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    兎角この世は その5 尊編 ~十三夜続編(未投稿)こぼれ話~

    ~~~~~~~~~~~~
    はじめに
    この物語は、先に投稿した
    ”兎角この世は その4 唯編”
    の続編になります。
    唯の将来を案ずる先生方や両親。
    現代でも才能を開花させる若君。
    それに巻き込まれる尊を
    描いてみました。
    原作を背景にしていますので、
    唯は高校2年生の設定です。
    ~~~~~~~~~~~~

    冬季練習の目標を書き上げ、
    陸上部のコーチに渡すと、
    唯は、トラックを走り始めた。
    軽く一周したところへ、
    コーチが血相を変えて、
    やって来た。

    「速川~!
     お前、これ、ホントか?」

    コーチは、唯がさっき渡した紙を
    握りしめている。
    練習目標の記入用紙だ。

     「はい。
      負けてられませんから。
      吹雪に。」

    「吹雪?
    そんな選手、いたか?」

     「馬ですよ。馬。」

    「馬?」

    コーチは訳が分からず、
    ぽかんとする。

    「あ、いや、そうじゃなくて。
     俺が聞きたいのは、
     この、自主練のとこだ。
     これ、ほんとに走ったのか?
     この距離を、このタイムで?」

     「ああ、それ?
      ホントです。
      マジで、ヤバかったです。」

    織田with高山軍に囲まれ、
    僅かな兵で守っている小垣城の
    若君救出の為、
    夜を撤して走った事を、
    唯は自主練として記入したのだ。

    敵兵を避ける為、
    羽木との境にある野上領の山中を
    走ったので、最短ルートと比べると、
    その距離は軽く3倍以上。
    それを三日で走破したのは、
    忠清への一途な思いからだ。

    「黒羽城公園の北口から、
     北領山遊歩道経由で
     小垣城址までって、
     このとんでもないルート、
     良く走る気になったな。」

     「命、かかってましたから。」

    「命?」

     「捨て身で走りました。」

    「お前、ホントに好きなんだな。」
      ”走るのが”

     「はい!超好きです!!!」
       ”若君が”

    「よし、分かった!
     後は、俺に任せろ!」

     「へ?」

    “ああ、勘違い”な会話に
    気づく事も無く、
    コーチは来た時以上の勢いで、
    校舎へ戻って行った。

     「コーチ?任せろって、
      いったい何を???」

    唯は、ただ、その後ろ姿を
    見送るしかなかった。

      ・・・・・・・・

    いつもより、気合の入った走り込みを
    終えて、自宅に戻った唯は、
    リビングに入って、驚いた。

     「何これ?!」

    そこにあったのは、
    天井まで積まれた“うま〇棒”。
    しかも、全種類の味ぞろえ。

      「さっき、店長が持って来た。
       “よろずや”の。」

     「“よろずや”?」

      「お礼だって。若君に。」

     「ふうん。で、その若君は?」

      「出かけた。店長と一緒に。
       お母さんも。」

     「え?まさか、また、バイト?」

      「さあ。」

    尊と唯が、うま〇棒1年分の壁を
    見上げている頃、
    忠清と唯の母、美香子は、
    駅ビルのカフェで、
    Z〇R〇黒羽店のマネージャーと
    向き合っていた。
    “よろずや”の店長は、
    二人をマネージャーに
    引き合わせるやいなや、
    そそくさと帰ってしまった。

    目の前には、
    今や忠清の好物の一つとなった、
    抹茶アイスが置かれている。
    しかも、そのカフェの
    オリジナルアレンジで、
    濃茶がかけられていた。
    バニラアイスにエスプレッソを注ぐ
    アフォガードの、緑茶バージョンだ。
    美香子は、ストロベリーアイスに
    添えられた、大粒のイチゴに
    目を輝かせていた。

    マネージャーは、
    “よろずや”の店長の、
    大学時代の先輩らしい。
    俳優の小〇旬そっくりな
    ”よろずや”の店長は、
    その先輩に頼まれて、断り切れず、
    忠清を紹介する事になり、
    山盛りの“うま〇棒”持参で、
    速川家を訪ねたのだった。

    たった一日で、開店セール用の棚を
    空にしたという忠清の噂は、
    今や“幻のアルバイター”として、
    商店街の店主たちに広まっている。
    エリア統括から、
    売上アップに繋がるプランの
    プレゼンをせかされている
    Z〇R〇黒羽店のマネージャーは、
    その噂を聞き逃すわけには
    いかなかった。

    マネージャーは、
    人当たりの良い笑顔で、
    二人に勧める。

      「どうぞ、御遠慮なく。
       溶けてしまう前に、
       召し上がって下さい。」

     「そうですか?
      では、頂きましょうか。」

    美香子が、大きなイチゴを口に運ぶ。
    それに倣って、忠清も濃茶に
    溶けかけた抹茶アイスを口にした。

    二人の口元がほころぶ。
    スイーツは、幸せを運ぶ天使だ。

    二人の皿が空になったのを見計らって
    マネージャーが、さらに
    ラテを注文する。

     「あら、お気遣いなく。
      私たちは、もう充分
      頂きましたから。」

      「あ、いや。
       ここのラテアートは、
       なかなかのものなんです。
       是非、お試しください。」

    マネージャーの言葉通り、
    運ばれて来たラテは、
    実に見事だった。
    美香子のカップにはバラが、
    若君には、白い馬が描かれている。

    「吹雪。」

    忠清が、つぶやく。
    すかさず、マネージャーが言う。

      「忠清さんは、
       馬がお好きだと、
       “よろずや”から聞きまして。」

    今回のアルバイトの話は、
    断わるつもりでやって来た
    二人だったが、
    マネージャーの心使いに、
    すぐ席を立つわけにもいかず、
    結局、話を聞くことになった。

      「実は、ライバルの長澤店では、
       姉妹都市の熊〇から、
       ゆるキャラ全国区の熊モ〇を
       呼んで、大々的に
       キャンペーンをする様でして。
       すでにコラボ商品を何種類も
       準備中らしく。
       こちらでも、地元から
       掘り起こそうと、
       この街出身の
       有名人を当たったのですが、
       なかなかで。」

    「長澤は熊?
     その長澤とは、高山の本城の
     事であろうか?」

      「高山?実は私、
       こちらに赴任して
       間もないもので、
       よくわからないのですが、
       確か、長澤にも城跡がある
       とは、聞いてます。」

    忠清の目が、
    見る見るうちに鋭くなる。
    それに気づいた美香子が囁く。

     「若君、落ち着いて。
      今は、平成よ。
      宗熊も、宗鶴もいないわ。」

    「そうじゃの。しかし、
     聞き捨てる訳にはいかぬ。」

     「ええ?」

    不安げな美香子をよそに、
    忠清はマネージャーに言った。

    「まずは、こちらの
     今の有り様を捉えて、
     足元を固めぬと、話は進まぬ。
     すまぬが、まずは、そちの城、
     を拝見いたしたい。」

    「は?城?
     ああ、店の事ですね?」

    その後、三人は、
    駅ビル1階のZ〇R〇に向かった。
    店は、改札口の手前、
    駅前広場にも面していて、
    イベントを打つにも好都合だ。
    駅ビル内の店としては、
    一番良い場所と言える。
    これで、売り上げが
    伸び悩んでいるというのが、
    不思議な位だ。

      「正直な所、今、この業界は、
       安売り競争激化で、
       薄利営業が長期化してまして。
       店舗数の削減も
       間もなく始まります。
       どこの店も生き残りに必死。
       そこで、長澤店は、熊モ〇で
       ファミリー層をまるごと
       取り込む作戦に
       出たって訳です。」

    「では、その長澤の客をも
     取り込む策を練らねばのう。
     ところで、松丸や、
     野上の地にも店はあるのか?」

      「えっと、それは、
       どちらの事でしょう?
       この近隣では、
       二店舗だけですが。
       ここと、長澤と。」

     「さようか。
      松丸や野上は、その名すら
      残らなんだのか?
      なれば、蘇らすのみ。」

       「はあ?」

    忠清は、暫くの間、
    店内の商品を眺め、
    何事かを考えていた。
    やがて、何かひらめいたらしく、
    美香子を交え、店の奥で、
    マネージャーと話し込んだ。

        ・・・・・・・・

    それから暫く後の事。

    「ねえねえ、唯。
     今度の日曜日、駅ビルの
     Z〇R〇に行かない?」

    朝練を終え、教室に戻った唯に、
    まゆが、声を掛けた。
    まゆは、1年の時からの
    クラスメートだ。

     「Z〇R〇?」

    「お店でキャンペーンするらしいよ。
     F4が来るんだって。」

     「F4?あの“花より男〇の”?」

    「そう。もっとも、モノマネ芸人の
     そっくりさんみたいだけど。
     なんか、懐かしくない?
     唯は、“花♡類”押し
     だったでしょ?」

     「そうだけど。
      その日は、
      コーチと木村先生が、
      家に来ることになってて。」

    「え?」

     「なんか、話があるんだって。
      進路の事で。」

    「ふううん。珍しいね。
     家庭訪問とか。
     引きこもりでも無いのに。
     じゃあさ、
     終わったらおいでよ。
     先に行ってるから。
     これ、キャンペーンのチラシ。」

    まゆから手渡されたチラシを、
    ろくに見もせず、
    カバンに突っ込むと、
    唯はため息をつく。
    せっかくの日曜日、
    若君と楽しもうとしていた
    あれやこれやが消えて行く。

    「今さら進路って言われたって、
     困るんだけど。
     先生方に、何て言おう。」

    “戦国武将に嫁ぎました。”
    なんて、言えない。
    言ったところで、
    信じて貰えるわけがない。

    上の空の数日が過ぎ、
    とうとう日曜日がやって来た。
    若君は、朝早くから
    出かけて行った。
    また、あの“よろずや”の店長が、
    迎えに来たのだ。

      「ホントについて行かなくて、
       大丈夫?」

    美香子が心配そうに、若君に言う。
    若君は、黙って頷くと、
    “よろづや”の車に乗り込んだ。
    美香子がつぶやく。

       「車には、すっかり
        慣れたみたいだけど。」

      「なんだか、出陣を見送る
       母親みたいだな。」

    冗談交じりにそう言って、
    唯の父、覚が笑った。

    やがて、先生方がやって来た。

    コーチは、そわそわと落ち着かない。
    出されたお茶に手も付けず、
    覚に向かって切り出した。

     「進路指導の先生のお話では、
      速川君はまだ、
      決めかねているそうですね。」

      「ええ、実は、ちょっと体調を
       崩していた時期がありまして。
       受験対策がままならない
       状況だったんです。」

    「それは、こちらでも
     承知しております。
     私の所には、昼休みに
     良く来てますから。
     羽木家の話をしている時だけは、
     気力が戻るようだったので、
     最後の惣領、忠清の墓が
     見つかった事も、
     すぐに知らせました。
     当初は、ひどく落ち込んで、
     逆効果だったかと、
     慌てたんですが、
     その後は、前より元気に
     なった様で。
     速川、本当に
     心配してたんだぞ。」

       「木村様~。」

    木村先生と唯の言葉に、
    覚も美香子も飛び上がりそうになる。

      「唯ったら!
       ここにいるのは、
       正秀殿じゃないのよ!」

    美香子のささやきに、
    唯は我に返り、礼を言う。

      「あの時は、本当に
       ありがとうございました!
       先生には、感謝しても
       しきれません!!
       そのおかげで、私、わか・・」

     「わ~、わわ、わか、
      分かったんだよな。
      今が大事な時だって。
      そう、これからの、
      人生を考える為に。」

    覚が慌てて、唯の言葉を遮った。
    まさか、その“羽木忠清”を、娘が
    戦国から、かっさらって来たとは、
    とても言えない。

    覚は、唯に目くばせするが、
    唯は全く気づかなかった。
    それを見た美香子が、
    唯をキッチンに立たせる。

       「そうそう、唯。
        まだ、先生方にお出しして
        なかったわ。
        ”よろずや”さんのお菓子、
        持ってきて。」

     「ところで、お父さんは、
      駅伝にご興味は?」

    会話に割り込む隙を窺っていた
    コーチが、ここぞとばかりに
    身を乗り出す。

      「は?」

     「箱根を走るお嬢さんの雄姿を、
      見たいとは思いませんか?!」

      「箱根って、あの正月恒例の
       箱根駅伝?」

     「そうです!!!あの箱根です。
      お嬢さんなら、
      区間賞だって夢じゃない。」

      「でも、あれは、男子学生の
       晴れ舞台でしょう?」

     「はい。確かに今は。
      でも、僕は、常々それは
      おかしいと思ってるんです!
      女子にも出場権を
      与えるべきです。
      唯さんなら、きっと
      やってくれます。!」

      「あ、いや、しかし、
       今日は、進路のお話では?」

     「はい。まさにそれです。
      僕としては、是非、
      スポーツ推薦をと言いたい
      ところなんですが、
      実は、速川君、
      夏、秋と大会成績が
      残念ながら不振でして。
      でも、まだ、
      記録会があります。
      実は、その記録会に、
      あの青学陸上部の名監督が
      来てくれる事になりまして。」

       「はあ。。。」

     「速川君の走りを見て貰う、
      絶好のチャンスです。
      懇親会も、予定されてますから、
      話しもできます!
      そこでですね・・・。」

    その後は、コーチの熱弁が
    延々と続いた。
    唯が書いたあの自主練メモが、
    まわりまわって、
    青学の名監督の耳に入り、
    当の名監督も興味を
    示しているらしい。

    木村先生は、それを
    辛抱強く聞いていたが、
    喉を枯らしたコーチが、
    湯呑に口をつけた隙に、
    こう切り出した。

    「このコーチの熱意も汲んで、
     いくつか資料を揃えて来ました。
     陸上の強化練習に参加となれば、
     受験勉強の時間も限られます。
     そこでですな。
     学部推薦で進学し、その後、
     可能であれば、青学に編入
     という方向で、検討されては
     如何かと。
     青学編入が無理だった場合でも、
     こちらであれば、郷土史の勉強が
     続けられます。
     いずれ、歴史の教師として、
     教壇に立つのも良いのでは
     ないですかな?
     むしろ、そうなってくれたら、
     私としては、
     教師冥利に尽きますが。」

    木村先生は、分厚い書類のコピーを
    覚に手渡した。

        ・・・・・・・・・・・・

    コーチと木村先生を見送った後、
    唯は駅ビルに駆け付けた。
    出来れば、若君を誘いたかったが、
    帰ってくる気配がない。
    仕方なく、唯は一人で来たのだった。

    「唯、遅いよ~!!!」

     「ごめ~ん。コーチの話が、
      めっちゃ長くて。
      で、F4そっくりさんは?」

    「もう、とっくにイベント終了。
     でも、唯の分も、
     サイン貰っといたから。
     はい、これ。」

    まゆから手渡されたのは、
    軍配型の色紙だった。

     「んん?」

    唯は、その表に掛かれている
    キャッチコピーに目が釘付けになる。

    “Z〇R〇“&”よろずや” 初コラボ!
       羽木家四天王見参!
      あのF4(そっくりさん)が、
     戦国武将として黒羽に
       帰ってくる!!!

    “なんか・・・ヤな予感が
     するんですけど・・・。”

    恐る恐る、唯はその軍配を裏返した。
    すると、そこには、6人の武士の
    コスプレ写真とサインが。
    最上段には、ひときわ大きく、

    “信長来襲、どうなる、羽木軍団”

    の文字が踊っている。

     「こ、これって・・・若君様?!
      しかも、信長?!何で???」

    信長コスプレの若君の写真には、
    見事な花押が書かれていた。

    思わず、唯の目が点になる。
    それに構わず、まゆは
    熱に浮かされたように
    しゃべりまくる。

    「すっごく楽しかったよ~、
     歌あり、踊りあり、ゲーム有。
     特に、銀さんと信長の殺陣が
     凄い臨場感で、もう最高~。
     また見たい~。絶対~。」

     「ははは・・・そりゃ、そうだ。
      だって、ホンモノだし。」

    「それに、あの刀剣〇舞の歌合。
     イベントのお客さんを
     二手に分けてね。
     羽木軍と、武田軍で合戦したの。
     歌合の、振付を間違えた人から
     抜けて行って。
     一曲終わって残った人が
     多い方が勝ち。
     盛り上がったよ~。」

     「で、まゆは、
      どっちについたの?」

    「私?超、迷った~。
     なにしろ、特別ゲストの信長が、
     超絶、イケてたし~。
     でも、やっぱり、
     地元のあいつの方にした。
     F4の羽木四天王、かわゆくて!!!
     何故か、銀さんが羽木の総大将
     だったけどねえ。」

     「は?かわいい?!
      まさか、あの爺たちが?
      で、勝負は?」

    「もちろん、地元の勝ち。
     で、これ、ゲットって訳~♡」

    まゆは、手に持っていた
    白いチャームを揺らす。
    それは、馬の形だ。

     「吹雪!」

    「唯ももう少し早く来れば、
     貰えたのに。
     これ、フリースやダウンの
     ファスナーのスライダーに
     なるんだよ~♪
     ね。超良くない?ほら!」

     「いや、私は。。。
      指、嚙まれそうだし。
      もう、これ以上、痛い目に
      あいたくないっつーか。」

     「はあ?
      じゃあ、フリースの予約してく?
      今なら、好きな家紋を
      刺繍してくれるって。
      なんでも、この当りにいた
      武家の紋が選べるらしいよ。
      先着、200枚限定。
      ほら、結構並んでる。」

       ・・・・・・

    自宅に戻った唯は、これまた、
    お菓子の壁を見る事になった。
    今度は、
    キョ〇ちゃんチョコボールの山だ。

      「これって、また
       “よろずや”から?」

     「そうなのよ!
      イベント大成功ですって・・・
      って、あらやだ。
      唯には内緒だったわ!」

      「内緒も何も、今、駅ビル、
       行って来たし。
       駅の中やら、商店街やら、
       このチラシが
       張り巡らされてて、
       びっくり!
       もう、若君も、お母さんも、
       何考えてんのよ!!!」

    唯は、美香子に、
    まゆから渡されたチラシを突き出す。

     「唯。若君はね。
      若君なりに、一生懸命なのよ。」

      「それは、
       そうかもしれないけど、
       何もこんな。。。」

     「そうね。初めは、
      唯がファンだった、小〇旬への
      子供っぽい嫉妬だったかも
      しれないけど。
      でも、今回は、Z〇R〇黒羽店の
      役に立ちたいって頑張ったのよ。
      それは、分かってあげないと。」

      「でも、ずるいよ。こんなの!
       私も見たかったのに~!」

     「え?唯がキレてるのって、
      そっち???」

    美香子はあきれ顔で唯を見上げる。

      「で、若君は?」

     「ソファーで眠ってる。
      さすがに疲れたのね。
      今日は、大仕事だったから。
      でも、若君って、案外、
      こっちの世界でも、
      やっていけるんじゃないかしら。
      イベントクリエイターの
      才能充分。」

    チョコボールの壁を崩さないように、
    足音を忍ばせて、唯はそっと、
    ソファーに近づく。
    眠っている若君を見て、唯は驚いた。

      “は、花♡類?!”

    マイクロファイバーの
    ピンク色のフリースで、
    白馬のぬいぐるみを抱いて
    眠っている若君は、まさに、
    幼心に憧れた王子様そのものだった。
    そのフリースには、
    羽木家の紋が刺繍されている。

     ”そう言えば、フリース、
      完売だった。
      2時間足らずのイベントで、
      200枚予約。
      おまけに、店内の
      フリースコーナーも空っぽ
      なんて。”

    ふと見ると、
    ソファーの下にDVDが落ちていた。

     ”信長協〇曲”

    その主演は、言わずと知れた、
    ”小〇旬”。

    信長役の人気俳優ランキングに、
    堂々のベスト3入り。

      「若君、これ、見たんだ。
       それで”信長”に。」

    夕食後、若君は早々と寝室へ。
    それを待っていた様に、
    覚と美香子は、唯と向かい合う。

    「今のお前には、若君しか
     目に入らないだろうけど、
     自分の将来だ。
     ここは、冷静に
     考えるべきじゃないか?」

     「実はね。お母さん、
      今日はちょっと、
      感動しちゃった。
      先生方が、唯の事、
      あんなに真剣に考えて
      下さってたなんて。」

      「でも。
       コーチが言うほど、
       甘くないと思う。
       結局、冬季大会の
       結果次第だし。」

    「珍しいじゃないか。
     お前が慎重になるなんて。
     いつもなら、考えるより先に
     突っ走るのに。」

     「ほんとね。
      “戦国武将の妻”が現実で、
      “箱根駅伝”が夢なんて、
      何だか変。」

    美香子の言葉に、覚が笑う。
    唯もつられて笑った。
    その唯を、美香子が真顔で見つめる。

     「ねえ、唯。
      もし、永禄で暮らす事に
      なったとして、
      若君が、いつか、その・・・
      討ち死・・・なんて
      事になったら、どうする?」

      「え?何それ。
       そうならないように、
       私がそばにいるんじゃない。」

     「お母さんね。少し、
      調べてみたの。戦国時代の事。
      信長が暗殺された後の秀吉って、
      かなり残酷な方法で、
      各地の城攻めをしてる。
      たとえ、城が落ちなくても、
      攻め込まれた城の奥方や子供は、
      人質にとられたりするらしいし。
      信長って、女性関係は、
      帰蝶様にずいぶん遠慮してた
      みたいだけど、
      秀吉は、手あたり次第。
      特に、信長の妹のお市の方に
      執心して叶わず、
      余程悔しかったのか、
      その娘の茶々を側室にしたの。
      だからね。悪い事は言わない。
      唯は、平成でも、、
      生きていける様に
      しておいた方が良い。絶対に。」

       「お、お母さん、
        そんな心配してたの。
        私が秀吉の人質になるとか?
        ありえない!考えられない!
        そんなの、あるわけ・・・」

      「実際、あったんでしょ?
       高山の人質になった事。
       阿湖姫の身代わりに。」

       「確かに、そうだけど。」

    「いずれにせよ、今後も、
     行き来できる様にしないとな!」

    そこへ、風呂上がりの尊がやって来た。

    「尊!」

     「尊!!」

      「たけるう~!!!」

       「な、何?揃いも揃って。」

    父と母と姉の迫力に、尊がたじろぐ。

    「お前、姉が、箱根で走る姿、
     見たくないか?
     俺は見たい!」

       「は?」

    「唯が人質になったりしたら、
     大変でしょ?!
     それより、教師の方が良くない?
     歴史の!」

      「人質?
       教師?」

     「絶対イヤ。秀吉なんて!
      考えられないから~!」

       「何故、そこで豊臣?
        若君の当面の敵は、
        織田だろ?
        っていうか、とうとう、
        家族がおかしなことに!」

    「早く作ってくれ!」

     「省エネ高性能の!!」

      「タフな新型起動スイッチ
       次世代家族対応型!」

       「えええええ????」

       ・・・・・・

    その年の秋、何故か尊は馬上にいた。
    ずっしりとした兜に、首が沈み込む。

    10月とはいえ、
    日差しはまだまだ強い。
    重い甲冑の中は、サウナ状態だ。

    “甲冑が、こんなに重いなんて。
    予想を超えまくってる。
    若君、良く戦えますね。
    こんな格好で。
    戦術を練るより、
    甲冑の軽量化が先なんじゃ。“

    朦朧とする意識の中で、
    幻覚の中にいる尊は、
    若君に語りかける。

    そして、とうとう、気を失った。

    「カーーーット!!!」

    福〇監督の野太い声が響く。

    “よろずや”の店長が、
    尊に駆け寄った。

     「凄いじゃないか!尊君~!
      迫真の演技だったよ!
      尊君。尊君?
      おい、どうした?」

    尊の体が、
    頭から落ちそうになるのを、
    店長が抱え込む。

     「やべえ!
      誰か、大急ぎで
      濡れタオルと氷持ってきて!
      脱水みたいだ。」

    撮影スタッフがわらわらと
    尊の周りに集まってきた。

    ここは黒羽城公園。
    若君が提案したZ〇R〇のイベントが
    大当たりで、とうとう地元の
    観光協会まで乗り出し、
    プロジェクションマッピングで、
    黒羽城を再現する企画にまで
    発展したのだ。
    その中に取り込む映像の一つとして、
    羽木九八郎忠清の出陣シーンが
    選ばれた。

    企画当初は、その若君本人が撮影に
    参加するはずだったのだが、
    映像監督のスケジュール調整で、
    撮影が遅れに遅れ、
    とうとう姉と若君は、
    撮影前に永禄に飛ぶ事に。

    そして、アレが再発動されたのだ。
    そう、速川家一同の必殺技。

     「尊!」
      「尊!!」
       「たけるう~!」

    ここまでは、僕もなんとか
    かわす術を身に着けた。
    ところが、今回ばかりは、
    とどめの一撃が僕を襲った。

    「許せ、頼む。尊。」

    若君に見つめられ、
    金縛り状態になった僕は、
    引き受けてしまったのだ。
    そう、まさに、うっかりと。

    重い瞼をやっとの事でこじ開けた
    尊の視界に、羽木家四天王、
    筆頭家老天野に扮した“よろずや”の、
    銀の字ではなく、花♡類キャラの
    店長のどアップが飛び込んできた。

    “わーーー!近い!近すぎる!!
    てか、やっぱり、よく似てる。
    キュンポイントつかみ放題って
    こういう事?”

    呆然としている尊に、
    ”花♡類”が甘い声で囁く。

    「気が付いた?
     ごめんね。無理させちゃって。
     でも、いい絵が取れたって、
     福〇監督、すっごく喜んでたよ。
     もう早速、次回作のプラン
     立ててる。
     街ぐるみの大イベントに
     なりそうだね!
     尊君、次も頼むね♡」

     “まじっすか?
     無理っす。
     次はもう勘弁して。
     それには、呼び戻さないと。
     若君を。
     頼む!未来の僕!
     早く、一日でも早く
     タフな省エネ新型高性能次世代
     ・・・あれ?あとなんだっけ?
     もう、なんでもいい。ともかく、
     新型起動スイッチを平成に・・・“

    うわごとをつぶやきながら、
    尊は、また気を失った。
    “花♡類”の腕の中で。

    「お、そのショットいいねえ。
     そのまま。そのまま。」

    福〇監督が、なにやら嬉しそうに、
    自らカメラを回す。

    その後、出来上がった
    プロジェクションマッピングの
    映像を見て、
    唯が嫉妬の焔と化す事を、
    この時の尊は、まだ、知らない。

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    ちょっとトラブル

    投稿作業中に、操作ミスで消えました。
    先に投稿される方がおられましたら、
    どうぞ、ご遠慮なく~。
    夕方、またチャレンジします。

    追伸:何とか編集できたので、
    投稿しました~。

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    返信
    これから投稿します。

    投稿直前に、大きな地震。
    避難中の方がおられましたら、
    お見舞い申し上げます。
    停電で、信号が消えてしまうのは、
    何とかならないものでしょうか。
    改良して欲しいものです。
    未来の尊にお願いしたい位です。

    てんころりん様
    いつも感想を有難うございます。
    励みになります。
    お礼が遅くなりすみません。
    目次やこれまでの要約は
    まだ作成していなくて
    そちらもごめんなさい。

    ぷくぷく様
    作品が消えてしまうのは
    呆然自失ですよね。
    アップされるのを楽しみにしてます。
    悪丸は、ナイスキャラですよね。
    夜討ちに出かけた爺たちを
    救出に向かうシーンを
    思い出します。
    煙玉の煙の中、千原様を背負い、
    唯にぶつかるシーンの、
    セリフがリアルで。
    本当に痛かったんだろうなと。
    ゴーグル付けてるのは、
    悪丸だったはずなのに。

    夕月かかりて様
    連作に続き、新作も!
    凄いパワーですね。
    敬服いたします。
    ドラマSPでは、若君は11月に。
    でも原作では2月に亡くなった事になっています。
    若君と唯が、二人で現代に飛んだ
    日付は、原作では
    明記されていません。
    なので、原作をもとに
    二人が平成に2月前後に
    戻って来たとすれば、
    バレンタインを二人で過ごすのも
    違和感はないと思います。
    ますますラブラブな二人。
    楽しませて頂いてます。

    では、これよりおばばも、
    投稿いたします~。

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    返信
    二人の平成Days46~22日7時30分、扉が開く

    遠足かも。どっちが引率かわからないけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人、着替えました。

    覚「なるほど、眼福はわかるな」

    尊「お姉ちゃん、若君を守るのを相当頑張んないと」

    唯「えー。ねぇ、私の服装にコメントは?」

    尊「ない。若君にはあるんじゃない?…あ、黙ってると思ったら、またときめいてるし」

    若君「…あ?ん、何か申したか?」

    尊「コメントは差し控えます」

    美香子「唯、髪はどうしたいの」

    唯「イヤリング着けるから、耳が出るようにして欲しいな」

    美「んー、じゃあ前髪は残して、横を編みこんであげよう」

    唯「やったぁ、ありがとう」

    美香子の手が、唯の髪を少しすくっては編み、すくっては編みして顔周りに三つ編みが出来上がっていく。

    唯「たーくん、そんなにじーっと見られると恥ずかしいよ」

    若「まさか、母上も術の使い手とは」

    美「あら~。なんか凄い人になった気分ね」

    お弁当、出来ました。

    覚「いつものリュックで持ってくのか?」

    唯「そのつもりだよ」

    覚「水筒もあるから、案外重いぞ」

    若「わしが持つので大丈夫です」

    美「じゃあ唯の鞄は?」

    唯「このリュック」

    いつものリュックに比べて、かなり小ぶり。

    美「まぁ、合格ね」

    唯「良かったぁ。しゃっ!」

    美「支度は完璧?ならちょっと待ってて」

    唯「ん?」

    芳江とエリが来た。

    芳江「んまぁ~、なーんてかわいらしいカップルなんでしょ!唯ちゃん、若君、よーく似合ってますよ」

    エリ「初々しいわね~。赤もとってもお顔に映えて綺麗。最後にこんな、天使みたいな姿が見られるなんて」

    美「お二人に、少し早く出勤していただいたのよ」

    唯「あっ、そうなんだ。ありがとう~」

    芳「私達は、お会いできるのが今日が最後だから」

    若「芳江さん、エリさん、今まで大変お世話になりました」

    エ「嬉しいわ~ホント、楽しませてもらいました。ありがとう。では、お元気で」

    芳「お達者でね」

    美「では、急いで駅まで送ってきます。さっ、出かけるわよ」

    唯「はーい。じゃあたーくん、参るぞ~」

    若「ハハハ、では、行って参ります」

    尊&覚&芳&エ「行ってらっしゃーい」

    車を見送った。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「若君、デレデレだったね」

    覚「おー、顔にメロメロって書いてあったぞ」

    尊「ははは。いい思い出になるといいね」

    覚「そうだな」

    駅に到着。

    美「二人きりなんだから、唯は若君を、若君は唯を守るのよ」

    唯「心得たっ」

    若「心得ました」

    美「二人ともいい笑顔ね。行ってらっしゃい」

    いよいよ自動改札を通ります。

    唯「あそこ今、入口がふさがってるじゃない。でね、カードをその光ってる所に当ててみて」

    いつものように、素直に言われた通りにする若君。ゲートが開いた。

    若「おおっ、動いた」

    唯「これで開くの。通って」

    若「急いでか?」

    唯「普通に歩けばいいよ」

    そろりそろりと通る。通過したらゲートが閉まった。

    若「おおっ」

    唯「そんな感じでーす」

    後ろから、唯も入ってきた。

    若「慣れておるのう」

    唯「慣れてはいないけど、学校の部活の大会とかしょっちゅう行ってた時に使ってたから。だから家にあるはずなんだけど、たぶんお母さんの事だから、買っちゃえ~って思ったんじゃないかな」

    ホームで電車を待っている。

    若「先程の話じゃが」

    唯「ん?改札?カード?」

    若「学校じゃ」

    唯「あ、そちらの話」

    若「…もう行かぬと決めたのじゃな」

    唯「バレてたかぁ」

    若「済まぬ、唯。わしの為に、様々な事を辞めたり、諦めたりさせておる」

    唯「いいの。だって、それは嫌だから行かない、って言ったら困るでしょ?」

    若「それは、身を裂かれる思いじゃ」

    唯「うん、だから気にしないでね」

    急に、抱き締められた。

    唯「えっ」

    若「わしが、唯を守る」

    唯「ありがとう。私も、たーくん守るからね」

    若「離さぬ」

    唯「うん。絶対そうしてね。たーくん」

    若「なんじゃ?」

    唯「ここでは…恥ずかしい」

    若「そうか」

    腕を緩めたところに、ちょうど電車が入ってきた。

    唯「じゃあ行こっ」

    出発します。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    どこに向かっているかは、次回。

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    返信
    二人の平成Days45~22日土曜7時、ピッとね

    電車は初めて、でも最後なの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は待ちに待ったクリスマスイブイブイブデート。朝ごはん食べてます。

    唯「お母さん、後で、髪結んで欲しい」

    美香子「あらそう、いいわよ」

    覚「駅には何時だ?」

    唯「8時に家出れればいいかな」

    覚「じゃあそろそろ作るか」

    唯「やったぁ、お弁当、お弁当~」

    若君「楽しそうじゃ」

    食卓も片付け終わりました。

    美「そろそろ着替えるわよね。二人に、渡す物があるの」

    唯「なに?」

    美「まずは唯に」

    袋が出てきた。

    唯「え?何だろ」

    タイツが複数。柄が入っている物が多い。

    唯「え!すごーい、かわいい~」

    美「ワンピースに合わせて穿いて欲しいな、って思って、買い揃えちゃった」

    唯「えーどうしよう~、たーくんどれがいい?」

    若「そうじゃな」

    唯「え」

    若「ん?」

    唯「選んでくれるの?」

    美「何よそれ。聞いたのは唯の方でしょう」

    尊「僕が進言した」

    美「あら、急に」

    若「尊に、わからぬのは致し方ないが、求めに出来るだけ応えるのも優しさとな」

    唯「えー、なんて嬉しいコトを~ありがとう!尊」

    尊「どういたしまして」

    唯「じゃあ、たーくんどれがいい?」

    若「これはいかがじゃ」

    唯「これ?」

    白地に、パステルカラーの水玉が散りばめられていて、少しラメが入っている。

    美「あら、かなりラブリーなのをチョイスね」

    唯「して、その心は?」

    若「夜降った雪が、朝日に照らされ、溶ける間際の輝きのようじゃ」

    美「まあ、なんて叙情的」

    若「雪だるま、の耳飾りに合わせての」

    唯「えー!すごい、たーくんセンスいい!」

    若「扇子?」

    唯「そう、扇子扇子」

    尊「通じてるのか?」

    美「ブーツがキャメル色だから、いい感じよ。でね、もう一つは二人に」

    色違いの定期入れが二つ。

    唯「え?何、定期?あー、ICカード?」

    美「そう。今日は電車も乗り継いだりするから、ピッって通れる方がいいでしょ。券売機で毎回買ってもいいだろうけど、若君も覚える事が少ない方が楽だしね」

    唯「そっか、ピッで通れるから」

    美「ただ買うだけでも良かったんだけど、記念になるかなって思って…カードをよく見てみて」

    唯「え?あー、名前が入ってる!って事は、たーくんのは?」

    若「どこじゃ?」

    唯「あ、これこれ。ハヤカワタダキヨ、って書いてあるよ」

    若「なんと」

    美「ごめんなさいね、若君。記名式を買う時は連絡先を登録しなきゃいけなかったんで、写真館の時と同じにしたの」

    若「これは…母上、ありがとうございます」

    唯「羽木が良かった?」

    若「いや。速川で嬉しい」

    若君が、カードの名前の部分を感慨深く指でなぞっている。

    美「じゃあ、そろそろ二人とも着替えてらっしゃい」

    若&唯「はいっ」

    美「ん~いい返事だこと」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    このままだと、カードの名前がピッだと勘違いされそう。

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    二人の平成Days44~18日火曜17時、冬に遊ぶ

    クリスマスイブイブイブデートの前に、デート服を買った際に唯が話していた、イヤリングを買った時の様子をお送りします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ヘアアクセサリーなどを売っている、ショップに到着。

    若君「おなごは、かんざしや櫛が好きじゃの」

    唯「え?誰かに贈ったりしたの?」

    若「してはおらぬ」

    唯「ホントかなぁ」

    若「してはおらぬし、今もわしが支払う訳ではないゆえ、贈った事にはならぬし」

    唯「いいの、たーくんが選んでくれた~ってのが嬉しいから」

    若「そうか。しかし、此処は眩い場所よのう」

    様々なアクセサリーが並んでいる。ライトが当たっているため、まぶしい位だ。壁に全面貼られた鏡に、光を集めた若君が映っている。

    唯 心の声(わぁ~綺麗。たーくんが)

    鏡の中の、若君に見とれる唯。

    唯 心(あ~周りが霞んで見える、綺麗過ぎる~。そんなたーくんは私のもの。私は、たーくんのもの。いや~ん、ぐふふ)

    若「唯?」

    鏡の向こうから、若君が声をかける。

    唯「あっ、なんでもないですぅ」

    しばらく店内を眺めていたが、あるイヤリングに目が止まった。

    唯「かーわいい!雪だるまみた~い」

    真珠を模した丸い玉が、上下重なりぶら下がって揺れる。上が小さめなので、確かにそう見える。

    唯「ねっ、雪だるまみたいでしょ?」

    聞かれた若君が首を傾げている。

    唯「え?何?」

    若「雪、だるまとはなんじゃ?雪はわかるが」

    唯「え~?!えっ、だるまがわからない?」

    若「わからぬ」

    唯「え~、歴史ありそうなのに。戦国時代にはなかったのかなあ」

    スマホで検索。

    唯「あ、なかったみたい。たーくん、ごめんね」

    若「それは良いが、そのように唯が喜ぶ、雪だるまとは何じゃ?」

    唯「あー、こんな感じ」

    画像を見せる。

    若「ほぉ。なるほど。雪でこのように形作るのじゃな」

    唯「うん!小さい頃、庭に雪が積もると、尊と一緒によく作ったんだよ。でも、どっちかというと、雪合戦に変わっちゃってたけど」

    若「合戦?幼子らがか?」

    唯「あっ、そういえば戦でした。雪を丸めて玉にして投げ合うから、痛くないよ。冷たいだけ」

    若「そうか。それは良い思い出じゃな。ならばそれにするが良い」

    唯「これでいい?待って、着けてみるね」

    頬にかかる髪を耳にかけ、着けて顔を揺らすと一緒にゆらゆらと。

    若「かわいいよ、唯」

    唯「気に入ってくれた?」

    若「あぁ。唯は何をしていてもかわいいがの」

    唯「やだぁ~どこでそんな返し方覚えたの?でも超嬉しい!」

    買い物終了。帰宅途中。

    唯「あの、これから向かう緑合も、雪がよく降るかなあ」

    若「そうじゃな…訪れた事はないが、山合いであったと思う」

    唯「そっか。じゃあ雪が積もったら、雪だるま作ってあげるね」

    若「共に作ろうではないか」

    唯「わぁ、楽しみ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人の熱で、即解けるって。

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    あれ?

    先程、このアシカフェ内の、スポンサードリンク(広告)に、電子書籍の広告で、アシガールの単行本の表紙が11巻15巻10巻の三つ表示されました。

    原作を読んでいなくても、アシガールと検索すれば漫画の情報は出るので、毎回、こんな表紙かーとは思っていましたが、最新刊15巻を見て、ん?

    あれ?この打掛、「桜が全体にあしらわれたパステル調の色打掛」とも言える。私が昨年12月1日に投稿した、二人の平成Daysのno.358、写真館で唯が決めた和装?

    私がイメージしたのは、もっと淡い色調だったんですが、元々あの表紙のお着物、原作に既に登場してたんですかね?それを私がどこかで見て、脳裏に焼きついてたのを描いちゃったのかしら。

    それか私が先?なぁんて。着物の柄は、すごく斬新でもない限り、どうしても似てくるものとは言えますね。

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    無題

    無駄・・・またやっちまいましたぁ( ;∀;)
    本編やSPの間の妄想は、日にちも分かっているので日にちですが題にしました(^_^)
    無題はSPの終った後の妄想で、現代に半月行っている設定なので、題をどうしようかと考えても良い言葉が浮かばず無題にしてしまいました(;_;)
    過去に自分で物語を幾つか書いた事がありますが、内容の前に、先に題が浮かんでという事も有り、自画自賛ですが〔心石〕と書いて〔ほうせき〕と読ませたり、〔人生〕を〔みち〕等と正規に読ませずに題を。でも今回はどうにもこうにも見付からずで(;_;)
    他に考えている事もありますので、その時は良い題が浮かぶようにしますね(*^_^*)

    インターネットのニュースで映画のタイトルが【アーク】と内容に
    えっ!って思いました、悪丸の名前を考えた時に母国は分かりませんがアフリカと仮定して、良くある名前にアークというのが有って、ドイツ語でイーグル(わし)だと知りカッコイイから付けたのです(^_^)
    不老不死の話ですが、以前に不老不死に悩む男性の物語を描いた事がありました。
    同じ様な事を考える人いるんだなぁと思いましたとさ(^_^)

    てんころりんさんの提案を、次に妄想物語を書く時の参考にさせて頂きます(^_^)
    頑張りま~す(^O^)/

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    ちょこっとだけ

    ぷくぷくさん
    ここ⤵️
     『無駄のラストの所と…』
     『無題のラスト』の間違いですよね。

    シリーズ『無題』が川の本流で『宗熊の決意 第一章』は支流なんですか !!
    今となると『無題』ってタイトル、ちょっと残念です。
    追伸:解説や案内は『宗熊の決意 題二章』に合わせて出して下されば大丈夫です。

    投稿フォームへ

    返信
    先にちょこっとだけ

    てんころりんさん
    ありがとうございます(^_^)
    時間の合間にちょこっとだけ(^_^;)
    無題が川の本流だとして、宗熊の決意第一章は支流で
    無駄のラストの所と合流するような感じで書きました(^_^)
    感想やまとめる事等の学習は苦手な私なので、
    有難いご意見は噛みしめるようにゆっくり考えてみようかと(*^_^*)
    少々お待ちください(*^_^*)

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    (新)二人のもしもDays1、バレンタイン直前篇

    とうとう、妄想が暴走になりました。

    平成Daysの空気感をそのままに、二人に、本来現代に居ない日付のイベントを楽しんでもらおうという算段です。今は確か?とか、この頃永禄では、は全てとっぱらいました…。
    なんでもありの様相ですが、ドラマの続きというよりは、勝手に面会時間はずらすわ呼び名は変えるわでお送りしている、平成Daysの進化版、としてお送りします。
    「創作」倶楽部の名のもとに、羽目を外しましたので、ご不満な方は、どうか跨いで通過してくださいm(._.)m

    ひとまず、今の時季に合わせたお話を。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    バレンタインが近づいた日曜の昼下がり。速川家キッチン。

    唯「たーくん、アーモンドチョコ好きだからさぁ」

    美香子「うん」

    唯「それが、すっごく大きかったら、喜んでくれるかなって」

    美「大きくね。いかにも唯が考えそうな」

    唯「だから~、作りたい~!」

    美「まぁ、まだ、作れって丸投げされるよりはいいけど」

    唯「で、考えたんだけど、元々のアーモンドチョコを芯にして、溶かした別のチョコをまわりにつければいいかなって」

    美「はいはい、それなりに手作り風に考えたのね。まぁ、やってみましょ。お父さん達が買い出し行ってる内に」

    板チョコをボウルに入れ、湯せんにかけている。

    美「温め過ぎると、分離するわよ」

    唯「どのくらい?」

    美「50℃くらいね。ちゃんと調べた?」

    唯「ざっくりとは。どうやって測るの」

    美「温度計あるから」

    唯「あるんだ」

    美「それくらい聞きなさい~。もー、行き当たりばったりなんだから!」

    チョコ、母のお陰でいい感じに溶けました。

    美「一粒、中に落としてみて」

    唯「うん、それで?」

    美「スプーンで転がしたらすくって、バットに並べる」

    唯「わかったー」

    美「そこ、垂れてる!」

    あちこちチョコが飛びながらも、順調に進んでます。

    唯「二、三個一緒に入れてくっつけたら、もっと大きくなるよね」

    美「なんでそんなに大きくしたいの?プチサイズを可愛くデコレーションしよう、って気はないの?」

    唯「一緒に食べるから。私は、大きい方がいい~」

    美「あれま。バレンタインデーの意義からかけ離れてる気はするけど、若君ならどんな風でもニコニコしてくれるわよね」

    唯「やってみよっ」

    徐々に出来上がってます。

    唯「なーんか、形が不格好だなー」

    美「バットに接してる部分は平らになるしね。固まるのに時間かかるし」

    唯「全部上から垂らすとか。まいっか、残り少ないし、ボウルのここにこすりつけてと」

    美「あ!もう~なんで、手で直接触るの!」

    唯「めんどい」

    美「はぁ~。面倒だなんて、若君に失礼でしょ!もー、作業終わるまで他の物触っちゃダメよ!」

    尊「ただいま~」

    若君「ただいま帰りました」

    美「あれ?思ったより早い」

    唯「えーっ!あとちょっとなのに~」

    若君と尊が、買い物袋を抱えて帰宅。

    尊「甘い香りがすると思ったら、男子、というか若君が見ちゃいけない作業中だったみたいだね」

    若「種の入った甘味、か?」

    テーブルの上に、見覚えのある空箱。

    覚「ただいまー、おっ?バレンタインの準備か」

    美「今日は買い物早かったわね」

    覚「男三人だからな。あれこれ悩まず、ひょいひょい運べる」

    唯「そのせいで、全部バレバレだよぅ」

    若君が、チョコまみれのテーブルの上を不思議そうに眺めている。

    若「これは、何という有り様じゃ?」

    唯「バレンタインデーの…」

    尊「それ、説明に相当時間かかるけど」

    唯「もー、それがわかってたから、帰るまでに終わりたかったんだよぅ」

    美「急いでたとはいえ、こんなにあちこちチョコ飛ばして~!」

    尊「若君、なんかすごい事になってますが、この有り様でもわかる事が一つあります」

    若「申してみよ」

    尊「お姉ちゃんは、若君のためにかなり頑張った模様です。なんで手がそんな状態かは、謎だけど」

    唯「おっ、尊うまくまとめたねぇ。正解~。へへへ、ほらたーくん見てっ」

    目の前に勢いよく手を出すので、若君は少しのけ反った。

    美「唯~、あちこち付いたら大変だから、じっとしてて!それ、服に付いたら中々取れないのよ!」

    唯「チョコ味の、唯でーす。なんちって」

    若「…頑張った、のじゃな」

    唯「うんっ」

    若君、唯や周りの様子を見ながら、じっと考えていたが、

    若「これが最良か…」

    唯「ん?」

    若「唯、うまそうじゃの」

    唯「そう?なんとかできて良かったよぉ…へっ?えーっ!!なんでー?!」

    唯の腕を掴み、指をパクっとくわえている。

    若「甘い」

    唯「えっ、えーっ!!」

    ジタバタするが、手首はがっつりホールドされていて、指一本一本、キレイに舐められていく。

    尊「なんか、直視できない」

    美「さすが若君、キュンポイントがわかってるわ」

    覚「へ?そうなのか~?」

    美「だって、並んでるチョコよりも、唯の方が良かったんでしょ。これで中身も食べたいなんて、言われようものなら…あらん」

    覚「妄想が激し過ぎるぞ」

    若君が手を離した。

    若「この位かの。ほれ、手を洗うて参れ」

    唯「はっ、はい」

    洗面所へ走って行った。

    尊「若君、あの」

    若「なんじゃ?尊」

    尊「なんで指舐めたんですか?」

    覚「核心を突く質問だな。いやそのまんまか」

    若「母上が大層ご立腹で」

    美「え?私?」

    若「唯が不憫であったので」

    美「あら優しい」

    若「手さえ、何とかすれば良いかと」

    尊「そうだったんだ」

    美「なあんだ」

    尊「お母さん~」

    若「何がどうと?」

    尊「いえ、実に健全な理由だったなと」

    若「健全?」

    尊「お母さんが変な事言うから。中身も食べたいんじゃないかって…ってこの説明、僕にさせないでよー!」

    若「中身、中身…なるほど」

    尊「今、不健全な顔にスイッチした気が?」

    唯「あー、びっくりした~」

    若「唯」

    唯「はい?」

    若「後程、中身をいただく」

    唯「中身?なにそれ。まいっか、わかったー」

    尊「うひゃー」

    美「まずは片付けましょ。きちんとチョコも固めないと」

    唯「うん。後で、できたチョコ少しあげるね。たーくん早く食べたいでしょ?」

    若「どちらかと言えば中身が良いが」

    美「はいはい、若いわねー」

    覚「ボウルこっちにくれ、洗うから」

    尊「なんなんだこの、後程話もサラっと進んでく空気は」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家はこの両親ありきでいつも平和。

    通常の、二人の平成Daysは、また二日後に再スタートします。

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    スタートが12月8日の件

    既に半月経ってるのはなぜか。

    一つめは、投稿日と描いている日付を合わせたかった。二年前に二人が居た日付と同じに。ちょうど11/23に初投稿していますが、そのまま11/23の話から始めると、二度と日付は一致しません。一つの日付で複数話ありますからね。途中、少しだけ一致して、手前味噌ですがリアルさを感じられて小躍りしました。以後は、ほとんど合ってませんが。

    二つめは、私が描いているのは、永禄に戻る事を決めた後の二人だからです。

    既出のno.370で、これらやSP内での日付の見解を述べてます。そちらと合わせてご覧いただけるとわかりやすいですが、

    11/23 平成に到着

    11/25 大相撲千秋楽(no.358内の台詞に出てくる)

    11/27? 平成か永禄かの選択を迫られる

    11/29? 永禄に戻る許しを得る

    →許しを得て即、写真館の予約。無事1日と9日を押さえた

    12/1 写真館で試着

    12/3 覚の指輪話(no.375内の回想)

    12/8 この日の午後から平成Daysスタート。夜は手巻き寿司パーティー(逆算したらこの日しかなかった)

    12/9 家族写真を撮りに行く

    じゃあ、11/29スタートじゃないの、となりますが、日付が明確でない。実際は12/1スタートです。物語は8日→1日→9日と進みますので。8日のパーティー内で、翌日は写真撮りに行く話が出ないと、いきなり1日の話はできないですから。

    これで説明になりましたかね?日付も物語も、終わりに近づくにつれてギュっとなっております。

    新?シリーズのお知らせ

    ご新規様への説明をしてすぐで恐縮ですが、この後、通常の平成Daysはお休みして、初投稿します。てんころりんさんが、「創作は自由!ドラマと関係なく現代の二人を書く事だってありますし」とおっしゃられて、今日出そうと思っていた私は、どこに間者潜んでた?とギクッといたしました。

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    no.507の訂正.補足です

    ①忘れているので, 少し読むつもりで検索システムを使いましたが『宗熊の決意 第一章 (7)』より前は出ません。探しました。
    (1)~(7)の投稿Noを知らせるのも一案ですね。

    ②しかし長いので, 読み直しは期待できないと思います。続きを直ぐ読めるように、いつの時期のどんな物語りか、解説を切望します。?

    ③時系列の順番は、前のシリーズ『無題』の後に『宗熊の決意』が続くと私は誤解してました。
    『無題』はドラマ(SP)の後の物語で、唯と若は黒羽城へ戻った後、成之,阿湖,爺様 他7人と、再び現代に逃れる事になり、一月現代で過ごして無事に黒羽へ。
    原作と全く違った展開が楽しかったですが、唯と若君は、現代から “二度” 戻る事になり、私. 混同してしまいました。?‍♀️

    ④ぷくぷくさんは:前のシリーズ『無題』のラストに宗熊と八次郎を登場させて、そこに現れる迄の熊の事を執筆中と書いてました(no.263)
    それが『宗熊の決意』ですね。

    ⑤創作した登場人物~*
    ・八次郎:三郎兵衛の弟。三郎兵衛も古いアシラバでないとピンとこないかもです。
    ・諸橋則次の娘·ゆめ
    ・相賀成之:相賀一成の弟でしたね。会話文で、男:「…」とあるのは、この人ですね?
    第二章でも登場でしょうか?更に新しい人物も出ますか?
    よく小説のカバーの折り返し部分に、登場人物の紹介があったりします。そういうのが欲しいなぁと思いました。

    色々注文して, すみません。何卒よろしくです?

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    ぷくぷくさん

    今日は“作品案内”の事だけにしますね。
    ぷくぷくさんは読み物風に、幾つかまとめて、ブロックで何回かに分けて投稿されてます。
    間隔が空いたので、次回に、何月何日 No…の続きという案内だけだと、読む方は忘れているし、新しい方には厳しいんじゃないかと・・
    『宗熊の決意』時期はいつの物語か、どういう状況から始まったどんな物語りか、解説して頂けたらと思います。
    ずっと読んでいる私も あやふやです。
    皆さんに向けて再開の時に よろしくです(*^^*ゞ
    ★2/7 書き換えます★

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    夕月かかりてさん、ありがとうございます

    「二人の平成Days」は4ヶ月続きますね。
    タイトルに番号と日付があれば、頁を繰って探して追えるでしょ.って話ですが、半端ない量なので案内があった方が親切ですね。
    創作は途中から読んでもよし.という方もいるでしょう。
    私なら、全体が見えないと不安ていうか、どんな経過で進んだのか知りたいし、ピックアップして読むので、目次や案内が欲しいです。
    投稿No順に一つ一つ書かなくても良いかなと思ってましたが、ご本人が書くと流石に分かりやすいです❗?
    この調子でお願いします。?

    それで・平成Daysは、SPで二人が現代に居た2018/11/23~12/23の創作で、日付を想定して書いたこと、12/8からはじめた理由、2ヶ月前に書いてますが、あった方が良くないですか?
    主に初めて読む方への案内なので。
    創作は自由!ドラマと関係なく現代の二人を書く事だってありますし。

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    夕月かかりてさん

    私の話は、裏付け無しの単なる妄想なので
    (^_^)
    色んな角度から、色々な物語が生まれるアシガールは恐るべし(^○^)

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    二人の平成Days43~21日22時、あの日の空と

    だからデジカメ持ってました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    写真がスライドショーのように流れ始めた。

    若君「テーマパークじゃな」

    イルミネーションの前でピースする二人から。

    尊「これ、よくピースサインがわかりましたね」

    若「指を二本出せと言われた」

    尊「そうなんだ、お姉ちゃんらしいや」

    しばらくイルミネーションの写真が続いた後、画面が切り替わった。

    若「ん?これは…あの」

    まだ暗い海が映る。画面が少しずつ動いている。

    若「先程までとは撮り方が違うようであるが」

    尊「さすが。よくわかりましたね。タイムラプスって言うんですけど、写真を一定の間隔で撮り続けて、繋げて映像の様にする技法なんです」

    若「宿から見た、海では?」

    尊「当たりです。イルミネーションでこれをやろうかなと思って、デジカメを…スマホではない別のカメラを持参したんですけど」

    若「また海が見られるとは」

    尊「そうなんです。前の晩に、若君がすごく海を気に入ったのがわかったので、急遽予定を変更して、海を夜明け前から日の出まで撮り続けました」

    若「ずっと手で持ち、か?」

    尊「いえいえ、三脚持って行ってましたから。全然楽だったんでご心配なく」

    朝日が昇り、海の色が変わっていく。

    若「美しい…わしもちょうど見ておった頃じゃ」

    尊「はい。撮影止める時間に合わせて、僕もその時間お風呂入ってたんです」

    若「そうだったのか」

    尊「そしたら、隣から賑やかな声が聞こえてきて」

    若「あの時か…」

    尊「二人のために撮影してて、それで声が聞こえたんで、とても幸せな気分になりました」

    若「そうか…。その折の、唯との時間はよう覚えておる。観る度に思い出せて、幸せを貰えるんじゃな」

    尊「喜んでもらえて、嬉しいです。次に本物を見に来れるまでは…この映像で楽しんでください」

    若「くれぐれも、無理はせぬようにの」

    画面が変わり、写真館の様子がスタート。

    若「ん?何やら…」

    尊「気づきました?音量上げますね」

    写真のスライドショーと共に、話し声が聞こえる。

    若「父上と母上の声じゃ!」

    尊「そんなに驚いてくれて、頑張った甲斐がありますー」

    若「写真を見ながら、感想を述べられているようじゃが」

    尊「はい。オーディオコメンタリーって言います。両親に家族写真の完成版を観てもらいながら、別に音声を録りました」

    若「次から次へと、術が繰り出されるのう」

    尊「実は音声を録るのに、若君とお姉ちゃんに少し悪い事をして」

    若「そうなのか?身に覚えがないが」

    尊「実は録るのが一苦労で…実験室に両親と僕の三人が居られて、かつ若君達が絶対来ない時間じゃないとダメなんで、二階に早めに行ってもらおうと画策して」

    若「ハハッ。一度部屋に入ると、確かに9時まで離れぬ。見透かされておるのう」

    尊「ええ、すいません。だから一昨日に」

    若「あー、なるほど。あの日は、けしかけられるのうとは薄々思うておった」

    尊「騙すような事してごめんなさい。ちょっと時間がなくて、切羽詰まってたんで」

    若「謀られたとは思うておらぬから、気に病むでないぞ。かえって苦労かけたの」

    尊「そういえばその日は、ちょっといつもと感じが違いましたね」

    若「あの日は一日中、心が騒いでおった。別れが迫る中、感慨深かったのもある。だがその中でも、唯を赤く染めた姿はあまりにも可憐であったので」

    尊「ときめいたんですね」

    若「そう申すのか?色々な表し方があるんじゃのう。尊は誠、ポテンシャルが高い」

    尊「…一回しか聞いてませんよね?」

    若「漏れなく、聞いておるゆえ」

    尊「神業だよ。では続きは、明日という事で」

    若「世話をかけたのう。忝ない。唯の喜ぶ顔が楽しみじゃ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    盛り沢山じゃ。

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    今までの二人の平成Days、番号とあらすじ、25まで

    ご教授をお願いしてばかりではいけないと、シリーズの案内をどのように、と色々考えましたが、既に40を越える投稿をしておりますので、まずは初投稿作品のダイブ!2話と、1から25までを羅列しました。もしや、思ってたんと違ーう?
    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。

    ドラマ最終話ダイブ!の続き~唯篇~no.329&同じく~若君篇~no.329、永禄に居ますが平成Daysのプロローグ的な位置付けです

    二人の平成Days1no.330、12/8、毎日誰かの誕生日

    2no.333、12/8、尊と三人でスーパーに。じいをカートにどう乗せるか

    3no.338、12/8、芳江さんエリさんの分もケーキを買って帰宅

    4no.346、12/8、楽しい手巻き寿司パーティー

    5―1no.347、12/8、二手に分かれた一階の方。翌日家族写真を撮りに行く発表が

    5―2no.348、12/8、一方二階は母達が涙

    6no.353、12/8、面白いの意味の違いを学ぶ

    7no.357、12/9、朝の公園で愛の告白とお姫様だっこ

    8no.358、12/1、母と三人で写真館へ試着に。速川忠清です

    9no.362、12/1、白装束から小垣城の別れを思い出し涙

    10no.363、12/1、タキシード姿が王子様。ネクタイは結べない

    11no.364、12/9、撮影スタート。ここで呼び名がたーくんに

    12no.368、12/9、和装から洋装。俳優ですと上手くやり過ごす

    13no.371、12/9、撮影大詰めに指輪登場

    14no.375、12/9、若君の指輪に込めた思いが語られる

    15no.383、12/9、情緒不安定な唯。意を決し両親との約束を破る若君

    16no.385、12/9、優しく相手をする若君。ここで面会時間が9時に延長

    17no.388、12/12、スーパー銭湯へGO

    18no.392、12/12、岩盤浴を満喫。赤ちゃんも寄ってきた

    19no.394、12/12、若君叱られる。現代語を駆使

    20no.395、12/15、温泉旅行へGO。若君の海初体験

    21no.404、12/15、テーマパークへ。煌めきの世界に全員大はしゃぎ

    22no.412、12/15、宿で夕食。父が酒の力を借りる

    23no.422、12/15、ジェンガ登場。同じ部屋に二人きりで唯のビンタが炸裂

    24no.427、12/15、とうとう…

    番号未定no.433、2019/1/1、これは後で40に変わります。

    25no.437、12/16、翌朝露天風呂で戯れる

    説明し過ぎもなんですし、やっぱり難しいですね~。続きは50話くらいまででまた書きます。

    ぷくぷくさんへ

    悪丸はアークくんなんですね。
    私は、悪丸となったのはこれが語源かな?と思っていた別の名前がありました。ただ、裏付けもとってないし、この後今日の投稿しなきゃいけないだし(ノд<)。また機会がありましたらお話します。
    彼も、苦労続きの人生ですよね。どうしても脇役にはスポットライトがあたりませんが。

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    悪丸

    南蛮貿易、南蛮船相手に商いをしている友蔵がある村に居る男を訪ねた。声を掛けたが返事がない。裏に回り土を耕す男に声を掛けた。

    「お~い、六太」
    「あぁ」

    返事だけ。無口で気難しく愛想もないが人情は厚く働き者。

    「暫らく振りにお前さんの顔を見たいと思うての」
    「あぁ・・・ん?」
     
    友蔵の後ろに誰か居る。

    「何だ?」
    「まぁ、話は。水を一杯くれないか」
    「あぁ」

    友蔵の後ろから六太をチラチラ見ながら家の中へ。珍しいのかジロジロと家の中を見ていた。水を汲み友蔵と子供に渡した。子供はコクリと頭を下げただけ。

    「礼も言えんのか」
    「まぁまぁ。六太を男と見込んで頼みがあるのだ」
    「はぁ?」

    友蔵が買い付けをした帰り際に、友蔵に相談してきた。乗組員は働き手として子供を連れてきたが、日本に到着し程なくして病に倒れあっけなく。連絡先として記載されていた情報は嘘だった事が分かり、母国に連れて帰っても家族の所在は分らない。子供ながらに一生懸命に仕事をして、仲間の輪に入って楽しむような子ではないが、他の乗組員に可愛がられていた。どうしようかと思案している所、顔見知りの友蔵を見つけた乗組員が助けてくれないかと懇願してきた。友蔵は異国の言葉は少し理解できたが肝心の『預けたい』という言葉があやふやなまま『YES』と返事をしてしまった。相手はニコニコしていた。友蔵的には出港するまでの間だけ見ていてくれという解釈だった。船から少し離れた所で休憩していると汽笛が。振り向いた時には岸壁から離れていた。慌てて子供の手を引き、甲板に見える乗組員に大きく腕を振り『子を忘れてるぞ!』と大声で言ったが汽笛にかき消された。乗組員は見送ってくれているのだとニコニコしていた。船はどんどん遠ざかる。その時、友蔵はやっと分かった。一時だけ預かるのではなかった事を。家には五人の子供が居るし、商いをしているからと言ってもそれほど裕福ではない。どうしようかと思った時ある人物が浮かんだ。そして六太の元へ。

    「お前さんは独り身だが、信用のおける男だ。この子を育ててくれないか?」
    「勝手な話だな」
    「重々承知している。だが、連れて帰るわけにはいかぬのだ。わしを助けると思って。後生だ、頼む。この通り」

    友蔵はその場に手を付き懇願した。

    「私は子を育てた事も無いぞ。一人で食べて行くのが精一杯だ」
    「分かっている。少しばかりだが、銭を置いていく・・・頼む」

    もう一度頭を下げた。観念したように、

    「わかった。だが、働いてもらうぞ」
    「働き者だって言ってたから。異国の言葉は分らないが、共に暮らせば話せるようになるかと」
    「はぁ、勝手な事を」

    友蔵は小袋に銭を入れて六太に渡した。

    「この子の名は?」
    「あうくとか言っておった」
    「あうく?・・・異国の名は変わっておるのだな」

    本来は〔アーク〕なのだが友蔵には〔あうく〕と聞こえたのだった。友蔵はもう一度頭を下げ早々に出て行った。

    「勝手な・・・お前、あうく、歳は?」

    アークは聞かれても理解が出来ず、首を傾げた。

    「はぁ・・・水汲みを覚えてもらおうか」

    六太は器の水を差して、外を指さし、桶を持ち敷居をまたいだ。アークは一緒にという事だと理解し六太について行った。子供心に此処に居なければならないと思った。村の水場に行くと、遠巻きに村人が見ていた。不愛想の六太だが嫌われてはいない。見知らぬ子が居るので近づきはしない。

    「六太さん、厄介な事、頼まれたようだねぇ」

    村人が話していた。六太は水汲みの仕方をジェスチャーで教え、アークに水汲みをさせた。

    「お前の仕事だからな」

    アークは言葉は分らないが、自分に与えられた仕事であることは分ったので頷いた。暮らしていく中で、無口の六太に言葉の分からないアーク、会話は無いが心は通じていた。躾や少しづつ言葉を教えていた。六太は今は百姓をしているが元は武家の出。武士としての心は失っていないのでアークには武家言葉を教えた。数日経った頃、水汲みに行ったはずのアークが程なく戻って来た。畑に行こうとした六太が声を掛けたが振る向きもせず中へ入っていく。どうしたのかと戻ると奥で膝を抱えふさぎ込んでいる。

    「どうした?・・・もしや、誰ぞに何か言われたのか・・・お前は言葉が分からなくとも相手の申しておる事は分るであろうからの」

    アークは心配してくれている事は分るので頷いた。アーク自身も相手が何を言っているのか目線で分っていたので、腕を指さした。

    「そうか・・・」

    すると、六太は表に出て、

    「こ奴は、幼き頃より学問もせず、汗水流して日の当たるところで畑仕事をして居ったからの・・・働き者じゃ!」

    日頃から話しかけても二言三言答える六太が大声で言っている事にみんなは驚いた。

    「お前が泣く事ではない」
    「あく・・・あく・・・言われた」
    「あく‥・そうか‥・」

    六太は何かを考えていた。アークはその姿を不安そうに見ていた。もしかしてこの家から追い出されるのではないかと。

    「あくか・・・あくう、お前の名を変えよう・・・お前はこの先も強うならねばならぬ、だが、人様を傷つける強さではない・・・悪に打ち勝つ強い男に・・・悪丸・・・どうじゃ」
    「あくまるぅ?」
    「そうだ、お前は、この時から、あくうではなく悪丸じゃ」
    「あくまる?・・・あくまる」

    アークにはそれが自分の名前であることが分かった。六太の意図とする事は分らなかったが嬉しそうに頷いた。
    月日が経ち悪丸は身体も大きく成長していた。無口だが働き者だと言われていた。そしてある日、六太が病に倒れ、枕もとに悪丸を。

    「悪丸」
    「はい」
    「私はもう長くない」
    「ううん」
    「分かっておるのだ。だから、今の内にお前に言っておきたい事があるのだ」
    「うん」
    「お前は、足軽として戦に出る事になるであろう。だが、お前は天に守られておるのだから案ずるな。私はお前が信じる事の出来るお方が現れると信じておる。そのお方は必ずやお前を救って下さる。信じてくれるであろう」
    「わからない」

    六太は悪丸の頬を優しく撫で、

    「お前は、私の子じゃ・・・」

    そして数日経ち六太は悪丸、村人たちに見送られ旅立った。この先どうしようかと考えていると同じ村の画次郎に声を掛けられ、黒羽に行こうと誘われた。画次郎はどうにか出世したいと考えていた時に、天野信茂と千原元次の間で何かと小競り合いが有り、今度は駆け比べになるとの話が耳に入った。そこで悪丸を使い駆け比べに出て勝てば自分ものし上がれると考えた画次郎は足の速い男が居ると言いに行って、声が掛かった。そして、最初の対戦の時、

    「速く走れん」
    「知ってるさ。だから、相手を睨め。お前より背が低いだろうからの、上から怖い顔をすれば怯む」
    「だが」
    「良いから、俺の言う通りにすればいいんだ。他に策があるから安心しろ」

    画次郎に言われたように相手を睨んだ。画次郎の思惑通りに、怯んだ男は思うように走れず悪丸の勝利。信茂は懲りずまた挑み、悪丸は毎回同じ様にして勝っていた。画次郎もそろそろ上に上がれるかとほくそ笑んだが、その時、唯が現れ、画次郎の思惑は露と消えた。悪丸は、六太の言葉を思い出した『自分が信じられるお方が現れる』と。

    ***
    「ほら行くぞ」
    二人は会場を後にした。
    「これからどうするかのぉ」
    「・・・」
    「おい、悪丸どうした?」
    「なんでもない」
    「確か、あいつ、天野に雇われておったな、そいつに頼んで、天野に行くか」
    「・・・」
    「悪丸?」
    「わし行く」
    「一緒にか?」
    「違う」
    「違うって、じゃ何処へ?お前に宛など無いだろうぉ」
    「ある」
    「あるって?・・・お前はずっとわしと居ったではないか、わしが居ないと何も出来んぞ」
    「できる」
    「悪丸、どうしたんだ?」
    画次郎の問いかけも無視して走って行った。
    「何なんだ!・・・勝手にしろ!」

    唯が藁を担いで会場を後に。悪丸は距離を置いて跡をつけ歩いた。すると、唯が倒れたので、駆け寄り助けた。

    おしまい

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    てんころりんさん

    ありがとうございます(^_^)
    私も負ける程の想像力豊かな作家さん達(^_^)
    私が書く昔の隙間シリーズでは今ほど長くはなかったのですよねぇ(^_^;)
    妄想がどうにも止まらない~♪
    宗熊の決意 第二章も中盤・・・えっ!未だ中盤?(すみません(;_;))
    なのでまだ先になりそうです(^_^;)
    そんな時、また妄想物語が出来てしまいました(^^♪
    考える事を仕事に回せと自分でも思います(;_;)
    ずっとどうなのかなぁと思っていた悪丸の事です(^_^)
    原作では唯の1歳下とか(^_^)
    悪丸の言葉遣いが武士のようなのでその事も含め、妄想なのでいつもの如く矛盾たっぷりのお話です。最後の所から、アシガール掲示板の№994(2019.9.19)【駆け比べの後の悪丸と画次郎の会話】に続きます(^_^)
    では、失礼おばして(^_^)

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    二人の平成Days42~21日21時、お披露目です

    取説がないからね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊「できた」

    唯と若君が、リビングでいちゃついている。

    尊「今日は部屋に行かないんだ?」

    唯「うん。そういう時もあるさ~」

    尊「あっそう。若君、9時過ぎに実験室に来てもらえますか?」

    若君「わかった」

    尊 心の声(もう時間は貴重だから、あえて両親のそばに居るんだろうな)

    9時。実験室に二人。目の前に、画面がついている箱状の物体がある。

    尊「では、まずは渡す機械の説明をします」

    若「尊、わしは唯を差し置いて、聞いてしまって良いのか?」

    尊「いいですよ。若君に、先に伝えておきたい事もあったので」

    若「伝える?」

    尊「機械の説明の後に、言いますね」

    若「そうか。ではまずは、しかと覚えねば」

    尊「大丈夫です。これ、機械は割と単純なんで。まず、この中にこのような物が入っています」

    手にはブルーレイディスク。

    若「穴が開いておる。鍔のようじゃ」

    尊「つば?」

    若「刀の」

    尊「あぁ、なるほど。この中には録画録音されたデータが入っています。今回、このデータ編集に時間がかかったんです」

    若「済まなかった」

    尊「いえいえ。楽しかったんで。予定が色々変わって、それもまた良しで」

    若「そうか。無理せずであったなら良いが」

    尊「電源を入れると、映像が画面に流れ始めます。後は、送り、戻し、停止などは下のボタンで操作です。音量も」

    若「ほぅ」

    尊「で、電源なんですが、もう一つ付属品があって」

    何やら畳まれている。広げると骨のない傘のよう。

    尊「太陽電池です」

    若「日の光で電気を?なんと」

    尊「灯籠、お城にありますよね。これを広げて被せて、日中太陽に当ててください。そうすると、充電されて、夜二人きりの時には楽しめます」

    若「あっぱれじゃな。で、これで繋ぐのか?」

    コードが伸びている。

    尊「そうです。あと、音が周りに聞こえては困る時は、これを挿して」

    イヤホン。

    若「どう使うのじゃ?」

    尊「若君、ちょっと失礼しますね」

    若君の耳に挿した。もう片方を自分の耳に。

    尊「これで、外に音が漏れずに静かに楽しめますよ」

    若「尊、近いの」

    尊「はい、わざと短めにしました」

    若「キスしてしまいそうじゃ」

    若君が、顔を尊に近づけた。

    尊「えっ、ダメですよ、若君に迫られたら、僕でも本気になりそうです」

    若「そうか?ハハハ」

    尊「あはは~。できれば毎回使ってください。お姉ちゃん喜びますよ」

    若「このイヤホンとやらをか?」

    尊「はい」

    若「そうなのか?まだまだ唯は、わからぬ」

    尊「で、伝える話なんですけど」

    若「おぉ、何であろうか」

    尊「まず、今から若君には大まかに見せますが、お姉ちゃんには明日の夜、改めて若君と一緒に観てもらおうと思います」

    若「心得た」

    尊「夜って明日が最後じゃないですか。これは両親からの伝言なんですが、明日は時間制限なしで、かつ、リビングに五つ布団敷いて寝たいみたいで。若君はそれでいいですか?」

    若「宿でも別々だったからの。無論それは良い話じゃ」

    尊「で、何か二人きりでやりたい事があったら、先に済ませて欲しいらしいです。それで夜は五人一緒に過ごすと」

    若「やる事とは、例えばなんじゃ?」

    尊「いや、僕からは何も」

    若「なんじゃ?」

    若君がにじり寄る。

    尊「わー、僕はただの伝言係です…」

    若「ハハハ。わかった。唯と話しておこう」

    尊「はい、お願いします。では、そろそろ再生しますね」

    若「よろしくお頼み申す」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    メドですね

    てんころりんさん、いつもご意見ありがとうございます。
    質問をしたはいいが、これ、投稿ペースの二日後までには答えてくれと言ってるようなもんだ!と、後で焦りました。早々のご返事に感謝です。

    今の一日おきのペースで投稿するなら、最終回は3月下旬位ですね。おいおい、まだそんなにあるんかい!と思われるでしょうが、土曜のお話だけで、15話もありました。そんなに要るかしらと自分にツッコミを入れつつ、デートの模様と仲良し速川家がたっぷりです。

    鋭意練り練り中のお話を、差し込む予定があります。私に足りない余韻、も必要ですね。なので、もう少しゆっくりになるとは思いますが、基本的には、今までどおり一日おきに投稿しますね。自分のペースとしてできあがっている、のが大きいです。ご容赦くださいませ(´д`|||)

    案内…は、どのようにすると良いでしょうか。no.何の話で、とかですか?振り向かず突っ走っている者なので、少し苦手な部分ではあります。ご教授いただけるとありがたく存じます。

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    投稿ペースについて

    ペースは読む人によって、きっと感じ方が違います。基本は、投稿する方のお考えと、都合次第と思います。
    夕月かかりてさんの今回のシリーズは 11月下旬から ほぼ1日おきに2ヶ月を超えました。
    その情熱に敬服します。

    ご質問があったので私が感じたことを書きます。
    物語は2018/12/21まで来て、残すところ3日。
    既に書き上げられたそうなので伺います。
    あと終わりまで何回か「めど」を知らせて頂けたらと思います。
    小説やコミックを読む場合、残りのページ数を感じながら読みますね。それと同じです。
    二人に平成Daysを出来るだけ楽しませてあげたい‥ 別れが名残惜しいとか‥ それとは別の話です。

    “連日の投稿もあり!”
    例えば 481, 484, 485など、内容が緊密に繋がっている時。
    次の話題に進む時は数日あけるとかして、物語に合わせて、進行は一定ペースでなくて良いと思いました。
    ただ夕月さんの投稿がいつ出るか分かるメリットはありました。
    その点は、次回の予定日を書く方法も ありますね。

    ☆夕月さん☆妖怪千年さん☆ぷくぷくさん、全員が長編か、シリーズものを書いておられて、読む方は結構大変です。
    ☆作家の方には、読者の記憶を呼び覚ますため、また新人さん、継続して読んでない方のためにも、時々 ご案内(今迄の経緯など)を出して頂けると助かります。

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    二人の平成Days41~21日金曜8時、フェードアウト

    いろんな手配が必要なのが現実。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は学校の終業式。玄関でお見送り。

    覚「じゃあ、唯を学校まで送るから」

    美香子「お願いします。その後も」

    覚「うん。若君、悪いが一人で留守番頼むな」

    若君「わかりました」

    覚「何かあれば、クリニックに母さん居るから」

    若「はい、大丈夫です」

    覚「行ってきます」

    唯「行ってきます、たーくん」

    尊「行ってきます。若君、お昼に間に合うよう、できるだけ早く帰るね」

    若「ありがとう。行ってらっしゃい」

    唯と覚、車内。

    覚「気持ちの整理はついたのか?」

    唯「ん~?周りに言わないでおこうかなって」

    覚「騒ぎにならないか?」

    唯「学校に来てたイケメンと何かあったとか思うんじゃない?実際そうだし」

    覚「お世話になった方々には、お礼を言っておけ」

    唯「そうだね」

    覚「若君には説明したのか?」

    唯「言ってない。退学って、あまりよくわからないんじゃないかな。聞かれたら言うよ。心配かけずに済むならその方がいい」

    時間を飛ばします。13時。再び唯と覚、車内。

    唯「お父さん、色々手続きありがとね。荷物も、少しずつ持って帰ってれば良かったけど」

    覚「まあ、若君に心配かけないつもりなら、それも出来なかっただろうからな」

    唯「うん。お父さん」

    覚「何?」

    唯「私、赤ちゃんに早く会えるといいなって思ってる」

    覚「おぉ、そうか。戦はもういいのか?」

    唯「戦のお供は他の足軽でもできるけど、たーくんの子供は私しか産めない。産まない。側室をとらないと決めてくれてるから、責任重大だし。たーくんを守りたい気持ちは変わらないから、たーくんの大事な家族となる子供を産み、育て、全部守る」

    覚「若君は、いろんな事サラっと言ってるけど、ちゃんと周りに目を配り、かつ物凄く愛情に溢れてる。唯は最上級の幸せ者だ」

    唯「わかってる。だから私も、私にしかできない事をがんばるよ。早くたーくんの喜ぶ顔が見たいな」

    ただいま帰りました。

    尊「おかえり、お父さん、お姉ちゃん」

    覚「おー、昼飯は済ませたよな?」

    尊「うん。お母さんは仕事中だから済ませたし、僕もその時食べたけど」

    覚「ん?若君は?」

    尊「二人が帰るまで待つって。で今支度始めた」

    覚「え、そりゃ悪かったな~。支度って?」

    尊「オムレツ焼いてる」

    唯「えー!たーくん、ありがとう!」

    キッチンに若君シェフ。

    若「父上、唯、おかえりなさい」

    唯「待っててくれたなんて、嬉しい~」

    若「父上、勝手に卵を使いました。すみません」

    覚「いいよいいよ、見ての通りまだ沢山あるしさ」

    出来ました。朝の残りのご飯、覚が出かける前に作っておいた味噌汁、そして、

    若「何も入っていないし、これしか作れないのですみません」

    覚「愛情がたっぷり入ってるよ~」

    唯「美味しそう!いただきまーす!」

    やはり、顔色を伺う若君。

    覚「心配しなくても、すごく美味しいよ。形も綺麗だし。文句なしだ。さぁ、若君も食べて」

    若「ありがとうございます」

    唯「おかわりー」

    覚「何?!もう?ご飯か味噌汁かどっちだ」

    唯「プラスでオムレツも」

    覚「はあ?!」

    若「では、これを食せ」

    若君が自分のオムレツを差し出す。

    唯「たーくん、半分ちょうだい」

    若「半分でいいのか?」

    唯「うん、仲良く半分こ」

    覚「仲良くじゃないだろ、搾取だ」

    離れて見ている尊。

    尊 心の声(家族団欒もあと数回だなぁ。よし、僕はラストスパートだ)

    実験室に入っていった。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    数回かあ。

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    まだまだ続きます

    てんころりんさん、今回もご丁寧に、あらすじとご感想、ありがとうございました。

    皆さんにお尋ねしたいんですが、二日に一回の投稿では、インターバルが短いですかね?
    前にもお話しましたが、ストックを小出しにしている状態なので、毎日でも投稿はできます。でもそれではせわしいわ余韻はないわ、何より早く終了してしまう(;^_^Aなので、一日置きくらいが良いのかなー早く読みたい方もみえるかもしれないしー、と思ってこうしているのですが。

    今日のお話は21日金曜の分。帰る日含めあと三日ではありますが、まだまだ平成Daysは終わりません。土曜は二人でラブラブデートですよ~。たっぷり時間(投稿話数)かけて、お送りします。

    もう、最終回まで描き終えております。終わりがわかっている物語、ちゃんと上手く着地できてるかしら~。そんな懸念を抱えつつ、次はどんな話にしようかと練り練り中です。

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    てんころりんさん

    いつもありがとうございます(^_^)
    痛み入りまするぅ(*^_^*)
    あの二人の場面は優しい気持ちになるので、それまでの事を考えてみたくなり書かせて頂きました(^_^)
    宗熊の決意 第二章の無くなった時はショックでした。それも一度ならず二度までも(;_;)
    頭の中では構想が着々とまとまっていますので、書いた物は思い出しながら、そして新たに付けたしたりして書いていきます(^_^)
    その他に一つ、妄想の中の妄想が浮かんでいます。以前に書かせて頂きました9人が平成に来た物語の中で出来事を考えています。いつか書けたらと思っています(^_^)
    作家さんの感想もままならないのに自分の事ばかりで、ごめんなさい(;_;)

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    感想:1月14日~1月31日

    ・夕月かかりてさん『二人の平成Days31~40』が大詰です。SPで唯と若君は2018年12/23の満月で永禄に帰りますが、もう12/20、まだ居てほしいし寂しいですが、夕月さんがどう締め括られるか楽しみです。

    ・妖怪千年おばばさん『兎角この世は3~4』は、SPの現代パートの物語。今回は唯と若君のクリスマス編? 他の要素も満載で愛馬/吹雪(ドラマでは疾風)の生い立ちを若君が語ります。

    ・ぷくぷくさん『最終回隙間 如古坊と成之』連ドラ最終回に如古坊が旅立つ時、ドラマでは描かれなかった会話ですね。
    宗熊の物語・第二章の原稿が消失でしょうか。この際じっくり練り直したものをお待ちしてます。

    ☆案内板を兼ねて感想 いきま~す ☆彡

    夕月かかりてさん

    No472_X’masイブ·デートに着ていく服がない。ドラマでもジャージか制服でしたね。女の子らしい格好をさせてやりたい美香子母の心が切ない。一回しか着られないからと遠慮する唯と若君の心が切ない。
    No.476_若君が料理に挑戦。覚 美香子の両親は若君が可愛くてならない様子だし、若君の素直で良き息子振りにもホロッとさせられます。
    母を知らない若君は母に優しくされると弱いみたいです。
    No.477_唯と尊がいない時間にオムレツとピラフの試作うまく出来ました。両親の愛に涙ぐむ若君に こちらも?。
    No.481,484,485_母と若君は車で唯を拾い、デート服を買いに。赤の❤️ペアルック!洋服に慣れてない若君の目に、唯はさぞや魅惑的に映ったでしょう。
    唯の可憐な姿は、未知の赤い花の蕾!山茶花は唯のイメージにぴったりですが、戦国時代には白い色の原種しかなかったらしい‥ 了解です!
    No.486_若君は美香子母にも唯にも、頭を撫でられると赤くなっちゃう。大切に育てられたけれど、きっと甘えさせて貰った経験がないんですね。戦国武将は皆そうではないでしょうか。
    No.489_シェフデビューの若君が夕食の支度の間、仲の良い唯と尊「…生きててね」?
    No.490,491_若君の料理は上出来、美味しそぅ?。皆幸せそうで理想の家族なのに… 来週もまた作ってねと言えない。
    若君のピラフのレシピは実際その日の《きょうの料理》だったとは!よく見付けられましたねぇ。
    No.492,493_同じその日の夕食後、唯と若君は家族宛に年賀状を書いたんですね!二人が旅立った後、元旦に届いた。家宝ですね本当に!

    妖怪千年おばばさん

    No.474_唯と若君が気になって、尾行せずにいられない覚パパ、可笑しく可愛い。往生際が悪いです(笑)。エリさん、葱を譲ってくれましたが、エリさんちの すき焼きは後日?気になっちゃいました。
    No.487_伏字が、小○旬、○田将○しか分からなくて??。教会のクリスマス降誕場面の人形→聖徳太子→愛馬/吹雪と連想が繋がるのが凄い!若君の嫉妬と唯に嫉妬する吹雪?。お熱いですからね。

    ぷくぷくさん

    No.479_連ドラ最終回、如古坊と成之が暫しの別れの前に唯の思い出を話します。いつおなごと分かったか? 若君はいつから知っていたか? とか面白かったです。
    唯がいなかったら今はない。共通した思いなのでしょう。成之が如古坊を追い払ったこと、ドラマではなかった詫び、ちゃんと書かれて良かったです。

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    二人の平成Days40~2019年1月1日9時、時空を超えて

    姉ならこうする、と考えればすぐ見つかるのかも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    元旦の速川家。届いた年賀状の仕分けをしている。

    美香子「えっ、えー!」

    覚「何?」

    美「唯達から、年賀状が届いてる!」

    覚「えぇ?!あー、まぁ配達のシステムからすると、こちらに居る内に投函すれば今届くからなあ。中々の嬉しいアイデアだ。で、なんて?」

    裏を見る。若君が書いたと思われる達筆。

    覚&美「やっぱり読めない」

    尊が起きてきた。

    尊「…読めない。訳文付けといてくれないとー」

    覚「ジェンガの時の苦労を、学習しないのか?唯は」

    美「時間かけて、解読するしかないわね」

    覚「年賀状というより…いや、嬉しいんだぞ?」

    美「で、何」

    覚「挑戦状?なんじゃ」

    尊「縁起の悪い事は書いてないと思うけどさ、正月中、解読して楽しめって事じゃない?」

    美「正月の新聞見開きで、まちがいさがしとか数独とか載ってるのみたいに?」

    尊「少なくとも、若君はそんなつもりはなかっただろうから、これはお姉ちゃんが悪いよ」

    覚「まあ、優しい気持ちが配達されました、と」

    美「そうね」

    尊が、年賀状の表の面を凝視していたが、何かに気付いた。

    尊「はぁ~?!何でわざわざこんな!」

    半分怒りながら、二階に上がっていく。

    美「え?何かヒントでもあった?」

    尊が手に袋を持って登場。

    覚「何だ?」

    尊「あったよ。ベッドの下に」

    美「あらま。よくわかったわね」

    尊「ここに書いてあった」

    覚と美香子が覗き込むが、

    美「見えない~老眼にはキツいわ」

    覚「え?言われてもどこかわからん」

    尊「よりによって、こんな所に書くんだから」

    表面下の、宝くじの番号の隙間隙間に、小さく何か書いてある。

    尊「B、E、D、し、た」

    美「あ~ようやくわかったわ。なんでこんな面倒な事をしたのかしら」

    尊「どう書くか悩み過ぎて、書ける場所が無くなったんじゃないかな。でもここじゃなくてもさー」

    欄外は、字を塗りつぶしたらしく、ところどころ真っ黒だ。

    尊「まっ、推測しかできないけど」

    覚「どう解く?」

    尊「くじがもし当たっても、引き換えるなとか」

    美「年賀状自体は、スタンプ押されて返ってくるじゃない」

    尊「じゃあやっぱり挑戦状だよ」

    覚「もうそうしとこう。見つかったんだし。で、答えは?」

    尊「書き損じの葉書に書いてあるよ」

    覚「新春を寿ぎ謹んでご祝詞を申し上げます。あー、いかにも古文なのかと思ったら、まあまあ分かりやすいなあ」

    美「若君が、私達に合わせてくれたんじゃない?優しいわね~」

    覚「字も綺麗だし。という事は…」

    美「何」

    覚「これ、コピーして、来年の年賀状に使えるんじゃないか?」

    尊「訳文つけるの?誰が書いたか聞かれたらどうするの?それにコピーなんて失礼だよ」

    覚「はいすいません、図に乗りました」

    美「永久保存よ。家宝」

    尊「まだ書いてあるんだよ。書き損じを若君が無駄にしたと気にしているので手数料払って取り替えてください、って」

    美「あら、そんな心配まで」

    覚「そんなもったいない事、できないよな」

    尊「じゃあ、あそこに置くの、決定?」

    覚&美「決定!」

    リビング奥の棚で、唯と若君の指輪が、射し込む朝の光に煌めいていた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    手にした全ての物が、愛おしい。次回、お話は平成に居た頃に戻ります。ご安心を。

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    二人の平成Days39~20日20時、愛を届けます

    唯達にちょうどいいシステム。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の部屋。

    唯「あのね、まずこれの説明をするね」

    取り出したのは、年賀状。

    若君「いい紙じゃの」

    唯「葉書って言ってね、文を書いて送れるの。これを、ポストって箱に入れると、郵便局って所が相手の家まで運んでくれるの」

    若「ほぅ」

    唯「でね、この年賀状ってのはその葉書の中でも特殊で、例えば今日入れても、明日入れても、みんな元旦に届くの」

    若「という事は、明日入れても、我らが去った後に届くと」

    唯「さすがたーくん、その通り。だから、お正月に、お父さん達を喜ばせたくて」

    若「で、わしは何を?」

    唯「表の、宛先とかは私が書くから、裏の文を書いて欲しいな」

    若「どのように?」

    唯「新年の挨拶。紙が小さいから難しいかもしれないけど」

    若「そうか。ただそのような習慣はまだあまりなかったゆえ、どう書くと良いかの」

    唯「そっかー。じゃあ」

    スマホで検索し、年賀状の文例を探す。

    唯「たーくんが、これ、ってひらめいたので書いて」

    若「心得た」

    唯「筆ペンと、半紙は用意したよ。年賀状も5枚あるから、もし間違えても大丈夫だから」

    若君、練習中。

    唯 心の声(相変わらず…読めない。でもジェンガの時もそうだったけど、面と向かって読めないとは中々言えないんだよねー)

    年賀状、3枚目で書き上げました。

    若「小さく書くのは慣れておらぬゆえ、無駄になり悪かったのう」

    唯「大丈夫だよ。この書き損じはね、郵便局で手数料を払うと、新品の葉書に交換できるんだよ。だから無駄にならないの」

    若「なんと。上手くできておる」

    唯「字が素敵~。で、どれにしたの?」

    若君が指さした言葉をスクショした。

    唯「たーくんありがとう。あとは私が宛先とか書くね。あっ」

    若「もう、良いか?」

    いつの間にか、後ろから抱き締められている。時計を見上げると、8時30分。

    唯「あー、油断も隙もないー」

    若「待てぬ」

    唯「えー。あはは」

    今日はここまで、と言いたい所ですが、まだ唯はやる事があるので、自主規制で9時ちょい前に飛びます。

    若「おやすみ、唯」

    唯「おやすみたーくん」

    ドアが閉まる。早速宛先を記入。

    唯「黒羽市東町3―45、速川覚様美香子様尊様、差出人は、唯&忠清」

    スクショを確認。

    唯「新春を…寿ぎ…謹んで…ご祝詞…を申し上げます、うーん同じ日本語とは思えないー。難しー」

    書き損じの年賀状にメモした。

    唯「良かった、無事終了。でも問題は、年賀状にこう書いてあるよって書けるスペースが残ってないんだよね~どうしよう」

    メモ入りの書き損じを含め4枚の年賀状と、練習の半紙を袋に入れ、ベッドの下に。

    唯「よし、あとはヒントを」

    投函する年賀状を見つめ、何やら書き込み出した。

    唯「気づいてね!尊くらいは」

    年賀状を前に、かしわ手を打った。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    この後、no.433、元日に投稿したお話の改訂版です。

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    若君のシェフデビューレシピ

    食卓には三品出ましたが、その内オムレツとスープは、覚お父さんのオリジナルで、特に引用した物はありません。

    ピラフのレシピは、検索できます。その前に、まずは過程を説明しますね。

    あの日2018年12月18日、夜9時の時点で、唯とお母さんは唯の部屋、尊は実験室、若君とお父さんはテレビを見始めました。

    9時スタートの料理番組、アシガールの放送局系列は?となると、そう、「きょうの料理」です。

    https://www.nhk.or.jp/lifestyle/recipe/detail/43290.html

    私もリアルタイムで観てたかもしれない、そして皆さんももしかしたら。同じ番組を観ていて、速川家では若君と覚の会話が繰り広げられていた、と想像すると、楽しくなりませんか?

    唯達の住んでいる黒羽市はどこか、の考察が、管理人様のブログ記事“羽木氏の領地・黒羽城はどこにあったのか?(2)”にあり、三重県北勢地方とあります。この放送は、三重県の特集だったので、

    覚「若君、しばらく尊に相手にしてもらえないよなあ。今日のテレビは地元の回だから、一緒に観ないか?」

    と、仲良く肩を並べていたのではないかと。

    最近、このレシピだけ急に閲覧回数が増えたな~、なんとアシガールを愛するアシラバの仕業か!これはそろそろオンデマンドに復活させないと!とか、ならないかなー、ちょっと遠回り過ぎるかな?その前に、勝手にリンクさせるなと怒られるかしら。

    今日は、二本立てです。元旦の投稿、ようやく順番が来ました。

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    二人の平成Days38~20日18時、手さばきあざやか!

    手元だけずっと見ていたい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と尊がしゃべっている間に、米を炒め始めてます。

    覚「火加減はこまめに見て」

    若君「はい」

    唯「エプロンじゃなくて、あの、コックさんの着る」

    尊「コックコート?」

    唯「っていうの?が良くない?」

    美香子「シェフ目当てに超人気のレストランになるわね」

    尊「ひとりじめ~なんて、言ってられなくなるよ?」

    唯「それはやだー」

    若「ハハハ」

    そうこうする内に、炊飯器スイッチオン。

    覚「さて、若君のポテンシャルが高い…しまった、ポテンシャルって日本語で何だっけ?」

    尊「潜在能力」

    覚「サンキュー。で、それが高いから、オムレツ、中に何か入れて作ってみる?若君」

    若「卵だけではなく、ですか?」

    唯「はいはーい!私チーズがいい!」

    尊「僕は明太子がいいな。まだあるよね?」

    美「じゃあ、明太子チーズオムレツでいいじゃない。あんまり手間かけさせないように。あんた達は食べるだけなんだから」

    尊「お母さんも食べるだけじゃん」

    美「えへ、その通り。と言ってる間に、着々と明太子とチーズの準備が進んでるわ。いいお店ね~」

    オムレツ作り始めました。

    唯「この手さばき、も~綺麗過ぎる。超カッコいい~、ますます惚れ直しちゃう~」

    覚「今日のギャラリーは一段と騒がしいな」

    若「唯、近過ぎる。下がって」

    唯「はぁい」

    尊「良かった、ちゃんと注意してくれて」

    唯「抱きつきたかったのにー」

    尊「フライパン持ってるのに?危ないよ!」

    炊飯器が呼んでます。

    覚「よし、後は蒸らして混ぜるだけ。あとオムレツ幾つ?」

    若「これで最後です」

    覚「よーし、運んで~」

    あおさとたいのピラフと、明太子チーズオムレツ、あと、わかめスープの完成です。

    全員「いただきまーす!」

    若「父上。僕が至らなく、手伝わせた上、汁まで作っていただき、ありがとうございました」

    覚「いいのいいの。手際良かったよ。ご丁寧にありがとね」

    唯「う~、うまぁい!」

    若君 心の声(どこかでこのような光景を見たな…あぁ、山寺で芋粥を食した時か。懐かしいのう)

    尊「若君、ホントに美味しいです」

    若「ありがとう」

    美「ん~息子の作るご飯は美味しいわ~」

    尊「ここにも居ますが」

    美「じゃあ、今度よろしくね~」

    尊「いずれ」

    美「はぁ。いつになるやら」

    全員で、大笑い。

    覚「いや~美味かった。若君お疲れ様。では」

    全員「ごちそうさまでしたー」

    片付けも終わりました。

    唯「8時かぁ。たーくん、頼みたい事があるから、部屋に来て」

    若「頼み?珍しいのう」

    唯「いいから、ねっ」

    二人で二階へ。

    覚「残念な事に、来週も作ろうな、が言えないんだよな」

    美「そうね。リクエストしようかとつい思っちゃったけど…」

    尊「いよいよカウントダウンかー。僕もあと一息。実験室に行くね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    数えたくないけど、あと少しです。

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    二人の平成Days37~20日木曜17時、絶妙な掛け合い

    同じテンポで返してくれる相手は貴重。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いよいよ、若君シェフのデビューです。キッチンでは、若君が両親のサポートで準備中。唯と尊はというと…食卓で支度をしてるようなしてないような。

    唯「たーくんが、現代男子だったら良かったな~と思う事は、ある」

    尊「贅沢な。なに」

    唯「まず、クリスマスにときめいてくれない」

    尊「それは聞いた。仕方ないじゃん。でも現代男子だって、何にも思わない人はいると思うけど」

    唯「イルミネーション綺麗だね~とか言って歩きたかった~」

    尊「テーマパークで見た時、言ってなかったっけ?」

    唯「知らない」

    尊「あ、そういえばお姉ちゃん居なかったな」

    唯「なにっ!いつ?」

    尊「あの、無数の電球で輝いてた道の所」

    唯「え?私何してた?」

    尊「走って遠く行ってた」

    唯「呼んでよぉ~!」

    尊「自分が勝手に走ってったくせに」

    唯「あと、クリスマスソングにキュンとしてくれない」

    尊「同じだね。聴いた事ない物は仕方ない。音楽全般は、最後までわからなかったみたいだね」

    唯「よくカップルがさあ、一つのイヤホンを片耳ずつ分けて同じ曲聴いてたりするじゃない。あれもやってみたかったな~」

    尊「耳に差し込むだけならすぐできるじゃん」

    唯「いい曲だね、って一緒にニッコリしたい」

    尊「台詞だけなら、頼めばやってくれるよ」

    唯「ちょっと違う~」

    尊「そりゃ違うけど。無い物ねだりが続くな」

    唯「あと、どれがいい?ってきいてもどれでもいいよって言う」

    尊「それは、若君の優しさもあると思うけど、正確には」

    唯「何?」

    尊「どれもわからないから、決めていいよ、だと思う。お姉ちゃんだって、例えば見た事ない物を三つ出されて、どれがいい?って言われてもわかんないでしょ」

    唯「なるほど。その説明はわかりやすい」

    尊「いつかさぁ」

    唯「ん?」

    尊「聞いても返事もない、あっても生返事なんて時が来ちゃったりして」

    唯「え~?結婚20年、倦怠期の夫婦みたいな?」

    尊「お姉ちゃん達、特に若君は絶対そんな事ないと思うけど」

    唯「どうしよう…飽きられたら」

    尊「その前に、超現実問題として、生きててね。あまり言いたくはないけど、こればっかりは時代が」

    唯「うん。生き抜くよ!で、ばんばん子供産んで子孫繁栄じゃ」

    尊「へー、最近まで腹が決まってなかった割には」

    唯「たーくんが、まっさらなジェンガに名前入れるって言ったから、願いを叶えてあげたいの」

    尊「良き妻じゃ。それ本人に言った?」

    唯「まだ。いつか言って、イチコロにする。ふっふっふ」

    尊「若君も俄然やる気出るよね。あっ、やる気はそっち方面の話じゃないよ」

    唯「そっち方面でいいよ。エロ侍だし」

    尊「それさ、お姉ちゃん命名したでしょ。で僕も、同じ日に全く同じ名前付けたんだよ」

    唯「月曜でしょ。たーくんに部屋に連れ込まれた」

    尊「なんつー言い方。で、若君に、さすが血が繋がっておるって言われちゃった」

    唯「へぇ。それで?」

    尊「言葉の意味を説明したら、笑いながら、お姉ちゃんにしか反応しないって言ってたよ。ちょっと聞いてて恥ずかしかったけど、愛だな愛、と心を落ち着かせて聞いてた」

    唯「反応…男子の会話って感じだね」

    尊「さっきの、結婚20年目の夫婦の話だけど」

    唯「うん」

    尊「ウチってそのくらいだよね?」

    唯「あーそうだね。という事は…ずっと仲良しなら、倦怠期はなしかー!」

    尊「旅行の帰りにさ」

    唯「うん。眠過ぎて、すぐ寝落ちしたけど」

    尊「その節は、お務めご苦労であった」

    唯「もうさぁー、たーくん全然寝させてくれなくってさぁー」

    尊「それ以上言わなくていいけど」

    唯「眠くても、愛だな愛」

    尊「はいはい。で、話戻すよ。車中で、お父さんとお母さん、お姉ちゃん達の言葉を引用してラブラブだったよ」

    唯「どんなん?」

    尊「美香子さんは僕の唯一です、とお父さんが言ったら、お母さんが、大好きな美香子は私一人だけって事?って言ってたよ」

    唯「あんた、よく恥ずかしげもなく言えるね」

    尊「あの時、お姉ちゃんの台詞上手い!と思ってたから」

    唯「あの日の事、私ところどころ覚えてないんだよねー。すごーく甘い時間だったな、とは強く残ってるけど」

    尊「あの時の若君の落ち着きと、返し方は見事だったよ」

    唯「尊、その台詞、いつか自分が使おうと思ってるんでしょ」

    尊「使えたらいいなあだけど。もし彼女ができたら、お姉ちゃんや若君に、キュンとする台詞教えに来て欲しいよ」

    唯「自ずから出てくる言葉じゃないと、胸に響かぬぞ」

    尊「うわっ、急に若君が乗り移った」

    唯「一心同体だから」

    尊「なるほどね」

    美香子「ちょっと~何座ってんの、テーブル拭いたの?」

    唯&尊「はーい、ただいま」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    仲良し姉弟の会話は、エンドレスです。

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    ライバルは言っても聞かぬ相手

    妖怪千年おばばさん、若君の平成での嫉妬は、かわいいですね。
    残念ながら、私が花○や銀○がとんとわからないので、その部分の感想は申し上げられません(>д<)

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    兎角この世は その4 ~十三夜続編(未投稿) こぼれ話 唯編~

    はじめに
     ”未投稿の十三夜続編より先に、
      こぼれ話ってどうなのよ。”
     と、自分にツッコミを
     入れつつの投稿です。
     ふきちゃん、阿湖姫、
     相賀の養女と、次々と現れる、
     恋のライバルたちをなんとか
     かわしてきた唯ですが、
     若君と飛んだ平成で、
     真のライバルを知る事に。
     いったい、それは誰?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    唯と共に、黒羽城から平成に飛んで、
    数日後の事。

    玄関の横にある、山桜桃梅の木に、
    小さな電球を張り巡らせながら、
    忠清が言う。

    「枯れ木に花とは、耳にもするが、
     枯れ木に星とは、珍しい。」

    すっかり葉を落とした山桜桃梅の
    細い枝に蓑虫が一つ
    ぶら下がっていた。
    冬支度を終えた小さな虫は、
    枯葉にくるまって眠っているらしい。
    電球のコードが当たらないように、
    横の枝にかけなおすと、
    忠清は、人差し指で、
    その蓑虫をそっと揺らした。

    穏やかな笑みを
    浮かべている忠清は、
    とても、戦国武将とは思えない。
    どう見ても、イケメンモデルと
    言った方がしっくりくる。
    尊の頭の中で、忠清は、今や
    芸能事務所のスカウトマンに、
    取り囲まれていた。

    「で、この後は、
     如何したら良いのじゃ?」

    忠清の声で、尊は妄想から
    引き戻された。

     「あ、ええっと、
      このソーラーパネルを
      ここに立てて、
      後は、日が暮れるのを
      待つだけです。」

    「では、これは?」

     「それは、こちらに。」

    尊が指をさす場所に、忠清が
    ポールタイプのソーラーライト
    を差し込む。
    ソーラーライトには、
    とある仕掛けが施されていた。

      「きっと、お姉ちゃん。
       喜びますよ。」

    忠清は、小さく頷くと
    唯の帰りを待った。

    しばらくして、
    家の前の道路に迎えに出ると、
    夕焼けの中に、唯の姿が見えた。
    忠清が手を振る。
    すると唯は、走りながら
    大きく手を振って答えた。

     「若君様~。ただいま~♪」

    家の手前で、忠清は
    唯に目をつぶらせた。

     「ええ?な、何?」

    忠清は黙って手を引く。
    玄関の前で、忠清は、
    唯の後ろに回り、その手首を
    そっとつかむと、唯自身の手で
    唯の目をふさいだ。

    その様子を、尊は玄関横の小窓から
    こっそり覗いている。
    小窓の隙間から、野菜を煮込む
    美味しそうな匂いが流れ出た。

      キュルルルル・・・

    唯のお腹の虫が鳴く。

    「お前の腹は、まこと、
     正直じゃの。」

    思わず吹き出し、忠清は、
    唯の手首を放してしまった。

     「わああ、きっれーい!
      どうしたんすか、これ?」

    唯が、歓声を上げる。

    山桜桃梅の枯れ枝が、
    シャンパン色の光に包まれていた。
    玄関ドアの横の壁には、
    ソリに乗ったサンタクロースが
    映っている。
    サンタの帽子は、
    若君の兜によく似ている。
    少し離れたソーラーライト
    から映し出された、影絵だ。

    「尊と作ったのじゃ。
     世話になっておる故、
     何か皆が喜ぶ物をと思うてな。
     とは申せ、わしは、
     尊の言葉のままに
     手を貸したまでじゃが。」

    唯は、クリスマスモードに
    変身した玄関を、夢中で
    スマホにおさめた。

    「唯は、本当に
     良い弟を持ったの。」

    忠清が、しみじみと言う。

     「今は、若君にとっても
      弟ですよ?!」

    「そうであったの。」

    尊は慌てて小窓から
    顔を引っ込め、両手を握り、
    つぶやく。

    「シャー!」

        ・・・・・・・・・

    山盛りのカレーライスのおかわりを
    ペロリと平らげた唯が、
    冷蔵庫の扉を開けた。

     「んん?無い!
      誰か知らない?アイス。」

      「あ、ごめん。
       お姉ちゃんのだった?
       おやつに、若君と食べた。
       半分ずつ。」

    いつもなら、猛烈に噛みついて
    来る姉が、何も言わない。
    ただ、唇を尖らせて、
    ふくれっ面をしている。
    忠清が言った。

    「すまぬ。唯のものとは
     知らなんだ故。」

    すかさず、尊が唯に
    何かを手渡した。

      「そういえばさ、新しいお店が
       出来たみたいだよ。
       これ、
       開店セールのチラシ。」 

     「スーパー“よろずや”?
      イケメン店長が
      心を込めておもてなし。
      厳選スイーツ、
      充実の品ぞろえ。
      今なら、消費税分
      ポイント還元。」

      「何でも、俳優の小〇旬
       そっくりの店長が、
       銀髪に侍のコスプレで
       接客してるらしい。」

     「え?小〇旬のコスプレ?
      もしかして、それって、
      〇魂の〇さん?」

      「行って確かめてきたら?
       〇田将〇とかレジ打ってる
       かもしれないし。」

     「でも、侍なら、
      本物を生で見てるし。
      〇男の花〇類なら
      見たいけど。」

      「あ、〇田将〇は、スルー?」

     「う~~ん。レジなら、
      〇本〇奈ちゃんがいいな。
      “千円アルヨ”なんて
      言って貰えたら最高!
       あの美貌で、〇田監督の
      アニメ実写キャラ熱演とか、
      ギャップがもう凄すぎて。」

      「それ、若君が言うなら
       分かるけど。」

    「何事?」

      「あ、若君は、〇魂も、
       〇より男〇も、
       まだ未体験でしたね。
       明日、借りに行きましょう。
       DVD。」

    TVドラマなら確実に、
    ピー音連発の会話の後、
    唯は忠清を誘って、
    “よろずや”に出かけた。
    一度、食べたいと思うと、
    食べずにいられなくなるのが
    “アイスクリーム”だ。

     「お父さんは、バニラ。
      お母さんは、ストロベリー。
      尊はチョコレートで、
      私はチョコミント。
      若君は、何にします?」

    「そうじゃの。抹茶かの。」

     「さすが~。チョイスが渋い!」

    “よろずや”の店内は、チラシ通り、
    お菓子が山積にされていた。
    しかも激安。
    薄給の店長の血糖値対策の為という、
    チラシのキャッチコピーを
    思い出し、唯は爆笑した。
    確かに、〇魂の主人公は、
    糖尿病設定だけど、何もそこまで
    やらなくてもと思いつつ、
    レジに立つと、目の前に、
    あの額がかけてある。

      【 糖 分 】

    “ここまでやるなら、結構、
    期待してもいいのかな・・・。”
    噂の“コスプレ店長”への興味が、
    グンと膨らむ。
    ところが、店の奥から出てきた
    レジ係は、〇田将〇でも、
    〇本〇奈でもなく、学生らしき、
    ごくフツーのバイト青年だった。
    “やっぱり、こんなもんだよね。”
    と、思いつつも、
    唯は聞かずにはいられない。

     「あのう。看板店長の、
      コスプレ侍さんは?」

       「あ、さっき早めに
        上がりましたよ。
        何でも、ツッパリ映画の
        床屋の店長役を、
        〇田監督からオファー
        されたとかで。
        本人より本人っぽいって、
        最近、影武者でちょいちょい
        出演依頼が来てて。」

     「え・・・マジで?
      そんなにクオリティ
      高いんですか?
      もしかして、双子の
      弟さんとか?」

    バイト君の答えに、
    目を♡にしている唯を、
    若君は引きずる様に、
    店から連れ出した。

    来た時の勢いはどこへやら、
    アイスクリームを抱えて、
    唯はトボトボ歩く。
    若君は、足を速めて先を行く。

    いつもなら、追いかけて来る唯が、
    どんどん遠くなる。
    しびれを切らした若君が、
    振り返って、声をかけた。

    「何やら、ひどく
     気落ちしておる様じゃの。」

     「そ、そんな事。」

    「会いたかったのか?
     それほどまでに。」

     「それほどではない・・・
      はずだったんですけど。」

    「では、何故そのような
     顔をしておる?」

    忠清に問い詰められて、
    唯は、今にも泣き出しそうだ。

     「戦国では、いつも
      生きるか死ぬかの瀬戸際で。
      気を張ってて。
      ドラマとか、映画とか、
      そんなのすっかり忘れてて。
      でも、
      小〇旬って聞いたとたんに、
      急に、色んな事を一気に
      思い出して。
      小学生の頃、お母さんに
      初めて連れて行って貰った映画が
      〇男ファイナルで。
      本当に嬉しくて。
      ファンになって。それで。
      本人じゃないって
      わかってても、
      会いたかったなって。
      で、会えなくて、急に
      体の力が抜けちゃって。」

    「ん。」

     「変ですよね。
      戦国では思い出しも
      しなかったのに。」

    「では、唯。
     明日はそのDVDを
     尊と借りて来る故、
     わしと共にそれを
     見る事に致そう。
     さすれば、向後、
     小〇旬とやらを思いだす折には、
     おのずとわしをも、
     思い出す事になるであろう?」

     「若君・・・?」

    忠清は、アイスクリームを
    抱えたままの唯を抱きしめた。

    翌日、いつもはあまり感情を
    表に出さない忠清が、
    DVDの中の小○旬に向かい、
    敵将を倒す勢いで、
    鋭い視線を飛ばしていたのは、
    やむを得ない。

       ・・・・・

    そして、その翌日。
    何故か、機嫌を直した忠清が、
    唯を呼んだ。

    「唯、如何じゃ?
     なかなか似合おうておろう?」

     「はい。とっても・・・ってか、
      どうしちゃったんすか?
      その恰好?」

    「“よろずや”の店長殿から
     拝借したのじゃ。」

     「拝借?」

    「うむ。
     明日より、十日程、店の前で
     チラシとやらを配る代わりにの。」

     「へ?」

      「お姉ちゃんの為に、
       若君、バイトすることに
       したんだって。」

     「バ、バイト?駄目ですよ、
      そんなの。危なすぎます!」

    〇魂〇さんコスプレの若君を、
    おばちゃんの群れが連れ去る・・・
    そして、唯が叫ぶ。

    「わ・か・ぎ・み・様~!」

    頭をぶんぶん振って、唯は、
    自分の脳裏に浮かんだ
    不吉なシーンを必死に消した。

    “JKの目から守るのだって
    一苦労なのに、若君ったら、もう!”

    「危ない・・・?
     何がどう危ないのじゃ?」

    「唯、良いんじゃない。
     何事も経験よ。
     明日は私がついてくから。」

     「えええ?
      何言ってんの?お母さんまで!」

    それにしても・・・
    若君の着ている〇さんの衣装、
    似合う。似合いすぎる。
    ってか本物の“もののふ”だから
    似合って当然だけど。

    尊が唯に近寄ってきて、囁く。

      「お姉ちゃんが、若君に、
       ヤキモチ焼かせたりするから
       こんな事になったんだよ?
       まあ、それだけ愛されてるって
       事だけど。
       ここは見守れば?」

     「焼き餅? 何それ?
      お正月もまだなのに、
      若君にそんな事、私が
      させる訳、無いでしょう?」

      「あのさ。
       それ、ボケてるつもり?
       そっちじゃなくて。」

     「何よ!どっち?」

      「だから、
       ジェラシーだって。」
     
     「はあ?
      あ、もしかして、
      小〇・・・旬?」

      「そう。若君はね。
       お姉ちゃんが、
       〇魂の〇さんを思い出したら、
       小〇旬じゃなくて、
       自分を思い出す様に、
       刷り込もうとしてるんだ。」

     「はああああ・・・
      なにもそこまでしなくても。
      さすが、戦国武将、徹底してる。
      てか、戦術が突飛すぎ。。。」

    翌日、部活の練習もそこそこに
    家に帰った唯は、若君の
    ジャージ姿を見てほっとした。
    若君は、〇さんのコスプレ衣装を
    丁寧に畳んでいる。
    さすがに、着物の扱いは
    手慣れたものだ。

      「若君、ただいま~。
       その着物、ハンガーにかけて
       おいた方がよくないですか?
       たしか、着物用のがどこかに」

    「いや。もう良いのじゃ。」

      「え?
       だって明日も行くんでしょう?
       ”よろずや”に。」

     「それがね。
      アルバイトは今日一日限り
      って事になったのよ。」

    唯の母が、忠清の代わりに答える。

     「若君がお店の前に立った
      途端にね。
      お客さんがつめかけて、
      もう大騒ぎ。
      あっという間に、
      開店セール用の棚が
      空っぽになっちゃって。
      この調子だと、仕入れが
      間に合わないから、
      今日だけにして欲しいって、
      店長に頭を下げられ
      ちゃったの。」

      「はああ??
       さすがというか、
       なんというか。」

    「奥方たちに囲まれてしまい、
     着替えもせぬまま、
     母上の車で帰ってきてしまった故、
     これから戻って、これを、店長に
     お返ししようと思うての。」
     
     「ちょうど良かったわ。
      唯、一緒に行ってあげて。」

    唯の提案で、忠清は変装を
    することになった。
    レンズを外した
    メガネフレームをかける。
    でも、それも、妙に似合う。
    忠清にダッフルコートのフードを
    深くかぶせながら、
    唯はため息をつく。

      “たった一日で、
       商店街のアイドルなんて。
       買い物途中の美魔女たちから、
       若君を守り切れるかなあ。
       こんな事なら、戦国で
       足軽やってた方が、
       ずうっと楽かも。“

    なるべく人目を避けながら、
    唯はおそるおそる若君に訊ねた。

      「若君、
       まさかとは思うのですが、
       次は〇男の花〇類のコスプレ
       しようとか、
       思ってませんよね?」

    若君は、ギクッとした様子で
    慌て気味に答える。

    「な、何故それを。
     実は、駅中の“Z〇R〇”とか
     申す店で、手伝いの者を
     探しておると、店長が教えて
     くれたのじゃ。
     そこであれば、花〇類によう似た
     衣装も手にはいるのではと
     思うたのじゃが。」

      「やっぱり!
       もうやめてくださいね。
       街中の女性から
       若君を守らなきゃ
       ならなくなったら、
       私の身が持ちませんから!」

       ”それに、今や、
        女性だけとは限らんし。”

    「わしは、ただ、
     唯を喜ばせようと。」

      「はい。それは、
       とっても嬉しいです。
       でも、若君が他の“おなご”に
       取り囲まれるのは、
       嫌なんです。」

    「さようか。
     唯が好まぬことは、
     わしもしとうは無い。」

    言ってから唯は
    ちょっとだけ後悔する。

    “私と二人だけの時なら、
    ” 花〇類“も良いんだけど。。。
    ピンク色のフード付きのフリースで、
    クッション抱いてる若君。
    ああ、最高♡”

    「唯、如何した?」

      「あ、いえ。何も♡」

        ・・・・・・

    “よろずや”のバックヤードで、
    忠清と唯はコスプレ衣装を
    無事返却した。
    またしても店長は不在。
    応対したのはあのバイト君だ。
    なんでも、アニメの劇場版、
    〇魂ファイナルのアテレコで、
    担当声優さんが風邪をひき、
    そのピンチヒッターで
    駆り出されたのだとか。

     「え?
      だってアニメのほうは、
      〇さんの声、小〇旬じゃ
      ありませんよね?」

      「店長は根っからの
       〇さんファンで、
       声優さんの方の
       声真似も得意なんです。」

    またしても、唯は、
    小〇旬そっくり店長には
    会えなかったのだが、
    一昨日の夜程は、
    落ち込まなかった。
    すでに、忠清の唯への刷り込みが、
    成功の兆しを見せている。

    日も暮れて、空には星が
    瞬き始めていた。

    ふと、忠清が足を止める。

    「唯、あれは何じゃ?」

    それは、教会の前に飾られた、
    小さな馬小屋だった。

     「あれは、教会の
      クリスマスの飾りです。
      キリストの誕生の時の場面を、
      お人形で再現してるんです。」

    「ほう。近くで見てみようかの。」

    忠清は、唯の手を引きながら、
    教会の前に立った。

    「教会というは、伴天連の
     教えを説くところであろう?」

     「良くご存じですね。
      たしか、黒羽の城下に、
      宣教師はいなかった
      はずなのに。」

    「キリシタン大名の事は
     存じておる。
     それに、信長は、伴天連から
     色々聞いておる様じゃ。
     海の外の国の子細をの。」

     「そうなんだ。
      信長って、好奇心旺盛
      なんですね。」

    「知識を広く得ようとするは、
     見習わねばならぬ。」

     「若君だって、凄いですよ。
      今回の半端ない
      行動力だって。」

    「わしなど、まだまだじゃ。
     ところで、キリストと言うは、
     厩で生まれたのか?」

     「そのようです。
      私も詳しくはないのですが。
      確か、大きな町の
      役所のような所に出向く途中、
      宿が取れず、厩で一夜を
      過ごしたとか。
      その時に誕生したのが
      キリストで、ひときわ輝く
      星に導かれた三人の博士が
      東からやって来て、
      祝福したとか。」

    「クリスマスに、
     星を飾るは、その為か?」

     「そうかもしれないですね。
      キリストの本当の誕生日は
      よくわかっていなくて、
      もともとあった冬至の
      お祭りの頃に、お祝いする
      ようになったという説も
      あるみたいです。」

    「確か、太子も、厩で生まれた
     と聞いたが。
     幼名は厩戸王じゃ。
     偉人は厩で生まれるのかも
     しれぬの。」

    そう言った後で、忠清は、突然、
    何かを思い出したように
    振り向いた。

      「どうしました?」

    「わしが生まれた時も、
     馬にまつわる話があっての。
     それを思い出したのじゃ。
     お前に話した事は、
     なかったか?」

      「ありませんよ。どんな?」

    「実はの。
     わしを産み落とす時、
     母上は大層、苦しまれたそうでの。
     母もわしも、
     命がつきるやもしれぬと、
     皆、一度は覚悟を決めた様じゃ。
     ところが、九死に一生を得た。
     つまりは、大変な難産の末、
     わしは生まれたのじゃ。」

     「難産。」

    「うむ。わしは、
     逆子であったそうでの。」

     「逆子。」

    「わしを取り上げたものの話では、
     皆があきらめかけた時、
     母の腹を、奥の者らが数人で、
     強くさすったとか。
     力を一にしての。
     母も気丈に、体を持ち上げて、
     声の限りに、神に祈りを
     捧げたそうじゃ。」

     「母上様が。」

    「己の命とひきかえに、
     この子をお守りくだされと。
     まさに時を同じゅうして、
     城の厩でも、
     産気づいた馬がおった。
     “風花”という名馬じゃった。」

     「風花・・・
      聞いた事、あります。
      確か、吹雪の母馬ですよね。」

    「さよう。」

    忠清の吐く息が白い。

    「誠に、不思議な事じゃがの。
     わしは、その時、母の腹の中で、
     くるりと体をまわしたらしい。
     そして、生まれた。
     喉が詰まっておったので、
     おなごたちが背中を強くたたき、
     わしは、詰まりものを全て吐き出して、
     やっとの事で産声を上げた。」

    唯の目に、涙が浮かぶ。

    「風花もまた、母上と
     同じ苦しみを味わっておっての。
     腹の仔が頭ではなく、
     足から出ようとしておった。
     それを、馬番たちが皆で
     引き出したそうじゃ。
     その仔馬は見事な毛並みの
     白馬であった。」

    「それが吹雪。」

    忠清が頷く。

    「その仔馬は、馬番たちの手で
     何とか息を吹き返したが、
     引き出すまでに時間がかかり、
     失のうた血が多すぎて、
     母馬の風花は息を引き取った。
     母上は、床上げの後、
     その話を聞き、風花が己の
     身代わりとなったのだと
     思うたらしい。
     城の皆もその様に申してな。
     風花が付けていた房飾りを
     鈴鳴神社に納め、丁重に弔った。
     その様な事も有り、
     わしが五歳の袴着の儀を
     終えた翌年に、吹雪は
     鈴鳴神社に奉納される
     はずじゃった。」

     「でも、奉納されたのは、
      確か、“新月”。
      何かあったんですか?」

     「吹雪は、他のどの馬よりも、
      わしによう、なついての。
      同じ日に生まれた故、
      幼き頃には、わしは、吹雪を
      まるで兄弟の様に思うておった。
      風花が母上の身代わりとなった
      と聞けば、哀れでもあり、
      感謝もした。
      何としても、
      この手の届くところに
      置いておきたかった。
      そしてのう。
      鈴鳴神社に奉納される、
      まさにその日に、
      わしは、吹雪の背に乗って、
      小垣城まで走ったのじゃ。」

     「それって、逃避行ですよね。
      しかも、たったの六歳で?」

    「そうじゃの。
     まさに、愛馬との逃避行じゃ。
     吹雪が、人であれば、
     さぞ、美しい姫であろうの。」

      「え?姫?
       吹雪って、メスなの?」

    「さよう。牝馬じゃ。
     お前、存じておらなかったのか?」

      「あ、はい。オスだとばかり。
       厩での仕事も、掃除や、
       馬糞の始末ばっかりで。
       それに、吹雪って、
       私が水桶を運ぶと、
       すぐにひっくり返すし、
       飼い葉をやろうとすると、
       私の袖をひっぱったりして。
       牝馬なら、相当な
       じゃじゃ馬ですよ?」

    「いや、そのような事は無い。
     平時には、穏やかで気品がある。
     そして、いざ戦となれば、
     勇猛果敢。
     その一方で、冷静さもまた失わず、
     わしの心をよく読む。
     まさに一心同体じゃ。」

      「若君様。
       吹雪の事となると、
       熱く語りますね。
       まるで、恋人みたい。」

    「ん。そうじゃの。
     恋人か。
     うまい事を言うのう。
     確かに、吹雪は、
     己を馬とは思うておらぬ
     やもしれぬ。」

      「えーーーー?!」

    いや、まさか、・・・
    考えたくないけど。
    でも・・・なんか、
    不吉な予感。。。
    今までオスだとばかり
    思ってたから、
    いたずら小僧で済ませてたけど。
    よーーーーく考えれば、
    思い当たる事、いっぱいある!
    厩でのあれやこれや。
    腕を噛まれた事も、
    一度や二度じゃないし。
    尻尾で、顔を叩かれたり。
    危うく蹴飛ばされそうになったり。

    もしかして、もしかして、
    私の最強のライバルは・・・
    吹雪???!!!

    あ“―――――――!!!!!

    忠清は、愛馬、吹雪との
    楽しい思い出に浸りながら、
    前を歩いて行く。
    唯は、もはや、パニック寸前。
    忠清の後をついていくのが
    精いっぱいだった。

      ・・・・・・

    その翌朝。
    唯は、登校するや否や、
    陸上部のコーチの部屋に駆け込み、
    冬季練習の目標を書いた紙を、
    コーチの胸に押し付けた。
    唯の必死の形相に、
    思わずコーチがのけぞる。

    「速川、書いて来たのか。
     やっとやる気になったんだな。
     よし、今見るから。」

    その紙を覗き込んだコーチが、
    目をむく。

    「はああ?
     な、なんだこれ?」

    そこには、こう書かれていた。

    速川唯の3つの目標。
     ばんえい競馬の馬より強く!
     三冠達成のサラブレッドより早く!
     吹雪より美しく!

    唯は、ランニングウエアで
    トラックに立っている。
    見上げれば、
    馬の形をした白い雲が、
    風に乗って流れて行く。
    その雲を追いかける様に、
    唯は靴を脱ぎ、裸足で走り始めた。

    ”吹雪~!
     いざ、勝負~!!!”

    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    あとがき
    ドラマでの若君の愛馬は、
    栗毛の“颯”ですが
    原作に登場する若君の愛馬は、
    白馬の“吹雪”となります。
    原作を背景にはしていますが、
    この物語は、全て、私の妄想です。

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    二人の平成Days36~19日19時、行っちゃえ~

    今日の若君は、感情が忙しかった。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはん。そろそろごちそうさまです。

    唯「まさか今夜が焼き魚だったとは」

    覚「お前が何度も言うから」

    唯「確かに言ってた、意味違うけど」

    若君「そういえば、尊」

    尊「なに?若君」

    若「服は買うたのだが、ほとんど尊のを借りたままじゃが、良いか?」

    尊「いいですよ。着慣れた服が楽でしょう?」

    美香子「いい買い物ができて良かったわ。若君、素敵だったわよ」

    若「ありがとうございます」

    唯「ねぇ聞いてっ!とうとう、」

    尊「とうとう?」

    唯「私の魅力で、たーくんを射抜きました~!」

    尊「やっと?」

    唯「うー、それは言うてはならぬ」

    美「試着した姿がね、若君のキュンのツボに入ったらしいの」

    若「キュン、とな。…言い得て妙じゃ」

    尊「ホントなんだ」

    美「でも、今日は一日色々あったから、疲れちゃってるかしら」

    唯「え、料理の練習、そんなスパルタだったの?!」

    美「違うわよ」

    尊「お母さんは教えてないよね」

    覚「厳しくなんかしてないぞ、若君は筋が良かったから。まあ色々、心揺さぶられる程に、って所だ」

    尊「ふーん」

    尊が若君の顔を覗き込む。

    若「なんじゃ?」

    尊「ちょっとぽや~んとしてるみたいですけど、調子悪い訳じゃないですよね?体、休めなくていいですか?」

    唯「えっ、うそっ」

    若「それはない。案ずるには及ばぬ」

    唯「ホントに?」

    その時、唯の手が若君の頭を撫でた。

    唯「疲れちゃった?大丈夫?」

    覚「あ」

    美「あ、すごい勘がいい」

    尊「は?勘?」

    そしてやはり弱点でした。

    唯「え?たーくん、顔赤くなってる!やだっ、やっぱり調子悪かったの?!」

    若「大事…ない」

    美「大丈夫。熱があるとかじゃないから」

    唯「え?そう?いつの間に診察した?」

    覚「それを言うなら、若君は唯に」

    尊「お熱だ、とか言う?」

    覚「何でわかった」

    尊「勘」

    唯「心配ないならいいけど。でも赤くなるなんて、たーくんかわいい!」

    尊「はいはい、続きは部屋でどうぞ」

    唯「なによ。食後なんだから、お茶くらい飲ませてよ」

    尊「そこ?」

    覚「はいお茶」

    唯「え?やけにスムーズに出てくるし」

    食卓が、どんどん片付いていく。

    唯「なんか、早くない?」

    覚「気のせいだろ」

    美「もう連れてって休ませたら?」

    唯「お母さん。部屋に行くイコール休む、では決してないのじゃ」

    尊「鍵かけたら豹変する?」

    唯「ありえる」

    尊「そんなん、知ったこっちゃないけど」

    唯「なんて無責任なっ!」

    若「ハハハ。では折角じゃ、部屋で少し休む。食事も終えた事だし。ん?確かに今日はいやに片付けが早いのう」

    唯「尊の部屋で一人で寝る?」

    若「何ゆえ避ける」

    唯「なんとなく。ウソウソ、一緒にゆっくり休もうね~」

    若「唯が休めるかは、わからぬが」

    唯「ちょっとー。全然元気じゃん」

    若「それでは、9時には下りて参ります」

    尊「はい。9時まで戻らなくていいですから」

    美&覚&尊「ごゆっくり~」

    三人で、バイバイと手を振る。

    唯「なによ、その盛大な送り出し」

    二人、二階へ上がって行った。

    尊「さてと」

    覚「さて」

    美「さて」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    19日のお話はここまでです。三人のさて、の続きは、またいずれ。

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    唯は何の花?

    若君にとって世の中のおなごは、唯or唯じゃないの二択(私見でーす)なので、お花に見えるくらいは当然だと思いますが、じゃあ何になぞらえたのか、という話を。妄想話のモチーフの、見解です(^_^;)

    現代の冬の和風の赤い花、だと山茶花や椿が一般的ですかね。山茶花の花言葉なんて、「困難に打ち克つ」とか「ひたむきさ」とか、唯そのものですし。

    山茶花自体は、古来より日本に生息する種のようですが、野生種は主に中国地方以西に分布していて、しかも白。園芸種は江戸時代になり発展した模様で、もし若君が永禄で赤い花を見ていたとしても、馴染みがなかったのではないかと思われます。

    椿は、首が落ちるのを想像して、武士には縁起が悪いと言われています。そうではないという説もあるようですが、総領としては、縁起も担ぎたいでしょうから、例えには使わないかなと。

    私は、若君にとって唯は、「初めて出会った、野原にぽつんと佇む、強くて可憐な一輪の花の蕾、咲く姿は未知の花」…なんじゃないかなーと思い、彼の想像を形にはせず、あえて〇〇の蕾とはしませんでした。

    ドラマ内の唯のテーマ曲、「ワイルドフラワー」は、青い花ですね。唯にぴったりだと思います。

    平成Daysは、クリスマス直前の話なので、ちょっと浮かれモードで赤い二人です。映像化したら絶対キレイだと思う~という野望、も、一匙入ってます。

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    二人の平成Days35~19日17時、腕の中で咲く花

    何がツボか、はまってみないとわからない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「たーくん?」

    若君「あ、あぁ唯。とてもかわいいよ」

    美香子「なんか、心ここにあらずね」

    唯、少し考えていたが、ふと思い出したように、天井を見あげた。

    唯「ねーねー、天の声~」

    美「天の声?」

    ……天の声といっても、天井に居る訳ではありません。

    唯「あ、居た居た。ねーねー、教えて。たーくんどうなっちゃったの?」

    そういうシステムではないのですが、今、この状態を解説なら出来ます。

    唯「えー、ぜひお願いしますぅ」

    若君、射抜かれました。

    唯「え…ホントに?!ずっきゅ~ん?」

    はい、ずっきゅ~ん。それでは、失礼します。……

    唯「えー、えー、ホントにそうなら超嬉しいんだけど!」

    美「ちょっと何?!今の」

    唯「え?ファンタジーだから、軽く流して」

    美「よくわからないけど。忠清くーん、起きてる?」

    若「…夢であろうか」

    美「えぇ?」

    唯「ねぇたーくん、この格好、気に入ってくれたの?」

    若君、首をコクっと。

    美「らしくないわねぇ」

    唯「んー、この萌え袖にキュンとしたとか?」

    若「萌え袖?」

    唯「袖が長くて、手がちょっとしか出ない」

    若「そうじゃな。それも良い」

    美「例えば、戦国時代には、こんなゆるくて体が中で泳ぐなんて服ないわよね。それが新鮮とか」

    若「それもあるやもしれません。何というか」

    唯「なに?」

    若「まるで、今にもほころびそうな蕾、の様にあまりに可憐で」

    美「あら綺麗~」

    唯「私が?やーん、嬉しいっ」

    美「忠清くんは、唯がお花に見えるのね。素敵ね」

    唯「やったー!しゃっ!」

    美「またー。せっかく花に例えてくれてるのに」

    若「ハハハ」

    美「ひとまず、気に入ったのはよーくわかりました」

    二着お買い上げ。

    美「あとはいいの?」

    唯「うん、いい、充分。ありがとう」

    アクセサリー売場の前を通過中。

    唯「お母さん、実はイヤリングだけ買ってあるんだぁ」

    美「あら、そうなの?」

    唯「昨日、たーくんと帰りに、一緒に選んだの」

    美「そう~。ワンピースに合いそう?」

    唯「うん、バッチリだった」

    美「当日、楽しみにしてるわね」

    唯「うん!」

    唯は、手を繋いでいる若君の方を全く見ない。

    若君 心の声(ずっと母上と楽しそうに話しておる。その横顔が、また良い)

    そろそろ帰ります。

    尊「えー、試作品、全部食べちゃったの?そんなにおいしくできたんだ。明日が楽しみだな」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    がっつり、ペアルックですね。

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    血の気が引きます…

    ぷくぷくさん、どうか気を落とされずに。
    私も、実は二度、投稿の段階で原稿が一部消えた事がありました。慎重にコピペしてるんですが。
    以後は保険で、他にも保管しています。

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    またうやってしもぉた

    如古坊と成之の別れの場面
    行った後の成之の寂しそうな表情が可愛い(*^_^*)
    頬をギュウする場面を見て考えたのが二人が出会った頃の妄想
    (アシガール掲示板 №757 2019.8.8 13:31)にて。

    あ~またやってしもぉたぁ(>_<)
    宗熊の決意 第二章 
    USBに入れておいた他の物を使用している時に、何かをクリックしたら、その物もデータが消え、
    第二章の続きをしようと初めは画面に出たのに、一旦やめた時、6ページまで書いていた物が何をしたのかそっくり無くなっていた( ;∀;)
    たわけ!です(;_;)
    あ~途中まで印刷しておけば良かったと後悔(;_;)

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    二人の平成Days34~19日16時、伏せよ!

    危機管理能力が必要。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    出かける前に、若君お着替え。

    覚「また制服着せたのか、お前も好きだな~」

    お馴染みの、尊の制服。

    美香子「学校帰りに買い物に行く、って体だからいいの~」

    覚「趣味と実益だな。まあ、若君が嫌がってないからいいだろう。じゃあ、遅くなるようなら連絡くれな」

    美「じゃ、行ってきます」

    若君「行って参ります、父上」

    二人で、学校までプチドライブ。

    美「車はどう?前にも聞いたわね」

    若「この前、長く乗ったので幾分慣れました」

    美「慣れ過ぎて、馬に乗れなくなったら大変よね」

    若「疾風に嫌がられるやもしれません」

    美「あらそれは、一大事ね」

    若「ハハハッ」

    唯の学校正門前。車は少し離して停めた。

    美「どこかしらね…あっ、居た」

    唯にも気づいたが、こちらの若君の姿が、JKに気づかれ始めている。

    美「不穏な空気。若君、伏せて!」

    若「ははっ!」

    唯が全速力で走ってきた。車のドアを開けると、小さく潜んでいる若君発見。

    唯「お待たせ、あっ」

    若「おかえり…唯」

    唯「…直ちに退却!」

    JKが群がる前に、安全に出発できました。

    唯「あー危なかった~」

    美「唯の足が速くて助かったわ」

    唯「ところで、どこ行くの?」

    美「ショッピングモールが、一番豊富かなって」

    到着しました。

    若「床が、硬くない」

    唯「そうだね。歩きやすいからかな?」

    若「走るのも楽そうじゃ」

    唯「走る用では、ない」

    プラプラしてます。

    美「どうしようかしら~。あ」

    外国産のファストファッションの店。

    美「唯のはともかく、忠清くんのは見つかるかも。入りましょ」

    メンズ服売場。

    唯「どんなのがいいかなー?」

    若「どんなでも」

    唯「だよねぇ」

    美「こちらでは、ジャージや制服しか着せてないからね。セーターとかどう?」

    色もカラフル。

    唯「わー、いっぱい。真っ赤とかある」

    ディスプレイに、赤のオフタートルのセーターが掛かっている。

    美「赤。忠清くんには新鮮ね…戦国では絶対着ないでしょ」

    唯「うん。多分これからも」

    美「一度着てみる?」

    若「はい、お母さん」

    フィッティングルームへ移動。着ました。

    唯「うわぁ~いい、いい!超好き~!」

    美「あら…何着ても素敵だろうとは思ったけど、こんなに似合うなんて」

    血色を思わせるその色。肌の透明感が増し、唇がより赤く感じられる。緩い首元から鎖骨が少し覗き、爽やかな色香が放たれている。

    唯「ねえねえ、たーくん、肘まで袖まくって」

    若「袖?上げるという事か?」

    凛々しいながら優しい顔立ちとは裏腹の、鍛えられた腕が現れた。

    唯「いい、いい、すんごくいい~っ!くらくらしちゃうぅ。決まり!」

    美「唯って腕フェチだったっけ?忠清くん、着心地はどう?首、チクチクしない?」

    若「暖かいですし、首…も、はい大丈夫です」

    美「悪くないならそれにしちゃおうか。眼福だったわ~。…あ、ん?」

    唯「どしたのお母さん」

    美「唯、売場で、このセーターのワンサイズ下のを持ってらっしゃい」

    唯「え?同じので?」

    美「地が厚いから、女の子だとワンピースとして着られるかも」

    唯「へー、そっか!お揃いはベタだけどやってみたーい!取ってくる~」

    走っていった。

    若「同じ物を着るという事ですか?」

    美「試しにね。こんな経験ないわよね?」

    若「おなごと同じはないです」

    美「じゃあせっかくだから」

    唯、着替えてます。中から声がする。

    唯「お母さん」

    美「なぁに?」

    唯「これでも大きいんじゃないかなぁ」

    美「見せてみて」

    カーテンを開けて出てきた。

    美「あら、かわいいじゃない」

    すると、若君の様子がまたおかしい。

    若「…」

    唯「たーくん、どしたの?目がうつろだよ?」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ちなみに、泣いてはいません。続く。

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    はーるか遠き所より参った守り神だから

    ぷくぷくさんへ
    唯が関わった人々が、幸せになっていく様はいいですよね。
    この別れの後、兄上は角がとれて色っぽくなってるし、如古坊はワイルドになってるし。シフト具合が好きです(^o^)

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    最終回の隙間 如古坊と成之

    唯が忠清の正室になる許しをもらい、藤尾に指導を受けている頃、如古坊は、

    (成之も母上様も良い顔をしておる。案ずることも無かろうが、だがいつ戦が起こるかわからぬ。わしも手助けできるよう強うならねばの。修行に出ようかの)

    そう考えている側に成之が、

    「如古坊、何をして居るのだ?」
    「ん」

    奥御殿の方から唯を呼ぶ藤尾の声が聞こえてきた。

    「唯がまた逃げたのかの、ハハハ」
    「その様じゃの・・・だが」
    「ん?成之?」
    「唯と初めて会うて、男の形(なり)をして居るが、女子(おなご)ではないかと思うた」
    「そうだったのか。あの折、わしは唯を見ても女子とは分らなかった」
    「そうか。一度、山で会うたが、忠清の側に居りたいので己を城にと申しておってな、阿湖殿との婚儀を伝えた折、驚き様で、こ奴はやはり女子だと」
    「わしは、山中でお前たちが我らを迎えに来て、撃たれたが大事無いと申す途中で忠清が血相変えて走り出したが、その慌て振りが分からなかったが、お前に唯之助は女子だと聞いて、驚いた」
    「あの者は立ち振る舞いも女子であるのに、誰も気づかなかったの。木村、小平太殿も驚いておった」
    「そうか。忠清は出会うた頃より知っておったのだろうか?」
    「ん。あの折、我らの企みを知った唯に酒を飲ませた事があったであろう」
    「あぁ」
    「あの折は、忠清は女子と知っておったと。想いもあった事もあの顔を見ておれば分ったが、いつからであるかは私も分からぬ」
    「そうか」
    「だが、唯が、我らの前に現れた事で、今はこうして母上も穏やかに暮らす事ができる。あの者が現れておらなんだら、私はどうしておったであろうか」
    「分らぬ?」
    「ん」
    「分らぬで、それで良いではないか。これより先は、母上様もお前も己を大切に生きるのみ。そして、忠清と力を合わせて参れば良いだけの事」
    「そうだな・・・」

    すると、成之が手を付き頭を下げた。

    「成之、どうした?」
    「お前に詫びねばならぬ」
    「何をだ?」
    「あの折、お前に刃を向けた」
    「あの?・・・あぁ、わしは向けられたとは思うておらぬ。驚きはした。足元に突き刺した事にはの」
    「すまなんだ・・・この通り」
    「もう良いではないか。わしは言ったであろう、お前を裏切る気持ちなど持たぬとな。死にとう無ければと物騒な事を言ったが、わしにはお前の瞳が悲しんでいるのが見えた。だから理由(わけ)は分らぬが、もうここには戻らない方が良いと思うたのだ」

    成之があの時に見た母の恐ろしいほどの形相を如古坊は見ていない事が分かっていたから、久の思ひを話すべきではと。その上でもう一度、詫びる事にしていた。

    「理由は」
    「今更聞いてどうする、お前を恨む事はしたくないのでな。あっ」
    「どうした?」
    「山中を逃げておる折にの、忠清と唯に、お前に殺されかけたと申してしもうた」
    「まことの事じゃ」
    「ふっ」

    如古坊が笑い出した。

    「如古坊?」
    「いやなぁ、唯と睨み合った事を思い出しての。あいつは、おかしな奴だよ」
    「そうだな」
    「わしも、唯と出会うて良かったと。だが、成之もこの話は唯には申さぬ方が良いぞ」
    「何故?」
    「つけあがるだけじゃ。アハハハ」
    「あぁ」

    如古坊は表に降りて、

    「成之」
    「ん?」

    成之も出て如古坊の隣に。

    「わしは、しばし旅に出ようと思うておる」
    「えっ?」
    「決めたのじゃ」

    そう言って成之に抱き着いた。

    「にょ・・・如古坊?」
    「はぐと申すのだそうだ」
    「はぐ?」
    「いつぞや、阿湖姫と唯が笑いながらこうして抱きおうておった。女子同士でと申したら、唯が男も女も構わず想う人と抱き合う事をはぐと申すのだと」
    「そうか、まこと面白い女子じゃ」
    「そうだな」
    「いつ発つのじゃ?」
    「時期にの」

    そして、成之に見送られ旅立った。

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    一方通行の私ですみません

    てんころりんさん、夕月かかりてさん、妖怪千年おばばさん、皆さん
    感想をありがとうございます(*^_^*)
    以前にも書きましたが、妄想は書けるのに言葉が見つからず妄想作家さんへの感想を書く事が出来ず、
    自分の妄想ばかりで、本当に一方通行になってしまいます。申し訳ございません(;_;)
    妄想の世界にどっぷりのこんな私ですが、これからもお付き合い下さい(^_^;)
    一つ、妄想の中で如古坊が「お袋様」と言葉にした事について、普段から母としたっている如古坊は「母上様」と言っていたけれど、この時は自分の母では無いと思い知らされた感で、お袋様と言ったのだと(^_^;)
    そんな事を考えていたら、その後の二人についての隙間が妄想できたので、またまたすみませんが書かせて頂きます。
    アシガール沼 妄想町1丁目1番地 住人より

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    二人の平成Days33~19日12時、笑顔を見せてね

    心が、求めていたんです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    玉ねぎをバターで炒めてます。

    覚「料理らしい過程は、実はこのくらいしかないんだ。ほとんど炊飯器にお任せだからな」

    美香子「デビューにちょうどいい感じ?」

    覚「失敗は少ないな。オムレツの方が高度だ」

    若君「あとどのくらい、炒めますか?」

    覚「そろそろいいな、米入れるよ。そのまま続けて」

    美「ん~、いい!いいわ~」

    覚「ギャラリーは静かに」

    鯛が入ります。

    覚「米の上に乗せて」

    若「このままですか?」

    覚「大丈夫だよ」

    炊飯器の蓋を閉め、スイッチオン。

    覚「さて、あとは炊き上がりに少し手を加えるだけ」

    若「ありがとうございます、父上。あの、オムレツですが、父上がどう作るか見たいのですが」

    覚「オッケー」

    美「さぁ面目躍如なるか」

    さすがの腕前であっという間に完成。

    若「何となく、掴みました」

    美「ホント~?」

    覚「じゃあ、早速」

    忠清、行きま~す。

    覚「おっ、いいよいいよ、トントンと」

    美「出来てる出来てる」

    若「動きません」

    覚「慌てないで、よし、お皿に出せる?」

    75点くらいのオムレツ完成。

    美「すごーい!ホントに掴んじゃったわ」

    覚「僕の出る幕ないなあ」

    若「父上の指南の賜物です。ありがとうございます」

    ピラフ炊き上がりました。

    覚「あおさ海苔を入れて、蒸らす。少し待って、混ぜて出来上がりだ」

    若「はい」

    お昼ご飯、出来ました。

    美「感動だわ~」

    覚「さっ、じゃあ、いただこうか」

    全員「いただきます」

    若君が、覚と美香子の顔色を伺っている。

    美「おいしーい!」

    覚「おっ、うまいなぁ。若君も食べてごらん」

    若「あ、美味いです」

    美「上手だったわよ~。明日の本番は万全ね」

    若君の様子がおかしい。

    美「え?どしたの若君」

    覚「え?殻や骨とか入ってた?」

    涙ぐんできた。

    美「えっ、何で?!」

    若「…心の底から、じんわりと、温かくなりました」

    泣きそうな若君を前に、しばらく沈黙。

    覚「…そうか。嬉しい感じ?」

    若「はい。求めていた物が手に入ったような」

    美「手に入ったのよ、忠清くん」

    美香子が席を立ち、若君の後ろへ。そのまま後ろからそっと抱き締める。

    若「母上…」

    美「すっかり泣き虫さんになっちゃって、この子は」

    落ちる涙が、若君のエプロンを濡らしてゆく。

    覚「唯が知ったら、また泣かしたな!って怒られるな」

    美「あら、こういう泣かせ方は、唯にはできないからいいのよ」

    若「父上母上の優しさが、心に染みました…ありがとうございます」

    覚「いや。忠清くんは、僕らの大事な息子だから、お礼なんか言わなくていいんだ」

    若「えっ?」

    覚「親が注ぐ愛情なんて、こちらからの一方通行としたもんなんだ。愛をありがとうなんていらないよ。忠清くんが元気で笑ってくれてればいい」

    若「父上…」

    覚「さぁ、冷めちゃうから食べような。って、わー!また泣いてる!」

    美「あーあ」

    覚「え~?僕、悪者?」

    若「いえ、…あはは」

    団欒は、しばらく続きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    いっぱい、甘えていいんだよ。

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    二人の平成Days32~19日水曜7時、泣けちゃう!

    練習の残りでいいから、食べさせて。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「料理って、焼き魚じゃあないよね」

    覚「それはとっくに手伝ってもらってる」

    美香子「じゃ、行くわよ唯。行ってきます」

    唯「行ってきまーす!たーくん、夕方にね」

    尊「若君、頑張ってね。行ってきまーす」

    若君「行ってらっしゃい、母上、唯、尊」

    一気に静かだ。

    覚「さてと。ピラフだから一品だけでもいいけど、他に挑戦したい料理あったりするかな?」

    若「もしできるならば、あの、卵を使って」

    覚「卵?何だろう」

    若「父上が、鉄鍋をこう上へ下へと操っていました」

    あおるような仕草。

    覚「あー、オムレツかな?」

    若「名前は、わかりません」

    覚「こういう動き?」

    フライパンを持ち、柔らかいオムレツを整えるように手首をトントンと叩く。

    若「そう、それです!父上の術じゃと思いました」

    覚「そうか~上手く形を作るには練習あるのみだな。まあ若君はセンスあるから、大丈夫だと思うけど」

    若「扇子?」

    覚「うわっ、やっちゃった」

    若君、前にもどこかで聞いたな、と笑顔。

    覚「卵かー、在庫がちょっと心細いから、少し練習して昼前に買いに行こう」

    若「はい!」

    美香子帰宅。テーブルの上の試作オムレツを眺めている。

    美「まだ、何作ってるか当てられないレベルかな」

    覚「これからこれから」

    若「励みます」

    美「いいのよ~学ぼうっていう気持ちが素晴らしいわ。ウチの二人は、座ればご飯が出てくると思ってるから」

    若「それは、父上の作る飯が全て美味いからでは」

    美「違うなーきっと。だって若君は教わろうと思ってくれたじゃない」

    若「父上を尊敬しておるので。いや、唯や尊がそうではないという意味ではありません」

    覚「尊敬だって。嬉しいなあ」

    若「もちろん母上も尊敬しております」

    美「んまぁ~嬉しい!ウチの子になる?あ、ウチの子だったわ」

    美香子、手を伸ばして若君の頭を撫でた。

    美「ホント、いい子」

    若「ありがとう、ございます…」

    若君の顔が、赤くなっていく。

    美「いやん、照れちゃった?かーわいい~」

    覚「おいおい、唯の居ない所でいいのか~?」

    若「いや、その」

    美「案外弱点だったりしてね」

    覚「完璧に見える若君にも、そんな可愛らしい所があったんだな」

    卵、大量。

    美「ある意味、失礼な量よね」

    覚「心おきなく練習するため、と言ってくれ」

    若「すみません。無駄にせぬよう励みます」

    覚「じゃあ、ピラフの準備から。まずは玉ねぎのみじん切りな」

    若「微塵に、切る」

    覚「うわっ、若君が言うと僕が斬られそうだ」

    頑張って、みじん切り。

    若「目が痛うなってきました。父上はこのような苦労をされていたとは露知らず、今まで難儀をかけすみません」

    覚「こんな時まで労ってもらえるなんて」

    美「もっと早くウチの子になって欲しかったわ~」

    覚「あー、そのくらいでいいよ。この後炒めるから、ひとまず顔洗っておいで」

    若「はい、行って参ります」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    生まれながらの親子でも、こんなに仲良くないよ。

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    デートは何度でも

    妖怪千年おばばさん、ロマンチック夜デートですねぇ。覚父さん、可愛いです。

    唯と若君のデートの様子は、今までも数多の妄想作家様が描かれています。これからも現れるであろう作家の皆さんも、いろんな場所に行かせてやって欲しいなーと思います。もう、365日デートでいいんじゃない?

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    兎角この世は その3 ~満月はイブの前 こぼれ話 覚編~

    はじめに
     娘の可愛いさは、ひとしおとか。
     父親が、娘の恋人を目の前にし、
     しかも、“祝言を上げた”と事後報告
     された時の気持ちって
     どんなものなんでしょうね?
     って事で、ドラマや原作の中では、
     常に二人に理解を示す
     唯パパ・覚さんの、本音を
     ちょっぴり書いてみました。
     
    ~~~~~~~~~~~~~~~~

    相賀の手から逃れ、黒羽城から
    二人で平成に飛んで間もない、
    ある朝の事。
    部活の朝練に行こうと、
    自転車置き場へ向かう唯に、
    忠清が声をかけた。

    「早いの。もう、登校するのか?」

     「はい。
      春の記録会に向けて、
      コーチが特別メニューを
      組んだみたいで。」

    「特別な段取りという事か?」

     「え?
      まあ、そうです。
      少しでも早く走れるように
      なれば、永禄でもきっと
      役に立ちますから。」

    「ん。良い心がけじゃ。励め。」

     「では、行ってきま~す。!
      あ、帰ってきたら、
      駅前のイルミネーション、
      一緒に見に行きましょうね。」

    「入見?なんじゃ、それは?」

     「行けば分かりますよ。
      キラッキラのピッカピカです。」

    「綺羅の飛花?」

    “唯の言葉はまるで呪文じゃ。”

    意味が分からなくても、
    唯の笑顔につられて、
    忠清はつい笑ってしまう。

    唯は、口元まで
    マフラーを巻き直し、
    若君に手を振ると、
    勢いよく自転車をこぎだした。
    玄関で覚が聞き耳を
    立てていたとは知らずに。

     「ふううん。駅前ねえ。」

    覚がつぶやく。

    ランニングウエアに着替え、
    校庭に出て、トラックを軽く
    走り始めた唯を、コーチが呼んだ。

    「おーーーい、速川。
     今日から、体育館に
     集合って言っただろ?」

    唯はそのままトラックを一周し、
    体育館に入った。
    体育館の一角に、
    見慣れぬ器具が並んでいる。
    まるで、スポーツジム状態だ。

     「ど、どうしたんすか?これ。」

    「開校100年の記念事業の一環だ。」

     「へ?
      ウチの学校、
      結構、歴史あるんですね。」

    「晴れて陸上部が、
     最初に使用する栄誉を得た。」

     「あ、陸上部専用って訳じゃ
      ないんだ。」

    「そう言うなよ。
     これでも、頑張って、
     朝練の時間帯の使用許可を
     貰ったんだ。」

    トレッドミルには、
    モニターもついていて、
    姿勢のチェックができる。
    早速、乗って走ろうとする唯を、
    また、コーチが止めた。

    「速川、まずは、ストレッチだ。
     寒い季節は特に、
     良く体をほぐさないと、
     怪我の元だぞ。
     それと、お前、
     これ、早く提出しろよ。」

    コーチは、記録会に向けての
    目標タイムの記入用紙を、
    唯の頭の上乗せると、
    他の部員の所へ走って行った。

    唯は、部室のロッカーに
    その用紙を放り込んで、ふと思う。

     “記録会かあ。その頃、
     私は何してるのかな。
      若君と、遠乗り・・・なんてね。
      それより、今日は、部活の後、
     思いっきりロマンチックに
     デート!“

    頭の中は、すでに
    あのクリスマス定番のメロディーで
    いっぱいだ。

      ♪恋人はサンタクロ~~ス♪

      ・・・・・・・・・・

    最近整備された駅前のロータリーに、
    大きなクリスマスツリーが
    飾られている。
    駅からタクシー乗り場に続く
    通路の庇や、花壇にも、
    小さな電球がたくさん
    取り付けられていた。
    大きな買い物袋を抱えた主婦や、
    家路に向かうサラリーマンが、
    立ち止まって、
    駅の時計台を見つめている。
    学習塾帰りの子供たちが、
    コンビニの前に集まって、
    大きな声でカウントダウンを始めた。

    「何事が、始まるのじゃ?」

     「もうすぐ、分かりますよ。」

    唯は楽しそうに、子供たちの声に
    自分の声をあわせる。

     「さん、にい、いち、ゼロ~!」

    駅前に光が溢れ、歓声が上がる。
    それと同時に、時計台の扉があき、
    旗を上下に振る人形が現れた。
    その後を、音楽隊が続く。
    大きな太鼓を打ちながら、
    首を左右に動かす人形を指さして、
    よちよち歩きの子どもが
    はしゃいでいる。

    左右に分かれた
    音楽隊の真ん中から、
    ひらりと、バレリーナが飛び出す。
    くるくると回りながら、
    次々と入れ替わる人形を、
    忠清は目を丸くして見上げている。

    オルゴールの音色に併せ、
    駅舎の前面に次々と
    放射状の光が走る。
    それは、まるで、
    流れ星の群舞の様。

    「美しい!
     まるで、夜空の星が、
     全てここに舞い降りた様じゃ。」

    曲が終わり、人形たちが
    時計台の中に消えて行く。
    忠清は、また、人形たちが
    出て来るのではないかと、
    暫くの間、その扉から
    目を離さずにいた。

    一方、唯はといえば、
    若君の横顔ばかり見つめていた。
    今の忠清は、まるで少年の様に
    キラキラと目を輝かせている。

    “血なまぐさい戦場から離れれば、
    若君はこんなに
    あどけない表情をみせるのね。”

    「皆を誘えば良かったの。
     尊や、父上や母上も。」

     「ですよね~。」

    忠清の声に、
    明るい声で答えながら、
    唯は、思わずうつむいてしまう。

    “今は、私だけを見て欲しいのに。”

    その思いを振り払うように、
    唯は、ツリーの前で
    忠清と二人で撮った写メを尊に送った。

    「そろそろ、帰りましょう。」

    唯は、忠清のコートの袖を引き、
    商店街の裏手にある
    ひっそりした遊歩道に入る。

    「ん?来た道と違うようじゃが?」

    遊歩道の木が、
    淡いピンク色に輝いている。

     「駅前ほどじゃないけど、
      こっちもなかなかですよ。」

    「あちらの方角が、黒羽城じゃの。
     とすると、ここは外堀あたり
     であろうか?」

     「大正解~。
      外堀跡が、今は桜の名所に
      なってるんです。」

    「さようか。
     戦の無き世では、堀は無用か。」

     「内堀の水堀は、
      まだ、少し残ってますよ。
      カルガモの堀として
      人気があります。
      それから、障子堀も。
      水をひいて、
      植物園になってます。
      夏には蛍も飛びますよ。」

    「そのような安らぎの場に
     なっているのは、
     喜ばしい事じゃの。
     例え、羽木の名が
     残っておらずとも。」

     「若君・・・。」

    唯が突然足を止めた。
    少し前を歩いていた忠清が
    振り向く。

    「如何した?」

     「その・・・。
      若君の立場はわかります。
      でも、あの・・・
      忘れませんか?
      せめて、家に帰る間だけでも。
      皆の事。」

    「唯・・・。」

    忠清が、ゆっくりと近づいて来る。
    唯は、無意識の内に後ずさる。
    そして、桜の木の根を踏んで
    止まった。

    忠清が、桜の木の幹に右手を置く。
    左手が、そっと
    唯の顎の下に添えられる。

     “これって、もしかして、
     目をつぶるシーン、再び?”

    忠清の熱い息が頬にかかる。
    瞬いていた瞼を、唯が閉じた。

    まさにその時の事。
    唯のスマホが、
    大音量で鳴り出した。

     ♪チャンチャラチャラチャラ
      チャッチャッチャー♪

    唯が慌ててスマホを取り出す。
    すぐに尊の声が流れた。

     「お姉ちゃん。
      すき焼き、先に
      食べちゃうよ?」

    そして、黒毛和牛を
    箸でつまみあげた、
    満面の笑顔の尊の写メが届く。

    美味しそうな肉を見た途端、
    唯のお腹が大きく鳴った。

    忠清が、笑い出す。
    そして、あの名台詞。

    「お前は、まこと、面白い!」

      “もう、尊のやつ~!
       良い所だったのにい!”
       
    唯は、ガックリと肩を落とし、
    大きなため息をついた。

    実はその時、遊歩道の暗がりで、
    黒い影がガッツポーズを
    決めていたのだが、
    唯と忠清は、
    全くそれに気づかなかった。

    その影は、
    二人がまた遊歩道を
    歩きだしたのを確かめると、
    もと来た道を走り抜け、
    商店街の人ごみに消えた。

    その人ごみの中で、
    その影は、ふいに肩をポンと叩かれた。

    “まずい!
     二人に見つかったか?”

      「覚さん?」

    首をすくめた覚が、
    恐る恐る振り返ると、
    そこにいたのは、
    速川クリニックの看護師、
    エリさんだった。

      「どうしたんですか?
       今夜は、すき焼きだって
       張り切ってたのに?」

    「あ、いや、それが。。。」

    うろたえた覚の目が泳ぐ。
    エリの買い物袋から、葱が
    飛び出しているのが見えた、

    「そう、ね、葱。
     葱だよ。
     葱買うの忘れちゃって。
     そこの八百ハチの
     “深谷ネキ”の売り出しチラシを
     思い出して、慌てて来たんだけど、
     もう閉店でさ。」

    エリさんは、買い物袋から、
    葱を2本取り出すと、覚に渡した。

      「どうぞ。私はぎりぎりで
       買えましたから。」

    「え?良いの?」

      「実は、美香子先生から、
       さっきお肉を分けて
       いただいたんです。
       クリニック宛ての
       お歳暮だから、
       私と芳江さんにもって。
       葱、2本じゃ、
       かえって申し訳
       ないんですけど。」

    「そうなんだ。
     じゃあ、遠慮なく。」

    エリさんは、買い物袋を
    軽々と持ち上げて振ると、
    帰って行った。

    その後姿を見送って、
    覚はほっと、胸をなでおろす。

    家路につきながら、覚は思う。

    “娘の幸せを願わない親はいない。
    でも、ケジメはつけないと!
    事情が事情とはいえ、
    若君からの正式な申し出は
    まだなんだから。“

    絶妙な、タイミングで鳴った
    唯のスマホの“三分間クッキング”の
    メロディーを思い出し、
    覚は、両手に持った“深谷葱”を
    振りながら、
    夜空に向かって叫ぶ。

     「尊~!グッジョブ!!!」

    流れ星が一つ、
    覚の目の前を通り過ぎて消えた。
    まるで、“ヤレヤレ”
    とでも言っている様に。

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    寒波の後は

    皆様、こんにちは。
    今日はちょっぴり温かいです。
    1月も早半ば。
    時間をちょっと戻しまして、
    クリスマス前のお話を、
    もう一つ書いてみました。
    これから投稿します。
    よろしくお願いいたします~。

    ぷくぷく様
    如己さんは成之母を、
    自分の母親の様に慕っていた
    のですから、あの回は、
    見ていて辛かったですね。

    てんころりん様
    感想有難うございます。
    今年はなるべく”ほっこり笑える”
    お話にチャレンジしたいと思います。

    夕月かかりて様
    仲良し速川家のストーリー、
    益々、楽しみです~。

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    二人の平成Days31~18日火曜20時、腕が鳴るよ

    何着てもかわいい、とは言いそうだけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    この時季、テレビはCMもニュースもクリスマス一色。

    唯「う~ん、いい!クリスマスはロマンチックでときめいちゃう。ねっ、たーくん」

    若君「ん?何がどうだと?」

    唯「うぅっ、ダメだぁ、いつも空振りってわかってるのについ聞いてしまうぅ」

    尊「そういうのは、長年の刷り込みだから。クリスマス、イコールロマンチックは若君には無理だよ」

    若「近々、その何やらで出かけると聞いておるが」

    唯「そう!クリスマスイブイブイブデート~!ぐふふ」

    尊が、指折り数えている。

    尊「…土曜か」

    美香子「デートはいいけど~、男の子が二人居るような格好で行くの?ちゃんとデート服考えた?」

    唯「んー考えたような考えてないような」

    美「9時過ぎでいいから、一度クローゼット見せなさい。ダメ元で」

    尊「ダメ前提か、だろうね」

    9時。唯の部屋。

    美「まず、スカートがないわね」

    唯「制服しか」

    美「スカートじゃなきゃダメとは言わないけど、どうにも色気が皆無というか」

    唯「そりゃあ、たーくんを、ずっきゅ~んと射抜くくらいの、かーわいい格好はしたいけど」

    美「じゃあ、明日買いに行く?朝は車で送るし、夕方は私が若君連れて、学校に迎えに行ってあげるわよ。そのまま買いに行けるから」

    唯「うーん」

    美「あら、話に乗ってこないなんて珍しい」

    唯「買ってもらおうかな、とはちょっとは考えたんだけど」

    美「そう?」

    唯「たーくんの分も、できればと思ったけど」

    美「そりゃそうよね、何が嫌なの」

    唯「嫌なんじゃなくて…」

    美「何?」

    唯「一回しか着ないから、悪いなって」

    美「一回…」

    二回目はない。別れが迫っている事実と直結してしまう。

    美「いいわ、明日行きましょ」

    唯「えっ、いいの?」

    美「若君に、唯のかわいい格好見せてあげたいし、若君のいつもと違う感じも見たいし。その貴重な一回を、私達に見せて欲しいから」

    唯「わあ!ありがとう、お母さん!」

    ぴょん、と抱きついた。

    美「うふふ」

    唯「うふっ、やったぁ~」

    唯を残し、美香子が下りてきた。

    美「尊は実験室?」

    覚「ああ」

    美「珍しく若君がこっちに居るわね」

    若「はい、父上に教えを乞うていました」

    覚「朗報だぞ、なんと若君が料理に挑戦だ」

    美「え~!イケメンシェフ誕生?!どうしたの?」

    覚「さっき料理番組を一緒に観てて、あ、材料全部今なら揃ってるって呟いたら」

    若「作らせて欲しい、と僕から願い出ました」

    覚「録画はいつもしてるから、見直してメモしてたところだ」

    美「すごーい。まだ内緒?」

    覚「内緒にしなくてもいいが、練習はした方がいいだろうな。明日にでもして、本番は木曜の夜にするか」

    美「あ。びっくりして言い忘れそうだったけど、明日朝、唯を学校まで送るから私」

    覚「何かあるのか?」

    美「で、若君、夕方私と一緒に出て、唯を学校に迎えに行くからよろしくね。土曜日のデート服買いに行きます」

    覚「おー、そうかそうか。じゃあ、明日の昼ごはんで試しに作ってみような、若君」

    若「ありがとうございます、父上。で、母上、服を?」

    美「うん。何か質問?」

    若「一度しか…」

    美「しっ!それ以上言わない~。気は回さなくていいから」

    若「わかりました。唯とそう約束したのですね」

    美「さすが若君!だから、ただ楽しみにしててね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    明日もイベント目白押し。

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    いつもありがとうございます

    ぷくぷくさんへ

    成之は、二人とも守りたかった。如古坊は突き放す事で守り、久は暴走を未然に防ぐ事で守り。
    この回のシーンは、サスペンス劇場のようだったなと思い出されます。ともすると冷たい奴にしか見えない兄上の、心のヒダを描いていただきありがとうございました。

    てんころりんさんへ

    息切れまでさせて、すみません(>д<)いつも細かく感想をいただけて、大感謝です。大変励みになります。ありがとうございます。
    若君には、まだまだ平成を満喫してもらいます。いつまで書いとるんじゃ!と言われても、できるだけいつまでも、でございます。なので、ご無理はなさらずで、お付き合いくださいませ。

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