アシガールの音楽 風風を駆ける
唯のテーマとなる風の曲では、アシガールの中で最も使われている曲です。
アシガールのサントラ集では4曲目に納められています。
風を暗示するピアノ伴奏(唯の動機)に横笛?でしょうか。
ところどころで縦笛も聞こえるような…
曲は1分20秒あたりでいったん転調するのですが、30秒ほどで元の調に戻って終わります。
元々転調好きなのですが、曲では転調が登場人物の心の動きを見事に表現しているように思います。
アシガールの中では「希望」を感じさせるシーンで使われているように思えるので、その線でまとめてみます。

【第1話】若君との出会いの場面
食べようとしていたきのこが毒きのこであると目の前に現れた若君に教えられ、すんでのところで吐き出して事無きを得た唯に対して、若君が「死ぬつもりではなかったのか。ならば生きよ。」と告げた時にこの曲が流れ始めます。
一人戦国時代に迷い込んで帰る方法もわからず、直前まで「私死ぬのかな・・・」と絶望しかけていた唯の心に一筋の希望と若君への思いが芽生えたことを暗示しているように思います。
この後、馬で去ろうとする若君を追って疾走しますが、腹ペコの上に足は便所サンダルということで追いつけず、あきらめかけたところで曲は途絶えます。
でも、この後、唯には運命的なご褒美が…

【第2話】かけくらべの復路
かけくらべで、唯が旗をとった後の復路のシーンで使われます。
敵のはずの悪丸が罠にかかった唯を助けるところで曲(風を駆ける)が流れ始めます。
バカ正直な悪丸に少し感謝しつつも「でもこの勝負、負けられないんで。」と言い、悪丸を残して走ります。
圧倒的なリードで帰ってくるのですが、天野の雇人になれるということでこの曲が象徴する希望に満ち溢れています。(この場では結局その希望はかないませんでしたが…)
また、この後唯の家来?になり、様々な場面で唯を助けることになる悪丸もある意味希望といえるかもしれません。

【第3話】尊の協力を得て再び戦国へ行く場面
それまで唯の戦国行きに難色を示していた尊が協力する意思を明らかにし、でんでん丸を唯に渡したところで曲(風を駆ける)が流れ始めます。
それまで、どうやって若君を助けるのかと尊に詰め寄られて意気消沈していた唯が一転、再び希望に燃えていく姿を曲は見事に表現していると思います。
この後、唯はおふくろ様たちへのおみやげをリュックから出して説明し始め、「我が家の伝統芸能」を心ゆくまで披露します。
曲はタイムマシンの起動スイッチをかまえる直前まで続きますが、自分ならおみやげを出すところからはコミカルなlittle boyかEggを使いたいところですが…いかがでしょうか。

【第5話】若君のため吉田城へ走る場面
若君を襲う謀略を知った唯が若君を救うため吉田城へ走るシーンで曲(風を駆ける)が流れますが、この時の唯の心中は希望どころか不安でいっぱいのはずです。
ここでこの曲が流れる理由は、若君の命を救うために走る唯こそが希望、と考えています。

【第6話】若君が自らの運命に立ち向かう決意をする場面
唯の部屋で尊が若君に「姉はできるかできないかじゃなくて、ただやるっていう人です。」と言うと曲(風を駆ける)が流れ始めます。
少しの間唯の姿を回想した後、「そのとおりじゃ。唯は何も考えておるまい。」と若君が笑うと、曲は転調します。(素晴らしい!)
盛り上がって期待感が高まったところで曲は突然止まり、若君の覚悟・決意へとつながっていきます。
「ならば定めはわしが己の力で変えてみせよう。」
それまで流れていた曲がピタリと止まったことによって、自らの運命に立ち向かおうとする若君の決意の重さが伝わってきます。
何回見ても感動的な場面です。

【第8話】唯が再び若君のための働くことを決意する場面
天野家から出ていこうと心を決めた唯がおふくろ様にさとされるシーン。
「今私に言うたことをなぜ若君に言わぬ。」とおふくろ様が唯をたしなめたところで曲(風を駆ける)が流れ始めます。
「励みなされ。」とおふくろ様に言われ、少しの間考えていた唯が、今後も若君のために励むことを決意したと思われる瞬間に曲は転調します。(これも素晴らしい!)
意を決して立ち上がった唯は、裸足のままわらじを持って若君の元へと走ります。

【第9話】思い出の場所で若君の気持ちを聞く場面
思い出の場所で自分のことをどう思っているかを若君に尋ねる唯ですが。
「唯ほど好ましいおなごに会ったことはないって、言って!」と心で叫ぶ唯の願いも空しく若君の答えは「わしは心から、お前に礼を申さねばならぬ。」
現代に戻らずに若君のそばで足軽として生きていくことは、若君がどう答えようが最初から決めていたようですから、とにかく若君の気持ちを知りたかったのでしょう。
この時唯が心で発した「っしゃ!」は、そういうことならそういうことでいいが自分の覚悟は変わらない、という気合を込めた「っしゃ!」。
それとほぼ同時に曲(風を駆ける)が流れ始めますが、この後、唯はタイムマシンの起動スイッチ(脇差)を池に投げ入れてしまいます。
若君の呼びかけにも振り返らず去っていく。
この唯の悲壮的な決意のためか、曲は転調直前に止まります。

【第11話】長沢城を脱出し、小垣への逃避行の道中
長沢城を脱出した唯と若君が小垣への道を急ぐシーンで曲(風を駆ける)が流れます。
追手をかわすために大手山山中に入るところで、自責の念にかられる若君に対して唯は「全然オッケーっす」という名セリフ?を発します。
この後、2日間水だけの苦行になるとも知らず、この時点では若君が助けに来てくれたことで嬉しさと希望でいっぱいです。

【第12話】兄上の改心が明らかになった場面
懸命に兄上を説得し、その直後に倒れた唯を男として介抱しようとする陣中の面々に向かって、兄上が少しためらいながら「唯之介は…おなごじゃ。」と言うところで曲(風を駆ける)が流れ始めます。
曲からも、兄上が完全にいい方に心変わりしたことがはっきりとわかります。
映像を見る限り、城を出る時点ではまだ迷っており、陣中で高山の裏切りを知った時点で高山と手を切る決心をしたと思われますが、小平太の「若君を救うと見せかけ、足をすくおうという」という発言にへそを曲げ、いったんは投げやりになってしまいます。
そこで唯に説得されるのですが、その後にこの曲が流れることによって、誰に何を言われようと若君を救いにいくという兄上の固い決意がうかがわれます。
兄上のこの決意が羽木家にとって希望となるであろうこともこの曲が暗示しているように感じます。
ところで、熱で意識がもうろうとしている唯の「兄上さん、若君をお願い。」といううわ言を聞き、兄上が「本体を頼む。若君はわしが迎えに参る。」という直前に曲が転調したらどういう感じになったでしょうか。
それだと曲を開始する位置がうまく合わないかな…