• このトピックには1,203件の返信、16人の参加者があり、最後に夕月かかりて(愛知)により23時間、 36分前に更新されました。
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    兎角この世は~源三郎編~ ”どんぎつねシリーズこぼれ話”

       
    皆様、ご無沙汰しました。
    ”緑合板”で、突然のお知らせを
    目にしまして、
    内容がそぐわないかと
    ためらっておりました。

    でも、勇気を振り絞って
    投稿いたします。
    原作は、途中までしか
    読んでいないので、
    ”黒羽城炎上”が
    どう回収されたのか、
    大変気になります。

    でもそこは、やはり原作を
    読み込んでからと思い、
    別の意味での”黒羽城炎上”事件
    を書いてみました。
    ちょっぴり笑って、
    ちょっぴり泣いて頂けたら
    嬉しいです。

    桜と薔薇様
    リクエストいただいた作品では
    ありませんが、
    お楽しみいただけましたら
    幸いです。

    夕月かかりて様
    ほのぼの長編、お疲れさまでした。
    次回作、お待ちしてます。

    ・・・・・・・・・・・・・・・

    花園での茶会が終わった翌日。
    つまりは、狐火に囲まれて、
    白狐の元へと戻って行く
    どんぎつねを見送った
    その明くる日でもあるのだが。

    源三郎は、宴の後片付けに
    追われていた。

     “仕事に励んでおれば、
     思い出す事も無い。“

    そう自分に言い聞かせ、
    ひたすら体を動かす。
    だが、しかし、
    当人はそのつもりでも、
    傍目にはそうは映らなかった。

      “源三郎様は、
      如何なされたのか。
      思い詰めた顔で、
      まるで、心ここにあらず
      のご様子。“

    庭師の頭は、さりげなく、
    手下の若い衆を力仕事に当てた。
    おのずと、源三郎には
    簾や簀の子の整理という、
    軽めの作業が回る。

    しかし、帳簿付けは
    源三郎以外、誰もする事ができない。
    何度も、茶道具や緋毛氈を数え直し、
    その数を書き直す様子に、
    庭師の頭は、
    気を揉むばかりだった。

    手間取りながらも記帳を終えた頃、
    ふと辺りを見回すと、
    宴の名残は東屋の周囲に
    新たに敷かれた白い玉砂利
    だけになっていた。

    西の空には、
    夕焼け雲が浮かんでいる。
    その中に、微かに動く
    小さなものがあった。
    目を凝らすと、
    透き通った羽根のカゲロウが
    風に身を任せるかの様に
    ふわふわと飛んでいる。

    源三郎は、いつの間にか、
    その頼りなげなカゲロウに
    誘い出されていた。

    着いた先は、
    月下美人の鉢が並ぶ一角だ。
    水を引き込んでいる樋の中から、
    流れる水音が微かに聞こえる。
    すると、カゲロウは、
    思いがけない早さで樋に向かい、
    その中に落ちて消えた。

     “とうとう、力尽きたか?“

    樋を覗き込む源三郎の胸が、
    チクリと痛む。

    子供の頃は、力強く飛ぶ
    オニヤンマが好きだったのに、
    何故、今は、
    儚げな小さな虫が気になるのか。

    溜息を一つ、つき、
    城に戻ろうと顔を上げると、
    黄昏の中に人の影があった。
    腰の辺りに、ふさふさと
    揺れるものが見える。

       “もしや、どんぎつね殿?“

       「戻ってきたのか?」

    源三郎は駆け寄ると、
    両腕を伸ばした。

    「何をする!」

    源三郎のみぞおちに
    その影の肘が突き刺さる。

       「うう!」

    体をくの字に折り、
    膝をついた源三郎の頭の上から、
    聞きなれた声が降ってきた。

    「源三郎?!」

      「わ、若君様!」

    振り返った若君が慌てて、
    源三郎を起こそうとする。
    すると、背中が棚に当たり、
    その弾みで、若君の体が
    源三郎に覆い被さる様に傾いた。

    源三郎は、若君が顔面を打つのを
    防ごうと、咄嗟に右手を
    若君の頭の後ろに回す。
    そして、自分の頬の横に引き寄せ、
    左腕で腰から背中を抱きかかえた。

    月下美人の鉢の間に
    倒れ込んだ二人は、
    暫くの間、動けなかった。

    源三郎は背中を、若君は腰の右側を、
    地面に強く打ち付けたのだ。

    西の山の稜線が、橙色に輝いていた。

        ・・・・・・・

       「さつき様、いつまで
        ここに、この様に?」

      「え?」

       「早う戻って、
        夕餉の支度にかかりませぬと
        御坊に叱られまする。」

      「さ、左様じゃの。
       私も戻らねば。
       今、見た事は、決して誰にも
       語ってはなりませぬぞ。」

       「承知しました。」

    花園の隅の、生け垣の裏にかがみ、
    息を潜めていたのは、
    奥女中のさつきと、薬師堂の小僧。

    さつきは、昨日の茶会で披露された、
    成之の花の見事さに感じ入り、
    その花材を一枝分けて貰いに、
    花園に出向いたのだ。

      「奥の長廊下の脇に
       飾りますれば、
       皆、喜びましょう。」

    そう言って、奥御殿の総取締役、
    藤尾の許しを貰った。

    奥では昨夜から、若君の腹違いの兄、
    成之の噂で持ち切りだ。
    常に落ち着いた様子で、
    時には冷たくさえ感じる成之だが、
    その胸の内は、あの花が示す様な、
    熱い思いをたぎらせて
    おられるのだと。

    女子が、キャラのギャップに
    魅入られるのは、この世の常らしい。

    東屋で一人、青銅の壺に向かう
    成之のまなざし。
    身の丈を超える古木を、
    立てた際に、額に浮かんだ汗。
    迷わず紅葉の枝を選び、
    古木の枝に埋め込む手さばき。

    見る間に、古木は切り立った崖に、
    紅葉は流れる滝に変わり、
    滝壺は、深紅の葉で
    埋め尽くされた。
    “清流”を、“紅”で表す。
    それは、誰もが息をのむ、
    斬新な芸術作品だった。

    さつきの訪れを気にも留めず、
    庭師たちは、忙しく立ち働いている。
    声を掛けるのもはばかられ、
    戻りかけた所へ、薬師堂の小僧が
    通りかかった。

        「何か、御用で?」

    小僧は、さつきから話を聞くと、
    庭師の頭を見つけ出し、
    伝えに走って行った。
    やっと、さつきに気づいた庭師は、
    その場で深々と頭を下げる。

        「小枝で宜しければ、
         花園の紅葉の下に
         置いてありますものを、
         お持ち下さいませと。」

    戻ってきた小僧は、庭師の
    しわがれた声音をまねる。
    さつきが噴き出すと、
    照れたように頭を掻き、
    庭師から、案内を頼まれたと言う。

        「ここは、私の庭の様な
         ものですから。」

    小僧は、大人びた口調で得意げだ。

       「まあ、左様な事、
        誰ぞに聞かれたら、
        仕置きものじゃ。」

    さつきは顔をしかめてたしなめる。
    が、すぐに笑顔に戻った。
    紅葉を手に入れるのが、
    よほど嬉しいらしい。

    秋の日は瞬く間に過ぎる。
    念願の枝を数本手にし、
    上機嫌で奥御殿へと足を向けた矢先、
    源三郎と若君が、折り重なって
    月下美人の陰に消える様を
    目撃したのだった。

       ・・・・・・

    背中全体に擦り傷を負ったが、
    源三郎は、何よりも先に、
    若君を案じた。

    若君は、腰を抑えたまま、
    声も出せずにいる。

    背中の痛みをこらえ、
    立ち上がり、
    若君を抱き上げると、
    源三郎は、花園の中に
    新たにしつらえられた
    水屋に向かった、

    そう、女子であれば
    誰もが一度は憧れるかもしれない、
    お姫様抱っこで。

    源三郎にとっては、あくまで
    主君の手当の為だったのだが、
    奥女中のさつきと、
    薬師堂の小僧には、
    そうは見えなかった。
    成之の“花”に惹かれながらも、
    日頃から若君贔屓を公言している
    さつきにとっては、衝撃の出来事だ。

    源三郎は、水屋の中に
    若君を運び込み、
    先ほど畳んだ緋毛氈を敷く。

    その上に若君を寝かせると、
    無礼を詫びながら、袴を脱がせ、
    着物の裾をまくる。
    若君の腰が、青紫色になっていた。
    源三郎は、水屋の手桶を掴むと、
    すぐ横の井戸で水を汲み、
    首に巻いていた手拭いで、
    若君のあざを冷やし始めた。

    「世話をかけるの。
     それより、ぬしの腹は如何じゃ?
     肘を強う当ててしもうたが。」

     「は。確かに一時
      息が止まり申した。
      さすが、若君にございます。」

    「すまぬ。源三郎とは思わず。」

     「いえ、私の方こそ、
      大層な見間違いを。」

    「見間違い?」

     「は。その。。。見知った者が、
      そのふさふさとした物と
      良く似た狐の尾を
      付けておりました故。」

    「さようか。それはもしや、
     稲荷の巫女とやらか?
     久殿の絵馬を
     届けてくれたと言う。
     だがの。
     これは、唯之助のものじゃ。」

     「唯之助の?
      確か、生まれ故郷に戻ったと
      伺いましたが。」

    「うむ。
     戻る前、城下の芝居小屋に
     立ち寄った様での。
     その折に、落として行ったらしい。
     よほど、慌てておったのであろう。
     使いの者が、届けたそうじゃ。
     天野の離れ座敷にの。
     わしが持っておった方が、
     唯之助も嬉しかろうと、
     おふくろ殿が申すので、
     譲り受けた。」

    源三郎は、どんぎつねを
    引き合わせるなり、花園を
    走り去った唯之助を思い浮かべた。
    そう言えば、あの時、
    何かが腰の当りに揺れていた
    様な気がしないでもない。

    「ん?源三郎。
     帯に挟んでいる、
     それは何じゃ?」

     「あ・・・これは。そのう。
      稲荷のお守りとか。」

    「貰うたのか?
     その巫女から?」

     「は。あ、いえ、その。」

    どんぎつねから渡された、
    小さな尻尾を指で撫でながら、
    耳まで赤くなっている源三郎
    を見て、若君は、話を変えた。

    「それよりも源三郎、
     背中に血が滲んでおるぞ。」

     「そ、それは、気付きませず、
      申し訳ございませぬ。
      すぐに止血を。」

    源三郎は慌てて、若君の着物を
    脱がせようとする。

    「いや、わしではない。
     ぬしじゃ。
     わしが、手当する故、
     早う着物を脱げ。」

     「滅相もございませぬ。
      かような傷、何程でも。」

    遠慮する源三郎の襟をつかみ、
    胸元をはだけると、
    若君は、半ば無理やり
    源三郎の片袖を引き抜いた。
    まさにその時、
    水屋の戸が開き、庭師の頭が、
    顔をのぞかせた。

    仕事を終え、帰りかけた庭師は、
    水屋から物音がするのを聞きつけ、
    不審に思ったのだ。

    そして、そこで目にしたものは、
    頬を朱に染めた半裸の源三郎と、
    下半身をはだけた若君の姿。

    仰天した庭師は、
    戸を閉めるのもそこそこに、
    叫びながら、走り去る。

      「お、お許し下さいまし~!」

    庭師は思った。

       “源三郎様が上の空で
       あったのは、
       かような訳が。。。“

    実に、間の悪い事は続くもの。
    当人たちは、庭師の誤解には
    とんと思い及ばず、
    こんな言葉を交わす。

    「あの者は、何をあのように、
     慌てておるのじゃ?」

     「はて?」

    こうして、宴の後の一日は
    とっぷりと暮れて行った。

        ・・・・・・・・

    さて、さらにその翌日。
    奥御殿で、若君と源三郎の噂が、
    “成之の花”を超えて
    しまったのは、致し方ない。

    薬師堂の小僧に口止めを
    したものの、己の胸の内に
    納めておくには、
    さつきにとって、
    刺激が強すぎた。

    その噂は、瞬く間に、
    藤尾の耳にも入った。

      “なんじゃと?
      自ら呼ばれたふき様の元に
      若君様がお通いに
      ならなかったのは
      それ故か?! “

    藤尾は血相を変え、
    城表に出向むくと、
    人目もはばからずに叫ぶ。

      「天野殿!
       信茂殿はおられぬか~?」

    一方で、薬師堂の小僧は、
    御坊には語らなかったものの、
    草木染の手習いにやって来た、
    天野家の女中、トヨには
    つい、漏らしてしまった。

    トヨが千原家の家紋ばかりを
    熱心に染めるので、
    その訳を尋ねた所、
    幼馴染の源三郎が、千原の姓を
    賜るのを、念じての事だと言う。

       「それなれば、
        じきに叶いましょう。」

    意味ありげに語る小僧に、
    トヨが聞き返す。

      「???何故に?」

       「若君様は源三郎様を
        格別にご寵愛のご様子。」

      「それは言葉が
       違うておろう?
       確かにお側近くに
       仕えてはおり、
       厚い信頼も頂いては
       おる様じゃが。」

       「私の言葉に誤りなど。
        確かにご寵愛にて。」

      「ご・・・ちょう???」

    トヨが小僧をまじまじと見る。

       “しまった!”

    小僧は、思わず、己の口を押え、
    その場を立ち去る口実を
    探したが、後の祭り。
    トヨに詰め寄られ、
    首根っこを掴まれた猫同然に
    体をすくめたまま、
    花園で目撃した様を、逐一語った。
    しかも、やや盛り気味に。
    いや、実は、大いに盛って。

    トヨは、頭の中が真っ白になり、
    思わずよろめく。

      “そんな!
      まさか、あの源三郎が!“

    やがて、おぼつかない足取りで、
    仕えている天野家へ帰って行った。

    どこをどう歩いたものか。
    気もそぞろで、勝手口に
    たどり着いたトヨに、
    下男が声を掛ける。

      「おお、やっと戻ったか。
       ご隠居様が、お呼びじゃ。
       早う、茶をお持ちしろ。」

    トヨは、何度も茶碗を落としかけ、
    一向に、信茂の茶が整わない。

    見かねた下男が、他の下女に
    手伝わせ、トヨは、今にも、
    つんのめりそうな様子で、
    隠居部屋に向かった。

    信茂は、茶を一口すすると、
    おもむろに切り出す。

    「トヨ。ぬしは確か、
     若君付きの源三郎とは、
     同郷であったの。」

      “げ・・・源三郎?”

    追い打ちをかけられ、
    直ぐにも逃げ出したい
    トヨであったが、
    ぐっと堪えて答えた。

     「は、はい。幼馴染にて。」

    「左様か、ならば尚更、好都合。
     実はの。確かめて欲しい事が
     あるのじゃが。」

    その後、幾晩も、トヨが眠れぬ夜を
    過ごしたのは、言うまでもない。

        ・・・・・・

     「はああああ~~~」

    こだまヶ池の淵で、どんぎつねは、
    手を合わせている。

    大きなため息を聞きつけ、
    白狐が声を掛けた。

    「どうした?」

     「こだまが、
      返って来ないんです。
      どうしちゃったんだろう?」

    白狐は、どんぎつねが
    黒羽城の方向を
    向いていることを見て取ると、
    慰めるように言う。

    「平和な現代でも、色々あるのだ。
     ましてや、源三郎殿が居るのは、
     戦国時代。」

     「言われなくても、
      分かってます!」

    「信じて待つも、忘れるも、
     全てお前次第だ。」

     「分かってますってば!」

    どんぎつねは、恨めしそうに
    白狐を睨むと、
    もう一度、大きく柏手を打った。

    あの日、源三郎は約束したのだ。
    どんぎつねが自分の娘として
    生まれ変わったら、
    “美緒”と名付けると。

    それには、源三郎がめでたく
    誰かと結ばれなければならない。
    その候補に、一番近いのは、
    トヨであったはず。

    伏見稲荷のこだまヶ池では、
    柏手のこだまが返る時間や方向で、
    願いの成就を占うのだが
    暫く待っても、
    やはり、こだまは返らなかった。

    「もう行くぞ!
     修行の時間だ。」

    しぶしぶ、どんぎつねは、
    白狐の後をついていく。
    一人前の、闇払いになるには、
    まだまだ遠いどんぎつねだった。

    さて、そのどんぎつねの
    生まれ変わりに、
    大きな役目を果たすはずの
    トヨはと言えば、ここ数日、
    頭痛、肩こり、腰痛、不眠に
    さいなまれていた。
    おまけに、下痢と便秘も
    繰り返している。
    つまりは、これまで経験のない
    絶不調で、食事もろくに
    喉を通らなかった。

    仕えている家の御隠居様の
    頼みとあらば、断る訳には行かぬ。
    さりとて、当の源三郎に
    面と向かって問いただしても、
    しらを切られれは、それで終わり。
    いや、その逆に、
    幼馴染のお前にならばと、
    噂通りの色恋の嗜好を
    打ち明けられでもしたら、
    その瞬間に、己の恋心は粉々に
    砕け散る。
    しかもその相手が、“わ・・・”

    イヤイヤイヤイヤ。

    トヨは、頭をぶんぶん振って、
    駆け巡る妄想を消そうとする。

    普段なら、考える前に体が動いて、
    テキパキと仕事をこなすのに、
    今は邪念が渦巻いて、
    全く手に付かない。
    トヨは焦った。
    情けない自分に腹が立つ。

    そう、空腹は時に、
    怒りに変わるもの。

    トヨは手にしていた雑巾を、
    廊下にたたきつけると、
    後を年下の下女に頼み、
    たすき掛けのまま、
    天野の屋敷を飛び出した。

     “噂だけでは、埒が明かぬ
     証拠でもつかめば別じゃが。”

    トヨが向かったのは、
    花園の水屋だ。

    薬師堂の小僧が語った、
    “お姫様抱っこ”の姿が、
    目の前に浮かぶ。
    戸を開けようとして、
    一瞬手が止まった。

    すると、いきなり戸が開き、
    出てきたのは庭師の頭だった。

      「うわあああ!」

    庭師はトヨを見て叫び声を上げた。
    その慌てっぷりを見て、
    逆に、落ちつきを取り戻したトヨは、
    庭師が後ろ手に何か隠したのを、
    見逃さなかった。

     「ここで何をしておる?!」

      「お、おぬしこそ!
       んんん?どこぞで、
       見かけた顔じゃの。」

     「天野の者じゃ。
      ぬしは時折、庭木の手入れに
      参るであろう?」

      「おお、雪囲いの折に、
       ふかし芋をくれた、
       お女中か。」

     「覚えておったか。」

      「そのお女中が何故ここに?」

     「ご隠居様から
      頼まれた事があっての。
      それより、ぬしは、
      今、何を隠した?」

      「わしは何も隠してなど。」

     「私の目は、ごまかせぬ。
      出さねば、
      御隠居様にお伝えする。
      庭師の頭は、手癖が悪いとな。
      さすれば、ぬしは、
      出入り禁止じゃ。」

      「それは、ご勘弁を。
       落ちていた物を、
       拾うただけで。
       すぐに、お届けに
       上がろうとした所へ、
       お前様が。。。」

    庭師が恐る恐る差し出したのは、
    なんと、トヨが源三郎に
    渡した手拭いだ。

     「届ける?
      では、これが誰の物か、
      ぬしは存じておるのじゃな?」

      「へえ。茶会の明くる日、
       源三郎様が確かにここに。」

     「他には?」

      「・・・。」

     「他に誰ぞおったのなら、
      その者の物かもしれぬ。」

      「いえ、そのような事は。
       一緒におられたのは、
       そのう。。。」

    言いかけて、庭師は口ごもる。

      「お許しくだされ。
       そのお方は決して、
       千原家の紋を
       お使いになるお方では
       ございませぬ故。」

     「次席家老の紋を
      受けぬ者とあらば、
      筆頭家老の天野家の者か?
      それとも?」

    手を緩めぬトヨの迫力に押され、
    庭師の頭は、致し方なく語った。
    あの日、自分が目にした有様を。

    トヨの目が、鋭く光った。
    これで、状況証拠は十分だ。

     「この手拭いは、私が届けよう。
      千原屋敷への使いもある故。」

      ・・・・・・

    庭師の前では、気を張っていた
    トヨであったが、
    花園の門を抜けた途端、ヘナヘナと
    その場にしゃがみ込んだ。

    手にした手拭を見つめる。
    千原家の紋が、ぼやけた。
    気付かぬうちに、
    涙が込み上げていたのだ。

    トヨの指には、小刀の傷が
    今も残っている。
    渋紙に紋を刻んだ時に
    小刀が滑って切ったのだ。
    滲んだり、掠れたり、
    何度も染め直している内に、
    指の傷も染料の紅に染まった。
    源三郎を思えば、
    それさえ嬉しく思えた。
    それなのに。

    トヨの心の中で、
    二人のトヨが囁き始める。

      「源ちゃん酷い。」
            と、白トヨ。
       「わざと落としたかも。」
            と、黒トヨ。
      「わざと?」と、白トヨ。
       「秘め事の証を残せば、
        若君も後には引けない。」
            と、黒トヨ。
      「それって、まさか。。。」
            と、白トヨ。
       「出世の為なら
        その身も差し出す。」
            と、黒トヨ。

    思わずトヨは、
    拳を振り上げ叫んだ。

     「武士であれば、身を
      差し出すべきは戦場じゃ~!」

    すると、おおらかな声が答えた。

    「まさに、その通り。」

    驚いて振り返れば、
    そこには腕を組み、
    頷きながら立つ源三郎の姿が。

     “い・・・いつの間に。。。”

    振り上げたトヨの拳の下には、
    あの手拭いが揺れている。
    それを見た源三郎は、
    にこやかに言う。

    「ん?トヨ。
     それは、お前がくれた
     手拭いではないか。
     実はの、わしはそれを
     取りに来たのじゃ。
     大切に使わせて
     貰うておるぞ。」

    何とまあ、これは兎に角、
    超絶に間が悪かった。

    源三郎のその一言が、
    くすぶっていた
    トヨのもやもやに
    火をつけたのだ。

     “何を今さら、ぬけぬけと!”

    トヨは手拭いを源三郎の胸に
    投げつけるとこう言い放つ。

     「見損のうたぞ、源三郎!
      色仕掛けで出世を目論むとは!」

    トヨの目から大粒の涙が
    ぼろりとこぼれ落ちた。

    源三郎は、訳も分からず、
    目を白黒させている。
    こんなに取り乱したトヨを
    見るのは、初めてだ。
    まずは落ち着かせようと、近づく。
    ところが、トヨはその源三郎の手を
    振り払い、走り去ってしまった。

    直ぐにも追いかけて行きたかったが、
    宿直の出仕の刻限が迫っている。
    足元に落ちた手拭いを拾い上げると
    枯葉が一枚、はらりと落ちた。
    それはまるで、さっき見た、
    トヨの涙の様だ。

     “解せぬ。
     女子なるものは、全く。”

    源三郎は、手拭いを丁寧に畳むと、
    懐に入れ、城に向かった。

       ・・・・・

       “ちと、遅うなった。”

    足早に若君の居間に向かう源三郎に
    庭から下男が声を掛けた。

       「源三郎様。
        若君様は、一足先に、
        湯殿に向かわれました。
        着替えの手伝いは無用と
        仰せられまして。」

      「承知した。」

    無用と言われても、近くに侍るのが
    お側仕えの勤め。

    湯殿に向かい、着替えの間で、
    若君を待つ。
    何故か寝間着が二着用意されている。
    やがて、湯上りの若君が姿を現した。

      「湯加減は如何で
       ございましたか?」

    「良い加減じゃ。
     ぬしも、浴びると良い。」

      「かたじけのうございまする。
       なれど、恐れ多い事にて。」

    源三郎は、さりげなく辞退すると、
    若君の着替えを手伝う。
    残った寝間着一着の入った盆を
    捧げ持ち、若君の寝所へ向かいつつ、
    心の中でつぶやく。

      “見習いの者が
      整えたのであろうか?
      衣装方には、
      良う言うておかねば。
      寝間着と言えど、上等な絹。
      数を誤るような
      粗相があってはならぬ。“

    寝所近くの廊下で若君が足を止めた。
    ほの暗い廊下に、黒い影がある。
    源三郎は、若君の前に立ち、
    低い声で問う。

      「何者じゃ?」

    影はおもむろに、
    手蠟燭に火をつける。
    ぼうっとその顔が浮かび上がった。

      「小平太殿!」

    「小平太、如何した?
     今宵は非番であろう?」

     「爺・・・いや、若君様の守役の
      指図にて。こちらを。」

    みれば、小平太の膝の前には、
    酒膳が置かれている。

    「鯉の汁か。気が利くの。」

    若君は、安堵した声で
    小平太をねぎらうと寝所に入った。

    小平太の後に続いて、
    控えの間に入った源三郎は、思わず、
    寝間着の盆を落としそうになる。
    閨の几帳の脇から、
    夜具が二組有るのが見て取れた。

    慌てて、横にいる小平太に、
    声を潜めて訊ねる。

     「今宵、若君様は、
      どこぞの姫をお召しに?」

    小平太は答えず、源三郎を睨む。

    閨の外廊下から若君の声がした。

    「小平太、膳をこちらへ。」

     「は、只今。」

    酒膳を持ち上げた小平太が、
    それをそのまま
    源三郎の目の前に突き出す。

     「ぬしがお持ちしろ。」

      「はっ?」

    同じお側仕えとはいえ、
    格上の小平太には逆らえぬ。

    源三郎は、腑に落ちぬ顔で
    膳を運んだ。

    それを見て若君は、
    改めて小平太を呼ぶ。

     「小平太、
      ぬしもこちらに参れ。

    気の進まぬ様子で現れた
    小平太の眉間のしわをみて、
    若君が、あきれたように
    声を掛けた。

    「如何した?
     今宵は常より一本
     多いようじゃが。」

    若君は自分の眉間を
    指でさし、笑う。

     「いえ、何も。
      常と変わりませぬ。」

    「左様か。
     折角の酒じゃ。
     ぬしも飲まぬか?」

     「かたじけのうございます。
      なれど、今宵は。」

    「なれば、まあ、よい。
     それにしても、小平太。
     聞き違えにも程がある。」

     「は?」

    「確かに、茶会の夜、向後は
     手足を伸ばして休みたい
     と申した。
     だが、それは言葉の綾じゃ。
     夜具を増せという事ではない。
     今は、語れぬが、全ては
     兄上次第の事での。」

     「は?成之様?
      いや、しかし・・・。
      では、源三郎は?」

    「源三郎とな?」

       「小平太殿、何故、
        そこで私の名が?」

     「水臭いぞ、源三郎。
      今さら、隠さずとも良い。
      もう、皆、承知の事じゃ。」

      「何を承知と?」

    小平太は、こらえきれず、
    ついに、若君に向かって
    申し述べる。

     「若君様。
      恐れながら、申し上げまする。
      私は、七つの頃よりお仕えし、
      自負して参りました。
      若君様のお心は、誰よりも
      存じ上げておると。
      その私に、何故、真っ先に
      打ち明けて下さらなかったのか。
      この小平太、誠に無念。」

    「打ち明ける?
     何をじゃ?
     先ほども申したが、
     兄上の事は、十分に策を練らぬと、
     語れぬ。」

     「成之様の事ではございませぬ。
      私が申し上げておるのは、
      源三郎との事にて。」

    「源三郎が如何したと言うのじゃ?」

     「もう、知らぬ者はございませぬ。
      こ、こ、こ、
      こい、こい・・・。」

    「鯉?」

    若君は、椀を覗き込む。

    「この汁が濃いと申すか?」

     「その濃いでも、
      この鯉でもございませぬ!」

    「ん?」

     「恋仲であると!
      若君様と源三郎が!」

    部屋の空気が一瞬にして固まる。

    暫くの沈黙の後、
    閨は、爆笑の渦に包まれた。
    誰の?
    そう、もちろん、若君の。

    源三郎は、卒倒寸前。
    小平太は、益々挙動不審に。

    笑い袋と化し、腹を押さえながら、
    悶絶していた若君が、
    ようやくその身を起こした頃、
    小平太が、恐る恐る声を掛けた。

     「若・君・様?」

    「笑いが過ぎて、腹が痛うなった。」

    またしてもこみ上げて来る笑いを
    こらえながら、若君が答える。

    源三郎は、今になってやっと
    トヨの言動が腑に落ち、
    青ざめた顔で、
    小平太に向かった。

      「それは、全く、
       根も葉もない噂に
       ございまする。」

     「いや、しかと逢瀬を見た
      と申す者が居り。
      それはそれで、
      めでたいと。」

       「めでたい?
        いや、その様な
        間柄もあるとは
        存じておるが、
        若君様と私は、
        断じて。。。」

    うろたえる源三郎。
    なだめる若君。

    「まあ、良いではないか。
     わしには、むしろ好都合。」

      「好都合?」

     「好都合とは?」

    「うむ。縁談除けになる故。
     此度の噂が、松丸に届けば、
     自ずと、阿湖姫との婚礼も
     無くなろう。
     阿湖殿は申し分のない姫君じゃ。
     それ故、いかように
     退いて貰うか、
     悩ましく思うておった。」

     「な、なんと!
      しかし、松丸との縁組には、
      乗り気であられたのでは?」

    「確かに。
     以前は、戦ばかりが先立ち、
     浅慮であったのじゃ。
     源三郎、しばし、頼むぞ。」

      「はっ?」

    「不服か?」

      「い、いえ。
       お役目とあらば。。。」

    答えながら、
    源三郎の目が泳ぐ。

      “どんぎつね殿。
      ぬしがくれたお守りは、
      このような折には、
      役に立たぬのか?
      わしは今、この上もない
      窮地に居る。“

    誤解の証拠として、
    源三郎の背中の擦り傷を確かめた
    小平太は、すっかり上機嫌に。
    冷めてしまった鯉の汁を
    若君から分けて貰い、
    勧められるまま、
    酒も飲み干して帰って行った。

    いつになく、深酒をした若君は、
    二つ敷かれた夜具の上に
    大の字になって眠っている。
    寝顔に笑みさえ浮かべて。

    あどけなさの残る、
    その寝顔を見れば、
    いかなる難題でも
    引き受けざるを得なくなる。
    源三郎は、ため息つきつつ、
    若君にそっと夜具を掛けた。

    東の空が、白々と明けて来る。
    冷たい指先に息を吹きかけ、
    伏見稲荷の方角を探す。

      “どんぎつね・・・
      いや、美緒。
      済まぬ。
      しばし、待てるか?
      いつになるかは、
      皆目分からぬが。“

    朝もやが、源三郎に忍び寄る。
    源三郎は、膝を抱えて
    静かに目を閉じた。
    花園で追ったカゲロウの姿が浮かぶ。
    突然、トヨの言葉が蘇った。

       「源三郎。
        カゲロウは、
        子を産むために
        水に身を投げるのじゃ。
        悲しくもあるが、
        生まれ変わると思えば、
        嬉しくも思える。」

    そうなのだ。
    カゲロウが生まれる頃、
    またここに見に来ようと、
    トヨと約束した。
    二人が育ったあの村の小川で。
    あれは、確か、千原の家に
    住み込む事になった前の年。
    まだ、その約束は
    果たしていない。

    忘れていた思い出が、
    源三郎の心をほんのり照らす。

    瞼を開けば、いつの間にか、
    朝もやは消え、青空が
    広がっていた

      “トヨには全て語ろう。
      カゲロウが生まれる頃に。
      例え、信じて貰えずとも。“

    源三郎は、そう心に決め、
    外廊下から空に向かって
    飛び蹴りをする。
    そして、庭に着地し、
    片膝をついて、
    ガッツポーズを決めた。

      ”シャーッ!”

    青空に浮かぶ白い月が
    静かにその姿を見守っていた。

      

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    夕月かかりてさん

    なんてうれしいニュースでしょう。ここは創作倶楽部ですから、いくらでも発想の羽を伸ばして下さい。ストーリーは新しくても、アシガール独特の登場人物達の醸し出す雰囲気は、たっぷり出ていて、飽きません。
    若君と唯のラブラブの今後、どこまでも暖かさと思いやりで包み込んでくれる速川家の面々、続編が遠のいてしまった今は、どんな展開も大歓迎です。
    楽しみにお待ちしております。

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    返信
    新作、練り始めました

    前回は、平成Daysが終わる頃には令和Daysを平行して書いておりましたので、インターバルは半月程でした。
    今、ゼロから大まかに組み立て始めたところです。いつ出せるか、そもそも出せるところまで行くのかも未定ですが。お時間をください。

    かなり自由にさせていただいておりますが、創作倶楽部で、いくら「原作にあること以外は許せないという方は閲覧注意!」とマスター様の説明があるにせよ、こんなにかけ離れて良いのだろうか?と自問します。特に私の話は、時系列で流れができているシリーズ物で、既に違う世界が広がっているし。大丈夫でしょうか?

    出てくるキャラクターが皆、楽しんでいる様子が描けたら、とは思います。
    あと、源トヨをもう少し何とかしたいんですが…寸止めしない夕月の毒牙にいよいよかかるのか?!これ如何に。まだ何も書いておりませんので、「止めよ!」の声が聞こえましたらご意見に従います。

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    返信
    キャラが語り出す

    梅とパインさん、労いのお言葉をありがとうございます。遅いなんてないです。描いた甲斐があった!と喜んでおります。
    ご質問(違う?)の回答他もろもろは後ほど。まずは、本日投稿する予定でした、物語作成中のこぼれ話から。

    著名な小説家や漫画家の方々が、「物語の中のキャラクターが、時折自分の手を離れ自由に話し出したり動き出したりする」などとおっしゃっているのを耳にした事があります。
    そういうモノなのかー、へーと思っておりましたが、妄想作家の端の端の端くれの私にも、そんな瞬間が訪れて驚きました( ゚Д゚)!しかも2回です。

    まず2回目を先に説明しますが、それが令和Days9話の吉田君でした。
    彼を、美香子先生のファンとしましたので、意外な場所でバッタリ会えればそりゃ嬉しい。ニコニコ顔を想像していたら、「病んでる時にしか会わない人に、元気な時に会えて嬉しい」としゃべり出しました!な、なんてカワイイ奴。なのでセリフに組み込みました。唯に会える方がレアケースと彼が気付く由もなく、ただただ喜ぶ吉田君でした。

    1回目なんですが、今更ながら告白します。平成Days14話(投稿番号no.375、サブタイトル:家族の一員)の若君です。
    尊が作った結婚指輪を戦国に持って行くのか、と聞かれ「我らが去った後、ここに置いて欲しい。父上が、ここに母上の指輪がありいつも傍に居るようだと申された。我らの指輪もそのように、いつもここに居るように思うて欲しいのじゃ」と答えました。
    指輪は作ってあげたかった、だがその後はどうしよう?と話を練っていたら、ふと若君が現れ、話し出したのです。うわっ、すぐに書き留めなきゃ!で。だから私も若君の話に感動した一人でした。発表当時、皆さんに比較的気に入っていただけたエピソードを今更で、本当にすみません。こんな経験二度もあると思っておりませんでしたので(>_<)

    ずっとそのキャラの事を考えているので、ただ妄想が甚だしいだけだとは思いますが、よくぞ現れてくだすった!と、若君と吉田くんには感謝です。

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    返信
    お疲れ様でした m(__)m

    夕月かかりて さん、ずいぶんずいぶん遅くなりましたけど… 長編の創作ストーリー & 振り返り を ありがとうございました。 大作でしたね (^^)。
    もう既に、次の物語の草案が出来上がっているのでしょうか?
    他の創作作家さんの作品も、楽しみに待ってます。
    私は……限界 (^o^;)。よっぽど気が向いたら、お邪魔します (^.^)。

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    返信
    振り返ります二人の令和Days、140(終)まで

    結局長文になっております。no.798の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    86、no.708、夢でも嫌!
    87、no.709、ウキウキです
    88、no.710、わかって欲しいのに
    89、no.711、止まらない!
    90、no.712、ゆらーりゆるーり
    91、no.713、甘くていいのです
    92、no.714、温もりも忘れない
    93、no.715、背中で語ります┅┅┅

    以前「唯が待つ元へ必ず帰るという強い決意で、これからも戦に臨む」って話してるんですが(27話)。いろんな方向から物事を考え、軽く口約束なんかしないであろう若君だからこそ、かえって仇になって怒らせたというか。
    友達が出来ても家には呼べないよと話す尊に、真っ先に謝った若君(93話)でしたが、この前の日の夜に実験室での秘密会談が行われ、その際新型タイムマシンに尊の妻女も乗るのかと話しており(138話)、それが軽々とは叶わないと知って、即詫びたのです。
    唯を怒らせたくだりがなくても、デートの帰りに花屋には寄ってたでしょうね。ここで、90話で若君を接客した、花屋の店員の会話をお送りします↓
    店員1「今の客、昨日も来てなかったか?」

    店員2「来てた!超イケメンは毎日でも来て欲しいよ」

    店1「息切らしてたな。急いで来たようだったけど」

    店2「早くしてとかなかったね。ジェントルマンだった」

    店1「動きがなんつーか、優雅でさ」

    店2「花束抱えた時のオーラ、すごかった!王子様現る!だった~」

    店1「500円玉をジャラジャラ出された時は驚いたけどな」

    店2「それさ、もう萌え萌えだったよ~。あんなマンガの世界から抜け出たようなイケメンがさ、貯金箱にコツコツ小銭貯めてたのかしらんなんて想像したらもう」

    店1「ヨダレ出てたんじゃないか?」

    店2「そこは飲み込んで、オマケしますっ!となった訳でして」

    94、no.716、新しい朝が来た
    95、no.717、心通じ合う
    96、no.718、浄化されます
    97、no.719、輝き続けます
    98、no.720、他人のそら似
    99、no.721、気持ちも入ってます
    100、no.722、手に手を取って
    101、no.723、心に響く声
    102、no.724、一途です
    103、no.728、繋がります
    104、no.730、準備はスローに
    105、no.731、盛り上がってます
    106、no.732、ときめき全開です
    107、no.733、打ち明けます
    108、no.735、旅立ちです
    109、no.736、納得できぬ┅┅┅

    若君が言いにくそうだったので、すっかり一人称が「わし」に戻っております。
    94話に、片腹痛いという言葉が出てきます。大変申し訳ありません!恥ずかしいという意味が全くないわけでもないようですが、ほとんどの場合、笑止千万とかちゃんちゃらおかしいといった意味で、私が恥じるという意味のみがあると勘違いし使用しました。本来の意味で読み進めると、若君が唯を滑稽だと思っていたかのようになりますが、決してそうではありません。100話も同様です。これはと苦々しくご覧になっていた方もいらっしゃったと思います。お詫び申し上げます。書き直しに関しては、内容が随分変わるのと、一度世に出た作品には責任もありますので、今のところはこのままにいたします。
    千羽鶴が完成しました。関わった全ての皆さん、芳江さんのお孫さんも、これは平和を願って作ってるんだよと理解して折り上げています。だから大殿に、手掛けた者達の総意だと断言できました(133話)。
    花火大会の動画を撮ってあげてお土産、にするつもりが、両親への置き土産にもなりました。覚さんの「そうか…そうか」は、描いていた私自身、こみ上げるものがありました。
    芳江さんが折り上げた連鶴は、三重県桑名市の伝統工芸です。黒羽城があったと推測されるいなべ市のお隣の市です。看護師さんお二人は、今のお住まいは速川クリニックからそう遠くはないでしょうが、少なくとも芳江さんは、ご実家は程良い距離にあるようです。
    唯ちゃんが若君の母に生まれ変わった世界では、やはり永禄二年に一族は滅びるでしょうか?例えそうであっても、母の愛を知らぬままよりは、ずっとずっと幸せな一生ですよね。

    110、no.737、どの花見ても綺麗だな
    111、no.738、応えて欲しい
    112、no.740、ミッション遂行中┅┅┅

    女子がキャーキャーしゃべりまくる様は描いてても楽しいです。名前が言いにくいってアンタ…本人の耳に入らないのを祈ります。
    千吉さん、さすがの安定感というか、とても描きやすかったんです。これからも唯之助奥方様を、時には諫めつつ手助けしてくれると思います。

    113、no.741、ズバリ正解です┅┅┅

    若君は朝から何を書いてたか(116話、119話も)、それは日記でした(138話)。

    114、no.742、怒らないでください┅┅┅

    115、no.743、じゃれ合います
    116、no.744、待て!
    117、no.745、聞こえないフリ
    118、no.746、月に酔う┅┅┅

    お待たせしました。源トヨようやく登場です。私にしては珍しく、寸止めの美を守っております。でも次回作があり、また登場するならば…どうでしょう。そっか、パラレルワールドだから何でもアリか。いやいやいや。誰か私を止めてください。

    119、no.747、希望の朝だ
    120、no.748、喜びに胸を開け┅┅┅

    ラジオ体操話を引っ張った甲斐がありまして、無事二元中継ができました。これからも実現するかは、唯が早起きできるかにかかります。

    121、no.754、秘めておきます
    122、no.757、セット完了です
    123、no.758、所以が知りたい
    124、no.760、最強の味方┅┅┅

    吉乃様なら、ちょっとのヒントで隠れ屋の謎を解いてしまうと思いました。やはりおふくろ殿には読まれておったか。大したお方じゃ。
    誹謗中傷は勿論ダメです。ただ唯ちゃん自身がちょっとガサツだったり、妻としての修行にあまり身が入っていなかったと推測されますので、恰好の餌食となってしまった。守りはするがやるべき事はきちんとやるように若君に諭されましたので(134話)、これからは変わっていく筈です。

    125、no.762、自覚が足りぬ!
    126、no.763、そっち?
    127、no.767、探り合いです
    128、no.771、先手必勝です
    129、no.772、勇気をください┅┅┅

    感覚が足軽の頃と変わっていないのんきな奥方を、ここでビシッと叱っておかないと、今後どんな危険な目にあうかわかりません。無事で良かった。
    夫婦揃って源トヨの恋路を応援してるのに、遅々として進まず。フーフーからのあーんしては、ちょっとは刺激になったかしら。源三郎が逃げずに自分の気持ちに向き合える日は来るかな?

    130、no.775、優秀な家臣達
    131、no.776、心も彩ります
    132、no.777、推して知るべし
    133、no.778、鶴翼を語る
    134、no.779、出生の陰に
    135、no.780、美しさそのままに
    136、no.781、どんな薬よりも
    137、no.782、氷が解けるように
    138、no.790、答え合わせです
    139、no.791、お見事です
    140(終)、no.792、そして明日へ┅┅┅

    若君の母は既にこの世を去っている。ドラマのこの設定で、若君の淋しさは勿論わかりますが、大殿だってそうじゃなかったの?後添えが居なかったのは何故?と、熟考しまして。私はこう答えを出しました。
    成之が若君を山中に救いに向かった日から、一年数か月経ってますから、仲直りというか成之の心の内のわだかまり自体はない筈ですが、ハイタッチでもいいから、兄弟が向き合い手を取り合える場を作ってあげたかったんです。固く握られた手がほどかれた時、兄の心も完全にほどけ、感極まるものがあったと思いたい。あとは阿湖姫にお任せしました。
    ドラマ8話で、別れ際に若君が悲痛な思いで語ったあのセリフ。少しバージョンアップして、未来を約束しました。消えた後のあんな切ない後ろ姿、もう私達が見る事はないでしょう。
    この令和Days、実は極力「キス」という言葉を使わないよう努めました。他の言葉で表しているから、何が違うんだって話ですが、なんとなくはっきりした表現じゃない方が良いかなと思ったまでです。最後、甘いチョコに甘い時間の小道具になってもらいました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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    振り返ります二人の令和Days、37から85まで

    どの回も思い入れがありますので、選り抜きに時間がかかっております。no.797の続きです。
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    37、no.641、唯先生の授業
    38、no.642、忠清先生の授業
    39、no.643、視線にご注意
    40、no.644、安心しておやすみ
    41、no.645、アオハルしてます
    42、no.646、効能は
    43、no.647、会話がBGM
    44、no.648、誰もが持つ宝物
    45、no.649、頭をフル回転┅┅┅

    楽しい楽しい海水浴の日。
    何も派手な遊びはしていませんが、両親に温かく見守られながら、夏の海を満喫してもらいました。
    41話、浮き輪でプカプカからの追いかけっこシーンは、若さ溢れる感じで三人に体験して欲しかったので、今回私の一番お気に入り回です。

    46、no.650、時間をプレゼント
    47、no.651、お見通しです
    48、no.652、瞼に浮かぶのは
    49、no.653、だって女子だもん
    50、no.654、君の為に僕は
    51、no.655、山盛りです
    52、no.656、かけがえのない時間┅┅┅

    輝く笑顔、真っ白なワンピースに風をはらませ、浜辺を裸足で駆ける天使のような唯ちゃん自身が、実は海の女神様で、砂に書いた願いを彼女自身が叶えていくに違いないのです。
    今回美香子さんに、娘と二人きりの時間をどこかで作ってあげたかったんですが、結果とても賑やかなドライブ&お買い物になりました。
    男子チームが訪れたのは、滋賀県彦根市にあるお城です。

    53、no.657、人生相談です
    54、no.658、導きます┅┅┅

    吉田君って、名前も呼ばれるしセリフもまあまああるのに、影が薄い。男性キャラで若君以上に目立つ訳にもいかず、仕方ないんですが、もう少し出番をあげようと再登場してもらいました。

    55、no.659、ふんわり守ります
    56、no.660、昵懇の仲です┅┅┅

    この日実は、隠れテーマが「五感を満たすデート」でした。雨に濡れて冷たく、ふと触れた体は温かく、カフェオレはより甘く、愛する人の香りに包まれ癒される。なので、少々生々しいと感じられる部分もあったかと思います。失礼しました。

    57、no.661、男も女もなく
    58、no.662、安全な時代とは
    59、no.663、願い事はなに
    60、no.664、千里の道も一歩から┅┅┅

    今回は、神社のくだりはほぼ創作ですが、愛知県犬山市にあるお城がモチーフです。天守で若君が、黒羽城があった方角を静かに眺めますが、この直前に信長の勢力拡大話を尊に聞いた(132話)ので、その距離の長さに思うところがあったのでしょう。

    61、no.667、コツコツと
    62、no.668、ヒヤヒヤです
    63、no.669、咲き誇ります
    64、no.671、教えてあげたい┅┅┅

    二人にでっかい花火見せてあげたいなぁと、現代に居る頃にどこかで花火大会やってなかったか調べましたら、ちょうどこの日、琵琶湖畔で開催されていました。お話の都合上だけなら土日か水曜開催にすれば良かったですが、実際の日付に合わせたので木曜日でした。私が代わりに?この花火大会の動画をじっくり観賞しましたが、カエルも猫もキノコも、ホントに打ち上がってたんですよ。

    65、no.672、色と香りに包まれて
    66、no.674、成長しあうのです
    67、no.679、恩返しします

    68、no.681、気が利きます
    69、no.686、私のモノ!
    70、no.688、これが目に入らぬか┅┅┅

    コーチ登場。前のシリーズ平成Days51で、デパートでばったり出くわした際「娘も小学生にもなると…」と言っていました。その娘が今回の上の子ですね。一年経って小2になりました。
    自分が娘達に取り合いにされる様子を想像して、デレデレしてた若君ですが、ここで、唯と若君の娘の名について、私の見解を述べさせてください。
    マスター様のブログ「アシガールの世界」内の「御月家の家系図からわかること」にて、「末の女子の名は美香。なぜ最初の女子につけなかったかはわかりません」とあります。私が思うに、覚は覺高に、尊は忠尊にマイナーチェンジして名付けてるけど、美香子は美香で呼び方もそのまんまなんで、畏れ多くて初めは名付けをためらったんじゃないかと。母の名を呼び捨てみたいになりますので。でも7番目に女子が生まれ、やっぱ付けようよと、ようやくリスペクトが勝ったと考えます。
    ただ、末っ子ってそもそも手放しで可愛くないですか?若君が思いっきり、母の名を連呼してる姿が想像されます。

    71、no.689、定番はどっち
    72、no.693、実践中です
    73、no.694、GO!ショッピング
    74、no.695、めざめました
    75、no.696、パワーチャージ!
    76、no.697、計画的に
    77、no.698、地上に瞬く星┅┅┅

    都会への旅行。子供達はあくまでも付き添いで、ずっと親の事を考えて行動し計画まで立ててます。だから夜、両親を早く二人きりにしてあげたのも、親孝行。
    鰻、私は断然ひつまぶし派です。そのままと薬味のせを少しいただいたら、だしを少しずつかけながらちびちび食します。

    78、no.700、リズムに合わせて
    79、no.701、思案します
    80、no.702、可愛くて可愛くて
    81、no.703、月に愛を誓います

    82、no.704、活用します
    83、no.705、夏休みと言えば
    84、no.706、ギュっとね
    85、no.707、発掘は再会だ┅┅┅

    覚さんなら、昔のグッズも大切にとってありそうだったので、この度プレイヤーを提供してもらいました。
    セミハンター、相当やかましそう。虫にキャーとか言う女子じゃなかったので、永禄で夜の草むらに飛ばされようがタフに生き延びたんだと思います。
    結婚20周年のお祝い。こんなイベントを計画してくれた子供達の成長に、両親は20年がより感慨深かった事でしょう。

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    振り返ります二人の令和Days、1から36まで

    通し番号、投稿番号、サブタイトルの順です。 どんな話だったっけ?と遡って投稿を探したい時、サブタイトルを掲示板の記事検索欄(板の下の方にあります)に入力すると、ページを戻っていくより早いと思います。

    今回、なにせ長いので(*_*)、かいつまんでの振り返りとし、描いている日付や内容が連続するお話は、まとめて解説いたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1、no.585、短気は損気?┅┅┅

    子供がすぐ出来ないのは僕のせいだよ、と言ってくれる旦那さんが、どのくらいの比率でいらっしゃるかはわかりませんが。二人にはこの一月、様々なプレッシャーから解放される日々を送ってもらいます。

    2、no.590、急いで検索!
    3、no.592、兄の激励
    4、no.593、時間無制限です┅┅┅

    ドラマの設定からより離れていってますが、尊が受験生という事情もあり、無事一緒の時間が増えました。
    一応申し上げておきますが、これで毎晩同衾、とまでは考えませんでした。私はどこでもすぐ眠れるんです、と言っていた唯。イベントがあった日など特に先に寝てしまう(64話)し、そこまでイチャイチャしてないと思います。

    5、no.594、ほんのり甘く┅┅┅

    マクワウリ、食べた事があったかは覚えがないんですが…一昨年、ホームセンターに苗が売っていまして。購入しまして育て始めたのですが、ダメでした(ノд<)メロンの育て方に近いらしく、ハードル高かったです。昨年は苗が手に入らなかったので、また機会があれば頑張りたいと思います。

    6、no.595、食欲旺盛です
    7、no.596、目白押しです

    8、no.597、静かにパニック
    9、no.598、そっと見てました
    10、no.603、まるで買い物デート
    11、no.604、色っぽいね┅┅┅

    吉田君、クラスでも席近かったし、ただのクラスメートよりは仲良かったんではないかと。ただ彼、ドラマでの一人称は「俺」ではなく「僕」でした。失礼しました。
    美香子先生、妖怪千年おばばさんのお話でも後にコーチになる尾関君に慕われていますが、私も、ドラマのあのキャラならきっとそうだろうと思いました。この9話については、こぼれ話がありますのでそれは後日に。
    男子の水着がグラデーションカラーなのは、永禄のお着物は皆さん絞りをあしらった柄が多く、にじみ具合や色の淡さなどが、見慣れていて手に取りやすかろうと考えたからです。尊も派手好きではないので地味めな黒白でとなったら、あらお揃い、となったと推測しました。

    12、no.605、買い込みます
    13、no.606、ふるまいます

    14、no.607、過ぎたるは…
    15、no.608、幻滅はイヤなの
    16、no.609、レッツトライ!
    17、no.615、結末変えます!
    18、no.618、口どけ優しく
    19、no.619、近う寄りたい┅┅┅

    楽しい楽しいプールの日。
    映画「犬神家の一族」の、犬神佐清の白マスク姿を彷彿とさせる程白かった模様の男子達。1976年公開の映画ですが、この前4Kデジタル修復したとニュースになってました。それまでもちょくちょくリメイクなどされていて、関連グッズも見た事ある気がしまして、唯が知ってる体で進めました。白い若君はイケてないらしい(42話)。
    タピオカですが、カップの底に沈む感じはちょっとカエルの卵っぽくはあり…私は好きですよ。だから唯に止められなくても、若君が実物見たら引いたかもとは思います。
    プールを大満喫した帰り道、名前で呼んでくださいと両親にお願いした若君。若君って呼び名、どこか敬語っぽくありませんか?令和に居る間くらい、総領とか何の肩書もない一人の男の子として過ごせばいい。より家族として絆が深まったと思ってます。

    20、no.620、いっちにーさんし!
    21、no.623、イケメンシェフ再び┅┅┅

    若君がラジオ体操と出逢った朝。永禄でも続く彼の新たな日課の始まりです。
    ハンバーグに高野豆腐を混ぜこむのは私の定番でして。未だ分量など模索中ですが、出来たハンバーグをお箸で割った時に、プチューと肉汁が出る動画を撮って、ほくそ笑んだりしております。

    22、no.624、あの頃の私と僕┅┅┅

    どうせお祭りを描くならと、黒羽城があったと推測される三重県いなべ市のお祭りの日程を調べましたらこの日でしたので、神輿などモチーフの参考にさせていただきました。

    23、no.625、屋根まで飛んだ

    24、no.626、君はプリンセス┅┅┅

    13話の後、エリさんはワンピース2着の仕立てに着手するのですが、久々で腕が鳴ったのでしょう、一週間かからずに出来上がりました。

    25、no.627、もてなします

    26、no.629、労います
    27、no.630、ずしりと重く
    28、no.631、製造中です
    29、no.632、香ってます
    30、no.633、光ほのかに┅┅┅

    戦の後、討ち取った敵の首を大将が確認していたそうですが、戦に寄らぬ和平の道を探りたかった若君には、とても辛い役目ではなかったかと推測します。体を優しくさすってもらって、辛さが少しは和らいだなら良いのですが。

    31、no.634、積年の夢
    32、no.635、社会勉強です┅┅┅

    両親は若君に、現代の仕組みも覚えて帰ってね、労働にはこのような対価があるんだよと教えたかった。親の教えを素直に聞き、よく働き、コツコツと貯め、そのほとんどを唯が喜ぶ品物に支払いました(56話、89話、98話)。

    33、no.636、働き者です
    34、no.637、シエスタです
    35、no.639、どうか醒めないで
    36、no.640、柔らかくて温かい┅┅┅

    「夢の中に出てきた、あなたはとても素敵…」松田聖子さんの「Eighteen」の歌い始めですが、唯の夢を書いている間中、ずっとこの曲が脳内リピートされていました。2019年8月は、唯がまだ誕生日を迎えていなければ、ちょうど18歳。まだまだ夢見てていい年頃だもの。忠清王子も唯姫の望みなら何でも叶えてくれそうだし。と若君に、反対のご意見もあったであろう車の運転をさせました。唯は泣いて喜んでおりましたので…ご容赦ください。

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    今までの二人の令和Days、番号とあらすじ、86から最終話まで

    no.727の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    86no.708、8/14、悪夢で体が動かない

    87no.709、8/14、デートに誘われご機嫌に

    88no.710、8/14、公園に取り残される唯

    89no.711、8/14、花束に超感動のあまり

    90no.712、8/14、ブランコから見上げる空

    91no.713、8/14、顔に残る証拠。留守番は任せて

    92no.714、8/14、両親に最後のマッサージ

    93no.715、8/14、尊が彼女を家に招く日は来るか。寝る位置の考察

    94no.716、8/15、最後の朝。呼ばれて芳江とエリの元へ

    95no.717、8/15、鶴が集まった。家族の話に感涙

    96no.718、8/15、千羽鶴完成

    97no.719、8/15、薬局でイチャつくカップル

    98no.720、8/15、スーパーの軒先で一休み

    99no.721、8/15、昼ごはんはおにぎり

    100no.722、8/15、写真を眺めながらゆったり過ごす二人

    101no.723、8/15、お目覚めの後花火観賞。荷物をまとめ始める

    102no.724、8/15、両親にメッセージ収録中にハプニング

    103no.728、8/15、芳江とエリにお別れの挨拶。鶴がまた増えた

    104no.730、8/15、はさみ揚げはカレー味

    105no.731、8/15、両親昭和歌謡にノリノリ

    106no.732、8/15、かき氷であーんして

    107no.733、8/15、唯の焦燥感はなぜ

    108no.735、8/15、無事永禄へ。誰か来た

    109no.736、8/15、からかわれる小平太

    110no.737、8/16、花の保管方法は。阿湖に会いに行く唯

    111no.738、8/16、土産を渡す。女子会大盛り上がり

    112no.740、8/16、千吉に頼み事する唯

    113no.741、8/17、成之を訪ねる若君

    114no.742、8/18、呼び名を優しく受けとめた吉乃

    115no.743、8/19、成之源三郎小平太の三者三様

    116no.744、8/19、じゃれ合いながらも何かを思い付く若君

    117no.745、8/19、源トヨを呼んだ若君。トヨにお願いが

    118no.746、8/19、源三郎に恋愛の教示

    119no.747、8/20、じいが体操を催促

    120no.748、8/20、ラジオ体操二元中継

    121no.754、8/21、吉乃が隠れ屋の謎に気付く

    122no.757、8/21、表門前のブランコ完成

    123no.758、8/21、悪丸の名の由来を推理する尊

    二人のもしもDays4no.759、とある年(ほぼ2021年)の12月23日から25日、唯の望みは叶い二人の望みはもうすぐ叶う

    124no.760、8/21、尊の読みは当たった。女中を成敗するトヨ

    125no.762、8/22、唯の無防備な行動に激怒した若君

    126no.763、8/22、トヨの勇気の結果は

    二人のもしもDays5no.764、とある年の大晦日から元日、家族五人で迎えた新年。誕生日を祝う

    127no.767、8/22、サポート体制万全で若君の料理始まる

    128no.771、8/22、もんじゃ焼き完成。トヨが攻め勝つ

    129no.772、8/22、源三郎一人相撲

    130no.775、8/23、庭にブランコ設置。悪丸の告白

    131no.776、8/23、男前のトヨにご褒美を

    132no.777、8/23、有頂天のトヨ。大殿登場

    133no.778、8/23、大殿に千羽鶴の意義を説明する若君

    134no.779、8/23、初めて語られる母の話

    135no.780、8/23、尊手芸男子の扉を開く

    136no.781、8/23、手当ては温かく優しい

    137no.782、8/23、固い絆のハイタッチ

    138no.790、8/23、尊と若君の秘密会談

    139no.791、8/23、速川家の三人が最後の若君手製の料理を堪能。しばし想い出に浸る

    140(終)no.792、8/23、聞きたかった言葉と離れても家族を思う心

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    カマアイナ様

    唯とたーくんの物語を、手放しで喜んでくださっているご様子がとても嬉しく、創作のうえで大変励みになりました。こちらこそ、ありがとうございました。心より感謝いたします。

    ご期待に添えるかはなんとも未定ですが、いつか作れたらいいなと思います。二人のラブストーリーなんていくらでも描けるんですが…私は速川家五人揃ってるのが好きなので、五人一緒がいいし…辻褄のちゃんと合う良さげな理由ないかしら。考えます。

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    夕月かかりてさん

    長期に渡る大作をありがとうございました。思いやりいっぱいで、心温まるストーリーが満載のこの連作、いつも楽しく読ませていただきました。本当に有難うございます。読者の私も暫くはたーくん、唯ロスに落ち入りそうです。寂しいですね。

    暫くは作品から離れても、英気を養って、またいつかストーリーが湧き出てくることを祈っております。尊の、次回は彼が5人乗りのタイムマシーンで永禄に迎えに来るまで待って欲しいとの言葉が、ひょっとして伏線ではないかと、勝手に期待を膨らませております。

    本当に長い間、ご苦労様でした。そして、楽しい作品を有難うございました。

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    140話終えて

    春先から始めた夏のお話、真冬に無事終えられまして、ほっとしております。
    唯と若君に味わわせてあげたかった夏の日々。他にも出来る事はあったかもしれませんが、家族の時間もたっぷり作ってあげたかったので、まあまあ詰め込んだつもりです。
    所々設定や呼び名も変えるし、至らない表現ですとか、気に入らない展開もあったであろうと思いますが、自由に描かせていただけました事、感謝感謝です。皆様、そっと見守ってくださいまして、ありがとうございました。

    今回、速川家へのプレゼントの如く現れた二人。三分後に戻れるならまさしく気楽な里帰り。現代の夏のシーンと家族共に過ごす幸せを堪能して欲しい。また永禄の皆さんの生き生きした姿を私が見たくて、38日間全ての日付を描きました。
    ドラマ7話で若君が「我らも確かに生きておったのだ…食らい、戦い、笑い、嘆き」と語りますが、日本史の教科書に載らない人々の日常こそ現代に続く訳で。令和Daysは、永禄と令和、これからも脈々と続く日々のほんの一部です。一部だからラストも淡々と。明日は何かが起こってしまうかもしれないけれど、それはいつの時代も同じ。おやすみまた明日の挨拶ができる幸せが、長く続くのを願うばかりです。

    終わって今思うのは…うん。淋しいですね。それにルーティンが無くなって、生活習慣が変わるなと(;^_^A
    話のストックを小出しにしてはいましたが、1日おきと決めた投稿ペース、毎日夕方になると、あれ今日投稿日だっけ?と焦りΣ(×_×;)
    休日に、今日は何話か書き進めるぞ!と日がな一日格闘する事も多々ありました。

    とはいえ、しばらくタイムマシンの行き来は無理ですし、モチーフもないし。こういうテーマで!となれば、少し前のパラレルワールド話の如くネタは出せますが…隠居生活に入ると思います。

    ひとまず、86話以降のあらすじの表を出します。あと、振り返りですが、140話全部では、場所ばかりとって申し訳ないので、かいつまんで、これだけは言っておきたい、弁解したい回だけにいたします。

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    二人の令和Days140(終)~23日20時、そして明日へ

    それぞれの場所で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が懐から、布に包まれた何かを出した。

    唯「あれ?それって、千羽鶴が包んであった風呂敷じゃない?」

    若君「そうじゃ」

    唯「えー、なにー」

    開くと、中身は小さい箱。

    唯「え?アーモンドチョコ!どうしたの?いつの間に買ってた?」

    若「千羽鶴と共に、包まれておったのじゃ」

    唯「そうなの?!そっか、次の日の朝、たーくん早起きだから、先に部屋に風呂敷ごと持ってったんだよね」

    若「あぁ、ほどいたらこれが出て参り驚いた。何も文は入っておらなんだゆえ、多分即座に思い立ち、入れてくださったのであろう」

    唯「お母さんが包んだって言ってたしね。え、でもなんで今まで隠してたの?」

    若「特に意味はないが」

    唯「そう?」

    若「ゆうべはこの時間、もんじゃ焼きで満腹であっただろうが、逆に今日の昼飯」

    唯「ギクッ」

    若「あまり食しておらなんだように見受けたが」

    唯「阿湖が居たから、ちょっとだけ見ならって、おしとやかにしてみた」

    若「ほぅ。で、腹も減っておろうと思い」

    唯「大当たりー!助かるぅ。じゃあ一緒に食べようよ。写真見ながらとかどう?」

    若「良かろう」

    蝋燭で照らしながら、二人で写真集のページをめくっていく。最後に近付いた所で、

    唯「あれ?これって」

    若「おぉ、これは…あの、爪を乾かしていた折の」

    ソファーでうたた寝する、二人の写真が増えていた。

    唯「ラブラブを激写されてるぅ。お父さんかな、尊かな。でもいい写真」

    ガッツリ唯にもたれていた若君。

    若「少し重そうにしておらぬか」

    唯「重かったもん」

    若「それは、済まなんだ」

    唯「ううん。安心して寝てるんだな、って嬉しかったから全然OK」

    若「ハハ、そうか」

    写真集をパタンと閉じた唯。顔を上げると、若君に見つめられていた。

    唯「…チョコもっと食べる?」

    若「あ?いや、唯が食せ」

    唯「要らないの?」

    若「唯がこの世の幸せ、と食す姿が見たい」

    唯「えー。そんなコト言うと、たーくんの分なくなるよ?」

    チョコを頬張る唯。優しく見つめる若君。

    若「図らずも、父上と存念が同じであった」

    唯「あー、今日の話?」

    若「わしも、妻は生涯、唯だけじゃ」

    唯「嬉しい!あっでも私、ずっと生きるから」

    若「…うん」

    唯「だってさ、愛するって、その人を幸せにするために生きる事じゃない?遠くじゃ嫌だよ。もちろんそばにも居たい」

    若「そうじゃな。…その、生きる話じゃが」

    唯「うん?」

    若「わしは唯に謝らねばならぬ」

    唯「謝るって?」

    若「戦へ出ても、必ずや唯の元へ帰る。無論生きての」

    唯「…」

    若「約束する」

    唯「いいの?」

    若「常に前を向いておらねばならぬのに、約束も出来ぬとは、敵に背中を向けるのと同じであった。気付くのが遅く、済まなかった」

    唯「…良かった。私ちょっと、心配してたの。あんなにたーくん、みんなに生きろって言ってたのに」

    若「考えた上で申した事ではあったが、かえって不安にさせてしもうた」

    唯「万が一、のために覚悟はする。でも必ず戻って来るって、強い気持ちで居てくれるだけで嬉しいよ。ありがとう」

    若「共に生きよう」

    唯「はい!」

    唯の肩に手を置いた若君。引き寄せようとすると、

    唯「はい、あーんして」

    口にチョコを入れられた。

    若「…避けておるのか?」

    唯「そんなコトないよぉ。まだチョコもあるし」

    若「今食べ切らずとも」

    唯「まぁそうだね。なんとなく、もうちょっとたーくんと話してたいなって」

    若「そうか。何を話す?」

    唯「あのね、初めて永禄に飛ばされた時、私ここで…って絶望したけど、たーくんに会えたのは奇跡で、今こうして一緒に居られて、ホント良かったなって」

    若「出会っていきなり刃先を向けられても?毒キノコを食せと申しても?」

    唯「あっ…そっそうだよ、まぁ、どうせだったら、たーくんに斬られるならまだいいのかなー。いや、痛いのはヤダな」

    若「ひょうげた小僧など斬らぬ」

    唯「どう見ても、おなごじゃなかったと」

    若「フフッ」

    唯「ちぇー」

    若「ハハハ」

    唯の髪を撫でる若君。見つめ合う二人。

    若「唯」

    唯「はい」

    若「この世に、わしの前に現れた事、心より礼を申す」

    唯「あ、それ…。そっか、私すぐ戻るつもりで、もう一回言ってってリクエストしてたんだった」

    若「お前の事は生涯…」

    唯「…」

    若「離さぬ」

    唯「キャー!」

    若「シッ!声が大きい!」

    唯「ごめぇん。あ~今のセリフ、動画でとっときたかったな~」

    若「幾度でも申すが」

    唯「やーん、それもっといい!嬉しいっ」

    唯が姿勢を正した。若君も正対する。

    唯「えっとね」

    若「うん?」

    唯「たーくんも大殿も優しくしてくれるけど、赤ちゃんが欲しい気持ちは変わってないの。もう、くよくよはしないけど、いつか…いつか会えるといいね」

    若「ゆるりと、待つとしよう」

    唯「うん。でも、子供にデレデレのたーくんも見たいな」

    若「ハハッ。まぁ、身籠れば、唯を戦に出さずには済む」

    唯「前に言ってたな、それ。うん。私は、子供を守って、だから家族を守れて、たーくんも守れるんだね」

    若「そうじゃな…」

    唯「あ」

    若「…」

    唯「ふふっ、チョコの味だ」

    ┅┅

    変わって、令和。速川家リビング。

    美香子「ふぅ。新聞も読み終わったし、そろそろ寝ようかしら。あら、尊」

    覚「喉でも渇いたか。麦茶なら冷蔵庫に」

    尊「あ、ううん、歯磨きに来た。今日はもう寝ようかと思って」

    覚「お?日中から細かい作業で疲れたか?」

    尊「なんか…兄さんの声が聞こえた気がしたんだ。程々にって」

    覚「降臨したか」

    美「忠清くん、静かに見守っててくれそうだもんね」

    ┅┅

    夜も更けてきました。五人、寝支度です。

    唯「さすがに眠くなってきたなぁ。たーくんそろそろ寝る?」

    若「うむ…」

    唯「って、なんか考え事してるし」

    若「尊は、このような夜更けにも、学問に励んでおるのでは?」

    唯「だって一か月遊んでたよ?アイツ」

    若「されど無理はならぬ」

    唯「じゃあさ、そう願ったら?気持ちを送る感じでさ」

    若「心通じ合うようにか」

    唯「そっ」

    若「…尊。体に気を遣い、程々にせよ」

    尊「あっ、…兄さん?」

    唯「たーくん優しいよ。ねぇねぇ、明日の予定は?」

    若「朝から領内の見回りに」

    唯「忙しいね。武士は週休二日とかないからなぁ」

    若「何じゃ、それは」

    唯「完全土日休みとかならいいのに」

    若「土日。そういえば、明日は土曜日じゃ」

    唯「え?よく覚えてたね。そっか、たーくん毎日日記つけてるからわかるんだ」

    若「土曜日なら、院は開いておるではないか」

    唯「半日ね」

    若「お母さんも、忙しゅうされるであろう」

    美「さて、明日あと半日、頑張ろっと」

    覚「そろそろ寝るか」

    唯「そうだね。じゃあ、寝るとしますか」

    若「あぁ」

    尊「おやすみなさーい」

    美「おやすみなさい」

    覚「おやすみ~」

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん、また明日ね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    彼らの日常は、続きます。

    この度も、ご覧いただいた全ての方に感謝いたします。かなり長くお付き合いいただきましたが、なんとか走り切る事ができました。ありがとうございました!

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    二人の令和Days139~23日19時、お見事です

    このブランド、爆売れに違いない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き令和。キッチンに覚と尊。

    尊「スパイス、忠清ブレンド使う?」

    覚「今日は使わない」

    尊「って言うか、どれが兄さんのかわかんなくなってるけど」

    覚「へへ。どうせなら、全部貼りたかったからさ。壮観だろ?」

    スパイスの棚に整列した小瓶。ラベルが統一されているのだが、

    尊「全部、忠清って書いてあるし」

    ┅┅回想。8月10日6時、キッチン┅┅

    覚が一階に下りてきた。すると、庭から若君登場。

    若君「おはようございます、お父さん」

    覚「おはよう、忠清くん。え?今朝はもう稽古終わったの?」

    若「今日は、大掃除をすると聞きましたので、早めに体を温めました」

    覚「そうなの!クリニックが昼までだから、本格的にやるのはそれからだけどね。さすが、志が違うなぁ」

    若「然程でもございませぬが」

    覚が、キッチンの棚を眺めていたが、蓋付の瓶を一つ取り出した。

    若「どうされましたか?」

    覚「あのさ、昨日スパイス混ぜてもらったじゃない。忠清ブレンド」

    若「はい。この瓶、ですね」

    覚「僕の字でラベル…あ、この貼ってある紙ね、書いたけどさ、どうせなら忠清くんに書いて欲しいな~なんて」

    若「それはお安い御用ですが、ここに書くのですか?」

    覚「いや、それは書きにくいから。ちょっと待ってね」

    紙と筆ペンを持ってきた。

    覚「ここに、名前だけ書いてくれる?」

    若「忠清、だけで?」

    覚「うん。それで充分だから」

    サラサラと達筆で名が書かれた。

    若「これで良いでしょうか」

    覚「カッコいいな~。ありがとう」

    若「で、どうされるのですか?」

    覚「ペタっと貼れるように、シールにプリントさせて貰うね。あ、えーと、この僕の字から、君の字に貼り替えるよ」

    若「そうですか。それは楽しみです」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「コピり過ぎだし、肝心のスパイス名は小さくしか書いてないし」

    覚「あまりに美しいから、達筆メインでな」

    尊「それよりこれ、超笑えるんだけど」

    酒やみりんの瓶にも、まるで銘柄のように忠清と大きく貼ってある。

    覚「高級酒みたいだろ?」

    尊「人気ブランドだなぁ」

    19時30分、美香子が顔を出した。

    美香子「8時前には席に着くから。あら、今日はスープがメイン?もしかして」

    覚「金曜だから忠清くんの料理の日。最後のホワイトソースだ」

    美「嫌だわ、最後なんて」

    覚「仕方ないだろ、いくら冷凍でも日持ちの問題はあるからな」

    20時、三人で晩ごはん。

    全員「いただきます」

    美「あ~美味しい。五臓六腑に染み渡るわ~」

    覚「最後の一掬いまで、堪能してくれ」

    尊「おいしいな。あ、そういえばさ、お母さん、花火大会の動画、観てないよね」

    美「観てないわね」

    尊「ご飯済んだら流してあげるよ」

    晩ごはん後のお茶タイム。

    尊「お父さんも座って」

    覚「僕は観たけどな。あ、もしかして、何か足したのか?」

    尊「うん」

    美「えー、何~」

    上映スタート。

    美「綺麗ね。まぁ」

    覚「気付いたか?」

    美「うん。唯と忠清くんの声が聞こえるわ」

    尊「僕、極力静かにしてたから」

    美「なんか嬉しい。ありがとう、尊」

    画面は、実験室の中に切り替わった。

    覚「お?」

    美「あら」

    二人からの感謝のメッセージ、生まれ変わったらの話と続く。

    美「今までで最高の泣きっぷりじゃない?」

    覚「あなたの母になります、なんて、我が娘ながら中々のモンだ」

    美「そうね…。あのさ」

    覚「何だ」

    美「ウチって、彼が帰ってきたい場所になってるかしら」

    覚「なってると思いたい」

    尊「なってるよ。絶対」

    美「うん。じゃあ、いつ来てもいいように」

    尊「すぐは来ないはずだけど」

    美「アクセサリー作り、頑張ろっと」

    覚「細かい作業だぞ~」

    美「顕微鏡で覗きながらやろうかしら」

    覚「なるほど、それいいな」

    尊「どんだけ小さい物作る気なの」

    美「やっぱり?」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅

    その頃、永禄。唯の居室。

    唯「たーくん、お疲れ様ぁ」

    若「待たせたの、唯」

    唯「あのね、聞いて!さっきね、小平太パパが妙だったの」

    若「妙とは何じゃ」

    唯「いっつも、会えば小言を言われてたんだけどさ。子はまだか攻撃も」

    若「まぁ、養父としての立場はあるからのう」

    唯「今日は、言いかけて、アッて口をふさいでたの。たーくんが止めてくれたの?」

    若「いや、直には申しておらぬ。吉乃殿には、わしの存念は伝えたが」

    唯「そーだったんだー。さすがたーくん、さすがおふくろさま。小平太パパさー、まぁ一応家族だけどさー、パワハラ気味だし、ちょっとうっとうしかったんだよね」

    若「パワハラ?」

    唯「あ、えーっと、どう説明しよう」

    若「それは」

    唯「ん?」

    若「鹿之原には近いのか」

    唯「…近くないっす」

    若「そうか。まぁ良い。今宵はの、唯が喜ぶ品を持って参った」

    唯「えー!なになに?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

    次回、最終回。

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    二人の令和Days138~23日17時、答え合わせです

    自由に行き来できる未来が早く来ますように。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。食卓に尊。早速買ってきたレジン液を型に流し込み、花を入れ、専用のライトで固めるという作業をしている。

    覚「カーテン開いてて、眩しくないのか?」

    覚が麦茶を運んできた。

    尊「わざと開けてあるんだよ」

    覚「そうなのか」

    まだこの時間は、太陽が燦々と降り注いでいる。

    尊「日にかざした時、どう見えるか確認したいから。だって使うのは日中でしょ、かんざしとか帯留めとか」

    覚「まぁ、そうだな。まだ練習段階か?」

    尊「うん、ひとまずは」

    覚「あまり根を詰めるなよ」

    尊「大丈夫。昼間しかやらないから」

    覚「そうなんだ」

    尊「花がどう日差しに映えるか見たいから、夜よりは明るい内に作業したくて。そのために、紫外線で固まるUVレジンじゃなくて、LEDライトで固まるLEDレジンにしたから」

    覚「色々あるんだな。面白そうだ。お母さんもやりたそうだったぞ」

    尊「今の内にモノにするからさ、土日で作ろうよ」

    覚「いいね~」

    尊「受験勉強は、夜にするから」

    覚「再始動な」

    尊「うん。三倍頑張ってるよ」

    再び作業を続ける尊。

    尊「ふう」

    一呼吸して顔を上げた。窓の外には、夏の庭の景色と、実験室。

    尊 「…」

    尊は、若君と二人、実験室で話し合った日の事を思い出していた。

    ┅┅回想。8月13日20時30分、実験室┅┅

    向かい合って座る尊と若君。

    若君「お父さんには、聞かれとうなかったのか?」

    尊「そんな事はないんですけど、なんとなくサシで話したくて」

    若「そうか」

    尊「それでは…前に、家族全員でお城に行った時の話ですけど」

    若「尊の隠れた存念じゃな」

    尊「はい。僕あの時、令和の現代は安全だと思いますか?って聞きました」

    若「そう思うておる、と答えたのう」

    尊「率直に言います。450年後の現代は、色々わからない分危険です。兄さんは特に」

    若「…聞かせて貰おうか」

    尊「永禄と令和。お互いに今どうしてるかな?と思いを馳せた時、令和に居れば永禄の大まかな状況はわかります。それは、歴史として残っているから。いつ戦があったとか、黒羽城はどうなっているとか」

    若「うむ。語り継がれるからじゃな」

    尊「兄さん、前回帰った後、向こうで日記付け始めたんですよね」

    若「あぁ。少しでも日々の様子が末代に残れば良かろうと思うての、前の日の事柄を、翌朝に」

    尊「翌朝なんですね。さすが兄さん、ちゃんと覚えてて書けるんだ」

    若「無事に朝を迎えられた事に感謝し、書き始めるのじゃ。何より、夜は出来るだけ長く唯と過ごしたい」

    尊「のろけですか?」

    若「ハハハ。朝の唯は居らぬも同然であるし」

    尊「ダラダラ寝てるんですね」

    若「その分、書く時間は取れると」

    尊「はは…。そういうのもあって、令和の僕達は永禄の状況を把握しやすくなってますけど、逆は無理ですから」

    若「そうじゃな」

    尊「いつかすごく改良されたタイムマシンができて、行き来が簡単安全にできるようになったとしても、現代に着いて驚くかもしれません」

    若「それは、例えるならば?」

    尊「家族の誰かが居なくなってるとか。事情は色々考えられますが、家が無くなってるとか。帰る場所としてその時速川家が存在してるかは、永禄ではわかりません」

    若「まぁ、考えとうはないが、わからなくもない話じゃな」

    尊「実験室自体が無くなっていれば、まず飛べませんけど、それはそれで、未来で何があったかと心配になりますよね」

    若「ふむ。あとは?」

    尊「無事着いた。僕も両親も健在。でも、見えない危険があるんです」

    若「どのような?」

    尊「初めて兄さんがここに来た時、感染症にかかったじゃないですか」

    若「うむ」

    尊「あの時の兄さん、矢傷が癒えつつあって万全な体調ではなかったにせよ、兄さんだからかかった気がするんです」

    若「わしだから。弱いとな?」

    尊「いえ、育った時代の違いです。いろんな免疫…病気やバイ菌から身を守る力がやや少ないというか」

    若「尊には、それがあるのか?」

    尊「僕に限らず、両親もです。必要な免疫は、赤ちゃんの頃からつけるような制度にもなってて」

    若「幼子は、病を恐れず育つ事が出来ると」

    尊「はい。で、兄さんにはそれがないけど、お姉ちゃんにはあります」

    若「良いではないか」

    尊「それがもっと危険で」

    若「何ゆえ?」

    尊「お姉ちゃん自身はピンピンしてても、知らずに現代の何かしらの菌などを、永禄に運んでしまうかもしれないんです。そうすると、兄さん始め永禄の皆さんが危ない」

    若「目に見えぬからか」

    尊「はい。今こうしてサシで話してる僕も、兄さんを危険に晒しているかもしれないんですが。前回は飛ぶ前に感染がわかったんで、治してから帰れましたけど…」

    若「それはないと思いたいが」

    尊「また、もし次回があったとして、現代に到着した時、もう空気自体が汚染されているかもしれない。普段からこれ着けていないといけない世界になってるかもしれません。そうすると、降りたった以上、永禄には簡単には戻れなくなります」

    隅に置いてある、防護マスクを指差した尊。

    若「そうか…」

    尊「という訳です。でね、兄さん」

    若「ん?」

    尊「まずは、大学入るための勉強を頑張ります。無事入り、手がつけられるようになったら、タイムマシンの改良をして、起動スイッチも新たに作ります。いつになるかは約束できませんけど」

    若「うん」

    尊「無事完成して、こちらの世界もまぁ安全、となったら、僕から迎えに行きますから、それまで待っていて欲しいんです」

    若「そうか。わかった。今の起動スイッチは、無闇に引き抜かぬ様、わしが預かっておく」

    尊「そうしてください。お願いします。新型の野望としては、一度に5人以上運べるようにしたいです」

    若「家族より多くか。子や…尊の妻女か?」

    尊「えっ?!そっちは…何とも言えません。どっちにしろ、早めに頑張って作ります」

    若「ハハハ。わしの頑張りが早いか、尊が早いか」

    尊「頑張りますか。ははは」

    若「ようわかった。わしばかりでなく、永禄の皆まで案ずるとは、さすが尊じゃ」

    尊「話せて良かったです。じゃあ、戻りましょうか」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「今日はここまでにするかな」

    覚「お、終わりか?じゃあそろそろテーブルの上片付けてくれ」

    尊「うん。晩ごはん何?」

    覚「今日は例の日だから、ごちそうだぞ」

    尊「例の日?今日は金曜…あ、兄さんの料理の日?まだ残ってるの?やった~!」

    覚「忠清くんは居ないが、手伝ってくれよ」

    尊「はーい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    ありがとうございます

    早速応えていただき、ありがとうございます♪

    妖怪千年おばばさん

     待ちますとも待ちますとも待ちますとも。大事なことは三回。
    楽しみにしていま〜す。とはいえ桜と薔薇は永遠の命はいただいていませんので、ゆっくり急いでお願いします🤲

    急ぎません❗️って言ったのに、どの口がー。失礼いたしました。

    梅とパインさん

     夜中に大笑い。
    久しぶりの「源ちゃんトヨちゃん」のノリ。ありがとうございます😊中毒性があります。勝手ながら、時々お願いします。
    梅パさんの心の声(なんてずうずうしい💢)???

    夕月かかりてさん

     「源ちゃんトヨちゃん」支社版までありがとうございます😊
    これだからこの郷の住人はやめられません。

    今のお話、終盤なのですね。先にも書きましたがどう納まるのか?どう着地するのか?楽しみです。

    まとめてお詫び

     昨日の桜と薔薇の投稿

      「さん」「さま」が混在。
      ひとえに桜と薔薇の粗忽が為せることにて、平にご容赦くださいm(_ _)m

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    最終回のお知らせです

    ついノリで、源トヨの投稿を先にしましたが、大事なお知らせをこのままさせていただきます。

    桜と薔薇さま。お読みいただいているのですね。嬉しい限りです。

    でも、そろそろ…なんです。長々とお送りしてきました「二人の令和Days」ですが、全140回となります。

    次が138なので、あと3回です。皆様、もう少しだけ、お付き合いください。

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    返信
    支社版『源・トヨ』

    二人の令和Daysを書き終わっておりまして、余裕があった所に、楽しげな投稿が!ちょっと別の角度から乗っかってみました。
    ┅┅
    トヨ「源ちゃん、パラレルワールドって知ってる?」

    源三郎「何か聞いたことあるような…」

    急に辺りが暗くなる。すぐに明るくなった。

    ト「え?何が起こった?」

    源「おぬし、誰じゃ」

    ト「へ?」

    源「トヨによく似ているが…」

    ト「…って何言ってるの?目の前に居るのはトヨちゃんですよー!」

    源「違うだろう」

    ト「えっ?」

    源「妻のトヨはどこに行ったんだ…」

    ト「つ、妻?!」

    トヨ 心の声(もしかして、もしかすると、あたしホントのパラレルワールドに迷い込んだの?)

    源「おぬし、名は?」

    ト「トヨ、です」

    源「そうか。同じ名なんだな。道に迷うたのか?」

    ト「そんなつもりはないんですけど…」

    源「隣の村境まで、送ってやろう」

    ト「は、はい…」

    ト 心(もう、言う事聞くしかないわね)

    歩きだした二人。

    ト「あのう…」

    源「何だ?」

    ト「トヨさんって、どんな奥方ですか?」

    源「ずっと好きで」

    ト「まあっ」

    源「ようやく射止めたんだ。もうじき子が生まれる」

    ト「そ、そうなんですか」

    ト 心(こっちの世界の方がいいじゃない!)

    草の生い茂る間に、暗くなっている箇所があった。なぜか、体が吸い寄せられるトヨ。

    ト「え!キャー!」

    ト 心(こ、これは、ドラマ1話の冒頭で、若君様を追った唯様がはまった穴?)

    ト「…はっ!」

    源「お前何だ、急に居眠りなんかして」

    目の前に源三郎。

    ト「あたしの知ってる源ちゃん?」

    源「何寝ぼけてるんだ?小さい頃から知った仲だろ」

    ト「良かった…」

    源「で、パラレルワールドが何って?」

    ト「ん?もうその話はいいや」

    源「何だそれ」

    ト 心(一瞬見たあの世界、別にこっちでも、そうなってもいいもんね。頑張ろっと!)

    梅とパインさんのように、なにわ色豊かにはできません。夕月かかりてに、お題「パラレルワールド」を与えるとこうなったと。お邪魔いたしました~。

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    返信
    本社版『源・トヨ』

    【時代なんぞ無視する本社】が お届けします😁。

    トヨ「源ちゃん、パラレルワールドって知ってる?」
    源三郎「あぁアレね。小さい頃好きやったなぁ」
    ト「ん?」
    源「食べよ思って紙剥いたら、ちょいちょい先っちょが折れてんのよね~」
    ト「何の話?」
    源「パラソルチョコレートやろ?」
    ト「ちゃうちゃう」
    源「え?犬の話やったん?」
    ト「いや、チャウチャウちゃう」
    源「何言うてんの?」
    ト「こっちのセリフやわ。ベタなネタやし…。私が言うてるのは パラレルワールドよ」
    源「何か聞いたことあるような…」
    ト「うん、何かね 今のこの世界と別に 同じような世界があるらしいよ」
    源「どういうこと?」
    ト「今 私はこうして源ちゃんと話しているけど、もう1つの世界でも 私と源ちゃんが居て 違う話をしている…みたいな感じ?」
    源「何か ややこしいなぁ」
    ト「どうする源ちゃん、もし そっちの世界で私と源ちゃんのことが 若君様や唯様にバレてたら?」
    源「どうもせんでも ええんと ちゃう? 隠すほどのことも無いやろ」
    ト「そしたら こっちでも 堂々として ええの?」
    源「こっちはこっち、よそはよそ!」
    ト「ええ~~」
    源「そやけど別の世界では 別の展開があるってことか…」
    ト「そうなるかな?」
    源 (心の中) ってことは、トヨと あんなことや こんなことや ああなったり こうなったり っちゅう展開しているかも知れんのか… (ニヤニヤ)
    ト「源ちゃん?」
    源 (ニヤニヤニヤニヤ…)
    ト「源ちゃんって!」
    源 (ムフフフフ…)
    ト「源三郎!」
    源「太刀を持て!」
    二人「えっ?」
    源「あ、いやいや これ俺が言うやつと違う。言われる方やった。つい言うてしもたわ。いや 俺が言うて どないするねん、なぁ」
    ト「知らんがな。それより今 何か変な想像してたよね?」
    源「え、いや、して…へん」
    ト「ふ~~~ん」
    源「あ!もう休憩時間終わるよ。戻らんとアカン」
    ト「はいはい、いつものんですね。そろそろ皆さん飽きてはるで」
    源「しょうがないんよ。作者の限界や」
    ト「こっちの作者、情けないなぁ。まぁそれなら、パラレルワールドの作者さんに 期待すると しましょかね」
    源「そうしましょ♪」
    二人「それでは皆さま、またいつかね~ (^-^)/」

    ◎ 桜と薔薇さん、こんなので すみません (^o^;)。
    夕月かかりて さん、今後ともよろしく~ (^.^)。

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    返信
    リクエストありがとうございます!

    桜と薔薇様

    「SP(スペシャル)は
       52分で小休止
          黒羽の守護神
            瞼に再生」

    あ・・・いやその💦

    ホントですか?

    だとしたら、
    妄想作家冥利に尽きまする。
    ありがとうございます!
    m(__)m

    続編・・・書いてみたいですが。
    (;^_^A
    実は、数々の難題が。

    その一例を挙げますと、
    このサイトの記事にも
    取り上げられておりますが、
    志津姫と若君の婚礼を
    知らせる手紙。

    相賀殿は、大殿他、
    城から”消えた”はずの
    足軽を含めた羽木の面々の
    居所を知っておられる。

    唯の狙いは、
    ”消える”
    事だったはず。

    つまりは、”行方知れず”
    にさせる事で、
    一族を守ろうとしたわけで、
    手紙が届いた時点で、
    その目論見は崩されている。

    では、いったい、誰が、何時、
    大殿たちの居所を明かしたのか?

    間者?
    身内が内通?
    もしや、野上の裏切り?
    まさかの若君?
    よもや、
    じいではあるまいな?

    うーーーーん。

    おばばの悩み所、山積で、
    妄想が追い付かないのです。

    おばばにとっての、
    別の”謎”の一つを
    今、ふきちゃんの物語を
    完結させることで、
    おばばなりに解き明かす
    つもりですので、
    気長にお待ちくださいね~。

    よろしくお願いいたします。
    m(__)m

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    ごめんなさい🙏

    夕月かかりてさま

    平成❌令和⭕️でした。

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    厚かましくもリクエスト

    昨年暮れ

    再び〝流浪の民〟になってしまった😰焦りました。

    管理人さまが大変なご苦労の末にこの郷が回復した時は、心底ホッとしました。

    管理人さまのご厚意に甘えているという事を実感したものです。
    本当にありがとうございます。

    唯の台詞風にいえば

    いつ無くなってしまうかもしれない—

    で、厚かましくリクエストすることにしました。

    妖怪千年おばばさん

    「黒羽の守護神」の続編をお願いします🤲

      SP(スペシャル)は

        52分で小休止

          黒羽の守護神
            瞼に再生

    ですが
    その後、志津姫との(婚礼)までを物語っていただきたいのです。

    急ぎません。ゆるりとお願いします。できれば「城代 疾風」ことスピン号へのオマージュと共に。

    ぷくぷくさん

    公式掲示板を読み込んでいない
    桜と薔薇のギモンを解決してください。

    若君が矢傷で平成に送られて来た時のこと。

    よしえさんとえりさんがなぜ平然と若君を受け入れているのか?
    イケメンを前にハイテンションではあるけれど、どのように納得しているのでしょう。
    そのスキマをお願いします。

    よしえさんこと上村依子さんへの哀悼を捧げます。

    もちろん新作もお待ちしています。

    梅とパインさま

    昨年来「源ちゃんトヨちゃん」出張が忙しかった(今もかな?)ようですが、本社からも新作お願いします。

    夕月かかりてさま

    永禄と平成を行ったり来たりの物語、桜と薔薇のアタマでは時々絡まりますが、どんなふうに帰結するのか楽しみにしています。

    とっても厚かましいお願いばかりで我ながら呆れます。ゆっくりゆったりお待ちしています。

    とはいえ、病禍をなんとかやりすごして概ね健康で暮らせますよう。ご本人やご家族、縁の方々が感染なさった方、ご快復を心よりお祈りしております。

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    二人の令和Days137~23日15時、氷が解けるように

    スピンも逝きましたか。名脇役でした。ドラマアシガールを彩ってくれて、ありがとうございました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もう心配ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の手ほどきで鶴を折る、成之と阿湖。

    成之「なるほど」

    阿湖「ここを折るのですね」

    若君「はい」

    阿「あら、唯は違う紙ね。鶴ではないお品を作ってるの?」

    唯「鶴だよ。バージョンアップした」

    阿「え?」

    若「より、折るのに技が要る物じゃな」

    唯「えーっと、ここ折ると…違う!これじゃ翼に噛みついてるみたいだから…」

    ブツブツ言いながら、連鶴に挑戦していた。

    唯「できた。けどなんか、クチャってしてるなー」

    クチバシで繋がる二羽の鶴。そのクチバシがヨレっとしていた。

    阿「まあ!この二羽…いい、すごくいいわ」

    唯「ごめん、肝心のチューしてる部分がイマイチだった」

    阿「いえ、この、この感じがいいの。ねじれて重なり合うクチバシがなんか…狂おしくて」

    唯「え?激しいのがお好みなの?意外~。阿湖ってさぁ、現代に居たら、ドロドロ恋愛関係のドラマとか観まくるタイプで、私とは話合わなかったんだろーなーって思う」

    阿「所々わからない言葉があるわね…でも、唯と合わないなんてないと思うわよ?」

    唯「ありがと。今が永禄で良かったよ。じゃ、これ阿湖にあげる」

    阿「まぁ!嬉しい!」

    仲良く四人で折り進めている。

    唯「なんかさ」

    若「なんじゃ?」

    唯「せがれ達が二人、仲良くしてるのって、イイ」

    阿「あら、さっきは母は嫌って言ってたのに」

    唯「なんとなく、ノリで」

    成「調子の良い事を申しておるのう」

    唯「いいじゃん、たーくんと兄上さんは、仲良くしてて欲しいってみんな思ってるよ」

    阿「そうね…」

    若「そう、じゃな…」

    成「…済まない」

    唯「やだ、なに謝ってんの?カンペキに仲直りしたでしょ」

    成「あぁ」

    若「うむ」

    唯 心の声(うわぁ、言葉少なっ。ヤバい、私が微妙な空気にしちゃった?どうしよう…うーん。そうだ!)

    唯「ねぇねぇ、心通じ合いました記念でさ、ここらでちょいと、アレやってみない?」

    若「アレとは?」

    唯「ハイタッチ」

    若「おぉ、なるほど。そうじゃな」

    成「今、何と?」

    阿「はい?」

    唯「やってみてあげるね」

    成之と阿湖が見やすいように移動し、向かい合って座った唯と若君。

    唯「では、座ったままバージョンで。いきまーす」

    若「うむ」

    唯「イェーイ!」

    若「イェーイ!」

    右手を高く挙げ、パシッといい音でハイタッチした。

    成「なんと」

    阿「まぁ」

    唯「はい、次は仲良し兄弟でどーぞ!」

    若君が、成之の前に座った。

    若「宜しいか?」

    成「あぁ」

    右手を高く挙げた二人。

    若「イェーイ!」

    成「イ、イェーイ!」

    パン!と大きな音でハイタッチ。すると、成之が合わせた手をすかさず握った。固く握られたまま、腕が下ろされる。

    若「兄上…」

    成「末永く、宜しく頼む」

    頷いた若君。手はゆっくりとほどかれた。

    阿「素敵…」

    唯「うん」

    成「阿湖」

    阿「はい」

    成「そろそろ、参るか」

    阿「あっ、はい。ねぇ唯、この折り紙、少しいただいてもいいかしら?もうちょっと作ってみたくて」

    唯「どーぞぉ」

    阿「出来上がったら、お持ちするわ」

    若「忝ない」

    成「では、これにて」

    若「では」

    成之が去っていく。阿湖が、唯に耳打ちした。

    阿「ごめんなさいね、そそくさと。なあさま、きっと涙を堪えてると思うの」

    唯「いいよん。早く行ってあげて」

    二人に会釈して、阿湖も出ていった。

    唯「たーくん偉いよ」

    若「ん?」

    唯「矢の傷とか、マジ辛かったでしょ」

    若「済んだ事じゃ」

    唯「大人だねぇ」

    若「…そうじゃ」

    唯「なぁに?」

    若「結果オーライ、とは、このような折に使うのではあるまいか?」

    唯「…はあ?!」

    若「違うたか?」

    唯「ううん、合ってる」

    若「そうか」

    唯「めっちゃゴキゲンな顔してるし」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は令和の尊からスタートです。

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    二人の令和Days136~23日13時30分、どんな薬よりも

    効果抜群。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄は、もうすぐ昼ごはんタイム。若君の居室に、唯と若君。

    唯「いらっしゃーい!」

    成之「これは、賑やかな出迎えじゃの」

    阿湖「唯~」

    若君「ようこそ、おいでくださった」

    成「これが、千羽鶴。ほほぅ」

    阿「色合いがとても綺麗ね」

    唯「でしょ~。後で作ってみようね!」

    二組のカップルが集結。程なく、四人分の膳が運ばれて来た。

    唯「あ、トヨだ」

    軽く会釈をするトヨ。唯は立ち上がり、膳を置いて部屋を出るトヨを捕まえた。

    唯「ねっねっ、デートどうだった?」

    トヨ「フフフ」

    唯「えー、気になる!」

    ト「何もございませぬ」

    唯「ホントに~?聞きたいけど、またねっ。じゃ!」

    唯が座り、食事スタート。

    阿「唯は、女中とも仲がよろしいのね」

    唯「トヨには、世話になってるから」

    阿「まぁ。懇意にしているにしても、唯って誰に対しても分け隔てなく、優しいわね」

    唯「いろいろ助けてもらってるからさ」

    成「何でもやってのけそうな唯殿でも?」

    唯「阿湖みたいにさー、いかにも儚げだとみんな守ってくれるけど」

    阿「それは…例えるなら、風を知らぬ姫、かしら?」

    成之に目をやる阿湖。何かに気付き、ギョっとした顔をした成之。

    若「兄上の顔色が変わっておる」

    唯「あー、さては兄上さん、阿湖にまたひどいコト言ったんじゃない?」

    成「その…」

    阿「初めて成之様にお会いした時、ちょうど忠清様が行方知れずの頃で」

    唯「そんな頃かー」

    阿「風を知らぬ姫は、さっさと親元に戻れと」

    成「風を知らぬ愛らしい姫、と申した」

    唯「そんなん言い訳だよね。兄上さん、そんな前から意地悪してたんだ。ひっどーい」

    成「なっ」

    唯「その頃は、ただのひねくれ者だったもんね。まっ、今じゃ二人超ラブラブだけどさー」

    阿「なあさまが動揺するのが可愛らしくて、つい昔話を蒸し返して意地悪しちゃうの」

    唯「はいはい。またのろけだよ。ヒューヒュー!」

    若「ハハハ」

    食事が終わり、いよいよ鶴の折り方の説明。

    成「この小さく薄い紙で作ると」

    若「一つ一つは小さき鶴なれど」

    唯「戦なき世を願いながら、折るのでありまーす」

    阿「強い思いの集まりなのね。素晴らしいわ」

    成「それにしても、実に彩り豊かじゃ」

    一枚取ろうとした成之。サッと指を滑らせた所、

    成「痛っ」

    阿「えっ、いかがなされました?」

    成「指が少し切れた。されど刃物などないが」

    若「それは、紙で切れたのでありましょう」

    唯「あー、ありがちなんだよね。でもって割と痛いし」

    成「油断ならぬ物であるのう」

    阿「でも、血が滲んで。どうしましょう!」

    成「大事ない」

    若「今、手当てを」

    唯「はいはーい、もう用意してまーす」

    唯の手には、消毒液と絆創膏。

    唯「ちょっとしみるけど、我慢してね」

    成「確かにこの、水か?しみるのう」

    唯「すぐ終わるから。痛いの痛いの飛んでけー!はい、これで良し」

    絆創膏をくるりと指に巻き、手当て終了。

    成「忝ない、唯殿」

    唯「いーえー」

    成「この貼り付いておるのはなんじゃ?布か?ふむ…。あと今、何か叫んでおったの。まじないか?」

    唯「うん、そうだね。傷が治るおまじないだよ。もう痛くないっしょ?」

    成「まぁ、そうじゃな」

    阿「なんか、母が子をあやすみたいだったわ。微笑ましかった」

    唯「えー?兄上さんがせがれ?それは、お断りしまーす」

    成「それは、こちらからも願い下げじゃ」

    阿「あら。ふふっ。そこまで二人して嫌がらなくても良いのに」

    このやり取りを眺めながら、若君は令和に居た頃を思い出していた。

    ┅┅回想。8月13日7時15分、キッチン┅┅

    両親がそろそろ朝ごはんの支度を始める。若君も一緒だ。尊が、ラジオ体操を録音し終わり、プレイヤーを持って実験室から戻った所。

    覚「えーっと、両手鍋どこに入れたっけかな」

    美香子「上の棚じゃない?」

    覚「上か…」

    若「お父さん、取りましょう」

    覚「おー、済まないね」

    頭上の棚の扉を開け、鍋を取り出す若君。しかし、竹ザルが引っ掛かっているのに気付かず、鍋が出たと同時に、ザルが降ってきた。

    美「あっ、危ない!」

    若「あっ」

    ザルは、若君の頭をかすめて、床に落ちた。

    覚「大丈夫か?!」

    若「はい、軽い物ゆえ、大事ないです」

    美「それにしたって…」

    尊「ケガはない?」

    美「一応、当たった所見せて。しゃがんでくれる?」

    当たった位置を確かめる美香子。

    美「大丈夫そうね。まだ竹ザルで良かったわ~」

    覚「そうだな」

    その箇所に、美香子がそっと手を当てた。

    美「痛いの痛いの飛んでけー!」

    若「…えっ?」

    尊「お母さん、兄さんはそんな小さい子供じゃないよ~」

    美「可愛いい息子の一大事だから、おまじないよ。あらっ」

    若君が、赤くなっている。

    尊「あーあ」

    覚「無闇に触るからだろ」

    美「あら、ごめんあそばせ」

    若「いえ…よう効くまじないでした」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯「たーくん?なにボーっとしてんの」

    若「あ、あぁ。では始めるとするかの」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days135~23日11時、美しさそのままに

    どーんと配れる程、出来上がりそうな勢い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。リビングに尊と覚。

    尊「さてと、上手く出来てるかな~」

    シリカゲルが詰まった大量のタッパーが目の前に。蓋に、色々な花の名前が書いてある。

    覚「中には失敗したのもあるかもな。その為の保険で、この量なんだろ?」

    尊「うん。全滅だけは避けたいけど」

    タッパーを開けた。そっと粉を払う。

    尊「あ、バラはいい感じかも」

    覚「へー」

    一つ一つ開けて確かめていく。

    尊「うわ、花びら取れちゃった!」

    覚「それだけしっかり乾燥したんだよ。色はみんな綺麗に残ってるな」

    粗方取り出したところ、食卓が花で一杯に。

    覚「綺麗だけどさ、これどうするんだ?」

    尊「それが、考えてないんだよ」

    覚「はあ?」

    尊「こんなに成功すると思ってなくって」

    覚「んー、どっちにしろそろそろ昼ごはんだ。一旦タッパーに戻して床に並べとけ」

    尊「うん」

    12時30分、美香子が昼休憩にやって来た。

    美香子「あら、こんなに沢山!すごいわね~。私達が貰った方も、こうすれば良かったかしら」

    尊「色は綺麗なんだけど、薄い花びらのは取れてたりするんだ」

    美「あらま。せっかくだから何とか生かしたいわよね。で、どうすんの?」

    尊「どうしようかと。ご飯食べたら調べようかなって」

    美「ふーん。あ!それなら今、手仕事のお師匠さん達に聞いてみるわ」

    尊「師匠?」

    リビングを出て行った美香子。

    覚「なるほど、エリさん達だな」

    尊「あ、そっか」

    すぐに戻ってきた。

    美「二人共、食事終わったらこっちに顔出してくれるって」

    覚「わかった。コーヒーの準備もしておくよ」

    1時過ぎ、エリと芳江が登場。

    美「ごめんなさいね、貴重な休憩時間に」

    エリ「いえいえ。あら、綺麗~」

    芳江「まぁ~。思った以上に大量ですね」

    エ「頑張ったわね、尊くん」

    尊「お父さんと二人でやったんで、そんなには大変じゃなかったです」

    覚「なかなか楽しかったですよ。はい、コーヒーどうぞ」

    芳「ありがとうございます。こんなに沢山あったら、アレンジは無限大ですよ」

    尊「そうなんですか!僕、色が褪せない内に何とかしようとばかり考えて、後始末をどうするとかすっかり抜けてて」

    芳「大きいのは、箱に詰めてギフトボックスみたいにしたり」

    尊「メモります。ギフトボックス、と」

    エ「ガラスの瓶に詰めて、飾るってのもいいわね」

    尊「あのう」

    芳「はい?」

    尊「お姉ちゃん達が、永禄で使えるようなグッズって、作れそうですか?」

    美「え、いつ渡すのよ」

    尊「それは未定。今後の展望としてだよ」

    覚「まあ、忠清くんから唯へのプレゼントだから、手元で使ってもらえる物の方がいいよな」

    エ「小さいお花もあるんですね。なら、まとめて固めたらいかがかしら」

    芳「そうね、レジンとかで」

    尊「レジン。樹脂ですか」

    美「あ、なんか光で固めて、アクセサリー作れるとかってヤツ?」

    尊「中に花を閉じ込めるって事ですか。へー」

    覚「実験みたいだな」

    芳「尊くん得意そう」

    尊「知らなかった」

    エ「あら、そうなの?」

    尊「手芸の世界に、科学が入り込んでいたなんて。ふーん。お父さん、早速昼から材料買いに行きたいから、車で乗せてってくれない?」

    覚「大量買いか?ま、いいだろう」

    美「でも、具体的に何作るつもり?」

    尊「えーっと…」

    エ「トンボ玉とかはどうかしら?」

    美「あら、それいいわねぇ」

    尊「トンボ玉って何?」

    美「基本は、柄の入ったガラスの小さい玉を言うけど。それを、レジンでお花入れて作るって事ね?」

    エ「ええ。ある程度形作ったら…そうね、帯留めにしたり」

    尊「へー」

    芳「かんざしの先に付けたりしたら、可愛いいわよね」

    覚「さすが師匠、アイデアが湯水の如くだな」

    尊「なんか、見えてきました。エリさん、芳江さん、ありがとうございました」

    エ「出来上がり、楽しみにしてますね」

    芳「これで尊くんも、手芸男子の仲間入りかもね」

    全員「ハハハ~」

    ランチ後のコーヒータイムは和やかでした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は永禄に戻ります。

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    二人の令和Days134~23日10時30分、出生の陰に

    生まれて来てくれて、ありがとう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    大殿「おぬしの母は」

    若君「はい」

    大「公家の出であるが、それは美しいおなごであった。また品も教養もあり、気立ても良く申し分なかった。あれ程のおなごには、もう出逢わぬと思う」

    唯 心の声(大殿も、若い頃はかなりイケてただろうし、お母さんがそんなに美人だったから、たーくんが超イケメンなんだな)

    若「そうですか」

    大「是非にと正室に迎えたが、生来体が弱く、子は難しかろうと思うておった。側室はその前から居ったしのう」

    若「久殿ですか」

    大「あぁ」

    唯 心(兄上さんのお母さんか)

    大「だが次第に、たとえ我が命に代えてでも、わしの子を産みたいと申し始めてのう」

    若「…」

    大「それはならぬ、と一旦は諌めた。忠清に申すのも何だが、世継ぎは側室との子で良い。愛する妻を危険に晒しとうなかった」

    若「それは…わかります。もし、唯がそのような体であったならば、わしも止めます」

    大「少しでも体力をつけ、備えれば産んでも良いかと詰め寄られた。今にして思えば、産む産まずに拘わらず、自分は長くは生きられぬと思うておったのやもしれぬ」

    唯「…」

    大「食が細かったのだが、よう食べるよう努め始めると、辛そうな顔は見せぬようになった。わしも安堵し、程なく身籠った。忠清だ」

    唯「良かった…」

    大「だが、時を同じゅうして久も身籠っておったのだ。成之だ。わしは、忠清が無事産まれるまで、その事を妻には知られとうなかった」

    唯 心(そっか。兄と弟なんだけど、実は何日か違いなだけで、タメだって話だったな)

    若「それは、何かと競べかねず、重荷に感じぬよう案じたが故ですか」

    大「そうじゃ。周りの者に口止めはしたのだが、やがて妻の耳に入ってしまい、そこからは…まるで人が変わってしもうて」

    唯 心(マタニティーブルーかな…)

    大「必ずや丈夫な子を産むと躍起になったかと思えば、久が男子で自分が女子を産んでしもうたらと泣かれたり。母になる者がそのような心持ちではならぬ、正室はそなたである、気を大きく持てと言い続けた。それだけ決死の覚悟であったのだろうと今ならわかるが、若造のわしはそれ以上どうしてやる事も出来なんだ。穏やかな時もあったが、どうしても波があり…成之が産まれたのは伝えてはおらぬ。だが、心も体も無理が祟ったのであろう」

    唯&若「…」

    大「忠清を無事産み落とすと、程なく天に旅立った。無念であった」

    唯が、泣きそうになっている。

    大「あれほど心労がかさんでおった割には、玉のような男子が産まれておる。忠清は、幼き頃から病一つなかった。まさしく命に代えて産んだのであろう」

    唯「これが、母の愛なんだな…」

    若君も、涙ぐんでいる。

    若「その後も妻を娶らなかったのは、そのような所以があったのですね」

    大「妻は生涯、お前の母一人じゃ」

    若「父上…。兄上は、城から出された後、何者かに毒を盛られたと聞きました。わしは、家臣の内の誰かが仕組んだと思うておりましたが」

    大「そうじゃな。逆恨みした、妻側の者の仕業であったやも知れぬ。今となっては分からぬが。だが、城から追ったのはわしじゃ。様々な訳はあったが、母子揃った姿を見るのが辛かったのは、否めぬ」

    唯「うっ、うっ…」

    大「泣き出してしもうたか」

    若君は少し下がり、そっと唯に寄り添った。

    若「いかがした?」

    唯「だって、どっかから違っちゃったって言うか、みんながみんな、幸せになれる方法があったはずなのに」

    若「わしは今、幸せに感じておるぞ?」

    大「唯。それはわしもじゃ。悲しい別れではあったが、母の面影そのままの忠清を残してくれた。今は何も憂いてはおらぬ」

    唯「はい…」

    大「子の、話だが」

    若「はっ」

    大「わし自身が、努めて子を成そうとはせなんだ。いきさつはわかったであろう」

    若「はい」

    大「世継ぎは居るに越した事はない。だが成之も居る。そもそも相賀に囚われていた折に、腹は括っておった」

    若「その言葉、有り難く頂きます」

    大「唯」

    唯「はい」

    大「色々申す者も居ろうが」

    唯「え、なんでそれを」

    大「奥の院を出た後、わしの居室の近くでべそをかいておったではないか」

    唯「うわっ、バレてたか」

    若「まだ敵が居るのか…」

    大「息災であるのが一番。いずれは、位に思うておれば良い。思い悩む姿は、そなたらしくない」

    首を傾げる唯。

    大「どうした?」

    唯「大殿は、味方なんですか?」

    大「味方。そうじゃ。子の事で思い煩う姿は、誰であれ見とうはない」

    唯「そうなんだ…」

    大「わしは何も指図はしておらぬが、しばしば恨まれて矢面に立っておるようじゃが」

    唯「ごめんなさい、ちょっと疑ってましたっ」

    大「ハハハ、やはり。まぁ良い。いつもの唯に戻った様であるし」

    唯「はい!」

    大「今日は此処までに致す。長居した」

    若「父上の存念がようわかりました」

    大「うむ。では」

    唯「ありがとうございました!」

    大殿を見送った二人。

    若「唯」

    唯「はい」

    若「わしはあと、どれだけ敵陣に切り込めば良いのじゃ」

    唯「だいぶ減ってきてるから大丈夫だよ」

    若「奥は、何とかする。が、身に付けるべき読み書きや所作は、此迄よりもしかと学ぶように。唯を思うての進言もあろう。耳を塞ぐばかりではならぬぞ」

    唯「嫌がってばっかじゃダメって?」

    若「そうじゃ」

    唯「はい。わかりました」

    若「周りは味方ばかりじゃ。じきに参る者達もな」

    唯「うん、もうちょっとしたら、阿湖と兄上さん来るもんね。楽しみ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は令和からスタートします。

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    二人の令和Days133~23日10時、鶴翼を語る

    戦を避けたい気持ち、わかってもらえたかな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自室へ向かう若君。大殿も一緒だ。

    若君 心の声(唯が居るやもしれぬな…)

    案の定、予感は当たった。既に机に折り紙を広げ、歌を口ずさみながら鶴を折っている。

    唯「こーの香~る風~に開け~よ。あー、こっちで聴く歌はこれくらいだから、頭ん中鬼リピだよぉ」

    人の気配に気付いた唯。

    唯「あっ、お疲れ様…えぇっ!」

    大殿「何をしておる」

    唯「うそっ、わわ、すぐ片付けます!」

    若君「待て、唯」

    唯「え」

    若「隠さずとも良い」

    唯「いいの?」

    若「そのままにせよ」

    唯「はい…」

    机の横にちょこんと座った唯。それを気にも留めず、大殿は飾られた千羽鶴を見ていた。

    大「幾分派手派手しいが」

    若「はっ」

    大「美しい」

    唯「良かった。褒められた」

    若「忝のう存じます」

    大「一度、此処の前を通った折に目に入り」

    若「左様でございましたか」

    大「よう見てみたいと思うておった。実に細かい作りじゃ」

    若「千羽鶴と申します。鶴を模した物が、千羽おります」

    大「それは大仰な。幾人もの手による物か」

    若「はい。これは」

    若君が、意を決した様子で続ける。

    若「戦なき世を願い、皆で作り上げた品にございます」

    大「手掛けた者達の、総意と申すか」

    若「然り。…父上」

    大「何じゃ」

    若「現からの逃げではございませぬ」

    大「ほぅ」

    若「何時でも、戦となれば務めを果たす所存です」

    大「それは…わかっておる」

    大殿が腰を下ろした。若君も前に座る。若君の少し後ろで、ハラハラしながらも、じっとしている唯。

    大「戦は、好んでするつもりはない。だが、攻め入られ、負ければ一家滅亡にも繋がる」

    若「はい。羽木も危機はございました」

    大「いつの時分の話をしておる」

    若「高山に攻め入られましたが、立木山を目前に敵は退散しました」

    大「あぁ。唯之助が、迫る高山を蹴散らしたと評判になった、あれか」

    唯 心の声(21世紀の科学の力ですけど)

    大殿が、唯に微笑みかける。

    唯「?」

    大「こうしてみると、唯はまことに、守り神かもしれぬのう」

    若「守り神、ですか」

    大「じいが申しておった」

    唯 心(じい、たまにはイイ事言うじゃん!)

    若「頷けます」

    大「健脚で、なにより体が丈夫であるし」

    唯 心(もっと、違うトコ褒めてくんないかなー)

    机の上を見る大殿。

    大「唯は、新しい千羽鶴を作っておったのか?」

    唯「はい」

    大「良き妻女じゃ」

    唯「わぁ、嬉しい!だって、願いって、叶うんですよ」

    若「唯…」

    大「言い切ったのう」

    唯「だって、強く強く願えば叶うもん」

    大「おぬしがそう申すと、そうやも知れぬと思えてくる」

    唯「願ったモン勝ちです」

    大「ハッハッハ。忠清の代は安泰になりそうじゃな」

    唯「え?えへへ」

    同じく飾ってある、翼が繋がった連鶴に気付いた大殿。

    大「これはまた見事な…連なっておるのか」

    若「はい。手に手を取り、進む姿です」

    大「成程」

    大殿が、若君に向き直った。

    大「忠清」

    若「はい」

    大「おぬしの母の話をしようと思う」

    若「えっ」

    唯「え、初めて聞くかも」

    大「初めて話す。忠清にもな」

    唯「そうなんだ…」

    若「…」

    姿勢を正した、唯と若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days132~23日9時、推して知るべし

    こじらせ男子だけど、根が真面目だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨの足の爪に、丁寧にネイルカラーを塗った唯。

    唯「でーきたっ。乾くまでじっとしてた方がいいから、そのまま動かないで待っててね」

    トヨ「とても艶々で綺麗…何と礼を申したら良いのでしょう」

    部屋の外に、人の気配がした。唯が気付く。

    唯「いいよぉ~、入って入って」

    源三郎「宜しいのでしょうか」

    ト「あ。源ちゃん」

    源三郎が、申し訳なさそうな顔をしながら入って来た。

    源「奥方様、昨夜は楽しい時を過ごさせて頂きました」

    唯「いーえー。これからトヨにデートのお誘い?」

    源「いや…謝りに参りました」

    ト「フン」

    唯「まだ、ご機嫌ナナメっぽいよ?」

    源「至極ごもっともです」

    唯「源三郎も、ありがとう」

    源「いえ、わしは物を運んだまでで、礼には及びませぬ」

    唯「あ、えっと、ゆうべの話じゃなくて。たーくんに頼まれてたでしょ?」

    源「…そちらですか。奥方様、存じ上げなかった話とはいえ、今までお力になれず申し訳なく思うております」

    唯「いいのいいの。ホント、助かったよぉ」

    源「それはようございました」

    トヨの姿に、源三郎が眉をひそめている。

    源「トヨ、何だそのなりは。奥方様の前で寛ぎ過ぎだろ」

    ト「動いちゃダメって言われてるからよ」

    唯「まあまあ。女中達をシメてくれたお礼にね、ごほうびあげたの。見て見て!」

    源三郎がペディキュアに気付いた。

    源「お、これは。綺麗だな、トヨ」

    ト「えっ」

    唯「お?」

    源「姫君と同じにして頂けるとは、幸せ者だ」

    ト「う、うん…」

    唯「ねぇねぇ、似合ってるよね?」

    源「よう似合うております。トヨは働き者ゆえ、このような褒美を賜って然るべきでありますし」

    唯「めっちゃ褒めてるぅ。あのさぁ源三郎、それ、もう一回ギュギュっとまとめて言ってみない?」

    源「まとめて、でございますか?良かったな、トヨ。綺麗だよ」

    ト「…」

    源「?」

    唯 心の声(源三郎、爪だけ見て言ってんだろうけど)

    ト「綺麗、綺麗って言ってくれた…」

    ずっと反芻して、頬を赤らめているトヨ。それに気付かない源三郎。

    唯 心(トヨかわいい!源三郎も、まんま答えてて超かわいいし。これは、私が一肌脱がないとってヤツ?ん~。よしっ)

    唯「ねぇ、源三郎」

    源「はい、奥方様」

    唯「ちょっとこっち来て~」

    唯が手招きをして、部屋の奥、飾り棚の前に源三郎を呼んだ。

    源「何でございましょうか」

    唯「これ見て。それ以上は、言わな~い」

    指差す先にあったのは、芳江が折った連鶴の、クチバシで繋がっているバージョンの方。コソコソ話す唯と源三郎。

    源「これは…その…」

    唯「私、邪魔はしないから」

    源「奥方様…そのお言葉は心がえぐられます」

    唯「なんなら、この部屋貸してあげるよ?」

    源「いやいやいや!」

    トヨが、体をねじっている。

    ト「後ろで話してると見えない…」

    唯「あ、そろそろ動いていいよ」

    ト「もう良いのですか?わかりました」

    立ち上がったトヨ。

    唯「うん、ばっちりぃ。あまり目立たないトコがいい感じ」

    ト「ありがとうございました!」

    唯「機嫌も直ったね」

    ト「はい!ねぇ源ちゃん」

    源「何だ?」

    ト「せっかくおめかししたから、どこかに出かけたいわ~」

    源「そうか。じゃあ、行くか」

    唯「ふふっ。行ってらっしゃーい」

    唯に深々と礼をして、源トヨは部屋を出た。

    ト「あたしさぁ」

    源「ん?」

    ト「あの棚、何が飾られてるか知ってるから」

    源「ま、まぁそうだよな」

    ト「ムフフフ。あー楽しみだわー」

    源「試練は続く、か…」

    その頃の若君。定例の軍議、と言うよりは申し合わせの最中だった。

    若君「仇や疎かには出来ませぬ」

    成之「裏でどう動いておるかは」

    小平太パパ「間者を増やすか…」

    若君は、尊との会話を思い出しながら、場に臨んでいた。

    ┅┅回想。8月7日10時30分、車中┅┅

    家族全員で城ツアーの日。そろそろ駐車場に入る頃。

    尊「兄さん。今から行く城、永禄8年に信長が侵攻します」

    若「随分と車を走らせておったが」

    尊「元々、拠点はこの辺りなんですよ」

    若「そうなのか…」

    尊「最終的にかなり勢力を伸ばしますが。特に西の方は」

    若「西、か。帰ったら、詳しく教えてくれぬか?」

    尊「了解です」

    ┅┅回想終わり┅┅

    大殿「織田の動きは、引き続き目を光らせよ」

    全員「はっ」

    解散。

    大「忠清」

    若「はっ」

    大「この後、所用はあるか?」

    若「いえ、すぐには有りませぬ」

    大「今からおぬしの居室へ参りたい」

    若「…ははっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days131~23日8時30分、心も彩ります

    アゲアゲで行こう!
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨ「奥方様、お待たせを致しました」

    唯「お疲れさまー。さっ、座って」

    唯の居室。一仕事終えたトヨと、唯が向かい合って座った。

    唯「トヨ~」

    ト「はい?」

    唯「超超超、嬉しーい!私のために、いろいろありがとう!すっごく助かったよ、マジ感謝してる~!」

    床に手をつき、頭を目一杯下げた唯。

    ト「奥方様、今、ゴンって音しましたけど!大事ございませぬか?」

    唯「ちょいと勢いついちゃった。えへへ」

    額を擦りながら顔を上げた。

    ト「で、何の事でしょうか?」

    唯「女中達を吊し上げたんでしょ」

    ト「あー。あんまり勝手な事言ってたんで、ちょくちょく軽くシメてただけです」

    唯「カッコいいっ」

    ト「いえ、今までわたくし気付いてなくて。まさか奥方様の悪口があんなに蔓延っていたなんて、知らなかったんです。天野から来ていない連中が、あらぬ事をベラベラしゃべりやがり」

    唯「地が出てる?」

    ト「あら失礼をば。源ちゃんに、よく見といてくれって言われるまで野放しにしてたなんて、こちらこそ、申し訳が立ちません!」

    頭を、床に擦る程下げたトヨ。

    唯「顔上げて。トヨががんばってくれたお陰で、だいぶ楽になったの。ありがとう」

    ト「源ちゃんが、若君様が大層気にされておられるから、と。お気遣いが素晴らしくていらっしゃる。素敵過ぎます」

    唯「ありがと。それ聞いたら、たーくんも喜ぶよ」

    ト「周りがね、わかってないんですよ。お二人、釣り合ってないとか思ってる」

    唯「あー、たーくんが超イケメンだから?じゃない、違う言い方…えーっと、び、び」

    ト「眉目秀麗ですか?」

    唯「そう、それ」

    ト「奥方様もこんなに麗しくていらっしゃるのに」

    唯が、トヨの額に手を当てた。

    ト「な、何ですか?」

    唯「いや、妙なコト言ってるから、熱でもあるのかと」

    ト「何をおっしゃってるんですか」

    唯「阿湖は、見ててマジかわいいな~と思うけど、私はそこまではさぁ」

    ト「醸し出す雰囲気は違いますが、お二人共お美しいですよ」

    唯「ホントに?!やーん、褒められちゃった!嬉しい!」

    ト「あまり言われた事、ないんですか?」

    唯「なんせむじな呼ばわりだし」

    ト「はあ」

    唯「ちょっと前まで男子だったし」

    ト「まあ、それはあるでしょうが」

    唯「たーくんは言ってくれるけど」

    ト「あらん。充分、いや十二分ですね。それは若君様を見てればわかります。奥方様を見つめる眼差しがもう、愛情がダダ漏れで」

    唯「そうなの?」

    ト「ご飯三杯はイケます」

    唯「ははは、トヨって面白ーい。あ、それでね、なんでトヨのがんばりを知ったかと言うと」

    ト「はい」

    唯「ちょうど説教してるのを、悪丸が見たんだって」

    ト「そうでしたか。そういえば、疾風を引いていたのを見かけたような」

    唯「悪丸が、私に謝ってきたの」

    ト「何故ですか?」

    唯「悪丸は、陰でコソコソ言ってんのを何回か聞いてたんだって。で、違うと言いたかったけど、それを止める勇気がなくて、ここまできてしまった。で、説教を見て、それができなかった自分は弱かったって。トヨは偉いって言ってた」

    ト「偉くはないです。わたくしは気付いていなかったんですから。そうですか。悪丸は、ずっと心を痛めていたのですね」

    唯「そうだね。もう気にしないでとは言っといたよ」

    ト「奥方様の悪口言うなんて、若君様に楯突いてるのと一緒って、気付かない連中がどうかしてるんですよ」

    唯「カッコいい~」

    ト「いえ、それはもういいですから」

    唯「でね、私からごほうびあげる」

    ト「そのような。いただく筋合いはございません」

    唯「いいからいいから」

    戸棚を開け、マニキュアのセットを出す唯。

    唯「どの色がいい?手だといろいろ問題あるだろうから、足の爪に好きなの塗ってあげる」

    ト「えっ、そんな!でも、お咎めを受けませんか?」

    唯「ごほうびに塗ってあげなさいって言ったのは、たーくんなんだよ」

    ト「ええっ!」

    唯「だから問題なーし」

    ト「若君様、なんて男前なの…」

    唯「なんか言われた時、たーくんの名前出すのはちょっとと思うなら、奥方がふざけてやったって言えばいいよ」

    ト「そんな、わざわざ悪者になる必要はありません」

    唯「じゃあ、仲良しの印で!」

    ト「仲良し…畏れ多いですが、嬉しいです」

    少し紫がかった、あまりキラキラしないピンク色を選んだトヨ。

    唯「大人だね~」

    ト「少し染まるだけでも、心浮き立ちますから」

    唯「アガるよね~」

    ト「あがる…はい!」

    唯「じゃあ、足を前に投げ出して。そうそう。では行きまーす」

    一本一本、塗り上げていく唯。

    ト「お上手ですね」

    唯「たーくんの方が上手だよ」

    ト「え?もしかして」

    唯「うん、手も足も、たーくんがいつも塗ってくれるの」

    ト「まあ…もう何者も、入り込む余地はないですね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days130~23日金曜7時、優秀な家臣達

    アミューズメントパークに変わりつつある?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、唯を起こそうと懸命になっている。

    若君「唯、唯」

    唯「ん…」

    若「早く起きねばならぬと、申しておったではないか」

    唯「眠いぃ」

    若「ブランコの取り付けがそろそろ終わるぞ」

    唯「取り、付け…はっ!」

    飛び起きた唯。

    唯「うそっ!もうそんな時間?やだぁ、たーくんなんで起こしてくれなかったの~」

    若「何度も起こそうと試みるも」

    唯「え?そうだった?」

    若「嫌がる奥方に蹴られる始末」

    唯「うげっ」

    若「手強い総大将であった」

    唯「ご、ごめん。すぐ着替えて行きますっ!」

    慌てて若君の居室前に飛んで行った唯。千吉と悪丸が見守る中、若君がブランコの具合を確かめていた。

    若「ぐらつきもない。ようやってくれたの」

    悪丸「はっ」

    千吉「忝のう存じます」

    若「木々の間に隠れておるゆえ、物思いにふけるには丁度良さそうじゃ」

    千「そうでございますか。おや、奥方様」

    唯「ごめんね、遅くなって。あーいい感じだね。表のと違って枝の位置が低いから、うーんと」

    若「何じゃ?」

    唯「大人のための、揺りかご?」

    千「おぉ」

    若「ほぅ。朝から弁が立つのう」

    唯「へへっ」

    若「よう寝たゆえ、冴えておる」

    唯「しれっと反撃したな?」

    千「表の方は、すっかり童達の溜まり場になっておりますな。中々若君様も使えぬのでは?」

    若「構わぬ。賑やかなのは良い。ただ、取り合って喧嘩になどならぬであろうか」

    千「なんとお優しい。それでしたら、城の周りにどんどん取り付け致しましょうか?」

    若「ほぅ。良いのか?」

    千「はい。お任せくだされ。今日も二人で充分作業出来ましたゆえ。なあ、悪丸」

    悪「はっ。すぐ、丈夫な枝をお探し申す」

    唯「すごーい。楽しそう」

    若「それはまた、難儀をかける。時々は、此処も使うてくれ」

    千「あっ、いや、それは」

    若「ハハハ。大儀であった。千吉、悪丸」

    千「はっ。では、これにて」

    悪丸が、なぜか残っている。

    唯「どしたの?悪丸」

    悪「奥方様に、伝えたき話が、ある」

    唯「そうなの?なにかな」

    若「わしは居らぬ方が良いか?」

    悪「いえ」

    悪丸が話し始めた。唯は驚きながら、若君は頷きながら聞いている。

    悪「わしは、何もできなんだ。弱かった」

    悪丸が頭を深く下げる。

    唯「わー、やめてやめて!」

    若「謝らずとも良い。心を痛めておったおぬしも、辛かったであろう?」

    唯「教えてくれてありがとう。よくわかったからさ、もう気にしないでね」

    悪丸は、二人に再び深く礼をして、去って行った。

    唯「たーくんが…仕向けた?」

    若「わしは、源三郎に言付けを頼んだまでじゃ」

    唯「ありがとうたーくん!どおりでここんトコ、あんまり言われないなと思った」

    若「唯を守れたようじゃの。わしの手柄ではない」

    唯「どうしよう…お礼言わなくちゃ。なにかごほうびもあげたいよ」

    若「褒美か」

    唯「身に付ける物とか…でも仕事の邪魔になっちゃダメだよね」

    若「ならばあれはいかがじゃ。物ではないが」

    若君が、身振り手振りで伝える。

    唯「いいの?誰かに咎められても、たーくんのお墨付きだよって?」

    若「働きぶりには、相応しかろう」

    唯「ありがとう!もうすぐ私の部屋に来ると思うから、早速そうするね!」

    そして朝食後。唯の居室。トヨが片付けに来た。

    唯「トヨ、昨日はいろいろありがとう。ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって」

    トヨ「いえ、とても楽しゅうございました」

    唯「で…どうだった?その後」

    ト「えっ」

    唯「源三郎は?」

    ト「源ちゃん…源ちゃんは」

    唯「顔、恐いよ?ヤな予感がするなー」

    ト「あいつ、逃げたんです」

    唯「逃げた。えー、私の知ってる源三郎じゃなーい!」

    ト「月が綺麗だななんて、殊勝な事言ってたのにですよ?」

    唯「それ、私も聞いたな。男子の間で流行ってんのかな」

    ト「だから、ちょっと怒ってるんです」

    唯「そっか~。愚痴も聞いてあげたいけど。あのさ、実は話があるんだ。この後時間いいかな」

    ト「はい。お話ですか。わかりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    妖怪千年おばばさん

    なんて嬉しいニュースでしょう。どうぞ、存分に時間をかけて、また傑作を届けて下さい。楽しみにしております。

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    マングースに野ブタ!

    カマアイナ様

    ハワイのお正月情報、
    ありがとうございます~(*^^)v

    マングースに野ブタですか?なんだか、
    ワクワクしてきました。(^_^)v

    実は、”ふきちゃん”の物語を
    なんとか完結させたいと
    思っているのですが、
    戦国時代の侍たちの暮らしぶりを
    どう描くかで悩んでまして。(;^_^A
    なかなか、筆が進まず。(^▽^;)
    一行書いては、削除の繰り返しです。

    でも、あきらめずに、
    ぼちぼち、行きますね。(^_^)v

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    二人の令和Days129~22日19時、勇気をください

    見てるのは月だけなのに。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もんじゃ焼き、完食。源三郎が、若君に頭を下げている。

    源三郎「今宵は、このような宴にお招きいただき」

    若君「良い」

    源「はっ?」

    若「礼は、要らぬ。まだ此処の後始末も頼まねばならぬゆえ」

    源「それは…」

    トヨ「片付けなど当然でございます」

    唯「ううん、こっちがお礼言わなくちゃだから。ありがとね」

    若「源三郎、トヨ、礼を申す」

    源「そのような。恐悦至極に存じます」

    ト「身に余る光栄でございます」

    若「各々のハガシであるが」

    源&ト「はい」

    若「持ち帰るが良い」

    源「はっ」

    ト「まぁ…宝物にいたします!」

    唯「今日の記念にプレゼント?」

    若「そうじゃな」

    唯「優しーい。いーなー」

    若「その手にある物は何じゃ」

    唯「あ、そっか」

    全員で笑って、お開き。

    若「では、済まぬが」

    ト「かしこまりました」

    源「心得ました」

    唯「じゃーねー、ありがと~」

    客間を去る唯と若君。見送った源トヨ。

    ト「さてと、ササッと洗っちゃおっかな。若君様とても手際がよろしくて、洗い物ほとんどないし」

    源「鉄板は俺が持つ」

    ト「ありがと」

    台所までの道すがら、空を見上げた源三郎。

    源三郎 心の声(月か…)

    明日で半月だが、存在感たっぷりに、宵の空に明るく輝いている。

    源 心(何もかも見透かされておるような…)

    洗い物の後、囲炉裏の火の始末をするトヨ。

    ト「粗方片付いたから、明日の朝、周りを拭き上げるわ」

    源「お疲れさん」

    客間を出る二人。

    ト「んん~」

    庭に向かい、大きく伸びをしたトヨ。

    ト「ふう」

    源「…」

    源 心(今、か!)

    源「月が…」

    ト「え?」

    源「月が、綺麗じゃな」

    ト「あ、そうね。とっても綺麗で手が届きそう」

    源 心(手が届く。届く…それは、俺達はそれほど近い間柄と言う意味合いか?!)

    源三郎、考えを巡らせ過ぎて黙り込んでいる。

    源「…」

    ト「どうしたの?」

    ふと二人、目が合った。そのまま見つめ合う。

    ト「源ちゃん…」

    源「う、うわ~!!」

    ト「え」

    突然、叫びながら頭を抱え、しゃがみこんだ源三郎。

    源「無理だ無理だ無理だ…」

    源 心(どうにも踏み出せない俺は、腰抜けだ…)

    ト「えぇ?」

    トヨ 心の声(なんでよ~!すっごくイイ感じだったのに!)

    すっくと源三郎が立ち上がった。だが、視線はあさっての方向のまま。

    源「こ、これにて」

    ト「へ?!」

    逃げるように走り去ってしまった源三郎。残されて、しばらく呆然とするトヨ。

    ト「…わかった。はいはい。そういう事ね。よーく、わかったわ。この、この意気地なし!」

    トヨの心の内を示すように、ヒュルルと風が吹き抜けていった。

    唯「あー、いい風。涼しーい」

    その頃の唯。寝間着姿で寝所前の縁に座り、足をぶらぶらさせていた。

    唯「夏に囲炉裏は、ちょーっと暑かったなぁ」

    寝間着姿の若君登場。

    若「蚊に刺されるぞ」

    唯「大丈夫。蚊取り線香ついてる」

    夜空を見上げながら返事をする唯。若君も月を見る。

    若君 心の声(そうじゃ)

    若「唯」

    唯「なぁに?」

    若「月が、綺麗じゃの」

    唯「ん?そうだね。でも、たーくんと一緒なら月はいつでもキレイだよ」

    若「…そうか」

    唯「え、なにー?」

    若「何程でもない」

    唯「ふーん。ちょっと早いけど、そろそろ寝た方がいいかなー。明日早起きしなくちゃだから」

    若「何かあるのか?」

    唯「例のブランコ、たーくんの部屋の前に、明日の朝一で付けてくれるって千吉さんが言ってたの」

    若「ほぅ、それは見届けねばの。ならば、起こしてやろう」

    唯「うん。お願いしまーす」

    若「中に入るぞ」

    唯「はーい。もう休む?」

    若「休むかどうかは」

    唯「なんかニヤケてるし」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    22日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days128~22日18時、先手必勝です

    待ってるだけじゃないおなごがここにも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨが、鉄板を囲炉裏にセットしている。

    若君「まるで、今宵の為に誂えたかのような…これで拵えられるとは有り難い。鍋だけが懸念であったゆえ」

    唯「確かに。フツーの鍋だと作りにくいしヤケドしそうだし」

    若「トヨ、よう支度してくれた」

    トヨ「いえ、わたくしは何も。若君様ご所望の品が丁度ございましたので、お出ししたまでです。こちらの先代のお屋形様が、狩りがお好きでいらして、猪や鹿やむじなを焼くために特別に作らせたと聞いております」

    唯「むじな?今むじなって言った?食べられるの?!」

    ト「食べられます。前に、信茂様が珍しく手に入ったと持ち帰られ、天野のお屋敷で一度お出ししております」

    唯「へー、びっくりー。たーくんは食べた事ある?」

    若「わしは、食した事はない。源三郎はあるか?」

    源三郎「いえ、ありませぬ」

    唯「じい、私をむじなむじなって。あっぶなーい、とって食われるところだった?」

    若「それはなかろうが」

    唯「とんだ食わせもんだよ~」

    若「ほぅ。上手いの」

    油を薄くひき、よく混ぜた具だけを先に鉄板に乗せ、丸く囲むように土手を作る。

    源三郎&トヨ 心の声(これは、儀式?)

    その中に生地を流し込む。

    源&ト 心(やっぱり儀式?)

    唯「二人とも、すっごい不思議そうな顔して見てる」

    若「初めて見る者はそうなる。わしもそうであった」

    唯「ちゃんと食べる物作ってるから、心配しないで」

    源&ト「わかりました」

    よく混ぜ、一面に広げた。

    唯「今日はお箸で食べる?ヘラないから」

    若「唯。あれはヘラとは申さぬ。ハガシという名だそうじゃ。た…師匠によると」

    唯「あ、調べたんだね。へー。たーくん、ホント作る気満々だったんだね」

    若「で、ハガシなら、ある」

    若君の懐から、小さいハガシが四つ登場。

    ト「まぁ、お小さいこと」

    源「竹でございますか」

    唯「え?もしかして」

    若「わしが今日の為に、削って作った」

    唯「えー!たーくんやっぱりヒ…」

    若「暇ではない」

    唯「そぉ?」

    ハガシをさっと水にくぐらせ、全員に渡した。

    若「そろそろ良かろう」

    唯「そうだね」

    源「え。出来上がり、ですか」

    ト「これは、どのようにいただくのでしょう」

    若「このように端から」

    手ほどきをする若君。

    若「掬い取ったこれを…ん?」

    隣で、唯が口を開けている。

    唯「ちょーだーい!フーフーもして欲しいぃ」

    若「ハハッ。このように掬ってすぐはまだ熱いからの」

    少し冷ましてから、唯の口に。

    若「どうじゃ?」

    唯「美味しい!」

    若「そうか。良かった。という案配じゃが」

    源トヨが、かなり戸惑っている。

    源「あの…恐れながら若君様」

    若「なんじゃ?」

    源「相手の口に入れるまでが、いただき方でございますか?」

    若「あ、いや。各々で食すが良い」

    源「良かった…」

    ト「残念…」

    源「は?」

    ト「あら、つい心の声が」

    唯「食レポ…もとい、食べた感想よろしくね」

    源「それでは、頂戴いたします。緊張する…」

    源三郎が口に運ぶ。

    源「美味い。この、香ばしさで風味が増しておるような。梅も効いております」

    若「そうか」

    ト「いただきます…うん、美味しい。野草はシャキっと、芋や米はトロっとがまたよろしくて」

    唯「二人とも食レポ上手だなぁ」

    若「皆に振る舞えそうかのう」

    ト「これは、皆喜ぶと思います」

    唯「やったぁ。良かったね!」

    若「あぁ」

    唯「たーくんまだ食べてないじゃん。はい、あーんして」

    若「ん…うむ、我ながら会心の出来じゃ」

    ト「いいな。仲睦まじくて羨ましい…」

    唯と若君の様子をじっと見ているトヨ。見て見ぬふりをしている源三郎。

    源「これは、大勢で囲みながらいただけそうで、宜しゅうございますな」

    唯「今、ちゃんと見てた?」

    源「え」

    唯「もー。ねぇ、たーくん」

    若「ハハハ。いつか、城の皆で囲みたいものじゃのう」

    唯「外でとか?」

    若「あぁ。バーベキューの様にの」

    唯「いいねー。って、二人はバーベキューじゃわかんないよ。おっとぉ?」

    トヨが、とうとう仕掛けていた。

    ト「源ちゃん、はい、あーんして」

    源「あーん、ってお前!」

    ト「遠慮するのは、損な気がしてきてさ。攻めてく」

    源「ええっ」

    ト「ちゃんとフーフーしたわよ?」

    源「いや、そういう事でなく…うわっ」

    早く早く、と唯と若君が目で訴えている。

    ト「そろそろ腹決めたら?」

    唯&若「お」

    源「あ、あぁ」

    パクリ。

    唯「かわいい~。ありゃ」

    攻められた方も、攻めた方も、顔がみるみる内に真っ赤になった。

    若「微笑ましいの」

    唯「うん。ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    長らくご無沙汰をしておりました

    参加当初に、大変ご親切に色々と私のドラマに関する知識の足りない所をご説明頂き、今でも深く感謝しております。こちらではSPは放映されませんでしたので、ユーチューブのサイトまで紹介して下さって、とてもありがたかったです。

    唯ならホノルルマラソンなどと言わず、島一周でも走れるんじゃないかしら。ただ道筋出るかもしれない動物はムジナや雉ではなく、マングースや野ブタかもしれませんね。ご褒美に何を望むかなー、、。

    こちらの新年はいたって静かそのものです。メインはやはり大晦日のカウントダウンのようですね。コロナの前は各ホテルが真夜中に庭に客を集め、皆さんシャンパンで乾杯しながら花火を見るというのが、この島の名物でしたが、今回はありませんでした。観光客は充分戻っているようですが、やはり人を集めるというのは遠慮しているようです。在ハワイの日本人は、栄養失調気味の数の子、いくら、ピンク色のきついかまぼこなどを買って、それなりに新年らしい食事を作る方も多々いると思いますが、私達老人は密を避け、家族だけで静かにという方が多かったのではと思います。
    それとこちらは本当に人種のるつぼというだけでなく、いろんな混血の方も多いので、祝い方も10人十色かもしれません。中国系の方は2月がメインですし、日系の方の間ではもうおせちは流行らず、煮しめとお餅ぐらいは食べても、後はバーベキューがメインだったりという印象を受けましたが、これはあくまでも私が経験させて頂いたご家族達の話です。ホノルルは一応こちらでは唯一の大都会ですから、新年の過ごし方も田舎とは違うかもしれませんね。

    妖怪千年おばば様の創作は暫くお目にかかっておりませんが、今年もどうぞ傑作を届けて下さい。楽しみに待っております。

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    ありがとうございました

    ご親切なお返事ありがとうございました。おっしゃる通り時差の関係で、朝起きると一番に新しい投稿を探すことが多いです。
    今年は2日が日曜日だったため、クリスマス休暇が1日だけ増えましたが、新年はとりたてて何もなく、すぐ日常に戻ってしまいます。

    これからも、末長く唯と若君のラブラブライフを、想像力巧みに発展させて下さい。
    楽しみにしております。

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    カマアイナ様~!

    久しぶりにお名前をお見かけし、
    とても嬉しいです!
    TVでハワイに観光客が戻っている
    と、報道されているのを見ました。
    ホノルルマラソンは、
    どうなのでしょう?

    おばば的には、ホノルルを
    唯ちゃんに走って貰いたいんです。

    暫く前に、箱根駅伝に女子選手
    を出場させる為の
    デモンストレーションランナー
    として走る姿を少しだけ
    描いたので。

    ただ、ハワイに行った事が無く、
    しかも、このコロナ禍。
    描けるものなのかと、
    迷ってまして。

    ハワイのお正月って、どの様に
    過ごされるんですか?
    少し、情報を頂けると、
    大変嬉しいです。

    よろしくお願いいたします。
    (*^^)vm(__)m

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    二人の令和Days127~22日17時、探り合いです

    あの手この手で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の料理スタート。トントントンと、湯通しした野草をリズム良く包丁で刻んでいく若君。

    源三郎「手慣れておられる」

    トヨ「見とれちゃう…」

    唯「たーくん、カッコいいってさ」

    若君「そうか?」

    源「たー…?」

    ト「あら」

    唯「いいでしょ~」

    ト「はい。仲睦まじさがようわかります。良いのですか?わたくし共の前で、そのような」

    唯「うん、いい。トヨと源ちゃん、だから」

    源「えっ」

    唯「合ってるよね?」

    ト「はい。フフフ」

    若「ほぅ。源三郎は、そう呼ばれておるのか」

    源「は、はい。幼い頃から変わらず」

    若「良いの」

    源「か、忝のう存じます」

    ト「源ちゃん、カッチカチじゃない」

    源「俺はトヨほど図太くない」

    ト「言ったわねー」

    蒲鉾も里芋も刻まれていく。

    唯「このお芋、昼ごはんの残り?」

    ト「いい感じに火を入れた後、煮崩れしたフリをして、よけておきました」

    唯「さすがトヨ~」

    源「上手いな。いつも横流し、やってるんじゃないか?」

    ト「やってません」

    源「怪しいな~」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「そこは、褒める所であるぞ」

    源「す、済みませぬ」

    若「わしが頼んだ以上の振る舞いじゃ。トヨ、礼を申す」

    ト「そのような。畏れ多い事でございます…」

    トヨは、隣の源三郎をベシベシ叩き始めた。

    ト「ねぇ聞いた、聞いた?嬉し~い!」

    源「痛い、痛いって!照れ隠しに俺を叩くんじゃない!」

    若「…おなごは、皆こうなのか。わしも、唯によう叩かれる」

    唯「それはー、たーくんが嬉しいコト言ってくれるからだよぉ」

    若「嬉しいのに叩くとは、些か解せぬが」

    唯「愛情表現の一つでござるぅ」

    若「ふむ。そうなのか。わかった」

    ト「納得されてる。素直に耳を傾けられるお姿が素敵…さすが若君様だわ」

    源「なあ、俺にもその表現…なのか?」

    ト「え!何を言わせたいの?それはどうかしらね~」

    源「守りが固いな」

    唯「ふふっ、楽しーい。夫婦漫才みたい」

    ト「め、おと…ヤダ、恥ずかしい!」

    源「だから、痛いって!」

    唯「あはは、かわいい~」

    若「ハハハ」

    下ごしらえ完了。

    若「あとは、混ぜるだけじゃ」

    ト「はい、こちらをお使いください」

    かなり大きい木の器が出てきた。材料をどんどん入れていく。

    唯「まずは粉だね。なんか黒っぽいのと茶色っぽいのとあるよ?」

    若「蕎麦粉と、少しの鰹節粉じゃ」

    唯「へー。で、水だね。こんなモンかな」

    若「良かろう。あとは蒲鉾、里芋。米もあったか?」

    ト「はい。櫃の残りで良いとお聞きしましたので、冷や飯で固うございますが、よろしいのでしょうか」

    若「構わぬ」

    唯「野草も入れるよ。味ってどうするの?」

    若「そうじゃな…味噌か梅かで考えておったが」

    ト「どちらも用意してございます」

    唯「梅干しで良くない?梅もんじゃで」

    若「わかった」

    梅干しを細かく叩き始めた若君。

    ト「あの…」

    唯「なに?」

    ト「今、なんと?梅、の後」

    唯「もんじゃの事?今日はね、もんじゃ焼き作るんだよ」

    ト「初めて聞くわ。源ちゃん知ってる?」

    源「いや」

    若「この、粉を溶いた生地を焼きながら文字を書いて学んだり遊んだりし、文字焼きと呼んでおったのが名の由来だそうじゃ」

    唯「え、そうなんだ!」

    若「知らなんだのか。わしは師匠に聞いた」

    唯「ふーん。美味しけりゃ名前なんか何でもいいし」

    若「唯なら、そうであろうの。ハハハ」

    トヨが、源三郎をつつく。

    ト「若君様って、奥方様が何言われても、ウンウンって嬉しそうに聞いてみえる」

    源「そうだな」

    ト「愛情の深さよねー」

    源「そうだな」

    ト「源ちゃんも、深い?」

    源「は?な、何の話だ」

    ト「守りが固いわね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    カマアイナ様!

    呼びかけに応えていただき、ありがとうございました!お元気そうで何よりです。

    すっかりそちらは日常モードですよね。私の正月は…実家に顔を出し、地元の神社に詣で、おせちを食べ、今は箱根駅伝がテレビで流れております。

    DVDを堪能されてるんですね。ここで皆さんが話される内容や私の創作話にも、たまーにドラマ本編やSPのエピソードやセリフが出てきます。これか~と答え合わせができるのも楽しいと思います。

    カマアイナさんには、ご自身が初投稿なさった時から創作話への熱い思いを語っていただいており、感謝しております。いつもお読みいただきありがとうございます。朝ドラですか?畏れ多いです(*^_^*)

    私としては、新聞の連載小説を書いている感覚なんです。この「アシカフェむじなランド」にはいろんな板がありますので、アシガール掲示板からご覧になる方もみえれば、他の板や創作倶楽部から入る方もみえるかと。新聞の1面から順番に読むも良し、小説やコラムが心待ちな方はそこから読まれるでしょうし。投稿を一日おき、また時間もできるだけ(日本時間ですが)夜19時から23時くらいにしているのは、そんな理由も加味しております。

    ハワイとの時差が19時間ですので、朝お目覚めになると私の創作話が投稿されている計算ですから、朝ドラは正解かもですね。時間的に、そろそろそちらは日の入りの時間では。綺麗なんだろうなぁ~。

    これからも、ちょくちょくお顔を出してくださいね。

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    新年おめでとうございます

    大変長らくご無沙汰しておりましたが、夕月さん、ぷくぷくさんや、妖怪千年おばばさんの作品はどれもとても楽しく読ませて頂いてきました。皆さん日本語の造詣も深く、創作も秀逸で、ただただ感心するばかりです。

    オンラインのフォーラムに投稿したのは、このサイトが初めてで、皆様とてもご親切で、感銘を受けました。ただ正直申しまして、私のような田舎生活者とはレベルの違う世界だなとも実感いたしました。加えて、ひとつ気になる初参加の方のワンライナーのコメントを見かけ、それ以後完全にビビってしまいました。あんなによくして頂いたのに、本当に失礼致しました。

    その後DVDも購入し、暫くは何度も繰り返しみる程のアシラバになっています。
    続編が出て来そうもないのが、大変残念ではありますが、それに代わる皆様の創作作品を、アシガールの余韻を楽しむべく、毎回楽しみに読ませて頂いております。
    今後も、どうぞ皆様の創作を是非続けて下さい。心待ちにしております。
    夕月さんの力作は、朝ドラ感覚で、次はどんな展開にと、ワクワクしながら読んでおります。これだけの長編を本当にありがとうございます。

    こちらでも「わげもん」の放映がまもなく始まりますので、内田、宮村コンビなら、また傑作になるに違いないと楽しみにしております。

    皆様、コロナにめげずに、どうぞ充実した良いお年を!
    Mahalo.

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    二人のもしもDays5、祝いましょう正月篇

    新春を寿ぎ、謹んでご祝詞を申し上げます。

    お正月にはお正月のお話。で、もしもDaysをお送りします。
    「若君に、現代の家族水入らずのお正月を味あわせてあげる」カマアイナさんのご意見に、一年越しで応えた形になりました。変わらずお過ごしでしょうか。

    話はゆるゆると進みます。遠くから様子を眺めるというよりは、隣に一緒に居る感じでご覧いただければと思います。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は大晦日。夕方のリビングで、家具の移動が始まっている。

    覚「ちゃんと敷けてるな?」

    尊「うん」

    食卓を玄関側にずらし、空いた床に敷きパッド。その上にこたつ登場。

    唯「出た出たっ」

    若君「座卓に、布団?」

    覚「忠清くんは初めて見るよな。大晦日にしか出さないから」

    若「何か儀式でも?」

    覚「あー。ははは」

    尊「ある意味、儀式だよ」

    唯「たーくん、ウチね、年越しの時だけ、このこたつが出てくるの」

    若「こたつ。聞き覚えはあるような…見るのは初めてじゃ」

    尊「兄さんの屋敷にはなかったんですね。永禄にあるとしたら、床下に炭とか熱源がある掘りごたつ的な物だったはず」

    美香子「はいはい、天板拭くわよ。はいOK!どうぞ忠清くん、入って」

    若「入る?」

    唯「座って布団に足入れるんだよ。中暖かいから」

    若「ほぅ」

    早速、唯と若君と尊がこたつに陣取る。

    若「おぉ、暖かい」

    唯「ねっ」

    若「何ゆえ、年越しだけ使われる?」

    美「あのね、毎年、大晦日の夜に放送されるテレビの歌番組があってね」

    若「テレビ?」

    覚「毎年、その時だけは、こたつでミカン食べながら観るって決めてて」

    若「ほぅ。一年の締めくくりが、このこたつ」

    唯「変でしょー。小さい頃からずっと、こうなんだよね」

    覚「基本的にウチは、食事しながらテレビは観ないからな。大晦日だけ特別だ」

    一度入ると抜けられないのが、こたつ。

    唯「あ~ぬくい。あんまりあったかいと外に出らんないけど、どうしよう」

    尊「何を」

    唯「初詣行きたい。でも人混みにたーくん連れてくと、さらわれそうで危ない」

    尊「有名な神社に行くとなると、まぁね。さらわれはしないだろうけど、はぐれやすい」

    美「遠くは止めて、年が明けたらすぐ、夜中の内に近くの神社に行きましょうよ。みんなで」

    唯「近くね。まっ、それがいいよね」

    覚「初詣はな、近くの氏神様にまず参るモンだしな」

    唯「わかった~」

    若「神社に、新しい年を迎えて初めて詣でるゆえ、初詣か?」

    尊「そうですね」

    若「それは、儀式で合うておるな?」

    尊「ははは。はい、これは間違いなく」

    夜。7時を過ぎた。

    覚「そろそろ蕎麦ゆでるぞ~」

    若「手伝います。晩に、蕎麦ですか」

    覚「いつもありがとね。これは、年越し蕎麦って言うんだよ」

    若「飯にも儀式が?」

    覚「そうだね。蕎麦のように、細く長く生きられますように、って願掛けかな」

    若「そうですか」

    晩ごはん兼、年越し蕎麦出来上がり。こたつに運ぶ。

    唯「たーくん、隣に入るね」

    尊「あー、四人用こたつに五人だからか」

    美「あら、私とお父さんで隣り合って座るからいいのに」

    覚「これだと、一面空くぞ?」

    ソファーに近い所から時計回りで尊、覚と美香子、唯と若君、と落ち着き、食事スタート。

    尊「なんやかんやで、くっつきたいんでしょ」

    唯「そゆこと。たーくんごめんね、狭いけど」

    若「構わぬ」

    紅白歌合戦が始まった。

    美「あら尊、もう横になるの?」

    尊「体の中も外もぬくぬくだからさ、眠い」

    覚「寝るのはいいが、そこの毛布かけろよ」

    尊「うん。ミカン、僕の分残しといてよ」

    ソファーの上に、毛布が何枚か用意されていた。一枚ズルッと引っ張り、早速寝始めた尊。

    若君 心の声(いつもなら、すぐ実験室や自室に籠るであろうに。余程居心地が良いとみえる)

    唯が、ミカンの筋を丁寧に取っている。

    美「珍しいわね」

    唯「たーくんにむいてあげてるから。はい、あーんして」

    若「お?あぁ。…甘い」

    唯「だよねー、うん甘っ」

    覚「自分用のは、筋そのままで、秒で口に入るよな」

    唯「当然でしょ。あれっ、お母さ~ん」

    美「なに」

    唯「ちゃんと尊にもミカン残しとかないと!」

    美香子の手元には、ミカンの皮の山。

    美「わかってるわよ。ちゃんと尊の分はよけてある」

    覚「それにしても、もう四つ目だ」

    唯「たーくん、お母さん前にね、家にあるミカン全部食べちゃって、尊が僕も食べたかったのに!って怒ったの」

    美「反省してますって」

    若「なるほど。それで先程念押しをしたと。ハハハ」

    覚「また手が黄色くなるぞ」

    10時を回った。尊が起きる。

    美「はい、尊様、ミカンどうぞ」

    尊「うん。食べる」

    唯「尊、そこの毛布取って」

    尊「あいよ」

    ソファーから一枚取り、こたつの一つ空いている席に置いた。

    唯「眠い、寝る。年明ける直前に起こして」

    覚「わかった」

    若「部屋でなくて、良いのか?」

    唯「うん、いいんだよ。私その毛布置いたトコに移るから、たーくんここ広く使ってね」

    席を移動し、毛布でみの虫状態になった唯が眠りについた。

    覚「忠清くん、お茶飲む?」

    若「はい、頂戴します」

    お茶を飲みながら、若君は考えていた。

    若 心(そうか…!今ここでこの時を、家族膝を突き合わせ共に過ごす、それが肝要であると。親の思いに子達が寄り添うておるのじゃな)

    唯の寝顔を覗き込む若君。

    若 心(今年は、この時を与えてやれた)

    11時45分。紅白が終わった。

    唯「たーくん、もうすぐ年が明けるよぉ」

    若「お…?いつの間にやら眠っておったか。これはしたり」

    肩に毛布がかけられていた。

    美「すごく姿勢良く寝てたから、最初気付かなくてね」

    若「そうでしたか」

    唯がテレビのチャンネルを替えた。賑やかにカウントダウンが始まっている。

    唯「もうすぐ、もうすぐぅ」

    全員こたつに入り待っていると、年が明けた。

    唯「ヒャッホー!明けましておめでとっ、たーくん!」

    若「え、あっ」

    いきなり唯に飛びつかれ、若君はバランスを崩し、二人、仰向けに倒れ込んだ。

    尊「危ないよ!」

    美「大丈夫?!こたつに膝ぶつけたりしてない?」

    若「大事ない…です」

    唯「ダメじゃ~んたーくん、ちゃんとどっしり構えてないとー」

    覚「勝手にやっといて、何だその言い草は」

    美「困った子ねー。さてと、じゃあ早速初詣に出掛けますか」

    尊「そうだね。着込まないと。はい、そこの二人、イチャイチャは帰ってからして」

    唯「はいはい」

    家族五人、静かな夜道を進む。子供達の声だけが響いている。

    尊「さみーよー」

    唯「マフラーぐるぐるで帽子も耳あてもして、出てるトコほとんどないクセに、なによそれ」

    若「確かに、尊かどうかもわからぬよのう」

    後ろから眺める両親。

    美「なんか、なんかね」

    覚「言わなくていいぞ。わかるから」

    美「…うん」

    氏神様に詣でる。人の姿はまばらだ。

    美「ふう。あらっ」

    若「…」

    若君が、格段に長く手を合わせている。

    覚「信仰心に、差が出てるな。偉いよ」

    帰り道。

    覚「さすがにシンシンと冷えてくるな」

    美「この、冬独特の空気感もいいわよ」

    尊「帰ったら、何か温かい飲み物欲しい」

    覚「わかった」

    若「唯、寒うないか?」

    唯「ん、ちょっと」

    それを聞いた若君、繋いだ手をほどき、唯の肩を抱いて引き寄せた。

    唯 心の声(きゃあ!)

    若「まだ寒いか?」

    唯「えっと…」

    唯 心(たーくんカッコいいっ。ぽーっとしちゃうぅ)

    唯の曖昧な返事で、若君が考えている。

    若「そうか…ならば」

    唯「え?」

    若君は、着ているコートのボタンを外し、前を開けた。

    唯「え、どしたの?」

    若「入れ」

    唯「えぇっ!」

    若「冷えては辛かろう。さあ」

    唯「…」

    尊「お姉ちゃん、開けてる方が寒いに決まってるでしょ、さっさと入ってあげなよ」

    唯「う、うん。ありがと、たーくん」

    若君のコートに、一緒にくるまった唯。

    若「寒くはないな?」

    唯「うん!超あったかいよ」

    若「うむ」

    覚「…何て言うかさ」

    美「うん」

    覚「あぁいう事が、スマートにできるのがさすが忠清くんだな」

    美「同感です」

    帰宅。こたつに直行する唯と尊。

    覚「はい、生姜湯にしたぞ」

    美「あら、いいわね」

    唯「甘いヤツ?」

    覚「そうだ」

    尊「あったまりそう。いただきます」

    若「いただきます」

    寛ぐ五人。

    覚「明日の朝ごはんだが、雑煮だ。忠清くん、雑煮はわかるよね?」

    若「はい」

    覚「餅は、遅くとも9時頃には焼き始めるから、ちゃんとその頃にはみんな起きろよ」

    唯「はぁい、がんばります」

    尊「はーい」

    若「心得ました」

    家族全員、小休止後、程なく床についた。そして…

    覚「心も体もキリっとするな。いい朝だ」

    元旦を迎えた。

    若「お父さん、おはようございます」

    覚「おっ、さすが忠清くん、早いな」

    リビングに二人だけ。時計は6時過ぎを指している。

    覚「あのさ」

    若「はい?何でしょうか」

    覚「稽古とか全部終わってからでいいからさ、一緒に初日の出、見に行かないか?」

    若「初日の出。はい。それは、いかにも霊験あらたかですね」

    覚「そうだね。太陽は毎日昇るとはいえ、やっぱり特別だから」

    6時50分。覚の運転で、見晴らしの良い場所に来た二人。

    覚「ここは、東の空が開けてるから。黒羽城公園よりね」

    若「そうですね」

    人が集まって来ている。覚が、カメラを取り出した。

    覚「よし」

    日が昇った。歓声が上がる。

    覚「なかなか上手く撮れたと思うな」

    若「それは何よりです」

    覚「忠清くん、こっち向いてくれる?」

    若「え?はい」

    パチリ。

    覚 心の声(初日の出と色男。うん、絵になる)

    7時30分、帰宅。唯と尊はまだ起きてこない。

    美「初日の出、私も起き抜けにベランダから拝めたわ」

    覚「そうか、済まんな。ふと思い付いてササッと出掛けたからさ」

    美「いい。起こされても、すぐに支度は無理だったし」

    覚「さてと。あいつら、当分起きてこないよなぁ。今日は朝ごはんが遅いから、忠清くん手持ち無沙汰だよね。ちょっと待ってな」

    若「はい?」

    覚が、箱を持ってきた。

    美「あら、お正月っぽい」

    若「かるた…小倉百人一首、ですか?」

    覚「あ、やっぱりわかるんだ!買ってきた甲斐があったよ~」

    若「この先の世にも、残っておるとは」

    覚「知ってるならさ、絶対僕らは太刀打ちできないと思うんだよな」

    美「昔、暗記したわ~」

    覚「僕、読み上げてあげるからさ、二人勝負してみたら?まだ時間あるし」

    美「そうね。忠清くんの一人勝ちでいいし」

    覚「一応やってみたら。いい?忠清くん」

    若「はい。お頼み申します」

    百人一首スタート。半分位進んだ所に、尊が下りてきた。

    尊「おはよう。なに、雅な遊びしてるじゃん」

    覚「忠清くんは雅なんだがな」

    美「え~?私が違うみたいじゃない」

    覚「見てればわかる」

    尊「ふーん。じゃあお手並み拝見します」

    終了。若君優勢だが、美香子もかなり取っていた。

    尊「なるほど。上の句を聞いてすぐ動き出して、ゆったりと取るのは兄さん。わかった段階でサッとかすめ取るのが母さんなんだ」

    覚「見ててさ、忠清くんが断然先に理解してるのに、母さんが大人げなく取ってくんだよ」

    美「あら、ごめんあそばせ。案外覚えてて、つい力が入っちゃって」

    若「ハハハ。いえ、楽しませていただきました」

    尊「そう考えるとさ、ジェンガって時間制限基本ないし、兄さん向けで優雅な遊びだったかもね」

    覚「確かに。外国発祥なのにな」

    朝ごはんの用意をしている。もうすぐ9時。唯はまだ下りてこない。

    若「起こして参ります」

    美「お願いね」

    尊「兄さん」

    若「なんじゃ?」

    尊「僕の読みなんですけど、何かグズってたら、初夢は今夜見る夢、って言ってください」

    若「ほぅ。そうか、わかった」

    唯の部屋。

    若「唯、そろそろ朝飯じゃ。腹も減っておろう?」

    唯「ん、んん~」

    若「なんじゃ?」

    唯「もっと、たーくんとラブラブな初夢見たいぃ」

    若 心(なるほど。さすが尊、ようわかっておる)

    若「唯。初夢は、今夜見る夢を指すのじゃ」

    唯「そうなの?知らなかった。んー、じゃあ起きる…いや、起きない」

    若「え?」

    唯「眠り姫はぁ、王子様のキスで、目覚める」

    若「それは…姫君も様々居るのだな。ハハハ」

    顔を近付け、軽くチョン、と唇を合わせた若君。

    若「姫、起きて賜れ」

    唯「え~、もうちょい時間かけてよぅ」

    若「餅は待ってはくれぬぞ。ほれ」

    唯「はぁい」

    二人が下りてくると、既に雑煮が完成していた。

    美「唯、また忠清くんに駄々こねたのね」

    唯「一応、間に合ったでしょっ。私、餅三つ入れて」

    覚「数は読み通りだが。忠清くんも、同じでいい?」

    若「はい。随分と華やかなあしらいの料理が並んでおりますが、これは?」

    覚「おせちだよ。おせち料理。食材の一つ一つに意味が込められてるんだ。例えば黒豆は、マメに働けるように、とか」

    若「ほぅ…縁起物であると。全ての由来を知りとうなるのう」

    尊「後で、教えますよ」

    覚「では」

    全員「いただきます」

    年賀状が届いた。両親が、追加で書き始めている。その頃、唯達は…

    若「わしが読み上げてやろう」

    尊「わー、こんな贅沢ないよ」

    唯「下の句が並べてあるんだよね。上の句だけじゃ全然わかんないから、下の句が読まれたら急いで探せばいいね?」

    尊「僕も、百人一首はあまり頭に入ってないから」

    若「好きなように楽しむが良い」

    再び百人一首スタート。だが、優雅とは決して言えない大騒ぎになっている。

    尊「痛っ!置いた手の上から叩くなよ!」

    唯「私も見つけたのに先を越されたもん」

    尊「毎回そうじゃん」

    唯「なんか、わかってる風でラクラク取ってんのもあるしさ」

    尊「有名な歌は、上の句でもわかるから。お姉ちゃんが知らなさ過ぎなんだよ」

    唯「えー、ハンデつけてよっ」

    なんやかや言いながらも、素早さは唯が勝り、若干だが唯の勝利だった。

    尊「文句言う割にはさー」

    唯「まっ、このくらいで許してやる」

    若「ハハハ」

    美「今から、追加の年賀状投函してくるわね」

    唯「行ってらっしゃーい」

    尊「ついでに、受け取ってくる?」

    美「えぇ。昼前には戻れると思う」

    覚「よろしくな」

    若「受け取り?」

    美「ショッピングモールまで行って来るわね」

    若「そうですか。お気を付けて」

    正午近くで、母が帰宅した。

    美「ただいまー」

    唯「おかえり~!わぁ」

    尊「やった~」

    若「何を持ち帰られた?この箱の形、見覚えがあるが」

    覚「おー、よしよし。どうする?昼から始めるか?」

    唯「そーするー!早くお祝いしたいし」

    覚「じゃあササッと支度するよ。あ、忠清くんは、手伝わなくていいから」

    若「それは、何ゆえ…」

    唯「まーまー。座ってて」

    こたつは既に片付けられている。食卓に、おせちも並んだが、皿やフォークやナイフも並ぶ。

    覚「よーし、では、昼ごはん兼誕生日パーティーを、始める」

    若君以外の四人、パチパチと拍手。

    若「誕生日。今日は誰が生を享けた日なのですか?」

    覚「あのさ、忠清くん」

    若「はい」

    覚「永禄では皆さん、1月1日、今日一つ歳を重ねるだろ?」

    若「はい…もしや」

    覚「君にとっては、毎日が大切な日々だし、生まれた日を祝う習慣はないのはわかってる。でも僕達は、君が生まれ、唯と出逢い、ここに来てくれた事に感謝したい。だから、今日を君の誕生日として、祝わせて欲しいんだ」

    美香子が、シャンパン代わりのソーダを全員のグラスに注いだ。箱の中身はバースデーケーキ。忠清くんお誕生日おめでとう、と描いてある。

    美「生まれて来てくれて、ありがとう。これはね、あなたのお母様がお元気でいらしたとしても、同じ事をおっしゃると思うの」

    尊「兄さんに出逢えて、心の底から嬉しい。兄さんを兄さんと呼べるのも嬉しい。ありがとう、忠清兄さん」

    唯「えっとぉ。たーくん、おめでとう」

    尊「…え、それだけ?」

    唯「いろいろセリフ考えてたけど、お祝いできるのが嬉しすぎて、全部すっ飛んじゃった」

    尊「感無量ね」

    覚「さ、みんなグラス持って。忠清くん、面食らってるみたいだけど」

    若「少々、面映ゆい、です」

    覚「喜んではくれてるんだね?」

    若「はい!」

    覚「では、忠清くんの誕生を祝して、乾杯!」

    唯&尊&美「かんぱーい!」

    若「乾、杯!」

    誕生日パーティー、スタート。

    尊「兄さん、こっち見てください」

    若「おぉ」

    唯「はい、笑って~」

    スマホを構える尊。パチリ。

    尊「あはは、おせち越しのケーキはちょっとシュールかも」

    唯「いいんだよ。ダブルでめでたいんだから」

    覚「でな、忠清くん」

    若「はい」

    覚「誕生日には、プレゼントを贈るんだが」

    若「プレゼント。クリスマス、だけではないのですね」

    覚「あー。まぁ時期が重なったから、しょっちゅう何か渡してるみたいになるね。で、君にもプレゼントをね」

    唯「わぁ、結局何にしたの?」

    美「お父さんが家族全員を代表して、とびきりのを選ぶって張り切ってたのよねー」

    若「そうでしたか。気を遣わせて済みませぬ」

    覚「現代的な物にしようか、永禄でも使える物か悩んだんだけどね」

    小さな箱が現れた。

    覚「僕はこういうジャンルはてんで不案内なんだけど、忠清くんには相応しいかなと思って」

    若「拝見します」

    中身は黒い棒状をしている。

    若「これは…上等な」

    覚「あ、嬉しいな~。わかってもらえたんだ」

    尊「墨?」

    唯「墨。字書く時の?」

    美「産地も近いしね。取り寄せとかじゃなく、買いに行ったのよね」

    若「それは難儀をかけました」

    覚「いつかさ、歴史的資料として、これで忠清くんが書いた文なんて出てきたら、感動しちゃうな~」

    尊「壮大だけど、有り得るね」

    唯「すごーい。時代をまたぐ文、的な?」

    覚「いやどうせなら、時をかける書状、はどうだ?ははは」

    美「上手い事言った気になってるわね」

    若「ありがとうございます。大切に、使わせていただきます」

    ケーキは、なんとか完食した。

    美「忠清くん、おせちは無理して食べなくていいわよ。三日は持つように作ってあるから」

    若「そうですか。それはありがたい」

    覚「ありがたい?」

    若「時間をかけ、それぞれの由来が学べますゆえ」

    尊「ダジャレっぽいのも多いけどね。昆布が喜コンブとか」

    若「ほぅ。喜昆布。洒落ておるの」

    覚「ダジャレが洒落るに変換か。なんかカッコいいな。言う人の違いか」

    美「そうね」

    覚「やっぱり」

    唯「ふー。満足満足」

    尊「そりゃそうでしょ。兄さんの分までケーキ横取りしてたじゃん」

    唯「ちょこっともらった」

    覚「ちょこっとのレベルじゃなかったがな」

    唯「ごちそうさま!あのさ、たーくん、ちょっと部屋まで来て欲しいんだけど」

    若「部屋。では食卓を片付けてから」

    美「あらいいわよ~行って。忠清くんはいつもよくやってくれてるから。はい、ごちそうさまね」

    若「済みませぬ。御馳走様でした」

    唯「行こっ」

    二人は二階へ上がって行った。

    尊「あのー」

    美「何?」

    尊「そろそろ例の物を」

    覚「例って何だ」

    尊「お年玉。兄さんの誕生日祝いが終わったら、くれるって言ってたじゃん」

    覚「ちゃんと用意してある。唯達が下りてきたら、三人に渡すから」

    尊「三人なんだ」

    美「結婚した娘とお婿さんには普通は渡さないけど、正月に帰省なんてそうそうないだろうから、特別にね」

    尊「なるほど」

    唯の部屋。

    唯「あのね」

    若「うむ」

    唯「私も、たーくんにプレゼント…用意したんだけど」

    若「先程とは別でか?それは忝ない」

    唯「理想としては、どーんと手編みのセーターとかマフラーとかさ」

    若「ふむ。大きく出たのう」

    唯「でも作った事ないから、何年かかるかわかんないし」

    若「理想は、高かったと」

    唯「永禄でも使える物で考えてね、巾着袋とかがいいのかなって」

    若「巾着袋?」

    唯「えーっと、金のけむり玉が入ってた、上を紐でキュッとしめる」

    若「あの形か。使い勝手は良さそうじゃの」

    唯「巾着袋くらい、たいていの女子は手作りするんだけど」

    若「ほぅ。されど、そこらのおなごとは違うておるゆえ」

    唯「大きく違ってすんません!買ってきちゃいました!でもねでもね、手作り感出したくて」

    若「いかがしたのじゃ」

    唯「ワッペンつけようと思って。あ、布でできた飾り的な?でも、周りをぐるっと縫うとかが」

    若「何年もかかるのか」

    唯「うぅ…ツッコミがうまくてグサっと刺さる。そんなにはかかんないけど、アイロンでくっつくのがあるから、それでくっつけた」

    若「アイロン。熱くして布の皺を伸ばす機械じゃな」

    唯「という訳で」

    若「言い訳が長かったのう」

    唯「もらって!たーくん、誕生日おめでとう!気持ちだけはギュっと入ってるから!」

    差し出された紙袋の中を確認する若君。

    若「ほほぅ」

    紺と黒の細かい縦縞。色使いがシックな袋の真ん中に…

    若「何の印じゃ?」

    唯「唯はたーくんが好き、って意味ですぅ」

    左からアルファベットのY、ハートマーク、アルファベットのTの形のワッペンが、ドンと貼り付けられている。三文字とも赤でかなり大きい。

    唯「あ~、色とか組み合わせがちょっとヤバかったかなぁ。ダメ?」

    若「使う折に皆に見せつけよう」

    唯「えっ、使ってくれるの?」

    若「何を申す。至極当然ではないか」

    唯「良かったぁ」

    若「ありがとう、唯」

    唯「嬉しいっ」

    若「唯に何か貰うなど初めてじゃの」

    唯「あ、そうかな、そうかも。たーくんには落雁やチョコボールもらったけど」

    若「菓子しか渡しておらぬようじゃの」

    唯「だってそうじゃん?あ、そんなコトないな。ヤな事思い出した」

    若「なんじゃ?」

    唯「中身が超ショックなメール、渡された。あれはカウントしたくない」

    若「あぁ、あれか」

    唯「お別れのメールは、これからもいりませんから!」

    若「案ずるな。それはもう、ない」

    若君の手が、唯の肩に。近付こうとして、体の向きを変えると、巾着袋が若君の膝から滑り落ちた。

    若「ん?」

    唯「え?なに」

    若「取れよった」

    ハートマークのワッペンが、接着が甘かったらしくポロっと取れている。

    唯「え…ギャー!」

    若「おわっ」

    唯に耳元で大声を出され、のけぞる若君。

    唯「やだもー!なんでぇ、あれっ、他のもなんかグラグラしてない?えーショック~!すぐアイロンかけてつけ直さなくちゃ!」

    若「すぐ、か」

    唯「下行く!あーん、もう~」

    若「そこまで急がずとも」

    もう立ち上がっている唯。呆気に取られながら見上げる若君。

    唯「たーくんどうする?ここに居る?」

    若「あ、いや。わしも行く」

    若君も立ち上がった。

    若「…フッ、フフッ」

    唯「やだ、笑わないでっ」

    若「まこと唯は、面白い」

    唯「それ…こっちでの意味でしょ」

    若「どうじゃろ」

    部屋を出る二人。

    若「ハハハハ」

    唯「もー、笑い過ぎだって!」

    家族の元へ下りて行きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いい年でありますように。

    次回は、令和Daysに戻ります。

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    二人の令和Days126~22日16時、そっち?

    進まないのがミソ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    野草を摘み終え、城に戻った唯と若君。

    唯「あ、伊四郎さん!ただいま~」

    若君に聞こえないよう、唯に近寄り小さい声で話し始める伊四郎。

    伊四郎「無事で、何よりじゃ」

    唯「え?」

    伊「さっき若君様が、血相を変えて飛び出して行かれたからな。多分奥方様の一大事なんだろうと思ってたんだ」

    唯「そうだったの。ありがとう、教えてくれて」

    若君が前を歩く。

    唯「え、こっち、おふくろさまの部屋じゃない?」

    若「先程、唯が外に出たのを三之助と孫四郎に聞いたゆえ、取り急ぎ礼を申しに参る」

    唯「そうなんだ」

    吉乃の居室。

    吉乃「よう、ご無事で」

    唯「心配かけてごめんなさい」

    若「三之助達は、まだ屋敷を駆け回っておりますか」

    吉「折角お越し頂いたのに済みませぬ。唯の無事は、伝えておきます」

    若「お頼み申します」

    二人の後ろ姿を見送る吉乃。

    吉乃 心の声(無事は何より。若君も落ち着きを取り戻され。されど…今や唯が若君を想うより、その逆が勝っておるように思えてならぬのは、気のせいか?)

    若君の居室に戻って来た。

    唯「ねえ」

    若「ん?」

    唯「今日、こっそり客間使うじゃん。なになに?ってみんな集まって来たら、困るよね」

    若「囲炉裏は使うが、襖障子は閉めるがのう。不審には思われるやも知れぬな」

    唯「あけるな、忠清。って書いて貼っとく?」

    若「ハハハ。そうか、よし、わかった」

    唯「え、半分冗談だったんだけど」

    すぐ用意をし、サラサラ書き出す若君。

    若「皆に知れてしもうては」

    唯「うん」

    若「今後、サプライズ、にはならぬであろう?」

    唯「あ。そうだね!」

    その頃、客間。源三郎とトヨが、若君の料理のために支度をしている。

    源三郎「水汲んできたぞ」

    トヨ「ありがと」

    囲炉裏に火を入れるトヨ。

    ト「ふう、これで良しと」

    源「お疲れさん」

    源三郎&トヨ 心の声(ちょっとちょっと!ふと気づけばこの状況、ヤバ過ぎるって!)

    襖障子は既に閉めてある。よって、周りにわからない状態の部屋に、二人だけ。

    源 心(若君様達に、早く来ていただきたいような、ずっと来て欲しくないような。困った、妙な汗が)

    ト 心(どうしよう、心臓バクバク!いや、ダメよ、火扱ってるんだから集中しなきゃ)

    しかし、動揺が押さえきれず、うっかり火種に指を近付けてしまったトヨ。

    ト「熱っ!」

    源「どうした!ヤケドしたのか?この指か?」

    ト「あ、ううん、大した事ない…え!」

    トヨが熱がった指を、咄嗟に自分の口に含んだ源三郎。

    ト「げ、源ちゃん!」

    源「いいから」

    源 心(ここまでは、反射的に動くんだ。あと少し、グッと体ごと引き寄せれば腕の中に…いやいや。そんなん、出来るならとっくにやってる。それができないのが、俺だ)

    ト「はい…」

    ト 心(源ちゃん何~!ときめいちゃうじゃない!あのー、指もいいけど唇…いやいや。このまま腕の中に飛び込む勇気もないクセに、私ったら)

    ところで、唯と若君は既に客間の外でスタンバイしていた。そっと隙間から覗き、小声で話している。

    唯「やーん、源三郎グッジョブ!まだ入んない方がいいよねぇ」

    若「あと三分程待つか」

    唯「3分?」

    若「三分あれば、永禄と令和の行き帰りも出来る位じゃ、二人の仲も一段進むのではないか?」

    唯「たーくん、面白がってない?」

    若「滑稽とは、思うておらぬ。行く末を見守るのみ」

    源三郎が、トヨの指の様子を見ている。

    源「大丈夫か?急に済まなかったな」

    ト「ありがと、源ちゃん」

    手を離した源三郎。黙り込む源トヨ。

    ト「お返し…」

    下を向いていたトヨが顔を上げた。

    ト「あたしから、お返しを」

    源「お返し?」

    源三郎に、にじり寄るトヨ。

    源「な、何の真似だ」

    焦る源三郎。固唾を呑んで見守る唯と若君。

    源「えっ?!」

    唯&若「え」

    トヨは、源三郎の手を掴み、自分がヤケドした同じ箇所の指を、パクリと口に入れていた。

    唯「ありゃ」

    若「これはまた」

    トヨの目が泳いでいる。源三郎も、すぐに言葉が出ない。

    源「…トヨ」

    ト「は、はい」

    源「落ち着けって」

    ト「や、やっぱり?言ったはいいけど、なんか一杯一杯で」

    源「いや、いいんだ。ふぅ…落ち着け、俺」

    ト「ごめんね、驚かせて。源ちゃん…なんか、らしくないわ。声が震えてる」

    源「あ?いや。これこそ俺、俺なんだよ。俺はさ…意気地無しだから」

    ト「え?何で。今のはあたしが血迷ったからでしょ、どこが意気地なしなの?さっきの源ちゃん、すっごくカッコ良かったし、好…あわわ」

    源「何だ?」

    ト「ふう、危なかった…な、何でもない。そんな気にするような事ないと思うわよ?」

    源「これがまた俺の厄介な所でさ。でも、ありがとな」

    ト「よくわからないけど。どういたしまして」

    源「そういえば話変わるけどさ、女中達が、トヨ怖~いって口々に話してたぞ」

    ト「あっそう。少し怖い位でいいのよ。軽くシメはしたけどね」

    源「軽く、な」

    ト「よく見張っといてくれって言ったのは、源ちゃんじゃない~」

    源「言ったは言ったが。やっぱ女中頭のシメ方は違うなー」

    ト「何よそれ、手練れみたいな言い方しないで~!」

    笑い出した源トヨ。それを合図のように、唯と若君は顔を見合わせた後、声をかけた。

    唯「お待たせぇ」

    若「待たせたの」

    源トヨが、笑いながら振り向いた。

    源「お待ちしておりました」

    ト「どうぞ、いらっしゃいませ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

    今年も皆様にはお世話になりました。ありがとうございました。
    年が明けましても、しばらく創作倶楽部にお邪魔いたします。拙い文章で恐縮ですが、よろしければ、今後もお付き合いください。

    新年一番ですが、一回お休みして、もしもDaysをお送りします。長文になりましたので、ちゃんと送信できるか心配…祈っときます(-人-;)

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    二人の令和Days125~22日木曜15時、自覚が足りぬ!

    そう、起こってからでは遅いから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君が、城内を歩き回っている。吉乃が声をかけた。

    吉乃「若君様、いかがなされました」

    若君「唯の姿がなく…ご存じありませぬか?」

    吉「唯ですか。そこらに居らねば、阿湖姫と会われておるのでは?」

    若「今、阿湖姫に尋ねましたが、寄ってはおらぬと」

    吉「何か唯に御用でも?」

    若「わしが城に戻り次第、共に出掛ける約束をしておりました」

    吉「そうでございますか。ならば居らぬのは解せぬ話」

    孫四郎「きゃー!」

    三之助「待てぇ!」

    はしゃぎながら、三之助と孫四郎が走って来た。

    吉「これ、若君様の前で走り回るでない!…そうじゃ、そなた達、唯を見かけなんだか?」

    孫「唯之助ならば、城から出て行きましたあ」

    若「何だと。まことか?」

    三「籠を抱えて、手を振っておりました」

    吉「供の者は居ったか?」

    三「ううん。一人じゃった」

    吉「はああ。何とした事か。あっ、若君様!」

    聞くや否や、若君は走って行ってしまった。

    吉 心(いたく狼狽されて…唯は何をしでかしておるのじゃ!)

    疾風に急いで乗り、城を出る若君。疾風の世話をしていた伊四郎が見送る。

    伊四郎「先程はあんなに、何やら楽しみなご様子で戻られたのに。どうされたのじゃ…」

    その頃の唯。

    唯「うん、写真と一緒。よし、と」

    城近くの小高い丘。野草の本を片手に、草とにらめっこしている。

    唯「ふぅ。ずっとしゃがんでると腰痛いな」

    立ち上がって伸びをした。すると、遠くで馬の嘶きが聞こえる。

    唯「馬?もしかして…」

    人の声も聞こえる。

    若「唯~!唯~!」

    唯「あ、たーくんだー」

    声のする方に、大きく手を振る唯。

    唯「若君さまぁー!ここー!」

    若「おぉ、唯!」

    若君が到着。駆け寄る唯。

    唯「お帰りー」

    若「唯…」

    疾風から下りるや否や、唯の両肩をガッチリ掴んだ若君。

    若「無事であったか?どこも怪我などしてはおらぬか?酷い目に遭うては…おらぬか?」

    唯「だ、大丈夫だよ。えっ、なに」

    若君が、鋭い目つきに変わった。

    若「この、大たわけ!!」

    唯「きゃっ!」

    若「唯は最早、足軽小僧ではない。身なりも違うておる」

    唯「はい…」

    若「山中を一人でなど、決して歩いてはならぬ!どこぞの間者が、城の姫と知って、拐っておったやもしれぬ。また、おなごと見れば寄って来る輩もあるだろう…取り返しのつかぬ事になってしまってからでは、遅いのじゃ!」

    唯「あ…」

    ようやく、身の危険があった事に気付き、血の気が引いた様子の唯。

    唯「ごめんなさい、ごめんなさい!」

    若「何事もなかったのだな?」

    唯「はい」

    若「そうか」

    そのまま、強く抱き締められた。

    唯 心の声(たーくん、汗びっしょりだ…ごめんなさい、ごめんなさい)

    眼差しが優しく戻った若君。

    若「待ちきれず、先に食べられる野草を探してくれておったのじゃな」

    唯「うん。帰る予定が遅くなってるんだなって思って」

    若「どうしても城を出たければ、必ず供の者を二人は付けよ」

    唯「はい。これからはそうします」

    若「唯にもし何かあったら、わしは…」

    唯「あっ、涙目…ごめんなさい、ホントにごめんなさい!」

    若「無事ならば、良い」

    唯「うん…」

    若君が笑顔に変わった。

    若「ところで、大分、摘めたのか?」

    唯「あ、えっとね、このくらい。今日のメニューには、まだまだだよね」

    籠の中を見せる。

    若「そうじゃな。お父さんが作られるような、滋養のある料理は、此処では難しいゆえ、野草でかさ増しじゃ」

    唯「ふふっ。さっきね、トヨを見かけたんだけど、遠くて。でも、腕で大きく丸!って出してたよ」

    若「そうか。準備は万端のようじゃな。源三郎にも、先程念押ししておいた」

    唯「じゃ、今夜の料理に向けて、あとちょっと頑張ろうね」

    若「あぁ」

    二人、本を見ながら、仲良く草を摘み始めた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    なぜ「悪丸」か?私の考察

    緑合板のざわめきは承知しております。
    このような折に、少し心苦しくはあるのですが、創作は粛々と進めさせていただきます。すみません。

    随分と前…2月5日に投稿していましたが、創作倶楽部no.503で、「悪丸となったのはこれが語源かな?と思っていた別の名前がありました」と書きました。

    裏付けばっちりとまではいきませんでしたが、辻褄はまあ合うかなと、今回令和Days124のお話に落とし込みました。一部抽象的な表現になりますが、こうなった経緯を追記します。

    こくしねるさんがおっしゃっていた通り、名前の悪の意味合いは、悪いではなく超強い。強い男になるんだぞと、日本名を名付けた方の親心だと思います。ただ、名付けるにはきっかけがある筈、それは何かと考えた時、彼の本名にヒントがあるのでは?と思いました。

    人は聞き慣れない言葉を耳にすると、頭の中で知った言葉に変換しがちです。

    「おぬし、名は?」
    「〇〇〇、アクバル、〇〇〇〇〇」
    「あく?今あくまると申したか?ならば以後悪丸と名乗れ」

    こんな感じかと。悪丸を演じたMAXさんは、アフリカのセネガルご出身です。そこに寄せて話を進めますと、16世紀のアフリカは、三角貿易(詳しくはここでは書きません。NGワードが含まれそうですので)の頃です。だから、悪丸も巡り巡って日本に辿り着いたと思われます。

    前のシリーズ、平成Days47で唯が「悪丸にどこの国から来たの?って聞いた事あるんだけど、すっかり忘れちゃった」と話しましたが、今とは国名が違いますし、唯でなくても覚えられなくてごもっともです。悪丸がまだ居たであろう頃のセネガルの辺りは、国の分裂が盛んに行われていた時期で、国名は特定できませんでした。

    で、アクバルさんってお名前あったよなぁ…と調べてみたんですが、夕月調べでは中東や東南アジア出身が多く、アフリカとはちょっと遠い。アラビア語でアクバルは偉大、という意味だけど、その国々ではアラビア語は話されていない。MAXさんは、プロフィールによるとアラビア語もOKだそうですが。

    でもその国々、宗教は同じです。セネガルは、公用語は植民地だったこともありフランス語ですが、お国の方のお名前の表記でいくと、フランス寄りではなくアラビア寄りと感じます。

    結果、名前にアクバルって入ってても有り得るかなと思いまして、入れ込んだ次第です。

    ちょっと無理無理だったかもしれませんが、なにせ創作ですので…大目に見てやってくださいませ。

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    二人の令和Days124~21日17時、最強の味方

    尊に教えてあげたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君と悪丸。

    若君「おぬし、この国に参った折に、名を新しく付けられたであろう」

    悪丸「名。はい」

    若「生まれ育った地での、名であるが」

    悪「はい…」

    若「もしや、アクバル、と入ってはおらぬか?」

    悪「あ、え?」

    若君の言葉を聞いた悪丸が、動揺している。

    悪「…その通りでござる。何故その名を」

    唯「へー、やっぱそうなんだ。尊すごーい」

    若「そうか、合うておったか。わしではない、師匠の了見じゃ。このように書くのか?」

    メモの、尊が書いた部分を見せる。

    悪「…然り」

    メモを指で一文字ずつ追っている。

    若「済まぬの。かえって、参った折の辛さなど思い起こさせたやも知れぬが」

    悪「いえ」

    若「良い名じゃ」

    悪「痛み入り、ます」

    若「大きく、立派という意味合いであろう?」

    悪「なんと。若君様は何でもご存じじゃ…」

    唯「偉大、だよね」

    若「これからも、悪丸は悪丸じゃが」

    悪「はっ」

    若「うむ」

    疾風の手綱を取る若君。悪丸が前に出た。

    悪「わしが」

    若「そうか。頼む」

    悪丸は、深く一礼し、疾風を城内へ連れて行った。

    唯「合ってたね」

    若「そうじゃな。尊に伝えられぬのは残念じゃが」

    唯「いつか言えるよ」

    若「うむ。その日を楽しみに待つとしよう」

    二人は、手を繋いで城へ戻って行った。

    女中1「あ、若君様よ!今日も一段と、麗しくていらっしゃるわ~」

    女中2「素敵~」

    女中3「ホントよね~」

    通って行く若君と唯を、城内の女中達が遠巻きに見ている。

    女2「そういえば知ってた?阿湖姫様の指先。このところ、とても美しく輝いていらっしゃるの」

    女3「チラリと拝見したわ。素敵でいらした」

    女2「でも、奥方も同じような指先なのよ」

    女1「阿湖姫様が、揃いにして差し上げたのではないかしら」

    女3「有り得るわね。なんと慈悲深いお方」

    女1「生粋のお姫様は、違うわね~。確か、海道一の手弱女と謳われていらっしゃったのでしょう?」

    女2「それにひきかえ」

    女1「あー。比べるのは阿湖姫様に失礼よ」

    女3「そうそう」

    女1「あーあ、若君様には、もっと楚々とした姫君と夫婦になっていただきたかったわ」

    女2「そうそう、もっとたおやかな姫ね」

    女3「海道一とは言わないけど、いくらなんでも」

    女1&2&3「ねぇ~」

    トヨ「ここにも居ったか…ちょいとお待ち!」

    トヨが、眉間に皺を寄せながら、三人の前に立ちはだかった。

    女3「な、何ですか?」

    ト「阿湖姫様は、勿論とても麗しいお方よ。でもその後、結構な言い草よね」

    女2「え?」

    女1「怒ってる?」

    ト「アンタ達に何がわかるの」

    女2「どういう事?」

    ト「いいわ」

    女1「何!」

    女3「怖い~」

    ト「そこへ、直れ」

    女1&2&3「え、え~?!」

    その場に正座させられる三人。

    ト「どれだけ奥方様が素敵な姫か、とことん教えてあげる。反省の色が見えるまで、そのままじゃ!」

    その頃、若君の居室に若君と唯。

    若「唯に見せたき物がある」

    唯「なになに!」

    棚から紙を取り出した。何か絵が描いてある。

    唯「絵?誰か描いてくれたの?」

    若「わしが描いた」

    唯「えぇっ!たーくんそんな才能あったの?!びっくり~」

    若「よう描けておろう」

    唯「ぷっ。それ、まんま自画自賛てヤツじゃん。これって、じい?」

    若「そうじゃ」

    唯「着物じゃないね。なんか、きてれつなカッコしてる」

    若「わからぬか?」

    唯「うぇっ、もしかして…トランプのジョーカー、じいの姿で描いてみた?」

    若「そうじゃ、良かろう?いつか厚く上質な紙が手に入ったら、トランプを一式作ってみたいと思うての」

    唯「へー、すごーい!いつかできるといいね!それにしてもさぁ」

    若「ん?」

    唯「たーくん…ヒマなの?」

    若「平和な時を満喫、と申せ」

    唯「そうだね。あはは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    21日のお話は、ここまでです。

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    二人のもしもDays4、戦国のクリスマスプレゼント篇

    超久々に、もしもDaysをお送りします。
    もしもDaysのシリーズは、本来唯と若君が現代に居ない筈の時季に、季節のイベントを楽しんでもらうコンセプトなんですが…今回は、永禄の二人でお送りします。

    もしも、か、今まさに、か。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄。日が落ちて大分時間が経っている。

    唯「いよいよ明日かぁ。気分だけでも盛り上げよーっと」

    寝所で、何やら書いてある紙を見ている唯。すると、襖が開いた。

    若君「待たせたの、唯。ん?何か読んでおるのか?珍しい」

    唯「あ、たーくん。お疲れ様ですぅ。でもって、珍しいは余分ですぅ」

    若「ハハハ、ご無礼いたした。されど、蝋燭でも暗かろう。何じゃ?碁盤の目のような」

    唯「なんとなーく、見覚えない?」

    若「あるのう。もしや、カレンダー、か?」

    唯「当たり!」

    若「拵えたのか」

    唯「うん。カウントダウンしてるの」

    若「んー、それは、指折り数えておるという意味合いか?」

    唯「そうそう。わかってるぅ。明日ね、クリスマスイブなんだよ」

    若「あぁ、クリスマス、か。以前平成、に参った折に、頻りに申しておったの」

    唯「うん。こっちではなんにもできないけどさ、考えるだけでウキウキなんだぁ」

    若「そうか」

    表情をコロコロ変えながら楽しげに話す唯に、慈しむように微笑みかける若君。

    唯「明日の晩、雪降んないかな」

    若「雪?しばらくはなかろう」

    唯「降らないかー。え、たーくんいつから天気予報できるようになった?」

    若「予報、はできぬ」

    唯「じゃあなに」

    若「朝晩はかなり冷えるが、この時季にしては暖かい」

    唯「そっか」

    若「何ゆえ、雪が良いのじゃ」

    唯「景色が真っ白でキレイなホワイトクリスマスになるから。ロマンチックでしょ?」

    若「ロマンチック…それもよう聞いた気が。そういう物なのか」

    唯「そういうモンなの」

    若「ハハッ」

    唯「なんでそこで笑う~?」

    若「いや。このような、とりとめのない話をしておる時間、も楽しゅうての」

    唯「そぉ?えへへ」

    二人、床についた。向かい合い見つめ合う。

    若「雪は降らずとも、そこそこ冷えてはおる。寒くはないか?」

    唯「そんなに寒くないよ。って…やだ、微妙に離れてってない?」

    若「暑かろうと思うて」

    唯「暑いなんて言ってないぃ。わざとでしょ」

    若「からこうてみた」

    唯「意地悪!はい、戻ってっ」

    若「ハハハ」

    唯「もー、油断も隙もないんだから。ちゃんとくっついててねっ。おやすみたーくん」

    若「おやすみ、唯」

    翌朝。領内の見回りに出ている若君と小平太。

    小平太「今朝も厳しい冷え込みでしたが、漸く暖まって参りましたな」

    若「そうじゃな」

    小「若君様も、お身体を冷やされたりなどなさいませぬ様」

    山に入って行く。川の上流、岩場の多い所に出た。

    若「充分な水量じゃ」

    小「はい」

    水しぶきを上げる程、岩肌を勢いよく流れる川。辺りは、当たるしぶきが凍り、うっすら白くなっている。

    若君 心の声(そうじゃ…!)

    夜になった。寝所で唯が空を見上げている。

    唯「てるてる坊主、逆さに吊るすと雨降るんだっけ。でもまんま雨だと困るしなぁ」

    若君が来た。

    若「唯、中に入れ。冷えてしまう」

    唯「雪、無理っぽいね。ざんねーん」

    若「そのようじゃな」

    褥の中。

    若「クリスマス、にはプレゼント、であったな。あの、中で雪が舞う」

    唯「スノードームだね。ごめんね、なにも用意できなくて」

    若「わしは、唯が笑うてさえいてくれれば良い」

    唯「私もね、こうしてたーくんと一緒に居るだけで超幸せだから」

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん」

    深夜。若君がそっと褥から抜けた。向かったのは、自身の居室の前庭。

    若「上手くいくと良いが」

    手には柄杓。目の前には松などの木々や灯籠。手桶から水を掬い、弧を描くように水を放った。

    若「もっと全体に…」

    何度も、木々に水をかける若君。

    若「ふう…」

    ガサッ、と物音。男が現れた。

    若「何奴じゃ!」

    小「おぬしこそ何奴!…え?若君様ではございませぬか」

    若「小平太か。今宵は警固であったか」

    小「はい。バシャバシャと音が聞こえましたゆえ、馳せ参じました。こんな夜更けに、何をされておるのですか?」

    若「唯を、喜ばせてやりとうての」

    小「は?水かけが、でございますか?」

    若「雪が見たい、と申すのじゃ」

    小「また突拍子もない事を…あ、口が過ぎました」

    若「望みを叶えてやりとうて。こうすれば水が凍り、朝少しは葉が白く化粧しておるかと思い」

    小「此処で、ですか。寝所前ではなく」

    若「音で起こしとうない」

    小「それは…ならば、わたくしがやっておきます」

    若「いや、小平太には関係のない話じゃ」

    小「何回か回る度に、かけておきましょう。若君様、体を冷やしてはなりませぬ。調子を崩されては、奥方様に見せる事も叶わなくなります」

    若「そうか…そうじゃな。済まぬ。では頼む」

    小「早うお戻りください」

    若「忝ない」

    回ってくる度に、庭木に水をまんべんなくかける小平太。

    小平太 心の声(若君は、何事も懸命にされる。特に、唯之助が関わると目の色が変わる程…おなごを好きになるとは、ここまで熱くなれるものなのであろうか)

    クリスマスの朝。早々に起き出し、居室に向かった若君。

    小「いかがでございましょう」

    若「これは…小平太、大儀であった。日が高くなってしもうては間に合わぬ。すぐに唯を呼んで参る」

    寝所に戻り、唯に優しく声をかける。

    若「唯、起きてくれ。プレゼント、がある」

    唯「んっ…ん、おはよたーくん。プレゼント?!え、ないよ?」

    枕元を探る唯。

    若「済まぬ。ここにはないのじゃ」

    唯「そうなんだ。サンタさんは枕元にプレゼント置いてくからてっきり」

    若「一緒に来てくれぬか?時間との勝負での」

    唯「へ?そうなんだ。わかったぁ」

    若君の居室に近付く。前庭が見えてきた。

    唯「え、あっ!」

    松や灯籠が、うっすら粉をふいたように白くなっている。小平太の姿はない。

    唯「すごーい!ここだけホワイトクリスマスだぁ。キレイ…」

    若「わしが作ったのではない。小平太が水をかけ続けてくれた賜物じゃ。小平太、居るか?」

    小「はっ」

    サッと現れた小平太。

    唯「ありがとう~小平太~!夜やってくれたんだよね。ごめんね、冷たかったでしょ」

    小「然程でもなかった。礼は若君様に。わしは、若君様の奥方様への思いに心を打たれたゆえ」

    小 心(若君様の、その優しい眼差しが全てを物語っておる)

    小「では、これにて」

    若「世話をかけた。痛み入る」

    唯「ゆっくり寝てね」

    少しずつ、小さな氷たちがとけて、雫があちらこちらで光を弾いている。縁に腰をかけ、眺める二人。

    唯「小平太が来なかったら、たーくん朝まで水かけてたんじゃない?ダメだよ、無理しちゃ」

    若「唯の喜ぶ顔が見られるなら、屋敷ごとでも撒く」

    唯「優しーい。あ、ますます私からのプレゼントがないのがヤバい…」

    若「プレゼントなら、とうの昔に貰うておるがのう」

    唯「え?あぁ」

    若「触れても良いか?」

    唯「もっちろん」

    少し大きくなっている唯のお腹に、優しく手を添える若君。

    若「あっ、今」

    唯「蹴ったね。パパに朝のごあいさつだね」

    若「そうかそうか」

    唯「デレデレだしぃ」

    庭はすっかり元の姿に。唯の居室まで戻ってきた二人。

    唯「今日がここでしょ、でね、予定日はこの辺りらしいの」

    若「ほぅ。カウントダウン、はクリスマスだけではなかったのだな」

    唯の作ったカレンダーには、出産予定の大まかな日付も入っていた。

    唯「うふふ」

    若「ハハハ」

    二人が眺めるカレンダーを、朝の光が眩しく照らしていました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    Merry Christmas。

    次回は、令和Daysに戻ります。

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    二人の令和Days123~21日16時、所以が知りたい

    板が違いますが、てんころりん様、誕生日リスト完成おめでとうございます。唯なみの健脚で駆け抜けましたね!お疲れ様でした。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城の周りで子供達が遊ぶなんて、いい環境。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯達の元に、疾風に乗って若君登場。

    唯「あ、若君お帰りぃ」

    足軽達は、全員一礼している。

    若君「出来上がったのじゃな」

    疾風を近くに繋ぎ、ブランコを見上げる若君。

    若「千吉、伊四郎、悪丸。大儀であった」

    三人「ははっ」

    若「唯、済まんかったの」

    唯「どういたしまして。ねっねっ、乗ってみて」

    ブランコをこぎ出す。

    千吉「あんなに高く上がるのか」

    悪丸「驚いた」

    伊四郎「若君様、さすが乗り方がお上手じゃ」

    ブランコを降りた。

    若「ありがとう、唯」

    唯「付ける場所ね、ここと、若君の部屋の前と、迷ったの」

    若「ほぅ。決め手はなんじゃ?」

    唯「ここなら、みんな遠慮なく使ってくれるじゃない?ほら見て」

    いつの間にか子供達が集まって来ていた。キラキラした目で、なになに?と見ている。

    唯「ふふっ、人気スポット決定だね。若君なら、一人占めじゃなくて絶対こっちって言うと思ったから」

    若「唯。何という…」

    思わず唯を引き寄せ、ギュっと抱き締めた若君。

    唯「えーっ!あの、あの、恥ずかしいよ、みんなが見てる…」

    若「あ?す、済まぬ。思わず」

    パッと離れた二人。微笑ましく見守っていたギャラリー。

    千「若君様、それではまた早々に材料を手に入れまして、若君様の居室前の木の丈夫な枝に取り付け致します」

    若「それは、痛み入る」

    唯「ありがと、千吉さん。伊四郎も悪丸も、ありがとう!」

    若「では、童達に献上しよう」

    全員、そこから離れた。早速子供達がブランコに群がっている。

    唯「かわいいね」

    若「そうじゃな」

    唯が若君に耳打ちした。

    唯の囁き「たーくん、メモ持ってきといたよ」

    若君の囁き「よう気が付いたの。わかった」

    足軽達に向き直る若君。

    若「世話をかけたのう、千吉、伊四郎。で、悪丸」

    悪「はっ」

    若「悪丸には話があるゆえ、しばし付き合え」

    悪「話。心得ました」

    疾風を繋いだ場所まで戻って来た、唯と若君と悪丸。

    唯「はい、メモ」

    若「おぉ。よし」

    メモを開いた。

    ┅┅回想。8月5日14時、リビング┅┅

    午前中に、吉田君が訪れ若君に人生相談した日。昼食後のリビングに、唯と若君と尊。

    唯「ジェンガさあ、永禄のみんなが読めるように、にょんにょん字で作り変える?」

    尊「自分読めるの?そういう話はさ、その字を全部書けたり読めたりできてからしたら?」

    唯「うっ」

    若「尊の申す通りじゃな」

    尊「心掛けはいいと思うけどね。でも作ってて、皆さんの名前、戦国時代っぽくて楽しかったよ。悪丸さんの悪とか」

    唯「え、それって戦国っぽいの?」

    若「この先の世では、使わぬのか?」

    尊「そうですね。どうしても、善の反対、の意味に今ではとりますから」

    唯「どういう事?良い悪いの悪じゃないの?」

    尊「力強いって意味。ですよね、兄さん」

    若「そうじゃ」

    唯「へー。日本に来てから誰かが付けてあげただろうから、強くなれーって願ったのかな」

    尊「悪丸さんって外国の人だよね。僕思ったんだけどさぁ」

    唯「うん」

    尊「もしかして、お国の名前はこうなんじゃないか?ってのが一つ思い浮かぶんだけど。多分だけど、悪丸って名前、本名と読みが似てるんじゃないかな」

    唯「どんなの?」

    尊「聞いたって忘れるでしょ」

    若「わかった。ならば、紙に書き持ち帰ろう」

    唯「ふーん。じゃあ、半紙と筆ペン持ってきてあげる」

    書き始めた若君。

    尊「お国の名前は、〇〇〇〇ではないか」

    若「ふむ。…ないか、と」

    尊「名の綴りは、隣に僕が書きますね。で、意味は〇〇〇」

    唯「〇〇〇なんだぁ、へー。いい名前だね」

    若「よし、書けた」

    尊「持ち帰るのを忘れないようにしないとですね。そうだな、今回も写真集作りますから、最初のページに挟んどきますよ」

    若「済まぬの」

    尊「いえいえ。いつか、答え合わせしたいですね」

    ┅┅回想終わり┅┅

    若「悪丸よ」

    悪「はっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。が、

    次回は、令和Daysはお休みして、久々にもしもDaysをお送りします。

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    二人の令和Days122~21日15時、セット完了です

    いい仕事、します。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    厩の隅にやって来た唯と千吉。板と縄が置いてある。

    唯「あっ、なかなかいいねぇ」

    千吉「そうじゃろう」

    唯「でね、これをこうしたいの」

    土の上に、絵を描いて説明する。

    千「ほぅ、これは変わった代物じゃな」

    唯「ここに乗ってね、ぶらーんぶらーんなの。若君お気に入りなんだよ」

    千「回られた先でお乗りになったと」

    唯「そっ」

    千「で、どこに付ける?」

    唯「表門出たちょっと先に、大きい木あるじゃない?あの枝になら、ボキッとはいかないかなって」

    千「あー、あれな。よう童が登っておる」

    唯「それも踏まえてね」

    千「踏まえて?そうなのか。でな、人手が要ると思い、呼んでおいた。おーい、出番だぞー」

    ワラワラと集まって来た。

    唯「あ、伊四郎さん、悪丸!」

    伊四郎「おー、唯之…いや、奥方様」

    悪丸「久々じゃ。えーと、奥方様」

    唯「なーにー、二人して呼び方があやしい」

    千「人足が少なかったかのう」

    唯「全然!なんなら私、木に登るし」

    千&伊&悪「それはならぬ」

    唯「うわっ。はぁい、おとなしくしてます…」

    千「では、一仕事するか」

    唯「ごめん、ちょっと取ってきたい物あるから、先行ってて。あとさ、若君はまた見回り中?」

    伊「先程、出て行かれたぞ」

    悪「小平太殿と」

    唯「小平太かぁ、あいつちょいちょい邪魔なんだよなぁ」

    千「おいおい」

    唯「失礼しました。じゃあ、すぐ行くから!」

    千「わかった」

    自分の部屋に戻った唯。

    唯「えっと、箱はここに置いといて、で、例のメモは…と」

    ゴソゴソ探す。今回持ち帰った写真集を出した。

    唯「最初のページにはさんどいたから…あったあった」

    メモを取り出して懐に仕舞い、部屋を出た。

    唯「そうそう、まず板に穴開けて、で縄通してギューっと縛りつけてね」

    門の近く、森を少し入った奥で作業する四人。

    伊「よし、固い。こんなもんじゃろ」

    千「そうそう取れぬぞ」

    伊四郎と悪丸が枝に登った。いよいよブランコを取り付ける。

    千「男二人乗ってもビクともせぬ。いい木を見つけたのう」

    唯「でしょ~」

    千「若君様は、気の利く奥方様を迎えられた」

    唯「やーん、嬉しいコト言ってくれるぅ」

    千「ただし、木登りは他に任せるようにな」

    唯「はーい」

    かなり頑丈に、太い枝に結び付けられた。

    唯「ん、大丈夫そう…だね。わぁ、やったー」

    ブランコ、完成。

    千「良かったのう」

    悪「奇妙な品じゃ」

    伊「乗る、物か?」

    唯「うー、ありがとねっ。じゃあ早速、千吉さん乗ってみて」

    千「え!それはならぬ、若君様のお帰りを待とう」

    唯「えー、だって若君が座ってさ、すぐブチッ、ドシンと尻もちとかついたらどうすんの」

    千「それもそうじゃな」

    伊「この中で、一番体が重そうな奴が乗りゃいいだろ」

    千「…わしか。承知致した」

    恐る恐るブランコに腰掛ける千吉。

    唯「大丈夫…かな。千吉さん、両手でしっかり縄つかんで」

    千「うむ」

    唯「行くよぉ、それー」

    背中を押す唯。ぶらーんぶらーんと前後に揺れる。

    千「ややっ!おーっ、何やら、楽しいぞ」

    唯「でしょ。試運転、大成功~」

    若君と小平太が、見回りから戻って来た。

    小平太「何やら賑やかでございますな」

    若君「そうじゃの。ん?唯か?」

    道から少し入った所に、唯達の姿が見えた。

    若「先に戻っておれ。様子を見て参る」

    小「承知致しました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    メモって何?は、次回。

    続きます。

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    てんころりん様

    私何かやらかしたかしらと、ちょっと身構えてしまいました(;^_^A

    説明もなく話を進めているので、分かりにくい部分が多々あると思います。他の、お読みいただいている皆様もそうですよね。迷わせてしまいすみません(>_<)

    題名に永禄の日付を表示するパターンも考えていたので、一応満月がいつかは調べました。でも閏月もある時代だし、合っているのかは…どうでしょう。あえて当てはめるならという程度に捉えております。

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    永禄の日にち

    夕月さん、
    タイトルは令和の日にちと時間が続き、令和のこの時に永禄では… というお話と気付き、二次元中継があり、巧い!と感心して先日は書きました。

    タイムマシンの移動は、永禄と令和の年と月は、ぼんやりですが覚えてました。
    ただ.永禄の満月を夕月さんが特別に設定されてると思わず、満月(十五夜)は15日と思い込んで書いてしまいました。
    すみせんでした(^.^)(-.-)(__)

    私も令和と永禄の日が違おうと、一緒に時間が流れてる感覚はあり、OKです。
    令和の日時でタイトルを続けたの、成功だと思います。

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