• このトピックには1,203件の返信、16人の参加者があり、最後に夕月かかりて(愛知)により1日、 10時間前に更新されました。
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    送信ボタンが

    すみません。
    送信ボタンが、壊れたでんでん丸のスイッチ状態です。
    押しても、押しても、作動せず。

    投稿される方がいらっしゃいましたら、ご遠慮なく。

    では、後ほどm(__)m

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    楽しそうなパーティ

    夕月かかりて様
    楽しそうなパーティ、始まりましたね。
    若君も唯も、平成ライフを満喫している様子。
    暖かな速川家の団欒、目に浮かんできそうです。

    では、私もまた、投稿させて頂きますね~。

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    二人の平成Days66~23日18時、パーティー始めます

    刻一刻と迫るその時間。あ、クラッカーね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    男性陣、お風呂出ました。

    尊「あはははー」

    覚「あー、楽しかった。若君、ありがとう」

    若君「ハハハ、いえ」

    美香子「大騒ぎね」

    覚「いやー、いい時間だった。風呂はスーパー銭湯でもホテルでも一緒だったけど、家の風呂はまた一味違ってさ」

    美「どう違った?」

    覚「より親密になれる」

    美「あら~良かったわね。じゃあ私達も続いて入りましょ」

    唯「はーい」

    覚「ちょっと休憩したら、そろそろ揚げ物始めるよ」

    若「はい父上。手伝います、尊と」

    尊「あっ、はい若君」

    お風呂。

    唯「お母さん、私気になる事があって」

    美「どうしたの?」

    唯「たーくん、もうすぐ永禄に帰れるから、もっと嬉しい顔してもいいと思うんだけど」

    美「んー、そんなに気持ちが前面に出る子ではないけど、確かにそれは思うわね」

    唯「帰るまでに何か起きるかも」

    美「一応、気にしておくわね。逆に唯は、朝より心なしか顔がスッキリしてるわ」

    唯「えっ?そっかー。たーくんが、色々気にしてくれて、話もいっぱいしたからかな」

    美「まあ、そうなの。若君はホントに心配りが素晴らしいわね」

    唯「その分、自分の事は後回しにするから心配だよ」

    二人、出ました。

    美「ふぅ、いいお湯でした。あら大変、パーティーの支度が進んでる」

    覚「あと、はさみ揚げだけだ」

    若「他は、運びます」

    美「サラダ盛り付けるわね」

    唯「あー、一気にお腹空いてきたー。尊、何してるの?」

    尊「カーテン閉めたらそこが寂しいなと思って、飾り付けの続きを」

    唯「手伝うよ」

    いよいよ、パーティー始まります。

    唯「ぐふふ。クラッカー登場」

    尊「悪い女だよ。そうやって戦国でも、若君をいたぶるんだな」

    唯「ちょっと反応見たいだけ~」

    尊「それを悪女と言う」

    覚「はい、お待たせ~。じゃあクラッカー持って、若君」

    若「これは?」

    美「パーティーの景気づけというか。せーの、メリークリスマス!でこの紐引いてね。あっ、人には向けちゃダメだから」

    若「景気づけに、やや危ない物を?」

    唯「あっ少し勘づいた」

    尊「だーかーらー」

    覚「はい、では始めるぞ」

    美「せーの!メリークリスマス!」

    パパパ、パンパン!

    若「…」

    若君は、しばらく、手元と天井を交互に見ていた。

    尊「若君、大丈夫ですか?お姉ちゃんがどんな物が説明しないもんだから」

    若「いや、構わぬ。これは戦に使えそうじゃなと思うた」

    美「どうせ余るから、持っていって。早速リュックに入れとくわね」

    若「忝のう存じます」

    尊「お姉ちゃん、若君に言う事ないの?」

    唯「ん?かわいかった」

    尊「やっぱり悪い女だ」

    蓮根のはさみ揚げをくわえて、パチリと撮影。

    若「唯、そのなりは…」

    唯「赤鼻のトナカイ。あ、もう説明はしません。こういう物と理解せよ」

    若「あいわかった」

    尊「言いくるめられてる」

    唯「しっかし、カロリー全部足すとすごいよねぇ。はさみ揚げ、唐揚げ、フライドポテト、ピザ、ケーキ」

    尊「ザ・背徳のメニュー」

    美「サラダも食べなさいよ~」

    唯「少しはね。平成の野菜、味薄いんだよね」

    覚「若君、そうなのか?」

    若「それは、思うておりました」

    覚「そうか。今度来る時は、野菜頼むわ」

    若「ハハハ、承知つかまつりました」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    野菜持ち出す余裕あるかな?

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    二人の平成Days65~23日15時、バリアフリーです

    月もケーキも、今日はまんまる。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    まだまだ飾り付け中。ツリーにオーナメントを下げ、サンタグッズをキッチンの作業台に並べる。

    唯「あぁぁぁ~、はぁ」

    尊「うるさいな。なんだよその、口から魂が出そうな溜息は」

    唯「もうすぐ、たーくんって呼べなくなる~」

    尊「なんだ、そんな事」

    若君「名など何でも良い」

    唯「つい、たーくんって呼んじゃったら、たわけたおなごって言われる~」

    若「唯なら有り得るであろうな」

    美香子「さすが、わかってる」

    唯「うっかり呼んでさあ、それを聞かれて」

    尊「お咎めを受ける?」

    唯「真似されたら嫌だし」

    尊「そっち?」

    美「そんな恐れ多い事、周りはしないでしょう?」

    唯「陰でならわかんないよー」

    若「陰ならこちらにわからぬままであるから、放っておけば良いだけの事」

    美「大人ね~」

    若「どう呼ばれても返事はする」

    唯「はぁい」

    美「あい変わらず、優しいわね~」

    若「母上、実の所、唯の声は何故か、どこに居ても耳に入るのです」

    美「あら、そうなの~。若君だけに聞こえるのかしらね」

    尊「愛だな、愛」

    若「いつもどこからか、呼ばれておるような気がしておりました」

    唯「だいたいは、ホントに叫んでたけど」

    若「夜の森とかであるぞ?」

    唯「居た居た」

    若「一人でか?」

    唯「うん、そんな時もあった」

    若「それは物騒じゃ。金輪際、してはならぬ」

    唯「わかったー」

    若「夜、出るならわしと、お洒落してデートじゃ」

    唯「うん!」

    美「いーなー」

    尊「お父さんと行って」

    美「そうするわ」

    覚「仕方なく、みたいに聞こえるぞ」

    美「気のせいよ~。さて、そろそろケーキ受け取りに行かなくちゃね」

    尊「わかった。じゃあお姉ちゃん達、続きよろしく」

    唯「行ってらっしゃーい」

    若「行ってらっしゃい、母上、尊」

    飾り付け、完成。

    唯「いい感じ~」

    若「煌びやかじゃな」

    覚「こっちも、あとは焼いたり揚げてくだけだ」

    唯「お疲れ様~」

    覚「そう言えば、風呂はいつ入る?これだけ腹に詰め込んだら、そうすぐには入れないから、晩飯前がいいんじゃないか?」

    唯「そうだよねぇ」

    若「いくら大飯食らいの唯でものう」

    唯「ちょっとぉ」

    若「ハハハ」

    お風呂、準備中。

    覚「今日も二人で入るか?」

    唯「え」

    若「いえ、昨日、父上母上のお気遣いで、充分堪能しましたゆえ」

    唯「堪能とか言ってる!」

    若「唯は、違うと申すか?」

    唯「うっ。違うと言いたいけど、はい、堪能しましたっ」

    覚「素直じゃないな」

    若「で、父上。もし良ければ父上と尊と、入りとう存じます」

    覚「えっ、いいの?」

    尊「ただいまー」

    唯「あっ、ケーキが帰ってきた!」

    若「それは違う」

    唯「えへ。とうとう、たーくんのツッコミが入るまでに成長」

    若「成長か?」

    尊「飾り付けだいたい完成したね、お疲れ様」

    若君が、箱の中を不思議そうに覗いている。

    若「尊、以前食したケーキと形が違うのう」

    尊「ホールケーキだから。あっ、切り分けずに大きいままだからです」

    若「そうか。餞に相応しい、立派な品なのじゃな」

    美「ただいま。あら、もうお風呂用意してる?」

    覚「あ、そうそう。若君が僕と尊と三人一緒に入りたいって、嬉しい事を言ってくれるんだ」

    美「あら~、じゃあ唯は、私と入る?」

    唯「あ、うん!」

    尊「若君、ありがとう。最…やめとこ」

    唯「たーくん、実はウチのお風呂、普通よりちょっと広めなの」

    若「そうなのか?普通、がわからぬゆえ」

    覚「介護しやすくなってるんだよ」

    美「歳をとっても入りやすい、入れてあげやすい仕様で作ってあるの」

    若「将来を見据えたと」

    美「さっすがウチの息子ね~。だから男性三人でも狭過ぎないのよ。で、唯、それがどうしたの?」

    唯「湯船が大きいから、一緒に入っても色々見えて困るー」

    美「まだ言ってる」

    唯「もっと狭かったら、たーくんとくっついて入れたのに」

    美「広くてもくっつくでしょ?贅沢ね。二人でアパートにでも引っ越しなさい!」

    お風呂、沸きましたよ。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    お風呂の話題が多いのは、それも日常だからです。

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    最終話番号

    二人の平成Days、この後の投稿は、65話です。

    最終話は、69話です。今日入れて、あと5回となりました。

    5話が2つあるので、全70話となります。あと少し、お付き合いください。

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    二人の平成Days64~23日14時、蜜月

    指差し確認は必須。すぐには戻れないから。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「では、持ち物確認しまーす」

    若君「ジェンガはここに」

    尊「おもナビくんイヤホン付、太陽電池、写真集」

    美香子「それ、機械と付属品、何か袋に入れた方が良くない?ちょうど唯が部活の着替え入れてた巾着、洗ってここにあるし。入れちゃうわよ」

    唯「ありがとお母さん。で、前ポケットに、ICカード二人分、写真館からの葉書」

    若「…そうじゃ、唯、もう一つ良いか?」

    唯「ん?いいよ、何?」

    若「持って参る」

    二階へ上がって行く若君。

    覚「唯、若君が何を取って来るかわからないが、後で蓮根のはさみ揚げ持たせてやるから」

    唯「あー、ありがとー」

    本を手に戻った。

    唯「あ、私の日本史の教科書。うん、こちらではお役御免だし」

    若「何か役に立つやも知れぬ」

    唯「じゃ、後で参考書も入れとこかな」

    尊「重そう~」

    唯「大丈夫、米よりは軽い。リュックはひとまず置いといてと」

    飾り付けの材料、各種。

    尊「折り紙切って、輪っか繋げようか」

    唯「どうやって分担する?」

    尊「若君は、ハサミやカッター使った事ないよね」

    若「初めて見るのう」

    唯「今、切り傷なんか作ったら大変だから、私とたーくんは、糊づけ班にして」

    尊「わかった。じゃあ僕は、切ってく班で」

    唯「たーくんまずはお手本ね。この細長い紙の端に、これ、糊って言うんだけど、このベタベタしてる部分をこすりつけて」

    若「ほぅ」

    尊「スティック糊だから塗りやすいはず」

    唯「端と端を貼りつける。二個目からは、輪っかに紙を通して貼る。ね、これで輪を繋げてくの」

    若「鎖のようじゃ」

    唯「あー、そうそれ。いろんな色あるから、隣同士が違う色になるようにしてね」

    若「センスが問われるのじゃな」

    唯「そう、センスセンス」

    尊「学習してる」

    美「じゃあ、私は同じやり方でレイを作るわ」

    唯「よろしく。名前のシール貼ってね」

    尊「名前?って何」

    唯「アルファベットのシール売ってたから、それで名前作って、私の、尊のって作る」

    尊「ふーん。それ若君に説明してあげないと」

    美「そうよね。じゃあ書きましょ。この文字を並べて、若君の名前ならこうなるのよ。TADAKIYO。唯はYUI」

    若「この文字はよう見かけるが…これも、名前なのですか?」

    美「そうよ」

    若「カードは…」

    美「あれは、カタカナよね。これはアルファベット」

    若「うむ…」

    尊「難しいよね」

    若「母上。その名前の入るレイ、も頂戴して良いですか?」

    美「どうぞ~。まだ出来てないけど」

    唯「私も首にかけてこーっと」

    美「ハワイでハネムーン、みたいに?」

    唯「お母さん…いい、それいい~!もぉ絶対二人して首にかけてく!」

    尊「また説明がいる事しゃべるんだから。若君、ハワイは海の向こうにある異国の島々です。ハネムーンは新婚旅行」

    唯「新婚って私達の事だよぉ。ホヤホヤ、ラブラブな~」

    尊「だーかーら。結婚したばかりでまだアツアツな、って、あー同じような言葉だった、説明がこんがらがる!」

    若「尊、何とかわかる。では、父上母上も新婚か?」

    美「あら残念、私達は違うのよ」

    若「大変仲睦まじいので、そうかと」

    美「いや~ん、若君ったら嬉しい事言うんだから!」

    覚「何?僕らが新婚?そりゃーずっと新婚気分だぞ」

    尊「それは誰が見てもその通り」

    若「父上母上を、見習いとう存じます」

    唯「ずっと新婚みたいにラブラブ?きゃ~!嬉し過ぎるぅ」

    尊「飽きられないように」

    唯「うわっ、励みます」

    若「わしも、励まねばの」

    唯「はいはい、励め」

    尊「おいおい!」

    唯「ついつい~」

    若「良い良い 」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    リュックは相当重い。

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    二人の平成Days63~23日12時、似て非なるもの

    重要な品なのに、しばらく隠れてました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「ただいまー、あ~あったかーい」

    若君「ただいま帰りました」

    尊「おかえり、若君、お姉ちゃん」

    美香子「寒かったでしょう」

    唯「ううんそんなには。ご飯なに?」

    覚「こらこら、まずは帰ったら手洗いうがい!」

    お昼ごはんスタート。

    覚「はいお待たせ~、今日の晩ごはんは油分たっぷりだから、昼はさっぱりとな。でも魚介類総動員だぞ」

    唯「わあ、豪華海鮮鍋!」

    全員「いただきまーす!」

    覚「唯のリクエストも入ってるぞ」

    唯「え?私、何言った?」

    覚「つみれ、って」

    唯「そうだったっけ」

    覚「違ったか?元々入れる予定で、冷凍しといたんだけどな」

    唯「なあんだ」

    美「日本酒ひっかけたくなるわね」

    覚「ま、今日はやめとくけどな。いつか、若君と酒を酌み交わしたいなあ。あと一年?二年?」

    若「酒は…永禄では飲んでおりましたが」

    覚「聞かなかった事にする」

    尊「別にその時代は、法律違反じゃないから」

    覚「そうだな。こちらで飲んでいい年齢になったら。楽しみにしてる、と言っておくよ」

    若「父上、ありがとうございます。そんな日が参りましたら、是非、盃を交わしたいです」

    美「唯、何やってるの」

    唯「蟹の身が取れないー、あっ!」

    尊「わっ!飛ばすなよー!」

    美「もっと丁寧に、キレイに食べて~」

    若「ハハハ」

    ごちそうさまでした。お茶タイム。

    美「唯、持って行く荷物、忘れ物がないように確認しときなさいよ」

    唯「はーい」

    若「あっ、父上。以前の話で恐れ多いのですが」

    覚「何だい?」

    若「ジェンガを、結局片付けさせてしまい、すみませんでした」

    覚「あー、いいよいいよ。入れ物見繕っておくよって言ったのは僕の方だからね。で、ぴったりなのがあったんだよ」

    覚が席を立つ。若君もついていく。キッチン作業台の下をゴソゴソ。

    覚「これ、ちょうど良くってさ。入れといた」

    半透明の大きめタッパー。中身が少し透けて見える。

    若「父上、ありがとうございます」

    尊「へー、袋とかよりは個数も分かりやすくていいね」

    若「では、頂戴します。あ?」

    覚「何?」

    若「あの…もう少し重さがあったように思うのですが」

    覚「え?そう?あっ!間違えた、こっちだ!」

    唯「間違えた?」

    同じタッパーがもう一つ出てきた。見た目があまり変わらない。

    覚「ごめんごめん、若君開けて確かめて」

    若「わかりました。…はい、確かに作ったジェンガで、名も入っております」

    美「え?何と間違えたの?」

    全員ぞろぞろやってきた。

    覚「別にしとけば良かったなー。すまんすまん。こっちの中身はこれだ」

    開けると、薄茶色の四角い物体がきちんと収まっている。

    唯「え?なに?巨大ジェンガ?」

    美「あー。もうやだお父さん、これ高野豆腐じゃない」

    尊「高野豆腐!」

    唯「高野豆腐?え、最初はこんな、木みたいなんだー」

    覚「使う時に水で戻すからな」

    若「あの、宿の晩に出た物ですか?」

    美「そうそう。若君は勉強熱心よねー。ちゃんとこれは何か聞いてから食べてたもんね」

    唯「でも危なかった~。もう少しで違う物持ってくトコだった」

    尊「高野豆腐は、それなりに喜ばれるとは思うけど」

    唯「ダメだよ、名前書く計画なんだから」

    美「書く?」

    唯「子供や孫ができたら、まっさらなジェンガに名前書くんだよ。たーくんがそうしたいって。え?言ってなかったっけ?」

    覚「そんな壮大な計画だったとは」

    美「若君…凄いわ。唯、頑張ってね」

    唯「うん、ばんばん産む」

    若「励みます」

    尊「サラっとすごい事言ってるよ。慣れたけど」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二つ三つ、隙間に高野豆腐入れといたら。

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    二人の平成Days62~23日9時、心も支度します

    城跡だから、広い公園。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「まだお昼まで全然時間あるから、公園プラプラする?」

    若君「ゆるりと歩くのじゃな」

    一周、ぐるっと巡っている。

    唯「ここで壁ドン、あっちの池でスワンボート。あ~、思い出がいっぱい。この公園には」

    若「よく参った。朝日も眩しかった。おぉ、自転車もここで乗れるようになった」

    唯「あはは、子供みたーい。そうだね、ここは、二人の定番のデートスポット」

    若「と、申すのじゃな」

    若君が、唯の顔を見ていて、何かに気づいた。

    若君 心の声(これは…このまま帰す訳にはゆかぬ!)

    若「唯、こちらへ」

    唯「えっ?」

    腕を掴み、ぐいぐい引っ張っていく。

    唯「えっ、なに」

    人目に付きにくい、公園の隅にやってきた。手を離し、唯の正面に立つ若君。

    若「唯」

    唯「はい…」

    若「ここで、泣いておけ」

    唯「えっ」

    若「先程から、顔つきがうつろじゃ。やはり家族との別れが辛いのであろう?」

    唯「まさか、気のせいだよ。私全然、平気だよ」

    若「まだ昼まで時間はある。今、思いの丈に泣いておけ。我慢をするな」

    唯「なんで?そんな、永禄に戻るの、すっごく楽しみなだけ、だよ」

    若君の視線が鋭く変わった。

    若「なぜ聞かぬ!泣けと申すに!!」

    唯「キャー!」

    その剣幕に、唯は涙目になり震えている。

    唯「ひどい…そんなに怒鳴られたら、泣きたくなくても泣いちゃう」

    若「ここで思い切り泣き、家ではずっと笑うて居て欲しいのじゃ」

    口調はいつもの若君に戻っていた。頭を撫でる。

    若「済まぬ。怖がらせたの」

    唯「ううん、いい。言われた通りだし、私と家族を思って言ってくれてるのはわかるから」

    唯が大きく息を吸った。

    唯「ふぅ。じゃあ、たーくん」

    若「なんじゃ?」

    唯「背中、貸して」

    若「背中?」

    唯「泣くのは我慢するつもりだった。だから見られたくないの」

    若「幾度も、唯の泣く姿は見ておるのに?」

    唯「…決意の涙だから、見ないで欲しい」

    若「…そうか」

    背中を向ける若君。後ろから、抱きついた唯のすすり泣きが聞こえてきた。

    若 心(空は…今日も澄んでおる…)

    しばらくして、背中が静かになった。

    唯「たーくん、ありがとう」

    前に回り、すっきりとした笑顔を見せた。

    若「憑き物が取れたようじゃ。良かった」

    唯「たーくんはなんでもお見通しだね。心配させてごめんなさい」

    若君が唯を抱き締める。

    若「怖かったのは、わしの方じゃ」

    唯「そう…なの?」

    若「唯に背中を向けると、消え去ってしまうのではないかと不安になる」

    唯「あ…」

    若「辛さが甦る」

    唯「私、どこにも行かない、ちゃんとここに居るから」

    お互いの存在を確かめあうように、固く抱き合う二人。

    若「わしと唯が生を受け、今日まで」

    唯「はい」

    若「共に居ない時間の方が長かったのに、とは思う」

    唯「うん。私もそう思う。でもそれって、好きだから、でいいんじゃない?」

    若「超好き、じゃな」

    唯「ふふっ、そうそう。これからは、一緒の時間は長くなってくばっかだよね?」

    若「そうじゃ。嬉しい限りじゃ。ずっとこうしていたいが」

    唯「ん、そろそろ帰らないと、ね」

    公園の出口。さっきの立看板。

    唯「いつか、もっと未来に、またいい方向に書き換わってるといいね」

    若「そうじゃな、切に願う。そういえば」

    唯「なぁに?」

    若「今日のこれは、クリスマスイブイブデートと申すのではないか?」

    唯「あっ!そう、そうですぅ~」

    若「その顔を、三人に見せてやってくれ」

    手をつないで、帰ります。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城があった時も、ない今も、残るのは素敵な思い出。

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    二人の平成Days61~23日日曜7時、塗り替えました

    最後の朝です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君、朝稽古中。

    若君「いつもより身を入れて動いたら、冬とはいえど随分と温まるのう」

    唯「たーくんカッコいいっ」

    尊「ふぁ~、ん?あれっ、寝坊のプロがもう起きてる!」

    唯「なによそれ。戦国の朝は早いのじゃ」

    尊「慣らし運転?だったらもっと早い日から始めない?今日だけじゃん」

    唯「昨日も早かった」

    尊「二日だけじゃん」

    唯「最後まで寝坊よりはいいでしょ」

    尊「まあね。若君、おはようございます」

    若「おはよう、尊」

    覚「若君、冷たいお茶にしたよ。どうぞ」

    若「あっ、父上、忝ない」

    二階から母が下りてきた。

    美香子「あ、尊起きたわね。起きた早々で悪いけど、使った布団一式、二階へ持ってって」

    尊「はーい」

    美「じゃ、テーブル戻すわよ」

    若「母上、わしが持ちます」

    元通りにセッティング完了。

    覚「じゃあ、運んでー」

    朝ごはん。

    美「今日の予定は?」

    唯「えっと。たーくん、多分…行きたいよね」

    若「あぁ、墓と城跡には参りたい」

    唯「それ、午前中に行かない?で、昼ごはんからはずっと家に居ようよ」

    若「あいわかった。昼からは?」

    唯「工作する。パーティーの飾り付けとか」

    若「心得た」

    美「ケーキ注文してあるから、夕方に受け取りに行くわ。尊と」

    尊「崩さないよう、抱えて持ち帰るよ」

    覚「僕は、張り切ってごちそうづくり」

    美「お願いします」

    唯「じゃあたーくん、ちょっと休憩したら早速出かけよっか」

    若「そうじゃな」

    二人、着替えました。

    美「え?今日もそれ着てくの?」

    二人とも真っ赤。

    唯「せっかく買ってくれたしー、やっぱお揃いは着たいし。あっ、ゆうべちゃんとファブっといたから」

    美「そう?よっぽど臭わないとは思うけど」

    唯「内緒だけどぉ、たーくんのは、ファブる前に、クンクンしちゃったぁ」

    尊「聞こえてるよ」

    美「あら、呼んで欲しかったわ~」

    尊「おいおい!」

    覚「お前ら、自由過ぎるぞ」

    若「?」

    美「唯」

    唯「なに?」

    美「ありがとう、二回目があって嬉しいわ」

    唯「ううん、えへへ。じゃ、行ってきまーす」

    若「行って参ります」

    お墓に到着。

    唯「これって、私達が永禄に戻ったらどうなるのかな。ずっとあるのかなあ」

    若「生害と伝えられたままであれば」

    唯「その方が安全だよね?」

    若「然り」

    唯「えっ、現れない方がいいとか…」

    若「どう転ぶかはわからぬ」

    城跡。

    若「今宵戻れば、元の姿の筈ではあるが」

    唯「複雑?」

    若「いや、この姿も良い。なにより、この先の世に馴染んでおる」

    唯「そっか。きっとね、石垣も、この時代にまで会いに来てくれてありがとう、って思ってるよ」

    城跡を離れ、歩き出す。

    唯「たーくん、私見せたい物がある。こっち来て」

    若「見せたい物?」

    黒羽城公園の立看板前。

    唯「これなんだけどね。読んでみてくれる?特に最後の方」

    若「羽木家は滅亡したと考えられていたが、近年の発掘調査により、通説が覆りつつあり、現在も調査は続いている」

    唯「これね、私も最近気づいたんだけど、書き換わってるの」

    若「換わっておる?」

    唯「最初見た時は、羽木家は滅亡した、で終わってた」

    若「そうであったか…それは、一重に唯のお陰じゃな」

    唯「私、歴史を変えようなんて全く考えずに行動してたけど、あっ変えたのかもって。あとね」

    若君の正面に立つ。

    唯「実はこの、滅亡した、ってのを見て、たーくんを守らなきゃ!って決意したの」

    若「…」

    唯「その頃は、たーくん…死んじゃうって歴史になってて、絶対嫌、嫌だって」

    若「…わしや羽木の者達は全て、唯に出逢い命を長らえた。それだけではない。わしは、唯の傍で幸せを噛み締めておる」

    唯「私も幸せ。なにが幸せって、こーんなに好きになれるたーくんに出逢えたから!」

    ぴょん、と抱きついた。若君が、しっかりと抱き締め返す。

    若「唯。羽木家総領として、改めて礼を申す。速川忠清としては」

    唯「ん?」

    若「会いに来てくれて、心から、ありがとう」

    唯「えー、感動~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の平成Days60~16日日曜4時、ずっと熱いままです

    二人の平成Days24no.427温泉宿で結ばれた

    25no.437露天風呂で始まる朝

    この間、深夜から唯が起きてくるまでの、若君の様子をお送りします。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    宿の部屋。二人は布団の中、唯は若君の腕に抱かれている。さっきまで話をしていたが、

    唯「もうダメ、眠い、ごめんたーくん」

    と、すとんと眠りに落ちてしまっていた。

    若君 心の声(口が開いたままじゃの。幼子のようじゃ)

    微笑みながら寝顔を眺め、感慨にふける。

    若 心(長かった)

    唯と出逢ってからの様々な出来事が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

    若 心(…漸く、此処まで)

    唯を抱き寄せ、目を閉じた。

    若 心(この静けさ、鼓動まで聞こえそうな)

    何時かはわからない。周りが静まり返る中、唯の寝息だけがかすかに聞こえる。

    若 心(そうじゃ)

    腕を緩め、唯の浴衣姿を確認し、そっと囁く。

    若君「唯、済まぬが、整えさせて貰う」

    布団をめくり、起こさないようにそっと、浴衣を裾まで真っ直ぐ伸ばし、脚をくるんで前の合わせを整えた。

    若 心(これで、片足だけ飛び出す事はない)

    ┅┅回想。3時、布団の中┅┅

    唯「やだ、なんで中にもぐってるの」

    若「んー?」

    唯「とぼけ方が怪しい。えっ、なに…キャー!」

    若「うっ!」

    唯「あわわ、うわぁっ、またやっちゃった…」

    唯の膝が、若君のみぞおちにクリーンヒット。

    唯「ご、ごめんたーくん」

    慌てて、蹴った所をさする唯。

    若「ゴホッ、あー、見事な膝蹴りじゃったの」

    唯「胡乱な動きなんかするからっ」

    若「胡乱とは、聞き捨てならぬ」

    唯「あっ開き直った!」

    若「近う寄りたいだけじゃ」

    唯「ホントにぃ?ごめんね、痛かったよね」

    若「もっと下を蹴られていたら、相当痛かったであろうが」

    唯「下?…あっ」

    若「まあ、蹴り上げてしまったならば、今と同じく、そっと優しくさすってくれれば良いだけの事」

    唯「…」

    若「何をじりじりと下がっておる?」

    唯「無理無理無理」

    若「申すのは一度で良い」

    唯「大事なコトは、三回言うのっ」

    若「まだ蹴られてはおらぬが」

    唯「いやぁ万が一ってあるしぃ、備えよ常にと申しましてぇ」

    若「今更何をうろたえておる」

    唯「い、いまさらとか言わないっ」

    若「布団から出てしまっておるではないか」

    唯「退陣で」

    若「敵となった覚えはない」

    唯「えー」

    若「近う参れ」

    唯「あー、その言葉は心が揺らぐー」

    若「たわけ。四の五の言わず、早う、此処へ」

    ┅┅回想終わり┅┅

    若 心(乱れを整えておけば、起きた時に慌てる事もなかろう)

    再び布団の中。肩に触れると、浴衣が少しひんやりしている。

    若 心(しまった、時間をかけ過ぎ、体を冷やしたか)

    温めようと、抱き寄せた。

    若 心(眠っておれば、逃げはせぬが)

    つい、腕に力が入り、きつく抱き締める。

    唯「ん…」

    唯がかすかに動いた。

    若「あぁ、痛かったか、済まぬ」

    腕を緩め、ふんわりと包みながら、目を閉じた。

    若 心(ん…雀、か)

    どれだけ経ったか、雀の鳴き声がし始めた。

    若 心(空が白んできたか)

    部屋の中も徐々に明るくなる。

    若 心(よう、眠れておるかの)

    唯の寝顔を覗く。

    若 心(消えてはおらぬ、此処に居る。共に朝を迎えられるのは、この上ない喜びじゃ)

    頬にかかる髪を、そっと払いのけた。

    若 心(そういえば)

    唯を仰向けに寝かせ直し、そっと布団から出た。

    若 心(海の様子は、如何ばかりか)

    外に出た。海を臨む位置に露天風呂がある。

    若 心(あれは、風呂か。そういえば隣にもあったのう)

    露天風呂に近づく。

    若「ん?…なんと!湯が沸いておるではないか」

    手を入れると、いい湯加減。

    若「ほぅ。まさしく、温かい泉じゃな。折角じゃ、入るとするか」

    早速、入浴する。湯船に体を沈めた。

    若「朝方の海もまた、格別じゃ」

    色を差し始めた海を眺め、時が経つのを忘れる。

    若「ふう」

    大分温まったので、湯船に腰掛けた。

    若「雀は、せわしく賑やかじゃの」

    あちらこちらで、チュンチュン、ちょこまかと跳ねる。眺めていると、背後で音がした。

    若「こちらの雀も、お目覚めか」

    振り向くと、ちょこまかと跳ね、表情をくるくると変えながら、唯が覗いていた。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君の傍で跳ね回る姿が、愛らしい。

    いよいよ、次回から最終日のお話です。

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    二人の平成Days59~22日23時45分、川の字で

    夜が明けちゃうよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    美香子「ようやく勢揃いね」

    唯「お待たせしました」

    美「布団並べたけど、どこに誰が寝る?」

    唯「あぁ」

    若君「父上は、一番奥と決まっております」

    覚「え、そうなの?何で?」

    若「家長は上座にて」

    覚「えっ、そうなんだ」

    美「さすが若君ね~。ホント感心しちゃう」

    覚「ありがとう若君。この位置なら、朝ごはんの支度もしやすいし」

    唯「家長って…」

    尊「なにを言い出す?」

    唯「家事全般隊長?」

    尊「えー!また突拍子もない事言って」

    若「…ハッハッハッ!」

    唯「ひどーい、そんなに笑うなんて」

    若「いや、我が父忠高が、掃除機をかけておるのを思い描いての」

    唯「ぷっ。それは愉快じゃ。でもエプロン似合うよ、きっと」

    美「普通お殿様は掃除機かけないけど、ウチのスーパーお殿様は、なんでもこなすわよ」

    覚「戦に出ろ、と言われたら、逃げるけどな」

    尊「ははは、それは僕も。だから若君はすごいって思う」

    若「戦は無いのが一番じゃが」

    美「そうね…。で、残りはどうしよう?」

    尊「お父さんは決まったから、あと奥からお母さん、お姉ちゃん、若君、僕?」

    美「それが妥当かな」

    若「いや」

    尊「あ、若君に発言権を譲ります」

    若「本来は母上が次じゃが、奥から、唯、母上はいかがじゃ。わしと尊はどちらが端でも良いが」

    唯「え?たーくんと離ればなれ?」

    若「大袈裟じゃのう。今宵は、父上母上の傍らで休むが良い」

    美「若君…」

    若「最後、とは申しませぬが」

    覚「いやー、その心持ちに感動だよ」

    美「ありがとう、若君。もう一つお願い。私の隣の布団で寝てくれないかなー」

    尊「それがメインか?」

    美「違うわよ、多分」

    尊「いいよ。じゃあ、お父さん、お姉ちゃん、お母さん、若君、僕だね」

    若「両親と唯が仲良く休むゆえ、わしと尊は」

    尊「なに?」

    若「抱き合うて寝るか?」

    唯「キャー!やめてー!」

    尊「そ、それは勘弁してください、お姉ちゃんが恋のライバルとか、嫌です」

    唯「は?そっちかよ」

    若「ハハハ」

    美「若君に迫られたら、尊だってなびくわよねぇ」

    尊「うん」

    唯「おいおい!」

    覚「それだけ、若君が魅力的って事だ」

    美「ホントに。常識も礼儀もわきまえてて、しかも戦にも強い。安心して唯を託せます」

    若「それは…恐悦至極に存じます」

    唯「あ!私が殿の前でとっちらかったヤツ!」

    覚「そういう言葉が、サラっと言えるのも素晴らしいな」

    唯「思い出した、たーくん、殿の脇でなんとも言えない顔してた!」

    若「妙な事を思い出させてしもうたのう」

    唯「でも、その後助けに来てくれたから、許す」

    美「ふふふ、いい思い出なのね。場所も決まったし、布団入って。電気消すわよ」

    月明かりだけが灯る部屋になりました。

    唯「暗くなったら、あっという間に寝ちゃいそう」

    尊「一緒に寝る意味ないじゃん」

    唯「うっかり寝入っちゃうといけないから、」

    美「何?」

    唯「お父さん、お母さん、手、つないでいい?」

    覚「唯…」

    美「やだ、泣けちゃうわ」

    尊「もらい泣きしそう」

    若「そうじゃな…」

    三人、手つなぎ。

    覚「こんなの、小さい頃、動物園に行った時以来じゃないか?」

    美「そうね、こーんな小さい時。お父さんが尊を抱っこして、三人お手手つないで」

    唯「覚えてないよぅ」

    美「そうよね、でも親って、子供達との一日一日が、とっても大切なの」

    唯「そういえば、前にたーくんが毎日大切って言ってた」

    美「そうなの?」

    尊「誕生日は大切な日だ、って話したら」

    若「毎日誰かの誕生日ゆえ、毎日大切と申しました」

    美「まあ…」

    覚「若君は、どこまで僕らを感動させてくれるんだ?」

    若「そこまで喜ばれるとは」

    覚「また、サラっとカッコいい事言ってー。僕も抱き合って、唯と取り合いしようかな?」

    唯「やだっ、たーくんは誰にも渡さないっ!」

    若「わしも、唯以外は考えられぬ」

    覚&尊「あー、振られちゃったー」

    若「ハハハ」

    夜は、ゆっくり更けてゆきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    次回、最終日が目前ですが、一回日付が戻ります。

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    妖怪千年おばばさんへ

    どうぞお気遣いなく。私のお話のクライマックスは、もう少し先です。延びて延びて、4月入ってから、メリークリスマスって言ってる予定です。

    あれだけ名前を連呼するなら、役名知りたかったですよね。確かにコーチ、としか書いてありませんでした。
    ウェディングドレスでオペは、以前のお話と続いてたんですね。今回の美香子さんも、パワフルでした。

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    9月の蝉 前編

    はじめに。
    唯ママと陸上部コーチの意外な
    エピソードを書いてみました。
    設定は、若君が平成で療養中の間
    としました。
    お楽しみいただけましたら、
    嬉しいです。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~
    蝉の声が聞こえる、ある日の午後。
    歴史資料室の扉が、突然、開いた。

    「木村先生。
      ちょっといいですか?」

    現れたのは、陸上部のコーチ。

    「おや、尾関君。何かね?」

     「二年の速川の事、
      何か、ご存知ですか。」

    「ああ、速川。
     今日、保護者の方が見えて、
     届を出されたそうですね。
     二学期まで、休むとか。

     「何故です?
      体調が悪そうには
      見えなかったんですが。
      むしろ、その逆。」

    「なんでも、馬の飼育の研修に
     行くとか。山村留学の様なもの
     でしょうかね。」

     「は?馬?
      速川は、今、一番
      大事な時なんですよ?
      で、校長は受理したんですか?」

    木村先生は、曖昧な表情で首肯く。

    「多様性の時代と言われて
     久しいですからな。
     生徒や保護者の価値観も様々です。
     我々も柔軟な対応が必要です。」

     「それにしても、
      何故この時期に。」

    「早目の夏休みって所でしょう。」

     「インターハイや、
      強化合宿もあるんですよ?」

    「インターハイ出場は、
     3年生が2名と聞いてます。
     速川は、出場しないのでは?」

     「確かに選手としては出ません。
      でも、サポートメンバーとして
      連れて行く予定だったんです。
      来年の為に。」

    「来年?」

     「そうです。大会の雰囲気を、
      経験させる為です。」

    「足だけは早いと、
     皆、認めてますが、
     そんなに有望なんですか?」

     「ええ。実は、私も入部当初は
      気づきませんでした。
      元気なヤツが来たなと
      思う程度で。
      ところが、去年の秋の新人戦で、
      度肝を抜かれました。」

    「ほう。」

     「あいつの本番の爆発力は、
       ハンパ無いです。」

    「では、何故、今年のインターハイ
     予選に出さなかったんです?」

     「出したかったですよ。
      でも、本人が、辞退したんです。
      三年生のラストチャンス
      だからって。
      そういうヤツなんです。」

    「そうでしたか。
     いや、実は私も残念なんです。
     速川は、少し前から、急に
     郷土史に興味を持ち始めましてね。
     夏休みには、黒羽城址の
     ボランティアガイドをすすめ様か
     と、思ってたんですよ。
     推薦で進学を考えるなら、
     郊外活動も、
     考慮されますからな。」

     ・・・・・・・・・・・

    尾関は自席に戻り、部員の
    写真ファイルの編集を始めた。
    コーチに就任してからというもの、
    三年生の送別会では、毎年、
    三年間の活動記録を
    スライドショーで披露している。
    パソコンのマウスを次々に
    クリックしていた尾関の手が、
    とあるファイルで止まった。
    それは、去年の新人戦のものだ。

    「コーチ!写真撮って~!」

    表彰式の後、
    そう言いながら駆け寄り、
    自分の目の前で
    金メダルを齧った唯の、
    満面の笑顔が蘇る。

    「いったい、
     どうしちまったんだ?
     速川。」

    尾関は、大きな溜め息をついた。
    木村先生の話では、唯はすでに
    自宅にはいないらしい。
    挨拶の一言位、有っても
    良さそうなものだが、担任すら、
    父親からの電話で初めて知った
    と言うから、何か、
    事情があるのだろう。
    納得できない自分を宥める様に、
    生ぬるいコーヒーを
    喉に流し込む。
    蝉の声が、ひときわ大きく
    なった様な気がした。

    そう言えば、あの日も、
    蝉が盛大に鳴いていた。
    夏合宿を終え、高2の尾関は
    一週間振りに、自宅に帰る
    途中だった。
    住宅街の、車の少ない抜け道を
    トレーニングと称し、
    チャリで爆走する。
    やがて、交差点の信号が
    見えてきた。
    緑の光が点滅し始める。

    “まだ、間に合う。“

    加速しようと、ペダルを強く
    踏み込んだ、その時、
    仔猫が並木の影から現れた。
    尾関は慌ててハンドルを切り、
    そのまま、道路に倒れこんだ。
    とっさに自転車からは
    飛び降りたが、
    足首を捻って転び、
    左側の骨盤を強打した。
    車が来なかったのは幸いだった。
    尾関は痛みに耐えながら、
    仔猫を探した。
    仔猫は、倒れた
    マウンテンバイクの
    後輪の脇で鳴いている。
    すぐ横の銀杏の木の根本に、
    底の広い紙袋が
    横倒しになっていた。
    辺りには、キャットフードが
    こぼれている。
    使い古したタオルも、
    紙袋の口から飛び出していた。

     「お前・・・
      捨てられたのか?」

    尾関は、猫に向かって言った。

    「どうしたの?大丈夫?」

    突然の声に、尾関の肩が
    ビクッと震えた。
    振り返ると、
    女の人が心配そうな顔で
    こちらを見ている。

     「いや、なんでもないっす。
      ちょっと、コケただけ。」

    その人は、自分のママチャリを
    歩道の脇に止めると、
    尾関の足首に触れた。

    「折れてはいないわね。
     念の為、レントゲン撮ろうか?
     私の勤め先、
     すぐそこだから。」

    美香子は、昼の休憩時間に
    コンビニで買い物をした
    帰りだった。
    通りの反対側に居たのだが、
    目の前で自転車ごと
    転んだ高校生を、
    放っては置けなかった。

     「え?
      もしかして、お医者さん?」

    「そう。
     らしくないでしょう?」

    美香子は笑いながらそう言うと、
    木の脇の紙袋を拾い上げた。
    中のタオルを取り出し、
    こぼれたキャットフードを包む。
    それを紙袋に戻し、鳴きながら
    震えている仔猫も袋に入れた。
    それをママチャリの籠の中に
    そっと置く。
    そして、倒れたマウンテンバイクを
    銀杏木に立て掛けると、
    尾関に言った。

    「これは、
     後から取りに来るとして、
     君はこっちに乗って。」

    美香子は自分の自転車の
    荷台を掌でたたいた。

     「あ、いや、全然、大丈夫。
      帰ります。家に。」

    立ち上がろうとして、尾関は何故か、
    尻餅をついてしまった。
    骨盤の左側に痛みが走る。
    足首に全く力が入らない。
    美香子は、尾関の腕をつかんで
    引き上げた。

    「全然、大丈夫じゃないでしょ。
     ほら、しっかりつかまって。」

    尾関はやっとの事で立ち上がると、
    仕方なく、ママチャリの荷台に
    跨がろうとする。
    すると、突然、
    目の前の自転車が
    グニャリとゆがみ、
    意識が飛んだ。

    気がつくと、そこは病院の
    ベッドの上だった。
    白いカーテンが開いて、
    名前を呼ばれた。
    看護婦に付き添われ、
    ドアを開けると
    白衣を来た女の人が振り向いた。

      「マジで、医者だったんだ。」

    「そうよ~。そこ、座って。」

    尾崎の顔色を確かめる様に
    見つめながら、美香子は尋ねた。

    「気分はどう?」

    女医とはいえ、大人の女性に
    まじまじと見つめられると、
    ドギマギする。
    尾関は、美香子の
    視線を外すように
    うつむくと、
    素っ気なく答えた。

      「ま、フツーかな。」

    「痛みは?」

      「有るけど、
       湿布して貰ったから
       大分、楽です。」

    「吐き気は、有る?」

      「いいえ。」

    「さっき転ぶ前に、
     目眩、しなかった?」

      「しなかったです。
       アイツが急に出てきて、
       ハンドル切って、それで。」

    「部活の帰り?」

      「合宿の帰りです。
       インターハイの強化合宿。」

    「種目は?」

       「3000メートル走。」

    美香子はうなずくと、
    小さなマイクに向かった。

    「尾関君のお母さんを
     呼んでください。」

    すぐに母親が不安げな顔で
    入って来た。

     「先生、お世話になりまして、
      ありがとうございます。
      こちらに連れてきて
      下さったのも、先生だとか。」

    「ちょうど、真向かいに
     いたものですから。」

    美香子はレントゲン写真を
    かざしながら言葉を続けた。

    「骨は、問題無さそうです。
     腰の内出血は、消えるまで
     暫くかかりますが、
     心配はありません。
     足首は軽い捻挫。
     腫れが退いて
     痛みが無くなるまで
     安静にして下さい。」

      「安静?
       これ位、何でもないっす。」

    「いいの?走れなくなっても。」

      「え?」

    美香子の言葉に、尾関が驚く。

    「お母さん、尾関君は、
     朝、顔色は良いですか?」

     「え?ええ。
      前より寝起きは
      悪くなりましたが、
      部活の練習で、
      疲れてるのかと。」

    「いつ頃からですか?」

     「高2になってから。
      春期大会の前位かしら。」

      「母ちゃん、余計な事、
       言うなよ。」

    尾関が、母の言葉を遮る。

    「分かりました。
     尾関君は、誰にも言わなかった
     かも知れませんが、
     時々、目眩があったはずです。
     スポーツ貧血ですね。」

      「え?」

    尾関が、息を飲む。
    母親は慌てて、美香子に聞く。

     「治りますか?」

    「ええ。今なら、
    食事療法で改善できます。」

      「食事?
       何食えばいいんですか?」

    「まずは、レバーね。
      ニラ炒めはどう?」

      「マジで?だっせえ。
       他に無いんすか?
       俺、苦手で。
       あの、ネチャッとした食感。」

    尾関は、今にも吐きそうな表情だ。

    「そうね。胡椒を効かせた
     レバカツなら、イケるんじゃない?
     良く焼いてタレにたっぷり浸した
     ヤキトリのレバーとか。
     レバーペーストのカナッペなら、
     お洒落よ。
     ワインに良く合う。
     って、まだ、飲めないか。」

      「おっさんメニューばっかり。」

    尾関が顔をしかめる。

    「そうね。でもフォアグラは、
     フランス料理の最高級食材
     なんだけど。」

    美香子は笑いながら、
    尾関の腕を軽く叩いた。

    「仔猫にお礼を言いなさい。
     早期発見は、あの子のお陰よ?」

      「そう言えば、アイツ、
       どこに?」

    「守衛室。」

    尾崎は、母親に言った。

      「飼ってもいいだろ?
       なんか、恩人みたいだからさ。
       俺の。」

      ・・・・・・・・・・・・

    結局、尾関のその年のインターハイの
    結果は散々だった。が、
    翌年は何とかメダルに手が届いた。
    尾関は、そのメダルを手に、
    あの病院に向かった。
    美香子に報告して、
    礼を言いたかった。

    受付の前に立つと、
    何故か自分の心臓が、
    バクバクし始めた。
    メダルを握りしめた手が
    汗ばんでいる。
    やっとの事で、声を絞り出す。

      「あのう。み、美香子先生に
       会いたいんですけど。」

     「美香子先生?」

      「そうです。
       去年、助けて貰って、
       そのお礼を言いに。」

     「あら、そうなの。
      でも残念ね。
      実は美香子先生、
      今日は御不在で。」

      「え?」

    その時だった。
    病院の入り口が開いて、
    誰かが飛び込んできた。
    白いレースをなびかせている。
    止める守衛の手を振り切り、
    ベールを脱ぎ捨て、
    その人が叫んだ。

    「これから、緊急オペ開始!」

       「美香子先生?!」

    受付の女性がつぶやく。

      「先生、今日、
       結婚式のはずなのに。」

       「けっ・・・こん。」

    尾関は、病院の外に出て、
    バス停のベンチに腰掛けた。
    淡い思いが、
    蝉の声に送られて、
    遅い夏の空に消えて行く。

       「それにしても、スゲー。
        結婚式放り出して、
        手術って、
        美香子先生、
        ぶっ飛んでる。」

    何故か、笑いがこみ上げて来た。

       「よっしゃー!
        俺も、頑張るぞ!」

      ・・・・・・・・・・・・

    「ああ、尾関君。
     ここにいたんですか?」

    体育教諭の声に、尾関は我に返った。

    「どうしたんです?
     ボンヤリして。」

     「あ、いや。
      陸上部の写真を整理していたら、
      色々思い出しまして。」

    「珍しいですね。
     らしくないなあ。
     それより、良い知らせです。」

     「え?」

    「今度、搬入されるはずの、
     トレーニング機器、
     陸上部に朝練時の使用許可が
     下りました。
     良かったですね。
     これまでの努力の賜物ですよ。
     インターハイの成果次第では、
     体育科の教師として正採用って
     事にもなるかもしれませんよ。
     君に教科を持って貰えるなら、
     私も嬉しい。」

     「あ、いや、まだそこまでは。」

    尾関は、大学卒業後、スポーツ用品の
    メーカーに就職したが、数年で退職。
    スポーツ生理学の分野では、
    よく知られた大学院を受験した。
    恋人もいたのだが、それを機に,
    彼女は次第に離れて行った。
    そのまま、会社に留まっていれば、
    結婚して、つつましいながらも幸せな
    家庭を築いていたかもしれない。
    でも、尾関には、学生時代に
    残した悔いが一つ、あった。

    尾関の出身大学は、
    箱根駅伝の常連校だ。
    入学すると、何の迷いもなく
    陸上部に入部し、起きて寝るまで
    すべて練習の寮生活を送った。
    一年生の頃は、その他大勢の部員の
    一人にすぎなかったが、
    二年の後半から、粘り強い勝負感が
    認められる様になり、
    控ではあるものの、
    選手の一人に名を連ねた。
    四年生でやっと、
    ビッグチャンスが訪れた。
    夢の箱根駅伝出場。
    しかも、走るのは花の2区。
    トップランナーが、
    ぶっちぎりのゴボウ抜きを
    披露する区間として
    知られている。
    地味な走りの自分が
    何故選ばれたのか、
    信じられなかった。
    監督はこう言った。

    派手なパフォーマーより、
    ここは、お前の様な、
    動じない勝負師に任せたい。

    監督の期待に答えようと、
    尾関は、いつも以上に練習を重ねた。
    ところが、それが裏目に出た。
    本番直前で、左足の中足骨の
    疲労骨折が判明したのだ。
    涙ながらに、監督に報告し、
    当日はサポートに回った。
    そして、卒業。

    就職して3年目の正月。
    箱根駅伝で、自分と同じように、
    疲労骨折で出場できなかった選手が
    いる事をニュースで知ったのだ。

    尾関は、常々思っていた。
    選手を育てるには、
    良いトレーナーが必要だと。
    ところが、今の状況は、
    選手育成の環境が整っていない。
    その思いが、押え込めない程、
    大きくなった。
    “誰かがやらなくちゃ。誰かが。
     でも誰かって、誰だ?“
    翌日、上司に相談した。
    そして、年度末の仕事を
    全てこなし、引き継ぐことで
    退職を了解して貰った。

    志高く、無事に大学院に入学、卒業
    したものの、その後、職を得るのは
    想像以上の厳しさだった。
    自分の研究成果を実践するには、
    できれば教育現場で働きたかったが、
    公立校の部活のコーチは、
    ほぼ、卒業生のボランティアだ。
    かろうじて、スポーツジムの
    トレーナーとして採用されたが、
    時給制で生活はカツカツ。
    大学院時代にしていた、
    予備校の講師の時給の方が、
    正直、高かった。
    そんな時、私立高の、スポーツ系
    部活のコーチ募集情報が入った。
    週3日の非常勤で、陸上以外の部活の
    基礎トレーニングも担当する。
    文武両道をモットーとする学園の
    周年事業の一環だった。
    尾関は、迷わず応募し、採用された。
    そして、出会ったのだ。
    速川唯に。

      ・・・・・・・・・・

    「そう言えば、速川ん家って、
     医者だったな。」

    尾関は、勢いよく立ち上がると、
    ロッカーに向かった。

    1時間後、尾関は速川医院の
    待合室にいた。

       「尾関さん、どうぞ~。」

    診察室に入ると、
    尾関は丸椅子に腰かけた。

    「今日は、どうされました?」

     「あ、古傷の状態を
      確かめておきたくて。」

    「古傷?どんな?」

     「中足骨の疲労骨折です。」

    答えながら、尾関は思った。

      “この声、どこかで
      聞いたような・・。”

    「何か、気になる症状が?」

     「いや。ただ、確認したくて。
      指導者が故障してtたら、
      仕事になりませんから。」

    「指導者?」

     「ええ、私、コーチなんです。
      この街の私立高校の陸上部の。」

    電子カルテに問診内容を
    打ち込んでいた手を止め、
    美香子が振り返った。

    「コーチ!
     これは、失礼しました。
     娘がお世話になりまして。」

     「あ、いや。
      突然、すみません。
      そのお嬢さんの事
      なんですが、日を改めて、
      お時間頂けません
      でしょうか?
      実は、ご相談したいことが
      有りまして。」

    「何でしょう?」

     「あ、今、
      ここではちょっと。」

    「そうですね。
     では、診察を。
     痛みはありますか?」

    答えながら、
    尾関は美香子から、
    目が離せない。
    蝉の声が、診察室にも
    響いていた。

    それから数日の後。
    隣町のレストランの
    窓際の席で、尾関は美香子と
    向き合っていた。

    「まさか、唯のコーチが
     尾関君だったなんてねえ。」

     「偶然というより、
      奇跡ですよね。
      僕は、いまでも、
      美香子先生は、
      あの病院にいると
      思ってましたから。」

    「そうね。
     まあ、色々とね。」

    そこへ、フォアグラのソテーが
    運ばれて来た。
    美香子が驚いて、目を丸くする。

    「大丈夫なの?
     こんな高級品!」

     「心配ないですよ。
      約束ですから。
      あのまま、会社に残ってたら、
      三ツ星のフレンチにご招待
      できたんですが。」

    「約束?」

     「したじゃないですか。
      僕が苦手なレバーを克服したら、
      二人でフォアグラ
      食べようねって。」

    「そうだったかなあ。
     そう言えば、あの猫、どうした?
     確か、尾関君が
     引き取ったのよね。」

    「母が飼ってくれました。
     僕が世話したかったんですけど、
     大学では寮だったので無理で。」

    「そうなんだ。」

     「母が甘やかして、
      こんなデブネコに
      なったんですよ。」

    尾関はスマホの写真を
    美香子に見せる。

    「あら。ホント。
     何だか、唯が弟にプレゼントした
     Tシャツのイラストにそっくり。
     で、相談て、何?」

     「実は・・・。」

    尾関の話を聞いて、
    美香子は、驚いた。
    自分の娘の才能を、
    見込んでくれる人が目の前にいる。
    その事自体が信じられなかった。

    「唯が、尾関君の期待に応えられるか
     どうかは分からないけれど、
     戻ってきたら、
     話してみるから。」

     「確かに、本人次第です。
      よろしくお願いします。」

    デザートの、ホイップした
    クリームチーズの最後の一匙を
    口に含むと、美香子は、
    優しく微笑みながら言った。

    尾関は、ホッとして微笑み返す。
    会計を済ませた所で、
    尾関に美香子が封筒を差し出す。

    「これ、私の分。」

     「え?いいですよ。
      ここは僕が。」

    「約束は、一緒に食べるって事
     だったんでしょう?
     フォアグラを。
     ご馳走になるとは
     言わなかったはずよ。」

    美香子は、自宅の最寄り駅で
    タクシーに乗った。
    車が城址公園の前を通りかかる。
    ふいに美香子はタクシーを止めると、
    運転手に少し待っていてくれる様に
    頼んだ。

    見上げた月はまだ、少し欠けている。

    「唯。今、どうしてるの?」

    美香子は、数百年の時を隔てた
    この場にいるかもしれない娘に
    話しかける。

    「ちゃんと、食べてる?
     ぐっすり眠れてる?
     全く、親に黙って、
     何やってんのよ!」

    美香子は思わず涙ぐみそうになる。
    心配で、心配でたまらなかった。

    でも、自分が落ち込んでいたら、
    尊を責める事になるかもしれない。
    引きこもりの尊が、家さえ
    居心地が悪くなったら、
    どこかに行ってしまうかも。
    尊までいなくなったら、
    悔やんでも悔やみ来れない。

    美香子の悩みは尽きない。

    正直な所、
    帰ってきてからの唯の事も、
    美香子は心配だった。

    「でも、唯の事を
     考えてくれている
     尾関君もいるんだから、
     きっと、大丈夫ね。」

    美香子は、気持ちを引き上げる様に、
    自分の頬を両手で叩く。
    そして、その手で、城址の石垣を
    そっと撫でると、
    タクシーに戻った。

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    返信
    お邪魔します~

    夕月かかりて様
    クライマックスの所、
    割り込みましてすみません。
    これから投稿させて頂きますね~。

    てんころりん様
    いつも感想有難うございます。
    陸上部コーチのお名前の件も、
    ありがとうございます。
    役名なしとのことでしたので、
    芸名を使わせて頂きました。

    投稿フォームへ

    返信
    二人の平成Days58~22日23時、多数決です

    逆に恥じらいがないのも困りものですが。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    戻ると、リビングに布団が五つ敷いてある。

    美香子「おかえり~」

    若君「母上、遅くなりました」

    唯「お父さん、はいお盆。ありがとね」

    覚「はいよ~」

    美「尊は?」

    唯「追加で作業頼んじゃった。もうすぐ来るよ」

    美「あーそう。お風呂入って欲しいんだけど。もう遅いし」

    唯「そっか、ごめん遅くなって」

    美「尊がまだなら唯でも若君でも、どっちが先でもいいけど。それか、一緒に入ってもらってもいいわよ~?」

    唯「えぇ?」

    美「どういう風でも。ねっ、お父さん」

    覚「まぁ、お前達の好きなようにでいいぞ」

    唯「…はいっ、私、先に入る!」

    美「なんで?」

    その瞬間、若君が、逃げようとする唯の腕を掴んだ。

    美「あ、捕獲した」

    唯「えーっ!」

    若「…」

    唯「ものすっごく、目が訴えてる!えー、うーん。じゃあ一緒に入る?」

    美「じゃあって何。初めてじゃないでしょう」

    唯「初めてみたいなもんだよ~」

    覚「行ってこい、若君が満面の笑みだ」

    唯「うへぇ」

    美「嫌なの?」

    唯「いや、ビビリなだけっす。じゃあたーくん、着替え取りに行こっか」

    若「父上母上、ありがとうございます」

    唯「私には?」

    若「ん?ハハハ」

    二人が階段を上がっていると、尊が実験室から出てきた。

    美「え、思ったより早い」

    覚「ややこしくなるから、止めるか」

    リビングから、二人で尊に向かって、身振り手振りで大きな✕を出した。

    尊「なになに?来るなって?」

    実験室に戻る尊。ほどなく、唯達が着替えを手に、浴室へ向かった。美香子が尊を呼びに行く。

    美「ごめんね尊」

    リビング。

    尊「何が起こったかと」

    美「ごめんごめん。お風呂にね、二人で入ってもらおうとしてて、唯が尊の顔見ちゃったら、男子二人で!って言いそうだったから」

    尊「また、けしかけたの?変な親」

    美「軽ーく、話振っちゃった」

    覚「振ったからには、ダメとは言えないしな」

    美「あら、ダメだった?」

    覚「いや、もう、どうもこうも言わない」

    美「寛大でよろしい。ウチのお風呂広めだから、二人でも全然余裕だし」

    覚「お前、そんな理由は後付けだろ」

    美「どうかしらね~」

    尊「え、でもお姉ちゃん良かったのかな。旅行の時は、完全に体隠して露天風呂だったらしいよ」

    美「えぇ?そんなややこしい事を。だから、初めてみたいなものって言ったのね。一瞬、嫌そ~な顔したし。結婚した、って自分で言ってるのにね」

    覚「なんかトゲがある言い方だな」

    美「事実、届を出すなんて話じゃないでしょ」

    尊「そんな超現実的な話する?」

    美「しないわよ、ファンタジーだから」

    尊「ファンタジー。確かに」

    覚「まあ、ファンタジーだな。ははは」

    美「ふふふ。まっ、いずれにせよ、今更お風呂になにを反対してるんだかって話よ」

    尊「僕は賛成」

    美「私も賛成」

    覚「僕も賛成だ」

    美「じゃあ、少なくとも8割が賛成なんで」

    尊「まあ、もう入ってるんだから全会一致だけど。ってかなんで多数決?」

    美「尊が言い出したからでしょ」

    お風呂の中は、二人の秘密なので解説はいたしません。お風呂あがりへ飛びます。

    唯「はぁ~。あっつーい」

    美「入る前も真っ赤だったけど、出ても真っ赤じゃない」

    唯「のぼせたー、いろんな意味で。ちょっと涼んでくる」

    外へ出て、ウッドデッキに腰掛けた。

    唯「わあー、今日が満月かと思うくらい、まんまる」

    空高く輝いている。

    唯「いよいよ明日かぁ」

    サッシが開く。

    若「唯、そのままでは風邪を引く」

    若君が、手に毛布を持って出てきた。

    唯「あー。たーくん、ちゃんと髪乾かした?もー、自分がまだびしょびしょなのに、私が先って聞かないんだから」

    若「唯に風を与えた事がなかったからの」

    唯「イケメン美容師だったよ。あ、美容師は髪切る人ね」

    若「そうか」

    隣に座り、毛布を広げ、二人一緒にくるまった。

    唯「私、涼もうと思って外に出たんだけど」

    若「すぐに冷えてしまうぞ」

    唯「また、ほてっちゃうよぉ」

    若「尊が風呂を出たら、中に入る。それまでは、しばし月見じゃ」

    唯「え?もう尊そこに居るよ」

    振り向くと、リビングに風呂上がりの尊。

    若「早いの」

    唯「ホントにー」

    尊、外からの視線に気づく。

    尊 心の声(うわっ、なに?!二人とも、なんでそんなに睨んでくる?)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ようやく、五人勢揃いかな。

    投稿フォームへ

    返信
    遅くなりました

    昨夜は投稿できず、一日おきのペースが崩れてしまい、失礼いたしました。もう遅れる事はないと思いますが、2日後以降になりそうな時は、一度ご連絡いたします。

    てんころりんさんへ

    優しく励ましてくださいまして、心より感謝いたします。

    ひろげ過ぎた大風呂敷、平成Days終了時にちゃんと畳めてるかは、皆さんのご判断におまかせです。ただ、二人には心晴れやかに気持ち良く旅立ってもらいたい、と切に願い、私自身納得がゆくまで、推敲は随時やっております。

    制作秘話なんて大それたものは、持ち合わせておりません(((^^;)。各話ごとに、この回はこれを伝えたかった!とか、このセリフが肝!とかはありますが。でもそれを始めると、またものすごい文章量に…投稿番号遡って読み直す皆様が続出で大変では。
    書く事自体は全く苦ではありませんので、それでよろしければ回を追って振り返らせていただきます。

    投稿フォームへ

    返信
    夕月かかりてさん

    お疲れ様です。読ませて頂いてます。
    出し続けるのは楽しいけれど本当に大変な事ですね。
    私は創作は無理ですが, “アシガール卒論” にしたいテーマがあり、アシガール掲示板に書いています。
    個々に別の投稿に見えると思いますが、テーマがあって結構力を入れており、出し続ける大変さは分かります。
    提出後も 卒業はしないと思いますけどね?。

    夕月さんは既に物語を書き上げている.とおっしゃってましたね。
    とは言え.たぶん手を入れて最終稿を出されてるかと。
    半端ない量です、その熱意と日々の努力に敬服します。
    平成の日付だと後1日、どう完結するのか楽しみです。

    この板では今、夕月さんだけでなく、ぷくぷくさんも 妖怪千年おばばさんも、続き物の形式をとって書かれています。
    そのため読者が感想を書き難い状況はあると思います。
    夕月さんの今回のシリーズはペースが速かったので、お一人の時がありますが???どうか気になさらず偉業達成まで頑張って下さいね。

    そして完成後は制作秘話など聞かせて頂けたら嬉しいです?。

    投稿フォームへ

    返信
    二人の平成Days57~22日22時15分、普通ってなに

    それぞれが個性的な音を奏でる、三重奏のようです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    上映会、終了。

    尊「じゃあ、また明日フル充電しとくよ」

    唯「よろしくー。さていよいよ写真集を」

    表紙をめくる。

    唯「いきなりこれからスタート?ほぼ最後じゃん」

    洋装姿でチャペル前のキスシーン。

    尊「せっかくだから、一番喜びそうなのをトップに」

    唯「えへへ~、ありがと」

    尊「あの頃は、許可制だったよね。それが今ではそこらじゅうでイチャイチャして」

    唯「悪い?」

    尊「限度はある」

    唯「え?嫉妬?」

    尊「なんでやねん」

    唯「なんで関西弁やねん」

    尊「お姉ちゃん達見てると、普通の恋愛ができそうにない」

    唯「なんで?」

    尊「ドラマチックじゃないと恋に落ちないかもしれない、どうしてくれる?」

    唯「いちゃもんつけてる!」

    若君「尊。普通、とは何じゃ?」

    尊「え?」

    若「わしはこれが普通じゃ。どう違うのかがわからぬが」

    尊「そう言われればそうかも」

    若「尊は、尊なりの頃合いで、愛しい姫に巡り逢うであろう。一瞬で落ちるかもしれぬ、いつの間にか心を占拠されておるやもしれぬ。始まっておらぬのに、憂う事はない」

    尊「そっか。はい、わかりました」

    唯「たーくんの言う事はすぐ聞くじゃん」

    尊「若君は、恋愛の師匠だから。心がさらわれた、なんて超カッコ良かった」

    唯「あ、それならもう返した」

    尊「は?返した?」

    唯「それは、二人は一つだからぁ」

    尊「さっきから同じ服着てくっついてるから、一つの物体に見えなくはないけど」

    唯「物体なんて、つまんない言い方~」

    若「通じあったのじゃ。心も体も一つにの」

    尊「へぇ、もう心なんてどっちが持ってる持ってないって話じゃないと。なるほど…」

    若「…尊?何か探しておるのか?」

    尊「恋愛の名言が出たら、書かなきゃと思ってメモを」

    若「ハハハ、自ずから出てくる言葉じゃないと、胸に響かぬぞ」

    尊「わっ!本物だ!」

    唯「ほらね、一心同体ですからぁ」

    尊「この姉、侮れない」

    唯「なにその早口言葉。さてはバカにしてたな?」

    若「あー、もう良い良い、全く写真を見ておらぬではないか」

    唯「ごめーん。この辺りは和装だね。たーくん素敵!新郎とか若君というよりすでに殿の風格だけど」

    若「いつまでも、若君、ではないからの」

    唯「え!そんな一気に老けちゃうの?!」

    尊「違うな」

    若「呼び名など変わりゆく」

    唯「そりゃそうだよね」

    若「唯には、全て見届けて貰う」

    唯「え、おじいちゃんおばあちゃんになるまで?」

    若「ハハッ、そうじゃ。良いな」

    唯「はい…」

    尊「キュン、だ」

    唯「キュンだよぉ。さぁ次は洋装。王子様だぁ」

    若「シンデレラの唯も、実に麗しい」

    尊「おっちょこちょいでとんちんかんだけどね」

    唯「とんちんかんなのは二人ともだけどね」

    尊「あ、やっぱそうなんだ」

    唯「そっ」

    若「?」

    見終わりました。

    唯「ねぇ、これって、ページ増やせる?」

    尊「できるよ。リクエストがあれば入れるよ」

    唯「んとね、私のスマホに入ってる写真、入れらんないかな」

    尊「あー、いいよ。え、見るのもはばかられるような、きわどいのとかはこっちが困るけど」

    唯「ないない、ラブラブなだけ。えっとリュックの中に…はいスマホ、お願いしまーす」

    尊「よし、これで、と。どれにする?」

    唯「えっとね~、これと…」

    尊「え、顔が妙な事になってるけどいいの?」

    唯「いいの、これはね~」

    若君 心の声(こんなに仲睦まじい姉弟を、離ればなれにさせるのは辛いのう…)

    尊「あとはプリントするだけだから、先に戻ってて」

    唯「わかったーよろしく。じゃ、たーくん行こっか」

    若「尊、済まぬの。両親も待ちわびておるじゃろうから、先に参る」

    尊「どーぞー」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜も大分更けましたが、ようやく家族の時間です。いや、どうかな。

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    返信
    二人の平成Days56~22日21時30分、優しいハーモニー

    親の気持ちを、ちゃんと受け止めているからこそ、です。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    イルミネーションの映像が流れ始めた。

    唯「綺麗だったよね~」

    若君「そうじゃな」

    唯「もっと、色んな所でデートしたかったなー」

    若「また、遠乗りに参ろう」

    唯「うん。あ、今度はちゃんと乗せてくれる?」

    若「ハハ、乗せる」

    尊「え?乗せなかったってどういう事?」

    唯「疾風の後を走ってくんだよ」

    尊「え、罰ゲーム?ロマンスのかけらもないけど」

    若「唯はその時分、配下の者であったゆえ、そうなったが」

    唯「いや、そうじゃなくても走らされた気がする。だって、もっと早く走れ~って笑ってたもん!」

    若「そうだったかのぅ」

    唯「もー」

    尊「そもそも、もう走っちゃダメなんじゃないの?ジェンガに名前入れるんでしょう?」

    若「おぉ、その通りじゃ。さすが師匠殿」

    唯「お気づかい、痛み入りますぅ」

    海と朝日のタイムラプス。

    唯「すごい技だね。テレビでちょっと見た事はあったけど」

    若「絶景じゃ」

    尊「この映像の辺りで、大騒ぎが聞こえたね」

    唯「もぉーさぁー、脱がそうとするわ見えちゃうわで、大変だったんだから」

    尊「脱がす?風呂に服着て入ってたの?」

    若「完全武装じゃった。残念じゃ」

    唯「なにそれ」

    尊「ははは。お父さんに言っとくね」

    唯「お父さん?なんで」

    覚「一緒にお風呂、って聞いただけで倒れそうだったから」

    若「風呂は父上とも入ったが」

    唯「お父さんとお風呂なんて、もう十何年も入ってないよ?」

    尊「んー、そういうのとは、ちょっと違うんじゃないかなー」

    尊 心の声(僕が煙に巻かれてるのか、二人してとんちんかんなのか、どっちだ?)

    家族写真、スタートです。

    唯「なんか声聞こえるよ?!なになに?」

    尊「両親のコメント入り」

    唯「うっそぉ!いつの間にー」

    若「服を買うた日の夜だそうじゃ」

    唯「あ゛」

    尊「なにその渋い顔」

    唯「あの日は…結局たーくんは全っ然元気で」

    若「ん?確か…唯がどんな花を咲かせるのか、問うた覚えはあるが」

    尊「暗号?」

    唯「もー全然休んでなかった」

    尊「さっきから、そんな話ばっかりだな。ていうか、ちょっと待てぇー!」

    唯「なに」

    若「どうした尊」

    尊「ちゃんとこれ観てる?」

    唯「観てるよ。懐かしいな、たーくんカッコいいなって」

    尊「コメント、聞いてる?」

    唯「それが、聞けないんだよぉ」

    尊「どうして?」

    唯「さっきから、ちらほら会話が聞こえるんだけど、もう泣きそうで」

    尊「やっぱり?」

    唯「やっぱり…ってなに」

    尊「録音中、聞いてた僕も胸がジーンとして何度も泣きそうになって、で、鼻すするのとかマイクが拾ったらマズいと思って」

    若「どう切り抜けたのじゃ」

    尊「タイムマシンの燃料作る時の、防護マスクかぶってた」

    唯「そんな、尊が聞いてて泣けるなら、私なんて絶対まともに聞けないよぉ」

    若「ならば、音を消して観ようではないか」

    尊「若君…」

    若「わしも、心穏やかには聞けそうにない」

    唯「たーくんも?」

    若「然り」

    尊「わかりました。では消音、と」

    若「唯、永禄に戻ってから、共に聞こう」

    唯「うん、そうする。ねぇ、観終わったらこっちの写真集見ようよ」

    若「そうじゃな。わしもまだ見ておらぬゆえ」

    尊「あっ、映像の最後に両親の顔出しコメントがあるから」

    唯「えーダメダメ、号泣しちゃう」

    尊「その前で止めるね」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    両親のコメントは、きっと私も泣いてしまうから、描きません。

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    二人の平成Days55~22日21時15分、お電話お待ちしています

    現代語の習得は、メディアの力も大きかったかも。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    晩ごはん後。

    唯「明日は、蓮根のはさみ揚げもある?」

    覚「あるぞ」

    唯「中がつみれ、って事はない?」

    覚「それがいいのか?」

    唯「いや、勘弁してー。お肉でお願いします」

    尊「ケーキも食べるし、脂だらけだね」

    唯「カロリーオーバー?」

    尊「それ、若君に説明がいるからあえて黙ってたのに」

    唯「あ、ごめん。たーくん、ひっくるめて、楽しく食べようって事で」

    若君「そうか」

    尊「まあ、そうだね」

    覚「お待たせ。はい、コーヒー持ってけ」

    唯「あーありがとう~」

    手にしたお盆に、マグカップ三つとミルクと砂糖。

    尊「じゃあ、行きますか」

    若「尊、よろしく頼む」

    唯「行ってきまーす」

    覚&美香子「ごゆっくりー」

    三人、実験室。目の前に機械。

    若「父上母上は?」

    尊「一緒には、恥ずかしいんだって。もう完成品は見せてあるんで」

    若「そうであったか」

    尊「それではお待たせしました。ジャジャーン!」

    唯「へー、画面付いてる。カーナビみたいだね」

    尊「あ、似てるかも。ってなんで知ってるの」

    唯「テレビショッピングでやってる」

    尊「そっか」

    唯「で、名前は?」

    尊「え?名前?あっ、付け忘れた」

    唯「珍しい」

    尊「昨日できたばっかりで」

    若「尊は忙しかったからの」

    唯「で、カーナビなの?」

    尊「違うけど。もしそうだったらいつ使うの」

    唯「そりゃそうだ」

    尊「ん?カーナビ…あっ、これで行くか」

    唯「へ?」

    若「何かひらめいたようじゃの」

    尊「皆様、本日ご紹介するこの商品」

    唯「あっなんか始まった」

    尊「まるでカーナビのようですが、ナビをするのは、道ではございません」

    唯「はあ」

    尊「ナビするのは、思い出でございます」

    唯「まー、素敵!」

    ノってきた。

    尊「その名も、おもナビくん」

    唯「ほー。って今付けてるし」

    尊「こちらのボタンで、操作します。今回、付属品として、こちらの太陽電池」

    唯「ほ?」

    尊「広げて、昼間日光に当て充電します。夜には本体に接続し、映像をお楽しみください」

    唯「すごーい」

    尊「そして、もう一品、特別ご奉仕にて、イヤホンをお付けします」

    唯「え、イヤホン?!やーん、超嬉しい~!」

    若「…何ゆえそこまで喜ぶ?」

    尊「そして、なんとなんと!今から30分以内のお電話で、こちらのミニ写真集もお付けします!」

    手には、一部プリントアウトした写真の束。

    唯「えー!欲しい欲しい!って、そのままくれるんじゃないんかい!あははは~ウケる~!」

    尊「こちら商売ですから~、ははははー!」

    唯と尊、お互いを指差しながら、ひとしきり大笑い。

    唯「あー、はぁ。涙でてきたよ~。…あ」

    尊「あ」

    若君が、静かに笑顔。

    唯「ごめーん、たーくん、訳分かんないよね。置いてけぼりにしちゃった」

    尊「ごめんなさい若君、勝手に盛り上がって」

    若「それは…」

    唯「わー、マジごめん」

    若「フリーダイアルに、電話すれば良いのじゃな?」

    尊「え」

    唯「え!なんでわかるの」

    若「テレビでよく観た」

    唯「あーそっか、平日の昼間なんて、そんなんばっかだよね。だからかー」

    若「尊、あっぱれであった」

    尊「へへ、褒められちゃった」

    若「名も、無事付いた事だし」

    唯「うん、めでたしめでたし。って、まだ観てなーい!」

    若「ハハハ」

    尊「では、上映会、始めます」

    唯&若「お願いします」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君、そういえば日中はテレビっ子だったわ。

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    二人の平成Days54~22日19時30分、感謝を形に

    まずは、結菜さん、おめでとうございます!
    ┅┅
    ほとんど、ひらがなで書いてない?
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯の部屋。

    唯「では、デレデレメロメロのたーくんが攻めて来る前に」

    若君「ハハハ。攻めなどせぬ。期が熟すのを待つ」

    唯「え~?優しーい。やらなきゃならない事があるからね~」

    白紙のメッセージカードと、靴下の形の巾着袋が三つずつ出てきた。

    唯「靴下なんだよ、かわいいでしょ~」

    若「何ゆえ、この形なのじゃ?」

    唯「クリスマスのプレゼントは、靴下に入れるのである」

    若「答えになっておらぬが。ん、まあ良い、そういう物だと覚えれば良いのじゃな?」

    唯「うん、もう、そう納得して。尊には聞かないでね、あいつ勘がいいからバレちゃう」

    若「あいわかった」

    唯「…ん?言葉、戻してきてる?」

    若「少しは」

    唯「現代語、忘れちゃう?」

    若「それはない。朝、おはよう、とか行ってらっしゃい、とか言うてしまいそうじゃ」

    唯「ふふっ。夜、おやすみは言ってね」

    若「閨が同じなら、寝かさぬが」

    唯「はぁ?」

    若「あっ、す、済まぬ」

    唯「で、作業なんだけどね、この紙にね」

    若「え…いっそ詰られた方が気が楽じゃが」

    唯「はいはい。じゃ、お父さんお母さん尊あてのプレゼントに、それぞれ文を付けるよ。まずは尊に、はい、しゃべって」

    若「しゃべる?」

    唯「感謝の言葉とか、伝えときたい事とか話して。私がたーくんからの文として代わりに書くから。プレゼントと一緒に渡します」

    若「なるほど。それは良きはからいじゃ。ならば…師匠、大変世話になり申した」

    唯「ははは。…申した、はい」

    若「次は、師匠も永禄に来られる、起動装置刀を所望」

    唯「ふふっ、これ見てまた悶絶しそう。じゃあ次はお母さんに」

    若「母の愛とは、心の底から充たされる物だと知る事ができました。優しく抱き締められた事は生涯忘れませぬ」

    唯「え?!初耳なんだけど」

    若「筆が止まっておるぞ」

    唯「あ、あー。気になる~!」

    若「後ろより、そっとであったが」

    唯「そうなんだ。えー色々聞きたいけど、まずは書く。では最後、お父さん」

    若「父上、尊敬しております。料理の指南ありがとうございました」

    唯「…ございました」

    若「父上の様な、優しき父になれるよう励みます」

    唯「えっ、父!父…」

    若「また止まっておる」

    唯「ごめん、ちょっとウルウルしちゃった。…励みます。あ、追伸、品はわしが選びました、と」

    若「唯は書かぬのか?」

    唯「私は、ゆうべもう書いた。じゃ、それぞれ袋に入れて」

    プレゼント袋三つ完成。

    唯「じゃあ、これは、今日ここで寝ないからベッドに隠しとこっかな」

    若「この後使うが」

    唯「あ、そうだった。って、おいおいっ!」

    若「ハハハ。唯」

    唯「はい」

    若「その、服の」

    唯「ワンピースの?」

    若「中がどうなっておるのか、ずっと気になっており」

    唯「えっ?!ずっと?!もしかして朝から?」

    若「朝から」

    唯「やだ、一日そんな事考えてたの」

    若「エロ侍じゃからの」

    唯「ははは。名前気に入ってる?えー、涼しい顔してコーチとしゃべってたよね」

    若「その折は、別の理由でちと危なかったがの」

    唯「そうなの?全然そんな風に見えなかったよ」

    若「コーチ殿が、子が既に居るように仰せられるので、嬉しゅうて顔が緩みそうじゃった」

    唯「そっかあ。ふふっ、まだわかんないけどね。あー、自分で言ってて照れちゃう~」

    若「待ち遠しゅうてならぬ」

    唯「そうだね。一緒に待ってようね」

    若君は、唯を抱き上げ、ベッドに寝かせた。

    若「唯…」

    頬を撫で、顔を近づける。

    唯「たーくん…」

    若「おぉ、そうじゃ」

    唯「へ?」

    若「腹は、今宵も黙っておらぬかのう」

    唯「あー、それなら大丈夫。さっき、お饅頭つまんどいたから」

    若「ほぅ?いつの間に。ハハッ、相当腹が減っておったとみえる」

    唯「えぇまぁ、それは、そのような…」

    若「ん?いかがした?」

    唯「え?ううん、なんにも…」

    若「…もしや?まさかと思うが、この時を待ちわび…」

    唯「わー!聞こえない聞こえないっ」

    若「…そうか」

    唯「そうか?ってなに」

    若「いよいよ、花が咲くのじゃな」

    唯「え?花?えー、わかりません」

    若「ならば」

    唯「聞いてないし」

    若「しかと、見届ける」

    唯「し、しかと、って…」

    若「じっくりと」

    唯「じっくり?じっくりってなにー!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    時間いっぱいまで、ご自由に。

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    二人のもしもDays2、うれしいひなまつり篇

    今日は、「もしも」の方をお送りします。
    1とこのシリーズの説明は、no.510にあります。本来、二人が現代には居ない時季のお話となっております。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    2月中旬、水曜の夕方。速川家リビング。

    尊「ただいまー。わっ!何!」

    リビング入ってすぐのスペースに、背丈程もある何かを組み立て中で、入口が塞がっている。

    覚「おー、おかえり尊。ちょっとこの端押さえててくれ」

    尊「は?はぁ、わかった」

    若君が、逆側を押さえている。

    尊「若君も、手伝わされてるんですね」

    若君「母上の大切な品と聞いての。是非にと」

    覚「よし、傾いてないからいいな。留めてくか」

    階段状の骨組完成。

    尊「ところで何?これ。あっ、あ~」

    奥で美香子と唯が、大きな箱から、和紙にくるまれた色々な形大きさの物を、取り出し並べている。

    尊「雛人形?」

    美香子「おかえり尊。当たりよ」

    尊「え?だって奥にもうあるじゃん」

    リビング奥の棚の前に、男雛女雛二体のみの親王飾りが、綺麗に飾ってある。

    美「あれは、唯の。これは、私のよ」

    尊「へ?一人に一つなの?」

    美「そりゃそうよ~」

    尊「お母さんの、あったんだね。初めて見る気がするけど」

    美「ホントは良くないんだけどね、ずっと仕舞ってて。でも今年は、若君も居るから見せてあげようかなって」

    若「先程、あちらの雛飾りは唯の物と聞き、では母上のは?と尋ねたのじゃ」

    唯「で、出すなら一気にってね。でもわかるよー、出したくなかったの。すっごいアイテムが多くて細かーい!」

    尊「で、あれがもしや七段飾りとか言うヤツ?」

    さっきの骨組は、毛氈が敷かれて雛壇らしく変身。

    尊「着替えたら手伝うよ」

    豪華七段飾り、完成。リビング入口側のスペース中央に、庭を向いてどーんと鎮座。

    唯「場所ってここでいいの?もっと隅っこじゃなくて」

    美「雛飾りは、東向きか南向きと決まってるのよ。この部屋、北も西も壁がないから。そんなに邪魔じゃないでしょ」

    唯「うん。ドアにぶつかるよりいっか。久しぶりに箱の外に出られたから、お日さまの方に向けてあげたいしー」

    若「母上の雛飾りもこれまた美しい。お付きの者も多く、豪華じゃ」

    唯「私のが貧弱に見える?」

    若「双方立派じゃ」

    美「あい変わらず、優しいわね~」

    晩ごはん後。

    若「尊、後で実験室に行っても良いか?9時過ぎになるが」

    尊「あ、いいですよ」

    9時過ぎの実験室。

    若「尊に、折り入って頼みたき儀がある」

    尊「わー、儀。久しぶりに聞きました。若君、何でござろうか」

    若「雛飾りを見て、思い付いたのじゃが」

    尊「へー?なんだろ」

    若「わしと唯は、永禄で祝言をあげた」

    尊「はい。お姉ちゃん、今でもその話が出ると嬉しそうです」

    若「互いの姿は目に焼きついておるが、この先の世にある、写真、はない」

    尊「こんな感じだよ、がわかりづらいと」

    若「何とか、形に出来ぬか?よく、検索、と言いながら調べておる中に、そのものがあれば、尊にも伝わるかと思うての。できれば、雛のように飾れる形で」

    尊「平面じゃなくて、立体って事ですね。…割と簡単にできると思います。だって、若君のは前に着てたアレですよね?」

    若「色は瑠璃紺じゃ。あと烏帽子」

    尊「お姉ちゃんの装束と髪型がわかれば、楽勝ですよ」

    若「尊には雑作ばかりかけるが。今日は、何か作業があったのではあるまいか?」

    尊「いえ、ないです。若君と待ち合わせだ~って、ときめきながら待ってました」

    若「かわいい弟じゃ」

    二人、パソコンで検索したり、細かい部分は紙に描いたりで、作業は翌日も続いた。

    尊「さすがに、顔は表現できないんで、まっさらでいいですか?」

    若「構わぬ。笑顔にしか見えぬゆえ」

    尊「カッコいい~」

    深夜、3Dプリンターが動き出した。

    若「ここまで苦労かけたのう」

    尊「ようやく雛二体できたんで、明日、雛壇とか作りましょう」

    そのまた翌日、金曜の夜。

    尊「できたー」

    若「尊、大儀であった」

    若君が、尊をギュッと抱き締めた。

    尊「えー!」

    若「喜びや感謝を伝えるには、このようにするのではないのか?」

    尊「えっ、その」

    若「違うと申すか?唯がよく、こうするが」

    尊「い、いえ、間違ってはないです」

    若「合ってはおるのじゃな」

    尊「はい、充分、充分わかりましたから」

    ようやく体が離れた。

    尊 心の声(はぁ。若君ってホント素直だなー。でもかなり、罪作りだよ)

    若「して、これはいつ皆に披露する?」

    尊「明日の朝で、どうですか」

    翌朝。朝ごはん前。

    尊「発表します、ジャジャーン!」

    唯&覚&美「おーっ」

    屏風の前に、雛二体。右の若君男雛は瑠璃紺、左の唯女雛は純白で、烏帽子や扇子や刀も表現されている。

    唯「あー、ちゃんと髪型が、戦国姫結びになってる!」

    前髪と横を4か所、つまんで結んである。

    美「お顔はつるんとしてるけど、もう、笑顔にしか見えないわ~」

    唯「言えるー」

    若「そうであろうの」

    覚「これが、祝言の時のか」

    唯「うん、すごく再現してあるよー。尊、たーくん、遅くまでありがとう!」

    尊「作ってて楽しかったよね?若君」

    若「あぁ。喜ばれ嬉しい限りじゃ」

    美「どこに置こうかしら?」

    覚「そんなに大きくないから、唯の雛飾りの置いてある台に、一緒に並べるか」

    雛飾り、二つ並びました。

    覚「雛壇が三つもあって、まさしく、雛のお祭だな」

    美「ふふっ、うまくまとまった?じゃあそろそろ」

    全員「いただきまーす!」

    食後、唯は出来上がった雛飾りの前にぺたんと座り、ずっと見入っていた。若君は、ソファーに座りその様子を見守っている。

    唯「なんか…色々思い出しちゃう」

    若「そうじゃな」

    唯「楽しい思い出ばかりじゃないのが、ちょっと切ないけどね」

    若「…今が平穏ならば、それで良い」

    唯「そうだね」

    その時、二人同時に何か思い付いた。

    若「そうじゃ」

    唯「あっ」

    顔を見合わす。

    若「なんじゃ?唯、申してみよ」

    唯「ううん、たーくんの方が早かったから、先に言って」

    若「そうか」

    キッチンで覚が作業しているのが気になる模様で、様子を覗く若君。

    若「父上には、聞かれないようにしたいが」

    唯「わかったぁ」

    座る若君に近付き、耳を寄せて聞く。

    唯「…えっ!やだ~!たーくんったらもーもーもー!」

    聞いた途端、若君の肩や胸を、バシバシ叩き始めた。

    若「痛い、それは強い、唯」

    覚「おーい、唯?若君をいじめるなよ~」

    覚が、作業したまま声だけかけた。唯が、若君の隣に座り、叩いた所を撫でる。

    唯「ごめんね、痛かったね。たーくん…あのね、あのね私も、同じ事考えてたの!」

    若「そうであったか。やはり我らは通じあっておるのう」

    唯「超嬉しい~」

    肩にもたれる唯。若君も顔を寄せる。

    若「ならば、支度をせねばならぬの」

    唯「うん!あ~でも、色々動くとバレちゃうから」

    若「そのような折は」

    唯「困った時の尊頼み~。これも意見は一致だねっ」

    若「ハハハ。師匠には頭が上がらぬわ」

    その日の晩ごはん後。

    尊「はーい、ではイベントの準備しまーす」

    若「あいわかった」

    唯「はーい」

    美「え?何?」

    覚「何だ?」

    三人が動く。テーブルをソファーの近くまで移動し、できたての雛飾りを上に置いた。座布団を五枚運び、テーブル前に二枚、その向かい、母の雛飾りの手前に三枚並べた所へ、尊が両親を呼ぶ。

    尊「ここに座って、待ってて」

    覚&美「はい?」

    唯と若君が洗面所に入って行った。尊は二階からお盆を持って来た。

    美「甘酒?と」

    覚「盃?いつの間に」

    唯達が現れた。唯の髪は戦国姫結び、若君は髷にした後軽くピンでまとめてある。座布団に座る。

    尊「お待たせしました。それでは、これより小垣城での祝言の、再現を始めます」

    覚&美「えっ…」

    唯「お父さん、お母さん、もっと早く見せてあげれば良かったけど、遅くなってごめんね。服もこんなままでごめん。後ろのお雛様のカッコしてると思って、見てて」

    覚&美「…」

    尊の手で、盃に甘酒が注がれる。再現スタート。

    覚&美「…」

    粛々と進む。

    美「若君の所作、とっても流麗で素敵…直垂着てるようにしか見えないわ」

    覚「そうだな」

    最後、若君が飲み干す場面で、盃が上下するのに合わせて、首を動かしながらじっと見とれる唯。

    覚「あはは、実際こうだったんだろうな」

    美「きっとそうね」

    終了。二人、前を見て微笑む。

    尊「以上です。皆さん、お疲れ様でした」

    覚「…ありがとう、ありがとう、凄く、良かったよ」

    両親とも涙目。

    美「本当にありがとう。すごく嬉しいわ。これは、どっちの発案なの?」

    若「二人、時を同じくして、です」

    美「えっ、そうなの?一心同体ね」

    唯「うん!」

    若「尊、色々世話をかけ、済まなかった」

    尊「ううん。このミッション、すごく楽しかった。僕も見てみたかったし。若君、超カッコ良かったです」

    唯「私もかわいかったでしょ?」

    尊「超好き!って気持ちは、よくわかったよ」

    唯「ん、まぁ合ってるからよしとする」

    若「ハハハ」

    覚「甘酒、飲みたくなったな。温めて、生姜入れてやるか」

    唯「賛成~。じゃあ、テーブル元に戻そっ」

    美「まずお雛様戻して」

    唯「はーい」

    家族団欒と温かい甘酒に、心も体も暖まった夜でした。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    切ない思い出が、温かい思い出に変わりました。

    次回、通常の平成Daysに戻ります。

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    久々の来訪者に喜びました

    てんころりんさん、今回もご感想をいただきありがとうございました。

    しばらくこの板、私以外の投稿がなかったので、少しさみしい思いをしておりました。
    そりゃアンタが一日おきに頻繁に来とるからじゃろ、心をグワングワンと揺さぶり、感想を言わずにはおれない、なんて話作ってから言え、って話ではあります。精進します。

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    感想:2/1~2/28

    作家さん自ら、前の投稿の案内を時々書いて頂けたら理想的と思い、お願いしました。
    私はNo毎に感想書くのは止めて月1ペースに致します。

    夕月かかりてさん

    No.497『二人の平成Days41_フェイドアウト』~No.530『二人の平成Days53_新居に届きます』まで14話

    12/23永禄に帰るまで後3日ですね。
    唯が退学届を出した終業式の日、父娘の車中の会話にしんみり。
    永禄で平成Daysのスライドショーを見られるようにした尊、兄弟愛ですね。若君は目を輝かせ、読む方も色々思い出します。

    唯が赤いデート服に買ったアクセサリーは雪だるまの様な白いイヤリング。
    若君がお母さんが用意した中からラメ入りのタイツを選ぶ理由が詩人!
    綺麗で可愛い唯が見えました。
    12/22、2日早いクリスマスイブデートは飛行場へ行ったんですね!
    『二人のもしもDays』で海外へ行くとか? (*^^*)

    赤のペアルックで緑の芝生の上に寝転ぶ2人、ほのぼのします。
    唯は、こういう時間は 今度いつ手に入るかな‥と思うのであった(ノ_・、)
    若君がICカードmanacaをほしがったのは速川忠清の名前の記念 デザイン良いですね!

    プレゼントを買いにデパートに立ち寄り、陸上部のコーチに会った!
    その話しっぷり、コーチ役·尾関伸次さんの声が聞こえました。?
    若君が養子のふりする機転は流石!

    速川家で過ごす最後の夜ですね。
    写真館から2人の宛名で届いたDMの話、良かったです。

    ぷくぷくさん

    No.502『悪丸』

    名前の由来と、駆け比べに出るまでのお話、興味深かったです。
    友蔵と六助は、唯之助の場合の勘兵衛さんやお袋さまと同じで、悪丸の未来を拓き、大切な事を教えてくれた恩人ですね。
    画次郎さん登場!☺️
    駆け比べの後 梅谷村の入口で、唯「帰れ!」悪丸「家 遠い. 海の向こう」
    ここ.唯の表情… 悪丸同じ身の上だものね。

    妖怪千年おばばさん

    No.520『兎角この世は_その5 尊編』

    唯と若君が速川家で過ごした日々の物語。
    唯は陸上部コーチに小垣まで走った3日のコースを自主練の記録として提出!なるほど~
    コーチと木村先生が、唯に進学して大学駅伝を薦める辺り、凄い現実感!あるある.
    相変わらず私、若君のバイト関係のエピソードに付いて行けてません?‍♀️
    長澤店に反応する若君? 同級生マユ登場!☺️
    両親と唯が尊に “次世代家族対応型” 新起動スイッチを依頼しました!
    そうそう やはりそこ!??ですね。
    尊が若君の代役で撮影したプロジェクションマッピング映像に 唯が将来 “嫉妬”って気になるぅ。
    尊編のタイトルはこの辺からでしょうか?

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    二人の平成Days53~22日19時、新居に届きます

    尊、休む暇なし。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「ただいま~!」

    若君「ただいま帰りました」

    覚「おー、おかえり~。今お茶いれるから」

    尊「おかえりなさい。楽しかった、よね?聞くまでもないか」

    若「尊に尋ねたい事が、数多あっての」

    尊「お姉ちゃんが、答えられずに?」

    唯「だって聞いた方が早いもん」

    尊「それも明日までだよ」

    唯「ギリギリまで聞きまくる」

    尊「聞いた内容は、ちゃんと覚えててよ?」

    唯「たーくんが覚える」

    尊「はあ」

    若「ハハハ」

    覚「はい、お茶。長旅お疲れさんでした」

    美香子「あ、お父さん、8時30分スタートで決定で」

    覚「了解」

    若「父上、あの、ありがとうございました」

    覚「いいよ~」

    美「で、カードだけど、唯のも持って行ってね」

    唯「二つともいいの?」

    美「二人はセットでしょ」

    唯「うん!良かったね、たーくん」

    若「ありがとうございます、大切にします」

    美「でね、追加でこれもって思って」

    葉書を差し出した。印刷がカラフルだ。

    若「葉書、じゃ」

    美「あら、良くご存じ。宛先を見て」

    唯「ウチの住所と…あっ!速川忠清様、唯様って書いてある!」

    若「なんと!何ゆえ、この名で」

    美「写真館から届いてたの。案内というか、広告だけどね。ちょっと嬉しくて、取っといたのよ」

    唯「なんか、ここにたーくんと二人で住んでるみたーい。やーん、感激っ」

    若「そうじゃな。これは嬉しい文じゃ。母上、この葉書も頂戴して良いのですか?」

    美「どうぞ。これってね、それこそ今後、季節毎に届くと思うの」

    尊「そうだね、DMってそういう物だし」

    美「受け取る度に、そうよ二人は今ここに居るのよ、って思えるわ。二人の新居に配達される葉書ね。楽しみよ」

    唯「なんか、じわっときた…」

    若「それは…わしも嬉しゅう思います」

    唯「ありがとう、お母さん」

    美「いいえ~」

    尊「いい話だね」

    覚「でも、あんまり行かないと、届かなくなるぞ?」

    美「じゃあ、孫の七五三とか、撮りたいわ~」

    唯「わあ!夢みたいだね」

    若「そうじゃな。叶うと良いとは思うが」

    一斉に尊に視線が集中。

    尊「わっ、今の僕では無理なんで、長い目で待ってください…」

    覚「最短でも三年後だろ」

    尊「えっ、だってタイムマシン2号も、いつの時代から未来の僕が送ったかわからないし」

    若「尊、済まないとは思うておるが、許せ、頼む。気長に待つゆえ」

    尊「うへー」

    尊を残して、四人、大笑い。

    唯「さてと。たーくん、今から部屋には行くけど、まだ色々やる事あるからね」

    若「心得た」

    唯「ずっとニヤけてるし。なんかー、こんなに現代になじんちゃって、ちゃんと立派な総領に戻れるか心配になってきた」

    美「大丈夫でしょ。唯に甘えてるだけよ」

    若「そうですね。今は、唯と、家族に甘えさせて貰うております」

    覚「速川の家族、じゃなく、家族、ってところが嬉しいなあ」

    美「そうね。だから唯、心配無用」

    唯「そっか、わかった。じゃあ、ちょっくら行ってきます」

    尊「では、後程」

    唯「のちほど…」

    若「後程、懐かしいのう」

    尊「あっ、なんか秘密の会話だ」

    二階へ上がって行きました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    そう、夜は今日が最後だから。

    次回、平成Daysは一回お休みして、「もしも」シリーズの第2回を挟む予定です。

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    今までの二人の平成Days、番号とあらすじ、26から50まで

    no.503の続きです。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    26no.443、12/16、海鮮市場。父が茶を吹く

    27no.449、12/16、ホームセンター。両親車内で語る

    28no.456、12/17、ジェンガに名を書きたい若君。達筆で読めない

    29no.461、12/17、完成したジェンガを前に永禄の仲間達を回想

    30no.467、12/17、若君と尊は仲良し兄弟

    31no.472、12/18、デート服がない唯とシェフデビューが決まった若君

    32no.476、12/19、朝から料理の特訓

    33no.477、12/19、両親の溢れる愛情に感涙

    34no.481、12/19、デート服を買いに行く。校門近くで車内に潜む若君

    35no.484、12/19、ペアルック購入。若君がときめき過ぎ

    36no.486、12/19、若君の体調を心配してるのか別の意図があるのか

    37no.489、12/20、唯と尊のしゃべくり漫才

    38no.490、12/20、料理披露

    39no.492、12/20、年賀状書きます

    40no.493、2019/1/1、年賀状届きました

    41no.497、12/21、唯は退学。オムレツ作って帰りを待っていた若君

    42no.500、12/21、尊が若君に機械の説明

    43no.504、12/21、収録内容確認。no.486の意図がわかる

    二人のもしもDays1no.510、とある年の2月上旬の日曜、バレンタイン直前でチョコ味の唯

    44no.515、12/18、イヤリング購入。唯の雪の思い出

    45no.516、12/22、デート当日。母から色々貰える

    46no.517、12/22、芳江とエリに挨拶。若君自動改札初体験

    47no.522、12/22、電車と飛行機。公共の場ではラブ自粛

    48no.523、12/22、貴重な写真を激写。人生の未来図を語る唯

    49no.524、12/22、公園ランチ後のラブラブタイム

    50no.525、12/22、土産に欲しい物有り。三人へのプレゼント買いに行く

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    二人の平成Days52~22日15時30分、まるわかりです

    早く決めないと、自由時間が減ります。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    雑貨売場で、睨みをきかせ、仁王立ちの唯。

    若君「唯、贈る品を選んでいる姿には到底見えぬぞ」

    唯「悩む、悩み過ぎて訳分からなくなってきた」

    若「ハハハ、気持ちは分かるがの」

    唯「はあ。ねぇ、たーくんなら何にする?」

    若「そうじゃな…」

    若君が、手にすっぽり入るサイズの、スノードームを手に取った。

    若「これは、どういった物じゃ?」

    唯「これはね、一旦逆さにするの、そうすると」

    中で雪が舞う。

    若「なるほど、雪の風景になるのじゃな」

    唯「スノードームかぁ。家にあるのはもっと大きいし、このサイズならかわいくていいかも。いろいろ、中の風景も種類あるし」

    若「小さいは、小さいのう」

    唯「よし、たーくん三つ選んで」

    若「わしがか?それで良いのか?」

    唯「たーくんが選んだとなったら、みんな喜ぶから」

    若「そうか。責任重大だが、選ぶとする」

    三つ決まりました。お会計。

    唯「ふう。任務完了。ありがとね」

    若「どういたしまして、じゃ」

    駅まで来た。地元へ戻る電車を、ホームで待っている。唯が足元をじっと見ている。

    若「いかがした?何かあるのか?」

    唯「うん。思い出した事があって」

    電車に乗り込んだ。座ろうと思えば座れるが、二人は立っている。

    唯「このブーツね、たーくんのお墓が見つかったって聞いて、慌てて見に行った時に履いててね」

    若「うん」

    唯「もう、悲しくて悲しくて、お墓の前で泣いて泣いて」

    若君が唯の肩を抱く。

    唯「で、涙がポタポタ落ちて、今でもシミになってるの」

    爪先の辺り、数か所色が変わっている。

    若「そうか。しかしわしは生きておる。もう泣かずとも良い」

    唯「うん。あの頃は、ずっと暗黒の世界で。何をする気にもなれなくて、実は髪も切らずにそのままだったの。小垣城で撫でてもらった時から、切れなくて」

    若「そう、だったのか」

    唯「まっ、そんな事もありましたって話。永禄に戻ったら、また髪は切らずに伸ばしてくね。本格的に、姫にならないと」

    若「どんな姿でも唯は姫じゃが」

    唯「えへへ。でも、暴れガッパのままじゃ、なんだしさぁ」

    若「暴れガッパ?唯は、河童でなくとも暴れるであろ…ふひ」

    唯「もーっ!どの口が言うのじゃ~?」

    若君が、両頬を横にむにーと伸ばされている。

    唯「ふふっ」

    若「ふう。してやられたのう、ハハハッ」

    駅では、母が待っていた。

    美香子「おかえり~、二人とも。楽しかった?」

    唯「うん!」

    若「お迎え、ありがとうございます」

    車内。

    若「母上、あの」

    美「はい」

    若「カードですが、母上のお気持ちに心を打たれました。謹んで頂戴します」

    美「いいえ~、そんなに喜んでくれたなんて嬉しい。こちらこそありがとう。それでね、追加で渡したい物があるから」

    若「物?」

    美「きっと喜んでくれると思う。後でね。ところで唯」

    唯「なに?」

    美「この後の予定は?」

    唯「帰って、晩ごはんまでを二人の自由時間にしようって、たーくんと決めた。食後に尊の作品発表会、その後は家族全員一緒に過ごす」

    美「うん。って事は、ごはんが遅いと、自由時間が増えるわよね」

    唯「それはそうだけど、晩ごはんは8時位って、朝ごはんの時に聞いたよ」

    美「それが、8時30分に変更はどう?ってお父さんが。遅過ぎても何だから、プラス30分で手を打たないか~って」

    唯「へ?それは嬉しいけど、なんで?」

    美「今朝見送った時、あまりにも若君がデレデレのメロメロで、これはプラスの時間が欲しいだろうって」

    若「えっ!わし、が」

    唯「たーくん、そんな顔してたの~?気づかなかったー、もっと見とけば良かったあ」

    美「唯はもっと分かりやすかったからね」

    唯「あ、そーすか」

    美「もうすぐ7時だから…まあまあ時間あるかな?」

    唯「うん。嬉しい!良かったね、たーくん」

    若「そうじゃな。父上に、礼を申さねばの。されど…」

    唯「なに?」

    若「顔に出たとは不覚じゃ」

    美「え?ダダ漏れよ?エリさん達なんか、可愛かった可愛かったって、仕事中ずっと言ってたわよ」

    若「こ、これはしたり」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    あんなに泣いた時もあった、と過去形で言えるのは、今が幸せだから。

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    二人の平成Days51~22日15時、守り抜きます

    誠実さは、初対面でも伝わるよね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    デパートで、プレゼント物色中。

    唯「どうしよっかな~」

    若君「どういった類いの品を、探しておるのじゃ?」

    唯「心がこもっていれば、どんなのでもいいんだけど、基本的に小さい物」

    若「小さい?何ゆえ?」

    唯「私のリュックに、三つ入れて帰るから。明日まで隠しておきたいから、たーくんが持ってる方には入れられないの」

    若「なるほど。その品に込めた存念は、物の大小に関わらぬ。それで良い」

    唯「ありがと、たーくん」

    誰かが、駆け寄って来た。

    男「速川、速川じゃないか?」

    唯「あっ、コーチ!」

    若「コーチ?」

    唯「うん、えっと、学校の陸上部で、指導してくれた」

    コーチ「珍しい所で会ったな。なんかいつもと全然イメージが違うから、最初わからなかったぞ。デートか?」

    唯「うん。コーチこそ、プレゼントでも買いに来たの?」

    コ「あぁ。娘も小学生にもなると、リクエストが具体的で、デパートまで探しに来た」

    唯「だから、こんな所でバッタリなんだね」

    コ「それより、速川。退学とは…驚いたぞ。昨日は、報告だけして逃げるように行ってしまって。今日会えて良かった」

    唯「はい。ごめんなさい」

    コ「かなりの有望株だったから、残念だけどな。まぁ、お前にも事情があるんだよな?」

    唯「はい」

    コ「どうしたんだ?」

    唯「あの、えっと…」

    若「失礼します」

    若君が、困っている唯の前に出た。

    コ「君は…そういえば以前、速川が超イケメンと帰って行くって、部員が騒いでたな。君だったのか」

    若「初めまして、コーチ。速川忠清と申します。唯が、お世話になっております」

    深々と一礼。

    コ「え?速川?え?」

    若「僕達、結婚したんです」

    コ「え?!結婚?!えっ、お婿さん?ずいぶんと若く見えるけど」

    若「早い、とお思いでしょうが」

    コ「急ぐ理由…えっ!まさか妊娠…もしや、それマタニティドレス?えーっ!」

    唯 心の声(うまい事進んでる。たーくん、がんばって!)

    若「事情は、お察しください」

    コ「は、はあ」

    若「暫く、僕の故郷に連れて帰るんです」

    コ「そ、そうなんだ。速川を名乗ったって事は、いずれ家を継ぐのかな?確か、実家のお母さんは医者だったよな?」

    唯「はい」

    若「故郷にて、精進して参ります」

    コ「それは、医師免許取得に向けて?」

    若「そう…ですね」

    コ「そうか、よーくわかった。速川!」

    唯「はい、コーチ」

    コ「お前は、恋愛などせず、走りを極めるのかと思っていたが」

    唯「まっ、そう見えてましたよね」

    コ「こんな、若いのに凄くしっかりした旦那さんに出会えていたとは。良かったな。おめでとう」

    唯「ありがとうございます。私、幸せになりますから」

    コ「そうか。うんうん」

    唯「私、みんなに何も言わず辞めちゃったんで、コーチから、今日の事言ってもらってもいいですよ」

    コ「そうなのか?」

    若「皆様に、よろしくお伝え願います」

    唯「速川は、最上級の素敵な旦那をゲットしたってね」

    コ「そうだな。じゃあ、これで。幸せになれよ」

    唯「はい!」

    若「ありがとうございました」

    若君は、また深々と礼。

    唯「…もうコーチ見えなくなったよ。顔上げて」

    若「そうか」

    唯「たーくぅん、ありがとう~!もぉ聞かれた時は、やばっ!マジで~?って焦った~」

    若「上手く勘違いもされたようだし、無事に事が運んで良かったの」

    唯「現代語、完璧だったよ」

    若「そうか?」

    唯「すっごくカッコ良かった。ますます惚れ直したでござるよぉ」

    若「それは嬉しい。全ては唯を守る為じゃ。守れておったか?」

    唯「うん!」

    若「あ、ここも公共の場じゃな」

    唯「そうなの~ざんねーん、私も。ふふっ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    此度の嘘は、誰も傷つけてはおらぬ。

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    時空を超えるICカード

    前回の平成Daysで、若君は、速川の名前のカードに感激していましたが、きっとそのカードのデザインも気に入ってくれたと思うんです。イメージした交通系ICカードは、マナカです。

    https://manaca.jp/type/index.html

    まるで…。交通事業者によると、無名のキャラクターで、月とは関係ないんですが。

    no.491の考察でもお話ししましたが、唯達が住む黒羽市は、三重県北勢地方の推測です。実はこの辺りを通る鉄道会社の路線では、ICカードを導入していません。
    でも、このエピソードを入れたかったので、今回は使える物としちゃいました。実際は使えないでしょ!とか言わないでね(;^_^A

    勝手に何もかもリンクさせてますが、大企業を敵にまわすつもりは、毛頭ありません…。関係者の方々がご覧になりましたら、人気のキャラクター御用達、にしましたので、売上に直結はしませんが、御容赦くださいますようお願い致します。

    このカードをお使いのアシラバの皆様!おめでとうございます、若君&唯とお揃いです!妄想の域を出ませんが。

    私の定期もお揃いです~。こんな些細な事でも、生活が少し潤うようです。自分で設定しておいて何なんですが。

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    二人の平成Days50~22日14時、手のひらに想い出

    唯、なんやかやで願いが少しずつ叶ってます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    建物内に戻りました。

    若君「暑いのう…」

    唯「うん、外もだいぶ暖かかったから。上着脱いで」

    脱ぐのを手伝う唯。

    唯「上着は、邪魔になるからおなかに巻いとけばいいよ」

    若「そうか」

    若君が上着の袖を、体の前で結んでいる姿に、

    唯 心の声(ん?なんか普通の人と違う…あ、そっか!おなかじゃなくて、腰骨の上で結んでるから、ビシっと決まってるんだ。んもぉ無駄にカッコいいんだから~。あっそうそう!)

    唯「たーくぅん、袖もまくって~」

    若「こうか?」

    唯大好物の、腕まくり姿。

    唯「へ、へへへ~」

    若「姫がおかしな事になっておる」

    土産物屋の前を通過中。

    若「色々売っておるようじゃの」

    唯「そうだね。何か欲しい物ある?」

    若「いや…」

    唯「あ?それって、なんかあるとみたぞぉ」

    若「永禄に持ち帰りたい物は、ある」

    唯「えーそうなんだ、なんだろ?」

    若「母上に許しを乞わねばならぬが」

    唯「えっ?それって、もしかして…」

    若君が、ICカードを出した。

    唯「すごく気に入ったんだね。やっぱ名前入りだから?」

    若「わしが、この先の世に居た証じゃからの」

    唯「そっかぁ。なんか私も嬉しい~。きっと喜ぶと思うけど、お母さんに今聞いてみるね」

    若「頼む」

    LINEでパパっと送信。即返信あり。

    唯「ふふっ。見て、これ」

    若「おぉ」

    号泣しているスタンプと、OKマークのスタンプが連続して来た。

    唯「良かったね、たーくん」

    若「あぁ。帰ったら、母上に礼を申す」

    駅の改札前。

    唯「そろそろ移動するよ。もう飛行機は堪能した?」

    若「良いぞ。実にこの、技術や人々の努力には、目を見張るばかりであった」

    唯「もし、もしいつか機会があったら…飛行機、乗ろうね」

    若「そうじゃな。いつか」

    唯「もしかしたら、その頃にはもーっと遠くまで行ける乗り物に、乗れるかもしんない」

    若「遠く?」

    唯「月にとか」

    若「月?!」

    唯「もしかしたら、ね」

    若「それは、どのように」

    唯「あ、えーっと…」

    若&唯「帰ったら尊に聞く」

    唯「わー、どうしよう。もうすぐこの手使えなくなる」

    若「ハハハ」

    電車内。

    若「この後はどうするのじゃ?」

    唯「さっき人がいっぱい居た駅の所で、デパートに行くよ。あのね、お父さん達にクリスマスプレゼント買いたいの」

    若「買い物に行くのじゃな。しかしその場所には、色々な呼び名があるのう」

    唯「そうだね。スーパーはわかるよね?」

    若「米など買う処」

    唯「うん、合ってる。あとは?」

    若「ショッピングモールは、床が柔らかい。ホームセンターは、じいの大きいカートが有り、手軽で楽チン」

    唯 「…他に覚え方なかったの」

    下車し、デパートに向かっている。都会は、そこかしこに、イルミネーションやツリーがある。

    若「昼間から眩いのう。綺麗じゃな」

    唯「あ」

    若「ん?いかがした」

    唯「ううん、綺麗だね。えへへ~」

    若「ようわからぬが、唯がご機嫌なら良かろう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    じい、居ないのに登場回数が多い。

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    二人の平成Days49~22日13時、風を纏って

    お母さん、あの選択、グッジョブでした。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    公園ランチ、そろそろ終わり。

    若君「なんと、茶がまだ熱い」

    唯「なにげにすごいでしょ~」

    冬にしては、暖かい日だ。飛行機が置いていく風も、心なしか柔らかい。

    若「よい風じゃ」

    唯「ホントだ。…ふふっ懐かしい」

    若「そうじゃな」

    空を見上げる若君。真上を、大迫力で飛行機が行き交っている。

    若「羽ばたきもせず、なぜ飛ぶのかの…」

    唯「私に聞いてる?」

    若「帰ったら尊に聞く」

    唯「それが正解~」

    若君は、シートから降りた。芝生の上に寝転び、空を仰ぐ。

    若「草の匂い、土の匂いじゃ」

    弁当箱や水筒を片付ける唯。

    唯 心の声(セーターの赤色が、芝生に映えて綺麗)

    若君は、眠ったようだ。時折、額にかかる前髪が風に揺れる。

    唯 心(無防備な寝顔が、かーわいい)

    シートも片付け、隣に座った。

    唯 心(こういう時間、今度はいつ手に入るかな…)

    いつの間にか、若君に見つめられている。

    唯「わぁ!起きてたんだ」

    手を伸ばしてきた。

    若「おいで」

    唯「えー」

    若「ん?」

    唯「そう言えば、絶対来ると思ってるでしょ」

    若「思うておる」

    唯「否定しないし~」

    若「来ないのか?」

    唯「どーしよっかなー?…えいっ!」

    寝転ぶ若君に、ダイブ!なかなかの衝撃。

    若「うっ、く、苦しい…」

    唯「えー?なにぃ?だって来いって言ったもーん」

    若君の胸元に顔をうずめていたが、

    唯 心(ダメダメ、このままじゃイヤリングがセーターに引っ掛かっちゃう)

    体を起こした。すると、

    若「…唯の向こうに、広がる空は」

    唯「空?」

    若「永禄も、この先の世も変わらず、一面澄んでおる」

    唯「450年変わらないかぁ。あっ、でも飛行機は飛んでない」

    若「ハハ、そうであったの」

    若君が、唯を乗せたまま体を起こした。

    若「そう言えば…まだ、遠いか?」

    唯「え?」

    若「体が境界線で近づけぬ、と申しておった」

    唯「うん。もっとそばに、もっとって思って。あー?たわけたおなごが無茶言ってる、って思ってるんでしょ」

    若「いや、構わぬ。唯の全てを慈しんでおるゆえ」

    唯「…難しい。帰ったら尊に聞く」

    若「ハハハ。もう、境はなかろう?」

    唯「うん。今はもうない。なんでだろ、いつの間にか消えてた感じ」

    若「宿の夜に消えたのであろう」

    唯「…」

    若「そのような意味合いではない」

    唯「うん、わかるよ。心も一つになったって事だね。たーくんもそう思う?」

    若「思う。今もそうであるし」

    唯「今?」

    若君が、視線を下に落とす。

    唯「え?わかんない」

    若「二人は一つじゃ」

    唯「え?あ、あーっ!ホントだぁ」

    同じセーターを着ているので、重なった部分で二人が一続きになっているように見える。

    唯「一つになってる、境目がなーい」

    若「そうじゃ。望み通りであろう?」

    唯「よく気がついたね!すごーい、感動しちゃったぁ」

    若「ハハハ」

    唯「たーくんと私は、一心同体~」

    また抱きついた。

    若「そうじゃな」

    唯「ふふっ。はぁ~、なんか幸せ過ぎて、溶けちゃいそう」

    若「溶ける?それはならぬ」

    唯「えぇ?」

    若「決して消えてはならぬぞ」

    唯「そっか~。あはは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    聞いているのは、風だけ。

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    二人の平成Days48~22日11時、告白します

    撮ろうと思って撮れるものじゃないから、超貴重。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    建物内に戻ってきた。

    唯「クリスマスツリーだ~、あっ、雪だるま見っけ!」

    大きなツリーの足元に、雪だるまのオブジェがある。

    若君「大きいのう。我ら程もある」

    唯「写真撮ろっと」

    まずは雪だるまをバックに、二人並んで自撮りでパチリ。

    唯「ポーズ変えよっ。え?たーくん何してるの」

    唯の背後に回っていて、顔を近付け、両手を肩に乗せている。

    若「良いぞ」

    唯「あぁ、前後にね。では、はい、ポー…」

    その瞬間、若君の両手が唯の両頬をつまみ、横にむにーっと引っ張った。パチリ。

    唯「ふひっ、あーっ!ちょーっとー!たーくん!」

    若「ハッハッハッ、愉快じゃ」

    唯「もーーっ!!ひどーい!」

    逃げる若君、追う唯。本気で逃げてない若君と、マジで追う唯なので、あっという間に捕獲完了。

    唯「かわいく撮りたいのに~!もーっ」

    若「かわいいではないか。見てみるが良い」

    撮れた写真を確認。

    唯「あ、かわいい…」

    若「で、あろう?」

    唯 心の声(たーくんが、超かわいい!)

    そこには、悪戯を企んで、瞳が子供のようにキラキラと輝いている若君が写っていた。

    唯「えへへ」

    若「掌を返したように、ご機嫌じゃの」

    空港併設の、公園に来た。芝生の上。

    唯「ごはん、ごはん、お腹空いたでしょ」

    若「唯ほどではない」

    唯「どーせ食い意地が張ってますよっ」

    レジャーシートを広げて座り、弁当箱と水筒もろもろを出した。

    唯「それでは~」

    唯&若「いただきます」

    唯「見て見て、おにぎりこんなに大きいよ」

    若「父上の愛情の大きさじゃな」

    唯「そうかも?はい、たーくん、あーんして」

    パクリ。

    唯「うふふ、かわいい~」

    若「そういえば、唯の手料理は、食しておらぬままじゃのう」

    唯「ギクッ。そ、それは」

    若「言うてみただけじゃ」

    唯「へ?」

    若「それを言うたら、母上のも尊のも食しておらぬからの」

    唯「ん?これはからかわれてるのか?まぁいいや。他の事を、今後がんばりますのでお許しを」

    若「ほぉ。例えばどのような?」

    唯「え?えーっと…」

    若「ん?何を恥ずかしがっておる」

    唯「あの、たーくんの子供、いっぱい産みます」

    若君の動きが止まった。

    若「そ、それは」

    唯「ジェンガに子や孫の名前書くって聞いて、感動したの、だから」

    若「…ありがとう、唯。一応尋ねるが、戦は?」

    唯は、若君の前に座り直し、正座した。若君も、体を唯の正面に向けた。

    唯「戦には、もう出ません」

    若「そうか。それは安心じゃ」

    唯「私、赤ちゃんに早く会いたくて」

    若「えっ」

    唯「戦は他の足軽でもできる。でも赤ちゃんは私しか産まないよね?」

    若「そうじゃ、愛するのは唯のみじゃ。側室など要らぬ」

    唯「お腹に居るかもしれないのに、無理に戦に出て何かあったら…たーくんも私も悲しいでしょ」

    若「…」

    唯「私は、私にしかできない事をがんばる。これからは、たーくんと、子供と、全部守るから」

    若「…唯!」

    唯の細身の体が折れてしまいそうな程、強く抱き締める若君。

    若「ありがとう、唯…」

    唯「いつか言おうと思ってたから。でも早く言って良かった。こんなに喜んでくれて」

    若「唯、ここも公共の場であろうが…」

    唯「あっ、あー。そうだけど、周りにあまり人居ないし…許します」

    熱いキスが続いた。

    若「唯」

    唯「はいっ」

    若「腹が鳴っておるの」

    唯「ひゃー!ごめんなさい~、だってぇ私まだ一口も食べてない」

    若「ハッハッハ。唯の腹は、恋路にも容赦ないのう」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    腹が減っては、戦もラブラブもできぬ。

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    二人の平成Days47~22日9時、エスコートします

    二人、羽根生えて飛んで行きそう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    地元の電車はかなり混んでいた。扉付近で立つ二人。

    唯 心の声(近い~。壁ドンなんか比べものになんないっ)

    壁にもたれる唯の前で、被さるように肘を壁に当てて立つ若君。

    若君「唯」

    唯「なに?」

    唯 心(見上げるともっと近いー)

    若「キスしとうなる」

    唯「えっ?!だめですっ」

    若「駄目なのか?」

    唯「だめなものは、だめ。ここは公共の乗り物の中だから、我慢してっ」

    若「…」

    唯「そんな顔してもだめっ」

    唯 心(ひゃ~!今されたら、私は瞬殺だし、周りのチラチラ見てる女子達も秒殺だよ~)

    大きな駅に到着した。乗り換えで移動する。

    若「平和な世の筈であるが、戦並みに人が行き交うのう」

    唯「乗り換え駅だから特にね」

    若「ここを進むのか?」

    唯「うん、がんばって行こー」

    雑踏を進む。唯が人にぶつかりそうになると、若君が肩を抱き、さっと引き寄せる。

    唯 心(守られてるー、感動~)

    乗り換え完了。今度の電車は、二人掛けの席に座る事ができた。窓際の若君が外に目をやる。

    若「速い、速いのう。先程は唯を隅々まで眺めていたゆえ、外に気付かず」

    唯「やだぁ。そうだね、今までたーくんが乗った乗り物の中では一番速いね」

    若「まだ速い馬があるのか?」

    唯「うん。今から行く所にね。私達が普通に乗れる乗り物ではそれが一番速いから、たーくんに見せてあげようと思って。馬というよりは、鳥だけど」

    若「鳥?!空を人が舞うのか?!」

    唯「そうなの。でもごめんね、乗るんじゃなくて見るだけだけど。近くで見たらきっと迫力あるから、腰抜かさないでね」

    若「そうか。心して見よう。なんと申す鳥じゃ?」

    唯「飛行機だよ。今、空港って場所に向かってるの」

    窓の外が一変した。空港島へ伸びる海上の線路を走行中。窓の外は海。反対側の窓の外も海しか見えない。

    若「なんと!我らは浮かんでおるのか?!」

    唯「ホントだ~なんか、天国への道、って感じ?」

    若「唯と共になら、いずこでも天国じゃが」

    唯「え~嬉しい。すっかり殺し文句がうまくなっちゃって、この子は」

    若「…母上にそっくりじゃの」

    唯「え?そう?」

    改札を抜けると、そこは空港。

    若「またここも、戦並みな」

    唯「年末近いから、人は多いかな」

    人種も様々。

    若「悪丸に似た者がおるの」

    唯「そうだね。私、悪丸にどこの国から来たの?って聞いた事あるんだけど」

    若「それで?」

    唯「すっかり忘れちゃいました~」

    若「ハハッ、そうであるか」

    唯「たーくん、そこから外に出られるから。いよいよ飛行機とご対面だね」

    デッキに出た。何機も並んでいる。

    若「これはなんと巨大な。しかも何羽も」

    滑走路近くのため、かなりの迫力と音。

    若「このような鋼の塊が、飛ぶとな」

    唯「うん。ほら、今、飛び立つよ」

    耳をつんざく音と共に、滑空していく。

    若「このような物を考え、形にした者が幾人も居るのじゃな」

    唯「そうだね。尊みたいなのがいっぱいね」

    若「感謝せぬとな」

    唯「未来の事まで感謝なんて、たーくん素敵!」

    若「そうか?」

    唯「大好き」

    若「わしもじゃ」

    唯「あっ、ここも公共の場だから」

    若「…読まれたのう。では代わりに」

    唯をお姫様抱っこで抱き上げた。

    唯「きゃっ」

    若「姫、くるくるか?」

    唯「うん!くるくる~」

    360度回転。

    唯「きゃー、えっ二周!」

    若「ハハハ~」

    唯「あはは~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君のそんな顔、それは唯にしか見せない顔。

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    10年ですか

    今回の地震は、先の震災を引き起こした地震の影響を受けて発生しているとの事。10年前のあの日、何をしていて何を考えていたかは、今でも鮮明に思い出されます。
    被害にあわれた地域の皆様に、早く平穏な日々が戻りますように。

    妖怪千年おばばさんへ

    お菓子タワーは子供の夢ですね。子供だけじゃないか?いくら好きなお菓子でも、いつまで経っても無くならないので、しばらく見たくなくなりそう。

    あまりにも、花男がわからないので、画像検索しました。なるほど、ピンクでした。若君似合いそうです。

    まゆちゃんは、クラスメート三人娘の、一番背の高い子ですね。やっぱり、地元のアイツ推しなんだ(^o^)

    投稿フォームへ

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    兎角この世は その5 尊編 ~十三夜続編(未投稿)こぼれ話~

    ~~~~~~~~~~~~
    はじめに
    この物語は、先に投稿した
    ”兎角この世は その4 唯編”
    の続編になります。
    唯の将来を案ずる先生方や両親。
    現代でも才能を開花させる若君。
    それに巻き込まれる尊を
    描いてみました。
    原作を背景にしていますので、
    唯は高校2年生の設定です。
    ~~~~~~~~~~~~

    冬季練習の目標を書き上げ、
    陸上部のコーチに渡すと、
    唯は、トラックを走り始めた。
    軽く一周したところへ、
    コーチが血相を変えて、
    やって来た。

    「速川~!
     お前、これ、ホントか?」

    コーチは、唯がさっき渡した紙を
    握りしめている。
    練習目標の記入用紙だ。

     「はい。
      負けてられませんから。
      吹雪に。」

    「吹雪?
    そんな選手、いたか?」

     「馬ですよ。馬。」

    「馬?」

    コーチは訳が分からず、
    ぽかんとする。

    「あ、いや、そうじゃなくて。
     俺が聞きたいのは、
     この、自主練のとこだ。
     これ、ほんとに走ったのか?
     この距離を、このタイムで?」

     「ああ、それ?
      ホントです。
      マジで、ヤバかったです。」

    織田with高山軍に囲まれ、
    僅かな兵で守っている小垣城の
    若君救出の為、
    夜を撤して走った事を、
    唯は自主練として記入したのだ。

    敵兵を避ける為、
    羽木との境にある野上領の山中を
    走ったので、最短ルートと比べると、
    その距離は軽く3倍以上。
    それを三日で走破したのは、
    忠清への一途な思いからだ。

    「黒羽城公園の北口から、
     北領山遊歩道経由で
     小垣城址までって、
     このとんでもないルート、
     良く走る気になったな。」

     「命、かかってましたから。」

    「命?」

     「捨て身で走りました。」

    「お前、ホントに好きなんだな。」
      ”走るのが”

     「はい!超好きです!!!」
       ”若君が”

    「よし、分かった!
     後は、俺に任せろ!」

     「へ?」

    “ああ、勘違い”な会話に
    気づく事も無く、
    コーチは来た時以上の勢いで、
    校舎へ戻って行った。

     「コーチ?任せろって、
      いったい何を???」

    唯は、ただ、その後ろ姿を
    見送るしかなかった。

      ・・・・・・・・

    いつもより、気合の入った走り込みを
    終えて、自宅に戻った唯は、
    リビングに入って、驚いた。

     「何これ?!」

    そこにあったのは、
    天井まで積まれた“うま〇棒”。
    しかも、全種類の味ぞろえ。

      「さっき、店長が持って来た。
       “よろずや”の。」

     「“よろずや”?」

      「お礼だって。若君に。」

     「ふうん。で、その若君は?」

      「出かけた。店長と一緒に。
       お母さんも。」

     「え?まさか、また、バイト?」

      「さあ。」

    尊と唯が、うま〇棒1年分の壁を
    見上げている頃、
    忠清と唯の母、美香子は、
    駅ビルのカフェで、
    Z〇R〇黒羽店のマネージャーと
    向き合っていた。
    “よろずや”の店長は、
    二人をマネージャーに
    引き合わせるやいなや、
    そそくさと帰ってしまった。

    目の前には、
    今や忠清の好物の一つとなった、
    抹茶アイスが置かれている。
    しかも、そのカフェの
    オリジナルアレンジで、
    濃茶がかけられていた。
    バニラアイスにエスプレッソを注ぐ
    アフォガードの、緑茶バージョンだ。
    美香子は、ストロベリーアイスに
    添えられた、大粒のイチゴに
    目を輝かせていた。

    マネージャーは、
    “よろずや”の店長の、
    大学時代の先輩らしい。
    俳優の小〇旬そっくりな
    ”よろずや”の店長は、
    その先輩に頼まれて、断り切れず、
    忠清を紹介する事になり、
    山盛りの“うま〇棒”持参で、
    速川家を訪ねたのだった。

    たった一日で、開店セール用の棚を
    空にしたという忠清の噂は、
    今や“幻のアルバイター”として、
    商店街の店主たちに広まっている。
    エリア統括から、
    売上アップに繋がるプランの
    プレゼンをせかされている
    Z〇R〇黒羽店のマネージャーは、
    その噂を聞き逃すわけには
    いかなかった。

    マネージャーは、
    人当たりの良い笑顔で、
    二人に勧める。

      「どうぞ、御遠慮なく。
       溶けてしまう前に、
       召し上がって下さい。」

     「そうですか?
      では、頂きましょうか。」

    美香子が、大きなイチゴを口に運ぶ。
    それに倣って、忠清も濃茶に
    溶けかけた抹茶アイスを口にした。

    二人の口元がほころぶ。
    スイーツは、幸せを運ぶ天使だ。

    二人の皿が空になったのを見計らって
    マネージャーが、さらに
    ラテを注文する。

     「あら、お気遣いなく。
      私たちは、もう充分
      頂きましたから。」

      「あ、いや。
       ここのラテアートは、
       なかなかのものなんです。
       是非、お試しください。」

    マネージャーの言葉通り、
    運ばれて来たラテは、
    実に見事だった。
    美香子のカップにはバラが、
    若君には、白い馬が描かれている。

    「吹雪。」

    忠清が、つぶやく。
    すかさず、マネージャーが言う。

      「忠清さんは、
       馬がお好きだと、
       “よろずや”から聞きまして。」

    今回のアルバイトの話は、
    断わるつもりでやって来た
    二人だったが、
    マネージャーの心使いに、
    すぐ席を立つわけにもいかず、
    結局、話を聞くことになった。

      「実は、ライバルの長澤店では、
       姉妹都市の熊〇から、
       ゆるキャラ全国区の熊モ〇を
       呼んで、大々的に
       キャンペーンをする様でして。
       すでにコラボ商品を何種類も
       準備中らしく。
       こちらでも、地元から
       掘り起こそうと、
       この街出身の
       有名人を当たったのですが、
       なかなかで。」

    「長澤は熊?
     その長澤とは、高山の本城の
     事であろうか?」

      「高山?実は私、
       こちらに赴任して
       間もないもので、
       よくわからないのですが、
       確か、長澤にも城跡がある
       とは、聞いてます。」

    忠清の目が、
    見る見るうちに鋭くなる。
    それに気づいた美香子が囁く。

     「若君、落ち着いて。
      今は、平成よ。
      宗熊も、宗鶴もいないわ。」

    「そうじゃの。しかし、
     聞き捨てる訳にはいかぬ。」

     「ええ?」

    不安げな美香子をよそに、
    忠清はマネージャーに言った。

    「まずは、こちらの
     今の有り様を捉えて、
     足元を固めぬと、話は進まぬ。
     すまぬが、まずは、そちの城、
     を拝見いたしたい。」

    「は?城?
     ああ、店の事ですね?」

    その後、三人は、
    駅ビル1階のZ〇R〇に向かった。
    店は、改札口の手前、
    駅前広場にも面していて、
    イベントを打つにも好都合だ。
    駅ビル内の店としては、
    一番良い場所と言える。
    これで、売り上げが
    伸び悩んでいるというのが、
    不思議な位だ。

      「正直な所、今、この業界は、
       安売り競争激化で、
       薄利営業が長期化してまして。
       店舗数の削減も
       間もなく始まります。
       どこの店も生き残りに必死。
       そこで、長澤店は、熊モ〇で
       ファミリー層をまるごと
       取り込む作戦に
       出たって訳です。」

    「では、その長澤の客をも
     取り込む策を練らねばのう。
     ところで、松丸や、
     野上の地にも店はあるのか?」

      「えっと、それは、
       どちらの事でしょう?
       この近隣では、
       二店舗だけですが。
       ここと、長澤と。」

     「さようか。
      松丸や野上は、その名すら
      残らなんだのか?
      なれば、蘇らすのみ。」

       「はあ?」

    忠清は、暫くの間、
    店内の商品を眺め、
    何事かを考えていた。
    やがて、何かひらめいたらしく、
    美香子を交え、店の奥で、
    マネージャーと話し込んだ。

        ・・・・・・・・

    それから暫く後の事。

    「ねえねえ、唯。
     今度の日曜日、駅ビルの
     Z〇R〇に行かない?」

    朝練を終え、教室に戻った唯に、
    まゆが、声を掛けた。
    まゆは、1年の時からの
    クラスメートだ。

     「Z〇R〇?」

    「お店でキャンペーンするらしいよ。
     F4が来るんだって。」

     「F4?あの“花より男〇の”?」

    「そう。もっとも、モノマネ芸人の
     そっくりさんみたいだけど。
     なんか、懐かしくない?
     唯は、“花♡類”押し
     だったでしょ?」

     「そうだけど。
      その日は、
      コーチと木村先生が、
      家に来ることになってて。」

    「え?」

     「なんか、話があるんだって。
      進路の事で。」

    「ふううん。珍しいね。
     家庭訪問とか。
     引きこもりでも無いのに。
     じゃあさ、
     終わったらおいでよ。
     先に行ってるから。
     これ、キャンペーンのチラシ。」

    まゆから手渡されたチラシを、
    ろくに見もせず、
    カバンに突っ込むと、
    唯はため息をつく。
    せっかくの日曜日、
    若君と楽しもうとしていた
    あれやこれやが消えて行く。

    「今さら進路って言われたって、
     困るんだけど。
     先生方に、何て言おう。」

    “戦国武将に嫁ぎました。”
    なんて、言えない。
    言ったところで、
    信じて貰えるわけがない。

    上の空の数日が過ぎ、
    とうとう日曜日がやって来た。
    若君は、朝早くから
    出かけて行った。
    また、あの“よろずや”の店長が、
    迎えに来たのだ。

      「ホントについて行かなくて、
       大丈夫?」

    美香子が心配そうに、若君に言う。
    若君は、黙って頷くと、
    “よろづや”の車に乗り込んだ。
    美香子がつぶやく。

       「車には、すっかり
        慣れたみたいだけど。」

      「なんだか、出陣を見送る
       母親みたいだな。」

    冗談交じりにそう言って、
    唯の父、覚が笑った。

    やがて、先生方がやって来た。

    コーチは、そわそわと落ち着かない。
    出されたお茶に手も付けず、
    覚に向かって切り出した。

     「進路指導の先生のお話では、
      速川君はまだ、
      決めかねているそうですね。」

      「ええ、実は、ちょっと体調を
       崩していた時期がありまして。
       受験対策がままならない
       状況だったんです。」

    「それは、こちらでも
     承知しております。
     私の所には、昼休みに
     良く来てますから。
     羽木家の話をしている時だけは、
     気力が戻るようだったので、
     最後の惣領、忠清の墓が
     見つかった事も、
     すぐに知らせました。
     当初は、ひどく落ち込んで、
     逆効果だったかと、
     慌てたんですが、
     その後は、前より元気に
     なった様で。
     速川、本当に
     心配してたんだぞ。」

       「木村様~。」

    木村先生と唯の言葉に、
    覚も美香子も飛び上がりそうになる。

      「唯ったら!
       ここにいるのは、
       正秀殿じゃないのよ!」

    美香子のささやきに、
    唯は我に返り、礼を言う。

      「あの時は、本当に
       ありがとうございました!
       先生には、感謝しても
       しきれません!!
       そのおかげで、私、わか・・」

     「わ~、わわ、わか、
      分かったんだよな。
      今が大事な時だって。
      そう、これからの、
      人生を考える為に。」

    覚が慌てて、唯の言葉を遮った。
    まさか、その“羽木忠清”を、娘が
    戦国から、かっさらって来たとは、
    とても言えない。

    覚は、唯に目くばせするが、
    唯は全く気づかなかった。
    それを見た美香子が、
    唯をキッチンに立たせる。

       「そうそう、唯。
        まだ、先生方にお出しして
        なかったわ。
        ”よろずや”さんのお菓子、
        持ってきて。」

     「ところで、お父さんは、
      駅伝にご興味は?」

    会話に割り込む隙を窺っていた
    コーチが、ここぞとばかりに
    身を乗り出す。

      「は?」

     「箱根を走るお嬢さんの雄姿を、
      見たいとは思いませんか?!」

      「箱根って、あの正月恒例の
       箱根駅伝?」

     「そうです!!!あの箱根です。
      お嬢さんなら、
      区間賞だって夢じゃない。」

      「でも、あれは、男子学生の
       晴れ舞台でしょう?」

     「はい。確かに今は。
      でも、僕は、常々それは
      おかしいと思ってるんです!
      女子にも出場権を
      与えるべきです。
      唯さんなら、きっと
      やってくれます。!」

      「あ、いや、しかし、
       今日は、進路のお話では?」

     「はい。まさにそれです。
      僕としては、是非、
      スポーツ推薦をと言いたい
      ところなんですが、
      実は、速川君、
      夏、秋と大会成績が
      残念ながら不振でして。
      でも、まだ、
      記録会があります。
      実は、その記録会に、
      あの青学陸上部の名監督が
      来てくれる事になりまして。」

       「はあ。。。」

     「速川君の走りを見て貰う、
      絶好のチャンスです。
      懇親会も、予定されてますから、
      話しもできます!
      そこでですね・・・。」

    その後は、コーチの熱弁が
    延々と続いた。
    唯が書いたあの自主練メモが、
    まわりまわって、
    青学の名監督の耳に入り、
    当の名監督も興味を
    示しているらしい。

    木村先生は、それを
    辛抱強く聞いていたが、
    喉を枯らしたコーチが、
    湯呑に口をつけた隙に、
    こう切り出した。

    「このコーチの熱意も汲んで、
     いくつか資料を揃えて来ました。
     陸上の強化練習に参加となれば、
     受験勉強の時間も限られます。
     そこでですな。
     学部推薦で進学し、その後、
     可能であれば、青学に編入
     という方向で、検討されては
     如何かと。
     青学編入が無理だった場合でも、
     こちらであれば、郷土史の勉強が
     続けられます。
     いずれ、歴史の教師として、
     教壇に立つのも良いのでは
     ないですかな?
     むしろ、そうなってくれたら、
     私としては、
     教師冥利に尽きますが。」

    木村先生は、分厚い書類のコピーを
    覚に手渡した。

        ・・・・・・・・・・・・

    コーチと木村先生を見送った後、
    唯は駅ビルに駆け付けた。
    出来れば、若君を誘いたかったが、
    帰ってくる気配がない。
    仕方なく、唯は一人で来たのだった。

    「唯、遅いよ~!!!」

     「ごめ~ん。コーチの話が、
      めっちゃ長くて。
      で、F4そっくりさんは?」

    「もう、とっくにイベント終了。
     でも、唯の分も、
     サイン貰っといたから。
     はい、これ。」

    まゆから手渡されたのは、
    軍配型の色紙だった。

     「んん?」

    唯は、その表に掛かれている
    キャッチコピーに目が釘付けになる。

    “Z〇R〇“&”よろずや” 初コラボ!
       羽木家四天王見参!
      あのF4(そっくりさん)が、
     戦国武将として黒羽に
       帰ってくる!!!

    “なんか・・・ヤな予感が
     するんですけど・・・。”

    恐る恐る、唯はその軍配を裏返した。
    すると、そこには、6人の武士の
    コスプレ写真とサインが。
    最上段には、ひときわ大きく、

    “信長来襲、どうなる、羽木軍団”

    の文字が踊っている。

     「こ、これって・・・若君様?!
      しかも、信長?!何で???」

    信長コスプレの若君の写真には、
    見事な花押が書かれていた。

    思わず、唯の目が点になる。
    それに構わず、まゆは
    熱に浮かされたように
    しゃべりまくる。

    「すっごく楽しかったよ~、
     歌あり、踊りあり、ゲーム有。
     特に、銀さんと信長の殺陣が
     凄い臨場感で、もう最高~。
     また見たい~。絶対~。」

     「ははは・・・そりゃ、そうだ。
      だって、ホンモノだし。」

    「それに、あの刀剣〇舞の歌合。
     イベントのお客さんを
     二手に分けてね。
     羽木軍と、武田軍で合戦したの。
     歌合の、振付を間違えた人から
     抜けて行って。
     一曲終わって残った人が
     多い方が勝ち。
     盛り上がったよ~。」

     「で、まゆは、
      どっちについたの?」

    「私?超、迷った~。
     なにしろ、特別ゲストの信長が、
     超絶、イケてたし~。
     でも、やっぱり、
     地元のあいつの方にした。
     F4の羽木四天王、かわゆくて!!!
     何故か、銀さんが羽木の総大将
     だったけどねえ。」

     「は?かわいい?!
      まさか、あの爺たちが?
      で、勝負は?」

    「もちろん、地元の勝ち。
     で、これ、ゲットって訳~♡」

    まゆは、手に持っていた
    白いチャームを揺らす。
    それは、馬の形だ。

     「吹雪!」

    「唯ももう少し早く来れば、
     貰えたのに。
     これ、フリースやダウンの
     ファスナーのスライダーに
     なるんだよ~♪
     ね。超良くない?ほら!」

     「いや、私は。。。
      指、嚙まれそうだし。
      もう、これ以上、痛い目に
      あいたくないっつーか。」

     「はあ?
      じゃあ、フリースの予約してく?
      今なら、好きな家紋を
      刺繍してくれるって。
      なんでも、この当りにいた
      武家の紋が選べるらしいよ。
      先着、200枚限定。
      ほら、結構並んでる。」

       ・・・・・・

    自宅に戻った唯は、これまた、
    お菓子の壁を見る事になった。
    今度は、
    キョ〇ちゃんチョコボールの山だ。

      「これって、また
       “よろずや”から?」

     「そうなのよ!
      イベント大成功ですって・・・
      って、あらやだ。
      唯には内緒だったわ!」

      「内緒も何も、今、駅ビル、
       行って来たし。
       駅の中やら、商店街やら、
       このチラシが
       張り巡らされてて、
       びっくり!
       もう、若君も、お母さんも、
       何考えてんのよ!!!」

    唯は、美香子に、
    まゆから渡されたチラシを突き出す。

     「唯。若君はね。
      若君なりに、一生懸命なのよ。」

      「それは、
       そうかもしれないけど、
       何もこんな。。。」

     「そうね。初めは、
      唯がファンだった、小〇旬への
      子供っぽい嫉妬だったかも
      しれないけど。
      でも、今回は、Z〇R〇黒羽店の
      役に立ちたいって頑張ったのよ。
      それは、分かってあげないと。」

      「でも、ずるいよ。こんなの!
       私も見たかったのに~!」

     「え?唯がキレてるのって、
      そっち???」

    美香子はあきれ顔で唯を見上げる。

      「で、若君は?」

     「ソファーで眠ってる。
      さすがに疲れたのね。
      今日は、大仕事だったから。
      でも、若君って、案外、
      こっちの世界でも、
      やっていけるんじゃないかしら。
      イベントクリエイターの
      才能充分。」

    チョコボールの壁を崩さないように、
    足音を忍ばせて、唯はそっと、
    ソファーに近づく。
    眠っている若君を見て、唯は驚いた。

      “は、花♡類?!”

    マイクロファイバーの
    ピンク色のフリースで、
    白馬のぬいぐるみを抱いて
    眠っている若君は、まさに、
    幼心に憧れた王子様そのものだった。
    そのフリースには、
    羽木家の紋が刺繍されている。

     ”そう言えば、フリース、
      完売だった。
      2時間足らずのイベントで、
      200枚予約。
      おまけに、店内の
      フリースコーナーも空っぽ
      なんて。”

    ふと見ると、
    ソファーの下にDVDが落ちていた。

     ”信長協〇曲”

    その主演は、言わずと知れた、
    ”小〇旬”。

    信長役の人気俳優ランキングに、
    堂々のベスト3入り。

      「若君、これ、見たんだ。
       それで”信長”に。」

    夕食後、若君は早々と寝室へ。
    それを待っていた様に、
    覚と美香子は、唯と向かい合う。

    「今のお前には、若君しか
     目に入らないだろうけど、
     自分の将来だ。
     ここは、冷静に
     考えるべきじゃないか?」

     「実はね。お母さん、
      今日はちょっと、
      感動しちゃった。
      先生方が、唯の事、
      あんなに真剣に考えて
      下さってたなんて。」

      「でも。
       コーチが言うほど、
       甘くないと思う。
       結局、冬季大会の
       結果次第だし。」

    「珍しいじゃないか。
     お前が慎重になるなんて。
     いつもなら、考えるより先に
     突っ走るのに。」

     「ほんとね。
      “戦国武将の妻”が現実で、
      “箱根駅伝”が夢なんて、
      何だか変。」

    美香子の言葉に、覚が笑う。
    唯もつられて笑った。
    その唯を、美香子が真顔で見つめる。

     「ねえ、唯。
      もし、永禄で暮らす事に
      なったとして、
      若君が、いつか、その・・・
      討ち死・・・なんて
      事になったら、どうする?」

      「え?何それ。
       そうならないように、
       私がそばにいるんじゃない。」

     「お母さんね。少し、
      調べてみたの。戦国時代の事。
      信長が暗殺された後の秀吉って、
      かなり残酷な方法で、
      各地の城攻めをしてる。
      たとえ、城が落ちなくても、
      攻め込まれた城の奥方や子供は、
      人質にとられたりするらしいし。
      信長って、女性関係は、
      帰蝶様にずいぶん遠慮してた
      みたいだけど、
      秀吉は、手あたり次第。
      特に、信長の妹のお市の方に
      執心して叶わず、
      余程悔しかったのか、
      その娘の茶々を側室にしたの。
      だからね。悪い事は言わない。
      唯は、平成でも、、
      生きていける様に
      しておいた方が良い。絶対に。」

       「お、お母さん、
        そんな心配してたの。
        私が秀吉の人質になるとか?
        ありえない!考えられない!
        そんなの、あるわけ・・・」

      「実際、あったんでしょ?
       高山の人質になった事。
       阿湖姫の身代わりに。」

       「確かに、そうだけど。」

    「いずれにせよ、今後も、
     行き来できる様にしないとな!」

    そこへ、風呂上がりの尊がやって来た。

    「尊!」

     「尊!!」

      「たけるう~!!!」

       「な、何?揃いも揃って。」

    父と母と姉の迫力に、尊がたじろぐ。

    「お前、姉が、箱根で走る姿、
     見たくないか?
     俺は見たい!」

       「は?」

    「唯が人質になったりしたら、
     大変でしょ?!
     それより、教師の方が良くない?
     歴史の!」

      「人質?
       教師?」

     「絶対イヤ。秀吉なんて!
      考えられないから~!」

       「何故、そこで豊臣?
        若君の当面の敵は、
        織田だろ?
        っていうか、とうとう、
        家族がおかしなことに!」

    「早く作ってくれ!」

     「省エネ高性能の!!」

      「タフな新型起動スイッチ
       次世代家族対応型!」

       「えええええ????」

       ・・・・・・

    その年の秋、何故か尊は馬上にいた。
    ずっしりとした兜に、首が沈み込む。

    10月とはいえ、
    日差しはまだまだ強い。
    重い甲冑の中は、サウナ状態だ。

    “甲冑が、こんなに重いなんて。
    予想を超えまくってる。
    若君、良く戦えますね。
    こんな格好で。
    戦術を練るより、
    甲冑の軽量化が先なんじゃ。“

    朦朧とする意識の中で、
    幻覚の中にいる尊は、
    若君に語りかける。

    そして、とうとう、気を失った。

    「カーーーット!!!」

    福〇監督の野太い声が響く。

    “よろずや”の店長が、
    尊に駆け寄った。

     「凄いじゃないか!尊君~!
      迫真の演技だったよ!
      尊君。尊君?
      おい、どうした?」

    尊の体が、
    頭から落ちそうになるのを、
    店長が抱え込む。

     「やべえ!
      誰か、大急ぎで
      濡れタオルと氷持ってきて!
      脱水みたいだ。」

    撮影スタッフがわらわらと
    尊の周りに集まってきた。

    ここは黒羽城公園。
    若君が提案したZ〇R〇のイベントが
    大当たりで、とうとう地元の
    観光協会まで乗り出し、
    プロジェクションマッピングで、
    黒羽城を再現する企画にまで
    発展したのだ。
    その中に取り込む映像の一つとして、
    羽木九八郎忠清の出陣シーンが
    選ばれた。

    企画当初は、その若君本人が撮影に
    参加するはずだったのだが、
    映像監督のスケジュール調整で、
    撮影が遅れに遅れ、
    とうとう姉と若君は、
    撮影前に永禄に飛ぶ事に。

    そして、アレが再発動されたのだ。
    そう、速川家一同の必殺技。

     「尊!」
      「尊!!」
       「たけるう~!」

    ここまでは、僕もなんとか
    かわす術を身に着けた。
    ところが、今回ばかりは、
    とどめの一撃が僕を襲った。

    「許せ、頼む。尊。」

    若君に見つめられ、
    金縛り状態になった僕は、
    引き受けてしまったのだ。
    そう、まさに、うっかりと。

    重い瞼をやっとの事でこじ開けた
    尊の視界に、羽木家四天王、
    筆頭家老天野に扮した“よろずや”の、
    銀の字ではなく、花♡類キャラの
    店長のどアップが飛び込んできた。

    “わーーー!近い!近すぎる!!
    てか、やっぱり、よく似てる。
    キュンポイントつかみ放題って
    こういう事?”

    呆然としている尊に、
    ”花♡類”が甘い声で囁く。

    「気が付いた?
     ごめんね。無理させちゃって。
     でも、いい絵が取れたって、
     福〇監督、すっごく喜んでたよ。
     もう早速、次回作のプラン
     立ててる。
     街ぐるみの大イベントに
     なりそうだね!
     尊君、次も頼むね♡」

     “まじっすか?
     無理っす。
     次はもう勘弁して。
     それには、呼び戻さないと。
     若君を。
     頼む!未来の僕!
     早く、一日でも早く
     タフな省エネ新型高性能次世代
     ・・・あれ?あとなんだっけ?
     もう、なんでもいい。ともかく、
     新型起動スイッチを平成に・・・“

    うわごとをつぶやきながら、
    尊は、また気を失った。
    “花♡類”の腕の中で。

    「お、そのショットいいねえ。
     そのまま。そのまま。」

    福〇監督が、なにやら嬉しそうに、
    自らカメラを回す。

    その後、出来上がった
    プロジェクションマッピングの
    映像を見て、
    唯が嫉妬の焔と化す事を、
    この時の尊は、まだ、知らない。

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    ちょっとトラブル

    投稿作業中に、操作ミスで消えました。
    先に投稿される方がおられましたら、
    どうぞ、ご遠慮なく~。
    夕方、またチャレンジします。

    追伸:何とか編集できたので、
    投稿しました~。

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    これから投稿します。

    投稿直前に、大きな地震。
    避難中の方がおられましたら、
    お見舞い申し上げます。
    停電で、信号が消えてしまうのは、
    何とかならないものでしょうか。
    改良して欲しいものです。
    未来の尊にお願いしたい位です。

    てんころりん様
    いつも感想を有難うございます。
    励みになります。
    お礼が遅くなりすみません。
    目次やこれまでの要約は
    まだ作成していなくて
    そちらもごめんなさい。

    ぷくぷく様
    作品が消えてしまうのは
    呆然自失ですよね。
    アップされるのを楽しみにしてます。
    悪丸は、ナイスキャラですよね。
    夜討ちに出かけた爺たちを
    救出に向かうシーンを
    思い出します。
    煙玉の煙の中、千原様を背負い、
    唯にぶつかるシーンの、
    セリフがリアルで。
    本当に痛かったんだろうなと。
    ゴーグル付けてるのは、
    悪丸だったはずなのに。

    夕月かかりて様
    連作に続き、新作も!
    凄いパワーですね。
    敬服いたします。
    ドラマSPでは、若君は11月に。
    でも原作では2月に亡くなった事になっています。
    若君と唯が、二人で現代に飛んだ
    日付は、原作では
    明記されていません。
    なので、原作をもとに
    二人が平成に2月前後に
    戻って来たとすれば、
    バレンタインを二人で過ごすのも
    違和感はないと思います。
    ますますラブラブな二人。
    楽しませて頂いてます。

    では、これよりおばばも、
    投稿いたします~。

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    二人の平成Days46~22日7時30分、扉が開く

    遠足かも。どっちが引率かわからないけど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人、着替えました。

    覚「なるほど、眼福はわかるな」

    尊「お姉ちゃん、若君を守るのを相当頑張んないと」

    唯「えー。ねぇ、私の服装にコメントは?」

    尊「ない。若君にはあるんじゃない?…あ、黙ってると思ったら、またときめいてるし」

    若君「…あ?ん、何か申したか?」

    尊「コメントは差し控えます」

    美香子「唯、髪はどうしたいの」

    唯「イヤリング着けるから、耳が出るようにして欲しいな」

    美「んー、じゃあ前髪は残して、横を編みこんであげよう」

    唯「やったぁ、ありがとう」

    美香子の手が、唯の髪を少しすくっては編み、すくっては編みして顔周りに三つ編みが出来上がっていく。

    唯「たーくん、そんなにじーっと見られると恥ずかしいよ」

    若「まさか、母上も術の使い手とは」

    美「あら~。なんか凄い人になった気分ね」

    お弁当、出来ました。

    覚「いつものリュックで持ってくのか?」

    唯「そのつもりだよ」

    覚「水筒もあるから、案外重いぞ」

    若「わしが持つので大丈夫です」

    美「じゃあ唯の鞄は?」

    唯「このリュック」

    いつものリュックに比べて、かなり小ぶり。

    美「まぁ、合格ね」

    唯「良かったぁ。しゃっ!」

    美「支度は完璧?ならちょっと待ってて」

    唯「ん?」

    芳江とエリが来た。

    芳江「んまぁ~、なーんてかわいらしいカップルなんでしょ!唯ちゃん、若君、よーく似合ってますよ」

    エリ「初々しいわね~。赤もとってもお顔に映えて綺麗。最後にこんな、天使みたいな姿が見られるなんて」

    美「お二人に、少し早く出勤していただいたのよ」

    唯「あっ、そうなんだ。ありがとう~」

    芳「私達は、お会いできるのが今日が最後だから」

    若「芳江さん、エリさん、今まで大変お世話になりました」

    エ「嬉しいわ~ホント、楽しませてもらいました。ありがとう。では、お元気で」

    芳「お達者でね」

    美「では、急いで駅まで送ってきます。さっ、出かけるわよ」

    唯「はーい。じゃあたーくん、参るぞ~」

    若「ハハハ、では、行って参ります」

    尊&覚&芳&エ「行ってらっしゃーい」

    車を見送った。

    尊「お父さん」

    覚「ん?」

    尊「若君、デレデレだったね」

    覚「おー、顔にメロメロって書いてあったぞ」

    尊「ははは。いい思い出になるといいね」

    覚「そうだな」

    駅に到着。

    美「二人きりなんだから、唯は若君を、若君は唯を守るのよ」

    唯「心得たっ」

    若「心得ました」

    美「二人ともいい笑顔ね。行ってらっしゃい」

    いよいよ自動改札を通ります。

    唯「あそこ今、入口がふさがってるじゃない。でね、カードをその光ってる所に当ててみて」

    いつものように、素直に言われた通りにする若君。ゲートが開いた。

    若「おおっ、動いた」

    唯「これで開くの。通って」

    若「急いでか?」

    唯「普通に歩けばいいよ」

    そろりそろりと通る。通過したらゲートが閉まった。

    若「おおっ」

    唯「そんな感じでーす」

    後ろから、唯も入ってきた。

    若「慣れておるのう」

    唯「慣れてはいないけど、学校の部活の大会とかしょっちゅう行ってた時に使ってたから。だから家にあるはずなんだけど、たぶんお母さんの事だから、買っちゃえ~って思ったんじゃないかな」

    ホームで電車を待っている。

    若「先程の話じゃが」

    唯「ん?改札?カード?」

    若「学校じゃ」

    唯「あ、そちらの話」

    若「…もう行かぬと決めたのじゃな」

    唯「バレてたかぁ」

    若「済まぬ、唯。わしの為に、様々な事を辞めたり、諦めたりさせておる」

    唯「いいの。だって、それは嫌だから行かない、って言ったら困るでしょ?」

    若「それは、身を裂かれる思いじゃ」

    唯「うん、だから気にしないでね」

    急に、抱き締められた。

    唯「えっ」

    若「わしが、唯を守る」

    唯「ありがとう。私も、たーくん守るからね」

    若「離さぬ」

    唯「うん。絶対そうしてね。たーくん」

    若「なんじゃ?」

    唯「ここでは…恥ずかしい」

    若「そうか」

    腕を緩めたところに、ちょうど電車が入ってきた。

    唯「じゃあ行こっ」

    出発します。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    どこに向かっているかは、次回。

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    二人の平成Days45~22日土曜7時、ピッとね

    電車は初めて、でも最後なの。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は待ちに待ったクリスマスイブイブイブデート。朝ごはん食べてます。

    唯「お母さん、後で、髪結んで欲しい」

    美香子「あらそう、いいわよ」

    覚「駅には何時だ?」

    唯「8時に家出れればいいかな」

    覚「じゃあそろそろ作るか」

    唯「やったぁ、お弁当、お弁当~」

    若君「楽しそうじゃ」

    食卓も片付け終わりました。

    美「そろそろ着替えるわよね。二人に、渡す物があるの」

    唯「なに?」

    美「まずは唯に」

    袋が出てきた。

    唯「え?何だろ」

    タイツが複数。柄が入っている物が多い。

    唯「え!すごーい、かわいい~」

    美「ワンピースに合わせて穿いて欲しいな、って思って、買い揃えちゃった」

    唯「えーどうしよう~、たーくんどれがいい?」

    若「そうじゃな」

    唯「え」

    若「ん?」

    唯「選んでくれるの?」

    美「何よそれ。聞いたのは唯の方でしょう」

    尊「僕が進言した」

    美「あら、急に」

    若「尊に、わからぬのは致し方ないが、求めに出来るだけ応えるのも優しさとな」

    唯「えー、なんて嬉しいコトを~ありがとう!尊」

    尊「どういたしまして」

    唯「じゃあ、たーくんどれがいい?」

    若「これはいかがじゃ」

    唯「これ?」

    白地に、パステルカラーの水玉が散りばめられていて、少しラメが入っている。

    美「あら、かなりラブリーなのをチョイスね」

    唯「して、その心は?」

    若「夜降った雪が、朝日に照らされ、溶ける間際の輝きのようじゃ」

    美「まあ、なんて叙情的」

    若「雪だるま、の耳飾りに合わせての」

    唯「えー!すごい、たーくんセンスいい!」

    若「扇子?」

    唯「そう、扇子扇子」

    尊「通じてるのか?」

    美「ブーツがキャメル色だから、いい感じよ。でね、もう一つは二人に」

    色違いの定期入れが二つ。

    唯「え?何、定期?あー、ICカード?」

    美「そう。今日は電車も乗り継いだりするから、ピッって通れる方がいいでしょ。券売機で毎回買ってもいいだろうけど、若君も覚える事が少ない方が楽だしね」

    唯「そっか、ピッで通れるから」

    美「ただ買うだけでも良かったんだけど、記念になるかなって思って…カードをよく見てみて」

    唯「え?あー、名前が入ってる!って事は、たーくんのは?」

    若「どこじゃ?」

    唯「あ、これこれ。ハヤカワタダキヨ、って書いてあるよ」

    若「なんと」

    美「ごめんなさいね、若君。記名式を買う時は連絡先を登録しなきゃいけなかったんで、写真館の時と同じにしたの」

    若「これは…母上、ありがとうございます」

    唯「羽木が良かった?」

    若「いや。速川で嬉しい」

    若君が、カードの名前の部分を感慨深く指でなぞっている。

    美「じゃあ、そろそろ二人とも着替えてらっしゃい」

    若&唯「はいっ」

    美「ん~いい返事だこと」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    このままだと、カードの名前がピッだと勘違いされそう。

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    二人の平成Days44~18日火曜17時、冬に遊ぶ

    クリスマスイブイブイブデートの前に、デート服を買った際に唯が話していた、イヤリングを買った時の様子をお送りします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ヘアアクセサリーなどを売っている、ショップに到着。

    若君「おなごは、かんざしや櫛が好きじゃの」

    唯「え?誰かに贈ったりしたの?」

    若「してはおらぬ」

    唯「ホントかなぁ」

    若「してはおらぬし、今もわしが支払う訳ではないゆえ、贈った事にはならぬし」

    唯「いいの、たーくんが選んでくれた~ってのが嬉しいから」

    若「そうか。しかし、此処は眩い場所よのう」

    様々なアクセサリーが並んでいる。ライトが当たっているため、まぶしい位だ。壁に全面貼られた鏡に、光を集めた若君が映っている。

    唯 心の声(わぁ~綺麗。たーくんが)

    鏡の中の、若君に見とれる唯。

    唯 心(あ~周りが霞んで見える、綺麗過ぎる~。そんなたーくんは私のもの。私は、たーくんのもの。いや~ん、ぐふふ)

    若「唯?」

    鏡の向こうから、若君が声をかける。

    唯「あっ、なんでもないですぅ」

    しばらく店内を眺めていたが、あるイヤリングに目が止まった。

    唯「かーわいい!雪だるまみた~い」

    真珠を模した丸い玉が、上下重なりぶら下がって揺れる。上が小さめなので、確かにそう見える。

    唯「ねっ、雪だるまみたいでしょ?」

    聞かれた若君が首を傾げている。

    唯「え?何?」

    若「雪、だるまとはなんじゃ?雪はわかるが」

    唯「え~?!えっ、だるまがわからない?」

    若「わからぬ」

    唯「え~、歴史ありそうなのに。戦国時代にはなかったのかなあ」

    スマホで検索。

    唯「あ、なかったみたい。たーくん、ごめんね」

    若「それは良いが、そのように唯が喜ぶ、雪だるまとは何じゃ?」

    唯「あー、こんな感じ」

    画像を見せる。

    若「ほぉ。なるほど。雪でこのように形作るのじゃな」

    唯「うん!小さい頃、庭に雪が積もると、尊と一緒によく作ったんだよ。でも、どっちかというと、雪合戦に変わっちゃってたけど」

    若「合戦?幼子らがか?」

    唯「あっ、そういえば戦でした。雪を丸めて玉にして投げ合うから、痛くないよ。冷たいだけ」

    若「そうか。それは良い思い出じゃな。ならばそれにするが良い」

    唯「これでいい?待って、着けてみるね」

    頬にかかる髪を耳にかけ、着けて顔を揺らすと一緒にゆらゆらと。

    若「かわいいよ、唯」

    唯「気に入ってくれた?」

    若「あぁ。唯は何をしていてもかわいいがの」

    唯「やだぁ~どこでそんな返し方覚えたの?でも超嬉しい!」

    買い物終了。帰宅途中。

    唯「あの、これから向かう緑合も、雪がよく降るかなあ」

    若「そうじゃな…訪れた事はないが、山合いであったと思う」

    唯「そっか。じゃあ雪が積もったら、雪だるま作ってあげるね」

    若「共に作ろうではないか」

    唯「わぁ、楽しみ!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    二人の熱で、即解けるって。

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    あれ?

    先程、このアシカフェ内の、スポンサードリンク(広告)に、電子書籍の広告で、アシガールの単行本の表紙が11巻15巻10巻の三つ表示されました。

    原作を読んでいなくても、アシガールと検索すれば漫画の情報は出るので、毎回、こんな表紙かーとは思っていましたが、最新刊15巻を見て、ん?

    あれ?この打掛、「桜が全体にあしらわれたパステル調の色打掛」とも言える。私が昨年12月1日に投稿した、二人の平成Daysのno.358、写真館で唯が決めた和装?

    私がイメージしたのは、もっと淡い色調だったんですが、元々あの表紙のお着物、原作に既に登場してたんですかね?それを私がどこかで見て、脳裏に焼きついてたのを描いちゃったのかしら。

    それか私が先?なぁんて。着物の柄は、すごく斬新でもない限り、どうしても似てくるものとは言えますね。

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    無題

    無駄・・・またやっちまいましたぁ( ;∀;)
    本編やSPの間の妄想は、日にちも分かっているので日にちですが題にしました(^_^)
    無題はSPの終った後の妄想で、現代に半月行っている設定なので、題をどうしようかと考えても良い言葉が浮かばず無題にしてしまいました(;_;)
    過去に自分で物語を幾つか書いた事がありますが、内容の前に、先に題が浮かんでという事も有り、自画自賛ですが〔心石〕と書いて〔ほうせき〕と読ませたり、〔人生〕を〔みち〕等と正規に読ませずに題を。でも今回はどうにもこうにも見付からずで(;_;)
    他に考えている事もありますので、その時は良い題が浮かぶようにしますね(*^_^*)

    インターネットのニュースで映画のタイトルが【アーク】と内容に
    えっ!って思いました、悪丸の名前を考えた時に母国は分かりませんがアフリカと仮定して、良くある名前にアークというのが有って、ドイツ語でイーグル(わし)だと知りカッコイイから付けたのです(^_^)
    不老不死の話ですが、以前に不老不死に悩む男性の物語を描いた事がありました。
    同じ様な事を考える人いるんだなぁと思いましたとさ(^_^)

    てんころりんさんの提案を、次に妄想物語を書く時の参考にさせて頂きます(^_^)
    頑張りま~す(^O^)/

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    ちょこっとだけ

    ぷくぷくさん
    ここ⤵️
     『無駄のラストの所と…』
     『無題のラスト』の間違いですよね。

    シリーズ『無題』が川の本流で『宗熊の決意 第一章』は支流なんですか !!
    今となると『無題』ってタイトル、ちょっと残念です。
    追伸:解説や案内は『宗熊の決意 題二章』に合わせて出して下されば大丈夫です。

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    先にちょこっとだけ

    てんころりんさん
    ありがとうございます(^_^)
    時間の合間にちょこっとだけ(^_^;)
    無題が川の本流だとして、宗熊の決意第一章は支流で
    無駄のラストの所と合流するような感じで書きました(^_^)
    感想やまとめる事等の学習は苦手な私なので、
    有難いご意見は噛みしめるようにゆっくり考えてみようかと(*^_^*)
    少々お待ちください(*^_^*)

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    (新)二人のもしもDays1、バレンタイン直前篇

    とうとう、妄想が暴走になりました。

    平成Daysの空気感をそのままに、二人に、本来現代に居ない日付のイベントを楽しんでもらおうという算段です。今は確か?とか、この頃永禄では、は全てとっぱらいました…。
    なんでもありの様相ですが、ドラマの続きというよりは、勝手に面会時間はずらすわ呼び名は変えるわでお送りしている、平成Daysの進化版、としてお送りします。
    「創作」倶楽部の名のもとに、羽目を外しましたので、ご不満な方は、どうか跨いで通過してくださいm(._.)m

    ひとまず、今の時季に合わせたお話を。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    バレンタインが近づいた日曜の昼下がり。速川家キッチン。

    唯「たーくん、アーモンドチョコ好きだからさぁ」

    美香子「うん」

    唯「それが、すっごく大きかったら、喜んでくれるかなって」

    美「大きくね。いかにも唯が考えそうな」

    唯「だから~、作りたい~!」

    美「まぁ、まだ、作れって丸投げされるよりはいいけど」

    唯「で、考えたんだけど、元々のアーモンドチョコを芯にして、溶かした別のチョコをまわりにつければいいかなって」

    美「はいはい、それなりに手作り風に考えたのね。まぁ、やってみましょ。お父さん達が買い出し行ってる内に」

    板チョコをボウルに入れ、湯せんにかけている。

    美「温め過ぎると、分離するわよ」

    唯「どのくらい?」

    美「50℃くらいね。ちゃんと調べた?」

    唯「ざっくりとは。どうやって測るの」

    美「温度計あるから」

    唯「あるんだ」

    美「それくらい聞きなさい~。もー、行き当たりばったりなんだから!」

    チョコ、母のお陰でいい感じに溶けました。

    美「一粒、中に落としてみて」

    唯「うん、それで?」

    美「スプーンで転がしたらすくって、バットに並べる」

    唯「わかったー」

    美「そこ、垂れてる!」

    あちこちチョコが飛びながらも、順調に進んでます。

    唯「二、三個一緒に入れてくっつけたら、もっと大きくなるよね」

    美「なんでそんなに大きくしたいの?プチサイズを可愛くデコレーションしよう、って気はないの?」

    唯「一緒に食べるから。私は、大きい方がいい~」

    美「あれま。バレンタインデーの意義からかけ離れてる気はするけど、若君ならどんな風でもニコニコしてくれるわよね」

    唯「やってみよっ」

    徐々に出来上がってます。

    唯「なーんか、形が不格好だなー」

    美「バットに接してる部分は平らになるしね。固まるのに時間かかるし」

    唯「全部上から垂らすとか。まいっか、残り少ないし、ボウルのここにこすりつけてと」

    美「あ!もう~なんで、手で直接触るの!」

    唯「めんどい」

    美「はぁ~。面倒だなんて、若君に失礼でしょ!もー、作業終わるまで他の物触っちゃダメよ!」

    尊「ただいま~」

    若君「ただいま帰りました」

    美「あれ?思ったより早い」

    唯「えーっ!あとちょっとなのに~」

    若君と尊が、買い物袋を抱えて帰宅。

    尊「甘い香りがすると思ったら、男子、というか若君が見ちゃいけない作業中だったみたいだね」

    若「種の入った甘味、か?」

    テーブルの上に、見覚えのある空箱。

    覚「ただいまー、おっ?バレンタインの準備か」

    美「今日は買い物早かったわね」

    覚「男三人だからな。あれこれ悩まず、ひょいひょい運べる」

    唯「そのせいで、全部バレバレだよぅ」

    若君が、チョコまみれのテーブルの上を不思議そうに眺めている。

    若「これは、何という有り様じゃ?」

    唯「バレンタインデーの…」

    尊「それ、説明に相当時間かかるけど」

    唯「もー、それがわかってたから、帰るまでに終わりたかったんだよぅ」

    美「急いでたとはいえ、こんなにあちこちチョコ飛ばして~!」

    尊「若君、なんかすごい事になってますが、この有り様でもわかる事が一つあります」

    若「申してみよ」

    尊「お姉ちゃんは、若君のためにかなり頑張った模様です。なんで手がそんな状態かは、謎だけど」

    唯「おっ、尊うまくまとめたねぇ。正解~。へへへ、ほらたーくん見てっ」

    目の前に勢いよく手を出すので、若君は少しのけ反った。

    美「唯~、あちこち付いたら大変だから、じっとしてて!それ、服に付いたら中々取れないのよ!」

    唯「チョコ味の、唯でーす。なんちって」

    若「…頑張った、のじゃな」

    唯「うんっ」

    若君、唯や周りの様子を見ながら、じっと考えていたが、

    若「これが最良か…」

    唯「ん?」

    若「唯、うまそうじゃの」

    唯「そう?なんとかできて良かったよぉ…へっ?えーっ!!なんでー?!」

    唯の腕を掴み、指をパクっとくわえている。

    若「甘い」

    唯「えっ、えーっ!!」

    ジタバタするが、手首はがっつりホールドされていて、指一本一本、キレイに舐められていく。

    尊「なんか、直視できない」

    美「さすが若君、キュンポイントがわかってるわ」

    覚「へ?そうなのか~?」

    美「だって、並んでるチョコよりも、唯の方が良かったんでしょ。これで中身も食べたいなんて、言われようものなら…あらん」

    覚「妄想が激し過ぎるぞ」

    若君が手を離した。

    若「この位かの。ほれ、手を洗うて参れ」

    唯「はっ、はい」

    洗面所へ走って行った。

    尊「若君、あの」

    若「なんじゃ?尊」

    尊「なんで指舐めたんですか?」

    覚「核心を突く質問だな。いやそのまんまか」

    若「母上が大層ご立腹で」

    美「え?私?」

    若「唯が不憫であったので」

    美「あら優しい」

    若「手さえ、何とかすれば良いかと」

    尊「そうだったんだ」

    美「なあんだ」

    尊「お母さん~」

    若「何がどうと?」

    尊「いえ、実に健全な理由だったなと」

    若「健全?」

    尊「お母さんが変な事言うから。中身も食べたいんじゃないかって…ってこの説明、僕にさせないでよー!」

    若「中身、中身…なるほど」

    尊「今、不健全な顔にスイッチした気が?」

    唯「あー、びっくりした~」

    若「唯」

    唯「はい?」

    若「後程、中身をいただく」

    唯「中身?なにそれ。まいっか、わかったー」

    尊「うひゃー」

    美「まずは片付けましょ。きちんとチョコも固めないと」

    唯「うん。後で、できたチョコ少しあげるね。たーくん早く食べたいでしょ?」

    若「どちらかと言えば中身が良いが」

    美「はいはい、若いわねー」

    覚「ボウルこっちにくれ、洗うから」

    尊「なんなんだこの、後程話もサラっと進んでく空気は」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    速川家はこの両親ありきでいつも平和。

    通常の、二人の平成Daysは、また二日後に再スタートします。

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    返信
    スタートが12月8日の件

    既に半月経ってるのはなぜか。

    一つめは、投稿日と描いている日付を合わせたかった。二年前に二人が居た日付と同じに。ちょうど11/23に初投稿していますが、そのまま11/23の話から始めると、二度と日付は一致しません。一つの日付で複数話ありますからね。途中、少しだけ一致して、手前味噌ですがリアルさを感じられて小躍りしました。以後は、ほとんど合ってませんが。

    二つめは、私が描いているのは、永禄に戻る事を決めた後の二人だからです。

    既出のno.370で、これらやSP内での日付の見解を述べてます。そちらと合わせてご覧いただけるとわかりやすいですが、

    11/23 平成に到着

    11/25 大相撲千秋楽(no.358内の台詞に出てくる)

    11/27? 平成か永禄かの選択を迫られる

    11/29? 永禄に戻る許しを得る

    →許しを得て即、写真館の予約。無事1日と9日を押さえた

    12/1 写真館で試着

    12/3 覚の指輪話(no.375内の回想)

    12/8 この日の午後から平成Daysスタート。夜は手巻き寿司パーティー(逆算したらこの日しかなかった)

    12/9 家族写真を撮りに行く

    じゃあ、11/29スタートじゃないの、となりますが、日付が明確でない。実際は12/1スタートです。物語は8日→1日→9日と進みますので。8日のパーティー内で、翌日は写真撮りに行く話が出ないと、いきなり1日の話はできないですから。

    これで説明になりましたかね?日付も物語も、終わりに近づくにつれてギュっとなっております。

    新?シリーズのお知らせ

    ご新規様への説明をしてすぐで恐縮ですが、この後、通常の平成Daysはお休みして、初投稿します。てんころりんさんが、「創作は自由!ドラマと関係なく現代の二人を書く事だってありますし」とおっしゃられて、今日出そうと思っていた私は、どこに間者潜んでた?とギクッといたしました。

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    返信
    no.507の訂正.補足です

    ①忘れているので, 少し読むつもりで検索システムを使いましたが『宗熊の決意 第一章 (7)』より前は出ません。探しました。
    (1)~(7)の投稿Noを知らせるのも一案ですね。

    ②しかし長いので, 読み直しは期待できないと思います。続きを直ぐ読めるように、いつの時期のどんな物語りか、解説を切望します。?

    ③時系列の順番は、前のシリーズ『無題』の後に『宗熊の決意』が続くと私は誤解してました。
    『無題』はドラマ(SP)の後の物語で、唯と若は黒羽城へ戻った後、成之,阿湖,爺様 他7人と、再び現代に逃れる事になり、一月現代で過ごして無事に黒羽へ。
    原作と全く違った展開が楽しかったですが、唯と若君は、現代から “二度” 戻る事になり、私. 混同してしまいました。?‍♀️

    ④ぷくぷくさんは:前のシリーズ『無題』のラストに宗熊と八次郎を登場させて、そこに現れる迄の熊の事を執筆中と書いてました(no.263)
    それが『宗熊の決意』ですね。

    ⑤創作した登場人物~*
    ・八次郎:三郎兵衛の弟。三郎兵衛も古いアシラバでないとピンとこないかもです。
    ・諸橋則次の娘·ゆめ
    ・相賀成之:相賀一成の弟でしたね。会話文で、男:「…」とあるのは、この人ですね?
    第二章でも登場でしょうか?更に新しい人物も出ますか?
    よく小説のカバーの折り返し部分に、登場人物の紹介があったりします。そういうのが欲しいなぁと思いました。

    色々注文して, すみません。何卒よろしくです?

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    返信
    ぷくぷくさん

    今日は“作品案内”の事だけにしますね。
    ぷくぷくさんは読み物風に、幾つかまとめて、ブロックで何回かに分けて投稿されてます。
    間隔が空いたので、次回に、何月何日 No…の続きという案内だけだと、読む方は忘れているし、新しい方には厳しいんじゃないかと・・
    『宗熊の決意』時期はいつの物語か、どういう状況から始まったどんな物語りか、解説して頂けたらと思います。
    ずっと読んでいる私も あやふやです。
    皆さんに向けて再開の時に よろしくです(*^^*ゞ
    ★2/7 書き換えます★

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    夕月かかりてさん、ありがとうございます

    「二人の平成Days」は4ヶ月続きますね。
    タイトルに番号と日付があれば、頁を繰って探して追えるでしょ.って話ですが、半端ない量なので案内があった方が親切ですね。
    創作は途中から読んでもよし.という方もいるでしょう。
    私なら、全体が見えないと不安ていうか、どんな経過で進んだのか知りたいし、ピックアップして読むので、目次や案内が欲しいです。
    投稿No順に一つ一つ書かなくても良いかなと思ってましたが、ご本人が書くと流石に分かりやすいです❗?
    この調子でお願いします。?

    それで・平成Daysは、SPで二人が現代に居た2018/11/23~12/23の創作で、日付を想定して書いたこと、12/8からはじめた理由、2ヶ月前に書いてますが、あった方が良くないですか?
    主に初めて読む方への案内なので。
    創作は自由!ドラマと関係なく現代の二人を書く事だってありますし。

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    返信
    夕月かかりてさん

    私の話は、裏付け無しの単なる妄想なので
    (^_^)
    色んな角度から、色々な物語が生まれるアシガールは恐るべし(^○^)

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