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    現代Days(仮)への道11~9日月曜11時、それでいいのか?

    姫じゃなきゃダメなの?
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    永禄。定例の軍議がそろそろ終わる。

    大殿「此れにて」

    全員「ははっ」

    若君は、未だ会えていない唯の身を心から案じながらも、日々の執務を粛々と続けていた。

    有山「木村殿、ちと話が」

    木村「有山殿?如何された」

    小平太パパが先に部屋を出たのを確認して、家臣二人が話し始めた。若君はまだ大殿と話をしている。

    有「どこぞに、源三郎に似合いの姫君は居られぬか。ご存じありませぬか?」

    木「源三郎?!」

    木村の甲高い声が部屋中に響く。話を終えた若君も驚いて立ち止まった。

    有「小平太殿が娶られぬ前に、先手を」

    木「ほほぅ…されどまだこの地は不案内で」

    有「心に留め置いてはくださらぬか」

    木「承知致した」

    若君が、二人に近付く。

    若君「源三郎が何か?」

    有「そろそろ縁組みは如何かと思いまして」

    若「縁組み…」

    有「はい。木村殿は、声が大きいからのぅ」

    木「若君様に隠す話でもなかろう~」

    若「源三郎は、承知しておるのか?」

    有「話はいたしました」

    若「して、何と」

    有「考えさせて欲しいと」

    若「…断ったのではなく?」

    有「はい」

    若「心に決めたおなごは、居らぬ様なのか?」

    有「わたくしには、居らぬと申しましたが」

    若「…そうか」

    腑に落ちない顔をしながら、自身の居室に戻った若君。すると、

    三之助「だから、そこではないー」

    孫四郎「ここはぁ~?」

    三「そこも、あっ」

    机の上でジェンガを広げる小さな武士が二人。思わず笑顔になる若君。

    三「また倒したー。あっ、若君様」

    若「好きに使うが良いと申したのはわしじゃ。続けよ」

    三之助&孫四郎「はいっ」

    少し離れて座った若君。遊ぶ二人の様子を微笑ましく眺めながらも、

    若君 心の声(源三郎。何故トヨの話を出さぬ?まさか遊びで付き合うておるとも思えぬのだが)

    渋い顔をしている。しばらくすると、

    三&孫「若君様ぁ」

    いつの間にか、二人並んで座っている。ジェンガは片付けられていた。

    若「おぉ。もう良いのか?」

    三&孫「はいっ」

    若「三之助」

    三「はいっ」

    若「此処で遊べと、吉乃殿が申されたのではないか?」

    三「…あのぅ」

    若「何じゃ?」

    三「母上が、若君様の気がまぎれるから、と」

    若「やはり。気が紛れる。その通りじゃ。ハハハ」

    二人の頭を、順に撫でる。

    若「よう紛れた、と、吉乃殿に伝えてくれ。礼を申す」

    三&孫「わかりましたぁ」

    一礼した後、走って出ていった。

    若 心(唯に会えず、気落ちする様が目に見えておるのだな。吉乃殿にまで気を遣わせるとは)

    庭に向いて座り直す。

    若「されど…解せぬ」

    源三郎の言動が、理解出来ない若君だった。

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    9日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道10~8日日曜10時、思い立ったが吉日

    初めてのおつかいにしては、遠い。
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    速川家三人、家族会議の真っ最中。

    美香子「飛んで行く日付と時間は間違いなくても、どこに着くかはわからないじゃない?」

    尊「毎回、一番安全な場所に到着してるみたいだよ。今はお姉ちゃんと兄さん離ればなれだから、多分兄さんの居場所に飛ぶんじゃないかな」

    美「尊は唯ほどタフじゃないから~。どうするの、場合によっては目の前に刀を突きつけられるかもしれないわよ?誰か他の人に見られて、曲者じゃ!って」

    尊「うーん」

    覚「でも最短で1時間だ」

    美「お父さん、行かせる気なの?」

    覚「唯は心配だ。それにその、前言ってたさ、このタイミングで忠清くんの心情を吐露した書が発見されたってのが何か」

    美「呼ばれてる?」

    覚「彼はそんなつもりはないだろうが。人に言えないから、書いて吐き出した感じに受け取れるし」

    尊「お母さんは心配じゃないの?だって連れて来るって言ってるんじゃないよ、せめて即効性のある、現代の薬を渡したいだけなんだよ」

    美「尊を心配してるのよ~」

    尊「僕?」

    美「こんな押し迫った時期に飛ぶなんて。ケガでもしたら受験に差し障るじゃない。これまで頑張ってきたでしょう」

    尊「まあね」

    美「どこか呑気よねぇ」

    尊「せっかくだから一度は行ってみたいってのはある。進化したスイッチ1号なら、向こうに一月居なくていいから超安全だし」

    美「安全かしらねぇ。遊びに行くのとは訳が違うわよ」

    覚「よし。尊にミッションを与える」

    美「え?!もう決まり?!」

    覚「今、やはり行くべきだと思うんだ。尊が動いて、唯や忠清くんが少しでも楽になるのならそうしてやりたい。いつでも行けるから一息ついた4月ね、では遅いだろう。彼らは今苦しんでるんだから」

    美「ん~」

    尊「お母さーん、行かせて欲しい!」

    美「わかったわ」

    尊「やったー!」

    美「色々持たせてやりたいから、準備しなくちゃね」

    覚「買い物か」

    美「昼過ぎに、薬局行ってくるわね。薬もだけど、栄養補助食品とかゼリー飲料とか」

    覚「あとさ」

    尊「なに?」

    覚「永禄に溶けこむためにはさ、洋服じゃなくて着物で行った方が良くないか?」

    尊「着物!」

    覚「僕もまあまあ数持ってるんだぞ?どうどう?」

    美「そういえば、羽織まで一揃えのとか、あったわね」

    尊「着させる気満々だな…えー、だって向こうすっごく寒いと思うよ?兄さんの部屋に暖房ないだろうし」

    覚「そりゃないだろ」

    尊「足とかスースーするんでしょ?」

    覚「ステテコも貸してやろう」

    尊「ステテコ…聞いた事あるような」

    美「首元も寒いだろうから、そうね~中にタートルネックの長袖Tシャツでも着て、マフラーも巻いてったら?」

    覚「おー、いいねぇ」

    尊「なんで服の話に変わったら、俄然やる気になってんの」

    美「なーんか、楽しくて」

    覚「ところで、永禄にあるスイッチが進化した話はするのか?」

    尊「うーん。一応話そうかな」

    覚「それは消極的なんだな」

    尊「僕、兄さんに散々、現代は安全とは限らないから来ちゃダメって言ってあるんだよ。おまけに今度は5人以上乗れるタイムマシン作ります、って大きいコト言っちゃってて」

    美「あら、そうなの」

    尊「来てはみましたが、まだそこまでは無理です、って謝らなきゃなんない」

    覚「そうか。まぁ今回は、唯に薬を渡す、これさえ何とかなればな」

    尊「うん」

    美「そうね。何とかなるわ~」

    尊「開き直った?」

    美「ウチは基本、楽天的」

    尊「そうでした」

    三人「ははは~」

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    8日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    現代Days(仮)への道9~7日土曜21時、動く!

    どんな計算式なんだ?
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    令和。実験室に尊。

    尊 心の声(お姉ちゃんも兄さんも、何とかしてあげたいよ。このままじゃ受験勉強も身が入らない)

    パソコンをぼんやり眺めるだけの尊。

    尊「でも、なすすべはなし。あーあ、サッと行ってサッと帰ってこれるなんてタイムマシン、出来ないかな…」

    そう呟くと、実験室の電気を消した。

    尊「身が入らないけど勉強するか」

    暗闇の中出て行こうとしたところ、

    尊「あれ?」

    棚の一部が点滅している。もう一度、明かりをつけて近づいてみると、

    尊「これ起動スイッチ1号だ。点滅機能なんかつけたっけ?」

    スイッチはまだ点滅している。

    尊「あ…あーっ?もしかして?!」

    スイッチを細かく調べ始めた。

    尊 心(すごい、すごい!)

    どれだけ時間が経ったか。実験室の外に人の気配がした。ドアを叩く音。

    美香子「尊~、もう、一度籠ったら全然出てこないんだから!今はタイムマシンより受験勉強でしょ、開けるわよ!」

    美香子がドアを開けると、尊がパソコンを凝視していた。

    美「尊~」

    尊「お母さん!どうしよう」

    美「は?どうしようって何が」

    尊「この起動スイッチ1号、使えるようになってるんだ」

    美「使える?燃料を足したの?だってそんな時間なかったでしょう。夜中にこっそり作ってたの?」

    尊「何もしてない。でも燃料も入ってて」

    美「わかった、もう夜遅いからまずはリビングに戻りましょ。続きはそちらでね」

    尊「うん」

    食卓に三人。

    美「で?何が起こったの?」

    尊「起動スイッチ1号が点滅してた。おかしいなと思って入ってる機能を調べたら、すごいコトになってた」

    覚「使えるようになってるのか。ずっと触ってなかっただろ?」

    尊「うん。でね、こちらを満月の日に出ると、永禄の満月一日前に着くんだけど」

    美「それって2号の機能と同じじゃない?」

    尊「違うんだ。満月の日、こっちを何時に出ても、到着するのは永禄の満月一日前の子の初刻、今で言うと23時に設定されてて」

    美「時間指定なの?」

    尊「そうみたい。でね、なんと戻る時は、空にまだ満月が浮かんでる時間でも、日付さえまたげば帰って来れるんだ。もちろん出た時間の3分後」

    覚「何だって?それさ、例えば満月の夜8時にこっちを出ても、向こうには前の日だけど同じ夜8時じゃなくて夜11時に着いて、で0時、0時とは言わんか」

    尊「子の正刻ね」

    覚「そんな、滞在1時間とかでも帰って来れるのか?」

    尊「うん。ちょっとだけ行ってすぐ戻れたらってニーズに応えたみたい。だからさ、今回お姉ちゃんがまだ具合悪いのか確認したり、薬とか持ってってあげられるかも」

    美「そんな深夜に会えるかしら?ちょっとって簡単に言うけど。それに、今はもう治ってるかもよ?」

    尊「書に、一週間も会えてないってあったよ?風邪にしては日にちかかり過ぎじゃない?」

    美「まぁそうだけど」

    尊「で、もっと驚くのは」

    覚「まだあるのか」

    尊「永禄にある起動スイッチ2号も、違う新しい機能が付いてた」

    美「手元にないのにわかるの?あー、どうプログラムが変わったか見ればわかるか。で?」

    尊「2号、当初燃料が15回分くらいだったんだ。ずっと一人で使い続けるなら7往復半」

    覚「ほー」

    尊「充分だとは思うけど、2号は二人で飛べるから、カウント数が変わる」

    美「倍々で減ってくのね」

    尊「ううん、違うみたいで。今、計算上の残量よりちょっと多いんだ。なぜかな?と思ったんだけど、どうやら飛び方によってはもっと省エネになるらしいんだ」

    美「あー、そういえば省エネにしてって頼んであったわね」

    覚「どんな飛び方だとそうなるんだ?」

    尊「ひとかたまりで飛ぶ。どこかくっついてればいい。二人でこっちに来た時、一回目はお姫様抱っこで二回目は抱き合ってたから、それが正解だったみたい」

    美「で、あと何往復できるの?」

    尊「人数により変わる」

    覚「人数?」

    尊「一度に飛べる人数が、なんと増やせるんだ!今の残量なら、二人だと2往復、三人だと1往復半、四人だと1往復、五人だと往復は無理」

    覚「こんがらがるなぁ」

    美「ふーん。ちょっと待った!」

    尊「はい?」

    美「そもそもなんで、使えるようになったり進化してるの?」

    尊「令和元年12月7日、こんなタイムマシンあったらなと呟く僕が居た」

    覚「何?モノローグ?」

    尊「呟いただけで、1号も反応しなくて、今頃部屋で勉強してた。そして何年か経ち、欲しかったタイムマシンが出来上がった。その時、未来の僕はどうすると思う?」

    美「ややこしい話だけど…きっと、欲しいって呟いてた、今日の尊に送り届けると思う」

    覚「何だ~?わかったようなやっぱりわからんような。今は二度目の世界って事か?一度目なんて覚えてないぞ」

    尊「なんとなく、ふわっとわかればいいんじゃない?」

    美「向こうにある2号も、燃料の残量そのままで、機能アップしたプログラムを届けたのかしら」

    尊「多分」

    美「ファンタジーね」

    覚「ファンタジーだ」

    尊「で、どうしよう」

    美「どうしようって…まさかこの大事な時期に飛ぶ気?!」

    尊「でも心配じゃない?」

    覚「そりゃあ心配さ」

    美「唯の状態はね。ちょっと考えさせて」

    覚「僕も。まぁ今日はここまでにしとけ。頭フルに使っただろ。今夜はもう寝なさい」

    尊「はい。満月は12日だからね」

    覚「わかったわかった」

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    7日のお話も、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    現代Days(仮)への道8~6日金曜15時、心が絶不調

    ビタミン唯が欠乏しております。
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    変わって、永禄。若君の居室。

    若君「して、どうなっておるのだ」

    小平太「熱は下がったとの事」

    唯の病状を、小平太に聞く若君。

    若「そうか。ならば」

    小「まだ会うてはいただけませぬ」

    若「何故?」

    小「のどがまだ痛むと聞きました」

    若「何と…薬師は何をしておるのだ」

    小「薬は、あらゆるものを試しておるようでございます」

    若「それはかえって、具合を悪うしてはおらぬのか?」

    小「わかりません」

    若「…」

    若君の表情が曇る。

    小「どうか、気を落とされませぬよう」

    若「小平太」

    小「はい」

    若「ならば…離れた所で良い、一目姿だけでも見られぬか?」

    小「それは…部屋からほとんど出られておられぬようですし」

    若「大人しゅうはしておるのか」

    小「世話を女中頭がしており、しかと見張っておると」

    若「そうか」

    トヨが居るなら、と少し安心した様子の若君。

    小「若君様。畏れながら申し上げます」

    若「何じゃ」

    小「一目会いたいと思い煩うお心はお察しします。されど万が一若君様まで罹り、長う患うような事になれば家の一大事でございます。御月家の為にもご勘弁を」

    若「…わかった。下がって良い」

    小「はっ」

    控えの間に戻った小平太。

    小平太パパ「ご様子は如何であった?」

    小「いたく憔悴しておられました」

    小パ「であろうのう」

    じい「むじなもじゃが、若君が不憫じゃあ」

    小「然り」

    じ「一刻も早う、若君の御子を、とも思うておるのに」

    小「…今、その話ですか?」

    じ「良いではないか。わしはもう、そう長うはないのじゃ」

    小「誰よりも長う生きそうですが」

    じ「いずれにせよ、早う夫婦を会わせてやりとうてなぁ」

    小パ「声が枯れ気味らしい。それさえ治れば、すぐにでも会わせて差し上げたいのじゃが」

    じ「良い薬はないのかのう」

    小パ&小「…」

    一方、居室の若君。憂いに満ちた表情のまま。

    若「何故このような…」

    大きく息をつくと、立ち上がり外に出た。

    若「…」

    空はどこまでも青かった。

    若「唯は、空も見られぬのであろうか」

    雀が、軒先でさえずっている。見上げた若君。ようやく表情に笑みが戻った。

    若「わしに会いに参ったのか?」

    しばらく跳ねる様子を眺めると、室内に戻った。

    若「…」

    机に向かった。硯箱と紙を出す。

    若君 心の声(これはもう、吐き出してしまわねば何も手につかぬ)

    筆をとった。思いの丈を、筆先にぶつけるように書き進めた。

    若「ふう…乱れておるのう」

    書を何度も読み返す。次第に落ち着いてきた。

    若 心(とても人には見せられぬ書じゃな)

    フフッ、と自嘲気味に笑うと、棚の戸を開け書を日記の束の上に乗せた。

    若 心(このような病…お母さんにかかれば、たちどころに治すのであろうの)

    起動スイッチは、日記の脇に入れてある。

    若 心(見てはならぬ夢じゃ)

    戸を閉め、また立ち上がると、今度は庭に出た。奥に進むと、そこにはブランコ。

    若 心(ここに腰掛ける唯を、後ろから押してやったのが懐かしいと思うようになろうとは)

    ブランコに座り、軽く揺らす。

    若 心(出来るだけ早う、語り合えるようにと願う)

    しばらく、空を見上げながら風にまかせ揺られていた若君だった。

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    6日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道7~5日20時、助けられるものなら

    何が起こってるかは、まだ推測の域を出ない。
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    食後。

    尊「まず、メール本文がこれだけど、読み上げるね」

    美香子「お願いします」

    尊「速川君、一昨日はありがとう。実に有意義な時間だったよ。それで早速だけど、中々興味深い手紙というかメモ的な物が見つかってね」

    美「忠清くんの?」

    尊「日記は勿論きちんと綴られているんだが、現地の解読チームによるとね、なぜか束の間から、これがヒラリと出てきたらしいんだ。書いてはみたが、すぐ処分するつもりだったのかもな」

    美「まぁ」

    尊「画像も訳も送るけど、大まかに説明するよ。内容から読み取れるのは、苛立ちと悲しみだ」

    美「え?」

    尊「日記と同じ人物が書いたとは推測される。なぜ推測かと言うと、あまりにも書体が異なっていてね。筆遣いにも心情が投影されている感じだ。何と言うか日記とは趣が全然違って人間臭い、本音が見える」

    美「忠清くんにしては珍しいわね」

    覚「だよな」

    尊「で、君にすぐ伝えたかったのはなぜかと言うと」

    美「何!」

    尊「日記の中には一切出てこない、妻女らしき名が一か所だけ出てくるんだ。これもつい出たんだろうな。名は、唯。唯姫だ。驚きだろ?」

    美「なるほどね…」

    尊「まぁ、一読してみて。ではまた。木村」

    次に、古文書の写真。

    美「ウチにある忠清くんの筆跡と比べても、明らかに乱れてるわね」

    今年の正月に唯と若君から受け取った、年賀状の若君の書体と並べても、それはよくわかる。

    尊「最後に現代訳ね」

    美「えーと…永禄四年十一月十六日。もう七日も愛する唯に会えていない。熱がひどく出る事は無くなったようだが、まだのどの具合が良くないらしい。医者は何をしているのだ。背中の一つもさすってやりたいが、近付くなと止められ実に歯がゆい。同じ屋敷に居るのに。代われるものなら代わってやりたい。辛い、胸が張り裂けそうだ。早くこの腕に抱き締めたい。一刻も早く」

    尊「お姉ちゃん、風邪でも引いたのかな」

    美「んー。そう読み取れるわね。治りつつはあるみたいだけど」

    覚「文章が、彼にしては情熱的だよな。確かに苛立ちと悲しみだ」

    美「居ても立っても居られない感じね」

    覚「すぐ治せる薬なんか、戦国時代にはないんだろうな」

    美「うーん…」

    黙り込む三人。

    尊「あのさ」

    美「何?」

    覚「何だ」

    尊「もしかしてさ、今これが出てきたのは、兄さんのSOSなんじゃ?何とか令和に届いて欲しいって」

    覚「なんでそう思えるんだ」

    尊「日付だよ」

    美「日付?この永禄4年11月16日?」

    尊「うん」

    尊がスマホで何か確認しながら、紙に図を書き始めた。

    尊「今月12月の満月は、12日」

    覚&美「うん」

    尊「今仮にタイムマシンが動くとして、飛んだ先が同じ満月だったら」

    美「一日前じゃなくね」

    尊「到着する日付は、永禄4年11月22日なんだ」

    覚「よくわからないが、そうなんだな?」

    尊「兄さんは、明日この文章を書く」

    美「よくわからないけど、そうなのね?」

    尊「今度の満月に、助けに来て欲しいんじゃ」

    美「だってそれは無理でしょ」

    尊「うん。無理。兄さんがその日に起動スイッチ抜いちゃうとも思えないし」

    覚「万が一抜いたとして、燃料が足りないとかはないのか?」

    尊「それは全然大丈夫。でも兄さんそんな事しないよ」

    美「うん、絶対しないと思う」

    覚「そうだな」

    尊「日付は偶然だろうけどさ、切ないね」

    覚「仕方ないな」

    美「そうね」

    尊「うん…」

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    年賀状のお話は、この板no.492にあります。

    5日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道6~5日木曜17時、食の全国制覇

    本格志向な物が多いけど、それでもちょっとした背徳感あり?
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    令和に戻り、速川家リビング。尊帰宅。

    尊「ただいま。うわっ、今何か蹴った!」

    覚「お帰り。すまんすまん、ダンボール畳んだヤツだ」

    尊「通販頼んだ?箱がやたらあるけど」

    覚「いやぁ、少し位は母さんを楽にしてやりたくて、レトルト製品をあちこちから取り寄せてみたんだ」

    尊「へー。全国各地の名産的な?」

    覚「あぁ。こんな機会でもないと買わないし」

    尊「どれも美味しそうだね。今日の晩ごはんはこれ?」

    覚「うん。見ると食べたくなるだろ」

    尊「やったー」

    畳んだダンボールを積み重ねる尊。すると、

    尊「あ、何か来た」

    ポケットのスマホが振動したので確認すると、

    尊「あ!木村先生からだ!」

    覚「おっ」

    尊「何か新しくわかったのかな?」

    メールを開いて読み始めた。尊の表情がみるみる内に変わっていく。

    覚「凄い発見でもあったっぽい顔だな」

    尊「凄いと思う…添付ファイルがあるから、実験室でプリントアウトしてくるよ」

    紙をひらひらさせながらすぐに戻って来た。

    覚「なんて?」

    プリントされたのは、メール本文と古文書の写真とその現代訳。

    覚「ん~。これは…彼って感情をこう表現するんだな」

    尊「何とかしてあげたいよ」

    覚「出来るのか?」

    尊「できない」

    覚「だよな」

    19時。晩ごはんの支度が、覚と尊で始まった。

    覚「よりどりみどりだ」

    尊「うん。どれにしようかなー」

    鍋2つに、湯が沸き始めている。

    覚「パスタ用とレトルトカレー用な」

    尊「僕これにする!牛タンカレー。美味しそう~」

    覚「それはいいが、具が大きいからパスタとの相性は微妙だな」

    美香子が仕事を終え、戻ってきた。

    美香子「ただいま。あら、湯気で加湿器不要な感じね」

    覚「お疲れ。母さんどれにする?」

    美「まぁー、綺麗に並べたわね。ってちょっと多過ぎよ。選べない」

    覚「まぁそう言わず」

    美「じゃあこのスープカレーで」

    尊「了解~」

    晩ごはんスタート。

    三人「いただきまーす!」

    尊「うん、美味しい。ずっとこれでもいいよ」

    覚「おいおい」

    尊「お母さん、木村先生からメール来たんだ。ご飯済んだら見せるね」

    美「あら。じゃあさっさと片付けなくちゃね」

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    続きます。

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    現代Days(仮)への道5~4日水曜17時、悩みが尽きぬ

    それって重要なの?今でも?
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    変わって、永禄。源三郎が、自身の住む屋敷に帰って来た。

    源三郎「只今戻りました」

    有山「おー」

    源「酒でございますか」

    吉田城代だった有山とその家の者達は、緑合では与えられた屋敷で、源三郎と居を共にしている。

    有「月見酒じゃ」

    源「今宵は見事な…半月ですが」

    有「まぁ座れ。お前も呑め」

    源「はい」

    暗くなり始めた空に、白く月が光る。見上げる源三郎。

    源三郎 心の声(月が、綺麗じゃな。俺はあの時から…変われなかった)

    トヨとの仲は進んでいないらしい。

    有「なあ」

    源「はい」

    有「縁組みは、考えておるか?」

    源「は、はぁ?」

    有「はぁ、とは何だ。お前の歳なら、妻女の一人や二人居っても」

    源「二人は要りません」

    有「いや、俺も一人しか居ないがな」

    源「急な話でございますな」

    有「急ではない。ずっと考えておったが、今宵は酒の力を借りて滑らかに話せそうじゃ」

    源「そうですか」

    有「忠清様近習として信頼も厚いお前の、その培ってきた才腕を、世継ぎにも伝えようとは思わぬか?」

    源「…」

    有「天野家は」

    源「はい」

    有「小平太の嫁取りはいつになるか、見当もつかぬが」

    源「その様で」

    有「お前もそう思うか。ただ幸いな事に、信近殿が男子を二人養子に迎えておる。見た所、躾も行き届いておる故、いずれどちらかは近習を継ぐのではと見ておる」

    源「なるほど」

    有「千原家由来の我々も、そろそろ手を打たねばならぬのでは?」

    源「未だ対立しておるのですか?」

    有「いや今は至って平穏。元次と信茂の戦い、程ではない」

    源「じいお二方が若かりし頃は、随分と不仲であったとは聞いております」

    源 心(その因縁の対決が…)

    有「お前の技量や気の遣い様を、子へ伝授もして欲しいが。あ、それこそ子が既にあるおなごを娶ると手っ取り早いな。お前より随分と年上になるやもしれぬがな?」

    源「酔いが回っておるようでございますな」

    有「…すんません」

    源 心(年上でも子がないおなごは…ならぬと言われたような気がする)

    有「いやでもな、近隣の地の姫君で、探し始めようかとは思うておる。どうじゃ?ん?」

    源「それはあの…既に父も母もない私を、今では千原繋がりというだけで居を共にもしていただいており、それ以上気にかけていただくのは」

    有「そう?」

    源「考えさせてくだされ」

    有「誰ぞ好いたおなごでも居るのか?」

    源「いえ…」

    有「悪い話ではないと思うぞぉ?」

    源「永季殿、ちと飲み過ぎではございませぬか?」

    有「そうかも」

    あとは軽い話をして、その場を離れた源三郎。自分の部屋に戻ったが、

    源「はぁ…」

    再び襖を開けて表に出た。半分でも輝きを放つ月を見上げる。

    源 心(トヨは…天野由来の者じゃ)

    そのまま下を向き、しばらくうなだれていたが、

    源 「仕方あるまい」

    そう呟くと、部屋へ戻っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    4日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    現代Days(仮)への道4~3日19時、よもやそんな

    てんころりんさん、タイミング良く話題にしていただきありがとうございます。

    このお話は、当然ながらタイムマシンが活躍します。マスター様がブログで設定数を求められていたので、それに準ずる形で飛ぶ日付を決めようかとも思いました。
    でも起動スイッチ2号はそもそも未来の尊が作った物だし、もっとフレキシブルなんじゃないかと思いまして。

    結果、日付は既に自由に決めさせていただいております。今後、お話の中で日付や時間がいっぱい出てきますが、尊がそう言うからそうなんだね~と大目に見てくださると幸いです。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    着信音あるあるに気を付けてください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が帰宅した。

    尊「ただいま~。ん?」

    リビングの明かりは漏れているが、いやに静かだ。

    尊「なんかいつもと違うな」

    そぅっとリビングを覗く尊。

    尊「ただいま、お父さん?」

    覚「おー、ここだ」

    尊「え、そんな所に居るの」

    覚は奥のソファーに座っていた。キッチンの電気はついていない。不思議に思いながら、父に近付く尊。

    尊「どうしたの?…えっ」

    覚「お帰り、尊」

    尊「何!手も足も包帯してる!ケガしたの?!」

    覚「うん…」

    ┅┅回想。今朝8時30分、クリニック┅┅

    美香子「支度は完了、と。あら?今朝はまだモーニングコーヒーのデリバリーがないわね」

    エリ「ご主人、お忙しいんじゃ?」

    美「でも時間はキッチリの人よ?まさかと思うけど、倒れてるといけないからちょっと様子を見てくるわね」

    芳江「行ってらっしゃいませ」

    廊下を進む美香子。リビングに一歩入ると、

    美「え?キャー!お父さん、どうしたの!!」

    覚「うう…」

    階段下に、うつ伏せに横たわる覚を発見。

    覚「さっき…階段踏み外した」

    美「なんて事!」

    覚「右手も右足も痛くて動けないんだ」

    美「それは…うーん。お父さん、手のここ押すわよ、痛い?」

    覚「痛くない」

    美「足も押すわよ、どう?」

    覚「大丈夫だ」

    状態を確認する美香子医師。

    美「骨が折れてるまではないと思うけど、レントゲン撮ろうかしら」

    覚「僕の事はいいから。患者さん待ってるから、開院しないと」

    美「目の前に居るのも患者よ!でもこんな時間…ちょっとだけ待ってて!」

    クリニックに慌てて戻った美香子。

    美「エリさん、頼めるかしら?レントゲン撮ります」

    エ「えっ」

    芳「まさか」

    美「患者は、ウチの階段下に居ます。もう開院しないといけないから、運ぶところからお願いできる?」

    エ「わかりました。お任せください」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「で、右手右足は捻挫と」

    覚「そうなんだよ」

    尊「なんで踏み外しちゃったの?」

    覚「洗濯物干して二階から下りてきたら、スマホが鳴ってるのが聞こえてさ。慌てて下りたらスリッパが脱げて、三段目位からズルっといっちゃったんだ」

    尊「あちゃー」

    覚「おまけに、後で着信履歴見ても無くて。テレビの音だったらしい」

    尊「あちゃちゃー。全治どのくらい?」

    覚「足は一週間位で、手は10日位らしい」

    尊「はあ。だからご飯の支度とか無理なんだね」

    覚「掃除や洗濯はいいんだが、料理は利き手が使えないとなあ。昼も母さんにやってもらってさ。夜も、今日は私がやるって言うから、大人しく待ってたんだ」

    尊「僕、何かやれる事あるならやるよ」

    覚「いや、受験前の大事な時期だ。母さんも、できるだけさせないって言ってた」

    尊「そうなんだ」

    覚「ところで、木村先生には会えたのか?」

    尊「そう!会えたんだよ!僕の事覚えててくれたよ」

    覚「そりゃ良かった。待った甲斐があったな」

    尊「うん!」

    覚「風呂は沸かしておいたから、ゆっくり入って体を温めな。出る頃には、母さんも仕事が終わってるだろうし」

    尊「わかった。話はご飯の時にするね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    3日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 連絡掲示板
    ありがとうございました

    確認致しました。お手間ばかりかけてすみません。

    毎回引っ掛かるなんてのは避けたいのですが…何よりマスター様にご迷惑かけたくないのですけれど。悩みどころです。

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    返信先: 連絡掲示板
    恐縮です…

    どうも相性が良くないらしく、ユーザー雑談板に投稿しましたが、また消えました。

    もし、フィルターにかかっておりましたら、二つ送信しておりますので、後の方だけ解除いただけませんでしょうか。急ぎません。まことに恐れ入ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    現代Days(仮)への道3~3日火曜17時、歴史のおさらい

    妖怪千年おばばさん、お人形見ました。素朴で愛らしいけど、成長するとキリっとするんですね。
    創作倶楽部が賑わうのは喜ばしいので、皆様どんどん割り込んでください(^-^)b
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ビビって通勤経路変えてはいなかったんだ。二年も経つしね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日も、学校帰りに昨日と同じ場所で待つ尊。

    尊 心の声(やっぱ無茶だったかな…)

    すると、遠くに新聞で見た姿を発見。

    尊「あっ、やったー!」

    木村先生が歩いて来た。早速駆け寄る尊。

    尊「あ、あのぅ、黒羽東高校の木村先生ですか?」

    木村「え?!その制服はあの高校…そうだけど、何の用だね?」

    尊「えーと、何から話そう、お久し振りです。僕二年前の夏、ここで先生にお会いして、というか出くわして」

    木「二年前?…あ、あーあー!君か、思い出したよ!不良の連中から助けてくれたあの時の子だね?もう一人、その制服着た美男子と二人だったね」

    尊「思い出してもらえて良かったです。で、もう一つお伝えしたい事がありまして、僕、速川尊と言います。姉の唯が、高校でお世話になってませんでしたか?」

    木「え!!それは驚きだ。うん、歴史を教えてたよ。…うーん」

    尊「多分、ある時期まで居眠りばっかりだったんじゃ」

    木「見てたのかい?そうだね。ある日突然、人が変わったように陣形とか聞いてきたな。なんだ、なぜあの時名乗ってくれなかったんだい?君たち、逃げるように走り去ったよな」

    尊「色々事情がありまして」

    木「で、こんな寒い所で待っててくれたの?もしかして新聞記事の話がしたかったかな?」

    尊「はい。昨日も居ましたけど会えなかったので」

    木「え、昨日も?ちょっと待って、君今、何年生?」

    尊「三年です」

    木「えっ!!こんな大事な時期に僕なんか待っててくれたの?それは嬉しいやら申し訳ないやら。じゃあ立ち話も何だからさ、そこに入ろう」

    尊「あ、はい」

    道の角にある喫茶店を指差す。二人で入っていった。

    木「ホットコーヒーでいい?ご馳走するよ」

    尊「はい。あ、ちゃんと払いますから」

    店員「いらっしゃいませ」

    木「いいからいいから。コーヒー二つね」

    尊「すみません」

    木「しかし、まさか速川の弟くんが、あの有名進学校に通ってるとは驚きだよ。大学は勿論行くよね?」

    尊「一応は」

    木「余裕が感じられるね。そうか。お姉さんは…あれ確か、急に退学したよな?」

    尊「はい、結婚しまして」

    木「結婚!噂は本当だったんだ」

    尊「遠くに嫁ぎましたので。この夏に里帰りしました。元気でしたよ。で、旦那さんが僕と一緒に居た美男子です」

    木「え!!今日は驚き過ぎて、心臓持つかなー。そうかね、そんな縁があるとはなあ」

    コーヒーが運ばれて来た。

    木「あー。落ち着く。で、用件を聞こうか?」

    尊「はい。記事、とても興味深かったです」

    木「そうか。あの書物、永禄3年の終わり頃から始まっててね」

    尊 心(間違いない。前々回、12月半ばに永禄に帰ってるから、兄さんの日記だ!)

    木「そんなに面白い物ではないよ」

    尊「そうなんですか?」

    木「日記というより備忘録に近いかな。書いた人間の実直さが窺えるんだ。どこで戦があったとか静観している感じだし、川の水量や作物の収穫量とかも書いてあったな」

    尊「後で読み返しては、対策を練ってたかもしれないですね」

    尊 心(さすが兄さん。お姉ちゃんとのラブラブが書いてある訳ではないと)

    木「最初の頃の物はさすがに破れとか酷くてね、あとどうしても、書いた人物の名前がわからないんだよ。時代と地理からすると、当時だと御月家の誰かだと思うんだけど」

    尊「そうなんですね」

    尊 心(あー、言ってしまいたい)

    先生が、グッと身を乗り出した。

    尊「え?」

    木「実はね」

    尊「はい」

    木「御月家はね、その頃には地元の歴史上姿を消した、羽木家の生き残りじゃないか、と僕は睨んでるんだ」

    尊「へー。ずっと永禄2年には滅びたって言われてた、あの羽木家ですか。それは面白いですね」

    尊 心(さすが先生)

    木「…ってさ、こんな事聞く為に、寒い中待っててくれたの?こんなんでいいのかい?」

    尊「はい。とても勉強になりました」

    木「そうか。それは嬉しいよ。この日記に興味があるならさ、何か新しいネタ出たら教えようか?」

    尊「いいんですか?」

    木「あぁ、歴史に興味を持って貰えるのは、教師としてとても嬉しいからね」

    尊「ありがとうございます!」

    木「何かあったら…そうだな、君のメルアド教えてくれる?」

    尊「はい!」

    メルアドを交換した。喫茶店を出る二人。

    木「すっかり暗くなっちゃったな。悪いね、貴重な時間付き合わせて」

    尊「いえ、僕こそ勝手に待ち伏せしてたのに、本当にありがとうございました!コーヒーごちそうさまでした!」

    深々と礼をして、先生を見送った尊。

    尊 心(待ってて良かった。早く帰って報告しよう!)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    角の喫茶店は、CafeMARGARETですね。

    続きます。

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    返信先: 連絡掲示板
    確認致しました

    毎度ご迷惑をおかけしてすみません。ありがとうございました。
    また、一日おきに投稿する生活がスタートしますので、どうか引っ掛かりませんようにと祈ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    現代Days(仮)への道2~2日月曜16時、勝ち目ないので

    妖怪千年おばばさん、てんころりんさん、カマアイナさん。ありがとうございます。反応があるだけで嬉しい今日この頃です。

    前に他の板に訪れた際、ほぼ通りすがりの人になっておりまして。板によって色も温度も違いますね。つい先程ユーザー板に行ってきましたが(今この時間は投稿が行方不明中ですが)、いかがなものでしょうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子さん、長袖二枚も着せるから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    学校帰り、若君が木村先生を救った、黒羽城公園近くの例の場所にやってきた尊。

    尊 心の声(確かに当てずっぽうだけど、ここで会えば思い出してもらいやすいし)

    あの日、杖を置いておじいさんが休憩していた、椅子に腰かけた。

    尊 心(あの後も、大変だったなぁ…)

    二年前の夏を、思い起こす。

    ┅┅回想。2017年7月、場所は同じ┅┅

    成敗直後。

    若君「精進致せ」

    木村「はい…」

    若「では、此れにて」

    木村先生にそう告げると、若君は杖を取り上げて歩き出した。尊も慌ててついて行く。

    若「お返し申す」

    持ち主のおじいさんに返却。

    若「さて尊、城へ参るか」

    尊「あ、あの若君」

    若「何じゃ。申せ」

    尊「逃げましょう」

    若「何だと?また下郎どもか?ならば討たねばならぬ、どこに潜んでおるのじゃ」

    尊「既に、囲まれつつあります…」

    遠巻きに見ていた女子高生達が、若君に近づこうと、ジリジリと幅を詰めてきていた。

    若「なんと。…おなごは討てぬ」

    尊「走ってもいいですか?」

    若「走る?…良かろう」

    尊「行きます!」

    若「うむ」

    ダッシュで、弾かれるように走り出した二人。女子高生達が不意を突かれ、キャー、待ってぇ!と背後で悲鳴をあげている。

    尊 心の声(ヤバい、僕そんなに足速くないのに)

    必死に走る尊。ついて来る若君も、やや腰を落とした独特の走り方をしている。

    尊 心(時代劇で見た事あるヤツだ!)

    間一髪、JKの輪から逃れ、公園の隅にたどり着いた二人。

    尊「あーなんとか逃げ切れて良かった。若君すみません!こんな暑い格好してるのに走らせてしまって。上脱いでください」

    若「あぁ」

    尊「僕持ちますから」

    紺色のカーディガンを脱ぎ、白いワイシャツ姿になった若君。

    尊 心(これはこれで、お母さんまたキャーキャー言うんだろうな)

    若「尊。城は近いのか?」

    尊「あ、はい、すぐそこです」

    若「一向に姿が見えぬが?」

    尊「えっと…こちらです」

    城跡に案内した尊だった。

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊 心(ようやく現実がわかった時の兄さんの後ろ姿、今でも忘れられないよ)

    そうこうする内に、周りはすっかり夜の帳が下りていた。

    尊 心(今日は諦めるか…)

    後ろ髪を引かれながら、帰路についた。

    尊「ただいま~」

    覚「お帰り。遅かったな。木村先生には会えたのか?」

    尊「会えなかった」

    覚「無理はするなよ、受験生なんだからな。はいお茶」

    尊「うん。明日もう一回だけ行ってみるよ」

    温かいお茶をすする尊。

    尊 心(お姉ちゃんが木村先生に教わってたなら、まぼ兵くん使った戦、戦術とか相談してたりして?わー、お姉ちゃんに聞いとけば良かったな)

    手はまだ冷たいが、心はほんのり温かかった尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日は会えるといいね。

    2日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 連絡掲示板
    画面展開が早いと思いましたら…

    ユーザー雑談板に投稿しましたら、見事に消えてしまいました。
    文章の再考が必要でしたらそうします。
    お手数おかけしてすみません。

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    返信先: 創作倶楽部
    (新)現代Days(仮)への道1~2019年12月1日日曜8時、出ました!

    2019年12月の満月は、12日です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    日曜の朝、令和の速川家リビング。尊が二階から下りてきた。

    尊「おはよう」

    美香子「おはよう~」

    覚「おーおはよう。今朝はピザトーストだ。焼き始めるぞ」

    尊「うん…」

    美「まだ寝させろって返事ね」

    尊「規則正しい生活しろって言うから。ゆうべは遅くまで勉強頑張ったんだよ?」

    美「わかってるわよ。でもね、これ見たら眠気が一気に覚めるわよ~?」

    目の前に、今朝の新聞を出された。

    尊「何か重大なニュースが載ってるの?」

    美「中の方のね、地域のニュースというかコラムの辺り」

    尊「へ?一面じゃなくて?」

    怪訝そうに、開いて確かめる尊。

    尊「これ?あ、あ?あーっ!」

    美「何その、驚きの三段活用」

    記事に目を奪われている。

    覚「焼けたぞー。おっ、思った以上に記事に食い付きがいいな」

    トーストを手に取るが、新聞に釘付けのまま。

    美「新聞は逃げていかないから。チーズがトロっとしてる内に食べたら?」

    尊「あ、うん。…熱っ!」

    食後。

    美「これ、書いたの忠清くんよね?」

    尊「うん。間違いなく。すごいな、ちゃんと残ってたんだ」

    記事は、隣の県のとある寺に保管されていた古文書を読み解いたところ、どうやら当時に日記として書いた物らしいと判明した、現代語訳には地元の高校教諭も関わっているという内容だった。

    尊「このお寺の場所、昔の地名は緑合だし」

    美「なーんか、感慨深いわよね」

    覚「忠清くんはホントに、歴史上の人物なんだな」

    尊「さっきの三段活用だけどさ」

    美「うん?」

    尊「僕、この写真の先生に会った事あるんだ。それでびっくりして」

    美「そうなの?!」

    覚「え、知り合いなのか?」

    尊「知り合いじゃないけど」

    覚「はぁ?じゃあ何だ」

    尊「兄さんを初めて黒羽城跡に連れて行った時にさ、途中で不良達を成敗した話したの覚えてる?」

    美「覚えてる。さすが忠清くん、正義感の強さはピカイチね、と思ったもの」

    尊「その時助けたおじさんが、この木村先生」

    記事内、複数人写る中の一人を指差した。

    美「そうなの?!ん~言われてみれば、いかにもオヤジ狩りに逢いそうな風貌よね」

    覚「おいおい。でもそんな繋がりがあったとはな。それに黒羽東高校教諭って書いてある。唯の母校だ」

    尊「これまたびっくりだよね」

    覚「これもまた繋がってる」

    美「唯もこの木村先生に歴史を教わっていたのかしらね」

    尊「…先生、僕の事覚えてるかな」

    美「助けてもらったのは覚えてるでしょ」

    尊「助けたのは、九割方兄さんだけど」

    覚「覚えてたら、何なんだ?」

    尊「中身を詳しく教えてもらえないかなって」

    覚「え?貴重な物だろ、簡単には無理じゃないか?」

    尊「でも記事にさ、歴史的資料になるかは全訳出来次第ってあるもん、今の内なら聞けるかも」

    覚「そう上手くいくか~?」

    美「それにしたって、どうアポイントメントを取るのよ?尊の高校じゃないのに」

    尊「夕方、通勤経路で待ってみようかなって。その成敗した現場、駅に近いから、今でもそこ通ってるんじゃないかな」

    美「そんな当てずっぽうな~」

    尊「二三日張ってみて、会えなかったら他の方法を考えるよ」

    尊 心の声(兄さんに、日記の話聞いてから四か月。もう資料として出てくるなんて、これも運命かな。あー、楽しげな予感。何か久々にワクワクしてきた!)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    お三方へ

    妖怪千年おばばさんへ。

    蘇芳のお話の途中にすみません。

    若い男性二人がなまめかしく…違いますが、そんな出来事もあったなあと、唯&若君、源トヨの二組の夫婦が笑い合う日がきっと来ると思える、楽しいお話をありがとうございました。

    私は、どうにもこうにも戦国の言葉遣いが苦手で…尊敬しております。

    ┅┅

    カマアイナさんへ。

    平成令和Daysを2周?!1周210話もありますよ!それは本当にありがとうございます。

    私はカマアイナさんに甘やかされている気がします。こんなに盛り立てていただいて、どれだけ気持ちが救われたことか。感謝しております。新作がお気に召すと良いですが。

    ┅┅

    てんころりんさんへ。

    お待ちしてました(^.^)いつも激励ありがとうございます。
    番号案内をこまめにですね。新作が何話になるかは皆目見当がつきませんが、そのように致します。

    私がこのアシカフェを見つけた頃には、創作倶楽部ができあがって随分経っていましたので、いろんな企画物に乗れずじまいでした。また妄想列車走んないかなー。
    PR、ですが。アシカフェの中の他の板に行くという意味でしょうか?すみません、そこが今一つわからなくて。私はいつも「最近の投稿」欄をチェックして、全ての投稿を読ませていただいておりますが、皆さんそうではないから、ですかね?

    この後の新作について

    また、あいも変わらずDaysシリーズのその後を、ゆるーくぬるーく始めます。よろしくお願いします。

    私、令和Daysを描いた時に、自分でかけた枷がありまして。
    「コロナ禍になってから二人を飛ばさない」だから2019年夏のお話となり、138話、尊と若君の秘密会談内で尊が説明する内容も、半年後の状況を見据えた物にしました。だから令和Daysはまだこのご時世、続きは無理だから完結のつもりでした。

    でも、速川家を描きたい。ほのぼのと現代を楽しむ時間をまたあげたいという気持ちが強くなり、枷ははめた状態で無理やり始めてしまおうと決めました。
    よって新作は、コロナ禍ギリギリ前の話となります。なぜそうなったか、からのスタートなので、プロローグが長くなります。

    そしてしばらくは、唯も若君もほとんど登場しません。あしからず。

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    返信先: 創作倶楽部
    朧月夜に寄せて

    ご無沙汰しております。

    帰宅の道すがら、西の空に浮かぶ月を眺めていました。
    心なしか輪郭が滲んでいて、あぁ、朧月夜。と、「夕月かかりて」としてはかなりの喜びでしたので、お知らせを兼ねて久々にお邪魔しました。

    新作、そろそろ出します。またDaysと付きます。また、ですみません。私にはこれしか描けませんので(+д+)

    今週か来週には始める予定です。

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    返信先: 創作倶楽部
    新作、練り始めました

    前回は、平成Daysが終わる頃には令和Daysを平行して書いておりましたので、インターバルは半月程でした。
    今、ゼロから大まかに組み立て始めたところです。いつ出せるか、そもそも出せるところまで行くのかも未定ですが。お時間をください。

    かなり自由にさせていただいておりますが、創作倶楽部で、いくら「原作にあること以外は許せないという方は閲覧注意!」とマスター様の説明があるにせよ、こんなにかけ離れて良いのだろうか?と自問します。特に私の話は、時系列で流れができているシリーズ物で、既に違う世界が広がっているし。大丈夫でしょうか?

    出てくるキャラクターが皆、楽しんでいる様子が描けたら、とは思います。
    あと、源トヨをもう少し何とかしたいんですが…寸止めしない夕月の毒牙にいよいよかかるのか?!これ如何に。まだ何も書いておりませんので、「止めよ!」の声が聞こえましたらご意見に従います。

    投稿フォームへ

    返信先: 創作倶楽部
    キャラが語り出す

    梅とパインさん、労いのお言葉をありがとうございます。遅いなんてないです。描いた甲斐があった!と喜んでおります。
    ご質問(違う?)の回答他もろもろは後ほど。まずは、本日投稿する予定でした、物語作成中のこぼれ話から。

    著名な小説家や漫画家の方々が、「物語の中のキャラクターが、時折自分の手を離れ自由に話し出したり動き出したりする」などとおっしゃっているのを耳にした事があります。
    そういうモノなのかー、へーと思っておりましたが、妄想作家の端の端の端くれの私にも、そんな瞬間が訪れて驚きました( ゚Д゚)!しかも2回です。

    まず2回目を先に説明しますが、それが令和Days9話の吉田君でした。
    彼を、美香子先生のファンとしましたので、意外な場所でバッタリ会えればそりゃ嬉しい。ニコニコ顔を想像していたら、「病んでる時にしか会わない人に、元気な時に会えて嬉しい」としゃべり出しました!な、なんてカワイイ奴。なのでセリフに組み込みました。唯に会える方がレアケースと彼が気付く由もなく、ただただ喜ぶ吉田君でした。

    1回目なんですが、今更ながら告白します。平成Days14話(投稿番号no.375、サブタイトル:家族の一員)の若君です。
    尊が作った結婚指輪を戦国に持って行くのか、と聞かれ「我らが去った後、ここに置いて欲しい。父上が、ここに母上の指輪がありいつも傍に居るようだと申された。我らの指輪もそのように、いつもここに居るように思うて欲しいのじゃ」と答えました。
    指輪は作ってあげたかった、だがその後はどうしよう?と話を練っていたら、ふと若君が現れ、話し出したのです。うわっ、すぐに書き留めなきゃ!で。だから私も若君の話に感動した一人でした。発表当時、皆さんに比較的気に入っていただけたエピソードを今更で、本当にすみません。こんな経験二度もあると思っておりませんでしたので(>_<)

    ずっとそのキャラの事を考えているので、ただ妄想が甚だしいだけだとは思いますが、よくぞ現れてくだすった!と、若君と吉田くんには感謝です。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります二人の令和Days、140(終)まで

    結局長文になっております。no.798の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    86、no.708、夢でも嫌!
    87、no.709、ウキウキです
    88、no.710、わかって欲しいのに
    89、no.711、止まらない!
    90、no.712、ゆらーりゆるーり
    91、no.713、甘くていいのです
    92、no.714、温もりも忘れない
    93、no.715、背中で語ります┅┅┅

    以前「唯が待つ元へ必ず帰るという強い決意で、これからも戦に臨む」って話してるんですが(27話)。いろんな方向から物事を考え、軽く口約束なんかしないであろう若君だからこそ、かえって仇になって怒らせたというか。
    友達が出来ても家には呼べないよと話す尊に、真っ先に謝った若君(93話)でしたが、この前の日の夜に実験室での秘密会談が行われ、その際新型タイムマシンに尊の妻女も乗るのかと話しており(138話)、それが軽々とは叶わないと知って、即詫びたのです。
    唯を怒らせたくだりがなくても、デートの帰りに花屋には寄ってたでしょうね。ここで、90話で若君を接客した、花屋の店員の会話をお送りします↓
    店員1「今の客、昨日も来てなかったか?」

    店員2「来てた!超イケメンは毎日でも来て欲しいよ」

    店1「息切らしてたな。急いで来たようだったけど」

    店2「早くしてとかなかったね。ジェントルマンだった」

    店1「動きがなんつーか、優雅でさ」

    店2「花束抱えた時のオーラ、すごかった!王子様現る!だった~」

    店1「500円玉をジャラジャラ出された時は驚いたけどな」

    店2「それさ、もう萌え萌えだったよ~。あんなマンガの世界から抜け出たようなイケメンがさ、貯金箱にコツコツ小銭貯めてたのかしらんなんて想像したらもう」

    店1「ヨダレ出てたんじゃないか?」

    店2「そこは飲み込んで、オマケしますっ!となった訳でして」

    94、no.716、新しい朝が来た
    95、no.717、心通じ合う
    96、no.718、浄化されます
    97、no.719、輝き続けます
    98、no.720、他人のそら似
    99、no.721、気持ちも入ってます
    100、no.722、手に手を取って
    101、no.723、心に響く声
    102、no.724、一途です
    103、no.728、繋がります
    104、no.730、準備はスローに
    105、no.731、盛り上がってます
    106、no.732、ときめき全開です
    107、no.733、打ち明けます
    108、no.735、旅立ちです
    109、no.736、納得できぬ┅┅┅

    若君が言いにくそうだったので、すっかり一人称が「わし」に戻っております。
    94話に、片腹痛いという言葉が出てきます。大変申し訳ありません!恥ずかしいという意味が全くないわけでもないようですが、ほとんどの場合、笑止千万とかちゃんちゃらおかしいといった意味で、私が恥じるという意味のみがあると勘違いし使用しました。本来の意味で読み進めると、若君が唯を滑稽だと思っていたかのようになりますが、決してそうではありません。100話も同様です。これはと苦々しくご覧になっていた方もいらっしゃったと思います。お詫び申し上げます。書き直しに関しては、内容が随分変わるのと、一度世に出た作品には責任もありますので、今のところはこのままにいたします。
    千羽鶴が完成しました。関わった全ての皆さん、芳江さんのお孫さんも、これは平和を願って作ってるんだよと理解して折り上げています。だから大殿に、手掛けた者達の総意だと断言できました(133話)。
    花火大会の動画を撮ってあげてお土産、にするつもりが、両親への置き土産にもなりました。覚さんの「そうか…そうか」は、描いていた私自身、こみ上げるものがありました。
    芳江さんが折り上げた連鶴は、三重県桑名市の伝統工芸です。黒羽城があったと推測されるいなべ市のお隣の市です。看護師さんお二人は、今のお住まいは速川クリニックからそう遠くはないでしょうが、少なくとも芳江さんは、ご実家は程良い距離にあるようです。
    唯ちゃんが若君の母に生まれ変わった世界では、やはり永禄二年に一族は滅びるでしょうか?例えそうであっても、母の愛を知らぬままよりは、ずっとずっと幸せな一生ですよね。

    110、no.737、どの花見ても綺麗だな
    111、no.738、応えて欲しい
    112、no.740、ミッション遂行中┅┅┅

    女子がキャーキャーしゃべりまくる様は描いてても楽しいです。名前が言いにくいってアンタ…本人の耳に入らないのを祈ります。
    千吉さん、さすがの安定感というか、とても描きやすかったんです。これからも唯之助奥方様を、時には諫めつつ手助けしてくれると思います。

    113、no.741、ズバリ正解です┅┅┅

    若君は朝から何を書いてたか(116話、119話も)、それは日記でした(138話)。

    114、no.742、怒らないでください┅┅┅

    115、no.743、じゃれ合います
    116、no.744、待て!
    117、no.745、聞こえないフリ
    118、no.746、月に酔う┅┅┅

    お待たせしました。源トヨようやく登場です。私にしては珍しく、寸止めの美を守っております。でも次回作があり、また登場するならば…どうでしょう。そっか、パラレルワールドだから何でもアリか。いやいやいや。誰か私を止めてください。

    119、no.747、希望の朝だ
    120、no.748、喜びに胸を開け┅┅┅

    ラジオ体操話を引っ張った甲斐がありまして、無事二元中継ができました。これからも実現するかは、唯が早起きできるかにかかります。

    121、no.754、秘めておきます
    122、no.757、セット完了です
    123、no.758、所以が知りたい
    124、no.760、最強の味方┅┅┅

    吉乃様なら、ちょっとのヒントで隠れ屋の謎を解いてしまうと思いました。やはりおふくろ殿には読まれておったか。大したお方じゃ。
    誹謗中傷は勿論ダメです。ただ唯ちゃん自身がちょっとガサツだったり、妻としての修行にあまり身が入っていなかったと推測されますので、恰好の餌食となってしまった。守りはするがやるべき事はきちんとやるように若君に諭されましたので(134話)、これからは変わっていく筈です。

    125、no.762、自覚が足りぬ!
    126、no.763、そっち?
    127、no.767、探り合いです
    128、no.771、先手必勝です
    129、no.772、勇気をください┅┅┅

    感覚が足軽の頃と変わっていないのんきな奥方を、ここでビシッと叱っておかないと、今後どんな危険な目にあうかわかりません。無事で良かった。
    夫婦揃って源トヨの恋路を応援してるのに、遅々として進まず。フーフーからのあーんしては、ちょっとは刺激になったかしら。源三郎が逃げずに自分の気持ちに向き合える日は来るかな?

    130、no.775、優秀な家臣達
    131、no.776、心も彩ります
    132、no.777、推して知るべし
    133、no.778、鶴翼を語る
    134、no.779、出生の陰に
    135、no.780、美しさそのままに
    136、no.781、どんな薬よりも
    137、no.782、氷が解けるように
    138、no.790、答え合わせです
    139、no.791、お見事です
    140(終)、no.792、そして明日へ┅┅┅

    若君の母は既にこの世を去っている。ドラマのこの設定で、若君の淋しさは勿論わかりますが、大殿だってそうじゃなかったの?後添えが居なかったのは何故?と、熟考しまして。私はこう答えを出しました。
    成之が若君を山中に救いに向かった日から、一年数か月経ってますから、仲直りというか成之の心の内のわだかまり自体はない筈ですが、ハイタッチでもいいから、兄弟が向き合い手を取り合える場を作ってあげたかったんです。固く握られた手がほどかれた時、兄の心も完全にほどけ、感極まるものがあったと思いたい。あとは阿湖姫にお任せしました。
    ドラマ8話で、別れ際に若君が悲痛な思いで語ったあのセリフ。少しバージョンアップして、未来を約束しました。消えた後のあんな切ない後ろ姿、もう私達が見る事はないでしょう。
    この令和Days、実は極力「キス」という言葉を使わないよう努めました。他の言葉で表しているから、何が違うんだって話ですが、なんとなくはっきりした表現じゃない方が良いかなと思ったまでです。最後、甘いチョコに甘い時間の小道具になってもらいました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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    返信先: アシガール掲示板
    明るい話題は良いですね

    月文字さん、嬉しいお知らせをありがとうございました。
    もし、同じ世界に居るならば、唯ちゃんとママ友になれるチャンスがありますね。育児の悩みを互いに相談とか?パパにも会えたりとか?それは羨ましいな~。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります二人の令和Days、37から85まで

    どの回も思い入れがありますので、選り抜きに時間がかかっております。no.797の続きです。
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    37、no.641、唯先生の授業
    38、no.642、忠清先生の授業
    39、no.643、視線にご注意
    40、no.644、安心しておやすみ
    41、no.645、アオハルしてます
    42、no.646、効能は
    43、no.647、会話がBGM
    44、no.648、誰もが持つ宝物
    45、no.649、頭をフル回転┅┅┅

    楽しい楽しい海水浴の日。
    何も派手な遊びはしていませんが、両親に温かく見守られながら、夏の海を満喫してもらいました。
    41話、浮き輪でプカプカからの追いかけっこシーンは、若さ溢れる感じで三人に体験して欲しかったので、今回私の一番お気に入り回です。

    46、no.650、時間をプレゼント
    47、no.651、お見通しです
    48、no.652、瞼に浮かぶのは
    49、no.653、だって女子だもん
    50、no.654、君の為に僕は
    51、no.655、山盛りです
    52、no.656、かけがえのない時間┅┅┅

    輝く笑顔、真っ白なワンピースに風をはらませ、浜辺を裸足で駆ける天使のような唯ちゃん自身が、実は海の女神様で、砂に書いた願いを彼女自身が叶えていくに違いないのです。
    今回美香子さんに、娘と二人きりの時間をどこかで作ってあげたかったんですが、結果とても賑やかなドライブ&お買い物になりました。
    男子チームが訪れたのは、滋賀県彦根市にあるお城です。

    53、no.657、人生相談です
    54、no.658、導きます┅┅┅

    吉田君って、名前も呼ばれるしセリフもまあまああるのに、影が薄い。男性キャラで若君以上に目立つ訳にもいかず、仕方ないんですが、もう少し出番をあげようと再登場してもらいました。

    55、no.659、ふんわり守ります
    56、no.660、昵懇の仲です┅┅┅

    この日実は、隠れテーマが「五感を満たすデート」でした。雨に濡れて冷たく、ふと触れた体は温かく、カフェオレはより甘く、愛する人の香りに包まれ癒される。なので、少々生々しいと感じられる部分もあったかと思います。失礼しました。

    57、no.661、男も女もなく
    58、no.662、安全な時代とは
    59、no.663、願い事はなに
    60、no.664、千里の道も一歩から┅┅┅

    今回は、神社のくだりはほぼ創作ですが、愛知県犬山市にあるお城がモチーフです。天守で若君が、黒羽城があった方角を静かに眺めますが、この直前に信長の勢力拡大話を尊に聞いた(132話)ので、その距離の長さに思うところがあったのでしょう。

    61、no.667、コツコツと
    62、no.668、ヒヤヒヤです
    63、no.669、咲き誇ります
    64、no.671、教えてあげたい┅┅┅

    二人にでっかい花火見せてあげたいなぁと、現代に居る頃にどこかで花火大会やってなかったか調べましたら、ちょうどこの日、琵琶湖畔で開催されていました。お話の都合上だけなら土日か水曜開催にすれば良かったですが、実際の日付に合わせたので木曜日でした。私が代わりに?この花火大会の動画をじっくり観賞しましたが、カエルも猫もキノコも、ホントに打ち上がってたんですよ。

    65、no.672、色と香りに包まれて
    66、no.674、成長しあうのです
    67、no.679、恩返しします

    68、no.681、気が利きます
    69、no.686、私のモノ!
    70、no.688、これが目に入らぬか┅┅┅

    コーチ登場。前のシリーズ平成Days51で、デパートでばったり出くわした際「娘も小学生にもなると…」と言っていました。その娘が今回の上の子ですね。一年経って小2になりました。
    自分が娘達に取り合いにされる様子を想像して、デレデレしてた若君ですが、ここで、唯と若君の娘の名について、私の見解を述べさせてください。
    マスター様のブログ「アシガールの世界」内の「御月家の家系図からわかること」にて、「末の女子の名は美香。なぜ最初の女子につけなかったかはわかりません」とあります。私が思うに、覚は覺高に、尊は忠尊にマイナーチェンジして名付けてるけど、美香子は美香で呼び方もそのまんまなんで、畏れ多くて初めは名付けをためらったんじゃないかと。母の名を呼び捨てみたいになりますので。でも7番目に女子が生まれ、やっぱ付けようよと、ようやくリスペクトが勝ったと考えます。
    ただ、末っ子ってそもそも手放しで可愛くないですか?若君が思いっきり、母の名を連呼してる姿が想像されます。

    71、no.689、定番はどっち
    72、no.693、実践中です
    73、no.694、GO!ショッピング
    74、no.695、めざめました
    75、no.696、パワーチャージ!
    76、no.697、計画的に
    77、no.698、地上に瞬く星┅┅┅

    都会への旅行。子供達はあくまでも付き添いで、ずっと親の事を考えて行動し計画まで立ててます。だから夜、両親を早く二人きりにしてあげたのも、親孝行。
    鰻、私は断然ひつまぶし派です。そのままと薬味のせを少しいただいたら、だしを少しずつかけながらちびちび食します。

    78、no.700、リズムに合わせて
    79、no.701、思案します
    80、no.702、可愛くて可愛くて
    81、no.703、月に愛を誓います

    82、no.704、活用します
    83、no.705、夏休みと言えば
    84、no.706、ギュっとね
    85、no.707、発掘は再会だ┅┅┅

    覚さんなら、昔のグッズも大切にとってありそうだったので、この度プレイヤーを提供してもらいました。
    セミハンター、相当やかましそう。虫にキャーとか言う女子じゃなかったので、永禄で夜の草むらに飛ばされようがタフに生き延びたんだと思います。
    結婚20周年のお祝い。こんなイベントを計画してくれた子供達の成長に、両親は20年がより感慨深かった事でしょう。

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    返信先: 連絡掲示板
    確認いたしました

    マスター様、ありがとうございました。

    似たような投稿を、今後あと二度いたします。何度もお手を煩わせないようにしたいのですが、長さだけでもないようですし、引っ掛からないのを願うばかりです。

    投稿フォームへ

    返信先: 連絡掲示板
    久々にやってしまいました

    創作倶楽部に先程投稿しましたが、見事に消えてしまいました。
    もし、フィルターにかかっているだけでしたら、お手数ですが解除をお願いします。
    届いていない模様でしたら、文章内のNGワードを探します。

    投稿フォームへ

    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります二人の令和Days、1から36まで

    通し番号、投稿番号、サブタイトルの順です。 どんな話だったっけ?と遡って投稿を探したい時、サブタイトルを掲示板の記事検索欄(板の下の方にあります)に入力すると、ページを戻っていくより早いと思います。

    今回、なにせ長いので(*_*)、かいつまんでの振り返りとし、描いている日付や内容が連続するお話は、まとめて解説いたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1、no.585、短気は損気?┅┅┅

    子供がすぐ出来ないのは僕のせいだよ、と言ってくれる旦那さんが、どのくらいの比率でいらっしゃるかはわかりませんが。二人にはこの一月、様々なプレッシャーから解放される日々を送ってもらいます。

    2、no.590、急いで検索!
    3、no.592、兄の激励
    4、no.593、時間無制限です┅┅┅

    ドラマの設定からより離れていってますが、尊が受験生という事情もあり、無事一緒の時間が増えました。
    一応申し上げておきますが、これで毎晩同衾、とまでは考えませんでした。私はどこでもすぐ眠れるんです、と言っていた唯。イベントがあった日など特に先に寝てしまう(64話)し、そこまでイチャイチャしてないと思います。

    5、no.594、ほんのり甘く┅┅┅

    マクワウリ、食べた事があったかは覚えがないんですが…一昨年、ホームセンターに苗が売っていまして。購入しまして育て始めたのですが、ダメでした(ノд<)メロンの育て方に近いらしく、ハードル高かったです。昨年は苗が手に入らなかったので、また機会があれば頑張りたいと思います。

    6、no.595、食欲旺盛です
    7、no.596、目白押しです

    8、no.597、静かにパニック
    9、no.598、そっと見てました
    10、no.603、まるで買い物デート
    11、no.604、色っぽいね┅┅┅

    吉田君、クラスでも席近かったし、ただのクラスメートよりは仲良かったんではないかと。ただ彼、ドラマでの一人称は「俺」ではなく「僕」でした。失礼しました。
    美香子先生、妖怪千年おばばさんのお話でも後にコーチになる尾関君に慕われていますが、私も、ドラマのあのキャラならきっとそうだろうと思いました。この9話については、こぼれ話がありますのでそれは後日に。
    男子の水着がグラデーションカラーなのは、永禄のお着物は皆さん絞りをあしらった柄が多く、にじみ具合や色の淡さなどが、見慣れていて手に取りやすかろうと考えたからです。尊も派手好きではないので地味めな黒白でとなったら、あらお揃い、となったと推測しました。

    12、no.605、買い込みます
    13、no.606、ふるまいます

    14、no.607、過ぎたるは…
    15、no.608、幻滅はイヤなの
    16、no.609、レッツトライ!
    17、no.615、結末変えます!
    18、no.618、口どけ優しく
    19、no.619、近う寄りたい┅┅┅

    楽しい楽しいプールの日。
    映画「犬神家の一族」の、犬神佐清の白マスク姿を彷彿とさせる程白かった模様の男子達。1976年公開の映画ですが、この前4Kデジタル修復したとニュースになってました。それまでもちょくちょくリメイクなどされていて、関連グッズも見た事ある気がしまして、唯が知ってる体で進めました。白い若君はイケてないらしい(42話)。
    タピオカですが、カップの底に沈む感じはちょっとカエルの卵っぽくはあり…私は好きですよ。だから唯に止められなくても、若君が実物見たら引いたかもとは思います。
    プールを大満喫した帰り道、名前で呼んでくださいと両親にお願いした若君。若君って呼び名、どこか敬語っぽくありませんか?令和に居る間くらい、総領とか何の肩書もない一人の男の子として過ごせばいい。より家族として絆が深まったと思ってます。

    20、no.620、いっちにーさんし!
    21、no.623、イケメンシェフ再び┅┅┅

    若君がラジオ体操と出逢った朝。永禄でも続く彼の新たな日課の始まりです。
    ハンバーグに高野豆腐を混ぜこむのは私の定番でして。未だ分量など模索中ですが、出来たハンバーグをお箸で割った時に、プチューと肉汁が出る動画を撮って、ほくそ笑んだりしております。

    22、no.624、あの頃の私と僕┅┅┅

    どうせお祭りを描くならと、黒羽城があったと推測される三重県いなべ市のお祭りの日程を調べましたらこの日でしたので、神輿などモチーフの参考にさせていただきました。

    23、no.625、屋根まで飛んだ

    24、no.626、君はプリンセス┅┅┅

    13話の後、エリさんはワンピース2着の仕立てに着手するのですが、久々で腕が鳴ったのでしょう、一週間かからずに出来上がりました。

    25、no.627、もてなします

    26、no.629、労います
    27、no.630、ずしりと重く
    28、no.631、製造中です
    29、no.632、香ってます
    30、no.633、光ほのかに┅┅┅

    戦の後、討ち取った敵の首を大将が確認していたそうですが、戦に寄らぬ和平の道を探りたかった若君には、とても辛い役目ではなかったかと推測します。体を優しくさすってもらって、辛さが少しは和らいだなら良いのですが。

    31、no.634、積年の夢
    32、no.635、社会勉強です┅┅┅

    両親は若君に、現代の仕組みも覚えて帰ってね、労働にはこのような対価があるんだよと教えたかった。親の教えを素直に聞き、よく働き、コツコツと貯め、そのほとんどを唯が喜ぶ品物に支払いました(56話、89話、98話)。

    33、no.636、働き者です
    34、no.637、シエスタです
    35、no.639、どうか醒めないで
    36、no.640、柔らかくて温かい┅┅┅

    「夢の中に出てきた、あなたはとても素敵…」松田聖子さんの「Eighteen」の歌い始めですが、唯の夢を書いている間中、ずっとこの曲が脳内リピートされていました。2019年8月は、唯がまだ誕生日を迎えていなければ、ちょうど18歳。まだまだ夢見てていい年頃だもの。忠清王子も唯姫の望みなら何でも叶えてくれそうだし。と若君に、反対のご意見もあったであろう車の運転をさせました。唯は泣いて喜んでおりましたので…ご容赦ください。

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    返信先: 創作倶楽部
    今までの二人の令和Days、番号とあらすじ、86から最終話まで

    no.727の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    86no.708、8/14、悪夢で体が動かない

    87no.709、8/14、デートに誘われご機嫌に

    88no.710、8/14、公園に取り残される唯

    89no.711、8/14、花束に超感動のあまり

    90no.712、8/14、ブランコから見上げる空

    91no.713、8/14、顔に残る証拠。留守番は任せて

    92no.714、8/14、両親に最後のマッサージ

    93no.715、8/14、尊が彼女を家に招く日は来るか。寝る位置の考察

    94no.716、8/15、最後の朝。呼ばれて芳江とエリの元へ

    95no.717、8/15、鶴が集まった。家族の話に感涙

    96no.718、8/15、千羽鶴完成

    97no.719、8/15、薬局でイチャつくカップル

    98no.720、8/15、スーパーの軒先で一休み

    99no.721、8/15、昼ごはんはおにぎり

    100no.722、8/15、写真を眺めながらゆったり過ごす二人

    101no.723、8/15、お目覚めの後花火観賞。荷物をまとめ始める

    102no.724、8/15、両親にメッセージ収録中にハプニング

    103no.728、8/15、芳江とエリにお別れの挨拶。鶴がまた増えた

    104no.730、8/15、はさみ揚げはカレー味

    105no.731、8/15、両親昭和歌謡にノリノリ

    106no.732、8/15、かき氷であーんして

    107no.733、8/15、唯の焦燥感はなぜ

    108no.735、8/15、無事永禄へ。誰か来た

    109no.736、8/15、からかわれる小平太

    110no.737、8/16、花の保管方法は。阿湖に会いに行く唯

    111no.738、8/16、土産を渡す。女子会大盛り上がり

    112no.740、8/16、千吉に頼み事する唯

    113no.741、8/17、成之を訪ねる若君

    114no.742、8/18、呼び名を優しく受けとめた吉乃

    115no.743、8/19、成之源三郎小平太の三者三様

    116no.744、8/19、じゃれ合いながらも何かを思い付く若君

    117no.745、8/19、源トヨを呼んだ若君。トヨにお願いが

    118no.746、8/19、源三郎に恋愛の教示

    119no.747、8/20、じいが体操を催促

    120no.748、8/20、ラジオ体操二元中継

    121no.754、8/21、吉乃が隠れ屋の謎に気付く

    122no.757、8/21、表門前のブランコ完成

    123no.758、8/21、悪丸の名の由来を推理する尊

    二人のもしもDays4no.759、とある年(ほぼ2021年)の12月23日から25日、唯の望みは叶い二人の望みはもうすぐ叶う

    124no.760、8/21、尊の読みは当たった。女中を成敗するトヨ

    125no.762、8/22、唯の無防備な行動に激怒した若君

    126no.763、8/22、トヨの勇気の結果は

    二人のもしもDays5no.764、とある年の大晦日から元日、家族五人で迎えた新年。誕生日を祝う

    127no.767、8/22、サポート体制万全で若君の料理始まる

    128no.771、8/22、もんじゃ焼き完成。トヨが攻め勝つ

    129no.772、8/22、源三郎一人相撲

    130no.775、8/23、庭にブランコ設置。悪丸の告白

    131no.776、8/23、男前のトヨにご褒美を

    132no.777、8/23、有頂天のトヨ。大殿登場

    133no.778、8/23、大殿に千羽鶴の意義を説明する若君

    134no.779、8/23、初めて語られる母の話

    135no.780、8/23、尊手芸男子の扉を開く

    136no.781、8/23、手当ては温かく優しい

    137no.782、8/23、固い絆のハイタッチ

    138no.790、8/23、尊と若君の秘密会談

    139no.791、8/23、速川家の三人が最後の若君手製の料理を堪能。しばし想い出に浸る

    140(終)no.792、8/23、聞きたかった言葉と離れても家族を思う心

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    返信先: 創作倶楽部
    カマアイナ様

    唯とたーくんの物語を、手放しで喜んでくださっているご様子がとても嬉しく、創作のうえで大変励みになりました。こちらこそ、ありがとうございました。心より感謝いたします。

    ご期待に添えるかはなんとも未定ですが、いつか作れたらいいなと思います。二人のラブストーリーなんていくらでも描けるんですが…私は速川家五人揃ってるのが好きなので、五人一緒がいいし…辻褄のちゃんと合う良さげな理由ないかしら。考えます。

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    返信先: 創作倶楽部
    140話終えて

    春先から始めた夏のお話、真冬に無事終えられまして、ほっとしております。
    唯と若君に味わわせてあげたかった夏の日々。他にも出来る事はあったかもしれませんが、家族の時間もたっぷり作ってあげたかったので、まあまあ詰め込んだつもりです。
    所々設定や呼び名も変えるし、至らない表現ですとか、気に入らない展開もあったであろうと思いますが、自由に描かせていただけました事、感謝感謝です。皆様、そっと見守ってくださいまして、ありがとうございました。

    今回、速川家へのプレゼントの如く現れた二人。三分後に戻れるならまさしく気楽な里帰り。現代の夏のシーンと家族共に過ごす幸せを堪能して欲しい。また永禄の皆さんの生き生きした姿を私が見たくて、38日間全ての日付を描きました。
    ドラマ7話で若君が「我らも確かに生きておったのだ…食らい、戦い、笑い、嘆き」と語りますが、日本史の教科書に載らない人々の日常こそ現代に続く訳で。令和Daysは、永禄と令和、これからも脈々と続く日々のほんの一部です。一部だからラストも淡々と。明日は何かが起こってしまうかもしれないけれど、それはいつの時代も同じ。おやすみまた明日の挨拶ができる幸せが、長く続くのを願うばかりです。

    終わって今思うのは…うん。淋しいですね。それにルーティンが無くなって、生活習慣が変わるなと(;^_^A
    話のストックを小出しにしてはいましたが、1日おきと決めた投稿ペース、毎日夕方になると、あれ今日投稿日だっけ?と焦りΣ(×_×;)
    休日に、今日は何話か書き進めるぞ!と日がな一日格闘する事も多々ありました。

    とはいえ、しばらくタイムマシンの行き来は無理ですし、モチーフもないし。こういうテーマで!となれば、少し前のパラレルワールド話の如くネタは出せますが…隠居生活に入ると思います。

    ひとまず、86話以降のあらすじの表を出します。あと、振り返りですが、140話全部では、場所ばかりとって申し訳ないので、かいつまんで、これだけは言っておきたい、弁解したい回だけにいたします。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days140(終)~23日20時、そして明日へ

    それぞれの場所で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が懐から、布に包まれた何かを出した。

    唯「あれ?それって、千羽鶴が包んであった風呂敷じゃない?」

    若君「そうじゃ」

    唯「えー、なにー」

    開くと、中身は小さい箱。

    唯「え?アーモンドチョコ!どうしたの?いつの間に買ってた?」

    若「千羽鶴と共に、包まれておったのじゃ」

    唯「そうなの?!そっか、次の日の朝、たーくん早起きだから、先に部屋に風呂敷ごと持ってったんだよね」

    若「あぁ、ほどいたらこれが出て参り驚いた。何も文は入っておらなんだゆえ、多分即座に思い立ち、入れてくださったのであろう」

    唯「お母さんが包んだって言ってたしね。え、でもなんで今まで隠してたの?」

    若「特に意味はないが」

    唯「そう?」

    若「ゆうべはこの時間、もんじゃ焼きで満腹であっただろうが、逆に今日の昼飯」

    唯「ギクッ」

    若「あまり食しておらなんだように見受けたが」

    唯「阿湖が居たから、ちょっとだけ見ならって、おしとやかにしてみた」

    若「ほぅ。で、腹も減っておろうと思い」

    唯「大当たりー!助かるぅ。じゃあ一緒に食べようよ。写真見ながらとかどう?」

    若「良かろう」

    蝋燭で照らしながら、二人で写真集のページをめくっていく。最後に近付いた所で、

    唯「あれ?これって」

    若「おぉ、これは…あの、爪を乾かしていた折の」

    ソファーでうたた寝する、二人の写真が増えていた。

    唯「ラブラブを激写されてるぅ。お父さんかな、尊かな。でもいい写真」

    ガッツリ唯にもたれていた若君。

    若「少し重そうにしておらぬか」

    唯「重かったもん」

    若「それは、済まなんだ」

    唯「ううん。安心して寝てるんだな、って嬉しかったから全然OK」

    若「ハハ、そうか」

    写真集をパタンと閉じた唯。顔を上げると、若君に見つめられていた。

    唯「…チョコもっと食べる?」

    若「あ?いや、唯が食せ」

    唯「要らないの?」

    若「唯がこの世の幸せ、と食す姿が見たい」

    唯「えー。そんなコト言うと、たーくんの分なくなるよ?」

    チョコを頬張る唯。優しく見つめる若君。

    若「図らずも、父上と存念が同じであった」

    唯「あー、今日の話?」

    若「わしも、妻は生涯、唯だけじゃ」

    唯「嬉しい!あっでも私、ずっと生きるから」

    若「…うん」

    唯「だってさ、愛するって、その人を幸せにするために生きる事じゃない?遠くじゃ嫌だよ。もちろんそばにも居たい」

    若「そうじゃな。…その、生きる話じゃが」

    唯「うん?」

    若「わしは唯に謝らねばならぬ」

    唯「謝るって?」

    若「戦へ出ても、必ずや唯の元へ帰る。無論生きての」

    唯「…」

    若「約束する」

    唯「いいの?」

    若「常に前を向いておらねばならぬのに、約束も出来ぬとは、敵に背中を向けるのと同じであった。気付くのが遅く、済まなかった」

    唯「…良かった。私ちょっと、心配してたの。あんなにたーくん、みんなに生きろって言ってたのに」

    若「考えた上で申した事ではあったが、かえって不安にさせてしもうた」

    唯「万が一、のために覚悟はする。でも必ず戻って来るって、強い気持ちで居てくれるだけで嬉しいよ。ありがとう」

    若「共に生きよう」

    唯「はい!」

    唯の肩に手を置いた若君。引き寄せようとすると、

    唯「はい、あーんして」

    口にチョコを入れられた。

    若「…避けておるのか?」

    唯「そんなコトないよぉ。まだチョコもあるし」

    若「今食べ切らずとも」

    唯「まぁそうだね。なんとなく、もうちょっとたーくんと話してたいなって」

    若「そうか。何を話す?」

    唯「あのね、初めて永禄に飛ばされた時、私ここで…って絶望したけど、たーくんに会えたのは奇跡で、今こうして一緒に居られて、ホント良かったなって」

    若「出会っていきなり刃先を向けられても?毒キノコを食せと申しても?」

    唯「あっ…そっそうだよ、まぁ、どうせだったら、たーくんに斬られるならまだいいのかなー。いや、痛いのはヤダな」

    若「ひょうげた小僧など斬らぬ」

    唯「どう見ても、おなごじゃなかったと」

    若「フフッ」

    唯「ちぇー」

    若「ハハハ」

    唯の髪を撫でる若君。見つめ合う二人。

    若「唯」

    唯「はい」

    若「この世に、わしの前に現れた事、心より礼を申す」

    唯「あ、それ…。そっか、私すぐ戻るつもりで、もう一回言ってってリクエストしてたんだった」

    若「お前の事は生涯…」

    唯「…」

    若「離さぬ」

    唯「キャー!」

    若「シッ!声が大きい!」

    唯「ごめぇん。あ~今のセリフ、動画でとっときたかったな~」

    若「幾度でも申すが」

    唯「やーん、それもっといい!嬉しいっ」

    唯が姿勢を正した。若君も正対する。

    唯「えっとね」

    若「うん?」

    唯「たーくんも大殿も優しくしてくれるけど、赤ちゃんが欲しい気持ちは変わってないの。もう、くよくよはしないけど、いつか…いつか会えるといいね」

    若「ゆるりと、待つとしよう」

    唯「うん。でも、子供にデレデレのたーくんも見たいな」

    若「ハハッ。まぁ、身籠れば、唯を戦に出さずには済む」

    唯「前に言ってたな、それ。うん。私は、子供を守って、だから家族を守れて、たーくんも守れるんだね」

    若「そうじゃな…」

    唯「あ」

    若「…」

    唯「ふふっ、チョコの味だ」

    ┅┅

    変わって、令和。速川家リビング。

    美香子「ふぅ。新聞も読み終わったし、そろそろ寝ようかしら。あら、尊」

    覚「喉でも渇いたか。麦茶なら冷蔵庫に」

    尊「あ、ううん、歯磨きに来た。今日はもう寝ようかと思って」

    覚「お?日中から細かい作業で疲れたか?」

    尊「なんか…兄さんの声が聞こえた気がしたんだ。程々にって」

    覚「降臨したか」

    美「忠清くん、静かに見守っててくれそうだもんね」

    ┅┅

    夜も更けてきました。五人、寝支度です。

    唯「さすがに眠くなってきたなぁ。たーくんそろそろ寝る?」

    若「うむ…」

    唯「って、なんか考え事してるし」

    若「尊は、このような夜更けにも、学問に励んでおるのでは?」

    唯「だって一か月遊んでたよ?アイツ」

    若「されど無理はならぬ」

    唯「じゃあさ、そう願ったら?気持ちを送る感じでさ」

    若「心通じ合うようにか」

    唯「そっ」

    若「…尊。体に気を遣い、程々にせよ」

    尊「あっ、…兄さん?」

    唯「たーくん優しいよ。ねぇねぇ、明日の予定は?」

    若「朝から領内の見回りに」

    唯「忙しいね。武士は週休二日とかないからなぁ」

    若「何じゃ、それは」

    唯「完全土日休みとかならいいのに」

    若「土日。そういえば、明日は土曜日じゃ」

    唯「え?よく覚えてたね。そっか、たーくん毎日日記つけてるからわかるんだ」

    若「土曜日なら、院は開いておるではないか」

    唯「半日ね」

    若「お母さんも、忙しゅうされるであろう」

    美「さて、明日あと半日、頑張ろっと」

    覚「そろそろ寝るか」

    唯「そうだね。じゃあ、寝るとしますか」

    若「あぁ」

    尊「おやすみなさーい」

    美「おやすみなさい」

    覚「おやすみ~」

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん、また明日ね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    彼らの日常は、続きます。

    この度も、ご覧いただいた全ての方に感謝いたします。かなり長くお付き合いいただきましたが、なんとか走り切る事ができました。ありがとうございました!

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days139~23日19時、お見事です

    このブランド、爆売れに違いない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き令和。キッチンに覚と尊。

    尊「スパイス、忠清ブレンド使う?」

    覚「今日は使わない」

    尊「って言うか、どれが兄さんのかわかんなくなってるけど」

    覚「へへ。どうせなら、全部貼りたかったからさ。壮観だろ?」

    スパイスの棚に整列した小瓶。ラベルが統一されているのだが、

    尊「全部、忠清って書いてあるし」

    ┅┅回想。8月10日6時、キッチン┅┅

    覚が一階に下りてきた。すると、庭から若君登場。

    若君「おはようございます、お父さん」

    覚「おはよう、忠清くん。え?今朝はもう稽古終わったの?」

    若「今日は、大掃除をすると聞きましたので、早めに体を温めました」

    覚「そうなの!クリニックが昼までだから、本格的にやるのはそれからだけどね。さすが、志が違うなぁ」

    若「然程でもございませぬが」

    覚が、キッチンの棚を眺めていたが、蓋付の瓶を一つ取り出した。

    若「どうされましたか?」

    覚「あのさ、昨日スパイス混ぜてもらったじゃない。忠清ブレンド」

    若「はい。この瓶、ですね」

    覚「僕の字でラベル…あ、この貼ってある紙ね、書いたけどさ、どうせなら忠清くんに書いて欲しいな~なんて」

    若「それはお安い御用ですが、ここに書くのですか?」

    覚「いや、それは書きにくいから。ちょっと待ってね」

    紙と筆ペンを持ってきた。

    覚「ここに、名前だけ書いてくれる?」

    若「忠清、だけで?」

    覚「うん。それで充分だから」

    サラサラと達筆で名が書かれた。

    若「これで良いでしょうか」

    覚「カッコいいな~。ありがとう」

    若「で、どうされるのですか?」

    覚「ペタっと貼れるように、シールにプリントさせて貰うね。あ、えーと、この僕の字から、君の字に貼り替えるよ」

    若「そうですか。それは楽しみです」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「コピり過ぎだし、肝心のスパイス名は小さくしか書いてないし」

    覚「あまりに美しいから、達筆メインでな」

    尊「それよりこれ、超笑えるんだけど」

    酒やみりんの瓶にも、まるで銘柄のように忠清と大きく貼ってある。

    覚「高級酒みたいだろ?」

    尊「人気ブランドだなぁ」

    19時30分、美香子が顔を出した。

    美香子「8時前には席に着くから。あら、今日はスープがメイン?もしかして」

    覚「金曜だから忠清くんの料理の日。最後のホワイトソースだ」

    美「嫌だわ、最後なんて」

    覚「仕方ないだろ、いくら冷凍でも日持ちの問題はあるからな」

    20時、三人で晩ごはん。

    全員「いただきます」

    美「あ~美味しい。五臓六腑に染み渡るわ~」

    覚「最後の一掬いまで、堪能してくれ」

    尊「おいしいな。あ、そういえばさ、お母さん、花火大会の動画、観てないよね」

    美「観てないわね」

    尊「ご飯済んだら流してあげるよ」

    晩ごはん後のお茶タイム。

    尊「お父さんも座って」

    覚「僕は観たけどな。あ、もしかして、何か足したのか?」

    尊「うん」

    美「えー、何~」

    上映スタート。

    美「綺麗ね。まぁ」

    覚「気付いたか?」

    美「うん。唯と忠清くんの声が聞こえるわ」

    尊「僕、極力静かにしてたから」

    美「なんか嬉しい。ありがとう、尊」

    画面は、実験室の中に切り替わった。

    覚「お?」

    美「あら」

    二人からの感謝のメッセージ、生まれ変わったらの話と続く。

    美「今までで最高の泣きっぷりじゃない?」

    覚「あなたの母になります、なんて、我が娘ながら中々のモンだ」

    美「そうね…。あのさ」

    覚「何だ」

    美「ウチって、彼が帰ってきたい場所になってるかしら」

    覚「なってると思いたい」

    尊「なってるよ。絶対」

    美「うん。じゃあ、いつ来てもいいように」

    尊「すぐは来ないはずだけど」

    美「アクセサリー作り、頑張ろっと」

    覚「細かい作業だぞ~」

    美「顕微鏡で覗きながらやろうかしら」

    覚「なるほど、それいいな」

    尊「どんだけ小さい物作る気なの」

    美「やっぱり?」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅

    その頃、永禄。唯の居室。

    唯「たーくん、お疲れ様ぁ」

    若「待たせたの、唯」

    唯「あのね、聞いて!さっきね、小平太パパが妙だったの」

    若「妙とは何じゃ」

    唯「いっつも、会えば小言を言われてたんだけどさ。子はまだか攻撃も」

    若「まぁ、養父としての立場はあるからのう」

    唯「今日は、言いかけて、アッて口をふさいでたの。たーくんが止めてくれたの?」

    若「いや、直には申しておらぬ。吉乃殿には、わしの存念は伝えたが」

    唯「そーだったんだー。さすがたーくん、さすがおふくろさま。小平太パパさー、まぁ一応家族だけどさー、パワハラ気味だし、ちょっとうっとうしかったんだよね」

    若「パワハラ?」

    唯「あ、えーっと、どう説明しよう」

    若「それは」

    唯「ん?」

    若「鹿之原には近いのか」

    唯「…近くないっす」

    若「そうか。まぁ良い。今宵はの、唯が喜ぶ品を持って参った」

    唯「えー!なになに?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

    次回、最終回。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days138~23日17時、答え合わせです

    自由に行き来できる未来が早く来ますように。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。食卓に尊。早速買ってきたレジン液を型に流し込み、花を入れ、専用のライトで固めるという作業をしている。

    覚「カーテン開いてて、眩しくないのか?」

    覚が麦茶を運んできた。

    尊「わざと開けてあるんだよ」

    覚「そうなのか」

    まだこの時間は、太陽が燦々と降り注いでいる。

    尊「日にかざした時、どう見えるか確認したいから。だって使うのは日中でしょ、かんざしとか帯留めとか」

    覚「まぁ、そうだな。まだ練習段階か?」

    尊「うん、ひとまずは」

    覚「あまり根を詰めるなよ」

    尊「大丈夫。昼間しかやらないから」

    覚「そうなんだ」

    尊「花がどう日差しに映えるか見たいから、夜よりは明るい内に作業したくて。そのために、紫外線で固まるUVレジンじゃなくて、LEDライトで固まるLEDレジンにしたから」

    覚「色々あるんだな。面白そうだ。お母さんもやりたそうだったぞ」

    尊「今の内にモノにするからさ、土日で作ろうよ」

    覚「いいね~」

    尊「受験勉強は、夜にするから」

    覚「再始動な」

    尊「うん。三倍頑張ってるよ」

    再び作業を続ける尊。

    尊「ふう」

    一呼吸して顔を上げた。窓の外には、夏の庭の景色と、実験室。

    尊 「…」

    尊は、若君と二人、実験室で話し合った日の事を思い出していた。

    ┅┅回想。8月13日20時30分、実験室┅┅

    向かい合って座る尊と若君。

    若君「お父さんには、聞かれとうなかったのか?」

    尊「そんな事はないんですけど、なんとなくサシで話したくて」

    若「そうか」

    尊「それでは…前に、家族全員でお城に行った時の話ですけど」

    若「尊の隠れた存念じゃな」

    尊「はい。僕あの時、令和の現代は安全だと思いますか?って聞きました」

    若「そう思うておる、と答えたのう」

    尊「率直に言います。450年後の現代は、色々わからない分危険です。兄さんは特に」

    若「…聞かせて貰おうか」

    尊「永禄と令和。お互いに今どうしてるかな?と思いを馳せた時、令和に居れば永禄の大まかな状況はわかります。それは、歴史として残っているから。いつ戦があったとか、黒羽城はどうなっているとか」

    若「うむ。語り継がれるからじゃな」

    尊「兄さん、前回帰った後、向こうで日記付け始めたんですよね」

    若「あぁ。少しでも日々の様子が末代に残れば良かろうと思うての、前の日の事柄を、翌朝に」

    尊「翌朝なんですね。さすが兄さん、ちゃんと覚えてて書けるんだ」

    若「無事に朝を迎えられた事に感謝し、書き始めるのじゃ。何より、夜は出来るだけ長く唯と過ごしたい」

    尊「のろけですか?」

    若「ハハハ。朝の唯は居らぬも同然であるし」

    尊「ダラダラ寝てるんですね」

    若「その分、書く時間は取れると」

    尊「はは…。そういうのもあって、令和の僕達は永禄の状況を把握しやすくなってますけど、逆は無理ですから」

    若「そうじゃな」

    尊「いつかすごく改良されたタイムマシンができて、行き来が簡単安全にできるようになったとしても、現代に着いて驚くかもしれません」

    若「それは、例えるならば?」

    尊「家族の誰かが居なくなってるとか。事情は色々考えられますが、家が無くなってるとか。帰る場所としてその時速川家が存在してるかは、永禄ではわかりません」

    若「まぁ、考えとうはないが、わからなくもない話じゃな」

    尊「実験室自体が無くなっていれば、まず飛べませんけど、それはそれで、未来で何があったかと心配になりますよね」

    若「ふむ。あとは?」

    尊「無事着いた。僕も両親も健在。でも、見えない危険があるんです」

    若「どのような?」

    尊「初めて兄さんがここに来た時、感染症にかかったじゃないですか」

    若「うむ」

    尊「あの時の兄さん、矢傷が癒えつつあって万全な体調ではなかったにせよ、兄さんだからかかった気がするんです」

    若「わしだから。弱いとな?」

    尊「いえ、育った時代の違いです。いろんな免疫…病気やバイ菌から身を守る力がやや少ないというか」

    若「尊には、それがあるのか?」

    尊「僕に限らず、両親もです。必要な免疫は、赤ちゃんの頃からつけるような制度にもなってて」

    若「幼子は、病を恐れず育つ事が出来ると」

    尊「はい。で、兄さんにはそれがないけど、お姉ちゃんにはあります」

    若「良いではないか」

    尊「それがもっと危険で」

    若「何ゆえ?」

    尊「お姉ちゃん自身はピンピンしてても、知らずに現代の何かしらの菌などを、永禄に運んでしまうかもしれないんです。そうすると、兄さん始め永禄の皆さんが危ない」

    若「目に見えぬからか」

    尊「はい。今こうしてサシで話してる僕も、兄さんを危険に晒しているかもしれないんですが。前回は飛ぶ前に感染がわかったんで、治してから帰れましたけど…」

    若「それはないと思いたいが」

    尊「また、もし次回があったとして、現代に到着した時、もう空気自体が汚染されているかもしれない。普段からこれ着けていないといけない世界になってるかもしれません。そうすると、降りたった以上、永禄には簡単には戻れなくなります」

    隅に置いてある、防護マスクを指差した尊。

    若「そうか…」

    尊「という訳です。でね、兄さん」

    若「ん?」

    尊「まずは、大学入るための勉強を頑張ります。無事入り、手がつけられるようになったら、タイムマシンの改良をして、起動スイッチも新たに作ります。いつになるかは約束できませんけど」

    若「うん」

    尊「無事完成して、こちらの世界もまぁ安全、となったら、僕から迎えに行きますから、それまで待っていて欲しいんです」

    若「そうか。わかった。今の起動スイッチは、無闇に引き抜かぬ様、わしが預かっておく」

    尊「そうしてください。お願いします。新型の野望としては、一度に5人以上運べるようにしたいです」

    若「家族より多くか。子や…尊の妻女か?」

    尊「えっ?!そっちは…何とも言えません。どっちにしろ、早めに頑張って作ります」

    若「ハハハ。わしの頑張りが早いか、尊が早いか」

    尊「頑張りますか。ははは」

    若「ようわかった。わしばかりでなく、永禄の皆まで案ずるとは、さすが尊じゃ」

    尊「話せて良かったです。じゃあ、戻りましょうか」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「今日はここまでにするかな」

    覚「お、終わりか?じゃあそろそろテーブルの上片付けてくれ」

    尊「うん。晩ごはん何?」

    覚「今日は例の日だから、ごちそうだぞ」

    尊「例の日?今日は金曜…あ、兄さんの料理の日?まだ残ってるの?やった~!」

    覚「忠清くんは居ないが、手伝ってくれよ」

    尊「はーい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    最終回のお知らせです

    ついノリで、源トヨの投稿を先にしましたが、大事なお知らせをこのままさせていただきます。

    桜と薔薇さま。お読みいただいているのですね。嬉しい限りです。

    でも、そろそろ…なんです。長々とお送りしてきました「二人の令和Days」ですが、全140回となります。

    次が138なので、あと3回です。皆様、もう少しだけ、お付き合いください。

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    返信先: 創作倶楽部
    支社版『源・トヨ』

    二人の令和Daysを書き終わっておりまして、余裕があった所に、楽しげな投稿が!ちょっと別の角度から乗っかってみました。
    ┅┅
    トヨ「源ちゃん、パラレルワールドって知ってる?」

    源三郎「何か聞いたことあるような…」

    急に辺りが暗くなる。すぐに明るくなった。

    ト「え?何が起こった?」

    源「おぬし、誰じゃ」

    ト「へ?」

    源「トヨによく似ているが…」

    ト「…って何言ってるの?目の前に居るのはトヨちゃんですよー!」

    源「違うだろう」

    ト「えっ?」

    源「妻のトヨはどこに行ったんだ…」

    ト「つ、妻?!」

    トヨ 心の声(もしかして、もしかすると、あたしホントのパラレルワールドに迷い込んだの?)

    源「おぬし、名は?」

    ト「トヨ、です」

    源「そうか。同じ名なんだな。道に迷うたのか?」

    ト「そんなつもりはないんですけど…」

    源「隣の村境まで、送ってやろう」

    ト「は、はい…」

    ト 心(もう、言う事聞くしかないわね)

    歩きだした二人。

    ト「あのう…」

    源「何だ?」

    ト「トヨさんって、どんな奥方ですか?」

    源「ずっと好きで」

    ト「まあっ」

    源「ようやく射止めたんだ。もうじき子が生まれる」

    ト「そ、そうなんですか」

    ト 心(こっちの世界の方がいいじゃない!)

    草の生い茂る間に、暗くなっている箇所があった。なぜか、体が吸い寄せられるトヨ。

    ト「え!キャー!」

    ト 心(こ、これは、ドラマ1話の冒頭で、若君様を追った唯様がはまった穴?)

    ト「…はっ!」

    源「お前何だ、急に居眠りなんかして」

    目の前に源三郎。

    ト「あたしの知ってる源ちゃん?」

    源「何寝ぼけてるんだ?小さい頃から知った仲だろ」

    ト「良かった…」

    源「で、パラレルワールドが何って?」

    ト「ん?もうその話はいいや」

    源「何だそれ」

    ト 心(一瞬見たあの世界、別にこっちでも、そうなってもいいもんね。頑張ろっと!)

    梅とパインさんのように、なにわ色豊かにはできません。夕月かかりてに、お題「パラレルワールド」を与えるとこうなったと。お邪魔いたしました~。

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    二人の令和Days137~23日15時、氷が解けるように

    スピンも逝きましたか。名脇役でした。ドラマアシガールを彩ってくれて、ありがとうございました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もう心配ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の手ほどきで鶴を折る、成之と阿湖。

    成之「なるほど」

    阿湖「ここを折るのですね」

    若君「はい」

    阿「あら、唯は違う紙ね。鶴ではないお品を作ってるの?」

    唯「鶴だよ。バージョンアップした」

    阿「え?」

    若「より、折るのに技が要る物じゃな」

    唯「えーっと、ここ折ると…違う!これじゃ翼に噛みついてるみたいだから…」

    ブツブツ言いながら、連鶴に挑戦していた。

    唯「できた。けどなんか、クチャってしてるなー」

    クチバシで繋がる二羽の鶴。そのクチバシがヨレっとしていた。

    阿「まあ!この二羽…いい、すごくいいわ」

    唯「ごめん、肝心のチューしてる部分がイマイチだった」

    阿「いえ、この、この感じがいいの。ねじれて重なり合うクチバシがなんか…狂おしくて」

    唯「え?激しいのがお好みなの?意外~。阿湖ってさぁ、現代に居たら、ドロドロ恋愛関係のドラマとか観まくるタイプで、私とは話合わなかったんだろーなーって思う」

    阿「所々わからない言葉があるわね…でも、唯と合わないなんてないと思うわよ?」

    唯「ありがと。今が永禄で良かったよ。じゃ、これ阿湖にあげる」

    阿「まぁ!嬉しい!」

    仲良く四人で折り進めている。

    唯「なんかさ」

    若「なんじゃ?」

    唯「せがれ達が二人、仲良くしてるのって、イイ」

    阿「あら、さっきは母は嫌って言ってたのに」

    唯「なんとなく、ノリで」

    成「調子の良い事を申しておるのう」

    唯「いいじゃん、たーくんと兄上さんは、仲良くしてて欲しいってみんな思ってるよ」

    阿「そうね…」

    若「そう、じゃな…」

    成「…済まない」

    唯「やだ、なに謝ってんの?カンペキに仲直りしたでしょ」

    成「あぁ」

    若「うむ」

    唯 心の声(うわぁ、言葉少なっ。ヤバい、私が微妙な空気にしちゃった?どうしよう…うーん。そうだ!)

    唯「ねぇねぇ、心通じ合いました記念でさ、ここらでちょいと、アレやってみない?」

    若「アレとは?」

    唯「ハイタッチ」

    若「おぉ、なるほど。そうじゃな」

    成「今、何と?」

    阿「はい?」

    唯「やってみてあげるね」

    成之と阿湖が見やすいように移動し、向かい合って座った唯と若君。

    唯「では、座ったままバージョンで。いきまーす」

    若「うむ」

    唯「イェーイ!」

    若「イェーイ!」

    右手を高く挙げ、パシッといい音でハイタッチした。

    成「なんと」

    阿「まぁ」

    唯「はい、次は仲良し兄弟でどーぞ!」

    若君が、成之の前に座った。

    若「宜しいか?」

    成「あぁ」

    右手を高く挙げた二人。

    若「イェーイ!」

    成「イ、イェーイ!」

    パン!と大きな音でハイタッチ。すると、成之が合わせた手をすかさず握った。固く握られたまま、腕が下ろされる。

    若「兄上…」

    成「末永く、宜しく頼む」

    頷いた若君。手はゆっくりとほどかれた。

    阿「素敵…」

    唯「うん」

    成「阿湖」

    阿「はい」

    成「そろそろ、参るか」

    阿「あっ、はい。ねぇ唯、この折り紙、少しいただいてもいいかしら?もうちょっと作ってみたくて」

    唯「どーぞぉ」

    阿「出来上がったら、お持ちするわ」

    若「忝ない」

    成「では、これにて」

    若「では」

    成之が去っていく。阿湖が、唯に耳打ちした。

    阿「ごめんなさいね、そそくさと。なあさま、きっと涙を堪えてると思うの」

    唯「いいよん。早く行ってあげて」

    二人に会釈して、阿湖も出ていった。

    唯「たーくん偉いよ」

    若「ん?」

    唯「矢の傷とか、マジ辛かったでしょ」

    若「済んだ事じゃ」

    唯「大人だねぇ」

    若「…そうじゃ」

    唯「なぁに?」

    若「結果オーライ、とは、このような折に使うのではあるまいか?」

    唯「…はあ?!」

    若「違うたか?」

    唯「ううん、合ってる」

    若「そうか」

    唯「めっちゃゴキゲンな顔してるし」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は令和の尊からスタートです。

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    二人の令和Days136~23日13時30分、どんな薬よりも

    効果抜群。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄は、もうすぐ昼ごはんタイム。若君の居室に、唯と若君。

    唯「いらっしゃーい!」

    成之「これは、賑やかな出迎えじゃの」

    阿湖「唯~」

    若君「ようこそ、おいでくださった」

    成「これが、千羽鶴。ほほぅ」

    阿「色合いがとても綺麗ね」

    唯「でしょ~。後で作ってみようね!」

    二組のカップルが集結。程なく、四人分の膳が運ばれて来た。

    唯「あ、トヨだ」

    軽く会釈をするトヨ。唯は立ち上がり、膳を置いて部屋を出るトヨを捕まえた。

    唯「ねっねっ、デートどうだった?」

    トヨ「フフフ」

    唯「えー、気になる!」

    ト「何もございませぬ」

    唯「ホントに~?聞きたいけど、またねっ。じゃ!」

    唯が座り、食事スタート。

    阿「唯は、女中とも仲がよろしいのね」

    唯「トヨには、世話になってるから」

    阿「まぁ。懇意にしているにしても、唯って誰に対しても分け隔てなく、優しいわね」

    唯「いろいろ助けてもらってるからさ」

    成「何でもやってのけそうな唯殿でも?」

    唯「阿湖みたいにさー、いかにも儚げだとみんな守ってくれるけど」

    阿「それは…例えるなら、風を知らぬ姫、かしら?」

    成之に目をやる阿湖。何かに気付き、ギョっとした顔をした成之。

    若「兄上の顔色が変わっておる」

    唯「あー、さては兄上さん、阿湖にまたひどいコト言ったんじゃない?」

    成「その…」

    阿「初めて成之様にお会いした時、ちょうど忠清様が行方知れずの頃で」

    唯「そんな頃かー」

    阿「風を知らぬ姫は、さっさと親元に戻れと」

    成「風を知らぬ愛らしい姫、と申した」

    唯「そんなん言い訳だよね。兄上さん、そんな前から意地悪してたんだ。ひっどーい」

    成「なっ」

    唯「その頃は、ただのひねくれ者だったもんね。まっ、今じゃ二人超ラブラブだけどさー」

    阿「なあさまが動揺するのが可愛らしくて、つい昔話を蒸し返して意地悪しちゃうの」

    唯「はいはい。またのろけだよ。ヒューヒュー!」

    若「ハハハ」

    食事が終わり、いよいよ鶴の折り方の説明。

    成「この小さく薄い紙で作ると」

    若「一つ一つは小さき鶴なれど」

    唯「戦なき世を願いながら、折るのでありまーす」

    阿「強い思いの集まりなのね。素晴らしいわ」

    成「それにしても、実に彩り豊かじゃ」

    一枚取ろうとした成之。サッと指を滑らせた所、

    成「痛っ」

    阿「えっ、いかがなされました?」

    成「指が少し切れた。されど刃物などないが」

    若「それは、紙で切れたのでありましょう」

    唯「あー、ありがちなんだよね。でもって割と痛いし」

    成「油断ならぬ物であるのう」

    阿「でも、血が滲んで。どうしましょう!」

    成「大事ない」

    若「今、手当てを」

    唯「はいはーい、もう用意してまーす」

    唯の手には、消毒液と絆創膏。

    唯「ちょっとしみるけど、我慢してね」

    成「確かにこの、水か?しみるのう」

    唯「すぐ終わるから。痛いの痛いの飛んでけー!はい、これで良し」

    絆創膏をくるりと指に巻き、手当て終了。

    成「忝ない、唯殿」

    唯「いーえー」

    成「この貼り付いておるのはなんじゃ?布か?ふむ…。あと今、何か叫んでおったの。まじないか?」

    唯「うん、そうだね。傷が治るおまじないだよ。もう痛くないっしょ?」

    成「まぁ、そうじゃな」

    阿「なんか、母が子をあやすみたいだったわ。微笑ましかった」

    唯「えー?兄上さんがせがれ?それは、お断りしまーす」

    成「それは、こちらからも願い下げじゃ」

    阿「あら。ふふっ。そこまで二人して嫌がらなくても良いのに」

    このやり取りを眺めながら、若君は令和に居た頃を思い出していた。

    ┅┅回想。8月13日7時15分、キッチン┅┅

    両親がそろそろ朝ごはんの支度を始める。若君も一緒だ。尊が、ラジオ体操を録音し終わり、プレイヤーを持って実験室から戻った所。

    覚「えーっと、両手鍋どこに入れたっけかな」

    美香子「上の棚じゃない?」

    覚「上か…」

    若「お父さん、取りましょう」

    覚「おー、済まないね」

    頭上の棚の扉を開け、鍋を取り出す若君。しかし、竹ザルが引っ掛かっているのに気付かず、鍋が出たと同時に、ザルが降ってきた。

    美「あっ、危ない!」

    若「あっ」

    ザルは、若君の頭をかすめて、床に落ちた。

    覚「大丈夫か?!」

    若「はい、軽い物ゆえ、大事ないです」

    美「それにしたって…」

    尊「ケガはない?」

    美「一応、当たった所見せて。しゃがんでくれる?」

    当たった位置を確かめる美香子。

    美「大丈夫そうね。まだ竹ザルで良かったわ~」

    覚「そうだな」

    その箇所に、美香子がそっと手を当てた。

    美「痛いの痛いの飛んでけー!」

    若「…えっ?」

    尊「お母さん、兄さんはそんな小さい子供じゃないよ~」

    美「可愛いい息子の一大事だから、おまじないよ。あらっ」

    若君が、赤くなっている。

    尊「あーあ」

    覚「無闇に触るからだろ」

    美「あら、ごめんあそばせ」

    若「いえ…よう効くまじないでした」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯「たーくん?なにボーっとしてんの」

    若「あ、あぁ。では始めるとするかの」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days135~23日11時、美しさそのままに

    どーんと配れる程、出来上がりそうな勢い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。リビングに尊と覚。

    尊「さてと、上手く出来てるかな~」

    シリカゲルが詰まった大量のタッパーが目の前に。蓋に、色々な花の名前が書いてある。

    覚「中には失敗したのもあるかもな。その為の保険で、この量なんだろ?」

    尊「うん。全滅だけは避けたいけど」

    タッパーを開けた。そっと粉を払う。

    尊「あ、バラはいい感じかも」

    覚「へー」

    一つ一つ開けて確かめていく。

    尊「うわ、花びら取れちゃった!」

    覚「それだけしっかり乾燥したんだよ。色はみんな綺麗に残ってるな」

    粗方取り出したところ、食卓が花で一杯に。

    覚「綺麗だけどさ、これどうするんだ?」

    尊「それが、考えてないんだよ」

    覚「はあ?」

    尊「こんなに成功すると思ってなくって」

    覚「んー、どっちにしろそろそろ昼ごはんだ。一旦タッパーに戻して床に並べとけ」

    尊「うん」

    12時30分、美香子が昼休憩にやって来た。

    美香子「あら、こんなに沢山!すごいわね~。私達が貰った方も、こうすれば良かったかしら」

    尊「色は綺麗なんだけど、薄い花びらのは取れてたりするんだ」

    美「あらま。せっかくだから何とか生かしたいわよね。で、どうすんの?」

    尊「どうしようかと。ご飯食べたら調べようかなって」

    美「ふーん。あ!それなら今、手仕事のお師匠さん達に聞いてみるわ」

    尊「師匠?」

    リビングを出て行った美香子。

    覚「なるほど、エリさん達だな」

    尊「あ、そっか」

    すぐに戻ってきた。

    美「二人共、食事終わったらこっちに顔出してくれるって」

    覚「わかった。コーヒーの準備もしておくよ」

    1時過ぎ、エリと芳江が登場。

    美「ごめんなさいね、貴重な休憩時間に」

    エリ「いえいえ。あら、綺麗~」

    芳江「まぁ~。思った以上に大量ですね」

    エ「頑張ったわね、尊くん」

    尊「お父さんと二人でやったんで、そんなには大変じゃなかったです」

    覚「なかなか楽しかったですよ。はい、コーヒーどうぞ」

    芳「ありがとうございます。こんなに沢山あったら、アレンジは無限大ですよ」

    尊「そうなんですか!僕、色が褪せない内に何とかしようとばかり考えて、後始末をどうするとかすっかり抜けてて」

    芳「大きいのは、箱に詰めてギフトボックスみたいにしたり」

    尊「メモります。ギフトボックス、と」

    エ「ガラスの瓶に詰めて、飾るってのもいいわね」

    尊「あのう」

    芳「はい?」

    尊「お姉ちゃん達が、永禄で使えるようなグッズって、作れそうですか?」

    美「え、いつ渡すのよ」

    尊「それは未定。今後の展望としてだよ」

    覚「まあ、忠清くんから唯へのプレゼントだから、手元で使ってもらえる物の方がいいよな」

    エ「小さいお花もあるんですね。なら、まとめて固めたらいかがかしら」

    芳「そうね、レジンとかで」

    尊「レジン。樹脂ですか」

    美「あ、なんか光で固めて、アクセサリー作れるとかってヤツ?」

    尊「中に花を閉じ込めるって事ですか。へー」

    覚「実験みたいだな」

    芳「尊くん得意そう」

    尊「知らなかった」

    エ「あら、そうなの?」

    尊「手芸の世界に、科学が入り込んでいたなんて。ふーん。お父さん、早速昼から材料買いに行きたいから、車で乗せてってくれない?」

    覚「大量買いか?ま、いいだろう」

    美「でも、具体的に何作るつもり?」

    尊「えーっと…」

    エ「トンボ玉とかはどうかしら?」

    美「あら、それいいわねぇ」

    尊「トンボ玉って何?」

    美「基本は、柄の入ったガラスの小さい玉を言うけど。それを、レジンでお花入れて作るって事ね?」

    エ「ええ。ある程度形作ったら…そうね、帯留めにしたり」

    尊「へー」

    芳「かんざしの先に付けたりしたら、可愛いいわよね」

    覚「さすが師匠、アイデアが湯水の如くだな」

    尊「なんか、見えてきました。エリさん、芳江さん、ありがとうございました」

    エ「出来上がり、楽しみにしてますね」

    芳「これで尊くんも、手芸男子の仲間入りかもね」

    全員「ハハハ~」

    ランチ後のコーヒータイムは和やかでした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は永禄に戻ります。

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    二人の令和Days134~23日10時30分、出生の陰に

    生まれて来てくれて、ありがとう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    大殿「おぬしの母は」

    若君「はい」

    大「公家の出であるが、それは美しいおなごであった。また品も教養もあり、気立ても良く申し分なかった。あれ程のおなごには、もう出逢わぬと思う」

    唯 心の声(大殿も、若い頃はかなりイケてただろうし、お母さんがそんなに美人だったから、たーくんが超イケメンなんだな)

    若「そうですか」

    大「是非にと正室に迎えたが、生来体が弱く、子は難しかろうと思うておった。側室はその前から居ったしのう」

    若「久殿ですか」

    大「あぁ」

    唯 心(兄上さんのお母さんか)

    大「だが次第に、たとえ我が命に代えてでも、わしの子を産みたいと申し始めてのう」

    若「…」

    大「それはならぬ、と一旦は諌めた。忠清に申すのも何だが、世継ぎは側室との子で良い。愛する妻を危険に晒しとうなかった」

    若「それは…わかります。もし、唯がそのような体であったならば、わしも止めます」

    大「少しでも体力をつけ、備えれば産んでも良いかと詰め寄られた。今にして思えば、産む産まずに拘わらず、自分は長くは生きられぬと思うておったのやもしれぬ」

    唯「…」

    大「食が細かったのだが、よう食べるよう努め始めると、辛そうな顔は見せぬようになった。わしも安堵し、程なく身籠った。忠清だ」

    唯「良かった…」

    大「だが、時を同じゅうして久も身籠っておったのだ。成之だ。わしは、忠清が無事産まれるまで、その事を妻には知られとうなかった」

    唯 心(そっか。兄と弟なんだけど、実は何日か違いなだけで、タメだって話だったな)

    若「それは、何かと競べかねず、重荷に感じぬよう案じたが故ですか」

    大「そうじゃ。周りの者に口止めはしたのだが、やがて妻の耳に入ってしまい、そこからは…まるで人が変わってしもうて」

    唯 心(マタニティーブルーかな…)

    大「必ずや丈夫な子を産むと躍起になったかと思えば、久が男子で自分が女子を産んでしもうたらと泣かれたり。母になる者がそのような心持ちではならぬ、正室はそなたである、気を大きく持てと言い続けた。それだけ決死の覚悟であったのだろうと今ならわかるが、若造のわしはそれ以上どうしてやる事も出来なんだ。穏やかな時もあったが、どうしても波があり…成之が産まれたのは伝えてはおらぬ。だが、心も体も無理が祟ったのであろう」

    唯&若「…」

    大「忠清を無事産み落とすと、程なく天に旅立った。無念であった」

    唯が、泣きそうになっている。

    大「あれほど心労がかさんでおった割には、玉のような男子が産まれておる。忠清は、幼き頃から病一つなかった。まさしく命に代えて産んだのであろう」

    唯「これが、母の愛なんだな…」

    若君も、涙ぐんでいる。

    若「その後も妻を娶らなかったのは、そのような所以があったのですね」

    大「妻は生涯、お前の母一人じゃ」

    若「父上…。兄上は、城から出された後、何者かに毒を盛られたと聞きました。わしは、家臣の内の誰かが仕組んだと思うておりましたが」

    大「そうじゃな。逆恨みした、妻側の者の仕業であったやも知れぬ。今となっては分からぬが。だが、城から追ったのはわしじゃ。様々な訳はあったが、母子揃った姿を見るのが辛かったのは、否めぬ」

    唯「うっ、うっ…」

    大「泣き出してしもうたか」

    若君は少し下がり、そっと唯に寄り添った。

    若「いかがした?」

    唯「だって、どっかから違っちゃったって言うか、みんながみんな、幸せになれる方法があったはずなのに」

    若「わしは今、幸せに感じておるぞ?」

    大「唯。それはわしもじゃ。悲しい別れではあったが、母の面影そのままの忠清を残してくれた。今は何も憂いてはおらぬ」

    唯「はい…」

    大「子の、話だが」

    若「はっ」

    大「わし自身が、努めて子を成そうとはせなんだ。いきさつはわかったであろう」

    若「はい」

    大「世継ぎは居るに越した事はない。だが成之も居る。そもそも相賀に囚われていた折に、腹は括っておった」

    若「その言葉、有り難く頂きます」

    大「唯」

    唯「はい」

    大「色々申す者も居ろうが」

    唯「え、なんでそれを」

    大「奥の院を出た後、わしの居室の近くでべそをかいておったではないか」

    唯「うわっ、バレてたか」

    若「まだ敵が居るのか…」

    大「息災であるのが一番。いずれは、位に思うておれば良い。思い悩む姿は、そなたらしくない」

    首を傾げる唯。

    大「どうした?」

    唯「大殿は、味方なんですか?」

    大「味方。そうじゃ。子の事で思い煩う姿は、誰であれ見とうはない」

    唯「そうなんだ…」

    大「わしは何も指図はしておらぬが、しばしば恨まれて矢面に立っておるようじゃが」

    唯「ごめんなさい、ちょっと疑ってましたっ」

    大「ハハハ、やはり。まぁ良い。いつもの唯に戻った様であるし」

    唯「はい!」

    大「今日は此処までに致す。長居した」

    若「父上の存念がようわかりました」

    大「うむ。では」

    唯「ありがとうございました!」

    大殿を見送った二人。

    若「唯」

    唯「はい」

    若「わしはあと、どれだけ敵陣に切り込めば良いのじゃ」

    唯「だいぶ減ってきてるから大丈夫だよ」

    若「奥は、何とかする。が、身に付けるべき読み書きや所作は、此迄よりもしかと学ぶように。唯を思うての進言もあろう。耳を塞ぐばかりではならぬぞ」

    唯「嫌がってばっかじゃダメって?」

    若「そうじゃ」

    唯「はい。わかりました」

    若「周りは味方ばかりじゃ。じきに参る者達もな」

    唯「うん、もうちょっとしたら、阿湖と兄上さん来るもんね。楽しみ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は令和からスタートします。

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    二人の令和Days133~23日10時、鶴翼を語る

    戦を避けたい気持ち、わかってもらえたかな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自室へ向かう若君。大殿も一緒だ。

    若君 心の声(唯が居るやもしれぬな…)

    案の定、予感は当たった。既に机に折り紙を広げ、歌を口ずさみながら鶴を折っている。

    唯「こーの香~る風~に開け~よ。あー、こっちで聴く歌はこれくらいだから、頭ん中鬼リピだよぉ」

    人の気配に気付いた唯。

    唯「あっ、お疲れ様…えぇっ!」

    大殿「何をしておる」

    唯「うそっ、わわ、すぐ片付けます!」

    若君「待て、唯」

    唯「え」

    若「隠さずとも良い」

    唯「いいの?」

    若「そのままにせよ」

    唯「はい…」

    机の横にちょこんと座った唯。それを気にも留めず、大殿は飾られた千羽鶴を見ていた。

    大「幾分派手派手しいが」

    若「はっ」

    大「美しい」

    唯「良かった。褒められた」

    若「忝のう存じます」

    大「一度、此処の前を通った折に目に入り」

    若「左様でございましたか」

    大「よう見てみたいと思うておった。実に細かい作りじゃ」

    若「千羽鶴と申します。鶴を模した物が、千羽おります」

    大「それは大仰な。幾人もの手による物か」

    若「はい。これは」

    若君が、意を決した様子で続ける。

    若「戦なき世を願い、皆で作り上げた品にございます」

    大「手掛けた者達の、総意と申すか」

    若「然り。…父上」

    大「何じゃ」

    若「現からの逃げではございませぬ」

    大「ほぅ」

    若「何時でも、戦となれば務めを果たす所存です」

    大「それは…わかっておる」

    大殿が腰を下ろした。若君も前に座る。若君の少し後ろで、ハラハラしながらも、じっとしている唯。

    大「戦は、好んでするつもりはない。だが、攻め入られ、負ければ一家滅亡にも繋がる」

    若「はい。羽木も危機はございました」

    大「いつの時分の話をしておる」

    若「高山に攻め入られましたが、立木山を目前に敵は退散しました」

    大「あぁ。唯之助が、迫る高山を蹴散らしたと評判になった、あれか」

    唯 心の声(21世紀の科学の力ですけど)

    大殿が、唯に微笑みかける。

    唯「?」

    大「こうしてみると、唯はまことに、守り神かもしれぬのう」

    若「守り神、ですか」

    大「じいが申しておった」

    唯 心(じい、たまにはイイ事言うじゃん!)

    若「頷けます」

    大「健脚で、なにより体が丈夫であるし」

    唯 心(もっと、違うトコ褒めてくんないかなー)

    机の上を見る大殿。

    大「唯は、新しい千羽鶴を作っておったのか?」

    唯「はい」

    大「良き妻女じゃ」

    唯「わぁ、嬉しい!だって、願いって、叶うんですよ」

    若「唯…」

    大「言い切ったのう」

    唯「だって、強く強く願えば叶うもん」

    大「おぬしがそう申すと、そうやも知れぬと思えてくる」

    唯「願ったモン勝ちです」

    大「ハッハッハ。忠清の代は安泰になりそうじゃな」

    唯「え?えへへ」

    同じく飾ってある、翼が繋がった連鶴に気付いた大殿。

    大「これはまた見事な…連なっておるのか」

    若「はい。手に手を取り、進む姿です」

    大「成程」

    大殿が、若君に向き直った。

    大「忠清」

    若「はい」

    大「おぬしの母の話をしようと思う」

    若「えっ」

    唯「え、初めて聞くかも」

    大「初めて話す。忠清にもな」

    唯「そうなんだ…」

    若「…」

    姿勢を正した、唯と若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days132~23日9時、推して知るべし

    こじらせ男子だけど、根が真面目だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨの足の爪に、丁寧にネイルカラーを塗った唯。

    唯「でーきたっ。乾くまでじっとしてた方がいいから、そのまま動かないで待っててね」

    トヨ「とても艶々で綺麗…何と礼を申したら良いのでしょう」

    部屋の外に、人の気配がした。唯が気付く。

    唯「いいよぉ~、入って入って」

    源三郎「宜しいのでしょうか」

    ト「あ。源ちゃん」

    源三郎が、申し訳なさそうな顔をしながら入って来た。

    源「奥方様、昨夜は楽しい時を過ごさせて頂きました」

    唯「いーえー。これからトヨにデートのお誘い?」

    源「いや…謝りに参りました」

    ト「フン」

    唯「まだ、ご機嫌ナナメっぽいよ?」

    源「至極ごもっともです」

    唯「源三郎も、ありがとう」

    源「いえ、わしは物を運んだまでで、礼には及びませぬ」

    唯「あ、えっと、ゆうべの話じゃなくて。たーくんに頼まれてたでしょ?」

    源「…そちらですか。奥方様、存じ上げなかった話とはいえ、今までお力になれず申し訳なく思うております」

    唯「いいのいいの。ホント、助かったよぉ」

    源「それはようございました」

    トヨの姿に、源三郎が眉をひそめている。

    源「トヨ、何だそのなりは。奥方様の前で寛ぎ過ぎだろ」

    ト「動いちゃダメって言われてるからよ」

    唯「まあまあ。女中達をシメてくれたお礼にね、ごほうびあげたの。見て見て!」

    源三郎がペディキュアに気付いた。

    源「お、これは。綺麗だな、トヨ」

    ト「えっ」

    唯「お?」

    源「姫君と同じにして頂けるとは、幸せ者だ」

    ト「う、うん…」

    唯「ねぇねぇ、似合ってるよね?」

    源「よう似合うております。トヨは働き者ゆえ、このような褒美を賜って然るべきでありますし」

    唯「めっちゃ褒めてるぅ。あのさぁ源三郎、それ、もう一回ギュギュっとまとめて言ってみない?」

    源「まとめて、でございますか?良かったな、トヨ。綺麗だよ」

    ト「…」

    源「?」

    唯 心の声(源三郎、爪だけ見て言ってんだろうけど)

    ト「綺麗、綺麗って言ってくれた…」

    ずっと反芻して、頬を赤らめているトヨ。それに気付かない源三郎。

    唯 心(トヨかわいい!源三郎も、まんま答えてて超かわいいし。これは、私が一肌脱がないとってヤツ?ん~。よしっ)

    唯「ねぇ、源三郎」

    源「はい、奥方様」

    唯「ちょっとこっち来て~」

    唯が手招きをして、部屋の奥、飾り棚の前に源三郎を呼んだ。

    源「何でございましょうか」

    唯「これ見て。それ以上は、言わな~い」

    指差す先にあったのは、芳江が折った連鶴の、クチバシで繋がっているバージョンの方。コソコソ話す唯と源三郎。

    源「これは…その…」

    唯「私、邪魔はしないから」

    源「奥方様…そのお言葉は心がえぐられます」

    唯「なんなら、この部屋貸してあげるよ?」

    源「いやいやいや!」

    トヨが、体をねじっている。

    ト「後ろで話してると見えない…」

    唯「あ、そろそろ動いていいよ」

    ト「もう良いのですか?わかりました」

    立ち上がったトヨ。

    唯「うん、ばっちりぃ。あまり目立たないトコがいい感じ」

    ト「ありがとうございました!」

    唯「機嫌も直ったね」

    ト「はい!ねぇ源ちゃん」

    源「何だ?」

    ト「せっかくおめかししたから、どこかに出かけたいわ~」

    源「そうか。じゃあ、行くか」

    唯「ふふっ。行ってらっしゃーい」

    唯に深々と礼をして、源トヨは部屋を出た。

    ト「あたしさぁ」

    源「ん?」

    ト「あの棚、何が飾られてるか知ってるから」

    源「ま、まぁそうだよな」

    ト「ムフフフ。あー楽しみだわー」

    源「試練は続く、か…」

    その頃の若君。定例の軍議、と言うよりは申し合わせの最中だった。

    若君「仇や疎かには出来ませぬ」

    成之「裏でどう動いておるかは」

    小平太パパ「間者を増やすか…」

    若君は、尊との会話を思い出しながら、場に臨んでいた。

    ┅┅回想。8月7日10時30分、車中┅┅

    家族全員で城ツアーの日。そろそろ駐車場に入る頃。

    尊「兄さん。今から行く城、永禄8年に信長が侵攻します」

    若「随分と車を走らせておったが」

    尊「元々、拠点はこの辺りなんですよ」

    若「そうなのか…」

    尊「最終的にかなり勢力を伸ばしますが。特に西の方は」

    若「西、か。帰ったら、詳しく教えてくれぬか?」

    尊「了解です」

    ┅┅回想終わり┅┅

    大殿「織田の動きは、引き続き目を光らせよ」

    全員「はっ」

    解散。

    大「忠清」

    若「はっ」

    大「この後、所用はあるか?」

    若「いえ、すぐには有りませぬ」

    大「今からおぬしの居室へ参りたい」

    若「…ははっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days131~23日8時30分、心も彩ります

    アゲアゲで行こう!
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨ「奥方様、お待たせを致しました」

    唯「お疲れさまー。さっ、座って」

    唯の居室。一仕事終えたトヨと、唯が向かい合って座った。

    唯「トヨ~」

    ト「はい?」

    唯「超超超、嬉しーい!私のために、いろいろありがとう!すっごく助かったよ、マジ感謝してる~!」

    床に手をつき、頭を目一杯下げた唯。

    ト「奥方様、今、ゴンって音しましたけど!大事ございませぬか?」

    唯「ちょいと勢いついちゃった。えへへ」

    額を擦りながら顔を上げた。

    ト「で、何の事でしょうか?」

    唯「女中達を吊し上げたんでしょ」

    ト「あー。あんまり勝手な事言ってたんで、ちょくちょく軽くシメてただけです」

    唯「カッコいいっ」

    ト「いえ、今までわたくし気付いてなくて。まさか奥方様の悪口があんなに蔓延っていたなんて、知らなかったんです。天野から来ていない連中が、あらぬ事をベラベラしゃべりやがり」

    唯「地が出てる?」

    ト「あら失礼をば。源ちゃんに、よく見といてくれって言われるまで野放しにしてたなんて、こちらこそ、申し訳が立ちません!」

    頭を、床に擦る程下げたトヨ。

    唯「顔上げて。トヨががんばってくれたお陰で、だいぶ楽になったの。ありがとう」

    ト「源ちゃんが、若君様が大層気にされておられるから、と。お気遣いが素晴らしくていらっしゃる。素敵過ぎます」

    唯「ありがと。それ聞いたら、たーくんも喜ぶよ」

    ト「周りがね、わかってないんですよ。お二人、釣り合ってないとか思ってる」

    唯「あー、たーくんが超イケメンだから?じゃない、違う言い方…えーっと、び、び」

    ト「眉目秀麗ですか?」

    唯「そう、それ」

    ト「奥方様もこんなに麗しくていらっしゃるのに」

    唯が、トヨの額に手を当てた。

    ト「な、何ですか?」

    唯「いや、妙なコト言ってるから、熱でもあるのかと」

    ト「何をおっしゃってるんですか」

    唯「阿湖は、見ててマジかわいいな~と思うけど、私はそこまではさぁ」

    ト「醸し出す雰囲気は違いますが、お二人共お美しいですよ」

    唯「ホントに?!やーん、褒められちゃった!嬉しい!」

    ト「あまり言われた事、ないんですか?」

    唯「なんせむじな呼ばわりだし」

    ト「はあ」

    唯「ちょっと前まで男子だったし」

    ト「まあ、それはあるでしょうが」

    唯「たーくんは言ってくれるけど」

    ト「あらん。充分、いや十二分ですね。それは若君様を見てればわかります。奥方様を見つめる眼差しがもう、愛情がダダ漏れで」

    唯「そうなの?」

    ト「ご飯三杯はイケます」

    唯「ははは、トヨって面白ーい。あ、それでね、なんでトヨのがんばりを知ったかと言うと」

    ト「はい」

    唯「ちょうど説教してるのを、悪丸が見たんだって」

    ト「そうでしたか。そういえば、疾風を引いていたのを見かけたような」

    唯「悪丸が、私に謝ってきたの」

    ト「何故ですか?」

    唯「悪丸は、陰でコソコソ言ってんのを何回か聞いてたんだって。で、違うと言いたかったけど、それを止める勇気がなくて、ここまできてしまった。で、説教を見て、それができなかった自分は弱かったって。トヨは偉いって言ってた」

    ト「偉くはないです。わたくしは気付いていなかったんですから。そうですか。悪丸は、ずっと心を痛めていたのですね」

    唯「そうだね。もう気にしないでとは言っといたよ」

    ト「奥方様の悪口言うなんて、若君様に楯突いてるのと一緒って、気付かない連中がどうかしてるんですよ」

    唯「カッコいい~」

    ト「いえ、それはもういいですから」

    唯「でね、私からごほうびあげる」

    ト「そのような。いただく筋合いはございません」

    唯「いいからいいから」

    戸棚を開け、マニキュアのセットを出す唯。

    唯「どの色がいい?手だといろいろ問題あるだろうから、足の爪に好きなの塗ってあげる」

    ト「えっ、そんな!でも、お咎めを受けませんか?」

    唯「ごほうびに塗ってあげなさいって言ったのは、たーくんなんだよ」

    ト「ええっ!」

    唯「だから問題なーし」

    ト「若君様、なんて男前なの…」

    唯「なんか言われた時、たーくんの名前出すのはちょっとと思うなら、奥方がふざけてやったって言えばいいよ」

    ト「そんな、わざわざ悪者になる必要はありません」

    唯「じゃあ、仲良しの印で!」

    ト「仲良し…畏れ多いですが、嬉しいです」

    少し紫がかった、あまりキラキラしないピンク色を選んだトヨ。

    唯「大人だね~」

    ト「少し染まるだけでも、心浮き立ちますから」

    唯「アガるよね~」

    ト「あがる…はい!」

    唯「じゃあ、足を前に投げ出して。そうそう。では行きまーす」

    一本一本、塗り上げていく唯。

    ト「お上手ですね」

    唯「たーくんの方が上手だよ」

    ト「え?もしかして」

    唯「うん、手も足も、たーくんがいつも塗ってくれるの」

    ト「まあ…もう何者も、入り込む余地はないですね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days130~23日金曜7時、優秀な家臣達

    アミューズメントパークに変わりつつある?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、唯を起こそうと懸命になっている。

    若君「唯、唯」

    唯「ん…」

    若「早く起きねばならぬと、申しておったではないか」

    唯「眠いぃ」

    若「ブランコの取り付けがそろそろ終わるぞ」

    唯「取り、付け…はっ!」

    飛び起きた唯。

    唯「うそっ!もうそんな時間?やだぁ、たーくんなんで起こしてくれなかったの~」

    若「何度も起こそうと試みるも」

    唯「え?そうだった?」

    若「嫌がる奥方に蹴られる始末」

    唯「うげっ」

    若「手強い総大将であった」

    唯「ご、ごめん。すぐ着替えて行きますっ!」

    慌てて若君の居室前に飛んで行った唯。千吉と悪丸が見守る中、若君がブランコの具合を確かめていた。

    若「ぐらつきもない。ようやってくれたの」

    悪丸「はっ」

    千吉「忝のう存じます」

    若「木々の間に隠れておるゆえ、物思いにふけるには丁度良さそうじゃ」

    千「そうでございますか。おや、奥方様」

    唯「ごめんね、遅くなって。あーいい感じだね。表のと違って枝の位置が低いから、うーんと」

    若「何じゃ?」

    唯「大人のための、揺りかご?」

    千「おぉ」

    若「ほぅ。朝から弁が立つのう」

    唯「へへっ」

    若「よう寝たゆえ、冴えておる」

    唯「しれっと反撃したな?」

    千「表の方は、すっかり童達の溜まり場になっておりますな。中々若君様も使えぬのでは?」

    若「構わぬ。賑やかなのは良い。ただ、取り合って喧嘩になどならぬであろうか」

    千「なんとお優しい。それでしたら、城の周りにどんどん取り付け致しましょうか?」

    若「ほぅ。良いのか?」

    千「はい。お任せくだされ。今日も二人で充分作業出来ましたゆえ。なあ、悪丸」

    悪「はっ。すぐ、丈夫な枝をお探し申す」

    唯「すごーい。楽しそう」

    若「それはまた、難儀をかける。時々は、此処も使うてくれ」

    千「あっ、いや、それは」

    若「ハハハ。大儀であった。千吉、悪丸」

    千「はっ。では、これにて」

    悪丸が、なぜか残っている。

    唯「どしたの?悪丸」

    悪「奥方様に、伝えたき話が、ある」

    唯「そうなの?なにかな」

    若「わしは居らぬ方が良いか?」

    悪「いえ」

    悪丸が話し始めた。唯は驚きながら、若君は頷きながら聞いている。

    悪「わしは、何もできなんだ。弱かった」

    悪丸が頭を深く下げる。

    唯「わー、やめてやめて!」

    若「謝らずとも良い。心を痛めておったおぬしも、辛かったであろう?」

    唯「教えてくれてありがとう。よくわかったからさ、もう気にしないでね」

    悪丸は、二人に再び深く礼をして、去って行った。

    唯「たーくんが…仕向けた?」

    若「わしは、源三郎に言付けを頼んだまでじゃ」

    唯「ありがとうたーくん!どおりでここんトコ、あんまり言われないなと思った」

    若「唯を守れたようじゃの。わしの手柄ではない」

    唯「どうしよう…お礼言わなくちゃ。なにかごほうびもあげたいよ」

    若「褒美か」

    唯「身に付ける物とか…でも仕事の邪魔になっちゃダメだよね」

    若「ならばあれはいかがじゃ。物ではないが」

    若君が、身振り手振りで伝える。

    唯「いいの?誰かに咎められても、たーくんのお墨付きだよって?」

    若「働きぶりには、相応しかろう」

    唯「ありがとう!もうすぐ私の部屋に来ると思うから、早速そうするね!」

    そして朝食後。唯の居室。トヨが片付けに来た。

    唯「トヨ、昨日はいろいろありがとう。ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって」

    トヨ「いえ、とても楽しゅうございました」

    唯「で…どうだった?その後」

    ト「えっ」

    唯「源三郎は?」

    ト「源ちゃん…源ちゃんは」

    唯「顔、恐いよ?ヤな予感がするなー」

    ト「あいつ、逃げたんです」

    唯「逃げた。えー、私の知ってる源三郎じゃなーい!」

    ト「月が綺麗だななんて、殊勝な事言ってたのにですよ?」

    唯「それ、私も聞いたな。男子の間で流行ってんのかな」

    ト「だから、ちょっと怒ってるんです」

    唯「そっか~。愚痴も聞いてあげたいけど。あのさ、実は話があるんだ。この後時間いいかな」

    ト「はい。お話ですか。わかりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days129~22日19時、勇気をください

    見てるのは月だけなのに。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もんじゃ焼き、完食。源三郎が、若君に頭を下げている。

    源三郎「今宵は、このような宴にお招きいただき」

    若君「良い」

    源「はっ?」

    若「礼は、要らぬ。まだ此処の後始末も頼まねばならぬゆえ」

    源「それは…」

    トヨ「片付けなど当然でございます」

    唯「ううん、こっちがお礼言わなくちゃだから。ありがとね」

    若「源三郎、トヨ、礼を申す」

    源「そのような。恐悦至極に存じます」

    ト「身に余る光栄でございます」

    若「各々のハガシであるが」

    源&ト「はい」

    若「持ち帰るが良い」

    源「はっ」

    ト「まぁ…宝物にいたします!」

    唯「今日の記念にプレゼント?」

    若「そうじゃな」

    唯「優しーい。いーなー」

    若「その手にある物は何じゃ」

    唯「あ、そっか」

    全員で笑って、お開き。

    若「では、済まぬが」

    ト「かしこまりました」

    源「心得ました」

    唯「じゃーねー、ありがと~」

    客間を去る唯と若君。見送った源トヨ。

    ト「さてと、ササッと洗っちゃおっかな。若君様とても手際がよろしくて、洗い物ほとんどないし」

    源「鉄板は俺が持つ」

    ト「ありがと」

    台所までの道すがら、空を見上げた源三郎。

    源三郎 心の声(月か…)

    明日で半月だが、存在感たっぷりに、宵の空に明るく輝いている。

    源 心(何もかも見透かされておるような…)

    洗い物の後、囲炉裏の火の始末をするトヨ。

    ト「粗方片付いたから、明日の朝、周りを拭き上げるわ」

    源「お疲れさん」

    客間を出る二人。

    ト「んん~」

    庭に向かい、大きく伸びをしたトヨ。

    ト「ふう」

    源「…」

    源 心(今、か!)

    源「月が…」

    ト「え?」

    源「月が、綺麗じゃな」

    ト「あ、そうね。とっても綺麗で手が届きそう」

    源 心(手が届く。届く…それは、俺達はそれほど近い間柄と言う意味合いか?!)

    源三郎、考えを巡らせ過ぎて黙り込んでいる。

    源「…」

    ト「どうしたの?」

    ふと二人、目が合った。そのまま見つめ合う。

    ト「源ちゃん…」

    源「う、うわ~!!」

    ト「え」

    突然、叫びながら頭を抱え、しゃがみこんだ源三郎。

    源「無理だ無理だ無理だ…」

    源 心(どうにも踏み出せない俺は、腰抜けだ…)

    ト「えぇ?」

    トヨ 心の声(なんでよ~!すっごくイイ感じだったのに!)

    すっくと源三郎が立ち上がった。だが、視線はあさっての方向のまま。

    源「こ、これにて」

    ト「へ?!」

    逃げるように走り去ってしまった源三郎。残されて、しばらく呆然とするトヨ。

    ト「…わかった。はいはい。そういう事ね。よーく、わかったわ。この、この意気地なし!」

    トヨの心の内を示すように、ヒュルルと風が吹き抜けていった。

    唯「あー、いい風。涼しーい」

    その頃の唯。寝間着姿で寝所前の縁に座り、足をぶらぶらさせていた。

    唯「夏に囲炉裏は、ちょーっと暑かったなぁ」

    寝間着姿の若君登場。

    若「蚊に刺されるぞ」

    唯「大丈夫。蚊取り線香ついてる」

    夜空を見上げながら返事をする唯。若君も月を見る。

    若君 心の声(そうじゃ)

    若「唯」

    唯「なぁに?」

    若「月が、綺麗じゃの」

    唯「ん?そうだね。でも、たーくんと一緒なら月はいつでもキレイだよ」

    若「…そうか」

    唯「え、なにー?」

    若「何程でもない」

    唯「ふーん。ちょっと早いけど、そろそろ寝た方がいいかなー。明日早起きしなくちゃだから」

    若「何かあるのか?」

    唯「例のブランコ、たーくんの部屋の前に、明日の朝一で付けてくれるって千吉さんが言ってたの」

    若「ほぅ、それは見届けねばの。ならば、起こしてやろう」

    唯「うん。お願いしまーす」

    若「中に入るぞ」

    唯「はーい。もう休む?」

    若「休むかどうかは」

    唯「なんかニヤケてるし」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    22日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days128~22日18時、先手必勝です

    待ってるだけじゃないおなごがここにも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨが、鉄板を囲炉裏にセットしている。

    若君「まるで、今宵の為に誂えたかのような…これで拵えられるとは有り難い。鍋だけが懸念であったゆえ」

    唯「確かに。フツーの鍋だと作りにくいしヤケドしそうだし」

    若「トヨ、よう支度してくれた」

    トヨ「いえ、わたくしは何も。若君様ご所望の品が丁度ございましたので、お出ししたまでです。こちらの先代のお屋形様が、狩りがお好きでいらして、猪や鹿やむじなを焼くために特別に作らせたと聞いております」

    唯「むじな?今むじなって言った?食べられるの?!」

    ト「食べられます。前に、信茂様が珍しく手に入ったと持ち帰られ、天野のお屋敷で一度お出ししております」

    唯「へー、びっくりー。たーくんは食べた事ある?」

    若「わしは、食した事はない。源三郎はあるか?」

    源三郎「いえ、ありませぬ」

    唯「じい、私をむじなむじなって。あっぶなーい、とって食われるところだった?」

    若「それはなかろうが」

    唯「とんだ食わせもんだよ~」

    若「ほぅ。上手いの」

    油を薄くひき、よく混ぜた具だけを先に鉄板に乗せ、丸く囲むように土手を作る。

    源三郎&トヨ 心の声(これは、儀式?)

    その中に生地を流し込む。

    源&ト 心(やっぱり儀式?)

    唯「二人とも、すっごい不思議そうな顔して見てる」

    若「初めて見る者はそうなる。わしもそうであった」

    唯「ちゃんと食べる物作ってるから、心配しないで」

    源&ト「わかりました」

    よく混ぜ、一面に広げた。

    唯「今日はお箸で食べる?ヘラないから」

    若「唯。あれはヘラとは申さぬ。ハガシという名だそうじゃ。た…師匠によると」

    唯「あ、調べたんだね。へー。たーくん、ホント作る気満々だったんだね」

    若「で、ハガシなら、ある」

    若君の懐から、小さいハガシが四つ登場。

    ト「まぁ、お小さいこと」

    源「竹でございますか」

    唯「え?もしかして」

    若「わしが今日の為に、削って作った」

    唯「えー!たーくんやっぱりヒ…」

    若「暇ではない」

    唯「そぉ?」

    ハガシをさっと水にくぐらせ、全員に渡した。

    若「そろそろ良かろう」

    唯「そうだね」

    源「え。出来上がり、ですか」

    ト「これは、どのようにいただくのでしょう」

    若「このように端から」

    手ほどきをする若君。

    若「掬い取ったこれを…ん?」

    隣で、唯が口を開けている。

    唯「ちょーだーい!フーフーもして欲しいぃ」

    若「ハハッ。このように掬ってすぐはまだ熱いからの」

    少し冷ましてから、唯の口に。

    若「どうじゃ?」

    唯「美味しい!」

    若「そうか。良かった。という案配じゃが」

    源トヨが、かなり戸惑っている。

    源「あの…恐れながら若君様」

    若「なんじゃ?」

    源「相手の口に入れるまでが、いただき方でございますか?」

    若「あ、いや。各々で食すが良い」

    源「良かった…」

    ト「残念…」

    源「は?」

    ト「あら、つい心の声が」

    唯「食レポ…もとい、食べた感想よろしくね」

    源「それでは、頂戴いたします。緊張する…」

    源三郎が口に運ぶ。

    源「美味い。この、香ばしさで風味が増しておるような。梅も効いております」

    若「そうか」

    ト「いただきます…うん、美味しい。野草はシャキっと、芋や米はトロっとがまたよろしくて」

    唯「二人とも食レポ上手だなぁ」

    若「皆に振る舞えそうかのう」

    ト「これは、皆喜ぶと思います」

    唯「やったぁ。良かったね!」

    若「あぁ」

    唯「たーくんまだ食べてないじゃん。はい、あーんして」

    若「ん…うむ、我ながら会心の出来じゃ」

    ト「いいな。仲睦まじくて羨ましい…」

    唯と若君の様子をじっと見ているトヨ。見て見ぬふりをしている源三郎。

    源「これは、大勢で囲みながらいただけそうで、宜しゅうございますな」

    唯「今、ちゃんと見てた?」

    源「え」

    唯「もー。ねぇ、たーくん」

    若「ハハハ。いつか、城の皆で囲みたいものじゃのう」

    唯「外でとか?」

    若「あぁ。バーベキューの様にの」

    唯「いいねー。って、二人はバーベキューじゃわかんないよ。おっとぉ?」

    トヨが、とうとう仕掛けていた。

    ト「源ちゃん、はい、あーんして」

    源「あーん、ってお前!」

    ト「遠慮するのは、損な気がしてきてさ。攻めてく」

    源「ええっ」

    ト「ちゃんとフーフーしたわよ?」

    源「いや、そういう事でなく…うわっ」

    早く早く、と唯と若君が目で訴えている。

    ト「そろそろ腹決めたら?」

    唯&若「お」

    源「あ、あぁ」

    パクリ。

    唯「かわいい~。ありゃ」

    攻められた方も、攻めた方も、顔がみるみる内に真っ赤になった。

    若「微笑ましいの」

    唯「うん。ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days127~22日17時、探り合いです

    あの手この手で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の料理スタート。トントントンと、湯通しした野草をリズム良く包丁で刻んでいく若君。

    源三郎「手慣れておられる」

    トヨ「見とれちゃう…」

    唯「たーくん、カッコいいってさ」

    若君「そうか?」

    源「たー…?」

    ト「あら」

    唯「いいでしょ~」

    ト「はい。仲睦まじさがようわかります。良いのですか?わたくし共の前で、そのような」

    唯「うん、いい。トヨと源ちゃん、だから」

    源「えっ」

    唯「合ってるよね?」

    ト「はい。フフフ」

    若「ほぅ。源三郎は、そう呼ばれておるのか」

    源「は、はい。幼い頃から変わらず」

    若「良いの」

    源「か、忝のう存じます」

    ト「源ちゃん、カッチカチじゃない」

    源「俺はトヨほど図太くない」

    ト「言ったわねー」

    蒲鉾も里芋も刻まれていく。

    唯「このお芋、昼ごはんの残り?」

    ト「いい感じに火を入れた後、煮崩れしたフリをして、よけておきました」

    唯「さすがトヨ~」

    源「上手いな。いつも横流し、やってるんじゃないか?」

    ト「やってません」

    源「怪しいな~」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「そこは、褒める所であるぞ」

    源「す、済みませぬ」

    若「わしが頼んだ以上の振る舞いじゃ。トヨ、礼を申す」

    ト「そのような。畏れ多い事でございます…」

    トヨは、隣の源三郎をベシベシ叩き始めた。

    ト「ねぇ聞いた、聞いた?嬉し~い!」

    源「痛い、痛いって!照れ隠しに俺を叩くんじゃない!」

    若「…おなごは、皆こうなのか。わしも、唯によう叩かれる」

    唯「それはー、たーくんが嬉しいコト言ってくれるからだよぉ」

    若「嬉しいのに叩くとは、些か解せぬが」

    唯「愛情表現の一つでござるぅ」

    若「ふむ。そうなのか。わかった」

    ト「納得されてる。素直に耳を傾けられるお姿が素敵…さすが若君様だわ」

    源「なあ、俺にもその表現…なのか?」

    ト「え!何を言わせたいの?それはどうかしらね~」

    源「守りが固いな」

    唯「ふふっ、楽しーい。夫婦漫才みたい」

    ト「め、おと…ヤダ、恥ずかしい!」

    源「だから、痛いって!」

    唯「あはは、かわいい~」

    若「ハハハ」

    下ごしらえ完了。

    若「あとは、混ぜるだけじゃ」

    ト「はい、こちらをお使いください」

    かなり大きい木の器が出てきた。材料をどんどん入れていく。

    唯「まずは粉だね。なんか黒っぽいのと茶色っぽいのとあるよ?」

    若「蕎麦粉と、少しの鰹節粉じゃ」

    唯「へー。で、水だね。こんなモンかな」

    若「良かろう。あとは蒲鉾、里芋。米もあったか?」

    ト「はい。櫃の残りで良いとお聞きしましたので、冷や飯で固うございますが、よろしいのでしょうか」

    若「構わぬ」

    唯「野草も入れるよ。味ってどうするの?」

    若「そうじゃな…味噌か梅かで考えておったが」

    ト「どちらも用意してございます」

    唯「梅干しで良くない?梅もんじゃで」

    若「わかった」

    梅干しを細かく叩き始めた若君。

    ト「あの…」

    唯「なに?」

    ト「今、なんと?梅、の後」

    唯「もんじゃの事?今日はね、もんじゃ焼き作るんだよ」

    ト「初めて聞くわ。源ちゃん知ってる?」

    源「いや」

    若「この、粉を溶いた生地を焼きながら文字を書いて学んだり遊んだりし、文字焼きと呼んでおったのが名の由来だそうじゃ」

    唯「え、そうなんだ!」

    若「知らなんだのか。わしは師匠に聞いた」

    唯「ふーん。美味しけりゃ名前なんか何でもいいし」

    若「唯なら、そうであろうの。ハハハ」

    トヨが、源三郎をつつく。

    ト「若君様って、奥方様が何言われても、ウンウンって嬉しそうに聞いてみえる」

    源「そうだな」

    ト「愛情の深さよねー」

    源「そうだな」

    ト「源ちゃんも、深い?」

    源「は?な、何の話だ」

    ト「守りが固いわね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    カマアイナ様!

    呼びかけに応えていただき、ありがとうございました!お元気そうで何よりです。

    すっかりそちらは日常モードですよね。私の正月は…実家に顔を出し、地元の神社に詣で、おせちを食べ、今は箱根駅伝がテレビで流れております。

    DVDを堪能されてるんですね。ここで皆さんが話される内容や私の創作話にも、たまーにドラマ本編やSPのエピソードやセリフが出てきます。これか~と答え合わせができるのも楽しいと思います。

    カマアイナさんには、ご自身が初投稿なさった時から創作話への熱い思いを語っていただいており、感謝しております。いつもお読みいただきありがとうございます。朝ドラですか?畏れ多いです(*^_^*)

    私としては、新聞の連載小説を書いている感覚なんです。この「アシカフェむじなランド」にはいろんな板がありますので、アシガール掲示板からご覧になる方もみえれば、他の板や創作倶楽部から入る方もみえるかと。新聞の1面から順番に読むも良し、小説やコラムが心待ちな方はそこから読まれるでしょうし。投稿を一日おき、また時間もできるだけ(日本時間ですが)夜19時から23時くらいにしているのは、そんな理由も加味しております。

    ハワイとの時差が19時間ですので、朝お目覚めになると私の創作話が投稿されている計算ですから、朝ドラは正解かもですね。時間的に、そろそろそちらは日の入りの時間では。綺麗なんだろうなぁ~。

    これからも、ちょくちょくお顔を出してくださいね。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人のもしもDays5、祝いましょう正月篇

    新春を寿ぎ、謹んでご祝詞を申し上げます。

    お正月にはお正月のお話。で、もしもDaysをお送りします。
    「若君に、現代の家族水入らずのお正月を味あわせてあげる」カマアイナさんのご意見に、一年越しで応えた形になりました。変わらずお過ごしでしょうか。

    話はゆるゆると進みます。遠くから様子を眺めるというよりは、隣に一緒に居る感じでご覧いただければと思います。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は大晦日。夕方のリビングで、家具の移動が始まっている。

    覚「ちゃんと敷けてるな?」

    尊「うん」

    食卓を玄関側にずらし、空いた床に敷きパッド。その上にこたつ登場。

    唯「出た出たっ」

    若君「座卓に、布団?」

    覚「忠清くんは初めて見るよな。大晦日にしか出さないから」

    若「何か儀式でも?」

    覚「あー。ははは」

    尊「ある意味、儀式だよ」

    唯「たーくん、ウチね、年越しの時だけ、このこたつが出てくるの」

    若「こたつ。聞き覚えはあるような…見るのは初めてじゃ」

    尊「兄さんの屋敷にはなかったんですね。永禄にあるとしたら、床下に炭とか熱源がある掘りごたつ的な物だったはず」

    美香子「はいはい、天板拭くわよ。はいOK!どうぞ忠清くん、入って」

    若「入る?」

    唯「座って布団に足入れるんだよ。中暖かいから」

    若「ほぅ」

    早速、唯と若君と尊がこたつに陣取る。

    若「おぉ、暖かい」

    唯「ねっ」

    若「何ゆえ、年越しだけ使われる?」

    美「あのね、毎年、大晦日の夜に放送されるテレビの歌番組があってね」

    若「テレビ?」

    覚「毎年、その時だけは、こたつでミカン食べながら観るって決めてて」

    若「ほぅ。一年の締めくくりが、このこたつ」

    唯「変でしょー。小さい頃からずっと、こうなんだよね」

    覚「基本的にウチは、食事しながらテレビは観ないからな。大晦日だけ特別だ」

    一度入ると抜けられないのが、こたつ。

    唯「あ~ぬくい。あんまりあったかいと外に出らんないけど、どうしよう」

    尊「何を」

    唯「初詣行きたい。でも人混みにたーくん連れてくと、さらわれそうで危ない」

    尊「有名な神社に行くとなると、まぁね。さらわれはしないだろうけど、はぐれやすい」

    美「遠くは止めて、年が明けたらすぐ、夜中の内に近くの神社に行きましょうよ。みんなで」

    唯「近くね。まっ、それがいいよね」

    覚「初詣はな、近くの氏神様にまず参るモンだしな」

    唯「わかった~」

    若「神社に、新しい年を迎えて初めて詣でるゆえ、初詣か?」

    尊「そうですね」

    若「それは、儀式で合うておるな?」

    尊「ははは。はい、これは間違いなく」

    夜。7時を過ぎた。

    覚「そろそろ蕎麦ゆでるぞ~」

    若「手伝います。晩に、蕎麦ですか」

    覚「いつもありがとね。これは、年越し蕎麦って言うんだよ」

    若「飯にも儀式が?」

    覚「そうだね。蕎麦のように、細く長く生きられますように、って願掛けかな」

    若「そうですか」

    晩ごはん兼、年越し蕎麦出来上がり。こたつに運ぶ。

    唯「たーくん、隣に入るね」

    尊「あー、四人用こたつに五人だからか」

    美「あら、私とお父さんで隣り合って座るからいいのに」

    覚「これだと、一面空くぞ?」

    ソファーに近い所から時計回りで尊、覚と美香子、唯と若君、と落ち着き、食事スタート。

    尊「なんやかんやで、くっつきたいんでしょ」

    唯「そゆこと。たーくんごめんね、狭いけど」

    若「構わぬ」

    紅白歌合戦が始まった。

    美「あら尊、もう横になるの?」

    尊「体の中も外もぬくぬくだからさ、眠い」

    覚「寝るのはいいが、そこの毛布かけろよ」

    尊「うん。ミカン、僕の分残しといてよ」

    ソファーの上に、毛布が何枚か用意されていた。一枚ズルッと引っ張り、早速寝始めた尊。

    若君 心の声(いつもなら、すぐ実験室や自室に籠るであろうに。余程居心地が良いとみえる)

    唯が、ミカンの筋を丁寧に取っている。

    美「珍しいわね」

    唯「たーくんにむいてあげてるから。はい、あーんして」

    若「お?あぁ。…甘い」

    唯「だよねー、うん甘っ」

    覚「自分用のは、筋そのままで、秒で口に入るよな」

    唯「当然でしょ。あれっ、お母さ~ん」

    美「なに」

    唯「ちゃんと尊にもミカン残しとかないと!」

    美香子の手元には、ミカンの皮の山。

    美「わかってるわよ。ちゃんと尊の分はよけてある」

    覚「それにしても、もう四つ目だ」

    唯「たーくん、お母さん前にね、家にあるミカン全部食べちゃって、尊が僕も食べたかったのに!って怒ったの」

    美「反省してますって」

    若「なるほど。それで先程念押しをしたと。ハハハ」

    覚「また手が黄色くなるぞ」

    10時を回った。尊が起きる。

    美「はい、尊様、ミカンどうぞ」

    尊「うん。食べる」

    唯「尊、そこの毛布取って」

    尊「あいよ」

    ソファーから一枚取り、こたつの一つ空いている席に置いた。

    唯「眠い、寝る。年明ける直前に起こして」

    覚「わかった」

    若「部屋でなくて、良いのか?」

    唯「うん、いいんだよ。私その毛布置いたトコに移るから、たーくんここ広く使ってね」

    席を移動し、毛布でみの虫状態になった唯が眠りについた。

    覚「忠清くん、お茶飲む?」

    若「はい、頂戴します」

    お茶を飲みながら、若君は考えていた。

    若 心(そうか…!今ここでこの時を、家族膝を突き合わせ共に過ごす、それが肝要であると。親の思いに子達が寄り添うておるのじゃな)

    唯の寝顔を覗き込む若君。

    若 心(今年は、この時を与えてやれた)

    11時45分。紅白が終わった。

    唯「たーくん、もうすぐ年が明けるよぉ」

    若「お…?いつの間にやら眠っておったか。これはしたり」

    肩に毛布がかけられていた。

    美「すごく姿勢良く寝てたから、最初気付かなくてね」

    若「そうでしたか」

    唯がテレビのチャンネルを替えた。賑やかにカウントダウンが始まっている。

    唯「もうすぐ、もうすぐぅ」

    全員こたつに入り待っていると、年が明けた。

    唯「ヒャッホー!明けましておめでとっ、たーくん!」

    若「え、あっ」

    いきなり唯に飛びつかれ、若君はバランスを崩し、二人、仰向けに倒れ込んだ。

    尊「危ないよ!」

    美「大丈夫?!こたつに膝ぶつけたりしてない?」

    若「大事ない…です」

    唯「ダメじゃ~んたーくん、ちゃんとどっしり構えてないとー」

    覚「勝手にやっといて、何だその言い草は」

    美「困った子ねー。さてと、じゃあ早速初詣に出掛けますか」

    尊「そうだね。着込まないと。はい、そこの二人、イチャイチャは帰ってからして」

    唯「はいはい」

    家族五人、静かな夜道を進む。子供達の声だけが響いている。

    尊「さみーよー」

    唯「マフラーぐるぐるで帽子も耳あてもして、出てるトコほとんどないクセに、なによそれ」

    若「確かに、尊かどうかもわからぬよのう」

    後ろから眺める両親。

    美「なんか、なんかね」

    覚「言わなくていいぞ。わかるから」

    美「…うん」

    氏神様に詣でる。人の姿はまばらだ。

    美「ふう。あらっ」

    若「…」

    若君が、格段に長く手を合わせている。

    覚「信仰心に、差が出てるな。偉いよ」

    帰り道。

    覚「さすがにシンシンと冷えてくるな」

    美「この、冬独特の空気感もいいわよ」

    尊「帰ったら、何か温かい飲み物欲しい」

    覚「わかった」

    若「唯、寒うないか?」

    唯「ん、ちょっと」

    それを聞いた若君、繋いだ手をほどき、唯の肩を抱いて引き寄せた。

    唯 心の声(きゃあ!)

    若「まだ寒いか?」

    唯「えっと…」

    唯 心(たーくんカッコいいっ。ぽーっとしちゃうぅ)

    唯の曖昧な返事で、若君が考えている。

    若「そうか…ならば」

    唯「え?」

    若君は、着ているコートのボタンを外し、前を開けた。

    唯「え、どしたの?」

    若「入れ」

    唯「えぇっ!」

    若「冷えては辛かろう。さあ」

    唯「…」

    尊「お姉ちゃん、開けてる方が寒いに決まってるでしょ、さっさと入ってあげなよ」

    唯「う、うん。ありがと、たーくん」

    若君のコートに、一緒にくるまった唯。

    若「寒くはないな?」

    唯「うん!超あったかいよ」

    若「うむ」

    覚「…何て言うかさ」

    美「うん」

    覚「あぁいう事が、スマートにできるのがさすが忠清くんだな」

    美「同感です」

    帰宅。こたつに直行する唯と尊。

    覚「はい、生姜湯にしたぞ」

    美「あら、いいわね」

    唯「甘いヤツ?」

    覚「そうだ」

    尊「あったまりそう。いただきます」

    若「いただきます」

    寛ぐ五人。

    覚「明日の朝ごはんだが、雑煮だ。忠清くん、雑煮はわかるよね?」

    若「はい」

    覚「餅は、遅くとも9時頃には焼き始めるから、ちゃんとその頃にはみんな起きろよ」

    唯「はぁい、がんばります」

    尊「はーい」

    若「心得ました」

    家族全員、小休止後、程なく床についた。そして…

    覚「心も体もキリっとするな。いい朝だ」

    元旦を迎えた。

    若「お父さん、おはようございます」

    覚「おっ、さすが忠清くん、早いな」

    リビングに二人だけ。時計は6時過ぎを指している。

    覚「あのさ」

    若「はい?何でしょうか」

    覚「稽古とか全部終わってからでいいからさ、一緒に初日の出、見に行かないか?」

    若「初日の出。はい。それは、いかにも霊験あらたかですね」

    覚「そうだね。太陽は毎日昇るとはいえ、やっぱり特別だから」

    6時50分。覚の運転で、見晴らしの良い場所に来た二人。

    覚「ここは、東の空が開けてるから。黒羽城公園よりね」

    若「そうですね」

    人が集まって来ている。覚が、カメラを取り出した。

    覚「よし」

    日が昇った。歓声が上がる。

    覚「なかなか上手く撮れたと思うな」

    若「それは何よりです」

    覚「忠清くん、こっち向いてくれる?」

    若「え?はい」

    パチリ。

    覚 心の声(初日の出と色男。うん、絵になる)

    7時30分、帰宅。唯と尊はまだ起きてこない。

    美「初日の出、私も起き抜けにベランダから拝めたわ」

    覚「そうか、済まんな。ふと思い付いてササッと出掛けたからさ」

    美「いい。起こされても、すぐに支度は無理だったし」

    覚「さてと。あいつら、当分起きてこないよなぁ。今日は朝ごはんが遅いから、忠清くん手持ち無沙汰だよね。ちょっと待ってな」

    若「はい?」

    覚が、箱を持ってきた。

    美「あら、お正月っぽい」

    若「かるた…小倉百人一首、ですか?」

    覚「あ、やっぱりわかるんだ!買ってきた甲斐があったよ~」

    若「この先の世にも、残っておるとは」

    覚「知ってるならさ、絶対僕らは太刀打ちできないと思うんだよな」

    美「昔、暗記したわ~」

    覚「僕、読み上げてあげるからさ、二人勝負してみたら?まだ時間あるし」

    美「そうね。忠清くんの一人勝ちでいいし」

    覚「一応やってみたら。いい?忠清くん」

    若「はい。お頼み申します」

    百人一首スタート。半分位進んだ所に、尊が下りてきた。

    尊「おはよう。なに、雅な遊びしてるじゃん」

    覚「忠清くんは雅なんだがな」

    美「え~?私が違うみたいじゃない」

    覚「見てればわかる」

    尊「ふーん。じゃあお手並み拝見します」

    終了。若君優勢だが、美香子もかなり取っていた。

    尊「なるほど。上の句を聞いてすぐ動き出して、ゆったりと取るのは兄さん。わかった段階でサッとかすめ取るのが母さんなんだ」

    覚「見ててさ、忠清くんが断然先に理解してるのに、母さんが大人げなく取ってくんだよ」

    美「あら、ごめんあそばせ。案外覚えてて、つい力が入っちゃって」

    若「ハハハ。いえ、楽しませていただきました」

    尊「そう考えるとさ、ジェンガって時間制限基本ないし、兄さん向けで優雅な遊びだったかもね」

    覚「確かに。外国発祥なのにな」

    朝ごはんの用意をしている。もうすぐ9時。唯はまだ下りてこない。

    若「起こして参ります」

    美「お願いね」

    尊「兄さん」

    若「なんじゃ?」

    尊「僕の読みなんですけど、何かグズってたら、初夢は今夜見る夢、って言ってください」

    若「ほぅ。そうか、わかった」

    唯の部屋。

    若「唯、そろそろ朝飯じゃ。腹も減っておろう?」

    唯「ん、んん~」

    若「なんじゃ?」

    唯「もっと、たーくんとラブラブな初夢見たいぃ」

    若 心(なるほど。さすが尊、ようわかっておる)

    若「唯。初夢は、今夜見る夢を指すのじゃ」

    唯「そうなの?知らなかった。んー、じゃあ起きる…いや、起きない」

    若「え?」

    唯「眠り姫はぁ、王子様のキスで、目覚める」

    若「それは…姫君も様々居るのだな。ハハハ」

    顔を近付け、軽くチョン、と唇を合わせた若君。

    若「姫、起きて賜れ」

    唯「え~、もうちょい時間かけてよぅ」

    若「餅は待ってはくれぬぞ。ほれ」

    唯「はぁい」

    二人が下りてくると、既に雑煮が完成していた。

    美「唯、また忠清くんに駄々こねたのね」

    唯「一応、間に合ったでしょっ。私、餅三つ入れて」

    覚「数は読み通りだが。忠清くんも、同じでいい?」

    若「はい。随分と華やかなあしらいの料理が並んでおりますが、これは?」

    覚「おせちだよ。おせち料理。食材の一つ一つに意味が込められてるんだ。例えば黒豆は、マメに働けるように、とか」

    若「ほぅ…縁起物であると。全ての由来を知りとうなるのう」

    尊「後で、教えますよ」

    覚「では」

    全員「いただきます」

    年賀状が届いた。両親が、追加で書き始めている。その頃、唯達は…

    若「わしが読み上げてやろう」

    尊「わー、こんな贅沢ないよ」

    唯「下の句が並べてあるんだよね。上の句だけじゃ全然わかんないから、下の句が読まれたら急いで探せばいいね?」

    尊「僕も、百人一首はあまり頭に入ってないから」

    若「好きなように楽しむが良い」

    再び百人一首スタート。だが、優雅とは決して言えない大騒ぎになっている。

    尊「痛っ!置いた手の上から叩くなよ!」

    唯「私も見つけたのに先を越されたもん」

    尊「毎回そうじゃん」

    唯「なんか、わかってる風でラクラク取ってんのもあるしさ」

    尊「有名な歌は、上の句でもわかるから。お姉ちゃんが知らなさ過ぎなんだよ」

    唯「えー、ハンデつけてよっ」

    なんやかや言いながらも、素早さは唯が勝り、若干だが唯の勝利だった。

    尊「文句言う割にはさー」

    唯「まっ、このくらいで許してやる」

    若「ハハハ」

    美「今から、追加の年賀状投函してくるわね」

    唯「行ってらっしゃーい」

    尊「ついでに、受け取ってくる?」

    美「えぇ。昼前には戻れると思う」

    覚「よろしくな」

    若「受け取り?」

    美「ショッピングモールまで行って来るわね」

    若「そうですか。お気を付けて」

    正午近くで、母が帰宅した。

    美「ただいまー」

    唯「おかえり~!わぁ」

    尊「やった~」

    若「何を持ち帰られた?この箱の形、見覚えがあるが」

    覚「おー、よしよし。どうする?昼から始めるか?」

    唯「そーするー!早くお祝いしたいし」

    覚「じゃあササッと支度するよ。あ、忠清くんは、手伝わなくていいから」

    若「それは、何ゆえ…」

    唯「まーまー。座ってて」

    こたつは既に片付けられている。食卓に、おせちも並んだが、皿やフォークやナイフも並ぶ。

    覚「よーし、では、昼ごはん兼誕生日パーティーを、始める」

    若君以外の四人、パチパチと拍手。

    若「誕生日。今日は誰が生を享けた日なのですか?」

    覚「あのさ、忠清くん」

    若「はい」

    覚「永禄では皆さん、1月1日、今日一つ歳を重ねるだろ?」

    若「はい…もしや」

    覚「君にとっては、毎日が大切な日々だし、生まれた日を祝う習慣はないのはわかってる。でも僕達は、君が生まれ、唯と出逢い、ここに来てくれた事に感謝したい。だから、今日を君の誕生日として、祝わせて欲しいんだ」

    美香子が、シャンパン代わりのソーダを全員のグラスに注いだ。箱の中身はバースデーケーキ。忠清くんお誕生日おめでとう、と描いてある。

    美「生まれて来てくれて、ありがとう。これはね、あなたのお母様がお元気でいらしたとしても、同じ事をおっしゃると思うの」

    尊「兄さんに出逢えて、心の底から嬉しい。兄さんを兄さんと呼べるのも嬉しい。ありがとう、忠清兄さん」

    唯「えっとぉ。たーくん、おめでとう」

    尊「…え、それだけ?」

    唯「いろいろセリフ考えてたけど、お祝いできるのが嬉しすぎて、全部すっ飛んじゃった」

    尊「感無量ね」

    覚「さ、みんなグラス持って。忠清くん、面食らってるみたいだけど」

    若「少々、面映ゆい、です」

    覚「喜んではくれてるんだね?」

    若「はい!」

    覚「では、忠清くんの誕生を祝して、乾杯!」

    唯&尊&美「かんぱーい!」

    若「乾、杯!」

    誕生日パーティー、スタート。

    尊「兄さん、こっち見てください」

    若「おぉ」

    唯「はい、笑って~」

    スマホを構える尊。パチリ。

    尊「あはは、おせち越しのケーキはちょっとシュールかも」

    唯「いいんだよ。ダブルでめでたいんだから」

    覚「でな、忠清くん」

    若「はい」

    覚「誕生日には、プレゼントを贈るんだが」

    若「プレゼント。クリスマス、だけではないのですね」

    覚「あー。まぁ時期が重なったから、しょっちゅう何か渡してるみたいになるね。で、君にもプレゼントをね」

    唯「わぁ、結局何にしたの?」

    美「お父さんが家族全員を代表して、とびきりのを選ぶって張り切ってたのよねー」

    若「そうでしたか。気を遣わせて済みませぬ」

    覚「現代的な物にしようか、永禄でも使える物か悩んだんだけどね」

    小さな箱が現れた。

    覚「僕はこういうジャンルはてんで不案内なんだけど、忠清くんには相応しいかなと思って」

    若「拝見します」

    中身は黒い棒状をしている。

    若「これは…上等な」

    覚「あ、嬉しいな~。わかってもらえたんだ」

    尊「墨?」

    唯「墨。字書く時の?」

    美「産地も近いしね。取り寄せとかじゃなく、買いに行ったのよね」

    若「それは難儀をかけました」

    覚「いつかさ、歴史的資料として、これで忠清くんが書いた文なんて出てきたら、感動しちゃうな~」

    尊「壮大だけど、有り得るね」

    唯「すごーい。時代をまたぐ文、的な?」

    覚「いやどうせなら、時をかける書状、はどうだ?ははは」

    美「上手い事言った気になってるわね」

    若「ありがとうございます。大切に、使わせていただきます」

    ケーキは、なんとか完食した。

    美「忠清くん、おせちは無理して食べなくていいわよ。三日は持つように作ってあるから」

    若「そうですか。それはありがたい」

    覚「ありがたい?」

    若「時間をかけ、それぞれの由来が学べますゆえ」

    尊「ダジャレっぽいのも多いけどね。昆布が喜コンブとか」

    若「ほぅ。喜昆布。洒落ておるの」

    覚「ダジャレが洒落るに変換か。なんかカッコいいな。言う人の違いか」

    美「そうね」

    覚「やっぱり」

    唯「ふー。満足満足」

    尊「そりゃそうでしょ。兄さんの分までケーキ横取りしてたじゃん」

    唯「ちょこっともらった」

    覚「ちょこっとのレベルじゃなかったがな」

    唯「ごちそうさま!あのさ、たーくん、ちょっと部屋まで来て欲しいんだけど」

    若「部屋。では食卓を片付けてから」

    美「あらいいわよ~行って。忠清くんはいつもよくやってくれてるから。はい、ごちそうさまね」

    若「済みませぬ。御馳走様でした」

    唯「行こっ」

    二人は二階へ上がって行った。

    尊「あのー」

    美「何?」

    尊「そろそろ例の物を」

    覚「例って何だ」

    尊「お年玉。兄さんの誕生日祝いが終わったら、くれるって言ってたじゃん」

    覚「ちゃんと用意してある。唯達が下りてきたら、三人に渡すから」

    尊「三人なんだ」

    美「結婚した娘とお婿さんには普通は渡さないけど、正月に帰省なんてそうそうないだろうから、特別にね」

    尊「なるほど」

    唯の部屋。

    唯「あのね」

    若「うむ」

    唯「私も、たーくんにプレゼント…用意したんだけど」

    若「先程とは別でか?それは忝ない」

    唯「理想としては、どーんと手編みのセーターとかマフラーとかさ」

    若「ふむ。大きく出たのう」

    唯「でも作った事ないから、何年かかるかわかんないし」

    若「理想は、高かったと」

    唯「永禄でも使える物で考えてね、巾着袋とかがいいのかなって」

    若「巾着袋?」

    唯「えーっと、金のけむり玉が入ってた、上を紐でキュッとしめる」

    若「あの形か。使い勝手は良さそうじゃの」

    唯「巾着袋くらい、たいていの女子は手作りするんだけど」

    若「ほぅ。されど、そこらのおなごとは違うておるゆえ」

    唯「大きく違ってすんません!買ってきちゃいました!でもねでもね、手作り感出したくて」

    若「いかがしたのじゃ」

    唯「ワッペンつけようと思って。あ、布でできた飾り的な?でも、周りをぐるっと縫うとかが」

    若「何年もかかるのか」

    唯「うぅ…ツッコミがうまくてグサっと刺さる。そんなにはかかんないけど、アイロンでくっつくのがあるから、それでくっつけた」

    若「アイロン。熱くして布の皺を伸ばす機械じゃな」

    唯「という訳で」

    若「言い訳が長かったのう」

    唯「もらって!たーくん、誕生日おめでとう!気持ちだけはギュっと入ってるから!」

    差し出された紙袋の中を確認する若君。

    若「ほほぅ」

    紺と黒の細かい縦縞。色使いがシックな袋の真ん中に…

    若「何の印じゃ?」

    唯「唯はたーくんが好き、って意味ですぅ」

    左からアルファベットのY、ハートマーク、アルファベットのTの形のワッペンが、ドンと貼り付けられている。三文字とも赤でかなり大きい。

    唯「あ~、色とか組み合わせがちょっとヤバかったかなぁ。ダメ?」

    若「使う折に皆に見せつけよう」

    唯「えっ、使ってくれるの?」

    若「何を申す。至極当然ではないか」

    唯「良かったぁ」

    若「ありがとう、唯」

    唯「嬉しいっ」

    若「唯に何か貰うなど初めてじゃの」

    唯「あ、そうかな、そうかも。たーくんには落雁やチョコボールもらったけど」

    若「菓子しか渡しておらぬようじゃの」

    唯「だってそうじゃん?あ、そんなコトないな。ヤな事思い出した」

    若「なんじゃ?」

    唯「中身が超ショックなメール、渡された。あれはカウントしたくない」

    若「あぁ、あれか」

    唯「お別れのメールは、これからもいりませんから!」

    若「案ずるな。それはもう、ない」

    若君の手が、唯の肩に。近付こうとして、体の向きを変えると、巾着袋が若君の膝から滑り落ちた。

    若「ん?」

    唯「え?なに」

    若「取れよった」

    ハートマークのワッペンが、接着が甘かったらしくポロっと取れている。

    唯「え…ギャー!」

    若「おわっ」

    唯に耳元で大声を出され、のけぞる若君。

    唯「やだもー!なんでぇ、あれっ、他のもなんかグラグラしてない?えーショック~!すぐアイロンかけてつけ直さなくちゃ!」

    若「すぐ、か」

    唯「下行く!あーん、もう~」

    若「そこまで急がずとも」

    もう立ち上がっている唯。呆気に取られながら見上げる若君。

    唯「たーくんどうする?ここに居る?」

    若「あ、いや。わしも行く」

    若君も立ち上がった。

    若「…フッ、フフッ」

    唯「やだ、笑わないでっ」

    若「まこと唯は、面白い」

    唯「それ…こっちでの意味でしょ」

    若「どうじゃろ」

    部屋を出る二人。

    若「ハハハハ」

    唯「もー、笑い過ぎだって!」

    家族の元へ下りて行きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いい年でありますように。

    次回は、令和Daysに戻ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days126~22日16時、そっち?

    進まないのがミソ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    野草を摘み終え、城に戻った唯と若君。

    唯「あ、伊四郎さん!ただいま~」

    若君に聞こえないよう、唯に近寄り小さい声で話し始める伊四郎。

    伊四郎「無事で、何よりじゃ」

    唯「え?」

    伊「さっき若君様が、血相を変えて飛び出して行かれたからな。多分奥方様の一大事なんだろうと思ってたんだ」

    唯「そうだったの。ありがとう、教えてくれて」

    若君が前を歩く。

    唯「え、こっち、おふくろさまの部屋じゃない?」

    若「先程、唯が外に出たのを三之助と孫四郎に聞いたゆえ、取り急ぎ礼を申しに参る」

    唯「そうなんだ」

    吉乃の居室。

    吉乃「よう、ご無事で」

    唯「心配かけてごめんなさい」

    若「三之助達は、まだ屋敷を駆け回っておりますか」

    吉「折角お越し頂いたのに済みませぬ。唯の無事は、伝えておきます」

    若「お頼み申します」

    二人の後ろ姿を見送る吉乃。

    吉乃 心の声(無事は何より。若君も落ち着きを取り戻され。されど…今や唯が若君を想うより、その逆が勝っておるように思えてならぬのは、気のせいか?)

    若君の居室に戻って来た。

    唯「ねえ」

    若「ん?」

    唯「今日、こっそり客間使うじゃん。なになに?ってみんな集まって来たら、困るよね」

    若「囲炉裏は使うが、襖障子は閉めるがのう。不審には思われるやも知れぬな」

    唯「あけるな、忠清。って書いて貼っとく?」

    若「ハハハ。そうか、よし、わかった」

    唯「え、半分冗談だったんだけど」

    すぐ用意をし、サラサラ書き出す若君。

    若「皆に知れてしもうては」

    唯「うん」

    若「今後、サプライズ、にはならぬであろう?」

    唯「あ。そうだね!」

    その頃、客間。源三郎とトヨが、若君の料理のために支度をしている。

    源三郎「水汲んできたぞ」

    トヨ「ありがと」

    囲炉裏に火を入れるトヨ。

    ト「ふう、これで良しと」

    源「お疲れさん」

    源三郎&トヨ 心の声(ちょっとちょっと!ふと気づけばこの状況、ヤバ過ぎるって!)

    襖障子は既に閉めてある。よって、周りにわからない状態の部屋に、二人だけ。

    源 心(若君様達に、早く来ていただきたいような、ずっと来て欲しくないような。困った、妙な汗が)

    ト 心(どうしよう、心臓バクバク!いや、ダメよ、火扱ってるんだから集中しなきゃ)

    しかし、動揺が押さえきれず、うっかり火種に指を近付けてしまったトヨ。

    ト「熱っ!」

    源「どうした!ヤケドしたのか?この指か?」

    ト「あ、ううん、大した事ない…え!」

    トヨが熱がった指を、咄嗟に自分の口に含んだ源三郎。

    ト「げ、源ちゃん!」

    源「いいから」

    源 心(ここまでは、反射的に動くんだ。あと少し、グッと体ごと引き寄せれば腕の中に…いやいや。そんなん、出来るならとっくにやってる。それができないのが、俺だ)

    ト「はい…」

    ト 心(源ちゃん何~!ときめいちゃうじゃない!あのー、指もいいけど唇…いやいや。このまま腕の中に飛び込む勇気もないクセに、私ったら)

    ところで、唯と若君は既に客間の外でスタンバイしていた。そっと隙間から覗き、小声で話している。

    唯「やーん、源三郎グッジョブ!まだ入んない方がいいよねぇ」

    若「あと三分程待つか」

    唯「3分?」

    若「三分あれば、永禄と令和の行き帰りも出来る位じゃ、二人の仲も一段進むのではないか?」

    唯「たーくん、面白がってない?」

    若「滑稽とは、思うておらぬ。行く末を見守るのみ」

    源三郎が、トヨの指の様子を見ている。

    源「大丈夫か?急に済まなかったな」

    ト「ありがと、源ちゃん」

    手を離した源三郎。黙り込む源トヨ。

    ト「お返し…」

    下を向いていたトヨが顔を上げた。

    ト「あたしから、お返しを」

    源「お返し?」

    源三郎に、にじり寄るトヨ。

    源「な、何の真似だ」

    焦る源三郎。固唾を呑んで見守る唯と若君。

    源「えっ?!」

    唯&若「え」

    トヨは、源三郎の手を掴み、自分がヤケドした同じ箇所の指を、パクリと口に入れていた。

    唯「ありゃ」

    若「これはまた」

    トヨの目が泳いでいる。源三郎も、すぐに言葉が出ない。

    源「…トヨ」

    ト「は、はい」

    源「落ち着けって」

    ト「や、やっぱり?言ったはいいけど、なんか一杯一杯で」

    源「いや、いいんだ。ふぅ…落ち着け、俺」

    ト「ごめんね、驚かせて。源ちゃん…なんか、らしくないわ。声が震えてる」

    源「あ?いや。これこそ俺、俺なんだよ。俺はさ…意気地無しだから」

    ト「え?何で。今のはあたしが血迷ったからでしょ、どこが意気地なしなの?さっきの源ちゃん、すっごくカッコ良かったし、好…あわわ」

    源「何だ?」

    ト「ふう、危なかった…な、何でもない。そんな気にするような事ないと思うわよ?」

    源「これがまた俺の厄介な所でさ。でも、ありがとな」

    ト「よくわからないけど。どういたしまして」

    源「そういえば話変わるけどさ、女中達が、トヨ怖~いって口々に話してたぞ」

    ト「あっそう。少し怖い位でいいのよ。軽くシメはしたけどね」

    源「軽く、な」

    ト「よく見張っといてくれって言ったのは、源ちゃんじゃない~」

    源「言ったは言ったが。やっぱ女中頭のシメ方は違うなー」

    ト「何よそれ、手練れみたいな言い方しないで~!」

    笑い出した源トヨ。それを合図のように、唯と若君は顔を見合わせた後、声をかけた。

    唯「お待たせぇ」

    若「待たせたの」

    源トヨが、笑いながら振り向いた。

    源「お待ちしておりました」

    ト「どうぞ、いらっしゃいませ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

    今年も皆様にはお世話になりました。ありがとうございました。
    年が明けましても、しばらく創作倶楽部にお邪魔いたします。拙い文章で恐縮ですが、よろしければ、今後もお付き合いください。

    新年一番ですが、一回お休みして、もしもDaysをお送りします。長文になりましたので、ちゃんと送信できるか心配…祈っときます(-人-;)

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days125~22日木曜15時、自覚が足りぬ!

    そう、起こってからでは遅いから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、城内を歩き回っている。吉乃が声をかけた。

    吉乃「若君様、いかがなされました」

    若君「唯の姿がなく…ご存じありませぬか?」

    吉「唯ですか。そこらに居らねば、阿湖姫と会われておるのでは?」

    若「今、阿湖姫に尋ねましたが、寄ってはおらぬと」

    吉「何か唯に御用でも?」

    若「わしが城に戻り次第、共に出掛ける約束をしておりました」

    吉「そうでございますか。ならば居らぬのは解せぬ話」

    孫四郎「きゃー!」

    三之助「待てぇ!」

    はしゃぎながら、三之助と孫四郎が走って来た。

    吉「これ、若君様の前で走り回るでない!…そうじゃ、そなた達、唯を見かけなんだか?」

    孫「唯之助ならば、城から出て行きましたあ」

    若「何だと。まことか?」

    三「籠を抱えて、手を振っておりました」

    吉「供の者は居ったか?」

    三「ううん。一人じゃった」

    吉「はああ。何とした事か。あっ、若君様!」

    聞くや否や、若君は走って行ってしまった。

    吉 心(いたく狼狽されて…唯は何をしでかしておるのじゃ!)

    疾風に急いで乗り、城を出る若君。疾風の世話をしていた伊四郎が見送る。

    伊四郎「先程はあんなに、何やら楽しみなご様子で戻られたのに。どうされたのじゃ…」

    その頃の唯。

    唯「うん、写真と一緒。よし、と」

    城近くの小高い丘。野草の本を片手に、草とにらめっこしている。

    唯「ふぅ。ずっとしゃがんでると腰痛いな」

    立ち上がって伸びをした。すると、遠くで馬の嘶きが聞こえる。

    唯「馬?もしかして…」

    人の声も聞こえる。

    若「唯~!唯~!」

    唯「あ、たーくんだー」

    声のする方に、大きく手を振る唯。

    唯「若君さまぁー!ここー!」

    若「おぉ、唯!」

    若君が到着。駆け寄る唯。

    唯「お帰りー」

    若「唯…」

    疾風から下りるや否や、唯の両肩をガッチリ掴んだ若君。

    若「無事であったか?どこも怪我などしてはおらぬか?酷い目に遭うては…おらぬか?」

    唯「だ、大丈夫だよ。えっ、なに」

    若君が、鋭い目つきに変わった。

    若「この、大たわけ!!」

    唯「きゃっ!」

    若「唯は最早、足軽小僧ではない。身なりも違うておる」

    唯「はい…」

    若「山中を一人でなど、決して歩いてはならぬ!どこぞの間者が、城の姫と知って、拐っておったやもしれぬ。また、おなごと見れば寄って来る輩もあるだろう…取り返しのつかぬ事になってしまってからでは、遅いのじゃ!」

    唯「あ…」

    ようやく、身の危険があった事に気付き、血の気が引いた様子の唯。

    唯「ごめんなさい、ごめんなさい!」

    若「何事もなかったのだな?」

    唯「はい」

    若「そうか」

    そのまま、強く抱き締められた。

    唯 心の声(たーくん、汗びっしょりだ…ごめんなさい、ごめんなさい)

    眼差しが優しく戻った若君。

    若「待ちきれず、先に食べられる野草を探してくれておったのじゃな」

    唯「うん。帰る予定が遅くなってるんだなって思って」

    若「どうしても城を出たければ、必ず供の者を二人は付けよ」

    唯「はい。これからはそうします」

    若「唯にもし何かあったら、わしは…」

    唯「あっ、涙目…ごめんなさい、ホントにごめんなさい!」

    若「無事ならば、良い」

    唯「うん…」

    若君が笑顔に変わった。

    若「ところで、大分、摘めたのか?」

    唯「あ、えっとね、このくらい。今日のメニューには、まだまだだよね」

    籠の中を見せる。

    若「そうじゃな。お父さんが作られるような、滋養のある料理は、此処では難しいゆえ、野草でかさ増しじゃ」

    唯「ふふっ。さっきね、トヨを見かけたんだけど、遠くて。でも、腕で大きく丸!って出してたよ」

    若「そうか。準備は万端のようじゃな。源三郎にも、先程念押ししておいた」

    唯「じゃ、今夜の料理に向けて、あとちょっと頑張ろうね」

    若「あぁ」

    二人、本を見ながら、仲良く草を摘み始めた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    なぜ「悪丸」か?私の考察

    緑合板のざわめきは承知しております。
    このような折に、少し心苦しくはあるのですが、創作は粛々と進めさせていただきます。すみません。

    随分と前…2月5日に投稿していましたが、創作倶楽部no.503で、「悪丸となったのはこれが語源かな?と思っていた別の名前がありました」と書きました。

    裏付けばっちりとまではいきませんでしたが、辻褄はまあ合うかなと、今回令和Days124のお話に落とし込みました。一部抽象的な表現になりますが、こうなった経緯を追記します。

    こくしねるさんがおっしゃっていた通り、名前の悪の意味合いは、悪いではなく超強い。強い男になるんだぞと、日本名を名付けた方の親心だと思います。ただ、名付けるにはきっかけがある筈、それは何かと考えた時、彼の本名にヒントがあるのでは?と思いました。

    人は聞き慣れない言葉を耳にすると、頭の中で知った言葉に変換しがちです。

    「おぬし、名は?」
    「〇〇〇、アクバル、〇〇〇〇〇」
    「あく?今あくまると申したか?ならば以後悪丸と名乗れ」

    こんな感じかと。悪丸を演じたMAXさんは、アフリカのセネガルご出身です。そこに寄せて話を進めますと、16世紀のアフリカは、三角貿易(詳しくはここでは書きません。NGワードが含まれそうですので)の頃です。だから、悪丸も巡り巡って日本に辿り着いたと思われます。

    前のシリーズ、平成Days47で唯が「悪丸にどこの国から来たの?って聞いた事あるんだけど、すっかり忘れちゃった」と話しましたが、今とは国名が違いますし、唯でなくても覚えられなくてごもっともです。悪丸がまだ居たであろう頃のセネガルの辺りは、国の分裂が盛んに行われていた時期で、国名は特定できませんでした。

    で、アクバルさんってお名前あったよなぁ…と調べてみたんですが、夕月調べでは中東や東南アジア出身が多く、アフリカとはちょっと遠い。アラビア語でアクバルは偉大、という意味だけど、その国々ではアラビア語は話されていない。MAXさんは、プロフィールによるとアラビア語もOKだそうですが。

    でもその国々、宗教は同じです。セネガルは、公用語は植民地だったこともありフランス語ですが、お国の方のお名前の表記でいくと、フランス寄りではなくアラビア寄りと感じます。

    結果、名前にアクバルって入ってても有り得るかなと思いまして、入れ込んだ次第です。

    ちょっと無理無理だったかもしれませんが、なにせ創作ですので…大目に見てやってくださいませ。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days124~21日17時、最強の味方

    尊に教えてあげたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君と悪丸。

    若君「おぬし、この国に参った折に、名を新しく付けられたであろう」

    悪丸「名。はい」

    若「生まれ育った地での、名であるが」

    悪「はい…」

    若「もしや、アクバル、と入ってはおらぬか?」

    悪「あ、え?」

    若君の言葉を聞いた悪丸が、動揺している。

    悪「…その通りでござる。何故その名を」

    唯「へー、やっぱそうなんだ。尊すごーい」

    若「そうか、合うておったか。わしではない、師匠の了見じゃ。このように書くのか?」

    メモの、尊が書いた部分を見せる。

    悪「…然り」

    メモを指で一文字ずつ追っている。

    若「済まぬの。かえって、参った折の辛さなど思い起こさせたやも知れぬが」

    悪「いえ」

    若「良い名じゃ」

    悪「痛み入り、ます」

    若「大きく、立派という意味合いであろう?」

    悪「なんと。若君様は何でもご存じじゃ…」

    唯「偉大、だよね」

    若「これからも、悪丸は悪丸じゃが」

    悪「はっ」

    若「うむ」

    疾風の手綱を取る若君。悪丸が前に出た。

    悪「わしが」

    若「そうか。頼む」

    悪丸は、深く一礼し、疾風を城内へ連れて行った。

    唯「合ってたね」

    若「そうじゃな。尊に伝えられぬのは残念じゃが」

    唯「いつか言えるよ」

    若「うむ。その日を楽しみに待つとしよう」

    二人は、手を繋いで城へ戻って行った。

    女中1「あ、若君様よ!今日も一段と、麗しくていらっしゃるわ~」

    女中2「素敵~」

    女中3「ホントよね~」

    通って行く若君と唯を、城内の女中達が遠巻きに見ている。

    女2「そういえば知ってた?阿湖姫様の指先。このところ、とても美しく輝いていらっしゃるの」

    女3「チラリと拝見したわ。素敵でいらした」

    女2「でも、奥方も同じような指先なのよ」

    女1「阿湖姫様が、揃いにして差し上げたのではないかしら」

    女3「有り得るわね。なんと慈悲深いお方」

    女1「生粋のお姫様は、違うわね~。確か、海道一の手弱女と謳われていらっしゃったのでしょう?」

    女2「それにひきかえ」

    女1「あー。比べるのは阿湖姫様に失礼よ」

    女3「そうそう」

    女1「あーあ、若君様には、もっと楚々とした姫君と夫婦になっていただきたかったわ」

    女2「そうそう、もっとたおやかな姫ね」

    女3「海道一とは言わないけど、いくらなんでも」

    女1&2&3「ねぇ~」

    トヨ「ここにも居ったか…ちょいとお待ち!」

    トヨが、眉間に皺を寄せながら、三人の前に立ちはだかった。

    女3「な、何ですか?」

    ト「阿湖姫様は、勿論とても麗しいお方よ。でもその後、結構な言い草よね」

    女2「え?」

    女1「怒ってる?」

    ト「アンタ達に何がわかるの」

    女2「どういう事?」

    ト「いいわ」

    女1「何!」

    女3「怖い~」

    ト「そこへ、直れ」

    女1&2&3「え、え~?!」

    その場に正座させられる三人。

    ト「どれだけ奥方様が素敵な姫か、とことん教えてあげる。反省の色が見えるまで、そのままじゃ!」

    その頃、若君の居室に若君と唯。

    若「唯に見せたき物がある」

    唯「なになに!」

    棚から紙を取り出した。何か絵が描いてある。

    唯「絵?誰か描いてくれたの?」

    若「わしが描いた」

    唯「えぇっ!たーくんそんな才能あったの?!びっくり~」

    若「よう描けておろう」

    唯「ぷっ。それ、まんま自画自賛てヤツじゃん。これって、じい?」

    若「そうじゃ」

    唯「着物じゃないね。なんか、きてれつなカッコしてる」

    若「わからぬか?」

    唯「うぇっ、もしかして…トランプのジョーカー、じいの姿で描いてみた?」

    若「そうじゃ、良かろう?いつか厚く上質な紙が手に入ったら、トランプを一式作ってみたいと思うての」

    唯「へー、すごーい!いつかできるといいね!それにしてもさぁ」

    若「ん?」

    唯「たーくん…ヒマなの?」

    若「平和な時を満喫、と申せ」

    唯「そうだね。あはは~」

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    21日のお話は、ここまでです。

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