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    四人の現代Days95~5日12時、大人への階段

    ぷくぷくさん、お疲れ様でした。私だったら、「切ない」かな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
    もうそんな年齢になるのです。
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    源三郎とトヨは、覚と美香子にアドバイスを受けながら、様々なポーズをとっていた。それを横目に見ながら、隅に寄り小声で話し始めた唯と若君と尊。

    尊「お姉ちゃん達が来るちょっと前にさ。晩ごはんの時に」

    唯「うん」

    尊「お母さんがボソっと呟いたんだ。広告とか増えてきたから気付いたのかな」

    唯「なんて?」

    尊「来年の今頃、唯に市から、成人式の案内が来るわねって」

    唯「あ…」

    尊「兄さんに説明すると」

    若君「いや、話を進めよ。後で詳しく聞く」

    尊「わかりました。で、今回来た時さ、綺麗な打掛着てたじゃない。あれ、両親すごく喜んでたんだよ。振袖姿並に華やかだったから」

    唯「知らなかった。あれ、なら今日なんで振袖じゃないの?」

    尊「結婚してるでしょ」

    唯「あ、結婚してたら振袖NGだったっけ」

    尊「一般的には」

    唯「袴なのはなんで?」

    尊「これはその時にお父さんが言ってたんだけど、お姉ちゃんさ、兄さんに出会ってなかったら、短大くらい行ってたんじゃない?」

    唯「進路とか全然考えてなかったけど、それもアリだったかも」

    尊「で、来年は短大に進学してたら卒業の時期」

    唯「あー」

    尊「卒業式とか謝恩会でさ、女子の皆さん、袴姿になってるじゃない。その時期は電車内がやたら華やかだよ」

    唯「そうだったね」

    尊「袴もいいな、って二人とも言ってた」

    唯「そっか…」

    尊「だから、袴姿は親孝行なんだよ」

    唯「わかった」

    尊「あのさ、都合良く成人式の時期に来られないか、とか思ってない?」

    唯「ちょっと」

    若「唯、それは」

    尊「そもそも今はタイムマシンの作業してないから。一応受験生なんで。だからごめん、無理」

    唯「すんません」

    若「今の唯を、よう見て貰え」

    唯「うん」

    尊「ところで、兄さんのその衣装ですけど」

    若「ん?」

    尊「その登場人物は兄さんに通ずる所があるって、母は言ってました。だからお仕着せではありますけど、ある意味兄さんにピッタリみたいですよ」

    若「そうなのか」

    尊「漫画に描かれた時代の軍服なんで。ざっくり言えば、国を守る人が着る服です」

    若「なるほど」

    美香子が駆け寄ってきた。源トヨが会釈をしている。

    美香子「ごめんねー、お待たせ~」

    源三郎「お待たせを致しました」

    トヨ「すみません」

    唯「おっ、順番が来たね。じゃあ撮りますかー。たーくん、言い忘れてたけど」

    若「何じゃ」

    唯「超カッコいいよ」

    若「ハハ。唯も実に麗しい」

    唯と若君の撮影が始まった。

    美「漫画から抜け出たみたいね~」

    カメラマン「この衣装、よく撮りますよ」

    美「そうなんですか!」

    カ「一定以上の年齢の方に人気ですね。っと、これは失礼しました」

    美「いえいえ、昔の作品ですから当然です」

    カ「この衣装で、こんなにお若い方を撮るのは久々です」

    美「え、って事は」

    カ「私は、ご夫婦でお召しになるのを撮る機会が多いですね」

    美「ご夫婦…私達位の?」

    カ「それもありますね」

    覚の顔を見る美香子。

    美「…」

    覚「ん?」

    美「ううん、やっぱり忠清くんの方が断然いいわ」

    覚「断然。だよな」

    美「だってお父さんだと、捕虜っぽい」

    覚「おいおい」

    最後は、家族7人全員で。

    カ「弟さん、もう少しお姉さんの方に。ドレスの裾に乗らない程度に寄りましょうか」

    唯の囁き「トヨの弟が尊。うんうん」

    若君の囁き「良いの」

    撮影完了。

    唯「お疲れ~。トヨ、着替えに行こっ」

    着替え中。

    ト「こんなに良くしていただくなど、畏れ多くて」

    唯「たぶんさ、尊が永禄に持って帰れるように写真集作ってくれると思うよ。いつでも見れるように」

    ト「至れり尽くせりですね。…どうかしましたか?」

    唯が、着替えの手を止め、何か考えている。

    唯「私、たーくんと永禄で生きてくって決心した時にね、両親に、今まで育ててくれてありがとうって言ったの」

    ト「…はい」

    唯「それからもう2回も戻ってきてるけどね、ちゃんと娘の成長を見守ってくれてるんだなって」

    ト「それは当然です。今回も、唯様の溌剌とした笑顔が見られて、大変喜んでらっしゃいますよ」

    唯「いつか、私も親になる時が来たら、もっとわかるかな」

    ト「はい。そして、必ず、授かれると思います」

    唯「夢で見たしね。トヨも私もね」

    ト「心待ちにいたしましょう」

    唯「そうだね。楽しみは後からやって来る!」

    ト「ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    5日のお話は、ここまでです。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=15

    ナレ:如古坊はチョコを一つ口に入れ、蓋をして忠清の前に置いた。
    如:「残しておかないと唯に何を言われるか。ははっ」
    若:「ん、ふっ」
    如:「それに幸子さんの写真の時も」
    若:「その折も如古坊は何か思うておる様に見えたのでな」
    如:「ふっ」
    若:「何じゃ?」
    如:「成之に聞いたのだが、お主・・・久し振りにお主と言った。お主は唯をおなごと気づくのは遅かったと」
    若:「出会うた場でも気づかなんだ。小僧と申したからの」
    如:「小僧。その時、レディとは言わなかったか?」
    若:「れでい?・・・それは?」
    如:「いや、こっちの事。で?」
    若:「半信半疑であったのだがの、和議の話をした折に、やはりおなごだと。だが、その場ではお前はおなごであろうとは言えなんだ」
    如:「何故?」
    若:「わしが思うに、おなごだと知られたら、わしの側に居る事は出来ぬと思うたのではと」
    如:「そうかも知れんな。だが、成之は初めて見た時に既におなごだと気づいたそうだ」
    若:「のちに兄上に聞きました。ははっ」
    如:「そうか。実は孝君の父親になりたいと。幸子さんも少なからず私を思ってくれていて、事情を知らない彼女が何かを感じたのか、私とは一緒になれないと言ったのだと聞いた」
    若:「唯が申しておった、おなごの勘は鋭いとな」
    如:「そうだな。怪しいと言われたからな。私は幸子さんと孝君には感謝をしている。このような想いを抱かせてくれた事に」
    若:「この世では辛い思いを皆は持ち出陣し戦うておる。わしは戦で敵味方関わりのう命を落とす者を思い悲しみ、だが、死に急ぐ者には情けをかける事は無いと思っておった」
    如:「それは致し方ない事だ」
    若:「ん。それが戦国の世に生きる者の定めなのだと。その思いだけで生きておったが、わしは唯と出会うて、唯が兄上の元に居った折に、これまでに感じた事も無い感情が芽生えた。民を守る事は大切な事ではあるが、それ以上に唯を守りたい、放しとうないとな」
    ナレ:唯が庵で悪巧みを聞き、戻って来た唯に酒を飲ませた時の事だと気づいた。
    若:「如古坊、如何した?」
    如:「いや・・・忠清は意外と情熱的なのだな。ははは」
    ナレ:笑って誤魔化した。
    若:「ん。唯と共に居り、そう思う気持ちが、ことに大きいと考えるようになった。小垣で唯を守る為、平成に戻るように申した折は、まこと、辛かったのだ。だが、わしは今こうして唯と共に居る事が出来ておるが、如古坊、そなたは」
    如:「あぁ、共に暮らしたいと考えた事も。だが出来ぬ事と。クリスマス会以降は幸子さんに会わずに。二人にこの先、家族が出来たとして、その姿は見たくないと思う。忠清が成之を前にして思った感情と同じだ。まことは今一度、会いたいと思っていたが、会ったとならば私の・・・寂しい気持ちだけが残り、この世に戻ってからも思いが残るだろう。会わずに戻った事は私にとっては良かったのだと今は思う」
    若:「だが、如古坊、寂しいとのその気持ちをも忘れなくとも良いのでは無いか」
    如:「そうか・・・熊田さんの奥さんもその様な事を言っていた」
    若:「如古坊が現代に行ったわけは、わしにも分らぬが、その者との善き思い出は如古坊にとっての宝物じゃ」
    如:「あぁ。だが、この話を唯にすれば、からかわれると思うての」
    若:「それは・・・そうかもしれぬの」
    如:「忠清と話していて、現代での話し方とこの世の話し方がゴチャゴチャになっている」
    若:「話している内に戻るのであろう」
    如:「お父さんもそう言っていた。朱に交われば赤くなると。戻ったと言う事なのだな」
    ナレ:寂しそうな表情の如古坊に、
    若:「であろうが、間違いなく如古坊は平成、令和を生きてきたのだ」
    如:「そうだな。そうだ、宗鶴殿の瓜二つの幸助さんに頂いたオセロゲーム、忠清が言っていたそうだな、このゲームで陣取りが出来たならばと」
    若:「あぁ、その様な戦であったれば、穏やかな暮らしが出来るのであろうと思うたのだ」
    如:「一年過ごし、穏やかな里が良く分かった。私もあの場所で生きていけたならと思ったからな」
    若:「そうじゃの」
    如:「そうだな。それに、お父さんが心配していた高山親子が熊田さん親子のように、高山と羽木も仲良くなったことを喜んでいたよ。私は自分のしてきた事は言えなかった」
    若:「そうか。だが、それで良い。唯も父上、母上には高山との仲違いの話はしておったが、兄上や如古坊の関りは申してはおらぬ」
    如:「唯は、我らの先が見えていたのかもしれないとな。まぁ、それは無いだろうが、唯には感謝している。それに尊は唯を尊敬していると言っていたが、尊に口止めされた」
    若:「わしも聞いたが、唯は褒められるとつけあがるからと申しておったな」
    如:「そう言う事だ」
    若:「だが」
    如:「どうした?」
    若:「何故、その」
    ナレ:肉食系フテ猫Tシャツを指した。自分が気に入ったが着られないので別を尊が見つけて注文してくれたと説明した。
    如:「元のTシャツは尊が唯に贈った物だが、何故、この絵だったのか聞いたか?」
    若:「尋ねてはおらぬが」
    如:「私は気になり聞いた。尊がこの絵を偶然見た時に唯にそっくりだと思ったのだと」
    若:「唯に?」
    如:「あぁ。ソファに寝転んで漫画を読んでいた唯に尊が声を掛けると、面倒臭そうに返事をしたその姿と同じだと思って、洒落のつもりで買ったが結局、唯が着る事は無かったのだと」
    ナレ:如古坊の説明で、忠清はその姿を想像して大笑い。夜中だったと両手で口を塞いだ。
    如:「はははっ」
    若:「のう、如古坊」
    如:「ん?」
    若:「如古坊とさしでこうして話したことは無かったと思うての」
    如:「そうだな・・・いつか、成之と三人で穏やかに話が出来る日が来ればいいの」
    若:「そうじゃの・・・では、そろそろ休むとするかの」
    如:「あぁ」
    ナレ:如古坊が立ち上がるとよろけ、忠清が腕を持ち支えた。
    如:「椅子だったから、こうして長く座っている事も無かったからな・・・あっ」
    若:「さようか」
    如:「あぁ」
    若:「ん?・・・如古坊」
    如:「思い出した」
    若:「ん?」
    如:「逃げて転びそうになった時に誰かに今のように支えられたように身体に触れられた・・・そんな感じがしたが」
    若:「そうであったか。だが、分からぬの」
    如:「そうだな・・・では休むとするか」
    ナレ:それぞれの閨へ。部屋に向かいながら如古坊は支えられた感触を思い出し、戻る時にも同じような感触だった事に気づき、
    如:「本当に未来の尊・・・だったのか?」
    ナレ:部屋でジャケットを脱ぐと、ポケットに白い封筒が。速川家の誰かが入れたのだと思った。
    如:「何だろう?」
    ナレ:畳まれたメモを開き驚いた。そこには【木村三吉様 ありがとうございました 神山孝】と書かれてあり、写真が2枚。
    如:「これは・・・孝君?」
    ナレ:スーツ姿の青年の胸元には如古坊が贈ったネクタイ。もう一枚は隠し撮りの様な写真で、消防士の制服を着た青年が仲間と談笑している。
    如:「どうして・・・本当に?」
    ナレ:覚えのある苗字【神山】
    如:「まさか、祥さん?」
    ナレ:本当に祥だとして、祥の優しさは知っているから、祥と別れる時に奥さんになる人も幸せだと言った言葉を思い出し如古坊は複雑だった。
    如:「そうなのか・・・なれば、おめでとうと言わねばならないのだろう。ふっ」
    ナレ:寂しく笑った。写真についても未来の尊なのかどうかも確かめる方法は無い。如古坊は消防士姿の孝に無事で居てくれと祈り、孝の成長を見られ嬉しい気持ちもある中で、大切な物を失ってしまった感情に涙が零れた。翌朝、忠清を呼び、昨夜の自分の感情は隠し、その写真を見せた。
    若:「これは・・・まさか」
    如:「私にも分からない・・・だが、やはり未来の尊であるのだと」
    若:「手立てはないがの、わしもそうなのではと。だが、この事は唯や他の者にも言わずに。それが良かろう」
    如:「そうだな・・・ことにこの青年の事を唯が聞いてきそうだからな」
    若:「であろうの・・・のぉ」
    如:「なんだ?」
    若:「まこと、尊であったれば・・・」
    如:「どうした?」
    若:「・・・いや」
    ナレ:未来の尊であれば、敵から助けたのだと理解できるが、現代に連れて行った事で如古坊と幸子が出会い、それにより二人に辛い思いを抱かせた事に。先の事も分かっていたはずの尊の行動が忠清には理解できなかった。そう考えている時に尊と話したことを思い出した。唯と二人で永禄に戻る許しをもらった翌日に将棋に誘われた。実験室で将棋の一試合が終わった後、装置を見ていた忠清に、
    尊:『僕は自分の為にこれを作りました』
    若:『過去や未来に行き、その者たちの定めが見られるとは、まこと、大した物じゃ』
    尊:『運命か』
    若:『わしは己の行く末は見とうない。だが、唯がわしと共に居っては・・・』
    尊:『分かります。でも、お姉ちゃんは望んで戦国に行くと決めているんですから。今の言葉を聞いたら、私を置いて行くなんて許しませんって鬼のように怒りますよ。お姉ちゃん怒ると怖いですよ』
    若:『では、唯を怒らせる真似はせんようにしないとな』
    尊:『お姉ちゃんは誰から見ても、若君を想っている事が分かります。でも、僕には誰かが誰かを好きになる瞬間は分かりません』
    若:『科学とやらでも人の心は分からぬのか?』
    尊:『分かる方法の機械はあるようです』
    若:『そうか・・・想い人は居らぬのか?』
    尊:『えっ、あっ、いえ、今は居ません』
    若:『いずれ尊の前にも現れるであろう。ならば、このたいむましんで尊の未来が見てみたいの』
    尊:『それは、遠慮しておきます・・・でも、このタイムマシーンが、お姉ちゃんと羽木の皆さんの運命、歴史を変えたと分かっています』
    若:『それは、我らが生きながらえて居る事』
    尊:『はい・・・さっきの話ですけど、人の心は科学で分かっても、奥底にある物は科学でも分からないんじゃないかって思うんです。人の心は複雑で、相手を怒っていても内心は逆とか、優しくしていても本当は悪いとか。昔から口車に乗ってって言葉もありますが正直、今の僕にはその判断は難しいです。厳しい事を言いますが、誰かが幸せになると誰かが悲しむ。そう言った事は世間ではよくある事だと思うんです。若君の時代の戦もそうですが』
    若:『そうじゃの』
    尊:『でも、悲しみを体験した時に、悲しむ人が前を向けるかどうかで、その人の運命が変わるんじゃないかなって・・・あれ、僕、何が言いたかったんだか』
    ナレ:忠清はその時の事を思い出し、目の前に居る如古坊がこの先どう生きていくのかと考えた。
    如:「どうした?」
    若:「ん・・・如古坊」
    如:「なんだ?」
    若:「如古坊は現代に参り幸せであったか?」
    如:「急になんだ・・・あぁ、わしはあの場に居って幸せ・・・だった」
    若:「ん?」
    如:「いや、善き思い出じゃ」
    若:「そうか、お前は前を向いておるのだな」
    如:「はぁ?・・・なんじゃそれは?」
    若:「何も。これは唯に見つからぬようにの」
    如:「あっ、あぁ」
    ナレ:如古坊は懐に仕舞いその場を離れ、歩いて行きながら、忠清の質問の意味が分からず首を傾げた。その後姿を見ながら、
    若:「尊、この場の様子を見ておるのならば、わしにそなたの思いを聞かせてはくれまいか」
    ナレ:尊の声ではなく、忠清を呼ぶ信茂と唯の声が聞こえてきた。
    若:「わしは、幸せ者じゃ。ふっ」
    ナレ:信茂と唯は我先にと前後交互に動きながら忠清の側に来て、忠清の腕に両側から抱き着き、
    じい:「このむじながのぉ、邪魔だてしおって」
    唯:「むじなって言わないでよ」
    若:「して、どうしたのじゃ?」
    唯:「あれっ・・・じい、何だっけ?」
    じい:「そうじゃ、あははは」
    ナレ:二人して用件を忘れた。
    若:「お主らは幸せ者じゃのぉ、あはは」
    ナレ:先に行く若君の後を着いて行きながら、
    唯:「思い出した。お袋様が食事の用意が出来ましたから呼んで来てって」
    ナレ:忠清はその言葉にまた笑った。如古坊は閨に戻り、みんなには見せなかった写真盾に入った写真。みんなが見たクリスマス会の写真の他にメンバーは同じだが、孝が如古坊の膝の上に座っての写真。尊に頼みそれをUSBには入れず、プリントアウトして写真盾に入れてもらった。裏板を外し、写真2枚も中に入れた。
    如:「これくらい持っていても祥さんは許してくれるだとう、ふっ」
    ナレ:寂しく笑った。すると表から、
    唯:「如古坊、起きて、朝ご飯出来たよ」
    如:「あぁ。今行く」
    ナレ:唯の足音が遠のき、
    如:「お父さん、お母さん、尊、今日も唯は元気ですよ」
    ナレ:そして、みんなの待つ部屋へ行った。

    ナレ:唯はせんた君を使っていて、
    唯:「濯ぎの水換えは面倒だなぁ。ホースがあったら良かったかも。改良が必要だね。戻ったら尊に言わなくっちゃ」
    ナレ:そう言いながら洗濯をしていた。それから、覚達が想像した通り、せんた君とスタート君は信茂のおもちゃとなった。唯と吉乃が使用していない時は、信茂が手拭いを入れてグルグル回して楽しんでいた。あまり激しくすると壊れると小平太に注意され、優しく回していた。スタート君も自分が掃除すると言ってスイッチを入れ動くスタート君を追いかけまわし遊んでいた。それに、信茂には渡さない方が良いと言っていた胡椒玉の拳銃を偶然に信茂が見つけてしまった。中にまだ4つ入っていた。ただのおもちゃだと言ったが、引き金を引いてしまった。それも自分に向けて。信茂はしばらく痛みとクシャミが止まらなかったが、知ってしまった信茂はニヤリと不敵な笑みを。如古坊は嫌な予感がした。それはしばらくして起こった。忠清と見回りから戻った小平太めがけて信茂は引き金を引いた。顔に命中してその場で痛がっているしクシャミも涙も。小平太はクシャミしながら信茂を追いかけ、捕まえるとクシャミしながら怒った。そして取り上げられた。シュンとなった信茂は縁側でシャチのぬいぐるみを隣に置き、ピンクの靴下を履いた足をブラブラさせながら、如古坊に貰ったボールペンで小平太の似顔絵を描き、
    じい:「面白さが分からんとは、堅物は誰に似たのじゃ」
    ナレ:小平太の顔に如古坊がされていた様に目の周りに丸、頬にバツを書き大笑い。その頃、信近は胡椒玉とは関係無い所で派手なクシャミをした。

    =現代=

    ナレ:風が止んだ、顔を上げると如古坊の姿は無かった。
    尊:「行っちゃったね」
    美:「無事に戻れたかしら」
    覚:「大丈夫さ。でも、如古坊さんが此処に来た意味は結局分からなかったな」
    美:「そうね」
    尊:「そうだね」
    美:「あっ」
    覚:「どうした?」
    美:「如古坊さんに、ラジオ体操の第二を教えるのを忘れてたわ」
    尊:「何それ?」
    美:「こっちの話よ。ふっ」
    ナレ:覚と尊が顔を見合わせ首を傾げた。すると、紙が飛んで来て尊の足元に落ちた。
    尊:「何だろう?」
    ナレ:驚きの声を上げた。覚も美香子もその紙を見た。それは写真だった。そこに写っていたのは少し大人びた忠清と唯。そして二人の間に緊張気味の表情の男の子と唯の腕に子の姿、唯は空いている手でピースサイン。

    お読みいただき有難うございました。
    皆様が○○○の中にどのような言葉を当てはめたのでしょうか?
    その様な事を考え【如古坊の楽しくも○○○思い出】を終了いたします。

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    四人の現代Days94~5日11時30分、母の思い

    二つの作品を、コラボレーションしました…勝手ながら。
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    源三郎の前に進んだトヨ。

    トヨ「源ちゃん」

    源三郎「…」

    美香子「あまりの美しさに声も出ない?はい、唯と忠清くんは移動開始よ」

    唯「えー」

    若君「行って参ります」

    カメラの準備も整い、源三郎とトヨのウェディングフォトを何枚か撮り始めた。

    尊の囁き「うーん。二人とも戦国時代の人とは思えない」

    美「しっかり源三郎くんの背筋も伸びてるし」

    覚「いい、いいよ~」

    自分のスマホでもバシャバシャ撮る覚。しばらくすると、カメラマンが振り向いた。

    カメラマン「ご両親も、ご一緒にいかがですか?」

    美「両親!あら~。撮ってもらう?」

    覚「おほー。それはお願いしようかな」

    美「尊は?」

    尊「僕は後でいいよ。まずはトヨ姉さん達と、4人で撮れば?」

    美「そうしよっか」

    トヨの囁き「トヨ姉さん…」

    源三郎の囁き「有難いな」

    ト 囁き「うん…」

    その後、尊も入れて5人で撮影。一段落した所に、唯と若君が衣装に着替えて戻ってきた。

    尊「へぇ」

    美「あらん、いい!いいわ~」

    唯「お母さん、これかわいいんだけど、なんのコスプレ?」

    美「ほれぼれしちゃうわ~。二人ともよく似合ってる」

    唯「だからこれなにって」

    美「忍さんと紅緒ちゃん」

    唯「は?」

    美「はいからさんよ~。唯の前髪が眉辺りでパツンと切ってあって、後ろ髪が長くなってたから、これだ!って思って。忠清くんの髪、ちょっと長めだけど、少尉もそんなに短髪ではなかったから」

    唯は、紫に白の矢絣柄の着物に海老茶色の袴。若君は榛色の軍服。帽子も靴も揃っており、サーベルまで持っている。

    覚「確か、大正時代を描いた少女漫画だったよな?まさしく大正浪漫って感じだ」

    唯「マンガのコスプレ?」

    美「家に全冊あるんだけど。読んでないの?あー、少女漫画全然興味なかったものね」

    尊「ちょっと!話は後にしなよ、待たせてるよ!」

    尊の後ろで、源三郎とトヨが立ったまま待っていた。

    美「あらごめんなさい。どうする?もう少し二人で撮る?今回ね、急遽だったからチャペルとかには移動できないのよね」

    唯「そうなんだ。じゃあ、もっといろんなポーズで撮ったら?」

    尊「なら、あれはどう?」

    美「何?」

    尊「源三郎さんなら、お姫様抱っこも軽々とできるんじゃないかな」

    覚「おっ!」

    美「あらん。見たいわ~。出来そう?って聞くのも失礼かしら」

    唯「見たいー」

    若「どうじゃ源三郎」

    源「…はい。では仰せの通りに」

    ト「え、きゃっ」

    ふわりと、トヨの体が持ち上がった。

    美「トヨちゃん、カッチカチになってる」

    撮影小物で手にしているブーケを両手で握ったまま、固まっている。

    ト「源ちゃん…恥ずかしい」

    源「俺もだから。暫く辛抱しろ」

    美「トヨちゃん。源三郎くんの首に両腕を回すと、抱える側が少し楽になると思う。ブーケ持っててあげるわ」

    ト「え!それは近付き過ぎではないですか」

    覚「まあまあ」

    そんな様子を眺めている、唯と若君と尊。

    唯「キレイだな、トヨ」

    尊「お姉ちゃんも、女学生って感じで悪くないよ」

    唯「ほめてくれるの?珍しい」

    尊「お母さんのリクエストに応えるってのは、いい」

    唯「えー?ムチャ振りじゃないの」

    なぜかここで、尊が溜め息をついた。

    若「どうした、尊」

    尊「お姉ちゃんが、やっぱりいつも通りだなって」

    唯「は?」

    若「それはつまり、この装束には深淵な意図があると?」

    尊「少なくともその袴姿には、込められた意味があります」

    唯「そうなの?んー、それって、今聞いてもいい?」

    若「口止めは、されておらぬか?」

    尊「されてません。お姉ちゃんは知っておくべきだと思うし」

    唯「じゃあ教えて。あっちが盛り上がってる内に」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=14

    ナレ:如古坊が①のUSBをまぼ兵くんにセット。翌日もその場所に行ったが戻れず、次に期待し、みんなに見せる為にと覚、美香子、木村先生、尊と如古坊で写した。
    信:「若君様に伺っておりましたが、まこと、木村殿に似ております」
    如:「先生は木村様の子孫だと」
    唯:「やっぱり、そうだったのね、納得」
    ナレ:家の手伝いをしている様子。城跡の写真を見せると、その場に行かなかった信茂達は黙ってしまった。
    若:「初めこそ驚いたがの。だが、我々が生きた証が現代にも残されている。そうではないか」
    小:「さようですね」
    源:「ですが、これ程までの立派な石垣が城内に?」
    信:「さよう。何故?」
    じい:「考える事は無かろうて、我らの子孫がこの先、館を築いたのじゃよ」
    唯:「そうだね。若君と私の・・・いやぁん」
    小:「何を申しておる」
    唯:「いいじゃん」
    若:「じいの申す通りだとわしも思うぞ。尊の書物に戦国の世が終わり、太平の世が訪れ、我らの子孫が生き残り、城壁も整えたのやも知れんからの」
    吉:「わたくしもその様に存じます」
    唯:「私たちの未来は明るい!」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:その後、祥の代わりにコテージに泊まった時の写真。ステーキに真っ先に食いついたのは唯。
    唯:「え~、如古坊いいなぁ。凄く贅沢してんじゃん」
    如:「これは祥さんの方で用意をしたんだ」
    唯:「へぇ。でも凄いね」
    ナレ:祥の失恋話は言わずにいた。もし現代に来ることが出来たとして、唯なら祥に根掘り葉掘り聞くだろうと美香子は分かっていたので口止めされていた。
    唯:「でも、どうして代わりに行ったの?」
    ナレ:聞かれた如古坊は困ってしまった。そこで忠清が助け船を。
    若:「あの場に向かう林に似ておるではないかの」
    唯:「そうかも、似ていますよね」
    ナレ:話が逸れた。如古坊は唯に見えないように忠清に頭を下げた。その次はソフトクリームを食べている写真。着ぐるみと一緒の写真。クリスマス会の用意の写真からクリスマス会の様子。
    如:「宗之さんが信茂様を大好きだと言っていましたよ」
    じい:「わしも宗之殿が好きじゃよ。宗熊と同じにのぉ」
    如:「それにこの上着はテーラーに勤めている宗之さんが私にと作ってくれました」
    信:「てら?」
    唯:「洋服を作る人?店?って事ですかね」
    信:「良く分からんが、そうか」
    じい:「着ても良いか」
    如:「はい」
    ナレ:袖を腕に巻くようにしてジャケットを着たが大きかった。
    唯:「なんかお父さんの上着を着た子供みたい。あはは」
    じい:「笑うては・・・もう良い」
    ナレ:脱いで如古坊に返した。
    吉:「唯、その様に申してはなりませんよ」
    唯:「は~い。ごめんね、じい」
    ナレ:信茂は現代で覚えたあっかんべぇをした。
    唯:「何それ」
    ナレ:唯も同じことを。周りのみんなは呆れ顔。
    吉:「唯・・・ふぅ・・・して、如古坊殿の隣に居るおなごとお子は?」
    如:「この親子は・・・熊田さんの知り合いで」
    吉:「さようですか。優しそうなお方ですね」
    如:「はい、優しいですし、この子孝君はとても母親想いで」
    唯:「ねぇ、若君」
    若:「ん?」
    唯:「あの人、ふきさんに似ていない?」
    若:「ふき殿?」
    小:「さようです、ふき殿に似ております」
    如:「ふきとは?」
    小:「若君様の側室にとお迎えしたお方でしたが・・・あっ」
    信:「どうした?」
    ナレ:今まで全く気付かずにいた小平太は、あの時のおなごが唯であることに気づき唯の顔を見た。見られた唯は小平太が気付いたと分かり、言わないでと言わんばかりに首を振った。だが、あの時は唯だったと気づいても、ふきが帰った事と唯の事を結び付けられるまでには至らなかった。
    小:「あっ・・・ですが、何故?」
    ナレ:忠清も二人の様子に小平太も気づいたのだと分かった。
    若:「・・・私に愛想を付かれたのであろう」
    信:「殿に伺いましたが、ふき殿はそのように申してはおりませんでしたぞ。わたくしには勿体のうございますと」
    若:「良いではないか。過ぎた事」
    唯:「そっ、そうですよ・・・・でも、この人、如古坊に寄り添ってない?」
    如:「た・・・たまたまだ」
    唯:「なんかその言い方、怪しいなぁ」
    如:「あっ、いや」
    若:「唯、終わったようじゃ。取り換えてはくれまいか?」
    ナレ:丁度①が終わったので好感を唯に頼んだ。如古坊はチラッと忠清を見た。忠清は軽く会釈。
    ②をセットした。正月飾りの初詣での様子。年明けから怒涛の誕生日会。1月23日は尊。1月31日が唯。2月5日が美香子で3月4日が覚。如古坊は生まれた日を知らないと答えたが、美香子が2月5日と決めた。理由は[にょ]が[2]、[こ]が[5]。尊が坊はと聞くとそれはいいじゃんとなり、2月5日に美香子と一緒に誕生日を祝った。
    唯:「私が居なくても誕生日会してくれたんだ。でも、お母さん、ダジャレで決めるなんて」
    如:「そうだろうが、私は嬉しかった」
    唯:「そっか」
    ナレ:そして、尊の大学合格の話を聞いた後、ステーキを食べる如古坊の姿にまた唯が、
    唯:「え~なんでぇ・・・またぁ・・・戻ったら絶対ステーキ食べるからね」
    吉:「そなたの気持ちも分かりますが、ここは尊殿の合格とやらを祝うのでは」
    唯:「あっ、まぁ・・・尊、おめでとう」
    ナレ:笑顔の尊に向かって言った。それから順番は違うが、水族館の写真が映し出された。
    じい:「如古坊、水族館は楽しいじゃろう」
    如:「はい。とても。信茂様の気に入れたシャチのショーも見ました。迫力に驚きました」
    じい:「そうじゃろう」
    源:「如古坊殿は現代の者と何ら変わりのう様に見受けられます」
    唯:「みんなみたいにカツラ被らないからそう見えるんじゃないかな」
    吉:「そうですね」
    源:「まことに、尊殿とも変わらず」
    如:「でも、この頃はまだ見聞きする事にドキドキしていたんですよ」
    信:「であろうの。だが、良い顔をしておる」
    如:「ありがとうございます」
    ナレ:次の写真に皆が爆笑。正月遊びの羽根つきでの敗者の顔。如古坊は墨で目の周りに丸、頬にバツ。
    如:「羽子板が思う様に振れず、負けてばかりでした。お父さんも負けて口の周りに書かれたのに、それは撮らせ無いと逃げ回って」
    ナレ:その時の様子を思い出して如古坊が笑った。如古坊の嬉しそうな姿に皆も笑顔。そして次の写真に、
    じい:「坂口殿!」
    信:「まことに」
    如:「造園業、植木職人でありました。私も顔を見た時は驚きました」
    唯:「作業しているの見た事あるけど、おっさんに似た人はいなかったと思うけど」
    如:「それもそのはずさ。この業者に頼むようになったのはこの3年くらいだそうだ。唯が戻っている時は頼んでいなかったからな」
    唯:「そうだったんだ・・・でも」
    若:「唯?」
    唯:「カメラで写してるものは端に日付が入っているから、日付が無い物も私でも写した時期は何となく分かるから尊にしちゃ珍しいなって思ったの。」
    小:「何がじゃ?」
    唯:「写真は写した順に並べるんじゃないかなって。1と2がバラバラだなぁって」
    如:「それは・・・尊がUSBに入れるデータを整理していた時に、試しに私に捜査してみないかと。で、何処をどうしたのか、慌ててまた何かしてしまったようで、並べられていた写真がゴチャゴチャになって…でも、尊はこれはこれで面白いと許してくれて」
    若:「そうであったか・・・ふっ、如古坊の慌てふためく様子が容易に想像できるの。ははは」
    唯:「ほんと。あはは」
    ナレ:反論も出来ない如古坊だった。そして、最後に映像が。
    覚:『皆さん、お元気ですか。如古坊さんから写真を見たと聞きまして、無事に戻られたことにみんな喜びました。僕たちにも如古坊さんはこの時代に来た理由は分かりません。それでも皆さんのお仲間の如古坊さんと過ごせた事も僕たちの宝物になりました』
    美:『この映像を皆さんが如古坊さんと一緒に見てくれていると信じています』
    覚:『大丈夫さ』
    尊:『お姉ちゃん、若君、皆さんは僕たちの生涯の友達です』
    唯:「私もその中って変じゃない」
    尊:『あっ、ごめんね。怒んないでね』
    唯:「タイミング良いんじゃん、わざとだなぁ、ははっ」
    覚:『如古坊さんは不安の中で過ごしていたことは分かります。一年はやっぱり長かった。この映像は3月24日に撮影しています。4月28日に戻れると信じて、この映像が無駄にならないことを祈っています』
    尊:『如古坊さんは、僕たちにも、とても優しかった』
    じい:「も?」
    如:「・・・さぁ」
    覚:『若君をはじめ皆さんと会えたことをこれからも僕たちの宝物として生きていきます。楽しい時間を有難うございました』
    ナレ:三人が手を付き頭を下げた。見ているみんなも同じ様に。
    唯:「私にはコメント無し」
    如:「寂しいか?」
    唯:「別に」
    如:「私は一年あの家で過ごして、お前、唯がどれほどみんなに愛されているかが良く分かった。そのあたたかい家で一年も暮らせたことは私にとっても宝物だよ。お父さんたちは何も言わなくても唯、お前は三人の気持ちは分かっていると思っているんじゃないか」
    唯:「まぁね。まっ、お父さんたちが褒められてるみたいで嬉しいな」
    ナレ:尊に口止めされていた尊敬していると言う事を迷った末に言わずにいた。
    如:「私は現代に行った理由もいまだに分かりませんが、行けて良かったと思います」
    唯:「何だったんだろうね・・・まさか、未来の尊の仕業」
    小:「仕業とは」
    唯:「あっ、いえ、悪い意味じゃないよ」
    如:「お父さんもそんなこと言っていたが、尊は違うんじゃないかって」
    唯:「ふ~ん・・・ふぁ~・・・ごめん」
    ナレ:唯は大あくび。吉乃が目をこする唯を立ち上がらせ、
    吉:「夜も更けておりますゆえ」
    若:「そうじゃの。また明日」
    信:「さようですな」
    ナレ:横を見ると小平太に寄り掛かりいつの間にか色紙の飾りを掛けたまま信茂は眠っていた。小平太が信茂を抱え閨へ。唯もフラフラと閨へ。忠清がまぼ兵くんからUSBを抜き取り如古坊に渡し、
    若:「如古坊も難儀したのだな」
    如:「いいえ、とても楽しく過ごせました」
    若:「そうか。お袋殿、すまぬが、ちと湯を沸かしてはくれまいか?」
    吉:「はい」
    若:「お袋殿、この物を使うて」
    ナレ:手動式マッチを渡した。
    吉:「唯より先に使うては」
    若:「構わぬ」
    ナレ:如古坊は仕組みを伝えた。
    若:「こおひいをの」
    如:「眠れなくなるのでは?」
    若:「父上に聞いたのか?」
    如:「あぁ、色々教えてもらっての。私も付き合います」
    若:「良いのか?」
    如:「はい」
    ナレ:吉乃は幕を片付けて、湯を沸かしに襖をあけ部屋を出た。開けた時に風が。
    若:「平成もこの世も風は同じじゃの」
    如:「そうだな。だが匂いが違う」
    若:「ん?」
    如:「此処は草の匂いだが、あの地では時より何処からかカレーの香りがした事もあった。ははっ」
    若:「さようか。父上のかれいも美味であったの。食したか?」
    如:「あぁ、何度も」
    若:「さようか」
    ナレ:如古坊の何度もの言葉に一年という時間を感じた。沢山持たせてくれたレンコンのはさみ揚げも残り五個。
    若:「皆、夕餉を済ませておったのに、よう食べたの」
    如:「そうだな。私は夕飯代わりだったが、あまり食べられなかったな」
    若:「ならば、残りは」
    ナレ:しばらくして、吉乃が湯と湯飲みを二つと、椀に飯を入れ持ってきた。
    吉:「如古坊殿、夕餉はまだなのではと存じますが」
    如:「お分かりで。ありがとうございます」
    ナレ:保温は無いから勿論飯は冷めていたが、吉乃の優しさが嬉しかった。
    吉:「容易に火を熾すことが出来ました」
    若:「さようか。お袋殿も」
    吉:「わたくしは休みます。あっ素頂戴いたします。ではおやすみなさいませ」
    ナレ:吉乃は閨へ。如古坊は飯を食べる前に、瓶の蓋に粉を湯飲みに入れ湯を注いだ。
    若:「香ばしい香りじゃ」
    ナレ:忠清はコーヒーを飲み、如古坊は飯を食べ、そして自分もコーヒーを。
    若:「父上のこおひいとはちと違うが、これもまた美味じゃの。添て、木村先生と会うたのはわしの墓の前だと申したの」
    如:「あぁ。木村先生は忠清の事を知ってから、たびたび手を合わせに行っていたと」
    若:「そうであったか」
    如:「一度、墓の前に案内されたが、私は手を合わせなかった」
    若:「何故?」
    如:「何故も何も・・・確かに450年も経てば、それは分かっている。だが、忠清はこうして私の前に居る。共に生きているとの思いが強くての、手を合わせる気にはならなかった。それを先生に話したら、そうですねと言ってくれた」
    若:「さようか」
    ナレ:如古坊の気持ちを嬉しく思った。
    如:「尊に命を全うするように、自ら命を絶つことはしないでと言われた。私は、勿論、全うすると約束した」
    ナレ:その言葉を聞いた時に忠清は小垣城で、唯が『生きて』と言った事を思い出していた。
    如:「忠清?」
    若:「そうじゃの、唯や尊が我らの命を長らえてくれたのだからの。我らは全うしなくてはの」
    如:「あぁ。そうだ、忠清、芳江さんの事を聞きました」
    若:「芳江殿」
    如:「あぁ、忠清の助言で心を決めて嫁がれたと」
    若:「そうであったか。唯とわしが永禄に戻る前にの、芳江殿が崛起糸申し菓子をこしらえて持ってきてくれたのだが、よう笑う者であるに、何やら仔細があるように思えての話を聞き、わしの思いを話したまでじゃ」
    如:「それが良かったそうだ。それから嫁ぎ先のメロンを私は食べたが、甘くて美味かった」
    若:「ん?・・・めろん」
    如:「果物です。翌日に戻れるのであれば持ち帰る事も。だが、時期が違って」
    若:「さようか、残念じゃの」
    如:「唯の好物だと。だからそれを言えば何を言われるか分からないからな」
    若:「そうじゃの、わしも黙っておこう」
    ナレ:忠清は唯の閨の方角を見て微笑んだ。如古坊はもう一杯飲もうと湯を注いだ。
    如:「祥さんの時にも話を逸らしてくれて」
    若:「申せない事のように思えての」
    如:「お母さんから口止めされていて」
    若:「さようか」
    如:「忠清は口が堅いから。祥さんは結婚を決めた女性にフラれてしまって、予約も用意も整っていたので、行ってくれないかと頼まれたんだ」
    若:「そうであったか」
    如:「あぁ。その者は優しい人で、いい人が現れると信じています」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:忠清ももう一杯と湯を注いだ。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=15へ続く
    予告の際は14回で終わるはずでしたが、なんやかんやと増えて、1回追加となり
    次の15がラストとなります。

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    四人の現代Days93~5日11時、父の思い

    血が繋がっていても、いなくても。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    写真館へ、車二台で出発。

    唯「お母さん、ワンピースなんだ」

    美香子「車運転するしね。トヨちゃんの衣装を一緒に選びたいから、着替える時間が惜しくて着物はやめたわ」

    到着後、女性陣が早速、ドレスの衣装部屋に入る。

    トヨ「目が眩む程の…」

    美「悩むわよね~」

    唯「急に言われて決めろって困るよね。壁にいっぱい写真が貼ってあるから見てみたら?」

    ト「はい」

    モデルが着用する写真を見ていくトヨ。

    ト「あら、これは」

    唯「いいのあった?あー、なるほど!」

    美「トヨちゃん、そのスカート気に入ってくれてるものね。その形なら、あっちにコーナーあるわよ」

    何着か見繕っていたが、

    ト「このお衣装が気になります」

    唯「だったら着てみよう!」

    早速試着するトヨ。

    美「あらぁ。すごくいい!自分に何が似合うかを、よくわかってるのね~」

    唯「なんか、トヨ!って感じ」

    ト「お恥ずかしい」

    美「他を試す?」

    ト「いえ。こちらをとても気に入りましたので」

    美「そうね。ホントによく似合ってるわよ。何て言うか、こう表現するとトヨちゃんは嫌がるかもしれないけれど、充分大人の女性が着るからこそ、しっくりくるドレス」

    唯「うん、わかるぅ~」

    ト「今のわたくしだから良いのですね。嬉しい」

    その頃、男性陣はタキシードを選んでいた。

    覚「忠清くんの時みたいに白とか、あとグレーとか色あるけどな」

    源三郎「このように煌びやかないでたちなど…」

    尊「じゃあ黒?」

    源「まだそれでしたら…」

    覚「遠慮がちだね。照れてるのかい?君も主役だよ?」

    若君「何事も経験じゃ」

    覚「その通り。じゃ、着てみような」

    覚と尊で選んだ、黒のタキシードを試着した源三郎。

    若「なかなか良いぞ」

    源「お恥ずかしい限りでございます」

    覚「どうした、背筋が伸びてないぞ?隣に立つトヨちゃんは、きっと目を見張る程美しいと思うから、ちゃんとエスコートしないと」

    源「エスコート、ですか?」

    尊「えーと、付き添うとか、守るとかかな」

    若「それは、源三郎が最も得意とする所ではないか」

    覚&尊「確かに」

    そこに、美香子が様子を見にやってきた。

    美「あら、いいわね。こちらもよく似合ってる」

    覚「トヨちゃんの方はどうだ?」

    美「決めたわよ。今アクセサリー選んでる」

    尊「え、もう?」

    若「やはりトヨは仕事が早い」

    美「なーんか、背中が丸いわね」

    源「華やいでおるのは、分不相応でございますゆえ」

    美「まぁ、ドレス姿のトヨちゃん見れば、背筋もピーンと伸びる筈よ」

    覚「おー、そんなにか」

    美「楽しみにしてて。支度完了なら撮影室に来てね」

    いよいよ源トヨの撮影に入る。源三郎は既に待機しており、トヨの支度待ち。

    唯「源三郎、ネクタイもベストもすっごくいい感じ。王子様みたい!カッコいい!」

    源「褒めていただくなど…」

    美「いいわねぇ。あ、二人揃ったら、唯と忠清くんは着替えに行くわよ」

    唯「えー、撮る所見れないの?」

    美「全員の写真も後で撮るから。あ、来たかな?」

    店員「花嫁様、入られます」

    覚「おー」

    尊「わぁ」

    若「うむ」

    源「…」

    ゆっくり入ってきたトヨ。ドレスの襟元は少し立ち上がったスタンドカラー。袖も長くほとんど肌が出ていない。細身に作られてはいるが、全体に豪華な刺繍が施されている。そのスカート部分が…

    尊「今日穿いてたスカートに似てるね」

    覚「大人の女性、だな」

    美「いいでしょ、このマーメイドライン」

    太もも辺りからくびれて細くなり、膝下からは潤沢に布地が使われ、裾まわりは波打つ程になっている。

    覚「綺麗だ。うんうん…」

    美「え、お父さん、泣いてる?!」

    覚「娘をもう一人嫁に出すかと思ったら、こみ上げるものが」

    ト「お父さん…」

    覚「わー、そんな風に声かけられたら、涙が止まらないよ」

    尊「源三郎さんを差し置いて感動しまくってる。いい話だけどさ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=13

    ナレ:駐車場からあの場所に向かい、時を待った。
    如:「その時がいつ来るのか分かりませんから・・・この一年、本当にお世話になりました。楽しく過ごせたのも皆さんのおかげです。先生にもお世話になりました。本当にありがとうございました」
    覚:「僕たちも、如古坊さんと過ごせたことが・・・こちらこそ、ありがとう。元気で。皆さんによろしくお伝え下さい。気を付けて」
    美:「如古坊さんとの思い出も私たちは忘れないから。身体に気を付けてね」
    尊:「如古坊さんも知っているように、これからも戦はある。でも、命を全うするまで生きて・・・絶対に自らなんて事はしないで」
    如:「尊・・・約束する、どんな事があっても生き抜くと・・・本当にありがとうございました」
    ナレ:四人が頭を下げた。すると挨拶が終わるのを待っていたかのように突風でみんなが顔を伏せた。そして風がやみ、覚と美香子と尊が顔を上げるとそこに如古坊の姿は無かった。

    =永禄=

    ナレ:如古坊は目を開けると暗闇。
    如:「戻れた・・・だが」
    ナレ:見渡すと敵に追われた場所と変わりはない。
    如:「同じ場所?・・・時間は?」
    ナレ:如古坊は自分が戻った時の場所について聞いたことがあった。唯の場合は戦国から平成に飛んだ場所と戻ってきた場所は違ったと聞いていたと尊から話を。
    如:「どうなんだ?」
    ナレ:すると、草を踏み音が聞こえ振り向くと、
    男:「何奴!」
    如:「えっ、過去?」
    ナレ:兎に角逃げたが追いつかれそうになった時、ポケットから拳銃を出し構えた。隠れていた月が出てきて、その月明りで男は自分に何かを向けているのが見え止まった。引き金を引いた。至近距離だった為か顔の前ではなく額に命中して胡椒が飛び出した。
    男:「なっ、痛い!痛い!・・・ハクション、ハクション」
    ナレ:痛みとクシャミが止まらず男はその場にうずくまる。その隙にその場から逃げ黒羽城へ一目散。
    如:「尊、ありがとう」

    ナレ:その頃、唯は信茂のスウェットを洗っていた。夕飯前に外に居た信茂が通り雨に濡れ、お気に入りのピンクのスウェットに着替えたが、食事中に小平太にちょっかいを出し、その弾みで汁を溢してしまった。唯が吉乃に命じられ洗濯していたのだった。
    唯:「なんで私が・・・明日だって。お湯じゃないし、冷たいし、はぁ、洗濯機が恋しい。しょうがないけど、もぉ」
    ナレ:文句を言いながら洗っていた。すると表で音がした。
    唯:「なに?」
    ナレ:戸口の側に行き、様子を見ていると人影が。
    唯:「誰?」
    如:「唯、私だ」
    唯:「私って?」
    ナレ:近づいてくる姿を見て、
    唯:「えっ?・・・にょ・・・如古坊?・・・でも、その格好・・・え~!」
    ナレ:そこへ忠清が来て、
    若:「唯、洗濯は済んだのか。支度が出来たのだが」
    ナレ:唯は外と忠清の顔を交互に見て、
    唯:「わっわっ・・・若君様」
    ナレ:草履を履き、唯の横に来て、
    若:「如何した。ん・・・如古坊?」
    じい:「唯、まだかのぉ。支度が出来たのだがの・・・どうしたのじゃ?」
    ナレ:戸口に側に来た如古坊を見て、
    じい:「・・・え~!」
    ナレ:信茂の声に小平太達が。普段から冷静である源三郎も驚きの声を上げた。常に冷静な吉乃は、
    吉:「話は奥で」
    若:「そっ、そうじゃの」
    ナレ:如古坊の周りを囲むように奥へ。
    唯:「若君様、あのTシャツ」
    若:「ん。ならば如古坊も」
    唯:「うちにって事ですよね」
    若:「そうであろうの」
    ナレ:二人も奥へ。如古坊の前に並んで座ったが、どう話を切り出していいのか分からずにいた。
    如:「何から話したら・・・私も唯の家、速川家で一年過ごしました」
    じい:「えっ!一年じゃと!」
    如:「はい」
    若:「如古坊、それは?」
    如:「はい」
    ナレ:敵方に見つかり逃げている途中でタイムスリップして平成に。木村先生に出会い速川の家に連れて行ってもらった。そして何度も戻る事に挑戦したが戻れず一年を過ごした。そして一年後の同じ日に戻ることが出来たと説明した。
    若:「速川家に居った事はその身なりで分かるが、たいむましんは?」
    如:「尊はタイムマシーン出はないだろうと言っていましたが、結局のところ原因は分かりません。戻るこ事も掛けでした」
    小:「そうであったか。で、如古坊」
    如:「はい?」
    小:「その袋から香ばしい匂い、もしや」
    如:「はい、そうでした。お父さんが皆さんに召し上がってもらいたいと」
    ナレ:リュックからペンギンのぬいぐるみを出してその後、タッパーを2つ出した。
    じい:「そのぬいぐるみは、ぺんぎんとか申した物ではないか。可愛いのぉ、わしにか?」
    如:「いいえ、これは私が気に入りましたので買ってもらいました」
    じい:「如古坊には似合わんぞ、わしにくれ」
    如:「お断りします」
    じい:「良いではないかぁ」
    小:「おじい様、その様な事を申してはなりません。おじい様にはしゃちがございましょう」
    信:「父上、さようです」
    ナレ:手を伸ばした信茂の両腕を信近と小平太が掴んだ。
    じい:「放すのじゃ!」
    ナレ:その様子を見て如古坊は笑い出した。
    吉:「如古坊殿どうされた?」
    如:「速川の皆さんが、このぬいぐるみを見た信茂様が欲しがり、お二人が止めるだろうと話していたので、本当にそうなったので可笑しくなって」
    若:「父上らにはお見通しであったのだな」
    ナレ:そう言われた信茂はシュンとなった。如古坊はリュックのポケットから小さな紙袋を出して、
    如:「これはお父さんが信茂様にと」
    じい:「ん?・・・・なんじゃ」
    ナレ:ペンギンとシャチのキーホルダーだった。
    唯:「キーホルダーね」
    じい:「これはどの様にするものじゃ?」
    ナレ:唯がつまみを外し、信茂の法被の結び目に引っ掛けた。
    唯:「此処を外すと取れるから」
    ナレ:信茂は二つを見て、
    じい:「これも、可愛いのぉ」
    ナレ:信茂の機嫌が直った。タッパーの側の袋の中身を唯が出した。
    唯:「靴下?・・・なんで?」
    ナレ:基本色とその色の濃淡の3足セットだった。
    如:「お母さんが、戦国に持ち帰った物もあるけれど、新しい靴下も必要だろうと。成之と阿湖姫の分もあります」
    ナレ:吉乃は残った物で良いと。先に信茂が持ったのがピンク系だった。
    唯:「だと思った」
    じい:「ん・・・如古坊?」
    如:「構いませんよ」
    じい:「ほれぇ」
    ナレ:唯の顔を見た。
    唯:「はいはい」
    若:「わしも残った物で良い」
    ナレ:小平太と信茂は緑系、源三郎は黄色系。唯がチェック柄の赤系は阿湖姫で、同じチェック柄の紫系を成之にと選んだ。残ったは茶系と青系が2組。吉乃は茶系を取り、青系を忠清と唯の前に置いた。
    唯:「若君とおそろっ」
    若:「唯?」
    唯:「お揃いって事ですよ」
    若:「さようか。お袋殿はその色で良いのか?」
    吉:「はい」
    唯:「お袋様良いの?」
    ナレ:そう聞きながらも唯はしっかり青系の靴下を握っていた。
    小:「唯、申しておる事と行動が伴っておらぬように見えるが」
    唯:「そんな事ないですよぉ。寒い時にはこっと・・・時代劇で見てると足袋履いてる人も居るけど、裸足が多いじゃん。こっちに来て本当だって思ったし、みんな我慢強いなぁって思っててのよね」
    如:「私も、常に裸足であったから、靴下を初めて履いた時は暑く感じた。でも、今は思わなくなった」
    じい:「そろそろ、ほれっ」
    如:「そうでした」
    ナレ:みんなは懐かしい匂いに笑顔になった。
    吉:「ただいま箸を」
    若:「このままでよい」
    ナレ:最初に忠清が手にして一口。
    若:「父上のレンコンのはさみ揚げは美味い」
    ナレ:みんなも食べていた。
    源:「唯様は召し上がらないのですか?」
    唯:「ちょっと、あの時の事を思い出してて」
    吉:「唯?」
    唯:「好きだけど結構食卓に出ててね。ちょっとだけ飽きた時期があって。でも、初めてこの時代に来て、その後、平成に戻った時は、満足に食べられなかったから、むさぼるように食べたけど・・・あっ」
    ナレ:吉乃の顔を見た。
    吉:「唯がこの世の料理と違う物を食していた事を知りましたから。気にする事な無いのですよ」
    唯:「お袋様」
    じい:「そうじゃの。色々知らぬものを食べた。まことに美味かった。ぴざとやらも美味かった。
    そうじゃ、餅も美味かったの。如古坊も食べたのかの?」
    如:「残念ながら、餅つき機が壊れていたので」
    じい:「さようか。のぉ、まだ袋に入っておるようだが」
    如:「そうでした。唯」
    唯:「なに?」
    如:「尊が作った物だ」
    ナレ:手動式マッチ、手動式洗濯機と掃除機を私、使い方を説明した。
    唯:「へぇ、そう。名前にひねりが無いなぁ」
    如:「ふっ」
    唯:「なに?」
    如:「お父さんも同じ事を言っていた。やはり親子だなぁと」
    唯:「そっ。でも、マッチは一つだとなぁ」
    如:「きっと唯は言うだろうと尊も分っていて」
    ナレ:別の袋から本体に装着出来る様に替え用5個を出し、戻るまでの間に時々作っていたと説明した。
    唯:「尊ありがとう」
    ナレ:それから覚と美香子からだとお徳用マッチ10箱、鍋掴みのセットと唯愛用のシャンプーと詰め替え用。
    源:「この大きな袋なのは、このように様々な品が入っておるからなのですね」
    如:「初めの頃は、もう少し小さな物でしたが、皆さんが特に唯を思って、このように」
    若:「唯、父上、母上、尊に感謝せねばの」
    唯:「うん。みんな有難う・・・でもさ、如古坊」
    如:「ん?」
    唯:「如古坊の話し方、家で話してるみたいで」
    如:「その事は皆さんに言われたよ。初めの頃はいつも通り話していたけれど、テレビの内容も分かるようになってから変わったのかもしれない。お父さんに言われて改めて気づいたくらいだから、自然にそうなっていたんだろうな」
    唯:「そうだったんだ」
    じい:「如古坊」
    小:「おじい様?」
    じい:「それが欲しいと申すのではない・・・わしらが唯と尊により危のう目から逃れる事が出来た。だが、それもたいむましんとやらがあっての事。平成に参った折も、戻れる手立てを尊が探してくれた。望みがあった。だが、如古坊は戻れる手立てが見つかぬまま、一年と長い年月を過ごした。戻れる手立ても無いままにの・・・どれほど」
    若:「そうじゃの。話す事もこの世とは違う物にならざるを得ない事態に立つ如古坊の不安はいかばかりか。我らには想像も出来ぬ事じゃの」
    如:「確かに不安はありました。でも、速川の皆さん、木村先生たちが親身になって下さり過ごした一年は私にとって掛け替えのないものになりました。木村先生も皆さんによろしくと言っていました」
    唯:「先生にもみんなを会わせてあげたかったなぁ」
    若:「そうじゃの」
    吉:「如古坊殿は、以前とは顔つきが違うように見受けられますね」
    如:「理容室に行きさっぱりしたからでしょうね。ははっ」
    唯:「祥んとこ?」
    如:「そうだ。友達が出来た。来ることがあったらまた来てくれと言われて」
    唯:「そうだったんだ」
    ナレ:唯はせんた君を持って、
    唯:「尊は分かってるよね。明日から使う。でも自動が良かったなぁ」
    ナレ:それを聞いて如古坊は笑った。
    唯:「なによ?」
    如:「尊もそう言うだろうって。でも、何か遭って感電したらって安全性を考えて手動に」
    唯:「そうなのねぇ。でも」
    吉:「良いではないか」
    唯:「まぁ」
    じい:「わしも洗濯するぞ」
    ナレ:如古坊は笑い、それも速川家では想像していたと。
    信:「父上の行動は読まれておるのですね。ははは」
    ナレ:信茂はふくれっ面。
    如:「そうでした」
    ナレ:如古坊はリュックの大きなポケットからクラッカーと畳まれた色紙の飾りを出し、
    如:「信茂様に」
    唯:「じいはうちの家族に随分気に入られてるのね」
    若:「じいの人徳であろう」
    唯:「人徳って言うか、じい自体が面白人間だからじゃないの」
    じい:「むじな、それは褒めておるのか?」
    唯:「またぁむじなって・・・そうですよ、褒めているんですよ。じいはみんなのマスコットだからね」
    じい:「ますこと?・・・なんじゃそれは?」
    唯:「可愛いって事ですよ。このぬいぐるみと同じです」
    じい:「さようか。ははっ」
    ナレ:信茂は色紙の飾りを首にかけ上機嫌。
    如:「その飾りは私が作ったのです」
    じい:「お主が。奇麗じゃよ」
    如:「ありがとうございます。それから唯と忠清に」
    若:「わしらに?」
    なれ:如古坊は雑誌のページを開き見せた。
    唯:「え~!若君じゃん」
    若:「まこと似ておるの」
    唯:「若君にもこんな格好させて、デートしたかったなぁ」
    ナレ:みんなも忠清そっくりな人物に驚いていた。その後、巾着袋からアーモンドチョコの箱を出して唯に渡した。唯は早速一つ口に。
    唯:「あま~い。また食べられるなんて」
    ナレ:若君は知っているが、食べる機会のなかった他のメンバーに如古坊がアーモンドの事を話してから食べさせた。
    源:「甘くて美味ですね。色々食べさせて頂きましたが、その中で、けえきとはまた違う甘さでございますね」
    信:「そうじゃの。これもまた美味い」
    ナレ:みんなチョコが気に入った。次にインスタントコーヒーの瓶を出して、
    如:「コーヒーも好きになりまして持たせてもらいました」
    若:「さようか。父上の淹れてくれたこおひいも美味だが、その物も?」
    如:「忠清が飲んだ物とは違うが、これも美味い」
    ナレ:忠清はその瓶を手に取り、
    若:「楽しみじゃの」
    ナレ:信茂がそれを持ちたいと言ったので忠清が渡すと、何故かもう一瓶を持ちマラカスのようにシャカシャカと音を立てて楽しんでいた。唯は何でもおもちゃにする天才だと思った。そして、リュックのポケットからUSBを2本。写真が入っている事は知っているが、2本を目の前にして、長い時を如古坊が過ごしたのだと言葉が出なかった。みんなの気持ちが分かり、
    如:「私は大丈夫です。さぁ、見ませんか?・・・でも、もう幕が?」
    小:「おじい様がまた写真を見たいと申されて、そこに如古坊が戻ったのだ」
    如:「そうですか。丁度良かった。では、皆さん見て下さい。それから唯」
    唯:「何?」
    如:「私が平成に行った三日後に元号が令和になって」
    唯:「れいわ?・・・そう言えば行った時そんなこと言ってたような」
    ナレ:如古坊はボールペンでキーホルダーの入っていた袋に令和と書いて見せた。
    唯:「これで令和ね。そっか、帰る?戻る?まっいっか。令和になるんだ。ねっ、若君」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:現代に行く手立ても無いがそう返事をした。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=14へ続く

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    四人の現代Days92~5日日曜5時45分、野望?

    尊は、もう少し体重があってもいいんじゃないか?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに下りてきた若君。

    若君「ん?おぉ、尊。早いの」

    尊「兄さん、おはよう」

    源三郎&トヨ「おはようございます」

    食卓に、尊と源三郎とトヨが座っていた。

    若「いかがした?」

    尊「僕、体を鍛えたいんです。源三郎さんとトヨさんに、兄さんが来るまで相談にのっててもらいました」

    若「ほぅ。瑠奈殿に関わる話か?」

    尊「わかっちゃいますよね。はい。実は昨日、彼女が転んだ時に支えきれず、一緒に倒れてしまって」

    若「それはならぬの。大事なかったか?」

    尊「はい、大丈夫でした。そこで、特に体幹、体の芯を鍛えるにはどうすればいいかなって」

    若「源三郎は、どう答えた?」

    源三郎「何事も満遍なくなさるが良かろう、と進言させて頂きました」

    若「わしも同感じゃな」

    尊「そうですか。わかりました」

    若「さては」

    尊「へ?」

    若「いずれは瑠奈殿を」

    そう言いながら、両手で下から抱え上げるような仕草をする若君。

    尊「えっ、お姫様抱っこですか?!」

    若「何処へ拐おうと?」

    尊「いえいえ!そんな予定はありません!」

    若「フフフ」

    源トヨが、キョトンとしている。

    源「瑠奈様が姫で?」

    トヨ「抱っこ?」

    尊「あ、そっか。説明が要りますね。と、言いつつ僕はまだできないし…兄さん、やって見せてもらえませんか?」

    若「良かろう。ならば尊、立て」

    尊「やっぱり僕?そうですよね、ではお願いします」

    若君が、尊をひょいとお姫様抱っこした。

    源「あぁ、あの。公園でくるりと回った折の」

    ト「くるくる、と仰っていたので、てっきりそう呼ぶと思っておりました。…いいですね」

    尊「兄さん、さすが。全然芯がブレてない」

    そこに、覚が下りてきた。

    覚「ん、ん?朝っぱらから何だ?!」

    尊「今後の展望についての話し合い」

    覚「抱えられながら答えるなよ。今朝の稽古は終わったのかい?」

    若「今からいたします。この尊姫と共に」

    尊「あ。はぁい、頑張りまぁす」

    覚「だから何の真似なんだ」

    朝ごはん後。写真館へ出かける為、それぞれ支度をしているのだが、なぜか美香子だけがバタバタと忙しそうに動いていた。

    唯「着てく服って、これでいいの?」

    美香子「あ、うん、いい。トヨちゃんも前開きのを着てるわよね」

    ト「はい」

    唯「お父さんも尊もスーツなのに?」

    唯と若君と源トヨは、ほぼ普段着に近い。

    美「トヨちゃん、髪まとめるから座って。その次は唯ね」

    唯「もしかして、なにか衣装着るの?」

    美「そうよ」

    唯「見に行ってないけど」

    美「唯と忠清くんのは、私があらかじめ決めといた。もうサイズもわかるしね」

    唯「へー?」

    美「源三郎くんとトヨちゃんのは、向こう行ってから決めるの。急遽お願いしたら、予約時間より早く行けば選ばせてくれるって話でね」

    話している間に、トヨの髪形が完成。

    唯「お団子になってる。小さく作ったね」

    ト「お母さん、ありがとうございます」

    美「はい、唯座って」

    唯「はいはい。あー?なんか見えてきた、見えてきたぞっ」

    ト「見える?」

    唯「ねぇお母さん、トヨの衣装って、ウェディングドレスじゃない?」

    美「当たり」

    唯「わーぉ!」

    美「明日の話が決まった時、そうだちょうどいい機会だわって思いついてね。はい、唯も出来た」

    唯の髪は、後ろ上半分を結び、頭頂部に少し高さを作ったハーフアップだった。

    唯「あ、たーくんとおソロだ」

    美「はい、次はお化粧するから、洗面所へ移動!」

    唯「忙しいな」

    洗面所に三人。お化粧スタート。

    ト「あの、伺ってもよろしいでしょうか。わたくしは、何を着せていただけるのですか?」

    美「あー、ウェディングドレスの説明が要るわね」

    唯「結婚式に花嫁さんが着る、キレイな衣装だよ!」

    ト「えっ…唯様の、あの飾られたお写真のような?」

    美「そうね」

    ト「まあ!」

    美「時間はあまりないけど、気に入ったドレスがあるといいわね。勿論、源三郎くんもタキシードよ」

    ト「それは…それなりにお代がかかるのではないですか?」

    美「もう、つつましいと言うか。家族写真だからみんなひっくるめてよ。唯達も衣装は着るし、トヨちゃんと源三郎くんの晴れ姿を是非見たくて。だから気にしない!」

    ト「わかりました。お気持ち、ありがたくいただきます」

    唯「二人とも、絶対似合うー。ところで、私とたーくんは何着るの?」

    美「現地でのお楽しみ」

    唯「へぇ?ま、いいや。トヨのドレス姿超楽しみだし」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、66から91まで

    no.923の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    66no.924、12/28、忘年会は素敵な自宅レストランで

    67no.925、12/28、忘年会終盤。納得の理由と折り鶴

    68no.926、12/29、大掃除。ラブラブカップルが羨ましいトヨ

    69no.928、12/30、若君の墓に驚く源トヨ

    70no.929、12/30、墓についての見解

    71no.932、12/31、文明の利器で外回りの大掃除も捗る

    72no.937、12/31、両親の想い出話で後押しできるか

    73no.940、12/31、見守り隊は三人

    74no.941、12/31、プロポーズ完了。尊に新展開

    75no.943、12/31深夜、みつきは瑠奈推し

    76no.946、1/1、トヨの雑煮は時を超える

    77no.952、1/1、一歩踏み出してみた尊

    78no.953、1/1、尊の初デートの日程決まる

    79no.954、1/1、瑠奈のジタバタを観察

    80no.957、1/1、令和でもぜひ結婚式を

    81no.959、1/2、何人目でもいい唯が息災ならば

    82no.960、1/2、永禄と現代の匂い考

    83no.962、1/3、おせちもいいけどパンケーキもね

    84no.964、1/3、駅名は城が由来

    85no.966、1/4、準備がはかどり過ぎ。近隣の城の今は

    86no.967、1/4、心動かされながらデートスタート

    87no.969、1/4、城跡巡り。瑠奈の兄はイケメン

    88no.971、1/4、尊と唯の優しさがかいま見えた

    89no.972、1/4、やっぱり尊の女神なのかも

    90no. 974、1/4、リスペクトからのカップル誕生

    91no.976、1/4、木村と吉田の謎は解けるか

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    四人の現代Days91~4日16時、振り返りは大切

    学校行ってる内に聞いとけよ、って話。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    カフェのたけるな。ドリンクは、それぞれもう三杯目になっていた。

    瑠奈「はぁ。そろそろ帰んないといけないなぁ。名残惜しい~」

    尊「そうだね」

    瑠「同じ気持ち?」

    尊「うん」

    瑠「ふふっ。良かった」

    尊「あのさ、家にパソコンってある?」

    瑠「パソコン?私の部屋にあるよ」

    尊「比較的新しい?」

    瑠「お兄ちゃんのお古を、去年買い替えたばっかりだけど全然使ってない。どうして?」

    尊「ビデオ通話ができるんじゃないかな」

    瑠「え、それって、尊と大きい画面で顔見ながら話せるの?!」

    尊「うん。詳しいやり方は教えるよ」

    瑠「わぁ。尊って、パソコンにも強いんだ。どうしよう、知れば知る程好きになる」

    尊「照れるよ。大した事じゃないのに」

    瑠「お願いがあるの」

    尊「何?」

    瑠「通学時間、朝は急行乗ってもらっていいけど、帰りだけは一緒がいいな」

    尊「あー。いいよ」

    瑠「大事な時期だから、あまり尊の時間を取り上げたくない。帰り、ちょっとだけゆっくりになるけど」

    尊「気遣ってくれてありがとう。まぁ何と言うかさ、今は周りを刺激しない方がいいんじゃないかな」

    瑠「こっちは勉強で頭一杯なのに、お前ら朝からベタベタくっつきやがって、みたいな?」

    尊「ははは、そうだね」

    瑠「じゃあ、日中も我慢する」

    尊「それがいいと思う。ではそろそろ。暗くなる前には家に着いて欲しいし」

    小垣駅のホーム。電車がやって来た。

    尊「見送ってくれてありがとう」

    瑠「当然でしょ。今日は超幸せだった。あー、電車のドアが二人を分かつのね」

    尊「今生の別れじゃないからさ」

    ドアが閉まった。尊が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた瑠奈。

    尊 心の声(三日後にはまた会えるってわかってても、こんなに切なく感じるんだ。…二度と会えないってわかってて、お姉ちゃんを現代に送り出した時の兄さん、どれだけ辛かったか。今なら痛い程わかる)

    ぼんやりと、流れる景色を眺める。

    尊 心(恋愛は超初心者でからきしだけど、こうやって学んでいけるんだな…)

    尊「ただいまー。うぇっ」

    帰宅した尊に、一斉に視線が集中。皆、何か言いたそうな顔をしている。

    唯「どうだったどうだったどうだった!」

    尊「当たりが強いな。楽しかったよ」

    唯「るなちゃんとはこれからどうすんの?」

    尊「あー、付き合う事になった」

    一瞬、全ての音が静まった。

    唯「なにぃ~!尊のクセにあんなかわゆい子が彼女なんて、ありえない!」

    尊「クセにって。はいはい、そうですね」

    美香子「よ、良かったじゃない。ジェットコースター的な展開でちょっとびっくりだけど」

    唯「ねー、自分からコクったの?」

    尊「いや、向こうから」

    唯「うっそぉ!ますますありえない!」

    尊「ひでぇな。少しは肯定しろよ」

    唯「で、OKしたんだ。ヒューヒュー!ねぇ、なにが決め手だったの?」

    尊「決め手というか、兄さんが…」

    唯「は?なんでたーくんが出てくんの」

    それを聞き、騒ぎを遠巻きに見ていた若君が近付く。

    若君「わしが、いかがした?」

    尊「来た波には乗れば良い、って言ってたのを思い出したから」

    若「…吉田殿か」

    尊「そうです。ありがたい訓話の中で」

    覚「あの時か。そうかそうか。そうやって自分の身に置き換えられるのは、それだけ尊が成長した証拠だ。いやぁ、良かった良かった」

    唯「話が見えない。吉田?」

    尊「お父さんか兄さんに聞いて。鞄置いてくる」

    唯「あ、ねぇねぇ!頼みがあるんだけど」

    尊「何だよ」

    唯「違う吉田の話」

    尊「へ?」

    吉田城跡の話をする唯。

    唯「木村先生に、メールで聞いて欲しい」

    尊「わかった」

    若「尊、もう一つ、木村殿に尋ねて欲しいのじゃが」

    尊「何でしょう」

    若「語られてはおらぬが、木村政秀の末裔ではござらぬか、と」

    尊「あー。そっくりだって言ってましたね。わかりました。早速連絡しますね」

    美「あ、尊、あとね」

    6日の式の話を耳打ちした。

    尊「了解~」

    尊は二階に上がっていった。

    源三郎「写真を拝見した限りではございますが、お二方は瓜二つ」

    トヨ「私も驚きました」

    美「もし先生が武将の末裔だったなら、歴史を教えていらっしゃるみたいだし、アピールすればいいのにね」

    唯「なーんにも言ってなかったんだよね。聞いてもいないけど」

    若「語られぬ由があるのやも知れぬ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ありがたい訓話は、令和Days54no.658にて。

    4日のお話は、ここまでです。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=12

    ナレ:戻れなかった3月24日からもう直ぐひと月経つ。今の如古坊にとっても、いつもの生活を過ごしていた。夕飯が終わり夫婦仲良くソファに座りテレビを見ていた。尊と如古坊はオセロをしている。如古坊は次何処に置くか考えていたがふと思った。
    如:「尊」
    尊:「はい?」
    如:「この世に来て一年経つが、向こうの世界は同じ時間が流れているのだろうか?」
    尊:「タイムマシーンなら設定は1分だけど結果3分だった。例えば12ヶ月だから向こうの時間は36分くらいになるだろうけど、あくまでもタイムマシーンでの計算だから、同じ時間が流れているかもしれないし、全然時間が経っていないかもしれないし、過去に戻っているかもしれないし・・・ごめんなさい、僕には」
    如:「謝る事では」
    尊:「うん」
    ナレ:如古坊が黒の駒を置くと次から次へと黒に変わり如古坊の勝ち。
    尊:「だいぶ強くなったね」
    如:「そうか。だが、お母さんには勝てないよ」
    美:「年季が違うからね。あはっ」
    如:「そうですね。尊もう一番」
    尊:「うん。あっ、その前に」
    ナレ:尊は実験室へ行った。
    覚:「どうしたんだ?」
    ナレ:少しして戻って来た。
    尊:「渡そうと思っていた物。これも持って行って」
    美:「拳銃って、そんな物騒な物」
    尊:「違うよ。元はBB弾ピストル。それを改良したんだ」
    覚:「それを唯に?」
    尊:「これは如古坊さんに」
    如:「私に?」
    尊:「そう。もし同じ場所、同じ時間に戻ったとして、如古坊さんがこっちに来る切っ掛けになった敵と会ったらこれを使う様に」
    美:「どう使うの?」
    尊:「此処に胡椒玉が入っている。で、相手の顔めがけて引き金を引くと胡椒玉が顔の前で破裂して、目つぶしにもなるし、敵がクシャミできっと身動きできないだろうからその隙に逃げるって事」
    覚:「そう言う事か。で、その名前は?」
    尊:「ん~、今回は浮かばなかったんだ」
    ナレ:覚は思った。この作者、手抜きしたなと。
    如:「胡椒は私も経験したが、しばらく大変だった」
    ナレ:食卓に焼きそばが出された。みんなが胡椒をかけるので真似て、胡椒を吸い込んでしまいクシャミが止まらなかった。
    如:「だが」
    尊:「何か問題?」
    如:「大いなる問題。もしこれを信茂様が知ったらと思って」
    美:「教えない方が良いんじゃないかしら」
    尊:「そうかも。見つからないようにして」
    ナレ:もし信茂が知った場合は、特に小平太が被害に遭うのだろうと思った。そして、風呂に入る前に、もう一番。今度は尊が勝った。

    ナレ:4月26日の夕飯時に、
    如:「最後にもう一度、祥さんに髪を」
    美:「そうね。いいんじゃない。でも明日は月曜だから、お父さん乗せて行って」
    覚:「そうだな。予約は?」
    ナレ:美香子が佳津子に連絡して予約をお願いした。
    美:「2時なら大丈夫だって」
    覚:「分かった」
    如:「すみません」
    覚:「一人で大丈夫ですよね。送ったら僕はちょっと買い物に」
    如:「大丈夫です」
    ナレ:この一年で色々覚え、一人でも不安は無かった。
    如:「私は自分でも現代の者のように思います。お父さんと行ったスーパーも初めはキョロキョロしているだけでしたが、今は普通に買い物もできます。便利な物と思っていた物も今は特別にとも思わず使います」
    尊:「そうだね。でも、戻ると、如古坊さん戻るんじゃないでしょうか」
    覚:「そうだな。仕事で標準語で話していても地元に戻るとその土地の言葉になるとか聞くからな。如古坊さんも」
    如:「そうかも知れませんね」
    美:「祥さんに居なくなること話すの?」
    如:「そのつもりです。挨拶したいので」
    美:「そうね。もし、もしもの話だけど、戻れなかったとしたら、延期したとか適当に言えばいいだろうしね」
    覚:「そうだな」
    ナレ:如古坊は食器を持ち流し台に行き洗い始めた。
    覚:「僕がやりますから」
    如:「いいえ、洗わせて下さい。初めは驚きながらこの場に立っていましたが、今はスポンジに洗剤をたらし洗う、この作業も普通に思えています」
    覚:「そうですね。皆さんに話を聞いていたとはいえ、驚きもありましたよね」
    如:「はい」
    覚:「後は、僕が。如古坊さん、お風呂に」
    如:「すみません。じゃ、先に入ります」
    ナレ:風呂の用意をして湯船につかると、この広い風呂に入る事は無いのだなぁと。そして最初に入った時の事を思い出していた。
    如:「あ~あれから・・・一年。何度この風呂に入ったのだろう」
    ナレ:そう言って、すくい上げた湯を顔にバシャと。

    ナレ:翌日朝食の後、如古坊を祥に見せに送った。
    祥:「いらっしゃい。どうぞ。で、今日は?」
    如:「お任せします」
    祥:「ではシャンプー台へ」
    ナレ:洗髪を受けながら、もう人の手で洗ってもらう事は無いのだなと思っていた。鏡の前に戻り、
    如:「実は、旅に出るので」
    祥:「そうなんですか。仲良くなれたのに残念です・・・旅かぁ」
    如:「はい」
    祥:「宛ては?」
    如:「気ままな旅です」
    ナレ:聞かれたらそう答える様にと覚に言われていた。
    祥:「いいですねぇ。私も、そんな旅がしてみたいですよ」
    ナレ:如古坊はどう答えて良いのか分からず黙っていた。
    祥:「気を付けて下さいね。で、またこっちに来る事があったら、此処に来てくださいね」
    如:「ありがとうございます」
    ナレ:鏡に映る如古坊の顔が少し寂しい表情に見えたので話を変えた。
    祥:「この間、母にお見合いをしたらって言われまして」
    如:「おみあい?」
    ナレ:如古坊が意味を聞いたのだが祥はそのまま続けた。
    祥:「はい。私も、お見合いが嫌がって事じゃないんですけど、大恋愛ってなんて夢もあるので・・・可笑しいですか?」
    如:「いいえ」
    祥:「まぁね、ドラマみたいな」
    如:「ドラマ?」
    祥:「例えば、出会った時は最悪だったのに、その二人が愛し合う様に・・・ヒャ~、自分で言ってあぁ恥ずかしい。今の事は忘れて下さい」
    如:「はい、聞かなかったことに」
    祥:「まぁ、そんな事があるとは思えませんが」
    如:「夢を見る事はいけない事ではないと思いますよ」
    祥:「そうですよね。ほんと三吉さんって、良い人ですよね。一緒に居て和みます」
    如:「そう言ってもらえて嬉しいです。祥さんの奥さんになる人も幸せだと思いますよ」
    祥:「ありがとうございます。もう少し夢を見ようと思います・・・はい、今日も色男に出来ましたよ」
    ナレ:支払い方法も覚えた如古坊は支払いながら、現代の金をもう使う事は無いんだなと思った。札をジッと見ていた如古坊を心配して声を掛けた。
    如:「いえ」
    祥:「そう・・・三吉さん、元気で」
    如:「はい。祥さんも」
    ナレ:ドアノブに手を掛けると、
    祥:「あれっ、おじさん迎えに来ないの?」
    如:「道も分かりますので、歩いて行こうかと。一年居た場所を見ておこうと思いまして」
    祥:「そうですか。じゃ、気を付けて」
    ナレ:祥は表に出て見送った。
    祥:「三吉さんって不思議な人だったなぁ」
    ナレ:自分でもどこがと言う事ではないがそんな気がした。如古坊はゆっくり歩いて景色を見ていた。
    如:「もう、此処に来ることは無い。そうでなくてはいけないんだな」
    ナレ:しばらく歩くと消防署が見えてきた。消防士が作業をしているのを見ていた。消防士が主役のドラマを見たことがあった。
    如(心の声):(人の為に命をかけて、本当に大変な仕事だな)
    ナレ:すると見覚えのある車が如古坊の横で停まった。
    覚:「祥君に如古坊さんが歩いて帰ったって連絡をもらってね」
    如:「そうでしたか。すみません」
    覚:「いいんですよ。乗ってください」
    如:「はい。では・・・城跡を見たいので連れて行ってもらえますか?」
    覚:「いいですよ、行きましょう」
    ナレ:城跡へ向かい、駐車場に停めて二人は石垣まで歩いて行った。
    如:「忠清が450年の時の流れを痛感したと言っていました。話を聞くに私もそう感じましたが、忠清は我々の生きた証が此処に残っているとも。この世で一年暮らして感じたのですが、我々が滅びた後のこの姿を見る者が居る。それを私も生きた証と喜ばしく思えるのだと」
    覚:「そうですね。歴史とは人生。誰かの人生をまたその先の人が見るんです。歴史は続くって、誰かが言ってたな。誰だったっけ?」
    如:「お父さん?」
    覚:「いえ。じゃ、戻りますか」
    如:「はい」
    ナレ:如古坊は振り返り、石垣に向かい深々と頭を下げた。

    ナレ:27日の夕飯の後に荷物の整理をしていた。
    如:「尊」
    尊:「はい?」
    如:「明日、学校を休ませる事になって」
    尊:「大丈夫ですよ。気にしないで下さい」
    美:「そうよ。一日くらい構わないって」
    如:「それに、お母さんにも」
    美:「大丈夫よ。明日は午後の診察時間短縮したから。スタッフも患者さんも優しいから。今回だけだし、最後だからね」
    如:「はい」
    覚:「荷物になって申し訳ないんだが、レンコンのはさみ上げを持って行ってもらいたいんだけどな」
    如:「そうですね、みんなも喜びます」
    尊:「喜んでもらえるだろうけど、あまり作り過ぎない方が良いと思うよ。お姉ちゃんがお米の袋とか持って行った時のリュックくらいの大きさになると逃げる時に大変だよ」
    覚:「そうだね、加減するから」
    如:「沢山作って下さい。大丈夫です、体力には自信がありますから。唯が持てたのであれば、そのくらい私も持って走れますから」
    覚:「はい。じゃ、明日は朝から頑張るから」
    美:「それはいいけど、私たちの食事は忘れないでね」
    覚:「大丈夫さ。あはは」
    ナレ:そこに木村先生から電話が。
    木:《夜分すみません》
    覚:「大丈夫です。どうしました?」
    木:《明日は、見送りに行けないので、如古坊さんにご挨拶を》
    覚:「そうでしたか。如古坊さん、木村先生が」
    如:「今晩は」
    木:《今晩は。とうとう明日だね》
    如:「はい」
    木:《大丈夫、戻れるから》
    如:「信じています。先生にもお世話になりました」
    木:《いえ、私は何も。でも、素敵な経験が出来ました。あなたに会えたことが》
    如:「ありがとうございます。先生、身体に気を付けて下さい」
    木:《ありがとう、君も気を付けて。じゃ、明日は会えないけれど、君の事は生涯忘れないよ。ありがとう》
    如:「礼を言うのは私の方です。先生の事も忘れません。戻りましたら先生の事も唯や忠清たちに話します」
    木:《ありがとう。では、皆さんにもよろしくとお伝えください》
    如:「はい。では、失礼します」
    ナレ:電話を切り、木村先生の言葉を伝えた。
    覚:「先生には本当にお世話になったな・・・お母さん?」
    美:「先生、遠慮してくれたのかもしれないわね」
    覚:「遠慮?」
    美:「出来るだけ立ち会ってくれていた先生が、最後とした日に見送れないって事は無いんじゃないかなって」
    覚:「う~ん」
    美:「最後だから、私たち水入らずでって考えてくれたのかもなぁって思ったのよ」
    覚:「そうかも知れないな」
    如:「私もその様に思います」
    ナレ:みんなは電話機の方を見ていた。お休みと挨拶をして尊の部屋に。本棚の古い本を手にして、
    如:「忠清に聞いたのだが、歴史を知る本があったと。これ?」
    尊:「そうです。若君に先に起こる事態を知り天下でも取るのかと聞いたら、そんな事は考えていなくて、みんなの為に先に起こる事を知り、みんなを守るのだって」
    如:「忠清らしい。穏やかな世の中にしたいと言っていた」
    尊:「若君が戦国に戻る前に、この穏やかな里で暮らせたらって」
    如:「忠清の気持ちは良く分かる。私もこの世を知らなければ思う事も無かっただろう。でも、一年暮らしていて、ならば自分もこの世界で生きていたいと思ったのだから」
    尊:「まぁ、当然かな」
    如:「だが、私は戦国時代の人間だ・・・私は、此処での暮らしは生涯忘れません」
    尊:「僕たちも忘れません。だって、如古坊さんとの思い出が多いですから」
    如:「そうだな。でも、信茂様がその言葉を聞いたら、肩を落とし残念がるだろうな。私に色々なは事を話してくれた。とても嬉しそうに」
    尊:「そうかも知れませんね・でも、それだけ此処の生活を楽しんでくれた事、僕たちは嬉しいです。じゃ、休みましょうか」
    如:「あぁ。おやすみなさい」
    ナレ:尊が灯りを消した。

    ナレ:決戦の日。朝食、昼食と忘れず覚は用意をして、その後レンコンのはさみ揚げを黙々と作っていた。如古坊を祥の店に送り届けた後、大きめのリュックを買ってきていた。前回のリュックから入れ替えていた。ぬいぐるみは道具やタッパーにつぶされるだろうと最後に入れる事にした。診察を終えて戻ってきた美香子が、
    美:「コーヒーはこの前より賞味期限の遅い物に。これをね」
    ナレ:前回は1瓶だったが、2瓶用意した。
    如:「ありがとうございます。これでしたら当分飲めますね」
    美:「若君も好きだったしね。インスタントだけどね。でも楽しみね」
    尊:「お母さん?」
    美:「この雑誌を唯が見たらって思ったら」
    尊:「そうだね。はしゃぐ姿が目に浮かぶよ」
    如:「そうだな」
    ナレ:如古坊がリュックに胡椒玉のピストルを入れようとした。
    尊:「これはポケットに入れていた方が良いよ。鉢合わせでもしたら直ぐに使える様に」
    如:「そうだな。これがあるから安心だよ」
    ナレ:如古坊がチョコの箱を入れようとしたが、揚げ物と一緒だと溶けてしまうからと尊が巾着袋を作りその中に入れて、リュックのフックに掛けた。タッパー2つ。
    尊:「随分作ったね」
    覚:「入りきらない分は夕飯に・・・用意が出来たら行きましょうか」
    如:「はい」
    ナレ:如古坊は家の中を見回し深々と頭を下げた。如古坊はこの時、二度とこの家には戻らないとそう感じていた。今度こそ戻れるような。でも、それは三人には言わずにいた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=13へ続く

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    四人の現代Days90~4日14時、ゴールいやスタート

    相当、騒がしかっただろうな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    こちら、速川家のリビング。

    美香子「唯、ちょっと」

    唯「なに?」

    隅に呼び、小声で話す母。

    美香子の囁き「源三郎くんとトヨちゃんの結婚式、6日の夜にするから」

    唯の囁き「ラジャ。芳江さんもエリさんも、それでいいの?」

    美 囁き「さっき連絡したらね、是非参列したいし、そういう理由なら一日でも早い方がいいって、お二人とも言ってくださったの」

    唯 囁き「そうなんだ。年明け初日で疲れてるのに悪いね。その分、パーっとやろうよ」

    美 囁き「忠清くんにこっそり言っておいて。尊には帰ったら伝えるわ」

    戻って、たけるなの二人。電車に乗っている。

    瑠奈「小垣で降りてくれるの?」

    尊「うん、どこかいい所ある?」

    瑠「みつきとかとよく溜まってるカフェがあるの。そこでいいかな」

    尊「わかりました」

    小垣駅。改札を抜け、歩き始めた。

    尊「ここだけ、和、だね」

    駅前に、立派な生け垣がある。

    瑠「うん。代々小垣に住んでる父親が言ってたけど、これは由緒正しいお庭なんだって」

    尊「へー」

    カフェは、駅から3分程の距離にあった。

    尊「お洒落なお店だね」

    瑠「でしょ。この辺りにしては」

    外を眺められる、窓際の横並びの席についた。

    瑠「向かい合わせより、こっちの方が尊には良さそう」

    尊「お気遣いありがとう」

    ドリンクで少し落ち着いた後、尊が話を切り出した。

    尊「あのさ。どうして、僕、なのかなって」

    瑠「質問というより、疑問?」

    尊「どこがそんなに気に入ってもらえたのか、わからなくて」

    瑠「そうなの?ふーん。では、時系列に沿って説明します」

    尊「お願いします」

    瑠「クラスメートの一人という認識だった尊の存在が気になり出したのは、12月15日。カラオケでばったり会った時ね。その時にも言ったけど、気遣いができるジェントルマンだなーって。話しやすくてびっくりしたし」

    尊「うん」

    瑠「決定的になったのが、18日のホームルーム」

    尊「あぁ、あの。あれは先生が悪いんだよ。羽木一族が滅びたのは、備えが足りなかったんだ、お前らはそうなるな、なんて、根も葉もない話を軽くするから、つい手を挙げて」

    ┅┅回想。その時の尊┅┅

    尊「先生、それは違います。近年継続中の調査で、滅びた時期も、滅びたかどうかも未確定に変わっています。なので、備えが足る足らないは引き合いに出せなくないですか?当時は皆、波乱の時代を一所懸命に生きていたんです。羽木一族に謝ってください。羽木家は…」

    ┅┅回想終わり┅┅

    瑠「まるで身内を庇うみたいだったよ。そこで、尊が黒羽市に住んでるって知って、地元愛が素晴らしいなって」

    尊 心の声(身内は庇うよ。つい、でしゃばっちゃったけど)

    瑠「その後の、尊のよどみなく出てくる知識がすごかったから、先生オロオロしながら謝ってたね。尊すっごく輝いてた。で、続きを聞きたいメンツだけ、放課後残って話聞いたじゃない。聞いててもう、尊敬の一言しかなくて、そのままキューンって、心をわしづかみにされたの」

    尊「尊敬なんて、おこがましいよ」

    瑠「地元の歴史ってさ、受験に関係ないじゃない。なのに尊、あんなに詳しくて、それでもって熱く語って…もぅ、たまらなくかっこ良かったよ」

    尊「なんか、恥ずかしいな」

    瑠「日を追う毎に、私の中で尊の存在が大きくなっていったの。クリスマスは、会えて超超嬉しかったんだけど、突然、本物が目の前に居る!って、訳わかんなくなっちゃって、平静を装うのが精一杯だった」

    尊「そうだったんだ。気付いてなかった」

    瑠「で、元日はバタバタしちゃったけど、ちゃんと気持ちを汲み取ってくれて、感動しっぱなしだったよ。そして今日一緒に居て、いっぱい尊を知れて、楽しくて仕方ないの」

    尊「僕はそんな立派な人間じゃないよ。瑠奈を支えられる体力もないし」

    瑠「ムキムキとか貧弱とか、関係ないレベルの話だよ。もう、私の頭の中では、このヒトだ!って鐘が鳴ってる」

    尊「鐘?ゴーン、って、お寺の?」

    瑠「…ぷっ」

    尊「え?違った?」

    瑠「違うー、教会で鳴らす、リンゴーンって方!もー、尊ったらぁ」

    尊「そっか、失礼しました」

    瑠「あは、あはは」

    尊「そんなに笑わないで」

    瑠「やだもう、じわじわ来る。あははは!尊、面白ーい!」

    尊「面白い…」

    笑い転げる瑠奈を見つめる尊。

    尊 心(はっ!兄さん、僕…)

    笑顔の瑠奈が、外の光にも照らされ、輝いている。

    尊 心(兄さんが言ってた面白いの意味、わかったような気がします)

    瑠「ふう。笑い過ぎちゃってごめんなさい。あのね」

    体ごと、尊の方に向いた瑠奈。尊も、瑠奈の方に体を向けた。

    瑠「わかってくれたかな。尊をすっごく尊敬してて…もう、散々言ってるからわかるよね?すっごく好きなの」

    尊「ありがとう。まだ信じられないけど、嬉しい」

    瑠「大事な時期だし、黙っていようと思ったけど、無理だった。私の恋愛の師匠はみつきだしさ」

    尊「あぁ。はい」

    瑠「私の事、嫌じゃなかったら、付き合ってください」

    尊「…」

    瑠「…嫌、かな」

    尊「嫌じゃないよ。なんで僕?って未だに思うだけ」

    瑠「じゃあ…」

    尊「僕で良ければ、よろしくお願いします」

    瑠「ホントに?!…うっ、うっ」

    尊「えっ」

    瑠「うわーん!嬉しいよー!」

    尊「わー、そんな豪快に泣かないで!えーと」

    鞄からハンカチを出し、瑠奈に渡した。

    瑠「これ、は?」

    尊「お母さんが、ハンカチは二枚持ってけって…だから、使って」

    瑠「尊、かっこ良過ぎる~、うえーん!」

    尊「三枚必要だったかな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    もう少し続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=11

    ナレ:聡子は速川家に立ち寄った。
    覚:「熊田さんも有難うございました」
    聡:「私は何も」
    尊:「お母さん」
    ナレ:美香子は幸子の気持ちと孝の事と自分達の思いを話した。
    覚:「そうだったんだな。如古坊さんの雰囲気を読み取ったのかもね。熊田さんが仰るような事を孝君も思ったと僕も思います。だから、会って間もないのに此処に来たんだと。如古坊さんの中に父親を感じたのだと思います」
    美:「そうね。それで、プレゼント喜んでくれてね、大切にしますと伝えてって。でも、どうしてネクタイだったの?」
    如:「孝君の大人になった姿を想像して、きっと立派な大人になるだろうと。お父さんから、ネクタイは武士でいう刀みたいな物だと聞いて」
    覚:「何が良いかと聞かれていた時、ニュースでサラリーマンが映っていて、ネクタイはどうかって。就職した時に使えるって。で、そう説明したんだ」
    美:「そう言う事ね。孝君がネクタイ締めた姿見てみたいわね」
    覚:「そうだな」
    ナレ:無理だと分かっていたが否定する言葉は言えなかった。
    聡:「私は幸子さんも如古坊さんも会ったのも数回だけど、似た者同士だなって思ったわ。二人のの気持ち。寂しい事だけど」
    如:「叶わないと知りつつ、孝君の父親になんてことも」
    覚:「二人を引き合わせた神様に文句が言いたいよ。幸子さんは幸せな思い出だと。でも、こんな悲しい思い出が二人に。それをした神様をね」
    如:「お父さん、有難うございます。でも、私は二人に会えた事、本当に良かったと思っているんですよ。私はこの世に来なければ生涯、誰かに好意を持ち共に過ごしたいと思う女性は現れなかったと思っています。生きていた中にその様な方に出会えた事を私は神様に感謝しています」
    覚:「僕が女だったら、一緒に戦国に行って良いって思いますよ」
    尊:「お父さん、キモイよ」
    覚:「親に向かってキモイは無いだろうぉ」
    尊:「ごめん、ごめん。でも、きっと如古坊さんも戦国に戻ったら素敵な女性が現れますよ」
    美:「そうね。でも、如古坊さん」
    如:「はい?」
    美:「添い遂げようと思う女性が現れても絶対、幸子さんと比べてはいけないわよ、その人に失礼になりますからね」
    聡:「そうかも知れない。でも、酷な言い方になるけど、幸子さんを封印と決めつけると、それがずっと心に残るからふとした時に、その名前が出てしまうんじゃないかしら」
    美:「それは?」
    聡:「まぁ、これは実体験なのね。主人が私と出会う前に大恋愛してね、結婚まで考えていたけども、ドラマみたいな話だけど、彼女の親が会社の為に結婚してくれって頼まれて、両親の事を思って主人と別れたのよ。その後、私と付き合うようになった時に決して彼女の事は私に知られないようにって決めたって。こっちにすれば余計な事だって思うんだけど、主人は勝手にそう決めたって。でも、言わないように出さないようにすればするほど出てしまう事ってあるでしょ、案の定、新婚旅行の時に呼んだら、振り向いた彼が言ったのは私名前じゃなくて、自分で分かったんでしょうね動きが止まって」
    美:「えっ」
    聡:「私も、えって言ったわ。慌てて誤魔化しているから問い詰めて聞き出したわ。私だってお付き合いした人達は居たわよ。憎くて別れたわけじゃない彼とは今も友達よ。主人も初めは戸惑っていたけど、今はその彼とゴルフに行く仲よ。で、主人は彼女の事は絶対心の中に仕舞って置こうって決めたって。でも、それって、言い換えれば、ずっと心の中に彼女が居るって事でしょ」
    美:「そうよね」
    聡:「だから、私は、如古坊さんが出会った人がどんな人かは分からないけれど、話せる範囲でその人に話した方が良いと思うの。タイムスリップの事は言えないでしょうけど。私はそう思うのね。まぁ、判断するのは如古坊さん自身だけど」
    如:「私には難しい課題ですが、熊田さんの話を聞いて、思い出さないようにする事は幸子さんにも失礼かと。相手の方には話して幸せな思い出を共有し、そして、その方とも幸せな思い出が作れるようにします」
    覚:「やっぱり、惚れちゃうねぇ。あはは」
    ナレ:如古坊の困り顔にみんなが笑った。

    ナレ:問題の日。3月24日の朝を迎えた。朝食を摂っている時に、如古坊が着ていたカーディガンのから見えるTシャツを見て、
    覚:「そのTシャツにあの素敵なジャケットってどうかと思うんだけどな」
    ナレ:ジャケットはテーラーに勤めている熊田宗之が仕立てた物。記念にと作ってくれた。
    如:「私はこのふてぶてしい猫が気に入りました。尊に聞きましたが忠清も着ていたと」
    覚:「そうですけど」
    美:「いいじゃない。もしかしてお父さん」
    覚:「僕が欲しいって事じゃないよ」
    尊:「そう言えば、若君がTシャツ着てたのって、どうして?」
    美:「若君がMRIを撮って戻ったら、病室じゃなくて唯の部屋にと考えて、前の番片付けしてた時に、タンスの奥に袋があって見たらタグもついていて。で、若君が戻って来て横になりたいって言ったから、丁度いいと思って」
    尊:「そうだったんだ。お姉ちゃん着てくれなかったからね。でも、戻ってきた時に若君が着ていたって話したら着る様になって」
    如:「そうだったのか」
    覚:「でも、ちょくちょく洗ってたけど、なんかそれって新しいように見えるけど」
    尊:「如古坊さんに話してきてもらったけど、首の所がヨレってなってたから探してみたら、出展されてて、それを買ったんだ」
    美:「他に持っていた人が居たなんてね」
    尊:「うん」
    覚:「でも、本当にいいんですか?」
    如:「私は気に入りましたので。ははっ」
    ナレ:その後、昼食を摂り、時間的に夕飯代わりの弁当を作り持たせた。ふぁ之助君と手動洗濯機の名前はせんた君。それを聞いた覚が何処かで聞いた事あるような名前だと笑った。そして若君そっくりなモデルの載っていた雑誌とペンギンのぬいぐるみ、写真データ、幸助からのオセロゲーム。唯と羽K気味が好きなアーモンドチョコとインスタントコーヒーを入れてパンパンのリュックを背負い、服装はジーパンと肉食系フテ猫のTシャツにジャケット。
    美:「私の用事も今日は無いから見送りに行けて良かったわ」
    ナレ:毎回、美香子も着いて行ったのだが一度だけ、どうしても外せない用事が出来て見送りに行けない事があった。
    美:「じゃ、行きましょうか」
    如:「はい」
    ナレ:如古坊は家の中をぐるりと見てから、深々と頭を下げ、
    如:「お世話になりました。名残惜しいですが、此処へは戻らず・・・行きましょうか」
    ナレ:車に乗り込み、あの場所へ。木村先生も待っていた。そして時を待ったが、しばらく経ってもなのも起らなかった。
    如:「駄目のようですね」
    木:「やはり、4月28日なのでしょう。きっとそうですよ」
    覚:「そうですね・・・帰りましょ」
    如:「はい」
    ナレ:駐車場に戻り、木村先生と別れた。
    覚:「夕飯何処かで食べて行きますか?」
    如:「私は、お父さんが作ってくれた弁当が食べたいです」
    覚:「そうですか」
    美:「私たちはある物で良いわよ」
    覚:「じゃ、このまま戻りますか」
    ナレ:何処にもよらずに戻った。如古坊は玄関に入り頭を下げた。
    如:「しばらくお世話になります」
    ナレ:三人は黙って見ていた。来月には必ず帰れると信じて。それから尊は勉強の合間に実験室で何か作業していた。そして、尊は大学に合格。お祝いにと豪華な食事のリクエストに尊は如古坊が気に入っていたブランド牛肉のステーキをリクエストした。如古坊は尊の祝いなのにと恐縮していたが、その好意を素直に受け頬張った。その姿を三人は笑顔で見ていた。そして食後に尊が黒い塊を持ってきた。
    美:「何?」
    覚:「洗濯機とは違うようだけど」
    尊:「今度は掃除機。お姉ちゃん掃除苦手だったから。戦国でもそうだろうなぁって思って」
    如:「私は唯が掃除をしている姿を見ていないので分かりませんが」
    美:「そうね。その、掃除機かけさせても丸くしてたわね」
    如:「丸く?」
    覚:「部屋には大概、角がありますよね」
    如:「そうですね・・・あっ」
    覚:「そう言う事です」
    美:「で、それを・・・楕円形ね」
    尊:「亀をイメージして作ったんだ。背中の甲羅みたいなものはソーラーパネルで、電気はここからでOKにすると自動的に動く。本家と同じ様に物が有れば避ける様にセンサーが付いてる。でも、自分で元に戻る為の場所の設置だとソーラーだけだと無理だから、戻る装置は無いくて、止まるまで動いてる」
    覚:「それだけでも凄いよ。うち用も作って欲しいな」
    尊:「完璧に出来るまで待って。で、ごみはお腹の部分に蓋が付いているからそこから出して捨てて。太陽に当てないと充電は出来ないから。でも、この大きさだから満タンでも一回の操作は5分くらい」
    覚:「五分もあれば意外と掃除できるから大丈夫だろう」
    尊:「そうなんだね」
    美:「これの名前は?」
    尊:「ジャジャジャジャーン・・・スタート君」
    覚:「えっ?・・・なんで?・・・で、ひねりあるか?」
    尊:「亀はタートルって言うのよく聞くけど、それはウミガメを指すらしくって」
    覚:「よく聞くな。で?」
    尊:「他にトータスともいうんだけど、それはリクガメの事らしいから、この場合はリクガメって」
    美:「それは分かったけど」
    尊:「トータスを後ろから読んでスタート・・・やっぱり・・・かなぁ」
    覚:「もう一つひねりがなぁ」
    美:「別にいいんじゃない。覚え易いし」
    覚:「まぁ・・・そうだな」
    ナレ:覚は思った。これまでのネーミングについてこの作者のセンスはこの程度かと。
    如:「すたぁと・・・聞いた事があるが」
    尊:「始まりとかで使われますね」
    如:「始まりか。良いではないか。唯は喜ぶだろう・・・だが」
    美:「如古坊さんが考えてること分るわ。これも信茂様のおもちゃになるだろうって」
    如:「分かりますか。ははは」
    ナレ:信茂の追いかけている姿が浮かびみんなは同じタイミングで笑った。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=12へ続く

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    四人の現代Days89~4日11時30分、二歩進んだ

    たけるなペア、三歩目に進むか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    参道を歩いている、尊と瑠奈。

    尊「砂利って、歩きにくいよね」

    瑠奈「ヒールの靴よりは、ブーツで正解だったけど。参道、長いよ」

    尊「気をつけて」

    瑠「うん。きゃあ!」

    尊「え、わー!」

    石に足をとられ、ずるっと滑ってしまった瑠奈。尊の方によろけてきたのだが、

    尊「痛っ…」

    瑠「ごめんなさい!大丈夫?!」

    尊は支えきれず一緒に倒れてしまい、尻もちをついていた。

    尊「大丈夫。手袋もしてるし。瑠奈こそケガとかしてない?」

    瑠「うん。どこもなんともない」

    尊「ごめんね。支えられなくて」

    瑠「謝んないで。とっさの事だもん、仕方ないよ」

    尊 心の声(僕はなんて非力なんだ。兄さんなんか、お姉ちゃんがぴょんと飛びついてもびくともしない。体幹を鍛えないと…)

    神社を後にした。

    瑠「お昼って…」

    尊「一緒に食べるつもりだったけど。軍資金も貰ってるし」

    瑠「わぁ、ホントに?嬉しい!どこに行こうかな…あっ」

    前方に、ファーストフード店を発見。

    尊「あ、ちょうどいいところに。知らないお店だとよくわからないから、あそこでもいい?」

    瑠「ジャンクフード的な物だけど、いいの?」

    尊「ファーストフードは食べるよ」

    瑠「そうなんだ、じゃあ行きまーす」

    注文した品をトレイで運び、席についた。二人ともコートを脱ぐ。

    尊 心(中はそんな感じだったんだ)

    瑠奈は、鮮やかなサーモンピンク色の、Vネックのセーターを着ていた。

    尊 心(シャケの切り身ってこんな色だよな)

    瑠「どうしたの?服、派手かな」

    尊「あ、いや、美味しそうだなって」

    瑠「…」

    尊「え?」

    瑠奈が、悪戯っぽく微笑む。

    瑠「私を、食べたい?」

    尊「…わぁ!そうか、そう聞こえるよね、ごめんなさい!失言です」

    瑠「失言なの?えー私、尊なら…いいのに」

    尊「いい。…いい?!えっ、あっ、その」

    瑠「焦ってるぅ。かーわいい!」

    向かい合って座り、食事を始めたのだが、

    尊 心(あー、まだ心臓バクバクする。それに、目のやり場に困るよ。顔を見ると恥ずかしいし、かといって視線を落とすと…)

    瑠奈は、かなり豊かな胸の持ち主だった。

    尊 心(もっと恥ずかしい)

    瑠「尊~、どうしてこっち見てくれないの?」

    尊「ごめんなさい、距離の取り方がわからなくて」

    瑠「そんな理由?」

    尊「僕、友達も居ないから、こういうの慣れてないんだよね」

    瑠「えぇ?言ってる意味がわからない。友達?クラスの子は、みんな友達じゃない」

    尊「それは、瑠奈はそうかもしれないけど」

    瑠「友達か、そうじゃないかの線引きって要るの?それってさ、尊が自分から周りに線引いてるんでしょ」

    尊「…瑠奈にはわからないよ」

    瑠「ほら!そうやって、私にも線引いてる」

    尊「…あっ」

    瑠「気付いてなかったんだね」

    尊「ごめんなさい」

    瑠「尊がそうしなければならない程、かつてどう辛かったかは、私はわからない。それはこちらもごめんなさいだよ。でも今の尊には友達、仲間がたくさん居る。ちゃんと周りを見て欲しい」

    尊「…」

    瑠「一人ぼっちじゃない。自分から、わざわざ孤立しなくてもいいでしょ」

    尊「はい」

    瑠「ねっ。でもね、尊は、私に言わせれば孤立や孤独というよりは、孤高って感じだけどね。かっこいい」

    尊「はは、ありがとう」

    瑠「ふふっ。どういたしまして」

    尊 心(瑠奈は…こんな僕を変えてくれるのかもしれないな)

    尊「あの、実は」

    瑠「なぁに?」

    尊「質問が二つあって」

    瑠「私に?えー、なにかな」

    尊「一つ目。名前ってさ、やっぱり月が由来なの?」

    瑠「あー。うん。私ね、満月の夜に産まれたんだって」

    尊「えっ、満月?!」

    尊 心(やはりこれは、運命なのか?!)

    瑠「そんなに驚く?でね、空に浮かぶ丸い月があまりに美しくて、他の候補だった名前を全部なしにして、月の女神の名前からとったんだって。漢字は両親が考えてね」

    尊「そうなんだ…」

    瑠「だからね、満月の夜は、必ず空見ちゃう」

    尊「僕も、満月の日は気になって見上げるよ」

    尊 心(空だったり、実験室の天井だったりするけれど)

    瑠「そうなの?!わぁ、またお揃い、嬉しいな。で、二つ目は?」

    尊「二つ目は…もう少し後で聞くよ」

    瑠「やだ、嬉し過ぎる。まだ一緒に居られるんだね」

    尊「あ、うん。そうだね」

    瑠「わぁ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだまだ続きます。

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    四人の現代Days88~4日11時、はなむけの

    みつき大明神、と呼ぼう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    神社は、賑わっていた。

    瑠奈「はい、合格祈願の御守、プレゼント!」

    尊「もらっちゃっていいの?」

    瑠「約束したもん」

    尊「ありがとう」

    瑠「恋愛成就のも買おうか悩んだけど、混んでて。尊を待たせちゃ悪いと思って、やめた」

    尊「そ、そう」

    瑠「御守なんかなくても、願いが叶うといいなー」

    尊「…」

    尊 心の声(あ、そうか。相手が誰かはわからない。自分だと思うなんて、自惚れもいいトコだ)

    瑠「ねっ、尊」

    尊「あ、はい」

    尊 心(えー、これはわからない…)

    瑠「でもね、下手に恋愛成就の御守持つより、みつきを拝んでた方が御利益ありそうなんだよねー」

    尊「そうなの?」

    参道を歩きながら話し出す瑠奈。

    瑠「みつきと彼ね、幼なじみなの。彼が三つ上。みつきとは中学校から一緒だけど、その時にはもう彼氏彼女になっててね」

    尊「へぇ、中一の時に高一の彼か」

    瑠「みつき、小さい頃から彼が好きだったんだって。それでね、ずっと心に秘めていたんだけど、彼が中学校に上がる年に考えたらしいの。小学校と中学校に分かれてしまうから、目が行き届きにくくなる」

    尊「他の小学校からも来るしね」

    瑠「よくさ、好きな人が知らない女と仲良くしてるのを物陰から見て、悶々としてるシチュエーションとかあるじゃない。主にドラマだけど」

    尊「うん」

    瑠「みつきはそんな子じゃないのは、なんとなくわからない?」

    尊「わかる」

    瑠「だからね、断られたらどうしようとか、今後気まずくなったらどうしようとかは杞憂だ!って、彼が中学校上がる春休みに、付き合ってくださいって告白したんだって」

    尊「え、って事は、小四になる年に?!それはミッキーさん、すごいや」

    瑠「で、やっぱり杞憂は杞憂で正式にお付き合いが始まったと。だから長いよー。もうね、みつきっていつもは強気なのに、彼氏にはメロメロなんだよ。かわいいでしょ」

    尊「わかるよ。元旦の初詣の時、ミッキーさんの彼が来るまで一緒に待ってたんだけど、会えた途端、顔つきがガラッと変わったからさ」

    瑠「え…?ちょっと待って、みつきの彼が来るまで?」

    尊「うん。一人にしとくと危ないじゃない」

    瑠「尊、家族と来てたんじゃないの?」

    尊「家族に、一緒に居てあげなさいって言われたし、僕もその方がいいと思ったし。確かに優しそうな彼氏さんだった。無事見届けてから、家族とはすぐに合流したよ」

    瑠「えっ。ちょっと、こっち来てくれる?」

    瑠奈が、かなり驚いた顔をしながら、参道の脇に尊を呼ぶ。

    尊「どうしたの」

    瑠「そんな話、今初めて聞いたからじっくり聞きたくて」

    尊「ミッキーさん、言ってなかった?」

    瑠「言ってたかな…あっ、そうか。私あの時、動画観て頭に血がのぼり過ぎて、言い訳はいらない!ってLINEした…」

    尊「それは…ミッキーさんに同情するなぁ」

    瑠「わー、後でみつきに平謝りしとく。っていうか!尊!」

    尊「矛先が変わったぞ」

    瑠「なんで黙ってたの!」

    尊「えぇっ、僕が怒られるの?!」

    瑠「もー、かっこ良過ぎるでしょ!ますます、惚れ直しちゃったぁ」

    尊「あの、心の声的なモノが、丸々聞こえてますが…」

    尊 心(ミッキーさんも瑠奈も、なんでこうもストレートに正面からぶつかってくるんだろう。心臓がもたないよ)

    さて。変わって速川家。城跡巡りから帰ってきた。

    源三郎「つくづく、車とはなんと速い乗り物、でしょうか」

    若君「山越えをせなんだとはいえ、あぁも速く、小垣に着くとはのう」

    覚「まぁ、道路も整備されてるしね。さて、昼ごはん作るか」

    トヨ「お手伝いいたします」

    美香子「あ、しまった!」

    若「お母さん、どうされた」

    美「尊に、二人分の昼ごはん代、お小遣いで渡そうと思ってて忘れてたわ」

    唯「あー。それならゆうべ、はい軍資金!って渡しといたよ」

    覚&美香子「え?!」

    唯「ちょっとぉ、それ驚き過ぎじゃない?」

    若「確かに、渡しておりました」

    美「そうなの?」

    唯「だってさー、一生に一度、最初で最後かもしんないから」

    美「そんな縁起でもない事言わない~。でも、ありがとね、唯。さすがお姉ちゃん!」

    唯「えっへん」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=10

    ナレ:金曜日の夜、木村先生が訪ねてきた。
    木:「すみません」
    覚:「いいえ、どうぞ上がって下さい」
    木:「お邪魔します」
    ナレ:覚に木村先生の落ち込んでいる様子が分かった。
    木:「夜分にすみません。もう一つすみません」
    ナレ:四人に頭を下げた。
    覚:「先生?」
    木:「古文書を見ていただきましたが、それが・・・実は別の場所でした」
    美:「別?」
    木:「はい。それが蝦夷で」
    覚:「蝦夷って、北海道の?」
    木:「そうです」
    ナレ:如古坊以外は全くの違うのだと分かった。
    如:「尊?」
    ナレ:尊がスマホで地図を表示して北海道を指した。
    尊:「これが北海道・・・で、如古坊さんたちはこの辺りです」
    如:「離れているな」
    木:「はい。申し訳なくて。日にちだけで・・・すみません」
    如:「謝る事では」
    覚:「そうですよ。色々調べてくれて、我々は感謝しかありませんから」
    木:「そう言っていただけて」
    美:「まぁ、日にちが同じなのも何か繋がりがあるのかも」
    覚:「そうだな。最近思うんだけど、未来の尊が助けてくれたのかも知れないと」
    尊:「未来の僕も無理な様な事言ってたから、それは無いと思うんだけど」
    美:「取り敢えず、3月24日と4月28日に賭けてみない?」
    覚:「そうだな」
    木:「はい・・・すみませんお邪魔しました」
    如:「先生、ありがとうございます」
    木:「いえ。では、失礼します」
    ナレ:木村先生は恐縮しながら帰った。
    覚:「本当に未来の尊が関わっていたとして、どうして」
    如:「私をという事ですか?」
    覚:「はい」
    尊:「分からないことだよね」
    美:「でも、色々研究して、方法を見つけたとも考えられるんじゃないのかな」
    覚:「まぁ、無い事も無いな。天才だし」
    尊:「そんな買い被らないでよ。未来の僕だという保証は無いんだからね」
    覚:「まぁ、取り敢えず夕飯にしよう」
    ナレ:夕飯を摂った後は皆、静かに夜を過ごした。

    ナレ:普段の生活に戻り、尊が学校から帰った後、夕食までの時間や休日は受験勉強で部屋に籠る事が多かった。その日は朝食が終わり、尊が学校へ行った後、如古坊が掃除をして、掃除機を片付けてきて庭で洗濯物を干している覚に話しかけた。
    如:「尊は時間あれば勉強で、現代の子供は大変だなと」
    覚:「如古坊さんの時代も若い人が戦に行きますから、形は違えども子供はいつの時代も大変なんですよ」
    如:「そうですね・・・でも」
    覚:「如古坊さん?」
    如:「私はこの時代を過ごしていて思う事が。この世は苦労してもその先に明るい未来があると」
    覚:「まぁ、一概に言えないこともありますが。でも、僕には一生分からない事なのかもしれません」
    如:「ん?」
    覚:「人はいつか・・・自分の人生が幸せだったのかを実感できるかどうかです」
    如:「それは私にも。ですが、人は最期に幸せだったと思うために一生懸命に生きているのだと思います」
    覚:「そうなのかも知れませんね。如古坊さんは哲学者みたいですね」
    如:「てつがくしゃ?」
    覚:「難しい事が考えられる人って事でしょうか・・・すみません、うまく説明できませんね」
    如:「いえ」
    ナレ:覚は洗濯物を干し終わり、昼飯用のパンを焼くため準備を始めた。
    如:「お父さんの作るパンも美味しい」
    覚:「そうですか。昔はパンは店で買っていましたけど、ちょっとしたパンなら家でも出来るようになりました。今日はブドウパンにしますね」
    如:「干しブドウが入っているパンですね」
    覚:「はい。久し振りですね」
    ナレ:如古坊に色んな物を食べて欲しいとパンも焼いて食べさせた。その中にブドウパンもあった。最初に食べた時は驚いていた如古坊もブドウパンは気に入った。
    如:「楽しみです」
    ナレ:パンの種をパン焼き機に入れた後、今度は湯飲み茶碗3つにお茶を淹れて、急須と菓子皿にせんべいを入れてお盆に乗せた。
    如:「それは?」
    覚:「造園業者に表の木の剪定をお願いしているんですよ。で、これを」
    ナレ:説明していると電話が鳴った。
    覚:「すみません、それを表にテーブル出してありますからそこに。で、ご苦労様と言って置いてきて下さい」
    如:「はい」
    ナレ:覚は電話に出て、如古坊は表に持って行った。庭の大きな木の側に脚立を立てて剪定していた。
    如:「お疲れ様です。どうぞお茶を」
    ナレ:植庄と書かれた法被を着た若い男性が近づいてきて、
    浩:「ありがとうございます」
    如:「どうぞ」
    ナレ:若い男性が父親を呼んだ。
    植:「すみませんね。浩、良夫さんを呼んできな」
    浩:「分かった・・・どうしました?」
    ナレ:如古坊は驚いた顔をしていた。
    浩:「親父の顔イカツイから、ははっ」
    如:「あっ、いえ」
    浩:「怖い顔ですけど、中身は結構乙女なんですよ」
    植:「余計なこと言ってないで、ほら。バカ息子がすみませんね」
    如:「あっ、いえ、どうぞ」
    ナレ:如古坊は頭を下げ中へ。
    覚:「如古坊さん?」
    如:「あっ、あの」
    覚:「どうしたんですか?」
    如:「驚いたので」
    覚:「何を?」
    如:「似た人が居る事は分かっていますが、また、そっくりな人が現れるとは」
    覚:「えっ?」
    如:「父親という方と、私が知る方に良く似ていたのです」
    ナレ:植庄の屋号で造園業を営んでいる植田啓治が坂口に瓜二つだった。
    覚:「それは驚きましたね」
    如:「はい。でも、その者を知っている唯が何も言っていなかったような」
    覚:「唯が居た頃は別の業者に頼んでいましたが、三年くらいかな、そこが廃業したので今の植庄さんにお願いするようになったんですよ。でも、唯が戻って来ている時には作業は頼まなかったからその方を見ていないので」
    如:「そうですか、だから」
    覚:「では、土産に写真を撮りましょう」
    如:「えっ?」
    ナレ:困惑する如古坊を横目にカメラを持って外へ。如古坊は追いかけた。
    覚:「ご苦労様です。お願いがあるんですが」
    植:「どうしたんですか?」
    覚:「写真を撮らせてもらえないかと」
    植:「どうして?」
    覚:「最近カメラに凝っていましてね、モデルになってください」
    植:「私たちで?」
    覚:「はい。にょ・・・三吉さんも何なら一緒に」
    ナレ:覚は無理矢理に啓治の横に如古坊を立たせて写した。その後、
    覚:「皆さんも入って」
    ナレ:息子と良夫も入れて写した。
    覚:「お仕事中すみませんでしたね。続けて下さい」
    ナレ:さっと撮って家の中へ入る覚を三人は不思議そうに見ていた。
    植:「旦那さん、面白い方だったんですね」
    如:「はい。お騒がせしました」
    ナレ:如古坊も中へ。夕食の時に昼間の話をした。
    美:「凄いわね。近くにそっくりな人が居たなんて」
    尊:「本当だね、不思議だね」
    如:「顔を見た時は本当に驚きました。でも、その者と別れた時は穏やかな気持ちでいましたのでこの世でも会えたことが嬉しくなりました」
    覚:「そうだったんですか。良かったですね」
    如:「はい」
    覚:「土産がまた一つ増えましたね」
    ナレ:如古坊は嬉しそうに頷いた。
    尊:「その写真もデータに」
    ナレ:唯たちのように、如古坊がこれまでに体験した事、日常の生活の写真もUSBに入れて持たせようと尊は纏めていた。

    ナレ:日曜日。お洒落をした美香子。
    尊:「今日だよね」
    美:「そう」
    ナレ:美香子と聡子は幸子の気持ちを確かめるために会う事になっていた。駅前のホテルのレストランでランチをしながら。
    如:「お母さん、あの、これを幸子さんと孝君に」
    ナレ:如古坊はお年玉で貰った金を使い、スカーフとネクタイを買った。
    美:「でも、これは、直接」
    如:「お願いします」
    ナレ:如古坊は会って渡したい気持ちはあるが、会わずにいた方がと考えていた。その気持ちが分かった美香子は、
    美:「じゃ、確かに」
    ナレ:美香子がホテルのロビーで待っていると聡子が先に来た。その後、幸子が。エレベーターが来るのを待って、降りてきたエレベーターに乗り込んだ。
    美:「今日はありがとうね。で、孝君も来るのかと」
    幸:「孝は、実家に」
    ナレ:事情を聞いていた美香子は驚いた。
    聡:「速川さん?」
    美:「いえ」
    ナレ:最上階に着きレストランへ。席を案内され、最上階なので眺めが良い窓際を。
    美:「たまにわいいわね」
    聡:「そうですね。頼みましょう」
    ナレ:三人は各々にオーダーし、料理が運ばれてくるのを待っていた。
    美:「さっき、ご実家って・・・でも」
    幸:「はい。今年に入って、母から連絡が来まして、父が倒れたと」
    美:「えっ」
    幸:「大丈夫です。仕事が忙しくて疲れが出たのだとお医者様が言っていたそうです。でも、父も思う所が有ったのか、私と孝に会いたいと。孝は生まれて一度も両親に会う事は無かったので」
    聡:「えっ?」
    ナレ:聡子の驚きようで自分の事は知らないのだと分かり、自分の事を正直に話した。美香子はそこまで話すのかと驚いていた。
    聡:「そんな事が。でも、今は素敵なお母さんね」
    幸:「ありがとうございます・・・連絡をもらった時は正直やめようかと思いました。でも、孝がお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会いたいと言って」
    美:「本当に孝君って大人のようね」
    聡:「私も一度しか会っていないけど、そう思うわね。凄くしっかりしているって」
    幸:「ありがとうございます」
    美:「それで、聞いてもいい?」
    幸:「はい。両親に会って、随分老けたように見えました。孝を目の前にして私たちに頭を下げてくれて驚きました。私に出て行けと言った時の顔とは別人の様で。孝は父と母にきちんと挨拶して、母が、私たちの子育てはあなたの反面教師になったのね、あなたは立派な母親よと」
    美:「そうだったの」
    幸:「両親はここで一緒に暮らさないかと言ってくれましたが、私は断りました」
    聡:「どうして?」
    幸:「意地とかではなくて、私もまだ頑張りどころだと思っていて。でも、金銭的にピンチの時は甘えさせてと言いましたら、母が、ちゃっかりしてるわねと笑って」
    美:「親は子供に甘えて欲しいものよ。ご両親も嬉しかったんじゃないかしら」
    幸:「ずっと親身になっていてくれた明子さんに話しましたら、涙を流して喜んでくれました。両親にはいつでも顔を見せるからと。今日も孝と遊びたいと母から連絡があったので」
    聡:「明子さんと言う方も報われたと思ったのかもしれないわね」
    ナレ:和やかな時間の中でゆったり食事を堪能して、食後のデザートのケーキとコーヒーを頼み、そして、肝心の話を聞くために、
    美:「あの、今日お誘いしたのわね」
    幸:「そうでしたね。もしかして、三吉さんの事では」
    ナレ:二人は驚いた。
    美:「孝君の事もそうだけど、もしかしてそう言う能力あるんじゃないの?」
    幸:「それは。ただ、あの日、クリスマス会で私が三吉さんにプレゼントを渡した時に、皆さんの顔が心配しているような表情に見えたもので」
    美:「そうだったのね。そうなのよね。幸子さんの気持ちを確かめたくて今日は」
    幸:「三吉さんは素敵な方だと。会って間もなく三吉さんの事も知らないのに、孝の父親にと考えたことがあります。でも、どう言えば伝わるのか」
    美:「何を?」
    幸:「三吉さんは遠い存在の様に感じて。このまま一緒には居られないような、何となくですがそう感じました。ですから、お礼にとマフラーを」
    ナレ:幸子が本能で何かを感じ取ったのだと二人は思った。
    美:「そうなのね、事情は話せないけど、もう直ぐ旅に出る事になっているのよ」
    幸:「そうだったのですね。でも、幸せな思い出になりました」
    聡:「きっとにょ・・・三吉さんもそう思っているわよ」
    幸:「ありがとうございます。三吉さんには二度と会わずにいようと思いました」
    美:「えっ、そう、でもどうして?」
    幸:「私の気持ちが揺らぐ心配が。孝にも正直に話しました。どうしてと聞かれましたが上手く伝えることが出来ませんでした。でも、私がそう話しながら涙を流したことで、孝は私の気持ちを理解してくれたのだと思います。会わないと言ってくれました」
    ナレ:そう話すと幸子は涙を流した。
    美:「孝君はなんて親思いなの。この場に居たら思いきり抱き締めてあげたいわ」
    聡:「私もよ・・・きっと孝君の中にもにょ・・・三吉さんがお父さんだったらって考えたんじゃないかしら・・・だから、そうだから、あなたの気持ちを受け止めたのね」
    ナレ:二人は幸子と孝と如古坊の想う心が一緒だと思った。
    美:「それでね、三吉さんに頼まれた物があって、三吉さんも幸子さんと孝君にお礼の品を渡してほしいと」
    ナレ:如古坊は覚に付き合ってもらい選んだ。如古坊は目が肥えているようで質の良い品を選んだので、足りない分は覚が二人の為と援助してくれた。
    幸:「開けてもいいですか?」
    美:「えぇ」
    ナレ:如古坊が幸子をイメージして選んだ淡いピンクのスカーフ。
    美:「孝君の箱にはネクタイ」
    幸:「そうですか。孝も喜びます」
    聡:「スカーフは幸子さんのイメージ通りだけど、なぜネクタイ?」
    美:「にょ・・・三吉さんが孝君の成人した姿を想像して」
    幸:「そうですか。では、大事に仕舞って、成人式の時に身に着ける様に。スカーフも大切な日に使いたいと思います。大切にしますとお伝えください」
    美:「はい」
    ナレ:美香子と聡子は幸子と孝の幸せを願い別れた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=11へ続く

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    四人の現代Days87~4日10時、辿ります

    石碑さえなく歴史から消え去った城も、あるのかもしれない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊と瑠奈は、乗り換え駅に到着。神社方面の電車の到着を待っている。

    瑠奈「尊ってさぁ」

    尊「はい」

    瑠「むきたてのゆで卵みたい」

    尊「え~、なんだよそれ」

    瑠「お肌もつるんとしてて」

    尊「それさ、僕の顔が青白くて、セーターがゆで卵の黄身みたいな色だから、そう見えるんじゃないの?」

    瑠「違うってば。なんというか、そこはかとない清潔感?鞄も靴もすごくキレイだし」

    尊「そう?」

    尊 心の声(お母さん、グズグズ言ってごめん。ありがとう!)

    瑠「家に居た頃のお兄ちゃんなんかさー、もー顔はニキビでブツブツだし、なんか脂クサイし、すっごく嫌だったのに」

    尊「帰省してたお兄さん?」

    瑠「うん。結婚してて、転勤族っていうの?今は遠くに住んでる。でね、去年赤ちゃんが産まれたの、かわいいよぉ。昨日撮ったの見せてあげる!」

    スマホの、お兄さん家族の写真を見た尊。

    尊「お兄さん…すげぇイケメン」

    瑠「そっち?」

    尊 心(兄さんとは違うタイプの、甘い感じのイケメンだ。瑠奈のお兄さんだから想像はできたけど)

    瑠「尊の顔、青白くはないよ。色白だけど。お肌にいいモノ食べてる?」

    尊「それはわからないけど、いわゆるジャンクフードはあまり食べないかな。ご飯は三食父親が作るし」

    瑠「お父さんがご飯作ってるの?すごーい」

    尊「ウチは、母が医者で生計を支えてて、父が主夫なんだ」

    瑠「あ。もしかしてお母さん、速川クリニックの先生?」

    尊「うん」

    瑠「やっぱり!家でそうじゃないかって話になって。ネットの口コミ、すごく良かったよ」

    尊「見てくれたの」

    瑠「尊は、継がない…んだね?」

    尊「うん、まぁ」

    瑠「他にやりたい事があるんだ」

    尊「まぁ、そうだね。内緒だけど」

    瑠「内緒ね。そっか。じゃあ、聞かない」

    尊「ありがとう」

    尊 心(何をやりたいかは…ごめんなさい、告白できないと思う)

    変わって、速川家の皆さん。小垣城跡に着いた。

    美香子「初めて来たけど、見える景色が鳥の目線、って感じがいいわね~」

    覚「標高が高過ぎないのがな」

    発掘作業はほぼ終了していた。柵で仕切られた外側から、中を覗き込んで話す四人。

    源三郎「ここが内門だ」

    トヨ「ふむふむ」

    唯「ねぇたーくん、あそこがあの部屋?」

    若君「あぁ。祝言を挙げた」

    美「発掘されてた学者さん達、呼びに行きたいわね」

    覚「この会話聞いたら驚くだろうけど、資料作りの助けにはなる」

    美「なるかしら?そのまま信じてはもらえないわよね」

    覚「周りから一人言みたいに呟くか?ハハハ」

    城跡の脇に、資料館の建設が始まっていた。

    唯「なにが入るのかな。いつか見学したいね」

    若「そうじゃな」

    その後、松丸城跡の石碑を確認し、長澤城跡に移動して、同じくひっそりと佇む石碑を確認している。

    覚「つわものどもが夢の跡、か」

    美「そうね。でもそれ、松尾芭蕉だから忠清くん達の時代よりずっと後よ」

    唯「全っ然、わかんなーい!」

    唯達四人は、なにかしら形跡がないか周りを探索していた。

    若「広い城であったのじゃが」

    源「こうしてみると、黒羽や小垣は、恵まれておりますな」

    ト「あとは、吉田城…」

    若「うむ」

    覚「おーい、そろそろ帰ろうかと思うけど」

    唯「ん。わかんないモノはしょーがない。帰ろ」

    若「…お父さん」

    覚「何だい、お願いしたき儀か?」

    若「ハハ、はい。ここは長澤城。かつて、捕らわれた唯を助け出し、小垣城を目指し山中を駆けました」

    唯「あん時は、お腹が空き過ぎて大変だったー」

    美「そっちの大変?ホント、顔に傷が残らなくて良かったわ」

    若「此の地から、小垣に向かっては貰えませぬか。この令和の世なら、どれほどで着けるか、知りとうて。麓までで構いませぬ」

    覚「そうか。呆気ない程あっという間だと思うけど。かえって、嫌にならないかい?」

    若「このような世がいつか参るのだと、心に焼き付けとう存じます」

    美「偉いわね。どんな事も吸収しようとして」

    覚「わかった。じゃあ小垣城の下経由で帰ろうな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=9

    ナレ:12月29日は朝から掃除開始。美香子は医院の方を言葉通りチャチャッと片付け、唯の部屋の掃除に取り掛かった。前回、吉乃と阿湖姫がこの部屋で過ごしたから、ある程度片付いていた。それまではタンスの扉が開いたまま、漫画も読んで出したままなど。美香子が片付けなさいと言っても中途半端にやるので結果、美香子が掃除をしていた。掃除機をかけ、勉強机の上の教科書を手にしてパラパラめくりフッと笑った。
    美:「開いてないのかってくらい奇麗なんだから」
    ナレ:教科書の隣に置いてあるノートを見たがビッシリ書いてあった。
    美:「この時ね、若君が褒美をくれるって分かって勉強していた時の。若君ありがとう」
    ナレ:唯にとって最後の期末テストでは今まで赤点ギリギリの教科が全て50点以上。覚と一緒に喜んだ事を思い出していた。
    美:「あぁ、これが前からだったら良かったのにねぇ。それが、唯らしいって事かしら・・・さっ、此処の掃除も終了」
    ナレ:下に降りてキッチンへ。覚は普段からまめに掃除をしているが、家具の後ろはたまにするくらい。如古坊は家具を移動して溜まっている埃を掃き取った後、窓を拭いていた。覚は食器棚の小皿を見ていた。
    美:「お父さん、手が止まってるわよ」
    覚:「ん」
    美:「どうしたの?」
    ナレ:覚は小皿を出して美香子に見せた。
    美:「それって若君の?」
    覚:「そう。僕の手伝いをして皿を割って」
    美:「そうだったわね」
    覚:「傷も感染症も治って戻る日にも手伝いをしてくれて、一枚足りなくなった皿を若君が見ていて、なんだか寂しそうに見えて」
    美:「自分に重ね合わせたのかもね」
    覚:「そう思って、若君にまた会えるなんて思わなかったけど、一枚足しておきたいって買っておいたけど、唯と戻ってきた時に、この皿を見て嬉しそうな表情でね。買っておいて良かったって」
    美:「そうね・・・で、手が止まってるわよ。ほら如古坊さんは力仕事してくれているんだからお父さんも」
    覚:「はいはい」
    ナレ:一通り掃除が済むと覚は休む間もなく、お節料理の支度を始めた。その光景を休憩していた美香子が見ていた。
    美:「そう言えば、掃除も簡単に済ませた唯が一番最初に此処で休んでいて、お父さんがお節の支度を始めると摘まみ食いしてたわね」
    如:「唯らしいと」
    ナレ:そう言った時、美香子の表情が寂しそうに見えた。
    如:「では、私が唯の代わりに摘まみ食いを」
    ナレ:席を立つと、如古坊は水に浸していた黒豆を口に入れ噛むと堅かった。
    覚:「それはまだ、煮る前ですよ・・・もぉ」
    如:「すみません」
    ナレ:黒豆を出してゴミ箱に捨てた。
    美:「如古坊さんも意外とおっちょこちょいなのね」
    ナレ:美香子も覚も如古坊の気持ちが嬉しかった。如古坊は照れて頭を掻いていた。実験室の片付けが終わった尊が戻って来て、手には黒い塊が。
    美:「尊?」
    尊:「洗濯はもちろん手洗いでしょ。お姉ちゃんはジャブジャブってするだけじゃないかって想像つくから」
    美:「あり得るわね。で、何?」
    ナレ:塊の端から折り畳み式の棒を4本出して伸ばし、棒の先をつまむと洗濯バサミのように開いた。
    尊:「この伸ばした棒が桶の縁に挟まるように。で、此処を押すと羽根が出て、桶の中に洗濯物を入れて、横のハンドルを回すと、桶の中で洗える仕組み。逆回りも出来る。羽根は下から押せば収納できる。本当は充電式にと思ったんだけど、水を使うから万が一感電したら大変だから手動式に。でもお姉ちゃん自動にして欲しかったって言うだろうな」
    美:「そうね、きっと。でも、説明だけじゃ分からないわ、バケツでも出来る?」
    ナレ:尊は水を汲んだバケツを濡れても大丈夫な様にウッドデッキの上に置いて雑巾を入れ動かした。
    覚:「昔見た球体の物にしなかったのか?」
    尊:「それも考えたけど、コンパクトに出来ないと」
    覚:「そうだな。大物洗いじゃなけりゃ十分だな。タライの様な物でも大丈夫か?」
    尊:「タライだと底が浅いから、桶みたいな底が深い物の方が良いな。それもお姉ちゃんに」
    如:「分かった。でも」
    覚:「如古坊さん?」
    如:「これを信茂様が見たらと思って」
    美:「そうね。信茂様、おもちゃ代わりに楽しむかも」
    ナレ:みんな同じ光景を想像して笑った。

    ナレ:昨日の内に掃除も済み、覚以外は朝からのんびりしていた。
    覚:「もぉ、いくら何でも、僕の前でのんびりしないでくれよ」
    尊:「ごめん。手伝うよ」
    覚:「玄関飾りも門松も終わってるから。じゃ、今年もそれを」
    尊:「一夜飾りは駄目だもんね」
    如:「いちやかざり?」
    覚:「鏡餅はお正月の前日だと元旦の前だから一夜になるんです。詳しい事は分からないけれど、僕が子供の頃から親に言われていて、それはしちゃいけないって」
    如:「その様な事があるのですね」
    覚:「はい。それぞれの場所に飾って」
    尊:「分かった。でも、今年は作らなかったんだね。毎年、鏡餅もお父さんが作るんだよ」
    ナレ:如古坊はそう聞いて、鏡餅のセットの華やかさを見て、
    如:「お父さんは、毎年、このような物を」
    覚:「これは買った物で飾りが付いていますが、いつもは上に橙って言う果物を乗せるくらいですよ」
    如:「だいだい?」
    覚:「これの事です」
    ナレ:箱の中の丸いオレンジ色の物を見せた。
    覚:「謂れは代々栄える様にとかって言うらしいですよ」
    如:「そうですか」
    覚:「お節料理にも色々な意味合いがありますよ。あとで教えますね」
    如:「はい」
    ナレ:尊と如古坊は玄関や洗面所など各部屋に飾った。
    尊:「あと何すれば良い?」
    覚:「じゃ、この伸し餅切って」
    尊:「でも、どうして今年は?」
    覚:「本当は如古坊さんにも餅つき機で楽しんで貰おうとしたんだけど、故障していて」
    如:「信茂様から聞いています。残念ですが、信茂様たちはこの餅は食べていないのですから、私も自慢します」
    覚:「そうですね」
    ナレ:覚は輪切りにした大根を包丁の側に置いた。
    如:「大根?」
    尊:「僕も初めは何でって思ったけど、餅を切ってると、どうしても餅が包丁にくっついて切れにくくなるんだ。で、大根を切りながら餅を切るんだよ」
    如:「どうして?」
    尊:「まぁ、昔の知恵って事」
    如:「深くは聞かない方が良いかの」
    尊:「そう言う事」
    ナレ:二人は交互に切り、タッパーに入れていた。その中から覚が取り出して焼き、醤油に付け海苔を巻き二人の前に置いた。
    如:「うまい」
    ナレ:笑顔で食べる如古坊の姿を覚と尊は笑顔で見ていた。そこへ戻って来た美香子。
    美:「彼女に呼ばれて何かと思ったら、ご主人の親戚からみかん沢山送って来たからって」
    ナレ:彼女とは祥の母の佳津子。みかん箱に沢山。
    覚:「じゃ、僕も休憩しようかな」
    ナレ:覚はみかんを二つ取り、あっという間に食べた。
    尊:「如古坊さん」
    如:「ん?」
    尊:「お父さんは果物の中で一番みかんが好きなんだ。みんな食べられちゃうから、如古坊さんも気を付けて」
    ナレ:箱一杯のみかんを見てから、覚の顔を見た。
    覚:「そうですよ。油断していたら無くなってるかも知れませんよ。あははは」
    如:「気を付けねば。ははは」
    ナレ:如古坊もみかんを一つ取り皮をむき丸々口に入れた。
    美:「もぉ、如古坊さんたらぁ」
    ナレ:如古坊は恥ずかしそうな顔をしながらモグモグ。

    ナレ:大晦日。年越し蕎麦を食べていた。除夜の鐘の音が遠くから聞こえてきた。
    覚:「もう直ぐ年が明けますね。108目の鐘は年が明けてからつかれるって聞いたことがあるな」
    美:「そうみたいね。でも、こうして、如古坊さんと年を越す事になるなんてね」
    如:「はい。良い経験が出来ました」
    覚:「じゃ、食べたら、着替えてお参りに行きましょう」
    尊:「お姉ちゃんが羽木を守るためにって練習で良く使っていた神社です」
    如:「そうか。目に浮かびます」
    美:「風邪ひかないようにカイロ貼って」
    ナレ:覚は先に着替え、三人に着つけた。結婚した頃、覚は美香子の勧めで着付け教室に通った。どうして自分がと尋ねた時に、美香子は昔、母親に通うように言われたが断ったと。だが覚には覚えておいて損は無いと。覚は素直に通い覚えた。如古坊も普段着ていた装束とは違うので着付けてもらった。
    如:「カイロが戦国に有ったら寒い思いをしなくていいのですが」
    覚:「そうですね。特に唯は。あっでも、持って行った事ある?」
    尊:「聞かれてないから持って行ってないかも。やっぱりお姉ちゃんは性格も身体も順応性が高いんだろうな」
    美:「だから生きていけるのかもね」
    覚:「強い子に育ったよ。じゃ、出掛けようか」
    ナレ:如古坊は幸子からのプレゼントのマフラーを巻いて。神社は普段ひっそりとしているが、年が明ける前から氏子が集まり焚火を焚き、有志のご厚意で甘酒が振舞われ賑やかだった。覚、美香子、尊は如古坊が無事に戻れるように祈っていた。如古坊は速川家の三人と幸子と孝の幸せを祈った。如古坊が一番最後に頭を下げた。
    覚:「如古坊さん長かったですね」
    如:「はい」
    覚:「大丈夫ですよ。戻れますよ」
    ナレ:覚達は自分たちと同じことをお願いしていたと思っていた。
    如:「はい」
    ナレ:自分の願いは言わなかった。あたたまりたいと甘酒をお願いした。酒粕で作っていないと聞き尊も一緒に飲み温まった。
    美:「たまには甘酒もいいわよね」
    ナレ:飲み終わり家路についた。家に戻って、覚はお節料理をテーブルに置き、お屠蘇の用意をした。尊は形だけ。
    覚:「明けましておめでとうございます」
    ナレ:三人も挨拶をした。そして、
    覚:「はい、お年玉」
    ナレ:尊と如古坊に渡した。
    如:「これは?」
    覚:「お年玉です。現代のお金です。年頭に子供たちに渡すのですよ」
    如:「ですが」
    覚:「まぁ、気持ちの問題です。受け取ってください」
    如:「はい」
    ナレ:現代のお金だと聞いて如古坊はポチ袋を見ていた。
    美:「何を考えていたのか当ててみましょうか?」
    如:「えっ?」
    美:「幸子さんと孝君に・・・でしょ」
    如:「あっ、えっ、まぁ」
    尊:「如古坊さんもお礼て事で渡すのは良いと思うけど」
    覚:「そうだな。買い物は連れて行きますよ」
    如:「ですが、それでは」
    ナレ:如古坊は三人の顔を見た。
    美:「私たちにと思ったんでしょうけど、私たちはもう如古坊さんから貰ってるから」
    如:「えっ?」
    覚:「そうだな、こうして一緒に居られる事だけで僕たちは十分ですよ」
    如:「・・・ありがとうございます。有難く頂戴します」
    覚:「はい。それとこれは」
    ナレ:二つの袋はテレビの前の写真盾の前に置いた。その写真は唯が美香子のウェディングドレスを着て、忠清は尊の制服を着て並んだ写真だった。
    如:「此処に来て最初に見た写真で理由を聞きました。でも何故?」
    尊:「お姉ちゃんは小遣いは漫画買ったりして使ってたけど、お年玉はずっと貯めていて、お父さんとお母さんにハワイ旅行をプレゼントするって決めてたんだって。で、その意思を次いで僕も。それを知った若君も協力するからって」
    如:「では、私も」
    尊:「その気持ちだけで十分だから、それは如古坊さんの思う様に使って、そうしてくれた方が、お姉ちゃんは兎も角、若君は嬉しいと思うよ」
    覚:「そうだよ」
    如:「ありがとうございます」
    ナレ:みんなの思いに感謝した。そして届いた年賀状を見ていた。中の一枚を手にした覚が笑った。みんなの前に置いた熊田家の年賀状。今年は全員、孫までもカツラ、着物が戦国時代のふん装をしていた。
    覚:「きっと、如古坊さんに見せたいからじゃないですか」
    如:「そうですね。本当に楽しい家族です」
    美:「見る限りお嫁さんも楽しんでいるみたいね」
    尊:「でもさ、元旦に届いたって事は、もっと前に用意をしていたんじゃないかな?」
    ナレ:よくよく見ると端に【如古坊さん】の文字が。
    如:「忠清らと会ったことで考えられたのでは」
    覚:「そうですね。だから」
    ナレ:四人は正月から熊田家により温かい気持ちになった。

    ナレ:翌日は如古坊は留守番で覚の実家に正月の挨拶に出掛けた以外はのんびりしていた。如古坊が普段キッチンに立つ覚がのんびりしているので尋ねた。
    覚:「いいんですよ。お節料理は三が日、のんびり出来る様にと考えられている料理なんです」
    如:「そうですか」
    ナレ:のんびりしている中でカルタやオセロゲームや覚達も久しく手にしなかった羽根つきなどで楽しんでいた。四日目の朝、普段の生活に一番乗りは覚。朝食の支度を始め、洗濯と動いていた。そこに起きてきた如古坊。
    如:「お父さん、おはようございます」
    覚:「おはようございます。尊は?」
    如:「まだ寝ているので起してはと」
    覚:「そうですか」
    如:「ですが、今日から今年が始まったような感じですね」
    覚:「そうですね。でも、如古坊さんから感じって聞くのは初めてですね」
    如:「私もすっかり現代の人間のようですね」
    覚:「まぁ。でも、戦国に戻れたら、戻るのではないでしょうか?」
    如:「朱に交われば赤くなる?」
    覚:「そう言う事ですね。もう直ぐご飯できますから、尊を起してきてください。今から慣れさせないと新学期始まって寝坊してはいけませんからね」
    如:「分かりました」
    ナレ:如古坊が二階へ上がろうとしたた美香子も起きてきた。
    美:「如古坊さん、おはよう。早いわね」
    如:「おはようございます」
    ナレ:尊の部屋に入り、布団を被って寝ている尊の布団をバサッと取り、
    如:「尊、遅刻するぞ」
    尊:「えっ!」
    ナレ:尊はその言葉で驚いて飛び起きた。
    尊:「えっ!・・・そうだっけ?」
    ナレ:如古坊を見ると笑顔。
    尊:「もぉ、如古坊さん」
    如:「ごめん。お父さんがもう直ぐご飯だから起してきてと言われて」
    尊:「お姉ちゃんみたいな脅かしはやめてよね」
    如:「ん?」
    尊:「小学生の時に、学校の創立記念日で休みだったんだけど、その朝、お姉ちゃんが慌てる様に遅刻するよって僕を起したんだ。僕は寝ぼけていて、慌てて着替えてランドセル持って下へ降りたら、お姉ちゃんがソファの上で腹抱えて笑っててさ、本人はまだパジャマで」
    如:「そんな事が。目に浮かぶよ」
    尊:「でしょう」
    ナレ:尊の言い方に寂しさを感じた。
    如:「尊は唯が居なくて寂しいか?」
    尊:「寂しいって事は無いと思うよ。もし、何もなくてずっと一緒に居たら考える事も無かったことはお姉ちゃんが居なくなって気づいた」
    如:「ん?」
    尊:「昔は正直、お姉ちゃんを馬鹿にしてた所が有ってね。でも、お姉ちゃんがみんなの為に頑張ってる姿や、若君がお姉ちゃんを想う気持ちを知ってから、お姉ちゃんを尊敬してるって事と、僕には出来ない事への力がある事も知れたから、寂しいと言うより、お姉ちゃんが僕のお姉ちゃんで良かったって。でも、この事はお姉ちゃんに言わないでよ」
    如:「何故?」
    尊:「つけあがるから・・・はっ、起きるか。如古坊さん先に行ってて」
    如:「あぁ」
    ナレ:如古坊は三人の唯に対する気持ちが良く分かり、戻れた時に自分も唯を守らねばならないと強く思った。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=10へ続く

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    四人の現代Days86~4日9時30分、幕開きです

    今回はときめいたらしい。前回は58話no.915です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊「30分も早く着いちゃったよ…」

    小垣駅に到着した尊。ホームに降り立った。

    尊 心の声(待たせるよりいいとはいえ、どこかで時間潰さないとな)

    ホームの端まで歩いていると、

    尊 心(え。ウソ?!もう来てる!)

    遠くのベンチに、瑠奈が座っていた。

    尊 心(びっくり。いつから居るんだろ)

    瑠奈はこちらに気付いていない。思わず身を隠す尊。

    尊 心(電話してるな)

    キャメル色のコートに、デニムのロングタイトスカート。モコっとした、足首が隠れる丈のムートンブーツを履いている。

    瑠奈「もー、待ち遠しくって!どうせ浮かれてますよーだ」

    かなり楽しそうに、誰かと話している。

    尊「…」

    尊 心(僕を待って、こんな早くから、あんなに喜んでる?信じられない。でもくすぐったいような。嬉しい)

    瑠「もー、いいでしょー。うん、うん、また報告するー、あはは!じゃーねー」

    尊 心(動きが、小動物っぽくて…かわいい)

    電話を切り、座ったまま伸びをした瑠奈。様子を見計らってそっと近づく尊。

    瑠「あ」

    気がついた。

    瑠「わぁ!」

    尊「えっ」

    ベンチから立ち上がり、満面の笑顔で頬を赤く染めながら、駆け寄ってくる。

    尊 心(こ、これは…)

    瑠「おはよう!尊。早かったね」

    尊「おはようございます。いつから居たの?」

    瑠「ちょっと前から」

    尊「寒かったでしょ」

    瑠「平気」

    尊「でも冷えたりしたら…あ、これ」

    持っていたカイロを差し出す。

    尊「わ、違う、新品あるからそっちを」

    瑠「ううん、これがいい。尊が握ってた方で」

    尊「え。ま、まぁ出したばかりではあるんで」

    瑠「ふふっ。尊は今日も、優しさ全開だね」

    尊「いや、優しいヒトは新品渡すでしょ。は、はは」

    瑠「今ね、みつきとしゃべってたの。センセによろしくって言ってたよ」

    尊「そうだったんだ」

    来た電車に乗り込んだ二人。

    瑠「コートがお揃で嬉しい!」

    尊「そうだね。偶然」

    瑠奈も、ダッフルコートだった。

    瑠「スカートも、デニムにしといて良かったぁ。お母さんがね、女子高生ならミニスカートが定番じゃないのって言ってて」

    尊「ははは。制服はそんな感じが多いかな」

    瑠「猫も杓子もミニスカートはなんだから、あえてのロングスカート!って言い返したら、笑ってた」

    尊「仲良いね。もしかして、電話する時いつも近くに居ない?」

    瑠「居る。理由は、内緒」

    尊「内緒ですか。ウチも、家族仲いいよ」

    瑠「カラオケもイルミネーションも、家族とだったんだもんね」

    尊「うん。他に一緒に行く人も居ないし」

    瑠奈が、自分を指差している。

    瑠「立候補する」

    尊「それはどうも…ありがとうございます」

    尊 心(なぜ、僕なんだろう?帰りまでには教えてもらおう)

    さて。その頃の速川家。覚がタブレットで城の情報を調べている。

    覚「松丸城も長澤城も、今は跡地に石碑が残るだけみたいだな。でもどうしても、吉田城跡が見つからない」

    美香子「なぜかしらねぇ」

    唯「すっごく大変だったけど、たーくんが初めてこっちに飛んだ場所なのに」

    源三郎「見つからない。そうですか…」

    トヨ「源ちゃん、大丈夫よ。きっとどこかにあるわ」

    若君「有山が守っておったからのう。気に病むのも無理はない」

    美「なぜこうも、黒羽城や小垣城と扱いが違うのかしらね。地元の熱意の違い?」

    唯「たとえばさ、高山が民に嫌われていたとか?」

    若「それはわからぬが、少なくとも松丸家はそれには当てはまらぬ」

    源「財もある家柄ですし」

    ト「私達が知らないところで、何かあったのでしょうか」

    覚「今は知る由もないが、ただ資料がないだけかもしれないぞ」

    若「なるほど」

    唯「そうだ!」

    美「もう何~、大きい声出して」

    唯「木村先生なら知ってるかも。尊が帰ったら、先生にメールさせよう!」

    美「デート中に今すぐやれって言わないだけ、少しは成長してるわね」

    覚「ひとまず、小垣、松丸、長澤の三箇所巡ってみるか。じゃ、分乗して出発~。いや、出立~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days85~4日土曜6時30分、未踏の地へ

    遠足の日の朝みたいな高揚感?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が目を覚ました。

    尊 心の声(あー。お風呂にも入らないといけないし、もう起きるか)

    パジャマのまま、階段を下りる尊。

    尊「あっ、そっか。この時間は」

    若君「尊、お早う」

    源三郎&トヨ「おはようございます」

    三人は、テレビを観ながらラジオ体操中。

    覚「おっ、やっぱり早く起きたなー。風呂、沸いてるぞ」

    尊「ウソ!もう?」

    美香子「デートが楽しみで、絶対早起きする、って読んでたのよ~」

    覚「僕は、緊張して早く起きちゃうって読んでた。なんせ女の子とだしな」

    尊「誰かと出かけるなんて、家族以外男同士でも行った事ないから、男女差はないよ」

    覚「で、緊張はしてるのか?」

    尊「こうやって追い立てられるから、そうじゃなくてもそうなりそう」

    覚「そうか?ははは」

    美「まぁ、まずはお風呂にね」

    尊が風呂から出ると、食卓で唯が不機嫌そうに座っていた。

    唯「なんで、尊のデートに合わせて、早起きしなきゃいけないのー。眠いよー」

    尊「僕のせいばかりじゃないでしょ」

    美「そんなに早くはないわよ?ホント、文句が多いわねぇ」

    朝ごはん後。

    美「さぁ、服選ぶわよ」

    尊「はいはい」

    母と息子が二階に上がり、尊の部屋に入る。

    美「ちなみに、自分ではどうコーディネートしようと思ってた?」

    尊「自分では…」

    タンスの中から服を取り出す。

    尊「セーターはこれ」

    薄いクリーム色のタートルネック。

    美「いいわね」

    尊「OK?下はこのジーンズで」

    美「ん、その辺に転がってるのじゃなくタンスから出てきたから良し。上着は、ダウンジャケットのつもりだった?」

    尊「うーん。でもこれこそ出かける時はずっと着てるし、どうしようかとは思ってた」

    美「クリーニング済みのを着ればいいのよ。ちょっと待ってて」

    手にコートを持って戻ってきた。

    尊「あー、それか」

    美「去年クリーニング出した後、私達の部屋のタンスに一緒に入ってて。こっちの方が断然、デート仕様よ」

    紺色のダッフルコート。大きいフードが付いており、前を留めるトグルは白で、爽やかな印象。

    尊「いいかも」

    美「決まりね。楽しみだわ~」

    尊「お母さんがでしょ」

    美「誰かとどこかに行こうという気持ちになってくれただけで嬉しいの。瑠奈ちゃんに感謝しなくちゃね」

    尊「うん…」

    美「じゃ、着替えて忘れ物ないか確認したら、下りてらっしゃい」

    しばらくすると、身支度を整えた尊がリビングに下りてきた。

    唯「ちょっとー、いやに爽やかじゃなーい」

    尊「悪い?あ、ねぇ、使い捨てカイロが欲しいんだけど」

    覚「いくつ要る?また二つか?」

    尊「うん。一つ使ってもう一つは予備で」

    カイロを袋から出し、シャカシャカ振る尊。

    若君「これか。源三郎もトヨも、見覚えがあろう」

    源三郎「はい。あの日の警固は、頂戴したこの品のお陰で寒さを感じずにおれました」

    トヨ「元々、振るだけで温かくなるのですね。驚きました」

    覚「なんならこれも、今回持って帰るかい?買い込んであるからさ」

    源「それは…有難いです」

    若「よろしければ、お願いしとう存じます」

    そこに美香子が、上着を羽織って登場。

    美「もう支度バッチリ?」

    尊「うん、まあ」

    美「駅まで送ってあげる。さ、行くわよ」

    尊「え、まだ待ち合わせに時間あるし、歩いてくよ」

    美「待たせるよりはいいじゃない。早めに行って待ってなさい」

    尊「それにしたって、相当早く着くよ」

    若「尊、早いに越した事はない」

    尊「このままだと、30分位早く…」

    若「行って参れ」

    尊「はい。わかりました」

    唯「えーと、ご武運を祈る?行ってらっしゃーい」

    源&ト「行ってらっしゃいませ」

    覚「楽しんできな」

    尊「うん。行ってきます」

    出かけていった。

    若「お父さん」

    覚「ん?」

    若「折り入ってお願いしたき儀がございます」

    覚「ほほぅ。何だい?」

    若「昨日、小垣城跡の話を聞きました。是非、今の姿を見とう存じます」

    覚「なるほどね」

    若「あと、もしよろしければですが」

    覚「うん」

    若「近隣に、吉田城や松丸城や長澤城もあるのですが、同じく見る事は叶いますでしょうか」

    覚「んー。その三つの城はあまり聞いた事ないから、どれも今はないんじゃないかな。よし、場所を調べて行ってみるか」

    若「忝のう存じます」

    唯「わーい!お出かけだぁ」

    覚「母さんが帰るまでに、身支度しておいて」

    唯&若君&源三郎&トヨ「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=8

    ナレ:12月22日の朝はパーティの支度で大忙し。如古坊が楽しくなり作り過ぎた飾りを部屋中に飾った。覚は料理を作り、途中買い物と予約していたケーキを取りに。戻ってからセッティング。テーブルの上は所狭しと料理が並び、鶏のから揚げにレンコンのはさみ揚げ、サラダ、孝が好みそうなフライドポテト等々。
    尊:「お父さん凄いね」
    覚:「まぁ、出来合いの物もあるけどね。如古坊さんにとっては最初で最後のクリスマス会になるし、孝君にとって思い出に残る誕生日会にしたいしね」
    尊:「そうだね。来年はもう如古坊さんは居ないし」
    ナレ:如古坊が戻れるとの思いでそう言った。11時半にインターホンが。
    尊:「僕が出るよ」
    ナレ:玄関ドアを開くと、幸助が大きな袋を抱えていた。
    幸助:「今日はお招き有難うございました」
    ナレ:三人が入るとテーブルの上の料理の品数を見て驚いた。
    聡:「申し訳ありません、お手伝いもせず」
    覚:「良いんですよ、沢山食べて下さい」
    宗:「そう言っては、父が遠慮しませんよ」
    幸助:「お前なぁ」
    ナレ:その親子の姿を見て如古坊が、
    如:「仲がよろしいですね」
    宗:「お恥ずかしい。あなたが如古坊さん」
    如:「はい。縁あって私もお世話になる事に」
    聡:「不思議な事もあるのですね。あの方々とお知り合いの方にまた会う事になるとは」
    幸助:「本当だな。不思議だよ。で、私たち親子と同じ姿の親子が居たとか」
    如:「はい。でも、私は、お目通りかないませんでしたので、話したことはありません」
    宗:「そうでしたか・・・では、この時代では私たちと如古坊さんは友達になりました」
    如:「嬉しいです」
    幸助:「でも、奥さんの話では、今回は尊君のタイムマシーンではないと」
    ナレ:尊は木村先生の意見を話した。
    聡:「では、如古坊さんが来た日の3月24日に戻れるかもしれないのですね」
    覚:「我々はそれに賭けようかと」
    宗:「あのぉ、水を差す様ですみませんが、旧暦でも現代は4月28日だったんですよね」
    美:「えぇ、そうよ」
    尊:「4月28日の可能性もあるって事ですよね」
    宗:「かも知れないと思って」
    覚:「そうか。その可能性もあるな。来たのは旧暦でも戻るのは現代の・・・3月24日に戻れなかったら4月28日」
    如:「その可能性もあると?」
    覚:「はい」
    幸助:「話には聞いていましたが、如古坊さんの話し方は我々と変わりませんね」
    如:「はい・・・それだけ長い期間この地に居るのだと」
    ナレ:その言葉に皆、黙ってしまった。美香子が時計を見て、
    美:「もう直ぐ幸子さんたちが来る時間よ。で、電話で伝え忘れていたけど、二人の前では如古坊さんは、みつよしさんって呼んでね」
    聡:「みつよしさん?」
    ナレ:覚が説明した。
    宗:「分かりました」
    ナレ:するとタイミングよく呼鈴が。尊が出て行き幸子と孝を迎え入れた。二人に会うのは初めてだったので挨拶をした。
    尊:「いらっしゃいませ。僕は此処の長男の尊です」
    幸:「小路幸子です。今日はお招き有難うございました」
    ナレ:部屋に行き三人に紹介した。
    幸:「小路幸子と申します。息子の孝です。孝ご挨拶」
    孝:「小路孝です。もう直ぐ小学生です」
    聡:「まぁ、随分しっかりした息子さんね。宗之の同じ年の頃とは大違い」
    宗:「お母さん、人前で。まぁ、確かに孝君みたいにしっかりしていなかったのは否めないけど」
    美:「人それぞれよ。座って」
    ナレ:テーブルの周りに椅子を並べ、足りない分は祥の家から借りてきた。幸助は大きな袋から青い袋を孝に、黄色い袋を尊に、赤い袋を如古坊に渡した。
    幸助:「参加される孝君が今日が誕生日で、来年小学校に上がると聞きまして」
    幸:「ありがとうございます。孝」
    孝:「ありがとうございます」
    ナレ:三人が中身を見ると、孝には学校で使える文具セット。尊には大学で使えるペンセット。如古坊にはマグネット式のオセロゲーム。
    幸助:「どうしてって皆さん思っていますよね」
    ナレ:覚達は頷いた。
    幸助:「いつの時代も悲しいかな陣取り合戦みたいな事あるじゃないですか。もし、ゲームの中で戦えるなら、こんな平和な事は無いって、ある人が話していて、それを聞いて、なんかジーンってきて。で、これをにょ・・・三吉さんにって」
    ナレ:幸助はここで会った忠清が、現代での楽しい事の中にオセロゲームをした時の事を話した。このゲームの様な戦いであったならと言っていたことを覚えていて同じ時代に生きる如古坊に渡したいと思っての事だった。幸助の話を聞いてその意味を知っている覚達は黙っていた。幸子はその意味が分からないが尋ねる事はしなかった。孝は、
    孝:「僕もゲームが欲しいなぁ」
    幸:「失礼なこと言わないの。すみません」
    幸助:「いいんですよ。そうか、ゲームが良かったか。あははは」
    ナレ:幸子は申し訳ない気持ちで頭を下げた。そして頼まれたクラッカーを覚に渡した。尊の掛け声で紐を引いた。大勢の事で聞き慣れていた面々も驚いた。如古坊も勿論驚いたが初めての経験とは言えない。幸子たちが不思議がると思ったので、
    如:「大きな音になりますね」
    ナレ:幸助たちは自分らも驚いたから、初めての如古坊はさぞかし驚いただろうと、言葉にはせずニコニコしていた。出してきたケーキの板チョコに【Merry Xmas】と【Happy Birthday】。蝋燭を6本立て火を点け、手拍子しながら歌う。事前に説明を受けていなかった事に戸惑いながらも如古坊もみんなと同じようにしながら歌う振り。
    覚:「孝君、吹き消して」
    ナレ:孝は笑顔で吹き消した。初めての光景は如古坊は不思議だった。何故点けた火を吹き消すことが祝いなのかと。だが言葉にすれば幸子に不思議がられると尋ねる事はしなかった。みんなで美味しく頬張った。すると、孝がもう一度クラッカーを鳴らしたいと言い出した。
    覚:「そうだよね」
    ナレ:覚は信茂の土産用に多く頼んだが、此処でそれを言っては幸子に不思議がられると思い、あとで買ってくればいいかと考え袋を渡した。孝は袋の中から一つ取り後は覚に戻した。孝はツリーの方に向かって紐を引いた。
    孝:「お母さん、楽しいね」
    幸:「そうね」
    覚:「遅くなったけど。孝君」
    ナレ:孝をツリーの側に連れて行き、
    覚:「これは孝君の誕生日とクリスマスプレゼント」
    ナレ:ツリーの下に置いてあるリボン付きの袋と箱を持たせた。その場では開けず幸子に開けて良いか聞いた。
    幸:「ありがとうございます。いいわよ」
    ナレ:孝は先に袋の方を開けた。体操着入れと手提げ袋。どちらも消防車のイラスとのアップリケ。箱の方もブロックで作る消防車だった。
    孝:「おじちゃん、ありがとう」
    ナレ:孝は箱を抱え頭を下げた。
    覚:「孝君が此処に来た時、ギターを教えていたら、大きくなったら消防車に乗りたいって言ってたんだよね」
    美:「そう、孝君は将来、消防士になりたいんだ」
    孝:「うん」
    ナレ:幸子には初耳だったので驚いた。
    幸:「孝、本当?」
    孝:「うん。僕、消防士さんになりたいんだ」
    幸助:「今から、将来なりたいものがあるなんて凄いな。息子は、君くらいの時、ヒーローになるって、何のヒーローだって聞いたら、ヒーローの一点張りでね。ははは」
    宗:「恥ずかしいこと言わないでよ。間違ってないけど」
    美:「どっちも素敵な事じゃないの」
    宗:「でも、どうしてブロックなんですか?」
    覚:「孝君なら、コツコツ作りそうな気がしたから」
    聡:「そうですね。今日初めて会ったけれど、一から頑張るようなお子さんだと」
    幸:「ありがとうございます」
    宗:「お母さん、何か言いたげだね」
    聡:「何も無いわよ。ふっ」
    宗:「それが言っているって事だよ。もぉ、お父さんも笑ってないで」
    幸助:「笑ってないぞ。いつもこんな顔だろ。あははは」
    ナレ:如古坊がこの親子が戦国の世に居たならば、羽木との戦は無かったのではと思った。
    尊:「にょ・・・三吉さん、そうしたんですか?」
    如:「いいえ。ただ、食べ過ぎたと」
    ナレ:如古坊は腹を擦りながらソファに座った。
    幸:「三吉さん、大丈夫ですか?」
    如:「あっ、大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」
    幸:「あの、これを」
    ナレ:幸子が箱を渡した。
    如:「これは?」
    幸:「お礼です」
    如:「れい?」
    幸:「はい。開けてみてください」
    ナレ:如古坊はリボンをほどいて蓋を取ると中には紺色のマフラーが入っていた。如古坊はこの布をどう使うのかと考えていると、幸子がマフラーを如古坊の首に巻いた。それを離れてた所で見ていたみんなはその大胆ともとれる行動に困惑していた。
    如:「温かい」
    幸:「気に入ってもらえました?」
    如:「はい・・・ありがとう・・・ございます」
    ナレ:幸子は笑顔を見せた。そして自分の腕時計を見て、
    幸:「そろそろ、お暇します。孝」
    ナレ:孝を側に呼び、
    幸:「今日は、本当にありがとうございました」
    覚:「いえ。私たちも楽しかったですよ。場だ料理もありますので貰って下さい」
    ナレ:タッパーに料理を詰めて渡した。
    幸:「ご馳走様でした」
    ナレ:孝は両手にプレゼントを抱え、嬉しそうにお辞儀をした。幸子と孝を見送った。そしてみんなが如古坊を見た。
    如:「あの、私に何か?」
    美:「私たちは、幸子さんが如古坊さんに好意を寄せていると。そう見えたのね。如古坊さん」
    ナレ:如古坊は一人一人の顔を見て、みんなが心配している事は分かった。
    如:「分かっています。皆さんが思われる通り、私はこの様な想いを今までにしたことはありませんでした。私が誰かを想う事になるとは自分自身で驚いています。正直、私がこの世に生まれ、彼女に出会っていたならばと・・・ですが、叶わぬ事なのですね」
    ナレ:如古坊の切ないまでの言葉に美香子と聡子は涙を拭っていた。
    覚:「僕も幸子さんの気持ちも皆さんが思う通りだと。如古坊さんの気持ちも分かる。もし、我々が考えが当たっているとしたら、如古坊さんから話した方がいいと思う」
    尊:「戦国時代から来たって?」
    覚:「ん~、それは、刺激が強すぎるか」
    美:「じゃ、なんて?」
    幸助:「旅に出るとか、外国に行くとか」
    宗:「それじゃぁ、電話とか手紙とか欲しいって言われるんじゃないかな」
    聡:「それもそうね」
    幸助:「これは酷な事になるけど、幸子さんの気持ちが本当に如古坊さんにあると分かったら、きっぱり、その気は無いと言った方が、彼女も次に進めるんじゃないかなって」
    ナレ:幸助の言葉も分かるから尚更辛い気持ちになった。
    如:「私の為にすみません」
    覚:「まだ時間はあるから、先に幸子さんの気持ちを確かめてからでも」
    美:「そうよね。話はそれからね」
    聡:「それでしたら、女同士ならば幸子さんも話すのでは」
    美:「そうね」
    ナレ:美香子と聡子が話を聞くことにした。
    幸助:「それでは、私たちも」
    聡:「そうね。如古坊さん」
    如:「はい?」
    聡:「如位古坊さんが穏やかな気持ちで戻れるように協力しますね」
    如:「ありがとうございます」
    宗:「信茂様たちに友達と言って下さいましたから、如古坊さんも友達です。僕にもお手伝いできることがあれば遠慮なく言って下さいね」
    如:「皆さん、ありがとうございます」
    ナレ:如古坊は深々と頭を下げた。熊田一家は帰って行った。片付けをしてコーヒーを淹れみんなの前に置いた。
    覚:「幸子さんの事、頼むな」
    美:「うん・・・お父さん」
    覚:「そうだな」
    ナレ:覚がどこかへ行き戻って来て、
    覚:「尊、これはお母さんと僕から」
    尊:「ありがとう」
    ナレ:プレゼントの中には財布と定期入れ。
    覚:「使えば使うほど味が出て風合いが良くなるそうだから、大事に使えよ」
    尊:「ありがとう、大切にするよ・・・如古坊さんには?」
    ナレ:尊が心配そうに聞くと、二人は顔を見合わせまた覚が何処かへ。戻って来た手には着物が。
    覚:「如古坊さんに。これを着て初詣でに行こう」
    如:「私に?」
    美:「着ていなくても似合うの分かるわ」
    如:「お父さん、お母さん、ありがとうございます」
    尊:「色んな思いはあるけど、来年の初詣では最後になればいいね」
    覚:「そうだな」
    ナレ:美香子と如古坊は黙って頷いた。
    美:「あっ、でも、その前に如古坊さんにも頑張ってもらわなくっちゃ」
    如:「えっ?」
    覚:「そうだな」
    如:「尊?」
    尊:「あぁそうだ。大掃除。如古坊さん、頼みます」
    如:「掃除?」
    美:「そっ、いつもより大掛かりでね。医院の方は私と看護師さん達でチャッチャとやるけど母屋はお父さんたちで。も、唯は、片付けながら捨てる漫画を読みだして仕事にならないから」
    尊:「だから、僕とお父さんがってのがいつもの事」
    如:「分かりました。頑張ります」
    美:「唯の部屋は私がするから」
    覚:「そうだな、僕がしたって知ったら、何言われるか。いつも男の子みたいなあいつでも、何か言えば、レディって言うからな。ははは」
    如:「れでい?」
    尊:「大人の女性って事かな?」
    如:「唯が・・・すまない」
    美:「いいんですよ。私たちもそう思うのですから」
    尊:「そうは思わないのは若君だけだろうね」
    覚:「そうだな」
    如:「そうかも知れません。私から見ても本当に忠清は唯の事を大切に想っている事が良く分かりますから」
    美:「唯は幸せ者ね」
    覚:「そうだな」
    ナレ:美香子と覚が顔を見合わせている姿を見て親としての想いを感じ、尊と如古坊は黙って見ていた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=9へ続く

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    四人の現代Days84~3日16時、着々と準備

    冬に二回も入ったら、いくら若くてもお肌カッサカサになりそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    コツコツと、自分の部屋で勉強していた尊。

    尊 心の声(そろそろ明日の打ち合わせの電話するか。4時頃ってLINEしておいたし。でも、なんで電話なんだろ)

    ところ変わって、こちらは瑠奈の家。あい変わらず、自分の部屋ではなく家のリビングに居た。

    瑠奈の母「またここでしゃべるの?」

    瑠奈の父「俺も居ていいのか?」

    瑠奈「いいよ。はしゃぎ過ぎて、おかしくなってたら止めて欲しいから」

    瑠母「あらまあ。今からそんな風で、明日尊くんとちゃんと話せるの?」

    瑠奈のスマホに電話がかかってきた。

    瑠「わぁ!深呼吸しなきゃ、すー、はー。…もしもしぃ」

    尊の電話『もしもし、お待たせしました』

    瑠「待ってた」

    尊 電話『え、遅かった?』

    瑠「ううん、大丈夫。あのね、どこに行こうか迷ったんだけど、遊びに行くんじゃないし、あまり遠くはダメって親に言われて」

    瑠父「俺達が悪者みたいだな」

    瑠「だから、電車の乗り換え一回で済む神社に行こうと思うの」

    尊 電話『うん。あそこだね。多分そうだろうと思ってた』

    瑠「もう行ってた?御守とか持ってる?」

    尊 電話『行ってないし持ってないよ』

    瑠「じゃあ、私がプレゼントしてあげる!」

    尊 電話『ははは。ありがとうございます』

    瑠「何時にどこで待ち合わせする?」

    尊 電話『駅で良くない?家からの最寄りは、何駅になる?』

    瑠「私は小垣駅。尊は、黒羽駅?」

    尊 電話『うん、そう。…それなら、10時に小垣駅のホームでどう?小垣なら通学経路の途中だから、そこまで行くよ』

    瑠「それでいい?小垣駅で降りた事ある?」

    尊 電話『ないね。そこ、急行電車停まらないから』

    瑠「黒羽駅は急行停まるもんね。そのままピューっと、学校の駅まで行けるから。…あれ?」

    尊 電話『どうかした?』

    瑠「前にカラオケ、来てたよね。小垣の」

    尊 電話『うん』

    瑠「なんでわざわざこっちまで来たの?黒羽市にもカラオケ屋さんあるよね?」

    尊 電話『小さい頃から、親に車に乗せられて半強制的に行ってたからなぁ。よくわからないけど、親がそこに慣れてるからかも』

    瑠「ふーん」

    尊 電話『あの、さ』

    瑠「はい!なに?」

    尊 電話『なんで、電話だったの?LINEなら時間気にせずに連絡できるのに』

    瑠「嫌だった?ごめん、忙しかったかな」

    尊 電話『それはないけど。ただ疑問に思っただけ』

    瑠「尊の声が聞きたかったの」

    瑠父「熱いな」

    瑠母「熱いわね」

    尊 電話『え。はは…そ、そうなんだ。では、明日よろしくお願いします』

    瑠「うん!楽しみにしてるね!」

    尊 電話『じゃあね』

    瑠「バイバーイ!…はぁ」

    電話を切っても、まだそわそわしている瑠奈。

    瑠「明日10時に、小垣駅のホームで待ち合わせになったぁ」

    瑠母「楽しみね。最初はどうなるかと思ったけど、そこまで暴走はしてなかった」

    瑠父「確か、速川君、だったな。で、黒羽市の子か」

    瑠「うん。なにかある?」

    瑠父「親御さん、速川クリニックを営まれてないか?」

    瑠母「速川クリニック…あー、聞いた事あるわね」

    瑠「有名なの?」

    瑠父「黒羽市、速川で検索したらすぐ出ると思うぞ。口コミ人気でも上位に入る筈」

    瑠「見てみる!え、でもウチのクラス、医学部志望は一人も居ないよ?」

    瑠父「そこの息子さんと決まった訳じゃないし、本人に聞けばわかる話だろ。ただ」

    瑠「ん?」

    瑠父「好きだと騒ぐ割には、リサーチが甘い」

    瑠「違う、尊は謎が多いの!」

    変わって、速川家。尊がリビングに下りてきた。

    唯「もう夕方だけど、連絡した?」

    尊「うん。明日の10時に、小垣駅のホームで待ち合わせになった」

    唯「おっ!」

    美香子「あ、もしかして、彼女の家がその近く?」

    尊「そう言ってた」

    その会話に、若君と源トヨが反応した。

    若君「今、小垣と申したな」

    尊「はい。小垣城跡からは少し離れてますけど、そういう名前の駅があるんです。兄さん、去年電車に乗ってますけど、気づきませんでしたか?」

    若「唯ばかり見ておった」

    尊「サラッとのろけたなぁ」

    源三郎「尊殿。その、駅、はどの辺りにあるのですか?」

    トヨ「小垣城の近くなんでしょうか」

    尊「なら、地図で説明しますね。お父さん、タブレット貸して」

    覚「ん」

    画面に地図を表示させた。若君と源トヨが尊の周りを囲む。

    尊「ここが黒羽城公園。すぐ近くに黒羽駅。小垣城跡はここから北東の位置にあり、今でも小高い山の上にあります」

    若「山城じゃからのう」

    尊「城下町は、当時も山の下にあったんじゃないですか?いや、違う。戻れば今でも山の下にありませんか?」

    若「民は、そうじゃな。城の南に」

    この辺り、と地図を指差す若君。

    尊「ですね。だから鉄道はその平地の部分を走っています。お城からは少し距離があるけど、駅名は小垣。ちなみに僕の通学経路ですが、黒羽駅から小垣駅を経由して行ってます」

    美「電車一本で通学できるから、楽は楽よね」

    尊「うん」

    美「あ、そうそう、先に言っとく。尊はお風呂、明日の朝入んなさい」

    尊「え!そこまで徹底?!」

    美「全ては君の為。なんなら、今夜入って朝も入る?」

    尊「いや、朝だけにします…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    3日のお話は、ここまでです。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=7

    ナレ:尊が学校から戻って戻って来て、リビングの段ボールの中を見て驚いた。箱一杯に飾りが。
    尊:「随分作ったね」
    如:「楽しくなって、作り過ぎました」
    尊:「大丈夫ですよ。家中飾りましょ」
    覚:「そうだな。で、物置からツリー出してきて」
    尊:「分かった。如古坊さんて手伝って」
    ナレ:物置からツリーの箱を運んで部屋の隅に置いた。
    如:「これは?」
    尊:「クリスマスツリー。本来は生木のモミの木なんだけど」
    如:「これは木?」
    尊:「プラスチックという素材で木を真似て」
    如:「煌びやかな木の前で皆が写真を。これだったのか」
    覚:「それです」
    ナレ:美香子も戻って来て早い夕食の後、みんなで飾りつけを。
    如:「奇麗だ・・・永禄でも立木に飾りを付けてクリスマスが出来るのでは・・・あの、今更ですが、クリスマスとは?」
    ナレ:その言葉に三人が笑った。
    如:「あの?」
    覚:「すみません。その疑問なく皆さんが楽しんでいたので。だから聞かれて驚いたので・・・尊、説明を」
    尊:「何で、お父さんがすればいいじゃん」
    覚:「お前に花を持たせているんだよ」
    尊:「別にいらないし・・・正直に言うけど、僕も良く知らないんだ。キリストが生まれた日とか、生まれてきた事とか、そんな事らしいよ」
    美:「難しい事はいいじゃない。如古坊さん」
    如:「はい?」
    美:「楽しい事。それだけでいいんじゃないの」
    如:「尊、すまない・・・はい、素直に楽しむ事にします」
    美:「そうよ・・・あっ、そう」
    尊:「お母さん?」
    ナレ:美香子は何処かへ行き、しばらくして戻ってきた美香子の手にはファイル。それをテーブルに置いた。
    覚:「年賀状の、どうして?・・・もう来年の年賀状印刷は頼んであるけど」
    美:「これを見せたくて」
    ナレ:今年の年賀状の中から一枚出して如古坊に見せた。それは熊田家族の写真付き年賀状。
    如:「これは・・・私は直に会う事は無く、遠目に見ていたのですが・・・話には聞いていた高山?」
    美:「そうよ」
    如:「やはり・・・でも、高山宗鶴の苦虫を嚙み潰したような顔とは違いますね」
    ナレ:祭りの時の様で、父親がはしゃいでいるのが良く分かる写真だった。
    如:「私が知る親子はこれ程までに仲良くは思いませんでしたね。でも、色々あってののち、この親子のようになったと。それに高山との蟠りも消えたと忠清に聞きました」
    覚:「そうなんですか。良かった・・・唯から高山との戦の事を聞いていたし、二人がこの家に来た時に、私たちの様な親子なのかと聞かれて、皆さんが困っていたので。本当に同じになったのであれば嬉しいですね」
    如:「はい」
    覚:「で、どうして・・・如古坊さんに見せたいのは分かるけど」
    美:「如古坊さんが高山親子との蟠りが無くて、この二人に会ってみたいと思うかなぁって」
    如:「そうですね・・・会ってみたいですね。戻れた時の土産話の中に入れたい」
    美:「じゃ、クリスマス会に誘いたいんだけど良い?」
    覚:「構わないけど、返ってご迷惑にならないか?」
    美:「まぁ、聞いてみて駄目なら」
    覚:「分かった」
    ナレ:明日連絡することにした。そこへ電話が鳴った。
    覚:「誰だろう?」
    ナレ:出ると相手は幸子だった。
    幸:《夜分遅くにすみません。小路です》
    覚:「大丈夫ですよ。どうしました?」
    幸:《明日の二時頃、伺ってもよろしいでしょうか?》
    覚:「構いませんよ。では明日」
    ナレ:約束をし電話を切った。
    尊:「お父さん?」
    ナレ:覚は如古坊を見ながら、
    覚:「僕たちに話したい事があるから、明日二時頃此処に来るって」
    如:「そうですか・・・孝君の事でしょうね」
    美:「会わせるとか言っていたんでしょ」
    覚:「あぁ・・・気にはなっていたけど」
    ナレ:幸子にとって悪い話ではないかと心配になった。
    尊:「みんなが心配してもどうにもならないでしょ。結果は出ているんだろうから」
    覚:「そうだな」
    ナレ:その話は終わりにし、風呂に入り就寝。でも、みんなは幸子の事を気にしていた。

    ナレ:翌日、休憩中に美香子が熊田家に連絡した。如古坊の事を伝えると聡子は驚きの声を上げた。家のクリスマスは24日だからその日は三人で参加すると言ってくれた。二時に呼鈴が鳴った。覚が迎え出ると幸子ひとりだった。
    覚:「あっ・・・どうぞ・・・孝君は?」
    幸:「今日はお泊り保育でして」
    覚:「あっ、そうなんですね。どうぞ、お入りください」
    幸:「お邪魔します」
    ナレ:リビングで如古坊は待っていた。如古坊が孝の姿が見えないと心配するだろうからと、
    覚:「孝君は、幼稚園のお泊り保育で」
    ナレ:覚の話し方で心配ないのだと察した。
    如:「そうですか」
    ナレ:お泊り保育の意味は分からないが分かっている風に答えた。覚は二人と自分の前にコーヒーを置いた。
    幸:「ありがとうございます・・・今日はご報告に」
    ナレ:二人は身構えた。
    幸:「あの?」
    覚:「いえ・・・どうぞ」
    幸:「はい・・・あの日、皆さんに力を頂いたので彼に連絡しまして会いました。孝を見て自分の子供の頃に似ていると嬉しそうでした。でも、奥さんの表情が」
    覚:「まぁ、複雑でしょうね」
    幸:「はい。彼女の所に孝が行くので彼も私も勿論、彼女も驚いていて、孝が僕の事が嫌いって聞いたのです」
    覚:「どうして?」
    幸:「子供心に感じたのでしょう。彼女はそんな事は無いと言っていましたが、表情は硬くて、当たり前ですよね、夫の子供が目の前に現れれば」
    覚:「そうでしょうね・・・あっ」
    幸:「いいえ・・・彼が、お父さんの所で暮らさないかと」
    覚:「あぁ」
    幸:「孝は首を振って、お母さんと居るから、お父さんの所には行かないよって。私はお父さんとすんなり言った事に驚きましたが、孝は私の元に戻り私の手を掴みました。彼は寂しそうでした。
    その後、自分の子ですが不思議でした」
    如:「えっ?」
    幸:「孝がまた二人の前に行きまして、彼と彼女の手を取り手を繋ぐようにしてから、彼女のお腹を触って、遊ぼうねって言ったんです」
    覚:「えっ、なに?」
    幸:「私たちは信じられない光景を見たようでしばらく言葉が出ませんでした。彼女が此処に居るのとお腹を擦って孝に聞きました。孝は、まだだけど、もう直ぐって」
    覚:「えっ?」
    幸:「特殊能力があるのかと聞かれましたが、そんな能力があるなんて今までだってそんな事はありませんでしたから。彼女にも彼にも申し訳なくて。でも、彼女が可愛い予言者を信じてみようかなと初めて笑ってくれて」
    如:「良かった。その後は?」
    幸:「はい。彼はもう少しこのままでと。もし、この先、今と同じ状況であれば、もう一度考えてくれないかと」
    覚:「そう思うのは当然でしょうね」
    幸:「はい。でも、私の気持ちは今後も変わらないからと。初めこそは彼と暮らすと言い出すかも知れないと思い会いに行きましたが、孝を手放さないと決めました。その事をはっきり話すと、ならば金銭的な援助を申し入れたいと。でも、私は、それも断りました」
    覚:「そうですか」
    幸:「帰った後に少しは出してもらった方が良かったかなと思いました。ふっ」
    覚:「それも良かったかもしれませんね・・・あっ、あの、もし良かったら、22日にクリスマス会をするので、来ませんか?」
    幸:「22日ですか」
    覚:「予定でも?」
    幸:「いえ。その日は孝の6歳の誕生日なので、ファミレスに行こうかと話していたので」
    覚:「それならば、此処で誕生日会も兼ねて」
    幸:「でも、ご迷惑では?」
    覚:「そんな事ないですよ。遠慮なく」
    幸:「・・・そうですか。孝も喜びます。では、参加させていただきます。私の方で用意する物を仰ってください」
    覚:「大丈夫ですよ」
    幸:「それはいけません。仰ってください」
    覚:「では、そうさせてもらいます。じゃ、お願いする物を後で連絡します」
    幸:「はい」
    ナレ:明るい表情で帰った。
    覚:「如古坊さん、良かったですね」
    如:「そうですね・・・孝君はどうして、そんな事を言ったんでしょうか」
    覚:「子供?」
    如:「はい」
    覚:「孝君には見えたんじゃないでしょうかね・・・世の中には解明できない能力がありますから。だって、如古坊さんが此処に来たのだって解明できない如古坊さんの潜在能力かも」
    如:「そうですね。孝君の予言が当たる事を願いたいですね」
    覚:「そうですね」
    ナレ:覚は如古坊の優しさに目を細めた。

    ナレ:夕飯の時に幸子と孝をクリスマス会に誘った事と孝の誕生日の事も話した。
    尊:「そうなんだ。でも、ねぇ、お母さん」
    美:「どうしたの?」
    尊:「熊田さんたちも来てくれるんだよね」
    美:「そうよ。聡子さんとご主人と息子さんの三人で」
    尊:「熊田さん達は状況が分かっているから話していても大丈夫だろうけど、幸子さんは如古坊さんの事知らないんだよ」
    美:「あっ」
    尊:「話の流れで」
    覚:「そうだな。僕はそこまで気が回らなかった」
    美:「熊田さんにお断りの連絡しないと」
    尊:「悪いよ・・・そうだ、時間ずらして、先に熊田さんに来てもらって説明する。それなら大丈夫じゃない」
    覚:「そうだな・・・30分くらいあれば説明できるだろうし」
    美:「電話で話せばいいと思うけど」
    覚:「そうだろうが・・・分かっていても、気になり聞いてしまうって事あるだろう。面と向かって話した方が良いと思うんだよ」
    美:「そうね」
    如:「すみません」
    覚:「何を謝っているんですか?」
    如:「お手数をお掛けしているって事ではと」
    美:「そんな気を使わないで。私たちは楽しんでいるのよ。それから幸子さんたちの事は詳しく話さなくても、仲良くなった親子で、息子さんの誕生日もその日で、来年学校に上がるくらいの情報で良いと思うの」
    覚:「そうだな・・・じゃ、幸子さんに何頼もうか?」
    如:「信茂殿が気に入っていた物で、確か・・・くらかぁとか言っていましたが」
    覚:「クラッカーね。そうですね、残ったら信茂様への土産に」
    如:「そうですね。話だけで手にするのは初めてなので楽しみです」
    ナレ:それを聞いて、若君やみんなが驚いた時の事を三人は思い出し笑いだした。
    如:「そんなに面白い事なのですか?」
    尊:「はい」
    ナレ:三人の楽しそうな表情に如古坊は返って不安が過ぎった。信茂に『紐を引いての、パンと音が鳴ってのヒラヒラと紙が出てくるのじゃ』と説明されたが如古坊には状況は分からなかった。だから余計に心配になった。

    ナレ:翌日、覚は幸子にクラッカーを頼んだ。それだけでいいのかと聞かれたので9個あればいいのだが土産用にと20個を頼んだ。来てもらう時間も12時と伝えた。有職時に幸子に連絡したことを話した。
    美:「もし、幸子さんが気にして早めに来てもいいように、搔い摘んで話しておいたから」
    覚:「そう、じゃ、大丈夫だな」
    ナレ:するとインターホンが。覚が玄関へ行き声を掛けると、
    木:「木村です。夜分にすみません」
    覚:「いえ。どうぞ」
    ナレ:木村先生を中へ通すと、料理が並んでいるのが見えた。
    木:「すみません、夕飯時に」
    美:「構いませんよ」
    ナレ:美香子と尊は器をキッチンに移動した。
    木:「早めにお伝えしようと来てしまいました」
    覚:「大丈夫ですよ。で、どうしたんですか?」
    ナレ:木村先生はテーブルにボロボロの本らしき物を開き説明した。
    木:「今日見つかった物でして、筆者はこの通り橋が切れていますので誰なのかは分かりませんが、日付の様な文字が読めたので。此処です」
    ナレ:どうにか判別できる箇所を指した。
    尊:「永禄・・・何年?」
    木:「肆は4年、永禄4年の参月弐肆日、3月24日。災いが起きたと記されています」
    美:「災い?」
    木:「天から大岩が降って来たと書いてありますので、私は隕石ではないかと考えました」
    尊:「隕石?」
    木:「隕石が落ちる時は熱を持っていても、如古坊さんの説明の一光がとは考えにくいですが、何らかの現象で発光があったとしたらと。まぁ、可能性は低いですが、現れたのは4月28日で、旧暦は3月24日でした」
    美:「その可能性も考えられますね」
    木:「でも、現象の可能性はゼロだとしても、日付が何らかの関係もあるのではないかと考えまして」
    尊:「3月24日」
    如:「その日に」
    木:「いやぁ、でも、確かな事は・・・返って惑わす様な事をしてしまって、申し訳ない」
    如:「そのような事はありません、希望が持てました」
    木:「如古坊さん」
    如:「先生は本当に頼りになります。唯がお世話になったと。まさか、私までお世話になるとは思いませんでした」
    木:「そんな風に言ってもらえて嬉しいです。他に手掛かりになる様な物があるか探してみます」
    覚:「ありがとうございます」
    木:「では。失礼します。お邪魔しました」
    ナレ:木村先生が帰った後、何故かみんなは黙っていた。しばらくして、
    覚:「夕飯」
    ナレ:テーブルに戻して夕飯の続きを。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=8へ続く

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    四人の現代Days83~3日金曜11時、ムクムクと

    炒めると、粉の中のグルテンの働きが弱まり、膨らみやすくなるらしいです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家キッチン。覚がメモを取り出す。横で、若君が控えている。

    覚「忠清くん、金曜だ」

    若君「はい」

    覚「今回は、昼ごはんで頑張って貰おうと思ってる」

    若「心得ました。今日は昼も家族揃うておりますゆえ。されど」

    覚「何?」

    若「もう午の初刻ですが」

    覚「間に合うかって事?大丈夫だよ」

    フライパンを出した。

    覚「手始めに、小麦粉を炒めるよ。フライパンの中に、そのボウルの粉を3分の1位入れて。大体でいいよ」

    若「まだ火が点いておりませんが、良いのですか」

    覚「いい質問だね。点けてから入れると、粉がはねるかもしれないからさ」

    若「ほぅ。考えておられる」

    小麦粉をから炒りしていると、すぐにいい香りがし始めた。

    覚「あ、そんなモンでいいよ。火を止めて、このバットに広げるように入れて」

    若「はい。これを、あと二度するのですね」

    覚「お見込みの通り」

    全部炒め終わった。

    覚「ちょっとこのまま冷ましておく」

    若「はい」

    覚「ほほっ、何してんだろって顔してるな」

    若「見当がつきませぬゆえ」

    覚「今日のメニューはね、君はクリスマスイブのデートの時に食べてるよ」

    若「…パンケーキですか?」

    覚「うん。この前来た時も尊と三人で行ってたね。僕はさ、流行り物で気にはなってたけど、食べに行くまでじゃないと思ってて」

    若「はい」

    覚「でも、君達が戻ってってすぐ、テレビで作り方やってたんだよ。これはと思ったんで、再放送したのを録画しといて、あれからたまに家で作ってるんだ」

    若「そうでしたか」

    覚「帰って来てくれたんで、よし作ってあげようか、でもどうせなら金曜がいいか、と思ってたら、ちょうどイブに唯と行けたって聞いて」

    若「出鼻を挫いたようで済みませぬ」

    覚「いやいや、謝らなくていい。それはそれ、これはこれ。で、行ってすぐもなんだったから今日にしたんだ。おせちや雑煮に飽きる頃だしな」

    若「源三郎もトヨも喜ぶと思います」

    覚「なんてったって、家で作れば甘さの調節ができる」

    若「それは良…あ、いや」

    覚「まあ、無理せずにな。じゃあ続きをしようか。その粉、ふるいにかけて。二回ね」

    若君が作業する中、覚は食卓にメープルシロップや生クリーム、フルーツなどを運び出した。唯や美香子、源トヨは覚に促され既に着席している。

    唯「え?なに、おやつ?」

    美香子「いよいよパンケーキね」

    トヨ「パンケーキ」

    源三郎「あの、噂に聞く」

    唯「へー!意外なメニュー。でもさ、家で作るとお店みたいにふわっとならなくて、いつもぺしゃんこじゃない」

    美「そうでもないのよ。さて、そろそろ尊呼んでくるわ」

    源「ならばわたくしが」

    源三郎がサッと席を立ち、二階へ上がっていった。

    美「さすが近習のプロ」

    材料が混ぜ合わせられ、いよいよ調理スタート。

    美「人数が多いから、フライパン二つ使って焼いてくのね」

    ト「お手伝いしなくて良いのでしょうか」

    美「なら、焼けたら運んであげて。フライパン一つに一枚ずつしか焼けないから、できた物から片っ端に」

    尊が呼ばれて下りてきた。

    尊「甘い匂いがする。そっか、例のブツをいよいよ今日やるんだ」

    美「ちゃんと勉強してた?」

    尊「してたよ。遊んでばかりでもいけないし」

    唯「瑠奈ちゃんと、ラブラブで電話してたとかじゃないのぅ?」

    尊「してない」

    唯「え~?」

    尊「明日の打ち合わせは夕方にするから」

    唯「あっそ。ヒューヒュー!」

    尊「うるさいよ」

    キッチンでは、若君が頻りに感心していた。

    若「おぉ…立ち上がっておる」

    ふわりと、少し高さのある仕上がりになっている。

    覚「いいねぇ。はい、まず二人分出来た」

    ト「お運びいたします」

    覚「おっ、さすが女中のプロ。ではよろしく」

    二皿運んできたトヨ。一皿目はスッと美香子の前に置いたのだが、二皿目をどこに置こうか迷っている。

    唯「トヨ、私たーくんと同じタイミングで食べたいから、まだいい」

    ト「そうですか。わかりました」

    美「私も後でいいのよ」

    ト「いえ、それは譲れません。では尊様」

    尊「僕も後でいいですよ。源三郎さんからどうぞ」

    源「いえ、滅相もない」

    美「早くしないと冷めてく一方だから、尊、先にいただいちゃいなさい」

    尊「そう?」

    美「源三郎くんとトヨちゃんを同時にすれば、ほら」

    尊「あ、あれも同時にやれるね。わかった」

    ト「何ができるのですか?」

    唯「あーんしてぇ、でしょ」

    源「え!」

    唯「なによいまさら」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    パンケーキの作り方の出典ですが、2019年8月21日放送の「ガッテン!」です。まるでこのお話を見据えたのかのように?家に録画が残っておりました。

    https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20190821/index.html

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=6

    ナレ:尊は学校へ、美香子が診察室へ。掃除する様子を見ていた如古坊に、
    覚:「どうしたんですか?」
    如:「はい。子供は学校へ、親は仕事。現代のいつもの姿なのだと思って」
    覚:「そうですね。まっ、昔は夫は外で仕事、妻は家庭。今はそんな固定概念は無く、それぞれの家庭の姿がありますね。僕は主夫を選びました」
    如:「お父さんの言っている事はドラマでも。家庭の中での仕事も大変なんだと」
    覚:「分かってくれて嬉しいですね。今は二人を送り出すのもスムーズに出来ますから、穏やかですかね。でも、以前の朝の姿を如古坊さんは知らないですね」
    如:「以前の?」
    覚:「唯が居る頃です、特に朝は。学校から帰って来た時はそれ程でも無いんですが。朝は慌ただしかった。いや、五月蝿いくらいでしたよ。朝練が無い日はギリギリまで寝ていて、起こすのも一苦労で、呼びに行って起きたのを確かめたのに部屋から出て来ないから見に行けば二度寝していて。でも、ごはん、白飯は好きだから、しっかり食べて、急いで出て行きましたよ。それこそ朝は戦場でしたね。あはは」
    ナレ:そう言いながらも覚が寂しいそうな表情。
    如:「目に浮かびます・・・何故、戦国へ行く事を許したのですか?」
    覚:「まぁ、若君が男も惚れる程のいい奴だったから・・・ですかね。いつかはお嫁に。それが早まった、遠くだったって事ですかね・・・正直、寂しい気持ちもありますが・・・でも、一番は娘が幸せと思える相手と居られる事ですかね」
    如:「親とはそう言うものなのですか?」
    覚:「はい。子供の幸せを願う、そう言うものです」
    如:「私の母は病で亡くなり、父は他の女と・・・それで私は寺に・・・父に捨てられたのです」
    覚:「そんな事が・・・でも、如古坊さんは、それが不幸だとは思っていないのでは?」
    如:「お父さんは私の心が読めるのですね。昔は恨みもしましたが今は違います。その事があったから、成之や忠清、そして唯に会う事も出来た。今は預けられて良かったと思っています」
    覚:「それは良かった・・・私たちも如古坊さんに会えて良かったと思っていますよ」
    如:「あり・・・かたじけない。はっ」
    ナレ:昼は如古坊のリクエストの鮭茶漬けだった。午前の診察が終わって、美香子もお茶漬けをサラサラと食べ、お茶を飲みながらまったりとしていた。そして、美香子が午後の診察だと部屋を出た後、しばらくして覚が時計を見て、エコバックを持ち、
    覚:「いつものスーパーの曜日限定3時のタイムサービスがあるので行ってきますね」
    如:「気を付けて」
    ナレ:送り出した後、如古坊が興味を示した少年漫画を尊が買ってきていた。それをソファに腰かけ読んでいた。漫画については成之から聞いていた。少年漫画を唯が好んで読んでいたと。初めこそ内容は分からなかったが読んでいる内に理解で出来るようになった。それだけ此処に長く居るのだなと思った。しばらくして眠気に襲われ少し眠ってしまった。さほど長くない時間で目を覚ました頃に物音が。目を開け庭を見ると孝がそこに居た。庭に出て、
    如:「孝君だよね。どうしたんだ?」
    ナレ:孝はこらえていたのか如古坊の声を聞き泣き出し抱き着いた。
    如:「どうしたんだ・・・入って」
    ナレ:座らせ、隣で背中を擦っていた。しばらくして落ち着いてきた孝に、
    如:「どうしたんだ?」
    孝:「お母さん嫌い」
    如:「嫌い?」
    孝:「うん」
    ナレ:どうしたらいいかと迷っている所に覚が戻って来た。
    覚:「えっ、この子は?」
    如:「お母さんが言っていた幸子さんの子供の孝君」
    覚:「そう。じゃ、表の子供用自転車はこの子の。でも、どうして此処に?」
    如:「理由は分かりませんが、お母さんと喧嘩したみたいで、お母さんが嫌いだと」
    覚:「そうなんだ。お母さんが心配しているだろうから、来てもらおう」
    ナレ:覚は診察室へ。美香子に母親は来ていないと。
    覚:「じゃ、黙って来ちゃったんだな。連絡してくれる?」
    美:「分かったわ」
    ナレ:連絡を入れ、孝が母屋に居る事を伝えた。覚はおやつに買ってきたシュークリームを二人の前に置いた。如古坊は何度も食べているので迷わず口に運んだ。じっとしている孝に、
    如:「孝君も食べて。美味しいよ」
    ナレ:孝は袖で涙を拭き、シュークリームを食べ始めた。しばらくしてチャイムが鳴った。覚がドアを開けると幸子が頭を下げ、
    幸:「息子がお騒がせを。すみません、直ぐに連れて帰ります」
    覚:「まぁ、中へ」
    幸:「いえ」
    ナレ:幸子の目が随分泣いたのだろう腫れている様に見えたので心配になり声を掛けた。
    幸:「ですが」
    覚:「どうぞ」
    幸:「すみません。では、失礼します」
    ナレ:二人の元に来て、如古坊の後ろに隠れている孝を呼んだが、
    孝:「ヤダ!」
    幸:「我が儘言うものじゃないの、ご迷惑でしょ!」
    ナレ:その言い方に如古坊は、
    如:「親子の事に口を挟むのは失礼だと思いますが、お母さん、落ち着いて」
    幸:「他人のあなたに何が分かるのですか」
    如:「・・・確かに、先日会ったばかりです。でも、会ったばかりの所へ孝君は来ました」
    幸:「えっ」
    如:「お母さんと孝君の二人の事ですが、こうして此処へ逃げて来た、孝君にとってはそうではないと言う事では?」
    幸:「あっ」
    覚:「お母さんも、どうぞ」
    ナレ:コーヒーとシュークリームを幸子の前に置いた。
    幸:「すみません」
    ナレ:ずっと如古坊の側に居る孝の方は見ずにコーヒーを一口。
    幸:「美味しいです」
    覚:「どう致しまして。落ち着かれました?」
    幸:「はい・・・孝、帰ろう」
    ナレ:先程迄の強い口調ではなく優しく言ったが、それでも孝は如古坊から離れない。
    幸:「嫌われちゃった・・・しょうがない事よね」
    如:「ならば、私たちに理由を話して、少しでも心が軽くなるのであれば」
    覚:「にょ・・・三吉さん」
    幸:「みつよしさんと仰るんですね」
    如:「はい」
    覚:「孝君、おじちゃんと遊んでいようか?・・・ギター弾いた事ある?」
    孝:「ううん」
    ナレ:覚はギターを孝に持たせた。教えている姿を見ながら、如古坊と幸子はウッドデッキスペースに座った。
    幸:「ご挨拶が遅れてすみません。私は小さい道路の路でしょうじと申します」
    如:「私は・・・き・・・木村・・・三吉と書いてみつよしです・・・孝君の事ですが」
    幸:「はい・・・昼過ぎに、あの子の父親が私の勤め先に来ました」
    如:「父親・・・でも、あなたは独りで」
    幸:「ご存じなのですね。はい、父親と言っても籍は入っていません」
    如:「そうですか。で?」
    幸:「彼には奥さんが居ますが、孝の事を知って」
    如:「もしかして」
    幸:「はい・・・孝を引き取りたいと・・・彼には子供が居なくて、学生時代から起業して業績を上げてきたと。成功したけれど、この先の後継者問題も。私と彼の関係を知っている友人が、たまたま私と孝を見かけたと。彼は確信は無いけれどその子が自分の子ではないかと考えて興信所に依頼して私の居場所を突き止めたそうです」
    ナレ:如古坊は興信所の意味は分からないが話の流れは感じ取った。
    如:「分からないでもないが。でも、何故喧嘩を?」
    幸:「彼には正直にあなたの子ですと言いました。会わせてくれないかと言われましたが私は断りました。誰もが幸せになれない原因は私に」
    如:「えっ?」
    幸:「彼を追い帰しました。その後、園から連絡があって、塀の向こうから孝に声を掛けている中年の男性が居ると。警察に通報するからと言われ、もしかしてその男性は興信所の人ではないかと考え、警察へは通報しないように頼み、私は早退して孝を迎えに行きました」
    如:「そうでしたか」
    幸:「孝にはどうして帰るのかと聞かれましたが、その理由も話さず連れ帰りました」
    如:「そうですか・・・幸せになれないとは?」
    幸:「はい・・・私は裕福な家庭で育ちました。何不自由ない生活の中、自分が欲しいと言えば何でも手に入る事で、我慢する事が欠如していました。我が儘のし放題で。両親はいつも忙しくしていたので、私が望む事をしていればいいと言うような親でした。私は女王様気取りで居ました。高校を卒業しても別に夢も無く大学へ行き、私の家の事を知っている男子生徒が私の取り巻きでクラブに良く行っていました」
    如:「くらぶ?」
    幸:「三吉さんは言った事ないのですね。真面目なのですね」
    如:「まぁ、真面目でした」
    ナレ:クラブの意味は分からないがそう答えた。
    幸:「大学在学中から就職活動をしている学生を横目に見ていました。私は父の会社に入ることが決まっていたので、何もせず遊び歩いていました。それを見かねた男性が私に注意をしてきたのですが無視しました。その彼が女性と居るところを見て、悪い虫が」
    如:「わるいむし?」
    幸:「・・・」
    如:「幸子さん?」
    ナレ:如古坊は幸子の顔を覗き込んだ。
    幸:「二人を困らせたいと、改心したと偽って彼に近づき、そして二人は別れました。別れさせたことで満足してしまった私は学校を辞め、アメリカの知り合いの所へ行ってしまいました」
    如:「すみませんが・・・酷いですね」
    幸:「謝る事では、本当に酷い事をしました。でも・・・身籠っている事が分かって」
    如:「孝君?」
    幸:「はい・・・日本に戻っても誰にも相談できなくて、その時、友人も居なかった事に。気づくのが遅いですよね・・・私の我が儘を聞いてくれていたお手伝いさんだけは私の異変に気付いてくれて病院にも付き合ってもらい、一緒に両親に話してくれたのですが、両親は怒って勘当だと。その上、彼女も辞めさせてしまって・・・明子さんと言うのですが、彼女の実家でお世話になり、孝を産んだ後に仕事を。ですが、これまで人任せの自分が働く事は難しく、紹介された店で働いても足手まといだと言われて居辛くなって。自分がしてきた事が今になって・・・」
    ナレ:如古坊は言葉を詰まらせた幸子の背中を優しく擦った。
    幸:「すみません。明子さんがお父さんは生まれる前にお空のお星さまになったと話していたので、父親の事は私に聞きません」
    如:「おそらのおほしさま?」
    ナレ:如古坊が意味が分かっていないとは思わず続けた。
    幸:「話しかけた男性がお父さんに会いたくないかと聞いてきたそうです。家に戻ってその事を聞かされ、理解してくれるか分からないけれど正直に、本当は父親は生きていると話しました」
    如:「そうですか」
    幸:「驚いていましたが、自分にもお父さんと呼べる人が居ると喜びました。何処に居るのかと聞かれて、その表情が嬉しそうで、それにお父さんに会いたいと。私の中で何かが破裂したようになり思わず、じゃ、お父さんの所に行きなさいと」
    如:「それは」
    幸:「そんな事を言ってはいけなかったのに。出て行く孝を追いかけもせず、こちらに居ると連絡を頂いて、あの子を見て無事である事に安堵したはずなのに、あんな言い方をしてしまい酷い母親です」
    ナレ:涙を流す幸子の様子を見ていた孝は隣に座って、
    孝:「ごめんなさい」
    幸:「孝は悪くないのよ。ごめんね・・・お父さんの事黙っていて、孝がお父さんに会ってみたいって言っただけだって分かっているのに、お父さんの所になんて言って・・・ごめんね。そんな事思っていないのよ。今は工場で働いているけれど、家計は厳しいから贅沢させられないし、色々考えてしまったの」
    如:「孝君はみんな分かっていますよ。お母さんが嫌いだと言ったのも、お母さんと居ると決めていたのに、そんなこと言われたから怒ったんでしょう。あなたが一生懸命に母親をしている事を孝君は分かっているのですから。なっ、孝君。本当に嫌いだから言ったんじゃないもんな」
    孝:「うん」
    ナレ:覚がコーヒーを淹れ直して、
    覚:「今日は暖かいですが、そろそろ身体が冷えてきたのでは、温まって下さい」
    如:「そうですね」
    ナレ:三人は座って、孝にはココアを出した。
    如:「それで、その方の事はどうされるのですか?」
    幸:「分かっているのです。きっと彼と住んだ方がこの子が幸せになる、お金の心配も無いから。この子が幸せであるならばと・・・初めから彼に・・・間違っていたのかもしれません」
    如:「それは・・・でも」
    覚:「孝君は、どうしたいんだい?」
    ナレ:五歳の孝を子ども扱いせず聞いてみた。
    覚:「ちゃんとお母さんに孝君の考えている事を話して」
    孝:「お母さんお仕事で遅く帰って来ても、朝はちゃんとご飯も作ってくれる。僕はお母さんが帰ってくるまで一人で寂しくっても泣かないよ。僕はずっとお母さんを守るんだから」
    覚:「あなたは立派な母親ですよ・・・間違っていたなんて思わないで下さいね」
    幸:「ありがとうございます・・・彼に会わせます」
    ナレ:急展開に如古坊も覚も驚いた。
    覚:「予想外で・・・どうしたんですか?」
    幸:「孝が彼と話して、彼の所へ行きたいと言っても大丈夫です。私を守ると言ってくれた言葉が此処に残っていますから」
    ナレ:胸元に手を。
    如:「それでは」
    幸:「何でしょうか、皆さんとこうして腹を割って話せた事で自分の中でモヤモヤしていた物が無くなってしまったように感じます。此処に来て良かったとそう思います」
    覚:「そう言っていただけるのは嬉しいのですが」
    幸:「ご心配ありがとうございます・・・彼に連絡します・・・今日はありがとうございました・・・孝、帰りましょう。ご馳走様でした」
    覚:「いいえ」
    如:「お力になれたようで良かった。孝君、いつでも遊びにおいで・・・あっ」
    幸:「どうしました?」
    ナレ:思わず言ってしまった。
    如:「いえ」
    ナレ:二人が帰った後に覚が、
    覚:「その時は別の土地に行ったと説明しますから」
    如:「そうですね・・・いつかは私の事は記憶から無くなるのですね」
    覚:「孝君の中では如古坊さんの事は覚えていると僕は思いますよ」
    如:「ありがとうございます・・・親は大変ですね・・・みんなが幸せになると良いですね」
    覚:「そうですね」
    ナレ:二人の幸せを願い、覚は家族の幸せの為に夕食作りを始めた。

    ナレ:12月22日に開催されるクリスマス会の為に、色紙を切って輪っかに繋げていた。
    覚:「如古坊さん、器用なんですね」
    如:「そうですか・・・上手く出来ていませんが楽しいです・・・でも、あれから」
    覚:「あの親子の事ですか?」
    如:「あれからどうしたのかなと、気になって」
    覚:「間違えていたらすみません」
    如:「何ですか?」
    覚:「ん・・・もしかして、孝君のお父さんにとか思ったかなぁって」
    如:「えっ?」
    覚:「いやいや、ごめん」
    如:「いえ・・・もしこの世、この時代に生まれていたならば・・・無理な事は分かっています」
    覚:「如古坊さん」
    如:「二人を心配している場合では・・・戻れないことを心配しなくては・・・お父さん、コーヒーが飲みたいです」
    覚:「はいはい」
    ナレ:覚にも無理な事は十分わかっているが、あの日、三人の姿が親子のように見えた。でもその事は黙っていた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=7へ続く

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    四人の現代Days82~2日9時、匂わせません

    サッカー観戦も、不良にビンタした時もそれだったからね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    結局、朝稽古後源トヨと四人で、近くの氏神様にやって来た。

    唯「…という夢だったの!」

    源三郎「正月から縁起が良いですね」

    唯「どうする?一番上の子が女の子だとさぁ、かわいくて嫁に出さんとか言わない?」

    源「それは…」

    唯「たーくんは、そう言ってた」

    若君「まあ、それはの」

    トヨ「唯様、実は」

    唯「なに?」

    ト「源ちゃんと、二人で決めたんです。昨日」

    若「決めた?」

    唯「なにを?」

    源「もし、子宝に恵まれたら、男子ならば忠清様そして御子様の近習となるべく、幼少より鍛えます」

    若「それは頼もしい」

    源「もしおなごが産まれたら、唯様と御子様にお仕えできるよう、女中の心得を叩き込みます」

    唯「え、親子でお世話してくれるの?お姫様なのに」

    ト「いいんです。ね、源ちゃん」

    源「どのような形であれ、我々は忠清様唯様にお仕えさせていただくのが喜びでございます」

    若「無理強いはしとうないが」

    源「心から思うておりますゆえ」

    若「そうか」

    唯「嬉しいな」

    ト「その、夢でございますが、音が聞こえなかったのは幸いです」

    唯「え、なんで?」

    ト「子の名など呼んでおるかもしれません。今それを知ってしまったら、名付けの楽しみがなくなりそうで」

    唯「なるほどねー」

    そのまま、唯がトヨにぐっと近づいた。

    唯「子供、産まれるから。夢じゃないよ、絶対」

    ト「はい。ありがとうございます」

    帰宅すると、食卓に尊が一人座っていた。

    尊「お帰りなさい。下りてきたら誰も居なくてびっくりした」

    唯「あんたも神社行ってきたら?」

    尊「後で散歩がてら行ってこようかな」

    美香子「散歩もいいけど、尊はね、朝ごはんの後やってもらう事があるわよ」

    尊「え、何」

    そして、朝ごはんが済んだ。覚がコーヒーを淹れている。

    美「あさってはデート」

    尊「うん。まだ2日後だけど」

    美「何着てくかはまた考えてあげるけど、その前に」

    尊「何」

    美「鞄、どうせいつもの肩掛けのでしょ」

    尊「それはそうだけど」

    美「洗います。中身出して持ってらっしゃい」

    尊「はあ?」

    美「通学以外はどこ行くのもそれじゃない。清潔感が大事!」

    尊「そんなに汚いかな」

    美「つべこべ言わない。洗濯は洗濯機がやるんだから。あと、履いてくスニーカーは、お茶タイムと散歩が済んだら自分で洗う事」

    尊「ええっ、そこまで…」

    美「明日洗って乾かないと大変だから、今日の内にやっておくの。これも瑠奈ちゃんの為。はい、鞄取ってらっしゃい!」

    尊「えー」

    渋々二階に上がっていった尊。

    美「あ、忠清くん源三郎くん、清潔感云々は、あくまでも現代の話ね」

    若「そうですか」

    源「…」

    若「源三郎、いかがした」

    源三郎の囁き「薄々思うていたのですが、ここに参った際、体が相当臭っていたのではないかと」

    若君の囁き「それは、わしも思うた。初めて参った折にの。後になり気づいた」

    源 囁き「随分と無礼を働いたのでは」

    若 囁き「致し方ないとはいえ、不快にさせておったのは忍びない」

    唯「たーくん、源三郎、なんかゴソゴソ言ってるけどさ。それはしょうがないんだよ。永禄って、いろいろクサいから」

    覚「はい、コーヒーお待たせ。そういえば唯が初めて永禄に飛んで帰って来た時も、相当臭かったぞ」

    唯「そういえばなんか言ってたな」

    美「ごめんなさいね、あなた達を悪く言ってるつもりはないの。今と昔では価値観が大分違うし。尊のデートが成功して欲しいって思ってるだけなのよ」

    源「そうでございますか」

    若「親心ゆえ、と」

    尊が、くたくたの鞄を持って下りてきた。

    尊「はい、鞄。やっぱ洗った方が…いいかも」

    美「でしょう。はい貸して、洗濯機回してくる。コーヒー飲んでていいわよ」

    ト「何かお手伝いする事はありますか?」

    尊「いえ、大丈夫ですよ」

    覚「デートが上手くいきますように、って祈っててやってくれな」

    ト「祈る」

    トヨが考え込んでいる。

    尊「どうしたんですか?」

    ト「でしたら、氏神様にお百度参りをいたしましょうか」

    尊「えっ!いや、それは…お願いだから止めてください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    2日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days81~2日木曜5時、幸せな初夢

    今後も続々、の予定だから、きっとすぐ回復してる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯は、夢を見ていた。

    唯 心の声(ん?)

    自分の姿を俯瞰で眺めているような形になっているが、音は聞こえていない。

    唯 心(マナーモード?ま、いいや。ここ、永禄だ)

    夢の中の唯は、自室で布団に横になっている。

    唯 心(なんだろ。なんかグターっとしてる。私また、風邪でも引いちゃったのかな)

    すると、襖が開いた。女性が座して一礼し、もう一人、幼い女の子が真似をしてちょこんと座り、お辞儀をして入ってきた。

    唯 心(トヨだ。あれ、なんか様子が違うコトない?…あっ!)

    トヨのお腹が大きい。

    唯 心(わぁ、お腹に赤ちゃん?!でもって、この女の子、娘ちゃん?なんとなく源三郎に似てる!良かったぁ。トヨ、歳を気にして子供産めるかって心配してたけど、全然OKって話だよね!)

    あい変わらず話し声は聞こえないが、トヨが横になったままの唯に、色々話しかけているようだ。

    唯 心(具合が悪いから、様子を見に来てくれたのかな)

    また、襖が開いた。

    唯 心(あ、たーくん。いやん、なんか、カッコ良さバージョンアップしてない?!)

    若君は、トヨ達に語りかけた後、唯の傍らに座り、髪を撫でながら話しかけている。

    唯 心(そっちの私、いーなー)

    すると、反対側の襖が開いた。侍女らしき女性が何人か居る。

    唯 心(真ん中の人だけ見た事ないな。それにしても、なんか騒がしくない?)

    若君もトヨも、歓喜している。その、真ん中の人物が大事そうに何かを抱えていたが、唯の隣にそっと寝かせた。

    唯 心(えっ)

    産まれたばかりと思われる赤ちゃんだ。

    唯 心(キャー!私の子供?産んだの?!やったー!そっか、さっきの知らない人は産婆さんだったんだな、きっと。わぁ、こんなにちっちゃいんだ…男の子かな、女の子かな、ちょっとわかんないけど、どっちでも超嬉しい!!良かったぁ~)

    すると、トヨが何かに気づいた様子で、後ろの襖を開けた。

    唯 心(ん?トヨの知ってる子たちかな。兄弟?)

    幼いながらも凛々しい顔立ちの男の子が二人、そぉっと中を覗いている。はじめは入るのをためらっていたが、若君に促され、唯に向かって駆け寄ってきた。

    唯 心(へ?ちょっと待って、えーとどっちの子もたーくんを小さくしたような美男子。なんとなく私にも似てるような?)

    唯の布団の周りを大小三人のイケメンが固め、トヨと娘が少し下がって見ている構図。

    唯 心(え、この赤ちゃん…何人目?!)

    ここで、目が覚めた。

    唯「…」

    若君「今朝は早いの」

    自分の部屋の布団で、若君の腕の中に居る。

    唯「なんか暗い…朝になってる?」

    若「朝じゃ。そろそろ稽古にと思うたら、唯がごそごそ動き出した」

    唯「そっか。夢見てたの。ううん、きっとね、夢じゃないの!」

    若「いかがした?」

    唯は今見た夢の説明をした。

    若「そうか」

    フッ、と微笑む若君。

    唯「これから起こる未来というか。時代としては過去だけど、現実だよね?そう思わない?」

    若「そうじゃな」

    唯「嬉しい、もっと見ていたかったな」

    若「うむ…」

    唯「どしたの?あんまり喜んでないよね」

    若「唯が、自室で横になっていたのが気にかかり」

    唯「え?そこで産んだからじゃないの?」

    若「いや。子を身籠ったとわかると、産殿を建て、そちらで産むべく手筈を整えるのじゃ。唯の自室ではない」

    唯「え、産むためだけにわざわざ?!初めて聞いた」

    若「産んだ後具合が悪うなり、子より先に下がったのではないかと」

    唯「そうなんだ。確かにかなりグターっとしてて、起き上がってなかった」

    若「男子二人の後の子の産まれる折には構えておれ、との、天からの知らせやもしれぬの」

    唯「そっか」

    若「唯の体が何より大事ゆえ」

    唯「嬉しいっ」

    若「フフ。では、わしはそろそろ」

    唯「私も起きるー」

    若「珍しい」

    唯「なによ、たまにはいいでしょ。気分がとってもいいからさぁ」

    若「ならば、稽古ではなく、共に近くの神社に詣でるのはいかがじゃ?」

    唯「あ。行く行く!でも朝稽古終わってからでいいよ。たーくんのカッコいい姿見たい」

    若「ハハ」

    唯「ねぇ、この夢の話、トヨや源三郎にもしゃべりたいけど、どう思う?」

    若「良かろう」

    唯「喜んでくれるよね!」

    若「あぁ。喜び、安堵する姿が目に浮かぶ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=5

    ナレ:夕飯時に孝の事を話した。
    美:「孝ちゃんね。お母さんが予防接種で来ていて、注射が怖いから見たくないって診察室から出て行ったのよ。裏に回っていたとわね」
    如:「せっしゅ?ちゅうしゃ?」
    美:「インフルエンザって風邪の一種で、かからないように予防をするのよ」
    如:「そうですか」
    覚:「如古坊さんは身体が丈夫ですね。風邪も引かないし」
    如:「そうですね。身体を壊したことは確かに無いかも知れません」
    尊:「それが良かったんじゃない」
    覚:「ん?」
    尊:「だって、体調崩しても此処なら。でも、他で診てって事になったら大変だよ・・・あれっ」
    覚:「どうした?」
    尊:「あの時、若君の時、お母さんが万が一、頭を打ってたらって心配して、まぁ、若君がタクシーで固まったから結局、病院には行かなかったけど。もし行ってたらどうしたのかなって。何でだろう、その時はそんな事も思わずにいたけど、考えてみれば、別の病院なら保険とか問題が?」
    美:「説明していなかった?」
    尊:「何を?」
    美:「あの時は後輩に頼んだのよ。若君が来る前にね、開業している病院に新しくMRIの機材を導入する事になって、確認で私が協力する話になってたのよ。丁度、若君が来る2日前に入ってね」
    覚:「そうだったのか。それも凄い偶然だよな」
    如:「そんな事もあるんですね」
    美:「ふっ」
    覚:「お母さん?」
    美:「如古坊さんと話していると、昔の人だって事を忘れるわよ」
    覚:「それ、昼間話したんだ。いつの間にかこの時代の言葉使いになっているって」
    美:「そうね、これだけ・・・ごめんね」
    如:「それは」
    美:「うん。さっきの話だけど、お母さん、幸子さんって言うのね。で、シングルマザーで」
    如:「しんぐるまざぁ?・・・それは初耳ですね」
    尊:「そうだったんだ。事情は様々だけど、お母さん独りで子供を育てる事をシングルマザーと言って、お父さんの場合はシングルファーザーって言うんだ」
    如:「そうか。母上様や吉乃殿のようですね」
    美:「そうね。彼女から話すまでは聞いてはいけないようで、理由を私も知らないのよ。ここ半年、如古坊さんが来た頃に来るようになったのよ」
    尊:「そうなんだ」
    ナレ:如古坊の顔を見ると何か考えている様な表情に、
    尊:「如古坊さん?」
    如:「ん・・・私が幼い頃、母は病で亡くなったので、私は母の事はよく覚えていないのです」
    美:「お父さんは?」
    如:「・・・まぁ」
    ナレ:三人は聞いてはいけないのだと、その後は他愛のない話で夕食を。風呂上がりに如古坊が水を飲みに来た。
    覚:「良かったらどうです?」
    ナレ:覚は酒を飲む仕草をした。
    如:「ビール?」
    覚:「はい。付き合って下さい」
    ナレ:若君は未成年であるので酒は飲ませなかった。成之達にはビールや日本酒を飲ませた事があったが、ビールの炭酸は好まなかった。如古坊も初めこそシュワシュワに驚いたが、慣れてからは覚と一緒に飲むようになった。
    覚:「木村先生から連絡がありました。如古坊さんが風呂に入っていたので、伝言を。明日は、用事があって行けませんが戦国に戻れるように祈っていますと」
    如:「そうですか。別れの言葉を言わずに・・・であれば、先生も喜んでくれるでしょう」
    覚:「そうですね」
    ナレ:そう返事をしながらも覚は寂しい気持ちもあった。そこへ尊が、
    尊:「如古坊さん、これをお姉ちゃんに」
    ナレ:差し出したYの形の物体。
    覚:「何だ、最近見ないパチンコみたいな形は」
    尊:「ジャンジャジャ~ン。手動型マッチふぁ之助君」
    如:「ふぁのすけ?」
    覚:「もしかして、ファイヤー?」
    尊:「そっ」
    覚:「もう一つひねりが欲しいなぁ。僕はまぼ兵くんってネーミング好きだけど」
    尊:「僕もめ組とか平蔵とは付けようと思ったけど、どっちも火を消す方だから。でも、いいじゃん・・・で、お姉ちゃんが行く時にマッチ箱持って行ったけど、早めに無くなってるんじゃないかと思って」
    如:「花火の時に見たが」
    覚:「信茂様が持って行った?」
    如:「そうです。木に火が点くことが不思議でしたし、花火は奇麗でした」
    尊:「そうだったんだ」
    覚:「で、それがマッチ?」
    尊:「この取っ手に収納されているハンドルを出して回すと、横のニクロム線、電熱線が熱を発してそこに藁とか燃え易い物を近づけると火が点く装置。阿湖姫に預けた機械で充電出来るようにすることも出来たんだけど、それが使えなくなった場合でも単独で使えるようにしたんだ」
    覚:「わが子ながら、凄いよ」
    如:「頼もしい弟を持って唯は幸せ者だよ」
    尊:「明日行く時に持って行ってもらいたくて、急いで作ったんだ」
    ナレ:尊は使い方を如古坊に伝授した。部屋に戻り荷物をリュックに入れて横になった。
    如:「今夜が最後の晩になれば」
    尊:「そうですね」
    ナレ:ハンガーにかけられた着物を見ながら、
    尊:「皆さんが戻る時に、服が気に入ったとそのままで戻られました」
    如:「私も、これを着ずに服のままだったら、戻れるかもしれないかもな」
    尊:「それは分かりませんが」
    如:「ん・・・では、私も服のままで挑戦してみようか」
    尊:「そうですね・・・電気消しますね」
    ナレ:部屋を暗くして就寝。

    ナレ:翌朝、如古坊が服のまま下りて来た。
    覚:「出掛ける前に着替えるんですか?」
    如:「いいえ、この姿でと考えて」
    尊:「若君たちが、この格好で戻れたから試しに」
    覚:「そうか・・・でも」
    尊:「ごはんまだ、お腹空いた」
    ナレ:覚の言いたい事が分かり遮るように。洋服であっても、それはタイムマシーンがあっての事。同じ様に出来るとは考え難いと。如古坊がトイレに行った時に、
    尊:「お父さんが言いたい事は分かるよ」
    覚:「まぁ・・・ふぅ・・・戻れたらいいな」
    尊:「そうだね」
    ナレ:四人は朝食、昼食が最後であればと思いながら食べていた。リュックに着物と入れ忘れていた若君にそっくりのモデルが掲載の本を入れた。
    覚:「じゃ、出掛けますか」
    如:「はい」
    ナレ:車に乗り、あの場所に着くまで誰も話さなかった。そしてその場所で静かに時を待った。カラスの鳴き声が聞こえるだけ。覚が腕時計を見て、
    覚:「そろそろ一時間経つな・・・やっぱり」
    如:「お父さん、尊」
    尊:「はい?」
    如:「戻りましょう・・・二人が風邪を引いてしまっては」
    覚:「そんな、気にしないで・・・では、帰りますか」
    尊:「ごめんなさい」
    如:「尊が謝る事ではないよ・・・きっと、私が」
    ナレ:如古坊は自分より落胆している尊の肩に腕を回し、駐車場に歩いて行った。そして家に着き迎えた美香子に頭を下げた。美香子は残念とまた一緒居られる思いの複雑な表情で迎え入れた。
    美:「おかえりなさい」
    如:「ただいま」
    ナレ:如古坊が抱えていたリュックを受け取った。そこに電話が。相手は木村先生だった。
    木:《どうでしたか?》
    覚:「戻る事は出来ませんでした」
    木:《そうですか》
    如:「お父さん」
    ナレ:如古坊と代わった。
    如:「木村先生、心配を掛けました」
    木:《そんな事は。まだ、行くなと言う事でしょう》
    如:「そうですね」
    木:《こう言っては、君に失礼だと思いますが》
    如:「何ですか?」
    木:《普段の姿が、現代の人の様だと思ってね》
    如:「皆さんもそう。私も、そう感じる事があります・・・心が戦国の世の者では無くなってしまったからでしょうか?」
    木:《それは私にも。でも、戻れると信じましょう。ではまた連絡します。次のチャレンジには私も見送りますね》
    如:「ありがとうございます」
    ナレ:みんなに木村先生の言葉を伝えた。夕食の時はいつもの時より暗さが倍増していたので暗い雰囲気を払拭する様に、
    如:「ねぇ、来月、クリスマスパーティーしようよ」
    覚:「そうだな」
    美:「飾りつけもして、盛大にパァって」
    如:「それは信茂殿が掛けていた紙で出来た飾りの事?」
    尊:「そうですよ。信茂様、随分気に入っていましたね」
    如:「私にも見せてくれました。鮮やかな紙でした」
    尊:「じゃ、決まり」
    ナレ:クリスマスの後にチャレンジすると決めた。

    ナレ:新年を迎える前に尊が髪をカットしたいと言ったので、如古坊も一緒に行く事にした。
    祥:「いらっしゃい。先に尊の方で良いかな?」
    尊:「はい」
    ナレ:二人に見られたことで、
    祥:「もしかして、心配してくれてる?」
    尊:「えっ?」
    祥:「お袋がおばさんに話したって聞いたからさ。元カノの事」
    尊:「まぁ」
    祥:「もう吹っ切れてるんだよ。追いかけてもね」
    如:「祥さん」
    祥:「何ですか?」
    如:「祥さんにも運命の人が現れますよ」
    祥:「そうですね。楽しみに待っています。運命の人が現れるのを」
    ナレ:話しながら手を動かして二人のカットも終わった。如古坊は祥に初めて髭を剃ってもらった後は、覚の電動式シェーバーを借りて髭剃りを。それも成之たちから使っていた時の話を聞いていたので分かっていたが恐る恐る使ってみた。それからは普通に使うようになった。
    祥:「これで新年迎えられますね」
    ナレ:支払いを済ませ店を出た。その時二人は自転車。忠清も乗ったと聞いて挑戦してみた。忠清よりも簡単には乗りこなせなかったが、何度も挑戦して乗れるようになった。
    如:「自転車は風を切り気持ちがいいものだな」
    尊:「そうだけど、やっぱり冬は寒いね。早く帰ろう」
    ナレ:スピードを上げた尊の後ろを如古坊は追った。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=6へ続く

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    四人の現代Days80~1日13時、密談です

    人前式ですね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家の食卓。おせち料理をいただきながらの、小宴会が終わろうとしている。

    美香子「お父さんはいつもの事だけど、二人は珍しいわね」

    覚が食卓の席で酔っぱらって寝ているのだが、若君と源三郎も、気持ち良さそうにスヤスヤと寝ている。

    唯「お母さんもトヨも、そんなにお酒飲んでないの?」

    美「そんな事ないわよ。ねぇ、トヨちゃん」

    トヨ「はい。充分いただきました」

    尊「察するところ」

    唯「なに」

    尊「お酒の強さでいうとさ、お母さんとトヨさんが同率一位で、次が兄さんと源三郎さん、断トツ最下位がお父さんなんじゃない?」

    唯「それはなんとなくわかる。たーくんと源三郎は、今日なんでつぶれてるんだろ」

    尊「睡眠時間が短かったでしょ。だっていつも通り朝稽古してたんだよね?」

    美「源三郎くんはもっと早かったわよ。私達がビデオ用意してたら下りてきてね、気分はどう?って聞いたら、あまり眠れなかったって言ってた」

    ト「そうだったんですか」

    尊「トヨさんは?」

    ト「なんかお恥ずかしいのですが、私はぐっすりと眠れたんです」

    美「安心したからよね。恥ずかしくなんかないわよ」

    ト「はい。ありがとうございます」

    尊「よく眠れたトヨさんと、眠れなかった源三郎さんか」

    美「だから、いいペアなんじゃない?」

    唯「うん。そうだね」

    ト「そうですか?嬉しい」

    美「じゃ、昼ごはん終了。男性三人はさすがに運べないから、このままそっとしときましょ。起こさないように片付けるわよ」

    唯と尊が、少し残ったおせちを一つにまとめている。食器を洗い始めた美香子。隣で手伝うトヨ。

    美「トヨちゃん。これは私の提案なんだけどね」

    ト「はい。どのような」

    美「お布団、源三郎くんの部屋に移さない?」

    ト「えっ、それは」

    美「嫌?まだ早い?」

    ト「お母さん方の隣のお部屋をお借りして休ませていただいておりますが、空けよと仰るのでしたら…」

    美「邪険にしてるんじゃないのよ。私達は全然構わないんだけどね、結婚しても、源三郎くんはお仕事で夜居ない時が多いんでしょ?」

    ト「はい。城の警固がありますので」

    美「あまり考えたくはないけど、戦になれば一緒も無理じゃない。ここで安全に夜を過ごせる内に、どうかなと思ったの」

    ト「お気持ちは大変ありがたいのですが、祝言もあげておりませんのに…」

    美「そっか。ごめんね、無茶言って」

    唯&尊「…」

    美香子の洗い物が終わった。トヨは食器を一つ一つ拭いている。

    美「ふぁあ。さすがに私も眠たくなってきたわ。一眠りしちゃおうかしら」

    ここで、唯が動いた。

    唯「お母さん、ちょっと」

    美「え、何?」

    母の背中を押して、ずんずんと廊下の方に連れていっている。

    唯「尊」

    尊「うん」

    察知した尊もついてきた。玄関近くまで来た三人。

    唯「トヨはついて来てないよね?」

    尊「うん、大丈夫」

    美「なぁに、鼎談?」

    唯「かなえだん、ってなに」

    尊「三人で話し合うって意味」

    唯「あー、うん、そう」

    コソコソ話し始めた三人。

    唯「お母さん、さっきの話、すごくいいと思った」

    尊「僕も」

    美「ちょっと言い方良くなかったかな。婚前交渉を勧めたみたいに聞こえたのよね、きっと」

    唯「婚前、交渉…」

    尊「お母さん、続けて」

    美「実は、今回お着物が四人分じゃない。唯の打掛もあるし、忠清くんや源三郎くんの袴もあるし。直前まで畳んでおくよりは、ちょっと広げておきたいってのはあるのよね。大した理由じゃないけどね」

    唯「それ、大した理由だよ」

    尊「でもそれを伝えると、嫌なのに無理強い、みたいになるよね」

    美「祝言がまだってのはその通りだし」

    唯「だったらさ、ここで結婚式しちゃえばいいんじゃない?」

    美「正式な祝言は戻ってからするとして?」

    尊「それ賛成。だってさ、今なら僕もお父さんもお母さんも、何だったらエリさんや芳江さんも参列できるじゃない」

    美「それもそうよね。いいアイデアだわ」

    唯「家でみんなでお祝い、いいと思う」

    美「そうね。でもちょっと時間ちょうだい。エリさんや芳江さんのご都合を聞きたいけど、さすがに三が日に連絡するのは避けたいから」

    尊「そうだね。もしOKしてもらえるのなら、お二人の都合を優先すればいいんじゃないかな」

    美「わかった。唯は忠清くんに話しておいて。私はお父さんに言っておく」

    唯「了解~」

    尊「楽しみが一つ増えそうだね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    1日のお話は、ここまでです。

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    すみません

    変換ミスが多々(-_-;)
    きっとそうだろうなぁとお察し下さりお読み下さい(-_-;)
    失礼いたしました。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=4

    ナレ:夏休みに入ると尊は食事以外の時間ずっと自分の部屋に。
    如:「尊は部屋に籠っておるが」
    覚:「夏休みの宿題を早々に終わらせて、如古坊さんと遊ぶんだそうです」
    如:「さようか・・・申し訳のぉ・・・戻れもせず居るわしに」
    覚:「こう言っちゃいけないのかも知れませんが、僕たちは如古坊さんとこうして居られる事も嬉しいんですよ」
    如:「さようか」
    覚:「如古坊さん、このジュースを尊に持って行って下さい」
    如:「分かった」
    ナレ:如古坊は零さないようにゆっくり階段を上がり、真剣に勉強する尊に小声で声を掛けた。
    尊:「ありがとう」
    如:「いや・・・励め」
    尊:「うん」
    ナレ:静かにドアを閉めて階段を静かに下りた。
    如:「父上」
    覚:「どうしました?」
    ナレ:如古坊はクーラーを指して、
    如:「この箱より風が出ておるが隙間風か?」
    覚:「夏は暑いので、この機械で涼しい風を部屋に」
    如:「そうであったか。まこと表は暑いのぉ・・・だがわしの居る地ではこれ程までに暑うは無いのだがのぉ」
    覚:「現代は温暖化が進んでいて、昔より暑くなっているようですからね。僕の子供の頃も、35度とか高い気温は無かったですね」
    如:「現代は暑うなっておるのか」
    覚:「そうですね」
    如:「それは難儀じゃのぉ」
    覚:「はい。とても難儀ですね」
    ナレ:如古坊は便利なクーラーを見ていた。夕飯時に電話がかかって来た。如古坊も初めの頃は音に驚いたが今は慣れた。
    覚:「誰だろ?・・・速川です」
    祥:《夜分すみません。神山です、祥です》
    覚:「どうしたんだ?」
    祥:《お願いがあるんですが》
    覚:「ん?」
    祥:《今週の土曜日から二泊三日で那須に行きませんか?》
    覚:「那須?・・・栃木の?」
    祥:《はい。実は友人と行く事になっていたんですが、その相手が行けなくなって、僕も都合が》
    覚:「えっ?」
    ナレ:覚は《祥の都合が》の意味は分からなかった。
    祥:《そう言う事なので。コテージ代も支払っていますし、食材も注文してあるので、おじさん達は交通費のみで大丈夫なので。もし良かったら皆さんで》
    覚:「ちょっと待って」
    ナレ:保留にして祥の要件を話した。
    美:「まぁ、急だけど、用意もしてあるんだったら、遠慮なく受けても。如古坊さんにも楽しんでもらえるだろうし良いんじゃない。まぁ、これも人助けになるんだし」
    覚:「そうだな。何処かへってまだ決めてなかったし・・・祥君、じゃ、遠慮なくその話を受けるよ」
    祥:《いいえ、こちらこそありがとうございます。助かります。明日パンフレットとか資料を持って行きますから。では、おやすみなさい》
    覚:「おやすみ」
    ナレ:如古坊に説明した。
    如:「わしも良いのか?」
    覚:「勿論です。楽しみましょう」
    尊:「有難いけど、でもお母さん大丈夫なの?」
    ナレ:美香子はカレンダーを指した。日曜は山の日で翌日は振替休日。当日の土曜は午前中診察をして午後から出掛ける事に。疲れて帰って来てもお盆休みだから大丈夫だと。
    尊:「ほんとだ。でも、良くその日に取れたよね」
    覚:「夏休み中だし、結構前から計画してたんじゃないか。泊りがけだから僕たちも用意はしないと」
    ナレ:明日、如古坊の着替えを買いに行く事にした。翌朝、祥がパンフレットを持ってきた。
    祥:「朝早くにすみません」
    覚:「大丈夫だよ、上がって」
    祥:「言え、店の準備もあるので、此処で。最近来ている三吉さんも行くんですか?」
    覚:「あぁ、そうだよ」
    祥:「あの、もしかして食材が足りないかもしれません」
    覚:「えっ?」
    祥:「あっいえ。それと、これはお袋からです」
    ナレ:ポチ袋を渡した。
    覚:「これは?」
    祥:「急に頼んだんだから、迷惑料って事で渡しなさいって」
    覚:「貰えないよ。こっちだって楽しませてもらうんだから」
    祥:「いいえ、受け取ってもらえないとお袋に叱られます」
    ナレ:覚はそこまでの事と思った。
    覚:「では、選別と言う事で土産買ってくるね。でも、神山さんにそう言ったら祥君困るだろうから、迷惑料確かに受け取りましたと伝えて」
    祥:「ありがとうございます。その中から食材も調達して下さい。じゃ、気を付けて行ってきて下さい」
    覚:「ありがとう、楽しんでくるよ」
    ナレ:中へ戻ると朝食を摂る三人に今の会話を聞かせた。ポチ袋の中には三万円。
    美:「こんなに」
    ナレ:前もって予約までしているのだから大勢で出掛けるのではないかと言ったが、
    美:「ねぇ、相手が行けなくなったって言ってたのよね。それに祥君も都合がって」
    覚:「そうだよ」
    美:「友達数人と行くなら、友達がって言うだろうし、その中の一人が行けなくても続行するんじゃないの。それに祥君が行けなくても他の人が行けばいいし」
    覚:「だろうな・・・あっ、もしかして」
    美:「って事じゃない」
    尊:「二人して、なに?」
    美:「憶測だけどね、もしかして彼女と行くつもりだったんじゃないのかなって」
    尊:「そう言う事」
    覚:「まっ、それは僕たちには関係ないから、思い切り楽しもう。ねっ、如古坊さん」
    如:「わしには分らぬが、永禄に戻った折に、皆に話せる事が増えるのだな」
    覚:「そう言う事です」
    ナレ:出発の土曜の朝は忙しくしていた。美香子の仕事が終わってすぐに出発出来るように支度をしていた。行ってすぐに冷たい飲み物が飲めるようにクーラ―ボックスにビールとソフトドリンクと氷を入れて、他の荷物と一緒に車のトランクに入れ美香子を待った。連休の初めでもあり少し混む所もあったが、休憩を入れ無事に食材の留め置き場所に到着。食材を積み込みコテージの番号を探し到着。
    覚:「如古坊さん、疲れたでしょう」
    如:「わしは。父上の方が疲れたであろう。支度はわしが。休んで・・・下さい」
    覚:「ありがとうございます。まっ、ちょっと休めば回復しますから」
    尊:「お父さん、パンフレットに書いてあった温泉施設に行こうよ」
    覚:「そうだな。如古坊さんも・・・お母さんは?」
    美:「私は此処のお風呂に入るわ。でも、祥君も奮発したわね。結構な料金じゃないのかな。色んな物が揃って、普通に住めそうよ」
    覚:「ほんとだな」
    ナレ:食材を冷蔵庫に入れて、三人は温泉施設へ散歩がてら歩いて向かった。美香子は持ってきたクーラーボックスの中から冷えたビールを出し、ウッドデッキに設置されていた椅子に腰かけ一杯。
    美:「祥君に乾杯」

    ナレ:暗くなる前から夕飯。祥の方で頼んでいたステーキを焼いた。
    美:「高そうなお肉ね。如古坊さん、沢山食べてね」
    如:「あ・・・はい」
    覚:「普段通りに話していいんですよ。周りに誰も居ませんから」
    如:「承知した。わしはこの様な肉を食うた事が無い。美味い。噛んでおるのだが直ぐに口の中から無くなるようだ」
    尊:「ほんとだね。美味しいね」
    ナレ:覚も手を動かしながら食べていた。みんな腹一杯でしばらく動けずにいた。夏でもここは自然に囲まれ心地良い風。星も奇麗に見えた。
    如:「城下から抜けるとこの様な林での。わしはこのような林を逃げての」
    覚:「そうだったんですね」
    美:「私の子供の頃にも近くに林はありましたよ。今でも少しは残っていますけど、昔はもっと自然がいっぱいでしたね」
    ナレ:そう言った後に大きく伸びをした。
    尊:「眠くなった?」
    美:「そうね。お風呂入って先に休むわ」
    覚:「分かった。おやすみ」
    ナレ:覚が片付け始めたので尊と如古坊も手伝った。

    ナレ:鳥のさえずりで目を覚ました如古坊は表を見ると、先に起きていた美香子が不思議な動きをしていた。
    如:「母上?」
    美:「おはよう。よく眠れた?」
    如:「はい・・・して、今の動きは?」
    美:「ラジオ体操って言ってね、昔からある体操、動きなのよ。やってみる?」
    ナレ:美香子の真似をして体を動かした。普段しない動きに戸惑ったが第一体操が終わって、
    如:「これだけの動きであるのに、汗をかいた」
    美:「今のは第一で、第二もあるのよ」
    如:「わしは」
    美:「ふっ、じゃ、またの機会に教えるわね」
    ナレ:返答に困った如古坊の顔を見て笑った。そこに覚が、
    覚:「朝食の用意が出来たよ」
    美:「夕べあんなに食べたのにお腹空いたわね」
    如:「そうじゃの」
    覚:「いい事では。食べたら出かけましょうか」
    ナレ:朝食を摂り、少し休んでから近くのレジャー施設へ向かった。唯が好きな絶叫系乗り物は無いので如古坊はさほど驚くことも無く楽しんでいた。その後、牧場で搾りたての牛乳のソフトクリームを食べたり、キャラクターの着ぐるみに驚きながら写真を撮った。土産を買い、コテージに戻った。翌日、途中の道の駅に寄り野菜や菓子を買い家路についた。高速道路に入った頃、後部座席で尊と如古坊が眠った。
    覚:「如古坊さん楽しんでくれたかな」
    美:「笑っていたでしょ。楽しんでくれてたって事でしょ。お盆が明けたら・・・今度こそ戻れるわよね。これだけ土産話が出来たんだから」
    覚:「そうだな。戻れるといいな」
    ナレ:助手席の美香子を見るとすでに寝ていた。
    覚:「もぉ」
    ナレ:笑った。

    ナレ:翌日、土産を持って美香子が神山の家を訪ねた。祥は母親の実家に行っていると留守だった。
    祥の母、佳津子が対応した。
    佳:「ごめんね、急にお願いして」
    美:「いいえ。とても楽しかったから。返って申し訳ないなぁって言ってたのよ。これお土産」
    佳:「ご丁寧にありがとうございます。この前のメロンも有難うね・・・でも、あの子も不憫なのよねぇ」
    美:「祥君?」
    佳:「実はね、本当は彼女と行くつもりだったのよ」
    美:「やっぱり」
    佳:「えっ?」
    美:「そんな事じゃないかなって」
    佳:「バレバレよね・・・確か付き合って二年だったんだけど、あの子も二七にもなるからそろそろ結婚を意識して、プロポーズのつもりでいたから、コテージの事も彼女にサプライズで用意して、だから相手は知らなかったのよ」
    美:「え~そうなの」
    ナレ:美香子はプロポーズの事までは考えていなかったので驚き、コテージや食材についての奮発に納得。
    佳:「えぇ。計画日の一週間前くらいに別れたのよ」
    美:「はぁ」
    佳:「で、一人で行きたくないって」
    美:「まぁ、そうよね」
    佳:「初めに私と主人にって言われたんだけど、そんな急な話、こっちだって都合ってもんがあるし、無理だって言ったら、何人かの友人に声かけたけど、やっぱり無理だって言われて」
    美:「白羽の矢が」
    佳:「そう言う事。ごめんね」
    美:「謝らなくていいのよ。凄く嬉しかったんだから。声かけてくれてありがとうね」
    佳:「美香子にそう言ってもらえて。美香子も知ってる通り、あの子、何でも親に話すじゃない。
    反対に親に隠し事すればって言ったくらいよ。で、別れた理由聞いたわよ」
    美:「理由は?」
    佳:「よく言う焼け木杭にって事よ。同窓会で元カレに再会してって」
    美:「あらまぁ」
    佳:「奪い返さないのかって、お父さんが言ったのね」
    美:「へぇ」
    佳:「あの子の優しい所は親として嬉しいけど、運命の人じゃなかったって・・・はぁ」
    美:「マジで」
    ナレ:何故かその後の言葉が出ない美香子は、
    美:「じゃ、また」
    佳:「ありがとうね」
    ナレ:佳津子に見送られ家に戻った。そして自分が思った通りの結果だったことを報告した。
    覚:「ドラマみたいな事あるんだなぁ。祥君には幸せになってもらいたいね」
    美:「そうね」
    ナレ:夕飯の時は祥の話はせずにいた。

    ナレ:その後も挑戦したが永禄に戻る事は出来なかった。尊も原因が分からないでいた。如古坊はいつの頃か中庭の手入れをするようになっていた。その日も昼食の後、枯葉を掃除していた。
    如:「もう直ぐ十一月だと言っていたな。半年か、永禄のみんなは心配しているだろうか」
    覚:「どうしました?」
    如:「あっ、お父さん。もう半年経ったのだと」
    覚:「時が経つのは早いですね。休憩にコーヒー淹れますよ」
    如:「すみません」
    ナレ:如古坊と自分の前にコーヒーを置いた。最初の方で如古坊はブラック派になっていた。
    覚:「如古坊さん」
    如:「はい?」
    覚:「ご自分では気づいていないのか?」
    如:「気づいていない。なんですか?」
    覚:「いつ頃からか、如古坊さんは我々と同じように話しています」
    如:「そうですか?・・・あっ、そうかも知れないですね。皆さんの会話を聞いていたら」
    覚:「朱に交われば赤くなると言う事ですね」
    如:「そうですね。でも、忠清たちは?」
    覚:「まぁ、此処まで長く居る事は無かったですから・・・すみません」
    如:「謝る事ではありません。自分が勝手に来てしまったのですから。それを皆さんが戻れるように頑張ってくれているにも拘らず、戻る事が出来ないのは自分に原因があるのだと思います」
    覚:「如古坊さん」
    如:「じゃ、掃除の続きを」
    ナレ:グイっと飲み干し、庭に出て続きを始めた。その如古坊の後姿が寂しそうに見えた覚は、
    覚(心の声):(神様は如古坊さんになんで試練を与えたんですか)
    ナレ:そう思いながらカップを洗っていた。そしてポットにコーヒーを淹れ、診察室へ持って行った。如古坊は今日の所は此処までとし、道具を物置に。
    如:「ふっ・・・私は、いつからわしと言わなく・・・初めこそテレビの中の話も分からず、尊たちが笑うのも意味が分からなかったが、今は一緒に笑える・・・私は現代の人間になってしまったのだろう」
    ナレ:それがどうなのか自分の中でも分からない複雑な気持ちだった。縁側に戻ってくると男の子が中を覗いていた。
    如:「何か用?」
    孝:「ごめんなさい」
    如:「謝る事ではないが、どうしたんだ?」
    孝:「おじちゃん、此処の人?」
    如:「そうだよ」
    ナレ:診察に来た人の子供だと思った。すると表から「たかし」と呼ぶ声が聞こえてきた。
    如:「君はたかし?」
    孝:「うん」
    如:「お母さんが呼んでるよ。行こうか」
    ナレ:男の子は伸ばす如古坊の手を取り共に歩いて行った。
    幸:「孝、どこに行ってたの、帰るわよ。すみません」
    如:「いいえ」
    ナレ:如古坊はお辞儀をして後ろを向くと、
    孝:「おじちゃん有難う」
    ナレ:その声に振り向き、手を振る孝の真似をして如古坊も手を振った。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=5へ続く

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    四人の現代Days79~1日10時、天にも昇る心地

    四人と言いつつ、四人が誰も出ない回も多々あります。あしからず。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは、瑠奈の家。大きいクッションに顔を埋め、スマホを握ったままリビングのソファーに寝転がる瑠奈。

    瑠奈の母「ちょっと瑠奈~。ようやく起きてきたと思ったらまた寝て。場所取らないでちょうだい、邪魔!」

    瑠奈「うぅぅ」

    瑠母「もう、何なの」

    瑠「自爆した」

    瑠母「えぇ?」

    瑠「もっと、いい感じにお近づきになりたかったのに~」

    瑠母「ははーん。さては、男の子がらみね。あなたはともかく、周りの同級生の子達は今大変な時期でしょうに。呑気よね」

    瑠「うっとーしい女、って尊にガン無視されるんだ」

    瑠母「その子、尊くんって名前なのね。クラスの子?」

    瑠「うん」

    瑠母「そう。卒業間近に盛り上がるってパターンかしら。その子も推薦入学?」

    瑠「ううん、尊はセンター試験受ける」

    瑠母「え!この時期に、そんな子の勉強の邪魔しちゃダメじゃない!」

    瑠「でも、初詣行ってたもん。しかもみつきと会ってる」

    瑠母「みつきちゃん?あら、彼女って彼氏くん居なかったっけ」

    瑠「居るよ。でも仲良さそうだったもん!」

    瑠母「よくわからないわね。一体何がどうだったの?」

    みつきと尊の動画を見せた。

    瑠母「楽しそうね」

    瑠「信じらんない、だってみつきさ、私が尊の事気になってるって知ってるのに」

    瑠母「偶然会ったんでしょう」

    瑠「わかんないよ?みつきズルい!」

    瑠母「そんな勝手に悪者にして。みつきちゃんには聞いたの?」

    瑠「さっきLINEした」

    瑠母「恨み節を並べたりしてないわよね?」

    瑠「…」

    瑠母「もう、呆れた子ね。それで、尊くんには何て伝えたの」

    尊に送った内容を見せた。

    瑠母「…」

    瑠「勢いで送っちゃった。既読になったけどまだ返事来ない。ふぇーん」

    瑠母「溜め息しか出ないわね。こんなにくどくどと畳み掛けちゃ、進むものも進まないわ。確か去年付き合ってた子、余計な事言い過ぎて嫌われて別れちゃったでしょ」

    瑠「言わないでっ」

    瑠母「その前の子は…」

    瑠「もういい」

    瑠母「瑠奈って、そこそこ頭のイイ子に育ってくれたけれど、何というか」

    瑠「なんですかっ」

    瑠母「恋愛偏差値は、ずっと低いままよね」

    瑠「うわーん」

    スマホに、LINEの通知あり。

    瑠「…みつきだ」

    瑠母「そう。みつきちゃんは懐が深いから、怒ったりしてないとは思うけど。何て?」

    瑠「私は彼とラブラブなんだから、妬いてる時間なんてムダ」

    瑠母「みつきちゃんいいわ~。清々しい」

    瑠「センセはね、マジで神だから!絶対逃しちゃだめだよ!…だって」

    瑠母「手遅れかもね」

    瑠「うわーん!」

    ここで、スマホがポロンと鳴った。

    瑠「あっ!尊から返事来た!でも見るの怖い」

    瑠母「良かったじゃない。返事くれただけでも。既読スルーもできるのに、誠実で」

    瑠「うん…」

    尊の返信を見た瑠奈。

    瑠「キャー!」

    瑠母「彼、なんて?」

    瑠「どうしよ!お母さん、これ見て!」

    瑠母「あらー、余裕な対応。確認するけど、同い年よね?」

    瑠「たぶん」

    瑠母「たぶん、って…」

    瑠「すっごく大人だし、後光が差しててもうキラッキラ。ホームルームにね、地元の歴史しゃべってた時なんて、もうたまらなかった」

    瑠母「ときめきポイントはまた後で聞くから、早く返事しなさい。どう出るつもり?」

    瑠「声聞きたい!電話してもいいかなぁ。まずはかけていいか聞こっと」

    瑠母「落ち着いて話さなきゃだめよ」

    瑠「かけていいって!お母さん、静かにしててね」

    瑠母「ここでかけるの?!何と言うか、いつもオープンな」

    瑠「また暴走したら、止めて欲しいから」

    瑠母「そうなの。恋は徐行運転の方が良くないかしら。瑠奈に限っては」

    瑠奈がシーッ!とジェスチャーした。見守る母。

    瑠「あ!あの、明けましておめでとう…しゃべってても大丈夫?…そうなんだ。私も家のリビングに居るの。帰り遅かったでしょ、眠くないの?」

    瑠母「まぁ、通常運転かな」

    瑠「あのぅ…さっきの返事、本気にしてもいいのかな」

    瑠母「リップサービスだけならかなりのやり手だけど」

    瑠「ホント?ホントに?!キャー!ねぇ、じゃあ学問の神様にお詣りしようよ、いつ?いつが都合いい?」

    瑠母「順調ね。彼が合わせてくれてるのね」

    瑠「瑠奈さんじゃなくて、瑠奈、って呼んで欲しいな…私も尊って呼ぶから」

    瑠母「え、勝手に名前で呼んでたの?」

    瑠「はは…そうだよね。ごめんなさい。動画観てショックで、気持ちが高ぶり過ぎちゃってつい。心の中でずっと名前で呼んでたから」

    瑠母「とっくに暴走してたのね。…あ、瑠奈、ちょっと待って!2日3日は、ほら」

    瑠「あ!ごめんね、明日明後日でお兄ちゃんが家族連れて帰省するの忘れてたの。4日5日とかでどうかな…うん、うん待ってる…4日、4日ね!キャー!!嬉しい!ありがとう!うん、私もいろいろ調べとくね。バイバーイ!…ふぅ」

    瑠母「良かったわね」

    瑠「嬉し過ぎる、デートしてくれるなんて」

    瑠母「優しい彼ね」

    瑠「うん…どうしよう、ドキドキが止まらないよぉ」

    瑠母「あらら、泣いちゃって」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回は速川家に戻ります。

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    四人の現代Days78~1日11時、一歩進む

    あっさりと決まるもんだな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ビデオを観終わった両親と、若君、源トヨが、食卓でミカンを食べている。

    美香子「ん、甘ーい」

    若君「実に美味そうに召し上がる」

    覚「母さんは、ミカンさえあれば上機嫌だからな」

    階段から足音が。

    美「あ、尊、起きたのね。ミカン食べる?」

    スマホを耳に当てながら、ちょっと待ってと片手を前に出し、カレンダーの前に向かった尊。

    覚「電話中か。え?電話?!」

    美「こんな元日から、誰と?」

    尊「4日はね、うん、何もないけど聞いてみるね」

    スマホを少し外して、両親に話しかける尊。

    尊「4日って、何も予定なかったよね?」

    覚「ないな」

    美「翌日は写真館だけど」

    尊「了解。もしもし、うん、4日なら大丈夫だよ。うん、あはは、そんなに喜んでくれて嬉しいよ。じゃあ、近付いたらまた連絡するね。うん。じゃあね」

    電話を切った。

    美「誰かと約束したの?」

    尊「うん。瑠奈と出かける」

    覚「へ?誰?」

    尊「クラスの女子」

    覚「へ?女の子と、デート?」

    尊「デート。あ、そっか、そうなるんだ」

    美「はあ?!」

    美香子が、手に持っていたミカンを落とした。コロコロ転がり、床に落ちたのを慌てて源三郎が拾う。

    源三郎「お母さん」

    美「あ、ありがとね源三郎くん。ちょっと何が起こったのか理解できなくて」

    トヨが、お茶を出す。

    トヨ「尊様、どうぞ」

    尊「ありがとうございます」

    若「わしが見込んだ通りになっておるの」

    尊「そうですね。兄さんに、一歩踏み出せって言われたんで、従ってみました」

    若「そうか」

    美「で、クリスマスにばったり会ったお嬢さんなのね」

    尊「うん。詳しくは、お姉ちゃんが起きてきたら話すよ。今ここで説明しても、一からまた言わなきゃならないだろうから」

    若「ならばわしが起こして参る。もう昼も近いゆえ」

    唯の部屋。

    若「唯。そろそろ昼じゃ。腹も空いておろう?」

    唯「ん…まだ眠いぃ」

    若「今は食い気より眠気か」

    唯「んー」

    若「早う起きぬと、瑠奈殿の話が聞けぬぞ」

    唯「るな…ん?なにっ!」

    若「痛っ!」

    急に飛び起きた唯の額が、覗き込んでいた若君の額と激突。

    唯「痛ぁい。たーくん、ごめぇん」

    若「いや、わしこそ済まなんだ」

    唯「それよりなに!新展開なの?!」

    若「近々、連れ立って遠乗りへ参るとの話じゃ」

    唯「うっそー!起きる起きる!あ、一気にお腹空いてきた」

    若「ハハッ」

    ようやく食卓に全員揃った。覚がおせち料理のお重を並べている中、尊が顛末を説明する。

    尊「まぁ、そんなところです」

    唯「ねぇねぇ、るなちゃんのコト、実は好きなんじゃないのぅ?」

    尊「嫌ではない。話しやすいし」

    唯「またまたー」

    尊「僕に興味を持ってくれている、という事柄に興味はあるけど」

    唯「なにそれ。わかりにくっ」

    尊「お姉ちゃんはわからなくてもいい」

    唯「なんだとー。るなちゃん、こんなヤツのドコがいいんだろ」

    若「これ、唯」

    尊「いいんですよ、兄さん。僕もそれが知りたいと思ってます。彼女に何が響いたのか」

    覚「惹かれ合うモノがあるんだろ。名は体を表すしな。ちょっと違うか?」

    美「名前が瑠奈ちゃんだもんねぇ」

    唯「名前?なんか関係あるの?」

    美「確か、月の女神よね」

    尊「そう。LUNAは、ローマ神話に出てくる月の女神だよ。ラテン語」

    唯「そうなの?!知らなかったぁ」

    ト「月に慕われる。尊様ならではと申しますか」

    源「それは必定ではございませぬか」

    若「出逢うべくして出逢うたようじゃの」

    尊「去年の4月からクラスは一緒ですけどね。何がどう転んだかわかりません」

    覚「そうかそうか。じゃあ、そろそろ昼飯にするか。尊の初デートを祝して」

    覚が、熱燗をいそいそと運んできた。

    美「どっちにしろ、飲むつもりだったんでしょ」

    覚「おせちって、いい塩梅にツマミになるしな。え、みんな飲まない?」

    若「いただきます」

    源「頂戴いたします」

    ト「わたくしもいただきます。唯様、尊様。よろしければ、雑煮をお作りしますが」

    唯「食べるー!」

    尊「僕も欲しいです。なんか急に、お腹空いてきました」

    ト「ふふっ。畏まりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回ですが、少し時間を戻して、瑠奈はこの時どうしていたか?をお送りします。

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    四人の現代Days77~1日10時30分、誘惑わくわく

    寝ぼけて生返事、ではないと思う。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ここは尊の部屋。ようやく目覚めた尊が、パジャマのままベッドでゴロゴロしている。

    尊 心の声(あーやっぱり。ずっとブルブルしてたんだな)

    スマホを手にした。案の定、LINEをいくつか受信している。

    尊 心(グループの方は、新年の挨拶とかだな。あ、ミッキーさんから来てる)

    みつきの投稿『センセが神過ぎて瑠奈には勿体ないかもしれない。けど!瑠奈をなにとぞ、なにとぞよろしく~』

    尊 心(選挙の街宣?本人に頼まれてる訳じゃないよなぁ。きっとミッキーさんが、情に厚いヒトなんだろうな)

    グループLINEは、まだ寝ている者も多いようで、そこまで活発に投稿はされていない。

    尊 心(さて…)

    瑠奈からも届いているのだが、

    尊 心(怖っ、なんか大量に来てるんだけど)

    恐る恐る、中を開いてみると…

    尊「うわ、これか!メンドくせぇって」

    瑠奈の投稿『初詣に行ってたんだ』

    瑠 投稿『みつきだけズルい』

    瑠 投稿『私も神社に行けば良かった!そしたら尊に会えて超ハッピーだったのに』

    瑠 投稿『あんなに楽しそうな動画』

    瑠 投稿『私も撮りたかった(T_T。。)』

    瑠 投稿『あー尊と初詣いいなぁ』

    瑠 投稿『やっぱりみつきみたいにリーダーシップ発揮できる子の方がいいのかな遠慮してちゃダメかな』

    尊「速川って呼ばれてなかったっけ?いつの間にか名前に変わってるし」

    じっとスマホの画面を見つめる。

    尊 心(僕はからかわれてるのか?うーん。ちょっと…違いそうだな)

    さらに画面を見つめる。

    尊「わー!ダメだ、どう考えても、好意を持たれてるとしか読み取れない」

    尊 心(どうしよう)

    尊「恋愛マスターに聞くべきか。いや」

    尊 心(僕は、どうしたい?)

    尊「…」

    尊 心(ちょっと鬱陶しい感じもあるけど、そこまで…嫌じゃない)

    尊「…」

    尊 心(彼女がなぜ、僕にこんなに興味を持ってくれてるのか、という点はすごく気になる。知りたいと思う)

    尊「兄さんも、一歩踏み出す勇気は必要、って言ってたしな」

    尊 心(よし。思い切って行ってみるか)

    返事を書き始めた。

    尊 心(ちょっと、惑わす感じ?なんか、なんか楽しいぞ)

    完成。

    尊の投稿『そんなに言うのなら、どこかに連れてってください』

    尊 心(攻め過ぎかな。いいや、なるようになれ!)

    送信。

    尊「ふう。着替えよ」

    着替えて、またベッドに腰掛けた。

    尊 心(今年はどんな一年になるのやら)

    すると、返信あり。

    尊「さぁどう出た。ん?」

    瑠 投稿『今って電話してもいいかな』

    尊「あ、そういう事ね。いいよ、と」

    電話がかかってきた。

    尊「もしもし」

    瑠奈の電話『あ!あの、明けまして、おめでとう』

    尊「明けましておめでとうございます」

    瑠 電話『しゃべってても大丈夫?』

    尊「大丈夫です。自分の部屋に居るし」

    瑠 電話『そうなんだ。私も家のリビングに居るの。帰り、遅かったでしょ、眠くないの?』

    尊 心(なんとなく、家族が近くに居るっぽいけどいいのかな)

    尊「帰ってきたのは3時回ってたけど、一眠りしたから平気だよ」

    瑠 電話『あのぅ』

    尊「はい」

    瑠 電話『さっきの返事、本気にしてもいいのかな』

    尊「いいですよ」

    尊 心(なぜだろう、すんなりOKしてしまう自分にびっくり)

    瑠 電話『ホント?ホントに?!キャー!ねぇ、じゃあ学問の神様にお詣りしようよ』

    尊「ははは。いいですね」

    瑠 電話『いつ?いつが都合いい?』

    尊「瑠奈さんの都合のいい時で」

    瑠 電話『瑠奈さんじゃなくて…瑠奈、って呼んで欲しいな』

    尊「え?あ、そうなんだ」

    瑠 電話『私も尊って呼ぶから』

    尊「もう呼ばれてたけど」

    瑠 電話『はは…そうだよね。ごめんなさい。動画観てショックで、気持ちが高ぶり過ぎちゃってつい。心の中でずっと名前で呼んでたから』

    尊 心(ずっと。心の中で。えー!自分の事とはいえ、何でそんなに?もしかして僕、モテてる?!)

    少しぽーっとしていると、電話の向こうで話し声が聞こえた。

    瑠 電話『ごめんね。明日明後日でお兄ちゃんが家族連れて帰省するの忘れてたの。4日5日とかでどうかな』

    尊「なるほど。5日は僕も家族で出かけるから、4日ならいいかも。ちょっと親に予定確かめてくるから、待っててくれる?」

    急いで部屋を出て、階段を駆け下りていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=3

    ナレ:連休も終わり、尊が学校へ行く支度をして、食事をしている時に、
    美:「如古坊さん、大丈夫よ、きっと戻れるわよ」
    如:「そうじゃの」
    美:「でね、戻れるまでの間、如古坊って名前も素敵なんだけど、声を掛ける事も無いとも限らないので、違う名前で呼んだ方が良いかなって考えたんだけど」
    覚:「それもそうだな。如古坊さんは出家する前の名前とか」
    如:「名か」
    覚:「はい」
    如:「・・・わしの名は三吉と申す」
    覚:「さんきちさん?」
    ナレ:尊がボールペンと紙を渡した。〔三吉〕と書いた。
    美:「三吉さん。じゃ、嫌じゃなかったら、みつよしさんって呼ぶのはどうかな?違和感はないと思うんだけど」
    如:「みつよしとな?」
    美:「駄目ですか?」
    如:「そのような事は無い。構わぬ」
    覚:「まぁ、この家に居る間は如古坊さんって呼ぶし。まっ、仮の名前って事で」
    如:「わかった」
    ナレ:如古坊は同意した。尊は学校へ。何も手立てが無い状態で毎日通っても大変だろうからと如古坊の提案で日を空けて行く事にした。翌月に行ってみたが変わりは無かった。その翌月も戻る事は出来なかった。その翌日、
    美:「ねぇ、如古坊さん、気分転換にさっぱりしてみたら?」
    尊:「お母さん、何?」
    美:「髪も整えて、髭も剃ってとか」
    覚:「如古坊さんがそのままでいいのなら、別に剃らなくても」
    ナレ:覚は自分の髭を触りながら言った。如古坊は少し考え、
    如:「そうじゃの・・・それも良かろう」
    美:「じゃ、彼女の理容室に連れて行って」
    尊:「誰が?」
    美:「尊で良いんじゃないの?」
    覚:「そうだな。話しかけられたら尊が答えれば良いし」
    尊:「本当に良いんですか?」
    如:「構わぬ」
    ナレ:如古坊が承諾した。如古坊の寸法に合う服が無かったので、スウェットの姿で土曜日に尊と共に、覚の運転で。訪れた理容室は、美香子の同級生の店で今は息子の祥(しょう)が切り盛りしていた。速川家御用達の店。尊も引き籠りの時に髪を切りに来ていた。祥は尊が引き籠りであることも知っていたがその事には触れず対応をしていた。だから、学校へ行くようになった事を聞いた時は喜んだ。店内に入ると、速川家でも見た事も無い物ばかりでキョロキョロしていた。工程は家で予習をしてきたので、示される通りに動くだけ。痒い所はと聞かれたら有っても無いですと答えるように等。
    祥:「いらっしゃい。で、この人」
    尊:「そうです」
    祥:「唯の知り合いだって、おばさんが言っていたけど」
    尊:「そうなんです。お願いします」
    祥:「こちらへどうぞ。そう言えば、お袋に聞いたけど、唯、学校を辞めて海外にって、彼とか」
    尊:「あっ、うん、そうなんだ」
    祥:「詳しい事とか聞いてないけど。それにこの前、唯がカットしに来たけど、そんな事、全然言ってなかったなぁ。まぁ、やけにニヤついていたけど。痒い所はありますか?」
    如:「無いです」
    祥:「此処に来ていたって陸上の話はするけど、勉強とか恋愛の話題も出なかったし」
    ナレ:唯が小垣城から戻り、墓を見て落ち込んでいた時に別れた場所と日にちの違いに気づき、そして未来の尊の力で永禄に戻る事が出来ると分かった時に、いつもの足軽の姿になる為に伸びていた髪を切りに来た。祥はシャンプーの手を動かしながら話していた。
    尊:「そうだね。その人が海外に住んでいて・・・で、一緒に」
    祥:「そうだったんだ。まぁ、結婚出来る年齢だけど。よく、おばさんたち許したね」
    尊:「うん。彼が凄く良い人で。だからお父さんもお母さんも送り出したって事」
    祥:「そうなんだ。こちらへ。で、どうします?」
    尊:「お任せします」
    ナレ:カットの前に祥が雑誌を如古坊に渡した。渡されたがどうしようかと考えながらページをめくっていくと、
    如:「えっ」
    尊:「如・・・三吉さん、どうしたんですか?」
    ナレ:尊に見せたページに男性モデル。
    尊:「えっ?」
    ナレ:尊も驚いた。そこに写っていたモデルが忠清に良く似ていた。
    祥:「二人して、どうしたの?」
    尊:「知り合いに良く似ていたので」
    祥:「そう」
    如:「尊、これを」
    ナレ:尊はこの本が欲しいのだと察した。
    尊:「じゃ、同じ物を取り寄せて」
    祥:「良かったら、それ持って行っていいよ」
    尊:「えっ?」
    祥:「もう時期、切り替えだから」
    尊:「いいんですか?」
    祥:「構わないよ」
    ナレ:如古坊は雑誌を尊に渡した。髭剃りの時に泡を付け、専用カミソリを使用するから驚かないように話していた。如古坊はジョリジョリと髭を剃る一定のリズムに心地良さを感じ眠りに落ちた。スースーと寝息が聞こえてきた。尊と祥は顔を見合わせ微笑んだ。そして剃り終わると温かいタオルが顔に巻かれて如古坊は起きた。
    如:「眠ってお・・・」
    ナレ:おったのかと言いそうになり言葉を止めた。
    祥:「どうしました?」
    如:「いえ」
    ナレ:その後、肩や頭をマッサージして終了。
    祥:「はい、終了です」
    ナレ:大きな鏡で顔を見た。
    如:「さっぱりした」
    祥:「お客さんも、モデルさんみたいですよ。冒険家なって感じがしましたけど」
    尊:「どうして?」
    祥:「なんとなくそんな感じがしたんでさ。でも、今更だけど、唯とどんな関係かなって」
    尊:「・・・そう、厳密に言えば、お姉ちゃんの彼の知り合いなんだ。で、彼が、自分が世話になったのでお礼に行ってくれって頼まれて、それでうちに来る事になったって事。色んな所に旅しているんだ」
    ナレ:尊は自分でも良くそんな出鱈目がペラペラ出たものだと驚いていた。如古坊は祥にそうなんだねと声を掛けられたが返答の使用も無いのでただ頷いた。
    尊:「彼、シャイな冒険家なんで。じゃ、お父さんに」
    ナレ:尊は慌てて電話を掛け迎えを頼んだ。家に戻ると美香子が、
    美:「やっぱり」
    尊:「やっぱりって?」
    美:「若君の周りの男性ってみんな素敵だから、如古坊さんもそうかなって思っていたのよ。若君達とは違ってワイルドって感じね」
    覚:「そうだな」
    如:「それは褒めておるのか?」
    美:「勿論、褒めているんですよ」
    如:「そうか。だが、心地良うて眠ってしまったのだ」
    覚:「それ、僕も経験あるから分かりますよ。ははっ」
    尊:「そうだ、これ見て」
    ナレ:貰ってきた雑誌を見せた。
    美:「若君にそっくりね。似た人は3人は居るとは聞いてるけど、時代を超えてもあるのね」
    如:「それは木村殿や高山親子の事であろうか」
    覚:「そうです。戻った時、これを見せてあげたら、一番唯が興奮するだろうな」
    美:「そうね」
    ナレ:如古坊が雑誌を手にして黙っていたことで、みんなも戻れる確証がない事は言えずにいた。そして祥に話したことを聞かせると覚も美香子も笑い出した。
    覚:「尊、小説家になれるぞ」
    尊:「僕だって誤魔化すのに必死だったんだよ、笑わないでよ」
    美:「ごめん、ごめん」
    如:「尊、すまぬ」
    覚:「如古坊さんが謝る事は無いですよ。そうだ、折角だから、洋服買って出かけないか?」
    如:「吉乃殿が申しておった、父上、母上に金の工面で難儀させたとな」
    覚:「遠慮しないで下さい」
    美:「そうよ、私達だって楽しめるんだから。私たちの楽しみ奪わないでね。如古坊さんにも現代のお洒落をしてもらいたいんだから、私たちの行為を素直に受け取って頂戴」
    如:「さようか・・・では・・・だが、ちと頼みがある」
    覚:「何ですか?」
    如:「信茂殿が気におうておった桃色は」
    覚:「大丈夫ですよ。ははは」
    ナレ:早速洋服を注文した。パソコンを操作する様子を話には聞いていたが目の前で起こる事に驚いていた。
    如:「まこと、便利な物じゃ」
    ナレ:服が届いた週の日曜日に出かける事にした。
    覚:「どんな所に行きたいですか?・・・場所って事ではなくても、そんな物が見たいかとかで場所を決めようかと」
    如:「難儀を掛けると申しておきながら・・・すまぬ事だが」
    覚:「遠慮なく言って下さい」
    如:「なれば、信茂殿が申しておったすいぞくかんとやらに」
    覚:「分かりました。水族館に行きましょう」
    ナレ:そして日曜日。希望した水族館に着いたが、家とは違う大きさの箱のような建物に驚いていた。
    如:「此処が水族館?」
    尊:「そうですよ。建物は頑丈に出来ています。中へ入ると分かりますが、中も頑丈な作りになっていますよ」
    如:「この様な物であったならば、敵方が攻め入っても」
    美:「そうね」
    如:関心仕切りで中へ入り、見た事も無い海洋生物に初めこそ驚いていたが、シャチのショーは大いに楽しんでいた。唯が言っていた信茂にそっくりのペンギンが一番気に入り、信茂と同じようにペンギンのぬいぐるみを買ってもらった。後部座席に座り、如古坊は袋に入ったぬいぐるみを見ながら、
    如:「これを信茂殿に見せたいのぉ」
    尊:「見せられますよ。でも、こっちの方が良いと言い出したらどうします?」
    如:「そうじゃのぉ・・・戦になろう。ははは」
    美:「なんか、その様子が目に浮かぶわ」
    覚:「そうだな。それを信近様と小平太様で止めるんだろうな」
    如:「そうじゃの」
    ナレ:如古坊が笑顔になったが直ぐに寂しそうな表情に。
    覚:「じゃぁ、帰りますか」
    如:「そうじゃの・・・まこと、楽しゅう過ごす事が出来た。名はどうするかの」
    尊:「帰ってから変えればいいから、今はお姉ちゃんが信茂様の事を呼ぶようにじいなんでどうですか?」
    如:「そうじゃの。わしは信茂殿をじいと呼ぶことは無いからの。それも良かろう。じい、じい」
    ナレ:運転する覚がミラー越しに如古坊の楽しそうな姿を見て、もし次に戻れなかったら、もっと思い出を作ってあげようと思っていた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=4へ続く

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    かたじけのう存じます

    皆様に楽しんでいただけていると信じて(それも妄想)おります。
    カマアイナさん提案の道具についてはもう少しお待ちください。でも「えっ?」こんな物かと思われるかも。私の頭脳ではその程度ですが(-_-;)
    今日も一つ書かせていただきます。その続きは来週となります(^-^)
    では失礼いたします。

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    ぷくぷくさんヘ

    初っ端から余りにも奇想天外で、ひえ〜〜〜〜、まさかやの展開ですね。
    読み応えがあって、楽しくて、既にルンルン🎶です。

    今までも大変な貢献をしてくれた木村先生も、とうとう秘密クラブの仲間入りができて、本当に良かったです。これで、彼の推理通り羽木家が縁合で生き延びているのも伝わるし、ホッです。

    如古坊の楽しくもに続くOOOが何なのかも、今は想像もできませんが、後々合点がゆくのでしょうね。
    今回も長編との事、楽しみにしています。ありがとうございます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=2

    ナレ:コーヒーを飲み干した。
    如:「美味だ」
    覚:「おかわりは?」
    如:「今は良い・・・わしがこうしてお主らと共に居る事が、夢の中ではないかと思うが、こおひいとやらを確かに飲んでおる。わしはこのへいせいと申す世の事を忠清らに聞いておるから、少しばかりだが心穏やかに此処に居る事が出来た。唯らがしゃしんとやらを見るその場にわしが居らぬでも見る事は出来たのだが、わしが使いで戻った折に、お主らをわしは見た。わしがこの場に来る事が分かっておったかのようにの」
    覚:「もしかして、そうだったのかも知れませんね。そういう運命だったから」
    如:「うんめい?」
    木:「さだめです」
    如:「そうなのかも知れんな」
    木:「速川が、唯さんが私の所に羽木家の事を聞きに来始めた頃は資料はあまり残っていなくて、羽木家が忽然と消え、資料は残っていないと説明した事がありました。ですが、資料が出てくるようになりまして、松丸から羽木へ宛てた手紙や、速川に似た女の子の写真が古戦場で発見されたり、先祖の手記は見つかったり・・・あっ、ボロボロの衣服が出て来た事も。速川が欲しい・・・もしや」
    尊:「それは若君が戻る時に着て行った服でした」
    木:「そうだったのか」
    尊:「先生の説明では、それは、姉が行った事で歴史が変わってきたという事ですか?」
    木:「そうなのかも知れないと」
    尊:「姉が戻ってきた時、ひとめぼれした若君様をどうしても助けたいって、僕に協力を求めてきた事があったんです。でも、僕は歴史が変わるからダメだって。でも姉が若君を想う気持ち、みんなを助けたいと思う気持ちが分かって協力して」
    覚:「その事で、歴史が変わったのかもしれないな」
    ナレ:その言葉に感慨深げに手記を見ていた。
    如:「なれば、わしはたいむましんとやらでこの世に?」
    尊:「それは違います。姉たちが戦国に戻って、それが使えるとは考え難いです」
    如:「さようか。では、わしは何故?」
    覚:「どんな状況だったんですか?」
    如:「敵方に見つかり追いかけられ倒れた・・・いや、その前に闇の中だったが一光がの」
    尊:「光?」
    如:「さよう」
    尊:「何だろう?・・・彗星?・・・分からないな」
    美:「その光が原因かは分からないけど、タイムスリップしてこの世界に来たのだろうけど、でも、此処で良かったわよね」
    尊:「お母さん?」
    美:「だって、別の時代とか、この時代でも別の場所に如古坊さんが現れたとしたらどうなっていたか」
    覚:「そうだな。此処だったから、木村先生の前に現れたから、関わりを知っている僕たちの所へ来ることが出来た。それは神様がそうしてくれたんだと思うよ」
    尊:「本当に此処で良かったよね」
    木:「本当ですね。導いてくれたのだと私も思います。これからどうしますか?」
    尊:「もしかして、直ぐに戻れるかもしれませんから、明日その場所に行ってみます」
    木:「では、私も明日・・・で、今夜は?」
    覚:「うちに・・・如古坊さん」
    如:「お世話になり申す」
    木:「では、私は」
    覚:「ご迷惑でなければ、夕飯を」
    木:「ありがとうございます。娘夫婦が来ることになっていますので」
    覚:「そうですか」
    ナレ:木村先生を表で見送る時に箱を渡した。
    木:「これは?」
    覚:「以前勤めていた看護師さんの嫁ぎ先のメロンです。沢山送ってくれたのでお裾分けで。お嫌いでなければ」
    木:「好きです。ありがたく頂戴します。では、明日」
    ナレ:木村先生が帰った後、覚は夕飯の支度をする前に風呂の用意をした。
    覚:「食事の前に風呂に入られて、さっぱりしてはどうですか?」
    ナレ:その言葉に如古坊は身体の臭いを嗅ぎ、
    如:「すまぬ、やはり、におうか」
    覚:「そうですね」
    ナレ:覚が遠慮せずに言ってくれた事が嬉しかった。素直に好意を受け取る事にした。
    覚:「でも、足が」
    如:「しぷとやらを貼ってもろうて痛みも薄れておるから大事ない」
    覚:「出てきたらまた貼って。様子を見てきますから待っていて下さい」
    ナレ:湯船に湯が溜まった頃、尊が一通り説明した。如古坊は現代の風呂についても信茂から説明を受けていたので、何となく要領は掴め、一人で入る事が出来た。
    覚:「如古坊さんはどうだ?」
    尊:「信茂様が色々話してくれた中に、お風呂の事もシャワーの事もあったって」
    覚:「信茂様の話している姿が想像できるよ」
    尊:「そうだね。楽しんでくれたんだろうね」
    美:「そうね。尊、着替えはこれを」
    ナレ:信茂達の為の着替え用に用意をしていたスウェットとランニングとパンツを渡した。
    尊:「如古坊さん、着替え置いておきますね。下着とスウェットです」
    如:「もしや桃色の?」
    尊:「えっ?」
    如:「いや、こちらの事じゃ、かたじけない」
    ナレ:如古坊は信茂に無理矢理着せられたピンクだと思った。
    尊:「着る時は声を掛けて下さい」
    如:「それには及ばぬ、信茂殿に聞いたのでな、わし一人でも大事ない」
    尊:「そうですか。では、ごゆっくり」
    ナレ:如古坊は世話になっているのに言い方が悪かったかなと反省していた。夕飯が出来た頃、如古坊が風呂場から出てきた。信茂はスウェットを着せる時に、持ち帰った下着を見せながら、現代ではこの様な布を身に付けるのだと説明した。『絞めつける物じゃがの』と言っていた。
    如:「長湯をしてしまった」
    覚:「ゆっくり出来て良かったです」
    如:「まことにすまぬが、しゃわぁとやらで流しはしたのだが。洗ってから入ったのだがの」
    ナレ:申し訳なさそうに言ったので覚は状況が分かった。
    覚:「大丈夫ですよ。チャチャッと掃除できますから」
    ナレ:尊と美香子に配膳を頼み風呂場へ。洗濯籠の中に着物が畳まれ入っていた。
    覚:「縮むかな・・・まっ、その時は替えを用意すればいいか」
    ナレ:洗濯機に入れスイッチを押した。湯船の中には如古坊が恐縮していたように垢が少し浮いていた。
    覚:「しょうがないですよ、これくらい」
    ナレ:栓を抜き、ダイニングに戻った。
    如:「すまぬ・・・それにの、お主らを何と呼べば」
    覚:「そうですね。まぁ、皆さんは父上と呼んでくださいましたが、お父さんでも父上でもどちらでもいいですよ」
    如:「では、父上」
    美:「私は、美香ちゃんって呼んでもいいわよ」
    ナレ:如古坊は困り顔。
    美:「もう、そんな困った顔しないでよ。母上でもお母さんでもいいわよ」
    如:「ならば、母上・・・たける・・・どの?」
    尊:「尊だけでいいですよ」
    如:「さようか」
    覚:「じゃ、食べましょう」
    ナレ:覚は得意料理のレンコンのはさみ揚げを。
    如:「これは美味いの」
    覚:「ありがとうございます。若君も皆さんも喜んで食べてくれてね」
    如:「さようか、まこと、美味い」
    ナレ:三人は如古坊の様子を目を細め見ていた。
    美:「皆さんが戦国に戻って、また三人の食事で、ちょっと寂しかったのね。でも、こうして如古坊さんが居て四人で楽しく食事が出来て嬉しいのよ」
    如:「母上」
    美:「でも、直ぐに戻れた方が良いって分かってるのよ」
    覚:「そうだな」
    ナレ:それからは信茂の話で盛り上がった。食後のデザートにメロンを出した。
    如:「これは?」
    覚:「メロンと言って甘くて美味しいですよ。切れ目を入れていますからこれで」
    ナレ:フォークを渡した。如古坊は初めて見る物を恐る恐る口に運び直ぐに、
    如:「甘くて、美味い。これを買うてくれたのか?」
    覚:「いいえ、貰い物です。以前勤めていた看護師さん、芳江さんって言うんですが、若君が唯と一緒に来て、そして戻った後、芳江さんも仕事を辞めて」
    ナレ:芳江の叔母が世話を焼き見合いをした。相手は茨城のメロン農家の長男。見合いの席でも人柄が良い事は分かったが、看護師の仕事も好き。それに農作業の経験も無いから躊躇していた。
    美:「芳江さんも明るくていい子でね、先方も気に入ってくれたから、私達も応援していたんだけど、踏ん切りがつかなくて返事を待ってもらっていた時にね、若君が芳江さんに言ってくれたのよ」
    如:「忠清が」
    美:「そう。芳江殿はその者の事は嫌いなのかって。初めにね、畑仕事も手伝ってほしいって正直に言ってくれた事で好感は持てたって、良い人だと思うって言ったら、若君がそう思える者が現れる事は唯が申しておったが奇跡、運命だと。自分も唯と出会えた事で良かったと思っているって、その相手が芳江殿の運命の人だとは思えないかって聞いてね、芳江さんは、運命の人かどうかは分からないって。でも自分で考えて答えを出したの。で、唯と若君が戻った後、芳江さんお嫁に行ってね、で、メロンを送ってきてくれたのよ」
    尊:「お礼の電話を掛けたら、毎年送りますよって言ってくれて。その時、お姉ちゃんと若君にも食べさせたかったって言ってたよ」
    覚:「如古坊さん、その事を二人にも話して下さいね。まだ有るので、明日持って行って」
    美:「そうね」
    如:「だが」
    覚:「大丈夫ですよ」
    美:「でも、唯、メロン好物だから、独り占めしないように言って下さいね」
    如:「あい分かった」
    ナレ:メロンが食べ終わり、お茶を飲んでいる時に、
    尊:「今夜、如古坊さんは?」
    覚:「ここじゃなぁ」
    美:「尊の部屋で良いんじゃない」
    尊:「別に構わないけど・・・でも、なんで、若君の時はお姉ちゃんの部屋だったの?今更だけどどうして」
    美:「あらっ、そうね、なんでだろう・・・忘れちゃった」
    尊:「まぁいいけど。じゃ、如古坊さん、今夜は僕の部屋で休みますから」
    如:「よいのか?」
    尊:「勿論。若君も成之様も僕の部屋で休んだんですよ」
    如:「成之も」
    尊:「じゃ、案内しますね」
    ナレ:部屋に案内して、成之の時のようにベッドで寝るように話すと、
    如:「この様に高いと、落ちてしまうのではないか?」
    尊:「寝相は悪いですか?」
    如:「悪うはないと思うが」
    ナレ:そう返事をしたことで尊はクスッと笑ってしまった。
    如:「たける?」
    尊:「すみません。成之様の時と同じ会話をしたので」
    如:「そうか、成之も」
    尊:「じゃ、僕、お風呂に入ってきますから先に休んでいて下さい」
    如:「かたじけない」
    ナレ:部屋の明かりを少し暗くして下へ降りた。覚が風呂掃除を終えて出てきた。
    覚:「今、お湯入れてるから」
    尊:「そう」
    ナレ:ダイニングで湯が溜まるのを待つ事にした。
    覚:「そう言えば、あの時とか、どうしたんだ?」
    美:「何が?」
    覚:「こう言っちゃ皆さんに失礼だろうが、皆さんが入った後は続けて入っていたけど」
    尊:「知らなかったんだ」
    覚:「ん?」
    尊:「若君も現代のように毎日風呂に入らないから、湯船が汚れるだろうと最初に察して、初めて入る時は毎回シャワーだけにしていたんだって、それを皆さんにも話して」
    覚:「そうだったのか。気を使ってくれていたんだな」
    美:「本当、皆さん優しいわよね・・・二度と会えない事が残念だけど」
    覚:「そうだな。もし、明日戻れないような事になったら、此処に居る間は皆さんと同じように、此処の暮らしを楽しんでもらいたいね」
    美:「そうね」
    ナレ:尊は風呂に入り、部屋に戻ると如古坊はまだ起きていた。だがソワソワしている。
    尊:「如古坊さん?」
    如:「すまぬが、厠は?」
    尊:「かわや・・・トイレね。ごめんねさい、我慢していたんですね。こっちです」
    ナレ:尊はトイレを案内して一通り方法を急いで教えた。風呂から上がった美香子に尋ねられ、
    尊:「言い出せなかったみたい」
    美:「そうだったのね。初めに説明してあげればよかったわね。気が回らなかったわ」
    尊:「うん」
    ナレ:トイレから出てきた如古坊は、
    如:「すまなかった・・・頼みがあるのだが」
    尊:「なんですか?」
    如:「水をの」
    ナレ:シンクの前に連れて行き、コップに注いだ。蛇口を見ていた如古坊は、
    如:「この様に容易に水が飲める事も教えてもろうた。まこと現代とやらは便利な物じゃ」
    尊:「便利ですよね・・・だから僕が戦国に行っていたら、お姉ちゃんみたいに生き抜くことは出来なかったと思うんです」
    如:「そのような事は無かろうて、忠清も申しておった、尊は強いとな」
    尊:「ありがとうございます・・・じゃ、戻りますか」
    ナレ:美香子と覚に挨拶して部屋に戻り眠りについた。

    ナレ:翌朝、覚が朝食の支度でダイニングに来るとサッシの前で如古坊が外を向き座っていた。
    覚:「如古坊さん、お早いですね。眠れませんでした?」
    如:「そのような事は無いのだが・・・目覚めて、尊の顔を見たならば、夢ではなかったのだと思うての」
    覚:「そう言えば、源三郎様もそこで不安がっていましたね」
    如:「ふあん?」
    覚:「戻れる方法は分からないし、このまま便利な事を覚えてしまって、戦国に戻れたとして、暮らせていけるかとか」
    如:「そうか」
    覚:「若君は必ず戻る事は出来るし、この世に居る間だけ便利を楽しめばいいとかって言ってましたね」
    如:「そうか、忠清が」
    ナレ:そこへ、美香子と尊が起きてきた。朝食を食べている時に、
    尊:「お父さん、乗せていって」
    覚:「分かってる。召し物は洗っておきましたから」
    如:「かたじけない・・・して、唯に聞いたのだが、尊はがっこうとやらに参らなくとも良いのか?」
    尊:「色々聞いていたんですね。心配しなくても大丈夫ですよ。ゴールデンウィークと言って続けて休める日なので。しばらく休みですから」
    如:「さようか。休みであるか」
    ナレ:朝食、昼食と現代の料理を堪能した。そして出発して、木村先生と合流した。現れた場所に立ち、離れた場所で三人が見守っていたが、1時間経っても何も起こらない。
    尊:「きっかけは何?」
    木:「光の理由は考えてみたが、彗星の周期だと如古坊さんが遭遇した時代には彗星は無かったようなんだ。彗星でもないのか?・・・火球?・・・それとも時間が違うのか?」
    ナレ:三人が腕組して考えている姿を見て、
    如:「わしの事ですまぬ」
    覚:「いいんですよ。明日また挑戦してみましょう」
    尊:「そうだね。ひょっこり戻れるかもしれないし」
    ナレ:その日は退散した。だが、毎日その場に行ったが、何も変わることなく如古坊の姿は消えなかった。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=3へ続く

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    今日も

    失礼ながら今日も(^-^)
    続きを書かせていただきます。

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    四人の現代Days76~1日7時、引き継ぎます

    ぷくぷくさん、始まりましたね。どんどん被せてください(^o^)
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    源トヨの案件が無事解決したからか、今日の若君はよく笑う。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    遅く帰宅したにも関わらず、今朝も普段通りにリビングに下りてきた若君。

    若君「なんと。ここまで遅れをとっておったとは」

    キッチンにトヨが一人。庭では、既に源三郎が額に汗しながら朝稽古をしている。そして、

    覚「おはよう」

    美香子「おはよう、忠清くん」

    若「お早うございます。テレビ、ですか」

    ソファーに両親が並んで座っている。

    覚「テレビじゃないんだ。番組を録画しておいたのを、今観てる」

    美「なんでこんな時間からって思うわよね。実はゆうべ放送された歌番組でね、全部で四時間以上あるし、何よりすぐに観たかったの」

    若「四時間は…二刻。それは長い」

    画面には、紅白歌合戦。

    美「それでね、嬉しいことに、今朝はトヨちゃんがお雑煮作ってくれるって」

    若「ほぅ」

    覚「ありがたくお言葉に甘えさせてもらって、観てるんだよ」

    若「そうですか。では、番組、を存分に楽しんでくだされ」

    その場を離れた若君は、キッチンへ。

    トヨ「おはようございます。忠清様」

    若「お早うトヨ。昨夜はよう眠れたか?」

    ト「はい!」

    若「わしも支度を手伝おう」

    ト「痛み入ります。ですが、あとは餅を煮るのみでございますので」

    若「そうか。源三郎はずっと外に?」

    ト「わたくしが下りて参りましたら、既に庭に居りました」

    若「ハハ、それは精が出るのう」

    稽古を終えた若君と源三郎が戻ってくると、ちょうど雑煮が食卓に運ばれてきていた。

    覚「いやぁトヨちゃん、済まなかったね」

    美「まあ、いい香り!」

    ト「ここでお召し上がりになりますか?そのままご覧になれるよう、そちらまでお運びしますのに」

    覚「いいのいいの。こんな美味そうな雑煮、ビデオ観ながらなんて失礼だ」

    ト「青菜しか入っておりませんのに」

    すまし汁に、焼かない角餅とほうれん草のみの、いたってシンプルな雑煮。

    美「ただお願いしただけなのに、今の時代と、作り方や中身が変わらなくてびっくり」

    ト「そうなんですか?」

    覚「うん。雑煮って地域性があるからね。本当に、450年前にこの辺りに住んでいたんだなってわかるよ」

    ト「それは…受け継がれているんですね」

    若「トヨ、ご苦労であった」

    源三郎「おぉ、雑煮」

    美「あ、源三郎くんのだけ、お餅が1個多いの発見!」

    源「え?」

    ト「あっ!いえ、誰よりも早うから稽古に勤しんでいたので、さぞかし腹を空かせているかと、小さい餅をもう一つ…すみません!」

    美「当然よね」

    覚「そうだ。いくらでも差をつけてもらって」

    美「ラブラブはわかる形でいいのよ」

    ト「贔屓したつもりでは…」

    若「ハハハ」

    覚「さ、ではいただこうか」

    全員「いただきます!」

    美「…ん、ん~。かつお節のお出汁がとても効いてて美味しい!」

    若「美味い」

    美「どう?源三郎くん。もうすぐ妻、の手料理は」

    源「はっ、とても美味い、です」

    美「こんな腕利きのトヨちゃんが居なくなると、お城も大変ね、忠清くん」

    若「ハハ、かと言って、いつまでも城を下がれぬのも」

    ト「そのような。わたくしはいつになろうとも構いません」

    美「結婚するのは間違いないものね」

    源「はい」

    美「忠清くん、色々決めてあげてね」

    若「はい。祝言をいつにするかなども、勘案致します。良いな、源三郎、トヨ」

    源三郎&トヨ「はい」

    美「そうよね。唯のお世話係も代わるものね」

    覚「そうか。ひゃー、トヨちゃんの後任は大変だろうな」

    美「父がそれ言うか~」

    若「お母さん、わしもそう思うております」

    美「やっぱり?」

    ト「あの、でしたらそのお役目はずっとわたくしが」

    美「あらま。いいのよ、放っておいて。いかに世話が焼けるかわかるわ。不束な娘でごめんなさいね」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    三重県北勢地域のお雑煮を参考にしました。

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=1

    ナレ:坂口と穏やかな時間を過ごし、お互いに二度と会う事は無いだろうと笑顔で別れ、黒羽城に戻った如古坊は不思議な光景を見た。此処に居るみんなが自分の知らない世界に行っていた事。見た事も無い衣類や品物。信茂等の話を不思議な面持ちで聞いていた。その後、忠高が黒羽に来た。そして、宗熊の計らいで忠高と宗鶴が対面し、二人の蟠りも消え、忠高、成之達は緑合に戻った。
    数日経ち、唯は夕餉の支度の手伝いをしていた。

    唯:「このマッチもあと僅か。もっといっぱい持ってくれば良かったなぁ。ふぅ」
    ナレ:唯は五本のマッチを名残惜しそうに見ていた。
    吉:「良いではないか。そなたも、まっちとやらが無くとも火を熾せるようになったではないか」
    唯:「まぁ、そうだけど。前よりかは早く・・・あっ、そうだ、花火の時に如古坊が何故、木に突然火が点くんだって驚いてましたね」
    吉:「そうであったの。まこと便利な品です」
    唯:「ライターの方が便利だけど中身が無くなったら使えないし、だからマッチにしたけど、もう無くなる。なんだかマッチ売りの少女の気分よ」
    吉:「何ですそれは?」
    唯:「いつ頃出来た物語かは忘れちゃったけど、貧しい少女がマッチを売っていてね、でも売れなくて、冬で雪も降って来て、寒いから売り物のマッチを擦って火を灯したら、火の向こうに楽しい事が映って、それで何度も擦って、マッチが無くなって・・・あれっ、最後どうだったか忘れちゃった」
    吉:「さようか。その少女とやらが幸せになっておったならば良いの」
    唯:「そうだね・・・で、そう言えば、如古坊の姿が朝から見えないけど」
    ナレ:成之達とは戻らず此処に残った如古坊の姿が見えない事に改めて気づいた。
    吉:「織田の出方も気になるとお殿様が申されての、探りに参ったのです。まだ暗いうちにの」
    唯:「そうだったんだ」
    ナレ:唯は残りのマッチを箱に戻した。
    吉:「汁の支度もあるが、使わぬのか?」
    唯:「如古坊が戻って来て、火を直ぐに点けなくっちゃならなかったら。その為に残しておこうかなって」
    吉:「さようか。優しいの」
    唯:「お袋様も私にラブ」
    吉:「そうじゃの。唯にらぶです」
    ナレ:吉乃は唯に抱き着いた。そこへ信茂が、
    じい:「何をしておる。腹が減ってのぉ」
    吉:「今しばらくお待ちください」
    じい:「わしも」
    ナレ:じいが二人に抱き着こうと手を伸ばしたが、
    唯:「間に合っております。ふっ」
    じい:「残念じゃのぉ。では、わしは小平太をぎゅっとしてこよう」
    唯:「ギュッなんて誰が教えたのよ。あぁ」
    ナレ:唯はお母さんだろうなぁと思っていると奥から、
    小:「おじい様、何をなさるのですか、お放し下さい!」
    ナレ:小平太の困惑する声が聞こえてきた。吉乃と唯は呆れていた。そこへ若君が来て、
    若:「小平太がじいに抱き着かれておるが」
    ナレ:唯が状況を説明した。
    若:「そうであったか。じいは平成で楽しい事を覚えておるのだな」
    唯:「で、若君こそどうしたんですか?」
    若:「ん・・・腹が減っての」
    唯:「えっ、もぉ、じいとおんなじこと言わないで。あははは」
    若:「じいもか。ははっ」
    ナレ:二人の様子をニコニコ顔で吉乃が見ていた。

    ナレ:如古坊は織田の陣に近づき探っていたが怪しい動きは見られない。一先ず黒羽へ戻ろうとその場を離れる時に後ろから声を掛けられた。
    男:「何奴!」
    ナレ:如古坊はその場から走り出した。
    男:「何者じゃ!待て!」
    ナレ:必死に逃げた。追いかける男も意外と足が速い。如古坊は覚悟を考えた。そして、追いつかれそうになった時に闇の中に光が。追いかけてきた男の足が止まった。その隙にと走り出したが足元をすくわれたかのように如古坊は倒れそうになった。

    =現代=
    ナレ:木村先生は羽木忠清の墓の前にしゃがんで、
    木:「速川、元気にやってるか?仲良くやってるか?・・・まぁ、大丈夫だろうな」
    ナレ:木村先生がそろそろ帰ろうかと立ち上がると後ろで気配を感じ振り向くと、不思議な格好をした男が倒れていた。
    木:「なっ・・・なに?」
    ナレ:如古坊はゆっくり目を開けた。
    如:「逃げおうせたか・・・ん?・・・夜が明けておったのか・・・ん?」
    ナレ:木村先生は驚きながら少しづづ近づいて行くと、如古坊が木村先生を見た。
    如:「あっ!・・・き・・・きむら・・・どの?」
    木:「殿?・・・いやぁ・・・いやぁ、そんなことが・・・まさか」
    ナレ:木村先生は羽木に関係する人物ではないかと考えた。だが何故、此処に居るのか理解出来ないが、そのままにしておくわけにはいかないと、如古坊を立ち上がらせようとした。
    如:「痛い!・・・何をする!」
    木:「怪我をしているんだね・・・あの、君」
    如:「何じゃ?」
    木:「つかぬ事をお聞きしますが、君は羽木忠清様、唯を知っているかね?」
    ナレ:目の前の男が忠清、唯の名を言った事に驚いたが、あの日に見た写真と同じ様な恰好をした木村に良く似た人物を目の前にして、
    如:「もしや、お主は唯が名を・・・その者を先生と申しておったが」
    木:「そうですよ。では、やはり」
    如:「わしが見た者と同じような形(なり)をしておる・・・では此処はへいせいとやら?」
    木:「そうです。厳密に言えば、あと三日で令和になります」
    如:「ならば、此処は平成ではないのか?」
    木:「今は平成ですよ」
    如:「ん?」
    ナレ:此処で話していてもしょうがないし、怪我をしているようだから速川家に連れて行く事にした。
    木:「あなたの知る唯、速川唯の家に連れて行きますから。私の腕に摑まってください」
    ナレ:如古坊はこの人物を信用した。この場所が永禄ではない事は分かった。拒絶したところで自分が何処へも行けない事も分かっていたから。如古坊自身あのスライドを見ていた事で、少しばかり状況を飲み込むことが出来ていた。
    木:「これに乗って」
    ナレ:自動車のドアを開け中へ促した。素直に乗ったので、
    木:「驚かないのですか?」
    如:「信茂殿に聞いたのじゃ。紙にのこの様な物を描き、馬より早いと教えてもろうての」
    木:「馬・・・そ・・・そうですか。では」
    ナレ:シートベルトをしようと腕を伸ばす木村先生の手を払った。
    木:「この乗り物に乗る時はシートベルトをしなくてはいけないので」
    如:「唯が申しておった、るうるであるか?」
    木:「速川が・・・そうですルールです」
    ナレ:木村先生は平成に来ていたのは忠清と唯だけだと思っていたので、逆にどう言う事と思っていた。如古坊は流れる景色を見ていた。
    如(心の声):(信茂殿が申しておった。まこと速い。目が回りそうじゃ)
    ナレ:分かっている様子でもじっとしていた如古坊が心配になり声を掛けた。
    如:「大事ない」
    ナレ:速川家の敷地に入り車を停めた。
    木:「待っていて下さいな」
    如:「あぁ」
    ナレ:インターホンを鳴らすと尊が出てきた。
    尊:「木村先生、どうしたんですか?」
    木:「いやなぁ、速川の知り合いを連れてきたんだが」
    尊:「知り合い?」
    木:「君の姉さんの」
    尊:「姉の・・・ですか?」
    ナレ:尊は木村先生と共に助手席に回ると見た事も無い恰好の男に、
    尊:「先生・・・もしかして」
    木:「そうだと思って」
    ナレ:尊はドアを開けてシートベルトを外し、
    尊:「僕は唯の弟です」
    如:「なれば、お主がたいむましんとやらをこさえたたけるか?」
    木:「えっ!」
    ナレ:タイムマシーンと聞いて尊の顔を見て声を上げた。
    尊:「先生、説明します。中へ」
    ナレ:今は日曜日の午後。みんな揃ってテレビを見ていた。リビングに通され、
    木:「お寛ぎの所すみません」
    覚:「木村先生どうしたんですか?・・・後ろの方は?」
    木:「羽木家の関係者の様でして」
    ナレ:その言葉で覚と美香子は驚き過ぎて言葉が出なかった。
    尊:「どうぞ座ってください」
    ナレ:座った木村先生の真似をして如古坊も座った。
    木:「私が羽木忠清様の墓に居ましたら現れまして。聞きましたらお嬢さんの事も知っているので。それでこちらへ。それに足も怪我している様なので」
    ナレ:怪我と聞いて美香子が、
    美:「失礼しますね」
    如:「お主は唯の母御」
    美:「ご存じなのですか?」
    如:「あぁ・・・しゃしんとやらを見せてもろうての」
    ナレ:木村先生は話が分からないので黙って聞いていた。
    覚:「そうですか。皆さん無事に着いたんですね。良かったな尊」
    尊:「うん」
    美:「捻挫のようね」
    ナレ:美香子は薬箱からシップを摂り如古坊の足首に貼った。
    如:「冷たい!」
    美:「大丈夫ですか?」
    如:「驚いただけじゃ。すまぬ」
    ナレ:覚が何も出していないと席を立った時、如古坊が、
    如:「すまぬが・・・無理であるなら良いのだが」
    覚:「どうしました?・・・遠慮なく言って下さい。唯がお世話になっているんですから」
    如:「わしが世話になっておる」
    美:「嘘でも、嬉しいですね」
    如:「いや、そのような」
    覚:「それで何ですか?」
    如:「信茂殿が申しておった、こおひいとやらは、苦いものじゃが、美味だと。ならばわしも飲んでみたいと思うての」
    覚:「分かりました。でも初めは少し甘くした物を飲んでもらった方が」
    如:「さようか。では」
    ナレ:その様子を尊がじっと見ていて、
    尊:「若君をはじめ皆さんもそうだったけど、直ぐにこの状況を飲み込んで凄いなぁと思いますよ」
    如:「さようか・・・皆もそうであろうが、あがいてもどうにもならぬ事が分かっておるからであろう」
    木:「すみませんが、私にもわかるように説明していただけませんか?」
    尊:「すみません。事情をお話ししますね」
    ナレ:尊はタイムマシーンを作り、予想外に唯が戦国へ行ってしまった事。忠清が矢傷を負いこの時代に唯が飛ばし傷の手当てをした事。唯と忠清が共にこの時代に来た事。そして羽木のみんながこの時代に逃れて来た事を話した。
    木:「そうだったのか。だが、君は優秀だから、私はその話を信じるよ。君がうちの学校に入学した頃、他の教員もあの速川の弟・・・あっ」
    覚:「構いませんよ、分かっていますから」
    木:「はぁ・・・ですが、速川が学校を辞める前の期末テストでは全科目今までとは違い点が良くて、私も先生方も驚いていました」
    尊:「その時は、若君のおかげなんです」
    木:「おかげ?」
    美:「唯のやる気を与えてくれて、私たちも結果も嬉しいですが、努力してくれた事が嬉しかったので」
    木:「そうですか」
    覚:「もっと前から、やる気出してくれてたら良かったんですが。ははは」
    ナレ:覚は笑っていたが、木村先生は自分迄笑うのは失礼だと思い話を変えた。
    木:「将来は科学者になるのかね」
    尊:「そんな事も考えたことありましたけど、今回の経験をして、返ってどうしたいのか迷い始めています。今はタイムマシーンは使えませんが、今後使えるようにする為には、今の僕には難しい課題です」
    木:「だが凄い事だよ・・・君と忠清様と出会ったあの日、私に向かって木村と言った事が不思議だったし、速川が私に木村殿と言った事も、スルーしたけど今思えば会っていたからなんだと」
    尊:「会って?」
    木:「木村政秀は私のご先祖様なんですよ。まぁ、それもはっきりしたのは最近ですが」
    如:「さようか」
    覚:「先生がご子孫と言う事は分かりましたし、彼が唯を知っているからって事も分かりますし、
    迷わず此処に連れて来た事がちょっと・・・僕は今何を言っているのか、話しながら分からなくなりまりました。ははっ」
    木:「分かります。そうでしたね。説明が・・・実は」
    ナレ:木村先生はカバンから古文書を出し、テーブルの上に。
    木:「これは政秀の手記です。忠清様と出会った後に発見されて」
    ナレ:優しくページをめくり絵の描いてある箇所を見せた。それは小垣城での若君と唯の婚礼の様子。一目で二人と分かる繊細且つ丁寧に描かれてあった。
    木:「祖父に代々木村家は絵の才能があると言われていまして。まぁ、私は駄目でしたけど。この絵を見た時にあの日出会った青年と速川だと分かり、不思議だった事がはっきりしました。速川が羽木家の事を頻繁に聞きに来ていた事の理由も」
    ナレ:だが裏のページに書かれていた文章については説明をしなかった。この婚礼が唯に最後の願いであり、明日は家臣として共に命を絶つ覚悟である事は。
    美:「もぉ、花嫁の格好をさせてもらっているのに、ピースは無いでしょうに。唯ったら」
    木:「奇態な事をしていると書かれてありますよ」
    覚:「ほんとですね・・・あれっ、あなたの名前を聞いていませんでしたね」
    如:「すまなんだ。わしは、如古坊と申す」
    覚:「にょこぼうさん・・・格好からしたら修験者かな?」
    如:「出家をしておる」
    尊:「そう言えば成之様が、仲の良い友が居るって言ってました。あなたの事ですか?」
    如:「成之とは幼い頃に出会うての、わしは成之に世話になったのだ」
    ナレ:唯は平成に戻ってきた時、高山と対峙している事を話したが、忠清が狙われた理由や高山の家臣との悪巧みのメンバーの如古坊の名は出していなかった。だから覚達は如古坊の事は知らなかった。
    覚:「そうだったんですか・・・はい、どうぞ。佐藤とミルクを入れておきましたから」
    ナレ:木村先生と如古坊の前に置いた。如古坊は頼んでみたもののどんな物か恐る恐る一口。
    如:「不思議な味じゃ・・・だが、わしの好みだ」
    美:「にょこぼうさんは大人なのね。どんな文字を書くんですか?」
    ナレ:ボールペンと紙を如古坊の前に置いた。尊がボールペンを持ちノックして書いて見せた。
    如:「墨も付けず書けるとは摩訶不思議じゃ」
    ナレ:先端を見てから文字を書いた〔如古坊〕と。もし唯がこの場に居たら言っただろう『読めない』と。みんなは理解した。
    美:「カッコイイ名前ですね」
    如:「ん?」
    美:「素敵だと言う事ですよ」
    如:「その様に言われたことは無かった」
    覚:「自信をもっていいのでは」
    如:「そのようなものか?」
    覚:「はい」
    ナレ:如古坊がボールペンを見ていたので、覚は持ち帰れるように用意をしますと話と嬉しそうに頷いた。此処に来て初めて笑顔を見せた。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=2へつづく

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=開始

    すみませんが始めさせていただきます。
    前回の報告より文字数が増えております(全14回)
    過去の創作の事などちらほら出ています。
    どのくらいの期間になるかは分かりませんが、これより数日かけて物語を書かせていただきます。
    作家の皆さんのように読み手に優しい書式が前々から苦手なため、そのページの切の悪い終わり方等の
    読み難さを感じられるでしょうがお許し下さい。そしてスマホを活用されての場合は、横向きにして頂くと少しばかりは読みやすくなるかと思います。
    読まれて皆様が「思ってたのと違~う」と思われるかも。その上で、楽しんでいただけたらと存じます。

    宜しくお願い申し上げます。

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    四人の現代Days75~2020年1月1日水曜2時、月推しです

    ざわざわしちゃう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    動画撮影スタート。

    みつき「あけおめ~!初詣に来てまーす!着物着せてもらったのー、ねっ、良くなーい?速川センセ、どうですか?」

    尊「皆さん明けましておめでとうございます。はい、よく似合ってるんで、彼氏さん喜ぶと思いますよ」

    み「ありがと。今は、夜中の2時でーす。鳥居の前で彼氏と待ち合わせしてたら、いきなりセンセが現れました~。デートですか?」

    尊「家族で来てます」

    み「本当かなー。どこかに彼女隠してない?」

    尊「本当ですよ。神出鬼没で、すいません」

    み「神社だけに?」

    尊「あ、上手いですね」

    み「アハハ~。というワケで、みんな、今年もよろしくね~」

    尊「よろしく~」

    終了。

    み「センセ上手だった!すぐグループLINEに投稿…いや待てよ」

    尊「ん?」

    み「瑠奈にシバかれるかなー。ま、いいや。送信、と」

    尊「なんで瑠奈さんにシバかれるの?」

    み「瑠奈、でいいから。だって瑠奈、センセのコトお気に入りだもん。かなりだよ?その歴史の話の時なんか、目がハートになってた」

    尊「は、はあ?」

    み「嫌?センセ彼女居ないんでしょ?」

    尊「そこまでご存知で」

    み「中学校から一緒だからさ、よく話す。あの子恋愛系やたらとオープンだし」

    尊「はあ」

    み「で、どう?」

    尊「どう、って…男女関係にはとんと無頓着で」

    み「で?」

    尊「食い下がるね」

    み「合うと思うんだよね。センセ、ジェントルマンだし」

    尊「ははは。それ、カラオケの時言われたヤツだね」

    み「うん。その時女子三人居たじゃない。今、彼氏居ないの瑠奈だけなんだよね」

    尊「へぇ」

    み「センセは、瑠奈の歴代の彼氏には居ないタイプ」

    尊「そうですか」

    み「で、今まで長く続いた試しがないから、今度はいい感じだと思った」

    尊「分析してるんだ」

    み「顔もかわいいじゃない」

    尊「そういう、何をどう感じるかは、主観が人それぞれ違うと思うけど」

    み「一般論はいらない」

    尊「強いな」

    み「私は、センセがどう感じてるか聞いてる」

    尊「はい。…うん、かわいらしい、と思います」

    み「でしょ!性格もかわいいんだよ。まあ、難があるとすれば、これが誰とも長続きしなかった原因でもあるけど」

    尊「何でしょう」

    み「恋愛は、一言で言うと、メンドくせぇ奴」

    尊「はあ」

    み「センセは大人だから大丈夫だと思うけど…あ、後ろに」

    尊「え?あ、兄さん」

    若君が近付いて来ていた。両親が合流したようだ。

    尊「ちょっとごめんね」

    み「うん」

    みつきから離れた尊。

    尊「呼びに来てくれたんですか?兄さん。お父さん達、ようやく車停められたんだね」

    若君「尊、あのおなごは、誰ぞを待っておるのか?」

    尊「彼氏…えっと、恋仲の男性を待ってるそうです」

    若「幾らこのように明るく人出があるとはいえ、夜更けにおなご一人にさせてはおけぬ。待ち人が参るまで、しかとおまもりせよ」

    尊「あ、そういう事ですね。実は僕もちょっと心配してました。じゃあ、彼女が無事彼氏と会えるまで。守れるかは自信ないですけど」

    若「おなご一人より弱くはなかろう」

    尊「そうありたいです。じゃ、ここを立ち去る時に、父か母に連絡するって伝えてください」

    若「うむ。では此れにて」

    若君は戻って行った。尊はみつきの元へ。

    み「え、ご家族の皆さん、行っちゃったよ?」

    尊「彼氏さんと会えるまで、一緒に居るね」

    み「え!センセ優しい!やっぱ超優良物件!」

    尊「物件って」

    ふと空を見上げた尊。周りがだいぶ明るいので、星はほとんど見えない。

    尊「何か、僕の周りの女性さ」

    み「うん?」

    尊「月に関係ある名前が多いなって」

    み「うん、瑠奈はまさしくそうだね。月の女神の名前。私は、月関係ないよ?」

    尊「え、そうなの?」

    み「瑠奈の名前の由来は本人に聞いてもらうとして、私のはさー、これ鉄板ネタなんだけど知らなかった?」

    尊「ごめんなさい、知らないです」

    み「では教えてあげよう。ウチね、両親二人とも、ディズニー好きで」

    尊「まさか」

    み「気付いた?子供が生まれたら、男でも女でも、絶対ミッキー、ではなんだから、ミツキって名前にするって決めてたらしい」

    尊「はあ」

    み「で、女の子だったから、ひらがなでみつきにしたと」

    尊「あれ、でもミッキーって男だよ」

    み「センセ、勘がいい、話が早い!そうなのよ。でもさ、ここでミニーとかだったら、ちょっと嫌じゃない?」

    尊「ちょっと暮らしづらいかもね」

    み「だから、みつきで良かったって。で、LINEの名前はミッキーにしてあると」

    尊「なるほど。聞いてみるもんだね」

    み「月、好きなんだ」

    尊「そうだね、気になるというか」

    み「月の女神は?」

    尊「推しますね」

    み「人助けをしてるの。あ、来た」

    遠くから走って来る若い男性が。

    尊「ちょっと離れるね。ちゃんと合流できるまでは見届けるんで」

    み「センセ、神だよ。ありがとう!」

    みつきから少し離れ、様子をさりげなく窺う尊。やがて、手を繋いだ二人が前を通っていった。

    尊「よし、任務完了」

    電話をかけながら、二人を追い抜き走っていった尊だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    みつきちゃんは、17話no.863に出てくる女子高生1の子です。

    31日付のお話は、ここまでです。

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    妖怪千年おばばさんへ

    この追伸に気づくのが遅れてごめんなさい。
    日本はお雑煮でも各地方で違うらしいし、当然インスタント物でも地域差があるのでしょうね。京都は是非ゆっくり滞在したいと思っているので、両方試せたらいいですね。

    新垣結衣さんも、吉岡里帆さんも清楚で可愛らしくて大好きな俳優です。里帆さんはこちらでも放映されたいくつかのドラマに出演されていて、とても親しみを感じます。
    星野源さんは有名な歌手としてお名前だけは知っていましたが、暫く前にこちらで放送された、引越し奉行の映画を観て以来、すっかりファンになってしまいました。

    日本の動画専門サイトに登録しようかとも思ったのですが、ヴァーチャルネットワークでアクセスしないと登録できないみたいですね。インターネットだからこそ、世界中に繋がっているのに、なんでわざわざこんなディジタル国境を設けるんでしょうか。ネットは老人には色々と優しくないなあと思うことが多々あります。

    今後も妖怪千年おばばさんの、読み応えある創作を楽しみにしております。
    ありがとうございました。

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    四人の現代Days74~31日23時55分、ドキドキ!

    無事に年を越せた先には、また何かが。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨは、ほぼ仁王立ちになって、源三郎を見おろしている。

    トヨ「そなた」

    源三郎「はっ」

    ト「このトヨを娶ろうとお思いか」

    覚&美香子&尊「…」

    源「…はい、左様に思うております」

    ト「ならば、しゃんとせえ!もののふであろう!」

    尊「うわぁ。めっちゃ怒られてる」

    美香子「怒ってるんじゃないわ。勇気を振り絞って、励ましてる」

    覚「震えてるしな」

    尊「え?あっ」

    離れていてもわかる程に、トヨの手は小刻みに震えていた。美香子が涙ぐんでいる。

    美「トヨちゃん…」

    尊「…源三郎さん!頑張って!」

    時計は、間もなく0時。源三郎が立ち上がった。そして、震えるトヨの手を両手で包む。

    源「トヨ、済まない。俺は、まこと意気地無しだ」

    ト「…」

    源「聞いてくれるか」

    ト「はい」

    源「俺は、ぬるま湯に浸かってのほほんとしていたんだ。心の中は決まっていたのに」

    ト「…」

    源「待たせて済まなかった」

    ト「…」

    源「共に、命を全うするまで、傍に居て欲しい。その髪が」

    ト「髪?」

    ジェットコースター三昧でだいぶ取れてしまっているが、今日のトヨの髪は、美香子の手で毛先がふわりと巻かれていた。

    源「その短うなった髪が、元の長さに戻り、背丈を越え、床につく様をそしてその先を、見届けたいんだ。共に白髪となるまで」

    ト「源ちゃん…」

    源「この赤井源三郎の、妻になって欲しい。この通り」

    頭を下げる源三郎。トヨの表情が、ぱぁっと明るくなった。

    ト「はい。喜んでお受け致します」

    ドーン!バラバラバラバラ!!

    尊「明けた…」

    覚「無事、明けたな」

    美「はぁ。良かったわぁ」

    空を埋め尽くす花火。一気に辺りが明るくなる。唯が走って来た。

    唯「あけおめ!トヨ…泣いてる。って事は!」

    後ろからやって来た若君も、軽く頷いている。

    唯「わあ!おめでとう!良かった、ホントに良かった!」

    ト「ありがとう、ございます…」

    源三郎は、放心状態になっていた。覚が背中をポンポンと叩く。

    覚「いやぁ、終わり良ければ全て良し」

    源「はい…」

    覚「じゃあ、年も明けた事だし、今後の抱負を聞こうか。なっ」

    尊「新年早々ムチャ振り?」

    源「…わかりました。畏れながら申し上げます。必ずや、必ずやトヨを幸せにいたします」

    ト「…」

    源「この、大輪の花火に誓って」

    全員で空を見上げる。まだまだ咲き誇り続けている花火。

    若君「うむ」

    唯「それ、絶対だからね!約束だよ!」

    2020年1月1日午前1時。プロポーズの余韻に浸りながら花火を充分堪能した後、遊園地を出てまた車に分乗し、初詣に向かっていた。

    美「あ、電話鳴ってる。唯、代わりに出て」

    唯「はーい。あ、尊か。もしもし?」

    尊 電話『お父さんがね、神社の駐車場混んでるかもって。だから先に僕達を降ろすって言ってる』

    唯「そうなんだ。わかったー、言っとく」

    神社の近くまで来た。前を走る覚車が停車。美香子車も停車し、ぞろぞろと5人が車から降りた。

    尊「鳥居で待機ね」

    唯「了解~。思ったより、人多いね」

    鳥居の横で、両親を待つ五人。道行く女性達が、若君に見とれながら続々と境内に入っていく。

    若「尊」

    尊「はい」

    若「こちらをずっと見ておるおなごが居るが」

    尊「ははぁ。兄さんも大変ですね」

    若「尊の知り合いではないのか」

    尊「え!まさかの僕?どこですか」

    若「あの、絣柄を召した」

    鳥居のもう一方の足元で、絣の着物と羽織姿の、ショートヘアの女の子がこちらを見ている。

    尊「あ」

    若「どうじゃ?」

    尊「はい、クラスメートでした。ちょっと行ってきますね」

    女の子の元へ向かった尊。

    女の子「やっぱ、速川センセ?」

    尊「こんばんは。じゃなかった、明けましておめでとうございます、ミッキーさん。今日は着物なんですね」

    みつき「おめでと。っつーかそれ、LINEの名前だし。センセさ、クラスメートの名前あんまり覚えてないでしょ。私はみつき。覚えてよね」

    尊「はい。ごめんなさい」

    み「今ね、彼氏待ってるの。彼大学生なんだけど、年またぎでバイトでさ。で、サプライズで着物着せてもらって、ここでちょうど会える時間に合わせて親に送ってもらったのに、肝心の彼氏がちょっと遅れてる」

    尊「なるほど。説明よくわかりました」

    み「センセは誰と来てるの?美男美女の団体に居てちょっと驚いたけど。あ、もちろんセンセも美男子だよ」

    尊「ついでに褒めてくれてありがとう。家族だよ。姉二人とその旦那さん。今は車停めに行った両親待ってるところ」

    み「そーなんだー」

    尊「で、あの、みつきさんこそ、僕の事センセって呼ぶじゃない。何で?」

    み「さん、要らないから。私ね、センセは下手な先生よりずっと尊敬してるからさ。あの歴史の話題以来」

    尊「そんな、恐縮至極です」

    み「センセはすごいよ。あ、ねー、一緒に撮ろうよ」

    尊「写真ですか」

    み「動画撮るよ~」

    尊「動画?!」

    み「いい感じで、フレームインしてきてねー、行きまーす」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    歴史の話題は、またいずれ。

    続きます。

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    四人の現代Days73~31日23時30分、ハラハラ!

    マズい、はしたないと思われてる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    観覧車を降り、全員ぞろぞろと、花火があがる会場に移動している。

    美香子「遊園地で一番装飾が煌びやかなのは、メリーゴーラウンドね」

    前を通過中。乗っている子供達が、カメラを構える親達に楽しそうに手を振っている。

    唯「かわいい~」

    尊「今乗りたいとか、言わないでよ?」

    唯「うーん」

    尊「なぜ悩む!」

    美「はい、さっさと歩いて~」

    花火会場の隅にやって来た。先に進めば、人がより多く集まっているが、この辺りはそこまでではない。

    覚「ここでいいか。周りにあんまり人居ない方がいいし。少し遠くても、花火は頭上にあがるからよく見えるしな。0時になったら、ドーンと」

    尊「タイムリミットが、打ち上げ花火か…」

    つい、黙る7人。時刻は、23時40分。

    美「嫌だ、緊張してきちゃった。自分の話でもないのに」

    源三郎とトヨは、どこに視線を合わせたらいいのかわからない様子だ。

    若君「…唯」

    唯「なぁに?」

    若「わしらは、少し離れようではないか」

    唯「え、離れるの?それだと決定的瞬間が見れなくない?」

    若「あまりに晒し者では、気の毒じゃろ」

    唯「えー、見たいよぅ」

    若君が唯に囁く。

    若君の囁き「二人きりで、年を越そうではないか」

    唯「いやん、そんな理由?!もー、たーくんったらぁ。わっかりましたー」

    安堵の表情になった若君。

    若「お父さん、お母さん、尊。あとはよろしゅうお頼み申します」

    覚「わかった」

    美「はい」

    尊「うん」

    赤のペアルックの二人が離れていった。

    覚「気の遣い方がさすがだな…」

    美「ねぇ、どういうフォーメーションにする?」

    覚「はあ?」

    尊「並び方?」

    美「どうしようかな~」

    美香子が、5人の立ち位置を決めている。緊張のあまり、顔が青ざめかけていた源トヨも、その滑稽な様子に、少し笑顔を見せた。

    美「どう?」

    覚「これ以外に何があるかって感じだが」

    尊「まんま、かぶり付きの位置だし」

    向かい合って立つ源トヨ。二人を正面に臨む位置で、3m程離れて並ぶ三人。

    美「さて、と。あと10分か…」

    その頃の、唯と若君。

    唯「冬ってさ」

    若「ん?」

    唯「なんか、遠いよね」

    若「遠い、とは?」

    唯「夏だとさー、着てる服も薄いし、水着着ちゃったりもするから、くっついててもピタっとするなぁって思うけど、冬はセーターもコートも着てるから、なんか遠い」

    それを聞き、若君は手繋ぎから体勢を変え、唯の後ろからそっと抱き締めた。

    唯「きゃっ」

    そのまま耳元に顔を近づけ、囁く。

    若「肌を合わせたいのか」

    唯「ひゃあ!やだたーくん、なんかエロ侍出てる」

    若「ハハハ」

    唯「あっちのヘタレ侍はどうなったかな。あー、まだ変化なしかー」

    離れてはいるが、5人の姿が確認できる場所には居る二人だった。

    若「屁垂れとは、何じゃ?」

    唯「ヘタレはヘタレ。今日でヘタレじゃなくなるといいけど」

    若「そのような…幾度も口にするでない」

    戻って、プロポーズ会場。源三郎が、小さい声でセリフを反芻していた。

    覚「伝えたい言葉がすっ飛んではなあ」

    美「時間はギリギリだけど、急かしてもね」

    尊「そもそも、こんな時間になっちゃったのは、お姉ちゃんのせいだし」

    源三郎が顔を上げる。身構えるトヨ。だが、すぐまた下を向く源三郎。これが、何回か続いている。

    源三郎「あっ…ふぅ。済まない、トヨ」

    トヨ「…」

    尊「あと5分」

    ここで、ずっと不安そうにしていたトヨの表情が、意を決したかの様にガラリと変わった。

    ト「赤井殿」

    源「え?は、はっ!」

    覚&美香子&尊「へ?」

    その言葉に思わず体が反応し、その場に跪いた源三郎。

    尊「時代劇みたいだ」

    美「お父さん、何言ってるの!」

    覚「すいません…」

    尊「何か不穏な空気。大丈夫かな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    追伸です。

    カマアイナ様
    どん兵衛きつねうどんは、
    W鰹だしと、鰹と昆布だし。
    2種類のお味があります。
    どちらがお好みですか?
    ただし、地域で分かれているんです。
    関東と、関西で。
    来日される際には、
    両方の地域を旅行されて、
    スーパーの棚を
    覗いてみて下さいね~、

    実は、どんぎつね役の
    吉岡里帆ちゃんは、
    CM契約満了になったそうです。
    ”~手紙~”でご紹介した動画が
    最後の様で。

    星野源さんと新垣結衣さんの
    結婚発表は、里帆ちゃん
    の契約満了時期を考慮した上
    での事だったかも。

    かわいいどんぎつねが、
    もう見られないのは
    さみしいですが、
    おばばの妄想小説の中では、
    これからも登場させたいと
    思います。

    これからも、よろしく
    お願いします~。m(__)m

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    ありがとうございます!

    カマアイナ様
    褒め上手の姫君。
    感想をいただき、感激しました!
    とても、励みになります。
    いつか、ハワイでの速川家も
    描けると良いなと思います。

    夕月かかりて様
    お邪魔なんてとんでもないです。
    いつも楽しく読ませて頂いてます。
    次はどうなるのかなと空想すると、
    つい、投稿を忘れるんです。
    私の言葉に語弊があったのなら、
    ごめんなさいね。
    また、次の作品が書けたら、
    遠慮なく、投稿させて
    いただきます~。
    これからも、楽しい連載を
    お願いします~(*^^)v

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    四人の現代Days72~31日22時、想い出の場所

    一番空に近いところで。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜の遊園地に来ている。

    尊「お姉ちゃん、物事には程度とか、限度ってモンがあるんだよ!」

    唯「だからごめんって」

    尊「トヨさんなら断らないってわかってて…」

    唯「だって、こんなにいっぱいジェットコースターに乗れるの超久しぶりなんだもん!」

    尊「わざと連れ回したんだろ」

    唯「楽しそうにしてたから、いいと思ったんだよぅ」

    トヨ「あの、わたくしなら大事ございませんので、どうか姉弟で喧嘩なさらないでください」

    尊「だって、辛そうですよ?」

    トヨがベンチに座っている。唯が隣で顔を覗きこんでいる。周りを、若君、尊、源三郎が囲む。

    若君「トヨ、済まぬ。わしが唯を止めねばならなんだ」

    ト「いえ!どの乗り物もとても楽しくて。少しだけ体が追いつかなかったみたいです。不徳の致すところでございます」

    覚「おー、どうした?」

    美香子「トヨちゃん、具合が悪いの?」

    カウントダウンイベントの、野外コンサートを楽しんでいた両親が合流した。

    尊「ご飯食べた後、お父さん達と別れたじゃない。その後、お姉ちゃんが無茶して、トヨさんを絶叫マシンにばかり連続で乗せて」

    覚「二人でずっと乗ってたのか。男衆は一緒じゃなかったのか?」

    尊「最初のジェットコースターだけ5人で乗った。後は、はい次~!って姉ちゃんがすぐトヨさんの手を引いて走ってっちゃって、追いつくのがやっとで。元々僕達三人とも絶叫マシンそんなに得意ではないし…でもはぐれるといけないから、ずっと降り口の近くで待ってた」

    美「忠清くんとではなかったのね」

    若「はい」

    唯「イヤイヤ乗ってくれなくてもいいもん。トヨは一緒にキャーキャー言ってくれるから」

    ト「あの、充分休めました。もう平気ですので」

    覚の囁き「尊、もしかして源三郎くんのプロポーズ…」

    尊の囁き「まだだよ。二人きりにもなってない。全部姉ちゃんが悪いんだよ」

    覚 囁き「あちゃー。今年もあと二時間切ってるぞ」

    唯「ねぇ、観覧車も乗りたーい!」

    尊「は?どの口が言ってる?!」

    ト「大丈夫です。あの大きく丸い乗り物ですよね」

    美「無理しちゃダメよ?」

    ト「好奇心と申しますか、そちらの方が強くって。参りましょう」

    美「じゃ、ゆっくりとね」

    もう少し休憩してから、観覧車乗り場にやって来た7人。

    美「ホントは二人きりにしてあげたいから、2対5がいいけど」

    源三郎の顔色をうかがう美香子。

    源三郎「あ、あの…」

    美「これでは、トヨちゃんの体調を気遣って一周終わりそうだから」

    覚「4対3か。わかった」

    乗車口前。

    覚「はい、唯と忠清くんと尊、先に乗れ」

    唯「そーゆー組み合わせ?」

    尊「妥当だよ」

    三人、先に来たゴンドラに乗り込んでいった。

    美「私達もご一緒させてね」

    源「はい!」

    ト「喜んで」

    次のゴンドラに四人で乗る。ゆっくりと、夜空に吸い込まれていくようだ。

    源三郎の囁き「体、辛くないか?」

    トヨの囁き「うん。ありがとう」

    にこやかに、二人の様子を眺める両親。

    美「あのね。私、観覧車にはとってもいい想い出があるの」

    ト「どのような?」

    美「お父さんが、プロポーズ…結婚の申し込みしてくれたのが、この中でなのよ」

    源「えっ」

    ト「まぁ!」

    覚「僕はその日ずっとそのつもりでさ。二人で遊びに来て、夕方ちょうど日が落ちる頃に観覧車に乗ろうと決めてて」

    美「まだ後で、って中々乗ろうとしなくって。そんなの知らないから」

    ト「ふふっ」

    覚「ゴンドラが頂上に着く頃、ちょうど空が真っ赤に染まって。その時、僕と結婚してくださいって、指輪を出して申し込んだんだ」

    美「嬉しかった…はい、って即答しちゃった」

    ト「はぁ~、いい。とてもいいお話ですね」

    覚「ハハハ。参考までに、なんてな」

    源「お聞かせいただき、ありがとうございました」

    ト「…」

    その頃の唯達。

    唯「ねー、例の女の子、るなちゃんだっけ?とはどうなった?」

    尊「どうなったって…何にもないよ」

    唯「連絡してないの?」

    尊「何でするんだよ。用がある訳でもないのに」

    唯「向こうからもないの?」

    尊「ないよ」

    唯「えー。つまんない」

    尊「勝手に盛り上がんないでよ。クラスメートの一人だよ」

    若「仲を深めようとは、思わぬか」

    尊「兄さんまで。僕の事はいいですから。今日は、源三郎さんとトヨさんさえ上手くいってくれれば」

    唯「ホント~」

    尊「散々邪魔してたクセに。ミッション聞いてないのかと思ってた」

    唯「だって年内にプロポーズでしょ?まだ時間ある」

    尊「呑気だな。あと今年も一時間しかないよ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    どうかお気になさらず

    妖怪千年おばばさん。久々のお出ましに、心が踊りました。

    いつも、投稿されるタイミングを私が邪魔しておりまして、大変恐縮でございます。

    私の創作話には、連続して番号がふってありますので、間に他の投稿話がどれだけ入っても、行方不明にもなりませんし、何ら問題はございません。

    今後は、どうぞご自身のタイミングで投稿なさってくださいね。

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    妖怪千年おばばさんへ

    妖怪千年おばばさん、すっかりご無沙汰しておりました。

    あまりに素晴らしいサプライズに、何度も読ませていただきました。
    才気溢れる創作って、こういう作品の事を謂うのでしょうね。
    一見繋がりがなさそうな場面が、次から次へと紡がれていって、その先が楽しみで仕方なくなります。
    妖怪千年おばばさんの創作の引き出しって、それこそマウナケアの山頂で見る満天の星の数ほどありそう。それを自在に繋げて、夢の星座を見せてくれているようです。
    ただただ感嘆するばかりです。妖怪千年おばばさん以外に誰がアシガールとコナコーヒーとをいとも自然に組み合わせることができるでしょう。誰が速川家のハワイ旅行を想像したでしょう。それが又アシガールに繋がるなんて嬉しすぎますね。

    同時代を平行移動すると、確かに時差ボケに苦しみますが、時空の穴を抜けると、そこは尽きない楽しさに満ちていて、時差ゴチの世界。尊に感謝です。

    一家揃って、パソコンをあけたら、??? その先が待ちきれないです。
    でも、こんな大作を出されたすぐ後に期待するのは虫が良すぎますね。
    お疲れ様でした。本当にありがとうございました。

    オババでも安心して又日本に行けるようになったら、食べた事のないどん兵衛、絶対買ってみます。

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