• このトピックには1,203件の返信、16人の参加者があり、最後に夕月かかりて(愛知)により1日、 13時間前に更新されました。
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    二人の平成Days43~21日22時、あの日の空と

    だからデジカメ持ってました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    写真がスライドショーのように流れ始めた。

    若君「テーマパークじゃな」

    イルミネーションの前でピースする二人から。

    尊「これ、よくピースサインがわかりましたね」

    若「指を二本出せと言われた」

    尊「そうなんだ、お姉ちゃんらしいや」

    しばらくイルミネーションの写真が続いた後、画面が切り替わった。

    若「ん?これは…あの」

    まだ暗い海が映る。画面が少しずつ動いている。

    若「先程までとは撮り方が違うようであるが」

    尊「さすが。よくわかりましたね。タイムラプスって言うんですけど、写真を一定の間隔で撮り続けて、繋げて映像の様にする技法なんです」

    若「宿から見た、海では?」

    尊「当たりです。イルミネーションでこれをやろうかなと思って、デジカメを…スマホではない別のカメラを持参したんですけど」

    若「また海が見られるとは」

    尊「そうなんです。前の晩に、若君がすごく海を気に入ったのがわかったので、急遽予定を変更して、海を夜明け前から日の出まで撮り続けました」

    若「ずっと手で持ち、か?」

    尊「いえいえ、三脚持って行ってましたから。全然楽だったんでご心配なく」

    朝日が昇り、海の色が変わっていく。

    若「美しい…わしもちょうど見ておった頃じゃ」

    尊「はい。撮影止める時間に合わせて、僕もその時間お風呂入ってたんです」

    若「そうだったのか」

    尊「そしたら、隣から賑やかな声が聞こえてきて」

    若「あの時か…」

    尊「二人のために撮影してて、それで声が聞こえたんで、とても幸せな気分になりました」

    若「そうか…。その折の、唯との時間はよう覚えておる。観る度に思い出せて、幸せを貰えるんじゃな」

    尊「喜んでもらえて、嬉しいです。次に本物を見に来れるまでは…この映像で楽しんでください」

    若「くれぐれも、無理はせぬようにの」

    画面が変わり、写真館の様子がスタート。

    若「ん?何やら…」

    尊「気づきました?音量上げますね」

    写真のスライドショーと共に、話し声が聞こえる。

    若「父上と母上の声じゃ!」

    尊「そんなに驚いてくれて、頑張った甲斐がありますー」

    若「写真を見ながら、感想を述べられているようじゃが」

    尊「はい。オーディオコメンタリーって言います。両親に家族写真の完成版を観てもらいながら、別に音声を録りました」

    若「次から次へと、術が繰り出されるのう」

    尊「実は音声を録るのに、若君とお姉ちゃんに少し悪い事をして」

    若「そうなのか?身に覚えがないが」

    尊「実は録るのが一苦労で…実験室に両親と僕の三人が居られて、かつ若君達が絶対来ない時間じゃないとダメなんで、二階に早めに行ってもらおうと画策して」

    若「ハハッ。一度部屋に入ると、確かに9時まで離れぬ。見透かされておるのう」

    尊「ええ、すいません。だから一昨日に」

    若「あー、なるほど。あの日は、けしかけられるのうとは薄々思うておった」

    尊「騙すような事してごめんなさい。ちょっと時間がなくて、切羽詰まってたんで」

    若「謀られたとは思うておらぬから、気に病むでないぞ。かえって苦労かけたの」

    尊「そういえばその日は、ちょっといつもと感じが違いましたね」

    若「あの日は一日中、心が騒いでおった。別れが迫る中、感慨深かったのもある。だがその中でも、唯を赤く染めた姿はあまりにも可憐であったので」

    尊「ときめいたんですね」

    若「そう申すのか?色々な表し方があるんじゃのう。尊は誠、ポテンシャルが高い」

    尊「…一回しか聞いてませんよね?」

    若「漏れなく、聞いておるゆえ」

    尊「神業だよ。では続きは、明日という事で」

    若「世話をかけたのう。忝ない。唯の喜ぶ顔が楽しみじゃ」

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    盛り沢山じゃ。

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    今までの二人の平成Days、番号とあらすじ、25まで

    ご教授をお願いしてばかりではいけないと、シリーズの案内をどのように、と色々考えましたが、既に40を越える投稿をしておりますので、まずは初投稿作品のダイブ!2話と、1から25までを羅列しました。もしや、思ってたんと違ーう?
    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。

    ドラマ最終話ダイブ!の続き~唯篇~no.329&同じく~若君篇~no.329、永禄に居ますが平成Daysのプロローグ的な位置付けです

    二人の平成Days1no.330、12/8、毎日誰かの誕生日

    2no.333、12/8、尊と三人でスーパーに。じいをカートにどう乗せるか

    3no.338、12/8、芳江さんエリさんの分もケーキを買って帰宅

    4no.346、12/8、楽しい手巻き寿司パーティー

    5―1no.347、12/8、二手に分かれた一階の方。翌日家族写真を撮りに行く発表が

    5―2no.348、12/8、一方二階は母達が涙

    6no.353、12/8、面白いの意味の違いを学ぶ

    7no.357、12/9、朝の公園で愛の告白とお姫様だっこ

    8no.358、12/1、母と三人で写真館へ試着に。速川忠清です

    9no.362、12/1、白装束から小垣城の別れを思い出し涙

    10no.363、12/1、タキシード姿が王子様。ネクタイは結べない

    11no.364、12/9、撮影スタート。ここで呼び名がたーくんに

    12no.368、12/9、和装から洋装。俳優ですと上手くやり過ごす

    13no.371、12/9、撮影大詰めに指輪登場

    14no.375、12/9、若君の指輪に込めた思いが語られる

    15no.383、12/9、情緒不安定な唯。意を決し両親との約束を破る若君

    16no.385、12/9、優しく相手をする若君。ここで面会時間が9時に延長

    17no.388、12/12、スーパー銭湯へGO

    18no.392、12/12、岩盤浴を満喫。赤ちゃんも寄ってきた

    19no.394、12/12、若君叱られる。現代語を駆使

    20no.395、12/15、温泉旅行へGO。若君の海初体験

    21no.404、12/15、テーマパークへ。煌めきの世界に全員大はしゃぎ

    22no.412、12/15、宿で夕食。父が酒の力を借りる

    23no.422、12/15、ジェンガ登場。同じ部屋に二人きりで唯のビンタが炸裂

    24no.427、12/15、とうとう…

    番号未定no.433、2019/1/1、これは後で40に変わります。

    25no.437、12/16、翌朝露天風呂で戯れる

    説明し過ぎもなんですし、やっぱり難しいですね~。続きは50話くらいまででまた書きます。

    ぷくぷくさんへ

    悪丸はアークくんなんですね。
    私は、悪丸となったのはこれが語源かな?と思っていた別の名前がありました。ただ、裏付けもとってないし、この後今日の投稿しなきゃいけないだし(ノд<)。また機会がありましたらお話します。
    彼も、苦労続きの人生ですよね。どうしても脇役にはスポットライトがあたりませんが。

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    悪丸

    南蛮貿易、南蛮船相手に商いをしている友蔵がある村に居る男を訪ねた。声を掛けたが返事がない。裏に回り土を耕す男に声を掛けた。

    「お~い、六太」
    「あぁ」

    返事だけ。無口で気難しく愛想もないが人情は厚く働き者。

    「暫らく振りにお前さんの顔を見たいと思うての」
    「あぁ・・・ん?」
     
    友蔵の後ろに誰か居る。

    「何だ?」
    「まぁ、話は。水を一杯くれないか」
    「あぁ」

    友蔵の後ろから六太をチラチラ見ながら家の中へ。珍しいのかジロジロと家の中を見ていた。水を汲み友蔵と子供に渡した。子供はコクリと頭を下げただけ。

    「礼も言えんのか」
    「まぁまぁ。六太を男と見込んで頼みがあるのだ」
    「はぁ?」

    友蔵が買い付けをした帰り際に、友蔵に相談してきた。乗組員は働き手として子供を連れてきたが、日本に到着し程なくして病に倒れあっけなく。連絡先として記載されていた情報は嘘だった事が分かり、母国に連れて帰っても家族の所在は分らない。子供ながらに一生懸命に仕事をして、仲間の輪に入って楽しむような子ではないが、他の乗組員に可愛がられていた。どうしようかと思案している所、顔見知りの友蔵を見つけた乗組員が助けてくれないかと懇願してきた。友蔵は異国の言葉は少し理解できたが肝心の『預けたい』という言葉があやふやなまま『YES』と返事をしてしまった。相手はニコニコしていた。友蔵的には出港するまでの間だけ見ていてくれという解釈だった。船から少し離れた所で休憩していると汽笛が。振り向いた時には岸壁から離れていた。慌てて子供の手を引き、甲板に見える乗組員に大きく腕を振り『子を忘れてるぞ!』と大声で言ったが汽笛にかき消された。乗組員は見送ってくれているのだとニコニコしていた。船はどんどん遠ざかる。その時、友蔵はやっと分かった。一時だけ預かるのではなかった事を。家には五人の子供が居るし、商いをしているからと言ってもそれほど裕福ではない。どうしようかと思った時ある人物が浮かんだ。そして六太の元へ。

    「お前さんは独り身だが、信用のおける男だ。この子を育ててくれないか?」
    「勝手な話だな」
    「重々承知している。だが、連れて帰るわけにはいかぬのだ。わしを助けると思って。後生だ、頼む。この通り」

    友蔵はその場に手を付き懇願した。

    「私は子を育てた事も無いぞ。一人で食べて行くのが精一杯だ」
    「分かっている。少しばかりだが、銭を置いていく・・・頼む」

    もう一度頭を下げた。観念したように、

    「わかった。だが、働いてもらうぞ」
    「働き者だって言ってたから。異国の言葉は分らないが、共に暮らせば話せるようになるかと」
    「はぁ、勝手な事を」

    友蔵は小袋に銭を入れて六太に渡した。

    「この子の名は?」
    「あうくとか言っておった」
    「あうく?・・・異国の名は変わっておるのだな」

    本来は〔アーク〕なのだが友蔵には〔あうく〕と聞こえたのだった。友蔵はもう一度頭を下げ早々に出て行った。

    「勝手な・・・お前、あうく、歳は?」

    アークは聞かれても理解が出来ず、首を傾げた。

    「はぁ・・・水汲みを覚えてもらおうか」

    六太は器の水を差して、外を指さし、桶を持ち敷居をまたいだ。アークは一緒にという事だと理解し六太について行った。子供心に此処に居なければならないと思った。村の水場に行くと、遠巻きに村人が見ていた。不愛想の六太だが嫌われてはいない。見知らぬ子が居るので近づきはしない。

    「六太さん、厄介な事、頼まれたようだねぇ」

    村人が話していた。六太は水汲みの仕方をジェスチャーで教え、アークに水汲みをさせた。

    「お前の仕事だからな」

    アークは言葉は分らないが、自分に与えられた仕事であることは分ったので頷いた。暮らしていく中で、無口の六太に言葉の分からないアーク、会話は無いが心は通じていた。躾や少しづつ言葉を教えていた。六太は今は百姓をしているが元は武家の出。武士としての心は失っていないのでアークには武家言葉を教えた。数日経った頃、水汲みに行ったはずのアークが程なく戻って来た。畑に行こうとした六太が声を掛けたが振る向きもせず中へ入っていく。どうしたのかと戻ると奥で膝を抱えふさぎ込んでいる。

    「どうした?・・・もしや、誰ぞに何か言われたのか・・・お前は言葉が分からなくとも相手の申しておる事は分るであろうからの」

    アークは心配してくれている事は分るので頷いた。アーク自身も相手が何を言っているのか目線で分っていたので、腕を指さした。

    「そうか・・・」

    すると、六太は表に出て、

    「こ奴は、幼き頃より学問もせず、汗水流して日の当たるところで畑仕事をして居ったからの・・・働き者じゃ!」

    日頃から話しかけても二言三言答える六太が大声で言っている事にみんなは驚いた。

    「お前が泣く事ではない」
    「あく・・・あく・・・言われた」
    「あく‥・そうか‥・」

    六太は何かを考えていた。アークはその姿を不安そうに見ていた。もしかしてこの家から追い出されるのではないかと。

    「あくか・・・あくう、お前の名を変えよう・・・お前はこの先も強うならねばならぬ、だが、人様を傷つける強さではない・・・悪に打ち勝つ強い男に・・・悪丸・・・どうじゃ」
    「あくまるぅ?」
    「そうだ、お前は、この時から、あくうではなく悪丸じゃ」
    「あくまる?・・・あくまる」

    アークにはそれが自分の名前であることが分かった。六太の意図とする事は分らなかったが嬉しそうに頷いた。
    月日が経ち悪丸は身体も大きく成長していた。無口だが働き者だと言われていた。そしてある日、六太が病に倒れ、枕もとに悪丸を。

    「悪丸」
    「はい」
    「私はもう長くない」
    「ううん」
    「分かっておるのだ。だから、今の内にお前に言っておきたい事があるのだ」
    「うん」
    「お前は、足軽として戦に出る事になるであろう。だが、お前は天に守られておるのだから案ずるな。私はお前が信じる事の出来るお方が現れると信じておる。そのお方は必ずやお前を救って下さる。信じてくれるであろう」
    「わからない」

    六太は悪丸の頬を優しく撫で、

    「お前は、私の子じゃ・・・」

    そして数日経ち六太は悪丸、村人たちに見送られ旅立った。この先どうしようかと考えていると同じ村の画次郎に声を掛けられ、黒羽に行こうと誘われた。画次郎はどうにか出世したいと考えていた時に、天野信茂と千原元次の間で何かと小競り合いが有り、今度は駆け比べになるとの話が耳に入った。そこで悪丸を使い駆け比べに出て勝てば自分ものし上がれると考えた画次郎は足の速い男が居ると言いに行って、声が掛かった。そして、最初の対戦の時、

    「速く走れん」
    「知ってるさ。だから、相手を睨め。お前より背が低いだろうからの、上から怖い顔をすれば怯む」
    「だが」
    「良いから、俺の言う通りにすればいいんだ。他に策があるから安心しろ」

    画次郎に言われたように相手を睨んだ。画次郎の思惑通りに、怯んだ男は思うように走れず悪丸の勝利。信茂は懲りずまた挑み、悪丸は毎回同じ様にして勝っていた。画次郎もそろそろ上に上がれるかとほくそ笑んだが、その時、唯が現れ、画次郎の思惑は露と消えた。悪丸は、六太の言葉を思い出した『自分が信じられるお方が現れる』と。

    ***
    「ほら行くぞ」
    二人は会場を後にした。
    「これからどうするかのぉ」
    「・・・」
    「おい、悪丸どうした?」
    「なんでもない」
    「確か、あいつ、天野に雇われておったな、そいつに頼んで、天野に行くか」
    「・・・」
    「悪丸?」
    「わし行く」
    「一緒にか?」
    「違う」
    「違うって、じゃ何処へ?お前に宛など無いだろうぉ」
    「ある」
    「あるって?・・・お前はずっとわしと居ったではないか、わしが居ないと何も出来んぞ」
    「できる」
    「悪丸、どうしたんだ?」
    画次郎の問いかけも無視して走って行った。
    「何なんだ!・・・勝手にしろ!」

    唯が藁を担いで会場を後に。悪丸は距離を置いて跡をつけ歩いた。すると、唯が倒れたので、駆け寄り助けた。

    おしまい

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    返信
    てんころりんさん

    ありがとうございます(^_^)
    私も負ける程の想像力豊かな作家さん達(^_^)
    私が書く昔の隙間シリーズでは今ほど長くはなかったのですよねぇ(^_^;)
    妄想がどうにも止まらない~♪
    宗熊の決意 第二章も中盤・・・えっ!未だ中盤?(すみません(;_;))
    なのでまだ先になりそうです(^_^;)
    そんな時、また妄想物語が出来てしまいました(^^♪
    考える事を仕事に回せと自分でも思います(;_;)
    ずっとどうなのかなぁと思っていた悪丸の事です(^_^)
    原作では唯の1歳下とか(^_^)
    悪丸の言葉遣いが武士のようなのでその事も含め、妄想なのでいつもの如く矛盾たっぷりのお話です。最後の所から、アシガール掲示板の№994(2019.9.19)【駆け比べの後の悪丸と画次郎の会話】に続きます(^_^)
    では、失礼おばして(^_^)

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    返信
    二人の平成Days42~21日21時、お披露目です

    取説がないからね。
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    尊「できた」

    唯と若君が、リビングでいちゃついている。

    尊「今日は部屋に行かないんだ?」

    唯「うん。そういう時もあるさ~」

    尊「あっそう。若君、9時過ぎに実験室に来てもらえますか?」

    若君「わかった」

    尊 心の声(もう時間は貴重だから、あえて両親のそばに居るんだろうな)

    9時。実験室に二人。目の前に、画面がついている箱状の物体がある。

    尊「では、まずは渡す機械の説明をします」

    若「尊、わしは唯を差し置いて、聞いてしまって良いのか?」

    尊「いいですよ。若君に、先に伝えておきたい事もあったので」

    若「伝える?」

    尊「機械の説明の後に、言いますね」

    若「そうか。ではまずは、しかと覚えねば」

    尊「大丈夫です。これ、機械は割と単純なんで。まず、この中にこのような物が入っています」

    手にはブルーレイディスク。

    若「穴が開いておる。鍔のようじゃ」

    尊「つば?」

    若「刀の」

    尊「あぁ、なるほど。この中には録画録音されたデータが入っています。今回、このデータ編集に時間がかかったんです」

    若「済まなかった」

    尊「いえいえ。楽しかったんで。予定が色々変わって、それもまた良しで」

    若「そうか。無理せずであったなら良いが」

    尊「電源を入れると、映像が画面に流れ始めます。後は、送り、戻し、停止などは下のボタンで操作です。音量も」

    若「ほぅ」

    尊「で、電源なんですが、もう一つ付属品があって」

    何やら畳まれている。広げると骨のない傘のよう。

    尊「太陽電池です」

    若「日の光で電気を?なんと」

    尊「灯籠、お城にありますよね。これを広げて被せて、日中太陽に当ててください。そうすると、充電されて、夜二人きりの時には楽しめます」

    若「あっぱれじゃな。で、これで繋ぐのか?」

    コードが伸びている。

    尊「そうです。あと、音が周りに聞こえては困る時は、これを挿して」

    イヤホン。

    若「どう使うのじゃ?」

    尊「若君、ちょっと失礼しますね」

    若君の耳に挿した。もう片方を自分の耳に。

    尊「これで、外に音が漏れずに静かに楽しめますよ」

    若「尊、近いの」

    尊「はい、わざと短めにしました」

    若「キスしてしまいそうじゃ」

    若君が、顔を尊に近づけた。

    尊「えっ、ダメですよ、若君に迫られたら、僕でも本気になりそうです」

    若「そうか?ハハハ」

    尊「あはは~。できれば毎回使ってください。お姉ちゃん喜びますよ」

    若「このイヤホンとやらをか?」

    尊「はい」

    若「そうなのか?まだまだ唯は、わからぬ」

    尊「で、伝える話なんですけど」

    若「おぉ、何であろうか」

    尊「まず、今から若君には大まかに見せますが、お姉ちゃんには明日の夜、改めて若君と一緒に観てもらおうと思います」

    若「心得た」

    尊「夜って明日が最後じゃないですか。これは両親からの伝言なんですが、明日は時間制限なしで、かつ、リビングに五つ布団敷いて寝たいみたいで。若君はそれでいいですか?」

    若「宿でも別々だったからの。無論それは良い話じゃ」

    尊「で、何か二人きりでやりたい事があったら、先に済ませて欲しいらしいです。それで夜は五人一緒に過ごすと」

    若「やる事とは、例えばなんじゃ?」

    尊「いや、僕からは何も」

    若「なんじゃ?」

    若君がにじり寄る。

    尊「わー、僕はただの伝言係です…」

    若「ハハハ。わかった。唯と話しておこう」

    尊「はい、お願いします。では、そろそろ再生しますね」

    若「よろしくお頼み申す」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    メドですね

    てんころりんさん、いつもご意見ありがとうございます。
    質問をしたはいいが、これ、投稿ペースの二日後までには答えてくれと言ってるようなもんだ!と、後で焦りました。早々のご返事に感謝です。

    今の一日おきのペースで投稿するなら、最終回は3月下旬位ですね。おいおい、まだそんなにあるんかい!と思われるでしょうが、土曜のお話だけで、15話もありました。そんなに要るかしらと自分にツッコミを入れつつ、デートの模様と仲良し速川家がたっぷりです。

    鋭意練り練り中のお話を、差し込む予定があります。私に足りない余韻、も必要ですね。なので、もう少しゆっくりになるとは思いますが、基本的には、今までどおり一日おきに投稿しますね。自分のペースとしてできあがっている、のが大きいです。ご容赦くださいませ(´д`|||)

    案内…は、どのようにすると良いでしょうか。no.何の話で、とかですか?振り向かず突っ走っている者なので、少し苦手な部分ではあります。ご教授いただけるとありがたく存じます。

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    投稿ペースについて

    ペースは読む人によって、きっと感じ方が違います。基本は、投稿する方のお考えと、都合次第と思います。
    夕月かかりてさんの今回のシリーズは 11月下旬から ほぼ1日おきに2ヶ月を超えました。
    その情熱に敬服します。

    ご質問があったので私が感じたことを書きます。
    物語は2018/12/21まで来て、残すところ3日。
    既に書き上げられたそうなので伺います。
    あと終わりまで何回か「めど」を知らせて頂けたらと思います。
    小説やコミックを読む場合、残りのページ数を感じながら読みますね。それと同じです。
    二人に平成Daysを出来るだけ楽しませてあげたい‥ 別れが名残惜しいとか‥ それとは別の話です。

    “連日の投稿もあり!”
    例えば 481, 484, 485など、内容が緊密に繋がっている時。
    次の話題に進む時は数日あけるとかして、物語に合わせて、進行は一定ペースでなくて良いと思いました。
    ただ夕月さんの投稿がいつ出るか分かるメリットはありました。
    その点は、次回の予定日を書く方法も ありますね。

    ☆夕月さん☆妖怪千年さん☆ぷくぷくさん、全員が長編か、シリーズものを書いておられて、読む方は結構大変です。
    ☆作家の方には、読者の記憶を呼び覚ますため、また新人さん、継続して読んでない方のためにも、時々 ご案内(今迄の経緯など)を出して頂けると助かります。

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    二人の平成Days41~21日金曜8時、フェードアウト

    いろんな手配が必要なのが現実。
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    今日は学校の終業式。玄関でお見送り。

    覚「じゃあ、唯を学校まで送るから」

    美香子「お願いします。その後も」

    覚「うん。若君、悪いが一人で留守番頼むな」

    若君「わかりました」

    覚「何かあれば、クリニックに母さん居るから」

    若「はい、大丈夫です」

    覚「行ってきます」

    唯「行ってきます、たーくん」

    尊「行ってきます。若君、お昼に間に合うよう、できるだけ早く帰るね」

    若「ありがとう。行ってらっしゃい」

    唯と覚、車内。

    覚「気持ちの整理はついたのか?」

    唯「ん~?周りに言わないでおこうかなって」

    覚「騒ぎにならないか?」

    唯「学校に来てたイケメンと何かあったとか思うんじゃない?実際そうだし」

    覚「お世話になった方々には、お礼を言っておけ」

    唯「そうだね」

    覚「若君には説明したのか?」

    唯「言ってない。退学って、あまりよくわからないんじゃないかな。聞かれたら言うよ。心配かけずに済むならその方がいい」

    時間を飛ばします。13時。再び唯と覚、車内。

    唯「お父さん、色々手続きありがとね。荷物も、少しずつ持って帰ってれば良かったけど」

    覚「まあ、若君に心配かけないつもりなら、それも出来なかっただろうからな」

    唯「うん。お父さん」

    覚「何?」

    唯「私、赤ちゃんに早く会えるといいなって思ってる」

    覚「おぉ、そうか。戦はもういいのか?」

    唯「戦のお供は他の足軽でもできるけど、たーくんの子供は私しか産めない。産まない。側室をとらないと決めてくれてるから、責任重大だし。たーくんを守りたい気持ちは変わらないから、たーくんの大事な家族となる子供を産み、育て、全部守る」

    覚「若君は、いろんな事サラっと言ってるけど、ちゃんと周りに目を配り、かつ物凄く愛情に溢れてる。唯は最上級の幸せ者だ」

    唯「わかってる。だから私も、私にしかできない事をがんばるよ。早くたーくんの喜ぶ顔が見たいな」

    ただいま帰りました。

    尊「おかえり、お父さん、お姉ちゃん」

    覚「おー、昼飯は済ませたよな?」

    尊「うん。お母さんは仕事中だから済ませたし、僕もその時食べたけど」

    覚「ん?若君は?」

    尊「二人が帰るまで待つって。で今支度始めた」

    覚「え、そりゃ悪かったな~。支度って?」

    尊「オムレツ焼いてる」

    唯「えー!たーくん、ありがとう!」

    キッチンに若君シェフ。

    若「父上、唯、おかえりなさい」

    唯「待っててくれたなんて、嬉しい~」

    若「父上、勝手に卵を使いました。すみません」

    覚「いいよいいよ、見ての通りまだ沢山あるしさ」

    出来ました。朝の残りのご飯、覚が出かける前に作っておいた味噌汁、そして、

    若「何も入っていないし、これしか作れないのですみません」

    覚「愛情がたっぷり入ってるよ~」

    唯「美味しそう!いただきまーす!」

    やはり、顔色を伺う若君。

    覚「心配しなくても、すごく美味しいよ。形も綺麗だし。文句なしだ。さぁ、若君も食べて」

    若「ありがとうございます」

    唯「おかわりー」

    覚「何?!もう?ご飯か味噌汁かどっちだ」

    唯「プラスでオムレツも」

    覚「はあ?!」

    若「では、これを食せ」

    若君が自分のオムレツを差し出す。

    唯「たーくん、半分ちょうだい」

    若「半分でいいのか?」

    唯「うん、仲良く半分こ」

    覚「仲良くじゃないだろ、搾取だ」

    離れて見ている尊。

    尊 心の声(家族団欒もあと数回だなぁ。よし、僕はラストスパートだ)

    実験室に入っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    数回かあ。

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    まだまだ続きます

    てんころりんさん、今回もご丁寧に、あらすじとご感想、ありがとうございました。

    皆さんにお尋ねしたいんですが、二日に一回の投稿では、インターバルが短いですかね?
    前にもお話しましたが、ストックを小出しにしている状態なので、毎日でも投稿はできます。でもそれではせわしいわ余韻はないわ、何より早く終了してしまう(;^_^Aなので、一日置きくらいが良いのかなー早く読みたい方もみえるかもしれないしー、と思ってこうしているのですが。

    今日のお話は21日金曜の分。帰る日含めあと三日ではありますが、まだまだ平成Daysは終わりません。土曜は二人でラブラブデートですよ~。たっぷり時間(投稿話数)かけて、お送りします。

    もう、最終回まで描き終えております。終わりがわかっている物語、ちゃんと上手く着地できてるかしら~。そんな懸念を抱えつつ、次はどんな話にしようかと練り練り中です。

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    てんころりんさん

    いつもありがとうございます(^_^)
    痛み入りまするぅ(*^_^*)
    あの二人の場面は優しい気持ちになるので、それまでの事を考えてみたくなり書かせて頂きました(^_^)
    宗熊の決意 第二章の無くなった時はショックでした。それも一度ならず二度までも(;_;)
    頭の中では構想が着々とまとまっていますので、書いた物は思い出しながら、そして新たに付けたしたりして書いていきます(^_^)
    その他に一つ、妄想の中の妄想が浮かんでいます。以前に書かせて頂きました9人が平成に来た物語の中で出来事を考えています。いつか書けたらと思っています(^_^)
    作家さんの感想もままならないのに自分の事ばかりで、ごめんなさい(;_;)

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    感想:1月14日~1月31日

    ・夕月かかりてさん『二人の平成Days31~40』が大詰です。SPで唯と若君は2018年12/23の満月で永禄に帰りますが、もう12/20、まだ居てほしいし寂しいですが、夕月さんがどう締め括られるか楽しみです。

    ・妖怪千年おばばさん『兎角この世は3~4』は、SPの現代パートの物語。今回は唯と若君のクリスマス編? 他の要素も満載で愛馬/吹雪(ドラマでは疾風)の生い立ちを若君が語ります。

    ・ぷくぷくさん『最終回隙間 如古坊と成之』連ドラ最終回に如古坊が旅立つ時、ドラマでは描かれなかった会話ですね。
    宗熊の物語・第二章の原稿が消失でしょうか。この際じっくり練り直したものをお待ちしてます。

    ☆案内板を兼ねて感想 いきま~す ☆彡

    夕月かかりてさん

    No472_X’masイブ·デートに着ていく服がない。ドラマでもジャージか制服でしたね。女の子らしい格好をさせてやりたい美香子母の心が切ない。一回しか着られないからと遠慮する唯と若君の心が切ない。
    No.476_若君が料理に挑戦。覚 美香子の両親は若君が可愛くてならない様子だし、若君の素直で良き息子振りにもホロッとさせられます。
    母を知らない若君は母に優しくされると弱いみたいです。
    No.477_唯と尊がいない時間にオムレツとピラフの試作うまく出来ました。両親の愛に涙ぐむ若君に こちらも?。
    No.481,484,485_母と若君は車で唯を拾い、デート服を買いに。赤の❤️ペアルック!洋服に慣れてない若君の目に、唯はさぞや魅惑的に映ったでしょう。
    唯の可憐な姿は、未知の赤い花の蕾!山茶花は唯のイメージにぴったりですが、戦国時代には白い色の原種しかなかったらしい‥ 了解です!
    No.486_若君は美香子母にも唯にも、頭を撫でられると赤くなっちゃう。大切に育てられたけれど、きっと甘えさせて貰った経験がないんですね。戦国武将は皆そうではないでしょうか。
    No.489_シェフデビューの若君が夕食の支度の間、仲の良い唯と尊「…生きててね」?
    No.490,491_若君の料理は上出来、美味しそぅ?。皆幸せそうで理想の家族なのに… 来週もまた作ってねと言えない。
    若君のピラフのレシピは実際その日の《きょうの料理》だったとは!よく見付けられましたねぇ。
    No.492,493_同じその日の夕食後、唯と若君は家族宛に年賀状を書いたんですね!二人が旅立った後、元旦に届いた。家宝ですね本当に!

    妖怪千年おばばさん

    No.474_唯と若君が気になって、尾行せずにいられない覚パパ、可笑しく可愛い。往生際が悪いです(笑)。エリさん、葱を譲ってくれましたが、エリさんちの すき焼きは後日?気になっちゃいました。
    No.487_伏字が、小○旬、○田将○しか分からなくて??。教会のクリスマス降誕場面の人形→聖徳太子→愛馬/吹雪と連想が繋がるのが凄い!若君の嫉妬と唯に嫉妬する吹雪?。お熱いですからね。

    ぷくぷくさん

    No.479_連ドラ最終回、如古坊と成之が暫しの別れの前に唯の思い出を話します。いつおなごと分かったか? 若君はいつから知っていたか? とか面白かったです。
    唯がいなかったら今はない。共通した思いなのでしょう。成之が如古坊を追い払ったこと、ドラマではなかった詫び、ちゃんと書かれて良かったです。

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    二人の平成Days40~2019年1月1日9時、時空を超えて

    姉ならこうする、と考えればすぐ見つかるのかも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    元旦の速川家。届いた年賀状の仕分けをしている。

    美香子「えっ、えー!」

    覚「何?」

    美「唯達から、年賀状が届いてる!」

    覚「えぇ?!あー、まぁ配達のシステムからすると、こちらに居る内に投函すれば今届くからなあ。中々の嬉しいアイデアだ。で、なんて?」

    裏を見る。若君が書いたと思われる達筆。

    覚&美「やっぱり読めない」

    尊が起きてきた。

    尊「…読めない。訳文付けといてくれないとー」

    覚「ジェンガの時の苦労を、学習しないのか?唯は」

    美「時間かけて、解読するしかないわね」

    覚「年賀状というより…いや、嬉しいんだぞ?」

    美「で、何」

    覚「挑戦状?なんじゃ」

    尊「縁起の悪い事は書いてないと思うけどさ、正月中、解読して楽しめって事じゃない?」

    美「正月の新聞見開きで、まちがいさがしとか数独とか載ってるのみたいに?」

    尊「少なくとも、若君はそんなつもりはなかっただろうから、これはお姉ちゃんが悪いよ」

    覚「まあ、優しい気持ちが配達されました、と」

    美「そうね」

    尊が、年賀状の表の面を凝視していたが、何かに気付いた。

    尊「はぁ~?!何でわざわざこんな!」

    半分怒りながら、二階に上がっていく。

    美「え?何かヒントでもあった?」

    尊が手に袋を持って登場。

    覚「何だ?」

    尊「あったよ。ベッドの下に」

    美「あらま。よくわかったわね」

    尊「ここに書いてあった」

    覚と美香子が覗き込むが、

    美「見えない~老眼にはキツいわ」

    覚「え?言われてもどこかわからん」

    尊「よりによって、こんな所に書くんだから」

    表面下の、宝くじの番号の隙間隙間に、小さく何か書いてある。

    尊「B、E、D、し、た」

    美「あ~ようやくわかったわ。なんでこんな面倒な事をしたのかしら」

    尊「どう書くか悩み過ぎて、書ける場所が無くなったんじゃないかな。でもここじゃなくてもさー」

    欄外は、字を塗りつぶしたらしく、ところどころ真っ黒だ。

    尊「まっ、推測しかできないけど」

    覚「どう解く?」

    尊「くじがもし当たっても、引き換えるなとか」

    美「年賀状自体は、スタンプ押されて返ってくるじゃない」

    尊「じゃあやっぱり挑戦状だよ」

    覚「もうそうしとこう。見つかったんだし。で、答えは?」

    尊「書き損じの葉書に書いてあるよ」

    覚「新春を寿ぎ謹んでご祝詞を申し上げます。あー、いかにも古文なのかと思ったら、まあまあ分かりやすいなあ」

    美「若君が、私達に合わせてくれたんじゃない?優しいわね~」

    覚「字も綺麗だし。という事は…」

    美「何」

    覚「これ、コピーして、来年の年賀状に使えるんじゃないか?」

    尊「訳文つけるの?誰が書いたか聞かれたらどうするの?それにコピーなんて失礼だよ」

    覚「はいすいません、図に乗りました」

    美「永久保存よ。家宝」

    尊「まだ書いてあるんだよ。書き損じを若君が無駄にしたと気にしているので手数料払って取り替えてください、って」

    美「あら、そんな心配まで」

    覚「そんなもったいない事、できないよな」

    尊「じゃあ、あそこに置くの、決定?」

    覚&美「決定!」

    リビング奥の棚で、唯と若君の指輪が、射し込む朝の光に煌めいていた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    手にした全ての物が、愛おしい。次回、お話は平成に居た頃に戻ります。ご安心を。

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    二人の平成Days39~20日20時、愛を届けます

    唯達にちょうどいいシステム。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の部屋。

    唯「あのね、まずこれの説明をするね」

    取り出したのは、年賀状。

    若君「いい紙じゃの」

    唯「葉書って言ってね、文を書いて送れるの。これを、ポストって箱に入れると、郵便局って所が相手の家まで運んでくれるの」

    若「ほぅ」

    唯「でね、この年賀状ってのはその葉書の中でも特殊で、例えば今日入れても、明日入れても、みんな元旦に届くの」

    若「という事は、明日入れても、我らが去った後に届くと」

    唯「さすがたーくん、その通り。だから、お正月に、お父さん達を喜ばせたくて」

    若「で、わしは何を?」

    唯「表の、宛先とかは私が書くから、裏の文を書いて欲しいな」

    若「どのように?」

    唯「新年の挨拶。紙が小さいから難しいかもしれないけど」

    若「そうか。ただそのような習慣はまだあまりなかったゆえ、どう書くと良いかの」

    唯「そっかー。じゃあ」

    スマホで検索し、年賀状の文例を探す。

    唯「たーくんが、これ、ってひらめいたので書いて」

    若「心得た」

    唯「筆ペンと、半紙は用意したよ。年賀状も5枚あるから、もし間違えても大丈夫だから」

    若君、練習中。

    唯 心の声(相変わらず…読めない。でもジェンガの時もそうだったけど、面と向かって読めないとは中々言えないんだよねー)

    年賀状、3枚目で書き上げました。

    若「小さく書くのは慣れておらぬゆえ、無駄になり悪かったのう」

    唯「大丈夫だよ。この書き損じはね、郵便局で手数料を払うと、新品の葉書に交換できるんだよ。だから無駄にならないの」

    若「なんと。上手くできておる」

    唯「字が素敵~。で、どれにしたの?」

    若君が指さした言葉をスクショした。

    唯「たーくんありがとう。あとは私が宛先とか書くね。あっ」

    若「もう、良いか?」

    いつの間にか、後ろから抱き締められている。時計を見上げると、8時30分。

    唯「あー、油断も隙もないー」

    若「待てぬ」

    唯「えー。あはは」

    今日はここまで、と言いたい所ですが、まだ唯はやる事があるので、自主規制で9時ちょい前に飛びます。

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん」

    ドアが閉まる。早速宛先を記入。

    唯「黒羽市東町3―45、速川覚様美香子様尊様、差出人は、唯&忠清」

    スクショを確認。

    唯「新春を…寿ぎ…謹んで…ご祝詞…を申し上げます、うーん同じ日本語とは思えないー。難しー」

    書き損じの年賀状にメモした。

    唯「良かった、無事終了。でも問題は、年賀状にこう書いてあるよって書けるスペースが残ってないんだよね~どうしよう」

    メモ入りの書き損じを含め4枚の年賀状と、練習の半紙を袋に入れ、ベッドの下に。

    唯「よし、あとはヒントを」

    投函する年賀状を見つめ、何やら書き込み出した。

    唯「気づいてね!尊くらいは」

    年賀状を前に、かしわ手を打った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    この後、no.433、元日に投稿したお話の改訂版です。

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    若君のシェフデビューレシピ

    食卓には三品出ましたが、その内オムレツとスープは、覚お父さんのオリジナルで、特に引用した物はありません。

    ピラフのレシピは、検索できます。その前に、まずは過程を説明しますね。

    あの日2018年12月18日、夜9時の時点で、唯とお母さんは唯の部屋、尊は実験室、若君とお父さんはテレビを見始めました。

    9時スタートの料理番組、アシガールの放送局系列は?となると、そう、「きょうの料理」です。

    https://www.nhk.or.jp/lifestyle/recipe/detail/43290.html

    私もリアルタイムで観てたかもしれない、そして皆さんももしかしたら。同じ番組を観ていて、速川家では若君と覚の会話が繰り広げられていた、と想像すると、楽しくなりませんか?

    唯達の住んでいる黒羽市はどこか、の考察が、管理人様のブログ記事“羽木氏の領地・黒羽城はどこにあったのか?(2)”にあり、三重県北勢地方とあります。この放送は、三重県の特集だったので、

    覚「若君、しばらく尊に相手にしてもらえないよなあ。今日のテレビは地元の回だから、一緒に観ないか?」

    と、仲良く肩を並べていたのではないかと。

    最近、このレシピだけ急に閲覧回数が増えたな~、なんとアシガールを愛するアシラバの仕業か!これはそろそろオンデマンドに復活させないと!とか、ならないかなー、ちょっと遠回り過ぎるかな?その前に、勝手にリンクさせるなと怒られるかしら。

    今日は、二本立てです。元旦の投稿、ようやく順番が来ました。

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    二人の平成Days38~20日18時、手さばきあざやか!

    手元だけずっと見ていたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と尊がしゃべっている間に、米を炒め始めてます。

    覚「火加減はこまめに見て」

    若君「はい」

    唯「エプロンじゃなくて、あの、コックさんの着る」

    尊「コックコート?」

    唯「っていうの?が良くない?」

    美香子「シェフ目当てに超人気のレストランになるわね」

    尊「ひとりじめ~なんて、言ってられなくなるよ?」

    唯「それはやだー」

    若「ハハハ」

    そうこうする内に、炊飯器スイッチオン。

    覚「さて、若君のポテンシャルが高い…しまった、ポテンシャルって日本語で何だっけ?」

    尊「潜在能力」

    覚「サンキュー。で、それが高いから、オムレツ、中に何か入れて作ってみる?若君」

    若「卵だけではなく、ですか?」

    唯「はいはーい!私チーズがいい!」

    尊「僕は明太子がいいな。まだあるよね?」

    美「じゃあ、明太子チーズオムレツでいいじゃない。あんまり手間かけさせないように。あんた達は食べるだけなんだから」

    尊「お母さんも食べるだけじゃん」

    美「えへ、その通り。と言ってる間に、着々と明太子とチーズの準備が進んでるわ。いいお店ね~」

    オムレツ作り始めました。

    唯「この手さばき、も~綺麗過ぎる。超カッコいい~、ますます惚れ直しちゃう~」

    覚「今日のギャラリーは一段と騒がしいな」

    若「唯、近過ぎる。下がって」

    唯「はぁい」

    尊「良かった、ちゃんと注意してくれて」

    唯「抱きつきたかったのにー」

    尊「フライパン持ってるのに?危ないよ!」

    炊飯器が呼んでます。

    覚「よし、後は蒸らして混ぜるだけ。あとオムレツ幾つ?」

    若「これで最後です」

    覚「よーし、運んで~」

    あおさとたいのピラフと、明太子チーズオムレツ、あと、わかめスープの完成です。

    全員「いただきまーす!」

    若「父上。僕が至らなく、手伝わせた上、汁まで作っていただき、ありがとうございました」

    覚「いいのいいの。手際良かったよ。ご丁寧にありがとね」

    唯「う~、うまぁい!」

    若君 心の声(どこかでこのような光景を見たな…あぁ、山寺で芋粥を食した時か。懐かしいのう)

    尊「若君、ホントに美味しいです」

    若「ありがとう」

    美「ん~息子の作るご飯は美味しいわ~」

    尊「ここにも居ますが」

    美「じゃあ、今度よろしくね~」

    尊「いずれ」

    美「はぁ。いつになるやら」

    全員で、大笑い。

    覚「いや~美味かった。若君お疲れ様。では」

    全員「ごちそうさまでしたー」

    片付けも終わりました。

    唯「8時かぁ。たーくん、頼みたい事があるから、部屋に来て」

    若「頼み?珍しいのう」

    唯「いいから、ねっ」

    二人で二階へ。

    覚「残念な事に、来週も作ろうな、が言えないんだよな」

    美「そうね。リクエストしようかとつい思っちゃったけど…」

    尊「いよいよカウントダウンかー。僕もあと一息。実験室に行くね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    数えたくないけど、あと少しです。

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    二人の平成Days37~20日木曜17時、絶妙な掛け合い

    同じテンポで返してくれる相手は貴重。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いよいよ、若君シェフのデビューです。キッチンでは、若君が両親のサポートで準備中。唯と尊はというと…食卓で支度をしてるようなしてないような。

    唯「たーくんが、現代男子だったら良かったな~と思う事は、ある」

    尊「贅沢な。なに」

    唯「まず、クリスマスにときめいてくれない」

    尊「それは聞いた。仕方ないじゃん。でも現代男子だって、何にも思わない人はいると思うけど」

    唯「イルミネーション綺麗だね~とか言って歩きたかった~」

    尊「テーマパークで見た時、言ってなかったっけ?」

    唯「知らない」

    尊「あ、そういえばお姉ちゃん居なかったな」

    唯「なにっ!いつ?」

    尊「あの、無数の電球で輝いてた道の所」

    唯「え?私何してた?」

    尊「走って遠く行ってた」

    唯「呼んでよぉ~!」

    尊「自分が勝手に走ってったくせに」

    唯「あと、クリスマスソングにキュンとしてくれない」

    尊「同じだね。聴いた事ない物は仕方ない。音楽全般は、最後までわからなかったみたいだね」

    唯「よくカップルがさあ、一つのイヤホンを片耳ずつ分けて同じ曲聴いてたりするじゃない。あれもやってみたかったな~」

    尊「耳に差し込むだけならすぐできるじゃん」

    唯「いい曲だね、って一緒にニッコリしたい」

    尊「台詞だけなら、頼めばやってくれるよ」

    唯「ちょっと違う~」

    尊「そりゃ違うけど。無い物ねだりが続くな」

    唯「あと、どれがいい?ってきいてもどれでもいいよって言う」

    尊「それは、若君の優しさもあると思うけど、正確には」

    唯「何?」

    尊「どれもわからないから、決めていいよ、だと思う。お姉ちゃんだって、例えば見た事ない物を三つ出されて、どれがいい?って言われてもわかんないでしょ」

    唯「なるほど。その説明はわかりやすい」

    尊「いつかさぁ」

    唯「ん?」

    尊「聞いても返事もない、あっても生返事なんて時が来ちゃったりして」

    唯「え~?結婚20年、倦怠期の夫婦みたいな?」

    尊「お姉ちゃん達、特に若君は絶対そんな事ないと思うけど」

    唯「どうしよう…飽きられたら」

    尊「その前に、超現実問題として、生きててね。あまり言いたくはないけど、こればっかりは時代が」

    唯「うん。生き抜くよ!で、ばんばん子供産んで子孫繁栄じゃ」

    尊「へー、最近まで腹が決まってなかった割には」

    唯「たーくんが、まっさらなジェンガに名前入れるって言ったから、願いを叶えてあげたいの」

    尊「良き妻じゃ。それ本人に言った?」

    唯「まだ。いつか言って、イチコロにする。ふっふっふ」

    尊「若君も俄然やる気出るよね。あっ、やる気はそっち方面の話じゃないよ」

    唯「そっち方面でいいよ。エロ侍だし」

    尊「それさ、お姉ちゃん命名したでしょ。で僕も、同じ日に全く同じ名前付けたんだよ」

    唯「月曜でしょ。たーくんに部屋に連れ込まれた」

    尊「なんつー言い方。で、若君に、さすが血が繋がっておるって言われちゃった」

    唯「へぇ。それで?」

    尊「言葉の意味を説明したら、笑いながら、お姉ちゃんにしか反応しないって言ってたよ。ちょっと聞いてて恥ずかしかったけど、愛だな愛、と心を落ち着かせて聞いてた」

    唯「反応…男子の会話って感じだね」

    尊「さっきの、結婚20年目の夫婦の話だけど」

    唯「うん」

    尊「ウチってそのくらいだよね?」

    唯「あーそうだね。という事は…ずっと仲良しなら、倦怠期はなしかー!」

    尊「旅行の帰りにさ」

    唯「うん。眠過ぎて、すぐ寝落ちしたけど」

    尊「その節は、お務めご苦労であった」

    唯「もうさぁー、たーくん全然寝させてくれなくってさぁー」

    尊「それ以上言わなくていいけど」

    唯「眠くても、愛だな愛」

    尊「はいはい。で、話戻すよ。車中で、お父さんとお母さん、お姉ちゃん達の言葉を引用してラブラブだったよ」

    唯「どんなん?」

    尊「美香子さんは僕の唯一です、とお父さんが言ったら、お母さんが、大好きな美香子は私一人だけって事?って言ってたよ」

    唯「あんた、よく恥ずかしげもなく言えるね」

    尊「あの時、お姉ちゃんの台詞上手い!と思ってたから」

    唯「あの日の事、私ところどころ覚えてないんだよねー。すごーく甘い時間だったな、とは強く残ってるけど」

    尊「あの時の若君の落ち着きと、返し方は見事だったよ」

    唯「尊、その台詞、いつか自分が使おうと思ってるんでしょ」

    尊「使えたらいいなあだけど。もし彼女ができたら、お姉ちゃんや若君に、キュンとする台詞教えに来て欲しいよ」

    唯「自ずから出てくる言葉じゃないと、胸に響かぬぞ」

    尊「うわっ、急に若君が乗り移った」

    唯「一心同体だから」

    尊「なるほどね」

    美香子「ちょっと~何座ってんの、テーブル拭いたの?」

    唯&尊「はーい、ただいま」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    仲良し姉弟の会話は、エンドレスです。

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    ライバルは言っても聞かぬ相手

    妖怪千年おばばさん、若君の平成での嫉妬は、かわいいですね。
    残念ながら、私が花○や銀○がとんとわからないので、その部分の感想は申し上げられません(>д<)

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    兎角この世は その4 ~十三夜続編(未投稿) こぼれ話 唯編~

    はじめに
     ”未投稿の十三夜続編より先に、
      こぼれ話ってどうなのよ。”
     と、自分にツッコミを
     入れつつの投稿です。
     ふきちゃん、阿湖姫、
     相賀の養女と、次々と現れる、
     恋のライバルたちをなんとか
     かわしてきた唯ですが、
     若君と飛んだ平成で、
     真のライバルを知る事に。
     いったい、それは誰?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    唯と共に、黒羽城から平成に飛んで、
    数日後の事。

    玄関の横にある、山桜桃梅の木に、
    小さな電球を張り巡らせながら、
    忠清が言う。

    「枯れ木に花とは、耳にもするが、
     枯れ木に星とは、珍しい。」

    すっかり葉を落とした山桜桃梅の
    細い枝に蓑虫が一つ
    ぶら下がっていた。
    冬支度を終えた小さな虫は、
    枯葉にくるまって眠っているらしい。
    電球のコードが当たらないように、
    横の枝にかけなおすと、
    忠清は、人差し指で、
    その蓑虫をそっと揺らした。

    穏やかな笑みを
    浮かべている忠清は、
    とても、戦国武将とは思えない。
    どう見ても、イケメンモデルと
    言った方がしっくりくる。
    尊の頭の中で、忠清は、今や
    芸能事務所のスカウトマンに、
    取り囲まれていた。

    「で、この後は、
     如何したら良いのじゃ?」

    忠清の声で、尊は妄想から
    引き戻された。

     「あ、ええっと、
      このソーラーパネルを
      ここに立てて、
      後は、日が暮れるのを
      待つだけです。」

    「では、これは?」

     「それは、こちらに。」

    尊が指をさす場所に、忠清が
    ポールタイプのソーラーライト
    を差し込む。
    ソーラーライトには、
    とある仕掛けが施されていた。

      「きっと、お姉ちゃん。
       喜びますよ。」

    忠清は、小さく頷くと
    唯の帰りを待った。

    しばらくして、
    家の前の道路に迎えに出ると、
    夕焼けの中に、唯の姿が見えた。
    忠清が手を振る。
    すると唯は、走りながら
    大きく手を振って答えた。

     「若君様~。ただいま~♪」

    家の手前で、忠清は
    唯に目をつぶらせた。

     「ええ?な、何?」

    忠清は黙って手を引く。
    玄関の前で、忠清は、
    唯の後ろに回り、その手首を
    そっとつかむと、唯自身の手で
    唯の目をふさいだ。

    その様子を、尊は玄関横の小窓から
    こっそり覗いている。
    小窓の隙間から、野菜を煮込む
    美味しそうな匂いが流れ出た。

      キュルルルル・・・

    唯のお腹の虫が鳴く。

    「お前の腹は、まこと、
     正直じゃの。」

    思わず吹き出し、忠清は、
    唯の手首を放してしまった。

     「わああ、きっれーい!
      どうしたんすか、これ?」

    唯が、歓声を上げる。

    山桜桃梅の枯れ枝が、
    シャンパン色の光に包まれていた。
    玄関ドアの横の壁には、
    ソリに乗ったサンタクロースが
    映っている。
    サンタの帽子は、
    若君の兜によく似ている。
    少し離れたソーラーライト
    から映し出された、影絵だ。

    「尊と作ったのじゃ。
     世話になっておる故、
     何か皆が喜ぶ物をと思うてな。
     とは申せ、わしは、
     尊の言葉のままに
     手を貸したまでじゃが。」

    唯は、クリスマスモードに
    変身した玄関を、夢中で
    スマホにおさめた。

    「唯は、本当に
     良い弟を持ったの。」

    忠清が、しみじみと言う。

     「今は、若君にとっても
      弟ですよ?!」

    「そうであったの。」

    尊は慌てて小窓から
    顔を引っ込め、両手を握り、
    つぶやく。

    「シャー!」

        ・・・・・・・・・

    山盛りのカレーライスのおかわりを
    ペロリと平らげた唯が、
    冷蔵庫の扉を開けた。

     「んん?無い!
      誰か知らない?アイス。」

      「あ、ごめん。
       お姉ちゃんのだった?
       おやつに、若君と食べた。
       半分ずつ。」

    いつもなら、猛烈に噛みついて
    来る姉が、何も言わない。
    ただ、唇を尖らせて、
    ふくれっ面をしている。
    忠清が言った。

    「すまぬ。唯のものとは
     知らなんだ故。」

    すかさず、尊が唯に
    何かを手渡した。

      「そういえばさ、新しいお店が
       出来たみたいだよ。
       これ、
       開店セールのチラシ。」 

     「スーパー“よろずや”?
      イケメン店長が
      心を込めておもてなし。
      厳選スイーツ、
      充実の品ぞろえ。
      今なら、消費税分
      ポイント還元。」

      「何でも、俳優の小〇旬
       そっくりの店長が、
       銀髪に侍のコスプレで
       接客してるらしい。」

     「え?小〇旬のコスプレ?
      もしかして、それって、
      〇魂の〇さん?」

      「行って確かめてきたら?
       〇田将〇とかレジ打ってる
       かもしれないし。」

     「でも、侍なら、
      本物を生で見てるし。
      〇男の花〇類なら
      見たいけど。」

      「あ、〇田将〇は、スルー?」

     「う~~ん。レジなら、
      〇本〇奈ちゃんがいいな。
      “千円アルヨ”なんて
      言って貰えたら最高!
       あの美貌で、〇田監督の
      アニメ実写キャラ熱演とか、
      ギャップがもう凄すぎて。」

      「それ、若君が言うなら
       分かるけど。」

    「何事?」

      「あ、若君は、〇魂も、
       〇より男〇も、
       まだ未体験でしたね。
       明日、借りに行きましょう。
       DVD。」

    TVドラマなら確実に、
    ピー音連発の会話の後、
    唯は忠清を誘って、
    “よろずや”に出かけた。
    一度、食べたいと思うと、
    食べずにいられなくなるのが
    “アイスクリーム”だ。

     「お父さんは、バニラ。
      お母さんは、ストロベリー。
      尊はチョコレートで、
      私はチョコミント。
      若君は、何にします?」

    「そうじゃの。抹茶かの。」

     「さすが~。チョイスが渋い!」

    “よろずや”の店内は、チラシ通り、
    お菓子が山積にされていた。
    しかも激安。
    薄給の店長の血糖値対策の為という、
    チラシのキャッチコピーを
    思い出し、唯は爆笑した。
    確かに、〇魂の主人公は、
    糖尿病設定だけど、何もそこまで
    やらなくてもと思いつつ、
    レジに立つと、目の前に、
    あの額がかけてある。

      【 糖 分 】

    “ここまでやるなら、結構、
    期待してもいいのかな・・・。”
    噂の“コスプレ店長”への興味が、
    グンと膨らむ。
    ところが、店の奥から出てきた
    レジ係は、〇田将〇でも、
    〇本〇奈でもなく、学生らしき、
    ごくフツーのバイト青年だった。
    “やっぱり、こんなもんだよね。”
    と、思いつつも、
    唯は聞かずにはいられない。

     「あのう。看板店長の、
      コスプレ侍さんは?」

       「あ、さっき早めに
        上がりましたよ。
        何でも、ツッパリ映画の
        床屋の店長役を、
        〇田監督からオファー
        されたとかで。
        本人より本人っぽいって、
        最近、影武者でちょいちょい
        出演依頼が来てて。」

     「え・・・マジで?
      そんなにクオリティ
      高いんですか?
      もしかして、双子の
      弟さんとか?」

    バイト君の答えに、
    目を♡にしている唯を、
    若君は引きずる様に、
    店から連れ出した。

    来た時の勢いはどこへやら、
    アイスクリームを抱えて、
    唯はトボトボ歩く。
    若君は、足を速めて先を行く。

    いつもなら、追いかけて来る唯が、
    どんどん遠くなる。
    しびれを切らした若君が、
    振り返って、声をかけた。

    「何やら、ひどく
     気落ちしておる様じゃの。」

     「そ、そんな事。」

    「会いたかったのか?
     それほどまでに。」

     「それほどではない・・・
      はずだったんですけど。」

    「では、何故そのような
     顔をしておる?」

    忠清に問い詰められて、
    唯は、今にも泣き出しそうだ。

     「戦国では、いつも
      生きるか死ぬかの瀬戸際で。
      気を張ってて。
      ドラマとか、映画とか、
      そんなのすっかり忘れてて。
      でも、
      小〇旬って聞いたとたんに、
      急に、色んな事を一気に
      思い出して。
      小学生の頃、お母さんに
      初めて連れて行って貰った映画が
      〇男ファイナルで。
      本当に嬉しくて。
      ファンになって。それで。
      本人じゃないって
      わかってても、
      会いたかったなって。
      で、会えなくて、急に
      体の力が抜けちゃって。」

    「ん。」

     「変ですよね。
      戦国では思い出しも
      しなかったのに。」

    「では、唯。
     明日はそのDVDを
     尊と借りて来る故、
     わしと共にそれを
     見る事に致そう。
     さすれば、向後、
     小〇旬とやらを思いだす折には、
     おのずとわしをも、
     思い出す事になるであろう?」

     「若君・・・?」

    忠清は、アイスクリームを
    抱えたままの唯を抱きしめた。

    翌日、いつもはあまり感情を
    表に出さない忠清が、
    DVDの中の小○旬に向かい、
    敵将を倒す勢いで、
    鋭い視線を飛ばしていたのは、
    やむを得ない。

       ・・・・・

    そして、その翌日。
    何故か、機嫌を直した忠清が、
    唯を呼んだ。

    「唯、如何じゃ?
     なかなか似合おうておろう?」

     「はい。とっても・・・ってか、
      どうしちゃったんすか?
      その恰好?」

    「“よろずや”の店長殿から
     拝借したのじゃ。」

     「拝借?」

    「うむ。
     明日より、十日程、店の前で
     チラシとやらを配る代わりにの。」

     「へ?」

      「お姉ちゃんの為に、
       若君、バイトすることに
       したんだって。」

     「バ、バイト?駄目ですよ、
      そんなの。危なすぎます!」

    〇魂〇さんコスプレの若君を、
    おばちゃんの群れが連れ去る・・・
    そして、唯が叫ぶ。

    「わ・か・ぎ・み・様~!」

    頭をぶんぶん振って、唯は、
    自分の脳裏に浮かんだ
    不吉なシーンを必死に消した。

    “JKの目から守るのだって
    一苦労なのに、若君ったら、もう!”

    「危ない・・・?
     何がどう危ないのじゃ?」

    「唯、良いんじゃない。
     何事も経験よ。
     明日は私がついてくから。」

     「えええ?
      何言ってんの?お母さんまで!」

    それにしても・・・
    若君の着ている〇さんの衣装、
    似合う。似合いすぎる。
    ってか本物の“もののふ”だから
    似合って当然だけど。

    尊が唯に近寄ってきて、囁く。

      「お姉ちゃんが、若君に、
       ヤキモチ焼かせたりするから
       こんな事になったんだよ?
       まあ、それだけ愛されてるって
       事だけど。
       ここは見守れば?」

     「焼き餅? 何それ?
      お正月もまだなのに、
      若君にそんな事、私が
      させる訳、無いでしょう?」

      「あのさ。
       それ、ボケてるつもり?
       そっちじゃなくて。」

     「何よ!どっち?」

      「だから、
       ジェラシーだって。」
     
     「はあ?
      あ、もしかして、
      小〇・・・旬?」

      「そう。若君はね。
       お姉ちゃんが、
       〇魂の〇さんを思い出したら、
       小〇旬じゃなくて、
       自分を思い出す様に、
       刷り込もうとしてるんだ。」

     「はああああ・・・
      なにもそこまでしなくても。
      さすが、戦国武将、徹底してる。
      てか、戦術が突飛すぎ。。。」

    翌日、部活の練習もそこそこに
    家に帰った唯は、若君の
    ジャージ姿を見てほっとした。
    若君は、〇さんのコスプレ衣装を
    丁寧に畳んでいる。
    さすがに、着物の扱いは
    手慣れたものだ。

      「若君、ただいま~。
       その着物、ハンガーにかけて
       おいた方がよくないですか?
       たしか、着物用のがどこかに」

    「いや。もう良いのじゃ。」

      「え?
       だって明日も行くんでしょう?
       ”よろずや”に。」

     「それがね。
      アルバイトは今日一日限り
      って事になったのよ。」

    唯の母が、忠清の代わりに答える。

     「若君がお店の前に立った
      途端にね。
      お客さんがつめかけて、
      もう大騒ぎ。
      あっという間に、
      開店セール用の棚が
      空っぽになっちゃって。
      この調子だと、仕入れが
      間に合わないから、
      今日だけにして欲しいって、
      店長に頭を下げられ
      ちゃったの。」

      「はああ??
       さすがというか、
       なんというか。」

    「奥方たちに囲まれてしまい、
     着替えもせぬまま、
     母上の車で帰ってきてしまった故、
     これから戻って、これを、店長に
     お返ししようと思うての。」
     
     「ちょうど良かったわ。
      唯、一緒に行ってあげて。」

    唯の提案で、忠清は変装を
    することになった。
    レンズを外した
    メガネフレームをかける。
    でも、それも、妙に似合う。
    忠清にダッフルコートのフードを
    深くかぶせながら、
    唯はため息をつく。

      “たった一日で、
       商店街のアイドルなんて。
       買い物途中の美魔女たちから、
       若君を守り切れるかなあ。
       こんな事なら、戦国で
       足軽やってた方が、
       ずうっと楽かも。“

    なるべく人目を避けながら、
    唯はおそるおそる若君に訊ねた。

      「若君、
       まさかとは思うのですが、
       次は〇男の花〇類のコスプレ
       しようとか、
       思ってませんよね?」

    若君は、ギクッとした様子で
    慌て気味に答える。

    「な、何故それを。
     実は、駅中の“Z〇R〇”とか
     申す店で、手伝いの者を
     探しておると、店長が教えて
     くれたのじゃ。
     そこであれば、花〇類によう似た
     衣装も手にはいるのではと
     思うたのじゃが。」

      「やっぱり!
       もうやめてくださいね。
       街中の女性から
       若君を守らなきゃ
       ならなくなったら、
       私の身が持ちませんから!」

       ”それに、今や、
        女性だけとは限らんし。”

    「わしは、ただ、
     唯を喜ばせようと。」

      「はい。それは、
       とっても嬉しいです。
       でも、若君が他の“おなご”に
       取り囲まれるのは、
       嫌なんです。」

    「さようか。
     唯が好まぬことは、
     わしもしとうは無い。」

    言ってから唯は
    ちょっとだけ後悔する。

    “私と二人だけの時なら、
    ” 花〇類“も良いんだけど。。。
    ピンク色のフード付きのフリースで、
    クッション抱いてる若君。
    ああ、最高♡”

    「唯、如何した?」

      「あ、いえ。何も♡」

        ・・・・・・

    “よろずや”のバックヤードで、
    忠清と唯はコスプレ衣装を
    無事返却した。
    またしても店長は不在。
    応対したのはあのバイト君だ。
    なんでも、アニメの劇場版、
    〇魂ファイナルのアテレコで、
    担当声優さんが風邪をひき、
    そのピンチヒッターで
    駆り出されたのだとか。

     「え?
      だってアニメのほうは、
      〇さんの声、小〇旬じゃ
      ありませんよね?」

      「店長は根っからの
       〇さんファンで、
       声優さんの方の
       声真似も得意なんです。」

    またしても、唯は、
    小〇旬そっくり店長には
    会えなかったのだが、
    一昨日の夜程は、
    落ち込まなかった。
    すでに、忠清の唯への刷り込みが、
    成功の兆しを見せている。

    日も暮れて、空には星が
    瞬き始めていた。

    ふと、忠清が足を止める。

    「唯、あれは何じゃ?」

    それは、教会の前に飾られた、
    小さな馬小屋だった。

     「あれは、教会の
      クリスマスの飾りです。
      キリストの誕生の時の場面を、
      お人形で再現してるんです。」

    「ほう。近くで見てみようかの。」

    忠清は、唯の手を引きながら、
    教会の前に立った。

    「教会というは、伴天連の
     教えを説くところであろう?」

     「良くご存じですね。
      たしか、黒羽の城下に、
      宣教師はいなかった
      はずなのに。」

    「キリシタン大名の事は
     存じておる。
     それに、信長は、伴天連から
     色々聞いておる様じゃ。
     海の外の国の子細をの。」

     「そうなんだ。
      信長って、好奇心旺盛
      なんですね。」

    「知識を広く得ようとするは、
     見習わねばならぬ。」

     「若君だって、凄いですよ。
      今回の半端ない
      行動力だって。」

    「わしなど、まだまだじゃ。
     ところで、キリストと言うは、
     厩で生まれたのか?」

     「そのようです。
      私も詳しくはないのですが。
      確か、大きな町の
      役所のような所に出向く途中、
      宿が取れず、厩で一夜を
      過ごしたとか。
      その時に誕生したのが
      キリストで、ひときわ輝く
      星に導かれた三人の博士が
      東からやって来て、
      祝福したとか。」

    「クリスマスに、
     星を飾るは、その為か?」

     「そうかもしれないですね。
      キリストの本当の誕生日は
      よくわかっていなくて、
      もともとあった冬至の
      お祭りの頃に、お祝いする
      ようになったという説も
      あるみたいです。」

    「確か、太子も、厩で生まれた
     と聞いたが。
     幼名は厩戸王じゃ。
     偉人は厩で生まれるのかも
     しれぬの。」

    そう言った後で、忠清は、突然、
    何かを思い出したように
    振り向いた。

      「どうしました?」

    「わしが生まれた時も、
     馬にまつわる話があっての。
     それを思い出したのじゃ。
     お前に話した事は、
     なかったか?」

      「ありませんよ。どんな?」

    「実はの。
     わしを産み落とす時、
     母上は大層、苦しまれたそうでの。
     母もわしも、
     命がつきるやもしれぬと、
     皆、一度は覚悟を決めた様じゃ。
     ところが、九死に一生を得た。
     つまりは、大変な難産の末、
     わしは生まれたのじゃ。」

     「難産。」

    「うむ。わしは、
     逆子であったそうでの。」

     「逆子。」

    「わしを取り上げたものの話では、
     皆があきらめかけた時、
     母の腹を、奥の者らが数人で、
     強くさすったとか。
     力を一にしての。
     母も気丈に、体を持ち上げて、
     声の限りに、神に祈りを
     捧げたそうじゃ。」

     「母上様が。」

    「己の命とひきかえに、
     この子をお守りくだされと。
     まさに時を同じゅうして、
     城の厩でも、
     産気づいた馬がおった。
     “風花”という名馬じゃった。」

     「風花・・・
      聞いた事、あります。
      確か、吹雪の母馬ですよね。」

    「さよう。」

    忠清の吐く息が白い。

    「誠に、不思議な事じゃがの。
     わしは、その時、母の腹の中で、
     くるりと体をまわしたらしい。
     そして、生まれた。
     喉が詰まっておったので、
     おなごたちが背中を強くたたき、
     わしは、詰まりものを全て吐き出して、
     やっとの事で産声を上げた。」

    唯の目に、涙が浮かぶ。

    「風花もまた、母上と
     同じ苦しみを味わっておっての。
     腹の仔が頭ではなく、
     足から出ようとしておった。
     それを、馬番たちが皆で
     引き出したそうじゃ。
     その仔馬は見事な毛並みの
     白馬であった。」

    「それが吹雪。」

    忠清が頷く。

    「その仔馬は、馬番たちの手で
     何とか息を吹き返したが、
     引き出すまでに時間がかかり、
     失のうた血が多すぎて、
     母馬の風花は息を引き取った。
     母上は、床上げの後、
     その話を聞き、風花が己の
     身代わりとなったのだと
     思うたらしい。
     城の皆もその様に申してな。
     風花が付けていた房飾りを
     鈴鳴神社に納め、丁重に弔った。
     その様な事も有り、
     わしが五歳の袴着の儀を
     終えた翌年に、吹雪は
     鈴鳴神社に奉納される
     はずじゃった。」

     「でも、奉納されたのは、
      確か、“新月”。
      何かあったんですか?」

     「吹雪は、他のどの馬よりも、
      わしによう、なついての。
      同じ日に生まれた故、
      幼き頃には、わしは、吹雪を
      まるで兄弟の様に思うておった。
      風花が母上の身代わりとなった
      と聞けば、哀れでもあり、
      感謝もした。
      何としても、
      この手の届くところに
      置いておきたかった。
      そしてのう。
      鈴鳴神社に奉納される、
      まさにその日に、
      わしは、吹雪の背に乗って、
      小垣城まで走ったのじゃ。」

     「それって、逃避行ですよね。
      しかも、たったの六歳で?」

    「そうじゃの。
     まさに、愛馬との逃避行じゃ。
     吹雪が、人であれば、
     さぞ、美しい姫であろうの。」

      「え?姫?
       吹雪って、メスなの?」

    「さよう。牝馬じゃ。
     お前、存じておらなかったのか?」

      「あ、はい。オスだとばかり。
       厩での仕事も、掃除や、
       馬糞の始末ばっかりで。
       それに、吹雪って、
       私が水桶を運ぶと、
       すぐにひっくり返すし、
       飼い葉をやろうとすると、
       私の袖をひっぱったりして。
       牝馬なら、相当な
       じゃじゃ馬ですよ?」

    「いや、そのような事は無い。
     平時には、穏やかで気品がある。
     そして、いざ戦となれば、
     勇猛果敢。
     その一方で、冷静さもまた失わず、
     わしの心をよく読む。
     まさに一心同体じゃ。」

      「若君様。
       吹雪の事となると、
       熱く語りますね。
       まるで、恋人みたい。」

    「ん。そうじゃの。
     恋人か。
     うまい事を言うのう。
     確かに、吹雪は、
     己を馬とは思うておらぬ
     やもしれぬ。」

      「えーーーー?!」

    いや、まさか、・・・
    考えたくないけど。
    でも・・・なんか、
    不吉な予感。。。
    今までオスだとばかり
    思ってたから、
    いたずら小僧で済ませてたけど。
    よーーーーく考えれば、
    思い当たる事、いっぱいある!
    厩でのあれやこれや。
    腕を噛まれた事も、
    一度や二度じゃないし。
    尻尾で、顔を叩かれたり。
    危うく蹴飛ばされそうになったり。

    もしかして、もしかして、
    私の最強のライバルは・・・
    吹雪???!!!

    あ“―――――――!!!!!

    忠清は、愛馬、吹雪との
    楽しい思い出に浸りながら、
    前を歩いて行く。
    唯は、もはや、パニック寸前。
    忠清の後をついていくのが
    精いっぱいだった。

      ・・・・・・

    その翌朝。
    唯は、登校するや否や、
    陸上部のコーチの部屋に駆け込み、
    冬季練習の目標を書いた紙を、
    コーチの胸に押し付けた。
    唯の必死の形相に、
    思わずコーチがのけぞる。

    「速川、書いて来たのか。
     やっとやる気になったんだな。
     よし、今見るから。」

    その紙を覗き込んだコーチが、
    目をむく。

    「はああ?
     な、なんだこれ?」

    そこには、こう書かれていた。

    速川唯の3つの目標。
     ばんえい競馬の馬より強く!
     三冠達成のサラブレッドより早く!
     吹雪より美しく!

    唯は、ランニングウエアで
    トラックに立っている。
    見上げれば、
    馬の形をした白い雲が、
    風に乗って流れて行く。
    その雲を追いかける様に、
    唯は靴を脱ぎ、裸足で走り始めた。

    ”吹雪~!
     いざ、勝負~!!!”

    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    あとがき
    ドラマでの若君の愛馬は、
    栗毛の“颯”ですが
    原作に登場する若君の愛馬は、
    白馬の“吹雪”となります。
    原作を背景にはしていますが、
    この物語は、全て、私の妄想です。

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    二人の平成Days36~19日19時、行っちゃえ~

    今日の若君は、感情が忙しかった。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはん。そろそろごちそうさまです。

    唯「まさか今夜が焼き魚だったとは」

    覚「お前が何度も言うから」

    唯「確かに言ってた、意味違うけど」

    若君「そういえば、尊」

    尊「なに?若君」

    若「服は買うたのだが、ほとんど尊のを借りたままじゃが、良いか?」

    尊「いいですよ。着慣れた服が楽でしょう?」

    美香子「いい買い物ができて良かったわ。若君、素敵だったわよ」

    若「ありがとうございます」

    唯「ねぇ聞いてっ!とうとう、」

    尊「とうとう?」

    唯「私の魅力で、たーくんを射抜きました~!」

    尊「やっと?」

    唯「うー、それは言うてはならぬ」

    美「試着した姿がね、若君のキュンのツボに入ったらしいの」

    若「キュン、とな。…言い得て妙じゃ」

    尊「ホントなんだ」

    美「でも、今日は一日色々あったから、疲れちゃってるかしら」

    唯「え、料理の練習、そんなスパルタだったの?!」

    美「違うわよ」

    尊「お母さんは教えてないよね」

    覚「厳しくなんかしてないぞ、若君は筋が良かったから。まあ色々、心揺さぶられる程に、って所だ」

    尊「ふーん」

    尊が若君の顔を覗き込む。

    若「なんじゃ?」

    尊「ちょっとぽや~んとしてるみたいですけど、調子悪い訳じゃないですよね?体、休めなくていいですか?」

    唯「えっ、うそっ」

    若「それはない。案ずるには及ばぬ」

    唯「ホントに?」

    その時、唯の手が若君の頭を撫でた。

    唯「疲れちゃった?大丈夫?」

    覚「あ」

    美「あ、すごい勘がいい」

    尊「は?勘?」

    そしてやはり弱点でした。

    唯「え?たーくん、顔赤くなってる!やだっ、やっぱり調子悪かったの?!」

    若「大事…ない」

    美「大丈夫。熱があるとかじゃないから」

    唯「え?そう?いつの間に診察した?」

    覚「それを言うなら、若君は唯に」

    尊「お熱だ、とか言う?」

    覚「何でわかった」

    尊「勘」

    唯「心配ないならいいけど。でも赤くなるなんて、たーくんかわいい!」

    尊「はいはい、続きは部屋でどうぞ」

    唯「なによ。食後なんだから、お茶くらい飲ませてよ」

    尊「そこ?」

    覚「はいお茶」

    唯「え?やけにスムーズに出てくるし」

    食卓が、どんどん片付いていく。

    唯「なんか、早くない?」

    覚「気のせいだろ」

    美「もう連れてって休ませたら?」

    唯「お母さん。部屋に行くイコール休む、では決してないのじゃ」

    尊「鍵かけたら豹変する?」

    唯「ありえる」

    尊「そんなん、知ったこっちゃないけど」

    唯「なんて無責任なっ!」

    若「ハハハ。では折角じゃ、部屋で少し休む。食事も終えた事だし。ん?確かに今日はいやに片付けが早いのう」

    唯「尊の部屋で一人で寝る?」

    若「何ゆえ避ける」

    唯「なんとなく。ウソウソ、一緒にゆっくり休もうね~」

    若「唯が休めるかは、わからぬが」

    唯「ちょっとー。全然元気じゃん」

    若「それでは、9時には下りて参ります」

    尊「はい。9時まで戻らなくていいですから」

    美&覚&尊「ごゆっくり~」

    三人で、バイバイと手を振る。

    唯「なによ、その盛大な送り出し」

    二人、二階へ上がって行った。

    尊「さてと」

    覚「さて」

    美「さて」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    19日のお話はここまでです。三人のさて、の続きは、またいずれ。

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    唯は何の花?

    若君にとって世の中のおなごは、唯or唯じゃないの二択(私見でーす)なので、お花に見えるくらいは当然だと思いますが、じゃあ何になぞらえたのか、という話を。妄想話のモチーフの、見解です(^_^;)

    現代の冬の和風の赤い花、だと山茶花や椿が一般的ですかね。山茶花の花言葉なんて、「困難に打ち克つ」とか「ひたむきさ」とか、唯そのものですし。

    山茶花自体は、古来より日本に生息する種のようですが、野生種は主に中国地方以西に分布していて、しかも白。園芸種は江戸時代になり発展した模様で、もし若君が永禄で赤い花を見ていたとしても、馴染みがなかったのではないかと思われます。

    椿は、首が落ちるのを想像して、武士には縁起が悪いと言われています。そうではないという説もあるようですが、総領としては、縁起も担ぎたいでしょうから、例えには使わないかなと。

    私は、若君にとって唯は、「初めて出会った、野原にぽつんと佇む、強くて可憐な一輪の花の蕾、咲く姿は未知の花」…なんじゃないかなーと思い、彼の想像を形にはせず、あえて〇〇の蕾とはしませんでした。

    ドラマ内の唯のテーマ曲、「ワイルドフラワー」は、青い花ですね。唯にぴったりだと思います。

    平成Daysは、クリスマス直前の話なので、ちょっと浮かれモードで赤い二人です。映像化したら絶対キレイだと思う~という野望、も、一匙入ってます。

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    二人の平成Days35~19日17時、腕の中で咲く花

    何がツボか、はまってみないとわからない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「たーくん?」

    若君「あ、あぁ唯。とてもかわいいよ」

    美香子「なんか、心ここにあらずね」

    唯、少し考えていたが、ふと思い出したように、天井を見あげた。

    唯「ねーねー、天の声~」

    美「天の声?」

    ……天の声といっても、天井に居る訳ではありません。

    唯「あ、居た居た。ねーねー、教えて。たーくんどうなっちゃったの?」

    そういうシステムではないのですが、今、この状態を解説なら出来ます。

    唯「えー、ぜひお願いしますぅ」

    若君、射抜かれました。

    唯「え…ホントに?!ずっきゅ~ん?」

    はい、ずっきゅ~ん。それでは、失礼します。……

    唯「えー、えー、ホントにそうなら超嬉しいんだけど!」

    美「ちょっと何?!今の」

    唯「え?ファンタジーだから、軽く流して」

    美「よくわからないけど。忠清くーん、起きてる?」

    若「…夢であろうか」

    美「えぇ?」

    唯「ねぇたーくん、この格好、気に入ってくれたの?」

    若君、首をコクっと。

    美「らしくないわねぇ」

    唯「んー、この萌え袖にキュンとしたとか?」

    若「萌え袖?」

    唯「袖が長くて、手がちょっとしか出ない」

    若「そうじゃな。それも良い」

    美「例えば、戦国時代には、こんなゆるくて体が中で泳ぐなんて服ないわよね。それが新鮮とか」

    若「それもあるやもしれません。何というか」

    唯「なに?」

    若「まるで、今にもほころびそうな蕾、の様にあまりに可憐で」

    美「あら綺麗~」

    唯「私が?やーん、嬉しいっ」

    美「忠清くんは、唯がお花に見えるのね。素敵ね」

    唯「やったー!しゃっ!」

    美「またー。せっかく花に例えてくれてるのに」

    若「ハハハ」

    美「ひとまず、気に入ったのはよーくわかりました」

    二着お買い上げ。

    美「あとはいいの?」

    唯「うん、いい、充分。ありがとう」

    アクセサリー売場の前を通過中。

    唯「お母さん、実はイヤリングだけ買ってあるんだぁ」

    美「あら、そうなの?」

    唯「昨日、たーくんと帰りに、一緒に選んだの」

    美「そう~。ワンピースに合いそう?」

    唯「うん、バッチリだった」

    美「当日、楽しみにしてるわね」

    唯「うん!」

    唯は、手を繋いでいる若君の方を全く見ない。

    若君 心の声(ずっと母上と楽しそうに話しておる。その横顔が、また良い)

    そろそろ帰ります。

    尊「えー、試作品、全部食べちゃったの?そんなにおいしくできたんだ。明日が楽しみだな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    がっつり、ペアルックですね。

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    血の気が引きます…

    ぷくぷくさん、どうか気を落とされずに。
    私も、実は二度、投稿の段階で原稿が一部消えた事がありました。慎重にコピペしてるんですが。
    以後は保険で、他にも保管しています。

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    またうやってしもぉた

    如古坊と成之の別れの場面
    行った後の成之の寂しそうな表情が可愛い(*^_^*)
    頬をギュウする場面を見て考えたのが二人が出会った頃の妄想
    (アシガール掲示板 №757 2019.8.8 13:31)にて。

    あ~またやってしもぉたぁ(>_<)
    宗熊の決意 第二章 
    USBに入れておいた他の物を使用している時に、何かをクリックしたら、その物もデータが消え、
    第二章の続きをしようと初めは画面に出たのに、一旦やめた時、6ページまで書いていた物が何をしたのかそっくり無くなっていた( ;∀;)
    たわけ!です(;_;)
    あ~途中まで印刷しておけば良かったと後悔(;_;)

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    二人の平成Days34~19日16時、伏せよ!

    危機管理能力が必要。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    出かける前に、若君お着替え。

    覚「また制服着せたのか、お前も好きだな~」

    お馴染みの、尊の制服。

    美香子「学校帰りに買い物に行く、って体だからいいの~」

    覚「趣味と実益だな。まあ、若君が嫌がってないからいいだろう。じゃあ、遅くなるようなら連絡くれな」

    美「じゃ、行ってきます」

    若君「行って参ります、父上」

    二人で、学校までプチドライブ。

    美「車はどう?前にも聞いたわね」

    若「この前、長く乗ったので幾分慣れました」

    美「慣れ過ぎて、馬に乗れなくなったら大変よね」

    若「疾風に嫌がられるやもしれません」

    美「あらそれは、一大事ね」

    若「ハハハッ」

    唯の学校正門前。車は少し離して停めた。

    美「どこかしらね…あっ、居た」

    唯にも気づいたが、こちらの若君の姿が、JKに気づかれ始めている。

    美「不穏な空気。若君、伏せて!」

    若「ははっ!」

    唯が全速力で走ってきた。車のドアを開けると、小さく潜んでいる若君発見。

    唯「お待たせ、あっ」

    若「おかえり…唯」

    唯「…直ちに退却!」

    JKが群がる前に、安全に出発できました。

    唯「あー危なかった~」

    美「唯の足が速くて助かったわ」

    唯「ところで、どこ行くの?」

    美「ショッピングモールが、一番豊富かなって」

    到着しました。

    若「床が、硬くない」

    唯「そうだね。歩きやすいからかな?」

    若「走るのも楽そうじゃ」

    唯「走る用では、ない」

    プラプラしてます。

    美「どうしようかしら~。あ」

    外国産のファストファッションの店。

    美「唯のはともかく、忠清くんのは見つかるかも。入りましょ」

    メンズ服売場。

    唯「どんなのがいいかなー?」

    若「どんなでも」

    唯「だよねぇ」

    美「こちらでは、ジャージや制服しか着せてないからね。セーターとかどう?」

    色もカラフル。

    唯「わー、いっぱい。真っ赤とかある」

    ディスプレイに、赤のオフタートルのセーターが掛かっている。

    美「赤。忠清くんには新鮮ね…戦国では絶対着ないでしょ」

    唯「うん。多分これからも」

    美「一度着てみる?」

    若「はい、お母さん」

    フィッティングルームへ移動。着ました。

    唯「うわぁ~いい、いい!超好き~!」

    美「あら…何着ても素敵だろうとは思ったけど、こんなに似合うなんて」

    血色を思わせるその色。肌の透明感が増し、唇がより赤く感じられる。緩い首元から鎖骨が少し覗き、爽やかな色香が放たれている。

    唯「ねえねえ、たーくん、肘まで袖まくって」

    若「袖?上げるという事か?」

    凛々しいながら優しい顔立ちとは裏腹の、鍛えられた腕が現れた。

    唯「いい、いい、すんごくいい~っ!くらくらしちゃうぅ。決まり!」

    美「唯って腕フェチだったっけ?忠清くん、着心地はどう?首、チクチクしない?」

    若「暖かいですし、首…も、はい大丈夫です」

    美「悪くないならそれにしちゃおうか。眼福だったわ~。…あ、ん?」

    唯「どしたのお母さん」

    美「唯、売場で、このセーターのワンサイズ下のを持ってらっしゃい」

    唯「え?同じので?」

    美「地が厚いから、女の子だとワンピースとして着られるかも」

    唯「へー、そっか!お揃いはベタだけどやってみたーい!取ってくる~」

    走っていった。

    若「同じ物を着るという事ですか?」

    美「試しにね。こんな経験ないわよね?」

    若「おなごと同じはないです」

    美「じゃあせっかくだから」

    唯、着替えてます。中から声がする。

    唯「お母さん」

    美「なぁに?」

    唯「これでも大きいんじゃないかなぁ」

    美「見せてみて」

    カーテンを開けて出てきた。

    美「あら、かわいいじゃない」

    すると、若君の様子がまたおかしい。

    若「…」

    唯「たーくん、どしたの?目がうつろだよ?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ちなみに、泣いてはいません。続く。

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    はーるか遠き所より参った守り神だから

    ぷくぷくさんへ
    唯が関わった人々が、幸せになっていく様はいいですよね。
    この別れの後、兄上は角がとれて色っぽくなってるし、如古坊はワイルドになってるし。シフト具合が好きです(^o^)

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    最終回の隙間 如古坊と成之

    唯が忠清の正室になる許しをもらい、藤尾に指導を受けている頃、如古坊は、

    (成之も母上様も良い顔をしておる。案ずることも無かろうが、だがいつ戦が起こるかわからぬ。わしも手助けできるよう強うならねばの。修行に出ようかの)

    そう考えている側に成之が、

    「如古坊、何をして居るのだ?」
    「ん」

    奥御殿の方から唯を呼ぶ藤尾の声が聞こえてきた。

    「唯がまた逃げたのかの、ハハハ」
    「その様じゃの・・・だが」
    「ん?成之?」
    「唯と初めて会うて、男の形(なり)をして居るが、女子(おなご)ではないかと思うた」
    「そうだったのか。あの折、わしは唯を見ても女子とは分らなかった」
    「そうか。一度、山で会うたが、忠清の側に居りたいので己を城にと申しておってな、阿湖殿との婚儀を伝えた折、驚き様で、こ奴はやはり女子だと」
    「わしは、山中でお前たちが我らを迎えに来て、撃たれたが大事無いと申す途中で忠清が血相変えて走り出したが、その慌て振りが分からなかったが、お前に唯之助は女子だと聞いて、驚いた」
    「あの者は立ち振る舞いも女子であるのに、誰も気づかなかったの。木村、小平太殿も驚いておった」
    「そうか。忠清は出会うた頃より知っておったのだろうか?」
    「ん。あの折、我らの企みを知った唯に酒を飲ませた事があったであろう」
    「あぁ」
    「あの折は、忠清は女子と知っておったと。想いもあった事もあの顔を見ておれば分ったが、いつからであるかは私も分からぬ」
    「そうか」
    「だが、唯が、我らの前に現れた事で、今はこうして母上も穏やかに暮らす事ができる。あの者が現れておらなんだら、私はどうしておったであろうか」
    「分らぬ?」
    「ん」
    「分らぬで、それで良いではないか。これより先は、母上様もお前も己を大切に生きるのみ。そして、忠清と力を合わせて参れば良いだけの事」
    「そうだな・・・」

    すると、成之が手を付き頭を下げた。

    「成之、どうした?」
    「お前に詫びねばならぬ」
    「何をだ?」
    「あの折、お前に刃を向けた」
    「あの?・・・あぁ、わしは向けられたとは思うておらぬ。驚きはした。足元に突き刺した事にはの」
    「すまなんだ・・・この通り」
    「もう良いではないか。わしは言ったであろう、お前を裏切る気持ちなど持たぬとな。死にとう無ければと物騒な事を言ったが、わしにはお前の瞳が悲しんでいるのが見えた。だから理由(わけ)は分らぬが、もうここには戻らない方が良いと思うたのだ」

    成之があの時に見た母の恐ろしいほどの形相を如古坊は見ていない事が分かっていたから、久の思ひを話すべきではと。その上でもう一度、詫びる事にしていた。

    「理由は」
    「今更聞いてどうする、お前を恨む事はしたくないのでな。あっ」
    「どうした?」
    「山中を逃げておる折にの、忠清と唯に、お前に殺されかけたと申してしもうた」
    「まことの事じゃ」
    「ふっ」

    如古坊が笑い出した。

    「如古坊?」
    「いやなぁ、唯と睨み合った事を思い出しての。あいつは、おかしな奴だよ」
    「そうだな」
    「わしも、唯と出会うて良かったと。だが、成之もこの話は唯には申さぬ方が良いぞ」
    「何故?」
    「つけあがるだけじゃ。アハハハ」
    「あぁ」

    如古坊は表に降りて、

    「成之」
    「ん?」

    成之も出て如古坊の隣に。

    「わしは、しばし旅に出ようと思うておる」
    「えっ?」
    「決めたのじゃ」

    そう言って成之に抱き着いた。

    「にょ・・・如古坊?」
    「はぐと申すのだそうだ」
    「はぐ?」
    「いつぞや、阿湖姫と唯が笑いながらこうして抱きおうておった。女子同士でと申したら、唯が男も女も構わず想う人と抱き合う事をはぐと申すのだと」
    「そうか、まこと面白い女子じゃ」
    「そうだな」
    「いつ発つのじゃ?」
    「時期にの」

    そして、成之に見送られ旅立った。

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    一方通行の私ですみません

    てんころりんさん、夕月かかりてさん、妖怪千年おばばさん、皆さん
    感想をありがとうございます(*^_^*)
    以前にも書きましたが、妄想は書けるのに言葉が見つからず妄想作家さんへの感想を書く事が出来ず、
    自分の妄想ばかりで、本当に一方通行になってしまいます。申し訳ございません(;_;)
    妄想の世界にどっぷりのこんな私ですが、これからもお付き合い下さい(^_^;)
    一つ、妄想の中で如古坊が「お袋様」と言葉にした事について、普段から母としたっている如古坊は「母上様」と言っていたけれど、この時は自分の母では無いと思い知らされた感で、お袋様と言ったのだと(^_^;)
    そんな事を考えていたら、その後の二人についての隙間が妄想できたので、またまたすみませんが書かせて頂きます。
    アシガール沼 妄想町1丁目1番地 住人より

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    二人の平成Days33~19日12時、笑顔を見せてね

    心が、求めていたんです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    玉ねぎをバターで炒めてます。

    覚「料理らしい過程は、実はこのくらいしかないんだ。ほとんど炊飯器にお任せだからな」

    美香子「デビューにちょうどいい感じ?」

    覚「失敗は少ないな。オムレツの方が高度だ」

    若君「あとどのくらい、炒めますか?」

    覚「そろそろいいな、米入れるよ。そのまま続けて」

    美「ん~、いい!いいわ~」

    覚「ギャラリーは静かに」

    鯛が入ります。

    覚「米の上に乗せて」

    若「このままですか?」

    覚「大丈夫だよ」

    炊飯器の蓋を閉め、スイッチオン。

    覚「さて、あとは炊き上がりに少し手を加えるだけ」

    若「ありがとうございます、父上。あの、オムレツですが、父上がどう作るか見たいのですが」

    覚「オッケー」

    美「さぁ面目躍如なるか」

    さすがの腕前であっという間に完成。

    若「何となく、掴みました」

    美「ホント~?」

    覚「じゃあ、早速」

    忠清、行きま~す。

    覚「おっ、いいよいいよ、トントンと」

    美「出来てる出来てる」

    若「動きません」

    覚「慌てないで、よし、お皿に出せる?」

    75点くらいのオムレツ完成。

    美「すごーい!ホントに掴んじゃったわ」

    覚「僕の出る幕ないなあ」

    若「父上の指南の賜物です。ありがとうございます」

    ピラフ炊き上がりました。

    覚「あおさ海苔を入れて、蒸らす。少し待って、混ぜて出来上がりだ」

    若「はい」

    お昼ご飯、出来ました。

    美「感動だわ~」

    覚「さっ、じゃあ、いただこうか」

    全員「いただきます」

    若君が、覚と美香子の顔色を伺っている。

    美「おいしーい!」

    覚「おっ、うまいなぁ。若君も食べてごらん」

    若「あ、美味いです」

    美「上手だったわよ~。明日の本番は万全ね」

    若君の様子がおかしい。

    美「え?どしたの若君」

    覚「え?殻や骨とか入ってた?」

    涙ぐんできた。

    美「えっ、何で?!」

    若「…心の底から、じんわりと、温かくなりました」

    泣きそうな若君を前に、しばらく沈黙。

    覚「…そうか。嬉しい感じ?」

    若「はい。求めていた物が手に入ったような」

    美「手に入ったのよ、忠清くん」

    美香子が席を立ち、若君の後ろへ。そのまま後ろからそっと抱き締める。

    若「母上…」

    美「すっかり泣き虫さんになっちゃって、この子は」

    落ちる涙が、若君のエプロンを濡らしてゆく。

    覚「唯が知ったら、また泣かしたな!って怒られるな」

    美「あら、こういう泣かせ方は、唯にはできないからいいのよ」

    若「父上母上の優しさが、心に染みました…ありがとうございます」

    覚「いや。忠清くんは、僕らの大事な息子だから、お礼なんか言わなくていいんだ」

    若「えっ?」

    覚「親が注ぐ愛情なんて、こちらからの一方通行としたもんなんだ。愛をありがとうなんていらないよ。忠清くんが元気で笑ってくれてればいい」

    若「父上…」

    覚「さぁ、冷めちゃうから食べような。って、わー!また泣いてる!」

    美「あーあ」

    覚「え~?僕、悪者?」

    若「いえ、…あはは」

    団欒は、しばらく続きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いっぱい、甘えていいんだよ。

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    二人の平成Days32~19日水曜7時、泣けちゃう!

    練習の残りでいいから、食べさせて。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「料理って、焼き魚じゃあないよね」

    覚「それはとっくに手伝ってもらってる」

    美香子「じゃ、行くわよ唯。行ってきます」

    唯「行ってきまーす!たーくん、夕方にね」

    尊「若君、頑張ってね。行ってきまーす」

    若君「行ってらっしゃい、母上、唯、尊」

    一気に静かだ。

    覚「さてと。ピラフだから一品だけでもいいけど、他に挑戦したい料理あったりするかな?」

    若「もしできるならば、あの、卵を使って」

    覚「卵?何だろう」

    若「父上が、鉄鍋をこう上へ下へと操っていました」

    あおるような仕草。

    覚「あー、オムレツかな?」

    若「名前は、わかりません」

    覚「こういう動き?」

    フライパンを持ち、柔らかいオムレツを整えるように手首をトントンと叩く。

    若「そう、それです!父上の術じゃと思いました」

    覚「そうか~上手く形を作るには練習あるのみだな。まあ若君はセンスあるから、大丈夫だと思うけど」

    若「扇子?」

    覚「うわっ、やっちゃった」

    若君、前にもどこかで聞いたな、と笑顔。

    覚「卵かー、在庫がちょっと心細いから、少し練習して昼前に買いに行こう」

    若「はい!」

    美香子帰宅。テーブルの上の試作オムレツを眺めている。

    美「まだ、何作ってるか当てられないレベルかな」

    覚「これからこれから」

    若「励みます」

    美「いいのよ~学ぼうっていう気持ちが素晴らしいわ。ウチの二人は、座ればご飯が出てくると思ってるから」

    若「それは、父上の作る飯が全て美味いからでは」

    美「違うなーきっと。だって若君は教わろうと思ってくれたじゃない」

    若「父上を尊敬しておるので。いや、唯や尊がそうではないという意味ではありません」

    覚「尊敬だって。嬉しいなあ」

    若「もちろん母上も尊敬しております」

    美「んまぁ~嬉しい!ウチの子になる?あ、ウチの子だったわ」

    美香子、手を伸ばして若君の頭を撫でた。

    美「ホント、いい子」

    若「ありがとう、ございます…」

    若君の顔が、赤くなっていく。

    美「いやん、照れちゃった?かーわいい~」

    覚「おいおい、唯の居ない所でいいのか~?」

    若「いや、その」

    美「案外弱点だったりしてね」

    覚「完璧に見える若君にも、そんな可愛らしい所があったんだな」

    卵、大量。

    美「ある意味、失礼な量よね」

    覚「心おきなく練習するため、と言ってくれ」

    若「すみません。無駄にせぬよう励みます」

    覚「じゃあ、ピラフの準備から。まずは玉ねぎのみじん切りな」

    若「微塵に、切る」

    覚「うわっ、若君が言うと僕が斬られそうだ」

    頑張って、みじん切り。

    若「目が痛うなってきました。父上はこのような苦労をされていたとは露知らず、今まで難儀をかけすみません」

    覚「こんな時まで労ってもらえるなんて」

    美「もっと早くウチの子になって欲しかったわ~」

    覚「あー、そのくらいでいいよ。この後炒めるから、ひとまず顔洗っておいで」

    若「はい、行って参ります」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    生まれながらの親子でも、こんなに仲良くないよ。

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    デートは何度でも

    妖怪千年おばばさん、ロマンチック夜デートですねぇ。覚父さん、可愛いです。

    唯と若君のデートの様子は、今までも数多の妄想作家様が描かれています。これからも現れるであろう作家の皆さんも、いろんな場所に行かせてやって欲しいなーと思います。もう、365日デートでいいんじゃない?

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    兎角この世は その3 ~満月はイブの前 こぼれ話 覚編~

    はじめに
     娘の可愛いさは、ひとしおとか。
     父親が、娘の恋人を目の前にし、
     しかも、“祝言を上げた”と事後報告
     された時の気持ちって
     どんなものなんでしょうね?
     って事で、ドラマや原作の中では、
     常に二人に理解を示す
     唯パパ・覚さんの、本音を
     ちょっぴり書いてみました。
     
    ~~~~~~~~~~~~~~~~

    相賀の手から逃れ、黒羽城から
    二人で平成に飛んで間もない、
    ある朝の事。
    部活の朝練に行こうと、
    自転車置き場へ向かう唯に、
    忠清が声をかけた。

    「早いの。もう、登校するのか?」

     「はい。
      春の記録会に向けて、
      コーチが特別メニューを
      組んだみたいで。」

    「特別な段取りという事か?」

     「え?
      まあ、そうです。
      少しでも早く走れるように
      なれば、永禄でもきっと
      役に立ちますから。」

    「ん。良い心がけじゃ。励め。」

     「では、行ってきま~す。!
      あ、帰ってきたら、
      駅前のイルミネーション、
      一緒に見に行きましょうね。」

    「入見?なんじゃ、それは?」

     「行けば分かりますよ。
      キラッキラのピッカピカです。」

    「綺羅の飛花?」

    “唯の言葉はまるで呪文じゃ。”

    意味が分からなくても、
    唯の笑顔につられて、
    忠清はつい笑ってしまう。

    唯は、口元まで
    マフラーを巻き直し、
    若君に手を振ると、
    勢いよく自転車をこぎだした。
    玄関で覚が聞き耳を
    立てていたとは知らずに。

     「ふううん。駅前ねえ。」

    覚がつぶやく。

    ランニングウエアに着替え、
    校庭に出て、トラックを軽く
    走り始めた唯を、コーチが呼んだ。

    「おーーーい、速川。
     今日から、体育館に
     集合って言っただろ?」

    唯はそのままトラックを一周し、
    体育館に入った。
    体育館の一角に、
    見慣れぬ器具が並んでいる。
    まるで、スポーツジム状態だ。

     「ど、どうしたんすか?これ。」

    「開校100年の記念事業の一環だ。」

     「へ?
      ウチの学校、
      結構、歴史あるんですね。」

    「晴れて陸上部が、
     最初に使用する栄誉を得た。」

     「あ、陸上部専用って訳じゃ
      ないんだ。」

    「そう言うなよ。
     これでも、頑張って、
     朝練の時間帯の使用許可を
     貰ったんだ。」

    トレッドミルには、
    モニターもついていて、
    姿勢のチェックができる。
    早速、乗って走ろうとする唯を、
    また、コーチが止めた。

    「速川、まずは、ストレッチだ。
     寒い季節は特に、
     良く体をほぐさないと、
     怪我の元だぞ。
     それと、お前、
     これ、早く提出しろよ。」

    コーチは、記録会に向けての
    目標タイムの記入用紙を、
    唯の頭の上乗せると、
    他の部員の所へ走って行った。

    唯は、部室のロッカーに
    その用紙を放り込んで、ふと思う。

     “記録会かあ。その頃、
     私は何してるのかな。
      若君と、遠乗り・・・なんてね。
      それより、今日は、部活の後、
     思いっきりロマンチックに
     デート!“

    頭の中は、すでに
    あのクリスマス定番のメロディーで
    いっぱいだ。

      ♪恋人はサンタクロ~~ス♪

      ・・・・・・・・・・

    最近整備された駅前のロータリーに、
    大きなクリスマスツリーが
    飾られている。
    駅からタクシー乗り場に続く
    通路の庇や、花壇にも、
    小さな電球がたくさん
    取り付けられていた。
    大きな買い物袋を抱えた主婦や、
    家路に向かうサラリーマンが、
    立ち止まって、
    駅の時計台を見つめている。
    学習塾帰りの子供たちが、
    コンビニの前に集まって、
    大きな声でカウントダウンを始めた。

    「何事が、始まるのじゃ?」

     「もうすぐ、分かりますよ。」

    唯は楽しそうに、子供たちの声に
    自分の声をあわせる。

     「さん、にい、いち、ゼロ~!」

    駅前に光が溢れ、歓声が上がる。
    それと同時に、時計台の扉があき、
    旗を上下に振る人形が現れた。
    その後を、音楽隊が続く。
    大きな太鼓を打ちながら、
    首を左右に動かす人形を指さして、
    よちよち歩きの子どもが
    はしゃいでいる。

    左右に分かれた
    音楽隊の真ん中から、
    ひらりと、バレリーナが飛び出す。
    くるくると回りながら、
    次々と入れ替わる人形を、
    忠清は目を丸くして見上げている。

    オルゴールの音色に併せ、
    駅舎の前面に次々と
    放射状の光が走る。
    それは、まるで、
    流れ星の群舞の様。

    「美しい!
     まるで、夜空の星が、
     全てここに舞い降りた様じゃ。」

    曲が終わり、人形たちが
    時計台の中に消えて行く。
    忠清は、また、人形たちが
    出て来るのではないかと、
    暫くの間、その扉から
    目を離さずにいた。

    一方、唯はといえば、
    若君の横顔ばかり見つめていた。
    今の忠清は、まるで少年の様に
    キラキラと目を輝かせている。

    “血なまぐさい戦場から離れれば、
    若君はこんなに
    あどけない表情をみせるのね。”

    「皆を誘えば良かったの。
     尊や、父上や母上も。」

     「ですよね~。」

    忠清の声に、
    明るい声で答えながら、
    唯は、思わずうつむいてしまう。

    “今は、私だけを見て欲しいのに。”

    その思いを振り払うように、
    唯は、ツリーの前で
    忠清と二人で撮った写メを尊に送った。

    「そろそろ、帰りましょう。」

    唯は、忠清のコートの袖を引き、
    商店街の裏手にある
    ひっそりした遊歩道に入る。

    「ん?来た道と違うようじゃが?」

    遊歩道の木が、
    淡いピンク色に輝いている。

     「駅前ほどじゃないけど、
      こっちもなかなかですよ。」

    「あちらの方角が、黒羽城じゃの。
     とすると、ここは外堀あたり
     であろうか?」

     「大正解~。
      外堀跡が、今は桜の名所に
      なってるんです。」

    「さようか。
     戦の無き世では、堀は無用か。」

     「内堀の水堀は、
      まだ、少し残ってますよ。
      カルガモの堀として
      人気があります。
      それから、障子堀も。
      水をひいて、
      植物園になってます。
      夏には蛍も飛びますよ。」

    「そのような安らぎの場に
     なっているのは、
     喜ばしい事じゃの。
     例え、羽木の名が
     残っておらずとも。」

     「若君・・・。」

    唯が突然足を止めた。
    少し前を歩いていた忠清が
    振り向く。

    「如何した?」

     「その・・・。
      若君の立場はわかります。
      でも、あの・・・
      忘れませんか?
      せめて、家に帰る間だけでも。
      皆の事。」

    「唯・・・。」

    忠清が、ゆっくりと近づいて来る。
    唯は、無意識の内に後ずさる。
    そして、桜の木の根を踏んで
    止まった。

    忠清が、桜の木の幹に右手を置く。
    左手が、そっと
    唯の顎の下に添えられる。

     “これって、もしかして、
     目をつぶるシーン、再び?”

    忠清の熱い息が頬にかかる。
    瞬いていた瞼を、唯が閉じた。

    まさにその時の事。
    唯のスマホが、
    大音量で鳴り出した。

     ♪チャンチャラチャラチャラ
      チャッチャッチャー♪

    唯が慌ててスマホを取り出す。
    すぐに尊の声が流れた。

     「お姉ちゃん。
      すき焼き、先に
      食べちゃうよ?」

    そして、黒毛和牛を
    箸でつまみあげた、
    満面の笑顔の尊の写メが届く。

    美味しそうな肉を見た途端、
    唯のお腹が大きく鳴った。

    忠清が、笑い出す。
    そして、あの名台詞。

    「お前は、まこと、面白い!」

      “もう、尊のやつ~!
       良い所だったのにい!”
       
    唯は、ガックリと肩を落とし、
    大きなため息をついた。

    実はその時、遊歩道の暗がりで、
    黒い影がガッツポーズを
    決めていたのだが、
    唯と忠清は、
    全くそれに気づかなかった。

    その影は、
    二人がまた遊歩道を
    歩きだしたのを確かめると、
    もと来た道を走り抜け、
    商店街の人ごみに消えた。

    その人ごみの中で、
    その影は、ふいに肩をポンと叩かれた。

    “まずい!
     二人に見つかったか?”

      「覚さん?」

    首をすくめた覚が、
    恐る恐る振り返ると、
    そこにいたのは、
    速川クリニックの看護師、
    エリさんだった。

      「どうしたんですか?
       今夜は、すき焼きだって
       張り切ってたのに?」

    「あ、いや、それが。。。」

    うろたえた覚の目が泳ぐ。
    エリの買い物袋から、葱が
    飛び出しているのが見えた、

    「そう、ね、葱。
     葱だよ。
     葱買うの忘れちゃって。
     そこの八百ハチの
     “深谷ネキ”の売り出しチラシを
     思い出して、慌てて来たんだけど、
     もう閉店でさ。」

    エリさんは、買い物袋から、
    葱を2本取り出すと、覚に渡した。

      「どうぞ。私はぎりぎりで
       買えましたから。」

    「え?良いの?」

      「実は、美香子先生から、
       さっきお肉を分けて
       いただいたんです。
       クリニック宛ての
       お歳暮だから、
       私と芳江さんにもって。
       葱、2本じゃ、
       かえって申し訳
       ないんですけど。」

    「そうなんだ。
     じゃあ、遠慮なく。」

    エリさんは、買い物袋を
    軽々と持ち上げて振ると、
    帰って行った。

    その後姿を見送って、
    覚はほっと、胸をなでおろす。

    家路につきながら、覚は思う。

    “娘の幸せを願わない親はいない。
    でも、ケジメはつけないと!
    事情が事情とはいえ、
    若君からの正式な申し出は
    まだなんだから。“

    絶妙な、タイミングで鳴った
    唯のスマホの“三分間クッキング”の
    メロディーを思い出し、
    覚は、両手に持った“深谷葱”を
    振りながら、
    夜空に向かって叫ぶ。

     「尊~!グッジョブ!!!」

    流れ星が一つ、
    覚の目の前を通り過ぎて消えた。
    まるで、“ヤレヤレ”
    とでも言っている様に。

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    寒波の後は

    皆様、こんにちは。
    今日はちょっぴり温かいです。
    1月も早半ば。
    時間をちょっと戻しまして、
    クリスマス前のお話を、
    もう一つ書いてみました。
    これから投稿します。
    よろしくお願いいたします~。

    ぷくぷく様
    如己さんは成之母を、
    自分の母親の様に慕っていた
    のですから、あの回は、
    見ていて辛かったですね。

    てんころりん様
    感想有難うございます。
    今年はなるべく”ほっこり笑える”
    お話にチャレンジしたいと思います。

    夕月かかりて様
    仲良し速川家のストーリー、
    益々、楽しみです~。

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    二人の平成Days31~18日火曜20時、腕が鳴るよ

    何着てもかわいい、とは言いそうだけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    この時季、テレビはCMもニュースもクリスマス一色。

    唯「う~ん、いい!クリスマスはロマンチックでときめいちゃう。ねっ、たーくん」

    若君「ん?何がどうだと?」

    唯「うぅっ、ダメだぁ、いつも空振りってわかってるのについ聞いてしまうぅ」

    尊「そういうのは、長年の刷り込みだから。クリスマス、イコールロマンチックは若君には無理だよ」

    若「近々、その何やらで出かけると聞いておるが」

    唯「そう!クリスマスイブイブイブデート~!ぐふふ」

    尊が、指折り数えている。

    尊「…土曜か」

    美香子「デートはいいけど~、男の子が二人居るような格好で行くの?ちゃんとデート服考えた?」

    唯「んー考えたような考えてないような」

    美「9時過ぎでいいから、一度クローゼット見せなさい。ダメ元で」

    尊「ダメ前提か、だろうね」

    9時。唯の部屋。

    美「まず、スカートがないわね」

    唯「制服しか」

    美「スカートじゃなきゃダメとは言わないけど、どうにも色気が皆無というか」

    唯「そりゃあ、たーくんを、ずっきゅ~んと射抜くくらいの、かーわいい格好はしたいけど」

    美「じゃあ、明日買いに行く?朝は車で送るし、夕方は私が若君連れて、学校に迎えに行ってあげるわよ。そのまま買いに行けるから」

    唯「うーん」

    美「あら、話に乗ってこないなんて珍しい」

    唯「買ってもらおうかな、とはちょっとは考えたんだけど」

    美「そう?」

    唯「たーくんの分も、できればと思ったけど」

    美「そりゃそうよね、何が嫌なの」

    唯「嫌なんじゃなくて…」

    美「何?」

    唯「一回しか着ないから、悪いなって」

    美「一回…」

    二回目はない。別れが迫っている事実と直結してしまう。

    美「いいわ、明日行きましょ」

    唯「えっ、いいの?」

    美「若君に、唯のかわいい格好見せてあげたいし、若君のいつもと違う感じも見たいし。その貴重な一回を、私達に見せて欲しいから」

    唯「わあ!ありがとう、お母さん!」

    ぴょん、と抱きついた。

    美「うふふ」

    唯「うふっ、やったぁ~」

    唯を残し、美香子が下りてきた。

    美「尊は実験室?」

    覚「ああ」

    美「珍しく若君がこっちに居るわね」

    若「はい、父上に教えを乞うていました」

    覚「朗報だぞ、なんと若君が料理に挑戦だ」

    美「え~!イケメンシェフ誕生?!どうしたの?」

    覚「さっき料理番組を一緒に観てて、あ、材料全部今なら揃ってるって呟いたら」

    若「作らせて欲しい、と僕から願い出ました」

    覚「録画はいつもしてるから、見直してメモしてたところだ」

    美「すごーい。まだ内緒?」

    覚「内緒にしなくてもいいが、練習はした方がいいだろうな。明日にでもして、本番は木曜の夜にするか」

    美「あ。びっくりして言い忘れそうだったけど、明日朝、唯を学校まで送るから私」

    覚「何かあるのか?」

    美「で、若君、夕方私と一緒に出て、唯を学校に迎えに行くからよろしくね。土曜日のデート服買いに行きます」

    覚「おー、そうかそうか。じゃあ、明日の昼ごはんで試しに作ってみような、若君」

    若「ありがとうございます、父上。で、母上、服を?」

    美「うん。何か質問?」

    若「一度しか…」

    美「しっ!それ以上言わない~。気は回さなくていいから」

    若「わかりました。唯とそう約束したのですね」

    美「さすが若君!だから、ただ楽しみにしててね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日もイベント目白押し。

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    返信
    いつもありがとうございます

    ぷくぷくさんへ

    成之は、二人とも守りたかった。如古坊は突き放す事で守り、久は暴走を未然に防ぐ事で守り。
    この回のシーンは、サスペンス劇場のようだったなと思い出されます。ともすると冷たい奴にしか見えない兄上の、心のヒダを描いていただきありがとうございました。

    てんころりんさんへ

    息切れまでさせて、すみません(>д<)いつも細かく感想をいただけて、大感謝です。大変励みになります。ありがとうございます。
    若君には、まだまだ平成を満喫してもらいます。いつまで書いとるんじゃ!と言われても、できるだけいつまでも、でございます。なので、ご無理はなさらずで、お付き合いくださいませ。

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    感想:12月31日~1月13日

    2週間でこんなに❗別に書きましたが、梅とパインさん【小笑いタイム】ぷくぷくさん【想い】もあります。
    追い付きました。(;゚;Д;゚;; )ハアハア‥息切れ
    遅れて来た方に案内にもなればと、極力まとめて書かせて頂きます。

    妖怪千年おばばさん

    【竜の泪】【兎角この世は】【兎角この世は その2】
    No.432_唯パパ覚の専門は宇宙工学!考えも及ばなかったですが、方向性はやや尊に引き継がれてますね。
    スペースシャトル チャレンジャー号の悲劇を思い出しました。合掌。
    ☆カマアイナさんは当日フロリダに滞在中で、ハワイの空港には、オニヅカ氏に敬意を表し記念館が長くあったお話、心に響きました。
    No.441_鐘ケ江家の二の姫は小平太を密かに想っていた!
    嫁ぐ前に知らされても困っちゃう。
    いや、にぶい誰かさんのせいで どうにもならなかったので、せめて最後にという事か。小平太の絶叫と鐘の音がダブって聞こえました。(^^)v
    No.459_母美香子の薦めで唯は“合気道”を習得中!
    元々 体を動かす事は得意で上達は早そう。
    夜中に寝とぼけた若君が、唯の部屋に間違えて侵入したもんで… 抱腹絶倒の展開に ?。
    カラスも笑っておりましたかぁ。アシガールでは烏, 蛙, 馬も時に笑いますね。

    夕月かかりてさん

    【平成Days番号未定】【平成Days 25】~【平成Days 30】
    No.433_12/23の満月で戦国へ帰った2人から元旦に年賀状が届いた!これからの平成Daysで書くそうで待ってます。
    No.437_露天風呂は目をつぶって通ります?。
    家族に何を騒いでいたのか聞かれた2人は『興が乗ったまでのこと』?アハハ‥
    No.443_市場で魚介類を買い込み、お父さんは残り少ない平成Daysに、料理の腕を振るいたかったのね。娘を嫁がせる(た?)父の困惑振りが、可笑しく切なく ジ~ンときました。
    No.449_ホームセンターへ。パーティーグッズやらDIYコーナーやら。若君が母娘2人の時間を作ろうと気遣うのが麗しく、両親が若君を誉めるのが麗しく、戦国の若君らしく家長のお父さんに従うのが麗しく…。
    No.456_私はゲームに疎くジェンガを知らず調べたら動画まであって助かりました。
    ジェンガを手造りし、パーツに皆の名を書く。面白い良いアイデア、若君のアイデアですが、つまりは夕月さんのアイデア!
    No.461_残りのパーツにはこれから生まれてくる子や孫の名も書く❗
    ファミリーツリーみたいな壮大なジェンガになりますね。
    勘兵衛さんや阿湖姫や孫四郎… 戦国の皆の名もあって、速川家にも1セット置いてあげたくなります。あ、プリントして名前は残るのかな?
    No.467_尊は若君の師匠!そうですね、若君は戦国では知り得なかった多くの事を尊から学んだでしょう。そして尊も若君から学んだ事があったでしょうね。2人が敬い合い 仲の良い兄弟っぷりが麗しいです。ここでもジ~ン。

    ぷくぷくさん

    【つのる想い】【想う心】
    No.465_若君が嘘をつくまでして、唯を現代に帰した理由は理解できます(7-8話)。
    ドラマでは唯が直ぐ復活、私は心が付いて行けませんでした。
    復活までの隙間を埋めて下さってありがとうございました。
    若君には本当の事を唯に話して唯と話し合ってほしかったけれど、それではアシガールじゃなくなります。f(^^;
    No.469_兄上は 如古坊と母上の板挟み(9話)。
    兄上にとって2人は とても大切な人。如古坊を去らせ、自分は母と運命を共にするしかなかったですね。辛い選択 (;ω;)。
    どう如古坊を突き放したか、ぷくぷくさんの物語では、兄上は刃を向けることは出来ず、如古坊は察して離れて行ったように思えます。

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    【想う心】

    久が如古坊に頭を下げ礼を言っているが、言葉とは裏腹にその表情は鬼の形相。しかも囲炉裏の炎で恐ろしさが一段と増している。成之は母の顔を見て驚いた。

    「では、林に行って参ります」

    如古坊は自分の様な者に頭を下げてくれた久への礼に、時季ではないが甘い汁を飲ませようとツルを集めに出掛けて行った。

    「わたくしは、少し休みます」
    「はい」

    寝床へ行く久の後姿に成之は一抹の不安を覚えた。

    (もしや、母上は如古坊を手に掛けるのではなかろうか。その様な事は決してさせてはならぬ。手立ては・・・)

    成之は考えて答えを出し、如古坊の元へ。
    幼き頃よりずっと一緒に居た友と別れなければならない。だが、そうせねば母も如古坊も助ける事は出来ない。辛い気持ちを抑え、ツルを切っている如古坊の側に行った。久の為に嬉しそうにツルを切る如古坊の代わりに枝を切る成之の心など気付かない如古坊は成之に背を向け、籠に枝を入れている。

    「もっと、集めようかの。成之」

    振り向くと自分の方に刀を構える成之の姿。

    「なっ、成之?」

    成之は驚く如古坊の足元の地面に突き刺した。

    「なっ何をするんだ・・・どっどうした、成之?」

    成之は抜くともう一度、地面に刺した。

    「一体どうしたんだ?わしが何をしたのだ?」
    「死にとう無ければ、この場から立ち去れ!」
    「えっ・・・なっ・・・死に?」
    「忠清の命を狙った者の一人だとお前の名が時期に殿の耳にもの」
    「えっ、だが」
    「私の伴であろうが、私は知らぬ事と申せば済むであろう」
    「そんな」

    如古坊に話した事は嘘だった。

    「お前は羽木の領内にはもう戻れぬのだ・・・私達の前から消えろ!」
    「成之」
    「なんだ!」
    「わしは、お前と共にここまで来た。お前を信じて」
    「それがどうしたと」
    「どうした・・・ふっ、わしは何をしておったのかのぉ。お前の頼みだと忠清の命も、戦を仕掛ける事も、お前の望みを叶えるためにわしは・・・だが、わしは、これまでもこれから先もお前を裏切る気持ちを持つことは無かろう。幼き頃、わしの手を取り、笑い合った友であるからの」
    (如古坊・・・私もだ)

    成之の想いは見えないが如古坊は立ち上がり、

    「分かった、お前がそうしろと申すなら、わしはお前たちの前から消える」

    『消える』の意味が成之には不吉な言葉に聞こえ咄嗟に、

    「お前は生きろ!」
    「えっ?・・・成之」
    「何でもない・・・お前は」

    その後の言葉が出ずにいると、

    「わかった。お前が望むなら、お前に殺されかけた事をずっと覚えてて生きていく・・・お前も達者でな・・・あっ、一つ頼みがある」
    「なんだ」
    「これでお袋様に甘い汁を飲ませてやってくれ」
    「・・・あぁ」
    「世話になったの」

    如古坊は成之に頭を下げ、その場から走り去った。成之はその後ろ姿に深々と頭を下げた。

    (如古坊・・・許せ)

    地面に刺さっていた刀を抜き庵に戻った。久に話したところで信用しないかと考えた成之は様子を見て、久が起きてきたのを確かめ、桶で刀に付いた土を落としているがまるで血を洗い流している様に見せた。久は成之の言葉と洗う姿を見て、

    「ようやりました」

    成之は母のその言葉で、自分の行動は間違いでは無かったと。

    「己が決めた事にございます」

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    ぷくぷく行きまーす

    アムロ行きまーす風に(^O^)/
    夕月かかりてさんも、沢山のストーリの作があったのですね(*^_^*)
    どんどん図に乗っていきます(^_^)

    では、遠慮なくまた一つ(^_^;)
    第9回 囲炉裏端で久が成之の事を考えてくれていると如古坊に礼を言った辺りから、成之が刀を洗っている場面の間を(^_^;)

    その後はしばし、【宗熊の決意】第二章を進めていこうかと思います(^_^)
    途中まで書いていますが、やっぱり長くなってしまいますね(^_^;)

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    二人の平成Days30~17日21時、語り合おう

    兄と弟、膝を突き合わせます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8時59分、二階から降りてきた若君は、両親に会釈をし、実験室へ向かった。

    若君「尊、入って良いか?」

    尊「どうぞ」

    尊が何かを組み立てている。

    若「手伝おう」

    尊「ありがとう、若君。じゃあここ押さえててください」

    若「済まぬのう」

    尊「え?」

    若「我らに関わる物ではないか?」

    尊「うん、まぁそうですね。買い物の時点でバレバレですよね」

    若「先程まで手伝うてくれていたし、残された時間があまりないが」

    尊「大丈夫ですよ。複雑じゃないので」

    若「そうか」

    尊「壊れてもすぐに直してあげられないから、簡単な作りにするので」

    若「…尊が、永禄に居れば楽しいじゃろうな」

    尊「僕はダメダメー。お姉ちゃんほどタフじゃないから」

    若「わしの良き相談相手になって欲しいが」

    尊「えー嬉しいですけど、僕は色々調べられる環境に居ないと無理です。自分発信ができないから」

    若「尊の賢さは、強さに繋がる」

    尊「あー、戦術を考えるくらいなら役に立つのかな?」

    若「何より」

    尊「ん?」

    若「暴れる唯を止めてくれるからの」

    尊「あはは。忠清兄さん」

    若「なんじゃ?」

    尊「僕、生まれ変わっても、忠清兄さんの弟がいいな」

    若「生まれ変わって、か。未来の尊の傍におるんじゃな」

    尊「あ、そうとも言えるかも」

    若「唯も共に、が条件じゃが」

    尊「それはもちろん」

    若「未来の尊が、我らをどう助けてくれるか、傍で見られるなら楽しみじゃの」

    尊「はぁ~、なんか兄さんの考え方って、一味違うというか、現代人より現代的、いや未来的というかすごいなぁ」

    扉を叩く音。

    美香子「尊~、若君~、お風呂入んなさーい」

    尊「はーい。行きます?」

    若「二人で入るか」

    尊「あ、嬉しい。行きましょう」

    リビングから入ると、ちょうど唯が風呂上がりで、階段を上がっていく。

    尊「あ、お姉ちゃん」

    尊の声に振り向いたが、若君に向かって、あっかんべーをして、そのまま上がっていった。

    尊「ケンカでもしたんですか?」

    若「いや。思うところがあるのじゃろう」

    尊「…兄さん、実験室来る前、ここに居ました?」

    若「いや、唯の部屋じゃ」

    尊「なるほど」

    若「ん?」

    尊「エロ侍だ」

    若「…先程も聞いたな。速川軍の暗号か?」

    お風呂の洗い場。

    尊「傷、ほとんどわからないなぁ。あの時は、どうなっちゃうのかと思ったけど」

    若「よう、わしの世話をしてくれた」

    尊「いえいえ。母が医師で良かったと、あんなに思った事はなかったです」

    若「わしは、導かれた」

    尊「運命、さだめ、ですか」

    若「誰に礼を申すと良いかの」

    尊「お姉ちゃん?」

    若「父上母上が出逢っておらねばそれもない。父上母上が生まれておらねばそれもない。結果、ここまで繋がる全ての者に感謝じゃな」

    尊「…下手な先生の訓話よりためになる」

    若「ん?師匠か?わしの師匠は尊じゃ。様々な言葉を教えてくれた」

    尊「えー、大した事はしてない」

    若「師匠、お背中流します」

    尊「えっ、えー。それでは、忠清に頼もうか。わっごめんなさい」

    若「かわいいのう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人とも、かわいいよ。

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    乗っちゃって~

    ぷくぷくさんへ

    隙間があいたままだと、今の時期寒いです。アシガールの隙間があいたままだと、心が寒いです。どんどん、図にも波にも乗ってくださいませ。

    カマアイナさんへ

    唯のカタカナ語は、永禄でも登場しています。パパとか、パワハラとか、勿論デートも。隠語にするつもりがなくても、ついしゃべっちゃうと思います。的確な日本語に変換してくれる尊が居ないのが、痛い所でしょうがね。

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    【つのる想い】

    若君に見送られ平成に戻ってきた唯は、すでに戦国に戻る気満々だったが尊の言葉に、二度と戦国に行く事が出来ない現実を知らされ、驚きと落胆。フラフラと立上り実験室を出て行く唯。お父さんが声を掛けても振り向きもせず自分の部屋へ。

    「そっとしておきましょ」
    「そうだな」
    「お姉ちゃん、大丈夫かな?」
    「明日になればいつものあの子に戻るわよ」

    ダイニングに戻り、天井を見上げ三人一緒に溜め息。

    「若君は、唯に本当の事を話していないようだな」
    「そうみたいね。でも、若君も真実は言えなかったのよ」
    「そうだな。あいつは本当のこと知ったら、戻るとは言わなかっただろうからな」
    「そうね。若君にも十二分に分かっていたから、本当の事を言わなかったのよね」
    「少しだけだったけど、僕にも若君は優しい人だって分かったもん」
    「そうだな。若君は本当に優しかったな」

    唯は電気も点けず、月明かりだけの薄暗い部屋で座りもせず呆然と立ちすくんでいた。ショックのあまりに思考が停止したように涙も出ない。本人もどれだけの時間が経ったのか分からないが、我に返り着物をハンガーに掛け、着替えてベッドに横になった。だが眠れない。気持ちが戻ったように涙が溢れてきた。ティシュー箱を抱える様に何枚も涙や鼻水を拭いて山の様になっていた。
    翌朝、お母さんがノックしてドアを開けると、ベッドに寄りかかる様に膝を抱え座って居る。テーブルにはティシューの山。降りてこない事で想像はついていたがこの状態までとは思っていなかった。

    「学校には欠席の連絡しておくから」
    「うん」

    ベッドの上に紙。

    「それは?」
    「若君から」

    お母さんはその手紙を手に取り、

    「唯、読んだの?」
    「ううん・・・読めなくて」

    涙が溢れてくる唯。

    「私が読もうか?大方読めると思うから」
    「えっ?」
    「忘れたの、お母さん、書道の段持ちよ」
    「じゃっ、じゃぁ、読んで」
    「今は駄目よ、午前の診察が終わったらでね。お父さんがお風呂とご飯の用意をしてくれているから、お風呂に入って、ご飯食べて、少し眠りなさい。寝ていないんでしょ」
    「でも」
    「起してあげるから」

    お母さんはティシューをゴミ箱に捨てて部屋を出て行った。唯は言われた通りにしたが、料理に少し箸を付けただけ。

    「ごちそうさま」
    「もう良いのか?」
    「うん・・・ごめんね」

    部屋へ向かうと、窓際のラックの肉食系Tシャツが目に留まった。

    「私が尊にあげたTシャツ、着てって言っても着てくれなかったのに、でも着てくれたんだ」
    「違うよ、それは、若君が此処に居る間、着ていたんだよ」
    「えっ!若君が」

    声のボリュームはいつもの唯だったので、これで元気になるかと思ったが、Tシャツをハンガーから外しジッと見ていてまた元気のない唯に戻ってしまった。お父さんが元気付けようと、

    「若君、結構気に入って、戦国に戻る時も、初めは着て帰りたいって言ってたんだけどな、でも、無地ならまだしも、そのふてぶてしい猫のイラストは戦国の人も驚くから止めた方がって。趣味が悪いと言われても若君が可哀想だからね・・・ハハハ」

    普段の唯なら『趣味が悪いなんて失礼でしょ!』と言うだろうがこの時は違った。

    「そうだね。若君が可哀想だもんね」
    「唯」

    唯はTシャツを抱きしめる様にして部屋に。そして袖を通した。洗濯していても若君の温もりを感じて、抱き締めてもらっている様な気持ちに。午前の診察が終わり、部屋に来ると、服は違うが朝と同じ様に膝を抱え座って居た。

    「眠れなかった?」
    「うん」

    お母さんは溜まっているティシューの山を片付けてから手紙を読んだ。涙を流しながら聞いていた。お母さんが読んでいるのだが唯の頭の中で聞こえる声は若君に変換されていた。読み終わりお母さんは唯の手を取り、

    「450年も離れているから今の唯の姿は若君には見えないけど、こうしている唯を知ったら若君はどう思うかな」
    「ん~」
    「悲しむでしょ。若君は唯の事を想って、そして私たち家族の事を考えて、唯に本当の事を言わずに送り出してくれたのよね」
    「ん~」
    「お父さんも言ってたけど、もし本当の事を知ったら唯は戻らないだろうって」
    「えっ!」
    「どうしたの?」
    「あの時、若君が言ったの、使えるのがもし一度だけだったらどうするって。もしかして、私がどう返事をするのか知りたかったのかな?」
    「ん~、そういう事ではないとは思うけど。若君は心の底では一緒に居たいって思っていたんじゃないかな。でも、私達に約束したから唯を戻すって。で、唯は何て言ったの?」
    「此処に残るって」
    「そう。若君は?」
    「何て言って良いか分からないけど、ほっとしてたような、喜んでいる様にも見えたな」
    「そう。お母さんが思うに、残るって言ってくれたことが嬉しかったんじゃないかな。で、きっと若君はその気持ちだけで充分で、だから必ず帰そうと思ったんじゃないかな」
    「だったら、嘘つかなくてもって思うけど」
    「それは若君の優しさだと思うわよ」
    「分からないでもないけど」
    「それに、唯の事を真剣に想っていなかったら、手紙を渡さなかったんじゃないの」
    「えっ?」
    「唯が若君に会う事は出来ないのよ。嘘をついた事だって唯は文句を言う事も出来ないでしょ」
    「うん」
    「黙っていればそれで済む事でしょ。それをこうして嘘を唯に謝る手紙をよこしてくれたって事は、もし、唯が怒って自分を許してくれないとしても構わないって」
    「構わない?」
    「唯はこっちの世界で、別の恋をして幸せになって欲しいから、自分が悪者を買って出たんじゃないかな。何も無かったら、若君の気持ちも分からず、ずっと若君を忘れられないだろうって考えたのかもね。若君は幸せになってくれることを望んでいるんだから」
    「うん」
    「でも、唯が忘れられないことも分かってる、いい思い出としてって事でね。私は、忘れるもよし心に残すもよし・・・ちょっと無責任かな?」
    「ううん」

    唯の頭を優しく撫で

    「夕飯はちゃんと食べてね」
    「うん・・・お母さんありがとう」

    お母さんが出て行った後、自分でもどうしたらいいのか分からず頭を抱えた。ふと目線の先に漫画本が。若君が読んでいたであろう漫画本を手にして、

    「若君はどう思ったのかなぁ。もぉ、感想も聞けないんだぁ・・・は~・・・若君様ぁ」

    力なく言葉にし、また、どっと落ち込んでしまった。いつの間にか夕方になっていた。殆ど食べていないにも関わらず腹が空かない。

    「身体はあっちの世界に順応してるんだなぁ・・・はぁ」

    そう考えて、ベッドに沈むほどの腑抜け状態の所に尊が入って来た。つい尊に愚痴った。呆れる尊。唯は尊の顔を見て思い出した『燃料が無い』だけならばと[燃料が有れば]と。目の前にタイムマシーンが現れた如くに元気になる唯。唯の催促に学校から戻ると毎日実験室へ。唯はいつもの様に学校へ行き授業中は居眠り、部活もこなし元気に過ごしていた。だが、満月の夜は電池切れの様に月を見上げて溜め息。その様子を毎回見ていた尊は強固に出て爆発。その頃、唯は木村先生が郷土史家の先生の所へ行く事を知り公園で戻るのを待って、松丸からのあの手紙を知り、婚儀の事も知った。

    「再会だ」

    その言葉に背中を押された。
    唯の自転車は、あとで家に連絡する事にして一先ず木村先生が学校の駐輪場に。

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    自画自賛第二弾

    てんころりんさん、カマアイナさん、夕月かかりてさん、妖怪千年おばばさん、皆様
    痛み入りまするぅ(*^_^*)
    NHK掲示板の時は隙間ストーリーが多かったです(^_^)
    場面場面の間を考えるのが楽しくて色々書きました。このような形でまた表現ができる事を覚えた私は、まだ幾つかありますので同じ様な形で此処に登場させて頂きます。昔はバスに乗っていましたが今は図に乗っています(^_^;)
    宗熊の決意第二弾は、どうすればみんなが幸せになれるのか考えて、スローペースになっています(^_^;)
    自画自賛の第二弾として、第8回ラストから第9回の隙間(唯が平成に戻って来てから城跡で木村先生に会った場面)の事を。
    因みに、〔ティッシュ〕と言っていますが、正式には〔ティシュー〕なのだと、50過ぎて知りました(^_^;)

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    夕月かかりてさん

    「父上、母上、9時には下りて参ります」って、ひょっとして今晩はもう満月ですか?
    まだですよね。現代を楽しむ時間がなさすぎー。

    ジェンガ、プレイバック、プリント、アイドル、スルー、ラブラブ、ラッキー、
    それに外来語ではないけど’ぷにぷに’ 私達の日本語からカタカナをご法度にされたら
    立ち往生してしまいます。永禄に戻ったら二人だけの隠語で、周りを煙に巻くことができるかな。

    若君の落ち着きぶりと唯の平成のJKぶりが、このおばばには時折カップルとして?と思えることも
    あるのですが、私のお脳が固すぎるのでしょう。
    唯のひたむきな思い入れと笑いをばらまく楽天的な天性は、どの時代にも通用するんでしょうね。
    どこへ行っても、どの時代でも、「唯は心配ない。」でありますように。

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    妖怪千年おばばさん

    くすっどころか、お腹がよじれてしまいました。
    毎回今までとは全然違う切り口で、フィクションの極意って
    この自由奔放さにあるんだろうなと、ただただ感心。

    先日まで見ていた「危険なヴィーナス」のシリーズで
    獣医の手嶋伯郎がよく妄想するシーンが出たのですが、
    今回の唯の強烈なアタック、将来のドラマ続編での若君が回想するシーンとして、
    時折ちらっと挿入されたら、ニタッときますね。。
    真っ白い煙の中、若君にパンチを喰らわせようとしたあのシーンを思い出します。

    それにしても若君の「寝台」、なんだか診察室の狭くて硬いベッドを
    想像してしまいます。日本語はご飯とライスでは茶碗とお皿を思い浮かべちゃうし、
    敷布は布団、シーツはベッドって相場が決まってるようだし、
    カタカナが氾濫する現代日本語って、器用に和洋折衷の生活様式を取り入れた結果ですね。

    さすが聡明な領主と感心するのが、救急手当て、薬や、保存食まで領民のためになりそうな
    ことを、せっせと習得する姿です。満月の出立では、忘れずに永禄にはない野菜、薬草、花の種を
    たっぷり袂に忍ばせて欲しいですね。本邦初X、Y、Zだらけで藩(?)も思いがけず潤うかもしれません。

    すみません、感想のはずが、たわいない妄想だらけになってしまいました。

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    二人の平成Days29~17日20時、妬いちゃう!

    聞かずに済むならって事もあるだろうに。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「それで、早々に三人で籠ってるのね」

    覚「悪いな、団欒を切り上げて」

    美「それはいいけど。若君って想像力豊かよね。でも、尊は良かったのかしら?何か作ろうとしてたみたいだけど」

    覚「自分のは、徹夜してでも完成させるだろ。二人に何か持たせる気なら特に。いいんじゃないか?多少無理しても、渡す頃には冬休みだ。いくらでも寝ていられる」

    美「私達の名前も入るかしら?」

    覚「真っ先に書いてたぞ。字もな、そこは読めた。今は実験室にあるけど…若君の達筆、取っておく?」

    美「うん。泣けるわね…」

    実験室。

    尊「お姉ちゃん、思い出プレイバックは後にしてよ。早く書いて」

    唯「ごめーん、どうしても気持ちが入るから」

    若君「書き忘れはないかの」

    唯「いいんじゃないかなぁ。ねぇ、ずいぶん余るけど、どうするの?」

    若「全て持って行く」

    唯「書いてないのも?予備?」

    若「子や孫の分じゃ」

    唯「え」

    尊「さすが若君、話がデカい…もとい、大きいよ」

    唯「惚れ直しちゃう~」

    若「そうか?それは嬉しい」

    尊「じゃあ、プリントするから、並べていって」

    完成しました。お名前一覧は、作者の体力気力耐久力を消耗し過ぎますので、涙をのんで割愛します。

    唯「見て見て~!」

    若「いかがであろうか」

    美「すごーい。尊はまだ何かやってるの?」

    唯「さあ。いちゃついてたら追い出された」

    覚「そりゃそうだ」

    唯「8時15分かー。今日はジェンガを眺めておしまいかな」

    美「戦国時代って感じね~、名前が。この勘兵衛さんとか」

    唯「勘兵衛さんは、命の恩人」

    若「え?そうなのか?」

    唯「おふくろさまの息子と間違えてくれたから、斬り捨てられずにすんだ」

    覚「さりげなく恐ろしい話してるな」

    唯「あ、孫四郎~!かぁわいいんだぁ、ぷにぷにしてて」

    若「ぷにぷに?うん、その言い方は、わからなくもない」

    唯「あ、阿湖姫」

    美「若君の許嫁だった?」

    唯「うん。元気かなー。かわいくて、現代に居たらアイドルになれるよ」

    若「アイドル?」

    唯「そこはスルーして欲しかったけど。人気者になれるって事。たーくんも、一緒の時楽しそうだったし…ん、なんか無性に怒れてきたっ」

    美「なんで?」

    唯「たーくんを半年ぶりに見た時、阿湖姫とすっげぇ楽しそうで、超ショックだった」

    若「何を見たのじゃ」

    唯「たーくんは笛吹いて、阿湖姫はカエル捕まえてた」

    美「聞いただけでは、全然ラブラブの場面じゃないわね」

    若「あの頃は」

    唯「ん?」

    若「唯に二度と逢えぬと思うていたし、羽木の為の婚儀であったし」

    覚「政略結婚か、時代だな」

    若「こういうものだ、と思うておったので」

    覚「そうか。なんていうか、諦め続ける人生だったんだな」

    唯「珍しく、深い事言ってる。でも、阿湖姫かわいくてラッキー!と思ったでしょっ」

    若「何を怒っておる」

    美「若君、嫉妬よ嫉妬。唯は居なかったんだからしょうがないでしょ」

    唯「だって~」

    若「案ずるような事は何もない。今のようにずっと共に居る訳ではないし。嫉妬か。かわいいのう」

    唯「ホントかな~?」

    若「欲しゅうなる」

    唯「…は?!何言ってんの?!」

    若「まだ時間は充分」

    唯「えぇっ?ちょっとー!おかしいでしょ!親の前でありえないし!」

    両親をおそるおそる見る。すると、二人が笑顔でバイバイ、と手を振っている。

    唯「えー!!」

    若「父上、母上、9時には下りて参ります」

    唯「うぅっ、とうとうその姿を現しよったな!このエロ侍め!まぁ、恥ずかしいような嬉しいような?あれぇ~」

    若君は、唯をひょいと抱えて、二階へ上がっていった。

    覚「なんというか、ほほえましいな」

    美「うん、かわいらしい。でも、若君も意外と、隅に置けないわね~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯がそう言うんだからそうなんでしょ。

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    痛そう…

    妖怪千年おばばさんの新作、笑いました。

    だめだよ若君~、唯はそもそも戦国でだいぶ鍛えられてて、そこらの女子よりかは腕力がついているのに、また鍛えてるんだから逃げられないよ。あーあ、烏にも笑われちゃって。

    腕に跡が残って、結局バレないか心配です。

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    兎角この世は その2 ~満月はイブの前 こぼれ話 忠清編~

    はじめに
     この物語は、以前、投稿した
     “満月はイブの前”の番外編
     として書きました。
     アシガールSPを背景にして
     いますが、すべて妄想です。
     閨に悩む、ちょっと笑える若君を
     書いてみました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~

    静かな住宅街の中を、
    忠清と唯は歩いていた。
    毎朝恒例の、素振りを
    忠清が終えた後、
    唯が散歩に誘ったのだ。

    考え事でもしているのか、
    忠清は腕組みをしたまま、
    唯の少し前を歩いている。
    人通りはほとんどない。
    唯は、手を繋ぎたくて、
    早足で近づく。
    すると、忠清は
    何故か、足を速めて先に行く。

      “え?”

    唯は、もっと早く、足を動かす。
    すると、忠清は、また先に行く。

     “はあ?”

    二人で競歩状態になっている。
    距離は全く縮まらない。

    唯は、走った。
    すると、若君も走る。
    さっきより、むしろ、
    二人の距離が延びた。

     “な、何?”

    唯が思わず大きな声を上げる。

      「待って~!
       待ってください~!」

     “ん?このシチュエーション、
    どこかで、前にもあった気が?”

    初めて会ったあの時と同じく、
    朝御飯前で腹ペコだけど、
    幸い、今はスニーカーだ。

    唯は忠清に、何故先に行くのか
    訳を聞こうと、マジでダッシュした。
    やっと忠清に追いつき、
    さらに追い抜く。

    負けず嫌いな若君の事だ。
    絶対、追いかけて来るに違いない。

    ところが、忠清は、急に足を止め、
    走り抜ける唯を見送った。
    追って来ない事に、唯が
    気付いたのは、かなり先まで
    走ってからだ。
    後ろを振り返ると、忠清が、
    唯に向かって手を上げた。

    「所用を思い出した。
     先に戻る故、唯はゆるりと
     散歩を楽しんで来ると良い。」

    そう言い残し、忠清は唯に背を向け、
    一人で家に向かって走って行く。

     “んもう、いったい何なのよ!”

    唯は、その場で右足を強く
    踏み鳴らして叫んだ。

     「わ・か・ぎ・み・様~~~!!!」

    ・・・・・・・・

    唯を戦国に伴いたいと、
    唯の両親と尊に申し入れ、
    許しを得た翌日、
    美香子が、唯に向かって言った。

     「ねえ、唯。
      今までは何とかなってたかも
      しれないけど、
      戦国で、ただ、足が速いって
      言うだけでは、
      いけないと思うの。
      しかも若君の正室ともなれば、
      なおさら。
      でね。
      お父さんとも話したんだけど、
      こちらにいる間に、唯も何か、
      身につけた方が良くない?」

     「何かって、何?」

      「お母さんの知り合いに、
       武道家がいてね。
       まあ、昔の患者さん
       なんだけど。
       さっき、問い合わせてみたの。
       そしたらね。
       喜んで指導して下さるって。
       短期集中で。」

       「ぶ、武道?
        でも・・・」

    唯は思う。

    “何とか、期末試験も終えて、
    やっと、若君との時間をたっぷり
    楽しめると思っていたのに、
    いまさら、習い事とか考えられない。
    しかも、武道って。“

    それを聞いていた若君が
    身を乗り出す。

    「母上、それは、剣術であろうか?
     もしや、弓術?」

      「いいえ、合気道よ。」

    「合気道?
     そ、それはどのような?」

     「そうか!
      戦国にはまだなかったんだ。
      うーーーん。
      柔道はあったのかな?」

    「柔道?
     父上、それはもしや、
     柔術の事であろうか?
     槍や剣を失のうた時の為に、
     組手であれば、
     武士は皆、励むが。」

       「柔道から派生したそうよ。
        もっとさかのぼれば、
        組み手になるのかも。
        違う所はね。
        合気道は、自分からは
        攻撃しないんですって。
        稽古も型が基本でね。
        護身術に近いかな。」

    「それは良いの。
     備えになろう。
     唯、しかと身につけて、
     奥の者たちにも伝授すると良い。
     励め。」

       「えーーーー?
        でも、まだ、若君と
        行きたい所が沢山あるのに、
        稽古で時間をとられるのは
        ちょっと。。。」

     「唯が励むと言うなら、
      永禄に戻る前に、
      ラーメンデートを
      致しても良いのだが?」

       「それならやります!
        明日から行きます。
        なんなら、今からでも!」

         ・・・・・・・・・

    そうして、五日ほどが過ぎた。
    夜空の月が段々と丸くなって行く。
    それを見上げるにつけ、
    忠清自身も、もっと励まねばと思う。
    ここのところ、忠清は、
    尊と一緒にレンタル店を回り、
    歴史ドラマのDVDを借りるのが
    日課になっていた。
    戦記物については、
    アニメや洋画も見た。
    美濃の斉藤や、尾張の織田が使う
    長槍によく似たものを
    スペインの歩兵が
    使うのを見て驚き、
    ローマ兵が、戦車を馬にひかせて
    戦うのを見ては、
    あれを作れぬものかと言って、
    尊を困らせたりした。

    覚からは、保存食の作り方を習い、
    美香子からは、
    病気やけがの手当の仕方や、
    薬についての指導を受ける。

    そんなある夜。
    夜中に喉が渇いて目が覚めた忠清は、
    水を飲みに階下の台所に下りた。
    冷たい水を一口飲んで、
    ふうっと深いため息をつき、
    また二階へ。
    色々な事を一気に詰め込んだので、
    頭が朦朧としている。
    忠清は部屋の扉を開け、
    布団に入ろうとした。

    「ん?」

    敷いてあるはずの夜具が無い。
    うっすらと差し込んでくる
    月の明かりに、
    ようやく目が慣れた時、
    忠清は、思わず、
    何度も目を瞬いた。

    「唯?」

    “何故、わしの閨に唯が?
    もしや、忍んで来たのか?
    なんと、大胆な・・・“

    その時、唯が寝返りを打ち、
    掛けていた布団が落ちた。

    “んん?何故、寝台が?”

    忠清は、今回、客間の和室を
    寝室にしている。
    そこでやっと、忠清は気づいた。

    “マジ、ヤバイ!・・・とは、
     このような折に
     使うのであろうか?”

    ヤバイ時でも、そこは若君。
    驚き方もおっとりしている。

    以前、矢傷を癒していた頃には、
    唯の部屋で過ごしていたので
    うっかり間違えて
    入ってしまったのだ。

    午後八時以降、
    唯と過ごすは御法度。

    “必ずお守り申す。”と父上と母上に
     約束したのに、何という事だ!

    慌てて戻ろうとしたが、ずり落ちた
    唯の夜具が気になった。
    それをそっとかけ直す。

    唯は、寝息を立てて熟睡している。
    一目、寝顔を見ようと、
    唯の前髪に触れた。
    すると、唯の手が、
    忠清の手首をつかみ、
    思いきりひねり上げた。
    いきなり関節技をきめられ、
    忠清は、悲鳴を上げそうになる。
    奥歯を噛みしめて、
    必死でこらえた。

    「唯、わしじゃ。
     起きておるのか?」

    痛みをこらえて囁くが、
    返事がない。
    合気道の稽古の疲れで、
    爆睡しているのだ。

    “これも、稽古の成果かと思えば、
    喜ばねばならぬが、
    まさか、己が技を
    決められようとは!“

    このまま、朝になり、
    唯の部屋に忍び込んだと
    皆に思われるのは、
    まこと、具合が悪い。

    何とか、力ずくで、
    唯の腕から逃れようとするが、
    忠清があがけばあがくほど、
    腕が締め付けられる。

    テレビで見たプロレスをまねて、
    空いている手で唯のベットの端を
    叩いてみるが、
    やはり、唯は腕を放さない。

    “なんとかせねば。”

    焦りまくる忠清の目に、
    唯の本棚の絵本の文字が
    飛び込んで来た。

    「北風と太陽・・・あれは、
     以前、読んだ事のある書物。
     ・・・そうじゃ!」

    忠清は、唯の耳元で、優しく囁く。

    「唯、良いものをやろう。
     アーモンドチョコレートじゃ。
     その手を前に。」

    すると、唯は、
    空いている方の左手を差し出す。

    “くうう・・・違う!
     そちらではない!”

    「唯、今度はチョコボールじゃ。
     沢山あるぞ。
     片手では足りぬ。
     両の手を差し出せ。」

    唯は、今度は両手を出し、
    忠清はやっとの事で、
    関節技から解放された。
    夢の中でチョコを食べているのか、
    唯の口がわずかに動く。

    忠清は足音を忍ばせ、
    唯の部屋から脱出した。
    和室に戻って自分の夜具に
    もぐりこんだが、腕が痛くて、
    なかなか寝付けない。
    やがて、空が白々と明けてきた。

    唯に、散歩を誘われたのは、
    まさに、その朝の事だ。

           ・・・・・・・

    小走りに、速川の家に戻りながら、
    忠清は思い悩む。

    わしのおらぬ隙に、
    妻の寝所に忍び込む不届き者が、
    もし、おったとしても、
    あのような目に合うのだと思えば、
    心安くはあるが・・・

    戦国に戻ったら、
    唯と閨は共にしたい。
    共にしたいとは思うものの、
    昨夜のあの状況が繰り返される
    としたら、身が持たない。

    毎夜、チョコボールで
    済むものだろうか?
    もっと、唯の好きなものを
    知っておかねばならぬのでは。

    合気道の道場と化す閨が、
    脳裏に浮かび、
    忠清は思わず天を仰いだ。

    ”敵陣に切り込むような勢いで、
     腹を決めねばならぬのは、
     わしのほうであったか!
     まこと、悩ましいものよのう。”

     「ち・ち・う・え~。
      如何したらよいのじゃ~!」

    静かな朝の空に、
    忠清の切ない声が響く。

    朝だと言うのに、
    どこかでカラスが鳴いている。
    いや・・・
    笑っているのかもしれなかった。

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    返信
    寒波

    首都圏は、またまた
    緊急事態宣言ですね~。
    寒波も厳しい。
    そんな中、こちらは、
    ほんわか温かく、嬉しいです。

    ぷくぷく様
    唯が消えて行くシーンは、
    何度見ても切ないっす。
    読んでも切なさがこみ上げます。
    そんな中で、吉乃様と、信近殿が
    結ばれたのは嬉しい事でしたね~。
    唯が戦国に戻った時に、
    ”吉乃様”とあらたまって呼ぶ唯に
    ”おふくろ様で良い。”と、言う
    吉乃様、かわいかったですね。

    夕月かかりて様
    若君が速川家の一員になって行く
    様子がほのぼのと、楽しいですね。
    思わず、
    ♪おさかなくわえた、ドラネコ・・・♪
    とか、歌いだしちゃいそうです。

    カマアイナ様
    長文の作品投稿有ですもの、
    ”長文の感想、ぜんぜんOKっす。”
    って、マスター様も皆様も
    おっしゃると思いますよ~。

    では、新春第二弾、
    おばばも行きますね~。

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    返信
    夕月かかりてさん

    では安心して、感想はこちらに書きます。
    たーくんは数限りない速川家のおもてなしで、
    目の回るような楽しい経験をしっぱなしですね。
    生活のリズムだけでもお能の世界から
    急にジェットコースターに飛び乗ったぐらいな感じでは。
    スマホに、テレビに、プリンターやらホームセンターまで、
    若君が若いとはいえ、たぐい稀な順応性です。 脱帽!

    タイムスリップの時に刀のスイッチを手に持って、
    二つの世界を行き来できるなら、
    若君に手土産として超軽量、折りたたみ車椅子を持たせてあげたいですね。
    体にくくりつければ、持って帰れないかしら?
    でも舗装された道路なしでは、じいも家の中でしか使えないかな。
    カートよりもずっと乗り心地がいいとは思いますが、
    永禄の人達に怪しまれないようにどう説明したらいいんでしょう。

    唯は簡単に「たーくんテレビでも観てて。」って言ってますが、
    アシガールの再放送してたらどんな反応を見せるかな?

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    返信
    二人の平成Days28~17日月曜16時、一つ一つ心をこめて

    あの唯のリュックの中には、これも入ってたんだね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    下校時の待ち合わせは、最近はいつもの黒羽城公園。高校の校門では、毎回JKが騒がしいので変更した。

    唯「あ、たーくん居た。良かったー」

    若君「唯、おかえり。それは居るじゃろ」

    唯「ううん、さっきお父さんから謎のLINEが来て、家に居るのかなって」

    若「謎?」

    唯「帰ったら、若君を手伝ってくれ…って、たーくんここに居るし。何手伝うの?」

    若「さあ?わからぬ」

    唯「わからぬ~?家では何してたの?」

    若「ジェンガを父上と作っていた」

    唯「え~?それで、できたの?」

    若「まだじゃ」

    唯「ふーん。それの関係かなぁ」

    ただいま帰りました。

    覚「おー、唯、若君、おかえり。待ってたぞ」

    唯「お父さん、ちょっとちょっと。たーくん、テレビでも観てて」

    若「わかった」

    若君から離れて、ひそひそ話。

    唯「何がどうなってるの?」

    覚「まあ、聞いてくれよ…」

    時間を戻します。

    ┅┅今日11時、庭にて┅┅

    覚と若君、二人で木片に一つ一つヤスリをかけている。

    覚「大分磨いたから、滑りはいいと思うぞ。ちょっと量が多かったかなー?54でいいのに100もあるけど。3の倍数でもなかったな。若君、指痛くないか?」

    若「大事ないです。父上こそ大丈夫ですか?」

    覚「なんとか。少し休憩しよう」

    二人でお茶タイム。覚がスマホを取り出した。

    覚「売ってるのはこんな感じかなー」

    若君が、ジェンガの商品ラインナップの画面を覗き込む。

    若「父上、何やら書いてある物があります」

    覚「ん?あー、商品名とか数字とか入ってるね」

    若「…名。ふむ」

    覚「何かあった?」

    若「父上」

    覚「何?」

    若「これは、人の名でも良いですか?」

    覚「え?一つずつに名前を入れるって事?!若君、さすが画期的だね~。何入れるんだい?」

    若「速川と、羽木の家族や家臣達、親しい者達を。僕や唯の大切な者達の名を記したいです」

    ┅┅回想終わり┅┅

    覚「で、昼飯の後、試しに書いてもらったんだけど」

    唯「ヤな予感」

    覚「もちろん、筆ペン渡したぞ?」

    唯「的中しそう」

    覚「見せてもらったら…」

    唯&覚「読めない」

    唯「にょんにょん字だよね~」

    覚「達筆と言え」

    唯「前にたーくんにメール持たされた時、どんだけ読むのに苦労したか忘れたの?」

    覚「いやー、その時はまだ感動してたから」

    唯「うん、いい話だけどね。たーくんって、知らないってのもあるけど、ちょいちょい、とんちんかんなんだよねー」

    覚「人の事言えるほど…」

    唯「はいはい、ここにも一人居ますぅ」

    覚「という事で、羽木の皆さんの名前がわかるお前が、若君から聞き取りして読める字にしてくれ。晩ごはんの後でいいから」

    唯「わかった。たーくんお待たせ~」

    尊「ただいまー」

    唯「おっ、グッドタイミング!」

    尊「は?」

    唯「晩ごはん食べたら、たーくんを手伝うから、あんたもプリンター用意して」

    尊「いきなり、繋がりそうにないワードが並んだけど」

    若「尊、済まんの。よろしく頼む」

    尊「はい。まあ、きっと楽しい事なんだろな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    とんちんかんって…純粋と言って。

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    カマアイナさんへ

    創作倶楽部の作品への、ご意見ご感想は、このままここに書きこんでくださいませ。

    原作の漫画やドラマの世界観を大切になさっている方々は、あえてこちらにお越しにならないので、他の板だと驚かれてしまいます(((^^;)

    妄想作家の私達が必ず目を通すこの板で、思う存分語ってください!少なくとも私は、長ければ長い程励みになるんですぅ。

    これからも、もちろん他の皆様も、長文短文、よろしければで良いですが、お待ちしてます。

    ぷくぷくさんへ

    久々に拝見しました。以前の作品も、充分読み応えのある長さだと思いましたが、大分、相当、加筆されてましたね。うぅ…若君、その姿に目頭が熱くなります。

    どうぞ、こちらでは消化不良にならないよう、書ききってください!

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