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    四人の現代Days91~4日16時、振り返りは大切

    学校行ってる内に聞いとけよ、って話。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    カフェのたけるな。ドリンクは、それぞれもう三杯目になっていた。

    瑠奈「はぁ。そろそろ帰んないといけないなぁ。名残惜しい~」

    尊「そうだね」

    瑠「同じ気持ち?」

    尊「うん」

    瑠「ふふっ。良かった」

    尊「あのさ、家にパソコンってある?」

    瑠「パソコン?私の部屋にあるよ」

    尊「比較的新しい?」

    瑠「お兄ちゃんのお古を、去年買い替えたばっかりだけど全然使ってない。どうして?」

    尊「ビデオ通話ができるんじゃないかな」

    瑠「え、それって、尊と大きい画面で顔見ながら話せるの?!」

    尊「うん。詳しいやり方は教えるよ」

    瑠「わぁ。尊って、パソコンにも強いんだ。どうしよう、知れば知る程好きになる」

    尊「照れるよ。大した事じゃないのに」

    瑠「お願いがあるの」

    尊「何?」

    瑠「通学時間、朝は急行乗ってもらっていいけど、帰りだけは一緒がいいな」

    尊「あー。いいよ」

    瑠「大事な時期だから、あまり尊の時間を取り上げたくない。帰り、ちょっとだけゆっくりになるけど」

    尊「気遣ってくれてありがとう。まぁ何と言うかさ、今は周りを刺激しない方がいいんじゃないかな」

    瑠「こっちは勉強で頭一杯なのに、お前ら朝からベタベタくっつきやがって、みたいな?」

    尊「ははは、そうだね」

    瑠「じゃあ、日中も我慢する」

    尊「それがいいと思う。ではそろそろ。暗くなる前には家に着いて欲しいし」

    小垣駅のホーム。電車がやって来た。

    尊「見送ってくれてありがとう」

    瑠「当然でしょ。今日は超幸せだった。あー、電車のドアが二人を分かつのね」

    尊「今生の別れじゃないからさ」

    ドアが閉まった。尊が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた瑠奈。

    尊 心の声(三日後にはまた会えるってわかってても、こんなに切なく感じるんだ。…二度と会えないってわかってて、お姉ちゃんを現代に送り出した時の兄さん、どれだけ辛かったか。今なら痛い程わかる)

    ぼんやりと、流れる景色を眺める。

    尊 心(恋愛は超初心者でからきしだけど、こうやって学んでいけるんだな…)

    尊「ただいまー。うぇっ」

    帰宅した尊に、一斉に視線が集中。皆、何か言いたそうな顔をしている。

    唯「どうだったどうだったどうだった!」

    尊「当たりが強いな。楽しかったよ」

    唯「るなちゃんとはこれからどうすんの?」

    尊「あー、付き合う事になった」

    一瞬、全ての音が静まった。

    唯「なにぃ~!尊のクセにあんなかわゆい子が彼女なんて、ありえない!」

    尊「クセにって。はいはい、そうですね」

    美香子「よ、良かったじゃない。ジェットコースター的な展開でちょっとびっくりだけど」

    唯「ねー、自分からコクったの?」

    尊「いや、向こうから」

    唯「うっそぉ!ますますありえない!」

    尊「ひでぇな。少しは肯定しろよ」

    唯「で、OKしたんだ。ヒューヒュー!ねぇ、なにが決め手だったの?」

    尊「決め手というか、兄さんが…」

    唯「は?なんでたーくんが出てくんの」

    それを聞き、騒ぎを遠巻きに見ていた若君が近付く。

    若君「わしが、いかがした?」

    尊「来た波には乗れば良い、って言ってたのを思い出したから」

    若「…吉田殿か」

    尊「そうです。ありがたい訓話の中で」

    覚「あの時か。そうかそうか。そうやって自分の身に置き換えられるのは、それだけ尊が成長した証拠だ。いやぁ、良かった良かった」

    唯「話が見えない。吉田?」

    尊「お父さんか兄さんに聞いて。鞄置いてくる」

    唯「あ、ねぇねぇ!頼みがあるんだけど」

    尊「何だよ」

    唯「違う吉田の話」

    尊「へ?」

    吉田城跡の話をする唯。

    唯「木村先生に、メールで聞いて欲しい」

    尊「わかった」

    若「尊、もう一つ、木村殿に尋ねて欲しいのじゃが」

    尊「何でしょう」

    若「語られてはおらぬが、木村政秀の末裔ではござらぬか、と」

    尊「あー。そっくりだって言ってましたね。わかりました。早速連絡しますね」

    美「あ、尊、あとね」

    6日の式の話を耳打ちした。

    尊「了解~」

    尊は二階に上がっていった。

    源三郎「写真を拝見した限りではございますが、お二方は瓜二つ」

    トヨ「私も驚きました」

    美「もし先生が武将の末裔だったなら、歴史を教えていらっしゃるみたいだし、アピールすればいいのにね」

    唯「なーんにも言ってなかったんだよね。聞いてもいないけど」

    若「語られぬ由があるのやも知れぬ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ありがたい訓話は、令和Days54no.658にて。

    4日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days90~4日14時、ゴールいやスタート

    相当、騒がしかっただろうな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    こちら、速川家のリビング。

    美香子「唯、ちょっと」

    唯「なに?」

    隅に呼び、小声で話す母。

    美香子の囁き「源三郎くんとトヨちゃんの結婚式、6日の夜にするから」

    唯の囁き「ラジャ。芳江さんもエリさんも、それでいいの?」

    美 囁き「さっき連絡したらね、是非参列したいし、そういう理由なら一日でも早い方がいいって、お二人とも言ってくださったの」

    唯 囁き「そうなんだ。年明け初日で疲れてるのに悪いね。その分、パーっとやろうよ」

    美 囁き「忠清くんにこっそり言っておいて。尊には帰ったら伝えるわ」

    戻って、たけるなの二人。電車に乗っている。

    瑠奈「小垣で降りてくれるの?」

    尊「うん、どこかいい所ある?」

    瑠「みつきとかとよく溜まってるカフェがあるの。そこでいいかな」

    尊「わかりました」

    小垣駅。改札を抜け、歩き始めた。

    尊「ここだけ、和、だね」

    駅前に、立派な生け垣がある。

    瑠「うん。代々小垣に住んでる父親が言ってたけど、これは由緒正しいお庭なんだって」

    尊「へー」

    カフェは、駅から3分程の距離にあった。

    尊「お洒落なお店だね」

    瑠「でしょ。この辺りにしては」

    外を眺められる、窓際の横並びの席についた。

    瑠「向かい合わせより、こっちの方が尊には良さそう」

    尊「お気遣いありがとう」

    ドリンクで少し落ち着いた後、尊が話を切り出した。

    尊「あのさ。どうして、僕、なのかなって」

    瑠「質問というより、疑問?」

    尊「どこがそんなに気に入ってもらえたのか、わからなくて」

    瑠「そうなの?ふーん。では、時系列に沿って説明します」

    尊「お願いします」

    瑠「クラスメートの一人という認識だった尊の存在が気になり出したのは、12月15日。カラオケでばったり会った時ね。その時にも言ったけど、気遣いができるジェントルマンだなーって。話しやすくてびっくりしたし」

    尊「うん」

    瑠「決定的になったのが、18日のホームルーム」

    尊「あぁ、あの。あれは先生が悪いんだよ。羽木一族が滅びたのは、備えが足りなかったんだ、お前らはそうなるな、なんて、根も葉もない話を軽くするから、つい手を挙げて」

    ┅┅回想。その時の尊┅┅

    尊「先生、それは違います。近年継続中の調査で、滅びた時期も、滅びたかどうかも未確定に変わっています。なので、備えが足る足らないは引き合いに出せなくないですか?当時は皆、波乱の時代を一所懸命に生きていたんです。羽木一族に謝ってください。羽木家は…」

    ┅┅回想終わり┅┅

    瑠「まるで身内を庇うみたいだったよ。そこで、尊が黒羽市に住んでるって知って、地元愛が素晴らしいなって」

    尊 心の声(身内は庇うよ。つい、でしゃばっちゃったけど)

    瑠「その後の、尊のよどみなく出てくる知識がすごかったから、先生オロオロしながら謝ってたね。尊すっごく輝いてた。で、続きを聞きたいメンツだけ、放課後残って話聞いたじゃない。聞いててもう、尊敬の一言しかなくて、そのままキューンって、心をわしづかみにされたの」

    尊「尊敬なんて、おこがましいよ」

    瑠「地元の歴史ってさ、受験に関係ないじゃない。なのに尊、あんなに詳しくて、それでもって熱く語って…もぅ、たまらなくかっこ良かったよ」

    尊「なんか、恥ずかしいな」

    瑠「日を追う毎に、私の中で尊の存在が大きくなっていったの。クリスマスは、会えて超超嬉しかったんだけど、突然、本物が目の前に居る!って、訳わかんなくなっちゃって、平静を装うのが精一杯だった」

    尊「そうだったんだ。気付いてなかった」

    瑠「で、元日はバタバタしちゃったけど、ちゃんと気持ちを汲み取ってくれて、感動しっぱなしだったよ。そして今日一緒に居て、いっぱい尊を知れて、楽しくて仕方ないの」

    尊「僕はそんな立派な人間じゃないよ。瑠奈を支えられる体力もないし」

    瑠「ムキムキとか貧弱とか、関係ないレベルの話だよ。もう、私の頭の中では、このヒトだ!って鐘が鳴ってる」

    尊「鐘?ゴーン、って、お寺の?」

    瑠「…ぷっ」

    尊「え?違った?」

    瑠「違うー、教会で鳴らす、リンゴーンって方!もー、尊ったらぁ」

    尊「そっか、失礼しました」

    瑠「あは、あはは」

    尊「そんなに笑わないで」

    瑠「やだもう、じわじわ来る。あははは!尊、面白ーい!」

    尊「面白い…」

    笑い転げる瑠奈を見つめる尊。

    尊 心(はっ!兄さん、僕…)

    笑顔の瑠奈が、外の光にも照らされ、輝いている。

    尊 心(兄さんが言ってた面白いの意味、わかったような気がします)

    瑠「ふう。笑い過ぎちゃってごめんなさい。あのね」

    体ごと、尊の方に向いた瑠奈。尊も、瑠奈の方に体を向けた。

    瑠「わかってくれたかな。尊をすっごく尊敬してて…もう、散々言ってるからわかるよね?すっごく好きなの」

    尊「ありがとう。まだ信じられないけど、嬉しい」

    瑠「大事な時期だし、黙っていようと思ったけど、無理だった。私の恋愛の師匠はみつきだしさ」

    尊「あぁ。はい」

    瑠「私の事、嫌じゃなかったら、付き合ってください」

    尊「…」

    瑠「…嫌、かな」

    尊「嫌じゃないよ。なんで僕?って未だに思うだけ」

    瑠「じゃあ…」

    尊「僕で良ければ、よろしくお願いします」

    瑠「ホントに?!…うっ、うっ」

    尊「えっ」

    瑠「うわーん!嬉しいよー!」

    尊「わー、そんな豪快に泣かないで!えーと」

    鞄からハンカチを出し、瑠奈に渡した。

    瑠「これ、は?」

    尊「お母さんが、ハンカチは二枚持ってけって…だから、使って」

    瑠「尊、かっこ良過ぎる~、うえーん!」

    尊「三枚必要だったかな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もう少し続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days89~4日11時30分、二歩進んだ

    たけるなペア、三歩目に進むか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    参道を歩いている、尊と瑠奈。

    尊「砂利って、歩きにくいよね」

    瑠奈「ヒールの靴よりは、ブーツで正解だったけど。参道、長いよ」

    尊「気をつけて」

    瑠「うん。きゃあ!」

    尊「え、わー!」

    石に足をとられ、ずるっと滑ってしまった瑠奈。尊の方によろけてきたのだが、

    尊「痛っ…」

    瑠「ごめんなさい!大丈夫?!」

    尊は支えきれず一緒に倒れてしまい、尻もちをついていた。

    尊「大丈夫。手袋もしてるし。瑠奈こそケガとかしてない?」

    瑠「うん。どこもなんともない」

    尊「ごめんね。支えられなくて」

    瑠「謝んないで。とっさの事だもん、仕方ないよ」

    尊 心の声(僕はなんて非力なんだ。兄さんなんか、お姉ちゃんがぴょんと飛びついてもびくともしない。体幹を鍛えないと…)

    神社を後にした。

    瑠「お昼って…」

    尊「一緒に食べるつもりだったけど。軍資金も貰ってるし」

    瑠「わぁ、ホントに?嬉しい!どこに行こうかな…あっ」

    前方に、ファーストフード店を発見。

    尊「あ、ちょうどいいところに。知らないお店だとよくわからないから、あそこでもいい?」

    瑠「ジャンクフード的な物だけど、いいの?」

    尊「ファーストフードは食べるよ」

    瑠「そうなんだ、じゃあ行きまーす」

    注文した品をトレイで運び、席についた。二人ともコートを脱ぐ。

    尊 心(中はそんな感じだったんだ)

    瑠奈は、鮮やかなサーモンピンク色の、Vネックのセーターを着ていた。

    尊 心(シャケの切り身ってこんな色だよな)

    瑠「どうしたの?服、派手かな」

    尊「あ、いや、美味しそうだなって」

    瑠「…」

    尊「え?」

    瑠奈が、悪戯っぽく微笑む。

    瑠「私を、食べたい?」

    尊「…わぁ!そうか、そう聞こえるよね、ごめんなさい!失言です」

    瑠「失言なの?えー私、尊なら…いいのに」

    尊「いい。…いい?!えっ、あっ、その」

    瑠「焦ってるぅ。かーわいい!」

    向かい合って座り、食事を始めたのだが、

    尊 心(あー、まだ心臓バクバクする。それに、目のやり場に困るよ。顔を見ると恥ずかしいし、かといって視線を落とすと…)

    瑠奈は、かなり豊かな胸の持ち主だった。

    尊 心(もっと恥ずかしい)

    瑠「尊~、どうしてこっち見てくれないの?」

    尊「ごめんなさい、距離の取り方がわからなくて」

    瑠「そんな理由?」

    尊「僕、友達も居ないから、こういうの慣れてないんだよね」

    瑠「えぇ?言ってる意味がわからない。友達?クラスの子は、みんな友達じゃない」

    尊「それは、瑠奈はそうかもしれないけど」

    瑠「友達か、そうじゃないかの線引きって要るの?それってさ、尊が自分から周りに線引いてるんでしょ」

    尊「…瑠奈にはわからないよ」

    瑠「ほら!そうやって、私にも線引いてる」

    尊「…あっ」

    瑠「気付いてなかったんだね」

    尊「ごめんなさい」

    瑠「尊がそうしなければならない程、かつてどう辛かったかは、私はわからない。それはこちらもごめんなさいだよ。でも今の尊には友達、仲間がたくさん居る。ちゃんと周りを見て欲しい」

    尊「…」

    瑠「一人ぼっちじゃない。自分から、わざわざ孤立しなくてもいいでしょ」

    尊「はい」

    瑠「ねっ。でもね、尊は、私に言わせれば孤立や孤独というよりは、孤高って感じだけどね。かっこいい」

    尊「はは、ありがとう」

    瑠「ふふっ。どういたしまして」

    尊 心(瑠奈は…こんな僕を変えてくれるのかもしれないな)

    尊「あの、実は」

    瑠「なぁに?」

    尊「質問が二つあって」

    瑠「私に?えー、なにかな」

    尊「一つ目。名前ってさ、やっぱり月が由来なの?」

    瑠「あー。うん。私ね、満月の夜に産まれたんだって」

    尊「えっ、満月?!」

    尊 心(やはりこれは、運命なのか?!)

    瑠「そんなに驚く?でね、空に浮かぶ丸い月があまりに美しくて、他の候補だった名前を全部なしにして、月の女神の名前からとったんだって。漢字は両親が考えてね」

    尊「そうなんだ…」

    瑠「だからね、満月の夜は、必ず空見ちゃう」

    尊「僕も、満月の日は気になって見上げるよ」

    尊 心(空だったり、実験室の天井だったりするけれど)

    瑠「そうなの?!わぁ、またお揃い、嬉しいな。で、二つ目は?」

    尊「二つ目は…もう少し後で聞くよ」

    瑠「やだ、嬉し過ぎる。まだ一緒に居られるんだね」

    尊「あ、うん。そうだね」

    瑠「わぁ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだまだ続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days88~4日11時、はなむけの

    みつき大明神、と呼ぼう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    神社は、賑わっていた。

    瑠奈「はい、合格祈願の御守、プレゼント!」

    尊「もらっちゃっていいの?」

    瑠「約束したもん」

    尊「ありがとう」

    瑠「恋愛成就のも買おうか悩んだけど、混んでて。尊を待たせちゃ悪いと思って、やめた」

    尊「そ、そう」

    瑠「御守なんかなくても、願いが叶うといいなー」

    尊「…」

    尊 心の声(あ、そうか。相手が誰かはわからない。自分だと思うなんて、自惚れもいいトコだ)

    瑠「ねっ、尊」

    尊「あ、はい」

    尊 心(えー、これはわからない…)

    瑠「でもね、下手に恋愛成就の御守持つより、みつきを拝んでた方が御利益ありそうなんだよねー」

    尊「そうなの?」

    参道を歩きながら話し出す瑠奈。

    瑠「みつきと彼ね、幼なじみなの。彼が三つ上。みつきとは中学校から一緒だけど、その時にはもう彼氏彼女になっててね」

    尊「へぇ、中一の時に高一の彼か」

    瑠「みつき、小さい頃から彼が好きだったんだって。それでね、ずっと心に秘めていたんだけど、彼が中学校に上がる年に考えたらしいの。小学校と中学校に分かれてしまうから、目が行き届きにくくなる」

    尊「他の小学校からも来るしね」

    瑠「よくさ、好きな人が知らない女と仲良くしてるのを物陰から見て、悶々としてるシチュエーションとかあるじゃない。主にドラマだけど」

    尊「うん」

    瑠「みつきはそんな子じゃないのは、なんとなくわからない?」

    尊「わかる」

    瑠「だからね、断られたらどうしようとか、今後気まずくなったらどうしようとかは杞憂だ!って、彼が中学校上がる春休みに、付き合ってくださいって告白したんだって」

    尊「え、って事は、小四になる年に?!それはミッキーさん、すごいや」

    瑠「で、やっぱり杞憂は杞憂で正式にお付き合いが始まったと。だから長いよー。もうね、みつきっていつもは強気なのに、彼氏にはメロメロなんだよ。かわいいでしょ」

    尊「わかるよ。元旦の初詣の時、ミッキーさんの彼が来るまで一緒に待ってたんだけど、会えた途端、顔つきがガラッと変わったからさ」

    瑠「え…?ちょっと待って、みつきの彼が来るまで?」

    尊「うん。一人にしとくと危ないじゃない」

    瑠「尊、家族と来てたんじゃないの?」

    尊「家族に、一緒に居てあげなさいって言われたし、僕もその方がいいと思ったし。確かに優しそうな彼氏さんだった。無事見届けてから、家族とはすぐに合流したよ」

    瑠「えっ。ちょっと、こっち来てくれる?」

    瑠奈が、かなり驚いた顔をしながら、参道の脇に尊を呼ぶ。

    尊「どうしたの」

    瑠「そんな話、今初めて聞いたからじっくり聞きたくて」

    尊「ミッキーさん、言ってなかった?」

    瑠「言ってたかな…あっ、そうか。私あの時、動画観て頭に血がのぼり過ぎて、言い訳はいらない!ってLINEした…」

    尊「それは…ミッキーさんに同情するなぁ」

    瑠「わー、後でみつきに平謝りしとく。っていうか!尊!」

    尊「矛先が変わったぞ」

    瑠「なんで黙ってたの!」

    尊「えぇっ、僕が怒られるの?!」

    瑠「もー、かっこ良過ぎるでしょ!ますます、惚れ直しちゃったぁ」

    尊「あの、心の声的なモノが、丸々聞こえてますが…」

    尊 心(ミッキーさんも瑠奈も、なんでこうもストレートに正面からぶつかってくるんだろう。心臓がもたないよ)

    さて。変わって速川家。城跡巡りから帰ってきた。

    源三郎「つくづく、車とはなんと速い乗り物、でしょうか」

    若君「山越えをせなんだとはいえ、あぁも速く、小垣に着くとはのう」

    覚「まぁ、道路も整備されてるしね。さて、昼ごはん作るか」

    トヨ「お手伝いいたします」

    美香子「あ、しまった!」

    若「お母さん、どうされた」

    美「尊に、二人分の昼ごはん代、お小遣いで渡そうと思ってて忘れてたわ」

    唯「あー。それならゆうべ、はい軍資金!って渡しといたよ」

    覚&美香子「え?!」

    唯「ちょっとぉ、それ驚き過ぎじゃない?」

    若「確かに、渡しておりました」

    美「そうなの?」

    唯「だってさー、一生に一度、最初で最後かもしんないから」

    美「そんな縁起でもない事言わない~。でも、ありがとね、唯。さすがお姉ちゃん!」

    唯「えっへん」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days87~4日10時、辿ります

    石碑さえなく歴史から消え去った城も、あるのかもしれない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊と瑠奈は、乗り換え駅に到着。神社方面の電車の到着を待っている。

    瑠奈「尊ってさぁ」

    尊「はい」

    瑠「むきたてのゆで卵みたい」

    尊「え~、なんだよそれ」

    瑠「お肌もつるんとしてて」

    尊「それさ、僕の顔が青白くて、セーターがゆで卵の黄身みたいな色だから、そう見えるんじゃないの?」

    瑠「違うってば。なんというか、そこはかとない清潔感?鞄も靴もすごくキレイだし」

    尊「そう?」

    尊 心の声(お母さん、グズグズ言ってごめん。ありがとう!)

    瑠「家に居た頃のお兄ちゃんなんかさー、もー顔はニキビでブツブツだし、なんか脂クサイし、すっごく嫌だったのに」

    尊「帰省してたお兄さん?」

    瑠「うん。結婚してて、転勤族っていうの?今は遠くに住んでる。でね、去年赤ちゃんが産まれたの、かわいいよぉ。昨日撮ったの見せてあげる!」

    スマホの、お兄さん家族の写真を見た尊。

    尊「お兄さん…すげぇイケメン」

    瑠「そっち?」

    尊 心(兄さんとは違うタイプの、甘い感じのイケメンだ。瑠奈のお兄さんだから想像はできたけど)

    瑠「尊の顔、青白くはないよ。色白だけど。お肌にいいモノ食べてる?」

    尊「それはわからないけど、いわゆるジャンクフードはあまり食べないかな。ご飯は三食父親が作るし」

    瑠「お父さんがご飯作ってるの?すごーい」

    尊「ウチは、母が医者で生計を支えてて、父が主夫なんだ」

    瑠「あ。もしかしてお母さん、速川クリニックの先生?」

    尊「うん」

    瑠「やっぱり!家でそうじゃないかって話になって。ネットの口コミ、すごく良かったよ」

    尊「見てくれたの」

    瑠「尊は、継がない…んだね?」

    尊「うん、まぁ」

    瑠「他にやりたい事があるんだ」

    尊「まぁ、そうだね。内緒だけど」

    瑠「内緒ね。そっか。じゃあ、聞かない」

    尊「ありがとう」

    尊 心(何をやりたいかは…ごめんなさい、告白できないと思う)

    変わって、速川家の皆さん。小垣城跡に着いた。

    美香子「初めて来たけど、見える景色が鳥の目線、って感じがいいわね~」

    覚「標高が高過ぎないのがな」

    発掘作業はほぼ終了していた。柵で仕切られた外側から、中を覗き込んで話す四人。

    源三郎「ここが内門だ」

    トヨ「ふむふむ」

    唯「ねぇたーくん、あそこがあの部屋?」

    若君「あぁ。祝言を挙げた」

    美「発掘されてた学者さん達、呼びに行きたいわね」

    覚「この会話聞いたら驚くだろうけど、資料作りの助けにはなる」

    美「なるかしら?そのまま信じてはもらえないわよね」

    覚「周りから一人言みたいに呟くか?ハハハ」

    城跡の脇に、資料館の建設が始まっていた。

    唯「なにが入るのかな。いつか見学したいね」

    若「そうじゃな」

    その後、松丸城跡の石碑を確認し、長澤城跡に移動して、同じくひっそりと佇む石碑を確認している。

    覚「つわものどもが夢の跡、か」

    美「そうね。でもそれ、松尾芭蕉だから忠清くん達の時代よりずっと後よ」

    唯「全っ然、わかんなーい!」

    唯達四人は、なにかしら形跡がないか周りを探索していた。

    若「広い城であったのじゃが」

    源「こうしてみると、黒羽や小垣は、恵まれておりますな」

    ト「あとは、吉田城…」

    若「うむ」

    覚「おーい、そろそろ帰ろうかと思うけど」

    唯「ん。わかんないモノはしょーがない。帰ろ」

    若「…お父さん」

    覚「何だい、お願いしたき儀か?」

    若「ハハ、はい。ここは長澤城。かつて、捕らわれた唯を助け出し、小垣城を目指し山中を駆けました」

    唯「あん時は、お腹が空き過ぎて大変だったー」

    美「そっちの大変?ホント、顔に傷が残らなくて良かったわ」

    若「此の地から、小垣に向かっては貰えませぬか。この令和の世なら、どれほどで着けるか、知りとうて。麓までで構いませぬ」

    覚「そうか。呆気ない程あっという間だと思うけど。かえって、嫌にならないかい?」

    若「このような世がいつか参るのだと、心に焼き付けとう存じます」

    美「偉いわね。どんな事も吸収しようとして」

    覚「わかった。じゃあ小垣城の下経由で帰ろうな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days86~4日9時30分、幕開きです

    今回はときめいたらしい。前回は58話no.915です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊「30分も早く着いちゃったよ…」

    小垣駅に到着した尊。ホームに降り立った。

    尊 心の声(待たせるよりいいとはいえ、どこかで時間潰さないとな)

    ホームの端まで歩いていると、

    尊 心(え。ウソ?!もう来てる!)

    遠くのベンチに、瑠奈が座っていた。

    尊 心(びっくり。いつから居るんだろ)

    瑠奈はこちらに気付いていない。思わず身を隠す尊。

    尊 心(電話してるな)

    キャメル色のコートに、デニムのロングタイトスカート。モコっとした、足首が隠れる丈のムートンブーツを履いている。

    瑠奈「もー、待ち遠しくって!どうせ浮かれてますよーだ」

    かなり楽しそうに、誰かと話している。

    尊「…」

    尊 心(僕を待って、こんな早くから、あんなに喜んでる?信じられない。でもくすぐったいような。嬉しい)

    瑠「もー、いいでしょー。うん、うん、また報告するー、あはは!じゃーねー」

    尊 心(動きが、小動物っぽくて…かわいい)

    電話を切り、座ったまま伸びをした瑠奈。様子を見計らってそっと近づく尊。

    瑠「あ」

    気がついた。

    瑠「わぁ!」

    尊「えっ」

    ベンチから立ち上がり、満面の笑顔で頬を赤く染めながら、駆け寄ってくる。

    尊 心(こ、これは…)

    瑠「おはよう!尊。早かったね」

    尊「おはようございます。いつから居たの?」

    瑠「ちょっと前から」

    尊「寒かったでしょ」

    瑠「平気」

    尊「でも冷えたりしたら…あ、これ」

    持っていたカイロを差し出す。

    尊「わ、違う、新品あるからそっちを」

    瑠「ううん、これがいい。尊が握ってた方で」

    尊「え。ま、まぁ出したばかりではあるんで」

    瑠「ふふっ。尊は今日も、優しさ全開だね」

    尊「いや、優しいヒトは新品渡すでしょ。は、はは」

    瑠「今ね、みつきとしゃべってたの。センセによろしくって言ってたよ」

    尊「そうだったんだ」

    来た電車に乗り込んだ二人。

    瑠「コートがお揃で嬉しい!」

    尊「そうだね。偶然」

    瑠奈も、ダッフルコートだった。

    瑠「スカートも、デニムにしといて良かったぁ。お母さんがね、女子高生ならミニスカートが定番じゃないのって言ってて」

    尊「ははは。制服はそんな感じが多いかな」

    瑠「猫も杓子もミニスカートはなんだから、あえてのロングスカート!って言い返したら、笑ってた」

    尊「仲良いね。もしかして、電話する時いつも近くに居ない?」

    瑠「居る。理由は、内緒」

    尊「内緒ですか。ウチも、家族仲いいよ」

    瑠「カラオケもイルミネーションも、家族とだったんだもんね」

    尊「うん。他に一緒に行く人も居ないし」

    瑠奈が、自分を指差している。

    瑠「立候補する」

    尊「それはどうも…ありがとうございます」

    尊 心(なぜ、僕なんだろう?帰りまでには教えてもらおう)

    さて。その頃の速川家。覚がタブレットで城の情報を調べている。

    覚「松丸城も長澤城も、今は跡地に石碑が残るだけみたいだな。でもどうしても、吉田城跡が見つからない」

    美香子「なぜかしらねぇ」

    唯「すっごく大変だったけど、たーくんが初めてこっちに飛んだ場所なのに」

    源三郎「見つからない。そうですか…」

    トヨ「源ちゃん、大丈夫よ。きっとどこかにあるわ」

    若君「有山が守っておったからのう。気に病むのも無理はない」

    美「なぜこうも、黒羽城や小垣城と扱いが違うのかしらね。地元の熱意の違い?」

    唯「たとえばさ、高山が民に嫌われていたとか?」

    若「それはわからぬが、少なくとも松丸家はそれには当てはまらぬ」

    源「財もある家柄ですし」

    ト「私達が知らないところで、何かあったのでしょうか」

    覚「今は知る由もないが、ただ資料がないだけかもしれないぞ」

    若「なるほど」

    唯「そうだ!」

    美「もう何~、大きい声出して」

    唯「木村先生なら知ってるかも。尊が帰ったら、先生にメールさせよう!」

    美「デート中に今すぐやれって言わないだけ、少しは成長してるわね」

    覚「ひとまず、小垣、松丸、長澤の三箇所巡ってみるか。じゃ、分乗して出発~。いや、出立~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days85~4日土曜6時30分、未踏の地へ

    遠足の日の朝みたいな高揚感?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が目を覚ました。

    尊 心の声(あー。お風呂にも入らないといけないし、もう起きるか)

    パジャマのまま、階段を下りる尊。

    尊「あっ、そっか。この時間は」

    若君「尊、お早う」

    源三郎&トヨ「おはようございます」

    三人は、テレビを観ながらラジオ体操中。

    覚「おっ、やっぱり早く起きたなー。風呂、沸いてるぞ」

    尊「ウソ!もう?」

    美香子「デートが楽しみで、絶対早起きする、って読んでたのよ~」

    覚「僕は、緊張して早く起きちゃうって読んでた。なんせ女の子とだしな」

    尊「誰かと出かけるなんて、家族以外男同士でも行った事ないから、男女差はないよ」

    覚「で、緊張はしてるのか?」

    尊「こうやって追い立てられるから、そうじゃなくてもそうなりそう」

    覚「そうか?ははは」

    美「まぁ、まずはお風呂にね」

    尊が風呂から出ると、食卓で唯が不機嫌そうに座っていた。

    唯「なんで、尊のデートに合わせて、早起きしなきゃいけないのー。眠いよー」

    尊「僕のせいばかりじゃないでしょ」

    美「そんなに早くはないわよ?ホント、文句が多いわねぇ」

    朝ごはん後。

    美「さぁ、服選ぶわよ」

    尊「はいはい」

    母と息子が二階に上がり、尊の部屋に入る。

    美「ちなみに、自分ではどうコーディネートしようと思ってた?」

    尊「自分では…」

    タンスの中から服を取り出す。

    尊「セーターはこれ」

    薄いクリーム色のタートルネック。

    美「いいわね」

    尊「OK?下はこのジーンズで」

    美「ん、その辺に転がってるのじゃなくタンスから出てきたから良し。上着は、ダウンジャケットのつもりだった?」

    尊「うーん。でもこれこそ出かける時はずっと着てるし、どうしようかとは思ってた」

    美「クリーニング済みのを着ればいいのよ。ちょっと待ってて」

    手にコートを持って戻ってきた。

    尊「あー、それか」

    美「去年クリーニング出した後、私達の部屋のタンスに一緒に入ってて。こっちの方が断然、デート仕様よ」

    紺色のダッフルコート。大きいフードが付いており、前を留めるトグルは白で、爽やかな印象。

    尊「いいかも」

    美「決まりね。楽しみだわ~」

    尊「お母さんがでしょ」

    美「誰かとどこかに行こうという気持ちになってくれただけで嬉しいの。瑠奈ちゃんに感謝しなくちゃね」

    尊「うん…」

    美「じゃ、着替えて忘れ物ないか確認したら、下りてらっしゃい」

    しばらくすると、身支度を整えた尊がリビングに下りてきた。

    唯「ちょっとー、いやに爽やかじゃなーい」

    尊「悪い?あ、ねぇ、使い捨てカイロが欲しいんだけど」

    覚「いくつ要る?また二つか?」

    尊「うん。一つ使ってもう一つは予備で」

    カイロを袋から出し、シャカシャカ振る尊。

    若君「これか。源三郎もトヨも、見覚えがあろう」

    源三郎「はい。あの日の警固は、頂戴したこの品のお陰で寒さを感じずにおれました」

    トヨ「元々、振るだけで温かくなるのですね。驚きました」

    覚「なんならこれも、今回持って帰るかい?買い込んであるからさ」

    源「それは…有難いです」

    若「よろしければ、お願いしとう存じます」

    そこに美香子が、上着を羽織って登場。

    美「もう支度バッチリ?」

    尊「うん、まあ」

    美「駅まで送ってあげる。さ、行くわよ」

    尊「え、まだ待ち合わせに時間あるし、歩いてくよ」

    美「待たせるよりはいいじゃない。早めに行って待ってなさい」

    尊「それにしたって、相当早く着くよ」

    若「尊、早いに越した事はない」

    尊「このままだと、30分位早く…」

    若「行って参れ」

    尊「はい。わかりました」

    唯「えーと、ご武運を祈る?行ってらっしゃーい」

    源&ト「行ってらっしゃいませ」

    覚「楽しんできな」

    尊「うん。行ってきます」

    出かけていった。

    若「お父さん」

    覚「ん?」

    若「折り入ってお願いしたき儀がございます」

    覚「ほほぅ。何だい?」

    若「昨日、小垣城跡の話を聞きました。是非、今の姿を見とう存じます」

    覚「なるほどね」

    若「あと、もしよろしければですが」

    覚「うん」

    若「近隣に、吉田城や松丸城や長澤城もあるのですが、同じく見る事は叶いますでしょうか」

    覚「んー。その三つの城はあまり聞いた事ないから、どれも今はないんじゃないかな。よし、場所を調べて行ってみるか」

    若「忝のう存じます」

    唯「わーい!お出かけだぁ」

    覚「母さんが帰るまでに、身支度しておいて」

    唯&若君&源三郎&トヨ「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days84~3日16時、着々と準備

    冬に二回も入ったら、いくら若くてもお肌カッサカサになりそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    コツコツと、自分の部屋で勉強していた尊。

    尊 心の声(そろそろ明日の打ち合わせの電話するか。4時頃ってLINEしておいたし。でも、なんで電話なんだろ)

    ところ変わって、こちらは瑠奈の家。あい変わらず、自分の部屋ではなく家のリビングに居た。

    瑠奈の母「またここでしゃべるの?」

    瑠奈の父「俺も居ていいのか?」

    瑠奈「いいよ。はしゃぎ過ぎて、おかしくなってたら止めて欲しいから」

    瑠母「あらまあ。今からそんな風で、明日尊くんとちゃんと話せるの?」

    瑠奈のスマホに電話がかかってきた。

    瑠「わぁ!深呼吸しなきゃ、すー、はー。…もしもしぃ」

    尊の電話『もしもし、お待たせしました』

    瑠「待ってた」

    尊 電話『え、遅かった?』

    瑠「ううん、大丈夫。あのね、どこに行こうか迷ったんだけど、遊びに行くんじゃないし、あまり遠くはダメって親に言われて」

    瑠父「俺達が悪者みたいだな」

    瑠「だから、電車の乗り換え一回で済む神社に行こうと思うの」

    尊 電話『うん。あそこだね。多分そうだろうと思ってた』

    瑠「もう行ってた?御守とか持ってる?」

    尊 電話『行ってないし持ってないよ』

    瑠「じゃあ、私がプレゼントしてあげる!」

    尊 電話『ははは。ありがとうございます』

    瑠「何時にどこで待ち合わせする?」

    尊 電話『駅で良くない?家からの最寄りは、何駅になる?』

    瑠「私は小垣駅。尊は、黒羽駅?」

    尊 電話『うん、そう。…それなら、10時に小垣駅のホームでどう?小垣なら通学経路の途中だから、そこまで行くよ』

    瑠「それでいい?小垣駅で降りた事ある?」

    尊 電話『ないね。そこ、急行電車停まらないから』

    瑠「黒羽駅は急行停まるもんね。そのままピューっと、学校の駅まで行けるから。…あれ?」

    尊 電話『どうかした?』

    瑠「前にカラオケ、来てたよね。小垣の」

    尊 電話『うん』

    瑠「なんでわざわざこっちまで来たの?黒羽市にもカラオケ屋さんあるよね?」

    尊 電話『小さい頃から、親に車に乗せられて半強制的に行ってたからなぁ。よくわからないけど、親がそこに慣れてるからかも』

    瑠「ふーん」

    尊 電話『あの、さ』

    瑠「はい!なに?」

    尊 電話『なんで、電話だったの?LINEなら時間気にせずに連絡できるのに』

    瑠「嫌だった?ごめん、忙しかったかな」

    尊 電話『それはないけど。ただ疑問に思っただけ』

    瑠「尊の声が聞きたかったの」

    瑠父「熱いな」

    瑠母「熱いわね」

    尊 電話『え。はは…そ、そうなんだ。では、明日よろしくお願いします』

    瑠「うん!楽しみにしてるね!」

    尊 電話『じゃあね』

    瑠「バイバーイ!…はぁ」

    電話を切っても、まだそわそわしている瑠奈。

    瑠「明日10時に、小垣駅のホームで待ち合わせになったぁ」

    瑠母「楽しみね。最初はどうなるかと思ったけど、そこまで暴走はしてなかった」

    瑠父「確か、速川君、だったな。で、黒羽市の子か」

    瑠「うん。なにかある?」

    瑠父「親御さん、速川クリニックを営まれてないか?」

    瑠母「速川クリニック…あー、聞いた事あるわね」

    瑠「有名なの?」

    瑠父「黒羽市、速川で検索したらすぐ出ると思うぞ。口コミ人気でも上位に入る筈」

    瑠「見てみる!え、でもウチのクラス、医学部志望は一人も居ないよ?」

    瑠父「そこの息子さんと決まった訳じゃないし、本人に聞けばわかる話だろ。ただ」

    瑠「ん?」

    瑠父「好きだと騒ぐ割には、リサーチが甘い」

    瑠「違う、尊は謎が多いの!」

    変わって、速川家。尊がリビングに下りてきた。

    唯「もう夕方だけど、連絡した?」

    尊「うん。明日の10時に、小垣駅のホームで待ち合わせになった」

    唯「おっ!」

    美香子「あ、もしかして、彼女の家がその近く?」

    尊「そう言ってた」

    その会話に、若君と源トヨが反応した。

    若君「今、小垣と申したな」

    尊「はい。小垣城跡からは少し離れてますけど、そういう名前の駅があるんです。兄さん、去年電車に乗ってますけど、気づきませんでしたか?」

    若「唯ばかり見ておった」

    尊「サラッとのろけたなぁ」

    源三郎「尊殿。その、駅、はどの辺りにあるのですか?」

    トヨ「小垣城の近くなんでしょうか」

    尊「なら、地図で説明しますね。お父さん、タブレット貸して」

    覚「ん」

    画面に地図を表示させた。若君と源トヨが尊の周りを囲む。

    尊「ここが黒羽城公園。すぐ近くに黒羽駅。小垣城跡はここから北東の位置にあり、今でも小高い山の上にあります」

    若「山城じゃからのう」

    尊「城下町は、当時も山の下にあったんじゃないですか?いや、違う。戻れば今でも山の下にありませんか?」

    若「民は、そうじゃな。城の南に」

    この辺り、と地図を指差す若君。

    尊「ですね。だから鉄道はその平地の部分を走っています。お城からは少し距離があるけど、駅名は小垣。ちなみに僕の通学経路ですが、黒羽駅から小垣駅を経由して行ってます」

    美「電車一本で通学できるから、楽は楽よね」

    尊「うん」

    美「あ、そうそう、先に言っとく。尊はお風呂、明日の朝入んなさい」

    尊「え!そこまで徹底?!」

    美「全ては君の為。なんなら、今夜入って朝も入る?」

    尊「いや、朝だけにします…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    3日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days83~3日金曜11時、ムクムクと

    炒めると、粉の中のグルテンの働きが弱まり、膨らみやすくなるらしいです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家キッチン。覚がメモを取り出す。横で、若君が控えている。

    覚「忠清くん、金曜だ」

    若君「はい」

    覚「今回は、昼ごはんで頑張って貰おうと思ってる」

    若「心得ました。今日は昼も家族揃うておりますゆえ。されど」

    覚「何?」

    若「もう午の初刻ですが」

    覚「間に合うかって事?大丈夫だよ」

    フライパンを出した。

    覚「手始めに、小麦粉を炒めるよ。フライパンの中に、そのボウルの粉を3分の1位入れて。大体でいいよ」

    若「まだ火が点いておりませんが、良いのですか」

    覚「いい質問だね。点けてから入れると、粉がはねるかもしれないからさ」

    若「ほぅ。考えておられる」

    小麦粉をから炒りしていると、すぐにいい香りがし始めた。

    覚「あ、そんなモンでいいよ。火を止めて、このバットに広げるように入れて」

    若「はい。これを、あと二度するのですね」

    覚「お見込みの通り」

    全部炒め終わった。

    覚「ちょっとこのまま冷ましておく」

    若「はい」

    覚「ほほっ、何してんだろって顔してるな」

    若「見当がつきませぬゆえ」

    覚「今日のメニューはね、君はクリスマスイブのデートの時に食べてるよ」

    若「…パンケーキですか?」

    覚「うん。この前来た時も尊と三人で行ってたね。僕はさ、流行り物で気にはなってたけど、食べに行くまでじゃないと思ってて」

    若「はい」

    覚「でも、君達が戻ってってすぐ、テレビで作り方やってたんだよ。これはと思ったんで、再放送したのを録画しといて、あれからたまに家で作ってるんだ」

    若「そうでしたか」

    覚「帰って来てくれたんで、よし作ってあげようか、でもどうせなら金曜がいいか、と思ってたら、ちょうどイブに唯と行けたって聞いて」

    若「出鼻を挫いたようで済みませぬ」

    覚「いやいや、謝らなくていい。それはそれ、これはこれ。で、行ってすぐもなんだったから今日にしたんだ。おせちや雑煮に飽きる頃だしな」

    若「源三郎もトヨも喜ぶと思います」

    覚「なんてったって、家で作れば甘さの調節ができる」

    若「それは良…あ、いや」

    覚「まあ、無理せずにな。じゃあ続きをしようか。その粉、ふるいにかけて。二回ね」

    若君が作業する中、覚は食卓にメープルシロップや生クリーム、フルーツなどを運び出した。唯や美香子、源トヨは覚に促され既に着席している。

    唯「え?なに、おやつ?」

    美香子「いよいよパンケーキね」

    トヨ「パンケーキ」

    源三郎「あの、噂に聞く」

    唯「へー!意外なメニュー。でもさ、家で作るとお店みたいにふわっとならなくて、いつもぺしゃんこじゃない」

    美「そうでもないのよ。さて、そろそろ尊呼んでくるわ」

    源「ならばわたくしが」

    源三郎がサッと席を立ち、二階へ上がっていった。

    美「さすが近習のプロ」

    材料が混ぜ合わせられ、いよいよ調理スタート。

    美「人数が多いから、フライパン二つ使って焼いてくのね」

    ト「お手伝いしなくて良いのでしょうか」

    美「なら、焼けたら運んであげて。フライパン一つに一枚ずつしか焼けないから、できた物から片っ端に」

    尊が呼ばれて下りてきた。

    尊「甘い匂いがする。そっか、例のブツをいよいよ今日やるんだ」

    美「ちゃんと勉強してた?」

    尊「してたよ。遊んでばかりでもいけないし」

    唯「瑠奈ちゃんと、ラブラブで電話してたとかじゃないのぅ?」

    尊「してない」

    唯「え~?」

    尊「明日の打ち合わせは夕方にするから」

    唯「あっそ。ヒューヒュー!」

    尊「うるさいよ」

    キッチンでは、若君が頻りに感心していた。

    若「おぉ…立ち上がっておる」

    ふわりと、少し高さのある仕上がりになっている。

    覚「いいねぇ。はい、まず二人分出来た」

    ト「お運びいたします」

    覚「おっ、さすが女中のプロ。ではよろしく」

    二皿運んできたトヨ。一皿目はスッと美香子の前に置いたのだが、二皿目をどこに置こうか迷っている。

    唯「トヨ、私たーくんと同じタイミングで食べたいから、まだいい」

    ト「そうですか。わかりました」

    美「私も後でいいのよ」

    ト「いえ、それは譲れません。では尊様」

    尊「僕も後でいいですよ。源三郎さんからどうぞ」

    源「いえ、滅相もない」

    美「早くしないと冷めてく一方だから、尊、先にいただいちゃいなさい」

    尊「そう?」

    美「源三郎くんとトヨちゃんを同時にすれば、ほら」

    尊「あ、あれも同時にやれるね。わかった」

    ト「何ができるのですか?」

    唯「あーんしてぇ、でしょ」

    源「え!」

    唯「なによいまさら」

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    パンケーキの作り方の出典ですが、2019年8月21日放送の「ガッテン!」です。まるでこのお話を見据えたのかのように?家に録画が残っておりました。

    https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20190821/index.html

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    続きます。

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    四人の現代Days82~2日9時、匂わせません

    サッカー観戦も、不良にビンタした時もそれだったからね。
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    結局、朝稽古後源トヨと四人で、近くの氏神様にやって来た。

    唯「…という夢だったの!」

    源三郎「正月から縁起が良いですね」

    唯「どうする?一番上の子が女の子だとさぁ、かわいくて嫁に出さんとか言わない?」

    源「それは…」

    唯「たーくんは、そう言ってた」

    若君「まあ、それはの」

    トヨ「唯様、実は」

    唯「なに?」

    ト「源ちゃんと、二人で決めたんです。昨日」

    若「決めた?」

    唯「なにを?」

    源「もし、子宝に恵まれたら、男子ならば忠清様そして御子様の近習となるべく、幼少より鍛えます」

    若「それは頼もしい」

    源「もしおなごが産まれたら、唯様と御子様にお仕えできるよう、女中の心得を叩き込みます」

    唯「え、親子でお世話してくれるの?お姫様なのに」

    ト「いいんです。ね、源ちゃん」

    源「どのような形であれ、我々は忠清様唯様にお仕えさせていただくのが喜びでございます」

    若「無理強いはしとうないが」

    源「心から思うておりますゆえ」

    若「そうか」

    唯「嬉しいな」

    ト「その、夢でございますが、音が聞こえなかったのは幸いです」

    唯「え、なんで?」

    ト「子の名など呼んでおるかもしれません。今それを知ってしまったら、名付けの楽しみがなくなりそうで」

    唯「なるほどねー」

    そのまま、唯がトヨにぐっと近づいた。

    唯「子供、産まれるから。夢じゃないよ、絶対」

    ト「はい。ありがとうございます」

    帰宅すると、食卓に尊が一人座っていた。

    尊「お帰りなさい。下りてきたら誰も居なくてびっくりした」

    唯「あんたも神社行ってきたら?」

    尊「後で散歩がてら行ってこようかな」

    美香子「散歩もいいけど、尊はね、朝ごはんの後やってもらう事があるわよ」

    尊「え、何」

    そして、朝ごはんが済んだ。覚がコーヒーを淹れている。

    美「あさってはデート」

    尊「うん。まだ2日後だけど」

    美「何着てくかはまた考えてあげるけど、その前に」

    尊「何」

    美「鞄、どうせいつもの肩掛けのでしょ」

    尊「それはそうだけど」

    美「洗います。中身出して持ってらっしゃい」

    尊「はあ?」

    美「通学以外はどこ行くのもそれじゃない。清潔感が大事!」

    尊「そんなに汚いかな」

    美「つべこべ言わない。洗濯は洗濯機がやるんだから。あと、履いてくスニーカーは、お茶タイムと散歩が済んだら自分で洗う事」

    尊「ええっ、そこまで…」

    美「明日洗って乾かないと大変だから、今日の内にやっておくの。これも瑠奈ちゃんの為。はい、鞄取ってらっしゃい!」

    尊「えー」

    渋々二階に上がっていった尊。

    美「あ、忠清くん源三郎くん、清潔感云々は、あくまでも現代の話ね」

    若「そうですか」

    源「…」

    若「源三郎、いかがした」

    源三郎の囁き「薄々思うていたのですが、ここに参った際、体が相当臭っていたのではないかと」

    若君の囁き「それは、わしも思うた。初めて参った折にの。後になり気づいた」

    源 囁き「随分と無礼を働いたのでは」

    若 囁き「致し方ないとはいえ、不快にさせておったのは忍びない」

    唯「たーくん、源三郎、なんかゴソゴソ言ってるけどさ。それはしょうがないんだよ。永禄って、いろいろクサいから」

    覚「はい、コーヒーお待たせ。そういえば唯が初めて永禄に飛んで帰って来た時も、相当臭かったぞ」

    唯「そういえばなんか言ってたな」

    美「ごめんなさいね、あなた達を悪く言ってるつもりはないの。今と昔では価値観が大分違うし。尊のデートが成功して欲しいって思ってるだけなのよ」

    源「そうでございますか」

    若「親心ゆえ、と」

    尊が、くたくたの鞄を持って下りてきた。

    尊「はい、鞄。やっぱ洗った方が…いいかも」

    美「でしょう。はい貸して、洗濯機回してくる。コーヒー飲んでていいわよ」

    ト「何かお手伝いする事はありますか?」

    尊「いえ、大丈夫ですよ」

    覚「デートが上手くいきますように、って祈っててやってくれな」

    ト「祈る」

    トヨが考え込んでいる。

    尊「どうしたんですか?」

    ト「でしたら、氏神様にお百度参りをいたしましょうか」

    尊「えっ!いや、それは…お願いだから止めてください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    2日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days81~2日木曜5時、幸せな初夢

    今後も続々、の予定だから、きっとすぐ回復してる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯は、夢を見ていた。

    唯 心の声(ん?)

    自分の姿を俯瞰で眺めているような形になっているが、音は聞こえていない。

    唯 心(マナーモード?ま、いいや。ここ、永禄だ)

    夢の中の唯は、自室で布団に横になっている。

    唯 心(なんだろ。なんかグターっとしてる。私また、風邪でも引いちゃったのかな)

    すると、襖が開いた。女性が座して一礼し、もう一人、幼い女の子が真似をしてちょこんと座り、お辞儀をして入ってきた。

    唯 心(トヨだ。あれ、なんか様子が違うコトない?…あっ!)

    トヨのお腹が大きい。

    唯 心(わぁ、お腹に赤ちゃん?!でもって、この女の子、娘ちゃん?なんとなく源三郎に似てる!良かったぁ。トヨ、歳を気にして子供産めるかって心配してたけど、全然OKって話だよね!)

    あい変わらず話し声は聞こえないが、トヨが横になったままの唯に、色々話しかけているようだ。

    唯 心(具合が悪いから、様子を見に来てくれたのかな)

    また、襖が開いた。

    唯 心(あ、たーくん。いやん、なんか、カッコ良さバージョンアップしてない?!)

    若君は、トヨ達に語りかけた後、唯の傍らに座り、髪を撫でながら話しかけている。

    唯 心(そっちの私、いーなー)

    すると、反対側の襖が開いた。侍女らしき女性が何人か居る。

    唯 心(真ん中の人だけ見た事ないな。それにしても、なんか騒がしくない?)

    若君もトヨも、歓喜している。その、真ん中の人物が大事そうに何かを抱えていたが、唯の隣にそっと寝かせた。

    唯 心(えっ)

    産まれたばかりと思われる赤ちゃんだ。

    唯 心(キャー!私の子供?産んだの?!やったー!そっか、さっきの知らない人は産婆さんだったんだな、きっと。わぁ、こんなにちっちゃいんだ…男の子かな、女の子かな、ちょっとわかんないけど、どっちでも超嬉しい!!良かったぁ~)

    すると、トヨが何かに気づいた様子で、後ろの襖を開けた。

    唯 心(ん?トヨの知ってる子たちかな。兄弟?)

    幼いながらも凛々しい顔立ちの男の子が二人、そぉっと中を覗いている。はじめは入るのをためらっていたが、若君に促され、唯に向かって駆け寄ってきた。

    唯 心(へ?ちょっと待って、えーとどっちの子もたーくんを小さくしたような美男子。なんとなく私にも似てるような?)

    唯の布団の周りを大小三人のイケメンが固め、トヨと娘が少し下がって見ている構図。

    唯 心(え、この赤ちゃん…何人目?!)

    ここで、目が覚めた。

    唯「…」

    若君「今朝は早いの」

    自分の部屋の布団で、若君の腕の中に居る。

    唯「なんか暗い…朝になってる?」

    若「朝じゃ。そろそろ稽古にと思うたら、唯がごそごそ動き出した」

    唯「そっか。夢見てたの。ううん、きっとね、夢じゃないの!」

    若「いかがした?」

    唯は今見た夢の説明をした。

    若「そうか」

    フッ、と微笑む若君。

    唯「これから起こる未来というか。時代としては過去だけど、現実だよね?そう思わない?」

    若「そうじゃな」

    唯「嬉しい、もっと見ていたかったな」

    若「うむ…」

    唯「どしたの?あんまり喜んでないよね」

    若「唯が、自室で横になっていたのが気にかかり」

    唯「え?そこで産んだからじゃないの?」

    若「いや。子を身籠ったとわかると、産殿を建て、そちらで産むべく手筈を整えるのじゃ。唯の自室ではない」

    唯「え、産むためだけにわざわざ?!初めて聞いた」

    若「産んだ後具合が悪うなり、子より先に下がったのではないかと」

    唯「そうなんだ。確かにかなりグターっとしてて、起き上がってなかった」

    若「男子二人の後の子の産まれる折には構えておれ、との、天からの知らせやもしれぬの」

    唯「そっか」

    若「唯の体が何より大事ゆえ」

    唯「嬉しいっ」

    若「フフ。では、わしはそろそろ」

    唯「私も起きるー」

    若「珍しい」

    唯「なによ、たまにはいいでしょ。気分がとってもいいからさぁ」

    若「ならば、稽古ではなく、共に近くの神社に詣でるのはいかがじゃ?」

    唯「あ。行く行く!でも朝稽古終わってからでいいよ。たーくんのカッコいい姿見たい」

    若「ハハ」

    唯「ねぇ、この夢の話、トヨや源三郎にもしゃべりたいけど、どう思う?」

    若「良かろう」

    唯「喜んでくれるよね!」

    若「あぁ。喜び、安堵する姿が目に浮かぶ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days80~1日13時、密談です

    人前式ですね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家の食卓。おせち料理をいただきながらの、小宴会が終わろうとしている。

    美香子「お父さんはいつもの事だけど、二人は珍しいわね」

    覚が食卓の席で酔っぱらって寝ているのだが、若君と源三郎も、気持ち良さそうにスヤスヤと寝ている。

    唯「お母さんもトヨも、そんなにお酒飲んでないの?」

    美「そんな事ないわよ。ねぇ、トヨちゃん」

    トヨ「はい。充分いただきました」

    尊「察するところ」

    唯「なに」

    尊「お酒の強さでいうとさ、お母さんとトヨさんが同率一位で、次が兄さんと源三郎さん、断トツ最下位がお父さんなんじゃない?」

    唯「それはなんとなくわかる。たーくんと源三郎は、今日なんでつぶれてるんだろ」

    尊「睡眠時間が短かったでしょ。だっていつも通り朝稽古してたんだよね?」

    美「源三郎くんはもっと早かったわよ。私達がビデオ用意してたら下りてきてね、気分はどう?って聞いたら、あまり眠れなかったって言ってた」

    ト「そうだったんですか」

    尊「トヨさんは?」

    ト「なんかお恥ずかしいのですが、私はぐっすりと眠れたんです」

    美「安心したからよね。恥ずかしくなんかないわよ」

    ト「はい。ありがとうございます」

    尊「よく眠れたトヨさんと、眠れなかった源三郎さんか」

    美「だから、いいペアなんじゃない?」

    唯「うん。そうだね」

    ト「そうですか?嬉しい」

    美「じゃ、昼ごはん終了。男性三人はさすがに運べないから、このままそっとしときましょ。起こさないように片付けるわよ」

    唯と尊が、少し残ったおせちを一つにまとめている。食器を洗い始めた美香子。隣で手伝うトヨ。

    美「トヨちゃん。これは私の提案なんだけどね」

    ト「はい。どのような」

    美「お布団、源三郎くんの部屋に移さない?」

    ト「えっ、それは」

    美「嫌?まだ早い?」

    ト「お母さん方の隣のお部屋をお借りして休ませていただいておりますが、空けよと仰るのでしたら…」

    美「邪険にしてるんじゃないのよ。私達は全然構わないんだけどね、結婚しても、源三郎くんはお仕事で夜居ない時が多いんでしょ?」

    ト「はい。城の警固がありますので」

    美「あまり考えたくはないけど、戦になれば一緒も無理じゃない。ここで安全に夜を過ごせる内に、どうかなと思ったの」

    ト「お気持ちは大変ありがたいのですが、祝言もあげておりませんのに…」

    美「そっか。ごめんね、無茶言って」

    唯&尊「…」

    美香子の洗い物が終わった。トヨは食器を一つ一つ拭いている。

    美「ふぁあ。さすがに私も眠たくなってきたわ。一眠りしちゃおうかしら」

    ここで、唯が動いた。

    唯「お母さん、ちょっと」

    美「え、何?」

    母の背中を押して、ずんずんと廊下の方に連れていっている。

    唯「尊」

    尊「うん」

    察知した尊もついてきた。玄関近くまで来た三人。

    唯「トヨはついて来てないよね?」

    尊「うん、大丈夫」

    美「なぁに、鼎談?」

    唯「かなえだん、ってなに」

    尊「三人で話し合うって意味」

    唯「あー、うん、そう」

    コソコソ話し始めた三人。

    唯「お母さん、さっきの話、すごくいいと思った」

    尊「僕も」

    美「ちょっと言い方良くなかったかな。婚前交渉を勧めたみたいに聞こえたのよね、きっと」

    唯「婚前、交渉…」

    尊「お母さん、続けて」

    美「実は、今回お着物が四人分じゃない。唯の打掛もあるし、忠清くんや源三郎くんの袴もあるし。直前まで畳んでおくよりは、ちょっと広げておきたいってのはあるのよね。大した理由じゃないけどね」

    唯「それ、大した理由だよ」

    尊「でもそれを伝えると、嫌なのに無理強い、みたいになるよね」

    美「祝言がまだってのはその通りだし」

    唯「だったらさ、ここで結婚式しちゃえばいいんじゃない?」

    美「正式な祝言は戻ってからするとして?」

    尊「それ賛成。だってさ、今なら僕もお父さんもお母さんも、何だったらエリさんや芳江さんも参列できるじゃない」

    美「それもそうよね。いいアイデアだわ」

    唯「家でみんなでお祝い、いいと思う」

    美「そうね。でもちょっと時間ちょうだい。エリさんや芳江さんのご都合を聞きたいけど、さすがに三が日に連絡するのは避けたいから」

    尊「そうだね。もしOKしてもらえるのなら、お二人の都合を優先すればいいんじゃないかな」

    美「わかった。唯は忠清くんに話しておいて。私はお父さんに言っておく」

    唯「了解~」

    尊「楽しみが一つ増えそうだね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days79~1日10時、天にも昇る心地

    四人と言いつつ、四人が誰も出ない回も多々あります。あしからず。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは、瑠奈の家。大きいクッションに顔を埋め、スマホを握ったままリビングのソファーに寝転がる瑠奈。

    瑠奈の母「ちょっと瑠奈~。ようやく起きてきたと思ったらまた寝て。場所取らないでちょうだい、邪魔!」

    瑠奈「うぅぅ」

    瑠母「もう、何なの」

    瑠「自爆した」

    瑠母「えぇ?」

    瑠「もっと、いい感じにお近づきになりたかったのに~」

    瑠母「ははーん。さては、男の子がらみね。あなたはともかく、周りの同級生の子達は今大変な時期でしょうに。呑気よね」

    瑠「うっとーしい女、って尊にガン無視されるんだ」

    瑠母「その子、尊くんって名前なのね。クラスの子?」

    瑠「うん」

    瑠母「そう。卒業間近に盛り上がるってパターンかしら。その子も推薦入学?」

    瑠「ううん、尊はセンター試験受ける」

    瑠母「え!この時期に、そんな子の勉強の邪魔しちゃダメじゃない!」

    瑠「でも、初詣行ってたもん。しかもみつきと会ってる」

    瑠母「みつきちゃん?あら、彼女って彼氏くん居なかったっけ」

    瑠「居るよ。でも仲良さそうだったもん!」

    瑠母「よくわからないわね。一体何がどうだったの?」

    みつきと尊の動画を見せた。

    瑠母「楽しそうね」

    瑠「信じらんない、だってみつきさ、私が尊の事気になってるって知ってるのに」

    瑠母「偶然会ったんでしょう」

    瑠「わかんないよ?みつきズルい!」

    瑠母「そんな勝手に悪者にして。みつきちゃんには聞いたの?」

    瑠「さっきLINEした」

    瑠母「恨み節を並べたりしてないわよね?」

    瑠「…」

    瑠母「もう、呆れた子ね。それで、尊くんには何て伝えたの」

    尊に送った内容を見せた。

    瑠母「…」

    瑠「勢いで送っちゃった。既読になったけどまだ返事来ない。ふぇーん」

    瑠母「溜め息しか出ないわね。こんなにくどくどと畳み掛けちゃ、進むものも進まないわ。確か去年付き合ってた子、余計な事言い過ぎて嫌われて別れちゃったでしょ」

    瑠「言わないでっ」

    瑠母「その前の子は…」

    瑠「もういい」

    瑠母「瑠奈って、そこそこ頭のイイ子に育ってくれたけれど、何というか」

    瑠「なんですかっ」

    瑠母「恋愛偏差値は、ずっと低いままよね」

    瑠「うわーん」

    スマホに、LINEの通知あり。

    瑠「…みつきだ」

    瑠母「そう。みつきちゃんは懐が深いから、怒ったりしてないとは思うけど。何て?」

    瑠「私は彼とラブラブなんだから、妬いてる時間なんてムダ」

    瑠母「みつきちゃんいいわ~。清々しい」

    瑠「センセはね、マジで神だから!絶対逃しちゃだめだよ!…だって」

    瑠母「手遅れかもね」

    瑠「うわーん!」

    ここで、スマホがポロンと鳴った。

    瑠「あっ!尊から返事来た!でも見るの怖い」

    瑠母「良かったじゃない。返事くれただけでも。既読スルーもできるのに、誠実で」

    瑠「うん…」

    尊の返信を見た瑠奈。

    瑠「キャー!」

    瑠母「彼、なんて?」

    瑠「どうしよ!お母さん、これ見て!」

    瑠母「あらー、余裕な対応。確認するけど、同い年よね?」

    瑠「たぶん」

    瑠母「たぶん、って…」

    瑠「すっごく大人だし、後光が差しててもうキラッキラ。ホームルームにね、地元の歴史しゃべってた時なんて、もうたまらなかった」

    瑠母「ときめきポイントはまた後で聞くから、早く返事しなさい。どう出るつもり?」

    瑠「声聞きたい!電話してもいいかなぁ。まずはかけていいか聞こっと」

    瑠母「落ち着いて話さなきゃだめよ」

    瑠「かけていいって!お母さん、静かにしててね」

    瑠母「ここでかけるの?!何と言うか、いつもオープンな」

    瑠「また暴走したら、止めて欲しいから」

    瑠母「そうなの。恋は徐行運転の方が良くないかしら。瑠奈に限っては」

    瑠奈がシーッ!とジェスチャーした。見守る母。

    瑠「あ!あの、明けましておめでとう…しゃべってても大丈夫?…そうなんだ。私も家のリビングに居るの。帰り遅かったでしょ、眠くないの?」

    瑠母「まぁ、通常運転かな」

    瑠「あのぅ…さっきの返事、本気にしてもいいのかな」

    瑠母「リップサービスだけならかなりのやり手だけど」

    瑠「ホント?ホントに?!キャー!ねぇ、じゃあ学問の神様にお詣りしようよ、いつ?いつが都合いい?」

    瑠母「順調ね。彼が合わせてくれてるのね」

    瑠「瑠奈さんじゃなくて、瑠奈、って呼んで欲しいな…私も尊って呼ぶから」

    瑠母「え、勝手に名前で呼んでたの?」

    瑠「はは…そうだよね。ごめんなさい。動画観てショックで、気持ちが高ぶり過ぎちゃってつい。心の中でずっと名前で呼んでたから」

    瑠母「とっくに暴走してたのね。…あ、瑠奈、ちょっと待って!2日3日は、ほら」

    瑠「あ!ごめんね、明日明後日でお兄ちゃんが家族連れて帰省するの忘れてたの。4日5日とかでどうかな…うん、うん待ってる…4日、4日ね!キャー!!嬉しい!ありがとう!うん、私もいろいろ調べとくね。バイバーイ!…ふぅ」

    瑠母「良かったわね」

    瑠「嬉し過ぎる、デートしてくれるなんて」

    瑠母「優しい彼ね」

    瑠「うん…どうしよう、ドキドキが止まらないよぉ」

    瑠母「あらら、泣いちゃって」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は速川家に戻ります。

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    四人の現代Days78~1日11時、一歩進む

    あっさりと決まるもんだな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ビデオを観終わった両親と、若君、源トヨが、食卓でミカンを食べている。

    美香子「ん、甘ーい」

    若君「実に美味そうに召し上がる」

    覚「母さんは、ミカンさえあれば上機嫌だからな」

    階段から足音が。

    美「あ、尊、起きたのね。ミカン食べる?」

    スマホを耳に当てながら、ちょっと待ってと片手を前に出し、カレンダーの前に向かった尊。

    覚「電話中か。え?電話?!」

    美「こんな元日から、誰と?」

    尊「4日はね、うん、何もないけど聞いてみるね」

    スマホを少し外して、両親に話しかける尊。

    尊「4日って、何も予定なかったよね?」

    覚「ないな」

    美「翌日は写真館だけど」

    尊「了解。もしもし、うん、4日なら大丈夫だよ。うん、あはは、そんなに喜んでくれて嬉しいよ。じゃあ、近付いたらまた連絡するね。うん。じゃあね」

    電話を切った。

    美「誰かと約束したの?」

    尊「うん。瑠奈と出かける」

    覚「へ?誰?」

    尊「クラスの女子」

    覚「へ?女の子と、デート?」

    尊「デート。あ、そっか、そうなるんだ」

    美「はあ?!」

    美香子が、手に持っていたミカンを落とした。コロコロ転がり、床に落ちたのを慌てて源三郎が拾う。

    源三郎「お母さん」

    美「あ、ありがとね源三郎くん。ちょっと何が起こったのか理解できなくて」

    トヨが、お茶を出す。

    トヨ「尊様、どうぞ」

    尊「ありがとうございます」

    若「わしが見込んだ通りになっておるの」

    尊「そうですね。兄さんに、一歩踏み出せって言われたんで、従ってみました」

    若「そうか」

    美「で、クリスマスにばったり会ったお嬢さんなのね」

    尊「うん。詳しくは、お姉ちゃんが起きてきたら話すよ。今ここで説明しても、一からまた言わなきゃならないだろうから」

    若「ならばわしが起こして参る。もう昼も近いゆえ」

    唯の部屋。

    若「唯。そろそろ昼じゃ。腹も空いておろう?」

    唯「ん…まだ眠いぃ」

    若「今は食い気より眠気か」

    唯「んー」

    若「早う起きぬと、瑠奈殿の話が聞けぬぞ」

    唯「るな…ん?なにっ!」

    若「痛っ!」

    急に飛び起きた唯の額が、覗き込んでいた若君の額と激突。

    唯「痛ぁい。たーくん、ごめぇん」

    若「いや、わしこそ済まなんだ」

    唯「それよりなに!新展開なの?!」

    若「近々、連れ立って遠乗りへ参るとの話じゃ」

    唯「うっそー!起きる起きる!あ、一気にお腹空いてきた」

    若「ハハッ」

    ようやく食卓に全員揃った。覚がおせち料理のお重を並べている中、尊が顛末を説明する。

    尊「まぁ、そんなところです」

    唯「ねぇねぇ、るなちゃんのコト、実は好きなんじゃないのぅ?」

    尊「嫌ではない。話しやすいし」

    唯「またまたー」

    尊「僕に興味を持ってくれている、という事柄に興味はあるけど」

    唯「なにそれ。わかりにくっ」

    尊「お姉ちゃんはわからなくてもいい」

    唯「なんだとー。るなちゃん、こんなヤツのドコがいいんだろ」

    若「これ、唯」

    尊「いいんですよ、兄さん。僕もそれが知りたいと思ってます。彼女に何が響いたのか」

    覚「惹かれ合うモノがあるんだろ。名は体を表すしな。ちょっと違うか?」

    美「名前が瑠奈ちゃんだもんねぇ」

    唯「名前?なんか関係あるの?」

    美「確か、月の女神よね」

    尊「そう。LUNAは、ローマ神話に出てくる月の女神だよ。ラテン語」

    唯「そうなの?!知らなかったぁ」

    ト「月に慕われる。尊様ならではと申しますか」

    源「それは必定ではございませぬか」

    若「出逢うべくして出逢うたようじゃの」

    尊「去年の4月からクラスは一緒ですけどね。何がどう転んだかわかりません」

    覚「そうかそうか。じゃあ、そろそろ昼飯にするか。尊の初デートを祝して」

    覚が、熱燗をいそいそと運んできた。

    美「どっちにしろ、飲むつもりだったんでしょ」

    覚「おせちって、いい塩梅にツマミになるしな。え、みんな飲まない?」

    若「いただきます」

    源「頂戴いたします」

    ト「わたくしもいただきます。唯様、尊様。よろしければ、雑煮をお作りしますが」

    唯「食べるー!」

    尊「僕も欲しいです。なんか急に、お腹空いてきました」

    ト「ふふっ。畏まりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回ですが、少し時間を戻して、瑠奈はこの時どうしていたか?をお送りします。

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    四人の現代Days77~1日10時30分、誘惑わくわく

    寝ぼけて生返事、ではないと思う。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは尊の部屋。ようやく目覚めた尊が、パジャマのままベッドでゴロゴロしている。

    尊 心の声(あーやっぱり。ずっとブルブルしてたんだな)

    スマホを手にした。案の定、LINEをいくつか受信している。

    尊 心(グループの方は、新年の挨拶とかだな。あ、ミッキーさんから来てる)

    みつきの投稿『センセが神過ぎて瑠奈には勿体ないかもしれない。けど!瑠奈をなにとぞ、なにとぞよろしく~』

    尊 心(選挙の街宣?本人に頼まれてる訳じゃないよなぁ。きっとミッキーさんが、情に厚いヒトなんだろうな)

    グループLINEは、まだ寝ている者も多いようで、そこまで活発に投稿はされていない。

    尊 心(さて…)

    瑠奈からも届いているのだが、

    尊 心(怖っ、なんか大量に来てるんだけど)

    恐る恐る、中を開いてみると…

    尊「うわ、これか!メンドくせぇって」

    瑠奈の投稿『初詣に行ってたんだ』

    瑠 投稿『みつきだけズルい』

    瑠 投稿『私も神社に行けば良かった!そしたら尊に会えて超ハッピーだったのに』

    瑠 投稿『あんなに楽しそうな動画』

    瑠 投稿『私も撮りたかった(T_T。。)』

    瑠 投稿『あー尊と初詣いいなぁ』

    瑠 投稿『やっぱりみつきみたいにリーダーシップ発揮できる子の方がいいのかな遠慮してちゃダメかな』

    尊「速川って呼ばれてなかったっけ?いつの間にか名前に変わってるし」

    じっとスマホの画面を見つめる。

    尊 心(僕はからかわれてるのか?うーん。ちょっと…違いそうだな)

    さらに画面を見つめる。

    尊「わー!ダメだ、どう考えても、好意を持たれてるとしか読み取れない」

    尊 心(どうしよう)

    尊「恋愛マスターに聞くべきか。いや」

    尊 心(僕は、どうしたい?)

    尊「…」

    尊 心(ちょっと鬱陶しい感じもあるけど、そこまで…嫌じゃない)

    尊「…」

    尊 心(彼女がなぜ、僕にこんなに興味を持ってくれてるのか、という点はすごく気になる。知りたいと思う)

    尊「兄さんも、一歩踏み出す勇気は必要、って言ってたしな」

    尊 心(よし。思い切って行ってみるか)

    返事を書き始めた。

    尊 心(ちょっと、惑わす感じ?なんか、なんか楽しいぞ)

    完成。

    尊の投稿『そんなに言うのなら、どこかに連れてってください』

    尊 心(攻め過ぎかな。いいや、なるようになれ!)

    送信。

    尊「ふう。着替えよ」

    着替えて、またベッドに腰掛けた。

    尊 心(今年はどんな一年になるのやら)

    すると、返信あり。

    尊「さぁどう出た。ん?」

    瑠 投稿『今って電話してもいいかな』

    尊「あ、そういう事ね。いいよ、と」

    電話がかかってきた。

    尊「もしもし」

    瑠奈の電話『あ!あの、明けまして、おめでとう』

    尊「明けましておめでとうございます」

    瑠 電話『しゃべってても大丈夫?』

    尊「大丈夫です。自分の部屋に居るし」

    瑠 電話『そうなんだ。私も家のリビングに居るの。帰り、遅かったでしょ、眠くないの?』

    尊 心(なんとなく、家族が近くに居るっぽいけどいいのかな)

    尊「帰ってきたのは3時回ってたけど、一眠りしたから平気だよ」

    瑠 電話『あのぅ』

    尊「はい」

    瑠 電話『さっきの返事、本気にしてもいいのかな』

    尊「いいですよ」

    尊 心(なぜだろう、すんなりOKしてしまう自分にびっくり)

    瑠 電話『ホント?ホントに?!キャー!ねぇ、じゃあ学問の神様にお詣りしようよ』

    尊「ははは。いいですね」

    瑠 電話『いつ?いつが都合いい?』

    尊「瑠奈さんの都合のいい時で」

    瑠 電話『瑠奈さんじゃなくて…瑠奈、って呼んで欲しいな』

    尊「え?あ、そうなんだ」

    瑠 電話『私も尊って呼ぶから』

    尊「もう呼ばれてたけど」

    瑠 電話『はは…そうだよね。ごめんなさい。動画観てショックで、気持ちが高ぶり過ぎちゃってつい。心の中でずっと名前で呼んでたから』

    尊 心(ずっと。心の中で。えー!自分の事とはいえ、何でそんなに?もしかして僕、モテてる?!)

    少しぽーっとしていると、電話の向こうで話し声が聞こえた。

    瑠 電話『ごめんね。明日明後日でお兄ちゃんが家族連れて帰省するの忘れてたの。4日5日とかでどうかな』

    尊「なるほど。5日は僕も家族で出かけるから、4日ならいいかも。ちょっと親に予定確かめてくるから、待っててくれる?」

    急いで部屋を出て、階段を駆け下りていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days76~1日7時、引き継ぎます

    ぷくぷくさん、始まりましたね。どんどん被せてください(^o^)
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    源トヨの案件が無事解決したからか、今日の若君はよく笑う。
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    遅く帰宅したにも関わらず、今朝も普段通りにリビングに下りてきた若君。

    若君「なんと。ここまで遅れをとっておったとは」

    キッチンにトヨが一人。庭では、既に源三郎が額に汗しながら朝稽古をしている。そして、

    覚「おはよう」

    美香子「おはよう、忠清くん」

    若「お早うございます。テレビ、ですか」

    ソファーに両親が並んで座っている。

    覚「テレビじゃないんだ。番組を録画しておいたのを、今観てる」

    美「なんでこんな時間からって思うわよね。実はゆうべ放送された歌番組でね、全部で四時間以上あるし、何よりすぐに観たかったの」

    若「四時間は…二刻。それは長い」

    画面には、紅白歌合戦。

    美「それでね、嬉しいことに、今朝はトヨちゃんがお雑煮作ってくれるって」

    若「ほぅ」

    覚「ありがたくお言葉に甘えさせてもらって、観てるんだよ」

    若「そうですか。では、番組、を存分に楽しんでくだされ」

    その場を離れた若君は、キッチンへ。

    トヨ「おはようございます。忠清様」

    若「お早うトヨ。昨夜はよう眠れたか?」

    ト「はい!」

    若「わしも支度を手伝おう」

    ト「痛み入ります。ですが、あとは餅を煮るのみでございますので」

    若「そうか。源三郎はずっと外に?」

    ト「わたくしが下りて参りましたら、既に庭に居りました」

    若「ハハ、それは精が出るのう」

    稽古を終えた若君と源三郎が戻ってくると、ちょうど雑煮が食卓に運ばれてきていた。

    覚「いやぁトヨちゃん、済まなかったね」

    美「まあ、いい香り!」

    ト「ここでお召し上がりになりますか?そのままご覧になれるよう、そちらまでお運びしますのに」

    覚「いいのいいの。こんな美味そうな雑煮、ビデオ観ながらなんて失礼だ」

    ト「青菜しか入っておりませんのに」

    すまし汁に、焼かない角餅とほうれん草のみの、いたってシンプルな雑煮。

    美「ただお願いしただけなのに、今の時代と、作り方や中身が変わらなくてびっくり」

    ト「そうなんですか?」

    覚「うん。雑煮って地域性があるからね。本当に、450年前にこの辺りに住んでいたんだなってわかるよ」

    ト「それは…受け継がれているんですね」

    若「トヨ、ご苦労であった」

    源三郎「おぉ、雑煮」

    美「あ、源三郎くんのだけ、お餅が1個多いの発見!」

    源「え?」

    ト「あっ!いえ、誰よりも早うから稽古に勤しんでいたので、さぞかし腹を空かせているかと、小さい餅をもう一つ…すみません!」

    美「当然よね」

    覚「そうだ。いくらでも差をつけてもらって」

    美「ラブラブはわかる形でいいのよ」

    ト「贔屓したつもりでは…」

    若「ハハハ」

    覚「さ、ではいただこうか」

    全員「いただきます!」

    美「…ん、ん~。かつお節のお出汁がとても効いてて美味しい!」

    若「美味い」

    美「どう?源三郎くん。もうすぐ妻、の手料理は」

    源「はっ、とても美味い、です」

    美「こんな腕利きのトヨちゃんが居なくなると、お城も大変ね、忠清くん」

    若「ハハ、かと言って、いつまでも城を下がれぬのも」

    ト「そのような。わたくしはいつになろうとも構いません」

    美「結婚するのは間違いないものね」

    源「はい」

    美「忠清くん、色々決めてあげてね」

    若「はい。祝言をいつにするかなども、勘案致します。良いな、源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    美「そうよね。唯のお世話係も代わるものね」

    覚「そうか。ひゃー、トヨちゃんの後任は大変だろうな」

    美「父がそれ言うか~」

    若「お母さん、わしもそう思うております」

    美「やっぱり?」

    ト「あの、でしたらそのお役目はずっとわたくしが」

    美「あらま。いいのよ、放っておいて。いかに世話が焼けるかわかるわ。不束な娘でごめんなさいね」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    三重県北勢地域のお雑煮を参考にしました。

    続きます。

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    四人の現代Days75~2020年1月1日水曜2時、月推しです

    ざわざわしちゃう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    動画撮影スタート。

    みつき「あけおめ~!初詣に来てまーす!着物着せてもらったのー、ねっ、良くなーい?速川センセ、どうですか?」

    尊「皆さん明けましておめでとうございます。はい、よく似合ってるんで、彼氏さん喜ぶと思いますよ」

    み「ありがと。今は、夜中の2時でーす。鳥居の前で彼氏と待ち合わせしてたら、いきなりセンセが現れました~。デートですか?」

    尊「家族で来てます」

    み「本当かなー。どこかに彼女隠してない?」

    尊「本当ですよ。神出鬼没で、すいません」

    み「神社だけに?」

    尊「あ、上手いですね」

    み「アハハ~。というワケで、みんな、今年もよろしくね~」

    尊「よろしく~」

    終了。

    み「センセ上手だった!すぐグループLINEに投稿…いや待てよ」

    尊「ん?」

    み「瑠奈にシバかれるかなー。ま、いいや。送信、と」

    尊「なんで瑠奈さんにシバかれるの?」

    み「瑠奈、でいいから。だって瑠奈、センセのコトお気に入りだもん。かなりだよ?その歴史の話の時なんか、目がハートになってた」

    尊「は、はあ?」

    み「嫌?センセ彼女居ないんでしょ?」

    尊「そこまでご存知で」

    み「中学校から一緒だからさ、よく話す。あの子恋愛系やたらとオープンだし」

    尊「はあ」

    み「で、どう?」

    尊「どう、って…男女関係にはとんと無頓着で」

    み「で?」

    尊「食い下がるね」

    み「合うと思うんだよね。センセ、ジェントルマンだし」

    尊「ははは。それ、カラオケの時言われたヤツだね」

    み「うん。その時女子三人居たじゃない。今、彼氏居ないの瑠奈だけなんだよね」

    尊「へぇ」

    み「センセは、瑠奈の歴代の彼氏には居ないタイプ」

    尊「そうですか」

    み「で、今まで長く続いた試しがないから、今度はいい感じだと思った」

    尊「分析してるんだ」

    み「顔もかわいいじゃない」

    尊「そういう、何をどう感じるかは、主観が人それぞれ違うと思うけど」

    み「一般論はいらない」

    尊「強いな」

    み「私は、センセがどう感じてるか聞いてる」

    尊「はい。…うん、かわいらしい、と思います」

    み「でしょ!性格もかわいいんだよ。まあ、難があるとすれば、これが誰とも長続きしなかった原因でもあるけど」

    尊「何でしょう」

    み「恋愛は、一言で言うと、メンドくせぇ奴」

    尊「はあ」

    み「センセは大人だから大丈夫だと思うけど…あ、後ろに」

    尊「え?あ、兄さん」

    若君が近付いて来ていた。両親が合流したようだ。

    尊「ちょっとごめんね」

    み「うん」

    みつきから離れた尊。

    尊「呼びに来てくれたんですか?兄さん。お父さん達、ようやく車停められたんだね」

    若君「尊、あのおなごは、誰ぞを待っておるのか?」

    尊「彼氏…えっと、恋仲の男性を待ってるそうです」

    若「幾らこのように明るく人出があるとはいえ、夜更けにおなご一人にさせてはおけぬ。待ち人が参るまで、しかとおまもりせよ」

    尊「あ、そういう事ですね。実は僕もちょっと心配してました。じゃあ、彼女が無事彼氏と会えるまで。守れるかは自信ないですけど」

    若「おなご一人より弱くはなかろう」

    尊「そうありたいです。じゃ、ここを立ち去る時に、父か母に連絡するって伝えてください」

    若「うむ。では此れにて」

    若君は戻って行った。尊はみつきの元へ。

    み「え、ご家族の皆さん、行っちゃったよ?」

    尊「彼氏さんと会えるまで、一緒に居るね」

    み「え!センセ優しい!やっぱ超優良物件!」

    尊「物件って」

    ふと空を見上げた尊。周りがだいぶ明るいので、星はほとんど見えない。

    尊「何か、僕の周りの女性さ」

    み「うん?」

    尊「月に関係ある名前が多いなって」

    み「うん、瑠奈はまさしくそうだね。月の女神の名前。私は、月関係ないよ?」

    尊「え、そうなの?」

    み「瑠奈の名前の由来は本人に聞いてもらうとして、私のはさー、これ鉄板ネタなんだけど知らなかった?」

    尊「ごめんなさい、知らないです」

    み「では教えてあげよう。ウチね、両親二人とも、ディズニー好きで」

    尊「まさか」

    み「気付いた?子供が生まれたら、男でも女でも、絶対ミッキー、ではなんだから、ミツキって名前にするって決めてたらしい」

    尊「はあ」

    み「で、女の子だったから、ひらがなでみつきにしたと」

    尊「あれ、でもミッキーって男だよ」

    み「センセ、勘がいい、話が早い!そうなのよ。でもさ、ここでミニーとかだったら、ちょっと嫌じゃない?」

    尊「ちょっと暮らしづらいかもね」

    み「だから、みつきで良かったって。で、LINEの名前はミッキーにしてあると」

    尊「なるほど。聞いてみるもんだね」

    み「月、好きなんだ」

    尊「そうだね、気になるというか」

    み「月の女神は?」

    尊「推しますね」

    み「人助けをしてるの。あ、来た」

    遠くから走って来る若い男性が。

    尊「ちょっと離れるね。ちゃんと合流できるまでは見届けるんで」

    み「センセ、神だよ。ありがとう!」

    みつきから少し離れ、様子をさりげなく窺う尊。やがて、手を繋いだ二人が前を通っていった。

    尊「よし、任務完了」

    電話をかけながら、二人を追い抜き走っていった尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    みつきちゃんは、17話no.863に出てくる女子高生1の子です。

    31日付のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days74~31日23時55分、ドキドキ!

    無事に年を越せた先には、また何かが。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨは、ほぼ仁王立ちになって、源三郎を見おろしている。

    トヨ「そなた」

    源三郎「はっ」

    ト「このトヨを娶ろうとお思いか」

    覚&美香子&尊「…」

    源「…はい、左様に思うております」

    ト「ならば、しゃんとせえ!もののふであろう!」

    尊「うわぁ。めっちゃ怒られてる」

    美香子「怒ってるんじゃないわ。勇気を振り絞って、励ましてる」

    覚「震えてるしな」

    尊「え?あっ」

    離れていてもわかる程に、トヨの手は小刻みに震えていた。美香子が涙ぐんでいる。

    美「トヨちゃん…」

    尊「…源三郎さん!頑張って!」

    時計は、間もなく0時。源三郎が立ち上がった。そして、震えるトヨの手を両手で包む。

    源「トヨ、済まない。俺は、まこと意気地無しだ」

    ト「…」

    源「聞いてくれるか」

    ト「はい」

    源「俺は、ぬるま湯に浸かってのほほんとしていたんだ。心の中は決まっていたのに」

    ト「…」

    源「待たせて済まなかった」

    ト「…」

    源「共に、命を全うするまで、傍に居て欲しい。その髪が」

    ト「髪?」

    ジェットコースター三昧でだいぶ取れてしまっているが、今日のトヨの髪は、美香子の手で毛先がふわりと巻かれていた。

    源「その短うなった髪が、元の長さに戻り、背丈を越え、床につく様をそしてその先を、見届けたいんだ。共に白髪となるまで」

    ト「源ちゃん…」

    源「この赤井源三郎の、妻になって欲しい。この通り」

    頭を下げる源三郎。トヨの表情が、ぱぁっと明るくなった。

    ト「はい。喜んでお受け致します」

    ドーン!バラバラバラバラ!!

    尊「明けた…」

    覚「無事、明けたな」

    美「はぁ。良かったわぁ」

    空を埋め尽くす花火。一気に辺りが明るくなる。唯が走って来た。

    唯「あけおめ!トヨ…泣いてる。って事は!」

    後ろからやって来た若君も、軽く頷いている。

    唯「わあ!おめでとう!良かった、ホントに良かった!」

    ト「ありがとう、ございます…」

    源三郎は、放心状態になっていた。覚が背中をポンポンと叩く。

    覚「いやぁ、終わり良ければ全て良し」

    源「はい…」

    覚「じゃあ、年も明けた事だし、今後の抱負を聞こうか。なっ」

    尊「新年早々ムチャ振り?」

    源「…わかりました。畏れながら申し上げます。必ずや、必ずやトヨを幸せにいたします」

    ト「…」

    源「この、大輪の花火に誓って」

    全員で空を見上げる。まだまだ咲き誇り続けている花火。

    若君「うむ」

    唯「それ、絶対だからね!約束だよ!」

    2020年1月1日午前1時。プロポーズの余韻に浸りながら花火を充分堪能した後、遊園地を出てまた車に分乗し、初詣に向かっていた。

    美「あ、電話鳴ってる。唯、代わりに出て」

    唯「はーい。あ、尊か。もしもし?」

    尊 電話『お父さんがね、神社の駐車場混んでるかもって。だから先に僕達を降ろすって言ってる』

    唯「そうなんだ。わかったー、言っとく」

    神社の近くまで来た。前を走る覚車が停車。美香子車も停車し、ぞろぞろと5人が車から降りた。

    尊「鳥居で待機ね」

    唯「了解~。思ったより、人多いね」

    鳥居の横で、両親を待つ五人。道行く女性達が、若君に見とれながら続々と境内に入っていく。

    若「尊」

    尊「はい」

    若「こちらをずっと見ておるおなごが居るが」

    尊「ははぁ。兄さんも大変ですね」

    若「尊の知り合いではないのか」

    尊「え!まさかの僕?どこですか」

    若「あの、絣柄を召した」

    鳥居のもう一方の足元で、絣の着物と羽織姿の、ショートヘアの女の子がこちらを見ている。

    尊「あ」

    若「どうじゃ?」

    尊「はい、クラスメートでした。ちょっと行ってきますね」

    女の子の元へ向かった尊。

    女の子「やっぱ、速川センセ?」

    尊「こんばんは。じゃなかった、明けましておめでとうございます、ミッキーさん。今日は着物なんですね」

    みつき「おめでと。っつーかそれ、LINEの名前だし。センセさ、クラスメートの名前あんまり覚えてないでしょ。私はみつき。覚えてよね」

    尊「はい。ごめんなさい」

    み「今ね、彼氏待ってるの。彼大学生なんだけど、年またぎでバイトでさ。で、サプライズで着物着せてもらって、ここでちょうど会える時間に合わせて親に送ってもらったのに、肝心の彼氏がちょっと遅れてる」

    尊「なるほど。説明よくわかりました」

    み「センセは誰と来てるの?美男美女の団体に居てちょっと驚いたけど。あ、もちろんセンセも美男子だよ」

    尊「ついでに褒めてくれてありがとう。家族だよ。姉二人とその旦那さん。今は車停めに行った両親待ってるところ」

    み「そーなんだー」

    尊「で、あの、みつきさんこそ、僕の事センセって呼ぶじゃない。何で?」

    み「さん、要らないから。私ね、センセは下手な先生よりずっと尊敬してるからさ。あの歴史の話題以来」

    尊「そんな、恐縮至極です」

    み「センセはすごいよ。あ、ねー、一緒に撮ろうよ」

    尊「写真ですか」

    み「動画撮るよ~」

    尊「動画?!」

    み「いい感じで、フレームインしてきてねー、行きまーす」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    歴史の話題は、またいずれ。

    続きます。

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    四人の現代Days73~31日23時30分、ハラハラ!

    マズい、はしたないと思われてる。
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    観覧車を降り、全員ぞろぞろと、花火があがる会場に移動している。

    美香子「遊園地で一番装飾が煌びやかなのは、メリーゴーラウンドね」

    前を通過中。乗っている子供達が、カメラを構える親達に楽しそうに手を振っている。

    唯「かわいい~」

    尊「今乗りたいとか、言わないでよ?」

    唯「うーん」

    尊「なぜ悩む!」

    美「はい、さっさと歩いて~」

    花火会場の隅にやって来た。先に進めば、人がより多く集まっているが、この辺りはそこまでではない。

    覚「ここでいいか。周りにあんまり人居ない方がいいし。少し遠くても、花火は頭上にあがるからよく見えるしな。0時になったら、ドーンと」

    尊「タイムリミットが、打ち上げ花火か…」

    つい、黙る7人。時刻は、23時40分。

    美「嫌だ、緊張してきちゃった。自分の話でもないのに」

    源三郎とトヨは、どこに視線を合わせたらいいのかわからない様子だ。

    若君「…唯」

    唯「なぁに?」

    若「わしらは、少し離れようではないか」

    唯「え、離れるの?それだと決定的瞬間が見れなくない?」

    若「あまりに晒し者では、気の毒じゃろ」

    唯「えー、見たいよぅ」

    若君が唯に囁く。

    若君の囁き「二人きりで、年を越そうではないか」

    唯「いやん、そんな理由?!もー、たーくんったらぁ。わっかりましたー」

    安堵の表情になった若君。

    若「お父さん、お母さん、尊。あとはよろしゅうお頼み申します」

    覚「わかった」

    美「はい」

    尊「うん」

    赤のペアルックの二人が離れていった。

    覚「気の遣い方がさすがだな…」

    美「ねぇ、どういうフォーメーションにする?」

    覚「はあ?」

    尊「並び方?」

    美「どうしようかな~」

    美香子が、5人の立ち位置を決めている。緊張のあまり、顔が青ざめかけていた源トヨも、その滑稽な様子に、少し笑顔を見せた。

    美「どう?」

    覚「これ以外に何があるかって感じだが」

    尊「まんま、かぶり付きの位置だし」

    向かい合って立つ源トヨ。二人を正面に臨む位置で、3m程離れて並ぶ三人。

    美「さて、と。あと10分か…」

    その頃の、唯と若君。

    唯「冬ってさ」

    若「ん?」

    唯「なんか、遠いよね」

    若「遠い、とは?」

    唯「夏だとさー、着てる服も薄いし、水着着ちゃったりもするから、くっついててもピタっとするなぁって思うけど、冬はセーターもコートも着てるから、なんか遠い」

    それを聞き、若君は手繋ぎから体勢を変え、唯の後ろからそっと抱き締めた。

    唯「きゃっ」

    そのまま耳元に顔を近づけ、囁く。

    若「肌を合わせたいのか」

    唯「ひゃあ!やだたーくん、なんかエロ侍出てる」

    若「ハハハ」

    唯「あっちのヘタレ侍はどうなったかな。あー、まだ変化なしかー」

    離れてはいるが、5人の姿が確認できる場所には居る二人だった。

    若「屁垂れとは、何じゃ?」

    唯「ヘタレはヘタレ。今日でヘタレじゃなくなるといいけど」

    若「そのような…幾度も口にするでない」

    戻って、プロポーズ会場。源三郎が、小さい声でセリフを反芻していた。

    覚「伝えたい言葉がすっ飛んではなあ」

    美「時間はギリギリだけど、急かしてもね」

    尊「そもそも、こんな時間になっちゃったのは、お姉ちゃんのせいだし」

    源三郎が顔を上げる。身構えるトヨ。だが、すぐまた下を向く源三郎。これが、何回か続いている。

    源三郎「あっ…ふぅ。済まない、トヨ」

    トヨ「…」

    尊「あと5分」

    ここで、ずっと不安そうにしていたトヨの表情が、意を決したかの様にガラリと変わった。

    ト「赤井殿」

    源「え?は、はっ!」

    覚&美香子&尊「へ?」

    その言葉に思わず体が反応し、その場に跪いた源三郎。

    尊「時代劇みたいだ」

    美「お父さん、何言ってるの!」

    覚「すいません…」

    尊「何か不穏な空気。大丈夫かな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days72~31日22時、想い出の場所

    一番空に近いところで。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜の遊園地に来ている。

    尊「お姉ちゃん、物事には程度とか、限度ってモンがあるんだよ!」

    唯「だからごめんって」

    尊「トヨさんなら断らないってわかってて…」

    唯「だって、こんなにいっぱいジェットコースターに乗れるの超久しぶりなんだもん!」

    尊「わざと連れ回したんだろ」

    唯「楽しそうにしてたから、いいと思ったんだよぅ」

    トヨ「あの、わたくしなら大事ございませんので、どうか姉弟で喧嘩なさらないでください」

    尊「だって、辛そうですよ?」

    トヨがベンチに座っている。唯が隣で顔を覗きこんでいる。周りを、若君、尊、源三郎が囲む。

    若君「トヨ、済まぬ。わしが唯を止めねばならなんだ」

    ト「いえ!どの乗り物もとても楽しくて。少しだけ体が追いつかなかったみたいです。不徳の致すところでございます」

    覚「おー、どうした?」

    美香子「トヨちゃん、具合が悪いの?」

    カウントダウンイベントの、野外コンサートを楽しんでいた両親が合流した。

    尊「ご飯食べた後、お父さん達と別れたじゃない。その後、お姉ちゃんが無茶して、トヨさんを絶叫マシンにばかり連続で乗せて」

    覚「二人でずっと乗ってたのか。男衆は一緒じゃなかったのか?」

    尊「最初のジェットコースターだけ5人で乗った。後は、はい次~!って姉ちゃんがすぐトヨさんの手を引いて走ってっちゃって、追いつくのがやっとで。元々僕達三人とも絶叫マシンそんなに得意ではないし…でもはぐれるといけないから、ずっと降り口の近くで待ってた」

    美「忠清くんとではなかったのね」

    若「はい」

    唯「イヤイヤ乗ってくれなくてもいいもん。トヨは一緒にキャーキャー言ってくれるから」

    ト「あの、充分休めました。もう平気ですので」

    覚の囁き「尊、もしかして源三郎くんのプロポーズ…」

    尊の囁き「まだだよ。二人きりにもなってない。全部姉ちゃんが悪いんだよ」

    覚 囁き「あちゃー。今年もあと二時間切ってるぞ」

    唯「ねぇ、観覧車も乗りたーい!」

    尊「は?どの口が言ってる?!」

    ト「大丈夫です。あの大きく丸い乗り物ですよね」

    美「無理しちゃダメよ?」

    ト「好奇心と申しますか、そちらの方が強くって。参りましょう」

    美「じゃ、ゆっくりとね」

    もう少し休憩してから、観覧車乗り場にやって来た7人。

    美「ホントは二人きりにしてあげたいから、2対5がいいけど」

    源三郎の顔色をうかがう美香子。

    源三郎「あ、あの…」

    美「これでは、トヨちゃんの体調を気遣って一周終わりそうだから」

    覚「4対3か。わかった」

    乗車口前。

    覚「はい、唯と忠清くんと尊、先に乗れ」

    唯「そーゆー組み合わせ?」

    尊「妥当だよ」

    三人、先に来たゴンドラに乗り込んでいった。

    美「私達もご一緒させてね」

    源「はい!」

    ト「喜んで」

    次のゴンドラに四人で乗る。ゆっくりと、夜空に吸い込まれていくようだ。

    源三郎の囁き「体、辛くないか?」

    トヨの囁き「うん。ありがとう」

    にこやかに、二人の様子を眺める両親。

    美「あのね。私、観覧車にはとってもいい想い出があるの」

    ト「どのような?」

    美「お父さんが、プロポーズ…結婚の申し込みしてくれたのが、この中でなのよ」

    源「えっ」

    ト「まぁ!」

    覚「僕はその日ずっとそのつもりでさ。二人で遊びに来て、夕方ちょうど日が落ちる頃に観覧車に乗ろうと決めてて」

    美「まだ後で、って中々乗ろうとしなくって。そんなの知らないから」

    ト「ふふっ」

    覚「ゴンドラが頂上に着く頃、ちょうど空が真っ赤に染まって。その時、僕と結婚してくださいって、指輪を出して申し込んだんだ」

    美「嬉しかった…はい、って即答しちゃった」

    ト「はぁ~、いい。とてもいいお話ですね」

    覚「ハハハ。参考までに、なんてな」

    源「お聞かせいただき、ありがとうございました」

    ト「…」

    その頃の唯達。

    唯「ねー、例の女の子、るなちゃんだっけ?とはどうなった?」

    尊「どうなったって…何にもないよ」

    唯「連絡してないの?」

    尊「何でするんだよ。用がある訳でもないのに」

    唯「向こうからもないの?」

    尊「ないよ」

    唯「えー。つまんない」

    尊「勝手に盛り上がんないでよ。クラスメートの一人だよ」

    若「仲を深めようとは、思わぬか」

    尊「兄さんまで。僕の事はいいですから。今日は、源三郎さんとトヨさんさえ上手くいってくれれば」

    唯「ホント~」

    尊「散々邪魔してたクセに。ミッション聞いてないのかと思ってた」

    唯「だって年内にプロポーズでしょ?まだ時間ある」

    尊「呑気だな。あと今年も一時間しかないよ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    どうかお気になさらず

    妖怪千年おばばさん。久々のお出ましに、心が踊りました。

    いつも、投稿されるタイミングを私が邪魔しておりまして、大変恐縮でございます。

    私の創作話には、連続して番号がふってありますので、間に他の投稿話がどれだけ入っても、行方不明にもなりませんし、何ら問題はございません。

    今後は、どうぞご自身のタイミングで投稿なさってくださいね。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days71~31日火曜10時、Xデー到来

    すぐに買っておいて、良かったね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニックは今日から休み。全員で、外回りの大掃除中。唯とトヨは、枯れ葉を掃いて集めている。

    唯「ふんふーん」

    トヨ「ご機嫌ですね」

    唯「今日もイベント盛りだくさんだから、掃除してても楽しみでしかたないよ。遊園地ってさ、いっぱい乗り物あるんだよ!」

    ト「スワンボート、のような?」

    唯「もっと速く動くジェットコースターとか、もっとゆっくり動く観覧車とか」

    ト「まあ。初めて聞く名ばかりですね。心踊ります」

    唯「あー楽しみ。ん?」

    家の前に宅配業者の車が停まった。

    唯「あ、何か届いた。たーくんに知らせなきゃ!」

    慌てて若君に声をかけにいった唯。

    唯「ねぇたーくん、仕事来たっぽいよ」

    若君「ん?」

    草むしりをしていた若君が顔を上げる。

    若「おぉ、受け取らねば」

    急いで家の玄関に向かった若君。ハンコを押し、荷物を受け取ると、覚がすぐにやって来た。

    覚「忠清くん、受け取りありがとな」

    若「礼には及びませぬが、これは?」

    覚「おせち料理のお重だよ」

    若「料理?この中に?」

    ダンボールをキッチンに運ぶと、中のお重の蓋を開けた覚。

    覚「どうだい?」

    若「これは…絢爛豪華ですね」

    覚「正月用だから、あと一日我慢な」

    若「心得ました」

    また外に出た若君。すると、黒いロープのような物体が、駐車場を這い、表まで伸びているのに気付いた。

    若君 心の声(これは何じゃ、大蛇か?!)

    ロープの先をたどってみると、尊と源三郎が、見慣れない機械を持って何やら準備している。

    尊「あ、兄さん。呼びに行く前に来てくれたんだ」

    源三郎「間もなく、支度が出来ます」

    若「支度?」

    そこは、クリニックの看板の前だった。

    尊「夏にこの看板、兄さんが懸命に掃除してくれたじゃないですか。あの後すぐ、この高圧洗浄機を買ったんですよ」

    若「これで掃除を。地を這う蛇のような物は?」

    尊「屋外用延長コードです。コンセントがない所でも電気が使えるように」

    若「ほぅ」

    源「楽に掃除が出来るので、是非忠清様にと、お父さんが仰せられ」

    若「わしの為に?ならば始めから手伝うたのに」

    尊「いいんですよ。まだこの後、他の場所で使いますから」

    若「そうであったか。色々済まぬの」

    準備完了。

    尊「そうです、そうするとこのブラシの部分から熱い蒸気が出てきます。で、擦ると」

    若「湯をかけながら磨けるようなものだと。随分と首が長いのう」

    尊「脚立使わなくても、上まで届きますよね」

    若「ほほぅ。では、いざ」

    スイッチオン。シュー、と音がし始めた。

    源「暖が取れそうな勢いですな」

    尊「かなり熱いですからね、油断は禁物です」

    若「おぉ、ほぅ、これは楽じゃ」

    みるみる内に汚れが取れ、あっという間に看板はピカピカになった。

    若「新たな術を見たのう」

    尊「兄さんお疲れ様。この後、クリニックの入口のガラス扉をこれで磨くんで、兄さんは草むしりに戻ってもらってもいいですか?」

    若「わかった。ならばこのコード、をそこまで運ぼう」

    掃除は順調に進み、12時を回った頃に終了した。昼ごはん中。

    覚「みんなお疲れさん。これで昼寝もしてな」

    尊「昼寝まで予定に組み込まれてるの?」

    覚「カウントダウンイベントに、初詣。体力の温存は必要だ。特に僕が」

    美香子「私も。車運転するしね」

    尊「そういう事か。それは必須だね」

    若「いつも済みませぬ」

    美「いいのよ。お出かけは楽しいし」

    唯「夜遅くなるもんね。私も寝とくー」

    覚「で、7時には出発する予定だ。晩飯は現地でな」

    唯「わかったー」

    美「トヨちゃんと唯は、お出かけ前にお化粧してあげるわ」

    唯「わーい!お母さん、トヨにたっぷり時間かけてあげてね」

    美「そのつもりよ」

    ト「そんな、あまりお手を煩わせるようでは」

    覚「まぁ、いいじゃないか。盛り上がってきたな~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    それこそ色んな板で

    いつもの投稿の時間になりましたが、まずここで、昨日今日のむじなランドの盛り上がりについてお話させてください。

    まずは妄想あさイチ。月文字さん、喜んでいただき光栄です。朝ドラヒロインが9月中に出演されるのは当然予想される話なので、もっと早く出しておいても良かったよな、と少し反省しております。彼のテレビ出演復活のシナリオとしては、そんなに悪くないと思ったんですが。どこかで、なんとか、と願っております。

    この金土、あちらこちらで皆さんに私の名前をあげていただきまして、大変恐縮しております。

    二日に一度投稿している私ですが、ここ最近は全体的にすごく静かで、話題がなければこんな感じかな、ちょっと寂しいなと思っておりました。

    良かった、皆さんお元気だったわと一安心いたしました。結菜さん効果は、当たり前ですが絶大でした(^_^;)ゞ

    カマアイナ様。お墓の刀の絵ですが、私も他の方に解説していただいて理解を深めました。形や方角が、公式掲示板の話題に上がっていたかはわかりません。

    墓の形、五輪塔の墓石は上から、空・風・火・水・地を表しているそうです。調べていて勉強になりました。

    そして、現代Daysはまだまだ終わりません。今後のお話が意に添うかはわかりませんが、どうか、今を楽しんでください。

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    返信先: 雑談掲示板
    すんなり見つかりました

    おおたわけさん。この度のご出演、おめでとうございます。
    番組に届いたメッセージが、1140通以上との事でした。その中で取り上げられたのは、なんて素晴らしい。
    わかる人だけわかればいい。でもまぼ兵くんだとわかる人がたくさん居るといいな、と思いながら観させていただきました。

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    返信先: 雑談掲示板
    良かった。

    私、未だにアシラバ5~6人説を信じていて…。創作話、読者さんがいらっしゃると思うだけで励みになります。千絵ちゃんさん、改めてありがとうございます。

    お話かわりまして、

    録画したあさイチを観ておりましたら、まぼ兵くんが出ていましたが!

    最後のイラスト紹介で暢子が持っていましたが。激似の別物じゃないと思うんですが。右下にお名前が「おお〇〇け」と!←一応伏せ字にいたしました。

    とってもお上手なイラストでした。

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    返信先: 雑談掲示板
    感謝感謝です

    千絵ちゃんさん、創作倶楽部は一部の方しか訪れないでしょうから、他の板でもお知らせすべきか悩んだんです。こちらこそ拾っていただき、ありがとうございます!

    今、私の投稿してるこの時間に放送中ですね。きっと盛り上がってるだろうなぁ。きょうの料理も録画予約済みですので、仕事終わりのご褒美がいっぱいで楽しみです!

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days70~30日10時、想像するに

    後程、一部解説します。
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    墓の裏に刻まれた文字を見る源トヨ。

    源三郎「生害?」

    トヨ「え?誰が?同じ名の違う御方ですか?」

    尊「何なんだとは思いますよね。建てた側に、兄さんはこうなった、と刻まなければならない事情があったんじゃないかと」

    ト「この、脇に描かれているのは何かしら」

    源「これは…刀じゃないか?」

    尊「僕もそう思います。後で見解を話しますが、まずは日付」

    スマホを取り出し、画像を二人に見せる。

    尊「これは寺に残されていた資料です」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「永禄三年十一月、黒羽城ニテ生害ス。この頃、兄さんの身の上に起こっていたのは?」

    源「…相賀一成が娘との婚儀、ですか」

    尊「はい。相賀側ではない人物で立ち合ったのは、天野のじい、と高山宗熊の二人だったそうですが、兄さんは助けに行った姉と、その場からまんまと抜け出すも追い詰められ、色々あったけど櫓の上で二人一緒に消えた、と」

    ト「それで昨年末に、こちらの世にお二人で現れたんですね」

    尊「はい。兄さんの話では、じいも宗熊さんも、消えた様子は見ていません。婚儀の場から二人が逃げてすぐ、守り神が迎えに来たから大丈夫、とすぐに馬に飛び乗り、宗熊さんと共に城を後にした、とじいに聞いたそうです」

    源「そのまま留まれば、事の次第によっては命が危のうございました」

    尊「消えた時、櫓の下には相賀の者しか居なかった。で、相賀にとっては面目丸つぶれ」

    源「取り逃がしたのではない、目の前で腹を切ったから婿に出来なかった、としたかった」

    ト「なるほど」

    尊「この墓の形。永禄以降、長い間主流です」

    源「五輪塔ですね」

    尊「あの織田信長の墓と伝えられているのもこの形。もっとも、そう言われてる墓は一つじゃなくて、幾つもあるんですけどね。だから建てた時期の特定もちょっと難しい。で、誰が建てたんだという話で」

    源「相賀一成か、家臣か、でしょうか」

    ト「資料が昨年解読されたばかりですが、寺の住職が、とも考えられますが」

    尊「現代に残る資料には限界があるんですが、兄さん自身が、誰でもよいって気にしてないんです。だから、いつかわかればいいかな位にとどめようかと。ところでこの墓、ずっとここにあったと思います?」

    ト「え?誰かが移したんですか?」

    源「何ゆえそのように、お考えになられる?」

    尊「これはあくまでも僕の見解ですけどね。ここで二人に質問です」

    源&ト「はい」

    尊「この墓はどちらの方角を向いているでしょうか。手がかりは、太陽の位置と、あそこに見える寺の本堂です」

    遠くに、資料が見つかった寺が見える。

    ト「わかりました。えーと、おてんと様が今あそこにあって」

    源「寺があちらを向いている」

    尊「わかりましたよね、では答えをどうぞ」

    源「西に向いております」

    ト「はい、私も西だと思います」

    尊「正解です。お墓の向きって、これで合ってます?」

    源「向き?西を向く墓は珍しいですが、なくはないと思います。それに、この五輪塔は、どの側から手を合わせても構いませぬ」

    ト「四方が正面、とされております」

    尊「さすが。答えが出るのが早い。それは僕も調べて、理解しました。隣に居る小さいお地蔵さんは、二体とも西を向いててこれは一般的な向きですし。でも、二体って少なくないですか?普通六体じゃないですか?」

    源「六地蔵ではないかと?うーん」

    ト「それで、移し忘れがないかと仰る?」

    尊「昔話のかさじぞうでも、お地蔵さんは六体としたもので」

    ト「かさじぞう?」

    源「そのような言い伝えがあるのですか?」

    尊「あ、お二人にとっては、未来の話だったかも。すいません、聞かなかった事にしてください」

    ト「ふふっ、その昔話はまた詳しくお聞かせくださいね」

    尊「はい。位置については、兄さんも、どっちの説も頷けるって言ってました。で、最後この絵ですが」

    源「はい」

    ト「いよいよですね」

    尊「兄さんは、飛ぶ時に姉を抱き上げました。手にしていた刀ですが、その直前に、月にめがけて真上に放り投げたそうです」

    源「投げた。すると…」

    ト「いずれは落ちて参ります」

    尊「刃先を下にして落ちてくるとどうなりますか」

    源「刺さりますね。櫓は木で組んでありますゆえ」

    ト「ではこれは、残された者達が、消えてすぐ見た景色…」

    尊「だと思ってます。すごく目に焼き付きますよね」

    源「そうですか。良くわかりました。尊殿、お話いただきありがとうございました」

    ト「私、もう一つ気付いたわ」

    源「何をだ?」

    ト「尊様と木村先生の、忠清様の日記についてのやりとりを伺った時、なぜ木村先生は御月家…ひいては、羽木の誰かと考えたのか、羽木なら当然忠清様の名が真っ先に出るでしょうと思っていたんです」

    尊「理由がわかりましたか」

    ト「木村先生は、昨年この墓の存在を知った。その時、永禄三年十一月に生害とあったのを信じているので、永禄三年の終わりから始まる日記や、永禄四年に書かれた熱き文は、無事逃げのびた別の人物が書いたと思われたんですね」

    尊「ご名答です」

    公園を出た三人。

    尊「この後は、姉に目一杯、綺麗にしてもらってくださいね」

    ト「はい。楽しみです。この後も、明日も」

    尊「だ、そうです」

    源「はい」

    ト「…」

    ┅┅

    ここで、墓の方角について、私夕月の見解をお話します。

    ドラマSPでのお墓のシーン。2018年(平成30年)と字幕が出た時ですが、唯と木村先生の後方、竹やぶのすぐ上から太陽の光が射しています。その次、唯が墓の裏に回りしゃがんだ時、後ろに見える竹の影も左に伸びています。

    先生と落ち合ったのは、まず平日の夕方だろうと考えます。よって最初の画面は、東から西方向を映している。生害の文字は東側に書かれている、チラリと見える二つの石は、裏から見た小さなお地蔵様と考えました。

    お寺は、ほとんどが東向きに建てられているそうですね。唯達の後ろに見える鳥居は、さっきの見解でいくと南に向かって伸びているので、途中で90度曲げないといけませんが、周りの景色からすると表の参道ではありませんので、そこは目をつぶりました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    30日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days69~30日月曜9時、衝撃的!

    その反応は、やはり。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、美香子は年内最後の仕事へ。6人でコーヒータイム中。

    覚「唯はまだ眠いのか」

    尊「まだじゃないよ。まただよ」

    ぽや~んとしている唯。

    覚「昨日久しぶりに働いたからか」

    唯「ん~。そりゃ昼間はあーだったけどさぁ」

    覚「何の話だ?」

    若君が一人、なぜか動揺している。

    覚「まあ、明日は盛り沢山だから、今日はダラダラしててもいいけどな」

    尊「ダラダラはいつもだけど」

    唯「うるさいなー。あ、思い出した。トヨ、手見せて」

    トヨ「はい?」

    唯「やっぱり爪、だいぶ割れてるね。ゆうべたーくんの言った通り」

    ト「え?」

    若君「手袋も着けず水仕事をしておった。そろそろ塗り直しが要るであろうと思い」

    ト「そのような。お気遣い、痛み入ります」

    唯「よしっ、じゃあ私がマニキュア塗り直してあげる」

    尊「さっきまで寝ぼけてたクセに。そんなすぐに細かい作業なんて大丈夫なの?ちゃんと出来ないなら、逆にトヨさんに失礼だよ?」

    唯「ちょっとヤバいか」

    ト「あの、唯様もお掃除頑張っていらっしゃいましたので、爪は似たような様子かと」

    唯「私?まぁピカピカではないけどさ」

    ト「先にお直しください」

    唯「えー。私がやるって言い出したのに、悪いよ」

    ト「いいんですよ。また忠清様がほどこされますよね?」

    若「あ?まぁそうじゃな」

    ト「どうぞ、仲睦まじくなさってください」

    尊「その様子を周りでじっと見てるってのも、ちょっと恥ずかしいけどね」

    ここで若君が、あ、という顔をした。

    若「そうじゃ、尊よ」

    尊「何?兄さん」

    若「待つ間、源三郎とトヨと三人で公園へ参るのは、いかがじゃ?」

    尊「あ、お散歩。いいですね、今日そんなに寒くないし。どうですか?源三郎さん、トヨさん」

    源三郎「はい!それは、是非とも」

    ト「ご一緒に。嬉しい、お願いいたします」

    若「尊、それでの」

    若君が部屋の隅へ尊を呼ぶと、小さく耳打ちした。

    尊「え、そこ、まだ行ってなかったんですか?」

    若「四人で参った折はまだ日も浅かったゆえ、城跡のみでとどめておいたのじゃ」

    尊「そうだったんですね」

    若「そこでその、尊の存念と申すか」

    尊「あ、僕の見解ですね。それも話していいんですか?」

    若「ほぼほぼ合うておると、わしは思うておる」

    尊「わかりました」

    席に戻った二人。

    尊「じゃ、出かけるとするか」

    唯「ちょうど良かった感じ?」

    尊「結果ね。まっ、お姉ちゃん達は、手に手を取ってイチャイチャしてて」

    唯「わかったー。わかったってのもヘンだな」

    若「尊、よろしく頼む」

    尊「お父さん、昼前には戻るよ」

    覚「了解」

    9時30分。家を出た尊と源トヨ。

    尊「なんか」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「明日、いい事があるみたいですね」

    源「え」

    ト「あの、どのようないい事なのでしょうか」

    尊「いい事は、いい事じゃないんですか?楽しみにしてますね」

    ト「どなたも、肝心な事は仰らないんですよね」

    尊「僕もよくは知らないんで」

    源「…」

    黒羽城公園に到着。遊具のない、奥の方へ入っていく尊。

    ト「尊様、どちらへ」

    源「この先は、竹やぶですが」

    周りが囲ってあるが、中央に石が積まれている場所に着いた。

    源「これは…墓、ですね」

    ト「どなたの?」

    尊「羽木九八郎忠清の墓です」

    源&ト「え、ええっ!!」

    状況が全く飲み込めていない源トヨ。話し始める尊。

    尊「僕の話の中には、推測の域を出ない部分があります。わかりにくい部分もあると思いますが、この墓について話して良いですか」

    源「お願い致します」

    ト「お聞かせくださいませ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    妄想「あさ〇チ」プレミアムトーク、9時から9時5分まで

    えー、お間違いなく。ここは創作倶楽部。

    想像したって、いいじゃない。問題作かもしれないけれど、ちょっとだけだから許してください。伏せ字多いし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    金曜日。テレビ放送中。ニュース明け、ゲストのアップからスタート。

    H多D吉「改めまして、今日のゲストは朝ドラちむどんどんヒロインの、K島Y菜さんです」

    K島「お願いします」

    S木アナ「9時台は、ちむどんどん以外での、ご活躍のお話をしたいんですが、まず、こちらのフリップをご覧ください」

    フリップが出された。

    S「弊社のドラマなど映像作品や、あとグッズ、チ〇ちゃんのぬいぐるみとか、を販売している〇HKスクエアが、ツイッターで先々月、好きな〇HKドラマを三つ呟いてくださいと募集しまして」

    H多H丸「ほう」

    S「こちら募集当日の順位なんですが、1位は正〇不動産」

    H「はー。Yピーはやっぱり人気ですね。私も、一人夜ドラ受けしてました」

    D「朝ドラ受けにとどまらず?」

    H「録画を観た後、こっそりと」

    S「聞きたかったです。2位はわげ〇ん、3位は女子的生〇で」

    H「りょーちんとボクテだ」

    D「それ朝ドラの時の役でしょう。視聴者を惑わせないでください。あと、ここで話を引っ張らない」

    K「あ、でも4位は、お母ちゃんですから」

    D「K島さん優しいですね。いいんですよ、お調子者のおじさんなんか庇わなくても」

    S「美女と男〇。観てましたー。で、5位は青天を〇けです」

    H「10位がカムカ〇。で、6位が二つある?隠れてますけど」

    S「はい、で、これをめくりますと」

    隠してあった部分が現れた。

    H「あぁなるほど。アシガールとスカーレット」

    D「主演なさった大人気ドラマと、三津、ですね」

    K「すごくありがたいです。嬉しい」

    S「それでですね、今回K島さんのプレミアムトークご出演にあたり、お一人、VTRでコメントを頂きました。両方のドラマに出演なさった方です」

    H「それは、もしや。まさかやー!」

    D「H丸さん、よくご本家の前で言えましたね」

    K「あはは」

    S「それでは、VTR、どうぞ!」

    画面が変わる。足元からカメラが徐々に上に移動し、はにかんだ笑顔の男性が映った。

    I藤「あさ〇チをご覧の皆様、おはようございます。H丸さんD吉さん、お久しぶりです。K島さん、長丁場、お疲れ様でした。I藤K太郎です」

    ┅┅┅┅

    順位については、報道で知りましたがそのまま使わせていただきました。

    ここから先はどうぞ、ご自身の御眼にてお見極めのほどを。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、現代Daysに戻ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days68~29日日曜12時、本領発揮

    昼間じゃなきゃいいのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は朝から家族総出で大掃除。前半戦が終わり、昼ごはん中。

    唯「半分以上終わった感じ?」

    食卓の隅に、掃除をする場所リストが置いてあり、上から順番に、済んだらチェックするようになっている。

    美香子「二階は終わってるし、一階は窓拭き済み、電灯のカサも済みと。こういう高い所は、身長がある子にやってもらうとホント助かるわ~。両方とも忠清くんよね?」

    若君「はい。全く苦ではありませんでした。どの薬も、一拭きでたちどころに汚れが取れましたゆえ」

    美「現代は、その辺も用途毎に揃ってて便利よね」

    若「それより、先程尊が、炊事場で首を突っ込み大変そうにしておりましたが」

    尊「あー、換気扇外してたんですよ。でも、浸け置きしておいたらみるみる油が浮き上がってきて、実験みたいで楽しかった。源三郎さんも、釘付けになってましたよね」

    源三郎「あまりの術に、感服いたしました」

    覚「壁は拭いた。あとはレンジ周りだけだが、一旦棚から出した調味料や調理器具を戻さないとな」

    唯「この表さ、お風呂とトイレはもう終わってるけど、あとリビング、廊下、玄関ときて、なんで最後が洗面所なの?風呂掃除のついででよくない?」

    覚「鏡は先でもいいが、洗面台は、掃除に使ったブラシや雑巾を洗った後、掃除した方が二度手間にならんからだ」

    唯「へー!考えてるぅ」

    トヨ「なるほど…」

    尊「理にかなってる」

    覚「さ、じゃあ後半戦、頑張ろう」

    ト「はいっ」

    トヨが手拭いで、ササッとほっかむりをした。

    美「さすが堂に入ってる」

    ト「お掃除、好きなんです」

    美「うん。目が輝いてるもの。では手分けしてスタート~」

    キッチンは覚と尊と源三郎。リビングは美香子と若君。唯とトヨは廊下で…

    ト「もっと固く絞る!」

    唯「えぇー」

    ト「なりません!そんなゆるゆるでは、雑巾ではなくただの濡れた布です!」

    美「ふふっ、どんどんトヨちゃんには絞って欲しいわ、唯を」

    若「ハハハ」

    掃除はどんどん進み、廊下がまず終了。

    美「そのまま玄関をお願いします」

    ト「わかりました」

    玄関で唯とトヨが靴を全部外に出していると、若君がやって来た。

    唯「そっち、もう終わったの?」

    若「あぁ。お母さんにこちらを手伝えとな」

    三人で玄関周りを掃いたり、棚を一つ一つ拭いたりしていたが、トヨが三和土のシミと格闘し始めた。

    唯「トヨ、あんまりやると手が荒れちゃうよ。ほら、ゴム手袋もう一つあるから使って」

    ト「いえ、素手の方がざらつきとかがわかりますので」

    若「…」

    ブラシや雑巾で、シミは跡形も無くなった。

    唯「すごーい!がんばったね!」

    ト「ふぅ。綺麗になりました。あ、お母さん」

    美香子が現れた。

    美「みんなありがとう。あのね、頑張ってるところ悪いけど、キッチンがさっき終わって、お父さん達が汗だくだったものだから、先に三人でお風呂に入ってもらったのよ」

    唯「いいよー。油ギトギトで大変そうだったもん。それよりココ見て!トヨががんばってくれたの!」

    美「まぁ!シミが取れてる!さすがトヨちゃんね。そんな心がけが良い子には、近々きっといい事があるわよ。ね、忠清くん」

    若「はい。働き者のトヨに、年内には」

    ト「年内、ですか」

    美「あとね、洗面所、鏡周りは掃除したから、あと洗面台を残すのみになってるからね」

    唯「そうなんだー」

    廊下の奥から声がする。

    覚「おーい、先にいただいたよー」

    美「あ、出たわね。じゃあ、後は私も手伝うから…唯、忠清くんとお風呂行ってらっしゃい」

    唯「え、トヨが先でいいよ」

    美「ちょうど全部靴が出てるから、私がちょっと入れ替えをしたいのよ。トヨちゃん、唯達が先でいいかしら?」

    ト「勿論です」

    美「はい、決まり。さっさと行く!」

    唯「え~、たーくんが昼間っから悪さしそうだし」

    ト「悪さ…」

    若「悪さとは何じゃ」

    唯「あ、入ってる時さ、遠慮なく洗面所に雑巾とか洗いに来てね」

    美「保険かけてるのかしら。ねぇ、忠清くん」

    若「ハ、ハハ」

    唯と若君が入浴中。トヨが、そっと洗面所のドアを開ける。

    トヨ 心の声(本当に入っていいのかしら?!お母さんも気にしなくていいと仰ったけれど)

    浴室の方を見ないようにして、掃除に使ったブラシや雑巾を洗い始めた。かすかに、話し声とお湯を流す音が聞こえてくる。

    ト 心(はぁ。一緒にお風呂か…羨ましいな)

    洗い終わり、洗面台も綺麗に拭き上げたトヨ。

    ト 心(永遠に、そんな時は来ないかもね)

    下を向き、ぼんやりしていると、浴室のドアが少しだけ開き、声がした。

    唯「トヨ~、ごめん、もう終わったかな。そろそろ出たいんだけど」

    ト「はっ!あっ、すみません!終わってます!すぐ出ます!」

    慌てて洗面所を出ていったトヨだった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    29日のお話は、ここまでです。

    次回ですが、現代Daysは一回お休みします。

    ご出演はもう一週か二週後だとふんで準備をしておりましたが、思ったより早かったので、一足お先に?「妄想あさ〇チ、少しだけ」をお送りします。

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    四人の現代Days67~28日13時、翼を広げて

    洋食をいただきながら、和の話。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨが話し出した。

    トヨ「その、初めて忠清様がこちらの世に来られた際、お一人で突然現れたんですよね」

    尊「そうなんです。お姉ちゃんが書き置きだけして。兄さんが、羽木の若君様だ、しかも大変な状態、としかわかりませんでした」

    唯「なんとか通じたでしょ」

    ト「随分と戸惑われたのでは?」

    美香子「んー、そうね。でも目の前に大怪我をした青年が居れば、まずは助けるのが第一で」

    覚「顛末は後で尊に聞いたけど、忠清くんが実直な人物というのはすぐわかったから」

    若君「その節は、感謝してもしきれませぬ」

    ト「エリさんや芳江さんも、かなり驚かれたのではないですか?その、450年前の人物と聞かされて、すぐに信じられましたか?」

    エリと芳江が顔を見合わせる。

    芳江「信じましたね」

    エリ「そうですね。先生が、この男性は若君だからと仰ってましたし」

    美「有無を言わさず、若君ってベッドネームに書いちゃったしね」

    ト「信頼されていらっしゃるからですね」

    芳「あと、戦国武士と言われて納得したところもありました」

    尊「どの辺がですか?」

    芳「若君が到着されて翌朝、先生に、清拭を頼まれまして」

    唯「せいしき、って?」

    美「体を拭く事」

    エ「まだその時は、お着物をお召しで」

    唯「飛んだ状態のままだったんだ」

    美「当日は処置だけしたから。あとはその道のプロに任せようと思って」

    芳「で、そのお着物やお体から…ね、エリさん」

    エ「えぇ。そこはかとなくいい香りがして」

    若「あぁ。和議と聞いておりましたので、普段より香を焚きしめておった筈です」

    芳「現代の男性ではまずない感じが」

    エ「納得でした」

    ト「そうだったのですね。お話いただきありがとうございました」

    唯「ちょっと待った」

    尊「なんだよ姉ちゃん」

    唯「拭いたのって、全身だよね」

    芳「はい、勿論」

    唯「すっぽんぽん?!」

    美「そりゃそうよ」

    唯「いやん」

    尊「粛々とお仕事されてるだけじゃない。前にも言ったでしょ、慣れてるって」

    若「ハハハ」

    覚「そろそろメイン料理出すよー」

    若「はっ、只今参ります」

    その後も話が弾み、デザートまでたどり着いた。

    美「お父さん、お疲れ様でした。忠清くんと源三郎くんも、お手伝いありがとう」

    若「いえ」

    源「こちらこそ勉強になりました」

    覚「初の試みだったが、やった感があったよ」

    唯「ねぇねぇ、まだ時間大丈夫なら、芳江さんに頼みたいコトがあるんだけど、いい?」

    芳「何でしょう?」

    唯が何かを持ってきた。

    ト「あ、前に買っていただいた」

    唯「そう、千代紙。例の連鶴、芳江さんがどうやって折ってるか見てみたくて。どうせなら柄入りので」

    芳「あら、お安い御用ですよ」

    渡された千代紙を半分に折り、ハサミで深く切り込みを入れた芳江。

    芳「エリさん、こちらの半分で鶴折ってくださらない?」

    エ「あら、共同作業?責任重大ですね。頑張ります」

    エリが一羽折った続きで芳江が折り始めた。

    唯「下に置いたりしないんだね」

    芳「そうですね、持ち上げたままというか」

    全員の視線が、芳江の手元に集中している。

    芳「そんな、見られてますとお恥ずかしい」

    唯「そうだよね。じゃあさ、みんなで鶴折ろうよ。一枚ずつあげる」

    美「あら、全部柄が違うのね。なら一枚ずつ配りましょ。トヨちゃんや源三郎くんも鶴、折れるの?」

    ト「はい」

    源三郎「千羽鶴、の手伝いはさせていただきましたので」

    美「永禄でも総動員してたのね」

    芳「はい、出来ました~」

    翼で繋がった二羽の連鶴完成。

    唯「ありがとー、芳江さんエリさん」

    そして、全部で9羽の折り鶴が出来上がった。

    尊「これ、どうする?」

    唯「飾っておこっか」

    テレビ台の上に並べられた。

    美「いいわね」

    尊「そうだね」

    覚「うん。エリさん芳江さん、お茶もう一杯いかがですか」

    エ「いただけますか?」

    芳「お願いします」

    冬の午後の柔らかな日差しが、食卓と鶴の翼に降り注いでいました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    28日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days66~28日土曜11時、満席でございます

    マダムの皆様をもてなします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    忘年会パーティーの準備が進んでいる。

    尊「お父さん、これ、もしかして今日のメニュー?」

    作業台に手書きのメモを発見。

    覚「そうだ」

    尊「コース料理みたいだね」

    覚「実は、そうしようと思ってる」

    唯「なになに!一皿ずつ出てくる、アレ?」

    覚「そうだな」

    尊「全部で9人だよ?お父さん一人で、給仕もするの?」

    覚「ちょっと考えがあってな。…あ、もうこんな時間か。じゃあ支度するかー」

    唯「支度?今してるじゃない」

    覚「料理じゃない。身支度をな。忠清くん源三郎くん、そろそろ着替えるよ」

    若君「はい」

    源三郎「わかりました」

    覚「トヨちゃん、ちょっと席外すからさ、鍋の火加減だけ見ててもらえる?」

    トヨ「かしこまりました」

    唯「着替えって?」

    尊「何が始まる?」

    程なくして、二階から下りてきた三人。

    唯「やーん、なに!カッコいいっ」

    尊「ウェイターさん風?新型のコスプレになってる。でも良く似合ってますよ、兄さん、源三郎さん」

    若「そうか?」

    源「忝のう存じます」

    三人は、揃って白のワイシャツに、首には蝶ネクタイをしていた。若君の髪はいつものハーフアップではなく、源三郎のように襟足の辺りで一つに結ばれている。

    覚「下はジーパンだけどな。変身だ。いいだろ?」

    尊「こんな店員さんが居たら、レストランに女性が殺到しそうだね」

    唯「たーくんがモテちゃう、困るー」

    ト「お召しかえをされたのは、何かなさるためなのですか?」

    覚「僕が作った料理を二人が運ぶんだ」

    ト「え?私は何をお手伝いすれば」

    覚「料理が来るのを、席で待っててもらえばいい」

    ト「そのような!運んでいただくのを待つなど、私には分不相応でございます」

    覚「まあまあ。こちらでは男性が給仕するのはよく見る風景なんで。たまには、いいんじゃない?」

    ト「そうでございますか…」

    覚「さて、料理の続きをするか。あ、尊、仲間に入れてやれなくて悪かったな」

    尊「別にいいけど。兄さん達ほどカッコ良く着こなせそうにないし」

    唯「尊だとさー、七五三みたいになりそう」

    尊「言ったな。でも否めない」

    覚「深い意味はないんだ。蝶ネクタイが三つしかなくてなー」

    唯「そんな理由?!」

    尊「三つも持ってたんだ」

    テーブルセッティングも進んでいる。

    覚「それ、各席に敷いてくれ」

    唯「わー、かわいい!」

    尊「ランチョンマット?」

    覚「レストランみたいに白い布をドーンと全体にとも考えたんだが、こっちの方がカラフルだからさ」

    色々な柄のランチョンマットが食卓に並べられた。

    唯「テーブルが全部埋まったね」

    覚「いい眺めだ」

    13時。美香子達三人がクリニックを終え、リビングに入って来た。

    美香子「お待たせしました。あー、二人、いい感じね」

    エリ「本日は、お招きいただきありがとうございます」

    芳江「こちら、皆さんでどうぞ」

    覚「いやー、手土産なんかいいのに。さ、どうぞどうぞ」

    前菜に当たる皿が並んだところで、全員席についた。覚が立ち上がる。

    覚「う~ん、壮観だ。皆様、少し早いですが、一年間お疲れ様でした。ではグラスをお持ちください。お酒でなくてすいませんね。気分だけでもシャンパン風にしようと思って、炭酸水ですが」

    唯「これ、お水なんだ。へー」

    覚「それでは、乾杯!」

    全員「乾杯~!」

    キッチンからの覚の合図で、若君と源三郎が席を立ち、スープが運ばれていく。

    若「芳江さん、どうぞ」

    芳「あらら感激!ドレスとか着てくれば良かったかしら」

    源「どうぞ、エリさん」

    エ「ありがとうございます。本当そうですね。シェフの美味しい料理にハンサムなボーイさん達のいらっしゃる、素敵なレストランですもの」

    美「食べたり運んだり、ちょっと二人せわしいわよね。お父さんのアイデアは悪くないけど」

    若「構いませぬ。日頃の感謝も込めて運んでおりますゆえ。気になさらず、ゆるりと歓談を」

    芳江が、ニコニコしながら若君を見つめている。視線に気付く若君。

    若「芳江さん、いかがなされた?」

    芳「感慨深いです。ここまで、現代の生活に溶け込まれて」

    若「さほどではございませぬが」

    エ「そうですねぇ。思い出しますね。初めて若君にお会いした時の事を」

    ト「…あの」

    美「どしたの、トヨちゃん」

    ト「私、ずっと気になっていた事があるんですが、お尋ねしてもよろしいでしょうか」

    唯「いいよ、どんどんしゃべって。なに?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、44から65まで

    no.900の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
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    44no.901、12/24、クリスマスプレゼント贈呈。実は貴重な紙

    45no.902、12/24、予算はOK。タイツ選びで大騒ぎ

    46no.903、12/24、アクセサリーも靴も決まりようやく出発

    47no.904、12/24、握るのは刀でなく手。パンケーキリベンジ成功

    48no.905、12/24、歩くだけで注目の的。初めてちゃん付けで

    49no.906、12/24、ひょんな事で指輪をプレゼント

    50no.907、12/24、若君を魔の手からガード。いよいよ行きたかった場所へ

    51no.908、12/24、デート終盤。甘い策略にはまる

    52no.909、12/24、金星に見守られながらまだ戯れる

    53no.910、12/24、クリスマスパーティー。いつかケーキ入刀しよう

    54no.911、12/25、いきなり絵を描かされる若君

    55no.912、12/25、エ〇〇〇ゲリオンに登場しそうな姿のじいの絵完成

    56no.913、12/25、全員でトランプ。実はお揃いってのがミソ

    57no.914、12/25、イルミネーションを観に来た。尊に隠し事あり

    58no.915、12/25、何かが始まる予感か

    59no.916、12/25、光に包まれながら寄り添って親密度アップ

    60no.917、12/26、覚&若君&源三郎居酒屋へ

    61no.918、12/26、千原じいに翻弄されていた源三郎

    62no.919、12/26、耳が痛い源三郎。家ではレトルト三昧

    63no.920、12/26、酒飲んで寝る人と戯れたい人

    64no.921、12/27、ぷにぷにの唯と尊。若君鮮魚店へ

    65no.922、12/27、今夜はアクアパッツァ。寒さを感じない程楽しい花火

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    四人の現代Days65~27日17時、蛍が飛ぶように

    庭に居たのは、5人の童でした。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーから帰ってきた、覚と唯と若君と源トヨ。留守番していた尊が出迎える。

    唯「ただいまぁ」

    尊「お帰りー。わ、すごい量だね。って、なんでお姉ちゃん、大根1本だけ持ってんの」

    唯「エコバッグを車から降ろす時に、源三郎が落っことしたんだよ」

    源三郎「忝ない…」

    トヨ「尊様、ただいま戻りました」

    若君「尊、留守の番、ご苦労であった」

    尊「いえいえ」

    覚「ただいま、尊。これで年内もたせるつもりで、ちょっと多目に買い物してきた」

    尊「なるほどね。あ、さっき、通販の荷物一つ届いたよ」

    覚「おー、そうか。ありがとな」

    唯「え、もう来たの?レトルト食品」

    覚「それはさすがに来ない。この時期には珍しいグッズだ」

    唯「へー」

    覚「また話すよ」

    晩ごはんの支度が始まった。

    覚「まず、鯛に両面焼き色をつける」

    若「はい」

    源「一尾をそのまま。これは豪快ですね」

    ト「ふむふむ」

    覚「魚が丸ごと手に入ればだけど、永禄で作るなら、切り身でもいいよ」

    若「お父さん。いつも先々まで考えていただきありがとうございます」

    唯「はい、質問!」

    尊「え?お姉ちゃんが料理に質問なんて、どういう風の吹き回し」

    唯「丸ごとって、鯉でもいいの?」

    ト「唯様、それはいかがなものでしょう」

    覚「鯉は…あまりオススメはしないな」

    唯「じゃあ、鴨は?」

    覚「何なんだそのラインナップは。あ、忠清くん、そろそろその缶詰の中身入れて。そうそう。でしばらく煮込むよ」

    若「わかりました。この料理は、何と申すのですか?」

    覚「アクアパッツァだよ」

    若「アクア、パ…」

    唯「また難しい名前だし」

    覚「またって何だ」

    唯「昨日ビーフなんとかって」

    尊「だからビーフストロガノフだって」

    覚「あー、ロシア料理な。アクアパッツァはイタリア料理だ」

    ト「様々な異国のお料理なのですか?」

    覚「そうだね」

    ト「とても勉強になります」

    アサリをフライパンに入れた頃、美香子が仕事を終え戻ってきた。

    美香子「忠清くん、順調?」

    若「はい。今宵はあまり手をかけておりませぬゆえ」

    美「腕がいいからよ~。ところでお父さん」

    覚「何だ?」

    美「明日だけど、お二人とも日が落ちる前には帰りたいってお話だから」

    覚「ん、わかった。そういう事なら、グッズは今夜楽しむか」

    尊「あ。何となく、今日届いた荷物の中身がわかった気がする」

    覚「お?」

    尊「大きさのわりにはすごく軽かったから、夏がシーズンの紙製品じゃない?」

    覚「さすがだな」

    唯「なになに!」

    覚「はいはい、まずは晩飯な」

    アクアパッツァが美しく皿に盛られている。

    唯「豪華!たーくんお疲れ様っ」

    若「見栄えよく出来、良かった」

    源「さすが忠清様」

    ト「大勢で囲むにはうってつけですね」

    尊「明日のパーティーも、こんな感じのメニューになるの?」

    覚「いや、また違う趣向を考えてる」

    唯「そーなんだー」

    覚「では、忠清くんお疲れさんでした」

    若「いえ」

    全員「いただきます!」

    食後。片付いた食卓に、ダンボール箱。

    唯「ホントだ。めっちゃ軽いね」

    若「どれ、中身は」

    唯「なにかな?あ、なるほどね!」

    若「おぉ」

    入っていたのは、大量の花火だった。

    尊「当たったね。でもこれ、何回分?ってくらいあるけど」

    覚「エリさん達もご一緒できたら、と思ったもんだから。無理して今日やりきらなくていいからな」

    唯「じゃあ、早速!バケツに水汲んでくるー」

    若「唯、わしが運ぼう」

    覚「あー、バケツは2つにしてくれー、ってもう居ない」

    尊「わかった、僕行ってくるよ」

    源三郎とトヨが、不思議そうに箱を覗きこんでいる。

    美「ごめんねー。説明もせず勝手に盛り上がっちゃって」

    源「こよりの巻きついた、棒ですか?」

    ト「お水が要ると?」

    美「外で遊ぶ物なんだけどね、この先に火を点けるの。すると火花が散るんだけど、それがとても綺麗なのよ」

    ト「この品々が。まぁ」

    源「火の手があがるのですか?」

    覚「火の手までいかないけど、多少の煙はあがるね。火薬の匂いもするかな」

    源「…」

    美「あ、源三郎くんが何考えてるかわかった。大丈夫。戦の始まりの合図じゃありません」

    源「結び付きはしないとわかっていても、つい。すみません」

    覚「逆に、平和の象徴みたいなモンだ」

    ト「そうなんですね」

    唯「お待たせー!ではお外に参りましょー!」

    賑やかに花火大会が始まった。

    源「おわっ!」

    若「何じゃ、火花の勢いに負けておるのか?」

    唯「ビビり過ぎだって~」

    尊「これ、夏の夜の風物詩なんですよ」

    ト「それをわざわざ、冬のこの時期に?」

    尊「源三郎さんやトヨさんに、見せてあげたかったんじゃないかな」

    ト「それは…お父さん、心より御礼申し上げます」

    覚「はははー。花火が嫌いな人は居ないだろうから。童心に帰れるだろ?さ、どんどん遊んで」

    ト「はい!」

    美「ホント、小さい子供みたい。上着も着ずに。寒くなーい?」

    尊「寒くないよー!」

    唯「大丈夫ぅ!キャハハー」

    若「ハハハー」

    ト「キャー!」

    源「なんだよトヨ、ハハハ」

    美「…いい景色ね」

    覚「…だな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    27日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days64~27日金曜6時45分、一枚から三枚

    奥の奥まで確認。
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    キッチン。覚が朝ごはんの準備を始めた。ラジオ体操後の、若君と源トヨが手伝いに入る。

    若君「お父さん、具合はいかがでしょうか」

    覚「いやぁ、ホント悪かったね。話が弾んで、ビールもクイクイいっちゃって。二日酔いはないから。で、今日の予定だけどさ」

    若「金曜、料理の日ですね。楽しみにしております」

    覚「明日の忘年会用の食材も買っておくから、スーパーにはそうだな、3時過ぎ位には行く。源三郎くんもトヨちゃんも、買い物のお手伝い頼むね」

    源三郎「お任せください。何でも運びます」

    トヨ「何なりとお申し付けくださいませ」

    覚「で、朝の内にね、僕と忠清くん二人だけで、違う店に食材受け取りに行くから」

    若「お父さんとわしとで、ですか」

    覚「あまり大勢で行くと邪魔になるし、よく手元が見えないと思うからさ。10時には行くって伝えてあるから。よろしくな」

    若「手元。はい、わかりました」

    美香子が二階から下りてきた。

    美香子「おはよう~」

    若君&源三郎&トヨ「おはようございます」

    美「忠清くん、ちょっといいかな」

    若「はい?」

    コンロ前から離れ、美香子の傍に来た若君。

    美「写真、こんなのがあったんだけど。どうかしら?」

    若「おぉ、それは。探していただきありがとうございました」

    写真を一枚受け取った若君。

    若「膝の上で眠る、幼い唯ですか。残念ながらお母さんのお顔が写っておりませんが」

    美「私は二の次なんで」

    若「これは愛らしい」

    美「今回、先に尊が永禄に飛んだじゃない」

    若「はい」

    美「大根アメ、持たせたわよね」

    若「はい。わしは見てはおりませぬが、たちどころに喉が治ったと、話には聞いております」

    美「唯に初めて大根アメ舐めさせた時の写真なの。喉が痛いって泣いてぐずってね」

    若「泣き疲れて眠ったと。ん?」

    美「あ、気付いた?」

    若「この、後ろに転がっておるのは…」

    美「転がってる!ホントその通りよね、尊よ。唯が泣こうが我関せずで、いつの間にかすやすや寝てたの」

    若「これまた実に愛らしい」

    美「でもね、この時のお父さんなんだけど、唯が眠った途端、おっカメラカメラ!って浮かれてて」

    若「フフフ。はい」

    美「で、私の斜め後ろに尊が寝てるじゃない。唯も尊も入るように色々角度を変えて構えてるんだけど、その前に、尊にタオルケットの一つも掛けてやってよって話で。私は動けないんだし」

    若「ハハハ」

    覚「それな、ベストショットを狙ってたんだよ~」

    美「一刻を争う訳じゃなかったでしょう。もう」

    ト「私も拝見してもよろしいですか?まぁ!なんて可愛らしい」

    源「おぉ」

    一段落した覚と、源トヨも覗き込む。

    美「で、こんなので良かったのかしら」

    若「はい!ありがとうございました」

    9時30分になった。覚が、車の荷台に発泡スチロールの空箱を何個も積み込んでいる。若君と源三郎も手伝い、最後に大きい台車を積んだ。

    覚「箱は、この位あれば御の字だろ」

    若「お父さん。察するところ、今から買い求めに参るのは、魚介ですか?」

    覚「正解!去年旅行行った帰りも、海鮮市場で大量買いしたもんね。今日も沢山買うよ~」

    若「スーパーではなく、ですか」

    覚「スーパーだとね、手順が見られないから」

    若「手順。ですか」

    覚「じゃあ源三郎くん、行ってくるよ。戻ったら、また荷物降ろすの手伝ってくれな」

    源「はい。行ってらっしゃいませ」

    車は駅近くの駐車場に停めた。台車に発泡スチロールのトロ箱を乗せ、ガラガラと押していく。

    覚「行くのはね、駅前の商店街の魚屋だよ」

    若「そうなんですか」

    店に到着。

    覚「おはようございまーす」

    若「おはようございます」

    店主「お、速川さん!随分な色男がお供だね」

    覚「娘婿連れて来たよ」

    店「そうかい。仕入れはバッチリだよ!ほら、いい鯛だろ?」

    若「鯛…」

    覚「早速、捌くのを見せてもらっていいかな。尾頭付きから」

    店「あいよ~」

    覚「さ、忠清くん前に出て。よく見える位置に」

    若「良いのですか?」

    覚「見せてもらえるよう、事前に頼んでおいたからね」

    若「それは…ありがとうございます!」

    鱗を取り、エラを外し、内臓が出され、中を水洗いし、拭き取った。

    若「ほぅ…」

    覚「家では鱗取りが大変でさ。少しは勉強になったかな」

    若「はい!」

    店「料理、好きなのかい。なら、三枚おろしも見てくかい?」

    覚「おっ、いいね」

    若「はい!是非お願いいたします!」

    プロの手際の良さに、ずっと釘付けになりながら唸っていた若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days63~26日21時、ルーティンです

    さすが、扱いが慣れていらっしゃる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    居酒屋。

    源三郎「わたくしが、お父さんを疲れさせてしもうたのでしょうか」

    若君「にしては、寝顔が笑うておる。充分語らえて満足していただけたのならば良いが」

    源「いかが致しましょう」

    若「うむ…」

    覚は、心地よさそうに眠っていた。

    若「目を覚まされるまで、わしらは飯を残さずいただいておくとしよう」

    源「はい」

    その時、

    源「何事?この真冬に虫か?!」

    近くで、ブーンブーンと音がする。

    若「ん…もしや。お父さん、御免」

    覚のポケットを探る若君。音は、スマホからだった。

    若「うーん」

    バイブがずっと作動している。画面には、美香子と出ており、電話がかかってきていた。

    若「どうすれば良いか、わからぬ」

    源「よく、尊殿や唯様が、板の上で指を滑らせておりますが」

    若「一向に止まぬ…」

    スマホに慣れていない若君は、うまくスワイプができていなかった。

    源「あ」

    若「止まった。お母さんの名も消えた」

    テーブルにスマホを置いた。悩める若武者二人。その時、店の電話が鳴った。

    おかみ「はーい。はい?あーこんばんは。ええ、ご主人寝てらっしゃいますね。お兄さん達が困ってます。はい、はい、伝えますね。お気を付けて」

    電話を切ったおかみが、若君と源三郎の元にやってきた。

    お「お兄さん達、安心してね。もうすぐ美香子先生が迎えに来ますからね」

    若「えっ?そうですか。わかりました。ご心配をおかけして済みませぬ」

    お「いつもの事ですんでね」

    若「いつも、ですか」

    程なくして、店の戸が開いた。

    美香子「こんばんはー。もう、すいません、いつもいつも」

    店主とおかみに会釈しながら、入ってきた美香子。

    美「お待たせ。ごめんねー」

    源「お母さん」

    若「お母さん。わざわざご足労頂き、忝のう存じます」

    美「お酒飲むとすぐ寝ちゃうんだから」

    若「思い起こせば、そうでした」

    美「ちゃんと話はできた?」

    若「はい、それは十二分に」

    美「そう。良かった。それだけが心配だったの。もうごちそうさまでいい?帰ろっか」

    若君&源三郎「はい」

    美「私、お会計してくるから。悪いけど、お父さんを運んでくれない?」

    源「わかりました。ならばわたくしが」

    源三郎が覚を背負い、若君が覚の靴とスマホを持った。

    美「お世話かけました~」

    若&源「ありがとうございました」

    店を出て、近くに停めた車の助手席に覚を乗せ、出発した。

    若「お母さん」

    美「なぁに?」

    若「大晦日、出掛けた先で、決着致しますので」

    源「ええっ」

    若「宣言しておかねばのう」

    源「励み、ます」

    美「それは楽しみね~。トヨちゃんの喜ぶ顔は、もっと楽しみよ」

    帰宅。若君と源三郎で、覚をソファーに寝かせた。

    源「これで、よろしいでしょうか」

    トヨ「源ちゃん、お疲れ様」

    美「ありがとね」

    唯「たーくんお疲れぇ。うわっ、酒くさっ」

    若「飲めば少しは臭うじゃろ」

    唯「少しじゃないよ」

    若「そうか?」

    唯「嫌だ、近寄んないで!」

    ムッとした顔で、若君を押しのけた唯。

    尊「兄さんがわかりやすく落ち込んでる」

    美「唯~。あんまり冷たくすると、ビールは敵だ!になっちゃうから。せっかく楽しんできたのに」

    唯「わかったよぅ。たーくん、はいお水。どーぞ」

    若「うむ」

    唯「でも接近禁止だから。って、聞いてる?なんで寄っかかってくるの!ちょっとたーくん、重い、重たいってばー!」

    尊「兄さんがわかりやすく酔ったフリしてる」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    26日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days62~26日19時、説法!

    集中攻撃も致し方なく。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    さて。変わってこちらは速川家。キッチンに、唯と尊とトヨ。

    トヨ「鍋に湯を沸かすのはわかりますが、こんなにも要るのですか?」

    コンロが鍋で埋め尽くされていて、どれも中は沸き始めたお湯。

    尊「要るんですよ」

    唯「ねー、そろそろ出しちゃダメ?どんなのがあるか見てみたい」

    尊「一度全部並べよっか」

    ト「並べる?」

    尊が大きなダンボール箱を持ってきた。中身を、食卓にドサっと出す。

    唯「こんなにあったんだ!すごっ」

    尊「妻への愛情が、この量にあらわれてるというコトで」

    覚が捻挫をした時に、美香子の炊事が楽になるよう大量に購入してあったレトルト食品が、まだわんさか残っていた。

    ト「食べられる物なのですか?」

    尊「そのまま開けて、ではなくて、お湯で温めるんですよ」

    ト「それでお鍋があんなに」

    唯「この写真、そそられるぅ!ビーフ、ストロノ?」

    尊「ビーフストロガノフ。何でちゃんとカタカナで書いてあるのに読めないの」

    唯「おいしけりゃなんでもいい」

    尊「はいはい。トヨさん、今日は四人でいろんなのを分け合って食べようと思ってます。もし気に入った献立があったら、帰る日までに再注文しますから、持ち帰ってくださいね」

    ト「まあ」

    唯「やったー!私の分も!」

    尊「それはいいけどさぁ。お姉ちゃん、頼むから、トヨさんの分まで永禄で横取りしたりしないでよ」

    唯「しないよ」

    尊「ホントかよ」

    唯「なぜなら、トヨの分は二人の愛の巣へ持ってってもらうから~」

    ト「愛の、巣?!」

    尊「あー。赤井家の備蓄として?」

    唯「そっ」

    ト「ええっ、それは選ぶのが大変!お品、よく見せていただいても良いですか?」

    唯「なんかすっかりその気だし。あー今ごろ、侍たちは何話してんのかなー」

    尊「お姉ちゃん、ちょっと」

    唯「なに」

    少しトヨから離れた二人。

    尊の囁き「今聞かなくてもいいっちゃいいんだけど、兄さんは、エロ侍じゃない」

    唯「ホントだよ」

    尊 囁き「はあ。それ、源三郎さんだと、どう表現する?」

    唯「あー。間違いなく」

    尊「間違いなく」

    唯「ヘタレ侍」

    尊「うわ。ヒドっと思うけど、否定できない僕が居る」

    戻って、居酒屋の三人。ますます熱が入っている。

    覚「あれだな。源三郎くんがある意味、のほほんとしてたのは、ライバル…恋敵が居なかったからじゃないか?いつでも俺の女に出来るぞなんて、思ってなかった?」

    源三郎「トヨはそんな一筋縄では…されど、恋敵は確かに居りませんでした」

    若君「ふむ…。例えばじゃ、もし小平太が、トヨを連れ込んでいる所に出くわしたらどうする」

    源「何ゆえそこで小平太殿なのですか」

    若「身近で、対等の立場の者じゃからの」

    覚「なるほどね。で、見ちゃったとして。さぁどうする!」

    源「それは、それは…うわぁっ!」

    覚「おいおい、パンクしてるな。大丈夫か?」

    若「早う答えよ」

    源「その後数日、様子を見ます…」

    覚「平和的だけど消極的だな。忠清くん、源三郎くんっていつもこんな風なの?」

    若「いえ全く。実に勇ましく優秀な家臣なのですが」

    覚「わかった。もうさ、結婚できないなんてなさそうじゃない。トヨちゃんのためにも、こちらに居る内に、愛してるよって伝える。そんでもって、プロポーズもする。あ、プロポーズは結婚してくださいって申し込みね」

    若「お父さん。これは、期日をはっきり決めた方が良いのでは」

    覚「それ賛成。じゃあ…年内!」

    源「年内!」

    覚「あと今日入れて6日ね。あ、今夜だと飲んだ勢いみたくなってトヨちゃんに失礼だから、あと5日だな」

    源「五日…一気に酔いが回ってきたような」

    若「散々放っておかれたトヨを思えば、五日でもかかり過ぎじゃ」

    覚「どう言うかとか、よく考えて。でさ、何なら大晦日にそうしたらどうかな。そしたらゆっくり言葉も選べるだろ?」

    若「大晦日は確か、夜に出掛けるのでは?」

    覚「行くのは遊園地だからさ。昨日のイルミネーション、良かっただろ?あそこまでキラキラじゃないけどさ、遊具とか光の装飾で、愛の言葉を囁くにはいい感じの場所だよ」

    若「三日三晩考えても、まだ余裕があるのう。精々、励め」

    源「はぁ…」

    覚「あのな、源三郎くん。親の立場として言うけどさ」

    源「はい」

    覚「親鳥はね、ヒナを孵す為に温めはする。だがヒナは、生まれる時は自力で殻を割って出てくるんだよ」

    若「なるほど。どうお膳立てしても、最後は己の存念一つ、であると」

    覚「そうだ」

    若「お父さん。わしの心にも響きました。わかったな、源三郎」

    源「…はい」

    場所変わって、またまた速川家。

    美香子「スープも惣菜も山ほどだけど、白いご飯あるから、丼もどう?」

    尊「豚丼と、あと麻婆茄子丼があるよ」

    唯「トヨ、どっちがいい?」

    ト「あの…両方でも良いですか」

    尊「了解しました。鍋に投入します」

    美「えーっと、何時になった?8時半か…」

    唯「宴会、きっと盛り上がってるよね」

    美「でもそろそろ、危ないのよねぇ」

    唯「そうだった」

    尊「あー、確かに」

    ト「?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    そろそろ?もう少し続きます。

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    四人の現代Days61~26日18時、全て泡とならぬよう

    罪作りな千原じい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「泡をよけながらというか。そうそう」

    若君と源三郎が、上唇に泡をつけながらビールを飲んでいる。

    源三郎「これは美味い」

    若君「この苦味がまた良いですね。何杯でも、は頷けます」

    覚「気に入ってくれたかー。良かった。じゃあさ、お品書き見て、食べたい物あったら注文して。話はそれからだ」

    テーブルの上が注文した料理で一杯になり、ビールが三人とも中から大に変わった所で、覚が話を切り出した。

    覚「源三郎くん。まずさ、君が躊躇している一番大きな理由を、忠清くんに話しな」

    源「はい。あれは忠清様と唯様の祝言の日取りが決まり間もない頃。わたくしは、元次様に呼ばれ、屋敷まで参じました」

    若「うむ」

    源「酒の席が用意されておりました。人払いをされ、二人きりとなった時に切り出された話が、千原を名乗らないか、と」

    若「なんと」

    源「赤井氏に拘りがなければ、忠清様の祝言が済んだら如何かと仰せられ」

    若「それは、今初めて耳にしたが」

    源「あくまでも祝言の後とのお話でしたので、一切他言されておられなかったようです。わたくしは謹んでお受けすると答えまして、大層喜んで頂きましたが、元次様が旅立たれましたので、話も立ち消えとなった次第」

    若「そうであったか。それで?」

    源「酒が進むにつれて饒舌になられました。その内、元次様からふと口をついて出た言葉が」

    若「うん」

    源「くれぐれも、天野由来の妻は娶るな、と」

    若「え?」

    源「トヨを名指ししてはおらぬと思います」

    若「で、あろうの。二人の仲を知る者は極僅かであるし」

    源「今となっては、本意はわかりません。かなり酒が入っておりましたし、笑いながら話されましたし」

    若「若かりし頃ならともかく、そこまで目の敵にする程、いがみ合ってはおらなんだと心得ておるが」

    源「はい。わたくしも、天野様側から聞いた覚えはありません。ただ、それが元次様と話した最後となりまして」

    覚「それで、呪縛のように今でものしかかっているんだね」

    若「おぬしはどう思うておるのじゃ。元次の意に従うのか?」

    源「いえ、トヨを妻として迎えたいと願うております」

    覚「でも、その言葉が引っ掛かって」

    源「はい…。忠清様」

    若「何じゃ」

    源「そこで、折り入ってお願いしたき儀がございます」

    若「申せ」

    源「両家、と申しますか、元次様と信茂様の確執がどこまで根深いかはわかりませぬ。ただ、元次様がどのようなお考えであったにせよ、信茂様にお許しを頂けるのであれば、トヨと夫婦になれるのではと思うておるのですが。甘い考えでしょうか」

    若「じいが許さぬとは思えぬがのう。そのように拘っておっては、小平太に縁談があっても進まぬやもしれぬゆえ。わかった。わしが上手く話を運び、許すとなれば良いのじゃな」

    源「はい!永禄に戻りました折には、どうか、どうか宜しくお願い申し上げます」

    横に居る若君に向かって、深々と頭を下げた源三郎。

    若「それでか。じいの絵を土産にしようと。機嫌を取ろうという算段であったか」

    源「はい」

    若「ハハハ。おぬしの焦りはようわかった。何ゆえ、もっと早うわしに話さなんだのじゃ」

    源「縁組みを持ちかけられようとは、露とも思うておりませんでしたので」

    若「トヨを待たせてしもうておる。縁組み云々の前に、動くべきじゃった」

    源「悔いております。また、髪を切らせてしもうた事も」

    覚「え?それ、関係ある?」

    源「トヨが、女中だから、髪は短くても構わぬのだと申しました。早々に妻として迎え、城から下がり女中でなかったならば、あの美しい黒髪を切る謂われもございませんでした」

    覚「源三郎くん。それは違うと思うな」

    源「そうでしょうか。わたくしめが逡巡しなければ、早う娶っておればと」

    覚「だからか。髪切った日さ、源三郎くん、有り得ない程ヨレヨレだったじゃない」

    源「トヨに顔向けできぬと思うておりました」

    覚「でも彼女、誰かに指図されたんじゃないしさ」

    若「切ると決めたのはトヨじゃ」

    源「…」

    覚「令和に来たから、トヨちゃんがヘアドネーションを知ったじゃない。来ない方が良かった?」

    源「いえ、それは微塵も思うてはおりませぬ」

    覚「だからね、なるべくしてなったんだよ」

    若「源三郎は、気に病まんでも良い」

    覚「そうだよ。でさ、逆にここに来なかったとする。永禄で、忠清くんの力を借りたとして、いつ、トヨちゃんに結婚の申し込みをしたかな?」

    源「それは…」

    覚「一向に進まなかったんじゃないか?あれよあれよと、どこかのお姫様がやって来て」

    源「…仰せの通りだと思います」

    覚「話を整理するよ。源三郎くんとトヨちゃんは愛し合ってる。源三郎は結婚したいと思ってるが、思わぬ壁が立ちはだかった。でもこの件は、忠清くんの力で何とかなりそう」

    若「はい。壁は直ちに消え去りましょう」

    覚「さすがだね。で、問題はその後だ。あのさ、まさかと思って、前回相談受けた時に聞かなかったんだけど」

    源「はい」

    覚「好きだよ、とも言ってないんじゃない?」

    源「…はい」

    覚「やっぱり」

    若「お父さん」

    覚「ん?」

    若「それならば、わしも夫婦となる前には申しておりませぬ」

    覚「君達は、ずっと離ればなれでその機会がなかっただけだろ?それに、事が落ち着いてすぐ、結婚しようって伝えたんだろ?思わせ振りな態度を続けた訳じゃない」

    若「そうですね。どうじゃ、源三郎」

    源「お言葉が、胸に刺さります」

    覚「何も言わないなんて、僕にしたら考えられない。でもなー、出来ないモノは仕方ないのかなー」

    若「お父さんの金言は、この忠清も、しかと心に刻んでおります」

    覚「そうかい。ありがとう。じゃあそれ、源三郎くんに教えてあげてよ」

    若「言わなくてもわかるなどない。愛するおなごには愛しておると、気負わずに伝え続ける」

    源「…その壁、越えられそうにありません」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days60~26日木曜13時45分、とりあえず

    冬にこんな冷たい飲み物を?とも思うよね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    そろそろ、クリニックが午後の診療に入る。

    覚「夕方には出かけるつもりだ」

    美香子「あの店だったら5時には開くから、早めに出ればいいんじゃない?」

    覚「そうするよ」

    美「じゃ、忠清くん源三郎くん。今夜の外呑み、楽しんできてね」

    源三郎「はい」

    若君「ありがとうございます」

    美香子がリビングから出ていった。

    若「お父さん。今宵向かう店は、しばしば行かれておるのですか?」

    覚「そうなんだよ」

    唯「あのね、うまいビールが飲みたい!って、お父さんたまに叫ぶんだよ。そーゆー時、晩ごはんは家族全員でそこに行ってたの」

    尊「その居酒屋、料理も美味しいんです。あと、僕達もその日はジュース飲み放題になるんで、わりと楽しみにしてました」

    若「そうであったか」

    そうこうする内に、16時30分になった。

    唯「外、もう暗いよ」

    覚「そろそろ出るか。忠清くん、源三郎くん、行けそうかい?」

    源「はい」

    若「お父さん」

    覚「ん?何かあった?」

    若「残る皆の晩飯は、支度せずとも良かったのですか?サラダ、は冷やしてありますが、仕事を終わられてから始めては、遅うなります」

    覚「これが、大丈夫なんだよ。ほぼ支度要らずなんだ」

    若「そうなんですか」

    尊「そうなんですよ」

    唯「どーぞ気にせずぅ」

    若「?」

    覚「じゃあ、行ってくるよ」

    尊「行ってらっしゃい」

    トヨ「行ってらっしゃいませ」

    唯「えーと…そう、ご武運を、祈る!」

    若「ハハハ」

    源「行って参ります」

    三人連れ立って歩き出した。出て行く様子が、クリニックから見える。

    芳江「あら。ご主人、息子さん達とお出かけですか」

    美「そうなの。三人で飲みに行くって。主人ね、源三郎くんの悩み相談だって言ってるのに、ずっと楽しみにしてたのよ」

    エリ「後姿は、お二人とも実の息子さんみたいですよ。ご主人も上背がおありですから」

    美「ホントね。綺麗に階段状」

    若君、覚、源三郎と身長順に並んでいる。

    美「尊の背だと、主人と忠清くんの間ね」

    エ「四人ともスラッとされてみえるから」

    美「三人とも、私が産んだみたい?」

    芳「ふふ。自慢のご子息ですね」

    店に到着した三人。そこは、駅前の道から少し入った所にあった。

    覚「夫婦二人だけでやってるんだ。入ろう」

    ガラガラと引き戸を開ける。中に入ると、カウンターと座敷があるが、こじんまりとしていた。

    店主「いらっしゃい」

    覚「こんばんは。座敷、いい?」

    おかみ「どうぞ」

    四人席に、一方に覚、若君と源三郎は並んで座った。

    覚「あぐらでいいよ。家だとさ、椅子ばっかりだもんな。こっちの方が楽だろ?」

    若「そうですね」

    源「ありがとうございます」

    周りを見渡す若君と源三郎。店内は、年季の入った壁や柱が、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

    若「何と申しますか、永禄に通ずるような」

    源「心落ち着きます」

    覚「そう?そりゃ良かったよ。おかみさん、まずは生中3つと、串の盛り合わせと、そのカウンターにある筑前煮とポテトサラダ、頼むよ」

    お「速川さん、生中でいいんですか?いつもは生大なのに」

    覚「え?!ひとまずは。おかみには敵わないなー」

    お「フフ、今お持ちします」

    早速、キンキンに冷えたジョッキに、ビールが注がれていくのが見える。

    若「お父さん、わしらに遠慮なさらずとも」

    覚「いやいや、君達ビール初めてだからさ、万が一、口に合わないといけないから、まずは合わせて普通サイズからね。ははは、おかみにあぁ言われるとは思ってなかったな」

    若「気心が知れておるのですね」

    お通しの揚げ出し豆腐、ビール、筑前煮と運ばれてきた。

    若「これが、ビールですか。並々と入っております」

    源「量が随分と」

    覚「日本酒と比べるとびっくりする量だよね。でもね、これが何杯でもいけるんだよ~」

    若「俄には信じ難いですが」

    覚「だよね。じゃあジョッキ持って。この持ち手を握るんだよ」

    若君&源三郎「はい」

    覚「では、乾杯!」

    若&源「乾杯!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男性陣の身長は、若君179cm、尊176cm、覚174cm、源三郎172cm、となっております。

    続きます。

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    四人の現代Days59~25日18時、春遠からじ

    様子見ですな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    瑠奈が走り去ったのを確認して、合流した五人。

    唯「髪の毛サラッサラでさぁ、かわゆい女の子だったじゃなーい!」

    尊「んー、よくわからないけど」

    唯「これでも気ぃ使ったんだよ?たーくんと源三郎見て、あっちのお兄さん達の方がいい!ってならないように隠してさぁ」

    尊「自分が困るからでしょ。あ、四人の説明はね、二人の姉とその旦那さん、になってるからよろしく」

    唯「お。じゃあなんかあれば、話を合わせろって話かー。この後またバッタリ会うかもしんないしね」

    若君「心得た」

    源三郎「わ、わかりました」

    トヨ「はい!」

    唯「では、いよいよ一回りしますか」

    尊「うん。待たせてごめんなさい」

    歩き出した五人。前に唯と若君。腕を絡ませている。後ろに、尊、源三郎、トヨと並ぶ。

    尊「あのですね」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「ここではぐれたりしたら、大変なんです」

    源「確かに」

    ト「そうですね」

    尊「手を繋ぐとか、前の二人みたいにくっついててくれませんか?」

    源「尊殿とですか?」

    尊「うわぁ、マジで答えてるからツッコミができない。いや、僕はいくらでも両親と連絡が取れますから、一人で大丈夫なんで」

    源「と、なれば」

    ト「え」

    尊「そうしてもらえると、僕は助かるんです。離れて歩かれるより、あぁやってひとかたまりになってくれてた方が目が届きやすいんで。もうすっかり辺りも暗いですし」

    源「…心得ました。そのような訳ならば」

    源三郎が、サッと手を出した。

    源「ほれ」

    ト「…」

    手を繋いだ源トヨ。

    尊「これで安心。僕も引率の任務を全うできそうです」

    源「尊殿、あの」

    尊「はい?」

    源「ありがとう、ございます」

    ト「あ、あの、ありがとうございます」

    尊「礼を言われる程ではないでござる。あれ、上手く戦国言葉に変換できてないや」

    源「ハハハ」

    ト「ふふふ」

    広い場所に出た。見渡す限り無数の電球で、全体が動画のように、景色が変わっていく。

    唯「すごーい!」

    若「桜が咲いたかと思えば、鳥が羽ばたき、紅葉が散り。見事じゃのう」

    唯「ロマンチックぅ」

    若「その言葉、聞き覚えがあるような」

    唯「こんな場所で告白なんてされたら、イチコロだよぉ」

    若「イチコロ…立てなくなるのか?」

    唯「へ?うん、まぁだいたい合ってる」

    若「そうか…」

    唯「ふふっ。たーくんが今何考えてるか、当ててしんぜよう」

    若「申してみよ」

    唯「作戦会議がもっと早かったら良かったんじゃないか、そしたら今日、源三郎が告白する手はずを整えられたのに」

    若「さよう。合うておる」

    唯「やっぱしね。まっ、お父さんに相談するからさ、なんとかなるんじゃない?」

    若「わしもそう願う」

    源トヨは、隣には居るが二人の世界になっていた。

    源「いつまでも見ていられるな」

    ト「うん」

    源「麗しい」

    ト「なんで私見て言うの。あちらでしょ」

    源「…」

    ト「え?」

    そんな姿を、ウンウンと頷きながら見ていた尊。

    尊 心の声(平和っていい。あ、忘れてた)

    スマホを取り出した。グループLINEをチェックするが、

    尊 心(うわっ)

    二人ピースサインの写真をあげてすぐ、グループ全員から矢継ぎ早に投稿されていた。

    瑠奈の投稿『ばったり会ったのー!』

    尊の投稿『ほんの偶然です』

    投稿1『めっちゃお似合い!』

    投稿2『速川、この時期に余裕じゃね?そうか、お前ら実は付き合ってたってオチな』

    投稿3『春だね~』

    投稿4『二人いつもと感じ違わないか?』

    投稿5『淋しい受験生に見せつけかよ。あ~羨ましいったら』

    投稿6『もー、早く受験終わって欲しい、彼氏作りたーい!』

    瑠 投稿『運命かもー!なぁんて(*^^*)』

    尊 心(どう返すといいんだろ。無下に違うって書くと、総攻撃に遭いそうだし)

    唯「尊~?なにつっ立ってスマホ見てんのよ。あ、グループLINEどうなった?」

    尊「こうなってる」

    唯「どれ、お姉様が見てあげる。ん?」

    尊「騒がしいよね」

    唯「あんた、この写真すっごいイイ顔してる」

    尊「そう?加工が上手いからじゃないの」

    唯「そういうコトじゃなくて。たーくん、この写真見て。で感想言って」

    若「どれ。おぉ、なんと柔和な」

    尊「そんなに違いますか?」

    若「このおなごには、心を許せるとみえる」

    尊「意識ないですけど」

    唯「恋が始まる5秒前、って感じ?へへっ」

    尊「なに上手いコト言った気になってんの」

    時間を追う毎に、イルミネーションは輝きを増していきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    25日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days58~25日17時30分、甘酸っぱい

    駆け寄ってくる姿なんて、ときめかないか?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イルミネーションそっちのけで、尊を囲んでいる四人。

    若君「尊、責めておるのではない。聞かせてくれぬか?」

    尊「わかりました。実は、この前クラスメートとLINEを交換したんです」

    若「共に学んでおる仲間と」

    唯「連絡先を交換ね。二人、ここまでわかる?大丈夫?」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「グループLINEにも入って」

    唯「えっとね、1対1じゃなくて、一度に何人も同じ画面見られるって言うか。つーか、すごい進歩じゃん!グループLINEまでなんてさ」

    尊「口車に乗せられて」

    唯「なにそれ。イヤならすぐ、グループ抜ければいいのに」

    尊「嫌ではない。みんな色々しゃべってるのを眺めてるだけだし」

    唯「あっそ。で?」

    尊「で、さっき、グループにこんなのが投稿されて」

    スマホを出した尊。LINEの画面が表示されている。

    唯「見ていいの?どれどれ。…大学推薦通ったご褒美兼ねて、家族でイルミネーション観にきてまーす!あれっ」

    若「これは、この地の入口の写真では?」

    尊「そうなんです」

    唯「じゃあこの子、近くに居るんだ!へー。女の子だよね?」

    尊「そうだね」

    唯「いやん、運命?!」

    尊「違うと思う」

    唯「僕も来てる!って送ったら?」

    尊「嫌だよ、グループになんて」

    唯「なんでよぅ」

    若「此処で会えたとなれば、相手のおなごも喜ぶのではないか?」

    尊「そうは思いますけど」

    唯「んー、その子さ、友だち追加はしてる?」

    尊「してるよ。その子がLINE聞いてきて、グループに入ったから」

    唯「じゃあ、グループ通さずに話せるじゃない」

    尊「そうだけど、恥ずかしいよ、急に個別にLINEなんて」

    唯「そんな事言ってるとさー、この広ーいテーマパークの中でなんて、絶対会えないよ?」

    若「尊よ」

    尊「はい」

    若「一歩踏み出す勇気は、必要じゃ。のう、源三郎」

    源三郎「はっ!はい…」

    唯「わかったでしょ。たーくんの言う事は聞くよね~」

    尊「…」

    唯「どの子?画面出して」

    渋々、女の子とのトーク画面を開いた尊。

    唯「LUNA。って名前?」

    尊「アルファベットで書いてるんだよ。名前が瑠奈だから」

    唯「へー。るなちゃん。かわいい名前だね」

    ちょいちょいと操作した唯。

    尊「うわっ!何すんだよ!呼び出してる!」

    唯「電話した方が早いって」

    尊「勝手に触んなよ!あっ、もしもし…」

    唯「おっ、つながった」

    尊「ごめんなさい、急に電話して。うん、LINE見た。実はさ、僕も同じ所に来てるんだ。うん、うん、そうなんだ、マジで。え?ここは…光のトンネルの前。近くに居るの?家族と一緒なんでしょ、…いいの?じゃあ、待ってるね、はい、はい、じゃ。…ふぅ」

    唯「ほらー。電話して正解だったでしょ」

    尊「うん…」

    若「会えそうで良かったのう」

    源「今、尊殿の違う一面を拝見しました」

    トヨ「口調がとてもお優しくて」

    唯「やっぱし?私も思った!ねぇねぇ、気になる子?」

    尊「そんなんじゃないよ。ヒトとの距離の取り方がよくわからないから、強く言わないだけ」

    唯「そーかなー」

    若「唯、我々が共に居ると話もしづらかろう。しばし離れるとしよう」

    唯「あ、そうだね。では、さらばじゃ。健闘を祈る!」

    尊「大袈裟だし」

    唯達が遠巻きに見ていると、道の向こうから女の子が一人、走って来た。

    瑠奈「速川~!わぉ、本物だ!」

    尊「こんばんは」

    瑠「え?一人?」

    尊「ううん」

    チラっと唯達の方を見る尊。若君と源三郎は向こうを向き、唯とトヨだけが、こちらに手を振ったり会釈したりしている。

    尊「姉夫婦が帰省してるんで」

    瑠「ふぅん。前も家族でカラオケに来てなかった?仲いいね。お姉さん二人と、旦那さん達と来てるんだ?」

    尊「あ。うん、そう」

    尊 心の声(良かった。都合良く勘違いしてくれて)

    瑠「一緒に写真撮ろうよ、で、グループに載せる。みんな驚くよ!」

    尊「いいの?色々勘ぐられたりして、困らない?」

    瑠「別に、困らないけど」

    尊「そう?」

    瑠「あ、速川的にマズい?彼女にバレたら大変とか」

    尊「彼女なんて居ないし」

    瑠「そう、なんだ」

    尊「ん?」

    瑠「え?はーい、撮るよー!」

    自撮りモードで、顔を寄せてピースサインをし、写真に収まった二人。

    瑠「サンキュ。すぐあげとくねー。コメントもしてよ?激似の他人と思われないように」

    尊「うん」

    瑠「じゃ、これで。ごめん、親に何も言わずに来ちゃったの」

    尊「あー、だから走ってたんだ。ごめんね、急がせちゃって」

    瑠「え…速川、優しい!」

    尊「そんな事ないけど」

    瑠「やっぱりジェントルマンだよ」

    尊「ははは。それ、前にも言ってたね」

    瑠「ありがとう、電話してくれて。また学校でね!…学校じゃなくても、いいけど」

    尊「え?ごめん、何?最後声小さくて聞こえなかった」

    瑠「ううん、何にも。じゃあね、バイバーイ!」

    尊「さよならー」

    瑠奈は、手を振りながら走っていった。

    尊 心(何を呟いてたんだろ?)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    瑠奈ちゃんは、17話no.863に出てくる女子高生2の子です。

    続きます。

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    四人の現代Days57~25日17時、説明せよ

    むやみに騒ぐは愚かな事、だから?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イルミネーションを観に、7人全員で車2台に分乗して移動中。なぜか男性車と女性車になっていた。

    美香子「珍しい。てっきり唯は忠清くんと同乗だと思ってたわ」

    唯「トヨと話がしたかったから。ねぇ!トヨ!源三郎さ、愛し合う二人って言った時、否定しなかったね!」

    トヨ「驚き過ぎて、声が出なかっただけではないですか?」

    美「でもその後すぐ、尊とは話してたわよ」

    唯「イイ線いってると思うなー」

    美「明日の晩、お父さんと忠清くんと源三郎くんで呑むって話じゃない。それ、作戦会議だと思うのよねー」

    唯「トヨを射止めるには?いや、もう恋に落ちてるし」

    美「お嫁さんになってください、じゃない?」

    ト「えっ」

    唯「そっか」

    ト「いえ、違うかもしれませんし」

    美「うーん。心で願ってる分、そう思われてなかったら、って考えちゃうと、怖いわよね」

    ト「はい…」

    唯「なにがいけないんだろ」

    美「源三郎くんに、何かしら踏み込めない理由があるのかもね」

    唯「それが何だよって話でさ」

    ト「わかりません…」

    美「こちらに居る内に、いい知らせが聞けるといいわね」

    唯「ホントだよ」

    男性車。

    覚「忠清くんは、すっかり車はお手のモンだね」

    若君「この助手席、は見晴らしもよく気に入っております」

    尊「お姉ちゃんが居ると、絶対並んで後部座席ですもんね。今日は珍しく、女子こっち~って言って別々だけど」

    もうすぐイルミネーション開催中のテーマパークに到着。

    覚「5時の点灯式には間に合うな。忠清くん、去年他の場所で見たみたいにさ、暗がりからパッと明るくなるよ」

    若「それは楽しみです。のう、源三郎」

    源三郎「このように遠方までお連れ頂き、見聞を広められ、お父さんお母さんには感謝ばかりでございます」

    尊「…」

    尊は、スマホを見ていた。

    覚「尊、もう着くけど、スマホは連絡しやすいようにしといてくれな」

    尊「あ…うん」

    覚「聞いてるか?」

    尊「聞いてる聞いてる」

    覚「はいはい、スマホは仕舞え。着いたぞ」

    車を停め、入場した。日が落ち薄暗い中、かなりの人が集まっている。

    唯「もうすぐっ」

    若「うむ」

    若君の腕にしがみつく唯。その隣に尊、そのまた隣に源三郎とトヨ。

    尊「あの」

    源「はい」

    尊「僕らに遠慮しなくていいですよ、もっと二人寄り添ってもらって」

    源「あ、いやいや!」

    ト「そのような!」

    美「あ、私達がお邪魔かしら」

    覚「ちょっとよけるか」

    源トヨの後ろに居た両親が、その場を離れようとしている。

    源「いえ、あの」

    ト「ここにいらしてください!何も、ありませんから」

    源「…」

    美「あらま」

    覚「そうかい?」

    もうすぐ17時。カウントダウンが始まった。

    尊「この声が、3、2、1、0で、0になったら光りますよ」

    源「声を合わせておるのですね」

    ト「皆、わかっていらっしゃると」

    点灯。一気に、全方向の景色が光で浮かび上がった。

    唯「わぁ!」

    若「おぉ。美しいのう」

    源「これは、なんともはや」

    ト「見とれちゃう…」

    唯「さてと。じゃっ、ラブラブカップルは自由に行動してね」

    覚「ラブラブって?僕らの事言ってるのか?」

    美「あなた達はどうするの」

    唯「うちらは尊にくっついて歩くからさ」

    美「連絡できるのは尊だけだからね。じゃあお父さん、せっかくなんでちょっとの間、お言葉に甘えますか」

    覚「わかった。じゃあ晩飯で合流するか。6時半にまたここでどうだ?」

    唯「了解~」

    若「お父さん、お母さん。クリスマスデート、楽しんできてくだされ」

    美「まぁ、気を遣ってくれたの。嬉しいわ」

    覚「じゃ、後でな」

    尊「またね」

    両親は並んで歩いていった。

    若「尊、世話をかけるが」

    尊「いえ…」

    唯「ねぇ尊」

    尊「…は?」

    唯「あんた、さっきからなんかおかしいよ?」

    尊「何が、だよ」

    唯「ソワソワしてさ」

    ト「どなたか、探しておられるのですか?」

    尊「え」

    源「車の中でも、少し虚ろであらせられました。何かあったのですか?」

    若「そういえば話しぶりが緩慢であったな。いかがした?」

    尊「いえ、何でもないんで」

    唯「尊~。有り体に申せ!」

    尊「嫌だよ」

    若「尊。有り体に、申せ」

    尊「…はい」

    唯「ちょっと、その態度なに」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days56~25日14時、さりげなく

    揺れる度に、心は弾む。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはん後。7人全員でトランプをしている。

    唯「ババ抜きだとさ、スタートが一人7枚とか8枚で、少なっと思うけど」

    尊「なかなか揃わないからいいでしょ」

    唯「まーねー」

    若君のカードを覚が引く。

    覚「うわっ」

    美香子「ちょっとお父さん、また~?分かりやすく反応しないでくれない?」

    覚「忠清くんは、ジョーカーをサラっと流してくる」

    若君「フフ、お父さんに導かれておるのでしょう」

    尊「わざと取るよう、仕向けてるようには全く見えないのがミソだね」

    覚「いいんだ、こうした処世術に長けていれば、戦国の世でも役に立つしな」

    唯「そんな大きな話?」

    美「負け惜しみに聞こえなくもないけど」

    覚「はいはい、じゃあ母さん引いて」

    覚のカードを美香子が引く。

    美「私は引き当てないわよ?どれにしようかな、これだ!はい、揃った、上がり~」

    覚「やられた~!」

    尊のカードを源三郎が引く。

    尊「なんかすいません、両親ばっかり騒がしくて」

    源三郎「いえ、仲睦まじくていらっしゃる」

    源三郎のカードをトヨが引く。

    トヨ「そうね。あら、揃ったわ。手持ちがなくなった」

    源「お前も引き当てるの上手くないか?」

    美香子が大きく伸びをした。

    美「んん~。さてと、唯」

    唯「なにー」

    美「この後着替えるでしょう。あの赤いセーター、ちゃんと用意してある?」

    唯「うん」

    尊「へー、珍しい」

    唯「たーくんが出してくれた」

    尊「は?」

    若「昨夜の内に在処を確かめ、セーター二枚と、足を覆う品を」

    美「タイツも?」

    若「はい。共に」

    美「まぁ。さすが忠清くんね」

    覚「わかった。あれだろ、直前でないないって騒ぐのが目に見えてるから、早めに動いてくれたんだな」

    唯「なによ、失礼なー」

    若「フフッ」

    唯「…失礼な」

    15時40分。出かける準備中。唯と若君が着替えて部屋から下りてきた。

    ト「まぁ、なんて、なんて」

    お揃いの赤いセーターを着た二人を、うっとりと見つめているトヨ。

    唯「ペアルックってかなりベタだとは思うけどー、やっぱ気分はアガる。ぐふふ」

    ト「愛し合うお二人が揃いの御召し物。すごくいいと思います!」

    若「揃い、か」

    唯「お揃いがいい。お揃い…」

    源三郎とトヨは、当然ながらバラバラの服装。

    唯「あ、ひらめいた!取ってくる!」

    何かに気づき、二階に駆け上がっていった唯。

    美「そろそろ支度出来た?あれ、唯が居ない」

    尊「部屋に何か取りに行ったみたいだよ」

    美「忘れ物かしら」

    若「いえ、多分、揃いの品を見繕うております」

    美「お揃いって?」

    唯が戻って来た。

    唯「お待たせー。はい、これトヨに。こっちは源三郎に」

    ト「え、これは」

    源「あの、花の入った」

    唯が出したのは、ほぼ同じ形に作られたレジンアクセサリー二つ。両方とも、短いチェーンが付いている。

    尊「それ、僕が作ったヤツだ。根付っぽく使ってもらえるといいなって」

    唯「これならお揃いだし、ちょうどジーンズにさぁ」

    輪になったチェーンの留め具を外し、トヨのジーンズのベルト通しに引っ掛けて留め、ぶら下げた唯。それを見て、源三郎のジーンズの同じ位置に付けてあげた尊。

    尊「完成ですね」

    唯「ペアルックじゃないけど、愛し合う二人にぴったし~」

    ト「ええっ!」

    唯「自分で言ってたクセに」

    ト「いえ、それは唯様と忠清様のお話でっ」

    源三郎は、真っ赤になったまま動かなかったが、

    源「尊殿…」

    尊「はい?」

    源「こちらの品は、尊殿が唯様と忠清様に差し上げるべく、お作りになったのでは」

    尊「そればっかりじゃないですから。いつか来た時に土産に渡そうと思って、大量に作ったんで。こちらに居る内に使ってもらえて、僕は嬉しいですよ」

    源「そうおっしゃられるならば、身に付けさせて頂きます」

    尊「よく見るとお揃い、っていいですよ」

    源「痛み入ります」

    美「さて、みんな、準備万端ねー?」

    覚「そろそろ出かけるぞ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days55~25日10時30分、サービス!

    この絵、使徒、じゃない使途は未定。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「服はさ、これまんま写せばいいから楽だよね」

    若君「うむ」

    何枚かの試作の後、じいのコスプレ画を描き上げた若君。

    トヨ「まぁ、とても似ていらっしゃる」

    源三郎「忠清様、お見事でございます」

    覚「今にも動き出しそうだ。いや~凄いな」

    唯「たーくん、天才!」

    若「天才?」

    尊「天賦の才って意味です、兄さん」

    尊登場。

    覚「もうそんな時間か。…お?」

    スマホを取り出す覚。

    覚「母さんからLINEが来たぞ。えーと、まだちょっとかかる、申し訳ないけど先始めててってさ」

    尊「了解。兄さんすごいね。絵まで描けるなんて」

    若「然程でもないがの」

    唯「ねー尊、これに色つけてプリントアウトして欲しい。お土産にするから」

    尊「そうなんだ。じゃ、実験室に行きますか。お母さんも忙しそうだし」

    唯「では、移動~」

    源三郎&トヨ「わかりました」

    若「お父さん、行って参ります」

    覚「行ってらっしゃい。母さんには、ゆっくり用事済ませなって伝えとくよ」

    実験室。パソコンの画面に、じいの絵が表示された。

    源「この箱で、色を付けるのですか?」

    尊「はい、そうです。また後で紙にして出しますね。兄さん、まず髪の色はどうしますか」

    若「髷は、灰がかかっておる」

    尊「全体に白髪ではないんですね」

    唯「そのあたりさぁ、カラーで印刷する意味なくない?もう、赤とかにしといたら」

    尊「何でだよ。そんなエキセントリックな」

    ト「鎧でしたら、赤備えでも良いのではないでしょうか」

    唯「あー。天野のね」

    若「そうじゃな。ならばこの装束を朱にするか」

    尊「…汎用ヒト型決戦兵器っぽいな」

    唯「なにそれ」

    尊「何にも。ただの一人言」

    唯「じいと鎧かぁ。黒羽城で夜中にね、廊下でガシャンガシャン音がするから何かと思って外に出たの。そしたら、じいと千原じいが夜討ちじゃ~って、鎧着て小突きあいながら出てくトコだったなぁ」

    源「元次様の最期の日、ですか」

    唯「あ、思い出させちゃってごめんね」

    尊「その千原じい、って、もう居ない…人?」

    唯「うん」

    若「源三郎は、千原の筋じゃからの」

    尊「そうなんですね。何というか、そちらは戦が日常で、壮絶じゃないですか。やっぱり僕は永禄では生きてゆけないな」

    若「そうか?尊は切れ者ゆえ、充分渡り合えると思うが」

    尊「兄さん、そういう勧誘はちょっと…」

    唯「ダメだよ~。こいつまた、モコモコの靴下はいてくるよ?」

    若「あぁ、あの洒落た」

    ト「ぷっ」

    源「フフッ」

    尊「はは…このネタ、引きずるなぁ」

    ワイワイ言いつつ、色つけ終了。プリンターから音がし始めた。

    ト「え?この箱から、床の下を通ってあちらに出るのですか?」

    尊「えーと、床下は通らないですが」

    じいのコスプレ画完成。

    源「おぉっ」

    ト「まぁ、鮮やかですね」

    若「ハハ、良いの」

    尊「でもこれ、本人に渡す時に何て説明するの?」

    唯「縁起モンですって言っとけばいいんだよ。たーくんが描いたってだけで、超ゴキゲンになると思うし」

    尊「見た目は魔除けに近いけど」

    ト「御利益ありそうですよ。ふふふ」

    源「はい、喜ばれるかと」

    尊「キャラ的にはアリですか」

    実験室のドアがノックされている。

    尊「はーい」

    開けると、美香子が顔を出した。

    尊「あ、お母さん。お疲れ様」

    美香子「ごめんね、遅くなって。ちょっと早いけど、お父さんがお昼にするって言ってるの。もう終わりそう?」

    尊「ちょうど終わった所。もういいよね?」

    唯「今何時?11時15分か。わかったー」

    若「尊、難儀をかけたのう」

    尊「いえいえ」

    ぞろぞろと、全員実験室を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days54~25日水曜6時20分、画伯!

    いずれは永禄でお披露目しただろうけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君と源三郎の朝稽古が終わり、リビングに戻ると、ちょうど美香子が二階から下りてきたところだった。

    源三郎「おはようございます!」

    美香子「おはよう。朝から元気ね~。見てるとこちらもやる気出てくるわ」

    若君「お母さん、おはようございます。ちょうど良かった。ちとお願いしたき儀がございまして」

    美「あら、何かしら。じっくり聞く話?」

    若「いえ、そうではございませぬので、手短に話します。唯の幼き頃の写真を、一枚で良いので分けていただけませぬか。先日作りました写真立てに入れたいのですが」

    美「幼いって、あの位?」

    リビング奥の写真コーナーの、赤ちゃんの写真が飾ってある場所を指差す母。

    若「それは、お任せ致します。できれば、今まで飾っておらぬ物であると幸いですが」

    美「んー。そうね。私達の寝室にしまってある写真もちらほらあるから…それ、急ぐ?」

    若「いえ、急ぎませぬ」

    美「わかったわ。見繕っておくわね」

    朝ごはん後。

    尊「お母さん」

    美「なに?」

    尊「この後、諸々用事あるだろうけどさ、何時頃終わりそう?」

    美「そうねぇ。10時半には終われるといいかなって所。どうして?」

    尊「みんなでトランプやりたい。どうせなら7人全員で」

    唯「ほー」

    トヨ「それは嬉しいですね」

    美「ははーん。カラオケ行った日、出かけるまで勉強しろって隔離されたのがよっぽど嫌だったのね?」

    尊「今は受験勉強が最優先なのはわかってるから、それはいい。今日はさ、お母さんが空くまではキッチリ籠って勉強しようと思って」

    覚「時間制限付きか。中々いい進め方だ」

    美「わかった。じゃあ私と尊は、その時間にここに集合にしましょう」

    尊「うん」

    尊と美香子がリビングを出ていった。

    唯「10時半まで待機?」

    覚「別に、それこそトランプしてりゃいいじゃないか」

    唯「夕方って何時に家出る予定?」

    覚「イルミネーションの点灯が5時だから、そこから観たいんだったら…出発は4時だな」

    唯「じゃあ、午前中も午後も、尊の望みを叶えてトランプな感じかな」

    源トヨが、不思議そうな顔をしている。

    源「あの、畏れながら」

    若「何じゃ。源三郎」

    源「そのイルミネーション、と申す物ですが、どのような」

    ト「光が灯るのですか?」

    唯「あー、そういえば全然説明してなかったかも」

    覚「そうか。これだよ、って画像見せるとネタバレになっちゃうからなあ」

    若「うむ。無数の灯りで、風景が輝くと申すか」

    源「それは…壮麗でございますな」

    覚「今日行く所はね、何もない所に絵が出てきたり、その絵が動いたりするんだよ」

    ト「光の絵が動く?」

    唯「感動すると思うー。私もそこのは、テレビでしか見たコトないけど」

    ト「まぁ…」

    源「益々楽しみでございます」

    トランプを出してきた唯。カードの一番上が、ジョーカーだ。

    唯「…」

    ト「唯様、どうされました?」

    唯「思い出した。たーくん、あの絵ってさ、実は持って来てたりする?」

    若「あの絵?」

    唯「じいの」

    若「あ…あれか。持ち帰ってはおらぬ」

    ト「天野様の、絵?」

    唯「たーくんがね、じいにこのジョーカーの服着せた絵、描いてたの。それがね、すっごく上手だったのー!」

    覚「忠清くん、そんな才能まであるんだ。イケメンが何でも出来るなんてズルい…いや、最強だよ」

    唯「こっちで、もう一度描いてよ」

    若「なんと」

    源「絵を嗜まれるなど初耳でございます。是非拝見しとう存じます」

    ト「わたくしも是非」

    唯「はい、決まりー!」

    若「唯…そのように、事を大きゅうせずとも」

    唯「またまたぁ。照れちゃってぇ」

    覚「よし。僕も見たいから、筆ペンと半紙取ってくるよ」

    若「お父さん、それは」

    唯「困ってるぅ。かわいいっ」

    描く準備が出来上がった。

    若「うむ…」

    唯「たーくん、がんばってぇ」

    覚「忠清くん、折角だからさ、出来たらその絵をパソコンに読み込んで、色を付けたりしてもいいんじゃないか?それを持って帰ってもいいし」

    若「おぉ、それは土産にうってつけですね」

    唯「じいに?それは喜ぶ…」

    源「信茂殿に?!それは良い手土産でございます!是非、是非に!」

    ト「源ちゃん、何よ?そんな声張り上げて」

    唯「びっくりしたー。なに身を乗り出してんの?源三郎に関係ある?」

    源「は、いや、その」

    若「何ぞ思うところがあるのか」

    源「は、はぁ…」

    若「まあ良い。では、描くと致すか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days53~24日19時45分、忖度します

    無言の圧が凄い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母の仕事が終わった。

    美香子「お待たせしちゃったわね、始めてくださいな」

    覚「はい、じゃあ皆、クラッカー持って~」

    若君「これはの、先を上に向け、紐を引かねばならぬ」

    源三郎「大きな音が出るばかりでなく、そのように気を遣い、使う品だと」

    トヨ「小さいお品ですのに」

    覚「さあ、用意はいいか~?じゃあ源三郎くんトヨちゃん、さっきも言ったけどさ、僕がメリークリスマスって言ったら、メリークリスマスって言って引っ張ってくれ」

    源「心得ました」

    ト「はい!」

    覚「行くぞー、メリークリスマス!」

    六人「メリー、クリスマス!!」

    パパパパ、パン、パン!

    ト「何、何が出てきたの?舞ってる!」

    源「大蛇か?!」

    唯「大きい音出るって教えといて良かったね。充分びっくりしてる」

    パーティーが賑やかにスタート。

    唯「ローストチキン、分けて分けて~」

    美「はいはい」

    手早くチキンを捌く母。

    美「はい、召し上がれ」

    源「ありがとう、ございます…」

    ト「源ちゃん?どうしたの」

    源「幼き頃、このように母に飯を取り分けてもらったのを、思い出した」

    ト「そう。いい思い出ね」

    美「あら、実のお母様と重ねてもらえるなんて嬉しいわ~。そんな可愛いい息子に、ミニトマトとレタスも付けてあげよう」

    源「はっ、忝のう存じます」

    唯「源三郎~、それは違うておるぞ」

    尊「何でそこだけ戦国言葉?」

    源「え、違うとは」

    唯「ママありがとう!だよ」

    源「ママ…」

    尊「ムチャ振りが甚だしい」

    源「ママ様、ありがとうございます!」

    唯「なんでそうなる?」

    尊「だからー」

    美「うふふ、源三郎くんはホント、真面目でいい子ね~」

    覚「おーい、ピザ焼きたてだぞ~、テーブルどこか空けてくれ~」

    食卓が、カロリー高めな皿で埋め尽くされている。

    唯「そういえば、何にも聞かないんだね、今日のデートの話」

    覚「そんな野暮な事はしない。聞かれたいなら別だが」

    美「あ、でもそのはめてる指輪、とっても華奢で綺麗ね。もしかしてもしかする?」

    若「わしが贈りました」

    ト「まあっ!」

    源三郎の囁き「トヨ、声が大きい!」

    トヨの囁き「ご、ごめん、つい」

    唯「もういいかな…あ、たーくん、ほら!」

    今度はすんなり指輪が抜けた。

    若「それは何より」

    覚「そんな事やってると、落っことすぞ?」

    ト「わぁ…見せていただいても良いですか?」

    唯「どーぞー」

    ト「蝶と花ですか。素敵…」

    美「良かったわね~唯。宝物ね」

    唯「うん!」

    食卓の上が片づいてきた。

    覚「そろそろケーキいくか?」

    唯「待ってましたっ」

    尊「デートで食べたんじゃないの?よく入るよな」

    唯「あれはパンケーキ、これはクリスマスケーキ。モノが違う。え、なに!二つもあるの?!ヒャッホー!」

    覚「どこから声出してるんだ」

    美「定番の生クリームにイチゴのと、もう一つはチョコレートケーキなのね」

    源「どちらも甘味でございますか?」

    尊「味は少し違いますけどね」

    覚が切り分けている。

    唯「あ、ケーキ入刀忘れてた」

    覚「あ?そりゃ済まんかったな」

    ト「入刀?」

    唯「ホントは、結婚式、えーと祝言の時にやるんだけどね。二人で一つのナイフ持って、初めての共同作業!って」

    ト「祝言ですか。いいですね…」

    少しうつむいたトヨ。速川家五人が、一斉に源三郎を見た。その視線におののく源三郎。

    源「いや、あの」

    覚「…さぁ、切り終わったぞ」

    若「…お父さん、ありがとうございました。いただきます」

    唯「…いただきます」

    尊「静かに事が進んでる」

    美「はいはい黙らない。ねぇトヨちゃん、ケーキはどう?」

    ト「はい。この漆黒のケーキ、風味が良いですね」

    覚「お、気に入ったかい?そりゃ良かった。ビターチョコだからね。大人な味だ」

    唯「ねぇ、たーくん」

    若「何じゃ」

    唯「パンケーキもこの位甘さ控えめなら良かったのにー、って思ってない?」

    若「少しは」

    唯「だよね~」

    尊「お姉ちゃん、また兄さんに無理させたの?」

    唯「してないよー、してない…はず」

    若「ハハハ」

    尊「笑ってるからいいけどさー」

    話は尽きず、夜更けまで仲良く集いました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    24日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days52~24日18時45分、星だけが見ていた

    寒さをものともせず。むしろ暖がとれそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    立てないと甘える唯を抱え、ようやく自転車の荷台に乗せた若君。

    唯「あ、宵の明星見っけ」

    唯が、空を指差した。若君も見上げる。

    若君「夕星か」

    唯「ゆう…なに?」

    若「ゆうづつじゃ。同じ星を指しておると思うが」

    唯「へー。そういう名前もあったんだ」

    若「どんな呼び名であれ、永禄も令和も、空は変わらぬじゃろ」

    唯「そうだね。こっちでは、なかなかこんなには見えないけど」

    若「こんな?あぁ」

    穿いているラメ入りのタイツを撫でる唯。

    唯「あの星いっぱいの夜ね、たーくんと両想いってわかって、すっごく嬉しかった。私、一生忘れない」

    若「わしも、あの夜は生涯忘れぬ」

    唯「あ」

    若「あ?」

    唯「よーく考えたら、お前を思うって告られた後、次に二人っきりになった時には、結婚しようって言われた」

    若「まぁそうだが」

    唯「たーくん、手が早くな~い?」

    若「早いとは何じゃ。聞き捨てならぬの」

    唯「怒った?キャー!」

    若「これ!」

    自転車をぴょんと降り、逃げようとした唯だったが、

    唯「わ、わっ」

    若「危ない!」

    バランスを崩し転びそうになった唯を、すんでの所で後ろから抱きかかえた。

    若「先程まで、立てぬと申しておったではないか」

    唯「そうでした」

    唯を支えながら立たせ、自分の方に向かせた若君。

    若「立てるか?」

    唯「うん。ありがと。もう…帰る時間だね」

    若「うむ。7時には戻らねばならぬ」

    唯「約束してたもんね」

    若「甘味の店で申したが」

    唯「うん?」

    若「時が進むにつれ、尻すぼみになってはおらなんだか?」

    唯「なってない、全然なってないよ」

    若「そうか」

    唯「デート、どうするかとかいっぱい考えてくれてありがとう。…あのぅ」

    若「何じゃ?」

    唯「もう一回、だけ」

    若「もう一回。壁ドンか?」

    唯「違う」

    若「ならば追いかけっこか」

    唯「違うぅ、たーくんの意地悪っ」

    若「ハハ、わかっておる」

    若君が、辺りをぐるりと見渡す。

    若「姫、誰も居りませぬ」

    唯「ふふっ、よろしい。あ」

    脇を抱えられ、再び荷台に乗せられた唯。

    唯「これ正解。またたーくんに骨抜きにされても安全」

    若「何も特別な事はしてはおらぬがのう」

    サドルに手をつき、体をかがめて優しくキスをした若君。

    若「帰るぞ」

    唯「はい!」

    走り出した自転車。

    唯 心の声(たーくんが、特別なんだってば!今日のデートも、一生忘れない、忘れないから)

    さて。その頃の速川家。

    トヨ「はは、あははは!痛い、お腹の皮がよじれる、もー源ちゃんったら!」

    源三郎「笑い過ぎだろ」

    尊「めっちゃツボに入ってるなぁ」

    源三郎がかけた変装道具の鼻メガネに、トヨが馬鹿ウケしている。

    尊「去年は僕がかけたんですよ。源三郎さん、貸してもらえますか」

    源「ははっ」

    尊がかけてみる。

    ト「まぁ」

    源「おぉ、そうなるのですね」

    ト「尊様にはとてもお似合いですね」

    尊「なんか複雑だな」

    玄関で物音がする。

    覚「お、ラブラブカップルのご帰還か」

    唯「ただいまぁ」

    若「只今戻りました」

    源三郎&トヨ「おかえりなさいませ」

    尊「お帰り、お疲れ~」

    唯「なに、もうそのメガネかけてんの?盛り上がってるねぇ」

    尊「お姉ちゃん達もね」

    唯「なにが」

    尊「口の周りがキラキラしてる」

    唯「あっ…もぅ、それはいいから!上着と荷物置いてくる、行こったーくん」

    二階に上がっていった二人。

    ト「尊様」

    尊「はい」

    ト「口元が、どうかしたんですか?」

    尊「あー。今僕から聞くより、後で姉にこっそり聞いた方がいいですよ」

    ト「そうですか。わかりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days51~24日18時30分、溶ける~

    策士あらわる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家リビング。テーブルセッティング中の覚とトヨ。

    トヨ「こちらのお品、美味しそうに焼けていますね」

    覚「ローストチキンって言うんだ。張り切って作ろうかなとも思ったけどさ、今回は市販品でごめんな」

    尊「今回…」

    覚「あ、早かったな、もう戻ってたのか。プレッシャーかけたつもりはないぞ~」

    尊が、ダンボール箱を持っている。

    源三郎「尊殿、わたくしが持ちます」

    尊「いえいえ、軽いし今から開けるんで。中身を一緒に出してもらえますか?」

    源「心得ました」

    ト「あら、随分と煌びやか」

    クリスマスの飾り付け用グッズが、わらわらと出てきた。

    尊「去年の使いまわしですけどね」

    ト「尊様。わたくし、この紙の輪に見覚えがあります」

    尊「あー、レイですね。お姉ちゃん達持ち帰ってますから」

    ト「唯様が大切に仕舞われておりました。このように丸かったのですね。形が崩れてでも残したかったと伺いました」

    覚「そうかー。去年唯達が帰ってから、皆さんに会えたまでの話は聞いてはいないが」

    尊「きっと、言わないだけで、色々大変だったんだろうな」

    変わって、デート中の二人。何度も通りを行き来していたが、

    若君「そろそろ戻らねばの」

    唯「うん」

    若「心残りはないか?」

    唯「うん!」

    再び、自転車で走り出した。若君にギュっと掴まる唯。

    唯 心の声(この後はクリスマスパーティー!楽しみっ)

    自転車が、黒羽城公園に入って行く。

    唯 心(ん?どこ行くの)

    どんどん奥へ進む。

    唯 心(公園突っ切って帰りは近道?そんな技まで身につけちゃったか~。やるぅ)

    建物が見えてきた。減速する若君。

    唯 心(へ?)

    自転車を降りた二人。きょとんとする唯。

    唯「この建物に用なの?もう閉まってる時間だけど」

    若君は微笑むばかりで、何も説明しない。

    唯「なに?…あっ」

    そこは…

    唯 心(ここ、壁ドンおねだりした所!)

    一年前と同じ場所。すっかり夜の帳が下りているので、周りには所々電灯があるが、その辺りはほの暗い。

    若「姫、此処へ」

    唯「…」

    促され、壁に背中をつける唯。

    唯「はは…こんなオプション、聞いてないんですけどっ」

    若君が右の掌で壁にもたれ、壁ドンの体勢に。

    唯 心(わぁ。なんか、くすぐったい)

    しばらく見つめ合っていたが、ゆっくりと顔が近づいてきた。

    唯「えっ」

    思わずうつむいた唯。横目でチラリと右を見る。

    唯 心(えっと、右、誰もいない)

    次に左方向をチラリ。

    唯 心(左も、よし。これで安心。って、なんで私が確認しなきゃいけないのー!)

    若「唯」

    呼ばれて反射的に顔を上げる。

    唯 心(キャー!近いよ!ちかいちかいち…)

    唇が重なった。

    唯 心(…)

    静寂に包まれている。

    唯 心(頭ぐるぐるする、甘い、甘すぎる、溶けちゃいそう)

    熱い時間が続く。若君の右腕は、肘まで壁についた。

    唯 心(攻めすぎだよぉ、濃いぃよぉ。あ、もうダメ、限界。溶けた)

    唯「はぁ…」

    若「唯?」

    膝から崩れるように、ズルッと下がり、へなへなとへたり込んだ唯。さすがの若君も、その様子に慌てている。

    若「どうした!具合が悪いのか?!」

    唯「イチコロですぅ」

    若「イチコロ?」

    唯「ノックアウトっす」

    若「ますますわからぬ」

    唯「わかってよぅ。具合は悪くない。力が抜けて立てないの」

    若「それは、一大事じゃな」

    唯「…なに気づいてニヤケてんの」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    デート終わりまであと少し。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days50~24日17時30分、狙ってる

    肖像権はどうなってるんだ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君「そろそろ、この地を出ようと思うておるが、良いか?」

    唯「うん。良いよん。自転車、私がこいであげよっか?」

    若「いや」

    唯「遠慮しなくってもー」

    若「ならぬ。そのような短い丈の…」

    唯「そうでした」

    出口に向かっていると、吹き抜けのある広いスペースに出た。随分と賑わっている。

    呼び込みの店員「ただいま福引をやっておりまーす!お買い上げレシートをご確認くださ~い!」

    唯「なになに?」

    近くの立看板を見る。どうやらモール内の全店舗対象で、合計購入金額が多い程、何回も引けるらしい。

    唯「パンケーキと指輪、金額足すと一回引けるなぁ」

    若「ならば行って参れ」

    唯「もう帰るからこれ以上増えないもんね。ではちょっくら」

    若君を置いてその場を離れようとした唯だが、ふと周りの様子に気がついた。

    唯 心の声(うわ、マジか!)

    唯「ねぇ」

    若「何じゃ、戻りおって」

    唯「たーくんも行こっ。ていうか、来てっ」

    若「一人では引けぬのか?ハハハ」

    若君の手を引っ張る唯。すると、周りに居た女子達の何台かのスマホが、スーッと引っ込んだ。

    唯 心(一体なに?一緒に写真撮ってくださいなの?!ううん、写真だけで済まなかったかも。怖っ、油断も隙もないっ。たーくんを守らないと!)

    ようやく抽選会場に並び、一回引いた唯。

    店「おめでとうございまーす、4等です!この中からお一つお選びください」

    唯「たーくん4等だって!5等のティッシュよりはいいかな?あっ、かわいい!これもらいまーす」

    会場を後にし、歩き出す。

    若「それは?」

    唯「サンタクロースのお人形~」

    赤い帽子赤い服、白髭のサンタクロースが、手のひらサイズで可愛らしく作ってある。

    若「サンタ、クロース?」

    唯「サンタさんの事だよ」

    若「サンタ、はサンタクロースが生来の名か」

    唯「うん。ごめん、私ずっとサンタさんって言ってたかも」

    若「忠清が、九八郎忠清のようにか?」

    唯「えっ?!それは、たぶん違う…」

    建物の外へ出た。

    唯「いよいよ?」

    若「駅前の通り、じゃな」

    唯「うん!この前木村先生と会った喫茶店から、ずっと行った所ね。楽しみっ」

    自転車をこぐ若君。通りが見えてきた。

    若君 心の声(おぉ…木々が輝いておる)

    唯「到着~。ねっ、キレイでしょ?」

    若「うむ」

    真っ直ぐ伸びる道の両側、街路樹がライトで装飾され、光の道になっている。

    若「この道を連れ立って歩くのが、夢じゃったと?」

    唯「うん!」

    照らされた歩道を、手を繋いで歩きだした。

    唯「一人で毎年見てた景色。たーくんと一緒に見たかったの。やっと、やっと~」

    若「来れて良かった」

    唯「えへっ」

    若「明かりが枝一本一本に、巻き付けてあるのう」

    唯「そうだね」

    若「細工が大変そうじゃ」

    唯「裏方の気持ち?」

    しばらくそぞろ歩いた。

    若「少し風が出てきたか」

    唯「ホントだ。でも寒くないよ」

    若「…そうか」

    唯「ん?ねぇ、それって寒いって言うとイイ事ある?」

    若「寒くはないのであろう」

    唯「えー。寒い寒いぃ。あっためてくれないと、こごえちゃうよ」

    若「フフッ」

    立ち止まる若君。唯の方を向く。

    唯「…え!」

    急に、強く抱き締められた。

    唯 心(キャーー!不意討ち!!街のみなさん、バカップルでごめんなさいっ。今、今だけだから許して)

    少し腕を緩めた若君。唯が見上げると、優しく微笑んでいる。

    若「冷えてはおらぬか?」

    唯「うん…」

    若「よし」

    再び、歩き出した。

    唯 心(はぁ~びっくりした。ドキドキだよぅ。このままキスされるのかと思った…ちょっと期待しちゃったけど、イカンイカン、ここは公共の場ですからっ)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days49~24日16時45分、贈ります

    優しい旦那様。たまにツッコミが入る。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって、速川家リビング。ケーキその他を受け取り帰宅した、覚と尊と源トヨ。

    覚「ここに置いてくれる?ん、ありがとな」

    源三郎「お父さん、あとは何をお手伝いすれば」

    トヨ「何なりとお申し付けください」

    覚「まだ時間あるからゆっくりやるよ。尊、例の話、しといてくれ」

    尊「はーい」

    尊が、部屋の隅に置いたビニール袋から、クラッカーを取り出した。

    尊「えーとですね。パーティー始める時に、これをこう引っ張るんですけど、大きい音がしますから、そのつもりでいてくださいね」

    源「そうなんですか」

    ト「それは、ご親切にありがとうございます」

    尊「兄さんが、驚かないよう説明しておいて欲しいって言ってたんで」

    覚「さすがにポップコーンで驚かせ過ぎたと思ったか?わからんが」

    尊「どんな風になるかは、後のお楽しみにしますね。今やると、掃除が大変なんで」

    ト「掃除!」

    源「掃除。わかりました」

    戻って、唯と若君。ウィンドウショッピング継続中。

    唯「アクセサリー屋さん、見てもいい?」

    若君「あぁ」

    店に入っていく唯。鏡がそこかしこにあり、映る唯が二人三人と増えていく。

    若君 心の声(唯が三人か。…手強い)

    唯「かわいいなー」

    一つ一つ顔を近付けて眺める唯。ライトに照らされ、表情も輝く。

    若 心(麗しい)

    唯「わぁ、この指輪、超かわいい!」

    手に取り、左手の薬指にはめてみる。

    唯「ねー、かわいくない?」

    若「これは、蝶が花にとまる様を模しておるのじゃな」

    唯「そーそー」

    一通り楽しんだ後、外そうとするが…

    唯「ヤ、ヤバい」

    若「いかがした?」

    唯「取れないの」

    ぐるぐると回してみるが、一向に関節を通過しない。ギューギュー引っ張る唯。

    唯「指むくんじゃったのかなあ。あとちょっとなのに!」

    若「これ、無茶はならぬ。指先の色が変わってきておるではないか」

    唯の手を取り、指輪を指の付け根に戻しつつ、優しくさする若君。

    若「痛々しい」

    唯「でも、どうしよう」

    若「そうじゃな…」

    若君が値札を確認する。

    若「うむ。これも何かの縁。買うてやろう。ならばこのまま身に付けておれるであろう?」

    唯「えっ、そんな!いいよ、だったら自分のおこづかいで買う」

    若「手持ちで足りるゆえ」

    唯「えぇぇ、悪いよぉ」

    若「一度、プレゼントなる物を買うてみたかった。この品を気に入ったならばそうしたい」

    唯「そりゃあ、もらえたらすっごく嬉しいけど…」

    若「ならば決まりじゃ」

    唯「なんか、ごめんなさい」

    若「謝らんで良い。よう似合うておるしの」

    唯「ホント?ありがとう」

    レジに向かった。若君が支払う。

    唯「あの、このままはめて帰っても…」

    店員「どうぞ。今日はそんなお客様多いです。気に入ったからこのままでって」

    唯「そうなんですか」

    唯 心の声(そんなラブラブな気持ちオンリーで、買って欲しかったなぁ)

    店「こちらお釣りとレシートです」

    若「はい」

    店「そのイヤリング素敵ですね。ついアクセサリーには目がいっちゃいます」

    唯「え、これですか!手作りで」

    店「まあ。とても器用でいらっしゃるんですね」

    唯「は、はは…」

    若「ありがとう。それでは」

    店「ありがとうございました~」

    無事購入完了。

    唯「ごめん。固まっちゃって、ちゃんとたーくんが作ってくれたって言えなかった」

    若「良い。細かい説明など要らぬ」

    左手をしげしげと見る唯。

    唯「プレゼントありがとう!大切にする!永禄にも持って帰るね」

    若「良い土産ができたのう」

    唯「もうちょっとがんばれば抜けそうなんだけど。パンケーキ、たーくんの分まで食べたからむくんだかなぁ」

    若「それはわからぬ」

    唯「もう人の分まで食べない、と」

    若「フッ」

    唯「鼻で笑ったな?」

    若「できぬ話をするからじゃ」

    唯「うっ」

    若「違うたか?」

    唯「違わない」

    若「であろうの」

    唯「ちぇー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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