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    二人のもしもDays4、戦国のクリスマスプレゼント篇

    超久々に、もしもDaysをお送りします。
    もしもDaysのシリーズは、本来唯と若君が現代に居ない筈の時季に、季節のイベントを楽しんでもらうコンセプトなんですが…今回は、永禄の二人でお送りします。

    もしも、か、今まさに、か。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄。日が落ちて大分時間が経っている。

    唯「いよいよ明日かぁ。気分だけでも盛り上げよーっと」

    寝所で、何やら書いてある紙を見ている唯。すると、襖が開いた。

    若君「待たせたの、唯。ん?何か読んでおるのか?珍しい」

    唯「あ、たーくん。お疲れ様ですぅ。でもって、珍しいは余分ですぅ」

    若「ハハハ、ご無礼いたした。されど、蝋燭でも暗かろう。何じゃ?碁盤の目のような」

    唯「なんとなーく、見覚えない?」

    若「あるのう。もしや、カレンダー、か?」

    唯「当たり!」

    若「拵えたのか」

    唯「うん。カウントダウンしてるの」

    若「んー、それは、指折り数えておるという意味合いか?」

    唯「そうそう。わかってるぅ。明日ね、クリスマスイブなんだよ」

    若「あぁ、クリスマス、か。以前平成、に参った折に、頻りに申しておったの」

    唯「うん。こっちではなんにもできないけどさ、考えるだけでウキウキなんだぁ」

    若「そうか」

    表情をコロコロ変えながら楽しげに話す唯に、慈しむように微笑みかける若君。

    唯「明日の晩、雪降んないかな」

    若「雪?しばらくはなかろう」

    唯「降らないかー。え、たーくんいつから天気予報できるようになった?」

    若「予報、はできぬ」

    唯「じゃあなに」

    若「朝晩はかなり冷えるが、この時季にしては暖かい」

    唯「そっか」

    若「何ゆえ、雪が良いのじゃ」

    唯「景色が真っ白でキレイなホワイトクリスマスになるから。ロマンチックでしょ?」

    若「ロマンチック…それもよう聞いた気が。そういう物なのか」

    唯「そういうモンなの」

    若「ハハッ」

    唯「なんでそこで笑う~?」

    若「いや。このような、とりとめのない話をしておる時間、も楽しゅうての」

    唯「そぉ?えへへ」

    二人、床についた。向かい合い見つめ合う。

    若「雪は降らずとも、そこそこ冷えてはおる。寒くはないか?」

    唯「そんなに寒くないよ。って…やだ、微妙に離れてってない?」

    若「暑かろうと思うて」

    唯「暑いなんて言ってないぃ。わざとでしょ」

    若「からこうてみた」

    唯「意地悪!はい、戻ってっ」

    若「ハハハ」

    唯「もー、油断も隙もないんだから。ちゃんとくっついててねっ。おやすみたーくん」

    若「おやすみ、唯」

    翌朝。領内の見回りに出ている若君と小平太。

    小平太「今朝も厳しい冷え込みでしたが、漸く暖まって参りましたな」

    若「そうじゃな」

    小「若君様も、お身体を冷やされたりなどなさいませぬ様」

    山に入って行く。川の上流、岩場の多い所に出た。

    若「充分な水量じゃ」

    小「はい」

    水しぶきを上げる程、岩肌を勢いよく流れる川。辺りは、当たるしぶきが凍り、うっすら白くなっている。

    若君 心の声(そうじゃ…!)

    夜になった。寝所で唯が空を見上げている。

    唯「てるてる坊主、逆さに吊るすと雨降るんだっけ。でもまんま雨だと困るしなぁ」

    若君が来た。

    若「唯、中に入れ。冷えてしまう」

    唯「雪、無理っぽいね。ざんねーん」

    若「そのようじゃな」

    褥の中。

    若「クリスマス、にはプレゼント、であったな。あの、中で雪が舞う」

    唯「スノードームだね。ごめんね、なにも用意できなくて」

    若「わしは、唯が笑うてさえいてくれれば良い」

    唯「私もね、こうしてたーくんと一緒に居るだけで超幸せだから」

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん」

    深夜。若君がそっと褥から抜けた。向かったのは、自身の居室の前庭。

    若「上手くいくと良いが」

    手には柄杓。目の前には松などの木々や灯籠。手桶から水を掬い、弧を描くように水を放った。

    若「もっと全体に…」

    何度も、木々に水をかける若君。

    若「ふう…」

    ガサッ、と物音。男が現れた。

    若「何奴じゃ!」

    小「おぬしこそ何奴!…え?若君様ではございませぬか」

    若「小平太か。今宵は警固であったか」

    小「はい。バシャバシャと音が聞こえましたゆえ、馳せ参じました。こんな夜更けに、何をされておるのですか?」

    若「唯を、喜ばせてやりとうての」

    小「は?水かけが、でございますか?」

    若「雪が見たい、と申すのじゃ」

    小「また突拍子もない事を…あ、口が過ぎました」

    若「望みを叶えてやりとうて。こうすれば水が凍り、朝少しは葉が白く化粧しておるかと思い」

    小「此処で、ですか。寝所前ではなく」

    若「音で起こしとうない」

    小「それは…ならば、わたくしがやっておきます」

    若「いや、小平太には関係のない話じゃ」

    小「何回か回る度に、かけておきましょう。若君様、体を冷やしてはなりませぬ。調子を崩されては、奥方様に見せる事も叶わなくなります」

    若「そうか…そうじゃな。済まぬ。では頼む」

    小「早うお戻りください」

    若「忝ない」

    回ってくる度に、庭木に水をまんべんなくかける小平太。

    小平太 心の声(若君は、何事も懸命にされる。特に、唯之助が関わると目の色が変わる程…おなごを好きになるとは、ここまで熱くなれるものなのであろうか)

    クリスマスの朝。早々に起き出し、居室に向かった若君。

    小「いかがでございましょう」

    若「これは…小平太、大儀であった。日が高くなってしもうては間に合わぬ。すぐに唯を呼んで参る」

    寝所に戻り、唯に優しく声をかける。

    若「唯、起きてくれ。プレゼント、がある」

    唯「んっ…ん、おはよたーくん。プレゼント?!え、ないよ?」

    枕元を探る唯。

    若「済まぬ。ここにはないのじゃ」

    唯「そうなんだ。サンタさんは枕元にプレゼント置いてくからてっきり」

    若「一緒に来てくれぬか?時間との勝負での」

    唯「へ?そうなんだ。わかったぁ」

    若君の居室に近付く。前庭が見えてきた。

    唯「え、あっ!」

    松や灯籠が、うっすら粉をふいたように白くなっている。小平太の姿はない。

    唯「すごーい!ここだけホワイトクリスマスだぁ。キレイ…」

    若「わしが作ったのではない。小平太が水をかけ続けてくれた賜物じゃ。小平太、居るか?」

    小「はっ」

    サッと現れた小平太。

    唯「ありがとう~小平太~!夜やってくれたんだよね。ごめんね、冷たかったでしょ」

    小「然程でもなかった。礼は若君様に。わしは、若君様の奥方様への思いに心を打たれたゆえ」

    小 心(若君様の、その優しい眼差しが全てを物語っておる)

    小「では、これにて」

    若「世話をかけた。痛み入る」

    唯「ゆっくり寝てね」

    少しずつ、小さな氷たちがとけて、雫があちらこちらで光を弾いている。縁に腰をかけ、眺める二人。

    唯「小平太が来なかったら、たーくん朝まで水かけてたんじゃない?ダメだよ、無理しちゃ」

    若「唯の喜ぶ顔が見られるなら、屋敷ごとでも撒く」

    唯「優しーい。あ、ますます私からのプレゼントがないのがヤバい…」

    若「プレゼントなら、とうの昔に貰うておるがのう」

    唯「え?あぁ」

    若「触れても良いか?」

    唯「もっちろん」

    少し大きくなっている唯のお腹に、優しく手を添える若君。

    若「あっ、今」

    唯「蹴ったね。パパに朝のごあいさつだね」

    若「そうかそうか」

    唯「デレデレだしぃ」

    庭はすっかり元の姿に。唯の居室まで戻ってきた二人。

    唯「今日がここでしょ、でね、予定日はこの辺りらしいの」

    若「ほぅ。カウントダウン、はクリスマスだけではなかったのだな」

    唯の作ったカレンダーには、出産予定の大まかな日付も入っていた。

    唯「うふふ」

    若「ハハハ」

    二人が眺めるカレンダーを、朝の光が眩しく照らしていました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    Merry Christmas。

    次回は、令和Daysに戻ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days123~21日16時、所以が知りたい

    板が違いますが、てんころりん様、誕生日リスト完成おめでとうございます。唯なみの健脚で駆け抜けましたね!お疲れ様でした。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城の周りで子供達が遊ぶなんて、いい環境。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯達の元に、疾風に乗って若君登場。

    唯「あ、若君お帰りぃ」

    足軽達は、全員一礼している。

    若君「出来上がったのじゃな」

    疾風を近くに繋ぎ、ブランコを見上げる若君。

    若「千吉、伊四郎、悪丸。大儀であった」

    三人「ははっ」

    若「唯、済まんかったの」

    唯「どういたしまして。ねっねっ、乗ってみて」

    ブランコをこぎ出す。

    千吉「あんなに高く上がるのか」

    悪丸「驚いた」

    伊四郎「若君様、さすが乗り方がお上手じゃ」

    ブランコを降りた。

    若「ありがとう、唯」

    唯「付ける場所ね、ここと、若君の部屋の前と、迷ったの」

    若「ほぅ。決め手はなんじゃ?」

    唯「ここなら、みんな遠慮なく使ってくれるじゃない?ほら見て」

    いつの間にか子供達が集まって来ていた。キラキラした目で、なになに?と見ている。

    唯「ふふっ、人気スポット決定だね。若君なら、一人占めじゃなくて絶対こっちって言うと思ったから」

    若「唯。何という…」

    思わず唯を引き寄せ、ギュっと抱き締めた若君。

    唯「えーっ!あの、あの、恥ずかしいよ、みんなが見てる…」

    若「あ?す、済まぬ。思わず」

    パッと離れた二人。微笑ましく見守っていたギャラリー。

    千「若君様、それではまた早々に材料を手に入れまして、若君様の居室前の木の丈夫な枝に取り付け致します」

    若「それは、痛み入る」

    唯「ありがと、千吉さん。伊四郎も悪丸も、ありがとう!」

    若「では、童達に献上しよう」

    全員、そこから離れた。早速子供達がブランコに群がっている。

    唯「かわいいね」

    若「そうじゃな」

    唯が若君に耳打ちした。

    唯の囁き「たーくん、メモ持ってきといたよ」

    若君の囁き「よう気が付いたの。わかった」

    足軽達に向き直る若君。

    若「世話をかけたのう、千吉、伊四郎。で、悪丸」

    悪「はっ」

    若「悪丸には話があるゆえ、しばし付き合え」

    悪「話。心得ました」

    疾風を繋いだ場所まで戻って来た、唯と若君と悪丸。

    唯「はい、メモ」

    若「おぉ。よし」

    メモを開いた。

    ┅┅回想。8月5日14時、リビング┅┅

    午前中に、吉田君が訪れ若君に人生相談した日。昼食後のリビングに、唯と若君と尊。

    唯「ジェンガさあ、永禄のみんなが読めるように、にょんにょん字で作り変える?」

    尊「自分読めるの?そういう話はさ、その字を全部書けたり読めたりできてからしたら?」

    唯「うっ」

    若「尊の申す通りじゃな」

    尊「心掛けはいいと思うけどね。でも作ってて、皆さんの名前、戦国時代っぽくて楽しかったよ。悪丸さんの悪とか」

    唯「え、それって戦国っぽいの?」

    若「この先の世では、使わぬのか?」

    尊「そうですね。どうしても、善の反対、の意味に今ではとりますから」

    唯「どういう事?良い悪いの悪じゃないの?」

    尊「力強いって意味。ですよね、兄さん」

    若「そうじゃ」

    唯「へー。日本に来てから誰かが付けてあげただろうから、強くなれーって願ったのかな」

    尊「悪丸さんって外国の人だよね。僕思ったんだけどさぁ」

    唯「うん」

    尊「もしかして、お国の名前はこうなんじゃないか?ってのが一つ思い浮かぶんだけど。多分だけど、悪丸って名前、本名と読みが似てるんじゃないかな」

    唯「どんなの?」

    尊「聞いたって忘れるでしょ」

    若「わかった。ならば、紙に書き持ち帰ろう」

    唯「ふーん。じゃあ、半紙と筆ペン持ってきてあげる」

    書き始めた若君。

    尊「お国の名前は、〇〇〇〇ではないか」

    若「ふむ。…ないか、と」

    尊「名の綴りは、隣に僕が書きますね。で、意味は〇〇〇」

    唯「〇〇〇なんだぁ、へー。いい名前だね」

    若「よし、書けた」

    尊「持ち帰るのを忘れないようにしないとですね。そうだな、今回も写真集作りますから、最初のページに挟んどきますよ」

    若「済まぬの」

    尊「いえいえ。いつか、答え合わせしたいですね」

    ┅┅回想終わり┅┅

    若「悪丸よ」

    悪「はっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は、令和Daysはお休みして、久々にもしもDaysをお送りします。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days122~21日15時、セット完了です

    いい仕事、します。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    厩の隅にやって来た唯と千吉。板と縄が置いてある。

    唯「あっ、なかなかいいねぇ」

    千吉「そうじゃろう」

    唯「でね、これをこうしたいの」

    土の上に、絵を描いて説明する。

    千「ほぅ、これは変わった代物じゃな」

    唯「ここに乗ってね、ぶらーんぶらーんなの。若君お気に入りなんだよ」

    千「回られた先でお乗りになったと」

    唯「そっ」

    千「で、どこに付ける?」

    唯「表門出たちょっと先に、大きい木あるじゃない?あの枝になら、ボキッとはいかないかなって」

    千「あー、あれな。よう童が登っておる」

    唯「それも踏まえてね」

    千「踏まえて?そうなのか。でな、人手が要ると思い、呼んでおいた。おーい、出番だぞー」

    ワラワラと集まって来た。

    唯「あ、伊四郎さん、悪丸!」

    伊四郎「おー、唯之…いや、奥方様」

    悪丸「久々じゃ。えーと、奥方様」

    唯「なーにー、二人して呼び方があやしい」

    千「人足が少なかったかのう」

    唯「全然!なんなら私、木に登るし」

    千&伊&悪「それはならぬ」

    唯「うわっ。はぁい、おとなしくしてます…」

    千「では、一仕事するか」

    唯「ごめん、ちょっと取ってきたい物あるから、先行ってて。あとさ、若君はまた見回り中?」

    伊「先程、出て行かれたぞ」

    悪「小平太殿と」

    唯「小平太かぁ、あいつちょいちょい邪魔なんだよなぁ」

    千「おいおい」

    唯「失礼しました。じゃあ、すぐ行くから!」

    千「わかった」

    自分の部屋に戻った唯。

    唯「えっと、箱はここに置いといて、で、例のメモは…と」

    ゴソゴソ探す。今回持ち帰った写真集を出した。

    唯「最初のページにはさんどいたから…あったあった」

    メモを取り出して懐に仕舞い、部屋を出た。

    唯「そうそう、まず板に穴開けて、で縄通してギューっと縛りつけてね」

    門の近く、森を少し入った奥で作業する四人。

    伊「よし、固い。こんなもんじゃろ」

    千「そうそう取れぬぞ」

    伊四郎と悪丸が枝に登った。いよいよブランコを取り付ける。

    千「男二人乗ってもビクともせぬ。いい木を見つけたのう」

    唯「でしょ~」

    千「若君様は、気の利く奥方様を迎えられた」

    唯「やーん、嬉しいコト言ってくれるぅ」

    千「ただし、木登りは他に任せるようにな」

    唯「はーい」

    かなり頑丈に、太い枝に結び付けられた。

    唯「ん、大丈夫そう…だね。わぁ、やったー」

    ブランコ、完成。

    千「良かったのう」

    悪「奇妙な品じゃ」

    伊「乗る、物か?」

    唯「うー、ありがとねっ。じゃあ早速、千吉さん乗ってみて」

    千「え!それはならぬ、若君様のお帰りを待とう」

    唯「えー、だって若君が座ってさ、すぐブチッ、ドシンと尻もちとかついたらどうすんの」

    千「それもそうじゃな」

    伊「この中で、一番体が重そうな奴が乗りゃいいだろ」

    千「…わしか。承知致した」

    恐る恐るブランコに腰掛ける千吉。

    唯「大丈夫…かな。千吉さん、両手でしっかり縄つかんで」

    千「うむ」

    唯「行くよぉ、それー」

    背中を押す唯。ぶらーんぶらーんと前後に揺れる。

    千「ややっ!おーっ、何やら、楽しいぞ」

    唯「でしょ。試運転、大成功~」

    若君と小平太が、見回りから戻って来た。

    小平太「何やら賑やかでございますな」

    若君「そうじゃの。ん?唯か?」

    道から少し入った所に、唯達の姿が見えた。

    若「先に戻っておれ。様子を見て参る」

    小「承知致しました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    メモって何?は、次回。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    てんころりん様

    私何かやらかしたかしらと、ちょっと身構えてしまいました(;^_^A

    説明もなく話を進めているので、分かりにくい部分が多々あると思います。他の、お読みいただいている皆様もそうですよね。迷わせてしまいすみません(>_<)

    題名に永禄の日付を表示するパターンも考えていたので、一応満月がいつかは調べました。でも閏月もある時代だし、合っているのかは…どうでしょう。あえて当てはめるならという程度に捉えております。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days121~21日水曜14時30分、秘めておきます

    武家の出身だから、きっと口は堅い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    吉乃の居室に現れた唯。

    吉乃「これで、良かったのかえ?」

    唯「わぁー、ありがとう!やっぱおふくろさまに頼んで正解だったぁ」

    手には、使い古しではあるが大きな紙。

    唯「私が小平太パパに言っても、何に使うんだ、あーだこーだで絶対すんなりもらえなかったと思ったから。もー、おふくろさまがちょうだいって言えば、すぐこのとおり」

    吉「出来た千羽鶴を入れると聞いたゆえ、これがどうしても要ると頼みました。新しい物をねだらぬ心掛けがよろしい。されど、三枚とは何ゆえ?」

    唯「一枚は、鶴入れる箱にします」

    パタパタ箱を折り始める。すぐ出来上がった。

    吉「ほぅ…手際が良い」

    唯「へへっ、でね、あと二枚は」

    外から、元気な声がやって来た。

    孫四郎「かかさまぁ~!」

    三之助「あっ、唯之助が居る!」

    唯「あ、ちょうどいい時に帰ってきたね。少々お待ちを…えーっと」

    さっきとは、折り方が違う。

    唯「でーきたっ」

    三「あっ、兜じゃ!兜が紙でできておる!」

    吉「なんと、これはまた…見事じゃ」

    孫「欲しい、欲しい!」

    三「わしも欲しい!」

    唯「ケンカはダメだよ、もう一個すぐ作るからさ、待ってて」

    兜が二つ完成。

    孫「わぁ!」

    三「わー、兜じゃあ!」

    大はしゃぎの二人。すぐ被り、また外へ出ていった。静寂が戻る。

    吉「どなたかに、教わったのかい?」

    唯「はい、小さい頃、お母さんに。…あっ」

    吉「ふふふ、そう。お国の母上に」

    唯「あ、箱は、お父さんが教えてくれました」

    吉「お父上が。…隠れ屋で?」

    唯「えっ」

    吉「若君様が、隠れ屋との行き帰りで随分と日に焼けておられました」

    唯「あぁ…この前、鶴折ってた時に聞いたんですか?」

    吉「えぇ」

    唯「あの、ごめんなさい、詳しい事は話せないんです」

    吉「良い。若君様のお話と、今日の唯を見て、ようわかりました」

    唯「なにが、ですか?」

    吉「隠れ屋には、唯のまことの父上母上が居られるのでは?」

    唯「…はい、そうです。一つ下の弟も居ます」

    吉「弟君が!それは心強い」

    唯「はい!若君が矢傷を負い、吉田城から逃がした時も、手助けしてくれました」

    吉「それはそれは。その地で、粒の揃った米を買うたと聞きましたが」

    唯「そうです。自分で買いました。あ、でも元々は親にもらったおこづかいだからなぁ」

    吉「あの時は、盗んだと思うてしまい、済まなんだの」

    唯「いえ、当然そう思いますよね」

    吉「唯は、わからない事ばかりでしたが…その地では、何不自由なく暮らしておったのであろう?」

    唯「まあ、そうですね。でも若君はここにしか居ないし」

    吉「その暮らしを捨て、梅谷村でひもじい思いをしながら若君を追いかけたと」

    唯「はい。いろいろありましたけど、私、今すっごく幸せですから」

    吉「それは、何より」

    唯「若君は、きちんと両親に結婚の許しをもらってます。で、唯を幸せにしてやってください、と言って送り出してくれました」

    吉乃が涙ぐんでいる。

    唯「おふくろさま…」

    吉「ご両親の心中、お察しするに余りあります」

    唯「あの…この事は…」

    吉「誰にも申しませぬ」

    唯「小平太パパにも?」

    吉「勿論。若君様もこれまで隠し通しておられたし、また隠れ屋に参る折に、差し障りがあってはなりませぬゆえ」

    唯「ありがとうございます、おふくろさま。あのっ、私にとって、おふくろさまはおふくろさまだけですから!」

    吉「えぇ。これからも宜しゅう頼みますよ」

    三之助達が戻って来た。

    三「ほら、あそこに。唯之助ぇ」

    唯「なぁに?」

    千吉「おぉ、奥方様、ここに居られたか」

    唯「あ、千吉さんだ。え、奥方?」

    思わず吉乃を見る唯。吉乃はにこやかに首を振っている。

    唯「え、私?!唯之助じゃないの?」

    千「大切な足軽仲間であったのは間違いないが、最早、そうは見えぬからのう」

    唯「そうなんだー。びっくりしたぁ」

    千「若君ご所望の品、揃ったが、どうすれば良いのじゃ?」

    唯「ホント?!ありがとう~。あ、おふくろさま、用ができたので、行きます」

    吉「わかりました。唯はまこと、若君様の為に人一倍動くのう」

    唯「えへ。痛み入ります。じゃっ」

    ペコっと頭を下げると、箱を手に取り、千吉と共にその場を去った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    日付のご説明

    妖怪千年おばば様、てんころりん様、私の拙い作品の感想をいつもありがとうございます。

    令和Daysで唯と若君が令和に飛んだ日付は、永禄4年7月26日です。

    で、令和元年7月17日に到着。令和元年8月15日に帰っていきますが、尊が3分後に設定したため、

    また永禄4年7月26日に到着しています。

    この後お送りする、令和元年8月21日のお話は、永禄では4年8月1日となります。

    永禄に戻った後のお話に入った時、日付表示も永禄仕様に変えようかなとは思ったんですが、時系列が分かりにくくなるし、速川家もちょくちょく出るし、とそのままにしました。

    速川家の五人は、同じ時間を過ごしている。だからこその、二元中継としました。

    いつまで続くんだよ、のご説明も。令和Days110で尊が「一週間後に出してみるね」と言っているので、それを見届けます。これは令和元年8月16日のお話なので、一週間後の23日のお話までの予定です。

    伏線的なモノの処理など、ちゃんとまとめて終われるかが心配でございます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days120~20日6時30分、喜びに胸を開け

    おーおぞーら、仰げ~。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄。中庭に唯と若君とじい。唯がプレイヤーをじいにわからないよう、そっと再生する。

    唯「はい、そろそろだよ~」

    じい「何じゃ、今日はむじなが音頭をとるのか?」

    唯「そうだよ。はい、シャンと立って!」

    ┅┅┅

    令和。そろそろテレビも体操が始まる。

    覚「よし、じゃあ五人一緒だと思って」

    尊「向こうはもっと大勢かもね」

    美香子「そうかもね。張り切って行こう!」

    ┅┅┅

    二元中継スタート。

    唯「いっちにー、さんし!」

    美「ふんふんふ、ふん、ふん」

    覚「タンタンタ、タンタンタ」

    若君「五、六、七、八」

    唯「じい、もっと腕挙げて!」

    じ「これ以上、挙がらぬのじゃあ」

    若「唯。熱が入るのはわかるがのう」

    覚「ヤバい、腕、挙がりにくいかも」

    美「やめて~、聞きたくない」

    若「無理はさせぬように」

    尊「兄さんが、無理はしないでって言ってるよ。きっと」

    美「うん、聞こえる気がする」

    覚「わかった、気を付けるよ」

    唯「筋肉は、裏切らない!」

    若「その言葉、何処ぞで聞いた覚えがあるような?」

    尊「体育会系のお姉ちゃんが指導すると、受ける側は大変そう。ラジオ体操じゃなくて違う体操になるんじゃない?」

    覚「戦国時代の方々は、相当鍛えてそうだけどな。と言っても、忠清くんはムキムキではなかったが」

    美「しなやかで、綺麗な体だったわよね~」

    尊「武士を褒めてるとは思えない言い方だけど、認めます」

    唯「ほら、若君をよく見て。しなやかで、動きがキレイでしょ?」

    じ「わしも、若い頃はなあ」

    唯「今を生きて」

    じ「はぃ…」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅

    二元中継、終わり。令和。

    尊「気のせいだと思うんだけど、隣に居るみたいに感じたよ」

    美「うん。なんかとっても清々しいし」

    覚「また、降臨したら、教えてくれ」

    尊「一心同体だしね」

    三人「ハハハ~」

    ┅┅┅

    永禄。

    唯「すんません、運動系はつい、熱くなっちゃって」

    じ「ふう。くたびれたわい。では」

    唯「え、もう行くの?疲れてるでしょ」

    じ「厠がわしを呼んでおるのじゃあ」

    唯「あぁそう。やっぱジジイだわ」

    若「これ、唯」

    じいは、そそくさと行ってしまった。

    唯「なんだったの?体操だけやりたかったの?」

    若「隠居の身ゆえ、何でも目新しい事はやってみたいのじゃろ。まぁ、付き合おうと思うておる」

    唯「優しいねぇ。で、やりながら思い出したんだけど」

    若「ん?」

    唯「テレビ版に、座ったままやる体操があった。じいにはそっちの方がいいよね」

    若「そういえば、あったのう。されど、撮った物を見せる訳にはゆかぬ」

    唯「そりゃ、たーくんが完コピするっきゃないでしょ」

    若「かん…?」

    唯「完璧に覚えて、再現してあげるの」

    若「そうか、わかった」

    唯「え、わかった、なの?!私も手伝うよ」

    若「早速、今宵観るとしよう」

    唯「今晩観るなら、明日はこんなに早く起きらんないよ、たぶん」

    若「毎朝とは申さぬゆえ、時々は共に頼む」

    唯「はぁい。あ、ゆうべさぁ、ここに居ない時あったでしょ?」

    若「よう気付いたの。源三郎と話しておった」

    唯「手を伸ばしても居なくって、ちょっと淋しかった」

    若「眠る唯には何も出来ぬからの」

    唯「起きてたら何かするんだ?」

    若「そうじゃ」

    唯「うわっ、肉食系」

    若「ん?それは…あの、Tシャツに書かれておった文字か?」

    唯「あっ、わかっちゃった?意味を教えてあげよう。一言で言うと、たーくんみたいなエロ侍~」

    若「…」

    唯「ん?どした?」

    若「お父さんお母さんに、わしはそう思われておったのであろうか」

    唯「え、だから着なさいって?まさかぁ、ないなーい。あれ元々、ウケ狙いで私が尊にあげたTシャツだから。たまたまあったからじゃない?」

    若「そうかのう」

    唯「でもー、最初着せた時は全く思ってなかったと思うけど、帰る頃には納得だったんじゃなぁい?ふっふっふ」

    若「ふむ」

    唯「あれ?すんなり受け入れた?」

    若「では此の先も、その様に」

    唯「なんか、うまいコト威厳で通された気が。…あーっ」

    若「お?ハハッ、腹の雀が餌をねだってさえずっておるのう」

    唯の腹が、キュルル~と鳴いている。

    唯「やだっ、も~」

    若「ハッハッハ~」

    庭や腹の、鳥のさえずりに負けない程、高らかに笑った若君でした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    20日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days119~20日火曜6時、希望の朝だ

    朝から皆元気。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    書き物をしている若君。鳥のさえずりに耳を傾けていた。

    若君 心の声(今日も、穏やかに朝を迎えた。有り難い)

    書き終えた物を仕舞う。

    若 心(そうじゃ)

    立ち上がり、居室を出る。向かったのは唯の寝所。

    若 心(まだ寝ておるであろう。起こさずに取り出せるかのう)

    寝所の襖が開いている。

    若 心(ん?起きておるのか?)

    中の様子を窺おうと覗き込んだ瞬間、

    唯「キャッ!ぁ痛っ」

    若君「なんと」

    唯が急に飛び出し、若君に激突。よろけた唯の腕を、咄嗟に掴んだ若君。

    若「唯!大事ないか?」

    唯「ご、ごめーん、ありがとう。ていうか、おはようたーくん」

    若「起きておったのだな」

    唯「うん、パチッと目が覚めたから」

    若「珍しい。まぁ昨夜あれだけ早う眠れば、そうであろうが」

    唯「でね、朝早くなら、たーくんまだ部屋に居るかなーと思って」

    若「で、走る気満々であったと」

    相変わらず、着物の両裾をめくり上げ帯に挟み、脚が丸見えになっている。

    唯「え!走るなんてぇ、オホホ」

    若「ではそのなりは何じゃ」

    唯「ス、スキップかな~」

    その場でやって見せる唯。

    唯「ラジオ体操にも、似たような動きあるじゃん?へへっ」

    若「おぉ、体操。そう、わしはその音の出る小さき物を取りに来たのじゃ」

    唯「ラジオを録音したヤツ?」

    若「それじゃ。今日は久々に、音と拍子を確かめながら体操しようと思うたゆえ」

    唯「ふーん。どうぞ~」

    プレイヤーを取り出し、音を確認する若君。

    若「ふむ。良い、良い」

    唯「その顔、まさかラジオ体操聴いてるなんて今でも思えないし」

    その時、外で声がした。

    じい「若君は、居られるかぁ~」

    唯「うわっ、出た!やっぱジジイは早起きだよ」

    若「ハハハ」

    若君は、プレイヤーとイヤホンを唯に渡した。

    若「唯が聴いて、拍子を教えてくれ。わしが着けていると目立つゆえ」

    唯「え、いいけど、じいは?」

    若「どうせ共にやると言って聞かぬ」

    唯「えぇ!もう一緒に体操したの?ははーん、さては、朝からブラブラしてるじいに捕まったね?」

    中庭に、じい登場。

    じ「おっ、やはり此方に居られましたなぁ。若君、今日も体操、体操を」

    唯から離れ、若君はじいに近付きながら話しかける。

    若「もう、具合は良いのか」

    じ「ご案じ召さるな。なんの、これしき」

    若「一昨日は、腰から妙な音がしたと、もがいておったではないか」

    唯「うわぁ、何が起こったか超わかる」

    じ「このように、ピンピンじゃあ。ハッハッハァ~」

    若「無理をしてはならぬぞ」

    ┅┅┅

    さて、その頃、令和の速川家。リビングに尊が下りてきた。

    美香子「あら、早いわね。どしたの」

    尊「なんとなく予感がして、目が覚めたんだ」

    覚「予感?」

    尊「今日の体操、お姉ちゃんや兄さんと、一緒にできるような気がして」

    美「あらそう。忠清くんは出来る時は毎朝ちゃんとやってるだろうけど、唯も起きてると踏んだ訳ね」

    尊「うん」

    覚「今朝は永禄と令和の二元中継でーす、ってか?」

    尊「ありえないよね」

    覚「いや、その予感、案外当たってるぞ」

    尊「なんでそう思えるの?」

    覚「だって三人は、三位一体なんだろ?」

    尊「あ。うん、そう!」

    美「そうだったわね。じゃあ、そろそろテレビの前に集合~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、二元中継。

    続きます。

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    返信先: 連絡掲示板
    なるほど

    わかりました。確かに今は、機能していない模様です。
    ありがとうございました。

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    返信先: 連絡掲示板
    今さらのお話とは思いますが

    各掲示板の右上の欄ですが、

    「購読」は、ポチっとするとその板に投稿があった時にメールが届くとの事。

    「お気に入り」には、どのような機能があるのでしょうか?ポチっとしてみましたが変化がなく。ご説明されている所が見つけられず、すみません。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days118~19日20時、月に酔う

    あと一歩、のアドバイス。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、自室前の縁に座り、酒を飲みながら月を眺めている。

    源三郎「若君様」

    若君「お、源三郎。今、帰りか」

    源「はい。お姿をお見かけしましたので、取り急ぎ伺いました」

    若「日が決まったか?」

    源「はい。三日後、は如何でしょうか」

    若「良かろう。ではトヨ共々、よろしく頼む」

    源「心得ました。今宵はこちらにおいでとは思わず。明日早朝に伺うつもりでおりました」

    若「唯なら、もう寝ておる」

    源「え!」

    若「え、よのう。ハハハ。時折、驚く程早く、すとんと眠ってしまうのじゃ。相手にされなんだゆえ、久々に酒を嗜んでおる」

    源「そう…でございましたか」

    若「おぬし、急ぎ帰る用はあるか?」

    源「いえ、ございませぬ」

    若「ならば、しばしわしに付き合え」

    源「は、はっ」

    盃に酒を注ぐ若君。

    源三郎 心の声(盃が二つある…誰かを待っていたのではないんだろうか)

    源「頂戴します」

    若「うむ」

    虫の声は控え目だ。二人の声だけが響く。

    若「わしにはの、師匠が居る」

    源「お師匠、ですか」

    若「料理を教わった」

    源「そうですか。料理をなさるとは初耳でしたので、驚きました」

    若「その師匠に、料理の他に教わった事があっての」

    源「はい」

    若「好きなおなごには、はっきりと好きと伝えねばならぬ」

    源「えっ」

    若「それとなくでは通じぬ。言わなくてもわかるなど、ないと」

    源「あっ、あの…何故そのような話をわたくしになさるのですか」

    若「声がうわずっておるぞ」

    源「あの、トヨ、でしたら、幼き頃より仲良うはしておりましたが」

    若「誰が相手でも良いがの。師匠の言葉、わしは胸にしみたゆえ、話した」

    源「は、はい」

    再び、酒が注がれた。

    若「唯とは、幾度も離ればなれになっておる」

    源「確かに…見かけない時期はありました」

    若「その折々で、別れは致し方なかったのじゃが、身が千切れる思いであった」

    源「そのようにお辛かったとは、全く存じ上げませんでした」

    若「互いに大切に思うておっても、離れねばならぬ時もあった」

    源「小垣で密かに逃がした時…ですね」

    若「そうじゃ。だが、もう二度と離しはせぬと心に誓った」

    源「そうですか…若君様が、このような話をなさるとは、少々驚いております」

    若「小平太よりは、通じると思うての」

    源「え、それは…どうお答えすれば良いのか」

    若「ハハハ…で、源三郎」

    源「はっ」

    若「好きなおなごが、自分の存念を伝えられないまま離れていったら、どうする」

    源「…」

    若「相手に、いつの間にやら縁談が持ち上がるやも知れぬぞ」

    源「え!そんな話、来てるんですか?!」

    若「誰の事かのう」

    源「うっ…若君様、お戯れが過ぎませぬか?」

    若「フフッ、酔うたかのう。酒の仕業か、月の仕業か」

    月を見上げる若君。

    若「さる者の言い伝えらしいのじゃが」

    源「はい」

    若「そなたを愛しておる、と、とても面と向かい口に出来ぬのならば」

    源「ならば!」

    若「身を乗り出したな?そこは、月が綺麗じゃな、と申せと」

    源「月が綺麗だね…」

    若「どう返されると良いかは、わからぬが。どれだけ近しいかにもよるやもしれぬ」

    源「わかりました」

    若「ご武運を、祈る」

    源「は、はあ」

    若「今宵は此処までにするかのう」

    源「お休みになられますか」

    若「唯の元へ参る。寝顔が見とうなった」

    源「ハハ。そうですか」

    若「そうじゃ、源三郎からトヨに伝えて欲しい話があるのじゃが、頼めるか?」

    源「それは、何なりとお申し付けください」

    若「うむ」

    若君が、耳打ちする。源三郎は最初かなり驚きながら聞いていたが、

    源「承知致しました。あと、これからは気に留め、よう見ておきます」

    若「頼んだぞ」

    源「はい。では、これにて」

    若「おやすみなさい」

    源「え?!お、おやすみなさいませ」

    立ち上がり、その場を去る源三郎。

    源 心(ふぅ。今日は驚きの連続だった。しかし、待たれていたのは…俺だったんだな。ハッパかけられたかー)

    見上げた月が、明るく輝いていた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    19日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days117~19日16時、聞こえないフリ

    エプロンも持ち帰れば良かったね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    源三郎とトヨが、屋敷内を連れ立って歩いている。

    トヨ「ねえ」

    源三郎「何だ」

    ト「何しでかしたのよ」

    源「俺達二人だったら、お前の方が怪しいだろ」

    ト「じゃあ何で、源ちゃんも呼ばれたの?」

    源「わからん。若君様が、伴って参れと」

    ト「二度と密会禁止?」

    源「密会…間者と思われたか?うーん」

    ト「それか、いよいよお前達、共に歩めとか?キャー!」

    源「静かに!もう着くぞ」

    ト「反応してくれてもいいのにさ」

    源「行くぞ」

    ト「はい」

    深呼吸する源トヨ。若君の居室の前に座り、声をかけた。

    源「若君様、トヨを連れて参りました」

    若君「入れ」

    源「はっ」

    中には、若君と唯。唯が、トヨに小さく手を振る。

    トヨ 心の声(なんて、のんきな…それどころじゃないですって!)

    若「よう来てくれた、トヨ」

    ト「直々にお目にかかるのは、お初にございます」

    下げた頭が上がらない。

    若「面を上げよ。実は、折り入ってトヨ殿に頼みがあってのう」

    源「トヨに?」

    慌てて顔を上げるトヨ。

    ト「私めに、でございますか?」

    若「実は、料理がしとうての」

    源&ト「えっ!」

    ト「し、しかし、若君様に、台所に入って頂く訳にはゆきませぬ」

    若「わかっておる。わしの望みだけ今から申すゆえ、出来そうなものか教えて欲しい」

    ト「は、はい」

    若「火を使いたいが、竈は台所にしかない。火鉢では心許ないゆえ、囲炉裏を使おうと思うておる」

    ト「客間にある囲炉裏でございますか」

    若「そうじゃ。幸い、しばらく客人はない。ここぞという日に、わしが夕刻から他で使わぬようにしておく」

    ト「日が決まれば、火は起こしておきます」

    若「次に。これだけの材料や鍋などは、揃うか?」

    食材等が書いてあると思われる紙を出す若君。

    唯 心の声(うわっ、また読めないっ)

    渡されたトヨが目を通す。

    ト「はい、これだけで宜しければ、明日にでも支度できます」

    若「そうか。最後、これが一番肝心なのじゃが、源三郎」

    源「はっ」

    若「この日は、二人で参れ。よっておぬしらが時間を取れる日が、決行日じゃ」

    源「トヨと、でございますか。手伝いが要るのですね」

    若「それもあるが、味見をして欲しくての」

    ト「若君様のお作りになるお料理をですか?!」

    若「上手く出来たならば、今後城の皆に振る舞いとうての。毒味まではいかぬと思うが」

    源「えっ、ではその日集うのは…」

    唯「四人だけだよ。ダブルデート!…あっ、ごめん。違う言い方だと…ん?」

    源トヨ、顔がみるみる真っ赤になる。

    唯「意味わかったっぽいな」

    若「出来る日が分かり次第、教えてくれぬか?」

    源&ト「承知致しました」

    唯「よろしく~」

    部屋を後にした源トヨ。

    ト「なんか、色々びっくりしたと言うか発見したと言うか」

    源「俺は、気が気でなかった」

    ト「若君が料理をなさるなんて」

    源「長く仕えているが、初耳で。しかし何で俺とトヨなんだ?どうしよう、味見など緊張で出来そうにない」

    ト「また正直に答えないと、若君様に悪いもんねぇ。あーそれにしても!見た?奥方様を見ていた時の若君様のお顔!」

    源「見た。愛しくて仕方がないご様子だった」

    ト「ホント深~く愛していらっしゃるのね。あー羨ましい」

    源「は?」

    ト「聞こえなかった?あー、羨ましいっ!」

    源「声がデカい!静かに歩け」

    ト「つれないわねぇ」

    源「日付を、一刻も早くお伝えしないと」

    ト「台所でこっそり仕込みができそうな日がいいわよね。すぐ確認する。どうやって伝えよう…いつもの裏門の横の木に、紙に書いて小さく畳んで縛っておこうか?」

    源「そうだな。頼んだぞ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days116~19日9時30分、待て!

    駆け引きも、上手くなっている。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の居室に到着した唯。

    唯「たーくん!お待たせぇ」

    若君「唯」

    唯「あっ、ごめん。まだ早かった?」

    若「いや。もう終わる」

    書き物を終え、片付けた。

    唯「出来た鶴、入れ物作んないとね。新聞紙はないしー」

    若「大きい紙なら、使い古しがあると思うがのう。触書など」

    唯「触書…おたずね者とか?」

    若「手配書か。それもある」

    唯「思い出したっ。あの似顔絵描いたヤツ、許さん」

    若「唯之助の手配書か」

    唯「実物はこーんなにかわゆいのにさっ」

    若「愛らしゅう描いてあれば、すぐに捕らえられておったであろう?似ておらぬのが幸いであった」

    唯「それって、褒めてくれてるの?」

    若「褒めるも何も、そうじゃろ」

    唯「やーん!嬉しいっ」

    後ろから、ムギュ~。

    若「うっ、ゴホッ、…技をかけるでない」

    唯「ごめぇん」

    腕は緩めたが、抱きついたまま話をしている。

    唯「千羽鶴作り、みんなを巻き込む?」

    若「志に応えて貰えるならば」

    唯「誰も戦はしたくないよ」

    若「だと良いがの」

    唯「緑合には、居ない」

    若「そうじゃな。兄上には、阿湖姫と共に来られよと声はかけた」

    唯「じいなんかはさぁ、めっちゃ食い付いて来るだろうけど、老眼で無理だろねー」

    若「小平太や源三郎は、家臣として無理をして折りそうじゃしのう」

    唯「仕事だと思われなければいいんじゃない?例えばさぁ、源三郎ならトヨと一緒に来てもらうとか」

    若「トヨ?源三郎にそのような仲睦まじいおなごが居るのか?!」

    唯「えっ、知らないの?」

    若「知らなんだ。何処の姫君じゃ?」

    唯「えー、城の中に居るよぉ、女中だもん。今朝は、私の部屋掃除してたよ」

    若「ほぅ…それはまた」

    唯「もともと幼なじみらしいよ。たまたま職場が一緒、的な?よく裏門出た先の草むらで、話してるよ」

    若「それで合点がいった。一昨日、兄上を訪ねたところ不在だったのじゃが、何故か兄上が城外に出られたのを源三郎は知っておった」

    唯「でね、あの二人、なんでか知らないけど、しゃべり方が現代風なの」

    若「ほぅ。くだけた物言いだと。それだけ、心を許しておるという事か」

    唯「そうかもだけど、永禄のみんなに話が聞こえても、全部は意味わかんないだろお前たち、かもよ」

    若「カムフラージュ、か」

    唯「わっ、よく覚えたね」

    若「いずれは…と考えておるのであろうか」

    唯「さあ。でもさ、源三郎に縁談は、かわいそうだから止めてね」

    若「わかった」

    唯「トヨとはね、仲いいんだ。ちょっと言い方はキツいけど、しっかりしてるし、人の悪口も言わないし」

    若「信用できる人物じゃの」

    唯「天野から来た女中さん達は、みんな優しいよ」

    若「そうか。それはきっと、唯が捕らえられた母親を身を挺して助けたのを、間近で見ておったからであろう」

    唯「あーそっか。そうかもね。トヨはね、女中頭やってるんだよ」

    若「頭なのか」

    唯「うん。天野の家でも女中頭だった。きっと良く働くから出世して、ここでも頭になったんじゃないかな」

    若君が考え込んでいる。唯は手を離し、横に座った。

    若「頭ならば、屋敷や台所をある程度自由に使えそうじゃの…」

    唯「台所?ご飯作って欲しいの?」

    若「いや、実は考えておった件が有り」

    唯「ふぅん?」

    若「尋ねてみる。では唯」

    唯「はぁい」

    若「遠乗りへ、参ろう」

    唯「やったー」

    唯が、少し近付いた。

    唯「ねぇねぇ、ここ、公共の場じゃない」

    若「わかっておる」

    唯「で?」

    若「したら最後、歯止めが利かぬぞ」

    唯「は?」

    若「遠乗りへは参らず、襖障子を全て閉め」

    唯「うわぁ…エロ侍」

    若「何とでも申すが良い」

    唯「わかったぁ」

    若「ん?」

    唯「このまま出かけまーす。寸止め状態、がんばってねっ」

    若「それは、喜ぶべきか悲しむべきか」

    唯「たーくんを泳がせて、楽しむのじゃあ」

    若「なんと罪作りな」

    唯「へへーん」

    鼻を広げて得意気な唯。

    若「ハッハッハ、唯が一枚上手であったの。御見それ致した。では出掛けよう」

    唯「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 連絡掲示板
    マスターお疲れ様でした

    驚異の復旧速度に脱帽です。ご尽力いただきありがとうございました。

    何が起こったかわからず、戸惑われた方も多かったと思いますが、これで一安心(#^.^#)またコツコツ投稿させていただきます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days115~19日月曜9時、じゃれ合います

    オロオロする男子達を想像しましょう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯が若君の居室に向かっていると、成之にバッタリ出くわした。

    唯「あ、兄上さんだ。おはよっ」

    成之「おぉ、唯…殿」

    唯「あれっ、唯之助じゃないんだ?」

    成「阿湖に咎められての。もう足軽小僧ではないのだからと」

    唯「へー」

    成「丁度良い。そなたに話がある」

    唯「私に?いいよ、ちょっとなら。なに?」

    成「唯殿…おぬし、阿湖に何を吹き込んだ」

    唯「なにその、持ち上げといて落とす的な言い方~」

    成「阿湖が…阿湖が昨晩…」

    唯「あ?さては、かわいく名前を呼ばれた?」

    成「うっ」

    唯「へー、ほー、フフン」

    成「また鼻を広げて」

    唯「ん?」

    成「おぬし、ようそうなっておるが。気付いておらぬのか?」

    唯「そうなの?!よく見てるねー。はっ!若君の前でも出ちゃってるかも?!いやーん」

    成「話を逸らしてしもうたな」

    唯「じゃあ戻す。で、かーわいかったでしょ?阿湖。ぐっふっふ」

    成「なっ」

    唯「ういヤツよのぅって?いや~ん、このこのー」

    成之にツンツン攻撃でからかう唯。

    成「や、止めよ」

    唯「いーなー。阿湖はかわいいから、なんでもハマってうらやましい」

    成「おぬしが謀ったのは、ようわかった」

    唯「ますます、阿湖を好きになったでしょ?」

    成「あ、あぁ」

    唯「よろしい!」

    成「してやられたのう」

    唯「なに言ってんの、このくらい大した事ないでしょ?なあさまの、数々の悪行に比べればぁ」

    成「うっ!そ、それは…済まぬ」

    唯「いーよ。じゃっ、たーくん待ってるんで!さらばじゃ~」

    成「た、たー?」

    成之が呼び止める間もなく、走り去った唯。この様子を、少し離れた所で見ていた小平太。

    小平太 心の声(あの二人、あんなに仲が良かったか?唯之助は、わからぬ)

    その頃、唯の居室。掃除をしている女中のトヨが、不審な動きをしている。

    トヨ「なんで、なんで?」

    背後から、男が近付いて来た。

    男「何をしておる」

    ト「ヒイッ!怪しい者ではございませぬ…って、もう何!源ちゃんじゃない!肝を潰したわ~」

    立っていたのは、源三郎。

    源三郎「この時間、ここに来れば会えると思って来てみたら…床を見ながら何ブツブツ言ってたんだ?」

    ト「怪奇現象が起きてるのよ」

    源「は?」

    ト「奥方様の部屋、やたらと周りに蚊が落ちてるの」

    源「へえ」

    ト「あたしはね、最近お目見えした、あの香炉が怪しいと思ってるんだ」

    源「若君様が、良い香でも手に入れられたんじゃないか?」

    ト「匂いがちょっと変わった感じだし」

    源「蚊除けの香なら、奥方様を思っての事だろ。もっとも、若君様はほぼ毎日こちらでお休みになられるが」

    ト「毎晩愛する方と…いいわねぇ」

    源「もう掃除は終わったか?」

    ト「あっさり流したわね」

    源「少しなら時間がある。外を歩かないか?と言っても、森や林ばかりだが」

    ト「え、いいの?」

    源「それこそ、蚊に刺されるかもだがな」

    ト「え!森の中だから?!いよいよ、初キ…」

    源「な、何を呆けておる。あまりおかしな事を言うと、連れて行かんぞ」

    ト「すぐ、すぐ片付けるから!」

    源「少しの時間、と言っているのに」

    ト「え、じゃあ時間があれば…」

    源「だーかーらー!」

    言いながら、真っ赤になっている源三郎。

    源「時間は刻々と経ってるぞ」

    ト「しばしお待ちを~」

    ササッと片付けが終わり、出て行った源トヨ。ようやく静かになった所へ、また小平太登場。

    小平太「行く先々で、何なんだ。今日はこういう日なのか?」

    空を見上げる。

    小 心(平和な証ではあるがのう…なんじゃこの、ひたひたと襲う虚無感は)

    小「稽古でもするか」

    そうつぶやいて、その場を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    小平太に幸あれ。令和Daysではそう願うだけですが。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days114~18日日曜15時、怒らないでください

    タイミングを見計らっていた模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の居室に、唯と三之助と孫四郎と吉乃が来ている。

    若君「折り目をしかとつけると、形が決まるのじゃ」

    三之助&孫四郎「はいっ」

    近くに、ジェンガが置きっぱなしになっている。

    吉乃「若君様は、まことに手ほどきが上手くあらせられますな」

    唯「うん。すっごく丁寧。出来上がりもキレイだし」

    吉「唯も、先程見事に折りあげておったではないか」

    唯「年季が違うもん」

    吉「年季。唯からそのような言葉を聞くとは。ふふふ」

    ジェンガ目当てに訪れたが、若君に折り紙を出され、すっかり折り鶴に夢中になっている三之助と孫四郎。

    孫「うんしょ…うんしょ」

    若「孫四郎にはまだ難しかったかの。ゆるりといたせ」

    机に二人並び、懸命に折り進めている。若君が前に座り、優しく教えながら様子を見守る。

    三「出来ましたぁ。若君様ぁ」

    若「何じゃ?」

    三「この鶴は、広げるとあのような姿になるのでございますか?」

    千羽鶴の下に、芳江の折った連鶴が飾ってある。

    若「そうじゃな。繋がってはおらぬが」

    三「あ、羽根が結ばれておる。どうなっておるのじゃ…」

    若「これは熟練の技を持つ御方からの賜り物ゆえ、わしにも作れぬ。あぁ、唯なら出来るかもしれぬがのう」

    吉「えぇ?!」

    唯「おふくろさま、そこ驚き過ぎ。どうすればいいかは勉強したから。一応」

    吉「ではいずれ、披露と」

    唯「練習しときますから、しばしお待ちを」

    吉「手習いも、その位熱心にして欲しいところでございますな」

    唯「うっ、にょんにょん字はまだ無理~」

    孫「出来ましたぁ!」

    若「おぅ、上手く折れたのう」

    唯「がんばったね!二人とも、もう一回大きい紙で折る?小さいので折ってみる?」

    三「小さき方だと、この千羽、鶴、と同じ品になるか?」

    唯「なるよ」

    三「ならば小さき紙で折る!」

    孫「折るぅ!」

    唯「じゃあ、今度は私が見ててあげる。若君、代わるね」

    唯が座った。若君は立ち上がり、千羽鶴を近くで眺める吉乃の元へ。

    吉「このような、鮮やかで張りのある、良き紙があるのでございますね」

    若「はい」

    吉「唯が、持って参りましたか?」

    若「いや…わしも共に居ったが。何故そのように申される?」

    吉「随分と前の話でございますが、唯が真っ白に粒の揃うた米を持ち帰りました」

    若「ほほぅ」

    吉「その折に、盗みを働いたのかときつく叱りまして」

    若「白米…それは多分、折り紙と同じスーパーで買うておるな」

    吉「は?」

    若「あ、いや。決して盗みなど働いておりませぬゆえ。双方、出所は同じじゃと」

    吉「隠れ屋、でございますか。若君様が矢傷を癒された」

    若「そう…じゃな。あぁ、その折は、吉乃殿にも城の者が辛く当たり、まことに済まなかったのう」

    吉「そのような。若君様が居られぬ間の事であり、皆が案じたがゆえでございます」

    若「信近は、大層喜んだであろうがの」

    吉「それは…ほほほ」

    吉乃が、若君の顔をしげしげと見つめている。

    若「何、か?」

    吉「隠れ屋は、随分と遠き処に有るのですね」

    若「そうじゃの…。それが何か?」

    吉「行き帰りに難儀をされたのでは?随分と日に焼けておられます」

    若「ハハハ、そうか。然程ではござらぬ」

    吉「そうでございますか」

    ここで、若君が意を決したように口を開いた。

    若「お気遣い、痛み入ります…母上」

    吉「え?」

    若「…」

    吉「若君様、こちらにおいで頂けますか」

    若「…はい」

    吉乃は、若君を促して部屋の外に出た。子供達は、こちらを気にも留めず、折り鶴に夢中ではしゃいでいる。

    若「不躾、でございましたな」

    吉「若君」

    若「はっ」

    吉「大切な名を、そのように無闇に口にしてはなりませぬ」

    若「…済みませぬ」

    吉「と、三之助に窘めるが如く申しましたが」

    にこやかに話す吉乃。バツが悪そうにしていた若君の顔が、パッと明るくなった。

    吉「三之助や孫四郎が聞くと驚きますゆえ、これからは内々に」

    若「心得ました」

    そこへ、孫四郎が走って来た。

    孫「かかさまぁ!」

    吉「ほぅ、出来たのかえ」

    若「上手く出来ておる」

    吉「戦なき世を願う品とあらば、唯に教えを乞うて、私も折りましょう」

    若「わしも共に」

    吉「まぁ。子と共に過ごせるなど、有り難き幸せでございますな」

    五人で、賑やかに鶴を折った午後でした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    18日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days113~17日土曜10時、ズバリ正解です

    令和の花の名は、カタカナばかりで一から覚えるのは大変だと思う。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、自身の居室で書き物をしている。

    若君「よし」

    したため終わると、丁寧に棚に仕舞った。立ち上がり、どこかへ向かう。

    若「兄上、居られますか」

    成之の居室の前に来た。声をかけたが、返事はなく姿も見えない。

    若君 心の声(何処かへ出掛けられたか)

    そこへ、源三郎が現れた。

    源三郎「若君様。成之様ならば先程、城外へお出になりました」

    若「そうか。花でも摘みに行かれたかの。よう知っておったな?」

    源「側を通られましたゆえ」

    若「おぬし、門の近くに居ったのか」

    源「はい」

    若「ふむ。そうか」

    若君は、その場を後にした。

    若 心(そろそろ、戻られたかのう)

    未の初刻、現代での昼1時頃になっていた。城の近くを見回り、帰って来た若君。早速、成之の居室に向かう。

    若「居られるの」

    居室の前で、成之は花器の手入れをしていた。

    若「兄上」

    成之「おぉ、これは忠清殿」

    若「今日は、生けてはおられぬのですね」

    成「既に、別の部屋に置いて参ったゆえ」

    若「左様で」

    成「して、用件は?」

    若「はい。つい先だって、花の名がとんと分からず、困り果て」

    成「ほぅ」

    若「とり混ぜて、としか申せず」

    成「ほぅ。唯…奥方に贈られたと?」

    若「はい」

    成「成程。それは、粋ではありませぬの」

    若「兄上なら、そう思われるでしょうな。唯は喜んでおりましたが」

    成「そなたの奥方ならば、そうであろうが」

    若「それで、また花のある時分にあしらい方など、是非兄上に教えを乞うてみたいと思うておるのですが」

    成「私が教えるなど、おこがましいが」

    若「もし、そのような時間を取って頂けるならば、で結構」

    成「承知致した」

    若「忝のう存じます」

    若君が、成之の顔を見ながら微笑む。

    若「実は朝方もこちらに参りましたが、お姿が見えず」

    成「それは済まなかったの。良い野花はないかと摘みに出ておったゆえ」

    若「摘まれた後は、阿湖姫の居室にいらしたのですね」

    成「何じゃ、その当たり前のような物言いは。あぁ、先程花を置いてきたと申したゆえ、そのように思うたのじゃな」

    若「摘んだ花をすぐ生けて差し上げる。さすが兄上ですな」

    成「そうだとは一言も申しておらぬが。何故阿湖と共に居たと、話を進める」

    若「顔に描いてありますゆえ」

    成「なっ…まぁ、その通りであるがの」

    若「ハハハ」

    成「そう言えば、忠清殿の居室が、大変賑やかに飾られておると、漏れ聞きました」

    若「もうお耳に。鶴を紙で模した物が千羽おります」

    成「千羽とはたまげる。どなたかからの賜り物で?」

    若「賜り物…あぁ、そうですな」

    若 心(紛う方なく。幾人もの力添えのお陰のプレゼント、じゃ)

    成「ん?」

    若「いえ。また、宜しければご覧に入れますゆえ、阿湖姫と共においでくだされ」

    成「また是非に。もしやそれも、奥方が絡んでおるのでは?」

    若「然り。唯とその周りの者達には、世話になるばかりでして」

    成「周り?」

    若「隠れ屋にて」

    成「隠れ…。忠清殿、その節は」

    若「何か?」

    成「その…忝ない」

    若「ハハハ」

    成「ハハ…」

    若「では、また参ります」

    成「良き花が手に入ったら声をかけましょう」

    若「お頼み申します」

    成之が、口元に光を集めながら軽く微笑んで、若君を見送る。

    若 心(平穏な日々は、良い)

    木漏れ日に目を細めつつ、若君はゆっくりと去って行った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    17日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days112~16日12時、ミッション遂行中

    そりゃ、恐縮しちゃうよね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今度は、厩の辺りをウロウロしている唯。

    唯「あ、居た居た。千吉さぁん!」

    見覚えのある後ろ姿に声をかけた。振り向く千吉。

    千吉「おぅ、その声は、唯之助。ん?」

    唯「久しぶりぃ」

    千「なにやら…随分と、おなごに見えるな」

    唯「え?ずっとかわいいおなごだけど」

    千「小僧には、見えん。奥方が板に付いてきたんだな」

    唯「みんな似たようなコト言うなぁ」

    千「で、今日は何の用だ?」

    唯「うん、あのね、人が腰掛けられるくらいの丈夫な板と、人がぶらさがってもビクともしないくらいの長い縄二本、手に入んないかな」

    千「板と縄。ふむ」

    唯「千吉さん、顔広いから。屋敷の備品を流してもらってもいいんだけどなー」

    千「屋敷の品を、勝手には使えぬぞ」

    唯「でも、使うのは若君なんだよ?」

    千「若君様がか。…それは、まことか?」

    唯「うえっ、信じてもらえないの?」

    千「何にお使いになられるのじゃ?」

    唯「若君の、心の安定のために」

    千「何じゃそれは。怪しいのう」

    唯「えー」

    千「お、ちょうど若君様が見回りから戻られたぞ」

    唯「あ」

    若君と小平太が、馬から降りている。駆け寄る唯。

    唯「おかえりー、若君ぃ」

    若君「お、唯。わざわざ出迎えてくれたのか?いかがしたのじゃ」

    唯「千吉さんに、頼み事してたの。ねっ、千吉さん」

    少し下がっていた、千吉を呼んだ。近付き、一礼する千吉。

    若「頼み事?」

    千「はっ、奥方様に、板と縄を手配するように、と」

    若「板と、縄…」

    千「若君様がご所望と」

    唯「作ってあげようと思ったんだけど」

    若「…ブランコ、か?」

    唯「うん!」

    若「そうか。千吉」

    千「はっ!」

    若「板の幅は一尺も要らぬが、長さは二尺から三尺の間。縄は十尺程が二本。是非手に入れたい。城内で使わぬ物があればで良いのじゃが」

    千「心得ました。なるべく早うお持ちいたします」

    若「いや、気長に待つゆえ」

    千「いえ、私めにお声掛け頂くなど、畏れ多い事でございますので、直ちに」

    若「そうか。では、頼んだぞ」

    千「ははっ」

    唯「よろしくっ」

    唯に向かって済まなさそうな顔をすると、千吉は去って行った。

    若「唯、ありがとう」

    唯「こっそり作る計画だったんだけどね~」

    若「心優しき妻女を持って、わしは幸せじゃ」

    唯「うふふ」

    小平太「若君、そろそろ参りましょう」

    唯「わぁっ!」

    若「小平太、まだ居ったのか」

    小「居てはなりませぬか」

    若「このまましばらく、唯と過ごそうかと思うておったゆえ。この後、何か用件があったか?」

    小「しばらく有りませぬ」

    若「ならば、もう下がって良い」

    小「はっ」

    小平太 心の声(なんか調子狂うなー。昨夜から、若君がちょいちょい冷たいし)

    小平太も、去って行った。唯と若君も、手を繋いでゆっくり歩き出した。

    唯「朝早くから、仕事だったんだね」

    若「夜明けすぐに一か所、朝飯後もう一か所領内を回る予定であった。忘れておったが」

    唯「あー。一月前に聞いた計算だもん、忘れても仕方ないよ。で、間に合ったの?」

    若「勿論じゃ。ただし、体操の時間は取れず、出来なんだ」

    唯「そこ、大事なんだ」

    若「日課になっておったゆえ。そう言えば」

    唯「ん?」

    若「今日からまた、一日二食じゃが?」

    唯「うわっ、お気遣い痛み入りますぅ。ここ来る前に、阿湖の部屋でお菓子食べたから大丈夫」

    若「土産を渡したのか」

    唯「うん、すっごく喜んでくれたよ」

    若「そうか、それは楽しみじゃな」

    唯「え?何が?」

    若「兄上の口元が、いつ輝くか」

    唯「またぁ、たーくんのエッチ!」

    若「それは、意味合いはどのような」

    唯「えっ?エッチの意味?!えー、わかんない、説明できないよぉ。昨日までに聞いてくんないとー」

    若「ハハハ。大体は分かるがの」

    唯「そうなの?」

    若「よく夜に、唯が申して、というか叫んでおったゆえ」

    唯「やだぁ…どエッチ」

    若「ん?」

    令和に比べ、暑過ぎない夏の平和な昼下がりでした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    16日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days111~16日10時、応えて欲しい

    デレデレしてる成之も見てみたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    阿湖の居室。グロスをようやく取り出した。

    唯「で、これが贈り物!どーぞ」

    阿湖「何?」

    唯「キラキラする紅、かな?」

    阿「紅にしては、淡い色ね」

    唯「私、自分の持って来たから、どんなんか塗って見せてあげる。鏡借りるね」

    ササッと塗って、振り向いた。

    阿「まあ!なんて素敵なの!私もつけてみたい!」

    唯「フタはこうやって取るの。で、筆が中にあるから…そうそう、ん、やっぱ阿湖、超似合うわ」

    輝く唇を、首をあちこち向けて鏡で確認する阿湖。

    阿「艶めいて綺麗…貰っていいの?」

    唯「どーぞ」

    阿「嬉しい!これは、どこのお品?南蛮渡来?」

    唯「ん、まぁそんなトコかな。それはメイドインジャパンだけど」

    阿「冥土…」

    唯「あ、なんでもないっす。きっと、兄上さんにもウケがいいはず」

    阿「成之様、喜んでくださるかしら?」

    唯「弟は喜んでたから、きっと同じだよ」

    阿「若君様が?」

    唯「うん、若君は喜んでた」

    阿「そういえば、唯は、忠清様とは呼ばないのね」

    唯「あー。若君で慣れてるからね」

    阿「でも、夫婦となったのに」

    唯「ただきよ、って言いにくくない?」

    阿「えっ、何て事言うの」

    唯「なりゆき、は言いやすいよね」

    阿「言いにくいって、そんな」

    唯「いいんだよ。実は、ここだけの話だけど」

    阿「なぁに!聞きたい!」

    唯「ぐふふ。二人きりの時は、違う呼び名なんだぁ。あ、若君はそのまま唯だけど」

    阿「秘密の名前があるの?」

    唯「うん。内緒だけど。だからさ、阿湖も兄上さんと二人きりの時は、違う名前付けて呼んだら?」

    阿「そんな…今でも、成之様とお声かけるだけで精一杯なのに」

    唯「より、ラブラブ…もとい、親密になれるよぉ?もーっといっぱい、優しくしてくれるかも」

    阿「唯は、そうなのね?」

    唯「うん!」

    阿「あぁ、どうしよう。だったらやってみたい。どう呼ぼうかしら」

    唯「えーっと、なーくん、とか?」

    阿「な、しか合ってないじゃない。…あ!もしかして若君様を、たーくん、って呼んでる?」

    唯「はっ!バレちまったな」

    阿「ふふふ。唯ってわかりやすい」

    唯「で、どうなの。名前はさ、短い方が呼びやすいでしょ」

    阿「そこまでくだけては呼べない…唯は、どうやって名付けたの?」

    唯「ひらめいた」

    阿「えぇっ、同じように出来るかしら」

    唯「目の前に、兄上さんが居ると思って」

    阿「えっ、困っちゃう!」

    唯「かわいいな~。はい、深呼吸!」

    阿「すぅー、はぁ。あっ」

    唯「どう?」

    阿「なんか、降りてきたわ…なあさま。きゃー!」

    唯「あ、いい!なんか、阿湖っぽいし」

    阿「なあさま、どんな反応されるかしら」

    唯「照れはするだろうけど、怒りはしないと思うよ」

    阿「試してみる…あぁ、でも恥ずかしい」

    唯「実行あるのみ!」

    阿「頑張るわ。そういえばね、唯」

    唯「うん?」

    阿「私、心から、若君様とあのまま夫婦にならなくて良かったと思ってるの」

    唯「え?だって、私が現れなかったら…」

    唯 心の声(しまった、私が来なかったら、阿湖はたーくんに会えてもいないよね。高山との戦で羽木家は…)

    阿「唯が居ないままで例え一緒になったとしても、ずっと眼差しは私をすり抜けて、心に宿る唯しか見てなかったと思うから」

    唯「阿湖を見ないって?そんな事ないよ。たーくんちゃんと優しくしてくれたと思う」

    阿「もちろん、とても良くしてくださったわよ。ただ、許嫁として共に過ごしていた時を思い起こすと、想い人を胸に秘めたまま、私にあのように接してくださっていたのねって」

    唯「なんか、ごめん」

    阿「唯は何も悪くないから謝らなくていい。あのね、唯が行方知れずになった折の若君様の顔、まるで般若の様だったのよ」

    唯「はんにゃ?片方が小平太に似てる芸人さん?」

    阿「え?」

    唯「あ、ごめん。現代とごっちゃになっちゃった。なんでもないー」

    阿「さっぱり話がわからないけれど。うーん…鬼の様、ならわかる?」

    唯「わかる!そんなに恐い顔してたんだ!やーん嬉しい!でもさ、たーくんホント優しいよ?そんなに冷たい目、してた?」

    阿「ううん。冷たいとかじゃなくて。想うおなごだけに向ける微笑みは違うと言うか」

    唯「そう?」

    阿「今、なあさまに同じように見つめられていると、深い愛情を感じられるので違いがわかるの」

    唯「チッ。結果、のろけかーい!」

    阿「うふふ。唯、すっかり、たーくんって呼んでる」

    唯「えへっ。ここんトコずっとそうだったから、つい出ちゃった」

    阿「いいなぁ。きっと、優しく微笑み返してくださるのよね」

    唯「うん!」

    阿「羨ましい。私もそうなりたいな。ところでこのお品、名は?」

    唯「グロスだよ」

    阿「グ、ロ、ス。大事に使うね」

    唯「じゃ、そろそろ行くね!なあさま呼び、がんばって」

    阿「はぁ…出来るかな」

    唯「言っちゃえばこっちのモンだよ」

    阿「唯を見倣って、勇気を出して言ってみる」

    唯「じゃーねー!」

    阿「じゃあね」

    阿湖に見送られ、唯は走って出て行った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days110~16日金曜9時、どの花見ても綺麗だな

    唯と若君が留守番してた時に、材料を買い込んだ模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和の朝。速川家リビング。

    覚「科学実験でも始めるのか?」

    尊「あながち間違いじゃないね」

    食卓の上に、大きいタッパーやハサミや何やら粉状の物が並んでいる。

    尊「さてと、始めますか」

    唯が受け取った方の花瓶を持ってきた。花を何本か選んで抜いていく。

    覚「何を手伝えばいい?」

    尊「花の部分だけ切って欲しい」

    覚「茎を落とすのか。なんか勿体ない気はするがな」

    尊「綺麗なまま残すためだから」

    タッパーに粉状の物を敷き詰める。

    覚「シリカゲルなんだな。乾燥剤」

    尊「うん、ドライフラワー用のね」

    花を等間隔に詰め、行き渡るようにシリカゲルを花びらの隙間に入れていく。

    尊「ムラなくきっちり入れれば、色が変わらず残せるらしいんだ」

    上も全て乾燥剤で隠れるようにパンパンに入れて、蓋をした。

    覚「これの繰り返しだな」

    尊「うん。でも全部じゃないからそんなには」

    覚「僕らが受け取った方は、そのままドライフラワーにするしな」

    尊「丸ごと乾かして、壁に飾るんだよね」

    もう一つの花瓶は、美香子が仕事に行く前に処理をして、乾かし始めていた。

    覚「いつか帰って来た時に、花がそのままだったら驚くよな」

    尊「うん。どうしよう、兄さんが買った花ってわからなかったら」

    覚「写真撮っただろ。残してあるデータと照合だよ」

    尊「ますます実験っぽいね」

    終了。

    尊「一週間後に出してみるね」

    覚「よし、なら涼しくて湿気が少ない所に保管な」

    ┅┅┅

    変わって、永禄の朝。

    唯「阿湖姫~!居る~?」

    阿湖姫の居室に、バタバタ走って現れた唯。

    阿湖「あら、唯」

    阿湖姫は、床の間の花を眺めていた。

    唯「あ、もしかして兄上さんが生けた花?キレイだね~」

    阿「ええ。とても可憐なお花でしょ?」

    唯「それ、阿湖姫に合わせたんだよ。憎いな~兄上さん」

    阿「そうなの?」

    唯「聞いてみればいいじゃん」

    阿「う~ん」

    唯「なにうなってるの」

    阿「明日にはまた替えてくださるそうなんだけれど…そんな、聞くなんて恥ずかしくて無理」

    唯「奥ゆかしいってこういう事なんだな」

    阿「あ、ちょうどお菓子があるわ。はい、召し上がれ」

    唯「ラッキー!ありがと阿湖姫、いただきまーす」

    阿「唯、前から思っていたけど」

    唯「ん?」

    阿「姫なんて付けず、阿湖、って呼んでくれないかしら?」

    唯「いいの?!うわぁ、なんかすっごく仲良くなったっぽい!嬉しい!わかった~そうするね!」

    パクパク菓子を食べる様子を見ている阿湖。

    阿「唯…あの、なんか顔つきが変わった?気のせい?」

    唯「えー?そぉ?」

    阿「食べる姿は変わらないけど」

    唯「あ、そーすか」

    阿「なんというか、とても足軽小僧だったとは思えない」

    唯「太ったかな」

    阿「うーん…そうなの?」

    唯「触れないでおきたいトコだけど。それか、かわいくなった?なんちってー」

    阿「うん」

    唯「えー!マジで!やーん、た…若君を悩殺しなくちゃ!」

    阿「とうに夢中にさせていると思うけれど。ところで、今日は何の御用?」

    唯「あ、お菓子に目が眩んで忘れてた。あのね、阿湖にも~っとかわいくなって欲しくて、プレゼント…もとい、贈り物持って来たの」

    グロスを懐から出そうとしたが、阿湖の目線は、先に違う場所に釘付けになった。

    阿「あっ、その指、何?とっても綺麗!」

    唯「あ、見つかっちゃった。いいでしょ~」

    阿「光に煌めいて、素敵…」

    唯「阿湖も塗る?」

    阿「いいの?!」

    唯「侍女のかめとか、怒りそうだけど」

    阿「良いの。私がそうしたいのだから」

    唯「強ぇ」

    阿「唯には、敵わない」

    唯「えー?じゃあさ、また今度持って来てあげるね。なんとか…塗れると思うから」

    阿「唯は、お付きの者にしてもらったの?」

    唯「ううん、若君にやってもらったんで」

    阿「ええっ?若君様が!あぁ、何か、暑い」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    女子会、続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days109~15日23時30分、納得できぬ

    義父と義兄が、ちょっと失礼です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄に戻った二人の居る閨に、誰かが来た。唯から離れ、襖に近付いた若君。

    小平太「若君様、奥方様、ご無事でございますか」

    若君「その声は、小平太か。夜更けに何じゃ」

    小「いえ…先程、屋敷がかなり揺れましたゆえ、大事なかったか、伺いに参りました次第」

    若「おぉ、そうであったか。わしも唯も、大事ない」

    唯「揺れた?地震があったって事?」

    若「いや、わしらが戻る折に、屋敷や城が揺れるらしいのじゃ」

    唯「そうなの?!知らなかった~」

    若「永季が申しておった。ひどく揺れた後、わしが現れたと」

    唯「あー、吉田城でね」

    若「そうじゃ…唯、襖を開けても良いか?」

    唯「え?うん、いいよぉ」

    若君が、襖をサッと開けた。

    小「えっ、開く?!中など見てはならぬのでは!」

    とっさに目を背け、後ずさる小平太。

    若「小平太」

    小「はっ」

    若「久しぶりじゃの」

    小「は…はあ?」

    若「息災であったか?」

    小「若君様、お戯れを…朝方、共に弓の稽古をしたではありませぬか」

    それを聞いた若君が唯の方を向き、軽く微笑みながら、頷いた。

    唯「うん、カンペキに3分後だね。さっすがたー…若君っ」

    小平太が、不思議そうな顔をして若君を見上げている。

    若「何じゃ?その妙な顔付きは」

    小「あっ、いや、その…日が高い内は、くまなく領内を回っておられたのかと」

    若「何ゆえ、そのように思うた」

    小「随分と、日に焼けておられます」

    若「そうか?気のせいじゃ」

    小「…はあ?」

    唯「ぷっ、くくく」

    笑いをこらえきれない唯。唯を一瞥し、一瞬ムッとした顔になった後、若君の方に向き直り、困り顔になった小平太。

    若「おぬしの気のせいであろう」

    小「左様…にございますか」

    若「下がれ」

    小「は、はっ」

    小平太は、腑に落ちない顔をしながら、一礼し襖を閉め、去って行った。

    唯「ふ、ふっ、あはは~」

    小平太の気配が消えた頃、唯が笑い出した。

    唯「もー、たーくん、超ウケる~!小平太、めっちゃ変な顔してたよぉ」

    若「良いのじゃ。誰にどう聞かれても、あのように答えるつもりであったからの」

    唯「カッコ良かった」

    若「そうか?」

    唯「最後、ちょっと冷たかったね」

    若「唯との時間が持てると思うた矢先に、現れるからじゃ」

    唯「え、怒った腹いせ?やだぁ、かーわいーい!って、うわっ、速い速い!」

    天野の屋敷。

    小平太パパ「お、戻ったな。お怪我などなかった様か?」

    小「ご無事でした。お二人共々」

    小パ「そうか、それは良かった。ひどく揺れたゆえ、案じておったが」

    小「はい…」

    小パ「何じゃ?何を目をしょぼつかせておる。眠いのか?」

    小「若君にからかわれました」

    小パ「どのように?」

    小「今朝方稽古にお供したのに、久しぶりと言われたり、随分と肌が焼けておられるのに、違うておる、気のせいじゃと」

    小パ「闇でよう見えなかったのではないのか?それに、若君様だって、その位のお戯れはなさるであろう?」

    小「それはさておき」

    小パ「さておき?」

    小「唯之助が…」

    小パ「奥方、な」

    小「完全におなごの姿に見え」

    小パ「そ、そうなのか」

    小「何と申すか…随分と麗しく」

    小パ「ほ、ほお。…もう休んだらどうだ」

    小「…そう致します。では父上、これにて」

    小パ「ああ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    15日のお話は、ここまでです。

    次回は、令和の速川家からスタートします。

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    返信先: 雑談掲示板
    アシガール繋がりなら

    月食、綺麗でした。こちらも是非。岐阜城の上の月。合成じゃないそうです。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/45acc610514968cf3f92b9cb4e13eafbae564f25
    永禄10年に織田信長が居城としました。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days108~15日23時、旅立ちです

    妖怪千年おばば様、私のペースはお気になさらず、じゃんじゃん投稿してくださいね。

    昨夜の月食、赤銅色もしっかり目視できて感動しました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二度と会えない訳ではないので。きっと。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに唯と若君が戻って来た。

    唯「お待たせ」

    覚「おー」

    美香子「あら、ヘアスタイル、そのままでいいの?」

    唯「え、このヘアゴム持ってっちゃダメだった?」

    美「別にいいわよ」

    唯「お揃いにできるからさぁ」

    美「なるほどね」

    若君「千羽鶴は、風呂敷に包んでくださったのですね」

    美「ええ。中に、芳江さんに頂いた連鶴も入ってるからね」

    唯「ありがとう~」

    若「では、鞄、はわしが持ちます」

    唯「移動しよっか」

    実験室。尊が先に来ていた。

    尊「兄さん、重そうだね」

    若「いや、何程でもない」

    準備、完了。

    美「じゃあね、元気でね」

    覚「体に、気を付けろよ」

    唯「うん」

    尊「兄さん」

    若「ん?」

    尊が、右手を挙げた。

    若「おぉ」

    若君も、同じ形に。

    尊「イェーイ!」

    若「イェーイ!」

    パシッと、ハイタッチ。

    尊「また、会いましょう」

    若「あぁ」

    覚「若いな~」

    美「イイ事よ」

    若「お父さん、お母さん。此度も世話をかけました。心より礼を申します」

    美「いえいえ」

    覚「楽しかったよ」

    若「必ずや、唯を守り抜きます」

    覚「ありがとう。生き生きした唯が見られるのは、忠清くんのお陰だからさ。全て託すよ」

    美「よろしくお願いします」

    唯「お父さん、お母さん、いろいろありがとね。…じゃあ」

    起動スイッチを抜いた。

    唯「いつか、孫の顔を見せられるよう、がんばるから!それなりに」

    覚「それなりに、でいいぞ」

    美「無理しちゃダメよ」

    唯「ありがと。だからさ尊、三人用の新しいタイムマシン、早めによろしくね!」

    若「これ、急いてはならぬと申したじゃろ」

    唯「えー…」

    しゃべりながら、消えていった。

    覚「毎回、こんな風だな」

    美「ちゃんと、3分後に帰れたかしら?」

    尊が、パソコンを見ている。

    尊「あー、大丈夫だよ」

    美「なんでそう言えるの」

    尊「これ、見て」

    画面に、設定した日付と時間が出ており、大きくOKと表示されている。

    覚「なんだ?こんな機能、あったか?」

    尊「増えたみたい」

    美「みたい、って何?」

    尊「だって、2号作ったのは未来の僕だから、今の僕はわからないよ」

    覚「そうか」

    尊「多分さ、ニーズに応えたんだよ。無事帰れたかしら、心配だわ~の声に、未来の僕が」

    美「なるほどね」

    尊「まあ、安心して、って事で」

    三人、実験室を後にした。

    ┅┅┅

    その頃、永禄。辺りは暗い。

    唯「ん…」

    若「無事、着いたか?」

    飛ぶ前に居た、閨に到着。

    唯「二人とも無事だね、良かったぁ」

    若「尊のお陰じゃの」

    唯「でもさぁ、ホントに3分後なのかなぁ。もしかして一月後かもだけど、区別つかないよね」

    若「尊の事じゃ、恙なく終えておろう」

    唯「うん。たぶんね」

    荷物を、部屋の隅に寄せて置いた。

    若「夜が明けたら、仕舞おう」

    唯「うん」

    若「…静かじゃな」

    唯「そうだね」

    褥の上に腰を下ろした若君。唯も前に座る。

    唯「ふふっ、行く前と一緒だ」

    若「そうじゃな」

    唯「でも、もう不安じゃないから」

    若「そうか。唯の傍で、支えるからの」

    唯「ありがとう」

    若君の手が伸び、唯の髪を優しく撫でる。

    若「唯…」

    唯「たーくん…」

    その時、部屋の外に、人の気配がした。

    唯「えっ、誰か来たっ」

    若「何奴じゃ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days107~15日22時45分、打ち明けます

    若君の好みにケチをつけるのか、って話。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    真剣な顔で、ゆっくりと話し出した若君。

    若君「…この先の世には、早う子を成せと申す者は居らぬ」

    唯「…」

    若「もしや永禄では、詰め寄られたり、陰で言われる心無い言葉に傷付いていたのではあるまいか?」

    唯「…」

    若「お母さんと先日、改めて話をした」

    ┅┅回想。8月12日21時30分、リビング┅┅

    唯はもう寝ている。月が綺麗だ話を、尊としていた後。

    若「お母さん」

    美香子「唯が居ないと静かね~。お茶飲む?冷たいのと温かいのとどっちがいい?」

    若「温かい茶を、お願いします。あの…」

    美「ん?ははーん、もしかして、訊ねたき儀がある?」

    若「仰せの通りです」

    美「わかった。じっくり聞いてあげよう」

    食卓に四人。

    覚「はい、お茶。僕らも居て、いいかな?」

    若「構いませぬ」

    尊「ありがとう、兄さん」

    美「さっ、何でも聞くわよ~」

    若「はい。お母さんにお尋ねしたい。唯がああも子を急いておったのは、何ゆえと思われますか?」

    美「なるほどね」

    若「此度、一番の拠り所であるお母さんと話が出来、唯も安心した様子でした。その後は話を切り出される事もなく、今に至っております」

    美「それは良かったわね。最初話聞いた時、どうかな?と思ったけど、その後はずっと私達の知ってる元気な唯だったわよ」

    若「はい。されど帰った後、またぶり返すのではと案じております。辛い思いはさせとうありませぬ。どうすべきか…どう支えれば良いのでしょうか」

    美「周りから期待されているのは当然よね。でもいくら何でも、たった七か月…ずっと離れてて再会してからその位でしょう。それで焦るのは早過ぎると私も思ったわ」

    若「はい」

    美「子供はすぐ出来るものだー、とたかをくくってたかもしれないけどね」

    覚「唯なら有り得るな」

    美「んー。あくまでも推測だけどね」

    若「何でしょうか?」

    美「もしかしたら、唯自身に対する中傷や陰口とかがあったかもしれない」

    若「えっ」

    覚「あー、それは悔しいが有り得るな」

    尊「ひでぇ…」

    若「それは…わしが総領だから、でしょうか」

    美「うん。人並み以上に、期待を背負ってるから、それは言える」

    若「…」

    美「違う理由かもよ?」

    若「いや、頷ける話です。唯が何も申さないゆえ、尚更」

    覚「人の口に、戸は立てられないからな」

    尊「でも言われっぱなしじゃ、かわいそうだよ」

    美「忠清くんはそういう地位の人だから、それなりの覚悟がいる、って自覚が足りなかったとも言える」

    覚「僕らが、もっと口酸っぱく言わなきゃいけなかったか」

    美「そうよね…ごめんね忠清くん。私達にも責任があるわ」

    若「何を申される。わしが、辛さがわからず寄り添うてやれなかったからです」

    美「忠清くんなら、丸く治められると思うな」

    若「折を見て、尋ねます」

    ┅┅回想終わり┅┅

    若「頼む、有り体に申してくれぬか?」

    唯「うん…そう…だね。さっさと産まないと、奥方として認めてもらえない。たーくんにふさわしくない」

    若「やはりそうであったか。何という…守ってやれず、済まなかった。この通り」

    深く頭を下げる若君。

    唯「やめて、たーくんは何も悪くない」

    若「されど」

    唯「ありがとう。でも大事なつとめでしょ…お母さんは大丈夫って言ったけど、私このまま妊娠しなかったらどうしようって、怖い」

    若「子など、なくても良い」

    唯「そんな…総領なのに、ダメだよ」

    若「兄上と阿湖姫も居る。わしは、笑顔のない唯を見る方が辛い」

    唯「でも」

    若「随分と前にの、わしは唯に誓いを立てたのじゃが、全くもって遂げておらぬと気付いた」

    唯「誓い?」

    若「これからは、わしが唯を守る、と」

    唯「あぁ、うん。すっごく嬉しくて、たーくんにダイブした時ね」

    若「色々申す者達には、耳を貸すな。二人で考えれば良い話じゃ」

    唯「…」

    若「わしが、全力で唯を守る。支える」

    唯「ありがとう。嬉しい」

    若「この先の世では、楽にしておれたようで、良かった」

    唯「うん。超リラックスしてたよ。それはなぜかと申しますとねぇ」

    若「なんじゃ?」

    唯「ちゃーんと、忘れている時間、にしてたからだよ」

    若「そうか。唯自身が、忘れている時間を大切にしておったのだな」

    若君が微笑みながら、唯の頬を撫でる。

    若「…今でも、初めて結ばれた日を思い出す」

    唯「うん」

    若「一つになりたいと申したあの時の思い、変わってはおらぬ。純粋に、今もそう思う。子は、あくまでもその次の話」

    唯「ありがとう」

    若「わしは、未来永劫、唯の味方じゃ」

    唯「嬉しい!」

    唯がギュっと抱きつく。優しく髪を撫でる若君。

    若「では、そろそろ参るか」

    唯「はいっ!」

    部屋の電気を消し、扉を閉めた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いよいよその時が。ですが、令和Daysはまだまだ終わりません。ご心配なく(?)

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days106~15日22時、ときめき全開です

    唯にも尊にも、絶対的に心優しき王子様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「なにかけよっかなぁ、悩むー。あれ、キウイのシロップなんてあるの?」

    覚「煮詰めて作ったんだ」

    唯「へー、すごーい。じゃあそれにするー」

    覚「忠清くん、どれにする?」

    若君「いかが致しましょう。この、朱よりも赤い」

    美香子「イチゴ?」

    若「前に参った折に、揃いで着たセーターの色味によう似ております」

    尊「あー、かなり近いかも」

    覚「これも渾身の作だから嬉しいよ。かけていい?」

    若「はい」

    美「また、いつか冬に来る時があったら、セーター着て見せてちょうだいね」

    若「はい!」

    みんなでかき氷タイム。

    唯「ん~美味しい!たーくんにも一口あげるね。はい、あーんして」

    若「うん、うまい」

    覚「良かった。どれも甘くなり過ぎないようにしたから、口に合ったかな」

    若「お気遣い、忝のう存じます」

    唯「尊のも美味しそう。これも作った?」

    覚「かなり難しかったけどな、旬の先取りで」

    尊「梨、なかなか良いよ。食べる?」

    唯「一口もらうねー。ん、いい!」

    尊「でしょ。兄さんも一口どうですか?」

    唯「ストップ!」

    尊「は?」

    唯「尊~、それは違うておるぞ」

    尊「だからなんで戦国言葉なんだよ」

    唯「あーんして、でしょ」

    尊「えーっ!!」

    若「おぉ、そうか」

    若君が、尊に近づくように、食卓に身を乗り出した。

    唯「ほら、たーくん待ってるじゃない、早く!」

    尊「う、うん。じゃあ…兄さん、あーんしてください」

    一口掬い、口元に滑らせた。

    若「これもうまい。お父さんはまことに、手練の技を持っておられる」

    覚「へへ、褒められちゃった。ありがとね忠清くん」

    唯「尊~?おーい」

    尊「はぁ…」

    美「目がハートになるって、ホントにあるのね」

    若「尊、どうした?なにやら呆けた顔をしておるが」

    尊「あ、いえ」

    若「あぁ、そうか。済まない、気付かなんだ」

    自分の、イチゴの氷を一口掬った。

    若「あーん、して」

    尊「ヒッ!」

    唯「わー、贅沢ぅ」

    美「優しいわね~」

    尊が、若君に釘付けになったままつぶやく。

    尊「お姉ちゃん…」

    唯「え、私?なに?」

    尊は、慌ててスマホを取り出した。

    尊「撮って」

    唯「うわっ、超贅沢!」

    スプーンをくわえた所を、パチリ。

    尊「お、美味しいです…」

    若「そうか。それは良かった」

    覚「おいおい、まんま恋する乙女の顔じゃないか」

    美「ふふっ、尊の気持ちがわからなくもない」

    覚「わからなくもない…僕の氷、食べる?」

    美「えー、貰うなら忠清くんからがいいわ」

    覚「やっぱりな」

    若「わかりました」

    美「…って、待って忠清くん、冗談だから!」

    若君は、掬った氷を美香子に差し出そうとしていた。

    若「良いのですか?」

    尊「兄さん、こぼれそうだよ」

    若「おぉ、これはしたり」

    唯「なら、それちょーだい!あ」

    スプーンは若君自身の口に吸い込まれた。

    唯「早いぃ」

    若「垂らすより良かろう」

    尊「残念でした~」

    全員「ハハハ~」

    会話が弾んでいたが、

    唯「んー、そろそろ…かな。早い?」

    覚「いや、キリがないからさ」

    美「そうね」

    唯「じゃあたーくん、着替えよっか」

    若「そうじゃな。では、行って参ります」

    三人「行ってらっしゃい」

    唯の部屋。着替え完了。

    唯「さてと、たーくんの布団も畳んだし」

    若「あぁ」

    唯「忘れ物、ないよねー」

    若「良かろう」

    唯「たーくん、ホントにありがとう」

    若「ん?」

    唯「一か月、すっごく楽しかった」

    若「わしもじゃ」

    唯「ふふっ」

    若「ところで、唯」

    唯「はい?」

    若君が唯の正面に立った。

    若「折り入って、話がある。聞いてくれるか?」

    唯「え、怖っ」

    若「帰ってからとも思うたが…」

    唯「なに?今言いたいんでしょ?どーぞ」

    若君は、ふぅ、と一呼吸した。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days105~15日21時、盛り上がってます

    興が乗ったまでの事。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    五人で、神経衰弱の真っ最中。

    覚「おーっ、取れた!初めてだ~」

    唯「やっと?」

    尊「ここへ来てようやく?」

    若君「さすがお父さんじゃ」

    覚「いや~。ありがとう、忠清くん」

    若「え?」

    覚「ヒント、出してくれて」

    尊「お父さん、ヒントじゃわからないよ。んーと兄さん、それとなく教えたりしました?」

    若「いや、何もしてはおらぬ」

    覚「またまた~」

    美香子「お父さん、せっかくこっそりと教えてくれたんだから、あんまり言っちゃダメよ」

    覚「そうか、そうだな」

    唯「たーくん、孝行息子だ」

    若「いや…」

    美「ふふっ、照れて可愛らしい。はぁ~。トランプ、楽しいわねぇ」

    尊「うん、間違いない」

    美「もっと色んな遊び、したかったわねぇ」

    唯「遊び~?例えば?」

    美「んー、みんなでカラオケとか」

    覚「うわっ、今この時間になってから言うか~?」

    唯「え~それ、たーくん聞いてるだけになっちゃうもん。すっごく音大きいしびっくりしちゃうよ」

    若「桶が空?」

    唯「言うと思った」

    尊「えーとですね、カラオケは…歌を歌う設備?場所?歌会?」

    若「歌会。ほぅ」

    唯「尊ダメだよ、永禄では歌はそれじゃないから、話がややこしくなる」

    尊「あ、詠じる方か。雅だね」

    覚「君が~、望むなら~」

    美「ヒデキ~!」

    若「?!」

    唯「もーなに!急に歌わないでっ」

    尊「すげぇ息ぴったりだし」

    覚「カラオケと聞いてつい。素晴らしき昭和歌謡を披露だ」

    美「思わずノッちゃったわ~」

    覚「さすが母さん~」

    唯「はぁ。たーくんごめんねぇ」

    尊「話が見えませんよね」

    若「大層楽しんでおられる、のはわかった」

    ひとしきり遊んだ後。

    美「お風呂、沸いたわよ。行ってらっしゃい」

    唯「わかったー。着替え取ってくる」

    美「後で慌てないように、お着物も出しておきなさいね」

    若「わかりました」

    唯の部屋。

    若「この先の世での、歌、は」

    唯「うん?」

    若「皆、きてれつな声をあげるのじゃな」

    唯「あっちゃー。私と親のしか知らないもんねぇ。ごもっともでございます」

    若「この話、内密に頼む」

    唯「承知いたしたっ」

    二人がお風呂タイム中、かき氷の準備をする三人。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「兄さんって、ホント周りをよく見てるし、何より優しいよね」

    覚「あぁ。さっきさ、僕の方がヒントに中々気付かなくて、忠清くんヤキモキしてただろうなぁ」

    美「さりげなくやってくれてるものね。父を立てるいい息子ね~」

    覚「忠清くんのお陰で、尊も成長してるしな」

    尊「僕?」

    覚「聖人君子のような彼が傍に居て、人としての在り方も学べただろ?」

    尊「うん…。えっ、兄さんと同じは無理だよ?努力目標にはするけど…道は険し過ぎる」

    美「いつか…ね、随分成長したな尊、って言ってもらえるように」

    尊「わぁ、そりゃ頑張らないと!」

    風呂上がりの洗面所。二人で交互に、髪にドライヤーをかけている。

    唯「真夏、お風呂出てすぐドライヤーって、厳し過ぎる~、暑いー」

    若「雫が垂れる程ではならぬゆえ、我慢じゃ」

    唯「たーくんはもうほとんど乾いたよ。まだ暑いでしょ、髷にしとく?」

    赤いリボンのヘアゴム登場。

    若「おぉ、これか。では頼む」

    唯「え、私が結んでいいの?」

    若「出来栄えは不問とするゆえ」

    唯「ん?なーんか引っかかるけど、まぁ良しとする。はい、できたよ」

    若「ありがとう唯。代わろう。うむ…粗方乾いたの。唯も、結ぶか?」

    唯「うん。やってくれる?」

    若「うむ。されどこの輪、実によく伸び縮みし、結わえ易いのう」

    唯「持ってく?てか、このまま結んどけば良くない?」

    若「そうか。そうじゃの。よし、出来たぞ。では戻ろう」

    唯達がリビングに戻ると、すっかり用意が出来ていた。

    唯「わー、キレイ~」

    若「色鮮やかな…これは何じゃ?」

    尊「シロップですよ。そっか、以前食べた時はもう氷にかけてあったかも」

    覚「外でも食べてはいるだろ?」

    唯「うん。プールででっかいのを三人で分けっこしたよ」

    美「お店で出る程、きめ細やかには削れないけど」

    唯「いいよ。私ちょっとガリガリしてんのも好きだから」

    氷を削り始めました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days104~15日20時、準備はスローに

    月が沈む前に帰ればいいんだから、まだまだ時間あります。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊「あれ?荷物が増えてる」

    唯「これ、すごいんだよぉ!ほらっ」

    尊「うわっ、繋がってる?」

    覚「連鶴か。芳江さんだな」

    若君「ご存じでしたか」

    覚「以前、患者さんへの快気祝いとして折ってみえたんだ」

    尊「へー。芳江さんもエリさんも、手仕事上手なんだね」

    覚「母さんが一番何にもできない」

    若「そのような」

    覚「ハハハ。三人とも医療のプロには違いないから。じゃあ、続きをしようか」

    若「はい!」

    はさみ揚げにまぶす粉の入ったバットが、二つ並んでいる。

    覚「こちらがいつもの。こちらが」

    若「カレー、ですか?」

    覚「そう、忠清ブレンド」

    尊「今日は二種類作るの?しかも兄さんお手製の。やったー!」

    覚「たまにはいいだろ?」

    若「ありがとうございます!」

    覚「あれ?唯が反応しないな。どうした?」

    尊「鋭意学習中だから」

    タブレットを凝視している唯。

    尊「連鶴の折り方をね」

    若「そうなのか」

    覚「ん、いい心掛けだ」

    いよいよ揚げ始める。

    美香子「ふう」

    尊「あ、おかえりー」

    唯「お疲れ様ぁ」

    若「一日お疲れ様でした」

    美「ただいま。あら?カレーの匂いがしてる」

    覚「お疲れ。忠清ブレンドで、はさみ揚げのアレンジだ」

    美「まぁ!食べる前から、美味しいって決定じゃない」

    覚「だろ?」

    美「ん~男子二人のエプロン姿が並ぶ、やっぱいいわ。よーく見とこ」

    覚「見納めって言わないのがいいな」

    美「当然でしょ~」

    唯「ねぇお母さん、これ持ってってもいい?」

    マニキュアセットを見せる。

    美「あらそう。いいわよ。忠清くんもいいって言ってくれてる?」

    唯「うん。これからも、塗ってもらうんだぁ」

    美「あらま。贅沢ねぇ」

    尊「ホントだよ」

    覚「まあまあ。美香子さんには、僕が塗ってあげるからさ~」

    美「いや、そういう意味ではないんだけど」

    覚「えぇっ!そ、そう…」

    美「は?もう、何拗ねてるの~」

    若「ハハハ、実に仲が良い」

    晩ごはん、出来ました。

    全員「いただきまーす!」

    若「うまい」

    唯「カレー味、いい!」

    美「うん、いいわ~」

    覚「だろ?」

    尊「おいしい!親子でコラボ、大成功だね」

    若「コ、コラ?」

    尊「あっ、ごめんなさい。コラボは…共同作業とか合作、かな」

    若「そうか。お父さんと手を携えて出来たと」

    美「手を携える。いい言葉ね~」

    覚「忠清くんと居ると、美しい日本語の勉強になるよな」

    尊「ずっと一緒でも、そう身に付いてないヒトも居るけど」

    唯「あぁおいしいっ。え、日本語がなにって?」

    尊「なんでもない」

    覚「まぁある意味、確固たる自己が出来上がっているんだが」

    唯「かっこ?カッコいいのはたーくんでしょ」

    尊「いい耳してるよ」

    若「ハハハ」

    晩ごはんも終わりかけ。

    覚「この後の話をする」

    四人「はい」

    覚「唯達、今回、寝間着姿で来たじゃないか」

    唯「うん」

    若「そうですね。寝所から参りましたゆえ」

    覚「だから、風呂上がりにそのまま、その寝間着を着ればいいっちゃいいんだが」

    唯「ちょっと暑いよ」

    美「確かに、あの白いお着物はそうよね」

    覚「そう。だからまず、少ししたら二人で風呂に入りなさい。で、一旦Tシャツジャージとか涼める格好に着替える」

    尊「それで?」

    覚「風呂上がりに、かき氷作ってやろう」

    唯「わぁ、あの手動でガリガリやるヤツ?」

    覚「そうだ。シロップは沢山用意したから。氷は向こうでは贅沢品だろ?腹を壊さない程度に食べて行きなさい」

    尊「やったー。かき氷機使うの久々。前に兄さんが一人で来た時以来じゃない?」

    若「おぉ、そうか」

    美「まだゆっくり寛ぎましょうね。じゃあ、ごはん終わったらまず」

    唯「なに?」

    美「トランプしない?神経衰弱、全員で一回もやってないもの」

    覚「うわっ」

    美「え?」

    覚「まだ、記憶力鍛えてない。でもやりたい」

    美「えぇ?」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜はまだまだ続きます。

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    二人の令和Days103~15日18時、繋がります

    上手くやれば、冠みたいに輪っか状にもできるみたいです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに戻ってきた唯。

    覚「おーお帰り」

    唯「うん。ちょっと待ってね」

    実験室にBlu-rayディスクを持っていった。

    唯「ただいま」

    覚「慌ただしいな」

    唯「時間ないから」

    覚「そうだな」

    花瓶の花は今日も綺麗に咲いている。

    唯「お父さん」

    覚「ん?」

    唯「たーくんに、お小遣いあげてくれてありがとう」

    覚「フフフ」

    唯「こんなにキレイなお花に変わったよ」

    覚「使い方が、さすがだなと思った」

    唯「うん」

    覚「彼は戻ればまた、プレッシャーだらけの日常だろ。一緒に居られる時間は、ゆっくりさせてやるんだぞ」

    唯「うん。あのさ、やる事も責任もいっぱいあるのに、私の事も考えて、ってダメかなぁ」

    覚「それはない」

    唯「なんで言い切れるの」

    覚「唯が居るから、より頑張れるさ。帰れる家があるのはな」

    唯「家…城じゃなくて?」

    覚「家とは、唯自身の事だから」

    唯「そっかぁ」

    覚「支えてやるんだぞ」

    唯「うん!」

    晩ごはんの、蓮根のはさみ揚げの準備中。

    覚「まだ実験室、時間かかりそうか?」

    唯「んー、たーくんはそろそろ戻ると思うんだけど。あ、来たよ」

    若君が戻ってきた。

    若君「お父さん、お待たせしました」

    覚「全然大丈夫だよ~って、あれ?なんか目や鼻、赤くない?」

    若「感涙に咽びまして」

    覚「そうか。うん、いい事だ」

    唯「なんか約束してたの?」

    若「はさみ揚げの作り方を見せて頂きたい、と願い出ておきながら、遅くなり」

    唯「へー」

    覚「じゃあ始めるよ。ここに並べた材料の説明からね」

    若「はい!」

    19時になった。そろそろクリニックの診療時間が終わる。

    覚「あ、忠清くん、一旦手洗ってさ、エリさん達に最後の挨拶しておいで」

    若「わかりました」

    唯「千羽鶴持ってね」

    診察終了後、クリニックへ入る二人。

    美香子「いらっしゃい」

    芳江「まぁー、これが完成品ですか」

    エリ「綺麗なグラデーションですね」

    若「お二方のお陰です」

    芳「いえいえ。あら、この辺はウチの孫が折ったわね」

    エ「皆さんの個性が出てますね」

    美「芳江さん、例のお品をどうぞ」

    芳「あ、そうそう。実は今朝、渡しそびれた物がありまして」

    唯「鶴以外で?」

    芳「これも鶴なんですけれど」

    違う箱が登場。

    唯「なにー?」

    芳「予定の折り鶴があっけなく完成したので、僭越ながらお屋敷で飾っていただけたらと思いまして」

    一つ取り出す芳江。千代紙で折られた柄入りの鶴だが、

    唯「あっ、え!」

    若「何羽も繋がっております!」

    唯「糊でくっつけたの?」

    芳「一枚の紙なんですよ」

    唯「えーっ」

    若「なんと」

    エ「素敵ね~」

    美「素晴らしいわよねぇ」

    芳「私の実家辺りの地域が発祥なんですけど、連鶴と言いましてね。一枚の長方形の紙を、端を5ミリ位残して、正方形が繋がるように切って、それぞれ折っていくんです」

    唯「すっごい器用だね、芳江さん」

    芳「伝統工芸ですから、小さい頃から親しんでましたので。何とか五羽は繋いでみました」

    唯「五羽…あ」

    若「家族の人数でお作りいただいたのですね」

    芳「はい。これは翼同士が繋がってますけど、唯ちゃん達にはこちらの方がいいかしら」

    唯「やーん!くちばし同士くっついて、チューしてるぅ。こんな風にもできるんだー」

    若「今朝方、大きい折り紙を買うたのですが」

    美「あら、そうだったの」

    芳「ちょうどいいですね。裏を中にして縦半分に折って、5ミリ残して横半分に切り込み入れれば作れますよ。そうするとより丈夫に折れますから」

    唯「たーくん、やる気満々でしょ」

    若「あぁ」

    唯「目、キラキラさせちゃって。かわいいんだから」

    美「ところで、お別れのご挨拶しに来たんじゃないの?」

    唯「そうだった。芳江さん、エリさん、一緒に過ごせて、すっごく楽しかった!ありがとう~」

    若「エリさん、芳江さん。この忠清、受けたご恩は生涯忘れませぬ。ありがとう、ございました」

    芳「どうかお元気で」

    エ「遠い未来から、祈ってますね」

    若「ありがとうございます」

    唯「バイバーイ」

    手を振りながら、クリニックを後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    源トヨ!

    やっぱ源トヨは可愛いですね。ほっこりします。私のお話令和Daysでも活躍してもらうつもりですが、出番はまだまだ先です。来月上旬には登場予定です。

    じゃあ、最終話はいつ頃って話ですが…年は跨ぎます。まだダラダラ続きます…(-人-;)長くてすみません。よろしければ、お付き合いください。

    今までの二人の令和Days、番号とあらすじ、37から85まで

    no.699の続きです。今回は、8月13日のお話までです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    37no.641、8/3、旅行スタート。若君初めての買い物

    38no.642、8/3、古式泳法の授業

    39no.643、8/3、ボンキュッボンとは。浜辺で昼ごはん

    40no.644、8/3、美香子到着。寝顔をパチリ

    41no.645、8/3、浮き輪を奪われる尊

    42no.646、8/3、温泉へ。綺麗な夕日

    43no.647、8/3、飲み過ぎの覚を寝かせる

    44no.648、8/3、永禄でのジェンガの回想

    45no.649、8/3、トランプで盛り上がる

    46no.650、8/4、朝の海。願いは砂の中に

    47no.651、8/4、若君考え込み唯怒る。午後は二手に分かれる

    48no.652、8/4、男子城ツアー。天守で風を感じる

    49no.653、8/4、女子買い物ツアー。寝顔の写真で大騒ぎ

    50no.654、8/4、男子恋愛マスターの講義

    51no.655、8/4、女子買い物後にパンケーキ

    52no.656、8/4、帰宅。次回城ツアー決まる。覚がタジタジに

    53no.657、8/5、悩める吉田君がやって来た

    54no.658、8/5、若君の訓話でスッキリな吉田君

    55no.659、8/6、デートでずぶ濡れの唯

    56no.660、8/6、ボート競争は若君の勝利

    57no.661、8/7、髪を結い合う二人

    58no.662、8/7、ぷらぷら城ツアーで若君の考察

    59no.663、8/7、城からかつての黒羽城を思う。神社に参拝

    60no.664、8/7、若君が千羽鶴を作る宣言

    61no.667、8/8、昼は鶴を折り夜は花火大会。美香子は折り紙見てやる気アップ

    62no.668、8/8、唯の危機に駆け出す若君

    63no.669、8/8、花火を堪能

    64no.671、8/8、美香子の作る晩ごはん。大殿に理解してもらうには

    65no.672、8/9、旅行初日は自由行動らしい。カレーは忠清ブレンドで

    66no.674、8/9、昼はハーブをブレンド。体固まる程頑張って鶴を折る

    67no.679、8/9、キーマカレー完成。尊の理想のデートで恩返し

    68no.681、8/10、草むしりを隅々までキッチリと

    69no.686、8/10、コーチ親子の様子に若君妄想でデレデレ

    70no.688、8/10、若君を都会の女子から守るには

    71no.689、8/11、千羽鶴半分完成。二回目の旅行スタート

    72no.693、8/11、美香子と若君が着物の話

    73no.694、8/11、三人でパンケーキ両親へのプレゼント購入

    74no.695、8/11、唯が薬局で四苦八苦

    75no.696、8/11、全員合流して鰻を食べる。尊の様子がおかしい

    76no.697、8/11、美香子子作りを全力否定

    77no.698、8/11、夜景が煌めく中若君の仮定話を唯が諭す

    78no.700、8/12、大音量でさすがに起きた

    79no.701、8/12、永禄の食糧事情を考える若君

    80no.702、8/12、家族写真。溢れる思いも写る

    81no.703、8/12、月が綺麗は愛してる

    82no.704、8/13、ラジオ体操を愛聴する若君

    83no.705、8/13、お祝いの準備で子供達はスーパーに

    84no.706、8/13、結婚20周年パーティーは和やかに

    85no.707、8/13、それぞれの矢じり考

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days102~15日17時、一途です

    違うタイプの美形に育つ、かな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    実験室に三人。

    尊「呼んだ用事は二つあってさ、一つ目。花火大会から一週間経ってるのに、まだ録画編集してないの、って思ってなかった?」

    唯「思ってた」

    若君「少しは思うたが、尊のことじゃ、頃合いを見計らっておるのであろうと」

    尊「さすが、いい読みです。あの、兄さんってラジオ体操好きじゃないですか」

    唯「うん、マニアだと思う」

    若「マニア、とは?」

    唯「超好きで夢中でしょ」

    若「ほぅ…ならば、わしは唯マニアでもあるのじゃな」

    唯「えっ?!あ、そうなる?やーん、もう、もう!」

    若「い、痛い」

    尊「はいそこー、叩かない、じゃれない!なんかとっ散らかってるなー。話戻すけど」

    唯&若「どうぞ」

    尊「花火だけより、もっとディスクの容量使おうと思って。体操さ、カセットテープだけじゃなく、毎朝テレビでやってるのを何日か録画しといたんだ」

    唯「へー」

    尊「兄さんがこれがいいって回をいくつか、ディスクに落とそうと。だからギリギリ今日まで溜めといたんだよ」

    若「それは…痛み入る。世話をかけたのう」

    尊「いえいえ。だからこの作業は、お姉ちゃんは関係ないっちゃ関係ない」

    唯「まぁそうかも。もう一つは?」

    尊「うん。さっきの花火のBlu-ray、もう一枚あってさ。こちらで保管する」

    若「先程そう申しておったのう」

    尊「前回は最後に、両親からのメッセージ入れたから、今回は二人にしゃべってもらおうと思って」

    若「そうか。存念…気持ちを伝えるのじゃな」

    唯「わかったー」

    尊「どっちからにする?」

    唯「メッセージからで」

    尊「その心は?」

    唯「お父さんずっとひとりぼっちじゃかわいそうだから、番組の確認になったら私、リビングに戻るよ」

    若「娘の鑑じゃな」

    唯「えへへ」

    メッセージの録画が始まった。

    尊「自然な感じにしたいから、基本流しっぱなしにするし、僕の声も入ると思う。じゃあ、スタート」

    唯「了解~。ん?たーくん、なんか緊張してる?」

    若「あ、あぁ。此処に居らぬ両親に話すとは、些か不得手じゃ」

    唯「いいんだよ、たーくんらしくで」

    若「ならば…此度も、お父さん、お母さんの深い愛情に包まれ、大層幸せな時を過ごしました。心より、礼を申します」

    唯「ん、良かろ。お父さんお母さん、今回も楽しかったよ。ありがとー」

    若「…」

    尊「兄さんまだ固まってる。んー、質問になら答えられます?」

    若「あぁ。済まぬ」

    尊「そうだな…えーっと、もし生まれ変わったとします。永禄がいいですか、令和がいいですか?」

    若「戦を知らずに、末永う幸せに生きる、のは良い」

    尊「でもそれも、戦国時代を生き抜いているからこそわかる喜びですよね」

    若「それもそうじゃの」

    尊「ぬくぬく生きててすみません」

    若「ハハッ、尊が選んでこの先の世に居る訳ではない」

    尊「まぁそうですけど」

    若「穏やかな里で穏やかに暮らせ」

    尊「はい!」

    唯「生まれ変わったらか~」

    尊「あー、そういえば前にさ、生まれ変わりの話で、お父さんにつっかかってたね」

    唯「ん~あったね」

    若「なんと。父に歯向かうなどと」

    唯「いいんだよ、結果オーライだったから」

    若「正解、であったと」

    尊「お姉ちゃんならどっち?」

    唯「たーくんが居る方」

    尊「だよね」

    唯「私さ、もし生まれ変わるなら、たーくんのお母さんになりたい」

    尊「え?妻じゃなくて?」

    唯「うん。でもね、私はずっと生きるよ。たーくんの成長を見守るの。淋しくないように、これでもかーってくらいに、愛情たーっぷりで、守り続けるの」

    尊「へぇ…」

    若「…」

    唯「妻は万が一別れちゃうかもしんないけど、母はずっと母だから、そこは安心だよね」

    尊「いつか別の女性と結婚しちゃうよ?」

    唯「今、この瞬間は私が妻だもん。いっぱい愛して、いっぱい愛してもらって、二人でラブラブのまま長生きするから」

    尊「添い遂げてからの次の世界ね」

    唯「うん」

    尊「えっ!兄さんまた」

    唯「へ?あっ」

    尊「静かだからわからなかったよ、ティッシュティッシュ!」

    若君が、うつむいたまま話す。

    若「尊よ」

    尊「あ、はい」

    若「この顛末を撮っておるじゃろ」

    尊「はい、逐一。嫌ですか?消しますか?」

    若「いや、わしらが持ち帰る方にも、入れてくれぬか」

    尊「なるほど。わかりました」

    唯「たーくん。なんか、ごめん。そんな風になるとは思わなくって」

    若「…末永う、寄り添うてくれるのじゃな」

    尊「鼻声なのが、なんかグッと来るなぁ」

    唯「あったり前でしょ。たーくんを守るんだもん!」

    若「…」

    尊「うわっ!ますます大変な事に!どうしよう~」

    唯「うーん。そろそろ録画、シメちゃおか?」

    尊「そうだね…」

    唯「よーし。はい、たーくん、拭いてね。良い?じゃあ一緒にカメラ見て。お父さーん、お母さーん、じゃあねっ。はい、手振って」

    目元が真っ赤な若君と、笑顔の唯が、ひらひらと手を振った。

    尊「かいがいしい所が母っぽいな。…はい、終了しました。兄さん、大丈夫ですか?」

    若「あぁ。色々済まない」

    尊「感動のるつぼの中、すみませんが…のんびりしてる時間があまりなくって」

    若「そうじゃな。では二つ目の用件に」

    唯「じゃあ、私戻るよ。ディスクだけ持ってきておくね」

    尊「お願いします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days101~15日16時、心に響く声

    若君は、爆睡なんて一生しないかもしれない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯が目覚めた。

    唯 心の声(なんか重い…ありゃ、たーくんがもたれかかってるんだ)

    唯に体を委ねたまま、まだスヤスヤ眠っている若君。

    唯 心(安心して眠ってる。私が守ってるから?なーんて。かーわいい)

    尊が様子を覗きに来た。が、口元に指を当て、シーと言うような仕草をして、そっと離れていった。

    唯 心(サンキュ、尊)

    16時30分過ぎ、ようやく若君が目覚めた。

    若君「ん…」

    唯「起きた?おはよっ、たーくん」

    若「何時じゃ?…なんと、そんなに眠っておったのか」

    唯「ぐっすりだったよ」

    若「幾日も眠ったように感ずる」

    唯「良かった。スッキリしたんだね。私と一緒だったから~?」

    若「違いない」

    唯「嬉しっ。寝れる時は寝ればいいんだよ。できない時もあるでしょ」

    若「そうじゃな…戦場では眠りが浅いからの」

    唯「…」

    若「あぁ、今は忘れておくのであったな」

    唯「うん」

    尊「お目覚めですね」

    覚「おー起きたな。麦茶飲むか?それかアイスクリームでも食うか?」

    唯「麦茶がいいー」

    尊「珍しい」

    唯「なんか、口カラカラで」

    尊「あー、口開けて爆睡してたからね。兄さんもお茶でいいですか?」

    若「頂く。喉はそう渇いてはおらぬが」

    尊「あー、兄さんは熟睡してましたからね」

    唯「ん?言い方、微妙に差つけてない?」

    尊「口開けてたヒトに言われても」

    唯「なにそれー」

    お茶タイム。

    尊「でさ、ごめんお待たせ。花火大会のラスト、今Blu-rayディスクに入れたよ。観る?」

    唯「待ってたよぅ。観たーい!」

    尊「了解~」

    テレビで再生し始めた。

    覚「荷物は、まとめ終わったのか?」

    唯「まだ。今朝買ってきたのもあるし」

    覚「なんだ。これ観たらすぐ始めるんだぞ」

    唯「うん」

    若「わかりました」

    花火が、画面いっぱいにひろがる。

    唯「すごーい、テレビでも大迫力ぅ。良かった観といて。おもナビくんだと画面ちっちゃいから」

    若「声が聞こえてはおらぬか?」

    唯「声?」

    花火観賞中の、唯や若君が驚いたり笑ったりした声も録音されていた。

    覚「…」

    尊「お父さん」

    覚「ん、ん?」

    尊「これ、もう一枚作ったから」

    覚「おー、そうなのか」

    尊「楽しそうな声、いつでも聞けるよ」

    覚「そうか…そうか、ありがとな」

    荷物の準備スタート。リビングの隅にずらっと並べた。

    唯「プレイヤー、イヤホン、カセットテープ、Blu-rayディスク、折り紙、蚊取り線香と線香入れ、写真集、絆創膏、消毒液、とグロス。千羽鶴は別で持ってくから、なんとか入るかな」

    覚「野草の本はいいのか?」

    唯「え、持ってっていいの?」

    覚「唯の本だろ。あるに越した事ないんじゃないか?」

    唯「わかったー」

    若「ありがとうございます」

    覚「その代わりと言っちゃなんだが、今回は戻るのが3分後だから、蓮根のはさみ揚げはないからな」

    唯「いいよー。晩ごはんにいっぱい食べとく」

    美香子が買ってくれたバッグに、荷物を詰め込む。

    唯「入ったー!ひぇ~重いっ」

    若「わしが持つゆえ」

    唯「お願いしまぁす」

    尊「キリがついたよね?あのさ、二人ともちょっと、実験室に来てくれないかな」

    唯「あっそう」

    若「わかった」

    尊「ごめんねお父さん。そんなにかからないから」

    覚「構わんぞ」

    実験室に三人向かいました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days100~15日14時、手に手を取って

    リラックス、存分にしといて欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君は、ソファーに移動した。

    若君「見終えたら、爪を塗り直してやろう」

    唯「やーん、至れり尽くせりぃ」

    並んで座り、写真集を見始める二人。

    唯「プールだぁ、なんかすっごく前な気がするけど」

    若「随分と、色が違うのう」

    自分の腕の色と、写真を見比べる若君。

    唯「ホントだー、こうして見ると、だいぶ日焼けしたってわかるね」

    若「日焼け止めを、塗り過ぎておったからまだ白いのか?」

    唯「んー、そればっかりでもない感じ」

    若「これは」

    唯「あ、オムレツ登場。撮っといてくれたんだ、サービスいいなあ。ん、もしかして」

    ページをめくると、若君の作ったメニューの写真がちょいちょい出てくる。

    唯「お腹空いてる時に見ちゃうと、目の毒になるかも」

    若「皆が食うのに困る事のないよう、励まねばのう」

    唯「これ見て、気持ちを奮い立たせる訳ね。あ、次はバーベキューパーティーだ。これも、楽しかったね」

    若「エリ殿芳江殿と、賑やかに過ごせたの」

    唯「あっ、旅行スタートだぁ、海、海!砂浜キレイ~」

    若「海で泳げたのは貴重な経験じゃった」

    唯「そうだね。あれ?これって」

    若「城じゃな」

    唯「あー、男子城ツアーね。こんな風だったんだー。次が…一緒に行った方のお城かぁ」

    若「おっ、花火じゃの」

    唯「すごーい、キレイに撮れてる!」

    若「写真、とはまことにたまげた物よのう」

    唯「そのまんま写ってるから?」

    若「まるで、その一時の空を切り取ったかの如く、咲き乱れておる」

    唯「観てた時の雰囲気も思い出すよね。花火は、動画も撮ってたけど…あれ、そういえばまだもらってない。尊~!」

    覚「実験室だ」

    唯「あっそう。まぁいいや、行くまでにはくれるでしょ」

    若「おぉ、これは」

    唯「わぁ、ホテルで見た夜景!やっぱキレイ~。色々思い出して…うふふ」

    若「フフッ。ここからは写真館じゃな」

    唯「たーくん、超かわいい!」

    若「…」

    唯「片腹痛い?」

    若「そうじゃな」

    唯「最後は、結婚20年パーティーだぁ」

    若「皆、良い顔をしておる」

    唯「ふー。いっぱい思い出持って帰れるね」

    唯をソファーに座らせたまま、マニキュアとペディキュアを塗り直し始めた若君。

    覚「あい変わらず、いい身分だな」

    唯「たーくんがいいよって言うから」

    若「良いのです。永禄で、もしこのような姿を見られたら、咎められるのはわしの方です」

    尊「そっか、なるほど。兄さんにとっての方が、より貴重なんだね」

    若「然り」

    唯「やっぱしこのセット、持って行こっかなぁ。お母さんに後で聞こっと」

    覚「まだやらせる気か?」

    唯「こっそりと」

    若「ハハハ」

    塗り直し終了。隣に座る若君。

    唯「乾くまでじっとしてると、このまま寝ちゃいそう~」

    若「眠れば良い。肩を貸そう」

    唯「わぁい、ありがと」

    若君にもたれる唯。程なく、寝息が聞こえてきた。

    若君 心の声(あと、少しか…)

    その体勢のまま、天井を見上げたり、飾り棚を眺める若君。

    若 心(極楽浄土、が有るのであれば、まさしく此の地に違いないのじゃが)

    唯の様子を覗く。スヤスヤと安心した顔で眠っている。

    若 心(唯と共にならば、何処へ参ってもその地が幸せに満ちた極楽、と思える)

    若「ありがとう、唯」

    小さく呟くと、ゆっくりと目を閉じた。

    覚「…二人とも、眠ったか?」

    尊「うん」

    覚「ところで、何コソコソとカメラ構えてるんだ」

    尊がデジカメを持ちながら、アングルをあちこち変えている。

    尊「幸せそうに寝てるからさ、ベストショットを、写真集の最後に足しといてあげようと思って」

    覚「そうか。くれぐれも起こさないようにな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days99~15日12時、気持ちも入ってます

    今まで、生物は運ばなかった筈。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君、帰宅。

    唯「ただいまぁ!ごめーん、昼になっちゃってたね」

    覚「いや、大丈夫だ」

    唯「え?なにが始まるの?」

    キッチンの作業台に、ボウルやら海苔やらが用意されている。

    尊「お母さん、とても一緒に昼ごはんは無理なんだって」

    唯「そんなに患者さん、来てるんだ」

    覚「で、サッと食べられるように、おにぎり握ってやろうと思ってな」

    若君「握り飯。お母さんは、里の者に頼りにされておるのですね」

    覚「忠清くん、作ってみる?」

    若「え?」

    覚「僕が握るより、喜びそうだ」

    唯「私もやろっかなー」

    尊「おっ、珍しい」

    唯「令和の思い出に」

    覚「おーいそれは、涙腺が危険になるから言わないでくれよ~」

    唯「いっぱい作ってさ、全員の昼ごはんそれで良くない?ピクニック気分で」

    若「楽しく、という事か?」

    唯「そっ」

    尊「僕もやるよ」

    覚「わかった。じゃあ、手、洗ってきなさい」

    三人「はーい」

    おにぎり作りスタート。

    唯「たーくん、手が大きいのに、いやにおにぎり小さくない?」

    若「大きいと、お母さんが食べにくかろうと思うての」

    覚「さすが。気持ちが行き届いてるな」

    若「唯が食すなら、大きく作るがの」

    唯「どういうコトよ」

    若「そういう事じゃ」

    尊「夫婦漫才?」

    覚「じゃ、この叩いてある梅を、ぐっと中に入れて」

    若「はい」

    唯「この昆布や、おかかも入れていいの?」

    覚「いいぞ。海苔巻くから、どれが当たるかは食べてのお楽しみだな」

    おにぎり完成。ずらりと並んだ。

    覚「お疲れさん。お母さんの所に持ってってくれるか?」

    若「行って参ります」

    クリニック。

    若君の囁き「お母さん、ここに置きますゆえ」

    美香子の囁き「まぁ、ありがとう!もしかして…」

    若 囁き「わしが握りました」

    美 囁き「そうなの!嬉しいわ~」

    若君 心の声(繁盛、と申すべきではないが、多くの民に慕われ、忙しくされておるのじゃな)

    昼ごはんスタート。皆でおにぎりを頬張る。

    唯「1個くらいさ、ハズレ作っときゃ良かった?」

    尊「ロシアンルーレット?怖ぇ。お姉ちゃん、とんでもない物入れそう」

    唯「ちゃんと食べられるモン入れるよ。んー、チョコレートとか?種の入った」

    尊「げっ!やめてくれー」

    若「それは…」

    唯「たーくん、好物でしょ」

    若「いや、さすがに別でいただきたい」

    尊「そういう妙な事言ってると、自分に当たるんだよ」

    唯「えー、やだぁ」

    尊「おいおい!」

    若「困った姫君よのう。ハハハ」

    昼ごはん終了。皆で片付け中。

    尊「あ、持って帰る写真さ、さっきプリントアウトしたから確認してね」

    唯「ありがとう~。花瓶のお花、いっぱい撮ってくれた?」

    尊「もちろん」

    若「さすがに持っては行けぬか」

    尊「生態系を乱す恐れがあるんで」

    若「何じゃ?それは」

    尊「種が落ちたりとか、既存の草花と受粉したりしてはいけないんです。永禄にあってはならない植物ができてしまうので。そういうのは、繁殖力も強いですから」

    若「なるほど」

    尊「兄さんの愛溢れるプレゼント、たくさん撮って残しましたから。じゃあ、持ってきますね」

    若「ありがとう、尊」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days98~15日11時、他人のそら似

    唯のクラスメートだった美沙ちゃんの先祖が、相賀の志津姫だったら、それはそれで一悶着ありそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに移動。

    唯「この大きさだよね」

    若君「然り」

    大きめの折り紙を、幾つかカゴに入れた。

    唯「あとは、いい?」

    若「そうじゃな」

    買い物はすぐ終了。店を出ると、駐車場にキッチンカーが何台か並んでいた。

    若「寄らずで良いのか?」

    唯「え、なんで?」

    若「唯が飛び付きそうな品揃えに思えるが」

    タコスやクレープ、タピオカドリンクもある。

    唯「タピオカ…ううん、いい」

    若「そうか?わしの、おごり、でもか?」

    唯「うん。あれはいらない。たーくんには、超絶カッコよく居て欲しいから」

    若「ようわからぬが」

    唯「なら、自販機でいいからジュースおごってくれる?」

    若「うむ」

    日陰に入り、ジュースを飲み始める二人。

    若「格好良く、と申したが」

    唯「うん」

    若「唯には、情けない姿も晒しておるように思えるが」

    唯「そんな事ないよ。たーくんってカンペキだもん」

    若「いや、そうは思わぬ」

    唯「どんなトコが?」

    若「涙したり」

    唯「いいじゃない。お父さんも、泣くのは恥ずかしくないって言ってたしさ」

    若「そうであろうか」

    唯「永禄で人前で、はちょっとヤバいよねぇ。令和に居るあいだに、わーっと泣いとく?」

    若「今日の内にか?ハハハ」

    唯「涙は、たーくんが優しい証拠だよ」

    若「唯の方が優しかろう」

    唯「えー?」

    若「わしを守る、と出会うた頃から申しておった」

    唯「それは、優しいって言うのかわかんないけど。ううん、やっぱたーくんの方だよ、だって民や兵を守るために、敵に下ったり…敵方の姫と結婚しようとするような総領だもん」

    若「無用な戦は、避けねばならぬゆえ」

    唯「そうではあるけど。あー、あの結婚式さぁ…なんかムカムカしてきたっ」

    若「思い出してしもうたか」

    唯「ぶち壊せて良かったけどさぁ。それにしても、あの相賀の姫、どっかで見たような顔してたんだよね~、今にして思えば。まぁいいけど」

    若「あの婚儀においては、唯の怒りは頷ける。済まなかったの」

    唯「ん、まぁいいよ。そんなに自分を犠牲にしてさ、なかなかできないよ?」

    若「羽木に手出しはさせとうなかった。相賀に与すれば、皆の暮らしを守れたからの。当然の事をしたまでじゃ」

    唯「偉いっ」

    若「褒めてくれるのか」

    唯「ちょっと頑固でわからんちんなトコあるけど」

    若「…」

    唯「あれ?怒った?」

    若「ディスっておるのだな」

    唯「うわっ!使いこなしてるっ」

    若「ハハハ。そろそろ帰るか」

    唯「はーい」

    自転車置き場まで戻って来た。

    唯「また後ろに乗っていい?」

    若「勿論じゃ」

    唯「ありがと」

    若「これからは、疾風に乗せるゆえ」

    唯「うん!」

    唯は荷台に腰をかけ、腕をギュっと若君の体に絡ませた。

    唯「うふふ、たーくんの背中~」

    頬をスリスリ。その様子を、振り向いて見ていた若君。

    唯「わっ、びっくりした!なぁに?」

    若「唯が居る、と思うての」

    唯「え?ちゃんと居るよぉ。消えたりしませんから~」

    若「それは、良かった」

    唯「なぁに?ヘンなの」

    若君 心の声(今宵は満月。わしは…一人ではない)

    唯の温もりと、そこに居る幸せを背中に感じながら、若君はペダルをこぎ始めた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days97~15日10時、輝き続けます

    カバンに入りきるだろうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君「行って参ります」

    唯「行ってきまーす!」

    覚&尊「行ってらっしゃーい」

    着替え完了。出かけていく二人。

    尊「お姉ちゃん、何買うつもりなんだろ」

    覚「土産とか?」

    尊「え、戻るのは3分後だよ」

    若君が運転。自転車に乗る。

    唯「あのね、今から行く所、たーくんは初めての場所だから」

    若「そうか。では道案内を頼む」

    唯「スーパーの向かいだけどね」

    若「ほぅ。ならば参ろうか」

    無事到着。

    若「ここは、何じゃ?」

    唯「薬局だよ」

    若「旅行の折に唯が居った所か?」

    唯「そうそう」

    店内に入る。

    若「この、何とも言えぬ香りは…」

    唯「あー、薬局だからかな。じゃあまず必需品から…あっ、たーくん偉い!ちゃーんと入口のカゴ取ったね」

    若「何を買うのじゃ?」

    絆創膏などのコーナーに来た。

    唯「初めてまぼ兵くん使って、高山を撃退した時にさ」

    若「ハハッ、あの時か」

    唯「その時、たーくん手を擦りむいてて、私持ってた薬で消毒したんだけど」

    若「勿論覚えておるぞ」

    唯「で、そういう消毒液系を買い込もうと思って」

    若「唯は、情け深いおなごじゃの」

    唯「へ?」

    若「戦は無いに越した事はないが、もしやの為に備えをしてくれるのじゃな」

    唯「だって、診察してくれるお母さん居ないしさー、また木村殿にお酒ぶっかけられてもさー」

    若「致し方ない。その頃は足軽小僧であったからのう。されど、速川家が永禄に居れば、戦に負ける気がせぬが」

    唯「えーそれ、言い過ぎじゃない?」

    若「お母さんは医師、として。尊は戦術を考え、お父さんは」

    唯「体力的に、戦は無理だよ?」

    若「飯炊きを」

    唯「ぷっ」

    若「三人共必要じゃろ」

    唯「ははは」

    消毒液や絆創膏の類いを、カゴにわんさか入れた。

    唯「さー、次!」

    若「唯、金は足りるのか?」

    唯「余裕。ちゃんと貯めといたもん。さてと」

    コスメのコーナー。

    唯「あのね」

    若「うん」

    唯「たーくんにキレイって思われたいし」

    若「充分麗しいがの。今も口元は輝いておるし」

    唯「だって、ちょっと塗るだけで、喜んでくれるから」

    若「唯が、より輝く」

    唯「んもう、うまいコト言うんだから。でね、他の色も、と思ったのと、あと同じ物をお土産にしたくて」

    若「土産。三分後に戻るが?」

    唯「この際置いといて」

    若「まあ、唯のする事じゃから、そこまでは驚かれぬが」

    唯「阿湖姫に、買って帰りたいの。よりかわいくなって欲しいし、兄上さんも大喜びするんじゃない?」

    若「そうか」

    唯「ダメ?」

    若「良かろう。そうか…兄上も、口元が輝くのじゃな」

    唯「うわっ、なんかいやらしい。胡乱な考えじゃのー」

    若「唯に言われとうない」

    唯「なんだとぉ、口が過ぎようぞっ」

    若「ハハハ」

    じゃれ合いながら、品物を選んでいく二人。そうこうして、買い物終了。

    唯「よーし、1つ目の任務完了!じゃあスーパーに移動ね」

    若「わかった」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days96~15日8時30分、浄化されます

    おねだりが上手くなっている。
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    尊「おかえりー。あれっ、兄さんなんか様子が…」

    覚「どうしたんだ?」

    唯「ひとまず、座る」

    食卓のそれぞれの席についた四人。

    覚「鶴を折ってくださったのか。そりゃ僕でも泣いて喜ぶな」

    唯「全部で200あるんだって」

    尊「え!それ、千羽鶴完成って事じゃん」

    唯「そうなのー。だからこの状態、わかるでしょ?もー、かわいくってしょーがない」

    若君「取り乱した。済まぬ」

    唯「いいよぉ。だって、嬉しかったんでしょ?」

    若「嬉しかったのもあるが、お二方の話の中で、それぞれ家族が出てこられた」

    唯「うん」

    若「芳江殿は大勢で賑やかな団欒、エリ殿は娘御とのかけがえのない時間が見えた。その様子に心を打たれたのじゃ」

    唯「そっか」

    覚「うんうん、そりゃ良かった。泣けるよね。泣くってな、体に良いんだぞ」

    若「体に、良い?」

    覚「泣く行為で、心も洗い流すというか、浄化されるんだ。ストレスも消える。だから必要。特に君には。何も恥ずかしくないよ」

    若「そうですか。ありがとうございます」

    唯「あ」

    尊「あ?」

    唯「それで、前回のBlu-ray、お涙ちょうだい状態にした?」

    尊「いや、そこまで考えてない」

    唯「そお?でも、向こうでたーくんが辛そうにしてたら、それ観て泣けばいいんだね」

    尊「無理やり?」

    唯「だってー、どうせすぐ色々我慢するもん。無理にでもデトックスだよ」

    若「我慢などと」

    覚「立場上仕方ない時だってあるだろ」

    唯「みんなの前では立派な総領で居なきゃいけない、でも二人きりの時くらい楽にしてあげたい。リセットは大事でしょ?」

    若「唯…」

    覚「私の胸で泣かせてあげる、か。そういう活用方法は悪くないな」

    唯「やーん、胸でなんてぇ」

    尊「何くねくねしてんの。じゃあ、せっかく作ってもらったから、糸通し始めよっか」

    若「そうじゃな。ぜひ完成した品を、お二方にご覧頂きたいしの」

    唯「ん、了解~」

    作業中。

    尊「この箱が、芳江さんの方?」

    唯「うん」

    尊「皆さんで折ったのわかる。形がすごくバラエティ豊かで」

    覚「微笑ましいな」

    唯「みんなの力で、永禄を守れるね」

    若「まことに有り難い」

    千羽鶴、千羽の鶴で出来上がりました。

    唯「やったー!終了!良かったね、たーくん」

    若「あぁ」

    覚&尊「おめでとう~」

    唯「ねぇ、たーくん」

    若「なんじゃ?」

    唯「爪の塗り直しは後にしてさ、持ってきたいなーって物思い出したから、買い物に行っときたいんだけどぉ。昼には帰れるように、自転車でピューっと」

    若「デート、の誘いか?」

    唯「えへへ」

    若「ならば、わしが乗せていってやろう」

    尊「それって…見ようによっては、ただ足に使われてるような」

    唯「気のせい気のせい」

    若「そうじゃ、折り紙も、もう少しあった方が良いやもしれぬ」

    覚「え?持たせるつもりで、買ってあるぞ?」

    若「大きい紙を、持ち帰りたいのですが」

    覚「あー。それはごめん、ないわ」

    若「戻ったら、わしが皆に、お母さんに教えを乞うたようにしとう存じます」

    覚「ふんふん、教えやすいように大きいのがいいんだね」

    尊「みんな巻き込んでやるんだ。壮大になってきたなぁ」

    唯「決まりっ。じゃあ着替えよーっと!どうしよっかな、今日は例のニットとジーンズにしよっかなー。たーくんそのままで行く?」

    若「いや、このなりでは…」

    朝稽古の格好のまま、上は白Tシャツだが、下はジャージ姿の若君。

    尊「こなれてる感出てて、悪くないと思うけどなぁ」

    覚「それにサンダル履きだと、ちょいワルっぽい感じだな。意外に似合うかも」

    唯「たーくんはなんでも似合うけど」

    若「ならぬ、これでは唯を伴えぬ。着替えて参る」

    唯「そう?」

    覚「さすが、紳士だな」

    二人、2階へ上がって行った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days95~15日8時、心通じ合う

    いろんな人の気持ちが、集まりました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    芳江「私達、若君にお渡ししたい物があるんです」

    若君「え?」

    二人、手に箱や紙袋を持っている。そこに唯がやって来た。

    唯「呼んだ?なぁに、なんかイベント?」

    エリ「押し付けがましくて、どうかと思ったんですけど」

    芳「少しは、足しになればと思いまして」

    それぞれ、中を見せる。カラフルな何かが入っていた。

    唯「あっ、えっ!もしかして、折り鶴?!」

    若「鶴!」

    唯「いっぱいあるー」

    エ「100羽ずつあります。二人で200ですね。少しはお助けできたかしら?」

    若「…」

    唯「200!たーくん、800作ってあるからちょうど1000…千羽鶴になったよ!ねぇ、ねぇ良かったね!」

    エ「まあ!そうなんですか!」

    芳「良かったわ~作った甲斐がありましたね」

    若「これは…」

    唯「お母さんが頼んだの?」

    美香子「まさか。全然知らなくて。お二人のご厚意の賜物よ」

    芳「勝手に、始めちゃいました」

    若「勝手など、そのような…」

    美「折り紙さ、ここにしばらく借りてたじゃない」

    唯「うん。仕事のモチベーションあげるって言ってたね」

    美「それをご覧になって、同じ物を買いに行かれたそうなの」

    唯「わざわざ合わせてくれたの?!」

    芳「若君の志に感動して、私達も出来る所まで頑張ってみましょう、できれば100羽ずつ、と約束しまして」

    エ「でも、無事ノルマが達成できました」

    若「それは…」

    美「忠清くん」

    若「は、はい」

    美「お礼を言う前に、お二人のお話を聞いてあげて」

    若「そうですか。わかりました。お聞かせ願えますか?」

    唯「お母さん」

    美「ん?」

    唯「泣いてるの?」

    美「え?私の事はいいから。さ、芳江さんからどうぞ」

    芳「はい。私は、家で一人コツコツと折ってたんですが、息子達が帰省してきた日、うっかりやりかけの状態で出しっぱなしにしてまして」

    若「はい」

    芳「息子にこれ何と聞かれ、勤め先のお婿さんが今頑張ってるからって話をしたら、じゃあみんなでやれば早いじゃない、となりまして」

    唯「へー、なんか楽しそう」

    芳「楽しかったです。もうじいちゃんからお嫁さんから孫からてんやわんやで。で、あっという間に出来上がりました。それで、私は若君にお礼を申し上げたいんです」

    唯「逆に?」

    若「わしに、ですか?」

    芳「折っている間は、テレビもスマホもゲーム機器もなく、手作業しながら語り合うだけの団欒の時間でした。孫に張り切って教えるおじいちゃんとか嬉しそうで…。若君のお陰でそんな時間がいただけました。ありがとうございました」

    若「いえ、そのような…」

    エ「私も、いいですか?」

    若「あ、はい、お願い致します」

    エ「私も一人コツコツと進めてまして。孫達が帰省した日も、夜、みんなが寝静まってからキッチンで折ってたんですが、嫁に行った娘が、何してるの?と顔を出しましてね」

    唯「服作ってあげてた娘さん?」

    エ「そうです。で、若君の話をしたら、じゃあ手伝うよとなりまして。一緒に仕上げました。私も、若君に感謝してるんですよ」

    若「それは、何ゆえでしょうか」

    エ「私の子育てが終われば娘の子育てが始まりで、二人きりでゆっくり話すなんて、いつ以来だったか。静かな夜、手仕事しながら色々話が出来て、とても穏やかで嬉しい時間だったんです。そんな機会を与えてくださって、本当にありがとうございました」

    唯「なんか、いい話ばっかだね。お母さんは先に聞いてたんだね」

    美「そうなのよ」

    エ「余談なんですが、若君…ではなくもちろん私も、勤務先のお婿さんと言いましたけど、どんな人?と娘に聞かれたので、あの、バーベキューの際に、写真撮らせていただいたじゃないですか」

    唯「エリさんも芳江さんも、たーくんと二人で撮ってたよね」

    芳「宝物です~」

    エ「私もです。で、それを見せたら、ちょっと!こんなイイ男が受け取ってくれるの?!って、俄然ヤル気が出たらしく、結果、その晩に完成した次第です」

    唯「ははは~」

    美「やっぱり、若君はいろんな人を幸せにする天才だと思うな」

    若「いや…痛み入ります」

    若君は、サッと床に座り、両手をついた。

    エ「えっ」

    芳「あららら」

    慌てて正座するエリと芳江。唯と美香子も、同じく正座した。まず芳江の方に正対した若君。

    若「芳江さん、家族の皆様共々、わしの為に時間を割いて頂き、心より礼を申します。ありがとうございました」

    芳「いえいえ、そんな、恐縮です」

    向き直り、エリと正対。

    若「エリさん、心より礼を申します。娘殿にも直々に礼を申したい処ですが、くれぐれも宜しくお伝えください。まことに、ありがとうございました」

    エ「そんなご丁寧に。娘に伝えますね」

    床につく程深く頭を下げる若君。中々上がらない。

    エ「まあ、お願いですから、もうお顔を上げてください」

    芳「充分、お気持ちはわかりましたから」

    ようやく顔を上げたが、

    唯「あれっ、たーくん、涙目…泣きそう?」

    美「あらら」

    唯「あのさ、もう行こっか?お母さん達そろそろ準備あるし」

    若「そうじゃの…」

    唯「じゃ、エリさん芳江さん、ありがとうございました!鶴もらってくね」

    美「うん」

    唯と若君がクリニックを後にした。

    美「あー危なかった。もう少しでもらい泣きする所だったわ」

    芳「あんな若君、初めて拝見しました」

    エ「驚きました」

    美「実は彼、意外と涙もろいのよ」

    芳&エ「そうなんですか?!」

    美「うふふ。さっ、じゃあお仕事モードに戻りましょうか」

    芳&エ「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: アシガール掲示板
    差し出口をお許しくだされ

    妖怪千年おばばさんの質問はてんころりん様あてですが、朝通勤途上でチラっと見まして。すぐ答えられたんですが、ちょっと遠慮しておりました。でも大分お時間も経っておりますので、代わりにお答えします。

    美沙ちゃんは、志津姫で正解です。静姫で検索すると出てきません。

    あと一週間くらい後に、私が創作倶楽部に投稿予定のお話の、導入部に書いております。

    お邪魔いたしました。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days94~15日木曜6時、新しい朝が来た

    いよいよですが、明るく。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    庭の雀が、騒がしい。

    若君 心の声(朝、か)

    そっと瞼を開く。すると、

    若君「なんと」

    唯「おはよっ、たーくん」

    腕の中の唯に、じっと見つめられていた。

    若「起きておったのか」

    唯「うん。へへー、たーくんより早く目が覚めたから、かわゆい寝顔を見てた」

    若「そうか。それはちと片腹痛いのう」

    唯「え!お腹痛いの?大丈夫?!」

    若「いや、多分唯が思うておるような意味合いではないが…」

    唯「調子悪いんじゃないんだね?後で尊に意味聞こっと。あのね」

    若「ん?」

    唯「すっごくよく眠れたよ。昨日とは全然違った。たーくんが守ってくれてたからかな」

    若「それは良かった」

    唯「安心、だった」

    若「安心か。これから先も、唯がそう思えるよう励む所存じゃ」

    唯「ありがと」

    二人、起き上がる。

    尊「片腹痛いはね、恥ずかしいって意味だよ」

    唯「わっ、びっくりした!盗み聞き?」

    尊「まあまあ大きな声でしゃべってたけど」

    唯「そうだった?」

    若「わしが最後に起きたのか。不覚じゃな」

    尊「そんな時があってもいいんですよ。今朝は、雀の大合唱で起きちゃいました」

    唯「確かにちょっとうるさいくらいだったね」

    尊「あれが全部お姉ちゃんかと思ったら、うるさいのは納得だったよ」

    唯「ちょっとー、たーくんはかわいいって意味で、私は雀みたいって言ってるんだから!」

    若「ハハハ」

    唯「え!もしかして、そっち?!」

    若君の朝稽古も終わり、そろそろ体操の時間。五人揃った。

    若「家族皆では、初めてじゃの」

    美香子「嬉しいわ~」

    覚「いい記念になるよ」

    唯「よーし、張り切っていこー!」

    尊「もっと早い内から、張り切るべきじゃなかったの」

    体もすっかり目覚めた。朝ごはん。

    唯「なんか、気分爽やか~」

    覚「早起きの良さにようやく気づいたか」

    唯「ご飯もおいしい!炊きたてのご飯、あったかい味噌汁、うーん幸せ」

    若「そうじゃのう…」

    美「あらら、考え込んじゃった。ごめんね、最後の朝なのに、私が仕事だからバタバタしてるけど」

    若「いえ」

    尊「今日は患者さんいっぱいで、忙しそうだよね」

    美「そうね~。お昼ゆっくりは食べられないかも」

    食後。

    唯「そろそろ、落とさなきゃねー」

    尊「あー」

    マニキュアが塗られた指先を見つめる唯。

    若「いや、そのままで良い。なんなら、塗り直してやろう」

    唯「いいの?」

    尊「3分後にしては、激変じゃないですか?」

    若「構わぬ。唯に関しては、多少の変化は誰も驚かぬゆえ」

    尊「急に居なくなったり現れたりするし?」

    若「ハハハ、そうじゃな」

    唯「マニキュアセット、向こうに持ってく?」

    若「それは、どちらでも良いが」

    唯「ふーん」

    若「戻った後、唯の指先を見れば、この日々は夢ではなかった、と思えるからの」

    尊「ある意味、お土産ですか」

    若「そうとも言えるのう」

    唯「そっか。じゃあ部屋から持ってくるね」

    唯は2階に上がっていった。

    覚「まだ8時だもんな。今朝は色々順調だ」

    尊「そうだね。でも今日は一日長く過ごせる方がいいよ」

    バタバタと足音がした。廊下を走って来た、白衣姿の美香子。

    覚「何だ?どうした?」

    美「忠清くん!」

    若「はい、お母さん。どうされましたか」

    美「ちょっと、いらっしゃい。唯は?」

    尊「2階」

    美「そう。戻ったら、クリニックに来るよう言って」

    尊「うん。何慌ててるの?」

    美「はい、さあさあ」

    若「はい…?」

    クリニックに入る若君。

    若「おはよう、ございます」

    芳江とエリが、笑顔で待っていた。

    芳江「おはようございます」

    エリ「おはようございます。あら、また一段と日に焼けてらっしゃらない?」

    若「そう…ですか?お二方共、息災のようで何よりです」

    芳「まぁー、気にかけていただいて」

    エ「嬉しいわ~」

    若「それ、で?何の御用でしょうか?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days93~14日21時、背中で語ります

    お月見ミッション最終章。昨日の満月は、拝めました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    身を焦がすような恋に落ちたら、どうする?尊。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    家族全員で、スイカを食べている。

    唯「尊」

    尊「何」

    唯「好きな人とか、いないの?」

    尊「何だよ唐突に。居ないよ。もし居たとしても、ここで発表すると思う?」

    美香子「え、居るの?」

    尊「ないない。僕はその点、茨の道が待ってるんだ」

    若君「何ゆえ?」

    尊「相当信用の置ける人物じゃないと、家の事情が話せない。これは男女関係なくだけど」

    覚「ふむ」

    尊「まずタイムマシンの話を口外しない人。次に、お姉ちゃんがなぜここに居ないかも、同じく秘密に出来る人。前途多難でしょ。友達が出来たとしても、家には連れて来れないよ」

    若「そうか。済まない」

    尊「わっ、なんで。一番謝る必要のない兄さんが」

    若「わしがこうして此処に居られるのも、そうした犠牲の上に成り立っておるゆえ」

    覚「タイムマシンに関しては、出来た時点で、唯や忠清くんの事がなくても、情報管理は自己責任だ」

    尊「そうだね。文句言ってる訳じゃないですから、兄さん」

    若「そうか」

    美「いいわねぇ、新婚旅行どこに行く?じゃなくて、どこの時代に行く?ができるんだ」

    唯「えー、うらやましい~」

    尊「何だよその、いろんな事を全部すっ飛ばした超楽観的な意見は」

    全員「ハハハ~」

    引き続き食卓で、ババ抜きがスタート。

    尊「お父さん、兄さんの隣は手強いよ」

    覚「そうなのか?攪乱させる?」

    若「そうかのう」

    美「戦術としてはさすがよね」

    何回戦も行うが、

    覚「しれっとジョーカーがやってくる」

    尊「でしょ?」

    唯「だって、たーくんすぐ引いてくんだもん」

    尊「そっか、お姉ちゃんに回ってくると、兄さんはつい引いちゃうんだ。やっぱり妻には弱いと」

    若「そうじゃな」

    唯「えー?」

    夜も更けてきた。

    美「私、そろそろ寝るわね。明日に差し支えないように」

    唯「じゃあもうおしまいにする?」

    美「いいのよ、まだ遊んでてちょうだい。みんながワイワイやってるの聞いてたいし」

    唯「そうなんだー」

    美「では、お先に」

    覚「悪いな。じゃ、おやすみ」

    若「おやすみなさい」

    唯&尊「おやすみー」

    一番遠い位置の布団で眠った母。食卓では引き続き、神経衰弱がスタート。

    唯「お父さん、全然取れないじゃん」

    覚「記憶力って、こんなにないものなのか」

    尊「年のせい?」

    覚「それは言うな」

    唯「お酒飲んどけば言い訳できたのに」

    覚「それも言うな」

    若「ハハハ」

    覚「ん?なんだ、もう1時じゃないか。さすがにそろそろ寝るか」

    唯「お父さん、一回も勝ってないけど。いいの?」

    覚「いい。次にやるまでに、記憶力鍛えておくよ」

    尊「前向きだなあ」

    若「素晴らしき志じゃ」

    唯「布団、どこが誰?」

    覚「僕は決まってるだろ?キッチンに一番近い所」

    尊「じゃあ真ん中の3枚だから…よし、僕がお父さんの隣、兄さん、お姉ちゃんだな」

    覚「その心は?」

    尊「二人はくっついて寝たいでしょ。でもラブラブが隣で繰り広げられたらお父さんには刺激が強いから、僕を挟む」

    唯「たーくんが真ん中なのは?」

    尊「兄さんがこちら側の方が、体の大きさから考えて、イチャイチャが見えにくい。お母さんからは丸見えだけど、どうせキャッキャ喜ぶだけだから」

    唯「あんた、よく平気な顔で解説できるよね」

    尊「平常心を保つ術を、僕は身に付けたのであった…」

    若「尊が、戦で陣に居ると、良かろうにのう」

    尊「え!いやいや、無理です!」

    唯「すぐに失神とかして、くたばってると思うよー、使えないよー」

    尊「うん、それは反論できない」

    若「そうかのう」

    覚「はいはい、よくわかったよ。その案採用する。さ、寝るぞ」

    消灯。

    覚「おやすみー」

    唯&若&尊「おやすみなさい」

    寝静まった深夜。ふと目覚めた尊が右を向くと、若君は唯側を向いており、背中だけが見える。

    尊 心の声(ん、正解でした)

    左向きに体勢を変え、尊は目を閉じた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日は令和最終日。

    14日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days92~14日17時、温もりも忘れない

    先月の中秋の名月は、雨雲に阻まれ…
    一昨日も今日も、美しい月を拝めたのに…
    昨日の十三夜は、居場所さえわからない程全く見えず(T_T)
    明日の満月は見られそう。期待します。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    カウントダウンが、始まっています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「なにこの袋、めっちゃ重いー」

    覚「スイカも買ってきた。半分だが」

    唯「どおりで」

    全員揃った。買い物袋の中身を食卓に並べている所に、別の袋が登場。

    美香子「見て、これ。良くない?」

    唯「ショルダーバッグ?大きいね」

    美「これで荷物持ってって貰おうと思って。リュックの代わりね。紙袋では無粋だから、探したの」

    唯「えーありがと~。蚊取り線香入れとか重たいもんね」

    美「お坊さんが荷物入れるのに使う頭陀袋ってあるんだけど、それ風だから向こうでも使えるかなと思って。あ、千羽鶴は別で風呂敷に包んであげるから」

    若君「ありがとうございます、お母さん」

    美「そろそろ荷物、まとめ始めなさいね」

    唯「うん」

    食卓にホットプレートが鎮座した。

    覚「そろそろ、肉も野菜もいいぞ」

    全員「いただきまーす!」

    美「あれ?お父さん、こんなメニューなのに、アルコールはいいの?」

    覚「うん。僕今日、やりたい事が二つあってさ」

    唯「二つ?」

    覚「一つは、忠清くんにマッサージしてもらう事」

    美「あ、それは私もお願いしたいわ」

    若「喜んで承ります」

    覚「お願いするのは今日で最後にするよ。明日帰る前に労働させても何だからな」

    美「そうね」

    若「そうですか」

    尊「もう一つは?」

    覚「海行った時さ、みんなトランプやってたよな?」

    尊「うん。酔っぱらいの動向を気にしながら」

    覚「帰る前に、僕も一緒にやりたい」

    唯「へー。いいよぉ。やろうやろう!」

    美「飲んでないから、布団につまずく心配もない?」

    覚「まあ、そういう事だ」

    美「じゃあ、ご飯食べ終わったら順番にお風呂ね。あ」

    唯「なに?」

    美「あなた達は、いいか」

    唯「え?入る入る」

    尊「顔のキラキラ消えてるよね」

    唯「それは置いといて」

    覚「ん、まぁいいんじゃないか?ハハハ~。じゃ、今日も男三人で行くか?」

    若「はい」

    唯「なんか、ゴキゲン?」

    尊「実は飲んでるんじゃないの」

    男子、風呂上がり。

    覚「あ、悪かったな。布団敷いといてくれたんだ」

    唯「掛布団出してないから、軽かったんで」

    美「じゃ、女子はお風呂行ってきまーす」

    尊「行ってらっしゃーい」

    覚「さて、と」

    若「では、早速」

    覚「うん…」

    若「お父さん?どうされましたか」

    覚「あぁ。最後って思っちゃうと、こみ上げるものがあるよ。明るく振る舞わないと、ちょっとね」

    尊「なるほど、そういう事だったんだね」

    若「…」

    覚「またいつか、頼むよ」

    若「はい!では精一杯、させていただきます」

    尊「じゃあ僕、残りの千羽鶴に糸通しとくよ」

    若「済まぬ」

    尊「いえいえ」

    全員揃いました。

    唯「尊、ありがと。手伝うよ」

    若「では、お母さんどうぞ」

    美「ありがとう。可愛いい息子とのスキンシップも、これで最後ね~」

    尊「別の意味で残念がってるな」

    美「尊、針と糸、よく似合ってるわよ」

    尊「なんだよそれ。そうやって、雑巾でも縫わせようとしてない?」

    美「バレたか」

    全員「ハハハー」

    マッサージ終了と同時に、糸通し完了。千羽鶴800羽分、十六束完成。

    唯「拍手ー、パチパチ~」

    尊「やったね」

    美「おめでとう、忠清くん」

    若「色々難儀をかけました。ありがとうございました」

    覚「では、完了記念に」

    唯「なに?」

    覚「スイカ切るか」

    唯「食べる食べるー!」

    尊「トランプ取ってくるね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days91~14日13時、甘くていいのです

    だって貴重な時間だもん。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「ただいまぁ」

    若君「ただいま戻りました」

    尊「おかえり。わっ、お姉ちゃんが埋もれてる!」

    美香子「お帰り~、まあ!なんて綺麗なの!」

    覚「立派な花束だなー。素敵なプレゼントだ」

    唯「うん!」

    美「ホントね~。でもずっと外にあったからかな、ちょっとしなっとしてるわね。すぐ花瓶に移しましょ」

    若「手伝います」

    美「ありがとね。…あら」

    若「何か?」

    美「ううん。うふふ、とっても熱ーい時間を過ごしたのね」

    唯「なにその、見てたかのような」

    美「強く擦ると肌を痛めちゃうから、お風呂までそのままでいいわよ」

    若「え?」

    唯「なんの話してるの?」

    尊「どれどれ。あ、あー」

    美「尊、科学的に説明してあげて」

    尊「え!科学的って。僕が言うの?!ハードル高いよ~」

    唯と若君に、なになに?と見つめられる尊。

    尊「うわっ。えーとですね、化粧品の成分って、色は比較的早く落ちるんだけど、光らせる成分は粒子が細かい物も多く、肌に浸透しやすくて」

    唯「難しい」

    尊「だって科学的にって言うから。だからさぁ、もうぶっちゃけ、兄さん、口のまわりがキラキラしてるんだよ」

    若「そうなのか?」

    唯「あ。よく見たらラメってる」

    尊「そうなるって事は、はみ出る程激しく…わー、もう勘弁してください!」

    若「なん、と…」

    唯「そ、そんな甘いワナがあるなんて」

    美「だから擦っちゃ駄目って。はい、花束ほどくわよ」

    両親が昨日受け取ったのと、今日のと、二つ花瓶が並んだ。

    唯「豪華~」

    美「お花はいいわね~」

    覚「はい、お待たせ、出来たぞ」

    唯「わっ、なに今日の昼ごはん!めっちゃ映えてるじゃん!」

    若「パン…ですか?」

    覚「フレンチトーストにした。ゆっくり用意出来たしな。お洒落だろ?」

    唯「うん、めっちゃオシャレ~」

    覚「はい、座ってー」

    昼ごはんスタート。

    唯「甘くておいしーい」

    覚「だろ?」

    唯「で、夜ごはんはなに?」

    覚「今聞くのか。このメニューを前に。まぁ、すっかり元気な証拠だな。焼肉にしようかと思ってる」

    唯「焼肉!」

    覚「ホットプレートでだけどな」

    美「昼、ちょっとしたら買い物に行くわね」

    唯「早くない?」

    美「お肉以外に買いたい物あるのよ」

    唯「そうなんだ。みんなで行く?」

    美「ううん、お父さんと行ってくるから」

    覚「尊はどうする?」

    尊「ついてっていい?僕も買いたい物ある」

    唯「へー」

    尊「ちょうど二人きりになっていいだろうし。理解ある弟なんで、邪魔はしない」

    唯「なによそれ~」

    三人を玄関で見送る。

    唯「帰りはどのくらい?」

    美「4時は過ぎるかな」

    唯「わかったー」

    覚「じゃあ忠清くん、留守番、頼むね」

    若「留守の番。承知つかまつりました」

    ドアが閉まった。

    唯「しばらく二人きりだねっ。うふふ」

    若「うむ…」

    若君が、立ったまま考え込んでいる。

    唯「どしたの?」

    若「家の何処に、控えておるのが良いのであろうか」

    唯「はぁ?控えるって…居場所って事?どこでも好きな所に。え~私てっきり、このまま部屋にさらわれて…やーん」

    若「唯は部屋に居れば良いが、わしは留守を守る為、下に居った方が良かろう」

    唯「え、もしかして…ずっと家の中を見張ってるつもりなの?」

    若「留守の番を任されたからには、全うせねばならぬ」

    唯「え、えぇ~?!留守番って初めてじゃなくない?」

    若「家に一人になった事はあれど、院は開いておったゆえ」

    唯「あぁ、完全にお父さんもお母さんも尊も居ないのは初めてなのね。って、違う~!」

    若「何が違うと申す」

    唯「今、玄関の鍵かけたじゃない。そう簡単に誰も入って来ないから!」

    若「それもそうじゃの」

    唯「もちろん、侵入者には気をつけなきゃいけないし、例えば火事とかならないように注意はするけど、ずっと見張ってなきゃならん、とかないの。ねっ、だからなにしててもいいから」

    若「そうか。わかった」

    唯「あーびっくりしたっ。まっ、そういうトコがたーくんのイイ所だけどね」

    若「…ならば」

    唯「はい?」

    若「まずは風呂に入るか」

    唯「へ?!きゃっ」

    ひょいと、あっという間に抱き上げられた唯。

    唯「あのぅ…」

    若「なんじゃ?」

    唯「いきなりの展開、早くないすか?」

    若「そうと決まれば、待てぬ」

    唯「出た!今褒めたばっかなのにこのヒトっ」

    若「4時過ぎには戻られるしの」

    唯「そんな計算まで!」

    若「嫌ならば降ろすが」

    唯「やだー、降りません」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夕方まで、ご自由に。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days90~14日11時、ゆらーりゆるーり

    見上げる空は、どの時代も変わらない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自転車を引きながら、ゆっくり歩く唯と若君。

    唯「スーパーは何度も行ったから、道わかったんだね」

    若君「帰り、詰めが甘かったがの」

    唯「まぁ無事会えたし。お花、買い方わかってた?」

    若「昨日見たように、これだけで作って欲しいと所望した。財布にあるだけ出した」

    唯「えっ!使い切っちゃったの?」

    若「少しは残っておるが」

    唯「この大きさだから、どーんと出したのはなんとなくわかる。そんなに稼いでたんだ…他になにか注文したの?」

    若「花の名がわからず、唯がどの花が好みかもわからなかったゆえ、とり混ぜて入れてくれと申した」

    唯「あー、だからこんなに色とりどりなんだね。お花畑みたいで、すっごく好き」

    若「それは良かった。そういえば、店の者が申しておったな」

    唯「なんて?」

    若「おまけします、と」

    唯「あはは、そうなんだ~。えー、どれがおまけかわかんなーい」

    遊具のある場所まで来た。

    唯「あっ珍しい、ブランコ空いてる。乗ろっ」

    ブランコの前に自転車をとめた。

    唯「たーくん、座って」

    若「ここに腰掛けるのか」

    唯「足ぶらーんってして」

    若「ほぅ。揺れておるが」

    唯「押しまーす、それぇー」

    若「おぉっ」

    ギーコギーコ、大きく揺らす唯。

    若「中々楽しい物よのう」

    唯「でしょ?私も乗るー」

    隣でこぎ始める唯。

    唯「ひゅ~」

    若「自分でも動かせるのか。やってみる」

    二人、同じくらいの高さまでこいでいる。

    唯「たーくん、さっすがぁ。さてと」

    ぴょーん、と飛び降りた。

    若「なんと」

    唯「あ、たーくんはやっちゃダメだよ。慣れてないから」

    また、若君の後ろから押してやる唯。

    唯「たーくん、帰ったらさ、また色々考えたり、背負ったりしなきゃいけないじゃない」

    若「そう…じゃな」

    唯「あとちょっとしかないけど、今くらい、こんな風にゆるーく過ごして欲しいな」

    若「そうか。忘れている時間、も必要かのう」

    唯「そゆこと」

    若「ありがとう、唯」

    若君は、揺られながらずっと空を見上げていた。やがて、ブランコが止まる。

    唯「失礼しまーす」

    若「ん?」

    ブランコに座る若君を、後ろから包みこむように抱き締める唯。

    唯「大丈夫、技かけたりしないから」

    若「ハハハ」

    公園の時計が、12時30分を指している。

    若「そろそろ帰るか」

    唯「はい」

    若「しかしこの、ブランコと申す物、中々良いのう」

    唯「作っちゃう?緑合って木に囲まれてるから、いい感じに伸びて丈夫な枝、いっぱいあるよ?」

    若「そのような。登って確かめぬと、丈夫かはわからぬが」

    唯「びくともしなかったけどね」

    若「なんと!いつの間に。困った姫君じゃ」

    立ち上がる若君。

    唯「…ねぇ」

    若「なんじゃ?」

    唯「ちょうどお昼だからかなぁ、右見て誰も居ません、左見て誰も居ません」

    若「それが何か?」

    唯「えーとぉ」

    若「公共の場で?」

    唯「うっ。すいません、調子に乗りましたっ」

    若「ハハハ」

    唯のイヤリングに触れる。

    若「懐かしいのう」

    唯「今まで忘れてて。良かったよ、帰るまでに連れて来れて」

    手が耳から顎へ。そのまま上を向かせ、そっと口づけた。

    若「帰るぞ」

    唯「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days89~14日10時、止まらない!

    眩しくて、直視できない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ひとり、途方に暮れる唯。

    唯「はっ!たーくん、一人で行動した事なんてないじゃない!どこに行けるっていうの…家に帰った?電話してみる?…って、このスマホ電話できないんだった」

    自転車が出て行った、公園入口の方をじっと見つめる。

    唯「信じて待つしかないか…あぁでも、事故にでも遭ってたら、どうしよう!」

    そのままベンチに座り続けていたが、

    唯「ダメだ、待てない!」

    公園入口まで、移動してきた。

    唯「こんなに車が走ってる…大丈夫かなあ。どこに行ったの?」

    その時、背後でブレーキの音がした。振り向くと、

    若君「ここに居ったのか、探したぞ」

    唯「たーくん!」

    自転車を降りて走ってきた若君。駆け寄り、若君の体を叩いて怒り出す唯。

    唯「バカ、バカっ、すっごく心配したんだから!」

    若「済まない」

    唯「居ても立ってもいられなくて、ここまで出てたの」

    若「そうか」

    唯「ベンチに居なかったのはごめんなさい。でもなんで、向こうから来たの?」

    若「戻る時に、道に迷うて」

    唯「えっ!」

    若「わからず走っておったら、公園が見えた。近付いたら裏門であったゆえ」

    唯「もうっ、無事着いたから良かったものの!いったい、どこに行ってたの?」

    若「あ、あぁ」

    自転車に戻り、手に何かを抱え、唯の元へ歩いてくる。

    唯「…えっ!」

    若「唯」

    あまりの驚きに、目を丸くし固まった唯。若君が、前に跪く。

    唯「…」

    若「悲しませて、済まなかった」

    唯「…」

    若「受け取って、欲しい」

    唯「あ、ありがとう…すごい、すごいキレイなお花…」

    夏の王子様から、両腕いっぱいの花束を受け取った姫。

    唯「いい香り…」

    若「その顔じゃ」

    唯「え?」

    若「両親に買うた際、同じ顔をした」

    唯「そうだった?」

    若「愛らしゅうて、もう一度見たいと思うて。で、自分も欲しいと申しておったゆえ、買うて参った」

    唯「嬉しい!それ、尊と話してる時のほんの一瞬の事だったよ?覚えててくれたんだ。でもなんで今?」

    若「一刻も早う、笑うて欲しくて」

    唯「そう、なんだ。もー、びっくりしたよ?」

    若「淋しい思いもさせてしもうたしの」

    唯「あ…」

    若「両親に咎められた。強くは申されなかったが。鶴ばかりではならぬとな」

    唯「…」

    若「唯を大切に思うのは、今までもこれからも変わらぬ。済まなかった」

    唯「たーくん…」

    黒羽城公園と書かれた入口の石碑。唯は持っていた花束を、そっと立て掛けた。

    唯「たーくん!」

    立ち上がった若君に、駆け寄る唯。両手で顔を包んだ。

    若君 心の声(また頬を引っ張るのか?あっ)

    引き寄せられ、一瞬の内に、唇を奪われた。

    若 心(!!)

    しばらく続いたが、若君は、動揺が隠せない。

    若「唯、此処は公共の…」

    唯「ギュってして」

    若「え?」

    唯「ギューって、して!」

    再び塞がれた唇。若君は、戸惑いつつも強く強く抱き締めた。

    唯「…」

    若「…」

    抱き合ったまま、見つめ合う二人。

    唯「ごめんね」

    若「何を謝る」

    唯「今まで、公共の場所だからダメって、ずっと避けてたのに」

    若「そうじゃの。しかも此処は…往来じゃ」

    すぐ近くで、車も人もひっきりなしに行き交っている。

    唯「もうね、たーくんしか見えなかったの」

    若「フフッ」

    唯「え?」

    若「それを申すなら、わしはとうの昔から、唯しか見えてはおらぬ」

    唯「え。ふふっ」

    若「ハハハ。このままでは目を引いてしまう。中に戻るか?」

    唯「はいっ」

    若「良い返事じゃ」

    自転車の前カゴに花束を乗せ、二人は公園内に戻って行きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days88~14日9時、わかって欲しいのに

    事実と向き合うと、そういう答えにはなる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「鞄は、今日も私のを使うから」

    小さめのショルダーバッグを斜めにかけて、完成。

    若君「昼には、戻ります」

    覚「弁当作りゃ良かったか?ゆっくりできたろうに」

    唯「ううん、家で食べるから」

    覚「帰るのは、1時位でいいからな」

    唯「ありがと。じゃ、行ってきまーす!」

    玄関のドアが閉まった。

    覚「一件落着か」

    美「なんとかね…ふぅ」

    尊「ため息?」

    美「んー。忠清くんも完璧じゃないな、って。折るのを何よりも優先しないでね、って最初に釘刺しといたんだけど」

    覚「つい、力が入ったんだろ。戦のない世界は、彼の切なる望みだしな」

    美「まぁ、丸く収まって良かったわ」

    覚「彼自身が、ちゃんと気付けたからいいんだよ」

    尊「そこは、さすが兄さんなんだな」

    その頃。自転車に乗る二人。

    若「遠乗りと言っても、いつもの公園じゃが」

    唯「全然OKだよ」

    若「では姫、後ろに」

    唯「はぁい」

    横向きにちょこんと座り、右腕を若君の体に巻きつけ、右頬を背中に押しあてた。

    若「それでは、出立いたす」

    唯「出立~」

    黒羽城公園。

    若「墓を見に行っても良いか?」

    唯「あー。今の時期は墓参りね」

    見つかった当時、ひっそりと竹林の隅にあった若君の墓は、今では周りが整備されている。

    唯「たーくんのお墓は市の物だから、ちゃんと定期的にキレイにしてもらえるからね」

    若「そのようじゃな」

    公園内。日陰になるベンチに、並んで座った。

    唯「雨宿り以来だね」

    若「そうじゃな。何か飲むか?」

    唯「ふふっ、まだいいよ。たーくん」

    若「ん?」

    唯「今朝は、ごめんね」

    若「何を申す。わしこそ、守ってやれず済まなかった」

    唯「気持ちだけで嬉しいよ。あのね」

    若「うん」

    唯「超、超、超好き」

    若君が、唯の方に体の向きを変え、ふわりと巻いた髪に触れる。

    若「わしも、心から想うておる」

    唯「うん、嬉しい。令和に来てね、朝も、昼も、夜も、寝る時も、ずっと一緒じゃない。永禄では考えられないくらい一緒で」

    若「あぁ。ここまで共に居れたのは、初めてじゃの」

    唯「ずっと一緒過ぎて、飽きられたらどうしようって」

    若「ハハハ、そのような。有り得ぬ」

    唯「逆に私が、飽きたらどうしようって」

    若「飽きて…しもうたのか?」

    唯「ううん。ますます好きになったよ」

    若「そうか。良かった」

    唯「好きで、しかたなくて…」

    涙が、一粒ポロリと落ちた。

    若「なんと、なぜ泣くのじゃ」

    慌てて拭う若君。

    唯「もうすぐ帰る。ここまで一緒には居られないよね」

    若「そうじゃな。戻ればまた、わしにはやらねばならぬ務めが山積じゃ。戦も、いつまた始まるやわからぬ」

    唯「離れたくない」

    若「それはわしも同じ」

    唯「今朝の夢ね、たーくんが…あの」

    若「命を落としたか?」

    唯「うん…そう」

    若「唯の様子で、そうではないかと思うておった」

    唯「怖かった。絶対嫌って思った。私を、ひとりぼっちにしないでね」

    若「あぁ。その為にも、戦なき世を求めたい」

    唯「戦に出ても、絶対、絶対、帰って来てね」

    若「うむ…その気持ちは強い。約束が出来ると良いのじゃが」

    唯「え?」

    若「負け戦の大将も、無事でと送り出されるのは、同じじゃ」

    唯「…なんで、なんでそんな事言うの?」

    若「必ず、とは申せぬ。そうなるやもしれぬという心持ちで居て欲しいのじゃ」

    唯「…」

    若「どうした?」

    唯「約束くらいしてくれてもいいのに」

    若「それは…」

    唯「ひどい、私なんか、どうでもいいんだ!」

    若「どうでもいいなど、微塵も思うてはおらぬ。落ち着いてくれ」

    唯「言ってくれるだけでも安心できるのに!うわーん!!」

    泣き始めてしまった。なだめる事ができず、途方に暮れる若君。

    唯「うっ、うっ」

    若「…唯」

    唯「なにっ」

    若「此処で、待っておれ」

    唯「は、はあ?」

    近くに置いた自転車に飛び乗った。

    若「すぐ、戻るゆえ」

    唯「はあ?!」

    若君は行ってしまった。取り残された唯。

    唯「えっ?なにが起こったの?ていうか、ひとりぼっちにしないでって言ってるのに、どうして勝手に居なくなるのよー!!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君はいずこへ?

    続きます。

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    返信先: 出演者情報板
    尊くんに一票

    たまーに違う板に現れます。この話はこちらで!

    他の候補者の方々も、また意外なバックグラウンドがあるかもしれませんが、専属になれば毎月お顔拝見できますよね?と、送信しました。

    尊くんこと翔大くんは、声もとても魅力的だと思ってます。一度体の中で反響してから出てるような…。是非、声の聞ける媒体にも出ていただきたいです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days87~14日8時、ウキウキです

    やんわりと、諭される。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    何とか、食卓の席についた唯。

    唯「ごめん、お待たせ」

    美香子「すごく辛いとか、ない?」

    唯「だいぶ戻ってきたから。ご飯食べれば大丈夫だよ」

    覚「じゃあ、いただくか」

    朝ごはん中。

    美「食欲は、あるわね」

    唯「うん」

    尊「怖い夢って、どんなだったの?」

    唯「無理。説明できない」

    尊「そう。よっぽどだったんだね」

    ずっと考え込んでいた若君が、箸を置いた。

    若君「唯」

    唯「はい?」

    若「遠乗りへ、参ろう」

    唯「え?」

    若「…」

    尊「お姉ちゃん、なにボーっとしてんだよ。せっかく兄さんがデートに誘ってくれてるのに」

    唯「え?デート?だって、あとちょっと、できる限り鶴折りたいって言ってたよね」

    美「あらまそんな事を」

    若「まだ、体が辛いか?」

    唯「ううん」

    若「出掛けとうはないか?」

    唯「ううん、そんなわけ、ないじゃない。そうなの…わぁ、嬉しい!」

    若「ようやく、笑うてくれたの」

    唯「この後、すぐ?」

    若「行けるのであれば」

    唯「わかった。あっ、でも、ベリー汗まみれだったから、シャワー浴びてもいい?」

    若「支度は、どれだけかかっても良い」

    尊「服どうすんの。ワンピース、アイロンかけてないでしょ」

    唯「かけるかける!」

    尊「デートの一言のパワー、すごいな」

    食事が済み次第、元気に風呂場に直行した唯。

    若「お父さん」

    覚「ん?何だい?」

    若「わしは、唯に我慢をさせていたのでしょうか」

    覚「そう…だね。君の為に納得はしていたと思うが、鶴という女性にご執心なのを、淋しい思いで見ていたかもしれないね。夢との因果関係はわからないが」

    美「今、千羽鶴どこまで進んでる?」

    尊「ちょうど800いったかな。まだ糸は通してないけど」

    美「じゃあ、忠清くん。ここまでで、作るのはおしまいにしましょうね」

    若「承知致しました」

    美「帰るまで、唯だけ見てあげてね」

    若「はい!」

    シャワー後も、アイロンをかけながら大騒ぎ。

    唯「今日は、レースのワンピにするっ」

    尊「勝負服?」

    唯「そっ」

    若「誰と戦うのじゃ?」

    尊「兄さんと」

    若「え?」

    美「いかに綺麗とか可愛いいとか思ってもらえるか、頑張るのよ。おなごは」

    若「そのままで充分じゃが…」

    美「またまた~。よーし、見てらっしゃい。唯、それ終わったら、髪巻いてあげる」

    唯「わー、ありがとう!」

    尊「母まで参戦か」

    ワンピースに着替えた。洗面所。

    美「巻きました、グロスもつけました、よし」

    唯「イヤリングもしようかな?」

    美「あら、いいわねぇ。前に買ったあれ?」

    唯「うん。変?」

    美「全然。じゃあ、両耳が出るようにピンで留めてあげよう」

    唯「わーい!」

    毛先がふわふわに巻かれて登場。

    覚「おっ、可愛いいな。出来上がりか?」

    唯「あとちょっと~」

    二階に駆け上がっていく。

    尊「愛のパワーだ。さっきまでとは色んな意味で、別人」

    若「そう、じゃの…」

    下りてきた。

    尊「あ、雪だるまのイヤリング。冬限定じゃないもんね。服にぴったり」

    覚「うんうん、いいね」

    唯「ありがと。たーくん、どぉ?」

    若「とても綺麗じゃ、唯」

    尊「あ、綺麗だよの応用バージョンだ」

    唯「ありがとう。超うれしい!」

    美「よっしゃあ!」

    尊「こちらは勝利のガッツポーズですか」

    唯「たーくんのためだもん」

    若「尚更、嬉しい限りじゃ」

    そろそろ出発。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days86~14日水曜7時30分、夢でも嫌!

    見ている方が、血の気が引く。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    薄暗い部屋。褥に、若君が寝かされている。その前に座る唯。

    唯「え…何が起こった?私、足軽の格好してる…ここ、吉田城?」

    目の前の若君が、ぴくりとも動かない。

    唯「時間が戻ったの?…ううん、きっとまた夢、夢なんだ。でも」

    若君の右肩に手をかけて、揺する。

    唯「起きて!たー…若君!」

    反応が全くない。

    唯「えっ…嫌、嫌だ若君、ねえ、起きて!誰かっ!どうして誰も居ないの?!」

    激しく揺する。

    唯「そこは痛い、って、言って!」

    動かない。

    唯「…」

    若君の首元に触れた。

    唯「冷たい…えっ」

    顔の血色が、みるみる内に失せていく。

    唯「嫌、嫌っ、ねえ、ねえったら!あっ、起動スイッチは?…持ってないじゃん私!」

    意を決して、掛布団をめくった。

    唯「ひっ」

    矢が、心の臓を捉えている。周りが真っ赤な血の海になっていた。

    唯「キャアアアアアア!!」

    ここで、目が覚めた。飛び起きる唯。

    唯「はっ!夢…。自分の部屋だ…はぁっ、はぁ、はぁ」

    呼吸が戻らない。

    唯「はぁっ、ゴホッ、やだ…汗びっしょり。あぁっ、怖かった…昨日、矢じりなんか見たからかな」

    時計は、7時45分を指している。

    唯「たーくん下に居るよね、居るよね…うぅ、寒い。着替えないと…やだっ、腰が抜けて動けないよぅ」

    階段を上がる足音。部屋のドアが開いた。

    若君「唯、まだ寝ておるのか?じきに朝飯…なんと、どうしたのじゃ?!」

    唯「たーくん…良かったぁ」

    明らかにおかしい唯の様子に、駆け寄る若君。

    若「いかがしたのじゃ?熱、でもあるのか?…そうではなさそうじゃの」

    唯「怖い、夢を見たの」

    若「どのような?」

    唯「怖すぎて…説明できない」

    若「そう、か。なんと…これは、着替えた方が良い」

    唯「そうなんだけど、力が入らないの」

    若「それは…待っておれ、拭く物を持って参る」

    階段を駆け下りる若君。すぐに戻って来た。

    若「タオルを湯で絞って参った。皆には伝えたから、ゆっくりで良いぞ」

    タンスから、着替えを取り出した。

    若「手伝うても、良いか?」

    唯「お願いします」

    着ていたびしょびしょのTシャツを脱がせ、温かいタオルで拭き始める若君。

    若「こんなに冷とうては、震えて当然じゃ」

    着替えさせた後、まだ小刻みに震える唯を、ギュっと抱き締めた。

    若「何とか、温まって欲しい」

    唯「ごめんね」

    時間をかけ落ち着かせた後、手を貸す。

    若「立てるか?」

    唯「うん、たぶん。あっ」

    よろけた唯をキャッチ。

    若「おぶってやろう。さぁ、背中に」

    唯「はい。ごめんなさい」

    若「病、ではないのじゃな?」

    唯「うん。それは違うよ」

    若「腰が抜ける程、怖い夢とは。わしが助けに参らねばならなんだな?」

    唯「はは…」

    若「…」

    若君におんぶしてもらい、一階へ下りていきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days85~13日15時、発掘は再会だ

    今まで、相当奥に隠れていた模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ケーキも美味しくいただき、談笑中。

    唯「あれ?折り紙、鶴じゃないのが混じってる?」

    ラッパのような形の物が何個かある。

    美香子「あ、これね。千羽鶴の一番上の飾りにしようと思って、くす玉作ってたのよ」

    覚「出来上がりは、こうだ」

    タブレットを開いて画像を見せる。

    尊「よく、七夕飾りの上に付いてるヤツ?」

    美「そうそう。この折ったのをまとめて結んで、丸くするのよ」

    唯「なんか、難しそう」

    美「紙が一回り大きいし、きちんと折り目をつけて進めれば大丈夫よ。…ふふっ、忠清くんったら」

    若君 「はい?」

    美「早くやってみたい!って顔が、可愛いい」

    若「これは、忝ない」

    唯「えー、見たかったぁ」

    早速全員で作り始めるが、

    尊「一行程進む毎に、写真撮っとこうか。その方が、戻ってからおさらいしやすいでしょ」

    唯「あんた、ホント賢いよね。よろしく~」

    黙々と進む中、ふと、唯の手が止まり、若君をじっと見ている。

    唯「たーくん…」

    若「…」

    唯「たーくん」

    若「あ、済まぬ、何じゃ?」

    唯「呼んだだけ」

    美「なにそれ。集中してるんだから、邪魔しちゃ駄目よ」

    唯「ごめん」

    晩ごはん前に、まあるく完成。

    唯「かわいい!鞠みたいだね」

    若「お母さん、ありがとうございました」

    美「いえいえ~楽しかったわ」

    8時。晩ごはん後。

    美「唯」

    唯「なに?」

    美「お風呂一緒に、どう?」

    唯「あ、うん!行く行くー」

    リビングに男三人。

    尊「兄さん、あの」

    若「何じゃ?」

    尊「前に、僕の気持ち…存念を聞きたいって言ってましたよね」

    若「あぁ。聞かせてくれるのか?」

    尊「はい。今がチャンスかと。お父さん」

    覚「ん?」

    尊「僕達、実験室に行くよ。ごめん」

    覚「サシで話したいんだろ?いいさ。あ、そういう事なら、唯にも内緒か?」

    尊「うん。お風呂出たら、来るなって伝えてくれる?」

    覚「了解~」

    尊「後で、三人でお風呂入ろうよ」

    覚「おっ。じゃあ待ってるよ」

    尊「行きましょう、兄さん」

    若「何やら大仰じゃのう」

    尊「そんな事ないですよ」

    唯達が風呂から出た。男子二人はまだ実験室。

    唯「なんの話をしてるのやらー」

    大人しく待つ唯。リビング奥の棚の前に立った。

    唯「これは、たーくんが初めて折った大きい鶴。あと…写真、増えてるな」

    海で撮った、水着姿ではしゃぐ三人の写真。

    唯「うん、いい感じぃ。ん?なんか奥に…」

    小さい入れ物を見つけた。

    唯「なにこれ?指輪のケースはちゃんと二つあるし?」

    開けてみる。中から、金属製の尖った物体が現れた。

    唯「えっ?あっ、これ…キャー!」

    美「どうしたの?!唯!」

    叫んだ拍子に、中身が床に落ちてしまった。

    唯「これ、これって…」

    美「そう。忠清くんの体に刺さってた、矢じりよ」

    唯「怖い、なんでここにあるの?!」

    美「それはね」

    覚「あー、待て。置いていきたいと言ったのは、忠清くんだ。なぜかは、彼の口から直接聞いた方がいい」

    美「それもそうね。あ、ちょうど戻って来たわ」

    尊「ただいまー」

    若「お父さん、お待たせしました。ん?どうした、唯」

    唯「たーくん、これ…」

    若君が、拾い上げる。

    若「残してくださっていたのですね」

    唯「永禄に、持って行かなかったんだ」

    若「それは…持ち帰れば、いずれまた誰ぞを殺めるやもしれぬゆえ」

    唯「そう…なんだ」

    美「取っておいたのはね、唯にとっては見たくもない物かもしれないけど、間違いなく、忠清くんと私達を繋いだ架け橋の品だからよ」

    覚「これのお陰で、会えたからな」

    若「そうですね」

    唯「うん。まぁ、そうなるね」

    若「解せぬ顔をしておるの。大切にして頂き、わしは有り難いと思うておるぞ」

    唯の頭を、ポンポン。

    唯「はぁい。わかりました」

    尊「じゃ、お風呂行きます?」

    覚「行くかー」

    若「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊と若君の秘密会談の中身は、後日。

    13日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days84~13日14時、ギュっとね

    相手を思う気持ちで、自然と体が動く。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ケーキ店の前。

    唯「あ」

    尊「何?」

    唯「あの、すいません」

    店員「いらっしゃいませ」

    唯「あのう、予約してないんですけど、今このホールケーキにメッセージ入れたりできますか?」

    尊「あー」

    店「出来ますよ。メッセージはチョコプレートに書いて乗せますが、よろしいですか?」

    唯「良いですぅ。お願いします!」

    店「文章はどのように?」

    唯「結婚20年おめでとう、で」

    店「かしこまりました」

    尊「お姉ちゃん、ナイス。すっかりショートケーキ買ってくつもりだったよ。よく気が付いたね」

    唯「ショーケースの中にあったから、ひらめいて…ダメ元で聞いたけど、良かったぁ」

    若君「ケーキでも、両親を祝えるのか。それは良い」

    尊「前回買った時は、一日早いクリスマスで、ケーキ入刀は兄さん達だったけどさ、今回は」

    唯「もっちろん、二人にやってもらうよ~。わぁ、楽しみ!」

    ケーキその他購入。

    尊「贈呈式さ、大分やり方の予定変わるよね」

    唯「うん。ケーキあるし、もう帰ってすぐ始める?」

    尊「そうだね」

    帰宅。

    唯「二人を席に座らせとくから、後から入って来て」

    尊「了解」

    若「承知した」

    唯「ただいまー!」

    覚「お帰り。暑かったろ」

    美香子「お帰り。あら、一人なの?」

    唯「いいから、座って座ってー」

    唯に誘導され、訳も分からず食卓の席につく両親。

    覚「帰って早々、何をバタバタやってるんだ?」

    美「何か企んでる?」

    唯「たーくん、準備OK?」

    若「良いぞ」

    唯「尊は?」

    尊「いいよー」

    唯「では、いざ!」

    突然、パンパンパン!と、子供達三人がクラッカーを鳴らした。

    覚「わっ!」

    美「キャー、何?!」

    唯が花束を持って来た。

    覚&美「え?え?」

    唯「結婚20年、おめでとう!」

    花束を受け取る両親。

    覚「ありがとう。いやぁ、驚いた。なんか、照れるな」

    美「ありがとう。サプライズしてくれたのね。まぁ、綺麗なお花~」

    唯「たーくん、来て」

    若「お父さん、お母さん。心ばかりの品でございますが」

    覚「あ。ペアの…湯呑みか?」

    若「わしが選びました」

    美「まぁ…」

    尊がカメラを構えている。

    尊「準備いいよ。どうぞ存分に」

    覚「何を?」

    尊「8か月前、残念がってたじゃない」

    覚「…あー」

    若君が両親に近づき、両腕を広げた。

    覚「そういう事か。よーし、じゃあ、2回分行くぞ!ありがとう、忠清くん!」

    ギュー。

    唯「たーくんがペチャンコになりそー」

    美「私もいいの?」

    若「勿論です」

    美「ありがとう~」

    ギュッ。からの、頭なでなで。

    若「あっ…」

    美「うふふ、赤くなった。あい変わらず可愛いい反応ね~」

    唯「もーっ、たーくんで遊ばない!」

    尊「はいはーい、ケーキ出すよ~」

    覚「おっ、これもスペシャルだな」

    唯「はい、ナイフ」

    美「あらん。もしかして入刀?」

    唯「どーぞ」

    仲良くケーキ入刀。

    美「ふう。なんか色々びっくりしちゃったわ」

    覚「紅茶いれるよ。さあ、座って座って」

    プチパーティーは、しばらく賑やかに続きました。

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    続きます。

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