• このトピックには1,203件の返信、16人の参加者があり、最後に夕月かかりて(愛知)により1日、 18時間前に更新されました。
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    二人の平成Days21~15日18時、願いは叶う

    なにせ、楽しそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イケメン保育士と園児二名。三人お手手つないで園内を散策中。広場に到着した。

    唯「わー、すごい!プロジェクションマッピングだー」

    建物の壁に、次々と目まぐるしく、煌びやかな映像が投影されている。

    若君「…」

    唯「あ、とうとうたーくん黙っちゃった。びっくりだよね~」

    若「これはあの、尊の作った」

    尊「あ、もしかして」

    若「まぼ兵くんの様なものか?」

    唯「えー、よく思い出したね」

    若「これも、戦で使えぬか?」

    唯「総領がすごい事考えてる~」

    尊「えーと、平和の象徴みたいなものだから、それは…」

    唯「でも、あのまぼ兵くんのお陰で、歴史変わりましたみたいな」

    若「尊のお陰じゃ」

    唯「こうして、一人の兵、まぼ兵によって、羽木は守られた」

    尊「どの歴史本に載るんだよ」

    電飾に彩られた、大きなクリスマスツリーを発見。

    唯「わあー綺麗!」

    尊「きれい~って言いながら、なんで合掌してんの」

    唯「なんかご利益ありそうじゃん」

    尊「和洋折衷?」

    唯「たーくん、今年の元旦もね、初日の出に向かって祈ったんだよ」

    若「どんな願いを?」

    唯「若君が無事永禄3年を生きてますようにーって。願いが通じて良かった。ホント良かった。」

    若「そうだったのか」

    唯「尊も、燃料作り頑張ったんだよ」

    若「尊、その節はありがとう」

    尊「いえいえ。兄さんの無事が確認できて良かったです」

    唯「たーくん、私にその、ねぎらいの言葉とかは?」

    若君は微笑みながら、唯の頭を軽くポンポンと。

    唯「えへへ~」

    尊「この二人、思った以上に通じ合ってる」

    眩い程の電球に照らされ、道が長く続いている。

    唯「すごーい!」

    かなり向こうまで走っていった。

    若「この、先の世は実に明るく輝いておる」

    尊「戦国は、ほんのり明るいかなって感じですもんね」

    若「だが、あの時、ふく…唯は輝いて見えた」

    尊「お寺での話ですか?面白かった、時ですね」

    若「ずっと、心はさらわれたままじゃ」

    尊「あ、例の名台詞。本人今居ないのにー」

    両親が合流。

    覚「おー、どうだ、堪能したかー?」

    尊「あ、かつての恋人達。デート、楽しかった?」

    美香子「なぁに~デートだなんて。まぁ、楽しかったわよ」

    覚「じゃ、そろそろホテルに戻るか」

    唯&尊&若「はーい」

    美「あ、すごい、揃った!忠清くん、ありがとう」

    若「家族は似るものだからの」

    部屋に戻った。

    唯「晩ごはん何時から?」

    美「下の和食処に8時。お風呂、先行っちゃう?」

    唯「行く行くー!」

    美「じゃ、女子は先に行きます。それでは男性陣、下でその時間に集合ね」

    覚「いくつまで女子なんだ」

    若君が外を見ている。夜になり、海は静かに色を沈めている。

    尊「気に入りました?海」

    若「二度と見る事がないかも知れぬから」

    尊「ない、って断言しないところがいいですね」

    覚「お、羽木の領地、海まで拡大?」

    若「それも悪くない、です、お父さん。だができれば戦は避けたい」

    尊「じゃあ、なんとか未来の僕が頑張って、現代にまた海を見に来れるように…約束はできないけど」

    若「無理はしないで欲しい」

    覚「さ、大浴場からも、海見えるから。僕らも行こうか」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今の誓いを胸に、きっと未来の尊は頑張る。

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    壮大!

    正座して待ってたら、SPの唯のように寝落ちしてました(´Д`)倒立前転ができる程の体力はありませんが、ムクッと起き上がり、拝読しました。

    こんな壮大なお話の後に、私のちっちぇ~話はいかがなモノでしょう。疾風、大活躍ですね。大鷹は、私には、今の若君というよりはもっと年齢を重ねた姿のイメージです。

    今日は、二年前に二人が永禄へ旅立った日ですね。ひと月って早い…私の妄想話はまだまだ続きますが、新年明けても、クリスマスとか言ってると思います。すみません。

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    妖怪千年おばば様、感動!

    妖怪千年おばばさん

    この驚きと感動をなんとかお伝えしたいのに、
    錆び付いた日本語と、枯れ果てたお脳があいまって、
    拙い言葉しか浮かびません。

    妖怪千年おばばさん、あなたは本当はお忍びでここに出入りする
    劇作家ではありませんか?
    物語の組み立て、中世の用語と言葉使い、臨場感あふれる描写、
    どれを取ってもとても素人とは思えません。

    私の、相葉を「ギャフン」とさせるの発想が如何に軽々しかったか、
    思い知らされました。このお話の深さの前に、反省〜です。

    忠清の稀有な名君の本領が発揮されていますね。
    武士道の誉れを体現化したような為人、武士の情けって清いですね。
    敵の相葉までが、若君に惚れ込むのもむべなるかなです。

    大鷹の群が城に馳せ参じたのも、城の名が黒羽なのも、
    全てガッテンいたしました。

     「黒羽の当主には
     確かに伝えられておる。
     戦で命を落とした者の念は、
     大鳥に宿るとな。
     黒羽の行く末を見届けたい、
     その一念で、散って行った
     武士どもが、
     城に戻ったのやもしれぬ。」

    ただ、興を削ぎたくないのですが、味噌汁の振る舞いが
    翌朝の事とすると、前夜に舞い戻っていた唯と若君は、
    その夜のうちに再会を果たしていたのでしょうか?
    歓喜の念に溢れても、折角、平和で安全な彼の地に
    逃したのに、’この大たわけ’ と、のたまわりつつ
    ぎゅっとしたのでしょうか? この隙間が大変気になります。

    もう一つ、とてもきになるのが冒頭の一文です。

    「未来の尊が平成に送ってくれた、
     新しい起動スイッチを使い、
     唯が戦国に戻った夜の事。」

    これは他の物語の伏線ですか?
    尊はひょっとして現在の令和ではなくて、
    もっと未来へタイムジャンプしていて、
    彼の地のハイテクを駆使した起動スイッチを、
    平成に送り届けたとか、、、。

    ここでは忠清の機知に私も腹を抱えて、クスっ。
    アシガールというタイトルにもぞっこんハマりましたが、
    颯を城代にするという発想の奇抜さ。
    恐れ入谷の、、、あとは忘れました。

    「だが、忠清も、
     考えたものじゃの。
     颯を城代にするとは。」

    こんなに楽しませていただいて、本当にありがとうございました。
    他にも色々な切り口で、続編を続々とお願いします。

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    黒羽の守護神

    未来の尊が平成に送ってくれた、
    新しい起動スイッチを使い、
    唯が戦国に戻った夜の事。
    野上の領内の山中、
    今にも崩れ落ちそうな廃屋の中で、
    羽木忠高は家臣を集め、
    唯と対面した。

    “忠清が小垣城から逃した、
    ならばそれでよい。
    しかし、この苦境の中、
    この娘は、何故に戻ってきたのか。“

    “殿ご自身の眼で、お見極めを。”
    唯を正室とするか、
    考えあぐねていた時、
    そう進言した、
    天野信茂の声が蘇った。

     「木村様、あの後、
      何があったんですか?」

    唯の言葉に、木村正秀は、
    小垣城開城の朝の様子を語り始めた。

    陣に戻る為、若君の愛馬、颯に
    騎乗しようとした相賀は、
    若君を四つん這いにさせ、
    背中を踏みつけた。

    それを聞いた足軽たちは、
    声を上げて泣いた。

       「そんな!私は、ただ、
        若君が生きて
        くれればと。」

        「恥を知りなされ!」

    唯の言葉に、
    吉乃の厳しい声が、飛ぶ。

    その声を遮る様に、
    木村正秀が言葉を続けた。

     「実は、まだ、
      皆に語っておらぬ事がある。」

    正秀は、一呼吸おき、
    足軽一人一人に視線を送った。
    足軽たちは、涙をぬぐいつつ、
    身を乗り出す。

     「相賀が鞍に跨り、
      若君が立ち上がった
      その時であった。
      突然、颯が大きくいななき、
      後ろ足で立ち上がると、
      相賀を振り落としたのじゃ。」

        「おお!」

         「な、なんと!」

    足軽たちから、驚きの声が漏れた。

    ものの見事に落馬し、
    あおむけに倒れ込んだ相賀は、
    咄嗟に脇差を抜いた。
    颯はそれを後ろ足で蹴り飛ばす。
    そして、踵を返すと歯をむき出し、
    前足を振り上げ、ここぞとばかり、
    相賀の腹を踏みつけようとした。

    「まて!それまでじゃ!」

    忠清の鋭い声に、颯は向きを変え、
    相賀の体すれすれに前足を下した。

     「おおお!
      とても馬とは思えぬ。
      まるで、荒武者の様じゃ。」

    驚いた宗熊が、声を上げた。

    相賀の家臣が、太刀を抜こうとする。
    それを宗熊が制した。

    忠清は膝をつき、
    相賀を抱き起そうとする。
    背中と腰を強く打った相賀は、
    顔をゆがめながら、こう言った。

    「今、わしの首をとれば、
     勝ちはぬしのものじゃ。」

    忠清は、静かに答えた。

     「戦は、すでに
      終わっておりまする。」

    忠清は、相賀を広間に運ぶ様、
    木村に言った。
    相賀の家臣が、すぐさま駆け寄り、
    相賀の両足を抱える。
    そこへ、木村の妻女が現れ、
    案内に立った。

      「お前、戻っておったのか?」

       「私は、貴方のお側を離れる
        つもりはございませぬ。」

    妻の言葉に、木村は思わず涙ぐむ。
    妻は優しく微笑みながら、
    小袖で夫の涙をぬぐった。

    一方、忠清は、愛馬、颯にむかい、
    こう言った。

     「颯よ、お前をこれより
      黒羽城の城代とする。
      急ぎ、城に向かえ。」

    忠清が、颯の脇腹を叩く。
    颯は、首を大きく振ると、
    小垣城の大手門を抜け、
    走って行った。

    城山を駆け下り、
    戦場を走る栗毛の馬の後を、
    織田や高山の兵が追うが、
    誰も捉える事は出来なかった。

    颯は、ただひたすらに
    黒羽を目指した。
    城下に入った後も、
    その足を止めようとはせず、
    城を一巡すると、
    西側にある空堀を一気に斜めに下り、
    さらに、その倍の高さの土塁を
    駆け上る。
    馬場先門脇のやや低くなった土塀を
    ひらりと飛び超え、馬場をつっきり、
    その先にある厩門に体当たりをした。

    厩門の先は、厩が連なっている。
    そこには、まだ、
    数頭の馬が繋がれていた。

    颯がいななくと、
    他の馬も一斉に声を上げる。

    野上の領地から密かに戻り、
    馬屋の隅に身を潜めていた天野信茂は
    そのいななきを聞きつけ、
    何事かと、厩門に走った。
    隠し小窓を開け、外を覗くと、
    栗毛の馬が、荒い息を吐いている。

     「これは・・・颯ではないか!」

    信茂は、厩門を開けると、
    颯を迎え入れた。
    鞍に目をやると、書付が一枚、
    はさんであった。

     “この馬は、黒羽城の城代なり。”

    それは、まさしく、
    忠清の筆によるものだった。

       ・・・・・・・

    その後、相賀は、半月ほどで、
    立ち上がれるまでに回復した。
    小垣城で手厚い介護を受けた相賀は、
    信長に宛て、
    羽木は反旗を翻す恐れなしと、
    書状を送った。
    やがて、織田勢は、わずかの兵を残し
    今川攻めの戦場へと移動して行った。
    高山の兵も、退いていき、
    残ったのは二百程。

     「では、我が城より輿を
      運ばせますゆえ、
      それにお乗り下され。」

    宗熊の進言に従い、
    相賀は高山の輿に乗り、
    黒羽城へ入城する事になった。
    小垣城の馬に乗った若君と、
    木村正秀が先導する。
    宗熊と高山の家老、相賀の家臣が、
    輿の脇を固めた。
    その後を、百名程の織田と
    高山の兵が続く。

    青い空に浮かぶ白い雲が、
    鳥の影を映していた。
    その影が、
    一羽、また一羽と増えて行く。

    大鷹の森が見えてきた頃、
    にわかに黒い雲が立ち込め、
    湿った風が吹き抜けた。

      「これは、いけませぬ。
       一雨、来るようですな。」

    「そうじゃの。
     今宵の宿と決めた寺は、
     まだ、先じゃ。
     木村、急ぎ大鷹の宮に使いを出し、
     一夜の宿を頼んで参れ。」

    雷鳴が近づいて来た。
    神仏をも恐れぬという、
    信長の威光を借りた相賀が、
    輿に乗ったまま、大鳥居を
    くぐろうとした、まさにその時、
    輿の真上で、轟音が鳴り響き、
    鋭い閃光と共に、鳥居の手前の
    銀杏の大木が、真っ二つに割れた。

    羽木の足軽たちが、口々に叫ぶ。

       「この皐月に雷とは、
        大鷹様のお怒りじゃ!」

     「このままでは、祟られるぞ!」

    それを聞いた忠清は、
    すぐに相賀の乗った輿の後ろに回り、
    兵たちに手を上げると、
    声を張り上げた。

     「静まれ!
      大鷹の神は、
      常に我らと共におられる!
      その慈愛の雨で、
      身を清めよ!」

    忠清の言葉のすぐ後に、事実、
    大粒の雨が一行を打ち付けたが、
    怯える者は、もう誰一人いなかった。

    輿の中で身を縮め、
    様子をうかがっていた相賀は、
    それを見て唸った。

    “なんと、巧みな事よ。
    ただ一言で、兵を静める。
    忠清は、なんとしても、
    わが手の内に置かねば。”

    やがて雨が上がり、
    本殿までの長い階段を、
    木立から差し込む西日が照らした。
    相賀は、家臣に背負われ、
    その階段を昇った。

    宮司が、本殿の前で出迎える。
    巨木が立ち並ぶ深い森が、
    夕闇にその姿を隠していた。

    翌朝は、みごとな五月晴れとなった。
    一行は早朝に大鷹の宮を出立した。
    すると、その後を追うように、
    巨木の森から次々と鳥が飛び立つ。
    それらは、やがて大群となり、
    まるで黒雲の様に、
    はるか上の空を進んだ。

    一行が城下に入ると、
    あちらこちらの町筋から、
    声が上がった。

      「おお、あれは!」
        「若君様じゃ!」
       「よう御無事で!」
        「若君様のご帰還じゃ!」

    小屋で息を潜めていた物売りや、
    町家の者たちが、
    わらわらと表に出て来る。
    城下に陣取っていた高山兵が、
    押し戻そうとするが、
    黒羽城の大手門に続く道は、
    あっという間に城下の者で
    埋め尽くされた。

    遠くに
    開け放たれた大手門が見える。
    その前に、
    栗毛の馬が巨漢の武者を乗せ、
    立っている。
    武者は、威風堂々、
    鋭い眼光を放っていた。

     「あれは・・・颯?
      いや、しかし、颯は
      わししか騎乗させぬはず。」

    訝しんだ忠清が、
    後方の木村正秀を呼ぼうとした。
    すると、巨漢の武者は踵を返し、
    大手門の中へと消えてしまった。

    忠清は馬を止め、大手門を見上げた。
    そこには、大鳥が
    びっしりと止まっている。
    天野信茂が門の中から駆け寄った。

      「若君~!」

    信茂は忠清を見て声を詰まらせる。

     「爺、野上に向かったのでは
      なかったのか?」

      「どうにもこの城が気にかかり、
       引き返した次第。
       若君が、お帰りになる前に、
       盗賊どもに荒らされてはと。」

     「さようであったか。」

      「小垣より戻りました颯、
       いやその・・・城代と共に、
       昼夜の見回りを欠かさず、
       高山兵をも、一兵たりと
       城内に踏み入れさせては
       おりませぬ。」

     「ようやってくれた。
      それにしても、爺、
      何故、このように大鳥が
      集まっておるのか。」

    忠清の言葉の通り、
    大手門にとどまらず、
    城壁にも櫓にも、
    城内、ありとあらゆるところに
    大鳥が止まっていた。

    天野信茂は、ふと、
    黒羽城築城にまつわる、
    とある言い伝えを思い出した。

      「これだけの大鳥を
       目にするのは、
       この信茂も初めての事。
       思い当たるとすれば、
       幼き頃に耳にした
       昔語りが一つ。」

     「さようか。では、
      後ほど聞かせて貰おう。」

    忠清は木村を呼び、
    城開け渡しの儀のしつらえを
    申し付けた。

    式場が整い、家臣を従え、
    居丈高にやってきた相賀は、
    苦虫をかみつぶしたような顔で、
    忠清に問うた。

     「これは、羽木家の作法に
      のっとっての事であろうか。
      なれば、常とは随分と
      異なるようじゃ。
      本丸御殿ではなく、
      何故、この様な場で?」

    そこは、東門脇に作られた、
    馬出と呼ばれる曲輪であった。
    そこに陣幕が張られ、
    式場となっている。

      「城代に目通りなされば、
       ご納得頂けましょう。」

    忠清が、脇の陣幕を上げさせた。
    そこには、錦の絹の房で飾られた、
    颯が控えていた。
    颯は、相賀を見るなり、
    歯をむき出す。
    慌てた相賀が、よろめきながら、
    刀に手をかけようとした。
    すると、大鳥の大群が舞い降り
    颯の周りを取り囲んだ。
    そして、一斉に鳴きかわす。
    まるで、それは、
    武者の上げる鬨の声だ。
    それに応じるかの様に、一羽の大鷹が
    相賀の眼前に現れた。
    鋭い嘴で、相賀に向かう。
    相賀が、思わず両手で顔を覆い、
    しゃがみこむと、
    大鷹は翼をひる返し、
    颯の背の上に降り立った。
    忠清は、一瞬、そこにまた、
    鋭い眼光の巨漢の武者を
    見たように思った。

     「た、忠清殿、
      こ、これも羽木家の、
      な、習わしでござるか。」

    大鷹と大鳥の黒い大群に肝をつぶし、
    相賀の声が裏返る。
    大鷹の眼光に射すくめられ、
    腰を抜かさんばかりの有様だ。

    よほど早く、
    切り上げたかったのだろう。
    領地や領民、捕虜となっている
    羽木の兵の扱いなど、
    向後の事のほとんどを、
    忠清の申し出通りに飲み、
    気もそぞろに儀式を終えると、
    相賀は逃げる様に
    本丸御殿へと姿を消した。
    相賀は、その後もなかなか、
    落ち着きを取り戻せずにいた。
    家臣に囲まれての酒宴も
    早々に切り上げ、
    夜具にくるまったが、
    夢の中にも大鷹が現れたので
    脂汗を流しつつ朝を迎えた。

    忠清は、信茂と木村を伴い、
    異母兄の成之が使っていた
    居間に入った。
    ささやかな夕餉の後、
    信茂が語り始めた。

    羽木の初代当主が
    この地を治め始めた頃の事。
    城を築く場所を求めて、
    馬を走らせていると、
    雛の啼く声が聞こえた。
    藪の中にいたのは、
    孵ったばかりの鷹の雛だった。
    親鳥のいない間に、先に孵った雛が、
    まだ孵らない卵を巣から
    蹴り落とす事がある。
    当主は、その雛を拾い上げ、
    懐で温めてやりながら、
    屋敷に連れ帰った。
    弱っていた雛は、
    何とか命を繋ぎ、大きく育った。
    そのまま手元に置く事も出来たが、
    大空高く羽を広げる事こそ、
    鷹のあるべき姿と考えた当主は、
    雛を見つけた藪にほど近い、
    巨木の森に鷹を放した。
    それから暫くして、
    当主は遠乗りに出かけた。
    すると、目の前にあの鷹が現れ、
    馬の前を飛び始めた。
    導かれるまま檜の森を抜けると
    小高い山の頂上に着いた。
    一望のもとに領地が広がる。
    鷹は再び飛び立ち、
    少し離れた所にある、
    杉林の上を旋回すると、
    また戻ってきた。
    その杉林の近くには、
    川が流れている。
    まさに、自然の堀の様に見えた。
    当主は大いに喜び、
    鷹と共に上った檜の山に本城を、
    杉林には砦を築く事にした。
    整地の為に森や林を切り開けば、
    倒した木は、そのまま城の資材となる。
    城が完成すると、当主は、
    鷹を放した森に大鷹の宮を建て、
    祭ったのだった。

    信茂の語りは、あちらこちらに飛ぶが
    忠清は止めもせず、
    ただじっと聞き入った。

    “なれば、己が見たあの巨漢の武者は
    大鷹の化身であろうか。”

    忠清は、改めて城の名を噛みしめた。

     ”あの大鷹は、
     羽木の初代当主に成り代わり、
     城明け渡しの立ち会いに
     現れたのか。”

    忠清は、大鷹宮の方向に一礼し、
    祈りを捧げた。

    夢うつつで一夜を過ごし、
    気がつけば、
    東の空が紅に染まっている。
    ふと軒に目をやると、
    つばくらめの巣がかかっていた。
    陽が高くなれば、親鳥が巣に
    餌を運ぶ姿も見られるだろう。

     “ここにも黒い羽根の
      ものがおるとは。”

    ある日、突然現れてやがて消える。
    まるで唯の様だと、忠清は思った。

    “この戦さえなかったなら、
    わしも子を授かり、
    親鳥の様に立ち働いたやもしれぬ。”

    忠清は庭におり、
    そこに一輪咲いていた菖蒲を摘むと、
    成之が残した花瓶に、
    その花を立てた。

          ・・・・・

    「よう、語ってくれた。」

    殿が、木村正秀に声をかけた。

      「殿は、ご存じで
       あられまするか?
       大鳥の正体を。」

    「うむ。
     にわかには、信じられぬがの。
     黒羽の当主には
     確かに伝えられておる。
     戦で命を落とした者の念は、
     大鳥に宿るとな。
     黒羽の行く末を見届けたい、
     その一念で、散って行った
     武士どもが、
     城に戻ったのやもしれぬ。」

    身を切るような空気が、
    心の中まで染み入る。
    何かを振り切る様に、
    殿が言葉を継いだ。

    「だが、忠清も、
     考えたものじゃの。
     颯を城代にするとは。」

    久方ぶりに、
    殿の豪快な笑い声が響き、
    それにつられて、
    家臣からも笑い声がもれた。

    「己を振り落とした馬なれど、
     黒羽城代とあれば、
     相賀も手は出せぬ。
     役目を果たした颯も、
     見事なものじゃ。
     そして、その颯を育てた
     馬番衆も、また、あっぱれ。」

    闇の中、冷え込む庭に座り、畏まって
    聞いていた馬番足軽たちの目が、
    その一言で輝いた。

    「皆をねぎらいたいものじゃ。
     馬番衆は特にの。
     厨に何か残ってはおらぬか?」

      「味噌の汁なれば、すぐに。」

    吉乃が答える。

    「それは良い。
     大鍋で、皆にふるまえ。」

       「私も手伝います!」

    唯が、勢いよく立ち上がった。

    薄い味噌汁にはわずかばかりの
    大根の葉が浮いているだけ。
    それでも、湯気の立つ鍋を囲み、
    小さな椀で、互いに分け合う
    足軽たちの笑顔は、
    夜空の月よりも明るく輝いていた。

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    なんだか・・・すみませんm(__)m

    素敵な歌詞も紹介されて、ほんわりと、あたたかな雰囲気の中、
    おばば、投稿に、ちょっとビビりました・・・(;^_^A
    正座・・・
    あ、いやその、おばばの物語は、
    真っ黒けな鳥が、沢山、出まくるんですけど・・・(;^_^A
    申し訳なさすぎ・・・(;^_^A
    でも、勇気を振り絞って投稿しますね~。
    正座の後は、美しい星座を見上げてお口直ししてくださいね~(;^_^A

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    予言者ですか?

    千絵ちゃんさん、脳内リンク大歓迎です!

    実は、今後の物語で、筒美京平さんの曲、もちろん歌詞の方ですが、ちょっと出てくるんです。透視されたかと思いました(*^_^*)お楽しみに。

    今日は、投稿はお休みして、妖怪千年おばばさんの新作を、正座して待ちまーす。

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    歌詞とリンク

    年末に備えてHDDの整理をしていて
    「筒美京平さんメドレー」番組があり
    つい見ていたら
    No.394 夕月かかりてさん作が浮かびました

    ?郷ひろみさん
    「あなたがいたから
    僕がいた」
    あなたがいたから
    僕がいた
    心の支えをありがとう
    (中略)
    夏の朝も秋の夜も
    あなたはずっと
    僕の胸に飛び込んでくれるよね
    (中略)
    泣いたり拗ねたり求めたり
    二人は離れていられない

    ?少年隊「君だけを」
    君だけに ah 君だけに ah
    巡り合うために
    僕は寂しさと共に生まれたよ
    (中略)
    僕は君だけを
    抱きしめるために
    生まれてきたよ

    筒美京平さんは
    作曲家なので
    作詞はそれぞれ
    橋本淳さん 康 珍化さんです
    勝手に脳内リンクしてしまいました?

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    妖怪千年おばばさん

    次の投稿、大変楽しみにしています。
    SPの要約、本当にありがとうございます。
    YouTubeで超短い予告編だけ見ました。
    若君が唯を抱いて尊の実験室に降り立つシーンが最後でした。
    それを見て、ああ、夕月かかりてさんのお話は
    ここからの続きとわかりました。

    若君が背中を踏みつけられるなんて、
    あってはならぬ由々しい事態ですね。
    そんな屈辱はアシラバには耐えられません。
    是非相賀をギャフンと言わせてください。

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    冬至

    レンコンも美味しいですが、
    冬至と言えばかぼちゃですね。
    永禄に、かぼちゃは
    あったんでしょうか?
    後で調べてみようかと。
    ”信長のシェフ”を読む限り、
    永禄には、日本が誇る万能調味料、
    ”醤油”はなかったそうで。。。
    何故そこにこだわるかって?
    実は、貧しく、苦しい暮らしにも、
    幸せを感じるシーンを
    書いてみたくて。

    夕月かかりて様
    ハッピーな速川家のシーン、
    楽しく読ませていただいてます。
    割り込む形になってしまって、
    ごめんなさいね。
    今夜、おばば、投稿します~。

    カマアイナ様
    SPを見ていらっしゃらないご様子なので、
    今夜、投稿予定のおばばの物語は、
    分かりにくいかもしれません。
    ごめんなさい。m(__)m
    SPは、和議を結んだはずの
    高山の裏切りから始まります。
    黒羽城は、信長の家臣、
    相賀の手に落ちます。
    おばば、ドラマには描かれなかった、
    黒羽城の明け渡しのシーンを
    書いてみました。
    ドラマの中で、
    相賀が若君の背中を踏みつける
    シーンが有るのですが、
    それが、とっても悔しくて。(;^_^A
    ちょっと、相賀を懲らしめて
    やりたくなりました。
    お読みいただけましたら、
    嬉しいです。

    ぷくぷく様
    大作、お疲れさまでした。
    宗熊の成長ぶりが、嬉しいですね。

    皆様
    投稿前のご挨拶が長くなり、、
    早、出勤の支度にとりかからなければ
    ならない時間となりました。
    では、今宵、またお邪魔いたしまする。
    (^_^)vm(__)m

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    二人の平成Days20~15日土曜13時、歩み寄ります

    浮かれちゃって、いいのよ~。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    本日の診察終了、クリニックを閉める。美香子が一人、急いで昼御飯中。

    美香子「ごめんなさいね、二人だけに片付けやらせちゃって。ありがとう」

    芳江「いえいえ。では、失礼します。皆さん、楽しんできてくださいね」

    エリ「失礼します。また、楽しいお話聞かせてください」

    唯「うん、ありがとう。お土産いっぱい買ってくるね!」

    若君「ありがとうございます、芳江さん、エリさん」

    芳&エ「まあ~、若君!嬉しいわ~」

    いよいよ、一泊二日の温泉旅行に出発です。

    美「なんとか間に合いそうね」

    覚「どっちにしろ、安全運転で行くからな」

    美「ありがとう。では今日の予定を発表します」

    唯&尊「はーい」

    若「はい、お願いします」

    美「15時にホテルにチェックイン、荷物を部屋に置いて、テーマパークへ。晩ごはんはホテルに戻って豪華会席料理」

    唯「やったー!」

    若「わからぬ言葉が多いの」

    唯「まっ、ついてくればいいから」

    尊「お姉ちゃんについてくと疲れちゃうよ」

    美「部屋から海が見えるらしいわよ」

    尊「各部屋に露天風呂もあるよ。忠清兄さんには情報多過ぎだよね」

    若「楽しそうなのは、わかった」

    ホテルに到着。部屋に入る。

    美「ひとまず荷物はこっちの部屋にまとめて」

    唯「わー、オーシャンビュー!」

    覚「露天風呂からも海が見えるのか~」

    尊「兄さんは海、初めてですよね」

    若「なんと広大な。しかも美しい」

    唯「隣も同じ作りだったー」

    尊「はやっ。海岸に下りられるんで、せっかくだから海見てから移動しませんか?兄さん」

    美「そうね。イルミネーションにはまだ時間あるし」

    若「聞いた言葉を書き留めておかぬと、わからなくなりそうじゃ」

    尊「書かなくても、はっきりしてる事があります。速川家、浮かれてます」

    若「そうか、全部まとめて浮かれておる、か」

    全員で大笑い。そして、ほどなく海岸に下りてきた。

    若「海、とな」

    尊「戦国時代って、勢力を拡げればわからないけど、領地が海に面してなかったら、ほぼほぼ見る機会ないですもんね」

    若「羽木の領地は山に囲まれておるからな、初めてじゃ」

    唯「わー、海、海!」

    尊「あそこに超浮かれてる人が」

    若「かわいいのう」

    尊「基本、なんでもかわいいんだな」

    覚「そろそろ行くぞー」

    尊&若「はーい」

    尊「あっ」

    若「この方が、楽しいじゃろ?」

    尊「はい!」

    テーマパークに着きました。

    若「周りが暗くなってきたが、夜に参る所なのか?」

    唯「うん。もちろん昼間もいいんだけど、断然夜!デートにぴったり~」

    尊「そろそろ点灯かな」

    その瞬間、一斉に辺りが輝いた。イルミネーションのスタート。

    若「おおっ!」

    唯「わあー、超キレイ~」

    尊「すごいな、眩しいよ」

    尊が、デジカメで撮影している。

    唯「スマホじゃないんだ」

    尊「たまにはね」

    唯「後でたーくんと撮って。あれ、そういえばお父さん達は?」

    若「お父さんお母さんなら、あそこに居る」

    唯「あっ、居た居た」

    若「これ、唯」

    走り出す唯の手を引っ張る若君。

    唯「え?どしたの?」

    若「二人をよく見て」

    覚と美香子、腕を組んでイルミネーションを見上げている。

    若「邪魔してはならぬ」

    唯「ホントだー。そっとしとこ」

    尊「え?じゃあ僕、余り?」

    若「余りじゃないぞ。我らと一緒で良いではないか」

    尊「え~?遠慮した方がいいんじゃ…」

    すると、若君が手を差し出した。

    若「さあ、行こう」

    尊「え?またお手手つないで?いいの?お姉ちゃん」

    唯「たーくんの優しさに免じて、許す」

    若「許さなくても、一緒じゃ」

    唯「あー、反抗期?」

    若「唯とだけだと、心配で」

    尊「それは正解!」

    唯「言ったな~。まっ、たーくんが楽しそうだから、いっかー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜は、これから。

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    二人の平成Days19~12日19時、大事な息子

    逆鱗に触れた模様。no.348慈愛とリンクします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「忠清くん」

    若君、箸を置き、美香子の方に体を向けた。

    若君「はい。お母さん」

    美「あなた、唯なしで生きていける?」

    若「…唯が、こちらの世で幸せに生きていってくれるなら」

    美「それはあくまでも唯の為でしょう。あなたの気持ちはどうなの?」

    若君、一瞬顔を上げるが、下を向いている。

    美「離れたとするじゃない。こちらで唯が他の男性と結婚するかもしれないわよ」

    唯「お母さん、それはないから」

    美「どうして断言できる?その逆だって有り得るのよ」

    若「いや、お母さんそれは」

    美「唯の幸せを思うなら、なぜ傍で見届けようと思わないの?」

    覚「美香子、そんな問い詰めなくても」

    美「いいの。素直ないい子で育ってると、怒られ慣れてないから、こういう時弱いだけよ」

    尊 心の声(そ、そうなんだ。でもすごい怒られ方だよ。頑張れ、兄さん)

    覚「それにしても~。忠清くん、君と離れて会えなかった頃の唯は、それは目も当てられない程、唯らしくなかったんだ。唯は、君と居るのが最上級の幸せなんだよ」

    唯「うん、私、たーくんと離れるなんて有り得ないよ」

    美「それで。あなたの気持ちは?」

    若君が前を向いた。

    若「唯が居ない世界は最早考えられません。唯の居る幸せを知ってしまった以上、もう知らなかった世界には戻れません」

    美「そうね。あなたが、唯が必要なんでしょう?」

    若「はい。その通りです」

    尊 心(すごい!現代語を駆使してる。いかにも総領ないつもの威厳がある感じじゃなく、一人の青年らしくていいな。もう少しだ、頑張れ~!)

    美「あなたを、もう一人にしたくないの」

    若「えっ」

    美「ずっと淋しかったでしょ?」

    若「はい…それは…」

    若君が涙ぐんできた。

    美「唯の幸せも願ってる。あなたの幸せも願ってる。大事な息子だもの。だから、無理しちゃ駄目よ」

    若「はい。ありがとうございます」

    うつむく若君の目から、涙が雫となりいくつも落ちる。

    唯「たーくん!」

    若君に抱きついた。一緒に泣いている。

    美「ご飯食べ終わったら、もう一度お風呂行ってらっしゃい。尊、ついていってね」

    尊「うん、わかった」

    尊 心(はぁ~。もらい泣きしそう、でも)

    尊「感動的な場面だけど、場所が…」

    美「いいのよ、このくらいガヤガヤしてる方が。気持ちも切り替えしやすいし、すぐお風呂で涙も洗い流せるしね」

    男湯。若君は露天風呂で、夜風に吹かれながらぼんやり夜空を見上げている。

    尊「一緒に入っていい?忠清兄さん」

    若「良いぞ」

    尊「随分、現代語話せるようになったんですね」

    若「もう二月半も居るから、なんとか。特に、お父さんお母さんにはその方がいいと思うて」

    尊「すごい。若君っぽくないといえばないけど」

    若「別れが、より辛くなる気がして、の。あえて話さぬようにしていた」

    尊「そうだったんだ…」

    若「尊は、いい両親に恵まれたな」

    尊「えー、忠清兄さんの両親でもありますよ」

    若「ありがとう」

    尊「わっ、感激」

    覚「おーい、僕も混ぜて」

    尊「えー?」

    覚「こらこら」

    若「ハハハ」

    女湯。同じく露天風呂で、こちらも一緒に夜空を見上げている。

    唯「お母さん、今日はありがとう」

    美「怒り過ぎてなかった?かわいい息子を泣かせちゃった」

    唯「たーくんは、ずっと色々我慢して、泣く機会なんか欲しくてもなかっただろうから。今日で大分楽になったはず」

    美「さっすが~わかってるぅ!」

    唯「えへへ」

    美「週末、楽しみね。いっぱい思い出作ろ」

    唯「うん」

    帰りの車中。

    覚「静かだな」

    美「三人とも寝てるから。かわいい寝顔よ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、温泉旅行です。

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    はじめまして!いらっしゃいませ??

    カマアイナさん、いらっしゃいませ〜
    この板も楽しいのですが、大作が続いているのでせっかくの初投稿が埋もれてしまうかも…
    なので初書き込み板に来ていただけると皆さんワラワラと歓迎に集まって来ますよ。
    取り敢えず、温かいお茶を?どうぞ〜

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    二人の平成Days18~12日18時、ママ!

    あら、噴火?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    岩盤浴中。二人で横になっている。

    若君「この、じわりと熱くなるのが実に不思議じゃ」

    唯「体にいいんだよぉ」

    若「溶岩…溶岩とは何じゃ?」

    壁の説明書きを読む若君。

    唯「あー、火山が噴火して、出てきたマグマが固まったやつ」

    若「火山?山が火を噴くのか?そんな恐ろしい天変地異が」

    唯「え?今でもいくらでもあるよ」

    若「そうか。尊でなく、唯から教わる事もあるんじゃな」

    唯「今、すっごい失礼な事言われたー」

    クールダウンで休憩エリアへ移動。

    唯「喉乾いたねー、あっ自販機見っけ。たーくん、どれにする?」

    若「どれでも」

    唯「だよねー。じゃあスポーツドリンクで。たーくん、その腕のバンド、機械のここに当てて」

    若君、素直にかざす。ドリンクが出てきた。

    若「なんと!また新たな術が」

    唯「それ、お財布代わりだから。帰る時に払うんだよ。今、お金持ち歩くと面倒でしょ」

    若「なるほど。上手く出来ておる」

    唯「子供をあやすみたいになってる?私。あ、あらら~」

    ヨチヨチ歩きの赤ちゃんが、こちらに向かってくる。

    唯「どしたの~?パパとママは~?」

    赤ちゃん「パパー」

    若君の足元に到着。

    唯「かーわいい!」

    若「なんと愛くるしい」

    赤ちゃんのパパ「あー、すみませーん!」

    赤ちゃんのママ「すみません。はーい、おいでー」

    唯「いえいえー。バイバーイ」

    両親は会釈をして去っていった。

    若「唯、パパとママとは何じゃ?」

    唯「えー?そこ?!てっきり、子供欲しいなーなんてラブラブな展開だと思ってたのにぃ~まあいいや。パパはお父さん、ママはお母さんだよ」

    若「あー」

    唯「あ?」

    若「信近か」

    唯「あっ、そうそう、小平太パパ」

    若「そうであったか」

    唯「えっ?今まで何だと思ってたの」

    カップルシート発見。周りに人も居ない。

    唯「こんな所にこんないいスペースが。しかも周りからちょい隠れてる。ぐふふ」

    若「胡乱な動きじゃ」

    唯「あっ、なんか悪者扱いされてる。えーい、お仕置きじゃ~」

    若君にくすぐり攻撃。

    若「わっ、これっ、唯!」

    唯「やーん、焦るたーくん、かわいい!」

    上着が引っ張られ、若君の胸元が現れた。

    唯「あっ」

    うっすら残る矢傷の痕。指でなぞる唯。

    唯「ほとんど見えないね。さすがお母さん」

    若「そうじゃな。唯、」

    唯「なに?」

    若「この傷のお陰で、速川の家族に逢う事が出来た」

    唯「大変だったのに?」

    若「あのまま永禄におっては…」

    唯「わー怖い。そうだね。尊には後で丸投げだって言われたけど」

    若「全て唯のお陰じゃ、礼を…いや」

    唯「ん?」

    若「ありがとう、唯」

    唯「えー、超嬉しい!」

    若君に抱きついた。すると、

    美香子「あら、お取り込み中失礼。お父さん、居たわよ~」

    唯「あっ、なんて絶妙なバッドタイミング」

    晩ごはんはフードコート。

    美「はぁ~。岩盤浴も堪能したし、極楽極楽」

    覚「ばあさんみたいになってるぞ」

    美「リフレッシュして、また明日からお仕事頑張るよ~って」

    尊「どうしたの?兄さん」

    若君が神妙な顔をしている。

    若「この、先の世は誠に極楽じゃ」

    唯「うん、そう思うならそう」

    若「このような地から、生きるのも厳しい永禄へ、唯を伴って良いのであろうか?わし一人の方が良いのではないか」

    唯&覚&尊 心の声(えー?!今さら~?)

    ただ一人、美香子の表情が険しくなった。

    美「忠清くん」

    唯「え?お母さん」

    唯 心(なんか、めっちゃ怒ってる!)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    不穏な空気。次回、緊迫のシーンから。

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    Mahalo nui loa(^o^)

    カマアイナさん、いらっしゃいませ!ご指名にあずかりました、夕月かかりてでございます。

    私がすぐ気が付くように、こちらに書いてくださったんですね。すぐに反応できず、恐縮です。毎日、鋭意執筆中です。推敲を重ねてから投稿しておりますので、お待ちくださいね。心からお願いされちゃいましたので、頑張りまーす。

    千絵ちゃんさんもおっしゃってましたが、ぜひ、初書き込み掲示板にも、お立ち寄りくださいませ。

    と言う訳で、本日も。

    投稿フォームへ

    返信
    ようこそ❗カマアイナさん❗

    E komo mai ‼️
    (エ・コモ・マイ →合ってますか❓)
    こちらへたどり着かれましたか~
    作家の皆さんの力作
    楽しいですよね~❗
    アシラバは世界中に
    いらっしゃいますね✌️
    よろしかったら、一度
    「初書き込み掲示板」へ
    お寄りくださると
    うれしいです‼️

    夕月かかりてさんの
    ♨️入浴施設で
    私も岩盤浴したいよ~
    離れた所から若君様&唯さんを
    拝みたいっス?

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    ドはまり

    初めまして。皆様よりはーるか遅く、今年の春に初めてアシガールの存在を知りました。それも途中から連ドラとして放映しているのに気づき、録画できたのは最終回のみ。まさかアメリカでこんなにユニークな、時を超越した時代劇風ラブコメが観れるとは夢にも思っていませんでした。
    お決まりのコースで、長期ロックダウンの刺激の少ない生活の中で得た、琴線に響く湧き水に触れたような感覚、、、こんな軽いタッチのコメディなのに何故だろうと、あらためて俳優その他をググりだしました。
    アシガールロスって本当にあるんですね。この齢Xで信じられません。
    そして運よくたどり着いたのがユーチューブの音楽とこのナジムランド。

    そして、又々嵌りました。夕月かかりてさんの連作。
    楽しくて、いくらでも話題が作れそうで、是非アシガールの余韻をできる限り引き伸ばして下さい。心からお願いします。
    Mahalo!

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    二人の平成Days17~12日水曜16時、邪魔しないで

    色々起こる方が、楽しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「すぐ来てくれるからまだ良かったけど~冬場は困るわ」

    覚「子供達だけ外行かせるか」

    尊「ただいまー。え?何、会議?」

    リビングの両親。尊が帰宅。

    覚「お湯が出ない」

    尊「えー」

    美「もうすぐ業者は来るんだけど、今日直るかどうかわからないのよ」

    覚「風呂がなー。間に合うかわからないから、お前達三人でスーパー銭湯でも行ってこい」

    尊「わかった。お姉ちゃん達は知ってる?」

    美「若君には、迎えに出る時に伝えたけど。唯にLINEしとこうか?」

    尊「うん。そうしないと、いくら若君が言っても全然帰って来ないよ」

    唯と若君帰宅。

    唯「ただいまー。まだ直んない?」

    美「もうすぐ業者来るから。ひとまず支度して、行ってらっしゃい。駅前から直行バス出てるでしょ。若君もいい予行練習になるし」

    尊「あーそうだね。若君、週末遠くの大きいお風呂に行くって言いましたけど、今日も行きますから」

    若君「そうか。父上母上は?」

    覚「ありがとね。状況わかり次第、尊に連絡するから」

    尊「お姉ちゃんはすぐ見るか怪しいからね」

    駅に着き、乗り込んだシャトルバスに驚く若君。

    若「一度に幾人も運べるとな」

    唯「なんか、当たり前の事を当たり前に思っちゃいけないなぁって、たーくん見てると思う」

    尊「確かにね。あっLINE来た」

    覚から。

    尊「あ、なんかあっさり直ったって。で…ん?お母さんが、岩盤浴行きたいって言ってるから、今から合流して、晩ごはんもそのままみんなでそこで食べよう、だってさ」

    若「尊は父上と話をしておるのか?」

    尊「あ、LINE。えーっと、電話はわかりましたよね?」

    若「父上が、耳にあてて話しておった」

    尊「今みたいに、公共の乗り物の中では電話はご法度なんです。えーっとこの中に、文を書く場所があって、それを僕とお父さんが同時に見る事ができます。なので、例えば」

    若「ふむ」

    尊「若君がLINEの仕組みに驚いてるよ、と入力、送信」

    覚から、即、笑顔のスタンプ返信。

    若「なっ、なんと!目の前に居るようじゃ。先の世は、驚く事ばかりじゃのう」

    唯「ふふっ、かわいい。私も岩盤浴行く~。たーくんあのね、石の上で寝てるとすっごく汗が出るんだよ」

    若「石が?熱いのか?」

    唯「まっ、行けばわかるから。なんといっても!岩盤浴エリアはたーくんと一緒に居られるし~」

    尊「あ、忠清兄さん、ここからは平成ライフでお願いします」

    若「お父さんお母さんじゃな」

    スーパー銭湯に到着。

    唯「じゃあ、30分後に岩盤浴用の服に着替えて、ここに集合ね。尊、ウチのお風呂とは違う所、ちゃんと教えてあげてよ」

    尊「わかった。行きましょう、兄さん」

    若「よろしく頼む」

    お風呂、出ました。待ち合わせ場所に居る尊と若君。

    尊「あ、忠清兄さん。髪なんですけど、この後行く所、ほとんど横になるんです。だからいつも寝る時みたいに結んだ方がいいですよ」

    若「あいわかった」

    左サイドに寄せ、下の方で結び直した。

    尊 心の声(はぁ~。忠清兄さんのこの髪型、超絶色っぽいんだよなー。もう周りの婦女子が射ぬかれまくってるよ)

    唯「お待たせー、行こっか」

    尊「お姉ちゃん、言わなくてもそうすると思うけど、兄さんの傍を離れちゃダメだよ」

    唯「えっ、こんな所にも敵が?守らなくちゃ!」

    若「唯、尊、案ずるな。わしは唯以外のおなごには、全く興味がない」

    尊「全くかー。良い心掛けじゃな」

    若「ははっ」

    唯「はははー」

    岩盤浴エリア。

    尊「じゃ、僕はここで」

    唯「えっ?ここ?ここって本や雑誌しかないじゃん」

    尊「せっかくの機会だから、胡乱な書物を読破しようかと」

    唯「あー、コミックも全巻とかあるもんね。珍しい、尊がマンガなんて」

    尊「たまにはね。名作と呼ばれる本は読んどこうかなって」

    唯「へー」

    尊「じゃあ兄さんここで。お姉ちゃん」

    唯「なに」

    尊「邪魔しないでよ」

    唯「うわっ、セリフとられた!」

    若「心得た。では尊、ゆるりと過ごされよ」

    尊「かたじけのうぞんじます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    両親は、次回には到着かな。

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    (ToT)

    千絵ちゃんさん、私めの創作話に泣いてくださったなんて、こちらこそ感激です~。

    このまま、少しでも皆さんに、物語に共感していただけるといいなぁ。私の腕次第だな。

    若君「励めと申した筈じゃが」

    と、言われているつもりで、励みます。

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    泣いちゃった?

    短い感想云わせてね
    夕月かかりてさん❗
    若君の指輪への想い
    2人の代わりに…

    泣けました?
    若君の深い想いと
    寂しさが増して?

    ぷくぷくさん❗
    読書感想文苦手でした
    まさに「あとがき」リメイクで
    提出していました
    だんだんズルくなり
    本文読まずにリメイク提出
    するようになっていました(笑)

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    二人の平成Days16~9日20時、溢れたあとは

    前回の隙間と、その後です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    19時35分、若君が二階に上がっていった。

    覚「騒ぎ過ぎて、知恵熱でも出たか?」

    美香子「そこまで子供じゃないわよ」

    尊「もしかして、指輪を置いてくのに反対とか」

    覚「んん~。有り得なくはないな」

    美「もう一組作る?」

    尊「作れなくはないけど、なんか意義違わない?若君に頼まれれば作るけど」

    二階で物音。

    覚「なんか落ちたか?」

    美「昔よく、ベッドで跳ねて遊んでるとあんな音がしたけど」

    尊「飛んだか落ちたか押し倒…えっ?健全な青少年にはちょっと…」

    覚「何を想像したんだ」

    8時近く、階段を下りる足音。

    尊「あっ、大丈夫だったのかな。ええーっ」

    〈若君と唯登場。一緒に居ていいお許しも出た後へ飛びます〉

    ソファーに座る若君。しがみついたままの唯を膝の上に乗せた。

    若君「唯、しばしこのままじゃ。案ずるな」

    唯「たーくん」

    若「ん?」

    唯「わがまま言って、困ったおなごだと思ったでしょ」

    若「思うてはおらぬ。唯の望みは出来るだけ叶えてやりたいからの」

    唯「嫌いにならない?」

    若「まさか。愛してるよ、唯」

    唯が顔を上げる。

    唯「それ、意味わかって言ってる?尊にこう言うと喜ぶからって聞いただけじゃないの?」

    若「わかっておる。心よりお慕い申す。唯以上に好もしい姫はおらぬ。唯一じゃ」

    唯「大好きな唯は私一人だけってこと?」

    若「そうじゃ。まだ不満か?」

    唯「ううん、嬉しい。でももっと近づきたいのに」

    若「もっと?」

    唯「体が邪魔」

    若「?」

    肩にもたれ、若君の胸元に手を置く。

    唯「体が境界線で、これ以上入れない。もっとたーくんの心に近づきたいのに」

    若「そうか。されど、ここにはない」

    唯「?」

    唯の顔を覗きこみ、微笑みながら、

    若「わしの心は、唯がさらっていった」

    唯「えっ、ふふっ。そうなんだ」

    若「ようやく笑うてくれたの。一安心じゃ」

    覚「はい、お邪魔するよー。ホットミルクどうぞ。多めに入れたから二人でゆっくり飲んで」

    唯「ありがと、お父さん」

    若「忝ない」

    尊が所在なさそうにしている。

    尊「ここ、ほぼ観覧席状態だよ~。ラブラブを見せつけられるにも程がある」

    覚「そう言いながらそこから動かないな。でもさすが若君だ。黙ってそのまま部屋にしけこむ事もできたのに、ちゃんと時間までに下りてきて」

    尊「しけこむ、っていつの時代の言葉だよ」

    美「心は唯にさらわれたなんて、もーキュンキュンするわ~」

    尊「こっちはがっつり聞いてるし」

    覚「若君みたいに、サラッとカッコいい言葉が言えてたらなぁ」

    美「言えてたら何、お父さん」

    覚「美香子をもっと喜ばせる事ができたな、と」

    美「や~ん!何それ~嬉しーい!」

    尊「この家、どうかしてる。誰か助けて~!」

    〈唯は落ち着きを取り戻し、若君の腕の中でうとうとし始めた。二階に連れて行き下に戻った後から〉

    美「若君、お疲れ様でした。女の子は、ああいう時あるから。ずっと膝に乗せてて大変だったわね。ありがとう」

    若「父上、母上、尊」

    若君は床に座り、手をつき、頭が床につきそうな程下げた。

    若「必ずお守り申すと約束したのは、わしの方であるのに、此度破ってしまい、誠に申し訳なく!」

    覚「わー、止めて止めて!不可抗力ってあるしさー」

    美「そうよ。唯がわがまま言うからでしょ。でね若君、私達ちょっと考え方を変えたの」

    覚「永禄に戻れば、ゆっくり夜過ごす事がままならないかも知れないだろ?せっかく平和で安全な今、もう少し二人で居る時間を作ってあげようと思ってさ」

    美「面会時間を一時間延長し、午後9時までとします」

    尊「亥の初刻です、若君」

    若「気遣い痛み入る。唯も喜ぶであろう」

    尊「若君も喜んでくれますよね?」

    若「超嬉しい、じゃな」

    翌朝。若君は庭で日課の朝稽古中。

    唯「ただいまー。おはよう、たーくん」

    若「唯?おはよう、出かけておったのか」

    唯「うん、ちょっと走ってきた。すっきりしたよ」

    若「具合はいかがじゃ?」

    唯「ありがとう。ゆうべは色々ごめんね。でも愛してるって二回も言ってくれたから元気出たよ」

    若「気づいておったか」

    唯「女子はね、雰囲気だけじゃなく、たまにははっきり言って欲しいのじゃー」

    若「そうか。それでは励むゆえ、これからはあまり父上達を困らせぬようにの」

    唯「心得ました。あっ、そうそう朝の挨拶をもう一つ」

    若君に、唯から軽くキス。

    唯「もうね、心の準備はずっとしたままだから、聞かなくていいよ。今までごめんね。で、欲しい時はこうして私から奪っちゃうから!」

    若「あいわかった。普段の唯に戻ったの」

    唯「うん。さて学校学校。着替えてくるねー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    充電完了ですね。

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    私もです

    リリ造さん
    梅とパインさん
    投稿を読ませていただいておりますが、私も感想文は頭に浮かんでもうまく書けません(;_;)
    想像は梅とパインさんの仰る通り自分発進だからかなと(^_^;)
    実は学生の頃、読書感想文の提出の際は、本編はダ―って読んでも、どう書けばいいか分からないので
    【あとがき】に言葉を足して提出した事が何度かありました(>_<)
    そう言う〔ずっこい者〕です(^O^)/

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    二人の平成Days15~9日19時30分、溢れるほどの

    少女と大人の狭間です。大人の階段上るシンデレラ。でも幸せは人任せじゃなく自分で掴み取る。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    昨日もらった落雁をつまみながら、家族五人でお茶タイム。

    覚「あ~和む。今日は一日お疲れ。若君も慣れない事ばかりで疲れたんじゃないか?」

    若君「いや、わしは仕事や学校は行かぬゆえ」

    唯「はぁ~、ちょっと疲れたかな?もう部屋に行くね」

    唯は立ち上がり、二階へ上がっていった。

    美香子「変ね、なんか指輪の話が済んだあたりから、そわそわしたり様子がおかしかった」

    覚「熱でもあるか?」

    尊「いや、それより挙動不審に近かったけど」

    若「様子を見て参る」

    若君が二階へ向かう。

    若「8時、には戻るゆえ」

    美「はい。調子悪そうなら教えてね」

    唯の部屋、ドア越しに。

    若「唯?」

    唯「…たーくん」

    若「いかがした。ひどく疲れたのか?」

    唯「…わからない」

    若「わからぬ?開けても良いか?」

    唯「…」

    若「入るぞ」

    ドアを開けると、唯はベッドの隅で膝を抱え、不安そうにこちらを見ている。

    若「唯。入らぬ方が良いか?」

    唯「ううん、居て。なんでこんななのかわかんない、わかんないの」

    若君はドアを閉め、その場に座った。

    若「いつからじゃ」

    唯「…指輪の事、考えてくれてたのがすっごく嬉しくて、感動して」

    若「…それで?」

    唯「好きになったのがたーくんで良かったって、大好きって思って、そしたら胸がきゅーっとなって、体が熱くなって、思うように動かなくなっちゃって、なんでかわからなくて」

    若君は黙って聞いていた。すると、唯が両手を前に出す。

    若「唯?」

    唯「ギュ、ってして」

    若君は即座に立ち上がり、ベッドに飛び乗って、強く抱き締めた。

    唯「好き、大好き!もうどうしようもなく好きで、どうかなっちゃったのかな」

    泣き出した。

    唯「ずっとギュっとしてて欲しい、体ごと全部愛して欲しい」

    若君は、髪を撫でながら黙って耳を傾けていた。唯が顔を上げる。

    唯「キスして。いっぱいして。準備はずっとできてるから」

    それは、溺れそうに激しく、溶けそうに甘く、包むように優しく、時が止まったように長く続いた。

    唯「…あのね」

    若「うん」

    唯「私、すっごく子供だし、まだまだ大人の女性にはなれないけど」

    若「うん?」

    唯「ホントの意味で、腹が決まるってこういう事なのかなって」

    若「そうなのか?」

    頬にかかった髪を払うと、唯はすがるような瞳で見上げている。

    唯「すっごく好きで、なんて言うか…全部受け取って欲しい」

    若君が唯の頬に触れた。

    若「そうか…。だが、唯、済まぬ。わしはこちらの世では、そのつもりはない。父上母上の気を揉ませたくないのじゃ」

    唯「ううん、いいの。ちょっと自分にびっくり。はぁ、ドキドキする」

    若君が時計を気にしている。7時55分だ。唯がそれに気付いた。みるみる涙が溢れる。

    唯「行っちゃうの?」

    考え込んでいる若君に、唯がしがみつく。

    唯「嫌、もうお別れなんて嫌!置いてかないで、離れたくない!」

    若君は、意を決したように、泣きじゃくる唯をそのまま抱き上げた。部屋を出て階段を下りる。リビングで驚く三人。

    若「父上、母上、尊。わしの頼みを聞いて欲しい。今日だけで良い、もう少し唯と共に居たい」

    唯のただならぬ様子と、若君の真剣な眼差しに、

    覚「わかった」

    美「さっ、ソファーに座って。こちらこそごめんなさいね。お世話かけます」

    若「明日、学校にはきちんと行かせるゆえ」

    美「さすがね。安心して任せられるわ。私達、近くに居るけどいい?」

    若「勿論じゃ。目が行き届くようにお頼み申す」

    尊「お姉ちゃん、大分暴走したんだな。若君で良かった」

    覚「牛乳でも温めるか、な」

    9時、唯が若君の腕の中で寝息を立て始めた。ゆっくり立ち上がり、三人に会釈をして唯の部屋まで運び、ベッドにそっと寝かせた。

    若「寝顔を見るのは、小垣以来じゃの」

    布団をかける。

    若「あの頃とは比べようもない程、幸せじゃ」

    しばらく寝顔を眺めていたが、

    若「そろそろ、許しがなくても良いか?」

    唇に軽くキス、その後瞼にもキスして、立ち上がり、電気を消した。

    若「おやすみ、唯。愛してるよ」

    静かにドアを閉めた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    何もわからぬ時は、全てわかる顔で何も言わぬ。それも包容力。

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    お騒がせしています

    私の見解で、皆様をざわざわさせてしまって恐縮です。てんころりんさん程、しっかりした検証はしていませんので、寝待月と関連のお話、大変興味深く拝読しました。

    烏以外に、夕方かもと思った根拠はありました。覚父さんが、スーパーの袋をテーブルに置いています。お昼ごはんを作るその時間に、スーパー帰りとは考えにくかったので、悩んだ所でした。

    ある程度組み立ててある物語の柱があると、肉付けに自分が楽なので、現在のシリーズはこのスタンスで描いていきますね。うっ、偉そうに何言ってんだか(;^_^A

    梅とパインさんに、またまた背中を押され、現在のシリーズが終わった後の虚無感がなくなりそうです(^o^)いや、まだ今のを描き終わってないんですが。

    次のシリーズは、矛盾だらけになる予感。

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    ラジャです!

    てんころりん さん こそ、この「創作倶楽部」の創設者とも言える 1番の賛同者さんですものね♪

    てんころりん さんの日時の検証、公式時代から 複数の方々で 盛り上がっていましたね (^^)。 ただただ 感心しておりました。
    夕月かかりて さんも、ちゃんと考えていらして すごいです (^-^)。

    ではでは、いつになるか全く分かりませんけど「源・トヨ」のストーリーを考えてみます (^.^)。 しかし、本格的にくっ付けちゃうと 後が続けにくいし…。もっと焦らしてやろう。← ドS梅パ (笑)。

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    創作だもの

    夕月かかりてさんのno.370に、私の解釈を書き過ぎてしまいました。私が熱くなる話題だったもので、すみません。m(__)m
    風呂上がりの2人が見る月は、日付の根拠になる‥ 満月の4日後位の月と私も思ってます。
    この月はリアリズムで描かれた期待がありました (ドラマで実際の満月が分かっていたので)。
    以前 月の出時刻を調べて実証したかったのです f(^^;
    でも違っていて、フィクションは「どう描くか作り手の自由」と思い直しました。
    辻褄を全て合わせるのは無理 とお伝えしたい私の体験談でしたが、言葉が足らなかったですね。

    両親に許しを願うシーンの時間も、学校の土曜半休か期末テストの時期と具体的で感心し、
    美香子さんの休憩時間にカラスの声は‥ と気にされてたので、夕方で差し支えない根拠を書きました。私が誤解したかもです。(>_<)
    美香子さんの休憩時間の方が、後の活動時間が増える‥ 写真館の予約を取った事にしてましたね。

    書く方達は、ドラマや原作のシーンとの兼ね合いで、読者がどう思うか心配かもしれませんね。
    でも読む方はその事はそれ程 気になりません。
    自由に発想を飛ばして矛盾もありと思ってます。
    可能性は無限大、パロディーもOKですし。

    夕月かかりてさんの唯ちゃん“幼め”とは思いませんでした。おっしゃるように現代にいる間、両親に甘えさせてあげて下さいね❣️
    梅パさん、いつかまた源三郎&トヨ?の方もよろしくお願いします。
    私も“作っちゃいたい”ですが、今は未だ無理・・

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    作っちゃいましょう!

    創作(妄想)作家 様各位、
    現在進行形の物語が 一段落しても、終了しないで下さいませね。
    例えば……は思い付かないけど(笑)、スピンオフでも何でも 大歓迎です♪
    …と 丸投げして、楽しみに待ってます (^.^)。

    リリ造さん、感想文は 難しいですよね~ (^_^;)。 私は 自分発信の好き勝手な文は別ですが、感想文に加え お返事も苦手なので ございます (>_<)。 要は ワガママなオナゴです。すみません??。
    …ってことで、今後ともよろしくです m(__)m。

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    返信
    そうなんです

    公式での創作脚本やこちらの創作倶楽部の作品読ませて頂いていて、どれもみんな面白い❤
    自分には描けない世界を楽しませてもらっています。よくお話が生まれてくるなぁ…と感心してます。
    私は感想文が昔から苦手なもので個々の作品については最近は控えておりました〜?
    梅パさんも⁉うっそぉ(笑)あんなに文章うまいのに〜(笑)

    とにかく楽しく拝見しておりますので、作者の皆様これからもお励み下され〜?

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    感謝ですo(^o^)o

    梅とパインさん、後押しいただきましてありがとうございます。

    夕月かかりてはこう描いてるけど、私ならこう描く!と妄想作家だらけになると、楽しいですね。今に、ドラマと妄想の境目がわからなくなるかも。相賀の弟が~とかたーくんが~とか、そんなんあったっけって(^_-)

    目下の悩みは、平成Daysは2018年12月23日に繋げる話で、そこにたどり着いたら終わるので、その後何を楽しみにしていこうかと。空いてる日付全部埋めるか?いやそれでもいつかは終わりが~ずっと描いていたいんですよねぇ。

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    夕月かかりて さん、

    どうぞ ご自分の思われるまま、物語を描いて下さい。
    ここは その為の『創作倶楽部』ですよ。わざわざ『アシガール掲示板』から分けて頂いた 板です。
    表書きにも マスターが「原作にあること以外は許せないという方は閲覧注意です!」と、書いて下さっています。 お気に召さない人は スルーすれば良いだけのこと。賛同など要りませぬ。どうぞご自由に…。(でも 賛同があれば 浮かれちゃいましょうね 笑)
    夕月かかりて さんや、他の創作作家さんの スゴ~い作品がアウトなら、私の妄想話なんぞ チラッとも参加出来ません。何も考えておらぬのじゃ (^o^;)。

    今までに何度も言っているんですが、私は感想文が苦手なので 1つ1つに コメントはしませんけど、どの投稿も ちゃんと読ませて頂いています。 特にこの「創作倶楽部」は 人によって全然違う観点で「お、そうきたか!」とか「なるほどね♪」とか感心することが多く、楽しみな 板 です。どうぞ皆さま、これからも 楽しませて下さいね。ヨロシクです (^^)♪

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    二人の平成Days14~9日17時、家族の一員

    いつも想ってるけど、ずっとここに居るから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    着替えも終わり、全員でモニターを見ながら写真の確認中。

    覚「データでもらえるんだってな」

    尊「うん、戦国に持ってくなら小さい方がいいから、プリントアウトして何とかするよ」

    ここで、指輪にまつわる覚と若君の会話を回想します。

    ┅┅12月3日月曜13時30分、リビングで┅┅

    唯と尊は学校。

    美香子「じゃ、行くね」

    覚「おー」

    若君「行って、らっしゃい、母上」

    週明けの来院者は多いので、美香子は早々とクリニックへ。若君と覚は昼食の後片付け。平成での日常となっている。

    覚「さてと」

    若君はなぜか、覚の左手をじっと見ている。

    覚「なになに?何かついてる?」

    若「父上、ちとお訊ねしたき儀がござる」

    覚「えー、改まって何?」

    若「その指に嵌まっている輪の事じゃが、一昨日、写真の館に参った折、同じ様に同じ指に嵌めている者を幾人も見掛けた。何か、いわれがあるのであろうか」

    覚「あー、結婚指輪だからだよ」

    若「婚礼で指輪を?」

    覚「結婚した二人の、永遠の愛の証として嵌めてるんだ。若君が見た人達はみんな結婚してるんだよ」

    若「二人?されど今、母上は嵌めておらなんだが」

    覚「そうだね、それは特別な事情でさ。お母さんは医師だから、家族じゃない人の体をたくさん触るじゃない。いくら清潔にしてても、もしかしたらバイ菌が付いてて、患者さんが、若君がかかったみたいに感染症にでもなったら大変だから、仕事中は嵌めないんだ。でもな」

    覚が、リビングの端の写真コーナーへ。

    覚「お母さんのはここにあるんだ」

    棚の奥からケースを取り出した。開けると指輪が一つ。

    若「ほぅ、母上の指輪は此処に」

    覚「仕事じゃない時は嵌めてくれればいいんだけどさー、ここだけの話、結婚した頃より太っちゃって入らないらしい。お母さんには内緒な」

    若君は、どう返すべきか困っていたが、

    覚「でも、いつもここに妻が居るって思えるからさ。へへ、ちょっとカッコいい事言っちゃった?」

    若「愛情深いのう。父上、実に胸に響く話じゃった」

    ┅┅回想終わり┅┅

    帰りの車中。

    美「晩御飯さぁ」

    覚「ん?」

    美「久々にピザでもとる?」

    唯&尊「賛成~!」

    美「お父さんも運転お疲れ様だしね」

    覚「おー、悪いね。若君は初めてだよな?」

    唯「うん。何事も経験経験」

    若「ピザとな」

    唯「熱いトロっとした物が伸びます」

    若「なんと」

    唯「大丈夫、ちゃんと美味しい食べ物だから」

    帰宅。ピザも届いた。

    唯「そうそう、そのまま持ち上げて!ほーら伸びてる伸びてる、あっ切れた。じゃああーんして、たーくん」

    尊「まだ言ってる」

    唯「気に入ったし、使える時は使う。はい、たーくんお口開けてくーださい」

    半ば強引に若君の口に入れた。

    美「そんな無茶な、もう」

    若「うん、美味い」

    尊「若君たまには断った方がいいですよ」

    食後。

    尊「では、指輪について説明します」

    美&覚&唯「お願いします」

    若「お頼み申す」

    尊「お父さんに指輪の話を聞いた若君は、僕に相談します」

    美「話しやすいからね」

    尊「いや、大きい理由があって。若君は、買うとなるとお金の負担がかかるのを理解しています」

    若「結果、父上母上が支払うのは忍びないゆえ」

    美「そんな、気にしなくていいのに」

    尊「実験室に既にある材料で何とかならないかと。で急いで作り始めたんだけど」

    唯「サイズ測られてない」

    尊「そう。あくまでサプライズにしたいからね。で、お姉ちゃん位の体格だとどのくらいの指輪サイズになるか調べたりしたんだけど、中学生の時家族でボーリングに行ったのを思い出して」

    覚「ん?話が飛んだぞ」

    尊「続くんだ。その時、球のポンド数が一緒で、お姉ちゃんにバカにされたのを思い出して。重さもだけど、そもそも指が入らないと持てないじゃん。球は右手だし、それから少しは成長してるけど、賭けてみようかと」

    唯「バカにされたは余分だけど」

    美「そういえばそんな事あったわね。で?」

    尊「僕の指のサイズで作った」

    唯「えー!すごい!ぴったりだったよ」

    尊「それは、若君が頑張ってくれたから。最近、やたらと手を握られてなかった?」

    唯「あ。ちょっと多かった?いや、わかんない、若君そのあたり上手だから」

    尊「さりげなく感触で測られてたり、さりげなく糸を巻いてみたり」

    唯「気づかなかったー」

    尊「結果やっぱり一緒だったから。お姉ちゃん大分戦国で鍛えられたね」

    唯「喜んでいいの?喜んでおくか」

    美「でもそれ、戦国に持ってくの?」

    尊「そこ!そこなんだよ、僕が感動したのは。では若君お願いします」

    若君が席を立ち、リビング端の写真コーナーに。

    若「我らが去った後、ここに置いて欲しい。父上が、ここに母上の指輪がありいつも傍に居るようだと申された。我らの指輪もそのように、いつもここに居るように思うて欲しいのじゃ」

    美「まぁ、なんて…若君…」

    覚「泣けてくるじゃないか」

    両親が涙ぐむ。

    美「唯はそれでいいの?」

    唯「うん。すごくいい話だし、さっきたーくんに、指輪の事は済まぬがまかせて欲しい、って言われたから」

    尊「うん、正しい妻の姿」

    若「良き伴侶よのう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8時までまだ時間があります。さて?

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    LoveDream

    てんころりんさん、早速の解説、ありがとうございます。

    再放送は6話から録画しましたので、手元にあります。オンデマンドが観られた当時に、曲が違う事も認識しました。

    SPの許しを得るシーン、あの光の入り方は夕方だよな~と思ったんですが、あそこはスタジオじゃなく実際に建っている家なので、撮ってる内に時間経っちゃった?とか失礼な事思ってました(^_^;)

    自分の思うままに物語を描く事が、全ての方に賛同を得られるとは思いません。今までも今後も、問題作乱発かもしれません。ある程度組み立てた上で発表するのは、多数の皆さんがご覧になる場所に出す者に必要な過程と、自分に枷をかけてます。そう言っても抜け抜けかもしれませんが。何も考えてなかったら、2018年11月23日から話始めてます(^-^)

    そういえば、私の描く唯を、少し幼めに感じられるかもしれません。現代に居る時くらい、両親に甘える娘でいて欲しいのであえてそうしています。色々、考えておるのじゃ。

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    なるほど~そういう事でありましたか

    夕月かかりてさん、聞かせてもらって良かったです。12/9の話が幾つか続き、後の日付は揃わない、了解しました。私が先走ってすみませんでした。

    2年前のちょうど今、2人は現代にいた!その感覚はしっかり持てました。
    SPは実際の?11/23と12/23を出し、初回放送は12/24、当時の臨場感は半端なかった事も思い出します。
    11/23から遡り、唯が小垣城から速川家に戻ったのは、5/29?と分かり、平成はそれで満足してしまいました。
    永禄の方は矛盾があり、その話はアシガール掲示板no.2383の後半に書いています。

    11/23~12/23で唯一の手掛かりは、2人がウッドデッキで眺める月?ですね。
    あの欠け具合は11/27寝待月あたりと私も思います。月の出が日々遅くなり、出の時刻を調べると、8時前に空に月はなく、リアリズムの整合性は無理でした。

    根拠として・実際の曜日・大相撲千秋楽・看護婦さんのためパーティーは土曜半休の日・美香子さんが白衣を脱いでいる… すごく考えて綿密に組み立てられたんですね。
    高校の週休2日制は私も気になって調べたことあります。現在は土曜半休に戻す学校が増える傾向らしいです。

    両親にお許しを頂くシーンで、遠くに聞こえる《カラスの鳴き声》これ重要かもしれません。
    本編最終回プロポーズシーンの《カラスの鳴き声》とリンクさせてる気がします。
    若君のプロポーズは本編とSP両方併せてパーフェクトに整ったと思うんです❣️
    今年の再放送では、本編プロポーズシーンの音楽は、SPと同じ《Love Dream》に変更されて、一層繋がりを感じました。録画しました?

    美香子さんは、患者の予約がなく 空いた時間にリビングに来て、白衣を一度脱いだかも…
    緊急対応があって休憩時間をずらしていたかも…
    12時~14時の間と考えなくても大丈夫ではないでしょうか??
    日没近く16時頃、カラス あんな風に鳴きそう…
    期末テストの時期、それもありそう…
    制作の方達、クリニックの診療時間19時迄、忘れてたとか??
    自由自在な創作、楽しみにしてますね~。
    ぷくぷくさんも、妖怪千年おばばさんも、よろしく~ (*^^*ゞ

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    考えるのが楽しい

    てんころりんさん
    皆様
    宗熊の決意はどんな事か
    アシラバの皆さんは想像できるかも
    そうです・・・・・を考えています(^_^)
    勿論宗熊にも幸せになって貰いたい
    みんなが幸せになる物語にします(^^♪
    それがアシガールだと思うので(*^_^*)
    楽しいです(^O^)/

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    二人の平成Days13~9日15時、笑顔で完成

    こんなん、生で見たいよー!
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    洋装は、先に家族全員。

    カメラマン「はいありがとうございましたー。ご家族三名様は撮影ここまでです。お疲れ様でしたー」

    店員「では花婿様花嫁様は、チャペルへご移動ください。ご家族様も、ご覧いただくのはご自由ですのでどうぞ」

    唯と若君は先に移動。

    覚「ここは教会もあるんだな」

    美香子「撮影用に小さいのがあるの。さっきまでよりはラフな感じの写真も撮るみたい」

    覚「唯に動けって言おうもんなら、とんでもない事になるぞ?」

    尊「まさか走りはしないでしょ、また靴脱げるよ」

    三人がチャペルに入る。

    覚「へー天井高いし、外とも繋がってて明るいなぁ」

    美「ステンドグラスをバックになんて、二人とも白だから映えるわ」

    何枚か撮影後、

    カ「まだ時間あるんで、なんでも撮りますよ。指輪の交換シーンとかも撮りますか?」

    唯「あっ、いえ」

    美「あ~指輪。そこまで気づかなかったわ、用意してない」

    すると、尊がポケットから、

    尊「あります!忠清兄さんお願いします」

    尊の手に指輪ケースらしき物。若君に渡しに行く。

    若君「心得た」

    開けると、プラチナのごとく輝く指輪が2つ。

    カ「あー、サプライズだったんですか、いい表情です!」

    唯の戸惑った顔も撮影。そこはプロ。

    唯「えっ?なんで?だって、サイズが」

    はめるとぴったり。

    唯「あっ、これって」

    若「ないよりは良いと思うての。嫌か?」

    唯「ううん、すっごく嬉しい」

    撮影再スタート。

    美「尊、まさか…作った?」

    尊「うん。なんとかならないか頼まれて」

    覚「唯に、じゃないな」

    尊「うん。兄さんに」

    美「えっ、でもサイズは?唯は測られた覚えがないみたいよ」

    尊「測ってないんだ」

    美「え?」

    尊「このミッションで僕は、忠清兄さんの気持ちに感動したんだ。後で話すよ」

    そうこうする内、向かい合い見つめるシーンを撮影中。

    カ「これが最後のショットなんで、お二人、キスしちゃってもいいですよー」

    唯 心の声(えー!ただでさえヒール履いてるから、顔が超接近してて恥ずかしいのに)

    若君を見上げるが、微笑んだまま動かない。

    唯「たー…若君?」

    若君は動かない。が、潤んだ目で何か訴えながら、唯の頬に手をやった。

    唯「あっ!準備、できてる」

    若「あいわかった」

    無事キスシーン撮れました。

    唯「はぁ、たーくんごめんね!」

    若君に飛びついた。

    カ「あー、最後いい表情いただきました!皆さん、お疲れ様でしたー」

    尊「キスが許可制だったなんて」

    美「忠清くんはどこまでも誠実ね」

    撮影機器が片付けられている中、唯が三人に向かって手招きしている。

    美「なになに」

    唯「ねぇねぇ、もうちょっとだけ撮らない?尊のスマホで」

    尊「早く場所空けなきゃいけないんじゃないの?何撮るの」

    唯「お父さんと、バージンロードを歩くの図」

    覚「えぇ?」

    唯「なーんか忘れてるなぁって思って。さっ急いで!」

    腕を絡ませ、ハイ、ポーズ。

    覚「唯、ありがとな」

    唯「どういたしまして」

    若「婚礼をするならば、このような儀式があるとな。微笑ましいのう」

    尊「そうですね。僕らも忘れてたけど」

    若「逆はないのか?」

    尊「へ?」

    若「母と婿、というのは」

    美「え~!嬉しいわ~、撮っていいの?」

    尊「ちょっとお母さん、兄さんの純粋な心につけこんで何言ってるの」

    美「撮って撮って」

    尊「聞いてないし」

    ちゃっかり、腕を絡ませハイポーズ。

    唯「ちょっと~どさくさに紛れてなに腕組んでんの!たーくん、場所変わって」

    美「えー、もう?」

    母と娘でピース。ハイ、ポーズ。

    尊「動きが一緒だし」

    唯「尊とたーくんも撮ってあげる」

    尊「えーっ、容貌の完成度の違いが如実だから、勘弁してください」

    唯「つべこべ言わない、時間ないから早く!」

    腕は絡みません。ハイ、ポーズ。

    店「速川様、そろそろ…」

    唯「はーい、ごめんなさーい」

    チャペルを出て、着替えに向かう。

    美「忠清くん、今日はありがとう。唯の花嫁姿を見せてくれて」

    若「いや、わしは段取りなどしてはおらぬ」

    美「ううん。ウェディングドレスはね、着るだけじゃダメなの。隣に最愛の旦那様が居て、幸せな笑顔があって完成なのよ」

    覚「なるほど。最高の笑顔は忠清くんのお陰だな」

    若「そうであるか」

    唯「たーくん最高!」

    尊「何か一人ノリが違うけど、今日は大目に見とく」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    指輪の謎、次回。

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    す、すみません…

    てんころりんさん、いつも感想をいただける事、大変感謝感激です。自分もそうだったように、潜在的な読者様は多数いらっしゃる筈…なんですが、これでいいのか?とふと立ち止まってしまいますので、反応があるだけでほっとします。

    スタートが12月8日な件ですが…もちろん、今日もそうですが、日付を合わせたかったのはその通りです。ただ、今日この後の投稿は12月9日分なので一致しますが、以後どんどんずれていきます…すみません。9日の話だけで、今日の分も含めまだ4つあるんです。ずれるのは、むべなるかな。皆さんのご期待にそえられないかもしれませんが、なんとか走り続けます。

    で、私の物語の組み立てがなぜこうなっているか、ここらで解説をさせていただきますね。公式掲示板で、こーかなあーかなと、皆さんが推測や解説なさっていたものの、セルフ版みたいな?SPの日付の個人的な見解も入ります。長文になりますが、よろしければ、お付き合いください。

    まず、SPで若君が唯を伴いたい宣言をした日がいつか。私の知る限り、はっきりした日付が掲示板等に出されてなかった気がするんですが…出ていたらすみません。

    尊の実験室で、どちらの世で生きるか選ばねばならぬ、となった後、空にかかる月を唯と若君が見上げますが、同じ日の夜と仮定すると、その月齢から11月27日火曜と考えます。

    若君がお墓を見に行った日が宣言日ですが、家に帰ると、美香子が白衣を脱いでいます。土曜の午後と考えるのが自然ですが、あれ唯の高校って土曜授業?尊も帰宅して風呂上がりっぽいし、期末テスト期間?と思いまして、速川クリニックの昼休憩時間、12時から14時、クリニックは水曜休みなので、最短で11月29日木曜と結論づけました。やたらと烏が鳴いてたのは気になったんですが。

    で、ここからは私の妄想物語に入りますが、12月1日に写真館に試着に行きます。11月29日午後にダッシュで予約を取り、9日に無事撮りに行けたと。
    no.358で「この前お父さんがテレビで大相撲の千秋楽観てたじゃないー」と唯が若君に言いますが、その日は12月1日、前週11月25日に大相撲11月場所の千秋楽があり、「髷結って黒の羽織袴だと、力士の優勝パレードしか浮かんでこない」とイメージが焼き付く感じとなります。

    no.346「若君が帰る日が決まったじゃない。逆算してて今日位どうかなって…」と芳江とエリを呼んで手巻き寿司パーティーでしたが、実際逆算すると、12月8日しかなくて。ご家庭があるであろうお二人に、19時にクリニック終わってからパーティーでは大変だろうと思い、午後休診の土曜にしました。

    ひとまずこんなところでしょうか。長い~、失礼しました。

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    読む立場で・・

    私が前回書き込みしてから9日経ちますが、その間に 夕月かかりてさんが6つ、ぷくぷくさんが3つ出ました。これ程のハイペースは常にではないかもしれませんね。
    妖怪千年おばばさんと3人、どんなペースで出されるか、読む方は分かりません。
    私なりの間隔を開けて書き込みしたいと思います。書かなくても読んでますので、よろしくお願いします。

    ★夕月かかりてさん~*
    物語の始まりが、2018年12月8日だった理由がやっと分かりました。
    2年前の9日と今日を合わせる計画だったんですね。
    てことは23日の出発まで同時進行で いくつかの話が進むんですね?
    ちゃんと日を合わせて出せることに、物凄く感心しとります。
    唯の春めいた色打掛姿と、パフスリーブにミニ丈の可憐なドレス姿?私も胸に刻みました。
    若君が尊くんの指南通り、素直に言うところが何気にかわいいです。

    ★ぷくぷくさん~*
    アシガール掲示板no.1410『2019年 速川家の元旦』は、唯と若君がビデオレター撮りする時と、正月にそれを見る家族3人の様子が同時進行する、粋な仕掛けでしたね。皆さん、アイデアが凄い❗
    唯のドレス姿にお父さん‥ ( 。゚Д゚。) うん泣くね。
    『宗熊の決意』熊君のロマンスは うまくまとまりそうな気配? そして賛同者を増やしてますね。?大きな事に取り掛かろうとしてますか?
    第一章は序章の様に感じました。
    3人の作品が交互に出るので、タイトルに章と番号あり、長くなる時は助かります。

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    二人の平成Days12~9日14時、本物だもの

    戦国武士、本場直送。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人だけの後、いよいよ家族五人で撮影。唯と若君は椅子に座る。

    カメラマン「はい、花婿様は脚を開いて座って軽く拳を握ってーって、おや、もう型が完璧。いいですよ~」

    尊 心の声(お兄様超カッコいい~、若君の本領発揮だよ)

    カ「はい、和装はここまでです。お疲れ様でしたー」

    店員「花婿様花嫁様は、お着替えをお願い致します」

    唯と若君が出て行こうとすると、カメラマンが声をかけた。

    カ「あの、もしかして、俳優さんとかされてますか?」

    唯「それがなにか?」

    カ「いや、着物の着こなしや佇まいが素晴らしくて。こう言っては何ですが、最近の花婿様は着物に負けてしまってる方が多いもんですから。いやーまるで、本物の武士が居るかのようでしたので」

    唯「はい、今度舞台がありまして」

    カ「あ、やはりそうなんですか!」

    唯「ただいま稽古中なんで、時々昔の言葉も出ちゃいますけど、ごめんあそばせ」

    カ「そうなんですか。あーそれで。よくわかりました。引き留めてすみません、どうぞお着替えを」

    待機中の三人。

    覚「さっきの唯、凄かったな」

    尊「あーやって戦国も切り抜けてきたんだよ。確かに上手いと思った」

    美香子「でまかせでもなんでも、あれで言葉遣いの辻褄も合って、結果守れたんだし」

    覚「全ては若君を守る、に通じるか。有言実行中だな」

    若君、着替えました。

    覚「お~、確かに王子様だね~母さんがキャーキャー言ってたのがわかるな」

    尊「思った以上に王子だ。僕、もう射抜かれてます。あ、この人も」

    美「ホント素敵…おとぎ話や少女漫画から抜け出たみたい」

    若「尊、昨日読んだシンデレラ、にこのようななりで王子という者がおったな」

    尊「そうですね。もうすぐ戌の正刻のシンデレラが来ますから。幸せな二人を見せてもらいますね」

    覚「階段で靴が脱げる所なんか、まんま唯だけどな」

    唯登場です。

    尊「なるほど」

    覚「ほー、いいねぇ」

    美「でしょ。このドレス着た時、忠清くんの表情が格段に良かったの」

    袖は大きく膨らませた半袖のパフスリーブ、唯の細い腕との対比が美しい。胸元はスクエアに開いており鎖骨の美しさが際立つ。デザインはシンプルだが、一輪一輪立体的に作られた花が、ドレス全体に付いている。スカート部分は前部分は膝上丈。唯の真っ直ぐで健康的な脚を引き立てている。後ろに向かって斜めに長く垂れ下がり、裾は引きずる長さ。裾までフリルと花がふんだんにあしらわれている。靴はハイヒール。ブーケはこんもりと丸く。髪は先ほどと同じくふわりと巻かれ軽やか。花冠に短めのベールが揺れる。

    尊「忠清兄さん、センスいいですね」

    若「扇子?」

    尊「うわっ、やっちゃった。なんでもないです」

    若「後ろのあしらいが」

    尊「はい」

    若「永禄の姫のようでの」

    尊「だから。よう似合うておる、って言われたって喜んでましたよ」

    若「そう申したのは二度目じゃ。一度目は…こちらに帰す時じゃったから、手放すのが辛かった」

    尊「あぁ。手紙を持たせた時ですね」

    若「あの時は、後にこのような幸せが待っているとは到底思えなんだが」

    尊「良かったですね、兄さん」

    若「かわいい、弟もおるし」

    尊「あ。嬉しいです」

    若「ところで尊」

    尊「はい?」

    若「今なら唯にどう申すと良いかの」

    尊「そうですね、〇〇〇〇ですね」

    唯「たーくん!あっ」

    駆け寄ろうとして、靴が脱げた。

    覚&美&尊「あー」

    若「唯」

    若君が素早く取りに行き、履かせる。

    唯「ありがとう、たーくん」

    その後、正面に立ち、微笑みながら唯の手を取った。

    若「綺麗だよ」

    唯「えっ!え~超嬉しい…」

    若「ではシンデレラ」

    唯「は、はい」

    若「参るぞ」

    唯「はいっ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    大事な話は、必ず相手の正面で。若君、紳士です。

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    私としたことが

    速川家なのに
    早川と書いて
    送信してしまいました(-_-;)
    見直しおこたった(-_-;)
    また、反省(^o^;)
    失礼しました(^_^;)

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    ひといき

    第一章完結
    来年あたり第二章が書けたらな(^_^)
    皆さんの物語ゆっくり読ませて頂きます(^_^)
    誰もが唯に花嫁衣裳を着せたくなりますよね(^^♪
    私もドレスを着せたことがあります(^_^)
    【2019年 早川家の元旦】(アシガール掲示板 1001-2000 12ページ  2020.1.8)の中で(^_^)
    これまでの皆さんの考えてきた物語等(私も)を映像化して見てみたい(^_^)
    週1日 40分番組として、放送は1年いや、2年いや、もっと長くなる(^_^)
    それは夢のまた夢の事ではあるし、なんか色々あるし、でも、あ~見てみたい(^^♪

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    =宗熊の決意 第一章=⑺

    熊:「相賀一成殿は己の欲の為、我が父を言葉巧みに引き込み羽木の領地に向かっております」
    男:「その様な・・・高山殿はどの様にお考えか?」
    熊:「私は戦の世に生まれし者にございますが、なれば穏やかに暮らしとう存じます。それは無理な事も承知しております。この世では戦をし、領地を治める事も大切な事でございますが今、相賀一成殿の己の私利私欲の為の戦は無用な戦にすぎません。我ら家臣もその手中に居ります、我が父も。ですから此度の戦だけは断じて止めなければならぬと存じます!」
    ナレ:宗熊の勢いに押されるように相賀成之は身体を逸らしながら頷いた。
    男:「お主のお心も分かりもうした」
    熊:「お身内と知ったからではございません、初めよりお頼みするつもりでおりましたゆえ」
    男:「はぁ・・・わたくしに兄を止めるようにと申したいのですな」
    熊:「その通りにございます」
    ナレ:成之は目を瞑り考えていた。二人共、駄目かなと思いながら黙って見ていた。
    男:「わたくしも戦わねばならぬことも承知しております。ですが、お覚悟をお持ちになりこうして訪ねられた事にはわたくしも力添えをと存じます」
    八:「えっ?」
    ナレ:声を出してしまい頭を下げた。
    男:「伴の者、詫びなくともよい。実を申しますとわたくしと兄は母が違います」
    ナレ:それを聞いて宗熊は名前も境遇も同じ事に驚いた。
    男:「如何した?」
    熊:「いえ」
    男:「わたくしは、自由奔放で口達者な兄を疎ましくも思っておりました。殿に気に入られている事も兄は分っており、此度の命も殿直々に兄にと。それでも、殿の為に務めておると思っていた兄が謀反を企てておるとは」
    熊:「信じがたい事とは存じますが」
    ナレ:堂々と言う宗熊。八次郎はそんな話ははなから無いからバレた時、相手はどう出るのかまた心配になった。すると成之が笑い出した。二人共どうしたのかと思っていると、
    男:「宗熊殿は芝居が達者なのですな」
    熊:「えっ?」
    男:「わたくしは、これまで兄を見て参りました。確かに口達者ではございますが、そこまでの事に頭が回るとは到底思えません」
    八:「えっ?」
    男:「ふふっ。兄は確かに大きい事を申します。ですが、申した事は形にもなりませぬ。申すのみ。今までもそうでした。ですから謀反を起こそうなどと、もし申しておったとしても、その事で動く事は出来ますまい。宗熊殿、真意を申してもらえませぬか?」
    熊:「成之殿。謀反は嘘にございます・・・申し訳ござらぬ!この通り!」
    ナレ:宗熊が手を付き謝ると、八次郎も同じ様に。
    男:「詫びる事はございません。わたくしは腹を立てておりせぬ」
    熊:「成之殿・・・実のところ、私は羽木忠清殿の身を羽木の皆様を案じております。お優しいお方ばかりでございます。ならば、共に力を出し合いこの戦乱の世を生き抜いて参りたいと存じます。甘い事をと思われておるでしょうが」
    男:「はい。ですがこの戦乱の世に、ひと時でも穏やかな時が有っても良いと存じます」
    熊:「成之殿」
    男:「なれば、この騒動は、わたくしが治めてみせましょう」
    熊:「忝い」
    ナレ:相賀成之は身支度をと。宗熊と八次郎を従え羽木に向かった。その頃、小平太がまぼ兵くんを天にかざし相賀の兵、高山の兵を食い止めていた。宗鶴と相賀もあの応援の映像を見て尻餅をついた。
    鶴:「なっ何じゃ、あれは!」
    ナレ:後ろで前に遭遇経験のある高山の兵が羽木の伏兵だと騒いでいた。
    相:「あの場に、このような兵が居ったとは考え難い・・・が、何故じゃ?」
    ナレ:攻めるに攻められない状況の中、兵の中に馬に乗った三人が現れた。
    鶴:「何じゃ!宗熊、今更何故来たのだ!」
    相:「成之!」
    ナレ:宗鶴は成之と聞き羽木の成之だと思ったが何故相賀一成が名を呼んだのか分からず相賀一成の顔を見た。
    相:「わしの弟じゃ」
    ナレ:人違いだと分かった。
    鶴:「相賀殿、何故お主の弟が?」
    相:「それを申すなら、何故、宗熊殿も居るのじゃ?」
    男:「兄上、戻りましょう」
    相:「何を申す!」
    熊:「もうお止め下さい」
    鶴:「何を申す!」
    男:「戻られないのであれば、殿に、兄上が謀反を企てておると進言いたしますが」
    相:「む・・・謀反・・・謀反とな。いや、何を申す!わしは殿の為を思っての事、偽りを申すでない!」
    男:「さようですか。お戻りいただけないのであれば、その様に殿に報告致します」
    相:「成之、何故じゃ!」
    男:「わたくしは、戦は免れられない事と存じます。が、この戦は無用の長物にすぎませぬ」
    相:「無用」
    男:「さようです。戻りましょう・・・戻ります!」
    ナレ:強く言われた相賀一成はその場に座り込んでしまった。
    鶴:「相賀殿、如何された。弟の言う事など聞かぬとも良いではないか!攻めますぞ!」
    ナレ:相賀の腕を取り立ち上らせたが、相賀は一気に冷めてしまった。
    相:「宗鶴殿・・・何れは攻めるが、何やら疲れた」
    鶴:「はぁ!疲れた!何を今更申すのだ!わしに力を貸してくれと泣きついてきたではないか!」
    相:「泣きついてはおらぬ!偽りを申すな!」
    ナレ:二人はお互いの胸座を掴んだ。成之と宗熊は呆れた。そしてお互いを羽交い絞めにして引き離した。宗熊は自分より背の高い八次郎に頼んだ。
    熊:「家臣の前で、その様な真似はなさいますな父上!」
    鶴:「放せ!誰じゃこいつは!」
    熊:「その様な事はどうでも良いではございませぬか。戻りましょう」
    鶴:「あ゛・・・そうじゃ、相賀殿!話が違うではないか!」
    相:「何れと申しておるではないか!・・・放せ、成之!」
    男:「兄上!」
    鶴:「はっ!このような弱い男だとは思わなんだ!」
    相:「弱いなどと、その様な事はない!」
    鶴:「お主と話しておってもらちが明かぬ・・・宗熊!」
    熊:「はい」
    鶴:「一先ず退散じゃ!」
    熊:「はい!」
    ナレ:満面の笑顔で返事をして成之の顔を見て頭を下げた。
    男:「では、兄上戻りますぞ。此度の事は殿には申さずにおきますゆえ。では、宗熊殿、八次郎殿。戦乱の世でなければ、友になれたやも知れませぬな」
    熊:「成之殿、我らは友にございます。私はその様に思うております」
    男:「さようか。では、何れ両者戦う事になるやも知れませぬが」
    熊:「みなまで申さなくとも承知しております。この世の習いににございますゆえ。この場だけの事だと。誠に世話になりもうした」
    男:「いえ。では、我らは」
    ナレ:相賀と家臣は織田の陣に戻って行った。宗熊は高山方には先に戻っている様にと言い、八次郎とその場に残った。そして羽木の領内に行き、まぼ兵くんを操作する小平太に声を掛けた。小平太は戦場に出た事はあっても宗熊と対峙する事は無かったので、知った顔の八次郎に紹介され慌てて唯達を呼びに行った。

    =宗熊の決意 第一章=  完

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    二人の平成Days11~9日日曜12時、親しみを込めて

    途中から見たら、誰を指してるかわからない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    覚の運転で、写真館に移動中。

    尊「今言うのもなんだけどさぁ」

    美香子「何?」

    尊「今日一日だけ若君の事、名前で呼んだ方が良くないかなって」

    唯「名前?」

    尊「僕たちは当たり前に若君って呼んでるけど、速川家に婿に入ったって体になってるんでしょ。その人を若君、だと変に見られないかな。今日は知らない人にたくさん会うし、どう?」

    美「そうねー。試着に行った時、時々店員さんが妙な顔してたわ」

    覚「忠清くん、か。新鮮だな」

    尊「僕は忠清兄さん、だけど。若君、いいですか?」

    若君「苦しゅうない」

    尊「良かった。で、あの、同じ理由なんですけど、ウチの父や母を今日だけお父さんお母さんと呼ぶ、なんて無茶…かな」

    若「心得た。尊や唯が日頃呼んでおるように、いたせば良いのじゃな」

    尊「えっ、いいんですか?」

    美「わ…じゃない忠清くんにお母さんって呼ばれるなんて、感激だわ」

    覚「僕も。嬉しいなあ」

    唯「よーし、私も呼び方決定!」

    尊「うるっさいなぁもう、何だよ」

    唯「私は、たーくんって呼ぶ!」

    覚&美&尊「はあ?!」

    唯「え?良くなーい?」

    尊「ちょっとー、忠清兄さん超引いてるよ」

    若「な、なにゆえそのような」

    唯「え?忠清のた、だよ」

    尊「忠清兄さん、姉がおかしな事言ってますが、親しみを込めた別の名前って事で、今日だけは許してやってください」

    若「そうか。昨日申しておった、平成ライフ、じゃな」

    唯「さっすが、たーくん!」

    尊「浮かれてる。戦国でそう呼ばないのを祈る」

    若「そういえば以前小平太にの、唯との婚儀が済めば小平太殿も兄上じゃの、兄上。と呼んでみた」

    唯「わー、それでそれで?」

    若「顔色が変わり、滅相もないお止めください御容赦を、と面を伏せたままでの」

    尊「そりゃそうだよね」

    若「愉快じゃった」

    尊「えっ意外、からかったりするんだ」

    唯「あはは~、小平太超真面目だからダメだよぉたーくん」

    美「忠清くんの意外な一面ね」

    尊「おっ、みんな慣れてきた。付け焼き刃だからどうかと思ったけど」

    若「わしも励むゆえ、懸念には及ばぬであろう」

    尊「あ、そっか。この慣用句は忠清兄さんに通じるんだ」

    到着。尊以外は早速着替えに行った。

    覚「おーお待たせ。母さんはさすがにまだだな」

    尊「お父さん、モーニング超似合うね」

    覚「そうか~。なんか身が引き締まるよ。尊も、スーツ新調して良かったな。カッコいいぞ」

    尊「兄さんのおかげだね。あっ」

    覚「おーっ」

    見慣れた髷姿に、淡いグレーの着物と羽織、縞柄の袴の若君登場。

    若「お父さん、尊」

    覚「はぁ~。ため息が出るねぇ」

    尊「凛々しさがハンパない。着替え、早かったですね」

    若「お付きの者が居たが、わし一人で着られるゆえ。お父さんも見違えたのう、洒落ておる」

    覚「へへ。ありがとね。着付け担当者は面食らっただろうな」

    美「まぁー!素敵~!」

    尊「あ、来た」

    黒留袖姿の美香子。

    美「はぁ~ほれぼれするわね」

    若「お母さん」

    美「はい?」

    若「麗しい」

    美「やーん!聞いた聞いた?せっかくだからって頑張って着て良かったわ~」

    尊「はいはい」

    店員「速川様、もうすぐ花嫁様の支度ができますので、撮影室にご移動をお願いいたします」

    撮影室内。

    店「花嫁様、入られます」

    その声は、若君に小垣城での婚儀を思い出させた。

    若君 心の声(あの時は…唯をなんとしてもここへ帰そうと気もそぞろであった。喜ぶ顔をあまり見てやれなんだ)

    美「唯、綺麗~」

    覚「おほー」

    尊「馬子にも、いや何でもないです」

    唯が入ってくる。色打掛は、早春の日差しを思わせる地色に浮かぶ、競うように咲き誇る満開の桜。散った花びらが光に煌めいて淡く輝き、裾まで流れるように続く。髪は、空気をはらませふわりと毛先が躍るように巻かれていて、この辺りは現代的。つまみ細工の髪飾り、先が動きに合わせてゆらゆらと。化粧も淡い色調だが内から輝くようで、長い睫毛が印象的だ。

    尊「お姉ちゃん、案外美女?」

    美「私の娘だもの」

    若「姫、此処へ」

    若君が進み出て、手を取り導いた。裾を整えていた店員が驚いている。

    唯「ありがとう、たーくん。羽織姿ってやっぱり新鮮。殿や兄上は着てたけど、たーくんが一番素敵!」

    若「唯。実に麗しい。生き抜く事が出来て良かったと、心より思う」

    唯「なーんか、まさか~って顔してるよ」

    若「そうか?」

    唯「小垣の時もびっくり顔だったよ。今の方がちゃんと見てくれてて嬉しそうだけど」

    若「見抜かれておったか、済まぬ」

    唯「いいよ、後になってよくわかったし」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    撮影スタート。

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    二人の平成Days10~1日17時、降臨!

    振りかえりもラストです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯も落ち着いたので、いよいよ若君の白装束、洋装選びスタート。

    美香子「どれも素敵ね~。これはオスカルっぽいわ~。あらこんなのもあるの、こっちは~そうねぇ、少尉?かな~」

    唯「例えがわかんないよ」

    美「いいの、わかる人にはわかるから」

    唯「迷っちゃう。若君はどんなのがいい?」

    若君「任せるゆえ、好きに選ぶが良い」

    唯「そうなるよねー」

    美「あんまりあれもこれもって、着替えさせると可哀想よ」

    唯「確かに」

    美「唯が手伝ってあげるならまだいいけど」

    唯「いやぁそれはまだ…恥ずかしいから」

    美「何を乙女な事言ってるんだか」

    若君は、母娘とはこのような、と微笑ましく見守っている。

    唯「ジャケットの長さもいろいろなんだー」

    美「そうね。若君は背丈があるから、長めはよく似合うと思うわ」

    唯「わー、イメージ湧いてきた。これいいかも」

    美「ふんふん、タキシードじゃなくてフロックコートね。ベストにシャツはウィングカラー、でアスコットタイ。似合いそう」

    唯「とにかく一度着てもらお。若君、下だけ着替えて。上はシャツだけはおって。ボタンはとめてあげる。ネクタイはお母さんがしめる」

    美「えぇ?何でやってあげないの、新婚夫婦の醍醐味でしょ」

    唯「うまく結べる自信がないから、涙をのんで譲る」

    美「何それ。まぁちょっと嬉しいけど」

    若君の着替えが着々と進む。

    唯「やーん、手元が狂う。眩しすぎて」

    若「ん?」

    と、天井を見る若君。

    唯「あっ違うよ。んー若君は、自分の魅力に全然気づいてないからさ」

    若「魅力とな」

    唯「詳しい意味は尊に聞いて」

    美「また丸投げしてる」

    唯「はい、お母さんお願い。す、すでにまともに見られないっ」

    アスコットタイで終了。

    美「はい、完成」

    ポン、と胸元を軽くタッチ。

    唯「それってさあ、なんでお母さんはみんなやるんだろうね、おふくろさまもやってた」

    美「はいおしまい、行ってらっしゃいって儀式みたいなものかしら。ついやっちゃった」

    若「母上、礼を申す」

    美「どういたしまして」

    唯「それより、ちょっと…はぁ~超、超、超カッコいい~!!」

    美「確かに…まるで」

    唯&美「王子様!」

    若「おうじ?」

    唯「ここではない国での、若君みたいな感じ?えっと、殿が王様で、その息子が王子」

    若「あいわかった」

    唯「え、マジで?」

    若「出立前に、わしの姿に二人がそう騒ぐであろう、と尊が申しておった」

    唯「あいつどっかで見てない?」

    美「見透かされてるわね」

    唯「まっ、仰せのとおりです~だし。これで決まりで」

    美「もういいの?一着しか着てないのに」

    唯「どれ着ても超カッコいいのは間違いないし、慣れない事はあんまりさせたくないし」

    若「良いのか?」

    唯「いいよ。服、苦しくない?」

    若「苦しゅうない」

    唯「ん?ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、いよいよ家族総出で撮影。

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    二人の平成Days9~1日16時、誓います

    唯の表情は七変化。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    洋装の衣装部屋に移動。

    唯「うわー思ったよりいっぱいある!どうしよう~」

    美香子「居た居た。これはまるでドレスの海ね。色は白でいいの?」

    唯「うん。でも綺麗めよりは可愛めかなー。あれ、若君どこ?」

    若君は、壁に貼ってある、モデルの着用例写真を見ていた。

    唯「あ~モデルに見とれてるのかなぁ?いいのありました?」

    若君「此れが、趣が違うておるが」

    ミニ丈のドレスだ。

    美「あら。若い子はこういうのもいいわね」

    唯「着やすそう。ロングドレスは何かしっくりこないしー。よし、若君もご執心だしミニで探そっと。こっちこっち」

    ミニドレスのコーナーから数着試着し、一番若君の反応が良かったドレスに決定。

    唯「若君の、よう似合うておる、いただきました~。さていよいよ」

    若「?」

    唯「若君のタキシード!はぁ~想像するだけでお腹いっぱい」

    若「なにやら、今までで一番浮かれておるようじゃの」

    唯「はいっ!」

    若「良い返事じゃ」

    タキシードコーナー。

    美「今ってカラフルなのねぇ。あら」

    唯「何?」

    美「白もいいわねぇ」

    唯「へ~真っ白だ。戦国なら白装束、的な?んー白装束?どこかで…」

    唯は、あのお気に入りの場所での、じいが脳裏に浮かんだ。

    唯 心の声(あの夜偶然出会ってなかったら、じいはあのまま切腹してたんだよね。会えたから良かったけど、もし…!なんか今頃怖くなってきた…切腹、あ…)

    次に思い出したのは、小垣城の別れの夜。

    唯 心(あの時も、ケンカしながらなんとか約束させてやめてもらったけど…お墓の日付に気付くまでは毎日辛かったし、会えると信じてたけど気が気じゃなかった。もうあんな思いは絶対に嫌ー!)

    美「唯、えっ何!」

    若「唯?」

    唯は、衣装を見つめたまま涙を流していた。すぐに若君が駆け寄り、前で膝をついて見上げる。

    若「もしや嬉しいのかと思うたが、悲しそうであるな。いかがした」

    唯「ごめんなさいごめんなさい」

    若「訳があるのであろう?」

    唯「あのあのっ、白い服で白装束を思い出して、それで、切腹するって言った小垣城を思い出して」

    しゃくりあげながら何とか話すが、涙は溢れる一方だ。

    若「白装束?よう知っておるな。誰ぞが切腹するのを見たのであるか?」

    唯「あっいえ」

    唯 心(じいが、なんてきっと悲しむから言えないよ)

    若「じいか?」

    唯「えっ」

    若「存じておる。笑いながらであったが、申しておった。唯に止められた事も」

    唯「そうだったんだ」

    若「よう命を救うてくれた」

    唯「いえ」

    若「小垣はわしも辛かった」

    唯「はい。わかってます」

    涙が止まり落ち着いてきた。

    若「されど再び会う事ができた」

    唯「うん、すっごく嬉しかった」

    若「わしはこうして生きて、ここにおる。悲しまずとも良い。もう泣くな」

    唯「はい」

    若君が微笑みながら唯の頬を拭う。見ていた美香子の方が泣きそうだ。

    若「白装束は怖いか?」

    唯「死ぬための服じゃなきゃ、怖くない」

    若「そうか。もう泣かぬなら、あえてこの、先の世の白装束を身に着けたい」

    唯「わかった、もう泣かない。でもなぜ?」

    若「誓いを立てるためじゃ。共に生き抜いて、唯を守り通すと誓おう。これは幸せな者が着るのであろう?白装束は死ぬ為ではなかった、共に幸せになる為じゃったのだと、先の世に伝えてみせる」

    唯「若君…」

    若「母上」

    美「…えっ?あっ、はい」

    若「母上にも誓う」

    美「若君…ありがとうございます。ちゃんと見届けますね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯のドレス姿は当日をお楽しみに。

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    =宗熊の決意 第一章=⑹

    鶴:「宗熊はどうしたのじゃ!」
    ナレ:来るなと言っておきながら宗熊を探した。
    鶴:「諸橋、宗熊は何処ぞに参った!」
    諸:「私にも分かりませぬ」
    鶴:「あ゛!‥‥‥もう良い!お前は共に参れ!」
    諸:「私は、此処でお守りいたしますゆえ」
    鶴:「はぁ!‥‥‥どいつもこいつも勝手な事ばかり!もう良い!相賀殿参りますぞ!」
    ナレ:諸橋は宗熊と宗鶴の無事を祈った。急ぎ織田の陣へ向かった宗熊たちは途中の川の畔で休憩し、馬は川の水を飲んでいた。
    熊:「八次郎には申し訳ない事をしたと思うておる」
    八:「宗熊様」
    熊:「わしは、忠清殿や成之殿、唯殿らとこうして遠駆けをしたいと思うておる。出来ぬことも分かっておるが、このままではならぬのだと思うてな。危のうと思うたらそなたは逃げよ。良いな」
    八:「いいえ、わたくしは城に戻るまで宗熊様のお側に居ります。羽木のお殿様と同じ様に宗熊様はわたくしにとりまして大切なお方にございます」
    熊:「八次郎」
    八:「ですが、わたくしは羽木の者にございます。ふふっ」
    熊:「そうじゃの‥‥‥務めが終わる折には酒を酌み交わそうぞ」
    八:「その様に」
    熊:「では参ろうぞ」
    ナレ:織田の陣に向かった。先程より気を引き締めて。その頃、宗鶴と相賀と羽木領へ向かうため支度をしていた相賀の手の者は数人あの不思議な状況に恐れをなし腰を上げずにいた。
    鶴:「何じゃ!・・・相賀殿この者等は!このような事では足手まといじゃ!わしの兵だけでも大事無い」
    ナレ:相賀の家臣でイヤイヤ参加する者と高山の家臣、足軽を引き連れて出立した。列の後ろの方でイヤイヤ参加した相賀の足軽と高山の足軽が話していた。
    A:「お主等、何だか気が乗らんように見えるがどうしたのだ?」
    B:[相賀様に従うしかないからついて行くが、わしは、あれを見てしまったから、祟りがあるようで気が乗らないんだよ」
    A:「なんだ?」
    B:「羽木の者がわしらの目の前で消えたんだ、それも一度ではない‥‥‥此度また目の前に現れての」
    A:「何じゃそれは?」
    B:「訳が分からねぇ・・・何も無けりゃいいんだけどな」
    A:「そうだなぁ」
    ナレ:それを聞いていた周りの足軽は何も無い事を祈った。織田の陣に到着した宗熊と八次郎は番をする男に声を掛けた。
    熊:「高山宗熊と申す。織田信長公にお目通り願いたい。お取り次ぎを」
    ナレ:その男は急いで中へ行き、宗熊が訪ねてきた事を伝えた。すると一人の男が表に出て来た。
    男:「何用にござるか?」
    熊:「お伝えしたき儀がございます」
    男:「伝える?」
    熊:「此処では・・・ならばお通し願いませぬか?」
    男:「だが、殿は居らぬ」
    熊:「戻られますか?」
    男:「早々にお戻りにはならぬが」
    ナレ:宗熊は勢いで来た感もあるので、不在に肩を落とした。
    男:「して、どのような?」
    ナレ:目の前の男は話を聞いてくれそうな気がして、
    熊:「織田信長公家臣の相賀一成殿の事にございます」
    男:「えっ?・・・相賀一成?」
    ナレ:二人は男の驚きに驚いた。
    熊:「はい。その者の事で信長公にお話がございました」
    男:「では、わたくしが聞きましょう。さぁ、奥へ」
    ナレ:その男が案内した。宗熊と八次郎は警戒しながら共に奥へ。座敷に通され、目に前に案内した男が座り名乗った。
    男:「失礼いたしました。わたくしは、相賀成之にございます」
    熊:「成之!・・・あっ、すまぬ」
    ナレ:宗熊は〔相賀〕の前に〔成之〕に驚いた。
    男:「如何いたした?」
    熊:「ご無礼仕った。知った者と同じ名であったのです。では成之殿は弟君であろうか?」
    ナレ:見るからに若いが息子ではないだろうから弟だと思った。
    男:「はい。一成は兄にございます」
    熊:「そうであったか」
    男:「兄がどうされた?」
    熊:「近頃の一成殿はどうされておるのかご存知か?」
    男:「何時ぞや、殿の命でそなたの御父上の高山宗鶴様に会おう事により出掛け、先達て戻って参りましたが程なくまた。戻っておりませんが」
    熊:「さようですか」
    ナレ:隣に従えている八次郎は宗熊が何をしようとしているのか分からないが、もし目の前の相賀成之が宗熊に手を出そうものなら自分の身を楯にして助けるつもりで緊張を持ち身構えていた。それが分かった成之は、
    男:「伴の者、その様に身構えなくとも良い。わたくしは手出しなど致しませぬ」
    八:「も・・・申し訳ございませぬ」
    男:「なぁに。して、兄の事にございますが」
    熊:「命で我ら高山に手を貸すおつもりで参った事は分ります。が、しかし、今はどうでありましょうか?」
    男:「ん?どの様な」
    熊:「相賀殿の娘御」
    男:「志津?」
    熊:「はい。先達て、羽木忠清殿と無理矢理、志津殿と祝言を画策なさり、ですが、忠清殿はその場から逃れ婚儀にはなりませんでした」
    男:「はぁ、わたくしは存じませんでした」
    熊:「そうでありましょう。相賀一成殿は高山にも羽木にも肩入れしては己の力にし、恐ろしい事を画策しておるのです」
    男:「画策とは?」
    熊:「何れは松丸の領地も支配し、その勢いで織田信長公に謀反を企てるおつもりなのです」
    男:「え!謀反・・・その様な大それたことを兄が」
    熊:「さようにございます」
    ナレ:隣で聞いていた八次郎はあまりの恐ろしさに身震いした。まさか、そんな事を考えていたなんてと。この時は宗鶴よりも恐ろしい人なのではないかと思ってしまった。

    つづく

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    原作ファンの皆様へ

    こんにちは。
    先日、投稿しました、“満月はイブの前“についての、ご連絡です。
    これは、ドラマ版として書きました。
    唯ちゃんが、たぶん学校帰りかと思われるシチュエーションで、黒羽城城址で、若君と出会うシーン、これが、その後の、速川家での、両親や尊への、唯との結婚の申し出と言うか、戦国へ唯を伴うと言う申し出になるわけですが、この場面を見る限り、若君は、唯と一緒には、自分の墓に行っていないと理解せざるを得ませんでした。
    でも、原作では、唯と供に墓に行き、しかも、それは、若君が亡くなったとさる日付けの後、知念和尚が記念碑的に建てた墓となっている様です。
    原作ファンの方々には、御満足頂けなかったと思いますが、SP放送の12月前に投稿したいと言う気持ちがありましたので、お許し頂きたく、よろしくお願いい申し上げます。m(__)m

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    =宗熊の決意 第一章=⑸


    ナレ:諸橋は二人の様子に驚いた。
    熊:「如何した?」
    諸:「あっ、えっ、あのぉ、殿がお探しにございます」
    熊:「父上が」
    ナレ:宗熊も諸橋も手紙の事がバレたのではないかと考えていた。
    諸:「私も共に」
    熊:「いや、大事無い。では、ゆめ殿」
    ナレ:宗熊は諸橋に事情を話す事なく部屋を出た。
    諸:「ゆめ?」
    ゆ:「父上様、わたくし、今一度、幸せになっても宜しいでしょうか?」
    ナレ:それだけで諸橋は事態が飲み込めた。
    諸:「そうか、そうか」
    ナレ:そう言ったが、今後の事も不安だった。宗熊は宗鶴の元に向かった。
    熊:「父上、何用にございますか?」
    鶴:「何用じゃと。お前が松丸へ宛てた文の返事はまだ来ぬのか」
    ナレ:宗熊は仔細を正直に話し宗鶴の出方を見定めようとした。
    熊:「文の返事ならば既に届いております」
    鶴:「ならば見せい。これへ持って参れ」
    熊:「文には松丸阿湖殿は嫁いでおると」
    鶴:「ん?誰ぞの?」
    熊:「羽木・・・羽木成之殿の妻となりもぉした」
    鶴:「あ゛っ!」
    熊:「羽木忠高殿の文で知りました」
    鶴:「はぁ?何を申しておるのだ、皆目分からぬ」
    ナレ:宗熊は忠高宛に文を出し状況を知ったと話した。宗鶴の顔がみるみる赤くなり閻魔の様な形相、宗熊は手打ちに遭うとまで覚悟を決めた。するとそこへ諸橋が駆け込んできた。
    諸:「殿!・・・と・・・の?」
    ナレ:すごい形相に驚き、宗熊の顔を見て頷いた。全て話したのですねと言うように。宗熊は頷いた。
    鶴:「何じゃ!」
    諸:「相賀一成様が」
    鶴:「相賀だとぉ!宗熊!」
    熊:「はい!」
    鶴:「話は後じゃ!逃げるでないぞ!」
    ナレ:相賀が宗熊よりも忠清を娘婿に選んだことが許せなかった。恨むその相手が何用だとドスンドスンと足音を立て相賀の元へ。
    鶴:「今更何用じゃ!」
    ナレ:襖を勢い良く開け怒鳴る様に言ったが、そこには一回り小さく見える相賀の姿が。
    鶴:「如何した?」
    ナレ:相賀の事が気になって宗熊も後からついて行き、その姿を見て驚いた。嫌味たっぷりにものを言う感じが見受けられないくらいシュンとなっていた。
    相:「私に力をお貸しくだされ」
    ナレ:その言い方も弱弱しい。さっきまで怒っていた宗鶴が宗熊に普通に聞いた。
    鶴:「何じゃ?」
    ナレ:そう言われたが宗熊にも分らなかった。本当は文句の一つも言ってやろうと思っていたがそうもいかない様子に、
    鶴:「相賀殿、どうされた?」
    ナレ:相賀の前に座り、顔を覗き込んだ。
    相:「羽木忠清とあの五月蝿いおなごが消えた。また消えた。時を置かずして戻って参った。高らかに笑いおって」
    ナレ:二人には何のことやら、何を言いたいのか分からない。宗熊は一度目に消えたと話した事は分るがその後の事は分らなかった。それから高らかに笑っていたのは忠清でなく信茂なのだが。
    鶴:「順序だてて申して下されなければ何も申す事は出来ませぬぞ」
    相:「順序だててと申されても。消えて、また消えて戻ったとしか」
    鶴:「堂々巡りの様じゃ。して、わしに力をとな?」
    相:「わしは羽木の者等を今度こそ撃ちのめしたいのじゃ。娘婿はどうでもよい。頼む、わしに力を貸してくれ。頼む!」
    ナレ:相賀は頭を下げ畳に額を擦る如くに。初めに訪ねてきた時の堂々とした姿はみじんも感じられなかった。宗鶴は羽木を撃つことが己の気が晴れると何年も思ってきた事。今、目の前の相賀も同じ望み。
    鶴:「分かりもうした。力を貸しましょう」
    熊:「父上!」
    鶴:「あ゛!」
    熊:「お止め下さい。もう良いではございませぬか」
    鶴:「良いとは何じゃ!それでも高山・・・高山宗鶴の跡目を継ぐ者なのか!・・・何を甘い事を申しておる!お前は来なくても良い!諸橋!支度をせい!」
    ナレ:宗鶴は相賀と共に羽木攻めに。宗熊は止めても無駄だと判断し、次の一手を考えた。そして大それた案が浮かんだ。戦支度を家臣に伝えに行く諸橋の側に行き、
    熊:「わしは行かぬ」
    諸:「はい・・・若君、何をお考えか?」
    熊:「わしはこれより、織田の陣に参る」
    諸:「えっ!織田信長公の・・・で、ありましょうか?」
    熊:「そうじゃ」
    諸:「殿に知れたならば、まこと、ただでは済まされますまい」
    熊:「分かっておる。此度こそ、追放・・・いや」
    ナレ:その先は言葉にしなかった。諸橋は何が言いたかったのか分かり身震いした。
    諸:「若君、まこと、それで良いのですか?」
    熊:「決めたのじゃ」
    諸:「では、私がお供いたします。お一人で参られるおつもりなのでしょうから」
    熊:「八次郎と参ろうかと」
    諸:「やじろうとな?」
    熊:「諸橋の次に信用のおける者じゃ・・・羽木方の間者」
    諸:「えっ!いやぁ、それは・・・やはり私が」
    熊:「いや。だが一つ頼みがある」
    諸:「はい?」
    熊:「諸橋は此処に残り、城を守って欲しい」
    諸:「ですが殿の」
    熊:「父上に手を貸さぬよう頼みたいのじゃ」
    諸:「ふ~・・・分かりました。殿から申された折は留まる事を申します」
    熊:「すまぬ」
    諸:「いいえ、娘婿となるお方の申す通りに致しますゆえ」
    熊:「諸橋・・・では、良いのか?」
    諸:「ゆめが承知した事に私は」
    熊:「忝い・・・だが、此度の事で、ゆめ殿を悲しませるやもしれんが」
    諸:「ゆめは、その旨も承知しております」
    熊:「そうか」
    ナレ:宗熊は八次郎の元に。
    八:「宗熊様、どうされましたか?」
    ナレ:八次郎を隅に呼び、
    熊:「急ぎ、織田の陣に向かうのだが、共に参ってくれまいか。わしの家臣として」
    八:「ですがわたくしは」
    熊:「高山の者となれとは言わぬ。この場だけで良いじゃ。頼む・・・だが」
    八:「承知しております。我が家は代々、間者としての役目についておりおます。覚悟は既に」
    ナレ:その言葉に宗熊は頭を下げた。
    八:「宗熊様のお考え通りに致します」
    ナレ:宗熊は支度をして、ゆめに会いに行き、
    熊:「私はこれより敵陣の真っただ中に参ります。命有らば、戻った折、ゆめ殿と祝言を」
    ゆ:「宗熊は、必ずやお戻りになられます‥‥‥では、わたくしは祝言の支度を」
    ナレ:ゆめは微笑んで見せた。やはり宗熊は思った〔美しい〕と。
    熊:「ゆめ殿」
    ゆ:「ご武運を」
    ナレ:ゆめは宗熊の両手を包み込むように握り、胸元で目を瞑った。
    熊:「ゆめ殿?」
    ゆ:「わたくしの念を宗熊様に。ですから、無事に戻られます」
    熊:「では、何も案ずることは無いのだな」
    ナレ:ゆめの優しさに感謝し、二人は馬で織田の陣へ向かった。

    つづく

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    二人の平成Days8~12月1日土曜15時、速川家の婿殿

    時間を戻して、写真館での大騒ぎの模様を。ちょうど今日と同じ日付になりました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    写真館に下見と試着をしに、美香子の運転で唯と若君移動中。

    美香子「もう車は大丈夫?若君」

    若君「まだ些か、腰が浮わつき所在ない」

    美「そうよね、中々慣れないわよね」

    唯「車はダメでも、疾風の運転は上手だから全然オッケー」

    美「お馬さんは運転とは言わないの」

    店に到着。受付席へ通され、唯と若君が並んで座り、美香子は少し離れた椅子に。

    店員「ではこちらに、お名前ご連絡先などお書きください」

    唯「…」

    席を立ち、美香子に駆け寄った。

    美「どしたの?」

    唯「どうしよう、若君の名前書かなきゃいけない」

    美「あらっそりゃそうよね、んー」

    唯「羽木九八郎忠清って書くの?」

    美「いや、それはダメ。この辺りでは学校で習う名前だもの、ふざけてるって思われる」

    唯「書かない訳にはいかない?」

    美「それはかえっておかしいから…あ、いい事思いついた!任せて」

    受付に美香子が座る。若君はきょとんとしている。

    美「ごめんなさいね、一人にしちゃって」

    若「何か困り事であるか?」

    美「大丈夫よ」

    と、書類をサラサラと書き上げた。

    美「籍はもう入ってまして、オホホ」

    店「ありがとうございました。ではこの後衣装室にご案内しますので、少々お待ちください」

    店員が書類を持って奥へ入っていった。

    唯「お母さん、今…速川忠清って書いた!」

    美「そうよ。若君、勝手な事してごめんなさい。羽木と書くよりはと思って。許してね」

    若「母上、ご案じ召さるな」

    唯「怒ってないの?」

    若「速川の娘御との婚礼なれば、これで良い。速川家の家督を譲られたようじゃ」

    唯「認められた…感じ?」

    若「そうじゃな」

    美「良かった」

    間もなく、衣装室に案内された。

    店「こちらが和装の部屋です。隣が洋装です。決まりましたら、番号を受付までお願い致します。それではごゆっくりどうぞ」

    唯「衣装、衣装!」

    美「走らない!」

    唯「ここが羽織袴のコーナーだね。案外カラフル。でもやっぱり黒?」

    美「まあスタンダードではあるけど。髪はどうする予定?」

    唯「和装は当然、髷だよ。洋装は今のまま上半分だけ結んだハーフアップかな」

    美「あー。ダメダメ、変な脳内変換してる私」

    唯「はあ?」

    美「髷結って黒の羽織袴だと、力士の優勝パレードしか浮かんでこない」

    唯「お母さん!ちょっと~そんな事言うと私もそれしか浮かばないじゃない!」

    美「ごめんごめん。先週相撲観たばっかりだから」

    唯「全然似てない、かすってもないのに」

    若「力士?」

    唯「あっ聞こえちゃった?この前お父さんがテレビで大相撲の千秋楽観てたじゃないー、って違う違うこの話掘り下げない!相撲の話は置いといて。若君、先に私の選ぶね」

    若「置いておく?」

    結果、唯は桜が全体にあしらわれたパステル調の色打掛、若君は唯に合わせて淡いグレー、縞柄の袴と決まった。

    美「冬だけど春爛漫って感じで、華やかでいて爽やか、いいわね~。では次は洋装ね、あれもう居ない」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    かすってるよ、両方戦い続ける男だし。

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    二人の平成Days7~9日日曜6時、早起きは三文の徳

    唯、あまりの事に熱出すんじゃ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    日の出前なので、まだ辺りは暗い。

    唯「あ。夜?朝?えーまだ5時半かぁ」

    尊の読み通り、唯が早々と目を覚ました。

    唯「ダメだ、ワクワクが止まらなくてもう寝れない、起きるかーでもな~」

    ベッドの上でごそごそ動いていると、ドアの向こうに気配あり。

    若君「唯」

    唯「え?若君?なんで?」

    若「起きておるか」

    唯「やーん寝起きだし。いや、結婚したらそんな事言ってらんないよね」

    自分に言い聞かせながら、髪を慌てて撫でつけ、ドアを開けた。

    唯「おはよっ若君」

    若「おはよう、唯」

    一通りの現代風挨拶は、既に習得済。

    唯「どしたの?私に早く会いたかった?なーんて」

    若「そうじゃな」

    唯「やーん、マジで?」

    若「起きるのを待っていた」

    唯「へ?なんで?」

    若「なんでも」

    唯「用があるんじゃなくて?」

    若君は微笑むだけだ。

    唯「あ、じゃあ、せっかく早起きしたし日の出見に行きます?いつもの公園まで」

    若「あいわかった。支度して参る」

    若君は尊の部屋で寝起きしている。着替えていると、尊が物音に気付いた。

    尊「おはよう若君、早いですね、出かけるの?」

    若「おはよう、尊。公園まで唯と参る」

    尊「あ、そうなんだ。冷えるからマフラーと手袋使ってください」

    マフラーを首にかけ手袋を渡した。

    若「済まぬのう」

    尊「そういえば、例の…」

    若「ふふ」

    尊「えっ、それは…行ってらっしゃい。朝ごはんには戻ってくださいね」

    若「承知つかまつった、師匠殿」

    尊「えー」

    空が白々と変わりゆく中、二人は家を出ていった。

    尊「若君、策士だ」

    辺りがかなり明るくなってきた頃、公園に到着。

    唯「ふー、たまには早起きも悪くないかも」

    若「朝いつも最後に降りて参るからの」

    唯「だって眠いんだもーん、今日は大丈夫だけど」

    東の空が輝いてきた。

    唯「もうすぐ日の出だよ」

    すると若君、唯の後ろにまわり、ハグ。

    唯「きゃっ」

    ふんわりと抱き寄せる。

    唯「えー?若君…」

    太陽が登りつつあり、眩しい。若君は腕をゆるめて唯の前に立ち、少し屈んで顔の高さを合わせ、真正面から見つめる。

    若「唯」

    唯「はい…」

    若「あいしてる」

    唯「えっ」

    若「唯、愛してる。そなただけを」

    くらくらするのは太陽が眩しいのか若君が眩しいのか。

    唯「は、反則ですぅ」

    胸に飛び込んだ。倒れそうだ。

    唯「あの」

    若「なんじゃ?」

    唯「心の準備、できてます」

    若「そうか」

    若君のキスはいつも優しい。

    唯「もうダメ、力入んないよ」

    足元がふらつく。

    唯「若君ぃ、抱っこして」

    若「だっこ?」

    唯「下からこう」

    身振りで伝えると、あっという間に抱き上げられた。

    唯「うふふ、お姫様抱っこ~」

    若「そうじゃな」

    唯「ねぇねぇ、くるくるーってして」

    若「くるくる?」

    唯「回って」

    唯を抱っこしたまま、360度回転。

    唯「きゃー、あはは~」

    若「唯、かわいいよ」

    唯「えーっえーっ!若君どうしちゃったの?違う人が入ってる?」

    若「実は尊に教えを乞うた」

    唯「やっぱり。尊、でかした!」

    公園を散歩中の人が、素敵ね~ドラマみたいね~と遠巻きに見ていた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の現代語は、破壊力大。

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    初々しい二人

    妖怪千年おばばさん、拝読しました。尊は案外ドレス似合いそうですけどね。彼女を早速部屋に招くなんて、やるぅ。今後が楽しみです。

    家族写真の回も完成してたんですが、妖怪千年おばばさんの作品をリスペクトの上、書き足しました。バージンロードの事は忘れてたわ、お父さんがあんまり出てなかったわで、イカンイカン、家族は大切にしないと。投稿はもうちょっと先です。お待ちくださいませ。

    本日、久々にラブ多めです。

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    すす凄い!

    ちょっとサボっていたらw(゜o゜)w読むの大変!
    ☆梅パさん~*
    久しぶりのトヨちゃん源ちゃんが可愛くて…
    ありがとうございました。また是非!
    ☆ぷくぷくさん~*
    お待ちしてました。『宗熊の決意』なんですね。
    心して読みます。決意はもしや?
    また決意は一つの事だけではないかもですね。
    タイトルと、章と番号があると分かりやすいし、後から見つけやすいですね。
    ☆夕月かかりてさん~*
    SPの現代パートは空想の余地が一杯、先も楽しみです。
    『面白いの考察』は、面白い(笑)投稿で公式で大きな反響が・・やっぱり印象に残ったんですね。
    面=目の前の意味、白い=明るくはっきりしていること、だそうですね。
    若君は唯の言う事やる事が興味深く、明るい気持ちになり心引かれた‥?
    ☆妖怪千年おばばさん~*
    私は唯のウェディングドレス姿を考えた事がなかったので新鮮でした。
    確かに、速川の両親に見せてあげたかったです。
    そして尊くんに恋の予感が‥。

    創作倶楽部が元気なのは嬉しく(*゚∀゚人゚∀゚*)♪ありがとうございます。

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