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[no.370] 2020年12月9日 22:21 夕月かかりて(愛知)さん 返信
す、すみません…
てんころりんさん、いつも感想をいただける事、大変感謝感激です。自分もそうだったように、潜在的な読者様は多数いらっしゃる筈…なんですが、これでいいのか?とふと立ち止まってしまいますので、反応があるだけでほっとします。
スタートが12月8日な件ですが…もちろん、今日もそうですが、日付を合わせたかったのはその通りです。ただ、今日この後の投稿は12月9日分なので一致しますが、以後どんどんずれていきます…すみません。9日の話だけで、今日の分も含めまだ4つあるんです。ずれるのは、むべなるかな。皆さんのご期待にそえられないかもしれませんが、なんとか走り続けます。
で、私の物語の組み立てがなぜこうなっているか、ここらで解説をさせていただきますね。公式掲示板で、こーかなあーかなと、皆さんが推測や解説なさっていたものの、セルフ版みたいな?SPの日付の個人的な見解も入ります。長文になりますが、よろしければ、お付き合いください。
まず、SPで若君が唯を伴いたい宣言をした日がいつか。私の知る限り、はっきりした日付が掲示板等に出されてなかった気がするんですが…出ていたらすみません。
尊の実験室で、どちらの世で生きるか選ばねばならぬ、となった後、空にかかる月を唯と若君が見上げますが、同じ日の夜と仮定すると、その月齢から11月27日火曜と考えます。
若君がお墓を見に行った日が宣言日ですが、家に帰ると、美香子が白衣を脱いでいます。土曜の午後と考えるのが自然ですが、あれ唯の高校って土曜授業?尊も帰宅して風呂上がりっぽいし、期末テスト期間?と思いまして、速川クリニックの昼休憩時間、12時から14時、クリニックは水曜休みなので、最短で11月29日木曜と結論づけました。やたらと烏が鳴いてたのは気になったんですが。
で、ここからは私の妄想物語に入りますが、12月1日に写真館に試着に行きます。11月29日午後にダッシュで予約を取り、9日に無事撮りに行けたと。
no.358で「この前お父さんがテレビで大相撲の千秋楽観てたじゃないー」と唯が若君に言いますが、その日は12月1日、前週11月25日に大相撲11月場所の千秋楽があり、「髷結って黒の羽織袴だと、力士の優勝パレードしか浮かんでこない」とイメージが焼き付く感じとなります。no.346「若君が帰る日が決まったじゃない。逆算してて今日位どうかなって…」と芳江とエリを呼んで手巻き寿司パーティーでしたが、実際逆算すると、12月8日しかなくて。ご家庭があるであろうお二人に、19時にクリニック終わってからパーティーでは大変だろうと思い、午後休診の土曜にしました。
ひとまずこんなところでしょうか。長い~、失礼しました。
[no.369] 2020年12月9日 12:13 てんころりん(東京)さん 返信読む立場で・・
私が前回書き込みしてから9日経ちますが、その間に 夕月かかりてさんが6つ、ぷくぷくさんが3つ出ました。これ程のハイペースは常にではないかもしれませんね。
妖怪千年おばばさんと3人、どんなペースで出されるか、読む方は分かりません。
私なりの間隔を開けて書き込みしたいと思います。書かなくても読んでますので、よろしくお願いします。★夕月かかりてさん~*
物語の始まりが、2018年12月8日だった理由がやっと分かりました。
2年前の9日と今日を合わせる計画だったんですね。
てことは23日の出発まで同時進行で いくつかの話が進むんですね?
ちゃんと日を合わせて出せることに、物凄く感心しとります。
唯の春めいた色打掛姿と、パフスリーブにミニ丈の可憐なドレス姿?私も胸に刻みました。
若君が尊くんの指南通り、素直に言うところが何気にかわいいです。★ぷくぷくさん~*
アシガール掲示板no.1410『2019年 速川家の元旦』は、唯と若君がビデオレター撮りする時と、正月にそれを見る家族3人の様子が同時進行する、粋な仕掛けでしたね。皆さん、アイデアが凄い❗
唯のドレス姿にお父さん‥ ( 。゚Д゚。) うん泣くね。
『宗熊の決意』熊君のロマンスは うまくまとまりそうな気配? そして賛同者を増やしてますね。?大きな事に取り掛かろうとしてますか?
第一章は序章の様に感じました。
3人の作品が交互に出るので、タイトルに章と番号あり、長くなる時は助かります。[no.368] 2020年12月9日 00:31 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days12~9日14時、本物だもの
戦国武士、本場直送。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅二人だけの後、いよいよ家族五人で撮影。唯と若君は椅子に座る。
カメラマン「はい、花婿様は脚を開いて座って軽く拳を握ってーって、おや、もう型が完璧。いいですよ~」
尊 心の声(お兄様超カッコいい~、若君の本領発揮だよ)
カ「はい、和装はここまでです。お疲れ様でしたー」
店員「花婿様花嫁様は、お着替えをお願い致します」
唯と若君が出て行こうとすると、カメラマンが声をかけた。
カ「あの、もしかして、俳優さんとかされてますか?」
唯「それがなにか?」
カ「いや、着物の着こなしや佇まいが素晴らしくて。こう言っては何ですが、最近の花婿様は着物に負けてしまってる方が多いもんですから。いやーまるで、本物の武士が居るかのようでしたので」
唯「はい、今度舞台がありまして」
カ「あ、やはりそうなんですか!」
唯「ただいま稽古中なんで、時々昔の言葉も出ちゃいますけど、ごめんあそばせ」
カ「そうなんですか。あーそれで。よくわかりました。引き留めてすみません、どうぞお着替えを」
待機中の三人。
覚「さっきの唯、凄かったな」
尊「あーやって戦国も切り抜けてきたんだよ。確かに上手いと思った」
美香子「でまかせでもなんでも、あれで言葉遣いの辻褄も合って、結果守れたんだし」
覚「全ては若君を守る、に通じるか。有言実行中だな」
若君、着替えました。
覚「お~、確かに王子様だね~母さんがキャーキャー言ってたのがわかるな」
尊「思った以上に王子だ。僕、もう射抜かれてます。あ、この人も」
美「ホント素敵…おとぎ話や少女漫画から抜け出たみたい」
若「尊、昨日読んだシンデレラ、にこのようななりで王子という者がおったな」
尊「そうですね。もうすぐ戌の正刻のシンデレラが来ますから。幸せな二人を見せてもらいますね」
覚「階段で靴が脱げる所なんか、まんま唯だけどな」
唯登場です。
尊「なるほど」
覚「ほー、いいねぇ」
美「でしょ。このドレス着た時、忠清くんの表情が格段に良かったの」
袖は大きく膨らませた半袖のパフスリーブ、唯の細い腕との対比が美しい。胸元はスクエアに開いており鎖骨の美しさが際立つ。デザインはシンプルだが、一輪一輪立体的に作られた花が、ドレス全体に付いている。スカート部分は前部分は膝上丈。唯の真っ直ぐで健康的な脚を引き立てている。後ろに向かって斜めに長く垂れ下がり、裾は引きずる長さ。裾までフリルと花がふんだんにあしらわれている。靴はハイヒール。ブーケはこんもりと丸く。髪は先ほどと同じくふわりと巻かれ軽やか。花冠に短めのベールが揺れる。
尊「忠清兄さん、センスいいですね」
若「扇子?」
尊「うわっ、やっちゃった。なんでもないです」
若「後ろのあしらいが」
尊「はい」
若「永禄の姫のようでの」
尊「だから。よう似合うておる、って言われたって喜んでましたよ」
若「そう申したのは二度目じゃ。一度目は…こちらに帰す時じゃったから、手放すのが辛かった」
尊「あぁ。手紙を持たせた時ですね」
若「あの時は、後にこのような幸せが待っているとは到底思えなんだが」
尊「良かったですね、兄さん」
若「かわいい、弟もおるし」
尊「あ。嬉しいです」
若「ところで尊」
尊「はい?」
若「今なら唯にどう申すと良いかの」
尊「そうですね、〇〇〇〇ですね」
唯「たーくん!あっ」
駆け寄ろうとして、靴が脱げた。
覚&美&尊「あー」
若「唯」
若君が素早く取りに行き、履かせる。
唯「ありがとう、たーくん」
その後、正面に立ち、微笑みながら唯の手を取った。
若「綺麗だよ」
唯「えっ!え~超嬉しい…」
若「ではシンデレラ」
唯「は、はい」
若「参るぞ」
唯「はいっ!」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
大事な話は、必ず相手の正面で。若君、紳士です。
[no.367] 2020年12月7日 21:54 ぷくぷくさん 返信[no.366] 2020年12月7日 14:06 ぷくぷく(群馬)さん 返信ひといき
第一章完結
来年あたり第二章が書けたらな(^_^)
皆さんの物語ゆっくり読ませて頂きます(^_^)
誰もが唯に花嫁衣裳を着せたくなりますよね(^^♪
私もドレスを着せたことがあります(^_^)
【2019年 早川家の元旦】(アシガール掲示板 1001-2000 12ページ 2020.1.8)の中で(^_^)
これまでの皆さんの考えてきた物語等(私も)を映像化して見てみたい(^_^)
週1日 40分番組として、放送は1年いや、2年いや、もっと長くなる(^_^)
それは夢のまた夢の事ではあるし、なんか色々あるし、でも、あ~見てみたい(^^♪[no.365] 2020年12月7日 11:58 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑺
=
熊:「相賀一成殿は己の欲の為、我が父を言葉巧みに引き込み羽木の領地に向かっております」
男:「その様な・・・高山殿はどの様にお考えか?」
熊:「私は戦の世に生まれし者にございますが、なれば穏やかに暮らしとう存じます。それは無理な事も承知しております。この世では戦をし、領地を治める事も大切な事でございますが今、相賀一成殿の己の私利私欲の為の戦は無用な戦にすぎません。我ら家臣もその手中に居ります、我が父も。ですから此度の戦だけは断じて止めなければならぬと存じます!」
ナレ:宗熊の勢いに押されるように相賀成之は身体を逸らしながら頷いた。
男:「お主のお心も分かりもうした」
熊:「お身内と知ったからではございません、初めよりお頼みするつもりでおりましたゆえ」
男:「はぁ・・・わたくしに兄を止めるようにと申したいのですな」
熊:「その通りにございます」
ナレ:成之は目を瞑り考えていた。二人共、駄目かなと思いながら黙って見ていた。
男:「わたくしも戦わねばならぬことも承知しております。ですが、お覚悟をお持ちになりこうして訪ねられた事にはわたくしも力添えをと存じます」
八:「えっ?」
ナレ:声を出してしまい頭を下げた。
男:「伴の者、詫びなくともよい。実を申しますとわたくしと兄は母が違います」
ナレ:それを聞いて宗熊は名前も境遇も同じ事に驚いた。
男:「如何した?」
熊:「いえ」
男:「わたくしは、自由奔放で口達者な兄を疎ましくも思っておりました。殿に気に入られている事も兄は分っており、此度の命も殿直々に兄にと。それでも、殿の為に務めておると思っていた兄が謀反を企てておるとは」
熊:「信じがたい事とは存じますが」
ナレ:堂々と言う宗熊。八次郎はそんな話ははなから無いからバレた時、相手はどう出るのかまた心配になった。すると成之が笑い出した。二人共どうしたのかと思っていると、
男:「宗熊殿は芝居が達者なのですな」
熊:「えっ?」
男:「わたくしは、これまで兄を見て参りました。確かに口達者ではございますが、そこまでの事に頭が回るとは到底思えません」
八:「えっ?」
男:「ふふっ。兄は確かに大きい事を申します。ですが、申した事は形にもなりませぬ。申すのみ。今までもそうでした。ですから謀反を起こそうなどと、もし申しておったとしても、その事で動く事は出来ますまい。宗熊殿、真意を申してもらえませぬか?」
熊:「成之殿。謀反は嘘にございます・・・申し訳ござらぬ!この通り!」
ナレ:宗熊が手を付き謝ると、八次郎も同じ様に。
男:「詫びる事はございません。わたくしは腹を立てておりせぬ」
熊:「成之殿・・・実のところ、私は羽木忠清殿の身を羽木の皆様を案じております。お優しいお方ばかりでございます。ならば、共に力を出し合いこの戦乱の世を生き抜いて参りたいと存じます。甘い事をと思われておるでしょうが」
男:「はい。ですがこの戦乱の世に、ひと時でも穏やかな時が有っても良いと存じます」
熊:「成之殿」
男:「なれば、この騒動は、わたくしが治めてみせましょう」
熊:「忝い」
ナレ:相賀成之は身支度をと。宗熊と八次郎を従え羽木に向かった。その頃、小平太がまぼ兵くんを天にかざし相賀の兵、高山の兵を食い止めていた。宗鶴と相賀もあの応援の映像を見て尻餅をついた。
鶴:「なっ何じゃ、あれは!」
ナレ:後ろで前に遭遇経験のある高山の兵が羽木の伏兵だと騒いでいた。
相:「あの場に、このような兵が居ったとは考え難い・・・が、何故じゃ?」
ナレ:攻めるに攻められない状況の中、兵の中に馬に乗った三人が現れた。
鶴:「何じゃ!宗熊、今更何故来たのだ!」
相:「成之!」
ナレ:宗鶴は成之と聞き羽木の成之だと思ったが何故相賀一成が名を呼んだのか分からず相賀一成の顔を見た。
相:「わしの弟じゃ」
ナレ:人違いだと分かった。
鶴:「相賀殿、何故お主の弟が?」
相:「それを申すなら、何故、宗熊殿も居るのじゃ?」
男:「兄上、戻りましょう」
相:「何を申す!」
熊:「もうお止め下さい」
鶴:「何を申す!」
男:「戻られないのであれば、殿に、兄上が謀反を企てておると進言いたしますが」
相:「む・・・謀反・・・謀反とな。いや、何を申す!わしは殿の為を思っての事、偽りを申すでない!」
男:「さようですか。お戻りいただけないのであれば、その様に殿に報告致します」
相:「成之、何故じゃ!」
男:「わたくしは、戦は免れられない事と存じます。が、この戦は無用の長物にすぎませぬ」
相:「無用」
男:「さようです。戻りましょう・・・戻ります!」
ナレ:強く言われた相賀一成はその場に座り込んでしまった。
鶴:「相賀殿、如何された。弟の言う事など聞かぬとも良いではないか!攻めますぞ!」
ナレ:相賀の腕を取り立ち上らせたが、相賀は一気に冷めてしまった。
相:「宗鶴殿・・・何れは攻めるが、何やら疲れた」
鶴:「はぁ!疲れた!何を今更申すのだ!わしに力を貸してくれと泣きついてきたではないか!」
相:「泣きついてはおらぬ!偽りを申すな!」
ナレ:二人はお互いの胸座を掴んだ。成之と宗熊は呆れた。そしてお互いを羽交い絞めにして引き離した。宗熊は自分より背の高い八次郎に頼んだ。
熊:「家臣の前で、その様な真似はなさいますな父上!」
鶴:「放せ!誰じゃこいつは!」
熊:「その様な事はどうでも良いではございませぬか。戻りましょう」
鶴:「あ゛・・・そうじゃ、相賀殿!話が違うではないか!」
相:「何れと申しておるではないか!・・・放せ、成之!」
男:「兄上!」
鶴:「はっ!このような弱い男だとは思わなんだ!」
相:「弱いなどと、その様な事はない!」
鶴:「お主と話しておってもらちが明かぬ・・・宗熊!」
熊:「はい」
鶴:「一先ず退散じゃ!」
熊:「はい!」
ナレ:満面の笑顔で返事をして成之の顔を見て頭を下げた。
男:「では、兄上戻りますぞ。此度の事は殿には申さずにおきますゆえ。では、宗熊殿、八次郎殿。戦乱の世でなければ、友になれたやも知れませぬな」
熊:「成之殿、我らは友にございます。私はその様に思うております」
男:「さようか。では、何れ両者戦う事になるやも知れませぬが」
熊:「みなまで申さなくとも承知しております。この世の習いににございますゆえ。この場だけの事だと。誠に世話になりもうした」
男:「いえ。では、我らは」
ナレ:相賀と家臣は織田の陣に戻って行った。宗熊は高山方には先に戻っている様にと言い、八次郎とその場に残った。そして羽木の領内に行き、まぼ兵くんを操作する小平太に声を掛けた。小平太は戦場に出た事はあっても宗熊と対峙する事は無かったので、知った顔の八次郎に紹介され慌てて唯達を呼びに行った。=宗熊の決意 第一章= 完
[no.364] 2020年12月6日 23:13 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days11~9日日曜12時、親しみを込めて
途中から見たら、誰を指してるかわからない。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅覚の運転で、写真館に移動中。
尊「今言うのもなんだけどさぁ」
美香子「何?」
尊「今日一日だけ若君の事、名前で呼んだ方が良くないかなって」
唯「名前?」
尊「僕たちは当たり前に若君って呼んでるけど、速川家に婿に入ったって体になってるんでしょ。その人を若君、だと変に見られないかな。今日は知らない人にたくさん会うし、どう?」
美「そうねー。試着に行った時、時々店員さんが妙な顔してたわ」
覚「忠清くん、か。新鮮だな」
尊「僕は忠清兄さん、だけど。若君、いいですか?」
若君「苦しゅうない」
尊「良かった。で、あの、同じ理由なんですけど、ウチの父や母を今日だけお父さんお母さんと呼ぶ、なんて無茶…かな」
若「心得た。尊や唯が日頃呼んでおるように、いたせば良いのじゃな」
尊「えっ、いいんですか?」
美「わ…じゃない忠清くんにお母さんって呼ばれるなんて、感激だわ」
覚「僕も。嬉しいなあ」
唯「よーし、私も呼び方決定!」
尊「うるっさいなぁもう、何だよ」
唯「私は、たーくんって呼ぶ!」
覚&美&尊「はあ?!」
唯「え?良くなーい?」
尊「ちょっとー、忠清兄さん超引いてるよ」
若「な、なにゆえそのような」
唯「え?忠清のた、だよ」
尊「忠清兄さん、姉がおかしな事言ってますが、親しみを込めた別の名前って事で、今日だけは許してやってください」
若「そうか。昨日申しておった、平成ライフ、じゃな」
唯「さっすが、たーくん!」
尊「浮かれてる。戦国でそう呼ばないのを祈る」
若「そういえば以前小平太にの、唯との婚儀が済めば小平太殿も兄上じゃの、兄上。と呼んでみた」
唯「わー、それでそれで?」
若「顔色が変わり、滅相もないお止めください御容赦を、と面を伏せたままでの」
尊「そりゃそうだよね」
若「愉快じゃった」
尊「えっ意外、からかったりするんだ」
唯「あはは~、小平太超真面目だからダメだよぉたーくん」
美「忠清くんの意外な一面ね」
尊「おっ、みんな慣れてきた。付け焼き刃だからどうかと思ったけど」
若「わしも励むゆえ、懸念には及ばぬであろう」
尊「あ、そっか。この慣用句は忠清兄さんに通じるんだ」
到着。尊以外は早速着替えに行った。
覚「おーお待たせ。母さんはさすがにまだだな」
尊「お父さん、モーニング超似合うね」
覚「そうか~。なんか身が引き締まるよ。尊も、スーツ新調して良かったな。カッコいいぞ」
尊「兄さんのおかげだね。あっ」
覚「おーっ」
見慣れた髷姿に、淡いグレーの着物と羽織、縞柄の袴の若君登場。
若「お父さん、尊」
覚「はぁ~。ため息が出るねぇ」
尊「凛々しさがハンパない。着替え、早かったですね」
若「お付きの者が居たが、わし一人で着られるゆえ。お父さんも見違えたのう、洒落ておる」
覚「へへ。ありがとね。着付け担当者は面食らっただろうな」
美「まぁー!素敵~!」
尊「あ、来た」
黒留袖姿の美香子。
美「はぁ~ほれぼれするわね」
若「お母さん」
美「はい?」
若「麗しい」
美「やーん!聞いた聞いた?せっかくだからって頑張って着て良かったわ~」
尊「はいはい」
店員「速川様、もうすぐ花嫁様の支度ができますので、撮影室にご移動をお願いいたします」
撮影室内。
店「花嫁様、入られます」
その声は、若君に小垣城での婚儀を思い出させた。
若君 心の声(あの時は…唯をなんとしてもここへ帰そうと気もそぞろであった。喜ぶ顔をあまり見てやれなんだ)
美「唯、綺麗~」
覚「おほー」
尊「馬子にも、いや何でもないです」
唯が入ってくる。色打掛は、早春の日差しを思わせる地色に浮かぶ、競うように咲き誇る満開の桜。散った花びらが光に煌めいて淡く輝き、裾まで流れるように続く。髪は、空気をはらませふわりと毛先が躍るように巻かれていて、この辺りは現代的。つまみ細工の髪飾り、先が動きに合わせてゆらゆらと。化粧も淡い色調だが内から輝くようで、長い睫毛が印象的だ。
尊「お姉ちゃん、案外美女?」
美「私の娘だもの」
若「姫、此処へ」
若君が進み出て、手を取り導いた。裾を整えていた店員が驚いている。
唯「ありがとう、たーくん。羽織姿ってやっぱり新鮮。殿や兄上は着てたけど、たーくんが一番素敵!」
若「唯。実に麗しい。生き抜く事が出来て良かったと、心より思う」
唯「なーんか、まさか~って顔してるよ」
若「そうか?」
唯「小垣の時もびっくり顔だったよ。今の方がちゃんと見てくれてて嬉しそうだけど」
若「見抜かれておったか、済まぬ」
唯「いいよ、後になってよくわかったし」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
撮影スタート。
[no.363] 2020年12月4日 21:40 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days10~1日17時、降臨!
振りかえりもラストです。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅唯も落ち着いたので、いよいよ若君の白装束、洋装選びスタート。
美香子「どれも素敵ね~。これはオスカルっぽいわ~。あらこんなのもあるの、こっちは~そうねぇ、少尉?かな~」
唯「例えがわかんないよ」
美「いいの、わかる人にはわかるから」
唯「迷っちゃう。若君はどんなのがいい?」
若君「任せるゆえ、好きに選ぶが良い」
唯「そうなるよねー」
美「あんまりあれもこれもって、着替えさせると可哀想よ」
唯「確かに」
美「唯が手伝ってあげるならまだいいけど」
唯「いやぁそれはまだ…恥ずかしいから」
美「何を乙女な事言ってるんだか」
若君は、母娘とはこのような、と微笑ましく見守っている。
唯「ジャケットの長さもいろいろなんだー」
美「そうね。若君は背丈があるから、長めはよく似合うと思うわ」
唯「わー、イメージ湧いてきた。これいいかも」
美「ふんふん、タキシードじゃなくてフロックコートね。ベストにシャツはウィングカラー、でアスコットタイ。似合いそう」
唯「とにかく一度着てもらお。若君、下だけ着替えて。上はシャツだけはおって。ボタンはとめてあげる。ネクタイはお母さんがしめる」
美「えぇ?何でやってあげないの、新婚夫婦の醍醐味でしょ」
唯「うまく結べる自信がないから、涙をのんで譲る」
美「何それ。まぁちょっと嬉しいけど」
若君の着替えが着々と進む。
唯「やーん、手元が狂う。眩しすぎて」
若「ん?」
と、天井を見る若君。
唯「あっ違うよ。んー若君は、自分の魅力に全然気づいてないからさ」
若「魅力とな」
唯「詳しい意味は尊に聞いて」
美「また丸投げしてる」
唯「はい、お母さんお願い。す、すでにまともに見られないっ」
アスコットタイで終了。
美「はい、完成」
ポン、と胸元を軽くタッチ。
唯「それってさあ、なんでお母さんはみんなやるんだろうね、おふくろさまもやってた」
美「はいおしまい、行ってらっしゃいって儀式みたいなものかしら。ついやっちゃった」
若「母上、礼を申す」
美「どういたしまして」
唯「それより、ちょっと…はぁ~超、超、超カッコいい~!!」
美「確かに…まるで」
唯&美「王子様!」
若「おうじ?」
唯「ここではない国での、若君みたいな感じ?えっと、殿が王様で、その息子が王子」
若「あいわかった」
唯「え、マジで?」
若「出立前に、わしの姿に二人がそう騒ぐであろう、と尊が申しておった」
唯「あいつどっかで見てない?」
美「見透かされてるわね」
唯「まっ、仰せのとおりです~だし。これで決まりで」
美「もういいの?一着しか着てないのに」
唯「どれ着ても超カッコいいのは間違いないし、慣れない事はあんまりさせたくないし」
若「良いのか?」
唯「いいよ。服、苦しくない?」
若「苦しゅうない」
唯「ん?ふふっ」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
次回、いよいよ家族総出で撮影。
[no.362] 2020年12月3日 23:03 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days9~1日16時、誓います
唯の表情は七変化。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅洋装の衣装部屋に移動。
唯「うわー思ったよりいっぱいある!どうしよう~」
美香子「居た居た。これはまるでドレスの海ね。色は白でいいの?」
唯「うん。でも綺麗めよりは可愛めかなー。あれ、若君どこ?」
若君は、壁に貼ってある、モデルの着用例写真を見ていた。
唯「あ~モデルに見とれてるのかなぁ?いいのありました?」
若君「此れが、趣が違うておるが」
ミニ丈のドレスだ。
美「あら。若い子はこういうのもいいわね」
唯「着やすそう。ロングドレスは何かしっくりこないしー。よし、若君もご執心だしミニで探そっと。こっちこっち」
ミニドレスのコーナーから数着試着し、一番若君の反応が良かったドレスに決定。
唯「若君の、よう似合うておる、いただきました~。さていよいよ」
若「?」
唯「若君のタキシード!はぁ~想像するだけでお腹いっぱい」
若「なにやら、今までで一番浮かれておるようじゃの」
唯「はいっ!」
若「良い返事じゃ」
タキシードコーナー。
美「今ってカラフルなのねぇ。あら」
唯「何?」
美「白もいいわねぇ」
唯「へ~真っ白だ。戦国なら白装束、的な?んー白装束?どこかで…」
唯は、あのお気に入りの場所での、じいが脳裏に浮かんだ。
唯 心の声(あの夜偶然出会ってなかったら、じいはあのまま切腹してたんだよね。会えたから良かったけど、もし…!なんか今頃怖くなってきた…切腹、あ…)
次に思い出したのは、小垣城の別れの夜。
唯 心(あの時も、ケンカしながらなんとか約束させてやめてもらったけど…お墓の日付に気付くまでは毎日辛かったし、会えると信じてたけど気が気じゃなかった。もうあんな思いは絶対に嫌ー!)
美「唯、えっ何!」
若「唯?」
唯は、衣装を見つめたまま涙を流していた。すぐに若君が駆け寄り、前で膝をついて見上げる。
若「もしや嬉しいのかと思うたが、悲しそうであるな。いかがした」
唯「ごめんなさいごめんなさい」
若「訳があるのであろう?」
唯「あのあのっ、白い服で白装束を思い出して、それで、切腹するって言った小垣城を思い出して」
しゃくりあげながら何とか話すが、涙は溢れる一方だ。
若「白装束?よう知っておるな。誰ぞが切腹するのを見たのであるか?」
唯「あっいえ」
唯 心(じいが、なんてきっと悲しむから言えないよ)
若「じいか?」
唯「えっ」
若「存じておる。笑いながらであったが、申しておった。唯に止められた事も」
唯「そうだったんだ」
若「よう命を救うてくれた」
唯「いえ」
若「小垣はわしも辛かった」
唯「はい。わかってます」
涙が止まり落ち着いてきた。
若「されど再び会う事ができた」
唯「うん、すっごく嬉しかった」
若「わしはこうして生きて、ここにおる。悲しまずとも良い。もう泣くな」
唯「はい」
若君が微笑みながら唯の頬を拭う。見ていた美香子の方が泣きそうだ。
若「白装束は怖いか?」
唯「死ぬための服じゃなきゃ、怖くない」
若「そうか。もう泣かぬなら、あえてこの、先の世の白装束を身に着けたい」
唯「わかった、もう泣かない。でもなぜ?」
若「誓いを立てるためじゃ。共に生き抜いて、唯を守り通すと誓おう。これは幸せな者が着るのであろう?白装束は死ぬ為ではなかった、共に幸せになる為じゃったのだと、先の世に伝えてみせる」
唯「若君…」
若「母上」
美「…えっ?あっ、はい」
若「母上にも誓う」
美「若君…ありがとうございます。ちゃんと見届けますね」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
唯のドレス姿は当日をお楽しみに。
[no.361] 2020年12月3日 15:53 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑹
=
鶴:「宗熊はどうしたのじゃ!」
ナレ:来るなと言っておきながら宗熊を探した。
鶴:「諸橋、宗熊は何処ぞに参った!」
諸:「私にも分かりませぬ」
鶴:「あ゛!‥‥‥もう良い!お前は共に参れ!」
諸:「私は、此処でお守りいたしますゆえ」
鶴:「はぁ!‥‥‥どいつもこいつも勝手な事ばかり!もう良い!相賀殿参りますぞ!」
ナレ:諸橋は宗熊と宗鶴の無事を祈った。急ぎ織田の陣へ向かった宗熊たちは途中の川の畔で休憩し、馬は川の水を飲んでいた。
熊:「八次郎には申し訳ない事をしたと思うておる」
八:「宗熊様」
熊:「わしは、忠清殿や成之殿、唯殿らとこうして遠駆けをしたいと思うておる。出来ぬことも分かっておるが、このままではならぬのだと思うてな。危のうと思うたらそなたは逃げよ。良いな」
八:「いいえ、わたくしは城に戻るまで宗熊様のお側に居ります。羽木のお殿様と同じ様に宗熊様はわたくしにとりまして大切なお方にございます」
熊:「八次郎」
八:「ですが、わたくしは羽木の者にございます。ふふっ」
熊:「そうじゃの‥‥‥務めが終わる折には酒を酌み交わそうぞ」
八:「その様に」
熊:「では参ろうぞ」
ナレ:織田の陣に向かった。先程より気を引き締めて。その頃、宗鶴と相賀と羽木領へ向かうため支度をしていた相賀の手の者は数人あの不思議な状況に恐れをなし腰を上げずにいた。
鶴:「何じゃ!・・・相賀殿この者等は!このような事では足手まといじゃ!わしの兵だけでも大事無い」
ナレ:相賀の家臣でイヤイヤ参加する者と高山の家臣、足軽を引き連れて出立した。列の後ろの方でイヤイヤ参加した相賀の足軽と高山の足軽が話していた。
A:「お主等、何だか気が乗らんように見えるがどうしたのだ?」
B:[相賀様に従うしかないからついて行くが、わしは、あれを見てしまったから、祟りがあるようで気が乗らないんだよ」
A:「なんだ?」
B:「羽木の者がわしらの目の前で消えたんだ、それも一度ではない‥‥‥此度また目の前に現れての」
A:「何じゃそれは?」
B:「訳が分からねぇ・・・何も無けりゃいいんだけどな」
A:「そうだなぁ」
ナレ:それを聞いていた周りの足軽は何も無い事を祈った。織田の陣に到着した宗熊と八次郎は番をする男に声を掛けた。
熊:「高山宗熊と申す。織田信長公にお目通り願いたい。お取り次ぎを」
ナレ:その男は急いで中へ行き、宗熊が訪ねてきた事を伝えた。すると一人の男が表に出て来た。
男:「何用にござるか?」
熊:「お伝えしたき儀がございます」
男:「伝える?」
熊:「此処では・・・ならばお通し願いませぬか?」
男:「だが、殿は居らぬ」
熊:「戻られますか?」
男:「早々にお戻りにはならぬが」
ナレ:宗熊は勢いで来た感もあるので、不在に肩を落とした。
男:「して、どのような?」
ナレ:目の前の男は話を聞いてくれそうな気がして、
熊:「織田信長公家臣の相賀一成殿の事にございます」
男:「えっ?・・・相賀一成?」
ナレ:二人は男の驚きに驚いた。
熊:「はい。その者の事で信長公にお話がございました」
男:「では、わたくしが聞きましょう。さぁ、奥へ」
ナレ:その男が案内した。宗熊と八次郎は警戒しながら共に奥へ。座敷に通され、目に前に案内した男が座り名乗った。
男:「失礼いたしました。わたくしは、相賀成之にございます」
熊:「成之!・・・あっ、すまぬ」
ナレ:宗熊は〔相賀〕の前に〔成之〕に驚いた。
男:「如何いたした?」
熊:「ご無礼仕った。知った者と同じ名であったのです。では成之殿は弟君であろうか?」
ナレ:見るからに若いが息子ではないだろうから弟だと思った。
男:「はい。一成は兄にございます」
熊:「そうであったか」
男:「兄がどうされた?」
熊:「近頃の一成殿はどうされておるのかご存知か?」
男:「何時ぞや、殿の命でそなたの御父上の高山宗鶴様に会おう事により出掛け、先達て戻って参りましたが程なくまた。戻っておりませんが」
熊:「さようですか」
ナレ:隣に従えている八次郎は宗熊が何をしようとしているのか分からないが、もし目の前の相賀成之が宗熊に手を出そうものなら自分の身を楯にして助けるつもりで緊張を持ち身構えていた。それが分かった成之は、
男:「伴の者、その様に身構えなくとも良い。わたくしは手出しなど致しませぬ」
八:「も・・・申し訳ございませぬ」
男:「なぁに。して、兄の事にございますが」
熊:「命で我ら高山に手を貸すおつもりで参った事は分ります。が、しかし、今はどうでありましょうか?」
男:「ん?どの様な」
熊:「相賀殿の娘御」
男:「志津?」
熊:「はい。先達て、羽木忠清殿と無理矢理、志津殿と祝言を画策なさり、ですが、忠清殿はその場から逃れ婚儀にはなりませんでした」
男:「はぁ、わたくしは存じませんでした」
熊:「そうでありましょう。相賀一成殿は高山にも羽木にも肩入れしては己の力にし、恐ろしい事を画策しておるのです」
男:「画策とは?」
熊:「何れは松丸の領地も支配し、その勢いで織田信長公に謀反を企てるおつもりなのです」
男:「え!謀反・・・その様な大それたことを兄が」
熊:「さようにございます」
ナレ:隣で聞いていた八次郎はあまりの恐ろしさに身震いした。まさか、そんな事を考えていたなんてと。この時は宗鶴よりも恐ろしい人なのではないかと思ってしまった。つづく
[no.360] 2020年12月3日 15:05 妖怪千年おばばさん 返信原作ファンの皆様へ
こんにちは。
先日、投稿しました、“満月はイブの前“についての、ご連絡です。
これは、ドラマ版として書きました。
唯ちゃんが、たぶん学校帰りかと思われるシチュエーションで、黒羽城城址で、若君と出会うシーン、これが、その後の、速川家での、両親や尊への、唯との結婚の申し出と言うか、戦国へ唯を伴うと言う申し出になるわけですが、この場面を見る限り、若君は、唯と一緒には、自分の墓に行っていないと理解せざるを得ませんでした。
でも、原作では、唯と供に墓に行き、しかも、それは、若君が亡くなったとさる日付けの後、知念和尚が記念碑的に建てた墓となっている様です。
原作ファンの方々には、御満足頂けなかったと思いますが、SP放送の12月前に投稿したいと言う気持ちがありましたので、お許し頂きたく、よろしくお願いい申し上げます。m(__)m[no.359] 2020年12月3日 14:26 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑸
=
ナレ:諸橋は二人の様子に驚いた。
熊:「如何した?」
諸:「あっ、えっ、あのぉ、殿がお探しにございます」
熊:「父上が」
ナレ:宗熊も諸橋も手紙の事がバレたのではないかと考えていた。
諸:「私も共に」
熊:「いや、大事無い。では、ゆめ殿」
ナレ:宗熊は諸橋に事情を話す事なく部屋を出た。
諸:「ゆめ?」
ゆ:「父上様、わたくし、今一度、幸せになっても宜しいでしょうか?」
ナレ:それだけで諸橋は事態が飲み込めた。
諸:「そうか、そうか」
ナレ:そう言ったが、今後の事も不安だった。宗熊は宗鶴の元に向かった。
熊:「父上、何用にございますか?」
鶴:「何用じゃと。お前が松丸へ宛てた文の返事はまだ来ぬのか」
ナレ:宗熊は仔細を正直に話し宗鶴の出方を見定めようとした。
熊:「文の返事ならば既に届いております」
鶴:「ならば見せい。これへ持って参れ」
熊:「文には松丸阿湖殿は嫁いでおると」
鶴:「ん?誰ぞの?」
熊:「羽木・・・羽木成之殿の妻となりもぉした」
鶴:「あ゛っ!」
熊:「羽木忠高殿の文で知りました」
鶴:「はぁ?何を申しておるのだ、皆目分からぬ」
ナレ:宗熊は忠高宛に文を出し状況を知ったと話した。宗鶴の顔がみるみる赤くなり閻魔の様な形相、宗熊は手打ちに遭うとまで覚悟を決めた。するとそこへ諸橋が駆け込んできた。
諸:「殿!・・・と・・・の?」
ナレ:すごい形相に驚き、宗熊の顔を見て頷いた。全て話したのですねと言うように。宗熊は頷いた。
鶴:「何じゃ!」
諸:「相賀一成様が」
鶴:「相賀だとぉ!宗熊!」
熊:「はい!」
鶴:「話は後じゃ!逃げるでないぞ!」
ナレ:相賀が宗熊よりも忠清を娘婿に選んだことが許せなかった。恨むその相手が何用だとドスンドスンと足音を立て相賀の元へ。
鶴:「今更何用じゃ!」
ナレ:襖を勢い良く開け怒鳴る様に言ったが、そこには一回り小さく見える相賀の姿が。
鶴:「如何した?」
ナレ:相賀の事が気になって宗熊も後からついて行き、その姿を見て驚いた。嫌味たっぷりにものを言う感じが見受けられないくらいシュンとなっていた。
相:「私に力をお貸しくだされ」
ナレ:その言い方も弱弱しい。さっきまで怒っていた宗鶴が宗熊に普通に聞いた。
鶴:「何じゃ?」
ナレ:そう言われたが宗熊にも分らなかった。本当は文句の一つも言ってやろうと思っていたがそうもいかない様子に、
鶴:「相賀殿、どうされた?」
ナレ:相賀の前に座り、顔を覗き込んだ。
相:「羽木忠清とあの五月蝿いおなごが消えた。また消えた。時を置かずして戻って参った。高らかに笑いおって」
ナレ:二人には何のことやら、何を言いたいのか分からない。宗熊は一度目に消えたと話した事は分るがその後の事は分らなかった。それから高らかに笑っていたのは忠清でなく信茂なのだが。
鶴:「順序だてて申して下されなければ何も申す事は出来ませぬぞ」
相:「順序だててと申されても。消えて、また消えて戻ったとしか」
鶴:「堂々巡りの様じゃ。して、わしに力をとな?」
相:「わしは羽木の者等を今度こそ撃ちのめしたいのじゃ。娘婿はどうでもよい。頼む、わしに力を貸してくれ。頼む!」
ナレ:相賀は頭を下げ畳に額を擦る如くに。初めに訪ねてきた時の堂々とした姿はみじんも感じられなかった。宗鶴は羽木を撃つことが己の気が晴れると何年も思ってきた事。今、目の前の相賀も同じ望み。
鶴:「分かりもうした。力を貸しましょう」
熊:「父上!」
鶴:「あ゛!」
熊:「お止め下さい。もう良いではございませぬか」
鶴:「良いとは何じゃ!それでも高山・・・高山宗鶴の跡目を継ぐ者なのか!・・・何を甘い事を申しておる!お前は来なくても良い!諸橋!支度をせい!」
ナレ:宗鶴は相賀と共に羽木攻めに。宗熊は止めても無駄だと判断し、次の一手を考えた。そして大それた案が浮かんだ。戦支度を家臣に伝えに行く諸橋の側に行き、
熊:「わしは行かぬ」
諸:「はい・・・若君、何をお考えか?」
熊:「わしはこれより、織田の陣に参る」
諸:「えっ!織田信長公の・・・で、ありましょうか?」
熊:「そうじゃ」
諸:「殿に知れたならば、まこと、ただでは済まされますまい」
熊:「分かっておる。此度こそ、追放・・・いや」
ナレ:その先は言葉にしなかった。諸橋は何が言いたかったのか分かり身震いした。
諸:「若君、まこと、それで良いのですか?」
熊:「決めたのじゃ」
諸:「では、私がお供いたします。お一人で参られるおつもりなのでしょうから」
熊:「八次郎と参ろうかと」
諸:「やじろうとな?」
熊:「諸橋の次に信用のおける者じゃ・・・羽木方の間者」
諸:「えっ!いやぁ、それは・・・やはり私が」
熊:「いや。だが一つ頼みがある」
諸:「はい?」
熊:「諸橋は此処に残り、城を守って欲しい」
諸:「ですが殿の」
熊:「父上に手を貸さぬよう頼みたいのじゃ」
諸:「ふ~・・・分かりました。殿から申された折は留まる事を申します」
熊:「すまぬ」
諸:「いいえ、娘婿となるお方の申す通りに致しますゆえ」
熊:「諸橋・・・では、良いのか?」
諸:「ゆめが承知した事に私は」
熊:「忝い・・・だが、此度の事で、ゆめ殿を悲しませるやもしれんが」
諸:「ゆめは、その旨も承知しております」
熊:「そうか」
ナレ:宗熊は八次郎の元に。
八:「宗熊様、どうされましたか?」
ナレ:八次郎を隅に呼び、
熊:「急ぎ、織田の陣に向かうのだが、共に参ってくれまいか。わしの家臣として」
八:「ですがわたくしは」
熊:「高山の者となれとは言わぬ。この場だけで良いじゃ。頼む・・・だが」
八:「承知しております。我が家は代々、間者としての役目についておりおます。覚悟は既に」
ナレ:その言葉に宗熊は頭を下げた。
八:「宗熊様のお考え通りに致します」
ナレ:宗熊は支度をして、ゆめに会いに行き、
熊:「私はこれより敵陣の真っただ中に参ります。命有らば、戻った折、ゆめ殿と祝言を」
ゆ:「宗熊は、必ずやお戻りになられます‥‥‥では、わたくしは祝言の支度を」
ナレ:ゆめは微笑んで見せた。やはり宗熊は思った〔美しい〕と。
熊:「ゆめ殿」
ゆ:「ご武運を」
ナレ:ゆめは宗熊の両手を包み込むように握り、胸元で目を瞑った。
熊:「ゆめ殿?」
ゆ:「わたくしの念を宗熊様に。ですから、無事に戻られます」
熊:「では、何も案ずることは無いのだな」
ナレ:ゆめの優しさに感謝し、二人は馬で織田の陣へ向かった。つづく
[no.358] 2020年12月1日 22:55 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days8~12月1日土曜15時、速川家の婿殿
時間を戻して、写真館での大騒ぎの模様を。ちょうど今日と同じ日付になりました。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅写真館に下見と試着をしに、美香子の運転で唯と若君移動中。
美香子「もう車は大丈夫?若君」
若君「まだ些か、腰が浮わつき所在ない」
美「そうよね、中々慣れないわよね」
唯「車はダメでも、疾風の運転は上手だから全然オッケー」
美「お馬さんは運転とは言わないの」
店に到着。受付席へ通され、唯と若君が並んで座り、美香子は少し離れた椅子に。
店員「ではこちらに、お名前ご連絡先などお書きください」
唯「…」
席を立ち、美香子に駆け寄った。
美「どしたの?」
唯「どうしよう、若君の名前書かなきゃいけない」
美「あらっそりゃそうよね、んー」
唯「羽木九八郎忠清って書くの?」
美「いや、それはダメ。この辺りでは学校で習う名前だもの、ふざけてるって思われる」
唯「書かない訳にはいかない?」
美「それはかえっておかしいから…あ、いい事思いついた!任せて」
受付に美香子が座る。若君はきょとんとしている。
美「ごめんなさいね、一人にしちゃって」
若「何か困り事であるか?」
美「大丈夫よ」
と、書類をサラサラと書き上げた。
美「籍はもう入ってまして、オホホ」
店「ありがとうございました。ではこの後衣装室にご案内しますので、少々お待ちください」
店員が書類を持って奥へ入っていった。
唯「お母さん、今…速川忠清って書いた!」
美「そうよ。若君、勝手な事してごめんなさい。羽木と書くよりはと思って。許してね」
若「母上、ご案じ召さるな」
唯「怒ってないの?」
若「速川の娘御との婚礼なれば、これで良い。速川家の家督を譲られたようじゃ」
唯「認められた…感じ?」
若「そうじゃな」
美「良かった」
間もなく、衣装室に案内された。
店「こちらが和装の部屋です。隣が洋装です。決まりましたら、番号を受付までお願い致します。それではごゆっくりどうぞ」
唯「衣装、衣装!」
美「走らない!」
唯「ここが羽織袴のコーナーだね。案外カラフル。でもやっぱり黒?」
美「まあスタンダードではあるけど。髪はどうする予定?」
唯「和装は当然、髷だよ。洋装は今のまま上半分だけ結んだハーフアップかな」
美「あー。ダメダメ、変な脳内変換してる私」
唯「はあ?」
美「髷結って黒の羽織袴だと、力士の優勝パレードしか浮かんでこない」
唯「お母さん!ちょっと~そんな事言うと私もそれしか浮かばないじゃない!」
美「ごめんごめん。先週相撲観たばっかりだから」
唯「全然似てない、かすってもないのに」
若「力士?」
唯「あっ聞こえちゃった?この前お父さんがテレビで大相撲の千秋楽観てたじゃないー、って違う違うこの話掘り下げない!相撲の話は置いといて。若君、先に私の選ぶね」
若「置いておく?」
結果、唯は桜が全体にあしらわれたパステル調の色打掛、若君は唯に合わせて淡いグレー、縞柄の袴と決まった。
美「冬だけど春爛漫って感じで、華やかでいて爽やか、いいわね~。では次は洋装ね、あれもう居ない」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
かすってるよ、両方戦い続ける男だし。
[no.357] 2020年11月30日 21:18 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days7~9日日曜6時、早起きは三文の徳
唯、あまりの事に熱出すんじゃ。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅日の出前なので、まだ辺りは暗い。
唯「あ。夜?朝?えーまだ5時半かぁ」
尊の読み通り、唯が早々と目を覚ました。
唯「ダメだ、ワクワクが止まらなくてもう寝れない、起きるかーでもな~」
ベッドの上でごそごそ動いていると、ドアの向こうに気配あり。
若君「唯」
唯「え?若君?なんで?」
若「起きておるか」
唯「やーん寝起きだし。いや、結婚したらそんな事言ってらんないよね」
自分に言い聞かせながら、髪を慌てて撫でつけ、ドアを開けた。
唯「おはよっ若君」
若「おはよう、唯」
一通りの現代風挨拶は、既に習得済。
唯「どしたの?私に早く会いたかった?なーんて」
若「そうじゃな」
唯「やーん、マジで?」
若「起きるのを待っていた」
唯「へ?なんで?」
若「なんでも」
唯「用があるんじゃなくて?」
若君は微笑むだけだ。
唯「あ、じゃあ、せっかく早起きしたし日の出見に行きます?いつもの公園まで」
若「あいわかった。支度して参る」
若君は尊の部屋で寝起きしている。着替えていると、尊が物音に気付いた。
尊「おはよう若君、早いですね、出かけるの?」
若「おはよう、尊。公園まで唯と参る」
尊「あ、そうなんだ。冷えるからマフラーと手袋使ってください」
マフラーを首にかけ手袋を渡した。
若「済まぬのう」
尊「そういえば、例の…」
若「ふふ」
尊「えっ、それは…行ってらっしゃい。朝ごはんには戻ってくださいね」
若「承知つかまつった、師匠殿」
尊「えー」
空が白々と変わりゆく中、二人は家を出ていった。
尊「若君、策士だ」
辺りがかなり明るくなってきた頃、公園に到着。
唯「ふー、たまには早起きも悪くないかも」
若「朝いつも最後に降りて参るからの」
唯「だって眠いんだもーん、今日は大丈夫だけど」
東の空が輝いてきた。
唯「もうすぐ日の出だよ」
すると若君、唯の後ろにまわり、ハグ。
唯「きゃっ」
ふんわりと抱き寄せる。
唯「えー?若君…」
太陽が登りつつあり、眩しい。若君は腕をゆるめて唯の前に立ち、少し屈んで顔の高さを合わせ、真正面から見つめる。
若「唯」
唯「はい…」
若「あいしてる」
唯「えっ」
若「唯、愛してる。そなただけを」
くらくらするのは太陽が眩しいのか若君が眩しいのか。
唯「は、反則ですぅ」
胸に飛び込んだ。倒れそうだ。
唯「あの」
若「なんじゃ?」
唯「心の準備、できてます」
若「そうか」
若君のキスはいつも優しい。
唯「もうダメ、力入んないよ」
足元がふらつく。
唯「若君ぃ、抱っこして」
若「だっこ?」
唯「下からこう」
身振りで伝えると、あっという間に抱き上げられた。
唯「うふふ、お姫様抱っこ~」
若「そうじゃな」
唯「ねぇねぇ、くるくるーってして」
若「くるくる?」
唯「回って」
唯を抱っこしたまま、360度回転。
唯「きゃー、あはは~」
若「唯、かわいいよ」
唯「えーっえーっ!若君どうしちゃったの?違う人が入ってる?」
若「実は尊に教えを乞うた」
唯「やっぱり。尊、でかした!」
公園を散歩中の人が、素敵ね~ドラマみたいね~と遠巻きに見ていた。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
若君の現代語は、破壊力大。
[no.356] 2020年11月30日 21:14 夕月かかりて(愛知)さん 返信初々しい二人
妖怪千年おばばさん、拝読しました。尊は案外ドレス似合いそうですけどね。彼女を早速部屋に招くなんて、やるぅ。今後が楽しみです。
家族写真の回も完成してたんですが、妖怪千年おばばさんの作品をリスペクトの上、書き足しました。バージンロードの事は忘れてたわ、お父さんがあんまり出てなかったわで、イカンイカン、家族は大切にしないと。投稿はもうちょっと先です。お待ちくださいませ。
本日、久々にラブ多めです。
[no.355] 2020年11月30日 09:55 てんころりん(東京)さん 返信すす凄い!
ちょっとサボっていたらw(゜o゜)w読むの大変!
☆梅パさん~*
久しぶりのトヨちゃん源ちゃんが可愛くて…
ありがとうございました。また是非!
☆ぷくぷくさん~*
お待ちしてました。『宗熊の決意』なんですね。
心して読みます。決意はもしや?
また決意は一つの事だけではないかもですね。
タイトルと、章と番号があると分かりやすいし、後から見つけやすいですね。
☆夕月かかりてさん~*
SPの現代パートは空想の余地が一杯、先も楽しみです。
『面白いの考察』は、面白い(笑)投稿で公式で大きな反響が・・やっぱり印象に残ったんですね。
面=目の前の意味、白い=明るくはっきりしていること、だそうですね。
若君は唯の言う事やる事が興味深く、明るい気持ちになり心引かれた‥?
☆妖怪千年おばばさん~*
私は唯のウェディングドレス姿を考えた事がなかったので新鮮でした。
確かに、速川の両親に見せてあげたかったです。
そして尊くんに恋の予感が‥。創作倶楽部が元気なのは嬉しく(*゚∀゚人゚∀゚*)♪ありがとうございます。
[no.354] 2020年11月29日 22:53 妖怪千年おばばさん 返信満月はイブの前 後編
気まずい数日の後、
約束の日曜日がやって来た。
岩谷さんに連絡を取りたくても、
ラインもメアドも、
電話番号すら、交換していない。
僕は、迷いに迷った末、
黒羽城公園に向かった。“来ないかも。”
約束の時間はもう15分過ぎている。
その間、僕は、資料館の外の、
入口の脇にある自販機の前で、
コイン占いをしていた。”26勝74敗。ボロ負け”
そして、101回目。
親指で上にはね上げた百円玉を
取り損ね、落としてしまった。
銀色のそれは、コロコロ転がって、
無情にも自販機の下に潜り込んだ。
仕方なく、僕は、両膝をついて
自販機の下に腕を突っ込んだ。すると、その時、
資料館のドアが開いて、
誰かが、中から出て来る気配がした。
頭の上から、声が降って来る。「な、何してるの?」
「え?」
振り向くと、そこには、
丸い銀縁メガネの岩谷さんが
立っていた。「こ、来ないと思って、
か、帰ろうかと思っ・・・。」「ま、待って。中にいたの?
いつから?
あ、何か飲まない?
今日は、僕がおごるよ。」膝をついたまま、泥だらけの手で
100円玉を握りしめている僕を見て
岩谷さんがクスリと笑った。資料館の隅の、
小さなテーブルをはさんで、
数学の問題をいくつか解いた後、
僕たちは、また、ドレスの話をした。岩谷さんは、学校帰りに、
問屋さんや、古着屋、
バーゲン中のブテイックを回って、
予算を立ててくれていた。僕は僕で、父さんに相談し、
クリスマスパーティーの費用から、
ドレスの製作費を補助してもらう事に
成功したが、僕の貯金箱を
空にしても、岩谷さんの予算には、
まだ足りなかった。「あと、少しなんだけどなあ。
う~ん・・・。あ、そうだ!」僕は、父に電話した後、岩谷さんと
トシさんの店に向かった。「おお、尊君。いらっしゃい。
おやおや、今日はデートかい?
隅におけないねえ。」「あ、いや、そうじゃなくて。
ちょっとお願いが。
この間、予約したケーキ
なんですけど、少し小さいのに
変えて貰えますか?」「え?そりゃあ良いけどさ。何で?」
「そ、それが、
ちょっとした訳があって。」「そう言えばさ、受取日、
イブじゃなかったよね。
この間、お父さんが来て、
確認してったんだ。
なんか、特別なお客さんの為の
パーティなんだって?
それなのに、小さくしちゃって
良いの?」「父さんがそんな事を?
あ、いや、
確かに豪華にしたくて、
いつもより大きいのを
頼んだんですけど。
食べきれなかったら、
勿体ないって、
さっき父とも話して。
それで。」トシさんは、さりげなく
岩谷さんを眺めてから、こう言った。「じゃあさ、こうしないか?
ケーキの大きさは、
そのままにしてさ。
そのかわりに、尊君が、
イブにここを手伝うってのは?
そこの彼女さんも
一緒にどうですか?
店を閉めた後には、
お好きなケーキ、
御馳走しますよ。」トシさんは、ひそひそ声で、
僕だけに付け加えた。「そうすりゃ、
イブのデート代もいらないし。」「あ、いや、
そういう事じゃなくって。」僕が小遣いのほとんどを、
発明につぎ込んでいるのを、
トシさんは知っている。
で、完璧に勘違いをしてるって訳だ。
ケーキを小さくするのは、
イブのデート代の為だと。トシさんの誤解を解こうと、
アワアワしている僕の後ろから、
思いがけない声が響いた。「わ、私で良かったら、
ぜ、是非!」「え、ええー?!」
思いがけない展開に、
僕はますます焦った。
そんな僕の気持ちをよそに、
店の奥の厨房から、
奥さんの嬉しそうな声がした。「助かるわ~、尊君。
あれからまた、
駅前のホテルの注文が入ってね。
手が足りないのよ~。
なんなら、今からでも、どう?」「い、今から?」
「やります!
やらせてください!!!」岩谷さんが、
キッパリ、ハッキリ、引き受けた。“やっぱり、そこは、
どもらないのね。”全くの予定外だったが、僕たちは、
それからしばらく、
クリスマスツリーのセッティングや、
ケーキの予約注文の整理をして、
店を手伝った。岩谷さんは、ケーキの下に敷く紙で、
器用に雪の結晶を切り抜いて、
奥さんとトシさんを喜ばせた。
このシーズン中、
カフェコーナーのケーキは、
その切り抜きの上に載せるという。そんなこんなで、店を出た時には、
二人とも数時間分のバイト料を
手にしていた。「よ、良かったね、尊君。
こ、これで、ド、ドレスの
材料費、クリア!」“速川君”が、いつの間にか、
“尊君”になっている。
思わず、顔が赤らむ。「あ、いや、
岩谷さんの分は
ちゃんと受け取って。」「い、いいよ。
そ、その代わり、
また、教えて。
こ、今度は、
ぶ、ぶ、ぶ、“物理”。」その翌日、
僕たちは放課後に待ち合わせ、
ドレスの材料を買いに行った。・・・・・・・
少し早いクリスマスの
パーティー当日。
つまりは、満月当日。姉と若君は、朝早くから
出かけて行った。あの姉の事だ。
半餃子か半炒飯がつく
ランチタイムを狙って、
ラーメンデートをするのは確実。
早くても帰ってくるのは
14時半過ぎだろう。母は、診察室にいる。
岩谷さんは、大きな袋と、
小さいミシンを抱えてやって来た。
キッチンのドアから、
そっと家に入って貰い、
足音を忍ばせながら、
二階にある僕の部屋に行った。早速、二人で
ドレスの仕上げに取り掛かる。
バーゲンで買ったミニの
キャミソールに、円形のフリルを
縫い付けると、
ロングドレスに早変わり。
さらにその上に、チュールレースを
何枚も重ねる。
すると、透ける羽がオーロラ色に
輝く、妖精ドレスになった。百円均一で買った白いシュシュを
レースに縫い付けると、
あっという間に袖が出来上がる。サテンの端切れはバラの花に。
それをビロードのリボンにつけると、
チョーカーになった。
もう一つ作って、ヘッドドレスに。僕は、言われるままに、布を切り、
糸を引いてギャザーを寄せる。
それを、岩谷さんは手際よく
形にしていく。
まるで、ディズニー映画の
魔法使いだ。
感心していると、
岩谷さんの声が飛んできた。「尊君、試着して!」
「えええ?ぼ、僕が?」
「チュ―ルのボリュームを、
確かめたいの。
私が着ると、
手直しできないし。」「はああ???」
暫くして、廊下から、
父の声が聞こえた。「どうだ?間に合いそうか?」
“な、何で、今?
わああああ・・・・!”止める間もなく、
絶望的なタイミングで、
部屋のドアが開いた。
そして、父が目にしたのは、
輝くウエディングドレスに身を包み、
恥じらいの笑みを浮かべる娘・・・
ではなく、
ひきつりまくっている僕・・・
だった。「た、たけるう???!!!」
絶叫する父の口を、
僕は、慌てて押えた。「なあに、どうしたの?」
いつの間にか、
診察室から戻っていた母の
足音が聞こえる。「まずいよ、父さん。
何とかしないと!」「あ、ああ。」
我に返った父が、
部屋のドアから顔だけ出して
母に言った。「あ、いや、何でも無い。
そうだ、母さん。忘れてた。
君の大好きな、
スパークリングワイン。
一緒に、買いに行かないか?
僕が銘柄を間違えたりしたら、
がっかりだろ?」二人が出かけて行くのを確かめた後、
僕は、さっきの父の様子を思い出し、
大笑いした。
岩谷さんも、
お腹を押さえながら笑っている。笑いがやっと収まった頃、
買っておいたサンドイッチを
二人でつまんだ。
岩谷さんが、念を押すように言う。「先にドレスの本体を
着て貰ってから、
腕に袖を通してあげてね。
このデザインは、
袖を縫い付けない所が、
ポイントなの。
バレエのチュチュ
みたいでしょ?」「チュチュ?」
「えっと、衣装の事。
バレリーナの。」「そうなんだ。覚えとくよ。
ありがとう。きっと、皆、喜ぶ。」「こちらこそ。
尊君のお蔭で、数学の期末試験も
なんとかなったし。
それに・・・「それに?」
「私ね。尊君の前では
話せるみたい。
その・・・普通に。」魔法使いの岩谷さんは、
循環バスに乗り、帰って行った。
父のレンコンのはさみ揚げを抱えて。
別れ際に、
彼女から渡されたポーチには、
僕が思いつきもしなかった、
メイク道具が入っていた。“ホントに、何から何まで。。。”
お姉ちゃん、許して欲しい。
僕の心が、この時一瞬、
イブに飛んだのは、仕方ない。・・・・・・
空には、煌々と月が輝いていた。
少し早いクリスマスパーティーも
終盤になり、
トナカイのカチューシャと
赤い鼻を付け、
おどけた顔で若君との
ケーキカットを済ませた姉に向かい、
父は、一つ、咳ばらいをしてから、
こう言った。「唯、今日は、お父さんと尊から、
特別なプレゼントがあります。
それは、唯だけではなく、
母さんも若君も、きっと喜んで
くれるはずです。」「特別な、プレゼント?」
「やあだ、なあに。
私にも内緒にしてたの?」父は、ぎこちない笑顔で姉を呼ぶと、
二階に上がって行った。「しばし、お待ちを。」
僕は、若君と母さんに
そう言い残し、二人に続く。父は、僕の部屋の前で、
姉に目をつぶらせた。
僕は、先に部屋に入って
ドレスの覆いを外した。父に手をひかれ、部屋に入ると、
姉は、恐る恐る目を開ける。
そして、ゆっくりと、
その場に座り込んだ。「これって・・・。
尊とお父さんが、私に?
夢みたい。
綺麗・・・。」着付けも終わり、
うっすらとお化粧をした姉を見て、
父は、感無量の様だった。
そして、自分もジャケットを羽織ると
姉の手を取り、腕を組む。「さあ、行こう。
母さんと、若君が待ってるから。
バージンロードを娘と歩く日が、
こんなに早く来るなんて、
思ってなかったけど。」僕は、ノートパソコンに
ダウンロードしておいた、
ミュージックファイルを
クリックした。廊下と階段に、
メンデルスゾーンが流れる。
それは、階下のリビングルームにも
届いているはずだ。
僕は、思いっきり大きな声を
張り上げた。「花嫁と、その父の
・入・場・で~す!」僕は、姉のドレスの裾を持ち、
オーケストラに併せて、
ウエディングマーチを口ずさんだ。「唯!」
「唯・・・?」
母と、若君の驚く声が、
姉の背中の向こうから聞こえる。
僕は心の中で叫んだ。“サプライズ・大・成・功~!!!”
・・・・・・・・・
「それから、それから?」
看板の明かりを消した、
トシさんの店の隅で、
特製ケーキをほおばりながら、
岩谷さんは、満月パーティの様子を
詳しく聞きたがった。
イブのケーキ屋は、
滅茶苦茶忙しくて、
疲れてはいたけれど、
僕と岩谷さんは、
長い間、しゃべり続けた。あの夜、
家の階段を、急遽、
バージンロードに見立てた父の事。
母が、姉のウエディングドレス姿
を見て、号泣した事。実は、その時、
今まで知らなかった、我が家の両親の
結婚秘話も知ったのだが、
岩谷さんが一番興味をもったのは、
姉がぞっこんの、親戚の子・・・
つまりは、若君の反応だった。それは、僕が
一番答えにくい事だった。「そ、それがさ。
実は、そのう、何と言うか。
信じて貰えないかも
しれないけど。」「何、何?」
「連れてった。
姉を。
い、一緒に。」「え???」
岩谷さんは、
クリームがたっぷりついたフォークを
口に入れたまま、目を見開いた。「うっそー!ホントに?」
なんとなく昭和な、
岩谷さんのリアクションに、
僕は引き気味に頷く。「凄~い!
お姉さんの願いが
叶ったのね。
素敵~。」僕は、それから、岩谷さんを
バス停に送って行った。
バスのドアが閉まる前、
僕は彼女から白い封筒を渡された。
クリスマスカードだ。
バス停の明かりの下で、
カードの金色の星が光った。
何気なく、その星を押した。
ジングルベルが流れる。
カードの隅に、何か書いてあった。
僕は、それをスマホに打ち込むと、
直ぐにメッセージを送った。何て送ったかって?
それは、今は、内緒。シングルベルのリズムに乗りながら、
自宅までの長い坂を走る。
本屋のベンチで、缶コーヒーを
落としたあの日の様に。夜空には、満天の星。
トナカイの引くソリの跡の様な雲が、
淡く、流れていた。[no.353] 2020年11月29日 21:20 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days6~8日20時10分、尊の指南
若君には、美しい言葉のみ口にして欲しい。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅尊が実験室に入ってきた。
尊「若君、待たせちゃってすみません」
若君「苦しゅうない、かえって難儀をかけたのう」
シンデレラの絵本を若君に渡す。
尊「さっきのシンデレラってのは、お姫様の名前で、この物語の主人公なんです。子供向けで読みやすいと思うんで、まずは目を通してもらえますか」
若「心得た。しばし待たれよ」
尊「わからない言葉は言ってくださいね」
解説を交えながらも、読み終えた。
若「この姫は、術が切れるのが子の正刻であるから急いたと」
尊「そうです。現代ではこの話は皆知っているので、しばしば時間に制限がある時に例えのように使ったりするんです。若君がわかる訳ないのに使っちゃってごめんなさい」
若「面をあげよ。しかしこの姫は唯に似ておるのう」
尊「灰、かぶってました?」
若「藁にまみれてはおったが」
尊「あれ、案外当たってた。他にどんな所が?」
若「綺麗な着物を持ってない、と」
尊「それは足軽だから仕方ないですよね」
若「…だがその折、わしが迂闊な物言いをしたらしく」
尊「はい」
若「唯にひどく泣かれてしまったのだ」
尊「えーっ!」
尊は、若君プレイボーイだ!と言いそうになったが、また説明がややこしくなるので止めて、
尊「何を言ったんですか?」
若「泣き顔も面白いと申したら、笑われた、とまた泣き出し」
尊「えっそれは…大泣きすると思います」
若「そうか。されど何故機嫌を損ねたのかわからぬのだ」
尊は考えた。もしかしたら、戦国と現代とは同じ言葉でも意味が違うんじゃないか?
尊「面白いの意味、他の言い方だと何になるか調べますので、少々お待ちを」
若「忝ない」
尊、面白いを検索中。
尊「あの、例えば他にどんな時にそう思ったりしました?」
若「唯に初めて逢うた折、戦は悲しむ者が増えるゆえ、してはならぬと申した。わしと存念が同じとわかり、もっと長く共に過ごしたかったが、すぐ去ってしまい、面白いと思うた」
尊「なるほど。なんとなくわかってきました。その時、お姉ちゃんの事、好もしいおなごと思いました?」
若「思うた。今も変わらぬ」
尊 心の声(あ~生でお姉ちゃんに聞かせたい!戌の正刻しばりが今日は恨めしい)
尊「あの、現代では滑稽という意味で使う事が多いです」
若「そうであるか、それなら腹を立てるのも無理はない。唯には済まぬ事をした、詫びねばならぬ」
尊「興味があるとか心引かれるとかが近くないですか?」
若「おぉ、そうじゃ!これはしたり」
尊「今度からは、違う言葉に言い換えるようにすればどうですか。例えば、泣き顔を見て」
若「見て」
尊「この場合は、可愛いよ、が一番合ってます」
若「泣き顔も、かわいいよ」
尊 心(ひゃー、誰ぞ唯を呼んで参れ!戦国の苦労が報われる~)
若「尊、礼を申す。しかし泣いておらずとも、かわいい、なのだが」
尊「ことある毎に、そう思ったら言えばいいんじゃないですか。あーでも出逢った当初より、固い絆だから」
若「だから?」
尊「…もっと喜ぶ言葉、教えます」
尊、悪魔の、いや天使の微笑み。
尊「で、明日皆で出かけるじゃないですか。お姉ちゃんの事だから、きっと珍しく早起きすると思うんで、朝一で言ってあげると一日ご機嫌に違いないです」
若「してどのような」
尊「〇〇〇〇〇」
若「〇〇〇〇〇じゃな、〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇。心得た」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
想像はつくと思いますが、明日をお楽しみに。
[no.352] 2020年11月29日 21:17 夕月かかりて(愛知)さん 返信[no.351] 2020年11月29日 21:09 夕月かかりて(愛知)さん 返信日本語の勉強
今回、いよいよ「面白い」の意味の違い、若君も尊も勉強します。
No.331で、既にてんころりんさんにご説明いただいていまして、その節はありがとうございました。
実はNo.329若君篇を投稿した時には、今回の話も完成してまして、あっさすがのご指摘!と少し焦りまして、触れる事ができず、ご挨拶が遅れました。失礼致しました。
おっしゃる通り公式掲示板で知り、その時すぐに辞書検索しましたので、ちゃんと(いや、ちゃっかり?)覚えていました。学校の勉強と同じですね。見た読んだだけでなく、自分で動くと身に付きます。今は、2年前唯と若君平成に居ました月間なので、連日意欲的に活動しております。ストックまだ有りなので、出せる時は毎日でも出せますので、今しばらくお付き合いください。
[no.350] 2020年11月29日 20:52 妖怪千年おばばさん 返信満月はイブの前 前編
実験室で、僕は、
でんでん丸を修理していた。
相賀の手に落ちた黒羽城で、
でんでん丸が使えずに、
危うく切られかけたと、
姉からクドクド言われたのだ。
でも、それが、
二人で現代に帰ってくる
きっかけには、なったらしい。若君の、姉との結婚の申し出、
というか、
姉を戦国に連れて行くという、
決意表明を聞いた時は、正直、
“やっぱり、そっちか~・・・。”
と、かなりがっかりした。一緒に、“若君の墓”を見に行った時、
しゃがみこんで、墓石に刻まれた
日付を確認した若君は顔色も変えず、
ただ、頷いただけだった。
でも、僕は、“黒羽城址”に案内した
あの日より、若君の気持ちを
読めるようになっていた。若君は、いつでも、自分の事より、
”領民と家臣と家“を第一に考える。
その、羽木家一族が、新天地で
新たな道を切り開こうとしていると
知った今は、“姉にとってベスト”
なのはどちらかと、考えるだろう。この時点では、若君は、
現代で生きていく事を
かなりの確率で覚悟して
いたんじゃないかと思う。僕は、自分でも驚くほど、若君と
一緒にいる事が楽しかったし、
嬉しかったので、正直、二人が
このまま、こちらの時代で暮らして
くれる事への期待値が、
かなり高かった。何よりも、そうなれば、
“尊~!お願い!!!”
という、姉の無茶ぶりも、
当面は無くなるから、
次の発明に没頭できる。でも、まてよ。
もし、そうなったとして、
若君が、自分の時代を気にかけない
はずもなく、姉以上に、木村先生に
張り付いて、羽木家一族に関わる
一大事でも掘り起こしたりすれば、
“尊、一日で良い。永禄に戻りたい。”
なんて、言い出すかもしれない。ま、無茶ぶりが、姉と若君、二人に
パワーアップする事を思えば、
永禄で、なんとか無事に
暮らしてくれる方が、
僕にとっては、まだ平和
なのかもしれなかった。そうだ!大変な事を忘れてた!
未来の自分に託した二人用の
起動スイッチは、これからの自分に
掛かっているんだ!
どうする、自分???
無理!!!少なくとも今は!!!堂々巡りの自問自答を打ち破る様に、
突然、実験室のドアが開いた。「尊、ちょっといいか?」
「何?」
「トシさんの店に行って、
予約してきて欲しいんだ。
クリスマスケーキ。」「は?
電話か、ネットじゃだめなの?」「繋がらないんだ。
さっきから小一時間も。
ネット予約は、やめたらしい。
去年、トラブルがあったそうだ。
直前キャンセルで、入金無し。
来店希望で、住所も登録なし
ってやつ。」「ふ~ん。」
「あ、それから、受取日は、
わかってるよな?」トシさんの店は、
駅前商店街のはずれにある。
立地はイマイチだし、
店は昭和のにおいがするし。
エキナカのおしゃれな店に、
客をとられても仕方がない。
ただ、この店の
ショートケーキは絶品だ。
僕的にはアップルパイも捨てがたい。
もう滅多に手に入らない、
紅玉というリンゴの酸味と、
カスタードクリームの甘さの
バランスが絶妙なのだ。
サックサクのパイ生地に
チョコアイスを添えた究極の一皿を、
ゲットできるかどうかは、いつも、
学期末の成績表にかかっていた。手押しの自動ドアを開けて
店に入ると、店主のトシさんと、
奥さんは、何やら、大きなケーキの
飾りつけをしていた。「こんにちは!」
「あら、尊君、いらっしゃい。」
「なんか、忙しそうですね。」
「急に、ウエディングケーキの
注文が入ったんだよ。」
駅前のホテルのパティシエが、
急病で倒れたとかで。」「式場の張りぼてのケーキじゃ
嫌だって新婦が
言ってるんですって。」「張りぼてって、あの、
ケーキカットするとこだけ
カステラの?」「そうそう、正しくは、
スポンジケーキだけどね。」「悪いな、尊君。
そこの、箱、取ってくれるかい?
サンタクロースじゃない方。」店は、入口の脇がカフェスペースに
なっている。
そのテーブルの上に、
小さな白い箱が二つあった。
開けてみると、片方に、
新郎新婦のミニチュア人形が
入っていた。僕は、その箱をそっと持ち上げると、
店主のトシさんに渡した。
人形の衣装の白いレースを
広げながら、奥さんが言う。「あら、かわいい。
私もこんなドレス、
着てみたかったわ~。」クリスマスケーキの予約を済ませ、
店を出た僕は、自分でも、何故か
良く分からないまま、気が付けば、
駅前のホテルの前にいた。
ホテルのドアが、
僕を誘い込む様に開く。ロビーの横に、
パンフレットが置いてあった。
花嫁姿のモデルの笑顔が目に留まる。“永禄で、祝言は済ませたって
言ってたけど、お姉ちゃんも、
もしかして、こういうの、
着てみたいのかな。“パンフレットに見入っている僕に
気づいたフロントの女性が、
声をかけてきた。「御婚礼受付を、御案内
致しましょうか?」「あ、いや、いいです。」
僕はパンプレットを握りしめたまま、
ホテルを飛び出した。本屋の前を通りかかると、
女性向けの結婚情報誌の
ポスターが目についた。
店に入って、棚を覗くと、
アイドル雑誌の最新刊を
手にしながら、制服姿のJK達が、
女子会トークで盛り上がっている。ここで、もし、僕が結婚情報誌に
手をのばしたら、確実に、
“ヤバイヤツ”と思われるだろう。僕は本屋の前にあるベンチに座り、
トシさんから貰った、予約サービスの
缶コーヒーのプルタブを開けた。“今度の満月の夜、
若君とお姉ちゃんが永禄に
飛んだら、もう会えないんだな。”数日後に控えている別れを想って、
僕は、急にしんみりした。コーヒーはまだ、
ほんのり温かかった。
僕は両手で缶を包み込んだ。
ぬくもりを少しでも
留めておきたかった。突然、冷たい風が、横に置いた
パンフレットを吹き飛ばした。慌てて立ち上がった弾みに、
缶を落とした。
飲みかけのコーヒーが道路に飛び散り
缶が、パンフレット追いかけるように
転がって行く。
向こうから歩いて来た人が立ち止まり、
その両方を拾い上げた。「あ!す、すいません。」
「は、速川・・・君?」
「えっ???」
”だ、誰?・・・知らないし・・・
こんな・・・美人。”直ぐには、気づかなかった。
そこに立っていたのは、
同じクラスの女子だった。
いつもは、長い髪で顔を半分隠し、
どう考えても似合うとは思えない、
古臭い銀縁の丸眼鏡を掛け、
教室の隅で本を読んでいる。ところが、今、
目の前にいる彼女は、
髪をアップにして、
キラキラの髪飾りを付け、
淡いクリーム色のワンピースに、
柔らかそうな白いコートを
羽織っている。
足元は、リボンを足首に巻いた
ハイヒール。
襟元はふわふわの毛皮。
もちろん、あのメガネは無し。
唇は、うっすらピンク色だ。「も、もしかして、
お岩・・・じゃなくて、
い、岩谷・・・さん?」答える代わりに、
彼女はにっこりと微笑むと、
風に飛ばされたパンフレットを
差し出した。
僕は、慌ててそれを受け取る。
岩谷さんは、
僕の落としたコーヒー缶を、
本屋の横にある、
空き缶回収BOXに入れると、
財布を取りだし、
自販機に硬貨を入れた。「は、はい。ま、まだ、
の、飲みかけだったんでしょう?」“どもる所は、
いつもと変わらないんだ。”僕は、ちょっとほっとした。
「ありがとう。
あ、今、お金を。」差し出されたアツアツの
コーヒー缶を受け取ると、
ジーンズのポケットを探る。「あ、あれ?」
“すっかり忘れてた!自分の財布、
持ってこなかったんだ。“父から預かった、ケーキの代金の
入った紙袋だけ、ダッフルコートの
内ポケットに突っ込んで、そのまま、
出て来たのだった。「ごめん。。。」
「き、気にしないで。
わ、私が勝手に、
か、買ったんだから。」「でも、悪いよ。それじゃあ。
ああ、そうだ。
明日、売店で買って返すよ。
昼休みに。
コーヒーで良い?
それとも何か、別のにする?」「え?ええっと。
な、何が、あ、あるんだっけ?
あ、あんまり、い、行った事が、
な、無くって。」「じゃあ・・・一緒に行く?」
「う、うん。い、一緒に行く。」
自分で誘っておきながら、
僕は急に照れ臭くなった。「あ、あのう・・・。
き、聞いてもいい?」「ん?」
「そ、それ、どうして?」
「え、ああ・・・これ?」
“何て言おう?アヤシイヤツと
思われても困るし。”「実はさ、
ウエディングドレスって、
どんなのかなって思って。
あ、いや、その。
ちょっとした、訳があって。
高いんだろうね。
レンタルするの。
どのくらいするか知ってる?」「え、ええっと。
お、お母さんの話では、
か、かなりするみたい。
じ、実は、今日、従妹の
け、結婚式だったの。
え、駅前の、そのホテルで。」「そ、そうなんだ。
やっぱり、無理か。」「無理って、まさか、速川君、
そういう趣味が?!」“そこは、どもらないんだね。”
と、僕は思った。岩谷さんが、
みるみるうちに怯えた目になる。“マジヤバイ!このままじゃ、
僕は、明日から確実に、
クラス中から“ヘンタイ”目線を
投げつけられる。“「え、あ、いや。違うんだ。
じ、実は今、
し、親戚が家に来ててさ。
近々、遠くに移住することに
なったとかで。
当分、会えなくなるんだよね。
姉が、その親戚の子に、
ぞっこんでさ。
せめて、思い出に、
ウエディングドレス姿で、
その子と写真をとって
あげようかな、なんてさ。
プリクラなら、
そんなの簡単だろうけど。
なんか、もうちょっと、リアルに
してやりたいなって。」「そ、そうなんだ。
な、なんか、意外。
は、速川君、
お、お姉さん思いなのね。」怯えていた岩谷さんの目が、和む。
「そうなんだ。
急に思いついてさ。
自分でも、驚いてる。
でも、凄く高そうだから、
無理かな。」「ま、まずは、お、お母さんに
相談してみたら?
お、お母さんも、お、お姉さんの
気持ちを分かってるなら、
き、協力してくれるんじゃない?
む、娘の花嫁姿を、
い、一番見たいのは、
お、お母さんじゃないかな。」「そうかもね。
でも、だからこそ余計に、
母さんにも内緒にしたいんだ。」「か、家族中に、
サプライズって事?」「うん。できれば。」
「で、でも、
サプライズを成功させるには、
ひ、一人くらいは、
手伝ってくれる人がいないと、
う、上手く行かないんじゃない?」「そ、そうだね。
じゃあ、父さんがいいかな。
帰って、相談してみるよ。」「う、う、うん。
わ、私も考えてみる。」循環バスで帰るという岩谷さんを、
僕は、バス停で見送った“今まで、話したことなかったけど、。
なんか、楽しかったな。
それに、き、きれいだし。。。“突然、バスに乗る岩谷さんの
後ろ姿が浮かんで、
何故か、耳まで赤くなった。足首に結ばれたリボンが、
瞼にちらつく。気が付くと、僕は、走っていた。
自宅までの、長い坂を。・・・・・・
翌日、僕は、学校の売店の外の階段で、
岩谷さんを待っていた。
岩谷さんは、密かに、
“お岩”さんと呼ばれている。
もっとも、古臭い日本の“怪談”を
知らない奴らには、“何それ?”
のレベルだし、彼女がクラスで
注目を集めるのは、
地味な“古文”の、試験問題が
返されるとき位だ。それでも、1年の時、半年以上、
通学せずに引きこもっていた
自分に比べれば、知名度は上だった。「ご、ごめん、お、お待たせ~!」
やっぱり、昨日は別人だったんじゃ
ないかと思うほど、今日の岩谷さんは
いつもの“お岩さん”だ。
なのに、声だけは、
昨日の“岩谷さん”だった。”なんか、妙に、はじけてる?”
昨日の缶コーヒー代しか
渡してないはずなのに、
岩谷さんは、何故かプリンを
二つ持って戻ってきた。
その一つを渡され、僕は戸惑った。「あ、ああ。僕の分とか、
良かったのに。
足りなかっただろ?お金。」「い、いいの。」
「良くないよ。
足りない分、今・・・」「じ、じ、じ、じゃあ、
その代わり、こ、こ、今度、
す、数学の、か、課題、教えて。
に、に、苦手で。
び、微分とか。。。」「いい・・・けど。」
「ホントに?」
“そこは、どもらないんだ。”
僕は、思わず笑ってしまった。
「じゃあ、今度の日曜日、
黒羽城公園の資料館に行く?
あそこなら、ここの生徒は
ほとんど来ないし。
教室で教えて、
誰かに何か言われたら、
メンドクサイだろ?」「う、う、う、うん。」
「嫌・・・なの?」
「う、う、ううん。行く。」
僕は、また、笑った。
「そうだ、昨日の話なんだけど。
ドレスを借りるのは、
やっぱり無理みたいだ。
うちの父、実は、専業主夫でさ。
つまりは、無収入。
コツコツ貯めたヘソクリも、
この間、庭にピザ窯作って、
使っちゃったって。」「そ、そうなんだ。ピ、ピザ窯・・・
す、すごいね。お父さん。
で、でも、な、なんか、
ざ、残念。」「仕方ないよ。
クリスマスケーキで、
ケーキカット位はできるさ。」「そ、そう。。。
そ、それも、す、素敵。
で、で、でも、でもね。
ゆ、ゆうべ、書いてみたの。
ド、ドレスの、デ、デザイン。
み、見てくれる?」「え???」
岩谷さんは、小脇に抱えていた
ノートを取り出し、ページをめくると
遠慮がちに差し出す。そこには、
ふわふわのレースに包まれた、
妖精の様な花嫁さんが描かれていた。「かわいい。
上手なんだね。イラスト。」「あ、ありがとう。
そ、それなら、何とか
作れる・・・かも。」「えっ?
作れる?これを?
岩谷さんが?ホントに?」僕は驚いて、そのイラストと、
岩谷さんを何度も何度も交互に見た。岩谷さんは、大きくうなずいた。
「私、衣装係なの。演劇部の!」
岩谷さんは前髪をかき上げて
微笑んだ。
僕は思わず声に出してしまった。「そこは、どもらないんだ。」
岩谷さんは、口を両手で抑えると、
走って行ってしまった。「あ、待って!ご、ごめん!
そうじゃな・・・」慌てて追いかけようとしたが、
階段を踏み外し、僕は、
したたか腰を打って転んだ。[no.349] 2020年11月29日 19:40 妖怪千年おばばさん 返信もうすぐ12月
12月といえば、思い浮かべるのは、
やはり、SPですよね。
緊張感あふれる立ち回りのシーンから
速川家でのパーティシーンへの流れが
とっても楽しかったですね。
閨のシーンで、唯が願った若君との
デートも実現して、見ている方も
ウキウキ気分を分けて貰った様に
思いました。でも、きっと多くの皆さんが
思ったんじゃないでしょうか?
もしかしたら、唯ママが一番、
唯ちゃんの花嫁姿を
見たいんじゃないかって。夕月かかりて様は、写真館での
家族写真と言う形に
されるようですね。素敵です~。
速川家の幸せいっぱいな笑顔が、
目に見えるようです。(^_^)v私も実は、唯ママに
唯の花嫁姿を見て欲しくて、
暫く前から、その物語の構想を
練ってました。12月に入る前に仕上げたいと
思っていまして、昨日、なんとか
かき上げました。
これから、投稿します~。夕月かかりて様のストーリーと、
かぶる所があるとは思いますが、
お許しくださいね~。ご一読頂けましたら、
嬉しいです~(*^^)vm(__)m- この返信は3年、 11ヶ月前に妖怪千年おばばが編集しました。
[no.348] 2020年11月28日 18:55 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days5―2~8日19時40分、慈愛
二階がこんな事になってたとは。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅覚と美香子の部屋。
美香子「では開けるわよ~はい!」
部屋に入ると、天井付近に棒が渡され、唯の月光舞の装束が幕の様に広げられてかかっている。
美「二人分で二揃えあるから、やむなくこんな感じで保管だけど」
芳江「素敵~」
エリ「本当に艶やかな茜色ですね」
衣桁には若君の直垂。
エ「こちらはまたシックな臙脂色で、威厳があるわね」
美「あの時代の、正装なんですって…」
美香子が泣き出す。
芳「えっ、先生」
エ「私達が見たいとお願いしてしまったから、お別れの辛さがぶり返されたかしら。ごめんなさい」
芳「あぁ…親としては、子供の望むようにはしてあげたいけど、もう二度と会えないかもと覚悟を決めて送り出すのは、私だったら出来るかと考えると、先生よく決断なさいましたよね」
美香子、涙をおさえながら、
美「違う、違うのよ。心配したのは若君の身の上なの」
芳「そうなんですか?」
美「実は、お二人だけに話したくて、唯を呼ばなかったの」
エ「そうですか…お話ならいくらでもうかがいます。先生がそれで少しでも楽になるなら尚更」
美「ありがとう。…唯が若君奪還した日は、敵方の娘との結婚式だったの。ずっと人質みたいな扱いで、戦場にも出ずっぱりで。そのいずれも辛かったに違いないのに、羽木の民を守るためならと、自分で決断して耐えていたって」
芳「まぁ…確かまだ二十歳前でしたよね?」
美「そうなのよ。もちろん現代と比べてはいけないけれどね。でね、唯がこちらに帰る時、若君が約束してくれたらしいの」
エ「どんな?」
美「唯が現代で生きるなら、若君も唯に守られた命を生き抜くって。戦国時代にそれはどれだけ大変か。でも自分から死は選ばない、唯がずっと心の中に居るから一人じゃない、時代は違っても唯と共に生きるって」
エ「現代に暮らす私達には、到底想像出来ない決意ですね」
美「もう一度会えて嬉しいわなんて簡単に言ってはいけない程、若君が過ごした日々は凄絶で。死と隣り合わせなんて言い方、軽過ぎて申し訳ないって思ったわ。傷ついて傷つき続けても、唯への想いを胸に生き抜いた若君の不断の努力と、やっぱり奇跡で、こうして来てくれて本当に本当にありがとうって」
三人とも涙が止まらない。
美「この話はね、全部唯から。若君にもそれとなく聞いたんだけど、はにかむだけで。心配かけまいと話さないのが、もういじらしくて」
芳「若君って、どこか淋しげな感じがします。戦国武将ってそういうものなのかと思ってました」
美「唯が、無性に抱き締めたくなる時があるって言うの。あんなに凛々しいのにふと、迷子になって泣きじゃくる子供みたいに見えるって。それは2か月半一緒なだけの私達も少しわかるのよ」
エ「若君は、唯ちゃんに母性愛を感じてるんじゃないでしょうか」
美「だと思うわ。小さい頃から総領ありきで帝王学を叩き込まれ、生活に不自由はないけど甘えられる母はない。そんな孤独とも戦っていた青年がある日、守ります!ってガムシャラに突進してくる女の子と出逢った。気になり始めて心の扉をそっと開いたら、無償の愛が惜しみなく注がれて溺れそうな程。きっと心の渇きが満たされたのね、恋に落ちるのは必然よ。もう、唯が若君を好きっていうより、若君には唯が必要不可欠なんだわって」
芳「それでは送り出すというより、もしかして若君に唯ちゃんを差し出す感じなんですか?あっ言い過ぎたでしょうか」
美「ううん。合ってる。この青年をもう一人にしてはいけない。彼を孤独から解放してあげたい。反対してた時期もあったんだけどね。偶然ではなく、満月が導いた贈り物だと、ようやく気付いたの。唯なしでは彼の幸せは有り得ないって断言できるから、唯よろしくね若君頑張れって気持ち」
芳「そうだったんですか。でもよく決断なさいました。そういえばさっき、女子高生が射抜かれたって話ありましたけど、私達も初めて若君にお会いした時、ズキュンと、ね?」
美「まだ全く動けない頃よね?」
エ「はい。先生が目覚めを確認して退出なさった後、第一声で私達名前を訊かれて」
芳「そう~今でもときめいちゃう。動けない中一人一人に目線をくださって、芳江殿エリ殿難儀をかける、っておっしゃって」
美「まあ。そこが若君の素晴らしい所よね」
エ「このお仕事も長いですけど、そんな優しい言葉かけてもらえるのは、後にも先にもあの一回だと思います」
美「そんな素敵な青年が息子だなんて嬉しいわ」
エ「すっかり若君の母ですね」
美「確かに、娘を送り出すというより息子を送り出す淋しさ?」
芳「それじゃ唯ちゃんの立場が~」
美「唯は生き抜く。あの子ならどの世界でも大丈夫、若君と一緒なら何も心配ないわ。そうそう、結婚のお願いを改めてされた時の若君、唯をくださいじゃなく、伴いたいって言ったの。唯は人として対等、本当に大事にしてくれてるってわかるのよ」
エ「さっきお食事の時も、唯ちゃんへの眼差しが、愛おしさに溢れてて。見ててキュンキュンしました」
美「でしょう。お二人とも話聞いてくれてありがとう。そろそろ降りてまたお茶しましょう」
芳&エ「はい」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
良かったね、若君。
[no.347] 2020年11月28日 18:52 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days5―1~8日19時40分、質問です
さすが若君、聞き逃さない。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅引き続き、一階リビング。
唯「落雁って、儚げなトコがいいよねぇ」
覚「まだ食べるのか?湿気らなけりゃ日持ちするから今じゃなくても」
唯「初デートを思い出してるのー、見てるだけ」
若君「…のう尊」
尊「何?若君」
若「ちと訊ねたき儀が」
尊「ははっ、何でござろうか」
若「不吉な事を申したな」
尊&唯&覚「?」
若「誰ぞ命を落とすのか?」
尊「なぜそんな事思ったんですか?」
若「しんで、と申した」
尊&唯&覚「あ」
尊「戌の正刻のシンデレラ、ですか?」
若「さよう。あの場にはそぐわぬゆえ何事かと」
唯「尊~、変な例え使うから」
覚「上手い、とは思ったけどな」
尊「ごめんなさい。じゃあ戌の正刻、8時過ぎたら資料出して説明します。あの、誰も命は落としません」
若「そうか」
覚「ところで、明日は家から礼服着てかなきゃダメか?僕も向こうで着替えできる?」
唯「男性用更衣室あったから大丈夫だよ。車の運転してもらうからラフな格好で行って。あー今日寝られるかなー」
尊「寝ないと写真写り悪くなるんじゃないの、顔むくむよ」
唯「そうだけど、もう若君の花婿姿が素敵すぎて…あっヨダレが」
美香子達が降りてきた。
覚「おっ、おかえり。お茶入れるよ。ん?何か三人共どうかしたか?」
美香子「ん?戦国の着物に感動してたのよ。唯、なんて顔してんの」
尊「妄想のかたまり」
美「あー明日が待ち遠しいのね。一緒に予約しに行った時も大騒ぎで」
芳江「ご家族でお出かけですか?」
美「えぇ。写真館に」
エリ「まぁ、家族写真ですか」
美「それもあるけど、唯の花嫁姿が見たくて」
覚「プラス若君の花婿姿だろ。はい、冷めない内にお茶どうぞ」
芳「まぁ。親孝行ね唯ちゃん」
唯「えへ。和洋ふたつともです」
美「私達、案外若君の和服姿をそんなに見てなくて。それも楽しみなんです」
尊「さて~、お楽しみの所、そろそろ8時なんで、若君をお姉ちゃんから隔離します。若君、実験室に先に行っててください」
若「心得た。ではこれにて。芳江殿、エリ殿、ゆるりと過ごされよ」
芳&エ「痛み入ります~」
唯「若君また明日ねっ、おやすみなさーい」
エ「あら思ったよりあっさり」
美「若君がきちんと約束を守ってるから、見習ってもらってます」
若君が実験室に入っていった。
覚「お前資料はどうするんだ」
尊「絵本の画像を検索しようかなって」
美「絵本?何で」
尊「若君にシンデレラの説明しなくちゃで」
美「あらま。さっきのね。えーと、待ってて。確か」
美香子がリビングを出てどこかへ。
唯「どこ行った?」
覚「クリニックじゃないか」
美香子がシンデレラの絵本を手に戻る。
美「はい、どうぞ。使って」
唯「えー?こんなんあったっけ?」
芳「待合室に昔置いてた本ですね」
エ「週刊誌とかと違って、置いている時間が長いので、劣化が激しくなったらさげるんですが、まだ取ってあったんですね」
美「そろそろ処分かなと思ってたら、まさか役に立つなんて」
尊「お母さんありがと、若君待たせてるから行くね」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
宗熊にもらった落雁は、お忘れのご様子です。
[no.346] 2020年11月27日 22:37 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days4~8日17時、賑やかな食卓
ドラマの若君の姿に、寄せました。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅夕方の速川家。若君が米袋をキッチンへ運ぶ。
覚「あーおかえりおかえり。わっ、お前らやっぱり若君だけに運ばせたな」
若君「父上、大事ないゆえ」
唯「ケーキどこ置く~?冷蔵庫~?」
覚「さすがに入らん。暖房の当たらない隅っこに置いて」
尊「お母さん達まだ仕事?」
覚「いや、終わった後買い物行くって言ってたけどもうすぐ帰るだろ。ほれ、支度手伝って」
若君が手を洗い、慣れた手つきでエプロンを着ける。既に日課。
若「父上、何をいたせば良いか」
覚「あーありがとね。イカやマグロを切ったから、皿に分けてくれる?若君はホントによく気がつくなあ。それに比べてウチの娘息子ときたら」
唯「若君だって息子じゃーん」
覚「お前が言うな。若君はな、戦国なら黙っていても飯が運ばれてくる身分なのにこんなに動いて」
若「父上、次は」
覚「え、もう?」
三人登場です。
芳江&エリ「こんばんは~」
美香子「お待たせ、あら~豪華ね」
エ「今日はお招きありがとうございます。あら、若君」
芳「あらあ」
若「エリ殿、芳江殿、しばらくであった」
芳「エプロン姿も素敵ねぇ~」
エ「お食事がもっと美味しくいただけるわ~」
覚「さ、座って座って。今日は急ですいませんでしたね」
唯「えっ?約束してなかったの?」
美「若君が帰る日が決まったじゃない。逆算してて今日位どうかなって思って。二人に聞いたら都合つけてくださって、それで手巻き寿司パーティーにね」
尊「そうだったんだ」
若「それはあい済まなんだ、礼を申す」
エ「でねデザートを、ケーキはと思ってたら、買ったとうかがったので」
芳「ちょっと目先の変わった物にしたの。こちら皆さんでどうぞ。ケーキの後でも大丈夫よ」
唯「えーなになに、わぁ綺麗な箱」
皆で覗きこむと、若君が一番反応した。
エ「若君にとっては珍しくない物だけど、現代味もいいかしらって」
若「これは」
唯「落雁!」
美「あれ、知ってた?」
尊「お母さん」
美「ごめんごめん、いただき物でしか中々口にしないじゃない」
唯「あのね、初デートの時若君がくれた」
尊「…餌付け?」
若「兄上からちょうど頂戴した物があっての」
芳「プレゼントに?素敵ね~。さりげなく懐からサッと出してって感じかしら?」
唯「えっ見てた?」
エ「芳江さん、二人の甘い想い出はそっとしておいてあげなくちゃ」
芳「あらそうよね、若君も図星って顔してるし」
若「いや、わしは」
唯「やーん、若君可愛い!」
覚「はいはい、そろそろ始めるよ。じゃあ」
手巻き寿司パーティー、スタートです。
唯「若君が巻いたのが食べたい!ちょうだーい」
覚「お前全部取り上げるつもりだろ」
唯「口開けて待ってるよりはいいでしょ。若君には私が作ったのあげるからいいの、はいとりかえっこ」
尊「デカっ!それにはみ出まくってるし」
美「もっとキレイに~」
唯「はっ、一瞬おふくろさまに言われたかと思った」
若君が微笑む。
美「怒られるポイントはどの世界でも同じって事よ。こんなんで奥方がつとまるかしら、心配」
尊「お城の奥の院で、不束な姫はちゃんとシメてもらえるんじゃない?」
唯「あー」
尊「身に覚えがあるな」
若君、黙々と寿司を巻いている。
エ「それにしても、若君の手って大きいのね。手のひらの海苔がちっちゃく見えるわ」
芳「そうそう、でお顔が小さいでしょ、とても戦国時代の方には見えなくてモデルさんみたい」
美「だから女子高生も群がるわよね」
若「その節は、難儀をかけ申した」
美「いいのよ、彼女達の気持ちもわかるし」
尊「若君は、無自覚な超イケメンだから。歩くだけで女子高生を射抜いてく」
唯「えー、そんな色目使っちゃダメだよぉ」
尊「使わなくても射抜く」
エ「そうね、綺麗なお顔立ち。それに、醸し出す品がとてもお有りなの」
美&芳「わかる」
覚「モテモテだね~」
若「よくわからぬが、忝ない」
食事後、大量のケーキも捌ききり、ティータイム中。
芳「そういえば唯ちゃん、今回とっても綺麗なお着物で帰ってきたって聞いたけど」
唯「はい、真っ赤なやつですね」
芳「それ、是非拝見したいんだけどいいかしら?」
エ「目を見張る鮮やかさ、って先生にうかがって。若君の御召し物もとっても素敵って」
唯「そんな、今までに自由に見てってくれれば良かったのに」
エ「いえ、やっぱり唯ちゃんの許可は取らないと」
唯「じゃあ二階に行きましょ」
唯が立ち上がると、美香子が止めた。
美「いいわよ、お着物は私達の部屋にあるから、あなたはここに居なさい。もう7時30分よ。」
唯「あ~あと30分!」
尊「戌の正刻のシンデレラ~」
若「?」
美「じゃあお二人どうぞ」
三人は、二階へ上がっていった。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
次回、進行が一階二階に分かれます。
[no.345] 2020年11月27日 22:16 夕月かかりて(愛知)さん 返信月に願います
ぷくぷくさん、ハラハラしながら読ませていただいております。熊には幸せになって欲しい、きっときっとなると願うばかりです。
妖怪千年おばばさん、ありがとうございます。動画観ました。何度観てもいいですね。
で、思い出した事が。本編10話で、唯が拐われた翌朝、阿湖姫が「やはりご存知だったのですね」の後、若君が4回刻んで振り向きます。なぜ刻む、それも演技指導ですかと思いながらも、毎回数える私です。では本日も。
[no.344] 2020年11月27日 16:16 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑷
=
諸:「痛~」
熊:「すまぬ!」
諸:「大事ございませんが、どうされたのですか?」
熊:「わしは強くもない、頼りない男である・・・諸橋則次殿、夫婦とは申さぬ。だが」
諸:「へっ?・・・私?」
熊:「えっ・・・いっいや、早まった」
諸:「もしや、若君、ゆめの事にございますか?」
ナレ:ゆめとは諸橋の次女。先程お茶を持ってきた娘である。
諸:「お気持ちは手に取る様に分かります。ですが、若君も存じておりましょう」
熊:「その様な事は気にはしてはおらぬ。叶わぬであろうか?」
諸:「叶わぬとかその様に仔馬のような眼差しで見られても、殿はお許しになりません。私も」
熊:「父上に何と言われてもわしは耐えられる。だが、父上の諸橋に許さぬと」
諸:「父上などと・・・分かりました、どのような事になろうともお覚悟よろしいですね」
熊:「分かっておる」
諸:「では、呼んで参ります」
ナレ:諸橋は奥へ行き新しいお茶を持って行くように話した。自分は用があるからと座敷には戻らず。諸橋とて娘の幸せも宗熊の幸せも願っている。諸橋は娘がどう返事をしても受け入れる覚悟だった。
ゆ:「お茶をお持ち致しました」
熊:「かっ忝い・・・して、諸橋は何処ぞに?」
ゆ:「ご用があると。では」
ナレ:部屋を出ようとしたゆめを呼び止めた。
ゆ:「宗熊様?」
熊:「すまぬが、座ってくれまいか?」
ゆ:「あっ、はい」
熊:「ゆめ殿とは幼き頃よう遊んでおったの」
ゆ:「さようでしたね。転んで泣いていたお顔を覚えております」
熊:「恥ずかしいのぉ」
ゆ:「その様な事はございませぬ。ふふっ」
ナレ:笑った顔が美しいと思っていた。昔はよく遊んでいたが、宗鶴がおなごと遊んではならぬ剣の稽古をするのだと言い出し、その言いつけに従い、いつしか遊ぶこともなくなり諸橋の役宅に来ることともなくなっていた。その間ゆめは嫁いだ。宗熊は姉の様に慕っていただけなので恋心は無かった。時が経ち唯の事を諦めた頃、ゆめが嫁ぎ先から戻ったと諸橋から聞いた。その時は久し振りだから挨拶しようと役宅に来た。出迎えたゆめを見て、宗熊のハートにキューピットの矢が刺さった。それからは心の中のゆめの存在が日に日に大きくなるが、奥手な宗熊は何も出来ずにいたが、今回の事で自分の決意を強めるべく、自分の気持ちを話す事にした。だが、ゆめを目の前にして言葉が出ない。
ゆ:「宗熊様、どうされました?」
熊:「ゆ・・・ゆめ殿」
ゆ:「はい」
熊:「そなたも存じておる様にわしは弱い者」
ゆ:「その様な事はございませぬ。宗熊様はお心のお強い方でございます」
熊:「さようか・・・ゆめ殿」
ゆ:「はい?」
熊:「わしはこの先どの様な事になるか分からぬ。何かの折、事を起こす事になり得るのだ」
ゆ:「はぁ」
ナレ:宗熊が何を言いたいのか分からないが席を外す事なく聞いていた。
熊:「わしは、何れ跡目を継ぎ領民を守らねばならぬ。わしに力を与えてくれる存在となってはくれまいか?」
ゆ:「えっ?」
熊:「め・・・夫婦となりたいとは申さぬ、わしの心に強い気持ちを持つことにそなたの存在を・・・あっ、いやっ・・・はっきり申そう、わしの妻になってはくれまいか?」
ゆ:「妻?」
熊:「・・・やはり・・・であろうの。すまなんだ」
ナレ:宗熊はどっと肩を落としフラッと立上り座敷を出ようとした。
ゆ:「宗熊様」
熊:「ん?」
ナレ:宗熊はその場に座った。
ゆ:「宗熊様、わたくしは歳上にございます」
熊:「気にはしておらぬ」
ゆ:「はい・・・わたくしの亡き夫はとても優しい殿方でした。わたくしに里へ戻るように申しました父上様も母上様も優しいお方でした。わたくしの顔を見ては思い出し、悲しむ姿も見ておりました。ですからお言葉通りわたくしは里に戻りました」
熊:「優しいお方に巡りおうたのだな」
ゆ:「はい」
熊:「して?」
ゆ:「わたくしが夫の事を忘れる事は出来ませぬ」
熊:「それは当然の事じゃ」
ゆ:「宗熊様がお気を悪うされるのではと」
熊:「わしはその様には思わぬ。ならば、その者の話をわしにも聞かせてはくれまいか?」
ゆ:「えっ?」
熊:「楽しゅうしておった事などを聞きたいと思うての」
ゆ:「宗熊様」
ナレ:宗熊が胡坐から正座に座り直し、
熊:「だが、わしの行いで再びそなたを悲しませる事になるやもしれぬ」
ゆ:「宗熊様」
熊:「やはり、先も分からぬわしの妻には・・・無理であろうの」
ゆ:「宗熊様のお人柄も良く存じておりますし、お心は幼き頃よりお変わりなく」
熊:「ゆめ殿」
ゆ:「宗熊様が何をお考えになられておるのかは分かりませぬが、何か強い意志がおありだと存じます。ならばわたくしの居りますことでお気持ちが落ち着かれるのであればわたくしは」
熊:「では、わしの妻になってくれると申すのか」
ゆ:「はい」
熊:「唯殿・・・あっ、すまぬ!」
ナレ:ゆめはクスッと笑い、
ゆ:「父上から聞いております。唯と申されるおなごの事は」
熊:「そうであったか。すまぬ」
ゆ:「詫びなくとも、わたくしと同じにございますから。わたくしにもお話願えますか」
熊:「ゆめ殿」
ナレ:宗熊はゆめの手を取り、何度も頭を下げた。するとそこへ諸橋が入って来た。つづく
[no.343] 2020年11月27日 14:50 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑶
=
ナレ:諸橋は庭に出て、宗熊の方に向き返り話し始めた。まだ人を信じる優しい宗鶴は忠高の気持ちを察し、会いに行かずに文を託すことに。諸橋に頼むつもりでいたが他に使いが有り、誰かほかに居ないかと言われた諸橋が声を掛けた者が行くと、それを見ていた別の男がその使いを買って出た。それが坂口だった。理由を聞いた坂口は良からぬことを考えた。文の所在は諸橋も知らぬ事。坂口は黒羽城へ向かう途中で文を破り川に流した。様子を見に行くと領民も殿も気落ちしていると聞いた。坂口は戻り中継ぎした者に、でまかせを話した。文はその場で破り捨てられ、何も言わず中へ。そして中で楽し気な笑い声が聞こえてきたと。見れば側室と舞を舞っていたと。宗鶴は中継ぎからその話を聞いて、初めは信じられなかったが、留めは、側室と加担して妻を蔑ろにしていたと、その言葉で信頼の心が一気に憎しみへと。嘘を信じてしまった。昨日まで穏やかだった宗鶴の態度に諸橋は何が何やら分らず、中継ぎの者に聞き、諸橋も当時は忠高の行いに腹を立てた。気の収まらぬ宗鶴が無理難題を言っても諸橋は従う事にした。それで宗鶴の気が晴れるのであればと。宗鶴はわしが妻に迎え入れておればこのような事態にならずに済んだのだと言っていた。
その話を聞き宗熊は手を付き、
熊:「諸橋。すまなんだ・・・この通り」
諸:「その様な真似はなさらずとも。その折の事は致し方ない事でございました。私も初めは信じておりました。ですが、日が経ち、殿の命で間者を忍ばせた折に、忠高様の様子を探った者に聞きました。あの話は嘘だったと。ですが、すでに宗鶴様は聞く耳をお持ちでなく、それとなく申した折でも、信じる事はなさいませんでした」
熊:「そうであったか・・・まこと、申し訳なかった」
諸:「家臣としての務めにございます」
熊:「だが父上は忠高様のご様子が分かっておろうに何故引かぬのであろうか?」
諸:「御心が純粋過ぎるあまりに、一度思われた憎しみにより真実が見えないのでありましょう。悲しい事でございます・・・して、宗鶴様の事がお分かりになられた若君はどうされるのでありましょうか?」
熊:「まだ分からぬが。だが事を起こさねばならぬと思うておる」
諸:「ですが、何故、此度の事を?」
ナレ:宗熊は嘘をついて羽木忠高に文を出し、その返事が来た事を話した。諸橋は驚いた。
諸:「その様な真似をされて」
熊:「知れたら、わしも追放されるのであろうな」
諸:「それは」
ナレ:諸橋は宗熊が心配になった。座敷に上がり宗熊の前に座り、
諸:「私は幼少の頃から宗鶴様に仕えて参りました。お側で見て参りました。嘘を鵜呑みにされてからの宗鶴様は奥方様にも若君にも」
熊:「諸橋?」
諸:「殿は幼き若君にもお優しい奥方様にも厳しくされておりました」
熊:「そうであった。わしも幼き心で父上が母上に優しい言葉一つ掛けておらぬと思うておった。だが、母上は私に父上の様に立派な城主となる様にと常日頃申しておった。一度とて父上を悪う申す事は無かった」
諸:「さようでした。お優しく、そしてお強いお方でした」
熊:「父上は母上が亡うなった折にも涙一つ見せなんだ」
諸:「いえ、若君が見ておられなかっただけにございます。お人払いをされた折、私が廊下り居りましたら中からすすり泣く声が聞こえておりました。宗鶴様は泣いておられたのだと」
熊:「その様な。まことか?」
諸:「私の一存の考えではございますが、側室を迎えず居りましたのは確かにあの姫様の事があったのだと。ですが、そののちは奥方様を想われてと思うのです」
熊:「さようか・・・父上がぁ。父上の優しい心が存在していたのだと。喜ばしい事じゃ」
諸:「若君・・・若君がのちの事をお考えになられることはご立派であられますが、若君のお気持ちが今の殿に伝わるとは私は・・・」
熊:「ん。だが、奥底に優しい心が残っておると知れただけでも、わしの力となる」
諸:「はぁ。その様に申されるのであれば私はもう何も申しません。私は若君のお言葉に従う覚悟が出来ました」
熊:「諸橋」
諸:「そう申し上げましても、宗鶴様を裏切る事ではございません」
熊:「分かっておる」
ナレ:諸橋が側に湯吞茶碗を持つと茶は冷めていた。新しい茶を持ってくるように言おうと立ち上がろうとしたら突然、宗熊は諸橋の腕を掴み、掴まれた諸橋は咄嗟の事に倒れてしまった。つづく
[no.342] 2020年11月26日 21:00 妖怪千年おばばさん 返信デビューおめでとうございます!
夕月かかりて様
デビューおめでとうございます!ぷくぷく様
猪熊君の物語、ついに投稿ですね。
楽しみにしてました。
途中で割り込む形になるので、
書き込むのを迷ったのですが、
忘れないうちにと思いまして。お二人の作品に共通する、唯
と若君のラブラブなシーンを
読ませて頂いて、思い出した動画があります。
ユーザーエリアの掲示板にURLを
張りましたので宜しければご覧ください。では、では、お二人の次の投稿を
楽しみにしています。梅とパイン様の作品も
楽しかったです~。有難うございます!
- この返信は3年、 12ヶ月前に妖怪千年おばばが編集しました。
[no.341] 2020年11月26日 15:51 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑵
=
諸:「はい。宗鶴様は若君と同じ年頃の頃は、羽木忠高様と川でおち合い、遠駆けをする仲でございました。その折、忠高様に婚儀の話がございました。戻られました宗鶴様が私に聞かせてくれました。私は次は宗鶴様ですねと申し上げ、その折、宗鶴様は出会うた娘を想い描いておったのだとその様に考えました」
熊:「そうであろうの。ん?・・・諸橋」
諸:「はい?」
熊:「忠高様と。あの折は忠高と」
諸:「はい。宗鶴様の前だけではその様に。私は、羽木忠高様に会うておりますゆえ。お優しいお人柄も存じております。忠清殿は御父上に似ておられます」
熊:「さようか。気苦労を掛けておるのだな」
諸:「いえ。忠高様の婚儀の前にお二人で遠駆けされた折、私もお供を。婚儀を心待ちにされておる忠高様が御父上の命で何れは側室を迎える事となると申されたと話されて、宗鶴様は側室も致し方ない事ではないかと話されて」
熊:「父上がぁ・・・だが父上は側室は」
諸:「宗鶴様が側室を迎える事はございませんでした。奥方を迎える前から殿にも言われておりましたが断固として迎える事がございませんでした。のちの御心でも奥方様が亡くなられても後添えも迎えませんでした」
熊:「ん?」
諸:「その事は何れ」
熊:「ん。父上は、その姫と夫婦になると決めておったからではないか?」
諸:「その様に存じます」
熊:「それからどうしたのじゃ?」
諸:「羽木忠高様の婚儀の席に宗鶴様も」
熊:「では」
諸:「はい。その折、あの娘だと分ったそうにございます。戻られてからは、しばらく気を落とされておりました。そののち奥方を迎え入れ、宗熊様がお生まれになりました」
熊:「その様な事なれば、このような事態になるとは思えぬが」
諸:「はい・・・その頃は互いに信頼しており間者を忍ばせる事もございませんでした。幼い忠清殿を残し御母上が亡くなられた事を知り、宗鶴様はお悔やみの文を羽木忠高様に」
ナレ:言葉を止めた諸橋の顔を覗き込み、
熊:「どうしたのじゃ?」
諸:「はっ、いえ」
熊:「申したではないか、わしは覚悟が出来ておるのだからの。申せ」
諸:「忠高様へ宛てた文を託した者にございます。その者が代々、羽木家に遺恨のあった者にございました。私はのちに知る事となり、宗鶴様にお話しいたしましたが、遅うございました」
熊:「その様な事が。して、その者とは?」
諸:「若君は直々にお会いになる事はございませんでしたが、忠清殿とあのおなごが逃げた折に宗鶴様の命は、羽木勢を誘い込み撃つとの事でしたが、その命を退き勝手な判断で事を起こそうとし、殿に知れ追放された者にございます。あの折の者だとは宗鶴様は覚えておらぬようでした。坂口と申す者にございます」
熊:「えっ!坂口」
諸:「はい。若君?」
熊:「和議の折に忠清殿と成之殿が参られたが、諸橋が席を外した折に、成之殿が忠清殿のお命を狙っていた事を話されての」
諸:「えっ、なんと」
熊:「わしも驚いた」
諸:「命を狙ったその者と忠清殿が?」
熊:「忠清殿は許されておってな」
諸:「はぁ」
熊:「加担しておった者が坂口だったと」
諸:「さようでしたか。あ奴めぇ」
熊:「して、その者が何をしたのじゃ・・・まさか!その者の行いが火種となったのではあるまいな」
諸:「実は、そのまさかにございます」
熊:「えっ?どういう事じゃ」つづく
[no.340] 2020年11月26日 15:00 ぷくぷく(群馬)さん 返信=宗熊の決意 第一章=⑴
ナレ:八次郎から渡された文を読み、宗熊は二人が無事に戻った事を喜びそして、敵方の己の身を案じてくれている羽木忠高に感謝した。忠清とは会っているが、忠高とは会うことは無かった。忠清の人柄を知り、そして忠高の優しさも知り、宗鶴の羽木家に対する遺恨について改めて不思議に思い、宗熊は確かめるべく諸橋の役宅を訪ねた。庭で諸橋は素振りをしていた。
諸:「わっ若君・・・どうされました?」
熊:「尋ねたき事があっての」
諸:「さようですか。では中へ」
熊:「諸橋、このところ妻女と則之介の姿が見られぬが、如何した?」
諸:「妻の里の父が怪我をしまして、ですが大事に至らず安堵しております」
熊:「さようか」
諸:「父上も則之介に会いたいであろうと連れて参って、しばらくは里に居れと申しまして」
熊:「そうであったか」
ナレ:諸橋は奥へ行き、娘に茶を持ってくるように伝え、宗熊を奥の座敷に通した。
諸:「何をお尋ねになりたいのでございましょうか?」
熊:「父上の事じゃ」
諸:「宗鶴様」
熊:「そうじゃ。わしは和議の折は。だがそれ以前のわしは父上に歯向かう事もせず居った。わしとてこのままではならぬであろうとは思うておるのだ」
諸:「はぁ」
熊:「わしは、領民を守らねばならぬ」
諸:「はい」」
熊:「父上の幼き頃は、羽木、高山は近隣の戦の折に助け合うておったのだと、幼き頃おじい様に聞いたのだが。父上が城主となったのち、今の様に戦を仕掛けておる。ことに、羽木の領地にばかりのぉ。何故、父上が羽木、羽木忠高殿に敵意をむき出しにされるのか分からぬ。これまでに父上に尋ねる事もせなんだ。だが、昔の様になればと思うておる」
諸:「それは・・・それは如何かと」
熊:「そうじゃの。分っておるが、事の真相を知りたいのだ・・・わしとて分かっておる、わしが城主となれたとしたところで、織田信長公の様に天下を司る事など出来ぬこともの」
諸:「それは・・・」
熊:「己の事は己が一番分かっておる。だが、このままでは我らとていつ滅びるか分からぬ」
諸:「若君のそのお考えは城主となるに値する事と存じます。ですが、急の事に驚いております。何故、その様に?・・・もしや、あの唯なるおなごの事にございますか?」
熊:「唯殿はわしの目を覚ましてくれたのだ。天が唯殿と出会わせてくれたのだと思うておる」
諸:「はぁ」
ナレ:そこへ娘が茶を持ってきた。諸橋の子は二人の娘と五歳の男の子。長女は嫁ぎ、次女も嫁いでいたが、亭主が先の戦で亡くなり、嫁ぎ先の両親がまだ若いから里に戻り、幸せを掴んで欲しいと。娘は両親の優しさにこたえる様に里に戻った。宗熊の三歳年上。
熊:「かっ・・・かたっかたじけ・・・すまぬ」
ナレ:宗熊ド緊張。二人はどうしたのかと思っていた。娘は座敷を出て行った。
諸:「若君どうされました?」
熊:「いや、先に父上の事じゃ」
諸:「先に?・・・そうでしたな」
ナレ:諸橋は腕組して考えていた。
熊:「何なりと申せ」
諸:「ですが・・・」
熊:「構わぬ」
諸:「では・・・若君が申されるように、羽木、高山は仲ようしておりました。戦の折には互いに力を貸すような」
熊:「であるのに、何故?」
諸:「はぁ」
ナレ:また言い難そうな諸橋に、
熊:「どの様な事でもわしは受け止める覚悟じゃ」
諸:「では。宗鶴様は幼き頃は大人に悪戯をし、叱られても笑っておる様なお方でした」
熊:「思いもつかぬ事じゃ」
諸:「宗鶴様は、御父上の命にて使いに参った折に娘と出会うたそうにございます。戻りまして私に話してくれました」
熊:「それは母上か?」
諸:「そうではございませぬ。実は・・・」
ナレ:また言い難そう。
熊:「諸橋」
諸:「はい。のちに分かった事にございますが、その娘は二条家の姫様にございました。羽木忠高様の」
熊:「では、忠清殿の母御か?」
諸:「はい」
熊:「父上が出会うた姫が何故、忠清殿の?・・・どういう事じゃ。何が遭ったと申すのじゃ」
諸:「何もございません」
熊:「無いと」つづく
[no.339] 2020年11月26日 07:34 リリ造(千葉)さん 返信[no.338] 2020年11月25日 21:19 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days3~8日15時30分、おつかいできたかな
若君が楽しそうだから、いっかー。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅スーパーにて。まずは米をゲット。
唯「なんか追加で買う~?」
尊「特に思い浮かばないよ」
唯「手巻き寿司に入れたい具ってさ、だいたいお父さんセレクトで正解なんだよね」
尊「確かに」
唯「ケーキとか買ってっちゃダメかな~?まだ若君とも食べてないんだよね」
尊「へー、とっくにデートで行ってるかと思った」
唯「今後の楽しみにとっといたけど、今なら自分のおこづかいじゃないし」
尊「現金な。でも若君と一緒にティータイム楽しそう。お父さんに聞いてくるよ」
尊はスマホを操作しながら少し離れた。
若「ケーキ?誕生日の話の折聞いたような」
唯「そうそう、若君には平成ライフを満喫してもらわないとね」
若「平成ライ、フ?」
唯「えっと、今この、先の世での生活、です。しまった、説明担当がいない時にしゃべっちゃったよ」
尊「お姉ちゃーん、そんな事だろうと思ったって。OKだけど、今夜は芳江さんエリさんも来るから、全員分買って早く帰ってこいってさ」
唯「えーそうだったんだ、楽しみ~。了解でござる。若君、あっちね」
尊「はやっ」
ケーキ売場ショーケースの前にしゃがむ二人。
唯「若君、どれにする?」
若「ほぅ、まるで錦絵のようじゃの」
店員達が、超イケメン~とうっとりしながら若君を見ている。
尊 心の声(どれだけ綺麗なケーキ並べても、若君に目がいっちゃうよなぁ。ある意味罪作り)
若「選べぬ。尊、頼む」
尊「えー?きっとどれも美味しいよ」
唯「私も選べなーい。いっそさ、ここからここまで全部、って贅沢は?」
尊「それ、一人2個計算じゃん。人の金だと思って」
唯「あんたの金でもないし」
尊「若君、いいですか?」
若君「苦しゅうない」
帰り道。若君は軽々と米10キロを肩に担いでいる。ケーキも大量で結構な重さなので、唯と尊で一箱ずつ運んでいる。
尊「お姉ちゃん、何キョロキョロしてんの」
唯「若君を狙って、変なのがついてきたら大変じゃん」
尊「守ってるね~。少なくともプロレスのスカウトは来ないと思う。でも凄いな若君、涼しい顔で運んでる。あ、涼しい顔はずっとだった」
若「何程でもない。芳江殿エリ殿には世話になったゆえ、会うのが楽しみじゃ」
尊「そうだね、確か初めてジーパン穿いた時、芳江さんが手伝ってくれたんだよね」
唯「えー」
若「何とか身に着けたが、この小さい金具に手こずった」
唯「ファスナーに?そんな…きわどい」
尊「お姉ちゃん、顔赤いよ」
唯「ちょっと想像して」
尊「妄想でしょ、芳江さんは仕事で慣れてるよ。それにそんな事で奥方がつとまるの?」
唯「うっ」
若「尊、唯はのう、腹が決まったようで決まっておらぬのだ」
尊「腹が決まる…あぁなるほど。弟に言っちゃっていいんですか?」
若「さすが尊は賢いの」
唯「ちょっと尊 ~!そのわかったような言い方、わかって言ってる?」
尊「なんとなく。ちょっと照れるし、お姉ちゃんが母になるなんて全く想像できないけどね」
唯「わかり過ぎの飛躍し過ぎ!恥ずかしい…」
尊「若君にとって、跡継ぎ問題はお家の一大事だからね。側室に取られてもいいの?」
唯「ううっ」
若「尊、わしは側室をめとるつもりはないのじゃ」
尊「えー!そうなんだ、凄い!お姉ちゃんホント愛されてる」
唯「えへへ~」
尊「励め。」
唯「なんであんたに」
若「尊はわしの味方じゃ」
唯「若君まで!もー!」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
ただいま帰りました~。
[no.337] 2020年11月25日 21:14 夕月かかりて(愛知)さん 返信いろんな物語あり
見たよ!と、続々と挙手。大変喜んでおります( ;∀;)
ぷくぷくさん、熊シリーズ、楽しみにしてます!私の物語は今後、平成Daysの名の通り現代に特化しますので、宗熊は…うん今のところ登場予定はありません(^_^;)
ここで一つお詫びを。ぷくぷくさん始め他の作家さんが使用済みのモチーフが、きっと被ります。既にスーパーのカートとか被りましたもんね。アプローチは違う筈なので、すみませんがパラレルワールドは幾つもあるらしい、と大目に見てやってください。
梅とパインさん、そっとしておいていただきありがとうございます。小平太だったら危なかった~!(偏見?)想い人のあるなしの違い、ですかね?
源三郎とトヨ、幼馴染みであるがゆえの、あと一歩が出せなくて怖いのでも一挙手一投足にときめくの、ってヒリヒリした感じ、好きです。お二人も美男美女ですもんね。続きをまた見せてください。さて、もう次のお話です。毎日と決めた訳ではありませんが、出せる時には出しますね。
[no.336] 2020年11月25日 14:27 梅とパインさん 返信~No.329の妄想に便乗~
《 源・トヨ は見た… 》
城内の 若君の部屋近くで、身を潜めている背中を トントンと叩かれ…
トヨ「ヒェッ!」
「シッ!」 振り返ると源三郎。
ト「げ…!」
源「シッ! こっちへ…」
そ~っと移動して 城外に出る二人。
源「トヨ! あんな所で 何やってたんだ!?」
ト「いや その… 天野様のところに 良い鴨肉が入ったから、お城にお届けせよ と言われて お台所まで持って来たんだけど… その…滅多にお城に入ることなんて無いから、ちょっとだけ お庭を覗いてみたくなって… でも 迷ってしまって 気付いたら あの場所で… 急に 人の声がしたから 隠れてた」
源「馬鹿者! 気付いたのが 俺だったから良かったけど、他の者なら キツいお咎めを受けるところだぞ!」
ト「だよね…。 けど 源ちゃん、見た~? 若君様と ふく…じゃなかった 唯様。ラブラブだね!」
源「こら! …いやまぁ 確かにね」
ト「いいなぁ、羨ましい」
源「そだな」
………なんとなく見つめ合う二人。
ほぼ同時に ハッとなり…
源「お、俺は もう戻る。 いいかトヨ、さっき見たことは 他の者には 絶対に言うなよ!」
ト「わ、分かった。言わないから安心して」
源「ほんとだぞ!」
ト「うん、私達だけの秘密ね」
…「私達だけ」という言葉に 思わずキュンとなり焦る源三郎。
源「じゃ…じゃあ…」と立ち去る。
源三郎の背中を見送りながら、先ほど見た 若君 と唯のキスシーンを思い出し 自分たちと置き換えて、ニヤニヤが止まらない トヨであった。源・トヨの ラブストーリーは 続く……
のかな? (笑)
「ラブラブ」の戦国的表現が分からず…お許しを f(^^;。夕月かかりて さん、勝手に 便乗妄想して すみません m(__)m?。
「周りには誰も居なかった」と ありましたが、源・トヨは しかと見ておりました (^.^)。
あ 失礼。「源・トヨ」って何のこっちゃ?…なら「女中頭」で検索してみて下さい。最初の 妄想投稿が 出て来ます。その後もちょこっと引っ張り出していますが、どれも大したことない内容ですので お気になさらず…(笑)。
現代バージョンも、楽しませて頂いてます。まだまだ ストックがあるとか… 楽しみにしてます。
他にも 妄想作家さんが 居られますけど「みんな違って みんないい」♪
妄想の競演・共演、楽しみましょう![no.335] 2020年11月25日 14:27 ぷくぷく(群馬)さん 返信作家さん誕生
妄想作家の妖怪千年おばばさん
そして、夕月かかりてさんもデビュー
古株?の私としては
負けていられません(^O^)/
ぷくぷく頑張りま~す(アムロ行きま~す風)
毎日誕生日は納得です(^O^)
優しい気持ちになりました(^_^)
私も色々書かせて頂きましたが、同じ視点が無いのは不思議です(^_^)
妄想の世界は楽しいって再認識しました(^_^)
速川家や羽木家などについてはまた私も考えてみようかなぁと思っていますが
一先ずその両家から離れちゃって(^_^)
予告していました高山宗熊の事を書いてみようと思います(^_^)
いつもの如く原作未読ですし、矛盾だらけではありますが妄想って事でお許しを(^_^;)
妄想の隙間シリーズとして〔創作俱楽部 №162(6/12)無題➄の中の宗熊が父親に嘘ついて、羽木家に文を出し、その返事が羽木忠高から届き、その文を読んだところから、№252(8/25)無題ラストのナレ:小平太は若君達を連れて行った。そこに八次郎と宗熊の姿が〕までの間の宗熊の行動を(^_^;)共に励みましょう(^O^)/
(偉そうにすみません(;_;))[no.334] 2020年11月24日 23:21 千絵ちゃん(静岡県)さん 返信秀逸至極m(_ _)m
夕月さん‼️笑いました
with 小姓→柚子胡椒 ?拍手
手巻き寿司の場面も見たい❗
天野爺が動物の買い物カートに
ハマってる姿も想像しただけで笑える~
細身だから案外…(笑)No. 329の2作品は偶然にも同No.
同じシチェーションでの
双方向の心の声は
新しい試み 独自のスタイルですね沸々と溜まっていた想いが
?噴出してるのですね❗
明るい作風 好きです?[no.333] 2020年11月24日 22:47 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days2~8日14時30分、仲良きことは
イケメン保育士と園児二名が歩いてるような。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅唯と若君が実験室から出てきた。
唯「いい天気!さっ、お出かけしましょ。どこ行こっかな~」
覚がキッチンから顔を出した。
覚「おーい、出かけるなら買い物頼む」
唯「えー?聞こえない聞こえない」
若君「父上、どんな御用じゃ?」
唯 心の声(ちぇー、若君優しいから~)
覚「米を買ってきて欲しいんだけどな。重いけど若君に頼めるなら」
若「お安い御用じゃ。して、どのくらいの重さかの」
覚「10キロ。あーわかんないか~」
尊「若君、甲冑一人分よりか全然軽いですよ。半分以下です」
尊が実験室から出てきた。
唯「なんであんたわかるの」
尊「若君にわかるように説明しないと。大切な兄上なんで」
唯「兄上…うんうん!」
若「なら二つは持てるの」
覚「いやいや~一つでいいから。イケメンが軽々と二袋も持ってたら、今度は女子高生じゃないのがついてきちゃうよ」
尊「誰が?」
覚「プロレスのスカウトとか」
唯「ちょっとー!若君で遊ばないで!はいはい、行ってくるから!お金ちょうだい」
覚「頼むね。夜は手巻き寿司だから楽しみにな。今日は大丈夫だけど明日の朝御飯が心細くて」
唯&尊「やったー手巻き寿司!」
若「父上の飯は何でも美味いが、二人がそれほど喜ぶのなら楽しみじゃ」
覚「はいよろしく。なんか巻きたい具あったら買ってきてもいいぞ。若君ばかりに荷物持たせるんじゃないぞ」
唯「いいよ、尊連れてくから」
尊「はあ?」
唯「あんた今一緒に喜んだじゃん。お散歩デートから、新婚カップルのスーパー巡りwith小姓!に変更するわ」
尊「最後、柚子胡椒みたいに聞こえるけど」
若「共に参ろう。尊が居れば心強い」
尊 心の声(あっ、若君の不安がダダ漏れ)
唯「そりゃ二人だけがいいに決まってるけどさ、仕方ないから連れてってあげる」
若「良いか?」
尊「承知つかまつりました、若君」
若「それでは、出立いたす」
唯&尊「ははーっ」
覚「夕方には戻れよ~」
三人、歩いてスーパーへ向かっている。
尊「ここは歩道が狭いんだから、手つなぎ禁止!一列!」
唯「えー」
若「尊の申す通りじゃ、唯」
スーパー近くで、歩道が広くなった。唯はすかさず腕を絡ませたが、
尊 心(一歩下がって歩くのも何だかな。前に出るか)
すり抜けようとすると、なんと若君が手を差し出してきた。
尊「えぇ?僕と?」
若「この手つなぎとやらは、なかなか幸せな気分になる。尊もいかがじゃ」
尊 心(それはお姉ちゃんとだからでしょう?でも断るのもなんだし)
三人並んでお手手つないで。
唯「変な集団~」
尊「いや、なんか楽しいかも」
若「尊もいつか姫君とな」
尊「えー」
唯「えー」
尊「何だよ姉ちゃん!」
若「姉弟仲睦まじいのう」
唯&尊「違う違う!」
若「ハッハッハッ」
入口に到着。
尊「カート取ってくる」
若「カー、ト?」
唯「買いたい品物を入れる、荷車みたいな?」
カート登場。
若「唯の馬とはまた違う、鋼の車じゃな」
尊「自転車とは用途が違うんで」
若「この手前のは何じゃ?」
チャイルドシートの部分を指差す。
唯「これは、幼き子をここに乗せます。二つ開いてる所に両足を入れて」
若「幼子のみか?」
唯「うん、孫四郎でもちょっと大きいかな。なんで?」
若「じいが足腰が悪くなってきておるゆえ、乗せてやりたい」
唯「じいを?!」
尊 心(お姉ちゃんが言ってた、世話になった天野家のじいの事?会った事はないけど、う~若君には悪いけど笑える!)
唯も尊も、若君の優しさがわかるからこそ、笑いをこらえている。
若「いかがした?」
唯「うんとね、じいって、全然じっとしてないじゃないですか。足バタバタすると、まだお金払ってない品物を蹴飛ばしそうだから、」
尊 心(お姉ちゃんにしてはグッジョブ!)
唯「違う乗り物があるの」
唯、キャラクターの形になっている幼児用カートを持ってきた。
唯「まっ、百歩譲ってこれかな」
若「ほう、色鮮やかであるの。じいが喜びそうじゃ」
尊 心(夫婦漫才か!)
若「尊、なんじゃ?」
尊「仲睦まじい事で」
唯「でしょでしょ~」
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
ちゃんと買い物完了する?
[no.332] 2020年11月24日 22:44 夕月かかりて(愛知)さん 返信励みになります!
てんころりんさん、早速感想までいただきありがとうございます。
千絵ちゃんさんにも背中を押され、作家デビューさせていただきました。
てんころりんさん、感服しました!若君の干支をお調べになったとは。身近に感じる事ができて嬉しい。再来年は、年男ですね!
毎日誰かの誕生日、私の完全オリジナルだったらカッコ良かったんですが、残念ながら違います。
私が以前住んでいた町に、ある洋菓子店がありまして、年中無休なんです。ショッピングモールの中だから無休とかではなくです。その理由というのが「毎日誰かの誕生日だから、必ず祝ってあげられるように休みなし」だったんです。いたく感動しまして、今回少し変えて若君に語ってもらいました。日付の訂正もありがとうございました。必ず夜ですもんね。失礼いたしました。期せずして同じ日になりました。
この後第2話です。早いかしら?ストックが有りますので…。
[no.331] 2020年11月24日 10:23 てんころりん(東京)さん 返信夕月かかりてさん☆初作品
読ませて頂きました~。
唯と若君の会話は全く同じに、2人の心の声で、違うバージョンの物語に仕上がっていました。
アイデアが斬新!とても面白かったです。
初キスの唯は、幸せ感と戸惑い (/-\*)
若君は唯の反応にあれこれ思う σ(゚Д゚*)若君『唯は“面白い”‥ 腑に落ちない顔をされる‥ 先の世とは“意味合いが違う”ようだ』ここ、公式掲示板をよく読まれてますね。
若君が言う「面白い」は、語源の意味で捉える方が相応しい。この意見を取り入れたんですね。SP平成での日々~*
若君は数え年。永禄2年/1559年 18才でしたね。
ってことは、1542年/天文11年 壬寅(ミズノエトラ)年生まれ でしょうか?
唯が尊に見せる資料に『永禄三 庚申(カノエサル)年十一月… 』とあり、何年生まれか? 干支は何か? 知りたくて、調べたことあるんです。
余計なことですけど‥ f(^^;『毎日が大切… 毎日誰かの誕生日』ほんと.深い言葉てす。???
あっ 唯と若君が平成に到着した日は、2018年11月23日の満月です。
2年前の2人の到着と ちょうど同じ日に、夕月かかりてさん、初作品発表だったですね!
次回作 楽しみにしています。- この返信は4年前にてんころりん(東京)が編集しました。
[no.330] 2020年11月23日 23:22 夕月かかりて(愛知)さん 返信二人の平成Days1~2018年12月8日土曜14時、一日一日を大切に
平成での29日間、ところどころを覗きます。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅土曜の昼下がりの実験室。若君と尊の二人。
若君「しかしこの部屋は、まるで生きているようじゃ。常に光が明るうなったり暗うなったり。面妖な」
尊「生きてる、なるほどそうかもですね」
尊 心の声(機械に目を輝かせるトコなんて、若君も男子って感じだな)
唯が入ってきた。
唯「みーつけた。んもう、籠るのは尊だけでいいのに」
若「この部屋にはいくらでも居られる」
尊「ほら、男同士通じてるんだよ」
唯「なにそれ。ねえねえ、若君ってさー、誕生日っていつ?」
尊「なにそれ急だし」
若「たん…じょうびとな?」
唯「ケーキ…はないな、お祝いのご馳走とかパーティーとか」
若「?」
尊「お姉ちゃん」
唯「何よ。尊知ってるの?」
尊「じゃなくて。戦国時代は、そんな風習はないんだよ」
唯「そうなの?いつか覚えとこと思ったのに。えーじゃあ、いつ年とるの?」
尊「誰もかれも年のはじめ、元日に一歳増えるんだ。数え年って聞いた事ない?」
唯「ない」
尊「これだから。だからいつ生まれたかは知っててもお祝いはないよ、ねえ若君」
若「そうじゃな。生まれた日とは大切か?」
尊「そうですね、現代では」
若「そうか。では毎日が大切じゃ」
唯「なんで?」
若「毎日誰かの誕生日じゃ」
尊「深い…さすが総領」
唯「毎日大切?超カッコいい!じゃあ今この時間も大切だから、お散歩デートに行きましょ、若君~」
男子、顔を見合わせて苦笑。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅
次回、お散歩デートなるか。
[no.329] 2020年11月23日 23:09 夕月かかりて(愛知)さん 返信ドラマ最終話ダイブ!の続き~若君篇~
こちらは、同じシチュエーションの若君側です。
┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅愛しい唯の鼓動を感じながら、空を眺めていた。
若君「唯」
唯「はぁい…あっごめんなさい!」
首に回していた腕をほどき退こうとするので、
若「いや、そうではない」
胸元に引き戻し、再び腕の中に。
唯「えっ」
空の彼方を見つめながら語りかける。
若「…そなたは誠に軽い身よのう、手足も棒切れの様であるし」
唯「えー?それ、褒めてます?」
若「褒めておる。前より思うておったが、このような体で、幾度もわしや羽木を救うてくれた、心より礼を申す」
唯「そんな。お礼は前も言われたし、若君を守ると決めたのは私だから」
若君 心の声(しかし戦はまたいつ始まるやわからぬ。何とか唯を出さずにすむ手立てはないだろうか)
唯「あっでも、背中とか痛いじゃないですか」
唯が体を起こそうとする。
若 心(このままするりと逃げてしまいそうじゃ)
右手を伸ばして顔を包んだ。
若「このままで良い。眼前には一面澄んだ空と唯だけじゃ。心地よい」
髪を撫でながら見つめると、唯はまた泣きそうな顔をしている。
唯「若君…」
若「なんじゃ?」
唯「超…超幸せですぅ」
若「幸せか、わしもじゃ」
若 心(笑顔も泣き顔も実に面白い。しかしそれを伝えると唯はいつも腑に落ちない顔をする。先の世とは意味合いが違うようだが、わからぬ。尊に聞いておくべきであったな)
唯「…若君ぃ」
若「ん?」
唯「心の臓が止まりそうですぅ」
若 心(どこかで聞いた様な。何も食してない筈だが、例えで良いのであろう)
若「ハッハッハ、それは困るのう」
若 心(尤も、唯が拐われた折はわしも心の臓が止まりそうであったわ。今となっては懐かしい話じゃ。ここまで心を動かされるとは)
若「心通じ合う姫など要らぬ、と思うておった時期もあったがの」
唯「そうなの?」
若「唯に出逢うて誠幸せじゃ」
体を起こし、唯も座らせたが、うつろな目で下を向いている。
若 心(今が適期では)
あごをそっと持ち上げる。驚いているが構わず近づき、唇を重ねた。邪魔する者もなく、風の音と鳥のさえずりだけしか聞こえない。
暫くすると、唯が怒り出した。
唯「若君…速攻過ぎますっ!さすが戦国武将、じゃなくてっ」
若「ん?如古坊や源三郎が参る前にと思うての」
若 心(何ゆえこうも腹を立てておるのか?同じ気持ちではなかったのか)
唯「あぁそだね。じゃなくて!なんというか、もちょっともったいぶるというか、ロマンチックに…ってこれ英語じゃん、もーっ何て説明すれば!」
若 心(早口であるし、先の世の言葉も入っているようでわからぬが…わしが悪いようじゃし、落ち着くまでもう少し話を聞こう)
若「それで?」
唯「ファーストキスなんだからあ、あっまた英語だった、えーと初めての~口づけなんですぅ。そりゃ若君にとっては初めてじゃないかもしれないけどさ、あっ否定しない?ちょっとショック」
若 心(今まで焦らされておったから、わしは堪忍袋の緒が切れそうじゃったのだが。初めてとそうではないのは何か意義が違うらしいが何であろうか)
若「唯が何に腹を立てているかはわからぬが」
向き直って真っ直ぐ唯を見つめる。
若「では如何すれば良い?」
唯「そうゆーんじゃないんだけど…もういいです」
若 心(落ち着いてきたようだな)
若「良いのか?」
唯「じゃあ今度からはー、心の準備ができてからで」
若「ほう、あいわかった」
若 心(そうか、急いてはならぬのだな。それはあい済まなんだ。これからは必ず許しを得よう)
唯「でも私は、若君が初めてで良かったし、これからもずっと若君だけですから」
若「そうか、それは喜ばしい事じゃ」
唯「ずっとお供するんですからっ」
若 心(必ず守ってみせようぞ)
若「心得た、で」
若 心(改めて許しを)
唯「へ?」
若「今はもう準備は出来ておるか?」
唯「えっ?えっと…はい…」
もう一度優しく口づけた。
この世界に二人だけ、かのような、静かで緩やかな時間だった。
[no.329] 2020年11月23日 21:57 夕月かかりて(愛知)さん 返信ドラマ最終話ダイブ!の続き~唯篇~
一緒に倒れこんだ後、若君に抱きついたままの唯。
唯 心の声(なんか…もう一回プロポーズされたみたいな感じ?超嬉しい!)
日差しが暖かい。
唯 心(ぽかぽかして気持ちいい…若君もあったかい…)
夢うつつにまどろんでいた。
若君「唯」
唯「はぁい…あっ!」
若君に、全体量乗っかったままでいる事にようやく気付く。
唯「ごめんなさい!」
首に回していた腕を外し、退こうとすると、
若「いや、そうではない」
胸元に引き戻され、再び抱き締められた。
唯「えっ」
戸惑っていると、若君はゆっくり話し始める。
若「…そなたは誠に軽い身よのう、手足も棒切れの様であるし」
唯「えー?それ、褒めてます?」
若「褒めておる。前より思うておったが、このような体で、幾度もわしや羽木を救うてくれた、心より礼を申す」
唯「そんな。お礼は前も言われたし、若君を守ると決めたのは私だから」
そう話しながら、
唯 心(前から軽いと思ってたって…どゆこと?あ、そっか!長沢城でおんぶしてもらったっけ。えへへ~。でもあの超カッコ良かった若君、全然見えなかった~ちょっとざんねーん、あーあとお姫様だっこもあこがれるなあ~今度おねだりしよっ)
兄上の部屋でのくだりは認識なくカウントされていないが、思い出してはニヤけ妄想してはニヤけていた。が、
唯「あっでも、背中とか痛いじゃないですか」
降りようと体を起こすと、若君の右手が伸びて顔を包み、
若「このままで良い。眼前には一面澄んだ空と唯だけじゃ。心地よい」
見つめながら優しく髪を撫でるので、胸が熱くなりまた泣きそうだ。
唯「若君…」
唯 心(会えなくて辛い事もあったけど、なんか、なんか…)
若「なんじゃ?」
唯「超…超幸せですぅ」
若「幸せか、わしもじゃ」
唯 心(もう、夢じゃない)
ふっと体の力が抜け、若君の胸に再び持たれかかった。
唯「…若君ぃ」
若「ん?」
唯「心の臓が止まりそうですぅ」
若君、少し考えた様子だったがすぐ破顔。
若「ハッハッハ、それは困るのう」
声が体越しにも響いて、全身で若君を聴いているよう。
若「心通じ合う姫など要らぬ、と思うておった時期もあったがの」
唯「そうなの?」
若「唯に出逢うて誠幸せじゃ」
若君は体を起こした。唯も座り直したがまだうつろに下を向いている。
若「唯」
大きな手で優しくあごクイされ顔を上げると、思いの外距離が近い。
唯 心(あっ)
目を閉じる間もなく、唇が重なった。
唯 心(はやっ!えーっえー…)
驚きはしたが、次第にその感触の柔らかさに、
唯 心 (キスって、キスってこんなに体までトロけるものなの…)
目を閉じすっかり夢見心地。風の音と鳥のさえずりだけが二人を包んでいる。
……どれだけ時が流れたか、もう一度強く抱き締められた。腕の中で唯は我に返り、
唯「若君…速攻過ぎますっ!さすが戦国武将、じゃなくてっ」
若「ん?如古坊や源三郎が参る前にと思うての」
唯「あぁそだね。じゃなくて!なんというか、もちょっともったいぶるというか、ロマンチックに…ってこれ英語じゃん、もーっ何て説明すれば!」
怒涛の勢いに、若君が首をかしげている。
若「それで?」
唯「ファーストキスなんだからあ、あっまた英語だった、えーと初めての~口づけなんですぅ。そりゃ若君にとっては初めてじゃないかもしれないけどさ、あっ否定しない?ちょっとショック」
若「唯が何に腹を立てているかはわからぬが」
若君は向き直り、
若「では如何すれば良い?」
唯「そうゆーんじゃないんだけど…もういいです」
若「良いのか?」
唯「じゃあ今度からはー、心の準備ができてからで」
若「ほう、あいわかった」
唯「でも私は、若君が初めてで良かったし、これからもずっと若君だけですから」
若「そうか、それは喜ばしい事じゃ」
唯「ずっとお供するんですからっ」
若「心得た、で」
唯「へ?」
若「今はもう準備は出来ておるか?」
唯「えっ?えっと…はい…」
もう一度そっと優しく口づけられた。
唯 心(ドキドキが止まんないよぉ!若君、策士?)
周りには終始誰も居なかった。急いで呼びに来る者がいないという事は平和の証であり、束の間ではあるが緩やかな時間が流れていた。
[no.328] 2020年11月23日 21:40 夕月かかりて(愛知)さん 返信失礼いたします
最近、アシカフェに入店いたしまして、こちらには初めて参りました。夕月かかりてと申します。
諸先輩いらっしゃるなか私も、とムクムク創造が膨らみ、僭越ながら創作物語を発表させていただきたく、お邪魔いたしました。
私の物語ですが、
・ドラマは本編とSP、Blu-rayの赤青の内容は観ている
・原作は読んでいない
・でも公式掲示板などで漏れ聞いた、原作関連の内容が混じるかもしれない
・キスに至る際の寸止めは、ない
となっております。「今回寸止めありません」と毎回お伝えするのも興醒めですので、アシガールは寸止めこその美!とお考えの方は、ご覧になられませんようお願いいたします。
本日、一気に三篇投稿いたします。ドラマ最終話の続き二種と、平成での二人の物語第1話です。
ド新人創作者の物語、ご笑納ください。
[no.327] 2020年11月10日 21:23 妖怪千年おばばさん 返信てんころりん様
いつも感想をありがとうございます。
m(__)m
前に書いて頂いた感想を拝見し、、
”小平次”も良かったな~”
と思っていました。(^_^)v
原作の10巻には、
SPのラストシーンを彷彿とさせる
場面も描かれていますね。今、”十三夜”の後の物語の
構想を練っています。高山と武田、両軍に取り囲まれた、
小垣城に若君がどのように入ったのか
その謎ときをしようかと。
それに、ふきちゃんがどう関わるのか、
楽しみにしていてください。(^_^)vでは、しばし、お時間を!
[no.326] 2020年11月9日 23:37 てんころりん(東京)さん 返信な~るほど
「十三夜」二の姫と小次郎の物語は、爺様の夢だったとされたんですね。
私も原作にあるという小平太の弟.夭折の話は、全く覚えておらず、すみませんでした。
原作は去年11月に13巻まで読みましたが、ドラマが深く入り過ぎていて、全く頭に入りませんでした。
若君が嘘をついて唯を帰す(ドラマ8話)辺りまで再読して、原作には原作の良さがあると、初めて分かった?初心者です。結びの段で爺様の夢として、同じ名の佐々木小次郎(!)を登場させ、今は亡き小次郎がこの世に残した想い、爺様の孫への想い、現実が幻想的に入り混ざり、一層感慨深い物語に思えました。
どうぞまた楽しませて下さいね。そして私の大失敗:小平太の弟の名を小平次だと思い込んでました!あちゃー(>_<)
それをno.317に、実際書いてしまいました!
お詫びして訂正させて下さい。m(__)m[no.325] 2020年11月8日 10:37 妖怪千年おばばさん 返信十三夜 結びの段
居間で眠りこけている信茂を、
当主の天野信近が揺り起こした。「父上、ここで居眠りをされては、
風邪を召されますぞ。」「ん・・・ううん。」
「祭りの酒が、まわりましたか。」
「お、おう。
ちと飲み過ぎたかのう。」そこへ、長男、小平太が狩衣姿で
やって来た。「ただ今 戻りました。」
「おお、小平太。よう戻った、
して首尾は?」「それが、そのう・・・」
「首尾とな?な、何の事じゃ?」
「は?」
「は?」
信近と小平太が、顔を見合わせる。
「何を寝ぼけておられるのです。
鈴鳴八幡の流鏑馬に
決まっておりましょう。」「おお、そうじゃった。
で、如何じゃった?」「そ、それが、
まことに面目ない事に、
勝ちは鐘ヶ江殿でござる。」「なんと、
此度も鐘ヶ江の巴御前か?
二度もしてやられるとは
情けない。
で、小次郎は?
まだ戻らぬのか?」「は?」
「は?」
また、信近と小平太が、
顔を見合わせる。「小平太、着替えて参れ。
それから、誰ぞに、
濃いめの茶を持たせよ。」「は、直ぐに。」
信近は、信茂の顔を
しげしげと覗き込む。「夢でも、見て
おられたのですか?
小次郎は、とうに・・・」「戻っておるのか?
では、早うこれへ。
二の姫との話も進めねば。」「はあ?
ですから、父上、小次郎は・・・」「茶をお持ちしました。」
信茂の様子を案じた小平太が、
自ら茶を運んできた。「爺様、鐘ヶ江殿の、
流鏑馬披露は、此度が初の事。
決戦に持ち込みましたが、
一心同体の見事な馬さばき、
寸分もぶれぬ矢で、
全て見事に射抜かれました。」「此度が初・・・とな?
して、小次郎は?」「ご存じだったのですか?
小次郎殿の事を?
小次郎殿も、決戦に
臨まれましたが、かろうじて、
私が一枚上となりました。」「さ、さようであろう。
わしは、
夢など見ておらぬわ。」信近が、小平太になにやら囁く。
それを聞いた小平太が、
信茂に茶を進めながら、
つとめて穏やかに言った。「爺様、小次郎殿と言うは、
佐々小次郎殿。
鈴鳴八幡の禰宜殿の、
遠い縁者に当たられるとか。
ゆえあって、射手を辞退した
源三郎の代役として、
禰宜殿が、弓の上手を
呼ばれたのです。」「な、なんと。」
「我が家の小次郎も、存命であれば
元服も済み、
流鏑馬も披露できる年頃。
八幡大神が、父上に、
夢で会わせて下されたのでは。」「夢で・・・とな?
う、ううむ・・・。
さよう・・・か。
さようであったの、
我が孫の小次郎は、
すでに・・・」信茂は、渋い茶を飲み終えると、
夜空の月を振り仰いだ。百本の矢を的に当て、
額に汗を浮かべたまま、
晴れやかに微笑んだ、
小次郎の顔が浮かぶ。「信近、夢の中の小次郎は、
瓜二つじゃった。
ぬしの若き頃にの。」信茂の声に、信近も月を見上げた。
つられて小平太も月をみて、
こう言った。「思い出したことが・・・。
確か、小次郎が
亡くなる前に、書いた文が
あったはず。
文箱を探して参ります。」・・・・・・・・・・・・・
それから、間もなくの事。
城内がにわかに慌ただしくなった。
高山に送り込んでいた間者が、
知らせて来たのだ。
密かに高山が、小垣に攻め入る
準備をしていると。城主、羽木忠高は、惣領の忠清を伴い
小垣の近くに馬を走らせた。
田にはまだ、
刈り取られていない稲が残っている。「いよいよ、お前も初陣となろう。」
「望む所にござりまする。」
「頼もしい事じゃ。
だが、忠清、将と言うものは、
相手に深手は負わせても、
深追いはならぬ。
手柄を上げようと逸る家臣を、
押さえるのも、将の役目ぞ。」「心得ました。」
「それと、もう一つ。
戦場は選ばねばならぬ。
刈り入れ前の田を踏み荒らすは、
己の首を絞めるのと同じじゃ。
戦の前には、必ず、おなごと童は、
村の世話役や庄屋の元に集めよ。
村の者は、おなごも童も
大切な働き手じゃ。」「童も働き手。。。」
忠高は、深くため息をつく。
「如何なされたのですか?」
「忠清。心せよ。
ぬしの代には、村の者にも、
城下の物売りの者にも、
皆、武芸を仕込まねば
ならぬやもしれぬ。」「皆?それは何ゆえに?」
「都の将軍の力が弱まっておる。
荒れた時代が来る事になろう。」忠清は、父の横顔を見つめた。
“父上は、常に時代を
読んでおられる。見習わねば。”秋風が、稲穂を波打たせている。
「おお、そうじゃ。松枝村の
すすきが原へも参ろう。」「すすきが原?」
「お前は、覚えておらぬのか?
あれには、まこと、
皆が肝をつぶしたものじゃ。」忠高は、幼い日の忠清を思い出し、
高らかに笑った。
忠清は、訝しみながらも、
馬を進める。草原に出ると、忠清は、
なぜか懐かしい思いにとらわれた。吹雪が首を上げ、小さくいななく。
忠清は思い出した。
“そうじゃ。ここは・・・”「父上、しばし、吹雪を
走らせて参りまする。」忠高は黙って、うなずいた。
7年前の十三夜の事だった。
忠清とまさに同じ日に生まれた
白馬、吹雪は、
鈴鳴八幡に奉納されるはずだった。
吹雪は、何事かを察したように、
数日前から落ち着かず、
馬番をてこずらせた。
その日、空が白み始めた頃、
忠清は、一人、部屋を抜け出すと、
厩に向かった。
馬番は吹雪の毛並みを整えていた。
気持ちが良いのか、さすがに
吹雪もおとなしくしている。
馬番よりも早く、忠清の気配に
気づいた吹雪が、首を伸ばす。「こ、これは、若君様。」
「吹雪と別れを惜しみたい。
しばし、外してくれぬか。。」「恐れながら、吹雪は、今、
気が荒れておりまする。
若君様に何事かありましては。」「これでもか?」
吹雪は、若君の胸に頭をつけ、
甘えている。
馬番は、飼葉を取りに
行くことにした。「吹雪、案ずるな。
お前はどこにもやらぬ。」厩の柵につないだ縄を解くと、
吹雪は、前足を折って屈んだ。
忠清は、水桶の淵に足をかけ、
すばやく吹雪の背に乗り、厩を出た。
吹雪を鈴鳴神社に送る為に、
早々と開いていた厩門を
一気に駆け抜けると、
黒羽城から一番遠い、
国境の小垣城を目指した。すすきが揺れる草原を、
吹雪と共に駆け抜ける。
まるで、一陣の風の様に。小垣城では、城代の木村が
陽の落ちた空に浮かぶ一番星を
見上げていた。
そこへ、門番が突然、
若君の来訪を知らせて来た。
何事かと、木村が自ら迎えに出る。
そこで、目にしたものは、
鞍もつけずに白馬に跨り、
満面の笑みを浮かべている、
幼い忠清の姿だった。「正秀、思い立って月見に参った。
今宵は小垣で過ごすと、
黒羽に使いを頼む。」木村正秀は、驚きのあまり
危うく腰を抜かす所だった。“天賦の才とはこの事か。
わずか六才で供も連れず、
馬を操り、駆けて来るとは。”空は、あの日の様に青く澄んでいる。
白い雲の下に、小垣城を認めると、
忠清は、手綱を引いた。「吹雪、今日はここまでじゃ。
お前との思い出の地、
何としても守ろうぞ。」ひと月後、忠清は初陣を飾った。
家臣はいつにも増して士気高く、
忠清の周りを固め、
高山軍は、攻め込んだことを
悔やむ様に、退いていった。・・・・・・・・・・・・・
「天野殿も参られたのですか。」
鈴鳴八幡の大社で、信茂は
鐘ヶ江久政に声をかけられた。「やや、これは鐘ヶ江殿。」
「せっかくの事です。
こちらでしばし、
ゆるりとされては如何?」禰宜の言葉に、
天野信茂と鐘ヶ江久政は、
大社から渡り廊下で続く建屋に入った。
巫女が、お神酒を運んで来る。信茂も久政も、
此度の勝ち戦のお礼参りに、
来たのだった。信茂にとっては、大切な
若君の初陣でもあったので、
格別な喜びであった。「鐘ヶ江殿、伺いましたぞ。
二の姫殿が、見事な流鏑馬を
御披露されたと。」「お恥ずかしい限りでござる。
あれには、いつも冷や汗を
かかされましてな。
こちらの禰宜殿が
お許し下さったから良いものの。」「まこと。頼もしきおなごじゃ。
実は、あの日、
わしは夢を見ましてのう。」ほろ酔い気分で、
信茂は夢の子細を語った。「先日、我が孫、小次郎が
亡くなる直前に書いた文が
見つかりました。
二の姫殿に宛てた文でしてな。
兄の小平太から
二の姫殿のお噂を伺って、
密かに憧れておった様で。
この病が癒えたら、
弓の指南をお願いしたいと。」「さような事が。
なんとも、不思議な事じゃ。」「実は、天野殿。
射手を務めた佐々小次郎は、
此度の戦の間、
こちらにとどまり、
この八幡宮の警護に
当たっておりましたが。」禰宜は、一呼吸おいて言葉を続けた。
「只今、二の姫殿との縁談を
進めておりまして。」「な、なんと。
それはまことでござるか?」「まことでござる。のう、天野殿、
これも八幡大神が下さった
御縁やもしれぬ。
無事、婚礼と成りました折には、
是非ともお立ち合い下され。」巫女が、禰宜を呼びに来た。
他にも、玉串を捧げに来たものが
あるらしい。鐘ヶ江久政は、
禰宜が退出するのを見届けると、
信茂の耳元で、声を潜め、
何事かを打ち明けた。信茂は、驚きを隠せなかったが、
咳ばらいを一つすると、
おもむろに立ち上がった。「では、その儀は、いずれまた。」
信茂は、ふと思い立ち、
境内の裏手に回った。
そこには、
吹雪の代わりに奉納された、
新月の厩がある。
新月は、吹雪と同じ年に生まれたが、
こちらは、漆黒の毛並みを持つ。
性格は穏やかで、
斎王行列の先頭を飾る馬として、
申し分が無い。
戦には向かぬかと思えたが、
此度は、甲冑姿の守り人を背に乗せ、
大社の鳥居の前に立ちはだかり、
動じなかったと禰宜から聞いた。「お前も、ようやったの。」
信茂は、新月に優しく声を掛けた。
まるで、今は亡き小次郎に
語りかける様に。
紫に変わる雲の上に、晩秋の陽の光が
うっすらと残っていた。[no.324] 2020年11月8日 09:44 妖怪千年おばばさん 返信”十三夜” タイトル変更
原作ファンの皆様、ごめんなさい。
10巻を読み直した所、天野家次男は、
10才にならないうちに
病死とありました。
”十三夜”は、漫画版を想定してます。
そこで、今までの”上、中、下の段”
を”序、早、急の段”と訂正しました。
これから、”結びの段”を投稿します。10巻の原作者のあとがきを拝見。
ドラマのSP終了後、漫画も終了予定
だったんですね。ドラマと原作が、
本当に良い関係で、原作の続投に
つながったのかと、感動しました。
これも、先輩アシラバ様達の
お蔭ですね。
ありがとうございます![no.323] 2020年10月23日 22:07 妖怪千年おばばさん 返信十五夜と十三夜
こんばんは!
先日、帰宅途中に、
大変美しい三日月を見ました。
昔、母が、十五夜にお供え物を
したら、十三夜も必ずするものだと
言っていたのを思い出しました。
母は、お団子ではなく、
お饅頭を供えていました。
十五夜には15個。
十三夜には13個。
ススキは、稲穂の代わりの様ですね。
団子は、里芋に見立てたものだとか。唯ちゃんを十五夜に例えると、
ふきちゃんは十三夜かなと。
そんな気がして、物語を書きました。
黒羽城に呼ばれた後の事も、
書きたかったのですが、
あまりにも長くなってしまうので、
それはまた、別の機会に。てんころりん様
感想有難うございます!
楽しんで頂けたようで、
嬉しいです。(^_^)v
続編もまた書いてみますね。[no.322] 2020年10月22日 15:43 ぷくぷく(群馬)さん 返信ごめんなさい
てんころりんさん
やり取りが嬉しくて、調子に乗ってはしゃいでしまった(;_;)
この歳になっても調子に乗りやすくブレーキが利かない性格、もぉ治らないですね(^_^;)本編では、心の声は唯と尊だけだったので、そのスタンスは変えずに、〔(心の声)〕
ご提案の〔……〕の形を使って書いていきます(^_^)宗熊の事はまだ完結していないので、出来上がりましたら書かせて頂きます(^_^)
ユーザー登録の事ですが、誤字脱字が多い私の事を心配して下さって以前にも登録はどうかとおっしゃって下さった方がおりましたが、ご提案頂いているにもかかわらず未だに登録していないのは
登録によって何かがという事では無くて、あくまでも私側の諸事情で躊躇しております。
すみません(>_<)誤字脱字等々の多い私が書いた後にあれやこれやと書く事を申し訳なく思っています。
別に急ぐことではないのだから、時間をかけて確かめてから送信するように努めます(^_^)
これからも宜しくお願い申し上げます(*^_^*)