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    続現代Days尊の進む道26~8月中旬

    無類の風呂好き?
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    今は夏休みですが、大学はちゃんと通っています。お話に出てこないので、尊行ってんのか?と思われていたかもしれません。これはひとえに、サークル活動などもせず人との交流を最小限にとどめて、タイムマシン作りや前回から始まった解読のお手伝いの時間を捻出しているからなんですが、この友人も作らないスタンスが頭を悩ませる場合もありまして。

    瑠奈「たけるーん」

    僕「お帰り。戻ってきたばかりなのに大丈夫?疲れてない?」

    瑠「だって早く会いたかったんだもん。はい、これは尊に、こっちは家族皆さんでどうぞ」

    僕「ありがとう」

    家族で数日旅行に行っていた瑠奈。お土産をすぐにでも渡したいとLINEが来たので、夕方、小垣駅近くのカフェで待ち合わせた。

    僕「お盆だからどこも混んでたでしょ」

    瑠「それは仕方ないって。でもうんざりする程ではなかったよ。でね、例の話!」

    僕「あ、うん」

    瑠「提案ありです。だからすぐにでも会って話がしたかったの」

    僕「旅行中も考えてくれてたんだ。ありがとう。どうすればいいかな」

    来月3日に、瑠奈が誕生日を迎える。どこに出かけるとかプレゼントは何がいいかとか、かなり悩んだ。けどやっぱり彼女の希望に沿うのが一番だと思い、どうしたいか考えてもらっていたんだ。そりゃさ、全くのシークレット、サプライズでとか憧れるけど、まだそこまでの経験も度量もないから腰が引ける。初めて祝う彼女の誕生日、失敗したくないし。

    瑠「家族6人の旅行は楽しかった。甥っ子ともいっぱい遊べたし。でもね、想像したの。ずらっと並ぶ会席料理とか、眺めのいい露天風呂とかね、尊と二人きりでこんな過ごし方できたら最高だなぁって」

    僕「うん…」

    瑠「だから、行ったばかりではあるけれどー、尊とも温泉旅行に行きたい!」

    僕「なる、ほど」

    遊園地とかアミューズメント系だろうと勝手に踏んでいたので、予想外の渋い答えに少し面食らっている。でもお任せにしたのはこちらなんだから、勿論仰せの通りに致します。と言いつつ、温泉旅行、ですか?!プールの日から、一言一句、一挙手一投足にハラハラドキドキなんですけど…

    瑠「言っとくけど泊まりじゃないよ、日帰り」

    僕「あ、そうなんだ」

    瑠「旅行サイト見てたらね、豪華な昼食付きのプランが割とあって」

    僕「へぇ」

    瑠「尊と泊まりで旅行、行きたいよ?誕生日の前日はちょうど満月だし。でもね、二人で行きまーすなんてまだ親に言えないでしょ。アリバイ工作しないと」

    僕「あー。泊まりなら、同性の友達と行くってしとかないとね。そうか…僕友達居ないから、誰と行くとか、つける嘘がないや」

    サークルのメンバーと旅行、なんて理由ならあっさり済むんだろうな。でも今まで話題にのぼらなくていきなりでは、嘘ってバレバレだし。あ~友達作っておけば良かった。そうではない?

    僕「ごめんなさい。希望どおりじゃなくて」

    瑠「希望どおりだよ?日帰りで行きたいって提案なんだから」

    僕「だって、瑠奈はミッキーさんや大学の友達と泊まるって言えば済む話なのに」

    瑠「それがね。そうは問屋が卸さないの」

    僕「どうして?」

    瑠「だってなんでもない日ならともかく、誕生日を絡めた日程で旅行なんて、ウッソでーす、ラブラブの尊と行きまーす!って言ってるようなモノじゃない?」

    僕「わざわざその日を選んで行くのは怪しいってか。平日だしね」

    瑠「第一、尊がバイトに来ない時点でお父さんにバレるのは必至」

    僕「そっか」

    瑠「だから気にしないで。でね!良さげな旅館あったから見てくれるかな」

    僕「もう探してくれたの?ありがとう」

    言われるままにスマホで検索。

    僕「山あいの旅館か。趣があるね」

    瑠「すごく寂れた感じの旅館だけど、露天風呂付きの部屋が選べるプランがあって!あとね、料理が美味しいって口コミが多いの」

    僕「ホントだ」

    今のところ、空きはあるから予約はできそうだな。え、部屋に露天風呂って事は…ヤバい、心臓が乱れ打ちしてる!何とか平静を保つ。

    瑠「距離がちょっとあるのだけが気がかりで。一日で行き帰りだと大変かな」

    僕「高速道路使えばそうでもないと思うよ」

    ナビを検索、と。

    瑠「どう?難しい?」

    僕「片道2時間位か。慣れない道だから余裕を持たせたいんで、朝早く出発して夕方も早めに現地を出れば多分大丈夫だよ。夜は家でご飯の方がいいでしょ?」

    瑠「誕生日は毎年、お母さんが張り切って豪華なディナーを作ってはくれる」

    僕「だったら尚更その方がいいよ。じゃあ、ここにしようか」

    瑠「うん!」

    僕「あと、プレゼント決めてよ」

    瑠「ううん。要らない」

    僕「へ?」

    瑠「旅行だけで充分だよ。だって車代、まだ完済してないでしょ。私にいっぱいお金使うよりそちらを優先して」

    僕「そんな。これは僕自身の事情で、瑠奈は関係ないのに」

    瑠「いくら親相手とは言え、借金は早めにスッキリさせようよ。ね」

    僕「はぁ~。ホント、いつも気を遣わせてごめん。どこかで何とか補填しないと…」

    瑠「あはは、そんなのいいのに」

    僕「あ、イイ事思いついた!多分だけど、クリスマスの頃には支払い終わってるだろうから、そっちのプレゼント代に上乗せするよ」

    瑠「えっ…クリスマス?」

    僕「遅いかな」

    瑠「ううん、全然!わぁ、どうしよどうしよ!えっとぉ、薬指のサイズは7号です」

    僕「ははは、そう来たか。おねだりが上手だ」

    瑠「ダメ?」

    僕「ううん。指輪だね。はっきり示してもらえるとこちらも助かる。わかりました」

    瑠「ホント?ホントに?!嬉しい!ちゃんと私にもクリスマス来るかなぁ」

    僕「えぇ?それは来るでしょ」

    瑠「ありがとうたけるん!どうしよう、誕生日もクリスマスもすっごく楽しみ~」

    こんなに喜んでくれるなんて、僕こそありがとうだよ。急いで予約…旅館の予約だなんて!浮き足立ってるのは僕も同じだな。

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    次回、瑠奈の誕生日です。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道25~8月上旬

    その冊数は、生き永らえた証拠。
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    先月末に、木村先生からメールが届いていた。

    覚「欠員が出たのか」

    僕「一人、旦那さんの転勤で急遽、らしいよ」

    その打診された内容がもう、飛び上がる程嬉しくて!二つ返事で引き受けたんだ。

    美香子「声をかけてくださった先生に感謝しなくちゃね」

    僕「うん。この為の時間はタイムマシン作るのに充ててた所から捻出するけど、いい?」

    覚「いいぞ。当然そうなるだろ。瑠奈ちゃんとのデートの時間を削る訳にはイカンし。彼女には何て説明したんだ?」

    僕「木村先生の手伝いとだけ。ちょっと遠くない?とは言われたけど、信頼されてて腕も見込まれたんだね、すごいねって褒めてくれた」

    美「俄然やる気になるわね」

    僕「もう、楽しみで仕方ないよ」

    覚「こんな貴重な体験、またとないしな」

    美「それに、忠清くんも絶対喜ぶ」

    覚「間違いない」

    今日ようやく先生と都合がついたので、まず簡単に説明を受けた後、現地へ一緒に向かう。待ち合わせ場所はいつものCafeMARGARET。

    木村「おー、尊くん。待たせたね」

    僕「先生!こんにちは。出校日お疲れ様です」

    木「まぁ夏休み中は毎日ではないから。あ、僕もアイスコーヒーで」

    店員「かしこまりました」

    木「ふう、いや~しかし暑いな。どう?元気でやってるかい?」

    僕「はい」

    木「そうかそうか」

    まずは涼をとってもらった。その後テーブルの上に出されたのは、地図などの印刷物数枚と、首から下げる名札らしき物。

    木「メールでも伝えた通り、主に頼むのは解読した資料の清書。他にも細かな作業をお願いするかもしれないが。そんなんでいいかい?」

    僕「はい。あの」

    木「ん、何でも質問してくれ」

    僕「僕みたいなズブの素人で、本当にいいんですか?」

    木「勿論だよ。こういう類いの作業はな、興味が全くない人間には苦痛なだけだから。君が快諾してくれてこちらは万々歳だよ」

    僕「お礼を言うのは僕の方です。両親も喜んでるんですよ」

    木「親御さんまで!ほ~、それはまた」

    先生がずっと携わっている、御月家ゆかりの物と推測される古文書の解読。そう、兄さんが書いた日記だ。何とこの度、そのお手伝いをさせて貰える事になりました!やったー!!

    木「念を押すけど、ほぼボランティアだぞ?いいのかい?」

    僕「はい!関われるだけで充分なんで」

    木「そう言って貰えると実に有難いよ。これが作業の日程表。大体土日や平日の夕方だ。無理せず来れる時だけでいい。皆さんそうしてるから気にせずにな」

    僕「はい」

    木「車は地図のこの丸付けた所に停めてくれ。で、この名札が入館証も兼ねるから」

    僕「はい!」

    いよいよ、僕の車で移動する。御月家ゆかりの地にある、大きい会館の一室で作業しているとの事。

    木「この辺りは来た事はあるかい?」

    僕「いえ、初めてです」

    羽木家の皆さんが逃げおおせた地。興味はあったけど、兄さんの本当のお墓とか、あとお姉ちゃんのそれとか…見ちゃったら絶対大ダメージ受けるから、逆にずっと避けてきたんだ。まさかこんな機会を与えられて訪れるとはね。

    僕「街並みとか、思った程田舎じゃない印象です」

    木「御月家が幾度もの戦乱をかいくぐって民を守り、末永く繁栄したからこそだ。だが」

    僕「何かあるんですか?」

    木「先見の明があるというか、いつどこでどんな戦が起きるかとか、わかっていて動いていた印象なんだよ。まさかとは思うがな」

    それは、兄さんが現代に居る間に後世の勉強をしっかりしていたからなんですよ先生。とは、言いたくても言えない。

    僕「治めていた人物が、革新的な考えの持ち主だったんじゃないですか?」

    木「なるほどな。良い読みだ」

    到着し、作業場所の会議室に入る。緊張!

    僕「こんにちは…」

    中には3人居た。日によってまちまちらしい。一通り挨拶を済ませると、先生が実物を見せてくれると言う。いよいよ兄さんの直筆とご対面!

    僕「わぁ…」

    僕も手袋をはめて触らせてもらった。

    僕「かなり保存状態が良いですね」

    木「だろ?この辺りは読み易くて助かる」

    一枚めくってみる。あぁ。読めはしないけど、兄さんの字なんだろうな、ってのはなんとなくわかる。変な言い方だけど、懐かしいような、親近感がわくような。

    僕「古文書は、ここに並べてある冊数で全てなんですか?」

    木「そうだな」

    何冊あるんだろ。生涯書き続けた感じの量だ。

    木「マメというか律儀というか」

    僕「そうですね。きっと素敵な人ですよ」

    お姉ちゃんの話がチラっとでも出てくるといいな。あと、子供や源三郎さん達の話題も。

    木「パソコンはこれを使ってくれ」

    開くと、解読済みの日記が現れた。でもただつらつらと書いてあるだけ。これは読みにくい。何とかしたいなぁ。

    僕「文章のレイアウトって、変えてもいいですか?」

    木「あー、君のやり易いようにしてくれていいよ」

    僕「見やすいよう一日毎に番号をふって、その時歴史上何があったとか、最終的に年表と照らし合わせできるようにしましょうか?」

    木「いいのかい?それは助かる。ゆくゆくは広く一般公開するかもしれないしな。いや~、我ながら、適任をスカウトした」

    僕「あはは」

    兄さん。生きた証、残してくれてありがとう。教科書には載らないかもしれない。でもきっちり伝えていきます。直接会えるのはちょっと延びてしまうかもしれないけど、僕、頑張るよ。

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    次回は、盆明けの頃です。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道24~8月4日17時

    四の五の言わず!
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    プールを大満喫し、ミッキーさんを家まで送ってきた。

    僕「はい。お疲れ様でした」

    みつき「センセありがとー!楽しかった!」

    瑠奈「みつき、今日はありがとね」

    み「どういたしまして。じゃあ瑠奈」

    瑠「うん?」

    み「グッドラック!」

    瑠「うん!」

    僕「?」

    み「またねー」

    僕「ではまた。さよなら」

    瑠「バイバーイ」

    僕「さてと。じゃあ次は瑠奈の家に」

    再び出発しようとしていると、

    瑠「ねぇたけるん」

    僕「ん?」

    瑠「家まで、ちょっとの間だけど運転代わってあげる」

    僕「そんな。大丈夫だよ。疲れてないから」

    瑠「この車運転してみたいの。ね、お願い」

    僕「へぇ、そう。わかりました」

    お望み通り、運転席と助手席を交代した。

    僕「ではお願いします」

    瑠「うん…」

    車が走り出した。

    僕「あの」

    瑠「はい」

    僕「方角って…」

    瑠「いいの。わざと遠回りしてるの」

    僕「はは、練習?」

    景色が、随分と華やかになってきた。ラブホテルが林立している。この道通らなきゃダメなのかな…。

    僕「へ?」

    ウインカーを出した瑠奈。その中の一箇所に…入ろうとしていた!

    僕「え、嘘!ちょっ、ちょっと待って!!」

    入る直前で、路肩に寄せて車が止まった。ハザードランプが点滅している。

    僕「ふう。落ち着け、落ち着くんだ…」

    瑠「…」

    僕「あ。あーなんだそうか、僕をからかってみたんだ。ね?」

    瑠「からかってません」

    僕「えぇぇ」

    瑠「大好きな尊と、もっと一緒に居たい。もっと近くで尊を感じたいと思ったから」

    僕「あ、ありがとう。嬉しいよ。でもそれにしたって…」

    瑠「嫌なの?」

    僕「一緒には居たいよ」

    瑠「一つ教えてください」

    僕「え?は、はい」

    瑠「私を欲しいって思ってくれた事、ある?」

    僕「それは…」

    瑠「…」

    僕「…はい。僕も一応男性の機能はあるから」

    瑠「一応って。そっか、良かったぁ。私に興味ないのかと思ってた」

    僕「興味はすごくあるよ」

    瑠「ホント?」

    僕「でも僕、何もわからないし…その…きっと幻滅させると思うんだ」

    瑠「そんなの、してみなきゃわからない」

    僕「してみないと。して、みないと?!」

    瑠「たけるん。懺悔します」

    僕「懺悔?」

    瑠「私、尊が初めてじゃない」

    僕「でしょうね」

    瑠「あのね。今まで彼氏はそれなりに居たけど、尊が誰より一番なの。今も尊敬してるし大好きだよ」

    僕「いつも褒めてくれてありがとう。光栄です」

    瑠「だから、初めても尊とが良かったなって思ったりするんだよね」

    僕「…」

    瑠「尊?」

    僕「あの、さ」

    瑠「はい?」

    僕「答えたくなかったら答えなくていいんだけど」

    瑠「何かな」

    僕「その、初めての時とかって、辛かったり、思い出したくないとかなの?」

    瑠「え。そんな事はないよ。当時一番好きな人とだったし嫌な思いはしてない」

    僕「そう。良かった」

    瑠「心配してくれたの?」

    僕「うん」

    瑠「嬉しい。ありがとう」

    僕「それもあるんだけど、嫌じゃなかったんなら、思い出を上書き保存なんてしなくてもいいんじゃないかな。きっと、元彼さんもいい思い出になってるだろうし」

    瑠「…尊って」

    僕「ん?」

    瑠「人間として完成してる。素敵」

    僕「そんなんじゃないよ。僕は瑠奈が初めての彼女で経験値が全くないから、口ばっかり達者でさ。ごめんなさい」

    瑠「やだ。謝んないで」

    僕「ならお礼を」

    瑠「お礼?」

    僕「こんな未熟な僕を選んでくれて、ありがとう。感謝してるよ」

    瑠「尊…」

    僕「本当に」

    瑠「感謝、感謝なんて…感動!」

    車を動かし始める瑠奈。

    僕「えっ!マジ?!もう?!」

    瑠「だって早く尊とイチャイチャしたい」

    僕「まだ、心の準備が」

    瑠「体の準備はできてるもんね」

    僕「ギク」

    瑠「ジーンズだったら目立たなかっただろうけど」

    僕「あぁっ、いや、その…」

    瑠「出発しまーす!」

    僕「うわー!」

    車は、ホテルの中に吸い込まれていった。やはり満月の日には、何かが起こる。

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    次回は。もうすぐお盆、の頃です。

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    続現代Days尊の進む道23~8月4日13時

    その滑りは見ものだ。
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    ここのプール、遊具とかの数は多いけれど、去年来た時はあれもこれもとは遊んでいない。海へ行く前の慣らし運転みたいなものだったし、お姉ちゃんなりに兄さんをあまり連れ回しちゃいけないって気遣ったんだろうな。そのお陰で僕は体力的に楽だった。でも今日は、様相がまるで違う訳で。

    みつき「ねぇねぇ、流れるプールそろそろ出ない~?くっついてるトコ悪いけど」

    瑠奈「えー。ウソウソ、出よっか」

    僕「うん」

    プールから上がった。

    瑠「次、どれにする?」

    み「んー。片っ端から行く」

    僕「片っ端!パワフルだなぁ。僕待ってるよ、二人で色々回ってきたら?」

    み「何その発言。遠慮してんの?」

    瑠「尊も一緒に行こうよぉ」

    僕「だってほら、浮き輪2つもあるし」

    み「は?センセ自分で言ってたじゃない。ここの充填機、一瞬で空気入るんでしょ?だったら一度抜いて畳んで、また使う時エアー注入でいいでしょうが」

    僕「ゲゲ」

    み「言うんじゃなかったって顔しない!」

    瑠「尊~、行けば絶対楽しいって」

    嫌ではないんだ。ペースの速さについていけるか心配なのと、あと一つ。

    僕「うん…でも、あの超高い直滑降のだけは勘弁して欲しい」

    み「あーあれね、はいはい。いいよ、了解」

    瑠「私もそれは苦手だから。あとは大丈夫?」

    僕「はい」

    み「決定!行くよ~」

    行くぞと腹を決めればそりゃ楽しい。そこそこ混んでいるのでどれも待ち時間があり、その間に休憩できてありがたいし。多少の罠は潜んでいるけれど。

    僕「ゲホッ、ゴホッ、あ゛ー」

    瑠「やだ!尊、大丈夫?」

    僕「あーびっくりした。鼻から水入った」

    み「傾斜ゆるいしって余裕かましてると、危ないよ~」

    僕「気を付けます」

    遊び方も学習しないとな。次に、ずらっとレーンが横一列に並んでいる滑り台にやってきた。何人も同時に滑れるんだな。

    瑠「せーのでスタートできるね。三人で競争する?」

    み「賛成~」

    先に滑ってる人を観察。途中平らになる所で止まりがちなんだな。ふむ。滑降スピードを上げるには、空気抵抗をできるだけ少なくする。接地面を少なくして摩擦を少なくする。これは理論より実践だな。よし、試してみよう。

    み「用意、スタート!」

    瑠「キャー!」

    み「ヒュ~!え、センセ速っ!」

    ゴール地点のプールに、猛スピードでダイブした。周りから歓声が起こっている。注目集めちゃった?

    み「ちょっとー、やるな!センセ」

    瑠「すごーい。リュージュの選手みたいだったよ」

    僕「力学的に考えた結果です」

    み「学習の成果を遊びで生かすとはね~」

    瑠「ねぇ、見て!後ろで待ってた子達、みんな尊の真似して下りてくる!」

    僕「へ?」

    み「あはは、ホントだ~」

    子供達が滑り台をわらわらと下りてきた。と思ったら、僕の周りに集まってきたぞ?わわっ、何!

    子供1「お兄ちゃん!お兄ちゃんみたいにしたらぼくもはやくすべれた!」

    子供2「とちゅうで止まんなかった!」

    子供3「すごーい!ありがとうお兄ちゃん!」

    僕「そうなんだ。役に立てて良かったよ」

    子供達は歓声を上げながら、再び順番待ちの列に走っていった。

    瑠「かーわいい」

    み「さすがセンセ、瑠奈だけでなくキッズまで虜にしてさ」

    僕「いやいや」

    昼ごはんの後も、次!はい次!と精力的に行動するお嬢さん方だ。でもついて行くのがそんなに苦じゃない。体力、備わってきている模様。

    み「ちょっと待たせちゃうけどごめん」

    僕「どうぞ。行ってる間に、浮き輪復活させとくよ」

    み「悪いね、よろしく~」

    瑠「行ってらっしゃーい」

    例の、高層ビル並みの高さから直滑降する大きい滑り台にトライすべく、一人喜び勇んで走っていったミッキーさん。

    瑠「尊、ちょっと顔が赤いかも」

    僕「あー。日焼け止めの効果以上に外に居たから仕方ないかな。瑠奈も少し赤くなってるような気がするよ」

    瑠「そっか。焼けちゃったかな。…後で尊に全身じーっくり見てもらお」

    僕「え?ごめん、聞こえなかった」

    瑠「何でもなーい」

    僕「?」

    ラストは、特大プールで波に揺られている。こっち使ってと小さい方の浮き輪を渡されたので、真ん中部分にお尻をスポンと入れ、空を見上げ一人プカプカと浮いていた。

    瑠「尊~」

    み「イェーイ!」

    バシャバシャと、超楽しそうに僕の前を横切っていくのを眺めている。こんな、夏を堪能してる風景の中に自分が居るなんてさ。なーんてぼんやりしていたら…

    僕「痛っ!」

    大きい浮き輪が飛んできた。そして、

    み「捕獲完了。時計回りでよろしく!」

    瑠「了解でーす」

    僕「へ?わー!」

    無防備に浮かぶ僕を、二人がかりでぐるぐると回転させ始めた!ひぇ~!

    み「センセ今、ほぼ意識飛んでたっしょ~」

    瑠「寛ぎ過ぎだってぇ。起きた?」

    僕「起きた起きた!目が回る!酔うって!」

    文句を垂れつつも楽しさが勝る。真夏の午後の気だるさを吹き飛ばすように、思い切りはしゃぐひとときだった。

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    そろそろ帰る、かな?

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    続現代Days尊の進む道22~8月4日11時

    ヘソ出しだったからか。
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    流れるプールのプールサイド。

    みつき「では私がこのシングル用の浮き輪でゆったりと。君達はカップル用でべったりと」

    僕「女性同士で使ってもらってもいいよ?」

    み「何遠慮してるの。はいはい、二人とも輪っかに入る!センセは後ろから瑠奈を支えるように!」

    瑠奈「はーい」

    僕「頑張ります…」

    流れに身を任せる。

    瑠「キャハハ~」

    み「あははは!たーのしーい!」

    僕「おっとっと、ははは~」

    最初は、僕達二人とも進行方向に体を向けていたのだが、

    瑠「あれ、いつの間に。みつきがあんな遠くに行ってる」

    僕「もうすぐ流れが急な箇所に差し掛かるんだよ。ほら」

    瑠「え、怖い!キャー!」

    僕「えっ」

    流れの速さに驚いた瑠奈。振り向いたと思ったら…わー!正面から抱きつかれた!

    瑠「…」

    僕「瑠奈、もう通り過ぎたよ。大丈夫」

    瑠「うん」

    僕「どうしたの?」

    瑠「このままがいい」

    僕「…」

    胸、めっちゃ当たってるし!!

    瑠「たけるん」

    顔を上げた瑠奈。唇が触れそうな程近い。誰も周りに居なければ、嬉しいシチュエーションなんだけど…どうにも恥ずかしい。

    僕「はい」

    瑠「一面の青空だね」

    空を仰ぐ。眩しい。

    僕「そうだね」

    目の前はもっと眩しいよ。

    瑠「夏のバカンス、最高!」

    再び僕の胸元に顔を埋めた。背中に回された両腕が、より一層キュ~っと締まる。ヤベぇ、平常心ではいられない!夏のバカンス、危険極まりないよ!

    み「お取り込み中ごめーん」

    急にミッキーさんが、流れに逆らいながら浮き輪を手に近寄ってきた。

    み「ちょっと上がる、浮き輪よろしく!」

    僕「どうしたの?」

    み「お腹の調子が。お手洗い行かせて」

    瑠「大変!すぐ行って!」

    そのまま三人ともプールから上がり、僕と瑠奈はトイレの前で待っていた。

    み「ごめんねー、お待たせ」

    瑠「大丈夫?」

    み「うん、もう大丈夫」

    僕「良かった」

    み「二人も今行っとく?」

    瑠「そうしようかな」

    僕「どうぞお先に」

    み「いいよセンセも。一人で待つから」

    僕「浮き輪、かさばるんで」

    み「確かに…私一人では持ちにくいかも」

    ミッキーさんと二人になった。

    み「ねぇねぇ、ちょうど瑠奈も居ないし、ぶっちゃけるけど」

    僕「何でしょう」

    み「プールサイドを歩いてた時の、瑠奈とセンセを見る、周りの男衆の視線の動きが一様に同じでさ」

    僕「あー、それ…僕もちょっと気づいてた」

    み「まず瑠奈を見て、抜群のスタイルと可愛いさにデレっとなる。でも瑠奈はセンセにベタ惚れでぴったりくっついてるから、次にセンセの顔見て」

    僕「何でオマエが相手?って顔するよね。ごもっともです」

    み「失敬な!って言ってやりな。で、そいつらは視線を下げて、股間で止まる」

    僕「うっ」

    み「どんなモノを持ってるんだと」

    僕「わー、モノ、ってそんな」

    み「もっとはっきり言った方がいい?」

    僕「いえ!結構です。そうなんだよ、やたらと見られてる。何にも持ってません。瑠奈と釣り合わなくてごめんなさい」

    み「思い出したんだよ。卒業間近の頃にさ」

    僕「はい?」

    み「センター試験直前に二人付き合いだしたじゃない。まさかこの時期!って、瑠奈を狙ってた男子達が後から悔しがっててさ。そいつらが似たような事言ってたんだよね」

    僕「え、どんな?」

    み「まさか速川に持っていかれるとは。絶対、すんげぇテクニックと立派なブツをお持ちに違いない」

    僕「そ、そんな」

    み「失礼だよねー。若造はそんな事しか考えないから」

    僕「は、はは…」

    み「あ、超絶テクとすんごいブツをお持ちではない、って言ってるんじゃないよ?そこは瑠奈の判断」

    僕「いやいやいや!判断も何も…」

    そこへ瑠奈が戻って来た。

    瑠「尊、お待たせ」

    僕「お帰り。では僕も急いで行ってきます」

    み「ごゆっくりー」

    瑠「行ってらっしゃーい」

    み「…瑠奈、さっきはマジごめん!いい雰囲気だったのに私のお腹のせいで」

    瑠「ううん、気にしないで。でね、みつき。私決めたの」

    み「決めた?」

    瑠「今日、尊との距離をゼロにする」

    み「…とうとう仕掛けちゃう?」

    瑠「うん」

    み「そっかー」

    みつきの囁き「さっきはタイムリーな話題だったか」

    瑠「え?」

    み「ううん、なんでもない」

    瑠「今日満月なんだよ。それもあって」

    み「満月、か。瑠奈にとっては特別な日だもんね。あ、帰ってきた。そんなに急がなくてもいいのに」

    僕「お待たせしました」

    瑠「お帰りぃ。じゃあ、流れるプールに戻ろうよ。行こっ、たけるん!」

    僕「うわぁ」

    み「入る前から抱きついてるし。果敢に攻めてんな~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道21~8月4日火曜9時

    速川家も中々の資産家だと思いますが。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いよいよ、プールの日。

    美香子「尊と瑠奈ちゃんと、もう一人女の子の三人なの?」

    僕「うん。瑠奈の親友で、元旦に彼氏と合流するまで神社前で一緒に待ってた子と」

    覚「あのお嬢さんか。安全運転でお二人をエスコートするんだぞ」

    僕「頑張るよ」

    美「その子はどんな子なの?」

    僕「潔いって形容詞がぴったり。僕にとってはお目付け役かな。今日は彼氏さんに快諾された上で参加。瑠奈に寄ってくる悪い虫を私が追い払う!って意気込んでる」

    覚「へぇ。姉御肌なんだな。尊にも色々ビシっと言ってくれるのか?」

    僕「うん。スパッと斬られてる」

    美「そうなの~。有難いわねぇ。そんな友人は貴重よ。大切にしなさい」

    僕「はい」

    覚「はさみ揚げは明日でいいんだよな?」

    僕「うん、ごめん。二人が今日都合良かったんで。約束してから満月の日って気付いて」

    覚「晩飯もいらないなら連絡くれ。お嬢さん達に合わせればいいぞ」

    僕「わかった」

    まずは瑠奈のマンションに車を走らせた。到着すると、エントランスから…天使が現れた!

    瑠奈「おはよっ!たけるん」

    僕「おはよう…」

    真っ白でボリュームのあるブラウスに、足元も真っ白なスニーカー。で、脚、脚が短パン、違う?ショートパンツって言うの?太ももから足首まで、全部丸出し…否、あらわで眩しい!

    瑠「脚が気になる?」

    僕「え」

    瑠「出かける前にもね、お母さんに脚出し過ぎじゃない?って言われたの。でも尊が車で送り迎えしてくれるしみつきも一緒って言ったら、ならいいわよって」

    僕「そうなんだ」

    脚だけじゃなく全身が輝いてる感じだよ。背中に天使の翼、隠してない?

    瑠「そのパンツ、今日デビュー?」

    僕「うん。ジーンズと違ってゴワゴワしてなくて、着てて涼しいね」

    瑠「でしょ~。でも着方が尊!だね」

    僕「すいません」

    前に一緒に買い物した時に購入した薄手のチノパン。何か、足首を出すようにロールアップしてなんて店員にも瑠奈にも言われたけど、長いまんま穿いてきました。オシャレじゃなくて、ごめんなさい。

    瑠「運転、辛くなったら代わってあげるね」

    僕「ありがとう。多分大丈夫だよ」

    次にミッキーさんの家に。車で数分の距離だった。瑠奈もミッキーさんも、かなり裕福な家庭のお嬢様なんだよな。到着した家の門、お城の入り口ってこんな感じかと思う程のデカさ!怖じ気づいていると、脇の通用口が開いた。

    僕「純和風の扉からトロピカルな人出てきた」

    瑠「ぷっ。みつきね、今日をすっごく楽しみにしてたんだよ」

    僕「わかりやすいな」

    みつき「ハ~イ!お待たせ~」

    麦わら帽子をかぶって登場。後で聞いたらカンカン帽って言うらしい。派手めの柄のシャツを前でギュっと結んで…ヘソ出しってヤツですか!で、ショートパンツにサンダル履き。

    み「センセ、お迎えありがとう」

    僕「どういたしまして」

    み「お、瑠奈はそうきたか。いいよん」

    瑠「みつきもリゾートな感じでいいよ。あのね尊、今日はショートパンツだけ揃えようねって決めてて」

    僕「そうだったんだ」

    ふーん…女子ってよくわからない。

    み「ドレスコードはショーパンっす。では、後部座席を占領させていただきまーす。センセ、運転よろしくぅ」

    僕「了解しました」

    プールに到着した。着替えを済ませ、浮き輪2つに空気を入れる。更衣室を出た所で待ち合わせなので戻ってくると、なぜかミッキーさんだけが外に立っていた。

    み「あ、浮き輪もう空気入れてくれたんだ。ありがとう~」

    僕「いえいえ。ここのエアー充填機、一瞬で入るから」

    ミッキーさんの水着は、黒地にロゴなど入っているビキニだった。ビーチバレーの選手みたいな?キャラに合っていてカッコいい。

    み「水着、モノトーンのグラデなんだ。似合ってるよ」

    僕「光栄です」

    み「あ、日焼け止め全身に塗ってる?」

    僕「当然だよ。後でヒリヒリしたら嫌だから」

    み「めっちゃ美容男子!」

    僕「そうかな」

    み「体もさ、言う程じゃないよ?ちゃんと鍛えた成果出てる。自信持っていい」

    僕「ありがとう」

    み「瑠奈まだかな。ちょっと見てくるよ」

    僕「支度に時間かかってるの?」

    み「髪結んでたからさ。あ、来た来た」

    思わず息を呑む僕。先に聞いてたよ?ビキニでしょ?白地に水彩画みたいな花柄でしょ?想像するとどうかなりそうだったよ。だからある程度心の準備はしてたんだ。髪がポニーテールになってる。それは聞いてない!色白の肌、うなじにかかる後れ毛が清楚でいて色っぽくて。

    瑠「尊、どう?」

    僕「とても、いいと思います」

    瑠「ホントに?やったぁ」

    動くと揺れる髪が、ますます金魚っぽいと言うか。その姿に心揺さぶられてます。

    み「センセ、眼鏡外してるけど見えてるんだよね?」

    僕「見えてるよ。まあまあ」

    瑠「いいの。今日は私が尊の眼になってあげるから」

    早速腕を絡ませてきた瑠奈。そ、そんなに近いとですね、魅力的な胸元を上から見下ろすような角度でですね、その…。

    み「心ゆくまでくっついててちょーだい。どこから行く~?」

    暑い、いや熱い一日になりそうだ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道20~7月25日夜

    辻褄合わせは綻びも出てくる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人揃って帰宅した。

    僕「ただいま」

    瑠奈「こんばんは~」

    覚「いらっしゃい瑠奈ちゃん。おっ!いいねいいね~。よーく、似合ってる」

    美香子「う~ん、いい!可愛らしいわ色っぽいわで、尊には勿体ない」

    僕「はいはい」

    瑠奈が来ると、テンション爆上がりの両親だ。

    覚「少しは何か口にしたのか?」

    僕「飲み物だけは」

    美「だったらお腹空いてるでしょう。買った物温め直す?」

    僕「お好み焼きだけチンするよ」

    美「いいわよ、座ってて。食べ始めなさい」

    覚「冷たい麦茶出そう」

    瑠「ありがとうございます」

    花火の箱は、もう窓際に置いてある。

    僕「準備万端だなあ。お楽しみの前にさ、子供神輿の写真、瑠奈に見せたい」

    美「あら、そうなのね。ならアルバム出しておくわ」

    僕はこの後、激しく後悔の念に駆られる。いくらでも理由は考えられたのに、すっぽりと頭から抜けてたんだ…。

    瑠「わぁ、ちっちゃーい!こんな頃から眼鏡かけてたんだね」

    僕「そうだね。年季、入ってます」

    食事後、アルバムを見せている。

    瑠「かわゆーい。でもどうしてこんなに苦々しい顔してるの?」

    僕「カメラ近寄り過ぎでさ。恥ずかしかったんだよ。望遠で撮ればいいのに」

    瑠「そんな理由?あはは。あれ、めくれない」

    僕「ん?くっついてる?」

    ペリペリと音を立ててページを開くと、何かでシミになっている。

    美「んもう!唯の仕業ね。あの子、そこに焼きそば落としたでしょ。きちんと拭いてなかったのよ。ホント、いい加減だわ~」

    覚「全く唯ときたら困ったモンだ。ほれ、布巾濡らしてきたぞ」

    僕「はい。ちょっと失礼…よし取れた。これでOK。残ってない」

    最後まで見終わり、アルバムを閉じた瑠奈。なぜか戸惑っているように見える。

    僕「どうかした?」

    瑠「ん…うん。上のお姉さんがどこにも写ってなかったなって思って」

    しまった!と思ったのは、まさしく後の祭り。

    僕「トヨ姉さん。えーっと」

    美「トヨちゃん!そ、そうね、夏休みに入ってたからお友達のお宅に泊まりに行ってたかしら?」

    覚「それか、親戚の家か。うん、トヨちゃんはたまたま写ってないんだよ」

    慌て方がかえって怪しいよ…。

    瑠「ですよね。ごめんなさい、変な事言って」

    覚&美香子「いえいえ」

    両親の顔の固まり方が尋常でなかった。

    僕「さて!じゃあ、プチ花火大会としますか」

    瑠「うん!」

    上手く流せたかな?四人で庭に出る。

    僕「もしかして、草刈りした?」

    覚「おー。草ボーボーでは防火上も見た目も良くないだろ?」

    僕「こっちも準備万端だったか」

    花火スタート。シューっと音を立て手元が明るくなる度に、家族の顔も照らされる。瑠奈の笑顔も浮かび上がる。綺麗だ。僕は花火よりそちらばかり眺めていた。

    瑠「線香花火はね、点火すると火の玉がふるふる震えて丸くなってくでしょ。その過程が好きなの」

    僕「火花が出てからじゃなくて?」

    瑠「弾ける準備頑張ってます、って感じが健気だと思わない?」

    浴衣と線香花火。情緒があるなあ。何より絵になる。イイ物見せてもらいました。

    覚「帰りは僕が乗せてくよ」

    僕「お願いします」

    瑠「ありがとうございます」

    覚「ちょっとだけ待っててくれるかい?」

    瑠「はい」

    二人で座って待つ。母は花火後のバケツを片付けに行っていた。

    瑠奈の囁き「さっき、お姉さんの話してごめんね。おじさまおばさまに悪い事しちゃった」

    あちゃー。その話、続きますか!

    僕の囁き「いいよ、気にしないで」

    瑠 囁き「お二人とも上のお姉さんに気を遣ってるよね。前に家族の事情は聞かないって言っておきながら蒸し返しちゃって、反省してる」

    僕 囁き「気を遣う?どの辺りが?」

    瑠 囁き「だって下のお姉さんも尊も名前は呼び捨てなのに、上のお姉さんはちゃん付けって呼んでるから」

    うへー!やっちまったー。

    僕 囁き「あ、ま、それは…」

    瑠 囁き「ごめんね、もう聞かないから」

    覚「お待たせ」

    僕「あ、うん。行こうか」

    瑠「はい。よろしくお願いします」

    瑠奈を無事送り届け、帰宅した。即三人で反省会だ。

    僕「トヨさんの立ち位置を怪しむというより、家族の内情を知ってしまってごめんなさいって感じだった。あー、僕は何てバカなんだ」

    覚「唯達はあの日、ちゃんと名前の呼び方まで決めてたのに僕らは手付かずのままでなあ。かえって気を煩わせて申し訳なかった」

    美「瑠奈ちゃん、いつも深入りはせず一歩引いてくれるのね…」

    ずっと秘密にし続けるか、いつか告白するかはわからない。なぜ?と問わない瑠奈の優しさに心が痛むよ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回はみつきと三人でプールへGO。

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    続現代Days尊の進む道19~7月25日土曜夕方

    飛ばす予定だった一人か。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今夜は地元のお祭りだ。浴衣姿で瑠奈を駅まで歩いて迎えに行った。

    瑠奈「尊、お待たせ~!わぁ、カッコいい!似合ってる!」

    僕「瑠奈もよく似合ってるよ」

    髪型が普段と違って、うなじが見えるようにまとめてある!いい!

    瑠「尊、何か着こなしがこなれてない?」

    僕「父親の持ってる帯と下駄を借りたんだ。この下駄全然足痛くならなくてさ。だからじゃないかな」

    瑠「素敵~!」

    会場になっている商店街までゆっくり歩く。浴衣の人は多いけど、瑠奈はやはり目を引く。そんな彼女と手を繋ぐ僕。一緒に居ると目立って当然なんだと、最近ようやく割り切れるようになった。幾分虚勢は張っているが、堂々と歩くよう心掛けている。

    瑠「お神輿、子供用もあるんだね」

    僕「この辺りの子供は一度は担ぐよ」

    瑠「尊もそうだった?」

    僕「うん」

    瑠「見たーい!写真残ってる?」

    僕「残ってるよ。あ、そうそう。晩ごはんだけどさ、ここで食べるか屋台で買って持ち帰って僕の家で食べるって選択肢があるんだけど、どうしたい?」

    瑠「ここで食べてて、うっかり浴衣汚したらショックだし…いいの?急にお邪魔しても」

    僕「急じゃないよ。両親が手ぐすね引いて待ってる」

    瑠「手ぐすねって。そうなの?」

    僕「実はさ、去年大量に通販で購入した花火がまだ残ってて。瑠奈も呼んでプチ花火大会やりたいって言ってるんだ」

    瑠「ホントに?!嬉しい、浴衣で花火ができるんだぁ」

    僕「写真もその時公開します。でね、最後父か母が家まで送るから」

    瑠「すごーい。至れり尽くせり~」

    何基もの神輿が、目の前を躍動感たっぷりに通り過ぎていく。

    瑠「お祭りっていいな。わくわくする」

    僕「だよね。この後神社に入って行くんだ。移動しようか?」

    瑠「うん、見たい」

    並ぶ提灯の明かり。時折吹き抜ける涼風。屋台から漂う香ばしい匂い。神輿の担ぎ手のかけ声に、僕達の下駄のカランコロンと鳴る音…去年は家族5人、今年は2人だけ。でもなぜか感覚が研ぎ澄まされて、もっと全身でお祭りを感じられる。瑠奈と一緒だからなのかな。

    瑠「オムそば、買ってもいい?」

    僕「いいよ」

    瑠「もうすぐ焼き上がるらしいの」

    僕「お好み焼きは買ったしオムそば買うし。じゃああと、あっちの屋台でたこ焼き調達してくるよ」

    そろそろ帰るし、すぐ近くだから少し油断してたんだ。だって目を離したのは2分もないよ?戻ると、いつの間にか男が三人も現れ、やたらと瑠奈に話しかけている。ゲゲ!ナンパ?!

    屋台のおじさん「もうすぐ焼けるよ~」

    瑠「はーい、待ってまーす」

    そこまで心配には及ばないようだ。察するに、瑠奈にとってナンパなんて日常茶飯事なんだろう。男達を軽くあしらっている。でもこのままではいけない!前髪をガッとかきあげ、胸を張る。よし、行くぞ!

    瑠「あ~、たけるんお帰りぃ。買えた?」

    ここが踏んばりどころだ。男達を一瞥し、歩み寄る。

    僕「ただいま。うん、この通り」

    瑠奈はニッコリ笑い、僕に体を寄せた。男達がチッと舌打ちするのが聞こえたが、フン、ざまあみろだ。ん?

    男1「アッ」

    男2「何だよ」

    男3「知り合いか?」

    僕「…」

    男1は見覚えのある顔だった。オメェかよ!僕は思い切り睨みつけてやった。相手は怯んでいる。いい気味だ。

    屋「お嬢ちゃん、待たせたね」

    瑠「あ、ありがとう。わぁアツアツ~」

    男1は何か言いたげだったが、男2と3を促してその場から去っていった。僕達も歩き出す。

    僕「大丈夫だった?」

    瑠「うん、全然大丈夫。屋台のおじさんも気にしてくれてたし」

    僕「そっか。でもごめんね、一人にして」

    瑠「いいよぉ。尊すごく睨んでたね。あんなに怒ってる顔を初めて見たからびっくり」

    僕「あいつに積年の恨みがあったから」

    瑠「え?えっ、それってどういう…」

    僕「あの男、僕をバカにしてた奴らの内の一人だったんだ」

    瑠「…」

    僕「昔の話だからさ」

    瑠「そ…う?」

    僕「瑠奈が居てくれて良かったよ」

    瑠「良かった。私何もしてないのに?」

    僕「はい残念でした、とっとと失せな、って鼻を明かしてやれたから。完全勝利した気分」

    瑠「そうだったんだ…。尊すごくカッコ良かったよ!うん、無言の勝利!」

    今夜はよく眠れそうだ。

    僕「ありがとう。あと、ちょっとでも瑠奈と離れたら危ないってよくわかったよ」

    瑠「ずっと離れない?」

    僕「うん」

    瑠「一生?」

    僕「え!あ、あの…」

    試されてる?!

    瑠「…」

    僕「はい。希望としては」

    瑠「ふふっ」

    とびきりの笑顔で僕を見上げると、肩にもたれてきた。はぁ。ドキドキが止まらない。抜き打ちテスト、多くない?やっぱり今夜は眠れないかも。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    大量に購入した花火のお話は、現代Days65no.922にて。

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道18~6月30日火曜

    体がどのようにできあがったら完成なんだ?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜。自分の部屋に居ると、珍しくミッキーさんからLINEが届いた。

    みつきの投稿『センセ、時間ある時に話したいんだよね』

    何?今でもいいよと送ると、すぐに電話がかかってきた。

    みつき『センセ久しぶりー』

    僕「お久しぶりです、ミッキーさん」

    み『ねぇ、早速本題だけどさ、一緒にプール行こうよ!瑠奈と三人で!』

    僕「え?いきなり!しかも三人、ですか」

    み『海も捨てがたいけどまずはプール!瑠奈と二人だけはNGで、私と行ってきなって話なら、間を取って三人で』

    僕「それ、間かな」

    み『まーまー。行こうよ。絶対楽しいよ』

    僕「ちょっと待って。彼氏さんは?」

    み『ちゃんと話はしたよ。三人で行っておいでって言ってくれた』

    僕「嘘っ」

    み『理解ある彼氏なんで』

    僕「俄には信じ難いけど、信頼関係の賜物なんだろうな」

    み『いつにする?』

    僕「既に決定事項ですか」

    み『何が嫌なの』

    僕「嫌なんじゃなくて…何と言うか…」

    み『モゴモゴしない!はっきり言う!』

    僕「すいません。その、自分の体に自信がないんだよ」

    み『どこが』

    僕「貧弱だから。最近ようやく、あばら骨が見えなくなってきたんだ」

    み『だったら問題ない』

    僕「そう思う?」

    み『向こうが透けて見えなければいい』

    僕「さすがにそれは。はは…ありがとう。あと、ずっと不安に感じてる事があって。ちょうどいい機会だからミッキーさんには言うけど」

    み『ご指名ありがとう。何でしょう』

    僕「僕はまだまだひ弱で強い男ではない。いざとなった時、瑠奈を守れるかどうかっていつも悩むんだ」

    み『ふーん…へ?ちょっと待った、それおかしくない?だって今回さ、私と瑠奈二人で行ってこいって話だったでしょ。女子二人が安全だって言うの?』

    僕「ミッキーさんは無敵だから」

    み『まぁね。って違うだろ!いいけど。あのさ、そういう気持ちは正義感に溢れてて素晴らしいと思う。だけど誰しもヒーローじゃない。そこまで心配しなくても。何か起こってしまった時、即座にSOS出すのも守る内に入るよ』

    僕「そうかな」

    み『すっごく瑠奈を大切にしてるのは、よくわかった』

    僕「大切だよ!とても」

    み『即答で断言。いいねぇ。瑠奈もねー、センセに関してはどこか自信なさげだから、同じ穴のむじなだとは思うんだよね』

    僕「むじな!久々に聞いた。自信ないの?どうしてだろ」

    み『すぐ、他の女が居るんじゃないかって疑うし。めっちゃ愛されてるって、端から見てても丸わかりなのにさー』

    僕「僕が悪いのかな」

    み『悪くはない。でもさ、一歩進んでみない?まっ、二歩でも三歩でも最後まででもいいけど』

    僕「はあ?」

    み『プール平日の方が空いてるよね、いつならいい?ちなみに、瑠奈の都合いい日はもう聞いてあるよ』

    僕「働くなぁ」

    み『本人たってのご希望なんで。かわゆい彼女のお願い断るなんて、相当だったんだね』

    僕「すいません」

    み『センセってさ』

    僕「はい?」

    み『瑠奈よりももっと守りたい物があって、それに合わせて行動してるようにも見受けられるんだよねー』

    僕「え」

    み『別に女隠してるとは思ってないから』

    僕「瑠奈しか居ないし他には考えられないよ。大切にしてるのは…家族だよ」

    み『なるほどね。お姉さんが二人、遠くで暮らしてるんだったよね?』

    僕「うん」

    み『瑠奈はあい変わらずメンドくせぇけどさ、何とか安心させてあげて』

    僕「はい」

    み『で、いつ?』

    僕「えーと」

    大学はもうすぐ夏休みだから、バイトの予定表を確認。何日か提示した。

    み『えーと、この日は私が周期的にヤバいし…じゃあ、ちょっと先だけど8月4日でどう?』

    僕「8月4日。わかりました。よく考えたら贅沢な取り合わせだよね。男1に女性2なんて。僕、大丈夫かな…」

    み『二人の邪魔はしないから。と言うより、邪魔者を撃退するために私が居る』

    僕「どういう意味?」

    み『瑠奈のビキニ姿を想像してみよ』

    僕「ビ、ビキニなんだ」

    み『今時珍しくないでしょ。白地に水彩画みたいな花柄でね。売場で一目惚れで購入したの』

    僕「一緒に買い物したんだったね」

    み『想像できた?超魅力的でしょ。いいよ、ヨダレ垂れてても見えないから』

    僕「ズッ。は、はい」

    み『で、そんな瑠奈に有象無象な輩が寄ってくるのよ、どうしても』

    僕「有象無象って。でも大変だ、どうしよう」

    み『私が阻止してあげるから』

    僕「どこかで聞いたような話だ」

    み『瑠奈の事だから、センセにくっついて離れないだろうし、まず大丈夫だけどねー』

    僕「それは…ますますどうしよう」

    み『あ、プール後に瑠奈を拐うなら、先に愛車で私を家に送ってからにしてね』

    僕「拐うって。僕の車で行くのも決定してると」

    み『世の中は上手いコトできているのだ』

    僕「ははは。いいよ。浮き輪ってある?」

    み『ない。持ってる?』

    僕「一人用のと、真ん中の穴が大きい二人用のが家にあるから、積んでくよ」

    み『カップル用?!センセにそんな甘い思い出が』

    僕「姉のだって」

    み『そうすか』

    僕「そうです」

    み『ふーん。じゃ、また連絡するね!バイバーイ』

    僕「はい。ではまた。失礼します」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、まずは浴衣デートです。

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    続現代Days尊の進む道17~6月28日夕方から29日月曜

    まだそんなには回数を重ねていない模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ショッピングモール内を一回りし終えたところで、コーヒーショップに入った。二人分購入して席に持っていくと、瑠奈はスマホを凝視している。

    瑠奈「ありがとう」

    僕「どういたしまして」

    さっきの失言、怒ってるんじゃない?おずおずとドリンクを差し出す。

    瑠「浴衣デートどこ行こう。花火大会とかいいなとは思うけど、浴衣着て車の運転はダメだよね。調べてもやっぱりNG」

    僕「うん。それで運転は危ないよ。どうしても花火大会に行きたい?」

    瑠「ううん。すっごい人出だし、そういう大会は動画もすぐにあがるからこだわらないよ。近場でなにかイベントないかなぁ」

    僕「だったら、確か…」

    今度は僕のスマホで検索。

    僕「毎年7月の終わりの土日に、地元の祭があるんだ。駅からも割と近くて、神輿とか出るんだよ」

    瑠「え、そうなの?じゃあ今年は」

    僕「25日土曜の夜。良かったらその日に、一緒に浴衣着て見に行こうよ」

    瑠「わぁ。行く行く!嬉しい!楽しみ~」

    少しは起死回生できたかな…。

    瑠「思ったより、周りの車居なくなってる」

    僕「そうだね」

    立体駐車場に戻ってきた。帰りも安全運転で行きますよ。車に乗り込みドアを閉めた。

    瑠「待って。まだシートベルトしないで」

    僕「え?」

    じっと僕を見ている。じーっと見ている。も、もしや、アレですか?!そうか、車だとこんな事ができるんだ。この場所特にほの暗いし。車の外に人の姿がないのを確認し、ゆっくり顔を近づけると、彼女は目を閉じた。

    瑠「…たけるん」

    僕「は、はい」

    瑠「いつでも奪ってね」

    いつでも!奪って!ど、動揺が。超超慎重運転で帰ります…。

    ┅┅

    翌日。小垣駅近くのカフェに女子二人。

    瑠「みつきー、ここー!」

    みつき「居た居た~。わざとこんな隅っこの席選んだ?急に会いたいって言うからびっくりしたよ。今日はどうしたの」

    瑠「うん。みつきに相談したくて」

    み「相談。ヤバい話?まさかセンセと何かあったとか」

    瑠「尊とは何の波風も立ってないよ」

    み「ずっとラブラブ。平和で結構じゃない。それで?」

    瑠「もうすっかり夏じゃない。尊に海とかプールに行きたいなって言ったの。そしたら、ミッキーさんと行ってきたらって」

    み「そうなの?私の彼も渋々一緒に行ってくれる系だけど。苦手なんかな」

    瑠「ううん。だって見たもん!尊の家のリビングに、家族で海行った時の水着写真飾ってあるんだよ?楽しそうだった」

    み「へー。何でかな」

    瑠「他の女と…」

    み「ないない」

    瑠「理由は見当つくんだよ。尊ね、自分の体に自信がないみたいで隠したがるの。昨日一緒にお買い物して確信した」

    み「そんなに変か~?センセの思うレベルが高過ぎるんじゃない?」

    瑠「私、全然気にならないんだけどな」

    み「よしわかった!私が聞いてあげる、つーか誘ってみるよ、一緒にプール行かない?って」

    瑠「ホント?でも、みつきの彼にもお伺いを立てないと」

    み「話すけど、多分行っておいでって言うよ。大丈夫、そんなんゴタゴタ言う人じゃない」

    瑠「信頼関係が羨ましい。他にも誘う?」

    み「んー。三人で良くない?」

    瑠「三人。いいね、楽しそう!」

    み「高2ん時さ、二人でビキニ新調したじゃない。去年はさすがに海もプールも我慢したからさ、今年は着ようよ。で、センセを囲むと」

    瑠「そうだね。行けるといいな」

    み「任せといて!」

    瑠「ありがと。…あとね」

    み「何、急にヒソヒソ話?」

    瑠「尊とはラブラブだけど、どうしてその先がないんだろ、って…。どう思う?」

    み「先?って」

    瑠「尊はすっごく優しい」

    み「それはよくわかる」

    瑠「優しくハグしてくれる」

    み「うん」

    瑠「優しくキスしてくれる」

    み「うん」

    瑠「でもその先がない」

    み「それかー。兆しもない?それっぽい雰囲気になるとか」

    瑠「全然。昨日もね、車だし、踏み込んでくれるかななんて、ちょっと迫ってみたけど」

    み「マジか!で?どうだったの」

    瑠「キスまでだったし家まで真っ直ぐ送ってくれた」

    み「棒読みが過ぎる。まぁそこはさすがセンセというか」

    瑠「私に興味ないのかな…」

    み「ンなワケない。大事にされてるんだよ」

    瑠「でも今までの彼は、いつもその先、最後までだったよ?」

    み「エッチまでセットじゃないのかって話?」

    瑠「うん」

    み「はぁ。そういうモンだと思ってるなら否定まではしない。ただ言い方悪いけどさ、そもそも今までの奴らは初めから体狙いだっただろうし。どいつもこいつも、ホントさっさと別れて良かったよ」

    瑠「尊、他の女と…」

    み「断言する。センセに限ってそれはない」

    瑠「そう…だよね」

    み「疑うなんてセンセに同情するけど。心配なら、なんとなーくそうなってもOKだよ的な感じにもう少し持ってってみたら?」

    瑠「そうしようかな…」

    み「焦んなくてもいいんじゃない?」

    瑠「嫌がられるかな」

    み「よっぽど大丈夫だとは思うけど」

    瑠「大好きな尊との距離をゼロにしたい。それだけなんだけどな」

    み「なるほど。純粋な気持ちからだと」

    瑠「おかしいかな」

    み「ううん。恋に全力、いいと思う。だったら応援する。気持ちが伝わるといいね」

    瑠「ありがとう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、久々に尊とみつきの舌戦です。

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    続現代Days尊の進む道16~6月28日14時

    一口ちょうだいイベントはあったんだろうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    僕「何食べよう」

    瑠奈「悩む~」

    一気に買い物をしたので、もう時計は昼をとっくに回っていた。飲食店一覧を見ている。

    瑠「トンカツいいかも」

    僕「へぇ。珍しい」

    瑠「ガッツリ系過ぎる?」

    僕「そんな事ないよ。かなり歩いたし僕もお腹空いてる」

    所望のメニューがある店で食事。

    瑠「尊の家の近所のラーメン屋さんも、また行きたいな」

    僕「気に入ってくれたんだ。美味しいよね」

    瑠「うん。油少なめにできるし」

    僕「少なめ、ね」

    瑠「あー、カツ食べてる口が何言う?って思ってるんでしょ」

    僕「ちょっと」

    瑠「もー。それはそれ、これはこれなの!」

    僕「ははは」

    くるくる変わる表情が愛らしい。肉でパワーチャージできたし、さぁ店を出るか。しかし、我ながら景気良く買ったなー。

    瑠「買い物袋、半分持ってあげる」

    僕「え?いいよ、僕の荷物ばかりだし」

    瑠「でもぉ」

    僕「?」

    瑠「尊の両手が塞がってると、くっついて歩けないもん…」

    僕「…」

    か、か、可愛い過ぎるぞ!

    僕「あ…あ、じゃあさ、一度荷物を車に積んでこようかな」

    瑠「うん!行くー」

    荷台に積み終えて歩き出すと、すぐに腕を絡ませ肩にもたれてきた。神様仏様、僕はこんなに幸せでいいんでしょうか?甘さにノックアウトされそうになりながら、まだ見ていないエリアを散策し始めた。

    瑠「うわぁ、日本の夏だね~」

    僕「ホントだ」

    特設会場に、浴衣がずらりと並んでいる。割と手頃な値段で一式揃うんだ。へー。

    瑠「尊は浴衣持ってる?」

    僕「一応」

    お姉ちゃんに、いかにも旅館の備品って言われたのがあるよ。浴衣を着たあの日が、全ての始まり。

    瑠「そっか。私も持ってはいるんだけど」

    僕「うん?」

    瑠「お互いに選び合った浴衣着て、デートできたらいいなって想像しちゃった」

    僕「浴衣デート、ですか」

    しぇ~!そんなん実現したら、舞い上がり過ぎて僕、宙に浮いてるかもよ?

    僕「はは。新しく選んでもらうのは全然構わないよ」

    瑠「ホント?」

    僕「でも僕が瑠奈のを選ぶのは…」

    瑠「えー、尊が決めてくれたのが着たい」

    僕「そっか。わかりました。自信ないけど期待に沿えるよう頑張るよ」

    瑠「やったぁ。私も尊にぴったりなのを探すね!」

    とは言いつつ、女性用浴衣の圧倒的な量ったらない。気合い入れないと。しゃっ、だな。

    僕「さてと。あれ、もう居ない」

    もう男性用浴衣のコーナーに移っていた。順番に見てたかと思いきや急に切り返したりして、時々動きが小動物。動く度にスカートがふわりと揺れてこれもまた良し。まるで…

    瑠「これに決めたよ~」

    僕「もう?絶対数が少ないから当然か」

    茶系の淡色の縞模様。派手過ぎず地味過ぎない所がいい感じ。さすが。

    僕「あと少し時間ください」

    瑠「ゆっくりでいいよ。手に持ってるのが候補?全部金魚の柄なんだね」

    君が金魚のようで。なーんて言って微妙な顔されてもなんだから黙っておく。スカートが水中で広がる尾びれ。人懐っこく駆け寄り、僕の周りでひらひらと舞い踊る姿。そしてつやつやでぷるんとした唇。

    僕「決めたよ。こちらでいかがでしょう」

    瑠「かーわいい!」

    水面に見立てた薄い水色の地に、様々な色柄の金魚が自由に泳ぐ様があしらわれている。良かった、喜んでくれて。肩の荷が下りたよ。そして二人ともお買い上げ完了した。

    僕「持つよ。二袋持っても片手は空くから」

    瑠「ありがと。優しーい」

    カツの効果もあって、活力漲ってますから。

    瑠「あ、こっちも夏~」

    少し歩いたら、今度は水着が売っていた。そういえば、去年もここが売場だった気がする。

    瑠「おととしね、みつきと水着買いに行ったんだよ。ここではないけど」

    僕「そうなんだ…」

    水着姿。想像すると鼻血が出そうだ。いやそれより僕の水着姿はどうなんだ?去年は…体はもっと貧弱だったけど、お姉ちゃんや兄さんを楽しませる為に海もプールも行った。でも家族とだしそんなに恥ずかしいとは思わなかった。今は…まだまだ鍛えないと、とても彼女にお見せできるような段階じゃないんだよな。

    瑠「尊?聞いてる?」

    僕「え?あ、ごめんなさい」

    瑠「海やプールに行きたいなぁ」

    出た!やっぱそうなるよね。でも…

    僕「えーっと」

    瑠「何?」

    僕「ミッキーさんと行けば」

    しまった、すげぇ冷たい言い方しちゃった!ヤバい!

    瑠「ふーん…。あ、あそこのペットショップ見たい!行こっ」

    瑠奈はそれ以上何も言わなかった。機嫌を損ねたかと思ったけど、その後の態度はなんら変わらず。でもあんな言い方はないよな。ごめんなさい!

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    旅館の備品、は令和Days22no.624にて。そして、前年の唯達の水着購入の様子は、同じく8no.597から11no.604にて。

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道15~6月28日11時

    尊の遺伝子なら、お目目ぱっちりでしょ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    小垣城資料館を出て、次の目的地に向かっている。

    瑠奈「よく行くの?」

    僕「ううん、全然」

    水着買いに行った時以来じゃないか?

    瑠「私は3か月に一度位かな。親が連れてってくれないと、車でしか行けないじゃない」

    そう。どちらの家からもまあまあ距離がある。でも兄さんは、クリスマスイブにお姉ちゃん乗せて自転車漕いで行った。それは基礎体力の違いだな。

    僕「店はいっぱいあるよね。だからそこでいいかなって」

    瑠「服にこだわりとかないの?」

    僕「あるように見える?」

    瑠「えーとぉ」

    僕「ごめん、言葉を選ばせて。お任せします」

    瑠「はい。頑張りまーす」

    到着したのは、ショッピングモール。

    瑠「まあまあの混み具合だね」

    僕「うん。平面駐車場はほぼ満車だし」

    話を整理します。僕もいよいよお給料を貰える身になり、今後は車の購入費諸々を親に払っていくんだけれど、服も自費で購入していこうと決めて。でも自分で選ぶと似たような物ばかりになる。だから瑠奈に見立てて貰おうと思ったんだ。そんな話を両親にしたら、今朝家を出る時なんかもう…。

    美香子「買い物デートか~。尊、やるわね」

    僕「そう?」

    美「彼氏の服を選ぶなんて、瑠奈ちゃんノリノリでしょ」

    僕「うん。すごく楽しみにしてる」

    覚「ここでクイズだ。ジャージャン!」

    僕「は?」

    覚「流れで彼女の服も選んでいると、これどう思う?と目の前に提示された。さて、どう答える?チッ、チッ、チッ」

    僕「それは…懸命に僕なりの答えを出す」

    覚「おっ」

    僕「女性のファッションなんて全くわからないけど、求められてるならできるだけ応えてあげたい」

    覚「ほほー。どれでもいいとは言わんのだな」

    僕「うん。よくお姉ちゃんが困ってたの見てたから」

    美「あ、思い出したわ。それおととしの話でしょ。忠清くんにアドバイスしたのよね」

    覚「へー。それは初耳だ」

    僕「そう?あ、確かお父さん、その時お姉ちゃん達がクリスマスイブイブイブデートに持ってくお弁当作ってたよ」

    覚「はいはい。あん時か」

    僕「で、どう?僕の回答は」

    覚「合格だな。でもその答えの理由、聞かれたとしても簡潔に。くどくど言うのは禁物」

    僕「わかった」

    美「車に積めるだけ積んできたら~?」

    僕「どんだけ買わせる気だよ。行ってきます」

    さて。無事駐車し、モール内を散策し始めた。

    瑠「風船配ってるんだ」

    イベントスペースが子供達で賑やかだ。こういう場所は家族連れにうってつけなんだろうな。子供か。僕に似たら微妙だけど瑠奈に似たら可愛いいだろうなー…なんて妄想が止まらない。

    瑠「ね、この店見てみよっ」

    僕「あ、はい」

    繋いだ手をグッと引っ張られ、我に帰った。妄想は、一緒に居ない時限定にしないとな。

    瑠「私、尊のTシャツ姿って見た事ないかも。綿シャツとか今日みたいなフーディーとか多いよね。嫌いなの?」

    僕「うーん。生地が薄いのはちょっと」

    瑠「そっか。こだわりはやっぱりあるんだね。いいよ、厚めで探してあげる」

    Tシャツはね、笑っちゃう程似合わないんだ。例の肉食系Tシャツも然り。薄手だと体のラインが如実に出るから、貧弱なのがバレバレで外に出るのが恥ずかしいんだよ。この呟きは聞かせられないけど、瑠奈ならきっと上手く欠点を隠せる品を選んでくれる筈だ。

    瑠「ねぇねぇ、これとこれ試着してみない?」

    僕「はい」

    いくらでも着せ替え人形になりますよ。

    僕「いいよ、カーテン開けて」

    瑠「失礼しまーす。あ、こっちも似合ってる。どう?さっき着たのと比べて」

    僕「どっちもいい感じだよ」

    瑠「両方ともやや大きめで、体の線を拾わないもんね」

    やっぱりな。気にしてる所、バレてました。

    瑠「どうする?」

    僕「2枚とも買うよ。値段も含めて瑠奈の見立て完璧だし」

    瑠「いいの?!たけるん太っ腹~」

    ショップの袋はどんどん増えていく。見て、着て、検討して、また戻ったりして。こんなに歩いてても疲れを感じないのは、瑠奈が上機嫌でずっと笑顔を見ていられるからだな。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    両親との会話中、「困ってた」は平成Days37no.489、「アドバイス」は同じく45no.516に出てきます。

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道14~6月28日日曜9時

    ドラマ1話で小垣城に攻め入った高山の軍勢は2,000人。資料館の甲冑がのべ2,000人の来場者を迎えるのはいつ頃かと考えると、決して少なくはない数。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    車での初デート。瑠奈の住むマンションに到着した。豪華なエントランスの少し手前で停車すると、瑠奈がすぐ現れて僕の車に駆け寄って来た。

    瑠奈「わぁ!」

    車をくまなく見てはしゃいでいる。そんなに喜んでくれると買った甲斐があるよ。スカートがふんわりしてて、ドレスを纏ったお姫様みたいだな。あ、だったら…

    僕「おはよう瑠奈」

    瑠「おはよぉ、尊」

    急いで車を降りた僕。助手席のドアを開けた。

    僕「お待たせしました、姫。どうぞ」

    瑠「あはは。どしたの、サービスいい~。そのフーディー、カッコいいね」

    僕「フーディー?」

    瑠「パーカの事。紺色がいい感じだよ」

    僕「そうなんだ、ありがとう。ファッション用語はてんで不案内で」

    瑠「うふふ。では運転お願いしまーす」

    よし、出発。まずは小垣城資料館に向かう。一度は行っておいて欲しいと伝えたら、じゃあ今日一緒に行きたい、となったんだ。間もなく到着した。

    瑠「ここ、発掘調査の前は公園だったんだよ。小さい頃はよく来たの」

    僕「へぇ」

    開館してすぐの時間なので、駐車場に車はほとんどなかった。家の敷地以外で駐車するのは初だから、申し分ないシチュエーションでラッキーだ。

    瑠「すごーい、一回ですんなり枠内にとめた。上手~」

    練習の成果あり!心でガッツポーズ。機嫌良く入口に向かっていると、入れ違いで人が出てきたのだが、

    僕「あっ、木村先生!」

    木村「お?おー!尊くんか!」

    僕「おはようございます」

    木「おはよう。随分と風貌が大学生っぽくなったな。最初誰かわからなかったよ」

    僕「へへ、そうですか」

    木「用が済んで帰るところでな。あれ、君って確か、ここには講演会当日に来てたんじゃなかったか?」

    僕「はい。二度目です。今日は案内しようと思って」

    木「彼女をか」

    僕「はい」

    僕らに遠慮して少し離れていた瑠奈を呼んだ。

    瑠「おはようございます、先生。私小垣に住んでるんです。今日はしっかりお勉強したいと思います」

    木「そうかそうか、ありがとな。尊くん、二度目の君に朗報だ。実はさっき展示を一部変えたところなんだよ」

    僕「え、変更!まだ開館間もないのにですか」

    木「僕が話をした中でさ、聴衆の反応が良かった話題があったの、覚えてるかい?」

    それって…

    僕「もしかして、羽木の若君の祝言ですか」

    木「そう!手記に記されているんだが、それは今まで展示してなかったから、問い合わせも多かったらしくてな。そんなに盛り上がるならって、町が動いてさ。2か月で変更だよ。今日から公開の運びで、今最終確認してきたんだ。実にグッドタイミングだったな」

    僕「本当ですね。今日で良かった」

    木「じゃ、これで。デート楽しんでくれ」

    僕「ありがとうございます。新しい展示の感想も、またメールします」

    手を上げ去っていく先生の後ろ姿に、二人でお辞儀をした。

    瑠「あの先生が、武将の末裔なんだね」

    僕「そう。木村先生はお知り合いになれてマジで良かったと思ってるよ」

    展示室へ入る。仄かな灯りに照らされた、厳かな雰囲気がいい。

    瑠「こういう場所のね、凛とした空気感って好きなの」

    僕「あ、それ僕も。落ち着くよね」

    瑠「わかるー!あ、声響いちゃった、ごめんなさぁい」

    ゆっくりと進み、じっくり見学している瑠奈。好感が持てるなぁ。

    僕「これか」

    新しい展示。手記のその箇所が開かれ、大きい解説パネルが設置してあった。力入れたなー。全体的にもレイアウトがかなり変わった印象だ。吉田城跡の工事完了も楽しみだし、講演がきっかけになって、色々羽木家寄りの方向に変わっていくのは嬉しい。先生に感謝。

    瑠「満月の日だったんだ」

    僕「え?どうしてわかるの」

    瑠「ほらここに」

    解説には書かれていないが、古文書中の満月の文字は僕でも何とか読み取れた。

    瑠「私も満月の日にしてもらおうかな。参列者のために休日と重なる時を選んで。ねっ、尊」

    僕「へっ?…あ、あの、はい、いい提案だと思います…」

    そんな話をサラっと無邪気に言う?はぁ。そうしようね、なーんて返せると男っぷりも上がるんだろうけど、未熟者なんでまだ無理…。

    瑠「ねぇ尊」

    僕「うん?」

    瑠「鎧兜が飾ってあるけど、手が届く位置でショーケースにも入ってない。いいのかな」

    僕「これ長い間、先生の勤める高校に置いてあったんだって。カバーも何もなく、はたきでパタパタやってたらしいよ。だから触るのを禁止にしなかったって先生言ってた」

    瑠「生徒にも触らせてたんだ。いい話だね。感触からも当時に思いを馳せられるもの」

    触り放題でも、姉はずっとスルーだったらしいけどさ。一般的な高校生に比べれば、特に珍しくもない見慣れた品ではあるとは言え。さて、これにて見学終了。

    僕「お疲れ様。わー、外は暑いな」

    瑠「来て良かった~。すっごく勉強になった。今度親連れて来る!ありがとう尊」

    僕「どういたしまして。じゃあ移動しますか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が着ているフーディーは、青DVD&Blu-rayに収録されている「アシガール番外編Episode2平成の馬平成の小姓」内で、若君の自転車を追いかけている場面に出てきます。

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道13~6月27日土曜

    ナンパとしては昔ながらのやり方。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    本日、納車しました。販売店に行ったのは僕と父と瑠奈の三人だけだったので、母は初めて実物と対面する。

    美香子「思ってた以上にピカピカだったわ」

    覚「走行距離が短かったからな」

    僕「うん。ほとんど新車」

    中古の軽自動車。

    僕「お母さん、黄色好きでしょ」

    美「確かに黄色系。クリーム色。違うわね」

    僕「は?」

    美「そんな理由で買ったんじゃないわよね~。瑠奈ちゃんの評価は?」

    僕「初デートの時の」

    美「お正月の?」

    僕「僕が着てたセーターの色だねって…」

    美「あー、似てる。それが購入の決め手ね」

    僕「は、はは」

    覚「そんな彼女が、今日都合つかなかったのは残念だったな」

    僕「だって日柄を優先だったでしょ、今日が大安だからって。瑠奈は明日会うから」

    美「初運転は明日のデートで?」

    僕「いきなりだとまごつきそうだから、今から少し走らせようと思ってる」

    美「ふうん」

    僕「乗る?」

    美「あらん。若い男の子に誘われるなんて、何十年ぶりかしら~」

    僕「何それ」

    覚「僕が誘った以来だといいが」

    美「残念ながら、そうなのよ~」

    覚「残念は余分だぞ」

    僕「はいはい。で、どうすんの」

    覚「僕も乗せてくれよ。いきなり三人だとヘビーか?」

    僕「いいよ。土曜の午後だからそうなると思ってたし」

    美「息子の運転でドライブなんて嬉しいわー。どこに乗せてってくれる?」

    僕「どこって…どうしよう」

    覚「プランなしか。目的地は決めた方が」

    美「じゃ、あそこ。小垣駅前というか吉田城跡というか。距離的に良くない?」

    覚「あー、そうだな」

    僕「二人ともまだ行ってなかった?いつでも行けると思うとつい後回しだよね」

    美「では、吉田城跡までよろしく~」

    僕「はい。心得ました」

    覚「頼むよ。じゃないな、お頼み申す。お、キーホルダーはそれにしたのか。いい感じだ」

    クリスマスプレゼントとして兄さんが作ってくれた、レジンで様々なパーツを閉じこめたキーホルダー。花はあえて入れてもらわなかったので、割とシンプルでクールな仕上がりだ。

    僕「使うのがもったいないと思いながらも、使わないともったいないなって」

    美「わかるわ~」

    両親とドライブに出発した。

    美「いつの日か、唯達も乗せてあげられるといいわね」

    僕「うん…予定は全くの未定」

    覚「実際今、かなり忙しいだろ。タイムマシンの作業もそんなに進んでないよな」

    僕「でもアルバイトがさ、場所は定期券の範囲内だし得意分野でやらせてもらってるし」

    瑠奈のお父さんの会社には、週に2~3日、大学終わりで行けるようにシフトを組んでもらっていた。

    美「ありがたいわよね。待遇がすごく良くて」

    覚「部長の娘さんの彼氏、ってのは皆さん知ってるのか?」

    僕「全然。あの進学校出てるんだ、とは社員さんに声かけられたけど。娘の存在自体を隠してるみたいだよ。瑠奈も、バイト上がりの僕を会社の前で待ち伏せなんてするなよ、って釘刺されてるらしい」

    美「彼女なら喜んで待ってそうだもんね。良かったじゃない。勿論照れもあるでしょうけど、そこの社員さんは若い男性が多いんでしょ?下手に娘さんが顔出したら、面倒な事になるってわかってみえるのよ」

    僕「それこそナンパ?ひぇー」

    覚「そりゃ父親としては心配だ」

    僕「頷ける?」

    覚「うん。僕にはそんな機会ないまま、行っちまったけどな…」

    美「あー…」

    愛車初運転の僕に助手席や後部座席を窺う余裕はなかった。だけど、きっとこの時両親は切ない表情をしてたと思う。しんみりとした空気が流れそうになった頃、小垣駅前に到着した。

    僕「ここで待ってるから見てきなよ」

    ロータリーから少し離れた隅に停めた。両親は一周見た後、なぜか駅に入っていく。ん?

    僕「お帰り。さっきはどうしたの」

    美「立看板あるじゃない。その周りに柵がしてあったから、工事でもするんですかって駅員さんに聞きに行ったのよ」

    僕「え、わざわざ?」

    覚「もしや撤去されるのかって心配になってさ。そうしたら、もうすぐ看板が大きくなるって話で」

    僕「へー!」

    美「木村先生の講演でも、ここの話題されてたじゃない。それで見学者が増えたみたいなの。で、町としてももう少し吉田城跡をアピールしようとなったんだって。ロータリーの周りにぐるりと歩道っぽく色を付けて、安全に渡れるように小さい横断歩道もできるらしいわ」

    僕「すごい。先生には、これからどんどん情報を発信してもらいたいね」

    美「そうね。今まで遠慮されてた分」

    覚「地元を見直せるからな」

    注目されつつあって良かったね、源三郎さん、兄さん。さぁ、安全運転で帰るとするか~。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君がプレゼントを作るくだりは、現代Days13no.859にて。

    次回、初ドライブデート。

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    続現代Days尊の進む道12~6月上旬

    青田買い的な?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは、瑠奈の家。

    瑠奈の父「また呼んでいただいたって?」

    瑠奈「うん。日曜のお昼に尊の家に行く。楽しみ!」

    瑠奈の母「運転免許証取得おめでとう、のランチですってよ」

    はい。二人とも、無事取れたんで。

    瑠父「こちらも、尊くんを招かないといけないなあ」

    瑠「気にしないでって言われたよ。おじさまが料理のレパートリーを披露したいんだって。だから何度でも来ればいいんだよって」

    その通り。もっと言うと、この会食、両親が恒例行事にしようと目論んでいる。

    瑠母「甘えさせて貰うばかりで申し訳ないわ。せめて手土産を奮発しましょうか」

    瑠父「だな。あと…折角伺うんなら、俺ちょっと資料作るわ」

    瑠「資料?あ、尊の仕事関係の?」

    瑠父「そう。当日持って行けるよう用意しておくよ」

    ┅┅

    そのランチ会食当日。瑠奈には黒羽駅まで来てもらったのだが、

    瑠「尊が運転してきたの?」

    僕「うん。口うるさい教官も居てごめん」

    美香子「うるさいって何よ。的確な指示と言いなさい~」

    駅まで車で迎えに行ってみました。母の車、助手席に監視付きだけど。

    美「運転はまあまあの出来。でもね、クリニックの駐車場で夜に練習してるから、駐車のテクニックは上達してるのよ」

    僕「お母さんの車をぶつけたり擦ったりしないよう、毎回ヒヤヒヤでさ」

    瑠「ふふっ。お出かけの準備ばっちりだね」

    美「はい、じゃあ私は後部座席に移るから、瑠奈ちゃんは尊の隣に」

    瑠「わぁ、ありがとうございます。嬉しい!」

    僕「ほんの少しの距離だけど。どうぞ」

    美「ランデブーね~いいわね~」

    僕「外野がやかましいな」

    安全運転で帰宅。出迎えた父の姿に、瑠奈が仰天している。

    瑠「おじさま…」

    着物をまとい、たすき掛けまでしていて。張り切り方がわかりやすい。

    覚「へへ。腕を振るうのにちょっと気合い入れたくてね」

    瑠「素敵。お似合いです!ちょうど良かった、今日は和菓子をお持ちしたんです。おじさまにぴったり!」

    覚「そうなの?いやぁ、瑠奈ちゃんはおじさんを転がすのが上手だな~。ささ、上がって」

    一番転がされてるのは僕ですが。まぁ、そんなこんなでランチは和やかに進んだ。

    覚「いただいた和菓子は、すっかり夏の風情だなー」

    僕「透き通ってる!」

    瑠「今朝父が買ってきました。我が家の夏の定番なんです」

    美「老舗の品ね。これ、お高いのよ~」

    僕「マジ?こんなに綺麗だから当たり前か」

    夏到来かー。今年は何が起こるんだろうな。

    瑠「免許証、私のはこれです。どうぞ」

    覚「見せてくれるの?お、いいね~」

    美「可愛いい子って、座っていきなり撮られても可愛いいのね。尊なんか、ぽやーんとした顔で写ってるのに」

    僕「免許証あるあるじゃないの」

    瑠「あと私、父の会社の資料を預かってきたんです」

    覚「資料?」

    瑠「尊くんのご両親にご覧いただくようにって、システム改修とか、尊が新規で作ったアプリなどの売り上げ推移を」

    美「あらご丁寧に。それ、社外秘じゃないのかしら?」

    瑠「OKな物だけみたいです」

    美「尊はもう聞いてるの?」

    僕「詳しい数字とかは知らない」

    覚「そうか。じゃあ食卓に広げてくれる?」

    その資料には、グラフや数字が細かく記載されていた。

    美「こんなに詳しく書いていただいて。わかりやすい」

    覚「売り上げが右肩上がりじゃないか。やるなぁ尊。違うか、会社の皆さんや周りの支えがあってこそだな」

    僕「うん」

    瑠「父が驚いていました。こういうシステム系って、大体は営業マンが個別に回って売り込むかメールが来るケースが多いらしいんですけど、今回は電話や手紙がくるって」

    美「手紙ねー。画面が見づらい方々で年齢層も高いからそうなるかしら」

    覚「うむ」

    美「知り合いの眼科医の奥様に、息子が関わった物があるんで良かったらってオススメしたの。その方、パソコンどころかずっとそろばんを使ってみえて」

    覚「そりゃまたレトロだな。でも慣れてる道具がいいんだろうな」

    美「苦手なパソコンシステムの導入は避けてみえたらしいけれど、私の言葉に心動いたみたいで。もう会社に連絡はされてると思うわ。もしかして手紙の方かも。芳江さんもエリさんも、吹聴しまくってるって言ってたし」

    瑠「すごーい。ネットの口コミなんかじゃなくて、本当の口伝えで広がってるんですね。あ、尊」

    僕「ん?」

    瑠「もう1つ書類預かってる。はい」

    僕「え?」

    速川尊様と書いてある、会社名の入った封筒を渡された。

    瑠「手紙らしいよ」

    僕「は?」

    覚「何だ」

    美「何て?」

    中を読み進める。

    僕「社長さんの名前で、多大なる貢献に心より感謝致します、ってお礼が書いてある」

    覚「そんな大ごとに!」

    僕「ご卒業後は弊社も選択肢としてご検討いただければ幸いでございます」

    美「入学したばかりよ」

    僕「もう1枚入ってる。こっちは瑠奈のお父さんの名前だ」

    瑠「うん。言ってた」

    覚「そちらは何だって?」

    僕「システム開発の契約とは別に、アルバイトで来て貰えませんか。週に1日2日でも構いません。君のような優秀な人材を会社一丸で求めています」

    美「あらー。びっくりし過ぎて、口が塞がらないわ」

    瑠「尊、天才なのがすぐにバレちゃったね」

    なんだか生活がどんどん変わっていきそうだ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、いよいよ車がやってきます。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道11~4月26日日曜

    大学生男子で一日両親と一緒に過ごすなんて、孝行息子。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    木村先生の講演日。早めに昼ごはんを済ませ、先に小垣城資料館にやって来た。19日に来たかったけど、混んでて資料がよく見えないと嫌だから今日まで我慢してたんだ。

    美香子「この中のどれかに、忠清くんや唯について書かれてあったりしないかしら」

    僕「だといいよね」

    ショーケースの中に並ぶ古文書。毎度の事ながら、読めない。

    覚「へー、ほほぅ」

    父が、小垣城の備品とされる燭台にやたらと興味を示している。

    覚「これは灯明皿でもいいし蝋燭でも使えるのか。2WAYなんだな。こっちは白い燭台か。珍しくないか?」

    美「お父さん。まさかこんなの家に欲しいとか言い出さないわよね」

    覚「ん?へへ~」

    美「すぐにハンガーが掛かるわよ。ここで見せていただくだけにして」

    覚「やっぱり?」

    僕「却下早ぇ」

    展示をじっくり見ているが、

    美香子の囁き「御月の名はどこにも出てこないわね」

    覚の囁き「だな」

    年表も、一部ぽっかり空いている。ちょうど木村政秀氏が御月家に仕えているだろう頃。

    僕の囁き「完全秘匿事項だったんだよ、きっと。兄さん達が追われる身にならないように」

    覚 囁き「そんなに上手くいくか?」

    美 囁き「でも木村先生もご存知なかったじゃない。羽木家にだけ仕えてきたように資料が残してあるなら、忠義ってそういうものじゃないの」

    奥まで進むと、ひっそりと甲冑が佇んでいた。

    覚「確か、唯が永禄で初めて出会った武将だったよな」

    僕「うん」

    美「感慨深いわ。この甲冑が、戦国時代も現代も唯に関わってるなんて」

    僕「450年以上の時を超えてね」

    ついつい興味深く見てしまい、小垣町民体育館に到着したのは開演時間ギリギリだった。何とか三人並べる場所を見つけ、着席した。

    美「普段から教壇に立ってみえるから、まんま歴史の授業な感じね」

    覚「だな」

    壇上の先生は、水を得た魚のようだ。興味深く聴かせてもらってたけど、そろそろ話もまとめに入る頃かな。

    木村「断腸の思いで小垣城を去る事となった政秀ですが、城代最後の夜を羽木の若君の祝言で飾れたと、後日手記に残しています」

    出た~!あったんだ!

    聴衆「おぉ…」

    どよめきがあり、拍手をする人も居た。この地域でも、羽木家は小学校で習うと瑠奈に聞いてはいたけど、反応が良くてちょっと嬉しいな。

    木「俄仕立てではあったが、微笑ましい婚儀で、この上ないはなむけになったと」

    微笑ましい、ねー。この辺は兄さんにも詳しくは聞いてないけど、

    僕「お姉ちゃんが色々やらかしたに違いないよね?あ、ごめん」

    両親は、一言一句聴き逃すまいと耳をそばだてていた。話しかけてすみません。

    木「夜明け前には若君が妻女を安全な場所へ逃がした、と記されておりますが、詳細はわかりかねます」

    だよね。会場の雰囲気的には、上手く逃がせて良かったね、さすが羽木の若君だといった感じに捉えられているみたい。

    覚「あの時は大変だったな」

    美「ホント」

    でも僕達は、その後お姉ちゃんが現代に帰されて起こる、人が変わったように落ち込んでいた半年に渡るあの顛末を思い出してしまう。その頃…木村先生、お姉ちゃんに会ってるな。随分と羽木家に執着する奴だと思ってただろうな。

    木「ご静聴ありがとうございました」

    終わりました。拍手。貴重な講演というか講義、聴けて良かった。

    美「もう先生にメールした?」

    僕「うん、今送った。ちゃんとお父さんお母さんの感想も書いといたよ」

    帰宅しお茶タイム中。母は資料館の小さいパンフレットを眺めている。父が、なぜかタブレットを取り出した。

    覚「ところで車、どうするつもりだ?」

    僕「いきなり?どうするって何」

    覚「こんなのが好み、とかないのか。探してやるぞ」

    僕「ないね。4人は乗れて荷物運べればいい」

    覚「ざっくりだな」

    僕「維持費や税金がかからない方がいいから、軽自動車かな」

    覚「軽かー。悪くはないが」

    美「いいんじゃない?家で3台目だもの」

    覚「なんつーかさ、今の若い兄ちゃん達ってあまり車に興味ない傾向なんだよな。瑠奈ちゃんはどうするって?」

    僕「ほぼ用途は身分証のみで、すぐには買わないみたいだよ」

    美「あら。お母さん、免許持ってらっしゃらないんじゃなかった?」

    僕「うん。それでも、家族で出かける時お父さんと運転代われればいい位に思ってるみたい。元々急いで取ろうとしてなかったし」

    覚「なるほどね」

    僕「僕としては、中古の軽でもいいよ」

    覚「欲がないなー。あ、まさか色々カスタムしたいとかか?」

    僕「しないよ。ちゃんと走りさえすればいい。それにさ、僕にカスタム許したら、もはや車じゃなくなると思うよ」

    覚&美香子「言える」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    小垣城の燭台ですが。ドラマSP内にて、2WAYは「持っていたのじゃ~!」、白いのは「唯様お入りになられまする」から「腹も決まった。よし!」辺りで確認できます。

    次回は、6月に入ります。

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    続現代Days尊の進む道10~3月下旬から4月中旬

    叩かれてすぐ口元を押さえてたけど、ケガもなかったようで良かった。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「随分と思い切ったパーセンテージじゃない?」

    覚「今まで売れ行きが芳しくなかったらしい。起死回生を狙っていると見たぞ。上手くいけば会社の信用度が爆上がりだもんな」

    契約書類を母に見せている。

    美「尊のニヤつきが止まらないのは、違う理由よね。この幸せ者~」

    僕「は、はは」

    すいません。前に白昼夢で見た、瑠奈のウェディングドレス姿がチラついてまして。

    美「会社には何回か通うのよね?」

    僕「そんなには行かないよ。今月中には終わる予定」

    美「仕事が速いわね~。これで収入、少しは確保できそうだから、アルバイトは探さない?」

    僕「何とも言えないけど、いつお呼びがかかるかわからないから、しばらくはやらないつもりだよ」

    覚「思ったんだけどさ。得た収入の使い道」

    美「もう?先走りし過ぎじゃない?」

    覚「免許が取れた暁には車がもう1台あった方がいい。その資金にするとかどうだ」

    僕「あー。まぁ当面、一番高額な買い物だね」

    美「いつまで経ってもプラモデルさえ買えないかもしれないのに?」

    覚「ひとまず車は早めに購入して、それを出世払いでどうだ」

    僕「出世払い。了解しました。全然メドが立たなかったら、他でも働けと」

    覚「どう展開するか楽しみだな」

    ┅┅

    怒涛の3月が過ぎ、4月を迎えた。いよいよ大学に入学だ。

    覚「入学式は、前に買ったスーツで良さそうか?」

    僕「残念ながら」

    美「何が残念なのよ。新品を買えって?」

    以前、写真館でお姉ちゃんと兄さんの婚礼写真を撮った際に新調したスーツを着てみたのだが、

    僕「頑張って鍛えてるつもりなのに、スーツがキツくなくて」

    覚「前よりはしっくりきてるけどな。大人に近づいてるんだ」

    美「うん。着られてる感もないし」

    僕「そっか。少しは成長したかな」

    ┅┅

    大学生活は順調だ。車校も行きつつ、瑠奈との時間も作りつつ、タイムマシン関係も細々と作業を進めていて、忙しくしている。そんな中、木村先生からメールが届いた。

    美「合格おめでとうメール以来?」

    覚「4月なんかお忙しいだろうに。何て?」

    僕「19日に小垣城資料館が開館するじゃない。その関連でなんと、木村先生の講演が26日にあるんだって。講演名が、小垣城代末裔が紐解く地元の歴史。これは行かないと」

    覚「へぇ~」

    僕「入場無料だから良かったら皆さんで来てください、場所は小垣町民体育館で午後2時からですと」

    美「それは是非伺いたいわね」

    覚「三人で行くか。小垣なら、瑠奈ちゃんにも声かけたらどうだ」

    僕「そうしてみるよ」

    早速いつものビデオ通話で聞いてみた。

    瑠奈『26日は、法事があって家族で出かけるんだよね』

    僕「そっか、残念」

    瑠『ごめんね。戦国武将の末裔なんだ。有名な先生なの?』

    僕「違う歴史の話題で新聞に載った事あるよ」

    瑠『へー。よくそんなローカル情報、ゲットできたね』

    僕「先生から直接連絡あったから」

    瑠『直接!知り合い?』

    僕「姉の母校の先生なんだよ」

    瑠『それだけで?お姉さん達今地元に居ないのに?』

    あの話をしよう。そんなに影響はないだろうし。

    僕「以前、先生が不良に囲まれてた現場に僕と兄さんが偶然出くわしてさ、兄さんが見事成敗したんだ」

    瑠『えーっ!お兄さんってどっちの』

    僕「え。あ、下の姉の旦那さん」

    瑠『あー、背が高い方のお兄さんだね。覚えてるよ。何かスポーツやってた人なの?』

    僕「武術全般を」

    瑠『すごーい。だから臆せずに立ち向かえるんだね』

    僕「超イケメンでケンカも強いなんて、天は二物を与えてるよね」

    瑠奈がキョトンとしている。

    僕「へ?僕何か変な事言った?」

    瑠『お兄さん、確かに顔立ちは整ってたけど』

    僕「でしょ。一瞬、顔見てなかったかと思ったよ」

    瑠『尊だって二物を与えられてるじゃない。超賢くて超カッコいいもん』

    僕「それは褒め過ぎだって。僕なんか全然カッコ良くない」

    瑠『え?大好きな彼が世界で一番カッコいいに決まってるでしょ』

    わわ、ド直球!

    僕「あ、ありがとう。話戻すよ。先生に姉が教わっていたのは、後から知ったんだけどね」

    瑠『そこからの縁なんだー。ねぇ、尊はそのケンカの時どうしてたの?』

    僕「どうも何もほとんど兄さんが倒したし。一人だけビンタはしたけど」

    瑠『えっ。ケガはなかった?』

    僕「顔をはたかれたけど、かすった程度だったから」

    瑠『…』

    僕「どうしたの?」

    瑠『尊が勇敢過ぎて、ますますキュンです』

    僕「流れでそうなっただけだよ」

    瑠『でも、ケンカはできればしないで欲しい』

    僕「しないしない。たまたま兄さんが一緒だったからで、僕一人では何もできないし。心配しなくて大丈夫です」

    瑠『約束だよぉ』

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊のスーツ、は平成Days11no.364に登場します。

    次回は、講演日当日です。

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    続現代Days尊の進む道9~3月中旬から下旬

    18歳成人は2022年4月1日からなので、この頃尊はまだ未成年です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自動車学校に通い始めた。なんやかやで、しょっちゅう瑠奈と過ごしている。

    僕「で、看護師さん達がすごく喜んでくれたんだ。格段に入力がしやすくなったって」

    瑠奈「そんなパソコンのデータシステムまでササッと直せるの?尊ってやっぱり天才!」

    僕「プログラム位は。今まで、苦労してるのに気付いてあげられなかったのが逆に申し訳なくてさ」

    瑠「ふぅん…」

    何か言いたげなのが気にはなったが、その場はここまでだった。そして翌日。

    瑠「あのね。勝手に話をしちゃってごめんなさいなんだけど」

    僕「何?」

    瑠「ウチのお父さんがね、プログラムの話、一度詳しく聞きたいって言ってるの」

    僕「へ?お父さん?」

    瑠「働いてる会社にIT部門があって、お父さんそこに居るんだけどね。尊があっという間にプログラム修正したんだよってしゃべったら、興味津々で」

    僕「はあ」

    瑠「名刺預かってきたから、電話だけでもしてくれるかなぁ」

    僕「いただきます…うわ、部長って書いてある。直接話せばいいの?瑠奈経由じゃなくて」

    瑠「これはビジネスだからって言われた」

    僕「え、そうなの。わかった。ひとまず連絡してみるね」

    早速電話する。

    瑠奈の父『尊くん、電話くれてありがとう。すぐこちらからかけ直すよ』

    僕「はい」

    作成に至る経緯や手順、かかった日数などを聞かれたけれど…何だろう。

    瑠父『よくわかったよ。あのさ尊くん』

    僕「はい」

    瑠父『唐突な話で申し訳ないんだけれどね、一度こちらまで来て貰えるとありがたいと思っている。その折にはご両親のどちらかも是非ご足労願いたい』

    僕「会社にですか。保護者同伴という事は、重要な話なんですね」

    瑠父『さすがに勘がいいね。君の為にもなると思うから、検討してくれるかい?』

    帰ってから両親に話をした。よくわからないがまず話は聞こう、だったら3月中がいいだろうと、後日父と訪れると決まった。

    ┅┅

    その当日。

    僕「ビル、デカっ」

    大きい乗り換え駅から徒歩圏内の場所にその会社はあった。着いてすぐ、小さな応接室に通されたんだけど…緊張で、体ガチガチだー。

    瑠父「お待たせしました、速川さん。いつも娘がお世話になっております。本日はお時間をいただきまして」

    覚「いえいえ、車で楽に来れましたし。駅近なのに駐車場の台数も確保されてて、素晴らしい社屋ですね」

    瑠父「ありがとうございます。では早速ですが本題に入らせてください。この度、速川尊さんと契約を結びたく、お父様にもご承諾を頂戴したいと、お越しいただいた次第なんです」

    覚「契約?!」

    僕「え?」

    瑠父「弊社のIT部門では、各種アプリだけでなく業務用システムも取り扱っております。力を入れてはいますが、他社との競争は激しさを増しており、頭一つ抜き出るには?足りないのは何か?ずっと悩みどころでした」

    覚「差別化は難しいですな」

    瑠父「そんな時に耳にした、尊くんの優しさ溢れる行動が、私の腹にストンと落ちたのです。これだったんだ、と」

    覚「業務システムをシニア仕様にシフトしたのがですか?」

    瑠父「はい。長年ご利用いただいているお客様には、世代交代がない所もある。見慣れた画面表示も、若い頃は何でもないが歳を重ねれば見にくくなる。パソコン利用者の年齢層には幅があるとわかっていたのに、なぜ今まで業務用に手を付けていなかったのか。深く反省もしました」

    覚「ウチのクリニックのように少人数でやっていたり、家族のみで経営だと年齢層は上がる一方で、年々目や体の負担は増えますね。そうですか…尊、意見はあるか?」

    僕「あ、えーと」

    まだ体固まってるけど、話さなきゃ。

    僕「僕気付いたんです。昔はできていたから頑張ろうと、看護師さん達は無理してたって。パソコン利用者をサポートするサービスありますよ?いやそういうのではない、中身も手順もわかるんだから。でも見にくい、で体に支障をきたす。そこで僕は、導入部分だけ楽にすればいいと思いました。あとは機械が全部やりますよってシステムは逆に違和感があったので」

    瑠父「見えない?できないんではなくて?と利用されている方の尊厳を傷つけるケースも発生しかねない所、尊くんはそうではなかった。その相手を立てるリスペクトの精神にも、感動を覚えました」

    僕「そんな、立派じゃないです」

    瑠父「では、ここからはビジネスの話をさせてください。弊社には既存の業務システムが幾つかあります。それを、尊くんにシニア仕様にバージョンアップしていただきたい」

    覚「それなら、貴社の社員さんでもできますよね。あえて尊なのはなぜですか」

    瑠父「アイデアは尊くんですから。今お使いになってみえる看護師の皆様の、貴重なご意見もふまえていただきたいですし。得手勝手に情報のみ搾取など致しません」

    覚「それは…ありがとうございます」

    瑠父「完成した折には弊社の販売ルートにのせます。売れた分だけ、何パーセントか尊くんに入るよう、契約をさせていただけませんか」

    僕「あのぅ」

    覚「どうした」

    僕「先に、アイデアの買い取りでおしまい、という選択肢もありますよね。会社の損得勘定的にそれでいいんですか?」

    瑠父「さすが頭の回転が速いね。大切な事に気付かせて貰えたお礼もありますし、この方が成果を実感できるでしょう?システム改修を取っ掛かりに、他の商品の売り上げも伸びると踏んでいますし。また今後、新たなプログラム作成をお願いするかもしれませんしね」

    覚「気を遣っていただいたとは。恐縮です」

    瑠父「いえ。何より尊くん」

    僕「はい」

    瑠父「いずれ息子になるかもしれない君と、円満な関係で居たいと思っているんだよ」

    僕「えっ」

    覚「ええー!それって」

    瑠父「すみません、いきなりなお話で。恋愛となるとどうにも暴走しがちな娘でご迷惑もおかけしているのですが、熱の入り方がそれはもう今までになくと言いますか。今日はどうだったあぁだったと、我が家で尊くんが話題に上らない日はありません」

    覚「それはありがたい話です。お嬢さんにはとても良くしていただいて、愚息には勿体ないと思っていますよ。な、尊」

    僕「恥ずかしいよ」

    そりゃ、願ったり叶ったりな話だよ。でも僕達まだ高校卒業したばっかだし…早過ぎない?

    瑠父「不束な娘で恐縮ですが、これからもよろしくお付き合いいただければと思っております」

    覚「こちらこそ、是非ともよろしくお願いします。良かったな~、尊」

    僕「うん…あ、ごめんなさい、はい!」

    軽くパニクってるけど、嬉しい。

    瑠父「ありがとうございます。それでは、契約内容について進めさせてください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道8~3月14日土曜

    理容室は、この創作倶楽部no.951に登場するあのお店かも?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    両親が大騒ぎしている。

    美香子「あら~!いい、すごーく似合ってて、カッコいいわよ~。さすが瑠奈ちゃん、見立てが完璧!」

    覚「こなれ感って言うのか?今度から服選びもお願いしたらどうだ。トータルでプロデュースしてもらいな」

    話は朝に遡る。

    僕「ホワイトデーってどうすればいいかわからなかったから、プレゼントじゃなくてご飯やスイーツをご馳走しようとは思ってたんだ」

    覚「で、考えたプランが?」

    僕「まず眼鏡を買いに行く。視力検査とかあるけど1時間みておけばいいかなと。その後早めのランチ」

    覚「ん」

    僕「13時に理容室。ラストに今日の労いも兼ねてどーんとスイーツ三昧してもらう」

    覚「忙しいな。でも悪くない」

    僕「恋愛マスター的には及第点ですか」

    瑠奈と待ち合わせて、まずは黒羽駅前の眼鏡店からスタートした。

    瑠奈「フレームはね、考えたけどオーバルよりはスクエアなんだよね」

    僕「楕円より長方形ですか。細身だね。見た目インテリっぽくなったりしない?」

    瑠「しない。尊は、インテリ風じゃなくて本当に超賢いんだからこれでいいの」

    1時間程で受け取れるらしい。ラッキー。なのですぐランチに向かった。

    僕「ごめんね、急がせて」

    瑠「全然大丈夫だよ。まだ11時だけど、ランチやってる店近くにあるの?」

    僕「リサーチ済みです」

    瑠「さすがぁ」

    とは言っても、あのCafeMARGARETなんだけど。木村先生と来た時に、ランチメニューが充実してるなって思ってたんだ。

    瑠「パスタでカルボナーラかな。美味しそう」

    僕「僕オムライスにするよ」

    瑠奈が、食べている僕をじっと見ている。

    僕「どうしたの?」

    瑠「もうすぐ、新生たけるんに会えると思うとウキウキする」

    僕「しかと見届けてください」

    瑠「うん!」

    その後、眼鏡を受け取った。いい感じだ。理容室は小垣駅が最寄りなので、電車に乗って向かった。

    店主の母「いらっしゃい!尊くん。彼女さん、お母さんに聞いていた通りの美少女ね~」

    瑠奈と店主が、持参した写真を見ながら話し合っている。何かくすぐったい感じだ。

    店主「前髪は、この辺りまで動きをつけるよ」

    僕「はい」

    瑠「うふふ」

    プロにお任せだ。だって口出しできるほどわかってないし。何も分からぬ時は全て分かる顔で何も言わぬのじゃ。なーんて。瑠奈には待たせるばかりで申し訳ないと思いつつ、楽しんでくれてるようでありがたい。そして…

    瑠「イメージ通り!素敵!」

    僕「確かに新生」

    何かふわっとしてる。これは巷で聞く、髪を遊ばせるってヤツ?!でも全体じゃなくて頭頂部から前髪だけだから、僕でもキープできるらしい。襟足が短いのは瑠奈の好みだな。

    店「前髪は下ろす形にはしてあるけど、額を出しても決まるよ。やってみて」

    僕「はい」

    腕を出して前髪をかきあげてみた。そのしぐさに、瑠奈の目が輝いている。

    僕「なるほど。少し巻いてあるから、下を向いても髪が落ちてこないんですね」

    店「どうかな?彼女さん。リクエストどおりになってる?」

    瑠「はい、とっても!ありがとうございます!尊超カッコいい~。うっとりしちゃう~」

    店母「こんなに手放しで褒めてくれるなんて、尊くん大好きっ子なのねー。ちょっとアンタも、いつまでも独り身で居ないで」

    店「そこで俺に矛先かよ」

    僕「ははは」

    スイーツタイムは、フルーツいっぱいのタルトにご満悦だった。あちこち引っ張り回しちゃって悪かったけど、終始ゴキゲンだったし、堪能はしてもらえたんじゃないかな…。で、購入した眼鏡をかけて帰宅したところ、冒頭の反応だったと言う訳だ。

    僕「僕の話はもういいから。お母さん、頼みがあるんだけど」

    美「何」

    僕「クリニックのパソコン、少し触ってもいいかな」

    美「触るって?」

    僕「エリさんと芳江さんが楽に仕事できるようにしたくて。具体的には文字を大きくするとか入力欄を広げるとか」

    美「え?そんなのすぐにできるの?」

    僕「粗方考えてあるから。個人のデータとかは鍵かけてあるでしょ?」

    美「勿論」

    僕「その方が僕も安心だし。晩ごはん後に使わせてくれる?」

    美「それはいいけど」

    覚「いつの間に準備してたんだ?」

    僕「お二人が目ショボショボさせて辛そうだったから一刻も早くって思って、試験後すぐに考え始めた」

    美「はぁ~驚きね。お手並み拝見するわ」

    調整は週明けに間に合った。使い勝手が良くなってるといいけれど。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は3月も後半になります。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道7~3月11日昼から夕方

    ご招待にはそのような深淵な意図が。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「よし、昼飯にするか」

    四人で食卓を囲む。このメンバー、馴染んでて違和感ない気がするのは僕だけかな。

    瑠奈「わぁ、このはさみ揚げ美味しい!」

    僕「こっちのカレー味も食べてみて」

    瑠「うん…おじさま、こちらもとっても美味しいです!」

    覚「おほー。そうかいそうかい」

    美香子「はさみ揚げファンがまた増えたわね。瑠奈ちゃん、制服も良かったけど私服もいいわ~。ブラウスとかカーディガンとか」

    瑠「嬉しいです。ありがとうございます」

    美「女の子!って感じがいい。うんうん」

    覚「だな。家の中が華やかになる」

    両親がこんなに喜ぶのは、勿論彼女の魅力に他ならない。でも、雰囲気は随分違うけど歳が一つ違いの彼女に、今家に居たらこんな感じかと姉の姿を投影してるんじゃないかな。だからこれからも、ちょくちょく会わせてあげたいとは思うんだ。

    美「次はいつ来てくれるのかしら」

    僕「あれ、展開早いぞ」

    瑠「え…」

    僕の顔色を窺っている。

    僕「いいよいつでも。瑠奈さえ良ければ来て」

    瑠「わぁ。ありがとう」

    覚「嬉しいねぇ」

    美「ホントに。この後は、大学や自動車学校の書類作成を二人でするんだったわよね」

    僕「うん」

    瑠「私ね、写真も持ってきたよ。新しいヘアスタイル候補、プリントアウトしたんだ」

    僕「そうなの?ありがとう、考えてくれて」

    美「あら。至れり尽くせりね」

    覚「春にはイメチェンか」

    食事終了。食卓が片付いたところで、

    美「瑠奈ちゃん、今日の為にエプロン買ってくれたんでしょ。良かったら置いていって」

    瑠「いいんですか?でもお洗濯しないと」

    覚「洗濯は洗濯機がやるから気にしない。しかし感心するよ。よそのお宅の娘さんって、こんなに気遣いができるんだな」

    僕「よそのお宅ね。言える」

    各種書類を片っ端から作成中。

    瑠「大学、サークルとかどうする?」

    僕「入らないよ」

    瑠「そうなの?」

    僕「えーと、瑠奈との時間をできるだけ作りたいし」

    覚「おっ」

    美「あら」

    瑠「えー?嬉しいけど、実際にはやりたいことや究めたい事があるからでしょ」

    僕「まぁ、なきにしもあらず」

    瑠「だよね」

    僕「…何かは、聞かない?」

    瑠「尊が話す気になったら聞くよ」

    僕「ありがとう」

    両親が、このやり取りにかなり驚いているのが見て取れた。そうなんだよ、こういった、人の思いに立ち入り過ぎない所はホント尊敬する。そして、書類作成は順調に進んだ。

    僕「よし、終わった」

    美「見せて。…ふんふん、いいでしょう。瑠奈ちゃんの分は、親御さんに点検してもらってね」

    瑠「はい」

    ケーキと紅茶が出された。両親は、髪型候補の写真に見入っている。

    覚「いい感じじゃないか」

    美「ホントよね。瑠奈ちゃんセンスいい。尊、理容室行く当日はついてきて貰いなさい。二人で行くからよろしく、って予約の電話してあげるわ」

    僕「え!そんなの恥ずかしいよ」

    覚「何が恥ずかしい。自慢の彼女だろ。いいじゃないか、母さんの友人の店だし融通きかせてくれそうだ」

    美「だって尊。写真があるとはいえ、一人で説明できる自信あるの?」

    僕「ない」

    美「でしょ。えーっと明日明後日は手続きとか行くわよね。瑠奈ちゃん、土曜は空いてる?」

    瑠「土曜ですか」

    僕「わっ。その日はホワイトデーだから、一応デートのつもりだったんだけど」

    瑠「いいですよ、おばさま。その行きつけのお店の予約が取れるなら私、ついて行きます」

    僕「えぇぇ」

    美「何絶句してるのよ。デートプランでも練ってたの?」

    僕「いや、特には…」

    美「決まりね。まだ空いてるかしら~」

    僕「話早過ぎだって」

    電話をかけに、その場を離れた母。すぐに戻って来た。

    美「13時に取れたわよ。楽しみにしてるわ、って言ってたわ」

    僕「それはお母さんの方でしょ。切るのは息子だよ」

    美「尊の成長を喜んでるのよ。あと、眼鏡も作り直すじゃない。それもその日に行っちゃいなさい。瑠奈ちゃん、尊に似合うフレーム見てあげてくれないかしら」

    瑠「はい。わかりました」

    僕「いいの?勝手に決められてるけど」

    瑠「行くよ。というか行きたい。尊が変身していく過程が見られるもん」

    美「デートの機会が増えて一石二鳥」

    覚「素直に嬉しいって言いな」

    僕「はっ、祝着至極に存じます」

    瑠「ぷっ、あはは。尊って、時々口調が武士っぽくなるね」

    夕方、母の車で瑠奈の家まで送っていった。その帰り道。

    美「尊。お父さんとも前に話したんだけど」

    僕「ん?」

    美「彼女になら、唯やタイムマシンの秘密が明らかになってもいいわねって」

    僕「あー。さっき驚いてたよね。信用できるから?」

    美「うん。ホントいい子だし」

    僕「実は兄さんにも、いずれ一緒にタイムマシン造るだろうって言われてたんだ」

    美「そうだったの。忠清くんのお墨付きなら間違いなしね。でもまぁ、そうならざるを得ない時が来たらでいいとは思う」

    僕「うん…」

    そんな機会、来るのかな…。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回はホワイトデー当日です。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道6~3月6日金曜から11日水曜昼

    師匠と弟子二人?それとも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ご報告です。本日発表があり、大学に無事合格しました。余裕と言いつつ一安心。ふぅ。

    覚「奮発したぞー」

    晩ごはんはすき焼き!やった~。

    僕「このお肉美味しい!」

    覚「だろ?」

    美香子「ご褒美よ。そうそう、エリさんと芳江さんね、心配は全くしてなかったって言ってたわよ~」

    僕「危ねっ。これで落ちてたら見せる顔がなかった」

    美「唯達にも…教えてあげたいわね」

    僕「あー」

    覚「話してなかったけどな、以前源三郎くんに聞かれててさ」

    僕「何を?」

    覚「大学は、入れなかったらどうなるのでしょうかって。行きたい気持ちがあるなら一年後に再挑戦するんだよって言ったら、もの凄く驚いてた」

    美「だったら今頃、心配で仕方ないんじゃないかしら」

    僕「うん…僕さ、思ったんだ。前にお姉ちゃんが言ってたじゃない。無事だったら知らせる、どうにかして絶対知らせるから、って」

    覚「言ってたな」

    僕「自分に置き換えてさ、こちらから何とかできないかって」

    美「それって…電話?メール?なーんて」

    覚「電報とかか?」

    僕「電報!サクラサク、って?それお姉ちゃんが理解できるかは微妙だよ」

    美「こっちも満開~とか言いそう。有り得る」

    覚「すまんすまん、ちょっと脱線したな。って事は?」

    僕「うん。瑠奈とほぼ毎晩パソコンでビデオ通話してるんだけど、これを永禄相手にできないかなって考え始めてる。月イチとかせめて年イチとか」

    美「ホントに?!新型タイムマシンの前に?」

    僕「作業は平行でやってくつもり」

    覚「ほー。夢がある話だが、大学行く時間あるか?アルバイトもするんだろ」

    僕「やれるだけやってみる。近頃、体力ついてきた感じだし」

    美「それでも、体壊すようでは本末転倒よ」

    僕「無理はしないようにするよ。で、話変わるけどさ、瑠奈がウチに来るって話、いよいよ遂行しようと思って」

    覚「おっ。いつでも大歓迎だぞ。昼飯をふるまうんだよな?」

    僕「そのつもり。お母さん、来週の水曜って忙しい?」

    美「諸々の用は午前中には終わる筈。平日よ?瑠奈ちゃんはその日でいいの?」

    僕「うん。クリニックは水曜休みって伝えたから。11日水曜で仮押さえにしてある」

    美「そうなの。だったらいいわよ」

    覚「了解。楽しみだな」

    僕「来てもらうのは土日でも良かったんだけどさ、実は思うところがありまして」

    覚&美香子「何」

    僕「今度の満月、10日じゃない」

    美「そう…ね。はいはい」

    覚「ちゃんとマークしたぞ」

    兄さんもよく眺めていた、月めくりの壁掛けカレンダー。父が、全ての満月の日付に黄色の丸いシールを貼りつけていた。

    僕「満月の日の献立ははさみ揚げでしょ。一日ずらしてもらって、月に一度の渾身の料理、是非瑠奈に食べさせてあげたいと思って」

    覚「二日連続でもいいぞ?」

    僕「新鮮に、一緒に味に感動したいから」

    覚「嬉しい事言ってくれる」

    僕「じゃあ、11日に決定って伝えるよ」

    美「そうね。これ最後のお肉。食べちゃって」

    僕「うん」

    ┅┅

    そして11日。瑠奈を駅まで迎えに行っていた。

    僕「ただいま」

    瑠奈「お邪魔します。こんにちは!おじさま」

    覚「おー。瑠奈ちゃん、いらっしゃい。ごめんな、車で迎えに出られずに」

    瑠「そんな、いいんです。あの、これ皆さんでどうぞって母が」

    覚「手土産なんかいいのに。ありがとう。いただくよ」

    僕「お母さんは、まだ?」

    覚「飯の時間には間に合うって言ってたぞ。瑠奈ちゃんさ」

    瑠「はい」

    覚「カレー味でちょっとスパイスきかせてるのは、苦手じゃないかい?」

    瑠「大丈夫です」

    僕「もしかして、忠清スパイス?」

    覚「へへ、使っちゃうよ~」

    瑠「おじさま、お手伝いします」

    覚「いいよ?お茶も出してなくて悪いね。座ってて」

    瑠「あの」

    鞄から何かを取り出した瑠奈。

    瑠「お手伝いするつもりで、エプロン持ってきたんです」

    覚「へー!」

    これには僕も驚いた。

    覚「若いのに。出来た娘さんだよ」

    瑠「可愛いいのがいいね、って母と買いに行きました」

    覚「わざわざかい?尊…お前、幸せ者だな」

    僕「仰せの通りです」

    その後三人でご飯の支度をしたけれど、瑠奈のエプロン姿が眩しくて。父は終始ご機嫌だし、僕はずっとニヤニヤしてた気がする。

    美「ごめんね~。遅くなりました」

    レンコンを揚げ始めた頃に、母が帰宅した。

    瑠「おばさま、こんにちは」

    美「瑠奈ちゃんいらっしゃい。あら!エプロン姿!もうお嫁に来てくれたの~?」

    ゲゲ!何言い出すの!下向いちゃったじゃないか!

    覚「母さん。からかうなよ、可哀想だろ。尊を選ぶかなんて決まってないんだから」

    美「それもそうね」

    瑠奈がクスっと笑った。えー、それ、どう捉えればいいの?

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道5~2月29日昼から3月2日月曜

    健やかに育ってくれるだけで、親孝行ではある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはんタイム。さすがに14時だと、フードコートの席も余裕があった。

    瑠奈「あ、そういえばね」

    僕「うん?」

    瑠「地元の小垣山にね、昔お城があったんだって。その跡地に資料館ができたの」

    僕「知ってる。つーか完成したんだ」

    小垣山。そのまんまの名前。そりゃそうか。

    瑠「さすが歴史通!町の広報に載ってたの。私も読んだけど、お母さんが尊くん知ってるかしらって言ってて」

    僕「いつ開館するかは知らないよ」

    木村先生には、もう少ししたら大学の合否、もちろん合格の報告がいいけど。を連絡しようと思っていた。

    瑠「確か4月19日、日曜って書いてあったはずだよ」

    僕「ありがとう。親に言っとくね」

    瑠「家族全員歴史好きなの?すごーい」

    好きというか、城跡見に行ってるし、木村先生のメールも読んだし。お姉ちゃんが関わる話は親も興味あるよ。

    僕「岩盤浴は満喫できた?」

    瑠「うん。一緒の時間も満喫できたし」

    僕「それは僕も同感です」

    瑠「ふふっ。良かったぁ」

    最後は瑠奈の自宅、というかマンションの入口まで送り、甘い一日が終わった。

    ┅┅

    3月。2日、高校の卒業式を迎えた。

    美香子「色々あった三年間よねぇ」

    僕「ホントだよ」

    覚「終了後は、クラスメートや瑠奈ちゃんとどこか行ったりするのか?」

    僕「ううん。写真はいっぱい撮ろうって話はしたけど、瑠奈はその後女子会するって言ってたし、特にイベントはなし」

    覚「そうか」

    僕「僕は、ミッションをこなすのみ」

    覚「ミッション?」

    美「何それ」

    僕「帰ったらね。じゃ、行ってきます」

    式はつつがなく進んでいた。僕はこの三年で、少しは成長できたかな。きっと、きっとできていると信じたい。兄さんに出会い、学んだ事は数知れず。源三郎さんもトヨさんも同じだ。勿論お姉ちゃんにも。あんなにひねくれてた自分が…いや、これも僕の歴史。糧になってるよね。

    クラスの男子「注目~!はい、バター」

    みつき「ちょっとそれ昭和~」

    教室に戻り、撮影大会が始まった。

    瑠「尊、こっちこっち。撮るよぉ」

    僕「はい。え、どのスマホ見ていいかわからないよ」

    み「どれもくまなく見てニッコリ笑う!」

    バッシャバッシャと撮りまくっている輪の中に自分が居るのがなんか不思議。今になって青春してる?そうしている内に、人がまばらになってきた。

    瑠「ごめんね尊、そろそろ行くよ。また夜話そうね」

    み「センセまたね~」

    僕「うん、また」

    瑠奈達を見送った後、教室を出た。廊下をゆっくり歩き、校門を出た所で振り返って校舎を臨んだ。お世話になりました、と呟いた。

    僕「ただいま」

    覚「おーお帰り」

    そのまま帰宅。食卓の席につくと、父はお茶を煎れてくれた。

    覚「思ったよりは遅かったな」

    僕「まあね」

    覚「あれ?筒は?」

    僕「筒って何。卒業証書ならこれだよ」

    リュックから厚手の二つ折りのホルダーを出した。

    覚「最近はこんな形なのか。へぇ~」

    僕「中、見ないの?」

    覚「母さんが仕事終わるまで、楽しみにとっておく。夜に恭しく拝見するよ」

    僕「贈呈式ね」

    晩ごはん後。

    僕「それでは」

    覚&美香子「はい」

    卒業証書を開いた。

    覚「おぉ」

    美香子「神々しいわ」

    しげしげと見つめて喜んでいる両親。

    美「ところで、今朝言ってたミッションって」

    覚「そうそう」

    僕「ミッションはね、これ。無事高校を卒業して、卒業証書を持ち帰る」

    美「へ?」

    覚「それだけ?」

    僕「そうだよ。お姉ちゃんが持ち帰らなかった卒業証書。だから僕は必ず見せてあげよう、とずっと思ってたんだ」

    美「…」

    覚「高校のはそうだな。確実に家まで運び、僕らが見る所までがミッションか」

    僕「うん」

    母が涙ぐんでいる。

    美「ありがとう、尊」

    僕「喜んでくれて嬉しいよ」

    覚「これ、壁にかけて飾っとくか?」

    僕「それは止めて」

    最後は三人で大笑いした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    案ずるまでもありませんが、次回は試験の結果発表からです。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道4~2月29日土曜朝から昼

    先日の台風、私は大きくは影響ありませんでしたが、皆様お変わりないでしょうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    とことんじゃれ合っていただきます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    父が今日のデートコースを不思議がっている。

    覚「高校生カップルが昼間っからスーパー銭湯でまったり、ってのも何だが」

    僕「7人で行ったじゃない。それをあんまり楽しそうに僕が話すから、羨ましかったって言ってた」

    覚「そうか。送迎バスは小垣駅からも出てるんだよな?」

    僕「うん。だから小垣で待ち合わせ。9時半のバスに乗るつもりだからそろそろ行くよ。夕方には帰るね」

    覚「楽しんできな」

    小垣駅に到着。ロータリーにマイクロバスが停まっていて、その前で瑠奈が小さく手を振っていた。吉田城跡を横目にバスに乗り込む。

    瑠奈「このバスにも乗った事あるの?」

    僕「うん、黒羽駅に来る方に。もう一年以上前だけどね。懐かしいな」

    お姉ちゃんと兄さんと乗ったなぁ。

    瑠「尊の話聞いてると、このスパ銭行くのが速川家の一大イベントみたい」

    僕「あー。そうかも。みんな好きだからね」

    瑠「お姉さん達家族も?」

    僕「うん」

    あ、話逸らした方がいいな。

    僕「でも一番記憶に残ってるのは、サウナの中で無の境地になってたお父さん。仙人みたいでさ」

    瑠「おじさまが?想像できるかも。あはは~」

    ふぅ。セーフセーフ。

    瑠「ねぇ、眼鏡曇ってるよ。見えてる?」

    僕「何とか」

    到着後ササッと風呂に入り、お望み通りの岩盤浴真っ最中。

    僕「暑っ。一度休憩したいけど、もうすぐ12時か…お腹って空いてる?」

    瑠「ううん。でも私も暑さは限界間近」

    僕「フードコートは今の時間混んでるから、昼ごはんは後回しで、まず涼みに行こうか」

    瑠「はーい」

    休憩エリアに移動してきた。

    瑠「尊?どこまで行くの?」

    目指す場所に向かう。

    僕「ラッキー。今日はお客さん多いからどうかなと思ったけど」

    よくお姉ちゃんと兄さんがイチャついていたカップルシートが、運良く空いていた。

    瑠「…」

    こんな所に連れてきて、ドン引きしたかな。

    瑠「この微妙な隠れ加減…」

    僕「誤解しないで。僕は使った事ない。お姉ちゃん達がよくね」

    瑠「ホントかな」

    僕「ホントだよ。僕がこの場所を使う日がくるなんて、夢にも思わなかった。瑠奈に感謝しなきゃね」

    瑠「ふぅん…」

    僕「疑ってる?」

    瑠「言う事聞いてくれるなら、不問にする」

    僕「わかりました。お望みは何でしょう」

    瑠「先に入って寝転んで」

    僕「はい」

    言われるがまま、シートというよりミニベッドに滑り込んだ。

    瑠「片腕を横に出して、伸ばして」

    僕「はい…」

    これはまさかの…腕枕?!

    瑠「わぁい!」

    僕「うわっ」

    すぐさま、大喜びの表情で飛び込んできた!

    瑠「ごめぇん。ちょっと勢い余っちゃった。どこもぶつけたりしてない?」

    僕「大丈夫です…」

    いや、それよりですね、近い、近いんですよ瑠奈さん!そこ、腕というより肩だし!

    瑠「うふふ。たけるんの腕枕だぁ」

    僕「あの…」

    瑠「なに?」

    僕「僕、汗臭くない?すごく心配なんだけど」

    瑠「全然匂わないよ」

    良かった。まずは一安心。

    瑠「あっ!つい飛びついちゃったけど、私こそ匂ってる?」

    僕「ううん。甘い香りがする」

    酔ってしまいそう。

    瑠「たけるん…なんかいやらしい」

    僕「何でだよ。事実を述べたまでです」

    瑠「クサくないなら安心。ねぇ、眠くなっちゃった。少し眠ってもいい?」

    え。って事は、しばらくこの状態?マジすか!違う汗かきそう。緊張するけど、ここは落ち着け落ち着け。

    僕「僕の隣で良ければどうぞ。冷えるといけないから、タオルかけておくよ」

    瑠「優しーい。たけるん、おやすみぃ」

    僕「おやすみなさい」

    僕は眠るなんて無理!目が冴えまくり!しばらくは瑠奈姫を守ります。しかし、やかましい姉が帰った後で良かった。こんな姿見られようものなら、収拾つかなかったよ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君シャトルバスに乗る、のお話は、平成Days17no.388にて。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    カマアイナさんへ

    ご自宅に直接の被害はなかったんですね。何よりです。

    日本の気象情報をよくご存知でいらっしゃいますね。仰せのとおり、私の住む東海地方近辺に台風接近中です。粗方の準備は済ませました。無事にやり過ごせるといいですが。

    尊くん、そうですね。大人への階段は登り始めたばかりです。そっと見守っていただければと思います。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道3~2月15日から27日木曜

    カマアイナさん。ハワイの山火事のニュースを見る度に案じております。お住まいはホノルル近郊ではなかったと認識しておりますが、生活に支障など出ていらっしゃいませんか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    画面に虫眼鏡当てたくなる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝のクリニック。エリさんと芳江さんがコーヒーを口にしているのだが、

    僕「お疲れですか」

    二人とも、頻りに眉間を押さえたり肩を上げ下げしているのが気になった。

    美香子「私がこき使っちゃってるのよね」

    芳江「いえいえ、そんな滅相もない」

    エリ「寄る年波に勝てないだけですよ~」

    芳「最近はね、特に目にきますね」

    エ「私も。ここ一年位でガタっと」

    僕「大変そう」

    美「うーん。人を増やすってのも考えたんだけどねぇ」

    母がチラっと僕の顔を見た。

    僕「何?」

    美「タイムマシンとか唯が家に居ない理由とかをね、これ以上他の人に知られる機会が少ない方がいいかしら、って思って求人を躊躇しちゃって」

    僕「それって…風が吹けば桶屋が儲かる的な話で、僕がタイムマシン造ったから芳江さんやエリさんが大変な思いをしてるの?それはごめんなさい」

    エ「いえいえ、尊くんは何も悪くないですよ」

    僕「お二人が辛そうにしてるのは、見てて僕も辛いです」

    芳「ほとんどのお仕事は全然大丈夫なんですけどね」

    エ「私達が苦手というか手こずっているのは、パソコンです」

    僕「パソコン。ですか」

    エ「何と言いますか、こういう業務系のシステムって、文字が小さいとか欄が狭いとかで、シニア世代には優しくないんですよ」

    僕「そうなんだ」

    芳「休み休みやりますし、メガネ型の拡大ルーペも買いましたし」

    エ「私も買いました。何とかやっていきますから、心配無用ですよ」

    美「私もできるだけ二人に負担かけないようにするわ」

    僕「僕、入力とか手伝おうか」

    美「要らない」

    僕「そうなの?」

    美「気持ちだけ貰っておくわ。尊は春からの新生活に全力投球しなさい」

    エ「そうですよ。尊くんはやらなければならない事が沢山ありますからね」

    芳「気にしないでくださいね」

    僕「はい…」

    リビングに戻って来た。

    覚「おー、お使いありがとな」

    僕「うん…」

    覚「何だ、今度は考え事か?」

    僕「ちょっとね。もう部屋に行くよ」

    覚「ん」

    部屋に戻ってからも、考えていた。

    僕「お二人の力になりたい。パソコン問題なら何とかなりそうだから、最終試験終わったら手をつけよう」

    決意表明をして、それからは勉強に打ち込んだ。

    ┅┅

    2月26日に最終試験が終わった。その翌日。

    瑠奈「ねぇねぇ、岩盤浴いつ行く?」

    僕「岩盤浴?」

    瑠「試験終わったら一緒に行こう、って言ってくれたでしょ」

    そんな約束したっけ?あー、話した話した!瑠奈が家に来た日に。

    僕「そうだったね」

    瑠「楽しみにしてたんだよぉ」

    危ねっ。機嫌を損ねるところだった。

    僕「だったら今週末はどう?土曜日とか」

    瑠「土曜ね。了解でーす。わぁ!久々のデート!」

    僕「そうだね。僕も楽しみだよ」

    クールに装ってるけど、デート、デート…かなり喜んでます。

    瑠「来週は、月曜日が卒業式で金曜日が合格発表でしょ。だから怒涛の一週間の前にデトックスはちょうどいいかも」

    僕「すっきりさっぱりとね」

    そうそう、もう一つの約束は覚えてるよ。

    僕「それもだけど、無事合格したら家に遊びに来るよね」

    瑠「うん、行きたい」

    僕「親に話したらお父さんがノリノリでさ、料理何にするか今から考えてるんだよ」

    瑠「待っててもらえてるの?嬉しい」

    僕「また日にち決めようね」

    瑠「うん!今度はちゃんとアポイントメントとります」

    僕「ははは」

    大学決まったような話してるけど、今更あーだこーだもないし。でも来月って、かなり慌ただしいよな。入学準備、自動車学校通学に向けて眼鏡作り直せって言われてるし、髪も切るんだった。でも生活がガラリと変わるんだから、こんなものなんだろうな。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、岩盤浴デートからスタートです。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道2~2月14日金曜から15日土曜

    てんころりんさん、カマアイナさん。ご声援ありがとうございます。
    しばらく、ゆるゆる物語にお付き合いくださいませ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    遅れてやって来た青春恋愛模様なら、尚更満喫して欲しいと思うのです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    受験生にも恋愛系イベントはやってくる。今日はバレンタインデーだ。

    みつき「来た来た」

    瑠奈「たけるーん!」

    僕「え」

    朝。登校すると、校門に瑠奈とミッキーさんが居て驚いた。

    僕「おはよう、ございます」

    瑠「おはよぉ」

    み「おはよう、センセ」

    僕「寒いのに、ここで待ってたの?」

    瑠「そんなに待ってないよ」

    み「センセの登校時間は把握してるし」

    僕「それにしても」

    み「はい、どうして今朝私達がここに居るのかはわかるでしょ。教室だと目立つからさ。いつもお世話になってまーす!」

    お辞儀をしながら紙袋を渡された。

    僕「あ、ありがとう」

    み「悪いけど、彼氏のとは差つけたから」

    僕「当然だよ」

    み「小さいチョコの詰め合わせ的な物。勉強の合間につまめるように」

    僕「それは、お気遣い痛み入りまする」

    み「そう来たか。うむ、苦しゅうないぞ」

    僕「ははは」

    み「では私はここで。お先に!さらばじゃ~」

    ミッキーさんは颯爽と駆け出して行ってしまった。

    僕「動きに無駄がないな」

    瑠「たけるん」

    僕「あ、はい」

    瑠「これ私から。受け取ってください」

    僕「ありがとう」

    今開けた方がいいのかな。でもこの綺麗なラッピング、元通りに戻せる自信ないな…。

    瑠「尊の部屋に、天文学の本があったの思い出して」

    僕「うん?」

    瑠「惑星みたいな柄の、真ん丸でツヤツヤなチョコがあったから、それにしたの」

    僕「へぇ、そんなのあるんだ。これ、今開けずに持ち帰ってもいいかな」

    瑠「いいよ」

    僕「楽しみは家までとっておくね。じゃあそろそろ、教室に行こっか」

    チョコの包み二つをリュックにしまった。歩き出そうとすると、

    瑠「お願いがあるの」

    僕「お願い。何でしょう」

    瑠「手、繋ぎたい」

    僕「…朝から?」

    帰りはいつも繋いでるけど。すみません、恋愛を謳歌してます。

    瑠「朝からがいい」

    周りを見渡すと、あちこちでチョコの受け渡しが行われていて、この辺りだけ何と言うかラブ全開!な感じではある。

    瑠「ダメ?悪いコかな。困る?」

    僕「悪いコじゃないし困らないよ。はい」

    手を差し出すと、満面の笑みで駆け寄ってきた。な、なんて可愛らしいんだ。

    瑠「うふふ」

    手を取り歩き出す。途中、クラスの男子に冷やかされたけど、それさえも心地よい。高校生活最後の最後で訪れたこんな日々。瑠奈には感謝するばかりだし、できるだけ望みは叶えてあげたい。ん?これって…

    ┅┅回想。実験室で若君と将棋対局中┅┅

    若君「唯が望み喜ぶ事を、何なりと叶えてやりたい」

    僕 心の声(しぇ~!お姉ちゃん、愛されてる!)

    ┅┅回想終わり┅┅

    兄さんに一歩近づいたかな。近づくなんて、おこがましいか~。

    ┅┅

    翌日は土曜日だった。朝ごはんの後、そのまま食卓でぼんやり椅子に座っていた。

    覚「ちゃんと寝たのか?ポーっとして」

    僕「寝たよ」

    ゆうべ。ミッキーさんに貰ったチョコは、原産国が様々で多くの種類が入っており、一つ一つ包み紙を眺めて楽しんでいた。瑠奈に貰ったチョコは、チョコ自体が目を見張る程美しかったので、同じく机に並べてずっと眺めていた。要は、初めてのバレンタインデーに浮かれてて、今も夢心地という訳だ。

    覚「まだここでウダウダしてるなら、これ持って行ってくれよ」

    僕「あ、うん。わかった」

    クリニックにコーヒーを運ぶ役目を仰せつかった。

    僕「おはようございます」

    美香子「あら珍しい」

    僕「試験勉強はもう少し後で始めるから」

    エリ「おはようございます、尊くん。お久しぶりですね」

    芳江「おはようございまーす。あらら尊くん忙しいでしょうに」

    後から思い返すと、この時エリさんと芳江さんに会っておいて本当に良かった。お役にも立てたし、その後の僕にも大きく影響したし。人生どう転ぶかわからないものだと痛切に感じた一件だった。それが何かは、またおいおい話します。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    (新)続現代Days尊の進む道1~2020年1月16日木曜から2月初旬

    今回のシリーズは、一話に何日分かまとまるケースが多くなります。
    あと、尊目線なので、セリフ前の表記が尊→僕に変わっております。

    では尊くん、よろしくお願いします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    僕「ふーん」

    美香子「中々いいわね~」

    1月16日。家の二階、源三郎さんとトヨさんが使っていた予備室。兄さんと源三郎さんが組み立てたテーブルが既に運びこんであったのだが、せっかくだからとその上に、父が写真をずらりと並べていた。

    覚「下には置ききれないしさ」

    僕「確かに。兄さんの意向でお花の写真立てはリビングにあるけど、それでも今回随分増えたもんね」

    美「…」

    覚「どうした?」

    美「この部屋に来れば…ね、と思って」

    覚「ん…」

    わかる。こんなに四人に見つめられて。賑やかだけど、かえって淋しいよね。でも淋しいと口にしてしまうと、もっと淋しくなるからだ。

    僕「ここでいつでも笑顔に会えるよ」

    覚「そうだな。毎日拝むか」

    美「うん。そうする。部屋の前通る度に」

    僕「え、一日一回じゃなくて毎回なの?」

    美「何とかの一つ覚えみたいな物よ」

    僕「別にいいけどさ」

    美「伝統芸能、ね」

    僕「あぁ。…懐かしいな」

    覚「ははは」

    三人で笑いながら、そっと部屋のドアを閉めた。

    ┅┅

    18日、土曜日。

    覚「頑張ってこいよ」

    美「余裕だ、なんて気を緩めちゃ駄目よ」

    僕「うん。行ってくるね」

    いよいよセンター試験が始まる。気を引き締めないとな。電車で会場に向かっていると、瑠奈からLINEが届いた。

    瑠奈の投稿『春からは朝も一緒の電車で通学したいな』

    そうだね。

    瑠 投稿『いっぱい念を送るから!』

    念?画面いっぱいに、ハートがめっちゃ飛びまくってますけど。ははは。

    瑠 投稿『がんばってね』

    はい。心して挑みます。

    ┅┅

    そして、まずは二日間の日程が終了した。その夜、晩ごはんの後。

    覚「まだ全部終わってはいないんだが、話をしておく」

    僕「うん?」

    覚「早い内に、車の免許取っときな」

    僕「免許!はぁ」

    美「あって損はないでしょ」

    僕「そう…だね」

    美「瑠奈ちゃんと、ドライブデートできちゃうわよ~?」

    僕「あー、まぁ」

    覚「彼女はその辺りどうしてるんだ?推薦で、日程に余裕があっただろ」

    僕「何も聞いてない」

    覚「一度話してみな」

    僕「わかった」

    早速、部屋でビデオ通話中に聞いてみた。

    瑠奈『免許は、大学入ってしばらくしたら取りに行こうかなぁくらいに思ってた。早く行きなさいって言われてるの?』

    僕「うん。何かアルバイトに行くにしても、車には乗れた方がいいだろって。3月中には通い始められるよう、準備しようかと思ってる」

    瑠『そっか。私も一緒に通おっかな』

    僕「そうする?」

    瑠『うん』

    結果としてこの選択は大正解だった。あれこれ考えたり後回しにしたりせず、ただやる、ってのも悪くない。

    ┅┅

    2月に入った。月末に最終試験を控えているので何となく足元がフワフワした感じだけど、少しずつ春は近づいている気がする。

    瑠「それ、好き」

    僕「好き?」

    瑠「前髪かきあげるしぐさ」

    帰りの電車内。髪がだいぶ伸びてきたから、そろそろ切りに行かなくてはと思っていたところだった。

    僕「髪は長めがお好みなの?」

    瑠「襟足が長いのは好きじゃないよ」

    僕「そうなんだ」

    瑠「だけど尊は、前髪はもう少し伸ばしてふわっとさせても似合うと思う」

    僕「へぇ」

    瑠「うん」

    僕「僕そういうの全然わからないから。瑠奈が考えてくれるなら、新しい髪型に挑戦してもいいけど」

    瑠「え、いいの?」

    僕「もうすぐ春だし。それもいいかなって」

    瑠「尊にしては珍しい発言」

    僕「言うね。まぁ、たまにはさ」

    瑠「だったら、大学はニューヘアスタイルでデビュー?」

    僕「そうなるね」

    瑠「わぁ、責任重大じゃない!…ううん、さてはモテモテになって出会った他の女と仲良くなろう、なんて」

    僕「またそんな事言う。有り得ないから」

    瑠「尊のキャンパスには女子がいっぱい居るもん。素敵!って言い寄られて」

    僕「ないない」

    瑠「どうしてそう言えるの?」

    僕「瑠奈以上の女性は居ないから目移りなんてしないよ」

    瑠「…」

    え、何?

    瑠「そんなセリフ、真顔でサラっと言うなんて。ドキドキしちゃう」

    あー。そんなキザなセリフだなんて気づいてなかった。マジでそう思ってるからだろうな。

    瑠「嬉しい」

    僕「どういたしまして」

    瑠「では安心して、髪型を熟考させていただきまーす」

    僕「よろしくお願いします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、バレンタインデーからのスタートです。

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    返信先: 創作倶楽部
    新連載のお知らせ

    皆様、ご無沙汰しております。夕月かかりてでございます。

    お知らせの前に、まずはぷくぷく様。大巨編の感想が大変遅くなりました。アシガール本家超えの時空跨ぎ!感服いたしました。今自分がどこに居るかわからなくなりそうでした。ぷくぷくさんのお話と比べ私の創作話など、近所をウロウロしてるようなモノでございます。

    そんなウロウロしかできない私ですが、以前お伝えした現代Daysの続きを始めたく、戻って参りました。またしばらくこちらにお邪魔させてください。

    今回はマイナーチェンジしまして、語り部は尊です。お話の最初と最後の説明は作者がいたしますが、文中は彼の目線で進みます。パラレルワールド全開。原作で新シーズンが始まっていますが、勝手ながらこのまま突っ走ります。

    ほぼ全編現代でのお話となりますが、永禄の面々もいずれは…相当先ですが登場しますので、今しばらくお待ちください。

    数日後にスタートします。投稿間隔は、変わらず3~5日に一度の予定です。

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    振り返ります四人の現代Days、150(終)まで

    no.1068の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118、no.1015、再会
    119、no.1016、一触即発
    120、no.1017、後悔先に立たず
    121、no.1018、ここはお白洲
    122、no.1019、陳述します
    123、no.1020、挑戦と再挑戦
    124、no.1021、もしもーし
    125、no.1022、時代時代で
    126、no.1023、春からのビジョン
    127、no.1024、団欒┅┅┅

    永禄で生きる決心をする前から、時空を行ったり来たりでちょくちょく長期に学校を休んでいた唯が、学校の友達にどう説明したのか。絶対してないよなと思い、こうなりました。

    128、no.1025、ホットほっと
    129、no.1026、忸怩たる思い
    130、no.1027、道に迷う
    131、no.1028、期待してます
    132、no.1029、肌身離さず
    133、no.1030、刻みます
    134、no.1031、大きくなったね
    135、no.1032、未来は明るい!
    136、no.1039、用意周到
    137、no.1040、遠慮のかたまり
    138、no.1041、お好みはどれ
    139、no.1042、興が乗る
    140、no.1043、男子の会話
    141、no.1044、レア物です
    142、no.1045、帰省終わります
    143、no.1046、文詠みます┅┅┅

    ボーリングですが。表記としてはボウリングが正解ですね。掘削しませんものね。大分前に気づきましたが、Daysシリーズではこのままにします。で、ボーリング初登場は遡って平成Days14話(no.375)。この時のエピソードと対になったのが134話です。

    144、no.1047、匂わせます
    145、no.1048、踊らされます┅┅┅

    じいは若君の守役だったので、幼い頃からよーく知っている。逆に考えると、共に過ごした時間の長さだけ、若君もじいをよーく知っている。じいが千原じいの話にどのようにのってくるかはお見通しだったので、勝ち戦も同然だったのです。

    146、no.1049、佳き日
    147、no.1050、一件落着┅┅┅

    梅を調べてて知ったのですが、「紅梅」「白梅」って、花の色でなく、材木にした時赤いか白いかで決まるらしいですね。木の内部が赤いのが紅梅、白いのが白梅。だから白い花を咲かせる紅梅もあると。ちょっとややこしい。
    緑の梅ですが、緑萼梅という種類が、花びらは白、中が緑、萼(がく)も緑でした。
    お父さん、一本締めだと言ってますが、あの様子だと手をパンと一回だけ叩きそう。それ一丁締めだって!と総ツッコミされてると思います。

    148、no.1052、助言します
    149、no.1053、犯人は

    150(終)、no.1054、夢で逢えたら┅┅┅

    長女二女がもう少し小さい頃は、唯も参戦して忠清パパの取り合いをしてたとは思いますが。かつて令和Days69話(no.686)、妄想してデレデレしたように。でも時の流れは残酷で。唯にも突っ込まれ放題で。パパ頑張って~。

    ┅┅

    発表する度に長くなっていくお話。お付き合いいただきありがとうございました。
    ひと月って長いような短いような。今回は遠出もさせてませんし、話が持つのかと思いきや、源トヨとたけるなの二組のカップルが色々話題を作ってくれました。感謝せねば。
    到着した当初、若君が両親に語った願いは全て叶い、胸を撫で下ろしております。

    今後の予定です

    四人の現代Days。余韻なくあっさり終わったと思われませんでしたか?

    本当は、最後は「続きます。」でした。描きたい欲が勝りまして。現代Daysの続き、主に尊のその後のお話を考えております。

    ただですね、以前自分自身が口にした話がずっと引っ掛かっておりまして↓

    ┅┅私、令和Daysを描いた時に、自分でかけた枷がありまして。「コロナ禍になってから二人を飛ばさない」┅┅

    続きとなるといよいよその時期に突入です。止めようかとも思いましたが、それを踏まえた上で進めてみようと、話を練り始めておりました。
    でも。速川クリニックはその頃大波真っ只中。中途半端に話を起こしては、かえって医療機関に従事されている方々に失礼に当たると考え、悩んだあげく…コロナ禍は描かない事にいたしました。
    でも自分の中では、できればその時期に当たる日付に唯と若君を飛ばしたくないので、また考えます。
    という訳で振り出しに戻っておりますので、今は手付かずの状態です。

    いつスタートするか、どのくらいの量になるかは全く未定でございます。

    メドがつきましたら、お知らせします。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります四人の現代Days、44から117まで

    no.1067の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    44、no.901、プライスレス
    45、no.902、選択せよ
    46、no.903、以心伝心
    47、no.904、戦うあなたが
    48、no.905、呼んだ?
    49、no.906、贈ります
    50、no.907、狙ってる
    51、no.908、溶ける~
    52、no.909、星だけが見ていた
    53、no.910、忖度します┅┅┅

    念願のクリスマスイブデート。色々過ごし方はあるでしょうが、私は終わりがけをとことん甘~くしました。唯が、物足りないって言い出さないように。デートプランなんて制約がなければいくらでも考えつきますが、一緒に居られて安全が確保されていれば、何してても楽しいんでしょうね。

    54、no.911、画伯!
    55、no.912、サービス!
    56、no.913、さりげなく
    57、no.914、説明せよ
    58、no.915、甘酸っぱい
    59、no.916、春遠からじ┅┅┅

    公式掲示板で読んだのかな違うかな…ドラマで瀕死の若君を丸投げされた翌朝、尊が両親に説明する際、ひじをテーブルに乗せ両手を口元に寄せて組みます。これが、アニメ新世紀エ〇〇〇ゲリオンの登場人物がよくやるポーズなんで、尊はそのアニメのファンなんだよと教わりまして。55話で用語をほんの少し盛り込みました。
    キラキラのイルミネーション。ソワソワしてる瑠奈に気づかない尊。いつか同じ場所でちゃんとデートさせてあげたいと思います。

    60、no.917、とりあえず
    61、no.918、全て泡とならぬよう
    62、no.919、説法!
    63、no.920、ルーティンです┅┅┅

    前回の振り返りで触れるのを忘れていましたが、ドラマの中では一切出てこない源三郎の氏、話を組み立てるにあたりどうしても必要でしたので、調べまして原作から引用致しました。

    64、no.921、一枚から三枚
    65、no.922、蛍が飛ぶように

    66、no.924、満席でございます
    67、no.925、翼を広げて

    68、no.926、本領発揮

    69、no.928、衝撃的!
    70、no.929、想像するに┅┅┅

    若君の実際の墓は、きっと立派な物が造られている。今回旧緑合の地に出向いていたらそれに出合ったかもしれないですが、もし没年が彫ってあったりしたらさすがにショックでしょうから、訪れる機会はこれからもないと思います。

    71、no.932、Xデー到来
    72、no.937、想い出の場所
    73、no.940、ハラハラ!
    74、no.941、ドキドキ!
    75、no.943、月推しです

    76、no.946、引き継ぎます
    77、no.952、誘惑わくわく
    78、no.953、一歩進む
    79、no.954、天にも昇る心地
    80、no.957、密談です┅┅┅

    瑠奈とみつき。皆様に好かれる子達であって欲しいと願い、セリフや仕草を熟考したつもりです。時々暴走はするけれど愛らしい、ふわっとした雰囲気の瑠奈と、物怖じせず凛とした、でも幼なじみの彼にはとことん一途なみつき。どちらも好きですね。自分が作ったキャラなので何とでも出来るってのもありますが、もっともっと描いていたい彼女達です。

    81、no.959、幸せな初夢
    82、no.960、匂わせません

    83、no.962、ムクムクと
    84、no.964、着々と準備

    85、no.966、未踏の地へ
    86、no.967、幕開きです
    87、no.969、辿ります
    88、no.971、はなむけの
    89、no.972、二歩進んだ
    90、no.974、ゴールいやスタート
    91、no.976、振り返りは大切┅┅┅

    唯は若君に一目惚れでしたね。対比でもないですが、尊にはゆっくりと恋に目覚めてもらいました。なんで僕?と疑いながらもまんざらではなかったはず。嫌だったら、元旦のLINE攻撃にマジうぜえ!の一喝で、はい終了~だったでしょ。

    92、no.978、野望?
    93、no.980、父の思い
    94、no.982、母の思い
    95、no.984、大人への階段

    96、no.986、そーっとね
    97、no.991、ハレの日
    98、no.993、祝福します
    99、no.994、昔も今も
    100、no.995、霧が晴れた┅┅┅

    吉田城ですが、ドラマSPスタート3分30秒後に出てくるロールプレイングゲーム風の地図には表示されていません。吉田城自体が話の流れに関係ないのでそうなったんだと思いますが、右下、黒羽城の東に森のような場所があるのでその辺りと推測しました。
    源トヨ二人で一部屋を与えられた初日。トヨが二階に上がってくるのを、実は首を長くして待っていた源三郎。子供用の図鑑でないと、内容がさっぱり頭に入ってこなかったのです。

    101、no.996、尊い!
    102、no.997、プチ旅行です
    103、no.998、初めての

    104、no.999、気遣いの人
    105、no.1000、健やかなる時を
    106、no.1002、ととのう?
    107、no.1003、触れてごらん

    108、no.1004、環境問題
    109、no.1005、事件発生!
    110、no.1006、臨機応変です
    111、no.1007、その線でいこう
    112、no.1008、出番が来た
    113、no.1009、一息ついて
    114、no.1010、間一髪?
    115、no.1011、慌てます
    116、no.1012、恐縮です
    117、no.1013、奏でていてね┅┅┅

    覚お父さん。若武者達の恋愛相談にも気さくに応じ、押しつけがましくもない。息子の彼女がぐずっても、相手に寄り添い交渉もしてくれ頼りになる。さりげないカッコ良さを表現したつもりです。
    「好き」の伝え方なんですが。唯は結局直接告白はしてませんよね。若君の切ない嘘で現代に帰された時は「大好きなんですぅ」は届いてないし。「超好き!」は二回ありますが、どちらかと言うと心の声が口をついて出た感じで。
    長澤城にて。唯 心の声(こんな状況でも余裕で笑えるなんて…)
    小垣城にて。唯 心の声(こんな夫がいる女子高生なんて私だけ!)
    若君の方がはっきり言っていて「お前を思う」と山寺で話の流れの中サラっと告げる。そりゃ「本当に?」って聞き返すよなぁ。
    で、尊の場合。まだ付き合い始めて5日です。瑠奈ちゃんに言いたい。私の事好き?って質問は危険です。好き以外の答えが選べないから相手の負担になるだけなんで。とは言え尊の腹は決まっていた(*^^*)ので、照れで遠回しな表現にはなったけれど渾身の告白は成功しました。

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    振り返ります現代Days(仮)&四人の現代Days1から43まで

    通し番号、投稿番号、サブタイトルの順です。 どんな話だったっけ?と遡って投稿を探したい時、サブタイトルを掲示板の記事検索欄(板の下の方にあります)に入力すると、ページを戻っていくより早いと思います。

    今回も長い(´д`|||)ので、かなりかいつまんでの振り返りといたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    現代Days(仮)への道

    1、no.818、出ました!
    2、no.823、勝ち目ないので
    3、no.825、歴史のおさらい
    4、no.827、よもやそんな
    5、no.828、悩みが尽きぬ
    6、no.829、食の全国制覇
    7、no.830、助けられるものなら
    8、no.831、心が絶不調
    9、no.832、動く!
    10、no.833、思い立ったが吉日
    11、no.834、それでいいのか?
    12、no.835、負けない!
    13、no.836、特等席です
    14、no.837、いざ!
    15、no.839、着いたー!
    16、no.841、任せます
    17、no.842、どうなる?
    18、no.843、深夜に咲く花
    19、no.844、のるかそるか
    20(終)、no.845、絆の輪です┅┅┅

    センター試験は、尊の受けたこの年が最終の実施でした。今は、大学入学共通テストが行われていますね。
    13話の、ぷにぷにの唯と尊のまぁ可愛らしい事。まだ言葉もたどたどしい唯と、歌うように愛娘に語りかける母の会話は、描いててとても楽しかったです。
    現代と永禄で何が起こったか。速川家の決断からの若君の決断と、かなり濃い内容のミニシリーズになりました。

    四人の現代Days

    1、no.847、いらっしゃいませ
    2、no.848、大騒ぎです
    3、no.849、まだ早い
    4、no.850、それが理由です┅┅┅

    何やかやで無事四人到着。着いてすぐに、戻ったら3分後だよと源トヨには説明してるんですが…目の前の事柄を理解するのに精一杯で、色々曖昧になった模様です(137話)。

    5、no.851、so cute!
    6、no.852、入れ過ぎ注意
    7、no.853、事も無げに
    8、no.854、遠乗りじゃ
    9、no.855、後押しします
    10、no.856、夜襲?

    11、no.857、職人あらわる
    12、no.858、姫にお似合いです
    13、no.859、ヘルプ!

    14、no.860、内密に願います
    15、no.861、熱唱!
    16、no.862、美声!
    17、no.863、針のむしろ┅┅┅

    実は16話17話を描いている時点では、この女子高生2の瑠奈が尊の彼女になるなんて全く予想だにしておりませんでした。何がどう転ぶかわかりません。クラスメートから彼女になるまでかかった日数は、三週間(90話)。

    18、no.864、水上の戦い
    19、no.865、あなたしか見えない
    20、no.866、召し上がれ
    21、no.867、チャンス!

    22、no.869、誰かのために
    23、no.870、二人並んで
    24、no.871、郷に入っては
    25、no.872、懐が深い┅┅┅

    ヘアドネーション。この話を描いた当時は、容易く取り上げて良い物かと考えたのですが、その後今までに私の周りで二人も寄付していて、事業として浸透しているのを実感しました。

    26、no.873、ステップアップ
    27、no.874、時速何キロ?

    28、no.875、てんこ盛りです
    29、no.881、アポ取ります

    30、no.884、丸投げですか?!
    31、no.886、きってきって
    32、no.887、思ってたんと違う┅┅┅

    31話で父が咄嗟にひねり出した、戦国戦隊シュツジンジャー。せっかくなんでちょこっと書いてみました↓

    敵に囲まれているシュツジンジャー5人。

    シュツジンジャー1号タダキヨ「謀りおったな!」

    シュツジンジャー2号ユイ「憎ったらしい!このサカグチめ!」

    サカグチ「ふふん。ノコノコ現れおって」

    カーット!

    ユイ「へ?」

    監督「おい、すり変わってるぞ!3号コヘイタはどこに行ったんだ!」

    ユイ「うわ。じい、何やってんのよ!」

    いつの間にか、コヘイタの衣装を着てじいがちゃっかり並んでいた。

    じい「何ゆえわしを仲間に入れぬぅ」

    ユイ「はぁ?ちょっと、小平太はどこよ?!」

    じい「小平太には、今日は撮影はなしと言っておいたわ」

    ユイ「なにそれ!小平太も、どうしてその話を信じるのよ~」

    タダキヨ「じい、それは…ならぬ」

    ユイ「どう考えてもじいはメンバーには入んないし。おかしいでしょ!」

    じい「良いではないかぁ。お、何じゃ?離せ、離すのじゃ!」

    両脇を掴まれ、捕らえられた宇宙人状態で引きずられていくじい。

    シュツジンジャー4号ゲンザブロウ「信茂様、御免」

    シュツジンジャー5号アクマル「連れていく」

    ユイ「ホントにもー。じいは今度から出禁にしとかないと」

    頑張れ、戦国戦隊シュツジンジャー。

    33、no.888、羽を休めて
    34、no.889、ほろほろと
    35、no.891、竹刀を持て!
    36、no.892、滲み出る

    37、no.893、熱が入るよ
    38、no.894、トロットロ
    39、no.895、浮っき浮き
    40、no.896、迫る!┅┅┅

    何度かスモア作ってみたんですけど、マシュマロってあっという間に焦げるんですよね。でも熱でいい感じにチョコが溶けると、よっしゃーとほくそ笑んでいます。

    41、no.897、ハンコください
    42、no.898、宣言します
    43、no.899、根回しばっちり┅┅┅

    日記に名前がない話は、木村先生との会話でもほんの一瞬しか触れていません。それをちゃんと覚えていた若君。きっと、シールを貼る時も姿勢良くペタリと(149話)。

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    返信先: 創作倶楽部
    ご声援ありがとうございます

    梅とパイン様。新作は絶賛挫折中ですか。誰と誰だったか気になります~。上手くお話が導き出せれば良いですね。ニューヒーロー&ヒロイン、いつか誕生するといいなぁ。

    カマアイナ様。これはイマイチって回もあったでしょうに、いつも手放しで喜んでくださり、こんなに持ち上げていただいて良いのかしらと私こそ感謝しております。

    ぷくぷく様。新作お待ちしておりました。雑談掲示板でのお知らせから音沙汰なく、どうされたかと心配していましたが、私の長い話が終わるのを待たれていらしたのですか?だとすると申し訳ないです。まだ振り返りとかやりますので、私が割り込む形になりますが、ご容赦くださいませ。

    で、通し番号・投稿番号・サブタイトルを載せた現代Daysの振り返り、また何回かに分けて行いますので、総評もその中に盛り込みます。それでもやたらと幅をとってしまい恐縮ですが。だってサブタイトル並べるだけで170行も…何とかコンパクトにまとめます。

    その後、今後の予定をお伝えします。

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    返信先: 創作倶楽部
    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、118から(終)まで

    no.1014の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118no.1015、1/10、一緒に登校しよう。唯はなぜ逃げる

    119no.1016、1/10、出会ったのは美沙

    120no.1017、1/10、別れる前に和解せよ

    121no.1018、1/10、無礼の訳を話せ

    122no.1019、1/10、諭される唯

    123no.1020、1/10、電話をかけよう。尊と瑠奈は何歩進んだか

    124no.1021、1/10、電話にもて遊ばれる若君

    125no.1022、1/10、買い物は令和風でいこう

    126no.1023、1/10、尊は何を憂う

    127no.1024、1/10、トヨの手腕で眠らない覚

    128no.1025、1/11、最後の朝も早起きできない唯

    129no.1026、1/11、尊の懸念が見えてこない

    130no.1027、1/11、未来は遠くないと諭される尊

    131no.1028、1/11、何気に尊に圧をかける若君

    132no.1029、1/11、エリと芳江からプレゼント

    133no.1030、1/11、尊の授業。エリと芳江に別れの挨拶

    134no.1031、1/11、ボーリング場へGO

    135no.1032、1/11、ゲームを戦の代わりにしたい

    136no.1039、1/11、はさみ揚げの活躍に期待

    137no.1040、1/11、戻る時間を理解していなかった源トヨ

    138no.1041、1/11、家族で遊ぶ時間を捻出

    139no.1042、1/11、駄菓子争奪大トランプ大会

    140no.1043、1/11、源三郎の意外な秘密

    141no.1044、1/11、レジ袋は人気ブランド

    142no.1045、1/11、土産の山と共に帰った

    143no.1046、1/11、かつての名言に熱い返歌

    144no.1047、1/12、じいを撹乱する若君

    145no.1048、1/12、じいに問う。頑張れ小平太

    146no.1049、1/13、源三郎とトヨの祝言始まる

    147no.1050、1/13、祝言無事終了

    148no.1052、1/14、悩めるトヨを諭す唯

    149no.1053、1/14、日記の謎解きや如何に

    150(終)no.1054、1/15、美香子の夢に現れたのは

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    返信先: 創作倶楽部
    梅とパイン様へ

    総評などはまた後日として、まずは梅パ様にお詫びとお礼を申し上げます。

    大人気の、関西弁炸裂の源ちゃんトヨちゃんシリーズ。私が現代Daysに二人を登場させたばっかりに、書きにくくなってしまったのではないですか?一応お許しを得て始めたとはいえ、申し訳なく思っておりました。

    源トヨの二人に与えられた設定にのっかる形で進み、私の話の中では夫婦になりました。でもそれはそれ、パラレルワールドの内の一つと捉えていただき、どうかまた、楽しいあのシリーズをお願いいたします。

    自由にさせてくださいまして、本当にありがとうございました。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days150(終)~15日水曜5時、夢で逢えたら

    妄想家系図は、一番下、マスター様のブログ記事内の「御月家の家系図からわかること」をご参照ください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男「美香」

    美香子 心の声(…ん、呼んだ?)

    ムクッと起き上がった美香子。ここは令和の速川家。覚と美香子の寝室。

    美香子「え。夢?」

    隣のベッドで、覚がスヤスヤと眠っている。

    美 心(確かに聞こえたけど、美香子じゃなくて美香だから私ではないか。でもあの声は)

    再び横になった美香子。

    美 心(彼だわ。これは夢の続きを見るしかないわね)

    目を閉じる。すると、景色がゆっくりと浮かび上がってきた。

    美 心(時代劇に出てくるような、武家屋敷?)

    屋敷の中には、着物姿の女の子達。

    美 心(小学校の中学年位?が二人。で、小さい子が一人。二、三歳ってところね。三姉妹なのかしら…あらっ?あれってもしかして!)

    一番幼い女の子。髪が両耳の上辺りで二つ結びになっているのだが、

    美 心(あの赤いリボン、私が唯にあげたヘアゴムに付いていた物じゃない?…うん、間違いないわ。と言う事は、このお嬢ちゃん達!)

    泣いてぐずる妹を、姉二人があやしている。

    美 心(唯にも忠清くんにもよく似てるわ。はぁ~。孫、孫なのね。泣けてきちゃう…こんなにも可愛らしくて)

    打掛姿の女性が現れた。

    唯「美香~。お待たせぇ。はい、もう泣かなーい!」

    美 心(唯~!まぁ~。話し方はあまり成長が感じられないけれど、すっかりお母さんの顔になって)

    母の貫禄さえ感じ、大垂髪もすっかり様になっていた唯。

    長女「あ、直ってるぅ」

    二女「すごぉい。良かったねっ、美香」

    美 心(あちゃー。娘達の口調は、完全に母の影響)

    三女・美香「さんた、さんた!」

    唯の持つ人形に、小さな手を伸ばす美香。

    美 心(サンタ?あっ!クリスマスイブデートで唯が引いた福引の、景品のサンタ人形!格好の遊び道具になってたのね)

    唯「トヨに頼んで大正解。はいどーぞ」

    美 心(トヨちゃんも元気で居るのね。孫のお人形まで面倒みてくれるなんて。唯は裁縫は全くできないままだったから、助かるわ)

    唯「あ、お帰りぃ。早かったね」

    若君「うむ。ん?美香」

    美 心(来た。あの声の主の登場ね)

    庭から現れた若君。

    美 心(う~ん。いい意味で、もう若君ではないか。年齢を重ねて、益々の威厳、でも気高さはそのままに。生やした髭の効果もあるだろうけど、持って生まれたものが大きいわよね~)

    若「何じゃ、泣いておったのか?よしよし」

    そう言いながら美香を抱き上げ、顔を近づけようとしたのだが、

    三「いやっ」

    露骨に顔を背けられた。

    二「パパまたやってる」

    長「懲りないよねぇ」

    美 心(ぷっ。どの時代も娘は父親に冷たい)

    唯「だからー。すぐ顔くっつけようとする。ヒゲが当たれば、嫌がるに決まってるっしょ」

    若「そうか…。剃り落とすべきか?」

    唯「そこ、違うから。マジでヘコむのやめてくんない?」

    美 心(忠清くん、なんて顔してるの!あはは~でも家族の平和な日常ね。いい物見せてもらったわ)

    …ここで目が覚めた。そのまま起き上がった美香子。

    美「残念。終わっちゃった。よし!忘れない内に書き留めておきましょ」

    その日の夜。食卓に両親と尊。

    尊「一日かけてわざわざ作成したの?」

    美「今日はお休みだったしね。これが、作っててとっても楽しかったのよ~」

    覚「服装とかも、ネットで調べて母さんが夢で見たままを忠実に描いたんだ。お陰でな、僕も一緒に見たような気になれたよ」

    今朝の夢を、絵と文章で再現していた両親。

    尊「僕の作った妄想家系図の設定に、だいぶ引っ張られてない?」

    美「それだけ信憑性が高いって事よ」

    覚「いい出来だぞ」

    尊「それはありがとうございます」

    美「長女ちゃんと二女ちゃんの名前がわからなかったのは惜しかったな。ねぇ尊」

    尊「何」

    美「名前、降臨してない?」

    尊「してないよ。残念ながら」

    美「美香ちゃんの時みたいに」

    尊「あれはね、今でもよくわからないんだ。ここにこの名が入る、書けと言われた気がしたんだよ」

    覚「あのさ」

    美香子&尊「はい」

    覚「聞いてくれないか?僕の推理なんだけど」

    美「あら。どんなかしら」

    尊「伺います」

    覚「妄想家系図によると、唯の子供は7人だよな。母さんの名は、そもそも末っ子に付けるつもりだったんじゃ」

    美「どうして?」

    覚「締めというか」

    美「シメって何よ」

    覚「何となく」

    美「説明になってないわよ」

    尊「わかる気がするようなしないような」

    覚「美香ちゃん、歳がちょっと下だっただろ」

    美「ん?そうね。お姉ちゃん達に比べると」

    覚「どうして間が空いたかはわからないが、二女から数年後に念願の三女が生まれ、二人の中で、よしここまでと、ようやく美香と名付けたんじゃないかと。どう、どう?」

    美「はあ」

    尊「そういう事にしておきますか。仮に答え合わせできたとしても相当先の話だし」

    覚「中々いいだろ?思うにさー、僕も久々に誕生した末娘なら溺愛しちゃうかも。忠清くんの気持ちはわかるよ」

    尊「ふーん。父親ってそんなモンなんだ」

    美「今回、上の男の子達やトヨちゃん源三郎くんには逢えなかったのよねー。次回の上映を楽しみに待つわ」

    尊「そう上手くいくかな」

    美「いいじゃない。願うのに損はなし」

    覚「僕も見せてもらえるよう、願っとく」

    尊「ははは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    四人の現代Days、これにて終了です。お読みくださった皆様に、心から感謝いたします。

    長い間、ありがとうございました。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days149~14日21時、犯人は

    和紙と墨って最強。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    こちら、令和の速川家。尊がリビングに顔を出した。

    覚「何だ、勉強してたんじゃないのか。もう休憩か?」

    美香子「喉でも渇いた?」

    尊「木村先生からメールが来たんだよ。早く教えたくて下りてきた」

    覚「メール?」

    食卓の席についた三人。

    美「先生もこの時期お忙しいでしょうに、わざわざメールくださったの?」

    尊「先に僕から送ってたんだよ。その返事をもらえた」

    覚「尊が先?何書いたんだ」

    尊「姉は土曜日に帰りました、その後例の日記はどこまで読み解けてますか、って感じ」

    美「そんな内容なの?せめてセンター試験終わってから、今週末以降で連絡すれば良かったじゃない」

    尊「お姉ちゃんが戻ったのを伝えときたかったし、進捗状況が気になっちゃって」

    美「今じゃなくても~」

    尊「でも、メールして正解だったんだよ」

    美「えぇ?」

    覚「んー良くわからんが。先生からは何て?」

    尊「読み上げるね。そうか、帰省が終わったか。ご両親も淋しかろうな。しかし僕にメールくれるなんて相当余裕じゃないか?気は抜かないようにな。でもこのタイミングで連絡くれて、少し有り難かったよ。ちょっとグチりたかったんだ」

    美「グチ?」

    尊「解読はボチボチやってるよ。あれから10日分位進んだが、その中に目新しい内容があってな。近習の婚儀を予定通り執り行え」

    覚&美香子「あ」

    尊「安堵したと。家臣の話なんて珍しい。初めてじゃないか」

    覚「忠清くん、凄いな。ちゃんとこちらと同時になるよう、やりこなしたんだ」

    美「どう褒めても褒め足りないわねぇ」

    尊「それでその日付の前後辺りなんだが、少々腹が立った事があってなー」

    覚「腹が立つ?」

    尊「イタズラされたような跡があって」

    美「イタズラ。あら大変」

    尊「四角い形状の何かが貼り付いていたようなんだ。その部分だけ色が変わって毛羽だっていたり、接着剤らしき跡が残っていたりしてな。何箇所か」

    覚「ん?」

    尊「これか?と思われる紙らしき破片は出てくるんだが、何が印刷されていたかとかは消えてしまっていてわからなかった。ゆくゆくは貴重な資料となるかもしれないこの日記に、後世の者がシールでも貼りやがったんじゃないかと思うんだ」

    覚「んん?」

    尊「怒れちゃってさー。誰かにグチりたかったところ、調査の事情を知ってる君から連絡が来たから、渡りに船と、チラっとつぶやかせてもらったよ。気分転換にもならない話で済まなかったね。では少し長くなってしまったが、試験の健闘を祈るよ。木村」

    黙り込んだ両親。しばらくして、

    覚「…それって」

    美「確か持って帰った…」

    尊「そう。多分、というか間違いなく、忠清シールだと思うんだ」

    美「イタズラなんでしょ。って事は…唯がやらかした?!」

    覚「え、でもさ、シールあげる話した時、唯に勝手に取り出されないような場所にしまった方がいいぞって言ったら、しかと心得ましたって頷いてたんだが」

    尊「兄さんなら、言い付け通りちゃんと隠してあったと思うよ」

    美「じゃあ誰が、って忠清くんしか居ないじゃない。それは有り得なくない?」

    尊「それが有り得るんだよ」

    美「嘘ぉ」

    尊「木村先生と初めて話した時に聞いたんだけど、あの日記さ、書いた人物の名前が入ってなくて著者不明なんだよ」

    覚「あー」

    尊「で、これは推測なんだけど、お姉ちゃんと兄さんが木村先生に会いに行ってるじゃない。その時にも名がないって話が出たんじゃないかと」

    覚「名前か、なら」

    美「ちょうど手元にいい物があるから貼っておこうか、って?えー!」

    尊「兄さんは、イタズラするつもりじゃなくて好意で貼ったんじゃないかなあ。450年前の日記、和紙が残るならシールも残るだろうって思うのは、わかる気がするよ」

    覚「でも現代の紙は思いの外脆かった」

    尊「そんなに厚い紙で作らなかったし?」

    覚「うん。どちらにせよ、和紙とは丈夫さでは比べ物にならんのだろうな。結果、ほぼ残ってないし」

    美「まさか木村先生を困惑させるとは思わなかったのね」

    尊「でも兄さん、お茶目だよね。書けば済むのにペタっとやったんだから。案外、シールたる物を貼ってみたかったのだ、なんてオチかもしれないね」

    覚「その答え合わせも、いつ出来るかは尊次第だしな」

    尊が座ったまま伸びをした。

    尊「はぁ~。最後はそこかー。ホント、プレッシャーが甚だしいよ」

    覚「何年かかってもいいさ」

    尊「そう?」

    美「でも私達が元気な内がいいわねぇ」

    覚「そりゃそうだ」

    尊「結局答えは変わらず。はいはい、もう少ししたら頑張らせていただきます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    14日のお話は、ここまでです。

    次回、最終回。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days148~14日火曜7時、助言します

    大切な女友達だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の居室にトヨが来た。

    トヨ「え!」

    唯「おはよっ」

    ト「もう起きていらっしゃるんですか!まさか寝ていないとか?」

    唯「そんなに驚くー?ゆうべあの後すぐ寝たからさ」

    ト「はあ」

    唯「たまにはね。たーくんとラブラブで、ラジオ体操もしてきたよ!」

    ト「おやまあ」

    唯「じいの姿は見かけなかったんだよね。なんで居なかったんかはわかんない」

    ト「うーん。察するところ、私が天野のお屋敷を出る頃に酒宴が始まっておりましたので、まだお休みではなかろうかと」

    唯「え。それって、源三郎もじい達に巻きこまれちゃったの?」

    ト「いえご心配なく。信茂様信近様有山様のお三人だけでした」

    唯「良かったねぇつかまらなくて。実はさ、トヨといろいろ話したいコトあるんだ。たーくんとも相談したんだけど、今朝のうちに言っておこうと思って」

    ト「お話。ですか」

    向かい合って座った二人。

    唯「まずは」

    また立ち上がり、棚から何かを持ってきた。

    ト「芳江さんとエリさんの連鶴ですね」

    唯「これあげる!もらって」

    ト「えっ」

    唯「令和の母二人、でしょ?」

    ト「とても良くしていただいたので、その通りではあります。でも」

    唯「たーくんも、トヨが持ってる方がいいって言ってたの。だからどーぞ」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「うん」

    ト「嬉しい。ありがとうございます。大切にいたします!」

    唯「でさ。昨日同じ時間に、速川の家でも同じように祝言ぽい事やってたみたいなんだよ」

    ト「そうなんですか?!」

    唯「たぶん。宴会とかとごちゃ混ぜにしてなければ。特にお父さん」

    と「どうしてそんな事ができたんですか」

    唯「たーくんが、この時間にやるからぜひ共にって尊に頼んどいたんだって」

    ト「え?待ってください。という事は…若君様は日にちと時間を、信茂様のお許しが出る前にお決めになっていらしたと?」

    唯「うん」

    ト「…」

    唯「たーくん、神だから」

    ト「神業の神ですか」

    唯「そーなの?」

    ト「で、よろしいかと。驚きました…」

    唯「頼りになるよね~」

    ト「はい。若君様の下でお仕えできる喜びを、噛みしめたく存じます」

    唯「でね。ここからが肝心な話なの。はっきり言うよ」

    ト「はい」

    唯「子作りに、励め!」

    ト「それは…私はそこまで若くありませんので、授かれるものなら早うとは思っておりますが」

    唯「でも、できれば私が先に産んで欲しいって思ってるよね」

    ト「勿論です。切望され、それで苦しい思いをされておられるのを間近で見ておりますので」

    唯「悩んでない?」

    ト「…少し悩んでおります」

    唯「おふくろさまには打ち明けたんでしょ」

    ト「…はい」

    唯「やっぱりね。私、何も聞いてないから。そうじゃないかなと思ったんで、カマかけてみたんだ」

    ト「え?」

    唯「おふくろさまは、人から聞いた事をすぐチクったり…んー、隠しときたい秘密をしゃべったりしないよ。そんな人じゃないのは知ってるでしょ」

    ト「はい、それはもう。でしたら何故」

    唯「カン?」

    ト「勘が働いたと」

    唯「言われたのは、トヨが城をいつ下がるか、あやふやではなくちゃんと話のすりあわせをしなさいって、それだけ」

    ト「そうでしたか」

    唯「早めに決めようよ。次の女中頭を誰にするかとか私の世話係はとか…いや、この際世話係はもうなしにしない?」

    ト「なりません」

    唯「ちぇ。まだ誰かにガミガミ言われるんだ」

    ト「言われぬよう、奥方様には自覚を持っていただかないと」

    唯「へーい。で、トヨが源三郎と赤井家の事だけを考えられるようにして、励んでもらうと」

    ト「ありがとうございます。私の周りは、昨日初めて事の次第を知った者ばかりですので、いきなり去るのも少し心苦しいのですが、引き継ぎは早う進めて参ります」

    唯「さみしくはなるけど、いつでも会えるし」

    ト「そうですね」

    唯「あのさ、前にどうやら三人目?の赤ちゃん産んだ夢見たって言ったじゃない。トヨが大きいお腹で娘ちゃん連れててって」

    ト「覚えております」

    唯「夢に出てきたのがその時に居た子供全員かはわかんないんだけどね、御月家の長男に当たる男の子より、トヨが連れてた女の子の方が大きかったんだよ」

    ト「歳が上という事ですか」

    唯「たぶんね。だからきっと、私より先に赤ちゃんに会える」

    ト「すみません…」

    唯「気にしなーい。私は私、トヨはトヨの人生だもん。あ、今、ちょっとカッコいいコト言った?」

    ト「お気遣いが心に染みました。ありがとうございます」

    唯「えへへ。言いたかったのはここまでだよ」

    ト「はい」

    唯「あー、急にお腹空いてきたんだけどぉ」

    ト「ふふっ。ではお運びいたします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    最終回のお知らせ

    長々と続けて参りました四人の現代Days。「現代Days(仮)」からスタートしたのはちょうど一年前の今日でした。

    皆様のご愛顧に大感謝しつつの全150回となります。(仮)も合わせると170回。よくもそんなに描いたもんだ。

    この後のお話を含め、あと3回です。

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    四人の現代Days147~13日18時、一件落着

    結構な歳のおじさん達が大騒ぎ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    一段と凛々しい源三郎が奥に進んでいる。すると、唯の傍らに置かれた品々に気が付いた。

    源三郎「あっ、これは…」

    破顔一笑し、その場で深く一礼する。

    小平太パパ「何をしておるのじゃ?」

    次に、吉乃の導きでトヨが入ってきたのだが、

    唯「顔が固まってる!笑って~」

    極度の緊張で、唯の声かけも聞こえていない。

    有山の妻女の囁き「なんと初々しい。あら?」

    有山の囁き「ん?どうした」

    有 妻 囁き「二人共、一輪ずつ梅が咲いております。源三郎は若葉の様な色で」

    有 囁き「おぉ、これは気が利いておるのう。此方は白梅か」

    美香子と源トヨの三人で行った組紐の店。押し問答は少しあったが、結局プレゼントされていたのは、梅の花を型どった色違いのブローチだった。

    有 妻 囁き「春の訪れでございますね」

    有 囁き「まさしく。良いな」

    三三九度の準備をしている。

    源三郎の囁き「トヨ、大丈夫か」

    トヨの囁き「何とか…」

    源 囁き「令和に居られる皆様も、見守ってくださっておる。お前、気付いていないだろう」

    ト 囁き「え?」

    源 囁き「奥方様の隣」

    ト 囁き「…あっ」

    唯の傍らで、ちょこんと五羽の折鶴達が参列していた。覚、美香子、尊、エリと芳江がそれぞれの手で折った物だ。

    トヨ「なんて…唯様、ありがとうございます」

    ピースサインで応える唯。一方、微笑む若君。

    若君「皆、晴れ姿を見届けておるゆえ」

    源三郎&トヨ「はい!」

    ┅┅

    さて。こちらは令和の速川家。

    尊「それが、トヨさんセレクトの帯締め?」

    美香子「そうなのよ~。せっかくだから出してきたの。やっぱり着物で参列した方が良かったかしら」

    尊「兄さんは、この時間だけ共に願いたい、って言ってただけだから」

    覚「気持ちは正装だぞ。ははは」

    永禄と同時刻に、リビングに座布団を並べ座る三人。

    美「可愛いい分身ね。小さくても、一羽ずつ座布団にのせるとそこに本人が居るみたいで」

    覚「そうだな。いかにも祝言に立ち合ってる雰囲気が出てる」

    ひな壇に当たる位置に座布団が二枚並び、源三郎とトヨが折った鶴がそれぞれ置かれている。源三郎側の参列者として若君と唯の折鶴が一羽ずつ置かれた座布団二枚。トヨ側に両親と尊が整列して座っている。

    尊「向こうもこんな感じなのかな。並び方とかは正解がわからないから違うだろうけど」

    美「きっと素敵なお式よ~。でもどうして今日この時間なのかしら。ピンポイントで忠清くんが指定したのよね?ぜひ同時にって」

    尊「平日だとさ、クリニック終わりからだと夜遅くなるし時間が不安定じゃない」

    覚「それはわかるが。いきなり今日で大丈夫だったんかな」

    尊「いつ何が起こるかわからないから、早めに設定したんだと思うよ。それにね、何か今日は一粒万倍日だからって言ってたよ」

    美「あら」

    覚「一粒の籾が何倍にも成長して大きな利益をもたらすってヤツだな。だから結婚式か」

    美「あの時カレンダー見ながらそんな事考えてたなんて。忠清くんってホント偉いわ~」

    尊「さてと。そろそろ終わりかな。30分はかからないって兄さん言ってたから」

    覚「よし!なら最後は一本締めだ」

    美「あらま」

    尊「それ…絶対向こうではやんないって」

    覚「いいからいいから。さ、やるぞ。お手を拝借。よーぉっ!」

    ┅┅

    戻って、永禄。祝言が終わって間もなく。

    若君の囁き「源三郎」

    源 囁き「はい」

    若 囁き「余興じゃ」

    源 囁き「余興、でございますか?」

    若君が立ち上がり、源トヨの目の前、真ん中の広い所へ出た。

    若「じい、信近。此処へ」

    小パ「はっ!」

    じい「ははぁ」

    胸元から、何やら書状のような物を出す若君。

    じ「おぉ」

    小パ「いよいよか」

    半分程開く。イラストになった、じいの姿がチラリと見えた。

    じ「んん?」

    小パ「絵か?」

    ト「あ」

    源「此処でお出しになられるとは」

    なぜか、一旦引っ込める若君。

    じ「むむっ」

    若「実はのう、じいの姿を絵にしたのじゃ」

    小パ「なんと。絵を嗜まれるなど初耳」

    次に、全部開いた若君。高い位置で掲げた。つられて立ち上がろうとするじいと信近。

    じ「よう見えぬ」

    小パ「若君様、お戯れを」

    有山「何事じゃ?わしにも見せてくだされ」

    右に掲げれば右に動き、左に掲げれば左に動く家臣三人。源トヨと有山の妻は笑いを堪えるのに必死だが、唯は大笑いしている。

    唯「あははは!たーくん、ウケる~!」

    散々若君に弄ばれた後、ようやく絵を受け取ったじい。信近と有山も覗き込む。

    じ「何やら奇天烈な」

    有「南蛮渡来の装束か?」

    小パ「それにしても、随分と質の良い紙じゃ」

    やたらと感心している三人を横目に、源トヨの前に腰を下ろした若君。

    若「源三郎。トヨ。末永う幸せにの」

    源「はい!」

    ト「ありがとうございます」

    若「では唯。帰るぞ」

    唯「えー、もう?」

    若「早う二人きりにしてやらねばの」

    唯「確かに」

    源トヨが床に擦る程頭を下げる。まだ騒いでいる家臣達。

    唯「また明日ね」

    唯と若君は、その場を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    13日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days146~13日月曜14時、佳き日

    この頃、ちょうど蕾が膨らんできています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自室に戻ろうとしている唯。源三郎が声をかけた。

    源三郎「奥方様」

    唯「あ、源三郎~」

    唯に駆け寄り、跪いた源三郎。

    唯「結婚式、もうすぐだね!」

    源「はい。奥方様には、お気遣い心より御礼申し上げます」

    唯「へ?私なんかやったっけ?はさみ揚げを冷めないようにはしたけど」

    源「それが効いたと伺いました」

    唯「ちょっとだけだよ」

    源「その様な。ご謙遜を」

    唯「ふふっ。珍しいでしょ、走る以外で役に立つなんて」

    源「い、いえ!」

    唯「たーくんのお手柄だって。話をどう持ってくかとかさ、上手なんだよ」

    源「はい。それはもう…まさかご同席くださるとは思わず」

    唯「同席?ってなに」

    源「え、お聞きになられておられぬ?」

    唯「知らなーい」

    源「昨日、天野様のお許しを得たと伺い、永季様にお話をと急ぎ向かおうとしたところ、わしも共に参ると仰せられ」

    唯「へー。その方が話早いもんね。だからトントン拍子なんだ。良かったね」

    源「はい」

    唯「たーくんさ、自分がしてやったみたいなコトは私にも言わないから」

    源「頭が下がります」

    唯「さっきね、おふくろさまとトヨが話してたよ。また泣きそうになってた」

    源「左様でございましたか」

    唯「夕方楽しみにしてるね!」

    源「ははっ」

    天野の屋敷。もうすぐ、現代の時間で夕方6時、酉の正刻。

    若君「よう似合うておる」

    源「痛み入ります」

    朽葉色の直垂を身に付けた源三郎。くすんだ色合いではあるが、顔立ちをとても引き立てている。

    若「それか。贈られた品は」

    源「はい。トヨと、祝言の折にはこの品を必ず身に付けようと約束しまして」

    若「花としては見ぬ色味じゃな」

    源「お母さんは、あなた達の時代にはなかった色かもしれないと仰せられましたが、わたくしが気に入りました故」

    若「そうか。まさに春じゃ」

    源「はい」

    こちらは、トヨが支度中。白装束になっている。

    唯「おじゃましまーす!あ、おふくろさま」

    吉乃「唯。何をうろついておるのです」

    唯「えへ。怒られるかなーとは思ったけど、早く花嫁さんを見たくって。もう準備できた?」

    トヨ「あと、これを付けたいのですが。吉乃様、よろしいでしょうか」

    唯「あ、ブローチ。同じ白だからいいよね!」

    吉「花飾りか?まあ良いでしょう」

    唯「じゃあ私が付けてあげる」

    ト「ありがとうございます」

    帯のすぐ上、脇の方に留められた。

    吉「それは」

    ト「はっ!はい」

    吉「もしや、唯のお国の品ではあるまいか?」

    ト「あっ、その…」

    唯「そーでーす。私のお母さんが、トヨと源三郎にってプレ…贈ってくれたんです」

    トヨの囁き「唯様、良いのですか?そのようなお話をされても」

    唯の囁き「いいのいいの。おふくろさまには、たーくんの矢傷を治した隠れ屋に、両親と尊が居るって言ってあるし」

    吉「やはり。家臣の婚儀にまで気を配られるとは。梅か?美しい細工がほどこされて」

    ト「はい。とても気に入っております」

    吉「それは何より。さあ、唯はそろそろ行きなされ」

    唯「はーい。待ってまーす」

    酉の正刻となった。祝言に立ち合う者はごく僅かだ。

    小平太パパ「何故、夫婦が離れて座っておるのじゃ」

    向かって右、源三郎側に若君。その後列に有山とその妻女。トヨ側に唯。その後列にじいと信近。

    じい「若君がこうお決めになったのじゃ。源三郎は若君の近習であるし、トヨはむじなの世話をしておるし。まぁ良いではないか」

    小パ「唯之助の脇には何やら置かれておるし」

    じ「文句ばかり垂れるでない。ほれ、始まるぞ」

    源三郎が入ってきた。

    唯「カッコいい~」

    有山「感慨無量」

    じ「おぉ。ええ婿じゃ」

    小パ「小平太には見せられん。ちょうど警固の番で良かったわい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days145~12日9時、踊らされます

    どこまでが策なのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    天野の屋敷。部屋に通された若君。三人揃った姿に少し驚いた様子だ。

    若君「小平太」

    小平太「はっ」

    若「まだ起きておったか」

    小「若君がお越しとあれば。居てはなりませんでしたか」

    若「話す手間は省けるが。気を落とさぬ様」

    小「気を落とす?何事でございましょう」

    若「まあ良かろう」

    じいの前に腰を下ろした若君。傍らのタッパーがじいの視線を釘付けにしているが、構わず話し出した。

    若「旅立って、じき二年になるか」

    じい「旅?あぁ、元次でございますか。若君に未だ気にかけていただけるなど、奴も本望でござろうの」

    若「竹馬の友が居らぬと、張りもなかろう」

    じ「なんのなんの」

    若「そうか?」

    じ「いざ戦となれば、先陣を切りますぞぉ」

    小平太パパの囁き「は?!またそのような戯れ言を」

    小平太の囁き「少しは歳を考えて頂かぬと」

    若「いや…じいは出陣ではのうて、城を守り通して貰いたい。無論、戦にならぬようこれからも努めて参るがの」

    じ「そうでござりますか?んにゃ、若君の仰せならば承知仕る。ふぉっふぉっ」

    小パ 囁き「有難い。わしらの説得には耳を貸さぬからのう」

    若「話が逸れたが」

    じ「おぉ、これはご無礼をば。何でございましょう」

    若「元次とは、隠居後も多少の小競り合いはあったであろうが」

    小パ 囁き「小競り合い!然り」

    若「仲違い程ではなかったな?」

    じ「それは、まぁ。共に幾度も出陣した、同士でもござるしのう」

    若「ならば、天野と千原の結び付きをより強固に致すのも構わぬな?」

    じ「結び付き?若君は何を仰せか」

    若「両家のせがれと娘が婚儀を行うなど」

    じ「なぬぅ?!」

    それを聞き、うろたえ始めた小平太と父信近。つい声が大きくなる。

    小平太パパ「小平太に縁組の話?!」

    小「え!」

    若「あぁ済まぬ。小平太にではない。驚かせたの」

    思わず立ち上がりかけた三人。すぐに下がり座り直した。

    小「さ、左様でございますか」

    小パ「違う、と」

    じ「ならば若君は、誰の話をしておいでじゃ」

    小「もしや」

    小パ「何じゃ」

    小「源三郎に縁組でございますか。されど、天野には娘は」

    小パ「小平太の姉は既に嫁いでおりますし」

    若「源三郎は合うておる」

    じ「はあ」

    若「で、じい。良いか?両家の確執などなかろう?」

    じ「それは…末代までいがみ合うつもりもござらぬし」

    若「うむ」

    じ「御意のままに」

    若「そうか」

    じ「で、婚儀の相手は…」

    小パ「誰…」

    若「よし。小平太」

    小「は、はっ」

    若「母君はどちらに?」

    小「母上でございますか。呼んで参ります」

    小平太が、心なしか肩を落としつつ部屋を出ていった。

    若「そういえば。待たせたの。じいにと唯からじゃ」

    じ「ぬはは!漸くレンコンにありつけようぞ」

    吉乃「若君様。お呼びでございますか」

    吉乃が現れた。

    若「頼みがあっての」

    吉「はい。何なりとお申し付けくださいませ」

    若「明晩酉の正刻、源三郎の婚儀を執り行う」

    吉「まぁ。祝言とは喜ばしい。わたくしは何を致せば宜しいでしょうか」

    若「源三郎もではあるが、トヨの身支度をしては貰えぬか」

    吉乃「畏まりました」

    小パ「トヨ?!」

    小「確かに、天野の者でございますが。え?」

    吉「何をそこまで驚かれる。仲睦まじゅう隠れて話し込む姿はよう見かけておりました。ご存じない?」

    小「まさか」

    小パ「知らなんだ」

    吉「まこと、天野の男衆は色恋沙汰に疎うございます」

    若「ハハハ。どちらの屋敷で行うかは、これから有山と話すが」

    じ「若君ぃ。ならば此処を使われよ」

    若君が振り向くと、じいがいたくご機嫌で、はさみ揚げを頬張っていた。

    小パ「朝餉が済んだばかりだというのに」

    若「良いのか?」

    じ「んにゃ。年明け早々祝い事など縁起が良うござる。ぬははは」

    若「そうか。ならば頼む」

    若君が立ち上がり、早々に出て行こうとする様子に、信近がかなり驚いている。

    小パ「若君、あっあの」

    若「何じゃ」

    小パ「書状は…」

    若「あぁ、忘れておったな。うむ…婚儀の席で披露すると致す」

    小パ「急ぎ何かではない、と」

    若「全く以て」

    小パ「そうですか…」

    若「では、此れにて」

    若君は、屋敷を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    12日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days144~12日日曜6時30分、匂わせます

    妙な擬音が多い、じいの百面相をお楽しみください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    穏やかな朝を迎えた。若君が一人、自室前の庭でラジオ体操を始めようとしている。

    若君 心の声(そろそろか)

    じいが現れるのを待っている。

    若 心(姿を見たら、蓋を開ける)

    タオルでくるんだじい宛のはさみ揚げは、まだ温かかった。その理由は…

    ┅┅回想。昨夜、源三郎とトヨが唯の居室を出た後┅┅

    若君「朝方には、はさみ揚げも冷めるのう」

    唯「いっくらタオルで巻いといてもそれは仕方ないかも。なんで?」

    若「あまり匂わぬ」

    唯「ふーん。あったかいと、ほ~れウマそうだろ~ってニオイで猛アピールするもんね。あーもしかして、なんか策ありってヤツ?」

    若「じいに、此処にお好みの品がある、と分かり易うできればと思うての」

    唯「企んでるねぇ。だったらじいにあげる分だけでも保温しとく?」

    若「保温。どのように致すのじゃ」

    唯「これ用に余分にもらっとけば良かったなー。でも源三郎とトヨのために、じいはできるだけゴキゲンにしときたいよねー」

    荷物の中から、使い捨てカイロを出した唯。袋を開けて振る。

    唯「どーんと2つ使おっ。これを、タッパーの上と下に仕込む」

    若「ほぅ。器は、熱で傷んだりはせぬか?」

    唯「たぶん大丈夫。チンできる入れ物だし」

    若「チン。電子レンジじゃな」

    唯「おっ、覚えたね」

    若「電子レンジ、は物体の中にある水の分子、を振動させ熱を出す。そうではなく、鉄の粉が空気に触れ酸化、すると出る熱で器を温めると」

    唯「たーくん…今ちょっとイラっとした」

    ┅┅回想終わり┅┅

    遠くから、聞き覚えのある声が近付いて来た。

    じい「若君ぃ~」

    若 心(よし)

    縁側の隅に置いたタッパー。タオルをめくり、蓋を少し開けた。

    じ「体操、体操を」

    若「うむ。始めるぞ」

    じ「ややっ?何やら香ばしい。これは嗅いだ覚え、いや食した覚えがあるような」

    いい匂いが辺りに漂っている。鼻をクンクンさせるじい。

    若「何じゃ。体操はせぬのか」

    じ「おほ?あいや滅相もない!」

    匂いに気を取られながら、体を動かすじい。

    じいの囁き「むむぅ。あの包みが怪しい」

    若「何か申したか?」

    じ「いえ?雀でございましょう」

    若「一羽も居らぬがの」

    体操が終わった。

    若「じい。朝餉の後屋敷へ参る。待つように」

    じ「は?信近でございますか、それとも小平太にござりますか」

    若「じいに話がある」

    じ「なんと?!ははっ、わかり申した」

    中に入る際、タッパーをひょいと手に取った若君。じいが鼻の下を目一杯伸ばしながら、穴が開きそうな程、若君の手元を見つめている。

    若「どうかしたか?」

    じ 囁き「さては…アレじゃな」

    若「この品も携えていく。楽しみにしておれ」

    じ「おぉぉ。レンコンもでござるか」

    源三郎も準備を始めていた。有山の所在を確かめている。

    源三郎 心の声(正午までには片をつける、と、忠…若君様は仰せになった。天野様のお許しが出次第、馳せ参じねば)

    源三郎「ん?」

    源 心(正午、か。午の正刻を令和でもそう申すと教わった。すっかり言葉が馴染んだようだな。若君様共々)

    時は進み、そろそろ天野の屋敷に若君が現れる。

    小平太パパ「父上に用、と?」

    じ「その様じゃ。今朝方、幾らでも話せた筈。それをせなんだとなれば、折り入って何かしらあるのやもしれん」

    小パ「うーん。身構えておらねば」

    じ「何じゃ小平太。警固上がりじゃろ。まだ休んでおらんのか」

    小平太「若君様のお成りとなれば、寝てなどおれません。あ、お姿が」

    じ「おっ」

    若君登場。手にはタッパーの包み、そして胸元の合わせから何かがチラリと見えている。

    じ「おぉぉレンコン~」

    小「書状をお持ちの様です」

    小パ「これは、心して聞かねばならぬ」

    天野家三世代、座して頭を下げた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days143~11日23時55分、文詠みます

    超理系と思いきや、文系もイケる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊の部屋。

    尊「どうだろ」

    スマホを取り出して操作する。

    尊「あ。起きてた。じゃあ」

    次にパソコンを操作し始めると、すぐに画面が開いた。

    瑠奈『わぁ!尊!』

    尊「お待たせしました。ちゃんと繋がったね。良かった」

    瑠『うん。練習で、お父さんのパソコンと通話してみたからばっちりだよ。嬉しい!画面大きいから、尊が目の前に居るみたい!』

    お互いの部屋のパソコン越しに、ビデオ通話を始めた二人。

    瑠『家に帰ったの遅かったんだね。お姉さん達の飛行機、最終の便だった?』

    尊「うん」

    尊 心の声(そういう事にしておいてください)

    瑠『寂しくなるね』

    尊「7人居たのが3人に一気に戻ったからさ。両親は少し気落ちしてる」

    瑠『そうなるよね。尊のお父さんお母さん、すっごく優しいしお話も楽しかった。また会えるといいな』

    尊「だったら、大学合格したら、また家に遊びに来なよ」

    瑠『ホント?!いいの?』

    尊「来てくれれば両親も喜ぶと思うし」

    瑠『行く行く!今度は、ちゃんと尊の家に行くって親に言うよ』

    尊「ははは。うん、ぜひ」

    瑠『ねぇ、今日満月なんだよ。知ってた?』

    尊「うん。見たよ」

    瑠『うふふ』

    尊「満月観ると、あ、誕生日来たって感じ?」

    瑠『月の周期で?えー、12倍速で歳取ってくのは困る』

    尊「ははは」

    瑠『そっか!毎月尊にバースデープレゼントをもらえるんだ?』

    尊「ヤベっ、墓穴掘った」

    瑠『キャハハ』

    尊 心(癒される。気落ちしてるのは僕もだったから)

    屈託のない瑠奈の笑顔に、顔がほころぶ尊。

    尊 心(あ。そうだ)

    何かを思いついた。

    尊 心(あの言葉、言ってみたい。どうかな。わかってくれるかな)

    瑠『あー、楽しい~』

    尊「あの、さ」

    瑠『なに?』

    尊「月が綺麗だね」

    瑠『月?』

    窓の外を窺おうとする瑠奈。が、すぐに動きが止まった。

    瑠『あ。もしかして…』

    尊 心(気づいた?)

    瑠奈が、居ずまいを正した。それに倣う尊。

    瑠『たけるん。もう一度言って欲しい』

    尊 心(さすが。わかったっぽい)

    尊「月が、綺麗ですね」

    瑠『尊…。あ』

    尊「へ?」

    瑠『えーっと、メモ!私どこにしまった~?』

    しきりに、机の引き出しを開けたりノートをめくったりしている。

    尊「何か探し物?」

    瑠『見つかった!もー、あまりにも出番がないから』

    尊「ん?」

    瑠『あのね、聞いてください』

    尊「はい」

    瑠『君はいかで、月にあらそうほどばかり、めぐり逢いつつ影を並べん』

    尊「…西行の和歌ですか」

    瑠『ヤだ、尊。なんでわかるの?天才!』

    尊「天才なんかじゃないよ。この問いにどんな答えがあるのか調べてあっただけ。瑠奈こそリサーチ済みでさすがだね」

    瑠『月関係には敏感ですから』

    尊「そっか」

    瑠『うふふ』

    尊「予想してた答えの中では一番…」

    瑠『だって、ずっと一緒に居られたら幸せだもん』

    尊「それは僕も同じだよ。って、わー照れる」

    瑠『すっごく嬉しい!月が入る愛の言葉だから、いつか誰か言ってくれないかなって、返答の見本をメモしておいたの。今まではこんな事全然なくて、やっぱり尊だったなって。ありがとう』

    尊「痛み入ります」

    瑠『ふふっ。あー、直接会ってる時じゃなかったのだけうらめしい。がっつりホールド、からのギューがしたいのに!』

    尊「そんな大技かけられたら骨折しちゃうよ」

    瑠『もー、どんな怪力だと思ってるの?でも、そうなったら付きっきりで介抱してあげる』

    尊「ははは」

    時間はあっという間に過ぎる。

    尊「名残惜しいけど、そろそろ」

    瑠『うん。明日もこうしてしゃべりたいな』

    尊「そうしようね。ではおやすみなさい」

    瑠『おやすみ、たけるん』

    暗く沈んだ画面をぼんやり眺める尊。

    尊「あ。今まで何で気づかなかったんだろ」

    尊 心(直接行き来するタイムマシンに拘っていたけど、こうやって、現代と永禄でリアルタイムに話ができるのもアリじゃないか?)

    尊「そっちの線も考えてみるか…」

    呟きながらパジャマに着替え、ベッドにもぐりこんでいった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    和歌の訳ですが、

    月は毎晩空に浮かぶ。同じくらい、大好きなあなたと絶えず会って、寄り添っていたい。

    といった感じです。

    11日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days142~11日23時40分、帰省終わります

    さよならは言わない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    土産のあまりの多さに、四人でも上手く抱えきれず、未だ出発できていない。

    美香子「えーと、どこかしら体がくっついてないと、飛べないのよね」

    唯「いろいろもらい過ぎた?」

    美「実家に寄った時なんて、大体こんなものよ。何とかしましょ」

    覚「レジ袋を腕にかけて、隣同士腕をからめてから風呂敷を持つ。どうだ?」

    尊「綺麗な着物にレジ袋。すごい光景だよ。これぞ奇天烈」

    唯「起動スイッチどうしよう」

    若君「荷はわしが粗方持つゆえ、唯が抜け」

    四人とも両手が塞がった状態で、なんとか円陣を組んだ。

    若「お父さん。お母さん。このようななりで済みませぬが、世話になり申した」

    覚「僕らこそありがとな」

    美「楽しかったわ」

    源三郎「心より礼を申します。この日々は、一生の宝と致す所存でございます」

    トヨ「本当に、本当にありがとうございました」

    尊「元気で居てくださいね。僕も…頑張ります。いろいろと」

    唯「尊ぅ」

    尊「何」

    唯「そこでー、あのセリフっしょ」

    尊「セリフ?」

    唯「だからこれからもきっとある!」

    尊「あー。うん」

    若「…では。此れにて。唯」

    唯「はい」

    起動スイッチが引き抜かれ、四人の姿が消えていった。

    覚「ふう」

    美「はぁ」

    尊は、パソコンを確認している。

    尊「うん、ちゃんと3分後に着いたよ。OKって出てる」

    覚「良かった」

    美「一安心ね」

    美香子が、深呼吸をしている。

    美「すー、は~」

    覚「何してんだ」

    美「余韻を、ね」

    覚「そうか。すー、は~~」

    尊「ほぼ揚げ物臭だけど」

    そして三人は、まだ温もりの残る実験室を後にした。

    唯「…着いた?着いた?」

    若「戻れたようじゃな」

    源「おぉ。何もかもそのままで」

    ト「永禄はここまで暗かったのですね」

    永禄。唯の居室に無事到着した四人。安堵の表情の、唯と源トヨ。

    唯「荷物さ、今日はここに置いてったら?」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「いいよん。隅っこに寄せよっ」

    ゴソゴソ動き出す唯達。

    若「待て」

    唯「待て、って?」

    若「しばし動くな。源三郎もトヨもじゃ」

    唯「なんで?」

    若「シッ。静かに」

    そう言うと、若君は襖を開け表へ出た。三人が静止してその場にかがむ。するとすぐ、外から声がした。

    男「若君様!」

    唯の囁き「あ、小平太だ」

    小平太「ひどく屋敷が揺れました。怪我などされてはおられませぬか?」

    若「あぁ。今、唯の無事も確かめた所じゃ」

    小「左様で」

    若「大事ない。戻れ」

    小「はっ」

    小平太の気配が消えた頃、若君が中に戻ってきた。

    唯「もう動いて大丈夫?」

    若「うむ。尊が参った折も相当揺れたゆえ、此度もそうであったのではと思うての。やはり小平太が飛んで来た」

    源「思い出しました。あの日の揺れは、尊殿が此方に来られたしるしであったのですね」

    若「フフ、源三郎」

    源「はっ?」

    若「あの日とは?まだ昨日の話じゃ」

    源「え」

    唯「だって3分後だもん」

    源「そう…でございますか」

    唯「そゆコト」

    ト「尊様と初めてお会いしてから、一日しか経っていないと」

    源「これはややこしい」

    唯「またいつもの生活が始まるってワケ。でもね!明日は、たーくんががんばるからさ」

    若「赤井家の荷は此処に預かっておく。今宵は、早う互いの寝所へ戻り体を休めよ。明日も早かろう」

    源「はっ」

    ト「わかりました」

    変わって、令和の速川家リビング。

    美「なーんか、部屋が広ーく感じるわ」

    覚「食卓が倍の大きさなのがまた、寂しさも倍増だな」

    尊「そんな物悲しい事ばかり言わないでよ。このテーブル、どうする?」

    覚「源三郎くん達が使ってた予備室に持っていくか。明日にでも」

    尊「そっか。じゃあ、僕もう部屋に行くね。おやすみなさい」

    覚&美香子「おやすみ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    11日のお話、もう少し続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days141~11日23時20分、レア物です

    大喜びでパクつきそうだから、危ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「代わるわ」

    覚「ん」

    四人はまだ二階。揚げ物担当を父から母に交代した。

    覚「風呂敷包みじゃ足りんな。紙袋でも用意するか」

    唯達が持ち帰る荷物の山の前に、覚と尊。

    尊「紙袋なの?」

    覚「土に還る方がいいだろ」

    尊「もうキリがなくない?あげた駄菓子、全部ビニールで包装してあるし」

    覚「それもそうだな。なら、せっかくだから」

    尊「せっかく?」

    キッチンの作業台下をゴソゴソ探す覚。

    覚「よし、いい物出てきたぞ」

    尊「は?レジ袋じゃない。最近エコバッグばかりでしょ。取ってあったの?」

    覚「何となくな。ほら、このロゴ見ろよ」

    尊「いつも行くスーパーのだ」

    覚「これで持ち帰ってもらえば、喜ばないか?向こうでも使えそうだし」

    尊「えー、喜ぶかな」

    四人が二階から下りてきた。

    若君「お待たせ致しました」

    覚「おー。武士の一団、だな」

    若「その、手にされておるのは?袋、ですか」

    覚「風呂敷や新聞紙だけじゃ心許ないだろ」

    唯「なんでレジ袋~」

    若「ん?これはもしや」

    トヨ「あの、よく訪れた」

    源三郎「スーパー、の名では?」

    若「このような品があると。名入りとは!いただけるのですか?」

    覚「使ってくれ。何枚でもあるぞ」

    若「うんうん、よう見慣れた店の名じゃ。有り難い」

    ト「買い物をした日々が思い出されます」

    源「大切に致します」

    尊「まさかの反応。人気のロゴだったとは」

    唯「なにげに丈夫だけどさぁ」

    はさみ揚げも用意できた。

    美「大きいタッパーは皆さんで。タオルでくるんである小さい方が、天野のじい様へね」

    若「布で巻いたのは、何ゆえでしょうか」

    美「少しでも温かいまま、渡せるといいなと思って」

    覚「ちなみに、高齢者用に蓮根には隠し包丁をしてある。噛み切りやすいようにな」

    若「おぉ、それはわしも案じておりました。喉に詰まらせぬかと」

    源「なんというお心遣い」

    ト「素晴らしいわ」

    若「ところで尊」

    尊「はい?」

    若「ちと話がある」

    リビングの隅に呼ばれた尊。若君が耳打ちしている。

    尊の囁き「え、そうなんですか。僕達は休みの日だし大丈夫ですけど、間に合いますか?」

    若君の囁き「間に合うよう進めておく」

    尊 囁き「カッコいい。わかりました。酉の正刻ですね」

    荷物の再確認も終わった。

    覚「最後、写真撮るから並んで」

    唯「はーい。ビフォーアフター的な?」

    7人でカメラに収まった。

    覚「さて、実験室に移動するか」

    美「荷物、少し持つわ」

    ト「すみません」

    あと30分程で日付が変わる。実験室は、人と荷物であふれていた。

    覚「じゃあな」

    美「元気でね」

    若「お父さん。くれぐれも、怪我には用心してくだされ」

    覚「本当に。忠清くんが慌てて飛んで来ないよう、気を付けるよ」

    源三郎とトヨは、何か言いたげな顔はしているのだが、

    源「まこと…筆舌に尽くし難く」

    ト「胸がいっぱいで、言葉が出ません」

    二人の肩をポンポンと叩く両親。

    覚「会えて良かったよ」

    美「あなた達から教わる事も、たくさんあったわ」

    源「そのような。身に余る光栄でございます」

    トヨがまた泣きそうになっている。

    美「駄目よ泣いちゃ。もう女中頭のトヨちゃんに戻るんだから。堪えなさい」

    母も、涙を堪えている。

    ト「はっ、はい」

    そんな中、ケロっとしている唯。

    唯「感動の場面だねぇ。うん、マジ連れて来て正解だった」

    尊「さっぱりしてんなぁ」

    唯「また来るもん。尊、よろしくぅ」

    尊「はぁ。あいも変わらず、わかってない」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    飛ぶのは次回ですが、まだまだ続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days140~11日22時30分、男子の会話

    寡黙な分、話の中身が濃い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トランプ大会、真っ最中。

    唯「今度は夏に来よう!」

    尊「は~。簡単に言ってくれるよな」

    唯「だって、また海やプールに行きたいもん!トヨや源三郎とさぁ」

    トヨ「あの、お写真のようにですか?」

    リビング奥に飾ってある、唯と若君と尊の水着姿の写真に、視線を向けたトヨ。

    唯「ぜーったい、楽しいってぇ」

    ト「唯様。私は良いのですが」

    なぜか、源三郎が申し訳なさそうに下を向いている。

    唯「え?なに」

    若君「唯。わしが申す」

    唯「はあ」

    若「源三郎はのう、戦となれば、鎧を身に付けておろうが川でも沼でも飛び込むが」

    唯「うん」

    若「水は些か苦手じゃ」

    唯「え、そうなの?知らなかった!」

    尊「びっくり」

    覚「それはまた」

    美香子「意外だわ」

    源三郎「恥ずかしながら、仰せの通りでございます。幼き頃、川辺で遊んでおりましたら、山に降った雨により水嵩があっという間に増し、流されそうになりまして」

    美「あら大変」

    源「騒ぎを聞きつけた父上と永季殿に、すんでのところで助けられました」

    覚「それは危なかったね」

    源「以来、水辺はつい、怯んでしまいます」

    尊「だからかー。あの水着の写真がらみで、源三郎さんに海とかプールの話をした時、いまいちノリが悪いなぁって思ってたんですよ」

    源「はい…覚えております。波が立ったり勢いよく流れると聞き、どうにも顔が強張ってしまいました」

    尊「苦手な物は仕方がないですよ」

    覚「今になって知る話もあるんだな。よしわかった。今度夏に来た時の為に、流れないプール、探しておくよ」

    尊「ちょっと!お父さんまで。プレッシャーの嵐だよ~」

    23時になった。

    美「お菓子、満遍なく行き渡った感じね」

    覚「そうだな…」

    一瞬、7人居るとは思えない程、シーンと静まりかえった。

    若「…わかりました。それでは、着替えて参ります」

    覚「あぁ、うん。じゃあ、はさみ揚げ用意するよ」

    美「お着物ね、唯とトヨちゃんのは唯の部屋、忠清くんと源三郎くんのは源三郎くんの部屋の前に置いたから、それぞれで着替えて。唯の着付けは、トヨちゃんにお願いして良かったのよね?」

    ト「はい。お任せください」

    唯「行ってきます」

    美「行ってらっしゃい…」

    四人が階段を上がっていった。

    尊「いよいよか…」

    美「尊、揚げ物手伝って」

    尊「あ、はい」

    二階。源三郎とトヨの部屋に若君が入る。

    若「もぬけの殻じゃの。閨の跡形もない」

    源「はい」

    若「如何であった?」

    源「こちらの世の暮らしでございますか?それはもう夢のような」

    若「違う。新婚生活、と申す物じゃ」

    源「新婚?」

    若「唯が、婚儀間もない夫婦をそう呼ぶと」

    源「あ、あぁ。それはもう夢のような」

    若「ハハ、答えは同じか」

    源三郎が、急にモジモジし始めた。

    若「ん?どうした」

    源「あの」

    若「何じゃ」

    源「可憐、の意味が漸くわかりました」

    若「可憐?」

    源「忠清様がそのように喩えられ」

    若「ほぅ…ほぅ!そうか、そうか」

    源「わたくしには、可憐より妖艶、でした」

    若「そこまで申さずとも良いが」

    源「明る過ぎる、と、すぐ灯りを消されておりましたが」

    若「ハッハッハ、そうか。源三郎と、斯様な話が出来るとは感慨無量」

    源「これまた夢のようでございます」

    若「小平太とは、いつになれば出来るのやら」

    源「わたくしからは何も申せません」

    若「フフフ。じいであるが」

    源「はい」

    若「任せておけ。吉報を待つのみ」

    源「ははっ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days139~11日21時、興が乗る

    まだ食うか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君と尊、入浴中。

    若君「しばらく、瑠奈殿に会えぬのであろう」

    尊「あー、まぁ。よく知ってますね」

    若「三連休、と聞いた」

    尊「はい。明後日まで学校、クリニックもですけどお休みです」

    若「淋しかろう」

    尊「今は受験勉強が最優先ですから」

    若「淋しかろう?」

    尊「畳みかけますね。ご心配なく。電話もLINEも、なんだってありますから。それに今日は、兄さん達を見送る日だからって伝えてありますんで」

    若「そうか」

    入れ替わりで覚と源三郎が風呂に。若君が、カレンダーの前に佇んでいる。美香子が近くを通ると、

    若「お母さん」

    美香子「ん?どした~?」

    若「暦の此処に、一粒万倍日、とありますが、何でござろうか」

    美「あー、これはね。籾、あるじゃない」

    若「米のですか」

    美「そう。その小さな一粒が成長して立派な稲穂になるのにあやかって、何かを始めるのにいい日って言われてるのよね」

    若「ほぅ。それは縁起が良いですね」

    美「だから、お祝い事にも最適なのよ。お店を新しく出す時とか、結婚式とか」

    若「結婚式。そうですか…」

    覚と源三郎、入浴中。

    源三郎「お父さんのお力添えでトヨを娶る事が出来、改めまして心より御礼申し上げます」

    覚「僕はアドバイス…進言しただけだから。いやぁでも良かったよ。忠清くん、かなり心配してたんだぞ?」

    源「はい。わたくし如き者にここまで心を砕いていただき、一層の精進と、身を尽くす所存でございます」

    覚「これで一家の主だな」

    源「はい」

    覚「ずっと赤井を名乗る?それはわからないかー」

    源「そうですね」

    覚「今は知り合いにも居ないけどさ、いずれ、旧緑合出身の赤井さんなーんて人に現代で出会ったら僕、感動しちゃうだろうな。有り得るだろ?家が続けば」

    源「そう願います」

    覚「気持ちを強く持って」

    源「はい。子孫繁栄。その為には」

    覚「子作りだな」

    源「はい…」

    覚「声が小さい」

    源「はっ!励みます!」

    覚「おー、風呂場の外まで響く勢いだな。いいぞ、ははは~」

    全員揃った。

    覚「では、大トランプ大会を始める」

    唯「やったー、ヒューヒュー!」

    覚「勝者には景品を用意した」

    尊「景品!」

    唯「なに!」

    美香子が、ダンボール箱を運んできた。中を見せる。

    美「お菓子よ~。どっちかというと、駄菓子かな」

    唯「わぁ、わさわさ入ってるぅ」

    尊「駄菓子。子供会の行事?」

    美「いいじゃないの。一回ゲーム勝つ度に、一つ選ばせてあげる」

    唯「へー。じゃあ勝てたら、もらったお菓子を見せびらかしなから食べていいんだ」

    覚「持ち帰る前提だったが、まぁそれもいいだろ。今食いたいなら」

    唯「食いたい」

    尊「勝ってから言って」

    唯「よーし!勝つぞ~」

    尊「姉はこう言ってますが、源三郎さんトヨさん、頑張ってくださいね」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「兄さんは…頑張ってもお姉ちゃんにかすめ取られそうだもんな」

    唯「たーくん、よろしくぅ」

    若「いや、渡さぬ」

    唯「なぬ!」

    尊「おっ、強気だ」

    若「朝方、中々起きぬ唯の鼻先にちらつかせ、起こすのに使う」

    唯「うぅっ」

    尊「ウケる」

    美「状況が目に浮かぶわ~」

    覚「そんなんされなくても起きろよな。はい、まずはババ抜きからだ」

    22時。かなり盛り上がっている。

    尊「兄さんの一人勝ちと思いきや、源三郎さんが健闘してる」

    源「然程でもございませぬ」

    唯「駄菓子に目がくらんで?」

    尊「お姉ちゃんじゃあるまいし」

    源「敵を惑わせる術は、身に付けて損はないと思いまして」

    覚「ほー。何事にも無駄がないよ」

    美「偉いわねぇ」

    尊が勝者になった時、

    尊「僕の分、トヨさんに差し上げます」

    トヨ「えっ」

    尊「好きなお菓子選んでください」

    ト「そんな、困ります、尊様への褒美でございます」

    尊「いいんですよ、僕はいつでも手に入るんで。もらってください」

    覚「おー、優しいなー。ジェントルマン、紳士だ」

    尊「ジェントルマンね。やっぱり僕ってそうなのかな」

    唯「やっぱり?なにそれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days138~11日20時、お好みはどれ

    手を尽くしてくれたから、劇的に回復。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「そろそろ風呂沸くぞ」

    美香子「あら、もう?ならトヨちゃん、座って。リムーバー持ってくるわ」

    トヨ「はい。お願いいたします」

    美香子がトヨの手を取り、マニキュアを落とし始めた。

    唯「ねぇねぇ、女子は三人一緒にお風呂のつもりだけど、男子も四人ギューギュー詰めで入るの?」

    覚「それはさすがに厳しい。コミュニケーションもいいが、ゆったり入って欲しいしな。せいぜい二人ずつだ」

    唯「どうすんの」

    尊「どういう組み合わせでもいいけど」

    若君「わしも構わぬ」

    唯「源三郎が決めたら?」

    源三郎「え」

    若「そうせよ」

    唯「誰と一緒がいい?」

    源「あの…」

    唯「いいよゆっくり考えれば」

    源「お父さんの、お背中を流させていただけるならば、この上ない喜びでございます」

    覚「おー、そうかいそうかい。嬉しいよ」

    尊「決まりだね。じゃあ僕は兄さんと」

    若「うむ」

    美「はい、お疲れ様~」

    マニキュアオフ完了。

    ト「ありがとうございました、お母さん」

    美「なーんか、さっぱりしちゃったわねぇ」

    ト「すっかり元通りです」

    美「元通りではないわよ?来た頃と違って、指先まで傷もない」

    ト「そうですね…ひとえにお母さんのお陰です」

    尊「治療した?」

    美「そこまで大々的ではなかったけど、私ができる限りは。寝る時に手袋はめてもらったりもしたわね。あれから一月も経つのねぇ」

    覚「飾ってなくても、綺麗な指先だ」

    ト「ありがとうございます…」

    覚「風呂、女性陣が先でいいぞ」

    美「そう?ありがと。じゃ、行きましょ」

    唯「はーい」

    ト「はい」

    三人はリビングを出ていった。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「なんか、晩ごはんも早めだったし、予定前倒し的な感じ?急いでるの?まさか、早く帰そうとか」

    覚「違う。みんな風呂から出たら、大トランプ大会やろうと思ってな」

    尊「大会!」

    若「そのような意図が」

    源「風呂の後は、即戻る支度をせねばと思うておりました」

    覚「飽きるまで遊んでもらう」

    尊「ははは」

    若君と源三郎が、ほっとした顔になった。

    覚「で、そうだな、11時過ぎ頃に着替えに行ってもらう」

    尊「何でその時間?」

    覚「あまり遅く戻って、翌朝からの仕事に影響するといけないからな。唯はともかく、三人は忙しい身だから」

    尊「なるほどね」

    覚「その間に、僕は土産のはさみ揚げを用意すると」

    尊「だからか。さっき、着物に着替えてる時位に揚げるって言ってたじゃない。なんでお風呂の間でない?と思ってたんだよ」

    覚「天野のじい様に渡すのが明日だとしても、少しでも出来立てに近い方がいいしな。二人とも、急いで帰りたかったかい?」

    若「いえ!」

    源「滅相もないです!」

    覚「な、まだまだ夜は長いぞ~」

    洗面所。風呂を出た女性陣。この後の予定は、美香子が二人に知らせていた。

    ト「お母さん。この下着、なんですが」

    美「ブラとショーツ?」

    ト「持ち帰るのを、お許しいただけませんでしょうか」

    美「いいわよ~。全部?」

    ト「いえ。もしも、また訪れる機会があったならば、その折にお母さんを慌てさせてもいけませんので」

    美「ふふっ。さすが気遣いのプロ。というか残すのは、おまじないも入ってない?」

    ト「まじない。そうですね」

    美「必ず戻って来れますように、って」

    ト「はい」

    唯「持ってって、向こうで使う?」

    ト「眺めて楽しみます」

    唯「かわいい下着は気分がアガるって言ってたもんね。あ、違うか」

    ト「え?」

    唯「源三郎が気に入ってるのにするんかな~?なーんて。いやん」

    ト「あの、その」

    唯「え?まさかの図星?!」

    ト「お恥ずかしい」

    美「あらん。そんな話聞いたら、お風呂出てるのにのぼせそうよ。はい、ドライヤー持って行って。二人とも髪は、リビングで乾かしなさい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: アシガール緑合板(ネタバレ注意!)
    妄想作家のつぶやき

    続編は、尊の娘がヒロインなんですね。
    結婚した妻は、夫の偉業を知ってるんでしょうか。姉がなぜ居ないとか、そこで一悶着はなかったのかしら。そんな事ばかり気になっております。

    ┅┅┅
    アシガール シーズン2
    あの御月家が帰ってくる!?
    「たまのこしいれ」

    伯母・唯と父・尊の血を受け継いだ天才肌でちょっぴりドジな主人公が江戸の大名家へまさかのお輿入れ!?

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days137~11日19時、遠慮のかたまり

    醒めたくない夢って、ある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはんが済んだ。

    唯「お母さん特製のスモア、みんな楽しみにしてるからさ、お願いしまーす!」

    美香子「わかりました。さて、どうするかな。バーベキューの時と違って、コンロの前に群がるってのもねぇ」

    覚「それに直火は焦げやすいしな。オープントースターでやるか?」

    美「そうしよっか。ビスケットにマシュマロのせて入れちゃえばいいもの」

    覚「でもトースターの前に群がるんなら、コンロと同じだしな…ん、よし!トースター本体をテーブルに運んじゃおう。な、いい考えだろ?えーっと延長コードはと」

    尊「話、早っ」

    デザートの準備をし始めた両親。

    美「誰が作っても同じになりそうだけど、これでも母の味になる?」

    若君「はい、勿論です」

    唯「お母さんが作れば、どんなんでも母の味だよ」

    美「そお?」

    食卓にオープントースターがセットされた。手際良く次々と作り始める母。

    美「材料、何か多くない?誰がこんなに食べるのよ」

    唯「どーんと買ったから。いいじゃなーい」

    美「唯に買い物させるとこうなるか。でも、これでしばらく甘い物も中々口にできないでしょうから、今夜、心ゆくまで食べてもらうってのもいいかもね」

    唯「でしょー」

    美「ホントにそこまで考えてた?はい、源三郎くんトヨちゃんお待たせ。熱いから気をつけてね」

    源三郎「頂戴致します」

    トヨ「ありがとうございます」

    唯「甘い物かぁ。あ、そういえば、まだ大根アメ残ってるわ」

    美「それは薬として尊に持たせたんだけどね。どっちにしろあまり日持ちはしないから、帰ったら三日以内位には食べておきなさいよ」

    それを聞いた源トヨが、怪訝そうに顔を見合わせている。

    唯「あれ、どした?二人とも」

    トヨの囁き「源ちゃん、言って」

    源「あ、あぁ。畏れながら申し上げます」

    唯「なに?」

    源「日持ちがしないのであれば、戻った折には時すでに遅し、ではありませぬか?もう一月も経っております」

    唯「へ?だって戻るのは、飛んだ3分後だし」

    源「三分?」

    ト「三分…」

    若「唯。その辺りの仕組み、子細を話してはおらぬ」

    唯「そうだった?」

    源トヨが頷いた。

    唯「えー、なんも聞かれないから、たーくんがしゃべったと思ってたー」

    若「わしは、あれやこれや立て続けに話しては狼狽するばかりと思うておる内に、期を逸したと申すか」

    唯「言うの忘れてたんだ」

    美「唯~。人のせいにしないの」

    唯「マジすかー」

    若「マジ、だ」

    唯「あれ私、あん時なんて言ったっけ?えーっと」

    若「三分間、夢のような夢ではない時間を過ごさぬか、と誘うておった」

    ト「三分は百八十数える内、と伺いました。今では三分がどれ程かはわかりますが、こちらの世で百八十数えても、何も変わりませんでしたので訳がよくわからず」

    唯「それしか言ってなかったからか。ごめーん」

    源「いえ、あえてわたくし共からお尋ねも致しませんでしたし」

    若「今、あえてと申したな」

    源「はい。トヨとも話しておりましたが、子細を伺ってしまうと、この夢から醒めてしまうのではないかと思い」

    唯「夢じゃないんだけど」

    ト「あの、それほど夢のような楽しい時を過ごさせていただいておりましたので」

    唯「そっか。そんな風に思っててくれたなら、連れてきてホント良かったよ。じゃあ、詳しくは尊から説明しまーす」

    尊「は?」

    唯「よろしくぅ」

    尊「いきなり丸投げかよ!話すけどさ。あの、要はですね、永禄では三分間だけ四人が居なくなってるんです」

    ト「こちらにこんなに長く居りますのに?」

    源「うーん」

    尊「夜遅くに発ったじゃないですか。それは、日中に急に四人も居なくなると周りが騒ぐから考慮したんですよね?兄さん」

    若「然り」

    尊「こちらに、満月から満月の間ほぼ一か月居たとしても、戻った時には3分、180数えた位しか経ってないんです。そういう機能…というか乗り物なんですよ。だから大根アメも無事と」

    源「わかったようなわからぬような」

    ト「やっぱりわからないような」

    唯「わかったつもりで行こー」

    尊「雑だな」

    美「ねぇ、もっと焼いてもいいの?まだ食べられる?」

    唯「じゃんじゃん作って!みんな遠慮して、欲しいって絶対言わないから」

    若君と源トヨがそっと微笑んだ。

    尊「珍しく正論」

    美「了解~」

    スモアパーティーもそろそろ終わり。

    美「最後一つ、源三郎くん食べて」

    源「はっ、それではいただきます」

    美「はい、おしまい。休憩したらお風呂ね」

    唯「まだまだ盛りだくさんだ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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