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    四人の現代Days23~17日9時、二人並んで

    父娘だけは、貴重。
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    リビングに戻って来た源トヨ。

    唯「お帰りぃ。今朝はゆっくりだったね」

    食卓で、覚と若君が将棋を指している。唯は、座る若君の後ろから、首に腕を絡ませ抱きついている。

    トヨ「将棋は、こちらの世にもあるのですね」

    覚「数少ない、共通の娯楽だよ」

    唯「今日はね、親孝行デーだから出かけないからね」

    ト「親孝行は出来る時にしないと。大事です」

    若君「昨日は、お父さんを一人残し出かけてしもうたゆえ」

    唯「将棋、誰が一番強いか勝負だってさ」

    ト「まぁ」

    源三郎「対局が楽しみです」

    若「お父さん、源三郎は城でも強い方に当たります」

    源「それ程でもございませぬが」

    覚「そうなんだ~。お手柔らかに頼むね」

    ト「では、私は隣で、お借りした本を読ませていただきます」

    唯「なにー?あ、包帯の巻き方だ。クリニックの?」

    ト「はい」

    若「トヨは学びも熱心じゃのう」

    何度か対局していると、昼近くなってきた。

    覚「いやぁ、確かに源三郎くん、強いわ」

    源「つい熱が入ってしまい、済みませぬ」

    覚「いいんだよ。手加減しないで欲しいしね。じゃあ次は、忠清くんと源三郎くんで指してて」

    若「いえ、そろそろ昼飯の支度をせねばなりませぬ」

    ト「それならば私も」

    源「私も」

    覚「いいよ、みんな座ってて。一人明らかに空いてるのが居るから。唯、手伝え」

    唯「えー、私?」

    覚「えーじゃない。ほら、若奥様」

    唯「若奥様。…昭和だなぁ」

    覚「えぇっ、今はそう言わんのか?古い?」

    唯「でも、じわじわくる。いい響きかもー」

    覚「だろ?」

    唯「よし、やるかー。たーくんエプロン貸してねっ」

    若「あぁ」

    覚「唯専用のエプロンも用意するか?」

    唯「いらないっす」

    覚「何だ、その言いぐさは」

    若「ハハハ」

    キッチンに立つ覚と唯。

    覚「若奥様、これも洗って」

    唯「はいはーい」

    トヨが本を閉じ、席を立とうとしている。

    若「トヨ、良い。座っておれ」

    ト「でも」

    若「父と娘、二人だけにしてやってくれぬか」

    ト「あ…はい。わかりました」

    美香子も休憩時間になり、昼ごはんスタート。

    唯「今日ねー、サラダ作るの手伝った!」

    美香子「へー。何したの」

    唯「野菜洗った。レタスちぎった。カニカマほぐした」

    美「それは、唯にしては充分過ぎる程働いたわね」

    唯「えっへん」

    美「威張る程じゃないけど?あ、トヨちゃん」

    ト「はいっ」

    美「エリさんに聞いたわ。また夜にね」

    ト「はい。お願い致します」

    覚「何だ、内緒話か?」

    美「そっ。母と娘のね」

    覚「おっ、いいねぇ」

    源「…」

    若「?」

    若君 心の声(何故源三郎が、鬱々としておるのじゃ)

    覚「話変わるけどさ、バーベキューやろうかなと思ってるんだけど。夜はさすがに寒いから、昼間にな」

    唯「バーベキュー!いつ?」

    覚「やっぱり日曜かな。芳江さん達を呼ぶ忘年会をそれで、とも考えたんだけどさ、その日だと開院中に火起こしする事になるから、煙がクリニックに流れても何だからさ」

    唯「今度の日曜?」

    美「そうね」

    若「それは良いですね」

    唯「やったー。源三郎、トヨ、バーベキューだよ。えーっと」

    若「庭で火を起こし、食しながら集うのじゃ」

    ト「それは楽しそうですね」

    源三郎が、目を白黒させている。

    若「どうした、源三郎」

    源「戦…は始まらないのですね?」

    唯「え!なんで戦?全然違うよ」

    若「何故そう思うた」

    源「狼煙を上げるのでは?」

    覚「狼煙?」

    美「あら、火を起こして煙が上がるって言ったからかしら」

    覚「そうかそうか。話を繋げるとそうなるもんな。源三郎くんは危機管理がしっかりしてるなぁ」

    若「源三郎。今は、忘れておれば良いぞ」

    唯「うん。そうだよ。忘れてるのも大事」

    源「はい。昨日、日々穏やかと話をしたばかりではありましたが、ふと思うてしまい」

    若「それより、この世に居る内に考えるべき件もあろう」

    源「は!はぁ…」

    覚「お?忠清くん、するりと王手かけたね」

    美「まあまあ。まだ序盤だもの。そう焦らなくてもいいんじゃない?」

    若「将棋にかけておられるのですね。さすがお父さんお母さん」

    唯「そうなの?」

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    続きます。

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    四人の現代Days22~17日火曜8時30分、誰かのために

    美しい髪の持ち主だから、周りが戸惑う。
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    朝のコーヒーをクリニックに運ぶ役目を、率先しておこなっているトヨと源三郎。

    源三郎&トヨ「おはようございます!」

    エリ&芳江「おはようございま~す」

    歓談後、コーヒータイム終了。

    源&ト「お邪魔致しました」

    美香子「いつもありがとね」

    会釈をし、出ていった二人。

    芳江「仲がいいのねぇ」

    美「それも勿論あるんだけど、二人で来るには別の理由があるのよ」

    エリ「そうなんですか?」

    美「出てく時、お盆とか、源三郎くんしか持ってないでしょ」

    エ「そういえばそうですね。トヨちゃんは手ぶらだわ。それって、源三郎くんの優しさではなく?」

    芳「元々、いつもご主人が一人で運んでいらっしゃいますしね。いえ、仲良く顔見せてくださって、とても嬉しいんですよ?」

    美「トヨちゃん、クリニックの壁に貼ってあるポスターや案内に興味津々でね。診療始まる前の僅かな時間に、じっくり見てるらしいの」

    エ「あー、だから帰りは俺が持って帰るから見ておいで、なんですね。それも優しいですね~」

    芳「医療に関心があるんでしょうか?」

    美「ん~。彼女の事だから、戻ってから役に立ちそうって、何でも身に付けたいのかもね」

    エ「でしたら、本でも貸してあげたらいかがですか?」

    美「あ、それもそうね。包帯の巻き方なんて、きっと役に立つわ」

    棚から一冊取り出した。エリが受け取る。

    エ「準備が済んだら、渡してきます」

    美「お願いします」

    その頃、待合室前の廊下に居たトヨ。

    トヨ 心の声(心の臓って、こんな形なの?!)

    解剖図に見入っていた。

    ト 心(本当、勉強になるわ)

    壁に、少し色褪せた新聞記事と、手書きの案内が貼ってあるのを見つけた。

    ト 心(髪の話?長い髪を切って、贈る?)

    読み進めていく内に、次第に記事に釘付けになっていく。

    ト 心(子供達を救えるって書いてある)

    足音がした。

    源三郎「トヨ、まだ見てたのか。そろそろ戻ろう。邪魔になるぞ」

    トヨ「あ、うん…」

    視線を外さず見続けるトヨ。

    源「そんなに気になるのか?」

    一緒に読み始める源三郎。

    源「所々わからぬ言葉があるが、もしかしてお前」

    ト「ちょっと気持ちが揺れてる」

    源「…」

    また足音が。

    ト「あ、エリさん」

    エ「ここに居たのね。ホント勉強熱心。そんなトヨちゃんに、はい。本貸しますね」

    ト「まあ!ありがとうございます!これは?」

    エ「止血の仕方とか、包帯…あなた達ならサラシね、巻き方が書いてあるわ。美香子先生がどうぞって」

    源「これは…わしも興味があります」

    ト「嬉しい!じっくり読ませていただきます!」

    エ「ところで、何をそんな真剣に見てたの?」

    ト「これです」

    壁を指差すトヨ。

    エ「これは…」

    ト「あの、これって人助けになるんですよね?」

    エ「えぇ。そのために長く伸ばされる方もみえるわ。まさかあなた」

    ト「私でもお役に立てるなら」

    エ「うん…気軽にどうぞとはとても言えないけれど、ひとまずもう開院時間だから、戻ってね」

    ト「はい」

    エ「美香子先生には、トヨちゃんがこう言ってましたと伝えておきます。その案内、先生がご自身で作られたの。詳しいお話も、先生から聞く方がいいですよ」

    ト「わかりました」

    廊下を進み、急いで戻っていく二人。

    源「お前、本気なのか」

    ト「源ちゃんには関係ないじゃない」

    源「…」

    ト「どうせ女中は、長くなり過ぎないようこまめに切り揃えてるんだし」

    源「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、21まで

    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
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    1no.847、2019/12/12、四人で無事到着

    2no.848、12/12、買い物に行かなきゃと焦る母

    3no.849、12/12、一緒でいいかい?まーだだよ

    4no.850、12/12深夜、令和に来た理由を両親に説明

    5no.851、12/13、女子達が可愛いくてドキドキ

    6no.852、12/13、働く女性達とコーヒーと

    7no.853、12/13、呼び名変更。源三郎車酔い

    8no.854、12/13、はさみ揚げ入りの籠のゆくえ

    9no.855、12/13、唯トヨがスーパーにおつかいに

    10no.856、12/13、シール談議。寝室が決定

    11no.857、12/14、お花アクセのお披露目

    12no.858、12/14、娘二人との買い物が楽しい母

    13no.859、12/14、恋愛マスターに相談しよう

    14no.860、12/15、トランプともんじゃ焼きと。お酒解禁します

    15no.861、12/15、全員でカラオケ店へ

    16no.862、12/15、唯も歌うし若君も歌う

    17no.863、12/15、余裕な対応の尊。トヨの感情移入

    18no.864、12/16、四人で黒羽城公園へ。一方的に攻撃される男子達

    19no.865、12/16、ブランコでくるくるでラブラブ

    20no.866、12/16、ラーメン店で一口あげる

    21no.867、12/16、帰路でおじいさんに感謝

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    四人の現代Days21~16日14時、チャンス!

    唯がガチで走ってた時、カッコ良く乗りこなしてたよ?
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    スーパーに到着。

    唯「売ってる売ってる。この時期はあるよねー」

    ラッピング用の紙やリボンが豊富に並んでいた。

    若君「煌びやかじゃ」

    唯「気分もアガるよねぇ。あ、たーくん、折り紙も買っていこうよ」

    若「そうじゃな。折角参ったしの」

    トヨ「折り紙。鶴を拵えた?」

    唯「そうだよ」

    源三郎「こちらの世の品でありましたか。そう聞けば腑に落ちます」

    ト「いろいろわかってくるわね」

    唯「三之助と孫四郎がね、たーくんの部屋に飾ってある千羽鶴が欲しい欲しい、って騒いでたんだよ」

    若「それは初耳じゃ」

    唯「だよね。だから、ごっそり仕入れてまた作り始めよっかなと思って」

    ト「またお手伝い致します。あら、こちらはまた綺麗な柄だこと」

    唯「千代紙だね。じゃあこれも買おっ」

    ト「良いのですか?」

    唯「なんかに使うかもだし、いいよ~」

    買い物を終え、スーパーを出た。すると、

    唯「あ~、たい焼き売りに来てるぅ!」

    キッチンカーを見つけた唯が、吸い込まれるように近寄って行く。

    若「もう腹が鳴ったのか?」

    唯「えへへ。たい焼きが呼んでるんだもん。4つ買ってくるから、待ってて~」

    ト「魚…でございますか?」

    若「魚の姿をした、甘味じゃな。前に一度食した。家族一同で、祭を見に行った後にの」

    源「甘い魚。それはまた奇態な」

    唯「お待たせ~。温かいうちに食べよっ」

    近くのベンチに座り、食べ始めた四人。

    唯「う~、甘ぁい。生き返るぅ」

    若「大袈裟じゃの。昼飯が辛かったからであろうが」

    唯「それは言える」

    若「このたい焼き、実に香ばしいのう」

    唯「だね。前にお祭りで買って帰った時はさ、だいぶしなっとしてたもん」

    源「優しい味がいたします」

    ト「なんか、落ち着きますね」

    唯「あー美味しかった!おやつタイムが済んだら、ぼちぼち帰りますか~」

    帰り道、歩道を歩く四人。前に、買い物袋を持った若君と、腕を絡ませご機嫌な唯。

    トヨ 心の声(こちらの世での夫婦とは、きっとこのような形なのね)

    後方から、チリンチリンと音がする。

    唯「あ、自転車通るよ。寄って~」

    ト「え、え?どちらに避ければいいの」

    源「おい、何をもたついておる」

    その時、源三郎の腕がスッと伸び、トヨの手を掴んで引き寄せた。

    ト 心(あっ)

    四人の脇を、自転車に乗ったおじいさんが、ベルをチリンチリン鳴らしながらヨロヨロと通って行く。

    源三郎 心の声(音を鳴らしながら走るとは、すわ一大事とも思えるが…どう見ても違うな)

    ト 心(キャー!キャー!)

    通り抜けていった。が、源三郎は手を握ったまま。

    源 心(この手、どうすべきか?俺は、どうしたいんだ…あっ)

    ギュッと握り返された手。源三郎が驚いてトヨの顔色を窺うが、恥ずかしそうにそっぽを向いている。

    源 心(俺に足りぬのは、これなんだな。済まない、トヨ)

    ト 心(離さないんだから!あぁでも、お二人がご覧になったら絶対ほどかれちゃうわ。唯様、忠清様、どうか振り向かないでください!)

    かわって、前の二人。

    若「今の御仁、じい程の歳か?」

    唯「もっといってない?」

    若「ならば尚更、自転車に乗っておられるとはたまげる」

    唯「あの、倒れそうで倒れない超スロースピードは、おじいちゃんあるあるなんだよね~。まねはできない」

    若「そうか、じいも世が世なら自転車を操ると」

    唯「やっとホームセンターのカートから昇格?あ、でもね、カートでもあーゆーのもあるよ」

    道の反対側に、高齢者用の電動カートに乗るおばあさんを発見。

    若「何じゃ、あれは車か?これまたゆるりと動いておる」

    唯「歩くくらいの速さにしかなんないんだよ」

    若「ほほぅ」

    唯「つーかさぁ、そもそもじいって馬に乗れるから、それで良くない?」

    若「歳も歳じゃ。長くは乗れぬ」

    唯「たぶんだけどさ、たーくんがちっちゃい頃のじいも、見た目今とあまり変わんなくない?」

    若「…言われてみれば」

    唯「でしょ。じい、って名前の、別の生き物だと思うなー。だからずっとあのまんまだって」

    若「そうか?」

    唯「そうそう。だからきっと、元気で長生きだよ。ふふっ」

    若「そうか。ハハハ」

    話に花が咲き、帰宅まで後ろの二人の甘酸っぱさに気付く事はなかった。

    唯「あー、着いた着いた。あれ?歩くの速過ぎた?二人とも顔赤いけど」

    源「そ、そうですか?」

    ト「担々麺をいただいたから?」

    唯「何時間も前だし源三郎食べてないし。ま、いっか。お疲れ様でした~」

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    16日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days20~16日12時、召し上がれ

    辛くて、甘くて、心が熱い。
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    公園を出て、ラーメン店にやって来た。

    唯「良かった。ギリ混む前だったね。入ろっ」

    四人掛けの席につく。

    唯「どうしよっかな。たーくん何にする?」

    若君「唯はいかが致す」

    唯「私、今日は担々麺にしよっかな」

    若「そうか。このチャーハン、はよくお父さんがフライパンを操り作られる飯か?」

    唯「そうだよ。こういうお店だと家のコンロより火が強いから、もっとパラパラでおいしいと思うよ」

    若「お父さんのチャーハンも大層美味じゃが。ではこれを」

    唯「二人には、初めてのヒトにはこれ、ってのを頼むね。いい?」

    トヨ「はい」

    源三郎「お願い致します」

    注文。

    唯「チャーハン一つと、担々麺一つと」

    若「ラーメン二つ。麺固め、油少なめ、全部のせを」

    店主「はい、かしこまりましたー」

    源「え」

    ト「そのような、長い名の品なのでございますか?」

    唯「違うんだけどね」

    若「初めて此処に参った折、尊がこう注文しておった。呪文のようじゃが、美味いラーメンが出てくる」

    ト「美味しさの呪文なんですね」

    源「心得ました」

    メニューが揃い、昼ごはん。

    源「これは美味い」

    ト「初めていただく味ですが、美味しいです」

    若「口に合うたなら、何よりじゃ」

    唯の担々麺をじっと見ているトヨ。

    ト「器の中が、赤い…」

    唯「でしょ。辛いけど、ちょっと食べてみる?」

    ト「はい。いただいてみたいです」

    唯「じゃあ私のと交換しよっか」

    受け取った器の中を、しげしげと見つめるトヨ。

    ト「地獄池?」

    唯「見た目そんなだけど、おいしいから」

    一口食べてみるトヨ。源三郎も不思議そうな顔をして様子を見ている。

    ト「あ、辛い、でも旨味もあり美味しいです」

    唯「でしょ」

    ト「ありがとうございました。お返しします」

    唯「もういい?源三郎は?」

    源「え!いえわたくしは、お気持ちだけで」

    唯「そう。じゃあ戻しまーす」

    若「唯。ほれ」

    唯「なに?あっ、一口くれるの?」

    若君が、チャーハンをレンゲに掬い、唯の目の前に差し出している。

    若「欲しかろうと思うて」

    唯「ありがと~。あーー」

    若「大きく開けたのう。腕もろとも食らうつもりか?」

    笑いながら、レンゲを唯の口元へ運ぶ若君。

    唯「うん。おいひい~」

    若「幼子の様じゃな」

    唯「たーくん、担々麺食べさせてあげよっか」

    若「…」

    唯「なんで黙るのー、ヤなの?」

    若「麺を掴み損ね、落とす様が目に浮かぶ」

    ト「いくらなんでも、そのような」

    唯「なによぅ。そりゃ焼きそばは確かに落としたけどさ」

    ト「既に大変な目に遭われたと」

    唯「まっ、こんな赤い汁が服に飛んだらヤバいもんね。じゃあ真ん中に置くからさ、ご自由にどーぞ」

    若「では少々いただく。ん?源三郎?」

    源「は、はい」

    若「箸が止まっておるぞ。もう腹一杯か?」

    源「胸が一杯です」

    若「上手いの。いや、そうではなく」

    源「食事を仲良く分け合い過ごす、この穏やかなひと時に、いたく感銘を受けております」

    唯「話が大きくなってるな」

    源「かつて若君様が大殿と対峙された程、道を探り、強く願われた日々は夢の話ではなかったと。此度この先の世にお連れいただいたのは、私やトヨにそれを伝える為であったのですね」

    若「参った所以の一つではある。戦に依らぬ和平はあるとな」

    源「ようわかりました。心にしかと留め置きます」

    ト「はい。わたくしも」

    唯「良かったね、たーくん」

    若「あぁ。源三郎、泰平の世でも腹は減るぞ。食せ」

    源「ははっ」

    ごちそうさまでした。

    唯「会計してくるー。外で待ってて」

    若「わかった」

    店の前で待つ三人。

    若「また、しばらく歩くぞ」

    源「どちらへ参りますか?」

    若「スーパーに、包み紙を買いに行く」

    ト「野菜を買い求めた所ですね。包む?」

    若「贈り物に使う。じきにクリスマスであるので」

    源「クリスマス。祭祀か何かで?」

    若「わしも初めて迎えるゆえ、ようわからぬのじゃが、少なくとも、唯の機嫌はすこぶる良うなる」

    源「そうですか」

    ト「楽しみにされているのですね」

    唯が出てきた。

    唯「お待たせ~。行こっか」

    若「良いか。では、出立」

    唯&源三郎&トヨ「ははっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    御成り、もとい、ダブルデートは続きます。

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    四人の現代Days19~16日11時、あなたしか見えない

    二人だけの世界。
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    ボートを降り、自動販売機で飲み物を買って休憩中の四人。

    若君「唯。無茶はならぬ」

    唯「はいはい」

    若「トヨが疲れ切っておるではないか」

    唯「ごめーん、トヨ。ちょーっとムキになっちゃって」

    トヨ「いえ。少し休めば大丈夫ですので」

    源三郎「あの、忠清様。もしやあれは」

    源三郎が遊具を指差した。

    若「そうじゃ。あの、童達が遊んでおるのが、ブランコじゃ」

    源「おぉ。あれが真の」

    しばらくすると、一台空いたのでブランコにやってきた四人。

    若「トヨ、乗ってみよ」

    ト「わたくしが先でよろしいのですか?」

    唯「どーぞぉ」

    ト「恐れ入ります」

    源「何やら、音がいたしますな」

    唯「あ、そうだね。ギーコギーコって」

    ト「大きく揺れるのですね」

    若「木に縛っておると、ここまではならぬからのう」

    トヨ、源三郎と乗り、次に唯がブランコに腰掛けた。

    若「唯。後ろから押してやろう」

    唯「え、そう?お願いしまーす」

    そっと押してやる若君。

    唯「なんか、久しぶり」

    若「あぁ」

    唯「風邪引く前に、たーくんの部屋の前のブランコで押してもらった以来?」

    若「そうじゃな」

    二人の様子を眺める源トヨ。

    源三郎 心の声(忠清様、この時を待たれていたかのようじゃ)

    トヨ 心の声(慈しむように、唯様を見つめる優しい笑顔が素敵だわ)

    唯「たーくん」

    若「ん?」

    唯「さっきはふざけてごめんなさい」

    若「構わぬ。そこまで動けるのは、病が治癒した証ゆえ」

    唯「…ありがとう」

    ブランコを降りた唯。

    唯「えっとぉ」

    若「うむ」

    唯「ここは公共の場所だし、周りにいっぱいヒト居るけど」

    若「何が望みじゃ?」

    そう言いながら近づき、唯の顎先に触れる若君。

    唯「あの、ごめんね。そっちじゃない」

    若「違うたか」

    唯「くるくる、して欲しいな」

    若「ハハハ、そうか。くるくるじゃな」

    源三郎&トヨ「くるくる?」

    唯と若君は遊具から離れ、広い所に出た。

    ト「何?」

    源「?」

    唯を抱き上げる若君。お姫様抱っこ。

    ト「まぁ」

    源「なんと」

    若君がくるりと回転する。首に腕をからめ、しがみつく唯。

    唯「キャー!」

    若「ハハハ~」

    ト「素敵…」

    源「…」

    唯「もう一回~」

    若「よし」

    唯「キャハハ~!」

    女性1「まるで映画のワンシーンだわ」

    女性2「若さっていいわねぇ」

    公園内の女性達をも釘付けにしていた。

    唯「ふぅ。ありがとたーくん」

    そっと下ろされた唯。

    唯「あ。めっちゃ見られてる?」

    若「その様じゃな」

    うっとり見ていたトヨと、恥ずかしそうにしている源三郎。

    唯「失礼しましたっ」

    ト「いえいえ」

    唯「これでご飯、何杯いける?」

    ト「四杯は」

    源「四杯?!どんだけ食うんだ」

    若「それは如何にも多かろう」

    ト「いえ!あの、物の例えと申しますか…」

    唯「あはは~、トヨ、かーわいーい!」

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    続きます。

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    四人の現代Days18~16日月曜9時、水上の戦い

    根に持つ、までではなかったと思うけれど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝からいい天気になった。

    唯「絶好のデート日和~」

    覚「いよいよ城跡か」

    源三郎「黒羽城が跡形もないなどとは、俄には信じ難いのですが」

    若君「こちらの世では、城は残っておる方が少ないそうじゃ」

    トヨ「さようでございますか」

    覚「昼飯はいらないんだよな?」

    唯「うん。ラーメン屋さんに行くつもり」

    若「久々じゃ」

    唯「夕方には帰るね」

    覚「わかった。じゃ、気を付けてな」

    唯「はーい。行ってくるねー」

    若「お父さん、行って参ります」

    源三郎&トヨ「行って参ります」

    黒羽城公園までの道すがら。前に、手を繋いで歩いている唯と若君。後ろに源トヨ。

    トヨ 心の声(いつかお二人のように、仲睦まじく手を繋いで歩けるかしら)

    公園に着いた。

    若「まずは、城跡へ」

    木々の間を抜けて、奥へ進む。

    源&ト「…」

    石垣のみ残る、城跡を見上げる源トヨ。

    若「言葉もないよのう」

    源「いつ頃から、このような姿に…」

    若「わしもそれは思うたが」

    唯「あのね。尊が言ってたんだけど、羽木家って歴史から突然消えたから、その、資料とかほとんど残ってないんだって」

    ト「まぁ…」

    唯「だから、火事なのか、ずっと後の時代に取り壊されたかもわかんないの」

    源「そうですか…」

    若「いずれ、燃え上がる様を目の当たりにするやもしれぬが」

    唯「縁起悪っ」

    若「そうなれば、しかと目に焼き付け」

    唯「日記にも書くと」

    若「そうじゃ。わしが、残していく」

    唯「カッコいいな。で、木村先生に見つけてもらうんだね」

    スワンボート乗り場にやってきた。

    源「鳥…ですか?」

    唯「白鳥の形の舟だよ。足で漕ぐの」

    ト「何ゆえ、鳥なのでしょうか」

    唯「わかんない」

    若「鳥が水面に浮かぶ姿を、模しておるのでは?」

    唯「そうかな。そうしとく。さてと、どう乗る?」

    若「漕ぎ方を教えねばならぬ。わしは源三郎と共に乗ろう」

    唯「わかったー。じゃあ私はトヨと乗るね。あ、今日は競争しないよ?」

    若「良いのか?」

    唯「たーくん、涼しい顔して本気出すからヤだ」

    若「そうじゃったかのう」

    ト「ふふっ。仲がよろしいこと」

    唯とトヨ二人とも、母に買ってもらった、体にぴったりしたスキニージーンズを穿いている。

    源「唯様もトヨも、足が長い…」

    若「そうじゃな。トヨは唯のように棒ではないが」

    源「棒、ですか?至極健脚ではいらっしゃいますが」

    若「もののけ並の速さよのう」

    源「もののけ…あっ。そ、その節はご無礼致しました」

    若「ハハハ」

    バシャバシャと漕ぎ出した四人。だが、女子スワンが不穏な動きをしている。

    唯「ふっふっふ」

    ト「唯様、もしや」

    唯「えーい!」

    ト「あーっ!」

    男子スワンに、わざとぶつかった女子スワン。

    若「おっ、と。何事じゃ、上手く操れなんだのか?」

    女子スワンの様子を、振り向いて覗く源三郎。

    源「いや…そうではなさそうです」

    若「何故そう思う」

    源「唯様が、不敵な笑みを浮かべておられます」

    若「なんと」

    唯「へへーん。あ、ごめんねトヨ」

    ト「あー、びっくりしました。どうしたんですか?」

    唯「ん?なんでもなーい」

    源「忠清様。何か唯様の機嫌を損ねるような事でもなさいましたか?」

    若「身に覚えはある。前に、この舟の速さ争いで競り勝っておる」

    源「それは…最も敵に回してはならぬお相手です」

    若「そうじゃの。おっと」

    源「わっ」

    またぶつかってきた唯スワン。

    若「源三郎」

    源「はい」

    若「退陣じゃ」

    源「はっ!」

    全速力で逃げ出した男子スワン。

    唯「あー!待てぇ~」

    ト「唯様ぁ~足がもちませーん!」

    しばらく戯れていた二羽だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days17~15日19時、針のむしろ

    学校での過ごし方が、変わるかな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クラスメートの女子三人と、立ち話する尊。

    女子高生1「私達さ、大学が推薦で決まった記念で、今日一日遊んでるんだ。もう帰るところだけど。速川は誰と来てるの?」

    尊「家族で。ただの付き添いだけど」

    女子高生2「へー。仲イイんだね。速川も大学、推薦だっけ?」

    尊「ううん、違う」

    女子高生3「違うの?え?成績、いっつもクラスでトップなのに?」

    尊「僕、一年の時ほとんど学校行ってなかったからさ、出席日数が推薦枠の基準に足りなくて的な」

    女3「そうなんだ…」

    女1「速川って、こんなに話しやすかったんだ。いつも一人で居るじゃん」

    尊「ヒトが苦手なんで」

    女2「今全然そんなん見えないよ。ねぇねぇ、大学決まったらさ、男子も一緒に遊ぼうって約束してるから、速川も入らない?」

    尊「あ。…はい」

    女2「じゃあLINEを交換~」

    尊「あ、ごめんなさい、スマホ部屋に置いてきちゃった」

    女2「じゃあ、明日学校でやろっ」

    尊「うん」

    女3「そろそろ帰るねー」

    女1「じゃあねー」

    尊「外、もう暗いから、気をつけて帰って」

    女3「えっ」

    女2「ジェントルマン!」

    女1「ありがとー」

    女子達は、手を振って去っていった。

    女1「なんか、意外~」

    女3「すっごい気さくっていうか」

    女2「もっと早く、仲良くしとけば良かったね」

    部屋に戻っていく尊。

    尊 心の声(大笑いした後だったからかな。なんか気負いなくすんなりしゃべれた。兄さんのお陰だな)

    ドアを開けて部屋に入ろうとすると、

    唯「おかえり。さっき、お腹押さえてたけど大丈夫だった?」

    尊「あ、うん大丈夫。ごめん、心配させて」

    唯「なに飲む?みんなの分、一緒に運んでよ」

    尊「あいよー」

    歌は続いている。

    覚「次は、とっておきのを歌おうと思う」

    美香子「あら、そう。メッセージ?」

    覚「あぁ」

    曲名が画面に表示された。

    源三郎「あっ」

    若君「おっ」

    トヨ「まぁっ」

    尊「こんな歌あるんだ」

    唯「へぇ」

    覚が歌い始める。

    覚「おさななじみの想い出は~、青いレモンの味がする~」

    ト「…」

    字幕を目で追うトヨ。

    唯「これ、何番まであるの?」

    美「10番くらいじゃないかな」

    唯「長っ」

    唯 心の声(この歌…お父さん、わざとだな)

    覚「その日のうちのプロポーズ、その夜のうちのくちづけは~」

    源三郎をチラっと見た唯。

    唯「くちづけは、誰かさんのせいでずっと後だったなー」

    源「す、済みませぬ」

    若「そう責めるな、唯」

    若君 心の声(この歌…お父さんは、このような生き様もある、と仰せなのであろう)

    覚「愛のしるしのいとし子は~、遠い昔の君と僕」

    曲が終わった。

    美「お父さん、良かったわよ~」

    若「心温まりました」

    唯「ハッピーエンドだ。ねっ、トヨ?うわっ」

    トヨが泣いている。

    ト「感動しました…」

    唯「だよねー。ねぇ、源三郎」

    源「は、はっ」

    尊「源三郎さん、すごい汗かいてる」

    若「ハハハ。何ぞ思うところがあるのじゃろ」

    源「はあ…」

    唯「ヨレヨレだなぁ」

    覚「じゃあ、そろそろ帰るか」

    唯「はーい。たーくん、どうだった?」

    若「実に楽しい時であった」

    美「良かったわ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    15日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days16~15日18時、美声!

    最後まで聴かないなんて、勿体なくない?
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    美香子「線路の脇の、つぼーみはー」

    両親の熱唱は続いている。

    若君「この機械、で歌いたい歌を探すのか」

    尊「そうです。大抵の曲は入ってると思いますよ」

    若「ならばあの、唯の歌うた」

    唯「げっ」

    尊「は?お姉ちゃん、兄さんの前で歌ったの?こっちで?向こうで?」

    唯「向こうで。まっ、いい思い出かな」

    尊「初耳~。誰の曲歌ったの。探すよ?」

    唯「いい、自分で探すからそれ貸してっ」

    機械を操作した唯。

    尊「…童謡?唱歌か。なんでまたこれ?」

    唯「いろいろありまして」

    若「穏やかでおおらかで安らぐ歌じゃ」

    歌の順番が回ってきた。

    美「あら、唯が歌うなんて珍しい」

    覚「ほー、いいねぇ」

    歌い進める唯。

    唯「よくー、茂ったぁもーのーだっ」

    覚&美香子&尊「ほい!」

    若「おおっ!」

    源三郎「何やら感動されておられるような」

    トヨ「そうね。とても明るい歌で」

    唯「へー、2番はこんな歌詞だったんだ、知らなかったぁ」

    若「小平太が止めて丁度良かったのか」

    歌が終わった。全員が拍手する。

    唯「どーもどーもぉ」

    若「唯」

    唯「なに?あ、イェーイ!」

    若「イ、エーイ」

    若君の右手が上がっていた。ハイタッチした二人。

    唯「ふう。一仕事終わったぁ」

    美「忠清くんも、歌えるといいのにね。何度も現代には来てるけど、さすがにそれは無理かな」

    若「歌、ですか」

    若君が考えている。

    唯「お母さーん、たーくんを悩ませないで~」

    美「ごめんごめん」

    若「一つ、あるのですが」

    唯「え」

    尊「え、何の歌が分かるの?」

    若「尊が録音、をしてくれた、体操の歌なら、永禄で幾度も聞いておるゆえ分かる」

    尊「ラジオ体操の歌?あたーらしーいー」

    若「朝が来た」

    覚「それかー」

    美「あるかな?」

    尊「探してみる…あ。あったよ」

    唯「あるの?!」

    尊「入れてみる?」

    唯「う、うん。怖いもの見たさで」

    尊「なんだそれ。兄さん、歌ってみます?」

    若「そうじゃな。良かろう」

    唯「ぜ、前代未聞…」

    曲が流れ始めた。若君がマイクを構える。

    若「新しい、朝が来た、希望の、朝だ」

    唯「歌ってる、歌ってるよぉ」

    美「いい声ねぇ」

    覚「ちゃんと腹から出てるしな」

    ト「忠清様の、新たな一面を拝見したわ」

    源「そうだな」

    尊の様子がおかしい。

    尊 心の声(ダメだ、ツボに入った!笑える、でもここで笑ったら兄さんに失礼過ぎる)

    尊「ごめん、ちょっと」

    覚「何だ、トイレか?急いで行ってこい」

    若君に会釈をし、部屋を出た尊。走って、角を曲がった所でしゃがみこんだ。

    尊「アハハハハ!ゴホッ、ヒー!苦しい~、ハハハハ!」

    ゲラゲラ笑う尊。ひとしきり笑い続けた後、深呼吸して、立ち上がった。

    尊「あー、兄さん許して。かなりウケちゃって、ごめんなさい!」

    部屋に戻ろうとしたところ、

    女子高生1「あれ?速川」

    女子高生2「あ、ホントだ」

    女子高生3「珍しい~こんなトコに来るんだ」

    尊「え?あ、こんばんは…」

    クラスメートの女子達に遭遇した尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days15~15日15時、熱唱!

    いきなり、嵐に巻き込まれる。情熱の。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    神経衰弱をしている、唯と若君と源トヨ。

    唯「やっぱ源三郎も、これ得意だね」

    美香子「あらゆる所に目を光らせるのに長けてるのね。さすがだわ」

    源三郎「お褒めいただけるとは。痛み入ります」

    唯「今日の晩ごはんなにー?」

    覚「もうその話か。夜は出かけるぞ」

    唯「やったー!なに食べに行くの?」

    美「パーティー系メニューかな?ピザとかフライドポテトとか」

    唯「どゆこと?」

    美「前回あなた達が帰って来た時に、行きそびれた場所に行こうと思ってね」

    若君「行きそびれた。もしや」

    唯「たーくんわかるの?」

    若「吟ずる処では。歌会と聞いた覚えがある」

    唯「まさか…カラオケ?」

    美「当たり~」

    唯「えぇっ?!そりゃ行くのはいいけどさ、歌うのお父さんとお母さんだけじゃない」

    若「唯は歌わぬのか?」

    唯「お父さん達が行くのに毎回ついてくだけ。尊もね。だって二人してずーっと歌ってるんだよ。しかもわかんない歌ばっかり」

    覚「素晴らしき昭和歌謡じゃないか」

    若「お父さんお母さんが楽しんでおられるのに、寄り添うておるのじゃな」

    唯「たーくん、そんなんでいい?」

    若「勿論じゃ」

    唯「尊は?留守番?」

    美「連れてくわよ。だから日中は勉強させてる」

    唯「一番迷惑なのは尊か…。源三郎、トヨ、今夜は全員でお出かけだよ」

    トヨ「まぁ。楽しみです」

    源「はい…」

    若「また車に酔うやもと案じておるのか?」

    覚「車を嫌いになって欲しくないからさ、酔い止め薬買っておいた。乗る前に飲んでもらうよ」

    美「だから怖がらないでね、源三郎くん」

    源「お心遣い、ありがとうございます」

    もうすぐ17時。尊が部屋から下りてきた。

    若「おぉ、尊」

    唯「お疲れっ」

    尊「ホントだよ。源三郎さん、トヨさん、今度は僕も一緒にトランプさせてくださいね」

    ト「はい!」

    源「是非お願い致します」

    車2台に分かれて出発。

    唯「たーくん、カラオケさ、マジ音デカくてうるさいからね」

    若「わかった」

    カラオケ店に到着。部屋に通される。

    若「暗い部屋じゃの。これはテレビか?随分と大きいのう」

    源「光が瞬いております」

    唯「さてと、何食べる~?ポテト?唐揚げ?」

    尊「このいろいろ盛ったヤツで良くない?あとたこ焼きとピザ」

    唯「了解~頼んじゃうね」

    美「はーい、飲み物よ~。フリードリンクだから、後は勝手に取りに行ってねー」

    ト「こちらに置けば良いですか?」

    覚「あー、ありがとねトヨちゃん」

    若「いつの間にやら事が進んでいっておる」

    源「その様ですね」

    両親が、歌い始めた。

    覚「君が~望むなら~!」

    美「ヒデキー!」

    覚「生命をあげてもいい~!」

    美「覚ー!」

    尊「最初から突っ走ってるな」

    唯「ん。いつも通り。ごめんね~びっくりでしょ?」

    若「これは、確か前に参った折に歌うておられた…奇天烈な…」

    唯「しーっ」

    若「済まぬ」

    尊「あのですね、適当に手拍子とか、そこにある、それ楽器なんですけど」

    源「これでしょうか?」

    タンバリンを手に取った源三郎。

    尊「適当に音に合わせて振っとけばいいです」

    若「適当が多いの」

    唯「ピタっと合えば盛り上がって、二人とも喜ぶけどね」

    若「ほぅ」

    尊「やってみましょうか」

    フライドポテトをつまみながら、シャンシャンと音楽に合わせてタンバリンを操る尊。

    若「上手いの。しかも食しながらとは」

    唯「トヨ、どうかした?ずっと画面見てるけど」

    ト「言葉が流れております」

    唯「あ、そうだね。歌詞がね」

    ト「心を打ちます…」

    唯「へ?!どの辺が?!」

    ト「あ、あの、ここです」

    覚「二人は愛を、永遠にきざもう~!」

    唯「新発見。そういう目で見たコトなかった」

    尊「恋だ愛だの歌が多いしね」

    ト「いいですねぇ…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days14~15日日曜10時、内密に願います

    恋愛マスターだから、いくつ?なんて聞かないとは思うけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    外は、雨。

    唯「いつまで降るのかなぁ」

    美香子「どこか行きたい所でもあるの?」

    唯「黒羽城公園。源三郎とトヨに城跡見せたくて」

    覚「明日は晴れるらしいぞ」

    唯「そうなんだ。じゃあ明日行こっかな」

    食卓で若君が、源トヨにトランプの説明を始めた。

    若君「この三つ葉の形は、クラブ、と申す」

    源三郎&トヨ「クラブ。はい」

    若「この槍先の形は、スペード。菱の形は、ダイヤ」

    源&ト「はい」

    若「この散り落ちた花びらの形は、ハートじゃ」

    覚「そう来たか」

    美「風流ね~」

    覚「だな。あのさー」

    美「何お父さん」

    覚「今日の昼、もんじゃ焼きにしようと思うんだけど」

    唯「もんじゃ!やったー」

    覚「んー、二人にどう説明しよう」

    源三郎「わかります」

    トヨ「はい」

    覚「え、なんで?」

    若「畏れながら、お父さん」

    覚「なになに!畏れながらに恐れをなすよ」

    若「師匠の足元にも及びませぬが、永禄でそれらしき料理を作り、四人で食しまして」

    美「まあ」

    覚「そりゃ凄いな」

    若「是非、源三郎とトヨに、真のもんじゃ焼きの伝授をお願い致します」

    覚「いや、本場とはまた違うと思うけど。大分手の痛みも引いたから、みじん切り頑張ろうと思ってさ」

    若「それはわしが」

    ト「わたくしで良ければ、支度を」

    美「なんていい子達なの~」

    覚「泣けてくるな」

    唯「トヨさぁ、みじん切り上手だと思うけど、キャベツは初めてだからどうだろ」

    覚「手を出さない奴が口を出すんじゃない」

    唯「すんませーん」

    昼になった。ホットプレートで、もんじゃ焼きがフツフツ言い始めている。

    ト「火種が見えませんが、煮炊きができるのですね」

    尊「そうですね」

    源「齢二十四を数えても、初めて知る事柄ばかり…」

    唯「いや、今ここに居るのがかなり特殊だし」

    尊「源三郎さんと兄さんって、歳は三つ違いでしたよね?」

    若「そうじゃ」

    尊「じゃあ兄さんは今、数えで21」

    唯「それがなんなの」

    尊「もう満年齢でもハタチになってるよね。こっちでもようやく、お酒が飲めるんじゃないかなって」

    覚「え、そうなの?」

    美「それ間違いない?」

    尊「大丈夫だと思うけど…また計算しとくよ。これ、もんじゃそろそろできてない?」

    覚「あー、そうだな」

    ト「この鋼の品がハガシでございますか?」

    若「そうじゃ」

    尊「それもわかるんだ」

    源「竹で出来ておりました」

    覚「え、もしかして作った?」

    若「はい。四人分誂えました」

    美「すごーい。準備万端で臨んだのね。さすが忠清くんね」

    唯「えー、ヒマだからじゃ…」

    美「唯。そんな失礼な事言わないの」

    覚「寸暇を惜しんで、だろ。なぁ、忠清くん」

    若「ハハハ、はい」

    唯「ちぇー、怒られたー」

    ト「ぷっ」

    源「フフッ」

    若「愉快じゃろう?これを家族の団欒、と申すのじゃ」

    源&ト「はい」

    覚「おーい、端が固くなる前に、どんどん食べてくれ~」

    食後。

    尊「うん、やっぱりもうお酒OKだよ。っていうか、夏に来た時も大丈夫だったんだけど。ごめん、気付かなくて」

    覚「いやいや、こっちも聞かなかったしな。そうか~、これでいよいよ忠清くんと源三郎くんと」

    少し身構えたトヨ。

    トヨ 心の声(私、歳を聞かれるのかしら?どうしよう)

    そんなトヨの戸惑いに気付いた唯が、

    唯「トヨも飲める歳、とだけ言っとく」

    ト 心(まぁ…唯様…)

    覚「そうか、トヨちゃんもか。いや~みんなで酒を酌み交わせるのは嬉しいなぁ」

    若「とうとうその日が参ったのですね」

    覚「前から気になってた、銘酒いろいろ取り寄せようかな」

    美「あら、いいわね。楽しみね、忠清くん」

    若「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days13~14日15時、ヘルプ!

    令和に連れてきた甲斐がある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって、家で留守番中の男子達。若君は、集中してレジンと格闘中。尊は参考書片手にその様子を見守っている。覚がカメラの手入れを始めたのを、源三郎が興味深く覗いている。

    源三郎「一昨日の夜に見た品ですね」

    覚「そうだね。また色々撮ってあげるよ。ところで、奥に飾ってある写真、見たかい?」

    源「いえ?」

    リビング奥の飾り棚前に歩いていく覚。源三郎もついていった。

    源「これは…私が見て良い物でしょうか」

    覚「どれ?あー、海に行った時のだね」

    波打ち際。唯を真ん中に、尊と若君が浮き輪片手に並んでいる。

    源「忠清様と尊殿が半裸…いや、それより」

    覚「女性のビキニ姿は、戦国時代の男性には刺激が強いよね」

    源「こちらの世では、珍しくはないいで立ちですか?」

    覚「まあそうだね。泳ぎに来てるし」

    源「泳ぐ…半裸で…」

    覚「源三郎くんさ」

    源「はい?」

    覚「もしかして、トヨちゃんのこんな姿、想像してない?」

    源「え!それは、あの」

    覚「気になる女性が居れば、自然な話だよ」

    源「は、はぁ…忝ない」

    覚「でも、女性陣には内緒にしとこうな」

    源「はい。あのお父さん、この奥にあるのは」

    覚「これはね、写真を撮る専門の場所に行った時の、唯と忠清くんの結婚式の写真だよ」

    源「結婚式?」

    覚「あ、そうか。えーと、祝言だね」

    源「ほぉ…この白装束がですか」

    若君「この白装束は、幸せに満ちておるじゃろ」

    いつの間にか、後ろに若君と尊が立っていた。

    源「忠清様…」

    若「このような折には」

    源「はい」

    若「姫に、綺麗だよ、と申すのじゃ」

    源「月、ですか?」

    尊「あー。兄さん、源三郎さんに話したんですね。月が綺麗だ話」

    若「あぁ。どうなったかは聞いてはおらぬが」

    源「…」

    覚「何だ?急に月が雲に隠れたぞ?」

    若「上手くいかなかったのか?」

    源「わたくしが悪いのです。意気地無しなのです…」

    覚「何か、こじれちゃったのかな?」

    尊「大変そうだね。これは、恋愛マスターの出番じゃない?」

    源「え?」

    若「そうじゃな。源三郎、わしは今しばらく作業に勤しむゆえ、しばしお父さんに話を聞いて貰うが良い」

    源「お父さんが。よろしいのですか?」

    覚「僕で良かったら、相談に乗るよ」

    源「はい…それでは師匠、お頼み申します」

    ソファーに並んで座る覚と源三郎。打ち明け話が始まった。食卓に若君と尊。

    尊「いいんですか?一緒に聞かなくて」

    若「聞いて良いならば、とうにわしに話しておる」

    尊「それもそうだ」

    若「お父さんに任せておけば安心じゃ」

    尊「兄さん、そう言いながら、手元が疎かになってますよ」

    若「お、ハハハ、これはしたり」

    次々と、若君の手で花が透明なレジンに浮かんでいく。

    尊「アクセサリーキット買っといて正解だったな。まさか兄さんが作るなんて夢にも思わなかったけど」

    尊が唯や若君あてに作ったのは、簪など和物アクセサリーだったが、キーホルダーやネックレスなども作れる材料は揃えてあった。

    若「よし。随分と慣れたゆえ、次は尊の為に作ろうと思う。どの型が良い?」

    尊「えっ、作ってプレゼントしてくれるんですか?」

    若「クリスマスプレゼント、じゃな。良ければであるが」

    尊「えーそんな!何でも嬉しいけど、選んじゃってもいいですか?」

    若「うむ」

    尊「わぁ。やっぱキーホルダーかなー、でも色々あるなぁ。自分が買ったのに悩んじゃうよ」

    若「ハハハ」

    夕方になった。女性陣帰宅。

    唯「ただいまー!」

    トヨ「ただいま戻りました」

    尊「おかえりー」

    若「おかえりなさい」

    美香子「留守番ありがとね。あら、ソファーに珍しい組み合わせ」

    覚「お帰り」

    源「お帰りなさいませ」

    若「もう、話は良いのか?」

    覚「また聞かせて貰うよ。なっ、源三郎くん」

    源「はい。お願い致します」

    尊「お姉ちゃん達、また何かおやつ食べてきたんでしょ?」

    唯「バレた?」

    尊「バレるも何も、それも込みのお出かけでしょうが?今日は何食べたの」

    唯「パフェ~」

    尊「あっそう」

    ト「あの、とても美しくて、甘くて、感動しました」

    尊「そうなんですね。それは良かったです」

    唯「トヨには言い方が優しいよねぇ」

    尊「食い意地張ってるヒトと一緒にはしない」

    唯「なんだとー」

    美「唯、中身が追いついてない」

    唯「すんません。たーくん、お母さんに服買ってもらったの!またデート行こうねっ」

    若「そうか。ありがとうございますお母さん。それは楽しみじゃ」

    唯「トヨも買ってもらったから、源三郎もだよ?デート」

    源「は、はい、わかりました」

    唯「だってさ、トヨ」

    ト「唯様、ありがとうございます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    14日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days12~14日14時、姫にお似合いです

    可愛いい娘が二人。そりゃ気分もアガる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子の車で出発。

    唯「今日はどこ行くの?」

    美香子「ショッピングモールよ」

    唯「買い物?また?」

    到着。一軒の店に入っていく美香子。

    唯「ジーンズの店だ」

    美「うん。デニム系で揃えようかと思って」

    唯「え、服買うの?だって」

    美「一月だけだから要らない、はもう言っちゃダメよ。私がそうしたいんだから」

    唯「…はい」

    棚をくまなく見て回る母。

    美「この辺かな。あなた達、細身で脚も長いし。だから体にフィットしたスキニージーンズをね」

    唯「あ、よく伸びるー。え、今はいてるのじゃダメなの?」

    トヨも唯のジーンズを穿いているが、二人とも比較的ダボっとしたゆるめのシルエット。

    美「唯もすっかり色っぽくなってるから、こんなのもいいと思う」

    唯「そぉ?でへへ~」

    美「中身が追いついてないけど」

    唯「すんません」

    美「じゃ、試着してみよう!トヨちゃんまずどうぞ」

    トヨ「は、はいっ」

    トヨが試着中。試着室の中から声がする。

    ト「あの…」

    唯「どしたー?」

    ト「脚の形があらわになって、恥ずかしいのですが」

    唯「どれどれ」

    美「トヨちゃん、ここには私達しか居ないから、見せてくれる?」

    カーテンが開いた。

    唯「いいじゃん!」

    美「いいわよ~。良く似合ってる」

    丈が長めのセーターから、体にぴったりなジーンズに包まれた、真っ直ぐな脚が伸びている。

    ト「これで、良いのでしょうか」

    唯「ばっちしだよぉ」

    ト「そうおっしゃるなら。わかりました」

    美「さすが戦国時代の女性ね。潔くて話が早いわ。はい、次~」

    次に試着した唯。大きめのトレーナーの下から、ジーンズを纏った細くて長い脚をニョキっと出し、その場で運動を始めた。

    唯「あ、スクワットが楽にできる、いいっ」

    美「それが決め手?でもいい感じよ。じゃあそれで、あとスカートを」

    唯「スカート!」

    美「前回はエリさんのワンピースでなんとか持たせたけど。唯にはやっぱりミニ丈かしら~」

    ト「お母さん、楽しそうですね」

    美「娘二人と買い物だもの」

    ト「二人。…嬉しいです」

    美「トヨちゃんには膝下丈位がいいかな」

    ト「私にもですか?」

    美「ふんふふーん。どれがいいかしら~」

    それには答えず、何着か手に取る母。

    唯の囁き「ここは、黙って話に乗っかった方がいいよ。超ゴキゲンだしさ」

    トヨの囁き「はい。ではそのように」

    結局、唯にはミニ丈で少し裾が広がった台形型、トヨにはくるぶし近くまであるマーメイドラインのロングスカートに決まった。

    美「無事完了ね」

    唯「ありがとう!お母さん」

    ト「お母さん、ありがとうございます。私にまで」

    美「気兼ねなく、じゃんじゃん着てね」

    唯「これ、たーくん気に入ってくれるかな」

    ト「源ちゃん、気に入ってくれるかしら」

    美「同時に思うは彼の事ばかり。二人とも、可愛いいわね~」

    店を出た三人。

    唯「お母さん、今日は当然、スイーツタイムありだよね?」

    美「そのつもりよ。一昨日の夜は怒涛の如く行って帰ってきたもの。トヨちゃんにはちょっと気の毒だった」

    ト「いえ、とても楽しく過ごしましたので」

    唯「今日はもーっと楽しいよぉ。何食べよう~」

    ト「食べる?」

    美「またパンケーキ?」

    唯「それもいいけど、まずはパフェにしようよ」

    美「わかった」

    ト「?」

    喫茶店にやってきた。

    美「チョコレートパフェと、フルーツパフェと、レモンティーお願いします」

    店員「かしこまりました」

    唯「わーい!」

    ト「?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    さて、男性陣は今頃何してる?

    続きます。

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    四人の現代Days11~14日土曜9時、職人あらわる

    前にも言いましたが、弱みは唯に対してだけ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。

    唯「あ、そうだ。尊~、私がたーくんにプレゼントしてもらった、花束の写真出してよ。トヨに見せたいから」

    尊「あー、あれね。じゃあ」

    覚「おっ。じゃあ」

    唯「じゃあ?」

    尊「満を持して、アレのお披露目もしよう」

    唯「アレってなに?」

    尊「あの花束さ、ちょっとお花だけ手を加えたんだよ」

    若君「手を加えた。あのように?」

    両親が受け取った方の花束は、ドライフラワーになり、カレンダーの上に飾ってあった。

    尊「ううん。まあ、まず花束の写真出すよ。きっと驚くから」

    唯「ふうん?」

    若「術でも使ったのであろうか」

    唯達が持ち帰ったのと同じ写真を、大きく引き伸ばしてきた。

    唯「いやに親切。こんなにデカくなくても良かったけど」

    覚「おー、この方がわかりやすいな」

    源三郎「花ですか。これは華やかですね」

    トヨ「まあ、艶やか。このような贈り物をいただけたら、そりゃあ」

    源「そりゃあ、何だ?」

    ト「ただの一人言よ」

    若「して、この花がどのように?」

    尊が箱を、覚がシリカゲルの詰まったタッパーを出してきた。

    唯「なになに?!」

    尊「お父さんから見せてあげてよ」

    覚「了解~」

    手袋をはめた覚が、タッパーからそっと中身を取り出す。

    若「お、おぉっ!」

    唯「えーっ!そのまんまじゃん!」

    源「何と」

    ト「同じお花、ですか?」

    尊「はい。なんとか形も色も残せたんですよ」

    唯「すごーい!ねぇ、こっちの箱はなに?」

    尊「前回、花本体は持って行かなかったじゃない」

    若「令和の花を永禄に持ち込むのは良くない、と申しておったのう」

    尊「で、いつになるかはわからないけど、お土産に持たせてあげられたらいいなって思ってさ、作った」

    箱を開けた。

    唯「超キレーイ!」

    花を透明なレジンで閉じ込めた、手作り和物アクセサリーがわんさか出てきた。

    若「櫛や簪…中で花が舞っておる」

    ト「可愛いい…」

    源「丸い玉に紐が付いた品もございますな」

    尊「こうすれば、男の人でも使えるかなって思って」

    源「ほぅ…尊殿は、手練れであらせられるのですね」

    尊「そんな事ないです。でも、思ったより早く渡せて良かった」

    覚「この辺、僕が作ったんだ、この辺は母さんが」

    源「何と。お父さん、お母さんは、全てに秀でておられるのですね」

    覚「またまたー。でも褒められて嬉しいな~」

    若「花がここまでになるのは、どのような仕組みなのじゃ?」

    尊「さっき埋めてた粉で乾燥させて、この透明なレジンは、機械の光で固めるんです」

    若「光?術を持つ光か?」

    尊「兄さん、興味あるなら、まだ花も材料も残ってますから一度やってみます?」

    若「頼む」

    尊「用意しますね」

    早速、食卓に広げて開始した。

    尊「できるだけ、空気の泡が入らないようにするのがコツです」

    若「うむ」

    唯「たーくんがんばって~」

    覚「あい変わらず、唯は見てるだけだな」

    唯「うまくできそうにないもん」

    尊「なんでもただやる、ってモットーのお姉ちゃんが、なんでこういう作業はやんないかな~。謎だ」

    若「出来た。どうじゃ?」

    ト「まあ、お上手!」

    源「すぐに習得され、さすがでございます」

    覚「ギャラリーも手練れだ」

    そうこうする内に、昼になった。美香子がクリニックを終え戻ってきた。

    美香子「あら、レジンアクセサリー作ってたの?」

    尊「兄さんがね。すごく上手なんだよ」

    美「そうなの。天は二物も三物も与えてるわね。ところでトヨちゃん、唯」

    ト「はい、お母さん」

    唯「なに?」

    美「昼ごはん済んだら、私とお出かけしましょ」

    ト「お母さんのお供ですか。喜んで参ります」

    美「唯は?」

    唯「行くよ。たーくんが昼からもこれやるって言ってるから、暇だし」

    美「決まりね。男性陣には家を守っててもらいましょ。尊、少しは勉強しなさいよ?」

    尊「わかってるよ。ここで兄さんの様子見ながら参考書読むから」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days10~13日18時、夜襲?

    両親にはお見通し。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはんの支度中。

    覚「はさみ揚げ、カレー味も作るか?」

    若君「はい!」

    カレーの素の、忠清スパイスを棚から出す覚。

    トヨ「あの、お父さん」

    覚「何だい?」

    ト「棚の品が、全て忠清様のお名前になっておりますが…」

    覚「あ、バレた?カッコ良くない?何となく揃えてみたかったんだよね~」

    源三郎「忠清様が一品ずつ書かれたのですか?」

    若「いや、したためたのは一度だけじゃ。お父さんが分身を作られた」

    覚「いっぱい名前のシール作ったからさ、まだ残ってるよ。帰る時持ってく?」

    若「ハハハ。では頂戴します」

    唯「え?刀とかに、忠清のですってお名前シール貼るの?」

    若「それはせぬが」

    覚「唯が小さい頃さー、シールと見るとタンスや壁のそこら中にすぐペタペタ貼られて、剥がすのが大変だったよ。そういや…大きくなってからも、一騒動あったな」

    唯「あった。ソファーで寝てた尊の顔に貼ったら、後でブチギレされたんだよ」

    ト「あらら」

    源「奔放だ」

    若「微笑ましいのう。様子が目に浮かぶ」

    覚「忠清くん、持ち帰ったらちゃんと隠しときなよ。顔に貼られる」

    唯「たーくんにはそんなコトしないよ~」

    若「しかと心得ました」

    唯「やると思ってるな?」

    晩ごはん。

    覚「どうだい?蓮根のはさみ揚げは」

    源「美味いです。すぐに籠が空になったのも頷けます」

    ト「あの香りのままですね。美味しいです」

    覚「そうかそうか」

    尊「ありがとう兄さん、作るって言ってくれて」

    若「一日遅うなったが、食せて良かったのう」

    尊「兄さんと一緒だから、倍美味しいよ」

    唯「トヨ聞いた?尊いつもこうなんだよ。ここに実のお姉さまが居るのにさ」

    ト「大好きな兄上様なんですね」

    唯「尊が男子で良かった。女子だったら、たーくんの取り合いになってた」

    ト「それは…ないですよ。唯様以外を選ばれるなどそもそも有り得ませんので」

    尊「僕も同感です。ない」

    美香子「うん、ない」

    覚「ないな」

    源「ございませぬ」

    唯「たたみかけられたー。ねぇ、そうなの?たーくーん」

    若「わしに何が足りぬのであろうか…」

    唯「うぇっ」

    尊「あーあ、かわいそうに。お姉ちゃんが疑うから、兄さん悩んじゃった」

    美「そんな二人に耳寄りな話よ」

    唯「なに?」

    美「今夜からは唯の部屋に忠清くんね。予備室には源三郎くん一人で、トヨちゃんは私達の寝室の隣片付けるからそこで」

    唯「やったー!」

    若「そうですか。忝ない。源三郎とトヨも、それで良いか?」

    源「はい」

    ト「はい。やはり夫婦は共にがよろしいですので」

    美香子 心の声(忠清くん、セリフとは裏腹に、ニッコニコだわ)

    美「ふふっ。ご飯済んだら片付け手伝うのよ、唯」

    唯「はいはーい」

    ト「恐れ入ります」

    若「尊」

    尊「なに?兄さん」

    若「尊がもしおなごであったならば、その折は妹として大切にするからの」

    尊「わぁ…ありがとう。嬉しい」

    覚 心の声(こういう所が、忠清くんだな)

    21時。男子達は風呂へ。母と娘二人が二階へ。

    ト「まぁ、畳!」

    美「ちょっと物が多くてごめんなさいね」

    覚と美香子の部屋は二間続きになっており、隣の和室は和箪笥や衣桁や姿見、唯達の着物も畳んで置いてあった。

    美「動かせる物だけ、源三郎くんの部屋に置かせてもらおうかな。あっちは家具がない分広いから」

    ト「運びます」

    唯「トヨの布団取ってくるー」

    セット完了。二部屋を仕切る襖を閉めた。

    唯「お母さん」

    美「何」

    唯「ここだと、源三郎が夜這いしにくくない?お母さん達がすぐ隣だから」

    美「あ、そっか」

    ト「えーっ!なんて事おっしゃるんですか!」

    美「トヨちゃんが向こうに行って、寝込みを襲えばいいんじゃない?」

    唯「そりゃそーだ。がんばれ、トヨ」

    ト「嫌だ、お二人とも、からかうのは止めてください~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    13日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days9~13日14時、後押しします

    どんどん食べさせちゃって。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯とトヨ、スーパーに到着。

    トヨ「こんなに山の様に…野菜が、どれも輝くように美しいですし」

    唯「永禄と比べるとねー」

    ト「あ、蓮根はやはり泥付きなんですね」

    唯「え、ホントだ。泥ついたまま売ってるんだ。知らなかった」

    ト「ご存じない?唯様は、こちらの世でも姫君で、炊事はなさっていなかったんですね」

    唯「うぅ。それは姫君だからじゃないんだけど」

    覚のメモを見ながら、食材をカゴに入れていく。

    唯「えーと、これで全部かな」

    ト「その様ですね」

    唯「あ、アレも買っちゃお!こっちこっち」

    ト「何ですか?」

    菓子売場。

    唯「へへー。アーモンドチョコ」

    ト「これは?」

    唯「種の入った甘味、ってね。たーくんが好きなの」

    ト「好物でいらっしゃると」

    唯「源三郎は、好きな食べ物とかある?」

    ト「共に何か食べる機会などそうなかったので、わかりません」

    唯「ふーん。あ、でもさっきさ、コーヒーおいしそうに飲んでた。気に入ったかもね」

    ト「そうですね」

    会計後。スーパー内の他の店舗前を歩いていると、トヨが足を止めた。

    ト「この寒い季節に、こんなにお花が咲き乱れてるなんて!」

    唯「花屋さんだからねー」

    ト「お花はいいですね。心が華やぎます」

    唯「うん。前にたーくんがね、ここで両腕いっぱーいの花束買ってプレゼントしてくれてね、超感動したの~!」

    ト「まあ…それ、間近で見たかったです」

    唯「それでね、あんまり感動したんで」

    ト「したんで?」

    目を閉じ、唇を尖らせるそぶりをした唯。

    ト「えー、いい!いいですそれ!」

    唯「今思い出しても、キュンだよ~」

    ト「キュン?」

    唯「わっ、うーん。しまった、説明係の尊居ないし」

    ト「ときめき、ですか?」

    唯「あー、それ!」

    ト「まぁ。それでしたら、聞いてる私もキュンです!ご飯三杯はイケます」

    唯「出た。トヨって、こんなに恋バナ好きだったんだね。意外」

    ト「憧れですかねぇ…」

    唯「ありゃ、急にテンション下がった」

    ト「いつ成就するんだろ…」

    唯 心の声(源三郎~、しゃんとせえ!ぐんなりした小童でもあるまいしさぁ)

    帰宅した。

    唯「ただいまぁ」

    ト「ただいま戻りました」

    覚「おー、お帰り。ありがとな」

    唯「すごい、テーブルほとんどできてる!」

    既に食卓に並べて置かれていた。

    若君「ぐらつきはないか?」

    源三郎「良さ…そうです」

    覚「バッチリだな。お疲れ~助かったよ、ありがとう。お茶入れるよ。みんな手洗ってきな」

    五人でお茶タイム。

    覚「唯、これも買ったか。アーモンドチョコ」

    唯「つい~」

    覚「体力勝負の後は甘い物欲しくなるから、彼らにちょうどいいよ。開けるぞ」

    一粒つまんだ唯。

    唯「たーくん、はい、あーんして」

    若「ん…おぉ、より甘く感ずる」

    覚「すっかり慣れたもんだな」

    源「甘い玉?」

    ト「食べられる種が入ってるらしいわよ」

    唯「トヨもどーぞ」

    ト「はい。って、私だけですか?」

    唯「だって、源三郎にはトヨが食べさせるから」

    源「え」

    ト「まあっ」

    若「その通りじゃな」

    覚「知らないのか?あーんして、は基本だ」

    源「お父さんまで…」

    ト「わかりました。源ちゃん、あーんして」

    源「…お、甘くて美味い」

    覚「よしよし」

    唯「いい見張りがついたなぁ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days8~13日10時30分、遠乗りじゃ

    あれは、天野家の台所で保管している模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    DIYコーナー。テーブルの天板にする木材の加工中。

    唯「なんか思ったよりデカいな」

    覚「フフフ」

    若君「唯、朗報じゃ」

    唯「ろうほう。なに?」

    覚「再来週の土曜さ、28日」

    唯「うん」

    覚「エリさんと芳江さんを招いて、昼ごはんを兼ねて一年お疲れ様会をやる予定だったんだ。まぁ、酒は出ないが忘年会だな」

    唯「へー」

    覚「で、参加が5人から9人に増えるじゃないか」

    唯「えーと…あ、そうだね!」

    覚「だから食卓もさ、この際一列に4人は座れるようにしようと思うんだ」

    唯「そーなんだー。わぁ、楽しみ!パーティーパーティー!」

    トヨ「パーティー?」

    若「宴じゃな」

    源三郎「…そうか」

    ト「何?」

    源「唯様は、時折こちらの世の言葉を話されていたのだな、とわかり申した」

    ト「そうね。でもなんとなくは意味わかってたでしょ。唯様って身振り手振りが大きくてわかりやすいもの」

    源「まあな」

    材料が揃い、車になんとか積み込んだ。

    覚「視界が開けてる方が酔いにくいから、源三郎くんが助手席な」

    源「忝のう存じます」

    車中。後部座席で唯と若君がひそひそ話をしていたが、

    唯「お父さん」

    覚「何だ?」

    唯「昨日満月だったけど、蓮根のはさみ揚げ作ってないでしょ」

    覚「あぁ、そうなんだよ」

    唯「食べたいな。たーくんが手伝うって言ってるし」

    若「今日は金曜日ですので」

    覚「あ、忠清くんの料理の日か。覚えててくれたんだ。嬉しいな」

    唯「それにトヨ達にも食べさせたいし」

    覚「二人は食べた事ないんだ。あれ?前に一度持たせたよな?」

    唯「天野のウチで食べ切っちゃって」

    覚「そうなの?源三郎くん」

    源「はい。初めて聞きました」

    覚「トヨちゃんは?その頃は天野の家に居ただろ?」

    ト「私は、最後空の籠は洗いました。とても香ばしい匂いが残っておりました」

    覚「うわー。最悪のパターンだ、中身がなかったか。そりゃ是非とも作ってあげないとな。じゃ、スーパー寄るか?」

    唯「ダメだよ、このまま帰んないと。源三郎がまた酔ったら」

    覚「そうだった。ならどうする?」

    唯「テーブル作るの時間かかるでしょ。たーくんと源三郎が作るのをお父さんが指導しなきゃいけないから、昼過ぎくらいにトヨと買い物してくるよ」

    覚「いいのか?」

    唯「一人だと心細いけど、二人なら」

    ト「私でよければお供いたします」

    覚「食材の見立てなら、トヨちゃんのお供が唯だけどな。じゃ、よろしく頼むね」

    13時30分。昼ごはんが済み、いよいよ庭でテーブル作りがスタートした。

    若「良いか?そちらを押さえておれ」

    源「はっ」

    覚「いやぁ、若い男の子がキビキビ動くのはいいなぁ」

    唯「お父さーん、これが買い物メモ?」

    リビングから声をかけた唯の手には小さい紙。

    覚「そうだ。よろしくな」

    唯「じゃ、たーくん!行ってきまーす!」

    若「あぁ。頼んだぞ」

    唯「あ~ん、腕まくりしてるのいい!超カッコいい~、ずっと見てたい~。けど行かなくちゃ。トヨ、行こっか」

    ト「ふふふ。ではお父さん、行って参ります」

    自転車置き場に来た唯とトヨ。

    唯「これが私の馬だよ」

    ト「馬。随分と筋張っておりますが」

    唯「自転車って言うの」

    ト「それが名ですか。忠清様の愛馬は疾風ですし」

    唯「そうだね、ってちょっと意味が違う気がする。ま、いっか。トヨ後ろに乗って」

    ト「唯様が手綱を。よろしいのですか?」

    唯「良いよん。たーくんを乗せて走ったコトもあるし」

    ト「それは…勇ましくていらっしゃる」

    後ろに乗ったトヨ。唯の体にギュっと腕を絡ませた。

    唯「うん、女子はやっぱこうだよね!参るぞ~」

    ト「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days7~13日9時、事も無げに

    令和ライフ、始動しました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ホームセンターに向かうため、車に乗り込んだ五人。

    覚「では、出立いたす」

    四人「ははっ」

    覚「おほ~、気持ちいいなあ」

    出発。

    若君「そう言えば」

    助手席の唯が振り向く。

    唯「なに?たーくん」

    若「外に出る折には、呼び名を変えねばならぬ」

    唯「あー」

    覚「あー。そういや昨夜はどうしたんだ、唯」

    唯「トヨのカッコがいかにもコスプレぽかったから、奥方様でも問題なかった」

    覚「なるほど」

    若「源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    若「令和では、人前で若君や奥方と呼ぶのはそぐわぬのじゃ」

    源三郎「そうですか。ならば如何すれば」

    若「名じゃな。忠清や唯」

    トヨ「名…」

    覚「そうだね。さん、を付けて忠清さんとか」

    唯「超新鮮!」

    源「それは…そこまでくだけた形でお声をかけるのは…」

    ト「お呼びできそうには…」

    覚「家臣だもんな~。ならさ、間を取って、忠清様とか唯様ならどう?変か」

    唯「ちょっとだけ変。けど無理に呼んでもらうよりは、アリかな」

    若「いかがじゃ?」

    源「それならば、何とか」

    ト「はい」

    唯「決まり~。もっと仲良くなれそうで嬉しい!ねっ、普段からもそうして欲しいな」

    若「それが良い。そもそも奥方とは、速川の家ではお母さんも指すからのう」

    源「なるほど。承知致しました」

    ト「そう呼ばせていただきます」

    到着。入口前で四人は先に車を降りたのだが、

    唯「自家用車で酔ったヒト初めて見た」

    源三郎が車酔い。壁に手を付き下を向いている。

    ト「大丈夫?源ちゃん」

    源「…」

    覚「お待たせ。あー、調子悪そうだね」

    唯「しばらく待ってようよ」

    源「いえ、私の事はお気になさらず…」

    若「とは言え」

    覚「あー。車酔いにはコーラが効く、って聞いた事ある気がするなあ」

    若「コーラ。わかりました」

    近くの自動販売機にすぐ向かった若君。財布を取り出す。

    唯「偉ーい、ちゃんと持って来てたんだ」

    若「幸い、小銭が多少残っておる」

    コーラを購入。フタを開けて渡す。

    若「飲め」

    源「済みませぬ」

    唯「私ここで、源三郎が楽になるまでトヨと居るからさ、お父さんとたーくんはテーブルの材料見てきて。切ってもらったりするから時間かかるでしょ?」

    覚「そうだな。じゃあ先に行くよ。源三郎くん、ゆっくりでいいからね」

    源「忝のう存じます」

    若「ではお父さんに付いて行って参る」

    唯「じゃーねー」

    ト「すみません」

    大分落ち着いてきた源三郎。唯は、コーラってこういう味、ともう1本買ったのをトヨを分け合って飲んでいた。

    ト「唯様」

    唯「おっ。はいはーい?」

    ト「先程は、この品をお求めになる忠清様の流麗な動きに、見惚れてしまいました」

    唯「あげないよ」

    ト「要りません」

    唯「おー、たーくんファンが聞いたら叫びそうな発言」

    ト「私は、げ…」

    唯「しーっ。聞こえちゃうよ」

    ト「慣れていらっしゃいましたね」

    唯「たーくんなりに、がんばって色々覚えてたからね。一度は、永禄に戻らずここでずっと暮らすって考えたし」

    ト「そうだったんですか」

    唯「こっちに居てもそれなりに幸せだけど、たーくんの本当の幸せは永禄にしかないからさ。帰ろうね、って説得して戻ったんだけどね」

    ト「でもそれは、唯様が速川の家と別れるのを意味するではありませんか」

    唯「私は、たーくんの居ない世界は考えられないから。ずっと守ってあげたいから、たーくんの居場所が私の居場所。たーくんのそばに居るのが私の幸せだから」

    ト「そこまで強い決意でいらしたのですね」

    唯「ん~?今すっごく幸せだからそれでいいの」

    源「唯様、トヨ」

    唯「あ、もう大丈夫?」

    源「はい。お待たせして済みませんでした」

    唯「じゃあ合流しよっか。こっちだよ~」

    唯が弾むように歩き出す。

    源「俺さ」

    ト「うん」

    源「永禄に戻らず、の辺りから聞いてたから」

    ト「うん…」

    源「お前、泣きそうじゃないか」

    ト「大丈夫、大丈夫よ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days6~13日8時、入れ過ぎ注意

    風味を壊さない程度にお願いします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    玄関で、学校に向かう尊を見送っている。

    尊「豪華だなぁ」

    唯「行ってらっしゃーい」

    若君「行ってらっしゃい」

    トヨ「行ってらっしゃいませ」

    源三郎「行ってらっしゃい、ませ」

    尊「かしずかれるってこんな感じ?偉くなったみたい!行ってきまーす!」

    ぞろぞろとリビングに戻る。

    覚「見送りお疲れ。なぁなぁ、食卓だけどさー」

    この食卓は席に着けるのが最高6人なので、今朝は小さい折り畳み式テーブルを繋げたが、高さが合っていなかった。

    覚「出来れば揃えられるといいがなぁ」

    唯「そりゃ同じ高さの方がいいよね。買う?それか作る?」

    覚「作る方がいいだろうな。そうしたら高さも幅もぴったり揃えられるし。でも僕がさ…」

    若「作ります。材料さえあれば幾らでも。のう、源三郎」

    源「勿論でございます。済みませぬ、私とトヨが参りましたばかりに」

    覚「いやいや、なんかやらせるみたいになって悪いね。さすがに力仕事はまだ無理だから、お願いしてもいい?」

    若君&源三郎「はい」

    覚「すまないね。じゃあ、もうちょっとしたらホームセンターに行こう」

    唯「行く行くー!お出かけお出かけ!」

    若「ホームセンター。じいを乗せる大きいカートが有り、手軽で楽チンな店じゃな」

    ト「じい?天野様?乗せる?」

    唯「まだ変な覚え方してるよ」

    覚「ははは。行くのはもう少し後だから、今のうちにクリニックに挨拶してきな。これをついでに頼むよ」

    若「朝のコーヒーを運ぶのですね。わかりました」

    唯「お母さんの仕事場に行くよ。看護師さんが二人居るの。二人とも女の人だよ」

    源「ほぅ…おなごのみで営まれておると」

    ト「素敵」

    唯「あ、そっか。確かに女性だけ。今までなーんも疑問に思わなかった」

    若「それだけ、この先の世では根付いておるからであろう」

    四人でクリニックに移動。エリと芳江の歓声の後、賑やかに自己紹介。

    芳江「源三郎さんは、若君とはまた違うタイプのイケメンさんね」

    エリ「トヨさんも、クールビューティーで」

    唯「二人とも、めっちゃ褒められてるよぉ」

    源「えっ」

    ト「そうなんですか?ありがとうございます」

    周りをキョロキョロするトヨ。

    ト「ここで診られるのですか?」

    美香子「そうね。唯、他も案内してあげて」

    唯「わかったー。次こっちね、行こっ」

    若「では、エリさん芳江さん。此れにて」

    エ「はい~」

    芳「またよろしくね」

    小児科用の絵本コーナー、病室などを巡る。待合室には既に患者も来ていた。

    源「もうあんなに集まっておる」

    ト「全てお母さんが一人で?」

    若「そうじゃ。此度参ったのは、お父さんが怪我をされ、院を営みながらの食事の支度では、お母さんの体に障ると思うたのもあるゆえ」

    ト「なんとお優しい」

    源「親同然なのですね」

    若「速川の両親は、溢れる程の愛情を注いでくれる」

    唯「ちょっとうっとーしいくらいね」

    若「今にそなたらもわかるであろう」

    源三郎&トヨ「はい」

    リビングに戻った四人。

    覚「君らもコーヒー、飲んでみる?」

    源「今運んだ物ですか?なんとも芳しい香りでした」

    ト「いただいてみたいです」

    覚「了解~」

    コーヒータイム。

    若「初めはちと刺激が強いやもしれぬゆえ、このミルク、や砂糖、を入れると良い。唯の量では」

    砂糖とミルクをたっぷり入れる唯。

    若「指針にはならぬが」

    唯「にがーいの、嫌だもん。小さい頃から苦手なんだよぅ」

    ト「だからですか。なるほど」

    若「もしや、処方された薬が苦いなどと申し、服しておらなんだのか?」

    唯「ギクッ」

    ト「若君様、そこは私がきちんとのませましたので」

    若「そうか。トヨが世話をしてくれて良かった」

    源「おぉ。これは、美味い。心落ち着くような」

    覚「気に入ってくれたなら良かったよ。もうちょっとしたら、出掛けようか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days5~13日6時、so cute!

    いつか、誘惑に負けてしまうのか?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    早朝。一階に下りてきた覚。目の前の光景に驚いた。

    覚「おー!カッコいいな~」

    庭で、若君が源三郎と朝稽古をしている。竹刀を打ち合う音が高らかに響く。

    トヨ「おはようございます、お父さん」

    リビングから外を眺めていたトヨが振り向き、床に手をつき挨拶をした。

    覚「わー、そんなかしこまらなくていいからね。よく眠れた?」

    ト「はい!」

    覚「唯はあい変わらず、起きて来ないな」

    ト「昨夜、私があれやこれや遅くまでお尋ねしてしまいまして。しばらくはお目覚めにならないかと」

    覚「ははは、そうなんだ」

    庭から戻ってきた若武者達。

    若君「おはようございます、お父さん」

    源三郎「おはようございます」

    覚「あー、おはようおはよう。いやぁ朝からいい眺めだったよ。お茶淹れようか」

    若「いえ。師匠、朝飯の支度を手伝います」

    覚「師匠!照れるよ。じゃあ、豆腐と葱だけ切ってもらおうか」

    若「はい!」

    ト「師匠、あの、私も」

    源「私にもお申し付けください、師匠」

    覚「わー、働き者の弟子が3倍に増えてるよ」

    6時20分、美香子が下りてきた。

    美香子「おはよう…まあっ!ほとんど準備終わってるじゃない!」

    若「おはようございますお母さん。これからは我々にお任せくだされ」

    美「さすがねぇ。でも代わるわ、時計見て」

    若「時計?おぉ、こんな時間でしたか。テレビを点けねば」

    源三郎&トヨ「テレビ?」

    エプロンで手を拭い、テレビを点けた若君。

    源「ヒッ!」

    ト「キャー!人が中に!」

    若「フフッ」

    時間になり、ラジオ体操が始まった。テレビの映像と、エプロン姿で体操する若君を前に、ポカーンとただ眺めるだけの源トヨ。

    源「これが…所以だったか」

    ト「源ちゃん、知ってたんだ」

    源「朝によう見かけた。舞われておると思うておった」

    ト「確かに。動きがとても雅で綺麗」

    覚「舞い踊るね。なるほど納得だ」

    美「…あ。お父さん、ちょっとコンロの火見ててもらっていい?」

    覚「ん、了解~」

    美香子が洗面所に向かう。手に櫛やヘアゴムを持ってすぐ戻ってきた。

    美「トヨちゃん。ちょっとここに座ってくれる?」

    ト「はい?」

    食卓の椅子が一脚、リビングに置かれた。

    美「向こうでは、髪は一つに束ねるだけでしょ」

    ト「はい」

    美「すっごく綺麗な黒髪だから、ちょっと編み込んでみたくて。いい?」

    ト「編む。はい、お願いします」

    櫛が少しずつ入り、美しく編み込まれていくトヨの髪。体操が終わった若君や源三郎が、興味深そうに見つめる中、毛先まで真っ直ぐ三つ編みになり、完成。

    美「はい、終了~」

    若「見事じゃ」

    源「…」

    合わせ鏡で髪の状態を確認したトヨ。

    ト「まあ…髪に模様が。素敵!お母さん、ありがとうございます!」

    美「あまりに綺麗な髪だから、つい触ってみたくなっちゃって。こちらこそ付き合ってくれてありがとう」

    若君が源三郎に何やら囁いている。

    源「えっ。は、はい、わかりました。トヨ」

    ト「なに?源ちゃん」

    源「可愛いい、よ」

    ト「…まぁっ。嬉しい、ありがとう。若君様、ありがとうございます!」

    若「ハハハ」

    7時。制服姿の尊が下りてきた。

    尊「お姉ちゃん、まだ部屋に居たんだ?声かけてくれば良かったね」

    若「起こして参る」

    唯の部屋。

    若「唯」

    唯「え~もうちょい寝かせて、トヨ~」

    若「わしじゃ」

    唯「ん?たーくん?!あ、そっか、令和に来たんだったぁ」

    若「皆が待っておる。早う」

    唯「まだ眠いぃ~」

    布団を頭からかぶってしまった唯。

    若「唯」

    唯「やだー」

    若「これ!」

    唯「キャー!」

    布団越しの攻防。ようやくめくると、唯は布団の隙間から顔を覗かせ、トロンとした瞳で若君を見上げていた。

    若「…」

    唯「たーくぅん、もぅちょっとぉ。お願い聞いて?」

    若「…」

    なぜか目を逸らした若君。

    唯「どしたの?」

    若「そのような眼差しで…見ないでくれぬか」

    唯「どして?」

    若「下りてゆけなくなる」

    唯「それって…キャー!じゃあこのまま、たーくんも一緒にぃ」

    若「ならぬ」

    唯「かわゆーい妻が、呼んでても?」

    若「…」

    唯「やーん、赤くなってる!かーわいい!」

    若「…早う」

    唯「え~、ダメ?ちぇー、ざんねーん」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    「はやかわゆい」には、「かわゆい」が入ってるもんね。

    続きます。

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    四人の現代Days4~13日金曜0時30分、それが理由です

    見せつけてもらおうじゃないか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビング。唯とトヨは入浴中。

    源三郎「あの、若君様…」

    若君「ん?あ、あぁ、厠か?」

    尊「トイレ?じゃあ僕案内しますよ。使い方も教えますね。源三郎さん、こちらです」

    源「尊殿、手数をかけます」

    両親と若君だけになった。

    若「お父さん、お母さん」

    覚&美香子「はい」

    若「此度こちらに参った由を、話しとう存じますが」

    覚「うん、聞こうか」

    美香子「どうぞ」

    若「まずは、お父さんが階段から落ち怪我をされ、お母さんが食事も支度されておると聞き、これは速川家の危機と」

    覚「心配かけてすまなかったね」

    若「是非直ちに力になりたいと。お二方に恩返しがしたかったのです」

    覚「痛みはしばらくあるみたいだから助かるよ。ありがとう」

    若「次に、じきにクリスマスであると」

    美「やっぱりそれもあった?唯が騒がしかったんじゃない?」

    若「此度においては、唯はそこまで申してはおりませぬ」

    美「あら。忠清くんの意見なのね」

    若「未だ子の兆しはないのですが」

    覚「それは、いいから」

    美「気にしちゃダメよ」

    若「来年またその先に、こちらへ参る好機があったとして、その頃には身重になっておるか、子が居るやもしれませぬ。それはそれで良いのですが」

    美「臨月には来ない方がいいわ。3分後に生後1か月の子が急に一緒に居てはね」

    若「早い内に願いを叶えてやりたいと思い。デート、がしたいのならば尚更、身重でない内にと」

    美「なるほどね」

    覚「優しい旦那さんだよ」

    若「次に、何故四人で参ったかですが、唯の真の事情を承知しておる者が他に欲しかったのです。源三郎もトヨも信頼のおける者達ですので、令和という時代を見聞すれば、必ずや味方になってくれるであろうと思いまして」

    覚「唯が突拍子もない事言い出しても、背景を理解した上で、トヨさんなんか諫めてくれそうだもんな」

    若「戦のない世の姿も伝えたく」

    美「あー、そうね。あなたの考え方の、理解者が増えるものね」

    若「はい。その二人ですが、何というか…恋仲であるのに恋仲と認めず、今一歩踏み出しておらぬ感がありまして」

    美「え?すごくお似合いでいい雰囲気だから、てっきりお付き合いしてると思ってたわ」

    覚「さっき、まだって言ってたもんね」

    若「源三郎の腰が引けておるのです。このままでは、他の姫君と縁組み…こちらの世では結婚、の話が進んでしまいます」

    美「何が躊躇させてるのかしらね」

    若「どう転ぶかはわかりませぬが、場を変えれば、決断にも至るかと思いまして」

    覚「相当ヤキモキしながら見てたんだね」

    美「いっそ、源三郎くんの前で思いっきり、あなた達が仲良ーくしてるのを見せつけたらどう?」

    若「見せつける…」

    覚「そんなん忠清くんがしてくれたら、唯は大喜びだろうな」

    若「そう、ですか…」

    美「向こうでは立場上の問題もあるでしょうけど、こっちに居る時くらい、大っぴらにしててもいいんじゃない?」

    若「仲睦まじさでは、お父さんお母さんには敵いそうにありませぬが」

    覚「またまた~。持ち上げるのが上手いね」

    美「でも、悪くない話でしょ?」

    若「はい…」

    美「あらら、悩んじゃった?」

    若「いえ。励みます。最後に、実はこれが一番の決め手であったのですが、改めてお父さんお母さんにお頼み申したい」

    覚「え」

    美「なに?」

    若「源三郎もトヨも、既に両親は居りませぬ。共に父は戦で、母は病に倒れております」

    美「そうなのね」

    覚「戦国時代の宿命にもなるのかなあ」

    若「わしは、この先の世で、母の愛を知りました。父の愛も充分過ぎる程いただき」

    美「可愛いい息子だもの」

    覚「当然だよ」

    若「源三郎とトヨにも、同じように愛情を注いでやってはいただけぬでしょうか。子でもない者に対し、不躾な頼みとは重々承知の上ですが、お父さんお母さんにはそれをお願い出来ると勝手ながら思い、連れて参りました」

    覚「家臣思いというか…そこまで君にさせる程、優秀なお二人なんだ」

    若「此度唯に早う会えたのは、二人の尽力の賜物です」

    覚「尊に聞いたよ。唯が包まれていた様子が、君への贈り物みたいだったって」

    若「前に参った折、唯が陰口を叩かれておるのではと話が出ましたが」

    美「それ、気になってたの。どうだった?」

    若「正にその通りでした。わしが源三郎に伝え、源三郎はトヨに伝え。そして、あらゆる火種を消しに奔走してくれました。二人には恩があるのです。それゆえ、わしが感じた喜びを二人にも味わわせてやりたいと申しますか」

    覚「そうか。わかった」

    美「うん。私達で良ければ」

    若「ありがとうございます」

    覚「ちゃんとつとまるかわからないけど、また息子や娘が増えたようで嬉しいよ」

    美「ホント嬉しいわ。さすが忠清くんのお眼鏡にかなった二人だけあって、すごくいい子達だし」

    源三郎が戻って来た。

    若「それでは、お願い致します」

    覚&美「ははっ」

    源「お待たせ致しました。尊殿ですが、もうお休みになられるとの言付けを預かりました」

    美「そう。ありがとう」

    唯とトヨが風呂から出た。

    唯「見て!トヨの髪、すっごくキレイなの!」

    美「ホント綺麗な黒髪ね。まさしく濡羽色」

    腰まで届く程の長さがある美しい髪。

    美「女性の鑑ね」

    トヨ「そんな、お恥ずかしい」

    覚「それ、さっきも聞いたな。ははは」

    そろそろ寝ます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    12日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days3~12日22時45分、まだ早い

    いつならいいんだ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の部屋。

    トヨ「お召し物は、畳めばよろしいでしょうか?」

    唯「助かるぅ。ありがとう」

    着替えの途中、タンスの引き出しを開ける唯。

    唯「今からね、これ買いに行くの。ブラジャーとショーツって言ってね、こっちでは服の下に着るんだよ。ブラジャーは、胸を保護する的なモノ」

    引き出しを覗くトヨ。

    ト「まあっ!なんて可愛らしい!」

    唯「お母さんがさ、下着くらい可愛いのにしなさいって、どんどん買い集めてたんだよ」

    ザ・女子!といった、フリルが付いたり花柄であったり、色とりどりなラインナップ。

    ト「綺麗…このような品を私も?」

    唯「うん。サイズがあるからさ、一緒に行かなきゃいけないから。こっち来てすぐ車は、ちょっとびっくりだと思うけど」

    ト「可愛いい…」

    唯「みんなかわいいの好きだなあ」

    ト「そうは思われないのですか?」

    唯「思うけど、そこまでうっとり~とかはならない」

    ト「えー、すごくいいと思いますけど」

    唯「たーくんが喜んでるからいいけどね」

    ト「…良いのですか?そのような話を私に」

    唯「トヨにはなんでも話せるよ」

    ト「まぁ…勿体ないお言葉です」

    唯「ふふっ。お母さん待ってるから、急ごっか」

    お風呂。

    若君「わしの矢傷は」

    源三郎「はい」

    若「縫合は、お母さんの手による」

    源「なんと!金創医であらせられると」

    若「腹を下しても診る。幼き子らも同じじゃ」

    源「尊殿は、薬師ではない?」

    尊「違いますよ。医者…薬師は母だけです」

    源「いやはや、それは驚くばかり」

    尊「女性が開業しているのは、永禄に暮らす方にとっては驚きですよね」

    若「こちらの世では、至極当然な話じゃ」

    源「そうですか」

    風呂上がり。唯達はまだ帰宅していない。

    覚「源三郎くんの方が、ちょっと髪は短めだね」

    源三郎の髪は、下の方で軽く束ねてある。

    尊「雰囲気が違って、こっちもカッコいい」

    若「源三郎、褒められておるぞ」

    源「お恥ずかしゅうございます」

    覚「さてと。そろそろ布団用意しとこうかな」

    尊「あー、そうだね」

    若「ならば手伝います」

    源「いえ、わたくしが」

    覚「あ、うーんその前に。忠清くん、ちょっと来てくれるかな」

    部屋の隅に呼ばれた若君。

    若「いかがされました?」

    覚の囁き「源三郎くんとトヨちゃんってさ、寝るの一緒の部屋でもいいのかな」

    若君の囁き「おぉ、それは…ちと早いです」

    覚 囁き「早い。愛を育んでる最中って事?そうか。どうしようかな」

    若 囁き「何か困り事でも?」

    覚 囁き「客用の予備室はあるんだけどね、もし君が唯の部屋へとなると、彼らで一部屋になるもんだから。まあもう一部屋片付ければ、別々に休んでもらえるけどさ」

    若 囁き「ならば、わしと源三郎でその予備の部屋で休みます。トヨを唯と共に」

    覚 囁き「いいのかい?」

    若 囁き「はい。二人は参ったばかりで、不安もあろうと思いますゆえ、話をしながら休みます」

    覚 囁き「君はともかく、唯はさっさと寝そうだけどな。ちゃんと説明するかなー」

    若 囁き「いや、唯とトヨは遠慮なく話せる仲。案ずるには及びませぬ」

    覚 囁き「そうか。よく見てくれてるね。ありがとう」

    日付が変わった。二階で布団の用意が済んだ頃、ようやく女性陣が帰宅。

    尊「お帰りー」

    美香子「ただいま。あらっ、尊まだ起きてたの」

    尊「寝ろって言われても、気持ちが高揚しちゃってるから無理。布団出しといたよ」

    美「まあ、ありがとう」

    唯「たーくんただいまぁ」

    若「お帰り、唯。買い物は無事出来たか?」

    唯「うん。ねっ、トヨ」

    ト「はい。見る物全てが珍しく、とても楽しい時を過ごしました」

    若「車、はいかがであった?」

    ト「車。流れる景色が美しく、もっと乗っていたかったです」

    若「そう、か」

    源「若君様?」

    尊「あ、兄さんもしかして、初めて車乗った時を思い出してます?カッチカチでしたもんね」

    若「皆がそうではないのか…」

    尊「これに関しては、トヨさんに軍配ですね」

    若「完敗じゃな」

    ト「えっ、やめてください!若君様」

    唯「トヨ~着替え取ってきたよ、お風呂入ろっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜はまだ続きます。

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    四人の現代Days2~12日22時30分、大騒ぎです

    見られるのは、予想か予定か。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    実験室から移動中。

    覚「あー、サンダルが足りない」

    尊「僕、運ぶから」

    美香子「打掛を捲って歩くのは…仕方ないか」

    唯「外歩くもん、しょーがないでしょっ」

    源三郎「賑やかでございますな」

    若君「これぞ速川の家じゃ。源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    若「愉快で、心温まる一月になる。約束する」

    源&ト「はい!」

    リビングに到着。電気が煌々とついている。

    源「此処はまるで…日が差したかのようじゃ」

    トヨ「眩しい位」

    覚「なっなっ、唯が綺麗な着物着てる内に写真撮ろう。三脚取ってくるから、壁際に並んでくれ」

    若「はい」

    唯「はーい。じゃあこっち来て~」

    源「はっ」

    ト「床に敷物が。美しい柄だこと」

    七人、並んだ。

    唯「あれ、カメラって言うんだけど、あそこ見ててね。で、はいチーズって言ったらニッコリ笑って」

    源&ト「はいチーズ。はい」

    覚「はい、チーズ!」

    パシャリ。

    尊「どう?」

    覚「いい感じだ~」

    若「今撮った写真を確かめておるのじゃ」

    源「写真?」

    ト「確かめる?」

    美「お二人も見てみて」

    デジカメを覗き込む源トヨ。

    源「分身か?!」

    ト「小さくなってる!」

    若「わしも初めはそう思うたのう」

    唯「たーくんさあ」

    若「ん?」

    唯「二人のいろんなリアクションが見たくて、連れて来たってのもなぁい?俺は知ってるぞって」

    若「さあ」

    唯「あやしいな」

    若「どうじゃろ。お父さんお母さん、此度四人で参った由ですが」

    覚「あーいいよ。またゆっくり聞くからさ、お風呂入ったら?」

    若「おぉ、風呂ですか」

    覚「尊もまだだから、源三郎くんに色々教えながら三人で入っといで。あ、男性陣が先でいいか?唯」

    唯「いいよー。だって尊、明日普通に学校行くんでしょ。早く入んないと」

    覚「着替えは用意しとくから」

    美「着替え…下着…下着。あーっ、大変!」

    覚「何だ?どうした?」

    美「えーと、ショッピングモールはもう閉店してる…あと確か県道沿いに、もっと遅くまでやってる大きいお店あったわよね」

    尊「あるね。今すぐ何か要る物あるの?」

    美「あるの。その店、何時まで?」

    覚「えーと…0時までだな」

    若「お父さんの手元の小さき板で、何でもたちどころにわかるのじゃ」

    源「何と。最早何がどうなっておるのやら」

    美「そしたら、忠清くんと源三郎くんと尊はお風呂へ。お父さんは忠清くん達の着替えを用意。下着、新品あるから源三郎くんにはそちらを」

    覚「じゃあ取ってくるか」

    尊「僕も行くよ。兄さん、源三郎さんとここで少し待っててください」

    若「済まぬのう」

    美「唯とトヨちゃんは、今から買い物へ」

    唯「買い物?!え、今?なにを?!」

    そっと唯に囁く美香子。

    唯「あー。それ大事!」

    美「すぐ部屋に行って着替えてきなさい。トヨちゃんは悪いけどまだそのままね。で、タンスの中の唯のを見せてあげて。こういうのを買うんだよって。私、車暖めておくわ」

    唯「わかったー。トヨ、私の部屋は二階なの。行こっ」

    ト「は、はい」

    若「…あぁ。あれか」

    唯「うわ。たーくんもしかして、何買うかわかっちゃった?」

    若君は、自分の胸元を両手で押さえた。

    唯「やだー、ジェスチャーしないで!そんでもって、変な想像もしないように!」

    トヨの腕を引っ張りながら、二階に上がっていった。

    若「変、とは?唯が身に付ける様は至極可憐であるのに」

    源「畏れながら、若君様」

    若「何じゃ?」

    源「お母さんの急ぎ様を見るに、かなり重要な品とお見受けしました」

    若「そうじゃ。この先の世のおなごには」

    源「おなごに。とんと見当もつきませぬが、どのような品でございますか?」

    若「フフッ」

    源「え?」

    若「今にわかるやも知れぬ。いずれ目にするやも知れぬ」

    源「目にする…わたくしが見る折もあると?」

    若「源三郎次第じゃろう。ハハハ」

    源「?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    (新)四人の現代Days1~2019年12月12日木曜22時10分、いらっしゃいませ

    この部屋、人口密度高し。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。実験室。

    尊 心の声(きっと来るはず)

    じっと一人で待っていた尊。すると、

    尊「あっ、光った!やったー…あれっ?」

    見え始めた人影がいやに多い。

    尊「え、ダブって見えてる?」

    眼鏡をかけたり外したりしていると、四人が現れた。

    唯「やったー!」

    若君「皆、無事であるな」

    唯「良かったぁ。よっ!尊!」

    尊「…」

    口が開いたまま、すぐに言葉が出ない尊。

    源三郎「尊…殿?此処は?」

    トヨ「何処?」

    若「尊、済まぬ。参る話は匂わせておったが、四人でとは申さなんだゆえ、驚かせてしもうたのう」

    尊「い、いえ。無事来れて良かったです」

    ドアを叩く音。

    覚「おーい、尊!」

    美香子「着いたんでしょ、開けて!」

    尊「あー、もう来ちゃった。お姉ちゃん、兄さん、源三郎さんとトヨさんに、簡単に説明しといて欲しい」

    唯「うん」

    若「わかった」

    尊「僕は、人数が多いのを説明してきます。じゃ、よろしく」

    尊は実験室のドアを開け、両親を押し出し外へ出て、素早く閉めた。

    若「源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい…」

    若「ここは、永禄から四百五十年余り後、令和と申す時代じゃ」

    源&ト「…」

    唯「私が暮らしてた時代なの。で、尊は私のホントの弟でね」

    源&ト「…」

    唯「今、外で騒いでたのは、私のホントの両親」

    若「声も出ぬのも無理はない。わしが初めて参った折は矢傷を癒しておったゆえ、時間をかけ理解できた」

    源「…と、なれば」

    若「ん?」

    源「もしや此処は、若君様の隠れ屋にございますか?」

    若「ようわかったの」

    源「おぉ、それは…漸く腑に落ちました」

    若「そうか?」

    源「最早此迄と思う程の深い傷を負われ、隠れ屋にとはいえ、どう動かれたのであろうとずっと思うておりました。彼の折も、この術をお使いになられたのですね」

    若「そうじゃ。唯が救うてくれた」

    ト「まぁ…」

    ドアが開いた。尊が顔を覗かせる。

    尊「そろそろ、いいですか?」

    若「良いぞ」

    唯「いいよん」

    若君が、腰を下ろし床に手をついた。唯達三人も、ぎゅうぎゅう詰めになりながら同じ体勢になり、覚達が入るのを待つ。

    覚「こんばんは…わあっ」

    美「こんばんは。まあっ」

    ドアを閉める尊。尊達も、四人の前に正座した。

    若「お父さん、お母さん」

    覚&美香子「はい」

    若「只今、帰りました」

    覚「帰る…」

    美「参るじゃなくて帰るなのね。嬉しいわ」

    唯「ただいまっ」

    覚「お~唯。見違えたなあ」

    美「すっごく綺麗よ」

    唯「えへへ。一度、お父さんお母さんに見せたかったの」

    覚「そうか。そりゃ嬉しいな。ははは」

    美「後ろは伸びてるけど、前髪が元に戻ってるわね」

    唯「ん、まぁそういう事もある」

    尊「源三郎さん、トヨさん、えーとそっちでは昨日だな、お世話になりました」

    源「礼には及びませぬ。お父、さん、お母、さん。拙者、若君様の近習を務める、赤井源三郎と申します」

    唯「源三郎、赤井って名字なんだ」

    尊「今知ったの?」

    ト「あの、わたくし、奥方様のお世話をさせて頂いております、女中のトヨと申します」

    唯「女中頭ね」

    尊「二人とも、すごく優秀なんだよ」

    美「まぁ。唯と忠清くんがお世話になってます」

    源三郎&トヨ 心の声(忠清くん?!)

    若「一月、大所帯でござるが、よろしくお頼み申しあげる」

    源&ト 心(ひ、一月?!)

    唯「お願いしまーす」

    源&ト「お、お願い致します」

    四人、深々と一礼。三人も一礼。

    唯「一月こっちに居るけど、帰ったら永禄では3分後、180数えたくらいだからね」

    ト「あぁ、それが三分ですか」

    源「驚く事ばかりじゃ」

    唯「尊、戻る時の設定よろしくねん」

    尊「了解~」

    美「楽しくなりそうね」

    覚「賑やかで嬉しいよ。じゃ、リビングに行こうか」

    若君が覚にサッと駆け寄り、立ち上がるのを手伝う。

    若「まだ色々、不自由ではございませぬか?」

    覚「あー、嬉しいなぁ。息子が帰って来たんだなあって思うよ」

    若「そう思うてもらえ、わしも嬉しい限りです」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道、番号とあらすじ

    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    なお、15話から18話は、令和の日付に読み替えています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1no.818、2019/12/1、若君の日記が旧緑合の地で見つかる

    2no.823、12/2、不良達を成敗後城跡に着くまでの隙間

    3no.825、12/3、木村先生に会えた尊

    4no.827、12/3、覚が階段から落ちて捻挫

    5no.828、12/4、源三郎が煮え切らない

    6no.829、12/5、通販三昧と木村先生のメール

    7no.830、12/5、見つかった書の解説

    8no.831、12/6、若君の心の内

    9no.832、12/7、起動スイッチが新たに到着

    10no.833、12/8、行きたいダメよ行ってこい

    11no.834、12/9、源三郎を理解できない

    12no.835、12/10、唯はトヨが見張り中

    13no.836、12/11、子供達の幼い頃に想いを馳せる両親

    14no.837、12/12、尊永禄に出発

    15no.839、12/12、無事着いたが若君に翻弄される尊

    16no.841、12/12、源トヨのミッション始まる

    17no.842、12/12、まずは唯を起こして

    18no.843、12/12、ようやく会えた唯と若君

    19no.844、12/12、尊戻るさて飛ぶの飛ばないの

    20(終)no.845、12/12、褒美は現代への旅

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    現代Days(仮)への道20(終)~12日22時、絆の輪です

    絶対楽しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄。満月の日の夕方。天野家は、朝に起こった話で持ちきりだった。

    小平太パパ「それはそれは、堂々とされ」

    じい「ほほぉ」

    吉乃「唯の、のどの具合はいかがでございましたか?」

    小パ「手を振りながら、治ったよと。すっかり元通りでこざった」

    小平太「治っておったのですな。それを見計らい動かれたとは、さすが若君様」

    小パ「お前もなぁ、それ程に熱い思いを寄せるおなごとかは」

    小「居りませぬ」

    小パ「色気がないのう」

    じ「それにしても、わしも見たかったわい、若君が唯之助を抱え歩く様を」

    ┅┅回想。今朝の若君┅┅

    唯と朝を迎え、朝の膳も二人分運ばせた。唯を居室へ送り届ける際、

    唯「たーくん、そんな、自分で歩くよ」

    お姫様抱っこ。

    若君「ならぬ」

    唯「なんで?」

    若「唯が勝手に参ったのではない。わしが拐ってきた姫をお返しにあがっておるからじゃ」

    唯「…守ってくれてるの?」

    若「当然じゃ」

    唯「嬉しいっ」

    小パ「あっ、わ、若君様…」

    ┅┅回想終わり┅┅

    夜10時になった。唯の居室。

    トヨ「随分と夜も遅いですが」

    唯「確かに。いつもならとっくに、たーくんとラブラブタイム」

    ト「お召し替えはなさらずで良いのですか?」

    打掛姿の唯。

    唯「うん。戦国の姫君の姿を見せてあげたいから」

    ト「え、若君様に?ではないですよね」

    外で声がした。

    若「唯」

    唯「どーぞぉ」

    入って来たのは若君と、

    若「おぉ、唯はそのなりか。良かろう。入れ」

    源三郎「は、はっ」

    ト「あ、源ちゃん」

    源三郎。

    唯「揃ったね」

    若「あぁ。源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    若「昨晩は、わしと唯の為に心を砕き時間を割いてくれた。心より礼を申す」

    源「並んだお姿を拝見出来るのは、この上ない喜びでございます」

    ト「お役に立て、胸を撫で下ろしております」

    唯「ごめんね、こんな遅い時間で。人目がないに越したコトないんで」

    源「人目?」

    若「折り入って二人に話があるが、その前にトヨに尋ねたい」

    ト「はいっ」

    携えてきた風呂敷を出した若君。

    唯「なかなか、入り心地良かったよぉ」

    源&ト「痛み入ります」

    若「二枚共、それぞれ何枚かを縫い合わせておるようなのじゃが」

    広げてみると、かなり細かく縫ってある。

    ト「わたくしが縫いました」

    若「やはり」

    ト「あの、昨晩ですが、ずっとブランコに居た訳ではないのです」

    若「申してみよ」

    ト「源ちゃんと、どうにかできないかしらとは毎日話しておりました」

    源「勝手ながら、いっそお包みし荷物に紛らせ、お運びするのはどうかと」

    ト「肌が擦れるのは以ての外ですので、肌当たりの良さそうな生地を、大きくするため縫い合わせました」

    唯「嬉しい。ありがとう」

    ト「仕事が終わった後に毎日少しずつ縫っておりましたが、ちょうど昨晩のあの時間に縫い上げましたので、どうしても警固中の源ちゃんに見せたくて、行きましたところ」

    源「ちょうどその時、若君様がお呼びになられたので」

    ト「サッと隠れ、お部屋に入られた後にブランコに戻り待っておりました。ですので、寒い中ずっとそこに、ではなかったのです」

    若「そうか…されど、折角の逢瀬をわしが呼んでしまい、邪魔をした。済まなかったの」

    ト「え!いえ」

    源「そのような…」

    若「唯、斯様な話じゃが」

    唯「うん。感動した。今の話聞いて、完全に決めたよ。連れてく」

    源「連れてく?」

    ト「どちらへ?」

    唯「あのね」

    源&ト「はい」

    唯「3分間、夢のような夢じゃない時間、過ごしてみない?二人にご褒美っていうか」

    若「唯、三分間ではわからぬ」

    唯「あ、そっか。ゆっくり180数えるくらいだよ」

    源「褒美で連れられて?」

    ト「百八十数える内?」

    若「是非、共に参りたいが」

    源「是非とあらば。心得ました」

    ト「御意のままに」

    若「うむ」

    唯「じゃあ、円陣で。寄って寄って」

    四人で輪になった。時計回りに、唯、若君、源三郎、トヨ。

    唯「隣同士で手を繋ぐよ。しっかりとね」

    源&ト「えっ」

    唯「つべこべ言わなーい。で、源三郎はたーくんの腕つかんでて」

    若君が、起動スイッチ2号を取り出した。

    源三郎 心の声(唯之助の脇差に似ておる)

    唯が若君の右腕をしっかりと掴んでいる。

    若「では、参るぞ」

    唯「お願いしまーす!」

    源&ト「え?」

    起動スイッチが作動する。

    唯「ねぇ、これってさ、向こうに満月の一日前に着かないよね?話がややこしくなるもんね」

    若「前にも満月の日に令和に着いた。こちらから参る折はそのようになっておるのでは」

    唯「そっか」

    若「今それを申すか?」

    唯「だよね~。まっ、なんとかなるっしょ」

    四人、消えていきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    長い間、(仮)でしたが、次回からは正式タイトルで新たにお送りします。

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    現代Days(仮)への道19~2019年12月12日21時20分、のるかそるか

    会いたい気持ちは全員同じ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の居室。

    尊「さてと。ミッションも完了したし、そろそろ帰るよ」

    唯「帰る?え、一月居なくてもいいの?!なにそれ!1号新機能?」

    尊「うん。バージョンアップしたから。未来の僕が」

    唯「ほえー。一月もここでどうするんかと思ってた」

    尊「明日普通に学校行けって言われてるからさ。長居してなんかあっても困るし」

    唯「そうなんだー。厳しいのう。でもホントありがとね」

    尊「来た経緯は兄さんに話してあるから」

    若君「尊。本当に、ありがとう」

    尊「いえいえ。じゃあ行きますね」

    起動スイッチを抜いた尊。スゥっと消えていった。

    唯「なんかお手軽になってる?」

    若「そうでもなかろうが。唯」

    唯「はい」

    若「わしが預かっておるスイッチ、今夜でも安全、に使えるらしい」

    唯「え?今尊が動いたばっかりなのに?」

    若「未来とやらはかなり術が進んでおるらしく、使っても大丈夫です、と、尊が申しておった」

    唯「えっ…その気になれば、今夜飛べるって事?えーどうしよう。向こうではいつからいつまでになるのかな」

    若「令和元年12月12日から、令和2年1月11日までらしい」

    唯「うわぁ、もしかして念願の」

    若「クリスマスデート、はできるのう」

    唯「えー、えー、行きたいっ!あ、でも尊、今超大事な時期だよね…」

    若「そこなのじゃ」

    唯「ん?」

    若「ん?」

    唯「普段のたーくんなら、邪魔をしてはならぬ、だから参らぬとか言わないっけ?」

    若「尊が熱心に学んでおる最中であり、心苦しい面もあるのじゃが…わしに考えがあっての」

    若君は、令和に飛ぼうと考える最大の理由を話し始めた。

    唯「えっ」

    若「唯は、如何思う」

    唯「うん。すごくいいと思う。それ、尊は知ってる?」

    若「いや」

    唯「飛ぶのはなんて言ってた?来てもいいよって?」

    若「良ければ、と」

    唯「ん、まぁそうなるよね。今の尊が、来て来て!なんて絶対言えないもん。ウチの家族は、普段は大歓迎だと思うけどさ」

    若「お母さんが特に厳しいと。尊の将来を案ずるがゆえであろうが」

    唯「でもね、そのたーくんの考えてる理由で来ました、なら怒らないと思うよ」

    若「だが、尊の学びを邪魔はしとうない。そこが悩みどころじゃ」

    唯「アイツは、出るな!って部屋に押しこんどけばいいんだよ」

    若「それは手荒な」

    唯「ウソウソ。あのね、尊は受験直前まで焦って勉強なんかしないよ。今までずっとがんばってきただろうしさ。たーくんと約束したじゃない、倍がんばるって。大好きなお兄ちゃんとの約束は絶対守ってるよ」

    若「さすが姉君じゃ」

    唯「へ?」

    若「尊をようわかっておるのじゃな」

    唯「さほどでもございませぬぅ」

    若「優しく見守うておる」

    唯「優しいと言えばたーくんでしょ。そんな優しいたーくんに」

    若「何じゃ?」

    唯「もっと、ギュ~ってして欲しいなぁ」

    若「ハハッ」

    唯「えー、してくれないの?」

    若「ギュ、では済まぬが良いか」

    唯「きゃあ!やーん、やっぱ生のたーくん、いい!」

    若「生?」

    ┅┅

    さて、令和の実験室。

    美香子「あっ、光った!」

    覚「無事か?!」

    尊「…ふう。ただいま」

    三人、手を取り合って喜び合う。

    美「ケガとかない?」

    尊「うん」

    覚「じゃあリビングに戻るか。積もる話はそちらで」

    尊「…ここで待ってようかな」

    美「え?待つってまさか」

    覚「唯、こっちに来るつもりなのか?!」

    美「そんな、尊の状況もわかってるはずなのに?もう、無茶ばっかりして!」

    尊「ううん、来ようと思ってるっぽいのは、兄さんなんだ。お姉ちゃんとはそんな話してなくて」

    美「忠清くんが?」

    覚「それって、もしかしてクリスマスが近いからか?」

    尊「多少はあると思うけど、兄さんとその話は一切してない」

    覚「何だろう?思慮深い彼の事だ、尊の状況を理解した上でなお、何か思う所があるんだろうな」

    尊「だから、良かったらどうぞって言ったよ」

    美「…もし来るとしたら、いつまでになるの?」

    尊「1月11日」

    美「え、センター試験って確かその翌週じゃない?」

    尊「うん。一週間もあるじゃない」

    美「…」

    尊「色々その、お父さんの捻挫の話とかしてた時も、所々何か考えてる感じだったんだ。兄さんがホイホイと来るなんて人じゃないのは周知の事実じゃない。それでも何かそうさせる理由があるんだよ、きっと」

    美「捻挫の話しちゃったの?それは心配するでしょう~」

    尊「兄さんに、何か隠してるだろうって詰め寄られて、白状したんだよ~」

    覚「さすが鋭いな」

    美「ん~。でも来るかははっきりしないんでしょう?ひとまずは着替えなさい」

    覚「そうだな。来ればここが光るから、リビングからもわかるし。風呂は…もうちょっと後にするか?」

    尊「うん…今日中は待ってみる」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道18~永禄4年11月21日23時45分、深夜に咲く花

    あなたに逢うために産まれた、みたいに。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の居室。

    唯「あ、たーくんに会えるなら…ちょっと待ってくれる?」

    トヨ「はい」

    棚をゴソゴソ探す唯。グロスを取り出した。

    ト「あ。源ちゃん、ちょっと後ろ向いてて」

    源三郎「ん?わかった」

    仄かな明かりの中、艶々の唇になった唯。

    唯「えへへ。よしっ。じゃ、よろしくぅ」

    若君の居室。若君と尊、歓談中。

    若君「そうか、満月の日であったのに、はさみ揚げは食せなかったと」

    尊「そんな時もありますよ」

    外に人の気配がした。

    若「参ったか!」

    言うやいなや体が動き、襖を開けていた若君。

    源「若君様、尊殿、お待たせ致しました」

    なんと、源三郎は大事そうに大きな大きな風呂敷包みを抱えていた。

    尊「もしやお姉ちゃん、あの中に?」

    そっと床に包みを置いた源三郎。すぐに、後ろに控えていたトヨの位置まで下がった。

    若「…唯?」

    若君が優しく触れる。モゾっと動き、中から声がした。

    唯「…たーくん?」

    若「おぉ、唯、唯!」

    急いでほどき始めた若君。風呂敷二枚で包まれていた唯。ほどく度に、はらりはらりと花びらが開くようだ。

    若「唯…」

    全てほどき終わると、唯が両足を抱えるように座っていた。顔を上げると、まず艶やかな唇が見え、そして、被さった髪をかきあげると…

    唯「たーくん!会いたかったよぉ!」

    若「唯!」

    固く抱き合う二人。

    尊「良かったね…あ、いけねっ」

    くるっと二人に背中を向けた尊。ぽーっと二人の再会を眺めていた源トヨも、

    ト「あっ、私達も後ろ向かなきゃ」

    源「おっと」

    くるっと襖側に向いた。

    ト「尊様、慣れていらっしゃるわね」

    源「そうだな」

    どのくらい時間が経ったか。

    唯「尊~」

    尊「あ、ラブラブタイムは終わりましたか」

    声を合図に、体の向きを戻した三人。

    唯「久しぶりっ」

    尊「ようやく僕にも再会のあいさつね」

    唯「着物、なかなか良いじゃん」

    尊「サンキュ。あれ?前髪って、長く伸ばしてなかったっけ?」

    唯「がんばって伸ばしてたけどさ、ちょっとうっとーしくって切っちゃった」

    尊「自由にやってんなぁ。声、全然普通だけど、まさかもう治った?」

    唯「大根アメ、無敵!もーすっかり、のど全快っす!」

    尊「マジか。早ぇな」

    唯「お母さんが作ってくれた、ってだけで治るんだよ」

    尊「なるほどね」

    若「源三郎、トヨ。此度はまこと、大儀であった。心より礼を申す」

    源「お役に立てて宜しゅうございました」

    ト「私共も、心より喜んでおります。あ、こちらを」

    トヨが運んで来た、もう一つの包みを差し出した。

    ト「明日の奥方様のお召し物でございます。今宵は…こちらでお休みになられると思いましたので」

    若「何と気の利く」

    唯「嬉しい、ありがとう、トヨ!」

    若「トヨ」

    ト「はっ、はい!」

    若「明日も早うから忙しいのではないか?遅うまで時間をとらせ済まなかったの。今宵はもう下がって良い」

    ト「いえ、勝手にブランコに乗っておりましたし、そのような」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「トヨを寝所へ送り届けよ」

    源「宜しいのですか?」

    若「しばしトヨの警固を」

    ト「まぁ…」

    源「ははっ!」

    尊「あっ、お二人もう行きますよね?これ僕もういいんで、良かったらどうぞ」

    立ち上がり、持っていた使い捨てカイロを源トヨに一つずつ渡す尊。

    源「若君様並に背丈のある御方だったとは」

    尊「まだしばらく使えるんで」

    源「これは温かい」

    ト「まぁ」

    尊「冷めてきたら、シャカシャカ振ってくださいね。少しはもちますから」

    源「そのように使うと。頂戴します」

    唯「あんた、二つも持ってたの?しかも何よ、その足!」

    尊「うるさいなぁ。寒いの嫌だからだよ!」

    尊の足元は、モコモコの毛糸の靴下だった。

    唯「たーくん、何とか言ってやって~」

    若「洒落ておる」

    唯「は?」

    笑いを堪えながら、源トヨは去っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道17~永禄4年11月21日23時30分、どうなる?

    ここまで親身にしてくれるなんて。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き若君の居室。源トヨを信じて待つ、若君と尊。

    尊「千羽鶴、こちらでも完成したんですね」

    令和から持っていった千羽鶴と、永禄の皆で作った千羽鶴が、床の間に並べて飾ってある。

    若君「あぁ。父上にも、戦なき世を皆が願っておる、と伝える事も出来た」

    尊「それは良かったですね」

    若「ところで、今、そちらの世は安泰か?」

    尊「はい。今のところは大丈夫です。あの、タイムマシンなんですけど」

    若「うむ」

    尊「兄さんが持ってる方のスイッチの性能を、未来の僕が上げまして。5人は今回無理ですけど」

    若「今は学びに勤しんでおるからじゃな」

    尊「はい。燃料の残りでいくと、二人2往復できます」

    若「そうか」

    尊「一度に運べる人数が増えてて、今なら四人で1往復が最高値です。手を繋ぐとか、くっついて飛ぶのが条件ですけど」

    若「四人も一度にか。それもたまげる話じゃ」

    尊「五人以上タイプは、気長に待ってください」

    若「ハハハ。心得た」

    その頃、唯の居室。到着した源トヨ。

    トヨ「行ってきます」

    源三郎「頼んだぞ」

    そっと居室の中に入るトヨ。当然唯は就寝中。

    ト「奥方様、奥方様、起きてはいただけぬでしょうか」

    肩を優しく揺り動かしながら声をかける。

    唯「ん…」

    ト「あ、思ったより早かったわ」

    唯「ん…ん?わっ、びっくりした!どしたの、こんな夜遅くに」

    起き上がった唯。

    ト「あの、わたくし先程、尊様とおっしゃる御仁にお会いしました」

    唯「えーっ!」

    ト「しーっ!」

    唯「ごめんっ。え?尊?なんで?満月って確か明日…」

    ト「満月が何か?」

    唯「そっか、一日前に着くパターンの方で来たか。で、で?」

    ト「今、若君様の居室においでです。尊様から品を預かりましたが、あの」

    唯「えー、会いたい!でも品も気になるぅ。で?」

    ト「源ちゃんを呼んでも良いでしょうか」

    唯「え、何その全員集合な感じ。うん、良いよぉ」

    源「御免」

    風呂敷を持って、源三郎が入って来た。

    源「こちらでございます」

    唯「わぁ、なになに」

    風呂敷をほどく。

    唯「薬だぁ、あ、食べ物もある。あ、トヨ見て!」

    ト「まぁ、爪を染めるあの品ですね」

    唯「マニキュアまで入ってるなんて、気が利いてる!…あ、手紙だ」

    すぐに読み始めた唯。涙ぐんできた。

    源三郎&トヨ「…」

    読み終わると、何かを探し始めた唯。

    唯「どれがそれ?あ、これかぁ。手拭いに包んであるからわからなかった」

    中から出てきたのは、大根アメの瓶と、子供用のスプーン。

    唯「懐かしい…これでのどカンペキに治る!」

    すぐに蓋を開け、舐めだした。

    唯「甘ーい、おいしーい!」

    源三郎 心の声(幸せそうなお顔をされて)

    トヨ 心の声(尊様はやはり薬師なのね)

    唯「あ、あ、あ。どう?いい声でしょっ」

    ト「えっ、治ってる」

    源「なんとよう効く薬じゃ。しかも治られたならば益々好都合」

    ト「まさしく。あの、奥方様」

    唯「うん」

    ト「若君様の居室に、お連れしても宜しゅうございますか?」

    唯「えっ…たーくんと、尊に会えるの?でも私、ふらふら歩いてたら怒られない?」

    ト「私と源ちゃんに策がございます。あの、少々手荒とお感じになられるやもしれませぬが」

    源「大切にお運びいたします。我々に、ゆだねていただけますか?」

    唯「会えるなら何でもいいよ、お願いします!」

    源&ト「承りました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道16~永禄4年11月21日23時15分、任せます

    夜中に外は寒いよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き若君の居室。

    若君「そうじゃな…」

    尊「…」

    若「よし。尊」

    尊「はい」

    若「近習を呼ぶ。信頼出来る者じゃ」

    尊「わかりました」

    若君は立ち上がり、襖を開け居室の外へ出て、中が見えないようにすぐピシャリと閉めた。

    若「源三郎は居るか」

    源三郎「はっ」

    庭から現れた源三郎。

    若「そこに居ったか。良いか源三郎」

    源「はい」

    若「中へ。そして、何を見ても大きな声を立てるでないぞ」

    源「え?はっ、心得ました」

    源三郎を居室に招き入れると、またしてもすぐ襖をピシャリと閉めた。

    源「うっ」

    尊を見て、明らかに狼狽えている源三郎。

    尊「こんばんは」

    源「こちらの御仁は…」

    若「大切な客人じゃ。そして唯の客人でもある」

    源「そうでございますか」

    若「頼みがある。何とか客人を唯に会わせたいが、世話をしているトヨと話は出来ぬか?」

    源「直ちに、でございますか」

    若「無理を承知で申しておる。済まぬ。このような夜更けに」

    源「今、呼んでも宜しければ」

    尊「え」

    若「出来るのか?」

    源「畏れながら申し上げます。トヨなら外に居ります」

    若「何と」

    源「若君様が使って良いと仰せになったので、今宵は警固番をしつつブランコで落ち合うておりました。警固が片手間のような形になり、申し訳ございません!」

    平伏す源三郎。

    若「そうだったのか。それは構わぬが、さぞかし外は寒かろう。すぐに呼べ」

    源「はっ」

    トヨを呼びに行く源三郎。

    若君 心の声(夜更けに逢瀬をする仲であるのに、何故縁組みを断らぬ?)

    すぐにやって来たトヨ。

    トヨ「若君様、申し訳ございません」

    平伏す二人。

    若「それは良い。これからも使うてくれ。わしにとっては好都合であったし。それで、頼みじゃが」

    源三郎&トヨ「はい」

    若「一番の望みは、この」

    尊「あの、尊と申します」

    若「尊を唯と会わせたい。無理であれば、尊が遠路運んだこの薬を、唯に渡したい」

    源「そうでございますか」

    源三郎 心の声(尊殿は、若君が呼ばれた薬師なのであろうか)

    トヨ 心の声(心なしか、奥方様に似ていらっしゃるような…気のせいだわ。きっと)

    若「如何であろうか」

    顔を見合わせる源トヨ。

    源「若君様」

    若「手立てはありそうか?」

    源「はい」

    若「おぉ」

    源「実は今宵私共、無茶とは思いつつ、若君様と奥方様を会わせて差し上げる事は出来ぬかと算段をしておりました」

    尊「優秀な家臣だなぁ」

    源「お預かりした品を届けるのは、容易うございます。まずは奥方様にお持ちして」

    若「頼む」

    源「その後、こちらにお連れする際ですが」

    若「出来るのか?!」

    源「私共に考えがございます。少々…手荒になっても宜しいでしょうか。傷つけるという意味合いではございません」

    若「…承知した」

    ト「大切に、大切にお連れいたします。どうかお許しください」

    若「そなたらのする事じゃ。案じてはおらぬ。宜しく頼む」

    源「では、尊殿、お品お預かり致します」

    尊「お願いします!」

    源トヨ、二人で荷物を持ち出て行った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    妖怪千年おばばさん

    英語のサブタイトル付きのアシガールが出来たのですね。ビックリしました。
    今特に心当たりはないのですが、興味がありそうな人がいたら、勧めてみます。
    海外で放送の予定でもあるのでしょうかね。
    ご親切にありがとうございました。

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    現代Days(仮)への道15~永禄4年11月21日23時、着いたー!

    褒めて伸ばす?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって永禄。若君の居室。

    若君 心の声(寝付けぬ…)

    既に床についていた若君だったが、眠れずとうとう起き上がってしまった。

    若 心(…)

    このところ多忙だった若君は、唯にも未だ会えず、また源三郎にも縁組みへの考えを聞けずじまいでいた。

    若 心(どうにも落ち着かぬ)

    すると、急に居室がガタガタと揺れ出した。すぐに立ち上がり、刀を取った若君。

    若 心(揺れる?まさか…満月は明晩じゃ)

    すぐに揺れは治まった。が、背後に人の気配を感じた若君、即、刀を抜き振り向いた。

    若君「何奴!おぉ」

    尊「わー!命だけはっ」

    若「尊!」

    刀を戻し、部屋の奥で腰を抜かしている尊の前に座った若君。

    尊「あーびっくりした~。お久しぶりです…」

    若「尊」

    尊「はい」

    若「洒落ておるの」

    尊「うわっ、開口一番がそれですか」

    若「よう似合うておるぞ」

    尊「かたじけのうぞんじます」

    若「そうか」

    尊「え?」

    若「タイムマシンが出来、迎えに参ったのじゃな。さすが尊。ここまで早いとは見上げたものじゃ」

    尊「わー、やっぱそう思いますよね。違うんです。今日は、兄さんとお姉ちゃんを救いに来ました」

    若「救う?」

    すると、外で声がした。

    源三郎「若君様、ひどく屋敷が揺れましたが、ご無事でございますか?」

    若「今宵は、源三郎か。大事ない。下がって良い」

    源「はっ」

    源三郎の気配が消えたのを見計らって、話し出す若君。

    若「救うとは?」

    尊「兄さん、しばらくお姉ちゃんに会えてませんよね。風邪こじらせたかなんかで」

    若「何故それを」

    尊「兄さんの切ない書、見ました。発見されたんです。令和で」

    若「何、と…」

    尊「のどを傷めてるって書いてあったので、薬を持って来たんです。お姉ちゃんに何とか渡せませんか?」

    若「その為だけに参ったと?学びを止めてまでか?」

    尊「あの、実はこの起動スイッチ1号、未来の僕が機能アップしてくれて、満月の日に飛ぶと、前の日に着いて」

    若「聞き覚えがある話じゃな」

    尊「で、日付さえまたげば、すぐ令和に帰れるんです。一月待たなくても」

    若「そうなのか」

    尊「だからえーと、腕時計…良かった、狂ってなかった。あと1時間もすれば帰れるんです」

    若「されど、少なからず身を危険に晒してまでとは…済まぬ。息災であったか?」

    尊「はい!」

    若「お父さん、お母さんは?」

    尊「あ、あっ、はい」

    少し言いよどんでしまった尊。

    若「ん?」

    尊「え?」

    若「何やら隠してはおらぬか?」

    尊「いえ、元気、元気ですから」

    しまった、と下を向いた尊。そこへ若君の手が伸びた。

    若「尊」

    クイっと、尊の顎を掴み持ち上げた若君。

    尊 心の声(こ、これは、伝説の顎クイってヤツ?!)

    若「有り体に申せ」

    尊 心(やってる事は、尋問だけど)

    尊「兄さんはお見通しですね。実は少し前に、父が階段を踏み外して」

    若「何だと」

    尊「右手右足をひねって。足はもう大丈夫なんですけど、手がまだで」

    若「家事はどうしておるのだ」

    尊「料理は、母がほとんどやってます」

    若「それは…お母さんは院がある。体に障ってはおらぬか?」

    尊「あと少しだからって言ってます。だから大丈夫ですよ」

    若「そうは言えども」

    尊「で、お姉ちゃんには会えましたか?」

    若「いや。会うてはおらぬ」

    尊「そうですか。あの」

    風呂敷をほどいた尊。

    尊「色々持って来たんです。両親の手紙もあります」

    若「それは…是が非でも渡さねばのう」

    尊「何か方法ありませんか?」

    若「うむ…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    こちらでもお知らせ~海外在住の皆様へ~

    カマアイナ様
    メープル様
    海外在住のアシラバの皆様

    アシガール掲示版で
    お知らせしたのですが、
    こちらでも。

    英語の字幕のある
    アシガールの動画を見つけました!
    第一話はこちら↓
    https://www.dailymotion.com/video/x7uwcn2

    日本のドラマに興味はあるけど、
    日本語は苦手というお友達が
    いらっしゃいましたら、
    ご紹介下さいな~。(*^^)v

    海外の俳優さんたちの”アシガール”も、
    いつか見てみたいですね。(^_^)v

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    現代Days(仮)への道14~12日木曜7時、いざ!

    なーんか、緊張感ないんだよなー。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家。朝ごはん中。

    覚「晩飯は早めに用意する。あと悪いな、今日ははさみ揚げ作れないから」

    尊「うん。また来月楽しみにしてる」

    いつものように時間が進んで行く。

    尊 心の声(いよいよ今夜初飛行。学校行ってる場合じゃなくない?でも親は許してくれず、と)

    尊「行ってきまーす」

    覚「おー」

    美香子「行ってらっしゃい」

    そして夜になった。

    尊「晩ごはん、ステーキなの?!」

    覚「どーんとな。腹が減っては戦ができぬ、だろ?」

    尊「戦には巻き込まれたくないけど。そうじゃないから行けるんだし」

    覚「いざとなれば、走って逃げなきゃならんだろ?だから肉でスタミナをな」

    尊「いざ、になる前に捕まるよ」

    美「お父さん、縁起の悪い事言わないで~」

    覚「すまんすまん」

    尊「これだから、ウチの家族は」

    20時30分。いよいよリビングで着物の着付けが始まった。

    尊「ステテコって、これ?えーっ」

    覚「あると大分違うから」

    美「はい、穿いて」

    尊「うぇっ」

    着付け完了。

    覚「おー、似合ってる」

    美「カッコいいわよ」

    尊「痛み入ります」

    21時。荷物の確認。

    美「この辺が、市販薬。でこっちが栄養補助食品。こっちが包帯や体温計。でね、薬局でついマニキュアも買っちゃったから持ってって」

    尊「わかった」

    覚「で、これこれ」

    大根アメ。

    尊「あー、久々に見た。うん、これが一番喜びそう」

    美「あと、これ」

    封筒。

    尊「お姉ちゃんへの手紙?」

    美「うん」

    覚「唯に会えない可能性もあるだろ。最低でも忠清くんには渡せるといいが」

    尊「そうだね」

    美「荷物全部、風呂敷に包むわね」

    尊「あ、大事な物用意しなきゃ。カイロ」

    覚「あー」

    使い捨てカイロを袋から出した。二つ。

    美「そこまで寒いかしら?だって多分寝室に飛ぶでしょ?外じゃなく」

    尊「念には念をだよ」

    21時15分。実験室に三人移動した。

    美「いよいよね」

    覚「頑張ってこい」

    尊「うん」

    覚「日付変わったら、出来るだけ早く帰って来いよ」

    尊「わかった」

    美「ちなみに、明日も学校は行ってもらうからね」

    尊「やっぱしかー。ちぇー」

    覚「学生の本分を忘れるな」

    尊「はいはい」

    タイムマシンエリアに立った尊。

    尊「では、行って参ります!」

    覚「おー」

    美「行ってらっしゃい」

    尊「そのさぁ、見送り方が、朝学校行く時と同じってどうな…」

    起動スイッチ1号と共に、消えていった。

    覚「何か言いながら消えてくのは、姉弟一緒だな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道13~11日水曜14時、特等席です

    あーんして、は想い出でもあるんだね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって令和。キッチンに、覚と美香子。

    覚「せっかくの休日に、働かせてごめんな」

    美香子「いいのよ~。作り置きは、やれる時にやっとかないと」

    美香子が材料を切り、覚が炒めたり煮込んだりしている。コンロがフル稼働中。

    覚「明日は満月だから、ホントは蓮根のはさみ揚げ作ってやりたいけど」

    美「まだ手が本調子じゃないもの。一回見送りにしましょう」

    覚「そうするよ」

    粗方の作業を終えた。15時。

    覚「お茶入れるよ」

    美「うん」

    一息つく二人。

    覚「明日の話」

    美「はい」

    覚「押し切るみたいになっちゃったけど」

    美「いいわよ。飛ぶなら今、って確かにそうだし」

    覚「薬とか、色々買ってきたみたいだな」

    美「うん。あとね、もしあの書の通り、残りはのどの痛みだけなら、とっておきの秘薬を持たせようと思ってるの」

    覚「へぇ…あ、あれか。大根アメ」

    美「さすがお父さん」

    休憩後。

    覚「これを煮沸消毒だな」

    美「作り方は簡単なのよね」

    小さめに切った大根とハチミツを、煮沸消毒済みのガラス瓶に入れ、蓋をした。

    美「明日の夜にはちょうど出来てるわ」

    覚「なんか、思い出すな」

    美「うん。いい思い出ばっかりよ」

    ┅┅回想。唯や尊が幼かった頃。日曜昼下がりの速川家リビング┅┅

    唯「うわぁーん、いたいよぉ、うわぁーん!」

    美「あーあ、泣き出しちゃった」

    隣で尊が、我関せずとばかりに積み木で一人遊びしている。

    覚「一緒に泣き出さないだけ助かるが」

    唯「ひっく、ひっく」

    美「まだお口の中、いたい?」

    唯「いたぁい」

    美「そっか。ちょっと痛みが残ってるかな。よしよし。そろそろアレが出来てるはず…ゆい~、ちょっとまっててねぇ」

    お盆に、瓶に入った大根アメとスプーンを数本のせて持って来た。ペタンとリビングの床に座る美香子。

    美「はい、ママのおひざにどーぞ」

    唯が走って来て、膝にチョコンと座る。

    美「あまーいのあげよう」

    唯「おくすり?にがいの、いや」

    美「おくすりじゃないわよ。ほら、ママいま、しろいおようふくきてないでしょ?」

    唯「きてない」

    美「みかこせんせいじゃないから、おくすりじゃないのよ~」

    瓶を開け、上澄みをスプーンで少し掬った。

    美「まずはママが味見。うん、上出来。ゆい~、あまいのできたよぉ~」

    唯「あまいの?」

    子供用スプーンに持ちかえて、ほんの少し掬った。

    美「はい、あーんしてくーださい」

    唯「にがくなぁい?」

    美「ううん、とーっても、あまいわよ~」

    おそるおそる、ペロッと舐めた唯。

    唯「あまぁい!」

    美「でしょ、ママの言ったとおり~」

    美香子 心の声(良かった、唯が好き嫌いのない子で)

    唯「もっと、もっと」

    美「あら、気に入ったみたいね。あとちょっとだけね~」

    また違うスプーンに、掬って与えた。

    美「はい、これで、おーしまい」

    唯「おしまい?」

    美「ふふっ。泣き疲れちゃって、お目目がくっつきそうじゃない。このままママのおひざでねんねしよっか?」

    すぐに静かになった唯。

    美「ふう」

    覚「お疲れさん。こっちも寝てるよ」

    見ると、尊が積み木を持ったまま、コテンと横になりスヤスヤ眠っていた。

    美「あらま。ふふふ」

    覚「ははは」

    ┅┅回想終わり┅┅

    覚「明日か…」

    美「明日ね…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    11日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道12~10日火曜9時、負けない!

    良薬口に苦し、のはず。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の居室に、唯とトヨ。

    トヨ「外へ出る、とおっしゃらないだけまだ良いですが」

    唯「え゛~?」

    声は枯れ気味だが、

    ト「体力が有り余っておられるようで」

    室内をぐるぐると走り回ったり、止まったと思えばスクワットを始める唯。

    唯「だってぇ。風邪引いちゃったのはホント、不徳のいたすところ、だったけどー。あとはのどの調子だけだもん、悪いのは。ケホッ」

    ト「そうですが」

    唯「動いてないと、どうかなりそうなんだよ」

    ト「若君様は、ここのところ気落ちされているのが目に見えてわかるそうです。それに比べれば」

    唯「私だって元気ないんだよ?これでも。早く、生のたーくんに会いたいよぉ!」

    ト「生?生身ではない若君様って何ですか」

    唯「え!えーと、ギュってできないたーくん、的な?」

    写真集や動画再生できるおもナビくんは、全て唯の居室にあるのでいつでも見られ、若君よりは気が紛れていた唯だった。

    ト「今日は薬は服されましたか?」

    唯「のんでない」

    ト「治すおつもりがないのですか?」

    唯「現代の薬ならすぐ効いたのに!」

    ト「現代、とは?」

    唯「あ、ごめん。何でもない」

    ト「そうですか」

    唯「でもさ、最近のんでるこれ、絶対罰ゲームだよ!苦過ぎ!」

    ト「またそのような」

    唯「トヨはのんでないから、そんなん言えるんだよ~」

    ト「わかりました」

    唯「え゛?」

    唯に処方された薬を少し手に取り、そのまま口に放り込んだトヨ。

    ト「そこまで苦うはございませぬが…ゴホッ」

    唯「わぁ、大丈夫?お水お水!」

    水を飲み落ち着いたトヨ。

    ト「失礼いたしました」

    唯「ごめん、まさかのんでくれるなんて思わなくって」

    ト「いえ。万が一、薬でなければ事が大きくなりますので」

    唯「薬じゃないなら何?」

    ト「毒を盛られるとか」

    唯「毒…そんな事あるの?!」

    ト「これは、薬師から直に受け取っておりますので、案ずるには及びませんが」

    唯「そう…」

    ト「さぁ、では奥方様も」

    今度は素直に服薬した唯。

    唯「私ってさ、まだ敵いるよね」

    ト「うーん…随分と蹴散らしたつもりですが」

    唯「たーくん人気あるもんね。このままさ、治らずに私なんか居なくなっちゃえーなんて思われてるんじゃない?」

    ト「それは…だから薬をのまれなかったのですか?」

    唯「ううん、苦いから」

    ト「あぁ、それだけの理由でしたら安心です。…少なくとも」

    唯「うん」

    ト「奥方様が居なくなれば、一番こたえるのは若君様です。今の若君様を拝見すればすぐわかるのに、未だそれをわからぬ者は居るのでしょう。残念ながら」

    唯「なぐさめてくれてありがとね」

    ト「若君様の、心からの笑顔を引き出せるのは、奥方様しか居られません」

    唯「そうかな」

    ト「そうですとも。天野の頃から長く仕えておりますが、奥方様と出会われてからは、格段によう笑うておられますし」

    唯がトヨににじり寄り、手を取った。

    唯「トヨ~。トヨがそばに居てくれて、ホントに良かったよぉ」

    ト「一刻も早く治し、若君様に会えるよう、全力でお助けいたします」

    唯「嬉しいっ。じゃあまずは」

    ト「いかがいたしましょう」

    唯「のどには、うがいかな」

    ト「はい、支度いたします」

    早速、口に水を含んでガラガラうがいをしては桶に吐き出す、のを始めた。

    唯「がんばる。私がんばるね」

    ト「お供いたします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    10日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道11~9日月曜11時、それでいいのか?

    姫じゃなきゃダメなの?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    永禄。定例の軍議がそろそろ終わる。

    大殿「此れにて」

    全員「ははっ」

    若君は、未だ会えていない唯の身を心から案じながらも、日々の執務を粛々と続けていた。

    有山「木村殿、ちと話が」

    木村「有山殿?如何された」

    小平太パパが先に部屋を出たのを確認して、家臣二人が話し始めた。若君はまだ大殿と話をしている。

    有「どこぞに、源三郎に似合いの姫君は居られぬか。ご存じありませぬか?」

    木「源三郎?!」

    木村の甲高い声が部屋中に響く。話を終えた若君も驚いて立ち止まった。

    有「小平太殿が娶られぬ前に、先手を」

    木「ほほぅ…されどまだこの地は不案内で」

    有「心に留め置いてはくださらぬか」

    木「承知致した」

    若君が、二人に近付く。

    若君「源三郎が何か?」

    有「そろそろ縁組みは如何かと思いまして」

    若「縁組み…」

    有「はい。木村殿は、声が大きいからのぅ」

    木「若君様に隠す話でもなかろう~」

    若「源三郎は、承知しておるのか?」

    有「話はいたしました」

    若「して、何と」

    有「考えさせて欲しいと」

    若「…断ったのではなく?」

    有「はい」

    若「心に決めたおなごは、居らぬ様なのか?」

    有「わたくしには、居らぬと申しましたが」

    若「…そうか」

    腑に落ちない顔をしながら、自身の居室に戻った若君。すると、

    三之助「だから、そこではないー」

    孫四郎「ここはぁ~?」

    三「そこも、あっ」

    机の上でジェンガを広げる小さな武士が二人。思わず笑顔になる若君。

    三「また倒したー。あっ、若君様」

    若「好きに使うが良いと申したのはわしじゃ。続けよ」

    三之助&孫四郎「はいっ」

    少し離れて座った若君。遊ぶ二人の様子を微笑ましく眺めながらも、

    若君 心の声(源三郎。何故トヨの話を出さぬ?まさか遊びで付き合うておるとも思えぬのだが)

    渋い顔をしている。しばらくすると、

    三&孫「若君様ぁ」

    いつの間にか、二人並んで座っている。ジェンガは片付けられていた。

    若「おぉ。もう良いのか?」

    三&孫「はいっ」

    若「三之助」

    三「はいっ」

    若「此処で遊べと、吉乃殿が申されたのではないか?」

    三「…あのぅ」

    若「何じゃ?」

    三「母上が、若君様の気がまぎれるから、と」

    若「やはり。気が紛れる。その通りじゃ。ハハハ」

    二人の頭を、順に撫でる。

    若「よう紛れた、と、吉乃殿に伝えてくれ。礼を申す」

    三&孫「わかりましたぁ」

    一礼した後、走って出ていった。

    若 心(唯に会えず、気落ちする様が目に見えておるのだな。吉乃殿にまで気を遣わせるとは)

    庭に向いて座り直す。

    若「されど…解せぬ」

    源三郎の言動が、理解出来ない若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    9日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道10~8日日曜10時、思い立ったが吉日

    初めてのおつかいにしては、遠い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家三人、家族会議の真っ最中。

    美香子「飛んで行く日付と時間は間違いなくても、どこに着くかはわからないじゃない?」

    尊「毎回、一番安全な場所に到着してるみたいだよ。今はお姉ちゃんと兄さん離ればなれだから、多分兄さんの居場所に飛ぶんじゃないかな」

    美「尊は唯ほどタフじゃないから~。どうするの、場合によっては目の前に刀を突きつけられるかもしれないわよ?誰か他の人に見られて、曲者じゃ!って」

    尊「うーん」

    覚「でも最短で1時間だ」

    美「お父さん、行かせる気なの?」

    覚「唯は心配だ。それにその、前言ってたさ、このタイミングで忠清くんの心情を吐露した書が発見されたってのが何か」

    美「呼ばれてる?」

    覚「彼はそんなつもりはないだろうが。人に言えないから、書いて吐き出した感じに受け取れるし」

    尊「お母さんは心配じゃないの?だって連れて来るって言ってるんじゃないよ、せめて即効性のある、現代の薬を渡したいだけなんだよ」

    美「尊を心配してるのよ~」

    尊「僕?」

    美「こんな押し迫った時期に飛ぶなんて。ケガでもしたら受験に差し障るじゃない。これまで頑張ってきたでしょう」

    尊「まあね」

    美「どこか呑気よねぇ」

    尊「せっかくだから一度は行ってみたいってのはある。進化したスイッチ1号なら、向こうに一月居なくていいから超安全だし」

    美「安全かしらねぇ。遊びに行くのとは訳が違うわよ」

    覚「よし。尊にミッションを与える」

    美「え?!もう決まり?!」

    覚「今、やはり行くべきだと思うんだ。尊が動いて、唯や忠清くんが少しでも楽になるのならそうしてやりたい。いつでも行けるから一息ついた4月ね、では遅いだろう。彼らは今苦しんでるんだから」

    美「ん~」

    尊「お母さーん、行かせて欲しい!」

    美「わかったわ」

    尊「やったー!」

    美「色々持たせてやりたいから、準備しなくちゃね」

    覚「買い物か」

    美「昼過ぎに、薬局行ってくるわね。薬もだけど、栄養補助食品とかゼリー飲料とか」

    覚「あとさ」

    尊「なに?」

    覚「永禄に溶けこむためにはさ、洋服じゃなくて着物で行った方が良くないか?」

    尊「着物!」

    覚「僕もまあまあ数持ってるんだぞ?どうどう?」

    美「そういえば、羽織まで一揃えのとか、あったわね」

    尊「着させる気満々だな…えー、だって向こうすっごく寒いと思うよ?兄さんの部屋に暖房ないだろうし」

    覚「そりゃないだろ」

    尊「足とかスースーするんでしょ?」

    覚「ステテコも貸してやろう」

    尊「ステテコ…聞いた事あるような」

    美「首元も寒いだろうから、そうね~中にタートルネックの長袖Tシャツでも着て、マフラーも巻いてったら?」

    覚「おー、いいねぇ」

    尊「なんで服の話に変わったら、俄然やる気になってんの」

    美「なーんか、楽しくて」

    覚「ところで、永禄にあるスイッチが進化した話はするのか?」

    尊「うーん。一応話そうかな」

    覚「それは消極的なんだな」

    尊「僕、兄さんに散々、現代は安全とは限らないから来ちゃダメって言ってあるんだよ。おまけに今度は5人以上乗れるタイムマシン作ります、って大きいコト言っちゃってて」

    美「あら、そうなの」

    尊「来てはみましたが、まだそこまでは無理です、って謝らなきゃなんない」

    覚「そうか。まぁ今回は、唯に薬を渡す、これさえ何とかなればな」

    尊「うん」

    美「そうね。何とかなるわ~」

    尊「開き直った?」

    美「ウチは基本、楽天的」

    尊「そうでした」

    三人「ははは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道9~7日土曜21時、動く!

    どんな計算式なんだ?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和。実験室に尊。

    尊 心の声(お姉ちゃんも兄さんも、何とかしてあげたいよ。このままじゃ受験勉強も身が入らない)

    パソコンをぼんやり眺めるだけの尊。

    尊「でも、なすすべはなし。あーあ、サッと行ってサッと帰ってこれるなんてタイムマシン、出来ないかな…」

    そう呟くと、実験室の電気を消した。

    尊「身が入らないけど勉強するか」

    暗闇の中出て行こうとしたところ、

    尊「あれ?」

    棚の一部が点滅している。もう一度、明かりをつけて近づいてみると、

    尊「これ起動スイッチ1号だ。点滅機能なんかつけたっけ?」

    スイッチはまだ点滅している。

    尊「あ…あーっ?もしかして?!」

    スイッチを細かく調べ始めた。

    尊 心(すごい、すごい!)

    どれだけ時間が経ったか。実験室の外に人の気配がした。ドアを叩く音。

    美香子「尊~、もう、一度籠ったら全然出てこないんだから!今はタイムマシンより受験勉強でしょ、開けるわよ!」

    美香子がドアを開けると、尊がパソコンを凝視していた。

    美「尊~」

    尊「お母さん!どうしよう」

    美「は?どうしようって何が」

    尊「この起動スイッチ1号、使えるようになってるんだ」

    美「使える?燃料を足したの?だってそんな時間なかったでしょう。夜中にこっそり作ってたの?」

    尊「何もしてない。でも燃料も入ってて」

    美「わかった、もう夜遅いからまずはリビングに戻りましょ。続きはそちらでね」

    尊「うん」

    食卓に三人。

    美「で?何が起こったの?」

    尊「起動スイッチ1号が点滅してた。おかしいなと思って入ってる機能を調べたら、すごいコトになってた」

    覚「使えるようになってるのか。ずっと触ってなかっただろ?」

    尊「うん。でね、こちらを満月の日に出ると、永禄の満月一日前に着くんだけど」

    美「それって2号の機能と同じじゃない?」

    尊「違うんだ。満月の日、こっちを何時に出ても、到着するのは永禄の満月一日前の子の初刻、今で言うと23時に設定されてて」

    美「時間指定なの?」

    尊「そうみたい。でね、なんと戻る時は、空にまだ満月が浮かんでる時間でも、日付さえまたげば帰って来れるんだ。もちろん出た時間の3分後」

    覚「何だって?それさ、例えば満月の夜8時にこっちを出ても、向こうには前の日だけど同じ夜8時じゃなくて夜11時に着いて、で0時、0時とは言わんか」

    尊「子の正刻ね」

    覚「そんな、滞在1時間とかでも帰って来れるのか?」

    尊「うん。ちょっとだけ行ってすぐ戻れたらってニーズに応えたみたい。だからさ、今回お姉ちゃんがまだ具合悪いのか確認したり、薬とか持ってってあげられるかも」

    美「そんな深夜に会えるかしら?ちょっとって簡単に言うけど。それに、今はもう治ってるかもよ?」

    尊「書に、一週間も会えてないってあったよ?風邪にしては日にちかかり過ぎじゃない?」

    美「まぁそうだけど」

    尊「で、もっと驚くのは」

    覚「まだあるのか」

    尊「永禄にある起動スイッチ2号も、違う新しい機能が付いてた」

    美「手元にないのにわかるの?あー、どうプログラムが変わったか見ればわかるか。で?」

    尊「2号、当初燃料が15回分くらいだったんだ。ずっと一人で使い続けるなら7往復半」

    覚「ほー」

    尊「充分だとは思うけど、2号は二人で飛べるから、カウント数が変わる」

    美「倍々で減ってくのね」

    尊「ううん、違うみたいで。今、計算上の残量よりちょっと多いんだ。なぜかな?と思ったんだけど、どうやら飛び方によってはもっと省エネになるらしいんだ」

    美「あー、そういえば省エネにしてって頼んであったわね」

    覚「どんな飛び方だとそうなるんだ?」

    尊「ひとかたまりで飛ぶ。どこかくっついてればいい。二人でこっちに来た時、一回目はお姫様抱っこで二回目は抱き合ってたから、それが正解だったみたい」

    美「で、あと何往復できるの?」

    尊「人数により変わる」

    覚「人数?」

    尊「一度に飛べる人数が、なんと増やせるんだ!今の残量なら、二人だと2往復、三人だと1往復半、四人だと1往復、五人だと往復は無理」

    覚「こんがらがるなぁ」

    美「ふーん。ちょっと待った!」

    尊「はい?」

    美「そもそもなんで、使えるようになったり進化してるの?」

    尊「令和元年12月7日、こんなタイムマシンあったらなと呟く僕が居た」

    覚「何?モノローグ?」

    尊「呟いただけで、1号も反応しなくて、今頃部屋で勉強してた。そして何年か経ち、欲しかったタイムマシンが出来上がった。その時、未来の僕はどうすると思う?」

    美「ややこしい話だけど…きっと、欲しいって呟いてた、今日の尊に送り届けると思う」

    覚「何だ~?わかったようなやっぱりわからんような。今は二度目の世界って事か?一度目なんて覚えてないぞ」

    尊「なんとなく、ふわっとわかればいいんじゃない?」

    美「向こうにある2号も、燃料の残量そのままで、機能アップしたプログラムを届けたのかしら」

    尊「多分」

    美「ファンタジーね」

    覚「ファンタジーだ」

    尊「で、どうしよう」

    美「どうしようって…まさかこの大事な時期に飛ぶ気?!」

    尊「でも心配じゃない?」

    覚「そりゃあ心配さ」

    美「唯の状態はね。ちょっと考えさせて」

    覚「僕も。まぁ今日はここまでにしとけ。頭フルに使っただろ。今夜はもう寝なさい」

    尊「はい。満月は12日だからね」

    覚「わかったわかった」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    7日のお話も、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道8~6日金曜15時、心が絶不調

    ビタミン唯が欠乏しております。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって、永禄。若君の居室。

    若君「して、どうなっておるのだ」

    小平太「熱は下がったとの事」

    唯の病状を、小平太に聞く若君。

    若「そうか。ならば」

    小「まだ会うてはいただけませぬ」

    若「何故?」

    小「のどがまだ痛むと聞きました」

    若「何と…薬師は何をしておるのだ」

    小「薬は、あらゆるものを試しておるようでございます」

    若「それはかえって、具合を悪うしてはおらぬのか?」

    小「わかりません」

    若「…」

    若君の表情が曇る。

    小「どうか、気を落とされませぬよう」

    若「小平太」

    小「はい」

    若「ならば…離れた所で良い、一目姿だけでも見られぬか?」

    小「それは…部屋からほとんど出られておられぬようですし」

    若「大人しゅうはしておるのか」

    小「世話を女中頭がしており、しかと見張っておると」

    若「そうか」

    トヨが居るなら、と少し安心した様子の若君。

    小「若君様。畏れながら申し上げます」

    若「何じゃ」

    小「一目会いたいと思い煩うお心はお察しします。されど万が一若君様まで罹り、長う患うような事になれば家の一大事でございます。御月家の為にもご勘弁を」

    若「…わかった。下がって良い」

    小「はっ」

    控えの間に戻った小平太。

    小平太パパ「ご様子は如何であった?」

    小「いたく憔悴しておられました」

    小パ「であろうのう」

    じい「むじなもじゃが、若君が不憫じゃあ」

    小「然り」

    じ「一刻も早う、若君の御子を、とも思うておるのに」

    小「…今、その話ですか?」

    じ「良いではないか。わしはもう、そう長うはないのじゃ」

    小「誰よりも長う生きそうですが」

    じ「いずれにせよ、早う夫婦を会わせてやりとうてなぁ」

    小パ「声が枯れ気味らしい。それさえ治れば、すぐにでも会わせて差し上げたいのじゃが」

    じ「良い薬はないのかのう」

    小パ&小「…」

    一方、居室の若君。憂いに満ちた表情のまま。

    若「何故このような…」

    大きく息をつくと、立ち上がり外に出た。

    若「…」

    空はどこまでも青かった。

    若「唯は、空も見られぬのであろうか」

    雀が、軒先でさえずっている。見上げた若君。ようやく表情に笑みが戻った。

    若「わしに会いに参ったのか?」

    しばらく跳ねる様子を眺めると、室内に戻った。

    若「…」

    机に向かった。硯箱と紙を出す。

    若君 心の声(これはもう、吐き出してしまわねば何も手につかぬ)

    筆をとった。思いの丈を、筆先にぶつけるように書き進めた。

    若「ふう…乱れておるのう」

    書を何度も読み返す。次第に落ち着いてきた。

    若 心(とても人には見せられぬ書じゃな)

    フフッ、と自嘲気味に笑うと、棚の戸を開け書を日記の束の上に乗せた。

    若 心(このような病…お母さんにかかれば、たちどころに治すのであろうの)

    起動スイッチは、日記の脇に入れてある。

    若 心(見てはならぬ夢じゃ)

    戸を閉め、また立ち上がると、今度は庭に出た。奥に進むと、そこにはブランコ。

    若 心(ここに腰掛ける唯を、後ろから押してやったのが懐かしいと思うようになろうとは)

    ブランコに座り、軽く揺らす。

    若 心(出来るだけ早う、語り合えるようにと願う)

    しばらく、空を見上げながら風にまかせ揺られていた若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    6日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道7~5日20時、助けられるものなら

    何が起こってるかは、まだ推測の域を出ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食後。

    尊「まず、メール本文がこれだけど、読み上げるね」

    美香子「お願いします」

    尊「速川君、一昨日はありがとう。実に有意義な時間だったよ。それで早速だけど、中々興味深い手紙というかメモ的な物が見つかってね」

    美「忠清くんの?」

    尊「日記は勿論きちんと綴られているんだが、現地の解読チームによるとね、なぜか束の間から、これがヒラリと出てきたらしいんだ。書いてはみたが、すぐ処分するつもりだったのかもな」

    美「まぁ」

    尊「画像も訳も送るけど、大まかに説明するよ。内容から読み取れるのは、苛立ちと悲しみだ」

    美「え?」

    尊「日記と同じ人物が書いたとは推測される。なぜ推測かと言うと、あまりにも書体が異なっていてね。筆遣いにも心情が投影されている感じだ。何と言うか日記とは趣が全然違って人間臭い、本音が見える」

    美「忠清くんにしては珍しいわね」

    覚「だよな」

    尊「で、君にすぐ伝えたかったのはなぜかと言うと」

    美「何!」

    尊「日記の中には一切出てこない、妻女らしき名が一か所だけ出てくるんだ。これもつい出たんだろうな。名は、唯。唯姫だ。驚きだろ?」

    美「なるほどね…」

    尊「まぁ、一読してみて。ではまた。木村」

    次に、古文書の写真。

    美「ウチにある忠清くんの筆跡と比べても、明らかに乱れてるわね」

    今年の正月に唯と若君から受け取った、年賀状の若君の書体と並べても、それはよくわかる。

    尊「最後に現代訳ね」

    美「えーと…永禄四年十一月十六日。もう七日も愛する唯に会えていない。熱がひどく出る事は無くなったようだが、まだのどの具合が良くないらしい。医者は何をしているのだ。背中の一つもさすってやりたいが、近付くなと止められ実に歯がゆい。同じ屋敷に居るのに。代われるものなら代わってやりたい。辛い、胸が張り裂けそうだ。早くこの腕に抱き締めたい。一刻も早く」

    尊「お姉ちゃん、風邪でも引いたのかな」

    美「んー。そう読み取れるわね。治りつつはあるみたいだけど」

    覚「文章が、彼にしては情熱的だよな。確かに苛立ちと悲しみだ」

    美「居ても立っても居られない感じね」

    覚「すぐ治せる薬なんか、戦国時代にはないんだろうな」

    美「うーん…」

    黙り込む三人。

    尊「あのさ」

    美「何?」

    覚「何だ」

    尊「もしかしてさ、今これが出てきたのは、兄さんのSOSなんじゃ?何とか令和に届いて欲しいって」

    覚「なんでそう思えるんだ」

    尊「日付だよ」

    美「日付?この永禄4年11月16日?」

    尊「うん」

    尊がスマホで何か確認しながら、紙に図を書き始めた。

    尊「今月12月の満月は、12日」

    覚&美「うん」

    尊「今仮にタイムマシンが動くとして、飛んだ先が同じ満月だったら」

    美「一日前じゃなくね」

    尊「到着する日付は、永禄4年11月22日なんだ」

    覚「よくわからないが、そうなんだな?」

    尊「兄さんは、明日この文章を書く」

    美「よくわからないけど、そうなのね?」

    尊「今度の満月に、助けに来て欲しいんじゃ」

    美「だってそれは無理でしょ」

    尊「うん。無理。兄さんがその日に起動スイッチ抜いちゃうとも思えないし」

    覚「万が一抜いたとして、燃料が足りないとかはないのか?」

    尊「それは全然大丈夫。でも兄さんそんな事しないよ」

    美「うん、絶対しないと思う」

    覚「そうだな」

    尊「日付は偶然だろうけどさ、切ないね」

    覚「仕方ないな」

    美「そうね」

    尊「うん…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    年賀状のお話は、この板no.492にあります。

    5日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道6~5日木曜17時、食の全国制覇

    本格志向な物が多いけど、それでもちょっとした背徳感あり?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    令和に戻り、速川家リビング。尊帰宅。

    尊「ただいま。うわっ、今何か蹴った!」

    覚「お帰り。すまんすまん、ダンボール畳んだヤツだ」

    尊「通販頼んだ?箱がやたらあるけど」

    覚「いやぁ、少し位は母さんを楽にしてやりたくて、レトルト製品をあちこちから取り寄せてみたんだ」

    尊「へー。全国各地の名産的な?」

    覚「あぁ。こんな機会でもないと買わないし」

    尊「どれも美味しそうだね。今日の晩ごはんはこれ?」

    覚「うん。見ると食べたくなるだろ」

    尊「やったー」

    畳んだダンボールを積み重ねる尊。すると、

    尊「あ、何か来た」

    ポケットのスマホが振動したので確認すると、

    尊「あ!木村先生からだ!」

    覚「おっ」

    尊「何か新しくわかったのかな?」

    メールを開いて読み始めた。尊の表情がみるみる内に変わっていく。

    覚「凄い発見でもあったっぽい顔だな」

    尊「凄いと思う…添付ファイルがあるから、実験室でプリントアウトしてくるよ」

    紙をひらひらさせながらすぐに戻って来た。

    覚「なんて?」

    プリントされたのは、メール本文と古文書の写真とその現代訳。

    覚「ん~。これは…彼って感情をこう表現するんだな」

    尊「何とかしてあげたいよ」

    覚「出来るのか?」

    尊「できない」

    覚「だよな」

    19時。晩ごはんの支度が、覚と尊で始まった。

    覚「よりどりみどりだ」

    尊「うん。どれにしようかなー」

    鍋2つに、湯が沸き始めている。

    覚「パスタ用とレトルトカレー用な」

    尊「僕これにする!牛タンカレー。美味しそう~」

    覚「それはいいが、具が大きいからパスタとの相性は微妙だな」

    美香子が仕事を終え、戻ってきた。

    美香子「ただいま。あら、湯気で加湿器不要な感じね」

    覚「お疲れ。母さんどれにする?」

    美「まぁー、綺麗に並べたわね。ってちょっと多過ぎよ。選べない」

    覚「まぁそう言わず」

    美「じゃあこのスープカレーで」

    尊「了解~」

    晩ごはんスタート。

    三人「いただきまーす!」

    尊「うん、美味しい。ずっとこれでもいいよ」

    覚「おいおい」

    尊「お母さん、木村先生からメール来たんだ。ご飯済んだら見せるね」

    美「あら。じゃあさっさと片付けなくちゃね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    現代Days(仮)への道5~4日水曜17時、悩みが尽きぬ

    それって重要なの?今でも?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって、永禄。源三郎が、自身の住む屋敷に帰って来た。

    源三郎「只今戻りました」

    有山「おー」

    源「酒でございますか」

    吉田城代だった有山とその家の者達は、緑合では与えられた屋敷で、源三郎と居を共にしている。

    有「月見酒じゃ」

    源「今宵は見事な…半月ですが」

    有「まぁ座れ。お前も呑め」

    源「はい」

    暗くなり始めた空に、白く月が光る。見上げる源三郎。

    源三郎 心の声(月が、綺麗じゃな。俺はあの時から…変われなかった)

    トヨとの仲は進んでいないらしい。

    有「なあ」

    源「はい」

    有「縁組みは、考えておるか?」

    源「は、はぁ?」

    有「はぁ、とは何だ。お前の歳なら、妻女の一人や二人居っても」

    源「二人は要りません」

    有「いや、俺も一人しか居ないがな」

    源「急な話でございますな」

    有「急ではない。ずっと考えておったが、今宵は酒の力を借りて滑らかに話せそうじゃ」

    源「そうですか」

    有「忠清様近習として信頼も厚いお前の、その培ってきた才腕を、世継ぎにも伝えようとは思わぬか?」

    源「…」

    有「天野家は」

    源「はい」

    有「小平太の嫁取りはいつになるか、見当もつかぬが」

    源「その様で」

    有「お前もそう思うか。ただ幸いな事に、信近殿が男子を二人養子に迎えておる。見た所、躾も行き届いておる故、いずれどちらかは近習を継ぐのではと見ておる」

    源「なるほど」

    有「千原家由来の我々も、そろそろ手を打たねばならぬのでは?」

    源「未だ対立しておるのですか?」

    有「いや今は至って平穏。元次と信茂の戦い、程ではない」

    源「じいお二方が若かりし頃は、随分と不仲であったとは聞いております」

    源 心(その因縁の対決が…)

    有「お前の技量や気の遣い様を、子へ伝授もして欲しいが。あ、それこそ子が既にあるおなごを娶ると手っ取り早いな。お前より随分と年上になるやもしれぬがな?」

    源「酔いが回っておるようでございますな」

    有「…すんません」

    源 心(年上でも子がないおなごは…ならぬと言われたような気がする)

    有「いやでもな、近隣の地の姫君で、探し始めようかとは思うておる。どうじゃ?ん?」

    源「それはあの…既に父も母もない私を、今では千原繋がりというだけで居を共にもしていただいており、それ以上気にかけていただくのは」

    有「そう?」

    源「考えさせてくだされ」

    有「誰ぞ好いたおなごでも居るのか?」

    源「いえ…」

    有「悪い話ではないと思うぞぉ?」

    源「永季殿、ちと飲み過ぎではございませぬか?」

    有「そうかも」

    あとは軽い話をして、その場を離れた源三郎。自分の部屋に戻ったが、

    源「はぁ…」

    再び襖を開けて表に出た。半分でも輝きを放つ月を見上げる。

    源 心(トヨは…天野由来の者じゃ)

    そのまま下を向き、しばらくうなだれていたが、

    源 「仕方あるまい」

    そう呟くと、部屋へ戻っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    4日のお話は、ここまでです。

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    現代Days(仮)への道4~3日19時、よもやそんな

    てんころりんさん、タイミング良く話題にしていただきありがとうございます。

    このお話は、当然ながらタイムマシンが活躍します。マスター様がブログで設定数を求められていたので、それに準ずる形で飛ぶ日付を決めようかとも思いました。
    でも起動スイッチ2号はそもそも未来の尊が作った物だし、もっとフレキシブルなんじゃないかと思いまして。

    結果、日付は既に自由に決めさせていただいております。今後、お話の中で日付や時間がいっぱい出てきますが、尊がそう言うからそうなんだね~と大目に見てくださると幸いです。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    着信音あるあるに気を付けてください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が帰宅した。

    尊「ただいま~。ん?」

    リビングの明かりは漏れているが、いやに静かだ。

    尊「なんかいつもと違うな」

    そぅっとリビングを覗く尊。

    尊「ただいま、お父さん?」

    覚「おー、ここだ」

    尊「え、そんな所に居るの」

    覚は奥のソファーに座っていた。キッチンの電気はついていない。不思議に思いながら、父に近付く尊。

    尊「どうしたの?…えっ」

    覚「お帰り、尊」

    尊「何!手も足も包帯してる!ケガしたの?!」

    覚「うん…」

    ┅┅回想。今朝8時30分、クリニック┅┅

    美香子「支度は完了、と。あら?今朝はまだモーニングコーヒーのデリバリーがないわね」

    エリ「ご主人、お忙しいんじゃ?」

    美「でも時間はキッチリの人よ?まさかと思うけど、倒れてるといけないからちょっと様子を見てくるわね」

    芳江「行ってらっしゃいませ」

    廊下を進む美香子。リビングに一歩入ると、

    美「え?キャー!お父さん、どうしたの!!」

    覚「うう…」

    階段下に、うつ伏せに横たわる覚を発見。

    覚「さっき…階段踏み外した」

    美「なんて事!」

    覚「右手も右足も痛くて動けないんだ」

    美「それは…うーん。お父さん、手のここ押すわよ、痛い?」

    覚「痛くない」

    美「足も押すわよ、どう?」

    覚「大丈夫だ」

    状態を確認する美香子医師。

    美「骨が折れてるまではないと思うけど、レントゲン撮ろうかしら」

    覚「僕の事はいいから。患者さん待ってるから、開院しないと」

    美「目の前に居るのも患者よ!でもこんな時間…ちょっとだけ待ってて!」

    クリニックに慌てて戻った美香子。

    美「エリさん、頼めるかしら?レントゲン撮ります」

    エ「えっ」

    芳「まさか」

    美「患者は、ウチの階段下に居ます。もう開院しないといけないから、運ぶところからお願いできる?」

    エ「わかりました。お任せください」

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊「で、右手右足は捻挫と」

    覚「そうなんだよ」

    尊「なんで踏み外しちゃったの?」

    覚「洗濯物干して二階から下りてきたら、スマホが鳴ってるのが聞こえてさ。慌てて下りたらスリッパが脱げて、三段目位からズルっといっちゃったんだ」

    尊「あちゃー」

    覚「おまけに、後で着信履歴見ても無くて。テレビの音だったらしい」

    尊「あちゃちゃー。全治どのくらい?」

    覚「足は一週間位で、手は10日位らしい」

    尊「はあ。だからご飯の支度とか無理なんだね」

    覚「掃除や洗濯はいいんだが、料理は利き手が使えないとなあ。昼も母さんにやってもらってさ。夜も、今日は私がやるって言うから、大人しく待ってたんだ」

    尊「僕、何かやれる事あるならやるよ」

    覚「いや、受験前の大事な時期だ。母さんも、できるだけさせないって言ってた」

    尊「そうなんだ」

    覚「ところで、木村先生には会えたのか?」

    尊「そう!会えたんだよ!僕の事覚えててくれたよ」

    覚「そりゃ良かった。待った甲斐があったな」

    尊「うん!」

    覚「風呂は沸かしておいたから、ゆっくり入って体を温めな。出る頃には、母さんも仕事が終わってるだろうし」

    尊「わかった。話はご飯の時にするね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    3日のお話は、ここまでです。

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    春色の姫

    ★妖怪千年おばばさん
    春の花は黄色が多いですね!💛
    ヨーロッパでは やはりミモザなのでしょうね。
    福寿草、白水仙の真ん中の黄色い花弁、レンギョウ、菜の花… 等々 目に浮かびます。
    花屋に並ぶ黄色のクロッカス、フリージア… 毎年春を感じます。

    米山京子さんの人形見せて頂きました。
    春色の着物を着た幼い二の姫、しっかり思い描きました~❣️✨
    成人した姫の颯爽とした高貴な姿、内に秘めた情熱と優しさは、確かなイメージとして、私の中にずっと生き続けています。
    おばばさんが書かれた世界が確かだからです。ご安心下さいね。

    おばばさんはお人形も作られたと聞いて、本当に創作がお好きなんですね。
    私は鑑賞&評論家タイプかなぁ(笑)

    新作のこと

    ★夕月かかりてさん
    私の場合、アシガール(ドラマの方)の魅力は、戦国の時間と現代の今が同時に進んでいるように思えたこと大きいです。

    夕月さんは現代との行き来を描いて1ジャンルを作って下さったので、楽しみです!😃👍
    そこでなのですが、往復の月の設定には あまり苦労なさらず、ご自由にと思います。

    まずSPから使われた新型タイムマシンは、移動に規則性があるのか?設定は固定されてるのか?分かっていません。AI機能あり安全な所へ届けるかも(笑)

    旧暦の閏月に加えて、新暦も 1年に13回の満月がある年が、2~3年に 1回くらいあり…
    そうなんです!アシガール以降、満月を意識して暮らして来て 知りました!
    ちなみに2018年、2020年がそうで、次は2023年。

    という訳で 戦国と現代で過ぎた月を正解に数えて揃えるのは大変ですし、見た目、行く月が段々ズレそうです。😖💦
    単に同じ月に行った方が、むしろ同時性が感じられるかもしれませんね。
    作家さんご自身が決定される事ですし、私の杞憂かもしれませんが…
    Cafe MARGARET ですね!懐かしい~

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    現代Days(仮)への道3~3日火曜17時、歴史のおさらい

    妖怪千年おばばさん、お人形見ました。素朴で愛らしいけど、成長するとキリっとするんですね。
    創作倶楽部が賑わうのは喜ばしいので、皆様どんどん割り込んでください(^-^)b
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ビビって通勤経路変えてはいなかったんだ。二年も経つしね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日も、学校帰りに昨日と同じ場所で待つ尊。

    尊 心の声(やっぱ無茶だったかな…)

    すると、遠くに新聞で見た姿を発見。

    尊「あっ、やったー!」

    木村先生が歩いて来た。早速駆け寄る尊。

    尊「あ、あのぅ、黒羽東高校の木村先生ですか?」

    木村「え?!その制服はあの高校…そうだけど、何の用だね?」

    尊「えーと、何から話そう、お久し振りです。僕二年前の夏、ここで先生にお会いして、というか出くわして」

    木「二年前?…あ、あーあー!君か、思い出したよ!不良の連中から助けてくれたあの時の子だね?もう一人、その制服着た美男子と二人だったね」

    尊「思い出してもらえて良かったです。で、もう一つお伝えしたい事がありまして、僕、速川尊と言います。姉の唯が、高校でお世話になってませんでしたか?」

    木「え!!それは驚きだ。うん、歴史を教えてたよ。…うーん」

    尊「多分、ある時期まで居眠りばっかりだったんじゃ」

    木「見てたのかい?そうだね。ある日突然、人が変わったように陣形とか聞いてきたな。なんだ、なぜあの時名乗ってくれなかったんだい?君たち、逃げるように走り去ったよな」

    尊「色々事情がありまして」

    木「で、こんな寒い所で待っててくれたの?もしかして新聞記事の話がしたかったかな?」

    尊「はい。昨日も居ましたけど会えなかったので」

    木「え、昨日も?ちょっと待って、君今、何年生?」

    尊「三年です」

    木「えっ!!こんな大事な時期に僕なんか待っててくれたの?それは嬉しいやら申し訳ないやら。じゃあ立ち話も何だからさ、そこに入ろう」

    尊「あ、はい」

    道の角にある喫茶店を指差す。二人で入っていった。

    木「ホットコーヒーでいい?ご馳走するよ」

    尊「はい。あ、ちゃんと払いますから」

    店員「いらっしゃいませ」

    木「いいからいいから。コーヒー二つね」

    尊「すみません」

    木「しかし、まさか速川の弟くんが、あの有名進学校に通ってるとは驚きだよ。大学は勿論行くよね?」

    尊「一応は」

    木「余裕が感じられるね。そうか。お姉さんは…あれ確か、急に退学したよな?」

    尊「はい、結婚しまして」

    木「結婚!噂は本当だったんだ」

    尊「遠くに嫁ぎましたので。この夏に里帰りしました。元気でしたよ。で、旦那さんが僕と一緒に居た美男子です」

    木「え!!今日は驚き過ぎて、心臓持つかなー。そうかね、そんな縁があるとはなあ」

    コーヒーが運ばれて来た。

    木「あー。落ち着く。で、用件を聞こうか?」

    尊「はい。記事、とても興味深かったです」

    木「そうか。あの書物、永禄3年の終わり頃から始まっててね」

    尊 心(間違いない。前々回、12月半ばに永禄に帰ってるから、兄さんの日記だ!)

    木「そんなに面白い物ではないよ」

    尊「そうなんですか?」

    木「日記というより備忘録に近いかな。書いた人間の実直さが窺えるんだ。どこで戦があったとか静観している感じだし、川の水量や作物の収穫量とかも書いてあったな」

    尊「後で読み返しては、対策を練ってたかもしれないですね」

    尊 心(さすが兄さん。お姉ちゃんとのラブラブが書いてある訳ではないと)

    木「最初の頃の物はさすがに破れとか酷くてね、あとどうしても、書いた人物の名前がわからないんだよ。時代と地理からすると、当時だと御月家の誰かだと思うんだけど」

    尊「そうなんですね」

    尊 心(あー、言ってしまいたい)

    先生が、グッと身を乗り出した。

    尊「え?」

    木「実はね」

    尊「はい」

    木「御月家はね、その頃には地元の歴史上姿を消した、羽木家の生き残りじゃないか、と僕は睨んでるんだ」

    尊「へー。ずっと永禄2年には滅びたって言われてた、あの羽木家ですか。それは面白いですね」

    尊 心(さすが先生)

    木「…ってさ、こんな事聞く為に、寒い中待っててくれたの?こんなんでいいのかい?」

    尊「はい。とても勉強になりました」

    木「そうか。それは嬉しいよ。この日記に興味があるならさ、何か新しいネタ出たら教えようか?」

    尊「いいんですか?」

    木「あぁ、歴史に興味を持って貰えるのは、教師としてとても嬉しいからね」

    尊「ありがとうございます!」

    木「何かあったら…そうだな、君のメルアド教えてくれる?」

    尊「はい!」

    メルアドを交換した。喫茶店を出る二人。

    木「すっかり暗くなっちゃったな。悪いね、貴重な時間付き合わせて」

    尊「いえ、僕こそ勝手に待ち伏せしてたのに、本当にありがとうございました!コーヒーごちそうさまでした!」

    深々と礼をして、先生を見送った尊。

    尊 心(待ってて良かった。早く帰って報告しよう!)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    角の喫茶店は、CafeMARGARETですね。

    続きます。

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    未練な事とは思いつつ

    皆様、こんばんは~!

    夕月かかりて様、新作連載
    始まったばかりで、
    割り込みまして、
    申し訳ございません。

    ただ、鐘ヶ江家の”二の姫”
    につきましては、
    おばばが生み出した、
    おばばオリジナルの
    最愛のキャラでしたので、
    それに近いイメージを
    少しでも皆様に
    お伝えしたく、お邪魔しました。

    まあ、当初名乗らせた名前とは
    異なりますが、今の所、
    幼き頃の、おてんばな”二の姫”の
    イメージに近い人形として
    ご紹介したいのは、こちらです。
    髪を、黒髪の戦国風にしていただき、
    唇を尖らせて、不服そうな表情に
    変えてイメージして頂ければ、
    もっと嬉しいです。
    そうすれば、
    幼き日の小平太殿を、
    ボコボコにして悠然と自宅に帰った
    ”二の姫”のイメージに近づくと
    思います。
    https://atelier-dolldoll.com/contents.html

    この人形は、ミモザの髪飾り、
    着物の袖の飾りもミモザかと。
    ヨーロッパでは、ミモザは
    春を告げる花。

    最近では、日本でも、恋人に贈る
    ”ミモザの日”と言うものが
    あるそうな。

    実は、ミモザも染料になるんです。

    この愛らしい姿。
    如何でしょう?
    成人した”二の姫”にとって、
    人生最高の晴れの場である
    ”流鏑馬披露”の日の
    最上の笑顔を想像して頂けると
    幸いでございます。m(__)m

    遠い昔、
    米山京子さんの本を手に入れ、
    それを頼りに30体ほど
    人形制作を致しました。
    そのほとんどは、
    友人、知人にプレゼント。
    愛する姪たちに作って、
    実家に送ったものは、隣の児童館に
    母が差し上げて、自分の手元には、
    一体も残っておりません。

    自分の子供に作ってやる余裕もなく、
    日々を過ごしていましたが、
    てんころりん様の投稿をきっかけに、
    なつかしい、人形作家のサイトを
    検索できたのは、嬉しい事でした。

    てんころりん様。
    ありがとうございます。
    m(__)m

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    現代Days(仮)への道2~2日月曜16時、勝ち目ないので

    妖怪千年おばばさん、てんころりんさん、カマアイナさん。ありがとうございます。反応があるだけで嬉しい今日この頃です。

    前に他の板に訪れた際、ほぼ通りすがりの人になっておりまして。板によって色も温度も違いますね。つい先程ユーザー板に行ってきましたが(今この時間は投稿が行方不明中ですが)、いかがなものでしょうか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子さん、長袖二枚も着せるから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    学校帰り、若君が木村先生を救った、黒羽城公園近くの例の場所にやってきた尊。

    尊 心の声(確かに当てずっぽうだけど、ここで会えば思い出してもらいやすいし)

    あの日、杖を置いておじいさんが休憩していた、椅子に腰かけた。

    尊 心(あの後も、大変だったなぁ…)

    二年前の夏を、思い起こす。

    ┅┅回想。2017年7月、場所は同じ┅┅

    成敗直後。

    若君「精進致せ」

    木村「はい…」

    若「では、此れにて」

    木村先生にそう告げると、若君は杖を取り上げて歩き出した。尊も慌ててついて行く。

    若「お返し申す」

    持ち主のおじいさんに返却。

    若「さて尊、城へ参るか」

    尊「あ、あの若君」

    若「何じゃ。申せ」

    尊「逃げましょう」

    若「何だと?また下郎どもか?ならば討たねばならぬ、どこに潜んでおるのじゃ」

    尊「既に、囲まれつつあります…」

    遠巻きに見ていた女子高生達が、若君に近づこうと、ジリジリと幅を詰めてきていた。

    若「なんと。…おなごは討てぬ」

    尊「走ってもいいですか?」

    若「走る?…良かろう」

    尊「行きます!」

    若「うむ」

    ダッシュで、弾かれるように走り出した二人。女子高生達が不意を突かれ、キャー、待ってぇ!と背後で悲鳴をあげている。

    尊 心の声(ヤバい、僕そんなに足速くないのに)

    必死に走る尊。ついて来る若君も、やや腰を落とした独特の走り方をしている。

    尊 心(時代劇で見た事あるヤツだ!)

    間一髪、JKの輪から逃れ、公園の隅にたどり着いた二人。

    尊「あーなんとか逃げ切れて良かった。若君すみません!こんな暑い格好してるのに走らせてしまって。上脱いでください」

    若「あぁ」

    尊「僕持ちますから」

    紺色のカーディガンを脱ぎ、白いワイシャツ姿になった若君。

    尊 心(これはこれで、お母さんまたキャーキャー言うんだろうな)

    若「尊。城は近いのか?」

    尊「あ、はい、すぐそこです」

    若「一向に姿が見えぬが?」

    尊「えっと…こちらです」

    城跡に案内した尊だった。

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊 心(ようやく現実がわかった時の兄さんの後ろ姿、今でも忘れられないよ)

    そうこうする内に、周りはすっかり夜の帳が下りていた。

    尊 心(今日は諦めるか…)

    後ろ髪を引かれながら、帰路についた。

    尊「ただいま~」

    覚「お帰り。遅かったな。木村先生には会えたのか?」

    尊「会えなかった」

    覚「無理はするなよ、受験生なんだからな。はいお茶」

    尊「うん。明日もう一回だけ行ってみるよ」

    温かいお茶をすする尊。

    尊 心(お姉ちゃんが木村先生に教わってたなら、まぼ兵くん使った戦、戦術とか相談してたりして?わー、お姉ちゃんに聞いとけば良かったな)

    手はまだ冷たいが、心はほんのり温かかった尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日は会えるといいね。

    2日のお話は、ここまでです。

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    返信
    夕月かかりてさん

    早速の続編、本当にありがとうございます。
    想像もしていなかった、素晴らしい切り口からの再開に、ワクワクしています。
    「なんとか知らせる。絶対なんとかして知らせるから。」の忠清君なりの回答がここにあるようで、初めて縁合の生活が垣間見れるのかななんて勝手に推測しています。
    全然違ってたらごめんなさい。

    日付の制約ですが、時折、もしコロナがなかったら、過去数年の世界はどう進展していただろうかと考えることがあります。あくまでもたらればの虚しさが残りますが。

    それにしてもオヤジ狩りとか、オヤジ転がしとか、親ガチャとか、「地震、雷、火事、親父」の時代の日本からは隔世の感がありますね。

    その点、速川一家も、若君の周りの人達も、優しさに満ち溢れていて、読む度にホッとしたり、クスクス笑えたり、心の清涼剤です。
    今後の展開が楽しみでなりません。 ありがとうございます。

    投稿フォームへ

    返信
    夕月かかりてさんのご質問

    創作倶楽部が独立して良かったですが、創作がお好きな方でないと、いつもは来ないかも。
    長編の場合、読む人には敷居が高くなるかも。
    その辺の理由から「こんな話、始めます、やってます」時々他の板に顔出されて*お茶を濁しつつ*いえ、話を合わせながら(笑)、書かれたらどうかな~と思ったのです。
     _________

    ☆おばばさま、後から気付きました。
    結局書き換えさせてしまって、すみません。

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