月がテーマの曲
作曲者SNSによりますと、若君のイメージは「月」とのことです。
月は、静かで美しく、どこか憂いをかかえています。
戦で敵も味方も死なせたくないと思いながら、家のため領民のために戦います。
唯のことを思いながらも、羽木家の行く末への思いとのジレンマに苦しみます。
心が休まることの無い若君の月のテーマは多くの場面で流れます。
アシガールのサントラ集には、若君をイメージした月がテーマの曲がいくつかあります。
・蒼い月-若君の憂い
・月見酒
・BITTER MOON
このうち、「月見酒」はチェロの曲ですが、「蒼い月-若君の憂い」にはヴィオラで同じ旋律が出てきます。
「月見酒」の最初に出てくる旋律ですが、これをここでは勝手に「若君の動機」と呼んでいます。(^^;
この若君の動機は、「月見酒」ではチェロの音域で演奏されますが、「蒼い月」ではヴィオラでオクターブ高い音域で演奏されます。
蒼い月-若君の憂い
オーケストラをバックに、チェロが高めの音域で暗くせつない旋律を奏でます。
若君の動機は「月見酒」よりオクターブ高い音で奏でられます。
本来より高めの音域で演奏することで少々苦しそうに聴こえ、そのことが苦悩する若君の胸の内を暗示しているように感じられます。
アシガール・サントラ集では6曲目に納められています。
【第2話】唯が月を見上げて若君を思う場面
若君が近々嫁をめとることを兄上から聞いて傷心した唯は月を見上げます。
「あの月、若君みたい。目には見えるけど絶対手の届かない。」と思ったところで曲が流れ始めます。
そこに偶然馬に乗った若君が通りかかりますが、唯の呼ぶ声は届かず、若君が走り去ると曲は消えていきます。
【第4話】不利な戦を強いられた若君を救うために唯が平成に戻る場面
この度の戦が千対3千の不利な戦いであることを知り、「若君ったら何でそんな戦に!」と唯が言うところで曲が流れ始めます。
若君が小垣の兵と民を見捨てないために3倍の敵と戦う決意をしたことが明らかになりますが、陣中の若君の苦悩を表すように曲は流れ続けます。
唯が見つめる先の空には満月。
そして若君が見えるところまで忍んできた唯は「なんとかしなくちゃ。私が。」
意を決してタイムマシンを起動させ、「若君様。少々お待ちを。」と言い残して唯は平成に戻ります。
ふと後ろを振り返った若君が、唯がいた場所まで近づいていき、「ふく?」というと同時に曲はピタリと止みますが、この演出が若君の言葉を印象的に浮き立たせています。
【第6話】黒羽城跡で若君が自分の運命を知る場面
黒羽城跡で若君が石垣に触れると曲が流れ始めます。
ここが450年後であることをなんとか理解した若君は、この後、自分と羽木家の運命について尊から聞くことになります。
若君の運命を嘆くようなチェロの響きが美しければ美しいほど心が痛くなる場面です。
【第9話】戦国に戻った唯が若君の苦労をおふくろ様から聞く場面
唯がいない半年の間、一度は兄上に惣領を譲ることを決意した若君が、惣領として再び高山と戦う決断をしたとおふくろ様が語るところで曲が流れ始めます。
その後、若君が阿湖姫との婚儀を自ら決断したことを聞かされた唯は激しく落ち込みます。
【第11話】羽木勢の危機に若君が降伏を決断する場面
高山勢と対陣した羽木勢を待ち構える高山の罠を知った若君は自身が降伏する決断をします。
羽木勢が罠にかかることについて、「それは己の死より耐え難い屈辱じゃ。」と若君がいうところで曲は流れ始めます。
自分が敵中を走り抜けて羽木勢に知らせるという唯の提案を若君は頑なに拒否し続けます。
その後、一計を案じた唯が「そうじゃなくて…ごめんなさい。」と言うと、悪丸が若君にでんでん丸を使い、若君が倒れると同時に曲は途絶えます。
若君の苦悩は消え、音楽は唯のテーマの一つ「風の境界線」へとつながれていきます。
若君のテーマから唯のテーマへの見事なバトンタッチによってドラマはクライマックスへ。