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    四人の現代Days47~24日14時45分、戦うあなたが

    甘くて上等。だって念願のデートだもん。
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    ショッピングモールに到着。自転車を降りる。

    唯「ふう。たーくんお疲れさま。やっぱ家から直で来るとちょっと遠いね。学校帰りだったらそこまでじゃなかったけど」

    歩き出した二人。

    若君「一番に、参りたい店がある。良いか?」

    唯「もっちろん。おまかせデートだもーん」

    手を繋ぎながらも、地図を確認しながら歩く若君。ある店に着いた。

    唯「えっ」

    若「やはり混みあっておるのう。尊の申した通りじゃ」

    唯「あ、あのたーくん」

    若「何処ぞに、名を書いて待つと聞いたが」

    唯「ホントに…いいの?」

    若「前は、残念な思いをさせ、済まなんだの」

    唯「それは…あ、名前、書いてくる」

    店頭にあるボードに、速川2名と書いた唯。そこは、以前若君が嫌がり入らなかった、パンケーキの店だった。

    唯「3組目だから、そんなに待たないと思う」

    若「そうか」

    唯「ここ、尊と行った店に比べて、かなり甘々だと思うけど…」

    若「構わぬ」

    店の前に並ぶ椅子に座った二人。

    唯「あ、たーくんは食べずに見てるだけとか?」

    若「いや。共有が、デートの醍醐味。わしもいただく。リベンジじゃ」

    唯「新しい言葉仕入れてるし」

    次々と呼ばれ、順番がもうすぐ来る。唯が座ったまま、列の後ろを見渡す。

    唯 心の声(イブだから、こういう店は混むよね。だいぶ後ろに増えてる)

    カップルばかりだ。

    唯 心(みんな、スマホ見てるなぁ)

    二人で一つのスマホを覗きこんでいたり、別々に指をやたらと動かしていたり。

    唯 心(右手にはスマホ、か)

    唯の左に座る若君。右手が、膝の上で軽く握られている。

    唯 心(キレイな手。床でも椅子でも、手はいつもこうだよね)

    そのまま、じっと見つめ続ける。

    唯 心(そこらのカップル男子と違って、たーくんの右手はスマホは持たない。でもこの手は…刀を持つんだ。で、人を斬る。戦は嫌だけど、きっとこれからもそう)

    若「唯?何を手ばかり見ておる」

    そう言うと、唯の左手を取り、自分の右手があった位置に乗せ、上からそっと包んだ。

    唯「あ」

    見上げると、目が合った。

    若「いかがした?」

    唯「ん、いろいろ」

    若「色々、か」

    唯「でもね、嬉しいな、が一番かな。たーくんをひとり占めしてるから」

    若「ハハ、それは今だけではなかろう」

    唯 心(忘れてなきゃいけないのに、急に戦を思い出すなんて、ダメじゃん私。幸せボケするなってか。刀も槍も持つけど、今はひとり占めできる私だけのたーくんだから!)

    店員「二名様でお待ちの、速川様~」

    唯「あ、はーい。行こっ」

    若「うむ」

    席に通され、注文する。しばらくすると、いかにも甘々なパンケーキが二皿運ばれてきた。

    若「いただこう」

    唯「うん」

    若君が食べる様子を心配そうに見ている唯。

    唯「たーくん…大丈夫?」

    若「大丈夫とは何じゃ」

    唯「無理してない?」

    若「こちらの世の甘味にも慣れた」

    唯「ホントに?」

    若「前に踵を返し立ち去った折に、相当嫌そうな顔をしておったからじゃな。まこと申し訳が立たぬ」

    唯「嫌なモノはしかたないもん。もう謝んないでね」

    若「心得た。ほれ、あーん、して」

    唯「え、あ」

    一口もらった唯。

    唯「じゃあ私もー。はい、あーん」

    若「ん、ん」

    唯「ねぇ、やっぱまだ苦手なんでしょ」

    若「気のせいじゃろ」

    唯「ホントかなー。でもね、がんばってくれてるたーくんは、超優しくて超カッコいいよぉ。ありがとね。うふふ」

    若「わしはの」

    唯「うん?」

    若「唯が笑うておれば、それで良いのじゃ」

    唯「ニコニコしてれば、がんばれちゃう?」

    若「然り」

    唯「もー。そんなん聞いたら、ニコニコよりニヤニヤだよぅ。どうしよう、一軒目からこんなんで、幸せすぎるー」

    若「ハハハ。尻すぼみにならぬと良いがの」

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    続きます。

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    四人の現代Days46~24日14時、以心伝心

    今朝のあさイチ、推し名書きの中に、アシガールもアシガールSPも載ってましたね(^o^)
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    楽しみにしてたわりには、準備万端ではない。
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    着替えて二階から下りてきた唯。

    唯「あれ、お母さん居ない。え、もうすぐ2時!そんな時間だったかぁ」

    尊「遅いんだよ。兄さんだって、色々計画があるだろうに」

    唯「ねー、見て、これ似合う~?」

    尊「人の話聞いてる?」

    唯の耳元で揺れていたのは、小花をレジンで閉じ込めたイヤリング。

    若君「おぉ」

    トヨ「可愛いいですね。ゆらりと揺れて」

    覚「似合ってるぞ。何より忠清くんが作ったアクセサリーだしな」

    唯「ありがと。気づいて良かった~」

    尊「気づく?」

    唯「部屋にさ、作ったアクセサリー入れた箱置いてあるじゃない。これだけ、箱の上に出てたの」

    尊「って事は」

    唯「たーくん、着けて欲しいならちゃんと言わないと~」

    若「ん?唯の好きにするが良いと思うて」

    覚「そんな、頼んだっていいのに。奥ゆかしいというか」

    唯「ちゃーんとラブラブ電波、キャッチしたからね!」

    源三郎の囁き「尊殿」

    尊の囁き「え?はい」

    源 囁き「電波、とは、例のWi-Fi、でございますか?」

    尊 囁き「えーと…違います」

    玄関でまだバタバタしている。

    唯「靴どうしよう~、あ。そうだ」

    下駄箱を探る唯。

    唯「あったあった。まだ履けるよねー」

    覚「通学で履いてたローファーか。うん、スッキリしてて悪くないぞ」

    唯「これなら慣れてて走りやすいし」

    若「走る場はない筈じゃが」

    唯「さてと。じゃ、行ってきまーす!」

    若「行って参ります。お父さん」

    覚「ん?」

    若「クリスマスパーティー、の支度が手伝えず、申し訳なく思うております」

    覚「何言ってるんだい。今日のデートの為に帰って来たようなモンだろ?そんなの気にせずに、十二分に楽しんでおいで」

    若「はい!」

    尊「行ってらっしゃーい」

    源三郎&トヨ「行ってらっしゃいませ」

    ようやく出ていった。

    尊「やっとだよ」

    覚「ははは。もうちょっとしたら、注文しといたケーキ取りに行くぞ」

    尊「じゃあ、源三郎さんとトヨさん連れて行ってあげてよ。せっかくだから、イブの街の様子も堪能してもらってさ」

    ト「尊様はどうなさるんですか?」

    尊「留守番してますよ」

    ト「そのような…ご一緒は難しいですか?」

    源三郎「本日からしばらくは、長く共に過ごせると楽しみにしておりましたが」

    尊「またまた~。僕と居て楽しいですか?」

    源&ト「楽しいです」

    尊「わぁ、即答…」

    覚「尊、モテ期到来だな。四人で行くぞ。ケーキな、奮発して大きめのを二つ頼んであるから。あと諸々あるし」

    尊「二つ!そりゃすごいや」

    ト「ケーキ?」

    尊「甘くて柔らかいんですよ」

    源「この令和の世は、甘味が多くございますね」

    尊「そうですね。居る間くらい、お腹いっぱい食べちゃってください」

    源&ト「はい!」

    その頃、まだ自転車置場の唯と若君。

    唯「たーくん、待たせてごめんね。もしかして、何時にココ、とか決まってた?」

    若「いや、それはない」

    唯「今日は、よろしくお願いします」

    若「うむ。よろしゅう頼む」

    少し顔を近づける若君。

    唯「え、なに」

    若「綺麗だよ」

    唯「やーん!そんなラブ大盛りでスタート?あの、あのね、さっきお母さんがね、好きな人を思ってお化粧するって、極上の時間よねって言ってた」

    若「ハハ、そうか。では、極上の姫と共に」

    唯「褒め…られてる?」

    ひょいと唯を持ち上げ、自転車の荷台に乗せたのだが、

    若「思うたより短いのう」

    唯「あ。スカートか!おしとやか~に乗りますんで、ご勘弁を」

    若「では、参るぞ」

    唯「参りまーす」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、ようやくデートスタート。

    続きます。

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    四人の現代Days45~24日8時45分、選択せよ

    ちょっと待ちくたびれた?
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    リビングに戻ってきた唯と若君。食卓で覚と源トヨと、冬休みに入った尊が寛いでいる。

    唯「ただいまぁ」

    覚「おー。喜んでもらえたか?」

    若君「はい!」

    覚「良かったな~」

    尊「しかし」

    唯「ん?」

    尊「お姉ちゃん、何かイベントがあると、やたら早起き。お子様のルーティンだよな」

    唯「悪い?だって今日は、今日は!」

    尊「はいはい」

    若「尊」

    尊「はい?」

    若「少し、良いか?」

    若君に促されて席を立った尊。

    唯「なに!秘密会議?」

    覚「はいはい、唯は今から洗い物だ。カップをそのまま流しに運んでくれ」

    唯「えー気になるぅ」

    トヨ「お父さん、洗い物なら致します」

    源三郎「いえわたくしが」

    覚「いや、いいよ。君達は座ってて」

    ソファーに移動した若君と尊。若君がジーンズのポケットから、尊が印刷したショッピングモールのフロアマップを取り出した。

    若「この店じゃが」

    尊「あー。ここ。リベンジですか?うわっ」

    若「リベンジ、とは?」

    尊「ごめんなさい、ついわからない言葉使っちゃった。えーと、再挑戦?改めて挑む?」

    若「挑む、か。そうなるのう」

    尊「今日なんか特に混みそうだし。頑張ってください。で、質問は何ですか?」

    若「支払いは二人で如何程になるか、わかるか?前に尊と三人で他の地の店には参ったが、とんと見当がつかぬ」

    尊「あ、じゃあお店のホームページ見てみましょうか」

    スマホで検索。

    若「おぉ」

    尊「飲み物込みで、4000円あれば大丈夫ですね。って、あれ?兄さん、手持ちのお金って…」

    若「今朝方、お母さんに渡されてのう」

    尊「それは良かった。あ、だからこの店も行っちゃおうって?」

    若「うむ」

    尊「急遽予定変更は大変そうだなぁ。そのお金、兄さんずっとマッサージ代受け取ってなかったからその分ですよね」

    若「いや、かなり上乗せされておる。そこまではいただけぬと一旦は断ったのじゃが」

    尊「いいんじゃないですか?」

    若「されど」

    尊「それか、母はそんなつもりないでしょうけど、マッサージ代先払いしたって考えても」

    若「…そうか、そうじゃな。後々の分は受け取らねば済む話か。ありがとう、尊。これで気兼ねなく使える」

    尊「兄さんはホント律儀だなぁ」

    昼になった。ご飯も済み、唯は美香子に軽く化粧もしてもらったのだが…

    美香子「唯~。悩むにも程があるわよ?」

    唯「お母さんが、ただの黒タイツじゃイベント感がないって言うからでしょっ」

    ト「どれも選んでも素敵だとは思いますが」

    昨年美香子が唯の為に購入した、色や柄の入ったタイツの数々を床に並べ、唸っている。

    尊「今日はてっきり、真っ赤なセーターのペアルックだと」

    唯「それは明日着る」

    尊「ふーん」

    唯「あの赤いの、すっごく気に入ってるけど、地元をうろつくには目立ちすぎて」

    尊「あっそう。だからここにセーターとスカートが置いてあるんだ」

    唯「たーくんが、白いパーカーにジーンズでしょ。だから私は白いセーターに、買ってもらったミニスカートのつもりで」

    尊「そこまでは色合わせも順調だったけど、か。この服に合わせるタイツは、コーディネートの腕が試されると」

    覚「コーディネートはこうでねぇと、ってのはないだろ」

    唯「はあ?」

    覚「すいません…」

    美「デートの時間が減ってくばかりよ?」

    唯「そうだけど~。たーくん、助けてぇ」

    若「うむ」

    じっとタイツの山を見て、一つ取り上げた。

    若「この品が良かろう」

    唯「これ?ありがと、じゃあそうする」

    美「今回は割とシンプルなのを選んだわね」

    濃紺の地に、銀のラメが光っている。

    尊「兄さん、また何かに見立てて選んだんじゃないですか?」

    美「あ、そうね。前は確か、雪が朝日に光る様子?これは何になるのかしら」

    若「夜更けに山寺で仰いだ空は、見渡す限り瞬く光の粒が散りばめられ、こぼれ落ちんとせんばかりでした」

    源三郎の囁き「…小垣近くのか?」

    トヨの囁き「え?」

    尊「満天の星空、ですか」

    覚「そりゃ絶景だな」

    美「そう言われるとそう見えてくるわ。あい変わらず、想像力が豊かね~」

    唯「山寺、星。…やーん!たーくんったら!」

    唯が若君の手を両手でガッツリ掴んでブンブンと振り、ウンウンと大きく頷いている。

    尊「何か思い出に繋がるっぽい反応だな」

    唯「超感動~!」

    若「…早う着替えて参れ」

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    続きます。

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    四人の現代Days44~24日火曜8時30分、プライスレス

    長くて楽しい一日が始まりました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニックに、唯と若君と源トヨが現れた。

    四人「おはようございます!」

    芳江「おはようございます。あらお揃いで」

    エリ「おはようございます。朝から元気ね~」

    コーヒーを配り終えた源トヨ。

    源三郎「では、此れにて」

    トヨ「失礼します」

    唯と若君が残った。二人が並ぶ。何?という顔の芳江とエリ。美香子はニコニコしながら様子を見ている。

    唯「んとね」

    エリ&芳江「はい?」

    唯「サンタさんは明日の朝、枕元にプレゼント置いてくけどね、明日はクリニック休みで二人に会えないから」

    若君「一日早うございますが」

    持っていた紙袋から、綺麗な包装紙にくるまれリボンが結ばれたプレゼントを取り出す若君。慌てて立ち上がる看護師さん二人。

    芳「あららら」

    エ「まぁっ、いいんですか?」

    若「はい。日頃の感謝を込めました」

    唯「メリークリスマス!」

    贈呈。

    美香子「開けてみて」

    エ「は、はい」

    芳「まぁーどうしましょう」

    美「ウチの家族は朝一番に受け取り済みよ」

    エ「そうなんですか」

    包装紙を開くと、中身が和紙にくるまれている。

    芳「あら急に和風。でも奥ゆかしさが感じられて、いいですね」

    唯「たーくんのアイデアなんだよ~」

    エ「懐紙のように使われてるんですね」

    中から出てきたのは…

    芳「あらっ、なんて綺麗なんでしょう!」

    エ「素敵。お花のペンダントなんですね」

    小花をレジンに閉じ込めてある。

    若「花の生かし方をお二方に教わったと、尊に聞きました。ささやかではございますが」

    唯「お礼だよ。幸せの、おすそ分け~」

    エ「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」

    芳「家宝にします」

    若「ハハハ」

    唯「時間取ってごめんね。さっ、コーヒー飲んで飲んで~」

    しばしの休息。

    美「芳江さん、さっき家宝って言われてましたけど」

    芳「はい」

    美「この中で家宝級の品は、実はこの包んであった和紙なのよ」

    芳「え、そう…なんですか?」

    エ「こちらが?」

    美「忠清くん、話してあげて」

    若「家宝など畏れ多いですが、この紙は、わしが永禄から持ち帰っております」

    芳「えーっ!」

    エ「戦国時代の和紙なんですか!」

    若「こちらの世に飛ぶ折に、何か役に立てばと思い、懐に忍ばせて参りました」

    唯「かなりのレア物っす」

    芳「それは貴重ですよ~」

    エ「驚きました。大切にとっておきますね」

    美「さて、話は弾むけどそろそろ」

    唯「ホントだ、もう行かなきゃ。カップもらいまーす。撤収~」

    若「お邪魔致しました」

    美「ありがとね」

    一気に静かになった。

    芳「こちらこそ、お礼を用意しないといけませんね」

    美「あ、それは止められてるから。要らないわよ」

    エ「止められた?」

    美「そもそも花を乾燥させて残したのはお父さんと尊だし、アクセサリーの材料も尊が揃えた物ばかりで、唯も言ってたけど幸せのお裾分けだから、お返しを受け取る筋合いはないってね」

    エ「本当にいいんですか?」

    美「えぇ。私達も用意しなかったから」

    芳「こんなに心がこもってるのに、何か悪いですが」

    美「いいのよ。ありがとうって受け取ってくださいな」

    エ「わかりました」

    芳「はい。でも和紙に包むなんて、粋ですね」

    美「でしょ。実は、私や家族がもらったプレゼントは、忠清くんがリクエストに応えながら作ってくれたんで、中身が何かはわかってたの。でもこんなワンクッションおいてくれるなんて、武士の嗜みって感じでさすが!と唸ったわ」

    エ「そうですね。ではそろそろ、最初の患者さん呼びますね」

    美香子&芳江「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、22から43まで

    no.868の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
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    22no.869、12/17、子供達を救う活動に心動くトヨ

    23no.870、12/17、覚と唯で昼ごはんの支度。煙は上がっても戦ではない

    24no.871、12/17、髪の寄付につき源トヨと母で意志疎通を図る

    25no.872、12/17、引き続き三人で思い出話

    26no.873、12/18、尊の成長に感涙

    27no.874、12/18、回転寿司にGO

    28no.875、12/19、盛り沢山の予定にウキウキ

    29no.881、12/19、Wi-Fiとは。木村先生と再会の日付決まる

    30no.884、12/20、女性の意見に耳を傾ける若君

    31no.886、12/20、料理の日。今夜のツマミは辛さ控えめ

    32no.887、12/20、永禄仕様の麻婆豆腐

    33no.888、12/21、トヨにご褒美ネイル

    34no.889、12/21、母達の前でだけ泣いたトヨ

    35no.891、12/21、源三郎を咎める若君

    36no.892、12/21、気持ちが整った源三郎。唯と若君の関係性の考察

    37no.893、12/22、男三人で外呑み決定。バーベキュースタート

    38no.894、12/22、バーベキューおやつタイム

    39no.895、12/22、唯とトヨお揃いの髪型でお風呂へ

    40no.896、12/22、悟りが開けそうな源トヨ。かたやイチャつく唯と若君

    41no.897、12/23、宅配便の受け取り方を学ぶ若君

    42no.898、12/23、木村先生と再会。語りが熱い

    43no.899、12/23、タブレットを見ながら引き続き歓談

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    四人の現代Days43~23日16時30分、根回しばっちり

    気が利く弟。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    タブレットに、日記の画像が出た。

    木村「これだ」

    唯「わぁ」

    若君「おぉ…」

    唯「たーくん、寄りすぎだよ~」

    木「そんなに興味があるのかね」

    ところどころ拡大して、若君に見せる唯。

    若「…」

    唯「すごいよねー。残ってるんだもんね」

    木「一部破れた箇所もあるが、保存状態はまあまあいいんだ」

    唯「大切にとってあったんだねぇ。これ、誰にあずけたの?」

    若「どう巡ったかは、わからぬ」

    木「何の話だ?」

    唯「ん、こっちの話。これさー、もっと、かわゆい妻とのラブラブが書いてあるかと思ったー。ねぇたーくん」

    若「ん…」

    唯「聞いてる?」

    木「日記の中には妻女の話は一切出てきてないぞ。しかも何だ、可愛いが前提か?見たのか?ははは~」

    唯「マジなんだってぇ」

    木「また夢でも見たのか。まぁ、あのラブレターかのような熱い走り書きからは、相当愛情を注いでいるのはわかるが」

    唯「でしょ。うふふ~」

    若「唯。少し黙っておれ」

    唯「あ、ごめんなさーい」

    若「450年を経ても、ここまで読める形で残ったとは。感動、しました」

    木「君さ、もしかしたらこれに限らず、古文書読めたりするのかい?」

    若「はい」

    唯 心の声(つーか、書くヒトだし)

    木「そうか。だから食い入るように見てたんだな。是非解読チームにスカウトしたいところだ。ははは」

    若「ハハ…」

    唯「今はどこまで見終わってるの?」

    木「さっきのラブレターの日付辺りで止まってる」

    唯「そうなんだ」

    木「これだけに専念できないから。年末で皆忙しいしな。年始に再開する」

    唯「ふーん」

    木「あとな、書いた人物がわからないままだから、せめてヒントが出てくるといいんだが」

    若「名、ですか」

    木「希望的観測としてな。ところで、いつ頃まで帰省してるんだ」

    唯「えーと、年あけて、ちょっとしたら戻る」

    木「そうか。今の内に、しっかり親孝行しとくんだぞ」

    唯「はーい」

    木「旦那さんは、本当に速川とは正反対だが、それが上手くいく秘訣なのかもな」

    その言葉に、はたと気付く若君。

    若「先生。もしや尊から、色々聞いておられましたか?」

    木「あぁ。寡黙だが勉強熱心だとね。それにプラスして、人を惹きつける力があるともね」

    若「それは…」

    唯「尊はたーくん大好きだから」

    木「わかるよ。話を聞こうという気持ちになるというか、何だろう、人の上に立つ人間が持つ威厳や品格まで感じるんだよな」

    唯 心(たーくんのオーラ、わかる?わかる?)

    若「褒めていただけるなど、畏れ入ります」

    若君 心の声(そうか。わしの出自など、探られなんだ所以はこれか。尊に礼を申さねば)

    その後も会話は弾んだが、時間はあっという間に過ぎていく。

    木「さて、じゃあそろそろお開きにするか」

    唯&若君「はい」

    喫茶店を出た三人。

    木「元気でな」

    唯「先生も元気でね!」

    若「ありがとうございました」

    先生の姿が見えなくなるまで見送った。

    若「お会い出来、良かった」

    唯「そうだね」

    若「帰るか」

    唯「うん。今夜は、まだやる事あるもんね」

    若「クリスマスプレゼントを、包まねばならぬ」

    唯「いそがしい~、でも楽しい!」

    若「そうじゃな」

    手を繋ぎ、自転車置場まで歩いていたが、

    唯「たーくん、寒い」

    若「なんと。それはならぬ」

    唯「寒いなー。もっと近くであっためて欲しいなー」

    若「あ、あぁ。心得た」

    唯の肩に手を回し、そっと抱く若君。

    若「姫、いかがじゃ」

    唯「えー、まだ寒いぃ」

    若「フフ、それはただならぬのう」

    グッと引き寄せた。

    唯「えへへ。あったかーい。このまま家まで歩いて帰ろっかな」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    23日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days42~23日15時、宣言します

    なんやかやで、理解してくれてる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    お花の写真立てが、出来上がった。

    唯「出かける前に終わって良かった」

    若君「源三郎、トヨ、難儀をかけたの」

    源三郎「難儀などございませぬ」

    トヨ「とても楽しかったです」

    唯「写真、なに入れるの?今度撮りに行く時の?」

    若「考えておく」

    唯「あっそう。決まってないんだ」

    若「約束の時間が近づいておる。早う片付けてそろそろ出る支度をせねば」

    唯「あー、そうだね。木村先生もね、最後のあいさつしてなかったんだー」

    若「それは、非礼を詫びねばのう」

    ササッと片付けを終え、唯と若君は、木村先生との待ち合わせに向かった。

    ト「あの、お父さん」

    覚「何だい?」

    ト「最後の挨拶、とは何でしょうか。木村先生は、唯様の通われていた学校に今もおいでになる方なんですよね?」

    源「わしもそこは、少し引っ掛かりました」

    覚「あー。君達はホントよく話を聞いてるよね。うん、じゃあ唯のその、学校最後の日の話をしよう」

    ト「よろしいのですか?」

    覚「どちらかと言うと、君達には話しておきたい」

    源「わかりました。心して、お聞き致します」

    二人が公園に到着した。乗ってきた自転車をとめ、喫茶店まで歩き始めたのだが、若君が腕組みしながら、なにやら小声で唱え続けている。

    若「わしは、僕…」

    唯「たーくーん、なに言ってるの?お経?」

    若「言葉を間違えぬようにと」

    唯「あ、現代語に変換ね。大丈夫でしょ」

    若「すっかりお父さんお母さんに甘えてしまい、使っておらなんだゆえ」

    唯「ヤバいと思ったら助けてあげるよ。…じゃないな」

    若「ん?」

    唯「唯之助が、お守りいたしまーす」

    若「そうか…済まぬ。あ、いや。ありがとう」

    組んでいた腕を下ろし、唯の手を取った若君。唯が微笑んだ。

    唯「もー。手つないでくれなくて、さみしかったんだからー。待ってたよぉ!」

    若「ハハッ。おっと、持っていかれそうじゃ」

    繋いだ手をぶんぶん振り回し、ご機嫌な唯。ほどなくCafeMARGARETに着いた。

    唯「えーと、3時45分か。いい時間」

    席で待つ事10分。木村先生が到着。

    唯「あ、来た来た」

    若「うむ」

    サッと席を立ち、お辞儀をしながら先生を出迎える若君。唯も慌てて立ち上がった。

    木村「おー」

    唯「先生~!久しぶりぃ」

    木「速川、元気にしてるか~」

    若「こんにちは、先生。どうぞ奥へ」

    木「いいよ、席なんてどこでも」

    若「上座はこちらですので」

    木「え!こんな美男子で、かつ常識も兼ね備えてるなんて。天は人を選んで、二物も三物も与えるんだなあ」

    ようやく座った三人。四人掛けの席に、奥に先生、手前に唯と若君が並んだ。

    木「まずは注文しよう。何でも頼んでくれ。再会を祝して僕が出す」

    唯「え~、じゃあパフェ?」

    若「これ、唯」

    唯「ウソウソ。先生、私ミルクティーがいい。たーくんは?」

    若「わ…僕は、コーヒーをお願いします」

    木「ん。すんませーん、コーヒー二つとミルクティーね」

    若「先生、初めて名乗らせていただきます。速川忠清と申します」

    木「速川!お婿さんなんだね」

    若「はい」

    唯 心の声(しれっと受け流す。プロだねぇ)

    木「あの、不良の輩に囲まれた時は、本当に助かったよ。ありがとう」

    若「いえ、当然の事をしたまでです」

    木「まさか助けてくれた二人が、尊君と、旦那さんだったとはなあ。縁は異なもの味なものだ」

    唯「なにそれ」

    木「お前は相変わらずだな」

    唯「あのね先生」

    木「どうした」

    唯「学校やめる時、私、結局誰にもあいさつしなくて、というかできなくて。ごめんなさい。今言います。お世話になりました」

    木「後から聞いてかなり驚いたが、何か事情があったんだろ?」

    唯「うん…まぁ。でも私、今もこれからも、すっごく幸せなの。たーくん、旦那さんと一緒に生きるって決めたから」

    若「唯…」

    木「より大切なモノが見つかったなら、それでいいさ。実際、顔に出てるしな」

    唯「え、顔?」

    木「幸せ一杯の顔だ。旦那さん、君もね」

    若「そうですか。ならば先生に誓います」

    木「え」

    若「命全うするまで、唯と添い遂げると」

    木「熱いな~。娘を嫁にやる父親になった気分だよ。良かったな、速川」

    唯「うん。私とたーくんは、結ばれる運命だったんだよ。羨ましいでしょ?」

    木「その情熱は、羨ましいよ。あーそれでな、例の日記に興味があるって、尊君に聞いてるけれど」

    若「はい!」

    唯「いろいろ教えて欲しいな、先生~」

    注文の品が運ばれてきた。先生がタブレットを取り出す。

    木「画像出すから、温かい内に飲みなさい」

    唯&若君「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days41~23日月曜9時、ハンコください

    努力を怠らぬ人。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食卓に四人。乾燥させた花を木箱に接着している。

    トヨ「色とりどりですね」

    唯「お花畑みたーい」

    若君「どう並べ咲かせるかは、センスの見せ所じゃ」

    源三郎「扇子、でございますか?」

    若「フフフ」

    順調に作業を進めていると、玄関の呼鈴が鳴った。

    覚「唯」

    唯「なにー」

    覚「ちょっと手が離せない。荷物が届いたから、受け取ってくれないか」

    唯「ん、わかったー」

    すぐ走っていった唯。ほどなく戻ってきたが、重そうに何かを抱えている。

    唯「われもの注意ってシールついてるけど、これなに?」

    覚「全国各地の銘酒をな、取り揃えようと思って」

    唯「そろえる。まだ来るの?」

    覚「今日は、もう一便届く予定だ」

    唯「ふーん。そうなんだ」

    若「唯。その、荷物の受け取りじゃが」

    唯「ん?」

    若「わしも手伝いたい。教えてくれぬか。酒ならば唯は口にせぬし」

    唯「そんなん気にしなくていいけど。いいよ、簡単だし教えてあげる」

    作業を少しの間源トヨに任せ、席を立った若君。唯が、今届いた箱の宛名部分を見せた。

    唯「間違って他人の家あての荷物を受け取らないように、来たらここを確認するんだよ」

    若「黒羽市東町3ー45、速川覚様」

    覚「お、よくスラスラ読めたね。とくに住所」

    若「葉書、に書いてありましたゆえ」

    唯「葉書…あ、あー。記念に持ってった、写真館から届いたヤツね」

    覚「連名のだな。速川忠清様唯様あての」

    若「はい。時折見返しており、覚えました」

    唯「でね、OKなら、下駄箱の上にハンコが置いてあるから、ここに押してくださいって言われた紙にポンと押すの。押したら紙と引き換えに荷物受け取って、おしまいだよ」

    若「わかった。では次を待とう」

    席に戻り、作業を続ける。

    源「忠清様」

    若「ん?」

    源「先程、黒羽、と聞こえましたが」

    若「そうじゃ。この地には、城の名がそこかしこに残っておる」

    唯「私が通ってた学校もね、黒羽東高校って名前なんだよ」

    源「ほほぅ」

    ト「まぁ」

    若「城跡しかのうなっても、民に親しまれておったようで、まこと喜ばしゅう思う」

    源「幾年も受け継がれ、残ったと」

    ト「ありがたいですね」

    しばらくすると、また呼鈴が鳴った。

    覚「来たね。忠清くん、頼むよ」

    若「心得ました」

    唯「後ろで見ててあげるよ」

    玄関に向かった若君と唯。超イケメンの登場に、宅配業者のお兄さんが少し驚いている。

    唯「たーくん、あて先見て」

    若「うむ、うむ。合うておる」

    業者「ここにお願いします」

    唯「あー、フタ取って。ギュっと押してね」

    なんとか受け取り完了した。

    唯「よくできました~」

    若「そうか?」

    唯「たーくん、聞いてもいい?」

    若「いかがした」

    唯「なんで急に、こういう荷物受け取ろうと思ったの?」

    若「これも、現代、の生活であろう」

    唯「まぁ、そうだけど」

    若「わしでも出来得る事柄を、増やしていきとうての」

    唯「…ずっと居るわけじゃないのに?」

    若「長い短いの話ではない」

    唯「勉強熱心なんだね」

    若「この令和の世では、客人ではなく、日々暮らしを営むように過ごしたいのじゃ」

    唯「そっか。たーくん、偉ーい!」

    若君の頭を撫でようとした唯だが、

    若「早うお父さんに荷物をお渡しせねば」

    かわされた。

    唯「ちょっとぉ、なんでいつも、ナデナデしようとすると逃げるのー!」

    若「ん~?ハハハ」

    二人じゃれ合いながら、荷物を抱えリビングに戻っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days40~22日16時30分、迫る!

    目、二人して見開いてたらちょっと怖い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    岩盤浴用の服に着替え、子供達五人が合流した。

    唯「たーくん、見て見て!トヨと髪型がお揃いなのぉ」

    若君「ふむ」

    唯の、頬や首にかかるほつれ毛をそっと撫でつける若君。

    唯「ん?ありがとう」

    若「このような、艶かしい姿で歩かれてはのう」

    唯「え?なまなましい?」

    トヨ 心の声(やだ、こんな色っぽい姿を俺以外の男に見せるんじゃないって仰るのね。これは、ご飯二杯イケるわ)

    尊「じゃあ僕、源三郎さんとトヨさんに説明するんで」

    唯「わかったー。じゃーねー」

    若「済まぬの。よろしく頼む」

    三人で歩いている。

    トヨ「源ちゃん、どう?この髪型」

    源三郎「うん。悪くないぞ」

    ト「艶かしい?」

    源「えっ」

    尊「あのー、すいません。僕、邪魔者で。お二人だけになりたいでしょうけど」

    源「いえそのような!不案内な地ですので、心強く思うております」

    ト「こちらこそ、尊様にお手間をかけさせてしまい、すみません」

    尊「慣れたら、自由に動いてもらっていいですからね。とりあえず、入ってみますか」

    いよいよ岩盤浴デビュー。三人並びで空いていた場所に、タオルを敷く。

    ト「あ、思った程石が熱くない」

    源「でも体は熱くなる、のですね?」

    尊「物は試しですよ。少し横になってみましょう」

    源「はい」

    ト「そういたします」

    尊「ではごゆっくり。おやすみなさい」

    一眠りしていた尊が目覚めた。

    尊「暑い…あ、お二人はどうかな。うぇっ」

    源トヨは、天井を見上げながらピクリとも動かず、汗びっしょりになりながらもそのまま横になっていた。

    尊「あの、大丈夫ですか?!」

    源「あぁ、尊殿。しばし無になっておりました」

    ト「なんと申しますか、体の中から洗われていくようで」

    尊「心頭滅却ってこういう事かも。一度出ましょうか」

    岩盤浴の部屋を出て水分補給をしていると、美香子が通りがかった。

    美香子「いい汗かいてる?」

    源三郎&トヨ「はい!」

    尊「あれ、お父さんは一緒じゃないの?」

    美「さっき、休憩所のベッドで爆睡してたわ。一番満喫してると思うな。じゃ、後でね」

    尊「うん」

    もう一度岩盤浴をした後、休憩エリアにやってきた三人。トヨが、飲み物を買い足しつつ、歩いて探検している。

    ト 心(へぇ。いろんな椅子や寝転がれる場所があるのね)

    ベンチに座っていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。

    唯「キャハハ!」

    若「ハハハ」

    ト 心(あら、唯様と忠清様。この裏にいらっしゃるのかしら)

    そこは、いい感じに隠れた、カップルシートだった。思わず耳をそばだててしまうトヨ。

    唯「お肌スベスベだよ~。ねぇ、さわってぇ」

    若「これ、服をめくり上げるでない」

    唯「いいの、外からは見えないもん。たーくんの好きにして、いいよぉ?」

    若「…からかっておるのか」

    唯「えー?聞こえませーん」

    ト 心(好きにしてなんて!言ってみたい。めくり上げたのって、上着?前を?!そ、それは…キャー!)

    唯「脚くらい、いいじゃなーい」

    ト 心(なんだ、脚か)

    源「トヨ、怪しいぞ。何やってんだ」

    ト「わ!びっくりした!」

    飛び上がるトヨの様子に訝しげな源三郎。尊が後ろから歩いてくる。

    唯「え、トヨ?」

    声に気付き、シートから出てきた唯。若君も立ち上がった。

    唯「楽しんでる?」

    ト「はい、お陰様で」

    尊「あー、兄さん達ここに居たんだ」

    若「そろそろ時間か?」

    尊「ぼちぼち、ですね」

    若「そうか。では、参るか」

    尊&源三郎&トヨ「はい」

    唯「ごはん、ごはん!」

    尊 心の声(兄さん、口調は普段通りだけど、顔が赤いな)

    この後は、家族団欒で過ごしました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    22日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days39~22日15時、浮っき浮き

    安全のために、バーは両手で持ちましょう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    バーベキューの片付けもスムーズに終わり、いよいよスーパー銭湯へ出発。車に乗り込んだ。

    唯「お風呂もいろんな種類があるんだよ」

    トヨ「楽しみです」

    美香子「私、サウナならミストサウナが好きなのよねぇ」

    唯「私もー。だってフツーのサウナだとマジ熱くて地獄だもん」

    ト「やはり地獄はあるのですね」

    現地に到着。

    覚「えー。では6時に晩ごはんにするから、それまで自由に過ごしてくれ。解散!」

    唯「了解~。お風呂もいいけど、岩盤浴も行きたいし」

    尊「時間決めて待ち合わせにする?」

    唯「そうだね。えーと今3時半だから、4時半くらい?」

    尊「わかった。じゃあ源三郎さん、行きましょう。こちらです」

    源三郎「はっ、お供致します」

    唯「たーくん、後でねっ」

    若君「あぁ」

    女風呂の更衣室。

    美「髪だけど、二人ともお団子にまとめてあげる。岩盤浴で寝そべっても邪魔にならないようにね」

    唯「やったー」

    ト「お団子…?」

    美「じゃあトヨちゃんから。座って」

    ト「はいっ」

    頭のほぼてっぺんで、ポニーテールがキュッと結ばれた。

    美「毛先はヘアクリップで留めるの。ピンだと小さくて、うっかり落としてどなたか踏んだりしたらケガの元だから」

    鞄からいくつかクリップを出す母。

    唯「ガバっととまるヤツだ。買ったの?」

    美「うん。女の子のこういうグッズって、選ぶのも楽しいのよね~」

    トヨの髪をゆるく三つ編みにし、くるくると結んだ根元に巻きつけ、毛先を大きめのクリップで留めた。

    唯「超かわいい!まぁるいお団子だぁ」

    ト「えっ、見たい」

    姿見に走っていったトヨ。鏡の前で満面の笑みになった。笑顔のまま戻ってくる。

    ト「お母さん、ありがとうございます!このような愛らしい形にしていただけるなんて」

    美「髪の量がちょうど良いのよ」

    唯「カットして正解だね~」

    ト「本当に嬉しい…」

    美「はい次。唯はそこまでの長さがないから、小さめのお団子ね。…ん、できた。良さげ」

    ト「お似合いです」

    唯「わぁい!では、お風呂へGO~」

    様々な湯船が並んでいる。

    唯「女子っぽい!バラの花が浮いてる!」

    ト「いい香り…」

    唯「トヨ、それもいいけど、こっちのお風呂に入ろっ」

    ト「はい」

    並んで肩までつかる唯トヨ。

    唯「ふー。ふふっ。髪型おソロでうれしいな。仲良し姉妹、って感じ」

    ト「まぁ…姉君なんておこがましい」

    唯「もしトヨがお姉ちゃんなら、源三郎は義理のお兄ちゃんか~」

    ト「…ええっ!」

    唯「おっ、体がシュワシュワしてきたよ~」

    ト「はぁ…え、あ?まぁ、いつの間にこんな」

    唯「これ炭酸風呂って言ってね、入ると体に細かい泡がつくの。このシュワシュワがお肌にいいんだってさ。美肌になって、たーくんをイチコロにするのじゃあ。ぐふふ」

    ト「ふふっ。効能が色々あるんですね」

    唯「あれ、そういえばお母さんどこ行った?って、いつの間にかあんなトコに居る」

    ト「あら」

    ジェット水流風呂で、恍惚の表情の母。

    美「あ゛~、極楽極楽」

    ト「お母さん!大丈夫ですか?!」

    美「ん?どした~?」

    ト「湯船の中が嵐の如くうねっております」

    美「これがねー、凝った体に効くのよ~。トヨちゃんもいらっしゃい」

    ト「効く。そう…なんですか?」

    唯「入ればわかるよ。そんな怖くないからさぁ、ねっ」

    ト「わかりました。頑張ります」

    入ってはみたが…

    ト「あーれー!」

    美「あらま」

    唯「水の勢いに流されてるよ。もー、トヨかわいいんだからぁ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days38~22日11時、トロットロ

    なんでもやってみる。結果は度外視で。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚が鉄板で焼きそばを焼いている。丸型のバーベキューコンロから、ゴロンと大きい塊肉がこんがりと焼けて出てきた。

    美香子「じゃあ、切り分けましょうね」

    トヨ「はい、お手伝いします」

    唯「ウッシッシ~」

    尊「牛。まさかのダジャレ?!」

    覚「コンロ空いたな。ポップコーンの素、買ってあるけど」

    若君「ならばわしが、炙ります」

    肉を焼き終わったコンロで、例の手鍋型の容器を揺らしている若君。

    源三郎「こちらは?」

    若「楽しみにしておれ。あと」

    ト「あと?」

    若「肝を潰さぬ用意、ものう」

    源「肝?」

    ト「何が始まるのでしょう」

    若「戦は、始まらぬ」

    源三郎&トヨ「戦?」

    軽く微笑みながらも、源トヨに詳しく説明しない若君。その内、音がし始めた。

    ト「キャッ」

    源「銃か?!」

    やがてババババ、と連続で破裂音が続くが、ギャラリーはいたって静か。

    源三郎 心の声(皆、この銃声の中、悠然と構えておられる…)

    トヨは、不安そうに唯の腕を掴んでいる。

    唯「だいじょぶだいじょぶ。おいしいからさ」

    ト「美味しい?騒がしい料理なのですね」

    鉄板の上が片付く頃、ポップコーンができあがった。開いて源トヨに中を見せる。

    源「この者達が暴れておったのですか」

    ト「匂いが香ばしいですね」

    唯「お疲れさまぁ。これ焼きそばとお肉、たーくんの分ね」

    若「済まぬの」

    尊「びっくりしましたよね。僕達も初めて見た時はそうでした」

    美「お二人は、そこまでうろたえてはなかったわね」

    源「いえ、一時はどうなるかと」

    ト「唯様が大丈夫と仰ったので」

    唯「たーくんは驚かそうとしてたけど。おぬしもワルよのぅ」

    若「ん?」

    覚「あー、そうそう」

    美「何?」

    覚「甘い菓子もあるんだ」

    家の中から何やら色々持ってきた覚。

    尊「なに?ビスケットと板チョコと、これはマシュマロ?」

    美「あらぁお父さん、もしかしてスモア?」

    覚「そうそう。じゃ、焼くかー」

    唯「すもう?はっけよい?」

    尊「それは明らかに違うと思う」

    即スマホで検索する尊。

    尊「えーと、スモアとは、2枚のビスケットにチョコレートと焼いたマシュマロをはさんだ…うわっ、超美味そう!」

    唯「え~、なんで今まで隠してた?」

    覚「知らなかったんだよ」

    美「たまたまテレビで観たのよね」

    串に刺したマシュマロが焼かれる。

    尊「加減が難しそうだね」

    唯「どんなん?想像できないー」

    美香子が手際良くビスケット、チョコ、焼いたマシュマロ、上からビスケットとはさんだ。

    美「はいできた。唯、取ってみんなに回して」

    唯「はーい。トヨ、どうぞ」

    ト「私からなど、おこがましいです」

    美「気にしないで。どんどんできるから」

    ト「はい。では…まぁ、甘くて柔らかい」

    若「うまい」

    唯「すごーい、プニプニ~」

    美「源三郎くんも尊もあるわね」

    尊「わー伸びる、チョコが垂れてきた!でも新食感で楽しいね」

    源「美味しいです」

    唯「おいしかった!ねぇねぇ、私も焼いてみたい!」

    覚「おー、じゃあ僕と母さんの分作って」

    唯が張り切って、焼き係を交代したが…

    尊「燃えてるよ!」

    唯「うそー!じゃあ次っ」

    尊「焦げたのどうすんだよ」

    覚「あー、いいよ焦げは取って食べるから。っておい、焦げた上から乗せるのか!」

    唯「マシュマロ増量でーす」

    美「もう~。ちゃんとはさめる?」

    覚「なんとか」

    唯「はい、お母さんのはうまく焼けたよ」

    尊「焼けてないでしょ。あー、無理にぎゅうぎゅう潰さない!はみ出てる!」

    唯「えへ?」

    静かに速川家のワチャワチャを見ていた三人。

    源「賑やかですね」

    若「愉快じゃ」

    ト「とっても微笑ましくて」

    若「うむ。家族とはなんと温かい。いつの日かこのような賑わいを、と願う」

    源「唯様と共にならば叶いましょう」

    若「そうじゃな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days37~22日日曜6時、熱が入るよ

    待ち遠しい予定が増えて、ご機嫌な父。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝のリビング。若君と源三郎が話をしている。

    若君「やはり、お父さんも交えて話をした方が良かろう」

    源三郎「忙しくされておるのに、お時間を頂戴しても宜しいものでしょうか」

    若「まずは伺いを立てねば。来られるのを待とう」

    覚が二階から降りてきた。

    覚「おはようおはよう。あれ、朝稽古もう終わったのかい?」

    若「お父さん、おはようございます」

    源「おはようございます!」

    若「稽古はこれからですが」

    若武者が二人並んで、丁寧に頭を下げている。

    覚「おいおい、どうした?面食らっちゃうよ」

    源「あの」

    覚「何だい?」

    源「お父さんに相談をしとう存じます。お時間を頂戴できないでしょうか」

    覚「例の話?」

    源「はい」

    覚「今回は、忠清くんも一緒に?」

    若「わしには、頼みがあると申しております。されど、よう悩みを聞いてくださったお父さんも、共に話をすべきと思いまして」

    覚「そうか。源三郎くん、いよいよ忠清くんに進言して解決の糸口をたどるんだ」

    源「はい」

    覚「で、話をしたいんだね。三人だけで?」

    源「出来得るならばですが」

    覚「急ぐ?今日明日とか」

    源「いえ!滅相もない事でございます。時間をとっていただけるなら、いつでも仰せのままに」

    覚「ん~」

    若「不躾なお願いとは存じますが」

    また二人で頭を下げた。

    覚「いやいや、そこまでしなくていいから。うーんと…あ!イイ事思いついちゃったぞ」

    ん?と顔を上げる二人。

    覚「それってさ、夜お酒呑みながらでも、いい?」

    若「それは…良いですね。いかがじゃ、源三郎」

    源「はい。お父さんさえ宜しければ是非に」

    覚「じゃあ、三人だけで呑みに出かけようよ。家でトヨちゃん達に聞こえないよう、コソコソ喋ってるよりはさ」

    カレンダーの前に移動した覚。若君達も続く。

    覚「いつがいいかな~。えーと…26日の夜はどうだい?」

    若君&源三郎「心得ました」

    覚「決まりだね。早速カレンダーに書いちゃおう。夜、覚忠源外呑みへ、と。へへー、楽しみだな。あ、いやごめん、大事な相談なのに不謹慎だね」

    若「いえ。腹を割った話ができそうで、わしも楽しみです」

    源「ありがとうございます」

    10時。バーベキューの準備で、庭にタープを設置している。

    源「この屋根、陣にあると良いですね」

    若「そうじゃろ。使わず済むに越した事はないが」

    覚「え!タープもう張れたの!」

    尊「兄さんと源三郎さんは、さすがの手際の良さだから。僕は出る幕なし」

    覚「出来る男達だもんな。こっちのコンロの火起こしも順調だぞ」

    美香子「野菜も肉も準備OKよ~、どんな感じ?あら、もう始められそうね」

    覚「じゃあスタートするか」

    美「そうね。唯~トヨちゃ~ん、食材運ぶわよー」

    唯「え、もう始めるの?だから朝ごはん、ちょい少なめだったんだ」

    美「今日はねー。色々前倒しで進めるわよ」

    唯「前倒し。なんで?」

    バーベキューコンロの網に、串に刺した野菜やソーセージが並べられた。

    尊「それもしかして、夕方か夜にまた別のイベントが増えた?」

    美「当たり~」

    唯「えー!なになに!」

    美「近場の温泉に行くわよ」

    尊「あ、スーパー銭湯?」

    唯「わぉ!トヨ~、でっかいお風呂と岩盤浴だよぉ」

    トヨ「石で、体が熱せられる地ですね」

    美「お肌ピカピカになるわよ~。ますます美人になっちゃうわね。髪もまとめやすい長さになったしね」

    ト「まぁ…そこまでお考えいただき、ありがとうございます」

    尊「僕も今回は、岩盤浴に挑戦しようかな」

    覚「お?乗り気じゃないか」

    尊「この際、一皮むけてみようかと」

    唯「へー」

    源「…あの、忠清様」

    若「ん?」

    源「やはり地獄なのですか?皮が剥けるなど」

    若「ハハッ、何を怖じ気づいておる。言葉の綾ではないか」

    源「もしやこの令和の世では、地獄は楽しげに過ごす地なのかと」

    若「楽しげな地は極楽と申すが」

    源「熱くて極楽ですか。考えが及びませぬ」

    唯「そこの男子~!なにぐちゃぐちゃ話してんの、焼けたよ、取らないとなくなるよ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days36~21日17時、滲み出る

    だから月は美しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    庭で素振りを続ける源三郎。食卓で工作をしながら、その様子を見ている若君と尊。

    尊「すごく熱が入ってる」

    若君「心の迷いをどう落とし込むか、決断すべきは今か、などと考えておるのじゃろう」

    尊「兄さんもそんな経験あるとか?」

    若「かつて」

    尊「そうなんだ。その時はどうなったんですか?」

    若「戦がいつ始まってもおかしゅうない、睨み合いが続いたが、和議となり治まった」

    尊「え!かなりおおごとだったんですね」

    最後の一箱に蝶番を取り付けていると、源三郎が汗を流し紅潮した顔で戻ってきた。

    覚「おー、頑張ったね。冷たいおしぼり用意してあるよ」

    源三郎「忝のう存じます。今、車の音がしました故、戻りました」

    尊「え!もう帰ってきた?!早っ」

    覚「今日はさすがに、寄り道はしなかったんだろうな」

    玄関から声がする。

    唯「ただいまぁ~」

    尊「あ、迎えに行かなきゃ。先行ってますね」

    源「はい。直ちに参ります」

    若「源三郎」

    源「はい」

    若「良い顔付きになった」

    源「さようでございますか。ひとえに、忠清様のお力添えの賜物です」

    覚「ささ、汗拭けたかい?行こう行こう」

    玄関に、唯と美香子だけ。

    覚「お疲れ。お?主役は満を持して登場か~」

    美香子「揃ったわね。では、トヨちゃんの、御成ーりー」

    ドアが開いて、トヨが恥ずかしそうに入ってきた。

    尊「わぁ」

    若「おぉ」

    覚「いいね~!」

    唯「トヨ、その場で回ってみて」

    トヨ「はい」

    後ろを向くトヨ。デニムのマーメイドスカートの裾がひらりと揺れ、髪はくるんと巻きが入り、わきの下辺りで揺れている。

    唯「この髪型、すっごく良くなーい?」

    美「せっかくだから、仕上げに毛先を巻いてもらったの」

    覚「うん、いい。可愛いいよ~」

    ト「ありがとうございます」

    尊「すっかり、現代のお姉さんですね」

    美「源三郎くん?なんでそんな後ろに居るの~」

    若君の後ろから顔を覗かせている源三郎。

    源「トヨ、おかえり」

    ト「ただいま戻りました、源ちゃん」

    源「…」

    唯「だからー。そこでもう一声、ないの?」

    源「あまりに目映く…」

    唯「は?」

    尊「なるほど。眩し過ぎて直視できないんですね」

    唯「はあ?」

    若「そうじゃな」

    唯「たーくんまで乗っかったよ!」

    若「事を成し遂げ、誇りに満ち溢れたトヨの姿は、光を纏ったようじゃからのう」

    唯「光…」

    美「内側から輝いてるのがわかるのね。ウチの息子達は、感性が豊かね~」

    ト「忠清様にそのようなお言葉をかけていただけるなんて、この上ない喜びです」

    唯「いーなートヨ、たーくんに褒めてもらえてー」

    若「妬いておるのか」

    唯「ん、ちょっとだけ。でもトヨがすごく立派なのは間違いないから」

    若「それを申すならば、唯は常に輝き、わしをあまねく照らしておるぞ」

    唯「え」

    美「あら素敵。愛の告白みたい」

    唯「マジすか?!やーん、たーくんったら」

    尊「なるほど。わかった!」

    唯「ちょっとなによぅ、せっかく告白にひたってんのにー」

    尊「お姉ちゃんは、兄さんにとって太陽なんだ」

    ト「太陽?」

    尊「あ、ごめんなさい。えーとお日さま?おてんとさま?」

    ト「あ、はい」

    源「わかります」

    尊「良かった。で、兄さんは月なんです」

    覚「ほー」

    美「解説して」

    尊「月って、自身で発光しない。あ、兄さんは別格なんで光ってますけど。でも、月が明るく輝いて見えるのは、太陽の光を反射してるからなんです」

    唯「そうなの?!へー」

    若「唯が居らねば光を失い暗闇の中…そうじゃな。わしは唯に照らされ、生命輝き、その月を見上げ、綺麗じゃの、とも囁けると」

    尊「そうですね」

    源「なるほど…」

    唯「なんか前に」

    ト「聞いた覚えがあるような」

    美「夏目漱石?深いわね」

    覚「科学的で文学的だよ」

    唯「ていうかさー。話すの、玄関じゃなくても良くない?」

    美「それもそうよね。では移動~」

    覚「尊、そろそろテーブル片付けてくれよな」

    尊「あ、かなり広げてある」

    若「急ぎ、片付け致します」

    バタバタと動く。

    源三郎の囁き「トヨ」

    トヨの囁き「うん」

    源 囁き「似合ってるぞ」

    ト 囁き「…ありがとう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    21日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days35~21日14時30分、竹刀を持て!

    まさかやー!こそ、創作倶楽部の醍醐味でございます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    平常心なら、隙を突かれるなんてない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ホームセンターに到着。

    覚「源三郎くん、大丈夫かい?うっかりして酔い止め薬渡し忘れたけど」

    源三郎「はい。すっかり車も慣れました」

    覚「なら良かったよ。さてと、どこに行けばいいかな~」

    案内図の前で、売り場を探す覚。

    若君「尊」

    尊「はい?」

    若「何処であれ、このような地図はあるのかのう」

    尊「案内図、フロアマップですか。ある所もない所もありますけど、どこか知りたい場所があるんですか?」

    若「あの、ショッピングモールの地じゃが」

    尊「あー、ありますよ。ちょっと待ってください…これですね」

    スマホにはフロアマップが表示されている。

    若「おぉ」

    尊「要るなら、帰ったら印刷しましょうか?」

    若「頼む」

    尊「クリスマスデートですか」

    若「あぁ」

    尊「聞いてもいないのに、クリスマスはたーくんにおまかせぇ~!って吹聴されました」

    若「ハハ、そうか」

    尊「お姉ちゃん、兄さんがこんなに苦労してるって、わかってんのかなぁ」

    若「乞われれば、全うするのみ」

    尊「それにしたって」

    尊 心の声(そんないろいろ迷ってる兄さんは、かなり可愛いいけどさ)

    覚「材料、それぞれ個数合ってるか?」

    尊「うん、OKだよ。ねぇ兄さん」

    若「何じゃ?」

    尊「お花の量的に四つは作れますけど、一つくらい持ち帰りたいとかありますか?」

    若「いや」

    尊「いいんですか?」

    若「この先の世に全て残す。花の写真は既に受け取っておるしの」

    尊「わかりました」

    男性陣帰宅。時計は16時を指している。

    尊「作業するなら、実験室の方がいいよね」

    覚「いや、食卓でやりな」

    尊「いいの?」

    覚「実験室や二階だと、トヨちゃんが帰ってきた時、すぐに出迎えに行けないだろ?」

    尊「そっか。そうだね。じゃあ、工具だけ取ってくるよ」

    若「尊」

    尊「なに?兄さん」

    若「作り始めるのが、少々遅うなっても構わぬか?」

    尊「はい?いいですよ。なんかやりたい事あったら、先にどうぞ」

    若「済まぬの」

    尊「いえいえ」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「庭へ出よ」

    源「え?」

    若「しばし、わしの相手を致せ」

    源「は、はい」

    尊&覚「?」

    庭で竹刀を構える二人。打ち合いが始まったが、若君の気迫にやや源三郎が押されている。

    覚「なんか…朝稽古よりも凄味が増してるな」

    尊「兄さんどうしたんだろ」

    一瞬の隙を突いて、源三郎の竹刀が叩き落とされた。

    尊&覚「あ!」

    慌ててウッドデッキに出た尊と覚。唖然とする源三郎に、剣先を向ける若君。

    尊「源三郎さん、大丈夫かな」

    覚「まさか、令和が穏やか過ぎて、体が鈍っちゃったとか…」

    若「お父さん。そうではございませぬ」

    覚「そうなの?」

    源「…」

    若「心此処にあらず、が所以であろう」

    尊「え」

    源「…済みませぬ」

    若「新しく変わろうとしておるトヨを、案ずるのはわからんでもない。されど、お母さんも唯も傍におり支えておる。おぬしだけ、いつまでもそのような心持ちではならぬ」

    源「…はい」

    尊「確かにずっと、どこか虚ろな感じだった」

    若「迷いを断ち切るのじゃ。そんな不安が表に出た顔付きのまま、戻ったトヨを出迎えるつもりか」

    源「顔、でございますか」

    覚「そうだな、源三郎くん。トヨちゃん、きっととびきりの笑顔で帰ってくるからさ、眉間にシワ寄せててはダメだよ」

    源「はい」

    竹刀を拾い上げ、尊の前に進み出た源三郎。

    尊「えっ、なんで僕なの…」

    源「尊殿」

    尊「はいっ」

    源「しばらく箱を作る手伝いが出来ませぬが、宜しいでしょうか」

    尊「え!それは、構わないですよ」

    源「畏れ入ります。忠清様」

    若「うむ」

    源「己と向き合うべく、このまま鍛練を続けとう存じます。忠清様はどうぞお戻りください」

    若「わかった」

    源三郎を一人残し、三人はリビングに戻っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅―┅┅

    続きます。

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    アキサミヨー

    下地先生「暢子さん」

    暢子「休憩中でーす。アベベの世話ならニーニーに言っちゃってくださーい」

    下地先生「寝ぼけているのね。歌子はどこ?」

    暢子「歌?(せき払い)♪おお牧場~は~み~ど~り~♪」

    オーナー「暢子さん。あなた、“奇天烈”って言われなかった?」

    暢子、夢から覚める。

    暢子「アキサミヨー。今日のまかないはレンコンの挟み揚げで決まり!」

    ☆すみません、ざっと見ただけですが…
    源トヨがタイムスリップしてる?!
    坂口殿が恋?!(「唯が恋?!」的な。)
    ありえん。まさかやー。
    さすが創作倶楽部。
    “部にして返す”ニーニーは
    ぽってかす部
    または
    伝統芸能部。であるね。

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    四人の現代Days34~21日14時、ほろほろと

    一人で気張ってるから、包んであげて欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美容院に出かける準備中。

    美香子「あとちょっと時間あるわね。トヨちゃん、唯、洗面所へ来て」

    唯「洗面所?」

    トヨ「はい」

    美「軽くお化粧しましょ」

    唯「やったー」

    ト「それは…ありがとうございます」

    唯が先に出てきた。

    唯「どう?かわいい?」

    若君「可愛い、よ」

    尊「言わせてないか?誘導尋問じゃないのか?」

    唯「せっかくお化粧したなら、たーくんとデートが良かったなぁ」

    若「ハハハ。トヨの新しく変わりゆく姿を、余すところなく撮ってやるのだぞ」

    トヨが出てきた。

    唯「超キレイ!まつ毛もくるんくるんだぁ」

    若「ほぅ。良いのう」

    尊「綺麗なお姉さんだ。あ、一段と、って意味です」

    ト「そんな、褒めていただけるなんて」

    源三郎「…」

    唯「源三郎~」

    源「…はっ」

    唯「尊でさえサラッと褒めてんのに。トヨに言う事ないの?」

    源「あの、えー…感無量です」

    唯「うまく逃げてない?」

    美「さて、そろそろ行くわね、お父さん」

    覚「ん…」

    美「何、どしたの」

    覚「トヨちゃん、化粧以上に目力が強いというか。朝方より、肝が据わった顔になったような」

    美香子の囁き「さっきひとしきり泣いたから。気持ちの切り替えができたんじゃない?」

    覚の囁き「それでか」

    美 囁き「エリさんと芳江さんが、うまく心の内を引き出してくれてね」

    ┅┅回想。12時45分のクリニック┅┅

    ト「エリさん、芳江さん。この後、行って参ります」

    エリ「まあ、わざわざ伝えに来てくれたの」

    芳江「ありがとうねぇ」

    エリが、トヨの前に歩み寄り、頭を撫でる。芳江は、トヨの後ろからそっと、長い髪を撫でた。

    ト「あ、あの…」

    エ「トヨちゃんはいい子。本当にいい子」

    芳「この美しい髪、憶えておきますね」

    ト「…うっ、うっ」

    その場で泣き出したトヨ。エリと芳江がそっと支える。その様子を見守る美香子。

    ト「ごめんなさい、私、嫌なんじゃなくて」

    美「今朝から、なんか張り詰めてたのよねぇ」

    ト「…」

    美「髪をバッサリ切るなんて、大事件だもの。直前に緊張するのは当然よ。どこかで吐き出せればいいなと思ってたけど、さすがの母二人だったわ」

    エ「辛くはないのね?」

    ト「はい」

    芳「心から、行きたいと思ってるのよね」

    ト「はい!」

    美「ふふっ。少しは気が楽になったかな。良かった。さ、涙を拭いて。そのまま戻ったらみんな心配するわ」

    ト「泣いてしまうなんて、お恥ずかしい…」

    美「全然。よく忠清くんも泣いてたし」

    ト「そうなんですか?!」

    芳「ここで泣きそうになって」

    エ「慌てて出て行った時もありましたね」

    ト「そんな事が…」

    美「笑顔になったわね」

    エ「じゃあ、行ってらっしゃい」

    芳「月曜、楽しみにしてますね」

    ト「はい!ありがとうございました!」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯「ちょっと源三郎~、褒めるまで出かけないよ?」

    源「そ、そんな」

    若「身構えるからであろう。見たまま感じたままを申せば良い」

    源「はい…トヨ」

    ト「うん」

    源「息を呑む程、美しい」

    ト「…」

    唯「この部屋、暑くない?」

    尊「暑いね」

    若「ハハハ」

    ト「ありがとう、源ちゃん。すごく嬉しい」

    源「お、おぅ。頑張って行ってこいよ」

    ト「うん!」

    美「じゃ、行ってきます」

    女性陣が出発した。

    覚「じゃあ僕らもそろそろ出るか。ホームセンターでいいんだよな?」

    尊「うん」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「大儀であった」

    源「いえ…」

    尊「すごくカッコ良かったですよ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days33~21日土曜8時、羽を休めて

    何でも、率先して動いてたんだろうなぁ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝。身支度を終えた美香子が、小瓶の入った箱を持ってきた。

    美香子「唯」

    唯「なに?あ、マニキュアだ。また買い足したの?」

    美「午前中に、トヨちゃんに塗ってあげてくれない?」

    唯「あーお出かけ前にね。わかったー」

    トヨ「えっ!私になど」

    唯「だってこっちに居る間くらい、指をキレイにしてたっていいもんね」

    美「来た当初は荒れた手で痛々しかったけど、だいぶ治ってきたから」

    ト「それは、お恥ずかしい…」

    美「あとね、爪用のいろんなシールやパーツも買ったからこれも使って。貼った上からトップコートを塗って、剥がれないようにするの」

    爪に貼る、花やハート型のシールや、立体的なパールの飾りなどがある。

    唯「わぁ、おしゃれなおねーさんがやってるヤツだぁ」

    ト「可愛らしいですね」

    尊「へー。爪のおしゃれの世界って今こんな風なんだ。作業するのにピンセットが要るよね?」

    美「そうね。出しといてくれる?」

    尊「了解~」

    唯「上に乗せて貼る感じ?」

    美「唯の爪は、既に綺麗に塗ってあるしね」

    唯「だってぇ。病気で部屋に閉じこめられてた時、マニキュアぐらいしかするコトなかったんだもん」

    美「まぁそうよね。もうすぐクリスマスだし、こんなのを足したらどうかなって」

    唯「嬉しい!ありがとうお母さん、がんばってみるー」

    食卓に、まず瓶を並べた。

    唯「色はなんとなく、トヨに似合いそうなのを選んだっぽい」

    ト「そうですか?嬉しい。並んでるだけで心が踊ります」

    若君「色鮮やかじゃな」

    唯「だよねぇ。ねぇ源三郎」

    源三郎「はい」

    唯「どれがいい?」

    源「は?」

    唯「選んで」

    ト「えっ」

    源「え!いや、その、このような類いは不慣れでございまして」

    唯「えー」

    若「これ、唯。トヨ、唯が勝手に進めてしもうておるが、良いか?」

    ト「はい。お母さんが買い求めてくださったお色はどれも素敵ですし、私も選べません」

    若「ならば良いが」

    ト「源ちゃん、決めて欲しい」

    源「そうか。ならば…うーん」

    源三郎が悩みながら取り上げたのは、やや赤みの強いオレンジ色のマニキュア。

    唯「おっ、いいね」

    若「ほほぅ。夕映えの色じゃの」

    ト「まぁ…素敵…」

    唯「夕映え!たーくん、なんてカッコいいコト言うのぉ」

    若「見たまま申しただけであるが」

    唯「もー。好きっ」

    若「ハハハ」

    源「トヨ、これでいいか?」

    ト「うん!」

    唯「決まりだね。じゃあ塗り始めまーす。パーツ、何貼るかも決めてね」

    ト「いえ、こちらは私には。唯様だけで」

    唯「なんで~?いいじゃない」

    ト「あの…炊事が、しにくくはなりませんか?」

    唯「そんな心配?」

    尊「お姉ちゃんの口からは、決して出ない質問だな」

    唯「なによ。確かに働いてませんけど」

    若「実に奥ゆかしいのう」

    源「…」

    覚「トヨちゃん、それは僕が答えよう」

    キッチンから覚登場。

    ト「お父さん」

    覚「たった一月だけどさ、そういうのから解放されて、自分の身を労るのも大切だよ」

    ト「労る…」

    覚「僕もね、最初トヨちゃんの手を見た時、水仕事を頑張る女性の手だなって思った。今の内くらいさ、美しい指先で気分も上々になって欲しい」

    ト「…」

    覚「どうしてもやりたければ、炊事用の手袋とかあるしさ。まぁでも、無理にしなくていいしさせるつもりもないよ。今は養生して」

    ト「そんな…お気遣いありがとうございます」

    源三郎が、前に進み出た。

    源「お父さん、わたくしがその分お手伝い致します」

    唯「お」

    若「ほぅ」

    尊「男前だ」

    ト「源ちゃん…」

    覚「ははは。充分やってもらってるけどね。じゃあトヨちゃんの分も、よろしく頼むよ」

    トヨの手を取る唯。

    唯「ごめんね。今までいっぱい働いてくれて」

    ト「いえ!唯様のお世話だけで、手が荒れたのではございません」

    唯「ピッカピカの爪にしてあげるね」

    ト「楽しみです、お願いします!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days32~20日18時、思ってたんと違う

    プチパーティー仕様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二階から下りてきた尊。

    尊「え?今おやつタイムなの?」

    覚「唯が勝手に配ってさ。休憩とは言ったが」

    覚以外、皆でシュークリームを頬張っていた。

    唯「シュークリームが呼んでたからさ~」

    覚「空耳だろ。今から酒呑むのに甘い物って」

    唯「関係あるの?」

    覚「出された食べ物を断らないと知ってて、わざとやってるだろ。まぁまだ食事まで時間はあるが」

    トヨ「この先の世の甘味は、どれもとても柔らかいのですね」

    若君「それもそうよのう」

    源三郎「見た目はかなりゴツゴツとしておりますが、持つと何ともまあ柔らかく」

    シュークリーム片手に、スマホを操作する尊。

    尊「兄さん、いろいろ考えたんですけど、こんなのがいいかなって」

    若「どれ。おぉ、これは美しい」

    木箱に、こぼれそうな程花が詰めてある画像を見せる。

    尊「入れた箱を立てられるように、モリモリと隙間なく貼り付けるんです」

    若「壁に咲いておるように見立てるのか」

    尊「あ、そうですね。で、これ見えます?写真立てなんですけど、木箱の脇に金具で繋いで、本を開いて立てたみたいにするんです」

    若「ほぅ。良いの。ではこのように致そう」

    唯「お花の箱作るの?」

    若「うむ。咲き誇る花々を、いつまでも粉の中に埋めておくのは忍びないゆえ」

    ト「まぁ綺麗」

    源「雅やかでございますな」

    覚「材料仕入れたいだろ?明日乗せてってやるぞ」

    尊「いいの?」

    若「よろしいのですか?」

    覚「トヨちゃん達が美容院行ってる間にさ」

    尊「あー、なるほど」

    若「ありがとうございます」

    19時30分。美香子が仕事を終え戻って来たが、

    尊「麻婆豆腐なんだよね?」

    覚「そうだ」

    唯「なんでホットプレート?」

    覚「これで作るからだ」

    尊「えー!」

    唯「聞いたコトない」

    美香子「これも永禄仕様なのね。 向こうで似たようなメニュー作れるように」

    唯「そうなんだ~。お父さん天才!」

    覚「へへ、そうか?じゃあ忠清くん、ここで豆腐以外の具材を炒め始めて」

    若「はい!」

    肉にトロミがついてきたところで、覚が熱燗を運んできた。

    美「まだできてないのに。豆腐も水切りしっぱなしだし。順番逆じゃない?」

    覚「もうできあがるんだよ。忠清くん、手ぬぐい外して、豆腐入れて」

    美「え、大きいまま?」

    若「このままですか?」

    覚「そのままドーンと入れていいよ。中で崩しながら食べるんだよ」

    美「あらま」

    唯「へぇ」

    尊「いろいろ斬新だ」

    覚「少し火を弱めて完成だ。忠清くん、お疲れ様。さーさー」

    酒を盃に注ぐ。美香子や源トヨにも同様に。

    全員「いただきます!」

    晩ごはん兼酒宴が始まった。

    唯「このマーボー、いいね」

    尊「ちょうどいい辛さ。美味しいです兄さん」

    若「そうか。良かった」

    覚「ささ、呑んで」

    若「お父さんこそ。つがせてください」

    覚「いいのかい。嬉しいねぇ」

    若「お母さんもどうぞ」

    美「まぁ嬉しい。じゃあ私はトヨちゃんに」

    ト「ありがとうございます。はい、じゃあ源ちゃんどうぞ」

    源「お、おぅ」

    唯「みんなゴキゲンだなぁ。まぁ、お酒関係なくても楽しいけどねー」

    尊「あ、なにお姉ちゃん、麻婆丼にしてる!」

    唯「いいでしょ~」

    若「唯の飯、美味そうじゃの」

    唯「たーくんにもあげよう。はい、あーん」

    若「うん、美味い」

    尊「僕も丼にしよっと」

    食卓を感慨深く眺める覚。

    覚「いや~。うんうん」

    美「何お父さん、しみじみと」

    覚「いい夜だ」

    美「ホントね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    20日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days31~20日15時、きってきって

    戦国時代の肉は、もう少し固そう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに買い物に来た五人。

    覚「全員で並ぶと、何とか戦隊みたいだな~」

    唯「はあ?何戦隊なの」

    覚「うーん…戦国戦隊、シュツジンジャー!どう?どう?」

    唯「ダサっ」

    覚「だよな。もうちょっと考えさせてくれ」

    唯「もういい」

    覚「バッサリだな」

    カートの中がどんどん埋まっていく。

    唯「お肉、大きいのと小さいのがあるね」

    覚「大きいのはバーベキュー用、小さいのは今晩のメニュー用だ」

    若君「今宵は肉料理ですか」

    覚「うん。僕も色々考えてさ、せっかく覚えるんだから、金曜は今後応用できるといいなってメニューにする予定だよ」

    唯「今後?永禄でも作れるメニューって事?」

    覚「材料に制限あるから、再現は無理だと思うけどな。でも、例えば」

    カートの中の豆腐パックを指差す覚。

    覚「トヨちゃん、こんな形ではないだろうけど、永禄にも豆腐はあるよね?」

    トヨ「はい。ございます」

    覚「て事は、豆腐料理はできるだろ?ならさ、現代のメニューをそっちに寄せた風に作れば、戻ってからも楽しめるんじゃないかな~ってね」

    若「お父さん…そこまでお気遣いいただいたとは」

    覚「金曜だけだから。気にしなくていいよ」

    唯「じゃあ、今日の晩ごはんは何?」

    覚「麻婆豆腐だ」

    唯「マーボー!ん?」

    覚「何だ」

    唯「麻婆豆腐ってお肉こんなだっけ?」

    覚「普通ひき肉だよな」

    唯「これ、違うコトない?」

    覚「永禄にひき肉は売ってないだろ。これを細かく刻むんだよ」

    若「なるほど…よう考えておられる」

    唯「へー」

    覚「今日は、そんなに辛くはしないぞ」

    唯「そうなの?」

    覚「日本酒に合わせたいからな」

    若「酒…」

    唯「あ、いよいよお酒デビューすか!良かったね、たーくん。源三郎もトヨもだけど」

    覚「念願のな」

    若「それは楽しみです。なぁ、源三郎、トヨ」

    源三郎「はい」

    ト「よろしいのですか?ご相伴にあずかっても」

    覚「気兼ねしてるのかい?普段は支度する側の身だから」

    ト「酒席を共になど、おこがましくて」

    覚「永禄では主従関係があるからそうだろうけどさ、僕にとってはみんな平等で可愛い子供達だからね」

    ト「なんてお優しい…」

    源「ありがとうございます」

    覚「さてと、これで揃ったかな。…おい、唯」

    唯「はーい?」

    覚「何だこの、シュークリームがワサワサ入った袋は」

    唯「賞味期限が近いからって、まとめ売りしてたんだもん。ほら!半額のシール!」

    覚「そういう安売りは目ざといな」

    唯「ダメ?」

    覚「もう一袋取ってきな」

    唯「え、やったぁ、しゃっ!」

    帰宅後、早速料理に取りかかった。

    覚「豆腐は水切りしないとな。忠清くん、パックから出したら、その手ぬぐいで包んで、ザルにあげといて」

    若「はい。何故このようになさるのですか?」

    覚「味を染み込みやすくする為だよ」

    ト「ふむふむ~」

    源「トヨ、前に出過ぎだ」

    ト「あっ、すみません!つい」

    若「ハハハ。熱心に学んでおるのう」

    葱を刻み、いよいよ肉を細かくする。

    若「柔らかい…包丁が滑り、思う様に動かぬ」

    唯「たーくんがんばって~」

    覚「刻む作業はこれで最後だから、ゆっくりでいいよ」

    唯「あ、尊おかえりぃ」

    尊「ただいまー。早っ、もうごはんの支度始まってたんだ」

    源三郎&トヨ「おかえりなさいませ」

    覚「お帰り尊。支度だけな。仕上げは母さんの仕事が終わってからだ」

    尊「ふーん」

    覚「あ、そのくらいでいいよ、忠清くん」

    若「これでよろしいですか。おかえり、尊」

    尊「兄さんただいま。なんか、まな板の上がすごい事になってるね」

    覚「忠清くん、ずっと包丁握りっぱなしだったから疲れただろ?手順も一段落だし、少し休憩しな」

    若「ありがとうございます」

    尊「あ、兄さん例の質問ですけど、後で画像見せますね。着替えてきます」

    若「おぉ、そうか。済まぬの」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    ぷくぷくさん

    心からほっこりしてしまう4部作を書き上げて、お疲れでしょうに、続きをお願いしたようになってしまい、ごめんなさい。
    ぷくぷくさんの作品を読ませて頂くと、頭の中にパッと映像が浮かんで、今は幻の続編を見ている満足感に浸れるのです。本当にありがとうございました。

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    四人の現代Days30~20日金曜8時、丸投げですか?!

    純粋に母を想う心、になんとか応えたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニック。若君が、源トヨを従え現れた。

    若君「おはよう、ございます」

    源三郎&トヨ「おはようございます」

    芳江「おはようございます。あら」

    エリ「まぁ。おはようございます」

    美香子「お殿様の御成りって感じね」

    若君の後ろに控えていた源トヨが、コーヒーを配る。配り終えたところで、

    若「ご苦労であった。下がって良い」

    一礼し、二人は部屋を出ていった。

    芳「一段と凛々しいですね」

    エ「見惚れちゃいました」

    美「本領発揮って感じね。今朝はどうしたの?」

    若「お三方にお訊ねしたき儀がありましたゆえ、今朝はわしが運ぶと申したのですが、朝の挨拶はせねば、行きは私共がと譲らず、このようになった次第でして」

    美「そうだったの。唯がついてきてないって事は、内緒の相談かな。なぁに?」

    若「はい…」

    次の句が中々出ない。

    若「あの、クリスマスデート、とは、何を致せば良いかお伺いしたく」

    美「なるほど」

    芳「まぁ。先程とはうってかわって、なんて初々しい」

    エ「そうですか。それを私達に聞こうと?」

    若「はい。お父さんに今朝方お訊ねしました所、まずはおなごの諸先輩、に聞くが良いと」

    美「唯は、何ができればいいって言ってた?」

    若「駅前の通りが飾り付けてあるので、そこを日が落ちてから歩きたいと。他はと聞いても、その日に共に居られれば何でも良い、と申しておりまして」

    美「あらま。行きたいって騒いでたわりには、ザックリした答えね。唯らしいと言えばらしいわ」

    若「恥じらいながら申しておりましたゆえ、本意ではあると思いますが」

    美「何も考えてないとも言える」

    芳「まあまあ。可愛らしいじゃないですか」

    エ「それで、かえって困っちゃったんですね。何とか喜ばせる方法はないかと」

    若「はい…」

    芳「でも、大好きな旦那様となら、何してても楽しいのは間違いないですね。スイーツ食べたりとか」

    エ「お洋服やアクセサリーのお店で、これなんてどう?似合うよ、なんて」

    芳「エリさん、何か思い出しながらしゃべってます?」

    エ「あら、うふふ。つい」

    若「ありがとうございます。そのような話を、引き合いに出して頂けるのは助かります」

    美「昼過ぎに家を出て、確か7時には帰るって言ってたわね。あー?もしかして、どこで何するかとか、全部任されちゃってる?」

    若「おぉ…さすがお母さん。その通りです」

    美「どうせ、たーくんが決めてぇ~とか、甘えながら言ったんでしょ」

    若「ハハ…」

    エ「図星みたいですね」

    若「ショッピングモール、に参ろうかとは思うております。寒空の下よりは過ごしやすいかと」

    美「あー。いいんじゃない?」

    芳「そうですね。今の時季、建物の中も周りもクリスマス仕様ですし」

    美「広い施設だから、プラプラ歩いたら?エリさんの思い出話みたいに、店を覗いたりしてね」

    若「覗くだけ、でも良いのですか?」

    美「勿論よ」

    若「そうですか。わかりました」

    美「いい案あったら、またこっそり教えてあげるわね」

    若「痛み入ります。お話を伺え、大変助かりました。では、そろそろ引き上げます。ありがとうございました」

    お盆を手に、深々と礼をして去っていった若君。

    エ「困り顔が、こう言っては何ですが、可愛らしかったです」

    芳「懸命な姿が素敵でした」

    美「うん…」

    エ「先生、何か?」

    美「やっぱり、お金受け取ってもらおうと思って」

    エ「お金?」

    芳「前回、何とかしてお小遣いを渡そうとしたアレですか?」

    美「マッサージ代と称して一回500円だったんだけどね。今回、お父さんが捻挫して私が家事のほとんどをやってると知り、手伝いたかったのも帰って来た理由の一つって言ってくれてね」

    エ「あい変わらず優しい子ですね」

    芳「親思いな」

    美「でね、来て間もなく、仕事と家事でお疲れでしょうって気を遣ってくれて、一日に二回とか揉んでくれてたんだけど、源三郎くんやトヨちゃんも家の手伝いを率先してやる子達なんで、自分だけ受け取る訳にはいかない、お金は要りませんの一点張りで」

    芳「そうだったんですか」

    美「仕方ないとは思いつつ、その分は貯めておいたの」

    エ「あ、それでさっき彼、お店は覗くだけでも大丈夫か聞いたんですね。先立つ資金がないから」

    芳「今までの小遣いは、唯ちゃんへの花束でほとんど使い切ったってお話でしたよね」

    美「お金はないのが前提で、使わずに過ごす方法を、彼なりに模索してたんだとは思う。でも決めた。デート代にどうぞって、無理矢理にでも渡すわ」

    エ「軍資金ですね。まさしく」

    芳「これで娘をよろしくね、でもいいんじゃないですか?」

    美「そうね。何とかするわ。じゃ、今日も一日お願いします」

    エ&芳「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    創作意欲

    皆様に喜んでいただいていると思い嬉しく存じます。
    坂口殿の事はてんころりんさんの言葉をヒントに創作いたしました。
    私は沼にどっぷりはまっていて、頭の中に浮かぶ映像はあの頃のままで止まっています。
    人物もあの頃のままです。
    例えるならサザエさんんみたいな感じです。変わってほしくはないと思っています。
    それはどうかなと思われるかもしれませんね(^-^)
    ヒントを頂いての作成も楽しいです。
    以前、千絵ちゃんさんからのお題で書かせていただいたこともあります。
    勝手に解釈ですが、カマアイナさんのコメントで何か考えてみたいなぁと思いました。
    いつもの通りめちゃくちゃな設定にはなりますが。
    いつかまた此処に書かせていただきます。
    では(^-^)

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    ぷくぷくさん

    ぷくぷくさんは、誰も彼も幸せにしてしまう天才ですね。唯と同じオーラが、、、。

    先の世への集団疎開が、こんな風に永禄で花開くとは、楽しくて頬が緩みっぱなしです。あの坂口までが、ぷくぷくさんの手にかかると憎めないいいおっさんに変身〜。

    続編を、本当にありがとうございました。
    ひょっとしたら次回は天才尊が、永禄の生活をより豊かにする発明品満載でご降臨遊ばすとか、、、。 いつか唯のご両親が大殿とのゴタイメーンを果たせることも祈っていますが、殿は何も知らされていないからどうでしょうかね?

    私の頭の中ではイメージつきの続編に変換されていて、天下のNHKにも皆様の力作の存在を教えてあげたいです。Mahalo!

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    四人の現代Days29~19日15時、アポ取ります

    ぷくぷくさん、久々に楽しませていただきました。

    投稿番号が、再び私のお話だけでカウントアップされていくのは寂しいので、妄想作家の皆様、勿論ご新規の作家様も、来訪をお待ちしています。
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    生き字引になんて、そうそうなれないよ。
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    昨日に引き続き、若君と源トヨは読書大会になっていた。

    覚「いい仕事与えられたな」

    唯「唯先生なんで」

    覚「そこまでは言ってない」

    源三郎「唯様、この言葉はどのような意味合いでしょうか」

    図鑑のページを開いて、指し示す源三郎。

    唯「了解っ、おまかせあれ~」

    手元のスマホで、聞かれた言葉を検索し始める唯。

    覚「スマホ、ちゃんと役に立ってるしな」

    唯「源三郎、意味は…コレ。見える?」

    源「はい。ほぅ。そのような」

    トヨ「唯様のその板も、お父さんや尊様がお持ちの板と同じような物でございますか?」

    唯「うん、だいたいは。私のは、出かけてる時はあんまり使えないけどね」

    ト「使えない?」

    唯「Wi-Fiがないとネット検索は無理」

    ト「わ、わい?」

    源「ふぁい?」

    若君「わしが話してしんぜよう」

    覚「おぉ、意外な人物が手を上げたぞ?」

    若「この先の世にはの、電波、と申す目には見えぬ物が、あちらこちらに飛び交っておる」

    源三郎&トヨ「えっ!」

    顔を上げ、キョロキョロしだす二人。

    唯「だからー、見えないんだってば」

    若「されど唯の板は、幾らでも飛び交うその電波は使えぬ」

    源「それは何故でございますか」

    若「使う為の契りを取り止めたからじゃ。唯が永禄で生きると決めた折に、両親がそうなさった。使うには金も要る故」

    ト「見えぬ品にお金が要るんですね」

    源「今此処では、使えておる様ですが?」

    若「この屋敷内には、此処でのみ飛び交う別の電波がある。それを唯の板が受け取ると、差し障りなく使えるのじゃ」

    唯「たーくんすごーい。拍手~パチパチ」

    覚「いやー、偉いね。尊に教わったかい?」

    若「はい。わしなりに、噛み砕きは致しましたが」

    源「うむ…わかったようなわからぬような」

    ト「やっぱりわからないような」

    若「こういう物と理解せよ、と唯なら申すが」

    唯「そんなセリフ言ったっけ?」

    若「昨年こちらに参った折にの」

    覚「あー。最後の方、あんまり説明してあげてなかったもんな」

    唯「そうだったかも」

    覚「源三郎くん、トヨちゃん。どんどんわからない言葉聞いて、唯をこき使ってくれな」

    源「こき使うなど」

    ト「おこがましいです」

    覚「いいんだよ。唯、良かったな~」

    唯「なにが」

    覚「スマホのお陰でたちどころに答えられるからさ、ウォーキングディクショナリーみたいになれるぞ」

    唯「なにそれ」

    覚「わからんか。わからなければ検索だ」

    唯「は?そんな言葉あるの?ウォーキン、グ、で?」

    覚「眉間にシワ寄ってるぞ」

    唯「えーやだー、お父さんが変なコト言うから!そんで?」

    覚「ディクショナリー。英語の授業でも、かなり早い段階で習ったはずだぞ」

    唯「うそだー、知らない」

    覚「知らない?うそだー」

    若「ハハハ。仲が良い」

    源「微笑ましいな」

    ト「うん」

    夕方。尊が帰宅。

    尊「ただいまー」

    覚「おー、今日は早かったな」

    尊「急いで返事しなくちゃと思って」

    若「おかえりなさい、尊」

    源&ト「おかえりなさいませ」

    唯「おかえりぃ。返事って、なんの?」

    尊「木村先生に、お姉ちゃん達今帰省してますって、昨日メールしといたんだ」

    唯「木村先生!そんで?」

    尊「さっき返信あってさ、もし都合が合えば会いたいって。兄さんにもね」

    唯「そうなの?!会いたい~!たーくんの日記の話も聞けるし」

    若「そうじゃな。わしも是非、お目通り願いたい」

    尊「年内なら、25日までは学校に出勤するって書いてあったけど、こちらが24も25も埋まってるもんね。23日位が妥当だと思ってたけど、どう?」

    唯「うん、その日は出かける予定もないし、いいよ」

    尊「わかった。早速、23日はいかがですかってメールするよ」

    もうすぐ晩ごはん。尊が二階から下りてきた。

    尊「お姉ちゃーん」

    唯「あ、先生から返事来た?」

    尊「うん。23日の夕方4時に、黒羽城公園近くのCafeMARGARETで待ち合わせにしたよ」

    唯「カフェ…あー、駅から公園行く通りの、角にある店ね。へー。なんでそこ?」

    尊「先生と会えた日、話をしたのがそこだったから。先生も通勤経路の途中だしさ。別に悪くないでしょう?」

    唯「うん、全然OK。いろいろありがとね、尊」

    尊「どういたしまして」

    若「先生をお待たせせぬよう、当日は早目に向かうとしよう」

    唯「そうだね。楽しみ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    19日のお話は、ここまでです。

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    失礼いたしました

    お邪魔致しました。
    また浮かびましたら書かせていただきます。

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    やさしさの風景4

    ナレ:坂口の中に抱いていた淡い恋心が蘇ったが、自分がこれまでにしてきた事の罪は消えないので、心根の優しいきよに会うことは出来ないと思っていた。
    母:「寿久、どうしました?」
    坂:「いえ」
    ナレ:自分の思いを遮るように首を振った。
    母:「あなたのその顔は、しばらく前に帰られたころとは違い、穏やかに見えますね」
    坂:「そうかもしれません。なにせ、守り神を見ましたから」
    母:「守り神とな?」
    坂:「さようです。ですが、もう会うことは無いかと」
    母:「さようですか」
    ナレ:久し振りに見た息子の表情が幼い頃、この家で過ごしていた時のように見えた母は、心の中でその守り神に感謝した。すると母親が立ち上がったので、
    坂:「母上?」
    母:「湯の支度をの」
    坂:「私が」
    母:「良いのですよ。誰かのために湯を沸かすことが嬉しいのです」
    坂:「母上」
    ナレ:母親は微笑み、風呂の支度の為に部屋を出て行った。その後姿を見ていて申し訳ない思いで胸が苦しくなった。風呂から上がり、仕立てたばかりの寝巻に袖を通し母の元へ。
    坂:「これは?」
    母:「あなたが、いつ戻られてもいいようにと用意をしておいたのです。ですが、袖も少し短いようですね」
    坂:「大丈夫です」
    母:「新たに仕立てましょうね」
    ナレ:母親の優しさに涙がこぼれ、袖で拭くと、
    母:「そのように袖で拭くとは、幼き子のようですね。ふふっ」
    坂:「母上」
    ナレ:坂口も子供のころを思い出し嬉しく思った。

    ナレ:坂口を見送り戻った如古坊が奥の部屋に行くと、みんなで白い布を襖に貼り付けているところだった。
    如:「何をしておるのだ?」
    唯:「楽しい事・・・でも、如古坊は驚くかな」
    ナレ:唯とじいが悪戯をする子のように笑った。
    如:「二人して何を企んでおるのだ」
    信:「まぁまぁ。如古坊も此処に」
    ナレ:信近が如古坊を座らせ、唯がまぼ兵くんのスイッチを入れた。光がスクリーンに見立てた布に当たり、集合写真が映し出され、如古坊は驚いてのけ反った。
    如:「な・・な・・な」
    ナレ:驚きで言葉が出ない。そのあとは水族館や家でのパーティー風景や日常の写真が映し出されていた。みんなはその時の感想を言いながら和気あいあいの中、目の前に起こる現実を飲み込むことも出来ずに如古坊は放心状態。スライドが終わったようで暗くなった。終わりかと思ったら今度は映像が。そこには覚、美香子、尊の姿。
    覚:『皆さんがこの映像を見ているということは、無事に戦国に戻られたのですね』
    美:『大丈夫よ、きっと皆さんで楽しんで見ていてくれてるわよ』
    覚:『そうだな。きっと、唯は若君の隣で見てるんだろうな』
    美:『そうね、若君、鬱陶しいと思ったら、はっきり言ってやってくださいね』
    尊:『若君は優しいから、それはしないんじゃない』
    覚:『そうだな』
    美:『短い間でしたが、とても楽しかったですよ。もっと色んな事を教えてあげたかったけれどね。残念ですが。でも、皆さんが喜んでくれていたと思っています』
    尊:『お姉ちゃんが、戦国で暮らせていけるのは若君をはじめ皆さんが居てくれるからだと思っています』
    覚:『そうだな、唯を皆さんに会わせてくれたこと神様に感謝しています』
    美:『それに、私たちに会わせてくれたこともね』
    覚:『神様もそうだけど、尊、お前にも感謝しているんだよ』
    美:『そうよ、楽しい時間を過ごさせてもらえたから』
    尊:『うん、厳密には未来の僕だけどね』
    ナレ:三人は三つ指を付き、
    覚:『どうかこれからも、唯の事をよろしくお願いします』
    ナレ:三人が頭を下げた。見ていた若君たちも同じように。何故かつられて如古坊も。そして映像が消えた。
    若:「まこと父上、母上、尊は唯を大切に思うておるのだな」
    吉:「さようですね。わたくしたちは唯を守らねばなりません」
    唯:「おふくろ様・・・でもさ、反論できないからって、鬱陶しいなんて、若君は思わないよね」
    若:「・・・さよう」
    唯:「何その間は・・・まっ、良いけど。でも、この映像は嬉しかった。私もみんなに会わせてくれた神様にも尊にも、みんなにも感謝してるわよ」
    ナレ:唯はみんなの前で三つ指を付き、
    唯:「これからもよろしくお願いします」
    ナレ:みんなも同じようにお辞儀をした。
    如:「のぉ、何が何やら」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:若君は不思議体験を話し聞かせた。
    如:「はぁ・・・その様なことが・・・四百五十年後とな・・・まだ信じられぬが、唯が、この世の者ではないと申される事には合点がいくことも。忠清の傷も・・・そうか、そうか」
    ナレ:完全に納得はしていないが、見せられた写真は見たこともない姿だった。
    如:「先の世の者はあのような形(なり)でおるのか?」
    じい:「そうじゃよ。動きやすい、それに機械と申す便利な物がた~んとあるのじゃよ」
    ナレ:じいはテレビや餅つき機や車、電車の話を聞かせた。聞いている如古坊の表情が唯には頭に〔?〕マークが沢山浮かんでいるのだろうと想像して笑ってしまった。
    若:「唯?」
    唯:「何でもないです・・・フフッ」
    成:「阿湖にも見せてあげたい」
    唯:「大丈夫ですよ、何度も見ることが出来ますから」
    成:「さようか」
    ナレ:成之は嬉しそうに返事をした。いつの間にかその場から居なくなっていたじいがシャチのぬいぐるみを持ってきて如古坊に説明。その姿に、
    如:「楽しそうじゃの」
    じい:「あぁ、楽しいのでの。だがこれはやらんぞ、あはは」
    如:「わしもその場に居りたかったがの、あのような形や機械とやらを見てみたかったの」
    ナレ:如古坊の言葉に、
    じい:「如古坊、ちと」
    ナレ:じいは如古坊の腕を取り連れて行った。如古坊もみんなも、じいの行動が不思議だった。しばらくして戻って来た。じいの後ろから部屋に入ってきた如古坊を見て、唯は腹を抱え大笑い。若君たちも初めはこらえていたが笑い出した。
    如:「笑うでない!」
    ナレ:マジ怒りではなく困惑。如古坊はピンクのスウェットに金髪のカツラ姿。
    如:「信茂殿に無理矢理」
    若:「すまぬ。だが、よう似合うておるぞ、ふふっ」
    唯:「そうよ、その格好でコンビニ行っても違和感無いわよ。アハハ!」
    如:「笑うでない・・・ん、こんびに、なんじゃそれは?」
    唯:「お店よ、何でも売っている、便利な所よ・・・でも、じい、そのカツラ有ったっけ?」
    じい:「父上にの、ぱそこんとやらで買うてもろうたのだ」
    唯:「いつの間に・・・そうだったんだ・・・ちょっと良い?」
    ナレ:唯はカツラを取り、
    唯:「被せて良い?」
    ナレ:そう聞いていながら返事を待たず、若君に被せた。
    唯:「めっちゃ似合ってる。これ被った若君とのデートも良かったかも」
    若:「唯」
    ナレ:若君がカツラを取ると、
    唯:「迷惑だった?」
    若:「そうではない」
    ナレ:若君はそのカツラを成之に被せた。
    若:「兄上の方が似合うております」
    成:「忠清」
    唯:「ほんと、兄上さんも似合うね。こんな時カメラが有ったら、写して阿湖姫にも見せられたのに。残念」
    ナレ:その様子にじいがチョイ焼きもち。自分で被り、
    じい:「わしが一番、似合うておるぞ」
    唯:「はいはい」
    ナレ:そのみんなの和やかな姿を見て若君は、
    若(心の声):(父上、母上、尊、私はどの様な事になろうとも唯を守り通します)
    唯:「若君?」
    若:「ん」
    ナレ:若君はじいの楽しそうに話す姿をニコニコしながら、隣に座る唯の肩に優しく腕を回した。
    夕餉の後、若君が如古坊の側に。
    若:「唯の事もそうだが」
    如:「案ずるな。申したところで、信じるとは思えんがの」
    若:「そうじゃな。だが如古坊は」
    如:「まぁ、そうだな。だが、わしも、平成とやらに行ってみたかったのぉ」
    若:「如古坊」
    如:「だが、あの道具は大したものじゃのぉ。尊と申すその者が戦国の世に来ておったならばどうしたのだろうかと思うたがの」
    若:「尊は申しておった。たいむましんをこしらえたのも、己の思いを果たすためにと。だが、己が戦国時代に行くことは出来ないだろうとな」
    如:「唯が来た」
    若:「わしは唯で良かったと思うておる」
    如:「出会うてからか、ふふっ」
    若:「それもあるが、唯ほどのがっつは無いと思うと尊も申しておった。だが、わしは、尊も戦国で生きていけるほど強い者であると共に暮らしそう思うた」
    如:「がっつ?」
    若:「頑張るということだそうだ」
    如:「そうじゃの、唯にはがっつがあるからの」
    唯:「なになに二人してぇ」
    若:「なにも」
    唯:「ふ~ん。男同士の話ね。で、じいが花火やろうって」
    若:「花火?」
    唯:「二人で平成に行ったとき、ちょっとやったでしょ。で、じいの荷物がやたら大きかったでしょ。その中に残ってた花火と、またやろうと買っておいた花火を、掃除のときに見つけて、それを持って来たんだって」
    若:「冬の花火もきれいだと申しておったな。そうであったか」
    ナレ:唯が説明がてら最初に蝋燭の火に点けて見せた。あまりにも鮮やかな火花に皆が驚いた。それぞれに引火し楽しんでいた。終わりそうな頃に唯が桶に水を入れ持ってきた。
    源:「唯様?」
    唯:「花火の後片付けは、水の中に終わった花火を入れるのがルールよ。そのままにして火がちょっとでも残ってたら、それで火事になる場合もあるんだよ」
    吉:「その様な事になってはいけませんね」
    ナレ:みんなで後片付け。じいは名残惜しそうに見ていた。
    唯:「じい、もしかして、もっとあったらって思ってるの」
    じい:「そうじゃ、これほど美しいものだとは、この写真とやらでは計り知れないのだなと」
    ナレ:パッケージの写真を唯に見せた。
    唯:「そっか」
    ナレ:こればっかりはどうにもならないと、慰めるようにじいの肩に腕を回しみんなの後から部屋に入って行った。

    ナレ:翌朝、坂口は朝餉を母と仲良く食べた後に、
    坂:「では、私は、庭の手入れを致します」
    母:「無理はせぬとも」
    坂:「大事ございません。まだまだ、身体は鈍っておりません」
    ナレ:坂口は手入れを始め、それを縁側で母親が嬉しそうに見ていた。
    母:「父上もその様にしていましたね。あなたはそれを側で見ておりました」
    坂:「そうでした」
    ナレ:娘が野菜を入れた籠を抱え、庭に回って来た。
    き:「お邪魔致します」
    母:「まぁまぁ、おきよさん」
    坂:「えっ?」
    ナレ:坂口は驚いて低い台から落ちてしまった。
    き:「大事ございませんか?」
    坂:「だ・・・大事ございません。お主は、あのきよか?」
    き:「はい」
    ナレ:立ち上がった坂口の着衣についた泥を自分の手拭いで払っていた。
    坂:「かたじけない」
    き:「いいえ。お怪我は?」
    坂:「あぁ」

    ナレ:その光景を母親はニコニコ顔で見ていた。

    この先は皆様のご想像通りでありましょう

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    やさしさの風景3

    ナレ:翌朝、坂口と如古坊は黒羽を後にした。
    坂:「わしは何をしていおったのだろうか」
    如:「ん?」
    坂:「羽木を恨み高山を恨み、己の思いを果たすことだけが務めと思っておった。成之の誘いにも乗った。それも己の思惑のためにの。だが、今となっては、己は何をしたかったのだろうかと」
    如:「坂口殿の申したいことを成之も申しておった。わしを引き込んだことを詫びてくれた」
    坂:「そうであったか」
    如:「わしは、わしの石で成之の手助けをしておっただけだ、詫びることは無いとな」
    坂:「そうか・・・ふっ」
    如:「坂口殿?」
    坂:「悪巧みばかりで主とこうして穏やかに話すことは無かったと思うての」
    如:「そうだったの。ははは。坂口殿は気づいておろうか?」
    坂:「ん?」
    如:「唯之助は、唯と申して、おなごなのだ」
    坂:「えっ?」
    如:「気づいておらなんだか」
    坂:「あのように威勢の良い者がおなごとな」
    如:「信じられんがの、ははは」
    ナレ:坂口も笑った。その頃、疾風の世話をしながら唯が派手なクシャミ。
    若:「風邪か?」
    唯:「いいえ、どうせ、あの二人が悪口でも言ってるんでしょうよ」
    若:「さようか?」
    ナレ:悪口かどうかは分からないが若君も二人が唯の事を話しているのだろうと思っていた。すると疾風もひと鳴き。まるで笑っているように。
    唯:「もしかして、あんたも、そう思ってんのねぇ。もぉ」
    ナレ:若君は声をあげて笑った。唯は頬を膨らませ一人と一頭を睨んだ。しばらく行くと坂口が足を止めた。
    坂:「如古坊、此処でよい」
    如:「だが」
    坂:「お主も達者での」
    如:「そうか・・・お主も達者での」
    ナレ:坂口は如古坊に深々とい頭を下げ、そして振り返り歩いて行った。如古坊はしばらく後姿を見送り、
    如:「戻るとするか・・・忠清らに話を聞かねばの」
    ナレ:如古坊も坂口に背を向け黒羽へ向かい歩いて行った。

    ナレ:坂口はこの地に足を踏み入れるのは何年振りかも覚えていないほど経っていることに後悔の気持ちが。坂口家の門を抜けると庭は草で鬱蒼としていた。養父坂口又左衛門が生きていたころは庭の手入れをし、いつも整えられた庭だった。
    坂:「わしが、父上の代わりにせねばの」
    ナレ:木戸を抜け中へ入ると静まり返っていた。
    坂:「まさか!・・・母上!」
    ナレ:部屋を見て回ったが姿が見えない。
    坂:「母上」
    ナレ:肩を落とし、仏間に行くと仏壇の前で母親が横になっていた。
    坂:「母上!」
    ナレ:坂口は鼓動が早くなるのを感じた。母親のもとに駆け寄り、落胆でペタリと座った。すると横たわる母親の体がピクッと動いた。
    坂:「母上」
    ナレ:その声に母親は目を覚まし起き上がった。
    母:「寿久?」
    坂:「母上」
    ナレ:坂口はほっとして息を吐いた。母親は坂口の前で三つ指を付き、
    母:「おかえりなさいませ」
    坂:「はい」
    母:「腹は空いていませんか?」
    ナレ:思いがけない言葉に、坂口は嬉しさがこみ上げ涙を流した。
    母:「どうしたのですか? やはり腹が空いているのですね、今支度を」
    坂:「はい、空いております」
    ナレ:坂口は否定るのではなくそう言い、涙をぬぐっていた。

    ナレ:母は膳の支度をし坂口の前に置いた。
    母:「急のことゆえ、このような物で申し訳ない事です」
    坂:「いえ」
    ナレ:坂口は何年振りかの母の手料理を一口一口大事に口に運んだ。母は嬉しそうにその姿を見ていた。
    母:「寿久は父上に似てきましたね」
    坂:「ですが」
    母:「その食し方はあの方に似ております」
    坂:「さようですか・・・母上」
    母:「おかわりですね」
    坂:「いいえ、私が前触れもなく何故戻って来たのか。これまで何をしてきたのかをもお聞きにならないのですか?」
    母:「えぇ・・・こうして無事におる事、それだけで良いのです。寿久が何をしていたかなど、わたくしには無用の長物にすぎません」
    坂:「母上」
    母:「あなたが詫びなければならなぬ事があると申すなら、その思いを生涯忘れずにおる事では」
    坂:「母上・・・はい」
    ナレ:戻って良かったと思った。そして、床に伏せっていた姿を覚えていた坂口は、
    坂:「母上、お加減は?」
    母:「あなたの顔を見ましたら、病の事な忘れておりました」
    坂:「母上」
    母:「いつまで此処に?」
    坂:「もう、ここにこのまま・・・私は父上の大切にしていた庭を整える役目がございます」
    母:「さようですか」
    ナレ:母は微笑んだ。坂口は急に戻ってきたにもかかわらず、膳の品数の多さを不思議に思い尋ねた。
    母:「一昨年の春から、時々、野菜や魚を届けてくれる方がおるのです」
    坂:「さようですか。その方とは?」
    母:「覚えておられますか?川谷村のおきよさん」
    坂:「あっ、はい。覚えております」
    母:「村で我が家の仔細を聞いたそうです。そして案じて此処へ。それから何かとお世話をして下さるのですよ」
    坂:「さようですか」
    ナレ:きよは数年前に三下り半を出され戻っていた。そして、昔よく遊んだ男の子の事を思い出し訪ねてきたと。独りで暮らす母を心配して訪ねてくれるようになったと。
    坂:「さようでしたか」

    4へつづく

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    やさしさの風景2

    ナレ:坂口の周りを囲み、
    じい:「如古坊、何が遭ったのじゃ?」
    如:「阿湖姫が唯に渡したい品が有ると申されて、近道にと山へ入り、坂口殿を見つけての。そこへ唯が転げ落ちてきた」
    唯:「転げって、失礼な」
    若:「唯」
    唯:「は~い・・・で、如古坊」
    如:「そうであった」
    ナレ:如古坊が箱笈の中から手紙と巾着袋を出して唯に渡した。唯は先に手紙を手にしたが、
    唯:「若君お願い」
    ナレ:要は読めないのである。
    若:「ん・・・では」
    ナレ:若君は側に如古坊が居るがそのまま読んだ。
    若:「唯が足軽の支度をしている折に、尊殿に唯に渡してくれるようにと渡されたのです。尊殿に何故直に渡せはせぬのかと尋ねましたら、お姉ちゃんじゃ、どっかに落としそうだと申されて」
    唯:「別にそれは書かなくてもいいじゃん・・・阿湖姫ったらぁ、まぁ、そうだろうけど」
    若:「唯」
    唯:「ごめん」
    若:「尊殿は戦国の世でも使えるようにと。尊殿はまこと姉思いの良き殿方です」
    唯:「はいはい・・・で、なに?」
    ナレ:巾着袋を開け中身を出すと、便箋と形はまぼ兵くんと同じだが一回り小さい物とケーブルとUSBが入っていた。便箋を開いた。
    唯:「まぼ兵くんジュニアみたいで可愛い。で、何だろ・・・若君様、お姉ちゃん・・・若君が先」
    小:「唯、進まぬではないか」
    唯:「うん。僕の力でもタイムマシーンがこの先に使えるようになるかは分からない。でも、戦はこれからも続く。でも、まぼ兵くんもでんでん丸も電池切れになったらお姉ちゃんたちの力になれない。だから充電器をと考えた・・・へぇ、これが充電器ね。でも、コンセントは無いから、後ろのハンドルを回して手動式の充電器を作った。ケーブルを接続して充電できるようにした。まぼ兵くんのお尻の所と、でんでん丸の柄(つか)・・・ふり仮名ふってある。踏ん、それくらい読めるわよ、失礼ね。で、柄の所に差し込み口を作ってある。小平太さん」
    小:「あいわかった」
    ナレ:小平太はまぼ兵くんとでんでん丸を取りに行った。戻ってみんなの前に置いた。
    唯:「気づかなかったなぁ。尊はやっぱり天才だね。で、このまぼ兵くんに、このUSBを差し込むと・・・へぇ」
    じい:「唯、どうしたのじゃ?」
    唯:「これにね、ほら、みんなで撮った写真がスライドで見られるんだって」
    ナレ:USBを持った若君が、
    若:「このように小さき物の中に写真がとな」
    唯:「そうなんです。と、白い布を広げたところに映るように・・・テレビみたいに」
    ナレ:その言葉に皆は感心していた。ただ一人、話の内容が全く分からない如古坊を除いて。
    如:「のぉ、先ほどから、わしの分からぬ言葉ばかりで、頭が痛うなってきた」
    若:「すまぬ。そうであったな・・・如古坊には信じがたいことを私らは。どう申してよいかわからぬが、ゆるりと話すことにいたす。まずは、坂口殿の事じゃ」
    吉:「さようですね」
    ナレ:吉乃は唯が出した品物をひとまず巾着袋に仕舞い、でんでん丸の柄に結んだ。
    じい:「このようにすれば失くすことはあるまい」
    ナレ:じいは唯の顔を見てほくそ笑んだ。
    唯:「言いたいことは分かってるわよ。もぉ」
    ナレ:若君は頬を膨らます唯の肩に優しく手を掛けた。すると坂口がうめき声をあげ目を開け飛び起きた。
    坂:「あっ!痛っ!」
    若:「起き上がらなくとも」
    坂:「あっ」
    唯:「あっじゃなくて、かたじけないとか、助けてあげたんだから礼を言うのが道理じゃないのぉ」
    若:「唯、坂口殿は」
    唯:「もぉ、ほんと、若君は優しいんだから、自分の命を狙った奴なんだよ、こいつは」
    若:「であろうが」
    唯:「それに,熊も狙ってさ・・・あっ、分かった、あの時も、私を撃つように言ったのも、おっさんでしょ」
    ナレ:その言葉に坂口は黙った。
    唯:「やっぱり・・・痛かったんだからねぇ」
    小:「かすり傷程度であったぞ」
    唯:「そうだけど・・・そう言う事じゃなくて、こんな奴、山に置いてきてよかったんじゃないの」
    若:「唯!」
    ナレ:若君は怖い顔を見せた。
    唯:「わ~か~ぎ~みさまぁ」
    若:「そのようなことを申してはならぬ。唯がそのように申しては父上、母上が悲しむのだ」
    唯:「若君・・・ふ~」
    若:「わしや宗熊殿を案じてくれるその心はまことに嬉しく思うぞ。だが、その様に申しては」
    唯:「ごめん。でも、ほんと、許せないってことは分かってよね」
    若:「わかっておる。それにの、わしも宗熊殿も生きておるのだからの」
    唯:「そうだけど」
    ナレ:そう言いながら唯は坂口を睨みつけた。坂口は黙って頭を下げた。するとグゥと音が聞こえてきた。一斉に坂口を見た。
    吉:「では、支度を致します…唯、手伝いを」
    ナレ:嫌々席を立つ唯。若君が話を聞くと、唯が言っていた通りだった。若君は宗熊が怪我をしなかった理由を話した。それを聞いて坂口も如古坊も驚いた。
    坂:「さようか。高山宗熊殿は天に味方されておったのだな・・・それに引き換えわしは」
    ナレ:坂口がため息交じりに言った。吉乃が手際よく作り坂口の前に置いた。何日食べずにいたのかと思うくらいの勢いでペロリと平らげた。
    じい:「のぉ、ちと尋ねるが」
    坂:「何を?」
    じい:「主は何故、羽木を陥れようとしたのだ?」
    唯:「そうよ、ずっと不思議だったんだよね・・・先生は高山との戦いは話してたけど、熊の説明で理由が分かって、羽木のお殿様と高山の親熊の仲を裂いたその根源がおっさんだったんだってさ」
    坂:「お前」
    唯:「おまえ~」
    坂:「いや、そなたの申しておる事は分からぬが、わしの事をそこまで知っておったとは」
    唯:「まっ、いいじゃん。で、理由を話してよ」
    ナレ:坂口は目を閉じた。皆は黙って待っていた。そして、
    坂:「わしの生まれ在所は暮らし振りに難儀するような谷間であった。田畑もままならぬ所での、だが木を伐りくらしておった。幼き頃にいずれ夫婦にと誓っておった娘が居った」
    唯:「おませさん」
    吉:「唯」
    坂:「だが、わしが五つになった折に、村の長の口利きで子の居らぬ坂口家に引き取られたのだ」
    唯:「ふ~ん、そうなんだ」
    信:「唯」
    唯:「ごめん、続けて」
    坂:「その娘も奉公に出たと聞いた。羽木家への」
    若:「当家?」
    坂:「そうだ」
    じい:「もしや、川谷村の、おきよと申したおなご?」
    坂:「さよう」
    若:「じい?」
    ナレ:じいの説明では、若君の母が亡くなり小平太が側付になる前に、一時ばかり娘に若君の世話を頼んだ。じいがお気に入りの場所に連れて行き、遊んでいるときに三歳の若君が足を滑らせ水の中へ。娘が助けて難を逃れたが、娘が風邪を引いてしまいしばらく寝込んでいたが、娘は迷惑が掛かると村に戻った。
    若:「遠い記憶にあるような。だが、思い出せんの」
    唯:「しょうがないですよ。小さかったんだから・・・で、その娘さんは?」
    坂:「ん」
    唯:「まさか、その娘さんが・・・それが原因で。だから、おっさん、羽木を恨んで」
    ナレ:唯の言葉でみんなは娘が亡くなったのではと思った。
    坂:「お・・・お主、思い違いをしておるようだが」
    唯:「思い違い?」
    坂:「風の便りで聞いたのだが、きよは村で所帯を持ち、暮らしておる」
    唯:「んって紛らわしいよ」
    坂:「わしが申すまえにお主が」
    唯:「そうだけど・・・じゃぁ、恨む理由はないんじゃないの」
    坂:「坂口の父上も母上もわしを優しく迎え入れてくれての。わしも穏やかに暮らしておったが、近隣で戦が起こり、その戦で父上が亡くなったのだが、羽木勢に加勢していた父上が裏切られ命を落としたと聞いたのだ」
    小:「羽木に」
    坂:「あぁ・・・母上は悲しみのあまり病となり床に伏せってしまった。今も尚、無理は出来ずにおるのだ。そして、共に戦っておった羽木と高山に裏切られたと聞いたのだ」
    信:「誰がそのように申したのだ」
    坂:「誰でもよいではないか。話を聞こうにも行方が分からぬ。だが、父上が亡くなったのは紛れもない事実なのだ・・・あのお優しい父上を蔑ろにしたことが許せなくての」
    唯:「復讐って事ね・・・私はその場にいなかったから分からないけど、もしかして、おっさんはその告げ口した人に騙されてたんじゃないの」
    坂:「わしが?」
    唯:「そうよ。話を鵜呑みにして・・・私は、羽木も高山もそこまで悪い人たちじゃないと思うわよ。まぁ確かに戦はやっちゃいけないことだけど。授業で戦争の事を習っても、何そんな無駄なことしてんだろうっていつも思ってた。こっちに来て戦に出たことはあるけど、それはただ若君様をお守りするって事だけだった。その場にいたけど今でも、正直よくわかんない。でも、やっぱ戦争は駄目だよなぁって思う」
    坂:「わしはおま・・・そなたの申しておる事はやはり分からん」
    唯:「いいよ、分からなくても」
    若:「先の世も先の世で様々なことがあるのだとわしも存じておる」
    唯:「若君様」
    若:「だがの、わしは、ならばこの世でも戦の無い穏やかな暮らしが出来るのであればと」
    じい:「そうじゃの、あんなに便利で、様々な楽しいことがこの世でも出来るのであればとわしも思うぞ」
    ナレ:じいの言葉に皆は納得していたが、坂口と如古坊は顔を見合わせ首を傾げた。
    じい:「坂口殿はこれよりはどうなさる?」
    坂:「わしの居る場は無いからの」
    じい:「では、里にお戻られてはどうかの?」
    坂:「里?」
    じい:「そうじゃ。母御が居るであろう」
    坂:「あぁ」
    若:「私はそなたの母御に会うたことは無いが心根の優しいお方ではないかと思うのだが」
    唯:「若君、会ったこともない人だよ」
    若:「そうじゃの。そなたの母上が申しておった、子供がやんちゃをしてもどんな時も母は味方でおるとな」
    唯:「ふ~ん。でも、このおっさんとお母さんは」
    若:「であろうが、共に過ごした日々が母と子にしていると思うのだが」
    ナレ:じいが坂口の手を取り、
    じい:「そうじゃよ、顔を見せておあげなさい。さぷらいずで驚かせての。母御はお主が戻ったことを喜ぶであろうからの」
    坂:「さふ?」
    じい:「気にする出ない。ははは」
    唯:「じいったら。まっ、じいの言う通りよ。きっとお母さんも若君が言ったように思ってるわよ。若君も言ってたけど、出来の悪い子ほど可愛いっていうしね」
    ナレ:一斉に唯を見た。見られた唯は、
    唯:「私の事じゃないわよ。たとえ話よ・・・失礼な。で、おっさん、お母さんに会いに行きなよ」
    坂:「そ・・・そうじゃの」
    唯:「そうそう」
    坂:「なぜであろうか、お主らと早う会うておったならばと思うたが」
    唯:「私は無理よ、生まれてないし」
    ナレ:みんなはそうだろうなと思っていた。坂口と如古坊が考えていることとは違うが。
    成:「その気持ちよう分かります。ことにこの唯と早う出会うておったならばと思うことが」
    唯:「そんな褒めないでよ、照れるわよ」
    小:「褒めておるのはなかろうて、ははは」
    唯:「小平太さんの意地悪ぅ、若君様何か言ってぇ」
    ナレ:若君はニコニコしているだけ。
    じい:「むじな・・・唯はのぉ、わしらの守り神じゃよ」
    坂:「守り神?」
    じい:「そうじゃ」
    唯:「じい?」
    じい:「主もこの守り神に会うたことで良きことが起こるであろうの」
    唯:「買い被りよ」
    坂:「いいや、わしもその様に思うぞ」
    唯:「おっさん」
    坂:「お主らと話しておったら、わしも、母上に会いとうなった」
    ナレ:坂口は直ぐにでも発つと言ったが、もうすぐ日も暮れるから明朝にト吉乃の言葉で、
    坂:「かたじけない」
    若:「如古坊、頼みがある」
    如:「は?」
    若:「途中まで坂口殿を送ってはくれまいか?」
    如:「わかった」
    ナレ:如古坊は若君の頼みを聞き入れた。

    3につづく

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    やさしさの風景1

    ナレ:平成から戻った唯たち。永禄に戻るとすぐに相賀たちが若君を連れ戻しに来たが、うまい具合に退散させた。退散した相賀は宗鶴に援軍を頼みに行き、羽木を襲う前に宗熊に阻止された。その頃、援軍を呼びに成之たちは急ぎ戻り、忠高に報告し、速やかに支度をし黒羽へ向かった。宗熊はこのままではいけないと宗鶴と忠高を会わせることを考え文を託した。唯の説得で緑合に戻った阿湖姫は成之たちを見送った後、疲れが出たのか寝込んでしまった。緑合にそのまま残った如古坊が三之助と孫四郎の剣の稽古をしているところへ阿湖姫がやって来た。如古坊にも元気がないことが見て取れた。

    如:「阿湖殿、お加減はもうよろしいのですか?」
    阿:「はい、それは、もう・・・はぁ」
    如:「阿湖殿?」
    阿:「わたくしとしたことが、どう致しましょうか?」
    如:「わしに尋ねられてものぉ。どうされたのです?」
    阿:「唯の預かり品を忘れており、成之様に託すことも忘れてしまいました」
    如:「唯の?」
    阿:「さようです・・・どう致しましょうか?」
    如:「ん~」
    阿:「・・・はぁ」
    ナレ:その落ち込み様に同情した如古坊は、
    如:「承知しました。わし・・・私が唯に届けます」
    阿:「まことか?」
    如:「はい」
    阿:「良いのですか、そのような頼みごとを」
    如:「構いません・・・で、その品とは?」
    阿:「ただいまここへ」
    如:「では支度をし、待っております。三之助、孫四郎」
    ナレ:二人の前に立ち、
    如:「わしは阿湖殿の使いで黒羽に参る。阿湖殿や母上様の事は頼んだぞ」
    ナレ:二人は揃って大きな声で返事をした。
    如:「頼もしいのぉ」
    ナレ:二人の頭を優しく撫でた。阿湖姫がスパンコールの付いた巾着袋を渡した。
    如:「これは何ですか?見たこともない飾りですな」
    阿:「すぱんこおると申す品です」
    如:「すぱ?・・・何処ぞでこのような?」
    阿:「まぁ、良いではないか」
    如:「はぁ?」
    阿:「この文とこの袋を渡してください」
    如:「承知しました」
    阿:「頼みます」
    ナレ:如古坊は預かった巾着袋と手紙を箱笈に入れて黒羽へ。

    ナレ:若君は、宗熊の文に書いたある父親同士の待ち合わせ場所を確認しに行こうと支度をしていた。
    唯:「若君、出掛けるんですか?」
    若:「ん。その場を見ておこうと思うての」
    ナレ:唯は空に黒い雲が立ち込めているのを見て、
    唯:「でも、天気悪くなりそうですよ。雨でも降るんじゃないですか」
    ナレ:若君も見上げ、
    若:「その様じゃの・・・明日にするか」
    唯:「そうですよ。明日お供します」
    若:「唯?」
    唯:「いつ、あののっぺり顔のあいつが攻めてくるか分からないから、身体が鈍らないように」
    若:「そうか」
    ナレ:奥から、小平太が呼んだので二人は中へ。

    ナレ:翌日の昼過ぎに、雨の心配はないようだからと、若君は疾風にまたがり、唯はいつものように後ろをついて走り出した。しばらく走り、唯は足を滑らせ脇から滑り落ちてしまった。唯の叫び声に振り向いたが姿が見えない。
    若:「唯!」
    ナレ:戻って辺りを見回した。
    若:「何処ぞに?」
    ナレ:草が生い茂っているので姿が見えない。唯は滑り落ち、
    唯:「いた~・・・ん?」
    ナレ:目の前に見覚えある男。
    唯:「如古坊!・・・なんで」
    如:「お前こそ」
    唯:「えっ?・・・まさか!」
    ナレ:横たわる男を見て驚きの声を上げた。
    如:「わしではない・・・いや、生きておる!」
    唯:「あっそっ」
    如:「信じておらぬのか」
    唯:「信じてますってぇ」
    ナレ:男がうめき声をあげ向けた顔を見て唯はまた驚いた。
    唯:「あっ、こいつぅ」
    如:「そうじゃ」
    唯:「なんで?」
    如:「わしにも分らぬ」
    ナレ:上にいる若君にも話し声が聞こえたので、草をかき分け下りてきた。
    若:「唯、大事ないか・・・如古坊?」
    ナレ:如古坊は頷いた。
    若:「唯、怪我は?」
    唯:「大丈夫です」
    若:「そうか。して、この者はどうしたのじゃ?」
    唯:「この男、坂口のおっさんだよ」
    若:「坂口・・・あぁ」
    唯:「ってか、若君このおっさんの顔知らなかったの?」
    若:「ん」
    唯:「どうして?・・・吉田上に居ましたよ」
    若:「その折は、別の者に会うたのでな」
    唯:「そうなんだ。顔を見られないようにしてたのかなぁ」
    若:「わしには分らぬ…して、何故このような所に」
    唯:「ねぇ、若君、ほらっ、熊が襲われたでしょ」
    若:「ん」
    唯:「で、その場から逃げてて、こんな目に遭ったんじゃないの?」
    若:「であろうの」
    ナレ:二人の会話が分からない如古坊は、
    如:「何が遭ったというのだ?」
    若:「後程の・・・しかし何故、如古坊が此処におるのだ?」
    唯:「そうよ」
    如:「わしは阿湖姫に、お主、唯に渡す品が有ったと申されての、届に来たのだ」
    唯:「そうだったんだありがと。で、何を?」
    若:「唯、戻ってからでよいではないか。この者を連れて戻るぞ」
    唯:「え~!・・・若君の命を狙った奴をなんでぇ」
    若:「唯、そのようなことをも申してはならぬぞ」
    唯:「え~・・・ん」
    ナレ:その言葉に如古坊がうな垂れたのが見えた唯は、
    唯:「あっ、いや、そう言う事じゃないから・・・気にしないで」
    如:「まぁ、しかたない事であるからな」
    若:「そうじゃ、気にするでないぞ。如古坊、手を貸してくれ」
    如:「わかった。唯、これを頼む」
    唯:「はぁい」
    ナレ:唯は腑に落ちない顔をしながら荷物を預かり、若君は脇を抱え、如古坊と上まで上がり疾風に乗せ落ちないように支えながら黒羽城へ戻った。宇やはり唯は納得できないでいた。

    ナレ:城へ戻ると唯がひとを呼びに。じいはぐったりしている坂口を見て驚いた。
    じい:「えっ、坂口殿、如何した?」
    若:「話は後じゃ」
    吉:「では、床の支度を。唯、手伝っておくれ」
    唯:「はぁい」
    ナレ:渋々、吉乃と部屋を戻り布団の用意を。
    吉:「唯?」
    唯:「まぁ、罰が当たったんでしょうよ」
    吉:「罰?」
    唯:「熊が襲われたって、で、あいつは逃げてる途中で転んで気を失ったって事じゃないかな」
    吉:「さようか」
    唯:「それをほっときゃいいってのに、若君はひとがいいんだから」
    吉:「唯、唯はそのように優しくできる若君様にらぶなのであろう」
    唯:「えっ、ラブって」
    吉:「母上様に教えてもらいました」
    唯:「お母さんは、おふくろ様に何教えてんだか。はぁ」
    ナレ:そこへ小平太が背負い部屋に来て寝かせ、足の傷に薬草を塗り手当をした。それを不機嫌な顔で唯が見ていた。

    2へつづく

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    四人の現代Days28~19日木曜7時、てんこ盛りです

    年末年始くらい、ねぇ。甘いかな?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん。

    覚「ここで、これからの予定を発表しておく」

    美香子「今既に決まってるのをね」

    唯「予定?」

    尊「どこか行ったりするの?」

    覚「明日も含めて、金曜は忠清くんの料理の日にしたい。忠清くん、それでいい?」

    若君「勿論です。またご指南をお願いいたします」

    覚「明日は、日曜の分の買い出しもするから」

    唯「わかったー」

    美「明後日21日土曜は、午後私とトヨちゃんと唯で美容院ね」

    トヨ「はい。よろしくお願いいたします」

    覚「で、22日日曜の昼はバーベキュー」

    唯「楽しみぃ」

    覚「唯、クリスマスデートだが、24日なんだろ?晩ごはんには間に合うように帰ってくるんだよな?」

    唯「たーくん、帰りはそのくらいだよね?」

    若「はい。戌の初刻、7時には戻るように致します」

    尊「思ったより早いね。いいの?」

    唯「5時でももう暗いから、イルミネーションはキレイに見えるからいいの」

    覚「よし。その日の夜は、クリスマスパーティーやるからな」

    唯&尊「やったー!」

    若「それは楽しみじゃ」

    唯「え、でも、25日だったら水曜でお母さん休みなのに、イブでいいの?」

    美「25日はね~、夜みんなでテーマパークに、本格的なイルミネーション観に行こうと思ってるのよ」

    唯「うわぁ、マジで?!ゴージャスぅ~」

    尊「すげぇ。二日間、がっつりクリスマスだ」

    若「昨年参った地と同じですか?」

    美「違うのよ。だから楽しみにしててね」

    若「それはまた。源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    若「話がさっぱり見えぬであろうが」

    源三郎「いえ。唯様が楽しみにされておる所以は、朧気ながらわかりました」

    ト「クリスマス、が待ち遠しくなりました」

    覚「で、28日土曜の昼は、芳江さんエリさんを囲んで忘年会な」

    尊「あ、僕も言っとく。冬休みは、24日から6日までだよ」

    ト「お休み。学校、がですか?」

    尊「そうなんですよ」

    源「共に過ごせると。それは大変喜ばしい」

    ト「嬉しいです。また楽しみが増えました」

    尊「わー、感激。その時期はお二人と過ごせるよう、勉強も休み休みにしようかな?」

    美「まぁ、ほどほどにね」

    覚「後悔しない程度にな」

    尊「あ、いいんだ。やったっ」

    覚「まだまだ続くぞ。29日日曜にまず家の大掃除、クリニックは31日から5日まで休診だから、大晦日に外回りを大掃除だ」

    ト「掃除ですね。腕が鳴ります」

    美「それで、大晦日の夜は」

    唯「初詣に行く?」

    美「その前に」

    尊「前?」

    美「カウントダウンイベントに行くわよ。花火上がるアレ。初めてだから、楽しみだわ~」

    若「花火ですか。あの夜空を彩る美麗さを、再び観られるとは」

    唯&尊「…」

    若「二人とも、いかがした?」

    尊「あまりにも画期的な年越しで」

    唯「びっくりした。え、あのテレビで宣伝してる、遊園地でやるヤツだよね。入るのにチケット要るんじゃないの?」

    覚「7枚ゲット済みだ」

    唯「すごーい!やるぅ!」

    美「でね」

    唯「あとはなに?」

    美「5日日曜は、恒例の場所に」

    尊「恒例…わかった、写真館じゃない?」

    美「当たり~」

    尊「よく予約取れたね?だって成人式間近で日曜なのに」

    美「そこは、お得意様だから」

    唯「お得意様。確かに、冬、夏、冬、こんなにしょっちゅう行く家族は他にないよね」

    美「源三郎くん、トヨちゃん、一緒に家族写真、撮りましょうね」

    源「家族…」

    ト「まぁ…」

    尊「予定、今のところそれだけ?」

    覚「そうだな」

    尊「僕そろそろ支度しないと。ごちそうさま。歯磨きしてくる」

    美「ホントはね~、温泉旅行とか行きたかったけど、尊が大事な時期だから」

    唯「いいよ、また今度行けばさー。尊、よろしくっ」

    尊「今度って簡単に言うなよ。でもさ、今温泉に入りたいなら、近場のあそこ行けばいいじゃない」

    美「どこよ」

    尊「スーパー銭湯。前みんなで行った、岩盤浴ができる。あそこ、掘ってみたら温泉出たって所だよ」

    唯「えー、そうなの?!」

    美「そうだったっけ?ってもう居ない」

    覚「じゃあまた、皆で行くか」

    ト「スーパーですか?」

    若「買い物をするスーパーとは違うて、広い風呂があり、石に横たわると体の芯から熱うなる」

    源「風呂があり、石が熱いのですか?」

    ト「まさか、湯でなく血の池とか」

    唯「だから地獄じゃないってば」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days27~18日17時、時速何キロ?

    どう生きてるかなんて、長さじゃないでしょ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続きリビング。

    美香子「ふう。あ、じゃあ熱心に読書中悪いけど、そろそろ片付けて、出かける準備してくれる?」

    唯「出かける?」

    若君「わかりました」

    源三郎&トヨ「はい」

    覚「この後車2台で移動するから。途中で、学校帰りの尊を拾う」

    唯「ってコトは、晩ごはんはどっか食べに行くの?」

    覚「回転寿司に行くぞ」

    唯「おーっ、やったぁ」

    若「良いですね」

    源&ト「回転、寿司…」

    唯「たーくんの時とおんなじ反応してる」

    若「知らねばそうもなろう」

    源三郎「あの、回転寿司とはどのような」

    若「酢入りの飯に魚の切り身が乗った皿が、早う食せと自らぐるりと練り歩く」

    源「練り歩く…」

    若「これぞと注文した皿は、早馬で駆けて参る」

    唯「わかりにくいと思うけど、説明は合ってるんだよ」

    トヨ「早馬…そうですか」

    覚「刺身もまだ食事に出してなかったし、想像つかないよな」

    美「大丈夫よ。行けばわかるからね」

    源&ト「はい」

    全員でお出かけ。途中、尊を拾った。

    覚「お帰り」

    唯「おかえりー」

    若「おかえりなさい」

    尊「お迎えありがとう」

    唯「ねっねっ、クラスメートって、女子?それとも、女子?」

    尊「なんで女子を二回言う。女子も男子も居たよ」

    唯「へー、何しゃべってたの」

    尊「大学決まったら何がしたいかとか。まずはみんな遊びたいって言ってたな」

    唯「尊は?」

    尊「僕?」

    唯「え、一緒に遊ぶんじゃないの?」

    尊「あー、そうだね。色々誘われた」

    覚「おおっ!そうかそうか」

    尊「いつまでも殻に閉じこもってちゃいけないかなって。昔ほどヒトが怖くなくなったし」

    唯「昔って~。大して生きてないのにさ」

    尊「大して生きてないのはお姉ちゃんも同じじゃない。なんだよ」

    唯「なによー」

    覚「はいはい、そこまでだ。店に着いたぞ」

    全部で7人の為、テーブルが2席に分かれた。

    美「4人と3人ね」

    尊「食い意地女王がもう座ってるし」

    唯「トヨ~こっちこっち!隣に来て」

    ト「良いのですか?私で」

    唯「いろいろ教えたげるよ」

    ト「ありがとうございます」

    尊「あ、僕大きいリュックあるから、3人の方で」

    若「ならば源三郎、尊に教えを乞うとしよう」

    源「はっ」

    覚「って事は」

    美「お父さん、美女に囲まれてハーレム状態ね。おめでとう」

    覚「おほー」

    唯テーブル。タッチパネル操作中。

    唯「では注文~」

    ト「確かに皿が練り歩いております。こんなに沢山の食事が、あれもこれも」

    美「そうね」

    ト「なんて、なんてありがたいのでしょう」

    レーンに向かい、手を合わせて拝んだトヨ。

    美「この現代の生活に、私達も感謝しなくちゃね」

    覚「あぁ」

    尊テーブル。注文した皿がやってきた。

    源「ヒッ」

    若「早馬が参ったのう」

    源「いつの間にやら目の前に。唯様並みの速さでございました」

    尊「姉は速さの基準なんだ。取りますね」

    若「ハハハ」

    源「いただきます。ん、これは美味い」

    若「ところで尊」

    尊「はい?」

    若「ちと知恵を拝借しとうての」

    尊「えー何ですか?」

    若「細工をせず、残った花なのじゃが」

    尊「あー、レジンアクセサリーのですか。大きい花は全部残ってますね」

    若「折角、元の美しさそのままであるし、どう生かすのが良いかと」

    尊「ん~。そうですね。考えますね。あ、お姉ちゃんには内緒にしたいとか?」

    若「いや。知れても構わぬ」

    尊「わかりました」

    唯テーブル。

    覚「トヨちゃん、遠慮せず食べてな」

    ト「はい!」

    美「唯~あなたは少しペースを落としなさい」

    唯「えー」

    ト「ふふっ」

    それぞれのテーブルで、食事は和やかに進みました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    18日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days26~18日水曜10時、ステップアップ

    残り少ない高校生活が、彩られていく。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん中にトヨから、髪を切る決意表明がなされていた。

    覚「こんな風に、切る前に少しずつ束にして結んでおくんだな。切った時落ちてバラけないように」

    若君「ふむ」

    唯「へー」

    覚「見える?写真、大きくするよ」

    トヨ「まあっ!」

    源三郎「指を開くだけで伸びるとは!」

    ヘアドネーションの勉強中。覚のタブレットに、四人が群がっている。美香子がリビングに戻って来た。

    美香子「あらま。お父さん、大人気ね」

    覚「へへ、いいだろ?美容院の予約、取れたか?」

    美「うん。トヨちゃん、土曜の3時になったわ。三日後よ。私の車で乗せてくわね」

    ト「お母さん、ありがとうございます」

    美「唯」

    唯「ん~?」

    美「当日、あなたもついてきて」

    唯「いいの?」

    美「切ってる様子を、写真撮ってあげて欲しいの。お店には、三人でお邪魔させてくださいって伝えてある」

    唯「わかったー。トヨ、私にまかせてねっ」

    ト「まぁ…見届けていただけるなんて、嬉しい」

    午後。食卓に、尊から借りた図鑑の類が堆く積まれ、若君と源トヨは読書大会となっている。

    唯「静かすぎる。しかも、たーくんに根っこが生えて動かない」

    美「思った通り、放って置かれてるわね」

    唯「本にたーくんを取られた~!」

    若「唯も共に読めば良いではないか」

    唯「勉強なんて、しなくて済むならしたくないもん」

    美「それは、ある程度やってる子のセリフだけど」

    源「忠清様は、これまで尊殿に書物を借りるなどされていなかったのですか?」

    若「こちらの世に参った当初は、尊と寝所を共にしておったゆえ、尊が明かりを点けておる時分は、わしもよう読んでおった」

    美「寝にくかった?ごめんなさいね」

    覚「その頃の予備室は、とても客を招けない程、物置状態だったからなぁ」

    若「いえ。尊が、わからぬ言葉があれば、すぐに声をかけるようにと申しておりましたし」

    唯「意外と優しいな」

    美「質問に答えれば、自分でも復習したのと同じだもの」

    若「読み始めた頃は、矢継ぎ早に問うておりましたが」

    美「いいのよ。頭の中のいろんな引き出し開けるお手伝いで、結果尊の為になってたわよ」

    若「ならば良いのですが。あの、尊と共に過ごした夜は、全てが新しく大変満ち足りておりました」

    唯が、急にしかめっ面になっている。

    唯「あー。ってコトはー、今の部屋割はご不満なんだ?あっそう、ふーん」

    若「何をふくれておる」

    唯「だってぇ。尊と一緒の方がいいんじゃないの?戻りますかぁ?」

    美「唯~、そんな言い掛かりつけたりしないの」

    若「…良いか、唯」

    隣に座る唯の側に、向き直る若君。

    若「傍らの、唯が眠る姿を見ずして一日は終わらぬ」

    唯「ホント?ホントにそう思ってる?」

    若「まことじゃ」

    唯「…えへっ」

    笑顔になり、椅子を寄せて若君に体をくっつけた唯。

    唯「ならば許すぅ」

    若「ハハハ」

    覚「そうか」

    美「何?」

    覚「だからあの古文書さ、あんな情熱的な文章になったんだな」

    美「なるほどね。唯は、忠清くんのパワーの源なのね」

    騒ぎをよそに、静かに読み耽っている源トヨ。

    美「あんまりしゃべってると迷惑ね」

    ページをめくるトヨの手元を、じっと見ていた美香子。

    美「…あ」

    覚「何だ?」

    美「ちょっと薬局で買い物してくる」

    覚「おー、そうか。じゃあさ、ボディーソープの詰め替えも買っといてくれないか」

    美「了解。行ってきます」

    ほどなく帰宅した美香子。

    美「はい、これ詰め替えね」

    覚「早かったな」

    美「出たついでに、尊が帰ってくる時間に合わせて駅で拾ってあげようと思って、LINEしといたのよ。そしたら、まだ学校に居るから今から出るって返事が来たから、一旦帰って来たんだけど…お父さん、あの子、放課後何してたと思う?」

    覚「んー、先生に質問してたとか?」

    美「クラスメートとおしゃべりしてたらしいの」

    覚「クラスメートと、おしゃべり!」

    唯「え?マジで?!」

    美「もう私、嬉しくって」

    覚「そうか、そうか…」

    源トヨが、両親の反応に驚いている。

    ト「え、どうなさったのですか?!」

    源「お二人共、涙ぐんでおられる…」

    美「ごめんね、何でもないのよ」

    覚「びっくりさせちゃったね」

    唯「友達ができただけで、こんなに感動されるのはヤツくらいだよ~」

    若「そう申す唯も目が潤んでおる。得も言われぬ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days25~17日22時、懐が深い

    カマアイナ様。心待ちにしてくださり、いつもありがとうございます。

    毎日投稿ではなく一日おきですと、倍の日数かけて楽しめますよ?ふっふっふ(^ω-)

    それは半分冗談で、投稿直前まで推敲を繰り返すもんですから、お話のストックはありますが、読み返し再考する時間はやはり要りまして。ゆるーいお話なので、ゆるりとお待ちいただけると幸いです。今後もよろしくお付き合いくださいませ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川クリニックを訪れる患者が多い理由。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き、おしゃべり中の三人。

    美香子「ずっと代々、近習を務めてきたの?」

    源三郎「千原家の筋としてです。赤井家としては、父の代から務めております」

    美「そうなのね。じゃあいずれ、誰かに継いでもらわなきゃね」

    源「は、はい…」

    美「まぁ、それも含めてだけど、ゆっくりじっくり考えればいいんじゃない?あなたの人生だもの」

    源「自分の中では、 大分考えがまとまって参りました」

    トヨ「…」

    美「あら、そうなの!それって、お父さんに相談したから?」

    ト「えっ、お父さんとお話を?」

    源「あぁ。じっくりと様々な話を聞いていただいた。お陰で、随分と気が楽になりました」

    美「それは良かったわ。ウチのお父さん、人の話聞くの上手だから」

    源「何を話したかは、ご存じないのですか?てっきり聞かれておられるかと」

    美「うん、知らない。妻にも口外なんてしないわよ。それがお父さんのイイ所なの」

    ト「素敵ですね」

    源「それは、とんだご無礼を働いてしまいました…お父さんに詫びねば」

    美「そんなの気にしなくていいわよ。それでね、たまには忠清くんにも話をしてあげて欲しいの。さっき、あなたの顔をすごく心配そうに見てたから。仕える身としては難しいかもしれないけれど」

    源「そうでしたか。全く気づいておりませんでした。機会を見て、話をさせていただきます」

    美「そうしてね。トヨちゃん」

    ト「はい」

    美「目の前が、明るくなった感じ?」

    ト「えっ。…だと良いのですが」

    源「…」

    ト「あの、お母さん、尊敬致します。勿論お父さんも尊敬しております」

    源「わたくしも、心からそう思うております」

    ト「お母さんは、体だけでなく、心も診ていらっしゃるのでは?お話してて、とても安心できます」

    美「あら、嬉しい事言ってくれるわね」

    ト「お話してるだけで、薬は要らないのでは」

    美「うふふ。そう言えば唯のお友達でね、ちょくちょくお腹こわしては診察に来てた男の子が居たんだけど」

    ト「友で男の子。はい」

    美「病は気からよ!って背中叩いて送り出したら、ピタっと来なくなってね」

    ト「まさか…他の院に行ったとか」

    美「そこは、頭のいい子だったから、ちゃんと気持ちを切り替えたらしいの。下す事もなくなったらしく、後日ばったり会った時に感謝されたわ」

    ト「さすがお母さん。人を見てそうされたのですね」

    美「でね、そのばったり会った時、唯も忠清くんも一緒に居たんだけど、唯がその子とあまりにも親しくしゃべるもんだから、忠清くんが嫉妬しちゃってね」

    ト「まあ」

    源「なんと」

    美「あの時の忠清くん、もう可愛くて仕方なかったわ。これ、内緒にしといてね」

    源「それはそれは。貴重なお話を、ありがとうございました」

    ト「私も見たかった…」

    源「おいおい」

    話が弾んでいたが、

    美「大分遅くなったわね。みんな心配してるかも。そろそろ戻りましょうか」

    源「あの」

    美「なぁに?」

    源「わたくしも、こちらの世に居る内に、出来る限り学びたいと思うのですが」

    美「例えば?」

    源「トヨのように、書物を読むなど」

    美「んー。ウチで一番本があるのは、尊の部屋ね」

    源「そうですか」

    美「図鑑…えーと、写真や絵で説明する本なんか、かなりある。言えば何でも快く貸すと思うわよ」

    源「わたくしがお借りして、使いたい時分に手元にない、と困られませんでしょうか?」

    美「大丈夫。ほとんど頭に入ってるんじゃないかな」

    ト「えっ、凄い」

    源「なるほど。それが故の、タイムマシン、なのですね」

    美「そうね。じゃ、行きましょ」

    リビングに戻った三人。

    覚「おー、お帰り」

    美「ただいま。あれ、唯は?」

    若君「眠いと申すので、先に寝かせました」

    美「あらそう」

    源「尊殿」

    尊「はい?」

    源「尊殿の居室には、蔵書が多数あると伺いました。お借りする事は出来るでしょうか?」

    尊「あ、そうなんだ。いいですよ、なら今から見てみますか?」

    源「良いのですか?折角お寛ぎになられているのに」

    尊「全然。大歓迎ですよ」

    ト「あ、あの、私もお供させてください」

    尊「どーぞどーぞ。じゃ、行きましょう」

    二階に上がって行った三人。

    美「お兄ちゃんもお姉ちゃんももう一人増えて、嬉しいのね」

    若「そうですね。お母さん、どのような術をお使いになられたのですか?」

    美「え?術?」

    若「源三郎の顔つきが、何か吹っ切れたような晴れやかさでございました」

    覚「おっ、いよいよ一歩進むのか?!」

    美「そんな感じはしたわね。私は何もしてないわよ?」

    若「さすがお母さんじゃ」

    美「だから違うってば~」

    覚「まあまあ、温かいお茶でも飲みな」

    若「ハハハ」

    夜はゆっくり更けてゆきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    嫉妬する若君は、この板no.597、598にて。

    17日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days24~17日21時、郷に入っては

    トヨ達でもわかる言葉に置き換えるのは、中々難しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはん後。

    美香子「じゃ、トヨちゃん」

    トヨ「はい」

    美「向こうで、資料見せながら話すわね」

    ト「はい!よろしくお願い致します」

    覚「コーヒー淹れたよ。持ってきな」

    美「ありがとう。じゃあ三人分ください」

    覚「了解~」

    美「源三郎くん、あなたも一緒にいらっしゃい」

    源三郎「はっ、はい。わかりました」

    ト「源ちゃんもですか」

    美「嫌?」

    ト「いえ」

    唯「秘密会議?」

    美「今はまだ内緒にしとくわ」

    唯「ふーん」

    尊「ふーん。行ってらっしゃい」

    リビングを出ていった三人。

    唯「なんだろね」

    覚「さあ」

    尊「源三郎さんの様子がおかしかったよね」

    若君「うむ。トヨが楽しげに話す横で、暗い顔をしておった」

    唯「悩みを聞く感じ?」

    尊「誰のだよ。お母さん、トヨさんとメインで話すみたいだったよ?」

    若「じきに、つまびらかになるのであろうが」

    クリニックの事務室。

    美「さて。ではトヨちゃんが見てた、ヘアドネーションの活動について説明します」

    ト「そのような名なのですね。所々読めなくて」

    美「髪が生まれつき生えなかったり、病気などで失ってしまう子供達がいます」

    源三郎&トヨ「はい」

    美「でも、髪はあるのが当たり前、ないのは不自然だという考え方が主流。髪がないというだけで、負い目を感じたり生活しづらいなんてあってはならないけれど、見た目がほんの少し違うだけでそれも個性なのに、そんな子供達をすんなり受け入れる時代には、この令和でも、残念ながらまだなってない。その姿にどうしても身構えてしまうし、そんな反応を敏感に感じ取り、心傷つく子達も多い」

    源&ト「…」

    美「ならばそんな子達が辛くならないように、寄付…皆が切った髪を集めて、かつら…頭にかぶせて髪があるように見せる物ね。人毛だから、より感触も自然だし。それを作り、贈るという活動です」

    源&ト「はい」

    美「切った髪ならどんな長さでもいい訳じゃなくて、最低31センチ以上、あなた達がわかる単位だと、一尺とちょっと、必ず要るの」

    源「一尺…」

    ト「もっと長くても良いのですね?」

    美「そうではあるけれど。あなたがやろうと思ってくれてるなら、バッサリ長く切るのではなく、できるだけ最低限にしておきたいわ」

    ト「それはどうしてですか?」

    美「私の居るこの令和の時代とは違って、永禄では長く豊かな黒髪こそが女性の美しさを示すでしょう?」

    ト「それはそうですが、私は姫君ではありませんので、いつもある程度の長さで留めております」

    美「でも、急に短くなったら周りが驚くでしょう」

    ト「誰も女中の髪など、気には致しません」

    美「そうなの?源三郎くん」

    源「…あの」

    美「はい」

    源「その、最低限の長さで切り落とすと、トヨの髪はどれ程の長さが残るのでしょうか」

    美「いい質問ね。じゃあ、測ってみましょ」

    用意しておいたメジャーをトヨの髪に当てる。

    美「例えば35センチ切ると、このくらいね」

    背中のその位置に、水平に手を置いた美香子。

    ト「あぁ、ちょうどこの下着の辺りですね」

    美「そうね。ブラの線くらい」

    源「?」

    美「どう?源三郎くん」

    源「…その位であれば、周りもそこまでは驚かぬと思います」

    美「そう。貴重な意見ありがとう」

    ト「お母さん。私が何故そうしたいか、聞いていただけますか?」

    美「勿論よ。先にそうすべきだったけど、内容を理解してからと思って。順番が逆でごめんなさいね」

    ト「いえ、謝っていただくなど畏れ多いです。まず、私めの髪で苦しんでいる子供達を救えるなんて、とても光栄です」

    美「め、は余分だけど。こんなに綺麗な髪の持ち主なのに。まず、って事は、他に理由があるのね?」

    ト「はい。この令和に参ってから、幾度かこの世の人々を見ておりますが、私程の長い髪のお方には未だお会いしておりません」

    美「そうね、主流ではないわ。もし居るとしたら、この寄付に向けて髪を伸ばされている方かもしれない。勿論全員がそうではないわよ」

    ト「私、忠清様唯様が呼んでくださったこの令和の世を、心ゆくまで楽しみたいんです。居る間は、できるだけ溶け込みたくて」

    美「そうなの。髪が短めの方が、馴染むと思った?」

    ト「はい。戦に怯える事なく過ごせる世。北風さえもどことなく軽やかなこの世では、軽やかな私で居たいなとも思いまして」

    美「確かに、サラサラと髪をなびかせるなんて、永禄ではないわよね」

    ト「はい。自分も軽やかになり、髪は子供達の為に使われ、この世に残せるなんて、これ程の喜びはありません。ですので、是非やらせてください」

    美「わかったわ。でもあと一晩だけ考えて。もう気持ちは決まってるでしょうけど、この活動に理解のある美容院…髪を整える所、に、予約を取りたいけど明日にしか連絡できないから」

    ト「はい。わかりました」

    美「源三郎くん」

    源「はい」

    美「あまりにも悲愴な顔してたから一緒に来てもらったけど、納得できたかしら?」

    源「はい。トヨの存念がわかりましたので」

    ト「そのような意図だったのですね」

    美「二人の間で、意志疎通してないみたいだったから。源三郎くんの意見も聞きたかったしね」

    源「ありがとうございます」

    ト「そこまでお気遣いいただき、ありがとうございました」

    美「せっかくの機会だから、もう少しお話しましょうか。コーヒー、冷めちゃうから飲んで飲んで~」

    源&ト「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days23~17日9時、二人並んで

    父娘だけは、貴重。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに戻って来た源トヨ。

    唯「お帰りぃ。今朝はゆっくりだったね」

    食卓で、覚と若君が将棋を指している。唯は、座る若君の後ろから、首に腕を絡ませ抱きついている。

    トヨ「将棋は、こちらの世にもあるのですね」

    覚「数少ない、共通の娯楽だよ」

    唯「今日はね、親孝行デーだから出かけないからね」

    ト「親孝行は出来る時にしないと。大事です」

    若君「昨日は、お父さんを一人残し出かけてしもうたゆえ」

    唯「将棋、誰が一番強いか勝負だってさ」

    ト「まぁ」

    源三郎「対局が楽しみです」

    若「お父さん、源三郎は城でも強い方に当たります」

    源「それ程でもございませぬが」

    覚「そうなんだ~。お手柔らかに頼むね」

    ト「では、私は隣で、お借りした本を読ませていただきます」

    唯「なにー?あ、包帯の巻き方だ。クリニックの?」

    ト「はい」

    若「トヨは学びも熱心じゃのう」

    何度か対局していると、昼近くなってきた。

    覚「いやぁ、確かに源三郎くん、強いわ」

    源「つい熱が入ってしまい、済みませぬ」

    覚「いいんだよ。手加減しないで欲しいしね。じゃあ次は、忠清くんと源三郎くんで指してて」

    若「いえ、そろそろ昼飯の支度をせねばなりませぬ」

    ト「それならば私も」

    源「私も」

    覚「いいよ、みんな座ってて。一人明らかに空いてるのが居るから。唯、手伝え」

    唯「えー、私?」

    覚「えーじゃない。ほら、若奥様」

    唯「若奥様。…昭和だなぁ」

    覚「えぇっ、今はそう言わんのか?古い?」

    唯「でも、じわじわくる。いい響きかもー」

    覚「だろ?」

    唯「よし、やるかー。たーくんエプロン貸してねっ」

    若「あぁ」

    覚「唯専用のエプロンも用意するか?」

    唯「いらないっす」

    覚「何だ、その言いぐさは」

    若「ハハハ」

    キッチンに立つ覚と唯。

    覚「若奥様、これも洗って」

    唯「はいはーい」

    トヨが本を閉じ、席を立とうとしている。

    若「トヨ、良い。座っておれ」

    ト「でも」

    若「父と娘、二人だけにしてやってくれぬか」

    ト「あ…はい。わかりました」

    美香子も休憩時間になり、昼ごはんスタート。

    唯「今日ねー、サラダ作るの手伝った!」

    美香子「へー。何したの」

    唯「野菜洗った。レタスちぎった。カニカマほぐした」

    美「それは、唯にしては充分過ぎる程働いたわね」

    唯「えっへん」

    美「威張る程じゃないけど?あ、トヨちゃん」

    ト「はいっ」

    美「エリさんに聞いたわ。また夜にね」

    ト「はい。お願い致します」

    覚「何だ、内緒話か?」

    美「そっ。母と娘のね」

    覚「おっ、いいねぇ」

    源「…」

    若「?」

    若君 心の声(何故源三郎が、鬱々としておるのじゃ)

    覚「話変わるけどさ、バーベキューやろうかなと思ってるんだけど。夜はさすがに寒いから、昼間にな」

    唯「バーベキュー!いつ?」

    覚「やっぱり日曜かな。芳江さん達を呼ぶ忘年会をそれで、とも考えたんだけどさ、その日だと開院中に火起こしする事になるから、煙がクリニックに流れても何だからさ」

    唯「今度の日曜?」

    美「そうね」

    若「それは良いですね」

    唯「やったー。源三郎、トヨ、バーベキューだよ。えーっと」

    若「庭で火を起こし、食しながら集うのじゃ」

    ト「それは楽しそうですね」

    源三郎が、目を白黒させている。

    若「どうした、源三郎」

    源「戦…は始まらないのですね?」

    唯「え!なんで戦?全然違うよ」

    若「何故そう思うた」

    源「狼煙を上げるのでは?」

    覚「狼煙?」

    美「あら、火を起こして煙が上がるって言ったからかしら」

    覚「そうかそうか。話を繋げるとそうなるもんな。源三郎くんは危機管理がしっかりしてるなぁ」

    若「源三郎。今は、忘れておれば良いぞ」

    唯「うん。そうだよ。忘れてるのも大事」

    源「はい。昨日、日々穏やかと話をしたばかりではありましたが、ふと思うてしまい」

    若「それより、この世に居る内に考えるべき件もあろう」

    源「は!はぁ…」

    覚「お?忠清くん、するりと王手かけたね」

    美「まあまあ。まだ序盤だもの。そう焦らなくてもいいんじゃない?」

    若「将棋にかけておられるのですね。さすがお父さんお母さん」

    唯「そうなの?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days22~17日火曜8時30分、誰かのために

    美しい髪の持ち主だから、周りが戸惑う。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝のコーヒーをクリニックに運ぶ役目を、率先しておこなっているトヨと源三郎。

    源三郎&トヨ「おはようございます!」

    エリ&芳江「おはようございま~す」

    歓談後、コーヒータイム終了。

    源&ト「お邪魔致しました」

    美香子「いつもありがとね」

    会釈をし、出ていった二人。

    芳江「仲がいいのねぇ」

    美「それも勿論あるんだけど、二人で来るには別の理由があるのよ」

    エリ「そうなんですか?」

    美「出てく時、お盆とか、源三郎くんしか持ってないでしょ」

    エ「そういえばそうですね。トヨちゃんは手ぶらだわ。それって、源三郎くんの優しさではなく?」

    芳「元々、いつもご主人が一人で運んでいらっしゃいますしね。いえ、仲良く顔見せてくださって、とても嬉しいんですよ?」

    美「トヨちゃん、クリニックの壁に貼ってあるポスターや案内に興味津々でね。診療始まる前の僅かな時間に、じっくり見てるらしいの」

    エ「あー、だから帰りは俺が持って帰るから見ておいで、なんですね。それも優しいですね~」

    芳「医療に関心があるんでしょうか?」

    美「ん~。彼女の事だから、戻ってから役に立ちそうって、何でも身に付けたいのかもね」

    エ「でしたら、本でも貸してあげたらいかがですか?」

    美「あ、それもそうね。包帯の巻き方なんて、きっと役に立つわ」

    棚から一冊取り出した。エリが受け取る。

    エ「準備が済んだら、渡してきます」

    美「お願いします」

    その頃、待合室前の廊下に居たトヨ。

    トヨ 心の声(心の臓って、こんな形なの?!)

    解剖図に見入っていた。

    ト 心(本当、勉強になるわ)

    壁に、少し色褪せた新聞記事と、手書きの案内が貼ってあるのを見つけた。

    ト 心(髪の話?長い髪を切って、贈る?)

    読み進めていく内に、次第に記事に釘付けになっていく。

    ト 心(子供達を救えるって書いてある)

    足音がした。

    源三郎「トヨ、まだ見てたのか。そろそろ戻ろう。邪魔になるぞ」

    トヨ「あ、うん…」

    視線を外さず見続けるトヨ。

    源「そんなに気になるのか?」

    一緒に読み始める源三郎。

    源「所々わからぬ言葉があるが、もしかしてお前」

    ト「ちょっと気持ちが揺れてる」

    源「…」

    また足音が。

    ト「あ、エリさん」

    エ「ここに居たのね。ホント勉強熱心。そんなトヨちゃんに、はい。本貸しますね」

    ト「まあ!ありがとうございます!これは?」

    エ「止血の仕方とか、包帯…あなた達ならサラシね、巻き方が書いてあるわ。美香子先生がどうぞって」

    源「これは…わしも興味があります」

    ト「嬉しい!じっくり読ませていただきます!」

    エ「ところで、何をそんな真剣に見てたの?」

    ト「これです」

    壁を指差すトヨ。

    エ「これは…」

    ト「あの、これって人助けになるんですよね?」

    エ「えぇ。そのために長く伸ばされる方もみえるわ。まさかあなた」

    ト「私でもお役に立てるなら」

    エ「うん…気軽にどうぞとはとても言えないけれど、ひとまずもう開院時間だから、戻ってね」

    ト「はい」

    エ「美香子先生には、トヨちゃんがこう言ってましたと伝えておきます。その案内、先生がご自身で作られたの。詳しいお話も、先生から聞く方がいいですよ」

    ト「わかりました」

    廊下を進み、急いで戻っていく二人。

    源「お前、本気なのか」

    ト「源ちゃんには関係ないじゃない」

    源「…」

    ト「どうせ女中は、長くなり過ぎないようこまめに切り揃えてるんだし」

    源「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、21まで

    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1no.847、2019/12/12、四人で無事到着

    2no.848、12/12、買い物に行かなきゃと焦る母

    3no.849、12/12、一緒でいいかい?まーだだよ

    4no.850、12/12深夜、令和に来た理由を両親に説明

    5no.851、12/13、女子達が可愛いくてドキドキ

    6no.852、12/13、働く女性達とコーヒーと

    7no.853、12/13、呼び名変更。源三郎車酔い

    8no.854、12/13、はさみ揚げ入りの籠のゆくえ

    9no.855、12/13、唯トヨがスーパーにおつかいに

    10no.856、12/13、シール談議。寝室が決定

    11no.857、12/14、お花アクセのお披露目

    12no.858、12/14、娘二人との買い物が楽しい母

    13no.859、12/14、恋愛マスターに相談しよう

    14no.860、12/15、トランプともんじゃ焼きと。お酒解禁します

    15no.861、12/15、全員でカラオケ店へ

    16no.862、12/15、唯も歌うし若君も歌う

    17no.863、12/15、余裕な対応の尊。トヨの感情移入

    18no.864、12/16、四人で黒羽城公園へ。一方的に攻撃される男子達

    19no.865、12/16、ブランコでくるくるでラブラブ

    20no.866、12/16、ラーメン店で一口あげる

    21no.867、12/16、帰路でおじいさんに感謝

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    四人の現代Days21~16日14時、チャンス!

    唯がガチで走ってた時、カッコ良く乗りこなしてたよ?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに到着。

    唯「売ってる売ってる。この時期はあるよねー」

    ラッピング用の紙やリボンが豊富に並んでいた。

    若君「煌びやかじゃ」

    唯「気分もアガるよねぇ。あ、たーくん、折り紙も買っていこうよ」

    若「そうじゃな。折角参ったしの」

    トヨ「折り紙。鶴を拵えた?」

    唯「そうだよ」

    源三郎「こちらの世の品でありましたか。そう聞けば腑に落ちます」

    ト「いろいろわかってくるわね」

    唯「三之助と孫四郎がね、たーくんの部屋に飾ってある千羽鶴が欲しい欲しい、って騒いでたんだよ」

    若「それは初耳じゃ」

    唯「だよね。だから、ごっそり仕入れてまた作り始めよっかなと思って」

    ト「またお手伝い致します。あら、こちらはまた綺麗な柄だこと」

    唯「千代紙だね。じゃあこれも買おっ」

    ト「良いのですか?」

    唯「なんかに使うかもだし、いいよ~」

    買い物を終え、スーパーを出た。すると、

    唯「あ~、たい焼き売りに来てるぅ!」

    キッチンカーを見つけた唯が、吸い込まれるように近寄って行く。

    若「もう腹が鳴ったのか?」

    唯「えへへ。たい焼きが呼んでるんだもん。4つ買ってくるから、待ってて~」

    ト「魚…でございますか?」

    若「魚の姿をした、甘味じゃな。前に一度食した。家族一同で、祭を見に行った後にの」

    源「甘い魚。それはまた奇態な」

    唯「お待たせ~。温かいうちに食べよっ」

    近くのベンチに座り、食べ始めた四人。

    唯「う~、甘ぁい。生き返るぅ」

    若「大袈裟じゃの。昼飯が辛かったからであろうが」

    唯「それは言える」

    若「このたい焼き、実に香ばしいのう」

    唯「だね。前にお祭りで買って帰った時はさ、だいぶしなっとしてたもん」

    源「優しい味がいたします」

    ト「なんか、落ち着きますね」

    唯「あー美味しかった!おやつタイムが済んだら、ぼちぼち帰りますか~」

    帰り道、歩道を歩く四人。前に、買い物袋を持った若君と、腕を絡ませご機嫌な唯。

    トヨ 心の声(こちらの世での夫婦とは、きっとこのような形なのね)

    後方から、チリンチリンと音がする。

    唯「あ、自転車通るよ。寄って~」

    ト「え、え?どちらに避ければいいの」

    源「おい、何をもたついておる」

    その時、源三郎の腕がスッと伸び、トヨの手を掴んで引き寄せた。

    ト 心(あっ)

    四人の脇を、自転車に乗ったおじいさんが、ベルをチリンチリン鳴らしながらヨロヨロと通って行く。

    源三郎 心の声(音を鳴らしながら走るとは、すわ一大事とも思えるが…どう見ても違うな)

    ト 心(キャー!キャー!)

    通り抜けていった。が、源三郎は手を握ったまま。

    源 心(この手、どうすべきか?俺は、どうしたいんだ…あっ)

    ギュッと握り返された手。源三郎が驚いてトヨの顔色を窺うが、恥ずかしそうにそっぽを向いている。

    源 心(俺に足りぬのは、これなんだな。済まない、トヨ)

    ト 心(離さないんだから!あぁでも、お二人がご覧になったら絶対ほどかれちゃうわ。唯様、忠清様、どうか振り向かないでください!)

    かわって、前の二人。

    若「今の御仁、じい程の歳か?」

    唯「もっといってない?」

    若「ならば尚更、自転車に乗っておられるとはたまげる」

    唯「あの、倒れそうで倒れない超スロースピードは、おじいちゃんあるあるなんだよね~。まねはできない」

    若「そうか、じいも世が世なら自転車を操ると」

    唯「やっとホームセンターのカートから昇格?あ、でもね、カートでもあーゆーのもあるよ」

    道の反対側に、高齢者用の電動カートに乗るおばあさんを発見。

    若「何じゃ、あれは車か?これまたゆるりと動いておる」

    唯「歩くくらいの速さにしかなんないんだよ」

    若「ほほぅ」

    唯「つーかさぁ、そもそもじいって馬に乗れるから、それで良くない?」

    若「歳も歳じゃ。長くは乗れぬ」

    唯「たぶんだけどさ、たーくんがちっちゃい頃のじいも、見た目今とあまり変わんなくない?」

    若「…言われてみれば」

    唯「でしょ。じい、って名前の、別の生き物だと思うなー。だからずっとあのまんまだって」

    若「そうか?」

    唯「そうそう。だからきっと、元気で長生きだよ。ふふっ」

    若「そうか。ハハハ」

    話に花が咲き、帰宅まで後ろの二人の甘酸っぱさに気付く事はなかった。

    唯「あー、着いた着いた。あれ?歩くの速過ぎた?二人とも顔赤いけど」

    源「そ、そうですか?」

    ト「担々麺をいただいたから?」

    唯「何時間も前だし源三郎食べてないし。ま、いっか。お疲れ様でした~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    16日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days20~16日12時、召し上がれ

    辛くて、甘くて、心が熱い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    公園を出て、ラーメン店にやって来た。

    唯「良かった。ギリ混む前だったね。入ろっ」

    四人掛けの席につく。

    唯「どうしよっかな。たーくん何にする?」

    若君「唯はいかが致す」

    唯「私、今日は担々麺にしよっかな」

    若「そうか。このチャーハン、はよくお父さんがフライパンを操り作られる飯か?」

    唯「そうだよ。こういうお店だと家のコンロより火が強いから、もっとパラパラでおいしいと思うよ」

    若「お父さんのチャーハンも大層美味じゃが。ではこれを」

    唯「二人には、初めてのヒトにはこれ、ってのを頼むね。いい?」

    トヨ「はい」

    源三郎「お願い致します」

    注文。

    唯「チャーハン一つと、担々麺一つと」

    若「ラーメン二つ。麺固め、油少なめ、全部のせを」

    店主「はい、かしこまりましたー」

    源「え」

    ト「そのような、長い名の品なのでございますか?」

    唯「違うんだけどね」

    若「初めて此処に参った折、尊がこう注文しておった。呪文のようじゃが、美味いラーメンが出てくる」

    ト「美味しさの呪文なんですね」

    源「心得ました」

    メニューが揃い、昼ごはん。

    源「これは美味い」

    ト「初めていただく味ですが、美味しいです」

    若「口に合うたなら、何よりじゃ」

    唯の担々麺をじっと見ているトヨ。

    ト「器の中が、赤い…」

    唯「でしょ。辛いけど、ちょっと食べてみる?」

    ト「はい。いただいてみたいです」

    唯「じゃあ私のと交換しよっか」

    受け取った器の中を、しげしげと見つめるトヨ。

    ト「地獄池?」

    唯「見た目そんなだけど、おいしいから」

    一口食べてみるトヨ。源三郎も不思議そうな顔をして様子を見ている。

    ト「あ、辛い、でも旨味もあり美味しいです」

    唯「でしょ」

    ト「ありがとうございました。お返しします」

    唯「もういい?源三郎は?」

    源「え!いえわたくしは、お気持ちだけで」

    唯「そう。じゃあ戻しまーす」

    若「唯。ほれ」

    唯「なに?あっ、一口くれるの?」

    若君が、チャーハンをレンゲに掬い、唯の目の前に差し出している。

    若「欲しかろうと思うて」

    唯「ありがと~。あーー」

    若「大きく開けたのう。腕もろとも食らうつもりか?」

    笑いながら、レンゲを唯の口元へ運ぶ若君。

    唯「うん。おいひい~」

    若「幼子の様じゃな」

    唯「たーくん、担々麺食べさせてあげよっか」

    若「…」

    唯「なんで黙るのー、ヤなの?」

    若「麺を掴み損ね、落とす様が目に浮かぶ」

    ト「いくらなんでも、そのような」

    唯「なによぅ。そりゃ焼きそばは確かに落としたけどさ」

    ト「既に大変な目に遭われたと」

    唯「まっ、こんな赤い汁が服に飛んだらヤバいもんね。じゃあ真ん中に置くからさ、ご自由にどーぞ」

    若「では少々いただく。ん?源三郎?」

    源「は、はい」

    若「箸が止まっておるぞ。もう腹一杯か?」

    源「胸が一杯です」

    若「上手いの。いや、そうではなく」

    源「食事を仲良く分け合い過ごす、この穏やかなひと時に、いたく感銘を受けております」

    唯「話が大きくなってるな」

    源「かつて若君様が大殿と対峙された程、道を探り、強く願われた日々は夢の話ではなかったと。此度この先の世にお連れいただいたのは、私やトヨにそれを伝える為であったのですね」

    若「参った所以の一つではある。戦に依らぬ和平はあるとな」

    源「ようわかりました。心にしかと留め置きます」

    ト「はい。わたくしも」

    唯「良かったね、たーくん」

    若「あぁ。源三郎、泰平の世でも腹は減るぞ。食せ」

    源「ははっ」

    ごちそうさまでした。

    唯「会計してくるー。外で待ってて」

    若「わかった」

    店の前で待つ三人。

    若「また、しばらく歩くぞ」

    源「どちらへ参りますか?」

    若「スーパーに、包み紙を買いに行く」

    ト「野菜を買い求めた所ですね。包む?」

    若「贈り物に使う。じきにクリスマスであるので」

    源「クリスマス。祭祀か何かで?」

    若「わしも初めて迎えるゆえ、ようわからぬのじゃが、少なくとも、唯の機嫌はすこぶる良うなる」

    源「そうですか」

    ト「楽しみにされているのですね」

    唯が出てきた。

    唯「お待たせ~。行こっか」

    若「良いか。では、出立」

    唯&源三郎&トヨ「ははっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    御成り、もとい、ダブルデートは続きます。

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    四人の現代Days19~16日11時、あなたしか見えない

    二人だけの世界。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ボートを降り、自動販売機で飲み物を買って休憩中の四人。

    若君「唯。無茶はならぬ」

    唯「はいはい」

    若「トヨが疲れ切っておるではないか」

    唯「ごめーん、トヨ。ちょーっとムキになっちゃって」

    トヨ「いえ。少し休めば大丈夫ですので」

    源三郎「あの、忠清様。もしやあれは」

    源三郎が遊具を指差した。

    若「そうじゃ。あの、童達が遊んでおるのが、ブランコじゃ」

    源「おぉ。あれが真の」

    しばらくすると、一台空いたのでブランコにやってきた四人。

    若「トヨ、乗ってみよ」

    ト「わたくしが先でよろしいのですか?」

    唯「どーぞぉ」

    ト「恐れ入ります」

    源「何やら、音がいたしますな」

    唯「あ、そうだね。ギーコギーコって」

    ト「大きく揺れるのですね」

    若「木に縛っておると、ここまではならぬからのう」

    トヨ、源三郎と乗り、次に唯がブランコに腰掛けた。

    若「唯。後ろから押してやろう」

    唯「え、そう?お願いしまーす」

    そっと押してやる若君。

    唯「なんか、久しぶり」

    若「あぁ」

    唯「風邪引く前に、たーくんの部屋の前のブランコで押してもらった以来?」

    若「そうじゃな」

    二人の様子を眺める源トヨ。

    源三郎 心の声(忠清様、この時を待たれていたかのようじゃ)

    トヨ 心の声(慈しむように、唯様を見つめる優しい笑顔が素敵だわ)

    唯「たーくん」

    若「ん?」

    唯「さっきはふざけてごめんなさい」

    若「構わぬ。そこまで動けるのは、病が治癒した証ゆえ」

    唯「…ありがとう」

    ブランコを降りた唯。

    唯「えっとぉ」

    若「うむ」

    唯「ここは公共の場所だし、周りにいっぱいヒト居るけど」

    若「何が望みじゃ?」

    そう言いながら近づき、唯の顎先に触れる若君。

    唯「あの、ごめんね。そっちじゃない」

    若「違うたか」

    唯「くるくる、して欲しいな」

    若「ハハハ、そうか。くるくるじゃな」

    源三郎&トヨ「くるくる?」

    唯と若君は遊具から離れ、広い所に出た。

    ト「何?」

    源「?」

    唯を抱き上げる若君。お姫様抱っこ。

    ト「まぁ」

    源「なんと」

    若君がくるりと回転する。首に腕をからめ、しがみつく唯。

    唯「キャー!」

    若「ハハハ~」

    ト「素敵…」

    源「…」

    唯「もう一回~」

    若「よし」

    唯「キャハハ~!」

    女性1「まるで映画のワンシーンだわ」

    女性2「若さっていいわねぇ」

    公園内の女性達をも釘付けにしていた。

    唯「ふぅ。ありがとたーくん」

    そっと下ろされた唯。

    唯「あ。めっちゃ見られてる?」

    若「その様じゃな」

    うっとり見ていたトヨと、恥ずかしそうにしている源三郎。

    唯「失礼しましたっ」

    ト「いえいえ」

    唯「これでご飯、何杯いける?」

    ト「四杯は」

    源「四杯?!どんだけ食うんだ」

    若「それは如何にも多かろう」

    ト「いえ!あの、物の例えと申しますか…」

    唯「あはは~、トヨ、かーわいーい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days18~16日月曜9時、水上の戦い

    根に持つ、までではなかったと思うけれど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝からいい天気になった。

    唯「絶好のデート日和~」

    覚「いよいよ城跡か」

    源三郎「黒羽城が跡形もないなどとは、俄には信じ難いのですが」

    若君「こちらの世では、城は残っておる方が少ないそうじゃ」

    トヨ「さようでございますか」

    覚「昼飯はいらないんだよな?」

    唯「うん。ラーメン屋さんに行くつもり」

    若「久々じゃ」

    唯「夕方には帰るね」

    覚「わかった。じゃ、気を付けてな」

    唯「はーい。行ってくるねー」

    若「お父さん、行って参ります」

    源三郎&トヨ「行って参ります」

    黒羽城公園までの道すがら。前に、手を繋いで歩いている唯と若君。後ろに源トヨ。

    トヨ 心の声(いつかお二人のように、仲睦まじく手を繋いで歩けるかしら)

    公園に着いた。

    若「まずは、城跡へ」

    木々の間を抜けて、奥へ進む。

    源&ト「…」

    石垣のみ残る、城跡を見上げる源トヨ。

    若「言葉もないよのう」

    源「いつ頃から、このような姿に…」

    若「わしもそれは思うたが」

    唯「あのね。尊が言ってたんだけど、羽木家って歴史から突然消えたから、その、資料とかほとんど残ってないんだって」

    ト「まぁ…」

    唯「だから、火事なのか、ずっと後の時代に取り壊されたかもわかんないの」

    源「そうですか…」

    若「いずれ、燃え上がる様を目の当たりにするやもしれぬが」

    唯「縁起悪っ」

    若「そうなれば、しかと目に焼き付け」

    唯「日記にも書くと」

    若「そうじゃ。わしが、残していく」

    唯「カッコいいな。で、木村先生に見つけてもらうんだね」

    スワンボート乗り場にやってきた。

    源「鳥…ですか?」

    唯「白鳥の形の舟だよ。足で漕ぐの」

    ト「何ゆえ、鳥なのでしょうか」

    唯「わかんない」

    若「鳥が水面に浮かぶ姿を、模しておるのでは?」

    唯「そうかな。そうしとく。さてと、どう乗る?」

    若「漕ぎ方を教えねばならぬ。わしは源三郎と共に乗ろう」

    唯「わかったー。じゃあ私はトヨと乗るね。あ、今日は競争しないよ?」

    若「良いのか?」

    唯「たーくん、涼しい顔して本気出すからヤだ」

    若「そうじゃったかのう」

    ト「ふふっ。仲がよろしいこと」

    唯とトヨ二人とも、母に買ってもらった、体にぴったりしたスキニージーンズを穿いている。

    源「唯様もトヨも、足が長い…」

    若「そうじゃな。トヨは唯のように棒ではないが」

    源「棒、ですか?至極健脚ではいらっしゃいますが」

    若「もののけ並の速さよのう」

    源「もののけ…あっ。そ、その節はご無礼致しました」

    若「ハハハ」

    バシャバシャと漕ぎ出した四人。だが、女子スワンが不穏な動きをしている。

    唯「ふっふっふ」

    ト「唯様、もしや」

    唯「えーい!」

    ト「あーっ!」

    男子スワンに、わざとぶつかった女子スワン。

    若「おっ、と。何事じゃ、上手く操れなんだのか?」

    女子スワンの様子を、振り向いて覗く源三郎。

    源「いや…そうではなさそうです」

    若「何故そう思う」

    源「唯様が、不敵な笑みを浮かべておられます」

    若「なんと」

    唯「へへーん。あ、ごめんねトヨ」

    ト「あー、びっくりしました。どうしたんですか?」

    唯「ん?なんでもなーい」

    源「忠清様。何か唯様の機嫌を損ねるような事でもなさいましたか?」

    若「身に覚えはある。前に、この舟の速さ争いで競り勝っておる」

    源「それは…最も敵に回してはならぬお相手です」

    若「そうじゃの。おっと」

    源「わっ」

    またぶつかってきた唯スワン。

    若「源三郎」

    源「はい」

    若「退陣じゃ」

    源「はっ!」

    全速力で逃げ出した男子スワン。

    唯「あー!待てぇ~」

    ト「唯様ぁ~足がもちませーん!」

    しばらく戯れていた二羽だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days17~15日19時、針のむしろ

    学校での過ごし方が、変わるかな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クラスメートの女子三人と、立ち話する尊。

    女子高生1「私達さ、大学が推薦で決まった記念で、今日一日遊んでるんだ。もう帰るところだけど。速川は誰と来てるの?」

    尊「家族で。ただの付き添いだけど」

    女子高生2「へー。仲イイんだね。速川も大学、推薦だっけ?」

    尊「ううん、違う」

    女子高生3「違うの?え?成績、いっつもクラスでトップなのに?」

    尊「僕、一年の時ほとんど学校行ってなかったからさ、出席日数が推薦枠の基準に足りなくて的な」

    女3「そうなんだ…」

    女1「速川って、こんなに話しやすかったんだ。いつも一人で居るじゃん」

    尊「ヒトが苦手なんで」

    女2「今全然そんなん見えないよ。ねぇねぇ、大学決まったらさ、男子も一緒に遊ぼうって約束してるから、速川も入らない?」

    尊「あ。…はい」

    女2「じゃあLINEを交換~」

    尊「あ、ごめんなさい、スマホ部屋に置いてきちゃった」

    女2「じゃあ、明日学校でやろっ」

    尊「うん」

    女3「そろそろ帰るねー」

    女1「じゃあねー」

    尊「外、もう暗いから、気をつけて帰って」

    女3「えっ」

    女2「ジェントルマン!」

    女1「ありがとー」

    女子達は、手を振って去っていった。

    女1「なんか、意外~」

    女3「すっごい気さくっていうか」

    女2「もっと早く、仲良くしとけば良かったね」

    部屋に戻っていく尊。

    尊 心の声(大笑いした後だったからかな。なんか気負いなくすんなりしゃべれた。兄さんのお陰だな)

    ドアを開けて部屋に入ろうとすると、

    唯「おかえり。さっき、お腹押さえてたけど大丈夫だった?」

    尊「あ、うん大丈夫。ごめん、心配させて」

    唯「なに飲む?みんなの分、一緒に運んでよ」

    尊「あいよー」

    歌は続いている。

    覚「次は、とっておきのを歌おうと思う」

    美香子「あら、そう。メッセージ?」

    覚「あぁ」

    曲名が画面に表示された。

    源三郎「あっ」

    若君「おっ」

    トヨ「まぁっ」

    尊「こんな歌あるんだ」

    唯「へぇ」

    覚が歌い始める。

    覚「おさななじみの想い出は~、青いレモンの味がする~」

    ト「…」

    字幕を目で追うトヨ。

    唯「これ、何番まであるの?」

    美「10番くらいじゃないかな」

    唯「長っ」

    唯 心の声(この歌…お父さん、わざとだな)

    覚「その日のうちのプロポーズ、その夜のうちのくちづけは~」

    源三郎をチラっと見た唯。

    唯「くちづけは、誰かさんのせいでずっと後だったなー」

    源「す、済みませぬ」

    若「そう責めるな、唯」

    若君 心の声(この歌…お父さんは、このような生き様もある、と仰せなのであろう)

    覚「愛のしるしのいとし子は~、遠い昔の君と僕」

    曲が終わった。

    美「お父さん、良かったわよ~」

    若「心温まりました」

    唯「ハッピーエンドだ。ねっ、トヨ?うわっ」

    トヨが泣いている。

    ト「感動しました…」

    唯「だよねー。ねぇ、源三郎」

    源「は、はっ」

    尊「源三郎さん、すごい汗かいてる」

    若「ハハハ。何ぞ思うところがあるのじゃろ」

    源「はあ…」

    唯「ヨレヨレだなぁ」

    覚「じゃあ、そろそろ帰るか」

    唯「はーい。たーくん、どうだった?」

    若「実に楽しい時であった」

    美「良かったわ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    15日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days16~15日18時、美声!

    最後まで聴かないなんて、勿体なくない?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「線路の脇の、つぼーみはー」

    両親の熱唱は続いている。

    若君「この機械、で歌いたい歌を探すのか」

    尊「そうです。大抵の曲は入ってると思いますよ」

    若「ならばあの、唯の歌うた」

    唯「げっ」

    尊「は?お姉ちゃん、兄さんの前で歌ったの?こっちで?向こうで?」

    唯「向こうで。まっ、いい思い出かな」

    尊「初耳~。誰の曲歌ったの。探すよ?」

    唯「いい、自分で探すからそれ貸してっ」

    機械を操作した唯。

    尊「…童謡?唱歌か。なんでまたこれ?」

    唯「いろいろありまして」

    若「穏やかでおおらかで安らぐ歌じゃ」

    歌の順番が回ってきた。

    美「あら、唯が歌うなんて珍しい」

    覚「ほー、いいねぇ」

    歌い進める唯。

    唯「よくー、茂ったぁもーのーだっ」

    覚&美香子&尊「ほい!」

    若「おおっ!」

    源三郎「何やら感動されておられるような」

    トヨ「そうね。とても明るい歌で」

    唯「へー、2番はこんな歌詞だったんだ、知らなかったぁ」

    若「小平太が止めて丁度良かったのか」

    歌が終わった。全員が拍手する。

    唯「どーもどーもぉ」

    若「唯」

    唯「なに?あ、イェーイ!」

    若「イ、エーイ」

    若君の右手が上がっていた。ハイタッチした二人。

    唯「ふう。一仕事終わったぁ」

    美「忠清くんも、歌えるといいのにね。何度も現代には来てるけど、さすがにそれは無理かな」

    若「歌、ですか」

    若君が考えている。

    唯「お母さーん、たーくんを悩ませないで~」

    美「ごめんごめん」

    若「一つ、あるのですが」

    唯「え」

    尊「え、何の歌が分かるの?」

    若「尊が録音、をしてくれた、体操の歌なら、永禄で幾度も聞いておるゆえ分かる」

    尊「ラジオ体操の歌?あたーらしーいー」

    若「朝が来た」

    覚「それかー」

    美「あるかな?」

    尊「探してみる…あ。あったよ」

    唯「あるの?!」

    尊「入れてみる?」

    唯「う、うん。怖いもの見たさで」

    尊「なんだそれ。兄さん、歌ってみます?」

    若「そうじゃな。良かろう」

    唯「ぜ、前代未聞…」

    曲が流れ始めた。若君がマイクを構える。

    若「新しい、朝が来た、希望の、朝だ」

    唯「歌ってる、歌ってるよぉ」

    美「いい声ねぇ」

    覚「ちゃんと腹から出てるしな」

    ト「忠清様の、新たな一面を拝見したわ」

    源「そうだな」

    尊の様子がおかしい。

    尊 心の声(ダメだ、ツボに入った!笑える、でもここで笑ったら兄さんに失礼過ぎる)

    尊「ごめん、ちょっと」

    覚「何だ、トイレか?急いで行ってこい」

    若君に会釈をし、部屋を出た尊。走って、角を曲がった所でしゃがみこんだ。

    尊「アハハハハ!ゴホッ、ヒー!苦しい~、ハハハハ!」

    ゲラゲラ笑う尊。ひとしきり笑い続けた後、深呼吸して、立ち上がった。

    尊「あー、兄さん許して。かなりウケちゃって、ごめんなさい!」

    部屋に戻ろうとしたところ、

    女子高生1「あれ?速川」

    女子高生2「あ、ホントだ」

    女子高生3「珍しい~こんなトコに来るんだ」

    尊「え?あ、こんばんは…」

    クラスメートの女子達に遭遇した尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days15~15日15時、熱唱!

    いきなり、嵐に巻き込まれる。情熱の。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    神経衰弱をしている、唯と若君と源トヨ。

    唯「やっぱ源三郎も、これ得意だね」

    美香子「あらゆる所に目を光らせるのに長けてるのね。さすがだわ」

    源三郎「お褒めいただけるとは。痛み入ります」

    唯「今日の晩ごはんなにー?」

    覚「もうその話か。夜は出かけるぞ」

    唯「やったー!なに食べに行くの?」

    美「パーティー系メニューかな?ピザとかフライドポテトとか」

    唯「どゆこと?」

    美「前回あなた達が帰って来た時に、行きそびれた場所に行こうと思ってね」

    若君「行きそびれた。もしや」

    唯「たーくんわかるの?」

    若「吟ずる処では。歌会と聞いた覚えがある」

    唯「まさか…カラオケ?」

    美「当たり~」

    唯「えぇっ?!そりゃ行くのはいいけどさ、歌うのお父さんとお母さんだけじゃない」

    若「唯は歌わぬのか?」

    唯「お父さん達が行くのに毎回ついてくだけ。尊もね。だって二人してずーっと歌ってるんだよ。しかもわかんない歌ばっかり」

    覚「素晴らしき昭和歌謡じゃないか」

    若「お父さんお母さんが楽しんでおられるのに、寄り添うておるのじゃな」

    唯「たーくん、そんなんでいい?」

    若「勿論じゃ」

    唯「尊は?留守番?」

    美「連れてくわよ。だから日中は勉強させてる」

    唯「一番迷惑なのは尊か…。源三郎、トヨ、今夜は全員でお出かけだよ」

    トヨ「まぁ。楽しみです」

    源「はい…」

    若「また車に酔うやもと案じておるのか?」

    覚「車を嫌いになって欲しくないからさ、酔い止め薬買っておいた。乗る前に飲んでもらうよ」

    美「だから怖がらないでね、源三郎くん」

    源「お心遣い、ありがとうございます」

    もうすぐ17時。尊が部屋から下りてきた。

    若「おぉ、尊」

    唯「お疲れっ」

    尊「ホントだよ。源三郎さん、トヨさん、今度は僕も一緒にトランプさせてくださいね」

    ト「はい!」

    源「是非お願い致します」

    車2台に分かれて出発。

    唯「たーくん、カラオケさ、マジ音デカくてうるさいからね」

    若「わかった」

    カラオケ店に到着。部屋に通される。

    若「暗い部屋じゃの。これはテレビか?随分と大きいのう」

    源「光が瞬いております」

    唯「さてと、何食べる~?ポテト?唐揚げ?」

    尊「このいろいろ盛ったヤツで良くない?あとたこ焼きとピザ」

    唯「了解~頼んじゃうね」

    美「はーい、飲み物よ~。フリードリンクだから、後は勝手に取りに行ってねー」

    ト「こちらに置けば良いですか?」

    覚「あー、ありがとねトヨちゃん」

    若「いつの間にやら事が進んでいっておる」

    源「その様ですね」

    両親が、歌い始めた。

    覚「君が~望むなら~!」

    美「ヒデキー!」

    覚「生命をあげてもいい~!」

    美「覚ー!」

    尊「最初から突っ走ってるな」

    唯「ん。いつも通り。ごめんね~びっくりでしょ?」

    若「これは、確か前に参った折に歌うておられた…奇天烈な…」

    唯「しーっ」

    若「済まぬ」

    尊「あのですね、適当に手拍子とか、そこにある、それ楽器なんですけど」

    源「これでしょうか?」

    タンバリンを手に取った源三郎。

    尊「適当に音に合わせて振っとけばいいです」

    若「適当が多いの」

    唯「ピタっと合えば盛り上がって、二人とも喜ぶけどね」

    若「ほぅ」

    尊「やってみましょうか」

    フライドポテトをつまみながら、シャンシャンと音楽に合わせてタンバリンを操る尊。

    若「上手いの。しかも食しながらとは」

    唯「トヨ、どうかした?ずっと画面見てるけど」

    ト「言葉が流れております」

    唯「あ、そうだね。歌詞がね」

    ト「心を打ちます…」

    唯「へ?!どの辺が?!」

    ト「あ、あの、ここです」

    覚「二人は愛を、永遠にきざもう~!」

    唯「新発見。そういう目で見たコトなかった」

    尊「恋だ愛だの歌が多いしね」

    ト「いいですねぇ…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days14~15日日曜10時、内密に願います

    恋愛マスターだから、いくつ?なんて聞かないとは思うけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    外は、雨。

    唯「いつまで降るのかなぁ」

    美香子「どこか行きたい所でもあるの?」

    唯「黒羽城公園。源三郎とトヨに城跡見せたくて」

    覚「明日は晴れるらしいぞ」

    唯「そうなんだ。じゃあ明日行こっかな」

    食卓で若君が、源トヨにトランプの説明を始めた。

    若君「この三つ葉の形は、クラブ、と申す」

    源三郎&トヨ「クラブ。はい」

    若「この槍先の形は、スペード。菱の形は、ダイヤ」

    源&ト「はい」

    若「この散り落ちた花びらの形は、ハートじゃ」

    覚「そう来たか」

    美「風流ね~」

    覚「だな。あのさー」

    美「何お父さん」

    覚「今日の昼、もんじゃ焼きにしようと思うんだけど」

    唯「もんじゃ!やったー」

    覚「んー、二人にどう説明しよう」

    源三郎「わかります」

    トヨ「はい」

    覚「え、なんで?」

    若「畏れながら、お父さん」

    覚「なになに!畏れながらに恐れをなすよ」

    若「師匠の足元にも及びませぬが、永禄でそれらしき料理を作り、四人で食しまして」

    美「まあ」

    覚「そりゃ凄いな」

    若「是非、源三郎とトヨに、真のもんじゃ焼きの伝授をお願い致します」

    覚「いや、本場とはまた違うと思うけど。大分手の痛みも引いたから、みじん切り頑張ろうと思ってさ」

    若「それはわしが」

    ト「わたくしで良ければ、支度を」

    美「なんていい子達なの~」

    覚「泣けてくるな」

    唯「トヨさぁ、みじん切り上手だと思うけど、キャベツは初めてだからどうだろ」

    覚「手を出さない奴が口を出すんじゃない」

    唯「すんませーん」

    昼になった。ホットプレートで、もんじゃ焼きがフツフツ言い始めている。

    ト「火種が見えませんが、煮炊きができるのですね」

    尊「そうですね」

    源「齢二十四を数えても、初めて知る事柄ばかり…」

    唯「いや、今ここに居るのがかなり特殊だし」

    尊「源三郎さんと兄さんって、歳は三つ違いでしたよね?」

    若「そうじゃ」

    尊「じゃあ兄さんは今、数えで21」

    唯「それがなんなの」

    尊「もう満年齢でもハタチになってるよね。こっちでもようやく、お酒が飲めるんじゃないかなって」

    覚「え、そうなの?」

    美「それ間違いない?」

    尊「大丈夫だと思うけど…また計算しとくよ。これ、もんじゃそろそろできてない?」

    覚「あー、そうだな」

    ト「この鋼の品がハガシでございますか?」

    若「そうじゃ」

    尊「それもわかるんだ」

    源「竹で出来ておりました」

    覚「え、もしかして作った?」

    若「はい。四人分誂えました」

    美「すごーい。準備万端で臨んだのね。さすが忠清くんね」

    唯「えー、ヒマだからじゃ…」

    美「唯。そんな失礼な事言わないの」

    覚「寸暇を惜しんで、だろ。なぁ、忠清くん」

    若「ハハハ、はい」

    唯「ちぇー、怒られたー」

    ト「ぷっ」

    源「フフッ」

    若「愉快じゃろう?これを家族の団欒、と申すのじゃ」

    源&ト「はい」

    覚「おーい、端が固くなる前に、どんどん食べてくれ~」

    食後。

    尊「うん、やっぱりもうお酒OKだよ。っていうか、夏に来た時も大丈夫だったんだけど。ごめん、気付かなくて」

    覚「いやいや、こっちも聞かなかったしな。そうか~、これでいよいよ忠清くんと源三郎くんと」

    少し身構えたトヨ。

    トヨ 心の声(私、歳を聞かれるのかしら?どうしよう)

    そんなトヨの戸惑いに気付いた唯が、

    唯「トヨも飲める歳、とだけ言っとく」

    ト 心(まぁ…唯様…)

    覚「そうか、トヨちゃんもか。いや~みんなで酒を酌み交わせるのは嬉しいなぁ」

    若「とうとうその日が参ったのですね」

    覚「前から気になってた、銘酒いろいろ取り寄せようかな」

    美「あら、いいわね。楽しみね、忠清くん」

    若「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days13~14日15時、ヘルプ!

    令和に連れてきた甲斐がある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    変わって、家で留守番中の男子達。若君は、集中してレジンと格闘中。尊は参考書片手にその様子を見守っている。覚がカメラの手入れを始めたのを、源三郎が興味深く覗いている。

    源三郎「一昨日の夜に見た品ですね」

    覚「そうだね。また色々撮ってあげるよ。ところで、奥に飾ってある写真、見たかい?」

    源「いえ?」

    リビング奥の飾り棚前に歩いていく覚。源三郎もついていった。

    源「これは…私が見て良い物でしょうか」

    覚「どれ?あー、海に行った時のだね」

    波打ち際。唯を真ん中に、尊と若君が浮き輪片手に並んでいる。

    源「忠清様と尊殿が半裸…いや、それより」

    覚「女性のビキニ姿は、戦国時代の男性には刺激が強いよね」

    源「こちらの世では、珍しくはないいで立ちですか?」

    覚「まあそうだね。泳ぎに来てるし」

    源「泳ぐ…半裸で…」

    覚「源三郎くんさ」

    源「はい?」

    覚「もしかして、トヨちゃんのこんな姿、想像してない?」

    源「え!それは、あの」

    覚「気になる女性が居れば、自然な話だよ」

    源「は、はぁ…忝ない」

    覚「でも、女性陣には内緒にしとこうな」

    源「はい。あのお父さん、この奥にあるのは」

    覚「これはね、写真を撮る専門の場所に行った時の、唯と忠清くんの結婚式の写真だよ」

    源「結婚式?」

    覚「あ、そうか。えーと、祝言だね」

    源「ほぉ…この白装束がですか」

    若君「この白装束は、幸せに満ちておるじゃろ」

    いつの間にか、後ろに若君と尊が立っていた。

    源「忠清様…」

    若「このような折には」

    源「はい」

    若「姫に、綺麗だよ、と申すのじゃ」

    源「月、ですか?」

    尊「あー。兄さん、源三郎さんに話したんですね。月が綺麗だ話」

    若「あぁ。どうなったかは聞いてはおらぬが」

    源「…」

    覚「何だ?急に月が雲に隠れたぞ?」

    若「上手くいかなかったのか?」

    源「わたくしが悪いのです。意気地無しなのです…」

    覚「何か、こじれちゃったのかな?」

    尊「大変そうだね。これは、恋愛マスターの出番じゃない?」

    源「え?」

    若「そうじゃな。源三郎、わしは今しばらく作業に勤しむゆえ、しばしお父さんに話を聞いて貰うが良い」

    源「お父さんが。よろしいのですか?」

    覚「僕で良かったら、相談に乗るよ」

    源「はい…それでは師匠、お頼み申します」

    ソファーに並んで座る覚と源三郎。打ち明け話が始まった。食卓に若君と尊。

    尊「いいんですか?一緒に聞かなくて」

    若「聞いて良いならば、とうにわしに話しておる」

    尊「それもそうだ」

    若「お父さんに任せておけば安心じゃ」

    尊「兄さん、そう言いながら、手元が疎かになってますよ」

    若「お、ハハハ、これはしたり」

    次々と、若君の手で花が透明なレジンに浮かんでいく。

    尊「アクセサリーキット買っといて正解だったな。まさか兄さんが作るなんて夢にも思わなかったけど」

    尊が唯や若君あてに作ったのは、簪など和物アクセサリーだったが、キーホルダーやネックレスなども作れる材料は揃えてあった。

    若「よし。随分と慣れたゆえ、次は尊の為に作ろうと思う。どの型が良い?」

    尊「えっ、作ってプレゼントしてくれるんですか?」

    若「クリスマスプレゼント、じゃな。良ければであるが」

    尊「えーそんな!何でも嬉しいけど、選んじゃってもいいですか?」

    若「うむ」

    尊「わぁ。やっぱキーホルダーかなー、でも色々あるなぁ。自分が買ったのに悩んじゃうよ」

    若「ハハハ」

    夕方になった。女性陣帰宅。

    唯「ただいまー!」

    トヨ「ただいま戻りました」

    尊「おかえりー」

    若「おかえりなさい」

    美香子「留守番ありがとね。あら、ソファーに珍しい組み合わせ」

    覚「お帰り」

    源「お帰りなさいませ」

    若「もう、話は良いのか?」

    覚「また聞かせて貰うよ。なっ、源三郎くん」

    源「はい。お願い致します」

    尊「お姉ちゃん達、また何かおやつ食べてきたんでしょ?」

    唯「バレた?」

    尊「バレるも何も、それも込みのお出かけでしょうが?今日は何食べたの」

    唯「パフェ~」

    尊「あっそう」

    ト「あの、とても美しくて、甘くて、感動しました」

    尊「そうなんですね。それは良かったです」

    唯「トヨには言い方が優しいよねぇ」

    尊「食い意地張ってるヒトと一緒にはしない」

    唯「なんだとー」

    美「唯、中身が追いついてない」

    唯「すんません。たーくん、お母さんに服買ってもらったの!またデート行こうねっ」

    若「そうか。ありがとうございますお母さん。それは楽しみじゃ」

    唯「トヨも買ってもらったから、源三郎もだよ?デート」

    源「は、はい、わかりました」

    唯「だってさ、トヨ」

    ト「唯様、ありがとうございます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    14日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days12~14日14時、姫にお似合いです

    可愛いい娘が二人。そりゃ気分もアガる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子の車で出発。

    唯「今日はどこ行くの?」

    美香子「ショッピングモールよ」

    唯「買い物?また?」

    到着。一軒の店に入っていく美香子。

    唯「ジーンズの店だ」

    美「うん。デニム系で揃えようかと思って」

    唯「え、服買うの?だって」

    美「一月だけだから要らない、はもう言っちゃダメよ。私がそうしたいんだから」

    唯「…はい」

    棚をくまなく見て回る母。

    美「この辺かな。あなた達、細身で脚も長いし。だから体にフィットしたスキニージーンズをね」

    唯「あ、よく伸びるー。え、今はいてるのじゃダメなの?」

    トヨも唯のジーンズを穿いているが、二人とも比較的ダボっとしたゆるめのシルエット。

    美「唯もすっかり色っぽくなってるから、こんなのもいいと思う」

    唯「そぉ?でへへ~」

    美「中身が追いついてないけど」

    唯「すんません」

    美「じゃ、試着してみよう!トヨちゃんまずどうぞ」

    トヨ「は、はいっ」

    トヨが試着中。試着室の中から声がする。

    ト「あの…」

    唯「どしたー?」

    ト「脚の形があらわになって、恥ずかしいのですが」

    唯「どれどれ」

    美「トヨちゃん、ここには私達しか居ないから、見せてくれる?」

    カーテンが開いた。

    唯「いいじゃん!」

    美「いいわよ~。良く似合ってる」

    丈が長めのセーターから、体にぴったりなジーンズに包まれた、真っ直ぐな脚が伸びている。

    ト「これで、良いのでしょうか」

    唯「ばっちしだよぉ」

    ト「そうおっしゃるなら。わかりました」

    美「さすが戦国時代の女性ね。潔くて話が早いわ。はい、次~」

    次に試着した唯。大きめのトレーナーの下から、ジーンズを纏った細くて長い脚をニョキっと出し、その場で運動を始めた。

    唯「あ、スクワットが楽にできる、いいっ」

    美「それが決め手?でもいい感じよ。じゃあそれで、あとスカートを」

    唯「スカート!」

    美「前回はエリさんのワンピースでなんとか持たせたけど。唯にはやっぱりミニ丈かしら~」

    ト「お母さん、楽しそうですね」

    美「娘二人と買い物だもの」

    ト「二人。…嬉しいです」

    美「トヨちゃんには膝下丈位がいいかな」

    ト「私にもですか?」

    美「ふんふふーん。どれがいいかしら~」

    それには答えず、何着か手に取る母。

    唯の囁き「ここは、黙って話に乗っかった方がいいよ。超ゴキゲンだしさ」

    トヨの囁き「はい。ではそのように」

    結局、唯にはミニ丈で少し裾が広がった台形型、トヨにはくるぶし近くまであるマーメイドラインのロングスカートに決まった。

    美「無事完了ね」

    唯「ありがとう!お母さん」

    ト「お母さん、ありがとうございます。私にまで」

    美「気兼ねなく、じゃんじゃん着てね」

    唯「これ、たーくん気に入ってくれるかな」

    ト「源ちゃん、気に入ってくれるかしら」

    美「同時に思うは彼の事ばかり。二人とも、可愛いいわね~」

    店を出た三人。

    唯「お母さん、今日は当然、スイーツタイムありだよね?」

    美「そのつもりよ。一昨日の夜は怒涛の如く行って帰ってきたもの。トヨちゃんにはちょっと気の毒だった」

    ト「いえ、とても楽しく過ごしましたので」

    唯「今日はもーっと楽しいよぉ。何食べよう~」

    ト「食べる?」

    美「またパンケーキ?」

    唯「それもいいけど、まずはパフェにしようよ」

    美「わかった」

    ト「?」

    喫茶店にやってきた。

    美「チョコレートパフェと、フルーツパフェと、レモンティーお願いします」

    店員「かしこまりました」

    唯「わーい!」

    ト「?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    さて、男性陣は今頃何してる?

    続きます。

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    四人の現代Days11~14日土曜9時、職人あらわる

    前にも言いましたが、弱みは唯に対してだけ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。

    唯「あ、そうだ。尊~、私がたーくんにプレゼントしてもらった、花束の写真出してよ。トヨに見せたいから」

    尊「あー、あれね。じゃあ」

    覚「おっ。じゃあ」

    唯「じゃあ?」

    尊「満を持して、アレのお披露目もしよう」

    唯「アレってなに?」

    尊「あの花束さ、ちょっとお花だけ手を加えたんだよ」

    若君「手を加えた。あのように?」

    両親が受け取った方の花束は、ドライフラワーになり、カレンダーの上に飾ってあった。

    尊「ううん。まあ、まず花束の写真出すよ。きっと驚くから」

    唯「ふうん?」

    若「術でも使ったのであろうか」

    唯達が持ち帰ったのと同じ写真を、大きく引き伸ばしてきた。

    唯「いやに親切。こんなにデカくなくても良かったけど」

    覚「おー、この方がわかりやすいな」

    源三郎「花ですか。これは華やかですね」

    トヨ「まあ、艶やか。このような贈り物をいただけたら、そりゃあ」

    源「そりゃあ、何だ?」

    ト「ただの一人言よ」

    若「して、この花がどのように?」

    尊が箱を、覚がシリカゲルの詰まったタッパーを出してきた。

    唯「なになに?!」

    尊「お父さんから見せてあげてよ」

    覚「了解~」

    手袋をはめた覚が、タッパーからそっと中身を取り出す。

    若「お、おぉっ!」

    唯「えーっ!そのまんまじゃん!」

    源「何と」

    ト「同じお花、ですか?」

    尊「はい。なんとか形も色も残せたんですよ」

    唯「すごーい!ねぇ、こっちの箱はなに?」

    尊「前回、花本体は持って行かなかったじゃない」

    若「令和の花を永禄に持ち込むのは良くない、と申しておったのう」

    尊「で、いつになるかはわからないけど、お土産に持たせてあげられたらいいなって思ってさ、作った」

    箱を開けた。

    唯「超キレーイ!」

    花を透明なレジンで閉じ込めた、手作り和物アクセサリーがわんさか出てきた。

    若「櫛や簪…中で花が舞っておる」

    ト「可愛いい…」

    源「丸い玉に紐が付いた品もございますな」

    尊「こうすれば、男の人でも使えるかなって思って」

    源「ほぅ…尊殿は、手練れであらせられるのですね」

    尊「そんな事ないです。でも、思ったより早く渡せて良かった」

    覚「この辺、僕が作ったんだ、この辺は母さんが」

    源「何と。お父さん、お母さんは、全てに秀でておられるのですね」

    覚「またまたー。でも褒められて嬉しいな~」

    若「花がここまでになるのは、どのような仕組みなのじゃ?」

    尊「さっき埋めてた粉で乾燥させて、この透明なレジンは、機械の光で固めるんです」

    若「光?術を持つ光か?」

    尊「兄さん、興味あるなら、まだ花も材料も残ってますから一度やってみます?」

    若「頼む」

    尊「用意しますね」

    早速、食卓に広げて開始した。

    尊「できるだけ、空気の泡が入らないようにするのがコツです」

    若「うむ」

    唯「たーくんがんばって~」

    覚「あい変わらず、唯は見てるだけだな」

    唯「うまくできそうにないもん」

    尊「なんでもただやる、ってモットーのお姉ちゃんが、なんでこういう作業はやんないかな~。謎だ」

    若「出来た。どうじゃ?」

    ト「まあ、お上手!」

    源「すぐに習得され、さすがでございます」

    覚「ギャラリーも手練れだ」

    そうこうする内に、昼になった。美香子がクリニックを終え戻ってきた。

    美香子「あら、レジンアクセサリー作ってたの?」

    尊「兄さんがね。すごく上手なんだよ」

    美「そうなの。天は二物も三物も与えてるわね。ところでトヨちゃん、唯」

    ト「はい、お母さん」

    唯「なに?」

    美「昼ごはん済んだら、私とお出かけしましょ」

    ト「お母さんのお供ですか。喜んで参ります」

    美「唯は?」

    唯「行くよ。たーくんが昼からもこれやるって言ってるから、暇だし」

    美「決まりね。男性陣には家を守っててもらいましょ。尊、少しは勉強しなさいよ?」

    尊「わかってるよ。ここで兄さんの様子見ながら参考書読むから」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days10~13日18時、夜襲?

    両親にはお見通し。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはんの支度中。

    覚「はさみ揚げ、カレー味も作るか?」

    若君「はい!」

    カレーの素の、忠清スパイスを棚から出す覚。

    トヨ「あの、お父さん」

    覚「何だい?」

    ト「棚の品が、全て忠清様のお名前になっておりますが…」

    覚「あ、バレた?カッコ良くない?何となく揃えてみたかったんだよね~」

    源三郎「忠清様が一品ずつ書かれたのですか?」

    若「いや、したためたのは一度だけじゃ。お父さんが分身を作られた」

    覚「いっぱい名前のシール作ったからさ、まだ残ってるよ。帰る時持ってく?」

    若「ハハハ。では頂戴します」

    唯「え?刀とかに、忠清のですってお名前シール貼るの?」

    若「それはせぬが」

    覚「唯が小さい頃さー、シールと見るとタンスや壁のそこら中にすぐペタペタ貼られて、剥がすのが大変だったよ。そういや…大きくなってからも、一騒動あったな」

    唯「あった。ソファーで寝てた尊の顔に貼ったら、後でブチギレされたんだよ」

    ト「あらら」

    源「奔放だ」

    若「微笑ましいのう。様子が目に浮かぶ」

    覚「忠清くん、持ち帰ったらちゃんと隠しときなよ。顔に貼られる」

    唯「たーくんにはそんなコトしないよ~」

    若「しかと心得ました」

    唯「やると思ってるな?」

    晩ごはん。

    覚「どうだい?蓮根のはさみ揚げは」

    源「美味いです。すぐに籠が空になったのも頷けます」

    ト「あの香りのままですね。美味しいです」

    覚「そうかそうか」

    尊「ありがとう兄さん、作るって言ってくれて」

    若「一日遅うなったが、食せて良かったのう」

    尊「兄さんと一緒だから、倍美味しいよ」

    唯「トヨ聞いた?尊いつもこうなんだよ。ここに実のお姉さまが居るのにさ」

    ト「大好きな兄上様なんですね」

    唯「尊が男子で良かった。女子だったら、たーくんの取り合いになってた」

    ト「それは…ないですよ。唯様以外を選ばれるなどそもそも有り得ませんので」

    尊「僕も同感です。ない」

    美香子「うん、ない」

    覚「ないな」

    源「ございませぬ」

    唯「たたみかけられたー。ねぇ、そうなの?たーくーん」

    若「わしに何が足りぬのであろうか…」

    唯「うぇっ」

    尊「あーあ、かわいそうに。お姉ちゃんが疑うから、兄さん悩んじゃった」

    美「そんな二人に耳寄りな話よ」

    唯「なに?」

    美「今夜からは唯の部屋に忠清くんね。予備室には源三郎くん一人で、トヨちゃんは私達の寝室の隣片付けるからそこで」

    唯「やったー!」

    若「そうですか。忝ない。源三郎とトヨも、それで良いか?」

    源「はい」

    ト「はい。やはり夫婦は共にがよろしいですので」

    美香子 心の声(忠清くん、セリフとは裏腹に、ニッコニコだわ)

    美「ふふっ。ご飯済んだら片付け手伝うのよ、唯」

    唯「はいはーい」

    ト「恐れ入ります」

    若「尊」

    尊「なに?兄さん」

    若「尊がもしおなごであったならば、その折は妹として大切にするからの」

    尊「わぁ…ありがとう。嬉しい」

    覚 心の声(こういう所が、忠清くんだな)

    21時。男子達は風呂へ。母と娘二人が二階へ。

    ト「まぁ、畳!」

    美「ちょっと物が多くてごめんなさいね」

    覚と美香子の部屋は二間続きになっており、隣の和室は和箪笥や衣桁や姿見、唯達の着物も畳んで置いてあった。

    美「動かせる物だけ、源三郎くんの部屋に置かせてもらおうかな。あっちは家具がない分広いから」

    ト「運びます」

    唯「トヨの布団取ってくるー」

    セット完了。二部屋を仕切る襖を閉めた。

    唯「お母さん」

    美「何」

    唯「ここだと、源三郎が夜這いしにくくない?お母さん達がすぐ隣だから」

    美「あ、そっか」

    ト「えーっ!なんて事おっしゃるんですか!」

    美「トヨちゃんが向こうに行って、寝込みを襲えばいいんじゃない?」

    唯「そりゃそーだ。がんばれ、トヨ」

    ト「嫌だ、お二人とも、からかうのは止めてください~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    13日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days9~13日14時、後押しします

    どんどん食べさせちゃって。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯とトヨ、スーパーに到着。

    トヨ「こんなに山の様に…野菜が、どれも輝くように美しいですし」

    唯「永禄と比べるとねー」

    ト「あ、蓮根はやはり泥付きなんですね」

    唯「え、ホントだ。泥ついたまま売ってるんだ。知らなかった」

    ト「ご存じない?唯様は、こちらの世でも姫君で、炊事はなさっていなかったんですね」

    唯「うぅ。それは姫君だからじゃないんだけど」

    覚のメモを見ながら、食材をカゴに入れていく。

    唯「えーと、これで全部かな」

    ト「その様ですね」

    唯「あ、アレも買っちゃお!こっちこっち」

    ト「何ですか?」

    菓子売場。

    唯「へへー。アーモンドチョコ」

    ト「これは?」

    唯「種の入った甘味、ってね。たーくんが好きなの」

    ト「好物でいらっしゃると」

    唯「源三郎は、好きな食べ物とかある?」

    ト「共に何か食べる機会などそうなかったので、わかりません」

    唯「ふーん。あ、でもさっきさ、コーヒーおいしそうに飲んでた。気に入ったかもね」

    ト「そうですね」

    会計後。スーパー内の他の店舗前を歩いていると、トヨが足を止めた。

    ト「この寒い季節に、こんなにお花が咲き乱れてるなんて!」

    唯「花屋さんだからねー」

    ト「お花はいいですね。心が華やぎます」

    唯「うん。前にたーくんがね、ここで両腕いっぱーいの花束買ってプレゼントしてくれてね、超感動したの~!」

    ト「まあ…それ、間近で見たかったです」

    唯「それでね、あんまり感動したんで」

    ト「したんで?」

    目を閉じ、唇を尖らせるそぶりをした唯。

    ト「えー、いい!いいですそれ!」

    唯「今思い出しても、キュンだよ~」

    ト「キュン?」

    唯「わっ、うーん。しまった、説明係の尊居ないし」

    ト「ときめき、ですか?」

    唯「あー、それ!」

    ト「まぁ。それでしたら、聞いてる私もキュンです!ご飯三杯はイケます」

    唯「出た。トヨって、こんなに恋バナ好きだったんだね。意外」

    ト「憧れですかねぇ…」

    唯「ありゃ、急にテンション下がった」

    ト「いつ成就するんだろ…」

    唯 心の声(源三郎~、しゃんとせえ!ぐんなりした小童でもあるまいしさぁ)

    帰宅した。

    唯「ただいまぁ」

    ト「ただいま戻りました」

    覚「おー、お帰り。ありがとな」

    唯「すごい、テーブルほとんどできてる!」

    既に食卓に並べて置かれていた。

    若君「ぐらつきはないか?」

    源三郎「良さ…そうです」

    覚「バッチリだな。お疲れ~助かったよ、ありがとう。お茶入れるよ。みんな手洗ってきな」

    五人でお茶タイム。

    覚「唯、これも買ったか。アーモンドチョコ」

    唯「つい~」

    覚「体力勝負の後は甘い物欲しくなるから、彼らにちょうどいいよ。開けるぞ」

    一粒つまんだ唯。

    唯「たーくん、はい、あーんして」

    若「ん…おぉ、より甘く感ずる」

    覚「すっかり慣れたもんだな」

    源「甘い玉?」

    ト「食べられる種が入ってるらしいわよ」

    唯「トヨもどーぞ」

    ト「はい。って、私だけですか?」

    唯「だって、源三郎にはトヨが食べさせるから」

    源「え」

    ト「まあっ」

    若「その通りじゃな」

    覚「知らないのか?あーんして、は基本だ」

    源「お父さんまで…」

    ト「わかりました。源ちゃん、あーんして」

    源「…お、甘くて美味い」

    覚「よしよし」

    唯「いい見張りがついたなぁ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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