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    四人の現代Days132~11日11時、肌身離さず

    ちょうど手のひらサイズだし。
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    キッチンに、覚と若君。

    覚「さて」

    若君「よろしくお頼み申します」

    覚「芋を茹でる。これはジャガイモね。鍋に水入れて」

    若「はい」

    唯「今日はなにー」

    覚「ニョッキだ」

    唯「にょきにょき?」

    尊「言うと思った」

    ジャガイモが茹であがった。

    覚「つぶすよ。熱いから気を付けてな」

    小麦粉、塩を混ぜ、こねる。

    トヨ「芋なら、何でもよろしいのでしょうか」

    覚「やった事はないけど、向こうで手に入る物で試してみたらどうだい。粉もさ、ある物で。でも失敗して、食べ物を粗末に扱っても何だな」

    ト「少しの量で試してみます」

    棒状に伸ばし、小さく切り分けている。

    唯「粘土みたーい」

    覚「はい、これ持って」

    唯「なに?フォーク?」

    覚「切り分けたこれを楕円形にまとめる。で、フォークを軽く押し当てて筋をつける」

    唯「へー。やるやる!」

    一つ作ってみた唯。

    唯「なんか」

    尊「何」

    唯「さなぎみたい。セミとかの」

    ト「さなぎ?」

    尊「うへぇ」

    唯「ねっ、そう思わない?源三郎」

    源三郎「似てはおります」

    尊「わー、それにしか見えなくなる!しかも大量だし!」

    唯と尊が大騒ぎし、源トヨと四人で成形している横で、野菜や肉を煮込み始めた若君。

    若「この中にニョッキ、が入ると」

    覚「うん、あれはもう一度茹でてからだけどね。母さん達が来る頃にちょうど仕上がるだろう」

    13時過ぎ。クリームシチューが出来上がった。

    美香子「お待たせ~。お二人もすぐみえるわよ」

    覚「よしよし」

    器に盛り付けていると、エリと芳江が現れた。

    エリ「こんにちは」

    芳江「お招きありがとうございます」

    尊「お疲れ様でした」

    唯「どーぞー。座って座って」

    9人が席についた。

    美「ちょっと待ってね。いただきますの前に」

    覚「何だ?」

    芳「あの、ささやかなんですが」

    エ「プレゼントをお持ちしました。はなむけの」

    美「今日戻る四人に、用意してくださったって」

    唯「えー!」

    若「それは忝ない」

    一つずつラッピングされた小さな包みが、二人からそれぞれに渡された。

    源「わたくしにまで」

    ト「どうしましょう」

    唯「開けていい?」

    芳「どうぞ」

    唯「ん?これ、定期入れ?あ、なんかついてる」

    尊「リール付きだ」

    唯「え?電車もバスも乗んないけど」

    エ「芳江さんのアイデアなんですよ」

    唯「うん?」

    芳「はい。お写真って、何枚か持ち帰られますよね」

    唯「そうだね」

    尊「はい。今回も用意してます」

    芳「こんな事はない方が良いですけど、どこかへお出ましにならなければならない際などに…」

    若「戦でしょうか」

    芳「そう、ですね。勿論普段から使ってもらってもいいんですが、身に付けて持ち歩けるようにと思いまして」

    唯「定期入れなのはどうして?」

    芳「普通の入れ物も考えたんですが、これですとリールの先にフックがついてますよね。落とす心配がないかなって」

    尊「腰の辺りに引っ掛けても、長さがあるから近くで見れるね」

    若「理に敵っておる」

    芳「アイデアは私でしたが、エリさんと一緒に選んだんですよ」

    エ「種類が多くて。楽しく選べました」

    唯「ありがとう!大事にするね!」

    若「ありがとう、ございます」

    源「大切に、使わせていただきます」

    ト「とても嬉しくて。勿体なくて…使えるかしら」

    唯「そこは使おうよ」

    ト「はい!」

    覚「ではそろそろ、いただくか。忠清くん渾身の作だ」

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    続きます。

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    四人の現代Days131~11日10時、期待してます

    尊なら、プレッシャーをプレジャーに変えられる、から?
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    実験室の若君と尊。

    若君「もう、気に病まんで良い」

    尊「いいんですか」

    若「大学に入った後、どうしていくかは、よう考えておけ。ただその中で、タイムマシンの進み具合は勘案するな」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿との時間を、大切に過ごされよ」

    尊「ありがとうございます。あの」

    若「何じゃ」

    尊「もう一つ、兄さんに意向を聞きたかったんです」

    若「申せ」

    尊「今夜、永禄に帰ると、起動スイッチの燃料が空になります」

    若「で、あろうの」

    尊「少しですが、僕が貯めておいた燃料があります。補給しますか?それとも、僕がいつか必ず完成させるタイムマシンのために、取っておきますか?」

    若「…取っておけ。いつの日か、尊が現れるのを待とう」

    尊「わー、プレッシャー。でも、兄さんの期待は励みにして、頑張ります」

    若「うむ」

    実験室からリビングに戻ってきた二人。

    唯「おかえりぃ」

    源三郎&トヨ「おかえりなさいませ」

    若「おぉ、布団が片付いておる。これはしたり。お父さん、済みませぬ」

    覚「いいんだよ、手は足りてるからね」

    若「わしは何を手伝えば」

    覚「まだいい。今は、次の洗濯の洗い上がりを待ってるところだよ」

    若「あと何れ程でしょう」

    覚「15分位かな」

    若「15分、か…ならば今の内に。尊よ」

    尊「はい」

    若「預けておいた、例の物をくれぬか」

    尊「わかりました。部屋にありますんで。ここに持ってきますか?」

    若「いや、上で受け取る。唯」

    唯「なに?」

    若「共に参れ」

    唯「なになに?」

    二階に上がってきた三人。尊の部屋の前で待つ若君と唯。

    尊「はい、どうぞ。傾けないように気を付けてくださいね」

    若「世話をかけた。ありがとう」

    尊「いえいえ。では」

    ダンボール箱を渡された若君。尊は、そのままリビングに戻っていった。

    唯「なになになに!」

    若「部屋で見せる。扉を開けてくれ」

    唯の部屋。箱を開けると、

    唯「あ、お花の写真立て!」

    夏に二人で令和に来た時に、若君が唯にプレゼントした花束。永禄に帰った後、覚と尊でその花をプリザーブドフラワーに加工。今回、若君と尊で木箱と写真立てを繋ぎ、子供達五人で加工した花を木箱に埋め込んで、写真立てを完成させた。

    唯「四つだったね」

    若「一つは、下に持っていく」

    箱から出して机に置いたが、その内一つを脇へ寄せた。

    唯「着いてすぐに、七人全員で撮った写真を入れたんだね。私の着物姿も貴重だし?」

    若「これは、奥の棚に置いていただこうと思うておる」

    唯「ふぅん」

    三つは、まだ裏を向いている。

    唯「あとは、なに入れたの?」

    若「まぁ待て」

    まず一つ目を表に返す。

    唯「ん?私?」

    お母さんから受け取った、母の膝で眠る唯の写真。

    唯「こんな写真初めて見たよ」

    若「お母さんにいただいた。やはり知らなんだか」

    唯「なんでこれなの?」

    若「これは、唯の知らぬ、かつての写真」

    唯「ふん?」

    次に、二つ目を表に返した。

    唯「あ、コスプレ」

    写真館で撮った、軍服の若君と並ぶ、はいからさんの装束。

    若「これは、唯の知らぬ時代の、今の写真」

    唯「はあ。珍しくて悪くないとは思うけど、なんでこれ?」

    若「最後は、こうなる」

    三つ目を表に向けたが、

    唯「なんも入ってないよ」

    若「これは、唯がまだ知らぬ、未来の写真が入る」

    唯「知らぬシリーズってのがあんの?よくわかんないけど、たーくんがそうしたいならそれでいいけど」

    若「いつか、また此処に参れた暁に、写真が入る」

    唯「そう。ふーん。なんやかや言ってさ」

    若「ん?」

    唯「たーくんが尊に一番プレッシャーかけてない?」

    若「プレッシャー。先程も尊にそう言われた。意味は?」

    唯「え!さっき聞かなかったの?!えーと、えーっと…そうだ!圧が強いってヤツ」

    若「重荷になると」

    唯「そー、そんな感じ。尊には、三つ目に写真入れない理由は言ったの?」

    若「空けておくと申したのみじゃ」

    唯「あっそう。だったら、ヤベぇめっちゃ待ってる!とは思わないかな。でも尊、気づいてんじゃない?」

    若「そうか…まぁ、良かろう。ハハハ」

    唯「笑ってるし」

    廊下で足音がする。

    若「洗い上がったようじゃ。干すのを手伝わねば」

    唯「ん。参りますか~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days130~11日9時30分、道に迷う

    彼なりの信条がある訳で。
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    尊「親のスネをかじり続ける生活しか念頭になかったのを、今、すごく恥じています」

    若君「一つ、問うても良いか」

    尊「はい」

    若「大学に入るのは、甘えではなかろう?」

    尊「…微妙です」

    若「ん?お父さんが、大学とは広く浅くではなく、より突き詰めて勉学に励む地と申されておったが」

    尊「その通りなんですけど…」

    若「口ごもっておるな」

    尊「タイムマシンの制作や研究は、もっともっと突き詰めたいです。でも大学では教われません。全て独学なんで」

    若「尊は、己の才覚一つで何事も為せるからのう」

    尊「前にもそう言ってくれましたね。僕は…僕は、全然成長していません。期待に応えられない、ダメな奴なんです」

    若「んむ…。ならば、何ゆえ通おうと?」

    尊「あの…何と言うか、まぁ大学なんて、行って当たり前じゃね?位にしか考えてなかったんです」

    若「それが、スネをかじる、と」

    尊「はい」

    若「両親がそれを良しとした。そしる謂れはない」

    尊「でも、このままじゃダメで」

    若「何がある?」

    尊「現代では、何をするにもお金がかかります」

    若「そうじゃな」

    尊「高校では、学校行っても真っ直ぐ帰宅。貰っている小遣いを使う機会はあまりありませんでした。たまに寄り道して買い物するにしても、タイムマシンに使う具材とかで。だから、大学に行ってもそんな生活を続けるつもりだったんです。今までは」

    若「そこで瑠奈殿か」

    尊「ただ会うだけじゃなくて、一緒にどこかに出掛けたり、食事したりプレゼントしたりしたい。兄さんも、イブにお姉ちゃんと行きましたよね。何となくわかりませんか?」

    若「わかる」

    尊「大学生にもなって、その資金まで親に出させる訳にはいきません。僕自身が働いて稼がないと。アルバイトって言うんですけど。何かしら始めなければと思ってます」

    若「大学に通う合間にか。それは忙しい」

    尊「そうなると、作業に使える時間は益々削れていきます」

    若「それが、見通せなんだに繋がるのか」

    尊「瑠奈の存在がなくても、本来気付くべきでした。いつまでも、外の世界を知らない甘えた子供でいてはいけないって。この日常はずっと変わらない、変わる筈なんてないと、高を括っていたんです」

    若「永禄には思いを馳せるが、より先の世に、己がどうなっておるかは読めなかったと」

    尊「情けないです」

    若「そこまで申さずとも。わしに顔向け出来ぬ、とは?」

    尊「前回サシで話をした時、新型タイムマシンが完成したら迎えに行きます、と豪語しました。しかも、5人以上乗せますって野望まで付け加えて」

    若「覚えておるぞ」

    尊「先が見えなくなりました。いつできるかは未定ではありますけど、例えば二年でできた筈が五年かかるとか」

    若「何年かかろうとも、完成そのものに驚くが」

    尊「今回兄さん達が使った起動スイッチ2号は、未来の僕が全て作り、未来の僕がバージョンアップ…えーっと」

    若「何となくわかる」

    尊「すいません。その未来の僕がいつの僕なのか、全く見えてこなくなって」

    若「つまり」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿に出会うたが故に、未来とやらが遠のいたと申したいのか?それで先程から謝っておると」

    尊「結果的には」

    若「尊。それは違うておるぞ」

    尊「あっ、本家…」

    若「新型を完成させた尊の傍らには、瑠奈殿が居る」

    尊「まさか」

    若「居る筈がないと、どうして言い切れる?」

    尊「僕の秘密を、打ち明ける前提ですよね」

    若「瑠奈殿は尊を、尊敬に値すると申した。何を恐れている?彼の君が、尊の偉業を言いふらすとでも?」

    尊「…」

    若「どうじゃ」

    尊「それは…瑠奈なら、ないと思います」

    若「会うたのは一度きりであるし、短くしか話してはおらぬが、わしもそうは思えぬ。才気ありと見てとれたが」

    尊「確かに、よく気がつくし、頭の回転は速いです」

    若「良き片腕になるのではないか?かえって、早う完成するやもしれぬ」

    尊「それは…考えが及びませんでした」

    若「一つ話しておこう。忘れられぬ、尊の言葉がある」

    尊「何でしょうか」

    若「相当信用の置ける人物でないと、家の事情が話せぬと」

    尊「言いましたね。好きな子は居ないのかって、突然お姉ちゃんに聞かれて」

    若「無理に事情を話せとは申さぬが、それを聞き、尊が心を開ける者がいつか現れるのを、切に願っていた」

    尊「心配かけてごめんなさい」

    若「それが瑠奈殿であろう」

    尊「そう…思いますか」

    若「出会うて日が浅い。疑うのも頷けるが」

    尊「兄さんのお眼鏡にかなったんなら、確かですよ。何より…たかだか18年しか生きてませんけど、こんなに全力で慕ってくれる女性に、今後出会えるとは思えません」

    若「フフ、慕われれば誰でも良いのか」

    尊「いえ!」

    若「瑠奈殿がどう接してくるかではない。尊の存念は如何に」

    尊「身を焦がすような恋に落ちるなんて思ってもみなかった。離したくない。大好きだから、僕をもっと理解して欲しいです」

    若「熱いのう」

    尊「自分でも驚きです…わかりました。話せる時期が来たら、話したいと思います」

    若「急がずとも良いが」

    尊「…はい」

    若「何か、足枷になっておるのか?」

    尊「もっと、自分に自信がついたらって…」

    若「自信。鍛え始めたのは、それもあるのか」

    尊「そうです。もう少し体力をつけて、瑠奈に見合うと、自分が思える男になりたいんです」

    若「あれだけ慕われておれば、充分であろうに」

    尊「一緒に電車に乗ってると」

    若「うん?」

    尊「この子の相手がお前?って顔、よくされるんですよ」

    若「そんな輩は構うでない」

    尊「もう少し堂々とできたら、とは思うんです。だから頑張ります」

    若「そうか。フッ」

    尊「え、何ですか?」

    若「ゆくゆくはお姫様抱っこ、じゃな」

    尊「あー、それ…はぁ。出るのは溜め息ばかりです。できるようになる前に、嫌われないといいですけど」

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    続きます。

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    四人の現代Days129~11日8時30分、忸怩たる思い

    こんな悩みを抱える日が来るなんて。
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    モーニングコーヒーをクリニックに配り終え、戻ってきた源トヨ。

    源三郎「お二方共、忠清様の料理を心待ちにされておるご様子でした」

    若君「それは一層、腕によりをかけねばのう」

    トヨ「こちらにお出ましになるのは、1時頃では、との仰せでございました」

    覚「そんなモンだろうな」

    若「お父さん。わしはどの時分から、飯の支度を始めれば良いでしょうか」

    覚「11時頃かな」

    若「わかりました」

    尊「今さらだけど、トヨさんも現代の時間の言い方で通じるんだ」

    ト「読み解ける方が、暮らしやすうございますので」

    尊「偉いなぁ」

    若「ならば尊」

    尊「はい。お願いします。ちょっと、兄さんと二人で話してくるから」

    唯「はいはい」

    若「実験室か?」

    尊「そうですね」

    若君と尊は、外に出ていった。

    唯「さてと。なにしてよっかなー」

    覚「仕事ならあるぞ」

    唯「仕事かー。ウソウソ。なにすればいい?」

    覚「珍しくいい返事だな」

    唯「たまには」

    覚「最終日にしてようやくか。隅に寄せてある布団を全部干したい。洗濯の続きもしたい」

    唯「ん、わかったー」

    源「ならば布団は、わたくしが運びましょう」

    ト「洗い上がっている物を、干して参ります」

    唯「手分けしてやりますか~」

    実験室。

    若「入るのは、参った日以来じゃ」

    尊「そうですね。今回は」

    若君がゆったりと腰を下ろした。尊も正面に座ったのだが、

    若「何やら硬いが」

    正座をし、握り拳を両膝に乗せ、ずっと下を向いている。

    若「急にどうした」

    尊「兄さんに、見せる顔がないんです」

    若「何かしたのか?」

    尊「これから迷惑をかけるんで」

    若「これから?」

    尊「僕は…」

    若「…」

    尊「見通しが全然できてなかったんです」

    若「見通し?」

    尊「甘えがありました」

    若「そうは見えぬぞ」

    尊「兄さんに申し訳なくて」

    若「謝られる由がわからぬが。まぁ良い。申してみよ」

    尊「…僕がタイムマシンを完成させたのは、お姉ちゃんが永禄に飛ぶ少し前でした」

    若「見上げたものと思うておる。よう作ってくれた」

    尊「作れて当然だったんです」

    若「そう、なのか?」

    尊「その頃の僕は、学生なのに学校に行かず、家に引きこもっていました」

    若「話には聞いた。辛い事柄があり、それを避けるのに、通わぬ道を選ぶのが最良と考えたのじゃろ。尊も両親も」

    尊「今となればですけど」

    若「時間は潤沢にあったゆえ、作れたと?」

    尊「はい。朝昼晩食事が用意され安全な生活。他事を何もせず、四六時中タイムマシンの事だけ考えて没頭していたので」

    若「そっと見守っていただいた両親に、感謝せねば」

    尊「はい」

    若「それで?」

    尊「今は学校もちゃんと通ってますし、春からは大学に行きます。少しは環境が変わりますが、それでも家に帰れば作業をする、受験準備前と変わらずできると思ってたんです。でも」

    若「でも?」

    尊「瑠奈に出会いました」

    若「良き出会いであったの」

    尊「最初は、押しも強いし、何で僕を選んだんだろうという思いが先行して、自分の気持ちがよくわからない状態が続いていました」

    若「あれよあれよ、か」

    尊「でも日を追う毎にどんどん惹かれていき、あっという間に、瑠奈の存在が僕の中で大きくなったんです。自分でも、展開が早いと思うんですけど」

    若「フフ。歩みを止めず突き進むは唯も同じ。やはり姉弟じゃの」

    尊「今は、瑠奈の事ばかり気になって。勿論今は、受験勉強が一番ではありますけど」

    若「良いではないか。尊は一体、何を案じておるのじゃ?」

    尊「怖いんです」

    若「怖い?」

    尊「このまま、この恋に溺れていってしまいそうで…」

    膝上の拳が、より固く握られた。

    若「それも良しと思うが」

    尊「他の事が手につきません。きっと、タイムマシンも。ごめんなさい」

    かすかに震えている尊。

    若「…続けよ」

    尊「僕は、一生恋愛なんて縁がないと思っていました」

    若「決めつけんでも良かろうに。尤も、わしも唯に出会う前は似た様なものであったがの。ハハハ」

    尊「今は、どうしようもなく、瑠奈が好きなんです」

    若「瑠奈殿に、尊の存念は伝えたか?」

    尊「ちゃんと伝えました。態度でも」

    若「応えてくれたか」

    尊「はい。とても喜んでくれました」

    若「幸せを噛み締めておると。それで?」

    尊「必ず大学に入り、春からは、勉学に励みつつも、できるだけ一緒の時間を過ごしたいんです」

    若「デート、もしたいと」

    尊「はい。でも見通しが甘過ぎて」

    若「そこが、ようわからぬのじゃが…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days128~11日土曜6時、ホットほっと

    今年もよろしくお願いいたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ウォームアップ完了。一人を除いて。
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    令和最終日の朝。キッチンで両親とトヨが、朝食の支度をしている。

    トヨ「朝から、こちらをお使いになられるのですね」

    食卓に、ホットプレートが置かれた。

    覚「これでパンを焼くよ」

    ト「そうですか」

    覚「パンを食べるのもこれで最後だね。あー、今回はって意味だよ」

    ト「今回は。はい。お心遣い、ありがとうございます」

    美香子「彼らも、一段と熱が入ってるわね」

    庭では、若君と源三郎が、体から湯気が立ち上らんばかりに稽古に励んでいる。

    ト「お野菜も随分と刻みましたし、チーズ、も山盛りに用意しました。これは?」

    覚「ピザトーストを、銘々で好みの具をのせて作って貰おうと思ってな。ピザは何回か食べてるからわかるよね」

    ト「はい」

    覚「尊がさ」

    ト「尊様が?」

    覚「最後の朝はこれがいい、ってリクエスト…要望したんだ」

    ト「何か意図がお有りなのでしょうか」

    美「そうね。なるほど、って感じかな。ところで」

    昨夜リビングに並べて敷いた布団は、ほぼ片付けられており、まだ起きようとしない唯を残すだけとなっている。

    美「唯~。そろそろ観念しなさい!」

    唯「キャー!」

    体にぐるりと巻き付けていた布団を、母にベロンと剥がされた唯。勢いで、コロコロとリビングの入口まで転がっていった。

    覚「漫画みたいだな。おー、お帰り」

    尊「ただいまー。わ、何?!」

    唯「ギャー!!」

    外から帰って来た尊。転がってきた唯につまずき、蹴飛ばしてしまっていた。

    唯「痛いぃ」

    尊「何だよ、まだ寝てたのかよ、そんなんじゃ全員でラジオ体操できないだろ」

    唯「うるさいな、今起きるところですー。なにアンタ、朝帰り?」

    尊「はあ?早起きして、走ってきたんだよ」

    唯「走る。尊が?!」

    尊「体を鍛えるんだ」

    唯「マジ?試験前なのに?」

    尊「頭も冴えるから、うってつけなんだよ。ほら立って」

    唯「はあ」

    尊が伸ばした手に支えられ、唯が立ち上がる。そこに、若君と源三郎が庭から戻ってきた。

    若君「尊」

    源三郎「尊殿、お帰りなさいませ」

    尊「ただいま戻りました。神社まで行って、階段の昇り降りをしてきましたよ」

    唯「階段!」

    若「そうか」

    唯「なに張り切ってんの」

    尊「鍛えるって言ったじゃない」

    唯「いきなりワケわかんないー」

    若「一日で終わらぬようにの。何事も、続けてこそじゃ」

    尊「はい。これからも頑張ります」

    美「はいはい、そろそろ始まるわよ~」

    テレビを点け、7人全員で体操を始めた。

    美「ん~、いい!」

    覚「永禄でも、できそうかい?」

    ト「はい」

    源「是非にと思うております」

    唯「たーくんと一緒にやろうとすると、もれなくじいがついてくるけど」

    源「それは、それで」

    若「フフ」

    朝ごはんがスタートした。ホットプレートにパンを並べ、焼き始めている。

    唯「コーン盛り盛りがいい!」

    美「こぼれてる方が多いわよ」

    唯「落ちたのも焼けるからいい。そうだ!こぼれた方にもチーズかければ」

    覚「カリカリになって、それはそれで美味そうだな」

    ト「尊様」

    尊「はい?」

    ト「この献立は、尊様が望まれたと伺いました」

    尊「そうなんですよ。原点に戻ろうと思って」

    ト「原点?ですか」

    尊「先月1日。朝ごはんに出たピザトーストを食べながら読んだ新聞記事から、今回の全てが始まったんで」

    若「わしの日記と、木村殿か」

    尊「はい」

    美「あの時は、二週間後には7人で食卓を囲むなんて、夢にも思わなかったわ」

    覚「3人から、5人ではなく一気に7人だったからな。嬉しかったな~」

    ト「わたくしも、このように団欒に加えていただけるなど、この上ない喜びでした」

    源「家族同様に接していただき、感謝しております」

    唯「チッチッ。それは違うておるぞ」

    尊「出た!戦国言葉」

    唯「同様じゃないよ。マジ家族だもんね」

    覚「そうだ」

    美「そうよ」

    源「…有り難き幸せでございます」

    ト「はい…」

    美「トヨちゃん~、涙ぐむのはまだ早い」

    ト「すみません」

    唯「いい感じに焼けた~。カリカリ~。ホットプレート最高!」

    美「唯に負けないよう、どんどん食べてね」

    ト「はい!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days127~10日20時30分、団欒

    本年も、私の拙い創作話に目を留めていただきまして、感謝ばかりです。ありがとうございました。

    来年も、ゆるゆると続きます。宜しければ、今しばらくお付き合いくださいませ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    一見、抑揚のない日常こそ、かけがえのないもの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母が仕事を終え、居酒屋に到着した。

    美香子「こんばんは~」

    店主「いらっしゃい」

    カウンターの客1「美香子先生じゃないですか!」

    カウンターの客2「先生、ご無沙汰しております」

    美「あらお揃いで。こんばんは。その後お二人共、具合はいかが?」

    客1「はい、いたって平穏です」

    客2「痛みのぶり返しもなく」

    美「それは何より。私にしょっちゅう会ってるようではね。ご無沙汰はいい傾向よ」

    客1「何かあればまた診てもらいます」

    美「何かがないように、健康管理してくださいね」

    客2「ははは。そうですな」

    美「では、失礼します」

    座敷で手招きしていた唯。

    唯「人気者だねぇ。お疲れ~」

    尊「お疲れ様」

    美「お待たせ。あら、まだ起きてる」

    覚「話に花が咲いてな」

    美「いつも咲いてるわよ。お父さんが勝手に寝始めるだけでしょ。今日は、トヨちゃんが向かいに座ってるから、上手く操縦してもらえてるのね」

    トヨ「いえ、私は何も。お父さんのお話が楽しくて」

    美「いい娘を持ったわ」

    尊「お母さん、ビール来たよ」

    美「待ってました~。それでは」

    7人揃って、乾杯~。

    唯「ねぇお母さん」

    美「あー美味しい。ん~?」

    唯「明日の午後、どこに遊びに行くの?」

    美「うん、それね。じゃあ、発表しちゃおうかな」

    唯「おーっ」

    美「それでは」

    尊「お願いします」

    美「お父さんの捻挫も、完治しました」

    唯「あ、そう言えば」

    尊「忘れてた」

    若君「お父さん。もう、何処も差し障りはございませぬか?」

    覚「うん。お陰様でな。先生もあぁ言ってるしさ、はは。心配かけて済まなかったね」

    美「という事で。ボーリングに行くわよ~!」

    唯「ボーリング!」

    尊「治ったにしても画期的だ。そう来たか。でも楽しそう!」

    若「ボーリング?」

    尊「兄さんには動画を見せてますよ。覚えてるかなー。去年結婚指輪作った時。大きくて重い球を転がすんです」

    若「的が何本もあり、玉を当て、なぎ倒しておった。あれか」

    尊「そう、それです」

    源三郎「指輪、と」

    ト「大玉?」

    尊「お姉ちゃんの指のサイズ調べるのに、参考にしたんです。って、どう繋がるんだ?ですよね」

    唯「まぁ、そのウラ話はまたしてあげるよ。どうやって遊ぶかは、行けばすぐわかるから」

    覚「張り切り過ぎて、帰ってから筋肉痛…は、君らにはないよな」

    美「ないない。点を競うとなるとついつい熱が入っちゃうかもしれないけど」

    ト「競う?」

    美「ゲームだけどね。誰かが一番になり誰かが七番になるわ。この前遊んだトランプもそうでしょ」

    源「争いではない、と」

    美「そうよ。家族全員が揃って楽しむのに、意義があるの」

    唯「何か話、デカくなってない?」

    尊「いいじゃない。会話を丁寧に拾ってるんだよ」

    若「フフ。心待ちに致します」

    その後も歓談は続き、時刻は22時を回った。

    尊「奇跡だ。お父さんが寝てない」

    覚「あんまり皆が言うから。かえって目が冴えたよ」

    尊「飲み足りないの?」

    覚「いや。充分堪能した」

    美「それこそ、トヨちゃんの才能ね」

    ト「そんな、お恥ずかしい」

    美「担がなくてすむだけでもホント助かるわ。そろそろ帰りましょうか」

    帰宅しても、イベントは続く。

    唯「ギリ、布団並んだ!」

    美「合宿みたいな風情ね」

    覚「修学旅行だろ」

    尊「戦国時代にない言葉ばかり並べないでよ」

    覚「おっ、並べるにかけて?」

    尊「浮かれてるなぁ」

    リビングに布団が7組。部屋を暗くしてからも、会話は続く。

    唯「千原じい、ヒドイよね」

    若「急に何じゃ。話を蒸し返すのか」

    唯「天野系の姫は妻にするななんてさ。関係ないじゃん!そー思わない?源三郎もさぁ」

    源「それは…恩義もございますし」

    唯「そんなんに縛られてたなんて、千原じい、のろってやろうかな」

    尊「物騒だな。ちょっと待って、もうあの世の人じゃないの?」

    唯「そうだけど。なんか今さらだけど怒れてきちゃって」

    若「唯がどう思うておろうとも、トヨが気にかけておるか否かじゃろ」

    唯「まあね」

    ト「唯様」

    唯「あい?」

    ト「私、その話を聞いても、怒りはありませんでした」

    唯「そうなの?」

    ト「忠義が素晴らしくて…源ちゃんを惚れ直しました」

    唯「あー。はいはいごちそうさま。おやすみっ」

    尊「なんだよ、話振っといて」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    10日のお話は、ここまでです。

    さて。新年ですが、勝手ながら投稿は4日から再スタートさせていただきます。ご容赦くださいませ。

    それでは皆様、よいお年を。

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    四人の現代Days126~10日17時30分、春からのビジョン

    それでも、かなり生活環境は変わる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「そろそろ出かけるか」

    唯「はーい」

    その声に、反応していない尊。どこか上の空でソファーに座ったままでいる。

    トヨ「尊様、お支度を」

    尊「あ、ごめんなさい」

    六人で家を出た。すっかり暗くなった道を歩く。

    唯「おやじさんの作る煮物が、超ウマなの!」

    ト「それは教えを乞いたいですね」

    覚「今日は人数も多いからさ、遠慮せず色々注文してくれよ」

    源三郎「はい」

    若君と尊は、最後尾で並んで歩いていた。

    若君「勉学には、励んでおれているか?」

    尊「はい。バッチリです。ちゃんと大学に入りますから」

    若「尊ならば、余裕綽々であろうが」

    尊「そう…ですね」

    若「ハハッ、大きく出たのう」

    尊「どこでも行けそうだったんですけど」

    若「選び放題か」

    尊「家から通いたかったんで、通える範囲では一番難しい学校にしました」

    若「ほぅ」

    尊「せっかくなら、もっといい大学にすればとは言われましたけど。僕がそんなに学歴とか気にしてないんで」

    若「学歴。どの大学に入るかで、その良し悪しが決まるのか?」

    尊「世間的には。でも学校の先生達と違って、父も母も強くは言わなかったので、最終的には自分で決めました」

    若「瑠奈殿も、大学には行くのであろう。同じ学び舎なのか?」

    尊「いえ、違います。瑠奈は女子大、おなごだけが通う大学に行くんです」

    若「それは、尊にとっては好都合じゃの」

    尊「校内に男子が居ないからですか?でも通学時間が長くなります。それは僕もですけど」

    若「様々言い寄って来そうな男衆から、守れそうか?」

    尊「うわぁ、ツッコみますね。喧嘩で大立ち回りなんてのは無理ですけど、もっと自分に自信が持てて心も強くなれるよう、体力作りに励みます。あ、でも通学、半分位は彼女と同じ経路なんです」

    若「そうか。それは楽しみじゃの」

    尊「はい」

    若「瑠奈殿は、心より尊を慕うておるのが、手に取るようにようわかる」

    尊「恐縮です」

    若「大切にせよ」

    尊「はい!」

    若「離れて暮らさぬのを決めたのは、お父さんお母さんが淋しがらぬようにとの心遣いもあるのではないか?」

    尊「あ、まぁ」

    若「まこと親思いよのう」

    尊「それもありますけど…」

    若「他に訳があると?」

    尊「タイムマシンを完全に操れる、未来の僕に少しでも早く近づきたいんで、家は離れられません」

    若「より研鑽を積むと」

    尊「春からは、またコツコツ作業を進めます。そのつもりです…」

    若「ん?どうした。顔がみるみる曇っておるが」

    居酒屋が見えてきた。尊が立ち止まる。それに合わせて、若君も歩みを止めた。

    尊「兄さん」

    若「うむ」

    尊「今回も、帰る前に二人だけで話がしたいです。時間もらえませんか」

    若「…そうか。それは構わぬが、今宵は難しかろう。明日の朝方は如何じゃ?」

    尊「わかりました。よろしくお願いします」

    深々と頭を下げた尊。

    覚「おーい、二人共何してる?早く入んな」

    若「参るぞ」

    尊「はい!」

    座敷に通された六人。

    おかみ「唯ちゃん、ちょっと見ない内にすっかり大人っぽくなって」

    唯「でしょでしょでしょ~」

    尊「中身は見た目程変わってないです」

    お「尊くんも、大きくなったわね~」

    唯「コイツ最近、同級生のかわゆーい彼女ができてー」

    尊「いいよ、そんな事言わなくても」

    お「あら。だったら、お酒が飲める年齢になったらぜひ、連れて来てね。おばちゃん、楽しみに待ってるわ」

    覚「あと二年あるな。頑張れよ、尊」

    尊「目標にします…」

    キンキンに冷えたジョッキに注がれた生中が、4杯出された。唯と尊にはジュース。

    ト「この量ですか?!」

    覚「多分トヨちゃんなら大丈夫だよ」

    若「これじゃこれじゃ」

    源「喉が鳴ります」

    乾杯!

    覚「あ゛ー」

    若「くーっ」

    源「うまい!」

    尊「みんな美味しそうに飲むなぁ。何かさ、ビールのCMみたいだね」

    唯「言える。トヨ、どう?」

    ト「この苦味、嫌いじゃないです」

    唯「大人だねぇ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days125~10日16時30分、時代時代で

    事情を知らないと、色々疑問がわく。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーに到着した四人。

    唯「お菓子、お菓子~」

    若君「ハハハ。それはちと違うておるぞ」

    カゴをサッと取り、歩き出した若君。慌てて、源三郎が追いかける。

    源三郎「忠清様」

    若「何じゃ」

    源「カゴは、わたくしが持ちます」

    若「ん。良い」

    源「されど、荷をお運びいただくなど、畏れ多く」

    若「源三郎」

    源「はっ」

    若「この令和の世も、残すはあと一日となった」

    源「は、はい」

    若「永禄に戻ったら、幾らでも持ってもらう。今はまだ良い」

    源「戻りましたら、でございますか」

    唯「えー、たーくん何言ってるの~?スーパーもレジもないのにぃ」

    若「物のたとえじゃ」

    唯「たとえ?」

    若「家臣に完全に戻るのは、もう少し後で良かろう」

    唯「ふーん?」

    若「下がっておれ」

    唯「だってさ、源三郎。たーくんにまかせとけば?」

    源「…心得ました」

    唯と若君が、売り場を仲良く進む。やや離れてついて行く源トヨだが、

    源「これが令和の世、なのであろうな」

    トヨ「そうね」

    周りを観察する二人。夕方の早い時間ではあるが、カップルが揃って買い物をする姿をちらほら見かける。

    ト「忠清様、こうして拝見すると、周りととても馴染んでいらっしゃるわ」

    源「そうだな。何より、楽しんでおられるのがよくわかる」

    ト「今は控えて。控えるのも得意でしょ」

    源「あぁ。任せろ」

    さて。こちらは、速川家。

    覚「はいはいはい、電話か。また忠清くんか?違うな、尊か。もしもし」

    尊の電話『もしもし、お父さん』

    覚「おー、どうした?おいおい、まさかまたトラブったのか~?」

    尊 電話『ううん、今日は大丈夫。ちょっと遅くなっちゃったから電話した。今黒羽駅に着いたけど、お店って、何時に予約してたんだっけ?』

    覚「母さんは仕事終わり次第合流だから、6時位には行きますって伝えてあるが」

    尊 電話『そっか、良かった。ちょっと焦ってた』

    覚「だから慌てなくていいぞ。唯達も、今スーパーに行ってるし」

    尊 電話『そうなの?!家に居ないんだ。もう帰ってくる?』

    覚「いや、4時前位に、ようやく今から向かうって連絡あったから、もう少しかかるんじゃないか?」

    尊 電話『そうなんだ、わかった、じゃあ急いで帰るよ』

    電話はすぐに切れた。

    覚「何を急ぐんだ。それに、どう連絡してきたのかって、なぜツッコミが入らない?僕の感動した話を、聞いてくれよ~」

    程なくして、尊が帰宅した。

    尊「ただいま」

    覚「おーお帰り。ん?」

    リュックをドサっと床に置くと、下を向いたまま、急いで洗面所に入っていった尊。

    覚「手洗いうがいか?」

    やがて出てきたのだが、

    覚「相当念入りにしてたな」

    尊「あー」

    覚「ん?前髪ビショビショじゃないか」

    尊「顔洗ったんで。着替えてくるよ」

    二階に消えていった。

    覚「行動に謎が多いな」

    唯「ただいま~」

    覚「こっちも帰ったか」

    唯達も帰宅。

    若「お父さん。先程は、話を途絶えさせてしまい」

    覚「いいのいいの。公衆電話には有りがちなんだよ。小銭でかけてると特に。いい経験だったね」

    若「はい!」

    覚「最初、何を言ってるのかわからなかったけど。あれか、戦で名乗る時は、あぁ始まるのかい?」

    若「そうです。驚かせてしまいましたか」

    覚「大丈夫だよ。声の抑揚が、まんま忠清くんだったから、すぐわかった」

    若「そうでしたか」

    尊が着替えを済ませ、下りてきた。

    尊「お帰りなさい。買い物行ってたんだね」

    唯「あれぇ?今日は一人~?」

    尊「基本一人です」

    唯「どっかに隠してない?」

    尊「ない。そこ、引っ張らなくていいから。なんだよ、買い物しっぱなしで、トヨさん達に片付けさせて」

    唯「あー。ごめんごめーん」

    ト「いいんですよ。お話しててください」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days124~10日15時45分、もしもーし

    どこにどう当てたのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今では珍しくなった、駅の公衆電話に群がっている唯達。

    若君「10円、はどれほど要るのじゃ?」

    唯「電話してる長さで変わるの」

    若「長さか」

    唯「100円でもいいんだけど、40円もあるし。たーくんも10円玉、持ってたりする?」

    若「コーヒーの支払いで使うてしもうた」

    唯「そっか。まぁ大丈夫っしょ」

    若「この箱に支払うと」

    唯「そうだよ。ではいってみよう!じゃあね、まずこれ耳に当てて」

    受話器を若君に持たせたのだが、

    唯「違うぅ」

    若「違う?」

    唯「端っこの、丸くてプツプツ穴開いてるトコに当てて」

    若「こうか」

    唯「もう一つの丸いのがちょうど口のあたりにくるでしょ。あー、そっちは離れててよくて…そうそう、それでいい」

    若「こう持つと、収まりが良いのか」

    唯「でね、上の丸いのから声が聞こえるから、下のそこに向かってしゃべってね。じゃあお金入れるよ」

    源三郎「忠清様とあろう御方が、少々手こずっておられる」

    トヨ「どうなるのかしら」

    若「何やら音がする。お父さんがもう話されておるのか?」

    唯「まだ。待って、今電話番号のボタン押してるから。お父さんが出たら、名前言ってね」

    若「名乗るのか。ん?音が変わった」

    覚の電話『はい、もしもし。速川です』

    若「おぉ、お父さんの声じゃ」

    唯「聞こえた?ならしゃべって」

    若「うむ。ならば」

    唯「ためるなぁ」

    若「我こそは、緑合の国の住人、御月…」

    唯「へ、なんで?!そこからじゃなくていい!名前だけで!」

    若「それでは名乗りにはならぬ」

    覚 電話『もしかして、その声は、忠清くんかい?』

    若「はい!お父さん。忠清です」

    覚 電話『いやぁ、びっくりしたよ。まさか、君と電話で話せるなんてなあ。何かあった?』

    若「膝を詰め、皆で話をしておりました。急ぎ買い物に向かいますが、戻るのが遅くなりますゆえ、一言お伝えしたく」

    覚 電話『そうか。わざわざありがとな。いいよ、ゆっくりで。まだ尊も帰ってないし』

    若「痛み入ります」

    覚 電話『何か食べときたい菓子とかあったら、買ってきて貰ってもいいぞ』

    若「菓子、ですか」

    覚 電話『心残りがあってもイカンからな。好きに買ってお…』

    ツー、ツー。

    若「ん?何じゃ?声が急に聞こえぬように!お父さんに一大事では?!もしや、倒れたのではなかろうか?!」

    唯「電話切れたからね」

    受話器を若君から受け取り、戻した唯。

    唯「はい、おしまい」

    若「お父さんは、無事なのか?!」

    唯「うん。全然大丈夫」

    若「ならば良いが」

    唯「まっ、気にしないで」

    若「話の腰を折るなど、とんだ無礼を働いてしもうた」

    唯「いいでしょ、言いたいコトは言えたんだし。お父さん、なんて?」

    若「所望の菓子があれば、買って良いと申された」

    唯「ふーん。それどーみても、私への伝言じゃないな」

    スーパーに向かい、歩きだした四人。

    唯「これもう一回食べときたい!ってお菓子、ある?」

    若「そうそうは思い出せぬが。源三郎、トヨはあるか?」

    トヨ「うーん…」

    源三郎「お言葉に甘えて宜しいのでしょうか」

    唯「あるなら言ってよ?これで頼まれた物しか買っていかなかったら、逆にお父さんガッカリすると思うし」

    源「あの、バーベキューの終わりに、お母さんがお焼きになった」

    唯「焼いた?」

    若「あぁ。あれはわしも気に入った。唯が焼くと焦がしよるが」

    唯「どーせそうですよぅ。スモアだね」

    源「はい。温かく、甘く、あの何とも言い表せぬ口当たりが忘れられませぬ」

    唯「そうなんだ」

    ト「いいですね。私もあのお菓子は、賑やかに過ごした情景と共に、優しいお味が思い出されます」

    唯「へー。ひそかに人気のスイーツってヤツ?だったら、私が腕をふるって、焼いてしんぜよう!」

    微妙な顔をして黙る、若君と源トヨ。

    唯「…ってもう、わかってますって。お母さんが作ったのが食べたいんでしょ?」

    三人が顔を見合わす。

    若「そうじゃな。母の味じゃからの。唯が焼いてはならぬとは申さぬが」

    唯「顔がダメって言ってたけど」

    若「そうか?」

    唯「材料どーんと買っとこ。どっかで、焼いてもらえる時間くらいあるっしょ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days123~10日15時30分、挑戦と再挑戦

    願いを叶えたいからこそ、直接言葉にしないの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    喫茶店の四人。

    若君「すっかり遅うなってしもうた」

    唯「たーくんの話が長いから~」

    トヨ「唯様」

    唯「すんません」

    若「日が落ちる迄に家に戻れると良いが。ひとまず此処を出よう」

    若君が会計をした後、外に出た。

    若「急ぎ買い物に参ろう」

    唯「んー、あのさたーくん」

    若「何じゃ」

    唯「帰るのが遅くなるって、お父さんに言っとこうよ」

    若「それが出来得るならば、一先ず安心ではあるが。されどどう伝える?」

    唯「電話、かけてみない?」

    若「電話。されど唯の持つその板は、使えぬのであろう?」

    唯「うん、もう契約してないからかけるのはできない。でもね、一回だけスマホ家に忘れちゃった時にやったコトあるんだけど、公衆電話使えばいいんだよ」

    若「他にも電話があると。ならば使いたいが、何処にある?」

    唯「これから探す」

    若「探す?」

    唯「公園ならどっかにありそうだけど、駅の方が間違いないから、行ってみようよ」

    若「そうか。わかった」

    変わって、ここは尊と瑠奈の通う高校の教室。

    みつき「バイバーイ!瑠奈、センセ」

    瑠奈「バイバイ、みつきー」

    尊「また来週」

    下校時刻になり、皆帰っていく。

    尊 心の声(今日は比較的、はけるのが早いな。試験も近付いてきたからか)

    あと、尊と瑠奈と、男子生徒数人を残すのみになっている。

    瑠「そろそろ帰ろっか」

    尊「うん」

    教室を出て廊下を歩いていると、さっきまで残っていた男子達が、相次いで二人を追い抜いていった。

    尊 心(あ。…教室が空になった)

    急に立ち止まる尊。下を向き、考え込んでいる。

    瑠「尊?」

    尊「…」

    瑠「どうしたの?」

    尊「あの…」

    瑠「なに?」

    尊「教室に、戻ろうかな…いや、まだ早過ぎる。しかもこんな時期に」

    瑠「え?戻るのに早い遅いが関係あるの?何か忘れ物?」

    尊「忘れ物というか…何と言うか…誰も居なさそうだし…」

    瑠「歯切れが悪いね。忘れ物なら、私ここで待ってようか?」

    その返事に、尊の表情が一瞬曇った。

    瑠「あ」

    それを見逃さなかった瑠奈。何かを察した。

    瑠「…ねぇ、たけるん」

    尊「はい」

    瑠「それ、私もついて行くと、イイ事が起こるかな」

    尊「イイ事…」

    瑠「…」

    尊「イイ事と思ってもらえると、嬉しい」

    瑠「そう。じゃあ、少しだけ遠回しに聞くよ」

    尊「珍しい」

    瑠「もー。言うと思った。昨日のあれ、気にしてた?」

    尊「…うん」

    瑠「尊のタイミングが、今?」

    尊「…はい。いや、でも早過ぎる。僕はどうかしてるんだ、ごめんなさい、帰ろう」

    瑠「…」

    瑠奈が、尊のブレザーの袖口をそっとつまみ、うつむく。

    瑠「早くない、よ」

    尊「そう、かな」

    瑠「連れてって、ください」

    尊「…いいの?」

    瑠「だって、来てくれるんでしょ」

    尊「はい」

    瑠奈が顔を上げると、そこには尊の真剣な眼差しが。

    尊「…」

    瑠「…」

    そのまま二人、廊下を戻っていった。

    唯「見ーっけ」

    若「これが、電話?」

    源三郎「随分と大きい」

    ト「色も鮮やかで」

    戻って、黒羽駅の四人。公衆電話を発見。

    唯「お父さんの番号は、私のスマホに入ってるからそれ見てかけよう。ちなみにー」

    電話の下にある棚から、分厚い電話帳を取り出した唯。ページをパラパラとめくる。

    唯「えーと、あった!ほら、速川クリニックの広告!」

    若「これは…大きく書かれておる」

    源「おぉ」

    ト「まぁ」

    唯「いいでしょ。前やっちまった時は、これ見てクリニックの方にかけたの。エリさんがびっくりしてたな」

    若「ほほぅ」

    唯「では、がんばってみよう!えーと、10円玉はと」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days122~10日15時、陳述します

    姉も線を引いていました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「お弁当一緒に食べてただけだし」

    若君「それを、仲が良いと申すのでは」

    唯「美沙とマユとれいなは、いつも三人一緒なんだよ。そこに私が入った感じ」

    トヨ「ご一緒されるようになられた、きっかけは何だったのですか?」

    唯「同じクラスになってすぐの、体育の授業で走ったの。軽くだったけど。そしたら、足速いねって声かけられて」

    ト「そこからですか。お話も沢山されたのでしょう?」

    唯「さっきの授業で先生が~とかはしゃべってたけど、恋バナなんかされても、前は興味もなかったしわかんなかったし、そんなに参加してない。お弁当の時間は超超楽しみで、食べるのに集中してたから」

    ト「それにしても」

    唯「私自転車通学だったから、朝も一人だし、三人は部活もしてなかったから、帰りの時間も違ったし。つーか、部活やってる方が珍しかったかも。吉田も帰宅部だったもん」

    若「吉田殿、か。帰宅、部?」

    唯「あ、ごめん。ただ帰ってくだけのヒトをそう言うの」

    若「…源三郎」

    源三郎「は、はい」

    若「眉間に皺が寄っておるぞ」

    ト「源ちゃん、どうしたの」

    源「唯様は、陸上部、で励んでおられたと伺いました」

    唯「うん」

    源「ならば帰宅部、とは、粛々と滞りなくそれぞれの屋敷に戻れるよう、身を正し足並みを揃え、全力を尽くす者達が集う場…であるのかと思うてしまいました」

    若「そうなのか?唯」

    唯「違う」

    源「済みませぬ、差し出口を致しました」

    若「構わぬ。先の世の言葉は奥が深い」

    唯「マジで言ってるトコが、源三郎っぽくていい。でもちょっとウケる~。全力で帰宅部がんばってます!って、みんなが整列しながら帰ってくの想像しちゃった。今月の活動目標、寄り道は1か所まで!なーんて」

    若「唯。そろそろ話を戻そうか」

    唯「ちぇー。はいはい」

    若「昼飯のみであれ、共に過ごしておったのであれば、細かく話せぬとはいえ、別れの挨拶はしておくべきではなかったか。最低限の嗜みとして」

    唯「なんかさ」

    若「何じゃ」

    唯「どーでもいいって思ったというか。わー!怒らないで!」

    若「続けよ」

    唯「明日から美沙達に会わなくなっても、淋しくないなって思ったんだよ。なんでって言われても困るけど、私がね、そんなに大事に思ってなかったんだな。つーか、私に友達って居たんかなって。クラスでもそんなんだし、部活の子達とも、タイムが上がったとかで盛り上がりはしたけど、部活終わりでどっか行くとかもあんまりなかった。友達とキャーキャーとかも覚えがない。なんとなーく毎日過ごしてた感じ。それなりに楽しかったけど。でもね!いきなり戦国時代に飛ばされて、たーくんに会えて、そっからはもー、毎日ドキドキでワクワクで、もちろん危険な時もあったけど、もー絶対たーくんを守る!って、それこそ目標ができたっていうか、人生これっきゃないって」

    若「俄に、饒舌になっておるの」

    唯「え?そーかな~」

    若「余程、友の話に触れて欲しくはなかったと見える」

    唯「気のせい気のせい」

    若「話の本質が見えにくくなりそうじゃ。もっとも、それが狙いであろうが」

    唯「ギク」

    若「ならばこうしよう。これから、わしの問いに答えよ」

    唯「…はぁい」

    若「順を追って尋ねる。昨年、此処を発った折は、そのように、美沙殿らに対しおざなりな態度であったと。ならば夏に、お父さんに二人の来訪を聞いて、どう思うた?」

    唯「わざわざ来てくれたんだ、悪かったな、でも美沙は来てないんだ」

    若「…続ける。先程の美沙殿に対しては、どう思うた?」

    唯「心配してないから来なかったんじゃないんだ」

    若「そうか。源三郎」

    源「はっ」

    若「美沙殿は大層憤慨されておったが、その様子や話しぶりを見て、どう思うた」

    源「…ご立腹も当然である、と感じました。至極真っ当なお話をされておられましたので」

    若「トヨはいかがじゃ?」

    ト「ご自分の仰りたい事は、きちんと話されていたと感じました。煮え切らない唯様の態度に怒ってみえたのが気の毒で、何度尻をひっぱたきしゃべらせようと思ったか」

    唯「私ばっか悪いみたいじゃない」

    若「さよう」

    唯「わー、味方ゼロ?!」

    若「わしは、美沙殿にハッとさせられたのじゃ。蓋し名言であった」

    唯「えぇ?」

    若「自分勝手に去っておきながら、家に様子を見に来なんだと拗ねるとは何事じゃ。この期に及び、構って欲しいなど言語道断」

    唯「うぅ、痛いトコ突かれた」

    若「構って欲しかったのじゃろ?だが美沙殿にとっては、何も事の次第がわからぬ。つい怒りを含めた口調になってしまったのは否めぬ。それを逆に責めるなど以ての外」

    唯「確かに、もっと心配して欲しかった、のかも。でもなにも説明なしで行っちゃったから、申し訳ないと言うか…あー、すっごくワガママでお子さまだったんだよ、ごめんなさい!」

    若「思うに」

    唯「なによ、まだあんの?」

    若「とどのつまり、そのような我が儘で無礼で甘えた態度が通ると思うてしまう程、美沙殿らに心を許していたのじゃ」

    唯「え」

    若「気づいてはおらぬ様だが」

    唯「…」

    若「先程駅では、別れの挨拶は出来たのじゃろ?」

    唯「うん」

    若「なら良い。誰しも、人として、完璧ではない」

    唯「たーくんはカンペキだと思うけど」

    若「いや。完璧であれば、こう拗れる前にどうすべきか、話が出来よう」

    唯「そうかな」

    若「未だお子様だ、と申しておったが、それはわしも、同じ」

    唯「ウソだ~」

    若「人の痛みがわかる者になれるよう、共に精進して参ろう」

    唯「あのぅ」

    若「ん?」

    唯「このお裁き、お咎めは、なし?」

    若「充分、心に刻んだじゃろ。もう良い」

    唯「ありがと…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days121~10日14時30分、ここはお白洲

    何でそうなった?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    再び走って、道端で待つ、若君達の元に戻ってきた唯。

    唯「ただいまっ」

    若君「無事、話せたようじゃの」

    唯「うん!」

    若「うむ。では参るか」

    来た道を戻り始める若君。

    唯「たーくん?どこ行くの」

    若「公園に戻る」

    唯「は?」

    若「正しくは、公園の脇の店じゃ。この近くでは、そこしか知らぬゆえ」

    唯「脇。って喫茶店?」

    若「さよう」

    唯「はあ?」

    若「唯の腹の内を探りとうての」

    唯「げげ!お裁きが始まるの?!つるし上げっすか?!」

    若「やましい思いがあるのであれば、そうもなろう」

    唯「ヤバっ、墓穴掘った」

    CafeMARGARETにやって来た四人。

    唯「たーくんがお茶しようなんて言うの、意外すぎる。あ、お金って」

    若「案ずるな。手持ちはある。わしのおごり、じゃ」

    唯「マジでぇ~!」

    店に入り、席についた。

    トヨ「いい香りがするわ」

    源三郎「コーヒー、ですか?」

    若「そうじゃ。この店では、お父さんが淹れるコーヒーとはまた違った、風味でいただけるであろう」

    源「それはまた」

    ト「楽しみです」

    店員「いらっしゃいませ」

    若「温かいコーヒーを四杯、頼みます」

    唯「ミルクと砂糖、いっぱい持ってきて!」

    店「かしこまりました」

    運ばれてきたコーヒーをいただく。

    若「いかがじゃ?」

    源「同じコーヒーでも、香りや味が随分と違いますね。これもまた良しです」

    ト「落ち着くわ~。って、いつもの如く、唯様だけまるで別の飲み物だわ」

    唯「ミルク砂糖たっぷりバージョン。飲んでみる?」

    ト「はあ。では、一口…ん、んー。まぁ、これもまた良し」

    唯「どーせお子ちゃまですよぅ」

    若君が切り出した。

    若「ならば、聞かせて貰おうか」

    唯「来たっ」

    若「何ゆえ、美沙殿を避けた?わしらの身の上を明かせぬのはわかる。されど挨拶もままならぬとは、到底見過ごせぬ」

    唯「うん…まあ、いろいろ」

    若「訳はあるのじゃな」

    唯「あのさ、話が下手っぴで、あっちこっち飛ぶかもしんないけど、いい?」

    若「良かろう」

    唯「去年学校やめた時さ。あ、えっと、どこから説明しなきゃいけないんだっけ」

    若「学校については、わしは夏に参った折に、お父さんに子細を伺った」

    ト「私共も存じ上げております」

    唯「そーなの?」

    源「はい。尊殿に。学校とは何か、唯様も通っておられたのかなど尋ねたところ、お辞めになった話まで一通り教えてくださいました」

    唯「いつの間にー」

    ト「こちらに参り間もなくでした。朝方、唯様が起きられる前に、時間をかけ」

    唯「ふーん。私の朝寝坊も役に立つねぇ」

    若「偶々じゃ」

    唯「なら、知ってる体で話す。でね、そん時、永禄でたーくんをこれからも守っていくんだ!って気持ちでいっぱいで、あいさつしとこうとか、ぜーんぜん考えてなくて」

    ト「それはまた…」

    唯「コーチだけ、退学の手続きした後、荷物を部室から出してたらばったり会っちゃって。しかたないから、ちょっとだけしゃべった」

    若「仕方ないなどと…コーチ殿は、学校にて唯の走りを指南されていたお方じゃ」

    ト「部活、ですね?」

    源「そこで、唯様の走る力が培われたと」

    唯「話、早っ。それも尊から?」

    源「はい」

    唯「便利だなアイツ」

    若「木村殿にも、会わず仕舞いであったと」

    唯「まあね。だってさ、ホントの事はなにも言えないじゃない。聞かれても答えらんないし、どうウソつくか考えてもさー、いつかボロがでるよ?」

    若「うむ…。美沙殿や仲睦まじくしておった者達にも、旅立つ前に話さなんだのは、それが所以か?」

    唯「そう、そう」

    唯の目がかすかに泳いだ。それを見逃さなかった若君。

    若「違うておると」

    唯「うへぇ、一緒だって~」

    若「ならぬ。つまびらかにせよ」

    唯「やだ、絶対怒られるもん。お裁きが下るってヤツ」

    若「まずは聞く。裁く裁かぬは後回しじゃ。何ゆえ美沙殿に、あのような無礼を働いたのか」

    唯「うぅ」

    ト「やはり後ろめたさがあったのですね」

    唯「ひぃ」

    若「申せ」

    唯「だって、だってそう思っちゃったんだもん…友達なんか居ない、って」

    ト「え?」

    源「先程は、てっきり言葉の綾だと」

    若「なんと…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days120~10日14時15分、後悔先に立たず

    今出来る事は今、ただやる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    口元をへの字に曲げ、押し黙っている唯。

    美沙「いやんなっちゃう。久しぶり~ってなって、熱いハグとかする流れでもいいのに」

    唯「…」

    美「あと二人は誰なの?」

    唯「…家族だよ」

    美「旦那さんの?」

    唯「うん」

    美「そう」

    大きく溜め息をつく美沙。

    美「あのさぁ。私もちょっと言い過ぎたけど、何が嫌なの?黙ってちゃわかんない」

    唯「…ごめん」

    美「それじゃ堂々巡りでしょ」

    唯「私が悪いんだよ」

    美「だから何って話よ?」

    唯「…」

    美「ふう。らち明かないし。もういい!電車の時間あるから、行く」

    キャリーバッグを引いて去っていく美沙。唯に駆け寄る若君と源トヨ。

    若君「唯」

    唯「ごめん。ザワザワして」

    若「唯らしからぬ。どうしたのじゃ。久方ぶりに会うた友ではないか」

    唯「…」

    若「旅立つまで仲睦まじゅうしておった三人の内の、残りの一人であろう?」

    唯「…よく覚えてるね」

    若「わしらが此処に居たが為に、本来蟠りなく終わった逢瀬を妨げたのじゃな」

    唯「違うよ、違う」

    若「されど、喧嘩別れの様になってしもうた」

    唯「いいんだよ、友達じゃないから」

    若「唯…」

    トヨ「唯様。そのような事を申してはなりません。大切な友でしょう?今からでも、追いかけて」

    唯「いいの」

    源三郎「唯様」

    ここで、源三郎が前に出た。唯の正面に立ち、頭を下げる。

    唯「え」

    源「畏れながら申し上げます。喧嘩別れは悲しゅうございますゆえ、電車に乗られてしまう前に和解を」

    唯「なんで?」

    源「どうかこの通り」

    唯「源三郎には関係ないじゃない」

    源「相手が居れば、仲直りのすべもあります。向き合える内にどうか」

    若「…そうか。喧嘩をし、その後二度と会えなくなった友もおったと」

    トヨ「戦、で?」

    源「あぁ。何故もっと歩み寄れなかったのかと、悔いばかりが残っておる」

    唯「…」

    若「唯」

    唯「はい」

    若「わかったであろう。走れ。そなたの脚なら間に合う」

    唯「なによ、普段は走るなって言うクセに」

    若「許す」

    唯「だって、うまく言えるか自信ない」

    若「言わずに後悔するより良かろう。行け」

    唯「…はい」

    唯は、駅に向かって走って行った。

    若「源三郎。よう申してくれたの」

    源「いえ」

    ト「忠清様。お尋ねしたいのですが」

    若「申せ」

    ト「唯様は身を隠すように歩いておいででした。あえてお声をかけられたのは、何ゆえでございますか?」

    源「それはわたくしも知りとう存じます。随分と嫌がられておられましたし」

    若「…幾度もこちらの世に参っておるが、唯のおなごの知り合いに初めて会うた」

    ト「まぁ!それは驚きです」

    若「これまで、会おうする素振りもなく、気に掛かっておったのじゃが、居たか、ようやく会えたかと。それで、安堵したのもあり」

    ト「そうでございましたか…」

    源「なるほど」

    若「されど、何ゆえあぁも拗れてしもうたのか…解せぬ」

    源「確かに」

    ト「唯様らしからぬ振る舞いでございました」

    若「うむ…。戻ったら、腹の内を問うか…」

    黒羽駅。美沙が改札を抜けようとした時、

    唯「美沙!」

    美「え」

    無事追いついた。

    唯「電車の時間、まだいい?」

    美「えぇ?…大丈夫だけど」

    唯「あのね、謝ってばっかだけどさ」

    美「うん…」

    唯「たーくんの話は、うまく説明できなくて」

    美「たーくん。旦那さん?」

    唯「あ、うん」

    美「言えないのは、旦那さん側の事情?」

    唯「…うん。だから」

    美「そっか。色々あるんだ?」

    唯「ごめん」

    美「はあ、そういう事。わかったようなわかんないような。ふふっ」

    唯「笑える?」

    美「訳わかんないところが唯だなって。うん、まあいいや。走ってきてくれてありがと。さすが、脚力は健在」

    唯「今の方が速いよ」

    美「えー、そうなの?」

    腕を広げる唯。

    美「何?」

    唯「ご希望の、ハグを」

    美「はは」

    ギュっと抱き締めあった二人。

    美「なんか唯、前ほど体カリカリじゃない」

    唯「太ったかな」

    美「そこまで言わないけど。じゃ、そろそろ行くよ」

    唯「うん」

    改札を抜け、振り向いた美沙。

    美「じゃあね、唯!」

    唯「バイバイ!美沙!」

    手をぶんぶん振った唯。美沙も、手を振りながら去っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days119~10日14時、一触即発

    まさか、根に持っていたとか?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    駅前の通りで、立ち話をしている。

    唯「これからどっか行くの?…美沙は」

    美沙「週末、三連休だから旅行行く」

    唯「三連休。あー、そうだったっけ」

    美「はい?今頃何言ってんの」

    唯「カレンダー、使わないんで」

    美「は?変わんないな、チョコチョコ訳分かんない。それより!急に学校やめて忽然と消えて、いったい、どこ行ってたの?!」

    唯「ごめん」

    美「ごめん、って」

    唯「だからごめんなさい」

    美「ごめん、だけじゃわからないけど?」

    押し問答のように話が進まない。源三郎とトヨが心配そうに見ているが、若君はどっしり構えて動かない。

    源三郎の囁き「助け舟は要りませぬか?」

    若君の囁き「要らぬ。唯がこちらの世の者に、何も語らず去ったのはまことの話ゆえ、責めるのは頷ける」

    唯「いいでしょ、今こうして元気でいるんだから」

    美「みんな、心配してたんだよ?」

    唯「みんな、ね」

    美「何その言い方」

    唯「美沙も入ってる?」

    美「えぇ?」

    唯「家に、見に来なかったでしょ」

    美「…」

    はたと、何かに気付いた若君。

    若君 心の声(あの話、此処に繋がるのか)

    ┅┅回想。昨年夏、令和に来て間もなく┅┅

    速川家リビング。仕事中の美香子以外、揃ってお茶を飲んでいる。

    覚「前回、クリスマス前に帰ってさ。退学も手続きして」

    唯「うん」

    覚「結局、先生や友達に何も説明しなかったみたいだな」

    唯「まあ、ね」

    覚「急に居なくなった形だっただろ。三学期が始まってすぐ、女の子が二人、様子を見に家に訪ねて来てくれたんだよ」

    唯「二人?」

    覚「同じクラスって言ってたぞ」

    唯「…三人じゃなくて?」

    覚「うん。せっかく心配して来てくれたけど、説明は曖昧にした。ごめんね、って謝っておくのが精一杯だったな」

    唯「どんな感じの子だった?」

    覚「背が高くてショートカットの子と、ロングヘアの子」

    唯「ロングヘア…前髪は?」

    覚「前髪?おでこは出てたな。名前聞いてあるから、えーとメモメモ」

    奥の棚をゴソゴソ探す覚。

    尊「気になるよね。誰が心配してくれてたか。でもさ、もしかして」

    唯「なによ」

    尊「思ってたメンバーというか、仲良くしてた友達とは、違うの?」

    唯「違わないけど…」

    覚「あったあった。うーんと、マユちゃんと、れいなちゃんだ」

    唯「…そうなんだ。それっきり?誰も?」

    覚「そうだな」

    唯「ふーん…」

    覚「わざわざ来てくれたんだぞ?もっと喜ばないと」

    唯「うん…」

    若君「唯」

    唯「んー?」

    若「礼を欠いて旅立ったのにも拘わらず、身を案じ訪ねてくれたなど、有り難いばかりではないか」

    唯「ん、そうだね」

    若「腑に落ちぬ顔をしておるの。どうした」

    唯「なんでもない」

    答えながら、席を立つ唯。

    若「唯、何処へ行く」

    唯「トイレ!」

    若「…」

    言葉通り、トイレに入っていった。

    尊「思うに」

    若「ん?」

    尊「さっきお姉ちゃん、三人じゃないのかって言ってましたよね」

    若「申したな」

    尊「仲良くしてた人が、一人入ってないのかもしれません」

    若「そうか…」

    尊「お姉ちゃんは、女同士のドロドロした人間関係とかなさそうですけど、ちょっと繊細な問題なんで、あまり細かく聞かない方がいいと思います」

    若「わかった」

    ┅┅回想終わり┅┅

    美「ねぇ、噂で、結婚したって聞いたんだけど」

    それを聞き、若君が歩み寄る。え?と驚く美沙。

    若「こんにちは。妻が、世話になっております」

    美「あ、どうも…うっそ、マジで?!」

    唯「マジだよ」

    美「いつの間に…あれ?何か旦那さんに初めて会った気がしない。もしや、前世で結ばれなかった、とか~?」

    唯「その辺で見ただけじゃないの?それよりさ、話、そらしたね」

    嫌そうな顔をした美沙。

    美「はいはい、確かに、マユ達と一緒には行かなかった!」

    唯「…」

    美「心配してなかったんじゃない、怒れただけ。何も言わずに学校やめたら、あっそ、相談もなし、そういう事?ってなる。冷たいって言いたいの?冷たいのは唯の方でしょ!」

    唯「言い方、きっつ」

    美「勝手に逃げといて、かまって欲しいなんて、おかしくない?」

    唯「う…。違う、逃げたんじゃない!」

    美「ウソばっかり。今だって、隠れてたじゃない!」

    源三郎「どうすべきか…」

    トヨ「唯様…」

    止めに入りそうなトヨと源三郎を、後ろ手で制止している若君。

    若「まぁ待て」

    ト「でも」

    若「唯が、怒りの種を蒔いたのじゃ。片は己でつけねばならぬ」

    源三郎&トヨ「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days118~10日金曜7時30分、再会

    冬の朝なのに、ホットスポット。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いつもより、かなり早く家を出た尊。

    尊 心の声(御触書の説明、小さいよ)

    小垣駅で一旦下車し、ロータリーにある立看板を見ていた。

    尊 心(もっと吉田城跡を前面に出して、大きく作って欲しいな。これは見逃すよ)

    ロータリーから離れ、駅の入口に立った。

    尊 心(時間的にはそろそろだけど…あ、来た)

    駅に向かって、瑠奈とみつきが歩いてくる。

    みつき「あー?ちょっと、瑠奈!」

    瑠奈「声が大きいよ。どうしたの」

    み「約束してたんなら、そう言ってよ~」

    瑠「約束?あっ、尊!どうして?」

    み「え?してないの?」

    三人が合流した。

    尊「おはよう、ミッキーさん、瑠奈」

    瑠「おはよう…」

    み「おはよセンセ。あのさ、思うんだけど、みつきよりミッキーさんの方が名前長くなってるじゃない。呼びにくくないの?」

    尊「キャラに合ってると思うから」

    み「いいけどさ。それより何、今朝はサプライズっすか?昨日、事件勃発したから?」

    尊「それは、丸く収まったからいいんだよ」

    み「まぁいいや。王子様のお出ましとなれば、私は去るべしなんで。じゃ!お先に~」

    瑠「ごめんねー」

    尊「また教室で」

    みつきは、改札を駆け抜けていった。

    瑠「どうしたの?わざわざ、早く家出てくれたの?」

    尊「うん、まあ。ミッキーさんと、しゃべっていたかった?」

    瑠「ううん、みつきとはいつでも、お弁当食べながらでも話せるもん」

    尊「何となくさ」

    瑠「うん?」

    尊「周りを刺激してみたくなったというか」

    瑠「…」

    尊 心(立看板を確認しておきたかった、のもあるけど。それは内緒で)

    瑠「ラブラブを見せつけちゃうの?」

    尊「ははは」

    瑠「悪いコだ」

    尊「悪いコは、困りますか?」

    瑠「困りませーん。ふふっ」

    変わって、昼前の速川家リビング。

    唯「買い物、要る?」

    覚「ちょっと食材が心細い。実は、忠清くんの料理用の分も鍋に使ってさ」

    唯「そりゃヤバい。明日の昼までに行かないと!」

    若君「ならば、今日の内に済まそうではないか。お父さん、四人で行って参ります」

    覚「頼もうかな。もう今日明日だけだし、ついでにプラプラしてきたらどうだ。黒羽城公園とかさ」

    唯「そうしよっか~」

    昼過ぎ。買い物メモを渡された唯。

    唯「散歩してからスーパーに行くよ。帰るのゆっくりめでもいい?」

    覚「いいぞ」

    まずは公園に到着。城跡の姿を目に焼きつけた後、若君の墓を訪れた。

    トヨ「忠清様の名のお墓に、手を合わせるのもいかがかとは思うのですが」

    源三郎「つい、拝んでしまいます」

    若「いや、それはわしも同じじゃ。合掌しとうなる」

    唯「なんかヘンだけどさ。私も拝んどこー」

    公園を抜け、駅前の通りを臨む。

    唯「夜行く店、ここをずっと行ったトコにあるんだよ」

    ト「そうなんですね」

    唯「では、スーパーに向かいますか~」

    駅を背に歩き出した。すると前方から、ガラガラとキャリーバッグを引きながら、女性が一人こちらに向かって来る。

    源「何やら音がいたします」

    若「あのおなごが引く荷車であろう。空港と申す、羽ばたかぬ大きな鳥が空を行き交う為の巣に、唯と参った折によう見掛けた」

    なぜか、唯の様子がおかしい。

    唯「うわ…会わずに済むと思ってたのに」

    他の三人の陰に隠れるように歩いていたが、その女性が、唯に気付いた。

    女性「…もしかして、唯?」

    唯「うっ」

    女「ちょっと!マジで唯なの?!」

    唯「…」

    明らかに避けている唯に、若君が声をかける。

    若「唯。呼ばれておるぞ」

    唯「わー!なんで!そこは拾わないで!スルーしてよ~!」

    女「やっぱ唯じゃん。びっくり!イメージ変わってて、一瞬わかんなかったけど」

    唯「…」

    トヨの囁き「出来れば会いたくなかった方みたいだけど」

    源三郎の囁き「いかがされたのであろう」

    若「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、92から117まで

    no.977の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    92no.978、1/5、若君が尊をお姫様抱っこ

    93no.980、1/5、トヨのドレスに覚感涙

    94no.982、1/5、撮影開始。唯と若君はコスプレ

    95no.984、1/5、衣装の深淵な意図

    96no.986、1/6、エリお手製の結婚式グッズ

    97no.991、1/6、尊が見たのは白昼夢か予知夢か

    98no.993、1/6、源トヨの結婚式を粛々と

    99no.994、1/6、トヨの決心と吉田城の謎解き

    100no.995、1/6、木村先生は苦悩していた

    101no.996、1/7、みつきとの舌戦はいつも完敗

    102no.997、1/7、小垣駅へGO

    103no.998、1/7、カフェで満腹。待った者には褒美を取らす

    104no.999、1/8、覚は修行僧になれるか

    105no.1000、1/8、美香子と源トヨで買い物へ。今が最良の寛ぎ時間

    106no.1002、1/8、サウナで賑やかに

    107no.1003、1/8、仙人だって腹は減る。最終日はどこに遊びに行こう

    108no.1004、1/9、レトルトを活用しよう。尊のSOS

    109no.1005、1/9、瑠奈がこじれている

    110no.1006、1/9、バタつきながらも招く準備

    111no.1007、1/9、家族形態も色々ある

    112no.1008、1/9、父が瑠奈母の説得を試みる

    113no.1009、1/9、瑠奈をすぐ帰さずに済んだ

    114no.1010、1/9、未遂に終わる

    115no.1011、1/9、唯がズバリと斬り込む

    116no.1012、1/9、羽木家のお陰でカップル誕生

    117no.1013、1/9、声も惚れられている尊

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    四人の現代Days117~9日21時、奏でていてね

    お疲れ様。
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    父に呼ばれた。

    覚「おーい、尊、瑠奈ちゃん。おいで」

    尊「行こう」

    瑠奈「うん」

    唯「じゃあね、るなちゃん」

    瑠「ありがとうございました」

    瑠奈は唯達四人に会釈をし、尊と玄関に向かっていった。

    トヨ「ふう、一件落着かしら。って、唯様何してるんですか」

    唯「どうなってるか気になるー」

    廊下をチラチラと覗いている唯。

    唯「はいはいなるほど!わかり申した!ねぇ、こっちこっち」

    ト「何ですか?」

    トヨの手を引っ張り、部屋の隅へ連れて行く唯。

    唯の囁き「なんで、るなちゃんがたーくんにキャーキャー言わなかったか、わかったよ」

    トヨの囁き「それはまたどうして?」

    唯 囁き「るなちゃんのお父さん、超イケオジなんだよ!あんなカッコいいパパが家に居たら、たーくんにはそんなに驚かないのかもって。お母さんも、超キレイなの!」

    ト 囁き「へぇ、気になる…」

    唯 囁き「トヨもチラっと見てみたら?」

    ト 囁き「少しだけ、拝顔させていただこうかしら」

    二人で再び廊下を覗く。

    唯「ねっ!」

    ト「確かに。お母様も、とてもお美しい方でいらっしゃるわ~」

    小声ではしゃぐ姿に、若君と源三郎がキョトンとしている。

    若君「何を騒いでおるのか」

    源三郎「さあ…」

    瑠奈と両親は、帰っていった。リビングに戻ってきた三人。

    美香子「はーい、お疲れお疲れ~」

    覚「まあ、良かった良かった」

    美「でもびっくりしたわ~。ご両親が、俳優さんと女優さんかしらと思う程、美形で」

    覚「彼女の両親だからな。頷ける」

    尊「お兄さんもそうだよ。前に写真見せてもらったけど」

    美「そうなの~。美男美女一家なのね」

    ト「お茶いかがですか」

    覚「ありがとう」

    美「今、お菓子いただいたのよ。早速開けましょうか」

    再び、お茶の時間となった。

    覚「そういえば尊、制服のままだったな」

    尊「うん。まぁ、お風呂までこのままでいいよ」

    立ち上がった尊。

    美「何?」

    尊「今日は、いろいろごめんなさい」

    一礼する。

    覚「こんな事もあるさ」

    尊「兄さん達も、言葉を選んで話をしてくれて」

    若「まずまずの出来と思うたが、いかがじゃ」

    尊「バッチリでしたよ。それに良かった、居酒屋さんに明日は行けそうで」

    覚「また、瑠奈ちゃんの機嫌を損ねなければな」

    尊「うへぇ。頑張ります」

    美「そうそう!提案、というかほぼ決めちゃったんだけどね」

    唯「なんすか」

    美「明日の予定だった、忠清くんの料理の機会が今浮いてるじゃない。それ、土曜の昼にしましょうよ。ていうか、して」

    覚「いいんじゃないか。どう?忠清くん」

    若「はい。それは是非ともお願いしとう存じます」

    美「土曜の昼が、芳江さんとエリさん、会うの最後じゃない」

    覚「そうだな」

    美「昼ごはん、ご一緒しませんかって誘ってたんだけど、それが忠清くんの料理だったらもっと喜んでくれるから」

    若「おぉ」

    唯「いいねー」

    覚「お二人は何て?」

    美「最初は、家族水入らずがいいんじゃないですかって二人とも遠慮されてたの。夜もあるからいいのよって言ってたんだけど、さっき、シェフが忠清くんになるかもって話したら、ちょっと目の色が変わって」

    覚「ははは。僕の料理はいつでも振る舞えるからな」

    美「おウチと相談はするけど、多分参加できる、って。二人とも」

    唯「やったね」

    さて。その頃の瑠奈と両親。帰りの車内。

    瑠奈の父「彼、尊くんさ」

    瑠「うん」

    瑠父「前に、声が聞きたいって電話してたじゃないか。確かに、魅力的ないい声してる」

    瑠奈の母「それは私も思ったわ。どちらかというと高い声だけど、響くような」

    瑠「いいでしょ。私は、聞いてて気持ちいい。ゾクゾクしちゃう」

    瑠父「そうだな、マリンバを奏でるような」

    瑠「マリンバ?」

    すぐに演奏する動画を探す瑠奈。

    瑠「うん、うん!わかる~」

    瑠母「あまり彼を困らせると、話をして貰えなくなって、声が聞けなくなるわよ」

    瑠「はぁい。気を付けます」

    戻って、速川家。

    尊「トヨさんも、すっかり姉になってましたね」

    ト「そうですか?上手く事が運んだなら、何よりです」

    尊 心の声(瑠奈は、トヨさんを両親どっちの娘だと思ったんだろうな。聞くのも変だし。あーでも、無事に済んで良かった)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    9日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days116~9日20時45分、恐縮です

    彼女をゲットできたのは、尊の実力。
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    瑠奈の発言を待っている。

    瑠奈「私」

    唯「うんうん」

    瑠「尊くんを、すごく尊敬してるんです」

    唯「尊敬。そんなにコイツ、立派だっけ?」

    美香子「唯~。いい話じゃないの。尊敬から憧れ、そして恋に発展したパターンかな」

    瑠「地元の歴史への造詣の深さに、とても感動して」

    覚「地元?」

    瑠「立て板に水だったんです」

    美「何か説明でもしたのかしら?」

    瑠「え、聞かれた事ないんですか?」

    尊「うわ」

    美「その反応は何」

    瑠「えー、絶対聞くべきだと思います!すごかったんですよ、羽木一族の存亡についての話」

    唯「え」

    一瞬、周りが静まりかえる。その様子には気付かない瑠奈。話を続ける。

    瑠「流暢で分かりやすい説明で、とっても素敵だったんです」

    美「いつ、どこで聞いたの?」

    瑠「学校のホームルームで、えーっと…先月の18日です。ほれぼれするほど、かっこ良かったんですよ!先生の話に、それは間違いです!って、すっくと立って発言して」

    美「あら」

    覚「それはまた」

    瑠「それで、続きが知りたい人だけ、放課後残って話を聞きました」

    美「18日。回転寿司に行った日ね」

    覚「その日確か、クラスメートとおしゃべりしてて、帰りが遅かったんじゃないか?」

    唯「あー、あの日」

    覚「大学の話だけしてたと思いきや。ははは、やるなぁ、尊」

    尊「…どうも」

    唯「尊さぁ」

    尊「なんだよ」

    唯「アンタ、なにげにいろいろやってたんだ。それで、るなちゃんをゲットしてさ。これは、羽木家に感謝しないとねー」

    尊「うん。それは、その通り」

    源三郎とトヨが、顔を見合わせて微笑んでいる。

    若君「尊」

    離れて静観していた若君が、ゆっくりと近づいてきた。唯の隣、尊の正面に当たる位置に座る。

    尊「兄さん…あの」

    若「その存亡話、興味がある」

    尊「ですよね」

    若「また、じっくりと聞かせてくれないか。感銘を受ける程であれば尚更、知りたい」

    尊「かしこまりましたっ」

    瑠「ふふふ。殿と家臣みたいだね」

    唯 心の声(家臣までいかない。小姓)

    瑠「尊、本が書けると思う。話すだけじゃもったいないよ。残しとくべき」

    美「うん。なんやかやで、話を一番まとめられるのは、尊よね。書いちゃう?」

    尊「はあ」

    若「手伝おうか?」

    唯「うわ、ぜーたく」

    尊「いやいや!畏れ多いです」

    覚「ははは。宴もたけなわだが、そろそろご両親、おみえにならないか?」

    美「あらホントだ」

    トヨが、瑠奈のブレザーを持ってスタンバイしている。

    トヨ「はい瑠奈さん、上着どうぞ」

    瑠「ありがとうございます。お姉さん」

    いつの間にか庭に出ていた、源三郎が戻ってきた。

    源三郎「お父さん、今、車が入られました」

    覚「寒いのに見に行ってくれてありがとう。いやぁ、この目の配り方には感心だなー」

    美「忘れ物はない?」

    瑠「はい」

    そして、玄関の呼鈴が鳴った。

    覚「まずは僕と母さんで行ってくるから」

    尊「うん」

    リビングの出口に立って、呼ばれるのを待つ尊と瑠奈。玄関から、両親同士が話す声が聞こえてくる。

    瑠奈の父「この度は、娘が大変ご迷惑をおかけ致しました」

    覚「いえいえ~。楽しい時間を過ごさせていただきましたよ」

    瑠奈の母「こちら、皆さんでお召し上がりください」

    美「そんな、気にしていただかなくても。わざわざすみません」

    緊張している瑠奈。尊の腕を掴んでいる。

    ト「大丈夫ですよ。頭ごなしに怒られるなんてありません。お父さんお母さんが間に入ってますからね」

    瑠「はい」

    尊「ありがとう、トヨ姉さん」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days115~9日20時、慌てます

    スペシャル鍋、イケメンの給仕付き。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リビングに下りてきた尊と瑠奈。

    美香子「初めまして、瑠奈ちゃん。尊の母です」

    瑠奈「こんばんは。初めまして、おばさま。お邪魔しています」

    美「あらん。おばさま。いいわ~。いつ、お母さんに変わるかしらね」

    瑠「えっ」

    尊「お母さん、何言ってるの!」

    美「こんなに可愛らしくて、話のきちんと出来るお嬢さんが、娘ならいいわねぇって」

    尊「時々暴走するけどね」

    美「少しはフォローしなさいよ。あら!真っ赤になっちゃって」

    瑠「…」

    尊「ごめんね。母が調子に乗って」

    瑠「ううん。…そうなったら、いいな」

    尊「えっ」

    唯が、ニヤニヤしながら近づいてきた。尊の顔をジロジロ見ている。

    尊「な、何だよ姉ちゃん」

    唯「あれ~?キラキラじゃなーい」

    尊「はあ?」

    唯「くちびるが」

    尊「…うるさいよ」

    唯「えー、してないのぅ?」

    尊「ほっといて」

    唯「つまんなーい!」

    尊「もういいから、あっち行って!」

    鍋は、二つ用意されていた。

    尊「味違い?」

    覚「8人なら鍋二つ要るから、どうせならって豆乳鍋とチゲにした。じゃあ、始めるか」

    晩ごはんが始まった。

    尊「もう一個の鍋、遠いよね。取ってきてあげるよ」

    瑠「ありがとう。あ」

    若君「尊、瑠奈さん。器を。取りましょう」

    尊「すいません、兄さん」

    瑠「ありがとうございます、お兄さん」

    手際良く盛り付け、二人に渡す若君。

    若「どうぞ。熱いので、気を付けて」

    瑠「はい」

    尊「ありがとう」

    その受け渡しの様子を、じっと見ていた唯。

    唯の囁き「やっぱありえない。たーくんこんなにカッコいいのに反応なし。なんで?」

    トヨの囁き「そんなにキャーキャー言って欲しいの?人それぞれでいいのに」

    唯 囁き「謎過ぎるんだってば」

    晩ごはん終了。

    瑠「私、運びます」

    美「あら、いいのに。って行っちゃったわ」

    瑠「こちらを…」

    トヨ「あら、ありがとう瑠奈さん」

    唯「置くトコないからもらっとくー」

    瑠「お兄さん達が、片付けてる…」

    若君と源三郎が、洗い物をしていた。

    唯「だって土鍋って重いし」

    若「重くなくてもやる」

    唯「まーねー。るなちゃん、ありがと」

    瑠「はい」

    ペコリとお辞儀をして、瑠奈は戻っていった。

    唯「はー」

    ト「今度は何」

    唯「一つしか歳違わないのに。あの胸、うらやましい」

    ト「はあ」

    食卓が綺麗に片付いた。

    覚「紅茶にするか」

    ティーカップに注いでいると、瑠奈のスマホが鳴った。

    瑠「もしもし。はい。わかった。伝えるね」

    尊「何時頃着くって?」

    瑠「今から出るから、あと15分くらいだそうです」

    美「そう。ならお茶する時間はあるわね」

    唯「あと15分?ヤバいヤバい」

    美「何よ唯」

    唯「私、るなちゃんに聞きたい事あってさ。どいてどいて」

    瑠「はい?」

    座っていた母を押しのけ、瑠奈の前の席に陣取る唯。

    尊「ヤな予感」

    唯「ねぇ、いったい、尊のドコがいいワケ?」

    瑠「どこ…」

    尊「わー!」

    唯「なによ、照れてんの?」

    尊「いや、理由で一部…」

    若君の方をチラっと見る尊。

    若「?」

    尊「その…」

    唯「なによウダウダして。ねっ、るなちゃん、教えて~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days114~9日19時30分、間一髪?

    はいどうぞ!って言われても、焦る。
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    尊の部屋に尊と瑠奈。

    尊「どうして謝るの?」

    瑠奈「なんとなく、他に彼女居ないってわかったし、家族とすごく仲良しなのもわかった」

    尊「それは、疑いが晴れて良かったよ」

    瑠「ごめんね。私…邪魔なんだね」

    尊「は?」

    尊 心の声(一難去ってまた一難?!今度は何!)

    瑠「尊には、やりたい事や究めたい事が多くって、きっと時間があればそれに没頭したいよね」

    尊「…」

    瑠「私が、付き合ってってワガママ言ったから、その時間を割いてくれてるんでしょ」

    尊「それは…」

    瑠「そうじゃない?」

    尊「…」

    尊 心(鋭いな。よく見てる。でも、気を遣わせてしまってはいけないんだ。タイムマシンの話は…ずっと出来ないかもしれないけれど、気持ちは隠さず正直に伝えたい)

    尊「一度も思わなかったかと言われると…」

    瑠「やっぱり。ごめんね、一緒に居ちゃ」

    尊「でも今は違う」

    瑠「違うの?」

    尊「没頭している時間は、それなりに楽しかった。でもそれは、いわばモノトーンの世界」

    瑠「…」

    尊「そんな僕に、瑠奈が嵐を起こしながら現れて。最初は、なるようになればいいって感じだったけど」

    瑠「強引だったよね」

    尊「自分の世界が、徐々に色付いていくのがわかったんだ。とても華やかな、経験のない」

    瑠「…」

    尊「こんな世界があったんだ、なんて心地よいんだって思った」

    瑠「嫌じゃない?」

    尊「うん」

    瑠「じゃあ、好き?あっ」

    尊「ん?」

    瑠「面倒な女だと思ってるよね」

    尊「あれ、気付いてるんだ」

    瑠「ひどーい。頭の片隅にはあるんだよ、一歩手前で止めとけって。でもつい、つい動いちゃうの」

    尊「で、ジタバタしてるんだ」

    瑠「ごめんなさい」

    尊「あはは」

    瑠「笑っちゃヤだ」

    尊「いいよ」

    瑠「いいよ、って?」

    尊「…ジタバタしてる月の女神、好きだよ」

    瑠「…」

    尊 心(うわ、渾身の告白、玉砕ですか?!)

    瑠「尊って、どうしてそんなに優しいの?」

    尊「え、どうして?それは…僕、尊敬する人が居てさ」

    尊 心(兄さんに追いつくのは一生無理だけど)

    尊「その人なら、こんな時どうするかな、って考えてから行動するようには心掛けてる」

    瑠「そっか。とっても素敵な人なんだね。だから、落ち着いて一歩引いて動けるんだ」

    尊 心(思考回路、最大限に使ってますから)

    尊「だから、ワガママなんかじゃないし、邪魔なんてこれっぽっちも思ってない。何も気にしなくていいよ」

    瑠「すっごく嬉しい。ありがとう」

    尊「わかってもらえて安心したよ」

    瑠「うん、うん」

    尊「僕の方こそ、ありがとう」

    瑠「え?」

    尊「今日は家まで来てくれて」

    瑠「…え!たけるん、素敵過ぎる!」

    笑顔の瑠奈が、尊に近づく。

    尊 心(わー、何?!あれ、止まった)

    かなりの至近距離に立っているが、それ以上近寄っては来ない。

    瑠「たけるん。私がおととい言った言葉、覚えてる?」

    尊「え…何だっけ」

    瑠「私、来てもらう方がいいの」

    尊「あ、あー」

    尊 心(それはまさしくアレ、アレですね?!あー、瞳に吸い込まれそうだ。このまま…はっ!待て、落ち着いて考えろ!だってまだ何日も経ってないよ?ここまで早過ぎない?!いいの?って、わー、めっちゃ待ってるよー!行くしかないって?!え、えーっと)

    おずおずと、両手で瑠奈の肩を包んだ尊。

    尊 心(わーっ!!女の子って、なんでこんなに柔らかいんだ!どうしよう、動けないよ!)

    その時、部屋の外で声がした。

    美香子「尊~、瑠奈ちゃーん、ご飯用意出来たから、下りてらっしゃいね」

    母の気配はすぐに消えた。

    尊「…はっ!ご飯、できたって」

    瑠「今の、お母さん?お仕事終わったんだね」

    尊「じゃ、じゃあ行きますか」

    尊 心(お約束のオチってホントにあるんだ。何というか…)

    ゆっくりと、瑠奈の肩から手を離した尊。瑠奈が、上目遣いで微笑む。

    瑠「奪っちゃえば、良かったかな」

    尊「ええっ!」

    瑠「ウソウソ。尊のタイミングでいいよ」

    尊「すいません…」

    瑠「待ってるからねー、たーけるん」

    尊「は、はい…」

    二人、階段を下りていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days113~9日19時、一息ついて

    お父さん、大活躍。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚と、瑠奈の母との電話が続いている。

    覚「こんな不安定な状態のお嬢さんを、このまま帰らせるのは僕も気が引けますし」

    尊 心の声(お父さん、頑張って)

    覚「これは提案なんですが、よろしければ、お嬢さんに晩ごはん召し上がってって貰えればと思いますが。母親の仕事終わりを待ちますんで、もう少し後の時間のスタートなんですがね…いやいや、お気になさらず。賑やかな方が楽しいですし、我が家は7人家族なんで、人数増えても全く問題ありません」

    唯「…どしたの、二人とも」

    源三郎とトヨが、涙ぐんでいる。

    トヨ「七人家族、なんて。嬉しいわ」

    源三郎「しかも、何の躊躇もなくさらりと話された。欣快の至りでございます」

    唯「きんかいの…それ、武士言葉?」

    若君「それはわからないが、言いかえるならば」

    唯「うん」

    若「超嬉しい、だ」

    唯「へー。ならそう言ってよぅ」

    源「ちょ、超嬉しい、です」

    若「フフフ」

    しばらく電話が続いたが、

    尊「え、終わり?」

    覚「はい、ありがとうね」

    スマホを瑠奈に返した覚。

    覚「私の一存では決められないからと、ご主人に相談してから、またかけてきてくださるそうだ」

    瑠奈「はい。わかりました。ありがとうございました」

    覚「どういたしまして」

    尊「じゃあ待つしかないね」

    ト「待つ間、お茶もう一杯入れようかしら」

    唯「今度は全員分にして」

    ト「そうね」

    覚「おーい、立ったままも何だから、こっちで座って飲みな」

    全員、静かにお茶をすすっていると、瑠奈のスマホが着信した。

    瑠「出ます」

    覚「うん」

    瑠「もしもし。…うん、うん。いいの?」

    尊「いい感触みたい」

    瑠「うん。…あの、母が代わってくださいって」

    覚「はい、代わりました。…あー、そうですか?こちらから行きますのに…ご主人もお疲れのところ帰ってすぐでは大変ですんで、晩ごはんはゆっくり済ませてからにしてくださいね。えぇ、いいんですよ。ウチ、分かりますか?はい、速川クリニックでナビを入力していただければ。門を開けておきますので、そこからお入りください。はい、でしたら、またご連絡お待ちしています。いえいえ。お嬢さんに代わります」

    瑠「うん…うん。わかった。はい」

    電話終了。

    瑠「父の帰宅後、母と一緒に車で迎えに来るそうです。9時頃になりそうだけど、家を出る時連絡するって言ってました」

    覚「良かった良かった。ちゃんと晩ごはん、食べてきてくださるかなー。慌てて来て貰ってもね」

    瑠「食べてくると思います。先生のお仕事に合わせてるのなら、あまり早く行ってお食事中でもいけないからって言ってました」

    覚「そうかそうか。その分尊と長く一緒に居られる訳だ。良かったな、尊」

    尊「あ、うん」

    瑠「おじさま」

    覚「おじさま?!」

    席を立ち上がる瑠奈。

    瑠「ありがとうございました」

    深々とお辞儀をした。

    覚「いやいや、えへへ。おじさまなんて、言われたことないから照れるよ」

    ト「では、支度の続きを始めましょうか」

    唯「ラジャ!」

    ぞろぞろとキッチンへ向かう唯達。

    瑠「あの、私もお手伝いします」

    覚「いいんだよ。四人も居て手は足りてるからさ。座ってて」

    瑠「はい…」

    覚「座ってて、も何だな。尊」

    尊「なに」

    覚「部屋を案内したら。支度できたら、呼んでやるから」

    尊「え」

    覚「何だ?見られて困る物でもあるのか?」

    尊「ないよ。ないない」

    覚「じゃあ、行ってきな。瑠奈ちゃん、また後でね」

    瑠「はい!」

    覚「元気になって良かったよ」

    二人、階段を上がっていった。

    覚「ふう。やれやれ」

    唯「お父さん、いいの?二人きりなんかにしちゃってさ」

    覚「忠清くん達の緊張がピークに達してたから、ちょっと舞台からはけて貰ったよ」

    唯「あー。確かに。ボロが出ないように、みんながんばってたもんね。ひとまずお疲れ~かな」

    変わって、尊と瑠奈。部屋のドアを開ける。

    尊「どうぞ」

    瑠「うん。失礼します…」

    尊 心(うわ。この見慣れた風景に瑠奈が居るなんて)

    瑠「わぁ、本がたくさんある」

    尊「うん」

    瑠「歴史の本が見当たらない…え?もしかしてあの話、全部頭に入ってるの?!」

    尊「そうなるね」

    瑠「尊、すごい!ますます尊敬しちゃう!」

    尊「褒めてくれてありがとう。それほどでもないよ」

    瑠「天文学の本とか、力学の本が多いね。学者さんみたい」

    尊「たまたまね」

    尊 心(何を造ってるかまでは、想像できないはず)

    瑠「あ!私のあげた御守!机の真ん中に置いてくれてるの?嬉しい!」

    尊「当然でしょ」

    瑠「ありがとう」

    ぐるっと部屋の隅々まで見渡した瑠奈。急に下を向き、黙りこくった。

    瑠「…」

    尊「どうしたの?」

    瑠「ごめんなさい」

    尊「電話、何とかなったじゃない。気にしないで」

    瑠「違うの」

    尊「え?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days112~9日18時、出番が来た

    頼れるぅ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    何度も、瑠奈のスマホがブルブルと振動しては止まるを繰り返している。

    尊「電話、出ない?」

    瑠奈「…」

    覚「うーん。ちょっと話を整理しようか。相手はお母さん?自宅にいらっしゃるのかな」

    瑠「はい」

    覚「親子の仲って…」

    尊「それは、かなりいい方だと思うよ」

    覚「だったら、怒ってみえるのは、連絡せずに遅くなってるからか。どう?」

    瑠「それも少しはありますけど…」

    覚「じゃあ、何に一番怒ってみえる?」

    瑠「大事な試験の前なのに、家に遊びに行くなんて何考えてるのって…」

    尊「…」

    鍋の準備をしながら、離れて様子を窺う唯達四人。

    唯の囁き「だよねー。センター試験来週だから、フツーはこんな時に来ないかも」

    若君の囁き「唯」

    唯 囁き「なに」

    若 囁き「尊の学びを最も妨げているのは、僕らに他ならないと思うぞ」

    唯 囁き「言われてみれば」

    若 囁き「瑠奈さんを、悪くは言えない」

    唯 囁き「たーくん」

    若 囁き「ん?」

    唯 囁き「現代語、がんばってるぅ」

    若 囁き「当然だ」

    戻って、瑠奈と覚。

    覚「で、何て仰ってるの?」

    瑠「さっさと電車乗って帰って来なさい、って…」

    瑠奈の目が、みるみる潤んできた。

    尊「わー、ハンカチ!えっと二枚目どこに入れたっけ?あった!はい瑠奈、使って」

    瑠「ごめんなさい」

    覚「そうか…。お母さんのお気持ちはわかる。でも、まだ尊の傍に居たいんだよね」

    コクリと頷く瑠奈。

    唯 囁き「尊、めっちゃ愛されてない?」

    トヨの囁き「一途ね。すがるような目で尊さんを見てるところなんか」

    唯 囁き「いったい尊のどこ…」

    ト 囁き「静粛に」

    瑠奈が、ハンカチを尊に返す。

    瑠「ありがとう」

    尊「ううん」

    覚「お母さんも、厳しいね。帰る時は、ちゃんと車で送ってあげるから、心配しなくていいよ」

    瑠「あの、母は車の免許持ってないんです」

    覚「そうなんだ。だから自力で帰ってこい、なんだな。お父さんは、いつも何時頃帰宅されるの?」

    瑠「8時とかです」

    覚「晩ごはんは、お父さんが帰られてからなのかな?」

    瑠「はい。あまり遅くならない限り」

    覚「そうか。んー」

    尊&瑠奈「…」

    覚「よし」

    尊「よし?」

    また、瑠奈のスマホが鳴り出した。

    覚「瑠奈ちゃん、電話に出て。でもって、僕に代わってくれる?」

    瑠「…はい。わかりました」

    唯 囁き「説得するんかな」

    若 囁き「母君は随分と気が立っておられるようだが、お父さんなら上手く事を運ばれるであろう」

    瑠「…もしもし。もー、説教はいいから!尊のお父さんが、電話代わって欲しいって。ホントだって!代わるよ」

    スマホをキュキュッと拭いて、覚に差し出した。

    瑠「お願いします」

    覚「はい」

    皆で固唾をのんで見守る。

    覚「もしもし。初めまして、尊の父です…いえいえ!いいんですよお母さん、そんなに謝っていただかなくても」

    不安そうにしている瑠奈に、話しかける尊。

    尊「きっとお父さんが、上手く話をしてくれるよ」

    瑠「うん」

    瑠奈が、尊の腕をギュっと掴む。

    尊 心の声(わぁ、家族の前なんでちょっと…めっちゃギャラリーに見られてるし!)

    そのまま、尊の顔を見上げた瑠奈。

    瑠「もう帰んなきゃ、ダメかなぁ」

    尊「多分大丈夫だよ。あ、そうか」

    瑠「?」

    尊「確認したいんだもんね。僕の素行調査」

    瑠「…意地悪」

    尊「えぇ?また悪者扱い?」

    瑠「それもあるけど、まだ尊と離れたくない。もっと一緒に居たいの。いつも、駅で別れるのがすごく淋しかった。尊は、違うの?」

    尊「違わないよ」

    瑠「ホントに?嬉しい」

    笑顔を見せ、尊に体を寄せた瑠奈。

    尊 心(可愛いいな。いや、浮かれている場合じゃない。周りの空気が明らかにおかしいんだよ…やっぱり!)

    唯とトヨが、口元を押さえ、体をよじりながら悶絶している。若君と源三郎も、何ともいえない顔をしながら視線を合わせようとしない。

    尊 心(は、はは…ちょっといたたまれないかも。恋愛モード全開で、何かすみません。もうあちこち気になって、電話の顛末が耳に入ってこないよ~)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days111~9日17時30分、その線でいこう

    だったら尚更、幸せ家族に見える。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    緊張の面持ちで、尊と瑠奈が入ってくるのを待つ四人。

    唯「がんばろっ」

    無言で頷く、若君と源三郎とトヨ。

    覚「はい、どうぞ入って」

    瑠奈「こんばんは。お邪魔します…」

    尊「ただいま。わぁ、整列してるし」

    四人の前に進む尊と瑠奈。瑠奈が、少し戸惑っている。

    尊「こんな風に並んでたら、びっくりしちゃうよね。僕の家族だよ」

    瑠「あの、初めまして、瑠奈です」

    尊「紹介するね。右から、下の姉の唯、下の姉の旦那さんの忠清さん、上の姉の旦那さんの源三郎さん、上の姉のトヨだよ」

    唯「こんばんは!」

    若君「こんばんは」

    源三郎「こんばんは」

    トヨ「こんばんは。お会いできて嬉しいわ。寒かったでしょう?お茶入れますから、座ってくださいね」

    尊「ありがとう。トヨ姉さん」

    覚「ささ、どうぞ。あ、その前に上着預かろうか」

    尊「うん」

    二人がブレザーを脱ぐ。覚が受け取り、ハンガーに掛けた。食卓に並んで座った二人。唯達四人は、キッチンに移動した。

    唯の囁き「ねぇねぇ」

    トヨの囁き「何?」

    唯 囁き「るなちゃんって、目悪いのかな」

    ト 囁き「えぇ?どうしてそう思うの」

    唯 囁き「だって、超美形のたーくん見ても、反応が薄いから」

    ト 囁き「もっと騒ぐ筈、って?」

    唯 囁き「だから見えてないんかと」

    ト 囁き「そんな、見えにくそうな感じは窺えなかったけれど」

    唯 囁き「じゃあ源三郎タイプが好みかと思いきや、そっちも反応なしだし。尊にコクるくらいだから、好みが変わってるのかもな」

    ト 囁き「口が過ぎるわね」

    唯 囁き「だってぇ。たーくんにキャーキャー言わない女子が居るなんて、ある意味ありえなくない?って、ト…お姉ちゃん、お菓子、これ出すの?」

    ト 囁き「お茶に合わせて、甘味を」

    唯 囁き「女子高生、きんつば食べるかな」

    ト 囁き「え?駄目?」

    その頃の尊と瑠奈。

    瑠「上のお姉さんとは、だいぶ歳が離れてるみたいだね」

    尊「あ、うん…」

    瑠「すごく大人の女性って感じで、素敵」

    尊「ありがとう。姉も喜ぶよ」

    瑠「そんなに顔は似てないね」

    尊「え。そ、そう?」

    瑠「いろんな家族の形や事情があるもんね」

    尊「事情?」

    瑠「ステップファミリーとかさ。尊の家がそうだとは言ってないよ。これ以上詳しくは聞かないから、心配しないでね」

    尊「えっと…ありがとう」

    尊 心の声(そうか!トヨさんと歳が離れてるのは、両親が再婚したからだと思ったんだ!だったら、僕やお姉ちゃんと顔が似てなくてもそんなにおかしくはないし。いい方向に勘違いしてくれて、辻褄が合って結果オーライというか。ちょっと気が楽になったかな)

    唯「お待たせぇ」

    ト「お茶どうぞ。お菓子も召し上がってね」

    瑠「わぁ、きんつば!和菓子大好きなんです、嬉しい」

    ト「喜んで貰えて良かったわ」

    唯「正解だったか。あ、ねぇ、るなちゃん」

    瑠「はい」

    唯「視力って、いい?」

    瑠「視力ですか。裸眼で左右とも1.5あります」

    唯「えー、そうなんだー」

    尊「なんだよ姉ちゃん、その質問」

    唯「初対面のヒトには聞くコトにしてるから」

    尊「はあ?また訳のわからない事を…ごめんね、変な姉で」

    瑠「ふふっ。ううん」

    笑顔を見せ、お茶とお菓子で落ち着いてきた風情の瑠奈。話しかけるタイミングを図る覚。

    覚「あのさ、瑠奈ちゃん」

    瑠「はい」

    覚「おウチには、ここに来てるって連絡したかい?」

    瑠「して…ません」

    覚「そうか。帰りが遅いと心配されるよ。電話しておいたら?」

    瑠「…はい」

    尊「電話、しづらいの?」

    瑠「めっちゃ怒られるのが目に見えてるから」

    尊「でも、しなきゃ」

    瑠「うん…」

    瑠奈が電話をかける。

    瑠「もしもし。…だから連絡遅くなってごめんって…今、尊の家に来てる…は?時期?それはそうだけど…はあ?もー、ギャンギャンうるさい!もういい!」

    尊「え」

    切ってしまった。

    尊「お母さんだった?ケンカしちゃったの?」

    瑠「…」

    覚「おやおや。困ったね」

    唯「なんか大変そう」

    ト「大丈夫かしら」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days110~9日17時10分、臨機応変です

    技量が試される。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    概略を唯達に説明した覚。

    覚「といった訳だ」

    唯「なにそれ!」

    若君「唯」

    唯「超迷惑!」

    若「口を慎め」

    唯「…」

    覚「あと15分位で瑠奈ちゃんが来る。落ち着かせてから家まで車で送って、それから店へ出発、となると…」

    若「お父さん。今日は止めと致すが良かろうと存じます」

    源三郎「畏れながら、わたくしもそうなさるがよろしいかと」

    トヨ「私もそう思います」

    唯「えー」

    覚「それがいいな。時計ばかり見て気もそぞろな状態で迎えるのは良くない。店はまだ金曜も、何なら土曜もチャンスはあるし」

    唯「明日はたーくんの料理じゃないの?土曜はいつものはさみ揚げでしょ。いつ行くの」

    若「唯。わしらにも関わる一大事じゃ」

    唯「だって、みんな楽しみにしてたのに」

    覚「その辺はまた考えよう。ひとまず、お店にキャンセルの連絡と、あと母さんに言わないとな。今の時間話せるかなー」

    ト「お父さん、私共に何か出来る事はございませんか?」

    覚「ん。じゃあさ、お茶と菓子の準備してくれる?」

    ト「はいっ」

    源「直ちに」

    覚「よろしく」

    覚は、クリニックに走っていった。

    若「唯」

    唯「ん?んー」

    若「予定、とは、得てして変わったり無くなったりするものじゃ」

    唯「はあ。まぁなんていうかさ、るなちゃんの気持ちもちょっとはわかるなって思うのよ」

    若「それはあれか」

    唯「なに?」

    若「乙女心と申す」

    唯「そうだね。はいっ!もうね、気持ちは切りかえたよ。今、何をしとくべきか考えてる」

    若「それでこその唯じゃの」

    唯「ん、よーし」

    若「いかが致す?」

    唯「呼び方決めよう!」

    若「呼び方、とは?」

    唯「名前の。だって、私のお姉ちゃんがトヨで、旦那さん二人でしょ。言い方で怪しまれたら、ヤバくない?」

    それを聞き、トヨと源三郎がキッチンから戻ってきた。

    ト「どうさせていただくのが良いでしょう」

    唯「今、紙に書くよ。お姉ちゃんさ」

    ト「え?は、はい」

    唯「妹には、敬語は使わないでね」

    ト「わかったわ」

    源「飲み込みが早い…」

    ト「だって、これで瑠奈様…瑠奈さんの前で完璧にこなせたら、尊、さん、にご恩が返せるでしょう?」

    源「それもそうだ」

    唯「たーくんや源三郎…さんは、あんまりしゃべんなくていいとは思うけど」

    若「いや、念には念を入れよう」

    唯「えーっと、呼び方変えるのが、私がお姉ちゃん源三郎さん、たーくんがトヨさん源三郎さん、源三郎が唯さん尊さん忠清さん、トヨが尊さん忠清さん、唯って感じかな。はい、書いたから」

    若「これは、各々読み上げて覚えねば」

    唯の書いたメモを覗き込み、ブツブツと復唱し始めた三人。そこへ、覚が戻ってきた。

    覚「何だ、どうした?」

    唯「準備してる。名前の呼び方の」

    覚「あー。主従関係が露呈しないようにか」

    唯「お母さん、なんて言ってた?」

    覚「そんな事もあるわよ、ってな。明日にずらせそうなら、店にそうお願いしてと」

    唯「なんかあっさりしてるな」

    覚「ちょっと考えてた風ではあったぞ」

    唯「へぇ。なんかいいコト思いついたのかな。明日、席空いてるといいね」

    覚「急いで電話してくる…ん?尊からLINEだ」

    唯「なにって?」

    覚「30分頃到着予定です、か。これは助かる。今何時だ?20分か。よし、まずは電話」

    リビングの隅で、何度もお辞儀をしながら電話する覚。

    唯「あ、たーくん。もうカンペキ?」

    若「任せてくれ。話し言葉も、使いこなしてみせる」

    唯「おっ。なにげに現代風になってる」

    覚の電話が終わった。

    覚「ふう。ギリギリに電話したのに、明日の晩に快く変更してくださったよ」

    唯「良かったぁ」

    覚「唯ちゃんと尊くんに会えるのを楽しみにしてます、っておかみさんが」

    唯「ホント?わぁ、ますます楽しみ!ねぇ、それはいいけど」

    覚「何だ」

    唯「結局、晩ごはんはどうすんの?」

    覚「思ったんだけどさ、瑠奈ちゃんに晩ごはん食べてって貰ってもいいんじゃないか。勿論、親御さんと話をしてからだが」

    唯「なるほどね。って、それだと急に人数増えるじゃない。困んない?」

    覚「だからさ、もしそうなってもいいように、鍋にしようかと思う」

    唯「ほー」

    若「名案ですね」

    ト「でしたら、ある程度、入れる食材を見繕っておきましょうか」

    覚「そうだね」

    唯「お姉ちゃん」

    ト「なに?唯」

    唯「私も手伝うよ」

    ト「じゃあ、いらっしゃい」

    覚「いい、いい感じだ~。あ、尊に居酒屋明日になったってLINEしとかないと」

    数分後。玄関で物音がした。

    尊「ただいまー」

    瑠奈「こんばんは…」

    唯「来たっ!」

    覚「じゃあ、僕が迎えに行ってくる」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days109~9日17時、事件発生!

    あーあ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚と尊、電話中。

    覚「で、どうしたんだ」

    尊の電話『さっきなんだけど…』

    ┅┅回想。高校の最寄り駅のホーム┅┅

    尊と瑠奈が、帰りの電車を待っている。

    尊「で、昨日で三回行ったけど、二度目の岩盤浴だったんだ」

    瑠奈「いいなぁ。私も尊と岩盤浴行きたいな」

    尊「そうだね。試験終わったら、行こうよ」

    瑠「すぐじゃないんだね」

    尊「それはそうでしょ」

    瑠「わかってる、それはわかってるんだけど…」

    尊「じゃあ何?」

    瑠「…ホントに家族と行ったの?」

    尊「へ?そうだよ。姉夫婦が帰省してるって言ったでしょ」

    瑠「帰省、長くない?」

    尊「え。そうかな?」

    瑠「怪しい」

    尊「怪しい…って、何が?」

    尊 心の声(マズい、あまりお姉ちゃん達の話は深掘りしないでおきたいけど)

    瑠「百歩譲って、クリスマスにばったり会った時はそうだったかもしれない」

    尊「譲らなくてもそうだって」

    瑠「女でしょ」

    尊「は?」

    瑠「他に彼女が居て、隠してるんだね」

    尊「はあ?」

    瑠「私だけじゃないんだ。悲しい…」

    尊「えぇ?!なんでそんな展開になるの?」

    瑠「だって、めちゃめちゃ楽しそうに話すじゃない。家族と出掛けてるヒトの話し方には思えない」

    尊「それは…」

    瑠「その女じゃなくて、私と居る時も、いっぱい笑って欲しいのに」

    尊 心(そっか、ごめん。気がついてなかったけど、これは僕が悪いよな)

    尊「他に女性なんて居ないけど、あまり笑ってないように見えてたならごめんなさい。瑠奈と一緒に居て、すごく楽しいと思ってるよ」

    瑠「…そうは思えない」

    尊「本当に楽しいよ。嘘なんかついてないから、安心してください」

    尊 心(隠し通さなきゃいけない事情は、山ほどあるけど)

    瑠「…」

    尊「え!なんで」

    瑠「…」

    尊「そんな、泣かないで」

    尊 心(わー!メンドくせぇバージョン、発動してる!困った、周りの視線が痛いよ)

    尊「電車、来たよ」

    瑠「…」

    車内で、扉の脇に立つ二人。瑠奈は、尊の腕にしがみついたまま、ずっと黙って下を向いている。

    尊 心(あーどうしよう、焦る。これは、何か言ってあげないとダメなんだろうな。こっ恥ずかしいけど、頑張るしかないか…)

    尊「あの、さ」

    瑠奈が顔を上げた。瞳は涙で潤み、濡れた睫毛の一本一本が光を弾いている。その艶めいた姿に、目を奪われる尊。

    尊 心(……はっ!思わず見とれてしまった)

    尊「えぇっと、聞いてくれる?」

    瑠「うん」

    尊「他に彼女なんて有り得ないから。僕はそんな器用じゃない。瑠奈しか居ないから」

    尊 心(ひゃー、我ながらなんてセリフ。でも、僕を思ってくれて泣いてるんだし)

    瑠「…ホントに?」

    尊「ホントだよ。ね、だからもう泣かないで」

    瑠「でも」

    尊「信じてください。ほら、もう着くよ。降りなきゃ」

    小垣駅に着いた。電車のドアが開くが、瑠奈は離れようとしない。小さく溜め息をつく尊。

    尊「じゃあ、僕もここで一緒に降りるね」

    瑠「いい」

    尊の腕を引っ張り、動こうとしない瑠奈。

    瑠「降りない」

    尊「え?」

    瑠「降りないったら降りない」

    尊「なんで…あっ」

    ドアは閉まり、電車は動き出した。

    瑠「確かめるまで帰らない」

    尊「確かめるって、何を」

    瑠「だって、私が電車降りた後、尊がどうしてるかわからないもん」

    尊「ついて来るって、事?」

    瑠「ちゃんと家族と一緒だった、他に彼女なんて居ないって証拠が見たい」

    尊「…」

    尊 心(マジかよー!!)

    ┅┅回想終わり┅┅

    尊 電話『と、いう経緯です』

    覚「今は、やむなく黒羽駅のホームに居るんだな。彼女はどこに?」

    尊 電話『家に電話するからってなだめて、少し離れたベンチに座らせてる』

    覚「そうか…」

    尊 電話『お父さん、どうするといいと思う?』

    覚「うーん」

    尊 電話『…』

    覚「よしわかった。ひとまず、瑠奈ちゃん連れて、帰って来い」

    尊 電話『いいの?』

    覚「このまま駅に居ても、彼女は納得しないだろ。この後の話はしたのか?」

    尊 電話『してない』

    覚「そうか。いいか尊、嫌そうな顔は絶対にするなよ。予定があったなんて悟られないようにな」

    尊 電話『はい。迷惑かけてごめんなさい。でも、お姉ちゃんはともかく兄さん達はどうするの?』

    覚「考える。あまり待たせるとまた疑われるぞ。こっちは何とかするから、ゆっくりめに歩いて来てくれ」

    尊 電話『わかった。連れて帰るよ』

    電話を切った覚。隣で聞いていた、唯の目が点になっている。

    唯「え?尊が彼女連れて帰ってくるの?なんで?」

    覚「忠清くん、源三郎くん、トヨちゃんも集まってくれ。今から、緊急家族会議だ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days108~9日木曜11時、環境問題

    資源回収もないし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    玄関の呼鈴が鳴る。

    若君「行って参ります」

    覚「よろしくな」

    朝から頻繁に荷物が届き、リビングと玄関の往復ばかりしている若君。

    若「これまた、ずしりと重い」

    また何か届いた。

    唯「お父さーん、嫌がらせみたいにピンポンピンポン鳴ってるけど?」

    覚「全部今日の午前中指定にしたからな。宅配業者が同じなら一度に届くと思うが、業者が違うとどうしてもな」

    唯「まだ来る?」

    覚「いや、これで終わりだ。別に通販の受け取りは忠清くん専属の仕事ではないんだが、ありがとな。お疲れさん」

    若「いえ」

    唯「中身はみんなおいしそうだけどさ」

    若「全て、湯で温めれば食せると」

    レトルト食品のオンパレードになっていた。

    源三郎「まるで山のように」

    唯「ねっ、分けよっ。どれ持ってく?」

    トヨ「私共の為に、ここまで揃えていただいたのですか」

    覚「手軽に買えるもんだから、ちょっと買い過ぎたかなー。無理に全部持って行かなくてもいいけどな」

    唯「えー、欲しいよ」

    覚「それは勿論構わんが。ところでこれ、いつ食うつもりなんだ?」

    唯「お腹すいた時」

    若「それは…」

    覚「毎日だろ、って言いたげだな」

    唯「わかった!戦に持ってって、陣で食べる。どう?ナイスアイデア!」

    覚「自分達だけ食べる訳にはいかないだろ。足軽の皆さんは、細々とした食事でしのぐだろうに」

    若「仰せの通りですね」

    唯「すんません」

    若「穀物が不作の年や、何かしらの天変地異の折に、民に分け与えられると良いのじゃが」

    覚「話が大きくなってきたな」

    ト「炊き出しが必要となった時、例えば大鍋に、カレーを調味料として足すなどいかがでしょう」

    唯「超うっすい、カレーっぽい汁ってコト?おいしいかなー」

    源「油が入っておりますので、多少腹持ちも良くなります。良い考えかと」

    覚「でも賞味期限はあるから。じゃあさ、有事の際に取っておいて、期限が近づいたら君達で食べな」

    若君&源三郎&トヨ「はい」

    唯「えー」

    若「唯。全てそうせよとは申しておらぬ」

    唯「ちょっとは先に食べる?」

    若「良かろう」

    唯「わーい。いっぱい持って帰ろ!」

    若「赤井家もじゃ。時折食し、こちらの世に思いを馳せるも良し」

    源「心得ました」

    ト「はい」

    覚「あと、思ったんだけどさ。このパウチの袋のゴミ、そっちではどうするんだ?」

    唯「そっか」

    ト「確かに」

    若「これは、埋めたら土に還りますか?」

    覚「還らないんだ」

    源「燃やせるのでしょうか?」

    覚「うーん。やった事はないけど、熔けるんじゃないか。その時代にない物は、処分に困るよな」

    若「考えます」

    唯「あ」

    覚「何だ?」

    唯「前に持ってったお菓子の袋、どうしたっけか」

    覚「菓子?」

    唯「三之助たちにあげたら、毒って言って食べてくれなかったの」

    若「それは知らなんだ」

    覚「いつの話だ?」

    唯「梅谷村に居た頃だから。そのまんま残ってるかも」

    覚「後世に、こりゃ何だ?ってなるパターンだな」

    夕方になった。

    唯「何時出発?」

    覚「6時位に出るか。母さんの仕事終わりは待たないから。後から来てもらう」

    唯「わかったー」

    その時、覚のスマホが鳴り出した。

    覚「おっとっと。ん?尊じゃないか。はい、もしもし」

    尊の電話『もしもし?お父さん?』

    覚「随分と騒がしいな。駅のホームか?」

    尊 電話『ねぇ、どうしよう!』

    覚「何だ、どうした?」

    尊 電話『瑠奈が』

    覚「瑠奈ちゃん?瑠奈ちゃんに何かあったのか?!」

    尊 電話『離してくれない』

    覚「…」

    尊 電話『もしもし、聞こえてる?』

    覚「お前、凄いセリフ吐いてるって自覚はあるか?」

    尊 電話『は?』

    覚「よもや尊の口から、そんな官能的にもとれるセリフを聞く日がこようとは」

    尊 電話『お父さん!こっちは真剣に話してるのに!』

    覚「すまんすまん」

    尊 電話『今日、出かけられないかも…』

    覚「そんなおおごとなのか?」

    唯「?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days107~8日19時、触れてごらん

    いよいよ、カウントダウン。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    全員で岩盤浴エリアに移動してきた。

    美香子「頑張っちゃった?」

    尊「何事も、一歩進まないとって思って」

    自動販売機の前の椅子に座り、スポーツドリンクを飲みながら、ぼんやりしている尊。

    美「連れて来てる私達も私達だけど、この時期無理しちゃうと」

    尊「そこまでだるいとかないから」

    美「そう」

    尊「大丈夫だよ。僕は、強くなれるなら頑張れる」

    美「強く、か。ふふ」

    尊「おかしい?」

    美「ううん、立派」

    尊「じゃあ何で笑うの」

    美「瑠奈ちゃんとの交際が、順調のようだから」

    尊「え。あ、まぁ」

    唯と若君。沢山ある岩盤浴のブースの前で思案中。

    唯「どこに入ろっかな。もう、全身つるんつるんなんだけどね~」

    若君「ほぅ」

    唯「確かめる?触っていいよぉ、はいどーぞ」

    腕を若君の前に出した唯。

    若「どれ」

    すると、若君は唯の正面に立った。

    唯「ほぇっ?」

    唯の両頬を掴み、むにーと引っ張り、手を離す若君。

    若「ふむ」

    唯「そんな確認のしかた?」

    若「ようわからぬ」

    唯「ひどっ」

    源トヨは、並んで横になり、岩盤浴を楽しんでいた。

    源三郎「熱風渦巻く中、お父さんは微動だにせず」

    トヨ「そうなの。修業を積まれておいでなのね」

    源「忠清様も、此度は業を為し遂げた」

    ト「源ちゃんもでしょう。良かったわね」

    源「あぁ。これで大抵の苦難は乗り越えられる自信がついた。尊殿が、少し辛そうにされていたのが気にかかったが」

    ト「さっきお母さんが、様子を尋ねてみえたわよ」

    源「そうだな。お任せしよう。お前も、違うサウナの間に入ったんだよな」

    ト「うん。そんなに熱くは感じなくて。塩が山盛りに置いてあり、汗をかいた肌に乗せると効能が色々あるって教えていただいたわ」

    源「塩か。痛くはなかったか?」

    ト「全然」

    源「体ではないぞ、手だぞ。こちらの世に参る前、そこらじゅう切れておっただろ」

    ト「あ、そう言えば。あら」

    トヨの手を取り、しげしげと見た源三郎。

    源「…傷が治る程、日が経ったんだな」

    ト「そうね…。得難い経験を、こんなにさせていただいて」

    源「そうだな。有難い」

    ト「あ、あのね。お塩でお肌がつるんつるんになるって伺ったの」

    源「へぇ」

    ト「撫でてみない?腕」

    源「な、何言ってる」

    ト「源ちゃんから手を握ってきたんじゃない。試しに、ね」

    源「ま、そうだが…う、うん。心なしか、よう滑るような」

    ト「そんなにそうっとじゃ、くすぐったいわよ~」

    20時。7人、フードコートにある、晩ごはんメニューの写真パネルの前に集まっている。

    唯「ごはん、ごはん。なにこれ!お肉がモリモリ!」

    覚「ステーキ丼か。うん、スタミナ回復には効きそうだ。僕それにしようかな」

    美「サウナで無の境地に入ったんでしょ。仙人って、確か霞しか食べなかったんじゃないかしら?」

    覚「からかってるだろ。覚仙人は、俗世間に戻って来たから腹が減っている」

    美「ただの寝起きの人ね」

    全員メニューも決まり、食事がスタートした。

    美「あー楽しい。こういう、イベントっぽい、遊びに来てる感じはいいわね」

    覚「皆で出掛けるのは、あと明日の晩だけか」

    美「そうよねー。…ねぇ、もう一回位、全員でどこかにお出かけしない?」

    若「おぉ」

    唯「大賛成!」

    覚「僕も賛成だが、いつだ。あと時間が取れるって言ったら…帰る当日、土曜の午後か」

    尊「今までに行った所へ、もう一度?」

    美「うーん。この期に及んでではあるけれど、初体験のイベントもいいかも」

    覚「クリニック終わってからだから、幾ら日付変わるまでに帰ればいいって言っても、そんなに遠くへは行けんぞ?」

    美「ちょっと考えさせて。折角だから、思い出は多い方がいいもの。ね?」

    唯「やったっ」

    源「痛み入ります」

    ト「お気を遣わせるばかりで、すみません」

    美「気にしなくていいのよ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days106~8日17時、ととのう?

    妖怪千年おばば様、新作お待ちしています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今回、首から上しか映像化できない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパー銭湯に向かうべく車2台で出発した。途中、尊を駅で拾う覚。

    尊「ただいまー。急な話でびっくりした」

    覚「今日は学校の用事は良かったんだな?」

    尊「うん。それは昨日だけ」

    唯「ねぇ、昨日遅かったのはさー、るなちゃんとラブラブしてたからじゃないのぉ?」

    尊「違うよ。…違う」

    全員で、まずは湯を楽しんでいる。男湯の中にあるサウナ室の前に、若武者が二人。

    若君「…」

    源三郎「…」

    尊「二人ともどうしたんですか?悩む位なら入らない方がいいんじゃ」

    若「参るぞ」

    源「はっ」

    扉の小窓から中を覗くと、覚がピースサインをして座っている。

    尊「止めた方が良くないですか?だってここに、もうすぐロウリュウタイムって書いてありますよ?えーと、ロウリュウはですね」

    若「老いた龍か?」

    源「龍?」

    尊「そう来たか…」

    方々に鋭い視線を送り始める、若君と源三郎。

    尊「あの、龍は出ません。それに危機管理して目を配る様子はさすがですけど、その…丸腰にも程があるし」

    若「では、何が始まるのじゃ?」

    尊「中で熱してる石に水をかけて蒸気を発生させます。その状態で人が来て、大きいタオルや団扇であおいで、熱風を体に直撃させます」

    若「ほぅ…それは、何ともはや」

    源「手厳しい」

    尊「多分お父さんは、この時間を狙って入ってますけどね」

    若「そうか。ならば、倣って挑むより他無し」

    源「お供致します」

    尊「サウナに入る前のやりとりとは思えない。あ、準備が始まった。もうすぐですね。行ってらっしゃい」

    若「尊」

    尊「はい。…ヤな予感」

    若「おぬしは?」

    尊「来たっ」

    若「尊も、もののふならば…」

    尊「わー、その台詞には弱い。はい、では僕も強い男になるべく、兄さん達に倣って、頑張ります…」

    代わって、女湯。

    トヨ「雪、ですか?」

    唯「ううん。塩」

    ト「塩?!」

    ミストサウナルーム。三人が座っている目の前に、こんもりと塩の山が築かれている。

    美香子「食用じゃないからね。汗が出てきたら体に乗せていって」

    唯「お肌つるんつるんになるよ!」

    ト「つるんつるん。良いですね」

    美「ちょっと唯、顔にはつけない!」

    唯「全身ピッカピカにしたいもーん」

    美「ダメよ!刺激が強過ぎるから」

    唯「大丈夫だっ…痛っ!目に入った!」

    美「はぁ~。当たり前でしょ、手で触らない!ホント世話の焼ける…」

    美香子が唯の顔を覗きこんでいると、

    ト「お母さん、離れてください」

    美「え?はい」

    ト「参ります」

    バッシャーン!

    美「あらお見事」

    唯「ケホ、ケホッ」

    ト「どうですか、目の痛みは」

    唯「うひゃ~、びっくりした。でも今の一撃で取れたよ。ありがとトヨ」

    手桶に汲んだ湯を、唯の顔にぶっかけていたトヨ。

    美「さすがトヨちゃん。目元に狙い撃ちもお手の物」

    ト「塩まみれの手で擦るよりかは良いかと。幸い、端に座っておられたので、多少手荒でも他の方のご迷惑にはならないと思いまして」

    美「ちょっと驚いたけど、正解よ。ありがとうトヨちゃん」

    ト「いえ。すみません」

    美「何で謝るの」

    ト「咄嗟とはいえ、出過ぎた真似をいたしました」

    美「ううん。永禄での二人の関係が垣間見えた感じで良かったわよ。これからもビシビシとよろしくね…って、違う違う」

    ト「ふふふ」

    唯「これじゃお世話係をいつまでも卒業できないわねぇ。トヨちゃん、今度からは唯が何かしでかしても、見て見ぬ振りしてね」

    ト「はい。では出来得る限りそういたします」

    唯「えー、塩対応っすか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    やっぱりふきちゃんが好き

    ふきちゃんの物語を
    練り直していたら、
    詩が浮かびました。
    ご披露~。m(__)m

    ・・・・・・・・・

    ふみを待ち
    月と太陽が入れ替わる

    ときめいて 一夜
    ゆらめいて 二夜

    三夜めは ため息

    伏し目がちに 四夜
    うつむいて 五夜

    六夜めに 一粒涙をのみ
    七夜めで 天を仰ぐ

    上る月は白々として虚しい
     

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    四人の現代Days105~8日14時、健やかなる時を

    心と体に、芯から、じんわりと。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子の車に、源三郎とトヨ。とある店に着いた。

    トヨ「紐…ですか?」

    美香子「ここね、組紐の専門店なの」

    源三郎「よくお越しになられるのですか?」

    美「たまーに。お父さん以外の人と来たのは初めてよ」

    源「忠清様も唯様も、ですか?」

    美「そうね。たまたま機会がなくて」

    既に、商品に釘付けになっているトヨ。

    源「おい、お母さんの話聞いてるか?」

    ト「あっ、すみません!」

    美「いいのよ~」

    運んできたバッグを広げる美香子。中には着物と帯が入っていた。

    美「これに合わせる帯締めが欲しくてね。あなた達の時代にはまだなかった物だから、わかりにくいかもしれないけれど。どれがいいかしらね」

    ト「えーと…。え!いえ、私が決めては」

    美「トヨちゃんの見立てでいいから。可愛いい娘に選んで貰ったわって。唯はね、こういう類いは全くダメなのよ。お城でもあまり興味なさそうでしょう?」

    ト「それは…そのようにはお見受けいたしますが」

    美「ね、だから是非お願いしたいわ」

    ト「そうですか。唯様の代わりは、到底務まりませんが」

    トヨが、棚を丹念に見始める。源三郎が、近くに並ぶ商品に気がついた。

    源「お母さん、これはもしや」

    美「ブローチね。紐を編んで作った」

    源「ブローチ。安全ピン、で留まるのですか?」

    美「その通り!よく覚えたわね、偉いわ~。って、あらごめんなさい、子供をあやすみたいな言い方になっちゃった」

    源「いえ…」

    源三郎が、はにかみながらブローチをじっと見ている。

    美「気に入ったなら買ってあげるわ」

    源「えっ?いやいや!」

    美「いいじゃない、小さくてお値段も張らないし。トヨちゃんと色違いでどう?」

    源「滅相もない事でございます!」

    美「いいのいいの、忠清くんと唯には内緒よ。あ、トヨちゃん、決めてくれた?」

    ト「こちらのお品が、色味も合ってよろしいかと存じます。いかがでしょうか」

    美「あ、いいわね~ありがとう。ではそれと、はい、こっちも色選んでね」

    ト「え?いえ、お気持ちだけで結構でございます!」

    源「お母さん、いただけませぬ」

    美「そう言わずに~」

    源三郎達がすったもんだをやっている、その頃の速川家。

    覚「ふう。しかし」

    食卓で覚と若君がお茶を飲んでいる。唯はというと、

    覚「よくあんなに寝られるもんだ」

    ソファーで、くるまった毛布から首だけを出し、スヤスヤと眠っている。

    若君「フフッ」

    覚「忠清くんさ」

    若「はい」

    覚「君こそ、どこか行きたい所とかなかったかい?」

    若「こちらの世も四度参っておりますゆえ、充分に楽しんでおります」

    覚「だからこそ、ってのもあるだろ」

    若「広い風呂も、酒と料理が美味い店も、丁度行きたかった地です」

    覚「そう?遠慮しなくてもいいんだぞ?」

    若「お父さん。何処かへ参るのは、無論楽しゅうございます。されど、今此のひととき全てが最良に他ならないのです」

    覚「今?」

    若「唯と穏やかに過ごせる此の時が」

    覚「こっちの生活全部か。いろんな重圧から解き放たれてるもんな」

    若「だからと言って、戦場に身を置くやも知れぬ永禄に、戻りたくないと申しておるのではなく」

    覚「わかるよ。心のデトックスだろ」

    若「デト?」

    覚「あーごめんごめん。どう言えばいいだろう。ん~、浄化、かな」

    若「浄められると。それは、腑に落ちます」

    覚「唯みたいに、ダラダラ過ごすのも悪くない訳だ。ははは。どうだい、君も唯と一緒に一寝入りしたら?」

    若「それは…もう、お手伝いする事はございませぬか?」

    覚「大丈夫だよ」

    若「わかりました」

    席を立ち、使った湯飲み茶碗などを洗って片付けた若君。そのままソファーに向かう。

    若「唯」

    唯「…ん。え、もう出かける~?」

    若「いや、まだ良い。わしも混ぜてくれ」

    唯「混ぜる?」

    横になっていた唯の体を抱き起こし、隣に座った。

    唯「一緒にお昼寝?」

    若「嫌か」

    唯「いいに決まってるでしょ。はい、半分こ」

    毛布を二人で分け合うようにかけ直し、若君にもたれた唯。すぐに寝息が聞こえ始めた。

    若君 心の声(心地好い…)

    窓の外に広がる冬の庭を眺め、温もりを感じながら、まどろむ若君だった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days104~8日水曜6時40分、気遣いの人

    座禅でも組んでいたのか?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ラジオ体操が終わったところで、覚が源三郎に声をかけた。

    覚「ちょっと、いいかな」

    源三郎「はい」

    部屋の隅に移動する。

    源「いかがなされました。言い付けでしたら、何なりとお受け致します」

    覚「いやいや、そんなんじゃないんだ。あのさ」

    覚が、メモ用紙とボールペンを取り出す。

    覚「あと今日入れて、残り四日だ」

    源「はい…お名残惜しゅうございます」

    覚「今まで色々こちらで体験してきてさ、これはもう一度やりたいな、行きたいなってのないかい?」

    源「それは、無きにしも非ずですが」

    覚「望み全部は難しいかもしれないけど、聞かせてくれないか?第一希望と、第二希望位教えて」

    メモを取ろうとしている覚。少し戸惑う様子の源三郎。

    源「あの、忠清様や唯様にはもうお尋ねになられたのでしょうか」

    覚「いや?そもそも、君とトヨちゃんにしか聞くつもりはないよ」

    源「それは、何ゆえでございますか」

    覚「仕える身である君達の、意見を優先する場があってもいいだろ。まあまあ、そう固く考えずに。な?」

    源「はい…ならば、風呂が幾つもあった地の」

    覚「スーパー銭湯か。ふんふん」

    源「お父さんが悠々とこなされていた、地獄の板敷の間に、今一度挑めたらと」

    覚「板の間?それって、サウナの事か?」

    源「灼熱を物ともせず座しておられたお父さんのお姿は、正にもののふでありました」

    覚「こんな事で褒められるとは思わなかったな。ちょっと気分いいぞ」

    源「早々に音を上げた不甲斐ないわたくしではございましたが、もし次があるのならと思うておりました」

    覚「なるほど。よしよし。もう一つ、聞こうか」

    源「お父さん忠清様と三人で、腹を割って話したあの店に、今一度参れるのであれば」

    覚「居酒屋だね。わかった。考えとくよ、ありがとな。おーいトヨちゃん、ちょっといい?」

    昼過ぎになった。

    覚「それでは、今後の大まかな予定を発表する」

    唯「あーい」

    覚「今日の夜は、スーパー銭湯に行くぞ」

    唯「おっ、岩盤浴!良かったね、トヨ」

    トヨ「良いのですか?お父さん」

    覚「君も源三郎くんも、一番行きたいって言ってたからさ。夕方尊を駅で拾う。晩飯もそこで済ませるよ」

    唯「たーくんもリベンジできるね。サウナ、お父さんみたいに長く入れたらって言ってたじゃない」

    覚「へぇ、そうだったのかい」

    源「忠清様も、でございましたか」

    若君「修行を終えサウナの間を出た後の、悟りを開いたかのようなお父さんのお顔が、今でも目に焼き付いております」

    覚「二人ともよく見てるなぁ」

    美香子「その後は、休憩室でグースカ寝てたけどね」

    覚「今日は、グダグダにならないよう、修行僧並に頑張るよ」

    美「無理はしないでよ~?帰りの運転に支障がないようにね」

    覚「大丈夫。酒は呑まないし。美味い酒は、翌日のお楽しみにとっとくから」

    美「嫌よ、また潰れちゃ」

    唯「てコトは?」

    美「明日の夜は、今度は家族全員で、例の居酒屋に行きましょうね。歩いて」

    若「おぉ。それは、わしも楽しみじゃ」

    源「お気遣いいただき、済みませぬ」

    ト「良かったわね、源ちゃん」

    唯「おかみさんとおやじさんに会うの、めっちゃ久しぶりだー」

    覚「明後日は、金曜だからまた忠清くん、料理頑張ろうな」

    若「はい!」

    美「で、金曜が最後の夜になるから、恒例の」

    唯「恒例。わかった!え、布団全部並ぶ?」

    覚「多分、イケるだろ」

    源「布団、ですか?」

    若「左様。発つ前の晩は、このリビングに布団を並べ、皆一同に休むとしておっての」

    ト「まぁ…心温まる習わしだこと」

    唯「今回さー、旅行行ってないから、雑魚寝なんて最初で最…ん、言わないでおこ」

    美「楽しみね。でね、今日この後だけど、トヨちゃんと源三郎くんに、私の買い物に付き合って欲しいのよ。いい?」

    ト「はい!お供いたします」

    源「喜んで」

    美「トヨちゃんが、私との買い物が忘れられなくて是非って聞いて」

    ト「えっ、それでわざわざお時間を」

    美「ううん。ちょうど、着物関係のグッズで欲しい物があるのよ。トヨちゃんに一緒に見立てて貰えると私も嬉しいわ」

    ト「なんて有り難きお言葉…」

    美「あなた達さえ良ければ、もう出掛けてもいいけど。そのお店、ちょっと距離あるのよ」

    ト「わかりました」

    源「では、上着を取って参ります」

    二階に上がっていった二人。

    若「お父さん、お母さん。色々と気を回していただき、ありがとうございます」

    覚「いやいや~、元は君の発案だし」

    美「彼らの望みを叶えてやって欲しいって言う忠清くんの気持ちが素晴らしくて。私達はそれに乗っただけ」

    唯「たーくん、神だわ」

    若「神?」

    唯「え。えーっと、神様仏様的な?」

    若「仏?崇められる程ではないが」

    唯「あがめるってなに?」

    美「あー、話が続かないったら」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8日のお話は、続きます。

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    四人の現代Days103~7日12時、初めての

    よく噛み、時間をかけ食せば、少しの量でも腹は満たされるのじゃ。という心の声。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    カフェでランチ中の四人。唯の食い意地が勝るかと思いきや、

    唯「カフェっぽい!めっちゃ映える!」

    やたらと写真を撮っている。

    若君「精が出るのう」

    唯「だって、撮っとかないとどんな料理かわかんないもん。帰ったら親に聞こうと思って」

    若「運ばれてくる度に、店の者が料理名を申すではないか」

    唯「カタカナいっぱいだからよくわかんない」

    若「カタカナ、であるのはわかると」

    食事終了。デザートも出され、寛ぐ四人。

    唯「どうだった?源三郎、トヨ」

    源三郎「美味しくいただきました」

    トヨ「どのお料理もお色味がとても鮮やかで、食が進みました」

    唯「映え映えだったよね~。来て良かったぁ」

    若「美しく盛られ見栄えのする料理の数々であったが、唯の腹には足りたか?」

    唯「足りたー。写真撮りながら休み休み食べてたのに、なんでかな。お腹いっぱい」

    若「フッ」

    唯「なんでそこで笑うの」

    若「それは、尚更来た甲斐があった」

    唯「んん?なーんか引っかかるような。ま、いっか。そろそろ帰る?」

    店を出た四人。もう一度、吉田城跡のロータリー前に佇む。

    唯「残してくれた人に感謝しなくちゃね」

    若「あぁ」

    さて。夕方になった。変わってここは、尊の高校。

    尊「西日がようやく眩しくなくなったな」

    放課後、教室に尊が一人自習している。すると扉がガラリと開き、瑠奈が入ってきた。

    瑠奈「はぁ。えっ、尊!」

    尊「お疲れ。先生の呼び出し、何だったの?」

    尊に駆け寄る瑠奈。座ったまま見上げる尊。

    瑠「冬休み前に提出した書類に、訂正が必要な箇所があるって…ねぇ、それより、待っててくれたの?!」

    尊「約束したじゃない。帰りは一緒って」

    瑠「そうだけど、急に呼ばれて行ったし、すごく待たせちゃった。ごめんね、ホントにごめんなさい」

    尊「そんなに謝らなくても」

    瑠「だって、試験前の尊の貴重な時間が」

    尊「ここで勉強してたから。気にしなくていいよ」

    瑠「ありがとう。いつも優しいね。私感動しちゃった。絶対、帰ったって思ってたの。もぅ、すっごい嬉しい!」

    尊「喜んでくれて僕も嬉しいよ。じゃあ、帰りますか」

    瑠「うん…」

    机の上の参考書や文房具を片付け始めた尊。その様子を、隣に立ったままじっと見つめている瑠奈。

    尊「どうしたの。鞄取ってきたら?」

    瑠「私、尊にお礼がしたい」

    尊「お礼?いいよそんなの」

    荷物を入れるため、リュックを取ろうと尊が横を向いたその時、

    尊「ん?」

    頬に柔らかな感触が。

    瑠「さぁ、帰りましょうね~」

    尊「え?」

    瑠奈が鞄を取りに行く。訳がわからない尊が、頬を指で触ってみると…

    尊「えええー!」

    指先に付いたリップグロスが、キラキラしている。瑠奈が鞄を持ち戻ってきた。

    瑠「あ、ごめん。ついちゃったね」

    尊「いやいやいや!」

    瑠「こんなの礼にはなんねぇよ、って?」

    尊「そうじゃなくて!あの、ふ、不意討ちは、卑怯なり」

    瑠「ふーん?そう。なら、名乗りを上げればいいんだ」

    尊「え」

    瑠奈がサッと手を挙げた。

    瑠「瑠奈、チューしまーす!はい、もう一回」

    尊「わー!」

    瑠「ねぇ、今度はどこにして欲しい?」

    尊「え!」

    瑠「くちびる?」

    尊「ひっ」

    瑠「あー。でもくちびるなら、自分からしに行くより来てもらう方がいいな」

    尊「ええっ」

    瑠「来てもらう方が、いい」

    尊「あの、近い、近いです…」

    瑠「えー。仕方ないな、だったら今日はほっぺまでにしといてあげる」

    尊「は、はぁ」

    瑠「あはは。たけるん、かわいいね」

    尊「たけるん?!」

    尊 心の声(手のひらの上で転がされた!口から心臓が出そうだよ。手練れJK、恐るべし…)

    尊「じゃあ、帰りますか…」

    席を立つ尊。教室を出ようとするのだが、

    瑠「たーけるんっ」

    尊「わー!」

    尊の腕に、べったりと絡みつく瑠奈。

    尊「そ、そんなにくっつかないで!」

    瑠「えー、これでも遠慮してるのに。腕くらいいいでしょ」

    尊「随分と豪快な遠慮…」

    尊 心(僕は、押しの強い女性に翻弄される運命なんだ…)

    瑠「何か言った?」

    尊「いえ、何も…わー、だから!」

    大騒ぎしながら、教室を出て行った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    7日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days102~7日10時、プチ旅行です

    面影は多少あるみたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    キッチンに居る覚に、唯が話しかけている。

    唯「お昼、外食してきてもいい?いい感じのカフェがあるって尊が言ってたから、行ってみたい」

    覚「いいぞー。カフェでランチなんて現代ならではだろ。これも経験だ。皆で行ってこい」

    唯「わーい」

    唯達四人、小垣駅に向かう準備が整った。

    覚「はい、昼飯代と電車代。楽しんできな」

    唯「ありがとー」

    若君「忝のう存じます」

    源三郎&トヨ「行って参ります」

    歩いて黒羽駅にやってきた。

    唯「たーくん、切符の券売機はお初だね」

    トヨ「電車には、既にお乗りになられてるんですよね?」

    若「前に乗った折には、小さき板をお母さんにいただいた。入口に当てるだけで、あの門が開いたのじゃ」

    源三郎「妖力…でございますか?」

    唯「どうして動くかは、尊に聞いて」

    若「その板には、月が微笑んでおっての。そう、これじゃ」

    券売機の画面に、ICカードのデザインが表示されている。グレーの地に黄色くて丸いキャラクターがついているのだが、

    唯「あ、たーくん、指さすだけにして。タッチパネルだから、画面に触るとどんどん動いてっちゃうの」

    若「済まぬ」

    源「お父さんがお持ちの、大きい板のような物ですか」

    唯「うん。そうだね」

    切符を買い、いよいよ自動改札を通る。

    唯「この切符を、この細く開いてる口に入れると、門が開くの。切符は向こう側にピョコって出てるから、忘れず取るんだよ。失くすと大変だから、ちゃんと持っててね。ではお手本行きます」

    唯が切符を投入する。即座に改札の扉が開き、一瞬の内に切符が頭を出して、通過しながら抜くと扉がまた閉まった。

    源「おぉ」

    ト「一人ずつ通るようになってるんですね」

    若「切符を取らねばならぬのが、昨年との違いか」

    唯「では、行ってみよう!」

    改札一箇所をほぼ占領する形で一人一人ゆっくり進み、無事全員通過。

    唯「あ、もうすぐ電車来る。急ごっ」

    ホームに着くと、すぐに電車が入ってきた。興味津々で乗り込む源トヨ。

    源「景色が飛んでいく」

    ト「速いですね」

    唯「各駅停車の電車だから、そこまで速くはないんだけどね」

    黙って外を眺めている若君。

    唯「あんなに木があったのに、って?」

    若「あぁ。開墾は、さぞや苦労したであろう」

    線路沿いは、すっかり住宅地になっている。

    若「時の流れを感ずる」

    唯「ここは、人が住みやすい、いい場所なんだよ」

    若「そうじゃな」

    小垣駅に到着。早速ロータリーに向かう。

    唯「あれかな?確かにいきなり和、だ」

    若「ふむ」

    ロータリーといっても、バス停もタクシー乗り場もなく、停車する車もなかったため、目の前まで安全に近付けた。

    ト「ここに何か書いてあります」

    唯「どこ?あ、あるね」

    御触書のような形の小さな立看板がある。かつてここには武家屋敷があり、その前は吉田城があった旨も書かれていた。

    源「見つかった」

    ト「良かったわ」

    若君は、ロータリーをぐるっと一周していた。

    若「唯」

    唯「はーい?」

    若「此処へ」

    唯「なになに?」

    ぞろぞろと移動。

    若「正面は此処じゃ」

    唯「あ、そうなんだ。松、大きいね」

    江戸時代に植えられたと思われる松が、見事な枝ぶりをしていた。若君が右上の方向を指差す。

    若「矢は、あの辺りから放たれた」

    唯「やだぁ、痛い痛い!思い出すの、嫌じゃないの?」

    若「射られねば速川の家族に会えなんだであろう?」

    唯「そうだけどね。たーくん、強いわ」

    若「唯程ではない」

    唯「言うねー」

    11時30分になった。尊が瑠奈に告白されたカフェにやってきた四人。通された席で、メニューの写真に釘付けになっている唯。

    唯「どれもおいしそう!どうするどうする?」

    ト「これは…迷いますね」

    唯「たーくんどうする?」

    若「任せる。ようわからぬゆえ」

    唯「源三郎は?」

    源「それはもう、お任せいたします」

    唯「困ったな。あ、これなんかどう?」

    シェフのおまかせランチ、2名様より注文可とある。

    ト「大きい器に盛られて、銘々で取り分けるようですね。良いと思います」

    唯「決まり!」

    注文完了。

    唯「あー、一気にお腹空いてきた」

    ト「四人分で足りますかしら?」

    唯「うーん、微妙」

    若「フフッ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    交通系ICカードは、manacaをイメージしてください。この板no.526にも若干説明があります。

    続きます。

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    四人の現代Days101~7日火曜8時30分、尊い!

    元旦にあれだけしゃべってるのに、今更?って思われてるよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日から高校は三学期。尊が教室に向かっていると、廊下に女子が二名。

    みつき「おはよ、センセ」

    瑠奈「おはよぉ、尊」

    尊「おはようございます。こんな所で立ち話してるの?」

    み「センセを待ってた」

    尊「え、僕を?まさか説教…」

    み「なんでよ。という訳で、はい、瑠奈は教室に入って」

    瑠「えー、もう?なんかね、みつきがどうしてもサシで話したいんだって。じゃあね尊」

    尊「うん」

    瑠奈は手を振って教室に入っていった。

    尊「話って?瑠奈に聞かれたくはないんだ?」

    み「あのね」

    みつきが深々とお辞儀をした。

    尊「いきなり何!困る、恥ずかしいよ」

    み「センセありがとう。瑠奈の彼氏になってくれて」

    尊「は、はあ。それはどうも」

    み「まずはお礼が言いたくって」

    尊「いつから保護者に」

    み「それでね、ここからは瑠奈情報を話しとこうと」

    尊「そうなんだ。では伺います」

    み「あの子、モテるのよ」

    尊「だろうね。わかります」

    み「あんなにかわいいのに、お高くとまってなくて」

    尊「そうだね」

    み「巨乳だし」

    尊「うっ」

    み「何よ。見ればわかるでしょ」

    尊「えーと」

    み「あ、もう触って確かめた?」

    尊「えええ何言ってるの!!」

    み「まだなの?彼氏の特権でしょ」

    尊「そんな」

    み「まだなの?」

    尊「だって」

    み「まだなの?」

    尊「まだだよ」

    み「ふーん。楽しみだね」

    尊「うわっ、口車に乗せられて、まだとか言ってしまった…予定があるみたいじゃないか。断じて違うから」

    み「でさ」

    尊「怖ぇ。弁解も聞いてもらえない」

    み「そんなだから、付き合う時は男から言われてってパターンばっかなのよ、いつも。瑠奈は最初、相手を何とも思ってないところからスタート」

    尊「なるほど」

    み「で、瑠奈ってメンドくせぇじゃない」

    尊「はい」

    み「もう実感しちゃったか。言い寄られて、いいかもって思った頃に嫌がられる。だから恋愛は、始まるのも早いけど終わるのも早いんだよね。続かない」

    尊「なんか気の毒な話だな。僕はそうならないでって、お願いですか?」

    み「私は、瑠奈とセンセは長く続くと確信してるから、お願いはしない」

    尊「その自信はどこから…」

    み「センセさ、今までなんとなく流されてきてるでしょ。瑠奈の猛烈なアプローチに」

    尊「それは否めませんが」

    み「私は喜んでる。なぜならほとんど初めてに近いくらい、瑠奈が自分から好き!って行動してるから」

    尊「よく見てるんだね」

    み「でもセンセは、好き好き攻撃をちゃんと受けとめてくれる器がある」

    尊「褒め過ぎじゃないの」

    み「うっとーしくても、嫌じゃないでしょ。どう?」

    尊「まぁ、そうだね」

    み「瑠奈の見た目だけじゃなく、中身をちゃんと見てくれてるからだよね」

    尊「あ、うん。それはその通りだよ。僕に足りない所を補ってくれると思う」

    み「さっすが~。瑠奈がね、尊の名の漢字はソンケイのソン!ぴったり!って言ってた。事実マジ尊敬してるし。もちろん私もだよ」

    尊「恐縮しちゃうよ」

    み「見込んだ通りのセンセで良かった。ありがとう」

    尊「へ?」

    み「これからもよろしくね。センセにお任せしとけば間違いない」

    尊「すごいな。友達思いなんだね。羨ましい」

    み「羨ましいって何。私は瑠奈の味方だけど、センセの味方でもある。二人は相性がいいってピンとはきたけど、センセが嫌がるなら勧めなかった」

    尊「そうなの?」

    み「友達の嫌がる事はしたくない」

    尊「友達。僕が?」

    み「他に誰が居るの。当たり前でしょ」

    尊「…ありがとう」

    み「って長くなっちゃったけど、今朝は直接お礼と、瑠奈の恋愛もろもろを話しときたかったの。ご静聴ありがとうございました」

    尊「いえいえ」

    み「そろそろチャイム鳴るから」

    尊「うん」

    尊 心の声(やっぱり僕は、自分から線を引いていたんだな)

    二人、教室に入っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days100~6日21時、霧が晴れた

    律儀な一族。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が、メールの続きを読み上げる。

    尊「城は、火災の影響もあり取り壊されたが、庭は、武家屋敷があった頃もあしらいはそのままだった」

    若君「…」

    尊「戦国時代の植栽は残っていないが、時代時代で趣を残しながら植え替えられ、今は小垣駅前のロータリーの中に一部が残る」

    唯「ロータリー!」

    若「ロータリー、とは?」

    尊「車やバスをぐるっと一方通行させるように丸く道が作ってある所というか。戦国時代の人に説明するのは難しいな。あの、僕この前これ、小垣駅前で見たんだよ」

    美香子「瑠奈ちゃんと一緒の時に?」

    尊「うん。そこだけいきなり和風で、なんでだろうと思ってたんだ」

    唯「ねぇ、明日行ってみようよ!それこそさ、電車乗って」

    覚「源三郎くんとトヨちゃんは、電車初体験だよな。いいんじゃないか?」

    尊「行ってらっしゃい。僕明日から学校だから」

    唯「そうだった。じゃあ四人でね!源三郎、トヨ」

    源三郎「電車は、図鑑、で見ました。一度に多くの物や人を運び、車より速う動くと」

    トヨ「楽しみです」

    若「明日は、外をよう見ておかねばのう」

    美「それにしても、先生よくご存じね」

    尊「この後、どうして詳しいかわかるよ」

    美「そうなんだ」

    尊「では、続きを。もう一つの質問、木村政秀の末裔ではないかとの指摘だが、よくわかったね?相当調べないと出てはこない名なんだが。答えは、その通りだ」

    若「やはりそうであったか」

    唯「早く言ってよ~」

    尊「この質問、もう少し前にされていたら、答えられなかった。返事に窮するというかな」

    唯「え?なんで?」

    尊「最近まで、羽木家は永禄2年に滅亡していたと伝えられていた。木村政秀は羽木家の家臣。戦に敗れれば、例え生き延びていたとしても切腹は免れない筈。なぜ末裔が存在するのか。主を裏切り、逃げたとも考えられる」

    若「木村は、せがれは戦で討たれておるが、嫁に出した娘が居た。唯が現れずそのままわしらが滅亡していたとしても、案ずるまでではないと思うが」

    覚「でも、もしかしてを考えたんじゃないか?先生は」

    尊「羽木家は黒羽の地で長く親しみを持たれ愛されている。ここで木村の末裔と語るのは憚られた。なので今まで口を閉ざしてきたんだ」

    美「勿体ない感じね」

    尊「だが、調査が進み、滅亡の時期及び滅亡したのかも曖昧になっている。僕はね、それを知って、心からありがたいと思った。木村も生きながらえていて当然だったなら、肩の荷が下りる」

    覚「歴代の末裔の皆さんが、悩んでたみたいだな」

    尊「小垣城の発掘がほぼ終わり、近々資料館が竣工する。そこで僕は、腹を決めた」

    唯「腹を決めた、って流行ってんの?」

    尊「代々受け継がれてきた、小垣地域の歴史が書かれた書物。吉田城の顛末も含む。と、高校の自分の控え室にある、木村政秀の甲冑一式を、寄贈する」

    若「残されておるのか!」

    美「だからこんなに詳しいのね。唯、先生に色々教えてもらった時に、甲冑は見てたんじゃないの?」

    唯「あったかな。あったかもしんない」

    尊「いい加減だな。いくら歴史の先生で、そこにあって不思議じゃなくてもさ、見れば驚かない?」

    唯「だっていつも先生には用があったけど、鎧には用がなかったから」

    覚「唯らしいな」

    尊「最後まで読むよ。今僕は、実に晴れやかな気分なんだ。木村政秀は、きっと穏やかな余生を送ったに違いない。そう信じられる。といったところだ。答えになったかい?ではまたいずれ」

    美「こうしてみると、唯は木村先生にも影響を与えてたのね。ちょっと唯、聞いてる?」

    唯「今さ、鎧の顔んトコに先生の写真はりつければ良くない?って思ってたー。チョビヒゲ描いてさぁ。ぐふふ」

    尊「少しは先生の告白に感動しろよ。それに現代の人にはわかんないよ?こんな感じなんかな~位で」

    唯「そっくりですby羽木九八郎忠清って、たーくんがサインしとくとか」

    若「許されるものなのか?」

    美「忠清くん、まともに聞いちゃダメよ」

    そうこうする内に、夜も更けてきた。唯とトヨが、風呂を済ませ、階段を上がってくる。

    唯「明日はね、切符買うトコから教えるね。たーくんも、それは初めてなんだよ」

    ト「そうなんですね」

    唯「じゃーねー、おやすみ」

    ト「おやすみなさいませ」

    唯が自室に入った。トヨが一人、廊下を進む。

    ト「ふぅ」

    源三郎の部屋、今夜からは二人の部屋の前で立ち止まるトヨ。すると、扉が中から開いた。

    源「…風呂、最後だったのか」

    ト「うん。唯様と一緒にね」

    二組並ぶ布団が見える。

    トヨ 心の声(ちょっと、生々しいんですけど…あら?)

    布団の横に、少し大きめの本が置いてある。

    ト「尊様にお借りしたの?」

    源「電車をもう少し学ぼうと思い。尊殿が幼き頃に、よう読んでいたそうだ」

    子供向けの図鑑だった。微笑むトヨ。

    ト「一緒に読みたいわ」

    源「じゃあ、入れ」

    ト「うん」

    静かに扉が閉まった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    6日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days99~6日20時30分、昔も今も

    何駅か分、走って向かったんだよね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    帰る芳江とエリを見送る、美香子と源トヨ。

    美香子「遅くまで付き合ってくださって、ありがとう」

    源三郎「ありがとうございます」

    トヨ「お気をつけて、お帰りくださいませ」

    芳江「いいお式でしたよ」

    エリ「立ち会えて良かったです」

    三人がリビングに戻ると、食卓はケーキや写真が片付き、晩ごはんの支度が始まっていた。

    ト「お手伝いしなくては。お父さん、何をいたしましょう」

    覚「おっ、ピッカピカの若奥様の初仕事だな」

    美「なりたてだもんね。あー眩しいわ」

    トヨの手が止まった。

    美「あら、言い方が悪かったかしら」

    覚「気に障っちゃった?」

    ト「いえ!滅相もないです。心から感謝するばかりでございます。あの」

    その場に正座し、手を揃えて床についたトヨ。いきなりの動きに戸惑う両親。何事かと皆もやってきた。

    美「どうしたの。そんなにかしこまって」

    ト「私」

    覚&美香子「はい」

    ト「お母さんが勧めてくださいました時は、躊躇するばかりでしたが、腹を決めました」

    若君「腹を」

    唯「決めた?」

    ト「今夜から寝所を移します」

    美「…源三郎くんと同じ部屋で休む?」

    ト「はい」

    源「え」

    美「いいの?あなたの意に反するなら、無理はしないで欲しい」

    ト「いえ。本意です。私、前に自ら申し上げました。忠清様が唯様と寝所を同じくされた時に、やはり夫婦は共にがよろしいですので、と」

    美「そっか」

    覚「源三郎くん。トヨちゃんはこう言ってるけど」

    源「はい。畏れながら…より早い日でとお気遣いいただいた、エリさん芳江さんのお気持ちを汲みたいと存じます」

    唯「おっ」

    若「うむ」

    覚「じゃあ今から、布団とか移動してきな。晩ごはんの支度の手は足りてるからさ」

    美「行きましょ。源三郎くんも」

    源「わかりました」

    ト「はい」

    三人は二階に上がっていった。

    若「唯、この碗を」

    唯「あーい。運びまーす」

    覚「尊も手伝ってくれ」

    尊「あ、うん」

    唯「あんた、さっきからスマホばっか見てるじゃない。さては、るなちゃんとラブラブしてんな?」

    尊「違うんだ、木村先生からメールが来たんだよ。質問の返事」

    唯「そうなの!」

    若「おぉ。何と?」

    尊「思わず読みふけっちゃって。じっくり皆に聞いて欲しいから、ご飯の後で発表するよ」

    そして、晩ごはん後。

    尊「では、木村先生からの返信メールを読み上げます」

    若「頼む」

    尊「返事が遅くなり済まなかった。質問は二つだったね。まずは、かつてあった筈の吉田城はどうなったかだが、城主有山永季が城を明け渡した後すぐ、半焼したらしい。失火か、戦によるものかはわからない」

    若「…」

    尊「城はやがて取り壊されたが、敷地は転々と持ち主が代わり、江戸時代には武家屋敷があった。そして最終的に土地を手に入れたのは、鉄道会社」

    唯「鉄道?」

    尊「鉄道を引く計画が持ち上がったからだ。開通の際、黒羽駅は黒羽城跡に近いのでその名が付けられる。そこから東に伸びる道沿いに線路が敷かれ、そして旧吉田城跡地に駅が出来た。駅名だが、吉田城があった事を知る者はほとんどなく、地名も小垣が広く使われていた為、小垣駅となった」

    覚「それは知らなかったな~」

    唯「ねぇ、ちょっとストップ!地図見せて」

    タブレットで近隣の地図を表示。

    唯「ここが黒羽城公園。でこれが駅で線路。東にまっすぐ伸びてる」

    若「永禄から通じておる道沿いに、線路はあるのう」

    唯「やっぱり?!私、たーくんが吉田城に和議に行ったって知って、危ない!すぐ行かなくちゃ!って行き方聞いたら、伊四郎さんが、門を出て東へまっすぐじゃ!って教えてくれて一目散に向かったの。その道だったんだ!」

    若「わしが輿に乗り、通ったのもこの道じゃ」

    尊「へぇ。兄さんもお姉ちゃんも通ったその道に、今は電車が走ってるんだね」

    覚「そんなに由緒ある場所だったんだ」

    美「歴史は繋がってる、って実感するわね」

    尊「続き、読むよ。地図見ながらでいいからさ」

    唯「うん」

    尊「実は、今でも吉田城を偲べる場所が小垣駅にあるんだ。ほとんど知られてはいないがな」

    若「何と」

    覚「えぇ?僕随分探したのに見つからなかったけど、見落としてた?」

    唯「どこ?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days98~6日20時、祝福します

    心配ご無用。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    食卓には、昨日撮った源三郎とトヨの晴れ姿の写真が、コラージュのようにしてあり何枚か飾ってある。

    覚「手作り感がいいな」

    唯「でしょっ。イイ仕事したー」

    尊「ほとんど兄さんが貼り付けてたけど」

    そこへ、美香子とエリと芳江が登場。

    美香子「ただいま~」

    エリ「本日は、おめでとうございます」

    芳江「この佳き日にお招きいただき、ありがとうございます」

    源三郎とトヨが二人に駆け寄る。

    源三郎「お疲れのところ、恐縮至極でございます」

    トヨ「エリさん、このような美しいお品を…」

    エ「とてもよく似合ってるわ~。私が勝手に作ったんだから、お礼なんていいんですよ」

    芳「あらら、泣くのはお式始まってからじゃないと」

    唯「はいはい、トヨこれで拭いて」

    尊「ハンカチと思いきや、ティッシュ…」

    覚「トヨちゃん、大丈夫かい?」

    ト「はい。すみません」

    覚「じゃあ、時間制限有りだからそろそろ始めような」

    源トヨはリビングの外へ。残りの全員は花道を作るように並び、尊はカメラをスタンバイ。

    覚「それでは、新郎新婦の入場です」

    源三郎がトヨの手を取り、リビングに入って来る。参列者が各々手に握っていた何かが、花道にひらひらと舞い始めた。

    唯「おめでとー!わーい!」

    尊「おめでとう!」

    芳「華やかね~」

    エ「コンフェッティシャワーですね」

    唯「コン?」

    エ「結婚式で紙吹雪を撒く演出ですよ」

    折り紙を小さく刻んだお手製の紙吹雪が舞う中、写真を飾った食卓の手前まで進み、振り返って一礼する二人。

    覚「はい、拍手~」

    若君「拍手?」

    若君だけ、拍手のテンポが違う。

    尊「あー。そうか、そうなるんだ」

    美「はくしゅというか、かしわで、なのね」

    拍手が止み、静かになった。

    美「お父さん、お父さん?」

    覚「…あ」

    美「次は何」

    覚「すまん、感無量で段取り忘れた」

    美「あらま」

    覚「えーと、何か僕しゃべるんだったかな。まぁいいや。では、指輪の交換に入ります」

    美「え、指輪?いつの間に」

    尊「昼から急遽。3Dプリンターで作ったから樹脂だけど」

    美「話がバタバタ決まったから、用意できないと思ってた」

    尊「こんなんで良ければ是非いかがですかって伝えたら、僕の時間も労力も費用もかからないならばって、二人に言われたから早速サイズ測ってさ」

    美「良かったわ~」

    指輪の交換スタート。

    芳「何度見てもいいわ~」

    エ「緊張して入らないと、結果自分で押し込むんですよね」

    芳「あら綺麗に入った」

    尊「素材が素材なんで、その点は柔らかくて正解だったかも」

    再び拍手に包まれる。

    覚「では、夫婦初めての共同作業、ウェディングケーキ入刀です」

    美「二段で正解ね」

    食卓に鎮座したケーキに、ナイフを入れた。尊が盛んにカメラのシャッターを切っている。再び一礼した二人に拍手。

    覚「ふう」

    美「ここまで?」

    覚「途中手順があやしかったけど、ここまでだな。あとは、お二人から今後の抱負を聞こうか。まずはトヨちゃん、どうだい?」

    ト「はい。本日は、私共の為にこのようにお集まりいただき、まことにありがとうございました。赤井の家に入りましたらば、源ちゃん…殿を生涯支えて参る所存でございます」

    唯「かたいなー」

    尊「お姉ちゃんがダラダラしてるだけでしょ」

    覚「では源三郎くん」

    源「はっ。己一人では、この佳き日を迎えられませんでした。皆々様に、心より御礼を申し上げます」

    美「うんうん」

    源「トヨのこの短うなった髪が」

    エリ&芳江「あら」

    源「背丈を越え床を擦り白髪となるまで、共に生き抜いて参ります」

    芳「生き抜く。現代に生きる私達には到底考えられない、厳しい世界ですよね…」

    エ「お二人とも、勿論唯ちゃんと若君にも、辛いばかりの未来になりませんように。幸多かれと強く願います」

    覚「皆さん、お疲れ様でした。早速、ケーキ切り分けますから」

    食卓の席が全て埋まる。

    美「いい眺めね」

    エ「このお写真のドレス、とても似合ってるわ。源三郎くんも一段と素敵」

    ト「ありがとうございます」

    源「痛み入ります」

    芳「あの、質問なんですが、トヨちゃんは戻ってもすぐにはお城から下がれないんですよね?重要なお仕事についているから」

    尊「そもそも結婚するって誰も知らないし」

    ト「もし、もしですね、無事祝言をあげられたとしても、しばらくは今まで通りのつもりです」

    源「ゆくゆくは、とは思うておりますが」

    美「まずは結婚のお許しからよね」

    源&ト「はい…」

    唯「それって、たーくんの腕次第?」

    若「ん?」

    唯「どう?いけそう?」

    若「フフフ」

    覚「お!策有りかい」

    若「考えております」

    芳「なら、絶対大丈夫ですね。大船に乗った気持ちで」

    エ「本当、頼もしいわ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    狸塚

    桜と薔薇 様
    そうです、そうです。ムジナズカ!
    ありましたよね!!!
    今でも地名変更していなければ、
    いいですね!
    邑楽町だったんですか?!
    館林から太田方向に向かう途中だったので、
    私は、館林のはずれの地名だとばかり
    思ってました。(;^_^A
    茂林寺の”分福茶釜”の影響ですかね。笑

    館林あたりに、
    テーマパーク的なムジナランド
    いつかできると楽しいですね。
    ロケ地の深谷からはちょっと遠いけれど。

    ご両親の介護に
    通われていらしたんですね。
    大変でしたね。

    姉のバイト先は”大越”ではない方です。
    うどんを食すのに、今回は、
    ”花山うどん”、”館林うどん”と、
    なぜか、”丸亀製麺”で迷いました。
    (;^_^A

    リクエストは、もうしばらく
    お待ちくださいな。
    (^_^)vm(__)m

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    四人の現代Days97~6日19時、ハレの日

    最近は、登場人物が皆、着飾っている。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    年明け初日だけあって、クリニックはまだ終わっていない。

    覚「いつでも始められるように、支度はしとこうな」

    唯「ベール、着けてあげるね」

    トヨ「お願いします」

    昨日と同じくお団子ヘアのトヨ。唯が、ベールの花部分に付いた櫛をお団子に差し込む。

    唯「ふわふわ~。いい!はい、手鏡どーぞ」

    ト「ありがとうございます。まぁ…」

    唯「昨日はシンプルに、ティアラだけだったもんね」

    尊が、源三郎の着ているパーカーの胸元にブローチを付けている。

    尊「こうやってですね」

    若君「布に刺した針が隠れる、と」

    尊「はい。危なくないんで、安全ピンって名前なんですよ」

    若「ほほぅ」

    源三郎「これで花が落ちぬのですね」

    尊が顔を上げると、トヨと唯が楽しげに話している。

    尊 心の声(花嫁の完成だね。ん…ん?!)

    その瞬間、尊の目の前の景色が全て消えた。

    尊 心(は?!)

    そして、何やら別の世界が広がっている。

    尊 心(あれ?何がどうなった!)

    なぜか、グレーのタキシードに衣装チェンジしている尊。

    尊 心(なんでタキシード…白昼夢?え、ここどこ!)

    ステンドグラスから太陽光が降り注ぐ、チャペルの中に立っていた。そして、バージンロードの先に居たのは…

    瑠奈「尊」

    尊「え」

    ウェディングドレス姿の瑠奈が微笑んでいる。戸惑いながらもゆっくりと近付いていく尊。

    尊「…」

    レース仕立てのベールが、軽く巻かれた髪を覆う。少し肩が出たオフショルダーの襟元は、純白の花で埋め尽くされており、花畑から生まれ出でたかの風情。キュッとくびれたウエストは、豊かな胸元との対比でより細く見える。スカート部分はふんわりと丸く膨らんでおり、ブーケを持つ姿はおとぎ話に出てくる妖精のようだ。

    瑠「この日を、ずっと待ってた」

    尊「とても綺麗だよ、瑠奈」

    尊 心(セリフが勝手に出てくるー!勿論ものすごく綺麗だけど、いきなり結婚式は、飛躍し過ぎじゃない?!)

    白昼夢の中で考える。

    尊 心(そうか。そうだな。要は、僕は浮かれてるんだ。あれよあれよと瑠奈が彼女になって。だからこんな想像しちゃうんだな)

    分析しながらも、瑠奈の美しさにデレデレしている尊。

    瑠「尊…」

    尊「瑠奈…」

    その時、誰かが尊の肩をバシバシ叩いた。

    唯「おーい!起きろー!」

    若「尊、いかがした?」

    尊「…はっ!」

    映像が全て消え、現実に戻ってきた尊。

    尊「あ、終わっちゃった」

    唯「なに立ったままヘラヘラしてんのよ」

    尊「はあ。失礼しました」

    若「うーむ」

    唯「どしたのたーくん」

    若「どこぞで、今の尊のような顔付きを見たのじゃが…何処であったか…あぁ、思い出した」

    唯「なに?」

    若「山中で、唯が食うてはならぬ茸に手を出したゆえ、抜いて即座に捨てたが、同じ顔をしておった」

    唯「あー、それ?!それねー、ちょいとばかり思い出しまして。…わかったぁ!!」

    尊「何だよ、うるせーなー」

    唯「今、るなちゃんとの結婚式を想像してたんでしょ!このこの~」

    尊「あぁ」

    唯「あー?冗談で言ったんだけど…マジでそうなの?」

    尊「もっと見ていたかったな」

    唯「ゲゲっ。やだ、やめてよ、調子狂う!」

    廊下から足音がする。

    美香子「ごめーん、あら、トヨちゃんよく似合ってるわよ」

    ト「ありがとうございます」

    覚「おー、お疲れ」

    美「あと10分位で三人とも来れると思う。もうちょっとだけ待っててね」

    源三郎&トヨ「はい」

    またバタバタと戻っていった母。

    覚「さてと。なら、ケーキを箱から出すか。手伝ってくれ」

    唯「はーい。崩さないようカンペキに運んだよ~」

    尊「お姉ちゃんは持ってないけど」

    唯「たーくんと尊が運んだ、血と汗と涙の結晶ってヤツね」

    尊「スポ根じゃねぇし」

    若「…」

    尊「兄さん?どうかしました?」

    若「この、苺、が血を模して…」

    尊「違います」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    な、な、なんと

    ぷくぷくさん

    大作、読ませていただきました。お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

    桜と薔薇も○○○は切ないだと思いました。

    でも、ただ切ないではなくて、幸せとないまぜになった切ないかな。

    生まれてこのかた、一筋縄ではいかない辛酸を舐めるようにして生きてきた(桜と薔薇はそう思っているのですが)如古坊にとって、
    幸子さんという大切な人に出会えて、孝くんとホンノ少しでも擬似親子のようなひとときも過ごすことができましたね。

    だから、幸せで切ない かな?
    幸子さんの名前はそういう意味もあったのでは?と 勝手に思っています。

    だけど、如古坊ってちゃんと得度を受けたお坊さんですか?

    寺で育ったというし、山中の寺で修行?していたし、それらしい名前だけれど。
    山伏姿で登場したことも。

    まあ、寺院が僧兵をかかえているような戦国時代ですから受戒も得度もグサグサだったのかもしれません。

    ところで
    ぷくぷくさん
    妖怪千年おばばさん

    な、な、なんと—は

    館林

    です。

    桜と薔薇は、学生時代に数年間館林に住んでいました。

    大学で親元を離れて以来、ずっと東京に住んでいますが
    数年前に二親の最後の一人が旅立つまで定期的に通っていました。

    花山はツツジの盛りは二度くらいしか行っていません
    ぷくぷくさん、地元民あるあるですよね。だって、車は渋滞だし、花山も混んで混んで。 

    だから、その二回も誰かを案内して仕方なく–だったでしょうか。

    麦落雁の老舗はあっちの店かな!こっちの店かな?

    うどんの 本丸。

    車じゃないと行かれないじゃないですか。駅から遠くて。

    残った親の暮らしが怪しくなってきた晩年の数年間は、月に数回行っていました。

    東北道を飛ばして館林インターて下り、用事を済ませて逆コースで帰って来る。

    インター近くの農協直売所ぽんぽこに寄って、新鮮な野菜を山ほど買って。

    親の衰え様、変わり様に打ちのめされた日は
    高速に上がる前に、アゼリアモールのタリーズで甘〜いお茶をして深く長いため息を吐いて。
    そんなことを思う自分自身に嫌気が差すこともありました。

    ぷくぷくさんとおばばさんのおかげで色々と思い出して少しセンチになってしまいました。
    でも、お二人がすごく近く感じられて嬉しいです。

    そういえば、

    お隣の邑楽町には

       狸塚(むじなづか)

    っていう地名がありましたっけ。

    おばばさん
    物語の芽か大きく育ちますように❗️桜と薔薇のリクエストも忘れないでくださいね。

    ぷくぷくさん
    ひと休みしてまたアンテナが回り始めたら新しい物語を紡いでください❗️

    楽しみにしています。

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    タヌキとナマズ

    皆様
    こちらの板で良いのかと思いつつ、
    話の流れで、失礼します。
    m(__)m

    ぷくぷく様
    館林にお住まいだったのですね。
    実は、姉が館林の近くに嫁いで
    おります。
    昔、姉は麦落雁の老舗で
    アルバイトをしておりました。

    今回は、知人のお仲間が九州から
    茂林寺駅近くに引っ越し、
    館林で演奏会をすると言う連絡が有り、
    伺いました。

    知人もそのお仲間も音楽家で、
    お仲間の方が、館林周辺の情景を
    作詞作曲されまして。
    板倉町と、お隣の県の足利市出身の
    声楽家とピアニストの方が、
    作品を演じられました。

    私の知人はギタリストですが、
    なかなか関東での演奏会の機会がなく、
    大変、喜んでいました。
    翌日は、茂林寺周辺を散策したようで、
    タヌキに沢山出会ったと、
    楽しそうでした。(*^^)v
    また、演奏会がある様でしたら、
    他の板でお知らせしますね。
    よろしければ是非!
    m(__)m

    以前は、”花山”の敷地内にあった、
    つつじが丘パークインという
    市営のホテルを利用していたのですが、
    閉館になってしまって残念です。

    ナマズのてんぷらを食べるのを
    今回は逸したので、
    次回は館林うどんの直営店”本丸”で、
    食べたいと思っています。

    ナマズを食べると義兄から
    聞いたときは、びっくりしたのですが、
    白身魚のてんぷらと似たお味で、
    美味しいですよね。
    (^_^)v

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    物語について

    夕月かかりてさん
    カマアイナさん
    妖怪千年おばばさん
    皆様
    お読み下さいましてありがとうございます。
    お察しの通り【切ない】です。
    初めに考えた題は【如古坊の思い出】としましたが、あっさり感がありました。
    初めからラストは【悲しみ】などをテーマに考えました。如古坊にとっては悲しい出来事ではありますが、幸子と孝の幸せを知る事が出来た嬉しさもある中で、胸が締め付けられるような気持ち【切ない】としました。【悲しみ】より寂しさが表現されたかなと思います。【如古坊の楽しくも切ない思い出】としようと思いましたが、お読みいただいて、想像力豊かな皆様なので、読み始めてから起こる事が容易に想像できるのではと考え、ちょっとだけ、その切ないテーマを先延ばしにしようと考え【○○○】としました。

    妖怪千年おばばさん館林に何度も足を運ばれておったのですね(^-^)
    市内に住んでいた頃はあまり足を運ぶことはありませんでしたね(-_-;)
    城跡も、それにつつじも有名なんですが、前に書きましたがバスガイドをしていてその時期は公園の送迎で何十回と行きましたが、中に入ったのは覚えている限りで3回くらいです(-_-;)
    住んでいると以外と行かない、地元民ってそんな感じじゃないかなって思います。
    狸は市内に茂林寺がありまして、そこは昔話の【ぶんぶく茶釜】の舞台になった所です。逸話なのかどうか分かりませんが、狸が化けた茶釜が残っていると聞いた事はあります。それで至る所に狸があります。某銀行の前とか他にも。茂林寺の狸はリアルっぽいし、一体一体が結構の大きさなのでちょっと怖いかも。置物は可愛い物もありますよ(^-^)
    茂林寺の思い出は、小学生の授業で写生に行って、生徒が書いている間、先生は銀杏拾いをしていたことです(^-^)
    つつじの時期に観光で来られる方のコースは、つつじが岡公園→茂林寺。又は茂林寺→つつじが岡公園です。(^-^)

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    ぷくぷく様へ

    お疲れさまでした。
    大作、ありがとうございます。
    にょこさんが現代へ!
    斬新な発想ですね。
    素晴らしい!

    少し前に群馬に行き、
    館林城を散策しました。
    初めてではなかったのですが、
    大きな城だったのだと、
    再認識。
    そして、そこに
    新たな物語の種が。

    今は、静かに発芽をまってます。
    ご披露できる日が、
    来ると良いのですが。

    館林に行くと、
    タヌキの置物が
    出迎えてくれます。
    お時間ありましたら、
    是非、行ってみて下さいな。
    (^_^)v

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    四人の現代Days96~6日月曜13時、そーっとね

    備えをしとくに越した事はない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昼ごはん中。

    美香子「もう読破した?」

    唯「まだ。私はあとちょっとだけど、たーくん、トヨ、源三郎の順で回してるから」

    源三郎「わたくしが2冊目に入った所です」

    母に、昨日話題となった漫画の単行本を借り、全巻をリレー方式で読んでいた四人。

    美「そっか。なら夜までには全員読み終えるかな」

    覚「じゃあそろそろ」

    美「今晩の予定を発表~」

    唯「待ってました!」

    若君「いよいよじゃな」

    トヨ「何かあるんですね。では読書の手を止めお手伝いしないと」

    美「源三郎くんとトヨちゃんは、何もしなくていいの」

    源三郎&トヨ「え?」

    尊「では、発表をお願いします」

    覚「うん。今夜、源三郎くんとトヨちゃんの結婚式を執り行う」

    源&ト「え!」

    美「参列者は、私達に加えエリさんと芳江さん。だから、仕事終わった後になるんで時間はちょっと未定」

    ト「そんな、今日は朝から忙しくされていらっしゃるのに」

    美「お二人のご意向で今日に決まったのよ。早い方がいいし、夜だけど一応、日柄が良い日だし、とも話しててね」

    唯「今日、そうなの?」

    美「大安よ。大安吉日」

    唯「へー」

    尊「さすがにお姉ちゃんでもわかるか」

    唯「いろんな物使い始める時、大安だ仏滅だってよく言ってたじゃない」

    覚「で、芳江さんエリさんはお食事はされないが、ケーキだけは召し上がっていただく」

    唯「入刀するヤツだよね!」

    覚「そうだ」

    唯「今日はドレスではないけど」

    美「まぁ、そのままの格好よね。でもね~」

    美香子が足元から紙袋を出した。中から…

    美「見て!素敵でしょう。エリさんが、この話を聞いてすぐ、サプライズで作ってくださってたの」

    唯「かーわいい!花嫁さんのベール?」

    たっぷりとしたチュール生地で出来ており、髪に装着する部分には造花があしらわれている。

    美「花婿さん用に、お揃いのお花のブローチもあるのよ」

    唯「このお花、布で出来てるんだ。リアル~」

    美「プラスチックよりは布よねって、市販品を探されたらしいわ」

    尊「エリさんすごいな。だって話してからそんなに日が経ってないよね?」

    唯「ほぼ一日とかじゃない?すごーい」

    美「それがね、もうワクワクで、探すのも作るのも、楽しくて仕方なかったからあっという間だったって。着けている二人を想像してね」

    源「言葉が…ありません」

    ト「貴重なお休みの日をお使いいただき…」

    美「勝手に作っちゃいましたとは仰ってたけど、嬉しいわよね。今夜お礼言ってあげて」

    夕方。

    覚「そろそろ、ケーキ受け取りの時間だな」

    尊「今日はどこに頼んだの?」

    覚「駅前商店街の店」

    若「ならば歩いてゆけますゆえ、受け取りに行って参ります」

    覚「おー。ならお願いしようかな」

    唯「私も行くー!」

    覚「じゃあ、何かあった時の為に尊もついてってくれ」

    尊「三人でね。わかった」

    源「痛み入ります」

    尊「二人とも、漫画あとちょっとですよね。ゆっくり読み進めててください」

    ト「はい」

    覚「あー、風呂敷持ってけ」

    尊「エコバッグじゃないんだ?」

    唯と若君と尊で、ぼちぼちと歩き出した。

    若「尊」

    尊「はい」

    若「あの漫画、に、館も激しく揺るがす程の大きな災いが描かれておった」

    尊「地震ですか?大正時代の話だから…関東大震災かな。そう?お姉ちゃん」

    唯「うん、確かそんな名前」

    若「戦もいつ始まるともわからぬが、そのような天変地異にも備えが要ると思うての」

    尊「さすが兄さん。永禄時代に天災がいつあったか、難しいとは思いますけど調べときましょうか?」

    若「頼めるならば」

    尊「わかりました」

    洋菓子店に着いた。すぐに注文したケーキが出てきたのだが、

    唯「デカっ!」

    尊「わー、奮発したんだ」

    ウェディングケーキは、二段重ねだった。箱を風呂敷に包み、ゆっくりと歩き始める。

    尊「車で取りに来てたら、揺れ過ぎて崩れてたかもね」

    唯「だから風呂敷なワケ?」

    尊「袋だと、サイズが合わないと中で動いちゃうからね」

    若「理にかなっておる」

    唯「さすが風呂敷!」

    尊「お父さんじゃなくて、そっちかーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    ぷくぷくさん

    楽しくも、切ない大作をほんとうにありがとうございました。
    毎回どう展開するのだろうと、ワクワクでしたが、もう終わりかと思うと、如古坊同様、私も切なくなります。如古坊の話し方が、いつの間にやら現代語に変わっているなんて、よく自然に仕上げましたね。これだけのものを書き上げるのは、さぞ大変だったことでしょう。 本当にご苦労様でした。

    やはり私も夕月かかりてさん同様、OOOは切ないが浮かびます。
    ありがとうございました。

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    四人の現代Days95~5日12時、大人への階段

    ぷくぷくさん、お疲れ様でした。私だったら、「切ない」かな。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
    もうそんな年齢になるのです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    源三郎とトヨは、覚と美香子にアドバイスを受けながら、様々なポーズをとっていた。それを横目に見ながら、隅に寄り小声で話し始めた唯と若君と尊。

    尊「お姉ちゃん達が来るちょっと前にさ。晩ごはんの時に」

    唯「うん」

    尊「お母さんがボソっと呟いたんだ。広告とか増えてきたから気付いたのかな」

    唯「なんて?」

    尊「来年の今頃、唯に市から、成人式の案内が来るわねって」

    唯「あ…」

    尊「兄さんに説明すると」

    若君「いや、話を進めよ。後で詳しく聞く」

    尊「わかりました。で、今回来た時さ、綺麗な打掛着てたじゃない。あれ、両親すごく喜んでたんだよ。振袖姿並に華やかだったから」

    唯「知らなかった。あれ、なら今日なんで振袖じゃないの?」

    尊「結婚してるでしょ」

    唯「あ、結婚してたら振袖NGだったっけ」

    尊「一般的には」

    唯「袴なのはなんで?」

    尊「これはその時にお父さんが言ってたんだけど、お姉ちゃんさ、兄さんに出会ってなかったら、短大くらい行ってたんじゃない?」

    唯「進路とか全然考えてなかったけど、それもアリだったかも」

    尊「で、来年は短大に進学してたら卒業の時期」

    唯「あー」

    尊「卒業式とか謝恩会でさ、女子の皆さん、袴姿になってるじゃない。その時期は電車内がやたら華やかだよ」

    唯「そうだったね」

    尊「袴もいいな、って二人とも言ってた」

    唯「そっか…」

    尊「だから、袴姿は親孝行なんだよ」

    唯「わかった」

    尊「あのさ、都合良く成人式の時期に来られないか、とか思ってない?」

    唯「ちょっと」

    若「唯、それは」

    尊「そもそも今はタイムマシンの作業してないから。一応受験生なんで。だからごめん、無理」

    唯「すんません」

    若「今の唯を、よう見て貰え」

    唯「うん」

    尊「ところで、兄さんのその衣装ですけど」

    若「ん?」

    尊「その登場人物は兄さんに通ずる所があるって、母は言ってました。だからお仕着せではありますけど、ある意味兄さんにピッタリみたいですよ」

    若「そうなのか」

    尊「漫画に描かれた時代の軍服なんで。ざっくり言えば、国を守る人が着る服です」

    若「なるほど」

    美香子が駆け寄ってきた。源トヨが会釈をしている。

    美香子「ごめんねー、お待たせ~」

    源三郎「お待たせを致しました」

    トヨ「すみません」

    唯「おっ、順番が来たね。じゃあ撮りますかー。たーくん、言い忘れてたけど」

    若「何じゃ」

    唯「超カッコいいよ」

    若「ハハ。唯も実に麗しい」

    唯と若君の撮影が始まった。

    美「漫画から抜け出たみたいね~」

    カメラマン「この衣装、よく撮りますよ」

    美「そうなんですか!」

    カ「一定以上の年齢の方に人気ですね。っと、これは失礼しました」

    美「いえいえ、昔の作品ですから当然です」

    カ「この衣装で、こんなにお若い方を撮るのは久々です」

    美「え、って事は」

    カ「私は、ご夫婦でお召しになるのを撮る機会が多いですね」

    美「ご夫婦…私達位の?」

    カ「それもありますね」

    覚の顔を見る美香子。

    美「…」

    覚「ん?」

    美「ううん、やっぱり忠清くんの方が断然いいわ」

    覚「断然。だよな」

    美「だってお父さんだと、捕虜っぽい」

    覚「おいおい」

    最後は、家族7人全員で。

    カ「弟さん、もう少しお姉さんの方に。ドレスの裾に乗らない程度に寄りましょうか」

    唯の囁き「トヨの弟が尊。うんうん」

    若君の囁き「良いの」

    撮影完了。

    唯「お疲れ~。トヨ、着替えに行こっ」

    着替え中。

    ト「こんなに良くしていただくなど、畏れ多くて」

    唯「たぶんさ、尊が永禄に持って帰れるように写真集作ってくれると思うよ。いつでも見れるように」

    ト「至れり尽くせりですね。…どうかしましたか?」

    唯が、着替えの手を止め、何か考えている。

    唯「私、たーくんと永禄で生きてくって決心した時にね、両親に、今まで育ててくれてありがとうって言ったの」

    ト「…はい」

    唯「それからもう2回も戻ってきてるけどね、ちゃんと娘の成長を見守ってくれてるんだなって」

    ト「それは当然です。今回も、唯様の溌剌とした笑顔が見られて、大変喜んでらっしゃいますよ」

    唯「いつか、私も親になる時が来たら、もっとわかるかな」

    ト「はい。そして、必ず、授かれると思います」

    唯「夢で見たしね。トヨも私もね」

    ト「心待ちにいたしましょう」

    唯「そうだね。楽しみは後からやって来る!」

    ト「ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    5日のお話は、ここまでです。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=15

    ナレ:如古坊はチョコを一つ口に入れ、蓋をして忠清の前に置いた。
    如:「残しておかないと唯に何を言われるか。ははっ」
    若:「ん、ふっ」
    如:「それに幸子さんの写真の時も」
    若:「その折も如古坊は何か思うておる様に見えたのでな」
    如:「ふっ」
    若:「何じゃ?」
    如:「成之に聞いたのだが、お主・・・久し振りにお主と言った。お主は唯をおなごと気づくのは遅かったと」
    若:「出会うた場でも気づかなんだ。小僧と申したからの」
    如:「小僧。その時、レディとは言わなかったか?」
    若:「れでい?・・・それは?」
    如:「いや、こっちの事。で?」
    若:「半信半疑であったのだがの、和議の話をした折に、やはりおなごだと。だが、その場ではお前はおなごであろうとは言えなんだ」
    如:「何故?」
    若:「わしが思うに、おなごだと知られたら、わしの側に居る事は出来ぬと思うたのではと」
    如:「そうかも知れんな。だが、成之は初めて見た時に既におなごだと気づいたそうだ」
    若:「のちに兄上に聞きました。ははっ」
    如:「そうか。実は孝君の父親になりたいと。幸子さんも少なからず私を思ってくれていて、事情を知らない彼女が何かを感じたのか、私とは一緒になれないと言ったのだと聞いた」
    若:「唯が申しておった、おなごの勘は鋭いとな」
    如:「そうだな。怪しいと言われたからな。私は幸子さんと孝君には感謝をしている。このような想いを抱かせてくれた事に」
    若:「この世では辛い思いを皆は持ち出陣し戦うておる。わしは戦で敵味方関わりのう命を落とす者を思い悲しみ、だが、死に急ぐ者には情けをかける事は無いと思っておった」
    如:「それは致し方ない事だ」
    若:「ん。それが戦国の世に生きる者の定めなのだと。その思いだけで生きておったが、わしは唯と出会うて、唯が兄上の元に居った折に、これまでに感じた事も無い感情が芽生えた。民を守る事は大切な事ではあるが、それ以上に唯を守りたい、放しとうないとな」
    ナレ:唯が庵で悪巧みを聞き、戻って来た唯に酒を飲ませた時の事だと気づいた。
    若:「如古坊、如何した?」
    如:「いや・・・忠清は意外と情熱的なのだな。ははは」
    ナレ:笑って誤魔化した。
    若:「ん。唯と共に居り、そう思う気持ちが、ことに大きいと考えるようになった。小垣で唯を守る為、平成に戻るように申した折は、まこと、辛かったのだ。だが、わしは今こうして唯と共に居る事が出来ておるが、如古坊、そなたは」
    如:「あぁ、共に暮らしたいと考えた事も。だが出来ぬ事と。クリスマス会以降は幸子さんに会わずに。二人にこの先、家族が出来たとして、その姿は見たくないと思う。忠清が成之を前にして思った感情と同じだ。まことは今一度、会いたいと思っていたが、会ったとならば私の・・・寂しい気持ちだけが残り、この世に戻ってからも思いが残るだろう。会わずに戻った事は私にとっては良かったのだと今は思う」
    若:「だが、如古坊、寂しいとのその気持ちをも忘れなくとも良いのでは無いか」
    如:「そうか・・・熊田さんの奥さんもその様な事を言っていた」
    若:「如古坊が現代に行ったわけは、わしにも分らぬが、その者との善き思い出は如古坊にとっての宝物じゃ」
    如:「あぁ。だが、この話を唯にすれば、からかわれると思うての」
    若:「それは・・・そうかもしれぬの」
    如:「忠清と話していて、現代での話し方とこの世の話し方がゴチャゴチャになっている」
    若:「話している内に戻るのであろう」
    如:「お父さんもそう言っていた。朱に交われば赤くなると。戻ったと言う事なのだな」
    ナレ:寂しそうな表情の如古坊に、
    若:「であろうが、間違いなく如古坊は平成、令和を生きてきたのだ」
    如:「そうだな。そうだ、宗鶴殿の瓜二つの幸助さんに頂いたオセロゲーム、忠清が言っていたそうだな、このゲームで陣取りが出来たならばと」
    若:「あぁ、その様な戦であったれば、穏やかな暮らしが出来るのであろうと思うたのだ」
    如:「一年過ごし、穏やかな里が良く分かった。私もあの場所で生きていけたならと思ったからな」
    若:「そうじゃの」
    如:「そうだな。それに、お父さんが心配していた高山親子が熊田さん親子のように、高山と羽木も仲良くなったことを喜んでいたよ。私は自分のしてきた事は言えなかった」
    若:「そうか。だが、それで良い。唯も父上、母上には高山との仲違いの話はしておったが、兄上や如古坊の関りは申してはおらぬ」
    如:「唯は、我らの先が見えていたのかもしれないとな。まぁ、それは無いだろうが、唯には感謝している。それに尊は唯を尊敬していると言っていたが、尊に口止めされた」
    若:「わしも聞いたが、唯は褒められるとつけあがるからと申しておったな」
    如:「そう言う事だ」
    若:「だが」
    如:「どうした?」
    若:「何故、その」
    ナレ:肉食系フテ猫Tシャツを指した。自分が気に入ったが着られないので別を尊が見つけて注文してくれたと説明した。
    如:「元のTシャツは尊が唯に贈った物だが、何故、この絵だったのか聞いたか?」
    若:「尋ねてはおらぬが」
    如:「私は気になり聞いた。尊がこの絵を偶然見た時に唯にそっくりだと思ったのだと」
    若:「唯に?」
    如:「あぁ。ソファに寝転んで漫画を読んでいた唯に尊が声を掛けると、面倒臭そうに返事をしたその姿と同じだと思って、洒落のつもりで買ったが結局、唯が着る事は無かったのだと」
    ナレ:如古坊の説明で、忠清はその姿を想像して大笑い。夜中だったと両手で口を塞いだ。
    如:「はははっ」
    若:「のう、如古坊」
    如:「ん?」
    若:「如古坊とさしでこうして話したことは無かったと思うての」
    如:「そうだな・・・いつか、成之と三人で穏やかに話が出来る日が来ればいいの」
    若:「そうじゃの・・・では、そろそろ休むとするかの」
    如:「あぁ」
    ナレ:如古坊が立ち上がるとよろけ、忠清が腕を持ち支えた。
    如:「椅子だったから、こうして長く座っている事も無かったからな・・・あっ」
    若:「さようか」
    如:「あぁ」
    若:「ん?・・・如古坊」
    如:「思い出した」
    若:「ん?」
    如:「逃げて転びそうになった時に誰かに今のように支えられたように身体に触れられた・・・そんな感じがしたが」
    若:「そうであったか。だが、分からぬの」
    如:「そうだな・・・では休むとするか」
    ナレ:それぞれの閨へ。部屋に向かいながら如古坊は支えられた感触を思い出し、戻る時にも同じような感触だった事に気づき、
    如:「本当に未来の尊・・・だったのか?」
    ナレ:部屋でジャケットを脱ぐと、ポケットに白い封筒が。速川家の誰かが入れたのだと思った。
    如:「何だろう?」
    ナレ:畳まれたメモを開き驚いた。そこには【木村三吉様 ありがとうございました 神山孝】と書かれてあり、写真が2枚。
    如:「これは・・・孝君?」
    ナレ:スーツ姿の青年の胸元には如古坊が贈ったネクタイ。もう一枚は隠し撮りの様な写真で、消防士の制服を着た青年が仲間と談笑している。
    如:「どうして・・・本当に?」
    ナレ:覚えのある苗字【神山】
    如:「まさか、祥さん?」
    ナレ:本当に祥だとして、祥の優しさは知っているから、祥と別れる時に奥さんになる人も幸せだと言った言葉を思い出し如古坊は複雑だった。
    如:「そうなのか・・・なれば、おめでとうと言わねばならないのだろう。ふっ」
    ナレ:寂しく笑った。写真についても未来の尊なのかどうかも確かめる方法は無い。如古坊は消防士姿の孝に無事で居てくれと祈り、孝の成長を見られ嬉しい気持ちもある中で、大切な物を失ってしまった感情に涙が零れた。翌朝、忠清を呼び、昨夜の自分の感情は隠し、その写真を見せた。
    若:「これは・・・まさか」
    如:「私にも分からない・・・だが、やはり未来の尊であるのだと」
    若:「手立てはないがの、わしもそうなのではと。だが、この事は唯や他の者にも言わずに。それが良かろう」
    如:「そうだな・・・ことにこの青年の事を唯が聞いてきそうだからな」
    若:「であろうの・・・のぉ」
    如:「なんだ?」
    若:「まこと、尊であったれば・・・」
    如:「どうした?」
    若:「・・・いや」
    ナレ:未来の尊であれば、敵から助けたのだと理解できるが、現代に連れて行った事で如古坊と幸子が出会い、それにより二人に辛い思いを抱かせた事に。先の事も分かっていたはずの尊の行動が忠清には理解できなかった。そう考えている時に尊と話したことを思い出した。唯と二人で永禄に戻る許しをもらった翌日に将棋に誘われた。実験室で将棋の一試合が終わった後、装置を見ていた忠清に、
    尊:『僕は自分の為にこれを作りました』
    若:『過去や未来に行き、その者たちの定めが見られるとは、まこと、大した物じゃ』
    尊:『運命か』
    若:『わしは己の行く末は見とうない。だが、唯がわしと共に居っては・・・』
    尊:『分かります。でも、お姉ちゃんは望んで戦国に行くと決めているんですから。今の言葉を聞いたら、私を置いて行くなんて許しませんって鬼のように怒りますよ。お姉ちゃん怒ると怖いですよ』
    若:『では、唯を怒らせる真似はせんようにしないとな』
    尊:『お姉ちゃんは誰から見ても、若君を想っている事が分かります。でも、僕には誰かが誰かを好きになる瞬間は分かりません』
    若:『科学とやらでも人の心は分からぬのか?』
    尊:『分かる方法の機械はあるようです』
    若:『そうか・・・想い人は居らぬのか?』
    尊:『えっ、あっ、いえ、今は居ません』
    若:『いずれ尊の前にも現れるであろう。ならば、このたいむましんで尊の未来が見てみたいの』
    尊:『それは、遠慮しておきます・・・でも、このタイムマシーンが、お姉ちゃんと羽木の皆さんの運命、歴史を変えたと分かっています』
    若:『それは、我らが生きながらえて居る事』
    尊:『はい・・・さっきの話ですけど、人の心は科学で分かっても、奥底にある物は科学でも分からないんじゃないかって思うんです。人の心は複雑で、相手を怒っていても内心は逆とか、優しくしていても本当は悪いとか。昔から口車に乗ってって言葉もありますが正直、今の僕にはその判断は難しいです。厳しい事を言いますが、誰かが幸せになると誰かが悲しむ。そう言った事は世間ではよくある事だと思うんです。若君の時代の戦もそうですが』
    若:『そうじゃの』
    尊:『でも、悲しみを体験した時に、悲しむ人が前を向けるかどうかで、その人の運命が変わるんじゃないかなって・・・あれ、僕、何が言いたかったんだか』
    ナレ:忠清はその時の事を思い出し、目の前に居る如古坊がこの先どう生きていくのかと考えた。
    如:「どうした?」
    若:「ん・・・如古坊」
    如:「なんだ?」
    若:「如古坊は現代に参り幸せであったか?」
    如:「急になんだ・・・あぁ、わしはあの場に居って幸せ・・・だった」
    若:「ん?」
    如:「いや、善き思い出じゃ」
    若:「そうか、お前は前を向いておるのだな」
    如:「はぁ?・・・なんじゃそれは?」
    若:「何も。これは唯に見つからぬようにの」
    如:「あっ、あぁ」
    ナレ:如古坊は懐に仕舞いその場を離れ、歩いて行きながら、忠清の質問の意味が分からず首を傾げた。その後姿を見ながら、
    若:「尊、この場の様子を見ておるのならば、わしにそなたの思いを聞かせてはくれまいか」
    ナレ:尊の声ではなく、忠清を呼ぶ信茂と唯の声が聞こえてきた。
    若:「わしは、幸せ者じゃ。ふっ」
    ナレ:信茂と唯は我先にと前後交互に動きながら忠清の側に来て、忠清の腕に両側から抱き着き、
    じい:「このむじながのぉ、邪魔だてしおって」
    唯:「むじなって言わないでよ」
    若:「して、どうしたのじゃ?」
    唯:「あれっ・・・じい、何だっけ?」
    じい:「そうじゃ、あははは」
    ナレ:二人して用件を忘れた。
    若:「お主らは幸せ者じゃのぉ、あはは」
    ナレ:先に行く若君の後を着いて行きながら、
    唯:「思い出した。お袋様が食事の用意が出来ましたから呼んで来てって」
    ナレ:忠清はその言葉にまた笑った。如古坊は閨に戻り、みんなには見せなかった写真盾に入った写真。みんなが見たクリスマス会の写真の他にメンバーは同じだが、孝が如古坊の膝の上に座っての写真。尊に頼みそれをUSBには入れず、プリントアウトして写真盾に入れてもらった。裏板を外し、写真2枚も中に入れた。
    如:「これくらい持っていても祥さんは許してくれるだとう、ふっ」
    ナレ:寂しく笑った。すると表から、
    唯:「如古坊、起きて、朝ご飯出来たよ」
    如:「あぁ。今行く」
    ナレ:唯の足音が遠のき、
    如:「お父さん、お母さん、尊、今日も唯は元気ですよ」
    ナレ:そして、みんなの待つ部屋へ行った。

    ナレ:唯はせんた君を使っていて、
    唯:「濯ぎの水換えは面倒だなぁ。ホースがあったら良かったかも。改良が必要だね。戻ったら尊に言わなくっちゃ」
    ナレ:そう言いながら洗濯をしていた。それから、覚達が想像した通り、せんた君とスタート君は信茂のおもちゃとなった。唯と吉乃が使用していない時は、信茂が手拭いを入れてグルグル回して楽しんでいた。あまり激しくすると壊れると小平太に注意され、優しく回していた。スタート君も自分が掃除すると言ってスイッチを入れ動くスタート君を追いかけまわし遊んでいた。それに、信茂には渡さない方が良いと言っていた胡椒玉の拳銃を偶然に信茂が見つけてしまった。中にまだ4つ入っていた。ただのおもちゃだと言ったが、引き金を引いてしまった。それも自分に向けて。信茂はしばらく痛みとクシャミが止まらなかったが、知ってしまった信茂はニヤリと不敵な笑みを。如古坊は嫌な予感がした。それはしばらくして起こった。忠清と見回りから戻った小平太めがけて信茂は引き金を引いた。顔に命中してその場で痛がっているしクシャミも涙も。小平太はクシャミしながら信茂を追いかけ、捕まえるとクシャミしながら怒った。そして取り上げられた。シュンとなった信茂は縁側でシャチのぬいぐるみを隣に置き、ピンクの靴下を履いた足をブラブラさせながら、如古坊に貰ったボールペンで小平太の似顔絵を描き、
    じい:「面白さが分からんとは、堅物は誰に似たのじゃ」
    ナレ:小平太の顔に如古坊がされていた様に目の周りに丸、頬にバツを書き大笑い。その頃、信近は胡椒玉とは関係無い所で派手なクシャミをした。

    =現代=

    ナレ:風が止んだ、顔を上げると如古坊の姿は無かった。
    尊:「行っちゃったね」
    美:「無事に戻れたかしら」
    覚:「大丈夫さ。でも、如古坊さんが此処に来た意味は結局分からなかったな」
    美:「そうね」
    尊:「そうだね」
    美:「あっ」
    覚:「どうした?」
    美:「如古坊さんに、ラジオ体操の第二を教えるのを忘れてたわ」
    尊:「何それ?」
    美:「こっちの話よ。ふっ」
    ナレ:覚と尊が顔を見合わせ首を傾げた。すると、紙が飛んで来て尊の足元に落ちた。
    尊:「何だろう?」
    ナレ:驚きの声を上げた。覚も美香子もその紙を見た。それは写真だった。そこに写っていたのは少し大人びた忠清と唯。そして二人の間に緊張気味の表情の男の子と唯の腕に子の姿、唯は空いている手でピースサイン。

    お読みいただき有難うございました。
    皆様が○○○の中にどのような言葉を当てはめたのでしょうか?
    その様な事を考え【如古坊の楽しくも○○○思い出】を終了いたします。

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    四人の現代Days94~5日11時30分、母の思い

    二つの作品を、コラボレーションしました…勝手ながら。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    源三郎の前に進んだトヨ。

    トヨ「源ちゃん」

    源三郎「…」

    美香子「あまりの美しさに声も出ない?はい、唯と忠清くんは移動開始よ」

    唯「えー」

    若君「行って参ります」

    カメラの準備も整い、源三郎とトヨのウェディングフォトを何枚か撮り始めた。

    尊の囁き「うーん。二人とも戦国時代の人とは思えない」

    美「しっかり源三郎くんの背筋も伸びてるし」

    覚「いい、いいよ~」

    自分のスマホでもバシャバシャ撮る覚。しばらくすると、カメラマンが振り向いた。

    カメラマン「ご両親も、ご一緒にいかがですか?」

    美「両親!あら~。撮ってもらう?」

    覚「おほー。それはお願いしようかな」

    美「尊は?」

    尊「僕は後でいいよ。まずはトヨ姉さん達と、4人で撮れば?」

    美「そうしよっか」

    トヨの囁き「トヨ姉さん…」

    源三郎の囁き「有難いな」

    ト 囁き「うん…」

    その後、尊も入れて5人で撮影。一段落した所に、唯と若君が衣装に着替えて戻ってきた。

    尊「へぇ」

    美「あらん、いい!いいわ~」

    唯「お母さん、これかわいいんだけど、なんのコスプレ?」

    美「ほれぼれしちゃうわ~。二人ともよく似合ってる」

    唯「だからこれなにって」

    美「忍さんと紅緒ちゃん」

    唯「は?」

    美「はいからさんよ~。唯の前髪が眉辺りでパツンと切ってあって、後ろ髪が長くなってたから、これだ!って思って。忠清くんの髪、ちょっと長めだけど、少尉もそんなに短髪ではなかったから」

    唯は、紫に白の矢絣柄の着物に海老茶色の袴。若君は榛色の軍服。帽子も靴も揃っており、サーベルまで持っている。

    覚「確か、大正時代を描いた少女漫画だったよな?まさしく大正浪漫って感じだ」

    唯「マンガのコスプレ?」

    美「家に全冊あるんだけど。読んでないの?あー、少女漫画全然興味なかったものね」

    尊「ちょっと!話は後にしなよ、待たせてるよ!」

    尊の後ろで、源三郎とトヨが立ったまま待っていた。

    美「あらごめんなさい。どうする?もう少し二人で撮る?今回ね、急遽だったからチャペルとかには移動できないのよね」

    唯「そうなんだ。じゃあ、もっといろんなポーズで撮ったら?」

    尊「なら、あれはどう?」

    美「何?」

    尊「源三郎さんなら、お姫様抱っこも軽々とできるんじゃないかな」

    覚「おっ!」

    美「あらん。見たいわ~。出来そう?って聞くのも失礼かしら」

    唯「見たいー」

    若「どうじゃ源三郎」

    源「…はい。では仰せの通りに」

    ト「え、きゃっ」

    ふわりと、トヨの体が持ち上がった。

    美「トヨちゃん、カッチカチになってる」

    撮影小物で手にしているブーケを両手で握ったまま、固まっている。

    ト「源ちゃん…恥ずかしい」

    源「俺もだから。暫く辛抱しろ」

    美「トヨちゃん。源三郎くんの首に両腕を回すと、抱える側が少し楽になると思う。ブーケ持っててあげるわ」

    ト「え!それは近付き過ぎではないですか」

    覚「まあまあ」

    そんな様子を眺めている、唯と若君と尊。

    唯「キレイだな、トヨ」

    尊「お姉ちゃんも、女学生って感じで悪くないよ」

    唯「ほめてくれるの?珍しい」

    尊「お母さんのリクエストに応えるってのは、いい」

    唯「えー?ムチャ振りじゃないの」

    なぜかここで、尊が溜め息をついた。

    若「どうした、尊」

    尊「お姉ちゃんが、やっぱりいつも通りだなって」

    唯「は?」

    若「それはつまり、この装束には深淵な意図があると?」

    尊「少なくともその袴姿には、込められた意味があります」

    唯「そうなの?んー、それって、今聞いてもいい?」

    若「口止めは、されておらぬか?」

    尊「されてません。お姉ちゃんは知っておくべきだと思うし」

    唯「じゃあ教えて。あっちが盛り上がってる内に」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    如古坊の楽しくも○○○思い出=14

    ナレ:如古坊が①のUSBをまぼ兵くんにセット。翌日もその場所に行ったが戻れず、次に期待し、みんなに見せる為にと覚、美香子、木村先生、尊と如古坊で写した。
    信:「若君様に伺っておりましたが、まこと、木村殿に似ております」
    如:「先生は木村様の子孫だと」
    唯:「やっぱり、そうだったのね、納得」
    ナレ:家の手伝いをしている様子。城跡の写真を見せると、その場に行かなかった信茂達は黙ってしまった。
    若:「初めこそ驚いたがの。だが、我々が生きた証が現代にも残されている。そうではないか」
    小:「さようですね」
    源:「ですが、これ程までの立派な石垣が城内に?」
    信:「さよう。何故?」
    じい:「考える事は無かろうて、我らの子孫がこの先、館を築いたのじゃよ」
    唯:「そうだね。若君と私の・・・いやぁん」
    小:「何を申しておる」
    唯:「いいじゃん」
    若:「じいの申す通りだとわしも思うぞ。尊の書物に戦国の世が終わり、太平の世が訪れ、我らの子孫が生き残り、城壁も整えたのやも知れんからの」
    吉:「わたくしもその様に存じます」
    唯:「私たちの未来は明るい!」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:その後、祥の代わりにコテージに泊まった時の写真。ステーキに真っ先に食いついたのは唯。
    唯:「え~、如古坊いいなぁ。凄く贅沢してんじゃん」
    如:「これは祥さんの方で用意をしたんだ」
    唯:「へぇ。でも凄いね」
    ナレ:祥の失恋話は言わずにいた。もし現代に来ることが出来たとして、唯なら祥に根掘り葉掘り聞くだろうと美香子は分かっていたので口止めされていた。
    唯:「でも、どうして代わりに行ったの?」
    ナレ:聞かれた如古坊は困ってしまった。そこで忠清が助け船を。
    若:「あの場に向かう林に似ておるではないかの」
    唯:「そうかも、似ていますよね」
    ナレ:話が逸れた。如古坊は唯に見えないように忠清に頭を下げた。その次はソフトクリームを食べている写真。着ぐるみと一緒の写真。クリスマス会の用意の写真からクリスマス会の様子。
    如:「宗之さんが信茂様を大好きだと言っていましたよ」
    じい:「わしも宗之殿が好きじゃよ。宗熊と同じにのぉ」
    如:「それにこの上着はテーラーに勤めている宗之さんが私にと作ってくれました」
    信:「てら?」
    唯:「洋服を作る人?店?って事ですかね」
    信:「良く分からんが、そうか」
    じい:「着ても良いか」
    如:「はい」
    ナレ:袖を腕に巻くようにしてジャケットを着たが大きかった。
    唯:「なんかお父さんの上着を着た子供みたい。あはは」
    じい:「笑うては・・・もう良い」
    ナレ:脱いで如古坊に返した。
    吉:「唯、その様に申してはなりませんよ」
    唯:「は~い。ごめんね、じい」
    ナレ:信茂は現代で覚えたあっかんべぇをした。
    唯:「何それ」
    ナレ:唯も同じことを。周りのみんなは呆れ顔。
    吉:「唯・・・ふぅ・・・して、如古坊殿の隣に居るおなごとお子は?」
    如:「この親子は・・・熊田さんの知り合いで」
    吉:「さようですか。優しそうなお方ですね」
    如:「はい、優しいですし、この子孝君はとても母親想いで」
    唯:「ねぇ、若君」
    若:「ん?」
    唯:「あの人、ふきさんに似ていない?」
    若:「ふき殿?」
    小:「さようです、ふき殿に似ております」
    如:「ふきとは?」
    小:「若君様の側室にとお迎えしたお方でしたが・・・あっ」
    信:「どうした?」
    ナレ:今まで全く気付かずにいた小平太は、あの時のおなごが唯であることに気づき唯の顔を見た。見られた唯は小平太が気付いたと分かり、言わないでと言わんばかりに首を振った。だが、あの時は唯だったと気づいても、ふきが帰った事と唯の事を結び付けられるまでには至らなかった。
    小:「あっ・・・ですが、何故?」
    ナレ:忠清も二人の様子に小平太も気づいたのだと分かった。
    若:「・・・私に愛想を付かれたのであろう」
    信:「殿に伺いましたが、ふき殿はそのように申してはおりませんでしたぞ。わたくしには勿体のうございますと」
    若:「良いではないか。過ぎた事」
    唯:「そっ、そうですよ・・・・でも、この人、如古坊に寄り添ってない?」
    如:「た・・・たまたまだ」
    唯:「なんかその言い方、怪しいなぁ」
    如:「あっ、いや」
    若:「唯、終わったようじゃ。取り換えてはくれまいか?」
    ナレ:丁度①が終わったので好感を唯に頼んだ。如古坊はチラッと忠清を見た。忠清は軽く会釈。
    ②をセットした。正月飾りの初詣での様子。年明けから怒涛の誕生日会。1月23日は尊。1月31日が唯。2月5日が美香子で3月4日が覚。如古坊は生まれた日を知らないと答えたが、美香子が2月5日と決めた。理由は[にょ]が[2]、[こ]が[5]。尊が坊はと聞くとそれはいいじゃんとなり、2月5日に美香子と一緒に誕生日を祝った。
    唯:「私が居なくても誕生日会してくれたんだ。でも、お母さん、ダジャレで決めるなんて」
    如:「そうだろうが、私は嬉しかった」
    唯:「そっか」
    ナレ:そして、尊の大学合格の話を聞いた後、ステーキを食べる如古坊の姿にまた唯が、
    唯:「え~なんでぇ・・・またぁ・・・戻ったら絶対ステーキ食べるからね」
    吉:「そなたの気持ちも分かりますが、ここは尊殿の合格とやらを祝うのでは」
    唯:「あっ、まぁ・・・尊、おめでとう」
    ナレ:笑顔の尊に向かって言った。それから順番は違うが、水族館の写真が映し出された。
    じい:「如古坊、水族館は楽しいじゃろう」
    如:「はい。とても。信茂様の気に入れたシャチのショーも見ました。迫力に驚きました」
    じい:「そうじゃろう」
    源:「如古坊殿は現代の者と何ら変わりのう様に見受けられます」
    唯:「みんなみたいにカツラ被らないからそう見えるんじゃないかな」
    吉:「そうですね」
    源:「まことに、尊殿とも変わらず」
    如:「でも、この頃はまだ見聞きする事にドキドキしていたんですよ」
    信:「であろうの。だが、良い顔をしておる」
    如:「ありがとうございます」
    ナレ:次の写真に皆が爆笑。正月遊びの羽根つきでの敗者の顔。如古坊は墨で目の周りに丸、頬にバツ。
    如:「羽子板が思う様に振れず、負けてばかりでした。お父さんも負けて口の周りに書かれたのに、それは撮らせ無いと逃げ回って」
    ナレ:その時の様子を思い出して如古坊が笑った。如古坊の嬉しそうな姿に皆も笑顔。そして次の写真に、
    じい:「坂口殿!」
    信:「まことに」
    如:「造園業、植木職人でありました。私も顔を見た時は驚きました」
    唯:「作業しているの見た事あるけど、おっさんに似た人はいなかったと思うけど」
    如:「それもそのはずさ。この業者に頼むようになったのはこの3年くらいだそうだ。唯が戻っている時は頼んでいなかったからな」
    唯:「そうだったんだ・・・でも」
    若:「唯?」
    唯:「カメラで写してるものは端に日付が入っているから、日付が無い物も私でも写した時期は何となく分かるから尊にしちゃ珍しいなって思ったの。」
    小:「何がじゃ?」
    唯:「写真は写した順に並べるんじゃないかなって。1と2がバラバラだなぁって」
    如:「それは・・・尊がUSBに入れるデータを整理していた時に、試しに私に捜査してみないかと。で、何処をどうしたのか、慌ててまた何かしてしまったようで、並べられていた写真がゴチャゴチャになって…でも、尊はこれはこれで面白いと許してくれて」
    若:「そうであったか・・・ふっ、如古坊の慌てふためく様子が容易に想像できるの。ははは」
    唯:「ほんと。あはは」
    ナレ:反論も出来ない如古坊だった。そして、最後に映像が。
    覚:『皆さん、お元気ですか。如古坊さんから写真を見たと聞きまして、無事に戻られたことにみんな喜びました。僕たちにも如古坊さんはこの時代に来た理由は分かりません。それでも皆さんのお仲間の如古坊さんと過ごせた事も僕たちの宝物になりました』
    美:『この映像を皆さんが如古坊さんと一緒に見てくれていると信じています』
    覚:『大丈夫さ』
    尊:『お姉ちゃん、若君、皆さんは僕たちの生涯の友達です』
    唯:「私もその中って変じゃない」
    尊:『あっ、ごめんね。怒んないでね』
    唯:「タイミング良いんじゃん、わざとだなぁ、ははっ」
    覚:『如古坊さんは不安の中で過ごしていたことは分かります。一年はやっぱり長かった。この映像は3月24日に撮影しています。4月28日に戻れると信じて、この映像が無駄にならないことを祈っています』
    尊:『如古坊さんは、僕たちにも、とても優しかった』
    じい:「も?」
    如:「・・・さぁ」
    覚:『若君をはじめ皆さんと会えたことをこれからも僕たちの宝物として生きていきます。楽しい時間を有難うございました』
    ナレ:三人が手を付き頭を下げた。見ているみんなも同じ様に。
    唯:「私にはコメント無し」
    如:「寂しいか?」
    唯:「別に」
    如:「私は一年あの家で過ごして、お前、唯がどれほどみんなに愛されているかが良く分かった。そのあたたかい家で一年も暮らせたことは私にとっても宝物だよ。お父さんたちは何も言わなくても唯、お前は三人の気持ちは分かっていると思っているんじゃないか」
    唯:「まぁね。まっ、お父さんたちが褒められてるみたいで嬉しいな」
    ナレ:尊に口止めされていた尊敬していると言う事を迷った末に言わずにいた。
    如:「私は現代に行った理由もいまだに分かりませんが、行けて良かったと思います」
    唯:「何だったんだろうね・・・まさか、未来の尊の仕業」
    小:「仕業とは」
    唯:「あっ、いえ、悪い意味じゃないよ」
    如:「お父さんもそんなこと言っていたが、尊は違うんじゃないかって」
    唯:「ふ~ん・・・ふぁ~・・・ごめん」
    ナレ:唯は大あくび。吉乃が目をこする唯を立ち上がらせ、
    吉:「夜も更けておりますゆえ」
    若:「そうじゃの。また明日」
    信:「さようですな」
    ナレ:横を見ると小平太に寄り掛かりいつの間にか色紙の飾りを掛けたまま信茂は眠っていた。小平太が信茂を抱え閨へ。唯もフラフラと閨へ。忠清がまぼ兵くんからUSBを抜き取り如古坊に渡し、
    若:「如古坊も難儀したのだな」
    如:「いいえ、とても楽しく過ごせました」
    若:「そうか。お袋殿、すまぬが、ちと湯を沸かしてはくれまいか?」
    吉:「はい」
    若:「お袋殿、この物を使うて」
    ナレ:手動式マッチを渡した。
    吉:「唯より先に使うては」
    若:「構わぬ」
    ナレ:如古坊は仕組みを伝えた。
    若:「こおひいをの」
    如:「眠れなくなるのでは?」
    若:「父上に聞いたのか?」
    如:「あぁ、色々教えてもらっての。私も付き合います」
    若:「良いのか?」
    如:「はい」
    ナレ:吉乃は幕を片付けて、湯を沸かしに襖をあけ部屋を出た。開けた時に風が。
    若:「平成もこの世も風は同じじゃの」
    如:「そうだな。だが匂いが違う」
    若:「ん?」
    如:「此処は草の匂いだが、あの地では時より何処からかカレーの香りがした事もあった。ははっ」
    若:「さようか。父上のかれいも美味であったの。食したか?」
    如:「あぁ、何度も」
    若:「さようか」
    ナレ:如古坊の何度もの言葉に一年という時間を感じた。沢山持たせてくれたレンコンのはさみ揚げも残り五個。
    若:「皆、夕餉を済ませておったのに、よう食べたの」
    如:「そうだな。私は夕飯代わりだったが、あまり食べられなかったな」
    若:「ならば、残りは」
    ナレ:しばらくして、吉乃が湯と湯飲みを二つと、椀に飯を入れ持ってきた。
    吉:「如古坊殿、夕餉はまだなのではと存じますが」
    如:「お分かりで。ありがとうございます」
    ナレ:保温は無いから勿論飯は冷めていたが、吉乃の優しさが嬉しかった。
    吉:「容易に火を熾すことが出来ました」
    若:「さようか。お袋殿も」
    吉:「わたくしは休みます。あっ素頂戴いたします。ではおやすみなさいませ」
    ナレ:吉乃は閨へ。如古坊は飯を食べる前に、瓶の蓋に粉を湯飲みに入れ湯を注いだ。
    若:「香ばしい香りじゃ」
    ナレ:忠清はコーヒーを飲み、如古坊は飯を食べ、そして自分もコーヒーを。
    若:「父上のこおひいとはちと違うが、これもまた美味じゃの。添て、木村先生と会うたのはわしの墓の前だと申したの」
    如:「あぁ。木村先生は忠清の事を知ってから、たびたび手を合わせに行っていたと」
    若:「そうであったか」
    如:「一度、墓の前に案内されたが、私は手を合わせなかった」
    若:「何故?」
    如:「何故も何も・・・確かに450年も経てば、それは分かっている。だが、忠清はこうして私の前に居る。共に生きているとの思いが強くての、手を合わせる気にはならなかった。それを先生に話したら、そうですねと言ってくれた」
    若:「さようか」
    ナレ:如古坊の気持ちを嬉しく思った。
    如:「尊に命を全うするように、自ら命を絶つことはしないでと言われた。私は、勿論、全うすると約束した」
    ナレ:その言葉を聞いた時に忠清は小垣城で、唯が『生きて』と言った事を思い出していた。
    如:「忠清?」
    若:「そうじゃの、唯や尊が我らの命を長らえてくれたのだからの。我らは全うしなくてはの」
    如:「あぁ。そうだ、忠清、芳江さんの事を聞きました」
    若:「芳江殿」
    如:「あぁ、忠清の助言で心を決めて嫁がれたと」
    若:「そうであったか。唯とわしが永禄に戻る前にの、芳江殿が崛起糸申し菓子をこしらえて持ってきてくれたのだが、よう笑う者であるに、何やら仔細があるように思えての話を聞き、わしの思いを話したまでじゃ」
    如:「それが良かったそうだ。それから嫁ぎ先のメロンを私は食べたが、甘くて美味かった」
    若:「ん?・・・めろん」
    如:「果物です。翌日に戻れるのであれば持ち帰る事も。だが、時期が違って」
    若:「さようか、残念じゃの」
    如:「唯の好物だと。だからそれを言えば何を言われるか分からないからな」
    若:「そうじゃの、わしも黙っておこう」
    ナレ:忠清は唯の閨の方角を見て微笑んだ。如古坊はもう一杯飲もうと湯を注いだ。
    如:「祥さんの時にも話を逸らしてくれて」
    若:「申せない事のように思えての」
    如:「お母さんから口止めされていて」
    若:「さようか」
    如:「忠清は口が堅いから。祥さんは結婚を決めた女性にフラれてしまって、予約も用意も整っていたので、行ってくれないかと頼まれたんだ」
    若:「そうであったか」
    如:「あぁ。その者は優しい人で、いい人が現れると信じています」
    若:「そうじゃの」
    ナレ:忠清ももう一杯と湯を注いだ。

    如古坊の楽しくも○○○思い出=15へ続く
    予告の際は14回で終わるはずでしたが、なんやかんやと増えて、1回追加となり
    次の15がラストとなります。

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    四人の現代Days93~5日11時、父の思い

    血が繋がっていても、いなくても。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    写真館へ、車二台で出発。

    唯「お母さん、ワンピースなんだ」

    美香子「車運転するしね。トヨちゃんの衣装を一緒に選びたいから、着替える時間が惜しくて着物はやめたわ」

    到着後、女性陣が早速、ドレスの衣装部屋に入る。

    トヨ「目が眩む程の…」

    美「悩むわよね~」

    唯「急に言われて決めろって困るよね。壁にいっぱい写真が貼ってあるから見てみたら?」

    ト「はい」

    モデルが着用する写真を見ていくトヨ。

    ト「あら、これは」

    唯「いいのあった?あー、なるほど!」

    美「トヨちゃん、そのスカート気に入ってくれてるものね。その形なら、あっちにコーナーあるわよ」

    何着か見繕っていたが、

    ト「このお衣装が気になります」

    唯「だったら着てみよう!」

    早速試着するトヨ。

    美「あらぁ。すごくいい!自分に何が似合うかを、よくわかってるのね~」

    唯「なんか、トヨ!って感じ」

    ト「お恥ずかしい」

    美「他を試す?」

    ト「いえ。こちらをとても気に入りましたので」

    美「そうね。ホントによく似合ってるわよ。何て言うか、こう表現するとトヨちゃんは嫌がるかもしれないけれど、充分大人の女性が着るからこそ、しっくりくるドレス」

    唯「うん、わかるぅ~」

    ト「今のわたくしだから良いのですね。嬉しい」

    その頃、男性陣はタキシードを選んでいた。

    覚「忠清くんの時みたいに白とか、あとグレーとか色あるけどな」

    源三郎「このように煌びやかないでたちなど…」

    尊「じゃあ黒?」

    源「まだそれでしたら…」

    覚「遠慮がちだね。照れてるのかい?君も主役だよ?」

    若君「何事も経験じゃ」

    覚「その通り。じゃ、着てみような」

    覚と尊で選んだ、黒のタキシードを試着した源三郎。

    若「なかなか良いぞ」

    源「お恥ずかしい限りでございます」

    覚「どうした、背筋が伸びてないぞ?隣に立つトヨちゃんは、きっと目を見張る程美しいと思うから、ちゃんとエスコートしないと」

    源「エスコート、ですか?」

    尊「えーと、付き添うとか、守るとかかな」

    若「それは、源三郎が最も得意とする所ではないか」

    覚&尊「確かに」

    そこに、美香子が様子を見にやってきた。

    美「あら、いいわね。こちらもよく似合ってる」

    覚「トヨちゃんの方はどうだ?」

    美「決めたわよ。今アクセサリー選んでる」

    尊「え、もう?」

    若「やはりトヨは仕事が早い」

    美「なーんか、背中が丸いわね」

    源「華やいでおるのは、分不相応でございますゆえ」

    美「まぁ、ドレス姿のトヨちゃん見れば、背筋もピーンと伸びる筈よ」

    覚「おー、そんなにか」

    美「楽しみにしてて。支度完了なら撮影室に来てね」

    いよいよ源トヨの撮影に入る。源三郎は既に待機しており、トヨの支度待ち。

    唯「源三郎、ネクタイもベストもすっごくいい感じ。王子様みたい!カッコいい!」

    源「褒めていただくなど…」

    美「いいわねぇ。あ、二人揃ったら、唯と忠清くんは着替えに行くわよ」

    唯「えー、撮る所見れないの?」

    美「全員の写真も後で撮るから。あ、来たかな?」

    店員「花嫁様、入られます」

    覚「おー」

    尊「わぁ」

    若「うむ」

    源「…」

    ゆっくり入ってきたトヨ。ドレスの襟元は少し立ち上がったスタンドカラー。袖も長くほとんど肌が出ていない。細身に作られてはいるが、全体に豪華な刺繍が施されている。そのスカート部分が…

    尊「今日穿いてたスカートに似てるね」

    覚「大人の女性、だな」

    美「いいでしょ、このマーメイドライン」

    太もも辺りからくびれて細くなり、膝下からは潤沢に布地が使われ、裾まわりは波打つ程になっている。

    覚「綺麗だ。うんうん…」

    美「え、お父さん、泣いてる?!」

    覚「娘をもう一人嫁に出すかと思ったら、こみ上げるものが」

    ト「お父さん…」

    覚「わー、そんな風に声かけられたら、涙が止まらないよ」

    尊「源三郎さんを差し置いて感動しまくってる。いい話だけどさ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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