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    続現代Days尊の進む道10~3月下旬から4月中旬

    叩かれてすぐ口元を押さえてたけど、ケガもなかったようで良かった。
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    美香子「随分と思い切ったパーセンテージじゃない?」

    覚「今まで売れ行きが芳しくなかったらしい。起死回生を狙っていると見たぞ。上手くいけば会社の信用度が爆上がりだもんな」

    契約書類を母に見せている。

    美「尊のニヤつきが止まらないのは、違う理由よね。この幸せ者~」

    僕「は、はは」

    すいません。前に白昼夢で見た、瑠奈のウェディングドレス姿がチラついてまして。

    美「会社には何回か通うのよね?」

    僕「そんなには行かないよ。今月中には終わる予定」

    美「仕事が速いわね~。これで収入、少しは確保できそうだから、アルバイトは探さない?」

    僕「何とも言えないけど、いつお呼びがかかるかわからないから、しばらくはやらないつもりだよ」

    覚「思ったんだけどさ。得た収入の使い道」

    美「もう?先走りし過ぎじゃない?」

    覚「免許が取れた暁には車がもう1台あった方がいい。その資金にするとかどうだ」

    僕「あー。まぁ当面、一番高額な買い物だね」

    美「いつまで経ってもプラモデルさえ買えないかもしれないのに?」

    覚「ひとまず車は早めに購入して、それを出世払いでどうだ」

    僕「出世払い。了解しました。全然メドが立たなかったら、他でも働けと」

    覚「どう展開するか楽しみだな」

    ┅┅

    怒涛の3月が過ぎ、4月を迎えた。いよいよ大学に入学だ。

    覚「入学式は、前に買ったスーツで良さそうか?」

    僕「残念ながら」

    美「何が残念なのよ。新品を買えって?」

    以前、写真館でお姉ちゃんと兄さんの婚礼写真を撮った際に新調したスーツを着てみたのだが、

    僕「頑張って鍛えてるつもりなのに、スーツがキツくなくて」

    覚「前よりはしっくりきてるけどな。大人に近づいてるんだ」

    美「うん。着られてる感もないし」

    僕「そっか。少しは成長したかな」

    ┅┅

    大学生活は順調だ。車校も行きつつ、瑠奈との時間も作りつつ、タイムマシン関係も細々と作業を進めていて、忙しくしている。そんな中、木村先生からメールが届いた。

    美「合格おめでとうメール以来?」

    覚「4月なんかお忙しいだろうに。何て?」

    僕「19日に小垣城資料館が開館するじゃない。その関連でなんと、木村先生の講演が26日にあるんだって。講演名が、小垣城代末裔が紐解く地元の歴史。これは行かないと」

    覚「へぇ~」

    僕「入場無料だから良かったら皆さんで来てください、場所は小垣町民体育館で午後2時からですと」

    美「それは是非伺いたいわね」

    覚「三人で行くか。小垣なら、瑠奈ちゃんにも声かけたらどうだ」

    僕「そうしてみるよ」

    早速いつものビデオ通話で聞いてみた。

    瑠奈『26日は、法事があって家族で出かけるんだよね』

    僕「そっか、残念」

    瑠『ごめんね。戦国武将の末裔なんだ。有名な先生なの?』

    僕「違う歴史の話題で新聞に載った事あるよ」

    瑠『へー。よくそんなローカル情報、ゲットできたね』

    僕「先生から直接連絡あったから」

    瑠『直接!知り合い?』

    僕「姉の母校の先生なんだよ」

    瑠『それだけで?お姉さん達今地元に居ないのに?』

    あの話をしよう。そんなに影響はないだろうし。

    僕「以前、先生が不良に囲まれてた現場に僕と兄さんが偶然出くわしてさ、兄さんが見事成敗したんだ」

    瑠『えーっ!お兄さんってどっちの』

    僕「え。あ、下の姉の旦那さん」

    瑠『あー、背が高い方のお兄さんだね。覚えてるよ。何かスポーツやってた人なの?』

    僕「武術全般を」

    瑠『すごーい。だから臆せずに立ち向かえるんだね』

    僕「超イケメンでケンカも強いなんて、天は二物を与えてるよね」

    瑠奈がキョトンとしている。

    僕「へ?僕何か変な事言った?」

    瑠『お兄さん、確かに顔立ちは整ってたけど』

    僕「でしょ。一瞬、顔見てなかったかと思ったよ」

    瑠『尊だって二物を与えられてるじゃない。超賢くて超カッコいいもん』

    僕「それは褒め過ぎだって。僕なんか全然カッコ良くない」

    瑠『え?大好きな彼が世界で一番カッコいいに決まってるでしょ』

    わわ、ド直球!

    僕「あ、ありがとう。話戻すよ。先生に姉が教わっていたのは、後から知ったんだけどね」

    瑠『そこからの縁なんだー。ねぇ、尊はそのケンカの時どうしてたの?』

    僕「どうも何もほとんど兄さんが倒したし。一人だけビンタはしたけど」

    瑠『えっ。ケガはなかった?』

    僕「顔をはたかれたけど、かすった程度だったから」

    瑠『…』

    僕「どうしたの?」

    瑠『尊が勇敢過ぎて、ますますキュンです』

    僕「流れでそうなっただけだよ」

    瑠『でも、ケンカはできればしないで欲しい』

    僕「しないしない。たまたま兄さんが一緒だったからで、僕一人では何もできないし。心配しなくて大丈夫です」

    瑠『約束だよぉ』

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    尊のスーツ、は平成Days11no.364に登場します。

    次回は、講演日当日です。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道9~3月中旬から下旬

    18歳成人は2022年4月1日からなので、この頃尊はまだ未成年です。
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    自動車学校に通い始めた。なんやかやで、しょっちゅう瑠奈と過ごしている。

    僕「で、看護師さん達がすごく喜んでくれたんだ。格段に入力がしやすくなったって」

    瑠奈「そんなパソコンのデータシステムまでササッと直せるの?尊ってやっぱり天才!」

    僕「プログラム位は。今まで、苦労してるのに気付いてあげられなかったのが逆に申し訳なくてさ」

    瑠「ふぅん…」

    何か言いたげなのが気にはなったが、その場はここまでだった。そして翌日。

    瑠「あのね。勝手に話をしちゃってごめんなさいなんだけど」

    僕「何?」

    瑠「ウチのお父さんがね、プログラムの話、一度詳しく聞きたいって言ってるの」

    僕「へ?お父さん?」

    瑠「働いてる会社にIT部門があって、お父さんそこに居るんだけどね。尊があっという間にプログラム修正したんだよってしゃべったら、興味津々で」

    僕「はあ」

    瑠「名刺預かってきたから、電話だけでもしてくれるかなぁ」

    僕「いただきます…うわ、部長って書いてある。直接話せばいいの?瑠奈経由じゃなくて」

    瑠「これはビジネスだからって言われた」

    僕「え、そうなの。わかった。ひとまず連絡してみるね」

    早速電話する。

    瑠奈の父『尊くん、電話くれてありがとう。すぐこちらからかけ直すよ』

    僕「はい」

    作成に至る経緯や手順、かかった日数などを聞かれたけれど…何だろう。

    瑠父『よくわかったよ。あのさ尊くん』

    僕「はい」

    瑠父『唐突な話で申し訳ないんだけれどね、一度こちらまで来て貰えるとありがたいと思っている。その折にはご両親のどちらかも是非ご足労願いたい』

    僕「会社にですか。保護者同伴という事は、重要な話なんですね」

    瑠父『さすがに勘がいいね。君の為にもなると思うから、検討してくれるかい?』

    帰ってから両親に話をした。よくわからないがまず話は聞こう、だったら3月中がいいだろうと、後日父と訪れると決まった。

    ┅┅

    その当日。

    僕「ビル、デカっ」

    大きい乗り換え駅から徒歩圏内の場所にその会社はあった。着いてすぐ、小さな応接室に通されたんだけど…緊張で、体ガチガチだー。

    瑠父「お待たせしました、速川さん。いつも娘がお世話になっております。本日はお時間をいただきまして」

    覚「いえいえ、車で楽に来れましたし。駅近なのに駐車場の台数も確保されてて、素晴らしい社屋ですね」

    瑠父「ありがとうございます。では早速ですが本題に入らせてください。この度、速川尊さんと契約を結びたく、お父様にもご承諾を頂戴したいと、お越しいただいた次第なんです」

    覚「契約?!」

    僕「え?」

    瑠父「弊社のIT部門では、各種アプリだけでなく業務用システムも取り扱っております。力を入れてはいますが、他社との競争は激しさを増しており、頭一つ抜き出るには?足りないのは何か?ずっと悩みどころでした」

    覚「差別化は難しいですな」

    瑠父「そんな時に耳にした、尊くんの優しさ溢れる行動が、私の腹にストンと落ちたのです。これだったんだ、と」

    覚「業務システムをシニア仕様にシフトしたのがですか?」

    瑠父「はい。長年ご利用いただいているお客様には、世代交代がない所もある。見慣れた画面表示も、若い頃は何でもないが歳を重ねれば見にくくなる。パソコン利用者の年齢層には幅があるとわかっていたのに、なぜ今まで業務用に手を付けていなかったのか。深く反省もしました」

    覚「ウチのクリニックのように少人数でやっていたり、家族のみで経営だと年齢層は上がる一方で、年々目や体の負担は増えますね。そうですか…尊、意見はあるか?」

    僕「あ、えーと」

    まだ体固まってるけど、話さなきゃ。

    僕「僕気付いたんです。昔はできていたから頑張ろうと、看護師さん達は無理してたって。パソコン利用者をサポートするサービスありますよ?いやそういうのではない、中身も手順もわかるんだから。でも見にくい、で体に支障をきたす。そこで僕は、導入部分だけ楽にすればいいと思いました。あとは機械が全部やりますよってシステムは逆に違和感があったので」

    瑠父「見えない?できないんではなくて?と利用されている方の尊厳を傷つけるケースも発生しかねない所、尊くんはそうではなかった。その相手を立てるリスペクトの精神にも、感動を覚えました」

    僕「そんな、立派じゃないです」

    瑠父「では、ここからはビジネスの話をさせてください。弊社には既存の業務システムが幾つかあります。それを、尊くんにシニア仕様にバージョンアップしていただきたい」

    覚「それなら、貴社の社員さんでもできますよね。あえて尊なのはなぜですか」

    瑠父「アイデアは尊くんですから。今お使いになってみえる看護師の皆様の、貴重なご意見もふまえていただきたいですし。得手勝手に情報のみ搾取など致しません」

    覚「それは…ありがとうございます」

    瑠父「完成した折には弊社の販売ルートにのせます。売れた分だけ、何パーセントか尊くんに入るよう、契約をさせていただけませんか」

    僕「あのぅ」

    覚「どうした」

    僕「先に、アイデアの買い取りでおしまい、という選択肢もありますよね。会社の損得勘定的にそれでいいんですか?」

    瑠父「さすが頭の回転が速いね。大切な事に気付かせて貰えたお礼もありますし、この方が成果を実感できるでしょう?システム改修を取っ掛かりに、他の商品の売り上げも伸びると踏んでいますし。また今後、新たなプログラム作成をお願いするかもしれませんしね」

    覚「気を遣っていただいたとは。恐縮です」

    瑠父「いえ。何より尊くん」

    僕「はい」

    瑠父「いずれ息子になるかもしれない君と、円満な関係で居たいと思っているんだよ」

    僕「えっ」

    覚「ええー!それって」

    瑠父「すみません、いきなりなお話で。恋愛となるとどうにも暴走しがちな娘でご迷惑もおかけしているのですが、熱の入り方がそれはもう今までになくと言いますか。今日はどうだったあぁだったと、我が家で尊くんが話題に上らない日はありません」

    覚「それはありがたい話です。お嬢さんにはとても良くしていただいて、愚息には勿体ないと思っていますよ。な、尊」

    僕「恥ずかしいよ」

    そりゃ、願ったり叶ったりな話だよ。でも僕達まだ高校卒業したばっかだし…早過ぎない?

    瑠父「不束な娘で恐縮ですが、これからもよろしくお付き合いいただければと思っております」

    覚「こちらこそ、是非ともよろしくお願いします。良かったな~、尊」

    僕「うん…あ、ごめんなさい、はい!」

    軽くパニクってるけど、嬉しい。

    瑠父「ありがとうございます。それでは、契約内容について進めさせてください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道8~3月14日土曜

    理容室は、この創作倶楽部no.951に登場するあのお店かも?
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    両親が大騒ぎしている。

    美香子「あら~!いい、すごーく似合ってて、カッコいいわよ~。さすが瑠奈ちゃん、見立てが完璧!」

    覚「こなれ感って言うのか?今度から服選びもお願いしたらどうだ。トータルでプロデュースしてもらいな」

    話は朝に遡る。

    僕「ホワイトデーってどうすればいいかわからなかったから、プレゼントじゃなくてご飯やスイーツをご馳走しようとは思ってたんだ」

    覚「で、考えたプランが?」

    僕「まず眼鏡を買いに行く。視力検査とかあるけど1時間みておけばいいかなと。その後早めのランチ」

    覚「ん」

    僕「13時に理容室。ラストに今日の労いも兼ねてどーんとスイーツ三昧してもらう」

    覚「忙しいな。でも悪くない」

    僕「恋愛マスター的には及第点ですか」

    瑠奈と待ち合わせて、まずは黒羽駅前の眼鏡店からスタートした。

    瑠奈「フレームはね、考えたけどオーバルよりはスクエアなんだよね」

    僕「楕円より長方形ですか。細身だね。見た目インテリっぽくなったりしない?」

    瑠「しない。尊は、インテリ風じゃなくて本当に超賢いんだからこれでいいの」

    1時間程で受け取れるらしい。ラッキー。なのですぐランチに向かった。

    僕「ごめんね、急がせて」

    瑠「全然大丈夫だよ。まだ11時だけど、ランチやってる店近くにあるの?」

    僕「リサーチ済みです」

    瑠「さすがぁ」

    とは言っても、あのCafeMARGARETなんだけど。木村先生と来た時に、ランチメニューが充実してるなって思ってたんだ。

    瑠「パスタでカルボナーラかな。美味しそう」

    僕「僕オムライスにするよ」

    瑠奈が、食べている僕をじっと見ている。

    僕「どうしたの?」

    瑠「もうすぐ、新生たけるんに会えると思うとウキウキする」

    僕「しかと見届けてください」

    瑠「うん!」

    その後、眼鏡を受け取った。いい感じだ。理容室は小垣駅が最寄りなので、電車に乗って向かった。

    店主の母「いらっしゃい!尊くん。彼女さん、お母さんに聞いていた通りの美少女ね~」

    瑠奈と店主が、持参した写真を見ながら話し合っている。何かくすぐったい感じだ。

    店主「前髪は、この辺りまで動きをつけるよ」

    僕「はい」

    瑠「うふふ」

    プロにお任せだ。だって口出しできるほどわかってないし。何も分からぬ時は全て分かる顔で何も言わぬのじゃ。なーんて。瑠奈には待たせるばかりで申し訳ないと思いつつ、楽しんでくれてるようでありがたい。そして…

    瑠「イメージ通り!素敵!」

    僕「確かに新生」

    何かふわっとしてる。これは巷で聞く、髪を遊ばせるってヤツ?!でも全体じゃなくて頭頂部から前髪だけだから、僕でもキープできるらしい。襟足が短いのは瑠奈の好みだな。

    店「前髪は下ろす形にはしてあるけど、額を出しても決まるよ。やってみて」

    僕「はい」

    腕を出して前髪をかきあげてみた。そのしぐさに、瑠奈の目が輝いている。

    僕「なるほど。少し巻いてあるから、下を向いても髪が落ちてこないんですね」

    店「どうかな?彼女さん。リクエストどおりになってる?」

    瑠「はい、とっても!ありがとうございます!尊超カッコいい~。うっとりしちゃう~」

    店母「こんなに手放しで褒めてくれるなんて、尊くん大好きっ子なのねー。ちょっとアンタも、いつまでも独り身で居ないで」

    店「そこで俺に矛先かよ」

    僕「ははは」

    スイーツタイムは、フルーツいっぱいのタルトにご満悦だった。あちこち引っ張り回しちゃって悪かったけど、終始ゴキゲンだったし、堪能はしてもらえたんじゃないかな…。で、購入した眼鏡をかけて帰宅したところ、冒頭の反応だったと言う訳だ。

    僕「僕の話はもういいから。お母さん、頼みがあるんだけど」

    美「何」

    僕「クリニックのパソコン、少し触ってもいいかな」

    美「触るって?」

    僕「エリさんと芳江さんが楽に仕事できるようにしたくて。具体的には文字を大きくするとか入力欄を広げるとか」

    美「え?そんなのすぐにできるの?」

    僕「粗方考えてあるから。個人のデータとかは鍵かけてあるでしょ?」

    美「勿論」

    僕「その方が僕も安心だし。晩ごはん後に使わせてくれる?」

    美「それはいいけど」

    覚「いつの間に準備してたんだ?」

    僕「お二人が目ショボショボさせて辛そうだったから一刻も早くって思って、試験後すぐに考え始めた」

    美「はぁ~驚きね。お手並み拝見するわ」

    調整は週明けに間に合った。使い勝手が良くなってるといいけれど。

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    次回は3月も後半になります。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道7~3月11日昼から夕方

    ご招待にはそのような深淵な意図が。
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    覚「よし、昼飯にするか」

    四人で食卓を囲む。このメンバー、馴染んでて違和感ない気がするのは僕だけかな。

    瑠奈「わぁ、このはさみ揚げ美味しい!」

    僕「こっちのカレー味も食べてみて」

    瑠「うん…おじさま、こちらもとっても美味しいです!」

    覚「おほー。そうかいそうかい」

    美香子「はさみ揚げファンがまた増えたわね。瑠奈ちゃん、制服も良かったけど私服もいいわ~。ブラウスとかカーディガンとか」

    瑠「嬉しいです。ありがとうございます」

    美「女の子!って感じがいい。うんうん」

    覚「だな。家の中が華やかになる」

    両親がこんなに喜ぶのは、勿論彼女の魅力に他ならない。でも、雰囲気は随分違うけど歳が一つ違いの彼女に、今家に居たらこんな感じかと姉の姿を投影してるんじゃないかな。だからこれからも、ちょくちょく会わせてあげたいとは思うんだ。

    美「次はいつ来てくれるのかしら」

    僕「あれ、展開早いぞ」

    瑠「え…」

    僕の顔色を窺っている。

    僕「いいよいつでも。瑠奈さえ良ければ来て」

    瑠「わぁ。ありがとう」

    覚「嬉しいねぇ」

    美「ホントに。この後は、大学や自動車学校の書類作成を二人でするんだったわよね」

    僕「うん」

    瑠「私ね、写真も持ってきたよ。新しいヘアスタイル候補、プリントアウトしたんだ」

    僕「そうなの?ありがとう、考えてくれて」

    美「あら。至れり尽くせりね」

    覚「春にはイメチェンか」

    食事終了。食卓が片付いたところで、

    美「瑠奈ちゃん、今日の為にエプロン買ってくれたんでしょ。良かったら置いていって」

    瑠「いいんですか?でもお洗濯しないと」

    覚「洗濯は洗濯機がやるから気にしない。しかし感心するよ。よそのお宅の娘さんって、こんなに気遣いができるんだな」

    僕「よそのお宅ね。言える」

    各種書類を片っ端から作成中。

    瑠「大学、サークルとかどうする?」

    僕「入らないよ」

    瑠「そうなの?」

    僕「えーと、瑠奈との時間をできるだけ作りたいし」

    覚「おっ」

    美「あら」

    瑠「えー?嬉しいけど、実際にはやりたいことや究めたい事があるからでしょ」

    僕「まぁ、なきにしもあらず」

    瑠「だよね」

    僕「…何かは、聞かない?」

    瑠「尊が話す気になったら聞くよ」

    僕「ありがとう」

    両親が、このやり取りにかなり驚いているのが見て取れた。そうなんだよ、こういった、人の思いに立ち入り過ぎない所はホント尊敬する。そして、書類作成は順調に進んだ。

    僕「よし、終わった」

    美「見せて。…ふんふん、いいでしょう。瑠奈ちゃんの分は、親御さんに点検してもらってね」

    瑠「はい」

    ケーキと紅茶が出された。両親は、髪型候補の写真に見入っている。

    覚「いい感じじゃないか」

    美「ホントよね。瑠奈ちゃんセンスいい。尊、理容室行く当日はついてきて貰いなさい。二人で行くからよろしく、って予約の電話してあげるわ」

    僕「え!そんなの恥ずかしいよ」

    覚「何が恥ずかしい。自慢の彼女だろ。いいじゃないか、母さんの友人の店だし融通きかせてくれそうだ」

    美「だって尊。写真があるとはいえ、一人で説明できる自信あるの?」

    僕「ない」

    美「でしょ。えーっと明日明後日は手続きとか行くわよね。瑠奈ちゃん、土曜は空いてる?」

    瑠「土曜ですか」

    僕「わっ。その日はホワイトデーだから、一応デートのつもりだったんだけど」

    瑠「いいですよ、おばさま。その行きつけのお店の予約が取れるなら私、ついて行きます」

    僕「えぇぇ」

    美「何絶句してるのよ。デートプランでも練ってたの?」

    僕「いや、特には…」

    美「決まりね。まだ空いてるかしら~」

    僕「話早過ぎだって」

    電話をかけに、その場を離れた母。すぐに戻って来た。

    美「13時に取れたわよ。楽しみにしてるわ、って言ってたわ」

    僕「それはお母さんの方でしょ。切るのは息子だよ」

    美「尊の成長を喜んでるのよ。あと、眼鏡も作り直すじゃない。それもその日に行っちゃいなさい。瑠奈ちゃん、尊に似合うフレーム見てあげてくれないかしら」

    瑠「はい。わかりました」

    僕「いいの?勝手に決められてるけど」

    瑠「行くよ。というか行きたい。尊が変身していく過程が見られるもん」

    美「デートの機会が増えて一石二鳥」

    覚「素直に嬉しいって言いな」

    僕「はっ、祝着至極に存じます」

    瑠「ぷっ、あはは。尊って、時々口調が武士っぽくなるね」

    夕方、母の車で瑠奈の家まで送っていった。その帰り道。

    美「尊。お父さんとも前に話したんだけど」

    僕「ん?」

    美「彼女になら、唯やタイムマシンの秘密が明らかになってもいいわねって」

    僕「あー。さっき驚いてたよね。信用できるから?」

    美「うん。ホントいい子だし」

    僕「実は兄さんにも、いずれ一緒にタイムマシン造るだろうって言われてたんだ」

    美「そうだったの。忠清くんのお墨付きなら間違いなしね。でもまぁ、そうならざるを得ない時が来たらでいいとは思う」

    僕「うん…」

    そんな機会、来るのかな…。

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    次回はホワイトデー当日です。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道6~3月6日金曜から11日水曜昼

    師匠と弟子二人?それとも。
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    ご報告です。本日発表があり、大学に無事合格しました。余裕と言いつつ一安心。ふぅ。

    覚「奮発したぞー」

    晩ごはんはすき焼き!やった~。

    僕「このお肉美味しい!」

    覚「だろ?」

    美香子「ご褒美よ。そうそう、エリさんと芳江さんね、心配は全くしてなかったって言ってたわよ~」

    僕「危ねっ。これで落ちてたら見せる顔がなかった」

    美「唯達にも…教えてあげたいわね」

    僕「あー」

    覚「話してなかったけどな、以前源三郎くんに聞かれててさ」

    僕「何を?」

    覚「大学は、入れなかったらどうなるのでしょうかって。行きたい気持ちがあるなら一年後に再挑戦するんだよって言ったら、もの凄く驚いてた」

    美「だったら今頃、心配で仕方ないんじゃないかしら」

    僕「うん…僕さ、思ったんだ。前にお姉ちゃんが言ってたじゃない。無事だったら知らせる、どうにかして絶対知らせるから、って」

    覚「言ってたな」

    僕「自分に置き換えてさ、こちらから何とかできないかって」

    美「それって…電話?メール?なーんて」

    覚「電報とかか?」

    僕「電報!サクラサク、って?それお姉ちゃんが理解できるかは微妙だよ」

    美「こっちも満開~とか言いそう。有り得る」

    覚「すまんすまん、ちょっと脱線したな。って事は?」

    僕「うん。瑠奈とほぼ毎晩パソコンでビデオ通話してるんだけど、これを永禄相手にできないかなって考え始めてる。月イチとかせめて年イチとか」

    美「ホントに?!新型タイムマシンの前に?」

    僕「作業は平行でやってくつもり」

    覚「ほー。夢がある話だが、大学行く時間あるか?アルバイトもするんだろ」

    僕「やれるだけやってみる。近頃、体力ついてきた感じだし」

    美「それでも、体壊すようでは本末転倒よ」

    僕「無理はしないようにするよ。で、話変わるけどさ、瑠奈がウチに来るって話、いよいよ遂行しようと思って」

    覚「おっ。いつでも大歓迎だぞ。昼飯をふるまうんだよな?」

    僕「そのつもり。お母さん、来週の水曜って忙しい?」

    美「諸々の用は午前中には終わる筈。平日よ?瑠奈ちゃんはその日でいいの?」

    僕「うん。クリニックは水曜休みって伝えたから。11日水曜で仮押さえにしてある」

    美「そうなの。だったらいいわよ」

    覚「了解。楽しみだな」

    僕「来てもらうのは土日でも良かったんだけどさ、実は思うところがありまして」

    覚&美香子「何」

    僕「今度の満月、10日じゃない」

    美「そう…ね。はいはい」

    覚「ちゃんとマークしたぞ」

    兄さんもよく眺めていた、月めくりの壁掛けカレンダー。父が、全ての満月の日付に黄色の丸いシールを貼りつけていた。

    僕「満月の日の献立ははさみ揚げでしょ。一日ずらしてもらって、月に一度の渾身の料理、是非瑠奈に食べさせてあげたいと思って」

    覚「二日連続でもいいぞ?」

    僕「新鮮に、一緒に味に感動したいから」

    覚「嬉しい事言ってくれる」

    僕「じゃあ、11日に決定って伝えるよ」

    美「そうね。これ最後のお肉。食べちゃって」

    僕「うん」

    ┅┅

    そして11日。瑠奈を駅まで迎えに行っていた。

    僕「ただいま」

    瑠奈「お邪魔します。こんにちは!おじさま」

    覚「おー。瑠奈ちゃん、いらっしゃい。ごめんな、車で迎えに出られずに」

    瑠「そんな、いいんです。あの、これ皆さんでどうぞって母が」

    覚「手土産なんかいいのに。ありがとう。いただくよ」

    僕「お母さんは、まだ?」

    覚「飯の時間には間に合うって言ってたぞ。瑠奈ちゃんさ」

    瑠「はい」

    覚「カレー味でちょっとスパイスきかせてるのは、苦手じゃないかい?」

    瑠「大丈夫です」

    僕「もしかして、忠清スパイス?」

    覚「へへ、使っちゃうよ~」

    瑠「おじさま、お手伝いします」

    覚「いいよ?お茶も出してなくて悪いね。座ってて」

    瑠「あの」

    鞄から何かを取り出した瑠奈。

    瑠「お手伝いするつもりで、エプロン持ってきたんです」

    覚「へー!」

    これには僕も驚いた。

    覚「若いのに。出来た娘さんだよ」

    瑠「可愛いいのがいいね、って母と買いに行きました」

    覚「わざわざかい?尊…お前、幸せ者だな」

    僕「仰せの通りです」

    その後三人でご飯の支度をしたけれど、瑠奈のエプロン姿が眩しくて。父は終始ご機嫌だし、僕はずっとニヤニヤしてた気がする。

    美「ごめんね~。遅くなりました」

    レンコンを揚げ始めた頃に、母が帰宅した。

    瑠「おばさま、こんにちは」

    美「瑠奈ちゃんいらっしゃい。あら!エプロン姿!もうお嫁に来てくれたの~?」

    ゲゲ!何言い出すの!下向いちゃったじゃないか!

    覚「母さん。からかうなよ、可哀想だろ。尊を選ぶかなんて決まってないんだから」

    美「それもそうね」

    瑠奈がクスっと笑った。えー、それ、どう捉えればいいの?

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    続現代Days尊の進む道5~2月29日昼から3月2日月曜

    健やかに育ってくれるだけで、親孝行ではある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはんタイム。さすがに14時だと、フードコートの席も余裕があった。

    瑠奈「あ、そういえばね」

    僕「うん?」

    瑠「地元の小垣山にね、昔お城があったんだって。その跡地に資料館ができたの」

    僕「知ってる。つーか完成したんだ」

    小垣山。そのまんまの名前。そりゃそうか。

    瑠「さすが歴史通!町の広報に載ってたの。私も読んだけど、お母さんが尊くん知ってるかしらって言ってて」

    僕「いつ開館するかは知らないよ」

    木村先生には、もう少ししたら大学の合否、もちろん合格の報告がいいけど。を連絡しようと思っていた。

    瑠「確か4月19日、日曜って書いてあったはずだよ」

    僕「ありがとう。親に言っとくね」

    瑠「家族全員歴史好きなの?すごーい」

    好きというか、城跡見に行ってるし、木村先生のメールも読んだし。お姉ちゃんが関わる話は親も興味あるよ。

    僕「岩盤浴は満喫できた?」

    瑠「うん。一緒の時間も満喫できたし」

    僕「それは僕も同感です」

    瑠「ふふっ。良かったぁ」

    最後は瑠奈の自宅、というかマンションの入口まで送り、甘い一日が終わった。

    ┅┅

    3月。2日、高校の卒業式を迎えた。

    美香子「色々あった三年間よねぇ」

    僕「ホントだよ」

    覚「終了後は、クラスメートや瑠奈ちゃんとどこか行ったりするのか?」

    僕「ううん。写真はいっぱい撮ろうって話はしたけど、瑠奈はその後女子会するって言ってたし、特にイベントはなし」

    覚「そうか」

    僕「僕は、ミッションをこなすのみ」

    覚「ミッション?」

    美「何それ」

    僕「帰ったらね。じゃ、行ってきます」

    式はつつがなく進んでいた。僕はこの三年で、少しは成長できたかな。きっと、きっとできていると信じたい。兄さんに出会い、学んだ事は数知れず。源三郎さんもトヨさんも同じだ。勿論お姉ちゃんにも。あんなにひねくれてた自分が…いや、これも僕の歴史。糧になってるよね。

    クラスの男子「注目~!はい、バター」

    みつき「ちょっとそれ昭和~」

    教室に戻り、撮影大会が始まった。

    瑠「尊、こっちこっち。撮るよぉ」

    僕「はい。え、どのスマホ見ていいかわからないよ」

    み「どれもくまなく見てニッコリ笑う!」

    バッシャバッシャと撮りまくっている輪の中に自分が居るのがなんか不思議。今になって青春してる?そうしている内に、人がまばらになってきた。

    瑠「ごめんね尊、そろそろ行くよ。また夜話そうね」

    み「センセまたね~」

    僕「うん、また」

    瑠奈達を見送った後、教室を出た。廊下をゆっくり歩き、校門を出た所で振り返って校舎を臨んだ。お世話になりました、と呟いた。

    僕「ただいま」

    覚「おーお帰り」

    そのまま帰宅。食卓の席につくと、父はお茶を煎れてくれた。

    覚「思ったよりは遅かったな」

    僕「まあね」

    覚「あれ?筒は?」

    僕「筒って何。卒業証書ならこれだよ」

    リュックから厚手の二つ折りのホルダーを出した。

    覚「最近はこんな形なのか。へぇ~」

    僕「中、見ないの?」

    覚「母さんが仕事終わるまで、楽しみにとっておく。夜に恭しく拝見するよ」

    僕「贈呈式ね」

    晩ごはん後。

    僕「それでは」

    覚&美香子「はい」

    卒業証書を開いた。

    覚「おぉ」

    美香子「神々しいわ」

    しげしげと見つめて喜んでいる両親。

    美「ところで、今朝言ってたミッションって」

    覚「そうそう」

    僕「ミッションはね、これ。無事高校を卒業して、卒業証書を持ち帰る」

    美「へ?」

    覚「それだけ?」

    僕「そうだよ。お姉ちゃんが持ち帰らなかった卒業証書。だから僕は必ず見せてあげよう、とずっと思ってたんだ」

    美「…」

    覚「高校のはそうだな。確実に家まで運び、僕らが見る所までがミッションか」

    僕「うん」

    母が涙ぐんでいる。

    美「ありがとう、尊」

    僕「喜んでくれて嬉しいよ」

    覚「これ、壁にかけて飾っとくか?」

    僕「それは止めて」

    最後は三人で大笑いした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    案ずるまでもありませんが、次回は試験の結果発表からです。

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    続現代Days尊の進む道4~2月29日土曜朝から昼

    先日の台風、私は大きくは影響ありませんでしたが、皆様お変わりないでしょうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    とことんじゃれ合っていただきます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    父が今日のデートコースを不思議がっている。

    覚「高校生カップルが昼間っからスーパー銭湯でまったり、ってのも何だが」

    僕「7人で行ったじゃない。それをあんまり楽しそうに僕が話すから、羨ましかったって言ってた」

    覚「そうか。送迎バスは小垣駅からも出てるんだよな?」

    僕「うん。だから小垣で待ち合わせ。9時半のバスに乗るつもりだからそろそろ行くよ。夕方には帰るね」

    覚「楽しんできな」

    小垣駅に到着。ロータリーにマイクロバスが停まっていて、その前で瑠奈が小さく手を振っていた。吉田城跡を横目にバスに乗り込む。

    瑠奈「このバスにも乗った事あるの?」

    僕「うん、黒羽駅に来る方に。もう一年以上前だけどね。懐かしいな」

    お姉ちゃんと兄さんと乗ったなぁ。

    瑠「尊の話聞いてると、このスパ銭行くのが速川家の一大イベントみたい」

    僕「あー。そうかも。みんな好きだからね」

    瑠「お姉さん達家族も?」

    僕「うん」

    あ、話逸らした方がいいな。

    僕「でも一番記憶に残ってるのは、サウナの中で無の境地になってたお父さん。仙人みたいでさ」

    瑠「おじさまが?想像できるかも。あはは~」

    ふぅ。セーフセーフ。

    瑠「ねぇ、眼鏡曇ってるよ。見えてる?」

    僕「何とか」

    到着後ササッと風呂に入り、お望み通りの岩盤浴真っ最中。

    僕「暑っ。一度休憩したいけど、もうすぐ12時か…お腹って空いてる?」

    瑠「ううん。でも私も暑さは限界間近」

    僕「フードコートは今の時間混んでるから、昼ごはんは後回しで、まず涼みに行こうか」

    瑠「はーい」

    休憩エリアに移動してきた。

    瑠「尊?どこまで行くの?」

    目指す場所に向かう。

    僕「ラッキー。今日はお客さん多いからどうかなと思ったけど」

    よくお姉ちゃんと兄さんがイチャついていたカップルシートが、運良く空いていた。

    瑠「…」

    こんな所に連れてきて、ドン引きしたかな。

    瑠「この微妙な隠れ加減…」

    僕「誤解しないで。僕は使った事ない。お姉ちゃん達がよくね」

    瑠「ホントかな」

    僕「ホントだよ。僕がこの場所を使う日がくるなんて、夢にも思わなかった。瑠奈に感謝しなきゃね」

    瑠「ふぅん…」

    僕「疑ってる?」

    瑠「言う事聞いてくれるなら、不問にする」

    僕「わかりました。お望みは何でしょう」

    瑠「先に入って寝転んで」

    僕「はい」

    言われるがまま、シートというよりミニベッドに滑り込んだ。

    瑠「片腕を横に出して、伸ばして」

    僕「はい…」

    これはまさかの…腕枕?!

    瑠「わぁい!」

    僕「うわっ」

    すぐさま、大喜びの表情で飛び込んできた!

    瑠「ごめぇん。ちょっと勢い余っちゃった。どこもぶつけたりしてない?」

    僕「大丈夫です…」

    いや、それよりですね、近い、近いんですよ瑠奈さん!そこ、腕というより肩だし!

    瑠「うふふ。たけるんの腕枕だぁ」

    僕「あの…」

    瑠「なに?」

    僕「僕、汗臭くない?すごく心配なんだけど」

    瑠「全然匂わないよ」

    良かった。まずは一安心。

    瑠「あっ!つい飛びついちゃったけど、私こそ匂ってる?」

    僕「ううん。甘い香りがする」

    酔ってしまいそう。

    瑠「たけるん…なんかいやらしい」

    僕「何でだよ。事実を述べたまでです」

    瑠「クサくないなら安心。ねぇ、眠くなっちゃった。少し眠ってもいい?」

    え。って事は、しばらくこの状態?マジすか!違う汗かきそう。緊張するけど、ここは落ち着け落ち着け。

    僕「僕の隣で良ければどうぞ。冷えるといけないから、タオルかけておくよ」

    瑠「優しーい。たけるん、おやすみぃ」

    僕「おやすみなさい」

    僕は眠るなんて無理!目が冴えまくり!しばらくは瑠奈姫を守ります。しかし、やかましい姉が帰った後で良かった。こんな姿見られようものなら、収拾つかなかったよ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君シャトルバスに乗る、のお話は、平成Days17no.388にて。

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    カマアイナさんへ

    ご自宅に直接の被害はなかったんですね。何よりです。

    日本の気象情報をよくご存知でいらっしゃいますね。仰せのとおり、私の住む東海地方近辺に台風接近中です。粗方の準備は済ませました。無事にやり過ごせるといいですが。

    尊くん、そうですね。大人への階段は登り始めたばかりです。そっと見守っていただければと思います。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道3~2月15日から27日木曜

    カマアイナさん。ハワイの山火事のニュースを見る度に案じております。お住まいはホノルル近郊ではなかったと認識しておりますが、生活に支障など出ていらっしゃいませんか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    画面に虫眼鏡当てたくなる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝のクリニック。エリさんと芳江さんがコーヒーを口にしているのだが、

    僕「お疲れですか」

    二人とも、頻りに眉間を押さえたり肩を上げ下げしているのが気になった。

    美香子「私がこき使っちゃってるのよね」

    芳江「いえいえ、そんな滅相もない」

    エリ「寄る年波に勝てないだけですよ~」

    芳「最近はね、特に目にきますね」

    エ「私も。ここ一年位でガタっと」

    僕「大変そう」

    美「うーん。人を増やすってのも考えたんだけどねぇ」

    母がチラっと僕の顔を見た。

    僕「何?」

    美「タイムマシンとか唯が家に居ない理由とかをね、これ以上他の人に知られる機会が少ない方がいいかしら、って思って求人を躊躇しちゃって」

    僕「それって…風が吹けば桶屋が儲かる的な話で、僕がタイムマシン造ったから芳江さんやエリさんが大変な思いをしてるの?それはごめんなさい」

    エ「いえいえ、尊くんは何も悪くないですよ」

    僕「お二人が辛そうにしてるのは、見てて僕も辛いです」

    芳「ほとんどのお仕事は全然大丈夫なんですけどね」

    エ「私達が苦手というか手こずっているのは、パソコンです」

    僕「パソコン。ですか」

    エ「何と言いますか、こういう業務系のシステムって、文字が小さいとか欄が狭いとかで、シニア世代には優しくないんですよ」

    僕「そうなんだ」

    芳「休み休みやりますし、メガネ型の拡大ルーペも買いましたし」

    エ「私も買いました。何とかやっていきますから、心配無用ですよ」

    美「私もできるだけ二人に負担かけないようにするわ」

    僕「僕、入力とか手伝おうか」

    美「要らない」

    僕「そうなの?」

    美「気持ちだけ貰っておくわ。尊は春からの新生活に全力投球しなさい」

    エ「そうですよ。尊くんはやらなければならない事が沢山ありますからね」

    芳「気にしないでくださいね」

    僕「はい…」

    リビングに戻って来た。

    覚「おー、お使いありがとな」

    僕「うん…」

    覚「何だ、今度は考え事か?」

    僕「ちょっとね。もう部屋に行くよ」

    覚「ん」

    部屋に戻ってからも、考えていた。

    僕「お二人の力になりたい。パソコン問題なら何とかなりそうだから、最終試験終わったら手をつけよう」

    決意表明をして、それからは勉強に打ち込んだ。

    ┅┅

    2月26日に最終試験が終わった。その翌日。

    瑠奈「ねぇねぇ、岩盤浴いつ行く?」

    僕「岩盤浴?」

    瑠「試験終わったら一緒に行こう、って言ってくれたでしょ」

    そんな約束したっけ?あー、話した話した!瑠奈が家に来た日に。

    僕「そうだったね」

    瑠「楽しみにしてたんだよぉ」

    危ねっ。機嫌を損ねるところだった。

    僕「だったら今週末はどう?土曜日とか」

    瑠「土曜ね。了解でーす。わぁ!久々のデート!」

    僕「そうだね。僕も楽しみだよ」

    クールに装ってるけど、デート、デート…かなり喜んでます。

    瑠「来週は、月曜日が卒業式で金曜日が合格発表でしょ。だから怒涛の一週間の前にデトックスはちょうどいいかも」

    僕「すっきりさっぱりとね」

    そうそう、もう一つの約束は覚えてるよ。

    僕「それもだけど、無事合格したら家に遊びに来るよね」

    瑠「うん、行きたい」

    僕「親に話したらお父さんがノリノリでさ、料理何にするか今から考えてるんだよ」

    瑠「待っててもらえてるの?嬉しい」

    僕「また日にち決めようね」

    瑠「うん!今度はちゃんとアポイントメントとります」

    僕「ははは」

    大学決まったような話してるけど、今更あーだこーだもないし。でも来月って、かなり慌ただしいよな。入学準備、自動車学校通学に向けて眼鏡作り直せって言われてるし、髪も切るんだった。でも生活がガラリと変わるんだから、こんなものなんだろうな。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、岩盤浴デートからスタートです。

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    返信先: 創作倶楽部
    続現代Days尊の進む道2~2月14日金曜から15日土曜

    てんころりんさん、カマアイナさん。ご声援ありがとうございます。
    しばらく、ゆるゆる物語にお付き合いくださいませ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    遅れてやって来た青春恋愛模様なら、尚更満喫して欲しいと思うのです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    受験生にも恋愛系イベントはやってくる。今日はバレンタインデーだ。

    みつき「来た来た」

    瑠奈「たけるーん!」

    僕「え」

    朝。登校すると、校門に瑠奈とミッキーさんが居て驚いた。

    僕「おはよう、ございます」

    瑠「おはよぉ」

    み「おはよう、センセ」

    僕「寒いのに、ここで待ってたの?」

    瑠「そんなに待ってないよ」

    み「センセの登校時間は把握してるし」

    僕「それにしても」

    み「はい、どうして今朝私達がここに居るのかはわかるでしょ。教室だと目立つからさ。いつもお世話になってまーす!」

    お辞儀をしながら紙袋を渡された。

    僕「あ、ありがとう」

    み「悪いけど、彼氏のとは差つけたから」

    僕「当然だよ」

    み「小さいチョコの詰め合わせ的な物。勉強の合間につまめるように」

    僕「それは、お気遣い痛み入りまする」

    み「そう来たか。うむ、苦しゅうないぞ」

    僕「ははは」

    み「では私はここで。お先に!さらばじゃ~」

    ミッキーさんは颯爽と駆け出して行ってしまった。

    僕「動きに無駄がないな」

    瑠「たけるん」

    僕「あ、はい」

    瑠「これ私から。受け取ってください」

    僕「ありがとう」

    今開けた方がいいのかな。でもこの綺麗なラッピング、元通りに戻せる自信ないな…。

    瑠「尊の部屋に、天文学の本があったの思い出して」

    僕「うん?」

    瑠「惑星みたいな柄の、真ん丸でツヤツヤなチョコがあったから、それにしたの」

    僕「へぇ、そんなのあるんだ。これ、今開けずに持ち帰ってもいいかな」

    瑠「いいよ」

    僕「楽しみは家までとっておくね。じゃあそろそろ、教室に行こっか」

    チョコの包み二つをリュックにしまった。歩き出そうとすると、

    瑠「お願いがあるの」

    僕「お願い。何でしょう」

    瑠「手、繋ぎたい」

    僕「…朝から?」

    帰りはいつも繋いでるけど。すみません、恋愛を謳歌してます。

    瑠「朝からがいい」

    周りを見渡すと、あちこちでチョコの受け渡しが行われていて、この辺りだけ何と言うかラブ全開!な感じではある。

    瑠「ダメ?悪いコかな。困る?」

    僕「悪いコじゃないし困らないよ。はい」

    手を差し出すと、満面の笑みで駆け寄ってきた。な、なんて可愛らしいんだ。

    瑠「うふふ」

    手を取り歩き出す。途中、クラスの男子に冷やかされたけど、それさえも心地よい。高校生活最後の最後で訪れたこんな日々。瑠奈には感謝するばかりだし、できるだけ望みは叶えてあげたい。ん?これって…

    ┅┅回想。実験室で若君と将棋対局中┅┅

    若君「唯が望み喜ぶ事を、何なりと叶えてやりたい」

    僕 心の声(しぇ~!お姉ちゃん、愛されてる!)

    ┅┅回想終わり┅┅

    兄さんに一歩近づいたかな。近づくなんて、おこがましいか~。

    ┅┅

    翌日は土曜日だった。朝ごはんの後、そのまま食卓でぼんやり椅子に座っていた。

    覚「ちゃんと寝たのか?ポーっとして」

    僕「寝たよ」

    ゆうべ。ミッキーさんに貰ったチョコは、原産国が様々で多くの種類が入っており、一つ一つ包み紙を眺めて楽しんでいた。瑠奈に貰ったチョコは、チョコ自体が目を見張る程美しかったので、同じく机に並べてずっと眺めていた。要は、初めてのバレンタインデーに浮かれてて、今も夢心地という訳だ。

    覚「まだここでウダウダしてるなら、これ持って行ってくれよ」

    僕「あ、うん。わかった」

    クリニックにコーヒーを運ぶ役目を仰せつかった。

    僕「おはようございます」

    美香子「あら珍しい」

    僕「試験勉強はもう少し後で始めるから」

    エリ「おはようございます、尊くん。お久しぶりですね」

    芳江「おはようございまーす。あらら尊くん忙しいでしょうに」

    後から思い返すと、この時エリさんと芳江さんに会っておいて本当に良かった。お役にも立てたし、その後の僕にも大きく影響したし。人生どう転ぶかわからないものだと痛切に感じた一件だった。それが何かは、またおいおい話します。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    (新)続現代Days尊の進む道1~2020年1月16日木曜から2月初旬

    今回のシリーズは、一話に何日分かまとまるケースが多くなります。
    あと、尊目線なので、セリフ前の表記が尊→僕に変わっております。

    では尊くん、よろしくお願いします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    僕「ふーん」

    美香子「中々いいわね~」

    1月16日。家の二階、源三郎さんとトヨさんが使っていた予備室。兄さんと源三郎さんが組み立てたテーブルが既に運びこんであったのだが、せっかくだからとその上に、父が写真をずらりと並べていた。

    覚「下には置ききれないしさ」

    僕「確かに。兄さんの意向でお花の写真立てはリビングにあるけど、それでも今回随分増えたもんね」

    美「…」

    覚「どうした?」

    美「この部屋に来れば…ね、と思って」

    覚「ん…」

    わかる。こんなに四人に見つめられて。賑やかだけど、かえって淋しいよね。でも淋しいと口にしてしまうと、もっと淋しくなるからだ。

    僕「ここでいつでも笑顔に会えるよ」

    覚「そうだな。毎日拝むか」

    美「うん。そうする。部屋の前通る度に」

    僕「え、一日一回じゃなくて毎回なの?」

    美「何とかの一つ覚えみたいな物よ」

    僕「別にいいけどさ」

    美「伝統芸能、ね」

    僕「あぁ。…懐かしいな」

    覚「ははは」

    三人で笑いながら、そっと部屋のドアを閉めた。

    ┅┅

    18日、土曜日。

    覚「頑張ってこいよ」

    美「余裕だ、なんて気を緩めちゃ駄目よ」

    僕「うん。行ってくるね」

    いよいよセンター試験が始まる。気を引き締めないとな。電車で会場に向かっていると、瑠奈からLINEが届いた。

    瑠奈の投稿『春からは朝も一緒の電車で通学したいな』

    そうだね。

    瑠 投稿『いっぱい念を送るから!』

    念?画面いっぱいに、ハートがめっちゃ飛びまくってますけど。ははは。

    瑠 投稿『がんばってね』

    はい。心して挑みます。

    ┅┅

    そして、まずは二日間の日程が終了した。その夜、晩ごはんの後。

    覚「まだ全部終わってはいないんだが、話をしておく」

    僕「うん?」

    覚「早い内に、車の免許取っときな」

    僕「免許!はぁ」

    美「あって損はないでしょ」

    僕「そう…だね」

    美「瑠奈ちゃんと、ドライブデートできちゃうわよ~?」

    僕「あー、まぁ」

    覚「彼女はその辺りどうしてるんだ?推薦で、日程に余裕があっただろ」

    僕「何も聞いてない」

    覚「一度話してみな」

    僕「わかった」

    早速、部屋でビデオ通話中に聞いてみた。

    瑠奈『免許は、大学入ってしばらくしたら取りに行こうかなぁくらいに思ってた。早く行きなさいって言われてるの?』

    僕「うん。何かアルバイトに行くにしても、車には乗れた方がいいだろって。3月中には通い始められるよう、準備しようかと思ってる」

    瑠『そっか。私も一緒に通おっかな』

    僕「そうする?」

    瑠『うん』

    結果としてこの選択は大正解だった。あれこれ考えたり後回しにしたりせず、ただやる、ってのも悪くない。

    ┅┅

    2月に入った。月末に最終試験を控えているので何となく足元がフワフワした感じだけど、少しずつ春は近づいている気がする。

    瑠「それ、好き」

    僕「好き?」

    瑠「前髪かきあげるしぐさ」

    帰りの電車内。髪がだいぶ伸びてきたから、そろそろ切りに行かなくてはと思っていたところだった。

    僕「髪は長めがお好みなの?」

    瑠「襟足が長いのは好きじゃないよ」

    僕「そうなんだ」

    瑠「だけど尊は、前髪はもう少し伸ばしてふわっとさせても似合うと思う」

    僕「へぇ」

    瑠「うん」

    僕「僕そういうの全然わからないから。瑠奈が考えてくれるなら、新しい髪型に挑戦してもいいけど」

    瑠「え、いいの?」

    僕「もうすぐ春だし。それもいいかなって」

    瑠「尊にしては珍しい発言」

    僕「言うね。まぁ、たまにはさ」

    瑠「だったら、大学はニューヘアスタイルでデビュー?」

    僕「そうなるね」

    瑠「わぁ、責任重大じゃない!…ううん、さてはモテモテになって出会った他の女と仲良くなろう、なんて」

    僕「またそんな事言う。有り得ないから」

    瑠「尊のキャンパスには女子がいっぱい居るもん。素敵!って言い寄られて」

    僕「ないない」

    瑠「どうしてそう言えるの?」

    僕「瑠奈以上の女性は居ないから目移りなんてしないよ」

    瑠「…」

    え、何?

    瑠「そんなセリフ、真顔でサラっと言うなんて。ドキドキしちゃう」

    あー。そんなキザなセリフだなんて気づいてなかった。マジでそう思ってるからだろうな。

    瑠「嬉しい」

    僕「どういたしまして」

    瑠「では安心して、髪型を熟考させていただきまーす」

    僕「よろしくお願いします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は、バレンタインデーからのスタートです。

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    返信先: 創作倶楽部
    新連載のお知らせ

    皆様、ご無沙汰しております。夕月かかりてでございます。

    お知らせの前に、まずはぷくぷく様。大巨編の感想が大変遅くなりました。アシガール本家超えの時空跨ぎ!感服いたしました。今自分がどこに居るかわからなくなりそうでした。ぷくぷくさんのお話と比べ私の創作話など、近所をウロウロしてるようなモノでございます。

    そんなウロウロしかできない私ですが、以前お伝えした現代Daysの続きを始めたく、戻って参りました。またしばらくこちらにお邪魔させてください。

    今回はマイナーチェンジしまして、語り部は尊です。お話の最初と最後の説明は作者がいたしますが、文中は彼の目線で進みます。パラレルワールド全開。原作で新シーズンが始まっていますが、勝手ながらこのまま突っ走ります。

    ほぼ全編現代でのお話となりますが、永禄の面々もいずれは…相当先ですが登場しますので、今しばらくお待ちください。

    数日後にスタートします。投稿間隔は、変わらず3~5日に一度の予定です。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります四人の現代Days、150(終)まで

    no.1068の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118、no.1015、再会
    119、no.1016、一触即発
    120、no.1017、後悔先に立たず
    121、no.1018、ここはお白洲
    122、no.1019、陳述します
    123、no.1020、挑戦と再挑戦
    124、no.1021、もしもーし
    125、no.1022、時代時代で
    126、no.1023、春からのビジョン
    127、no.1024、団欒┅┅┅

    永禄で生きる決心をする前から、時空を行ったり来たりでちょくちょく長期に学校を休んでいた唯が、学校の友達にどう説明したのか。絶対してないよなと思い、こうなりました。

    128、no.1025、ホットほっと
    129、no.1026、忸怩たる思い
    130、no.1027、道に迷う
    131、no.1028、期待してます
    132、no.1029、肌身離さず
    133、no.1030、刻みます
    134、no.1031、大きくなったね
    135、no.1032、未来は明るい!
    136、no.1039、用意周到
    137、no.1040、遠慮のかたまり
    138、no.1041、お好みはどれ
    139、no.1042、興が乗る
    140、no.1043、男子の会話
    141、no.1044、レア物です
    142、no.1045、帰省終わります
    143、no.1046、文詠みます┅┅┅

    ボーリングですが。表記としてはボウリングが正解ですね。掘削しませんものね。大分前に気づきましたが、Daysシリーズではこのままにします。で、ボーリング初登場は遡って平成Days14話(no.375)。この時のエピソードと対になったのが134話です。

    144、no.1047、匂わせます
    145、no.1048、踊らされます┅┅┅

    じいは若君の守役だったので、幼い頃からよーく知っている。逆に考えると、共に過ごした時間の長さだけ、若君もじいをよーく知っている。じいが千原じいの話にどのようにのってくるかはお見通しだったので、勝ち戦も同然だったのです。

    146、no.1049、佳き日
    147、no.1050、一件落着┅┅┅

    梅を調べてて知ったのですが、「紅梅」「白梅」って、花の色でなく、材木にした時赤いか白いかで決まるらしいですね。木の内部が赤いのが紅梅、白いのが白梅。だから白い花を咲かせる紅梅もあると。ちょっとややこしい。
    緑の梅ですが、緑萼梅という種類が、花びらは白、中が緑、萼(がく)も緑でした。
    お父さん、一本締めだと言ってますが、あの様子だと手をパンと一回だけ叩きそう。それ一丁締めだって!と総ツッコミされてると思います。

    148、no.1052、助言します
    149、no.1053、犯人は

    150(終)、no.1054、夢で逢えたら┅┅┅

    長女二女がもう少し小さい頃は、唯も参戦して忠清パパの取り合いをしてたとは思いますが。かつて令和Days69話(no.686)、妄想してデレデレしたように。でも時の流れは残酷で。唯にも突っ込まれ放題で。パパ頑張って~。

    ┅┅

    発表する度に長くなっていくお話。お付き合いいただきありがとうございました。
    ひと月って長いような短いような。今回は遠出もさせてませんし、話が持つのかと思いきや、源トヨとたけるなの二組のカップルが色々話題を作ってくれました。感謝せねば。
    到着した当初、若君が両親に語った願いは全て叶い、胸を撫で下ろしております。

    今後の予定です

    四人の現代Days。余韻なくあっさり終わったと思われませんでしたか?

    本当は、最後は「続きます。」でした。描きたい欲が勝りまして。現代Daysの続き、主に尊のその後のお話を考えております。

    ただですね、以前自分自身が口にした話がずっと引っ掛かっておりまして↓

    ┅┅私、令和Daysを描いた時に、自分でかけた枷がありまして。「コロナ禍になってから二人を飛ばさない」┅┅

    続きとなるといよいよその時期に突入です。止めようかとも思いましたが、それを踏まえた上で進めてみようと、話を練り始めておりました。
    でも。速川クリニックはその頃大波真っ只中。中途半端に話を起こしては、かえって医療機関に従事されている方々に失礼に当たると考え、悩んだあげく…コロナ禍は描かない事にいたしました。
    でも自分の中では、できればその時期に当たる日付に唯と若君を飛ばしたくないので、また考えます。
    という訳で振り出しに戻っておりますので、今は手付かずの状態です。

    いつスタートするか、どのくらいの量になるかは全く未定でございます。

    メドがつきましたら、お知らせします。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります四人の現代Days、44から117まで

    no.1067の続きです。
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    44、no.901、プライスレス
    45、no.902、選択せよ
    46、no.903、以心伝心
    47、no.904、戦うあなたが
    48、no.905、呼んだ?
    49、no.906、贈ります
    50、no.907、狙ってる
    51、no.908、溶ける~
    52、no.909、星だけが見ていた
    53、no.910、忖度します┅┅┅

    念願のクリスマスイブデート。色々過ごし方はあるでしょうが、私は終わりがけをとことん甘~くしました。唯が、物足りないって言い出さないように。デートプランなんて制約がなければいくらでも考えつきますが、一緒に居られて安全が確保されていれば、何してても楽しいんでしょうね。

    54、no.911、画伯!
    55、no.912、サービス!
    56、no.913、さりげなく
    57、no.914、説明せよ
    58、no.915、甘酸っぱい
    59、no.916、春遠からじ┅┅┅

    公式掲示板で読んだのかな違うかな…ドラマで瀕死の若君を丸投げされた翌朝、尊が両親に説明する際、ひじをテーブルに乗せ両手を口元に寄せて組みます。これが、アニメ新世紀エ〇〇〇ゲリオンの登場人物がよくやるポーズなんで、尊はそのアニメのファンなんだよと教わりまして。55話で用語をほんの少し盛り込みました。
    キラキラのイルミネーション。ソワソワしてる瑠奈に気づかない尊。いつか同じ場所でちゃんとデートさせてあげたいと思います。

    60、no.917、とりあえず
    61、no.918、全て泡とならぬよう
    62、no.919、説法!
    63、no.920、ルーティンです┅┅┅

    前回の振り返りで触れるのを忘れていましたが、ドラマの中では一切出てこない源三郎の氏、話を組み立てるにあたりどうしても必要でしたので、調べまして原作から引用致しました。

    64、no.921、一枚から三枚
    65、no.922、蛍が飛ぶように

    66、no.924、満席でございます
    67、no.925、翼を広げて

    68、no.926、本領発揮

    69、no.928、衝撃的!
    70、no.929、想像するに┅┅┅

    若君の実際の墓は、きっと立派な物が造られている。今回旧緑合の地に出向いていたらそれに出合ったかもしれないですが、もし没年が彫ってあったりしたらさすがにショックでしょうから、訪れる機会はこれからもないと思います。

    71、no.932、Xデー到来
    72、no.937、想い出の場所
    73、no.940、ハラハラ!
    74、no.941、ドキドキ!
    75、no.943、月推しです

    76、no.946、引き継ぎます
    77、no.952、誘惑わくわく
    78、no.953、一歩進む
    79、no.954、天にも昇る心地
    80、no.957、密談です┅┅┅

    瑠奈とみつき。皆様に好かれる子達であって欲しいと願い、セリフや仕草を熟考したつもりです。時々暴走はするけれど愛らしい、ふわっとした雰囲気の瑠奈と、物怖じせず凛とした、でも幼なじみの彼にはとことん一途なみつき。どちらも好きですね。自分が作ったキャラなので何とでも出来るってのもありますが、もっともっと描いていたい彼女達です。

    81、no.959、幸せな初夢
    82、no.960、匂わせません

    83、no.962、ムクムクと
    84、no.964、着々と準備

    85、no.966、未踏の地へ
    86、no.967、幕開きです
    87、no.969、辿ります
    88、no.971、はなむけの
    89、no.972、二歩進んだ
    90、no.974、ゴールいやスタート
    91、no.976、振り返りは大切┅┅┅

    唯は若君に一目惚れでしたね。対比でもないですが、尊にはゆっくりと恋に目覚めてもらいました。なんで僕?と疑いながらもまんざらではなかったはず。嫌だったら、元旦のLINE攻撃にマジうぜえ!の一喝で、はい終了~だったでしょ。

    92、no.978、野望?
    93、no.980、父の思い
    94、no.982、母の思い
    95、no.984、大人への階段

    96、no.986、そーっとね
    97、no.991、ハレの日
    98、no.993、祝福します
    99、no.994、昔も今も
    100、no.995、霧が晴れた┅┅┅

    吉田城ですが、ドラマSPスタート3分30秒後に出てくるロールプレイングゲーム風の地図には表示されていません。吉田城自体が話の流れに関係ないのでそうなったんだと思いますが、右下、黒羽城の東に森のような場所があるのでその辺りと推測しました。
    源トヨ二人で一部屋を与えられた初日。トヨが二階に上がってくるのを、実は首を長くして待っていた源三郎。子供用の図鑑でないと、内容がさっぱり頭に入ってこなかったのです。

    101、no.996、尊い!
    102、no.997、プチ旅行です
    103、no.998、初めての

    104、no.999、気遣いの人
    105、no.1000、健やかなる時を
    106、no.1002、ととのう?
    107、no.1003、触れてごらん

    108、no.1004、環境問題
    109、no.1005、事件発生!
    110、no.1006、臨機応変です
    111、no.1007、その線でいこう
    112、no.1008、出番が来た
    113、no.1009、一息ついて
    114、no.1010、間一髪?
    115、no.1011、慌てます
    116、no.1012、恐縮です
    117、no.1013、奏でていてね┅┅┅

    覚お父さん。若武者達の恋愛相談にも気さくに応じ、押しつけがましくもない。息子の彼女がぐずっても、相手に寄り添い交渉もしてくれ頼りになる。さりげないカッコ良さを表現したつもりです。
    「好き」の伝え方なんですが。唯は結局直接告白はしてませんよね。若君の切ない嘘で現代に帰された時は「大好きなんですぅ」は届いてないし。「超好き!」は二回ありますが、どちらかと言うと心の声が口をついて出た感じで。
    長澤城にて。唯 心の声(こんな状況でも余裕で笑えるなんて…)
    小垣城にて。唯 心の声(こんな夫がいる女子高生なんて私だけ!)
    若君の方がはっきり言っていて「お前を思う」と山寺で話の流れの中サラっと告げる。そりゃ「本当に?」って聞き返すよなぁ。
    で、尊の場合。まだ付き合い始めて5日です。瑠奈ちゃんに言いたい。私の事好き?って質問は危険です。好き以外の答えが選べないから相手の負担になるだけなんで。とは言え尊の腹は決まっていた(*^^*)ので、照れで遠回しな表現にはなったけれど渾身の告白は成功しました。

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    返信先: 創作倶楽部
    振り返ります現代Days(仮)&四人の現代Days1から43まで

    通し番号、投稿番号、サブタイトルの順です。 どんな話だったっけ?と遡って投稿を探したい時、サブタイトルを掲示板の記事検索欄(板の下の方にあります)に入力すると、ページを戻っていくより早いと思います。

    今回も長い(´д`|||)ので、かなりかいつまんでの振り返りといたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    現代Days(仮)への道

    1、no.818、出ました!
    2、no.823、勝ち目ないので
    3、no.825、歴史のおさらい
    4、no.827、よもやそんな
    5、no.828、悩みが尽きぬ
    6、no.829、食の全国制覇
    7、no.830、助けられるものなら
    8、no.831、心が絶不調
    9、no.832、動く!
    10、no.833、思い立ったが吉日
    11、no.834、それでいいのか?
    12、no.835、負けない!
    13、no.836、特等席です
    14、no.837、いざ!
    15、no.839、着いたー!
    16、no.841、任せます
    17、no.842、どうなる?
    18、no.843、深夜に咲く花
    19、no.844、のるかそるか
    20(終)、no.845、絆の輪です┅┅┅

    センター試験は、尊の受けたこの年が最終の実施でした。今は、大学入学共通テストが行われていますね。
    13話の、ぷにぷにの唯と尊のまぁ可愛らしい事。まだ言葉もたどたどしい唯と、歌うように愛娘に語りかける母の会話は、描いててとても楽しかったです。
    現代と永禄で何が起こったか。速川家の決断からの若君の決断と、かなり濃い内容のミニシリーズになりました。

    四人の現代Days

    1、no.847、いらっしゃいませ
    2、no.848、大騒ぎです
    3、no.849、まだ早い
    4、no.850、それが理由です┅┅┅

    何やかやで無事四人到着。着いてすぐに、戻ったら3分後だよと源トヨには説明してるんですが…目の前の事柄を理解するのに精一杯で、色々曖昧になった模様です(137話)。

    5、no.851、so cute!
    6、no.852、入れ過ぎ注意
    7、no.853、事も無げに
    8、no.854、遠乗りじゃ
    9、no.855、後押しします
    10、no.856、夜襲?

    11、no.857、職人あらわる
    12、no.858、姫にお似合いです
    13、no.859、ヘルプ!

    14、no.860、内密に願います
    15、no.861、熱唱!
    16、no.862、美声!
    17、no.863、針のむしろ┅┅┅

    実は16話17話を描いている時点では、この女子高生2の瑠奈が尊の彼女になるなんて全く予想だにしておりませんでした。何がどう転ぶかわかりません。クラスメートから彼女になるまでかかった日数は、三週間(90話)。

    18、no.864、水上の戦い
    19、no.865、あなたしか見えない
    20、no.866、召し上がれ
    21、no.867、チャンス!

    22、no.869、誰かのために
    23、no.870、二人並んで
    24、no.871、郷に入っては
    25、no.872、懐が深い┅┅┅

    ヘアドネーション。この話を描いた当時は、容易く取り上げて良い物かと考えたのですが、その後今までに私の周りで二人も寄付していて、事業として浸透しているのを実感しました。

    26、no.873、ステップアップ
    27、no.874、時速何キロ?

    28、no.875、てんこ盛りです
    29、no.881、アポ取ります

    30、no.884、丸投げですか?!
    31、no.886、きってきって
    32、no.887、思ってたんと違う┅┅┅

    31話で父が咄嗟にひねり出した、戦国戦隊シュツジンジャー。せっかくなんでちょこっと書いてみました↓

    敵に囲まれているシュツジンジャー5人。

    シュツジンジャー1号タダキヨ「謀りおったな!」

    シュツジンジャー2号ユイ「憎ったらしい!このサカグチめ!」

    サカグチ「ふふん。ノコノコ現れおって」

    カーット!

    ユイ「へ?」

    監督「おい、すり変わってるぞ!3号コヘイタはどこに行ったんだ!」

    ユイ「うわ。じい、何やってんのよ!」

    いつの間にか、コヘイタの衣装を着てじいがちゃっかり並んでいた。

    じい「何ゆえわしを仲間に入れぬぅ」

    ユイ「はぁ?ちょっと、小平太はどこよ?!」

    じい「小平太には、今日は撮影はなしと言っておいたわ」

    ユイ「なにそれ!小平太も、どうしてその話を信じるのよ~」

    タダキヨ「じい、それは…ならぬ」

    ユイ「どう考えてもじいはメンバーには入んないし。おかしいでしょ!」

    じい「良いではないかぁ。お、何じゃ?離せ、離すのじゃ!」

    両脇を掴まれ、捕らえられた宇宙人状態で引きずられていくじい。

    シュツジンジャー4号ゲンザブロウ「信茂様、御免」

    シュツジンジャー5号アクマル「連れていく」

    ユイ「ホントにもー。じいは今度から出禁にしとかないと」

    頑張れ、戦国戦隊シュツジンジャー。

    33、no.888、羽を休めて
    34、no.889、ほろほろと
    35、no.891、竹刀を持て!
    36、no.892、滲み出る

    37、no.893、熱が入るよ
    38、no.894、トロットロ
    39、no.895、浮っき浮き
    40、no.896、迫る!┅┅┅

    何度かスモア作ってみたんですけど、マシュマロってあっという間に焦げるんですよね。でも熱でいい感じにチョコが溶けると、よっしゃーとほくそ笑んでいます。

    41、no.897、ハンコください
    42、no.898、宣言します
    43、no.899、根回しばっちり┅┅┅

    日記に名前がない話は、木村先生との会話でもほんの一瞬しか触れていません。それをちゃんと覚えていた若君。きっと、シールを貼る時も姿勢良くペタリと(149話)。

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    返信先: 創作倶楽部
    ご声援ありがとうございます

    梅とパイン様。新作は絶賛挫折中ですか。誰と誰だったか気になります~。上手くお話が導き出せれば良いですね。ニューヒーロー&ヒロイン、いつか誕生するといいなぁ。

    カマアイナ様。これはイマイチって回もあったでしょうに、いつも手放しで喜んでくださり、こんなに持ち上げていただいて良いのかしらと私こそ感謝しております。

    ぷくぷく様。新作お待ちしておりました。雑談掲示板でのお知らせから音沙汰なく、どうされたかと心配していましたが、私の長い話が終わるのを待たれていらしたのですか?だとすると申し訳ないです。まだ振り返りとかやりますので、私が割り込む形になりますが、ご容赦くださいませ。

    で、通し番号・投稿番号・サブタイトルを載せた現代Daysの振り返り、また何回かに分けて行いますので、総評もその中に盛り込みます。それでもやたらと幅をとってしまい恐縮ですが。だってサブタイトル並べるだけで170行も…何とかコンパクトにまとめます。

    その後、今後の予定をお伝えします。

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    返信先: 創作倶楽部
    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、118から(終)まで

    no.1014の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118no.1015、1/10、一緒に登校しよう。唯はなぜ逃げる

    119no.1016、1/10、出会ったのは美沙

    120no.1017、1/10、別れる前に和解せよ

    121no.1018、1/10、無礼の訳を話せ

    122no.1019、1/10、諭される唯

    123no.1020、1/10、電話をかけよう。尊と瑠奈は何歩進んだか

    124no.1021、1/10、電話にもて遊ばれる若君

    125no.1022、1/10、買い物は令和風でいこう

    126no.1023、1/10、尊は何を憂う

    127no.1024、1/10、トヨの手腕で眠らない覚

    128no.1025、1/11、最後の朝も早起きできない唯

    129no.1026、1/11、尊の懸念が見えてこない

    130no.1027、1/11、未来は遠くないと諭される尊

    131no.1028、1/11、何気に尊に圧をかける若君

    132no.1029、1/11、エリと芳江からプレゼント

    133no.1030、1/11、尊の授業。エリと芳江に別れの挨拶

    134no.1031、1/11、ボーリング場へGO

    135no.1032、1/11、ゲームを戦の代わりにしたい

    136no.1039、1/11、はさみ揚げの活躍に期待

    137no.1040、1/11、戻る時間を理解していなかった源トヨ

    138no.1041、1/11、家族で遊ぶ時間を捻出

    139no.1042、1/11、駄菓子争奪大トランプ大会

    140no.1043、1/11、源三郎の意外な秘密

    141no.1044、1/11、レジ袋は人気ブランド

    142no.1045、1/11、土産の山と共に帰った

    143no.1046、1/11、かつての名言に熱い返歌

    144no.1047、1/12、じいを撹乱する若君

    145no.1048、1/12、じいに問う。頑張れ小平太

    146no.1049、1/13、源三郎とトヨの祝言始まる

    147no.1050、1/13、祝言無事終了

    148no.1052、1/14、悩めるトヨを諭す唯

    149no.1053、1/14、日記の謎解きや如何に

    150(終)no.1054、1/15、美香子の夢に現れたのは

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    返信先: 創作倶楽部
    梅とパイン様へ

    総評などはまた後日として、まずは梅パ様にお詫びとお礼を申し上げます。

    大人気の、関西弁炸裂の源ちゃんトヨちゃんシリーズ。私が現代Daysに二人を登場させたばっかりに、書きにくくなってしまったのではないですか?一応お許しを得て始めたとはいえ、申し訳なく思っておりました。

    源トヨの二人に与えられた設定にのっかる形で進み、私の話の中では夫婦になりました。でもそれはそれ、パラレルワールドの内の一つと捉えていただき、どうかまた、楽しいあのシリーズをお願いいたします。

    自由にさせてくださいまして、本当にありがとうございました。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days150(終)~15日水曜5時、夢で逢えたら

    妄想家系図は、一番下、マスター様のブログ記事内の「御月家の家系図からわかること」をご参照ください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男「美香」

    美香子 心の声(…ん、呼んだ?)

    ムクッと起き上がった美香子。ここは令和の速川家。覚と美香子の寝室。

    美香子「え。夢?」

    隣のベッドで、覚がスヤスヤと眠っている。

    美 心(確かに聞こえたけど、美香子じゃなくて美香だから私ではないか。でもあの声は)

    再び横になった美香子。

    美 心(彼だわ。これは夢の続きを見るしかないわね)

    目を閉じる。すると、景色がゆっくりと浮かび上がってきた。

    美 心(時代劇に出てくるような、武家屋敷?)

    屋敷の中には、着物姿の女の子達。

    美 心(小学校の中学年位?が二人。で、小さい子が一人。二、三歳ってところね。三姉妹なのかしら…あらっ?あれってもしかして!)

    一番幼い女の子。髪が両耳の上辺りで二つ結びになっているのだが、

    美 心(あの赤いリボン、私が唯にあげたヘアゴムに付いていた物じゃない?…うん、間違いないわ。と言う事は、このお嬢ちゃん達!)

    泣いてぐずる妹を、姉二人があやしている。

    美 心(唯にも忠清くんにもよく似てるわ。はぁ~。孫、孫なのね。泣けてきちゃう…こんなにも可愛らしくて)

    打掛姿の女性が現れた。

    唯「美香~。お待たせぇ。はい、もう泣かなーい!」

    美 心(唯~!まぁ~。話し方はあまり成長が感じられないけれど、すっかりお母さんの顔になって)

    母の貫禄さえ感じ、大垂髪もすっかり様になっていた唯。

    長女「あ、直ってるぅ」

    二女「すごぉい。良かったねっ、美香」

    美 心(あちゃー。娘達の口調は、完全に母の影響)

    三女・美香「さんた、さんた!」

    唯の持つ人形に、小さな手を伸ばす美香。

    美 心(サンタ?あっ!クリスマスイブデートで唯が引いた福引の、景品のサンタ人形!格好の遊び道具になってたのね)

    唯「トヨに頼んで大正解。はいどーぞ」

    美 心(トヨちゃんも元気で居るのね。孫のお人形まで面倒みてくれるなんて。唯は裁縫は全くできないままだったから、助かるわ)

    唯「あ、お帰りぃ。早かったね」

    若君「うむ。ん?美香」

    美 心(来た。あの声の主の登場ね)

    庭から現れた若君。

    美 心(う~ん。いい意味で、もう若君ではないか。年齢を重ねて、益々の威厳、でも気高さはそのままに。生やした髭の効果もあるだろうけど、持って生まれたものが大きいわよね~)

    若「何じゃ、泣いておったのか?よしよし」

    そう言いながら美香を抱き上げ、顔を近づけようとしたのだが、

    三「いやっ」

    露骨に顔を背けられた。

    二「パパまたやってる」

    長「懲りないよねぇ」

    美 心(ぷっ。どの時代も娘は父親に冷たい)

    唯「だからー。すぐ顔くっつけようとする。ヒゲが当たれば、嫌がるに決まってるっしょ」

    若「そうか…。剃り落とすべきか?」

    唯「そこ、違うから。マジでヘコむのやめてくんない?」

    美 心(忠清くん、なんて顔してるの!あはは~でも家族の平和な日常ね。いい物見せてもらったわ)

    …ここで目が覚めた。そのまま起き上がった美香子。

    美「残念。終わっちゃった。よし!忘れない内に書き留めておきましょ」

    その日の夜。食卓に両親と尊。

    尊「一日かけてわざわざ作成したの?」

    美「今日はお休みだったしね。これが、作っててとっても楽しかったのよ~」

    覚「服装とかも、ネットで調べて母さんが夢で見たままを忠実に描いたんだ。お陰でな、僕も一緒に見たような気になれたよ」

    今朝の夢を、絵と文章で再現していた両親。

    尊「僕の作った妄想家系図の設定に、だいぶ引っ張られてない?」

    美「それだけ信憑性が高いって事よ」

    覚「いい出来だぞ」

    尊「それはありがとうございます」

    美「長女ちゃんと二女ちゃんの名前がわからなかったのは惜しかったな。ねぇ尊」

    尊「何」

    美「名前、降臨してない?」

    尊「してないよ。残念ながら」

    美「美香ちゃんの時みたいに」

    尊「あれはね、今でもよくわからないんだ。ここにこの名が入る、書けと言われた気がしたんだよ」

    覚「あのさ」

    美香子&尊「はい」

    覚「聞いてくれないか?僕の推理なんだけど」

    美「あら。どんなかしら」

    尊「伺います」

    覚「妄想家系図によると、唯の子供は7人だよな。母さんの名は、そもそも末っ子に付けるつもりだったんじゃ」

    美「どうして?」

    覚「締めというか」

    美「シメって何よ」

    覚「何となく」

    美「説明になってないわよ」

    尊「わかる気がするようなしないような」

    覚「美香ちゃん、歳がちょっと下だっただろ」

    美「ん?そうね。お姉ちゃん達に比べると」

    覚「どうして間が空いたかはわからないが、二女から数年後に念願の三女が生まれ、二人の中で、よしここまでと、ようやく美香と名付けたんじゃないかと。どう、どう?」

    美「はあ」

    尊「そういう事にしておきますか。仮に答え合わせできたとしても相当先の話だし」

    覚「中々いいだろ?思うにさー、僕も久々に誕生した末娘なら溺愛しちゃうかも。忠清くんの気持ちはわかるよ」

    尊「ふーん。父親ってそんなモンなんだ」

    美「今回、上の男の子達やトヨちゃん源三郎くんには逢えなかったのよねー。次回の上映を楽しみに待つわ」

    尊「そう上手くいくかな」

    美「いいじゃない。願うのに損はなし」

    覚「僕も見せてもらえるよう、願っとく」

    尊「ははは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    四人の現代Days、これにて終了です。お読みくださった皆様に、心から感謝いたします。

    長い間、ありがとうございました。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days149~14日21時、犯人は

    和紙と墨って最強。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    こちら、令和の速川家。尊がリビングに顔を出した。

    覚「何だ、勉強してたんじゃないのか。もう休憩か?」

    美香子「喉でも渇いた?」

    尊「木村先生からメールが来たんだよ。早く教えたくて下りてきた」

    覚「メール?」

    食卓の席についた三人。

    美「先生もこの時期お忙しいでしょうに、わざわざメールくださったの?」

    尊「先に僕から送ってたんだよ。その返事をもらえた」

    覚「尊が先?何書いたんだ」

    尊「姉は土曜日に帰りました、その後例の日記はどこまで読み解けてますか、って感じ」

    美「そんな内容なの?せめてセンター試験終わってから、今週末以降で連絡すれば良かったじゃない」

    尊「お姉ちゃんが戻ったのを伝えときたかったし、進捗状況が気になっちゃって」

    美「今じゃなくても~」

    尊「でも、メールして正解だったんだよ」

    美「えぇ?」

    覚「んー良くわからんが。先生からは何て?」

    尊「読み上げるね。そうか、帰省が終わったか。ご両親も淋しかろうな。しかし僕にメールくれるなんて相当余裕じゃないか?気は抜かないようにな。でもこのタイミングで連絡くれて、少し有り難かったよ。ちょっとグチりたかったんだ」

    美「グチ?」

    尊「解読はボチボチやってるよ。あれから10日分位進んだが、その中に目新しい内容があってな。近習の婚儀を予定通り執り行え」

    覚&美香子「あ」

    尊「安堵したと。家臣の話なんて珍しい。初めてじゃないか」

    覚「忠清くん、凄いな。ちゃんとこちらと同時になるよう、やりこなしたんだ」

    美「どう褒めても褒め足りないわねぇ」

    尊「それでその日付の前後辺りなんだが、少々腹が立った事があってなー」

    覚「腹が立つ?」

    尊「イタズラされたような跡があって」

    美「イタズラ。あら大変」

    尊「四角い形状の何かが貼り付いていたようなんだ。その部分だけ色が変わって毛羽だっていたり、接着剤らしき跡が残っていたりしてな。何箇所か」

    覚「ん?」

    尊「これか?と思われる紙らしき破片は出てくるんだが、何が印刷されていたかとかは消えてしまっていてわからなかった。ゆくゆくは貴重な資料となるかもしれないこの日記に、後世の者がシールでも貼りやがったんじゃないかと思うんだ」

    覚「んん?」

    尊「怒れちゃってさー。誰かにグチりたかったところ、調査の事情を知ってる君から連絡が来たから、渡りに船と、チラっとつぶやかせてもらったよ。気分転換にもならない話で済まなかったね。では少し長くなってしまったが、試験の健闘を祈るよ。木村」

    黙り込んだ両親。しばらくして、

    覚「…それって」

    美「確か持って帰った…」

    尊「そう。多分、というか間違いなく、忠清シールだと思うんだ」

    美「イタズラなんでしょ。って事は…唯がやらかした?!」

    覚「え、でもさ、シールあげる話した時、唯に勝手に取り出されないような場所にしまった方がいいぞって言ったら、しかと心得ましたって頷いてたんだが」

    尊「兄さんなら、言い付け通りちゃんと隠してあったと思うよ」

    美「じゃあ誰が、って忠清くんしか居ないじゃない。それは有り得なくない?」

    尊「それが有り得るんだよ」

    美「嘘ぉ」

    尊「木村先生と初めて話した時に聞いたんだけど、あの日記さ、書いた人物の名前が入ってなくて著者不明なんだよ」

    覚「あー」

    尊「で、これは推測なんだけど、お姉ちゃんと兄さんが木村先生に会いに行ってるじゃない。その時にも名がないって話が出たんじゃないかと」

    覚「名前か、なら」

    美「ちょうど手元にいい物があるから貼っておこうか、って?えー!」

    尊「兄さんは、イタズラするつもりじゃなくて好意で貼ったんじゃないかなあ。450年前の日記、和紙が残るならシールも残るだろうって思うのは、わかる気がするよ」

    覚「でも現代の紙は思いの外脆かった」

    尊「そんなに厚い紙で作らなかったし?」

    覚「うん。どちらにせよ、和紙とは丈夫さでは比べ物にならんのだろうな。結果、ほぼ残ってないし」

    美「まさか木村先生を困惑させるとは思わなかったのね」

    尊「でも兄さん、お茶目だよね。書けば済むのにペタっとやったんだから。案外、シールたる物を貼ってみたかったのだ、なんてオチかもしれないね」

    覚「その答え合わせも、いつ出来るかは尊次第だしな」

    尊が座ったまま伸びをした。

    尊「はぁ~。最後はそこかー。ホント、プレッシャーが甚だしいよ」

    覚「何年かかってもいいさ」

    尊「そう?」

    美「でも私達が元気な内がいいわねぇ」

    覚「そりゃそうだ」

    尊「結局答えは変わらず。はいはい、もう少ししたら頑張らせていただきます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    14日のお話は、ここまでです。

    次回、最終回。

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    四人の現代Days148~14日火曜7時、助言します

    大切な女友達だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の居室にトヨが来た。

    トヨ「え!」

    唯「おはよっ」

    ト「もう起きていらっしゃるんですか!まさか寝ていないとか?」

    唯「そんなに驚くー?ゆうべあの後すぐ寝たからさ」

    ト「はあ」

    唯「たまにはね。たーくんとラブラブで、ラジオ体操もしてきたよ!」

    ト「おやまあ」

    唯「じいの姿は見かけなかったんだよね。なんで居なかったんかはわかんない」

    ト「うーん。察するところ、私が天野のお屋敷を出る頃に酒宴が始まっておりましたので、まだお休みではなかろうかと」

    唯「え。それって、源三郎もじい達に巻きこまれちゃったの?」

    ト「いえご心配なく。信茂様信近様有山様のお三人だけでした」

    唯「良かったねぇつかまらなくて。実はさ、トヨといろいろ話したいコトあるんだ。たーくんとも相談したんだけど、今朝のうちに言っておこうと思って」

    ト「お話。ですか」

    向かい合って座った二人。

    唯「まずは」

    また立ち上がり、棚から何かを持ってきた。

    ト「芳江さんとエリさんの連鶴ですね」

    唯「これあげる!もらって」

    ト「えっ」

    唯「令和の母二人、でしょ?」

    ト「とても良くしていただいたので、その通りではあります。でも」

    唯「たーくんも、トヨが持ってる方がいいって言ってたの。だからどーぞ」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「うん」

    ト「嬉しい。ありがとうございます。大切にいたします!」

    唯「でさ。昨日同じ時間に、速川の家でも同じように祝言ぽい事やってたみたいなんだよ」

    ト「そうなんですか?!」

    唯「たぶん。宴会とかとごちゃ混ぜにしてなければ。特にお父さん」

    と「どうしてそんな事ができたんですか」

    唯「たーくんが、この時間にやるからぜひ共にって尊に頼んどいたんだって」

    ト「え?待ってください。という事は…若君様は日にちと時間を、信茂様のお許しが出る前にお決めになっていらしたと?」

    唯「うん」

    ト「…」

    唯「たーくん、神だから」

    ト「神業の神ですか」

    唯「そーなの?」

    ト「で、よろしいかと。驚きました…」

    唯「頼りになるよね~」

    ト「はい。若君様の下でお仕えできる喜びを、噛みしめたく存じます」

    唯「でね。ここからが肝心な話なの。はっきり言うよ」

    ト「はい」

    唯「子作りに、励め!」

    ト「それは…私はそこまで若くありませんので、授かれるものなら早うとは思っておりますが」

    唯「でも、できれば私が先に産んで欲しいって思ってるよね」

    ト「勿論です。切望され、それで苦しい思いをされておられるのを間近で見ておりますので」

    唯「悩んでない?」

    ト「…少し悩んでおります」

    唯「おふくろさまには打ち明けたんでしょ」

    ト「…はい」

    唯「やっぱりね。私、何も聞いてないから。そうじゃないかなと思ったんで、カマかけてみたんだ」

    ト「え?」

    唯「おふくろさまは、人から聞いた事をすぐチクったり…んー、隠しときたい秘密をしゃべったりしないよ。そんな人じゃないのは知ってるでしょ」

    ト「はい、それはもう。でしたら何故」

    唯「カン?」

    ト「勘が働いたと」

    唯「言われたのは、トヨが城をいつ下がるか、あやふやではなくちゃんと話のすりあわせをしなさいって、それだけ」

    ト「そうでしたか」

    唯「早めに決めようよ。次の女中頭を誰にするかとか私の世話係はとか…いや、この際世話係はもうなしにしない?」

    ト「なりません」

    唯「ちぇ。まだ誰かにガミガミ言われるんだ」

    ト「言われぬよう、奥方様には自覚を持っていただかないと」

    唯「へーい。で、トヨが源三郎と赤井家の事だけを考えられるようにして、励んでもらうと」

    ト「ありがとうございます。私の周りは、昨日初めて事の次第を知った者ばかりですので、いきなり去るのも少し心苦しいのですが、引き継ぎは早う進めて参ります」

    唯「さみしくはなるけど、いつでも会えるし」

    ト「そうですね」

    唯「あのさ、前にどうやら三人目?の赤ちゃん産んだ夢見たって言ったじゃない。トヨが大きいお腹で娘ちゃん連れててって」

    ト「覚えております」

    唯「夢に出てきたのがその時に居た子供全員かはわかんないんだけどね、御月家の長男に当たる男の子より、トヨが連れてた女の子の方が大きかったんだよ」

    ト「歳が上という事ですか」

    唯「たぶんね。だからきっと、私より先に赤ちゃんに会える」

    ト「すみません…」

    唯「気にしなーい。私は私、トヨはトヨの人生だもん。あ、今、ちょっとカッコいいコト言った?」

    ト「お気遣いが心に染みました。ありがとうございます」

    唯「えへへ。言いたかったのはここまでだよ」

    ト「はい」

    唯「あー、急にお腹空いてきたんだけどぉ」

    ト「ふふっ。ではお運びいたします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    最終回のお知らせ

    長々と続けて参りました四人の現代Days。「現代Days(仮)」からスタートしたのはちょうど一年前の今日でした。

    皆様のご愛顧に大感謝しつつの全150回となります。(仮)も合わせると170回。よくもそんなに描いたもんだ。

    この後のお話を含め、あと3回です。

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    四人の現代Days147~13日18時、一件落着

    結構な歳のおじさん達が大騒ぎ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    一段と凛々しい源三郎が奥に進んでいる。すると、唯の傍らに置かれた品々に気が付いた。

    源三郎「あっ、これは…」

    破顔一笑し、その場で深く一礼する。

    小平太パパ「何をしておるのじゃ?」

    次に、吉乃の導きでトヨが入ってきたのだが、

    唯「顔が固まってる!笑って~」

    極度の緊張で、唯の声かけも聞こえていない。

    有山の妻女の囁き「なんと初々しい。あら?」

    有山の囁き「ん?どうした」

    有 妻 囁き「二人共、一輪ずつ梅が咲いております。源三郎は若葉の様な色で」

    有 囁き「おぉ、これは気が利いておるのう。此方は白梅か」

    美香子と源トヨの三人で行った組紐の店。押し問答は少しあったが、結局プレゼントされていたのは、梅の花を型どった色違いのブローチだった。

    有 妻 囁き「春の訪れでございますね」

    有 囁き「まさしく。良いな」

    三三九度の準備をしている。

    源三郎の囁き「トヨ、大丈夫か」

    トヨの囁き「何とか…」

    源 囁き「令和に居られる皆様も、見守ってくださっておる。お前、気付いていないだろう」

    ト 囁き「え?」

    源 囁き「奥方様の隣」

    ト 囁き「…あっ」

    唯の傍らで、ちょこんと五羽の折鶴達が参列していた。覚、美香子、尊、エリと芳江がそれぞれの手で折った物だ。

    トヨ「なんて…唯様、ありがとうございます」

    ピースサインで応える唯。一方、微笑む若君。

    若君「皆、晴れ姿を見届けておるゆえ」

    源三郎&トヨ「はい!」

    ┅┅

    さて。こちらは令和の速川家。

    尊「それが、トヨさんセレクトの帯締め?」

    美香子「そうなのよ~。せっかくだから出してきたの。やっぱり着物で参列した方が良かったかしら」

    尊「兄さんは、この時間だけ共に願いたい、って言ってただけだから」

    覚「気持ちは正装だぞ。ははは」

    永禄と同時刻に、リビングに座布団を並べ座る三人。

    美「可愛いい分身ね。小さくても、一羽ずつ座布団にのせるとそこに本人が居るみたいで」

    覚「そうだな。いかにも祝言に立ち合ってる雰囲気が出てる」

    ひな壇に当たる位置に座布団が二枚並び、源三郎とトヨが折った鶴がそれぞれ置かれている。源三郎側の参列者として若君と唯の折鶴が一羽ずつ置かれた座布団二枚。トヨ側に両親と尊が整列して座っている。

    尊「向こうもこんな感じなのかな。並び方とかは正解がわからないから違うだろうけど」

    美「きっと素敵なお式よ~。でもどうして今日この時間なのかしら。ピンポイントで忠清くんが指定したのよね?ぜひ同時にって」

    尊「平日だとさ、クリニック終わりからだと夜遅くなるし時間が不安定じゃない」

    覚「それはわかるが。いきなり今日で大丈夫だったんかな」

    尊「いつ何が起こるかわからないから、早めに設定したんだと思うよ。それにね、何か今日は一粒万倍日だからって言ってたよ」

    美「あら」

    覚「一粒の籾が何倍にも成長して大きな利益をもたらすってヤツだな。だから結婚式か」

    美「あの時カレンダー見ながらそんな事考えてたなんて。忠清くんってホント偉いわ~」

    尊「さてと。そろそろ終わりかな。30分はかからないって兄さん言ってたから」

    覚「よし!なら最後は一本締めだ」

    美「あらま」

    尊「それ…絶対向こうではやんないって」

    覚「いいからいいから。さ、やるぞ。お手を拝借。よーぉっ!」

    ┅┅

    戻って、永禄。祝言が終わって間もなく。

    若君の囁き「源三郎」

    源 囁き「はい」

    若 囁き「余興じゃ」

    源 囁き「余興、でございますか?」

    若君が立ち上がり、源トヨの目の前、真ん中の広い所へ出た。

    若「じい、信近。此処へ」

    小パ「はっ!」

    じい「ははぁ」

    胸元から、何やら書状のような物を出す若君。

    じ「おぉ」

    小パ「いよいよか」

    半分程開く。イラストになった、じいの姿がチラリと見えた。

    じ「んん?」

    小パ「絵か?」

    ト「あ」

    源「此処でお出しになられるとは」

    なぜか、一旦引っ込める若君。

    じ「むむっ」

    若「実はのう、じいの姿を絵にしたのじゃ」

    小パ「なんと。絵を嗜まれるなど初耳」

    次に、全部開いた若君。高い位置で掲げた。つられて立ち上がろうとするじいと信近。

    じ「よう見えぬ」

    小パ「若君様、お戯れを」

    有山「何事じゃ?わしにも見せてくだされ」

    右に掲げれば右に動き、左に掲げれば左に動く家臣三人。源トヨと有山の妻は笑いを堪えるのに必死だが、唯は大笑いしている。

    唯「あははは!たーくん、ウケる~!」

    散々若君に弄ばれた後、ようやく絵を受け取ったじい。信近と有山も覗き込む。

    じ「何やら奇天烈な」

    有「南蛮渡来の装束か?」

    小パ「それにしても、随分と質の良い紙じゃ」

    やたらと感心している三人を横目に、源トヨの前に腰を下ろした若君。

    若「源三郎。トヨ。末永う幸せにの」

    源「はい!」

    ト「ありがとうございます」

    若「では唯。帰るぞ」

    唯「えー、もう?」

    若「早う二人きりにしてやらねばの」

    唯「確かに」

    源トヨが床に擦る程頭を下げる。まだ騒いでいる家臣達。

    唯「また明日ね」

    唯と若君は、その場を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    13日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days146~13日月曜14時、佳き日

    この頃、ちょうど蕾が膨らんできています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自室に戻ろうとしている唯。源三郎が声をかけた。

    源三郎「奥方様」

    唯「あ、源三郎~」

    唯に駆け寄り、跪いた源三郎。

    唯「結婚式、もうすぐだね!」

    源「はい。奥方様には、お気遣い心より御礼申し上げます」

    唯「へ?私なんかやったっけ?はさみ揚げを冷めないようにはしたけど」

    源「それが効いたと伺いました」

    唯「ちょっとだけだよ」

    源「その様な。ご謙遜を」

    唯「ふふっ。珍しいでしょ、走る以外で役に立つなんて」

    源「い、いえ!」

    唯「たーくんのお手柄だって。話をどう持ってくかとかさ、上手なんだよ」

    源「はい。それはもう…まさかご同席くださるとは思わず」

    唯「同席?ってなに」

    源「え、お聞きになられておられぬ?」

    唯「知らなーい」

    源「昨日、天野様のお許しを得たと伺い、永季様にお話をと急ぎ向かおうとしたところ、わしも共に参ると仰せられ」

    唯「へー。その方が話早いもんね。だからトントン拍子なんだ。良かったね」

    源「はい」

    唯「たーくんさ、自分がしてやったみたいなコトは私にも言わないから」

    源「頭が下がります」

    唯「さっきね、おふくろさまとトヨが話してたよ。また泣きそうになってた」

    源「左様でございましたか」

    唯「夕方楽しみにしてるね!」

    源「ははっ」

    天野の屋敷。もうすぐ、現代の時間で夕方6時、酉の正刻。

    若君「よう似合うておる」

    源「痛み入ります」

    朽葉色の直垂を身に付けた源三郎。くすんだ色合いではあるが、顔立ちをとても引き立てている。

    若「それか。贈られた品は」

    源「はい。トヨと、祝言の折にはこの品を必ず身に付けようと約束しまして」

    若「花としては見ぬ色味じゃな」

    源「お母さんは、あなた達の時代にはなかった色かもしれないと仰せられましたが、わたくしが気に入りました故」

    若「そうか。まさに春じゃ」

    源「はい」

    こちらは、トヨが支度中。白装束になっている。

    唯「おじゃましまーす!あ、おふくろさま」

    吉乃「唯。何をうろついておるのです」

    唯「えへ。怒られるかなーとは思ったけど、早く花嫁さんを見たくって。もう準備できた?」

    トヨ「あと、これを付けたいのですが。吉乃様、よろしいでしょうか」

    唯「あ、ブローチ。同じ白だからいいよね!」

    吉「花飾りか?まあ良いでしょう」

    唯「じゃあ私が付けてあげる」

    ト「ありがとうございます」

    帯のすぐ上、脇の方に留められた。

    吉「それは」

    ト「はっ!はい」

    吉「もしや、唯のお国の品ではあるまいか?」

    ト「あっ、その…」

    唯「そーでーす。私のお母さんが、トヨと源三郎にってプレ…贈ってくれたんです」

    トヨの囁き「唯様、良いのですか?そのようなお話をされても」

    唯の囁き「いいのいいの。おふくろさまには、たーくんの矢傷を治した隠れ屋に、両親と尊が居るって言ってあるし」

    吉「やはり。家臣の婚儀にまで気を配られるとは。梅か?美しい細工がほどこされて」

    ト「はい。とても気に入っております」

    吉「それは何より。さあ、唯はそろそろ行きなされ」

    唯「はーい。待ってまーす」

    酉の正刻となった。祝言に立ち合う者はごく僅かだ。

    小平太パパ「何故、夫婦が離れて座っておるのじゃ」

    向かって右、源三郎側に若君。その後列に有山とその妻女。トヨ側に唯。その後列にじいと信近。

    じい「若君がこうお決めになったのじゃ。源三郎は若君の近習であるし、トヨはむじなの世話をしておるし。まぁ良いではないか」

    小パ「唯之助の脇には何やら置かれておるし」

    じ「文句ばかり垂れるでない。ほれ、始まるぞ」

    源三郎が入ってきた。

    唯「カッコいい~」

    有山「感慨無量」

    じ「おぉ。ええ婿じゃ」

    小パ「小平太には見せられん。ちょうど警固の番で良かったわい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days145~12日9時、踊らされます

    どこまでが策なのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    天野の屋敷。部屋に通された若君。三人揃った姿に少し驚いた様子だ。

    若君「小平太」

    小平太「はっ」

    若「まだ起きておったか」

    小「若君がお越しとあれば。居てはなりませんでしたか」

    若「話す手間は省けるが。気を落とさぬ様」

    小「気を落とす?何事でございましょう」

    若「まあ良かろう」

    じいの前に腰を下ろした若君。傍らのタッパーがじいの視線を釘付けにしているが、構わず話し出した。

    若「旅立って、じき二年になるか」

    じい「旅?あぁ、元次でございますか。若君に未だ気にかけていただけるなど、奴も本望でござろうの」

    若「竹馬の友が居らぬと、張りもなかろう」

    じ「なんのなんの」

    若「そうか?」

    じ「いざ戦となれば、先陣を切りますぞぉ」

    小平太パパの囁き「は?!またそのような戯れ言を」

    小平太の囁き「少しは歳を考えて頂かぬと」

    若「いや…じいは出陣ではのうて、城を守り通して貰いたい。無論、戦にならぬようこれからも努めて参るがの」

    じ「そうでござりますか?んにゃ、若君の仰せならば承知仕る。ふぉっふぉっ」

    小パ 囁き「有難い。わしらの説得には耳を貸さぬからのう」

    若「話が逸れたが」

    じ「おぉ、これはご無礼をば。何でございましょう」

    若「元次とは、隠居後も多少の小競り合いはあったであろうが」

    小パ 囁き「小競り合い!然り」

    若「仲違い程ではなかったな?」

    じ「それは、まぁ。共に幾度も出陣した、同士でもござるしのう」

    若「ならば、天野と千原の結び付きをより強固に致すのも構わぬな?」

    じ「結び付き?若君は何を仰せか」

    若「両家のせがれと娘が婚儀を行うなど」

    じ「なぬぅ?!」

    それを聞き、うろたえ始めた小平太と父信近。つい声が大きくなる。

    小平太パパ「小平太に縁組の話?!」

    小「え!」

    若「あぁ済まぬ。小平太にではない。驚かせたの」

    思わず立ち上がりかけた三人。すぐに下がり座り直した。

    小「さ、左様でございますか」

    小パ「違う、と」

    じ「ならば若君は、誰の話をしておいでじゃ」

    小「もしや」

    小パ「何じゃ」

    小「源三郎に縁組でございますか。されど、天野には娘は」

    小パ「小平太の姉は既に嫁いでおりますし」

    若「源三郎は合うておる」

    じ「はあ」

    若「で、じい。良いか?両家の確執などなかろう?」

    じ「それは…末代までいがみ合うつもりもござらぬし」

    若「うむ」

    じ「御意のままに」

    若「そうか」

    じ「で、婚儀の相手は…」

    小パ「誰…」

    若「よし。小平太」

    小「は、はっ」

    若「母君はどちらに?」

    小「母上でございますか。呼んで参ります」

    小平太が、心なしか肩を落としつつ部屋を出ていった。

    若「そういえば。待たせたの。じいにと唯からじゃ」

    じ「ぬはは!漸くレンコンにありつけようぞ」

    吉乃「若君様。お呼びでございますか」

    吉乃が現れた。

    若「頼みがあっての」

    吉「はい。何なりとお申し付けくださいませ」

    若「明晩酉の正刻、源三郎の婚儀を執り行う」

    吉「まぁ。祝言とは喜ばしい。わたくしは何を致せば宜しいでしょうか」

    若「源三郎もではあるが、トヨの身支度をしては貰えぬか」

    吉乃「畏まりました」

    小パ「トヨ?!」

    小「確かに、天野の者でございますが。え?」

    吉「何をそこまで驚かれる。仲睦まじゅう隠れて話し込む姿はよう見かけておりました。ご存じない?」

    小「まさか」

    小パ「知らなんだ」

    吉「まこと、天野の男衆は色恋沙汰に疎うございます」

    若「ハハハ。どちらの屋敷で行うかは、これから有山と話すが」

    じ「若君ぃ。ならば此処を使われよ」

    若君が振り向くと、じいがいたくご機嫌で、はさみ揚げを頬張っていた。

    小パ「朝餉が済んだばかりだというのに」

    若「良いのか?」

    じ「んにゃ。年明け早々祝い事など縁起が良うござる。ぬははは」

    若「そうか。ならば頼む」

    若君が立ち上がり、早々に出て行こうとする様子に、信近がかなり驚いている。

    小パ「若君、あっあの」

    若「何じゃ」

    小パ「書状は…」

    若「あぁ、忘れておったな。うむ…婚儀の席で披露すると致す」

    小パ「急ぎ何かではない、と」

    若「全く以て」

    小パ「そうですか…」

    若「では、此れにて」

    若君は、屋敷を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    12日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days144~12日日曜6時30分、匂わせます

    妙な擬音が多い、じいの百面相をお楽しみください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    穏やかな朝を迎えた。若君が一人、自室前の庭でラジオ体操を始めようとしている。

    若君 心の声(そろそろか)

    じいが現れるのを待っている。

    若 心(姿を見たら、蓋を開ける)

    タオルでくるんだじい宛のはさみ揚げは、まだ温かかった。その理由は…

    ┅┅回想。昨夜、源三郎とトヨが唯の居室を出た後┅┅

    若君「朝方には、はさみ揚げも冷めるのう」

    唯「いっくらタオルで巻いといてもそれは仕方ないかも。なんで?」

    若「あまり匂わぬ」

    唯「ふーん。あったかいと、ほ~れウマそうだろ~ってニオイで猛アピールするもんね。あーもしかして、なんか策ありってヤツ?」

    若「じいに、此処にお好みの品がある、と分かり易うできればと思うての」

    唯「企んでるねぇ。だったらじいにあげる分だけでも保温しとく?」

    若「保温。どのように致すのじゃ」

    唯「これ用に余分にもらっとけば良かったなー。でも源三郎とトヨのために、じいはできるだけゴキゲンにしときたいよねー」

    荷物の中から、使い捨てカイロを出した唯。袋を開けて振る。

    唯「どーんと2つ使おっ。これを、タッパーの上と下に仕込む」

    若「ほぅ。器は、熱で傷んだりはせぬか?」

    唯「たぶん大丈夫。チンできる入れ物だし」

    若「チン。電子レンジじゃな」

    唯「おっ、覚えたね」

    若「電子レンジ、は物体の中にある水の分子、を振動させ熱を出す。そうではなく、鉄の粉が空気に触れ酸化、すると出る熱で器を温めると」

    唯「たーくん…今ちょっとイラっとした」

    ┅┅回想終わり┅┅

    遠くから、聞き覚えのある声が近付いて来た。

    じい「若君ぃ~」

    若 心(よし)

    縁側の隅に置いたタッパー。タオルをめくり、蓋を少し開けた。

    じ「体操、体操を」

    若「うむ。始めるぞ」

    じ「ややっ?何やら香ばしい。これは嗅いだ覚え、いや食した覚えがあるような」

    いい匂いが辺りに漂っている。鼻をクンクンさせるじい。

    若「何じゃ。体操はせぬのか」

    じ「おほ?あいや滅相もない!」

    匂いに気を取られながら、体を動かすじい。

    じいの囁き「むむぅ。あの包みが怪しい」

    若「何か申したか?」

    じ「いえ?雀でございましょう」

    若「一羽も居らぬがの」

    体操が終わった。

    若「じい。朝餉の後屋敷へ参る。待つように」

    じ「は?信近でございますか、それとも小平太にござりますか」

    若「じいに話がある」

    じ「なんと?!ははっ、わかり申した」

    中に入る際、タッパーをひょいと手に取った若君。じいが鼻の下を目一杯伸ばしながら、穴が開きそうな程、若君の手元を見つめている。

    若「どうかしたか?」

    じ 囁き「さては…アレじゃな」

    若「この品も携えていく。楽しみにしておれ」

    じ「おぉぉ。レンコンもでござるか」

    源三郎も準備を始めていた。有山の所在を確かめている。

    源三郎 心の声(正午までには片をつける、と、忠…若君様は仰せになった。天野様のお許しが出次第、馳せ参じねば)

    源三郎「ん?」

    源 心(正午、か。午の正刻を令和でもそう申すと教わった。すっかり言葉が馴染んだようだな。若君様共々)

    時は進み、そろそろ天野の屋敷に若君が現れる。

    小平太パパ「父上に用、と?」

    じ「その様じゃ。今朝方、幾らでも話せた筈。それをせなんだとなれば、折り入って何かしらあるのやもしれん」

    小パ「うーん。身構えておらねば」

    じ「何じゃ小平太。警固上がりじゃろ。まだ休んでおらんのか」

    小平太「若君様のお成りとなれば、寝てなどおれません。あ、お姿が」

    じ「おっ」

    若君登場。手にはタッパーの包み、そして胸元の合わせから何かがチラリと見えている。

    じ「おぉぉレンコン~」

    小「書状をお持ちの様です」

    小パ「これは、心して聞かねばならぬ」

    天野家三世代、座して頭を下げた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days143~11日23時55分、文詠みます

    超理系と思いきや、文系もイケる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊の部屋。

    尊「どうだろ」

    スマホを取り出して操作する。

    尊「あ。起きてた。じゃあ」

    次にパソコンを操作し始めると、すぐに画面が開いた。

    瑠奈『わぁ!尊!』

    尊「お待たせしました。ちゃんと繋がったね。良かった」

    瑠『うん。練習で、お父さんのパソコンと通話してみたからばっちりだよ。嬉しい!画面大きいから、尊が目の前に居るみたい!』

    お互いの部屋のパソコン越しに、ビデオ通話を始めた二人。

    瑠『家に帰ったの遅かったんだね。お姉さん達の飛行機、最終の便だった?』

    尊「うん」

    尊 心の声(そういう事にしておいてください)

    瑠『寂しくなるね』

    尊「7人居たのが3人に一気に戻ったからさ。両親は少し気落ちしてる」

    瑠『そうなるよね。尊のお父さんお母さん、すっごく優しいしお話も楽しかった。また会えるといいな』

    尊「だったら、大学合格したら、また家に遊びに来なよ」

    瑠『ホント?!いいの?』

    尊「来てくれれば両親も喜ぶと思うし」

    瑠『行く行く!今度は、ちゃんと尊の家に行くって親に言うよ』

    尊「ははは。うん、ぜひ」

    瑠『ねぇ、今日満月なんだよ。知ってた?』

    尊「うん。見たよ」

    瑠『うふふ』

    尊「満月観ると、あ、誕生日来たって感じ?」

    瑠『月の周期で?えー、12倍速で歳取ってくのは困る』

    尊「ははは」

    瑠『そっか!毎月尊にバースデープレゼントをもらえるんだ?』

    尊「ヤベっ、墓穴掘った」

    瑠『キャハハ』

    尊 心(癒される。気落ちしてるのは僕もだったから)

    屈託のない瑠奈の笑顔に、顔がほころぶ尊。

    尊 心(あ。そうだ)

    何かを思いついた。

    尊 心(あの言葉、言ってみたい。どうかな。わかってくれるかな)

    瑠『あー、楽しい~』

    尊「あの、さ」

    瑠『なに?』

    尊「月が綺麗だね」

    瑠『月?』

    窓の外を窺おうとする瑠奈。が、すぐに動きが止まった。

    瑠『あ。もしかして…』

    尊 心(気づいた?)

    瑠奈が、居ずまいを正した。それに倣う尊。

    瑠『たけるん。もう一度言って欲しい』

    尊 心(さすが。わかったっぽい)

    尊「月が、綺麗ですね」

    瑠『尊…。あ』

    尊「へ?」

    瑠『えーっと、メモ!私どこにしまった~?』

    しきりに、机の引き出しを開けたりノートをめくったりしている。

    尊「何か探し物?」

    瑠『見つかった!もー、あまりにも出番がないから』

    尊「ん?」

    瑠『あのね、聞いてください』

    尊「はい」

    瑠『君はいかで、月にあらそうほどばかり、めぐり逢いつつ影を並べん』

    尊「…西行の和歌ですか」

    瑠『ヤだ、尊。なんでわかるの?天才!』

    尊「天才なんかじゃないよ。この問いにどんな答えがあるのか調べてあっただけ。瑠奈こそリサーチ済みでさすがだね」

    瑠『月関係には敏感ですから』

    尊「そっか」

    瑠『うふふ』

    尊「予想してた答えの中では一番…」

    瑠『だって、ずっと一緒に居られたら幸せだもん』

    尊「それは僕も同じだよ。って、わー照れる」

    瑠『すっごく嬉しい!月が入る愛の言葉だから、いつか誰か言ってくれないかなって、返答の見本をメモしておいたの。今まではこんな事全然なくて、やっぱり尊だったなって。ありがとう』

    尊「痛み入ります」

    瑠『ふふっ。あー、直接会ってる時じゃなかったのだけうらめしい。がっつりホールド、からのギューがしたいのに!』

    尊「そんな大技かけられたら骨折しちゃうよ」

    瑠『もー、どんな怪力だと思ってるの?でも、そうなったら付きっきりで介抱してあげる』

    尊「ははは」

    時間はあっという間に過ぎる。

    尊「名残惜しいけど、そろそろ」

    瑠『うん。明日もこうしてしゃべりたいな』

    尊「そうしようね。ではおやすみなさい」

    瑠『おやすみ、たけるん』

    暗く沈んだ画面をぼんやり眺める尊。

    尊「あ。今まで何で気づかなかったんだろ」

    尊 心(直接行き来するタイムマシンに拘っていたけど、こうやって、現代と永禄でリアルタイムに話ができるのもアリじゃないか?)

    尊「そっちの線も考えてみるか…」

    呟きながらパジャマに着替え、ベッドにもぐりこんでいった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    和歌の訳ですが、

    月は毎晩空に浮かぶ。同じくらい、大好きなあなたと絶えず会って、寄り添っていたい。

    といった感じです。

    11日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days142~11日23時40分、帰省終わります

    さよならは言わない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    土産のあまりの多さに、四人でも上手く抱えきれず、未だ出発できていない。

    美香子「えーと、どこかしら体がくっついてないと、飛べないのよね」

    唯「いろいろもらい過ぎた?」

    美「実家に寄った時なんて、大体こんなものよ。何とかしましょ」

    覚「レジ袋を腕にかけて、隣同士腕をからめてから風呂敷を持つ。どうだ?」

    尊「綺麗な着物にレジ袋。すごい光景だよ。これぞ奇天烈」

    唯「起動スイッチどうしよう」

    若君「荷はわしが粗方持つゆえ、唯が抜け」

    四人とも両手が塞がった状態で、なんとか円陣を組んだ。

    若「お父さん。お母さん。このようななりで済みませぬが、世話になり申した」

    覚「僕らこそありがとな」

    美「楽しかったわ」

    源三郎「心より礼を申します。この日々は、一生の宝と致す所存でございます」

    トヨ「本当に、本当にありがとうございました」

    尊「元気で居てくださいね。僕も…頑張ります。いろいろと」

    唯「尊ぅ」

    尊「何」

    唯「そこでー、あのセリフっしょ」

    尊「セリフ?」

    唯「だからこれからもきっとある!」

    尊「あー。うん」

    若「…では。此れにて。唯」

    唯「はい」

    起動スイッチが引き抜かれ、四人の姿が消えていった。

    覚「ふう」

    美「はぁ」

    尊は、パソコンを確認している。

    尊「うん、ちゃんと3分後に着いたよ。OKって出てる」

    覚「良かった」

    美「一安心ね」

    美香子が、深呼吸をしている。

    美「すー、は~」

    覚「何してんだ」

    美「余韻を、ね」

    覚「そうか。すー、は~~」

    尊「ほぼ揚げ物臭だけど」

    そして三人は、まだ温もりの残る実験室を後にした。

    唯「…着いた?着いた?」

    若「戻れたようじゃな」

    源「おぉ。何もかもそのままで」

    ト「永禄はここまで暗かったのですね」

    永禄。唯の居室に無事到着した四人。安堵の表情の、唯と源トヨ。

    唯「荷物さ、今日はここに置いてったら?」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「いいよん。隅っこに寄せよっ」

    ゴソゴソ動き出す唯達。

    若「待て」

    唯「待て、って?」

    若「しばし動くな。源三郎もトヨもじゃ」

    唯「なんで?」

    若「シッ。静かに」

    そう言うと、若君は襖を開け表へ出た。三人が静止してその場にかがむ。するとすぐ、外から声がした。

    男「若君様!」

    唯の囁き「あ、小平太だ」

    小平太「ひどく屋敷が揺れました。怪我などされてはおられませぬか?」

    若「あぁ。今、唯の無事も確かめた所じゃ」

    小「左様で」

    若「大事ない。戻れ」

    小「はっ」

    小平太の気配が消えた頃、若君が中に戻ってきた。

    唯「もう動いて大丈夫?」

    若「うむ。尊が参った折も相当揺れたゆえ、此度もそうであったのではと思うての。やはり小平太が飛んで来た」

    源「思い出しました。あの日の揺れは、尊殿が此方に来られたしるしであったのですね」

    若「フフ、源三郎」

    源「はっ?」

    若「あの日とは?まだ昨日の話じゃ」

    源「え」

    唯「だって3分後だもん」

    源「そう…でございますか」

    唯「そゆコト」

    ト「尊様と初めてお会いしてから、一日しか経っていないと」

    源「これはややこしい」

    唯「またいつもの生活が始まるってワケ。でもね!明日は、たーくんががんばるからさ」

    若「赤井家の荷は此処に預かっておく。今宵は、早う互いの寝所へ戻り体を休めよ。明日も早かろう」

    源「はっ」

    ト「わかりました」

    変わって、令和の速川家リビング。

    美「なーんか、部屋が広ーく感じるわ」

    覚「食卓が倍の大きさなのがまた、寂しさも倍増だな」

    尊「そんな物悲しい事ばかり言わないでよ。このテーブル、どうする?」

    覚「源三郎くん達が使ってた予備室に持っていくか。明日にでも」

    尊「そっか。じゃあ、僕もう部屋に行くね。おやすみなさい」

    覚&美香子「おやすみ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    11日のお話、もう少し続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days141~11日23時20分、レア物です

    大喜びでパクつきそうだから、危ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「代わるわ」

    覚「ん」

    四人はまだ二階。揚げ物担当を父から母に交代した。

    覚「風呂敷包みじゃ足りんな。紙袋でも用意するか」

    唯達が持ち帰る荷物の山の前に、覚と尊。

    尊「紙袋なの?」

    覚「土に還る方がいいだろ」

    尊「もうキリがなくない?あげた駄菓子、全部ビニールで包装してあるし」

    覚「それもそうだな。なら、せっかくだから」

    尊「せっかく?」

    キッチンの作業台下をゴソゴソ探す覚。

    覚「よし、いい物出てきたぞ」

    尊「は?レジ袋じゃない。最近エコバッグばかりでしょ。取ってあったの?」

    覚「何となくな。ほら、このロゴ見ろよ」

    尊「いつも行くスーパーのだ」

    覚「これで持ち帰ってもらえば、喜ばないか?向こうでも使えそうだし」

    尊「えー、喜ぶかな」

    四人が二階から下りてきた。

    若君「お待たせ致しました」

    覚「おー。武士の一団、だな」

    若「その、手にされておるのは?袋、ですか」

    覚「風呂敷や新聞紙だけじゃ心許ないだろ」

    唯「なんでレジ袋~」

    若「ん?これはもしや」

    トヨ「あの、よく訪れた」

    源三郎「スーパー、の名では?」

    若「このような品があると。名入りとは!いただけるのですか?」

    覚「使ってくれ。何枚でもあるぞ」

    若「うんうん、よう見慣れた店の名じゃ。有り難い」

    ト「買い物をした日々が思い出されます」

    源「大切に致します」

    尊「まさかの反応。人気のロゴだったとは」

    唯「なにげに丈夫だけどさぁ」

    はさみ揚げも用意できた。

    美「大きいタッパーは皆さんで。タオルでくるんである小さい方が、天野のじい様へね」

    若「布で巻いたのは、何ゆえでしょうか」

    美「少しでも温かいまま、渡せるといいなと思って」

    覚「ちなみに、高齢者用に蓮根には隠し包丁をしてある。噛み切りやすいようにな」

    若「おぉ、それはわしも案じておりました。喉に詰まらせぬかと」

    源「なんというお心遣い」

    ト「素晴らしいわ」

    若「ところで尊」

    尊「はい?」

    若「ちと話がある」

    リビングの隅に呼ばれた尊。若君が耳打ちしている。

    尊の囁き「え、そうなんですか。僕達は休みの日だし大丈夫ですけど、間に合いますか?」

    若君の囁き「間に合うよう進めておく」

    尊 囁き「カッコいい。わかりました。酉の正刻ですね」

    荷物の再確認も終わった。

    覚「最後、写真撮るから並んで」

    唯「はーい。ビフォーアフター的な?」

    7人でカメラに収まった。

    覚「さて、実験室に移動するか」

    美「荷物、少し持つわ」

    ト「すみません」

    あと30分程で日付が変わる。実験室は、人と荷物であふれていた。

    覚「じゃあな」

    美「元気でね」

    若「お父さん。くれぐれも、怪我には用心してくだされ」

    覚「本当に。忠清くんが慌てて飛んで来ないよう、気を付けるよ」

    源三郎とトヨは、何か言いたげな顔はしているのだが、

    源「まこと…筆舌に尽くし難く」

    ト「胸がいっぱいで、言葉が出ません」

    二人の肩をポンポンと叩く両親。

    覚「会えて良かったよ」

    美「あなた達から教わる事も、たくさんあったわ」

    源「そのような。身に余る光栄でございます」

    トヨがまた泣きそうになっている。

    美「駄目よ泣いちゃ。もう女中頭のトヨちゃんに戻るんだから。堪えなさい」

    母も、涙を堪えている。

    ト「はっ、はい」

    そんな中、ケロっとしている唯。

    唯「感動の場面だねぇ。うん、マジ連れて来て正解だった」

    尊「さっぱりしてんなぁ」

    唯「また来るもん。尊、よろしくぅ」

    尊「はぁ。あいも変わらず、わかってない」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    飛ぶのは次回ですが、まだまだ続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days140~11日22時30分、男子の会話

    寡黙な分、話の中身が濃い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トランプ大会、真っ最中。

    唯「今度は夏に来よう!」

    尊「は~。簡単に言ってくれるよな」

    唯「だって、また海やプールに行きたいもん!トヨや源三郎とさぁ」

    トヨ「あの、お写真のようにですか?」

    リビング奥に飾ってある、唯と若君と尊の水着姿の写真に、視線を向けたトヨ。

    唯「ぜーったい、楽しいってぇ」

    ト「唯様。私は良いのですが」

    なぜか、源三郎が申し訳なさそうに下を向いている。

    唯「え?なに」

    若君「唯。わしが申す」

    唯「はあ」

    若「源三郎はのう、戦となれば、鎧を身に付けておろうが川でも沼でも飛び込むが」

    唯「うん」

    若「水は些か苦手じゃ」

    唯「え、そうなの?知らなかった!」

    尊「びっくり」

    覚「それはまた」

    美香子「意外だわ」

    源三郎「恥ずかしながら、仰せの通りでございます。幼き頃、川辺で遊んでおりましたら、山に降った雨により水嵩があっという間に増し、流されそうになりまして」

    美「あら大変」

    源「騒ぎを聞きつけた父上と永季殿に、すんでのところで助けられました」

    覚「それは危なかったね」

    源「以来、水辺はつい、怯んでしまいます」

    尊「だからかー。あの水着の写真がらみで、源三郎さんに海とかプールの話をした時、いまいちノリが悪いなぁって思ってたんですよ」

    源「はい…覚えております。波が立ったり勢いよく流れると聞き、どうにも顔が強張ってしまいました」

    尊「苦手な物は仕方がないですよ」

    覚「今になって知る話もあるんだな。よしわかった。今度夏に来た時の為に、流れないプール、探しておくよ」

    尊「ちょっと!お父さんまで。プレッシャーの嵐だよ~」

    23時になった。

    美「お菓子、満遍なく行き渡った感じね」

    覚「そうだな…」

    一瞬、7人居るとは思えない程、シーンと静まりかえった。

    若「…わかりました。それでは、着替えて参ります」

    覚「あぁ、うん。じゃあ、はさみ揚げ用意するよ」

    美「お着物ね、唯とトヨちゃんのは唯の部屋、忠清くんと源三郎くんのは源三郎くんの部屋の前に置いたから、それぞれで着替えて。唯の着付けは、トヨちゃんにお願いして良かったのよね?」

    ト「はい。お任せください」

    唯「行ってきます」

    美「行ってらっしゃい…」

    四人が階段を上がっていった。

    尊「いよいよか…」

    美「尊、揚げ物手伝って」

    尊「あ、はい」

    二階。源三郎とトヨの部屋に若君が入る。

    若「もぬけの殻じゃの。閨の跡形もない」

    源「はい」

    若「如何であった?」

    源「こちらの世の暮らしでございますか?それはもう夢のような」

    若「違う。新婚生活、と申す物じゃ」

    源「新婚?」

    若「唯が、婚儀間もない夫婦をそう呼ぶと」

    源「あ、あぁ。それはもう夢のような」

    若「ハハ、答えは同じか」

    源三郎が、急にモジモジし始めた。

    若「ん?どうした」

    源「あの」

    若「何じゃ」

    源「可憐、の意味が漸くわかりました」

    若「可憐?」

    源「忠清様がそのように喩えられ」

    若「ほぅ…ほぅ!そうか、そうか」

    源「わたくしには、可憐より妖艶、でした」

    若「そこまで申さずとも良いが」

    源「明る過ぎる、と、すぐ灯りを消されておりましたが」

    若「ハッハッハ、そうか。源三郎と、斯様な話が出来るとは感慨無量」

    源「これまた夢のようでございます」

    若「小平太とは、いつになれば出来るのやら」

    源「わたくしからは何も申せません」

    若「フフフ。じいであるが」

    源「はい」

    若「任せておけ。吉報を待つのみ」

    源「ははっ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days139~11日21時、興が乗る

    まだ食うか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君と尊、入浴中。

    若君「しばらく、瑠奈殿に会えぬのであろう」

    尊「あー、まぁ。よく知ってますね」

    若「三連休、と聞いた」

    尊「はい。明後日まで学校、クリニックもですけどお休みです」

    若「淋しかろう」

    尊「今は受験勉強が最優先ですから」

    若「淋しかろう?」

    尊「畳みかけますね。ご心配なく。電話もLINEも、なんだってありますから。それに今日は、兄さん達を見送る日だからって伝えてありますんで」

    若「そうか」

    入れ替わりで覚と源三郎が風呂に。若君が、カレンダーの前に佇んでいる。美香子が近くを通ると、

    若「お母さん」

    美香子「ん?どした~?」

    若「暦の此処に、一粒万倍日、とありますが、何でござろうか」

    美「あー、これはね。籾、あるじゃない」

    若「米のですか」

    美「そう。その小さな一粒が成長して立派な稲穂になるのにあやかって、何かを始めるのにいい日って言われてるのよね」

    若「ほぅ。それは縁起が良いですね」

    美「だから、お祝い事にも最適なのよ。お店を新しく出す時とか、結婚式とか」

    若「結婚式。そうですか…」

    覚と源三郎、入浴中。

    源三郎「お父さんのお力添えでトヨを娶る事が出来、改めまして心より御礼申し上げます」

    覚「僕はアドバイス…進言しただけだから。いやぁでも良かったよ。忠清くん、かなり心配してたんだぞ?」

    源「はい。わたくし如き者にここまで心を砕いていただき、一層の精進と、身を尽くす所存でございます」

    覚「これで一家の主だな」

    源「はい」

    覚「ずっと赤井を名乗る?それはわからないかー」

    源「そうですね」

    覚「今は知り合いにも居ないけどさ、いずれ、旧緑合出身の赤井さんなーんて人に現代で出会ったら僕、感動しちゃうだろうな。有り得るだろ?家が続けば」

    源「そう願います」

    覚「気持ちを強く持って」

    源「はい。子孫繁栄。その為には」

    覚「子作りだな」

    源「はい…」

    覚「声が小さい」

    源「はっ!励みます!」

    覚「おー、風呂場の外まで響く勢いだな。いいぞ、ははは~」

    全員揃った。

    覚「では、大トランプ大会を始める」

    唯「やったー、ヒューヒュー!」

    覚「勝者には景品を用意した」

    尊「景品!」

    唯「なに!」

    美香子が、ダンボール箱を運んできた。中を見せる。

    美「お菓子よ~。どっちかというと、駄菓子かな」

    唯「わぁ、わさわさ入ってるぅ」

    尊「駄菓子。子供会の行事?」

    美「いいじゃないの。一回ゲーム勝つ度に、一つ選ばせてあげる」

    唯「へー。じゃあ勝てたら、もらったお菓子を見せびらかしなから食べていいんだ」

    覚「持ち帰る前提だったが、まぁそれもいいだろ。今食いたいなら」

    唯「食いたい」

    尊「勝ってから言って」

    唯「よーし!勝つぞ~」

    尊「姉はこう言ってますが、源三郎さんトヨさん、頑張ってくださいね」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「兄さんは…頑張ってもお姉ちゃんにかすめ取られそうだもんな」

    唯「たーくん、よろしくぅ」

    若「いや、渡さぬ」

    唯「なぬ!」

    尊「おっ、強気だ」

    若「朝方、中々起きぬ唯の鼻先にちらつかせ、起こすのに使う」

    唯「うぅっ」

    尊「ウケる」

    美「状況が目に浮かぶわ~」

    覚「そんなんされなくても起きろよな。はい、まずはババ抜きからだ」

    22時。かなり盛り上がっている。

    尊「兄さんの一人勝ちと思いきや、源三郎さんが健闘してる」

    源「然程でもございませぬ」

    唯「駄菓子に目がくらんで?」

    尊「お姉ちゃんじゃあるまいし」

    源「敵を惑わせる術は、身に付けて損はないと思いまして」

    覚「ほー。何事にも無駄がないよ」

    美「偉いわねぇ」

    尊が勝者になった時、

    尊「僕の分、トヨさんに差し上げます」

    トヨ「えっ」

    尊「好きなお菓子選んでください」

    ト「そんな、困ります、尊様への褒美でございます」

    尊「いいんですよ、僕はいつでも手に入るんで。もらってください」

    覚「おー、優しいなー。ジェントルマン、紳士だ」

    尊「ジェントルマンね。やっぱり僕ってそうなのかな」

    唯「やっぱり?なにそれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days138~11日20時、お好みはどれ

    手を尽くしてくれたから、劇的に回復。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「そろそろ風呂沸くぞ」

    美香子「あら、もう?ならトヨちゃん、座って。リムーバー持ってくるわ」

    トヨ「はい。お願いいたします」

    美香子がトヨの手を取り、マニキュアを落とし始めた。

    唯「ねぇねぇ、女子は三人一緒にお風呂のつもりだけど、男子も四人ギューギュー詰めで入るの?」

    覚「それはさすがに厳しい。コミュニケーションもいいが、ゆったり入って欲しいしな。せいぜい二人ずつだ」

    唯「どうすんの」

    尊「どういう組み合わせでもいいけど」

    若君「わしも構わぬ」

    唯「源三郎が決めたら?」

    源三郎「え」

    若「そうせよ」

    唯「誰と一緒がいい?」

    源「あの…」

    唯「いいよゆっくり考えれば」

    源「お父さんの、お背中を流させていただけるならば、この上ない喜びでございます」

    覚「おー、そうかいそうかい。嬉しいよ」

    尊「決まりだね。じゃあ僕は兄さんと」

    若「うむ」

    美「はい、お疲れ様~」

    マニキュアオフ完了。

    ト「ありがとうございました、お母さん」

    美「なーんか、さっぱりしちゃったわねぇ」

    ト「すっかり元通りです」

    美「元通りではないわよ?来た頃と違って、指先まで傷もない」

    ト「そうですね…ひとえにお母さんのお陰です」

    尊「治療した?」

    美「そこまで大々的ではなかったけど、私ができる限りは。寝る時に手袋はめてもらったりもしたわね。あれから一月も経つのねぇ」

    覚「飾ってなくても、綺麗な指先だ」

    ト「ありがとうございます…」

    覚「風呂、女性陣が先でいいぞ」

    美「そう?ありがと。じゃ、行きましょ」

    唯「はーい」

    ト「はい」

    三人はリビングを出ていった。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「なんか、晩ごはんも早めだったし、予定前倒し的な感じ?急いでるの?まさか、早く帰そうとか」

    覚「違う。みんな風呂から出たら、大トランプ大会やろうと思ってな」

    尊「大会!」

    若「そのような意図が」

    源「風呂の後は、即戻る支度をせねばと思うておりました」

    覚「飽きるまで遊んでもらう」

    尊「ははは」

    若君と源三郎が、ほっとした顔になった。

    覚「で、そうだな、11時過ぎ頃に着替えに行ってもらう」

    尊「何でその時間?」

    覚「あまり遅く戻って、翌朝からの仕事に影響するといけないからな。唯はともかく、三人は忙しい身だから」

    尊「なるほどね」

    覚「その間に、僕は土産のはさみ揚げを用意すると」

    尊「だからか。さっき、着物に着替えてる時位に揚げるって言ってたじゃない。なんでお風呂の間でない?と思ってたんだよ」

    覚「天野のじい様に渡すのが明日だとしても、少しでも出来立てに近い方がいいしな。二人とも、急いで帰りたかったかい?」

    若「いえ!」

    源「滅相もないです!」

    覚「な、まだまだ夜は長いぞ~」

    洗面所。風呂を出た女性陣。この後の予定は、美香子が二人に知らせていた。

    ト「お母さん。この下着、なんですが」

    美「ブラとショーツ?」

    ト「持ち帰るのを、お許しいただけませんでしょうか」

    美「いいわよ~。全部?」

    ト「いえ。もしも、また訪れる機会があったならば、その折にお母さんを慌てさせてもいけませんので」

    美「ふふっ。さすが気遣いのプロ。というか残すのは、おまじないも入ってない?」

    ト「まじない。そうですね」

    美「必ず戻って来れますように、って」

    ト「はい」

    唯「持ってって、向こうで使う?」

    ト「眺めて楽しみます」

    唯「かわいい下着は気分がアガるって言ってたもんね。あ、違うか」

    ト「え?」

    唯「源三郎が気に入ってるのにするんかな~?なーんて。いやん」

    ト「あの、その」

    唯「え?まさかの図星?!」

    ト「お恥ずかしい」

    美「あらん。そんな話聞いたら、お風呂出てるのにのぼせそうよ。はい、ドライヤー持って行って。二人とも髪は、リビングで乾かしなさい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: アシガール緑合板(ネタバレ注意!)
    妄想作家のつぶやき

    続編は、尊の娘がヒロインなんですね。
    結婚した妻は、夫の偉業を知ってるんでしょうか。姉がなぜ居ないとか、そこで一悶着はなかったのかしら。そんな事ばかり気になっております。

    ┅┅┅
    アシガール シーズン2
    あの御月家が帰ってくる!?
    「たまのこしいれ」

    伯母・唯と父・尊の血を受け継いだ天才肌でちょっぴりドジな主人公が江戸の大名家へまさかのお輿入れ!?

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days137~11日19時、遠慮のかたまり

    醒めたくない夢って、ある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはんが済んだ。

    唯「お母さん特製のスモア、みんな楽しみにしてるからさ、お願いしまーす!」

    美香子「わかりました。さて、どうするかな。バーベキューの時と違って、コンロの前に群がるってのもねぇ」

    覚「それに直火は焦げやすいしな。オープントースターでやるか?」

    美「そうしよっか。ビスケットにマシュマロのせて入れちゃえばいいもの」

    覚「でもトースターの前に群がるんなら、コンロと同じだしな…ん、よし!トースター本体をテーブルに運んじゃおう。な、いい考えだろ?えーっと延長コードはと」

    尊「話、早っ」

    デザートの準備をし始めた両親。

    美「誰が作っても同じになりそうだけど、これでも母の味になる?」

    若君「はい、勿論です」

    唯「お母さんが作れば、どんなんでも母の味だよ」

    美「そお?」

    食卓にオープントースターがセットされた。手際良く次々と作り始める母。

    美「材料、何か多くない?誰がこんなに食べるのよ」

    唯「どーんと買ったから。いいじゃなーい」

    美「唯に買い物させるとこうなるか。でも、これでしばらく甘い物も中々口にできないでしょうから、今夜、心ゆくまで食べてもらうってのもいいかもね」

    唯「でしょー」

    美「ホントにそこまで考えてた?はい、源三郎くんトヨちゃんお待たせ。熱いから気をつけてね」

    源三郎「頂戴致します」

    トヨ「ありがとうございます」

    唯「甘い物かぁ。あ、そういえば、まだ大根アメ残ってるわ」

    美「それは薬として尊に持たせたんだけどね。どっちにしろあまり日持ちはしないから、帰ったら三日以内位には食べておきなさいよ」

    それを聞いた源トヨが、怪訝そうに顔を見合わせている。

    唯「あれ、どした?二人とも」

    トヨの囁き「源ちゃん、言って」

    源「あ、あぁ。畏れながら申し上げます」

    唯「なに?」

    源「日持ちがしないのであれば、戻った折には時すでに遅し、ではありませぬか?もう一月も経っております」

    唯「へ?だって戻るのは、飛んだ3分後だし」

    源「三分?」

    ト「三分…」

    若「唯。その辺りの仕組み、子細を話してはおらぬ」

    唯「そうだった?」

    源トヨが頷いた。

    唯「えー、なんも聞かれないから、たーくんがしゃべったと思ってたー」

    若「わしは、あれやこれや立て続けに話しては狼狽するばかりと思うておる内に、期を逸したと申すか」

    唯「言うの忘れてたんだ」

    美「唯~。人のせいにしないの」

    唯「マジすかー」

    若「マジ、だ」

    唯「あれ私、あん時なんて言ったっけ?えーっと」

    若「三分間、夢のような夢ではない時間を過ごさぬか、と誘うておった」

    ト「三分は百八十数える内、と伺いました。今では三分がどれ程かはわかりますが、こちらの世で百八十数えても、何も変わりませんでしたので訳がよくわからず」

    唯「それしか言ってなかったからか。ごめーん」

    源「いえ、あえてわたくし共からお尋ねも致しませんでしたし」

    若「今、あえてと申したな」

    源「はい。トヨとも話しておりましたが、子細を伺ってしまうと、この夢から醒めてしまうのではないかと思い」

    唯「夢じゃないんだけど」

    ト「あの、それほど夢のような楽しい時を過ごさせていただいておりましたので」

    唯「そっか。そんな風に思っててくれたなら、連れてきてホント良かったよ。じゃあ、詳しくは尊から説明しまーす」

    尊「は?」

    唯「よろしくぅ」

    尊「いきなり丸投げかよ!話すけどさ。あの、要はですね、永禄では三分間だけ四人が居なくなってるんです」

    ト「こちらにこんなに長く居りますのに?」

    源「うーん」

    尊「夜遅くに発ったじゃないですか。それは、日中に急に四人も居なくなると周りが騒ぐから考慮したんですよね?兄さん」

    若「然り」

    尊「こちらに、満月から満月の間ほぼ一か月居たとしても、戻った時には3分、180数えた位しか経ってないんです。そういう機能…というか乗り物なんですよ。だから大根アメも無事と」

    源「わかったようなわからぬような」

    ト「やっぱりわからないような」

    唯「わかったつもりで行こー」

    尊「雑だな」

    美「ねぇ、もっと焼いてもいいの?まだ食べられる?」

    唯「じゃんじゃん作って!みんな遠慮して、欲しいって絶対言わないから」

    若君と源トヨがそっと微笑んだ。

    尊「珍しく正論」

    美「了解~」

    スモアパーティーもそろそろ終わり。

    美「最後一つ、源三郎くん食べて」

    源「はっ、それではいただきます」

    美「はい、おしまい。休憩したらお風呂ね」

    唯「まだまだ盛りだくさんだ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days136~11日18時30分、用意周到

    そんなに固くはないが、かと言って。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    帰宅し、晩ごはんの準備をしている。

    唯「はっさみっ揚げ~!」

    覚「あい変わらず口しか出さないな。チョロチョロしてるだけなら、あっち行ってろ」

    唯「へーい」

    尊「叱られ方が小学生並みだ」

    美香子「持ってく荷物の確認は終わったの?」

    唯「だいたいは」

    美「この後は、ご飯食べてお風呂入ってお着物に着替えてだから、忙しいわよ?今の内にちゃんと見ておきなさいよ」

    唯「はいはい」

    美「ホントにもう~」

    尊「叱られ方、以下同文」

    リビングの隅に、持ち帰る荷物の山が二つできている。

    尊「御月家と赤井家ね。このでっかい新聞紙の包みは何?」

    唯「レトルトいっぱい持ってくから」

    尊「あー、なるほど」

    唯「バラけるといけないから一度包んである。ビニール袋とかより燃やせるモノがいいって、お父さんが言うから」

    尊「へー。いい考えだけど、燃やすのは勿体ないよ。だってこれ、日付入ってるじゃない。いつこっちに来てたかわかるよ」

    唯「そう言えばそうだ。…あ、だったらさ、ねー、お母さーん」

    美「何?」

    唯「今日の新聞ちょうだい」

    美「今日の。どうするの」

    唯「この日までここに居たって、記念に持っていきたい」

    美「あー」

    唯「あれ?ダメ?」

    美「お父さんは朝一番に読んでるからいいけど、私まだだったわ」

    唯「えー、じゃあ今読んでよ」

    美「うーん。連載小説は読んでおきたいわね。じゃあ支度の手も足りてるみたいだし、ちょっと失礼して目を通しておこうかしら。唯、このふきん持って」

    唯「ふきん?」

    美「私の代わりにテーブル拭く、はい」

    唯「えー。仕方ないなー。やるか」

    美「そんなにトーン下げない~」

    ソファーに移動し、新聞を広げ読み始めた美香子。唯はすぐに食卓を拭き終わり、新しい方のテーブルをじっと見ていた。

    唯 心の声(たーくん達が作ったこのテーブル、大活躍だったな)

    唯「お母さん」

    顔を上げた母。

    美「何?」

    唯「このテーブル、明日には片付ける?」

    美「ん~。まだ考えてないけど、三人だけなら二卓も要らないものね」

    唯「だよね」

    食卓を離れ、今度はテレビ台に近付いた唯。芳江やエリも交え全員で1羽ずつ折った、折り鶴が9羽並んでいる。

    唯 心(なにげにそれぞれ個性出てて、かわいい)

    しばらく眺めていたが、

    唯「…あ。ねぇ、お母さん」

    美「えぇ?今度は何。そんなに呼ばれると、全然読み進められないわねぇ」

    唯「ごめんごめん。この鶴だけどさ、持ってってもいい?」

    美「持ってく?あら。無機質なテレビ周りが華やかになって気に入ってたけど、そうしたいならどうぞ」

    唯「全部じゃないから。私とたーくんと源三郎とトヨが折ったのは、置いてく。残りの五人分だけ欲しい」

    美「…そう。それ、ちょっと嬉しいわ」

    唯「でしょ」

    美「翼が広げてあるから、たたんだ方がいいわよね。やれそう?」

    唯「厚めの紙で作ってあるから多分できる。連鶴だけ難易度高いけど…いいよ、新聞読んでてくれれば」

    美「はいはい」

    その頃のキッチン。

    若君「お父さん。この量を一度に、ですか?」

    あとは粉をまぶすだけの、はさみ揚げ予備軍が大量に用意されている。

    覚「こっちはね、晩ごはんにじゃなくて手土産用だよ。後で、君達が着物に着替えてる時位に揚げるよ」

    若「そうでしたか。毎度のお気遣い、痛み入ります」

    尊「揚がったヤツ、運ぶよ」

    トヨ「では私もこちらを」

    覚「頼むね。んと。忠清くんさ、わかるかなー」

    若「何でございましょう」

    覚「はさみ揚げ、あの天野のじい様は食べた事あるかな」

    若「それは…わしはわかりかねますが」

    源三郎「わたくしも存じ上げませぬが、トヨでしたらわかるかと。おい、トヨ」

    ト「はい、お父さん。信茂様はお召し上がりになられています」

    覚「さすがトヨちゃん。ありがとう」

    ト「はさみ揚げの入っていた籠を、空になっても尚、匂いをかぎながら抱えておられました。それを私が受け取り、洗いました次第」

    若「ハハハ。何と申すか、情景がありありと浮かぶのう」

    ト「かなりお気に召したと思います。三つは食したと仰せられていましたので」

    若「それはまた」

    尊「で、それがどんな関係があるの?」

    覚「源三郎くん達二人の、結婚のお許しを貰う相手だろ」

    若「そう…ですね」

    尊「え、まさかの袖の下?」

    覚「忠清くんが、明日にも話をするって言うからさ。少しでも手助けになればいいなって。気に入ってくれてるなら好都合。天野様用は分けて用意するよ」

    ト「お父さん…」

    源「そこまでお考えいただいたとは」

    覚「まあまあ。さぁ、そろそろ飯にしような」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    ありがとうございます

    てんころりんさん、そうなんです!再考の時間もたっぷり取りたいのにそれも難しく。
    この隙?に、他の作家の皆さんで、ここが賑わうと良いななんて思ったりします。

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    返信先: 創作倶楽部
    頑張ります

    カマアイナさん、早速の励ましのお言葉、ありがとうございます。

    息切れしないよう、続けて参ります。

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    返信先: 創作倶楽部
    投稿間隔を変更いたします

    本日も、こうして目を通していただき、心から感謝しております。

    実を申しますと、ここ最近私自身が、創作・投稿活動に時間を費やすのが難しい状態が続いております。

    大変恐縮ですが、四人の現代Days、現在投稿を一日おきに続けているところ、三日…遅くとも五日に一度程に切り替えたいと存じます。

    二日に一度のお楽しみ、にしてくださっている方には心苦しい限りですが、あと1話2話で最終回なんて事はなく、まだまだゆるゆると続きますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days135~11日17時、未来は明るい!

    掬われないよう、救いたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    家族全員でボーリングを楽しんでいる。

    唯「曲がれぇ~曲がれぇ~!ちぇっ」

    尊「念じても無理。球は曲がらない」

    唯「うるさいなー。信じるモノはなんとかって言うじゃない。はい次、たーくんどうぞ」

    尊「救われる?ピンが倒せる方向に球を投げればすむ話でしょ」

    唯「ムカつく!そう言うアンタだって、ガターやらかしてるクセに!」

    尊「いいんだよ、何年かに一回しかやらないのに上手くできる訳ないんだから。みんなで楽しめれば」

    若君は、すぐに投球のコツを掴んだようだ。

    尊「うわっ、兄さん、しれっとスペアとってる!」

    若君「二度投げる内に、全て的を倒せば良いのであろう?」

    尊「そうですけど。集中力が凡人とは違うんだろうな」

    唯「あーあ。今だけ、お父さんと腕チェンジできないかなー」

    尊「しつこいな。そんな事ばっかり言ってると、掬われるのは足だ」

    若「ハハ。尊、上手いの」

    レーンは二つ使っている。隣は…

    トヨ「ああっ!またしくじってしまいました」

    覚「あー。ボトっと落とした感じだね。いいよいいよ。真っ直ぐには転がってるから、ピンも倒れてるし」

    ト「床を傷めないよう、そっと置かねばなりません。次こそは何とか」

    覚「メンテナンス側を心配か」

    満喫している様子の、若君と源トヨ。源三郎は特に、

    源三郎「ハハハッ!」

    覚「おっ、ストライク出た」

    ト「源ちゃん、やるじゃない」

    源「お父さん、的が全て倒れました!」

    覚「源三郎くんも筋がいいねー。初めてとは思えないよ」

    美香子「もっと早く、連れて来てあげれば良かったわね。とっても楽しそうだし」

    唯「源三郎があんなに笑ってる」

    若「うむ」

    唯「甲斐が、あった?」

    若「ハハ、そうじゃな」

    3ゲーム終える頃には、皆そこそこの点数を取っていた。

    覚「トヨちゃんも、100点超えたか」

    ト「お父さんのご指南の賜物でございます」

    覚「忠清くんと源三郎くんは、いい感じの点の取り合いだったな」

    源「力が入り、つい競り合うてしまいました」

    若「構わぬ。手加減は無用」

    美「いいわよね。こんな戦い方は平和そのものだもの」

    若「…」

    帰り道。覚の車に、唯と若君と尊。若君が、外に流れる夜景を静かに眺めている。

    唯「たーくん?なんか考えてる?」

    若君「…戦は、ないに越した事はない」

    唯「うん」

    若「率いる兵の命、ひいては民の命を粗末にはしとうない。刀同士の鍔迫り合いではなく、先程のボーリングの様に、運も少しはあるが技量力量で争えば、血を流さず命を落とさずに済む」

    唯「…そうだね」

    若「敵陣にも有能な御仁は居る。無闇に殺めるのでなはく、手を取り合ってゆけるならば、より良き国造りが出来る筈」

    覚「よく考えてるな…」

    唯「…」

    唯は、若君と初めて二人きりで話した、寺での夜を思い出していた。

    ┅┅回想。ドキドキの夜┅┅

    若「戦は勝たねばならぬ。そうでなくては城の者も領民も、心安んじて暮らしていく事ができぬ。だが…命を落とした者も、逃げ落ち延びる敵方の兵も、我らのようにただ、安らかに暮らしたい者たちではなかったか…」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯 心の声(戦国は、たーくんが心を痛める場所。でもたーくんの本当の幸せは、この現代じゃなくあの場所にしかないから…守るよ、ずっと)

    若「尊」

    尊「は、はい」

    若「わしらが永禄に戻っても、戦乱はまだ続くか?」

    尊「…続きます。残念ながら」

    若「そうか。ならば生き抜くより他なし」

    尊「兄さん、大丈夫。絶対大丈夫だから」

    若「それはつまり」

    尊「はい?」

    若「後の世がどうなってゆくか、わかっておるからじゃな」

    尊「あの、えっと、僕からは何も」

    若「どうなろうとも、日々粛々と生きる。それは、先を知ろうが知らまいが、変わらぬ」

    尊「…はい」

    若「ふう。令和の暮らしも残す所あと僅か。まだまだ楽しまねばの」

    唯「そうだよ。晩ごはんのはさみ揚げ、楽しみだしぃ」

    尊「毛色がガラッと変わってるし」

    覚「よし、そうだな!今夜は、ますます腕によりをかけちゃうよ~」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days134~11日15時30分、大きくなったね

    光るのは、塗ってあるオイルも要因では?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨ「お待たせを致しました」

    リビングに戻ってきたトヨは、目元に赤みは残るが、すっかり元のキリリとした姿になっていた。

    ト「洗い物も済んでしまいましたか?すみません!後片付けが出来ず」

    美香子「そんなの気にしない。人手は足りてるからね。さあ、じゃあそろそろ、出かけちゃおっか?」

    唯「出かけるー!ボーリング!」

    覚「よし、運動するぞー」

    尊「運動。まぁそうだね」

    唯「へぇ。いざ勝負!じゃないんだ」

    覚「三人は初めてだから、真剣勝負はしない。なんなら、僕と唯で点取り競争するか?」

    唯「やだ」

    覚「即答か」

    唯「負けるとわかってる戦はしないのだ」

    覚「おっ、それって、僕は上手いと思ってくれてるんだな?」

    唯「まーねー」

    覚「おほー。そうかそうか」

    尊「ゴキゲンだ」

    車2台に分乗。美香子車に、源トヨ。

    ト「お母さん」

    美「なぁに?」

    ト「この、爪の飾りを、永禄に帰りますまでに取り去りたいのですが」

    美「あー、マニキュアその他諸々。いよいよ女中頭のトヨちゃんに戻る準備ね。唯はあのままでいいけど、あなたはねぇ。勿体ないとは思いつつ」

    ト「奥方様と女中は、違って当然です」

    美「わかりました。じゃあ夜お風呂入る前に、取ってあげるわ」

    ト「ありがとうございます」

    美「手だけよね?足は、塗ったままでいいわよね?」

    ト「足も…」

    源三郎「残します」

    ト「え?」

    美「あらん」

    源「炊事、洗濯に支障ない。そのままにしておけ。誰も困りはせぬ」

    ト「わかったわ。なら残します」

    源「色味を気に入っておったようだしな」

    美「そうなのね~」

    ト「はい。先に手に施していただきましたが、何度も眺めてうっとりしている私を見て、唯様が是非足にもこのお色を、と」

    美「うふふ。だって確か、源三郎くんが選んだ色だったわよね?」

    源「そうではありますが、元はお母さんが選ばれた色でございます」

    ト「忠清様が、夕映えの色と仰られ」

    美「聞いた聞いた。いっそのこと、売り場にそう書いておいたらって思ったもの」

    ト「まあ」

    源「ハハッ」

    美「あ、源三郎くんが笑った」

    源「え」

    美「声上げて笑うなんて、中々なかったじゃない。仕える身、が染みついてるのもあるとは思うけど」

    源「そう…ですね」

    美「これから行く所ね、大声で笑っても叫んでも、全然大丈夫なの」

    ト「賑やかな場なんですね」

    美「だから、大いに笑って騒いで楽しんで欲しいな。旅立つ前に」

    源「はい。お母さんのご要望とあらば」

    美「ふふ、受け答えの真面目さは変わんないな。それが源三郎くんのいい所ね」

    ボーリング場に到着。

    唯「靴借りるよ。はい、こっち」

    若君「履きかえるのか」

    使うレーンが決まり、座席に上着や荷物を置いていると、ズラリと並ぶレーンを見ながら、若君と源トヨがしきりに感心している。

    源「なんと美しい床であろうか」

    ト「輝いてるわ。どれほど手入れをすれば、このようになるのかしら」

    若「そうか。このように、板敷の床が光る程磨かれた舞台に上がるには、それ相当の履物が要るのじゃな」

    唯「靴ってそんな理由だっけ?」

    覚「まぁ、そうしとこう」

    尊「そんなんでいいの?」

    唯「いいんじゃな~い?たーくん、球取ってこよっ」

    若「球?あぁ」

    ボール置き場で選んでいる唯と若君。

    唯「指が入る物を選ぶ。でもって、転がすからさ、持ち上がらないほど重いのは止めとくんだよ」

    若「うむ」

    源トヨは、尊に選び方を教わっていた。

    源「指で上げられれば、良いのですね」

    尊「はい。重過ぎて、足の上なんかに落としたりしたら大変なんで」

    ト「どうしましょう。やはりこちらかしら」

    源「無理するな」

    尊「源三郎さんの言う通りですよ。重ければいい訳じゃないんで」

    7人のボールが集まった。

    唯「尊」

    尊「何」

    唯「アンタの球はどれ?」

    尊「は?僕のはこれだけど」

    唯「わー、めっちゃ差つけられた!」

    球のポンド数が随分と違い、尊はかなり重い球を選んでいた。

    尊「悪い?ちゃんと持てるから」

    唯「中学生の時は、同じ重さの球だったのに」

    尊「当たり前でしょ」

    唯「ふふーん。オトナになったのう」

    尊「それ、重さで決まるモノ?そりゃ僕だって少しは」

    唯「へー。少しは、ね」

    尊「うるさいよ」

    尊 心の声(こんなバカ話…あと何回できるのかな)

    美「はいはい。まず三人に説明するわね。それから始めましょ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days133~11日13時30分、刻みます

    別れは辛いけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    9人で昼ごはん。

    エリ「とても美味しい。ニョッキも作ったんですか?」

    若君「はい」

    芳江「あらら。私、柔らかめの水とんかと思ってました」

    覚「水とん。まあ、似てますわな」

    美香子「もしかして」

    覚「何だ?」

    美「これを、再現しようと永禄で作るとするじゃない。それが後世になって、水とんの由来だったりして?」

    覚「ほほー。なるほど」

    尊「こういう、各地域で自然発生的に出来たであろう食べ物はさ、実際わかんないよね」

    覚「そうなるかもしれないし、書き残してあるとは限らないからわからんな」

    尊「だから、向こうでどう工夫して作ってもらっても、歴史を変えるまでにはなりませんから」

    若「ふむ」

    源三郎「心得ました」

    トヨ「はい」

    美「ところで尊、あなたのんびり食べてる場合?」

    尊「わかってるよ。ちゃんと話す内容は書き起こしたから、大丈夫」

    芳「何かあるんですか?」

    尊「あの、食後、少しだけ時間ください」

    美「羽木一族の存亡の話をするのよ」

    芳「羽木?」

    エ「若君でも源三郎さんでもなく、尊くんがですか?」

    覚「学校で、クラスメートにしゃべる機会があったんだそうです。じゃあ僕らにも、話して貰おうと」

    芳「まあ。それは、私達も是非聞かせていただきたいですね」

    エ「きっと、話もお上手にまとめられてるんですよね」

    唯「それで彼女もゲットしたし」

    尊「それはいいから」

    食後。お茶を飲みながら、尊の説明を全員で聞いている。

    尊「お姉ちゃん?所々、しかめっ面で聞いてるけど、何だよ」

    唯「ちょいちょい、難しい言葉出てくるからだってば。まあまあわかってるから」

    尊「まあまあかよ。兄さん、源三郎さん。今のところ話、合ってますか?」

    若「合うておる」

    源「分かりやすく語られておられますし」

    尊「良かった。じゃあ続けます。それでですね…」

    15時近くになった。玄関で、帰るエリと芳江を唯達四人で見送る。

    唯「じゃあねっ」

    エ「どうか、お元気で」

    若「お二方も、体を厭われよ」

    芳「はい。ありがとうございます」

    源「わたくし共こそ、心より礼を申します…おい、トヨ?」

    ト「…」

    唯「わー!」

    声をころし、はらはらと涙を流していたトヨ。唯が走っていき、ティッシュの箱を抱えて戻ってきた。

    唯「使って」

    ト「すみません。唯様」

    エリと芳江も、言葉にはならない様子だ。

    ト「…あの、朝のコーヒーの時間、お話にお付き合いいただきありがとうございました」

    芳「毎朝楽しみにしていましたよ」

    エ「えぇ。勿論私も」

    ト「髪を切りに行く前に、優しくお声掛けいただいた事は、一生忘れません」

    エ「何も特別にはしていませんよ」

    芳「可愛い娘ですもの」

    源「…」

    唯と若君も、静かに見守っている。

    芳「幸せになってね」

    ト「はい」

    エ「源三郎さん、頑張ってくださいよ?」

    源「ははっ!」

    エリと芳江は帰っていった。立ったまま動かない、トヨの背中をさする唯。

    唯「ちゃんと、言えてたよ」

    ト「そうですか」

    唯「うん。伝わってた。あのさ」

    ト「はい」

    唯「ずっとさ、トヨは強いなって思ってたんだけど、案外泣き虫でびっくりだった」

    ト「私は、強くなんかないです」

    唯「ねぇたーくん」

    振り向いて、若君に問いかける唯。

    若「心を委ねられる、母君二人に此処で出会うたのじゃ」

    唯「安心できる?」

    若「うむ。わしは今、令和の世に連れて参った甲斐があったと、心から思うておる。のう、源三郎」

    源「はい…」

    若「唯」

    唯「あ、はい」

    目配せをした若君。まだ下を向いているトヨから唯がそっと離れ、さする役割を源三郎にバトンタッチした。

    若「落ち着くまで傍らに居れ」

    源「はい」

    唯「先に戻ってるね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days132~11日11時、肌身離さず

    ちょうど手のひらサイズだし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    キッチンに、覚と若君。

    覚「さて」

    若君「よろしくお頼み申します」

    覚「芋を茹でる。これはジャガイモね。鍋に水入れて」

    若「はい」

    唯「今日はなにー」

    覚「ニョッキだ」

    唯「にょきにょき?」

    尊「言うと思った」

    ジャガイモが茹であがった。

    覚「つぶすよ。熱いから気を付けてな」

    小麦粉、塩を混ぜ、こねる。

    トヨ「芋なら、何でもよろしいのでしょうか」

    覚「やった事はないけど、向こうで手に入る物で試してみたらどうだい。粉もさ、ある物で。でも失敗して、食べ物を粗末に扱っても何だな」

    ト「少しの量で試してみます」

    棒状に伸ばし、小さく切り分けている。

    唯「粘土みたーい」

    覚「はい、これ持って」

    唯「なに?フォーク?」

    覚「切り分けたこれを楕円形にまとめる。で、フォークを軽く押し当てて筋をつける」

    唯「へー。やるやる!」

    一つ作ってみた唯。

    唯「なんか」

    尊「何」

    唯「さなぎみたい。セミとかの」

    ト「さなぎ?」

    尊「うへぇ」

    唯「ねっ、そう思わない?源三郎」

    源三郎「似てはおります」

    尊「わー、それにしか見えなくなる!しかも大量だし!」

    唯と尊が大騒ぎし、源トヨと四人で成形している横で、野菜や肉を煮込み始めた若君。

    若「この中にニョッキ、が入ると」

    覚「うん、あれはもう一度茹でてからだけどね。母さん達が来る頃にちょうど仕上がるだろう」

    13時過ぎ。クリームシチューが出来上がった。

    美香子「お待たせ~。お二人もすぐみえるわよ」

    覚「よしよし」

    器に盛り付けていると、エリと芳江が現れた。

    エリ「こんにちは」

    芳江「お招きありがとうございます」

    尊「お疲れ様でした」

    唯「どーぞー。座って座って」

    9人が席についた。

    美「ちょっと待ってね。いただきますの前に」

    覚「何だ?」

    芳「あの、ささやかなんですが」

    エ「プレゼントをお持ちしました。はなむけの」

    美「今日戻る四人に、用意してくださったって」

    唯「えー!」

    若「それは忝ない」

    一つずつラッピングされた小さな包みが、二人からそれぞれに渡された。

    源「わたくしにまで」

    ト「どうしましょう」

    唯「開けていい?」

    芳「どうぞ」

    唯「ん?これ、定期入れ?あ、なんかついてる」

    尊「リール付きだ」

    唯「え?電車もバスも乗んないけど」

    エ「芳江さんのアイデアなんですよ」

    唯「うん?」

    芳「はい。お写真って、何枚か持ち帰られますよね」

    唯「そうだね」

    尊「はい。今回も用意してます」

    芳「こんな事はない方が良いですけど、どこかへお出ましにならなければならない際などに…」

    若「戦でしょうか」

    芳「そう、ですね。勿論普段から使ってもらってもいいんですが、身に付けて持ち歩けるようにと思いまして」

    唯「定期入れなのはどうして?」

    芳「普通の入れ物も考えたんですが、これですとリールの先にフックがついてますよね。落とす心配がないかなって」

    尊「腰の辺りに引っ掛けても、長さがあるから近くで見れるね」

    若「理に敵っておる」

    芳「アイデアは私でしたが、エリさんと一緒に選んだんですよ」

    エ「種類が多くて。楽しく選べました」

    唯「ありがとう!大事にするね!」

    若「ありがとう、ございます」

    源「大切に、使わせていただきます」

    ト「とても嬉しくて。勿体なくて…使えるかしら」

    唯「そこは使おうよ」

    ト「はい!」

    覚「ではそろそろ、いただくか。忠清くん渾身の作だ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days131~11日10時、期待してます

    尊なら、プレッシャーをプレジャーに変えられる、から?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    実験室の若君と尊。

    若君「もう、気に病まんで良い」

    尊「いいんですか」

    若「大学に入った後、どうしていくかは、よう考えておけ。ただその中で、タイムマシンの進み具合は勘案するな」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿との時間を、大切に過ごされよ」

    尊「ありがとうございます。あの」

    若「何じゃ」

    尊「もう一つ、兄さんに意向を聞きたかったんです」

    若「申せ」

    尊「今夜、永禄に帰ると、起動スイッチの燃料が空になります」

    若「で、あろうの」

    尊「少しですが、僕が貯めておいた燃料があります。補給しますか?それとも、僕がいつか必ず完成させるタイムマシンのために、取っておきますか?」

    若「…取っておけ。いつの日か、尊が現れるのを待とう」

    尊「わー、プレッシャー。でも、兄さんの期待は励みにして、頑張ります」

    若「うむ」

    実験室からリビングに戻ってきた二人。

    唯「おかえりぃ」

    源三郎&トヨ「おかえりなさいませ」

    若「おぉ、布団が片付いておる。これはしたり。お父さん、済みませぬ」

    覚「いいんだよ、手は足りてるからね」

    若「わしは何を手伝えば」

    覚「まだいい。今は、次の洗濯の洗い上がりを待ってるところだよ」

    若「あと何れ程でしょう」

    覚「15分位かな」

    若「15分、か…ならば今の内に。尊よ」

    尊「はい」

    若「預けておいた、例の物をくれぬか」

    尊「わかりました。部屋にありますんで。ここに持ってきますか?」

    若「いや、上で受け取る。唯」

    唯「なに?」

    若「共に参れ」

    唯「なになに?」

    二階に上がってきた三人。尊の部屋の前で待つ若君と唯。

    尊「はい、どうぞ。傾けないように気を付けてくださいね」

    若「世話をかけた。ありがとう」

    尊「いえいえ。では」

    ダンボール箱を渡された若君。尊は、そのままリビングに戻っていった。

    唯「なになになに!」

    若「部屋で見せる。扉を開けてくれ」

    唯の部屋。箱を開けると、

    唯「あ、お花の写真立て!」

    夏に二人で令和に来た時に、若君が唯にプレゼントした花束。永禄に帰った後、覚と尊でその花をプリザーブドフラワーに加工。今回、若君と尊で木箱と写真立てを繋ぎ、子供達五人で加工した花を木箱に埋め込んで、写真立てを完成させた。

    唯「四つだったね」

    若「一つは、下に持っていく」

    箱から出して机に置いたが、その内一つを脇へ寄せた。

    唯「着いてすぐに、七人全員で撮った写真を入れたんだね。私の着物姿も貴重だし?」

    若「これは、奥の棚に置いていただこうと思うておる」

    唯「ふぅん」

    三つは、まだ裏を向いている。

    唯「あとは、なに入れたの?」

    若「まぁ待て」

    まず一つ目を表に返す。

    唯「ん?私?」

    お母さんから受け取った、母の膝で眠る唯の写真。

    唯「こんな写真初めて見たよ」

    若「お母さんにいただいた。やはり知らなんだか」

    唯「なんでこれなの?」

    若「これは、唯の知らぬ、かつての写真」

    唯「ふん?」

    次に、二つ目を表に返した。

    唯「あ、コスプレ」

    写真館で撮った、軍服の若君と並ぶ、はいからさんの装束。

    若「これは、唯の知らぬ時代の、今の写真」

    唯「はあ。珍しくて悪くないとは思うけど、なんでこれ?」

    若「最後は、こうなる」

    三つ目を表に向けたが、

    唯「なんも入ってないよ」

    若「これは、唯がまだ知らぬ、未来の写真が入る」

    唯「知らぬシリーズってのがあんの?よくわかんないけど、たーくんがそうしたいならそれでいいけど」

    若「いつか、また此処に参れた暁に、写真が入る」

    唯「そう。ふーん。なんやかや言ってさ」

    若「ん?」

    唯「たーくんが尊に一番プレッシャーかけてない?」

    若「プレッシャー。先程も尊にそう言われた。意味は?」

    唯「え!さっき聞かなかったの?!えーと、えーっと…そうだ!圧が強いってヤツ」

    若「重荷になると」

    唯「そー、そんな感じ。尊には、三つ目に写真入れない理由は言ったの?」

    若「空けておくと申したのみじゃ」

    唯「あっそう。だったら、ヤベぇめっちゃ待ってる!とは思わないかな。でも尊、気づいてんじゃない?」

    若「そうか…まぁ、良かろう。ハハハ」

    唯「笑ってるし」

    廊下で足音がする。

    若「洗い上がったようじゃ。干すのを手伝わねば」

    唯「ん。参りますか~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days130~11日9時30分、道に迷う

    彼なりの信条がある訳で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊「親のスネをかじり続ける生活しか念頭になかったのを、今、すごく恥じています」

    若君「一つ、問うても良いか」

    尊「はい」

    若「大学に入るのは、甘えではなかろう?」

    尊「…微妙です」

    若「ん?お父さんが、大学とは広く浅くではなく、より突き詰めて勉学に励む地と申されておったが」

    尊「その通りなんですけど…」

    若「口ごもっておるな」

    尊「タイムマシンの制作や研究は、もっともっと突き詰めたいです。でも大学では教われません。全て独学なんで」

    若「尊は、己の才覚一つで何事も為せるからのう」

    尊「前にもそう言ってくれましたね。僕は…僕は、全然成長していません。期待に応えられない、ダメな奴なんです」

    若「んむ…。ならば、何ゆえ通おうと?」

    尊「あの…何と言うか、まぁ大学なんて、行って当たり前じゃね?位にしか考えてなかったんです」

    若「それが、スネをかじる、と」

    尊「はい」

    若「両親がそれを良しとした。そしる謂れはない」

    尊「でも、このままじゃダメで」

    若「何がある?」

    尊「現代では、何をするにもお金がかかります」

    若「そうじゃな」

    尊「高校では、学校行っても真っ直ぐ帰宅。貰っている小遣いを使う機会はあまりありませんでした。たまに寄り道して買い物するにしても、タイムマシンに使う具材とかで。だから、大学に行ってもそんな生活を続けるつもりだったんです。今までは」

    若「そこで瑠奈殿か」

    尊「ただ会うだけじゃなくて、一緒にどこかに出掛けたり、食事したりプレゼントしたりしたい。兄さんも、イブにお姉ちゃんと行きましたよね。何となくわかりませんか?」

    若「わかる」

    尊「大学生にもなって、その資金まで親に出させる訳にはいきません。僕自身が働いて稼がないと。アルバイトって言うんですけど。何かしら始めなければと思ってます」

    若「大学に通う合間にか。それは忙しい」

    尊「そうなると、作業に使える時間は益々削れていきます」

    若「それが、見通せなんだに繋がるのか」

    尊「瑠奈の存在がなくても、本来気付くべきでした。いつまでも、外の世界を知らない甘えた子供でいてはいけないって。この日常はずっと変わらない、変わる筈なんてないと、高を括っていたんです」

    若「永禄には思いを馳せるが、より先の世に、己がどうなっておるかは読めなかったと」

    尊「情けないです」

    若「そこまで申さずとも。わしに顔向け出来ぬ、とは?」

    尊「前回サシで話をした時、新型タイムマシンが完成したら迎えに行きます、と豪語しました。しかも、5人以上乗せますって野望まで付け加えて」

    若「覚えておるぞ」

    尊「先が見えなくなりました。いつできるかは未定ではありますけど、例えば二年でできた筈が五年かかるとか」

    若「何年かかろうとも、完成そのものに驚くが」

    尊「今回兄さん達が使った起動スイッチ2号は、未来の僕が全て作り、未来の僕がバージョンアップ…えーっと」

    若「何となくわかる」

    尊「すいません。その未来の僕がいつの僕なのか、全く見えてこなくなって」

    若「つまり」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿に出会うたが故に、未来とやらが遠のいたと申したいのか?それで先程から謝っておると」

    尊「結果的には」

    若「尊。それは違うておるぞ」

    尊「あっ、本家…」

    若「新型を完成させた尊の傍らには、瑠奈殿が居る」

    尊「まさか」

    若「居る筈がないと、どうして言い切れる?」

    尊「僕の秘密を、打ち明ける前提ですよね」

    若「瑠奈殿は尊を、尊敬に値すると申した。何を恐れている?彼の君が、尊の偉業を言いふらすとでも?」

    尊「…」

    若「どうじゃ」

    尊「それは…瑠奈なら、ないと思います」

    若「会うたのは一度きりであるし、短くしか話してはおらぬが、わしもそうは思えぬ。才気ありと見てとれたが」

    尊「確かに、よく気がつくし、頭の回転は速いです」

    若「良き片腕になるのではないか?かえって、早う完成するやもしれぬ」

    尊「それは…考えが及びませんでした」

    若「一つ話しておこう。忘れられぬ、尊の言葉がある」

    尊「何でしょうか」

    若「相当信用の置ける人物でないと、家の事情が話せぬと」

    尊「言いましたね。好きな子は居ないのかって、突然お姉ちゃんに聞かれて」

    若「無理に事情を話せとは申さぬが、それを聞き、尊が心を開ける者がいつか現れるのを、切に願っていた」

    尊「心配かけてごめんなさい」

    若「それが瑠奈殿であろう」

    尊「そう…思いますか」

    若「出会うて日が浅い。疑うのも頷けるが」

    尊「兄さんのお眼鏡にかなったんなら、確かですよ。何より…たかだか18年しか生きてませんけど、こんなに全力で慕ってくれる女性に、今後出会えるとは思えません」

    若「フフ、慕われれば誰でも良いのか」

    尊「いえ!」

    若「瑠奈殿がどう接してくるかではない。尊の存念は如何に」

    尊「身を焦がすような恋に落ちるなんて思ってもみなかった。離したくない。大好きだから、僕をもっと理解して欲しいです」

    若「熱いのう」

    尊「自分でも驚きです…わかりました。話せる時期が来たら、話したいと思います」

    若「急がずとも良いが」

    尊「…はい」

    若「何か、足枷になっておるのか?」

    尊「もっと、自分に自信がついたらって…」

    若「自信。鍛え始めたのは、それもあるのか」

    尊「そうです。もう少し体力をつけて、瑠奈に見合うと、自分が思える男になりたいんです」

    若「あれだけ慕われておれば、充分であろうに」

    尊「一緒に電車に乗ってると」

    若「うん?」

    尊「この子の相手がお前?って顔、よくされるんですよ」

    若「そんな輩は構うでない」

    尊「もう少し堂々とできたら、とは思うんです。だから頑張ります」

    若「そうか。フッ」

    尊「え、何ですか?」

    若「ゆくゆくはお姫様抱っこ、じゃな」

    尊「あー、それ…はぁ。出るのは溜め息ばかりです。できるようになる前に、嫌われないといいですけど」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days129~11日8時30分、忸怩たる思い

    こんな悩みを抱える日が来るなんて。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    モーニングコーヒーをクリニックに配り終え、戻ってきた源トヨ。

    源三郎「お二方共、忠清様の料理を心待ちにされておるご様子でした」

    若君「それは一層、腕によりをかけねばのう」

    トヨ「こちらにお出ましになるのは、1時頃では、との仰せでございました」

    覚「そんなモンだろうな」

    若「お父さん。わしはどの時分から、飯の支度を始めれば良いでしょうか」

    覚「11時頃かな」

    若「わかりました」

    尊「今さらだけど、トヨさんも現代の時間の言い方で通じるんだ」

    ト「読み解ける方が、暮らしやすうございますので」

    尊「偉いなぁ」

    若「ならば尊」

    尊「はい。お願いします。ちょっと、兄さんと二人で話してくるから」

    唯「はいはい」

    若「実験室か?」

    尊「そうですね」

    若君と尊は、外に出ていった。

    唯「さてと。なにしてよっかなー」

    覚「仕事ならあるぞ」

    唯「仕事かー。ウソウソ。なにすればいい?」

    覚「珍しくいい返事だな」

    唯「たまには」

    覚「最終日にしてようやくか。隅に寄せてある布団を全部干したい。洗濯の続きもしたい」

    唯「ん、わかったー」

    源「ならば布団は、わたくしが運びましょう」

    ト「洗い上がっている物を、干して参ります」

    唯「手分けしてやりますか~」

    実験室。

    若「入るのは、参った日以来じゃ」

    尊「そうですね。今回は」

    若君がゆったりと腰を下ろした。尊も正面に座ったのだが、

    若「何やら硬いが」

    正座をし、握り拳を両膝に乗せ、ずっと下を向いている。

    若「急にどうした」

    尊「兄さんに、見せる顔がないんです」

    若「何かしたのか?」

    尊「これから迷惑をかけるんで」

    若「これから?」

    尊「僕は…」

    若「…」

    尊「見通しが全然できてなかったんです」

    若「見通し?」

    尊「甘えがありました」

    若「そうは見えぬぞ」

    尊「兄さんに申し訳なくて」

    若「謝られる由がわからぬが。まぁ良い。申してみよ」

    尊「…僕がタイムマシンを完成させたのは、お姉ちゃんが永禄に飛ぶ少し前でした」

    若「見上げたものと思うておる。よう作ってくれた」

    尊「作れて当然だったんです」

    若「そう、なのか?」

    尊「その頃の僕は、学生なのに学校に行かず、家に引きこもっていました」

    若「話には聞いた。辛い事柄があり、それを避けるのに、通わぬ道を選ぶのが最良と考えたのじゃろ。尊も両親も」

    尊「今となればですけど」

    若「時間は潤沢にあったゆえ、作れたと?」

    尊「はい。朝昼晩食事が用意され安全な生活。他事を何もせず、四六時中タイムマシンの事だけ考えて没頭していたので」

    若「そっと見守っていただいた両親に、感謝せねば」

    尊「はい」

    若「それで?」

    尊「今は学校もちゃんと通ってますし、春からは大学に行きます。少しは環境が変わりますが、それでも家に帰れば作業をする、受験準備前と変わらずできると思ってたんです。でも」

    若「でも?」

    尊「瑠奈に出会いました」

    若「良き出会いであったの」

    尊「最初は、押しも強いし、何で僕を選んだんだろうという思いが先行して、自分の気持ちがよくわからない状態が続いていました」

    若「あれよあれよ、か」

    尊「でも日を追う毎にどんどん惹かれていき、あっという間に、瑠奈の存在が僕の中で大きくなったんです。自分でも、展開が早いと思うんですけど」

    若「フフ。歩みを止めず突き進むは唯も同じ。やはり姉弟じゃの」

    尊「今は、瑠奈の事ばかり気になって。勿論今は、受験勉強が一番ではありますけど」

    若「良いではないか。尊は一体、何を案じておるのじゃ?」

    尊「怖いんです」

    若「怖い?」

    尊「このまま、この恋に溺れていってしまいそうで…」

    膝上の拳が、より固く握られた。

    若「それも良しと思うが」

    尊「他の事が手につきません。きっと、タイムマシンも。ごめんなさい」

    かすかに震えている尊。

    若「…続けよ」

    尊「僕は、一生恋愛なんて縁がないと思っていました」

    若「決めつけんでも良かろうに。尤も、わしも唯に出会う前は似た様なものであったがの。ハハハ」

    尊「今は、どうしようもなく、瑠奈が好きなんです」

    若「瑠奈殿に、尊の存念は伝えたか?」

    尊「ちゃんと伝えました。態度でも」

    若「応えてくれたか」

    尊「はい。とても喜んでくれました」

    若「幸せを噛み締めておると。それで?」

    尊「必ず大学に入り、春からは、勉学に励みつつも、できるだけ一緒の時間を過ごしたいんです」

    若「デート、もしたいと」

    尊「はい。でも見通しが甘過ぎて」

    若「そこが、ようわからぬのじゃが…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days128~11日土曜6時、ホットほっと

    今年もよろしくお願いいたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ウォームアップ完了。一人を除いて。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和最終日の朝。キッチンで両親とトヨが、朝食の支度をしている。

    トヨ「朝から、こちらをお使いになられるのですね」

    食卓に、ホットプレートが置かれた。

    覚「これでパンを焼くよ」

    ト「そうですか」

    覚「パンを食べるのもこれで最後だね。あー、今回はって意味だよ」

    ト「今回は。はい。お心遣い、ありがとうございます」

    美香子「彼らも、一段と熱が入ってるわね」

    庭では、若君と源三郎が、体から湯気が立ち上らんばかりに稽古に励んでいる。

    ト「お野菜も随分と刻みましたし、チーズ、も山盛りに用意しました。これは?」

    覚「ピザトーストを、銘々で好みの具をのせて作って貰おうと思ってな。ピザは何回か食べてるからわかるよね」

    ト「はい」

    覚「尊がさ」

    ト「尊様が?」

    覚「最後の朝はこれがいい、ってリクエスト…要望したんだ」

    ト「何か意図がお有りなのでしょうか」

    美「そうね。なるほど、って感じかな。ところで」

    昨夜リビングに並べて敷いた布団は、ほぼ片付けられており、まだ起きようとしない唯を残すだけとなっている。

    美「唯~。そろそろ観念しなさい!」

    唯「キャー!」

    体にぐるりと巻き付けていた布団を、母にベロンと剥がされた唯。勢いで、コロコロとリビングの入口まで転がっていった。

    覚「漫画みたいだな。おー、お帰り」

    尊「ただいまー。わ、何?!」

    唯「ギャー!!」

    外から帰って来た尊。転がってきた唯につまずき、蹴飛ばしてしまっていた。

    唯「痛いぃ」

    尊「何だよ、まだ寝てたのかよ、そんなんじゃ全員でラジオ体操できないだろ」

    唯「うるさいな、今起きるところですー。なにアンタ、朝帰り?」

    尊「はあ?早起きして、走ってきたんだよ」

    唯「走る。尊が?!」

    尊「体を鍛えるんだ」

    唯「マジ?試験前なのに?」

    尊「頭も冴えるから、うってつけなんだよ。ほら立って」

    唯「はあ」

    尊が伸ばした手に支えられ、唯が立ち上がる。そこに、若君と源三郎が庭から戻ってきた。

    若君「尊」

    源三郎「尊殿、お帰りなさいませ」

    尊「ただいま戻りました。神社まで行って、階段の昇り降りをしてきましたよ」

    唯「階段!」

    若「そうか」

    唯「なに張り切ってんの」

    尊「鍛えるって言ったじゃない」

    唯「いきなりワケわかんないー」

    若「一日で終わらぬようにの。何事も、続けてこそじゃ」

    尊「はい。これからも頑張ります」

    美「はいはい、そろそろ始まるわよ~」

    テレビを点け、7人全員で体操を始めた。

    美「ん~、いい!」

    覚「永禄でも、できそうかい?」

    ト「はい」

    源「是非にと思うております」

    唯「たーくんと一緒にやろうとすると、もれなくじいがついてくるけど」

    源「それは、それで」

    若「フフ」

    朝ごはんがスタートした。ホットプレートにパンを並べ、焼き始めている。

    唯「コーン盛り盛りがいい!」

    美「こぼれてる方が多いわよ」

    唯「落ちたのも焼けるからいい。そうだ!こぼれた方にもチーズかければ」

    覚「カリカリになって、それはそれで美味そうだな」

    ト「尊様」

    尊「はい?」

    ト「この献立は、尊様が望まれたと伺いました」

    尊「そうなんですよ。原点に戻ろうと思って」

    ト「原点?ですか」

    尊「先月1日。朝ごはんに出たピザトーストを食べながら読んだ新聞記事から、今回の全てが始まったんで」

    若「わしの日記と、木村殿か」

    尊「はい」

    美「あの時は、二週間後には7人で食卓を囲むなんて、夢にも思わなかったわ」

    覚「3人から、5人ではなく一気に7人だったからな。嬉しかったな~」

    ト「わたくしも、このように団欒に加えていただけるなど、この上ない喜びでした」

    源「家族同様に接していただき、感謝しております」

    唯「チッチッ。それは違うておるぞ」

    尊「出た!戦国言葉」

    唯「同様じゃないよ。マジ家族だもんね」

    覚「そうだ」

    美「そうよ」

    源「…有り難き幸せでございます」

    ト「はい…」

    美「トヨちゃん~、涙ぐむのはまだ早い」

    ト「すみません」

    唯「いい感じに焼けた~。カリカリ~。ホットプレート最高!」

    美「唯に負けないよう、どんどん食べてね」

    ト「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days127~10日20時30分、団欒

    本年も、私の拙い創作話に目を留めていただきまして、感謝ばかりです。ありがとうございました。

    来年も、ゆるゆると続きます。宜しければ、今しばらくお付き合いくださいませ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    一見、抑揚のない日常こそ、かけがえのないもの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母が仕事を終え、居酒屋に到着した。

    美香子「こんばんは~」

    店主「いらっしゃい」

    カウンターの客1「美香子先生じゃないですか!」

    カウンターの客2「先生、ご無沙汰しております」

    美「あらお揃いで。こんばんは。その後お二人共、具合はいかが?」

    客1「はい、いたって平穏です」

    客2「痛みのぶり返しもなく」

    美「それは何より。私にしょっちゅう会ってるようではね。ご無沙汰はいい傾向よ」

    客1「何かあればまた診てもらいます」

    美「何かがないように、健康管理してくださいね」

    客2「ははは。そうですな」

    美「では、失礼します」

    座敷で手招きしていた唯。

    唯「人気者だねぇ。お疲れ~」

    尊「お疲れ様」

    美「お待たせ。あら、まだ起きてる」

    覚「話に花が咲いてな」

    美「いつも咲いてるわよ。お父さんが勝手に寝始めるだけでしょ。今日は、トヨちゃんが向かいに座ってるから、上手く操縦してもらえてるのね」

    トヨ「いえ、私は何も。お父さんのお話が楽しくて」

    美「いい娘を持ったわ」

    尊「お母さん、ビール来たよ」

    美「待ってました~。それでは」

    7人揃って、乾杯~。

    唯「ねぇお母さん」

    美「あー美味しい。ん~?」

    唯「明日の午後、どこに遊びに行くの?」

    美「うん、それね。じゃあ、発表しちゃおうかな」

    唯「おーっ」

    美「それでは」

    尊「お願いします」

    美「お父さんの捻挫も、完治しました」

    唯「あ、そう言えば」

    尊「忘れてた」

    若君「お父さん。もう、何処も差し障りはございませぬか?」

    覚「うん。お陰様でな。先生もあぁ言ってるしさ、はは。心配かけて済まなかったね」

    美「という事で。ボーリングに行くわよ~!」

    唯「ボーリング!」

    尊「治ったにしても画期的だ。そう来たか。でも楽しそう!」

    若「ボーリング?」

    尊「兄さんには動画を見せてますよ。覚えてるかなー。去年結婚指輪作った時。大きくて重い球を転がすんです」

    若「的が何本もあり、玉を当て、なぎ倒しておった。あれか」

    尊「そう、それです」

    源三郎「指輪、と」

    ト「大玉?」

    尊「お姉ちゃんの指のサイズ調べるのに、参考にしたんです。って、どう繋がるんだ?ですよね」

    唯「まぁ、そのウラ話はまたしてあげるよ。どうやって遊ぶかは、行けばすぐわかるから」

    覚「張り切り過ぎて、帰ってから筋肉痛…は、君らにはないよな」

    美「ないない。点を競うとなるとついつい熱が入っちゃうかもしれないけど」

    ト「競う?」

    美「ゲームだけどね。誰かが一番になり誰かが七番になるわ。この前遊んだトランプもそうでしょ」

    源「争いではない、と」

    美「そうよ。家族全員が揃って楽しむのに、意義があるの」

    唯「何か話、デカくなってない?」

    尊「いいじゃない。会話を丁寧に拾ってるんだよ」

    若「フフ。心待ちに致します」

    その後も歓談は続き、時刻は22時を回った。

    尊「奇跡だ。お父さんが寝てない」

    覚「あんまり皆が言うから。かえって目が冴えたよ」

    尊「飲み足りないの?」

    覚「いや。充分堪能した」

    美「それこそ、トヨちゃんの才能ね」

    ト「そんな、お恥ずかしい」

    美「担がなくてすむだけでもホント助かるわ。そろそろ帰りましょうか」

    帰宅しても、イベントは続く。

    唯「ギリ、布団並んだ!」

    美「合宿みたいな風情ね」

    覚「修学旅行だろ」

    尊「戦国時代にない言葉ばかり並べないでよ」

    覚「おっ、並べるにかけて?」

    尊「浮かれてるなぁ」

    リビングに布団が7組。部屋を暗くしてからも、会話は続く。

    唯「千原じい、ヒドイよね」

    若「急に何じゃ。話を蒸し返すのか」

    唯「天野系の姫は妻にするななんてさ。関係ないじゃん!そー思わない?源三郎もさぁ」

    源「それは…恩義もございますし」

    唯「そんなんに縛られてたなんて、千原じい、のろってやろうかな」

    尊「物騒だな。ちょっと待って、もうあの世の人じゃないの?」

    唯「そうだけど。なんか今さらだけど怒れてきちゃって」

    若「唯がどう思うておろうとも、トヨが気にかけておるか否かじゃろ」

    唯「まあね」

    ト「唯様」

    唯「あい?」

    ト「私、その話を聞いても、怒りはありませんでした」

    唯「そうなの?」

    ト「忠義が素晴らしくて…源ちゃんを惚れ直しました」

    唯「あー。はいはいごちそうさま。おやすみっ」

    尊「なんだよ、話振っといて」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    10日のお話は、ここまでです。

    さて。新年ですが、勝手ながら投稿は4日から再スタートさせていただきます。ご容赦くださいませ。

    それでは皆様、よいお年を。

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    四人の現代Days126~10日17時30分、春からのビジョン

    それでも、かなり生活環境は変わる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「そろそろ出かけるか」

    唯「はーい」

    その声に、反応していない尊。どこか上の空でソファーに座ったままでいる。

    トヨ「尊様、お支度を」

    尊「あ、ごめんなさい」

    六人で家を出た。すっかり暗くなった道を歩く。

    唯「おやじさんの作る煮物が、超ウマなの!」

    ト「それは教えを乞いたいですね」

    覚「今日は人数も多いからさ、遠慮せず色々注文してくれよ」

    源三郎「はい」

    若君と尊は、最後尾で並んで歩いていた。

    若君「勉学には、励んでおれているか?」

    尊「はい。バッチリです。ちゃんと大学に入りますから」

    若「尊ならば、余裕綽々であろうが」

    尊「そう…ですね」

    若「ハハッ、大きく出たのう」

    尊「どこでも行けそうだったんですけど」

    若「選び放題か」

    尊「家から通いたかったんで、通える範囲では一番難しい学校にしました」

    若「ほぅ」

    尊「せっかくなら、もっといい大学にすればとは言われましたけど。僕がそんなに学歴とか気にしてないんで」

    若「学歴。どの大学に入るかで、その良し悪しが決まるのか?」

    尊「世間的には。でも学校の先生達と違って、父も母も強くは言わなかったので、最終的には自分で決めました」

    若「瑠奈殿も、大学には行くのであろう。同じ学び舎なのか?」

    尊「いえ、違います。瑠奈は女子大、おなごだけが通う大学に行くんです」

    若「それは、尊にとっては好都合じゃの」

    尊「校内に男子が居ないからですか?でも通学時間が長くなります。それは僕もですけど」

    若「様々言い寄って来そうな男衆から、守れそうか?」

    尊「うわぁ、ツッコみますね。喧嘩で大立ち回りなんてのは無理ですけど、もっと自分に自信が持てて心も強くなれるよう、体力作りに励みます。あ、でも通学、半分位は彼女と同じ経路なんです」

    若「そうか。それは楽しみじゃの」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿は、心より尊を慕うておるのが、手に取るようにようわかる」

    尊「恐縮です」

    若「大切にせよ」

    尊「はい!」

    若「離れて暮らさぬのを決めたのは、お父さんお母さんが淋しがらぬようにとの心遣いもあるのではないか?」

    尊「あ、まぁ」

    若「まこと親思いよのう」

    尊「それもありますけど…」

    若「他に訳があると?」

    尊「タイムマシンを完全に操れる、未来の僕に少しでも早く近づきたいんで、家は離れられません」

    若「より研鑽を積むと」

    尊「春からは、またコツコツ作業を進めます。そのつもりです…」

    若「ん?どうした。顔がみるみる曇っておるが」

    居酒屋が見えてきた。尊が立ち止まる。それに合わせて、若君も歩みを止めた。

    尊「兄さん」

    若「うむ」

    尊「今回も、帰る前に二人だけで話がしたいです。時間もらえませんか」

    若「…そうか。それは構わぬが、今宵は難しかろう。明日の朝方は如何じゃ?」

    尊「わかりました。よろしくお願いします」

    深々と頭を下げた尊。

    覚「おーい、二人共何してる?早く入んな」

    若「参るぞ」

    尊「はい!」

    座敷に通された六人。

    おかみ「唯ちゃん、ちょっと見ない内にすっかり大人っぽくなって」

    唯「でしょでしょでしょ~」

    尊「中身は見た目程変わってないです」

    お「尊くんも、大きくなったわね~」

    唯「コイツ最近、同級生のかわゆーい彼女ができてー」

    尊「いいよ、そんな事言わなくても」

    お「あら。だったら、お酒が飲める年齢になったらぜひ、連れて来てね。おばちゃん、楽しみに待ってるわ」

    覚「あと二年あるな。頑張れよ、尊」

    尊「目標にします…」

    キンキンに冷えたジョッキに注がれた生中が、4杯出された。唯と尊にはジュース。

    ト「この量ですか?!」

    覚「多分トヨちゃんなら大丈夫だよ」

    若「これじゃこれじゃ」

    源「喉が鳴ります」

    乾杯!

    覚「あ゛ー」

    若「くーっ」

    源「うまい!」

    尊「みんな美味しそうに飲むなぁ。何かさ、ビールのCMみたいだね」

    唯「言える。トヨ、どう?」

    ト「この苦味、嫌いじゃないです」

    唯「大人だねぇ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days125~10日16時30分、時代時代で

    事情を知らないと、色々疑問がわく。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに到着した四人。

    唯「お菓子、お菓子~」

    若君「ハハハ。それはちと違うておるぞ」

    カゴをサッと取り、歩き出した若君。慌てて、源三郎が追いかける。

    源三郎「忠清様」

    若「何じゃ」

    源「カゴは、わたくしが持ちます」

    若「ん。良い」

    源「されど、荷をお運びいただくなど、畏れ多く」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「この令和の世も、残すはあと一日となった」

    源「は、はい」

    若「永禄に戻ったら、幾らでも持ってもらう。今はまだ良い」

    源「戻りましたら、でございますか」

    唯「えー、たーくん何言ってるの~?スーパーもレジもないのにぃ」

    若「物のたとえじゃ」

    唯「たとえ?」

    若「家臣に完全に戻るのは、もう少し後で良かろう」

    唯「ふーん?」

    若「下がっておれ」

    唯「だってさ、源三郎。たーくんにまかせとけば?」

    源「…心得ました」

    唯と若君が、売り場を仲良く進む。やや離れてついて行く源トヨだが、

    源「これが令和の世、なのであろうな」

    トヨ「そうね」

    周りを観察する二人。夕方の早い時間ではあるが、カップルが揃って買い物をする姿をちらほら見かける。

    ト「忠清様、こうして拝見すると、周りととても馴染んでいらっしゃるわ」

    源「そうだな。何より、楽しんでおられるのがよくわかる」

    ト「今は控えて。控えるのも得意でしょ」

    源「あぁ。任せろ」

    さて。こちらは、速川家。

    覚「はいはいはい、電話か。また忠清くんか?違うな、尊か。もしもし」

    尊の電話『もしもし、お父さん』

    覚「おー、どうした?おいおい、まさかまたトラブったのか~?」

    尊 電話『ううん、今日は大丈夫。ちょっと遅くなっちゃったから電話した。今黒羽駅に着いたけど、お店って、何時に予約してたんだっけ?』

    覚「母さんは仕事終わり次第合流だから、6時位には行きますって伝えてあるが」

    尊 電話『そっか、良かった。ちょっと焦ってた』

    覚「だから慌てなくていいぞ。唯達も、今スーパーに行ってるし」

    尊 電話『そうなの?!家に居ないんだ。もう帰ってくる?』

    覚「いや、4時前位に、ようやく今から向かうって連絡あったから、もう少しかかるんじゃないか?」

    尊 電話『そうなんだ、わかった、じゃあ急いで帰るよ』

    電話はすぐに切れた。

    覚「何を急ぐんだ。それに、どう連絡してきたのかって、なぜツッコミが入らない?僕の感動した話を、聞いてくれよ~」

    程なくして、尊が帰宅した。

    尊「ただいま」

    覚「おーお帰り。ん?」

    リュックをドサっと床に置くと、下を向いたまま、急いで洗面所に入っていった尊。

    覚「手洗いうがいか?」

    やがて出てきたのだが、

    覚「相当念入りにしてたな」

    尊「あー」

    覚「ん?前髪ビショビショじゃないか」

    尊「顔洗ったんで。着替えてくるよ」

    二階に消えていった。

    覚「行動に謎が多いな」

    唯「ただいま~」

    覚「こっちも帰ったか」

    唯達も帰宅。

    若「お父さん。先程は、話を途絶えさせてしまい」

    覚「いいのいいの。公衆電話には有りがちなんだよ。小銭でかけてると特に。いい経験だったね」

    若「はい!」

    覚「最初、何を言ってるのかわからなかったけど。あれか、戦で名乗る時は、あぁ始まるのかい?」

    若「そうです。驚かせてしまいましたか」

    覚「大丈夫だよ。声の抑揚が、まんま忠清くんだったから、すぐわかった」

    若「そうでしたか」

    尊が着替えを済ませ、下りてきた。

    尊「お帰りなさい。買い物行ってたんだね」

    唯「あれぇ?今日は一人~?」

    尊「基本一人です」

    唯「どっかに隠してない?」

    尊「ない。そこ、引っ張らなくていいから。なんだよ、買い物しっぱなしで、トヨさん達に片付けさせて」

    唯「あー。ごめんごめーん」

    ト「いいんですよ。お話しててください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    四人の現代Days124~10日15時45分、もしもーし

    どこにどう当てたのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今では珍しくなった、駅の公衆電話に群がっている唯達。

    若君「10円、はどれほど要るのじゃ?」

    唯「電話してる長さで変わるの」

    若「長さか」

    唯「100円でもいいんだけど、40円もあるし。たーくんも10円玉、持ってたりする?」

    若「コーヒーの支払いで使うてしもうた」

    唯「そっか。まぁ大丈夫っしょ」

    若「この箱に支払うと」

    唯「そうだよ。ではいってみよう!じゃあね、まずこれ耳に当てて」

    受話器を若君に持たせたのだが、

    唯「違うぅ」

    若「違う?」

    唯「端っこの、丸くてプツプツ穴開いてるトコに当てて」

    若「こうか」

    唯「もう一つの丸いのがちょうど口のあたりにくるでしょ。あー、そっちは離れててよくて…そうそう、それでいい」

    若「こう持つと、収まりが良いのか」

    唯「でね、上の丸いのから声が聞こえるから、下のそこに向かってしゃべってね。じゃあお金入れるよ」

    源三郎「忠清様とあろう御方が、少々手こずっておられる」

    トヨ「どうなるのかしら」

    若「何やら音がする。お父さんがもう話されておるのか?」

    唯「まだ。待って、今電話番号のボタン押してるから。お父さんが出たら、名前言ってね」

    若「名乗るのか。ん?音が変わった」

    覚の電話『はい、もしもし。速川です』

    若「おぉ、お父さんの声じゃ」

    唯「聞こえた?ならしゃべって」

    若「うむ。ならば」

    唯「ためるなぁ」

    若「我こそは、緑合の国の住人、御月…」

    唯「へ、なんで?!そこからじゃなくていい!名前だけで!」

    若「それでは名乗りにはならぬ」

    覚 電話『もしかして、その声は、忠清くんかい?』

    若「はい!お父さん。忠清です」

    覚 電話『いやぁ、びっくりしたよ。まさか、君と電話で話せるなんてなあ。何かあった?』

    若「膝を詰め、皆で話をしておりました。急ぎ買い物に向かいますが、戻るのが遅くなりますゆえ、一言お伝えしたく」

    覚 電話『そうか。わざわざありがとな。いいよ、ゆっくりで。まだ尊も帰ってないし』

    若「痛み入ります」

    覚 電話『何か食べときたい菓子とかあったら、買ってきて貰ってもいいぞ』

    若「菓子、ですか」

    覚 電話『心残りがあってもイカンからな。好きに買ってお…』

    ツー、ツー。

    若「ん?何じゃ?声が急に聞こえぬように!お父さんに一大事では?!もしや、倒れたのではなかろうか?!」

    唯「電話切れたからね」

    受話器を若君から受け取り、戻した唯。

    唯「はい、おしまい」

    若「お父さんは、無事なのか?!」

    唯「うん。全然大丈夫」

    若「ならば良いが」

    唯「まっ、気にしないで」

    若「話の腰を折るなど、とんだ無礼を働いてしもうた」

    唯「いいでしょ、言いたいコトは言えたんだし。お父さん、なんて?」

    若「所望の菓子があれば、買って良いと申された」

    唯「ふーん。それどーみても、私への伝言じゃないな」

    スーパーに向かい、歩きだした四人。

    唯「これもう一回食べときたい!ってお菓子、ある?」

    若「そうそうは思い出せぬが。源三郎、トヨはあるか?」

    トヨ「うーん…」

    源三郎「お言葉に甘えて宜しいのでしょうか」

    唯「あるなら言ってよ?これで頼まれた物しか買っていかなかったら、逆にお父さんガッカリすると思うし」

    源「あの、バーベキューの終わりに、お母さんがお焼きになった」

    唯「焼いた?」

    若「あぁ。あれはわしも気に入った。唯が焼くと焦がしよるが」

    唯「どーせそうですよぅ。スモアだね」

    源「はい。温かく、甘く、あの何とも言い表せぬ口当たりが忘れられませぬ」

    唯「そうなんだ」

    ト「いいですね。私もあのお菓子は、賑やかに過ごした情景と共に、優しいお味が思い出されます」

    唯「へー。ひそかに人気のスイーツってヤツ?だったら、私が腕をふるって、焼いてしんぜよう!」

    微妙な顔をして黙る、若君と源トヨ。

    唯「…ってもう、わかってますって。お母さんが作ったのが食べたいんでしょ?」

    三人が顔を見合わす。

    若「そうじゃな。母の味じゃからの。唯が焼いてはならぬとは申さぬが」

    唯「顔がダメって言ってたけど」

    若「そうか?」

    唯「材料どーんと買っとこ。どっかで、焼いてもらえる時間くらいあるっしょ」

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    続きます。

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