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  • 返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days40~3日14時、安心しておやすみ

    二人の未来に乾杯。
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    ランチ終わり。

    唯「なんか眠くなってきたー」

    尊「同感。昼寝しちゃう?」

    唯「しちゃうしちゃうー」

    覚「え?ここで?パラソルに入りきらんぞ?」

    唯「足は出ててもいいよ。ねっ、たーくんも」

    若君「言われれば、少し眠気を感ずるような」

    覚「ずっと日に当たってると疲れるもんだよ。一緒に休みなさい」

    若「わかりました。お父さんは?」

    覚「僕はずっとうとうとしてたようなモンだから。そろそろ母さんも着くかもしれないし。ささ、寝ちゃってー」

    子供達三人、川の字に並んでお昼寝。

    覚「中々いい眺めだ」

    しばらくすると、日傘をさした女性が近づいて来た。

    覚「あ、母さん」

    美香子「シーッ。みんなお昼寝中なのね」

    覚「お疲れさん。道、混んでたか?」

    美「ううん。空いてて順調だったし、快適なドライブだったわよ」

    寝顔を覗き込む。

    美「かーわいい。写真撮っちゃお。怒られるかな」

    覚「いや、このシーンは貴重だから」

    三人をパチリ。

    美「なんてかわいいのー。日に焼けて、鼻の上とか少し赤らんでるのがまたいいわ」

    覚「車、宿に停めたよな」

    美「うん」

    覚「じゃ、1本どうぞ」

    ビールを2本クーラーボックスから出して、1本を差し出す。

    美「あら、すっかり飲み切ったと思ってたら」

    覚「ちゃんと美香子さんの分も入ってる。二人で飲む為に」

    美「あらぁ。じゃあ、乾杯」

    その話し声で、若君が目覚めた。

    若「あっ、お母さん。もうお着きでしたか」

    美「お待たせしました。今、かわいい寝顔を見せてもらったわ」

    若「それはお恥ずかしい」

    美「そんな事ないわよー。撮ったの見せてあげる」

    スマホを見せる。

    若「ほぅ…」

    美「自分の寝顔なんか、見た事ないもんね」

    若「それは勿論ですが、その、思うていたより柔和な顔付きでした」

    美「ずっと優しい顔立ちよ?」

    若「いえ、この先の世で、家族の愛に包まれた者の顔になっております」

    美「まぁ、素敵!ありがとう忠清くん」

    覚「いくらでも愛情は注ぐよ~ビールの如く」

    美「酔っぱらいが、ちょっと調子に乗ってるわね」

    若「ハハハ」

    尊が目覚めた。唯を起こす。

    尊「お姉ちゃん、お母さん来たよ」

    唯「あ、おはよー、お母さん」

    美「しっかり遊んでるみたいね」

    唯「もう宿に行く?」

    美「まだいいわよ」

    尊「じゃあ、あとちょっとだけ。行きましょう、兄さん」

    若「そうじゃな」

    唯「あ、私お母さんに聞きたい事あるから、先に行って」

    尊「わかったー」

    若「では、今しばらく楽しんで参ります」

    美「行ってらっしゃい。…唯、何の質問?」

    唯「朝から胸がキツいの。着方が間違ってる?それか体がおかしい?」

    美「あら、そうなの。ねじれてるとか挟んでるってのはないわね。キツいのは今日だけ?」

    唯「実はプールの時、あれ?って思ったんだけど、今日着たらもっとキツい。水着縮んだのかな」

    美「それはないと思うけど。ふむ。ふーん、なるほどね」

    唯「なになに!」

    美「唯は、胸は大きくなれば嬉しいのよね。こちらでは栄養状態もいいし、多少大きくはなってるんだと思うわよ」

    唯「そうなんだ!やったー。でもたーくんは、大きさなんてどうでもいいみたいなんだよね。残念」

    美「それは、時代と価値観の違いだし、彼が紳士だからだと思う。でもお礼を言うとしたら忠清くんによ」

    覚「えーっ?!そんな、直接的な」

    美「お父さん。考え過ぎ。好きな人とずっと一緒に居られるだけで、女性ホルモン出まくりなのよ」

    唯「たーくんとラブラブだから、こうなった?」

    美「そういう事」

    唯「そっか、病気とかじゃないんだ、良かった~。じゃあ、合流してくるね!」

    美「行ってらっしゃーい」

    男子達の元へ、走って行った。

    覚「医者として、答えてないだろ」

    美「そんな事ないわよ~。女の先輩として、母としての方が大きいけど。でも、嬉しい」

    覚「頼られるのがか?」

    美「そうよ。一緒に居られる内に、沢山甘えて欲しいなと思う」

    覚「その、唯の成長にちょっと照れるよ」

    美「照れるのは、体の話だけじゃなくない?」

    覚「ん?あ、あぁ」

    美「めきめきと綺麗になってる。大人の女性に変わっていくのに立ち会えるなんて…そんな姿絶対見られないと思ってたから、本当に嬉しい。忠清くんに感謝するのは、私達の方だわ」

    覚「そうだな…」

    美「まだビールある?」

    覚「あるよ。祝杯か?」

    美「そうよ。今この瞬間と、輝く未来に、乾杯!」

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    もうちょっと波に揺られます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days39~3日12時、視線にご注意

    頭の中に、知識の引き出しがいっぱい。
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    覚が2本目のビールを飲み終わった所に、唯達が戻って来た。

    唯「お父さーん、ん?だいぶ飲んでない?」

    覚「まだ2本だけだ~」

    尊「まだ午前中だけど?」

    唯「ジュースもらいに来たー。中見せて」

    クーラーボックスの中。数本のビールとお茶、ジュースが複数。

    唯「あ、ジンジャーエール見っけ!これにするー」

    覚「そんなに好きだったか?」

    唯「昨日は眺めただけで、実物は飲めなかったから」

    覚「実物?眺めた?ボックスのそばには立ててあったがな」

    唯「やっと飲めるー」

    覚「まぁ、セレクトが正解だったって事だな。忠清くんも、尊も持ってけよ」

    尊「それより、お腹がなんとなーく空いてきた気がする」

    覚「尊にしては珍しい」

    唯「尊にしては珍しく、運動したからだよ」

    若君「朝飯が、早かったからでは」

    覚「確かに。じゃあさ、お金渡すから、お昼ごはん適当に買ってきて」

    尊「わかったー。じゃ、行きましょうか兄さん」

    若「お父さん、缶を捨てて参ります」

    覚「えっ、ありがとう。なんて気の利く子なんだー」

    唯「ちょっと待ってー」

    覚「おいおい、炭酸を一気に飲むんじゃない!」

    お昼ごはんを買い込み、一旦陣地に戻った三人。

    唯「これじゃ足りないよね、もっと買ってくる!」

    尊「あっ、お箸もらい忘れてるよ。お姉ちゃーん!」

    二人して走って行った。

    覚「騒がしい連中だ」

    若「ハハハ」

    覚「どう?海水浴は。遊べてる?」

    若「はい、存分に。連れて来ていただき、ありがとうございます。僕達、だけ楽しんでおるようですみません」

    覚「いやいや~いいんだよ。こうやってボーっと夏の風景を眺めるのも乙なモンだし、時々、ボンキュッボンのお嬢さんが通ると心踊るしな」

    若「お父さん、あの」

    覚「あ?」

    若「そのボンキュッボンとは、どのような」

    覚「えっ!えーっと…清廉な忠清くんに説明するのは憚られるなぁ」

    若「前に、唯が自分から言い出しておきながら、教えて貰えず仕舞いでして」

    覚「そ、そうなの。それは気になってたよね。えーとね…」

    唯達の姿が見えてきた。

    覚「…と、いう意味だよ」

    若「なるほど。よくわかりました」

    唯「ただいま!」

    尊「お待たせしましたー」

    ランチスタート。

    尊「あ、兄さん、それできたてで熱いですから」

    若「そうか、ありがとう尊」

    唯「ピクニックみたいー」

    覚「確かにな」

    唯「超楽しい!たーくんは?」

    若「楽しんでおるぞ。浜の者達が、一様に笑顔なのも良い」

    尊「さすが、遊んでても周りが見えてるのは、いつもながらすごい。ただ」

    唯「ただ、なに?」

    尊「兄さんが視線を向けると、女子の皆さんがバッタバッタと射抜かれていく」

    唯「え!」

    尊「ように、見受けられる」

    覚「ま、そうだろうな。見ててもそんな感じだ」

    唯「危険危険!寄ってこられちゃ困るから、昼からはもっとたーくんとくっついとく!」

    若「何やらようわからぬが。おなごは浜にも沢山おる。されど興味はない」

    覚「あの、それってさー、えーと、うん。確か、好きの反対は無関心、ってヤツ?」

    尊「お父さん、それを言うなら、愛の反対は憎しみではなく無関心です、だよ」

    覚「そうだったか?さすが、すぐ訂正が入るな」

    若「尊…実に胸を打たれる言葉じゃの」

    尊「先人には学ぶ事が多いですから。あ、兄さんも、その中の一人ですよ」

    若「いや、わしは未熟者じゃ。中々達観できぬゆえ」

    覚「忠清くんが達観できてないなら、僕らは生まれ変わっても無理だな」

    尊「僕、ら、って言ったね。正解だけど」

    覚「浜辺がなんか高尚な場になったなー。いや、一人は違うが」

    尊「お姉ちゃ~ん。全然聞いてないでしょ」

    唯「ん?食事中は、食べるのに全力投球なのじゃ」

    尊「投球中だって、外から球が飛んできたらちゃんと受けようよ」

    覚「飛んで来てるとも思ってないんだろ」

    尊「そんなに食べたら、水着、はち切れるよ」

    唯「え!」

    若「それは困るのう」

    尊「ほら、兄さんもそう言ってる事だし」

    唯「うーん」

    覚「往生際が悪いな~」

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    マザー・テレサですね。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days38~3日10時、忠清先生の授業

    命に関わる、とも言えるし。
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    男子チーム。着替えて日焼け止めも塗った。

    若君「お父さんも、Tシャツの下は水着を召されたのですね」

    覚「海には入らないよ?お酒飲むから危ないからね。でも気分が違うし、周りとも馴染むしな」

    尊「お姉ちゃん遅いな。あ、来た」

    モゾモゾしながら唯登場。

    尊「何してんの?虫にでも刺された?」

    唯「なんか…胸がキツい」

    尊「キツい。さては太り始めのサイン?」

    唯「え!やだー。でも背中はキツくなくて、胸だけなんだけど」

    尊「胸だけ大きくなったとでも言いたい?」

    唯「だってぇ」

    若「痛いのか?」

    唯「痛くはない。そこまでじゃないよ」

    若「まさか押されて飛び出るなどと」

    唯「いや、それはないから!」

    覚「いろんな意味で、事故のないようにな」

    シートを敷き、クーラーボックスをドンと置いてビーチパラソルを開く。

    覚「じゃ、ここが速川の陣地だから」

    若「わかりました、殿」

    覚「殿!なんか偉くなったみたいだ。ありがとう」

    尊「よーし、行くぞー」

    覚「尊、眼鏡そのままか?」

    尊「あ、忘れてた。外す外す」

    クーラーボックスの上に置いた。

    覚「見えるのか?」

    尊「プールの時も、なしで何とかなったから」

    覚「度付きのゴーグルとか売ってただろ」

    尊「万が一、その形に日に焼けたら困るから」

    覚「女優か?海は広いぞ。まぁ常に三人かたまってるようにな」

    唯「気を付けるー。尊が変な人についてかないように」

    尊「失礼な。お姉ちゃんも兄さんも、動きや佇まいが独特だから間違えないよ」

    波打ち際に、三人並ぶ。

    唯「じゃあ、せーので足浸けるよ。せーの!」

    若「おおっ」

    尊「もっと冷たいかと思ったら、案外そうでもなかった」

    若「砂が波と共に、さらりと指の間を抜けていくのう」

    唯「ここですぐ遊びたいところだけど、ちょっと我慢する」

    若「ほぅ?珍しい」

    唯「言ったなー。では尊からどーぞ」

    尊「実は、兄さんに教えてもらいたい事があって」

    若「教える?わしがか?」

    尊「古式泳法、ってのが知りたいんです」

    若「なるほど」

    尊「身に付けておくと、何かと便利かと思って」

    唯「私も覚えたーい」

    若「良いぞ。ただ此処はちと浅過ぎるのう」

    唯「なら、もっと深い所へGO~」

    賑やかな三人の姿を眺める覚。

    覚 心の声(水着、わざわざ揃えたんじゃなく、ほぼ三人同時に選んだって言ってたな)

    唯はレモン色のビキニ、若君はブルーの濃淡をグラデーションに染めてあるサーフパンツ、尊は同じデザインのモノトーン。

    覚 心(尊と忠清くんは、同士という感じがするし、反対色を着る唯を、二人して引き立てている感じもするし。水着までもが、持ち場が決まってるんだな)

    クーラーボックスからビールを取り出し、燻製をつまみに飲み始める。

    覚 心(はぁ~。極楽極楽と)

    海の中の三人。浮き輪に掴まりバシャバシャと、少し深い所に移動してきた。

    唯「この辺でいい?ではたーくんよろしくっ」

    尊「お願いします」

    若「わかった。この泳ぎは、川を渡ったり、水の中で体を安定させる為であるゆえ、顔は水面から出ておる」

    若君が立ち泳ぎを始めた。肩から上が水面から出ている。

    唯「すごーい!涼しい顔して泳いでる?立ってる?」

    尊「涼しい顔はいつもだけど」

    唯と尊、潜って若君の足捌きを確認。

    尊「わかったような気もするけど難しそう」

    唯「やってみよー!」

    若「二人共、安全の為、浮き輪を首に掛けておくのが良かろう」

    数秒なら浮けるようになった。

    唯「ふー。疲れた。あ、たーくんもういいよ、ありがと。浮き輪に掴まってね」

    尊「甲冑を着てこれやるんだもんね、兄さんがタフなのは当然だなぁ」

    唯「あとは?」

    若「随分と熱心じゃのう」

    唯「だって、なんかの時、絶対役に立ちそうだもん」

    若君が横向きになった。

    尊「あ、浮けばいいんだね。少し楽かな」

    両手両足で水を押し出すように掻き、ゆっくり進んでいく。

    唯「たーくんがやると、なんでも優雅に見えるけど」

    尊「でも実際は甲冑着て…以下同文」

    唯「さっきのよりはできそう。がんばろっと」

    こちらはスムーズにマスターした。

    唯「ありがとうございましたー、忠清先生!」

    尊「とっても勉強になりました、忠清先生」

    若「何やら面映ゆいのう」

    授業、終わり。浮き輪に掴まり、浅瀬に戻っていった。

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    現代人にも必要だと思う。

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    返信先: アシガール掲示板
    いえいえ

    公式掲示板、ヒーヒー言いながらも、膨大な量を懸命に読んでおいて良かったです。

    ご事情は致し方なく。セーブしなくても良い状況に、早くなればいいですね。書きたい!と思われているなら尚更です。

    そして、てんころりんさんのような公式時代からの方も、私のような当時の盛り上がりを存じ上げない方も、分け隔てなくもっと、このむじなランドに参加していただけると嬉しいですね。

    差し出口、大歓迎じゃ。

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    返信先: アシガール掲示板
    中途半端でちょろい

    今日はこちらにお邪魔します。

    てんころりんさん、今回もお誕生日リストありがとうございました。楽しませていただいております。

    その中で、野上元良がなぜ唯に中途半端でちょれ~と言われたのかがわからない、とありました。私の見解…とも違うんですが、僭越ながらお話しします。
    差し出口を、お許しくだされ←by木村殿。

    野上の地は羽木よりもずっと山奥にあるので、もっと山賊っぽいワイルドな猛者かと思いきや、随分と小柄な男が現れた。並んだ如古坊の方がよっぽどワイルドだし(^_^;)。

    髭の生やし方も、もっとわさーっとなってれば、山男来た!とも思えますが、これまたちと半端な感じ。私は、中途半端感をわざわざ出すために、その生やし方にしたのかな、と思ってました。付け髭しようと思えばいくらでもできますから。

    総領と言えば若君と同じなのに、誰?この人偉いの?と言いのける唯は失礼なヤツですが、そう思えなかった程、あまり威厳もなく中途半端と感じたまましゃべっちゃったんだと思います。

    ちょれ~ですが、ちょろいですね。若君が和睦を目指して、きっと誠意をもって手を尽くしたんでしょうから、そう簡単に野上がハイハイと言った訳ではない筈ですが、その辺は唯はわかってない。いかにもあっという間に話が進んだと思ったので、ちょろいじゃん野上!となったんだと思います。

    今の見解の中、一部は公式掲示板でどなたかが話されていた内容です。

    長々と失礼いたしました。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days37~3日土曜7時、唯先生の授業

    初めてのお買い物。
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    今日から旅行。早朝から準備中のリビング。

    覚「最後、クーラーボックス。重いよ」

    若君「はい」

    尊「積み込む荷物ってこれで全部ー?」

    唯「これもー!」

    唯がワンピースに着替えて下りてきた。

    唯「はい、たーくんと二人分の着替え」

    尊「はいよー。え、紙袋?雑だなー」

    唯「だってデカリュックはお城にあるもん」

    尊「あ、そっか。まぁ車だからいっか」

    覚「おー、それがエリさんの作品か。中々、似合ってるぞ」

    ヒマワリ柄のワンピース。

    唯「でしょでしょ?」

    尊「誰に褒められようと、基本、兄さんが気に入ればいいんだよな」

    若君が、微笑みながら唯を見つめている。

    尊「うわっ、その顔が全てを物語ってる。ごちそうさまです」

    美香子「あ、もう出かけられそうね。気を付けて行ってね」

    覚「悪いな、母さんだけ道中一人だが」

    美「いいのよ~キッチリ仕事終えてから行くわね」

    若「お母さん、先に参りますが、お二人の想い出の地、目の奥に焼き付けますゆえ」

    美「いい所だから、楽しんできてね。夕方には着く予定よ」

    覚「じゃ、忘れ物ないなー。では」

    唯&尊「では」

    覚「レッツゴー!」

    若「レ、レッツ…」

    唯「ちょっとー、いきなり、たーくんが知らない言葉使わないで!」

    車に移動。尊が唯の足元を見ている。ペディキュアが綺麗に塗ってあり、白いサンダルに映える。

    尊「うん、足元だけ見てたら、中身がこんなだとはバレないな」

    唯「なによぅ、いいでしょっ。自分なんか、またたーくんとお揃いでご機嫌なクセに」

    尊と若君の足元は、夏のお出かけ用に買ってもらった色違いのサンダル。

    尊「いいじゃんよー」

    若「尊」

    尊「はい?」

    若「先程から、面と向かい褒めるのは、苦手なようじゃの」

    尊「え!」

    唯「え、そうだったの?なんだぁ、超超キレイな絶世の美女なら、そう言えばいいのにー」

    尊「そこまでは申せません」

    美香子が手を振り見送る。

    美「行ってらっしゃーい」

    四人「行ってきまーす!」

    美「いい天気で良かったわ」

    順調に走り、高速道路のサービスエリアで休憩。

    唯「たーくん、財布持って来た?」

    若「持っておる」

    唯「お買い物の練習しない?自販機だけど」

    自販機コーナー。

    唯「お財布いくら入ってるんだっけ。ふーん、千円札1枚と五百円玉2枚ね。じゃあ、五百円玉をこの隙間に入れて」

    若「ここに差すと」

    唯「すると、入れたお金で買える飲み物のボタンが光るの。どれにする?」

    若「ほぅ、全て光っておる。ではこの、お茶を」

    唯「そのボタンを押して」

    ガコ、っと音がして落ちてきた。

    唯「で、取り出す。でね、このお茶150円なの。今入れたのが500円だから、引き算して350円戻って来なきゃいけない。この自販機は、おつりでもう出てきてる。その小さい窓の中から出して」

    若「おぉ、銭が小そうなって増えておる」

    唯「数えて」

    若「100と書いてある銭が3枚、50と書いてある銭が1枚。350、円、じゃな」

    唯「自販機の中には、何本も買えるようにまたボタンが光るのもある。その時はこの持ち手を下げると、おつりが出てくるからね」

    若「わかった」

    尊が合流。

    尊「あ、もしかして、初めてのお買い物?」

    若「おぉ、このお茶を買うたぞ」

    尊「へぇ、もうバッチリじゃないですかー」

    尊が右手を挙げる。若君がすぐに気付き、同じく右手を挙げた。

    尊「イェーイ!」

    若「イェーイ!」

    パシッ、とハイタッチ。

    唯「あれっ、私がジュース買ってる隙に、なんか仲良くやってるー」

    尊「うまくいったね、おめでとうだよ」

    唯「ふーん。たーくん私ともやる?」

    若「いや、唯とは、手はつなぐ方が良い」

    唯「やーん、やっぱり?」

    尊「はいはい、手つないでください。お父さんが待ってるからそろそろ戻ろう」

    10時。現地に到着した。車を宿に停め、歩いて海水浴場に。

    唯「ホントだ!砂浜が白ーい!キレーイ」

    若君「同じ海でも随分と違うのじゃな」

    尊「青い空、青い海、白い砂浜…絵に描いたような夏の風景だ」

    覚「じゃあ着替えて集合な」

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    いよいよ。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days36~2日15時30分、柔らかくて温かい

    あの頃の唯は、超サバイバル生活だったので。
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    リビングで寝入ってしまった唯を抱き上げ、二階の部屋に連れてきた若君。

    若君 心の声(よう寝ておる)

    ベッドに寝かせ、タオルケットをそっと掛けた。

    若 心(さて)

    本棚の前に立つ。

    若 心(尊に倣い、わしも学ぶとするかの)

    少しではあるが、図録や参考書が並ぶ中、見覚えのない冊子を発見。

    若 心(初めて見るのう)

    手に取る。

    若 心(食べられる、野草?)

    パラパラとめくる。写真と解説が続く。

    若 心(今まで気が付かなんだが、これは是非一読せねば)

    唯が寝ているベッドにもたれるように床に座り、1ページずつ読み進める。

    若 心(よう見る草もあれば、見覚えのない草もある。これが450年の隔たりなのであろうか)

    読んでいると、後ろで唯が動いた。

    若 心(目覚めたかの)

    本を置き立ち上がり、唯の様子を確認。

    若 心(ん?何やら…面白い)

    口をとがらせ、突き出している。

    若 心(面白いと申しては、また機嫌を損ねるのう)

    ずっと突き出したままで動かない。

    若 心(ハハッ、これはねだっておるのか?かわいいよ、唯)

    そっと近づき、唇を重ねた。満足そうな寝顔に変わる。

    若 心(起きはせぬか。夢の中で、うまい物でも食しておるのかのう)

    続きを読み進める。しばらくすると、今度は廊下で足音が。

    若 心(お父さんが、下へ行かれたようじゃ)

    時計は17時を指している。

    若 心(教えを乞う為には、そろそろわしも行かねば)

    唯の様子を伺う。すると、

    若 心(何が起こったのじゃ!)

    唯が泣きながら眠っている。

    若 心(どうすれば良いのか…)

    心配で覗き込む若君。その時、唯が目覚めた。そして抱きつき、泣いた経緯を話す。

    若 心(良かった。夢の中のわしが、酷い仕打ちをしたのではなかった)

    若君「落ち着いたら、下りて参れ」

    唯「うん。わかった」

    キッチンに下りてきた若君。

    若「お父さん、遅くなり済みませぬ」

    覚「全然遅くなんかないよー。じゃあまずは、玉ねぎをみじん切りにしようか」

    若「微塵切り、ですね」

    覚「そうだ。華麗に斬っちゃってー」

    カニ缶を開け、炒めた玉ねぎ、パセリと昼作ったソースを混ぜる。

    覚「少し固まってるから、成型しやすいと思う。一口大の、俵型にして」

    若「俵。知っておる言葉はわかりやすいです」

    覚「あ、そうだね」

    衣をつけ、いよいよ揚げ始める。

    覚「しまった」

    若「え?」

    覚「ちょっと揚げ油が少なかったなー。忠清くん、鍋から離れて」

    若「離れる?はい」

    その時、ポン!とコロッケが爆発した。

    若「えっ」

    覚「やっちまったなー。ごめんな、びっくりしただろ?油かかってない?」

    若「大丈夫です。が、危険が未然にわかるのですね。さすが師匠です」

    覚「できる師匠なら爆発させないよー。他のは上手くやるからね」

    カニクリームコロッケ、完成です。

    尊「やったー」

    美香子「あら~、形も綺麗」

    唯「絶対うまいヤツだぁ」

    全員「いただきまーす!」

    若君がまた、すぐ箸をつけない。

    唯「どしたの?心配しなくても、おいしいよぉ~」

    若「いや、これも熱かろうと思うて」

    覚「ヤケドは嫌だよな。でもこれはよっぽど大丈夫だよ。みんなバクバク食べてるだろ?」

    若「そうですね。頂きます。あ、うまい」

    覚「今夜も大成功だ」

    尊「爆発以外はね」

    覚「それな。次回頑張ります」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    2日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days35~2日15時、どうか醒めないで

    愛馬を操るが如く。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が呼んでいる。

    若君「唯、出かけるぞ」

    唯「へ?出かけるって、どこに」

    若「海じゃ」

    唯「え?海は明日…」

    若「ドライブに行きたいのであろう?参るぞ」

    唯「え?ドライブ?馬で?」

    若「何をたわけた事を。車に決まっておるではないか」

    唯「はあ?」

    助手席のドアを開けてくれる若君。訳もわからず乗り込む唯。

    唯 心の声(うそっ、たーくんが運転するの?え?えーと、これは…うん、夢だ。夢を見てるんだな)

    出発した。ハンドルを握る若君。真っ白な半袖Tシャツから伸びる逞しい腕を、じっと見つめる。

    唯 心(ずっと眺めてたいなぁ。どうか、途中で目が覚めませんように!)

    若「良い天気じゃ」

    唯「そうだね」

    若「ドライブ日和じゃの」

    唯「うん」

    若「そう申しながら、外の景色でなく、わしの方ばかり見ておるようじゃが」

    唯「見える景色で、一番キレイだもん」

    若「外よりか?ハハハ」

    海が見えた。しばらく海岸線沿いを走る。水面に反射する太陽の光が眩しい。

    唯「すごい、キラキラしてる」

    若「海は今日も、美しいのう」

    唯 心(キラキラなのは、海だけじゃないよ)

    少し高台になっている駐車場に入って行く。海側を向いて車を停めた。

    唯「まぶしーい」

    若「まだ日が高いからの」

    車からすぐ降りずに、黙って海を見つめる二人。

    若「車は、良いのう」

    唯「そう思う?」

    若「二人きりになれる」

    唯「うん、嬉しい」

    唯 心(どうせ夢なんだからさぁ、自分の好きな展開に、アレンジしてもいいよね)

    唯「たーくん」

    若「ん?」

    若君に近づき、口をとがらせるそぶり。

    若「ねだっておるのか」

    唯「ダメ?」

    若「大歓迎じゃ」

    そっと唇が重なる。驚く程、感触が柔らかい。

    唯 心(夢じゃないみたい…)

    停めたのは、カフェの駐車場だった。店に入ると、案の定、若君に視線が集中。

    唯 心(ねっ、ねっ、超カッコいいでしょ!でも私がひとり占めなんだから!)

    ジンジャーエールが運ばれてきた。グラスの中のはじける泡が、光を集めて輝く。

    唯 心(夢のデート。嬉しすぎる!炭酸の泡と一緒にはじけちゃいたい!)

    会話をはずませていると、徐々に日が傾いてきた。

    若「そろそろ帰ろうかの」

    唯「うん」

    車に乗り、走り出した。夕日が、海に沈んでゆく。

    唯「すごーい、真っ赤」

    若「先程までとは、うって変わった姿よのう」

    信号待ち。若君が唯を見ると、唯と唯越しの夕日が並んでいる。

    若「実に美しい」

    よく見ると、唯が泣いている。

    若「なんと。どうしたのじゃ」

    慌てて、コンビニの駐車場に車を停める。

    唯「ごめん、ごめんね」

    若「いかがした?」

    唯「夢ってわかってるんだけど、夕日はキレイだし、たーくんは超カッコいいし、感動して」

    若「夢、か。わしは、唯が望み喜ぶ事を、何なりと叶えてやりたいと思うておる」

    唯「嬉しい。ありがとう」

    若「唯が望むなら、車にも乗る。心の何処か片隅で、望んではおらなんだか?」

    唯「思ってた…たーくんの運転でドライブなんて、絶対叶わないから言わなかったけど」

    若「そなたの喜ぶ顔が見られるなら、何だってする。まさか泣かれるとは思わなかったがの」

    唯「ごめんね。望みって、願えば叶うんだね」

    若「それを教えてくれたのは、そなたではないか」

    唯「あ…」

    若君が唯の頭を撫でる。

    若「乗っておるだけでも、疲れるであろう?帰りは寝ておれば良いぞ」

    唯「うん。ありがとう」

    帰り道、目を閉じた。車がゆりかごのよう。

    唯 心(たーくんは、最高のダーリンだ)

    ここで、目が覚めた。

    唯「あっ」

    周りを確かめる。自分のベッドに横になっている。まだ涙が残っている。そして、

    若「唯、一体どうしたというのじゃ」

    若君が心配そうに覗き込んでいる。

    唯「あー」

    手を伸ばし、若君に抱きつく。

    唯「良かった、起きてもちゃんとたーくんが居た」

    若「わしは何処へも行かぬ。いかがした?」

    唯「あのね、たーくんの夢を見てたの」

    若「今、泣いておったではないか。夢の中のわしが、何かしたのか?」

    唯「ううん、すっごく優しくてカッコ良かったよ」

    若「では何ゆえ涙を」

    唯「幸せ過ぎて、かな」

    若「そうなのか。良い夢であったのじゃな」

    唯の体を起こし、涙を拭う若君。

    若「そろそろ、晩飯の支度の時間じゃ」

    唯「あ、そんなに経ってたんだ」

    若「わしは先に行く。落ち着いたら、下りて参れ」

    唯「うん、わかった。このまま行ったら、たーくんが泣かしたみたいだもんね」

    若「ハハハ。それは構わぬが、お父さんが心配するからの」

    日常に、戻ります。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、唯が寝ている間、若君がどう過ごしていたかをお送りします。

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    返信先: 創作倶楽部
    この後のお話35について

    描かれているモチーフが、現実に起こった出来事を連想させ、若君にそんな事させるな、とのご意見もあるでしょう。

    唯ちゃんならこう願ったであろう、ならば喜んで欲しい。そして、心優しき若君ならこうするでしょう、とあえてお送りします。二人に経験させたい夢のひととき、何卒ご容赦くださいませ。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days34~2日14時、シエスタです

    一番暑い時間。ぼんやりしててもいいじゃない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはん後、母以外の四人でまどろんでいる。

    覚「しまった!」

    唯「わっ!」

    尊「びっくりした!」

    覚「明日使う、大事な物を用意するの忘れてた、大変だ」

    唯「えー、なにを?」

    覚「ビーチパラソル」

    唯&尊「それ、大事!」

    若君「ビーチ、パラソル…」

    尊「あ、ビーチは砂浜、パラソルは傘です」

    覚「どこにしまったかなー」

    無事見つかりました。

    覚「お、開くな。使える。良かった」

    唯「あぶなかったー」

    若「随分と大きな傘じゃ」

    覚「海では、日陰がないからね。自分達で確保しないと」

    若「手に持ち、掲げるのですか?」

    覚「いや、それは重いからね。砂浜に置くというか、刺すんだよ」

    若「陣地の旗印としてですか?」

    覚「お、いい表現。合ってるよ」

    尊「というか、そもそもあとは何を準備してたの?」

    パラソルをたたんで、キッチンへ移動。

    覚「クーラーボックス。冷たい飲み物たくさん持ってくから」

    ボックスの隣に、缶やペットボトルが多数置いてある。

    尊「ビールも用意してあるね」

    覚「ビーチで昼間っから飲むのは、最高だからなー。あと、レジャーシート」

    若「おぉ、この敷物は見覚えがあります」

    唯「たーくん、覚えてたんだ」

    尊「あー、空港デートに持ってったヤツ?」

    若「羽ばたかぬ巨大な鳥が、何羽も居りました」

    唯「あーあの日のデートは…良かった、超幸せだった~」

    尊「こっちが羽ばたいて飛んできそうだな」

    覚「もう忘れ物はないと思うけどなー。ま、一安心だ」

    言いながら、首をコキコキと動かしている。

    覚「忠清くんに、頼んじゃおうかな?マッサージ」

    若「はい、喜んでさせて頂きます」

    唯「お父さーん、人使い荒くない?」

    覚「やっぱり?稼いでもらおうってのもあるからなー」

    若「お父さんのお役に立てるなら、何でもいたします」

    覚「嬉しいね~。いや、ちゃんと払うからね」

    マッサージ終了。

    覚「いやー、今日も気持ち良かったよ、ありがとう」

    若「喜んで頂けて嬉しいです」

    覚「ふぁ~。なんか気持ち良くて、眠くなっちゃったな。ちょっと昼寝でもしてこうかな」

    若「そうですか。ゆるりとお休みくだされ。休まれておる間、何かしておく事はありますか?」

    覚「感動だ」

    唯&尊「は?」

    覚「唯や尊の口からは到底出ない言葉を聞いて、感動してる」

    唯「気が利かなくてすいませんねぇ」

    尊「僕らが倍頑張っても、追い付かないよ、兄さんには」

    覚「倍か?」

    尊「もっとかー」

    覚「忠清くん、また夕方から頼むから、君も休んでて。じゃ」

    覚が二階に上がっていった。

    尊「僕も少し昼寝しようかな。15分くらいの昼寝って、かえってその後頭が働くんですよ」

    若「ほぅ。勉学に勤しむのに、丁度塩梅が良いと。そのような、体の仕組みまでもわかっておるとは」

    尊「試して、実際楽だったんで。兄さんの美味しい料理で英気を養ったんで、晩ごはんまで一頑張りしてきます」

    若「そうか」

    尊「…ありえない」

    若「え?」

    尊「お姉ちゃん、もう寝てます」

    椅子に座ったまま、寝落ちしている。

    若「いつの間に」

    尊「お姉ちゃん、そんな寝方したら体痛くなるよ」

    唯の体を揺する尊。

    唯「ん…」

    若「ハハハ。尊、では我らも二階に上がろうかの」

    尊「はい。お姉ちゃーん、起きてー」

    その時、若君が唯をひょいと抱き上げた。

    尊「あ」

    若「参ろうか」

    尊「はい。世話の焼ける姉でホントすいません」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days33~2日金曜8時、働き者です

    朝から一汗、かいてます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、若君がまたカレンダーの前に立っている。

    若君「この、休とあるのは何ですか?」

    美香子「クリニックのお盆休みよ」

    若「11から14迄線が引いてあります」

    美「暦と元々の休診日の関係で、13日だけ休めば連休に出来たから。15日からまた始めるわ」

    若「まだ盆、の内では?」

    美「毎年こんな感じなのよ。そうね、一昨年居た時は忠清くん、寝込んでたから」

    若「その折は、造作をかけました」

    美「いいのよ~。でも、あなた達が来る前に今年の盆休みを決めたんだけど、結果オーライだったわ」

    若「オーライ?」

    美「あ、正解だったって意味よ。帰るのは15日じゃない。芳江さんとエリさんに最後の日に会えるから」

    若「タイミング、が良かったと」

    美「あら現代語。ちゃんと理解してるのね、ホント勉強熱心。じゃあそろそろ行くわね」

    若君は、クリニックに向かう美香子に会釈をし、キッチンで片付けの終わった覚の元へ。

    若「お父さん、今日は金曜です」

    覚「お、朝からやる気満々だね~」

    若「何をいたせば良いですか?」

    覚「今日はね、ちょっと目新しい事をやろうと思う」

    若「目新しい?」

    覚「このメニューに決定!じゃなくて、いろんな料理に使い分けができる、いわば料理の素みたいな」

    若「素、ですか」

    覚「ホワイトソースを仕込もうと思う。前にさ、グラタンでヤケドしそうになった事あったじゃない?」

    若「グラタン…あー、はい。中が思いの外熱く、慌てました」

    覚「あの白いソースだよ。沢山作って冷凍しておけば、忠清くんのお手製料理が長く楽しめるからね」

    若「長く。それは良いですね」

    リビングに居た、唯と尊が寄ってきた。

    尊「洋食のコースができる?カッコいいね」

    唯「じゃあ、今日の昼と夜はなに作るの?」

    覚「昼は…そうだな、まずドリアにするか」

    若「ドリア?」

    唯「グラタンの下に、ご飯が敷いてあるヤツだね」

    若「ほぅ」

    覚「夜は、忠清くんの腕なら多分大丈夫だし、カニ缶があるから…カニクリームコロッケにするか」

    唯&尊「やったー!」

    唯「で、買い物は行く?」

    覚「明日から二日間家を空けるから、食材を減らさなきゃいけないんで、行かないぞ」

    唯「そうなんだー」

    覚「ヒマなら、クリニックに患者さんが来られる前に、駐車場や入口に打ち水してこい。ほれ、尊も」

    唯&尊「はぁい」

    覚「忠清くんは、早速用意だよ」

    若「はい!」

    小麦粉と顆粒スープと塩を混ぜた物と、牛乳を、少しずつダマにならないよう、泡立て器で慎重に混ぜて、火にかける。

    覚「この過程が、実は肝心」

    若「はい」

    覚「実は最後まで基本的に、ひたすら混ぜ続けるから」

    若「頑張ります」

    クリームチーズと白胡椒が入った。ゴムべらに持ちかえて、まだまだ混ぜる。

    覚「ここで焦がすと、ソースが白じゃなくて茶色になるから。頑張れ」

    とろみがついてきた。

    覚「おっ、そんな所かな。火をとめて」

    若「はい」

    覚「これで終わったかと思うだろ?違うんだなー。いろんな料理に使おうと思うと、あと二周は必要だけど。どうする?」

    若「無論、やらせて頂きます」

    覚「だよね。コツが掴めただろうから、僕はドリアの具材の用意を始めるよ」

    結局、三回作りました。

    覚「お疲れ様。上手に出来てるよ。座って小休止して。はい、麦茶」

    若「ありがとうございます」

    唯「たーくん、腕疲れたでしょ。揉んであげるね」

    若「済まぬの。あっ」

    唯「へ?」

    若「支払いは…」

    唯「やだ、そんなんナシだから!」

    小休止後、昼ごはんの支度に入る。

    覚「お前達、出番だぞ」

    唯&尊「はーい」

    覚「唯はグラタン皿にバター塗って。尊は、その皿にご飯を敷いてくれ」

    尊「了解ー」

    唯「ねーねー、具はなに?」

    覚「玉ねぎ、ウィンナー、パプリカとブロッコリーだ」

    唯「色がキレイだね」

    覚「忠清くんがソースを色白に作ってくれたからな、赤や緑が映えるぞ」

    若「ご指南の賜物です」

    覚「さ、チーズを散らしてと。ラストスパートだ」

    綺麗な彩りのドリアが出来上がりました。

    美「まぁ、すごく鮮やかね」

    覚「忠清くんの腕がいいからな」

    若「痛み入ります」

    覚「では」

    全員「いただきまーす!」

    若君がすぐに食べない。

    唯「どしたの?」

    若「熱くないか?」

    唯「むちゃくちゃ熱くはないよ」

    若「そうか」

    唯「冷めるの待ってたの?かわいいー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜も頑張ってね。続きます。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days32~1日8時、社会勉強です

    どの子にも、注ぐ愛情は同じ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「忠清くんに、渡す物があるんだ」

    真新しい財布が出てきた。

    唯「財布?」

    尊「誰の?」

    覚「忠清くんのだ」

    若君「え?」

    美香子「急に何、よね。忠清くん、もう三回もこちらに来てるのに、お金を扱う機会がなかったじゃない」

    若「はい。それは、由もありませぬゆえ」

    覚「で、忠清くんには今後、働いたお礼として随時支払いをしたいと思う」

    若「礼?」

    尊「お小遣いじゃなくて?」

    覚「普通、同居してるからといって、娘婿に小遣いはあげない」

    唯「働くって、家の手伝い?」

    覚「それは唯や尊もやるじゃないか。忠清くんにしか出来ない事に、支払う」

    若「それは、どのような?」

    美「超絶に気持ちいい、マッサージに。えーと、肩揉み、かな」

    若「肩揉み…わしは手練ではござらぬ。金を頂くなど出来ませぬ」

    美「あのね、忠清くん。あなたのマッサージって、優しさがにじみ出てて、とーっても癒されるの。自分では気付いてないでしょうけど」

    覚「充分、受け取る権利があると思うんだ」

    若「それは…大変恐れ多いのですが」

    覚「自分で自由に使えるお金は、あと半月暮らすのにも、あった方がいいと思うから。お節介かな?」

    若「そのような…。忝ない、わしにお気遣い頂いたのですね」

    唯「今、いくら入れてあるの?」

    覚「母さんと話して、一回500円にしようと。僕と母さんと一回ずつやってもらったから、1000円入ってる。忠清くん」

    若「はい」

    覚「受け取ってくれ。まだ少額でなんだけど、これはどう使うのも君の自由だ。唯とのデートも、しやすくなるよ」

    唯「ありがとう~、お父さんお母さん」

    若「わかりました。大切に使わせて頂きます」

    覚「これをダシにでもないんだけど、これからどんどんお願いするから」

    若「はい!精一杯、務めます」

    尊「これで兄さんも、経済活動に参加だね」

    若「経、済?」

    尊「世の中を回すって事です」

    美「この経験が、少しでもあなたの総領としての糧になるといいなと思う。大袈裟かな?」

    若「いえ、そこまで考えてくださったとは。心より御礼申し上げます」

    昼になった。クリニックの休診時間に合わせ、昼ごはん中。

    尊「昨日、買い物に行ったのって、兄さんの財布探しだったんだね」

    美「そうなの。ごめんね忠清くん、好みも聞かずに買っちゃって」

    若「いえ、大層気に入っておりますゆえ」

    美「昨日はね、ホントはもっと早く帰るつもりだったんだけど、コスメの売場でつい、長居しちゃって」

    唯「へー。化粧品?」

    美「実は、唯にと思って」

    唯「私?!えっ、私化粧なんてうまくできないよぉ」

    美「違うのよ。取ってくるわね」

    小さい袋だが、少し重い。

    唯「なに?なんかガラスの瓶がいっぱい入ってる…あ、マニキュア!」

    美「そうなの。現代に居る間くらい、指先のオシャレしてもいいんじゃないかと思って」

    唯「色、何色もあるよ?」

    美「もうすぐクリニックも盆休みになるし、都会にお出かけもするし。私もその間はキレイにしたいから、いっぱい買っちゃった」

    唯「うまく塗れるか自信がないー。お母さん、塗ってほしい」

    美「それが、私も久々過ぎてあやしいわよ?今日の午後、ゆっくりやってみなさい。塗る順番は書いといてあげるから」

    14時。リビングの床にペタンと座る唯。マニキュア&ペディキュアの準備に奮闘中。

    唯「えーと、ベースコートが乾いたら色を塗る、かあ。たーくん、どの色がいい?」

    若「これで爪を染めるとな。おなごの装いも様々じゃの。これはいかがじゃ?」

    唯「あぁ、桜色でキレイだね。少しパールも入っててキラキラしてるし。じゃあこれで。さぁー、頑張るぞ!」

    若「唯」

    唯「なに?」

    若「やってみても良いか?」

    唯「えっ!たーくんが塗ってくれるの?!」

    覚「そりゃ随分贅沢だなあ」

    若「唯を、より麗しく仕立てる手伝いが出来るならば」

    唯「なんて優しいのぉ、嬉しい~」

    覚「そうか。そこで、より、も付け加えるんだな。勉強になるなあ」

    唯「お父さん、なにメモってんの」

    若君が唯の手を取り、丁寧に塗りあげていく。

    唯「あ、そっか。超小さい筆みたいなモノだから、たーくんの方が上手なのは当たり前かも」

    覚「城の姫と小姓みたいだぞ」

    唯「やーん、たーくんが小姓なんて」

    若「これ、動くでない」

    唯「あ、ごめん」

    実験室に居た尊が戻って来た。ちょうどペディキュアに差し掛かった所。

    尊「わっ!なんて光景!お姉ちゃん、何兄さんにやらせてんだよ」

    若「わしが、やりたいと進言したのじゃ」

    尊「へ、へー。写真撮ってあげよっか?」

    唯「あー、撮って撮って~」

    足の爪に塗る様子を、パチリ。

    尊「こんな感じ」

    唯「やーん、いい!すっごくいい~」

    覚「どれ、見せてくれ。ほー」

    尊「ほー、でしょ?お父さん」

    覚「あぁ」

    唯「どういう意味よ」

    尊「写真にするとさ、二人の世界ができてて、部外者立入禁止!って感じなんだよ」

    唯「いいじゃなーい!」

    若「そうじゃな。尊も、塗るか?」

    尊「いや、ご遠慮させていただきます」

    唯「お母さんには、お父さんが塗ってあげたら?」

    覚「それ、いいな。じゃあ、唯の指で練習するか」

    唯「お断りします」

    覚「だよな。じゃあ、自分の指で練習するか」

    尊「それもおかしいでしょ」

    覚「だな。ハハハ」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days31~8月1日木曜7時30分、積年の夢

    そんなに待ったのなら、ぜひ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もうすぐ朝ごはん。

    美香子「忠清くん」

    若君「はい、お母さん。何の御用でしょうか」

    美「今日から8月だから、カレンダーをめくるんだけどね。ちぎった7月のカレンダーを隣に貼りたいから、押さえててくれる?」

    若「貼る。わかりました」

    8月のカレンダーの左に、7月のカレンダーが並んだ。

    若「先月は貼っておらぬのに、今月は何ゆえこうされるのですか?」

    美「うん、あのね。忠清くん達が来てくれて、楽しい予定をいっぱい書き込んだじゃない」

    若「はい。プール、バーベキュー、などと書いてあります」

    美「捨てずに、思い出として取っておきたいのよね」

    若「そうなのですね。いつも、急に現れ申し訳ありません」

    美「何言ってるの~。ホントに忠清くんは自慢の息子だわ」

    若「いえ、褒めて頂くなど」

    唯がやってきた。

    唯「たーくん、なにカレンダー見てんの?」

    若「思い出と予定を」

    唯「へ?そう。今日から8月かあ。3日4日で海!もうすぐ!楽しみだな~」

    若「待ち遠しいのう」

    唯「ん?」

    若「なんじゃ?」

    唯「3日から4日に線が引いてあるのはわかる。泊まりで旅行だから。11日から12日にも線が引いてあるんだけど」

    若「二日間で何かあるのかのう」

    唯「だって、私もたーくんも知らないじゃん」

    若「そうじゃな」

    唯「それに怪しい暗号書いてあるし」

    若「怪しいとは?」

    唯「2✕2+1✕1って」

    若「ほぅ」

    尊が洗面所から出てきた。

    尊「二人で何つっ立ってんの?」

    唯「カレンダーの暗号を解読してるの」

    尊「は?」

    唯「ほら、このかけ算と足し算」

    尊「あぁ」

    唯「あっ、さてはあんた、答え知ってるな?」

    尊「答えは5でしょ」

    唯「違ーう!意味だってば」

    若「5…」

    唯「たーくん、わかったの?」

    若「人数かの。家族の」

    唯「え」

    尊「さすが兄さん」

    唯「人数だとなに?」

    覚「唯」

    唯「はぁい」

    覚「尊には、先に言う必要があったから知ってるんだ」

    唯「はあ」

    美「実はね、今日色々発表しようと思ってたのよ」

    若「今日、色々ですか」

    覚「ご飯後に言うから。はい、座って~」

    朝ごはん、ごちそうさまでした。

    覚「それでは発表する」

    唯&若「はい」

    覚「11日12日で、旅行に行く」

    唯「へ?はい、はいっ」

    尊「速川唯さん、ご発言ください」

    唯「海に行くの決まった時、取れる所で宿なんとか取ったって言ってた」

    覚「その通りだ」

    唯「2か所も取れたの?三連休だし、お盆も近くて、観光地なんて絶対無理じゃない?」

    覚「観光地ならな」

    唯「え?」

    覚「行くのはホテルだ。都会の高級ホテル」

    唯「都会…」

    覚「案外すんなり取れたんだ。みんなお盆には田舎に向かうからな」

    唯「なんで行こうって?」

    美「それはね。忠清くん、私達夫婦ね、結婚して20年になるの」

    若「それは、喜ばしい。おめでとうございます」

    美「唯達が来る前はね、尊が受験生だし、特に何も考えてなかったんだけどね」

    覚「二人が来て、旅行に行こうと思った時、この際前からやってみたかった事を実行しちゃおうか、ってな」

    美「それがね、夫婦で都会の高級ホテルに泊まる事だったの」

    若「一夜の宿をと」

    美「結婚した当日ね、式を挙げました、披露宴を行いました、そのまま二人で高級ホテルに泊まり初夜を迎え」

    唯「初夜…」

    美「翌日新婚旅行に出かける、ってのをやりたかったんだけど。高級ホテルの部分だけ入れ込めなくて、それぞれの実家に帰って、そこから新婚旅行に行ったのよ」

    若「それで此度、行うのですね。ならば、お二人だけ行かれても良かったのでは?」

    覚「君と唯は、きっと今後、こんな機会はないだろ?」

    若「それは…そうですが」

    尊「それでね、兄さん達にも体験してもらおうと。そうすると僕が余るからさ、一人部屋でもいいか?って聞かれて」

    若「なるほど」

    尊「いいよって。せっかくだもんね」

    唯「暗号は、二人部屋が2つ、一人部屋が1つって意味?」

    覚「そうだ。聞かずに進めたが、まぁ嫌とは言わないと思ったからな」

    唯「言わないよー。嬉しーい!たーくん、良かったね!」

    若「それは、楽しみじゃのう」

    覚「それでな、忠清くん」

    若「はい?」

    覚「君にはもう一つ、別件で話と提案があるんだ」

    若「別で、ですか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    別件は、次回をお待ちあれ。

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    二人の令和Days30~31日19時、光ほのかに

    バーベキューもいよいよ終盤。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    日の入りです。ようやく涼しくなりました。

    覚「花火、はもう少し暗くなってからだな。スイカ切ってくるか」

    若君「お父さん、手伝います」

    覚「いいのかい?さっきあんなに…」

    若「ご迷惑をおかけしたゆえ、是非手伝わせてください」

    美香子「忠清くんは、偉いわねぇ」

    覚「母さん」

    美「なに?」

    コソコソ話し出す。

    覚「どうしよう、切った時に忠清くんが卒倒でもしたら」

    美「まさか。なんで卒倒するの?」

    覚「だって、切ったら中が赤くて、赤い汁がタラリと…」

    美「嫌だ、リアルで怖い!でも、お父さんじゃああるまいし、彼はそんな弱い子じゃないから、心配いらないわよ」

    キッチンに覚と若君。

    覚「真っ二つに切って」

    若「はい」

    覚 心の声(大丈夫かなー)

    若「切れました。おぉ、これなら見覚えがあります」

    覚「そ、そう?思い出した?」

    若「はい、大層瑞々しく、甘かったと覚えております」

    覚「そうかー。良かった」

    切り分けて、みんなでいただきます。

    唯「冷たくておいしーい」

    若「うまい」

    尊「やっぱ夏はスイカだね」

    美「あー美味しい。あ、お二方、種は庭に落としていただいて結構よ」

    エリ「できるだけ落とさないようには致しますが、落ちたらごめんなさい」

    芳江「お庭のゴミになりますものね」

    覚「いや、気にしないでください」

    唯「ねーねー、落ちたスイカの種、ここで育ったりしないの?」

    覚「しない。種としては充分育つが、スイカの種蒔きは本来春にするから、今蒔いても上手く育たない」

    芳「よくご存知ですね」

    覚「小さい頃、同じ疑問を持ちまして、調べた事がありましてね。取って置いて春に植えれば、運が良ければ芽吹くらしいんですが、なんせ子どもの考える事、すぐ忘れまして」

    芳「まあ、かわいらしいこと」

    エ「でも、お庭広いですよね。野菜などはお作りにはなられないのですか?」

    覚「忠清くんが、朝稽古する場所が無くなりますので」

    若「お父さん、それは」

    覚「ハハハ。半分は冗談だから気にしないで。極めるとトコトンやる性分なんで、手を出してないだけだから」

    若「半分は、本当に考えて頂いておるのですね。済みませぬ」

    尊「兄さん、気の回し方がすご過ぎる」

    辺りが暗くなってきました。

    唯「花火、花火!」

    覚「わかったから。まず、金属のバケツに水汲んでこい」

    唯「はーい」

    若「唯、手伝おう」

    美「中身は…よしよし。手持ち花火ばかりね」

    エ「確かに。ロケット花火やネズミ花火みたいに、動く物が入ってないわ」

    芳「唯ちゃんなら喜んで選びそうですけれど」

    尊「その理由は、僕が説明します」

    エ&芳「あら。お願いします」

    尊「ロケット花火は、以前、飛ばした残骸が、屋根にしばらく乗っかったままになってしまいまして」

    エ「あら」

    尊「ネズミ花火は、駐車場でやってたんですが、お父さんの車の下に入っていってしまい、そこでパーンと弾けて燃え」

    芳「まあ」

    尊「以後、禁止となりました」

    エ&芳「よくわかりました」

    花火、スタートです。

    唯「たーくん、この先っぽに火を点けるの。はい」

    若「こうか?」

    シューという音と共に、火花が散る。

    若「おぉ、美しいのう」

    7人が一斉に火を放つ。明るい光に、ぼんやりと皆の顔が浮かぶ。

    若「綺麗じゃの」

    唯「それって花火が~?それとも私~?」

    若「双方、負けず劣らず美しい」

    唯「キャー!たーくんったら!」

    若「今、叩くのは止めよ。火を持っておるゆえ危ない」

    尊「的確に叱ってる」

    線香花火。

    覚「動と静なら、静だな」

    芳「この儚さがいいですよねぇ」

    エ「心落ち着きます」

    美「エリさんは、普段から落ち着いてらっしゃるじゃない」

    エ「いえいえ。でも、元気いっぱいの唯ちゃんが羨ましかったりしますよ」

    尊「元気にも、程度ってもんがあります」

    美「でも、忠清くんがブレーキをかけてくれるから安心なんです」

    唯「なになにー」

    美「忠清くんは、いい子ねって」

    唯「あれー?そんな事言ってたっけ」

    美「聞こえてたんじゃない。でも合ってるでしょ?」

    唯「大正解!」

    若「なにやら、痛み入ります」

    全員「ハハハ~」

    夜はゆっくりと更けていきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    これで半分の日数、過ぎました。

    31日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days29~31日17時、香ってます

    揺すり続けないと、弾けず残るんだよね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    風が凪いでおり、夕方でも蒸し暑い。

    唯「けむいー」

    覚「炭に油が落ちるしな」

    若君「香も焚いておるのですね」

    美香子「香?」

    若「辺りが香っておりますが」

    エリ「あー、蚊取り線香の事かしら」

    若「か、を取る?かは蚊ですか?」

    美「当たりよ。蚊を退治するの」

    若「ほぅ。それは重宝な」

    唯「帰る時に持ってこっか?」

    若「あ、いや」

    美「あら、持たせてあげるわよ」

    芳江「まあ、お優しい」

    尊「永禄では、虫とも戦ってたでしょ?少しでも持ってけばいいのに」

    若「頂戴してばかりでは、なりませぬゆえ」

    覚「匂いが好みじゃない?」

    若「いえ、良い香りです」

    覚「じゃあ、持ってきな。どんな理由でも気に入ったんならさ」

    若「そうですか。痛み入ります」

    唯「入れ物は?この豚さん?」

    若「これが香っておったのか」

    美「んー、考えとくわ」

    丸いコンロの大きいお肉がそろそろいい感じ。

    唯「うひょひょー」

    美「どんな喜び方なの」

    唯「美味しいモノには目がないのじゃー」

    美「色気のいの字もないわね」

    芳「色気。はともかく、健康的でいいと思いますよ。唯ちゃんって、かなりの美人さんだと思いますし」

    尊「ともかく、は入ると」

    美「まぁ、私の娘なんで美人よね」

    覚「あぁ」

    尊「はいはい」

    美「唯はねー、黙ってれば、確実に美人枠なんだけど」

    尊「黙ってないから、枠外だと」

    唯「なんだとー」

    エ「うふふ、若君のお顔に」

    若「え?」

    エ「黙ってなくても綺麗だよ、って書いてあります」

    唯「えー、ホントに?やだもぅ、たーくんったら!」

    服の上からでなく、腕を直接、バチバチと叩かれる若君。

    若「そこは痛い、唯」

    尊「枠外だから加減ってもんがない」

    18時、鉄板の焼きそばが食べ頃。

    唯「まだ入るけど、もうメニューはラストに近い?」

    覚「ご飯モノはな」

    尊「あとはデザート?」

    覚「いや、その前に。母さん、丸いコンロ空いたぞ」

    美「はいはーい」

    手には、アルミ箔で出来た手鍋のような、銀色の物体。

    美「お二方に、手土産で頂きました~。火にかけるわね」

    唯「わぁ、ありがとー。なに?」

    尊「中なんにも入ってないよ?」

    エ「入ってるんですよ」

    唯「え?そうなの?空でペッタンコだよ?」

    芳「今回、何をお持ちしようかと思いまして、食材もフルーツもご用意されると伺ったので」

    エ「せっかく炭火も点いてるし、もし作ってお腹一杯でも、残しておけるお菓子にしようと思いましてね。お高い物じゃなくて、ごめんなさいね」

    覚「いえいえ。わざわざすみません。小さい頃、よく作ってもらって食べましたよ」

    美「これ、アウトドアにも向いてるわね」

    若「菓子、アウト、ドア…」

    尊「兄さん、安心してください」

    若「あ?あぁ。わしはわからずとも当然だと?」

    尊「僕も姉さんも、わからないんです」

    若「そんな物も、あるのじゃな」

    唯「えー、なんだろ?あっ、ふくらんできた!」

    尊「なんかプスプス言ってるよ。わっ!」

    若「銃か?!兵が潜んで居ったのか?!」

    唯「えー、なにー!」

    鍋の中から、バババババ、パンパンパンとかなりの爆発音が連続で聞こえ、鍋の上部がムクムクと膨らんできた。

    唯「怖い!なんか生まれてる!」

    若「何奴…」

    尊「あ、もしかして、ポップコーン?」

    美「当たり~。作る過程はちょっと激しいけどね」

    若「敵の来襲かと用心してしもうた」

    覚「ハハハ。刀を抜きそうな勢いだったね」

    美「鍋が静かになったわね。よし、できあがり。はい、どうぞ」

    尊「わぁ、早速のおやつタイムだ」

    唯「いただきまーす」

    若「ほぅ、この者達が暴れておったのか。頂戴します、芳江さん、エリさん」

    芳&エ「どうぞ~」

    唯「できたてポップコーンなんてはじめて食べたけど、うまぁい!」

    尊「すごい、ちゃんと弾けてるし、バター風味?で、美味しいな」

    美「いくつか頂いたから、また作りましょ。どう?忠清くん」

    若「大変美味しいです。されど」

    尊「あ、出来上がる仕組みはなんとなくわかったんで、後で教えますね」

    若「なぜ言わんとせん事がわかるのじゃ?以心伝心じゃの」

    日が大分暮れてきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    そろそろスイカも食べ頃。

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    返信先: 雑談掲示板
    吉田秋生さん

    こちらの板には、初めてお邪魔します。

    吉田秋生さんの「BANANA FISH」と聞いて、あぁ懐かしい!と、飛び込んでしまいました。と言っても、キジトラさんごめんなさい、私「BANANA FISH」は読んでいないんです。なのでそちらの話は全くできません。反応したのは作者名の方です。雑談板だから、多少横道に逸れてもいいかしらと…失礼します。

    私は、吉田秋生さんと言えば「櫻の園」なんです。「BANANA FISH」と同時期に発表された、毎年チェーホフの櫻の園を上演する、女子校演劇部に属する女子高生達の、短編4話のオムニバスストーリーです。

    連載時、単行本出たら速攻で買おう!と、発売日に本屋に走った覚えがあります。先程引っ張り出して再読しました。若いって…甘かったり苦かったり痛かったり、五感をフルに使うよね、こうしてみんな大人になっていくよね…と、また涙しました。これはあくまでも私の感想ですが。全編で桜の花びらが舞い踊っていました。

    1990年に映画化されています。観に行ってる筈なんですが、うろ覚えです。だってもう31年も経ってる(*_*;A!びっくり。映画で主役を演じられたのが、ドラマアシガールの母、速川美香子役の、中島ひろ子さんです。あーそうだったわ、と記憶が繋がりました。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days28~31日15時45分、製造中です

    子供のように、はしゃいでもいいのよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ガーランドを飾り付けている。

    唯「そこ、そこで!」

    若君「ここで結ぶのじゃな」

    唯「そっ。かわいいー」

    尊「軽くワイヤーに巻こうかな」

    唯「風で揺れるくらいにして」

    尊「了解」

    唯「ん、いい感じい!」

    覚「お~、かわいらしく出来たな」

    その時、玄関のチャイムが鳴った。

    芳江「こんにちは。本日はお招きいただき、ありがとうございます」

    エリ「こんにちは。お世話になります」

    美香子「いらっしゃいませ。貴重なお休みの日に、わざわざありがとうございます」

    エ「いえいえ、家の用事はちゃんとできましたから」

    芳「楽しみにしておりました~」

    美「じゃ、どうぞ~」

    芳&エ「お邪魔します」

    パーティー、賑やかに始まりました。

    エ「可愛らしく飾り付けてありますね」

    唯「えへへ~がんばりましたぁ」

    エ「日差しによく映えてますよ。とっても素敵です」

    唯「やったぁ!褒められた~」

    尊「嬉しいね」

    エ「暑い中支度してくださって、ありがとうございます」

    覚「いえいえ、楽しんでやってましたから」

    唯「でも火も点いたし、ホントあっついよねぇ」

    尊「夏だから」

    唯「当たり前過ぎるー」

    若「陽炎が現れそうじゃの」

    尊「さすが兄さん、表現がカッコいい」

    唯「かげろう、ってなに?」

    尊「そこから説明いるんかーい!」

    エ「うふふ、可愛らしい」

    家の中で、美香子が芳江の説明を聞いている。

    芳「…と、準備はそんな感じです」

    美「わかりました。お菓子作りというより、理科の実験ね。早速用意するわ。今の時間なら、こっちの方が子供達も喜ぶだろうし」

    芳「三人の喜ぶ顔が、楽しみです」

    火の番人、覚。

    覚「時間のかかる物からぼちぼち焼き始めるよ。忠清くん、丸いコンロに塊の肉乗せてって」

    若「わかりました」

    美香子と芳江が外に出てきた。バレーボール程の丸い物体を、重そうに抱えている。

    美「はーい、唯と尊はこれの面倒見て」

    唯「なになに?わあ、ボール?」

    尊「面倒見るって何?」

    芳「アイスクリームを作ってくださいね」

    唯「アイス!あ、これが製造機?え?」

    尊「どういう仕組みなんですか?」

    芳「このボール、中が二重構造でしてね。外側には今、氷と塩を入れました。内側にはアイスの材料が入ってます」

    尊「あ、急激に冷やすんですね。でも空気を含ませないとアイスは滑らかにならない…わかった!だからボールなんだ。転がして攪拌するんだね」

    美「さすが尊。10分は転がし続けないとって話。頑張れる?」

    唯「がんばる~!あ、重い、だから転がすのかー。よし、行くよー」

    尊「はい、わ、ホントに重い!はいっ、兄さん」

    若「おおっ、ほれ、唯」

    尊「兄さん」

    若「なんじゃ?」

    尊「今の話、後で仕組みを詳しく教えますから」

    若「済まぬのう。わからぬと、顔に書いてあったかの」

    唯「大丈夫、私もわかってない」

    尊「お姉ちゃんは、わかんなくても進むヒトだから、説明はしない」

    唯「聞いてもたぶんわかんない。はい、尊」

    尊「やっぱり。はいっ、兄さん」

    若「ハハハ。はい、 唯」

    10分経ちました。

    美「はい、じゃあまず手を洗ってらっしゃい」

    唯&尊&若「はーい」

    三人が戻ると、芳江とエリがアイスを器に盛り付けている。

    唯「わぁ、できてるー!すごーい」

    尊「なんか、やり切った感があるね」

    若「これだけ外にあったのに、中はこのように冷えておるとは。またしても術じゃな」

    上手に出来上がりました。

    唯「あー冷たい!おいしーい!」

    尊「あー生き返る」

    若「大変美味しいです、芳江さん」

    芳「あらぁ~若君にそう言われて嬉しい。孫から借りてきた甲斐があったわ~」

    エ「そうなんですね」

    芳「私が買ってあげた物だから、貸してとも言わず実はこっそり持ち出しました」

    エ「あらら」

    覚「僕も一口。おー、うまく出来るもんだね。こっちはね、そろそろ串焼き、いい感じだよー」

    美「じゃあ、どうぞお二人、召し上がってください」

    芳「私達からでいいんですか?」

    美「早くしないと、唯に追いつかれますから」

    尊「正解!」

    唯「お母さん、聞こえてますけど?どうぞ、お客様から召し上がれ」

    エ「では、いただきますね」

    芳「いただきます~」

    若「どうぞ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだまだ序盤。

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    二人の令和Days27~31日13時、ずしりと重く

    勝鬨の裏にあるもの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはんは軽く済ませた。

    美香子「じゃ、急いで行ってくる」

    覚「使い易そうな物にしてくれよ」

    美「うん、ポケットに入るサイズにするわね」

    尊「なんか足りない物でもあるの?」

    覚「今日要る物じゃないんだがな、今しか行ける時間がないから」

    尊「そうなんだ」

    覚「じゃあタープを張り始めるか」

    若君「お父さん、もう少しお待ち頂きたい。日焼け止めを」

    覚「あー」

    唯「白くしないでよ?」

    尊「わかってるよー」

    覚「大事な準備だな」

    四人、日射しの強さがピークに近い中、タープを完成させた。

    覚「はい、みんなお疲れさん、休憩するぞ。麦茶どうぞ」

    唯&尊「はーい」

    若「ありがとうございます。所でお父さん」

    覚「なんだい?」

    若「麦茶を朝から随分といただいておりますが、無くなりはしませぬか?」

    覚「忠清くんはよく気が付くね。ありがとう。沢山作ってあるから大丈夫だよ。その代わりね」

    若「はい」

    覚「他の食材もあるから冷蔵庫がいっぱいでさ、冷やしときたかった果物が入らなくてね」

    尊「果物…もしかして、スイカ?」

    覚「そうだ」

    唯「やったあ!」

    覚「大きいバケツで水には浸けてあるけど、バーベキュー始めたら冷蔵庫が空くから移すよ」

    若「スイカ?」

    覚「前、夏に居た時食べてるから、見れば思い出すよ」

    15時。母、帰宅。

    美「ごめんね、ほとんど準備やってもらっちゃって」

    覚「暑い中お疲れさん」

    美「そろそろいらっしゃるかも。遅くとも4時にはって言ってみえたから」

    覚「そうか。じゃあまず食材を冷蔵庫から出して、外に持ち出すにはまだ早いから食卓に並べるか。そうしたらスイカが入る」

    唯&尊「わかったー」

    若「運びます」

    食卓に、串に刺した野菜やら肉やらが入ったバットが並べられた。

    覚「忠清くん、これだよ」

    スイカが浮かぶバケツを運んできた。

    若「忝ない。思い出せませぬ」

    覚「あ、そうか。切って出してるから、こんな丸ごとのままではわからないんだな」

    美「じゃあ、はいタオル。忠清くん、バケツから出してくれる?」

    若「はい」

    タオルで拭きながら、スイカを持ち上げ抱える若君。

    唯「大きいね」

    覚「奮発したぞ」

    美「冷蔵庫の扉開けるから入れてくれる?」

    若「はい。ここで良いですか?」

    尊「バケツ片付けてくる」

    冷蔵庫の棚にスイカを乗せ、ドアを閉めた。

    若「…」

    唯「どしたの?たーくん」

    若「いや、何程でもない」

    覚「何も、って感じじゃないな。顔色が悪くないか?」

    美「えっ、もしかして体調が悪いのに無理してた?えーと…熱はなし。どこか辛い所はある?」

    若「いえ、大事ありませぬゆえ」

    尊が戻って来た。

    尊「なに?どうしたの?」

    唯「たーくんがすごく辛そうなの」

    尊「え?スイカ運んだだけだよね」

    若「心配をかけ済みませぬ、わしの事は放っておいてくだされば結構」

    尊「体調不良なのに、無理したとか?兄さんなら充分有り得る」

    若「いや、それはない」

    尊「じゃないなら…スイカの感触で、思い出した事があるとかですか?それもすごく嫌とか辛かったとか」

    若「…」

    唯「たーくん?」

    美「え?重さとか」

    覚「形や大きさとか?」

    若「…そうじゃな」

    尊「顔色が変わる位だから、きっとただならぬ物だよね。うーん…あっ」

    唯「なに」

    尊「僕、わかったかも…いや、でもな」

    覚「思い当たる物があるのか」

    尊「うん。ちょっと言いづらいけど、兄さんがそこまでになるならもしかして、って」

    美「何、なの?」

    尊「…兄さん、違ってたらごめんなさい。あの、もしかして、人の頭…首ですか」

    若「…尊はまことに賢いのう。その通りじゃ」

    唯「えっ!」

    美「首…」

    覚「そ、そうなんだ」

    尊「勝ち戦の宿命みたいなものですか。…あっ、ごめんなさい!僕なんかが軽々しく言う事じゃなかったです」

    若「いや、良い。合うておる。…その度毎に、命の重さを噛み締めておった」

    唯が、泣きそうになっている。

    唯「もし、戦に負けたら…たーくんが…怖い、やだ!絶対嫌!」

    若「唯。わしは此処に生きておる。泣くでない」

    唯「私、私必ずたーくんを守るから!」

    若「わかった。唯が待つ元へ必ず帰る、という強い決意で、これからも戦に臨むゆえ、大人しく待っておるのだぞ」

    尊「兄さん。戦国時代は歴史上、残念ながらまだまだ続くんです。見守るしかない僕らは、兄さん達の無事を強く強く願い続けますから」

    美「私も」

    覚「僕もだ。ごめんな忠清くん、辛い事を思い出させちゃって」

    若「いや、皆が楽しんでおるのに、わしが水を差し申し訳なく思うております」

    両親が、若君の肩や背中を優しくさする。

    美「辛い時、これからは教えて欲しい。できる事なら、一緒に考えてあげたいから。ね」

    覚「遠慮なんか、するんじゃないぞ」

    若「はい。ありがとうございます」

    唯「たーくん、ごめんなさい。戦が終わっても、いつも厳しい顔してたのって、そういう事だったんだね。私、全然わかってなかった」

    若「知らずに済めば良い事もある。気に病むでないぞ」

    覚「…じゃあ、支度の続きをしようか。火も起こさないと」

    尊「飾り付けもしなくちゃいけないから、急がないとね」

    唯「たーくん」

    若「…ん?」

    唯「ここは永禄じゃない。ね、今は笑っていてほしい」

    若「そうじゃな。わかった」

    覚「じゃ、外に出るか。暑いぞー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は笑顔に戻ります。

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    二人の令和Days26~31日水曜9時、労います

    一家に一人欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食卓の上が、沢山の折り紙で色とりどりになっている。

    唯「では、唯お姉さんと楽しく工作!のお時間でーす」

    若君「今日は、唯が師匠か。よろしく頼む」

    唯「えへ、師匠だって!気分いい~」

    尊「では始めてください、師匠」

    唯「はーい。ではまず折り紙を、裏が見えるようにテーブルに置きます」

    若「真っ直ぐにか?」

    唯「うん。次に、左下の角と、右上の角が重なるように折ります」

    尊「三角形になって表が見えてればいいよね」

    唯「で、開きます。すると、左上から右下に斜めに線が入ります」

    若「折り目をつけると」

    唯「折り紙の下の端と、今折った線を、ぴったり合わせるように折ります。同じく、右の端もその線に合わせて折ります」

    尊「端同士がくっついて、右下が尖ればいいんだよね?」

    唯「たーくんわかる?」

    若「わかる。凧を傾けたような形じゃな」

    唯「順調だね。で、左上のまだ裏が見えてる三角形の部分を、裏が見えなくなるように今折った部分に重ねて折ります」

    尊「二等辺三角形になった。あ、今折った所に、紐を通すんだね」

    唯「そっ。あとは糊づけすれば、できあがり~」

    若「これが、どうなるのじゃ?」

    唯「いっぱいつなげて、飾りにするよ」

    若「華やかじゃの。さぞかし、お二方も喜ばれるであろう」

    唯「じゃあたーくん、どんどん折っていって。尊は糊づけ、私は紐に通してくよ」

    尊「了解」

    若「承知つかまつった」

    作業中。

    覚「珍しく、黙々とやってるな」

    唯「心をこめて作ってるんだよ」

    覚「いい心がけだ。お二人な、4時頃にはみえるから」

    唯「わかったー。これ、昼までにはできると思う」

    若「では、昼過ぎに屋根を張りますか?」

    覚「そうだね」

    尊「お母さんはいつもの片付け中?」

    覚「今日は書類の整理だけだから、昼前には終わるって言ってたな」

    若「お母さんは、休みでも忙しくされておるのう」

    覚「地域の皆さんに、お陰様で親しんでいただいてるからな。まっ、たまには労ってやってくれ」

    若「わかりました」

    11時。ガーランドが、ほぼ完成。

    唯「かーわいい。どこに付けよう」

    尊「タープの屋根からぶら下げるとか、固定するワイヤーに沿わせるとか」

    唯「おっ、いいねー」

    美香子がクリニックから戻って来た。

    美香子「あー、疲れた。まあ!綺麗に出来てるじゃない」

    食卓の自分の席に座り、腕をぐるぐる回している。

    覚「麦茶、入れるよ」

    若君が尊に何やら囁いている。

    尊「わかった、任せて」

    若「よろしく頼む」

    尊「お母さん、お疲れ様。肩揉んであげるよ」

    美「あら?どういう風の吹きまわし?ありがとう」

    尊が美香子の肩を揉み始めた。目を閉じて満喫する母。

    美「はぁ~極楽極楽」

    唯「出たっ極楽」

    美「あー気持ちいい。尊こんなにマッサージ上手だった?」

    うとうとしかけている。

    尊「お父さん、僕にも麦茶ちょうだい」

    覚「あいよ」

    声に反応して目を開けると、尊はキッチンに居る。

    美「あれっ?ちょっと待って、尊がそっちに居る…え?」

    母が驚いて振り向くと、

    美「まぁ!」

    手を止めた若君が、優しく微笑んでいた。

    若「初めからわしでは、お母さんも遠慮されると思うて」

    美「うん、そりゃそうだけど。びっくり~」

    唯「良かったねお母さん、かわいい息子に揉んでもらえて」

    若「按摩の心得があるわけではないので、恐縮ですが」

    美「そんな、ありがとう忠清くん~。こちらが恐縮しきりよ~。すっごく気持ち良かったわよ。なんと言うか、包まれてる感じで、安心感があったのよ」

    若「心を込めましたゆえ、伝わったのは嬉しい限りです」

    覚「いいなー」

    若「では、お父さん、こちらへお掛けください」

    覚「え、僕もいいの?へへっ、ありがとう忠清くん」

    唯「さっすがたーくん、優しーい」

    尊「繁盛しそうだね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    体と心の、両方に効きそうです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days25~30日火曜14時、もてなします

    ゆる~く進む平和な日常を楽しんで欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに唯と尊。

    唯「明日ってさ、バーベキューパーティーじゃん」

    尊「うん。何の確認?」

    唯「パーティーならさ、飾り付けしなきゃじゃない?」

    尊「あ、そうか。お二人をご招待だから、おもてなししなくちゃだね」

    唯「前回の手巻き寿司パーティーの時はさ、ご招待を聞いたのがその日だったから、何も準備できなかったし」

    尊「特にお姉ちゃんは、プレゼントもらってるしね。そりゃあ張り切って用意しないと」

    唯「えー、手伝ってよぅ」

    尊「勿論手伝うけど。今回外でやるからなー。どうやって飾ろう?」

    覚が食卓で、明日用の買い物リストを作成中。若君が、隣で説明を聞いている。

    覚「肉はね、塊を用意して、じっくり焼くんだ」

    若君「なるほど。丸いコンロでですね?」

    覚「そう。焼く時間も、前回を参考にやるよ」

    若「お父さんの手順、学ばせて頂きます」

    唯がスマホで検索している。

    唯「あのさ、よくテントとかに付けてある、三角がいっぱいつながってるヤツ、良くない?」

    尊「あー、運動会ではためいてるヤツみたいな?」

    唯「うん。ヤツの名前がわからないけど」

    尊「テント、三角、飾りで見てみたら?」

    唯「わかった。…へー、ガーランドって名前なんだ」

    尊「どれどれ。ほー、いい感じ。作り方載ってる?」

    唯「うん。えーっと」

    覚がやって来た。

    覚「おーい、今から明日のパーティー用に、仕入れに出かけるぞ」

    唯「あ、はーい。尊、なんかね、折り紙と紐さえあれば良さげだよ」

    尊「その二つならスーパーにも売ってるから、今一緒に買えばいいよね」

    唯「決まり!それでいこー」

    若「何やら話し合うておったの」

    唯「たーくんは、料理をがんばる。私と尊は、飾り付けをがんばるのだー」

    覚「もてなそうという気持ちは、中々いいぞ」

    スーパーで買い物中。

    唯「お肉が大きい、しかも幾つもあるぅ!」

    覚「たくさん用意しないと、唯に食われちゃってお客様に回らないからな」

    唯「うっ」

    尊「お上品には程遠いから」

    唯「ううっ」

    若「そういえば、芳江さんもエリさんも、唯はいつでも姫であって欲しい、と申されておったのう」

    唯「うううっ」

    尊「大袈裟だなあ。人並みに食べてれば済む話じゃん」

    唯「人並みがわからない」

    尊「これだから。やっぱり、帰る頃にはかなり太ってるよ」

    唯「やだー。あんまり太ると」

    若「なんじゃ?」

    唯「お姫様抱っこしてもらえなくなる」

    尊「なんでそこだけ、姫を強調なんだよ」

    カートが、2台になった。

    覚「買い忘れはないかな。メモはと」

    尊「すごい、なんかバラエティ豊かだね」

    若「折り紙が入っておる。また、工作をするのか?」

    唯「うん。前回のとはまた違うからね」

    若「ほぅ」

    尊「あれ?お父さんが居ない」

    唯「ホントだ。どこ行った?」

    若「思い出した物でも、あったのかのう」

    覚「あーごめんごめん、ただいま」

    唯「え?それ生クリームだよね。お菓子でも作るの?」

    覚「母さんに用意するよう頼まれてたのに、メモし忘れてたんだ。危なかったな~」

    尊「生クリーム指定で?」

    覚「あー。あとの材料は家にあるから。なんかな、芳江さんが、アイスクリームを作るグッズを持って来てくださるらしいんだ」

    唯「やったあ!アイス~」

    尊「グッズ、ってなんだろう。アイスクリーム製造機的な?」

    覚「母さんによると、楽しみにしてて、とはおっしゃってたらしい」

    唯「へー」

    覚「そうだ尊」

    尊「何?」

    覚「今日は、日焼け止めは買わなくていいか?」

    尊「うわっ、まだ在庫あるんで…」

    覚「ハハハ。じゃあ会計するか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日も朝から忙しそう。

    30日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days24~29日月曜8時、君はプリンセス

    娘同様にかわいいのでしょう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚と子供達三人、庭で朝の涼しい内に、昨日使ったバーベキューグッズの片付けの続きや手入れをしている。

    覚「明後日すぐ使うにしても、ある程度は綺麗にしとかないと」

    若君「準備も兼ねてですね」

    唯「あっまだゴミがあった」

    尊「タープは隅にまとめとけばいい?」

    覚「あぁ」

    家の中から声がする。

    美香子「唯~」

    唯「え?なに」

    美「ちょっとクリニックに来てー」

    唯「へ?」

    唯がクリニックに入ると、エリと芳江がニコニコ顔で待っていた。

    唯「おはようございまーす」

    エリ「おはよう、唯ちゃん。朝からお手伝いしてるのに、呼びつけてごめんなさいね」

    唯「ううん」

    エ「唯ちゃんにプレゼントしたい物があるの。喜んで貰えると嬉しいけれど」

    唯「えっ?今日ってなんか記念日だった?なに?」

    手にはワンピース。二着ある。

    エ「僭越ながら、作らせていただきました」

    唯「えーっ!」

    美「素晴らしいわよね」

    唯「えっ、なんで?」

    エ「若君が、料理を頑張っているのに感化されて。久々に趣味の洋裁をやろうと思ったんですけどね、何作ろうかしらと考えた時に、せっかくだから若君つながりで、彼が喜びそうな物にしよう、唯ちゃんに夏のドレスはどうかしらって」

    美「私がね、相変わらず色気のない服ばっかりで、って少し愚痴ったのを覚えててくださってたのよ」

    唯「でもオムレツ作ってから、そんなに日にち経ってないよ?」

    エ「二着とも同じ形だから早く出来たの。大した物じゃなくてごめんなさいね」

    唯「大した物だよー、すごーい」

    二着ともノースリーブで膝下位の丈。裾に向かってAラインにふんわり広がっている。一枚は白無地で所々レースがあしらわれている。もう一枚は同じく白地だが、全体に大きいヒマワリの柄入り。

    唯「順番に着てくる!」

    空いている病室に駆け込み、サッと着替えた。まずはレースの方。

    唯「すごいお上品~」

    美「ハイジの下着みたいでかわいい」

    唯「ハイジ?この形だとリトルミイでしょ。赤くはないけど」

    もう一枚のヒマワリ柄。

    唯「こっちもかわいいー。夏って感じ!」

    エ「お似合いで良かったわ。唯ちゃんって、私のイメージはヒマワリなの。だからこの柄にしました」

    芳江「それでね、唯ちゃん」

    唯「はい」

    芳「私からもプレゼントがあるの」

    唯「え!なにその大盤振る舞い!」

    芳「実は、布はエリさんと一緒に選びました。で、私は服作りは無理だから、出来上がりを想像して、似合いそうなこれを」

    手にした箱から、サンダルが出てきた。

    唯「キャー!超かわいい!今履いていい?」

    美「ちょっと忠清くん呼んで来るわね」

    真っ白で華奢なデザイン。ベルトにラインストーンが付いており、光に煌めく。そして若君が登場。

    若「失礼します、おはようございます。あっ」

    唯「たーくん!エリさんと芳江さんにもらっちゃった!」

    若「おぉ」

    唯「可愛いかろ?」

    若「あぁ。唯が綺麗に咲いておる」

    エ「咲くだなんて、さすが若君ね~」

    芳「こちらがうっとりしちゃうわ~」

    唯「やーん、これでばんばんデートに行かなくっちゃ!まずはあさって?」

    美「いや、それは止めて。バーベキューは汚れてもいい、いつもの格好で」

    唯「わかった。ん、ちょっと待て、いつもの格好はいい加減だって言ってる?」

    美「それは残念ながらその通り。だから、母心でワンピースを頂けたのよ。唯がもっとオシャレな子だったら、こんな事は思われない」

    唯「複雑だなぁ」

    エ「唯ちゃんは今でも充分可愛らしいけれど、母心としては、よりかわいらしい姿を見たいとは思います」

    芳「あちらでは、お姫様でしょう?是非こちらでもお姫様で居てね」

    唯「はぁい」

    若「唯、そろそろ開院じゃ。邪魔になる。参ろう」

    唯「そうだね。たーくん、もう一着あるの。向こうで見せるね!エリさん芳江さん、ありがとうございました!」

    若「ありがとうございました」

    エ&芳「いえいえ~」

    二人が出ていった。

    美「あーあ、サンダル履いたままで」

    芳「ふふっ、一応新品ですから」

    エ「しかし、今日もいい表情見せてもらいました。若君には」

    芳「今日は何と書いてありました?私は、ドキドキ…かな?」

    エ「私はキュンキュン、と読みました」

    美「お二人とも、もしかして忠清くんのその表情が見たくてご用意頂いた?」

    エ&芳「はい」

    美「ふふっ、どこまでも一番人気ね、忠清くん」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    29日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days23~28日日曜11時、屋根まで飛んだ

    つい、目で追ってしまう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「ペグは、斜め下に向かって打ち込むんだぞ」

    尊「うん。あれ、全然入っていかない」

    唯「非力過ぎるー」

    若君「尊、代わろう」

    尊「すみません。兄さんお願いします」

    昼ごはんは、水曜の予行練習を兼ねてバーベキュー。まずはタープを設置して日陰を作った。

    唯「たーくんお疲れさま。日陰はやっぱ必要だねー」

    覚「炎天下ではな。暑さは少しでもしのがないと」

    唯「まっ、家に一歩入れば涼しいけど」

    美香子「そういう逃げ道は基本的にナシよ」

    尊「そういえば兄さん。令和の夏って、永禄より断然暑くないですか?」

    若「暑いのう。それは前に参った折も、そう思うておった」

    尊「気温も低かったみたいだけど、昔はもっと緑が多かったし」

    美「そうよね。今はエアコンの熱とかアスファルトの道路とかで、気候以上に暑いわよね」

    唯「もうさぁ、すっかり体が現代の暑さ忘れててさぁ、ダラダラしちゃうよ~」

    覚「ダラダラは今に始まった事じゃないがな」

    蝉の合唱の中、バーベキュースタート。金網の上が色とりどりになっている。

    尊「野菜も肉も、こうして串に刺さってるのがいかにもバーベキューだし、より美味しく感じるね」

    美「パプリカも玉ねぎも甘いわよ~。ウィンナーももう良さげよ」

    唯「焼きとうもろこしどうかな?この醤油の焦げ具合がなんとも…いいっ!いただきまーすっ」

    覚「はぁ~ビールがうまい。忠清くん、遠慮してると唯に全部食われちゃうぞ」

    若「この戦では、唯には到底勝てませぬ」

    覚「ハハハ、最初から白旗か。量は充分用意したから大丈夫だけどな」

    テーブルの上にカセットコンロ。鍋が置かれた。

    覚「汁物もないとな」

    唯「中身なにー?」

    覚「餃子のスープ」

    若「あの餃子が汁に、ですか」

    美「ワンタン風?」

    覚「そうだ。もうすぐ出来るから」

    丸型のバーベキューコンロから、いい匂いがしてきた。

    尊「これが気になってしょうがない、絶対美味しいのが入ってる」

    覚「そろそろいいだろ。開けてみろ」

    中から、こんがり焼けた肉の塊が登場。

    唯&尊「やったー!」

    若「おぉっ」

    覚「今切るから。おっ、いい感じに中まで火が通ったな。時間もこのくらい、だな。よしよし」

    美「予行練習にしては豪華ね」

    覚「当日失敗したくないからな」

    唯「毎日予行練習がいいなー」

    スープ出来ました。

    美「忠清くんの作品が見事変身ね」

    唯「あっついよー」

    覚「暑い時こそ熱い物だ」

    若「お父さん、とても美味しいです」

    覚「上手に作ったモチモチの皮が活きてるよ」

    鉄板の上が、焼きそばの山に。豪快に炒められていく。

    尊「そういえば昨日食べたばっかりだね」

    覚「だから醤油味にしたんだ」

    唯「さっすが~、考えてるぅ」

    すっかり食べ終わりました。

    覚「は~、極楽極楽」

    美「ほろ酔いね」

    唯「ウチの家族って、すぐ極楽って言うなあ」

    美「そう思えるって幸せよ」

    尊「そういう事」

    唯「そうだ、そろそろアレやろっ」

    尊「あー、シャボン玉?」

    美「あら懐かしい。昔ながらのストロー式のと、この輪っかは…あぁ、液に浸けて大きいのを作るのね」

    唯「売場には、バズーカみたいにババーっと出るのもあったけど」

    覚「今はそんななのか。それはついていけない。このストローのが風情があっていい」

    唯「じゃあお父さんにそれあげる。私輪っかのでやるから」

    覚「おっ、ありがとな。何十年振りだろう」

    若「花火と共に買うた物か?」

    唯「うん、そう。じゃあたーくん行くよ!ご覧あれ~」

    シャボン液に浸した輪っかを大きく振る唯。軌道に乗って、無数のシャボン玉が飛び出し、ふわふわと舞う。

    若「これはなんと美しい…一瞬にして生まれるとは」

    美「綺麗ね~」

    唯「わー、楽しーい!」

    尊「お姉ちゃん貸して、僕もやりたい!」

    覚の吹くシャボン玉と尊の振るシャボン玉。全てが太陽の強い光を反射して、虹色に煌めく。庭全体が夢の世界のように。

    美「極楽浄土って、こんな感じかしら」

    若「…」

    尊「兄さんもどうぞ」

    若「あ、あぁ。良いのか?」

    刀を抜くように振る若君。シャボン玉は屋根に向かっていく。

    唯「おっ、いい感じ~」

    若「随分飛ぶ物よのう」

    美「お父さん、そのシャボン玉吹く姿、なかなかかわいいわよ」

    覚「そうか?おーい、こっちのストローのは、僕だけやってていいのか~?」

    尊「いいよ、だって酒臭いでしょ」

    覚「あ、そうか。ハハハ」

    暑さを忘れるひとときでした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    平和の象徴のよう。

    28日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days22~27日土曜18時、あの頃の私と僕

    遅くなりましたが、アシカフェ2周年おめでとうございます!
    投稿されている_〆(・ω・。)皆様にも、こっそり?(/ω・\)閲覧を楽しまれている皆様にも、ずっと心安らぐ地でありますようにと願います。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    初めて観ても郷愁を誘う、それが祭。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「町全体がウキウキしてるのを肌で感じながらそぞろ歩くって、いいわね~」

    今日は、地元のお祭り。商店街で開催されるため、家族全員プラプラ歩いて移動中。

    覚「まだまだ暑いなー」

    美「あ、唯、もしかして浴衣着たかった?」

    唯「ううん。毎日着てるようなもんだし」

    尊「確かに」

    唯「そういえば尊は持ってるじゃん、浴衣。いかにも旅館の備品な感じの」

    尊「うぇっ」

    覚「なんだその反応は」

    唯「私が初めてタイムマシン使った時、自分が飛ぼうと思ってたみたいで、そんな変なカッコしてた」

    若君「そのような支度をしておったのか」

    尊「僕は、心の底から、あの時戦国に飛ばなくて良かったと思ってる」

    唯「ホントだよー。尊があんな所に行ってたら…」

    美「そうね…戻る事なく、こちらは何で尊が行方不明かわからないままで」

    尊「戻れないって決めつけられてるけど、まぁきっとそうだったんだろな」

    唯「怖っ。第一、それじゃたーくんに会えないしさぁ。ホント、飛ぶ前に止めて良かったよ」

    若「ん?」

    唯「なに?」

    若「止めたいきさつはわかったが、では何ゆえ唯が刀を抜いたのじゃ?」

    尊「それはですねぇ、お姉ちゃんの制服の袖のボタンに僕の脱いだセーターが引っかかりまして、起動スイッチを小刀だと勘違いしたお姉ちゃんが、セーターを切ろうとしたからなんです」

    若「そうであったか。いや?どうして引っかかるのじゃ」

    尊「そういえばそうだ。床に置いといたのに」

    唯「それでスマホの画面拭いたから」

    尊「げっ!人の服で?知らなかった!ホントやる事なす事めちゃくちゃだよなあ」

    若「何ともはや…。それに、もし切れておればセーターに穴が空くではないか」

    尊「その状況からして、お姉ちゃんがそんな事、気にすると思います~?」

    若「…うつけ者じゃ」

    尊「うつけ者。正解!そういえば織田信長も、確かそう呼ばれてたなあ。一緒じゃん、お姉ちゃん」

    唯「やだ、嬉しくなーい!」

    商店街に着きました。人出が多く、賑わっている。

    美「この夕暮れの雰囲気がまたいいわね~。わくわくする」

    覚「祭と聞くと血が騒ぐ、か?」

    美「DNAに組み込まれてるのよ。いや、楽しいのはそれだけが理由じゃないわよ」

    覚「家族で来てるからか?」

    美「そうよー。まさか子供達がこんなに大きくなってから、一緒に来るなんて思ってもみなかったでしょ?」

    覚「唯は友達と出かけてしまうし、尊は家から出なかったからな。確かにそうだ」

    お神輿が、ワッショイ!ワッショイ!のかけ声と共に次々と通っていく。

    若「勇壮じゃの」

    唯「あー、これ見ると本格的に夏だなって感じー」

    若「これは、五穀豊穣を願ってであろう?」

    尊「そうですね」

    若「里の者達が、一つになっておるのが良い」

    法被を着た子供達が、横をすり抜けて行く。

    若「子らも何かを?」

    唯「うん、子供のお神輿もあるの」

    若「ほう」

    唯「町の子供たちは大抵一度は参加するよ。私や尊も、小さい頃に一緒にかついだ事あるんだよ」

    尊「僕はすごく嫌だったけど」

    若「何ゆえ?」

    尊「ウチの子供が~って、親が張り切って応援するのが恥ずかしくて。両親見てると、なんとなくわかりません?」

    若「ハハハ。かわいい娘と息子の晴れ舞台じゃからの。お父さんお母さんの様子が目に浮かぶ」

    尊「その時の写真、アルバムになってるんで、帰ったら見ますか?」

    若「それは是非に」

    神輿が神社に入って行き、祭も佳境に。

    唯「お腹空いてきたなぁ」

    覚「食べてくか?」

    唯「食べたい物買って、家で食べようよ」

    美「へー。今すぐじゃなくていいなんて」

    唯「早いトコたーくんを隔離したいから」

    尊「あー。お神輿の次くらいに視線を集めてる気はするね」

    覚「じゃあ、忠清くんの安全のために、どーんと買い込んで帰るか」

    若「それで良いのか?」

    唯「知り合いに会うと説明が面倒だし。全然OKだよ」

    帰宅しました。お好み焼きやら焼きそばやらが食卓に並ぶ。

    尊「兄さん、これがお神輿かついだ時のアルバムです」

    若「おぉ、早速済まぬのう」

    小さくてかわいい唯と尊の写真が続く。

    若「実に愛らしい」

    唯「それ見て~、尊の微妙な顔!」

    美「写真をお箸で指さない!」

    尊「恥ずかしいのに、すごく近くから撮ってたからかな」

    唯「よいしょ。たーくん、はい、あーんして~。あっ」

    美「唯~、もう!」

    覚「焼きそばそんなに掴んだら、落ちるに決まってるだろ?」

    若「唯、食事は写真を見終わってからでよい」

    唯「そぉ?」

    尊「ホントやりたい放題だよ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食べ物は大切にしましょう。

    27日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days21~26日金曜14時、イケメンシェフ再び

    腕はメキメキ上がる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに、覚と子供達三人で来ている。

    唯「あー涼しい」

    覚「涼む場所じゃないぞ」

    唯「わかってるけど気持ちいいもん」

    カートには、野菜が既に入っている。

    尊「ニラか…。わかった!今夜、餃子?」

    覚「おー、さすが勘がいいな」

    若君「餃子…食した覚えがあるような」

    覚「忠清くんは筋がいいから、ちょっと高度な事に挑戦してもらうよ」

    若「高度、ですか」

    粉物売場。カートに入れていく。

    唯「小麦粉?何個も?」

    覚「ざっくり言えばそうだが、種類が違う」

    唯「へー」

    帰宅しました。

    覚「まずは、野菜やキノコを細かく切ろう」

    若「はい」

    順調に、餃子のたねが準備されていく。

    覚「唯、尊」

    唯&尊「はーい」

    覚「これ全部混ぜて、こねてくれ」

    尊「わー、たくさんあるね」

    唯「わかったー」

    覚「忠清くんは次の作業な。餃子の皮を作ってもらう」

    若「皮、をですか」

    薄力粉と強力粉と塩を混ぜ、練って、生地を寝かせる間にスープの用意をして。

    若「お父さんは、これを毎度一人で仕切っておられるとは」

    覚「皮は毎回作らないから。でもなんとかなるもんだよ」

    若「感服致します」

    皮が一枚ずつ出来上がりつつある。たね再登場。

    覚「ほれ、お前達座って。包み始めろ」

    唯「わかった。わぁ、皮伸びるー」

    尊「なんかすごい量になりそうだけど、今日全部食べるの?」

    覚「いや、残りは冷凍する。日曜のバーベキュー分だ」

    唯「そうなんだー、やったぁ」

    覚「だから今日食べきらないようにな、唯」

    唯「なんで指名~」

    尊「当然でしょ」

    若「ハハハ」

    そろそろ晩ごはん始まります。

    美香子「まぁ~。忠清くん頑張ったのね、すごい量」

    若「お父さんのお力添えのお陰です」

    尊「ホットプレート、温め始めていい?」

    覚「いいぞ」

    全員席に着きました。ホットプレートが単独で仕事中。

    覚「蓋開けるぞ」

    若「皮が破れていなければ良いですが」

    覚「破れるのは、包み担当の腕だから気にしないで」

    餃子完成。

    唯「うわぁ、めっちゃ美味しそう~」

    美「皮がツヤツヤに光ってる。綺麗ね」

    若「確かに、輝いております」

    尊「もう食べていい?」

    覚「いいぞー」

    いただきまーす。

    唯&尊「うまい!」

    美「美味しい!中身も勿論だけど、皮がすっごいモチモチよ」

    覚「忠清くん、食べてみてどう?」

    若「美味しいです。されど味付けはお父さんの指南通りでしたし、混ぜたのは唯ですし、わしの腕ではありません」

    覚「皮は忠清くんの独壇場だったよ」

    若「上手く出来て嬉しいです」

    美「忠清くん…また来週も料理、楽しみにしてていい?」

    若「はい、勿論です」

    美「嬉しい。ね、お父さん」

    覚「あぁ。前回、また来週も作ってねが言えなくて、少し淋しかったんだ」

    若「そうでしたか」

    尊「毎週金曜は兄さんシェフの日、でいいんじゃない?あと二回はあるし」

    唯「おーっ」

    覚「ちゃんと手伝えよ?」

    唯「うん。週一くらいなら」

    若「いや、手伝うのは毎日じゃ」

    尊「見事なツッコミ~」

    覚「尊も手伝えよ」

    尊「はーい」

    美「うふふ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    団欒って、いい。

    26日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days20~25日木曜6時30分、いっちにーさんし!

    夏だけ取り上げられがちだけど、年中放送してるから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の朝稽古が終わった。

    覚「昨日だいぶ疲れただろうに、忠清くんは立派だよ」

    若君「いえ、褒めて頂く程のものではありません」

    覚「今日も暑くなるかな?何℃位まで上がるだろ。天気予報…忠清くん、テレビつけてくれる?」

    若「わかりました」

    テレビ体操の番組が画面に現れた。

    覚「あ、ちょうどこの時間か。たまには体操するかー」

    若「え?」

    母が洗面所から出てきた。

    美香子「あら、この時間にテレビなんて珍しい。まぁ!ラジオ体操やってる。じゃあ私も」

    若「え?え?」

    テレビに合わせて体操を始める両親。

    若「動きが、身に付いておるのですね。ピタリと同じに動かれて」

    覚「音楽と号令聞くと、体が勝手に動くんだよ」

    美「同じ時間に近所の神社で、小学生を集めて体操してるわよ」

    若「あ、外の道を、子らが走って行くのはそのような所以でしたか」

    覚「すぐ覚えられるから、忠清くんもやってみな」

    若君は見よう見まねで、三人で体操。最後は深呼吸して終了。

    若「なるほど、清々しいです」

    覚「毎朝この時間に放送してるから」

    若「では、明日からここまでを稽古と致します」

    覚「ハハハ。あ、天気予報観るんだった」

    9時。唯と尊が、リビングでダラダラしている。

    尊「あ~、扇風機が気持ちいい」

    唯「やっぱりちょっと焼けてるよ、尊」

    尊「いいよ。今回は日焼け止めのお陰で程良く焼けたから、ヒリヒリしなかったし」

    唯「で、また海で焼くと」

    尊「僕って見分けつくかな?」

    唯「つくつかないより、焼いた事実に驚かれるっしょ」

    覚「二人は、あい変わらずダラダラしてるなあ」

    若「昨日随分と動きましたので」

    覚「それは忠清くんも同じじゃないか。なんていうか、心構えの違いだな」

    若「ハハハ。ところでお父さん」

    覚「何?」

    若「また、料理の指南をお願い致します」

    覚「忠清くんは、留まる所を知らないね。感心するよ。いいよ、実はもう考えててね」

    若「それは嬉しいです。で、何をいたしますか?」

    覚「明日作るメニューは決めてある。で、今日はその練習として、ハンバーグを作ろうと思うんだが」

    唯「昨日昼に食べたー。ハンバーガーだけど」

    覚「あっ、そうなの?」

    若「お父さん、是非お願いします。以前オムレツを作った際には、ずっとオムレツばかり食しておりましたゆえ、構いません」

    覚「そうだったね。じゃあ早速仕込むか」

    作業台の上、怪しい物体が水に浸かっている。

    尊「ハンバーグ作るんだよね?これどう見ても高野豆腐だけど」

    覚「そうだ。いつもハンバーグに入ってるんだぞ?」

    唯「え!知らなかった!だからジェンガと間違える程、ストックしてたんだ?」

    尊「なんで入れるの?」

    覚「肉汁を含ませるんだ。栄養がある割にはヘルシーだしな」

    尊「なるほど!だからいつもジューシーなんだね」

    若「お父さんの工夫ですか?」

    覚「うん、色々試してね」

    若「さすが師匠」

    昼ごはんは、ミニハンバーグ。

    美「夜が本番?」

    覚「今日はな。明日がホントの本番だ」

    美「ハンバーグが予行練習って、何?」

    覚「明日のお楽しみだ」

    夜ごはん。普通サイズも上手に出来ました。

    唯「美味しーい!」

    若「良かった」

    覚「明日また買い物に行こうな。で、明日は唯や尊にも手伝ってもらうから」

    唯「手伝う?」

    覚「また明日な」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    25日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days19~24日17時、近う寄りたい

    本日の天体ショーは、肉眼では無理でした。今は朧に浮かんでいます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    親密度は、より増すかな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    プール出口で待つ子供達に、お迎えが来ました。

    唯「お父さん、お母さん、ありがとー」

    若君「お迎えありがとうございます」

    尊「ただいまー。ちょっと違うか」

    覚「おー、みんな少し焼けてないか?」

    尊「え、困る」

    唯「女子か!」

    美香子「夢中で遊んでたのね」

    回転寿司店にもうすぐ着きます。

    若「寿司が、回るとは…」

    尊「回るというか巡るというか。練り歩く、が近いかな?」

    若「早う食せと?」

    尊「あ、それ近いかも」

    席に通され、注文スタート。

    若「確かに皿が練り歩いておる」

    覚「どんどん注文してくれよー。忠清くんも遠慮するなよ」

    若「はい、ありがとうございます」

    レーンに一番近い所に陣取った唯と尊が、タッチパネルで注文していく。

    唯「もうすぐ来るから」

    若「来る?」

    高速レーンに、数皿運ばれてきた。席の前でピタリと止まる。

    若「どこから参った?!」

    尊「はい、どうぞー。どんどん降ろすよ」

    空になった乗り物が、自動で戻っていく。

    若「どこに参る?!」

    唯「厨房。たーくんどんどん食べてね」

    若「この先の世は、色々とうまく出来ておるのう」

    満腹です。

    美「忠清くん、ちゃんと量食べた?」

    若「はい。お気遣いありがとうございます」

    美「そんな丁寧じゃなくていいのよ、家族なんだから」

    帰りの車中。

    唯「二人でさあ、今日だけで日焼け止め一本使い切ったんだよ?!ありえなくなーい?」

    覚「凄いな。若君も尊も真っ白だったんじゃないか?」

    美「尊、若君にはちゃんと正しい情報を伝えなきゃダメよ」

    尊「うん、気をつけるよ」

    若君が考え込んでいる。

    唯「たーくん、どしたの?」

    若「…あの」

    唯「ん?」

    若「お父さん、お母さん」

    覚&美「はい?」

    若「折り入って、お願いしたき儀が」

    覚「え、何!身構えちゃうよ」

    美「なぁに?忠清くん」

    若「わしは、家の外では、忠清と名で呼んで貰うております」

    美「そうね。若君、だと現代じゃかえって不自然だから」

    若「恐れながらお頼み申したい。家でも全て、名で呼んで頂けぬでしょうか?わしも、お父さんお母さんと呼ばせて頂きたく」

    車内が静かになる。

    覚「…それは構わないが。どうしたんだい?」

    若「永禄では、家族には名で呼ばれております」

    唯「あー、お父さん…殿も、兄上さんもそうだね。あとの人達は若君か若君様。あ、熊は名前で呼んでるか」

    若「宗熊殿は友じゃからの」

    唯「そうだね」

    若「名を呼ばれると、家族じゃな、と大層心地好く感じます。先の世の生活に合わせたく、わしも父上母上から変えたいと思うております。何卒」

    覚「そうか、わかった」

    美「そうね、だって忠清くんは娘のお婿さんだもの。普通に考えても、忠清くんと呼ぶのが正解よね。わかりました。そうさせてもらうわね」

    若「ありがとうございます。尊」

    尊「はい」

    若「尊には」

    尊「はい、兄さんですね。承知いたしました。なんか嬉しいな、兄さんがホントに兄さんになったみたいで」

    唯「兄には間違いないじゃない」

    尊「いや、なんというか、気分の問題?」

    唯「気分が上がるなら良し」

    若「ハハハ。あと、より現代語を習得出来るよう励みます。これから、出かける機会も多かろうと思いますので」

    美「無理はしなくていいのよ」

    若「随分と忘れておりますので。お父さんお母さんに迷惑がかからぬようにはしたいです」

    覚「そんな、迷惑だなんて。ホント忠清くんは勉強熱心だなー」

    唯「いい息子を持ちました」

    尊「確かに。って、なんでお姉ちゃんが言うんだよ」

    唯「唯母さんだから」

    尊「あ、そうだったね」

    美「なに?それ。面倒見ますって?」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    24日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days18~24日13時、口どけ優しく

    尊の願いはみんなの願い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだ食事中。

    唯「お迎えが5時で、それまでに外に出てなきゃいけないから、4時30分ちょい前には着替え始めなきゃだね」

    尊「そうだね。この後どうする?」

    唯「ちょっと遊んでおやつ食べてまた遊んで」

    尊「計画におやつタイム入ってるし」

    若君「その前に」

    唯「なに?」

    若「日焼け止めを塗らねばの」

    尊「そうだった!さすが兄さん」

    唯「微妙に赤くなってる気はするけど」

    尊「げっ!それヤバいよ」

    今度は白くありません。

    唯「良かった、スケキヨじゃなくて」

    尊「今からどれに行く?」

    唯「三人一緒に乗れるのにしない?浮き輪は更衣室に置いといてさ」

    長い時間並び、複数人でボートに乗って滑り降りる巨大アトラクションへ。

    唯「ひゅ~、きゃははー!」

    尊「あはははー」

    若「ハハハー」

    三人とも、ハイテンションで降りてきた。

    唯「あー、超超楽しかった!」

    尊「夏満喫!って感じだねー」

    若「実に貴重な経験じゃった」

    唯「さてと。今何時?」

    尊「えーと…もうすぐ3時。あれ、そんなに経ってたんだ」

    唯「では、おやつタイムにしまーす」

    またまた売店の前。

    尊「あんまり食べると、お寿司入んないよ」

    唯「大丈夫、考えてる。かき氷にしない?」

    尊「なるほど。カロリーは少なめだ」

    若「氷?」

    唯「うん。あ、冬に池が凍るのとは違うから」

    尊「さすがにわかるよー。兄さんが一人で来た時に家で食べてるもん」

    唯「あ、そうなの。あんなデカいのだった?」

    バレーボール位はあるか。シロップやアイスや色々てんこ盛りでかなり大きい。

    尊「デカっ!三人で一つで良くない?」

    唯「そうしよっか」

    仲良く氷を三人ですくっている。

    若「このような味わいじゃったかのう」

    尊「口どけはこちらの方が断然いいですから」

    唯「家のかき氷機で作った?」

    尊「うん。だってあの頃は、兄さんほとんど家を出てなかったから」

    若「ほとんど床に臥せっておったしの」

    唯「あー良かった!」

    尊「なんだよ急に」

    唯「あの頃、たーくん帰って来なくてどうしちゃったかと、すっごく心配したり辛かったりしたけどさ」

    若「その節は、済まなかった」

    唯「ううん、たーくんは悪くない。頑張って我慢したから、もー今日なんか最高に楽しい!ごほうびもらえた!」

    尊「うっかり、スイッチ起動したくせに」

    唯「それはすいません。来ない方が良かった?」

    尊「無事来れて良かった、でしょ。もちろん来てくれて嬉しいよ」

    唯「ありがと。あーあ、しょっちゅう行き来できればいいのになー」

    尊「ダメ」

    唯「ダメかー」

    若「唯。我らはこのひと時を、思う存分楽しめば良い」

    唯「そうだね。さて、氷もごちそうさまだし、また流れとく?」

    若「まだ一周しておらぬしの」

    唯「そこ、こだわる所なんだ」

    また浮き輪二つで、流れに身をまかせる三人。

    尊「極楽極楽」

    唯「お風呂みたいな言い方だし」

    尊「自分こそそうでしょ」

    浮き輪の中で、最初から若君に抱きついている。

    唯「いいでしょ、さっきは満喫できなかったもん」

    尊「兄さんが良ければいいけど。ダメなんて言う訳ないか」

    若「唯が望むままで良い」

    尊「お姉ちゃんの言う事なら、なんでも聞きそうだなぁ」

    若君にもたれる唯。

    若「いかがした?」

    唯「ん~?たーくんの鼓動を感じてるの」

    若「そうか」

    唯「なんか…」

    若「なんじゃ?」

    唯「生きているって、素晴らしい」

    若「どうしたのじゃ」

    唯「そう思ったから…それだけ」

    唯の体を支える腕に力をこめる若君。付かず離れずで様子を見ていた尊。

    尊 心の声(こんな、楽園みたいな場所で思う事じゃないけど…どうか、どうか永禄に戻っても無事でいてくれますように)

    太陽が明るく降り注いでいた午後でした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    切に願う。

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    返信先: 創作倶楽部
    ありがとうございます

    梅とパインさん、ボケた私の為に(^_^;)源トヨ話に、村名を入れていただき、ありがとうございました。

    原作に手を出さないのは…私がドラマだけで満足している、ってのが大きいです。いずれ触手が伸びるかもしれませんが、ひとまず今は令和Daysの執筆を、頑張りますo(・ω・o)

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days17~24日12時、結末変えます!

    唯姫は、忠清王子に必ず愛されるから、泡となり消え去る事などない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    滑り台も様々な種類がある。別の場所に移動してきた。

    唯「浮き輪全部持っててあげるから、尊も滑ってきなよ。たーくんと」

    尊「え、お姉ちゃんは?」

    唯「さっきハラハラし過ぎて疲れちゃったー。浮き輪の番しててあげるからさ」

    尊「いいの?やったー。じゃあ兄さん、目の前の行っときます?」

    若君「そうじゃな。唯、良いのか?」

    唯「うん。休憩中でーす」

    若「ハハッ、藁の布団で休むのか?」

    唯「そっ」

    尊「暗号?」

    唯「素敵な思い出なのじゃ」

    尊「そうなんだ。じゃ、行ってくるねー」

    若「行って参るが…唯、大事ないか?」

    唯「ありがとたーくん。そこまでじゃないから」

    歓声がこだましている中、若君達が上がっていった、滑り台の出口付近に座る唯。

    唯 心の声(なんか夢みたいな時間だなあ。ガッツリ遊んじゃってるけど、ここに戦国武士一人居ます!って誰が信じる?)

    空を見上げる。

    唯 心(久しぶりに空見たなあ。青空も雲もこんなにキレイ。総領の妻たる者、こういう心の余裕がないとダメなんだろなあ。ひゃー、道は険しい~)

    若「待たせたの、唯」

    若君がまた、水も滴るイイ男で帰ってきた。

    唯「お帰りたーくん。尊はこの後?」

    若「すぐ参る。順番を待つ間にの、尊にまた一つ言葉を教えて貰うた」

    唯「どんな?」

    若「唯は、マーメイド」

    唯「いきなり英語だし」

    若「唯が水に戯れる姿は、どんな姫じゃと尋ねたら、こうだと」

    唯「なるほどね」

    尊も降りてきた。

    尊「あー楽しかった!お姉ちゃんお待たせ」

    唯「尊」

    尊「何?」

    唯「人魚姫ってさ、確か最後は悲しい結末じゃなかったっけ?」

    尊「お姉ちゃん、今まで歴史を塗り替えまくってきたから、おとぎ話くらい結末変えるでしょ?」

    唯「ハッピーエンドに?」

    尊「でしょ」

    若「悲しい結末など、ない」

    唯「たーくん…」

    若「唯と共にならば」

    唯「やーん嬉しい!」

    若君に抱きつく唯。

    尊「お腹空いてきたね」

    唯「あ、そうだよ、お昼ごはん食べよー」

    尊「切り替え早っ!」

    若「これぞ唯じゃな。ハハハ」

    唯「えー」

    尊「ハハハー」

    売店近くに来た。

    唯「晩ごはんはお寿司だから、寿司以外のメニューで」

    尊「あまりプールサイドでお寿司出してないと思うけど」

    唯「たーくん、食べたい物ある?」

    若「そうじゃな…」

    唯「ん、ちゃんと考えてる。よしよし」

    若「前に一度食した、ハンバーガーとやらはあるかの」

    尊「あっちの店にありますよ。へー、食べた事あるんだ」

    唯「学校帰りに小腹が空いて」

    尊「初耳。ん?それって、家帰ったら普通に晩ごはん食べたんでしょ」

    唯「うん」

    尊「食べ過ぎでしょ」

    唯「たまには」

    尊「たま、ねぇ。兄さんとは一回だけなんだね」

    ハンバーガーショップで昼ごはん。

    尊「兄さんがハンバーガーかぶりついてるの、新鮮」

    若「そうか?」

    唯「たーくん、ほっぺたにソース付いてる」

    若「ん?」

    唯が指で拭った。

    唯「かわいいー」

    尊「なんかさー、ここに戦国武士一人居ます!って誰が信じる?」

    唯「あはは」

    尊「おかしい?」

    唯「ううん、尊は弟だなって」

    尊「はあ?」

    若「紛うことなく姉弟じゃ。言葉や動きがよう似ておる」

    唯&尊「えー、そうかなー?…あっ」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ポテトもどうぞ。

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    返信先: 創作倶楽部
    励みになります!

    梅とパインさん、アシラバのひとりさん、貴重なコメントをありがとうございました。

    私は原作を読んでおりませんので、想像するのは全て、演じられた俳優さんのお顔です。なので、原作で想像していただけるなんて、違和感なく受け入れてもらえているのかな、と少し安堵いたしました。ありがとうございます。

    プールはあとちょっとです。令和Daysのテーマが、現代の平和な夏をぜひ楽しんでもらいたい!なので、今後も二人には大いに遊んでもらいます。

    想い出が見え隠れしてますか?さてどこまでが実話でしょう。フフフ。いや、ほぼ理想論ですので(^_-)

    本など恐れ多いですが、その前に、この投稿をする度に、敏腕な編集者さんに見ていただきたい…。何度も推敲で、最早原型をとどめないのでは。そして、本など戯れ言!と一蹴されるのであります。

    源&トヨ、超タイムリーな話題がモチーフだったとは、妖怪千年おばばさんの投稿を見るまで気づいておりませんでした(×_×;)
    源トヨのカップルも可愛らしいので、ぜひ令和Daysにも登場していただきたい所ですが、出番が見つかりません(*_*)

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days16~24日11時、レッツトライ!

    攻撃はしてこないけど、強敵は強敵かも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    休憩中。

    唯「私さあ、昼ごはんの前に、あの超高くてストンと落ちる系の滑り台行っときたいんだよね~」

    尊「まさか、あれ?」

    最も高い所は、何階建てのビルの高さか。かなりの急勾配で、真っ直ぐ降りてくる滑り台。

    尊「マジで?!嫌だよ、一緒になんか行かないよ?」

    唯「一人で行ってくるから大丈夫。たーくんと待ってて」

    尊「珍しい。兄さんと離れてもいいなんて」

    唯「刺激が強過ぎるから、無理に連れて行けないもん」

    若君「滑り台?公園でよう幼子が遊んでおる物か?」

    尊「それのプール版で特殊な物です。どんなのか近くで見ますか?」

    巨大滑り台の下に来た。

    若「高いの」

    尊「見てるだけで怖いよ」

    若「降りてきた者達は、一様に楽しそうじゃが」

    唯「そりゃ楽しいからね」

    尊「そう思える人しかやらないからね」

    唯「じゃあ行ってくる。順番待ちで時間かかるだろうから、どっかで遊んでていいよ」

    唯が行こうとすると、

    若「唯」

    唯「え?なにたーくん」

    若「わしも共に参る」

    尊「は?!」

    唯「え、たーくん怖くない?平気なの?」

    若「唯が平気な物であれば、怖くなかろう」

    尊「その論理、合ってるような、合ってないような…」

    唯「そぉ?無理しなくていいよ?」

    若「中々の敵にも見えるが、羽木家総領たる者、どのような困難にも立ち向かう」

    尊「変な所でやる気に火がついちゃったな」

    唯「んーまぁ何事も経験だし。じゃあ行こっか~」

    若「尊、一人待たせるが済まんの」

    尊「いーえー。下から勇姿見てますね」

    浮き輪二つ抱え、二人を見送る尊。

    尊 心の声(度胸試し?こっちの世が平和過ぎて、体がなまってきたのかな)

    女性ばかりのグループが、二人とすれ違った。そのまま尊の方に歩いて来る。

    女性1「ねぇねぇ、今のお兄さん、超イケメンじゃなかった?!」

    女性2「うん、超カッコ良かった~!でもキレイな彼女居たもん、お似合いの」

    女性3「すっごく細くてスタイル良かったよねー。うらやまし過ぎるー」

    尊 心(へー。一般論って、こうなんだ)

    滑り台頂上への階段を、軽快に登りきった唯と若君。

    唯「到着ー。あ、あそこに尊いるよ!おーい!」

    若「おぉ」

    尊が、手を振っている。

    唯「浮き輪人間になってるから、見つけやすいね」

    若「そうじゃな」

    見上げる尊。

    尊 心(こうして見ると、なかなかの美男美女カップルなんだな。たまには俯瞰で見ろって事かー。あ、俯瞰で見てるのはあっちか)

    二人の順番が来た。

    唯「たーくんが先ね。一人ここに残るよりいいから」

    若「わかった」

    係員が声をかける。

    係員「あ、彼女さんビキニですねー。滑る衝撃で、ブラの後ろのホックが外れる事がありますから、気をつけてくださいねー」

    唯「え、嘘っ!」

    若「それは…全て落ちる事はなかろうが」

    唯「そりゃそうだけど~」

    若「やめた方が良いのでは?」

    唯「うーん。いや、やりたい!がんばって落ちないように押さえるよ」

    若「既に、形が変わる程押さえつけてお…」

    唯「それ以上、言わなくていいから」

    係「彼氏さん先で正解ですー。取れてたら即、留めてあげてくださいねー」

    若「わかりました」

    唯「えー、なにそれっ」

    いよいよ。

    係「はい、いいですよー」

    若「それでは唯、下で待つ」

    唯「なによその余裕。こっちはもし取れたらどうしようかって…笑ってるし!」

    下の尊。

    尊「あ、来た来た」

    若君が水しぶきをあげながら到着。

    尊「お疲れ様ー。おぉっ、カッコいい~」

    水から上がり、髪をかきあげる姿は、そこだけスローモーションになったよう。水も滴る超イイ男の登場に、周りの視線が集まる。

    若「おー、尊。中々楽しかったぞ?」

    尊「ホントですか~?」

    若「体がふわりと浮いた折は、肝が潰れそうになったがの」

    尊「やっぱり。あれ、お姉ちゃん来るのをこんな近くで待ちます?」

    若「どうやらこの滑りで水着の上が外れる事があるらしく、救わねばならぬゆえ」

    尊「え!そんな罠があるんだ。あ、来た」

    キャーキャー言いながら降りてきた。

    唯「ひゃー。ねえねえ、大丈夫?後ろ外れてない?」

    尊「あー、大丈夫だよ」

    若「平気と言いつつ、随分騒がしかったの」

    唯「取れたらどうしようって、そっちの方が怖くってー」

    尊「なるほどね」

    唯「あー、こんなに怖いモノだったとは」

    尊「なんだそれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    それこそスリル満点でした。

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    二人の令和Days15~24日10時、幻滅はイヤなの

    なぜ流れてるかなんて考えた事ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    流れるプールの中。

    若君「随分と流れが早いの。足元がおぼつかぬ」

    唯「じゃあたーくん、この浮き輪の穴に一緒に入って」

    若「こうか?」

    浮き輪の中に二人で入ると、唯の背中が若君の胸元にピタッと密着。

    唯「やーん、いい感じぃ。たーくん、足離していいよ。ちゃんと浮くから」

    若「まことか?」

    尊「大丈夫ですよ」

    唯「では参るぞ~」

    流れるプールでプカプカ流れる三人。

    若「この輪で浮かんでおれば、勝手に押されるように流れていくのじゃな」

    唯「うん」

    若「どこまで行くのじゃ?」

    唯「一周回って元の場所に戻る」

    若「回るだけと?」

    尊「そうですね」

    若「それが楽しいと」

    唯「うん。細かい事は気にしないで」

    若「景色は変わるがの」

    急に、唯が真下に潜った。

    若「え?」

    唯「ぷはー!」

    浮き輪の中に、若君の方を向いて上がってきた。

    唯「あー気持ちいい、プール最高!もっとくっついちゃおーっと」

    ここぞとばかり抱きつく唯。

    若「なんと」

    尊「やりたい放題だなあ。だけど、周りも似たようなもんだしな」

    辺りを見回す若君。抱き合って流れているカップルが、かなり居る。

    若君 心の声(この先の世の者達は、随分と行いが大胆じゃな…)

    唯「たーくん」

    若「…あぁ、なんじゃ?」

    唯「よそ見はダメっ」

    若「余所見などせぬ。わしには唯しかおらぬ」

    尊「愛の囁きが板についてきてる」

    唯「嬉しーい!もっとギュっとしちゃお!」

    音楽が聞こえてきた。

    尊「あ、お姉ちゃんそこまでだよ」

    唯「えー、もう?いいトコだったのにぃ」

    尊「上がるよ」

    若「上がる?何ゆえ?」

    尊「お客の健康面の安全のために、一時間に一回、プールから必ず出て10分休憩しなさいって決まってるんです」

    若「ほぅ、色々考えられておるのう。では出よう」

    唯「ちぇー」

    上がった後、売店の前を歩いている。

    尊「なんか飲む?」

    唯「うん、何にしよっかな」

    タピオカドリンクが売られている。

    尊「流行りものだ。お姉ちゃんはとっくに飲んでるよね?」

    唯「うん」

    尊「兄さんと?」

    唯「ううん」

    尊「まだって事?」

    唯の声が小さくなる。

    唯「たーくんには飲んで欲しくなくて」

    尊「へ?なんで?」

    唯「だいぶ前の話だけど、ドリンク店の前にカップルが居て、仲良く飲んでて」

    尊「なに語りだしてんの、じっくり聞く話?兄さん、ちょっとだけごめんなさい」

    若「良いぞ」

    若君に聞かれないよう、少しだけ離れた。

    唯「そのカップルの彼氏さんがね、イケメンだったの。たーくんとは比べものにならないけど」

    尊「うん」

    唯「いいなぁ、いつかたーくんとあぁやってデートしたいなって。離れてる時だったから。で、うらやましくてじーっと見てて」

    尊「うん。でも今ならできるじゃん…あ、ごめん、話続けて」

    唯「タピオカって、最後下に残っちゃってなかなか吸いきれないんだよ。で、その彼氏さんが一生懸命吸ってたんだけど、その吸ってる顔とか様子が超イケてなくて~」

    尊「あぁ。ほっぺたがギュンと引っ込んだり、ズゴゴとか音させたりして?」

    唯「たーくんのあんな姿は見たくないなぁって。それで一緒に行ってないの」

    尊「へ、そんな理由?王子様はずっとカッコ良くいて欲しい?」

    唯「うん」

    尊「超純粋な乙女じゃん」

    唯「え?」

    尊「お姉ちゃん、かわいい」

    唯「やだもぅ!」

    バシバシ叩かれる尊。

    尊「痛っ!痛いって!」

    若「これ唯、どうした?狼藉を働くでないぞ」

    二人に割って入る若君。

    唯「尊がからかうからっ」

    尊「兄さんが超愛されてるからですよ」

    若「…話が見えぬ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イケてなくても許してあげて欲しい。

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    二人の令和Days14~24日水曜9時、過ぎたるは…

    どんなイケメンでも、さすがに引くかも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日も暑くなりそう。プールに出かける準備中。

    覚「ちゃんとグッズ全部持ったか?」

    唯「たぶん大丈夫」

    美香子「夕方は、二人で迎えに行くからね」

    尊「あ、そうなんだ」

    覚「晩ごはんは外食にしようと思ってな」

    唯「え!そうなの、何食べに行くの~?」

    美「回転寿司なんかどう?」

    唯&尊「やったー!」

    若君「回転、寿司…」

    尊「普通くっつかない言葉だから、びっくりだよね」

    唯「たーくん、楽しみにしてて~」

    若「わかった」

    美「じゃ、行ってらっしゃい」

    覚&唯&若&尊「行ってきまーす」

    車中。

    覚「極力、三人一緒に居ろよ」

    唯「うん」

    覚「特に、若君を一人にしないように」

    尊「うん」

    覚「迷子にはならないと思うが。若君は目立つから、その点は見付けやすいな」

    尊「大勢の女子に囲まれて?」

    唯「やだっ!指一本触れさせないっ!」

    尊「せいぜい頑張って」

    唯「あんたもだよ」

    尊「もちろん」

    若「なにやら、済まぬのう」

    唯&尊「全然OKっす!」

    プール入口。車から降りる子供達。

    覚「じゃ、楽しんできて」

    唯「ありがとお父さん」

    若「また夕方、よろしくお願いします」

    尊「行ってきまーす」

    更衣室の前。

    唯「じゃ、10分後に集合ね」

    尊「わかった。じゃあ行きましょう、兄さん」

    若「参ろう」

    男子更衣室。着替え完了で、日焼け止めを塗り始める二人。

    若「これを体にと」

    尊「はい。まんべんなくで」

    若「尊…いやに白うなっておるのう」

    尊「ヒリヒリしたくないんで」

    若「そうか」

    集合時間になりました。

    唯「ちょっと…二人とも、どうしたらそうなるのよ!」

    白塗り状態の男子達。

    唯「怖い~。忠清じゃなくてスケキヨになってる…」

    若「尊が、こうした方が良いと」

    唯「犯人はあんたか!」

    尊「お姉ちゃんみたいに地黒じゃないもん、焼くと赤くなるから、しっかり塗らないと嫌なんだよ」

    唯「失礼なっ。私もこれでも日焼け止めちゃんと塗ってきたんだよ?」

    尊「嘘だー」

    唯「最近の日焼け止めって、塗っても白くなんないのが普通だから、あんた達相当こってり盛ったよね。もー!これじゃプールに入れてもらえないよ?」

    明らかに白過ぎる部分を、頑張って塗り込んだ。

    唯「ふぅ。ようやくヒトらしくなったよ。世話がかかる~。日焼け止めはね、こってり塗るんじゃなくて、こまめに塗り直すのが効果があるんだから!」

    尊「そうなんだ。よく知ってるね」

    唯「お母さんによく聞かされた」

    尊「へー。ありがと、唯母さん」

    唯「は?!」

    若「お母さん、か。なるほど。ありがとう唯お母さん」

    唯「ちょっと!兄弟でふざけないでっ」

    若&尊「ハハハー」

    唯「もぉ~」

    前を歩く女性の水着は、ワンピースだ。

    若「覆う所が多い者も居るのう」

    尊「そうですね」

    唯「えっ、まだ怒ってる?」

    若「案ずるな。唯はその水着、よう似合うておるし、尊の申した通り、この場所に似つかわしい姿じゃと思うておる」

    かなり際どいビキニパンツを着た男性が、横切っていく。

    若「おぉ、ほぼ丸裸じゃの」

    尊「…お姉ちゃーん?なんだよその顔」

    唯「やだぁ困る、でも見たいっ」

    尊「何一人で悶えてんの」

    唯「えっ?!えっと、たーくんがピッチピチで着てるのを想像しちゃって…ヤバい、セクシー過ぎる、たまらん、じゃなくてっ」

    尊「妄想が甚だしい」

    尊 心の声(うっかり選びそうだった事は、黙っておこう)

    ようやくプールのそばに来ました。

    唯「尊にはこちらを授けよう」

    二つのドーナツ状の浮き輪の内、小さい方を渡した。

    尊「いいの?一個もらっちゃって」

    唯「うん。だってこっち、カップル用だもん」

    尊「ホントだ。真ん中の穴が大きい。しっかり選んでるね~」

    唯「当然でしょ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    なんやかやで超楽しそう。

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    二人の令和Days13~23日火曜12時30分、ふるまいます

    腕は落ちていなかった模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニックの昼休み。

    芳江「今日は先生も、こちらでお昼を召し上がる?」

    美香子「ええ。お二人とも、お弁当少なめ、玉子料理なしで来てくださったかしら?」

    エリ「はい。実は、少しワクワクしてます」

    芳「もしや、ご馳走が?なんて」

    美「ホントは、昼ごはん全部と言いたい所だったんですけどね。シェフに負担がかかるので一品でご勘弁を」

    エ「ご主人が?」

    美「ふふふ」

    覚「はい、失礼するよー」

    折り畳み式のテーブルを運んできた。

    唯「お邪魔しまーす」

    両手にお皿。設置されたテーブルに置く。

    芳「あらぁ、綺麗なオムレツ!」

    エ「唯ちゃんが作ったの?」

    唯「いや、私には無理っす。もうすぐ最後の一皿が来ますから」

    廊下を見る芳江とエリ。すると、

    若君「失礼します」

    エプロン姿で、フライパンと皿を持って現れた。

    芳&エ「えーっ!」

    若「今、盛り付け致します」

    綺麗にフライパンから滑り降り、オムレツが皿に。

    若「お待たせ致しました。どうぞお召し上がりくだされ」

    エ「まぁー素敵!」

    芳「頂く前から、美味しいってわかるわ~」

    若「いや、褒めていただくのは、ご賞味の後で結構です」

    お昼ごはんスタート。

    芳「美味しい!お世辞じゃないですよ」

    エ「ふわっとろっ、が絶妙で、勿論お味もとても美味しいです」

    若「良かった。ありがとうございます」

    美「サプライズは成功ね。一安心。お二人には黙ってたんだけど、実は前回来た時何回か作ってくれてて」

    芳「そうだったんですか」

    美「ここを去る直前だったから、お二人に食べてもらえる機会がなかったの。だから黙っててごめんなさいね」

    エ「そうなんですか。良かったわ~頂く機会が出来て」

    若「はい、わし…あ、僕も嬉しいです」

    そろそろ午後の診察の準備に。一旦戻っていた唯と若君が、片付けにやってきた。

    芳「ごちそうさまでした。片付けまでありがとう」

    エ「ごちそうさまでした。料理は、若君の趣味になるのかしら?」

    若「趣味、とは?」

    美「興味があって、楽しくできる事、かな?」

    若「あぁ、ならば料理は、趣味です」

    芳「いいご趣味ね」

    エ「あー、私も久々に、趣味の洋裁しようかしら」

    唯「へー、エリさん、服とか作るの?」

    エ「ええ。昔はよく、子供の服や自分の服も作ってたのよ」

    唯「すごーい」

    芳「若君に感化され、俄然やる気が出ました?」

    エ「出ました~」

    美「ふふっ。若君って、いろんな人を幸せにする天才ね」

    若「いや、何もしておりませぬゆえ」

    唯「そこが良いのじゃー」

    芳「唯ちゃんは、全然変わらないわね。小さい頃のままだわ」

    唯「えーちょっとは大人になってない?髪もちょっと伸びてるしー」

    美「伸びてはいるけど」

    唯「最近、ポニーテールができるようになってきたんだよー。たーくんとお揃い!」

    美「向こうでやってたの?」

    唯「いや、勝手にやるとシメられる…」

    若「城の奥に指導する者がおりまして」

    美「必要ね」

    唯「えー!」

    美「親の顔が見たいとか思われてないかしら?唯への色々な指導、ビシビシお願いしたいわ」

    若「ハハハ」

    エ「若君が唯ちゃんに指導するなら、ちょっと甘そうね」

    若「え?そう…かもしれません」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子さん、ずっと黙ってたのも辛かったでしょう。

    23日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days12~22日月曜14時、買い込みます

    大きいお肉…今回は魚介類ではない模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚と子供達三人、ホームセンターに向かう車中。

    覚「あさってな、行きもプールまで乗せてってやるから」

    唯&尊「やったー!」

    若君「父上、良いのですか?」

    覚「いいよー。任せて」

    若「ありがとうございます」

    覚「あとな、8日、花火大会も乗せてってやるから」

    唯「やったっ」

    尊「良かったですね、若君」

    若「それは…世話ばかりかけ済みませぬ」

    覚「当日の詳細は、また考えるよ」

    ホームセンターに着きました。

    唯「では、花火などもろもろ探して参る!さらばじゃ!」

    ぴゅ~っと走って消えていった。

    覚「おーい、ってもう居ない」

    尊「兄さん置いてかれてるし」

    若「ハハハ。重い物は運びますゆえ、わしはこちらに居ります」

    尊「今日は何買うの?」

    覚「七人でコンロ一つじゃ心もとないから、もう一つ買おうと思う」

    アウトドアグッズ売場で、丸型の蓋が付いているタイプを選んだ。

    尊「へー、いろんな種類があるんだね」

    覚「忠清くん、大きい肉をドーンと焼いてあげるよ」

    若「さすが料理の師匠。お父さん、また手ほどきをお願いします」

    覚「あぁ、勿論だよ。あ、そういえば料理の話で、母さんが忠清くんにお願いしたい事がある、って今朝チラッと言ってたな」

    若「わしに、ですか?」

    覚「うん。帰ったら確認するよ」

    コンロや着火材などでカートは一杯に。

    尊「あ、思い出した。日焼け止めも買わなきゃ。ちょっと行ってくるよ」

    尊が離れる。

    若「日焼け、止め?日に焼けなくなる術があるのですか?」

    覚「そうだよ。迂闊に焼いてしまって、ヒリヒリしちゃ痛いだろ?」

    若「はい」

    覚「あと、永禄に戻った時にさ、やたら焼けてたら周りが驚くよ?3分後の顔で戻らないと」

    若「なるほど。お父さん」

    覚「何だい?」

    若「大層中身が濃く、心地の良い3分を過ごしております」

    覚「そう思ってもらえて、嬉しいよ」

    尊が両手に何本も、日焼け止めを抱えて戻って来た。

    覚「随分多いな」

    尊「お母さんが、肌の老化は二十歳前から始まるって脅すから」

    覚「まあホントの事だろうし」

    尊「僕、焼くと赤くなっちゃうから。ヒリヒリは嫌だし」

    唯「お待たせ~!」

    カゴに山盛り詰め込んで、唯が合流。

    若「お帰り、唯。それが花火、か?」

    尊「なんかそうじゃないのも混じってるな。あ、浮き輪!二つあるし」

    唯「要るでしょ」

    尊「要る。さすが遊びに関しては、よく気が付くなあ」

    唯「地味に失礼な気がする」

    尊「あとは?あ、シャボン玉作るやつだ!」

    唯「そっ。いいトコに目を付けたと思わなーい?」

    尊「そうだね。懐かしいし、兄さんには新しいし」

    若「まだまだ知らぬ物があると?」

    唯「うん。楽しみにしててねー」

    帰宅しました。

    覚「コーヒー運びがてら、母さんに、若君に何の用か聞いてくるよ」

    若「お願いします」

    マグカップ三つを運ぶ覚。ほどなく美香子と戻る。

    尊「え?今いいの?」

    美香子「ちょうど今患者さん居なくて。若君、あのね」

    若「はい」

    唯「なになにー」

    リビングでひそひそ会議。

    美「…と、言う訳なんだけど、頼んでもいい?」

    若「上手く出来るでしょうか」

    尊「朝、練習したら?」

    若「良いですか?父上」

    覚「いいよ~」

    美「じゃ、戻るわね」

    唯「じゃあ、今からスーパーに?」

    覚「そうなるな。材料が心細い」

    唯「行く行くー」

    覚「今度は何をねだるんだ」

    唯「バレた?アイス買ってー」

    尊「小学生か!」

    唯「じゃああんたはナシね」

    尊「それとこれとは話が別」

    唯「なにそれ」

    若「ハハハ」

    早速皆でスーパーへ出かけました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    さて、何が始まるのでしょう。

    22日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days11~21日15時30分、色っぽいね

    かわいい妻。見せびらかしたい派か、しまっときたい派かなら、きっとしまっときたい派。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男子二人を見送ると、早速物色。

    美香子「ビキニがいいんだって?」

    唯「うん」

    美「忠清くんを悩殺したいとか?」

    唯「うん!」

    美「彼はそのままの唯が好きなんだから、それこそスクール水着でもいいと思うけど」

    唯「もー!なんで親子で同じ事言うのっ」

    美「あ、尊も言ってた?」

    唯「言ってた。かわいいの着たいもん!選ばせてよ~」

    美「はいはい」

    三着選んだ。美香子がチェック。

    美「なんと言うか、この胸パッドの、えげつない程の入り方が…」

    唯「胸小さめ女子の救世主でしょ」

    美「半分以上パッドが占めてるじゃない。胸の形が崩れるから、あまりオススメできないんだけどねー」

    唯「いーのー。これでガッツリ、谷間を作るのだー!」

    美「忠清くん、中身知ってるから、なんか怪しいなと思うわよ」

    唯「えー、あくまでも、たーくんの味方?」

    美「まあ、まずは試着してみなさいな」

    次々と試着。

    美「んーどれも悪くないけど、強いて言うなら黄色いのかな」

    唯「やっぱり?私もそう思った!もう一回着てみるね」

    再度着替え中。

    尊「お母さーん」

    美「あ、おかえり。決まった?」

    若君「お母さん、見てください」

    美「ふむふむ、青色の濃淡がグラデーションに入ってるのね。あら!尊は黒の濃淡の色違い?合わせたの?」

    尊「偶然の一致」

    美「まあ!そうなのー。仲良し兄弟ね」

    尊「思わず、喜びのハイタッチしたよ」

    美「へー。尊、優しいわね」

    尊「え?」

    美「ハイタッチの思い出を、いい方に塗り替えてあげたのね」

    尊「うわっ」

    若「そうなのか?尊」

    尊「えーっと…えへへ」

    若君が手を差し出した。尊もそっと出す。

    若「ありがとう、尊」

    尊「いえいえ」

    固い握手。

    美「ん~兄弟愛。いい眺めだわー」

    唯「ねぇちょっとぉ、私の事忘れてない?」

    試着室のカーテンが開いた。

    唯「ジャーン!どお?どお?たーくん」

    若「唯…」

    レモン色のビキニ。ショーツはシンプルだが両脇にリボン、ブラは肩紐は細く、胸の中央でリボンを結んだようなデザインで、動くとリボンが揺れる。

    若「よう似合うておるぞ。…ん」

    不自然に盛り上げられた胸元を、不思議そうに見ている。

    若「何やら普段と違うておる」

    唯「やだー、気のせいだってぇ」

    尊「ウソにも程がある」

    若「この先の世では、これを良しとすると?」

    唯「あれぇ?なんかノリが悪いー」

    尊「時代が違えば、価値観も違うでしょ」

    若「良しとするのならば」

    唯「ならば?OK?」

    若「他の男に色目を使うのか」

    唯「えっ?!まさかっ!」

    尊「ヤバい展開だな」

    若「無念じゃ」

    唯「違う、違うってば!」

    美「拗ねてる…」

    尊「お母さん、シーッ」

    美「あ、ごめん、つい」

    唯「たーくん、そんなんじゃないから!」

    若「…わしは、有るがままの唯で良いのじゃが」

    美「あー。ほらね、言った通りでしょ?唯」

    尊「やっぱ僕らの方が理解してる」

    唯「えー、これダメ?」

    若「駄目とまでは申さぬ。気に入ったのであればそれで良い。何より似合うておるし」

    尊「もろ手を挙げて賛成ではないが、まあ良かろう?」

    美「忠清くん、少しでもあなたの気を引きたかった乙女心に免じて、許してやって」

    若「ほぅ。乙女心、とはそういう物なのですね。ならば、唯」

    唯「はいっ」

    若「許す」

    唯「ありがと~。きょ、きょうえつ…なんだっけ?」

    尊「言えないなら言わない」

    水着三着お買い上げ。そろそろ帰ります。

    唯「あー、無事決まって良かったぁ。早くプール行きたいなー」

    美「プール。確かにいきなり海水浴よりはいいかも。いつ行くの?」

    唯「まだ考え中」

    美「今週の水曜にしたら?行きはまだ約束できないけど、帰りは迎えに行ってあげるわよ」

    唯「え、いいの?」

    若「それは有り難きお言葉じゃ」

    尊「やったー!」

    美「ご機嫌ね。なんせペアルックだもんね」

    尊「楽しみー」

    唯「乙女か!」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    楽しい予定続々。

    21日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days10~21日15時、まるで買い物デート

    ふんどしも、際どいからダメ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    水着売場の前。

    美香子「この売場は、時代が移ってもカラフルさは同じね~」

    唯「キャー!かわいいのがいっぱーい」

    尊「派手~。一人だったら絶対入れないよ」

    若君「全ての色を集めたような処じゃな」

    美「あい変わらず綺麗な表現ね、忠清くん」

    唯「あ」

    尊「外出時は令和ライフ、始動だね。了解」

    若「わかりました、お母さん」

    売場内に突入。

    美「メンズ物は向こうにあるから、自由に決めてらっしゃい。何かあれば呼んで。どうせこちらは時間かかるだろうから」

    尊「はーい。行きましょう、兄さん」

    若「わかった。お母さん、行って参ります」

    売場の隅にメンズコーナー。

    尊「こちらは選択肢が少ないから、かえって助かりますよね」

    若「それでも随分とある」

    尊「あっ、それはちょっと…」

    若「いやに小さいのう」

    手に取ったのはビキニパンツ。

    尊「それ選んだら、お姉ちゃんに際どいのはダメって言えないです」

    若「どのように身に付けるのじゃ?ほぅ、伸びるのか」

    尊「兄さん、売り物なんであまり伸ばさないでくださいね」

    若「あ?そうか、済まない」

    尊 心の声(そんなん選んだら、お母さんだけが異常に喜ぶよ)

    尊「無難に、サーフパンツ系にしましょう」

    若「色々、模様が入っておるのう」

    しばらく、二人それぞれ黙って選んでいた。

    若「これなど如何であろうか」

    尊「決まりました?僕も選びましたから、試着しましょうか。あっ」

    若「おっ」

    同じ柄の色違いを手にする二人。

    尊「わー、嬉しい!あとはサイズが合えばいいけど。兄さん、ちょっと見せてください」

    若君の選んだ水着のタグを見る尊。

    尊「サイズは大丈夫そう。じゃ、着てみましょうか」

    試着室。まずは若君。

    若「どうじゃ?」

    尊「わー、想像通りよく似合う。えーどうしよう、僕似合わなかったら」

    若「そんな事はなかろう」

    尊「いや、容貌の完成度の違いが如実なので…」

    若「その言葉、いつぞや聞いたな」

    尊、着替えました。

    若「何も申し分なかろう」

    尊「良かった~」

    選択完了。

    尊「あの、もしかして僕に気を遣って同じのにしたとかないですか?」

    若「いや、それはない。わしも面食らった位じゃ。されどかわいい弟と、センスが同じで嬉しかった」

    尊「センス、ちゃんと覚えてますね。さすが忠清兄さん」

    若「此度も、様々な言葉を覚えようと思うておる。尊、よろしく頼む。…そうじゃ、早速尋ねたいのじゃが」

    尊「なんですか?」

    若「先程唯と吉田殿が、再会の折に手を叩き合うておった。あれは何か合図や決め事なのであろうか。あとクラスメート、とは何じゃ?」

    尊「あー、ハイタッチ。えーと軽い挨拶でもやるし、上手くいったねおめでとうって時もやるし。お姉ちゃんの様子だと、会えばいつもあぁしてたんじゃないかな。クラスメートは、同じ教室で勉強してた仲間です」

    若「そうか。仲良うしていたのは相違ないと」

    尊「多分お姉ちゃん、誰にでもやってますよ。だから心配要りませんから」

    若「そうか?」

    尊「はい。…あ、そういえばハイタッチって、今この状況でもやりますよ」

    若「それは何ゆえ?」

    尊「一緒の選んだじゃん、二人通じあってるよな!って」

    尊が右手を挙げる。若君も同じく右手を挙げた。

    尊「イェーイ!」

    若「イ、イェーイ」

    パシッ!といい音でハイタッチ。

    若「おぉ、なにやら、より通じ合うた気がするのう」

    尊「良かった。じゃあ、これからは時々やりましょう」

    若「そうじゃな」

    尊「もう決まったかな~?お姉ちゃん達の所に行きましょうか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    実に微笑ましい兄弟。

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    返信先: 創作倶楽部
    ぷくぷく様・妖怪千年おばば様

    まずぷくぷく様へ。

    お返事が遅くなり大変失礼致しました。先程ようやく以前の作品を再度拝読しましたが、変わった?そうかな?という感想です。謝っていただくなど恐れ多いです。
    それでしたら、私の「」の使い方は、ぷくぷくさん寄りですので、こちらが恐縮でございます。

    お二人へ。

    私が現代のお話を描いているのは、戦国言葉をうまく扱えないからです。もっと励まないといけませんが(*_*)。お二人の言葉の操り方、大変尊敬致しております。

    てんころりん様

    投稿の間隔が空くのですね(ToT)淋しくなります。

    色々ご事情もあると思いますので、サイトが見られない、という環境でないのであれば、アシカフェの動向を見守っていてくださいね。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days9~21日14時30分、そっと見てました

    あい変わらずな親子です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    本屋を出て、急いで歩き出す尊。

    尊 心の声(あそこの角を曲がれば、水着売場はすぐだな)

    角を曲がった所で、思わずバックした。

    尊 心(わ、おっと!え、誰と居る?僕出てっていいのかな?様子を見るか)

    唯達三人に遭遇。少し離れた所から覗く事に。

    美香子「ふむー」

    尊「わっ!お母さん!いつから後ろに居たの?」

    美「尊こそ、いつから覗いてんのよ」

    尊「ハイタッチから」

    美「私もそこから。あの子達、というか唯だけど、相当プラプラしながらゆっくりと売場に向かってたのね」

    尊「若君固まってるよね。大丈夫かな」

    美「どっちの言葉をしゃべればいいか、わかんなくなってるんじゃない?」

    尊「あ、そっか。目上の人には現代語、僕やお姉ちゃんは戦国言葉でいいけど、現代語の方が無難そうな同年代、って今まで経験ないもんね」

    美「唯がほったらかしにしてるのは気になるけど。なんか思考停止してる感じで口も開いちゃってるしね。若君の瞳って、黒目がちじゃない。まるで…」

    尊「埴輪みたいになっちゃってる?」

    美「はに丸王子みたいになっちゃってる」

    尊「またわかんない事言うー。なんかのキャラ?」

    美「ただの埴輪よりはかわいいわよ。お供の馬もいるの。若君と一緒でしょ。はい、わからなければ検索!」

    尊「後で見るよ。お母さんってさあ」

    美「何」

    尊「ただ勉強して頭イイだけの人じゃなくて、ちゃんとそういうテレビや漫画とか?も押さえてるからすごい」

    美「お勉強が出来れば医者にはなれるけど、それでは人としてはペランペランだもの。視野が広いのは大事よ」

    尊「なるほど。そんな美香子先生が人気で、我が速川クリニックは安泰だと。僕もそういうの必要なのかな…あれ、お姉ちゃん達どうなった?」

    唯と吉田がしゃべりまくる隣で、黙って若君が聞いている構図のまま。

    美「そろそろ助けに行こっか」

    尊「え、行くの?」

    美「だってあの男の子、ウチの患者さんだもの」

    尊「知ってるんだ」

    美香子と尊、歩き出す。

    吉田「お前がしゃべり過ぎるから、旦那さんがしゃべる隙がないんだろ?」

    唯「違うよ~」

    吉「…あっ、美香子先生!こんにちはー」

    美「こんにちは、吉田くん。最近お腹の調子はどう?」

    吉「はい、最近は大丈夫です。先生に、病は気からと言われてからは」

    唯「そういえばコイツ、潔癖症で人の握ったおにぎり食べられないんだったー」

    美「あらそんな事があったの。でも今は大丈夫ね。ハイタッチしてる位だから」

    唯「そんな前から見てたの?」

    若君 心の声(長い間見ておったと?…母上、早く止めていただきたかった)

    吉「先生も来てたんだ。あっ、弟くん?あの超エリート高に通ってるっていう」

    尊「こんにちは」

    美「唯達が里帰りしてくれたから、家族みんなでお出かけしてるのよ」

    吉「へー。じゃあ僕は、お邪魔なんでそろそろ消えます。今日は先生に会えて、嬉しかったです」

    唯「ちょっとー、そこは私じゃないの?」

    吉「お医者さんは、普通は病んでる時だけ会う人だろ。今日は元気な時に会えたからさ」

    若君「なるほど」

    尊「さすが人気の先生だ」

    美「ふふふ、ありがとう吉田くん」

    吉「では、失礼します!」

    美「さよなら~」

    唯「バイバーイ」

    ひとまず、小さな嵐が去りました。

    尊「へー、これがはに丸王子」

    美「見つかった?ひんべえも居るでしょ」

    尊「この馬?ふーん」

    唯「なに検索してんの」

    尊「ん?まあいいから」

    美「若君」

    若「はい、母上」

    美「あの子、ただの友達だからね」

    若「そう…ですか?随分親しげでしたが」

    美「唯は小さい頃から、男友達が多い子だったから」

    若「なぜそれを、わしに申されるのですか?」

    美「すごく嫉妬してたように見えたから」

    若「…」

    唯「え!たーくんが嫉妬!なんで?」

    美「唯が吉田くんと楽しそうにしてたからでしょ」

    唯「えー?たーくん以外は目もくれないし」

    若「まことか?」

    唯「うん。ごめんねー、久々だったからいっぱいしゃべっちゃった」

    美「じゃ、そろそろ行きましょ」

    唯が、若君と手をつなごうと左手を出した。すると、

    若「こちらじゃ」

    逆側に回り、唯の右手を取った。

    美「ふふっ、かわいいわね若君」

    尊「あー、右手はわしのモノだと?」

    若「然り」

    唯「えー、しばらくこのネタ引っ張られそうー」

    いよいよ、水着売場へ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    心配しなくても、全部若君のモノでしょ。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days8~21日日曜14時、静かにパニック

    まさかの伏兵、登場。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母の運転で、ショッピングモールに到着。

    美香子「車停めてくるから、先に行ってて」

    唯&若君&尊「はーい」

    三人、入口手前で車から降りた。

    尊「お姉ちゃん、ちょっと本屋寄りたいから」

    唯「了解、先に行ってる~」

    唯と若君の二人で、水着売場へ向かい始めた。

    唯「久しぶりだね~ショッピングモール」

    若「相変わらず、床が柔らかい」

    唯「またそれ~?そろそろ違う覚え方にしようよ~」

    二人が歩いていると、通路の向こう側から、こちらをいぶかしげに見ながら若い男性が近づいてくる。

    男「あれ?速川?」

    唯「あれ?あー!」

    唯、若君とつないだ手を離して、急に駆け出した。

    若「唯?え?」

    取り残される若君。

    唯「吉田~!」

    吉田「やっぱ速川かー!」

    唯と吉田、お互い右手を挙げた。

    唯「うぇーい」

    吉「うぇーい」

    パシッとハイタッチ。

    若君 心の声(なっ、なんと!)

    唯「久しぶりー元気?今日は買い物?」

    吉「久しぶり。お前は間違いなく元気だな。ちょっと本屋に行ってた」

    唯「優等生ってみんな本屋に行くなぁ」

    吉「誰でも行くだろ。あれ?お前確か、デキたから学校辞めたんじゃなかったっけ?デキ婚って聞いた気が」

    唯「デキ婚…はぁ。デキて欲しいのにぃ」

    一気にトーンダウンし、顔が曇る。

    吉「え、俺なんか地雷踏んだ?あっ…デキてたけどダメだったとか?ごめん速川、事情がわからなくて」

    唯「いーよ。元々デキてないから。それガセネタだよ」

    吉「そう?デリケートな話だからさ、傷つけたら悪かったなって」

    唯「ありがと。結婚したのはホントだけど」

    吉「ソコはマジなんだ、天変地異~。あれが旦那さん?置いてきてどうすんだよ」

    若 心(唯…一体、何者と話しておるのじゃ)

    若君、ようやく近くまで来た。

    吉「何が起こると、こんなすんげぇイケメンとお前がくっつくんだ?」

    唯「私の魅力で」

    吉「自信満々に言ってんなー。俺にはわかんねー。…あ、こんにちは!高校で速川のクラスメートだった、吉田と言います」

    若「こんにち、は…」

    唯「マイダーリンのたーくんだよ」

    吉「こいつの、ドコがいいんすか?」

    若「え」

    唯「もー!変な事聞かないで!」

    若 心(この男、随分と親しく話しておる。クラスメート、がわからぬが、学校に関わる人物か?しかもあの、手を叩き合う仕草は何じゃ?かなり心通じておるような…)

    若君、考えを巡らせ過ぎて、うつろな表情になっている。

    吉「足が速いのが好みとか?」

    唯「止めてよー。それは褒められたけど、馬には負けちゃうし」

    吉「なんでそこで馬なんだよ。お前は飛脚か?それか足軽?」

    唯「え!なんでわかった?さすが優等生!」

    吉「何だよソレ。話がとっ散らかって、訳わかんねーよ。ねぇ、旦那さん」

    若「え?あぁ…」

    若 心(現代語を話さねばならぬようだが、とても使いこなせそうにない。ここは黙って、頷くより他ない)

    吉「なんか、寡黙でカッコいいな。歳は幾つ違い?」

    唯「え!えっと…二つくらい?」

    吉「また訳わかんねぇ事言う。あー、誕生日の関係?」

    唯「そ、そう」

    吉「すげぇ大人っぽい。わかった!いつもお前がしゃべり過ぎるから、旦那さんがしゃべる隙がないんだろ?」

    唯「違うよ~」

    若 心(話はいつまで続くのか。唯、そなたの楽しげな顔、これ以上見ておるのは…)

    その時、尊と美香子がこちらに向かって来るのが見えた。

    若 心(おぉ、助かった!)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、この場面を別の角度からお送りします。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days7~20日16時、目白押しです

    もしや、水に入るのにトラウマあり?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    実験室に三人。

    唯「ねぇ、花火の後に調べたい物がある」

    尊「あー、そう。まずは花火…えっと、家で今度やろうとしてるのは、こんな感じです」

    線香花火などの画像や動画を観る若君。

    若君「ほぅ、まさしく火の花じゃな。美しいのう」

    尊「で、こちらが打ち上げ花火です。これは家では無理なんで、やってる所に見に行ったりするんですけど」

    動画が、夜空を彩る、迫力の大輪の花火に。

    若「なんと!闇に花が咲いておる!しかも咲いては消え、また違う花が咲き」

    唯「たーくんは言い方がいつもキレイ」

    尊「少しは見習ったら?」

    唯「身に付くモノなら、とっくに身に付いておるのじゃ」

    尊「ソッコー諦めたと」

    唯「似合わないコトはしない」

    尊「似合うよう努力しなよ」

    唯「いーのー。たーくん、打ち上げ花火キレイでしょ。あーどっかで、生で観らんないかな~」

    尊「花火大会ね、探すよ…あ、8日にあるよ」

    唯「他には?」

    尊「お姉ちゃん達が帰る日の辺りが多くて」

    唯「お盆だもんね。わかった、ありがと」

    尊「どうする?」

    唯「木曜だもんね…お父さんに相談してみる」

    若「空一面に、咲くのが観られると?」

    唯「観たいよね。ちょっと返事待っててね」

    尊「で、何調べるの?」

    唯「そうそう、水着を見たくて。ビキニがいいな~。明日買いに行く前に予習する」

    尊「ふーん」

    唯「なによ」

    尊「いかにして、若君を悩殺するか?いやーそりゃ無理でしょ」

    唯「失礼なっ。そりゃボンキュッボンではないけどっ」

    若「ボン…」

    唯「あ、なんでもないから」

    尊「若君は、そのままのお姉ちゃんが好きなんだから、水着なんか何でもいいんじゃないの」

    唯「んーそっか。って違う!しかもなんで尊に言われる?」

    若「尊。水着とは、なんじゃ?」

    尊「あ、理解がそんな前で止まってたんだ。ごめんなさい若君。えーと、泳ぐ時に着る物です。水着のカタログはと」

    画像が出た。ビキニの女性やマネキンが、ポーズをとっている。

    若「なっ!こ、これは…」

    尊「やっぱり刺激が強いよね」

    若「覆う所が少な過ぎはしないか?」

    唯「そーかなー」

    尊「若君もそう言ってるし、もうスクール水着にしといたら」

    唯「やだっ、かわいいのが着たいっ!」

    尊「で、悩殺したいからビキニ?」

    唯「着てみたいんだよぅ」

    尊「若君、ちょっと刺激は強いかもしれませんが、これが海やプールに行くと映えるんですよ」

    若「こういう物なのか。先の世はわからぬ。唯、あまり際どい物は着てはならぬぞ。所で、プールとは何じゃ?」

    尊「あ、この写真の後ろに写ってる場所です。泳いだり、水遊びをしたりするために、水を溜めてあります。水がキレイな池や沼?ちょっと違うか」

    若「沼…底なしではないか?」

    尊「いや、それはかえって作るのが難しいです。なんか嫌な思い出でもあるんですか?」

    唯が投げ捨ててしまった、タイムマシンの起動スイッチを拾いに、沼に入った事を思い出す若君。

    若「いや、何程でもない」

    尊「足、着きますから」

    唯「そんな話してると、プール行きたくなる~」

    尊「行く?」

    唯「まさかあんたの口から出るなんて」

    尊「いきなり海よりは、若君も良くない?」

    唯「確かに。いつにする?」

    カレンダーを確認。

    尊「いつでも行けると言えば行けるけど。あ、来週土曜はお祭りだから。地元の」

    唯「あー、あのお神輿出るヤツ?」

    尊「うん」

    唯「じゃあ、来週のどっかの平日かなー」

    若「盛り沢山じゃな」

    尊「なんかさ」

    唯「なに?」

    尊「楽しい予定で、カレンダーが埋まってくって、いい」

    唯「夏休み終わった時にさ、あんただけ真っ黒に日焼けしててさ、周りが何してた?!って思うんじゃない?」

    尊「それさえも僕は後悔しない」

    唯「カッコいい事言ってると思いきや、遊びに真剣なだけだし」

    若「約束したからの。後に励むと」

    尊「うん、今は満喫する」

    唯「若君との夏、をでしょ」

    尊「お姉ちゃんも入ってるから、ちゃんと」

    唯「ちゃんと入ってて、良かったよ」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    おでかけの予定、続々。

    20日のお話は、ここまでです。

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    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days6~20日土曜14時、食欲旺盛です

    人の倍はいかがなものか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊の夏休みスタート。美香子の仕事終わりに合わせ、五人全員で、遅めの昼ごはん。

    覚「思ったんだけどな」

    美香子「何を?」

    覚「ご招待の日だが」

    唯「わぁ、なになに?」

    覚「庭でバーベキューやろうか?夏だし」

    唯&尊「やったー!」

    尊「えー、いつぶりだろ?」

    美「バーベキューコンロ、錆びたりしてないかしら?」

    覚「あーどうかな」

    若君「なにやら楽しそうじゃ」

    尊「えーと、説明しますと、庭で火をおこして、肉や野菜を焼いたりして食べるんです」

    若「わざわざ、外で?」

    尊「確かに」

    唯「そこで話終わんないでよ」

    若「野外で食するとは…戦の折はそうじゃが」

    覚「そうか。若君にとっては、何をわざわざ不便な事を、ってなるよな」

    唯「気が乗らない?」

    若「いや、皆がそこまで喜ぶゆえ、その不便が楽しいのであろうの」

    唯「正解!」

    覚「じゃあ、今から点検するか」

    一式、ウッドデッキに並べた。

    若「この、袋に入った長い物は、何ですか?」

    覚「あぁ、タープだね。出してみようか」

    金属製の骨組が畳まれている。広げた上にシートを被せ、ポールを立てる。屋根が出来た。

    覚「日差しや雨よけだね。これは簡単に設営できて楽なんだ」

    若「これは…良いですね」

    唯「たーくん、戦に持って行きたいって思ったんでしょ?」

    若「思うた」

    覚「雨を制する者は戦を制するか」

    尊「そんな格言あったっけ」

    覚「中々いいだろ?」

    美「自画自賛ね。でも、夜だからよっぽど使わないんじゃない?」

    唯「えー使おうよ」

    美「雨天決行って事?」

    唯「じゃなくて、昼にもやろうよ。予行練習で」

    覚「あー、悪くないな。ご招待しておいて、お粗末な物お出ししても何だしな」

    尊「いつにする?」

    覚「やるなら日曜しかないから…明日は買い物だろ?来週だな。ご招待日の直前にはなるが」

    唯「わーい!食べるぞぉ~」

    覚「何だ?向こうでは、あまり食べられなかったのか?」

    若「父上、そんな事はありません。いつもの如く、人より多く食しておりました」

    唯「たーくん、そこは黙ってて~」

    若「まことの話じゃ」

    美「どうせ、ばんばん産むからとか言って人の倍食べてたんでしょ。現代よりカロリー少ないお食事だろうから、いいようなものの」

    尊「来月、ぶっくぶくに太って帰るんじゃない?」

    唯「そんな事ないもん!」

    覚「百年の恋も冷めるぞ」

    唯「ひー!」

    若「家の手伝いなどして、体を動かせば済む話じゃ」

    美「それいいわね~、一石二鳥」

    唯「太った私は嫌?たーくん」

    尊「そこ、論点違うし」

    若「容姿は何も申さぬが、働かざる者食うべからずじゃからの。わしも励みますゆえ、以後、何なりと申し付けくだされ。父上、母上」

    覚「わかった。三人ともな」

    唯&尊「はぁい」

    美「若君に先頭に立ってもらえると、色々スムーズだわ~」

    若「お役に立てて、嬉しいです」

    覚「ひとまず、点検の続きー」

    全員「はーい」

    点検、終了。

    覚「何とか全部いけそうだ。燃料は買わないとな。月曜にでも行くか」

    唯「行く行くー!」

    覚「ホームセンターだぞ?いやに乗り気だな」

    唯「夜、みんなで花火やりたーい!いいでしょ?いっぱい買おうよ」

    美「なるほどね」

    尊「わー、いいね!」

    若「花火?」

    尊「あ、説明…よりも、今から映像見ますか?実験室で」

    若「よろしく頼みたいが。父上、もう手伝いはありませぬか?」

    覚「大丈夫だよ。ありがとな」

    唯「じゃあ、実験室へGO~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    初めて平成に一人で来た時は、ほとんど寝込んでたもんね。

    投稿フォームへ

    返信先: 連絡掲示板
    確認いたしました

    連続で恐縮です。お手を煩わせてしまい、すみませんでした。

    投稿フォームへ

    返信先: 連絡掲示板
    夜分に失礼いたします

    創作倶楽部に先程投稿しましたが、編集した所、原稿が消えてしまいました。
    後から送信した方が復活できるとありがたいですが、先の方でも構いません。お手数おかけしてすみません。

    投稿フォームへ

    返信先: 創作倶楽部
    二人の令和Days5~19日金曜7時30分、ほんのり甘く

    城下にもよく売りに来てましたね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    玄関。

    尊「では一学期最終日、行ってきます!お昼には帰りますね」

    若君「行ってらっしゃい、尊」

    若君がリビングに戻ると、唯が麦茶をガブ飲みしている。

    若「腹を壊すぞ」

    唯「現代の夏って、こんなに暑かったかなー」

    若「確かに朝稽古の時分から日差しは強いが。唯は、一歩も外に出ておらぬではないか」

    覚「若君、もっと言ってやってくれ。ダラダラされるだけではたまらん」

    若君が呆れていると、風呂敷を抱えて美香子が現れた。

    美香子「お父さん、31日になったわ」

    覚「おー、そうか。良かった」

    カレンダーに予定を書き込む。

    唯「なに?31日って」

    覚「また、芳江さんとエリさんを、晩ごはんにご招待しようと思ってな」

    唯「わぁ!そうなんだ~」

    美「今回土曜は、旅行も行くし、お二人の都合がつかなかったから、水曜なんだけど」

    若「それは楽しみじゃ」

    唯「この包みなに?」

    美「あー、これね。芳江さんにいただいたの」

    風呂敷をほどくと、二人が見覚えのある、黄色い果実がゴロゴロっと出てきた。

    唯「あーっ!瓜!」

    若「おぉ、この先の世にもあるのじゃな」

    覚「マクワウリだな」

    唯「マクワウリ、って名前なの?」

    美「おうちで、おじいさんが育ててみえるらしくて。今年はいっぱい採れたからって、くださったの」

    覚「向こうで、食べたのか?」

    唯「うん、おふくろさまが切ってくれた。すっごく甘かったよ」

    覚「これ自体は甘さは控えめだが、戦国時代なら、かなり甘く感じるだろうな。早速冷やして、昼にいただこう」

    唯「わー、楽しみっ」

    バケツに水を張り、凍った保冷剤とマクワウリを沈めた。じっと見つめる唯。

    若「吉乃殿が、とならば、まだ梅谷村に居た頃か?」

    唯「うん。まだ全然、たーくんに会えてなかった頃」

    若「声は、幾度も聞いた気がするがの」

    唯「あはは、わりと叫んでたからね」

    若「唯とわかっておれば、馳せ参じたが」

    唯「ホントに~?その頃は、おなごと心通じ合わなくて良かったんじゃなかったぁ?」

    若「うっ、それは」

    唯「ははは。あーあの頃は、超働いたな~」

    覚「今も、働いてもらっていいんだぞ」

    唯「えー」

    若「父上、ならば今から、庭の草取りをいたします。唯と」

    覚「あー、それは助かる。よろしく頼むね」

    唯「げっ!」

    若「ほれ、行くぞ」

    唯「はぁい」

    一仕事、終了。

    覚「あー、綺麗になった。ありがとう、若君、唯」

    若「いえ、朝稽古でよく、草に足を取られておりましたので」

    唯「自分のためかーい」

    覚「よくぞ気付いてくれたと言え。はい、お疲れ様。麦茶どうぞ」

    唯「わーい、あーおいしい」

    若「このようにいただくのが本来じゃ」

    唯「えへ、失礼いたしましたぁ」

    家族全員で昼ごはん。マクワウリも切りました。

    尊「へー、450年前もこれ食べたの?」

    唯「いただきまーす!あ~懐かしいっ。確かに、今食べるとそこまで甘くないけど、おいしい!」

    覚「若君、変わらない?」

    若「はい、同じです」

    美「変わらないってのも、ある意味すごいわよね」

    覚「そんな物もあっていいだろ」

    唯「ねえねえ、31日は何作るか決めた?」

    覚「まだだ。考えておく」

    尊「イベント、もっと増えるといいなぁ」

    唯「受験生のセリフじゃないし」

    尊「三倍頑張るから」

    唯「はいはい」

    全員「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イベントは、まだまだ増える予定。

    19日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days4~18日20時、時間無制限です

    確かにそう言ってました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだ晩ごはん中。

    覚「で、これは提案なんだが。若君に」

    若君「わし、にですか?」

    覚「海、見るだけじゃなくて、泳いでみないか?」

    若「泳ぐ…」

    唯「海水浴?!行く行くー!」

    覚「今度行く所、近くに海水浴場があるんだけど、砂浜が白くて綺麗でね。ぜひ楽しんでもらいたくてさ。良ければ当日は、早朝にここを出発する」

    尊「え、土曜でしょ、お母さんは?」

    美香子「仕事終わってから、車で宿に直接向かうわ」

    唯「いいの?お母さんだけ一人だよ?」

    美「いいわよ~この歳で海なんて、日焼けが心配だし。そこ、ホントに綺麗なのよ。昔はよくお父さんと行ったの」

    若「思い出の場所なのですね。では、是非朝からお願い致します」

    覚「よし、じゃあ楽しみにしてて」

    唯「水着買わなくちゃ!」

    美「そうね。じゃあ日曜に買いに行きましょ。四人で」

    尊「四人…」

    美「尊、入ってるわよ」

    尊「海水浴かー、こんな事でもないと絶対行かない」

    美「でしょ。良かったわね、夏の思い出が増えるわよ」

    尊「うん!」

    覚「だな。ところで、若君お待たせ。話ってなんだい?」

    若「あっ、ありがとうございます」

    若君が箸を置く。

    若「前に二人でこの先の世に参った折、寝所は別でした。その所以は、唯がまだ高校生だから、という事でした」

    覚「うん、そうだったね」

    若「もう高校生ではありません。去る時に辞めはしましたが、今は既に卒業した歳に相当と、唯に聞きました」

    覚「はい」

    若「寝所を、唯と同じ部屋にしていただけぬでしょうか」

    若君が頭を下げる。

    覚「わかった。今日から唯の部屋で。面会時間の制限もなしにする」

    唯「わー、嬉しい!良かったね、たーくん!」

    若「誠に忝のう存じます」

    ずっと頭を下げている。

    美「若君、実はそれ、こちらからお願いしようかと思ってたの」

    若「え、そうなのですか?」

    驚いて顔を上げた。

    美「遊ぶ気満々だけど、尊は一応受験生だから。夜部屋で勉強する時に、いつまでも電気付けたりしてると、若君も居心地が悪いかなって思ってね」

    若「そうですか。わしも、尊の邪魔はしとうありません」

    尊「時間制限ないって事はさ、例えば若君が夜12時まで僕と一緒に居て、それから寝に行ってもいいわけだよね」

    唯「なんでそうなる」

    尊「亥の初刻のシンデレラじゃなくなると、前半一緒か後半一緒か、配分が変わるだけじゃん」

    唯「そんな事ない。夜一緒は大きい。じゃあ毎日、晩ごはん食べ終わったらすぐ部屋に行って、朝までたーくんとずっと一緒に居よっと」

    尊「なんでそうなる」

    美「うふふ、なんか、若君の取り合いになる様相ね」

    覚「人気者だ」

    若「痛み入ります」

    9時。ゆうべ尊の部屋に敷いた若君の布団一式を、唯の部屋に移動。

    若「尊、済まなかったの」

    尊「いーえー。僕このままお風呂行ってくるよ」

    唯「ありがとね」

    唯のベッドに沿わせて布団を敷いた。

    唯「うー、嬉しいっ!もぉこっちの布団でばっかり寝ちゃうかも」

    若「で、わしが唯のベッドで寝るとな」

    唯「あー、そんな意地悪言う?」

    若「ハハハ」

    若君が何か考え込んでいる。

    唯 心の声(目の前に布団。今二階には二人だけ…キャー!ちょっと待って、い、いま腹を)

    若「…尊とは、歳は一つ違いであったな」

    唯「は?!あ、うん、そうだよ。急になに」

    若「となれば、昨年此処に居た折、唯は、受験生ではなかったのか?」

    唯「え!えーと、受験って、それを目指してるから受験生なんで、私は勉強もしてなかったから…」

    若「違うたか」

    唯「受験は全然考えてなかったよ。どうしてそう思ったの?」

    若「唯の夢ややりたい事の、芽を摘んだかと思うての。尊は、発明家になる為、今受験生だと聞いたゆえ」

    唯「私の夢ややりたい事は、叶ってるよ」

    若「そうなのか?」

    唯「やりたい事は、たーくんを守る事。今回は、急に令和に連れて来ちゃってごめんなさいだけど。夢は、たーくんのお嫁さんになる事」

    若「そうか。ならば良いが」

    唯「うふふ」

    若「喉が乾いたの。下に行くか?」

    唯「あっ、はい」

    若「どうした?」

    唯「ううんなんにも。行こっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    残念でした。なのか?

    18日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days3~18日12時、兄の激励

    きっと約束は守られる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはんの時間です。

    覚「お疲れ~」

    美香子「ありがとね。あ~、いいわね、四人って」

    全員「いただきます」

    若君は、今朝唯に頼まれた話をいつ切り出そうか、機会を伺っていた。

    美「あら?若君どうかした?」

    若君「いえ、お気遣いなく」

    美「…そうだ、ゆうべ検査がどうとか言ってた話だけどね」

    唯「あ、そうそう!」

    美「まだ出来ない、なんて嘆かなくていいから」

    唯「ホントに?!私の体がどうかしてるんじゃなくって?」

    美「ないない。2年3年経ってるならだけど。あんまり焦るのは、迎える気持ちとしても良くないから。ね、若君」

    若「案ずるな、と。ありがとうございます…助かります」

    美「ほらー、唯、若君もあんまり言われて、相当堪えてたみたいよ」

    唯「そっか。ごめんねたーくん」

    覚「若君、さっきから何か言いたそうなんだが、それ、晩飯の時でもいいかい?」

    若「えっ?あっ、はい」

    唯「えー」

    覚「唯の指図か」

    唯「ん?なんのコトかなー」

    覚「旅行の話、今の内に母さんと相談したいから」

    唯「えっ!やったぁ!待つ待つ!」

    覚「やっぱり黒幕はお前か」

    晩ごはん。

    唯「わーい、蓮根のはさみ揚げ!」

    尊「二日連続」

    唯「え?そうなの?」

    美「満月の夜は、はさみ揚げって決めててね」

    唯「そうだったんだ」

    若「済みませぬ、父上」

    覚「いいよ~食べたかっただろ?」

    若「はい!」

    全員「いただきまーす」

    久々の家族団欒です。

    覚「ところで、宿、取れたぞ」

    唯&尊「やったー!」

    唯「ん?なによ尊」

    尊「は?」

    唯「一応、受験生なのに」

    尊「旅行なんか行ってる場合じゃないって?」

    唯「心配してあげてるんだよ」

    覚「五人で行くぞ。尊もそうしたいって言ったし」

    唯「大丈夫なの?」

    尊「僕は、決心したんだ」

    唯「え、改まってなに」

    尊「この夏、多分受験勉強三昧なんだろうな、とは、お姉ちゃん達が帰ってくるまでは思ってた」

    唯「うん」

    尊「でも、まるでプレゼントのように二人が現れて」

    美「プレゼント。そうね」

    尊「このひと月は、お姉ちゃんと若君と、がっつり楽しむ事にした。こんな夏休みと同時期なんて機会ないし、できるだけ一緒に居たいし」

    若「尊、それで良いのか?将来に関わるのではないのか?」

    尊「大丈夫です。二人が帰ったら、倍、頑張りますから」

    若「無理はしないで欲しいが」

    尊「家族五人の時間は貴重だから。後で振り返った時、このひと月を言い訳にはしないと、若君に誓います」

    若「そうか」

    若君が、尊に手を差し出す。尊も慌てて手を出した。食卓の上で、二人はがっちり手を組んだ。

    若「ご武運を祈る」

    尊「わー、これで三倍頑張れる!」

    パチパチパチ。

    尊「え?なんで拍手?」

    唯「なんとなく。ねっねっ、で、いつどこに行くの?」

    覚「来月3日4日で、また海の近くに」

    唯「海!海だって、たーくん!」

    若「同じ場所ですか?」

    覚「いや、前回は太平洋側だったんで、今回は日本海側だよ」

    若「?」

    尊「後で、地図見せますね」

    覚「で、何とか取れた宿だから、温泉はあるけれど、今回は部屋に露天風呂はない。あと、五人一部屋だからな」

    美「イチャイチャできなくてごめんね、若君」

    若「あっ、いえ」

    尊「そこ、お姉ちゃんじゃなくて若君なんだ」

    美「だって、今、唯より明らかにがっかりしてたもの」

    唯「えー、かわいい~」

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    そろそろ切り出したら?若君。続きます。

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    二人の令和Days2~18日木曜8時、急いで検索!

    家から通える距離で、進学でしょうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝。尊は学校に。若君が玄関で見送る。

    尊「もう若君に見送ってもらう事なんてないと思ってたから、ちょっと感動してる」

    若君「そうか。いくらでも見送るぞ」

    尊「いえ、明日終業式だから、今日入れて二回なんだけど」

    若「学校へ行かぬと?」

    尊「夏休みになるんで、基本ずっと家に居ますよ」

    美香子「普通は、高三の夏なんて忙しい筈なんだけどね~」

    母が通りかかった。

    尊「大学は…まあ行ける所に行くし」

    美「まっ、入れない大学は尊にはないしね」

    若「賢いからですね」

    美「発明家の道をひた走るのよね」

    尊「うん」

    若「医者には、ならぬと?」

    美「やりたい事をやって、極めてくれるならそれでいいと思ってるの」

    尊「若君に、起動装置刀、の注文受けてるしね」

    若「わしの所為で?」

    尊「いえいえ、タイムマシン完成した時から、家は継がないと決めてましたから、ご安心を」

    唯がやって来た。

    唯「あれ?なかなかたーくん戻って来ないと思ったら。まだいいの?」

    尊「あ、そろそろ行かなきゃ」

    美「じゃ、行ってらっしゃい」

    唯「行ってらっしゃーい」

    若「行ってらっしゃい、尊」

    尊「わー、嬉しい!」

    半分泣きそうな顔で、尊は出て行った。

    美「さて、私も準備。あ、二人とも、エリさんと芳江さんに、顔見せてあげて」

    唯「わかったー。帰って来たって言った?」

    美「言ってない。サプライズでよろしく~」

    若「心得ました」

    クリニックに入る。中から、少し間を置いて、歓声が上がった。

    覚「おー、盛り上がってるな」

    キッチンで片付けの終わった、覚の耳にも届いた。

    若「お二方共、腰を抜かさんばかりであったのう」

    唯「化けて出た的な?でもすっごく喜んでくれて、良かったね」

    若「そうじゃな」

    二人、リビングに戻り、ソファーに並んで座った。

    唯「ねぇたーくん、あのね」

    若「なんじゃ?」

    唯「あっ…お父さん来ちゃったから、小さい声で話すね」

    覚は、食卓でタブレットを操作し始めた。

    若「…そうか。うむ…」

    唯「ねぇ、たーくんから、これは解せぬ、って言って~」

    若「されど、家長には従わねば」

    唯「だーってぇ、もう高校生じゃないし、ちゃんと結婚式もしたのにぃ。たーくんだって、その方がいいでしょ?」

    若「それは、叶えば喜ばしいが」

    しきりに説得している。

    覚「おーい、何企んでるか知らんが、ちょいちょい聞こえてるぞー」

    唯「なんでもないよぉ~」

    若「唯、ならば昼に、父上母上に話してみる」

    唯「うん、そうして。お願いします」

    唯はソファーから立ち上がり、覚の元へ。

    唯「ところで、お父さんなにやってるの?」

    覚「せっかく二人が帰って来たから、どこか旅行に行こうと思ってな」

    唯「きゃー!嬉しい!どこ、どこ行くの?」

    覚「今からの予約はかなり厳しいからな。取れる日付、取れる所にだ」

    若「父上、手間をかけ済みませぬ」

    唯「あー、取れるといいなあ。でも珍しい、尊じゃなくてお父さんが探してるなんて」

    覚「尊は今学校だから、早くて夕方しか探せないだろ。電話急げって言うからな」

    唯「…それ、もしかして、善は急げ?」

    覚「おっ、唯でもわかったか」

    唯「あ、ディスってる!もー!」

    若「その言葉はそう使うのじゃな」

    覚「ん?若君、ディスるがわかるのか?」

    若「はい。以前、唯の部屋にあった胡乱な書物に載っておりました」

    覚「…若君、あい変わらず凄いな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    あまり年長者を驚かせると、体に悪いよ。

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    まずはめでたい\(^o^)/

    今日投稿するならこの話題に触れないと!祝復活!皆さんに教えていただけたので、早速NHKオンデマンドのお気に入りに再追加しました!鬼リピします(ToT)

    実は8か月

    前回の令和Days1内で、唯が「もう、7か月も経つんだよ?」と言いますが、永禄四年の月計算としては、この日現在8か月経っています。

    管理人様のブログ記事”戦国時代に使われていた旧暦とは”に、ご説明がありますが、この時代の暦には「閏月」という制度が使われており、一年が13か月ある年が、19年に7回のペースで存在しました。
    永禄四年はこの年に当たります。一月差し込まれたのは、3月の後ろでした。よってこの年は、1月―2月―3月―閏3月―4月―5月―6月―7月…と進んでいました。

    今月は3月で来月は閏3月だと聞かされたであろう唯は、相当驚いてさすがに覚えていたでしょうから、間違えて7か月と言う事はない筈です。平成Daysから続けてお読みくださっている皆様に分かりやすくするために、8か月ではなく7か月と表現しました。

    二人が結ばれたのは平成30年12月15日の深夜でこの日が令和元年7月17日だから、7か月後だよねと考えた方がわかりやすいと思いましたので、唯にも若君にも7で話してもらった次第です。

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    (新)二人の令和Days1~2019年7月17日水曜20時、短気は損気?

    唯は強運の持ち主だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは戦国。永禄四年、緑合の城。閨に唯と若君。二人、白の寝間着姿で、布団の上に向かいあって座っている。

    唯「…」

    若君「泣くな」

    唯「だって、今月もダメだった」

    若「何を急いておる。何年かかっても良い」

    唯「私が、女の出来損ないなんだよ」

    若「違う」

    唯「早く、若君…たーくんを喜ばせてあげたいのに」

    若「これはその…先の世で、タイミング、と申す物が、少し合わぬだけじゃ。それか、所以はわしにあるのであろう」

    唯「違うよ」

    若「いずれにせよ、子を成す成さぬは、我らがどう憂いても、天に任せるより他ない」

    唯「もう、7か月も経つんだよ?」

    若「まだ七月しか経っておらぬ」

    唯「…検査とかした方がいいのかな」

    若「検、査?」

    唯「お母さんは医者だから」

    若「何を気のふれた事を。此処は永禄じゃ。…まさか、先の世に帰りたいと申すか?」

    唯「家として、跡継ぎが必要でしょ?もっと、ばんばん産んでくれる側室を…」

    若「唯!たわけた事を申すな。この忠清、命を全うするまで、愛するのはそなただけじゃ」

    唯「でも、今はこうして平和な夜だけど、いつまた戦があるかわからないし、早くって気持ち、わかってよ」

    若「だからと言って、戯れ言を申すでない」

    唯「戯れ言って…私、真剣に話してるのに!どうしてわかってくれないの?!ひどい!もういい!」

    唯は立ち上がり、奥で何かを探し始めた。

    若「唯、何をしておる…あっ、それは」

    手に、タイムマシンの起動スイッチ2号。

    若「唯、落ち着くのじゃ、旅立つ折に尊が、二度と使うなと申したではないか!」

    唯「いざとなったら、これで!」

    若「ああっ!」

    唯は、刀を抜いて起動させてしまった。若君は、慌てて唯を掴んで引き寄せ、抱き締める。

    若「唯…」

    唯「えっ?なに?だって若君がわかってくれないから、ちょっとフリしただけだよ。だって今日、満月じゃないし」

    若「…今宵は、満月じゃ」

    唯「えっ?またぁ、嘘でしょ?」

    若「嘘など申さぬ」

    唯「マジで?!え、間違えた?…ちょっと待って今日何日?え、この前の満月っていつだった?思い出せない…そういえば最近いつ月見た?あーどうしよう!どこかとんでもない世界に飛ぶの?それとも生きていられないの?!」

    混乱して暴れる唯を押さえながら、若君は優しく語りかける。

    若「唯。あれほど満月を気にしておったのに、空を見上げていなかったと?」

    事の大きさに呆然としながらも、なんとか若君の問いに答える唯。

    唯「…うん。とてもそんな気分になれなくて…全然見てなかったの」

    優しく唯の髪をなでる若君。

    若「そうであったか…。月も見上げられぬ程、気に病んでおったのか。そこまで辛い思いをしておったのじゃな。わかってやれず、済まなかった」

    唯「ううん、若君が悪いんじゃないのに、当たっちゃってごめんなさい。ホントにごめんなさい!…あっ」

    二人の体が、消えかかっている。

    唯「どうしよう…どうしよう!」

    若「もう良い。一蓮托生じゃ。しっかり、つかまっておるのだぞ」

    唯「はい…ごめんなさい…」

    そして、閨には、誰も居なくなった。

    ┅┅┅

    その頃、現代の尊の実験室。

    尊「あれ、こっちのファイルじゃなかったか」

    パソコンと格闘中。その時、天井が光った。

    尊「え?!タイムマシン、何で動いてるの?!」

    恐る恐る振り向くと、そこには、唯と若君の抱き合う姿が。

    尊「わっ、白いっ、お化け?!えーっ!えーっ!」

    飛び退いて、腰を抜かしている。

    唯「あぁ、尊がいる…帰ってこれたんだ」

    若「良かった、無事戻って参った」

    尊「なんで?なんで?危険だから、使わないでって言ったのに」

    唯「若君が私の気持ちわかってくれないから、つい…」

    尊「なんでだよ、ケンカの小道具じゃないよ?無事に着いたから良かったものの」

    唯「ごめんなさい。反省してます。来ちゃったからにはしょうがないけど、この起動スイッチ2号、一月後に使うと、永禄では一月後の、一日前に着くんだよね?」

    尊「使うならね。そりゃ、帰ってもらわないと困るから、使ってもらうけど」

    唯「って事は、約一月、私達、永禄で行方不明になるよね…ごめんなさい、若君!どうしよう…」

    若「こうなったからには、致し方ないではないか」

    尊「…それ、飛んだ永禄時間の3分後に着けば、丸く収まるよね?」

    唯「そりゃそうだけど、どうするの?」

    尊「えっと、この前永禄に飛んだ時は、敵に囲まれた中に戻るのも危険だったから、翌月の満月の一日前に戻ったんだけど、原理的には、3分後に戻る方が安全なんだ」

    唯「そうなの?」

    尊「んー簡単に言うと、一度作った道を通った方が、改めて道路を作るより楽と言うか」

    若「その説明はわかりやすいの」

    尊「ありがとう若君。だから、今回帰る時は、3分後に戻れるように設定を変えとくよ」

    唯「そんな簡単にできるの?」

    尊「未来の僕だけが頑張るんじゃなくて、今の僕も頑張らないとな、って思ったからさ、研究済み。だから一月後、安全に帰れますから」

    若「尊。我らがおらぬ間にそのような…大儀であったの。さすが師匠じゃ」

    唯「ありがとう~!尊ー!」

    ドアを叩く音。

    覚「尊ー、さっきかなりこの中が光ってたが、大丈夫かー?」

    美香子「怪我とかしてないー?」

    尊「ははは、さすがに、二人が帰って来たとは思ってないね。開けていい?」

    唯&若「はい」

    ドアを開けた。

    覚「爆発はしてないな。あっ!」

    美「まあ…なんてこと」

    唯「お父さん、お母さん、ただいま!」

    若「父上、母上、ただいま戻りました」

    覚「どうしたんだ、体は無事か?」

    唯「うん、大丈夫」

    若「ご心配には及びませぬ」

    美「唯…大分髪が伸びたわね。また、次の満月まで?」

    唯「うん。よろしくね」

    若「よろしくお頼み申します」

    美「そう…。ひとまず、リビングへ移動する?」

    覚「おー、じゃあコーヒーでも淹れるか」

    唯「うん!」

    若「また、平成ライフ、が始まるのですね」

    両親と尊、首を振る。

    若「え?」

    尊「若君、元号が変わって、今は令和って言うんです」

    唯「あ、そんな変わるってニュース、前に聞いたような…」

    若「では、令和ライフの始まりじゃな」

    尊「さすが若君、順応性が高い!」

    覚「じゃあ、行こうか」

    土産話は、夜中まで続きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人の夏物語、スタートです。

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