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    二人の令和Days83~13日9時、夏休みと言えば

    遊びから学ぶ事もあるし。
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    覚「じゃ、行ってくる。昼前には戻るから」

    唯「ごゆっくり~」

    美香子「デートじゃないから」

    両親が、墓参りに出かけていった。

    唯「さて、と。鶴がんばって折り折りするかなー」

    尊「成長したねお姉ちゃん」

    唯「は?」

    尊「だって学生の頃さ、夏休みの宿題、今くらいの時期でも全然手付けてなかったじゃない。そんなお姉ちゃんが今や、せっせと」

    唯「たーくんのためだもん」

    尊「愛の力か。兄さん、お姉ちゃんね、その宿題を挙げ句の果てに僕にやらせようとしてたんですよ」

    若君「それはならぬの」

    唯「尊が問題解くと、全部正解になるから手抜いてって」

    尊「ひどいでしょ?」

    若「困った姉君よのう。ハハハ」

    その時、ピンポーン。玄関の呼鈴が鳴った。

    尊「あ、来た来た。僕行ってくるよ」

    玄関に向かう尊。

    唯「グッドタイミング。ちょうどお父さん達居ないし」

    若「何じゃ?二人は何の話をしておる?」

    唯「湯呑みがデパートから届いたんだよ」

    若「なんと。来訪があるだけでそれがわかるとな」

    尊「はーい、無事到着~」

    段ボールを開ける。

    唯「うん、いい感じ。やっぱたーくんセンスいいわ」

    若「喜んで頂けるかのう」

    尊「心配無用ですよ」

    唯「たーくん、ハグの用意しとかないとね」

    若「そうじゃな」

    しばらくすると、今度は尊のスマホが鳴った。

    尊「あれ、お母さんだ。…はい、うん、いや今はいいよ。昼から三人で出かけるから、その時買って来てもいい?ん、じゃそういう事で、じゃあね」

    唯「お母さん、何って?」

    尊「ケーキでも買って帰るかって言われたんだけど」

    唯「あぁ。夕方、プレゼント贈呈式の時の方がいいよね」

    尊「うん。だから自分達で買うって言っといたよ」

    昼過ぎ。

    唯「そろそろ出かける?」

    尊「うん」

    覚「暑いぞ?車、出すか?」

    唯「ううん、大丈夫。ありがと」

    美「帽子かぶって行きなさいね」

    三人、麦わら帽子をかぶりプラプラ歩く。

    唯「なんかさ、こんなカッコだと、小学生の時に神社に虫取りに行ったの思い出す」

    尊「うん、あったあった。お姉ちゃんさー、鳴いてるセミ捕まえるから、もううるさくて仕方なかったからよく覚えてるよ」

    唯「セミハンターの血が騒いで」

    尊「何だよそれ」

    若「ハハハ」

    スーパーに到着。

    唯「どうしよっかな。先にお花買う?」

    尊「うん。本来の目的からで」

    花屋の店頭。

    若「色鮮やかじゃ。この、山の様にある中から選んでいくのか?」

    唯「んー、それでもいいけど、おまかせにしちゃうよ」

    若「任せる?」

    尊「まぁ見ててください」

    唯「すみませーん、予算これだけで、花束一つお願いしまーす」

    店員「ご希望の花とかありますか?」

    唯「どうしよっかな」

    尊「お母さんて、黄色好きじゃない?マニキュアも薄い黄色にしてたし」

    若「絽の召し物も、そうであったの」

    唯「そういえば、前に見送りの時、黄色いサマーセーター着てた気がする。じゃあ、黄色多めで作ってください」

    店「わかりました」

    花束完成。店を後にする。

    唯「お花いい香り~。フローラルぅ。でも思ったより重ーい」

    若「わしが持とう」

    唯「ありがと。うーん、たーくんが持つと…似合い過ぎる」

    尊「自分が渡されたいんじゃない?」

    唯「ホントだよ~。さて、ケーキケーキと」

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    続きます。

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    二人の令和Days82~13日火曜8時、活用します

    完全に身に付くまでの、グッズ。
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    唯が目覚めた。あい変わらず、朝起きるのは遅い。

    唯 心の声(早起きすると、たーくんの髪を結べるって特典がぶらさがってても、起きらんないんだよねー)

    階段を下りる。下りきって、一歩リビングへ踏み出したのだが、

    唯 心(ん?)

    思わずバックして、階段に戻った。

    唯 心(なに?なんか今…)

    今度は、そーっと顔だけ出して様子を覗く。

    唯 心(やーんなになに!たーくんが、現代男子になってる~!)

    食卓で、若君と尊が談笑している。若君が、小さいプレイヤーを手にしており、耳からはイヤホンのコードが垂れている。

    唯 心(いつの間に音楽に目覚めたの?軽ーくリズムなんか取っちゃって!J―POP?まさかの洋楽?!んもー、たーくんったらぁ!)

    ようやく移動してきた。

    唯「おはよっ」

    若君「おはよう、唯」

    尊「おはようお姉ちゃん」

    唯「たーくん、なに聴いてるの?」

    若「お、これか。唯にも聴かせてやろう」

    イヤホンを外し、唯の耳へ。

    唯「えー、なんだろ~ワクワク。…ん?」

    若「どうじゃ、良かろうに」

    唯「たーくん、これ…」

    若「ん?」

    唯「ラジオ体操第一じゃん」

    若「良いじゃろ?」

    唯「どんだけ好きなのよ。しかも、なんかプレイヤーがレトロな…カセットテープってヤツ?」

    尊「そうだね」

    唯「あんたが工作した?」

    尊「違う。だって、兄さんに止められてるし」

    覚「それ、僕があげたんだ」

    キッチンでは、両親が仲良く朝ごはんの支度をしている。

    唯「はあ?」

    覚「戻ってからも体操を続けるって言うから。リズムとか確認しやすいように、プレイヤー、最新の小さいヤツ買ってあげるって言ったんだけど」

    若「負担をかけとうないので、断ったのじゃ」

    唯「ふーん。で、これは?」

    覚「元々ある物ならいいだろって。古いけど、カセットテープにラジオを録音して、僕のもう使わないプレイヤーで再生してもらおうと。その大きさなら、懐に忍ばせながら運動できるし」

    唯「電源は?」

    覚「電池でもコンセントでも、どっちもいけるタイプだから」

    尊「おもナビくんの、太陽電池使って充電してくれれば」

    唯「はあ」

    若「お父さん、大切に使わせて頂きます」

    覚「プレイヤーも、忠清くんに使ってもらえて喜んでるよ」

    唯「なんなのよ。私のトキメキを返して~」

    美香子「はいはい片付けて、朝ごはんよ~」

    朝ごはん中。

    覚「今日、この後母さんと二人で墓参り行ってくるから、三人で留守番頼むな」

    尊「ついてかなくていい?」

    覚「ん、まぁいい」

    唯「わかったー」

    美「プレイヤーと言えば、おもナビくんだっけ?観てるの?」

    唯「うん、観てる。ちゃんと動いてるよ」

    尊「良かった」

    唯「Blu-rayさぁ、一回全部通して観たんだけど」

    若「お父さんお母さんの有り難きお言葉に、涙して観ました」

    覚「そう?感動させちゃった?」

    唯「夜こっそり観たんだけど、翌朝二人とも、泣き過ぎて目が腫れちゃって」

    若「何事かと、少々騒ぎになりました」

    美「そうなの~」

    尊「太陽電池はどう?調子はいい?」

    唯「うん大丈夫。なんだけどさぁ、あれ、灯籠に乗せると案外目立つんだよ。で、不審物扱いになりそうだったから」

    美「うん」

    唯「さわるな、忠清。ってたーくんに紙に書いてもらって、貼り出しといた」

    美「ぷっ。何それ~」

    尊「兄さんが、いいように使われてる…」

    覚「誰の入れ知恵か、すぐバレるな」

    唯「いいんだよ、だってたーくんの字だもん。文句は言われない」

    若「これで周りに、力関係もつまびらかになりまして」

    美「ホントよね」

    尊「怖ぇ正室だと思われてるよ、きっと」

    唯「えぇ?いいよ、たーくんにそう思われなければ」

    若「唯ほど怖い物は、他にないが」

    唯「やだー!それはやめて~」

    若「ハハハ」

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    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days81~12日13時、月に愛を誓います

    寝不足で満腹なんて、よく起きていられたモンだ。
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    写真館を出た。車内。

    覚「昼、何か食べたい物あるか?」

    尊「朝あんなに食べたから、そうはお腹空いてないでしょ」

    唯「まぁ、そうだね」

    尊「兄さんもですよね」

    若君「あぁ、当分は何も入りそうにない」

    覚「じゃあ、どこも寄らずに、このまま帰るか?」

    美香子「そうしましょ」

    尊「いいの?ワンピースおニューなのに」

    美「写真いっぱい撮ったし。いいわよ。やっぱり家が一番だしね」

    尊「それ、旅行あるあるだな」

    唯「昼はサラっと?また冷麦?」

    覚「またとか言うな。なんなら、そうめんにするが」

    唯「定番のもう一つ?出されても、どう違うかわかんないし」

    覚「麺の太さが違う。そうめんの方が細い」

    唯「へー、そうなんだぁ。って、聞いてもすぐ忘れそう」

    美「ふふっ、なんか…いいわね」

    覚「何が?」

    美「この、何気ない日常会話が、いい」

    尊「こんなしょーもない会話が?」

    美「家族、って感じじゃない」

    覚「そうだな、何も特別じゃないのがいいな。そうだ、唯、尊、忠清くん」

    唯「なに?」

    若「はい」

    尊「何、改まって」

    覚「昨日今日、僕と母さんに付き合ってくれて、ありがとな」

    美「本当。ありがとうね」

    唯「ううん、すっごく楽しかったから」

    若「また新たに様々な経験もさせて頂きました。ありがとうございます」

    尊「で、じきに結果がわかると」

    美「そうね。神のみぞ知る」

    尊「えっ?!やっぱりそうなの?!」

    美「冗談よ。自分で話振っておいて、何よその驚き方は」

    尊「え…」

    全員「ハハハ~」

    夜になった。9時のリビング。尊が風呂から出た。

    尊「あれ?兄さん一人?お姉ちゃんは?」

    若「先程、眠ったところじゃ」

    尊「えっ、早っ。確かに、昼間鶴折りながらウトウトはしてたけど。ゆうべ寝るの遅かったんですか?…って、しまった、聞かなくてもいい事聞いちゃった」

    若「いつ眠りについたかは、覚えてはおらぬ」

    尊「そうですか。それ以上は聞きませんから」

    若君が、夜空を見上げている。

    若「今宵も、月が綺麗じゃのう」

    尊「わぁ、嬉しい!」

    若「嬉しい?…何ゆえに?」

    尊「あの、この前吉田さんが家に来た時に、留学先では英語を話すって言いましたよね。覚えてます?」

    若「勿論覚えておる」

    尊「その英語で、アイラブユー、日本語に訳すと、私はあなたを愛しています、って言葉があるんですけど」

    若「うむ」

    尊「日本人はそんな直接的な言い方はしない、訳すなら、月が綺麗ですね、位にしなさいと諭したという、ある人の逸話がありまして」

    若「ほぅ。それで喜んだと。まことに尊は、才覚がある」

    尊「恐縮です」

    若「実に風情があり、良い話じゃの」

    尊「兄さんには必要ないですよね。だってお姉ちゃんが好き好き言ってるのを、うなずいて聞いてればいいんですから」

    若「いや、わしはお父さんの弟子であるので」

    尊「そうでした。じゃあ直接、愛の言葉を囁いてやってください。あ、この逸話、お姉ちゃん絶対知らないですから」

    若「そうか」

    尊「うわっ、しまった…すいません」

    若「ん?なんじゃ?」

    尊「こんな話、恋愛のレの字も知らない僕が言うのは、ちょっと図々しかったですね」

    若「ハハハ。わしも唯に出会うまでは無頓着であったゆえ、構わぬ」

    尊「ありがとう兄さん。あー、良かった」

    若「良かった?」

    尊「だって、兄さんが元々恋愛マスターだったら、お姉ちゃんの入る隙なく、結果僕達出会えてなかったんじゃないかな」

    若「そうか。確かにそれは幸いじゃった」

    尊「はい」

    若「それにしても、つくづく月に縁があるのう。ハハハ~」

    尊「ははは~」

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    漱石ですね。

    12日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days80~12日11時、可愛くて可愛くて

    79話の前書きで、少し言葉が足りなかったのでここで訂正します。
    創作意欲をかきたてるドラマに出逢えた、を改め、ドラマは勿論大好きでもっと先が観たくてつい創作意欲が湧く、です。失礼致しました。

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    何度も言うが、今は緩んでて良し。
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    ホテルをチェックアウト後、写真館にやって来た。

    若君「訪れるのは久々じゃのう」

    尊「思ったより混んでるね」

    覚「お盆は人が集まるから、この機会にってケースが多いらしいんだ」

    唯「ふーん」

    美香子「唯、ちょっといらっしゃい」

    唯「なに?」

    化粧室。

    美「グロス、持ってる?」

    唯「うん。これ」

    美「白ワンピースだとこのままでもいいけど、今日はひまわりの柄に負けないよう、ちょっと赤みを足すわね」

    口紅を薄く塗った上に、グロスを重ねた。

    美「うん、綺麗」

    唯「わぁ、すごい、ありがとうお母さん」

    男性陣の元に戻ると、ちょうど順番が来て、撮影室に通された。

    覚「おっ、いいじゃない」

    尊「さすがにスッピンで撮影はね」

    若「…おぉ」

    若君は、一瞬ハッとした表情をした後、はにかんだような笑顔になった。

    唯 心の声(喜んでくれてる…もっと早く、ちゃんとしとけば良かったな。ごめんね、たーくん)

    撮影スタート。

    唯「なんかさぁ」

    尊「ん?」

    唯「お父さんのはしゃぎ方が、朝から妙に激しくない?」

    尊「確かに。あ、ゆうべいい事あった?」

    美「それは置いとくけど」

    尊「置いとかれたな」

    美「ご機嫌なのは、これを身に付けてるからなのよね」

    唯「なに?」

    美香子の首元からチラリと見えていたネックレス。隠れていた下の方を引き出した。

    若「それは、もしや」

    尊「結婚指輪だ。そっか、ネックレスに通したんだね。今日はちゃんと連れて来たんだ」

    美「はまんないからといって、お留守番も何だから。唯達の指輪だってお出かけしてるのにね」

    尊「昨日は着物だったから、今日がお披露目なんだね」

    覚「へへ~。いいだろう?」

    唯「うん。みんな一緒に来れて、良かったね」

    五人で撮った後、両親二人で。その後、唯と若君で撮り始めた。

    カメラマン「お二人お若いので、もう少し動きのあるのを撮りましょうか」

    唯「動く?」

    カ「座るご主人の後ろから奥様がハグ、で行きましょう」

    唯「えー」

    準備完了。

    唯「えーい!」

    美「唯~!」

    尊「あー」

    若「く、苦しい…」

    唯「ごめぇん」

    覚「技かけてるんじゃないんだから。加減てのがあるだろう」

    カ「微笑ましいですね。はい、では次は立っていただいて、逆にご主人が奥様を後ろからハグしてください」

    チェンジ。

    若「こう、でしょうか」

    唯「え~恥ずかしい…」

    カ「はい、とてもいいですよ~」

    慈しむような、優しいバックハグ。

    尊「兄さん、あんな顔するんだ」

    覚「なんというか…なんというか、なんというかだな」

    美「ひまわりを包む日の光?」

    尊「そこまで考えて、シャツの色選んだの?」

    美「ううん、偶然だけど…」

    撮影終了。持ち帰る写真を選ぶ。

    唯「やーん、これいい!あっ、これもいい~」

    尊「うるさいなー、わかったから」

    若「…」

    美「照れちゃう?」

    若「心の内も全て、晒しておるような」

    覚「だね。いいんだよ、今はそれで」

    尊「こんなトコでいい?」

    美「いいわよ」

    唯「永禄に、持って行ける?」

    尊「余裕」

    唯「やったー、家族写真も入れてねっ」

    そろそろ帰ります。

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    続きます。

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    二人の令和Days79~12日8時、思案します

    記念すべきアシガール第一回放送から4年ですか…金曜22時にしか出逢わなかった私は、超新参者でございますが、こうして本日も、創作が続いております。
    創作意欲をかきたてるドラマに出逢えた幸せと、このアシカフェでほぼ野放し状態で自由に描かせていただける事に感謝感謝です。

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    それぞれの時代でできる事を。
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    レストランへ移動中。

    尊「お母さん、もしかして、みんなの服の色合わせた?」

    母のワンピースは、ポートネックで肘近くまで袖があり、体のラインを拾うか拾わないか位の、細身の膝下丈。

    尊「そのワンピースが深緑でさ、お姉ちゃんがひまわり柄でさ、僕と兄さんのシャツが、黄色だったり緑だったり」

    尊は緑系のチェック、若君はクリーム色の無地。

    唯「ボタンのあるシャツひさしぶりで、たーくん手こずってたから留めてあげた」

    尊「で、お父さんは」

    覚「いいだろ?」

    白シャツに茶系のベスト。蝶ネクタイに緑色が入っている。

    尊「コーヒー淹れるのが上手そう」

    美香子「ワンピースはおニューだけど、後は元々ある物で考えてみたの。家族でトータルコーディネート、ね」

    尊「写真仕様なんだね」

    朝食は、バイキング形式。

    唯「さー、行くぞぉ~!」

    尊「食事となるとスイッチが入るな」

    唯「たーくんあのね、食べたい物を好きなだけ取っていいんだよぉ」

    美「取り過ぎて残してはダメよ」

    若君「少なく取るのも、構わぬと」

    尊「さすが。大人だ」

    若「しかし、これは…」

    食事が並ぶテーブルが、延々と続いている。

    若「何が何やら…」

    尊「わからない物は説明しますね。お姉ちゃん、もう遥か彼方に進んでってるんで」

    若「世話をかける」

    若君に付き添う尊。

    尊「うーんと。卵だけでも、ゆでたまごもスクランブルエッグも温泉たまごもあるしなー。こりゃ僕だって迷うな」

    若「…」

    尊「ん?兄さん悩んでる?…いや、違うな。もしかして、永禄の皆さんに食べさせてあげたい、とか思ってます?」

    若「それは、思う」

    尊「ですよね」

    若「思う事は、他にも数多ある」

    尊「あー。こんなにいっぱい選択肢も量もあって、贅沢ですもんね。なんか、すいませんって思います」

    若「いや。時代が違うゆえ、良い悪いは一様には申せぬ」

    尊「比べられないと」

    若「わしがすべきは、永禄を生きる民がひもじい思いをせず、平穏に過ごせるよう努める事じゃ。その為には、やはり戦はしとうない」

    尊「それで、千羽鶴に願いをこめるんですね」

    若「この先の世に居る内に、願掛けができるとは思わなんだからの」

    尊「また、手伝いますね」

    ようやく全員揃った。

    全員「いただきまーす」

    美「あら、尊も忠清くんも、お皿が色とりどりね
    ~」

    尊「兄さんが悩んじゃってたから、量少なめ種類多めにした。二人で分け合うよ」

    若「残さぬように頂きます」

    覚「偉いな二人とも。それでも、びっくりするような量ではないけどな。問題は」

    一斉に唯に視線が集中。

    唯「なに?あと一回おかわりして、最後はデザートが基本っしょ」

    尊「お腹出てくるよ」

    唯「そこはねー、エリさんのワンピ最高。いっくらでも入る。だってさー、こんな贅沢たぶんもう一生ないよぉ?」

    尊「んー、まぁそうだね今んところ。でもそれ、一事が万事そうだから、キリがなくない?」

    唯「おかわり行ってくるー」

    尊「聞いてねーなー」

    天井まで届く大きな窓から、レストラン全体に朝日が差し込んでいる。

    美「いい朝よね…。さっき、こんな機会一生ないって言ってたけど」

    覚「うん」

    美「私は、一生なかったであろう様々な体験を、忠清くんにさせてあげられて嬉しいわ」

    若「お母さん…」

    美「あまり、特別な事できなくてごめんなさいね」

    若「いえ、この日々、毎日特別と思うておりますゆえ」

    覚「さすが、一日一日感謝して生きてるんだな。見習わないとな」

    唯「なんの話~?」

    尊「また盛り盛りになって戻ってきた。このヒトも、ある意味一日一日しっかり生きてる感じ」

    若「そうじゃのう」

    唯「みんな、しゃべってばっかだなぁ」

    美「優雅に寛いでるのよ。ほら、今日も空はあんなに綺麗だし」

    朝の柔らかな光に包まれながら、朝食タイムは、ゆっくりゆったりと過ぎていきました。

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    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days78~12日月曜6時20分、リズムに合わせて

    そんなに見つめないで~。
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    静かな朝だ。若君が目覚める。

    若君 心の声(そうか、ここでは鳥のさえずりは聞こえぬか)

    傍らでスヤスヤ眠る唯。

    若 心(ハハッ、やはり、褥の横幅を余す所なく使った寝姿じゃの)

    起こさないようそっとベッドから抜ける。カーテンを開けた。

    若 心(おぉ、下はこのような風景だったのか)

    ビルや、ビルの隙間の家々が見える。

    若 心(それぞれの暮らしが、そこにあるのじゃな。どの時代も変わらぬ)

    時計が、6時25分を指している。

    若 心(お、体操の時間じゃ)

    テレビのリモコンを手に取るが、勝手がわからない。

    若 心(家と違うてわからぬ…)

    なんとか点け、チャンネルも合わせたが、音量の下げ方がわからない。

    若 心(これで下げるのか、いや、上がっておる!)

    時間になり、軽快な音楽が大音量で流れた。

    唯「ひゃあ!なに!」

    唯が飛び起きる。

    唯「どしたのたーくん、あーうるさい!リモコン貸してっ!」

    ようやく普通の音量に。

    唯「あーびっくりした。おはよう」

    若君「おはよう、唯。済まぬ、起こさぬよう努めたつもりが」

    唯「いーよー。私も体操しよっと」

    二人仲良く、ラジオ体操。

    若「共にするのは初めてじゃの」

    唯「そうだね。でもちゃんとできるんだよー」

    若「両親が、皆できるものだと申されておったが、まことにそうであるな」

    最後、深呼吸で終了。

    唯「あー、動いたらお腹空いたっ」

    若「朝飯は何時からじゃったかのう」

    唯「8時からだから、7時50分に着替えて部屋の前に集合だよ」

    若「そうか」

    唯「ふぁ~。やっぱまだちょっと眠いかな」

    若「唯は、また寝るのか?」

    唯「え?」

    若「寝てしまうのか?」

    唯「それ、寝るなって言ってるのと一緒じゃん」

    若「食事まで時間がある」

    唯「ありますねぇ。えーと、いつの間にやら、ずいぶんと…お近くにいらっしゃいますねぇ」

    若「…」

    唯「もー、目で訴えるの、反則!」

    7時50分。部屋の前。

    美香子「おはよう~」

    覚「おはよう、忠清くん、唯」

    若「おはようございます」

    唯「ふぁ~、おはよぉ」

    覚「眠れてないのか」

    美「ふーん」

    唯「なによその、なんか言いたげな感じ!今朝は早く起きたからだよぅ」

    若「そこまで早うはなかったがのう」

    唯「私の話はいいから。あ、お母さんのワンピ、お披露目だねっ」

    覚「どおどお?忠清くん、よく、似合ってると思わない?」

    若「はい。よう似合うておられます」

    美「ダメよ~お父さん、そんな誘導尋問しちゃ」

    覚「ん?ははは」

    唯「超ご機嫌じゃん」

    若「尊が居らぬの」

    唯「あれ、ホントだ。どうした?」

    尊部屋のドアが開いた。

    尊「お、おはよう。遅くなってごめんなさい」

    覚「どうした。珍しいな」

    尊「着替えなきゃいけないのを忘れてて」

    美「おやまぁ。高級ホテルだからそこはね」

    尊「あ、ワンピースそれなんだ。いい色だね」

    美「あらありがと。じゃ、行きましょうか」

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    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    今までの二人の令和Days、番号とあらすじ、36まで

    中秋の名月…の筈が、こちらはガッツリ雨雲に隠れております(>д<)ご覧になれる地域の方は、どうぞお楽しみください。

    さて、投稿し始めてから大分経ってしまいましたが、平成Daysの時と同じくあらすじを出します。
    番号が36までなのは、描いている日付の区切り(今回は8月2日のお話まで)に合わせたためです。

    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
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    二人のもしもDays3no.572、とある年の3月下旬、遠出して花見

    二人の令和Days1no.585、2019/7/17、スイッチ起動させてしまった唯。若君と共に令和に登場

    2no.590、7/18、何かを訴えている唯

    3no.592、7/18、旅行先決定。尊は受験勉強後回しに

    4no.593、7/18、無事同部屋&面会時間取っ払いに

    5no.594、7/19、マクワウリを食べる

    6no.595、7/20、バーベキューパーティー開催決定で準備。働かざる者食うべからず

    7no.596、7/20、花火などを画像で説明。沼で拾い物は大変だった

    8no.597、7/21、吉田君登場に気が気でない若君

    9no.598、7/21、三人の様子を観察していた尊と美香子

    10no.603、7/21、仲良く水着を選ぶ男子達

    11no.604、7/21、ビキニ選びで大騒ぎ

    12no.605、7/22、コンロや浮き輪など買い込む。美香子が若君に頼み事

    13no.606、7/23、芳江とエリにオムレツを振る舞う

    14no.607、7/24、プール。白過ぎる男子達

    15no.608、7/24、タピオカドリンクは若君に飲ませない

    16no.609、7/24、巨大滑り台に挑戦

    17no.615、7/24、泡にはならない人魚姫

    18no.618、7/24、生きてるって素晴らしい

    19no.619、7/24、互いの呼び名を変更で親密度アップ

    20no.620、7/25、急に体操する両親に戸惑う若君。高野豆腐入りのミニハンバーグ

    21no.623、7/26、金曜は若君シェフの日。今日は餃子

    22no.624、7/27、地元のお祭りを見に行く

    23no.625、7/28、バーベキュー予行練習。シャボン玉で幻想的な世界

    24no.626、7/29、エリにワンピース芳江にサンダルを貰う

    25no.627、7/30、バーベキューパーティーの買い出し。人並みがわからない唯

    26no.629、7/31、飾り付けの工作を着々と。若君が両親をマッサージ

    27no.630、7/31、スイカの重さや大きさは

    28no.631、7/31、バーベキューパーティースタート。アイスは転がして作る

    29no.632、7/31、蚊取り線香と激しいポップコーン

    30no.633、7/31、スイカを切り分け花火を楽しむ

    31no.634、8/1、答えが5になる二回目の旅行発表

    32no.635、8/1、今後は経済活動に参加する若君。マニキュアの手伝いも

    33no.636、8/2、クリニックの休診日説明とホワイトソースの素作り

    34no.637、8/2、昼寝をしに全員二階へ上がる

    35no.639、8/2、夢で若君がドライブに誘う

    36no.640、8/2、現実と夢がリンク。カニクリームコロッケ爆発

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days77~11日23時、地上に瞬く星

    都会は、空もなかなか見えないけれど。
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    若君「…」

    唯「たーくん?」

    外を眺めたまま、若君が話し出す。

    若「こうではなかった時、を考えておった」

    唯「どんな?」

    若「唯が、永禄に来なければ、また、わしに出会わなければ」

    唯「うん」

    若「ここに座るのは、この先の世の男じゃ」

    唯「ん?あぁ、でも私田舎もんだからさ、こんな所に連れて来てくれるヒトならだけどね」

    若「珍しい」

    唯「へ?」

    若「普段なら、そんな事有り得ない、などと申すのに」

    唯「今日は、じっくり話を聞いてあげる」

    若「そうか。で、羽木は、とうに滅びておる」

    唯「うん。他に戦に勝つ方法がなければね」

    若「わしは、愛など知らぬまま」

    唯「阿湖姫は、家同士で結婚の約束はしてたけど会ってないもんね。でもたーくんなら、どんな姫が相手でも優しくしてたと思うけど」

    若「今日は随分と殊勝な」

    唯「なによ。ちゃんと聞いてるでしょ?続きは?」

    若「あぁ。唯は、この先の世の男と幸せに暮らすであろう」

    唯「たーくんを知らないままなら、いつかは誰かとそうなるだろうね」

    若「少なくとも、戦など知らずに済む」

    唯「で?」

    若「話はここまでじゃ」

    唯「そっちが良くない?って、いつもの仮定の話?」

    若「そう…じゃな。いつも申すが、唯の幸せを願っての事じゃ」

    唯「ふーん」

    若「またか、と思うておるのであろう?」

    唯「ん?まあ。えーっと。…あのね、私の前には、たーくんに続く道だけがまっすぐ伸びてた」

    若「…うん」

    唯「永禄に飛んだのも、たーくんと出会ったのも、好きになったたーくんに振り向いてもらいたくて頑張ったのも、結果羽木を助けたのも、目の前の道をまっすぐ進んだだけ」

    若「…必定であったと」

    唯「まっしぐらに走って、たどり着いたゴールがたーくんでホントに幸せだよ。たーくんと一緒に居ない私は考えられない、存在しないんだよ」

    若「わしも、唯が居ない世は考えられぬ」

    唯「心配してくれるのは嬉しいよ。でもそろそろわかって欲しいんだけどな。ずっと一緒に居てくれる方が、何倍も、何万倍も嬉しい」

    若「それは、わしもじゃ。なのに、つい考えてしまい…堂々巡りで済まぬ」

    唯「あのね、前におふくろさまにね」

    若「吉乃殿に?」

    唯「お前のおりたい場所に力を尽くし、ただおればよい、って言われたの」

    若「そうか…。吉乃殿が母上でおられる事に感謝せねばの」

    唯「たーくんのお母さんでもあるじゃん。妻の母、でしょ?」

    若「ん?そう、か。…ハハッ」

    唯「え、なに?」

    若「いや、信近に、父上と声をかけたらさぞや愉快であろうと」

    唯「あはは~、それ、腰抜かしてしばらく動けなくなるって」

    若「母上か…」

    唯「でね」

    若「あぁ、済まぬ」

    唯「私のおりたい場所は、永禄とか令和とかそういうのじゃなくて、たーくんのそば、なの。それだけなの。だから、そばに居させてね」

    若「…」

    唯「離れるなんて、ぜぇーったい、イヤだからね!」

    若「唯…」

    唯「たーくん優しいから。もうね、もしこうだったら、なんて考えなくていいからね」

    若「…心得ました」

    唯「起動スイッチ抜いちゃった時、しっかり捕まえてくれたから、離れずにいられて嬉しかった。ありがとう。すごく危険だったのに」

    若「唯とは、一心同体じゃからの」

    唯「出たっ。うふふ」

    若「ずっと共に」

    唯「うん!」

    若「いつまでも仲良う。両親のように」

    唯「あの二人、特殊な気がするけどねー」

    若「そうか?わしは見倣おうと思うておる」

    唯「ずっとラブラブ?」

    若「そうじゃ」

    唯「やったっ」

    唯の肩を抱き、引き寄せる若君。

    若「さて」

    唯「さて…とは?」

    若「精もついたしの」

    唯「なんか言ってるなー」

    若「ハハハ。まだ眠りはせぬだけじゃ。このまま夜景を眺めるとしよう」

    唯「夜景ね。キレイだもんね。ずっと見てられる」

    若「眺めつつ」

    唯「つつ…。えー、ど、どう続く?」

    若「まっしぐらに、唯にゴールじゃ」

    唯「あ?そう来たか~。うまいっ!」

    若「ハハ…」

    唯「あ」

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    夜はこれから。

    11日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days76~11日21時、計画的に

    特別感満載のお部屋。
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    ようやく口を開く尊。

    尊「あのさあ」

    美香子「なに?」

    尊「何企んでるの」

    覚「企むって?」

    尊「ベッドが、ダブル」

    美「ダブルじゃないわよ、クイーンサイズよ?あ、唯達の部屋も同じだからね」

    唯「へぇー、確かに大きーい」

    若君「唯向きじゃの」

    唯「どういう意味かなー」

    美「僕も大きいベッドが良かったって?」

    尊「違うよ。来年の春、無事に大学デビューしました、すぐに、小さい弟か妹の世話もデビューするって事?」

    覚「え?」

    尊「鰻も食べたしさ」

    唯「どゆこと?尊が、私達の子供の世話してくれるの?」

    若「違う。弟か妹と申しておるゆえ」

    美「…えっ、えーっ!ヤダ、そんな訳ないでしょう!無理無理!」

    唯「あー、やっとわかった」

    覚「そういう事か、そうか…」

    美「嫌だお父さん、考えないで!」

    若「それはめでたい」

    美「忠清くんまで!」

    唯「それって、うまくいけば子と孫が同級生になる?」

    尊「お姉ちゃん、いやに冷静だね」

    唯「この夫婦ならありえるかもって」

    尊「あ、誤解がないように言っとくけど、世話が嫌な訳じゃないから。という事で」

    唯「という事で?」

    尊「僕達は早々に引き上げるべきらしい」

    若「退陣か」

    唯「了解っ」

    覚「ビール、もう少し減らせば良かったかな」

    美「だからー!」

    唯「お菓子と飲み物もらってくねー、じゃ!」

    若「おやすみなさい、で良いのであろうか」

    尊「休まないから違いますよ。お邪魔しました~」

    美「ちょっとー!」

    部屋が一気に静かになった。

    美「ホントにもう…ふっ、ふふっ」

    覚「ははは」

    廊下の三人。

    唯「さて、どうしよう」

    若「もうしばらく、三人共に過ごそう」

    唯「了解~」

    尊「いいんですか?両親と同じ理由で、早く二人きりになりたいとかないですか?」

    若「早々に一人では。折角家族で来ておるのに」

    尊「わぁ、嬉しい。じゃあ、僕の部屋に来てください。確か、ツインの部屋をシングルで使うって言ってたから」

    尊の部屋に入る。

    唯「ホントだー、ベッドが二つあるぅ」

    若「外の美しさは変わらぬ」

    尊「なんなら今、火曜日どうするか打ち合わせします?」

    若「そうじゃな」

    唯「賛成~」

    秘密の会議。

    唯「じゃあ、そんな段取りでよろしくっ」

    若「承知致した」

    尊「じゃ、そろそろ行きなよ」

    唯「もういいの?」

    尊「鰻の効果がある内に」

    若「効果…」

    唯「いや、それどうなの」

    尊の部屋を出て、ようやく自分達の部屋に入る二人。

    唯「わーい!」

    若「なんじゃ?」

    荷物を置き、靴を脱ぎ捨て、ベッドにぴょーんと、うつ伏せにダイブする唯。

    若「随分と跳ねるのう」

    唯「さっきは尊の部屋だったから遠慮したけど、こういうトコのベッドは、ウチのとは違ってね」

    若「そうなのか」

    若君が、唯の寝転ぶ横に腰掛けた。

    唯「ねえねえ、靴脱いで、ベッドにあがって」

    若「ん?こうか?」

    唯「ほら、びょーんびょーん!」

    ベッドで飛び跳ねる唯。弾む動きに翻弄される若君。

    若「な、何を揺らしておる!」

    唯「へっへー」

    若「これ、唯!」

    唯「きゃはは~!えいっ!」

    若君の胸元にダイブ。

    唯「ふふっ、捕まえた」

    顔を上げ、若君と見つめ合う。

    唯 心の声(目をつぶる場面…ううん、それ以上?!)

    しかしその瞬間、若君が視線をそらした。視線の 先には、夜景。

    唯 心(え!夜景に負けた~。キレイだもんね、しかたないかぁ)

    若君は立ち上がり、窓に向いてベッドの端に座り直した。夜景が正面に見える位置だ。

    唯 心(ん?)

    隣に座る唯。

    唯「たーくん、どしたの?」

    若「…」

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    若君、どうした?

    続きます。

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    二人の令和Days75~11日18時45分、パワーチャージ!

    会計もうなぎのぼり。
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    鰻店に向かっている三人。アーケード街をプラプラ歩いている。

    唯「あ、サングラス見っけ!ねー、たーくん絶対似合うと思うー、かけてみてっ」

    若君「これか。どれ」

    唯「やーん、やっぱ超カッコいい!」

    尊「より無敵感が増してる」

    若「なにやら暗いの。おぉそうか、これはあの、金の煙玉を使えば見えるように」

    尊「ならないです」

    若「ならぬのか」

    唯「コントやってんの?キャハハ、ウケる~」

    店に到着。

    尊「どこだろ?あっ、居た」

    覚「おーい」

    美香子「こっちよー」

    若「お待たせ致しました」

    唯「お待たせー」

    美「あら、唯、綺麗。いい色選んだわね」

    唯「えへ。ありがと」

    三人、席につく。

    美「さっ、好きなの注文していいわよ」

    尊「鰻屋で好きなのって、危険じゃない?予算的に」

    唯「えー、私、ひつまぶしが食べたいっ」

    覚「いいんじゃないか?」

    美「私も一緒で」

    唯「お父さんは?」

    覚「うな丼。特上な」

    尊「えっ、すごい、僕もそれがいい!」

    唯「たーくんどうする?って言ってもわかんないよね」

    美「いろんな食べ方があるのは、ひつまぶしよね」

    唯「たーくん、私と同じのでいい?」

    若「頼む」

    尊「兄さん、僕には少し多いかもしれないんで、良かったら少し食べてくださいね」

    若「おぉ、デートは共有が醍醐味であったな」

    唯「まだデート続いてたんだ」

    注文した。

    唯「どうだった?美術館デート」

    美「良かったわよ~。それに、どこも涼し過ぎる位でね」

    尊「そこ重要だね」

    覚「お前達は?炎天下、大丈夫だったか?」

    唯「うん、途中デパートも寄ったし。ちょうど涼めた」

    若「パンケーキ、も食しました」

    覚「おっ。いいねぇ」

    美「良かったわねー」

    鰻のオンパレード。

    全員「いただきまーす!」

    唯「まず、おひつの中で四つに分けてね、そのまま食べるのと、薬味で食べるのと、だしをかけて食べるのと」

    若「残りは?」

    唯「お好きにどーぞ」

    尊「兄さん、僕の一切れどうぞ」

    唯「わー、もっと豪華になった」

    覚「沢山食べて、精つけてな」

    美「あらぁ、理解ある父ね~」

    若「…そのような意味合いがあるのですね」

    尊「応援してます」

    唯「げっ、なにそれっ!」

    晩ごはん終了。ホテルまで、夜の繁華街を歩く。

    若「随分と、光が瞬いております」

    美「いいの?お父さん、寄り道しなくても」

    覚「いいに決まってるだろ。今大分ビール飲んだし」

    尊「部屋って、上の方の階?」

    美「そうね」

    尊「じゃあ、きっと夜景が綺麗だね。兄さん、この景色を上から見られますよ」

    若「上?」

    唯「わぁ、楽しみ~」

    ホテルに到着。

    美「荷物は私達の部屋にあるから、持ってって」

    唯「はーい」

    部屋の扉が開いた。

    唯「わぁー!すごい!キレイ!」

    若「これは…美しい」

    大きく開いた窓。眼下には、眩い程の光の絨毯が広がっている。

    美「こんなに綺麗なのね~」

    覚「いいね~。ん?尊、何て顔してるんだ」

    ベッドの前で、なんとも言えない表情のまま、固まっている尊。

    唯「どしたの?尊」

    尊「…」

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    尊、どうした?

    続きます。

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    二人の令和Days74~11日17時30分、めざめました

    ちょっと足すだけで劇的に。
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    電気街の中の店。様々な部品が、壁から迫るようにぶら下げられている。

    唯「なんか、所狭しというか。こんなんで欲しい部品とか見つかるわけ?」

    尊「見つかるんだなこれが」

    唯「今回も、なんか作ってくれるの?」

    尊「ううん」

    唯「えー、そうなんだ」

    若君「わしが止めた」

    唯「そうなの?」

    尊「僕は、また何か作ろうかなって思ったんだけど」

    若「作る時間があるなら、勉学に充てよと」

    唯「なるほどね。弟思いの優しいお兄ちゃんだなぁ」

    尊「あ、新しい写真集とか、この前撮った花火の動画は、編集して持たせてあげるから」

    唯「ありがと」

    若「尊、これは何に使う品かのう」

    尊「あ、これはですねぇ」

    唯 心の声(二人して目を輝かせちゃってさ。たーくんも男の子なんだなあ。楽しそうで良かった)

    今日の唯は、白レースのワンピース。カーディガンは手に持っている。

    唯 心(服はかわいいけど…やっぱ化粧くらいしなきゃいけないんだよね。気付くの遅過ぎ?)

    店の外に出た唯。ガラスに自分が映っている。

    唯 心(身だしなみ、か。うーん…)

    道の少し先に、大きい薬局を見つけた。

    唯「あ。…ねぇ、尊~!」

    尊「何~?」

    唯「私、あそこの薬局に居る~」

    尊「わかった~」

    唯 心(えっと…どこかなぁ)

    店に入り、何かを探す唯。

    唯 心(あった。うぇっ、ここ、すっごくキラキラしてるんですけどっ!)

    若い女性向けのコスメのコーナー。

    唯 心(プチプラなのがいいよねぇ。いや!そんな事より…どうしよう、化粧品なんて買うの初めてだからわかんないよぅ)

    自分の指先に目をやる。マニキュアやペディキュアは、最初に若君が塗ってくれたパール調の桜色のまま。

    唯 心(たーくん、この色がいいって、あれから何度か塗ってるから…同じ感じがきっといいよね)

    口紅の棚。リップグロスを物色する。

    唯 心(試供品がある!あ、この白い紙に塗って試すんだ。これでイメージつかめるかなぁ)

    片っ端から紙に色をのせていく。

    唯 心(こんなモンかな…。これ以上、考えるのムリ~)

    お買い上げ。店を出て、早速塗ろうとするが、

    唯「あちゃー、そう言えば鏡も持ってないんだった!つくづく、女子失格だよね…」

    スマホのインカメラを鏡代わりに、なんとか完了。

    唯「うん。たぶんオッケー」

    尊「お姉ちゃーん」

    若「唯」

    さっき居た店とは違う方向から、二人登場。

    唯「え?もしかして、すっごい回った?」

    尊「僕にとってのワンダーランドだからね」

    唯「ちょっとしたテーマパークなんだ」

    若「ん?唯、なにやら…」

    尊「あ、唇がキラキラしてる。わかった!お店の試供品、塗りたくってきたんでしょ」

    唯「なにっ、聞き捨てならぬ!ちゃんと買った!ほらっ!」

    グロスを、男子達の目の前にどーんと出した。

    唯「もーっ」

    尊「で、いきなり化粧してどしたの」

    唯「え?えっとぉ」

    尊「周りの女性と比べて、焦った?」

    唯「だってー」

    若「唯」

    唯「は、はい」

    若「わしに、顔をよう見せてくれ」

    唯「はいっ」

    顔を上げた唯。若君の表情が緩んだ。

    若「綺麗だよ、唯」

    唯「わぁ、ホントに?…いや、ちょっと待て」

    若「え?」

    唯「たーくん、そのフレーズ、尊に教わったでしょ」

    尊「確かに教えたけど」

    唯「かわいいよ、もだけどさ、こう言えば喜ぶ的な暗号みたいに使ってない?」

    若「唯が何を気に入らぬのかわからぬが…愛らしく麗しいと思うて話しておったがの」

    尊「まさかお姉ちゃん、今の今まで、疑ってたの?」

    唯「うん」

    尊「ひでぇ!」

    若「心がこもっておらぬように感じたか。それは、済まなかった」

    尊「なんで兄さんが謝る展開?いやいやいや、おかしいって」

    唯「そっか、わかってたんだ。ごめん疑って。あまりにもサラっと言ってくれるから…ねぇねぇ、愛してる、もそう?」

    若「唯を、かけがえのないおなごと思うておるぞ」

    唯「そっか、そっか、良かったぁ」

    尊「そういうのは、もっと早くに確認しとくべきでしょ!」

    唯「失礼しましたっ。もう街は堪能した?」

    尊「うん。したよ。ありがと」

    若「姫君を、一人にして済まなかったの」

    唯「そろそろ鰻屋さんに移動する?」

    尊「そうしよっか」

    若「参ろう」

    若君が、唯の手を取った。そして、

    若「尊もじゃ」

    尊「うわぁ。じゃ、今はお言葉に甘えまして」

    三人、繋がりました。

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    続きます。

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    二人の令和Days73~11日15時、Go!ショッピング

    徒歩圏内になんでもあるから、都会は便利。
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    唯「尊、店選び正解。生クリームがそんなに甘くない」

    尊「でしょ。兄さん、どうですか?」

    若君「これなら、食べられそうじゃ」

    唯「すごーい。じゃあ、一口ちょーだい!」

    少し切って、唯の前に差し出す若君。

    若「食せ」

    唯「違うぅ」

    若「違う?あぁ。あーん、して」

    唯「わーい。うん、こっちも美味しい!」

    尊「やらされてる感が否めないけど」

    唯「えへへ。ラブラブカップルは、今どこに行ってるんだろうね」

    尊「美術館巡りって言ってたよ」

    唯「へー!そうなんだ。なら、着物も納得~」

    唯がご機嫌で食べる姿を、優しい眼差しで見守る若君。

    尊 心の声(元々何でも美味しそうに食べるお姉ちゃんだけど、永禄に戻っても、こういうシチュエーションがいっぱいあるのを願うよ)

    三人、完食。店を出た。

    尊「あー美味しかった。兄さん、良かったですね」

    若「あぁ。ありがとう、尊」

    唯「なにが?」

    尊「男子の秘密」

    唯「あっそう。あ、ねぇねぇ今さ、もらった小遣いで支払いしたじゃん」

    尊「うん」

    唯「もう使う予定なくない?」

    尊「山分けしたいの?」

    唯「違う。せっかくだからさぁ、両親に20周年おめでとう、しない?」

    若「それは良いの」

    尊「なるほど。早速検索…ふーん、結婚20年って磁器婚式って言うんだって。だからプレゼントは陶磁器とからしいよ。ペアのカップとか?」

    唯「へー、そうなんだ。あとさ、花束もあると良くない?」

    若「花を献上と」

    尊「カップの値段がわからないけど、花もだとちょっと金額が足りないかも」

    唯「喜んで出すよ」

    若「わしも出す」

    尊「え、いいんですか?」

    若「自由に使いなさいと申された。二人の為に使えるなら尚更良い」

    尊「じゃあ、デパートも近くにある事だし、今から探す?プレゼント」

    唯「探すー。電気街はいいの?」

    尊「まだ全然時間あるし」

    デパートの売場。

    唯「カップもいいけどー、なんか湯呑みも良くない?」

    若「おぉ、これなどお父さんに似合いそうじゃ」

    尊「どっしりしてるね。色違いもあるから、それにします?」

    若「良いのか?」

    唯「たーくんが選んだって聞いたら、倍喜ぶよ」

    尊「そうそう。前に、クリスマスプレゼントでスノードームもらったじゃないですか」

    若「あぁ。わしが選んだ小さき物じゃな」

    尊「僕ももちろん超嬉しかったけど、二人、何で目の前に居ないんだ、抱き締めたかった~って大騒ぎだったんですよ」

    唯「そうだったんだー。じゃあ今回は、直接ギューってしてもらおう」

    若「ハハハ。喜んで頂けたのじゃな」

    お買い上げ。

    唯「これ、持ち運ぶの?バレバレになるし、重いよ?」

    尊「ご心配なく。僕あてに家に配達してもらうから」

    唯「へぇ、さっすがー。デキる男だねぇ」

    デパートを後にする。

    唯「お花はどうする?」

    尊「そうだね。あと、一人千円ずつくらい足すとまあまあ大きい花束にできそう」

    若「ならばそうしよう」

    尊「湯呑みもちょうど届くだろうし…火曜日に買いに行く?」

    唯「三人で行こうよ」

    尊「よし、決まりだね」

    電気街に到着。

    尊「ミッションが確実に進んでる。よしよし」

    唯「顔つきが変わってるよ。ニヤニヤしちゃってさー」

    尊「兄さんとデートだもん、ニヤけずに居られるかって話」

    若「デート。手でも繋ぐか?」

    尊「い、いや、そこまではいいです」

    唯「肩でも抱いたら?」

    若「そうか」

    尊「いや、マジ無理だから!」

    唯「キュンキュンしちゃって?」

    尊「そうだよ~」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    遠慮せずとも良かろうに。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days72~11日13時、実践中です

    言われた事をきちんとこなします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母、着物姿で登場。

    美香子「お待たせ~」

    覚「う~ん、いいねぇ」

    唯「きっちり着込んでるー。暑くない?」

    美「訪問着だもの、そりゃあきっちりよ。これね、案外暑くないのよ」

    若君「よう似合うておられる。麗しい」

    美「まぁ〜。嬉しいわ~」

    近寄って、生地をじっと見つめる若君。

    若「これは、紗ですか?」

    美「違うのよ。絽って言うの」

    若「ろ?」

    美「忠清くんなら聞いてくると思って調べたんだけど、まだあなたの時代にはない織り方だったのよね」

    若「山吹の花を思わせる色の地に浮かぶ、縞が美しいです」

    美「ありがとう。うーん、いい!持つべきは、お着物の話ができる息子ね~」

    唯「この二人、日本語しゃべってる?シャとかロとか言ってるけど」

    尊「着物の話してんだから日本語でしょ」

    準備完了で出発。車内。

    美「ねぇ、最後14日の夜、またリビングに布団敷いてみんなで一緒に寝たいんだけど」

    唯「いいよー」

    美「でも私翌日から仕事だから、話し込むとか出来ないかもしれないのよ。ただ居るだけになってもいい?」

    覚「いいんじゃないか?お互いの気配を感じられるだけでもいいもんだろ」

    唯「うん。良いよそれで」

    尊「恒例行事って事で。了解一」

    若「わかりました」

    車窓の景色が、都会のビル群の光景に変わってきた。

    若「ほう…天を突く程高く、地に刺したが如く細く鋭い屋敷の数々じゃのう…」

    美「あら?初めて見る風景?前来た時に、デパート行ったって言ってなかった?」

    唯「そこ、駅から直結だったから、ビルを見るのはほぼ初めてなんだよ」

    そろそろ二手に分かれる。 車を降りる三人。

    美「チェックインして、荷物も運んでおくわね」

    唯「うん、よろしくー」

    覚「尊、鰻店の場所は大丈夫か?」

    尊「うん。地図確認したよ。7時に予約してあるんだよね」

    覚「そうだ」

    唯「デート、楽しんできて」

    若「ごゆるりと」

    尊「行ってらっしゃい」

    美「ありがとう。じゃあね」

    手を振りながら、両親は去って行った。

    唯「さてと。パンケーキの店は目星付けた?」

    尊「うん。あ、やっぱ一番に行く?」

    唯「だって時間のメドがわかんないし、あんまり遅い時間だと、鰻入んないよ?」

    尊「そうだね。じゃあ行こっか」

    尊と若君が前を歩き、唯は後ろから付いて行っている。

    尊「後ろでいいの?」

    唯「デートの付き添いなんで。ついでに、たーくんに変なのが寄って来ないか見張ってる」

    やはり若君は、道行く女性達の視線を集める。

    女性1「超イケメン…モデル?それか俳優?」

    女性2「絶対それ系だよね。あ、指輪してる。え一結婚してるんだー」

    女1「イイ男って、残ってないよねー」

    尊が振り向き、囁く。

    尊「指輪効果出てるね」

    唯「うん、サンキュー。助かってる」

    尊「…」

    唯「なによ。顔になんか付いてる?」

    尊「街行く女性達と比べて、負けてる点があるとするなら」

    唯「えっ、なに?」

    尊「どスッピンな所。みんなきちんと化粧してるから。現代の街中なんだからさ、身だしなみ的に少しくらいしてくれば良かったのに」

    唯「うわぁ、痛たたっ。それ、薄々感じてた」

    パンケーキ店に到着。ほどなく席に通され、注文も完了。

    尊「大ブームの頃なら、絶対来なかったよ。店の外にズラーって並んでる映像、よく見たから」

    唯「それは言えるかも。ねぇ、たーくん、今さらなんだけどさぁ」

    若「なんじゃ?」

    唯「また店に行こうとは言ってくれてたけど、ホントに良かったの?」

    若「勿論じゃ」

    唯「無理してない?」

    尊「兄さん向けに、めちゃめちゃ甘くはない系の店にはしたけどね」

    若「唯が、この世の幸せ、と頬張る姿が見とうての」

    唯「誰かの入れ知恵?」

    尊「だとしても、兄さんがいいって言ってるんだからいいじゃない」

    唯「ふぅん。お礼は、誰に言えばいいの?」

    尊「お父さんに」

    唯「えっ!意外な答えだった」

    パンケーキが三皿運ばれて来た。モリモリと、生クリームがうず高く鎮座している。

    唯「わーい!」

    若「おお」

    尊「壮観だなぁ。恋愛マスターは、食べるの見てるだけでもいいって言ってたけど」

    若「一口ちょうだい、がやりたかろう?」

    唯「いやに詳しく指導されてるなあ。でも嬉しい!だって、お父さんが師匠でたーくんが弟子なら、絶対甘くて優しいもん」

    尊「同感です。では」

    三人「いただきます!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    妖怪千年おばば様

    気を遣わせてしまい、すみません!

    源トヨの登場は、うーんと先です。存分に、発表してください。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days71~11日日曜9時、定番はどっち

    千羽鶴ミッションも着々と進む。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、食卓に、折り鶴を色分けして入れた箱を並べた。

    美香子「お待たせ、裁縫箱持ってきた。針と糸と、あとボタンね。一番下に付けて糸から鶴が抜け落ちないようにするの。プラスチックじゃ何だから木製にしたわ」

    唯「いよいよ千羽鶴の形になるよ、たーくん」

    若君「皆総出で済まない」

    覚「何羽ずつにする?」

    美「それもだけど、どうやって並べる?この箱の並びのまま、グラデーションにする?」

    唯「グラデーション賛成。キレイだから」

    尊「50羽ずつだとこの位の長さだよ」

    美「いいんじゃない?」

    尊「じゃあさ、箱の横にこの箱から何羽か取り出すか書こう。足して50になるように」

    美「あー、それ楽ね。出して並べて、下になる色から糸で掬っていけばいいもんね」

    若「手筈が整っていっておる…」

    唯「黙って流れに乗るのが正解だよ」

    あれよあれよという間に、束が出来上がっていく。

    覚「順調だな。じゃあ、早めだけど昼ごはんの支度始めるよ」

    唯「了解~」

    若「実に美しい」

    尊「50羽、糸通ったよ。上はどうすんの?」

    美「そこにあるリングに、軽く結んでおいて」

    11時。十束完成した。

    美「旅行から帰ったら、また続きをしましょうね」

    若「わかりました」

    覚「はい、撤収してー。ごはんだぞ」

    冷麦です。

    唯「夏の定番だから今日もこれなの?」

    尊「え、夏の定番はそうめんじゃない?」

    唯「そうだった?どっち?」

    覚「どっちもだろ」

    美「お父さんは冷麦派よね」

    覚「うん。そうめんはな、ゆで時間が短過ぎて、家事好きの僕としてはあっけなくてさ~」

    唯「そんな理由なんだ。どおりでよく出る」

    覚「今日はな、晩ごはんがスタミナ系だからこうした」

    唯「スタミナ?お肉とか?」

    覚「鰻食べに行く」

    尊「うなぎ!」

    唯「わぁ、ひっさびさだ!」

    美「忠清くん、食べた事あった?」

    若「いえ、初めて聞く名です。食した覚えはありませぬ」

    唯「そっかぁ、じゃあ楽しみにしててー」

    若「そこまで皆が喜ぶのであれば、楽しみじゃの」

    昼ごはん後。

    美「支度、ゆっくりでいいからね。じゃ」

    唯「なに?」

    覚「今日は、着物を着るって張り切ってるんだ」

    唯「へー」

    覚「まぁ本人がそうしたいって言ってるから」

    唯「あー、デートだから特別ぅ?暑いのに大変だね~」

    覚「永禄では年中着物だろ」

    唯「まっ、そうだけど。だってまさかお母さん浴衣じゃないだろうし」

    覚「浴衣じゃあないな」

    若「お母さんが、着物を召されると」

    唯「うん。絶対たーくんに聞いてくるから、褒める用意しておいて」

    尊「褒める用意って。兄さんなら普通に素直に褒めるでしょ」

    覚が、尊に手招きしている。二人で部屋の隅に。

    尊「お父さん、何?」

    覚「あのさあ、鰻、背開きか腹開きか、気にしなきゃいけなかったかな?どう思う?」

    尊「え?あ、あー。腹開きだと切腹を連想させるからってヤツ?」

    覚「店には聞いてないんだけど、地域的には両方あるらしい」

    タブレットで検索する。

    尊「んー兄さんの時代には、鰻はあっても開いてなかったみたいだね。て事は知らない料理なんだから、わざわざ、聞いた事のない言い伝え的な物を教えなくてもいいんじゃないかな。兄さんなら、聞いたとしても気にしないとは思うけど」

    覚「そうだな。黙っておくよ」

    唯「なにコソコソしゃべってんのー」

    尊「今日の段取り」

    唯「ふーん」

    覚「あ、そうそう、今日な、僕と母さん自由にさせて貰うからさ、三人に小遣いをやるよ」

    唯「マジで?やったぁ!」

    尊「ラッキー!」

    若「わしにもですか?」

    覚「三人一括だけどな。はい」

    唯「わっ、1万円だ」

    尊「こんなにいいの?」

    覚「まあ、お好きなように。残ったら、山分けしな」

    唯「へー、ありがとー」

    尊「ありがとう」

    若「ありがとうございます」

    覚「さ、じゃあ僕らもそろそろ出かける支度するか」

    三人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days70~10日16時、これが目に入らぬか

    あんまりカッコいいと、それでもチャレンジしてくる強者が居るかも。気をつけよう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    看板は、ピカピカになった。

    唯「カンペキ!たーくんお疲れさま」

    若君「まだ何かする事はあるかのう」

    唯「働き者だなぁ」

    家に戻ると、母が出迎えた。

    美香子「お帰り~。あ、脚立は玄関でいいわよ。もうね、掃除もほぼ終わりだから、お風呂一番に入っちゃってくれる?」

    唯「いいの?やったー。じゃあ、どっちが先入る?」

    美「何言ってるの」

    唯「え、もしや」

    若「わかりました」

    唯「出た!」

    美「みんな汗たっぷりかいてるもの。晩ごはん前に全員お風呂済ませたいからよ。はい、行ってらっしゃ~い」

    18時。晩ごはんの支度が始まった。覚と若君はキッチンに。尊と入れ換わって最後、美香子が風呂に。唯は、ホットプレートがセット済みの食卓で、ぼーっとしている。

    尊「あーさっぱりした。げっ!なんだよ姉ちゃん、その腑抜けな状態は。兄さんと一緒のお風呂で、湯あたりしたの?」

    唯「してなぁい。お風呂は超ラブラブだったしぃ」

    尊「成長してるな」

    唯「…ああっ、そういえば!あ痛っ」

    ガン!と音が。急に飛び起きた唯が、膝をテーブルにぶつけた。

    唯「い、痛ぁい」

    尊「あーあ。何いきなり覚醒してんだよ」

    唯「ねぇ、どうしよう!都会で、たーくんが尋常じゃない数の女達に囲まれたら」

    尊「カッコいいのは罪だな。でもそれ、そんなに心配するような事?」

    唯「都会の女は怖い」

    尊「歩いてる人のほとんどが、都会の人ではないと思うけど」

    唯「えー。でもー」

    尊「わかった。要は、兄さんを守れればいいんだよね?」

    唯「うん」

    尊「そんなん簡単だよ」

    唯「うっそぉ」

    尊「これ使えばいい」

    リビング奥の棚から、ケースを一つ取り出す尊。

    唯「あ!尊お手製の結婚指輪!」

    尊「これはめてれば、そうそう近づいては来ないんじゃない?」

    唯「そっか…そっか、結婚してますってアピールすればいいんだもんね!」

    尊「そゆこと」

    美「あー、いいお湯でした。あら、懐かしいグッズ出してるわね」

    唯「どうしよう、指に入らなかったら…あ、入った。たーくぅん!」

    若君の元へ指輪を持っていく唯。

    若「おぉ、これは」

    唯「ねっ、はめてみて!まだぴったり?」

    若「ふむ。…ぴったりじゃな」

    唯「わぁ、良かったぁ。たーくん、今から、慣れるためにそのままにしててね」

    若「心得た」

    覚「騒がしいな。はい、もんじゃ焼き作るよ、席について~」

    具材を炒め、土手を作り、だしを流し入れ、なじませる。

    若「これで固まるのか?」

    唯「固まらないよ」

    若「え?」

    ホットプレートの上が、ふつふつ言い始めた。

    覚「そろそろいいな」

    美&尊「いただきまーす」

    唯「はい、たーくんこのヘラ持ってね」

    若「小さいのう。どう使うのじゃ?」

    尊「見ててください。これをこうやって、隅からはがして押し付けて、ちょっと焼く」

    若「ほぅ」

    尊「これをこのままパクリと。あ、熱いですから気をつけてくださいね」

    若「ほぅ…」

    唯「はい、フーフーしたよ。あーんして」

    若「うまい。わしもやってみよう。…はい、唯」

    唯「キャー!私にくれるの?嬉しーい。ねぇねぇ、あーんして、って言ってぇ」

    若「あーん、して」

    尊「そ、総領の威厳が…まだ棒読みで良かったけど、永禄の皆さんには見せられないな」

    唯「おいし~い!ふふっ」

    若「お父さん、これは、どんな材料でも出来る物でしょうか?」

    覚「そうだね。それっぽい物でいいなら、永禄でも作れなくはないと思うよ」

    若「そうですか」

    唯「作ってみちゃう?!すんごい野望~」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    10日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days69~10日14時、私のモノ!

    ちょっと位、緩んでもいいよ。令和だもん。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニックは盆休みに入った。そろそろお昼ごはんが終わる。

    美香子「さあ、暑いけど、もうひと頑張りして大掃除するよ~」

    若君「お母さん、その大掃除ですが」

    美「はい?」

    若「普段出来ぬ所を掃除すると聞きました」

    美「うん、そうね」

    覚「どこか、汚いなぁって所あった?」

    若「相当汚れておる、とは申しませんが」

    覚「うん。でも、気になったんだろ?」

    若「表に掲げた、院の名が入った、夜に光る」

    尊「あー、さっき兄さんが見てた、クリニックの看板ですね」

    若「虫が集まるゆえ、所々黒うなっております」

    美「あー。なんかすっごく恥ずかしいわ。それ、きちんと磨いた覚えないのよ」

    覚「目につく所なのにな。ちゃーんと見てなきゃいけないな~。さすが忠清くんだ」

    美「じゃあ忠清くん、そこ、あなたにお掃除お願いしてもいい?」

    若「承知致しました」

    唯「私も手伝うー」

    尊「かなり暑いよ?」

    唯「一緒がいいもん」

    尊「そこは、愛の力が勝るんだ」

    覚「高圧洗浄機位買っときゃ良かったなー。ブラシとバケツと雑巾と、あと脚立が要るから用意するよ」

    外に出た。看板を見上げる若君と唯。

    唯「これかー。確かにうす汚れてる」

    若「始めるか」

    若君が脚立に登った。雑巾で水を含ませながら、ブラシで擦る。みるみる内にバケツの水が真っ黒に。

    唯「水、替えてくるね」

    若「頼む」

    一人黙々と擦っている若君。すると、

    若君 心の声(何やら、視線を感ずる…ん?)

    いつの間にか、門の外に小さい女の子が立っていた。脚立に乗る若君を下から見上げている。

    若 心(近くの屋敷の娘御であろうか。年は孫四郎程か)

    そのまま掃除を続けていると、またもや熱視線を感じた。見ると、

    若 心(なんと!分身の術か?!)

    一回り大きく、そっくりな顔で同じ服を着た女の子がもう一人増えて、二人に見つめられている。

    若 心(これは、どうしたものか…)

    若君が戸惑っていると、

    男「あー、やっぱり里帰りしてたなー!」

    若「…あっ、これは」

    急いで脚立を降り、麦わら帽子を脱いで、現れた男性に近づく若君。

    若「久方ぶり、です、コーチ」

    コーチ「元気そうだね。速川は?あ、君も速川だったな」

    若「水を汲みに行っておりまして」

    唯「あー!コーチ!」

    コ「おー、元気かー」

    唯「え?なんでここに居るの?てか、もしかして娘ちゃん?二人?かーわいい!」

    コ「ウチの娘だ。小2と年長」

    若君の囁き「…何の話じゃ?」

    唯の囁き「年は、7才と5才、って意味だよ」

    コ「妻の実家がこの近くでな。ゆうべから来てるんだが、子供が飽きだしてさ、公園にでも行こうと思ったんだが、あーそう言えば速川の実家この辺りだったな、って様子を見に来てみたんだ。済まんな、娘達がじっと見ててびっくりしただろ?」

    若「いえ」

    上の娘「パパ、この人たち誰?」

    コ「このお姉さんは、パパが教えてる高校の部活で頑張ってたんだ。で、このお兄さんと結婚したんだよ」

    上娘「けっこん。あ、わたしがしょうらい、パパとすることだね」

    唯&若「え」

    下の娘「ちがうよ!あたしがしょうらい、パパとけっこんするんだもん!」

    上娘「わたしだもん!」

    下娘「あたしだもん!」

    唯「か、かわい過ぎるっ。コーチ、めっちゃ愛されてるじゃん!」

    コ「嬉しいんだが、いっつもこれでケンカが始まるんだ。さ、パパはまだお話があるから、先に公園に行ってなさい」

    娘達は、走っていった。

    コ「ふう。騒がせて悪かったな。君らも子供…あっ」

    唯「あ、私、子供できてませんから。コーチが勘違いしただけだよ」

    コ「そ、そうか。まだしばらくこちらには居るのか?」

    唯「お盆の頃に、帰ります」

    コ「そうか。じゃ、そろそろ行くよ。元気でな」

    唯「うん。元気でねー」

    若「では、これにて」

    走って行くコーチ。後ろ姿を見送る唯と若君。

    コーチ 心の声(速川、綺麗になったな…)

    唯「あのさぁ」

    若「ん?」

    唯「さっき、ホンの一瞬だけど、とても永禄のみんなに見せらんない顔してたよ」

    若「そう…やもしれぬ」

    唯「デレッデレもいいトコだった」

    若「唯に瓜二つな愛らしい娘達に、取り合いにされる様を思い浮かべての」

    唯「ははは。でもそれ、ちょっと違うよ」

    若「違う?」

    唯「私も取り合いに参加するもん」

    若「そうか、ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の現代Days(仮)か…

    てんころりんさん、いつも感想をありがとうございます。心に染みまする。

    なんせ「寸止めの美」がないので、いつイチャイチャしだすかと、ハラハラしながら御覧いただいてると思います。恐縮です。

    今日のお話から、速川クリニックが盆休みに入りますので、家族五人の場面がちょっとは増えるかな。速川家は、両親を筆頭に今日も平和です。

    題名の件ですが…そりゃあ現代で生活を営む二人は、私も見たいです。でもここで、超現実的な事案が頭をもたげ…若君は「登録」されてない人物だから、唯達と同じようには生活できないし…ファンタジーはどうなった!って話なんですが。

    ひとまず、と言ってはなんですが、令和Days、満月の2019年8月15日以降のお話もちょっぴり描きますので、今しばらくお付き合いくださいませ。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days68~10日土曜8時30分、気が利きます

    郷に入っては郷に従う。いや、馴染み過ぎ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。

    美香子「じゃあ、あと半日、頑張りまーす!」

    四人「行ってらっしゃーい!」

    覚「さて、と。昼からは大掃除だけど、午前中も色々やっとかないとなー」

    若君「お父さん」

    覚「何だい?」

    若「掃除と、大掃除は、何が違うておるのですか?」

    覚「あー。大掃除は、普段中々出来ない所だったり、大がかりにしか出来ない所だったり。いつもより念入りにって感じかな」

    若「普段出来ぬ所ですか」

    覚「どこか、ここやらないとって気付いた所あったら教えてな」

    若「わかりました」

    覚「まずは、気温が上がらない朝の内に、庭の草むしりだな。帰って来た早々に抜いてもらったが、もう大分伸びてるから」

    若「わかりました。では早速三人でいたします」

    唯「私と」

    尊「あ、僕か」

    覚「よろしく。日焼け止めも軍手も帽子もタオルも忘れずにな」

    若「はい。では支度が出来次第、参るぞ」

    唯&尊「ははっ」

    草むしり中。

    唯「どうせならさぁ、食べられる野草とか生えてきてくれれば一石二鳥なのにね」

    若「そうじゃのう。この辺りの草は、まず無理であろう」

    尊「それ、もしかして本読みました?」

    若「あぁ。実に為になった」

    唯「私が買った本でしょ」

    尊「その本、しばらくお父さんが持ってたんだよ。僕はその時読んだ。多分今回帰ってくるちょっと前に、お姉ちゃんの部屋に戻してると思う」

    若「おぉ、それで合点がいった。わしはこの前、初めて見たのじゃ」

    尊「実際、永禄で役に立ったの?」

    唯「立ったよ。ひもじい時にモグモグしてた」

    若「いつの話じゃ?梅谷村に居った頃か?」

    唯「まっ、そう…だね」

    尊「お城入ってからもやってたら怖いよ」

    庭の草むしりは終了。

    若「先程、お父さんが、普段出来ぬ所を掃除すると申された」

    唯「うん」

    若「草はまだ、そこらに生えておるのだが」

    クリニックの駐車場の隅を指差す若君。

    尊「じゃあ、もうちょっと頑張りますか?」

    唯「どしたの尊?やる気じゃん」

    尊「だって、昼過ぎに頼まれたら、もっと暑い時にやんなきゃいけないんだよ?」

    唯「なるほど。なら、やっちゃおー!」

    建物近くから、門の辺りまで手分けして、草むしり続行。

    覚「あれ?おー、感心感心」

    クリニックの中からも三人の様子が見える。

    美「あら、こんな所までやってくれるなんて。さすが忠清くん…いや、これは尊が主導かな」

    芳江「草むしりの分析ですか?」

    美「感情で動くのが唯。でも納得すればすんなり言う事を聞く。感情と理論のバランスがいいのが忠清くんだけど、今日の場合、多分忠清くんが提案して、理論で動く尊が、全員が納得するような答えを出して、こうなってると思うわ」

    エリ「まあ。まるで会話をご覧になったかのようですね」

    門の前まで来た。クリニックの看板をじっと見つめる若君。

    尊「ふう、こんなトコかな。あれ、看板がどうかしました?」

    若「うむ。後でお母さんに聞いてみようと思うての」

    尊「そうですか」

    敷地内全て、草むしり終了。抜いた草をゴミ袋に集め、覚の元へ。

    唯「あー、あっつーい」

    尊「ふう、重っ」

    若「お父さん、これで宜しいでしょうか」

    覚「あー、ありがとねぇ。ホント助かったよ。ごめんな、永禄なら周りが何でもやってくれる身分なのに、つい甘えちゃってさ」

    若「いえ、此処は先の世ですので。何でも致します」

    覚「みんなお疲れさん。麦茶飲んで、涼んで」

    時計は、11時を指している。

    覚「ありがとな。午前中はここまででいいぞ。また昼から頼むな」

    若「わかりました」

    覚「ところで、今日の晩だが、いよいよもんじゃ焼きにしようと思う」

    唯「おーっ!」

    尊「楽しみー!」

    唯「具はなに?」

    覚「明太チーズでどうだ」

    唯「お餅も入れて~」

    覚「了解」

    唯「たーくん、できた所からどんどん食べてくんだよ。楽しみにしててね」

    若「出来た所から?…少々解せぬが」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days67~9日17時、恩返しします

    尊は、これで三倍以上頑張れるに違いない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    キッチンに四人集合。

    覚「じゃあ忠清くん、始めるよ」

    若君「はい!」

    覚「今日は、色々同時進行だから、唯も尊もよろしくな」

    唯&尊「はーい」

    カレー作りスタート。ショウガ、ニンニクを炒めたところに、玉ねぎ投入。

    覚「色が変わるまでじっくり炒めるよ。これで味が決まるからね」

    ひき肉、スパイスを入れ、炒め続ける。隣では、野菜スープが出来上がった。

    尊「ひき肉なんだ。わかった!キーマカレー作るんだね」

    覚「そうだ。肉じゃがじゃないだろ?」

    唯「お母さんに対抗してる?」

    トマト、ヨーグルト、水、調味料を入れてしばらく煮る。その間に、トッピング用のピーマンやパプリカを細切りにして炒めている。

    覚「ご飯は、炊いておいた。これだよ」

    若「色が付いております!」

    覚「ターメリックライスだから黄色だよ。おーい」

    唯&尊「はーい」

    覚「ご飯とスープ盛り付けてくれ」

    唯&尊「はいはーい」

    キーマカレー、出来上がり。

    美香子「美味しそう!」

    若「これで良かったのか、わかりかねます」

    覚「大丈夫だよ。では」

    全員「いただきまーす!」

    心配そうに皆が食べるのを見ている若君。

    唯「おいしい!」

    尊「辛過ぎなくて、なんか爽やかで」

    美「人となりが出てる感じね。美味しいわ」

    覚「味がまとまってて、美味しいよ。食べてごらん」

    若「はい。…なるほど」

    覚「どう?」

    若「これが、わし、なのですね」

    覚「うまいだろ?」

    若「はい。されど、人となりが出ておるとなると、身構えてしまいます」

    覚「ははは、そうか。料理って、そんなもんだけどな。バッチリ大成功だからね」

    食後。久々に、実験室に子供達三人集合。

    唯「さて。旅行の話しよっか。親に隠れてこっそりと」

    尊「まだあんまり考えてないけど、もう日にちないもんね」

    唯「私、思ったんだけどさぁ」

    尊「うん」

    唯「尊が、たーくんと二人で出かけるとしたら、どうする?」

    若「二人?」

    尊「えっ!二人で?!えーっと…ホテルからちょっと歩くと、電気街があるんだ。今すぐ何か欲しいって訳じゃないけど、プラプラしたい」

    唯「理系男子版ウィンドウショッピングだね。で?」

    尊「その近くの商店街もプラプラ。アーケードだから、暑くないし」

    唯「うん」

    尊「で、僕もモリモリのパンケーキ食べてみたい」

    唯「おっ」

    尊「こんな機会でもないと、一生口にしない気がする。これは、お姉ちゃんも一緒じゃないとちょっと無理かな」

    唯「わかった。それで行こー!」

    尊「は?」

    唯「大好きなお兄ちゃんとデート、良くない?二人で出かけるなんて、なかったでしょ」

    尊「兄さん一人だけ来た時にはあったけど…だいぶ前だな」

    若「此度は、ないのう」

    唯「尊とたーくんのデートに、私が付いてく体でどう?邪魔はしないからさ~」

    尊「え、いいの?やったー!」

    唯「今回さ、受験勉強を後回しにしてくれてるから。そのお礼というか」

    若「なるほど、それは良き計らいじゃ」

    尊「わぁ、ありがとう、お姉ちゃん」

    唯「ちゃんと、行く店やルート、決めといてよ?」

    尊「うん!」

    夜も更けてきた。唯の部屋。

    若「心優しい姉君じゃ」

    唯「そぉ?ありがと。たーくんも尊を気にしてくれてたからさ。あ、ごめんね、勝手に盛り上がって決めちゃって」

    若「構わぬ。これで丁度、恩返しが出来るのじゃな」

    唯「そうだね」

    若「…今日は、眠くはないか?」

    唯「眠くないよ。あはは~、なんか、狙ってる顔になってるよ」

    若「狙っておるからじゃ」

    唯「やっぱしか。えっ、もう?!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜はいつまで続くかわかりませんが、9日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    ありがとうございます!

    梅とパイン様、驚かせてすみませんでした。創作は自由とは言え、やはり承諾はいただきたかったので、感謝感謝です。

    では、頑張って描き進めます!

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days66~9日11時、成長しあうのです

    人としては完成形、弱みは唯に対してだけ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    鶴を入れる箱を作っている。

    唯「これでラスト?」

    尊「できたね。じゃ、鶴を入れてこう」

    唯「箱さぁ、どうせ並べるならグラデーションにしない?」

    尊「そうだね。糸通す時にも楽だろうし」

    リビングの隅に、整然と鶴の山が並んだ。

    唯「いい感じ!」

    尊「なんか、できあがりが見えてきたよね」

    食卓に、覚と若君。

    覚「さて、そろそろ忠清くんの嗅覚もリセットされただろ。ハーブのブレンド始めようか」

    若君「はい!」

    しばらくすると、

    若「お父さん、いかがでしょうか」

    覚「おっ、どれどれ…ん~、いいね!」

    若「形になっておるでしょうか」

    覚「勿論。じゃあ、早速お昼ごはんに使おう。キッチンへ移動な」

    若「はい!」

    尊「なんかさ、実の娘や息子より可愛がってるよね」

    唯「甘えてこないのが、またいいんじゃなぁい?」

    覚「なんかブツブツ言ってるな」

    唯「なんでもないっす」

    昼ごはん。

    美香子「白身魚のフライ、衣にハーブ入ってる?」

    覚「あぁ、忠清くんにブレンドしてもらった」

    美「あれ、そんな予定だった?」

    覚「メインは夜だ。カレーを作る」

    美「あら、そうなのね~。忠清くん、とってもいい香りよ」

    若「ありがとうございます」

    昼下がり。四人で静かに鶴を折っている。

    覚「そうそう、千羽鶴を繋ぐための糸や針なんかは、母さんが持ってるから。日曜の午前中に、ちょっとやってみるって言ってたから、忠清くん、もう少し待っててな」

    若「わかりました。色々、造作をかけ済みませぬ」

    尊「お姉ちゃんが、こんなに長い時間、黙って鶴折ってるなんて驚異」

    唯「そりゃあ、たーくんのためだし、平和も願ってるし」

    尊「模範解答じゃん。愛は永禄を救う、だね」

    覚「お、3時になったな。休憩しようか」

    若「はい」

    唯「ふー。あーでも、さすがに体は固まるなぁ」

    尊「確かに」

    覚「あ、じゃあ二階の洗濯物、取り込んできてくれ」

    唯「えー、暑いしヤダ」

    覚「おやつは、いつもより高級なアイスだ」

    唯「行ってきます」

    尊「僕も行ってくる。体一旦温めたら、よりアイスがおいしくなるし」

    二人、二階に上がっていった。

    覚「なんなんだ、あいつらは」

    若「ハハハ」

    覚「でも、唯は君が黙々と頑張る姿に、感化されてるよ」

    若「そうですか」

    覚「ありがとうね」

    若「え…いえ、そのような」

    覚「君が、唯を成長させてくれている。親は、ある程度までしか寄り添えないからね」

    若「わし…僕、は」

    覚「うん」

    若「お父さん、お母さん、尊に出会えた事、唯に感謝しております。三人には、学ぶ事ばかりで、少しは成長出来ておるのでは、と思うております」

    覚「充分出来上がってるけどね。でも、嬉しいよ」

    唯達が下りてきた。

    唯&尊「アイス、アイス!」

    覚「騒々しいなあ。はい、座ってー」

    おやつタイム。

    尊「今夜のカレーって、ゆうべと同じ具?」

    覚「同じって?」

    尊「だって、肉じゃがの中身って、ほぼカレーと一緒でしょ」

    覚「そういうのじゃないな。まっ、この先は、後のお楽しみにしとけ」

    唯「ふーん」

    若「カレー、であって、カレーでない…」

    覚「しまった、本人が一番考え込んでる」

    おやつタイム終了。

    覚「よし、今日はあとちょっと、キリのいい所までにしよう」

    唯「え、じゃあ次の封を開けない感じ?」

    覚「今日みんなかなり頑張ったからな。無理はしないでおこう。な、忠清くん」

    若「無理しておるように見えましたか」

    覚「そうだね。たまたま家に居るから作ってます、位でいこうよ。平和を願うのに、眉間にシワ寄せていてもね。あ、因みに明日は大掃除だから」

    唯「大掃除?今?」

    覚「明日の午後からクリニックが盆休みに入るから、この機会にしとくんだ」

    尊「人手もちょうどあるし?」

    若「わかりました。では明日、しかと掃除をさせて頂きます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    梅とパイン様

    突然、名指しの失礼をお許しください。

    実は、お願いがございます。源三郎とトヨの仲良しカップルを、令和Daysに登場させたいので、お借りしたいのですm(_ _)m

    急に仲が進む、なんて野暮な事はいたしません。今後の令和Days、永禄に戻った後のお話も少し描く事にしましたので、ぜひ源トヨにもお手伝いいただきたいのです。よろしいでしょうか?

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days65~9日金曜9時、色と香りに包まれて

    子供達の自主性を重んじている、と言って。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。覚と若君はキッチンで後片付け、唯と尊は、食卓を拭いている。

    尊「そういえば、今度の旅行の予定、聞いた?」

    唯「聞いてない」

    尊が唯に近づく。

    唯「なになに!」

    尊「シッ、静かに。なんかね、1日目、昼ごはん家で食べてから出発して、夜ごはんはホテルじゃなくどこかお店を予約したらしいんだけど」

    唯「そーなんだー」

    尊「現地着いてから晩ごはんまでの時間さ」

    唯「うん」

    尊「自由行動らしいよ。正確には、お父さん達は自分達で行きたい所にデートに行くから、僕らはほったらかし。言い方悪いけど」

    唯「そっかあ。まあ今回は、ラブラブの二人がメインだからねぇ。好きなトコ行けばいいけど、お前ら考えろよ、か」

    尊「三人は一緒に居ないといけないし」

    唯「不満?」

    尊「それ、お姉ちゃんのセリフじゃないの?」

    唯「ううん。お母さん達が何も言ってこないから、ちょっと予感はしてた。まだ、現地集合!って言われないだけ良かったかなって」

    尊「で、どうする?」

    唯「ちょっと考えるよ。尊も、行きたい所あったらピックアップしといて。で、2日目は何するって?」

    尊「家族写真をまた撮りに行くってさ」

    唯「へー、そうなんだー。だからワンピース買ったのかなぁ」

    キッチン。

    若君「お父さん、今日は金曜です。料理の指南をお願い致します」

    覚「うん、ちゃんと考えてるよ。今から準備するね。おーい、お前達」

    唯「なにー」

    覚「食卓拭いたか?今からそこ使うから」

    尊「綺麗になってるよ」

    覚「あーそうそう、鶴だが、折るのもいいが、色毎に仕分けした方が、後の作業がしやすいだろ。分け始めなさい」

    唯「了解~」

    尊「じゃあ、床に広げちゃおうか」

    食卓に、覚が小瓶を並べていく。

    尊「何?あ、スパイスか」

    唯「いっぱいあるー」

    覚「忠清くん、座って」

    若「座る。はい」

    覚「今日は、カレーを作ろうと思うんだ」

    唯&尊「カレー!」

    若「カレー。あの少々辛い料理ですね」

    覚「これは、スパイス。香辛料だ。カレーを作る時、溶かすだけのルーを入れれば手軽だが、これを混ぜて作る事もできる」

    若「はい」

    覚「スパイスは、基本の調合はある。最低これをこの位ってね。でもあとは、応用だ。それをやって貰おうと思ってね」

    若「好みで、作ると」

    覚「そう。それでね、何をどれだけ入れたかをメモるから」

    若「それは、何ゆえにですか?」

    覚「調合の内容を残しておけば、今後、僕が作っても、忠清くんが作った物と同じ風味になる。忠清ブレンドとして残る。というか、残させてくれないか」

    尊「いつまでも、兄さんが作った!って思えるんだ。いい考えだね」

    覚「基本の調合は、この手前の入れ物の中。ピンときたのを足していって欲しいんだけど。時間かかっていいから、頑張って」

    若「わかりました」

    小瓶の中身の香りを、一つ一つ確かめていく若君。

    唯「ソムリエ、的な?」

    尊「それ大分違う。調合師だよ」

    じっくり時間をかけていた若君が、顔を上げた。

    若「お父さん、いかがでしょうか」

    覚「どれどれ。うん、いいね。予想通り、とても爽やかな感じだ。メモもバッチリとったよ。お疲れ様」

    若「香りの趣が違う物もあり、悩みました」

    覚「あぁ、それはハーブだから。優しい香りが多いよね」

    若「こちらだけでも、料理には使うのですか?」

    覚「使うね。あ、ハーブだけでもブレンドしてみる?」

    尊「別のミッションが始まる?」

    覚「いや、実は昼からカレーだと、クリニックが匂いそうでどうしようかなと思ってて。ハーブ焼きとかなら、そう匂わないから」

    若「是非お頼み申します」

    覚「わかった。でもちょっと休憩しような。鼻がおかしくなっちゃうから」

    若「麦茶なら、わしが入れます」

    席を立つ若君。リビングの床の状態に気づく。

    若「おぉ…いつの間にやら、鶴の花が満開ではないか」

    床に、各色毎の折り鶴の山が出来ており、色とりどり。

    唯「キレイだよね~」

    尊「20色以上あるからね」

    覚「はい、二人もこっち来て。休憩しな」

    お茶タイム。

    覚「しかし、ちょっと足の踏み場がないよな。新聞紙で、箱作って入れるか」

    唯「箱?」

    休憩後、半分に切った新聞紙を、パタパタ折り始める父。

    覚「こんなモンでいいだろ」

    唯「早ーい。もうできたー」

    若「なんと…お父さんは、このような術も操られると」

    覚「おっ、褒めてくれるの?嬉しいね。さ、こんだけ入れなきゃならないから、みんなで箱作るぞ」

    三人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days64~8日22時、教えてあげたい

    速川家、騒がし過ぎて、引かれるかもよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ようやく父と合流した。

    覚「花火どうだった?」

    唯「すごかった~!デカいし、眩しいし、音はズン、って響くし」

    若君「心にも、響きました」

    尊「兄さん上手いな」

    覚「音はな、かなり離れてても聞こえてたぞ」

    唯「そーなんだー。ごめんねぇ、ウチらだけ楽しんじゃって」

    覚「気にすんな。それより、腹減っただろ?」

    尊「軽くは食べたから」

    唯「晩ごはんなにー?」

    尊「軽く食べてないヒトが何か言ってる」

    覚「何だろうなあ」

    唯「え?まだ決めてないの?」

    覚「いや、実は、今日は母さんが作って待ってるんだ」

    唯「え!お母さんの作る晩ごはんなんて、超超久しぶりなんだけど!」

    尊「お昼は、そこそこあるけどね」

    唯「たーくんなんて、初めてじゃない?」

    若「晩ごはんは頂いた覚えがないのう」

    覚「メニューは、聞けば教えてくれるんじゃないか?」

    唯「いや、いい。楽しみにしとくよ」

    22時30分、帰宅。

    四人「ただいまー!」

    母が玄関に出迎えに。

    美香子「お帰りなさーい。楽しかった?」

    唯「超楽しかったー!」

    若「…」

    美「あら忠清くん、どうかした?」

    若「お母さんが、エプロンを身に付けておられる」

    尊「確かにレアだ」

    美「あ、これ~?珍し過ぎて、びっくりよねぇ」

    若「いえ、よう似合うておられます」

    美「あら、嬉しいわ~」

    食卓に、おかずがズラリと並んでいる。全員、席についた。

    覚「うまそうだ。では」

    全員「いただきまーす!」

    覚「肉じゃがにしたんだな」

    美「うん。家庭料理って感じでしょ?お父さんには、ちゃんとおつまみも作ったわよ。運転お疲れ様でした。ビールどうぞ」

    覚「ありがとな」

    唯「お味噌汁の具はなに?豆腐と…なめこだ!」

    尊「ここにもキノコだね」

    美「ここにもって?」

    唯「花火が、キノコの形になってたの」

    美「あらそうだったの。私、先見の明があったわね」

    若「お母さん、どれも大変美味しいです」

    美「まー嬉しい!たまには腕を奮わなきゃね~」

    唯「お味噌汁ってまだある?」

    尊「え、もう?」

    美「あるある。お鍋温めてくるわね」

    席を立つ母。

    覚「人気だな~。母さん、頼むからさ、僕の聖域を乱さないでくれよ?」

    尊「焦ってるね」

    唯「いいじゃん、いっそ受け持ち交代してさ、明日はお父さんが診察したら?」

    若「えっ、お父さんが医師を?!」

    覚「いや、忠清くん、それはないから。こら、唯!紛らわしい事言うんじゃない!」

    唯「えへへっ」

    美「あはは。お味噌汁お待たせ~」

    賑やかな夕食も済み、唯の部屋。

    若「唯」

    唯「なーに?」

    若「わしはの、速川の一員になれた事、この上なき幸せじゃと思うておる」

    唯「それは、ウチの家族もそう思ってるよ。みんな、たーくん大好きだもん」

    若「知る由もなかった、団欒、とはなんと素晴らしき物かを教えて貰うた」

    唯「平和って、いいよね」

    若「まことにの」

    唯「たーくんが戦を避けたかった事、大殿に、いつか分かってもらえるかなぁ」

    若「父上か…かつてのわしもそうであったが、戦乱の世しか知らず、穏やかな日々など知りようもないからのう。平和とは何か、は、速川家と共に過ごせば、すぐにでも分かるのじゃが」

    唯「大殿と一緒にゴハンとか?!それ、すっごい野望だね」

    若「前にお父さんが、父上に挨拶がしたいと申されておったしの」

    唯「やっぱ、行き来が自由なタイムマシン、欲しいよね~」

    若「そうは思わなくもないが、少なくとも今は、尊は勉学に勤しんで欲しいのじゃ。無理もさせとうない。くれぐれも、尊を急かしてはならぬぞ」

    唯「はぁい」

    ベッドに座る唯の傍らに、若君が腰かけた。

    唯「…やだ」

    若「ん?」

    唯「なんか今、急にモーレツに眠気がっ」

    若「ほぅ。そやつには早々に退散して貰うて、夫婦の時間をもうけたい所じゃが」

    唯「超眠いー。どうしよう、たーくんなんとかしてぇ」

    若「ハハハ。いや、夜もすっかり更けておるゆえ、もう眠るとしよう」

    ベッドから立ち上がる若君の、腕を掴む唯。

    唯「あの、すぐ寝落ちするかもだけど、たーくんと一緒がいい。ダメ?」

    若「良いぞ」

    唯を抱き上げ、自分の布団に寝かせた。電気を消して布団に戻ると、

    若「なんと。もう眠っておる」

    頭を撫でる。

    若「おやすみ、唯。また明日、わしの傍らで笑うてくれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    これが実物かー

    古本屋に、健太郎くんの写真集がありました。

    古本なんで中身も確認して、おー、きっとこの写真だな、皆さんが盛り上がってたのは~と推測もして(;^_^A

    で、誰かが手放したんだな、切ないねぇ…と思い、家に連れて帰りました。

    今ようやく手に入れたという事は、この板の私の創作話、平成Daysや令和Daysで、若君を散々脱がしておきながら(ノд<)、実物を知らなかった訳でして。

    妄想も甚だしく、描かせていただいております。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days63~8日19時30分、咲き誇ります

    めいっぱい楽しんで欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    すっかり、空は夜の色に変わった。

    尊「あ、兄さん。大砲のようなかなり大きい音がしますけど、敵の襲来ではありませんからご安心を」

    若君「そうか。承知致した」

    花火大会、スタート。一斉に花火が打ち上がり、辺りが一気に明るくなる。

    唯「キャー!」

    若「おおっ」

    尊「わー、楽しい!」

    会場は横に長いので、左から右から打ち上がる。

    若「おぉ、せわしいのう」

    唯「首が疲れちゃうよぉ」

    尊「全体をなんとなく観てればいいじゃん」

    唯を真ん中に、三人並んで観ている。

    唯「たーくん、キレイだね」

    若「そうじゃな」

    若君にもたれかかる唯。唯の肩を抱き、引き寄せる若君。

    尊 心の声(夏の夜のデートだよねぇ。ま、どんどんくっついてくださいな)

    若「尊よ」

    尊「は?はいっ!」

    若「何じゃ?その驚き様は。声をかけただけじゃが」

    尊「いや、まさかその状態で呼ばれると思ってなかったんで、すみません」

    若「まあ良いが。花火が上がると、後から遅れて音が聞こえるように感ずるのじゃが」

    尊「あ、その通りです。光と音では伝わる速さが違って、音の方が断然遅いからなんです」

    唯「それ私もわかるー。雷も、ピカッからゴロゴロまで時間あると、遠いって言うでしょ」

    尊「お姉ちゃん、ご名答。どのくらい違うかは、また花火終わってから説明しますよ」

    若「遠雷と同じなのか。体では分かっておる事も、はっきり謂れがあり、此処ではつまびらかになるのじゃな」

    唯「でも、数字で言われても、わかんないよねぇ」

    尊「お姉ちゃんは聞けばわかるでしょ」

    唯「えー、だって難しそうだしぃ」

    若「ハハハ」

    花火が、何かを形作っている。

    唯「あー、カエルだぁ!」

    尊「凝ってるー。あ、次は猫だ」

    若「あれは…何であろうか」

    尊「えーっと何だろ…あ、キノコだ」

    若「茸。ハッハッハ」

    唯「あー、ヤな予感するー」

    若「唯が、山の茸を取って食おうとした事を思い出した」

    尊「そんな事があったんですか」

    唯「だってさー、2日間水だけで山道ずっと歩いてたんだよ、手も出るってモンよ?」

    尊「それって、もしかして兄さんも一緒で、同じく空きっ腹だったんじゃないの?」

    唯「まぁ、そうだけど」

    尊「鍛え方の違いだな。胃を小さくしといた方がいいんじゃないの?今も、結局完食してるしさあ」

    唯「お腹がふくれさえすれば、絶好調なの!」

    尊「燃費悪いなー」

    花火は、空高く打ち上がるのもあれば、湖面近くで花開くのもあり、それは距離が近い分、迫力が凄い。

    若「あれは…やっておる者達は、危なくはないのか?」

    尊「万全の態勢でやってるから、大丈夫だと思いますけど…総領だけに、目の配り方がさすがですね」

    若「皆が無事なのが何よりじゃからの」

    ラストに近づいて来た。尊がデジカメを構える。

    若「撮る、のか?」

    尊「はい。写真はちょくちょく撮ってましたけど、終わりにかけては一番豪華なんで、動画を撮りますね。お土産用に」

    唯「わぁ!ありがとう~」

    エンディング。これでもか!の大乱舞。

    若「おぉ…」

    唯「すごーい」

    最後、空一面を彩り、終了。

    唯「はぁ~。終わったぁ」

    尊「これで、良しと。また編集しますね」

    若「このような素晴らしき経験をさせて頂いた、お父さんに感謝せねばならぬ。付き合うてくれた尊にも、礼を申す」

    尊「そんな、痛み入ります。僕こそ、すごく久々で、こんな機会作ってくれた兄さん達に感謝ですよ」

    若「家で待ってくれておる、お母さんにも感謝じゃな」

    尊「あっ、お父さんからLINE…えっと、道が混んでるから、9時半位になるって」

    唯「じゃあ、シートはもう少しこのままにしよっか」

    周りは、家族連れの姿は減り、カップルばかりになっている。

    尊「これも、夏の夜って感じだな」

    唯「イチャイチャタイム?」

    尊「ま、そうでしょ。って、自分は一日中イチャイチャしてるじゃん」

    唯「悪い?」

    尊「いいよ。平和な時を楽しんでくれれば」

    唯「えー。なんか、尊すっごく物分かり良くなってない?」

    尊「悪い?」

    唯「いいよぉ」

    若「ハハハ。まことに仲の良い姉弟じゃ」

    お迎えまであと少し。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days62~8日18時、ヒヤヒヤです

    武士であり、唯にとっては騎士。knightね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    花火大会の会場近くに到着した。車を降りる子供達。

    尊「じゃあ、9時前位にこの辺りで」

    覚「わかった。忠清くん」

    若君「はい」

    覚「楽しんできて」

    若「はい!」

    会場の公園。

    唯「だいぶ場所取りしてあるね。この辺りにしよっか」

    尊「そうだね」

    若「敷物を広げれば良いのか?」

    尊「はい。そっち持ってください」

    陣地が完成。

    唯「もっと人多くなると、戻った時に陣地がわかんなくなるから、今のうちになんか買ってくる!」

    ぴゅ~っと、唯が走っていった。

    尊「返事する前に行っちゃったよ」

    若「ハハハ」

    敷いたシートに座る若君と尊。湖のほとりの公園。花火は湖面に上がる。

    若「まだ昼の暑さは残っておるが、湖を渡る風が涼やかじゃの」

    尊「そうですね」

    若「この、目の前で花開くのか?」

    尊「はい。迫力ありますよ。僕も見に来るのは久しぶりなんで、楽しみです」

    若「そうか」

    唯の姿が見えた。

    尊「あ、戻って来た。ん?」

    なぜか、男性二人に挟まれて歩いている。

    若「知った者に会うたのか?」

    尊「それはわからないんですけど…」

    唯の様子を観察する。男達に、やたらと話しかけられているように見える。

    尊「あ」

    若「なんじゃ?」

    尊「お姉ちゃん、ナンパされてるんだ」

    若「ナンパ、とは?」

    尊「あっ、えっと」

    尊 心の声(どうしよう!成敗するって、前みたいに立ち回りが始まったら)

    若君と一緒に黒羽城公園に行った時の、不良達とのやり取りを思い出す尊。

    尊「あの、誘っているというか…」

    若「誘う?」

    尊「お茶しようよとか遊ぼうよとか…」

    若「何だと。危ない目に遭うておるのか?」

    若君の顔色が変わった。

    尊「見た所、危ないとまでは…あっ」

    止める間もなく、立ち上がり走り出す若君。

    尊「ひゃー!お願いだから、無茶はしないでー!」

    後ろ姿に何とか声をかけた。

    尊 心(大丈夫かな…いや、今の顔、まんま戦国武士だったしなあ。心配だ~)

    緊張しながら、唯達の様子をうかがう尊。

    尊 心(あ、思ったより穏便に終わりそう)

    男達は、若君が到着するとすぐ、散り散りに去っていった。

    尊 心(あんな迫力あるイケメンが走って来たら、勝てる訳ないもんな。そりゃそうなるよね)

    胸を撫で下ろす尊。唯と若君が戻って来た。

    唯「ただいまー」

    尊「なんか、緊張感ないなー」

    唯「たーくんがすごい顔して走って来たから、びっくりしたけど」

    尊「さっき一緒に居た人達、別に知り合いじゃないでしょ?」

    唯「知らない」

    尊「何しゃべってたの」

    唯「しゃべってないよ。なんか色々話しかけられたけど、よくわかんないから無視してた」

    尊「なんとかナンパをかわしたと」

    唯「ナンパ?え、私ナンパされてたの?!」

    尊「のんき過ぎる。兄さんの足元見てみなよ」

    唯「え?あっ、裸足…サンダル履いてない!」

    若「唯が危ない目に遭うておると思うての、そのまま駆け出したのじゃ」

    唯「えーっ!たーくぅん、嬉しい、ありがとう~!」

    尊「しっかし、なんかいっぱい買ってきたね」

    唯「見ると全部美味しそうで。で、ごめん、持ちきれなくて飲み物買ってない」

    尊「あっそう。じゃあ僕買って来るよ」

    若「わしが行こう」

    尊「いえ。兄さんは、お姉ちゃんを守っててください」

    若「そうか。わかった」

    唯「おおげさだなぁ」

    尊「何言ってんの。勝手に動いたりして、兄さんを心配させないように」

    唯「はぁい」

    尊「じゃあ、適当に買ってきます」

    若「よろしく頼む」

    尊 心(ふう。兄さんが居れば安心に決まってるのに、つい焦っちゃったな)

    日が暮れてきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    瞬殺でしたね。

    続きます。

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    二人の令和Days61~8日木曜10時、コツコツと

    芳江さん。ドラマの新作でお会いする事はもう叶いませんが、創作物語ではずっと、キュートな笑顔で居ていただきます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    地味な作業ではある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、早速四人で鶴を折っている。

    覚「あまり、根を詰めるなよ」

    唯「うん。でも今日は夕方からメインイベントだから、あっつい昼間はこれやっててちょうどいいよ」

    尊「花火大会の会場辺りも、雨の心配はなさそうだね」

    唯「たーくん、いよいよ、おっきい花火観られるよ」

    若君「楽しみじゃ」

    昼ごはん。美香子がクリニックから戻る。

    美香子「順調?」

    若「はい」

    美「まだ封開けてない折り紙、一つ貸してね」

    唯「いいけど、折る時間なんて、なくない?」

    美「うん、ない。でもこれを見て、忠清くんも頑張ってるから私も仕事頑張る!ってモチベーションを上げようと思って。お盆休みまであとちょっとだし」

    尊「なるほど」

    午後のクリニック。

    エリ「折り紙ですか?」

    芳江「今は折る機会も中々ないですね。孫はゲームばっかりで」

    美「忠清くんが、千羽鶴作りたいって今頑張ってるの。永禄の平和を願ってね」

    エ「まあ、若君が。素晴らしいわ」

    芳「本当に。感心しきりです」

    その頃のリビング。引き続き四人で製作中。

    若「尊には、これではなく、勉学をして欲しいのじゃが」

    尊「いいんですよ。だってあと一週間だし。僕の心配はしなくていいです」

    若「済まない」

    唯「あと一週間かぁ。今日は夕方までこれやってればいいけど、やっぱデートやイベントも大事だよねぇ。お父さん、何時頃出発する?」

    覚「そうだな。花火は7時半からだけど、早目がいいよな。早過ぎても暑いし…5時に家出れば、まあ立ったまま観るような事はないんじゃないか?」

    唯「わかったー」

    尊「じゃ、作業は4時半位までだね」

    若「そうじゃな」

    覚「まずは、一旦休憩しな。はい、ジュースどうぞ」

    休憩中。

    唯「お父さん、花火大会の会場まで乗せてってくれて、帰りも拾ってくれるんだよね?」

    覚「そうだ」

    唯「その間はどうしてるの?」

    覚「そこからは離れて、夜のひとりドライブと洒落こむよ」

    若「それは…難儀をかけ、済みませぬ」

    覚「気にしなくていいから。あとさ、晩ごはんは、ホントに帰ってからでいいのか?」

    尊「いいよ。今日はお母さん置いてきぼりだし、食事はできるだけ五人でしようよ。軽くはつまんでおくし、どうせ一人空きっ腹のヒトは勝手に食べてるから」

    唯「いいじゃん、お祭りっぽくって」

    覚「まあ、とにかくはぐれないように。尊にしか連絡できないから」

    尊「そうだね」

    若「連絡出来ぬとは、どういう事でしょうか」

    唯「たーくん、言ってなかったけどね、私のスマホ、もう電話とかLINEとかできないの」

    覚「さすがにもう使わんだろうって、年明けに解約したんだよ。物が手元にあるから分かりにくいよなあ。どう説明すればいいだろう」

    若「電源、は入っておるようじゃが?」

    唯「うん。Wi-Fiが繋がれば使えるから、家の中なら、検索とかはできるんだよ」

    若「わ、わい?」

    尊「難しいですよね。機械としては使える時もある。でも連絡手段としては使えないんです」

    若「そうなのか」

    覚「だから、くれぐれも迷子にならないようにな」

    若「承知致しました」

    唯「三人一緒ね。あ、これが、えーと、さんみいったい、ってヤツ?」

    尊「この場合はちょっと違う」

    唯「えー、違うの?」

    若「ハハハ」

    そろそろ出かける時間。

    唯「今日は、どっちのワンピ着よっかな~」

    尊「ひまわりので」

    唯「なんで尊が答える?」

    尊「だって白無地だと、他の人と間違えそうだし人混みに紛れちゃうから」

    唯「そっか。安全策ね」

    支度ができました。

    覚「レジャーシートは持ったか?」

    尊「あるよー」

    唯「では」

    若「レッツ、ゴーじゃな」

    唯「正解!」

    いよいよ、花火大会に出かけます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夏の想い出も、ちゃんと作ろうね。

    続きます。

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    月文字様

    四太郎、よろしゅうござりまする!
    人気俳優さんが続々出演されているCMですから、いつか…は有り得た話ですね。
    与太郎も確認しました。1話のあの場面、結局誰が誰の何にあたるか、正解がわからずじまいで、その場に居ても混乱しそう。

    私の話、いつ寸止めじゃない場面が出るかと、ヒヤヒヤしながらご覧いただいているのですね。なんか、すみません。そういう方、多いのかな…。

    寸止めはしませんが(^_^;)悪者も出さないのがモットーでございます。その点は、安心して見ていただけるかなと思っております。

    黒羽城が復元なんかしちゃったら、櫓の上で月見がしたい!

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days60~7日14時、千里の道も一歩から

    帰るまでの目標ができました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    お好み焼き店。鉄板前の五人。

    覚「熱々の出来たてが来るから、忠清くんは気を付けて」

    唯「私がフーフーしてあげる!」

    若君「冷ますという事か?己で出来るがの」

    唯「えぇぇぇ」

    若「…頼もうか」

    ふんわりと厚みのあるお好み焼きが、人数分運ばれてきた。

    覚「まさかこれで、足りないって事はないだろうが」

    唯「んー、たぶん」

    尊「多分かーい」

    目の前のお好み焼きを、若君がじっと見つめている。

    若「動いておる…」

    尊「何がですか?あー、かつお節が湯気で揺れてるんだ」

    覚「こういう、僕らではもう気にも止めない事に気付くのは、感性が素晴らしいな」

    唯「はい、たーくん、あーんしてぇ」

    若「……、…うまい」

    美香子「唯~、一口が大き過ぎ!」

    昼ごはん、終了。

    覚「じゃあ、ぼちぼちと帰るか」

    帰り道の車内。

    美「あー美味しかった」

    覚「中々、家ではふわっと出来ないからなあ」

    若「お父さんの腕をしても、ですか?」

    覚「ありがとねぇ。あそこまではならないんだ」

    尊「ホットプレートならさ、もんじゃ焼きの方が簡単にできるよね」

    覚「もんじゃかー、最近やってないなあ」

    唯「えー、久しぶりに食べたい!帰るまでに作ってー」

    覚「そうだな。わかった」

    若「もんじゃ。また変わった名の料理じゃ」

    美「見た目、ちょっと引くかもしれないわね。だけど美味しいから楽しみにしてて」

    若「わかりました」

    唯「ねぇねぇ、アイスクリームってまだあった?」

    覚「あったかなー」

    尊「ないよ。昨日最後の1個僕が食べた」

    唯「いつの間にー」

    尊「自分ら、デートしてたじゃん」

    唯「ま、そうだけど」

    覚「じゃあ、スーパーに寄ってくか。あと何か要る物あったかな?」

    若「お父さん」

    覚「お?何か買う物思い出した?」

    若「いや、お母さんにも、お訊ねしたき儀があるのですが」

    覚「おー、久々に聞いたなぁ」

    美「どんな事かしら?」

    若「先刻、神社で見た千羽鶴、あの鶴はわしでも作れますか?」

    美「うん、作れるわよ」

    尊「教えましょうか?」

    若「え?」

    唯「うん、私もできるよ」

    若「二人が答えるとは思わなんだ」

    唯「鶴は、折り紙の定番だから」

    若「そうなのか。すぐに習得出来るかのう」

    唯「大丈夫じゃなーい?え、もしかしてたーくん、千羽鶴作りたいの?」

    若「戦なき世を願うと聞いた。己で出来得る事があるのならば、是非成し遂げたいのじゃが」

    一瞬、車内が静かになった。

    尊「…そうなんだ。兄さんはやっぱすごいな。じゃあ、手伝います」

    覚「皆で手伝うよ。でも帰るまでに千羽できるかなー」

    美「千って、確か多いって意味よ。千羽折らなくてもいいと思う。もしどうしてもそうしたいなら、永禄に帰ってから続けたらいいわ。こちらに居る内に千羽は、ちょっと厳しいと思うし」

    若「そうですか」

    美「とても素晴らしい事だけど、空いた時間にだけコツコツやりなさい。忠清くんの事だから、何よりも優先してやっちゃいそうだもの。残りの現代の時間も、ちゃんと満喫して欲しいから。ね?」

    尊「さすが、可愛いい息子の事、よくわかってる」

    若「ありがとうございます。されど、出来得る限り、励みとう存じます」

    覚「じゃあ、折り紙も追加で」

    17時、スーパー経由で帰宅。

    尊「この折り紙が全部鶴になるんだね。さぞかし壮観だろうな」

    若「今まで見た紙より、小さいようじゃが」

    美「千羽鶴なら、小さめがいいから。でも練習するのは大きい方がいいわよね」

    唯「ガーランド作った時の残りが、ちょっとだけあるよ」

    美「じゃあまず、それでやってみようね」

    若「ありがとうございます、お母さん」

    若君は大きい折り紙で試作、教える母と唯達は小さい折り紙で、作り始めた。

    美「三角に二回折った所を、こう開くの」

    若「こうですか?」

    尊「…すごい、みんな黙々と折ってる」

    唯「集中してるんだよ。たーくんのために」

    覚「なにより、唯がアイスクリームをすぐに食べ始めなかったのが凄いな」

    唯「失礼なー。お風呂上がりの楽しみにするから今はいいの!」

    若「ありがとう、唯」

    唯「いーえー。って、さてはアイス優先だと思ってたな?」

    若「あぁ」

    唯「ひどっ」

    一つ一つ、出来上がっていきます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    無理はしないでね。

    7日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days59~7日12時、願い事はなに

    今日は、和、の日の模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城内。どんどん上階へ。

    尊「ここが一番上かな?」

    唯「わー、すごい!」

    川沿いの崖に立つその城は、大変見晴らしが良い。

    唯「外に出られるよ。あ、川が見える!」

    美香子「この木製の手摺が低めで、ちょっとスリルがあるわね」

    外回廊。川からの風が心地良い。

    若君「…」

    覚「当時は、近くの他の城も見えてただろうな」

    若「お父さん」

    覚「何だい?」

    若「黒羽城は、どちらの方角でしょうか」

    覚「あ、あぁ。えーとね、ここから南西になるから、こっちだよ」

    二人で移動し、黒羽城がかつてあった方角を臨む。

    覚「距離的には、当時も見えはしなかったけどね」

    若「はい。良いのです」

    外を眺めながら佇む二人。

    覚 心の声(考えさせちゃう所にばかり、連れて来てるかな…)

    尊「あ、ここに居たんだね」

    唯「外、ぐるっと一周してきたよ~」

    若「…そうか」

    美「地上は暑いけど、ここは涼しくていいわね~」

    覚「確かにな」

    若「お父さん、ありがとうございました」

    覚「もう、いいの?」

    若「はい。良き城でした」

    城を出る。城下町まで下りる途中に、神社があった。

    覚「参拝してくか」

    鳥居をくぐり、参道を進む。

    美「お城もそうだけど、こういう和の場所って、なーんか心落ち着くわよね」

    賽銭箱の前。

    唯「ここにお金を入れるの」

    若「ほぅ。銭を供物とするのじゃな」

    唯「くもつ?」

    尊「はい、そうです。多分永禄の頃って、まだお米とかですよね」

    若「そうじゃな」

    唯「お米を賽銭箱に入れるの?」

    尊「違うー。ここに銭って書いてあるじゃん」

    覚「説明は後にしろ」

    美「静かにね」

    唯&尊「はぁい」

    お参りが済んだ。参道の脇に、絵馬が沢山掛かっている。

    若「お母さん、あれは、何ですか?」

    若君が指差す先に、色とりどりの、ある物。

    美「絵馬の事かしら?」

    若「絵馬は、分かります」

    美「あ、そうなのね。ごめんなさいね、何がいつから始まったとかわからなくて」

    若「いえ。絵馬と共に掛かる物が分かりませぬ」

    覚「ん?あー、千羽鶴だね」

    若「千羽、鶴…鶴を千羽も模したと?」

    美「少し近付いて見てみたら?」

    絵馬掛所の前に、皆で進む。

    若「これは…紙で出来ておるのですか?」

    美「そうよ」

    唯「この前三角に折ったでしょ、折り紙」

    尊「それと材料は一緒です」

    美「きっと、どなたかが祈願の為に奉納されたのね」

    若「祈願。どのような?」

    美「病気が治りますようにとか、試合に勝てますようにとか、平和な世の中になりますようにとか」

    若「平和…。戦のない世を願ってですか?」

    美「そうね。一つ一つ祈りながら折るって過程が大事だから、奉納せずに、家に置いてある事もあるわよ」

    若「そのような品ですか…わかりました」

    神社を出た。

    唯「昼ごはん何にするー?」

    尊「すぐに俗世間にまみれるなぁ」

    唯「お腹空いてないの?」

    尊「まだお腹空いてるの?」

    唯「いいじゃん。たーくん、何か食べたい物ある?」

    若「何かというか、家族皆で囲む食卓は、何でもうまいのじゃが」

    美「皆で囲む…あ、じゃあさ、お好み焼きはどう?」

    尊「お好み焼き?やったっ」

    唯「食べたーい!」

    覚「それはいいが、鉄板前は暑いぞ~」

    美「多少は暑いけど。忠清くん、いい?」

    若「はい。祭の夜に食した、半月型の物ですね」

    美「今日は、お店でいただくから満月型よ」

    若「そうなんですか」

    尊「店探すから、少々お待ちを」

    覚「予約もしちゃってくれ。五人だから、行って四人席しかないと困るから」

    尊「了解~」

    早速予約。

    覚「じゃ、移動するか」

    四人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days58~7日11時、安全な時代とは

    戦はないのが一番。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城近くに到着。駐車場に停め、プラプラ歩き出す五人。

    覚「まずは見学を先にして、昼ごはんは後だな」

    唯「お腹空かない?」

    覚「先に食べると、階段がキツい」

    唯「そっか」

    整備された城下町に入ってきた。町並みに風情が残されており、店も多く、賑わっている。

    唯「わー、ワクワクするー!先に向こうまで行って見てくる!」

    美香子「あんまり遠く行っちゃダメよ~!」

    覚「小学生だな」

    若君と尊が、並んで歩いている。

    尊「格好はかわいくても、中身が変わんないから」

    若君「ハハハ。良いのじゃ」

    唯の弾むポニーテールを、目で追う若君。

    若「唯の、目を見張る程の姿は、永禄で幾度か見ておる」

    尊「はい」

    若「おなごの姿や、祝言の折や」

    尊「はい」

    若「だが、そのいずれもすぐに別れが訪れた」

    尊「そう…ですね。その二回、帰って来た時はしばらく目も当てられませんでした」

    若「今は、手を伸ばせばそこに居る。消えずにずっと居る。それが嬉しゅうての」

    尊「…」

    若「どうした?」

    尊「兄さんも辛かったんだな、って」

    若「唯にも家族にも、この先の世に帰すのが最も良き策と思うたゆえ、わしの存念など二の次であったからの」

    尊「これからは、姉とずっと一緒に居てください。二人ともそう望んでるんだから、そうすればいいんです」

    若「そうじゃな…唯が居ない世は最早考えられぬ。が、この先の世に留めおくのが良いのでは、と時折考えてしまう」

    尊「なぜですか?」

    若「永禄では明日もわからぬ身。できれば危ない目に遭わせとうない」

    尊「令和の現代は、安全だと思いますか?」

    若「そう思うておるが。違うと申すか?」

    尊「僕は行き来してないので、比べられません」

    若「にしては、違うかのような物言いであったが」

    尊「すみません」

    若「謝らずとも良いが、何やら含みがあるのう」

    道の奥に唯の姿が見えた。手を振っている。

    若「またの折に、尊の存念を聞かせてくれ」

    尊「はい」

    唯の手にはダンゴ。口をモグモグさせている。

    美「もう食べてる!」

    唯「ダンゴが呼んでたからー」

    覚「この分だと、走って先に行っては買い食い、僕らが追い付いたらまた走って先で食べ、じゃないか?」

    唯「あ、それいい」

    尊「やっぱ太って帰るんだよ。姫様お顔が丸うございます、って言われるよ」

    唯「えー」

    尊「兄さん、どう思います?」

    若「そういえば、最近は抱えると少し重く感ずるような」

    唯「やだ、抱えるって…なんてコト言うの!」

    引き続き、五人でプラプラ。

    美「永禄の城下町は、どんな感じなの?」

    若「道幅は、うんと狭いです」

    尊「ここは自動車も通るから広いよね」

    唯「下は土だよ」

    覚「それは聞かなくても分かる」

    城に着いた。木々の間から覗く天守をバックに、写真をパチリ。

    若「また趣が違うておる。これまた美しい」

    覚「入ろうか」

    石垣が目の前に。

    若「…」

    覚「急かしちゃいけないな」

    美「そうね」

    入城。巡っていると、殿用の控えの間があった。

    唯「たーくん座っても、全然違和感ないよ」

    若「それは、いかがなものか」

    階段では、やはりするすると軽やかな動きの若君。

    美「なるほどね。見事だわ」

    上がると、そこはかなり広かった。

    尊「城によって、だいぶ造りが変わるものなんですね」

    この前の城とは違い、天井が高く、吹き抜けのようになっている。

    若「わしが思うに」

    尊「はい」

    若「前の城は、防御を重きに置いていた」

    覚「あー、あちこちに矢狭間や鉄砲狭間があったね。あれでは城内に入る前にアウトだ」

    若「この城は、城内で戦わざるを得なくなった時に備え、天井が高いのだと思います。これなら、槍が使えますゆえ」

    尊「槍を振り回してもぶつからないために、高い天井。へー」

    唯「たーくんすごーい。勉強になるぅ」

    美「なるほどね。こうやって見知った知識で、いよいよ、お城を建てる準備を始めちゃう?」

    若「あ、いや、ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days57~7日水曜9時、男も女もなく

    イチャイチャが止まらない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は家族全員で城ツアー。朝ごはん後、唯の部屋で着替え中。

    唯「たーくん、これが買ってもらった服!かわいいでしょ~」

    若君「おぉ。よう似合うておるぞ」

    唯「ありがと。この袖とか、見覚えない?」

    若「覚えておる。あの、皆で写真を撮った折の、装束に似ておるの」

    乳白色の半袖カーディガン。ボタンを首元まで全て留め、セーターとして着た。身頃全体に小花が付いている。袖が大きく膨らんでおり、少し透けている。下はジーンズを合わせた。

    唯「でしょでしょ!お母さんが見つけてくれたの~」

    若「幾度も着ないのに買うて頂くとは、ありがたいのう」

    唯「そうだね。ヘビロテするつもりだよ」

    若「蛇、露呈?」

    唯「急に蛇出たら怖い~。違うの、何回も着るって意味だよ」

    若「そうか。現代語、はやはり難しいのう」

    朝からかなり気温が上がっている。

    唯「暑いなー。今日は、髪結ぼうかなあ」

    若「ほぅ」

    母にもらった、赤いリボンの付いたヘアゴムで、髪を後ろで一つにまとめ始める唯。

    若「確かに今朝は一段と暑い。わしも今日は、髷にするかの」

    唯「その方が涼しいよね」

    若「その、対の残りを使おう。すると、唯と揃いになる」

    唯「おそろ?わぁ、嬉しい!え、でもリボン付いてるよ、いいの?」

    若「リボン。結び目を模したこれが付いておると、わしが使うてはならぬのか?」

    唯「結び目。確かに。そう言われればそう。男女関係ないと言えばない。だから女の子用と決めてはいけない…」

    若「何か、おかしな事を申したか?」

    唯「ううん。たーくんは正しいよ。すっごく正しい」

    若「大仰じゃの」

    唯「なんでもないよ。じゃあ今日はおそろで!やった~。ねーねー、たーくんの髪、結んでみたーい!」

    若「それは良いが、仕上がりはそのような?」

    唯自身のポニーテールが、かなり適当に結ばれている。

    唯「え?まぁ、これは。たーくんのは、もうちょっと丁寧にするからぁ」

    若「お手柔らかに頼む」

    まとめ始めるが、なかなか進まない。

    唯「はぁ、うっとりしちゃう~。ずーっと触ってたいっ。いっつもさ、起きるとたーくんもう居ないから、こんなん超貴重~」

    若「それは、唯が早う起きれば良いだけの事では?」

    唯「んー、聞こえない聞こえない」

    まあまあキレイにできあがった。

    唯「一丁上がり~」

    若「ご苦労であったの。では、代わろう」

    唯「代わる、ってなに?」

    若「その仕上がりでは…お母さんが嘆く。わしが直してやろう」

    唯「えー、たーくんが結んでくれるの?嬉しーい!おおざっぱだと、いい事あるなあ」

    若「ハハハ」

    恍惚の表情の唯。

    唯「髪ってさぁ、神経通ってないのに、なんで触られるとこんなに気持ちいいんだろ?」

    若「それは、想う相手なればこそであろう」

    唯「そんなモン?たーくんも、気持ち良かった?」

    若「良い心地であったぞ」

    唯「そっかぁ。これからは、がんばって早く起きてみようかなー」

    若「おぉ、良い心がけじゃの」

    綺麗なポニーテール、できあがり。

    唯「たーくんありがとう~。もうさ、朝からラブラブで、お出かけなんかどうでもいいような」

    若「それは本末転倒じゃろ。行くぞ」

    お揃いのヘアスタイルになり、ようやくリビングに下りてきた二人。

    唯「お待たせ~!」

    覚「おー、はいはい。それ、ウェディングドレスの上だな」

    尊「似た物があるもんだね」

    美香子「見つけた時は、もう嬉しくってね」

    唯「うふふ~」

    尊「兄さん、今日は髷なんですね。気温上がるらしいし、いいかも」

    若「唯と揃いじゃ。良かろう?」

    尊「あ、リボン付。お姉ちゃん何してんだよ」

    唯「たーくんがこれがいいって」

    尊「そうなんだ」

    若「怪訝そうじゃの。結び目が付いておるだけであろうに」

    尊「結び目。確かに」

    覚「そうか。うん、何というか、この中で一番先進的なのは、忠清くんだな」

    美「私もそう思う。よくお似合いよ、忠清くん」

    若「ありがとうございます」

    覚「よし。じゃ、そろそろ行こうか」

    ようやく出発。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days56~6日15時、昵懇の仲です

    互いにゾッコン、でもある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    濡れたTシャツの裾を掴み、パタパタ空気を送って、早く乾かそうとしている唯。

    唯「もうちょっとで乾くから、待っててね」

    若君は微笑みながら、

    若君「何か、飲むか?」

    唯「あっ、うん。カフェオレの、甘めのがいいな」

    若「わかった」

    近くの自販機に歩いて行く。

    唯 心の声(キレイな背中…)

    若君は自分の財布を取り出し、買って戻って来る。一連の動きがしなやかだ。

    唯 心(夏の、王子様だ。はぁ。素敵過ぎる。見とれちゃう)

    若「姫、所望の品をお持ち致した」

    唯「ありがとう。たーくんのおごり?」

    若「おごり、とは?」

    唯「ごちそうしてくれるの?」

    若「勿論じゃ」

    唯「ありがと。たーくんも飲んでね」

    若「分け合うのじゃな。共有、が醍醐味と」

    唯「え?なんか難しいコト言ってる」

    仲良くカフェオレを分け合う。一層甘い。

    唯「だいぶ乾いたよ、もう透けてない。Tシャツ返すね」

    ふと触れた若君の体が、とても温かい。

    唯「たーくん、あったかい」

    若「温かい?それは唯が冷えておるのでは?」

    若君は立ち上がり、唯も立たせた。そして上半身裸のまま、唯を抱き締める。

    若「そこまで冷えてはおらぬの。良かった」

    唯「大丈夫だよ。心配させてごめんね」

    若「初めから、こうすれば良かったか?」

    唯「それはダメ」

    若「そうなのか」

    唯「気持ち良すぎて、離れられないから」

    若「ハハッ、そうか」

    腕を緩め、Tシャツを着る若君。

    若「おぉ、唯の匂いがする。良い香りじゃ」

    唯「やだ、恥ずかしい」

    見つめ合う二人。

    若「唯」

    唯「はい…」

    若君の手が、唯の顎をそっと持ち上げた。顔が近づいてくる。

    唯「…ダメ、ダメだよたーくん!」

    顔を背ける唯。

    唯「ごめんなさい、嫌だからじゃなくって」

    若「わかっておる。此処は公共の場、じゃからのう」

    唯「え、やだ、もしかしてわざとだったの?もー、たーくんの意地悪!」

    若「試したのではない」

    唯「そう?」

    若「さあ」

    唯「さあ?それ、穴だらけの言い訳だよ。もしや、隙あらばってヤツ?もろ、残念って顔してるもんね」

    若「あぁ、残念無念じゃ」

    唯「あれまぁ。あはは、素直でよろしい!」

    若「ハハハ」

    若君が、唯の髪を指ですく。

    若「こちらも乾いたの。良かろう。この後は、いかがいたす?」

    唯「久しぶりに、ボートに乗りたいでーす!」

    若「そうか、では参ろう」

    スワンボート乗り場。

    唯「ねぇねぇ」

    若「なんじゃ?」

    唯「今日はさ、別々に乗って、どっちが先に向こう岸に着くか競争しない?」

    若「ほぅ。ならば受けて立とうかのう」

    唯「なんか余裕だよね。ちょーっと、気にくわないなー」

    2艘に分かれ、用意、スタート。

    唯「キャー!」

    若「ハッハッハ~」

    バッシャバッシャと、漕ぎまくる二人。

    若「お、追い付いておるのう」

    唯「ムカつく~!」

    ちょっとの差で、若君の勝ち。

    若「大儀であったのう」

    唯「言ったなー、上から目線。旦那様の顔を立ててあげたの!」

    若「ハハハ~」

    たっぷり遊んで夕方。自転車に乗る。

    若「わしが前じゃ」

    唯「いいの?」

    若「お疲れの姫は後ろに」

    唯「優しーい。ありがと。ではよろしくお願いしまーす」

    若「しっかり掴まっておれ」

    唯「あー。はいっ!」

    若君の体にギュっと腕を絡ませて、帰ります。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    あなたがそばに居る幸せ。

    6日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days55~6日火曜14時、ふんわり守ります

    日付が、揃いました。ちょうど二年前は、こんなに自由に出歩けたな、と思いを馳せてしまいます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    どんな毛布よりも暖かい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君が、出かける準備をしている。

    唯「今日は、少し曇ってるからそこまで暑くないよね」

    覚「一雨来るかもしれんぞ」

    唯「そーかなー」

    尊「何しに行くの?」

    唯「デート~」

    尊「ただ出かけると」

    唯「悪い?デートに理由などないのじゃ」

    尊「何しててもデートって事だな。いや、そのカッコで行くの?特別感が全くないけど」

    二人とも、Tシャツにジーンズ。

    唯「ペアルックと言ってっ」

    尊「普段着の延長でしょ。今日こそワンピースじゃないの?」

    唯「いいの、このカッコで」

    尊「アイロンかけるの面倒なだけでしょ」

    唯「ギクっ」

    二人の様子を、笑顔で見ている若君。

    若君「お父さん、久々に公園まで行って参ります。夕方には戻りますゆえ」

    覚「あー、気を付けて行っておいで」

    出発。自転車にまたがる唯。

    唯「たーくん、後ろに乗って。私の馬で、遠乗りへ参るのじゃー」

    若「後ろ、とな?ここに跨がれば良いのか?」

    唯「うん」

    若「重いじゃろう、わしが前に」

    唯「いーの、乗ってもいないのに重いとか言わない!」

    若「それもそうじゃの。ではよろしく頼む」

    唯「じゃあ行くよー」

    若君と二人乗りで、軽快に自転車をこぐ唯。

    若「おぉ、速い」

    唯「落ちないよう、しっかり掴まっておれ~」

    若「ハハハッ」

    唯 心の声(ちぇー、私にギュっ!とかしてくんないかなー)

    順調に走り、公園が見えてきた。が、

    唯「あ、ヤバっ、雨降ってきた!スピードアップ!」

    若「またそのような、唯ばかり濡れてしまうではないか」

    唯「いーの、あと少しだから行っちゃうよー!」

    本降りになった頃、到着。慌てて雨宿りする。

    唯「あー、焦ったぁ~」

    若「ひどく濡れてしもうておる」

    ベンチに座る二人。髪や腕の、雫を払う。

    唯「ハンカチじゃ全然追い付かないね」

    若「わしは良いのじゃが、唯が」

    唯「いいのいいの。もうちょっとだったのに惜しかったなー。…クシュン!」

    若「これは大変じゃ、体が冷えたのではないか?」

    唯「大丈夫、大丈夫」

    その時、若君は着ていたTシャツを脱いで上半身裸になり、そのTシャツで唯の髪や体を拭き始めた。

    唯「えっ!」

    若「背に腹はかえられぬ。幸いわしはそこまで濡れてはおらぬ、許せ」

    唯「やだ、ダメだよ、たーくんが風邪引いちゃう」

    若「わしの事はいい、じっとしておれ」

    おとなしく、拭いてもらう唯。

    唯 心(たーくんの匂いがする。あったかくて気持ちいいな…なんか安心する)

    拭いた後、一番濡れている胸元を隠すように、Tシャツを掛ける若君。

    唯「たーくん、ありがとう。返すよ」

    若「ならぬ。掛けておけ」

    唯「だって」

    若「ならぬ物はならぬ。その…」

    唯「なに?」

    若「見えて…」

    唯「見える?…あっ、やだっ!」

    胸元を確認すると、濡れたTシャツから、下着が透けてしまっている。

    若「さぞや冷たい思いをしたであろう。済まなかった」

    唯「そんな、私がムチャしたんだもん、たーくんは悪くないから」

    若「乾くまでそのままにせよ」

    唯「うん。わかった」

    若「大切な唯を、他の者に晒しとうない」

    唯「嬉しい。ありがとう」

    雨音が小さくなってきた。

    若「止みつつあるの」

    雲の切れ間から、空が見え始めた。

    若「夕立だったのじゃな」

    唯「良かった。もう大丈夫だね。あっ、虹見っけ!」

    若「おぉ」

    青空に、綺麗にかかっている。

    唯「なんかトクした気分ー。外に居たから見れたね!」

    若「濡れずに済めば尚良かったであろうが」

    唯「まっ、そりゃそうだ。あはは」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days54~5日11時15分、導きます

    若いけど、器量も徳もあるので。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君「所で、何を悩んでいる?」

    吉田「あ、はい。実は、留学の話が出てて」

    覚「へぇ、どこの国?」

    吉「イギリスです」

    尊の囁き「留学は、海の向こうの国に勉強に行く事。イギリスでは英語を話します」

    若「行きたくはないと?」

    吉「そんな事はないんですけど」

    若「英語、が不安なのか?」

    吉「微妙です。日常会話くらいは、なんとか」

    若「言葉は、お互いに相手が何を伝えようとしているかわかれば、何とでもなる」

    吉「あとは実践ですか」

    若「そうじゃな」

    尊 心の声(兄さんが、お姉ちゃんのハチャメチャな現代語に苦労した様子が、目に浮かぶよ)

    若「あとは?」

    吉「あとは…なんか、このまま流されていいのかなって。順調に進んでるんで」

    若「順調。良いではないか」

    吉「波に乗って、いいんでしょうか?」

    若「来た波には乗れば良い。波が砕けても、辿り着いた岸辺で、そのまま地に足を着け歩き出すのみ」

    尊 心(サーファー話の応用?)

    吉「なんか…全て前向きなんですね」

    若「前しか向かぬ。これは、唯に教わった」

    吉「あーあいつ、いつもそうですね。あっ、あいつなんて言ってすみません」

    階段から足音が。

    唯「あーよく寝た。え!吉田じゃん!何ウチでくつろいでんのよ!」

    吉「お前こそ、変な時間によくグースカ寝てられるよな」

    唯「で、なにしてんの」

    吉「忠清さんに、悩みを相談してた」

    唯「はあ。いきなり現れて?」

    吉「美香子先生に話したくて来たんだけど。でも先生には会えたし、悩みもなんだか解消したし」

    若「それは、手助けができて良かった」

    吉「僕今まで、大丈夫だよとか頑張れよとかしか言われてなくて。忠清さんには、特に励ましの言葉をかけられていないのに、一番背中を押してもらえた気がします」

    唯「たーくんは、色々苦労してるから」

    尊「生死の境を彷徨った事もありましたね」

    若「その際、助けてくれたのが、美香子先生だったのじゃ」

    吉「そうなんだ!へぇ、色々物語があるなぁ。忠清さんって、速川になってるから…医師を目指してるんですか?」

    若「あ?あぁそう…だね」

    吉「医師じゃなくても、カウンセラーとかもイケそう。僕、じっと見つめられて心が持ってかれそうになりましたから」

    唯「惚れそうになった?ダメだよ、あげないから!」

    覚「そうだね、さすが総領…あ、しまった」

    尊「お父さん~」

    吉「ははは、羽木家総領だけに、ですか?」

    覚「ははは~、賢い子は話が早いね」

    吉「では、大変お世話になりました。そろそろ帰ります」

    覚「え?良かったら昼ごはん食べていきなよ」

    唯「そうだよー」

    吉「昼の早い時間に用事があるんです。なのでこれで失礼します。ありがとうございました」

    廊下の途中、クリニック内で診療中の美香子に軽く会釈をして、玄関に向かった。

    吉「忠清さん、一つだけ質問していいですか?」

    若「苦しゅうない。申してみよ」

    吉「堂に入ってるなあ。あの、こいつのドコがいいんすか?」

    唯「うわっ!忘れてなかった!」

    若「ハハハ。唯はその、人となりそのものが、いわば生きる、生じゃ」

    吉「生。せい、ですか」

    若「生きる力が漲っており、周りにもその力を与える。時には命さえも皆に与える」

    吉「なるほど。確かに超前向きなんで、例えている意味はわかります」

    尊&覚 心の声(例えばかりでも、ない)

    若「また、雀の様に跳ね回る姿は実に愛らしい」

    吉「雀。かなりかわいい比喩ですね」

    覚&尊 心(愛の力だな)

    唯「もう!恥ずかしい、早く帰ってっ」

    吉「ははは。よくわかりました。本当に、今日はお世話になりました。ありがとうございました」

    若&覚&尊「いえいえ」

    唯「バイバーイ」

    リビング。

    尊「お疲れ様でした、兄さん」

    若「少しは、吉田殿の指針になったでしょうか」

    覚「なったよ、確実に」

    尊「一度は恋敵と思った人に、よく優しくできましたね」

    唯「そこ、大きく違うから!」

    若「いや、程なくして別の地に参るとの話であったので」

    尊「え!そんな事も思いながら話してたんですか。あい変わらずすごいなぁ」

    若「そうか?そういえば」

    尊「はい」

    若「カウンセラーとは、なんじゃ?」

    尊「あー、またそんな所で理解が止まってたんだ」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    救済完了。

    5日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days53~5日月曜11時、人生相談です

    悩める子羊、再登場。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニック、診療時間中。

    芳江「先生、あの」

    美香子「はい?」

    芳「外に男の子がずっと立ってるんですが、入る気配がなくて。よく見たら、以前診察した唯ちゃんの同級生の子なんです。唯ちゃんを呼んできた方がいいですよね?」

    美香子が外を確認する。

    美「あら、吉田くんじゃない。どうしたのかしら?そうね、芳江さん悪いけど、彼をウチの玄関に案内してもらえない?」

    芳「わかりました」

    美香子が玄関に回った。ドアを開けるとそこには吉田くんが。

    吉田「美香子先生、こんにちは。すみません、突然来てしまって」

    美「それは構わないけど。唯を呼べばいい?」

    吉「いえ、実は先生に会いたくて来ました」

    美「え?」

    吉「僕、悩んでる事があって。どうしようもなく悶々としてたら、先生の顔が浮かんで…無茶は承知で、話を聞いていただけたらと思って、来てしまいました」

    美「まぁ、そうなの。気持ちは嬉しいけど、まだ診察中だしね」

    吉「そうですよね。すみませんでした!帰ります」

    美「…ううん、ちょっと待って」

    吉「え?」

    美「そういう話を聞いてくれる、うってつけの人物が今ウチに居るわ。頼んであげる。入って」

    吉「え、でも」

    美「いいのよ。きっとスッキリ帰れるから」

    玄関に入ると、声を聞きつけ、覚、若君、尊の三人がやってきた。

    美「どうぞー」

    覚「お客さん?」

    若君&尊「あ」

    覚「知り合い?」

    尊「この前、買い物途中で会ったんだ」

    美「唯の同級生の吉田くんよ」

    吉「お父さんですか?初めまして、吉田です。旦那さん弟さん、この前はどうも。すみません、お邪魔します」

    覚「どうぞー。お友達なんて久しぶりだな。お茶の用意してくるよ」

    美「お願いします。あれっ、唯は?」

    若「寝ております」

    美「は?」

    若「ソファーで眠そうにしておりましたので、部屋で寝るよう申しまして」

    尊「起こしてくるよ」

    美「いや、いい。唯に用じゃないし」

    尊「そうなの?」

    美「忠清くん」

    若「はい」

    美「彼、迷える子羊なの。悩んでる事があるらしくて、ぜひ話を聞いてあげてもらえない?」

    若「子羊?それは構いませんが」

    吉「旦那さん、にですか」

    美「忠清くんは若いけど、人生経験豊富だからね」

    尊「確かに適任だね」

    吉「そうなんですか」

    美「じゃ、どうぞー。私は戻るからゆっくりしていってね」

    吉「先生、お忙しい所、すみませんでした」

    食卓の、美香子の席に通される吉田くん。向かいに若君。尊は若君の隣に座った。尊が若君に囁く。

    尊「兄さん、もし吉田さんがわからない言葉を言ったら、すぐ教えますから」

    若「済まない」

    覚「はい、お茶どうぞ」

    吉「すみません」

    若「吉田くん、まだ名乗っていなかった。速川忠清と申します」

    吉「え!苗字速川なんだ、びっくり。あの…忠清って、羽木忠清と同じ忠清ですか?」

    若「そうだね」

    覚&尊 心の声(それを言うなら、羽木忠清と同じ、ヒト)

    吉「羽木家って、謎なんですよ。ずっと永禄2年には滅びたって習ってきたのに、最近どんどん歴史が書き換わってて」

    覚&尊 心(犯人、二階で寝てます)

    吉「でも忠清さん、もし羽木忠清が今の時代に居たら、こんな感じなのかなって思います。美香子先生が適任って言われたの、わかる気がします」

    覚&尊 心(さすが、勘がいい)

    若「そうか、では羽木九八郎忠清となって、話を聞こうか」

    尊 心(え?あ、でもうっかり戦国言葉入ってもイケるから、それいい考えかも)

    吉「あ、輩行名が入った。本格的だ」

    覚 心(九八郎って、はいこうめい、って言うんだ。賢い子達の話、ついていけるかなぁ)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days52~4日18時30分、かけがえのない時間

    完全に、五人家族。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    女子チーム、帰宅。

    唯「ただいまー」

    美香子「遅くなりましたー」

    玄関に、男子チームお出迎え。

    唯「たーくん!ただいま!」

    若君「お帰り、唯。おおっ」

    ぴょーんと、若君に飛びついた。

    唯「会いたくてしょうがなかったよぉ!」

    若「そうか。わしもじゃ」

    唯「ホントに?嬉しーい」

    尊「熱いな。あ、こっちにもう一人居た」

    覚が、腕を広げて、よし来い!とばかりに待っている。

    美「お父さん。私には、そこまでの情熱はないです」

    覚「そうなのかー」

    美「後でね」

    尊「後とか言ってるし。買い物はできた?」

    唯「うんバッチリ」

    尊「なんでお姉ちゃんが答える」

    唯「私のも買ってもらったから。あ、たーくん、蚊取り線香入れ買ったからね」

    若「そうか。お母さん、香炉に要らぬ金を使わせてしまい、済みませぬ」

    美「大丈夫、三割引だったから」

    若「安く手に入れたと。買い物上手じゃのう」

    唯「当たりー!」

    美「うふふ、ホントね」

    若「?」

    覚「さ、じゃあ揃ったから、冷麦ゆで始めるよ」

    美「あ、そうなのね。お待たせしました」

    晩ごはん。

    美「しっかし、よく入るわねぇ、唯」

    唯「冷麦は別腹」

    尊「それ、メインが逆じゃね?何食べてきたの」

    唯「モリモリにデコった、パンケーキ~」

    それを聞いて、顔を見合わせる男子三人。

    覚「今日食べたんだ」

    唯「うん。悪い?」

    尊「悪かないけどさ」

    若君が、少し淋しそうな顔をしている。

    唯「ん?どしたの、たーくん」

    若「あ、いや。唯」

    唯「はい?」

    若「また、じきにそのような甘味処へ参ろう」

    唯「え、いいの?やーん、たーくんとなら何回でも行っちゃうよっ」

    若「そうか」

    笑顔になる若君に、ほっとする覚と尊。美香子も、経緯を悟った。

    覚&尊&美 心の声(良かった良かった)

    覚「あ、母さん。水曜、また違う城を皆で見に行こうと思うんだが」

    美「あら、そうなの。じゃあ、朝から行けるようにします」

    覚「済まないな」

    若「お母さん、済みませぬ」

    美「いいのよ~」

    唯「どこ行くの?」

    覚「ここだ」

    覚がタブレットを見せる。

    唯「へー、ここは行った事なーい」

    美「そこって、城下町が整備されて、食べ歩きとかできる所じゃない?」

    唯「食べ歩き!」

    尊「反応めちゃ速っ」

    美「で、今日はどうだった?忠清くん」

    若「はい、見応えのある良い城でした」

    尊「兄さんの、階段昇りの速さは見ものだったよ」

    唯「んー、まぁそうだろね。すっごく急でしょ」

    尊「うん。あ」

    唯「あ?」

    尊「お姉ちゃん、水曜そのワンピースは、オススメしないというか」

    若「確かに。エリさんには悪いが、ならぬぞ」

    美「あー、下から覗き放題になるからね」

    唯「それはイカン、止めとく。あ、やったぁ、じゃあ、今日買ってもらった服とジーンズにする!」

    美「そうね、ちょうどいいわ。私もスカートは止めるわね」

    若「服を、買うて頂いたのですか」

    美「ええ、忠清くんも喜ぶと思って」

    若「喜ぶ?」

    唯「うん!絶対。んー、お披露目は、当日のお楽しみにしまーす」

    尊「へー」

    覚「母さんの服は?」

    唯「よく似合ってたよぉ」

    覚「そうか。そのお披露目は大分先だな」

    美「あら、後で着て見せてあげようか?」

    覚「あ、いや、どうしようかなー。ん?」

    子供達三人が、どうするのどうするの?と言いたげなキラキラした瞳で、発言を待っている。

    覚「うわっ。僕も当日でいいです…」

    唯「え~?見せてもらえばいいのに」

    若「遠慮などせずとも良かろうに」

    尊「ラブラブなのは周知の事実なのに」

    覚「畳みかけられた!お前達、息ピッタリじゃないか」

    唯「んー、一心同体?」

    若「以心伝心じゃな」

    尊「三位一体でしょ」

    美「あはは、面白い!」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    4日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days51~4日16時30分、山盛りです

    スイーツ以上に甘い関係。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ワンピースの試着行脚スタート。

    唯「なんかイマイチー」

    美香子「確かに。着てみないとわからないものよね~」

    他のも試す。

    美「あ、中々良くない?」

    唯「悪くないけど、他のも着てみる?」

    決まりそう。

    唯「あ、めっちゃいいじゃん!マダム感出てる。でもすっごいシンプルだけどいいの?」

    美「似合ってるならいい。これは、ジャッキー風かな」

    唯「ジャッキー?」

    美「元アメリカ大統領の奥様で、品のあるお洒落で有名だったの」

    唯「へー。どおりでイイ女」

    美「あらぁ、嬉しいわ~」

    無事決まり、試着室を出る母。

    美「あのさ」

    唯「うん?」

    美「そのワンピース、可愛いいけど袖がないから、来週街中とかホテルだと、腕から冷えちゃうかもしれないわ」

    唯「そうかな?」

    美「カーディガン買おう」

    唯「え!それ嬉しいけど、そんなに着ないよぅ」

    美「さっき、唯と忠清くんが絶対喜びそうなの見つけたの」

    唯「へ?たーくんもって、どゆこと?」

    母が、白っぽい薄手の半袖カーディガンを手に取った。

    唯「あっ、見覚えのある形!」

    美「ね。上までボタンがあるから、普通にセーターとしても着られるし、前を開けて着れば、頂いたワンピースにも合うし」

    唯「着てみるー」

    試着。

    唯「かわいい!下はジーンズでもいいよね」

    美「そうね」

    唯「でも」

    美「いいのいいの、決まりね」

    レジに向かう。

    唯「ホントにいいの?」

    美「大丈夫。ここにイイ事書いてある」

    2点以上お買い上げで10%オフ、のポスターが貼ってある。

    唯「あっ、おトク情報!」

    美「ね、だから買っちゃおう!」

    唯「やったぁ」

    ワンピースとカーディガン、お買い上げ。

    唯「お母さん、ありがと~」

    美「いーえー。さてと、ちょっと休憩する?」

    唯「うん。ねっねっ、私、モリモリにデコったパンケーキが食べたいなぁ」

    美「またそんなカロリー高いのを。晩ごはん食べないつもり?」

    唯「食べる気マンマンだけど」

    美「聞くまでもなかったか。忠清くんとは、一緒に行ってないの?」

    唯「甘過ぎるスイーツは体に毒だと思ってるんだよ。顔が拒否ってたから、お店に入るのやめた事がある」

    美「永禄ではまず口にしないもんね。甘いって背徳よね~」

    唯「一生のお願い!」

    美「大袈裟な」

    唯「一皿を半分コでいいからぁ」

    美「私が半分も食べられるかだけど。ま、忠清くんが乗り気じゃないなら、代わりに一緒に行ってあげよう」

    唯「わーい!」

    店に入る。待望の、これでもか!とモリモリに飾られたパンケーキが運ばれて来た。

    唯「うー、嬉し過ぎるぅ」

    美「こんなビジュアルなら、彼が引いたのはわからなくもないな」

    唯「そっかぁ」

    美「まぁその辺は、現代も永禄も変わんないかな。さっ、召し上がれ」

    唯「いっただっきまーす!」

    帰り道の車内。

    美「他に、やり残したなって思う事があるなら、やっときなさいね」

    唯「うん。また思い出したら。でもね」

    美「ん?」

    唯「ずっと心の片隅に引っかかってても、20年後に叶うんだってのもすっごくロマンチックでいいなぁ。しかも二人して思ってたんでしょ?」

    美「そうね」

    唯「二人でいつか叶えようねってのがいいー。長ぁい約束もきっと待てる。どしたら、そう思える?」

    美「それは、あなたと彼なら同じように出来ると思うわよ」

    唯「どんなどんな?」

    美「お互いをずっと好きでいる」

    唯「サラっとすごいコト言った!うん、がんばる!たーくんに嫌われないように。あー、早くギューってしたいよ~」

    美「ドラマティックな帰宅風景になりそうね」

    愛する男子達が、家で待ってます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    見覚えのある形って?は後日。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days50~4日16時、君の為に僕は

    そっと触れれば当時の息遣いを感じられるような、石垣も大切に残してあるし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    そろそろ城を出る。

    覚「忠清くん」

    若君「はい」

    覚「他の城も、見たくなったかい?」

    若「はい!」

    覚「後世に復元した城は沢山あるけどねー、それよりは、築城当時から現存してるのがいいよな」

    若「そうですね」

    覚「水曜、母さんの手が空き次第、もう一箇所出かけるか?」

    若「良いのですか?忝のう存じます」

    尊「やったー!どこ行くの?」

    覚「今日と同じ国宝で、まあまあ近くにあるからそこかなと」

    尊「調査済みなんだ。国宝の城で検索、と…あ、なるほどね」

    覚「尊、そこ、築城してどれくらい経つか調べて」

    尊「了解。えーと…480年位だね」

    若「なんと、わしが生を享ける前からかの。残る城は残るのじゃな」

    尊「お城って、後世になってから、取り壊しとか焼失とかの憂き目にあってる方が断然多いんですよ」

    若「そうなのか」

    覚「黒羽城公園は、きちんと整備されてお堀の面影も残ってるし、市民に親しまれているからね」

    若「それはそれで、良いのですね」

    17時。男子チーム帰宅。

    若「お父さん、運転ありがとうございました」

    覚「いやいやー。あ、そうだ、早速お願いしちゃってもいい?マッサージ」

    若「承知いたしました」

    尊「どんどん稼いでもらって」

    若「いや、そのようなつもりではない」

    覚「いいじゃないか。僕も嬉しい。忠清くんも自由に使える資金が増えるしさ」

    尊「どうせあの二人、おやつタイム有りだからしばらく帰って来ないよ。お父さん、倍の時間やってもらってさ、千円払ったら」

    覚「そうしようか」

    若「それはならぬ、倍など受け取れませぬ」

    覚「僕がいつもの倍疲れてるから、って事でいいんじゃないか?たっぷり頼むよ」

    若「わかりました。しかと、させて頂きます」

    至福の顔をする父。その様子を眺める尊。

    尊「お母さん達、何食べてると思う?」

    覚「パフェとかじゃないか?」

    尊「絶対スイーツ系だよね。兄さんは、一緒に食べてるんじゃないですか?」

    若「その、パフェとやらは口にした事があるがのう…」

    尊「あ、無理して食べた感じですか?」

    若「毒かと思う程甘かった」

    尊「ハハハ、確かに恐ろしく甘いですよね」

    覚「その時、唯はどんな様子だった?」

    若「顔に出ておったらしく、ごめん、と謝られました」

    覚「だよね。あのね、忠清くん」

    若「はい」

    覚「苦手なものを食べろとは言わない。これは僕の勘なんだけど、その後、いかにも甘そうなのは一緒に食べてないんじゃないか?」

    若「あ、はい。店の前まで行き、引き返した事はありましたが」

    尊「何の店だったんですか?」

    若「確か…パン、ケーキとあったような」

    尊「へぇ」

    覚「それね、君の顔色をうかがったんだよ」

    若「そう…ですね。残念そうな顔をしておりました」

    覚「そういう時は、店には入ってあげて、君は飲み物だけにする。で、唯が幸せそうに頬張る姿をただ眺めてなさい。かわいい妻にはご機嫌で居て欲しいだろ?」

    若「はい。そうですね。今後は、機会を作ってでも、是非そういたします」

    覚「まだ日数あるしな」

    尊「デートの指導してる。え、そういう時お父さんならどうするの?」

    覚「僕は、そこまで甘いのは苦手じゃないから、別の種類のを頼んで交換しながら食べる。女の子って、一口ちょうだい、とか好きだから」

    若「あ、それは行きました。ラーメンで」

    尊「あー、あの店ね」

    覚「色々共有したいんだよ。それがデートの醍醐味だから。でもできる範囲でいいからね」

    若「そのような意図であれを…女心はわからぬ、まだまだ不得手じゃ」

    覚「相手の喜ぶ顔が見たい、と思えば、自然に体は動くよ」

    若「愛情の深さゆえですね」

    覚「あとね、これはあくまでも僕の意見なんだが」

    若「はい」

    覚「言わなくてもわかる、なんてないから。愛する妻にはちゃんと愛してるって言う。事ある毎に、言い続ける」

    尊「わー。それ、僕なんかでも、ハードル高っ!て思うけど」

    覚「そう思ってるんだから、言うだけなんだけどな」

    尊「なんかカッコいいぞ。気負わないのが大事?」

    覚「美味しいと感じたら美味しいと言うのと同じ」

    尊「恋愛マスター?兄さん、どうですか?」

    若「続けておられるからこその夫婦円満ならば、倣うより外なかろう。精進いたす」

    尊「兄さんならできるかもな。なんか、濃いぃ講義だったなあ」

    若「早う、会いとうなりました」

    覚「そうだねー。帰ってきたら、ハグなんかしちゃう?」

    そうこうする内、マッサージ終了。

    覚「あー、ありがとう、生き返ったよ」

    若「痛み入ります」

    尊「晩ごはんは何にするの?」

    覚「冷麦にする。顔見てからゆで始めても、遅くなり過ぎないし」

    若「支度はいかがいたしましょう」

    覚「つゆは買ってあるから、ネギとショウガだけ用意しようかな」

    若「わかりました。手伝います」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、女子チーム篇に戻ります。

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    二人の令和Days49~4日14時30分、だって女子だもん

    正しい意味だと、その後の悲しい別れも思い出してしまうので、触れないでおきましょう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    女子ショッピングツアーの車内。

    唯「ねぇねぇ、なに買うの?」

    美香子「この機会に、服を新調したいなって」

    唯「あ、来週のお泊まり用?ヒューヒュー!よっ、お二人さんっ」

    美「お泊まり用って~」

    唯「だって初夜とか言ってたしぃ。でも、結婚式の日のリベンジできて、良かったね」

    美「ありがとう。思い出した?自分の時の事」

    唯「えっ?…えぇっ!やだもぅ!お母さん、何言い出すのー!」

    美「祝言の話よ?」

    唯「あ、そっちか」

    美「それに、そもそも初夜の意味をはき違えてる気がするけど?」

    唯「え?初めて…えっと…一つになった時じゃないの?」

    美「違うわよ」

    唯「え、あ、そうなの?!やーん、色々思い出しちゃった」

    美「そんな、初めての時の話なんか、聞く訳ないでしょう~」

    唯「母は娘のを確認するモンなのかー、と思って」

    美「なんでよ。心に秘めときなさい」

    唯「でも、その…次の日の朝、たーくんにすっごくからかわれたんだよぉ」

    美「自分から話したいの?まぁいいけど。それって確か、外風呂で大騒ぎしてたって時よね。年齢的にも学生カップルが戯れる感じね。微笑ましいわ~」

    唯「えー?いろいろ仕掛けられて、超焦ったりしたんだけどっ」

    美「唯が可愛くて仕方なかったのね。愛情表現よ」

    唯「えー?遊ばれてたとしか思えなかったけどなー。なんてヤツ…」

    美「ヤツとか言わない」

    どんどん高速道路を走る。

    唯「へ?どこまで行くの?」

    美「せっかく高速に乗ったから、アウトレットモールに行こうかなって」

    唯「わぁ!久しぶりだ~」

    到着。

    唯「お買い物、お買い物!」

    美「唯の物じゃあないけど」

    唯「わかってるよー、でも楽しい!」

    プラプラと、まずはウィンドウショッピング。

    唯「どんなのがいいの?」

    美「ワンピースにしよっかなー」

    唯「私みたいな?」

    美「その形は、唯の年齢だから似合うのよ」

    唯「大人げなのがいい?マダームって感じの」

    美「マダムな感じはいいわよね」

    何軒か回り、目を付けたが、途中雑貨店の前で立ち止まる母。

    美「あ、ちょっと覗いてみましょ」

    唯「へ?」

    何かを探している。

    美「あ、あったわ」

    唯「何が?」

    蚊取り線香ホルダーのコーナー。

    美「今の時季なら、あると思ったから」

    唯「へぇー。雑貨店だと、豚さんじゃなくてもかわいいのがあるね」

    美「和室に置いといても馴染むのがいいわよね。倒れにくいのも必須だし…これなんかどうかな?」

    金属製の黒い入れ物。蓋付きで、本体蓋とも、美しく透かし彫りがしてあり、煙の出口になっている。

    唯「引っ掛けるんじゃなくて、そのまま乗せるだけなんだ」

    美「脚があるから、畳の上に置いても大丈夫そうね。灰も蓋があるから散らばりにくいし。どう?」

    唯「持ち手もあるし、使いやすそう」

    美「じゃあ、お土産決定でいい?」

    唯「買ってくれるの?」

    美「勿論よ~。でも、三割引だったのは、忠清くんには内緒ね」

    唯「買い物上手じゃのう、って逆に喜ぶと思うよ」

    美「へー、そうなのね。さすが若奥様、わかってるわね~」

    唯「あらぁそれほどでもなくってよ、オホホ」

    美「十代の女の子のセリフではないわね」

    ワンピース探しに戻った。

    美「細く見えるのがいいな」

    唯「乙女心っすか」

    美「お父さんは、そのままの美香子でいいよ、って言ってくれるけど」

    唯「うっ!ラブラブ攻撃にやられた~」

    美「別にいいでしょ~」

    唯「あーそんな事言うから、たーくんにギュってしてもらいたくなっちゃったじゃない!会いたい~、もう、早く服決めて帰ろっ」

    美「え~。あ、昨日撮った、忠清くんの可愛いい寝顔見せてあげるから」

    唯「え!なにそれっ、聞いてない!…やーん、超かわいいー!はぁ~。忠清チャージ完了。ねぇ、この写真も土産に持ってきたい!」

    美「尊に頼んどくわね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    女子チーム篇、まだまだ続きますが、次回は男子チーム篇です。

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    二人の令和Days48~4日14時、瞼に浮かぶのは

    感じる空気感は同じなんでしょう。
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    男子城ツアーの車内。

    尊「このメンバーで出かけるの、初めてだね。なんかすごくワクワクする」

    覚「男だけってのがか」

    尊「女性陣が邪魔って言ってるんじゃないよ」

    若君「わかっておる。尊、そのワクワク、とは何じゃ?」

    尊「あ、えーと…心踊る、かな」

    若「そうか。ならばわしもワクワクしておる」

    覚「ははは。ご機嫌なのはいい事だ」

    城近くの駐車場に停めた。目の前のお堀に架かる橋を渡り、入城。

    若「まだ天守は見えぬの」

    尊「って事は、相当歩くと。こんなんだったかなー。あんまり覚えてないや」

    覚「これから大分登るぞ」

    天守へ続く道はやがて、階段道に変わった。急斜面をぐねぐねと登る。

    尊「お父さん、この階段サンダルだとキツいよ」

    覚「そうだなー、すまんすまん」

    尊「兄さんは全然平気そうだけど」

    若君が、坂をモノともせずスッスッと登って行く。

    若「ゆるりと参れ。お父さんも無理はなさらず」

    尊「体力の差が顕著だー」

    覚「ふぅ、お前の方が若いんだぞ」

    山の頂上に到着。造形が実に美しい天守を、目の前に臨む。

    覚「白い漆喰の壁が綺麗だろ。今日は天気がいいから特に映えるな」

    若「…」

    覚「ここ、国宝なんだよ」

    若「国の、宝と?!」

    覚「また色々考えちゃう?」

    若「いえ。ただただ感心しております」

    尊「写真撮ろう」

    城をバックに、パチリ。

    尊「年齢を重ねた兄さんが、築城されてすぐにここを訪れる、なんて未来もあるかもね」

    覚「訪れるか、攻めるか?」

    若「それは、和睦が良いですが」

    覚「んー、ホントに忠清くんは、戦国武士とは思えない程平和主義だね」

    若「親子兄弟夫婦が睦まじく、穏やかに暮らすが良いのです」

    城内は土足禁止。三人とも裸足になった。

    尊「おウチにお邪魔する感じだね」

    順路に沿って進む。

    覚「うわっ、随分急な階段だな。まるでハシゴだ」

    尊「このしつらいが、お城だよね。手すりちゃんと掴んで上がらなきゃ」

    言っているそばから、若君が滑らかな動きで、颯爽と急階段を上がって行く。

    尊「わー。さすがに慣れてる」

    観光客「まぁ、若いわね~」

    他の観光客も、感心して見ている。

    尊 心の声(若いのもあるけど、どっちかというと、勝手知ったる、なんだけどな)

    上がりきった所で覚と尊が一息ついていると、窓や矢狭間から涼しい風が入って来た。

    尊「ふんふん、ここから矢を射るとあの道の兵は一網打尽なんだ」

    覚「おー、いい風。生き返る。一休み一休み」

    若君は、壁や柱を感慨深く眺めている。

    覚「黒羽城を思い出す?」

    若「いえ…柱の色に、重ねた年月の長さを感じておりました」

    また階段が。またしてもスルスルと上る若君。

    尊「わー、速い、待ってー、若君!」

    覚「尊、呼び名が」

    尊「え?あ、つい」

    階段を上がる尊の前に、上から手が伸びてきた。

    若「尊、手を」

    尊「あ」

    尊を引き上げる若君。

    尊「ありがとう兄さん」

    続いて覚も。

    覚「あーありがとねぇ、忠清くん」

    尊「兄さん、ごめんなさい。さっきうっかり、若君って呼んじゃった」

    若「そうであったな」

    尊「なんか、身のこなし方がまるで、袴姿に見えて」

    若「ハハハ」

    天守の最上階。風は一層涼やかに吹き抜ける。

    覚「かなり上がったな」

    尊「いい眺め~」

    ふと若君を見ると、窓に向かい、腕を組み、風を浴びながら目を閉じている。

    尊「兄さん…」

    覚「そっとしといてやろう」

    しばらくすると、若君が振り向いた。

    若「お父さん、今日はこの城に連れて来て頂き、ありがとうございました」

    覚「いえいえ。堪能できたみたいだね」

    若「あっ」

    覚「あ?」

    階段を上がってくるお年寄りに駆け寄って手を取り、上がる手伝いをする若君。

    尊「なんて優しい」

    覚「実に出来る男だよ」

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    次回は、女子チームの様子をお送りします。

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    二人の令和Days47~4日8時、お見通しです

    城主が残したいと望んでも叶わない時はある。
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    朝食。

    美香子「ん~、ザ・宿の朝ごはんよねぇ」

    尊「焼き魚とか?」

    美「生卵に海苔とか」

    尊「なんとなくわかるような。兄さんが釘付けになる、固形燃料も早速燃えてるし」

    若君「炎が美しゅうての」

    唯「旅館って感じだね」

    覚「では、いただこう」

    全員「いただきまーす」

    覚「食べながら聞いてくれ。まずゆうべは、すまなかったな」

    尊「あちこちぶつけたりしなくて良かったよ」

    覚「唯と忠清くんで一つの布団だったのは、思わずのけ反ったが」

    唯「安全第一でして」

    尊「予定通りだったんじゃないの」

    唯「はて?」

    覚「まあいいが。で、今日だが」

    美「はい」

    覚「午前中はドライブだ。景色のいい所へ行く。昼からなんだが、忠清くん」

    若「はい。お父さん、何でしょうか」

    覚「君さえ良ければ、連れて行こうと思う場所がある」

    若「どのような所ですか?」

    覚「帰り、少し寄り道すると、お城があるんだ。築城は黒羽城よりずっと後なんだが、今でも天守が残っててね」

    若「今も!この先の世にですか」

    尊「あー、あの城なら400年以上残ってますね」

    覚「行きたいかい?他の城なんて見るのは辛いなら止めるが」

    若「それは…是非お連れ頂きとう存じます」

    覚「そうか。じゃあ行こうか。尊は?」

    尊「僕も一緒に行きたい」

    覚「だな。唯はどうする?」

    唯「お母さんはどうするの?」

    美「んー、忠清くんとお城も捨てがたいけど、もし良ければ別行動で買い物に行きたいな」

    唯「じゃあそっちに付き合うよ」

    美「あら、ありがとう唯」

    尊「珍しい、兄さんと別行動でいいなんて」

    唯「だってあのお城でしょ?そこ地元の遠足や社会見学のド定番で、何回も行ってるもん。たーくんが来てって言うなら考えるけど」

    若「いや」

    唯「あちゃ、ちょっと残念」

    若「そのような意味合いではない。この折に、お母さんに親孝行せよ」

    唯「うん、わかった。今日はそうするね」

    覚「じゃあご飯食べて、もう一回温泉入って、出発するか」

    チェックアウト。出発する。

    唯「午前中は、お父さんの車に乗ろっかな。たーくんと」

    尊「じゃあ僕はお母さんの車に」

    車は山に登ってきた。

    唯「わぁー、すごーい!遠くまでよく見えるね」

    覚「かなり上がってきたからな」

    若「山も海も美しい」

    美「山頂はね、もっとキレイらしいの」

    尊「へぇー。大パノラマなんだ」

    昼頃、山頂の公園に到着。

    美「あー、気持ちいいわねー」

    覚「お疲れ~」

    散策した後、レストランに入り、昼ごはん。

    美「ここも眺望が素晴らしいわね~」

    尊「四方が見渡せるよ」

    覚「殿様になった気分って、こんなんかな?あ、黒羽城は高い所にないね。平城か」

    若「小垣城は山城でした。双方残ってはおりませぬが」

    覚「そう、だったね」

    若「なので、この先の世に残るとは、どのような城かと思うております」

    覚「そうか。楽しみにしてて」

    若「はい」

    覚 心の声(にしては、笑顔が淋しそうなんだよなあ。連れてくって言わない方が良かったかな)

    唯が動いた。若君の両頬を、横にむにーと引っ張る。

    美「唯!また急にそんな事して!」

    唯「いいの。たーくん」

    若「何、じゃ?」

    唯「前に言ったよ。ここは令和なんだから、今は笑ってて欲しい」

    尊「笑ってたじゃん」

    唯「無理してたもん。なーんか色々考えてたっぽいけど、この今のひと時を思う存分楽しもうって、たーくん自分で言ってたのにさ」

    若「そうであったの。済まなかった。お父さん」

    覚「はい」

    若「色々考えを巡らせてしまいましたが、楽しみにしておるのは本意です。この後、よろしくお頼み申します」

    覚「うん、よしよし、わかったよ」

    昼ごはん終了。いよいよ二手に分かれる。

    美「別れる事は辛いけど、仕方がないんだ若君のため」

    覚「またそんな古い歌を」

    美「うまいでしょ?」

    覚「まぁな。晩ごはんは、家にある物で済まそうと思うから、お互いメドとして19時には帰宅しような」

    美「わかりました」

    唯「じゃーねー、行ってらっしゃい、行って来まーす」

    尊「行ってらっしゃい、行って来ます」

    若「では、後程」

    唯「ふふっ、のちほど~」

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    次回、まずは男子チームから。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days46~4日日曜7時、時間をプレゼント

    そう思える心が純粋で美しい。
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    唯が目覚めた。

    唯「ん…あれっ?」

    周りを見ると、寝ているのは自分だけで布団には誰も居ない。

    唯「へ?みんなどこ行った?」

    若君「おはよう、唯」

    声に振り向くと、窓際の椅子に、若君と尊が座っている。

    尊「お姉ちゃん、おはよ」

    唯「おはよ。どしたの、たーくんが早起きはわかるけど尊まで起きてるなんて」

    尊「なんとなく目が覚めたから」

    唯「お父さんとお母さんは?」

    若「散歩へ参ると」

    尊「8時5分前に、ゆうべご飯食べたトコに集合だってさ」

    唯「ふーん」

    若「折角じゃ、朝の海を間近で見たいのだが」

    尊「お姉ちゃん、まだ寝たいんなら兄さんと二人で行ってくるけど」

    唯「えー、なによ、男子二人でラブラブなんて許さないよ、私も行く!」

    尊「ちぇっ」

    唯「ちぇっ、だとぉ?」

    若「ハハハ。では着替えるとしよう」

    三人着替え完了。唯は、今日は白レースのワンピース。

    尊「黙ってりゃ姫だね」

    唯「少しは認めるんだな。よし。しゃっ!」

    若「それは、いわゆる姫君の口調ではないがのう」

    海までやって来た。

    唯「いい風~」

    若「そうじゃな」

    尊「朝からまぶしいね」

    遠くに、見覚えのある後ろ姿と日傘の二人が歩いている。

    尊「あ、お父さん達だ」

    唯「ホントだ。おーぃ…」

    若「待て」

    駆け出そうとする唯の腕を掴み、止める若君。

    唯「え?どして?」

    若「邪魔をしてはならぬ。折角二人だけの時を楽しんでおられるのに」

    尊「さすが兄さん、優しいな」

    よく見ると、腕を絡ませ、日傘は覚がさしてあげている。

    尊「一番ラブラブなのは、あの二人だな」

    唯「あい変わらず仲がいいよね」

    若君が、両親の姿を目で追っている。

    尊「兄さん?」

    若「あぁ。もしや、と考えての」

    唯「もしや?」

    若「我らが此度、この先の世に参った由を」

    尊「なぜか、って事ですか」

    若「両親に、このような一時を差し上げる為ではなかったかと」

    尊「なるほど。旅行に来なければ、まず浜辺は歩かないし」

    若「近々、積年の夢を叶えるとの事」

    尊「そうですね。すごく喜んでると思います」

    若「尊の学びは邪魔をしてしもうたが」

    尊「邪魔じゃないですよ。学習計画にメリハリがついたから、これでいいんです」

    若「そうか。ありがとう、尊」

    尊「ありがとうはこっちですよ」

    唯が、小枝で波打ち際に何か書いている。

    尊「静かだと思ったら。何、相合傘でも書いてんの?」

    唯「んー?海の神様にお願いしてんの。たーくんと、ずーーー」

    線を引きながら、走る唯。

    尊「ずーが長いな」

    若「ハハハ」

    唯「ーーっと、いっしょに!はい完成~」

    尊「よく見たら裸足じゃん。あー、あんな遠くに脱ぎ散らかして」

    若「わしが取って参る」

    若君がサンダルを拾い上げると、少し大きな波が来た。文字をさらってゆく。

    尊「あー、消えちゃった」

    唯「うん。いいんだよ」

    尊「砂にメッセージなんて、儚さの象徴なのに」

    唯「尊よ」

    尊「何」

    唯「それは違うておるぞ」

    尊「なんで戦国言葉なんだよ」

    唯「消えたんじゃないんだよ。海の神様がね、よしわかった聞き入れてやるって、砂の中に染み込ませたの」

    尊「ほー」

    唯「だから砂浜は、みんなの願いが詰まってるんだよ」

    尊「誰かに聞いたの?」

    唯「ううん。私が、そう思ってる。これで絶対叶うんだよ」

    尊「そうなんだ。お姉ちゃん、素敵だね」

    唯「えっ?!尊の口からそんな褒め言葉が出るなんて、びっくり」

    若「そう素直に申せる尊も、良き弟じゃ」

    尊「やったー。兄さんに褒められた」

    若「時間は、まだ良いか?」

    尊「えーと、7時45分。もう行かないとですね」

    若「ならばほれ、唯、履いて」

    唯「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日も輝く一日が始まりました。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days45~3日22時、頭をフル回転

    実はムキになるタイプ?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「これ、全部裏向いてるけどね、中に同じ数字やアルファベットが書いてあるカードが4枚ずつあるの」

    若君「ほぅ」

    唯「2枚めくって、文字が同じなら取る。で、続けてまためくれるの。違ったら裏を向けて戻して次の人へ。めくられたカードの位置を覚えといて、順番来たら取っていけるように。最後一番多く取れた人の勝ちだよ」

    若「何となくはわかった」

    尊「ひとまずやってみようよ」

    賑やかに始まった。

    唯「あっ、さっきどっかで見たぞっ」

    若「見た。あっ」

    美香子「いただき~」

    尊「やられたー」

    盛り上がっていると、覚がモゾモゾ動いて歩きだした。

    美「お父さん、トイレ?」

    覚「うん…あ、痛っ」

    一番端の、入口近くに敷かれた布団につまずいている。

    美「あらら」

    唯「もー、危ないー」

    若「水を用意しますか」

    戻って来た覚に水を飲ませた。また横になり眠り始める。

    尊「あの位置の布団、夜中に起きたらまた引っ掛かるかも」

    美「寝てる所に、ヨロヨロのお父さんが降ってくるかもしれないわね。後で考えましょ」

    神経衰弱は、3回やった内、最後は若君の勝利だった。

    美「トランプに慣れてないし、文字も見分けにくかったでしょう。大健闘、というかさすがね」

    唯「勝って良かったよ。下手すると勝てるまで付き合わされそうだったもん」

    若「そこまでは申さぬ」

    唯「て言いながら、ニコニコだしさ」

    若「他にも遊び方はあるのか?」

    尊「ありますよ。何しよう?」

    唯「やっぱ超定番のババ抜き?」

    若「婆、抜き。また妙な名じゃ」

    美「カードに慣れたから、ちょっと教えれば大丈夫かも」

    尊「じゃあ、説明しますね」

    ババ抜きスタート。

    唯「これもさぁ、ある意味たーくん向きだよね」

    美「カード引く時、表情で惑わせる?」

    尊「そうだよ。僕、何度兄さんからジョーカーを引いた事か」

    若「ん?そうかのう。フフッ」

    美「不敵な笑いね。なんか新鮮」

    また盛り上がっていると、再び覚が起きてトイレへ。顔がスッキリしてきている。

    覚「ババ抜きやってるのか」

    若「お父さん、具合はいかがですか」

    覚「だいぶ酒も抜けたよ。心配かけて悪かったね。じゃ」

    布団にもぐりこむと、すぐ寝息が聞こえた。

    尊「明日は大丈夫そうだね」

    美「うん。良かった」

    もうすぐ日付が変わる。

    美「さてと。そろそろ寝る?」

    唯「朝ごはんは何時から?」

    美「8時よ」

    唯「じゃあ、そろそろかなー」

    若「布団はどういたしましょう」

    美「そうねぇ」

    唯「いい事考えたっ」

    美「何?」

    唯「いっそ、この端のは畳んじゃったら?誰が通っても暗がりだと引っ掛かりそうだから」

    尊「一人分どうすんの。あー?もしや」

    唯「たーくんと私は、二人で一つでいいよん。ぐふふ」

    若「なんと」

    美「いかにも唯が考えそうな。狭くない?」

    唯「くっついて寝るからいい」

    尊「兄さん、いいんですか?」

    若「苦しゅうない。皆が足元を気にせず動けるならば、尚更良かろう」

    尊「まっ、懸念があるとするなら、お父さんが夜中に見て腰抜かす位かな」

    美「じゃあ、片付けて寝る準備しようか」

    そして消灯。

    美「おやすみなさい」

    尊「おやすみなさーい」

    唯は若君の腕の中。

    唯「うふふ、おやすみ、たーくん」

    若「おやすみ、唯」

    また明日。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    3日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days44~3日21時、誰もが持つ宝物

    きっと器用に書くのでしょう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トランプを座卓に広げている。

    美香子「そういえば、ジェンガってどうなった?使ってる?」

    若君「はい、よう遊んでおり、名も書き足しております」

    唯「三之助が好きだよね」

    若「そうじゃな」

    美「確か天野の家の男の子よね」

    若「三之助にジェンガを見せ、遊び方を教えると大層喜び、頻繁に興じておりました」

    ┅┅回想。永禄、昼下がりの城┅┅

    若君の居室に、三之助と孫四郎と吉乃が来ている。唯も居る。

    吉乃「若君様の元へ参ると聞かず、何事かと思うておりました。子らに、このように付き合うてくださっていたとは」

    若「初めに訳も伝えず呼んだのはわしの方じゃ。構わぬ。いつでも参られよ」

    唯「だいぶグラグラしてるよぉ」

    三之助「わかっておる!唯之助は黙っておれ!」

    唯「はいはい」

    孫四郎「動いておるー」

    唯「あっ、触っちゃダメっ!」

    ジェンガが倒れた。

    三「あー!」

    唯「あーあ」

    若「ハハハ。孫四郎はまだようわからぬよのう」

    三之助が、プリプリ怒りながら崩れたジェンガを集めている。

    三「あれっ…?若君様ぁ!」

    若「何じゃ?」

    三「これは、三之助と書いてあるのでござりますか?」

    若「そうじゃ。よう読めたのう」

    ジェンガの名前は、尊が書体をゴシック体でプリントしたので、一見しただけでは永禄の者にはわかりにくかった。

    唯「にょんにょん字で印刷してもらえば良かったな…」

    若「それにはの、わしや唯の、大切な者の名が入っておるのじゃ」

    三「大切…?」

    驚き、頬を赤らめ、はにかむ三之助。ブロックを探り始めた。

    三「あ、孫四郎を見つけた!」

    孫「わぁー、かかさまぁー!」

    ブロックを受け取り、吉乃の元へ持っていく孫四郎。

    吉「どれ。ほぉ、このように…若君の、皆を大切にされるお気持ちのあらわれでございますのう」

    三「うーん?若君様、知らぬ名があります」

    首を傾げながら取り上げたブロックに、覚と書いてある。

    若「此処には居らぬ者もおるのじゃ」

    三「居らずとも、大切…」

    三之助が何か考えている。

    若「ん?そうか、三之助の大切な者達を思い起こしておるのじゃな」

    下を向き、モジモジし始めた。

    若「ん?…よし。どれ、まだ名を入れておらぬ木片が幾らでもあるゆえ、その名を書いてやろう。誰じゃ?」

    三「…父上と、兄者…」

    若「わかった。今支度をするからの。唯、硯箱を」

    唯「はーい」

    吉乃が驚いてにじり寄る。

    吉「若君様、それはなりませぬ」

    若「そもそも書き足してゆくつもりの品じゃ。お気に召さるな」

    吉「若君様や唯とは由縁なき者にございます」

    若「今も息災であれば、会うて語らう折もあったやもしれぬ」

    吉「そのような。若君に御目通り叶うなど…」

    若「吉乃殿。戦は、城を常日頃守る者だけでは成り立たぬ。領民の力あってこそじゃ」

    吉「はい」

    若「名を上げぬまま、ひっそりと命を落とす者も多い」

    吉「それは、致し方ございませぬ」

    若「その者達は、名も無き者などではなく、大切な名がそれぞれにある。全ての者が、名を呼ばれ、無事に帰るようにと祈られ、見送られておるであろう。吉乃殿も、そうではなかったか?」

    吉「…仰せの通りでございます」

    若「戦はできればしとうないが」

    吉「よう存じ上げております」

    若「関わった者全てに礼を申したいのは山々であるが、それはままならぬ。三之助の兄君は、小垣が落ちた折に、と聞いておるが」

    吉「左様にございます」

    若「せめてもの罪滅ぼし、にもならぬであろうが、ここにその名を刻みたい」

    吉乃は、少し考えていたが、顔を上げ、小さく頷いた後ゆっくりと頭を下げた。

    吉「お心持ち有り難く承りました。御意のままに」

    若「うむ。ならば三之助、父上の名は?」

    三「はいっ!孫兵衛にございます!」

    若「よし。今入れるからの」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯「あの時の三之助、緊張して体が固まってた。たーくんに、お兄ちゃんの名前を言った時なんか特に。孫四郎も真剣な顔してたし」

    美「吉乃様って、もしかして男の子4人のお母さんじゃない?」

    唯「え」

    若「その通りです」

    尊「兄さんが答えるとは意外。お姉ちゃんは知らなかった?」

    唯「聞けなかったんだよ。お兄ちゃんの代わりにもならない、急に現れた私としてはさ」

    若「名を書いた後、せがれはもう一人居らぬかと、秘かに聞いたのじゃ。したらば、産まれてすぐ亡くした子が居ると」

    美「やっぱり。孫四郎くんは四番目だなと思ったから」

    若「その名も書こうと申したが、己の心の内にのみ、留め置きたい、と」

    美「そっか…」

    尊「いい話だね。でもおかしいなぁ」

    唯「はぁ?」

    尊「少しの間でも、その吉乃様と一緒に暮らしたのに、その凛とした所とか、お姉ちゃん全然見習ってない気が」

    若「それもそうよのう」

    唯「えっ、ひどっ」

    美「吉乃様に、不束な娘ですみません、って伝えて」

    若「わかりました」

    唯「えー、私の味方はどこにいるの~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トランプ、やりますから。

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    二人の令和Days43~3日19時、会話がBGM

    仲良し家族。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食事処。席に通される。

    唯「今回も豪華だねっ」

    若君「これは、何じゃ?」

    尊「サザエですね。こっちは岩ガキ」

    若「妙な形をしておる」

    尊「貝ですよ。シジミとかと同じ仲間」

    若「そうなのか」

    美香子「まだ飲むかー」

    覚「地酒を勧められるとな」

    美「色々理由はつけられるわね」

    覚「では」

    全員「いただきまーす!」

    箸が進む。

    唯「うまーい!」

    覚「酒もうまーい」

    美「酔っぱらい~」

    若「楽しそうじゃ」

    尊「あー、何食べても美味しいなぁ」

    美「よく動いた証拠ね。もちろん新鮮な魚介類が並んでるからだけど」

    唯「お刺身もコリコリしてるー。ウニもとろけるー」

    美「みんな食べっぷりが良くて、いいわ~」

    そろそろ食べ終わり。

    美「堪能した?」

    唯「したしたー」

    尊「あー満腹」

    若「どれも美味でした」

    美「お父さんは…寝てるわね」

    若「昼、眠っておられませぬので」

    美「そればっかりじゃないけどね。お父さん、寝るなら部屋でー」

    覚「んぁ?ん…もうごちそうさん、か?」

    四人「ごちそうさまでしたー」

    美「はい、部屋に戻りましょ」

    部屋には、布団が既に敷いてある。

    美「一番奥がお父さんでいいわね。はい、おやすみ~」

    覚「おやすみ…」

    尊「明日の朝、頭ガンガンなんじゃない?」

    美「だからもう寝てもらうわ。代わりに運転は今回無理だし」

    唯「明日は、チェックアウトの後どうするの?」

    美「海水浴は今日だけ、は言ったよね。お父さんには考えがあるみたいなんだけど、寝ちゃってるから明日の朝しか聞けないのよね」

    尊「車2台だから、別行動もあり?」

    美「それも含めて考えてるらしいわ。ごめんねぇ、これ!って言えなくて」

    唯「わかったー」

    尊がスマホをいじっている。

    尊「兄さん、これがサーファーです」

    若「ほぅ。随分と大きな波じゃな。のみ込まれそうじゃ」

    尊「こう、ボードで波に乗るんです」

    若「いずれ浜に着くであろう?」

    尊「そしたらまた、波を求めて沖へ漕ぎ出すんですよ」

    若「そのように楽しむのじゃな」

    唯「たーくんがサーファー…やだっ、超人気になっちゃう」

    尊「尋常じゃない数の女性達に囲まれるだろうね」

    美「有り得るわねぇ」

    唯「その中の美女と、いい感じで仲良くなって、私は捨てられるんだ。嫌だぁ~!」

    尊「頑張って自分磨きすれば?」

    唯「だって磨くなんて、どうやればいいかわかんない」

    美「自然児過ぎるからねぇ」

    尊「残念だったねぇ」

    唯「おいおい!えー、どうしよう~!」

    若「待たれよ。話が膨らみ過ぎており、ついてゆけぬ」

    クーラーボックスの中を確認する母。

    美「あら、まだチューハイが1本あったわ。あなた達もなんか飲む?お茶もジュースもまだあるわよ」

    唯「飲むー」

    尊「何がある?あ、兄さん先にどうぞ」

    若「済まぬのう」

    美「お菓子もまだ残ってるわね。珍しい、あまり食べなかったのね。はい、どうぞ」

    唯「ずっと遊んでたから。あ、勉強もしたよ」

    美「勉強?」

    尊「兄さんに、古式泳法教えてもらった」

    美「まあ素敵。今度私にも教えてね、尊」

    尊「どこで披露するんだよ」

    美「確かに」

    尊「あ、そういえば、トランプ持ってきたよ」

    唯「えー、何する?たーくんがわかるようなゲームじゃないと」

    美「神経衰弱はどう?」

    若「神経、衰弱…物騒な名じゃの」

    尊「名前はそうかも。多分兄さん得意だと思うな」

    美「じゃ、座卓の上に並べよっか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days42~3日17時、効能は

    若いから、すぐにはシミとかできないでしょ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    着替えて宿まで歩いてきた四人。

    美香子「あ、良かった。水着のままならどうしようかと思ってた」

    唯「普通に道路も歩くし、それはないよ~」

    若君「お母さん、お待たせ致しました」

    美「お帰りなさい。お部屋はこっちよ」

    部屋に入ると、窓が横長に大きくこの時間でも眩しいほど。坂を少し上がってきたので、連なる家々の屋根の奥に、海が見える。

    尊「ぎりオーシャンビューだ」

    覚「温泉もあるし、海までそう遠くないし。いいだろ?」

    尊「もちろん。宿、取れて良かったね」

    覚「あぁ」

    美「ありがとうね。晩ごはんはね、7時からよ」

    唯「じゃあ、ご飯前に温泉入るー」

    覚「そうだな、早速みんなで行くか」

    大浴場前。

    覚「では、ご飯の10分前にここに集合な」

    四人「はーい」

    男湯。

    覚「浮き輪ずっと使ってたから、ほぼ上半身が焼けてる感じだな」

    尊「ホントだ。しかも肩からグラデーションに薄くなってる?」

    若「日は上から当たるからのう」

    覚「あんまり擦るなよ、皮がめくれる」

    尊「そこまでではないけど、後でヒリヒリするかなぁ」

    覚「だからそっとしとけって。ここは美肌の湯だから、湯船に入ったら軽く撫でておけ」

    温泉に入る。

    若「前に入った温泉の湯とは、また違うような気がいたします」

    覚「そうだね。泉質が違う」

    尊「前の所は体を温める効果が高くて冬向きで、ここはさっぱりするんで夏向きなんです」

    覚「泉質で選べる程余裕はなかったけど、まぁ良かった。どっちも体にはいいよ」

    若「ほぅ。勉強になります」

    覚「忠清くん、その髪型で日焼けしてると、サーファーみたいだな。カッコいい」

    尊「確かに。兄さん、後で動画見せますね」

    若「そういう者がおると」

    覚「海は色々な楽しみ方があるって事だよ」

    女湯。

    唯「美肌の湯って書いてある!」

    美「私達にぴったりでしょ。男湯も同じだけどね」

    唯「やっぱしちょっと焼けてる?背中は?」

    美「背中の方がわかるかなー」

    唯「って事は、たーくんも焼けてるよね」

    美「顔、赤かったしね。いいんじゃない?精悍さが増して、より素敵でしょ」

    唯「たーくんはいつでもカッコいい」

    美「はいはい」

    唯「あ、でもスケキヨはイマイチだった」

    美「よっぽど強烈だったのね」

    女湯の更衣室。髪を乾かし終わる。

    美「髪、そのままだと湯上がりはちょっと暑いでしょ。結んであげる」

    唯「え、何も結ぶ物持ってないよ」

    美「さっき買っちゃった。売店で」

    手には赤いリボンが付いたヘアゴムが2つ。

    唯「かわいいー」

    美「後ろで分けて、二つ結びにするわね」

    浴衣にもよく似合う髪型に。やがて集合時間になった。

    覚「おっ、かわいいじゃないか」

    唯「えへ。たーくん、どぉどぉ?」

    若「愛らしい」

    唯「うっ、嬉しいっ。お母さん、ありがとう!」

    美「いえいえ」

    尊「これはあれだな、洋菓子店の前に立って首をグラグラさせてる、赤いオーバーオールを着て舌をペロッと出してるあの」

    唯「回りくどっ。言いたい事はわかった」

    食事処に向かう途中、窓から海が見えた。ちょうど日の入りの時間。

    美「まぁ!真っ赤で綺麗~」

    覚「グッドタイミングだったな」

    若「海に滲んでいくようじゃ」

    尊「カッコいいな。時々、ホントに兄さんと同じ風景見てんのかな僕、って思う」

    唯が黙っている。

    唯 心の声(昨日、夢で見た夕日?これはデジャブ?)

    尊「お姉ちゃん、行くよー」

    唯「あ、うん」

    若「どうした?」

    唯「昨日見た夢にも、夕日が出てきたの。キレイだったなって」

    若「という事は、夢の中のわしも見ておったと」

    唯「あ、そうだね。美しいってつぶやいてたよ」

    若「わしの事じゃ、唯共々美しいと思うておったに違いない」

    唯「え、そう?やーん嬉しい」

    若「参るぞ」

    唯「はぁい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    弟は、照れ隠しですな。

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    二人の令和Days41~3日16時、アオハルしてます

    そりゃ、満喫してもらわないと。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君と尊が、浮き輪に身を任せプカプカ浮かんでいる。

    若君「そういえば」

    尊「なんですか?」

    若「日焼け止めを忘れておる」

    尊「あー、そうなんですよ。塗り直す事すっかり頭から抜けてて。ま、いっかって」

    若「赤うなっておる」

    尊「兄さんもです」

    若「そうであろうの」

    尊「あ、でも兄さんこそ、戻った時ヤバくないですか。なんで一晩でこんなに変わるんだって」

    若「知らぬ存ぜぬを決め込む。構わぬ」

    尊「さすが兄さん。…あ」

    若「どうした?」

    尊「一句、ひらめきました」

    若「ほぅ?申してみよ」

    尊「赤くない、黒くないよと、白を切る」

    若「おぉ、上手いの」

    尊「やったー」

    若「ハッハッハ」

    唯が、ジャブジャブと浅瀬を走って来た。

    唯「尊~、ちょうだい!」

    尊「何をだよ」

    唯「その浮き輪」

    尊「は?兄さんとくっついとくんじゃなかったの?」

    唯「こっちも使いたいもん。はい、どいて」

    尊「えー!僕どうすればいいんだよ」

    唯「たーくんの浮き輪に一緒に入れば?」

    尊「へ?」

    若「良いぞ。入るか?」

    尊「うわっ。今ちょっと、ときめいてしまった…」

    唯「乙女な尊ちゃんに貸してあげる」

    尊「所有物みたいに言うな」

    唯「嬉しいくせに。じゃ!」

    若「何処へ行く?」

    唯「私は自由なマーメイドなのだ~」

    奪い取った浮き輪でバシャバシャと、バタ足で泳ぎ、どんどん離れて行く。

    尊「お姉ちゃーん!ちょっと!」

    若「唯~、待たぬか!」

    唯「キャハハ~!」

    様子を見守る両親。

    覚「楽しそうだな」

    美香子「ホントにね。じゃあ私、先に宿でチェックインしとくわ」

    覚「悪いな」

    美「ずっと居ると焼けちゃいそうだもの。日焼けは禁物だから、若くないんで」

    覚「いつまでも若いよ、美香子さん」

    美「あらん。じゃ、ゆっくりでいいからね」

    その頃、海の中では追いかけっこが終わっていた。

    唯「えー、速~い」

    尊「地上なら絶対追いつかないけど」

    若「こちらは二馬力じゃからの」

    尊「はい、チェンジ。こっちに戻って」

    唯「あれ、もういいの?」

    尊「男二人じゃちょっと狭い」

    唯「超密着してたんだ。くっくっくっ」

    尊「自分が仕向けたんじゃないか。あ、嫌と言ってる訳ではないです、兄さん」

    若「ハハハ。確かにちと狭かったのう。では唯、おいで」

    唯「キャー!尊、どいてどいて!」

    尊「扱いが雑過ぎる。はいはい」

    大きい浮き輪の中で、また若君に抱きつく唯。

    唯「ん~、極楽ぅ」

    尊「自分も言ってるし」

    若「そろそろ戻らねばならぬのでは?」

    尊「あー、そうですね。晩ごはんの時間とか決まってるだろうし」

    唯「えー、くっついたばっかなのに」

    尊「いつでもできるでしょ」

    若「そういえば、胸元はまだ辛いのか?」

    唯「あ、えっと、キツいのは変わんない。だけど、お母さんが大きくなったんでしょ大丈夫って言うから」

    若「そう、なのか」

    唯「お母さんが、たーくんにお礼を言いなさい、って」

    若「え?」

    尊「それって…大きくしてくれてありがとう的な?うへぇ」

    唯「えっ…あっ、そういう意味?!」

    尊「今気付いたの?僕は聞いちゃいけない話だな。さよなら~」

    若「それはその、いよいよ」

    唯&尊「ん?」

    若「ボンキュッボン、だと」

    唯「うわっ、いつの間に!」

    若「お父さんに伺った」

    唯「んもー、覚えなくていい言葉だってあるのにさぁ」

    若「唯の望みを叶えてやれたなら、喜ばしい」

    唯「似たようなセリフ、どっかで聞いたような…」

    尊「なんか今、俗っぽい自分を反省したよ。さてと、そろそろ戻る?」

    唯「うん。くっつきたいのはずっとだから、キリがないし」

    若「ハハハ。では、お父さんも待たれておるし、戻ろう」

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    めっちゃ焼けてると思う。

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