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    過去&永禄&現在⑬

    ナレ:祥は幸子に連絡をして、孝と二人きりで話がしたいと銭湯に誘った。
    幸:《銭湯ですか?》
    祥:「はい。孝君は銭湯に行った事は有りますか?」
    幸:《一度もありません。アパートの近くに以前は在りましたが、私たちが越した頃に廃業したので行く機会はありませんでした》
    祥:「そうですか。うちの近くに在るので、男同士裸の付き合いで腹を割って話したいと」
    幸:《そうですか。ですが、今の状態で行くとは考えられません》
    祥:「手強いですね。でも、俺は二人を幸せにしたいと、孝君の頑固には勝てるつもりです」
    幸:《分かりました。話してみます》
    祥:「はい。宜しくお願いします」
    ナレ:その日は日曜日、翌日も休みなので、孝と幸子は泊りがけで実家に来ていた。孝と亮二がテレビゲームをしていた。孝はいつものように元気だった。母紗千江に祥の提案を話した。
    紗:「そうなの。でも、あなたから聞いていた孝君の様子、此処ではいつもと変わらないのには驚いたわ」
    幸:「そうね。私も驚いたわ。私とは話さないのに」
    紗:「それだけ、気を使う子なのよ」
    幸:「私の責任ね」
    紗:「あなただけじゃないわ。私達の責任の方が重いわよ。だから尚更、孝君には幸せになって欲しいと思うのよ。祥さんであれば二人を幸せにしてくれるとお父様も言っていたわ」
    幸:「そうね。私もそう思うわ。でも」
    紗:「此処は祥さんにお任せして」
    幸:「えぇ」
    ナレ:ゲームが一段落した時に孝を呼んだが幸子の側に来ようとしない。紗千江は幸子の耳元で、
    紗:「この頑固さはあなたに似たのね」
    幸:「そうかしら?」
    紗:「そうよ。孝君、お母さんが話があるそうよ」
    亮:「孝が考えていることをお母さんに言わないと、お母さんだって分からないんだぞ。お前は男だ、女性を泣かせることをしちゃいけないんだよ」
    紗:「あなた、そう言っても」
    亮:「まぁそうだが、孝は分かってくれるよ。なっ、孝」
    ナレ:亮二に背中を押されゆっくり幸子の元へ歩いて行った。
    幸:「孝は何を怒っているの?」
    孝:「怒ってない」
    幸:「私には怒っているようにしか見えないのよ。怒っていないのなら、孝が思っていることを話してくれないかな?」
    孝:「・・・・・」
    亮:「孝だって言いたい事あるのに言えなくて苦しいんじゃないか?」
    紗:「そうよ、お母さんも孝君の言いたい事を受け止めてくれるから」
    孝:「・・・・・」
    幸:「孝、何でも良いのよ言って。もし、祥さんとの結婚が嫌なら、嫌と言ってくれていいのよ。三吉さんにはもう会えないと話したでしょ。それでも孝の心の中に三吉さんが居る事も祥さんは分かっているから」
    孝:「・・・お母さんとお兄ちゃんが結婚したら・・・僕・・・要らないんでしょ」
    幸:「えっ?」
    紗:「何を言っているの孝君。要らないわけないじゃないのよ」
    幸:「そうよ。どうしてそんな事を?・・・あっ」
    紗:「幸子?」
    幸:「あの話を理解していたの孝?」
    亮:「何だね?」
    ナレ:幸子が理由を話した。孝が小学校に上がる頃、幼稚園の同じ組の男の子の母親が再婚した。昨年、再婚相手の間に子供が生まれた。その頃から息子が反抗的になったとその母親から相談を受けた話を孝も側で聞いていた。母親の話では生まれたばかりの妹の側にも寄り付かず、何か頼んでも言う事を聞かない。赤ちゃん返りの様子もない。
    幸:「息子さんが言っていた事、妹のなっちゃんが可愛いんだ僕なんか要らないんだと言って、彼女は息子さんの頬を叩いてしまったと話していたの」
    紗:「その子、寂しかったのね」
    幸:「分かっていたはずなのに手を挙げてしまったと。もしかして、孝、あなたもそう思うの?弟か妹が出来て、自分が要らないと思うの?」
    孝:「だって」
    幸:「私は正直どうなるか分からないけれど、祥さんは孝を大事にしてくれると思うのよ」
    紗:「あなたったら」
    幸:「孝に目を向けられない事も」
    亮:「ここは祥さんに任せてみないか?・・・丸投げって事じゃにからな」
    紗:「分かってるわよ。私も、それが良いと思うから」
    幸:「孝、祥さんが男同士手で話がしたいと言ってくれているの、お受けしてもいいわよね」
    孝:「・・・うん」
    ナレ:早速、祥に連絡した。孝の様子の理由を伝えた。
    祥:《そうだったんだ。理由が分かれば、話しやすいから。じゃ、善は急げで今週の金曜日の夜に連れて行っていいですか?》
    幸:「はい。お願いします」
    祥:《じゃ、うちで夕飯食べてからって事で》
    幸:《分かりました。では、仕事終わりに伺います」
    祥:《待ってます。ご両親によろしくとお伝えください》
    ナレ:電話を切った後、祥は金曜の夜に二人が来ることを話した。
    亮:「本当に、神山にそっくりな男だな。仲間内では一番優しい男だよ。私も安心だよ・・・あっ」
    幸:「お父様?」
    亮:「孫の取り合いになるって話していたんだ」
    幸:「お父様ったら」
    ナレ:亮二は孝を抱き上げ、
    亮:「神山のお祖父ちゃんと遊ぶのを10回なら、私とは100回遊ぼうな」
    ナレ:孝は一先ず頷いた。
    紗:「あなたったら、孫に気を使わせて呆れましたわ」
    ナレ:幸子も苦笑い。

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    過去&元禄&現在⑫

    =過去 2021年 正月=

    ナレ:眠っていた祥を文字通り叩き起こし、
    佳:「いつまで寝ているのよ、新しい年になったんだから、あなたも新しくなりなさいよ!」
    祥:「新しくって、意味わかんない」
    佳:「正月なのよ、正月早々寝坊なんて1年の始まりなのよ、起きなさい!」
    ナレ:佳津子は掛け布団をはがした。
    祥:「分かったよ、起きるよ」
    ナレ:嫌々起きた祥はパジャマのままで1階に。テーブルにはお節料理のお重とお屠蘇セットが。二人は着物姿。
    と:「休みだからってなぁ、パジャマは無いだろうよ」
    祥:「誰も見ていないんだし、まぁ、いつもの事だし」
    と:「まぁ。じゃ、来年からは着物とは言わないが、パジャマは無しにしろよな」
    祥:「わかったよ」
    ナレ:着かえず椅子に座り、
    祥:「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
    ナレ:挨拶して手酌で酒を注ぎ飲んだ。
    佳:「呆れたわね。で、今年はどうするの?」
    祥:「どうするって何を」
    ナレ:そう聞いた祥だが要件は分かっている。孝の誕生日会の日の夜、砕けちゃうかもと言っていたにもかかわらず、どうなったのか何も言ってこない息子にヤキモキしている事を。当の祥も行動できずに立ち止まっていた。幸子から何も言ってこない事で、それが答えなのかと考えた祥は幸子にLINEすら出来ずにいた。
    祥:「あぁ、砕けちゃったかもな」
    と:「私から小路に聞いてもいいんだぞ」
    祥:「子供じゃないんだから、それはやめてくれよ」
    と:「ん。明子さんが言っていたが、彼女の心に誰か居るって、お前がグズグズしているのは、もしかして、その相手お前知っているのか?」
    祥:「グズグズって。まぁそうだけど。それに相手の事も俺も知ってるし、もう会えない人だし」
    佳:「何それ、意味わからないわよ」
    祥:「もぉ良いじゃん、俺、見合いする」
    ナレ:投げやり気味に言った祥に、
    と:「情けない男だよ」
    祥:「正月早々、そんなこと言われたかないよ。自分が一番分かってるんだからさ」
    ナレ:その言葉に二人は何も言えなかった。いつも明るい正月が今年は静かな元日となった。しばらくして、
    祥:「父さん、母さん、ごめん」
    ナレ:としをはニコニコしながら祥の頭をなでた。
    佳:「じゃ、これから初詣に行きましょ。そこで神頼み」
    祥:「分かった」
    ナレ:三人揃って出掛けた。

    ナレ:近くの寺でお参りを済ませ、家に戻った祥は意を決し幸子にLINEを。【明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします】
    祥:「シンプル過ぎたかな。イラストとかにした方が良かったかな」
    ナレ:着信に喜んだが別の人物。イラストオンリーの内容。相手は仲間内の横瀬だった。独身は祥とこの横瀬だけ。
    祥:「俺とこいつだけか。は~」
    ナレ:年頭の挨拶を返信して直ぐ既読でまた着信。【年初めの飲み会、他の連中、奥さんの用事で来月にしないかって言ってきたけど なら、二人で飲むか?】
    祥:「そうだったな。暇なのは俺と横瀬だけなんだな」
    ナレ:返信で【了解  お前の方で日程、店は決めて良いよ あとで教えてくれ】。直ぐに動く絵文字が返って来た。ノックがの音がして佳津子が顔を出した。
    佳:「お汁粉食べる?」
    祥:「食べる。餅二つね」
    ナレ:佳津子の後から部屋を出ようとした時にLINEの着信の音。横瀬だろうとゆっくりスマホを見ると相手は幸子だった。
    祥:「えっ!」
    ナレ:そこには年頭の挨拶と富士山をバックに小路亮二達との写真が貼り付けてあった。
    祥:「富士山か」
    ナレ:祥は直ぐに返信した【楽しまれていますね。皆様にもよろしくお伝えください】。直ぐに【有難うございます。伝えます】。祥は今はこれだけで幸せな気持ちになった。

    =過去 2021年 1月4日=

    ナレ:祥は正月明け5日からの営業の為、店で用意をしていた。元日に幸子からのLINEはあったがそれっきりだった。
    祥:「旅行かぁ、そう言えば家族旅行っていつ行ったっけ?」
    ナレ:祥の祖父、としをの父親が昔、この場所で理髪店を営んでいた。としをは理容の道には進まず会社勤め。祥は小さい頃から祖父の事が好きで、仕事姿の祖父を見ていて、祥も祖父と同じ道に。祖父は祥が専門学校に通っている頃に他界した。理容学校を卒業して、直ぐに独り立ちをしないで他の店で修業するようにと、としをに勧められ、祖父の弟子だった人の店で3年働き、戻って休業していた店を再開した。再開してからも休日返上で腕を上げる為、勉強に励んでいた。たまには友達と飲むことはあったが旅行は無かった。
    祥:「二人とも、何も言わなかったな。今度、何処かに連れて行くか」
    佳:「なに?」
    ナレ:急に顔を出したので驚いた。
    祥:「驚かすなよ」
    佳:「別に驚かせて・・・やっぱり驚くかな」
    祥:「意味わかんない」
    佳:「いいから来なさい。お客さんよ」
    祥:「誰?」
    佳:「いいから」
    ナレ:祥の腕を引き母屋へ。
    祥:「えっ!」
    佳:「ほら、驚いたでしょ」
    ナレ:そこには幸子と孝が居た。
    幸:「明けましておめでとうございます」
    祥:「あっ、はい。明けましておめでとうございます」
    佳:「お土産を頂いたのよ」
    祥:「ありがとうございます」
    ナレ:正月の用意をしている時に小路亮二は思い立ち、山梨に行くと言い出した。その場に居た明子にも声を掛けたが、やはり急の事も有り都合がつかないと断った。
    佳:「京都木さんは家族水入らずと遠慮なさったのかも」
    幸:「そうだと思います」
    ナレ:幸子は物心がついた頃から両親と年末年始をゆっくり過ごす事は無かった。紗千江の実家は山梨で姉夫婦がワイナリーを営んでいる。紗千江も行事以外は実家に出向く事は無かった。ワインは送ってくれている。亮二の提案に心配をかけていた詫びとワインの礼の為に行くのは良いだろうとみんなは承知した。早速、紗千江が連絡をすると姉は驚いていたが喜んでくれた。
    と:「飲み会の時に言っていたな、国内外のワインを飲んでいるが、妻の実家のワインが一番、自分に合っていると」
    幸:「父もそう申しておりまして、ご無沙汰しているのにと言いましたら苦笑いを」
    と:「そうですか。でも、小路は嬉しかったと思いますよ」
    幸:「はい」
    佳:「じゃ、そのワイナリーに行ってみたいわね」
    幸:「では、母に伝えておきます。いつでも仰って下さい」
    佳:「ありがとうね」
    幸:「伯母の家にお泊り頂いて、ゆっくり観光なさったら良いかと」
    佳:「まぁ、日帰りになると思うから」
    幸:「いえ、遠慮なさらずに」
    佳:「いえ、良いのよ。だって、この子にご飯作らないと」
    ナレ:祥の顔を見て笑った。
    祥:「別に、どうにでもなるよ。ゆっくり旅行も出来なかったから、お言葉に甘えて。勿論お礼はしますから」
    と:「そりゃぁ、当然だろう」
    ナレ:祥は日ごろの感謝に自分が負担するからと言った。
    と:「じゃ、贅沢させてもらおぅかな」
    祥:「あのぉ、限度ってのが有るんだからね、そこんとこは分かってよ」
    と:「はいはい」
    ナレ:二人のやり取りを笑顔で見ていた。
    祥:「ほら、幸子さんが呆れてるだろ」
    幸:「いえ。私は素敵なご家族だと」
    と:「あなただって、幸せでしょ」
    幸:「はい。少し前までは不幸は自分が蒔いた種だと諦めていました。ですが、ある方に出会って、私と孝が幸せの方へを歩いて行けたように思います」
    佳:「えっ?」
    幸:「いえ」
    ナレ:祥はその相手が如古坊の事だと分かっていた。
    幸:「あの、祥さんにお話があって」
    祥:「俺に?」
    幸:「はい」
    祥:「では、店の方で」
    ナレ:その様子に佳津子が、
    佳:「暖房点けて無いから、此処でね。ねぇ、孝君、前に食べたケーキ屋さんが今日から営業なのね、ケーキ買いに行かない?」
    と:「私もたまにはいいかな。孝君行こう」
    ナレ:三人は出掛けた。
    祥:「話って?」
    幸:「両親に三吉さんの事を話しました。孝が父親になって欲しいと願っていたことも。そして会えない事も」
    祥:「そうですか。で、ご両親は?」
    幸:「もう会えないと知って驚いていましたが、私が生涯その人を想っている事も知った上で、私を受け止めてくれる人が居ると話しました」
    祥:「えっ」
    幸:「父も母も直ぐに神山さんの息子さんだと、祥さんだろうと」
    祥:「お見通しだったんだな」
    幸:「父が、祥さんはお前がその人を想う事を承知で受け止めてくれる。その言葉に甘えているのか。甘えているのならば祥さんに失礼じゃないかと」
    ナレ:祥は話の流れで、もしかして承知してくれていないのかと。
    祥:「でも、俺はそれでも構わないって話したのでしょう?」
    幸:「話しました。父も母も、私の気持ちが変わらないのあればお断りした方が良いと」
    祥:「それは分かりますが・・・幸子さんは?」
    幸:「私は・・・私は、数日だけの人ですが今でも心に思いが残っています」
    祥:「それは俺だって、何度か店に来てくれただけですが、今でも俺の中に彼が居ます。それは幸子さんと同じだと思っています。そうでしょ」
    幸:「はい」
    ナレ:そう返事した後、二人とも何も言わず時間が過ぎた。すると突然、祥は立ち上った。その反動で椅子が倒れた。幸子は驚いて立ち上がると、祥が幸子を抱きしめた。思いもよらない行動に驚き離れようとした幸子を、祥はギュッと強く抱きしめた。
    祥:「俺は幸子さんの過去も想い出も全部受け止める覚悟は出来ています。だから、俺と結婚して下さい」
    幸:「神山さん・・・良いのですか?」
    祥:「良いも何も、きっと運命なんです。そうです、俺と出会うのが運命なんです。幸子さんと孝君と家族になる事が俺の生まれた意味なんです。運命なんです」
    ナレ:変に思われたかなと思っていたが、幸子が自分の腕を祥の背中に回し抱き締めた。
    祥:「幸子さん・・・ん?」
    ナレ:横を見るととしをと佳津子がニコニコしていた。二人は離れた。
    祥:「あっ、えっ、いつから?」
    都:「過去も思い出もから」
    佳:「キザな事を言ってたわねぇ。運命連呼で。ははは」
    祥:「ただいまくらい言ってよ」
    佳:「言ったわよ」
    ナレ:だが孝は複雑な表情。
    幸:「孝?」
    孝:「帰ろうよ」
    ナレ:孝は幸子の腕を引いた。
    祥:「孝君?」
    ナレ:孝は返事すらしない。
    幸:「孝、お返事は?」
    孝:「・・・」
    祥:「良いんですよ」
    佳:「ケーキ持って帰ってね」
    ナレ:箱を幸子に渡した。
    幸:「すみません。お邪魔しました。神山さん」
    祥:「はい?」
    幸:「連絡します。では、失礼します」
    ナレ:二人は帰った。
    佳:「子供には刺激が強かったかしらね」
    祥:「声掛けてくれれば良かったんだろうに」
    と:「ただいまって言ったぞ」
    祥:「あぁ、まっ」
    佳:「ショックだったのね」
    と:「そうかもな」
    ナレ:その夜、幸子から連絡が来た。
    祥:「孝君の様子は?」
    幸:《車の中も、夕食の時も一言も話してくれません。先程やすみましたが、おやすみも言わずに寝ました》
    祥:「そうですか。お母さんを取られるようだと思ったのかも知れませんね」
    幸:《そうなのかどうかは、私にも分かりません。いっそ、怒ってくれた方が》
    祥:「そうですね。あの場でも俺に怒ってくれた方がとも思います。孝君、どんな気持ちなんだろう」
    幸:《はい。しばらくは、そっとしておいた方がと思うのですが》
    祥:「そうですね」
    ナレ:電話を切った後、佳津子たちに話した。
    佳:「孝君って大人びているのは、きっと育った環境で、自分の気持ちを押し殺す術を覚えてしまったのかも知れないわね」
    と:「そうだったら、寂しくないか?」
    佳:「そうね。で、あなたはどうするつもり?」
    祥:「取り敢えず、様子を見る事にしようって。方法を俺も考える時間が欲しいけど。まぁ、長くならない様には考えてるけど」
    と:「そうだな」
    ナレ:一週間は行動を起こさず過ごした。その間、幸子から報告はあったが何ら変わりない様子だと。幸子は孝が此処まで頑固だと思わなかったと。祥は考えた方法を実行するため行動に出る事にした。

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    過去&元禄&現在⑪

    =過去 2020年12月24日=

    ナレ:亮二達は22日に祝いたかったが、幸子にわざわざ早退させず冬休みになってからと言われその通りにした。支度が出来た頃、幸子と孝が到着。ツリー下のリボン付きの箱の山。
    幸:「お父様」
    亮:「今までの分。今回だけだ許してくれ」
    ナレ:両親の気持ちも分かるが苦笑い。今回だけだと許した。そこへケーキの箱を運んできた明子に、
    幸:「すみません」
    明:「いいえ。この様な・・・お嬢様と孝君の・・・嬉しゅうございます」
    ナレ:明子は感激していた。
    幸:「明子さん、有難うございます」
    ナレ:幸子の言葉を聞いて亮二と紗千江も明子に頭を下げた。
    明:「旦那様も奥様もその様な事なさらないで下さい」
    ナレ:お互いに頭を下げている姿に孝が、
    孝:「おじいちゃんたち何してるの?」
    亮:「ありがとうって事だよ」
    ナレ:そこへ呼鈴が鳴り、明子が玄関へ。あの頃、幸子と明子がこの屋敷から居なくなった後、一人お手伝いを雇ったが長続きせず、亮二達はどれほど明子が優秀なお手伝いであったか身に染みて感じていた。それから誰も雇う事はせず、雑用は運転手の森園に頼むようにしていた。幸子が両親と会うようになった頃にその話を聞いた明子が時々だが手伝うようになっていた。
    祥:「京都木さん」
    明:「いらっしゃいませ。しばらく前からはまた働かせて頂いておりまして」
    祥:「そうですか」
    明:「お待ちしておりました。どうぞ」
    ナレ:中へ通され、祥は幸子がお嬢様だとは知っていたが、屋敷の大きさやリビングの調度品の豪華さに驚いていた。幸子が側に来て、
    幸:「今日はありがとうございます。父と母です」
    ナレ:豪華な物が凄すぎて両親の顔を見るまでにはなっていなかった祥が二人を見て驚いた。
    亮:「あなたは」
    祥:「あの時の・・・幸子さんのご両親でしたか」
    ナレ:亮二が祥と会った時の話をした。
    亮:「神山のご子息で・・・面接の」
    祥:「面接?」
    亮:「いえ、こちらの事です。どうぞお座り下さい」
    ナレ:みんなが揃い、誕生日とクリスマスパーティーが始まった。隅にあるプレゼントの山を見た祥は驚きながらも、孫の初めての誕生日をとても楽しみにしていたことが読み取れ、微笑ましく思い、車に置き忘れたプレゼントを持って来なくて良かったと思っていた。帰り際に渡せばいいかなと考え、取りに戻る事はしないでいた。
    亮:「プレゼントは全部、孝にだよ」
    ナレ:孝は箱を二つ抱え戻って来た。
    孝:「ありがとう」
    紗:「孝ちゃん、遠慮しなくてもいいのよ。みんな孝ちゃんのプレゼントだから」
    孝:「僕、これとこれが欲しいんだ」
    亮:「だが、箱だけでは中身が分からないからな、みんな開けて良いんだよ」
    孝:「ううん、おじいちゃんとおばあちゃんが僕にくれる物はみんな好きな物だから」
    ナレ:としをがその様子を見ていて、
    と:「孝君は、本当、祥より大人だと思うよ」
    祥:「まぁ、否定できないけど。俺だったら全部貰うかな」
    亮:「本当に良いのかい?」
    孝:「うん」
    ナレ:孝は幸子に開けて良いかと聞いてから丁寧に包み紙をはがして箱を出した。有名なゲーム機とゲームソフトだった。
    孝:「お母さん」
    紗:「ゲームは好きじゃなかったかしら?」
    幸:「好きとか嫌いとかではなくて、孝はまだこういったゲームをした事が無くて」
    紗:「そうだったのね。他に何か?」
    幸:「大丈夫よ」
    と:「じゃ、お前、一緒にやってあげたらどうだ」
    祥:「えっ、あっ、そうだね。孝君、今度一緒にやろうね」
    孝:「うん」
    ナレ:もう一つの箱にはヒーローのフィギュアが3体入っていた。
    幸:「孝、良かったわね」
    孝:「うん」
    亮:「喜んでくれるか?」
    幸:「孝はこのアニメが好きなので」
    亮:「良かった」
    ナレ:その後は孝も祥も豪華な料理を頬張っていた。そして、孝が目をこすり始めた。
    幸:「孝、眠くなった?」
    孝:「うん」
    ナレ:孝をソファで横になるよう促した。孝は横になると程なく寝息を立てた。
    幸:「はしゃいでいたから疲れたのね」
    ナレ:祥は孝のはしゃぐ姿は一般的に子供がはしゃぐの半分にもならないと思いクスッと。
    と:「どうした?」
    祥:「何でもない」
    幸:「お父様、私、明日も仕事なのでそろそろ」
    亮:「あっ、そうか。だが、今夜は泊まるかと。だったら、明日早く出掛ければ良いじゃないか」
    幸:「早番なのよ」
    亮:「眠っているのを起すのはかわいそうだ。ならば、孝だけでもこのまま」
    幸:「ごめんなさい。孝もお友達のお宅でクリスマス会があるの。今日は帰ります。また今度、泊まりに来ますから」
    亮:「そうか。では、送らせよう。明子さん、森園を呼んでくれ」
    ナレ:亮二は幸子の都合も聞かず泊まらせるつもりで森園に迎えに行かせたので、幸子自身の車は無い。
    と:「良かったら、息子に送らせますよ」
    幸:「それでは」
    亮:「そうだな。送ってもらいなさい。祥さん、よろしくお願いしますね」
    祥:「あっ、はい。送り届けたら迎えに来るよ。それまで父さん待っていてくれ」
    亮:「神山は我が家の車で遅らせるから心配しなくてもいいよ。もう少し話していたいからね」
    と:「そうだよ。気を付けてな。あれ、忘れずにな」
    祥:「あぁ。では父の事、よろしくお願いします」
    ナレ:祥は眠っている孝を負んぶして表に。紗千江と明子が折詰めした料理を幸子に渡した。明子が孝のプレゼントを持ち、車に積み三人を見送った。
    亮:「では、続きを」
    ナレ:としをの空いたグラスにワインを注いだ。
    亮:「合格だな」
    と:「ん?」
    亮:「神山が言っていただろう。私は祥君なら幸子と孝を幸せにしてくれると思ったよ」
    紗:「主人の言う通りです。私も彼なら」
    と:「そう言っていただけるのは嬉しいのですが、私が言っては息子に叱られますが、優柔不断な所が有りますからね」
    明:「そうですか。私は頼りになる息子さんだと思いますよ。お二人を大切にして下さると」
    と:「なんだか私が照れますね」
    明:「ですがこの場で賛成していても、当のお二人が」
    と:「そうですね。出会って時間も経って、息子も当たって砕けるとか言っていても、一向に砕けにも行かないで、妻とヤキモキしているのでね。見守るしかないのかと嘆いています」
    明:「ですが」
    紗:「どうしたの?」
    明:「はっきりとは。ですが、幸子お嬢様には誰か心に秘めた方が居られるようです」
    紗:「好きな人が?」
    明:「私はそう感じました」
    亮:「誰なんだね?」
    明:「どなたなのかは皆目」
    亮:「そうか・・・やはり、見守るしかないのかね。だが、孝も欲が無い」
    ナレ:残されたプレゼントの山を見た亮二に紗千江は、
    紗:「私たちの元で育ったならば、全て自分の物にしていたかもしれませんね。ふっ」
    ナレ:その笑いに亮二は苦笑い。
    明:「では、旦那様、寄付をなさったらどうかと」
    亮:「それも良かろう。手続きを頼んでもいいか」
    明:「はい。では」
    ナレ:明子は片付けを始めた。
    紗:「私が片付けておくから良いわよ」
    明:「ですが」
    紗:「あの頃の私とは違うのよ。支度もテキパキと出来ていた方でしょ。ふふっ」
    ナレ:昔は、身の回りの事も明子に任せていて、出掛けることが多かった。でも、それも亮二の為だと分かっていた明子は文句ひとつ言わず働いていた。幸子が我が儘になっていたのも明子が両親の苦労を話さずにいた事だと後悔していた。少し前にとしをに父親の事を聞いたと聞かされた明子は、その時、幸子にも謝った。幸子は両親に自分の我が儘を謝り、亮二達は一時の感情で幸子と明子を追い出したことを謝った。
    明:「そうでした。お任せします。では、私もそろそろお暇致します。お正月の用意もございますので明日も参ります」
    紗:「ありがとう」
    ナレ:明子は夫用に料理をタッパーに詰めて持ち帰った。
    亮:「うまくいけば、神山と親戚かぁ」
    と:「そうなるなぁ。まぁ、それも二人次第だけどな。だが」
    亮:「どうした?」
    と:「小路と孫の取り合いになりそうだな。あははは」
    亮:「そうだな。あははは」
    ナレ:側で紗千江はニコニコしていた。飲み慣れないワインに自分でも、そろそろヤバいかなと思ったとしをは、
    と:「私も、そろそろ。楽しかった。これからもよろしくな」
    亮:「今までの分も取り返す気持ちで、飲もうな」
    と:「そうだな」
    ナレ:亮二は森園を呼び、としをを送り届けるよう伝えた。

    ナレ:アパートに到着して、孝を寝かせた。
    幸:「お茶を淹れますね」
    祥:「すみません」
    ナレ:祥の前に湯吞茶碗を置き、相向かいに座った。
    祥:「楽しかったですね」
    幸:「そうですね」
    ナレ:そう言った後、お互いに黙ってしまった。隣の座敷で孝が寝返りを打ち、布団がはだけた。幸子が布団を掛け直しに。そして、祥にも幸子があの写真を見た事も分かった。戻って来た幸子に、
    祥:「幸子さんの中に今でも三吉さんが居る事は分かっています。勿論、俺の中にも彼が居ます。酷な事を言いますが、彼はもう幸子さん、孝君、俺の前に現れる事はありません」
    幸:「・・・・・」
    祥:「俺はあなたにも孝君にも三吉さんを忘れて欲しいとは言えません。ですが、あなたも先に進むべきだと思います」
    幸:「・・・・・」
    祥:「俺が・・・俺が全部・・・全部受け止めたいと考えています。三吉さんを想う気持ちも全部。二人を幸せにしたいと思っています・・・返事は直ぐでなくてもいいです。俺は待つのは慣れていますから。でも、断るのであれば早めにお願いします」
    幸:「・・・・・」
    祥:「では、帰ります。ご馳走様でした。お邪魔しました。これを孝君に」
    ナレ:プレゼントを置いて出て行く時に、
    祥:「孝君にゲームの相手が欲しいと言われたら手伝わせてください。では」
    ナレ:幸子は頷くだけだった。祥は直ぐには発進できずにいた。幸子の心深くに如古坊が居る事が良く分かったから。
    祥:「砕けちゃうかなぁ。ふ~」
    ナレ:エンジンをかけ家に向った。

    ナレ:戻ると、としをは酔いつぶれて既に寝息を立てていた。
    佳:「お帰り」
    祥:「ただいま。父さんは?」
    佳:「さっき帰って来たけど、玄関の前で運転手さんに支えられてね。その方に手伝ってもらってベッドに放り投げたわよ」
    祥:「放りって。そんなに。俺が帰る前まではそんなに飲んでなかったみたいだけど」
    佳:「運転手さんの話だと、帰る前に、何か、孫の取り合いで盛り上がってたらしいのね。で、ワイン飲んだって。飲みつけないから回りが早かったんじゃないの」
    祥:「孫・・・そう言う事。で、母さん」
    佳:「なに?」
    祥:「やっぱり、砕けるかも」
    佳:「えっ・・・あぁ、そう。お風呂入って寝なさい」
    祥:「あぁ。おやすみ」
    ナレ:二階に上がる息子の後姿に、
    佳:「祥に幸あれ・・・あっ、今、上手いこと言った。ははっ」
    ナレ:誰も聞いていないが笑い、そして、息子が幸せになる事を願った。

    過去&永禄&現在⑫へつづく

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    過去&元禄&現在⑩

    =過去 2020年 12月初め=

    ナレ:幸子と祥はLINEのやり取りはしていたが、本当に他愛のない会話ばかりだった。その中で幸子の見合い話が無くなった事については祥にとって吉報ではあったが、だからと言って先に進めずにいた。神山家で夕食を摂っていた。
    祥:「あれ? 父さん出掛けてるの?」
    佳:「言わなかった?」
    祥:「何?」
    佳:「小路さんの所で昔の仲間と集まって飲み会」
    祥:「あぁ、そんなこと言ってたね」
    佳:「そう言えば、幸子さんとはどうなったの?」
    祥:「どうって、LINE友達のまま・・・期待しない方が良いかも」
    佳:「お前はもっと肉食系だと思ってたんだけど」
    祥:「肉食って、そんな事ないだろ。知ってるだろうに」
    佳:「まぁねぇ」
    祥:「・・・ごめんよ」
    佳:「別に謝る事でもないでしょ。食べたらお風呂入っちゃって、お父さん午前様だろうし」
    祥:「分かった」
    ナレ:祥も分かっている。自分が此処迄何も出来ない男だったのかと。寝付けずにいると表で車のドアの閉まる音がした。枕元のスマホで時間を確認した。
    祥:「1時前か。随分、盛り上がったんだな」
    ナレ:ムクっと起き上がり下へ。
    祥:「お帰り」
    と:「あ~ご子息どの~」
    祥:「随分酔っぱらって、楽しかったんだな」
    と:「目茶苦茶楽しかった~。何十年も会っていなかったのにな、直ぐにあの頃に戻って、先生の悪口で盛り上がって~」
    祥:「先生も気の毒だね」
    ナレ:その内、としをがその場で眠ってしまった。
    佳:「お願い」
    祥:「あぁ」
    ナレ:としをを担いで寝室へ運んだ。
    祥:「父さんってこんなに軽かったっけ?」
    佳:「あなたが大きくなったって事でしょ」
    祥:「そうだね」
    ナレ:ベッドに横たわらせ布団を掛け、
    祥:「父さんが此処迄酔っぱらう姿初めてかも」
    佳:「私もよ。楽しかったんでしょうね」
    祥:「そうだね。じゃ、おやすみ」
    ナレ:祥は部屋に戻り、しばらくして眠りについた。

    ナレ:朝食を摂っていた祥が、
    祥:「父さんどう?」
    佳:「案の定、二日酔いで頭痛いって」
    祥:「あんなに酔ってたんだから、そうなるだろうね」
    ナレ:祥が食後のお茶を飲んでいるところへ、としをがフラフラと歩いてきた。
    祥:「おはよう」
    と:「あぁ、頭痛い」
    ナレ:佳津子はとしをの前に蜆の味噌汁を出した。
    と:「すまない」
    ナレ:味噌汁を少しずつ飲んで一息。
    祥:「上機嫌だったね」
    と:「あぁ、楽しかった。小路以外は年賀状とかでの繋がりはあったけどな、会う事も無かった五人だけどな、直ぐに騒いでいた頃に戻って、昔話で盛り上がった」
    祥:「先生の悪口とかって言ってた夕べ」
    と:「そっ、いつも竹刀持っていた先生がいてな、ケツをバシッてやられた事もあった。まぁ、私たちが悪さしたからだけどな。でも、楽しかったんだよ」
    祥:「そう」
    と:「そう言えば、孝君の誕生日が今月だって、確か22日とか言ってたな。孫の初めての誕生日会を盛大にするから来てくれって誘われたんだよ」
    佳:「初めて?」
    ナレ:祥も昔の話をすることは無かったので佳津子は深く知らなかった。
    と:「まぁ、色々あったらしいがな。でも、それは過去の事だからな」
    佳:「そう」
    ナレ:としをにそう言われた佳津子は過去の事なら聞く必要も無いだろう、今の幸子が佳津子は気に入っているのだからと。
    と:「祥も行くだろ」
    祥:「いやぁ、俺は、どうかな」
    佳:「お父さんの付き添いで行けばいいじゃないのよ」
    と:「そうだぞ。幸子さんとは友達なんだろ」
    祥:「まぁ」
    ナレ:どうしたら良いかと考えながら店舗へ。歳をは頭をコツコツ叩きながら、
    と:「私が言う事でもなかったんだが」
    佳:「何を?」
    と:「他の奴らが帰って、亮二とサシで飲んでいる時に幸子さんの結婚の事を聞いてみたんだよ」
    佳:「そうなの」
    と:「孝君の父親の事を私に聞かせようとしたけど、私達にはそれは関係ないから」
    佳:「そうね」
    と:「あぁ。で、亮二は幸せにしてくれる人が居るならと言って。親としては相手がどんな人か心配になるよな」
    佳:「当然でしょうね。で?」
    と:「私の息子なんてどうかなって」
    佳:「えっ?」
    と:「酒も入っていたし、私も祥の事が気掛かりだったから、そう聞いてみたんだ」
    佳:「そう」
    と:「じゃぁ、面接するかって笑っていたよ」
    佳:「そう。じゃ、面接に行かせないと」
    と:「あぁ」
    ナレ:祥が怖気づいても引っ張ってでも連れて行こうと話し合った。そんな話になっているとは知らない祥は、
    祥:「いくら親友の息子だって言っても」
    ナレ:先に進もうとしない祥はそれから何も変わらず過ごして1週間前となった。
    佳:「孝君のプレゼント買ったの?」
    祥:「まだって言うか、俺が行かなくても」
    佳:「何言ってんのよ、まったくぅ。べつにお嬢さんをくださいって言いに行くわけじゃないのよ。孝君の誕生日会に行くのよ」
    祥:「そうなんだけど・・・分かった。プレゼント買いに行くから」
    佳:「嫌々行かれてもねぇ」
    祥:「嫌々じゃないから」
    ナレ:定休日に祥はデパートに出掛けた。甥や姪には好みがそれぞれだから結局のところ現金を渡している。身内でもないから入学祝とかそう言う事でない場合はどうだろう。やっぱり品物の方が良いだろうなと考えながら店内を覗いていた。小学生は何を喜ぶのか、何を買ってあげたら良いのか分からずウロウロ。決まらず休憩でレストランに入りコーヒーを注文して、スマホで小学生欲しい物ランキングを見ていた。ゲーム関係が上位。
    祥:「孝君はゲームするのかな?」
    ナレ:祥のテーブルの一つ先の席に夫婦らしき二人。その席に口まで箱が見える大きな袋が見えた。祥は随分買い物してる夫婦だなぁと見ていた。コーヒーを飲み干し席を立つと、ほぼ同時にその夫婦も席を立ち、男性が持ち上げた袋の手提げ部分がちぎれ中身が散乱。祥はその場に行き店員と一緒に袋に戻した。
    夫:「申し訳ない」
    祥:「いいえ。お帰りでしたら車まで運びますよ」
    妻:「いえ、それは」
    祥:「遠慮しないで下さい。力だけは有り余ってますから」
    夫:「そうですか。では、お願いします」
    祥:「地下駐車場ですか?」
    夫:「はい」
    ナレ:三人はレジに行くと妻が祥の分も支払うと言った。祥は遠慮したが、運んでもらう駄賃としてと妻は支払った。
    祥:「では、ご馳走様です」
    ナレ:エレベーターに乗り込んだ。
    祥:「失礼ですが、随分と買われたようですが」
    夫:「孫の誕生日会でクリスマスも兼て、色々見ていましたら、あれもこれもと。娘に叱られるでしょうね・・・でも、そうしたくて」
    祥:「そうですか」
    ナレ:祥は男性の言い方に何かあるのだろうと思いそれ以上の事は聞かなかった。地下駐車場に行くと祥でも高級車と分かる車から白い手袋をした男性が降りてきて、祥が持っていた袋を受け取り荷物をトランクに。
    ド:「お帰りなさいませ社長」
    祥:「社長・・・でしたか」
    夫:「まぁ。本当に助かりました」
    祥:「いえ。では、お気を付けて」
    ナレ:挨拶をしてエレベーターに向った。そして、プレゼント選びの続きをウロウロと。考えている時にふとあの写真が浮かんだ。孝の手に消防車のブロックのおもちゃ箱を。
    祥:「もしかして消防車が好きとか・・・あっ、そうだ」
    ナレ:幸子との他愛のないやり取りの中に、孝が社会科見学で消防署を訪れたその感想を楽しそうに話していたと書かれてあった。
    祥:「好きなんだな消防車。じゃ」
    ナレ:おもちゃ売り場に行き、消防車のプラモデルを購入した。

    過去&永禄&現在⑪へつづく

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    過去&永禄&現在⑨

    ナレ:三時半過ぎて、幸子が店を訪ねた。
    祥:「お呼び立てしてすみません」
    幸:「遅くなってしまい申し訳ございません」
    祥:「気にされることは無いです。どうぞ」
    ナレ:椅子に座らせて、相向かいより少しずれた位置に座った。
    祥:「お気づきかも知れませんが、俺・・・いや、私はあなたの事を」
    幸:「すみません、気が付かなくて」
    祥:「いえ、こちらこそすみません。でも、私は真剣にと、それだけは分かって下さい」
    幸:「はい。それは。私の様な者を有難うございます。でも」
    ナレ:祥は幸子の「でも」の言葉で、やはり三吉の事があるのだと思った。
    祥:「失礼を承知でお聞きしますが」
    幸:「はい?」
    祥:「小路さんは本当に良いんですか?」
    幸:「はぁ?」
    祥:「小路さん、いえ、幸子さんは三吉さんの事を今でも。でも、お見合いを」
    ナレ:幸子は驚いていたが軽く頭を振り、
    幸:「もう過ぎた事ですから・・・ですから、お見合いもお受けしました」
    祥:「本当に良いんですか?」
    幸:「いいも悪いも、もう三吉さんは居ませんから」
    ナレ:語尾が少し強めだった。まるで自分に言い聞かせているようだと祥には思えた。
    祥:「私、俺は自分の気持ちに正直に生きています。今も、一目惚れしたあなたの事が好きです。あなたの心の中に三吉さんが居ると分かっていても。幸子さんの正直な気持ちを聞かせて下さい」
    ナレ:幸子は手元をジッと見ていた。店の時計のカチカチの音だけが響いていた。そして、
    幸:「私は自分の事が嫌いでした。我が儘を言っていた自分も。先日お父様からお聞きして父の事を知り尚更、自分の行いを後悔しました。でも、孝を授かった事だけは私の幸せです。孝と二人で暮らしていても泣き言は言いたくないと生きてきました。そんな中で三吉さんの優しさが心に沁みましたそれで・・・それだけの事と思われるでしょうね」
    祥:「いいえ。何も不思議な事では無いですよ。現に俺だって、三吉さんに会ったのも数回だけでしたけど、俺の心に三吉さんの存在は今でも。幸子さんと俺の好みは同じだったんですよね」
    幸:「そうですね・・・神山さんもお優しい人だと分かります。でも」
    祥:「深く想いがある事は忘れなくても。もし、俺に時間をくれるのなら待ちます。あっ」
    幸:「あの?」
    祥:「幸子さん、お見合いするんでしたよね」
    幸:「はい・・・私は自分に嘘をついていたことを今は恥じています」
    祥:「なにも恥じる事は無いです」
    幸:「有難うございます。お会いしてからではお相手の方に失礼ですからお断りします」
    祥:「大丈夫ですか?」
    幸:「はい。奥様からお話を頂いた時に、奥様にも心に想い人が居るのであれば、お相手に失礼だからお断りした方が良いと言われていました」
    祥:「そうですか」
    ナレ:見合いを断っても自分に望みがあるのかと言えば分らない事だった。
    幸:「私にも時間を下さい」
    祥:「えっ?」
    幸:「ですが」
    祥:「大丈夫です。友人関係でも俺は嬉しいですから。心配しないで下さい。失恋には慣れていますから。あはは」
    ナレ:幸子がクスッと。
    祥:「笑ってくれた事で、話して良かったとそう思います。今日はよく眠れそうですよ」
    幸:「あの、一つ伺っても?」
    祥:「なんなりと」
    幸:「神山さんは三吉さんが何処の居られるかご存じですか?」
    ナレ:ふいに聞かれ驚く祥に、
    幸:「聞いてはいけないことを聞いてしまいました。ご存じだからと言って、どうにもならないのに。可笑しいですね」
    祥:「そんな事は無いです。でも、すみません。俺も旅に出たとしか聞いていないので分からないんです」
    幸:「そうですか。何処かで元気に暮らしているのでしょうね」
    祥:「そうでしょう」
    ナレ:本当の事を言うのは酷だと考え、祥は墓場まで持って行こうと決めた。
    祥:「友達としてお願いが」
    幸:「はい?」
    祥:「LINE友達登録してもらってもいいですか?」
    幸:「あっ、はい、構いません」
    ナレ:お互いに登録した。
    祥:「既読スルーしても構いません。既読が付くだけで嬉しいので。ははっ」
    幸:「それは。神山さんもスルーして下さっても構いませんよ。ふふっ」
    祥:「じゃ、早速」
    慣れ:祥は〔今日はありがとうございました〕。幸子も〔こちらこそ、有難うございました〕と、お互いに送った。そして、幸子は帰って行った。祥はその後姿に、
    祥:「如古坊さん、これで良かったんですよね。気持ちは伝えました。この先どうなるか分かりませんが、幸子さんと孝君が幸せになるように俺は協力していきます」
    ナレ:ふと、この場に居たら如古坊はどんな言葉を言うのか考えて、
    祥:「恋のライバルかな。ふっ」
    ナレ:そこへ佳津子が店舗に顔を出した。
    佳:「どうだった?」
    ナレ:気持ちを伝えた事。幸子が見合いを断ると言った事を伝えた。
    佳:「じゃ、祥と?」
    祥:「それは分からない。もしかして、友達関係で終わるかも」
    佳:「そう。幸子さんの気持ちは聞いていないって事ね」
    祥:「そう言う事。でも、LINE登録はしてもらったから」
    佳:「良かったわね」
    ナレ:そう言って佳津子は母屋へ。廊下を歩きながら何処までお人好しなのだと、優しいのは良いけどもう一押しが。誰に似たのかと思っていた。

    ナレ:幸子はその足で真知子の元へ。
    真:「どうしたの?」
    幸:「お世話になっておきながら申し訳ない事なのですが、お見合いのお話をお断りいただきたいのです。無責任な事だと分かっています。それに奥様にもご迷惑が掛かる事も重々承知の上で・・・申し訳ございません」
    真:「幸子さんが私に我が儘を言ったの初めてね」
    幸:「すみません」
    真:「怒っているのじゃないのよ。幸子さんが我が儘を言ってくれたことが嬉しいのよ。私も主人もあなたを娘の様に思っているの、でもあなたは。しょうがない事だけど。でも、もっと我が儘を言って、頼ってほしいと思っていたから」
    幸:「有難い事ではありますが。この場合は非常識な事をお願いしていると」
    真:「お話を受けた時、あなたには想う人が居るのだと感じていたのよ」
    幸:「はい」
    真:「それでも見合いを受けると言った事で、その想い人とは一緒になれないのだと私も分かったわ。でも今、断ると言う事はその人か、別の人が現れたって事かしら?」
    幸:「私の中の人は心の中だけにしています。その方もそれを知っています。でも、その方とはまだ」
    真:「そうなの。複雑でしょうね」
    幸:「えっ?」
    真:「その人はあなたの心の人の事を知っていながら告白したんでしょうね」
    幸:「はい」
    真:「何処のどなたか知らないけれど、私はその彼があなたを孝君を受け止めてくれるって気がするのよね。そして、あなたも少なからずそう思う気持ちが芽生えたんじゃないの?」
    幸:「えっ?」
    真:「自分では気づかないって事もあるわよ。だから、見合いを断りたいと言った。私にはあなたが幸せな道を歩き始めたって、その道が見えるわ」
    幸:「えっ?」
    真:「この先はあなたが考える事。私は断る事がこれからの事ね」
    幸:「すみません」
    ナレ:幸子は手を付き頭を下げた。
    真:「実の母は居るけど、私もあなたの母親のつもりよ。こんな時はごめんねで良いのよ」
    幸:「・・・ごめんなさい」
    真:「後は任せなさい。じゃ、早速、先方に行ってくるわ」
    幸:「では、私も」
    真:「私の演技力を見せたいところだけど私一人で」
    ナレ:支度をして出掛けた。途中、菓子折りを買い、店舗脇の駐車場に向かう時に歩道脇に停車していた車が目に留まった。そして見合いを断る口実が目の前に。助手席から出てきた女性が、
    女:「私は絶対産むから」
    ナレ:運転席から出て来た男が、
    男:「そんなこと言うなよ・・・えっ?」
    ナレ:男は真知子の姿を見て動きが止まった。その男が幸子の見合い相手だった。真知子は黙ってお辞儀をして車に乗り込み、その男の家に向った。
    男:「一先ず送るから、ゆっくり話そう」
    ナレ:男は両親にバレる事を恐れ、声がオドオド。
    女:「何なのよ。あなたとは別れます。この子は私一人で立派に育てますから、ご心配なく!」
    ナレ:女性は持っていたバッグで車のボディを叩き、カツカツとヒールのかかとを鳴らし男の前から去った。
    男:「ヒールはやめた方がぁ」
    女:「分かってるわよ!・・・さようなら!」
    ナレ:男に向ってあっかんべ―。

    ナレ:真知子は先方に到着し、座敷に通された。菓子折りを渡し、差し出された座布団をずらして手を付き、
    真:「申し訳ございませんが、お話を頂いておりましたご子息とのご縁談、お断りさせていただきたく、まかりこしました」
    父:「まかり・・・牧合さん、理由を話していただけませんか?」
    真:「それはご子息にお聞きいただければ。ですが、お付き合いはこれまで同様に願います」
    ナレ:二人は何が何やらと困惑していた。そこへ息子が帰って来た。真知子が先ほどの事を両親に話しているのだと思っていた。玄関ドアの音で帰って来たと両親が部屋から出て来た。
    父:「牧合さんが見合いを断りに来た。理由はお前だと。何が遭ったんだ?」
    息:「それは」
    ナレ:その後がゴニョゴニョとはっきり聞こえない。
    母:「はっきり言いなさい!」
    ナレ:そこへ、真知子が部屋から出てきて、
    真:「では、私はこれにて失礼いたします」
    ナレ:息子にも深々と頭を下げて出て行った。その後、両親が息子を問い詰め、以前から付き合っていた女性が居たが、親の言いなり状態で見合いをすることにしたが、その女性との間に子供が出来たと。その事を真知子が知ったと話した後、父親のグーの拳が息子の頬にヒット。だが、その事実を知った真知子の行動の早さに三人は考える余地も無かった。両親は相手の女性を連れて来させ、彼女の前で土下座し、嫁に来て欲しいと懇願した。承知した彼女の家に行き同じように謝り、相手の両親にも許しを貰った。息子は蚊帳の外状態のまま話が進み入籍。それも3日間の出来事だった。

    ナレ:夕食を一緒にと幸子と孝を誘った。その時、真知子が見合いはキャンセルしたからと。幸子が自分も挨拶にと言ったが、『行く必要はない』とだけ。幸子にも理由は話さず引き止めた。幸子は真知子の言う通りにした。

    過去&永禄&現在⑩へつづく

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    過去&永禄&現在⑧

    =過去 2020年 晩秋=

    ナレ:もう直ぐ冬が訪れようとしている頃の神山家の食卓。
    佳:「ねぇ、祥」
    祥:「何?」
    佳:「何って。あの日、砕けに行くって言ってたんじゃないの」
    ナレ:覚悟を決めておきながら祥は行動に起こすことも出来ずふた月も経っていた。祥自身も何やってるんだと分かっているが何も出来ず時間ばかり過ぎていた。
    佳:「裏の木も秋から冬になろうとしているのよ」
    祥:「情緒あるみたいな言い方して・・・俺だって分かってるんだよ。分かってるんだけどさ・・・情けないって分かってるんだよ」
    と:「分かってるを連呼してるだけじゃな」
    祥:「う~」
    佳:「もしかして、このふた月で相手が出来てたらどうするのよ」
    祥:「えっ!」
    佳:「あり得る事よ」
    と:「そうだな。あるかも」
    祥:「父さんも」
    ナレ:祥は「分かってる」を繰り返しながら店舗へ。その後姿にとしをと佳津子は深いため息。

    ナレ:切っ掛けは突然来た。牧合の妻の真知子が神山家に町内の婦人旅行の土産を持って。会社は息子が継ぎ、真知子が関わっていた仕事は嫁が引き継いだことで時間が出来たと佳津子に話していた。そこへコーヒーを入れに来た祥が挨拶した。真知子が、
    真:「うちで働いてくれている、主人の遺品を頼んだ小路幸子さんが来週お見合いするのよ」
    祥:「えっ?」
    真:「祥君?」
    祥:「いえ」
    ナレ:話を聞きたいがその場に居るのは不自然だと考え佳津子に合図。佳津子も頷いて見せた。
    佳:「そうなの。良さそうなお嬢さんだったから」
    真:「そうなのよ。本当に真面目でね、女手一つで息子さんを育てていてね。正直に話してくれた時は驚いたけど、彼女の誠実さが分かって働いてもらっているんだけど。主人の葬儀の時に幸子さんの働きぶりを見ていた方が息子の嫁にどうかと話を持ってきてね。幸子さんも承知してくれて」
    佳:「そうだったの。見ている人は見ているのね。幸せになって欲しいわね」
    ナレ:そう言いながらも佳津子は祥の落ち込み様を考え表情が曇った。
    真:「どうしたの?」
    佳:「何でもないのよ」
    ナレ:真知子は長居したと挨拶して帰って行った。佳津子は店舗に行き真知子の話を伝えた。
    佳:「幸子さんに幸せになって欲しいって私もそう思う」
    祥:「俺だって・・・それは俺じゃないって」
    佳:「祥」
    祥:「何?」
    佳:「こうなったら玉砕してきなさい。あなたが先に進むためにも。その方が良いと思うわよ」
    祥:「そうだろうけどぉ。でもさ、幸子さんが俺の気持ち聞いて、申し訳ないって思うんじゃないか。彼女ならさ」
    佳:「そうかも知れない。でも、親としては息子がこのままって事の方が辛いわよ」
    祥:「分かってる」
    佳:「善は急げ。幸子さんの連絡先分かる?」
    祥:「あぁ、孝君預かった事あったろ、その時、店に掛かってきた番号は控えてる」
    佳:「そう。で、これまでの間に一度も掛けてないの?」
    祥:「あぁ」
    佳:「あぁって」
    ナレ:佳津子はここまでの男とは思わなかったとため息。
    祥:「ん?」
    佳:「何でもないわよ。いいからあなたも、そろそろ覚悟決めなさい」
    ナレ:祥はスマホを手に眺めるだけ。佳津子は背中を叩いて母屋に戻った。時間的に仕事中だと、夜掛ける事に。祥は思いっきり頬を叩いた。

    ナレ:夕飯の後、祥は自分の部屋に戻り、幸子に連絡した。
    幸:《はい》
    祥:「小路さんの携帯でしょうか?」
    幸:《はい、そうです》
    祥:「神山、神山祥です」
    幸:《神山さん。ご無沙汰しております》
    祥:「こちらこそ」
    幸:《神山さん、何か?》
    祥:「あっ、えっ、あの、牧合さんから聞きました。さ・・・小路さん、お見合いをすると」
    幸:《あ、はい、そうです》
    ナレ:幸子の返事の後は祥の次の言葉が出なくしばらく沈黙。
    幸:《神山さん?》
    祥:「すみません。あの、お願いがあるんですが」
    幸:《はい?》
    祥:「お忙しいと思いますが、お会いしてお話ししたい事が」
    幸:《そうですか。では、明日の午後でしたら時間取れますが》
    祥:「分かりました。ありがとうございます。場所は・・・」
    ナレ:2時に予約入っていることを思い出し、
    祥:「すみませんが、3時半に店の方に来ていただけませんか。それでは遅いようでしたら、あの」
    聡:《大丈夫です。その頃に伺います》
    祥:「すみません。ありがとうございます」
    ナレ:お互い挨拶して電話を切った。

    ナレ:翌日の午後、予約客の天野の対応をしていた。
    祥:「天野さん、久し振りですね」
    天:「歳のせいかね、髪の伸びも遅くなってね」
    祥:「それは分かりませんが、天野さんは元気ですよね」
    天:「今年で80になるよ」
    祥:「お若いですよね」
    天:「ありがとう。じいさんも親父も長生きでね。ご先祖様もみんな長生きだとね」
    祥:「そうなんですね」
    天:「戦国の世でも90の長生きのご先祖様も居てね。昔話しただろう、そのご先祖様が黒羽城の家臣だったって」
    ナレ:子供の頃に聞いていたが忘れていた。幸子の事で尊から話を聞いた中に天野という家臣が居た事を思い出し驚きの声を上げた。
    天:「祥君、どうしたんだね」
    祥:「いえ。そうでしたね」
    天:「ご先祖様に会ってみたいねぇ」
    祥:「えっ」
    天:「どうした?」
    祥:「そうですか」
    天:「人生100年時代、私もまだまだ元気」
    祥:「俺にもその元気分けて下さい」
    ナレ:天野は祥が何か決意しているように感じ取り、力を与える様に祥の手をギュッと握り、
    天:「エネルギー注入。あははは」
    祥:「ありがとうございます。元気出ました。じゃ、今日も色男完成です」
    天:「では、ナンパしに城下に繰り出すかね、ははは」
    ナレ:元気な天野を見送った。
    祥:「城下って。ふっ、尊が言っていたな、楽しい人だったと。きっと天野さんみたいな人だったんだろうな。そ~言えば似てるかも」
    ナレ:見せてもらった信茂の姿を思い浮かべ、髪を白髪にして白くなったアゴ髭を重ねてみた。
    祥:「やっぱり似てるな」
    ナレ:尊にLINE下。[天野という人の子孫だと思う人が、うちの常連に居る。元気で面白い人だよ。それに顔も似ている]。尊はその事を覚と美香子に話すと二人は会ってみたいと。

    過去&永禄&現在⑨へつづく

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    過去&永禄&現在⑦

    ナレ:速川家から戻った佳津子が店に顔を出すと、ダラリとした格好で座る祥の姿を見てため息。
    佳:「しっかりしなさいよ!」
    ナレ:祥の肩を叩いた。
    祥:「痛いなぁ。しっかりしてないわけじゃないよ。さっき、久し振りの塚本さんが帰ったから、休憩してただけだよ」
    佳:「そうは見えなかったけど」
    祥:「はいはい。で、何か食べるのある?」
    佳:「はいはい。その前にちょっといい?」
    祥:「なに?」
    佳:「あなたの心の中に居る幸子さん、シングルマザーだそうよ」
    祥:「えっ?」
    ナレ:大げさに驚き、椅子から滑り落ちた。ゆっくり座り直す表情は喜んでいる風には見えない。
    佳:「どうしたの?」
    祥:「幸子さんが独り身だと分かっても、俺がって言い出せない気が」
    佳:「どうして?」
    祥:「俺の勘だけど、彼女の心の中に誰か居るような気がするんだ」
    佳:「孝君の事じゃないの?」
    祥:「子供に対してってのとは違うと思う・・・そんな気がする」
    佳:「そうなの・・・そうね」
    ナレ:祥に言われて佳津子もそんな気がしてきた。祥の肩をポンと叩き、
    佳:「じゃ、何か作るわね。出来たら呼ぶから」
    祥:「あぁ、お願い」
    ナレ:それからも、祥は行動に起こせずにひと月経った。その間に幸子の事を知る尊に話を聞く事もせず。すると、幸子から孝のカットの予約の連絡が。
    祥:「では、お待ちしております」
    ナレ:祥は事務的な対応で変に思ったかなと思っていた。そして翌日、幸子と孝が来店。シャンプーをしている時に幸子のスマホに着信が。表に出ようとした幸子に、
    祥:「他に居ませんからここで構いませんよ」
    幸:「すみません・・・はい、小路です・・・えっ!」
    ナレ:驚いた幸子は祥の顔を見た。
    祥:「どうしました?」
    幸:「あっ、はい。会社の近くで火事が。念の為、書類を社長宅に移動することにしたと。私も」
    祥:「ご心配なく。孝君はうちで待ってもらいますから」
    幸:「はい、今行きます・・・すみません。孝、神山さんの言う事を聞いてね。終わったら直ぐ来るから」
    祥:「小路さんも気を付けて」
    幸:「はい」
    ナレ:出て行く姿を孝が心配顔で見ていた。
    祥:「大丈夫さ。念の為って事だから」
    孝:「うん」
    ナレ:カットも終わった孝を母屋に連れて行き、佳津子に説明した。
    佳:「大事に至らなければいいけど。孝君、此処で待っていましょうね」
    孝:「はい」
    佳:「ほんと、孝君は偉いわよねぇ」
    祥:「はいはい。曽井さんが時期に来るから店に居るね。何かあったら呼んで」
    佳:「何もないわよねぇ。じゃ、孝君、ケーキ屋に行きましょ」
    祥:「土産忘れないでよ」
    佳:「はいはい。じゃ、行こう」
    ナレ:佳津子も母の心配を少しでも和らげられたらと孝を誘った。夕飯時になっても連絡がない。
    心配する孝に夕飯を食べさせた。食後、孝はウトウトし始めた。
    祥:「お母さんが戻ってきたら起こすから寝ていて大丈夫だよ」
    と:「隣に布団敷いて」
    ナレ:隣の座敷に客用の布団を敷き孝を寝かせた。しばらくして、店の電話の呼鈴が聞こえた。
    祥:「はい。神山バーバーです」
    幸:《すみません、遅くなってしまって》
    祥:「気にしないで下さい。で、会社の方は?」
    幸:《消火の途中で風向きも変わり、工場の方は大丈夫だったのですが、火元の工場の持ち出した書類を倉庫に運ぶ手伝いをしていて、ようやく落ち着きましたので。これから迎えに伺います》
    祥:「お宅は会社から近いですか?」
    幸:《あっ、はい》
    祥:「孝君、夕飯の後、眠ってしまいましたので、俺が送ります」
    幸:《ご迷惑では》
    祥:「遠慮しないで下さい。それと、さ・・・小路さん夕食は?」
    幸:《それは。それどころではなくて、コンビニで何か買いますので》
    祥:「残り物になりますが、弁当に詰めて持って行きますので」
    幸:《すみません》
    ナレ:住所を聞いて、佳津子に弁当を頼み出来た頃、孝を負ぶさり車に乗せた。
    と:「気を付けてな」
    祥:「うん」
    ナレ:アパートに向った。表で幸子が待っていた。
    幸:「ありがとうございます」
    ナレ:後部座席で眠っている孝を幸子が起こそうとしたので、
    祥:「大丈夫ですよ、俺が」
    ナレ:孝を抱え幸子の後ろをついて行った。部屋に入り座敷に布団を敷き、祥が孝を横に。そして、タンスの上の写真が目に留まった。
    祥:「あれ、三吉さん?速川さん達も」
    幸:「速川さんの宅でのクリスマス会に参加させてもらいまして」
    祥:「そうですか。三吉さんともお知り合いなんですね」
    ナレ:祥が幸子に話しかけたが、写真の方も見ずに、
    幸:「まぁ・・・お茶煎れますね」
    祥:「あっ、いえ、もう遅いですから帰ります。じゃ」
    ナレ:祥は車に乗り込んだが直ぐには発信しなかった。
    祥:「もしかして、幸子さんの心の中のって、三吉さん」
    ナレ:鈍感な祥でもそう確信したが、どうすることも出来ない。家に戻って風呂に入りベッドに横たわったまま、寝付けず朝を迎えた。

    ナレ:体ではなく心にダルさを感じ、起きるのも億劫なほど。だが、下から「ご飯よ」の声。のっそりと起きて食卓に着いた。上の空の祥に、
    佳:「ほらっ、溢すわよ」
    祥:「あっ、うん」
    ナレ:味噌汁を飲み干し、食器をシンクに置き、店の方に歩いて行く。
    佳:「祥、その格好で仕事するの?」
    祥:「えっ?」
    ナレ:祥は寝間着の格好のまま。着替えに二階へ。
    と:「あいつ、どうしたんだ?」
    佳:「幸子さんの事だと思うんだけど」
    ナレ:シングルマザーである事をとしをに話した。
    と:「そうだったのか。でも、あの様子じゃ、彼女に相手が居るんじゃないか」
    佳:「そうなのかも知れないわね」
    ナレ:二人は見守る事しか出来なかった。当の祥は、幸子の部屋で見た写真を思い出していた。どう見ても幸子が三吉の如古坊に寄り添っているように見えた。
    祥:「そうなんだろうなぁ・・・はぁ」
    ナレ:予約客の相手を務めて普段通りに対応したが、一人になると落ち込む姿を見ていた佳津子は、
    佳:「幸子さんの何を悩んでるのか知らないけど、一人で悩んでたってしょうがないでしょうよ」
    祥:「そんなこと言ったって・・・本人に聞く勇気があったらとっくに聞いてるよ」
    佳:「もぉ、本人に聞けないんだったら、幸子さんを知る速川さんに聞くとか」
    祥:「えっ?」
    佳:「一先ず、その方法しかないんじゃないの」
    祥:「まぁ」
    ナレ:佳津子の助言で祥は尊にLINEをして夜に会う約束を。夕飯を済ませた後に祥は速川家を訪ねた。
    祥:「夜分にすみません」
    覚:「大丈夫だよ。コーヒー淹れたからどうぞ」
    尊:「こっちに来てください」
    ナレ:祥に連絡を貰った時、幸子の好きな相手の事を聞きたいと。そう考えた理由は分からないが、真実を伝えた方が良いのだろうと尊が二人に言った。祥が信じてくれると信じて。
    祥:「離れがあるのは知ってたけど、機械だらけには驚いたな」
    尊:「此処に案内するのは身内以外は祥さんだけです」
    祥:「光栄だね。で、ごめんな」
    尊:「大丈夫ですよ。祥さんから連絡を貰って僕たちも覚悟しましたから」
    祥:「えっ?」
    尊:「幸子さんの事を話さなくてはと思っていましたから」
    祥:「偶然、クリスマス会の写真を見て、もしかしてって」
    尊:「そうだったんですね」
    祥:「やっぱり、幸子さんは、三吉さんの事を」
    尊:「はい。孝君は三吉さんに父親になって欲しかったと言う思いも知っています」
    祥:「・・・そうだったんだ。きっと、三吉さんも」
    尊:「はい。彼も同じ想いでした」
    祥:「両想いなら何故、彼は旅に出たんだ?・・・想いがあるなら一緒になる事も出来たんだろう」
    尊:「想いだけではどうにもならなかったんです」
    祥:「どういう意味?」
    ナレ:尊はタイムマシーンの下に行き見上げて、
    尊:「長くなりますが、今から話す事は真実です。それを祥さんが信じるかは分かりません」
    祥:「話してみなけりゃ分らないよ」
    ナレ:尊は如古坊が来る前の時に忠清達みんなで写した写真を何枚か見せながら、タイムマシーンを完成させ唯が戦国に行った事から説明して、その仲間の如古坊が現代に来て幸子と知り合った事を一気に話した。最初は祥も相槌を。だが途中からは驚き過ぎて息をするのも忘れていたかのように話が終わると大きく息を吐いた。
    尊:「驚きましたよね」
    祥:「あぁ。じゃ、三吉、いやにょこぼうさんは戦国時代の人だったんだ」
    尊:「そうなんです」
    祥:「その事を幸子さんは知っているのかい?」
    尊:「本当の事は知らないでしょう。でも、一緒になれないと言ったそうです。祥さんが母と一緒に居るところを見た日に。何処かで遠い存在の人だと分かっていたかのようだったと母たちは言っていました」
    祥:「母たち?」
    ナレ:同席していた聡子の事も掻い摘んで話した。
    祥:「不思議な事があるんだな。でも幸子さん本能で感じていたんだな・・・なんか、切ないな」尊:「はい」
    祥:「幸子さんの中にも気持ちが残っているんだな・・・入る余地なんて無いいんだろう」
    尊:「そう考えるのは違うと思います」
    祥:「えっ?」
    尊:「如古坊さんは自分が二人を幸せに出来ない事も十分に分かっていて、幸子さんと孝君の幸せを一番に考えていました。僕は、祥さんが幸子さんと孝君を幸せにしたいと思う気持ちを胸を張って言えるのであれば、行動に起こした方が良いと思います。それが、如古坊さんの為になると思うから」
    祥:「俺は同じ人を好きになった者として、にょこぼうさんの気持ちが分かるよ。本当は誰にも渡したくないってね」
    尊:「僕はそこまで誰かを好きになった事はありませんから、酷な事が言えるのかもしれません」
    祥:「なに?」
    尊:「この今の世界に居るのは祥さんなんですよ。二人の側に居られるのは祥さんだけなんですよ」
    祥:「・・・ん、分かった。そうだな、俺がにょこぼうさんの分も二人を幸せに出来るんだ・・・分かった。でも、玉砕するかもしれない」
    尊:「えっ?」
    祥:「言わないで後悔するより、言って後悔する方がよっぽど気持ちがいいから。幸子さんに言うよ」
    尊:「そう。頑張って」
    祥:「駄目だった時は慰めてくれよな」
    尊:「それは・・・でも」
    祥:「彼の事は黙っているよ。勿論、今聞いた話も誰にも言わないよ」
    尊:「ありがとう」
    祥:「じゃ、帰るよ。本当の事話してくれてありがとう」
    尊:「ううん」
    ナレ:祥は覚と美香子に元気よく挨拶して帰って行った。
    美:「話したのね」
    尊:「うん。全部。信じてくれたし誰にも言わないって。で、幸子さんに気持ちを話すって。もしし、駄目だったら慰めてって」
    覚:「そうか。でも、祥君なら二人を幸せにしてくれると信じてる。きっと、その気持ちは幸子さんに通じると思うよ」
    美:「そうね。この先どうなるか分からないけど、佳津子さんだったら嫁姑問題も無さそうだしね」
    覚:「そうだな」
    美:「私は、ちょっとバチバチってやってみたいわねぇ、嫁姑で」
    ナレ:尊を見た。
    尊:「そんな、先の話しないで」
    覚:「あれっ、前に、何年もしたらって、そんな先の話じゃないような言い方してたじゃないか」
    尊:「そうだったっけ」
    ナレ:将来の尊の嫁を想像して二人は笑っていた。祥は家に着いて店舗の椅子に座り、
    祥:「唯がねぇ、驚いたな。でも、この時代そんな事があったなんて・・・約束したしな・・・さぁ、これからどうするかだな」
    ナレ:椅子にもたれて考えていると佳津子がやって来た。
    佳:「戻ってたの。こっちで物音がするから泥棒かと思って」
    ナレ:佳津子の手にはゴルフのアイアンが握られていた。
    祥:「母さんが強いのは分かるけど、泥棒だったら危険だから、そういう時は出て来ない事だよ」
    佳:「強いは余計だけど。息子が心配してくれるのは嬉しいわね。で、私たちの心配についてはどうなの?」
    祥:「私達?」
    佳:「幸子さんの事よ」
    祥:「決めた、当たって砕けるで」
    佳:「そう言う事ね。駄目だったらお父さんと二人で慰めてあげるから、一応頑張りなさい」
    祥:「一応って・・・ありがと、頑張るよ」
    佳:「風呂空いてるから入って」
    祥:「わかった」
    ナレ:祥は着替えを持って風呂場へ。

    過去&永禄&現在⑧へ続く

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    振り返ります四人の現代Days、150(終)まで

    no.1068の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118、no.1015、再会
    119、no.1016、一触即発
    120、no.1017、後悔先に立たず
    121、no.1018、ここはお白洲
    122、no.1019、陳述します
    123、no.1020、挑戦と再挑戦
    124、no.1021、もしもーし
    125、no.1022、時代時代で
    126、no.1023、春からのビジョン
    127、no.1024、団欒┅┅┅

    永禄で生きる決心をする前から、時空を行ったり来たりでちょくちょく長期に学校を休んでいた唯が、学校の友達にどう説明したのか。絶対してないよなと思い、こうなりました。

    128、no.1025、ホットほっと
    129、no.1026、忸怩たる思い
    130、no.1027、道に迷う
    131、no.1028、期待してます
    132、no.1029、肌身離さず
    133、no.1030、刻みます
    134、no.1031、大きくなったね
    135、no.1032、未来は明るい!
    136、no.1039、用意周到
    137、no.1040、遠慮のかたまり
    138、no.1041、お好みはどれ
    139、no.1042、興が乗る
    140、no.1043、男子の会話
    141、no.1044、レア物です
    142、no.1045、帰省終わります
    143、no.1046、文詠みます┅┅┅

    ボーリングですが。表記としてはボウリングが正解ですね。掘削しませんものね。大分前に気づきましたが、Daysシリーズではこのままにします。で、ボーリング初登場は遡って平成Days14話(no.375)。この時のエピソードと対になったのが134話です。

    144、no.1047、匂わせます
    145、no.1048、踊らされます┅┅┅

    じいは若君の守役だったので、幼い頃からよーく知っている。逆に考えると、共に過ごした時間の長さだけ、若君もじいをよーく知っている。じいが千原じいの話にどのようにのってくるかはお見通しだったので、勝ち戦も同然だったのです。

    146、no.1049、佳き日
    147、no.1050、一件落着┅┅┅

    梅を調べてて知ったのですが、「紅梅」「白梅」って、花の色でなく、材木にした時赤いか白いかで決まるらしいですね。木の内部が赤いのが紅梅、白いのが白梅。だから白い花を咲かせる紅梅もあると。ちょっとややこしい。
    緑の梅ですが、緑萼梅という種類が、花びらは白、中が緑、萼(がく)も緑でした。
    お父さん、一本締めだと言ってますが、あの様子だと手をパンと一回だけ叩きそう。それ一丁締めだって!と総ツッコミされてると思います。

    148、no.1052、助言します
    149、no.1053、犯人は

    150(終)、no.1054、夢で逢えたら┅┅┅

    長女二女がもう少し小さい頃は、唯も参戦して忠清パパの取り合いをしてたとは思いますが。かつて令和Days69話(no.686)、妄想してデレデレしたように。でも時の流れは残酷で。唯にも突っ込まれ放題で。パパ頑張って~。

    ┅┅

    発表する度に長くなっていくお話。お付き合いいただきありがとうございました。
    ひと月って長いような短いような。今回は遠出もさせてませんし、話が持つのかと思いきや、源トヨとたけるなの二組のカップルが色々話題を作ってくれました。感謝せねば。
    到着した当初、若君が両親に語った願いは全て叶い、胸を撫で下ろしております。

    今後の予定です

    四人の現代Days。余韻なくあっさり終わったと思われませんでしたか?

    本当は、最後は「続きます。」でした。描きたい欲が勝りまして。現代Daysの続き、主に尊のその後のお話を考えております。

    ただですね、以前自分自身が口にした話がずっと引っ掛かっておりまして↓

    ┅┅私、令和Daysを描いた時に、自分でかけた枷がありまして。「コロナ禍になってから二人を飛ばさない」┅┅

    続きとなるといよいよその時期に突入です。止めようかとも思いましたが、それを踏まえた上で進めてみようと、話を練り始めておりました。
    でも。速川クリニックはその頃大波真っ只中。中途半端に話を起こしては、かえって医療機関に従事されている方々に失礼に当たると考え、悩んだあげく…コロナ禍は描かない事にいたしました。
    でも自分の中では、できればその時期に当たる日付に唯と若君を飛ばしたくないので、また考えます。
    という訳で振り出しに戻っておりますので、今は手付かずの状態です。

    いつスタートするか、どのくらいの量になるかは全く未定でございます。

    メドがつきましたら、お知らせします。

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    過去&永禄&現在⑥

    ナレ:日曜日の朝から祥はソワソワ。
    佳:「何なの?」
    祥:「何?」
    佳:「何って、動物園の熊じゃないんだから、うろうろって」
    祥:「熊に失礼だよ」
    佳:「はっ?面白くない返答ね」
    祥:「別にいいじゃん。用意は良いの?」
    佳:「着々と進んでるわよ」
    ナレ:料理も支度も出来た頃、尊が覚の手料理持参で裕と神山家に到着。
    裕:「よっ。祥さんが自力でって言ってたけど、もし、無理そうだったら助け舟出してやろうな」
    尊:「そうだね」
    ナレ:佳津子が迎え出た。中に通され、2つ並べたテーブルの上に料理が。
    尊:「おばさん、父からです」
    佳:「ありがとうね。で、新入さんね」
    裕:「はい。稲賀裕です。いながと読みますがいねがです。今日はお招き有難うございました。あのこれは母からです」
    ナレ:裕が持参した袋から箱を出し、その中に色んな味付けのクッキーが入っていた。
    裕:「母はお菓子作りが趣味で、まあまあな味なので宜しかったら召し上がって下さい」
    ナレ:先に祥が一つ取り、
    祥:「いただきます・・・裕君、まあまあってレベルじゃないじゃん、美味いよ」
    裕:「母に伝えます」
    ナレ:上機嫌でもう一つ頬張る祥の姿を見て、ウキウキの理由はみんなの知る所だった。すると呼鈴が。祥が出迎えに出た。
    京:「お招き有難うございました」
    祥:「今日はお越しくださいまして有難うございました。どうぞ上がって下さい」
    ナレ:幸子の隣に男の子が居た。
    幸:「お邪魔致します。ご挨拶して」
    孝:「小路孝です」
    祥:「しょう・・・あっ、幸子さんのお子さんですか?」
    幸:「はい」
    ナレ:結婚していたのだと驚きで祥の動きが止まった。美香子の新しい相手の言葉など頭になかった。ただただショックで。
    明:「祥さん、どうしたの?」
    祥:「あっ、いえ、どうぞ」
    ナレ:四人を中へ通した。さっきまで無駄にテンションの高かった祥が玄関から戻るとドッと落ち込んでいる。佳津子に子供も一人参加すると話を聞いていたので孝だと分かっていた尊は、もっと前に話しておくべきだったと反省していた。
    佳:「祥?」
    祥:「何でもないよ」
    ナレ:幸子が孝に自己紹介させた事で息子の落ち込みを理解した。先に案内して京都木夫妻も幸子も品数の多さに驚いていた。
    裕:「俺、子供の頃は、特にピーマンと椎茸も嫌いで、他にも色々。嫌いなんて言わずに何でも食べなさいって母に叱られていました。でも、ある事で、何でも食べられるようになって、今は何でも食べます。偉いでしょ、ははっ」
    明:「偉いわね」
    孝:「どうしてなの?僕もピーマン食べられないんだ」
    裕:「そっかぁ、昔ね、お兄ちゃんの夢の中にもったいない神様が現れてね、もったいないことするなよ、そんなことするとシッペだぞって。ははは」
    と:「そうか、祥にも現れて欲しいね。未だに人参とピーマンは食べられないんだよ。他にも色々ね。ははは」
    祥:「父さん、わざわざ言わなくてもいいだろうに。もぉ」
    佳:「祥は放っておいて、孝君、どんどん食べてね」
    ナレ:目の前の料理をみんな笑顔で食べていた。祥以外は。ことに裕は京都木夫妻に安心してもらえたらと元気よく食べていた。
    明:「裕さん、しっかり食べて大きくなってね」
    裕:「はい。2m目指して。ハハハッ。なんかお母さんに言われてるみたいで、照れくさいなぁ」
    ナレ:裕の言葉に明子が目頭を押さえた。佳津子も同じ母として明子の気持ちが分かった。
    佳:「明子さん、大丈夫?」
    明:「はい、ワサビを付けすぎて」
    ナレ:この場の雰囲気を壊してはいけないと誤魔化し、注がれた烏龍茶を飲んだ。としをは幸子に父親の名前を尋ねた。
    幸:「父はの名は亮二ですが。あの?」
    と:「やっぱり。中学の時の同級生なんですよ」
    ナレ:その頃の事を幸子に話した。でも、子供の頃は父親も忙しくしていたので、ゆっくり話す事も無かったと話した。
    と:「そうだったんだな。あいつも大変だったんだな」
    ナレ:としをの説明で父親が会社を継ぐ経緯を聞いた幸子は、父親が養子であることを初めて知った。
    幸:「お恥ずかしいのですが、その話を初めて知りました」
    と:「そうだったのか。私が話してしまってすまない。まぁ、それもあいつの優しさだと思って欲しい」
    幸:「はい」
    と:「私には分らない世界だが、君の父親は必死だったんじゃないかなとね」
    幸:「はい」
    ナレ:幸子は両親に放っておかれていたのだと思っていたが、それは父親が自分の代で会社を潰すわけにはいかないと頑張っていたんだ。母もそうだったのだと。二人の気持ちも知らずに我が儘放題の自分を反省していた。
    と:「幸子さん?」
    幸:「今日は伺ってよかったと」
    ナレ:としをは幸子の想いは分からないが、父親に対する気持ちの変化を察した。
    と:「それは良かった。で、弟さんが居たはずだが?」
    幸:「はい。叔父は父が会社を継いでから、好きなカメラで生計を立てています」
    と:「カメラマン?」
    幸:「はい。専門は自然ですので国内外飛び回っています」
    と:「作品は?」
    幸:「何冊か出版されています」
    と:「凄いね。名前は確か正憲さんとかじゃなかったかな」
    幸:「そうです。ローマ字表記で活動しています」
    佳:「あなた、書店に行きましょ」
    と:「そうだな」
    祥:「パソコンとかスマホで見れるんじゃないの」
    佳:「そうかも知れないけど、情緒が無いわね。やっぱり作品は本で、髪の状態で見たいのよ」
    祥:「まぁ」
    ナレ:普段の祥を知らない裕でさえ気づいた。裕は尊にトイレを案内させるためその場を離れた。
    裕:「なぁ、祥さん、あの孝君の事を知らなかったって事だよな」
    尊:「うん、言うタイミング逃して」
    裕:「そっか」
    尊:「祥さん頑張るって言っててけど。駄目なら僕たちでって、でも無理だよね」
    裕:「無理とかそういう問題じゃないだろぉよ。旦那が居るなら子供の事の前に話す・・・じゃないか」
    尊:「幸子さん独身、シングルマザー」
    裕:「そっ、そうなのか。でも、それが分かった所であの雰囲気じゃ、祥さん行動しないだろうし、俺たちの作戦も無理だろ」
    尊:「そうだね。他を考えるとしようか」
    裕:「そうだな。今は俺が盛り上げるから」
    尊:「頼みます」
    裕:「じゃ、俺はトイレ」
    ナレ:トイレに入る裕。

    ナレ:賑やかな食事会も終わり、みんなが笑顔で帰って行った。ただ一人、祥は複雑な顔で見送った。お礼にと明子と幸子が洗い物をしてくれていた。佳津子は覚の差し入れの器を洗っていた。
    佳:「裕君が盛り上げてくれたから良かったけど。ホストのあなたがあれじゃ・・・まぁ、分からなくもないけど」
    と:「母さん?」
    佳:「幸子さんの事でしょ」
    と:「あ~、あぁ」
    佳:「幸子さんが人妻だったからでしょ。告白もしてないのに失恋」
    祥:「母さん」
    ナレ:誰もシングルマザーの事は言わなかった。本人も敢えて話すことは無いと。だから神山家の三人は人妻だと思っていた。
    祥:「俺、見合いするよ」
    佳:「急にどうしたの?」
    祥:「そうして欲しかったんだろ」
    佳:「まぁ、そうだけど」
    ナレ:そう言われてしまうと返って頼む気にはなれない佳津子だった。祥は片付けが終わると店舗に行き椅子にドサッと座り、深いため息をついた。
    と:「本当に幸子さんの事」
    佳:「一目惚れでしょうね」
    と:「こればっかりはなぁ」
    ナレ:二人は店の方を向きため息。

    ナレ:翌日、佳津子が容器を持って速川家を訪ねた。
    佳:「昨日はありがとうございました。本当に美味しかったわ。特にレンコンのはさみ揚げが。レシピ教えて下さい」
    覚:「はい。こちらとしても尊と稲賀君がお世話になりましたから」
    佳:「稲賀君が盛り上げてくれて助かったわ。うちの祥は使い物にならなかったし」
    ナレ:そう言いながら尊を見た。
    尊:「まぁ」
    美:「尊?」
    尊:「幸子さんが結婚しているものだと思ってしまって」
    佳:「えっ、その言い方?」
    美:「周りからあえて言う事も無いと思っていたみたいだし、尊に様子を聞いたけど、幸子さんも身の上話をする場では無かったと判断したのかも。実は、幸子さんはシングルマザーなの。でも、孝君の父親とはちゃんと話して連絡も取り合ったし、二人が別れた後に相手の方も結婚しているし」
    佳:「事情があるのね。でも、それを知った所で、あの子にチャンスがあるのかどうかも分らないし」
    ナレ:覚達三人は幸子の中にも孝の中にも如古坊の存在がある事は分かっているので、今は何とも言えないと口をつぐんだ。佳津子は帰った。
    美:「佳津子さんの為にも祥君の為にもいい方法ないかしらね」
    覚:「そうだな。如古坊さんだって、二人が幸せになってくれたらって思っているだろうし」
    尊:「そうかな」
    美:「それもあるかもしれないけど、こればっかりはどうしようもない事だから」
    尊:「分かってる。それに僕たちが此処で言っていても何も始まらないって事も」
    ナレ:佳津子は親としては一番に息子の幸せを望んでいる。どうにかならないかと考えながら家路についた。

    過去&永禄&現在⑦につづく

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    過去&永禄&現在⑤

    ナレ:祥に相談を受けた翌日、講義の後、いつもの喫茶店でコーヒーにミルクと砂糖を入れて必要以上にスプーンでグルグル混ぜている尊に、
    裕:「なぁ、どうした」
    尊:「ん」
    裕:「まさか、恋の悩みか?」
    尊:「えっ!」
    ナレ:自分の声に周りを見て頭を下げた。
    裕:「・・・図星か?」
    尊:「図星って言えばそうだけど、でも、僕の事じゃないよ」
    裕:「違うなら、誰だよ、俺の知ってる人?」
    尊:「言えないよ」
    裕:「俺とお前さんの仲じゃんか。それともお前さんと親友だと思ってたのは俺の勘違いかぁ」
    ナレ:あからさまに噓泣きと分かる姿に尊は苦笑い。
    尊:「分かった。裕さんの知ってる人。それだけで勘弁して」
    裕:「俺も知ってる。ん~、大学関係、いや違うな・・・分かった、祥さん」
    尊:「えっ!」
    裕:「てことは当りだな」
    尊:「此処だけの話だから」
    裕:「分かってるって。で、相手は京都木さんと居た女性、確かさちこさんか」
    ナレ:裕の勘の鋭さに驚き、返事も出来なかった。
    裕:「やっぱりそうなんだ」
    尊:「でも、どうしてそう?」
    裕:「あの時、祥さんが彼女を見ている感じが、もしかしてって思ったんだよ。祥さんも分かりやすい人だよね。俺みたいな者にもさとられるんだから。ははっ」
    尊:「そ、そうだね」
    裕:「で、俺の推理だと、相談されたがどうしたものかと悩んでいるってところ」
    尊:「え・・・そ、そうなんだ。見てた?」
    裕:「そんなわけないじゃん・・・じゃ、俺を使えよ」
    尊:「えっ?」
    裕:「俺をダシに使えって事だよ」
    尊:「だし?」
    裕:「そっ」
    尊:「でも、どうやって?」
    裕:「話す前に、クリームソーダ奢って」
    尊:「それぐらいいいよ。追加で野菜サンドは?」
    裕:「それはまた今度で。で、あの彼女さん、えっと幸せの子?」
    尊:「そうだよ」
    裕:「別に言う事も無かったから言ってないけど俺の母親もさちこ。平仮名でこは子供の子」
    尊:「そうだったんだ」
    裕:「運命を感じるねぇ。で、俺の事は京都木さんも気づいてくれていると思うんだ。でも、言わないだろうから、まぁ、知り合った縁でって事で、ごはん食べませんかって祥さんから誘うんだよ。で、その時、幸子さんも」
    尊:「大丈夫かな?」
    裕:「だってさぁ、彼女だけ誘っても、相手が遠慮したら計画おじゃんになるだろ。そうだろ?」
    尊:「そうかな」
    裕:「幸子さんだって京都木さんと一緒なら来やすいんじゃないかなって。で、その時、二人っきりにして話をさせるとかって事でさ」
    ナレ:裕の提案を話す価値はあると思った。
    尊:「分かった、その案で相談してみるよ。もし、それでって事になったら裕さんも勿論」
    裕:「あたぼうよ。結構いい出汁出るかもよ。祥さんの為にもな・・・ん?さっきから、俺の名前さん付けだよなぁ」
    尊:「あぁ」
    裕:「もぉ」
    ナレ:約束通り裕の分も支払い、家に戻り覚と美香子に伝えた。
    覚:「そんな感じであれば幸子さんも参加しやすいだろうな」
    ナレ:夕飯の後、尊は祥に電話を掛け伝えた。でも、裕が言っていた二人っきりにさせる話は言わなかった。
    祥:《そうだったら、来てくれると思うよ》
    尊:「うん。あとは」
    祥:《そうだな。ここまでやってくれたんだから、俺も頑張らないとな》
    尊:「ん・・・」
    祥:《どうした?》
    ナレ:孝の事を話した方が良いかと考えていると、電話の向こうから佳津子が、
    佳:《祥、スマホ鳴ってるわよ》
    祥:《わかった。じゃ、やっぱり日曜とかの方がいいよな。決まったら連絡するよ》
    尊:「あっ、うん」
    祥:《ごめん、じゃ、また》
    ナレ:電話が切れた。受話器を持ったままの尊に、
    美:「孝君のこと言うタイミング逃したようね」
    尊:「うん」
    覚:「祥君、どう思うかな」
    美:「そうね」
    ナレ:美香子は如古坊を思い浮かべて、
    美:「もし、この場に如古坊さんが居たらどうだったかな」
    覚:「そんな事考えたら、こっちが切なくなるからさ。やめようよ」
    美:「そうね、ごめん」
    ナレ:如古坊だったら、きっと祥を応援するのだろうと三人は思った。

    ナレ:祥が電話に出ると仲間の一人で、付き合っていた彼女と三か月後に式を挙げるから招待状を送るとの連絡だった。祥は出席の意思を伝え電話を切った。
    佳:「誰?」
    祥:「もちっとが結婚するんだってさ」
    佳:「持田君。そうなの」
    と:「先月は、確か、六田君だったよな」
    祥:「りくか・・・そうだったな」
    ナレ:祥の仲間が続々と結婚していることを知る両親の気持ちは十分に分かっている。前の事もあるから、幸子の事を話して上手くいかなかったら、また、ガッカリさせてしまうのではないかと。
    佳:「それと、尊君と何話してたの?」
    ナレ:京都木夫妻を誘って食事会をと提案してきたことを伝えた。
    と:「京都木さんと?」
    祥:「ん。彼も京都木さんもどちらも同じ思いだと思うけど言葉にはしないから、また会わせてあげたいって」
    佳:「そうなの。どちらも優しいわね。私も彼に会ってみたいわね」
    祥:「うん。で、あの時、一緒に居た幸子さんもって尊が」
    ナレ:祥は心の中で謝り、尊を強調して言った。
    佳:「さちこさんって牧合さんの所の?」
    祥:「そう」
    佳:「尊君が?」
    祥:「おばさんが最近知り合った友達が幸子さんだったって尊が」
    佳:「そうなの。縁ってあるのね。それにさちこさんも京都木さんの?」
    ナレ:京都木明子が幸子の屋敷で働いていたことを説明した。
    と:「しょうじって、小さい道路の路?」
    祥:「声に出すだけでどんな字を書くのかは知らないよ。幸子さんの漢字も分かったばかりだし」
    と:「そうか。もし、そうだったら、親父さんの名前は亮二じゃないかとな」
    祥:「もぉ、だから、会ったの3回だし、ましてや、父親の名前までは」
    と:「それもそうだな」
    佳:「お父さん?」
    と:「もし、私が知っている人なら、中学の同級生。学力ではビリを競い合う仲だった奴かなと思ってな」
    佳:「ビリ?」
    と:「そっ、高校受験まじかになってから必死に勉強して、お互いどうにか志望校に合格」
    佳:「そうそう、お義母さんに聞いたわ。やれば出来る子なのに、言ってもやらなかった子が急に勉強し始めて、心配していた高校にも入れて赤飯炊いて喜んだって」
    と:「きっかけは、あいつの親父さんが一時期、具合が悪くなって。過労で大事を取って入院してた時に、父親を心配するならば、大学卒業したら私の元で社長に成るべく修業をしなさいって言われたそうだよ。亮二が養子になって5年後に弟が生まれて、卑下してたわけじゃないけど、実子の弟に会社を継がせるだろうと思っていて、ダラダラ過ごしていたって。でも、病室で言われて決心して、俺達、つるんでいた他の3人にも勉強を強要して一緒に」
    祥:「そんな事が。だから俺に勉強しろって言わなかったんだな」
    と:「私の子だしな。ははは」
    佳:「もぉ、二人して。もし、その方のお子さんだったら?」
    と:「もしそうなら、今の様子を聞きたいな。中学卒業してお互い高校生活で、それぞれに友達も出来て、仲違いってわけじゃないけど疎遠になってな」
    ナレ:としをの話を聞いていて、
    佳:「じゃ、お店決まっていないのなら、此処で良いんじゃないの?」
    祥:「此処って、うち?」
    佳:「そうよ」
    祥:「でも、結構な人数になるよ」
    佳:「料理教室まで通っていても、腕を振るう場が無いじゃない。目いっぱい料理を作ってみたいのよ」
    ナレ:佳津子は腕まくり。佳津子に強く言われ会場は神山家に決まった。その事を尊に連絡した。
    祥:《そう言う事で、我が家でやる事になったんだ》
    尊:「ご迷惑では?」
    祥:《お袋がやる気になってて、やめると嫌味言われそうだから。で、京都木さんに予定聞くけど、一応来週の日曜と考えているんだ》
    尊:「裕さんも僕も大丈夫だと思うけど・・・まぁ」
    祥:《どうした、何か不都合?》
    尊:「あっ、いえ」
    祥:《そっか、じゃ、はっきりしたら、連絡する》
    ナレ:尊は電話を切った後、覚に話した。
    覚:「神山さんだけに任せては申し訳ないから、僕も何品か作るよ」
    尊:「ダブって多くなってもと思うけど」
    覚:「あれは大丈夫だと思うけど」
    尊:「あれ?」
    美:「そうね、レンコンのはさみ揚げは大丈夫じゃないの」
    尊:「そっか。そうだね、じゃ、お願い」
    覚:「任せとけ」
    ナレ:覚は腕まくり。祥は京都木に連絡した。
    祥:「夜分すみません」
    明:《大丈夫ですよ。どうしました?》
    祥:「実は、うちでおしゃべり会をしようという話になりまして」
    明:《おしゃべり会?》
    祥:「はい。お二人と、先日の裕君も誘って、みんなで」
    明:《あの方?》
    祥:「そうです。それから、都合がつきましたらご一緒していました幸子さんもどうかなと」
    明:《幸子さんも・・・はい、聞いてみますね。あの、もし大丈夫でしたら一人子供の参加もよろしいでしょうか?》
    祥:「お子さん?」
    明:《はい》
    祥:「大丈夫ですよ。賑やかになります」
    明:《ありがとうございます》
    祥:「来週の日曜日と考えていますが、ご都合は?」
    明:《私と主人は大丈夫ですが、明日、幸子さんに聞いてからお返事しますね》
    祥:「分かりました。では、おやすみなさい」
    明:《では、失礼いたします》
    ナレ:電話が切れた後も祥は受話器を握りしめていた。
    祥:「可笑しかったかな?」
    ナレ:唐突に幸子の名を出して怪しまれなかったかと今更だがドキドキしていた。
    佳:「どうしたの、そんな恰好で。終わったなら受話器置きなさいよ」
    祥:「あっ、あぁ・・・風呂入れる?」
    佳:「今、お父さんが入ってるから」
    祥:「そっ、じゃ、出たら呼んで」
    ナレ:祥は二階に駆け上がった。翌日、明子から日程も大丈夫だし、幸子も参加すると連絡があり、その時も子供も一人参加すると聞いた。祥は京都木夫妻の孫なのかと思い、その子については聞かなかった。そして子供ぬ喜びそうなメニューも入れてもらえるようにと佳津子に伝えた。

    過去&永禄&現在⑥へつづく

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    振り返ります四人の現代Days、44から117まで

    no.1067の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    44、no.901、プライスレス
    45、no.902、選択せよ
    46、no.903、以心伝心
    47、no.904、戦うあなたが
    48、no.905、呼んだ?
    49、no.906、贈ります
    50、no.907、狙ってる
    51、no.908、溶ける~
    52、no.909、星だけが見ていた
    53、no.910、忖度します┅┅┅

    念願のクリスマスイブデート。色々過ごし方はあるでしょうが、私は終わりがけをとことん甘~くしました。唯が、物足りないって言い出さないように。デートプランなんて制約がなければいくらでも考えつきますが、一緒に居られて安全が確保されていれば、何してても楽しいんでしょうね。

    54、no.911、画伯!
    55、no.912、サービス!
    56、no.913、さりげなく
    57、no.914、説明せよ
    58、no.915、甘酸っぱい
    59、no.916、春遠からじ┅┅┅

    公式掲示板で読んだのかな違うかな…ドラマで瀕死の若君を丸投げされた翌朝、尊が両親に説明する際、ひじをテーブルに乗せ両手を口元に寄せて組みます。これが、アニメ新世紀エ〇〇〇ゲリオンの登場人物がよくやるポーズなんで、尊はそのアニメのファンなんだよと教わりまして。55話で用語をほんの少し盛り込みました。
    キラキラのイルミネーション。ソワソワしてる瑠奈に気づかない尊。いつか同じ場所でちゃんとデートさせてあげたいと思います。

    60、no.917、とりあえず
    61、no.918、全て泡とならぬよう
    62、no.919、説法!
    63、no.920、ルーティンです┅┅┅

    前回の振り返りで触れるのを忘れていましたが、ドラマの中では一切出てこない源三郎の氏、話を組み立てるにあたりどうしても必要でしたので、調べまして原作から引用致しました。

    64、no.921、一枚から三枚
    65、no.922、蛍が飛ぶように

    66、no.924、満席でございます
    67、no.925、翼を広げて

    68、no.926、本領発揮

    69、no.928、衝撃的!
    70、no.929、想像するに┅┅┅

    若君の実際の墓は、きっと立派な物が造られている。今回旧緑合の地に出向いていたらそれに出合ったかもしれないですが、もし没年が彫ってあったりしたらさすがにショックでしょうから、訪れる機会はこれからもないと思います。

    71、no.932、Xデー到来
    72、no.937、想い出の場所
    73、no.940、ハラハラ!
    74、no.941、ドキドキ!
    75、no.943、月推しです

    76、no.946、引き継ぎます
    77、no.952、誘惑わくわく
    78、no.953、一歩進む
    79、no.954、天にも昇る心地
    80、no.957、密談です┅┅┅

    瑠奈とみつき。皆様に好かれる子達であって欲しいと願い、セリフや仕草を熟考したつもりです。時々暴走はするけれど愛らしい、ふわっとした雰囲気の瑠奈と、物怖じせず凛とした、でも幼なじみの彼にはとことん一途なみつき。どちらも好きですね。自分が作ったキャラなので何とでも出来るってのもありますが、もっともっと描いていたい彼女達です。

    81、no.959、幸せな初夢
    82、no.960、匂わせません

    83、no.962、ムクムクと
    84、no.964、着々と準備

    85、no.966、未踏の地へ
    86、no.967、幕開きです
    87、no.969、辿ります
    88、no.971、はなむけの
    89、no.972、二歩進んだ
    90、no.974、ゴールいやスタート
    91、no.976、振り返りは大切┅┅┅

    唯は若君に一目惚れでしたね。対比でもないですが、尊にはゆっくりと恋に目覚めてもらいました。なんで僕?と疑いながらもまんざらではなかったはず。嫌だったら、元旦のLINE攻撃にマジうぜえ!の一喝で、はい終了~だったでしょ。

    92、no.978、野望?
    93、no.980、父の思い
    94、no.982、母の思い
    95、no.984、大人への階段

    96、no.986、そーっとね
    97、no.991、ハレの日
    98、no.993、祝福します
    99、no.994、昔も今も
    100、no.995、霧が晴れた┅┅┅

    吉田城ですが、ドラマSPスタート3分30秒後に出てくるロールプレイングゲーム風の地図には表示されていません。吉田城自体が話の流れに関係ないのでそうなったんだと思いますが、右下、黒羽城の東に森のような場所があるのでその辺りと推測しました。
    源トヨ二人で一部屋を与えられた初日。トヨが二階に上がってくるのを、実は首を長くして待っていた源三郎。子供用の図鑑でないと、内容がさっぱり頭に入ってこなかったのです。

    101、no.996、尊い!
    102、no.997、プチ旅行です
    103、no.998、初めての

    104、no.999、気遣いの人
    105、no.1000、健やかなる時を
    106、no.1002、ととのう?
    107、no.1003、触れてごらん

    108、no.1004、環境問題
    109、no.1005、事件発生!
    110、no.1006、臨機応変です
    111、no.1007、その線でいこう
    112、no.1008、出番が来た
    113、no.1009、一息ついて
    114、no.1010、間一髪?
    115、no.1011、慌てます
    116、no.1012、恐縮です
    117、no.1013、奏でていてね┅┅┅

    覚お父さん。若武者達の恋愛相談にも気さくに応じ、押しつけがましくもない。息子の彼女がぐずっても、相手に寄り添い交渉もしてくれ頼りになる。さりげないカッコ良さを表現したつもりです。
    「好き」の伝え方なんですが。唯は結局直接告白はしてませんよね。若君の切ない嘘で現代に帰された時は「大好きなんですぅ」は届いてないし。「超好き!」は二回ありますが、どちらかと言うと心の声が口をついて出た感じで。
    長澤城にて。唯 心の声(こんな状況でも余裕で笑えるなんて…)
    小垣城にて。唯 心の声(こんな夫がいる女子高生なんて私だけ!)
    若君の方がはっきり言っていて「お前を思う」と山寺で話の流れの中サラっと告げる。そりゃ「本当に?」って聞き返すよなぁ。
    で、尊の場合。まだ付き合い始めて5日です。瑠奈ちゃんに言いたい。私の事好き?って質問は危険です。好き以外の答えが選べないから相手の負担になるだけなんで。とは言え尊の腹は決まっていた(*^^*)ので、照れで遠回しな表現にはなったけれど渾身の告白は成功しました。

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    振り返ります現代Days(仮)&四人の現代Days1から43まで

    通し番号、投稿番号、サブタイトルの順です。 どんな話だったっけ?と遡って投稿を探したい時、サブタイトルを掲示板の記事検索欄(板の下の方にあります)に入力すると、ページを戻っていくより早いと思います。

    今回も長い(´д`|||)ので、かなりかいつまんでの振り返りといたします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    現代Days(仮)への道

    1、no.818、出ました!
    2、no.823、勝ち目ないので
    3、no.825、歴史のおさらい
    4、no.827、よもやそんな
    5、no.828、悩みが尽きぬ
    6、no.829、食の全国制覇
    7、no.830、助けられるものなら
    8、no.831、心が絶不調
    9、no.832、動く!
    10、no.833、思い立ったが吉日
    11、no.834、それでいいのか?
    12、no.835、負けない!
    13、no.836、特等席です
    14、no.837、いざ!
    15、no.839、着いたー!
    16、no.841、任せます
    17、no.842、どうなる?
    18、no.843、深夜に咲く花
    19、no.844、のるかそるか
    20(終)、no.845、絆の輪です┅┅┅

    センター試験は、尊の受けたこの年が最終の実施でした。今は、大学入学共通テストが行われていますね。
    13話の、ぷにぷにの唯と尊のまぁ可愛らしい事。まだ言葉もたどたどしい唯と、歌うように愛娘に語りかける母の会話は、描いててとても楽しかったです。
    現代と永禄で何が起こったか。速川家の決断からの若君の決断と、かなり濃い内容のミニシリーズになりました。

    四人の現代Days

    1、no.847、いらっしゃいませ
    2、no.848、大騒ぎです
    3、no.849、まだ早い
    4、no.850、それが理由です┅┅┅

    何やかやで無事四人到着。着いてすぐに、戻ったら3分後だよと源トヨには説明してるんですが…目の前の事柄を理解するのに精一杯で、色々曖昧になった模様です(137話)。

    5、no.851、so cute!
    6、no.852、入れ過ぎ注意
    7、no.853、事も無げに
    8、no.854、遠乗りじゃ
    9、no.855、後押しします
    10、no.856、夜襲?

    11、no.857、職人あらわる
    12、no.858、姫にお似合いです
    13、no.859、ヘルプ!

    14、no.860、内密に願います
    15、no.861、熱唱!
    16、no.862、美声!
    17、no.863、針のむしろ┅┅┅

    実は16話17話を描いている時点では、この女子高生2の瑠奈が尊の彼女になるなんて全く予想だにしておりませんでした。何がどう転ぶかわかりません。クラスメートから彼女になるまでかかった日数は、三週間(90話)。

    18、no.864、水上の戦い
    19、no.865、あなたしか見えない
    20、no.866、召し上がれ
    21、no.867、チャンス!

    22、no.869、誰かのために
    23、no.870、二人並んで
    24、no.871、郷に入っては
    25、no.872、懐が深い┅┅┅

    ヘアドネーション。この話を描いた当時は、容易く取り上げて良い物かと考えたのですが、その後今までに私の周りで二人も寄付していて、事業として浸透しているのを実感しました。

    26、no.873、ステップアップ
    27、no.874、時速何キロ?

    28、no.875、てんこ盛りです
    29、no.881、アポ取ります

    30、no.884、丸投げですか?!
    31、no.886、きってきって
    32、no.887、思ってたんと違う┅┅┅

    31話で父が咄嗟にひねり出した、戦国戦隊シュツジンジャー。せっかくなんでちょこっと書いてみました↓

    敵に囲まれているシュツジンジャー5人。

    シュツジンジャー1号タダキヨ「謀りおったな!」

    シュツジンジャー2号ユイ「憎ったらしい!このサカグチめ!」

    サカグチ「ふふん。ノコノコ現れおって」

    カーット!

    ユイ「へ?」

    監督「おい、すり変わってるぞ!3号コヘイタはどこに行ったんだ!」

    ユイ「うわ。じい、何やってんのよ!」

    いつの間にか、コヘイタの衣装を着てじいがちゃっかり並んでいた。

    じい「何ゆえわしを仲間に入れぬぅ」

    ユイ「はぁ?ちょっと、小平太はどこよ?!」

    じい「小平太には、今日は撮影はなしと言っておいたわ」

    ユイ「なにそれ!小平太も、どうしてその話を信じるのよ~」

    タダキヨ「じい、それは…ならぬ」

    ユイ「どう考えてもじいはメンバーには入んないし。おかしいでしょ!」

    じい「良いではないかぁ。お、何じゃ?離せ、離すのじゃ!」

    両脇を掴まれ、捕らえられた宇宙人状態で引きずられていくじい。

    シュツジンジャー4号ゲンザブロウ「信茂様、御免」

    シュツジンジャー5号アクマル「連れていく」

    ユイ「ホントにもー。じいは今度から出禁にしとかないと」

    頑張れ、戦国戦隊シュツジンジャー。

    33、no.888、羽を休めて
    34、no.889、ほろほろと
    35、no.891、竹刀を持て!
    36、no.892、滲み出る

    37、no.893、熱が入るよ
    38、no.894、トロットロ
    39、no.895、浮っき浮き
    40、no.896、迫る!┅┅┅

    何度かスモア作ってみたんですけど、マシュマロってあっという間に焦げるんですよね。でも熱でいい感じにチョコが溶けると、よっしゃーとほくそ笑んでいます。

    41、no.897、ハンコください
    42、no.898、宣言します
    43、no.899、根回しばっちり┅┅┅

    日記に名前がない話は、木村先生との会話でもほんの一瞬しか触れていません。それをちゃんと覚えていた若君。きっと、シールを貼る時も姿勢良くペタリと(149話)。

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    過去&永禄&現在④

    ナレ:翌日、祥は尊にLINEを。しばらくして尊から電話が。
    尊:《稲賀君に話します。で、場所は?》
    祥:「城址公園でどうかなと」
    尊:《じゃ、石垣から見える遊具の所で彼と話している姿を見てもらうのは?》
    祥:「そうだな。じゃ、いつにしようか?」
    ナレ:相談して来週の日曜日の午後2時と決めた。尊が店の方は大丈夫かと聞くと、その時間帯の予約を受け付けないから心配ないと。そして尊は講義が終了した後、いつもの喫茶店で裕を公園へ誘う話を。
    裕:「来週の日曜に城跡の公園、黒羽城?」
    尊:「そっ」
    裕:「なんで?」
    尊:「えっと・・・僕はあの場所が好きなんだ、大切な人との思い出もあるし」
    裕:「彼女?」
    尊:「違うよ」
    裕:「ふ~ん、でもなんで?」
    尊:「ん・・・稲賀君も大切な人の中の一人だから、本当だよ」
    裕:「別に疑ってはいないけど。分かったよ。じゃぁさぁ、大切だって思うんなら、だいぶ経つけど、その稲賀君は止めてくんない?」
    尊:「あっ、ごめん、そうだよね、同級生でも年上の人に君付けは良く無かったよ・・・ですね」
    裕:「も~、そうじゃなくて、裕って呼び捨てにしてくんないかねぇ。俺だって尊って呼んでるじゃんかぁ」
    尊:「そうだね、じゃ、裕君」
    裕:「君って、まぁ、それでいいや。で、何時?」
    尊:「2時に遊具の所で待ってるから」
    裕:「分かった」
    ナレ:裕は何か意味ある様な気もしていたが聞かずにいつもの野菜サンドを食べていた。尊は裕と別れた後、祥にLINEした。祥もその晩、京都木に連絡をして待ち合わせ時間も2時20分前と伝えた。裕が来る前に打ち合せする時間も必要だろうと。

    ナレ:尊は昼食を取り城址公園に向った。早めに出て来たのでまだ誰も来ていなかった。石垣にもたれて、忠清と来た時の事を思い出してながら待っていると三人連れが、
    尊:「えっ」
    ナレ:祥が話していた夫婦と思われる二人の隣に幸子の姿が。
    尊:「どうして?」
    ナレ:尊は美香子が言った『偶然』に驚いた。三人に近づいて行くと脇道から祥が来た。
    祥:「えっ?」
    ナレ:祥も幸子の姿に驚いていた。
    祥:「しょうじさんがどうして?」
    尊:「ご無沙汰しています」
    幸:「ご無沙汰してしまい申し訳ございません」
    ナレ:尊に頭を下げる幸子の様子を見て、
    祥:「尊?」
    尊:「祥さんも?」
    ナレ:二人の様子を見てどちらにも関わりがある幸子が説明した。京都木の妻は明子で、幸子の幼い頃からお手伝いとして小路家に勤めていた。明子に、尊は親身になってくれた速川家の人。祥と会ったのは社長の葬儀の時だったと話した。
    祥:「それぞれに縁があったとは驚きです」
    明:「幸子お嬢様は」
    幸:「その言い方はもうやめてね」
    明:「はい。幸子さんは娘に優しくしてくれていまして」
    幸:「お二人は私の事ご存じなの。だからはっきり言っても。我が儘だった私にも明子さん同様に優しくも厳しくしてくれていて、年下だったけれど。この度の事を明子さんから伺って、二人と同じ思いで、私もその方に会ってみたいとお願いして一緒に」
    祥:「そうでしたか。でも」
    幸:「分かっています」
    ナレ:話し込んでいて時間よりも早めに来た裕が近づいている事に気づかなかった。段取りとしては遠くで姿を見る事だったが、
    裕:「尊」
    尊:「えっ、どうして?」
    裕:「何さ?」
    尊:「何でもないんだ」
    裕:「祥さんも、ってか、何してるんですか?」
    祥:「えっ、あっ」
    裕:「何を慌てて・・・あ~、そう言う事」
    尊:「そう言う事って?」
    裕:「そこの女性が祥さんの彼女で、お二人が彼女さんのご両親で・・・でも、尊は?」
    尊:「違うよ・・・この方たちは・・・ご家族で城跡を見に来ているところで声を掛けられて」
    裕:「そぉ・・・でも、祥さんは?」
    祥:「俺は・・・体力づくりのマラソン」
    ナレ:明らかに運動をするような恰好ではない。
    裕:「良く分からないけど、そう言う事にしておきますか・・・でも、祥さんとお似合いだなぁつて思ったんだけど」
    ナレ:先に声にしたのは幸子だった。
    幸:「この方に失礼かと。私より年下・・・でしょうから」
    裕:「お若く見えますけど?」
    幸:「今年30歳になります」
    ナレ:その答えに尊と祥は驚きの声を上げた。
    裕:「二人とも?」
    ナレ:話をしていても幸子の年齢までは聞いていなかった尊。祥は同い年位だと思っていた。
    尊:「何でもないんだ」
    明:「楽しそうな方ね」
    裕:「はい、よく言われます。昔・・・親に五月蝿いってよく言われます」
    尊:「ご両親だけじゃないと思うけど」
    裕:「何だとぉ、年上だぞぉ」
    尊:「年上扱いするなって言ってるのに」
    裕:「いいじゃん。俺、稲賀って言うんですけど、母方の伯父さんが秋田の人で酔うと、悪い子はいねがぁって俺にまとわりつくんですよ。あははは」
    ナレ:幸子と祥と尊の表情は変わらなかったが、明子と夫は声をあげて笑った。
    裕:「この話すると大概、へって感じの顔されますけど、お二人が笑ってくれて、今日は来てよかったなんてね。あのぉお名前を伺ってもいいですか?」
    京:「構いませんよ。京都に木と書いてきょうつぎと申します」
    裕:「珍しいお名前ですね」
    京:「あなたもそうですね」
    裕:「そう言えばそうですね。あははは」
    京:「私たちもあなたに会えて良かった。楽しかったですよ」
    裕:「それは良かった」
    京:「我々はもう帰ろうか?」
    明:「そうね。楽しかったわ」
    幸:「では、失礼いたします」
    ナレ:三人はお辞儀をして歩いて行った。
    祥:「俺も戻るよ。じゃ」
    ナレ:駐車場の方へ歩いて行った。
    裕:「久し振りに遊具に乗るってのもいいなぁ」
    ナレ:裕はパンダにまたがり、尊は馬に。
    裕:「なぁ」
    尊:「なに?」
    裕:「京都木さんの連絡先、祥さんに聞いておいて。祥さんの知り合いなんだろ」
    尊:「えっ?・・・あっ、まぁ」
    裕:「俺が結婚する時に招待したいって思ってさ」
    尊:「どうして?」
    裕:「何となく・・・って事かな」
    尊:「ん・・・祥さんに話しておくよ」
    ナレ:裕は胸に手を当てた。二人を目の前にした時に心臓がドクンと大きく波打った。裕の中でその意味が分かった。尊も裕の想いを感じ取った。
    尊:「うちに寄る?」
    裕:「今日は・・・父さんと母さんと外で食べようって誘う事にするわ。バイト代入ったし」
    尊:「そうだね」
    裕:「尊も親孝行しろよ。じぁな」
    尊:「うん。じゃ、気を付けて。今日はありがとう」
    裕:「あぁ、明日な」
    ナレ:裕は駐車場に行きバイクで帰って行った。

    ナレ:戻った頃、裕の事を尊から聞いて、京都木夫妻と同じ思いだったことを知り自分の中ではこれで良かったのだと思った。だが、もう一つの祥の中のモヤモヤがさらに大きくなっていた。
    佳:「どうしたの、箸持ったまま考え事?消化に悪いわよ」
    ナレ:夕飯時に、お椀を持ったままジッとしている祥に話しかけたが、聞こえていないよう。
    と:「おい、祥!」
    祥:「えっ、あっ、なに?」
    佳:「考え事しながらで、お味噌汁溢すわよ」
    祥:「あっ、ごめん、ご馳走様」
    ナレ:箸を置き、席を立ち、自分の部屋に行く息子の後姿に、
    と:「あいつ、どうしたんだ?、京都木さんの事で何かあったのか?」
    佳:「それはいい方向に済んだらしいけど。まぁ、他に思い当たる節はあるんだけど」
    と:「なんだ?」
    佳:「牧合さんのところの従業員さんで、ほら形見の品を持って来てくれたって話したでしょ」
    と:「あぁ」
    佳:「その時に来た女性に会ってから、あの子の様子が・・・と思うんだけど」
    と:「まさか?それだけで?」
    佳:「時間じゃないでしょ。母の勘としてはそうなのかなって思うけど、いつもなら、何でも話す子なのに」
    と:「まぁ、あいつも27、秋には28になるんだし。前みたいなわけにはいかないんだろう。しばらくは、そっとしておいた方が」
    佳:「そうね」
    ナレ:佳津子は祥のほとんどてうぃ付けていない食器をかたずけて、おにぎりを2つ握り部屋の前に行きドア越しに、
    佳:「夜中お腹すくでしょうから、食べなさいね。此処に置いておくわよ」
    ナレ:ドアの向こうから、
    祥:「ありがと」
    ナレ:祥は自分でもどうしたら良いのか分からなかった。ただ頭から幸子の存在が消えない事だけは分かった。
    祥:「あっ、そうだ、尊」
    ナレ:幸子と知り合いの尊に相談してみようかと考えたが、そうなれば自分のモヤモヤした気持ちを話さなくてはいけない。唸りながら頭を掻きむしり髪型がクシャクシャ。祥は意を決し、翌日速川家を訪ねた。

    ナレ:夕飯が思ったと思う時間帯に、速川家の玄関ドアの前で深呼吸をして呼鈴を押した。モニター越しに名乗る声がうわずった。
    尊:「今開けます・・・祥さん、どうしたんだろう?」
    ナレ:両親の顔を見た。玄関へ行きドアを開けた。
    尊:「いらっしゃい」
    祥:「夜分にごめんな」
    尊:「大丈夫ですよ。あがって」
    ナレ:尊の後ろから歩く姿は背の高い祥が背中を丸めて静々と。
    覚:「さっ、此処に」
    ナレ:覚が椅子を引き座らせた。
    祥:「すみません」
    美:「どうしたの?」
    祥:「あ・・・あのぉ・・・そのぉ・・・」
    覚:「祥君らしくないよ、あのそのって」
    祥:「はい・・・あの、助けてもらいたくて」
    美:「何を?」
    祥:「実は、俺、さちこさんの事でモヤモヤしてて」
    ナレ:三人は揃って驚きの声を上げた。
    祥:「そこまで」
    美:「そりゃぁ驚くわよ。モヤモヤって幸子さんを好きになったって事でしょ」
    祥:「まぁ」
    覚:「まぁって、そうですって」
    祥:「やっぱり、そうですよね」
    美:「やっぱりって、他人事みたいに」
    祥:「はぁ、すみません・・・昔に見かけた時はどうって言うか逆に付き合いたくないなぁって思ってたんですけど、再会して」
    美:「ビビッときたのね」
    祥:「そう言う事だと。でも、俺だって付き合った女性は居ますけど、今回は、なんか、どうしたらッて、考えてしまって」
    美:「佳津子さん達には話したの?」
    祥:「まだ、言っていません」
    美:「珍しいわね、何でも話す仲なのに」
    祥:「俺もそう思います。でも、今回は言えなくて」
    覚:「もしかして心の中で、二人をガッカリさせてしまうかもって思ってるんじゃないか?」
    祥:「そうかも知れません。前の事もあるから」
    尊:「でも、言わないと何も進まないと思うんだけど」
    美:「そうよね。もしかして幸子さん新し彼が出来ているかもしれないから」
    ナレ:覚達は幸子がシングルマザーだと知っているが自分たちが言っていいものかとこの場合は言わずにいた。祥も独り身だと考えていたから美香子の『新しい』についても付き合っていた人が居るのだろうと疑問は持たなかった。
    祥:「そうですよね」
    尊:「居るかどうかは分からないけど。まぁ、兎に角、話してみる事はした方が良いと思うな」
    覚:「そうだな。話して、相手が居るなら祥君もきっぱり諦めがつくだろうし」
    祥:「はい。さちこさんが幸せなら俺は」
    美:「そうね。名前も幸せが付くから、名前通りになって欲しいわね」
    祥:「幸せに子と書くんですか?」
    美:「そうよ」
    祥:「素敵な名前ですね」
    覚:「本人に言ってあげれば」
    祥:「それはぁ」
    ナレ:覚達は祥にも幸せになって欲しいと思うがどうなるかは分からない。はっきりさせなくてはとも考えるが、どう切り出していいのか分からなかった。
    祥:「すみません」
    美:「私たちも方法を考えるから、時間頂戴」
    祥:「はい・・・宜しくお願いします。では、失礼します」
    ナレ:祥を見送った。
    覚:「どうしたら良いのかねぇ」
    美:「そうね。でも、孝君の事を言わなくて良かったのかしら?」
    覚:「あぁ、祥君の顔を見ていたら言えなかった。言った方が良かったよな。やっぱり」
    尊:「方法が見つかった時に話して、祥さんがどう判断するかは、祥さんに任せるしかないと思うけど」
    覚:「そうだな」
    ナレ:しかし、その晩、案は浮かばなかった。

    過去&永禄&現在⑤につづく

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    過去&永禄&現在③

    =過去 2020年 夏=

    ナレ:サークル仲間とのキャンプの計画があり、夏休み前に髪をカットしに祥の所へ。
    祥:「大学生活はどうだ?」
    尊:「楽しいですよ。勉強にはどうにかついて行けてますし、サークルは特に裕さんがムードメーカーで、先輩達は昔の事を聞いていても、それを全く感じさせない五月蝿い奴って言ってます」
    祥:「楽しそうで良いじゃないか」
    尊:「タイプは違うけど、姉に似ているって思う時もあるんです」
    祥:「そうか。で、唯から連絡あるのか?」
    尊:「まぁ・・・元気にしているようですよ」
    祥:「そっか。あの性格だから、何処でも生きていけると思うよ。ははは」
    尊:「そう思います」
    祥:「で、あの後、彼の事を思い出した。あの時は顔も白くて線の細い子だった。でも、尊と一緒に居る姿見て、心から嬉しかった。でさ、祖父の代から贔屓にしてくれているお客さんが居てね、四年前だったかな、ご病気で亡くなった娘さんの三回忌に参列したんだけど、詳しくは言えないけど、やっと気持ちも部屋も整理できたと言ってね、その時、お父さんが移植した人からの手紙を見せてくれて、その手紙の文面に、共に生きていきますと書いてあって、その時は気づかなかったけど、今思えば彼かなと」
    尊:「裕さん?」
    祥:「だと思うんだ。その方にも言えないけど、もしそうなら、今の彼を見たら」
    尊:「きっと、喜んでくれると思うな」
    祥:「そうだな・・・」
    尊:「祥さん?」
    祥:「・・・ん、色々決りはあると思うけど」
    尊:「それって、会わせたいって?」
    祥:「まぁ。彼には言わずに遠くから姿を見るだけでも。そうさせたいって思ったんだけどさ」
    尊:「僕もそう思うかな。でも、その方が会いたくないと言ったら?」
    祥:「まぁ、その時はその時で。でも、本当に彼なのかは、はっきりしていないから、その事も話して、それでもいいと言ったら」
    尊:「分かりました。その方が姿を見たいと言ったら、協力します」
    祥:「ありがと。連絡してみる。で、もう一つ思い出したことがあって」
    尊:「ん?」
    祥:「おばさんと居た女性の事。でも、本当にその人か確証は無いんだけど、似ていたんでさ」
    尊:「はぁ?」
    ナレ:祥はレジ下の抽斗から何か持ってきて尊に見せた。
    祥:「俺が高校の仲間と湘南に遊びに行って、友人が海の家でバイトしてて、売り上げ協力って事でさ。で、そこに、取り巻きって分かる男性の中に髪の長い女性が居て、遠目に見てても、その彼女があれこれって指図すると周りの男が動いててさ。まぁ、彼女の事知らないけどさ、女王様気取りって感じで、正直いけ好かないって思った女性に似ていたんだけど、おばさんと一緒に居る女性はそんな感じが全くしないから、まぁ、他人の空似なんだろうけど。その時に写したのに写ってたんだ」
    ナレ:仲間の後ろに写る女性。尊は祥の話を聞きながらその姿を見て、間違いなく幸子だと思った。幸子と孝にはクリスマス会以降会う事は無かった。
    祥:「もしこの彼女が眼の前に現れても、ごめんだなって思ったんだよね」
    尊:「そうなんだ」
    ナレ:それ以上の事は言えなかった。尊は夕飯の時に祥が昔の幸子を見かけたと伝えた。
    美:「祥君が。話には聞いているけど、私たちは今の幸子さんしか知らないから」
    覚:「そうだな。今の幸子さんに会ったら、どうなるんだろうな」
    美:「まぁ、偶然でもない限り会う事は無いんじゃない。ご両親から手紙を貰ったきり会う事も無いし。でも、それでいいとお父さんも思っているしね」
    覚:「そうだな。二人とも元気で暮らしているって話だし」
    ナレ:幸子の両親から世話になったと娘から聞いたと礼状が届いた。孝は小学校に元気に通い、幸子は前々から勤めていた工場の正社員となり頑張っていると書かれてあった。お礼の品としてワインが送られてきた。

    ナレ:尊に話した翌々日、祥は母の佳津子の同級生の通夜に伴い出掛けた。その同級生は牧合板金の経営者。祥が子供の頃に毎年お年玉を貰った事もあり、店にも度々来ていた。その縁もあり二人で焼香に。受付に行き、香典袋を置き、お悔やみの言葉を述べ顔を上げると目に前に幸子が居た。
    祥:「あっ」
    佳:「祥?」
    祥:「何でもない、行こう」
    ナレ:幸子に頭を下げ中へ。幸子の隣で受付をしていた従業員の根元洋子が、
    洋:「幸子さん、あの人お知り合い?」
    幸:「いいえ、知らない人です。誰かに似ていたのでしょう」
    洋:「そうね。で、明日の告別式、子供の用で来れ無いんだけど」
    幸:「大丈夫です。私の時も色々都合してもらっているのですから。遠慮しないで下さい」
    洋:「ありがとう。でも、さっきの人、素敵じゃない。亭主が居なかったら」
    ナレ:軽く笑ってしまい、不謹慎だったわねと神妙な顔に戻した。祥たちは焼香が終わり、お清めの席に案内された。祥は運転だからとウーロン茶。佳津子は知り合いと清めに酒を飲んでいた。手伝いをしている幸子を横目にウーロン茶を飲んでいた。そして、帰る事にして葬儀社の関係者から香典返しを受け取り、家に戻った。

    ナレ:葬儀から三日経った。店舗横の母屋から呼鈴が何度か聞こえて来た。
    祥:「どうした?」
    ナレ:祥は表に出ると、葬儀の時に受付に居た幸子が立っていた。
    祥:「あなたは?」
    幸:「こんにちは。あの、お母様はお留守でしょうか?」
    祥:「出掛ける時は顔を出すけど、今日は無いから、昼寝でもしてるのかも。待っていて下さい」
    ナレ:祥は店側から母屋に戻り鍵を開けた。
    祥:「お待たせしました。どうぞ」
    ナレ:客間に通し、勝子を探しに奥へ。するとトイレから出て来た。
    佳:「は~便秘解消」
    ナレ:そう言いながら腹を擦って、
    佳:「呼鈴鳴ってても、出るに出られなかったけど、お客さん?」
    祥:「牧合社長の葬儀の時に受付に居た女性が」
    佳:「牧合さんの所の?」
    ナレ:客間に行くと、部屋の隅で立っていた幸子が、
    幸:「お邪魔しております。わたくし、小路幸子と申します。奥様から神山さんへお渡しする物がございまして、本来であれば自身が伺わなくてはいけないのですが、色々と片付けもあるとの事でわたくしが」
    佳:「大丈夫よ。大変だものね。ご苦労様、お座りになって」
    ナレ:幸子が風呂敷包みから霧箱を2つ出し、座卓の上に置いた。
    幸:「社長の形見分けです。神山さんに受け取って頂きたいと仰せつかりました」
    佳:「私にまで。有難うございます」
    ナレ:それは九谷焼と有田焼の抹茶碗だった。学生時代に佳津子は茶道部に在籍していた。そこへ、担任に無理矢理連れて来られた牧合宗也。のちの牧合板金の社長。学校もサボりがち、たまに来ても喧嘩。見かねた担任が少しは心が落ち着くだろうと茶道部に連れて来た。宗也自身も自分でも何をやっているんだと思ってはいたが、気持ちを何処にぶつけたら良いのか分からない状態であった。そして、茶道部の顧問が宗也の前に点てた抹茶を差し出し、作法は気にしないで好きなように飲みなさいと言った。宗也は片手でグイッと飲んだ。周りの女子生徒は苦いと文句を言うのだろうと身構えていたが、その予想を反し『美味い』と言った。それからは何故か授業をサボる事はあっても茶道部に顔を出した。佳津子以外は初めの頃はビビッて話しかけられなかったが、佳津子はどんな生徒だと知っていたが、怖いもの知らずの性格なので初めから話しかけていた。サバサバした性格の佳津子に打ち解けていき、何でも話す仲になっていたが、恋愛にはならなかった。お互いに所帯を持った時に恋愛に発展しなかったことが不思議だったと。その事について宗也の妻が前世は兄弟だったのではと言った事に二人は納得していた。そして茶道にはまった宗也は名のある作家の抹茶碗を何点も集めていた。
    幸:「この2点は、社長が特に大切にしていた物なので神山さんに受け取って欲しいと」
    佳:「私の様な物にまで、では有難くお受けいたします」
    幸:「では、私はこれで」
    佳:「ごめんなさいね、お構いもしませずに」
    幸:「いえ、では失礼します」
    ナレ:玄関まで戻った時に祥が、
    祥:「あの、失礼な事うかがいますが」
    幸:「はい?」
    祥:「9年くらい前でsyが、湘南でお見かけしたような・・・」
    ナレ:幸子は昔の姿を知っている人が目の前に居て驚いた。
    祥:「あのぉ、まぁ、人違いですね」
    幸:「いいえ、それは私ですね・・・では、失礼します。お邪魔しました」
    ナレ:挨拶して出て行った。祥は聞いてはいけない事だったのではと反省したと、同時に祥は胸にモヤッと感。それが何なのかは分からなかった。
    佳:「どうしたの?」
    祥:「何でもいな」
    ナレ:祥は店舗に戻った。しばらくして店の電話から掛けた。
    祥:「きょうつぎさんのお宅でしょうか?」
    京:《はい、京都木です》
    祥:「神山です」
    京:《祥さんね。ご無沙汰しています。あの、主人に何か?》
    祥:「あのぉ、お二人にでして」
    京:《私も?》
    祥:「はい。確証も無い事なので申し訳ないのですが」
    京:《はい?》
    祥:「私の知り合いの友人が心臓移植をした青年でして」
    京:《えっ》
    祥:「時期が同じ頃と言うだけなのですが、彼はとても元気に過ごしていて、会うことは出来ませんがその姿を」
    ナレ:どう言っていいのか言葉に詰まると、
    京:《もし、その方だとして、主人に聞いてみないと分かりませんが、私は姿を見たいと思います》
    祥:「そうですか。でも確証は」
    京:《大丈夫です。もし違う方であっても、同じように娘も何処かで元気にしている事が分かる気がしますので。主人に話してみます》
    祥:「分かりました。では」
    ナレ:電話を切った後、祥は良かったのだろうかと、話してしまった後も後悔していた。翌日の夜、京都木の夫から連絡が来た。
    京:《妻に聞きました。正直複雑な思いも有りますが、妻が言ったように、その方でなくても、元気にしているのだろうとその方を通して知れるのではないかと考えました。お手数ですがお願いできますか?》
    祥:「はい。決まりましたらご連絡差し上げます」
    ナレ:挨拶をして電話を切った。ダイニングに戻って来た祥に、
    佳:「どなただったの?」
    ナレ:祥は事情を説明した。父のとしをは、
    と:「そんなことして、本当に良かったのか?」
    祥:「まぁ」
    ナレ:言葉が見つからずうな垂れる祥の背中を擦り、
    佳:「最近考え事をしているようだったけど、その事だったのね。私もお父さんと同じように思うわ。まぁ、もう話してしまったのだから、お節介と言っていいのか分からないけど」
    祥:「ん」
    ナレ:二人の話す言葉を聞きながら反省と、モヤッと感が頭の中で渦巻いていた。

    過去&永禄&現在④につづく

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    返信
    すみません

    夕月かかりてさん
    カマアイナさん
    皆様
    ありがとうございます。
    この先は脇道にそれたストーリーになってしまいますが、お読みいただければと思います。
    再度書きますが、今後の内容では、そりゃあ無理あるだろうって事が出てきますが、お許しください。
    では、引き続き書かせていただきます(^-^)

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    返信
    ぷくぷくさんへ

    暫く寂しくなるだろうなと思っていたら、間髪を入れずにぷくぷくさんの新作、大変嬉しく読ませていただきました。尊もいよいよ大学生ですね。受験も済んだ今、発明にも思い切り時間が割けるようになるのではと期待しています。今後は裕君とのコラボも出てくるのでしょうか。

    ぷくぷくさんさんの創作は、いつもほのぼの感満載で、読んでいるだけで頬がほころんできます。まだ続きがあるそうで、楽しみです。
    本当にありがとうございます。

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    返信
    ご声援ありがとうございます

    梅とパイン様。新作は絶賛挫折中ですか。誰と誰だったか気になります~。上手くお話が導き出せれば良いですね。ニューヒーロー&ヒロイン、いつか誕生するといいなぁ。

    カマアイナ様。これはイマイチって回もあったでしょうに、いつも手放しで喜んでくださり、こんなに持ち上げていただいて良いのかしらと私こそ感謝しております。

    ぷくぷく様。新作お待ちしておりました。雑談掲示板でのお知らせから音沙汰なく、どうされたかと心配していましたが、私の長い話が終わるのを待たれていらしたのですか?だとすると申し訳ないです。まだ振り返りとかやりますので、私が割り込む形になりますが、ご容赦くださいませ。

    で、通し番号・投稿番号・サブタイトルを載せた現代Daysの振り返り、また何回かに分けて行いますので、総評もその中に盛り込みます。それでもやたらと幅をとってしまい恐縮ですが。だってサブタイトル並べるだけで170行も…何とかコンパクトにまとめます。

    その後、今後の予定をお伝えします。

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    返信
    今までの四人の現代Days、番号とあらすじ、118から(終)まで

    no.1014の続きです。通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    118no.1015、1/10、一緒に登校しよう。唯はなぜ逃げる

    119no.1016、1/10、出会ったのは美沙

    120no.1017、1/10、別れる前に和解せよ

    121no.1018、1/10、無礼の訳を話せ

    122no.1019、1/10、諭される唯

    123no.1020、1/10、電話をかけよう。尊と瑠奈は何歩進んだか

    124no.1021、1/10、電話にもて遊ばれる若君

    125no.1022、1/10、買い物は令和風でいこう

    126no.1023、1/10、尊は何を憂う

    127no.1024、1/10、トヨの手腕で眠らない覚

    128no.1025、1/11、最後の朝も早起きできない唯

    129no.1026、1/11、尊の懸念が見えてこない

    130no.1027、1/11、未来は遠くないと諭される尊

    131no.1028、1/11、何気に尊に圧をかける若君

    132no.1029、1/11、エリと芳江からプレゼント

    133no.1030、1/11、尊の授業。エリと芳江に別れの挨拶

    134no.1031、1/11、ボーリング場へGO

    135no.1032、1/11、ゲームを戦の代わりにしたい

    136no.1039、1/11、はさみ揚げの活躍に期待

    137no.1040、1/11、戻る時間を理解していなかった源トヨ

    138no.1041、1/11、家族で遊ぶ時間を捻出

    139no.1042、1/11、駄菓子争奪大トランプ大会

    140no.1043、1/11、源三郎の意外な秘密

    141no.1044、1/11、レジ袋は人気ブランド

    142no.1045、1/11、土産の山と共に帰った

    143no.1046、1/11、かつての名言に熱い返歌

    144no.1047、1/12、じいを撹乱する若君

    145no.1048、1/12、じいに問う。頑張れ小平太

    146no.1049、1/13、源三郎とトヨの祝言始まる

    147no.1050、1/13、祝言無事終了

    148no.1052、1/14、悩めるトヨを諭す唯

    149no.1053、1/14、日記の謎解きや如何に

    150(終)no.1054、1/15、美香子の夢に現れたのは

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    (訂)過去&永禄&現在②

    =過去 2020年4月初め=

    ナレ:4月2日の入学式から2日経った大学の構内。部やサークル勧誘の中、運動以外の部やサークルかまだ決まっていない尊は差し出されたチラシを受け取るだけ。校門を出る前に声を掛けられた。尊と同じ工学部の学生。たまたま尊の席の近くに居た男子の稲賀裕という名だった。
    尊:「確か、いねが君だったよね」
    裕:「俺の名前覚えてくれてたんだ、嬉しいねぇ」
    尊:「だって、隣に来てわざわざ説明してくれたでしょ」
    ナレ:『自分は、いながと読まれること多いけど、これでいねがって読むんだ』と。
    裕:「なぁ、え~」
    ナレ:裕は尊の名前は憶えていなかった。
    尊:「速川尊です。じゃ」
    裕:「そうそう、そうだったね。因みに、はやは日に十の方?」
    尊:「速度の速に川で速川」
    裕:「そっちね。あはは」
    ナレ:調子のいい男だなと尊は思った。離れようとすると腕を掴まれた。
    裕:「速川君、俺とサークル作らない?」
    尊:「はぁ?」
    裕:「何処か決まってるなら諦めるけど」
    尊:「運動以外で考えてはいるけど、まだ決まってないよ」
    裕:「じゃ、俺と一緒に良いでしょ。此処のサッカー部は強豪らしいけど、そこは俺は無理だから」
    尊:「無理?で、サッカー?」
    裕:「フットサルの方」
    尊:「フットサルってサッカー経験者がするイメージだけど、君、中高とかサッカー部だったの?」
    裕:「いいや、俗に言う帰宅部」
    尊:「へっ?」
    ナレ:どう言った事でそうなるのか尊には理解出来なかった。
    裕:「サッカー見るのは好きなんだよ。でも、目茶苦茶練習ってのは嫌いでさ。でも、何もしないってのもね。で、見て知ってるフットサル。人数も5人だし、声掛ければ集まる人数だと思ってさ。野球だと場所とか道具が要るじゃん。でも、ボール一つで出来るし」
    ナレ:捲し立てるように言った。尊は真剣にサッカーやフットサルに向き合っている人達に失礼だと思い、その気持ちが自然と表情に現れたようで、
    裕:「もしかして、怒ってる?」
    尊:「怒ってはいないけど、呆れてる」
    裕:「・・・」
    ナレ:初対面の相手も怒ったかなと思っていると、裕は大笑い。
    尊:「稲賀君?」
    裕:「はっきり言ってくれて、君が気に入った、親友第一号だ」
    ナレ:豪快に笑っていた。裕が半ば強引に最近では珍しい喫茶店に行く話になった。尊は自転車、裕は原付バイク。それぞれ押しながら歩いて行った。尊自身、自分の行動は不思議だった。挨拶しただけの相手とこうして今いる事に。店内でサークルを作るにあたってのルールなどを検索して、
    尊:「顧問や活動方針を決める事から始めないと」
    裕:「もっと簡単に出来るのかと思ってた、色々大変なんだな」
    尊:「じゃ、やめる?」
    裕:「ん・・・俺さ」
    尊:「何?」
    ナレ:あんなにしゃべっていた裕が黙って天井を見上げた。
    尊:「どうしたのさ?」
    裕:「速川君、君は親友第一号なんだ。まぁ、友達は居るけど、ズバッと言ってくれる友達は居なかったんだ」
    尊:「ん?」
    裕:「俺って健康そのものって感じに見えるだろ」
    尊:「どちらかと言えばそう言うタイプ。ガキ大将って感じ」
    裕:「嬉しいなぁ・・・でも、成長した頃に心臓に欠陥が判明して入退院を繰り返していたんだ」
    尊:「えっ?」
    裕:「小学校の頃は何度か学校に行く事は出来たけど、先生もみんなも知ってるから、はれ物に触るみたいに、運動も、友達と喧嘩もした事なくてさ」
    尊:「そうだったんだ。でも、今は」
    裕:「15歳になる前に移植して、この通り。でも、正直怖かったんだ。まだ、どうなるか分からない頃に、院内で理容学校の生徒が実習を兼て、俺達の髪を切る事があって、みんな優しい人達だったけど、俺の髪を切ってくれた男の人も優しくてさ、怖い気持ちを話したんだ。守秘義務ってでも自分で話すから良いかなって。そしたら、その人が、その人の心臓を貰うんじゃなくて、その人の命と共に君は生きていくって事じゃないかなってさ。俺そんな風に考えた事なかったから。一緒に生きていくんだって」
    尊:「そうだったんだ。その胸の人、君がこんなにいい加減な人だとは思わないんじゃないかな」
    裕:「何だよぉ。ははっ、で、俺、本当は君より一つ上」
    尊:「そうだった・・・ですか」
    裕:「やめてくれよ。本当は医学部に入って、俺みたいな子を治せる医者になりたいって考えて医学部受けたけど無理だった。でも、学生生活を満喫したいからさ、まぁ、医学部は諦めて、人の役に立てるマシーンを作ろうと考えて、浪人してこの大学受けた。で、君に会えた」
    ナレ:尊は最初の印象と変わった。
    裕:「高校でも心配性の両親に言われて運動部には入らなかった。大丈夫だと言ってたんだけど。随分心配かけたから言う事聞いて。で、大学に入ったら、運動しても良いって許しが出てさ。でも、無理はしないでって言われてさ。自分たちで作ったサークルなら無理しなくても出来るかなって思ってさ」
    尊:「そうなんだ」
    裕:「速川君はなんでこの大学?」
    尊:「家から自転車で通えるって言うのが一番の理由だけど。僕は・・・何年掛かってもいいからタイムマシーンを作りたい」
    ナレ:尊は何故か会ったばかりの裕に思いを素直に言えた。そんな夢物語と笑われるかと思ったが裕は、
    裕:「凄い事考えてんだなぁ」
    ナレ:尊は驚いた。
    尊:「あのぉ、笑わないの?」
    裕:「笑うわけないじゃんか夢は大きくって事。で、どの時代に行きたいんだ。過去、未来?」
    尊:「室町時代かな」
    裕:「その頃って戦国時代じゃなかったっけ」
    尊:「そうだよ」
    裕:「俺はヤダねぇ、怖いじゃん。何でそんな時代に?」
    尊:「会いたい人達が居るんだ・・・会えないんだけどね」
    裕:「ふ~ん、歴史好きなんだ」
    尊:「まぁ・・・もしタイムマシーンが有ったら、稲賀君は何処に行きたい?」
    裕:「そうだなぁ・・・小さい頃かな」
    尊:「どうして?」
    裕:「父さんと母さんに会って・・・心配しなくても、俺はこんなに元気になるから安心しなって言ってあげたい・・・かな」
    ナレ:尊は両親への想いを知り目頭が熱くなった。
    裕:「何だよぉ、この話はもう終わり」
    尊:「ん。で、その理容の人とは会ったの?」
    裕:「それ以来は会ってないな」
    尊:「君の今の姿をみたら喜ぶんじゃないかな」
    裕:「そうだな・・・えっ?」
    尊:「どうしたの?」
    裕:「まさか・・・でも、でも、そうだよ」
    ナレ:裕は窓の外を見ながら、
    裕:「奇跡が起きた」
    尊:「えっ?」
    ナレ:外で軽く手を振る男性。
    尊:「祥さん」
    ナレ:祥は店員にコーヒーを頼み尊の隣に座った。
    祥:「大学の友達?」
    尊:「そうだよ」
    ナレ:驚いている様子の裕に理容を思い出し、
    尊:「もしかして、さっき話してた人?」
    裕:「うんうんうん、絶対そう」
    祥:「二人してどうしたんだ?」
    尊:「彼、同じ学部の稲賀雄さん。祥さんとは昔会った事あるみたいよ」
    祥:「えっ、何処で?」
    裕:「7年前に、藤野﨑病院に来たことありますよね。患者の髪を切りに来てくれた」
    祥:「とうのさき?・・・そう言えば行った事あるけど」
    ナレ:裕がその時の話をしていく内に祥も思い出してきた。
    祥:「そうか、あの時の男の子か。そうか、そうか、良かったね」
    ナレ:祥の嬉しそうな表情に尊が涙ぐんだ。
    裕:「何で、君が泣くんだよ」
    尊:「そうだよね。稲賀君、奇跡の再会に号泣」
    裕:「そんな風に言ったら泣けるわけないだろうがよ」
    祥:「まだ、会ったばかりなんだろ。なのに昔からの友達みたいだな」
    裕:「速川君と会うのも運命だったのかも」
    尊:「まぁ、そうだと言っておきますか」
    裕:「何だよ、その言い方ぁ。ははは」
    祥:「元気になって良かったね」
    裕:「はい」
    尊:「で、祥さん、どうして此処に?」
    祥:「うちのコーヒーメーカーが壊れてさ。もう、口がコーヒーになってて飲みに来たの」
    尊:「でも、此処って家から離れているけど?」
    祥:「コーヒー飲みに行くって言ったら、お袋がついで頼んでさ。で、こっちの方に出てきて」
    裕:「じゃ、しょうさんと会うのも運命だったんですね」
    祥:「そうかもな。ははっ・・・そう言えば三吉さん元気?」
    尊:「はい」
    裕:「ねぇ、みつよしさんって?」
    尊:「姉の知り合いの知り合いで、今、僕の家で過ごしてて」
    裕:「知り合いの知り合いねぇ」
    祥:「君も会えば好きになるよ。一緒に居て和むような人なんだ」
    裕:「男性ですよね」
    祥:「そうだよ。そう思える人に出会えるのって素敵な事だと思うよ」
    裕:「そうですね。しょうさんや速川君に会えた事も同じかなって」
    ナレ:尊と祥は嬉しそうに笑った。
    祥:「尊、そう言えば、2月初めの日曜日におばさんと他に二人連れを駅前で見かけたんだけど」
    ナレ:尊は如古坊の事で美香子と聡子と幸子が会っていた日の事だと分かった。
    尊:「女友達とでランチ」
    祥:「そう。若い感じの女性を何処かで見た事がある様な気がしてたんだけど」
    ナレ:幸子の事だと思ったが何も言わずにいた。
    祥:「まぁ、似た人かも知れないし。覚えている人と感じは違うし、人違いかな」
    ナレ:コーヒーを飲み干し、
    祥:「じゃ、行くよ」
    ナレ:尊たちの分のオーダー表も持って席を立った。
    尊:「祥さん」
    祥:「奇跡の再会におごらせて。じゃ、ごゆっくり」
    ナレ:二人は礼を言った。祥はさわやかに挨拶して店を出た。
    裕:「悪かったよね」
    尊:「まぁ」
    ナレ:野菜サンドの皿を見て、
    裕:「じゃ、もっと食べておけば良かったかな。ははは」
    尊:「もぉ」
    ナレ:呆れるように言ったが、裕とは友達になれると思った。それから、本当にフットサルのサークルを立ち上げようかと大学を調べたら、既にそのサークルは現存していたことを知り、とりあえず善は急げと店を出て見学に行った。先輩も優しい人達で、裕も身体の事を話した。上級生は遊び半分、試合もあるが日本一を目指すほどでもなく、運動不足にならない為にとサークルを立ち上げたOBの言葉を聞かせ、二人を快く歓迎してくれた。

    ナレ:裕と別れ、帰る途中、書店に立ち寄りフットサル関係の本を買った。尊は夕食を摂りながら裕の話をした。
    如:「現代の医学は素晴らしいですね」
    美:「今でも進化を続けていますからね」
    如:「現代の医療が戦国の世に存在したならばと思います」
    覚:「そうですね」
    尊:「僕が凄い発明をして、病院ごと戦国時代に飛ばせたらなんて思うよ」
    覚:「凄い事考えるなぁ」
    美:「その時は私も医師として行ってみたいわね」
    如:「お母さんが来てくれたら、私も唯も心強いだろうな」
    覚:「唯は嫌がるんじゃないかな」
    尊:「どうして?」
    覚:「吉乃様とお母さん、二人も口うるさい母親が居るのはってさ」
    美:「そうかも、ふふっ」
    如:「私はお母さんと唯が話す姿を見ていませんので何とも言えませんが。でも、嬉しいと思いますよ」
    美:「そうだったわね」
    覚:「テレビで見た事あるでしょう。まるで漫才ですよ」
    如:「それならば尚更見てみたいですね。ははっ」
    尊:「ほんと。あはは」
    ナレ:いつの間にか裕の話題から変わっていた。だが、祥が幸子を見かけた事は言えなかった。

    過去&永禄&現在③に続く

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    過去&元禄&現在①

    創作倶楽部2⃣ №983 2022.10.28 如古坊の楽しくも○○○思い出=15のラストに続く

    =過去 2020年 4月28日=

    ナレ:如古坊が無事に戻れたと信じて家に戻った。写真をテーブルに置き、
    覚:「やっぱり、未来の尊だったんじゃないか?」
    美:「じゃ、何故、如古坊さんを連れて来たの?」
    覚:「そうだな・・・メッセージは?」
    尊:「裏に晴忠7歳、かくたかって読むのかな?覚高1歳しか書いてないし」
    美:「二人の子供よね、一緒に写っているのだから」
    覚:「そうだな。でも、下の子の名前って僕の字が使われているのかな?」
    美:「そうかも。良かったわね」
    尊:「木村先生に頂いた巻物に書いてあったな。それと関係あるのかな?」
    覚:「そうかも知れないな」
    美:「ピースサインなんてして、あの子、母親になっても変わらないわね」
    覚:「そうだな。だが、唯が母親になぁ」
    美:「しっかり母親してるのかしらね」
    覚:「そうだな」
    尊:「大丈夫だよ。だって若君も吉乃様もみんなも居る事だしね」
    美:「そうね・・・」
    尊:「どうしたの?」
    覚:「ん・・・僕たちにとっては孫なんだなぁってお母さんも思ったんだろう」
    美:「えぇ」
    ナレ:覚と美香子の寂しそうな表情に、
    尊:「あと何年もしたら、抱かせてあげられるよ」
    覚:「そうだな」
    美:「楽しみね。でも、やっぱり、未来の尊じゃないの?尊が此処に行って写してきた」
    尊:「僕だったとして、戻れるタイミングは幾らでもあったと思うんだけど、どうして1年だったのかもさ分らないな。でも、未来の僕だったとして、どうしてメッセージも無く写真だけを。それに如古坊さんの事も」
    覚:「ん~そうだよな。僕たちの前に現れないとしても、何らかのメッセージは残すだろうし」
    ナレ:三人は考えたが答えは出なかった。そこに電話が。
    木:《今晩は、木村です。どうでした?》
    覚:「はい。戻れたようです」
    木:《それは良かった。ですが、なんだか寂しいですね》
    覚:「はい。時が経つのは早いと言いますが、やはり1年は長かった。色んな思い出が」
    木:《そうでしょう》
    覚:『でも、それもすぐに慣れるでしょう」
    木:《はぁ》
    覚:「これからも、来てください。一緒に思い出話をしましょう」
    木:《そうですね。では、また》
    ナレ:覚は電話を切った後、夕飯の支度をした。皿にレンコンのはさみ揚げの山。
    美:「皆さん、喜んでくれたわよね」
    覚:「そうだな。そうだったら嬉しいけどな」
    尊:「若君達も好きだって言ってくれてたけど、小平太さんが一番食べていたよ」
    覚:「そうだったな・・・ん」
    美:「どうしたの?」
    覚:「こうなるんだったら、唯に料理を教えておけば良かったなぁって思ってね」
    尊:「こう言っちゃなんだけど、それは無理な話だと思うよ。お姉ちゃんだってこうなるなんて思ってもみなかっただろうけど。でも、現代の調理器具が無いからね」
    覚:「そうだな」
    尊:「それに将来の為だから教えるって言われても、なんだかんだで逃げてただろうし」
    美:「そうでしょうね。なにせ、私の娘だから、ははっ」
    ナレ:覚は苦笑い。

    =過去 2020年 6月=

    ナレ:速川家はいつもの生活に戻ったが、最初の頃、尊は目覚めると横を見て、もう居ないんだとつぶやく事があった。朝食を摂りながら、尊はフットサル入門の本を見ていた。
    覚:「でもなぁ、お前がフットサル部に入るとはなぁ」
    尊:「部じゃなくてサークルだよ」
    覚:「はいはい。でも食べながらじゃ、消化に悪いんじゃないか?」
    尊:「うん」
    ナレ:本を閉じて食べるのに専念。尊は大学に入り、長く付き合う事となる男子と出会った。

    過去&元禄&現在②へ続く

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    夕月かかりてさんへ

    お疲れ様でした。
    速川家の皆さん、特に源三郎さんとトヨさんの幸せについては、私の妄想の中には無かったのでとても新鮮でした。ありがとうございました。
    妄想作家のサガでしょうね、きっとこの度の作品を書いている際も、次の創作内容が浮かんで案を練っておられる事でしょう。
    そんな中で申し訳ございませんが失礼して、しばらく私も此処の登場させていただきます。しばらくの間、夕月かかりてさん、創作作家の皆様もお茶して、ゆっくりして頂ければと思います(^-^)
    では、よろしくお願い申し上げます。

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    夕月かかりてさんへ

    驚きの速川家訪問からの新展開、大変楽しく読ませていただきました。
    アシガールを見た時は、トヨにはほとんど関心もなく、どんな顔かもよく思い出せなかったのですが、速川家の心温まる愛情にひたり、たった1ヶ月で、結婚も両親もいっぺんに手にすることができましたね。夕月かかりてさんのおかげで、源三郎もトヨもグッと身近に感じられるようになりました。

    本当に長期にわたる大作ご苦労様でした。おかげ様でアシガールの余韻をここまで引き伸ばして楽しむ事ができました。ありがとうございます。

    これから寂しくなることはいななめませんが、今後も尊の発明のおかげで、現代との行き来は、どこかで維持されるだろうと、勝手に期待しています。

    少なくとももうすぐ始まる大河ドラマ、「ひかる君へ」は内田ゆきさん統括で、冬野ゆみさんの音楽とのこと、ガラリと物語は違うとはいえ、どこかでアシガールのエッセンスを彷彿とさせるのではと、今から期待しています。
    できることならアシ紫カフェならぬ、雑談コーナーでもあったらアシガールロスも和らぐのではなんて、勝手に思ってしまいます。

    美香子さんの夢では、若君と唯は子供達に囲まれ幸せなエンディングの様子。
    もしアシガールに続きがあるなら、150年後ではなく、若君と唯が、その後をどう生きたのか知りたいですね。それほど主人公2人と、速川家を筆頭に彼らを取り巻く人物、ストーリーが魅力に溢れていたということですね。

    御多分に洩れず、私も昨日、一昨日とWBCのドラマに酔いしれて、感想が遅くなりましたが、夕月かかりてさんへの心からの感謝の気持ちには変わりありません。
    ありがとうございました。

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    返信
    夕月かかりて さん

    反応が遅くて 申し訳ありません(>_<)。
    まずは お疲れさまでした m(__)m。
    なかなかの大作を 長く(無料で♪)楽しませて頂き、本当にありがとうございました (^o^)。すごく面白かったです♪← 感想文 苦手で すみません (^^;)

    そしてそして、お詫びとお礼だなんて 滅相もございません (*_*)。
    組み合わせとしては 私が考えた「源三郎&トヨ」ですが、こんなに素敵なカップルに育ててもらって すごく嬉しく思っております 本当に (^^)v。
    私に関して言えば 書きにくくなったのではなくて、ちょっと ふざけ過ぎたゆえに 単に行き詰まっただけの自業自得ですからね(笑)。お気になさらないで下さいませ😌。
    実は「源・トヨ」を お任せしている間に、もう1組の男女の物語を 考えていたんですけど 全然上手く まとまらなくて… (>_<)。そのうち ご披露しようと思っていましたが、絶賛挫折中でございます (-_-;)。

    夕月かかりて さんは、新作の構想はありますか? 楽しみに待ってますので、どうぞよろしくお願い致します (^^)。

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    返信
    梅とパイン様へ

    総評などはまた後日として、まずは梅パ様にお詫びとお礼を申し上げます。

    大人気の、関西弁炸裂の源ちゃんトヨちゃんシリーズ。私が現代Daysに二人を登場させたばっかりに、書きにくくなってしまったのではないですか?一応お許しを得て始めたとはいえ、申し訳なく思っておりました。

    源トヨの二人に与えられた設定にのっかる形で進み、私の話の中では夫婦になりました。でもそれはそれ、パラレルワールドの内の一つと捉えていただき、どうかまた、楽しいあのシリーズをお願いいたします。

    自由にさせてくださいまして、本当にありがとうございました。

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    四人の現代Days150(終)~15日水曜5時、夢で逢えたら

    妄想家系図は、一番下、マスター様のブログ記事内の「御月家の家系図からわかること」をご参照ください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男「美香」

    美香子 心の声(…ん、呼んだ?)

    ムクッと起き上がった美香子。ここは令和の速川家。覚と美香子の寝室。

    美香子「え。夢?」

    隣のベッドで、覚がスヤスヤと眠っている。

    美 心(確かに聞こえたけど、美香子じゃなくて美香だから私ではないか。でもあの声は)

    再び横になった美香子。

    美 心(彼だわ。これは夢の続きを見るしかないわね)

    目を閉じる。すると、景色がゆっくりと浮かび上がってきた。

    美 心(時代劇に出てくるような、武家屋敷?)

    屋敷の中には、着物姿の女の子達。

    美 心(小学校の中学年位?が二人。で、小さい子が一人。二、三歳ってところね。三姉妹なのかしら…あらっ?あれってもしかして!)

    一番幼い女の子。髪が両耳の上辺りで二つ結びになっているのだが、

    美 心(あの赤いリボン、私が唯にあげたヘアゴムに付いていた物じゃない?…うん、間違いないわ。と言う事は、このお嬢ちゃん達!)

    泣いてぐずる妹を、姉二人があやしている。

    美 心(唯にも忠清くんにもよく似てるわ。はぁ~。孫、孫なのね。泣けてきちゃう…こんなにも可愛らしくて)

    打掛姿の女性が現れた。

    唯「美香~。お待たせぇ。はい、もう泣かなーい!」

    美 心(唯~!まぁ~。話し方はあまり成長が感じられないけれど、すっかりお母さんの顔になって)

    母の貫禄さえ感じ、大垂髪もすっかり様になっていた唯。

    長女「あ、直ってるぅ」

    二女「すごぉい。良かったねっ、美香」

    美 心(あちゃー。娘達の口調は、完全に母の影響)

    三女・美香「さんた、さんた!」

    唯の持つ人形に、小さな手を伸ばす美香。

    美 心(サンタ?あっ!クリスマスイブデートで唯が引いた福引の、景品のサンタ人形!格好の遊び道具になってたのね)

    唯「トヨに頼んで大正解。はいどーぞ」

    美 心(トヨちゃんも元気で居るのね。孫のお人形まで面倒みてくれるなんて。唯は裁縫は全くできないままだったから、助かるわ)

    唯「あ、お帰りぃ。早かったね」

    若君「うむ。ん?美香」

    美 心(来た。あの声の主の登場ね)

    庭から現れた若君。

    美 心(う~ん。いい意味で、もう若君ではないか。年齢を重ねて、益々の威厳、でも気高さはそのままに。生やした髭の効果もあるだろうけど、持って生まれたものが大きいわよね~)

    若「何じゃ、泣いておったのか?よしよし」

    そう言いながら美香を抱き上げ、顔を近づけようとしたのだが、

    三「いやっ」

    露骨に顔を背けられた。

    二「パパまたやってる」

    長「懲りないよねぇ」

    美 心(ぷっ。どの時代も娘は父親に冷たい)

    唯「だからー。すぐ顔くっつけようとする。ヒゲが当たれば、嫌がるに決まってるっしょ」

    若「そうか…。剃り落とすべきか?」

    唯「そこ、違うから。マジでヘコむのやめてくんない?」

    美 心(忠清くん、なんて顔してるの!あはは~でも家族の平和な日常ね。いい物見せてもらったわ)

    …ここで目が覚めた。そのまま起き上がった美香子。

    美「残念。終わっちゃった。よし!忘れない内に書き留めておきましょ」

    その日の夜。食卓に両親と尊。

    尊「一日かけてわざわざ作成したの?」

    美「今日はお休みだったしね。これが、作っててとっても楽しかったのよ~」

    覚「服装とかも、ネットで調べて母さんが夢で見たままを忠実に描いたんだ。お陰でな、僕も一緒に見たような気になれたよ」

    今朝の夢を、絵と文章で再現していた両親。

    尊「僕の作った妄想家系図の設定に、だいぶ引っ張られてない?」

    美「それだけ信憑性が高いって事よ」

    覚「いい出来だぞ」

    尊「それはありがとうございます」

    美「長女ちゃんと二女ちゃんの名前がわからなかったのは惜しかったな。ねぇ尊」

    尊「何」

    美「名前、降臨してない?」

    尊「してないよ。残念ながら」

    美「美香ちゃんの時みたいに」

    尊「あれはね、今でもよくわからないんだ。ここにこの名が入る、書けと言われた気がしたんだよ」

    覚「あのさ」

    美香子&尊「はい」

    覚「聞いてくれないか?僕の推理なんだけど」

    美「あら。どんなかしら」

    尊「伺います」

    覚「妄想家系図によると、唯の子供は7人だよな。母さんの名は、そもそも末っ子に付けるつもりだったんじゃ」

    美「どうして?」

    覚「締めというか」

    美「シメって何よ」

    覚「何となく」

    美「説明になってないわよ」

    尊「わかる気がするようなしないような」

    覚「美香ちゃん、歳がちょっと下だっただろ」

    美「ん?そうね。お姉ちゃん達に比べると」

    覚「どうして間が空いたかはわからないが、二女から数年後に念願の三女が生まれ、二人の中で、よしここまでと、ようやく美香と名付けたんじゃないかと。どう、どう?」

    美「はあ」

    尊「そういう事にしておきますか。仮に答え合わせできたとしても相当先の話だし」

    覚「中々いいだろ?思うにさー、僕も久々に誕生した末娘なら溺愛しちゃうかも。忠清くんの気持ちはわかるよ」

    尊「ふーん。父親ってそんなモンなんだ」

    美「今回、上の男の子達やトヨちゃん源三郎くんには逢えなかったのよねー。次回の上映を楽しみに待つわ」

    尊「そう上手くいくかな」

    美「いいじゃない。願うのに損はなし」

    覚「僕も見せてもらえるよう、願っとく」

    尊「ははは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    四人の現代Days、これにて終了です。お読みくださった皆様に、心から感謝いたします。

    長い間、ありがとうございました。

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    四人の現代Days149~14日21時、犯人は

    和紙と墨って最強。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    こちら、令和の速川家。尊がリビングに顔を出した。

    覚「何だ、勉強してたんじゃないのか。もう休憩か?」

    美香子「喉でも渇いた?」

    尊「木村先生からメールが来たんだよ。早く教えたくて下りてきた」

    覚「メール?」

    食卓の席についた三人。

    美「先生もこの時期お忙しいでしょうに、わざわざメールくださったの?」

    尊「先に僕から送ってたんだよ。その返事をもらえた」

    覚「尊が先?何書いたんだ」

    尊「姉は土曜日に帰りました、その後例の日記はどこまで読み解けてますか、って感じ」

    美「そんな内容なの?せめてセンター試験終わってから、今週末以降で連絡すれば良かったじゃない」

    尊「お姉ちゃんが戻ったのを伝えときたかったし、進捗状況が気になっちゃって」

    美「今じゃなくても~」

    尊「でも、メールして正解だったんだよ」

    美「えぇ?」

    覚「んー良くわからんが。先生からは何て?」

    尊「読み上げるね。そうか、帰省が終わったか。ご両親も淋しかろうな。しかし僕にメールくれるなんて相当余裕じゃないか?気は抜かないようにな。でもこのタイミングで連絡くれて、少し有り難かったよ。ちょっとグチりたかったんだ」

    美「グチ?」

    尊「解読はボチボチやってるよ。あれから10日分位進んだが、その中に目新しい内容があってな。近習の婚儀を予定通り執り行え」

    覚&美香子「あ」

    尊「安堵したと。家臣の話なんて珍しい。初めてじゃないか」

    覚「忠清くん、凄いな。ちゃんとこちらと同時になるよう、やりこなしたんだ」

    美「どう褒めても褒め足りないわねぇ」

    尊「それでその日付の前後辺りなんだが、少々腹が立った事があってなー」

    覚「腹が立つ?」

    尊「イタズラされたような跡があって」

    美「イタズラ。あら大変」

    尊「四角い形状の何かが貼り付いていたようなんだ。その部分だけ色が変わって毛羽だっていたり、接着剤らしき跡が残っていたりしてな。何箇所か」

    覚「ん?」

    尊「これか?と思われる紙らしき破片は出てくるんだが、何が印刷されていたかとかは消えてしまっていてわからなかった。ゆくゆくは貴重な資料となるかもしれないこの日記に、後世の者がシールでも貼りやがったんじゃないかと思うんだ」

    覚「んん?」

    尊「怒れちゃってさー。誰かにグチりたかったところ、調査の事情を知ってる君から連絡が来たから、渡りに船と、チラっとつぶやかせてもらったよ。気分転換にもならない話で済まなかったね。では少し長くなってしまったが、試験の健闘を祈るよ。木村」

    黙り込んだ両親。しばらくして、

    覚「…それって」

    美「確か持って帰った…」

    尊「そう。多分、というか間違いなく、忠清シールだと思うんだ」

    美「イタズラなんでしょ。って事は…唯がやらかした?!」

    覚「え、でもさ、シールあげる話した時、唯に勝手に取り出されないような場所にしまった方がいいぞって言ったら、しかと心得ましたって頷いてたんだが」

    尊「兄さんなら、言い付け通りちゃんと隠してあったと思うよ」

    美「じゃあ誰が、って忠清くんしか居ないじゃない。それは有り得なくない?」

    尊「それが有り得るんだよ」

    美「嘘ぉ」

    尊「木村先生と初めて話した時に聞いたんだけど、あの日記さ、書いた人物の名前が入ってなくて著者不明なんだよ」

    覚「あー」

    尊「で、これは推測なんだけど、お姉ちゃんと兄さんが木村先生に会いに行ってるじゃない。その時にも名がないって話が出たんじゃないかと」

    覚「名前か、なら」

    美「ちょうど手元にいい物があるから貼っておこうか、って?えー!」

    尊「兄さんは、イタズラするつもりじゃなくて好意で貼ったんじゃないかなあ。450年前の日記、和紙が残るならシールも残るだろうって思うのは、わかる気がするよ」

    覚「でも現代の紙は思いの外脆かった」

    尊「そんなに厚い紙で作らなかったし?」

    覚「うん。どちらにせよ、和紙とは丈夫さでは比べ物にならんのだろうな。結果、ほぼ残ってないし」

    美「まさか木村先生を困惑させるとは思わなかったのね」

    尊「でも兄さん、お茶目だよね。書けば済むのにペタっとやったんだから。案外、シールたる物を貼ってみたかったのだ、なんてオチかもしれないね」

    覚「その答え合わせも、いつ出来るかは尊次第だしな」

    尊が座ったまま伸びをした。

    尊「はぁ~。最後はそこかー。ホント、プレッシャーが甚だしいよ」

    覚「何年かかってもいいさ」

    尊「そう?」

    美「でも私達が元気な内がいいわねぇ」

    覚「そりゃそうだ」

    尊「結局答えは変わらず。はいはい、もう少ししたら頑張らせていただきます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    14日のお話は、ここまでです。

    次回、最終回。

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    四人の現代Days148~14日火曜7時、助言します

    大切な女友達だから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の居室にトヨが来た。

    トヨ「え!」

    唯「おはよっ」

    ト「もう起きていらっしゃるんですか!まさか寝ていないとか?」

    唯「そんなに驚くー?ゆうべあの後すぐ寝たからさ」

    ト「はあ」

    唯「たまにはね。たーくんとラブラブで、ラジオ体操もしてきたよ!」

    ト「おやまあ」

    唯「じいの姿は見かけなかったんだよね。なんで居なかったんかはわかんない」

    ト「うーん。察するところ、私が天野のお屋敷を出る頃に酒宴が始まっておりましたので、まだお休みではなかろうかと」

    唯「え。それって、源三郎もじい達に巻きこまれちゃったの?」

    ト「いえご心配なく。信茂様信近様有山様のお三人だけでした」

    唯「良かったねぇつかまらなくて。実はさ、トヨといろいろ話したいコトあるんだ。たーくんとも相談したんだけど、今朝のうちに言っておこうと思って」

    ト「お話。ですか」

    向かい合って座った二人。

    唯「まずは」

    また立ち上がり、棚から何かを持ってきた。

    ト「芳江さんとエリさんの連鶴ですね」

    唯「これあげる!もらって」

    ト「えっ」

    唯「令和の母二人、でしょ?」

    ト「とても良くしていただいたので、その通りではあります。でも」

    唯「たーくんも、トヨが持ってる方がいいって言ってたの。だからどーぞ」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「うん」

    ト「嬉しい。ありがとうございます。大切にいたします!」

    唯「でさ。昨日同じ時間に、速川の家でも同じように祝言ぽい事やってたみたいなんだよ」

    ト「そうなんですか?!」

    唯「たぶん。宴会とかとごちゃ混ぜにしてなければ。特にお父さん」

    と「どうしてそんな事ができたんですか」

    唯「たーくんが、この時間にやるからぜひ共にって尊に頼んどいたんだって」

    ト「え?待ってください。という事は…若君様は日にちと時間を、信茂様のお許しが出る前にお決めになっていらしたと?」

    唯「うん」

    ト「…」

    唯「たーくん、神だから」

    ト「神業の神ですか」

    唯「そーなの?」

    ト「で、よろしいかと。驚きました…」

    唯「頼りになるよね~」

    ト「はい。若君様の下でお仕えできる喜びを、噛みしめたく存じます」

    唯「でね。ここからが肝心な話なの。はっきり言うよ」

    ト「はい」

    唯「子作りに、励め!」

    ト「それは…私はそこまで若くありませんので、授かれるものなら早うとは思っておりますが」

    唯「でも、できれば私が先に産んで欲しいって思ってるよね」

    ト「勿論です。切望され、それで苦しい思いをされておられるのを間近で見ておりますので」

    唯「悩んでない?」

    ト「…少し悩んでおります」

    唯「おふくろさまには打ち明けたんでしょ」

    ト「…はい」

    唯「やっぱりね。私、何も聞いてないから。そうじゃないかなと思ったんで、カマかけてみたんだ」

    ト「え?」

    唯「おふくろさまは、人から聞いた事をすぐチクったり…んー、隠しときたい秘密をしゃべったりしないよ。そんな人じゃないのは知ってるでしょ」

    ト「はい、それはもう。でしたら何故」

    唯「カン?」

    ト「勘が働いたと」

    唯「言われたのは、トヨが城をいつ下がるか、あやふやではなくちゃんと話のすりあわせをしなさいって、それだけ」

    ト「そうでしたか」

    唯「早めに決めようよ。次の女中頭を誰にするかとか私の世話係はとか…いや、この際世話係はもうなしにしない?」

    ト「なりません」

    唯「ちぇ。まだ誰かにガミガミ言われるんだ」

    ト「言われぬよう、奥方様には自覚を持っていただかないと」

    唯「へーい。で、トヨが源三郎と赤井家の事だけを考えられるようにして、励んでもらうと」

    ト「ありがとうございます。私の周りは、昨日初めて事の次第を知った者ばかりですので、いきなり去るのも少し心苦しいのですが、引き継ぎは早う進めて参ります」

    唯「さみしくはなるけど、いつでも会えるし」

    ト「そうですね」

    唯「あのさ、前にどうやら三人目?の赤ちゃん産んだ夢見たって言ったじゃない。トヨが大きいお腹で娘ちゃん連れててって」

    ト「覚えております」

    唯「夢に出てきたのがその時に居た子供全員かはわかんないんだけどね、御月家の長男に当たる男の子より、トヨが連れてた女の子の方が大きかったんだよ」

    ト「歳が上という事ですか」

    唯「たぶんね。だからきっと、私より先に赤ちゃんに会える」

    ト「すみません…」

    唯「気にしなーい。私は私、トヨはトヨの人生だもん。あ、今、ちょっとカッコいいコト言った?」

    ト「お気遣いが心に染みました。ありがとうございます」

    唯「えへへ。言いたかったのはここまでだよ」

    ト「はい」

    唯「あー、急にお腹空いてきたんだけどぉ」

    ト「ふふっ。ではお運びいたします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    最終回のお知らせ

    長々と続けて参りました四人の現代Days。「現代Days(仮)」からスタートしたのはちょうど一年前の今日でした。

    皆様のご愛顧に大感謝しつつの全150回となります。(仮)も合わせると170回。よくもそんなに描いたもんだ。

    この後のお話を含め、あと3回です。

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    四人の現代Days147~13日18時、一件落着

    結構な歳のおじさん達が大騒ぎ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    一段と凛々しい源三郎が奥に進んでいる。すると、唯の傍らに置かれた品々に気が付いた。

    源三郎「あっ、これは…」

    破顔一笑し、その場で深く一礼する。

    小平太パパ「何をしておるのじゃ?」

    次に、吉乃の導きでトヨが入ってきたのだが、

    唯「顔が固まってる!笑って~」

    極度の緊張で、唯の声かけも聞こえていない。

    有山の妻女の囁き「なんと初々しい。あら?」

    有山の囁き「ん?どうした」

    有 妻 囁き「二人共、一輪ずつ梅が咲いております。源三郎は若葉の様な色で」

    有 囁き「おぉ、これは気が利いておるのう。此方は白梅か」

    美香子と源トヨの三人で行った組紐の店。押し問答は少しあったが、結局プレゼントされていたのは、梅の花を型どった色違いのブローチだった。

    有 妻 囁き「春の訪れでございますね」

    有 囁き「まさしく。良いな」

    三三九度の準備をしている。

    源三郎の囁き「トヨ、大丈夫か」

    トヨの囁き「何とか…」

    源 囁き「令和に居られる皆様も、見守ってくださっておる。お前、気付いていないだろう」

    ト 囁き「え?」

    源 囁き「奥方様の隣」

    ト 囁き「…あっ」

    唯の傍らで、ちょこんと五羽の折鶴達が参列していた。覚、美香子、尊、エリと芳江がそれぞれの手で折った物だ。

    トヨ「なんて…唯様、ありがとうございます」

    ピースサインで応える唯。一方、微笑む若君。

    若君「皆、晴れ姿を見届けておるゆえ」

    源三郎&トヨ「はい!」

    ┅┅

    さて。こちらは令和の速川家。

    尊「それが、トヨさんセレクトの帯締め?」

    美香子「そうなのよ~。せっかくだから出してきたの。やっぱり着物で参列した方が良かったかしら」

    尊「兄さんは、この時間だけ共に願いたい、って言ってただけだから」

    覚「気持ちは正装だぞ。ははは」

    永禄と同時刻に、リビングに座布団を並べ座る三人。

    美「可愛いい分身ね。小さくても、一羽ずつ座布団にのせるとそこに本人が居るみたいで」

    覚「そうだな。いかにも祝言に立ち合ってる雰囲気が出てる」

    ひな壇に当たる位置に座布団が二枚並び、源三郎とトヨが折った鶴がそれぞれ置かれている。源三郎側の参列者として若君と唯の折鶴が一羽ずつ置かれた座布団二枚。トヨ側に両親と尊が整列して座っている。

    尊「向こうもこんな感じなのかな。並び方とかは正解がわからないから違うだろうけど」

    美「きっと素敵なお式よ~。でもどうして今日この時間なのかしら。ピンポイントで忠清くんが指定したのよね?ぜひ同時にって」

    尊「平日だとさ、クリニック終わりからだと夜遅くなるし時間が不安定じゃない」

    覚「それはわかるが。いきなり今日で大丈夫だったんかな」

    尊「いつ何が起こるかわからないから、早めに設定したんだと思うよ。それにね、何か今日は一粒万倍日だからって言ってたよ」

    美「あら」

    覚「一粒の籾が何倍にも成長して大きな利益をもたらすってヤツだな。だから結婚式か」

    美「あの時カレンダー見ながらそんな事考えてたなんて。忠清くんってホント偉いわ~」

    尊「さてと。そろそろ終わりかな。30分はかからないって兄さん言ってたから」

    覚「よし!なら最後は一本締めだ」

    美「あらま」

    尊「それ…絶対向こうではやんないって」

    覚「いいからいいから。さ、やるぞ。お手を拝借。よーぉっ!」

    ┅┅

    戻って、永禄。祝言が終わって間もなく。

    若君の囁き「源三郎」

    源 囁き「はい」

    若 囁き「余興じゃ」

    源 囁き「余興、でございますか?」

    若君が立ち上がり、源トヨの目の前、真ん中の広い所へ出た。

    若「じい、信近。此処へ」

    小パ「はっ!」

    じい「ははぁ」

    胸元から、何やら書状のような物を出す若君。

    じ「おぉ」

    小パ「いよいよか」

    半分程開く。イラストになった、じいの姿がチラリと見えた。

    じ「んん?」

    小パ「絵か?」

    ト「あ」

    源「此処でお出しになられるとは」

    なぜか、一旦引っ込める若君。

    じ「むむっ」

    若「実はのう、じいの姿を絵にしたのじゃ」

    小パ「なんと。絵を嗜まれるなど初耳」

    次に、全部開いた若君。高い位置で掲げた。つられて立ち上がろうとするじいと信近。

    じ「よう見えぬ」

    小パ「若君様、お戯れを」

    有山「何事じゃ?わしにも見せてくだされ」

    右に掲げれば右に動き、左に掲げれば左に動く家臣三人。源トヨと有山の妻は笑いを堪えるのに必死だが、唯は大笑いしている。

    唯「あははは!たーくん、ウケる~!」

    散々若君に弄ばれた後、ようやく絵を受け取ったじい。信近と有山も覗き込む。

    じ「何やら奇天烈な」

    有「南蛮渡来の装束か?」

    小パ「それにしても、随分と質の良い紙じゃ」

    やたらと感心している三人を横目に、源トヨの前に腰を下ろした若君。

    若「源三郎。トヨ。末永う幸せにの」

    源「はい!」

    ト「ありがとうございます」

    若「では唯。帰るぞ」

    唯「えー、もう?」

    若「早う二人きりにしてやらねばの」

    唯「確かに」

    源トヨが床に擦る程頭を下げる。まだ騒いでいる家臣達。

    唯「また明日ね」

    唯と若君は、その場を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    13日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days146~13日月曜14時、佳き日

    この頃、ちょうど蕾が膨らんできています。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    自室に戻ろうとしている唯。源三郎が声をかけた。

    源三郎「奥方様」

    唯「あ、源三郎~」

    唯に駆け寄り、跪いた源三郎。

    唯「結婚式、もうすぐだね!」

    源「はい。奥方様には、お気遣い心より御礼申し上げます」

    唯「へ?私なんかやったっけ?はさみ揚げを冷めないようにはしたけど」

    源「それが効いたと伺いました」

    唯「ちょっとだけだよ」

    源「その様な。ご謙遜を」

    唯「ふふっ。珍しいでしょ、走る以外で役に立つなんて」

    源「い、いえ!」

    唯「たーくんのお手柄だって。話をどう持ってくかとかさ、上手なんだよ」

    源「はい。それはもう…まさかご同席くださるとは思わず」

    唯「同席?ってなに」

    源「え、お聞きになられておられぬ?」

    唯「知らなーい」

    源「昨日、天野様のお許しを得たと伺い、永季様にお話をと急ぎ向かおうとしたところ、わしも共に参ると仰せられ」

    唯「へー。その方が話早いもんね。だからトントン拍子なんだ。良かったね」

    源「はい」

    唯「たーくんさ、自分がしてやったみたいなコトは私にも言わないから」

    源「頭が下がります」

    唯「さっきね、おふくろさまとトヨが話してたよ。また泣きそうになってた」

    源「左様でございましたか」

    唯「夕方楽しみにしてるね!」

    源「ははっ」

    天野の屋敷。もうすぐ、現代の時間で夕方6時、酉の正刻。

    若君「よう似合うておる」

    源「痛み入ります」

    朽葉色の直垂を身に付けた源三郎。くすんだ色合いではあるが、顔立ちをとても引き立てている。

    若「それか。贈られた品は」

    源「はい。トヨと、祝言の折にはこの品を必ず身に付けようと約束しまして」

    若「花としては見ぬ色味じゃな」

    源「お母さんは、あなた達の時代にはなかった色かもしれないと仰せられましたが、わたくしが気に入りました故」

    若「そうか。まさに春じゃ」

    源「はい」

    こちらは、トヨが支度中。白装束になっている。

    唯「おじゃましまーす!あ、おふくろさま」

    吉乃「唯。何をうろついておるのです」

    唯「えへ。怒られるかなーとは思ったけど、早く花嫁さんを見たくって。もう準備できた?」

    トヨ「あと、これを付けたいのですが。吉乃様、よろしいでしょうか」

    唯「あ、ブローチ。同じ白だからいいよね!」

    吉「花飾りか?まあ良いでしょう」

    唯「じゃあ私が付けてあげる」

    ト「ありがとうございます」

    帯のすぐ上、脇の方に留められた。

    吉「それは」

    ト「はっ!はい」

    吉「もしや、唯のお国の品ではあるまいか?」

    ト「あっ、その…」

    唯「そーでーす。私のお母さんが、トヨと源三郎にってプレ…贈ってくれたんです」

    トヨの囁き「唯様、良いのですか?そのようなお話をされても」

    唯の囁き「いいのいいの。おふくろさまには、たーくんの矢傷を治した隠れ屋に、両親と尊が居るって言ってあるし」

    吉「やはり。家臣の婚儀にまで気を配られるとは。梅か?美しい細工がほどこされて」

    ト「はい。とても気に入っております」

    吉「それは何より。さあ、唯はそろそろ行きなされ」

    唯「はーい。待ってまーす」

    酉の正刻となった。祝言に立ち合う者はごく僅かだ。

    小平太パパ「何故、夫婦が離れて座っておるのじゃ」

    向かって右、源三郎側に若君。その後列に有山とその妻女。トヨ側に唯。その後列にじいと信近。

    じい「若君がこうお決めになったのじゃ。源三郎は若君の近習であるし、トヨはむじなの世話をしておるし。まぁ良いではないか」

    小パ「唯之助の脇には何やら置かれておるし」

    じ「文句ばかり垂れるでない。ほれ、始まるぞ」

    源三郎が入ってきた。

    唯「カッコいい~」

    有山「感慨無量」

    じ「おぉ。ええ婿じゃ」

    小パ「小平太には見せられん。ちょうど警固の番で良かったわい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days145~12日9時、踊らされます

    どこまでが策なのか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    天野の屋敷。部屋に通された若君。三人揃った姿に少し驚いた様子だ。

    若君「小平太」

    小平太「はっ」

    若「まだ起きておったか」

    小「若君がお越しとあれば。居てはなりませんでしたか」

    若「話す手間は省けるが。気を落とさぬ様」

    小「気を落とす?何事でございましょう」

    若「まあ良かろう」

    じいの前に腰を下ろした若君。傍らのタッパーがじいの視線を釘付けにしているが、構わず話し出した。

    若「旅立って、じき二年になるか」

    じい「旅?あぁ、元次でございますか。若君に未だ気にかけていただけるなど、奴も本望でござろうの」

    若「竹馬の友が居らぬと、張りもなかろう」

    じ「なんのなんの」

    若「そうか?」

    じ「いざ戦となれば、先陣を切りますぞぉ」

    小平太パパの囁き「は?!またそのような戯れ言を」

    小平太の囁き「少しは歳を考えて頂かぬと」

    若「いや…じいは出陣ではのうて、城を守り通して貰いたい。無論、戦にならぬようこれからも努めて参るがの」

    じ「そうでござりますか?んにゃ、若君の仰せならば承知仕る。ふぉっふぉっ」

    小パ 囁き「有難い。わしらの説得には耳を貸さぬからのう」

    若「話が逸れたが」

    じ「おぉ、これはご無礼をば。何でございましょう」

    若「元次とは、隠居後も多少の小競り合いはあったであろうが」

    小パ 囁き「小競り合い!然り」

    若「仲違い程ではなかったな?」

    じ「それは、まぁ。共に幾度も出陣した、同士でもござるしのう」

    若「ならば、天野と千原の結び付きをより強固に致すのも構わぬな?」

    じ「結び付き?若君は何を仰せか」

    若「両家のせがれと娘が婚儀を行うなど」

    じ「なぬぅ?!」

    それを聞き、うろたえ始めた小平太と父信近。つい声が大きくなる。

    小平太パパ「小平太に縁組の話?!」

    小「え!」

    若「あぁ済まぬ。小平太にではない。驚かせたの」

    思わず立ち上がりかけた三人。すぐに下がり座り直した。

    小「さ、左様でございますか」

    小パ「違う、と」

    じ「ならば若君は、誰の話をしておいでじゃ」

    小「もしや」

    小パ「何じゃ」

    小「源三郎に縁組でございますか。されど、天野には娘は」

    小パ「小平太の姉は既に嫁いでおりますし」

    若「源三郎は合うておる」

    じ「はあ」

    若「で、じい。良いか?両家の確執などなかろう?」

    じ「それは…末代までいがみ合うつもりもござらぬし」

    若「うむ」

    じ「御意のままに」

    若「そうか」

    じ「で、婚儀の相手は…」

    小パ「誰…」

    若「よし。小平太」

    小「は、はっ」

    若「母君はどちらに?」

    小「母上でございますか。呼んで参ります」

    小平太が、心なしか肩を落としつつ部屋を出ていった。

    若「そういえば。待たせたの。じいにと唯からじゃ」

    じ「ぬはは!漸くレンコンにありつけようぞ」

    吉乃「若君様。お呼びでございますか」

    吉乃が現れた。

    若「頼みがあっての」

    吉「はい。何なりとお申し付けくださいませ」

    若「明晩酉の正刻、源三郎の婚儀を執り行う」

    吉「まぁ。祝言とは喜ばしい。わたくしは何を致せば宜しいでしょうか」

    若「源三郎もではあるが、トヨの身支度をしては貰えぬか」

    吉乃「畏まりました」

    小パ「トヨ?!」

    小「確かに、天野の者でございますが。え?」

    吉「何をそこまで驚かれる。仲睦まじゅう隠れて話し込む姿はよう見かけておりました。ご存じない?」

    小「まさか」

    小パ「知らなんだ」

    吉「まこと、天野の男衆は色恋沙汰に疎うございます」

    若「ハハハ。どちらの屋敷で行うかは、これから有山と話すが」

    じ「若君ぃ。ならば此処を使われよ」

    若君が振り向くと、じいがいたくご機嫌で、はさみ揚げを頬張っていた。

    小パ「朝餉が済んだばかりだというのに」

    若「良いのか?」

    じ「んにゃ。年明け早々祝い事など縁起が良うござる。ぬははは」

    若「そうか。ならば頼む」

    若君が立ち上がり、早々に出て行こうとする様子に、信近がかなり驚いている。

    小パ「若君、あっあの」

    若「何じゃ」

    小パ「書状は…」

    若「あぁ、忘れておったな。うむ…婚儀の席で披露すると致す」

    小パ「急ぎ何かではない、と」

    若「全く以て」

    小パ「そうですか…」

    若「では、此れにて」

    若君は、屋敷を後にした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    12日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days144~12日日曜6時30分、匂わせます

    妙な擬音が多い、じいの百面相をお楽しみください。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    穏やかな朝を迎えた。若君が一人、自室前の庭でラジオ体操を始めようとしている。

    若君 心の声(そろそろか)

    じいが現れるのを待っている。

    若 心(姿を見たら、蓋を開ける)

    タオルでくるんだじい宛のはさみ揚げは、まだ温かかった。その理由は…

    ┅┅回想。昨夜、源三郎とトヨが唯の居室を出た後┅┅

    若君「朝方には、はさみ揚げも冷めるのう」

    唯「いっくらタオルで巻いといてもそれは仕方ないかも。なんで?」

    若「あまり匂わぬ」

    唯「ふーん。あったかいと、ほ~れウマそうだろ~ってニオイで猛アピールするもんね。あーもしかして、なんか策ありってヤツ?」

    若「じいに、此処にお好みの品がある、と分かり易うできればと思うての」

    唯「企んでるねぇ。だったらじいにあげる分だけでも保温しとく?」

    若「保温。どのように致すのじゃ」

    唯「これ用に余分にもらっとけば良かったなー。でも源三郎とトヨのために、じいはできるだけゴキゲンにしときたいよねー」

    荷物の中から、使い捨てカイロを出した唯。袋を開けて振る。

    唯「どーんと2つ使おっ。これを、タッパーの上と下に仕込む」

    若「ほぅ。器は、熱で傷んだりはせぬか?」

    唯「たぶん大丈夫。チンできる入れ物だし」

    若「チン。電子レンジじゃな」

    唯「おっ、覚えたね」

    若「電子レンジ、は物体の中にある水の分子、を振動させ熱を出す。そうではなく、鉄の粉が空気に触れ酸化、すると出る熱で器を温めると」

    唯「たーくん…今ちょっとイラっとした」

    ┅┅回想終わり┅┅

    遠くから、聞き覚えのある声が近付いて来た。

    じい「若君ぃ~」

    若 心(よし)

    縁側の隅に置いたタッパー。タオルをめくり、蓋を少し開けた。

    じ「体操、体操を」

    若「うむ。始めるぞ」

    じ「ややっ?何やら香ばしい。これは嗅いだ覚え、いや食した覚えがあるような」

    いい匂いが辺りに漂っている。鼻をクンクンさせるじい。

    若「何じゃ。体操はせぬのか」

    じ「おほ?あいや滅相もない!」

    匂いに気を取られながら、体を動かすじい。

    じいの囁き「むむぅ。あの包みが怪しい」

    若「何か申したか?」

    じ「いえ?雀でございましょう」

    若「一羽も居らぬがの」

    体操が終わった。

    若「じい。朝餉の後屋敷へ参る。待つように」

    じ「は?信近でございますか、それとも小平太にござりますか」

    若「じいに話がある」

    じ「なんと?!ははっ、わかり申した」

    中に入る際、タッパーをひょいと手に取った若君。じいが鼻の下を目一杯伸ばしながら、穴が開きそうな程、若君の手元を見つめている。

    若「どうかしたか?」

    じ 囁き「さては…アレじゃな」

    若「この品も携えていく。楽しみにしておれ」

    じ「おぉぉ。レンコンもでござるか」

    源三郎も準備を始めていた。有山の所在を確かめている。

    源三郎 心の声(正午までには片をつける、と、忠…若君様は仰せになった。天野様のお許しが出次第、馳せ参じねば)

    源三郎「ん?」

    源 心(正午、か。午の正刻を令和でもそう申すと教わった。すっかり言葉が馴染んだようだな。若君様共々)

    時は進み、そろそろ天野の屋敷に若君が現れる。

    小平太パパ「父上に用、と?」

    じ「その様じゃ。今朝方、幾らでも話せた筈。それをせなんだとなれば、折り入って何かしらあるのやもしれん」

    小パ「うーん。身構えておらねば」

    じ「何じゃ小平太。警固上がりじゃろ。まだ休んでおらんのか」

    小平太「若君様のお成りとなれば、寝てなどおれません。あ、お姿が」

    じ「おっ」

    若君登場。手にはタッパーの包み、そして胸元の合わせから何かがチラリと見えている。

    じ「おぉぉレンコン~」

    小「書状をお持ちの様です」

    小パ「これは、心して聞かねばならぬ」

    天野家三世代、座して頭を下げた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days143~11日23時55分、文詠みます

    超理系と思いきや、文系もイケる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊の部屋。

    尊「どうだろ」

    スマホを取り出して操作する。

    尊「あ。起きてた。じゃあ」

    次にパソコンを操作し始めると、すぐに画面が開いた。

    瑠奈『わぁ!尊!』

    尊「お待たせしました。ちゃんと繋がったね。良かった」

    瑠『うん。練習で、お父さんのパソコンと通話してみたからばっちりだよ。嬉しい!画面大きいから、尊が目の前に居るみたい!』

    お互いの部屋のパソコン越しに、ビデオ通話を始めた二人。

    瑠『家に帰ったの遅かったんだね。お姉さん達の飛行機、最終の便だった?』

    尊「うん」

    尊 心の声(そういう事にしておいてください)

    瑠『寂しくなるね』

    尊「7人居たのが3人に一気に戻ったからさ。両親は少し気落ちしてる」

    瑠『そうなるよね。尊のお父さんお母さん、すっごく優しいしお話も楽しかった。また会えるといいな』

    尊「だったら、大学合格したら、また家に遊びに来なよ」

    瑠『ホント?!いいの?』

    尊「来てくれれば両親も喜ぶと思うし」

    瑠『行く行く!今度は、ちゃんと尊の家に行くって親に言うよ』

    尊「ははは。うん、ぜひ」

    瑠『ねぇ、今日満月なんだよ。知ってた?』

    尊「うん。見たよ」

    瑠『うふふ』

    尊「満月観ると、あ、誕生日来たって感じ?」

    瑠『月の周期で?えー、12倍速で歳取ってくのは困る』

    尊「ははは」

    瑠『そっか!毎月尊にバースデープレゼントをもらえるんだ?』

    尊「ヤベっ、墓穴掘った」

    瑠『キャハハ』

    尊 心(癒される。気落ちしてるのは僕もだったから)

    屈託のない瑠奈の笑顔に、顔がほころぶ尊。

    尊 心(あ。そうだ)

    何かを思いついた。

    尊 心(あの言葉、言ってみたい。どうかな。わかってくれるかな)

    瑠『あー、楽しい~』

    尊「あの、さ」

    瑠『なに?』

    尊「月が綺麗だね」

    瑠『月?』

    窓の外を窺おうとする瑠奈。が、すぐに動きが止まった。

    瑠『あ。もしかして…』

    尊 心(気づいた?)

    瑠奈が、居ずまいを正した。それに倣う尊。

    瑠『たけるん。もう一度言って欲しい』

    尊 心(さすが。わかったっぽい)

    尊「月が、綺麗ですね」

    瑠『尊…。あ』

    尊「へ?」

    瑠『えーっと、メモ!私どこにしまった~?』

    しきりに、机の引き出しを開けたりノートをめくったりしている。

    尊「何か探し物?」

    瑠『見つかった!もー、あまりにも出番がないから』

    尊「ん?」

    瑠『あのね、聞いてください』

    尊「はい」

    瑠『君はいかで、月にあらそうほどばかり、めぐり逢いつつ影を並べん』

    尊「…西行の和歌ですか」

    瑠『ヤだ、尊。なんでわかるの?天才!』

    尊「天才なんかじゃないよ。この問いにどんな答えがあるのか調べてあっただけ。瑠奈こそリサーチ済みでさすがだね」

    瑠『月関係には敏感ですから』

    尊「そっか」

    瑠『うふふ』

    尊「予想してた答えの中では一番…」

    瑠『だって、ずっと一緒に居られたら幸せだもん』

    尊「それは僕も同じだよ。って、わー照れる」

    瑠『すっごく嬉しい!月が入る愛の言葉だから、いつか誰か言ってくれないかなって、返答の見本をメモしておいたの。今まではこんな事全然なくて、やっぱり尊だったなって。ありがとう』

    尊「痛み入ります」

    瑠『ふふっ。あー、直接会ってる時じゃなかったのだけうらめしい。がっつりホールド、からのギューがしたいのに!』

    尊「そんな大技かけられたら骨折しちゃうよ」

    瑠『もー、どんな怪力だと思ってるの?でも、そうなったら付きっきりで介抱してあげる』

    尊「ははは」

    時間はあっという間に過ぎる。

    尊「名残惜しいけど、そろそろ」

    瑠『うん。明日もこうしてしゃべりたいな』

    尊「そうしようね。ではおやすみなさい」

    瑠『おやすみ、たけるん』

    暗く沈んだ画面をぼんやり眺める尊。

    尊「あ。今まで何で気づかなかったんだろ」

    尊 心(直接行き来するタイムマシンに拘っていたけど、こうやって、現代と永禄でリアルタイムに話ができるのもアリじゃないか?)

    尊「そっちの線も考えてみるか…」

    呟きながらパジャマに着替え、ベッドにもぐりこんでいった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    和歌の訳ですが、

    月は毎晩空に浮かぶ。同じくらい、大好きなあなたと絶えず会って、寄り添っていたい。

    といった感じです。

    11日のお話は、ここまでです。

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    四人の現代Days142~11日23時40分、帰省終わります

    さよならは言わない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    土産のあまりの多さに、四人でも上手く抱えきれず、未だ出発できていない。

    美香子「えーと、どこかしら体がくっついてないと、飛べないのよね」

    唯「いろいろもらい過ぎた?」

    美「実家に寄った時なんて、大体こんなものよ。何とかしましょ」

    覚「レジ袋を腕にかけて、隣同士腕をからめてから風呂敷を持つ。どうだ?」

    尊「綺麗な着物にレジ袋。すごい光景だよ。これぞ奇天烈」

    唯「起動スイッチどうしよう」

    若君「荷はわしが粗方持つゆえ、唯が抜け」

    四人とも両手が塞がった状態で、なんとか円陣を組んだ。

    若「お父さん。お母さん。このようななりで済みませぬが、世話になり申した」

    覚「僕らこそありがとな」

    美「楽しかったわ」

    源三郎「心より礼を申します。この日々は、一生の宝と致す所存でございます」

    トヨ「本当に、本当にありがとうございました」

    尊「元気で居てくださいね。僕も…頑張ります。いろいろと」

    唯「尊ぅ」

    尊「何」

    唯「そこでー、あのセリフっしょ」

    尊「セリフ?」

    唯「だからこれからもきっとある!」

    尊「あー。うん」

    若「…では。此れにて。唯」

    唯「はい」

    起動スイッチが引き抜かれ、四人の姿が消えていった。

    覚「ふう」

    美「はぁ」

    尊は、パソコンを確認している。

    尊「うん、ちゃんと3分後に着いたよ。OKって出てる」

    覚「良かった」

    美「一安心ね」

    美香子が、深呼吸をしている。

    美「すー、は~」

    覚「何してんだ」

    美「余韻を、ね」

    覚「そうか。すー、は~~」

    尊「ほぼ揚げ物臭だけど」

    そして三人は、まだ温もりの残る実験室を後にした。

    唯「…着いた?着いた?」

    若「戻れたようじゃな」

    源「おぉ。何もかもそのままで」

    ト「永禄はここまで暗かったのですね」

    永禄。唯の居室に無事到着した四人。安堵の表情の、唯と源トヨ。

    唯「荷物さ、今日はここに置いてったら?」

    ト「よろしいのですか?」

    唯「いいよん。隅っこに寄せよっ」

    ゴソゴソ動き出す唯達。

    若「待て」

    唯「待て、って?」

    若「しばし動くな。源三郎もトヨもじゃ」

    唯「なんで?」

    若「シッ。静かに」

    そう言うと、若君は襖を開け表へ出た。三人が静止してその場にかがむ。するとすぐ、外から声がした。

    男「若君様!」

    唯の囁き「あ、小平太だ」

    小平太「ひどく屋敷が揺れました。怪我などされてはおられませぬか?」

    若「あぁ。今、唯の無事も確かめた所じゃ」

    小「左様で」

    若「大事ない。戻れ」

    小「はっ」

    小平太の気配が消えた頃、若君が中に戻ってきた。

    唯「もう動いて大丈夫?」

    若「うむ。尊が参った折も相当揺れたゆえ、此度もそうであったのではと思うての。やはり小平太が飛んで来た」

    源「思い出しました。あの日の揺れは、尊殿が此方に来られたしるしであったのですね」

    若「フフ、源三郎」

    源「はっ?」

    若「あの日とは?まだ昨日の話じゃ」

    源「え」

    唯「だって3分後だもん」

    源「そう…でございますか」

    唯「そゆコト」

    ト「尊様と初めてお会いしてから、一日しか経っていないと」

    源「これはややこしい」

    唯「またいつもの生活が始まるってワケ。でもね!明日は、たーくんががんばるからさ」

    若「赤井家の荷は此処に預かっておく。今宵は、早う互いの寝所へ戻り体を休めよ。明日も早かろう」

    源「はっ」

    ト「わかりました」

    変わって、令和の速川家リビング。

    美「なーんか、部屋が広ーく感じるわ」

    覚「食卓が倍の大きさなのがまた、寂しさも倍増だな」

    尊「そんな物悲しい事ばかり言わないでよ。このテーブル、どうする?」

    覚「源三郎くん達が使ってた予備室に持っていくか。明日にでも」

    尊「そっか。じゃあ、僕もう部屋に行くね。おやすみなさい」

    覚&美香子「おやすみ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    11日のお話、もう少し続きます。

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    四人の現代Days141~11日23時20分、レア物です

    大喜びでパクつきそうだから、危ない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「代わるわ」

    覚「ん」

    四人はまだ二階。揚げ物担当を父から母に交代した。

    覚「風呂敷包みじゃ足りんな。紙袋でも用意するか」

    唯達が持ち帰る荷物の山の前に、覚と尊。

    尊「紙袋なの?」

    覚「土に還る方がいいだろ」

    尊「もうキリがなくない?あげた駄菓子、全部ビニールで包装してあるし」

    覚「それもそうだな。なら、せっかくだから」

    尊「せっかく?」

    キッチンの作業台下をゴソゴソ探す覚。

    覚「よし、いい物出てきたぞ」

    尊「は?レジ袋じゃない。最近エコバッグばかりでしょ。取ってあったの?」

    覚「何となくな。ほら、このロゴ見ろよ」

    尊「いつも行くスーパーのだ」

    覚「これで持ち帰ってもらえば、喜ばないか?向こうでも使えそうだし」

    尊「えー、喜ぶかな」

    四人が二階から下りてきた。

    若君「お待たせ致しました」

    覚「おー。武士の一団、だな」

    若「その、手にされておるのは?袋、ですか」

    覚「風呂敷や新聞紙だけじゃ心許ないだろ」

    唯「なんでレジ袋~」

    若「ん?これはもしや」

    トヨ「あの、よく訪れた」

    源三郎「スーパー、の名では?」

    若「このような品があると。名入りとは!いただけるのですか?」

    覚「使ってくれ。何枚でもあるぞ」

    若「うんうん、よう見慣れた店の名じゃ。有り難い」

    ト「買い物をした日々が思い出されます」

    源「大切に致します」

    尊「まさかの反応。人気のロゴだったとは」

    唯「なにげに丈夫だけどさぁ」

    はさみ揚げも用意できた。

    美「大きいタッパーは皆さんで。タオルでくるんである小さい方が、天野のじい様へね」

    若「布で巻いたのは、何ゆえでしょうか」

    美「少しでも温かいまま、渡せるといいなと思って」

    覚「ちなみに、高齢者用に蓮根には隠し包丁をしてある。噛み切りやすいようにな」

    若「おぉ、それはわしも案じておりました。喉に詰まらせぬかと」

    源「なんというお心遣い」

    ト「素晴らしいわ」

    若「ところで尊」

    尊「はい?」

    若「ちと話がある」

    リビングの隅に呼ばれた尊。若君が耳打ちしている。

    尊の囁き「え、そうなんですか。僕達は休みの日だし大丈夫ですけど、間に合いますか?」

    若君の囁き「間に合うよう進めておく」

    尊 囁き「カッコいい。わかりました。酉の正刻ですね」

    荷物の再確認も終わった。

    覚「最後、写真撮るから並んで」

    唯「はーい。ビフォーアフター的な?」

    7人でカメラに収まった。

    覚「さて、実験室に移動するか」

    美「荷物、少し持つわ」

    ト「すみません」

    あと30分程で日付が変わる。実験室は、人と荷物であふれていた。

    覚「じゃあな」

    美「元気でね」

    若「お父さん。くれぐれも、怪我には用心してくだされ」

    覚「本当に。忠清くんが慌てて飛んで来ないよう、気を付けるよ」

    源三郎とトヨは、何か言いたげな顔はしているのだが、

    源「まこと…筆舌に尽くし難く」

    ト「胸がいっぱいで、言葉が出ません」

    二人の肩をポンポンと叩く両親。

    覚「会えて良かったよ」

    美「あなた達から教わる事も、たくさんあったわ」

    源「そのような。身に余る光栄でございます」

    トヨがまた泣きそうになっている。

    美「駄目よ泣いちゃ。もう女中頭のトヨちゃんに戻るんだから。堪えなさい」

    母も、涙を堪えている。

    ト「はっ、はい」

    そんな中、ケロっとしている唯。

    唯「感動の場面だねぇ。うん、マジ連れて来て正解だった」

    尊「さっぱりしてんなぁ」

    唯「また来るもん。尊、よろしくぅ」

    尊「はぁ。あいも変わらず、わかってない」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    飛ぶのは次回ですが、まだまだ続きます。

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    四人の現代Days140~11日22時30分、男子の会話

    寡黙な分、話の中身が濃い。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トランプ大会、真っ最中。

    唯「今度は夏に来よう!」

    尊「は~。簡単に言ってくれるよな」

    唯「だって、また海やプールに行きたいもん!トヨや源三郎とさぁ」

    トヨ「あの、お写真のようにですか?」

    リビング奥に飾ってある、唯と若君と尊の水着姿の写真に、視線を向けたトヨ。

    唯「ぜーったい、楽しいってぇ」

    ト「唯様。私は良いのですが」

    なぜか、源三郎が申し訳なさそうに下を向いている。

    唯「え?なに」

    若君「唯。わしが申す」

    唯「はあ」

    若「源三郎はのう、戦となれば、鎧を身に付けておろうが川でも沼でも飛び込むが」

    唯「うん」

    若「水は些か苦手じゃ」

    唯「え、そうなの?知らなかった!」

    尊「びっくり」

    覚「それはまた」

    美香子「意外だわ」

    源三郎「恥ずかしながら、仰せの通りでございます。幼き頃、川辺で遊んでおりましたら、山に降った雨により水嵩があっという間に増し、流されそうになりまして」

    美「あら大変」

    源「騒ぎを聞きつけた父上と永季殿に、すんでのところで助けられました」

    覚「それは危なかったね」

    源「以来、水辺はつい、怯んでしまいます」

    尊「だからかー。あの水着の写真がらみで、源三郎さんに海とかプールの話をした時、いまいちノリが悪いなぁって思ってたんですよ」

    源「はい…覚えております。波が立ったり勢いよく流れると聞き、どうにも顔が強張ってしまいました」

    尊「苦手な物は仕方がないですよ」

    覚「今になって知る話もあるんだな。よしわかった。今度夏に来た時の為に、流れないプール、探しておくよ」

    尊「ちょっと!お父さんまで。プレッシャーの嵐だよ~」

    23時になった。

    美「お菓子、満遍なく行き渡った感じね」

    覚「そうだな…」

    一瞬、7人居るとは思えない程、シーンと静まりかえった。

    若「…わかりました。それでは、着替えて参ります」

    覚「あぁ、うん。じゃあ、はさみ揚げ用意するよ」

    美「お着物ね、唯とトヨちゃんのは唯の部屋、忠清くんと源三郎くんのは源三郎くんの部屋の前に置いたから、それぞれで着替えて。唯の着付けは、トヨちゃんにお願いして良かったのよね?」

    ト「はい。お任せください」

    唯「行ってきます」

    美「行ってらっしゃい…」

    四人が階段を上がっていった。

    尊「いよいよか…」

    美「尊、揚げ物手伝って」

    尊「あ、はい」

    二階。源三郎とトヨの部屋に若君が入る。

    若「もぬけの殻じゃの。閨の跡形もない」

    源「はい」

    若「如何であった?」

    源「こちらの世の暮らしでございますか?それはもう夢のような」

    若「違う。新婚生活、と申す物じゃ」

    源「新婚?」

    若「唯が、婚儀間もない夫婦をそう呼ぶと」

    源「あ、あぁ。それはもう夢のような」

    若「ハハ、答えは同じか」

    源三郎が、急にモジモジし始めた。

    若「ん?どうした」

    源「あの」

    若「何じゃ」

    源「可憐、の意味が漸くわかりました」

    若「可憐?」

    源「忠清様がそのように喩えられ」

    若「ほぅ…ほぅ!そうか、そうか」

    源「わたくしには、可憐より妖艶、でした」

    若「そこまで申さずとも良いが」

    源「明る過ぎる、と、すぐ灯りを消されておりましたが」

    若「ハッハッハ、そうか。源三郎と、斯様な話が出来るとは感慨無量」

    源「これまた夢のようでございます」

    若「小平太とは、いつになれば出来るのやら」

    源「わたくしからは何も申せません」

    若「フフフ。じいであるが」

    源「はい」

    若「任せておけ。吉報を待つのみ」

    源「ははっ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days139~11日21時、興が乗る

    まだ食うか。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君と尊、入浴中。

    若君「しばらく、瑠奈殿に会えぬのであろう」

    尊「あー、まぁ。よく知ってますね」

    若「三連休、と聞いた」

    尊「はい。明後日まで学校、クリニックもですけどお休みです」

    若「淋しかろう」

    尊「今は受験勉強が最優先ですから」

    若「淋しかろう?」

    尊「畳みかけますね。ご心配なく。電話もLINEも、なんだってありますから。それに今日は、兄さん達を見送る日だからって伝えてありますんで」

    若「そうか」

    入れ替わりで覚と源三郎が風呂に。若君が、カレンダーの前に佇んでいる。美香子が近くを通ると、

    若「お母さん」

    美香子「ん?どした~?」

    若「暦の此処に、一粒万倍日、とありますが、何でござろうか」

    美「あー、これはね。籾、あるじゃない」

    若「米のですか」

    美「そう。その小さな一粒が成長して立派な稲穂になるのにあやかって、何かを始めるのにいい日って言われてるのよね」

    若「ほぅ。それは縁起が良いですね」

    美「だから、お祝い事にも最適なのよ。お店を新しく出す時とか、結婚式とか」

    若「結婚式。そうですか…」

    覚と源三郎、入浴中。

    源三郎「お父さんのお力添えでトヨを娶る事が出来、改めまして心より御礼申し上げます」

    覚「僕はアドバイス…進言しただけだから。いやぁでも良かったよ。忠清くん、かなり心配してたんだぞ?」

    源「はい。わたくし如き者にここまで心を砕いていただき、一層の精進と、身を尽くす所存でございます」

    覚「これで一家の主だな」

    源「はい」

    覚「ずっと赤井を名乗る?それはわからないかー」

    源「そうですね」

    覚「今は知り合いにも居ないけどさ、いずれ、旧緑合出身の赤井さんなーんて人に現代で出会ったら僕、感動しちゃうだろうな。有り得るだろ?家が続けば」

    源「そう願います」

    覚「気持ちを強く持って」

    源「はい。子孫繁栄。その為には」

    覚「子作りだな」

    源「はい…」

    覚「声が小さい」

    源「はっ!励みます!」

    覚「おー、風呂場の外まで響く勢いだな。いいぞ、ははは~」

    全員揃った。

    覚「では、大トランプ大会を始める」

    唯「やったー、ヒューヒュー!」

    覚「勝者には景品を用意した」

    尊「景品!」

    唯「なに!」

    美香子が、ダンボール箱を運んできた。中を見せる。

    美「お菓子よ~。どっちかというと、駄菓子かな」

    唯「わぁ、わさわさ入ってるぅ」

    尊「駄菓子。子供会の行事?」

    美「いいじゃないの。一回ゲーム勝つ度に、一つ選ばせてあげる」

    唯「へー。じゃあ勝てたら、もらったお菓子を見せびらかしなから食べていいんだ」

    覚「持ち帰る前提だったが、まぁそれもいいだろ。今食いたいなら」

    唯「食いたい」

    尊「勝ってから言って」

    唯「よーし!勝つぞ~」

    尊「姉はこう言ってますが、源三郎さんトヨさん、頑張ってくださいね」

    源三郎&トヨ「はい」

    尊「兄さんは…頑張ってもお姉ちゃんにかすめ取られそうだもんな」

    唯「たーくん、よろしくぅ」

    若「いや、渡さぬ」

    唯「なぬ!」

    尊「おっ、強気だ」

    若「朝方、中々起きぬ唯の鼻先にちらつかせ、起こすのに使う」

    唯「うぅっ」

    尊「ウケる」

    美「状況が目に浮かぶわ~」

    覚「そんなんされなくても起きろよな。はい、まずはババ抜きからだ」

    22時。かなり盛り上がっている。

    尊「兄さんの一人勝ちと思いきや、源三郎さんが健闘してる」

    源「然程でもございませぬ」

    唯「駄菓子に目がくらんで?」

    尊「お姉ちゃんじゃあるまいし」

    源「敵を惑わせる術は、身に付けて損はないと思いまして」

    覚「ほー。何事にも無駄がないよ」

    美「偉いわねぇ」

    尊が勝者になった時、

    尊「僕の分、トヨさんに差し上げます」

    トヨ「えっ」

    尊「好きなお菓子選んでください」

    ト「そんな、困ります、尊様への褒美でございます」

    尊「いいんですよ、僕はいつでも手に入るんで。もらってください」

    覚「おー、優しいなー。ジェントルマン、紳士だ」

    尊「ジェントルマンね。やっぱり僕ってそうなのかな」

    唯「やっぱり?なにそれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days138~11日20時、お好みはどれ

    手を尽くしてくれたから、劇的に回復。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚「そろそろ風呂沸くぞ」

    美香子「あら、もう?ならトヨちゃん、座って。リムーバー持ってくるわ」

    トヨ「はい。お願いいたします」

    美香子がトヨの手を取り、マニキュアを落とし始めた。

    唯「ねぇねぇ、女子は三人一緒にお風呂のつもりだけど、男子も四人ギューギュー詰めで入るの?」

    覚「それはさすがに厳しい。コミュニケーションもいいが、ゆったり入って欲しいしな。せいぜい二人ずつだ」

    唯「どうすんの」

    尊「どういう組み合わせでもいいけど」

    若君「わしも構わぬ」

    唯「源三郎が決めたら?」

    源三郎「え」

    若「そうせよ」

    唯「誰と一緒がいい?」

    源「あの…」

    唯「いいよゆっくり考えれば」

    源「お父さんの、お背中を流させていただけるならば、この上ない喜びでございます」

    覚「おー、そうかいそうかい。嬉しいよ」

    尊「決まりだね。じゃあ僕は兄さんと」

    若「うむ」

    美「はい、お疲れ様~」

    マニキュアオフ完了。

    ト「ありがとうございました、お母さん」

    美「なーんか、さっぱりしちゃったわねぇ」

    ト「すっかり元通りです」

    美「元通りではないわよ?来た頃と違って、指先まで傷もない」

    ト「そうですね…ひとえにお母さんのお陰です」

    尊「治療した?」

    美「そこまで大々的ではなかったけど、私ができる限りは。寝る時に手袋はめてもらったりもしたわね。あれから一月も経つのねぇ」

    覚「飾ってなくても、綺麗な指先だ」

    ト「ありがとうございます…」

    覚「風呂、女性陣が先でいいぞ」

    美「そう?ありがと。じゃ、行きましょ」

    唯「はーい」

    ト「はい」

    三人はリビングを出ていった。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「なんか、晩ごはんも早めだったし、予定前倒し的な感じ?急いでるの?まさか、早く帰そうとか」

    覚「違う。みんな風呂から出たら、大トランプ大会やろうと思ってな」

    尊「大会!」

    若「そのような意図が」

    源「風呂の後は、即戻る支度をせねばと思うておりました」

    覚「飽きるまで遊んでもらう」

    尊「ははは」

    若君と源三郎が、ほっとした顔になった。

    覚「で、そうだな、11時過ぎ頃に着替えに行ってもらう」

    尊「何でその時間?」

    覚「あまり遅く戻って、翌朝からの仕事に影響するといけないからな。唯はともかく、三人は忙しい身だから」

    尊「なるほどね」

    覚「その間に、僕は土産のはさみ揚げを用意すると」

    尊「だからか。さっき、着物に着替えてる時位に揚げるって言ってたじゃない。なんでお風呂の間でない?と思ってたんだよ」

    覚「天野のじい様に渡すのが明日だとしても、少しでも出来立てに近い方がいいしな。二人とも、急いで帰りたかったかい?」

    若「いえ!」

    源「滅相もないです!」

    覚「な、まだまだ夜は長いぞ~」

    洗面所。風呂を出た女性陣。この後の予定は、美香子が二人に知らせていた。

    ト「お母さん。この下着、なんですが」

    美「ブラとショーツ?」

    ト「持ち帰るのを、お許しいただけませんでしょうか」

    美「いいわよ~。全部?」

    ト「いえ。もしも、また訪れる機会があったならば、その折にお母さんを慌てさせてもいけませんので」

    美「ふふっ。さすが気遣いのプロ。というか残すのは、おまじないも入ってない?」

    ト「まじない。そうですね」

    美「必ず戻って来れますように、って」

    ト「はい」

    唯「持ってって、向こうで使う?」

    ト「眺めて楽しみます」

    唯「かわいい下着は気分がアガるって言ってたもんね。あ、違うか」

    ト「え?」

    唯「源三郎が気に入ってるのにするんかな~?なーんて。いやん」

    ト「あの、その」

    唯「え?まさかの図星?!」

    ト「お恥ずかしい」

    美「あらん。そんな話聞いたら、お風呂出てるのにのぼせそうよ。はい、ドライヤー持って行って。二人とも髪は、リビングで乾かしなさい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days137~11日19時、遠慮のかたまり

    醒めたくない夢って、ある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはんが済んだ。

    唯「お母さん特製のスモア、みんな楽しみにしてるからさ、お願いしまーす!」

    美香子「わかりました。さて、どうするかな。バーベキューの時と違って、コンロの前に群がるってのもねぇ」

    覚「それに直火は焦げやすいしな。オープントースターでやるか?」

    美「そうしよっか。ビスケットにマシュマロのせて入れちゃえばいいもの」

    覚「でもトースターの前に群がるんなら、コンロと同じだしな…ん、よし!トースター本体をテーブルに運んじゃおう。な、いい考えだろ?えーっと延長コードはと」

    尊「話、早っ」

    デザートの準備をし始めた両親。

    美「誰が作っても同じになりそうだけど、これでも母の味になる?」

    若君「はい、勿論です」

    唯「お母さんが作れば、どんなんでも母の味だよ」

    美「そお?」

    食卓にオープントースターがセットされた。手際良く次々と作り始める母。

    美「材料、何か多くない?誰がこんなに食べるのよ」

    唯「どーんと買ったから。いいじゃなーい」

    美「唯に買い物させるとこうなるか。でも、これでしばらく甘い物も中々口にできないでしょうから、今夜、心ゆくまで食べてもらうってのもいいかもね」

    唯「でしょー」

    美「ホントにそこまで考えてた?はい、源三郎くんトヨちゃんお待たせ。熱いから気をつけてね」

    源三郎「頂戴致します」

    トヨ「ありがとうございます」

    唯「甘い物かぁ。あ、そういえば、まだ大根アメ残ってるわ」

    美「それは薬として尊に持たせたんだけどね。どっちにしろあまり日持ちはしないから、帰ったら三日以内位には食べておきなさいよ」

    それを聞いた源トヨが、怪訝そうに顔を見合わせている。

    唯「あれ、どした?二人とも」

    トヨの囁き「源ちゃん、言って」

    源「あ、あぁ。畏れながら申し上げます」

    唯「なに?」

    源「日持ちがしないのであれば、戻った折には時すでに遅し、ではありませぬか?もう一月も経っております」

    唯「へ?だって戻るのは、飛んだ3分後だし」

    源「三分?」

    ト「三分…」

    若「唯。その辺りの仕組み、子細を話してはおらぬ」

    唯「そうだった?」

    源トヨが頷いた。

    唯「えー、なんも聞かれないから、たーくんがしゃべったと思ってたー」

    若「わしは、あれやこれや立て続けに話しては狼狽するばかりと思うておる内に、期を逸したと申すか」

    唯「言うの忘れてたんだ」

    美「唯~。人のせいにしないの」

    唯「マジすかー」

    若「マジ、だ」

    唯「あれ私、あん時なんて言ったっけ?えーっと」

    若「三分間、夢のような夢ではない時間を過ごさぬか、と誘うておった」

    ト「三分は百八十数える内、と伺いました。今では三分がどれ程かはわかりますが、こちらの世で百八十数えても、何も変わりませんでしたので訳がよくわからず」

    唯「それしか言ってなかったからか。ごめーん」

    源「いえ、あえてわたくし共からお尋ねも致しませんでしたし」

    若「今、あえてと申したな」

    源「はい。トヨとも話しておりましたが、子細を伺ってしまうと、この夢から醒めてしまうのではないかと思い」

    唯「夢じゃないんだけど」

    ト「あの、それほど夢のような楽しい時を過ごさせていただいておりましたので」

    唯「そっか。そんな風に思っててくれたなら、連れてきてホント良かったよ。じゃあ、詳しくは尊から説明しまーす」

    尊「は?」

    唯「よろしくぅ」

    尊「いきなり丸投げかよ!話すけどさ。あの、要はですね、永禄では三分間だけ四人が居なくなってるんです」

    ト「こちらにこんなに長く居りますのに?」

    源「うーん」

    尊「夜遅くに発ったじゃないですか。それは、日中に急に四人も居なくなると周りが騒ぐから考慮したんですよね?兄さん」

    若「然り」

    尊「こちらに、満月から満月の間ほぼ一か月居たとしても、戻った時には3分、180数えた位しか経ってないんです。そういう機能…というか乗り物なんですよ。だから大根アメも無事と」

    源「わかったようなわからぬような」

    ト「やっぱりわからないような」

    唯「わかったつもりで行こー」

    尊「雑だな」

    美「ねぇ、もっと焼いてもいいの?まだ食べられる?」

    唯「じゃんじゃん作って!みんな遠慮して、欲しいって絶対言わないから」

    若君と源トヨがそっと微笑んだ。

    尊「珍しく正論」

    美「了解~」

    スモアパーティーもそろそろ終わり。

    美「最後一つ、源三郎くん食べて」

    源「はっ、それではいただきます」

    美「はい、おしまい。休憩したらお風呂ね」

    唯「まだまだ盛りだくさんだ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days136~11日18時30分、用意周到

    そんなに固くはないが、かと言って。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    帰宅し、晩ごはんの準備をしている。

    唯「はっさみっ揚げ~!」

    覚「あい変わらず口しか出さないな。チョロチョロしてるだけなら、あっち行ってろ」

    唯「へーい」

    尊「叱られ方が小学生並みだ」

    美香子「持ってく荷物の確認は終わったの?」

    唯「だいたいは」

    美「この後は、ご飯食べてお風呂入ってお着物に着替えてだから、忙しいわよ?今の内にちゃんと見ておきなさいよ」

    唯「はいはい」

    美「ホントにもう~」

    尊「叱られ方、以下同文」

    リビングの隅に、持ち帰る荷物の山が二つできている。

    尊「御月家と赤井家ね。このでっかい新聞紙の包みは何?」

    唯「レトルトいっぱい持ってくから」

    尊「あー、なるほど」

    唯「バラけるといけないから一度包んである。ビニール袋とかより燃やせるモノがいいって、お父さんが言うから」

    尊「へー。いい考えだけど、燃やすのは勿体ないよ。だってこれ、日付入ってるじゃない。いつこっちに来てたかわかるよ」

    唯「そう言えばそうだ。…あ、だったらさ、ねー、お母さーん」

    美「何?」

    唯「今日の新聞ちょうだい」

    美「今日の。どうするの」

    唯「この日までここに居たって、記念に持っていきたい」

    美「あー」

    唯「あれ?ダメ?」

    美「お父さんは朝一番に読んでるからいいけど、私まだだったわ」

    唯「えー、じゃあ今読んでよ」

    美「うーん。連載小説は読んでおきたいわね。じゃあ支度の手も足りてるみたいだし、ちょっと失礼して目を通しておこうかしら。唯、このふきん持って」

    唯「ふきん?」

    美「私の代わりにテーブル拭く、はい」

    唯「えー。仕方ないなー。やるか」

    美「そんなにトーン下げない~」

    ソファーに移動し、新聞を広げ読み始めた美香子。唯はすぐに食卓を拭き終わり、新しい方のテーブルをじっと見ていた。

    唯 心の声(たーくん達が作ったこのテーブル、大活躍だったな)

    唯「お母さん」

    顔を上げた母。

    美「何?」

    唯「このテーブル、明日には片付ける?」

    美「ん~。まだ考えてないけど、三人だけなら二卓も要らないものね」

    唯「だよね」

    食卓を離れ、今度はテレビ台に近付いた唯。芳江やエリも交え全員で1羽ずつ折った、折り鶴が9羽並んでいる。

    唯 心(なにげにそれぞれ個性出てて、かわいい)

    しばらく眺めていたが、

    唯「…あ。ねぇ、お母さん」

    美「えぇ?今度は何。そんなに呼ばれると、全然読み進められないわねぇ」

    唯「ごめんごめん。この鶴だけどさ、持ってってもいい?」

    美「持ってく?あら。無機質なテレビ周りが華やかになって気に入ってたけど、そうしたいならどうぞ」

    唯「全部じゃないから。私とたーくんと源三郎とトヨが折ったのは、置いてく。残りの五人分だけ欲しい」

    美「…そう。それ、ちょっと嬉しいわ」

    唯「でしょ」

    美「翼が広げてあるから、たたんだ方がいいわよね。やれそう?」

    唯「厚めの紙で作ってあるから多分できる。連鶴だけ難易度高いけど…いいよ、新聞読んでてくれれば」

    美「はいはい」

    その頃のキッチン。

    若君「お父さん。この量を一度に、ですか?」

    あとは粉をまぶすだけの、はさみ揚げ予備軍が大量に用意されている。

    覚「こっちはね、晩ごはんにじゃなくて手土産用だよ。後で、君達が着物に着替えてる時位に揚げるよ」

    若「そうでしたか。毎度のお気遣い、痛み入ります」

    尊「揚がったヤツ、運ぶよ」

    トヨ「では私もこちらを」

    覚「頼むね。んと。忠清くんさ、わかるかなー」

    若「何でございましょう」

    覚「はさみ揚げ、あの天野のじい様は食べた事あるかな」

    若「それは…わしはわかりかねますが」

    源三郎「わたくしも存じ上げませぬが、トヨでしたらわかるかと。おい、トヨ」

    ト「はい、お父さん。信茂様はお召し上がりになられています」

    覚「さすがトヨちゃん。ありがとう」

    ト「はさみ揚げの入っていた籠を、空になっても尚、匂いをかぎながら抱えておられました。それを私が受け取り、洗いました次第」

    若「ハハハ。何と申すか、情景がありありと浮かぶのう」

    ト「かなりお気に召したと思います。三つは食したと仰せられていましたので」

    若「それはまた」

    尊「で、それがどんな関係があるの?」

    覚「源三郎くん達二人の、結婚のお許しを貰う相手だろ」

    若「そう…ですね」

    尊「え、まさかの袖の下?」

    覚「忠清くんが、明日にも話をするって言うからさ。少しでも手助けになればいいなって。気に入ってくれてるなら好都合。天野様用は分けて用意するよ」

    ト「お父さん…」

    源「そこまでお考えいただいたとは」

    覚「まあまあ。さぁ、そろそろ飯にしような」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    ありがとうございます

    てんころりんさん、そうなんです!再考の時間もたっぷり取りたいのにそれも難しく。
    この隙?に、他の作家の皆さんで、ここが賑わうと良いななんて思ったりします。

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    夕月かかりてさん

    もう二年以上、二日に一度のペースを保って来られて本当にお疲れ様でした。👏👏
    努力の賜物だと感心してました。
    長い間に状況が変わりますね、私もです。
    でも書くことに手を抜けないですね。
    準備期間を自由に取られて、これからもどうぞよろしくお願いします。🤗

    ぷくぷくさん☆妖怪千年おばばさん

    毎度楽しく読ませて頂いてます。🥰
    コメントしてなくてすみません。
    何事にも時がある… ⏳
    えっ今?とか言われそうですが(笑)
    後からまた読んだり、まとめて読んだりしてます。
    マイペース返信お許し下さいね! 🙏

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    頑張ります

    カマアイナさん、早速の励ましのお言葉、ありがとうございます。

    息切れしないよう、続けて参ります。

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    夕月かかりて(愛知)さん

    先ほどは、自分の名前を入れ忘れて、失礼しました。

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    夕月かかりて(愛知)さん

    御察しの通り、隔日の投稿をいつも楽しく読ませて頂いております。
    お仕事のお忙しさをぬって、続けてくださって感謝しかありません。
    どうぞご無理のないように。それにあと1、2回で終了だろうなと思っていたので、まだ続くとのこと、嬉しいですね。有難うございます。

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    投稿間隔を変更いたします

    本日も、こうして目を通していただき、心から感謝しております。

    実を申しますと、ここ最近私自身が、創作・投稿活動に時間を費やすのが難しい状態が続いております。

    大変恐縮ですが、四人の現代Days、現在投稿を一日おきに続けているところ、三日…遅くとも五日に一度程に切り替えたいと存じます。

    二日に一度のお楽しみ、にしてくださっている方には心苦しい限りですが、あと1話2話で最終回なんて事はなく、まだまだゆるゆると続きますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

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    四人の現代Days135~11日17時、未来は明るい!

    掬われないよう、救いたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    家族全員でボーリングを楽しんでいる。

    唯「曲がれぇ~曲がれぇ~!ちぇっ」

    尊「念じても無理。球は曲がらない」

    唯「うるさいなー。信じるモノはなんとかって言うじゃない。はい次、たーくんどうぞ」

    尊「救われる?ピンが倒せる方向に球を投げればすむ話でしょ」

    唯「ムカつく!そう言うアンタだって、ガターやらかしてるクセに!」

    尊「いいんだよ、何年かに一回しかやらないのに上手くできる訳ないんだから。みんなで楽しめれば」

    若君は、すぐに投球のコツを掴んだようだ。

    尊「うわっ、兄さん、しれっとスペアとってる!」

    若君「二度投げる内に、全て的を倒せば良いのであろう?」

    尊「そうですけど。集中力が凡人とは違うんだろうな」

    唯「あーあ。今だけ、お父さんと腕チェンジできないかなー」

    尊「しつこいな。そんな事ばっかり言ってると、掬われるのは足だ」

    若「ハハ。尊、上手いの」

    レーンは二つ使っている。隣は…

    トヨ「ああっ!またしくじってしまいました」

    覚「あー。ボトっと落とした感じだね。いいよいいよ。真っ直ぐには転がってるから、ピンも倒れてるし」

    ト「床を傷めないよう、そっと置かねばなりません。次こそは何とか」

    覚「メンテナンス側を心配か」

    満喫している様子の、若君と源トヨ。源三郎は特に、

    源三郎「ハハハッ!」

    覚「おっ、ストライク出た」

    ト「源ちゃん、やるじゃない」

    源「お父さん、的が全て倒れました!」

    覚「源三郎くんも筋がいいねー。初めてとは思えないよ」

    美香子「もっと早く、連れて来てあげれば良かったわね。とっても楽しそうだし」

    唯「源三郎があんなに笑ってる」

    若「うむ」

    唯「甲斐が、あった?」

    若「ハハ、そうじゃな」

    3ゲーム終える頃には、皆そこそこの点数を取っていた。

    覚「トヨちゃんも、100点超えたか」

    ト「お父さんのご指南の賜物でございます」

    覚「忠清くんと源三郎くんは、いい感じの点の取り合いだったな」

    源「力が入り、つい競り合うてしまいました」

    若「構わぬ。手加減は無用」

    美「いいわよね。こんな戦い方は平和そのものだもの」

    若「…」

    帰り道。覚の車に、唯と若君と尊。若君が、外に流れる夜景を静かに眺めている。

    唯「たーくん?なんか考えてる?」

    若君「…戦は、ないに越した事はない」

    唯「うん」

    若「率いる兵の命、ひいては民の命を粗末にはしとうない。刀同士の鍔迫り合いではなく、先程のボーリングの様に、運も少しはあるが技量力量で争えば、血を流さず命を落とさずに済む」

    唯「…そうだね」

    若「敵陣にも有能な御仁は居る。無闇に殺めるのでなはく、手を取り合ってゆけるならば、より良き国造りが出来る筈」

    覚「よく考えてるな…」

    唯「…」

    唯は、若君と初めて二人きりで話した、寺での夜を思い出していた。

    ┅┅回想。ドキドキの夜┅┅

    若「戦は勝たねばならぬ。そうでなくては城の者も領民も、心安んじて暮らしていく事ができぬ。だが…命を落とした者も、逃げ落ち延びる敵方の兵も、我らのようにただ、安らかに暮らしたい者たちではなかったか…」

    ┅┅回想終わり┅┅

    唯 心の声(戦国は、たーくんが心を痛める場所。でもたーくんの本当の幸せは、この現代じゃなくあの場所にしかないから…守るよ、ずっと)

    若「尊」

    尊「は、はい」

    若「わしらが永禄に戻っても、戦乱はまだ続くか?」

    尊「…続きます。残念ながら」

    若「そうか。ならば生き抜くより他なし」

    尊「兄さん、大丈夫。絶対大丈夫だから」

    若「それはつまり」

    尊「はい?」

    若「後の世がどうなってゆくか、わかっておるからじゃな」

    尊「あの、えっと、僕からは何も」

    若「どうなろうとも、日々粛々と生きる。それは、先を知ろうが知らまいが、変わらぬ」

    尊「…はい」

    若「ふう。令和の暮らしも残す所あと僅か。まだまだ楽しまねばの」

    唯「そうだよ。晩ごはんのはさみ揚げ、楽しみだしぃ」

    尊「毛色がガラッと変わってるし」

    覚「よし、そうだな!今夜は、ますます腕によりをかけちゃうよ~」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days134~11日15時30分、大きくなったね

    光るのは、塗ってあるオイルも要因では?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    トヨ「お待たせを致しました」

    リビングに戻ってきたトヨは、目元に赤みは残るが、すっかり元のキリリとした姿になっていた。

    ト「洗い物も済んでしまいましたか?すみません!後片付けが出来ず」

    美香子「そんなの気にしない。人手は足りてるからね。さあ、じゃあそろそろ、出かけちゃおっか?」

    唯「出かけるー!ボーリング!」

    覚「よし、運動するぞー」

    尊「運動。まぁそうだね」

    唯「へぇ。いざ勝負!じゃないんだ」

    覚「三人は初めてだから、真剣勝負はしない。なんなら、僕と唯で点取り競争するか?」

    唯「やだ」

    覚「即答か」

    唯「負けるとわかってる戦はしないのだ」

    覚「おっ、それって、僕は上手いと思ってくれてるんだな?」

    唯「まーねー」

    覚「おほー。そうかそうか」

    尊「ゴキゲンだ」

    車2台に分乗。美香子車に、源トヨ。

    ト「お母さん」

    美「なぁに?」

    ト「この、爪の飾りを、永禄に帰りますまでに取り去りたいのですが」

    美「あー、マニキュアその他諸々。いよいよ女中頭のトヨちゃんに戻る準備ね。唯はあのままでいいけど、あなたはねぇ。勿体ないとは思いつつ」

    ト「奥方様と女中は、違って当然です」

    美「わかりました。じゃあ夜お風呂入る前に、取ってあげるわ」

    ト「ありがとうございます」

    美「手だけよね?足は、塗ったままでいいわよね?」

    ト「足も…」

    源三郎「残します」

    ト「え?」

    美「あらん」

    源「炊事、洗濯に支障ない。そのままにしておけ。誰も困りはせぬ」

    ト「わかったわ。なら残します」

    源「色味を気に入っておったようだしな」

    美「そうなのね~」

    ト「はい。先に手に施していただきましたが、何度も眺めてうっとりしている私を見て、唯様が是非足にもこのお色を、と」

    美「うふふ。だって確か、源三郎くんが選んだ色だったわよね?」

    源「そうではありますが、元はお母さんが選ばれた色でございます」

    ト「忠清様が、夕映えの色と仰られ」

    美「聞いた聞いた。いっそのこと、売り場にそう書いておいたらって思ったもの」

    ト「まあ」

    源「ハハッ」

    美「あ、源三郎くんが笑った」

    源「え」

    美「声上げて笑うなんて、中々なかったじゃない。仕える身、が染みついてるのもあるとは思うけど」

    源「そう…ですね」

    美「これから行く所ね、大声で笑っても叫んでも、全然大丈夫なの」

    ト「賑やかな場なんですね」

    美「だから、大いに笑って騒いで楽しんで欲しいな。旅立つ前に」

    源「はい。お母さんのご要望とあらば」

    美「ふふ、受け答えの真面目さは変わんないな。それが源三郎くんのいい所ね」

    ボーリング場に到着。

    唯「靴借りるよ。はい、こっち」

    若君「履きかえるのか」

    使うレーンが決まり、座席に上着や荷物を置いていると、ズラリと並ぶレーンを見ながら、若君と源トヨがしきりに感心している。

    源「なんと美しい床であろうか」

    ト「輝いてるわ。どれほど手入れをすれば、このようになるのかしら」

    若「そうか。このように、板敷の床が光る程磨かれた舞台に上がるには、それ相当の履物が要るのじゃな」

    唯「靴ってそんな理由だっけ?」

    覚「まぁ、そうしとこう」

    尊「そんなんでいいの?」

    唯「いいんじゃな~い?たーくん、球取ってこよっ」

    若「球?あぁ」

    ボール置き場で選んでいる唯と若君。

    唯「指が入る物を選ぶ。でもって、転がすからさ、持ち上がらないほど重いのは止めとくんだよ」

    若「うむ」

    源トヨは、尊に選び方を教わっていた。

    源「指で上げられれば、良いのですね」

    尊「はい。重過ぎて、足の上なんかに落としたりしたら大変なんで」

    ト「どうしましょう。やはりこちらかしら」

    源「無理するな」

    尊「源三郎さんの言う通りですよ。重ければいい訳じゃないんで」

    7人のボールが集まった。

    唯「尊」

    尊「何」

    唯「アンタの球はどれ?」

    尊「は?僕のはこれだけど」

    唯「わー、めっちゃ差つけられた!」

    球のポンド数が随分と違い、尊はかなり重い球を選んでいた。

    尊「悪い?ちゃんと持てるから」

    唯「中学生の時は、同じ重さの球だったのに」

    尊「当たり前でしょ」

    唯「ふふーん。オトナになったのう」

    尊「それ、重さで決まるモノ?そりゃ僕だって少しは」

    唯「へー。少しは、ね」

    尊「うるさいよ」

    尊 心の声(こんなバカ話…あと何回できるのかな)

    美「はいはい。まず三人に説明するわね。それから始めましょ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days133~11日13時30分、刻みます

    別れは辛いけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    9人で昼ごはん。

    エリ「とても美味しい。ニョッキも作ったんですか?」

    若君「はい」

    芳江「あらら。私、柔らかめの水とんかと思ってました」

    覚「水とん。まあ、似てますわな」

    美香子「もしかして」

    覚「何だ?」

    美「これを、再現しようと永禄で作るとするじゃない。それが後世になって、水とんの由来だったりして?」

    覚「ほほー。なるほど」

    尊「こういう、各地域で自然発生的に出来たであろう食べ物はさ、実際わかんないよね」

    覚「そうなるかもしれないし、書き残してあるとは限らないからわからんな」

    尊「だから、向こうでどう工夫して作ってもらっても、歴史を変えるまでにはなりませんから」

    若「ふむ」

    源三郎「心得ました」

    トヨ「はい」

    美「ところで尊、あなたのんびり食べてる場合?」

    尊「わかってるよ。ちゃんと話す内容は書き起こしたから、大丈夫」

    芳「何かあるんですか?」

    尊「あの、食後、少しだけ時間ください」

    美「羽木一族の存亡の話をするのよ」

    芳「羽木?」

    エ「若君でも源三郎さんでもなく、尊くんがですか?」

    覚「学校で、クラスメートにしゃべる機会があったんだそうです。じゃあ僕らにも、話して貰おうと」

    芳「まあ。それは、私達も是非聞かせていただきたいですね」

    エ「きっと、話もお上手にまとめられてるんですよね」

    唯「それで彼女もゲットしたし」

    尊「それはいいから」

    食後。お茶を飲みながら、尊の説明を全員で聞いている。

    尊「お姉ちゃん?所々、しかめっ面で聞いてるけど、何だよ」

    唯「ちょいちょい、難しい言葉出てくるからだってば。まあまあわかってるから」

    尊「まあまあかよ。兄さん、源三郎さん。今のところ話、合ってますか?」

    若「合うておる」

    源「分かりやすく語られておられますし」

    尊「良かった。じゃあ続けます。それでですね…」

    15時近くになった。玄関で、帰るエリと芳江を唯達四人で見送る。

    唯「じゃあねっ」

    エ「どうか、お元気で」

    若「お二方も、体を厭われよ」

    芳「はい。ありがとうございます」

    源「わたくし共こそ、心より礼を申します…おい、トヨ?」

    ト「…」

    唯「わー!」

    声をころし、はらはらと涙を流していたトヨ。唯が走っていき、ティッシュの箱を抱えて戻ってきた。

    唯「使って」

    ト「すみません。唯様」

    エリと芳江も、言葉にはならない様子だ。

    ト「…あの、朝のコーヒーの時間、お話にお付き合いいただきありがとうございました」

    芳「毎朝楽しみにしていましたよ」

    エ「えぇ。勿論私も」

    ト「髪を切りに行く前に、優しくお声掛けいただいた事は、一生忘れません」

    エ「何も特別にはしていませんよ」

    芳「可愛い娘ですもの」

    源「…」

    唯と若君も、静かに見守っている。

    芳「幸せになってね」

    ト「はい」

    エ「源三郎さん、頑張ってくださいよ?」

    源「ははっ!」

    エリと芳江は帰っていった。立ったまま動かない、トヨの背中をさする唯。

    唯「ちゃんと、言えてたよ」

    ト「そうですか」

    唯「うん。伝わってた。あのさ」

    ト「はい」

    唯「ずっとさ、トヨは強いなって思ってたんだけど、案外泣き虫でびっくりだった」

    ト「私は、強くなんかないです」

    唯「ねぇたーくん」

    振り向いて、若君に問いかける唯。

    若「心を委ねられる、母君二人に此処で出会うたのじゃ」

    唯「安心できる?」

    若「うむ。わしは今、令和の世に連れて参った甲斐があったと、心から思うておる。のう、源三郎」

    源「はい…」

    若「唯」

    唯「あ、はい」

    目配せをした若君。まだ下を向いているトヨから唯がそっと離れ、さする役割を源三郎にバトンタッチした。

    若「落ち着くまで傍らに居れ」

    源「はい」

    唯「先に戻ってるね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    四人の現代Days132~11日11時、肌身離さず

    ちょうど手のひらサイズだし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    キッチンに、覚と若君。

    覚「さて」

    若君「よろしくお頼み申します」

    覚「芋を茹でる。これはジャガイモね。鍋に水入れて」

    若「はい」

    唯「今日はなにー」

    覚「ニョッキだ」

    唯「にょきにょき?」

    尊「言うと思った」

    ジャガイモが茹であがった。

    覚「つぶすよ。熱いから気を付けてな」

    小麦粉、塩を混ぜ、こねる。

    トヨ「芋なら、何でもよろしいのでしょうか」

    覚「やった事はないけど、向こうで手に入る物で試してみたらどうだい。粉もさ、ある物で。でも失敗して、食べ物を粗末に扱っても何だな」

    ト「少しの量で試してみます」

    棒状に伸ばし、小さく切り分けている。

    唯「粘土みたーい」

    覚「はい、これ持って」

    唯「なに?フォーク?」

    覚「切り分けたこれを楕円形にまとめる。で、フォークを軽く押し当てて筋をつける」

    唯「へー。やるやる!」

    一つ作ってみた唯。

    唯「なんか」

    尊「何」

    唯「さなぎみたい。セミとかの」

    ト「さなぎ?」

    尊「うへぇ」

    唯「ねっ、そう思わない?源三郎」

    源三郎「似てはおります」

    尊「わー、それにしか見えなくなる!しかも大量だし!」

    唯と尊が大騒ぎし、源トヨと四人で成形している横で、野菜や肉を煮込み始めた若君。

    若「この中にニョッキ、が入ると」

    覚「うん、あれはもう一度茹でてからだけどね。母さん達が来る頃にちょうど仕上がるだろう」

    13時過ぎ。クリームシチューが出来上がった。

    美香子「お待たせ~。お二人もすぐみえるわよ」

    覚「よしよし」

    器に盛り付けていると、エリと芳江が現れた。

    エリ「こんにちは」

    芳江「お招きありがとうございます」

    尊「お疲れ様でした」

    唯「どーぞー。座って座って」

    9人が席についた。

    美「ちょっと待ってね。いただきますの前に」

    覚「何だ?」

    芳「あの、ささやかなんですが」

    エ「プレゼントをお持ちしました。はなむけの」

    美「今日戻る四人に、用意してくださったって」

    唯「えー!」

    若「それは忝ない」

    一つずつラッピングされた小さな包みが、二人からそれぞれに渡された。

    源「わたくしにまで」

    ト「どうしましょう」

    唯「開けていい?」

    芳「どうぞ」

    唯「ん?これ、定期入れ?あ、なんかついてる」

    尊「リール付きだ」

    唯「え?電車もバスも乗んないけど」

    エ「芳江さんのアイデアなんですよ」

    唯「うん?」

    芳「はい。お写真って、何枚か持ち帰られますよね」

    唯「そうだね」

    尊「はい。今回も用意してます」

    芳「こんな事はない方が良いですけど、どこかへお出ましにならなければならない際などに…」

    若「戦でしょうか」

    芳「そう、ですね。勿論普段から使ってもらってもいいんですが、身に付けて持ち歩けるようにと思いまして」

    唯「定期入れなのはどうして?」

    芳「普通の入れ物も考えたんですが、これですとリールの先にフックがついてますよね。落とす心配がないかなって」

    尊「腰の辺りに引っ掛けても、長さがあるから近くで見れるね」

    若「理に敵っておる」

    芳「アイデアは私でしたが、エリさんと一緒に選んだんですよ」

    エ「種類が多くて。楽しく選べました」

    唯「ありがとう!大事にするね!」

    若「ありがとう、ございます」

    源「大切に、使わせていただきます」

    ト「とても嬉しくて。勿体なくて…使えるかしら」

    唯「そこは使おうよ」

    ト「はい!」

    覚「ではそろそろ、いただくか。忠清くん渾身の作だ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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