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    満月はイブの前 後編

    気まずい数日の後、
    約束の日曜日がやって来た。
    岩谷さんに連絡を取りたくても、
    ラインもメアドも、
    電話番号すら、交換していない。
    僕は、迷いに迷った末、
    黒羽城公園に向かった。

    “来ないかも。”

    約束の時間はもう15分過ぎている。
    その間、僕は、資料館の外の、
    入口の脇にある自販機の前で、
    コイン占いをしていた。

    ”26勝74敗。ボロ負け”

    そして、101回目。
    親指で上にはね上げた百円玉を
    取り損ね、落としてしまった。
    銀色のそれは、コロコロ転がって、
    無情にも自販機の下に潜り込んだ。
    仕方なく、僕は、両膝をついて
    自販機の下に腕を突っ込んだ。

    すると、その時、
    資料館のドアが開いて、
    誰かが、中から出て来る気配がした。
    頭の上から、声が降って来る。

      「な、何してるの?」

     「え?」

    振り向くと、そこには、
    丸い銀縁メガネの岩谷さんが
    立っていた。

      「こ、来ないと思って、
       か、帰ろうかと思っ・・・。」

     「ま、待って。中にいたの?
      いつから?
      あ、何か飲まない?
      今日は、僕がおごるよ。」

    膝をついたまま、泥だらけの手で
    100円玉を握りしめている僕を見て
    岩谷さんがクスリと笑った。

    資料館の隅の、
    小さなテーブルをはさんで、
    数学の問題をいくつか解いた後、
    僕たちは、また、ドレスの話をした。

    岩谷さんは、学校帰りに、
    問屋さんや、古着屋、
    バーゲン中のブテイックを回って、
    予算を立ててくれていた。

    僕は僕で、父さんに相談し、
    クリスマスパーティーの費用から、
    ドレスの製作費を補助してもらう事に
    成功したが、僕の貯金箱を
    空にしても、岩谷さんの予算には、
    まだ足りなかった。

     「あと、少しなんだけどなあ。
      う~ん・・・。あ、そうだ!」

    僕は、父に電話した後、岩谷さんと
    トシさんの店に向かった。

    「おお、尊君。いらっしゃい。
     おやおや、今日はデートかい?
     隅におけないねえ。」

     「あ、いや、そうじゃなくて。
      ちょっとお願いが。
      この間、予約したケーキ
      なんですけど、少し小さいのに
      変えて貰えますか?」

    「え?そりゃあ良いけどさ。何で?」

     「そ、それが、
      ちょっとした訳があって。」

    「そう言えばさ、受取日、
     イブじゃなかったよね。
     この間、お父さんが来て、
     確認してったんだ。
     なんか、特別なお客さんの為の
     パーティなんだって?
     それなのに、小さくしちゃって
     良いの?」

     「父さんがそんな事を?
      あ、いや、
      確かに豪華にしたくて、
      いつもより大きいのを
      頼んだんですけど。
      食べきれなかったら、
      勿体ないって、
      さっき父とも話して。
      それで。」

    トシさんは、さりげなく
    岩谷さんを眺めてから、こう言った。

    「じゃあさ、こうしないか?
     ケーキの大きさは、
     そのままにしてさ。
     そのかわりに、尊君が、
     イブにここを手伝うってのは?
     そこの彼女さんも
     一緒にどうですか?
     店を閉めた後には、
     お好きなケーキ、
     御馳走しますよ。」

    トシさんは、ひそひそ声で、
    僕だけに付け加えた。

    「そうすりゃ、
     イブのデート代もいらないし。」

     「あ、いや、
      そういう事じゃなくって。」

    僕が小遣いのほとんどを、
    発明につぎ込んでいるのを、
    トシさんは知っている。
    で、完璧に勘違いをしてるって訳だ。
    ケーキを小さくするのは、
    イブのデート代の為だと。

    トシさんの誤解を解こうと、
    アワアワしている僕の後ろから、
    思いがけない声が響いた。

       「わ、私で良かったら、
        ぜ、是非!」

      「え、ええー?!」

    思いがけない展開に、
    僕はますます焦った。
    そんな僕の気持ちをよそに、
    店の奥の厨房から、
    奥さんの嬉しそうな声がした。

     「助かるわ~、尊君。
      あれからまた、
      駅前のホテルの注文が入ってね。
      手が足りないのよ~。
      なんなら、今からでも、どう?」

      「い、今から?」

       「やります!
        やらせてください!!!」

    岩谷さんが、
    キッパリ、ハッキリ、引き受けた。

    “やっぱり、そこは、
    どもらないのね。”

    全くの予定外だったが、僕たちは、
    それからしばらく、
    クリスマスツリーのセッティングや、
    ケーキの予約注文の整理をして、
    店を手伝った。

    岩谷さんは、ケーキの下に敷く紙で、
    器用に雪の結晶を切り抜いて、
    奥さんとトシさんを喜ばせた。
    このシーズン中、
    カフェコーナーのケーキは、
    その切り抜きの上に載せるという。

    そんなこんなで、店を出た時には、
    二人とも数時間分のバイト料を
    手にしていた。

     「よ、良かったね、尊君。
      こ、これで、ド、ドレスの
      材料費、クリア!」

    “速川君”が、いつの間にか、
    “尊君”になっている。
    思わず、顔が赤らむ。

     「あ、いや、
      岩谷さんの分は
      ちゃんと受け取って。」

      「い、いいよ。
       そ、その代わり、
       また、教えて。
       こ、今度は、
       ぶ、ぶ、ぶ、“物理”。」

    その翌日、
    僕たちは放課後に待ち合わせ、
    ドレスの材料を買いに行った。

       ・・・・・・・

    少し早いクリスマスの
    パーティー当日。
    つまりは、満月当日。

    姉と若君は、朝早くから
    出かけて行った。

    あの姉の事だ。
    半餃子か半炒飯がつく
    ランチタイムを狙って、
    ラーメンデートをするのは確実。
    早くても帰ってくるのは
    14時半過ぎだろう。

    母は、診察室にいる。

    岩谷さんは、大きな袋と、
    小さいミシンを抱えてやって来た。
    キッチンのドアから、
    そっと家に入って貰い、
    足音を忍ばせながら、
    二階にある僕の部屋に行った。

    早速、二人で
    ドレスの仕上げに取り掛かる。
    バーゲンで買ったミニの
    キャミソールに、円形のフリルを
    縫い付けると、
    ロングドレスに早変わり。
    さらにその上に、チュールレースを
    何枚も重ねる。
    すると、透ける羽がオーロラ色に
    輝く、妖精ドレスになった。

    百円均一で買った白いシュシュを
    レースに縫い付けると、
    あっという間に袖が出来上がる。

    サテンの端切れはバラの花に。
    それをビロードのリボンにつけると、
    チョーカーになった。
    もう一つ作って、ヘッドドレスに。

    僕は、言われるままに、布を切り、
    糸を引いてギャザーを寄せる。
    それを、岩谷さんは手際よく
    形にしていく。
    まるで、ディズニー映画の
    魔法使いだ。
    感心していると、
    岩谷さんの声が飛んできた。

      「尊君、試着して!」

     「えええ?ぼ、僕が?」

      「チュ―ルのボリュームを、
       確かめたいの。
       私が着ると、
       手直しできないし。」

     「はああ???」

    暫くして、廊下から、
    父の声が聞こえた。

    「どうだ?間に合いそうか?」

    “な、何で、今? 
     わああああ・・・・!”

    止める間もなく、
    絶望的なタイミングで、
    部屋のドアが開いた。
    そして、父が目にしたのは、
    輝くウエディングドレスに身を包み、
    恥じらいの笑みを浮かべる娘・・・
    ではなく、
    ひきつりまくっている僕・・・
    だった。

    「た、たけるう???!!!」

    絶叫する父の口を、
    僕は、慌てて押えた。

       「なあに、どうしたの?」

    いつの間にか、
    診察室から戻っていた母の
    足音が聞こえる。

     「まずいよ、父さん。
      何とかしないと!」

    「あ、ああ。」

    我に返った父が、
    部屋のドアから顔だけ出して
    母に言った。

    「あ、いや、何でも無い。
     そうだ、母さん。忘れてた。
     君の大好きな、
     スパークリングワイン。
     一緒に、買いに行かないか?
     僕が銘柄を間違えたりしたら、
     がっかりだろ?」

    二人が出かけて行くのを確かめた後、
    僕は、さっきの父の様子を思い出し、
    大笑いした。
    岩谷さんも、
    お腹を押さえながら笑っている。

    笑いがやっと収まった頃、
    買っておいたサンドイッチを
    二人でつまんだ。
    岩谷さんが、念を押すように言う。

     「先にドレスの本体を
      着て貰ってから、
      腕に袖を通してあげてね。
      このデザインは、
      袖を縫い付けない所が、
      ポイントなの。
      バレエのチュチュ
      みたいでしょ?」

    「チュチュ?」

     「えっと、衣装の事。
      バレリーナの。」

    「そうなんだ。覚えとくよ。
     ありがとう。きっと、皆、喜ぶ。」

     「こちらこそ。
      尊君のお蔭で、数学の期末試験も
      なんとかなったし。
      それに・・・

    「それに?」

     「私ね。尊君の前では
      話せるみたい。
      その・・・普通に。」

    魔法使いの岩谷さんは、
    循環バスに乗り、帰って行った。
    父のレンコンのはさみ揚げを抱えて。
    別れ際に、
    彼女から渡されたポーチには、
    僕が思いつきもしなかった、
    メイク道具が入っていた。

    “ホントに、何から何まで。。。”

    お姉ちゃん、許して欲しい。
    僕の心が、この時一瞬、
    イブに飛んだのは、仕方ない。

       ・・・・・・

    空には、煌々と月が輝いていた。

    少し早いクリスマスパーティーも
    終盤になり、
    トナカイのカチューシャと
    赤い鼻を付け、
    おどけた顔で若君との
    ケーキカットを済ませた姉に向かい、
    父は、一つ、咳ばらいをしてから、
    こう言った。

    「唯、今日は、お父さんと尊から、
     特別なプレゼントがあります。
     それは、唯だけではなく、
     母さんも若君も、きっと喜んで
     くれるはずです。」

      「特別な、プレゼント?」

     「やあだ、なあに。
      私にも内緒にしてたの?」

    父は、ぎこちない笑顔で姉を呼ぶと、
    二階に上がって行った。

       「しばし、お待ちを。」

    僕は、若君と母さんに
    そう言い残し、二人に続く。

    父は、僕の部屋の前で、
    姉に目をつぶらせた。
    僕は、先に部屋に入って
    ドレスの覆いを外した。

    父に手をひかれ、部屋に入ると、
    姉は、恐る恐る目を開ける。
    そして、ゆっくりと、
    その場に座り込んだ。

       「これって・・・。
        尊とお父さんが、私に?
        夢みたい。
        綺麗・・・。」

    着付けも終わり、
    うっすらとお化粧をした姉を見て、
    父は、感無量の様だった。
    そして、自分もジャケットを羽織ると
    姉の手を取り、腕を組む。

     「さあ、行こう。
      母さんと、若君が待ってるから。
      バージンロードを娘と歩く日が、
      こんなに早く来るなんて、
      思ってなかったけど。」

    僕は、ノートパソコンに
    ダウンロードしておいた、
    ミュージックファイルを
    クリックした。

    廊下と階段に、
    メンデルスゾーンが流れる。
    それは、階下のリビングルームにも
    届いているはずだ。
    僕は、思いっきり大きな声を
    張り上げた。

       「花嫁と、その父の
        ・入・場・で~す!」

    僕は、姉のドレスの裾を持ち、
    オーケストラに併せて、
    ウエディングマーチを口ずさんだ。

     「唯!」

      「唯・・・?」

    母と、若君の驚く声が、
    姉の背中の向こうから聞こえる。
    僕は心の中で叫んだ。

    “サプライズ・大・成・功~!!!”

         ・・・・・・・・・

     「それから、それから?」

    看板の明かりを消した、
    トシさんの店の隅で、
    特製ケーキをほおばりながら、
    岩谷さんは、満月パーティの様子を
    詳しく聞きたがった。
    イブのケーキ屋は、
    滅茶苦茶忙しくて、
    疲れてはいたけれど、
    僕と岩谷さんは、
    長い間、しゃべり続けた。

    あの夜、
    家の階段を、急遽、
    バージンロードに見立てた父の事。
    母が、姉のウエディングドレス姿
    を見て、号泣した事。

    実は、その時、
    今まで知らなかった、我が家の両親の
    結婚秘話も知ったのだが、
    岩谷さんが一番興味をもったのは、
    姉がぞっこんの、親戚の子・・・
    つまりは、若君の反応だった。

    それは、僕が
    一番答えにくい事だった。

     「そ、それがさ。
      実は、そのう、何と言うか。
      信じて貰えないかも
      しれないけど。」

       「何、何?」

     「連れてった。
      姉を。
      い、一緒に。」

       「え???」

    岩谷さんは、
    クリームがたっぷりついたフォークを
    口に入れたまま、目を見開いた。

       「うっそー!ホントに?」

    なんとなく昭和な、
    岩谷さんのリアクションに、
    僕は引き気味に頷く。

       「凄~い!
        お姉さんの願いが
        叶ったのね。
        素敵~。」

    僕は、それから、岩谷さんを
    バス停に送って行った。
    バスのドアが閉まる前、
    僕は彼女から白い封筒を渡された。
    クリスマスカードだ。
    バス停の明かりの下で、
    カードの金色の星が光った。
    何気なく、その星を押した。
    ジングルベルが流れる。
    カードの隅に、何か書いてあった。
    僕は、それをスマホに打ち込むと、
    直ぐにメッセージを送った。

    何て送ったかって?
    それは、今は、内緒。

    シングルベルのリズムに乗りながら、
    自宅までの長い坂を走る。
    本屋のベンチで、缶コーヒーを
    落としたあの日の様に。

    夜空には、満天の星。
    トナカイの引くソリの跡の様な雲が、
    淡く、流れていた。

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    二人の平成Days6~8日20時10分、尊の指南

    若君には、美しい言葉のみ口にして欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊が実験室に入ってきた。

    尊「若君、待たせちゃってすみません」

    若君「苦しゅうない、かえって難儀をかけたのう」

    シンデレラの絵本を若君に渡す。

    尊「さっきのシンデレラってのは、お姫様の名前で、この物語の主人公なんです。子供向けで読みやすいと思うんで、まずは目を通してもらえますか」

    若「心得た。しばし待たれよ」

    尊「わからない言葉は言ってくださいね」

    解説を交えながらも、読み終えた。

    若「この姫は、術が切れるのが子の正刻であるから急いたと」

    尊「そうです。現代ではこの話は皆知っているので、しばしば時間に制限がある時に例えのように使ったりするんです。若君がわかる訳ないのに使っちゃってごめんなさい」

    若「面をあげよ。しかしこの姫は唯に似ておるのう」

    尊「灰、かぶってました?」

    若「藁にまみれてはおったが」

    尊「あれ、案外当たってた。他にどんな所が?」

    若「綺麗な着物を持ってない、と」

    尊「それは足軽だから仕方ないですよね」

    若「…だがその折、わしが迂闊な物言いをしたらしく」

    尊「はい」

    若「唯にひどく泣かれてしまったのだ」

    尊「えーっ!」

    尊は、若君プレイボーイだ!と言いそうになったが、また説明がややこしくなるので止めて、

    尊「何を言ったんですか?」

    若「泣き顔も面白いと申したら、笑われた、とまた泣き出し」

    尊「えっそれは…大泣きすると思います」

    若「そうか。されど何故機嫌を損ねたのかわからぬのだ」

    尊は考えた。もしかしたら、戦国と現代とは同じ言葉でも意味が違うんじゃないか?

    尊「面白いの意味、他の言い方だと何になるか調べますので、少々お待ちを」

    若「忝ない」

    尊、面白いを検索中。

    尊「あの、例えば他にどんな時にそう思ったりしました?」

    若「唯に初めて逢うた折、戦は悲しむ者が増えるゆえ、してはならぬと申した。わしと存念が同じとわかり、もっと長く共に過ごしたかったが、すぐ去ってしまい、面白いと思うた」

    尊「なるほど。なんとなくわかってきました。その時、お姉ちゃんの事、好もしいおなごと思いました?」

    若「思うた。今も変わらぬ」

    尊 心の声(あ~生でお姉ちゃんに聞かせたい!戌の正刻しばりが今日は恨めしい)

    尊「あの、現代では滑稽という意味で使う事が多いです」

    若「そうであるか、それなら腹を立てるのも無理はない。唯には済まぬ事をした、詫びねばならぬ」

    尊「興味があるとか心引かれるとかが近くないですか?」

    若「おぉ、そうじゃ!これはしたり」

    尊「今度からは、違う言葉に言い換えるようにすればどうですか。例えば、泣き顔を見て」

    若「見て」

    尊「この場合は、可愛いよ、が一番合ってます」

    若「泣き顔も、かわいいよ」

    尊 心(ひゃー、誰ぞ唯を呼んで参れ!戦国の苦労が報われる~)

    若「尊、礼を申す。しかし泣いておらずとも、かわいい、なのだが」

    尊「ことある毎に、そう思ったら言えばいいんじゃないですか。あーでも出逢った当初より、固い絆だから」

    若「だから?」

    尊「…もっと喜ぶ言葉、教えます」

    尊、悪魔の、いや天使の微笑み。

    尊「で、明日皆で出かけるじゃないですか。お姉ちゃんの事だから、きっと珍しく早起きすると思うんで、朝一で言ってあげると一日ご機嫌に違いないです」

    若「してどのような」

    尊「〇〇〇〇〇」

    若「〇〇〇〇〇じゃな、〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇。心得た」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    想像はつくと思いますが、明日をお楽しみに。

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    すみません!

    妖怪千年おばばさん、モチーフが被るのは、パラレルワールド多しだから、私は全然構いませんが、投稿のタイミングが被ってすみません!

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    日本語の勉強

    今回、いよいよ「面白い」の意味の違い、若君も尊も勉強します。
    No.331で、既にてんころりんさんにご説明いただいていまして、その節はありがとうございました。
    実はNo.329若君篇を投稿した時には、今回の話も完成してまして、あっさすがのご指摘!と少し焦りまして、触れる事ができず、ご挨拶が遅れました。失礼致しました。
    おっしゃる通り公式掲示板で知り、その時すぐに辞書検索しましたので、ちゃんと(いや、ちゃっかり?)覚えていました。学校の勉強と同じですね。見た読んだだけでなく、自分で動くと身に付きます。

    今は、2年前唯と若君平成に居ました月間なので、連日意欲的に活動しております。ストックまだ有りなので、出せる時は毎日でも出せますので、今しばらくお付き合いください。

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    満月はイブの前 前編

    実験室で、僕は、
    でんでん丸を修理していた。
    相賀の手に落ちた黒羽城で、
    でんでん丸が使えずに、
    危うく切られかけたと、
    姉からクドクド言われたのだ。
    でも、それが、
    二人で現代に帰ってくる
    きっかけには、なったらしい。

    若君の、姉との結婚の申し出、
    というか、
    姉を戦国に連れて行くという、
    決意表明を聞いた時は、正直、
    “やっぱり、そっちか~・・・。”
    と、かなりがっかりした。

    一緒に、“若君の墓”を見に行った時、
    しゃがみこんで、墓石に刻まれた
    日付を確認した若君は顔色も変えず、
    ただ、頷いただけだった。
    でも、僕は、“黒羽城址”に案内した
    あの日より、若君の気持ちを
    読めるようになっていた。

    若君は、いつでも、自分の事より、
    ”領民と家臣と家“を第一に考える。
    その、羽木家一族が、新天地で
    新たな道を切り開こうとしていると
    知った今は、“姉にとってベスト”
    なのはどちらかと、考えるだろう。

    この時点では、若君は、
    現代で生きていく事を
    かなりの確率で覚悟して
    いたんじゃないかと思う。

    僕は、自分でも驚くほど、若君と
    一緒にいる事が楽しかったし、
    嬉しかったので、正直、二人が
    このまま、こちらの時代で暮らして
    くれる事への期待値が、
    かなり高かった。

    何よりも、そうなれば、
    “尊~!お願い!!!”
    という、姉の無茶ぶりも、
    当面は無くなるから、
    次の発明に没頭できる。

    でも、まてよ。
    もし、そうなったとして、
    若君が、自分の時代を気にかけない
    はずもなく、姉以上に、木村先生に
    張り付いて、羽木家一族に関わる
    一大事でも掘り起こしたりすれば、
    “尊、一日で良い。永禄に戻りたい。”
    なんて、言い出すかもしれない。

    ま、無茶ぶりが、姉と若君、二人に
    パワーアップする事を思えば、
    永禄で、なんとか無事に
    暮らしてくれる方が、
    僕にとっては、まだ平和
    なのかもしれなかった。

    そうだ!大変な事を忘れてた!
    未来の自分に託した二人用の
    起動スイッチは、これからの自分に
    掛かっているんだ!
    どうする、自分???
    無理!!!少なくとも今は!!!

    堂々巡りの自問自答を打ち破る様に、
    突然、実験室のドアが開いた。

    「尊、ちょっといいか?」

     「何?」

    「トシさんの店に行って、
     予約してきて欲しいんだ。
     クリスマスケーキ。」

     「は?
      電話か、ネットじゃだめなの?」

    「繋がらないんだ。
     さっきから小一時間も。
     ネット予約は、やめたらしい。
     去年、トラブルがあったそうだ。
     直前キャンセルで、入金無し。
     来店希望で、住所も登録なし
     ってやつ。」

     「ふ~ん。」

    「あ、それから、受取日は、
     わかってるよな?」

    トシさんの店は、
    駅前商店街のはずれにある。
    立地はイマイチだし、
    店は昭和のにおいがするし。
    エキナカのおしゃれな店に、
    客をとられても仕方がない。
    ただ、この店の
    ショートケーキは絶品だ。
    僕的にはアップルパイも捨てがたい。
    もう滅多に手に入らない、
    紅玉というリンゴの酸味と、
    カスタードクリームの甘さの
    バランスが絶妙なのだ。
    サックサクのパイ生地に
    チョコアイスを添えた究極の一皿を、
    ゲットできるかどうかは、いつも、
    学期末の成績表にかかっていた。

    手押しの自動ドアを開けて
    店に入ると、店主のトシさんと、
    奥さんは、何やら、大きなケーキの
    飾りつけをしていた。

      「こんにちは!」

     「あら、尊君、いらっしゃい。」

      「なんか、忙しそうですね。」

    「急に、ウエディングケーキの
     注文が入ったんだよ。」
     駅前のホテルのパティシエが、
     急病で倒れたとかで。」

     「式場の張りぼてのケーキじゃ
      嫌だって新婦が
      言ってるんですって。」

       「張りぼてって、あの、
        ケーキカットするとこだけ
        カステラの?」

      「そうそう、正しくは、
       スポンジケーキだけどね。」

     「悪いな、尊君。
      そこの、箱、取ってくれるかい?
      サンタクロースじゃない方。」

    店は、入口の脇がカフェスペースに
    なっている。
    そのテーブルの上に、
    小さな白い箱が二つあった。
    開けてみると、片方に、
    新郎新婦のミニチュア人形が
    入っていた。

    僕は、その箱をそっと持ち上げると、
    店主のトシさんに渡した。
    人形の衣装の白いレースを
    広げながら、奥さんが言う。

     「あら、かわいい。
      私もこんなドレス、
      着てみたかったわ~。」

    クリスマスケーキの予約を済ませ、
    店を出た僕は、自分でも、何故か
    良く分からないまま、気が付けば、
    駅前のホテルの前にいた。
    ホテルのドアが、
    僕を誘い込む様に開く。

    ロビーの横に、
    パンフレットが置いてあった。
    花嫁姿のモデルの笑顔が目に留まる。

    “永禄で、祝言は済ませたって
    言ってたけど、お姉ちゃんも、
    もしかして、こういうの、
    着てみたいのかな。“

    パンフレットに見入っている僕に
    気づいたフロントの女性が、
    声をかけてきた。

     「御婚礼受付を、御案内
      致しましょうか?」

      「あ、いや、いいです。」

    僕はパンプレットを握りしめたまま、
    ホテルを飛び出した。

    本屋の前を通りかかると、
    女性向けの結婚情報誌の
    ポスターが目についた。
    店に入って、棚を覗くと、
    アイドル雑誌の最新刊を
    手にしながら、制服姿のJK達が、
    女子会トークで盛り上がっている。

    ここで、もし、僕が結婚情報誌に
    手をのばしたら、確実に、
    “ヤバイヤツ”と思われるだろう。

    僕は本屋の前にあるベンチに座り、
    トシさんから貰った、予約サービスの
    缶コーヒーのプルタブを開けた。

    “今度の満月の夜、
     若君とお姉ちゃんが永禄に
     飛んだら、もう会えないんだな。”

    数日後に控えている別れを想って、
    僕は、急にしんみりした。

    コーヒーはまだ、
    ほんのり温かかった。
    僕は両手で缶を包み込んだ。
    ぬくもりを少しでも
    留めておきたかった。

    突然、冷たい風が、横に置いた
    パンフレットを吹き飛ばした。

    慌てて立ち上がった弾みに、
    缶を落とした。
    飲みかけのコーヒーが道路に飛び散り
    缶が、パンフレット追いかけるように
    転がって行く。
    向こうから歩いて来た人が立ち止まり、
    その両方を拾い上げた。

     「あ!す、すいません。」

    「は、速川・・・君?」

     「えっ???」

    ”だ、誰?・・・知らないし・・・
     こんな・・・美人。”

    直ぐには、気づかなかった。
    そこに立っていたのは、
    同じクラスの女子だった。
    いつもは、長い髪で顔を半分隠し、
    どう考えても似合うとは思えない、
    古臭い銀縁の丸眼鏡を掛け、
    教室の隅で本を読んでいる。

    ところが、今、
    目の前にいる彼女は、
    髪をアップにして、
    キラキラの髪飾りを付け、
    淡いクリーム色のワンピースに、
    柔らかそうな白いコートを
    羽織っている。
    足元は、リボンを足首に巻いた
    ハイヒール。
    襟元はふわふわの毛皮。
    もちろん、あのメガネは無し。
    唇は、うっすらピンク色だ。

    「も、もしかして、
     お岩・・・じゃなくて、
     い、岩谷・・・さん?」

    答える代わりに、
    彼女はにっこりと微笑むと、
    風に飛ばされたパンフレットを
    差し出した。
    僕は、慌ててそれを受け取る。
    岩谷さんは、
    僕の落としたコーヒー缶を、
    本屋の横にある、
    空き缶回収BOXに入れると、
    財布を取りだし、
    自販機に硬貨を入れた。

    「は、はい。ま、まだ、
     の、飲みかけだったんでしょう?」

     “どもる所は、
      いつもと変わらないんだ。”

    僕は、ちょっとほっとした。

    「ありがとう。
     あ、今、お金を。」

    差し出されたアツアツの
    コーヒー缶を受け取ると、
    ジーンズのポケットを探る。

     「あ、あれ?」

    “すっかり忘れてた!自分の財布、
     持ってこなかったんだ。“

    父から預かった、ケーキの代金の
    入った紙袋だけ、ダッフルコートの
    内ポケットに突っ込んで、そのまま、
    出て来たのだった。

     「ごめん。。。」

    「き、気にしないで。
     わ、私が勝手に、
     か、買ったんだから。」

     「でも、悪いよ。それじゃあ。
      ああ、そうだ。
      明日、売店で買って返すよ。
      昼休みに。
      コーヒーで良い?
      それとも何か、別のにする?」

    「え?ええっと。
     な、何が、あ、あるんだっけ?
     あ、あんまり、い、行った事が、
     な、無くって。」

     「じゃあ・・・一緒に行く?」

    「う、うん。い、一緒に行く。」

    自分で誘っておきながら、
    僕は急に照れ臭くなった。

    「あ、あのう・・・。
     き、聞いてもいい?」

     「ん?」

    「そ、それ、どうして?」

     「え、ああ・・・これ?」

    “何て言おう?アヤシイヤツと
     思われても困るし。”

     「実はさ、
      ウエディングドレスって、
      どんなのかなって思って。
      あ、いや、その。
      ちょっとした、訳があって。
      高いんだろうね。
      レンタルするの。
      どのくらいするか知ってる?」

    「え、ええっと。
     お、お母さんの話では、
     か、かなりするみたい。
     じ、実は、今日、従妹の
     け、結婚式だったの。
     え、駅前の、そのホテルで。」

     「そ、そうなんだ。
      やっぱり、無理か。」

    「無理って、まさか、速川君、
     そういう趣味が?!」

    “そこは、どもらないんだね。”
    と、僕は思った。

    岩谷さんが、
    みるみるうちに怯えた目になる。

    “マジヤバイ!このままじゃ、
     僕は、明日から確実に、
     クラス中から“ヘンタイ”目線を
     投げつけられる。“

     「え、あ、いや。違うんだ。
      じ、実は今、
      し、親戚が家に来ててさ。
      近々、遠くに移住することに
      なったとかで。
      当分、会えなくなるんだよね。
      姉が、その親戚の子に、
      ぞっこんでさ。
      せめて、思い出に、
      ウエディングドレス姿で、
      その子と写真をとって
      あげようかな、なんてさ。
      プリクラなら、
      そんなの簡単だろうけど。
      なんか、もうちょっと、リアルに
      してやりたいなって。」

    「そ、そうなんだ。
     な、なんか、意外。
     は、速川君、
     お、お姉さん思いなのね。」

    怯えていた岩谷さんの目が、和む。

     「そうなんだ。
      急に思いついてさ。
      自分でも、驚いてる。
      でも、凄く高そうだから、
      無理かな。」

    「ま、まずは、お、お母さんに
     相談してみたら?
     お、お母さんも、お、お姉さんの
     気持ちを分かってるなら、
     き、協力してくれるんじゃない?
     む、娘の花嫁姿を、
     い、一番見たいのは、
     お、お母さんじゃないかな。」

     「そうかもね。
      でも、だからこそ余計に、
      母さんにも内緒にしたいんだ。」

    「か、家族中に、
     サプライズって事?」

     「うん。できれば。」

    「で、でも、
     サプライズを成功させるには、
     ひ、一人くらいは、
     手伝ってくれる人がいないと、
     う、上手く行かないんじゃない?」

     「そ、そうだね。
      じゃあ、父さんがいいかな。
      帰って、相談してみるよ。」

    「う、う、うん。
     わ、私も考えてみる。」

    循環バスで帰るという岩谷さんを、
    僕は、バス停で見送った

    “今まで、話したことなかったけど、。
    なんか、楽しかったな。
    それに、き、きれいだし。。。“

    突然、バスに乗る岩谷さんの
    後ろ姿が浮かんで、
    何故か、耳まで赤くなった。

    足首に結ばれたリボンが、
    瞼にちらつく。

    気が付くと、僕は、走っていた。
    自宅までの、長い坂を。

       ・・・・・・

    翌日、僕は、学校の売店の外の階段で、
    岩谷さんを待っていた。
    岩谷さんは、密かに、
    “お岩”さんと呼ばれている。
    もっとも、古臭い日本の“怪談”を
    知らない奴らには、“何それ?”
    のレベルだし、彼女がクラスで
    注目を集めるのは、
    地味な“古文”の、試験問題が
    返されるとき位だ。

    それでも、1年の時、半年以上、
    通学せずに引きこもっていた
    自分に比べれば、知名度は上だった。

    「ご、ごめん、お、お待たせ~!」

    やっぱり、昨日は別人だったんじゃ
    ないかと思うほど、今日の岩谷さんは
    いつもの“お岩さん”だ。
    なのに、声だけは、
    昨日の“岩谷さん”だった。

    ”なんか、妙に、はじけてる?”

    昨日の缶コーヒー代しか
    渡してないはずなのに、
    岩谷さんは、何故かプリンを
    二つ持って戻ってきた。
    その一つを渡され、僕は戸惑った。

     「あ、ああ。僕の分とか、
      良かったのに。
      足りなかっただろ?お金。」

    「い、いいの。」

     「良くないよ。
      足りない分、今・・・」

    「じ、じ、じ、じゃあ、
     その代わり、こ、こ、今度、
     す、数学の、か、課題、教えて。
     に、に、苦手で。
     び、微分とか。。。」

     「いい・・・けど。」

    「ホントに?」

    “そこは、どもらないんだ。”

    僕は、思わず笑ってしまった。

     「じゃあ、今度の日曜日、
      黒羽城公園の資料館に行く?
      あそこなら、ここの生徒は
      ほとんど来ないし。
      教室で教えて、
      誰かに何か言われたら、
      メンドクサイだろ?」

    「う、う、う、うん。」

     「嫌・・・なの?」

    「う、う、ううん。行く。」

    僕は、また、笑った。

     「そうだ、昨日の話なんだけど。
      ドレスを借りるのは、
      やっぱり無理みたいだ。
      うちの父、実は、専業主夫でさ。
      つまりは、無収入。
      コツコツ貯めたヘソクリも、
      この間、庭にピザ窯作って、
      使っちゃったって。」

    「そ、そうなんだ。ピ、ピザ窯・・・
     す、すごいね。お父さん。
     で、でも、な、なんか、
     ざ、残念。」

     「仕方ないよ。
      クリスマスケーキで、
      ケーキカット位はできるさ。」

    「そ、そう。。。
     そ、それも、す、素敵。
     で、で、でも、でもね。
     ゆ、ゆうべ、書いてみたの。
     ド、ドレスの、デ、デザイン。
     み、見てくれる?」

     「え???」

    岩谷さんは、小脇に抱えていた
    ノートを取り出し、ページをめくると
    遠慮がちに差し出す。

    そこには、
    ふわふわのレースに包まれた、
    妖精の様な花嫁さんが描かれていた。

     「かわいい。
      上手なんだね。イラスト。」

    「あ、ありがとう。
     そ、それなら、何とか
     作れる・・・かも。」

    「えっ?
     作れる?これを?
     岩谷さんが?ホントに?」

    僕は驚いて、そのイラストと、
    岩谷さんを何度も何度も交互に見た。

    岩谷さんは、大きくうなずいた。

     「私、衣装係なの。演劇部の!」

    岩谷さんは前髪をかき上げて
    微笑んだ。
    僕は思わず声に出してしまった。

    「そこは、どもらないんだ。」

    岩谷さんは、口を両手で抑えると、
    走って行ってしまった。

    「あ、待って!ご、ごめん!
     そうじゃな・・・」

    慌てて追いかけようとしたが、
    階段を踏み外し、僕は、
    したたか腰を打って転んだ。

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    もうすぐ12月

    12月といえば、思い浮かべるのは、
    やはり、SPですよね。
    緊張感あふれる立ち回りのシーンから
    速川家でのパーティシーンへの流れが
    とっても楽しかったですね。
    閨のシーンで、唯が願った若君との
    デートも実現して、見ている方も
    ウキウキ気分を分けて貰った様に
    思いました。

    でも、きっと多くの皆さんが
    思ったんじゃないでしょうか?
    もしかしたら、唯ママが一番、
    唯ちゃんの花嫁姿を
    見たいんじゃないかって。

    夕月かかりて様は、写真館での
    家族写真と言う形に
    されるようですね。素敵です~。
    速川家の幸せいっぱいな笑顔が、
    目に見えるようです。(^_^)v

    私も実は、唯ママに
    唯の花嫁姿を見て欲しくて、
    暫く前から、その物語の構想を
    練ってました。

    12月に入る前に仕上げたいと
    思っていまして、昨日、なんとか
    かき上げました。
    これから、投稿します~。

    夕月かかりて様のストーリーと、
    かぶる所があるとは思いますが、
    お許しくださいね~。

    ご一読頂けましたら、
    嬉しいです~(*^^)vm(__)m

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    二人の平成Days5―2~8日19時40分、慈愛

    二階がこんな事になってたとは。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚と美香子の部屋。

    美香子「では開けるわよ~はい!」

    部屋に入ると、天井付近に棒が渡され、唯の月光舞の装束が幕の様に広げられてかかっている。

    美「二人分で二揃えあるから、やむなくこんな感じで保管だけど」

    芳江「素敵~」

    エリ「本当に艶やかな茜色ですね」

    衣桁には若君の直垂。

    エ「こちらはまたシックな臙脂色で、威厳があるわね」

    美「あの時代の、正装なんですって…」

    美香子が泣き出す。

    芳「えっ、先生」

    エ「私達が見たいとお願いしてしまったから、お別れの辛さがぶり返されたかしら。ごめんなさい」

    芳「あぁ…親としては、子供の望むようにはしてあげたいけど、もう二度と会えないかもと覚悟を決めて送り出すのは、私だったら出来るかと考えると、先生よく決断なさいましたよね」

    美香子、涙をおさえながら、

    美「違う、違うのよ。心配したのは若君の身の上なの」

    芳「そうなんですか?」

    美「実は、お二人だけに話したくて、唯を呼ばなかったの」

    エ「そうですか…お話ならいくらでもうかがいます。先生がそれで少しでも楽になるなら尚更」

    美「ありがとう。…唯が若君奪還した日は、敵方の娘との結婚式だったの。ずっと人質みたいな扱いで、戦場にも出ずっぱりで。そのいずれも辛かったに違いないのに、羽木の民を守るためならと、自分で決断して耐えていたって」

    芳「まぁ…確かまだ二十歳前でしたよね?」

    美「そうなのよ。もちろん現代と比べてはいけないけれどね。でね、唯がこちらに帰る時、若君が約束してくれたらしいの」

    エ「どんな?」

    美「唯が現代で生きるなら、若君も唯に守られた命を生き抜くって。戦国時代にそれはどれだけ大変か。でも自分から死は選ばない、唯がずっと心の中に居るから一人じゃない、時代は違っても唯と共に生きるって」

    エ「現代に暮らす私達には、到底想像出来ない決意ですね」

    美「もう一度会えて嬉しいわなんて簡単に言ってはいけない程、若君が過ごした日々は凄絶で。死と隣り合わせなんて言い方、軽過ぎて申し訳ないって思ったわ。傷ついて傷つき続けても、唯への想いを胸に生き抜いた若君の不断の努力と、やっぱり奇跡で、こうして来てくれて本当に本当にありがとうって」

    三人とも涙が止まらない。

    美「この話はね、全部唯から。若君にもそれとなく聞いたんだけど、はにかむだけで。心配かけまいと話さないのが、もういじらしくて」

    芳「若君って、どこか淋しげな感じがします。戦国武将ってそういうものなのかと思ってました」

    美「唯が、無性に抱き締めたくなる時があるって言うの。あんなに凛々しいのにふと、迷子になって泣きじゃくる子供みたいに見えるって。それは2か月半一緒なだけの私達も少しわかるのよ」

    エ「若君は、唯ちゃんに母性愛を感じてるんじゃないでしょうか」

    美「だと思うわ。小さい頃から総領ありきで帝王学を叩き込まれ、生活に不自由はないけど甘えられる母はない。そんな孤独とも戦っていた青年がある日、守ります!ってガムシャラに突進してくる女の子と出逢った。気になり始めて心の扉をそっと開いたら、無償の愛が惜しみなく注がれて溺れそうな程。きっと心の渇きが満たされたのね、恋に落ちるのは必然よ。もう、唯が若君を好きっていうより、若君には唯が必要不可欠なんだわって」

    芳「それでは送り出すというより、もしかして若君に唯ちゃんを差し出す感じなんですか?あっ言い過ぎたでしょうか」

    美「ううん。合ってる。この青年をもう一人にしてはいけない。彼を孤独から解放してあげたい。反対してた時期もあったんだけどね。偶然ではなく、満月が導いた贈り物だと、ようやく気付いたの。唯なしでは彼の幸せは有り得ないって断言できるから、唯よろしくね若君頑張れって気持ち」

    芳「そうだったんですか。でもよく決断なさいました。そういえばさっき、女子高生が射抜かれたって話ありましたけど、私達も初めて若君にお会いした時、ズキュンと、ね?」

    美「まだ全く動けない頃よね?」

    エ「はい。先生が目覚めを確認して退出なさった後、第一声で私達名前を訊かれて」

    芳「そう~今でもときめいちゃう。動けない中一人一人に目線をくださって、芳江殿エリ殿難儀をかける、っておっしゃって」

    美「まあ。そこが若君の素晴らしい所よね」

    エ「このお仕事も長いですけど、そんな優しい言葉かけてもらえるのは、後にも先にもあの一回だと思います」

    美「そんな素敵な青年が息子だなんて嬉しいわ」

    エ「すっかり若君の母ですね」

    美「確かに、娘を送り出すというより息子を送り出す淋しさ?」

    芳「それじゃ唯ちゃんの立場が~」

    美「唯は生き抜く。あの子ならどの世界でも大丈夫、若君と一緒なら何も心配ないわ。そうそう、結婚のお願いを改めてされた時の若君、唯をくださいじゃなく、伴いたいって言ったの。唯は人として対等、本当に大事にしてくれてるってわかるのよ」

    エ「さっきお食事の時も、唯ちゃんへの眼差しが、愛おしさに溢れてて。見ててキュンキュンしました」

    美「でしょう。お二人とも話聞いてくれてありがとう。そろそろ降りてまたお茶しましょう」

    芳&エ「はい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    良かったね、若君。

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    二人の平成Days5―1~8日19時40分、質問です

    さすが若君、聞き逃さない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    引き続き、一階リビング。

    唯「落雁って、儚げなトコがいいよねぇ」

    覚「まだ食べるのか?湿気らなけりゃ日持ちするから今じゃなくても」

    唯「初デートを思い出してるのー、見てるだけ」

    若君「…のう尊」

    尊「何?若君」

    若「ちと訊ねたき儀が」

    尊「ははっ、何でござろうか」

    若「不吉な事を申したな」

    尊&唯&覚「?」

    若「誰ぞ命を落とすのか?」

    尊「なぜそんな事思ったんですか?」

    若「しんで、と申した」

    尊&唯&覚「あ」

    尊「戌の正刻のシンデレラ、ですか?」

    若「さよう。あの場にはそぐわぬゆえ何事かと」

    唯「尊~、変な例え使うから」

    覚「上手い、とは思ったけどな」

    尊「ごめんなさい。じゃあ戌の正刻、8時過ぎたら資料出して説明します。あの、誰も命は落としません」

    若「そうか」

    覚「ところで、明日は家から礼服着てかなきゃダメか?僕も向こうで着替えできる?」

    唯「男性用更衣室あったから大丈夫だよ。車の運転してもらうからラフな格好で行って。あー今日寝られるかなー」

    尊「寝ないと写真写り悪くなるんじゃないの、顔むくむよ」

    唯「そうだけど、もう若君の花婿姿が素敵すぎて…あっヨダレが」

    美香子達が降りてきた。

    覚「おっ、おかえり。お茶入れるよ。ん?何か三人共どうかしたか?」

    美香子「ん?戦国の着物に感動してたのよ。唯、なんて顔してんの」

    尊「妄想のかたまり」

    美「あー明日が待ち遠しいのね。一緒に予約しに行った時も大騒ぎで」

    芳江「ご家族でお出かけですか?」

    美「えぇ。写真館に」

    エリ「まぁ、家族写真ですか」

    美「それもあるけど、唯の花嫁姿が見たくて」

    覚「プラス若君の花婿姿だろ。はい、冷めない内にお茶どうぞ」

    芳「まぁ。親孝行ね唯ちゃん」

    唯「えへ。和洋ふたつともです」

    美「私達、案外若君の和服姿をそんなに見てなくて。それも楽しみなんです」

    尊「さて~、お楽しみの所、そろそろ8時なんで、若君をお姉ちゃんから隔離します。若君、実験室に先に行っててください」

    若「心得た。ではこれにて。芳江殿、エリ殿、ゆるりと過ごされよ」

    芳&エ「痛み入ります~」

    唯「若君また明日ねっ、おやすみなさーい」

    エ「あら思ったよりあっさり」

    美「若君がきちんと約束を守ってるから、見習ってもらってます」

    若君が実験室に入っていった。

    覚「お前資料はどうするんだ」

    尊「絵本の画像を検索しようかなって」

    美「絵本?何で」

    尊「若君にシンデレラの説明しなくちゃで」

    美「あらま。さっきのね。えーと、待ってて。確か」

    美香子がリビングを出てどこかへ。

    唯「どこ行った?」

    覚「クリニックじゃないか」

    美香子がシンデレラの絵本を手に戻る。

    美「はい、どうぞ。使って」

    唯「えー?こんなんあったっけ?」

    芳「待合室に昔置いてた本ですね」

    エ「週刊誌とかと違って、置いている時間が長いので、劣化が激しくなったらさげるんですが、まだ取ってあったんですね」

    美「そろそろ処分かなと思ってたら、まさか役に立つなんて」

    尊「お母さんありがと、若君待たせてるから行くね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    宗熊にもらった落雁は、お忘れのご様子です。

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    二人の平成Days4~8日17時、賑やかな食卓

    ドラマの若君の姿に、寄せました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夕方の速川家。若君が米袋をキッチンへ運ぶ。

    覚「あーおかえりおかえり。わっ、お前らやっぱり若君だけに運ばせたな」

    若君「父上、大事ないゆえ」

    唯「ケーキどこ置く~?冷蔵庫~?」

    覚「さすがに入らん。暖房の当たらない隅っこに置いて」

    尊「お母さん達まだ仕事?」

    覚「いや、終わった後買い物行くって言ってたけどもうすぐ帰るだろ。ほれ、支度手伝って」

    若君が手を洗い、慣れた手つきでエプロンを着ける。既に日課。

    若「父上、何をいたせば良いか」

    覚「あーありがとね。イカやマグロを切ったから、皿に分けてくれる?若君はホントによく気がつくなあ。それに比べてウチの娘息子ときたら」

    唯「若君だって息子じゃーん」

    覚「お前が言うな。若君はな、戦国なら黙っていても飯が運ばれてくる身分なのにこんなに動いて」

    若「父上、次は」

    覚「え、もう?」

    三人登場です。

    芳江&エリ「こんばんは~」

    美香子「お待たせ、あら~豪華ね」

    エ「今日はお招きありがとうございます。あら、若君」

    芳「あらあ」

    若「エリ殿、芳江殿、しばらくであった」

    芳「エプロン姿も素敵ねぇ~」

    エ「お食事がもっと美味しくいただけるわ~」

    覚「さ、座って座って。今日は急ですいませんでしたね」

    唯「えっ?約束してなかったの?」

    美「若君が帰る日が決まったじゃない。逆算してて今日位どうかなって思って。二人に聞いたら都合つけてくださって、それで手巻き寿司パーティーにね」

    尊「そうだったんだ」

    若「それはあい済まなんだ、礼を申す」

    エ「でねデザートを、ケーキはと思ってたら、買ったとうかがったので」

    芳「ちょっと目先の変わった物にしたの。こちら皆さんでどうぞ。ケーキの後でも大丈夫よ」

    唯「えーなになに、わぁ綺麗な箱」

    皆で覗きこむと、若君が一番反応した。

    エ「若君にとっては珍しくない物だけど、現代味もいいかしらって」

    若「これは」

    唯「落雁!」

    美「あれ、知ってた?」

    尊「お母さん」

    美「ごめんごめん、いただき物でしか中々口にしないじゃない」

    唯「あのね、初デートの時若君がくれた」

    尊「…餌付け?」

    若「兄上からちょうど頂戴した物があっての」

    芳「プレゼントに?素敵ね~。さりげなく懐からサッと出してって感じかしら?」

    唯「えっ見てた?」

    エ「芳江さん、二人の甘い想い出はそっとしておいてあげなくちゃ」

    芳「あらそうよね、若君も図星って顔してるし」

    若「いや、わしは」

    唯「やーん、若君可愛い!」

    覚「はいはい、そろそろ始めるよ。じゃあ」

    手巻き寿司パーティー、スタートです。

    唯「若君が巻いたのが食べたい!ちょうだーい」

    覚「お前全部取り上げるつもりだろ」

    唯「口開けて待ってるよりはいいでしょ。若君には私が作ったのあげるからいいの、はいとりかえっこ」

    尊「デカっ!それにはみ出まくってるし」

    美「もっとキレイに~」

    唯「はっ、一瞬おふくろさまに言われたかと思った」

    若君が微笑む。

    美「怒られるポイントはどの世界でも同じって事よ。こんなんで奥方がつとまるかしら、心配」

    尊「お城の奥の院で、不束な姫はちゃんとシメてもらえるんじゃない?」

    唯「あー」

    尊「身に覚えがあるな」

    若君、黙々と寿司を巻いている。

    エ「それにしても、若君の手って大きいのね。手のひらの海苔がちっちゃく見えるわ」

    芳「そうそう、でお顔が小さいでしょ、とても戦国時代の方には見えなくてモデルさんみたい」

    美「だから女子高生も群がるわよね」

    若「その節は、難儀をかけ申した」

    美「いいのよ、彼女達の気持ちもわかるし」

    尊「若君は、無自覚な超イケメンだから。歩くだけで女子高生を射抜いてく」

    唯「えー、そんな色目使っちゃダメだよぉ」

    尊「使わなくても射抜く」

    エ「そうね、綺麗なお顔立ち。それに、醸し出す品がとてもお有りなの」

    美&芳「わかる」

    覚「モテモテだね~」

    若「よくわからぬが、忝ない」

    食事後、大量のケーキも捌ききり、ティータイム中。

    芳「そういえば唯ちゃん、今回とっても綺麗なお着物で帰ってきたって聞いたけど」

    唯「はい、真っ赤なやつですね」

    芳「それ、是非拝見したいんだけどいいかしら?」

    エ「目を見張る鮮やかさ、って先生にうかがって。若君の御召し物もとっても素敵って」

    唯「そんな、今までに自由に見てってくれれば良かったのに」

    エ「いえ、やっぱり唯ちゃんの許可は取らないと」

    唯「じゃあ二階に行きましょ」

    唯が立ち上がると、美香子が止めた。

    美「いいわよ、お着物は私達の部屋にあるから、あなたはここに居なさい。もう7時30分よ。」

    唯「あ~あと30分!」

    尊「戌の正刻のシンデレラ~」

    若「?」

    美「じゃあお二人どうぞ」

    三人は、二階へ上がっていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、進行が一階二階に分かれます。

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    月に願います

    ぷくぷくさん、ハラハラしながら読ませていただいております。熊には幸せになって欲しい、きっときっとなると願うばかりです。

    妖怪千年おばばさん、ありがとうございます。動画観ました。何度観てもいいですね。
    で、思い出した事が。本編10話で、唯が拐われた翌朝、阿湖姫が「やはりご存知だったのですね」の後、若君が4回刻んで振り向きます。なぜ刻む、それも演技指導ですかと思いながらも、毎回数える私です。

    では本日も。

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    =宗熊の決意 第一章=⑷

    諸:「痛~」
    熊:「すまぬ!」
    諸:「大事ございませんが、どうされたのですか?」
    熊:「わしは強くもない、頼りない男である・・・諸橋則次殿、夫婦とは申さぬ。だが」
    諸:「へっ?・・・私?」
    熊:「えっ・・・いっいや、早まった」
    諸:「もしや、若君、ゆめの事にございますか?」
    ナレ:ゆめとは諸橋の次女。先程お茶を持ってきた娘である。
    諸:「お気持ちは手に取る様に分かります。ですが、若君も存じておりましょう」
    熊:「その様な事は気にはしてはおらぬ。叶わぬであろうか?」
    諸:「叶わぬとかその様に仔馬のような眼差しで見られても、殿はお許しになりません。私も」
    熊:「父上に何と言われてもわしは耐えられる。だが、父上の諸橋に許さぬと」
    諸:「父上などと・・・分かりました、どのような事になろうともお覚悟よろしいですね」
    熊:「分かっておる」
    諸:「では、呼んで参ります」
    ナレ:諸橋は奥へ行き新しいお茶を持って行くように話した。自分は用があるからと座敷には戻らず。諸橋とて娘の幸せも宗熊の幸せも願っている。諸橋は娘がどう返事をしても受け入れる覚悟だった。
    ゆ:「お茶をお持ち致しました」
    熊:「かっ忝い・・・して、諸橋は何処ぞに?」
    ゆ:「ご用があると。では」
    ナレ:部屋を出ようとしたゆめを呼び止めた。
    ゆ:「宗熊様?」
    熊:「すまぬが、座ってくれまいか?」
    ゆ:「あっ、はい」
    熊:「ゆめ殿とは幼き頃よう遊んでおったの」
    ゆ:「さようでしたね。転んで泣いていたお顔を覚えております」
    熊:「恥ずかしいのぉ」
    ゆ:「その様な事はございませぬ。ふふっ」
    ナレ:笑った顔が美しいと思っていた。昔はよく遊んでいたが、宗鶴がおなごと遊んではならぬ剣の稽古をするのだと言い出し、その言いつけに従い、いつしか遊ぶこともなくなり諸橋の役宅に来ることともなくなっていた。その間ゆめは嫁いだ。宗熊は姉の様に慕っていただけなので恋心は無かった。時が経ち唯の事を諦めた頃、ゆめが嫁ぎ先から戻ったと諸橋から聞いた。その時は久し振りだから挨拶しようと役宅に来た。出迎えたゆめを見て、宗熊のハートにキューピットの矢が刺さった。それからは心の中のゆめの存在が日に日に大きくなるが、奥手な宗熊は何も出来ずにいたが、今回の事で自分の決意を強めるべく、自分の気持ちを話す事にした。だが、ゆめを目の前にして言葉が出ない。
    ゆ:「宗熊様、どうされました?」
    熊:「ゆ・・・ゆめ殿」
    ゆ:「はい」
    熊:「そなたも存じておる様にわしは弱い者」
    ゆ:「その様な事はございませぬ。宗熊様はお心のお強い方でございます」
    熊:「さようか・・・ゆめ殿」
    ゆ:「はい?」
    熊:「わしはこの先どの様な事になるか分からぬ。何かの折、事を起こす事になり得るのだ」
    ゆ:「はぁ」
    ナレ:宗熊が何を言いたいのか分からないが席を外す事なく聞いていた。
    熊:「わしは、何れ跡目を継ぎ領民を守らねばならぬ。わしに力を与えてくれる存在となってはくれまいか?」
    ゆ:「えっ?」
    熊:「め・・・夫婦となりたいとは申さぬ、わしの心に強い気持ちを持つことにそなたの存在を・・・あっ、いやっ・・・はっきり申そう、わしの妻になってはくれまいか?」
    ゆ:「妻?」
    熊:「・・・やはり・・・であろうの。すまなんだ」
    ナレ:宗熊はどっと肩を落としフラッと立上り座敷を出ようとした。
    ゆ:「宗熊様」
    熊:「ん?」
    ナレ:宗熊はその場に座った。
    ゆ:「宗熊様、わたくしは歳上にございます」
    熊:「気にはしておらぬ」
    ゆ:「はい・・・わたくしの亡き夫はとても優しい殿方でした。わたくしに里へ戻るように申しました父上様も母上様も優しいお方でした。わたくしの顔を見ては思い出し、悲しむ姿も見ておりました。ですからお言葉通りわたくしは里に戻りました」
    熊:「優しいお方に巡りおうたのだな」
    ゆ:「はい」
    熊:「して?」
    ゆ:「わたくしが夫の事を忘れる事は出来ませぬ」
    熊:「それは当然の事じゃ」
    ゆ:「宗熊様がお気を悪うされるのではと」
    熊:「わしはその様には思わぬ。ならば、その者の話をわしにも聞かせてはくれまいか?」
    ゆ:「えっ?」
    熊:「楽しゅうしておった事などを聞きたいと思うての」
    ゆ:「宗熊様」
    ナレ:宗熊が胡坐から正座に座り直し、
    熊:「だが、わしの行いで再びそなたを悲しませる事になるやもしれぬ」
    ゆ:「宗熊様」
    熊:「やはり、先も分からぬわしの妻には・・・無理であろうの」
    ゆ:「宗熊様のお人柄も良く存じておりますし、お心は幼き頃よりお変わりなく」
    熊:「ゆめ殿」
    ゆ:「宗熊様が何をお考えになられておるのかは分かりませぬが、何か強い意志がおありだと存じます。ならばわたくしの居りますことでお気持ちが落ち着かれるのであればわたくしは」
    熊:「では、わしの妻になってくれると申すのか」
    ゆ:「はい」
    熊:「唯殿・・・あっ、すまぬ!」
    ナレ:ゆめはクスッと笑い、
    ゆ:「父上から聞いております。唯と申されるおなごの事は」
    熊:「そうであったか。すまぬ」
    ゆ:「詫びなくとも、わたくしと同じにございますから。わたくしにもお話願えますか」
    熊:「ゆめ殿」
    ナレ:宗熊はゆめの手を取り、何度も頭を下げた。するとそこへ諸橋が入って来た。

    つづく

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    =宗熊の決意 第一章=⑶

    ナレ:諸橋は庭に出て、宗熊の方に向き返り話し始めた。まだ人を信じる優しい宗鶴は忠高の気持ちを察し、会いに行かずに文を託すことに。諸橋に頼むつもりでいたが他に使いが有り、誰かほかに居ないかと言われた諸橋が声を掛けた者が行くと、それを見ていた別の男がその使いを買って出た。それが坂口だった。理由を聞いた坂口は良からぬことを考えた。文の所在は諸橋も知らぬ事。坂口は黒羽城へ向かう途中で文を破り川に流した。様子を見に行くと領民も殿も気落ちしていると聞いた。坂口は戻り中継ぎした者に、でまかせを話した。文はその場で破り捨てられ、何も言わず中へ。そして中で楽し気な笑い声が聞こえてきたと。見れば側室と舞を舞っていたと。宗鶴は中継ぎからその話を聞いて、初めは信じられなかったが、留めは、側室と加担して妻を蔑ろにしていたと、その言葉で信頼の心が一気に憎しみへと。嘘を信じてしまった。昨日まで穏やかだった宗鶴の態度に諸橋は何が何やら分らず、中継ぎの者に聞き、諸橋も当時は忠高の行いに腹を立てた。気の収まらぬ宗鶴が無理難題を言っても諸橋は従う事にした。それで宗鶴の気が晴れるのであればと。宗鶴はわしが妻に迎え入れておればこのような事態にならずに済んだのだと言っていた。
    その話を聞き宗熊は手を付き、
    熊:「諸橋。すまなんだ・・・この通り」
    諸:「その様な真似はなさらずとも。その折の事は致し方ない事でございました。私も初めは信じておりました。ですが、日が経ち、殿の命で間者を忍ばせた折に、忠高様の様子を探った者に聞きました。あの話は嘘だったと。ですが、すでに宗鶴様は聞く耳をお持ちでなく、それとなく申した折でも、信じる事はなさいませんでした」
    熊:「そうであったか・・・まこと、申し訳なかった」
    諸:「家臣としての務めにございます」
    熊:「だが父上は忠高様のご様子が分かっておろうに何故引かぬのであろうか?」
    諸:「御心が純粋過ぎるあまりに、一度思われた憎しみにより真実が見えないのでありましょう。悲しい事でございます・・・して、宗鶴様の事がお分かりになられた若君はどうされるのでありましょうか?」
    熊:「まだ分からぬが。だが事を起こさねばならぬと思うておる」
    諸:「ですが、何故、此度の事を?」
    ナレ:宗熊は嘘をついて羽木忠高に文を出し、その返事が来た事を話した。諸橋は驚いた。
    諸:「その様な真似をされて」
    熊:「知れたら、わしも追放されるのであろうな」
    諸:「それは」
    ナレ:諸橋は宗熊が心配になった。座敷に上がり宗熊の前に座り、
    諸:「私は幼少の頃から宗鶴様に仕えて参りました。お側で見て参りました。嘘を鵜呑みにされてからの宗鶴様は奥方様にも若君にも」
    熊:「諸橋?」
    諸:「殿は幼き若君にもお優しい奥方様にも厳しくされておりました」
    熊:「そうであった。わしも幼き心で父上が母上に優しい言葉一つ掛けておらぬと思うておった。だが、母上は私に父上の様に立派な城主となる様にと常日頃申しておった。一度とて父上を悪う申す事は無かった」
    諸:「さようでした。お優しく、そしてお強いお方でした」
    熊:「父上は母上が亡うなった折にも涙一つ見せなんだ」
    諸:「いえ、若君が見ておられなかっただけにございます。お人払いをされた折、私が廊下り居りましたら中からすすり泣く声が聞こえておりました。宗鶴様は泣いておられたのだと」
    熊:「その様な。まことか?」
    諸:「私の一存の考えではございますが、側室を迎えず居りましたのは確かにあの姫様の事があったのだと。ですが、そののちは奥方様を想われてと思うのです」
    熊:「さようか・・・父上がぁ。父上の優しい心が存在していたのだと。喜ばしい事じゃ」
    諸:「若君・・・若君がのちの事をお考えになられることはご立派であられますが、若君のお気持ちが今の殿に伝わるとは私は・・・」
    熊:「ん。だが、奥底に優しい心が残っておると知れただけでも、わしの力となる」
    諸:「はぁ。その様に申されるのであれば私はもう何も申しません。私は若君のお言葉に従う覚悟が出来ました」
    熊:「諸橋」
    諸:「そう申し上げましても、宗鶴様を裏切る事ではございません」
    熊:「分かっておる」
    ナレ:諸橋が側に湯吞茶碗を持つと茶は冷めていた。新しい茶を持ってくるように言おうと立ち上がろうとしたら突然、宗熊は諸橋の腕を掴み、掴まれた諸橋は咄嗟の事に倒れてしまった。

    つづく

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    デビューおめでとうございます!

    夕月かかりて様
    デビューおめでとうございます!

    ぷくぷく様
    猪熊君の物語、ついに投稿ですね。
    楽しみにしてました。
    途中で割り込む形になるので、
    書き込むのを迷ったのですが、
    忘れないうちにと思いまして。

    お二人の作品に共通する、唯
    と若君のラブラブなシーンを
    読ませて頂いて、思い出した動画があります。
    ユーザーエリアの掲示板にURLを
    張りましたので宜しければご覧ください。

    では、では、お二人の次の投稿を
    楽しみにしています。

    梅とパイン様の作品も
    楽しかったです~。

    有難うございます!

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    =宗熊の決意 第一章=⑵


    諸:「はい。宗鶴様は若君と同じ年頃の頃は、羽木忠高様と川でおち合い、遠駆けをする仲でございました。その折、忠高様に婚儀の話がございました。戻られました宗鶴様が私に聞かせてくれました。私は次は宗鶴様ですねと申し上げ、その折、宗鶴様は出会うた娘を想い描いておったのだとその様に考えました」
    熊:「そうであろうの。ん?・・・諸橋」
    諸:「はい?」
    熊:「忠高様と。あの折は忠高と」
    諸:「はい。宗鶴様の前だけではその様に。私は、羽木忠高様に会うておりますゆえ。お優しいお人柄も存じております。忠清殿は御父上に似ておられます」
    熊:「さようか。気苦労を掛けておるのだな」
    諸:「いえ。忠高様の婚儀の前にお二人で遠駆けされた折、私もお供を。婚儀を心待ちにされておる忠高様が御父上の命で何れは側室を迎える事となると申されたと話されて、宗鶴様は側室も致し方ない事ではないかと話されて」
    熊:「父上がぁ・・・だが父上は側室は」
    諸:「宗鶴様が側室を迎える事はございませんでした。奥方を迎える前から殿にも言われておりましたが断固として迎える事がございませんでした。のちの御心でも奥方様が亡くなられても後添えも迎えませんでした」
    熊:「ん?」
    諸:「その事は何れ」
    熊:「ん。父上は、その姫と夫婦になると決めておったからではないか?」
    諸:「その様に存じます」
    熊:「それからどうしたのじゃ?」
    諸:「羽木忠高様の婚儀の席に宗鶴様も」
    熊:「では」
    諸:「はい。その折、あの娘だと分ったそうにございます。戻られてからは、しばらく気を落とされておりました。そののち奥方を迎え入れ、宗熊様がお生まれになりました」
    熊:「その様な事なれば、このような事態になるとは思えぬが」
    諸:「はい・・・その頃は互いに信頼しており間者を忍ばせる事もございませんでした。幼い忠清殿を残し御母上が亡くなられた事を知り、宗鶴様はお悔やみの文を羽木忠高様に」
    ナレ:言葉を止めた諸橋の顔を覗き込み、
    熊:「どうしたのじゃ?」
    諸:「はっ、いえ」
    熊:「申したではないか、わしは覚悟が出来ておるのだからの。申せ」
    諸:「忠高様へ宛てた文を託した者にございます。その者が代々、羽木家に遺恨のあった者にございました。私はのちに知る事となり、宗鶴様にお話しいたしましたが、遅うございました」
    熊:「その様な事が。して、その者とは?」
    諸:「若君は直々にお会いになる事はございませんでしたが、忠清殿とあのおなごが逃げた折に宗鶴様の命は、羽木勢を誘い込み撃つとの事でしたが、その命を退き勝手な判断で事を起こそうとし、殿に知れ追放された者にございます。あの折の者だとは宗鶴様は覚えておらぬようでした。坂口と申す者にございます」
    熊:「えっ!坂口」
    諸:「はい。若君?」
    熊:「和議の折に忠清殿と成之殿が参られたが、諸橋が席を外した折に、成之殿が忠清殿のお命を狙っていた事を話されての」
    諸:「えっ、なんと」
    熊:「わしも驚いた」
    諸:「命を狙ったその者と忠清殿が?」
    熊:「忠清殿は許されておってな」
    諸:「はぁ」
    熊:「加担しておった者が坂口だったと」
    諸:「さようでしたか。あ奴めぇ」
    熊:「して、その者が何をしたのじゃ・・・まさか!その者の行いが火種となったのではあるまいな」
    諸:「実は、そのまさかにございます」
    熊:「えっ?どういう事じゃ」

    つづく

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    =宗熊の決意 第一章=⑴

    ナレ:八次郎から渡された文を読み、宗熊は二人が無事に戻った事を喜びそして、敵方の己の身を案じてくれている羽木忠高に感謝した。忠清とは会っているが、忠高とは会うことは無かった。忠清の人柄を知り、そして忠高の優しさも知り、宗鶴の羽木家に対する遺恨について改めて不思議に思い、宗熊は確かめるべく諸橋の役宅を訪ねた。庭で諸橋は素振りをしていた。
    諸:「わっ若君・・・どうされました?」
    熊:「尋ねたき事があっての」
    諸:「さようですか。では中へ」
    熊:「諸橋、このところ妻女と則之介の姿が見られぬが、如何した?」
    諸:「妻の里の父が怪我をしまして、ですが大事に至らず安堵しております」
    熊:「さようか」
    諸:「父上も則之介に会いたいであろうと連れて参って、しばらくは里に居れと申しまして」
    熊:「そうであったか」
    ナレ:諸橋は奥へ行き、娘に茶を持ってくるように伝え、宗熊を奥の座敷に通した。
    諸:「何をお尋ねになりたいのでございましょうか?」
    熊:「父上の事じゃ」
    諸:「宗鶴様」
    熊:「そうじゃ。わしは和議の折は。だがそれ以前のわしは父上に歯向かう事もせず居った。わしとてこのままではならぬであろうとは思うておるのだ」
    諸:「はぁ」
    熊:「わしは、領民を守らねばならぬ」
    諸:「はい」」
    熊:「父上の幼き頃は、羽木、高山は近隣の戦の折に助け合うておったのだと、幼き頃おじい様に聞いたのだが。父上が城主となったのち、今の様に戦を仕掛けておる。ことに、羽木の領地にばかりのぉ。何故、父上が羽木、羽木忠高殿に敵意をむき出しにされるのか分からぬ。これまでに父上に尋ねる事もせなんだ。だが、昔の様になればと思うておる」
    諸:「それは・・・それは如何かと」
    熊:「そうじゃの。分っておるが、事の真相を知りたいのだ・・・わしとて分かっておる、わしが城主となれたとしたところで、織田信長公の様に天下を司る事など出来ぬこともの」
    諸:「それは・・・」
    熊:「己の事は己が一番分かっておる。だが、このままでは我らとていつ滅びるか分からぬ」
    諸:「若君のそのお考えは城主となるに値する事と存じます。ですが、急の事に驚いております。何故、その様に?・・・もしや、あの唯なるおなごの事にございますか?」
    熊:「唯殿はわしの目を覚ましてくれたのだ。天が唯殿と出会わせてくれたのだと思うておる」
    諸:「はぁ」
    ナレ:そこへ娘が茶を持ってきた。諸橋の子は二人の娘と五歳の男の子。長女は嫁ぎ、次女も嫁いでいたが、亭主が先の戦で亡くなり、嫁ぎ先の両親がまだ若いから里に戻り、幸せを掴んで欲しいと。娘は両親の優しさにこたえる様に里に戻った。宗熊の三歳年上。
    熊:「かっ・・・かたっかたじけ・・・すまぬ」
    ナレ:宗熊ド緊張。二人はどうしたのかと思っていた。娘は座敷を出て行った。
    諸:「若君どうされました?」
    熊:「いや、先に父上の事じゃ」
    諸:「先に?・・・そうでしたな」
    ナレ:諸橋は腕組して考えていた。
    熊:「何なりと申せ」
    諸:「ですが・・・」
    熊:「構わぬ」
    諸:「では・・・若君が申されるように、羽木、高山は仲ようしておりました。戦の折には互いに力を貸すような」
    熊:「であるのに、何故?」
    諸:「はぁ」
    ナレ:また言い難そうな諸橋に、
    熊:「どの様な事でもわしは受け止める覚悟じゃ」
    諸:「では。宗鶴様は幼き頃は大人に悪戯をし、叱られても笑っておる様なお方でした」
    熊:「思いもつかぬ事じゃ」
    諸:「宗鶴様は、御父上の命にて使いに参った折に娘と出会うたそうにございます。戻りまして私に話してくれました」
    熊:「それは母上か?」
    諸:「そうではございませぬ。実は・・・」
    ナレ:また言い難そう。
    熊:「諸橋」
    諸:「はい。のちに分かった事にございますが、その娘は二条家の姫様にございました。羽木忠高様の」
    熊:「では、忠清殿の母御か?」
    諸:「はい」
    熊:「父上が出会うた姫が何故、忠清殿の?・・・どういう事じゃ。何が遭ったと申すのじゃ」
    諸:「何もございません」
    熊:「無いと」

    つづく

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    大賑わい

    妄想作家のみなさんの作品、みんな違ってみんな面白い〜?
    しかし発想といいますか、視点といいますか…よく思いつきますね!尊敬致す!
    これからも新作待ってまーす?

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    二人の平成Days3~8日15時30分、おつかいできたかな

    若君が楽しそうだから、いっかー。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    スーパーにて。まずは米をゲット。

    唯「なんか追加で買う~?」

    尊「特に思い浮かばないよ」

    唯「手巻き寿司に入れたい具ってさ、だいたいお父さんセレクトで正解なんだよね」

    尊「確かに」

    唯「ケーキとか買ってっちゃダメかな~?まだ若君とも食べてないんだよね」

    尊「へー、とっくにデートで行ってるかと思った」

    唯「今後の楽しみにとっといたけど、今なら自分のおこづかいじゃないし」

    尊「現金な。でも若君と一緒にティータイム楽しそう。お父さんに聞いてくるよ」

    尊はスマホを操作しながら少し離れた。

    若「ケーキ?誕生日の話の折聞いたような」

    唯「そうそう、若君には平成ライフを満喫してもらわないとね」

    若「平成ライ、フ?」

    唯「えっと、今この、先の世での生活、です。しまった、説明担当がいない時にしゃべっちゃったよ」

    尊「お姉ちゃーん、そんな事だろうと思ったって。OKだけど、今夜は芳江さんエリさんも来るから、全員分買って早く帰ってこいってさ」

    唯「えーそうだったんだ、楽しみ~。了解でござる。若君、あっちね」

    尊「はやっ」

    ケーキ売場ショーケースの前にしゃがむ二人。

    唯「若君、どれにする?」

    若「ほぅ、まるで錦絵のようじゃの」

    店員達が、超イケメン~とうっとりしながら若君を見ている。

    尊 心の声(どれだけ綺麗なケーキ並べても、若君に目がいっちゃうよなぁ。ある意味罪作り)

    若「選べぬ。尊、頼む」

    尊「えー?きっとどれも美味しいよ」

    唯「私も選べなーい。いっそさ、ここからここまで全部、って贅沢は?」

    尊「それ、一人2個計算じゃん。人の金だと思って」

    唯「あんたの金でもないし」

    尊「若君、いいですか?」

    若君「苦しゅうない」

    帰り道。若君は軽々と米10キロを肩に担いでいる。ケーキも大量で結構な重さなので、唯と尊で一箱ずつ運んでいる。

    尊「お姉ちゃん、何キョロキョロしてんの」

    唯「若君を狙って、変なのがついてきたら大変じゃん」

    尊「守ってるね~。少なくともプロレスのスカウトは来ないと思う。でも凄いな若君、涼しい顔で運んでる。あ、涼しい顔はずっとだった」

    若「何程でもない。芳江殿エリ殿には世話になったゆえ、会うのが楽しみじゃ」

    尊「そうだね、確か初めてジーパン穿いた時、芳江さんが手伝ってくれたんだよね」

    唯「えー」

    若「何とか身に着けたが、この小さい金具に手こずった」

    唯「ファスナーに?そんな…きわどい」

    尊「お姉ちゃん、顔赤いよ」

    唯「ちょっと想像して」

    尊「妄想でしょ、芳江さんは仕事で慣れてるよ。それにそんな事で奥方がつとまるの?」

    唯「うっ」

    若「尊、唯はのう、腹が決まったようで決まっておらぬのだ」

    尊「腹が決まる…あぁなるほど。弟に言っちゃっていいんですか?」

    若「さすが尊は賢いの」

    唯「ちょっと尊 ~!そのわかったような言い方、わかって言ってる?」

    尊「なんとなく。ちょっと照れるし、お姉ちゃんが母になるなんて全く想像できないけどね」

    唯「わかり過ぎの飛躍し過ぎ!恥ずかしい…」

    尊「若君にとって、跡継ぎ問題はお家の一大事だからね。側室に取られてもいいの?」

    唯「ううっ」

    若「尊、わしは側室をめとるつもりはないのじゃ」

    尊「えー!そうなんだ、凄い!お姉ちゃんホント愛されてる」

    唯「えへへ~」

    尊「励め。」

    唯「なんであんたに」

    若「尊はわしの味方じゃ」

    唯「若君まで!もー!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ただいま帰りました~。

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    いろんな物語あり

    見たよ!と、続々と挙手。大変喜んでおります( ;∀;)

    ぷくぷくさん、熊シリーズ、楽しみにしてます!私の物語は今後、平成Daysの名の通り現代に特化しますので、宗熊は…うん今のところ登場予定はありません(^_^;)

    ここで一つお詫びを。ぷくぷくさん始め他の作家さんが使用済みのモチーフが、きっと被ります。既にスーパーのカートとか被りましたもんね。アプローチは違う筈なので、すみませんがパラレルワールドは幾つもあるらしい、と大目に見てやってください。

    梅とパインさん、そっとしておいていただきありがとうございます。小平太だったら危なかった~!(偏見?)想い人のあるなしの違い、ですかね?
    源三郎とトヨ、幼馴染みであるがゆえの、あと一歩が出せなくて怖いのでも一挙手一投足にときめくの、ってヒリヒリした感じ、好きです。お二人も美男美女ですもんね。続きをまた見せてください。

    さて、もう次のお話です。毎日と決めた訳ではありませんが、出せる時には出しますね。

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    ~No.329の妄想に便乗~

    《 源・トヨ は見た… 》
    城内の 若君の部屋近くで、身を潜めている背中を トントンと叩かれ…
    トヨ「ヒェッ!」
    「シッ!」 振り返ると源三郎。
    ト「げ…!」
    源「シッ! こっちへ…」
    そ~っと移動して 城外に出る二人。
    源「トヨ! あんな所で 何やってたんだ!?」
    ト「いや その… 天野様のところに 良い鴨肉が入ったから、お城にお届けせよ と言われて お台所まで持って来たんだけど… その…滅多にお城に入ることなんて無いから、ちょっとだけ お庭を覗いてみたくなって… でも 迷ってしまって 気付いたら あの場所で… 急に 人の声がしたから 隠れてた」
    源「馬鹿者! 気付いたのが 俺だったから良かったけど、他の者なら キツいお咎めを受けるところだぞ!」
    ト「だよね…。 けど 源ちゃん、見た~? 若君様と ふく…じゃなかった 唯様。ラブラブだね!」
    源「こら! …いやまぁ 確かにね」
    ト「いいなぁ、羨ましい」
    源「そだな」
    ………なんとなく見つめ合う二人。
    ほぼ同時に ハッとなり…
    源「お、俺は もう戻る。 いいかトヨ、さっき見たことは 他の者には 絶対に言うなよ!」
    ト「わ、分かった。言わないから安心して」
    源「ほんとだぞ!」
    ト「うん、私達だけの秘密ね」
    …「私達だけ」という言葉に 思わずキュンとなり焦る源三郎。
    源「じゃ…じゃあ…」と立ち去る。
    源三郎の背中を見送りながら、先ほど見た 若君 と唯のキスシーンを思い出し 自分たちと置き換えて、ニヤニヤが止まらない トヨであった。

    源・トヨの ラブストーリーは 続く……
    のかな? (笑)
    「ラブラブ」の戦国的表現が分からず…お許しを f(^^;。

    夕月かかりて さん、勝手に 便乗妄想して すみません m(__)m?。
    「周りには誰も居なかった」と ありましたが、源・トヨは しかと見ておりました (^.^)。
    あ 失礼。「源・トヨ」って何のこっちゃ?…なら「女中頭」で検索してみて下さい。最初の 妄想投稿が 出て来ます。その後もちょこっと引っ張り出していますが、どれも大したことない内容ですので お気になさらず…(笑)。
    現代バージョンも、楽しませて頂いてます。まだまだ ストックがあるとか… 楽しみにしてます。
    他にも 妄想作家さんが 居られますけど「みんな違って みんないい」♪
    妄想の競演・共演、楽しみましょう!

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    作家さん誕生

    妄想作家の妖怪千年おばばさん
    そして、夕月かかりてさんもデビュー
    古株?の私としては
    負けていられません(^O^)/
    ぷくぷく頑張りま~す(アムロ行きま~す風)
    毎日誕生日は納得です(^O^)
    優しい気持ちになりました(^_^)
    私も色々書かせて頂きましたが、同じ視点が無いのは不思議です(^_^)
    妄想の世界は楽しいって再認識しました(^_^)
    速川家や羽木家などについてはまた私も考えてみようかなぁと思っていますが
    一先ずその両家から離れちゃって(^_^)
    予告していました高山宗熊の事を書いてみようと思います(^_^)
    いつもの如く原作未読ですし、矛盾だらけではありますが妄想って事でお許しを(^_^;)
    妄想の隙間シリーズとして〔創作俱楽部 №162(6/12)無題➄の中の宗熊が父親に嘘ついて、羽木家に文を出し、その返事が羽木忠高から届き、その文を読んだところから、№252(8/25)無題ラストのナレ:小平太は若君達を連れて行った。そこに八次郎と宗熊の姿が〕までの間の宗熊の行動を(^_^;)

    共に励みましょう(^O^)/
    (偉そうにすみません(;_;))

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    秀逸至極m(_ _)m

    夕月さん‼️笑いました
    with 小姓→柚子胡椒 ?拍手
    手巻き寿司の場面も見たい❗
    天野爺が動物の買い物カートに
    ハマってる姿も想像しただけで笑える~
    細身だから案外…(笑)

    No. 329の2作品は偶然にも同No.
    同じシチェーションでの
    双方向の心の声は
    新しい試み 独自のスタイルですね

    沸々と溜まっていた想いが
    ?噴出してるのですね❗
    明るい作風 好きです?

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    二人の平成Days2~8日14時30分、仲良きことは

    イケメン保育士と園児二名が歩いてるような。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君が実験室から出てきた。

    唯「いい天気!さっ、お出かけしましょ。どこ行こっかな~」

    覚がキッチンから顔を出した。

    覚「おーい、出かけるなら買い物頼む」

    唯「えー?聞こえない聞こえない」

    若君「父上、どんな御用じゃ?」

    唯 心の声(ちぇー、若君優しいから~)

    覚「米を買ってきて欲しいんだけどな。重いけど若君に頼めるなら」

    若「お安い御用じゃ。して、どのくらいの重さかの」

    覚「10キロ。あーわかんないか~」

    尊「若君、甲冑一人分よりか全然軽いですよ。半分以下です」

    尊が実験室から出てきた。

    唯「なんであんたわかるの」

    尊「若君にわかるように説明しないと。大切な兄上なんで」

    唯「兄上…うんうん!」

    若「なら二つは持てるの」

    覚「いやいや~一つでいいから。イケメンが軽々と二袋も持ってたら、今度は女子高生じゃないのがついてきちゃうよ」

    尊「誰が?」

    覚「プロレスのスカウトとか」

    唯「ちょっとー!若君で遊ばないで!はいはい、行ってくるから!お金ちょうだい」

    覚「頼むね。夜は手巻き寿司だから楽しみにな。今日は大丈夫だけど明日の朝御飯が心細くて」

    唯&尊「やったー手巻き寿司!」

    若「父上の飯は何でも美味いが、二人がそれほど喜ぶのなら楽しみじゃ」

    覚「はいよろしく。なんか巻きたい具あったら買ってきてもいいぞ。若君ばかりに荷物持たせるんじゃないぞ」

    唯「いいよ、尊連れてくから」

    尊「はあ?」

    唯「あんた今一緒に喜んだじゃん。お散歩デートから、新婚カップルのスーパー巡りwith小姓!に変更するわ」

    尊「最後、柚子胡椒みたいに聞こえるけど」

    若「共に参ろう。尊が居れば心強い」

    尊 心の声(あっ、若君の不安がダダ漏れ)

    唯「そりゃ二人だけがいいに決まってるけどさ、仕方ないから連れてってあげる」

    若「良いか?」

    尊「承知つかまつりました、若君」

    若「それでは、出立いたす」

    唯&尊「ははーっ」

    覚「夕方には戻れよ~」

    三人、歩いてスーパーへ向かっている。

    尊「ここは歩道が狭いんだから、手つなぎ禁止!一列!」

    唯「えー」

    若「尊の申す通りじゃ、唯」

    スーパー近くで、歩道が広くなった。唯はすかさず腕を絡ませたが、

    尊 心(一歩下がって歩くのも何だかな。前に出るか)

    すり抜けようとすると、なんと若君が手を差し出してきた。

    尊「えぇ?僕と?」

    若「この手つなぎとやらは、なかなか幸せな気分になる。尊もいかがじゃ」

    尊 心(それはお姉ちゃんとだからでしょう?でも断るのもなんだし)

    三人並んでお手手つないで。

    唯「変な集団~」

    尊「いや、なんか楽しいかも」

    若「尊もいつか姫君とな」

    尊「えー」

    唯「えー」

    尊「何だよ姉ちゃん!」

    若「姉弟仲睦まじいのう」

    唯&尊「違う違う!」

    若「ハッハッハッ」

    入口に到着。

    尊「カート取ってくる」

    若「カー、ト?」

    唯「買いたい品物を入れる、荷車みたいな?」

    カート登場。

    若「唯の馬とはまた違う、鋼の車じゃな」

    尊「自転車とは用途が違うんで」

    若「この手前のは何じゃ?」

    チャイルドシートの部分を指差す。

    唯「これは、幼き子をここに乗せます。二つ開いてる所に両足を入れて」

    若「幼子のみか?」

    唯「うん、孫四郎でもちょっと大きいかな。なんで?」

    若「じいが足腰が悪くなってきておるゆえ、乗せてやりたい」

    唯「じいを?!」

    尊 心(お姉ちゃんが言ってた、世話になった天野家のじいの事?会った事はないけど、う~若君には悪いけど笑える!)

    唯も尊も、若君の優しさがわかるからこそ、笑いをこらえている。

    若「いかがした?」

    唯「うんとね、じいって、全然じっとしてないじゃないですか。足バタバタすると、まだお金払ってない品物を蹴飛ばしそうだから、」

    尊 心(お姉ちゃんにしてはグッジョブ!)

    唯「違う乗り物があるの」

    唯、キャラクターの形になっている幼児用カートを持ってきた。

    唯「まっ、百歩譲ってこれかな」

    若「ほう、色鮮やかであるの。じいが喜びそうじゃ」

    尊 心(夫婦漫才か!)

    若「尊、なんじゃ?」

    尊「仲睦まじい事で」

    唯「でしょでしょ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ちゃんと買い物完了する?

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    励みになります!

    てんころりんさん、早速感想までいただきありがとうございます。

    千絵ちゃんさんにも背中を押され、作家デビューさせていただきました。

    てんころりんさん、感服しました!若君の干支をお調べになったとは。身近に感じる事ができて嬉しい。再来年は、年男ですね!

    毎日誰かの誕生日、私の完全オリジナルだったらカッコ良かったんですが、残念ながら違います。
    私が以前住んでいた町に、ある洋菓子店がありまして、年中無休なんです。ショッピングモールの中だから無休とかではなくです。その理由というのが「毎日誰かの誕生日だから、必ず祝ってあげられるように休みなし」だったんです。いたく感動しまして、今回少し変えて若君に語ってもらいました。

    日付の訂正もありがとうございました。必ず夜ですもんね。失礼いたしました。期せずして同じ日になりました。

    この後第2話です。早いかしら?ストックが有りますので…。

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    夕月かかりてさん☆初作品

    読ませて頂きました~。
    唯と若君の会話は全く同じに、2人の心の声で、違うバージョンの物語に仕上がっていました。
    アイデアが斬新!とても面白かったです。
    初キスの唯は、幸せ感と戸惑い (/-\*)
    若君は唯の反応にあれこれ思う σ(゚Д゚*)

    若君『唯は“面白い”‥ 腑に落ちない顔をされる‥ 先の世とは“意味合いが違う”ようだ』ここ、公式掲示板をよく読まれてますね。
    若君が言う「面白い」は、語源の意味で捉える方が相応しい。この意見を取り入れたんですね。

    SP平成での日々~*
    若君は数え年。永禄2年/1559年 18才でしたね。
    ってことは、1542年/天文11年 壬寅(ミズノエトラ)年生まれ でしょうか?
    唯が尊に見せる資料に『永禄三 庚申(カノエサル)年十一月… 』とあり、何年生まれか? 干支は何か? 知りたくて、調べたことあるんです。
    余計なことですけど‥ f(^^;

    『毎日が大切… 毎日誰かの誕生日』ほんと.深い言葉てす。???
    あっ 唯と若君が平成に到着した日は、2018年11月23日の満月です。
    2年前の2人の到着と ちょうど同じ日に、夕月かかりてさん、初作品発表だったですね!
    次回作 楽しみにしています。

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    二人の平成Days1~2018年12月8日土曜14時、一日一日を大切に

    平成での29日間、ところどころを覗きます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    土曜の昼下がりの実験室。若君と尊の二人。

    若君「しかしこの部屋は、まるで生きているようじゃ。常に光が明るうなったり暗うなったり。面妖な」

    尊「生きてる、なるほどそうかもですね」

    尊 心の声(機械に目を輝かせるトコなんて、若君も男子って感じだな)

    唯が入ってきた。

    唯「みーつけた。んもう、籠るのは尊だけでいいのに」

    若「この部屋にはいくらでも居られる」

    尊「ほら、男同士通じてるんだよ」

    唯「なにそれ。ねえねえ、若君ってさー、誕生日っていつ?」

    尊「なにそれ急だし」

    若「たん…じょうびとな?」

    唯「ケーキ…はないな、お祝いのご馳走とかパーティーとか」

    若「?」

    尊「お姉ちゃん」

    唯「何よ。尊知ってるの?」

    尊「じゃなくて。戦国時代は、そんな風習はないんだよ」

    唯「そうなの?いつか覚えとこと思ったのに。えーじゃあ、いつ年とるの?」

    尊「誰もかれも年のはじめ、元日に一歳増えるんだ。数え年って聞いた事ない?」

    唯「ない」

    尊「これだから。だからいつ生まれたかは知っててもお祝いはないよ、ねえ若君」

    若「そうじゃな。生まれた日とは大切か?」

    尊「そうですね、現代では」

    若「そうか。では毎日が大切じゃ」

    唯「なんで?」

    若「毎日誰かの誕生日じゃ」

    尊「深い…さすが総領」

    唯「毎日大切?超カッコいい!じゃあ今この時間も大切だから、お散歩デートに行きましょ、若君~」

    男子、顔を見合わせて苦笑。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、お散歩デートなるか。

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    ドラマ最終話ダイブ!の続き~若君篇~

    こちらは、同じシチュエーションの若君側です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    愛しい唯の鼓動を感じながら、空を眺めていた。

    若君「唯」

    唯「はぁい…あっごめんなさい!」

    首に回していた腕をほどき退こうとするので、

    若「いや、そうではない」

    胸元に引き戻し、再び腕の中に。

    唯「えっ」

    空の彼方を見つめながら語りかける。

    若「…そなたは誠に軽い身よのう、手足も棒切れの様であるし」

    唯「えー?それ、褒めてます?」

    若「褒めておる。前より思うておったが、このような体で、幾度もわしや羽木を救うてくれた、心より礼を申す」

    唯「そんな。お礼は前も言われたし、若君を守ると決めたのは私だから」

    若君 心の声(しかし戦はまたいつ始まるやわからぬ。何とか唯を出さずにすむ手立てはないだろうか)

    唯「あっでも、背中とか痛いじゃないですか」

    唯が体を起こそうとする。

    若 心(このままするりと逃げてしまいそうじゃ)

    右手を伸ばして顔を包んだ。

    若「このままで良い。眼前には一面澄んだ空と唯だけじゃ。心地よい」

    髪を撫でながら見つめると、唯はまた泣きそうな顔をしている。

    唯「若君…」

    若「なんじゃ?」

    唯「超…超幸せですぅ」

    若「幸せか、わしもじゃ」

    若 心(笑顔も泣き顔も実に面白い。しかしそれを伝えると唯はいつも腑に落ちない顔をする。先の世とは意味合いが違うようだが、わからぬ。尊に聞いておくべきであったな)

    唯「…若君ぃ」

    若「ん?」

    唯「心の臓が止まりそうですぅ」

    若 心(どこかで聞いた様な。何も食してない筈だが、例えで良いのであろう)

    若「ハッハッハ、それは困るのう」

    若 心(尤も、唯が拐われた折はわしも心の臓が止まりそうであったわ。今となっては懐かしい話じゃ。ここまで心を動かされるとは)

    若「心通じ合う姫など要らぬ、と思うておった時期もあったがの」

    唯「そうなの?」

    若「唯に出逢うて誠幸せじゃ」

    体を起こし、唯も座らせたが、うつろな目で下を向いている。

    若 心(今が適期では)

    あごをそっと持ち上げる。驚いているが構わず近づき、唇を重ねた。邪魔する者もなく、風の音と鳥のさえずりだけしか聞こえない。

    暫くすると、唯が怒り出した。

    唯「若君…速攻過ぎますっ!さすが戦国武将、じゃなくてっ」

    若「ん?如古坊や源三郎が参る前にと思うての」

    若 心(何ゆえこうも腹を立てておるのか?同じ気持ちではなかったのか)

    唯「あぁそだね。じゃなくて!なんというか、もちょっともったいぶるというか、ロマンチックに…ってこれ英語じゃん、もーっ何て説明すれば!」

    若 心(早口であるし、先の世の言葉も入っているようでわからぬが…わしが悪いようじゃし、落ち着くまでもう少し話を聞こう)

    若「それで?」

    唯「ファーストキスなんだからあ、あっまた英語だった、えーと初めての~口づけなんですぅ。そりゃ若君にとっては初めてじゃないかもしれないけどさ、あっ否定しない?ちょっとショック」

    若 心(今まで焦らされておったから、わしは堪忍袋の緒が切れそうじゃったのだが。初めてとそうではないのは何か意義が違うらしいが何であろうか)

    若「唯が何に腹を立てているかはわからぬが」

    向き直って真っ直ぐ唯を見つめる。

    若「では如何すれば良い?」

    唯「そうゆーんじゃないんだけど…もういいです」

    若 心(落ち着いてきたようだな)

    若「良いのか?」

    唯「じゃあ今度からはー、心の準備ができてからで」

    若「ほう、あいわかった」

    若 心(そうか、急いてはならぬのだな。それはあい済まなんだ。これからは必ず許しを得よう)

    唯「でも私は、若君が初めてで良かったし、これからもずっと若君だけですから」

    若「そうか、それは喜ばしい事じゃ」

    唯「ずっとお供するんですからっ」

    若 心(必ず守ってみせようぞ)

    若「心得た、で」

    若 心(改めて許しを)

    唯「へ?」

    若「今はもう準備は出来ておるか?」

    唯「えっ?えっと…はい…」

    もう一度優しく口づけた。

    この世界に二人だけ、かのような、静かで緩やかな時間だった。

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    ドラマ最終話ダイブ!の続き~唯篇~

    一緒に倒れこんだ後、若君に抱きついたままの唯。

    唯 心の声(なんか…もう一回プロポーズされたみたいな感じ?超嬉しい!)

    日差しが暖かい。

    唯 心(ぽかぽかして気持ちいい…若君もあったかい…)

    夢うつつにまどろんでいた。

    若君「唯」

    唯「はぁい…あっ!」

    若君に、全体量乗っかったままでいる事にようやく気付く。

    唯「ごめんなさい!」

    首に回していた腕を外し、退こうとすると、

    若「いや、そうではない」

    胸元に引き戻され、再び抱き締められた。

    唯「えっ」

    戸惑っていると、若君はゆっくり話し始める。

    若「…そなたは誠に軽い身よのう、手足も棒切れの様であるし」

    唯「えー?それ、褒めてます?」

    若「褒めておる。前より思うておったが、このような体で、幾度もわしや羽木を救うてくれた、心より礼を申す」

    唯「そんな。お礼は前も言われたし、若君を守ると決めたのは私だから」

    そう話しながら、

    唯 心(前から軽いと思ってたって…どゆこと?あ、そっか!長沢城でおんぶしてもらったっけ。えへへ~。でもあの超カッコ良かった若君、全然見えなかった~ちょっとざんねーん、あーあとお姫様だっこもあこがれるなあ~今度おねだりしよっ)

    兄上の部屋でのくだりは認識なくカウントされていないが、思い出してはニヤけ妄想してはニヤけていた。が、

    唯「あっでも、背中とか痛いじゃないですか」

    降りようと体を起こすと、若君の右手が伸びて顔を包み、

    若「このままで良い。眼前には一面澄んだ空と唯だけじゃ。心地よい」

    見つめながら優しく髪を撫でるので、胸が熱くなりまた泣きそうだ。

    唯「若君…」

    唯 心(会えなくて辛い事もあったけど、なんか、なんか…)

    若「なんじゃ?」

    唯「超…超幸せですぅ」

    若「幸せか、わしもじゃ」

    唯 心(もう、夢じゃない)

    ふっと体の力が抜け、若君の胸に再び持たれかかった。

    唯「…若君ぃ」

    若「ん?」

    唯「心の臓が止まりそうですぅ」

    若君、少し考えた様子だったがすぐ破顔。

    若「ハッハッハ、それは困るのう」

    声が体越しにも響いて、全身で若君を聴いているよう。

    若「心通じ合う姫など要らぬ、と思うておった時期もあったがの」

    唯「そうなの?」

    若「唯に出逢うて誠幸せじゃ」

    若君は体を起こした。唯も座り直したがまだうつろに下を向いている。

    若「唯」

    大きな手で優しくあごクイされ顔を上げると、思いの外距離が近い。

    唯 心(あっ)

    目を閉じる間もなく、唇が重なった。

    唯 心(はやっ!えーっえー…)

    驚きはしたが、次第にその感触の柔らかさに、

    唯 心 (キスって、キスってこんなに体までトロけるものなの…)

    目を閉じすっかり夢見心地。風の音と鳥のさえずりだけが二人を包んでいる。

    ……どれだけ時が流れたか、もう一度強く抱き締められた。腕の中で唯は我に返り、

    唯「若君…速攻過ぎますっ!さすが戦国武将、じゃなくてっ」

    若「ん?如古坊や源三郎が参る前にと思うての」

    唯「あぁそだね。じゃなくて!なんというか、もちょっともったいぶるというか、ロマンチックに…ってこれ英語じゃん、もーっ何て説明すれば!」

    怒涛の勢いに、若君が首をかしげている。

    若「それで?」

    唯「ファーストキスなんだからあ、あっまた英語だった、えーと初めての~口づけなんですぅ。そりゃ若君にとっては初めてじゃないかもしれないけどさ、あっ否定しない?ちょっとショック」

    若「唯が何に腹を立てているかはわからぬが」

    若君は向き直り、

    若「では如何すれば良い?」

    唯「そうゆーんじゃないんだけど…もういいです」

    若「良いのか?」

    唯「じゃあ今度からはー、心の準備ができてからで」

    若「ほう、あいわかった」

    唯「でも私は、若君が初めてで良かったし、これからもずっと若君だけですから」

    若「そうか、それは喜ばしい事じゃ」

    唯「ずっとお供するんですからっ」

    若「心得た、で」

    唯「へ?」

    若「今はもう準備は出来ておるか?」

    唯「えっ?えっと…はい…」

    もう一度そっと優しく口づけられた。

    唯 心(ドキドキが止まんないよぉ!若君、策士?)

    周りには終始誰も居なかった。急いで呼びに来る者がいないという事は平和の証であり、束の間ではあるが緩やかな時間が流れていた。

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    失礼いたします

    最近、アシカフェに入店いたしまして、こちらには初めて参りました。夕月かかりてと申します。

    諸先輩いらっしゃるなか私も、とムクムク創造が膨らみ、僭越ながら創作物語を発表させていただきたく、お邪魔いたしました。

    私の物語ですが、

    ・ドラマは本編とSP、Blu-rayの赤青の内容は観ている

    ・原作は読んでいない

    ・でも公式掲示板などで漏れ聞いた、原作関連の内容が混じるかもしれない

    ・キスに至る際の寸止めは、ない

    となっております。「今回寸止めありません」と毎回お伝えするのも興醒めですので、アシガールは寸止めこその美!とお考えの方は、ご覧になられませんようお願いいたします。

    本日、一気に三篇投稿いたします。ドラマ最終話の続き二種と、平成での二人の物語第1話です。

    ド新人創作者の物語、ご笑納ください。

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    返信
    てんころりん様

    いつも感想をありがとうございます。
    m(__)m
    前に書いて頂いた感想を拝見し、、
     ”小平次”も良かったな~”
    と思っていました。(^_^)v
    原作の10巻には、
    SPのラストシーンを彷彿とさせる
    場面も描かれていますね。

    今、”十三夜”の後の物語の
    構想を練っています。

    高山と武田、両軍に取り囲まれた、
    小垣城に若君がどのように入ったのか
    その謎ときをしようかと。
    それに、ふきちゃんがどう関わるのか、
    楽しみにしていてください。(^_^)v

    では、しばし、お時間を!

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    返信
    な~るほど

    「十三夜」二の姫と小次郎の物語は、爺様の夢だったとされたんですね。 
    私も原作にあるという小平太の弟.夭折の話は、全く覚えておらず、すみませんでした。
    原作は去年11月に13巻まで読みましたが、ドラマが深く入り過ぎていて、全く頭に入りませんでした。
    若君が嘘をついて唯を帰す(ドラマ8話)辺りまで再読して、原作には原作の良さがあると、初めて分かった?初心者です。

    結びの段で爺様の夢として、同じ名の佐々木小次郎(!)を登場させ、今は亡き小次郎がこの世に残した想い、爺様の孫への想い、現実が幻想的に入り混ざり、一層感慨深い物語に思えました。
    どうぞまた楽しませて下さいね。

    そして私の大失敗:小平太の弟の名を小平次だと思い込んでました!あちゃー(>_<)
    それをno.317に、実際書いてしまいました!
    お詫びして訂正させて下さい。m(__)m

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    返信
    十三夜 結びの段

    居間で眠りこけている信茂を、
    当主の天野信近が揺り起こした。

    「父上、ここで居眠りをされては、
     風邪を召されますぞ。」

     「ん・・・ううん。」

    「祭りの酒が、まわりましたか。」

     「お、おう。
      ちと飲み過ぎたかのう。」

    そこへ、長男、小平太が狩衣姿で
    やって来た。

      「ただ今 戻りました。」

    「おお、小平太。よう戻った、
     して首尾は?」

      「それが、そのう・・・」

     「首尾とな?な、何の事じゃ?」

      「は?」

    「は?」

    信近と小平太が、顔を見合わせる。

    「何を寝ぼけておられるのです。
     鈴鳴八幡の流鏑馬に
     決まっておりましょう。」

     「おお、そうじゃった。
      で、如何じゃった?」

      「そ、それが、
       まことに面目ない事に、
       勝ちは鐘ヶ江殿でござる。」

     「なんと、
      此度も鐘ヶ江の巴御前か?
      二度もしてやられるとは
      情けない。
      で、小次郎は?
      まだ戻らぬのか?」

      「は?」

    「は?」

    また、信近と小平太が、
    顔を見合わせる。

    「小平太、着替えて参れ。
     それから、誰ぞに、
     濃いめの茶を持たせよ。」

       「は、直ぐに。」

    信近は、信茂の顔を
    しげしげと覗き込む。

    「夢でも、見て
     おられたのですか?
     小次郎は、とうに・・・」

    「戻っておるのか?
     では、早うこれへ。
     二の姫との話も進めねば。」

    「はあ?
     ですから、父上、小次郎は・・・」

      「茶をお持ちしました。」

    信茂の様子を案じた小平太が、
    自ら茶を運んできた。

      「爺様、鐘ヶ江殿の、
       流鏑馬披露は、此度が初の事。
       決戦に持ち込みましたが、
       一心同体の見事な馬さばき、
       寸分もぶれぬ矢で、
       全て見事に射抜かれました。」

     「此度が初・・・とな?
      して、小次郎は?」

      「ご存じだったのですか?
       小次郎殿の事を?
       小次郎殿も、決戦に
       臨まれましたが、かろうじて、
       私が一枚上となりました。」

     「さ、さようであろう。
      わしは、
      夢など見ておらぬわ。」

    信近が、小平太になにやら囁く。
    それを聞いた小平太が、
    信茂に茶を進めながら、
    つとめて穏やかに言った。

       「爺様、小次郎殿と言うは、
        佐々小次郎殿。
        鈴鳴八幡の禰宜殿の、
        遠い縁者に当たられるとか。
        ゆえあって、射手を辞退した
        源三郎の代役として、
        禰宜殿が、弓の上手を
        呼ばれたのです。」

     「な、なんと。」

    「我が家の小次郎も、存命であれば
     元服も済み、
     流鏑馬も披露できる年頃。
     八幡大神が、父上に、
     夢で会わせて下されたのでは。」

     「夢で・・・とな?
      う、ううむ・・・。
      さよう・・・か。
      さようであったの、
      我が孫の小次郎は、
      すでに・・・」

    信茂は、渋い茶を飲み終えると、
    夜空の月を振り仰いだ。

    百本の矢を的に当て、
    額に汗を浮かべたまま、
    晴れやかに微笑んだ、
    小次郎の顔が浮かぶ。

     「信近、夢の中の小次郎は、
      瓜二つじゃった。
      ぬしの若き頃にの。」

    信茂の声に、信近も月を見上げた。
    つられて小平太も月をみて、
    こう言った。

      「思い出したことが・・・。
       確か、小次郎が
       亡くなる前に、書いた文が
       あったはず。
       文箱を探して参ります。」

      ・・・・・・・・・・・・・

    それから、間もなくの事。
    城内がにわかに慌ただしくなった。
    高山に送り込んでいた間者が、
    知らせて来たのだ。
    密かに高山が、小垣に攻め入る
    準備をしていると。

    城主、羽木忠高は、惣領の忠清を伴い
    小垣の近くに馬を走らせた。
    田にはまだ、
    刈り取られていない稲が残っている。

    「いよいよ、お前も初陣となろう。」

     「望む所にござりまする。」

    「頼もしい事じゃ。
     だが、忠清、将と言うものは、
     相手に深手は負わせても、
     深追いはならぬ。
     手柄を上げようと逸る家臣を、
     押さえるのも、将の役目ぞ。」

     「心得ました。」

    「それと、もう一つ。
     戦場は選ばねばならぬ。
     刈り入れ前の田を踏み荒らすは、
     己の首を絞めるのと同じじゃ。
     戦の前には、必ず、おなごと童は、
     村の世話役や庄屋の元に集めよ。
     村の者は、おなごも童も
     大切な働き手じゃ。」

     「童も働き手。。。」

    忠高は、深くため息をつく。

     「如何なされたのですか?」

    「忠清。心せよ。
     ぬしの代には、村の者にも、
     城下の物売りの者にも、
     皆、武芸を仕込まねば
     ならぬやもしれぬ。」

     「皆?それは何ゆえに?」

    「都の将軍の力が弱まっておる。
     荒れた時代が来る事になろう。」

    忠清は、父の横顔を見つめた。
    “父上は、常に時代を
    読んでおられる。見習わねば。”

    秋風が、稲穂を波打たせている。

    「おお、そうじゃ。松枝村の
     すすきが原へも参ろう。」

     「すすきが原?」

    「お前は、覚えておらぬのか?
     あれには、まこと、
     皆が肝をつぶしたものじゃ。」

    忠高は、幼い日の忠清を思い出し、
    高らかに笑った。
    忠清は、訝しみながらも、
    馬を進める。

    草原に出ると、忠清は、
    なぜか懐かしい思いにとらわれた。

    吹雪が首を上げ、小さくいななく。
    忠清は思い出した。
    “そうじゃ。ここは・・・”

    「父上、しばし、吹雪を
     走らせて参りまする。」

    忠高は黙って、うなずいた。

    7年前の十三夜の事だった。
    忠清とまさに同じ日に生まれた
    白馬、吹雪は、
    鈴鳴八幡に奉納されるはずだった。
    吹雪は、何事かを察したように、
    数日前から落ち着かず、
    馬番をてこずらせた。
    その日、空が白み始めた頃、
    忠清は、一人、部屋を抜け出すと、
    厩に向かった。
    馬番は吹雪の毛並みを整えていた。
    気持ちが良いのか、さすがに
    吹雪もおとなしくしている。
    馬番よりも早く、忠清の気配に
    気づいた吹雪が、首を伸ばす。

     「こ、これは、若君様。」

    「吹雪と別れを惜しみたい。
     しばし、外してくれぬか。。」

     「恐れながら、吹雪は、今、
      気が荒れておりまする。
      若君様に何事かありましては。」

    「これでもか?」

    吹雪は、若君の胸に頭をつけ、
    甘えている。
    馬番は、飼葉を取りに
    行くことにした。

    「吹雪、案ずるな。
     お前はどこにもやらぬ。」

    厩の柵につないだ縄を解くと、
    吹雪は、前足を折って屈んだ。
    忠清は、水桶の淵に足をかけ、
    すばやく吹雪の背に乗り、厩を出た。
    吹雪を鈴鳴神社に送る為に、
    早々と開いていた厩門を
    一気に駆け抜けると、
    黒羽城から一番遠い、
    国境の小垣城を目指した。

    すすきが揺れる草原を、
    吹雪と共に駆け抜ける。
    まるで、一陣の風の様に。

    小垣城では、城代の木村が
    陽の落ちた空に浮かぶ一番星を
    見上げていた。
    そこへ、門番が突然、
    若君の来訪を知らせて来た。
    何事かと、木村が自ら迎えに出る。
    そこで、目にしたものは、
    鞍もつけずに白馬に跨り、
    満面の笑みを浮かべている、
    幼い忠清の姿だった。

    「正秀、思い立って月見に参った。
     今宵は小垣で過ごすと、
     黒羽に使いを頼む。」

    木村正秀は、驚きのあまり
    危うく腰を抜かす所だった。

    “天賦の才とはこの事か。
    わずか六才で供も連れず、
    馬を操り、駆けて来るとは。”

    空は、あの日の様に青く澄んでいる。
    白い雲の下に、小垣城を認めると、
    忠清は、手綱を引いた。

    「吹雪、今日はここまでじゃ。
     お前との思い出の地、
     何としても守ろうぞ。」

    ひと月後、忠清は初陣を飾った。
    家臣はいつにも増して士気高く、
    忠清の周りを固め、
    高山軍は、攻め込んだことを
    悔やむ様に、退いていった。

       ・・・・・・・・・・・・・

     「天野殿も参られたのですか。」

    鈴鳴八幡の大社で、信茂は
    鐘ヶ江久政に声をかけられた。

    「やや、これは鐘ヶ江殿。」

      「せっかくの事です。
       こちらでしばし、
       ゆるりとされては如何?」

    禰宜の言葉に、
    天野信茂と鐘ヶ江久政は、
    大社から渡り廊下で続く建屋に入った。
    巫女が、お神酒を運んで来る。

    信茂も久政も、
    此度の勝ち戦のお礼参りに、
    来たのだった。

    信茂にとっては、大切な
    若君の初陣でもあったので、
    格別な喜びであった。

    「鐘ヶ江殿、伺いましたぞ。
     二の姫殿が、見事な流鏑馬を
     御披露されたと。」

    「お恥ずかしい限りでござる。
     あれには、いつも冷や汗を
     かかされましてな。
     こちらの禰宜殿が
     お許し下さったから良いものの。」

    「まこと。頼もしきおなごじゃ。
     実は、あの日、
     わしは夢を見ましてのう。」

    ほろ酔い気分で、
    信茂は夢の子細を語った。

    「先日、我が孫、小次郎が
     亡くなる直前に書いた文が
     見つかりました。
     二の姫殿に宛てた文でしてな。
     兄の小平太から
     二の姫殿のお噂を伺って、
     密かに憧れておった様で。
     この病が癒えたら、
     弓の指南をお願いしたいと。」

     「さような事が。
      なんとも、不思議な事じゃ。」

      「実は、天野殿。
       射手を務めた佐々小次郎は、
       此度の戦の間、
       こちらにとどまり、
       この八幡宮の警護に
       当たっておりましたが。」

    禰宜は、一呼吸おいて言葉を続けた。

      「只今、二の姫殿との縁談を
       進めておりまして。」

    「な、なんと。
     それはまことでござるか?」

     「まことでござる。のう、天野殿、
      これも八幡大神が下さった
      御縁やもしれぬ。
      無事、婚礼と成りました折には、
      是非ともお立ち合い下され。」

    巫女が、禰宜を呼びに来た。
    他にも、玉串を捧げに来たものが
    あるらしい。

    鐘ヶ江久政は、
    禰宜が退出するのを見届けると、
    信茂の耳元で、声を潜め、
    何事かを打ち明けた。

    信茂は、驚きを隠せなかったが、
    咳ばらいを一つすると、
    おもむろに立ち上がった。

    「では、その儀は、いずれまた。」

    信茂は、ふと思い立ち、
    境内の裏手に回った。
    そこには、
    吹雪の代わりに奉納された、
    新月の厩がある。
    新月は、吹雪と同じ年に生まれたが、
    こちらは、漆黒の毛並みを持つ。
    性格は穏やかで、
    斎王行列の先頭を飾る馬として、
    申し分が無い。
    戦には向かぬかと思えたが、
    此度は、甲冑姿の守り人を背に乗せ、
    大社の鳥居の前に立ちはだかり、
    動じなかったと禰宜から聞いた。

    「お前も、ようやったの。」

    信茂は、新月に優しく声を掛けた。
    まるで、今は亡き小次郎に
    語りかける様に。
    紫に変わる雲の上に、晩秋の陽の光が
    うっすらと残っていた。

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    ”十三夜” タイトル変更

    原作ファンの皆様、ごめんなさい。
    10巻を読み直した所、天野家次男は、
    10才にならないうちに
    病死とありました。
    ”十三夜”は、漫画版を想定してます。
    そこで、今までの”上、中、下の段”
    を”序、早、急の段”と訂正しました。
    これから、”結びの段”を投稿します。

    10巻の原作者のあとがきを拝見。
    ドラマのSP終了後、漫画も終了予定
    だったんですね。ドラマと原作が、
    本当に良い関係で、原作の続投に
    つながったのかと、感動しました。
    これも、先輩アシラバ様達の
    お蔭ですね。
    ありがとうございます!

    投稿フォームへ

    返信
    十五夜と十三夜

    こんばんは!
    先日、帰宅途中に、
    大変美しい三日月を見ました。
    昔、母が、十五夜にお供え物を
    したら、十三夜も必ずするものだと
    言っていたのを思い出しました。
    母は、お団子ではなく、
    お饅頭を供えていました。
    十五夜には15個。
    十三夜には13個。
    ススキは、稲穂の代わりの様ですね。
    団子は、里芋に見立てたものだとか。

    唯ちゃんを十五夜に例えると、
    ふきちゃんは十三夜かなと。
    そんな気がして、物語を書きました。
    黒羽城に呼ばれた後の事も、
    書きたかったのですが、
    あまりにも長くなってしまうので、
    それはまた、別の機会に。

    てんころりん様
    感想有難うございます!
    楽しんで頂けたようで、
    嬉しいです。(^_^)v
    続編もまた書いてみますね。

    投稿フォームへ

    返信
    ごめんなさい

    てんころりんさん
    やり取りが嬉しくて、調子に乗ってはしゃいでしまった(;_;)
    この歳になっても調子に乗りやすくブレーキが利かない性格、もぉ治らないですね(^_^;)

    本編では、心の声は唯と尊だけだったので、そのスタンスは変えずに、〔(心の声)〕
    ご提案の〔……〕の形を使って書いていきます(^_^)

    宗熊の事はまだ完結していないので、出来上がりましたら書かせて頂きます(^_^)

    ユーザー登録の事ですが、誤字脱字が多い私の事を心配して下さって以前にも登録はどうかとおっしゃって下さった方がおりましたが、ご提案頂いているにもかかわらず未だに登録していないのは
    登録によって何かがという事では無くて、あくまでも私側の諸事情で躊躇しております。
    すみません(>_<)

    誤字脱字等々の多い私が書いた後にあれやこれやと書く事を申し訳なく思っています。
    別に急ぐことではないのだから、時間をかけて確かめてから送信するように努めます(^_^)
    これからも宜しくお願い申し上げます(*^_^*)

    投稿フォームへ

    返信
    そうですね。

    来週木曜10/29は、旧暦に換算すると九月十三日に当たり、十三夜のお月見ですね。?
    妖怪千年おばばさんは、丁度季節に合わせて物語を作られたんですね。

    ぷくぷくさん、添削ではなく感想ですからね。
    スマホの勝手な改行の為、大変読み難くなったケースを書かせて頂きましたが、後は本当に自由にどうぞ‥ 求められれば感想は述べます。

    今回、唯の“心の声”が ( ) 内にあって、とても面白かったです。アイデアとして新鮮でした。
    ドラマでも唯の“心の声”は効果的でした!!
    結菜ちゃんは一人残って“心の声”の収録もして、大変だったでしょうね。

    登場人物が 皆それぞれ心の中を呟きだすと、それはちょっと多角的過ぎて、うるさいかな‥?
    いや、そうとばかり言えないかも…
    ケース·バイ·ケースですね。
    面白いかもしれません。(*´艸`*)
    純粋な余白は、スペースや「・・」以外も試して違いを演出すると、単調にならず、読む方もニュアンスの違いを感じて読めると思います。
    試作ばかりでなく 本番どうぞ~ ( ゚∀゚)つ

    【2020.10.23】書き換えました★

    ぷくぷくさん、ユーザー登録の件は了解です。
    続きになるし、個人連絡なので ここを書き換えました。気付いて頂けないかもしれませんが、それはそれで・・

    “自分側の諸事情”的な事は、前にも書かれていたので承知の上、もしかして誤解があるのでは?と思ったのです。10/21に書いた事は省きます。
    メールアドレスを登録しても、管理人さん以外の人には伝わりません。管理人さんは “個人のアドレスは極力見ないようにしている”と書かれてました。

    もし個人のPCやスマホのアドレスを登録する事に躊躇があるなら、ヤフーアドレスを使う方法もあります。ヤフーアドレスはPCと関係なく使えるYahoo Japan の公的サービスです。無料です。アドレス取得は簡単です。

    私はPCでインターネットを使っていた頃にアドレス取得し、ネット通販や公的な関係はヤフーアドレスを使い、自分のPCアドレスは極プライベートな関係に限っていました。
    Yahoo JapanのHPからログインすれば、どこのPCでも, スマホでも, 自分のYahooアドレスに届いたメールを読めます。
    PCをどなたかと共用している場合も、分けられて便利です。
    今私は PCを使っていないので、このアドレスは重宝しています。こちらのユーザー登録もヤフーアドレスでしています。

    ぷくぷくさん、私のお節介なので気になさらず、
    ご本人の諸事情を知ろうとは思いません。
    書いた事は的外れかもですが、何か参考になればと思って・・
    ユーザー登録は、勿論ご本人のお考え次第です。

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    自前?

    確認したのに、また消し忘れた文字がありました(;_;)

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    SP隙間シリーズ

    ナレ:源三郎が行った後、二人も殿の元に向かった。廊下を並んで歩いていた。
    唯:「(まさか、やっぱり反対なんて事に)若君」
    若:「案ずるな」
    唯:「えっ!もしかして私の心読みました?いや~ん」
    ナレ:唯は胸元に手を当てた。
    若:「お前の顔を見ていれば分かる」
    唯:「そうなのね(若君ったらぁ)うふっ」
    若:「ん?」
    唯:「何でもないです」
    ナレ:部屋の前で声を掛けた。
    殿:「入れ」
    ナレ:そこには阿湖姫の姿も。
    唯「(やっぱり)あのぉ」
    殿:「唯、お前に」
    唯:「えっ!」
    殿:「何じゃ、その様に大声で。 まぁ、座れ」
    唯:「はい」
    ナレ:何を言われるのかドキドキしていた。
    殿:「お前は、今も天野の離れにて寝泊まりをしておるようだが何故?」
    唯:「えっ?えっとぉ、まぁ」
    ナレ:昼間は藤尾にビシビシしごかれ、いや、指導を受けているから、休む時くらいは藤尾の目の届かない離れで眠りたいと思っていたので、修行が終わると直ぐに戻っていた。
    阿:「唯は、わたくしに気兼ねをしておるのでは?」
    唯:「気兼ね(あっ、遠慮か)ただ、私は」
    殿:「ただ?」
    唯:「えっと、それはぁ(どう言えば、ん~)」
    ナレ:腕組して考える唯をどうしたのかと三人は見ていた。
    唯「(あっ!)そう、まだ結、んと、そっ婚儀が済んでいないので、ここはやっぱりケジメをとそう考えていたので。それだけです。阿湖姫にまで心配をかけてしまっていたんですね。すみません」
    阿:「わたくしは」
    殿:「だが、お前は忠清の正室になるのだ。奥に入り物事を覚える事がお前の務めであるぞ」
    唯:「はぁ。まぁ(頑張ってるけど、のんびりできないじゃん)」
    若:「唯」
    唯:「(心読まれた?)」
    若:「父上、私は唯の思うようにさせても良いと存じます」
    唯:「若君(やっぱり読んだのね)」
    殿:「忠清。主からその様な言葉を聞くとは思わなんだ。ははは」
    若:「父上」
    阿:「唯」
    唯:「はい」
    阿:「わたくしは忠清様の妻は唯でまことに良かったと思うております」
    唯:「阿湖姫様(なんて優しいのぉ、私が男だったら阿湖姫と、そうなると若君は)」
    ナレ:考えながら若君の顔を見た。見られた若君は何の事か分からず首を傾げた。
    唯:「何でもないです(こう言ってもらってるんだから、私もしっかりしなきゃいけないのよねぇ)分かりました。支度が整いましたら、奥へ入り寝泊まりする事にします」
    若:「唯、良いのか?」
    唯:「はい!」
    殿:「そうか。わしの申したい事は済んだ。下がって良いぞ」
    ナレ:唯と若君と阿湖姫は部屋を出た。
    阿:「わたくしがお殿様に申してしまったものですから」
    唯:「私の事を心配してくれての事ですから。私は有り難いって思ってますよ。阿湖姫も私に気兼ねしないで下さいね」
    阿:「はい」
    ナレ:そして早速翌日から奥へ入った。

    ナレ:そして、宗熊より和議を覆し織田が攻め入る旨の書状が届いた。若君は吉乃に会い、唯が己の想いをくみ取り、平成に戻る事になれば二度と会えないと思い、唯の閨の前に立ち、
    若:「唯」
    ナレ:起こして自前は自分も行くと言い出すのは分っていたので、そっと名前を呼び、襖に向かって深々と頭を下げた。唯は夢の中で若君に呼ばれ、ふと目を覚まし、表に人の気配を感じ出て行くと吉乃が居た。そして若君の後を追った。

    以上(^_^)

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    10月29日は十三夜

    カレンダーを見ていてあれっと。十三夜(^^♪
    ラブラブには縁遠い私としては、この場だけでも楽しくしたい(^O^)/
    二人の会話は案として書いたので妖怪千年おばばさんが設定を妄想して下さいましたが、あえて設定無しの会話でした。
    てんころりんさんの助言(添削)をお願いしようかと思いまして、設定の無い会話の後の事を
    SPの隙間として書いてみます。
    〔スペース〕や〔・・・〕では無くて、昔書いた本をまた最近読みだしまして、違った表現もあったので、今まで書いた物とは違うパターンで書いてみます。
    設定は、源三郎が呼びに来た後からの事で、SPの初めの方の、若君が「宗鶴め!」と歩いて行く時に唯の寝ていた場所を黒羽城の奥の閨として。いつもの如く矛盾はありますが(^_^;)
    書式の感想をお願い致します(^_^)
    ですが、簡略化の文章が思い浮かびません。情けないですが(;_;)

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    妖怪千年おばばさん「十三夜」のこと

    晩秋の風物の中、幼いふきの物語が進み、最後は二の姫と小平次の話が展開し、数年の物語になっていたんですね。端午の節句の衝撃的な出来事!
    用意された的:餅粉と砂糖で作った柏の葉は、風で揺れぬよう 小平次の矢が命中し易いよう、二の姫が考えたのでしょうか?
    美味しそうな的は鳶に狙われてしまいました。
    小平次は勝機ありと思ったが、結果は曖昧、でも実際、二の姫の心?を得ましたね。??
    爺様の仰る通り鳶は神の使いだったかも 。

    爺様は孫の幸せの為 交渉に奔走されますね。
    鐘ケ江は、嫁がせる積もりのない娘を出すなら、末娘を若君の側室に推してほしいとか お願いしたのでしょうか?
    爺様の方も、鐘ケ江と結ぶのは戦略的に有利、二の姫を気に入ったのでしょうし、早く若君のお子を抱きたいし、若君と末の姫の縁組を考えてるみたいで…。
    天野家のふきちゃん支持、納得です。
    大作お疲れ様でした。
    楽しませて頂きました ?。
    【2020.11.9追記】
    「小次郎」を誤って「小平次」と書いています。
    お詫びして訂正します。誰?!ですよね。

    ★ぷくぷくさんへ~*
    次回作、楽しみにお待ちしています。

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    ぷくぷく様

    感想、有難うございます!
    漫画の様に感じて頂けたなんて
    感激です!
    天野家次男の名前は、
    今年、健太郎氏が演じるはずだった
    役名から頂きました。
    ”巌流島”いつか上演できる日が
    来ると良いですね。
    ぷくぷくさんの投稿も、
    是非、また読ませてくださいね。
    ラブラブなシーンがお得意で、
    羨ましい~。(*^^)v

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    十三夜

    妖怪千年おばばさん
    十三夜 上の段・中の段・下の段
    読ませて頂きました。
    学の無い私には難しい表現もありましたが
    以前にも書かせて頂いたように上品を感じました。
    ふきさんの幼少の頃や小次郎の恋(^_^)
    読ませて頂いていて、何故でしょうか、いつも皆さんの物語を読むと人物(実写)で情景が浮かぶのですが、この十三夜は、漫画で描かれている、漫画本をめくり読んでいるという感じでした(^_^)
    その本を手にしてみたいって思いました(^_^)
    違った表現をしてしまっていましたら、ごめんなさい(;_;)

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    十三夜 急の段

    屋敷に戻る道すがら、つるは探る様に
    ふきに話しかけた。

      「ふき様、
       ようございましたなあ。
       お母様にお会いになれて。」

     「これも、
      二の姫様のおかげじゃの。」

    ”これまで、二の姫様は、ふき様に
    全く関心の無いご様子だったのに。”

    つるは、二の姫の心遣いに、
    ふきよりも驚いていた。

      「先ほど、
       お手にされていた物は?」

     「手に?
      ああ、あれは、七つの頃の、
      十三夜の約束の。」

      「お約束?」

    鐘ヶ江の家に引き取られた
    翌年から、弥五郎はふきの母に、
    みみずくを届けるようになった。
    もしや、ふきが戻って来ては
    いないかと、思いつつ。
    母は、鈴鳴八幡の祭りの日に、
    森のはずれの鬼子母神にお参りし
    そのみみずくを納めていたのだ。
    娘の無事を願って。

      「そのような事が。」

     「持ち帰ろうかと思いもしたが。
      此度も納めてもらう事にした。」

    つるは、ほっと胸をなでおろした。
    ふきに里心が付いて、村に帰りたいと
    泣くのではないかと案じたのだ。

    ふきは、思った。
    “あのみみずくを受け取っていたら、
    この夢から覚めたやもしれぬ。”

    だが、今のふきは、もう少し
    夢にとどまっていたかった。
    そう、黒羽城の若君様に、
    一目会えるその日まで。

     ・・・・・・・・

    若君の部屋から戻る途中、
    天野信茂は、千原元次に出くわした。

    「隠居の身で、若君様に日参とは
     忠義な事じゃの。」

     「にゃ、にゃにおう。
      未だ隠居もできぬ、ぬしに
      言われる筋合いではなかろう。」

    「ふん。
     大殿のお言葉があっての事じゃ。
     まだこの元次が退くには早いとな。
     此度の鈴鳴八幡の流鏑馬では、
     ぬしの孫殿は、揃いも揃って、
     鐘ヶ江にしてやられたとか。」

     「か、勝ちを譲ったまでの事よ。
      初披露の、しかも、おなごに
      本気で向かうほど、
      無粋に躾てはおらぬ。
      ぬしの方こそ、その二の姫から、
      斎王役を譲られたと聞いたが?
      今頃は、
      良縁が舞い込んでおろうの。
      ぬしの縁者の、斎王殿に。」

    「何を言う。
     鐘ヶ江殿に懇願されて引き受けは
     したが、そのおかげで、ぬしの孫の
     小次郎に射手が
     回ったのではないか。
     源三郎が譲ったものを、
     無駄にしおって。」

     「それも、
      ぬしらが難癖をつけられぬ為
      であろう?
      源三郎が勝ちを手にすれば、
      射手の順を決めるくじに、
      何か細工をしたのではと、
      言われかねぬからのう。」
          
    「ほ、ほう、射手の順とな?
     馬場の荒れた三番手の鐘ヶ江殿が
     勝ちを手にするとは、
     誠、あっぱれ。」

    際限もなく繰り広げられる舌戦を、
    通りがかった、信近が止めに入った。

     「父上、ここにおられたのですか?
      これは、千原殿も御一緒に。
      千原殿、礼を申し上げまする。
      此度の流鏑馬以来、我が次男、
      小次郎が励むようになりまして。
      誠にありがたきことにござる。」

    流鏑馬は、三番勝負で行われた。

    一番目、板の的。
    二番目、扇。
    三番目、小旗。

    風に揺れる小旗を射抜くのは
    特に難しく、吹く風の運もあり、
    ほぼ、ここで勝敗が決まる。
    ところが、今年は三人の射手、
    いずれも外さず、異例の決戦に
    もつれ込んだ。

    陽もとっぷりと暮れ、
    揺れる篝火に照らし出された的は、
    掌に収まるほどの素焼きの皿。
    それが、馬場の三か所に立てられ、
    その間隔も同一ではない。

    一番手の小平太、一の皿は見事命中、
    二の皿はやや外し、三の皿は命中。
    二番手の小次郎、一は命中、
    二、三を外した。

    勝ちは小平太と誰もが思った。
    そこへ、前出の二人の射手の馬を
    はるかにしのぐ速さで、
    葦毛の馬が駆け抜けた。
    次々と、かわらけが砕けて宙に舞う。
    三枚見事に命中し、
    見物人が、どよめいた。

    小次郎は、我を忘れて葦毛の馬に
    かけより、馬上の射手に尋ねた。

     「御身の名は、何と申される?」

    「先に名乗らぬとは、
     無礼であろう。」

     「そ、それがしは、天野小次郎。
      天野信近の次男にござる。」

    馬上の射手は、被り物を取ると、
    涼やかな声で答えた。

    「鐘ヶ江久政の次女じゃ。
     我が名は小次郎殿の
     兄上にお訊ねあれ。」

    豊かな黒髪が、狩衣の上に流れ、
    汗に濡れた前髪が、その白い額を
    際立たせている。
    その笑顔は、まるで、
    コウロゼンと呼ばれる
    昇る朝日を表す
    蘇芳染めの色の様。

     「鐘ヶ江殿の、じ、次女?!」
     
    艶然と微笑む馬上の人を、
    瞬く間に見物のおなご衆が取り囲み、
    小次郎は、
    もはや近寄ることもできない。

    呆然と見送る小次郎に、
    小平太が声を掛けた。

    「お前は初対面であったのう。
     あの者は別名、鐘ヶ江の“巴御前”
     “おのこであれば、将に”と、
     大殿が惜しんだ“おなご”じゃ。」

    鈴鳴八幡の神事は、
    巫女と斎王の舞で幕を閉じた。

    禰宜の計らいで、その舞には、
    鐘ヶ江の二の姫も加わった。
    純白の狩衣で舞う二の姫は、
    この世のものとも思えぬ美しさ。

    その姿が、小次郎の心の臓を
    射抜いた事は言うまでもない。
    屋敷に戻った小次郎は、
    いてもたってもいられず、
    兄の小平太に打ち明けた。

     「惚れ申した。
      鐘ヶ江の二の姫を
      我が妻に迎えたい。」

    小平太は、驚きのあまりのけぞり、
    声を上げた。

    「小次郎、気を確かに持て!
     は、早まってはならぬ!」

       ・・・・・・

    ある日の朝、
    自分の後を追っては、転んで
    泣いていた幼い小次郎の姿を、
    小平太は思い出していた。
    その弟は、今、
    一心不乱に弓を引いている。

    若君に仕え始めて数年たった頃、
    小平太は、二の姫に剣の稽古で
    打ち負かされた事があった。
    打ち込まれ、悔し涙が止まらず、
    鼻水を盛大にすすり上げた所、
    容赦なく胴を打たれ、倒れ込んだ。
    その小平太の鼻の上に、
    蛙がぴょんと飛び乗った。
    炸裂する、鐘ヶ江の笑い声。
    あまりの屈辱に小平太は、
    屋敷まで駆け戻った。
    それからしばらくの間、
    小平太は父を相手に、自宅の庭で
    猛烈に剣の稽古に励んだ。
    半月後、稽古場に出向き、
    勝負を挑もうと鐘ヶ江を探したが、
    姿が無い。
    あくる日も、その次の日も、
    鐘ヶ江は現れなかった。
    “おなご”と知ったのは、
    小平太が元服した後の事だった。

    “分からぬ。
    男に勝つ事を喜ぶ様な、
    めっぽう気の強いおなごの、
    どこが良いのじゃ。”

    あきれながらも、つい声が出る。

    「小次郎、息を整えよ。顎、引け!」

    鈴鳴八幡の例大祭の後、小次郎は
    鐘ヶ江の二の姫に文を届けるも、
    受け取る事さえ拒まれた。
    使いの者から伝え聞いた事に、

    “わが身は鈴鳴八幡に捧げるつもり故
    文は受け取れぬ。”とか。

    それでも、小次郎は諦められない。
    毎日やってくる小次郎の使いに
    根負けしたのか、ある日、二の姫は、
    “弓矢の技を鍛え、一矢も外さず、
    百本的に当てたら、受け取ろう。”
    と伝えた。

    やがて、その事は、
    それぞれの当主の耳にも入り、
    双方の家で、共に同じ問題を
    抱える事になった。

    第一に、二の姫は小平太の一つ年上。
    小次郎の三才上になる。
    小平太にすれば、年上の姫を義妹と
    呼ぶのは、いささか具合が悪い。

    第二に、両当主は二番目の子を、
    それぞれ分家に出すつもりでいた。
    鐘ヶ江家では婿を、
    天野家では嫁を望んでいたのだ。
    特に、天野家は、戦ともなれば、
    先陣を仰せつかる事が多い。
    当主の信近、長男の小平太が、
    同じ戦で何事かあれば、
    後を継ぐのは次男、小次郎。
    鐘ヶ江家への婿入りに難色を示すのは
    当然の事だった。

    二か月が過ぎ、新年を迎えた。

    小次郎は、大晦日も年明けも、
    祝いの膳すら手に付けず、
    弓を引き続けた。

     「のう、信近よ。そろそろ、
      許してやってはどうじゃ。
      年が離れていようとも、睦まじく
      暮らす夫婦は数々ある。」

    「それは、私も存じております。
     だが、小次郎を婿入りさせる訳には
     参りますまい!」

     「そこは、それ。あちらは、姫が
      たくさんおられるでの。
      話次第ではないかの?」

    「いかような話に持ち込むと?」

     「まあ、この信茂に
      思う所がない訳ではない。」

    「いずれにせよ、二の姫の心が
     小次郎にむかねば、
     どうにもなりませぬ。」

    信茂と信近は、
    七草の入った粥をすすっていた。
    そこへ、当の小次郎より早く、
    小平太が駆け込んできた。

      「や、やりました!
       こ、こ、小次郎が!ついに!」

    「ま、まことか!」

     「あ、ああっちっち!!!」 

    驚いた信茂が、
    粥の椀を取り落として、騒ぎ立てる。 
    小平太が、水を汲みに行こうとした。
    そこへ、小次郎が手桶と手ぬぐいを
    持ってきた。

       「爺様の声が、
        庭まで聞こえましたゆえ。」

    「よう気づいたの、小次郎。
     さ、早う冷やさねば。」

    信茂は、申し訳なさそうに、
    赤くなった手を水に浸す。
    小平太が、信茂の膝にこぼれた粥を
    手ぬぐいで拭きとった。

      「足は、熱うは
       ございませぬか?」

    「おお、すまんの。
     大したことは無い。
     それより、小次郎、でかしたの。
     精進の賜物じゃ。」

    汗が浮いたままの小次郎の顔を見て、
    信茂の目頭が熱くなる。
    ”寒風の中、
    どれほどの矢を射たものか。。。”

     「善は急げじゃ。小次郎、
      早う文を書け。
      わしが、届けに参ろう。」

       「爺様が?」

    「そ、それは、
     まだ早うございましょう。
     あの“巴御前”の事じゃ、
     またどの様な難題を
     言い出すやもしれませぬ。」

     「望むところじゃ。我が孫なれば、
      どの様な難題も受けて立つ。
      のう、小次郎?」

       「無論、受けて立ちまする!」

      「よう申した。
       では、爺様のお共は、わしが。
       小次郎は早う文を。」

     「年の初めの嫁取り合戦じゃ。
      仕損じるまいぞ。小平太よ。」

    信茂と小平太は衣装を整え、小次郎が
    射抜いた百本目の矢に文を結び、
    意気揚々と、鐘ヶ江家に向かった。

       ・・・・・

    五月晴れのその日、端午の節句の事。
    青空には、鳶が輪を描いていた。

    鐘ヶ江家では、下男、下女が
    いつにも増して、
    忙しく立ち働いている。
    母屋の庭は、特に念入りに清められ、
    大ぶりの花瓶が台の上に
    しつらえられた。

    当主、久政は、
    朝からそわそわと落ち着かない。
    一方で、その妻は、
    あれこれと指図しながら、
    姫たちの支度に気を配っていた。

    やがて、天野家一行が到着したと
    知らせが入った。
    久政が、自ら迎えに出る。
    姫たちは、几帳越しに庭の見える、
    母屋の部屋に集められた。

    三の姫が、ふきに
    ひそひそ声で話しかける。

      「小次郎殿は、
       見事に的を射抜けようか?」

       「私は、射抜いて欲しくは
        ございませぬ。
        二の姫様が嫁がれるのは、
        さみしゅうございます。」

      「では、ふきは、二の姫様が、
       鈴鳴八幡の守り人となるのを
       望んでおるのか?」

       「いえ、それは、
        尊いお志とは存じますが、
        望みはいたしませぬ。
        今まで通り、ここでご一緒に
        過ごしたいと願うばかり。」

      「それなれば、
       案ずることは無い。
       暫くは、共に暮らせる。」

       「それは、まこと?」

      「二の姫様の事は、
       お父様もお母様も、
       色々と考えておられた。
       その武勇を頼もしく
       思いながら、
       “おなご”としての幸せを
       失なわせるのも
       良きことではないとな。
       そこで、
       いずれ天野を名乗るとしても、
       小次郎殿が、
       身を立てるまでは、
       この屋敷内で暮らすのは
       如何かと、天野様に
       申されたのじゃ。」

    実は、久政がこの縁談を
    承知する為に、信茂にした交渉事は
    他にもあったが、それを知るのは、
    まだ、妻だけであった。

    当の二の姫は、一人自室で
    衣装に迷っていた。
    母が整えた打掛は、
    身になじまぬ気がする。

    弟を失った翌年、早々と
    父が用意していた弟の肩衣を着て、
    父母の前に立った日の事が、
    未だに忘れられない。
    あの端午の節句の父母の涙と笑顔。
    その為に、今日まで武芸に
    励んできたのだ。

    “太郎丸、私は”おなご“になっても
    良いのだろうか?”

    二の姫は、弟の面影に語りかけた。

    “小次郎殿の成果を見届けるまでは、
    これまでの姿でいよう。”

    二の姫はそう決めると、
    袴を身に着けた。

    年明けの七日に受け取った、
    小次郎の文に対し、
    二の姫はこのように書き送った。

     ~今年の端午の節句に、我が庭で、
      みごと柏の葉を打ち抜いたら、
      お望みをかなえましょう。~
     

       「二の姫様、
        すべて整いました故、
        そうぞ、お出ましを。」

    いつもは、ふきから離れないつるが、
    迎えに来た。
    つるは、松の枝を捧げ持っている。
    二の姫はそれを受け取ると、
    母屋の庭に向かった。

    小次郎は、狩衣姿で庭に控えていた。
    やがて、肩衣姿の二の姫が、
    松の小枝を手に現れた。
    その白い指先が、わずかに震える。

    花瓶に小枝が斜めに活けこまれ、
    その枝の先には、
    餅粉と砂糖で作られた柏の葉が
    下げられていた。

     “あれが、的か!”

    小さく息をのみ込んだ小次郎の喉が
    わずかに動く。
    振り向いた二の姫の
    かすかな微笑みを、
    小次郎は見逃さなかった。

     “勝機は、我に有り。”

    小次郎は、ゆっくり立ち上がり、
    ただ一点を見つめ、弓を引き絞った。
    その場の誰もが息を止めた。
    弓は、一瞬にして松の枝を払い、
    その先に置かれた板に突き刺さった。
    柏の葉が、揺れている。
    砕け散りはしなかったが、
    菓子の端に当たった様には見えた。
    二の姫が確かめようと進み出る。
    すると、突然、その上に、
    黒い影が急降下した。

       「蘇芳殿!」

    皆が騒然とする中、小次郎が二の姫に
    覆いかぶさった。
    鋭い痛みが、小次郎の左腕を貫く。
    赤い血が狩衣ににじんだ。

    「鳶じゃ!」

    立ち会っていた天野信茂が叫ぶ。

      「おのれ!」

    後ろで弟を見守っていた小平太が、
    弓をつがえて鳶を狙う。
    しかし、黒い影は、上空に高く
    飛び去ってしまった。

    駆け寄った鐘ヶ江久政が、
    二の姫を抱き起そうとするが、
    小次郎が姫にしがみついて
    離そうとしない。
    久政は、鳶よりも
    小次郎をいまいましく思った。

      「小次郎殿、御放し下され。
       息が詰まる。」

    二の姫の言葉に、
    我に返った小次郎が、
    名残惜しそうに腕の力を抜く。

    「さあ、二の姫、こちらへ。」

    父の言葉を耳にはしたが、
    二の姫はその場から離れず、
    肩衣から右腕を引き抜き、
    その下の白い衣の袖をちぎると、
    小次郎の腕に巻いた。

    そして、自ら小次郎の手をとると、
    自室に向かう。

      「まずは、手当じゃ! 
       誰ぞ、湯とさらしと、
       薬を早う!」

    意外な事の成り行きに、
    皆が立ち騒ぐ中、
    信茂だけは、ただ一人、
    空を見上げていた。

    「あの鳶は、鈴鳴八幡の
     使いかもしれぬのう。」

      ・・・・・

    今年も、また十三夜がやって来た。

    ふきの居間のあった離れ座敷は、
    今は二の姫の住まいとなった。
    新たに、
    厨と湯殿が建て増されている。

    ふきは、母屋に続く三の姫の部屋に、
    三の姫はその向かい、以前の二の姫の
    部屋にいる。
    その中庭で、ふきと三の姫は、
    焼き栗をほおばっていた。

       「二の姫様は、どの様な衣装に
        なさるのでしょう?」

      「御婚礼の?
       烏帽子姿かもしれませぬ。」

       「そ、それでは、
        婿殿がお二人に。」

      「それでも良いと、小次郎殿が
       申されておられるそうじゃ。
       あの、流鏑馬の日に、
       白い狩衣で舞われた二の姫が
       忘れられぬとか。」

       「まあ、それでは、
        いっそのこと、
        小次郎殿が打掛を
        お召しになられたら。」
         
    二人の笑い声に誘われたのか、
    庭の虫の音が大きくなった。

      「それにしても、
       縁談と言うものは、
       なかなか思うようには
       進まぬらしいの。」

       「何かさわりでも?」

      「実はの。
       何やら、お母様の
       意に添わぬ事が
       あるらしい。」

       「まあ、いまさら?
        お二人のお気持ちが
        第一では?」

      「なんとか収めようと、
       天野の御隠居様に
       父上がご相談なさって
       おるそうじゃ。」

    その頃、天野家では、信茂と信近が、
    月見酒を交わしていた。

    「で、若君は、何と?」

     「それが、なかなかでの。
      それは、そうじゃろう、
      非の打ち所の無い母御が
      おられるのじゃ。 
      おなごを見る目は高くなろう。」
     
    「では、その御方様に御相談は
     できぬものでしょうか?
     鈴鳴八幡への御信仰も
     お厚い方ゆえ。
     八幡神宮の守りは、
     小次郎と二の姫で固めると
     お約束すれば、
     奥方様もお口添え下さるのでは。」

     「ううむ。
      それも一手になろうか。」

    ”この目の黒いうちに、
    若君のお子をこの腕に抱いてみたい。”

    それには、やはり、
    鐘ヶ江の、秘蔵の娘を、
    若君のお側に置くのが
    良いのではないか。

    鐘ヶ江は、小垣の元領主。
    縁者をたどれば、
    高山や松丸の領地にも、
    繋がるものが少なからず居る。

    それは、高山や松丸の動きを
    いち早く知るには好都合なのだ。

    信茂は、祈るような気持ちで
    盃に映る月を眺めた。

    七歳のふきの十三夜の願いが叶うのは
    もう少し先の事。
    今宵も、
    月では兎が黄金色の餅をついていた。

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    やっとやっと

    十三夜、下の段、
    やっと書き上げました。
    かなり、長いです。
    途中で飽きたら飛ばしてね。
    最後まで読んでくださる方には、
    大感謝!
    かなり詰め込みすぎたかと、
    反省しきり。
    反省しつつも投稿って、どうなのよと
    自分に突っ込み。(;^_^A
    よろしくお願いいたしまする。
    m(__)m
    スマホで読みやすくなってると
    良いな~。

    てんころりん様
    アドバイス有難うございます!
    (;^_^A
    スマホによっても表示される文字数が
    違うのかも。
    おばばのは、今のところ17文字が
    MAXのようなので、当分それで
    対応させて頂きますね。(^_^)v

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    ぷくぷくさん、

    会話文の余白は、間·マと、話すペースを表現されたのだろうと思ってました。
    スマホが勝手に改行しても「・」マークがあれば、分かり易くなりますね。(^^)d
    no.309は、私のスマホでは、地の文は折り畳まれますが、会話文は短かったので、殆ど畳まれませんでした。
    また昨日書いた通り、畳まれる=即.分かり難い、というご心配には及びません。
    時々ご自分のスマホで「こんなんなりましたか」と覗いてみて下さいね。

    で、これは個人的な印象です。読者は他にもいらっしゃるので一概には言えないですが…
    私のスマホは「・」が大きくて目立ちます。
    多分スマホの機種によって、PCでも多少の違いがあるかもしれません。
    私の印象では「・」が多いなぁと感じます。
    ちょっと考えたり 口ごもる感じで「‥ 」や「… 」
    時間が長い時は (間) と書くとか「・」の他にも使い分けると、違いが出るかなと。
    色々試されては如何でしょうか?

    あと、地の文は以前の様に「ナレ:」とか (語り)、脚本なので (ト書) とか、出だしに「○」1個でも書かれると、会話文と区別出来て良いかなと。
    以上、全く個人の見解です。
    意見を求められたと思って、率直な感想を書かせて頂きました。

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    妖怪千年おばばさん、

    スマホに合わせる為、書式が細長くなってしまい、申し訳ないです。私も悩んでます。
    先日のno.299は、スマホでも右側に十分過ぎる余白が残りました。
    もっと幅を広げて書いて頂いて大丈夫と思います。

    妖怪千年おばばさんの書式は、地の文と会話に段差をつけ、会話も人によって段差で区別し、画面上美しいです。
    見た経験ありと書かれてましたが、以前の投稿は余白の段差がとても大きかった為、文が右端に寄り、畳まれて次の行の先頭に飛び出す、まさにそれでした。

    こちらも対策はとりました。
    スマホを横長に持ち替え、1行の文字数を増やして読む。
    PC版サイトに切り替えて読む (この機能が全てのスマホにあるのか私は分かりません)。
    ご本人が書かれた書式に近い状態で読む事は出来ます。
    これをしても文が畳まれる位、文頭の余白が大きい箇所があった為、書かせて頂きました。

    決して、スマホに合わせて細長く書いて下さいと、お願いする積もりはありませんでした。
    前回から余白の段差を小さくされたので、仮に文が畳まれても、こんなイメージだと思います。
     「________
    ___ 」
       「___ 」
     「____ 」
    ご本人の美意識に合わないかもしれませんが、読む方は十分対応できます。
    読み辛いと、スルーする人が多いと思うんですね。それは勿体ないし残念なので、何度も書かせて頂いてます。
    老婆心ながら(・´ω`・)です。?

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    返信
    ぷくぷく様

    唯と若君のラブラブなシーン
    ありがとうございます。
    唯を正室とするお許しを頂く頃の
    設定なのかなあなどと、
    勝手に妄想させて頂きました。
    (^_^)v
    次の投稿も、お待ちしてますね。

    おばば、どうしてもパソコン画面の、
    右側、3/2近く空白になってしまう
    事に、未だ、葛藤してます。
    パソコン愛用者の、
    ビジュアル的な欲求と、
    申しますか。。。

    例えば、スマホ画面を意識して、
    会話文の先頭行を整えようとして、
    パソコン画面で数文字分スペースを
    打って編集しても、
    そのスペースが何故か無視されて、
    次の行の先頭1文字目に
    表示されてしまったりするのは、
    ブログの頃から経験してまして。

    設定上の、バグ???

    などと、勝手に想像してました。

    これは、もう、読んでくださる方々の、
    寛容なお心に頼るしかないなと。

    物語ではなく、
    詩・・・
    だと思えばいいのかしらね。
    おばばの悩みも、
    結構、深いです。

    投稿フォームへ

    返信
    穏やかな昼下がり

    若君が縁側で笛を吹いている。後ろからそ~っと近づいた唯。唯だと気付いたが知らぬふりして吹き続けている。後ろから若君の目を覆い、
    唯:「だ~れだっ」
    若:「   宗熊殿」
    唯:「え~・・・もぉ」
    若:「ふっ・・・分かっておる・・・唯之助」
    唯:「もぉ、若君~・・・ふふっ」
    唯は若君に抱き着いた。そこへ源三郎が若君を呼びに来て、
    源:「あっ・・・いやっ・・・・・出直して参ります!」
    若:「構わぬ、何じゃ?」
    源三郎は唯の方を見た。軽くにらまれ後退り。
    源:「と・・・殿がお呼びにございます・・・唯様も共にと」
    唯:「私も?」
    源:「はい、その様に・・・では・・・わたくしは」
    源三郎は足早にその場を去った。唯は若君の顔を見ながら、
    唯:「   わたしもって」
    若:「そうじゃのぉ・・・参ろうか」
    唯:「はい」
    立ち上り、殿の元へ。

    どの様な表示がされているか(^_^)

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    返信
    てんころりんさん

    ありがとうございます(^_^)
    数学だけじゃなくてみんな行進の掛け声1212です(;_;)
    美術だけは良い方だと思いますが(^_^;)
    なので、どうしてあのクラスに入れてのか本当に不思議でなりません(;_;)
    高3の時、数学の先生は、結果だけを重視するのではなくて、それまでの過程、努力も評価に入れてくれる先生でした。テストの時に、出題されている問題の他に勉強したものを裏に書くと、それも点数に加えてくれました。表の問題が出来なさ過ぎて裏で点数を稼いでいた私ですが、よっぽど悪くて、最高でも75点でした(^_^;)
    優秀な人は120点とか150点とか取ってました。そう言う人を見て凄いなぁ、私は無理だと諦めていました(^_^;)
    そう言う先生だったからまぁ挫けなかったのかも(^_^)

    〔案〕として余白とかを変えて文章を書いてみますので添削をお願い致します(^_^)
    名前の後の部分はスペースを開けてみます。

    投稿フォームへ

    返信
    ぷくぷくさん、ほぼそうです

    文頭に余白を入れて①②の出だしを揃えても、スマホでは下の様になり、余白が生きないです。
    スマホだけでなく、PC同士でも個々に設定が違うので、作った通りに見えてないかもしれません。
     ①________
    __、←(ぷくぷくさん改行)
     ②______。
    今はスマホに慣れたので、上のケースは気にならなくなりました。
    会話文には名前もあるしOK。
    それで気にせずにと申し上げました。

    さて、余白が多ければ多い程、当然スマホの改行は増えます。
    文中の余白も然りです!
    例えば「、」や「。」の後に、1~3文字分に相当するスペースを入れてらっしゃいますね。
    スマホだとその分、改行が増えてしまいます。

    私自身も工夫してます。スマホを横長に持ち替えて、一行の文字数を増やして読んだり‥
    私のスマホはPC版サイトに切り替える機能があり、PC画面に近い状態で見たりもします。
    そうすると句読点の後のスペースは生きてきます。

    上記方法をとっても、改行が減らず文が畳まれ、意味不明の余白など、読み難さが解消しない事がありました。
    それでno.290でお二人にお願いしたのです。
    一緒に書いたので、説明不十分ですみませんでした。

    スマホでは、スペース(余白)は文が畳まれる事が増えて、効果は少ないと思って下さい。
    だからと言ってPCの方もいらっしゃいます、どうするかは、ぷくぷくさん次第です。

    余白を多く使い過ぎない様に留意して頂けば、何の問題もないのです。
    ぷくぷくさん、数学の成績良かったんですか?!
    わぉ 羨ましい! 私なんか落第点ギリギリですょ!

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    てんころりんさん

    余白を気を付けていれば他はそんなに気にしなくて大丈夫という事でしょうか?
    また、的外れな事を言ってしまっていますか?
    こんな私でごめんなさい(^_^;)

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