羽
MIDI音源で奏でられていると思いますが、曲名どおり、ゆったりとして軽やかな感じの3拍子の曲です。
シンプルですが、包み込むような穏やかさ・暖かさが感じられ、純粋無垢な気持ちを表現しているように思います。
アシガール・サントラ集の32曲目に納められています。
【第2話】唯が山中で偶然兄上に会う場面
黒羽城に入れず、遠くの山上から城を臨んだ唯が「あそこに若君がいるんだよなぁ。」とつぶやいているところに山草を取りに来た兄上が現れます。
唯の「あけすけな物言い」に対して、兄上が自分の立場と境遇を話し始めると、曲も流れ始めます。
この時点では唯は若君の配下になる前なので、兄上は唯に対してまだ悪い感情をもってはいません。
そこで、特に警戒するわけでもなく、考えをめぐらせることもなく、素直な気持ちで自分語りを始めたことが曲からわかります。
また、「この人はこれから悪いことするけど、本当は悪い人じゃないんだよ。」とも曲が訴えているような気がします。
唯が最後まで兄上を信じようとしたのは、兄上を慕う若君のためだけでなく、この時の唯の純粋な気持ちからの直観があったからなのかもしれません。
この後、若君が阿湖姫を娶ることを話したところで曲は止まります。
兄上がこのことを話したのは、話の成り行きからなのか、それとも唯を女子と疑っているからなのか…
話し始めた時にはまだ曲が流れていたので、悪戯心ではなく、話の成り行きだったのだと思います。
ただ、それを聞いた唯は呆然自失状態でその場を去ってしまいます。
【第10話】牢の中から唯が宗熊に意見をする場面
高山からの脱出を試みた唯でしたが、もう少しのところでつかまり、牢に入れられてしまいます。
夜、唯の空腹を心配して煎り豆を持った宗熊が密かに唯のもとを訪れます。
惣領であることにどこか悩んでいる様子の宗熊に唯が、「惣領がなによ。私だって足軽だよ。」と言うところで曲が流れ始めます。
高山家の嫡子でありながら、父の厳しさに耐えかね、一度は唯といっしょに逃げようとした宗熊でしたが、それは宗熊が純粋であるからこそ。
一方、唯の純粋で一途なところは折り紙つきですが、そんな唯と宗熊のやりとりのバックにこの曲が流れると、危機に陥っている場面にもかかわらず、ほんわかとして微笑ましいシーンとなっています。
「人のいいなりになってちゃ駄目だよ。」と宗熊を説得する唯。
ただ、宗熊の純粋さゆえの勘違いで唯の思うとおりにはいきませんでしたが…
後に、この時のやりとりは、羽木家と高山家の将来を左右する重要な場面だったことがわかります。
勘違いした宗熊が「阿湖姫(唯)との祝言が楽しみじゃ!」と言うところで曲は止まり、明日、阿湖姫の兄上が長沢城に来ることを知った唯は真っ青になります。
【第11話】長沢城からの逃避行の道中、立ち寄った寺で唯が星空を見上げる場面
寝相の悪い悪丸にけられて起きてしまった唯が、小屋の外に出て満天の星空を見上げて思わず「おおっ!」と言う時に曲は流れ出します。
平成の星空を見慣れている唯には、ネオンなどの地上の光の無い澄み切った戦国の星空はさぞ感動的だったことでしょう。
この時までに戦国にけっこう長い期間滞在しているので星空を見上げることはあったと思いますが、半年ぶりで戦国に帰ってきた直後なのでこの感動になったのだと思います。
と、そこに、やはり眠れぬ若君も外に出てきて、しばしの会話。
会話が途切れてしばし見つめ合い、若君が少し離れた縁側に腰かけたところで曲は終わります。
この後、救出の礼を言う唯に若君は自らの思いを告げ、それに応えた唯が敵陣に切り込む勢いで若君に告白する名シーンとなりますが、純粋で穏やかなこの曲がその伏線となっているように思います。