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    二人の令和Days82~13日火曜8時、活用します

    完全に身に付くまでの、グッズ。
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    唯が目覚めた。あい変わらず、朝起きるのは遅い。

    唯 心の声(早起きすると、たーくんの髪を結べるって特典がぶらさがってても、起きらんないんだよねー)

    階段を下りる。下りきって、一歩リビングへ踏み出したのだが、

    唯 心(ん?)

    思わずバックして、階段に戻った。

    唯 心(なに?なんか今…)

    今度は、そーっと顔だけ出して様子を覗く。

    唯 心(やーんなになに!たーくんが、現代男子になってる~!)

    食卓で、若君と尊が談笑している。若君が、小さいプレイヤーを手にしており、耳からはイヤホンのコードが垂れている。

    唯 心(いつの間に音楽に目覚めたの?軽ーくリズムなんか取っちゃって!J―POP?まさかの洋楽?!んもー、たーくんったらぁ!)

    ようやく移動してきた。

    唯「おはよっ」

    若君「おはよう、唯」

    尊「おはようお姉ちゃん」

    唯「たーくん、なに聴いてるの?」

    若「お、これか。唯にも聴かせてやろう」

    イヤホンを外し、唯の耳へ。

    唯「えー、なんだろ~ワクワク。…ん?」

    若「どうじゃ、良かろうに」

    唯「たーくん、これ…」

    若「ん?」

    唯「ラジオ体操第一じゃん」

    若「良いじゃろ?」

    唯「どんだけ好きなのよ。しかも、なんかプレイヤーがレトロな…カセットテープってヤツ?」

    尊「そうだね」

    唯「あんたが工作した?」

    尊「違う。だって、兄さんに止められてるし」

    覚「それ、僕があげたんだ」

    キッチンでは、両親が仲良く朝ごはんの支度をしている。

    唯「はあ?」

    覚「戻ってからも体操を続けるって言うから。リズムとか確認しやすいように、プレイヤー、最新の小さいヤツ買ってあげるって言ったんだけど」

    若「負担をかけとうないので、断ったのじゃ」

    唯「ふーん。で、これは?」

    覚「元々ある物ならいいだろって。古いけど、カセットテープにラジオを録音して、僕のもう使わないプレイヤーで再生してもらおうと。その大きさなら、懐に忍ばせながら運動できるし」

    唯「電源は?」

    覚「電池でもコンセントでも、どっちもいけるタイプだから」

    尊「おもナビくんの、太陽電池使って充電してくれれば」

    唯「はあ」

    若「お父さん、大切に使わせて頂きます」

    覚「プレイヤーも、忠清くんに使ってもらえて喜んでるよ」

    唯「なんなのよ。私のトキメキを返して~」

    美香子「はいはい片付けて、朝ごはんよ~」

    朝ごはん中。

    覚「今日、この後母さんと二人で墓参り行ってくるから、三人で留守番頼むな」

    尊「ついてかなくていい?」

    覚「ん、まぁいい」

    唯「わかったー」

    美「プレイヤーと言えば、おもナビくんだっけ?観てるの?」

    唯「うん、観てる。ちゃんと動いてるよ」

    尊「良かった」

    唯「Blu-rayさぁ、一回全部通して観たんだけど」

    若「お父さんお母さんの有り難きお言葉に、涙して観ました」

    覚「そう?感動させちゃった?」

    唯「夜こっそり観たんだけど、翌朝二人とも、泣き過ぎて目が腫れちゃって」

    若「何事かと、少々騒ぎになりました」

    美「そうなの~」

    尊「太陽電池はどう?調子はいい?」

    唯「うん大丈夫。なんだけどさぁ、あれ、灯籠に乗せると案外目立つんだよ。で、不審物扱いになりそうだったから」

    美「うん」

    唯「さわるな、忠清。ってたーくんに紙に書いてもらって、貼り出しといた」

    美「ぷっ。何それ~」

    尊「兄さんが、いいように使われてる…」

    覚「誰の入れ知恵か、すぐバレるな」

    唯「いいんだよ、だってたーくんの字だもん。文句は言われない」

    若「これで周りに、力関係もつまびらかになりまして」

    美「ホントよね」

    尊「怖ぇ正室だと思われてるよ、きっと」

    唯「えぇ?いいよ、たーくんにそう思われなければ」

    若「唯ほど怖い物は、他にないが」

    唯「やだー!それはやめて~」

    若「ハハハ」

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    続きます。

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    二人の令和Days81~12日13時、月に愛を誓います

    寝不足で満腹なんて、よく起きていられたモンだ。
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    写真館を出た。車内。

    覚「昼、何か食べたい物あるか?」

    尊「朝あんなに食べたから、そうはお腹空いてないでしょ」

    唯「まぁ、そうだね」

    尊「兄さんもですよね」

    若君「あぁ、当分は何も入りそうにない」

    覚「じゃあ、どこも寄らずに、このまま帰るか?」

    美香子「そうしましょ」

    尊「いいの?ワンピースおニューなのに」

    美「写真いっぱい撮ったし。いいわよ。やっぱり家が一番だしね」

    尊「それ、旅行あるあるだな」

    唯「昼はサラっと?また冷麦?」

    覚「またとか言うな。なんなら、そうめんにするが」

    唯「定番のもう一つ?出されても、どう違うかわかんないし」

    覚「麺の太さが違う。そうめんの方が細い」

    唯「へー、そうなんだぁ。って、聞いてもすぐ忘れそう」

    美「ふふっ、なんか…いいわね」

    覚「何が?」

    美「この、何気ない日常会話が、いい」

    尊「こんなしょーもない会話が?」

    美「家族、って感じじゃない」

    覚「そうだな、何も特別じゃないのがいいな。そうだ、唯、尊、忠清くん」

    唯「なに?」

    若「はい」

    尊「何、改まって」

    覚「昨日今日、僕と母さんに付き合ってくれて、ありがとな」

    美「本当。ありがとうね」

    唯「ううん、すっごく楽しかったから」

    若「また新たに様々な経験もさせて頂きました。ありがとうございます」

    尊「で、じきに結果がわかると」

    美「そうね。神のみぞ知る」

    尊「えっ?!やっぱりそうなの?!」

    美「冗談よ。自分で話振っておいて、何よその驚き方は」

    尊「え…」

    全員「ハハハ~」

    夜になった。9時のリビング。尊が風呂から出た。

    尊「あれ?兄さん一人?お姉ちゃんは?」

    若「先程、眠ったところじゃ」

    尊「えっ、早っ。確かに、昼間鶴折りながらウトウトはしてたけど。ゆうべ寝るの遅かったんですか?…って、しまった、聞かなくてもいい事聞いちゃった」

    若「いつ眠りについたかは、覚えてはおらぬ」

    尊「そうですか。それ以上は聞きませんから」

    若君が、夜空を見上げている。

    若「今宵も、月が綺麗じゃのう」

    尊「わぁ、嬉しい!」

    若「嬉しい?…何ゆえに?」

    尊「あの、この前吉田さんが家に来た時に、留学先では英語を話すって言いましたよね。覚えてます?」

    若「勿論覚えておる」

    尊「その英語で、アイラブユー、日本語に訳すと、私はあなたを愛しています、って言葉があるんですけど」

    若「うむ」

    尊「日本人はそんな直接的な言い方はしない、訳すなら、月が綺麗ですね、位にしなさいと諭したという、ある人の逸話がありまして」

    若「ほぅ。それで喜んだと。まことに尊は、才覚がある」

    尊「恐縮です」

    若「実に風情があり、良い話じゃの」

    尊「兄さんには必要ないですよね。だってお姉ちゃんが好き好き言ってるのを、うなずいて聞いてればいいんですから」

    若「いや、わしはお父さんの弟子であるので」

    尊「そうでした。じゃあ直接、愛の言葉を囁いてやってください。あ、この逸話、お姉ちゃん絶対知らないですから」

    若「そうか」

    尊「うわっ、しまった…すいません」

    若「ん?なんじゃ?」

    尊「こんな話、恋愛のレの字も知らない僕が言うのは、ちょっと図々しかったですね」

    若「ハハハ。わしも唯に出会うまでは無頓着であったゆえ、構わぬ」

    尊「ありがとう兄さん。あー、良かった」

    若「良かった?」

    尊「だって、兄さんが元々恋愛マスターだったら、お姉ちゃんの入る隙なく、結果僕達出会えてなかったんじゃないかな」

    若「そうか。確かにそれは幸いじゃった」

    尊「はい」

    若「それにしても、つくづく月に縁があるのう。ハハハ~」

    尊「ははは~」

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    漱石ですね。

    12日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days80~12日11時、可愛くて可愛くて

    79話の前書きで、少し言葉が足りなかったのでここで訂正します。
    創作意欲をかきたてるドラマに出逢えた、を改め、ドラマは勿論大好きでもっと先が観たくてつい創作意欲が湧く、です。失礼致しました。

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    何度も言うが、今は緩んでて良し。
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    ホテルをチェックアウト後、写真館にやって来た。

    若君「訪れるのは久々じゃのう」

    尊「思ったより混んでるね」

    覚「お盆は人が集まるから、この機会にってケースが多いらしいんだ」

    唯「ふーん」

    美香子「唯、ちょっといらっしゃい」

    唯「なに?」

    化粧室。

    美「グロス、持ってる?」

    唯「うん。これ」

    美「白ワンピースだとこのままでもいいけど、今日はひまわりの柄に負けないよう、ちょっと赤みを足すわね」

    口紅を薄く塗った上に、グロスを重ねた。

    美「うん、綺麗」

    唯「わぁ、すごい、ありがとうお母さん」

    男性陣の元に戻ると、ちょうど順番が来て、撮影室に通された。

    覚「おっ、いいじゃない」

    尊「さすがにスッピンで撮影はね」

    若「…おぉ」

    若君は、一瞬ハッとした表情をした後、はにかんだような笑顔になった。

    唯 心の声(喜んでくれてる…もっと早く、ちゃんとしとけば良かったな。ごめんね、たーくん)

    撮影スタート。

    唯「なんかさぁ」

    尊「ん?」

    唯「お父さんのはしゃぎ方が、朝から妙に激しくない?」

    尊「確かに。あ、ゆうべいい事あった?」

    美「それは置いとくけど」

    尊「置いとかれたな」

    美「ご機嫌なのは、これを身に付けてるからなのよね」

    唯「なに?」

    美香子の首元からチラリと見えていたネックレス。隠れていた下の方を引き出した。

    若「それは、もしや」

    尊「結婚指輪だ。そっか、ネックレスに通したんだね。今日はちゃんと連れて来たんだ」

    美「はまんないからといって、お留守番も何だから。唯達の指輪だってお出かけしてるのにね」

    尊「昨日は着物だったから、今日がお披露目なんだね」

    覚「へへ~。いいだろう?」

    唯「うん。みんな一緒に来れて、良かったね」

    五人で撮った後、両親二人で。その後、唯と若君で撮り始めた。

    カメラマン「お二人お若いので、もう少し動きのあるのを撮りましょうか」

    唯「動く?」

    カ「座るご主人の後ろから奥様がハグ、で行きましょう」

    唯「えー」

    準備完了。

    唯「えーい!」

    美「唯~!」

    尊「あー」

    若「く、苦しい…」

    唯「ごめぇん」

    覚「技かけてるんじゃないんだから。加減てのがあるだろう」

    カ「微笑ましいですね。はい、では次は立っていただいて、逆にご主人が奥様を後ろからハグしてください」

    チェンジ。

    若「こう、でしょうか」

    唯「え~恥ずかしい…」

    カ「はい、とてもいいですよ~」

    慈しむような、優しいバックハグ。

    尊「兄さん、あんな顔するんだ」

    覚「なんというか…なんというか、なんというかだな」

    美「ひまわりを包む日の光?」

    尊「そこまで考えて、シャツの色選んだの?」

    美「ううん、偶然だけど…」

    撮影終了。持ち帰る写真を選ぶ。

    唯「やーん、これいい!あっ、これもいい~」

    尊「うるさいなー、わかったから」

    若「…」

    美「照れちゃう?」

    若「心の内も全て、晒しておるような」

    覚「だね。いいんだよ、今はそれで」

    尊「こんなトコでいい?」

    美「いいわよ」

    唯「永禄に、持って行ける?」

    尊「余裕」

    唯「やったー、家族写真も入れてねっ」

    そろそろ帰ります。

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    続きます。

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    二人の令和Days79~12日8時、思案します

    記念すべきアシガール第一回放送から4年ですか…金曜22時にしか出逢わなかった私は、超新参者でございますが、こうして本日も、創作が続いております。
    創作意欲をかきたてるドラマに出逢えた幸せと、このアシカフェでほぼ野放し状態で自由に描かせていただける事に感謝感謝です。

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    それぞれの時代でできる事を。
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    レストランへ移動中。

    尊「お母さん、もしかして、みんなの服の色合わせた?」

    母のワンピースは、ポートネックで肘近くまで袖があり、体のラインを拾うか拾わないか位の、細身の膝下丈。

    尊「そのワンピースが深緑でさ、お姉ちゃんがひまわり柄でさ、僕と兄さんのシャツが、黄色だったり緑だったり」

    尊は緑系のチェック、若君はクリーム色の無地。

    唯「ボタンのあるシャツひさしぶりで、たーくん手こずってたから留めてあげた」

    尊「で、お父さんは」

    覚「いいだろ?」

    白シャツに茶系のベスト。蝶ネクタイに緑色が入っている。

    尊「コーヒー淹れるのが上手そう」

    美香子「ワンピースはおニューだけど、後は元々ある物で考えてみたの。家族でトータルコーディネート、ね」

    尊「写真仕様なんだね」

    朝食は、バイキング形式。

    唯「さー、行くぞぉ~!」

    尊「食事となるとスイッチが入るな」

    唯「たーくんあのね、食べたい物を好きなだけ取っていいんだよぉ」

    美「取り過ぎて残してはダメよ」

    若君「少なく取るのも、構わぬと」

    尊「さすが。大人だ」

    若「しかし、これは…」

    食事が並ぶテーブルが、延々と続いている。

    若「何が何やら…」

    尊「わからない物は説明しますね。お姉ちゃん、もう遥か彼方に進んでってるんで」

    若「世話をかける」

    若君に付き添う尊。

    尊「うーんと。卵だけでも、ゆでたまごもスクランブルエッグも温泉たまごもあるしなー。こりゃ僕だって迷うな」

    若「…」

    尊「ん?兄さん悩んでる?…いや、違うな。もしかして、永禄の皆さんに食べさせてあげたい、とか思ってます?」

    若「それは、思う」

    尊「ですよね」

    若「思う事は、他にも数多ある」

    尊「あー。こんなにいっぱい選択肢も量もあって、贅沢ですもんね。なんか、すいませんって思います」

    若「いや。時代が違うゆえ、良い悪いは一様には申せぬ」

    尊「比べられないと」

    若「わしがすべきは、永禄を生きる民がひもじい思いをせず、平穏に過ごせるよう努める事じゃ。その為には、やはり戦はしとうない」

    尊「それで、千羽鶴に願いをこめるんですね」

    若「この先の世に居る内に、願掛けができるとは思わなんだからの」

    尊「また、手伝いますね」

    ようやく全員揃った。

    全員「いただきまーす」

    美「あら、尊も忠清くんも、お皿が色とりどりね
    ~」

    尊「兄さんが悩んじゃってたから、量少なめ種類多めにした。二人で分け合うよ」

    若「残さぬように頂きます」

    覚「偉いな二人とも。それでも、びっくりするような量ではないけどな。問題は」

    一斉に唯に視線が集中。

    唯「なに?あと一回おかわりして、最後はデザートが基本っしょ」

    尊「お腹出てくるよ」

    唯「そこはねー、エリさんのワンピ最高。いっくらでも入る。だってさー、こんな贅沢たぶんもう一生ないよぉ?」

    尊「んー、まぁそうだね今んところ。でもそれ、一事が万事そうだから、キリがなくない?」

    唯「おかわり行ってくるー」

    尊「聞いてねーなー」

    天井まで届く大きな窓から、レストラン全体に朝日が差し込んでいる。

    美「いい朝よね…。さっき、こんな機会一生ないって言ってたけど」

    覚「うん」

    美「私は、一生なかったであろう様々な体験を、忠清くんにさせてあげられて嬉しいわ」

    若「お母さん…」

    美「あまり、特別な事できなくてごめんなさいね」

    若「いえ、この日々、毎日特別と思うておりますゆえ」

    覚「さすが、一日一日感謝して生きてるんだな。見習わないとな」

    唯「なんの話~?」

    尊「また盛り盛りになって戻ってきた。このヒトも、ある意味一日一日しっかり生きてる感じ」

    若「そうじゃのう」

    唯「みんな、しゃべってばっかだなぁ」

    美「優雅に寛いでるのよ。ほら、今日も空はあんなに綺麗だし」

    朝の柔らかな光に包まれながら、朝食タイムは、ゆっくりゆったりと過ぎていきました。

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    続きます。

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    二人の令和Days78~12日月曜6時20分、リズムに合わせて

    そんなに見つめないで~。
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    静かな朝だ。若君が目覚める。

    若君 心の声(そうか、ここでは鳥のさえずりは聞こえぬか)

    傍らでスヤスヤ眠る唯。

    若 心(ハハッ、やはり、褥の横幅を余す所なく使った寝姿じゃの)

    起こさないようそっとベッドから抜ける。カーテンを開けた。

    若 心(おぉ、下はこのような風景だったのか)

    ビルや、ビルの隙間の家々が見える。

    若 心(それぞれの暮らしが、そこにあるのじゃな。どの時代も変わらぬ)

    時計が、6時25分を指している。

    若 心(お、体操の時間じゃ)

    テレビのリモコンを手に取るが、勝手がわからない。

    若 心(家と違うてわからぬ…)

    なんとか点け、チャンネルも合わせたが、音量の下げ方がわからない。

    若 心(これで下げるのか、いや、上がっておる!)

    時間になり、軽快な音楽が大音量で流れた。

    唯「ひゃあ!なに!」

    唯が飛び起きる。

    唯「どしたのたーくん、あーうるさい!リモコン貸してっ!」

    ようやく普通の音量に。

    唯「あーびっくりした。おはよう」

    若君「おはよう、唯。済まぬ、起こさぬよう努めたつもりが」

    唯「いーよー。私も体操しよっと」

    二人仲良く、ラジオ体操。

    若「共にするのは初めてじゃの」

    唯「そうだね。でもちゃんとできるんだよー」

    若「両親が、皆できるものだと申されておったが、まことにそうであるな」

    最後、深呼吸で終了。

    唯「あー、動いたらお腹空いたっ」

    若「朝飯は何時からじゃったかのう」

    唯「8時からだから、7時50分に着替えて部屋の前に集合だよ」

    若「そうか」

    唯「ふぁ~。やっぱまだちょっと眠いかな」

    若「唯は、また寝るのか?」

    唯「え?」

    若「寝てしまうのか?」

    唯「それ、寝るなって言ってるのと一緒じゃん」

    若「食事まで時間がある」

    唯「ありますねぇ。えーと、いつの間にやら、ずいぶんと…お近くにいらっしゃいますねぇ」

    若「…」

    唯「もー、目で訴えるの、反則!」

    7時50分。部屋の前。

    美香子「おはよう~」

    覚「おはよう、忠清くん、唯」

    若「おはようございます」

    唯「ふぁ~、おはよぉ」

    覚「眠れてないのか」

    美「ふーん」

    唯「なによその、なんか言いたげな感じ!今朝は早く起きたからだよぅ」

    若「そこまで早うはなかったがのう」

    唯「私の話はいいから。あ、お母さんのワンピ、お披露目だねっ」

    覚「どおどお?忠清くん、よく、似合ってると思わない?」

    若「はい。よう似合うておられます」

    美「ダメよ~お父さん、そんな誘導尋問しちゃ」

    覚「ん?ははは」

    唯「超ご機嫌じゃん」

    若「尊が居らぬの」

    唯「あれ、ホントだ。どうした?」

    尊部屋のドアが開いた。

    尊「お、おはよう。遅くなってごめんなさい」

    覚「どうした。珍しいな」

    尊「着替えなきゃいけないのを忘れてて」

    美「おやまぁ。高級ホテルだからそこはね」

    尊「あ、ワンピースそれなんだ。いい色だね」

    美「あらありがと。じゃ、行きましょうか」

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    続きます。

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    今までの二人の令和Days、番号とあらすじ、36まで

    中秋の名月…の筈が、こちらはガッツリ雨雲に隠れております(>д<)ご覧になれる地域の方は、どうぞお楽しみください。

    さて、投稿し始めてから大分経ってしまいましたが、平成Daysの時と同じくあらすじを出します。
    番号が36までなのは、描いている日付の区切り(今回は8月2日のお話まで)に合わせたためです。

    通し番号、投稿番号、描いている日付、大まかな内容の順です。
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    二人のもしもDays3no.572、とある年の3月下旬、遠出して花見

    二人の令和Days1no.585、2019/7/17、スイッチ起動させてしまった唯。若君と共に令和に登場

    2no.590、7/18、何かを訴えている唯

    3no.592、7/18、旅行先決定。尊は受験勉強後回しに

    4no.593、7/18、無事同部屋&面会時間取っ払いに

    5no.594、7/19、マクワウリを食べる

    6no.595、7/20、バーベキューパーティー開催決定で準備。働かざる者食うべからず

    7no.596、7/20、花火などを画像で説明。沼で拾い物は大変だった

    8no.597、7/21、吉田君登場に気が気でない若君

    9no.598、7/21、三人の様子を観察していた尊と美香子

    10no.603、7/21、仲良く水着を選ぶ男子達

    11no.604、7/21、ビキニ選びで大騒ぎ

    12no.605、7/22、コンロや浮き輪など買い込む。美香子が若君に頼み事

    13no.606、7/23、芳江とエリにオムレツを振る舞う

    14no.607、7/24、プール。白過ぎる男子達

    15no.608、7/24、タピオカドリンクは若君に飲ませない

    16no.609、7/24、巨大滑り台に挑戦

    17no.615、7/24、泡にはならない人魚姫

    18no.618、7/24、生きてるって素晴らしい

    19no.619、7/24、互いの呼び名を変更で親密度アップ

    20no.620、7/25、急に体操する両親に戸惑う若君。高野豆腐入りのミニハンバーグ

    21no.623、7/26、金曜は若君シェフの日。今日は餃子

    22no.624、7/27、地元のお祭りを見に行く

    23no.625、7/28、バーベキュー予行練習。シャボン玉で幻想的な世界

    24no.626、7/29、エリにワンピース芳江にサンダルを貰う

    25no.627、7/30、バーベキューパーティーの買い出し。人並みがわからない唯

    26no.629、7/31、飾り付けの工作を着々と。若君が両親をマッサージ

    27no.630、7/31、スイカの重さや大きさは

    28no.631、7/31、バーベキューパーティースタート。アイスは転がして作る

    29no.632、7/31、蚊取り線香と激しいポップコーン

    30no.633、7/31、スイカを切り分け花火を楽しむ

    31no.634、8/1、答えが5になる二回目の旅行発表

    32no.635、8/1、今後は経済活動に参加する若君。マニキュアの手伝いも

    33no.636、8/2、クリニックの休診日説明とホワイトソースの素作り

    34no.637、8/2、昼寝をしに全員二階へ上がる

    35no.639、8/2、夢で若君がドライブに誘う

    36no.640、8/2、現実と夢がリンク。カニクリームコロッケ爆発

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    二人の令和Days77~11日23時、地上に瞬く星

    都会は、空もなかなか見えないけれど。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君「…」

    唯「たーくん?」

    外を眺めたまま、若君が話し出す。

    若「こうではなかった時、を考えておった」

    唯「どんな?」

    若「唯が、永禄に来なければ、また、わしに出会わなければ」

    唯「うん」

    若「ここに座るのは、この先の世の男じゃ」

    唯「ん?あぁ、でも私田舎もんだからさ、こんな所に連れて来てくれるヒトならだけどね」

    若「珍しい」

    唯「へ?」

    若「普段なら、そんな事有り得ない、などと申すのに」

    唯「今日は、じっくり話を聞いてあげる」

    若「そうか。で、羽木は、とうに滅びておる」

    唯「うん。他に戦に勝つ方法がなければね」

    若「わしは、愛など知らぬまま」

    唯「阿湖姫は、家同士で結婚の約束はしてたけど会ってないもんね。でもたーくんなら、どんな姫が相手でも優しくしてたと思うけど」

    若「今日は随分と殊勝な」

    唯「なによ。ちゃんと聞いてるでしょ?続きは?」

    若「あぁ。唯は、この先の世の男と幸せに暮らすであろう」

    唯「たーくんを知らないままなら、いつかは誰かとそうなるだろうね」

    若「少なくとも、戦など知らずに済む」

    唯「で?」

    若「話はここまでじゃ」

    唯「そっちが良くない?って、いつもの仮定の話?」

    若「そう…じゃな。いつも申すが、唯の幸せを願っての事じゃ」

    唯「ふーん」

    若「またか、と思うておるのであろう?」

    唯「ん?まあ。えーっと。…あのね、私の前には、たーくんに続く道だけがまっすぐ伸びてた」

    若「…うん」

    唯「永禄に飛んだのも、たーくんと出会ったのも、好きになったたーくんに振り向いてもらいたくて頑張ったのも、結果羽木を助けたのも、目の前の道をまっすぐ進んだだけ」

    若「…必定であったと」

    唯「まっしぐらに走って、たどり着いたゴールがたーくんでホントに幸せだよ。たーくんと一緒に居ない私は考えられない、存在しないんだよ」

    若「わしも、唯が居ない世は考えられぬ」

    唯「心配してくれるのは嬉しいよ。でもそろそろわかって欲しいんだけどな。ずっと一緒に居てくれる方が、何倍も、何万倍も嬉しい」

    若「それは、わしもじゃ。なのに、つい考えてしまい…堂々巡りで済まぬ」

    唯「あのね、前におふくろさまにね」

    若「吉乃殿に?」

    唯「お前のおりたい場所に力を尽くし、ただおればよい、って言われたの」

    若「そうか…。吉乃殿が母上でおられる事に感謝せねばの」

    唯「たーくんのお母さんでもあるじゃん。妻の母、でしょ?」

    若「ん?そう、か。…ハハッ」

    唯「え、なに?」

    若「いや、信近に、父上と声をかけたらさぞや愉快であろうと」

    唯「あはは~、それ、腰抜かしてしばらく動けなくなるって」

    若「母上か…」

    唯「でね」

    若「あぁ、済まぬ」

    唯「私のおりたい場所は、永禄とか令和とかそういうのじゃなくて、たーくんのそば、なの。それだけなの。だから、そばに居させてね」

    若「…」

    唯「離れるなんて、ぜぇーったい、イヤだからね!」

    若「唯…」

    唯「たーくん優しいから。もうね、もしこうだったら、なんて考えなくていいからね」

    若「…心得ました」

    唯「起動スイッチ抜いちゃった時、しっかり捕まえてくれたから、離れずにいられて嬉しかった。ありがとう。すごく危険だったのに」

    若「唯とは、一心同体じゃからの」

    唯「出たっ。うふふ」

    若「ずっと共に」

    唯「うん!」

    若「いつまでも仲良う。両親のように」

    唯「あの二人、特殊な気がするけどねー」

    若「そうか?わしは見倣おうと思うておる」

    唯「ずっとラブラブ?」

    若「そうじゃ」

    唯「やったっ」

    唯の肩を抱き、引き寄せる若君。

    若「さて」

    唯「さて…とは?」

    若「精もついたしの」

    唯「なんか言ってるなー」

    若「ハハハ。まだ眠りはせぬだけじゃ。このまま夜景を眺めるとしよう」

    唯「夜景ね。キレイだもんね。ずっと見てられる」

    若「眺めつつ」

    唯「つつ…。えー、ど、どう続く?」

    若「まっしぐらに、唯にゴールじゃ」

    唯「あ?そう来たか~。うまいっ!」

    若「ハハ…」

    唯「あ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜はこれから。

    11日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days76~11日21時、計画的に

    特別感満載のお部屋。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ようやく口を開く尊。

    尊「あのさあ」

    美香子「なに?」

    尊「何企んでるの」

    覚「企むって?」

    尊「ベッドが、ダブル」

    美「ダブルじゃないわよ、クイーンサイズよ?あ、唯達の部屋も同じだからね」

    唯「へぇー、確かに大きーい」

    若君「唯向きじゃの」

    唯「どういう意味かなー」

    美「僕も大きいベッドが良かったって?」

    尊「違うよ。来年の春、無事に大学デビューしました、すぐに、小さい弟か妹の世話もデビューするって事?」

    覚「え?」

    尊「鰻も食べたしさ」

    唯「どゆこと?尊が、私達の子供の世話してくれるの?」

    若「違う。弟か妹と申しておるゆえ」

    美「…えっ、えーっ!ヤダ、そんな訳ないでしょう!無理無理!」

    唯「あー、やっとわかった」

    覚「そういう事か、そうか…」

    美「嫌だお父さん、考えないで!」

    若「それはめでたい」

    美「忠清くんまで!」

    唯「それって、うまくいけば子と孫が同級生になる?」

    尊「お姉ちゃん、いやに冷静だね」

    唯「この夫婦ならありえるかもって」

    尊「あ、誤解がないように言っとくけど、世話が嫌な訳じゃないから。という事で」

    唯「という事で?」

    尊「僕達は早々に引き上げるべきらしい」

    若「退陣か」

    唯「了解っ」

    覚「ビール、もう少し減らせば良かったかな」

    美「だからー!」

    唯「お菓子と飲み物もらってくねー、じゃ!」

    若「おやすみなさい、で良いのであろうか」

    尊「休まないから違いますよ。お邪魔しました~」

    美「ちょっとー!」

    部屋が一気に静かになった。

    美「ホントにもう…ふっ、ふふっ」

    覚「ははは」

    廊下の三人。

    唯「さて、どうしよう」

    若「もうしばらく、三人共に過ごそう」

    唯「了解~」

    尊「いいんですか?両親と同じ理由で、早く二人きりになりたいとかないですか?」

    若「早々に一人では。折角家族で来ておるのに」

    尊「わぁ、嬉しい。じゃあ、僕の部屋に来てください。確か、ツインの部屋をシングルで使うって言ってたから」

    尊の部屋に入る。

    唯「ホントだー、ベッドが二つあるぅ」

    若「外の美しさは変わらぬ」

    尊「なんなら今、火曜日どうするか打ち合わせします?」

    若「そうじゃな」

    唯「賛成~」

    秘密の会議。

    唯「じゃあ、そんな段取りでよろしくっ」

    若「承知致した」

    尊「じゃ、そろそろ行きなよ」

    唯「もういいの?」

    尊「鰻の効果がある内に」

    若「効果…」

    唯「いや、それどうなの」

    尊の部屋を出て、ようやく自分達の部屋に入る二人。

    唯「わーい!」

    若「なんじゃ?」

    荷物を置き、靴を脱ぎ捨て、ベッドにぴょーんと、うつ伏せにダイブする唯。

    若「随分と跳ねるのう」

    唯「さっきは尊の部屋だったから遠慮したけど、こういうトコのベッドは、ウチのとは違ってね」

    若「そうなのか」

    若君が、唯の寝転ぶ横に腰掛けた。

    唯「ねえねえ、靴脱いで、ベッドにあがって」

    若「ん?こうか?」

    唯「ほら、びょーんびょーん!」

    ベッドで飛び跳ねる唯。弾む動きに翻弄される若君。

    若「な、何を揺らしておる!」

    唯「へっへー」

    若「これ、唯!」

    唯「きゃはは~!えいっ!」

    若君の胸元にダイブ。

    唯「ふふっ、捕まえた」

    顔を上げ、若君と見つめ合う。

    唯 心の声(目をつぶる場面…ううん、それ以上?!)

    しかしその瞬間、若君が視線をそらした。視線の 先には、夜景。

    唯 心(え!夜景に負けた~。キレイだもんね、しかたないかぁ)

    若君は立ち上がり、窓に向いてベッドの端に座り直した。夜景が正面に見える位置だ。

    唯 心(ん?)

    隣に座る唯。

    唯「たーくん、どしたの?」

    若「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君、どうした?

    続きます。

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    二人の令和Days75~11日18時45分、パワーチャージ!

    会計もうなぎのぼり。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    鰻店に向かっている三人。アーケード街をプラプラ歩いている。

    唯「あ、サングラス見っけ!ねー、たーくん絶対似合うと思うー、かけてみてっ」

    若君「これか。どれ」

    唯「やーん、やっぱ超カッコいい!」

    尊「より無敵感が増してる」

    若「なにやら暗いの。おぉそうか、これはあの、金の煙玉を使えば見えるように」

    尊「ならないです」

    若「ならぬのか」

    唯「コントやってんの?キャハハ、ウケる~」

    店に到着。

    尊「どこだろ?あっ、居た」

    覚「おーい」

    美香子「こっちよー」

    若「お待たせ致しました」

    唯「お待たせー」

    美「あら、唯、綺麗。いい色選んだわね」

    唯「えへ。ありがと」

    三人、席につく。

    美「さっ、好きなの注文していいわよ」

    尊「鰻屋で好きなのって、危険じゃない?予算的に」

    唯「えー、私、ひつまぶしが食べたいっ」

    覚「いいんじゃないか?」

    美「私も一緒で」

    唯「お父さんは?」

    覚「うな丼。特上な」

    尊「えっ、すごい、僕もそれがいい!」

    唯「たーくんどうする?って言ってもわかんないよね」

    美「いろんな食べ方があるのは、ひつまぶしよね」

    唯「たーくん、私と同じのでいい?」

    若「頼む」

    尊「兄さん、僕には少し多いかもしれないんで、良かったら少し食べてくださいね」

    若「おぉ、デートは共有が醍醐味であったな」

    唯「まだデート続いてたんだ」

    注文した。

    唯「どうだった?美術館デート」

    美「良かったわよ~。それに、どこも涼し過ぎる位でね」

    尊「そこ重要だね」

    覚「お前達は?炎天下、大丈夫だったか?」

    唯「うん、途中デパートも寄ったし。ちょうど涼めた」

    若「パンケーキ、も食しました」

    覚「おっ。いいねぇ」

    美「良かったわねー」

    鰻のオンパレード。

    全員「いただきまーす!」

    唯「まず、おひつの中で四つに分けてね、そのまま食べるのと、薬味で食べるのと、だしをかけて食べるのと」

    若「残りは?」

    唯「お好きにどーぞ」

    尊「兄さん、僕の一切れどうぞ」

    唯「わー、もっと豪華になった」

    覚「沢山食べて、精つけてな」

    美「あらぁ、理解ある父ね~」

    若「…そのような意味合いがあるのですね」

    尊「応援してます」

    唯「げっ、なにそれっ!」

    晩ごはん終了。ホテルまで、夜の繁華街を歩く。

    若「随分と、光が瞬いております」

    美「いいの?お父さん、寄り道しなくても」

    覚「いいに決まってるだろ。今大分ビール飲んだし」

    尊「部屋って、上の方の階?」

    美「そうね」

    尊「じゃあ、きっと夜景が綺麗だね。兄さん、この景色を上から見られますよ」

    若「上?」

    唯「わぁ、楽しみ~」

    ホテルに到着。

    美「荷物は私達の部屋にあるから、持ってって」

    唯「はーい」

    部屋の扉が開いた。

    唯「わぁー!すごい!キレイ!」

    若「これは…美しい」

    大きく開いた窓。眼下には、眩い程の光の絨毯が広がっている。

    美「こんなに綺麗なのね~」

    覚「いいね~。ん?尊、何て顔してるんだ」

    ベッドの前で、なんとも言えない表情のまま、固まっている尊。

    唯「どしたの?尊」

    尊「…」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    尊、どうした?

    続きます。

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    二人の令和Days74~11日17時30分、めざめました

    ちょっと足すだけで劇的に。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    電気街の中の店。様々な部品が、壁から迫るようにぶら下げられている。

    唯「なんか、所狭しというか。こんなんで欲しい部品とか見つかるわけ?」

    尊「見つかるんだなこれが」

    唯「今回も、なんか作ってくれるの?」

    尊「ううん」

    唯「えー、そうなんだ」

    若君「わしが止めた」

    唯「そうなの?」

    尊「僕は、また何か作ろうかなって思ったんだけど」

    若「作る時間があるなら、勉学に充てよと」

    唯「なるほどね。弟思いの優しいお兄ちゃんだなぁ」

    尊「あ、新しい写真集とか、この前撮った花火の動画は、編集して持たせてあげるから」

    唯「ありがと」

    若「尊、これは何に使う品かのう」

    尊「あ、これはですねぇ」

    唯 心の声(二人して目を輝かせちゃってさ。たーくんも男の子なんだなあ。楽しそうで良かった)

    今日の唯は、白レースのワンピース。カーディガンは手に持っている。

    唯 心(服はかわいいけど…やっぱ化粧くらいしなきゃいけないんだよね。気付くの遅過ぎ?)

    店の外に出た唯。ガラスに自分が映っている。

    唯 心(身だしなみ、か。うーん…)

    道の少し先に、大きい薬局を見つけた。

    唯「あ。…ねぇ、尊~!」

    尊「何~?」

    唯「私、あそこの薬局に居る~」

    尊「わかった~」

    唯 心(えっと…どこかなぁ)

    店に入り、何かを探す唯。

    唯 心(あった。うぇっ、ここ、すっごくキラキラしてるんですけどっ!)

    若い女性向けのコスメのコーナー。

    唯 心(プチプラなのがいいよねぇ。いや!そんな事より…どうしよう、化粧品なんて買うの初めてだからわかんないよぅ)

    自分の指先に目をやる。マニキュアやペディキュアは、最初に若君が塗ってくれたパール調の桜色のまま。

    唯 心(たーくん、この色がいいって、あれから何度か塗ってるから…同じ感じがきっといいよね)

    口紅の棚。リップグロスを物色する。

    唯 心(試供品がある!あ、この白い紙に塗って試すんだ。これでイメージつかめるかなぁ)

    片っ端から紙に色をのせていく。

    唯 心(こんなモンかな…。これ以上、考えるのムリ~)

    お買い上げ。店を出て、早速塗ろうとするが、

    唯「あちゃー、そう言えば鏡も持ってないんだった!つくづく、女子失格だよね…」

    スマホのインカメラを鏡代わりに、なんとか完了。

    唯「うん。たぶんオッケー」

    尊「お姉ちゃーん」

    若「唯」

    さっき居た店とは違う方向から、二人登場。

    唯「え?もしかして、すっごい回った?」

    尊「僕にとってのワンダーランドだからね」

    唯「ちょっとしたテーマパークなんだ」

    若「ん?唯、なにやら…」

    尊「あ、唇がキラキラしてる。わかった!お店の試供品、塗りたくってきたんでしょ」

    唯「なにっ、聞き捨てならぬ!ちゃんと買った!ほらっ!」

    グロスを、男子達の目の前にどーんと出した。

    唯「もーっ」

    尊「で、いきなり化粧してどしたの」

    唯「え?えっとぉ」

    尊「周りの女性と比べて、焦った?」

    唯「だってー」

    若「唯」

    唯「は、はい」

    若「わしに、顔をよう見せてくれ」

    唯「はいっ」

    顔を上げた唯。若君の表情が緩んだ。

    若「綺麗だよ、唯」

    唯「わぁ、ホントに?…いや、ちょっと待て」

    若「え?」

    唯「たーくん、そのフレーズ、尊に教わったでしょ」

    尊「確かに教えたけど」

    唯「かわいいよ、もだけどさ、こう言えば喜ぶ的な暗号みたいに使ってない?」

    若「唯が何を気に入らぬのかわからぬが…愛らしく麗しいと思うて話しておったがの」

    尊「まさかお姉ちゃん、今の今まで、疑ってたの?」

    唯「うん」

    尊「ひでぇ!」

    若「心がこもっておらぬように感じたか。それは、済まなかった」

    尊「なんで兄さんが謝る展開?いやいやいや、おかしいって」

    唯「そっか、わかってたんだ。ごめん疑って。あまりにもサラっと言ってくれるから…ねぇねぇ、愛してる、もそう?」

    若「唯を、かけがえのないおなごと思うておるぞ」

    唯「そっか、そっか、良かったぁ」

    尊「そういうのは、もっと早くに確認しとくべきでしょ!」

    唯「失礼しましたっ。もう街は堪能した?」

    尊「うん。したよ。ありがと」

    若「姫君を、一人にして済まなかったの」

    唯「そろそろ鰻屋さんに移動する?」

    尊「そうしよっか」

    若「参ろう」

    若君が、唯の手を取った。そして、

    若「尊もじゃ」

    尊「うわぁ。じゃ、今はお言葉に甘えまして」

    三人、繋がりました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days73~11日15時、Go!ショッピング

    徒歩圏内になんでもあるから、都会は便利。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯「尊、店選び正解。生クリームがそんなに甘くない」

    尊「でしょ。兄さん、どうですか?」

    若君「これなら、食べられそうじゃ」

    唯「すごーい。じゃあ、一口ちょーだい!」

    少し切って、唯の前に差し出す若君。

    若「食せ」

    唯「違うぅ」

    若「違う?あぁ。あーん、して」

    唯「わーい。うん、こっちも美味しい!」

    尊「やらされてる感が否めないけど」

    唯「えへへ。ラブラブカップルは、今どこに行ってるんだろうね」

    尊「美術館巡りって言ってたよ」

    唯「へー!そうなんだ。なら、着物も納得~」

    唯がご機嫌で食べる姿を、優しい眼差しで見守る若君。

    尊 心の声(元々何でも美味しそうに食べるお姉ちゃんだけど、永禄に戻っても、こういうシチュエーションがいっぱいあるのを願うよ)

    三人、完食。店を出た。

    尊「あー美味しかった。兄さん、良かったですね」

    若「あぁ。ありがとう、尊」

    唯「なにが?」

    尊「男子の秘密」

    唯「あっそう。あ、ねぇねぇ今さ、もらった小遣いで支払いしたじゃん」

    尊「うん」

    唯「もう使う予定なくない?」

    尊「山分けしたいの?」

    唯「違う。せっかくだからさぁ、両親に20周年おめでとう、しない?」

    若「それは良いの」

    尊「なるほど。早速検索…ふーん、結婚20年って磁器婚式って言うんだって。だからプレゼントは陶磁器とからしいよ。ペアのカップとか?」

    唯「へー、そうなんだ。あとさ、花束もあると良くない?」

    若「花を献上と」

    尊「カップの値段がわからないけど、花もだとちょっと金額が足りないかも」

    唯「喜んで出すよ」

    若「わしも出す」

    尊「え、いいんですか?」

    若「自由に使いなさいと申された。二人の為に使えるなら尚更良い」

    尊「じゃあ、デパートも近くにある事だし、今から探す?プレゼント」

    唯「探すー。電気街はいいの?」

    尊「まだ全然時間あるし」

    デパートの売場。

    唯「カップもいいけどー、なんか湯呑みも良くない?」

    若「おぉ、これなどお父さんに似合いそうじゃ」

    尊「どっしりしてるね。色違いもあるから、それにします?」

    若「良いのか?」

    唯「たーくんが選んだって聞いたら、倍喜ぶよ」

    尊「そうそう。前に、クリスマスプレゼントでスノードームもらったじゃないですか」

    若「あぁ。わしが選んだ小さき物じゃな」

    尊「僕ももちろん超嬉しかったけど、二人、何で目の前に居ないんだ、抱き締めたかった~って大騒ぎだったんですよ」

    唯「そうだったんだー。じゃあ今回は、直接ギューってしてもらおう」

    若「ハハハ。喜んで頂けたのじゃな」

    お買い上げ。

    唯「これ、持ち運ぶの?バレバレになるし、重いよ?」

    尊「ご心配なく。僕あてに家に配達してもらうから」

    唯「へぇ、さっすがー。デキる男だねぇ」

    デパートを後にする。

    唯「お花はどうする?」

    尊「そうだね。あと、一人千円ずつくらい足すとまあまあ大きい花束にできそう」

    若「ならばそうしよう」

    尊「湯呑みもちょうど届くだろうし…火曜日に買いに行く?」

    唯「三人で行こうよ」

    尊「よし、決まりだね」

    電気街に到着。

    尊「ミッションが確実に進んでる。よしよし」

    唯「顔つきが変わってるよ。ニヤニヤしちゃってさー」

    尊「兄さんとデートだもん、ニヤけずに居られるかって話」

    若「デート。手でも繋ぐか?」

    尊「い、いや、そこまではいいです」

    唯「肩でも抱いたら?」

    若「そうか」

    尊「いや、マジ無理だから!」

    唯「キュンキュンしちゃって?」

    尊「そうだよ~」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    遠慮せずとも良かろうに。

    続きます。

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    二人の令和Days72~11日13時、実践中です

    言われた事をきちんとこなします。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    母、着物姿で登場。

    美香子「お待たせ~」

    覚「う~ん、いいねぇ」

    唯「きっちり着込んでるー。暑くない?」

    美「訪問着だもの、そりゃあきっちりよ。これね、案外暑くないのよ」

    若君「よう似合うておられる。麗しい」

    美「まぁ〜。嬉しいわ~」

    近寄って、生地をじっと見つめる若君。

    若「これは、紗ですか?」

    美「違うのよ。絽って言うの」

    若「ろ?」

    美「忠清くんなら聞いてくると思って調べたんだけど、まだあなたの時代にはない織り方だったのよね」

    若「山吹の花を思わせる色の地に浮かぶ、縞が美しいです」

    美「ありがとう。うーん、いい!持つべきは、お着物の話ができる息子ね~」

    唯「この二人、日本語しゃべってる?シャとかロとか言ってるけど」

    尊「着物の話してんだから日本語でしょ」

    準備完了で出発。車内。

    美「ねぇ、最後14日の夜、またリビングに布団敷いてみんなで一緒に寝たいんだけど」

    唯「いいよー」

    美「でも私翌日から仕事だから、話し込むとか出来ないかもしれないのよ。ただ居るだけになってもいい?」

    覚「いいんじゃないか?お互いの気配を感じられるだけでもいいもんだろ」

    唯「うん。良いよそれで」

    尊「恒例行事って事で。了解一」

    若「わかりました」

    車窓の景色が、都会のビル群の光景に変わってきた。

    若「ほう…天を突く程高く、地に刺したが如く細く鋭い屋敷の数々じゃのう…」

    美「あら?初めて見る風景?前来た時に、デパート行ったって言ってなかった?」

    唯「そこ、駅から直結だったから、ビルを見るのはほぼ初めてなんだよ」

    そろそろ二手に分かれる。 車を降りる三人。

    美「チェックインして、荷物も運んでおくわね」

    唯「うん、よろしくー」

    覚「尊、鰻店の場所は大丈夫か?」

    尊「うん。地図確認したよ。7時に予約してあるんだよね」

    覚「そうだ」

    唯「デート、楽しんできて」

    若「ごゆるりと」

    尊「行ってらっしゃい」

    美「ありがとう。じゃあね」

    手を振りながら、両親は去って行った。

    唯「さてと。パンケーキの店は目星付けた?」

    尊「うん。あ、やっぱ一番に行く?」

    唯「だって時間のメドがわかんないし、あんまり遅い時間だと、鰻入んないよ?」

    尊「そうだね。じゃあ行こっか」

    尊と若君が前を歩き、唯は後ろから付いて行っている。

    尊「後ろでいいの?」

    唯「デートの付き添いなんで。ついでに、たーくんに変なのが寄って来ないか見張ってる」

    やはり若君は、道行く女性達の視線を集める。

    女性1「超イケメン…モデル?それか俳優?」

    女性2「絶対それ系だよね。あ、指輪してる。え一結婚してるんだー」

    女1「イイ男って、残ってないよねー」

    尊が振り向き、囁く。

    尊「指輪効果出てるね」

    唯「うん、サンキュー。助かってる」

    尊「…」

    唯「なによ。顔になんか付いてる?」

    尊「街行く女性達と比べて、負けてる点があるとするなら」

    唯「えっ、なに?」

    尊「どスッピンな所。みんなきちんと化粧してるから。現代の街中なんだからさ、身だしなみ的に少しくらいしてくれば良かったのに」

    唯「うわぁ、痛たたっ。それ、薄々感じてた」

    パンケーキ店に到着。ほどなく席に通され、注文も完了。

    尊「大ブームの頃なら、絶対来なかったよ。店の外にズラーって並んでる映像、よく見たから」

    唯「それは言えるかも。ねぇ、たーくん、今さらなんだけどさぁ」

    若「なんじゃ?」

    唯「また店に行こうとは言ってくれてたけど、ホントに良かったの?」

    若「勿論じゃ」

    唯「無理してない?」

    尊「兄さん向けに、めちゃめちゃ甘くはない系の店にはしたけどね」

    若「唯が、この世の幸せ、と頬張る姿が見とうての」

    唯「誰かの入れ知恵?」

    尊「だとしても、兄さんがいいって言ってるんだからいいじゃない」

    唯「ふぅん。お礼は、誰に言えばいいの?」

    尊「お父さんに」

    唯「えっ!意外な答えだった」

    パンケーキが三皿運ばれて来た。モリモリと、生クリームがうず高く鎮座している。

    唯「わーい!」

    若「おお」

    尊「壮観だなぁ。恋愛マスターは、食べるの見てるだけでもいいって言ってたけど」

    若「一口ちょうだい、がやりたかろう?」

    唯「いやに詳しく指導されてるなあ。でも嬉しい!だって、お父さんが師匠でたーくんが弟子なら、絶対甘くて優しいもん」

    尊「同感です。では」

    三人「いただきます!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    大丈夫で~す♪

    梅パは 喜んでおります (^.^)。
    源・トヨ、どなた様も 好きに使っちゃって下さいませ~?。

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    妖怪千年おばば様

    気を遣わせてしまい、すみません!

    源トヨの登場は、うーんと先です。存分に、発表してください。

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    追記しました~

    先日、投稿した”稲荷”の
    イメージソング ”夢の恋人”を
    大変かわいらしく
    ギターで弾き語りしている
    動画を見つけました。
    ”稲荷”の最後に追記しましたので、
    よろしければ、ご覧ください。

    梅とパイン様
    今回の、”どんぎつね三部作”は、
    源ちゃんトヨちゃんが、
    ラブラブになる少し前のお話しとして
    お許しくださいね。

    夕月かかりて様
    ますます仲良しな速川家ですね。
    夕月かかりてさんの、源トヨ登場を
    待ってから、投稿しようかと
    思っていたのですが、
    まだまだ続きそうだったので、
    割り込みまして、すみません。
    楽しみにしてますね。

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    二人の令和Days71~11日日曜9時、定番はどっち

    千羽鶴ミッションも着々と進む。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、食卓に、折り鶴を色分けして入れた箱を並べた。

    美香子「お待たせ、裁縫箱持ってきた。針と糸と、あとボタンね。一番下に付けて糸から鶴が抜け落ちないようにするの。プラスチックじゃ何だから木製にしたわ」

    唯「いよいよ千羽鶴の形になるよ、たーくん」

    若君「皆総出で済まない」

    覚「何羽ずつにする?」

    美「それもだけど、どうやって並べる?この箱の並びのまま、グラデーションにする?」

    唯「グラデーション賛成。キレイだから」

    尊「50羽ずつだとこの位の長さだよ」

    美「いいんじゃない?」

    尊「じゃあさ、箱の横にこの箱から何羽か取り出すか書こう。足して50になるように」

    美「あー、それ楽ね。出して並べて、下になる色から糸で掬っていけばいいもんね」

    若「手筈が整っていっておる…」

    唯「黙って流れに乗るのが正解だよ」

    あれよあれよという間に、束が出来上がっていく。

    覚「順調だな。じゃあ、早めだけど昼ごはんの支度始めるよ」

    唯「了解~」

    若「実に美しい」

    尊「50羽、糸通ったよ。上はどうすんの?」

    美「そこにあるリングに、軽く結んでおいて」

    11時。十束完成した。

    美「旅行から帰ったら、また続きをしましょうね」

    若「わかりました」

    覚「はい、撤収してー。ごはんだぞ」

    冷麦です。

    唯「夏の定番だから今日もこれなの?」

    尊「え、夏の定番はそうめんじゃない?」

    唯「そうだった?どっち?」

    覚「どっちもだろ」

    美「お父さんは冷麦派よね」

    覚「うん。そうめんはな、ゆで時間が短過ぎて、家事好きの僕としてはあっけなくてさ~」

    唯「そんな理由なんだ。どおりでよく出る」

    覚「今日はな、晩ごはんがスタミナ系だからこうした」

    唯「スタミナ?お肉とか?」

    覚「鰻食べに行く」

    尊「うなぎ!」

    唯「わぁ、ひっさびさだ!」

    美「忠清くん、食べた事あった?」

    若「いえ、初めて聞く名です。食した覚えはありませぬ」

    唯「そっかぁ、じゃあ楽しみにしててー」

    若「そこまで皆が喜ぶのであれば、楽しみじゃの」

    昼ごはん後。

    美「支度、ゆっくりでいいからね。じゃ」

    唯「なに?」

    覚「今日は、着物を着るって張り切ってるんだ」

    唯「へー」

    覚「まぁ本人がそうしたいって言ってるから」

    唯「あー、デートだから特別ぅ?暑いのに大変だね~」

    覚「永禄では年中着物だろ」

    唯「まっ、そうだけど。だってまさかお母さん浴衣じゃないだろうし」

    覚「浴衣じゃあないな」

    若「お母さんが、着物を召されると」

    唯「うん。絶対たーくんに聞いてくるから、褒める用意しておいて」

    尊「褒める用意って。兄さんなら普通に素直に褒めるでしょ」

    覚が、尊に手招きしている。二人で部屋の隅に。

    尊「お父さん、何?」

    覚「あのさあ、鰻、背開きか腹開きか、気にしなきゃいけなかったかな?どう思う?」

    尊「え?あ、あー。腹開きだと切腹を連想させるからってヤツ?」

    覚「店には聞いてないんだけど、地域的には両方あるらしい」

    タブレットで検索する。

    尊「んー兄さんの時代には、鰻はあっても開いてなかったみたいだね。て事は知らない料理なんだから、わざわざ、聞いた事のない言い伝え的な物を教えなくてもいいんじゃないかな。兄さんなら、聞いたとしても気にしないとは思うけど」

    覚「そうだな。黙っておくよ」

    唯「なにコソコソしゃべってんのー」

    尊「今日の段取り」

    唯「ふーん」

    覚「あ、そうそう、今日な、僕と母さん自由にさせて貰うからさ、三人に小遣いをやるよ」

    唯「マジで?やったぁ!」

    尊「ラッキー!」

    若「わしにもですか?」

    覚「三人一括だけどな。はい」

    唯「わっ、1万円だ」

    尊「こんなにいいの?」

    覚「まあ、お好きなように。残ったら、山分けしな」

    唯「へー、ありがとー」

    尊「ありがとう」

    若「ありがとうございます」

    覚「さ、じゃあ僕らもそろそろ出かける支度するか」

    三人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days70~10日16時、これが目に入らぬか

    あんまりカッコいいと、それでもチャレンジしてくる強者が居るかも。気をつけよう。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    看板は、ピカピカになった。

    唯「カンペキ!たーくんお疲れさま」

    若君「まだ何かする事はあるかのう」

    唯「働き者だなぁ」

    家に戻ると、母が出迎えた。

    美香子「お帰り~。あ、脚立は玄関でいいわよ。もうね、掃除もほぼ終わりだから、お風呂一番に入っちゃってくれる?」

    唯「いいの?やったー。じゃあ、どっちが先入る?」

    美「何言ってるの」

    唯「え、もしや」

    若「わかりました」

    唯「出た!」

    美「みんな汗たっぷりかいてるもの。晩ごはん前に全員お風呂済ませたいからよ。はい、行ってらっしゃ~い」

    18時。晩ごはんの支度が始まった。覚と若君はキッチンに。尊と入れ換わって最後、美香子が風呂に。唯は、ホットプレートがセット済みの食卓で、ぼーっとしている。

    尊「あーさっぱりした。げっ!なんだよ姉ちゃん、その腑抜けな状態は。兄さんと一緒のお風呂で、湯あたりしたの?」

    唯「してなぁい。お風呂は超ラブラブだったしぃ」

    尊「成長してるな」

    唯「…ああっ、そういえば!あ痛っ」

    ガン!と音が。急に飛び起きた唯が、膝をテーブルにぶつけた。

    唯「い、痛ぁい」

    尊「あーあ。何いきなり覚醒してんだよ」

    唯「ねぇ、どうしよう!都会で、たーくんが尋常じゃない数の女達に囲まれたら」

    尊「カッコいいのは罪だな。でもそれ、そんなに心配するような事?」

    唯「都会の女は怖い」

    尊「歩いてる人のほとんどが、都会の人ではないと思うけど」

    唯「えー。でもー」

    尊「わかった。要は、兄さんを守れればいいんだよね?」

    唯「うん」

    尊「そんなん簡単だよ」

    唯「うっそぉ」

    尊「これ使えばいい」

    リビング奥の棚から、ケースを一つ取り出す尊。

    唯「あ!尊お手製の結婚指輪!」

    尊「これはめてれば、そうそう近づいては来ないんじゃない?」

    唯「そっか…そっか、結婚してますってアピールすればいいんだもんね!」

    尊「そゆこと」

    美「あー、いいお湯でした。あら、懐かしいグッズ出してるわね」

    唯「どうしよう、指に入らなかったら…あ、入った。たーくぅん!」

    若君の元へ指輪を持っていく唯。

    若「おぉ、これは」

    唯「ねっ、はめてみて!まだぴったり?」

    若「ふむ。…ぴったりじゃな」

    唯「わぁ、良かったぁ。たーくん、今から、慣れるためにそのままにしててね」

    若「心得た」

    覚「騒がしいな。はい、もんじゃ焼き作るよ、席について~」

    具材を炒め、土手を作り、だしを流し入れ、なじませる。

    若「これで固まるのか?」

    唯「固まらないよ」

    若「え?」

    ホットプレートの上が、ふつふつ言い始めた。

    覚「そろそろいいな」

    美&尊「いただきまーす」

    唯「はい、たーくんこのヘラ持ってね」

    若「小さいのう。どう使うのじゃ?」

    尊「見ててください。これをこうやって、隅からはがして押し付けて、ちょっと焼く」

    若「ほぅ」

    尊「これをこのままパクリと。あ、熱いですから気をつけてくださいね」

    若「ほぅ…」

    唯「はい、フーフーしたよ。あーんして」

    若「うまい。わしもやってみよう。…はい、唯」

    唯「キャー!私にくれるの?嬉しーい。ねぇねぇ、あーんして、って言ってぇ」

    若「あーん、して」

    尊「そ、総領の威厳が…まだ棒読みで良かったけど、永禄の皆さんには見せられないな」

    唯「おいし~い!ふふっ」

    若「お父さん、これは、どんな材料でも出来る物でしょうか?」

    覚「そうだね。それっぽい物でいいなら、永禄でも作れなくはないと思うよ」

    若「そうですか」

    唯「作ってみちゃう?!すんごい野望~」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    10日のお話は、ここまでです。

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    ~稲荷~

    https://www.youtube.com/watch?v=T1WW3TL2v0I
    このCMを見て、つい、“かまたま” を
    食してしまったおばばです。笑
    日清、ずるい!
    でも、かまたまならば、
    やはり、麺は太麺のほうが良いですな。
    食した後、以前投稿した、
    “月食”、“星降る夜に”
    の続編を書いてみました。

    梅とパイン様、
    “トヨ”ちゃんお借りします~(^^♪
    ~~~~~~~~~~~~~

    いつもの様に、籠を携え、
    部屋から出ようとした成之は、
    不意に、忠清に呼び止められた。

    「兄上、どちらへ?」

     「木の実を探しに。
      花材にしようと思うての。」

    「これでは、足りませぬか?」

    忠清は、摘んだばかりの草花が
    入った手桶を差し出す。

     「野ぶどうか。尾花もあるの。」

    鋭いまなざししか向けぬ成之が
    僅かに見せた微笑みを、
    忠清は見逃さなかった。

    「部屋へお待ちしましょう。」

     「うむ。」

    先に、外へ出ていた如古坊は、
    その様子を、塀の陰から見ていたが、
    やがて、城の裏門に向かって
    歩き始めた。
    源三郎が、その後を付けている事には
    全く気付かずに。

    部屋に戻った成之は、
    次の間の棚から、花器を一つ選ぶと、
    庭に面した外廊下に運んだ。

    忠清は、その斜め後ろに座り、
    兄を見つめる。
    成之は、花を手桶から取り出すと、
    広げた紙の上に、丁寧に並べ始めた。
    桔梗を手にした成之は、
    薄紫の花弁に、しばし目を止める。
    そこへ、忠清が声を掛けた。

    「それは、茎が細すぎましょう。」

    成之は、黙したまま、
    桔梗を2輪、尾花に添えると、
    短く切ったフキの茎に通す。
    そして、それを花器の
    中央に立てた。

    「ほう。これは、見事な。」

    忠清は、言葉を続ける。

    「兄上と私も、その桔梗の様に
     有りたいものです。」

     「何を申される。
      忠清殿は、すでに大木の風情。
      このような小さな器には、
      収まりきらぬ。」

    「私など、古木の枝の小さな
     新芽にすぎませぬ。」

     「忠清殿が新芽であれば、
      私は、さしずめ、
      切り捨てられた小枝であろう。
      たまたま拾われて、
      僅かな水で命を
      繋いだだけの。」

    「庭師の頭に問うた事が
     ありまする。
     古木に新たな力を与えるには、
     どの様な策があるかと。」

    成之が、花を選ぶ手を止めた。
    その肩に緊張が走る。
    成之の顔色が変わったのが、
    忠清には手に取るように分かった。

     「して、その答えは?」

    成之が乾いた声で訊ねた。
    忠清は、静かに息を吐く。

    「接ぎ木にございまする。
     手法は幾通りかあるそうな。
     日を改めて、より良い策を、
     兄上と語りたいものです。」

    忠清が声を強めた。

    「台木の切り所を見誤れば、
     下から出た新芽の勢いで、
     継いだ枝が枯れる事も
     あるとか。」

    成之は、花器を見つめたまま、
    野ふどうの葉をちぎる。
    そして、血の気の引いた指先を、
    その弦で隠した、

    「花材であれば、
     花園に満ちておりまする。
     されど、兄上は山に向かわれる。
     それは、何故?」

     「花はの。
      開いた場により、趣が異なる。
      崩れ落ちそうな崖の中腹で、
      凛と頭を上げる花もあれば、
      藪の中で、うつむいて咲く
      可憐な花もある。
      その有り様を知り、
      花器に写すのじゃ。」

    「兄上は、野趣を
     好まれるのですね。」

     「山深い寺で育ったからの。
      加えて申せば、
      花園などに出向こうものなら、
      あらぬ疑いをかけられよう。」

    「疑いとは?」

     「知れた事。
      花園は薬草園と続いておる故。」

    「目当ては、花ではないと?」

    成之は、是も非も無く、
    花器に向かう。

    忠清は、兄の背から眼を放さず、
    なおも語りかける。

    「実は、本日は、礼を申し上げに
     参ったのです。」

     「礼とは、何の事かの?」

    「探索に奔走して下さったと
     伺いました。
     吉田城で姿を消した私の。」

     「確かに。
      しかし、探し出せなんだ。
      礼には及ばぬ。」

    「お気持ちが嬉しいのです。
     宜しければ、これを。」

    忠清は、懐から包みを取り出した。
    成之が、ゆっくりと振り返る。

    見慣れぬ透けた薄い紙の中には、
    細い棒の先に留められた、
    小さな風鈴が入っていた。
    透明なガラスには、
    赤とんぼが描かれている。

    それは、平成の黒羽城址の
    売店にあった、
    園芸用のピックだった。
    羽木家滅亡を知った際、
    忠清は食事もせず、唯の部屋に
    籠ってしまったのだが、
    忠清の気を晴らそうと、
    尊が買って来てくれたのだ。

    永禄に戻る前、これを
    兄への土産にしたいと尊に伝えた。
    尊は、驚いた様だった。
    忠清の命を狙った黒幕は、
    兄の成之かもしれないのにと。
    尊は、暫く考え込んでいたが、
    それが、成之との対話の
    きっかけになるのならと、
    承知してくれたのだ。

     「ギヤマンか?」

    「流石、兄上。ようご存じ。」

     「これを手に入れたとなれば、
      忠清殿の隠れ屋は、
      堺辺りの、商家であったか。
      医術に長ける伴天連も
      おると聞くが。」

    「隠れ屋の事は、またあらためて。
     この城の向後の事、兄上と
     語りあり合いたいと、
     私は心より願ごうて
     おりまする。」

    手にした小さな風鈴を、
    頭上にかざし、成之は、
    その小さな音に耳を傾ける。

    無邪気に赤とんぼを追った、
    幼い日の思い出が、うっすらと
    成之の脳裏をよぎった。

    虫籠を持った母の声が蘇る。

    「さあ、お城へ戻りましょう。」

     「父上は喜んで
      下さいましょうか?」

    「ええ、必ず。
     素早い蜻蛉を、成之がその手で、
     みごとに捉えたのですから。」

    空一面に広がる夕焼けが、
    母の頬を染めていた。
    幸せに包まれた、優しい微笑み。
    成之の記憶の中の穏やかな母は、
    ほどなく、床に臥せ、
    苦悶する姿に変わった。
    “あの笑みは、二度と戻らぬ。”

    懐かしい夕景を、
    苦い思いが黒く塗り潰す。

    「兄上、もし宜しければ、
     花園の東屋で
     茶会を致しませぬか?
     秋の七草も、
     咲き揃うておりまする。」

    忠清の声で、我に返った成之は、
    唇を強くかんだ。
    “わしが探しておったのは、
    お前の骸じゃ!“
    今にも叫び出しそうな己を、
    必死で押しとどめる。

    退出した忠清の足音が遠ざかり、
    やがて消えた。

    成之の震える拳の中で、
    小さな風鈴が砕ける。

    指の間から、血が滴る。
    それは、まるで、赤とんぼの
    涙の様だった。

      ~~~~~~~~

    裏門を抜けた如古坊は、
    振り返りもせずに、山に向かった。
    その道は、野上との国境を守る、
    砦に続いている。

    源三郎は、柴を刈る村人の姿を装い、
    少し後ろを歩いた。

    鬱蒼とした木々の間には、
    村人が踏み固めた、
    横道が幾つかあり、その一つに
    如古坊は足を踏み入れる。

    この山には、至る所に
    鳴子が仕掛けてあるのだが、
    気に止める様子は全く無い。
    どうやら、通い慣れているらしい。

    “このまま、後を追えば、
    枯れ葉を踏む音で、気付かれる。“
    源三郎が、ためらっていると、
    不意に後ろから声がした。

     「そこで何をしておる!」

    慌てて振り向いた源三郎の頬に、
    細い人差し指が刺さる。
    悪ふざけがまんまとはまり、
    娘が、笑い声を立てた。
    幼馴染のトヨだ。
    素早くトヨの脇に
    体を寄せた源三郎は、
    その口を手で覆った。

    驚いたトヨが、もがく。

    「静まれ!」

    空いた片方の手で、
    トヨの背を押すと、
    足早に山道を上がる。

    「ここまで来れば、良かろう。」

    やっと手を放した源三郎を、
    トヨが睨んだ。

     「何の真似じゃ!」

    「すまぬ。
     ちと、子細があっての。
     それより、ぬしの方こそ、
     何故、ここに?」

     「薬師堂に参る途中じゃ。」

    「薬師堂なれば、
     下の道ではないか。」

     「下からでは、本堂までの
      段がきつい。
      この少し先の、脇道を
      下る方が楽じゃ。

    「しかし、遠回りであろう?」

     「薬師堂に下りる途中で、
      ノアザミの葉を摘む。」

    「ノアザミ?」

     「干して、煎じれば、
      寝付の薬湯になる故。」

    「ほう。良う存じておるの。」

     「薬師堂の御坊が 
      教えてくれたのじゃ。
      若君様が、
      行方知れずになった折にの。」

    「左様か。
     では、その薬湯は天野の
     信茂様の為か?
     守役であられたお方じゃ。
     御心痛は誰よりも
     深かったであろう。
     千原家の元次様も、夜も眠らず、
     案じておられた。」

     「信茂様はの。
      自害なさろうとして。
      唯之助に止められたのじゃ。
      未だ、眠りは浅い。
      せめて、薬湯をと思うての。
      誤って、他の葉が
      混じっておらぬか、
      必ず御坊に確かめて貰うのならと
      ご当主の信近様が特別に
      お許し下さった。」

    「忠義な事よ。
     ぬしも、すっかり
     天野家の者じゃの。」

     「下女ではあるがの。
      して、源三郎の子細とは?」

    「今は、語れぬ。
     それよりも、遅うなっては、
     咎められよう。
     早う行け。」

    源三郎はトヨを促し、踵を返す。
    が、すぐにまた振り返った。

    「トヨ、手を出せ。」

    源三郎は、懐から取り出した
    手拭いの端を口に咥えると、
    細く裂く。
    それを手慣れた様子で
    トヨの右手に巻き付けた。

    「これで良い。
     ノアザミには棘がある故。」

    トヨが礼を言う間もなく、
    源三郎は、来た道を駆け下りる。
    そして木陰に身を隠し、
    如古坊が戻って来るのを待ったが、
    やがて諦めて、城に戻った。

    その夜、トヨが千原家を訪ねて来た。
    元次も不眠と知った天野信茂が、
    薬草を届けさせたのだ。
    何かと張り合う元次と信茂だが、
    数々の難局を、共に乗り越えて来た
    “戦友”でもある。

    「これは、忝い。
     元次様は、ここ暫く酒量が増し、
     案じておったのじゃ。」

     「されば今宵はこれを
      一服盛って、ころりと。」

    トヨは、おどけて男の様な
    口振りで言う。

    「たわけたことを申すな。」

    源三郎は、たしなめながらも、
    思わず笑ってしまうのだった。

     「そう言えばの。
      あの後、薬師堂で
      見慣れぬ僧を見た。」

    「僧とな?
     それは、如何様な?」

     「袈裟には似合わぬ、
      がっしりとした体つきの。
      まるで、
      高野山におるという、、、」

    「僧兵の様な?」

    トヨは、キッパリと頷いた。
    “如古坊やもしれぬ。”
    勢い込んだ源三郎は、
    思わずトヨの両肩を掴んだ。

    「トヨ。
     折り入って、頼みがある。」

     「頼み?」

    トヨは、ぶっきらぼうに問い返す。
    しかし、その目は少女の様に
    輝いていた。
    いつもなら、すぐに振り払うはずの
    源三郎の手も、そのままにして。

       ~~~~~~~

    「源三郎さ~ん!」

    聞き覚えのある微かな声に、
    源三郎は足を止めた。
    辺りを見回すが、誰もいない。
    “空耳か、、、”
    源三郎は石段を上がり、
    稲荷の社に手を合わせた。
    真新しい絵馬が、目の前に
    置かれている。
    何気なく手にすると、
    子狐が描かれていた。
    源三郎の口から
    とある名がこぼれる。

    「どんぎつね殿」

     「呼びました?」

    思わず顔を上げると、
    社の屋根の上に
    愛らしく動く耳が見えた。
    その上に、ふっくらとした尾が
    揺れている。
     “幻か?”
    源三郎は、何度も己の目を擦った。

    どんぎつねは、社の裏から出て来て
    源三郎の前に立つと、その手を握る。

     「幻じゃありませんよ。
      此処に居ます。」

    「無事で・・・あったか。」

     「はい。」

    「あの夜、お前は天の川に、
     飲み込まれたはず。」

     「驚きましたよね。
      でも、あれは、私を
      助けに来てくれた
      白狐なんです、」

    「白狐とな?」

     「はい、伏見稲荷の。」

    「清少納言も参拝したと言う?」

     「ええ、良くご存じですね。
      伏見は、稲荷の総本宮。
      白狐は、妖狐族の
      総取締役でもあるんです。」

    源三郎は、どんぎつねの尾に
    素早く目をやる。
    どんぎつねは、その視線を追い、
    訝し気に首を傾けたが、
    直ぐに、あの夜、自分の尾が
    裂けかけたのを、思い出した。

     「あ、大丈夫ですよ。ほら。」

    どんぎつねは、ふさふさとした尾を
    揺らす。

     「危うく、闇落ちしかけ
      ましたけどね。
      ぎりぎりの所で、
      裂けた尾の先を、
      白狐が切り落として
      くれたんです。」

    「闇落ち?」

     「あ、、、ええと。
      “九尾の狐”はご存じですか?」

    「あの、殺生石として
     封じられたという、狐の事か?
     確か、美女に化けて
     帝をたぶらかしたとか。
     名は、確か、、、」

    どんぎつねは、目を伏せ、
    小さな声で答えた。

     「“玉藻の前”です。
      その前は、“妲己”でした。」

    「殷王朝を滅ぼしたという
     傾国の美女も、九尾の狐?」

     「妲己の尾が幾つあったかは、
      分かりません。
      人に化けた狐の尾が裂けるのは
      その狐の心の傷が、
      引き金になるんです。」

    どんぎつねは語る。
    裂けた尾の数は、妖狐が受けた
    裏切りの数なのだと。

    「九尾の狐が哀れに思えるの。」

     「源三郎さんは、優しい。
      私は、源三郎さんの真心に
      救われました。」

    「わしの真心?」

     「はい。あの夜、源三郎さんが、
      私の姿を恐れて逃げ出せば、
      私は、貴方を餌食にしたはず。
      闇落ちする妖狐は、
      人の血を浴びて、
      妖気を増すのです。
      あの夜、せまる闇に抗うのに
      私も必死でした。」

    「確かにお前は、苦しみながらも、
     わしに、後姿を見せるな
     と言った。」

     「そして、源三郎さんは
      逃げなかった。
      その一瞬の間に、微かに残る
      私の正気を感じて、
      白狐が助けに
      来てくれたんです。」

    どんぎつねは、なおも語る。
    総取締役の白狐でさえ、
    人の血を浴びた妖狐の闇は、
    祓えないのだと。
    恨みを生み出すのは、
    裏切られた者の深い悲しみ。
    それは、狐も人も変わりはしない。

    気が付けば、どんぎつねは、
    巫女の様な装束を身に着けていた。
    その姿を見直して、源三郎が問う。

    「白狐の元におれば、ぬしは
     二度と闇に落ちる事はあるまい。
     何故に、戻った?」

     「源三郎さんに、
      お礼を言いたかったの。
      親切にして下さって、
      本当にありがとうございます。
      もし宜しければ、これを。」

    どんぎつねは、源三郎の手を離し、
    何やら、モフモフしたものを
    差し出す。

    それは、小さくはあるが、
    どんぎつねの美しい尻尾に
    瓜二つだ。

     「白狐が切り落とした、
      私の尻尾の先です。」

    思わず後ずさりした源三郎を見て、
    どんぎつねは悲しそうな顔をする。

     「やっぱり気持ち悪いですよね。
      でもこれには、
      妖力は有りません。
      その代わり、
      危険には敏感なので、
      お守りになります。」

    「お守り?」

     「はい。
      殺気を感じると、
      毛が逆立つのです。」

    源三郎は、恐る恐るその尻尾の先を
    手に取った。

    薬草園で枕にした、
    どんぎつねの尻尾の感触が蘇る。
    源三郎は思った。
    “むしろ、安らぐ気がするが。”

    「なれば、ありがたく。」

    尻尾の根元には、
    細い紐が付いている。
    源三郎はそれを脇差の柄に下げた。

    どんぎつねは、満面の笑顔で、
    尻尾をぐるぐる回す。

     「他に何か、
      お役に立てる事は?」

    「いや。もう充分。
     ぬしが無事でおったのが、
     何よりじゃ。」

    その時だった。
    源三郎の脇差に下げた尻尾が
    急に揺れ始めた。

    「これは、何とした事!」

    どんぎつねの耳が、
    伏せ気味に尖る。

    「ただならぬ気配がします。」

       ~~~~~~~

    やがて、馬のひずめの音が
    聞こえてきた。
    源三郎は、どんぎつねの手を取り、
    社の裏手にある、
    杉の御神木の陰に隠れる。

    走り去る馬上の人を見て、
    源三郎は、目を見張った。
    “あれは、成之様!”

    実はこの日も源三郎は、
    如古坊の後を追っていたのだ。
    高山との国境近くのこの山に入ると
    すぐに、谷間を流れる川の淵に
    馬を置いたまま、如古坊は
    姿を消してしまった。

    かなりの距離を置き、
    馬の足跡を頼りに
    追っていたのだが、
    すでに気付かれていたのかも
    知れなかった。
    “またしても見失のうたか。”

    源三郎は仕方なく、
    引き返す事にしたのだが、
    口惜しい思いは胸に増すばかり。
    ふと、近くに稲荷神社があるのを
    思い出し、気を鎮めようと、
    立ち寄ったのだった。
    どんぎつねを案じる思いもあった。

    そして、まさかの再会。
    それは、源三郎に
    思わぬ力を与えた。

    「どんぎつね殿、ちと訊ねるが、
     鼻は効くか?」

     「もちろんです! 
      今、通ったお方は、
      着物から白檀の香りが。」

    「その香りを、辿れ様か?」

     「お任せ下さい。」

    「では、頼む!」

    社の裏に廻り、つないだ馬を
    引きだそうとする源三郎を、
    どんぎつねが止める。

     「馬は置いて行きましょう。
      さほど遠くはなさそうです。」

    源三郎はどんぎつねの言葉に従い、
    並んで歩き始めた。
    どんぎつねの耳としっぽは
    気になるものの、この際、
    かまってなどいられない。

     「源三郎さん。あの方は?」

    「羽木家惣領、忠清様の兄上じゃ。
     腹違いではあるが。」

    その一言で、どんぎつねは
    何かを悟ったらしい。

    「先程、ぬしが申した
     ただならぬ気配とは?」

     「あの方は、濃い灰色の靄に
      取り巻かれています。
      あのままでは、危ない。」

    「危ない?
     成之様が?」

    どんぎつねは、黙ったまま、
    かすかな香りを追う。

    源三郎もそれ以上は訊ねず、
    その横を歩きながら、
    トヨが聞き出してくれた
    薬師堂の小僧の話を思い返した。

    如古坊は、月毎に薬師堂を訪れ、
    薬を受け取っては、何処かへ
    届けているらしい。
    しかも、時には貴重な
    高麗人参まで携えて。

    源三郎はそれを聞いて、
    腑に落ちた気がした。
    如古坊は、鳴子の張り巡らされた
    あの横道の先で、
    人参を育てているに違いない。
    “しかし、いったい何の為に?”

     「もうすぐです。
      この道の奥。」

    どんぎつねがさす指の先に、
    笹竹に囲まれた小屋の屋根が
    小さく見えた。
    “如古坊が姿を消した場所とは
    まるで方向が違う。
    やはり、気付かれていたか。“

    「よし。
     わしが行って、探りを入れよう。
     ぬしはここで、待っておれ。」

     「駄目です。それでは
      靄の正体が分かりません。
      私も行きます。」

    「しかし、、、」

     「源三郎さんは、この藪の葉を
      茎ごとたくさん切って、
      持って来て下さい。」

    「何故?」

     「カモフラージュです。」

    「鴨?」

     「ええっと。あ、、、隠れ蓑。
      そう。隠れ蓑にするんです。」

    そう言い残すと、
    どんぎつねは走り出した。
    足音は全く立たない。
    “唯之助にも劣らぬの。”
    どんぎつねの見事な走りっぷりに、
    源三郎は、舌を巻く。

    言われた通りに、源三郎は
    藪の小枝を小刀で切り出した。
    そして、それを小脇に抱え、
    足音を忍ばせて、小屋に近づく。
    笹竹の間で、手招きするように
    どんぎつねの尾が揺れていた。
    源三郎は、素早くその横に
    体を滑り込ませる。

    広縁に人影が見えた。
    話し声がかすかに聞こえる。

    「母上の容態は?」

     「先ほど、手当は済ませた。
      ほどなく落ち着かれよう。」

    「あれ程、出歩いてはならぬと、
     申し伝えておいたものを。」

     「まあ、まあ、ここは。。。
      お前の為に、山竜胆を
      探そうとなされたのじゃ。」

    源三郎は、耳を疑った。
    “母上?”

     「源三郎さん。
      部屋の奥に黒い靄が
      見えます。
      成之様の物より、
      もっと暗くて濃い。」

    「奥にいるのは、
     成之様の母御らしい。」

      「母御?それは、
       お母様の事ですね。
       でも、何故、このような
       山奥の小屋に?」

    「子細はわからぬ。
     殿がご正室を迎える折に、
     城から追われたと聞いておる。
     成之様はすぐに寺に入られ、
     母御のその後は、誰も語らぬ。」

     「ひどい!
      それではお母様が
      恨みの念を抱いても
      仕方がないです。」

    「ううむ。何とか、姿を
     確かめられぬものか。」

    小屋の奥を覗き込もうと、
    源三郎が身を乗り出す。
    そのはずみに、
    笹竹がザワッと揺れた。
    その音に驚いて、庭先の鶏が、
    けたたましく泣き騒ぐ。
    “あっ!!!”
    源三郎が息を飲む。
    どんぎつねの形相が
    見る間に変わった。

      「この、チキンめが―――!」

    飛び出そうとするどんぎつねの袖を
    源三郎が咄嗟に抑えた。

     「どんぎつね殿!気を確かに!」

      「え?あっ!
       私ったら、つい私情が。」

    その時、如古坊の大音声が轟いた。

    「誰じゃ、そこにおるのは?!」

     「これは、したり!
      逃げるぞ!」

    袖を引く源三郎の腕を、何故か、
    どんぎつねの白い指が抑えた。

      「ここは、私の出番です!
       源三郎さんはこの枝を被って
       先に逃げて!」

     「ならぬ!」

      「中にいる方を
       確かめないと。
       任せて!私、女優なんで。」

    そう言うやいなや、どんぎつねは、
    笹竹の間をするりと抜け、
    肩を怒らせている如古坊の
    目の前に立った。

    不意に現れた巫女姿の女子に、
    如古坊は一瞬、たじろぐ。

    「な、何者じゃ?」

      「私は、伏見稲荷の
       巫女にございます。」

    どんぎつねは、緋色の袴の両脇を
    両手で広げ、膝を屈めて、
    優雅にお辞儀をした。
    まるで、ディズニー・プリンセス
    の様に。
    だが、しかし、悲しいかな、
    ここは永禄。
    プリンセスなんて、
    だあれも知りゃしない。

    袴を思いっきり広げたのは
    源三郎を隠す為だったのだが、
    当の源三郎にはさっぱり伝わらず。
    尻尾を払う様に動かして、
    合図を送るが、
    立ち去る気配は全く無かった。
    “ん、もう!!!
    こうなったら、仕方ない。
    大切な非常食だけど。“

    どんぎつねは、
    衣の袖に手を入れると、
    スナック菓子を数粒、掌で握り、
    粉々に砕いて、足元に落とした。
    “関西限定、カール薄塩味。。。
    やっと見つけたのにい!“

    そう。
    “東京”では、今や幻の
    スナック菓子なのだ。

    小屋の床下に逃げ込んでいた鶏が、
    目ざとくそれを見つけて、
    近寄ってくる。
    “カールうすしお”のかけらを
    ついばみ始めた所で、
    どんぎつねは、ここぞとばかりに
    鶏を蹴り上げた。
    鶏は、羽をばたつかせ、
    盛大に叫び声を上げながら、
    小屋の屋根に吹っ飛ぶ。
    “ナイス・シュート!!!”
    そう。
    それは、令和なら
    ナデシコ・ジャパンから、
    オファーが来るレベル。

    如古坊は、口をあんぐりと空け、
    屋根を見上げた。
    すかさず振り返り、どんぎつねは
    源三郎を促す。

      「早く!今のうちに!」

    どんぎつねの言葉に押され、
    源三郎は、身をひるがえし、
    笹竹の中から姿を消した。

        ~~~~~~~

    稲荷の社に戻った源三郎は、
    なかなか、馬を引き出せずにいた。
    早く城に戻って、若君に報告をと
    思いつつ、やはり、
    どんぎつねが気にかかる。

    やがて、日が暮れて、
    辺りは闇に包まれた。
    “遅い。遅すぎる。。。”
    源三郎は焦った。
    “如古坊に捕らえられたか?
    なれば、助けに行かねば。
    いやしかし、
    伏見に戻ったのやもしれぬ。
    それなれば良いが。
    やはり、ここは確かめに。。。“

    暗闇の中で、隠れ蓑はいらぬはず。
    なのに源三郎は、
    袴に、長めの枝を差し込み
    胸元まで葉で覆う。
    社を出ようとした所で、
    鳥居の下に、金色の星が二つ、
    輝いているのが見えた。

    源三郎は、目をしばたく。
    その星は、真っ直ぐに
    こちらに向かって来る。
    思わず目をつぶった源三郎の耳に、
    柔らかな声が響いた。

     「今から、何処に行くの?」

    目を開けると、そこにあったのは、
    愛らしく動く狐の耳。

    「どんぎつね殿!」

    源三郎は我を忘れて、どんぎつねを
    抱きよせた。
    笹の葉に鼻をくすぐられ、
    どんぎつねが大きなくしゃみをする。
    源三郎は、あわてて胸を引き、
    どんぎつねを離した。

    「すまぬ。案じていた故、つい。」

    その後、源三郎とどんぎつねは、
    月明かりを頼りに、枯枝を集め、
    焚火をしながら、夜を過ごした。
    正しくは、源三郎の馬も一緒に。
    源三郎は、枯葉を集め、
    馬の寝床を作ってやり、
    馬は前足を折って、
    その上にじゃがみ込んだ。
    源三郎は、優しく馬の首を撫でる。
    馬が落ち着いたところで、
    どんぎつねをそばに呼んだ。

    「この馬は大人しいゆえ、
     ぬしが触れても暴れはせぬ。」

    源三郎は、どんぎつねの手を取ると、
    首筋を触らせた。
    どんぎつねは、馬のたてがみに、
    頬を寄せる。
    馬のぬくもりが心地良い。

    「これで、寒さはしのげよう。」

    馬の体に上体を預けてくつろぐ
    どんぎつねの姿に、なぜか源三郎の
    心もほぐれて行くのだった。

    焚火が、時折小さく爆ぜて、
    火の粉が舞い、炎が揺らめく。
    馬とどんぎつねに背を向け、
    源三郎は、焚火を見つめたまま、
    どんぎつねの話に聞き入った。

    けたたましい鶏の声を聞きつけて、
    顔を出した成之に、
    狐の絵馬を渡した事。
    病人の願い事と名前を書いて、
    稲荷神社に奉納すれば、
    病は癒えると伝えた事。

     「もし、お母様が私の話を
      聞いておられたなら、
      ご自身が、絵馬に願いを
      託すかもしれません。
      弱った者ほど、神仏に
      すがりたくなるもの。」

    「お前の耳と尻尾をみて、
     成之様や如古坊は
     不審に思わなかったのか?」

    「狐が稲荷神の使いである事は、
     皆様、良くご存じです。
     伏見稲荷では、新たに神官を
     迎える事になり、
     その儀式の為の時別な衣装だと
     伝えました。
     ここに私が来たのは、
     儀式に使う杉の葉を
     取りに来たのだと。
     通りがかりに、話し声が聞こえ、
     なにやら困り事の様だと思い、
     足を止めたと申し上げました。」
     “平成の東京だったら、
     振り向きもされないんだけど。
     コスプレ天国だから。“

    「杉の葉?その御神木の?」

    どんぎつねがうなづく。

     「この稲荷神社は、伏見稲荷の
      八百八十八番目の末社なのです。
      八は末広がりで縁起が良いので、
      この御神木が選ばれました。」

    どんぎつねの話は、
    まんざら嘘でもないらしい。

    小さな火の中で、
    また枯れ枝がはぜた。
    その音が、だんだん遠くなる。
    やがて、源三郎は、
    浅い眠りに落ちて行った。

    夜明け前、
    体が揺れるのに気付いた源三郎は、
    思わずわが目を疑った。
    いつの間にか、馬の背に乗っている。
    馬は城を目指している様だ。

    源三郎は手綱を引き、
    稲荷神社に戻ろうとするが、
    馬は向きを変えようとしない。
    まるで、何かに操られている様に。

    馬の鼻先に、小さな火が
    おぼろに揺れている。
    “あれは、もしや、狐火?”

    突然、源三郎の全身から力が抜ける。
    手綱を取ろうとしても、
    指に力が入らない。
    源三郎は、なすすべもなく、
    狐火に導かれる馬に、
    その身をゆだねた。

      ~~~~~~

    「高山との国境の小屋で、
     いったい、何をして
     おられるのか。」

    若君と共に、源三郎の報告を聞いた
    小平太が、成之への
    不信感を露わにする。

    源三郎は、成之の母の事は、
    この時はまだ、語らずにいた。

     「若君、直ぐに如古坊を
      問いただしては?」

    思案を重ねていた忠清が、
    やっと口を開いた。

    「小平太。早ってはならぬ。
     今は、源三郎とともに、
     花園での茶会の準備を進めよ。」

    忠清は思い返していた。
    此度、源三郎が突き止めた小屋は、
    唯が見たと言う、成之と高山の
    坂口との密談の場であろう。
    今思えば、大手柄であったのに、
    逆上して唯を責めた。
    忠清は、いまさらながら、
    あの夜の己を、恥じた。
    “それにしても、兄上が未だ、
    あの小屋を使うておるとは。
    わしに知られた事は、承知のはず。
    何故じゃ?“

    若君の部屋を退出した後も、
    小平太は不服な様子。

     「若君は、いったい何を
      考えておられるのか!」

    一方で、源三郎はすぐにも
    稲荷神社に戻りたかったが、
    若君の言葉に従って納戸に向かい、
    茶会の為の茶器を揃え始めた。

    さらに数日が過ぎた。
    茶会を二日後に控え、花園の東屋で
    会場を整えている源三郎のもとに、
    何故か、トヨがやって来た。
    小平太の使いだと言う。

     「小平太殿は、本日は参れぬ。」

    「何故?」

     「三之助と孫四郎を送って行く事に
      なったのじゃ。
      先に戻った、梅谷村の
      おふくろ様の元への。」

    「天野の屋敷で、養うはずでは?」

     「三之助がの、
      母を守るは、自分の役目じゃと
      言い張って聞かぬらしい。」

    「何と、けなげな事よ。」

     「今日の務めを、
      ぬし一人に任すは心苦しいが、
      よろしく頼むと。」

    「承知した。伝言ご苦労。」

     「それと。。。これを。」

    トヨは真っ白な晒を源三郎に渡す。
    手ぬぐいほどの大きさで、
    端には千原家の家紋が
    染められていた。

    「これは?」

     「先日の礼じゃ。
      薬師堂の小僧に、草木染の
      手ほどきをうけての。」

    「薬師堂?では、この紋は、
     ぬしが染めたのか?」

    しばらく前の事。
    ノアザミの葉を摘むと言う
    トヨの手に、手ぬぐいを巻いて
    やったのを、源三郎は思い出した。

    「あのような事、
     気にせずとも良いものを。
     それに、わしはまだ
     許されておらぬ。
     千原を名乗る事は。」

    トヨは聞こえぬふりで言う。

     「首に巻けば、汗止めになろう。
      襟も汚れまい。」

    源三郎は、小さく頷くと、
    うつむいたままそれを首に巻いた。
    トヨは嬉しそうに、その様子を見て
    いたが、源三郎が顔を上げると、
    慌てたように後ろを向き、
    走って行ってしまった。
    “相変わらず、せわしい奴じゃ。”

    源三郎は、礼も言えぬまま、
    トヨを見送る。
    やがて、東屋の作業に戻った。

    明後日の茶会では、茶を味わう前に、
    この東屋で、成之が花を立て、
    披露する趣向になっている。
    東屋の柱に朽ちた所が無いか、
    源三郎は、その一つ一つを
    掌でなぞって確かめた。

    その後、花器をしつらえる為の
    花台を東屋に運び入れる。
    布で丁寧に花台を拭き清めた所へ、
    庭師の頭が、縁台の組み立てが
    終わったと、報告に来た。

    「奥御殿の方々の御席には、
     紗の天蓋をお付けする事に
     なっているはずじゃが。」

     「抜かりございませぬ。
      床の緋毛氈と、天蓋の紗は、
      明日、運び込む手筈にて。」

    「左様であったの。ところで、
     成之様の花器は決まったか?」

     「野点であれば、青銅の壺が
      よろしかろうとの仰せ。」

    「左様か。
     その壺の運び込みも
     明日になろうの。
     であれば、明日の夜も
     わしが番を致そう。」

     「連夜のお役目では、
      お身体に触りが。
      今宵は、わしらが見張ります、
      どうか、お屋敷にお戻りを。」

    「いや、大事無い。
     野営は戦で慣れておる。」

    庭師らを帰し、東屋に戻る。
    西に傾く夕日が目に染みる、
    源三郎は、ふと思い出した。
    “どんぎつね殿に、
    袴をはかせたのも、
    ここであった。“

    脇差に下げた小さな尻尾を、
    指でそっと撫でる。
    源三郎は、声に出してみた。

    「姫、おみ足をお上げ下され。」

     「は~~い。」

    驚いて振り向くと、
    当のどんぎつねがおどけた顔で
    片足を上げていた。

    「な、何故分かった?
     わしがここにおると。」

     「だって、それ、
      私の分身ですから。」

    「分身。。。」

     「ずっと、お守りします。
      源三郎さんが
      持っていて下さる限り。」

    「それは、、、心強いの。」

    どんぎつねは、満開の花の様な
    笑顔を見せる。
    源三郎は、眩しそうな顔で、
    目をそらした。

     「源三郎さん?」

    「あ、いや、その。
     折角参ったのじゃ。
     紅葉を見せてやろう。
     今が、見ごろ故。」

     「あ、いえ、それよりも、
      これを。」

    どんぎつねは、衣の袖から、
    杉の葉に包まれたものを、
    そっと取り出す。

    「これは、もしや。」

     「はい。絵馬です。
      今朝、社で見つけました。
      これにも、黒い靄が
      かかっていたので、
      御神木の葉で封じています。」

    絵馬を受け取る源三郎の指が震える。
    これを書いたのは、成之様か?
    それとも母御か?
    その願いとは、いったい。。。

     「ご覧になる時も、杉の葉は
      付けたままにして下さい。
      そして、その葉が枯れる前に、
      稲荷の社に戻して。」

    「承知した。
     早う若君にお届けせねば。
     いや、しかし、これは困った。
     わしは、明後日の朝まで、
     ここを離れられぬ。」

     「少しの間でしたら、
      私がここに。」

    「それは、ならぬ。
     ぬしは、城の者では無い。」

    源三郎はため息をつき、天を仰ぐ。
    空には一番星が瞬き始めた。
    その時、どんぎつねの耳が
    ピクリと動いた。

    「誰か来ます!」

    源三郎が、どんぎつねを
    花台の下に押し込む。
    砂利を踏む音とともに
    聞こえてきたのは、
    良く知った声だ。

    「源三郎、ご苦労。」

     「これは、小平太殿。
      梅谷村へ参られたのでは?」

    「急ぎ戻ったのじゃ。
     珍しき梅が枝を手に入れた故。
     今、庭師の頭に預けて参った。」

     「梅?この季節に?」

    小平太は、得意げに語る。

    「それがの、咲いておったのじゃ。
     滅多に見られぬ故、
     若君様の茶会にと、
     母上が申されての。」

     「母上?」

    聞き返されて、小平太は慌てた。

    「あ・・・いやその、
     母上じゃ。三之助と、孫四郎の。」

    小平太の顔が、見る見るうちに
    朱に染まる。
    普段、生真面目で無骨な小平太の
    思わぬ一面を見て、源三郎は驚く。
    “?乃殿を慕っておられるのか。”

    小平太は、照れくさそうに
    背を向けると、
    今宵の番を代わると言う。
    役目を放り出し、“おふくろ様”に
    会いに行ったとは、
    思われたくないらしい。
    小平太は、茶会当日の警備役
    なので、その前夜の番には、
    付けぬ決まりになっていた。

     「なれば、ありがたく。」

    引き継ぎはないかと問う小平太を、
    刈込の足りない柴垣に案内しながら、
    源三郎は、さりげなく東屋に
    視線を送る。

    どんぎつねは、そっと花台の下から
    這い出すと、源三郎に手を振り、
    すぐにその姿を消した。

       ~~~~~~

    そして、茶会当日。

    源三郎は、稲荷の社の前で、
    手を合わせていた。

     「茶会に出なくて良いの?」

    どんぎつねが、無邪気な顔で言う。

    「わしは、列席を許される様な
     身分ではない。」

     「身分?
      それならば、その身分とかに、
      感謝です。」

    「感謝?」

     「はい。そのおかげで、
      今日また、ここで
      会えたんでしょう?」

    源三郎は、戸惑いを隠せない。
    誰もが、立身出世を望むもの。
    それなのに。。。

    どんぎつねは、屈託なく続ける。

     「で、分かりました?
      何が望みか。
      絵馬を書いた人の。」
     
    「いや。
     ただ、“大願成就”とのみ
     記されていた故。
     つまびらかにはなっておらぬ。」

     「そうですか。
      筆跡は?」

    「それは判明した。
     成之様の母御のものと。
     歌会の古い短冊が、
     残っておっての。
     照らし合わせたのじゃ。」

     「凄い!
      源三郎さんって、
      名探偵ですね。」

    「めい?」

     「私ね。思うんです。
      成之様は、冷静沈着に見えて、
      お母様への思いは、
      人一倍お強い。
      そのお母様の暗い念が払えれば、
      成之様にまとわりついている
      暗い靄もきっと晴れます。」

    「しかし、どのようにすれば?」

     「まずは、お母様の体を癒す事。
      それから、過去に何があったのか、
      慎重に調べて、こじれた原因を
      洗い出すんです。」

    「お、おお。不思議じゃの。
     ぬしの言葉を聞くと、その通りに
     成せそうな気がする。」

    いつの間にか、辺りは
    夕闇に包まれていた。
    小さな火が、
    一つ、また一つと、
    稲荷の社を囲み始める。

    「どんぎつね殿、この火は?」

     「白狐の迎えです。」

    「迎え?
     では、伏見稲荷へ戻るのか?」

     「はい。」

    「急すぎるではないか。
     留まれぬのか?ここへ。
     つまりその・・・
     こ、こ、このわしの・・・」

    思いもしなかった突然の別れに、
    源三郎の頭は真っ白になる。
    驚きのあまり舌がもつれる。
    “妻”という文字が目の前に
    浮かぶが、言葉に出来ない。

     「私、闇払いになる事に
      したんです。」

    「闇払い?」

     「はい。闇落ちする人を、
      助けたいんです。
      それには、白狐の元で
      修行しないと。」

    「その修業とは、
     ここでは成せぬのか?
     救わねばならぬものが、
     目の前におるではないか。
     ここに納めた絵馬のお方の。
     この稲荷の巫女となり、
     その方の闇を払うが、
     ぬしの役目では。」

     「成之様のお母様は、
      まだ夜叉にまでは
      落ちていません。
      今なら、人の力で救えます。
      たぶん夫であったお殿様なら。
      お母様が救われれば、
      成之様も救われます。」

    狐火がどんぎつねの周りを
    ゆっくりと飛び始めた。

     「私、実は、“葛の葉”様に
      憧れていました。
      安倍晴明様のお母様の。」

    「篠田の森に消えたと言う?」

    どんぎつねは、微笑みながら頷く。

     「でも、私には無理だと
      悟ったんです。
      これからは、人に恋せず、
      人を救う修行に励みます。」

    どんぎつねの決意は固い様だ。
    源三郎の目の前から、
    “妻”という言葉が消えて行く。
    肩を落とす源三郎に、
    どんぎつねは優しくこう言った。

     「源三郎さん、
      気づいてないんですか?
      あんなに慕われているのに。」

    「わしが?」

     「その、首のものは?」

    源三郎は、慌てて晒を首から外す。

    「見ておったのか、花園で。
     こ、これは、礼にと。
     それにあれは、
     妹の様なものじゃ。
     あ、いや、時に、
     姉の様でもあるが。」

     「妹?」

    源三郎は語った。
    故あって、源三郎はとある村で
    生まれたのだが、急に母の乳が
    出なくなり、困り果てた所へ、
    見かねたトヨの母が、
    乳を含ませてくれたのだと。

     「トヨさんって
      おっしゃるんですね。
      私だったら、肌に着けるものは
      好きな人にしか
      贈りませんけど。」

    「そのような事、申すでない。」

    源三郎は、何とか話をそらそうと
    躍起になる。

    「そうじゃ。
     あれは見事じゃったの。
     伏見稲荷の巫女は、
     蹴鞠もたしなむのか?」

     「蹴鞠?」

    「まさか、鶏があのように
     宙に舞うとは。」

     「ああ、あれですか。
      やりましたよね~。」

    どんぎつねが自慢げに
    尻尾をぐるぐる回す。
    それを見て、源三郎が笑った。

     「実は私。
      あれから考えたんです。
      私の前世はポンスキーで、
      子供だった源さんと
      ボールで遊んでたのかなって。」

    「ぼおるとは?」

     「あ、鞠です。」

    「その後に、狐に
     生まれ変わったと。」

     「はい。」

    「源殿も、罪な事をしたものじゃ。
     人に生まれ変わるよう、
     願えばよかったものを。」

     「源三郎さんは、そう願って
      下さるんですか?」

    「願う。」

     「良いんですか?
      そんなこと言って。
      ホントに、生まれ変わるかも。
      例えば、源三郎さんと、
      誰かさんの娘としてとか?」

    「誰かさんとは、誰であろう。」

    源三郎が寂しそうな顔をする。
    どんぎつねは、
    慌てて言葉を添えた。

     「男の子として、
      生まれたりして。」

    「男?いや、やはり娘が良い。」

     「そう?
      じゃあ、考えておいて下さい。
      名前を。」

    「どんぎつねでは不服か?」

     「不服では無いですけど。
      折角なら、もっと、
      娘らしいのが。」

    「心得た。」

     「今、決めてもらえます?」

    「何故に?」

     「生まれ変わった時に、
      思い出せるかも。
      今日の事。」

    「承知した。」

    腕組みをした源三郎の指が、
    脇差に下げたモフモフに触れる。
    やがて、どんぎつねを見つめて、
    こう言った。

    「美緒」

    どんぎつねの尻尾が、
    嬉しそうに揺れる。

    「ぬしの尾は、美しい故。」

     「えーーー?尻尾だけ?」

    どんぎつねは嬉しさを隠して、
    わざと口を尖らせる。

    「あ、いや。そういう訳では。」

    どんぎつねは、思う。
    “やっぱり源三郎さんカワイイ。”

    気が付けば、どんぎつねは
    沢山の狐火に取り巻かれていた。

    夜空には美しい星が瞬いている。
    どんぎつねは空を見上げた。

     「もう、行かなくちゃ。」

    「もう。」

    どんぎつねは、源三郎が左手の中に
    丸めて持っている晒を
    そっと自分の手に取ると、
    静かに広げて、それを源三郎の
    首に巻きなおした。

     「どうか、お幸せに。」

    「美緒。」

    源三郎が呟く。

    狐火に導かれる様に、どんぎつねは
    稲荷の社と御神木の周りを
    ゆっくりと廻ると、やがて、
    鳥居の向こうに消えて行った。

    “これを、“狐の嫁入”と
    呼ぶのやもしれぬ。“

    白狐の元に戻るどんぎつねの、
    美しい尾が、目の奥で揺れる。

    源三郎は、朝日が昇るまで、
    その場に一人、
    たたずんでいた。
    https://www.youtube.com/watch?v=ZPsZj6_udmE

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    二人の令和Days69~10日14時、私のモノ!

    ちょっと位、緩んでもいいよ。令和だもん。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニックは盆休みに入った。そろそろお昼ごはんが終わる。

    美香子「さあ、暑いけど、もうひと頑張りして大掃除するよ~」

    若君「お母さん、その大掃除ですが」

    美「はい?」

    若「普段出来ぬ所を掃除すると聞きました」

    美「うん、そうね」

    覚「どこか、汚いなぁって所あった?」

    若「相当汚れておる、とは申しませんが」

    覚「うん。でも、気になったんだろ?」

    若「表に掲げた、院の名が入った、夜に光る」

    尊「あー、さっき兄さんが見てた、クリニックの看板ですね」

    若「虫が集まるゆえ、所々黒うなっております」

    美「あー。なんかすっごく恥ずかしいわ。それ、きちんと磨いた覚えないのよ」

    覚「目につく所なのにな。ちゃーんと見てなきゃいけないな~。さすが忠清くんだ」

    美「じゃあ忠清くん、そこ、あなたにお掃除お願いしてもいい?」

    若「承知致しました」

    唯「私も手伝うー」

    尊「かなり暑いよ?」

    唯「一緒がいいもん」

    尊「そこは、愛の力が勝るんだ」

    覚「高圧洗浄機位買っときゃ良かったなー。ブラシとバケツと雑巾と、あと脚立が要るから用意するよ」

    外に出た。看板を見上げる若君と唯。

    唯「これかー。確かにうす汚れてる」

    若「始めるか」

    若君が脚立に登った。雑巾で水を含ませながら、ブラシで擦る。みるみる内にバケツの水が真っ黒に。

    唯「水、替えてくるね」

    若「頼む」

    一人黙々と擦っている若君。すると、

    若君 心の声(何やら、視線を感ずる…ん?)

    いつの間にか、門の外に小さい女の子が立っていた。脚立に乗る若君を下から見上げている。

    若 心(近くの屋敷の娘御であろうか。年は孫四郎程か)

    そのまま掃除を続けていると、またもや熱視線を感じた。見ると、

    若 心(なんと!分身の術か?!)

    一回り大きく、そっくりな顔で同じ服を着た女の子がもう一人増えて、二人に見つめられている。

    若 心(これは、どうしたものか…)

    若君が戸惑っていると、

    男「あー、やっぱり里帰りしてたなー!」

    若「…あっ、これは」

    急いで脚立を降り、麦わら帽子を脱いで、現れた男性に近づく若君。

    若「久方ぶり、です、コーチ」

    コーチ「元気そうだね。速川は?あ、君も速川だったな」

    若「水を汲みに行っておりまして」

    唯「あー!コーチ!」

    コ「おー、元気かー」

    唯「え?なんでここに居るの?てか、もしかして娘ちゃん?二人?かーわいい!」

    コ「ウチの娘だ。小2と年長」

    若君の囁き「…何の話じゃ?」

    唯の囁き「年は、7才と5才、って意味だよ」

    コ「妻の実家がこの近くでな。ゆうべから来てるんだが、子供が飽きだしてさ、公園にでも行こうと思ったんだが、あーそう言えば速川の実家この辺りだったな、って様子を見に来てみたんだ。済まんな、娘達がじっと見ててびっくりしただろ?」

    若「いえ」

    上の娘「パパ、この人たち誰?」

    コ「このお姉さんは、パパが教えてる高校の部活で頑張ってたんだ。で、このお兄さんと結婚したんだよ」

    上娘「けっこん。あ、わたしがしょうらい、パパとすることだね」

    唯&若「え」

    下の娘「ちがうよ!あたしがしょうらい、パパとけっこんするんだもん!」

    上娘「わたしだもん!」

    下娘「あたしだもん!」

    唯「か、かわい過ぎるっ。コーチ、めっちゃ愛されてるじゃん!」

    コ「嬉しいんだが、いっつもこれでケンカが始まるんだ。さ、パパはまだお話があるから、先に公園に行ってなさい」

    娘達は、走っていった。

    コ「ふう。騒がせて悪かったな。君らも子供…あっ」

    唯「あ、私、子供できてませんから。コーチが勘違いしただけだよ」

    コ「そ、そうか。まだしばらくこちらには居るのか?」

    唯「お盆の頃に、帰ります」

    コ「そうか。じゃ、そろそろ行くよ。元気でな」

    唯「うん。元気でねー」

    若「では、これにて」

    走って行くコーチ。後ろ姿を見送る唯と若君。

    コーチ 心の声(速川、綺麗になったな…)

    唯「あのさぁ」

    若「ん?」

    唯「さっき、ホンの一瞬だけど、とても永禄のみんなに見せらんない顔してたよ」

    若「そう…やもしれぬ」

    唯「デレッデレもいいトコだった」

    若「唯に瓜二つな愛らしい娘達に、取り合いにされる様を思い浮かべての」

    唯「ははは。でもそれ、ちょっと違うよ」

    若「違う?」

    唯「私も取り合いに参加するもん」

    若「そうか、ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    返信
    二人の現代Days(仮)か…

    てんころりんさん、いつも感想をありがとうございます。心に染みまする。

    なんせ「寸止めの美」がないので、いつイチャイチャしだすかと、ハラハラしながら御覧いただいてると思います。恐縮です。

    今日のお話から、速川クリニックが盆休みに入りますので、家族五人の場面がちょっとは増えるかな。速川家は、両親を筆頭に今日も平和です。

    題名の件ですが…そりゃあ現代で生活を営む二人は、私も見たいです。でもここで、超現実的な事案が頭をもたげ…若君は「登録」されてない人物だから、唯達と同じようには生活できないし…ファンタジーはどうなった!って話なんですが。

    ひとまず、と言ってはなんですが、令和Days、満月の2019年8月15日以降のお話もちょっぴり描きますので、今しばらくお付き合いくださいませ。

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    返信
    ふふふ (^q^)

    いつもは お誕生日のお知らせのお礼は直接言っていますが、他ならぬ 源ちゃんですからね (^.^)。 勝手ながら、てんころりん様のお名前を 出させて頂きました。お許しを… f(^^;。

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    返信
    夕月かかりてさん

    2019年(令和元年)7月、ひょんなことから現代に戻って来た唯と若君でしたね。
    8月の満月がもう少しで来てしまいます。
    夏休みに実家へ里帰りした2人というイメージで読んでます。
    また来てね~って(笑)

    そして夕月さんの令和Daysを読んでいると、現代で生きることを選んだ唯と若の物語が あっていいかなぁと思ってしまいます。
    私は原作を全く知らずにドラマを見たので、初見の頃から、それは思いました。

    緑合に行った羽木には父上と兄上がいて、任せればよい。
    父上も「我らは我らを生きる!」かっこよく言ってましたし。
    父上は、若君と唯は相賀から逃れて、2人で生き延びて欲しかったのかな? なんて勝手に解釈します。

    色々なお話がありましたが、若君の孝行息子ぶりに好感あります。
    大分前のお話ですが、海水浴で唯·若·尊が浮き輪をして、3人一緒に浮かんでいて、砂浜で覚さんがのんびりビールを飲む図、好きでした。

    平成Daysの続きで、ジェンガに書いた名前の話になり、美香子さんが孫四郎と三之助には、亡くなった弥之助の他にもう1人兄がいたのでは?と推理しますが、そうですよね。
    私もそう思います。

    夕月さんの速川家のなかで、私、特にお父さんとお母さんのファンです。
    古舘寛治さんと中島ひろ子さんの声が本当に聞こえますょ。

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    返信
    わ~驚いた (笑)

    ★梅パさん、
    源ちゃん トヨちゃんの ほんわかした会話、いつもかわいくて好きです❣️

    あら?天野の奥方様って誰?_吉乃さまかぁ。
    え?これ誰?どこのお局様?_てんころりん? 私かぁ。

    (゚〇゚)ビックリ
    有名な源ちゃんトヨちゃんシリーズに出てしまった!
    ありがとうございました。

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    返信
    二人の令和Days68~10日土曜8時30分、気が利きます

    郷に入っては郷に従う。いや、馴染み過ぎ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。

    美香子「じゃあ、あと半日、頑張りまーす!」

    四人「行ってらっしゃーい!」

    覚「さて、と。昼からは大掃除だけど、午前中も色々やっとかないとなー」

    若君「お父さん」

    覚「何だい?」

    若「掃除と、大掃除は、何が違うておるのですか?」

    覚「あー。大掃除は、普段中々出来ない所だったり、大がかりにしか出来ない所だったり。いつもより念入りにって感じかな」

    若「普段出来ぬ所ですか」

    覚「どこか、ここやらないとって気付いた所あったら教えてな」

    若「わかりました」

    覚「まずは、気温が上がらない朝の内に、庭の草むしりだな。帰って来た早々に抜いてもらったが、もう大分伸びてるから」

    若「わかりました。では早速三人でいたします」

    唯「私と」

    尊「あ、僕か」

    覚「よろしく。日焼け止めも軍手も帽子もタオルも忘れずにな」

    若「はい。では支度が出来次第、参るぞ」

    唯&尊「ははっ」

    草むしり中。

    唯「どうせならさぁ、食べられる野草とか生えてきてくれれば一石二鳥なのにね」

    若「そうじゃのう。この辺りの草は、まず無理であろう」

    尊「それ、もしかして本読みました?」

    若「あぁ。実に為になった」

    唯「私が買った本でしょ」

    尊「その本、しばらくお父さんが持ってたんだよ。僕はその時読んだ。多分今回帰ってくるちょっと前に、お姉ちゃんの部屋に戻してると思う」

    若「おぉ、それで合点がいった。わしはこの前、初めて見たのじゃ」

    尊「実際、永禄で役に立ったの?」

    唯「立ったよ。ひもじい時にモグモグしてた」

    若「いつの話じゃ?梅谷村に居った頃か?」

    唯「まっ、そう…だね」

    尊「お城入ってからもやってたら怖いよ」

    庭の草むしりは終了。

    若「先程、お父さんが、普段出来ぬ所を掃除すると申された」

    唯「うん」

    若「草はまだ、そこらに生えておるのだが」

    クリニックの駐車場の隅を指差す若君。

    尊「じゃあ、もうちょっと頑張りますか?」

    唯「どしたの尊?やる気じゃん」

    尊「だって、昼過ぎに頼まれたら、もっと暑い時にやんなきゃいけないんだよ?」

    唯「なるほど。なら、やっちゃおー!」

    建物近くから、門の辺りまで手分けして、草むしり続行。

    覚「あれ?おー、感心感心」

    クリニックの中からも三人の様子が見える。

    美「あら、こんな所までやってくれるなんて。さすが忠清くん…いや、これは尊が主導かな」

    芳江「草むしりの分析ですか?」

    美「感情で動くのが唯。でも納得すればすんなり言う事を聞く。感情と理論のバランスがいいのが忠清くんだけど、今日の場合、多分忠清くんが提案して、理論で動く尊が、全員が納得するような答えを出して、こうなってると思うわ」

    エリ「まあ。まるで会話をご覧になったかのようですね」

    門の前まで来た。クリニックの看板をじっと見つめる若君。

    尊「ふう、こんなトコかな。あれ、看板がどうかしました?」

    若「うむ。後でお母さんに聞いてみようと思うての」

    尊「そうですか」

    敷地内全て、草むしり終了。抜いた草をゴミ袋に集め、覚の元へ。

    唯「あー、あっつーい」

    尊「ふう、重っ」

    若「お父さん、これで宜しいでしょうか」

    覚「あー、ありがとねぇ。ホント助かったよ。ごめんな、永禄なら周りが何でもやってくれる身分なのに、つい甘えちゃってさ」

    若「いえ、此処は先の世ですので。何でも致します」

    覚「みんなお疲れさん。麦茶飲んで、涼んで」

    時計は、11時を指している。

    覚「ありがとな。午前中はここまででいいぞ。また昼から頼むな」

    若「わかりました」

    覚「ところで、今日の晩だが、いよいよもんじゃ焼きにしようと思う」

    唯「おーっ!」

    尊「楽しみー!」

    唯「具はなに?」

    覚「明太チーズでどうだ」

    唯「お餅も入れて~」

    覚「了解」

    唯「たーくん、できた所からどんどん食べてくんだよ。楽しみにしててね」

    若「出来た所から?…少々解せぬが」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    ハピバ♪

    【いつもの場所】
    トヨ「げ~んちゃん♪」
    源三郎「おぅ!」
    ト「はい これ」(差し出す 干菓子)
    源「お、こんな贅沢な菓子を どうしたんだ?」
    ト「天野の奥方様が 女中たちに下さったの。これは私の分だけど、今日 源ちゃんのお誕生日だから 持って来た」
    源「覚えてくれてたんだ!」
    ト「ううん 忘れてた、あはは…」
    源「何だよ~。え… じゃあ何で?」
    ト「てんころりん様が 教えて下さったのよ」
    源「あぁ あの御方は いつも皆のことを よく覚えて下さって、有り難いことだよね」
    ト「ほんと そう。梅パ…とかいう人とは違うよね」
    源「そんなこと言っちゃダメだよ! あの人は 俺たちの…その…キューピッド…ってやつ…?」
    ト「まぁそうだね。でも ただのキューピー体型って話もあるよ」
    源「やめろ やめろ!」
    ト「さ、食べて食べて♪」
    源「うん、せっかくだから トヨもお食べ」
    ト「うん♪ 源ちゃん お誕生日おめでとう!」
    源「ありがとう♪」
    二人の側の樹で ツクツクボウシが賑やかに鳴いてます。

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    二人の令和Days67~9日17時、恩返しします

    尊は、これで三倍以上頑張れるに違いない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    キッチンに四人集合。

    覚「じゃあ忠清くん、始めるよ」

    若君「はい!」

    覚「今日は、色々同時進行だから、唯も尊もよろしくな」

    唯&尊「はーい」

    カレー作りスタート。ショウガ、ニンニクを炒めたところに、玉ねぎ投入。

    覚「色が変わるまでじっくり炒めるよ。これで味が決まるからね」

    ひき肉、スパイスを入れ、炒め続ける。隣では、野菜スープが出来上がった。

    尊「ひき肉なんだ。わかった!キーマカレー作るんだね」

    覚「そうだ。肉じゃがじゃないだろ?」

    唯「お母さんに対抗してる?」

    トマト、ヨーグルト、水、調味料を入れてしばらく煮る。その間に、トッピング用のピーマンやパプリカを細切りにして炒めている。

    覚「ご飯は、炊いておいた。これだよ」

    若「色が付いております!」

    覚「ターメリックライスだから黄色だよ。おーい」

    唯&尊「はーい」

    覚「ご飯とスープ盛り付けてくれ」

    唯&尊「はいはーい」

    キーマカレー、出来上がり。

    美香子「美味しそう!」

    若「これで良かったのか、わかりかねます」

    覚「大丈夫だよ。では」

    全員「いただきまーす!」

    心配そうに皆が食べるのを見ている若君。

    唯「おいしい!」

    尊「辛過ぎなくて、なんか爽やかで」

    美「人となりが出てる感じね。美味しいわ」

    覚「味がまとまってて、美味しいよ。食べてごらん」

    若「はい。…なるほど」

    覚「どう?」

    若「これが、わし、なのですね」

    覚「うまいだろ?」

    若「はい。されど、人となりが出ておるとなると、身構えてしまいます」

    覚「ははは、そうか。料理って、そんなもんだけどな。バッチリ大成功だからね」

    食後。久々に、実験室に子供達三人集合。

    唯「さて。旅行の話しよっか。親に隠れてこっそりと」

    尊「まだあんまり考えてないけど、もう日にちないもんね」

    唯「私、思ったんだけどさぁ」

    尊「うん」

    唯「尊が、たーくんと二人で出かけるとしたら、どうする?」

    若「二人?」

    尊「えっ!二人で?!えーっと…ホテルからちょっと歩くと、電気街があるんだ。今すぐ何か欲しいって訳じゃないけど、プラプラしたい」

    唯「理系男子版ウィンドウショッピングだね。で?」

    尊「その近くの商店街もプラプラ。アーケードだから、暑くないし」

    唯「うん」

    尊「で、僕もモリモリのパンケーキ食べてみたい」

    唯「おっ」

    尊「こんな機会でもないと、一生口にしない気がする。これは、お姉ちゃんも一緒じゃないとちょっと無理かな」

    唯「わかった。それで行こー!」

    尊「は?」

    唯「大好きなお兄ちゃんとデート、良くない?二人で出かけるなんて、なかったでしょ」

    尊「兄さん一人だけ来た時にはあったけど…だいぶ前だな」

    若「此度は、ないのう」

    唯「尊とたーくんのデートに、私が付いてく体でどう?邪魔はしないからさ~」

    尊「え、いいの?やったー!」

    唯「今回さ、受験勉強を後回しにしてくれてるから。そのお礼というか」

    若「なるほど、それは良き計らいじゃ」

    尊「わぁ、ありがとう、お姉ちゃん」

    唯「ちゃんと、行く店やルート、決めといてよ?」

    尊「うん!」

    夜も更けてきた。唯の部屋。

    若「心優しい姉君じゃ」

    唯「そぉ?ありがと。たーくんも尊を気にしてくれてたからさ。あ、ごめんね、勝手に盛り上がって決めちゃって」

    若「構わぬ。これで丁度、恩返しが出来るのじゃな」

    唯「そうだね」

    若「…今日は、眠くはないか?」

    唯「眠くないよ。あはは~、なんか、狙ってる顔になってるよ」

    若「狙っておるからじゃ」

    唯「やっぱしか。えっ、もう?!」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夜はいつまで続くかわかりませんが、9日のお話は、ここまでです。

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    すごい♪

    源・トヨ、大忙しです (^o^;)。
    違った2つのストーリーに出して頂けるとは、感謝感激雨あられ ?♪
    楽しみに待ってます?。

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    返信
    トヨちゃん

    梅とパイン様
    夕月かかりて様

    源ちゃんトヨちゃん、実は、私も今、書いてまして。
    もう少しで書きあがるので、アップしますね。
    よろしくお願いします~(*^^)v

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    返信
    ありがとうございます!

    梅とパイン様、驚かせてすみませんでした。創作は自由とは言え、やはり承諾はいただきたかったので、感謝感謝です。

    では、頑張って描き進めます!

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    返信
    びっくりした~(笑)

    さっき 気付きました (^-^;。

    源ちゃんトヨちゃん、どうぞどうぞ使って下さいませ~♪ 逆に嬉しいです (*^^*)。
    前には 妖怪千年おばばさんも 源ちゃんを出してくれたし、生みの親として(←違うぞ!) 嬉しいことです (^^)。

    連載を 楽しみにしてますので、よろしくお願いしますね (^^)d。

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    返信
    二人の令和Days66~9日11時、成長しあうのです

    人としては完成形、弱みは唯に対してだけ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    鶴を入れる箱を作っている。

    唯「これでラスト?」

    尊「できたね。じゃ、鶴を入れてこう」

    唯「箱さぁ、どうせ並べるならグラデーションにしない?」

    尊「そうだね。糸通す時にも楽だろうし」

    リビングの隅に、整然と鶴の山が並んだ。

    唯「いい感じ!」

    尊「なんか、できあがりが見えてきたよね」

    食卓に、覚と若君。

    覚「さて、そろそろ忠清くんの嗅覚もリセットされただろ。ハーブのブレンド始めようか」

    若君「はい!」

    しばらくすると、

    若「お父さん、いかがでしょうか」

    覚「おっ、どれどれ…ん~、いいね!」

    若「形になっておるでしょうか」

    覚「勿論。じゃあ、早速お昼ごはんに使おう。キッチンへ移動な」

    若「はい!」

    尊「なんかさ、実の娘や息子より可愛がってるよね」

    唯「甘えてこないのが、またいいんじゃなぁい?」

    覚「なんかブツブツ言ってるな」

    唯「なんでもないっす」

    昼ごはん。

    美香子「白身魚のフライ、衣にハーブ入ってる?」

    覚「あぁ、忠清くんにブレンドしてもらった」

    美「あれ、そんな予定だった?」

    覚「メインは夜だ。カレーを作る」

    美「あら、そうなのね~。忠清くん、とってもいい香りよ」

    若「ありがとうございます」

    昼下がり。四人で静かに鶴を折っている。

    覚「そうそう、千羽鶴を繋ぐための糸や針なんかは、母さんが持ってるから。日曜の午前中に、ちょっとやってみるって言ってたから、忠清くん、もう少し待っててな」

    若「わかりました。色々、造作をかけ済みませぬ」

    尊「お姉ちゃんが、こんなに長い時間、黙って鶴折ってるなんて驚異」

    唯「そりゃあ、たーくんのためだし、平和も願ってるし」

    尊「模範解答じゃん。愛は永禄を救う、だね」

    覚「お、3時になったな。休憩しようか」

    若「はい」

    唯「ふー。あーでも、さすがに体は固まるなぁ」

    尊「確かに」

    覚「あ、じゃあ二階の洗濯物、取り込んできてくれ」

    唯「えー、暑いしヤダ」

    覚「おやつは、いつもより高級なアイスだ」

    唯「行ってきます」

    尊「僕も行ってくる。体一旦温めたら、よりアイスがおいしくなるし」

    二人、二階に上がっていった。

    覚「なんなんだ、あいつらは」

    若「ハハハ」

    覚「でも、唯は君が黙々と頑張る姿に、感化されてるよ」

    若「そうですか」

    覚「ありがとうね」

    若「え…いえ、そのような」

    覚「君が、唯を成長させてくれている。親は、ある程度までしか寄り添えないからね」

    若「わし…僕、は」

    覚「うん」

    若「お父さん、お母さん、尊に出会えた事、唯に感謝しております。三人には、学ぶ事ばかりで、少しは成長出来ておるのでは、と思うております」

    覚「充分出来上がってるけどね。でも、嬉しいよ」

    唯達が下りてきた。

    唯&尊「アイス、アイス!」

    覚「騒々しいなあ。はい、座ってー」

    おやつタイム。

    尊「今夜のカレーって、ゆうべと同じ具?」

    覚「同じって?」

    尊「だって、肉じゃがの中身って、ほぼカレーと一緒でしょ」

    覚「そういうのじゃないな。まっ、この先は、後のお楽しみにしとけ」

    唯「ふーん」

    若「カレー、であって、カレーでない…」

    覚「しまった、本人が一番考え込んでる」

    おやつタイム終了。

    覚「よし、今日はあとちょっと、キリのいい所までにしよう」

    唯「え、じゃあ次の封を開けない感じ?」

    覚「今日みんなかなり頑張ったからな。無理はしないでおこう。な、忠清くん」

    若「無理しておるように見えましたか」

    覚「そうだね。たまたま家に居るから作ってます、位でいこうよ。平和を願うのに、眉間にシワ寄せていてもね。あ、因みに明日は大掃除だから」

    唯「大掃除?今?」

    覚「明日の午後からクリニックが盆休みに入るから、この機会にしとくんだ」

    尊「人手もちょうどあるし?」

    若「わかりました。では明日、しかと掃除をさせて頂きます」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    梅とパイン様

    突然、名指しの失礼をお許しください。

    実は、お願いがございます。源三郎とトヨの仲良しカップルを、令和Daysに登場させたいので、お借りしたいのですm(_ _)m

    急に仲が進む、なんて野暮な事はいたしません。今後の令和Days、永禄に戻った後のお話も少し描く事にしましたので、ぜひ源トヨにもお手伝いいただきたいのです。よろしいでしょうか?

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    二人の令和Days65~9日金曜9時、色と香りに包まれて

    子供達の自主性を重んじている、と言って。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後。覚と若君はキッチンで後片付け、唯と尊は、食卓を拭いている。

    尊「そういえば、今度の旅行の予定、聞いた?」

    唯「聞いてない」

    尊が唯に近づく。

    唯「なになに!」

    尊「シッ、静かに。なんかね、1日目、昼ごはん家で食べてから出発して、夜ごはんはホテルじゃなくどこかお店を予約したらしいんだけど」

    唯「そーなんだー」

    尊「現地着いてから晩ごはんまでの時間さ」

    唯「うん」

    尊「自由行動らしいよ。正確には、お父さん達は自分達で行きたい所にデートに行くから、僕らはほったらかし。言い方悪いけど」

    唯「そっかあ。まあ今回は、ラブラブの二人がメインだからねぇ。好きなトコ行けばいいけど、お前ら考えろよ、か」

    尊「三人は一緒に居ないといけないし」

    唯「不満?」

    尊「それ、お姉ちゃんのセリフじゃないの?」

    唯「ううん。お母さん達が何も言ってこないから、ちょっと予感はしてた。まだ、現地集合!って言われないだけ良かったかなって」

    尊「で、どうする?」

    唯「ちょっと考えるよ。尊も、行きたい所あったらピックアップしといて。で、2日目は何するって?」

    尊「家族写真をまた撮りに行くってさ」

    唯「へー、そうなんだー。だからワンピース買ったのかなぁ」

    キッチン。

    若君「お父さん、今日は金曜です。料理の指南をお願い致します」

    覚「うん、ちゃんと考えてるよ。今から準備するね。おーい、お前達」

    唯「なにー」

    覚「食卓拭いたか?今からそこ使うから」

    尊「綺麗になってるよ」

    覚「あーそうそう、鶴だが、折るのもいいが、色毎に仕分けした方が、後の作業がしやすいだろ。分け始めなさい」

    唯「了解~」

    尊「じゃあ、床に広げちゃおうか」

    食卓に、覚が小瓶を並べていく。

    尊「何?あ、スパイスか」

    唯「いっぱいあるー」

    覚「忠清くん、座って」

    若「座る。はい」

    覚「今日は、カレーを作ろうと思うんだ」

    唯&尊「カレー!」

    若「カレー。あの少々辛い料理ですね」

    覚「これは、スパイス。香辛料だ。カレーを作る時、溶かすだけのルーを入れれば手軽だが、これを混ぜて作る事もできる」

    若「はい」

    覚「スパイスは、基本の調合はある。最低これをこの位ってね。でもあとは、応用だ。それをやって貰おうと思ってね」

    若「好みで、作ると」

    覚「そう。それでね、何をどれだけ入れたかをメモるから」

    若「それは、何ゆえにですか?」

    覚「調合の内容を残しておけば、今後、僕が作っても、忠清くんが作った物と同じ風味になる。忠清ブレンドとして残る。というか、残させてくれないか」

    尊「いつまでも、兄さんが作った!って思えるんだ。いい考えだね」

    覚「基本の調合は、この手前の入れ物の中。ピンときたのを足していって欲しいんだけど。時間かかっていいから、頑張って」

    若「わかりました」

    小瓶の中身の香りを、一つ一つ確かめていく若君。

    唯「ソムリエ、的な?」

    尊「それ大分違う。調合師だよ」

    じっくり時間をかけていた若君が、顔を上げた。

    若「お父さん、いかがでしょうか」

    覚「どれどれ。うん、いいね。予想通り、とても爽やかな感じだ。メモもバッチリとったよ。お疲れ様」

    若「香りの趣が違う物もあり、悩みました」

    覚「あぁ、それはハーブだから。優しい香りが多いよね」

    若「こちらだけでも、料理には使うのですか?」

    覚「使うね。あ、ハーブだけでもブレンドしてみる?」

    尊「別のミッションが始まる?」

    覚「いや、実は昼からカレーだと、クリニックが匂いそうでどうしようかなと思ってて。ハーブ焼きとかなら、そう匂わないから」

    若「是非お頼み申します」

    覚「わかった。でもちょっと休憩しような。鼻がおかしくなっちゃうから」

    若「麦茶なら、わしが入れます」

    席を立つ若君。リビングの床の状態に気づく。

    若「おぉ…いつの間にやら、鶴の花が満開ではないか」

    床に、各色毎の折り鶴の山が出来ており、色とりどり。

    唯「キレイだよね~」

    尊「20色以上あるからね」

    覚「はい、二人もこっち来て。休憩しな」

    お茶タイム。

    覚「しかし、ちょっと足の踏み場がないよな。新聞紙で、箱作って入れるか」

    唯「箱?」

    休憩後、半分に切った新聞紙を、パタパタ折り始める父。

    覚「こんなモンでいいだろ」

    唯「早ーい。もうできたー」

    若「なんと…お父さんは、このような術も操られると」

    覚「おっ、褒めてくれるの?嬉しいね。さ、こんだけ入れなきゃならないから、みんなで箱作るぞ」

    三人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days64~8日22時、教えてあげたい

    速川家、騒がし過ぎて、引かれるかもよ。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ようやく父と合流した。

    覚「花火どうだった?」

    唯「すごかった~!デカいし、眩しいし、音はズン、って響くし」

    若君「心にも、響きました」

    尊「兄さん上手いな」

    覚「音はな、かなり離れてても聞こえてたぞ」

    唯「そーなんだー。ごめんねぇ、ウチらだけ楽しんじゃって」

    覚「気にすんな。それより、腹減っただろ?」

    尊「軽くは食べたから」

    唯「晩ごはんなにー?」

    尊「軽く食べてないヒトが何か言ってる」

    覚「何だろうなあ」

    唯「え?まだ決めてないの?」

    覚「いや、実は、今日は母さんが作って待ってるんだ」

    唯「え!お母さんの作る晩ごはんなんて、超超久しぶりなんだけど!」

    尊「お昼は、そこそこあるけどね」

    唯「たーくんなんて、初めてじゃない?」

    若「晩ごはんは頂いた覚えがないのう」

    覚「メニューは、聞けば教えてくれるんじゃないか?」

    唯「いや、いい。楽しみにしとくよ」

    22時30分、帰宅。

    四人「ただいまー!」

    母が玄関に出迎えに。

    美香子「お帰りなさーい。楽しかった?」

    唯「超楽しかったー!」

    若「…」

    美「あら忠清くん、どうかした?」

    若「お母さんが、エプロンを身に付けておられる」

    尊「確かにレアだ」

    美「あ、これ~?珍し過ぎて、びっくりよねぇ」

    若「いえ、よう似合うておられます」

    美「あら、嬉しいわ~」

    食卓に、おかずがズラリと並んでいる。全員、席についた。

    覚「うまそうだ。では」

    全員「いただきまーす!」

    覚「肉じゃがにしたんだな」

    美「うん。家庭料理って感じでしょ?お父さんには、ちゃんとおつまみも作ったわよ。運転お疲れ様でした。ビールどうぞ」

    覚「ありがとな」

    唯「お味噌汁の具はなに?豆腐と…なめこだ!」

    尊「ここにもキノコだね」

    美「ここにもって?」

    唯「花火が、キノコの形になってたの」

    美「あらそうだったの。私、先見の明があったわね」

    若「お母さん、どれも大変美味しいです」

    美「まー嬉しい!たまには腕を奮わなきゃね~」

    唯「お味噌汁ってまだある?」

    尊「え、もう?」

    美「あるある。お鍋温めてくるわね」

    席を立つ母。

    覚「人気だな~。母さん、頼むからさ、僕の聖域を乱さないでくれよ?」

    尊「焦ってるね」

    唯「いいじゃん、いっそ受け持ち交代してさ、明日はお父さんが診察したら?」

    若「えっ、お父さんが医師を?!」

    覚「いや、忠清くん、それはないから。こら、唯!紛らわしい事言うんじゃない!」

    唯「えへへっ」

    美「あはは。お味噌汁お待たせ~」

    賑やかな夕食も済み、唯の部屋。

    若「唯」

    唯「なーに?」

    若「わしはの、速川の一員になれた事、この上なき幸せじゃと思うておる」

    唯「それは、ウチの家族もそう思ってるよ。みんな、たーくん大好きだもん」

    若「知る由もなかった、団欒、とはなんと素晴らしき物かを教えて貰うた」

    唯「平和って、いいよね」

    若「まことにの」

    唯「たーくんが戦を避けたかった事、大殿に、いつか分かってもらえるかなぁ」

    若「父上か…かつてのわしもそうであったが、戦乱の世しか知らず、穏やかな日々など知りようもないからのう。平和とは何か、は、速川家と共に過ごせば、すぐにでも分かるのじゃが」

    唯「大殿と一緒にゴハンとか?!それ、すっごい野望だね」

    若「前にお父さんが、父上に挨拶がしたいと申されておったしの」

    唯「やっぱ、行き来が自由なタイムマシン、欲しいよね~」

    若「そうは思わなくもないが、少なくとも今は、尊は勉学に勤しんで欲しいのじゃ。無理もさせとうない。くれぐれも、尊を急かしてはならぬぞ」

    唯「はぁい」

    ベッドに座る唯の傍らに、若君が腰かけた。

    唯「…やだ」

    若「ん?」

    唯「なんか今、急にモーレツに眠気がっ」

    若「ほぅ。そやつには早々に退散して貰うて、夫婦の時間をもうけたい所じゃが」

    唯「超眠いー。どうしよう、たーくんなんとかしてぇ」

    若「ハハハ。いや、夜もすっかり更けておるゆえ、もう眠るとしよう」

    ベッドから立ち上がる若君の、腕を掴む唯。

    唯「あの、すぐ寝落ちするかもだけど、たーくんと一緒がいい。ダメ?」

    若「良いぞ」

    唯を抱き上げ、自分の布団に寝かせた。電気を消して布団に戻ると、

    若「なんと。もう眠っておる」

    頭を撫でる。

    若「おやすみ、唯。また明日、わしの傍らで笑うてくれ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    8日のお話は、ここまでです。

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    これが実物かー

    古本屋に、健太郎くんの写真集がありました。

    古本なんで中身も確認して、おー、きっとこの写真だな、皆さんが盛り上がってたのは~と推測もして(;^_^A

    で、誰かが手放したんだな、切ないねぇ…と思い、家に連れて帰りました。

    今ようやく手に入れたという事は、この板の私の創作話、平成Daysや令和Daysで、若君を散々脱がしておきながら(ノд<)、実物を知らなかった訳でして。

    妄想も甚だしく、描かせていただいております。

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    二人の令和Days63~8日19時30分、咲き誇ります

    めいっぱい楽しんで欲しい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    すっかり、空は夜の色に変わった。

    尊「あ、兄さん。大砲のようなかなり大きい音がしますけど、敵の襲来ではありませんからご安心を」

    若君「そうか。承知致した」

    花火大会、スタート。一斉に花火が打ち上がり、辺りが一気に明るくなる。

    唯「キャー!」

    若「おおっ」

    尊「わー、楽しい!」

    会場は横に長いので、左から右から打ち上がる。

    若「おぉ、せわしいのう」

    唯「首が疲れちゃうよぉ」

    尊「全体をなんとなく観てればいいじゃん」

    唯を真ん中に、三人並んで観ている。

    唯「たーくん、キレイだね」

    若「そうじゃな」

    若君にもたれかかる唯。唯の肩を抱き、引き寄せる若君。

    尊 心の声(夏の夜のデートだよねぇ。ま、どんどんくっついてくださいな)

    若「尊よ」

    尊「は?はいっ!」

    若「何じゃ?その驚き様は。声をかけただけじゃが」

    尊「いや、まさかその状態で呼ばれると思ってなかったんで、すみません」

    若「まあ良いが。花火が上がると、後から遅れて音が聞こえるように感ずるのじゃが」

    尊「あ、その通りです。光と音では伝わる速さが違って、音の方が断然遅いからなんです」

    唯「それ私もわかるー。雷も、ピカッからゴロゴロまで時間あると、遠いって言うでしょ」

    尊「お姉ちゃん、ご名答。どのくらい違うかは、また花火終わってから説明しますよ」

    若「遠雷と同じなのか。体では分かっておる事も、はっきり謂れがあり、此処ではつまびらかになるのじゃな」

    唯「でも、数字で言われても、わかんないよねぇ」

    尊「お姉ちゃんは聞けばわかるでしょ」

    唯「えー、だって難しそうだしぃ」

    若「ハハハ」

    花火が、何かを形作っている。

    唯「あー、カエルだぁ!」

    尊「凝ってるー。あ、次は猫だ」

    若「あれは…何であろうか」

    尊「えーっと何だろ…あ、キノコだ」

    若「茸。ハッハッハ」

    唯「あー、ヤな予感するー」

    若「唯が、山の茸を取って食おうとした事を思い出した」

    尊「そんな事があったんですか」

    唯「だってさー、2日間水だけで山道ずっと歩いてたんだよ、手も出るってモンよ?」

    尊「それって、もしかして兄さんも一緒で、同じく空きっ腹だったんじゃないの?」

    唯「まぁ、そうだけど」

    尊「鍛え方の違いだな。胃を小さくしといた方がいいんじゃないの?今も、結局完食してるしさあ」

    唯「お腹がふくれさえすれば、絶好調なの!」

    尊「燃費悪いなー」

    花火は、空高く打ち上がるのもあれば、湖面近くで花開くのもあり、それは距離が近い分、迫力が凄い。

    若「あれは…やっておる者達は、危なくはないのか?」

    尊「万全の態勢でやってるから、大丈夫だと思いますけど…総領だけに、目の配り方がさすがですね」

    若「皆が無事なのが何よりじゃからの」

    ラストに近づいて来た。尊がデジカメを構える。

    若「撮る、のか?」

    尊「はい。写真はちょくちょく撮ってましたけど、終わりにかけては一番豪華なんで、動画を撮りますね。お土産用に」

    唯「わぁ!ありがとう~」

    エンディング。これでもか!の大乱舞。

    若「おぉ…」

    唯「すごーい」

    最後、空一面を彩り、終了。

    唯「はぁ~。終わったぁ」

    尊「これで、良しと。また編集しますね」

    若「このような素晴らしき経験をさせて頂いた、お父さんに感謝せねばならぬ。付き合うてくれた尊にも、礼を申す」

    尊「そんな、痛み入ります。僕こそ、すごく久々で、こんな機会作ってくれた兄さん達に感謝ですよ」

    若「家で待ってくれておる、お母さんにも感謝じゃな」

    尊「あっ、お父さんからLINE…えっと、道が混んでるから、9時半位になるって」

    唯「じゃあ、シートはもう少しこのままにしよっか」

    周りは、家族連れの姿は減り、カップルばかりになっている。

    尊「これも、夏の夜って感じだな」

    唯「イチャイチャタイム?」

    尊「ま、そうでしょ。って、自分は一日中イチャイチャしてるじゃん」

    唯「悪い?」

    尊「いいよ。平和な時を楽しんでくれれば」

    唯「えー。なんか、尊すっごく物分かり良くなってない?」

    尊「悪い?」

    唯「いいよぉ」

    若「ハハハ。まことに仲の良い姉弟じゃ」

    お迎えまであと少し。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days62~8日18時、ヒヤヒヤです

    武士であり、唯にとっては騎士。knightね。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    花火大会の会場近くに到着した。車を降りる子供達。

    尊「じゃあ、9時前位にこの辺りで」

    覚「わかった。忠清くん」

    若君「はい」

    覚「楽しんできて」

    若「はい!」

    会場の公園。

    唯「だいぶ場所取りしてあるね。この辺りにしよっか」

    尊「そうだね」

    若「敷物を広げれば良いのか?」

    尊「はい。そっち持ってください」

    陣地が完成。

    唯「もっと人多くなると、戻った時に陣地がわかんなくなるから、今のうちになんか買ってくる!」

    ぴゅ~っと、唯が走っていった。

    尊「返事する前に行っちゃったよ」

    若「ハハハ」

    敷いたシートに座る若君と尊。湖のほとりの公園。花火は湖面に上がる。

    若「まだ昼の暑さは残っておるが、湖を渡る風が涼やかじゃの」

    尊「そうですね」

    若「この、目の前で花開くのか?」

    尊「はい。迫力ありますよ。僕も見に来るのは久しぶりなんで、楽しみです」

    若「そうか」

    唯の姿が見えた。

    尊「あ、戻って来た。ん?」

    なぜか、男性二人に挟まれて歩いている。

    若「知った者に会うたのか?」

    尊「それはわからないんですけど…」

    唯の様子を観察する。男達に、やたらと話しかけられているように見える。

    尊「あ」

    若「なんじゃ?」

    尊「お姉ちゃん、ナンパされてるんだ」

    若「ナンパ、とは?」

    尊「あっ、えっと」

    尊 心の声(どうしよう!成敗するって、前みたいに立ち回りが始まったら)

    若君と一緒に黒羽城公園に行った時の、不良達とのやり取りを思い出す尊。

    尊「あの、誘っているというか…」

    若「誘う?」

    尊「お茶しようよとか遊ぼうよとか…」

    若「何だと。危ない目に遭うておるのか?」

    若君の顔色が変わった。

    尊「見た所、危ないとまでは…あっ」

    止める間もなく、立ち上がり走り出す若君。

    尊「ひゃー!お願いだから、無茶はしないでー!」

    後ろ姿に何とか声をかけた。

    尊 心(大丈夫かな…いや、今の顔、まんま戦国武士だったしなあ。心配だ~)

    緊張しながら、唯達の様子をうかがう尊。

    尊 心(あ、思ったより穏便に終わりそう)

    男達は、若君が到着するとすぐ、散り散りに去っていった。

    尊 心(あんな迫力あるイケメンが走って来たら、勝てる訳ないもんな。そりゃそうなるよね)

    胸を撫で下ろす尊。唯と若君が戻って来た。

    唯「ただいまー」

    尊「なんか、緊張感ないなー」

    唯「たーくんがすごい顔して走って来たから、びっくりしたけど」

    尊「さっき一緒に居た人達、別に知り合いじゃないでしょ?」

    唯「知らない」

    尊「何しゃべってたの」

    唯「しゃべってないよ。なんか色々話しかけられたけど、よくわかんないから無視してた」

    尊「なんとかナンパをかわしたと」

    唯「ナンパ?え、私ナンパされてたの?!」

    尊「のんき過ぎる。兄さんの足元見てみなよ」

    唯「え?あっ、裸足…サンダル履いてない!」

    若「唯が危ない目に遭うておると思うての、そのまま駆け出したのじゃ」

    唯「えーっ!たーくぅん、嬉しい、ありがとう~!」

    尊「しっかし、なんかいっぱい買ってきたね」

    唯「見ると全部美味しそうで。で、ごめん、持ちきれなくて飲み物買ってない」

    尊「あっそう。じゃあ僕買って来るよ」

    若「わしが行こう」

    尊「いえ。兄さんは、お姉ちゃんを守っててください」

    若「そうか。わかった」

    唯「おおげさだなぁ」

    尊「何言ってんの。勝手に動いたりして、兄さんを心配させないように」

    唯「はぁい」

    尊「じゃあ、適当に買ってきます」

    若「よろしく頼む」

    尊 心(ふう。兄さんが居れば安心に決まってるのに、つい焦っちゃったな)

    日が暮れてきました。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    瞬殺でしたね。

    続きます。

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    二人の令和Days61~8日木曜10時、コツコツと

    芳江さん。ドラマの新作でお会いする事はもう叶いませんが、創作物語ではずっと、キュートな笑顔で居ていただきます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    地味な作業ではある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    朝ごはん後、早速四人で鶴を折っている。

    覚「あまり、根を詰めるなよ」

    唯「うん。でも今日は夕方からメインイベントだから、あっつい昼間はこれやっててちょうどいいよ」

    尊「花火大会の会場辺りも、雨の心配はなさそうだね」

    唯「たーくん、いよいよ、おっきい花火観られるよ」

    若君「楽しみじゃ」

    昼ごはん。美香子がクリニックから戻る。

    美香子「順調?」

    若「はい」

    美「まだ封開けてない折り紙、一つ貸してね」

    唯「いいけど、折る時間なんて、なくない?」

    美「うん、ない。でもこれを見て、忠清くんも頑張ってるから私も仕事頑張る!ってモチベーションを上げようと思って。お盆休みまであとちょっとだし」

    尊「なるほど」

    午後のクリニック。

    エリ「折り紙ですか?」

    芳江「今は折る機会も中々ないですね。孫はゲームばっかりで」

    美「忠清くんが、千羽鶴作りたいって今頑張ってるの。永禄の平和を願ってね」

    エ「まあ、若君が。素晴らしいわ」

    芳「本当に。感心しきりです」

    その頃のリビング。引き続き四人で製作中。

    若「尊には、これではなく、勉学をして欲しいのじゃが」

    尊「いいんですよ。だってあと一週間だし。僕の心配はしなくていいです」

    若「済まない」

    唯「あと一週間かぁ。今日は夕方までこれやってればいいけど、やっぱデートやイベントも大事だよねぇ。お父さん、何時頃出発する?」

    覚「そうだな。花火は7時半からだけど、早目がいいよな。早過ぎても暑いし…5時に家出れば、まあ立ったまま観るような事はないんじゃないか?」

    唯「わかったー」

    尊「じゃ、作業は4時半位までだね」

    若「そうじゃな」

    覚「まずは、一旦休憩しな。はい、ジュースどうぞ」

    休憩中。

    唯「お父さん、花火大会の会場まで乗せてってくれて、帰りも拾ってくれるんだよね?」

    覚「そうだ」

    唯「その間はどうしてるの?」

    覚「そこからは離れて、夜のひとりドライブと洒落こむよ」

    若「それは…難儀をかけ、済みませぬ」

    覚「気にしなくていいから。あとさ、晩ごはんは、ホントに帰ってからでいいのか?」

    尊「いいよ。今日はお母さん置いてきぼりだし、食事はできるだけ五人でしようよ。軽くはつまんでおくし、どうせ一人空きっ腹のヒトは勝手に食べてるから」

    唯「いいじゃん、お祭りっぽくって」

    覚「まあ、とにかくはぐれないように。尊にしか連絡できないから」

    尊「そうだね」

    若「連絡出来ぬとは、どういう事でしょうか」

    唯「たーくん、言ってなかったけどね、私のスマホ、もう電話とかLINEとかできないの」

    覚「さすがにもう使わんだろうって、年明けに解約したんだよ。物が手元にあるから分かりにくいよなあ。どう説明すればいいだろう」

    若「電源、は入っておるようじゃが?」

    唯「うん。Wi-Fiが繋がれば使えるから、家の中なら、検索とかはできるんだよ」

    若「わ、わい?」

    尊「難しいですよね。機械としては使える時もある。でも連絡手段としては使えないんです」

    若「そうなのか」

    覚「だから、くれぐれも迷子にならないようにな」

    若「承知致しました」

    唯「三人一緒ね。あ、これが、えーと、さんみいったい、ってヤツ?」

    尊「この場合はちょっと違う」

    唯「えー、違うの?」

    若「ハハハ」

    そろそろ出かける時間。

    唯「今日は、どっちのワンピ着よっかな~」

    尊「ひまわりので」

    唯「なんで尊が答える?」

    尊「だって白無地だと、他の人と間違えそうだし人混みに紛れちゃうから」

    唯「そっか。安全策ね」

    支度ができました。

    覚「レジャーシートは持ったか?」

    尊「あるよー」

    唯「では」

    若「レッツ、ゴーじゃな」

    唯「正解!」

    いよいよ、花火大会に出かけます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    夏の想い出も、ちゃんと作ろうね。

    続きます。

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    月文字様

    四太郎、よろしゅうござりまする!
    人気俳優さんが続々出演されているCMですから、いつか…は有り得た話ですね。
    与太郎も確認しました。1話のあの場面、結局誰が誰の何にあたるか、正解がわからずじまいで、その場に居ても混乱しそう。

    私の話、いつ寸止めじゃない場面が出るかと、ヒヤヒヤしながらご覧いただいているのですね。なんか、すみません。そういう方、多いのかな…。

    寸止めはしませんが(^_^;)悪者も出さないのがモットーでございます。その点は、安心して見ていただけるかなと思っております。

    黒羽城が復元なんかしちゃったら、櫓の上で月見がしたい!

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    四太郎ものがたり

    もしも某ケータイ会社のCM
    『三太郎ものがたり』に
    健太郎さんが登場したら……

    縁側で横になっている健太郎さん。

    浦島太郎「あ、今日も寝てる?」

    三之助「寝てる」

    木村様「たわけ!寝ておる時ではなかろう」

    桃太郎「しーっ。寝かせておいてあげようよ」

    金太郎「もう三年も寝てるらしいよ」

    目を覚ます。

    健太郎さん「三年…」
    (若君「三千…」的な)

    浦島太郎「おはよう、寝太郎」

    桃太郎「それ、あだ名だよね。で、まことの名は?」

    健太郎さん「私は け…、いえいえ、名乗るほどの あれじゃありません」

    阿湖姫「なんと奥ゆかしい」
    (織姫の辞書には無いであろう言葉)

    金太郎「じゃあ、寝太郎で」

    健太郎さん「寝てたんじゃないんです、考えてたんです。やっと…やっと…ひらめきました。わらじを作りましょう!」

    三之助「それなら、わらをようけ たたいておいた」

    唯「三之助~!ありがとう」

    三太郎「何、この展開」

    こうして、みんなで佐渡島へ行きましたとさ。(鬼ヶ島は登場せず)

    与太郎「わしも入れてくれ~」
    (アシガール1話に名前だけ登場する人物)

    参考:民話『三年寝太郎』

    ◇◇◇
    どうも、お邪魔しました。
    寸止めの美学を重んじる私は夕月さんの最初の説明に恐れをなして夕月さんのお話を読めておりません。
    なんちって。
    恐る恐る、ちゃっかり読んでます。
    若君の城郭めぐりを見ていると
    現代での黒羽城の復元を夢見ます。

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    二人の令和Days60~7日14時、千里の道も一歩から

    帰るまでの目標ができました。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    お好み焼き店。鉄板前の五人。

    覚「熱々の出来たてが来るから、忠清くんは気を付けて」

    唯「私がフーフーしてあげる!」

    若君「冷ますという事か?己で出来るがの」

    唯「えぇぇぇ」

    若「…頼もうか」

    ふんわりと厚みのあるお好み焼きが、人数分運ばれてきた。

    覚「まさかこれで、足りないって事はないだろうが」

    唯「んー、たぶん」

    尊「多分かーい」

    目の前のお好み焼きを、若君がじっと見つめている。

    若「動いておる…」

    尊「何がですか?あー、かつお節が湯気で揺れてるんだ」

    覚「こういう、僕らではもう気にも止めない事に気付くのは、感性が素晴らしいな」

    唯「はい、たーくん、あーんしてぇ」

    若「……、…うまい」

    美香子「唯~、一口が大き過ぎ!」

    昼ごはん、終了。

    覚「じゃあ、ぼちぼちと帰るか」

    帰り道の車内。

    美「あー美味しかった」

    覚「中々、家ではふわっと出来ないからなあ」

    若「お父さんの腕をしても、ですか?」

    覚「ありがとねぇ。あそこまではならないんだ」

    尊「ホットプレートならさ、もんじゃ焼きの方が簡単にできるよね」

    覚「もんじゃかー、最近やってないなあ」

    唯「えー、久しぶりに食べたい!帰るまでに作ってー」

    覚「そうだな。わかった」

    若「もんじゃ。また変わった名の料理じゃ」

    美「見た目、ちょっと引くかもしれないわね。だけど美味しいから楽しみにしてて」

    若「わかりました」

    唯「ねぇねぇ、アイスクリームってまだあった?」

    覚「あったかなー」

    尊「ないよ。昨日最後の1個僕が食べた」

    唯「いつの間にー」

    尊「自分ら、デートしてたじゃん」

    唯「ま、そうだけど」

    覚「じゃあ、スーパーに寄ってくか。あと何か要る物あったかな?」

    若「お父さん」

    覚「お?何か買う物思い出した?」

    若「いや、お母さんにも、お訊ねしたき儀があるのですが」

    覚「おー、久々に聞いたなぁ」

    美「どんな事かしら?」

    若「先刻、神社で見た千羽鶴、あの鶴はわしでも作れますか?」

    美「うん、作れるわよ」

    尊「教えましょうか?」

    若「え?」

    唯「うん、私もできるよ」

    若「二人が答えるとは思わなんだ」

    唯「鶴は、折り紙の定番だから」

    若「そうなのか。すぐに習得出来るかのう」

    唯「大丈夫じゃなーい?え、もしかしてたーくん、千羽鶴作りたいの?」

    若「戦なき世を願うと聞いた。己で出来得る事があるのならば、是非成し遂げたいのじゃが」

    一瞬、車内が静かになった。

    尊「…そうなんだ。兄さんはやっぱすごいな。じゃあ、手伝います」

    覚「皆で手伝うよ。でも帰るまでに千羽できるかなー」

    美「千って、確か多いって意味よ。千羽折らなくてもいいと思う。もしどうしてもそうしたいなら、永禄に帰ってから続けたらいいわ。こちらに居る内に千羽は、ちょっと厳しいと思うし」

    若「そうですか」

    美「とても素晴らしい事だけど、空いた時間にだけコツコツやりなさい。忠清くんの事だから、何よりも優先してやっちゃいそうだもの。残りの現代の時間も、ちゃんと満喫して欲しいから。ね?」

    尊「さすが、可愛いい息子の事、よくわかってる」

    若「ありがとうございます。されど、出来得る限り、励みとう存じます」

    覚「じゃあ、折り紙も追加で」

    17時、スーパー経由で帰宅。

    尊「この折り紙が全部鶴になるんだね。さぞかし壮観だろうな」

    若「今まで見た紙より、小さいようじゃが」

    美「千羽鶴なら、小さめがいいから。でも練習するのは大きい方がいいわよね」

    唯「ガーランド作った時の残りが、ちょっとだけあるよ」

    美「じゃあまず、それでやってみようね」

    若「ありがとうございます、お母さん」

    若君は大きい折り紙で試作、教える母と唯達は小さい折り紙で、作り始めた。

    美「三角に二回折った所を、こう開くの」

    若「こうですか?」

    尊「…すごい、みんな黙々と折ってる」

    唯「集中してるんだよ。たーくんのために」

    覚「なにより、唯がアイスクリームをすぐに食べ始めなかったのが凄いな」

    唯「失礼なー。お風呂上がりの楽しみにするから今はいいの!」

    若「ありがとう、唯」

    唯「いーえー。って、さてはアイス優先だと思ってたな?」

    若「あぁ」

    唯「ひどっ」

    一つ一つ、出来上がっていきます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    無理はしないでね。

    7日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days59~7日12時、願い事はなに

    今日は、和、の日の模様。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城内。どんどん上階へ。

    尊「ここが一番上かな?」

    唯「わー、すごい!」

    川沿いの崖に立つその城は、大変見晴らしが良い。

    唯「外に出られるよ。あ、川が見える!」

    美香子「この木製の手摺が低めで、ちょっとスリルがあるわね」

    外回廊。川からの風が心地良い。

    若君「…」

    覚「当時は、近くの他の城も見えてただろうな」

    若「お父さん」

    覚「何だい?」

    若「黒羽城は、どちらの方角でしょうか」

    覚「あ、あぁ。えーとね、ここから南西になるから、こっちだよ」

    二人で移動し、黒羽城がかつてあった方角を臨む。

    覚「距離的には、当時も見えはしなかったけどね」

    若「はい。良いのです」

    外を眺めながら佇む二人。

    覚 心の声(考えさせちゃう所にばかり、連れて来てるかな…)

    尊「あ、ここに居たんだね」

    唯「外、ぐるっと一周してきたよ~」

    若「…そうか」

    美「地上は暑いけど、ここは涼しくていいわね~」

    覚「確かにな」

    若「お父さん、ありがとうございました」

    覚「もう、いいの?」

    若「はい。良き城でした」

    城を出る。城下町まで下りる途中に、神社があった。

    覚「参拝してくか」

    鳥居をくぐり、参道を進む。

    美「お城もそうだけど、こういう和の場所って、なーんか心落ち着くわよね」

    賽銭箱の前。

    唯「ここにお金を入れるの」

    若「ほぅ。銭を供物とするのじゃな」

    唯「くもつ?」

    尊「はい、そうです。多分永禄の頃って、まだお米とかですよね」

    若「そうじゃな」

    唯「お米を賽銭箱に入れるの?」

    尊「違うー。ここに銭って書いてあるじゃん」

    覚「説明は後にしろ」

    美「静かにね」

    唯&尊「はぁい」

    お参りが済んだ。参道の脇に、絵馬が沢山掛かっている。

    若「お母さん、あれは、何ですか?」

    若君が指差す先に、色とりどりの、ある物。

    美「絵馬の事かしら?」

    若「絵馬は、分かります」

    美「あ、そうなのね。ごめんなさいね、何がいつから始まったとかわからなくて」

    若「いえ。絵馬と共に掛かる物が分かりませぬ」

    覚「ん?あー、千羽鶴だね」

    若「千羽、鶴…鶴を千羽も模したと?」

    美「少し近付いて見てみたら?」

    絵馬掛所の前に、皆で進む。

    若「これは…紙で出来ておるのですか?」

    美「そうよ」

    唯「この前三角に折ったでしょ、折り紙」

    尊「それと材料は一緒です」

    美「きっと、どなたかが祈願の為に奉納されたのね」

    若「祈願。どのような?」

    美「病気が治りますようにとか、試合に勝てますようにとか、平和な世の中になりますようにとか」

    若「平和…。戦のない世を願ってですか?」

    美「そうね。一つ一つ祈りながら折るって過程が大事だから、奉納せずに、家に置いてある事もあるわよ」

    若「そのような品ですか…わかりました」

    神社を出た。

    唯「昼ごはん何にするー?」

    尊「すぐに俗世間にまみれるなぁ」

    唯「お腹空いてないの?」

    尊「まだお腹空いてるの?」

    唯「いいじゃん。たーくん、何か食べたい物ある?」

    若「何かというか、家族皆で囲む食卓は、何でもうまいのじゃが」

    美「皆で囲む…あ、じゃあさ、お好み焼きはどう?」

    尊「お好み焼き?やったっ」

    唯「食べたーい!」

    覚「それはいいが、鉄板前は暑いぞ~」

    美「多少は暑いけど。忠清くん、いい?」

    若「はい。祭の夜に食した、半月型の物ですね」

    美「今日は、お店でいただくから満月型よ」

    若「そうなんですか」

    尊「店探すから、少々お待ちを」

    覚「予約もしちゃってくれ。五人だから、行って四人席しかないと困るから」

    尊「了解~」

    早速予約。

    覚「じゃ、移動するか」

    四人「はーい」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days58~7日11時、安全な時代とは

    戦はないのが一番。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    城近くに到着。駐車場に停め、プラプラ歩き出す五人。

    覚「まずは見学を先にして、昼ごはんは後だな」

    唯「お腹空かない?」

    覚「先に食べると、階段がキツい」

    唯「そっか」

    整備された城下町に入ってきた。町並みに風情が残されており、店も多く、賑わっている。

    唯「わー、ワクワクするー!先に向こうまで行って見てくる!」

    美香子「あんまり遠く行っちゃダメよ~!」

    覚「小学生だな」

    若君と尊が、並んで歩いている。

    尊「格好はかわいくても、中身が変わんないから」

    若君「ハハハ。良いのじゃ」

    唯の弾むポニーテールを、目で追う若君。

    若「唯の、目を見張る程の姿は、永禄で幾度か見ておる」

    尊「はい」

    若「おなごの姿や、祝言の折や」

    尊「はい」

    若「だが、そのいずれもすぐに別れが訪れた」

    尊「そう…ですね。その二回、帰って来た時はしばらく目も当てられませんでした」

    若「今は、手を伸ばせばそこに居る。消えずにずっと居る。それが嬉しゅうての」

    尊「…」

    若「どうした?」

    尊「兄さんも辛かったんだな、って」

    若「唯にも家族にも、この先の世に帰すのが最も良き策と思うたゆえ、わしの存念など二の次であったからの」

    尊「これからは、姉とずっと一緒に居てください。二人ともそう望んでるんだから、そうすればいいんです」

    若「そうじゃな…唯が居ない世は最早考えられぬ。が、この先の世に留めおくのが良いのでは、と時折考えてしまう」

    尊「なぜですか?」

    若「永禄では明日もわからぬ身。できれば危ない目に遭わせとうない」

    尊「令和の現代は、安全だと思いますか?」

    若「そう思うておるが。違うと申すか?」

    尊「僕は行き来してないので、比べられません」

    若「にしては、違うかのような物言いであったが」

    尊「すみません」

    若「謝らずとも良いが、何やら含みがあるのう」

    道の奥に唯の姿が見えた。手を振っている。

    若「またの折に、尊の存念を聞かせてくれ」

    尊「はい」

    唯の手にはダンゴ。口をモグモグさせている。

    美「もう食べてる!」

    唯「ダンゴが呼んでたからー」

    覚「この分だと、走って先に行っては買い食い、僕らが追い付いたらまた走って先で食べ、じゃないか?」

    唯「あ、それいい」

    尊「やっぱ太って帰るんだよ。姫様お顔が丸うございます、って言われるよ」

    唯「えー」

    尊「兄さん、どう思います?」

    若「そういえば、最近は抱えると少し重く感ずるような」

    唯「やだ、抱えるって…なんてコト言うの!」

    引き続き、五人でプラプラ。

    美「永禄の城下町は、どんな感じなの?」

    若「道幅は、うんと狭いです」

    尊「ここは自動車も通るから広いよね」

    唯「下は土だよ」

    覚「それは聞かなくても分かる」

    城に着いた。木々の間から覗く天守をバックに、写真をパチリ。

    若「また趣が違うておる。これまた美しい」

    覚「入ろうか」

    石垣が目の前に。

    若「…」

    覚「急かしちゃいけないな」

    美「そうね」

    入城。巡っていると、殿用の控えの間があった。

    唯「たーくん座っても、全然違和感ないよ」

    若「それは、いかがなものか」

    階段では、やはりするすると軽やかな動きの若君。

    美「なるほどね。見事だわ」

    上がると、そこはかなり広かった。

    尊「城によって、だいぶ造りが変わるものなんですね」

    この前の城とは違い、天井が高く、吹き抜けのようになっている。

    若「わしが思うに」

    尊「はい」

    若「前の城は、防御を重きに置いていた」

    覚「あー、あちこちに矢狭間や鉄砲狭間があったね。あれでは城内に入る前にアウトだ」

    若「この城は、城内で戦わざるを得なくなった時に備え、天井が高いのだと思います。これなら、槍が使えますゆえ」

    尊「槍を振り回してもぶつからないために、高い天井。へー」

    唯「たーくんすごーい。勉強になるぅ」

    美「なるほどね。こうやって見知った知識で、いよいよ、お城を建てる準備を始めちゃう?」

    若「あ、いや、ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days57~7日水曜9時、男も女もなく

    イチャイチャが止まらない。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    今日は家族全員で城ツアー。朝ごはん後、唯の部屋で着替え中。

    唯「たーくん、これが買ってもらった服!かわいいでしょ~」

    若君「おぉ。よう似合うておるぞ」

    唯「ありがと。この袖とか、見覚えない?」

    若「覚えておる。あの、皆で写真を撮った折の、装束に似ておるの」

    乳白色の半袖カーディガン。ボタンを首元まで全て留め、セーターとして着た。身頃全体に小花が付いている。袖が大きく膨らんでおり、少し透けている。下はジーンズを合わせた。

    唯「でしょでしょ!お母さんが見つけてくれたの~」

    若「幾度も着ないのに買うて頂くとは、ありがたいのう」

    唯「そうだね。ヘビロテするつもりだよ」

    若「蛇、露呈?」

    唯「急に蛇出たら怖い~。違うの、何回も着るって意味だよ」

    若「そうか。現代語、はやはり難しいのう」

    朝からかなり気温が上がっている。

    唯「暑いなー。今日は、髪結ぼうかなあ」

    若「ほぅ」

    母にもらった、赤いリボンの付いたヘアゴムで、髪を後ろで一つにまとめ始める唯。

    若「確かに今朝は一段と暑い。わしも今日は、髷にするかの」

    唯「その方が涼しいよね」

    若「その、対の残りを使おう。すると、唯と揃いになる」

    唯「おそろ?わぁ、嬉しい!え、でもリボン付いてるよ、いいの?」

    若「リボン。結び目を模したこれが付いておると、わしが使うてはならぬのか?」

    唯「結び目。確かに。そう言われればそう。男女関係ないと言えばない。だから女の子用と決めてはいけない…」

    若「何か、おかしな事を申したか?」

    唯「ううん。たーくんは正しいよ。すっごく正しい」

    若「大仰じゃの」

    唯「なんでもないよ。じゃあ今日はおそろで!やった~。ねーねー、たーくんの髪、結んでみたーい!」

    若「それは良いが、仕上がりはそのような?」

    唯自身のポニーテールが、かなり適当に結ばれている。

    唯「え?まぁ、これは。たーくんのは、もうちょっと丁寧にするからぁ」

    若「お手柔らかに頼む」

    まとめ始めるが、なかなか進まない。

    唯「はぁ、うっとりしちゃう~。ずーっと触ってたいっ。いっつもさ、起きるとたーくんもう居ないから、こんなん超貴重~」

    若「それは、唯が早う起きれば良いだけの事では?」

    唯「んー、聞こえない聞こえない」

    まあまあキレイにできあがった。

    唯「一丁上がり~」

    若「ご苦労であったの。では、代わろう」

    唯「代わる、ってなに?」

    若「その仕上がりでは…お母さんが嘆く。わしが直してやろう」

    唯「えー、たーくんが結んでくれるの?嬉しーい!おおざっぱだと、いい事あるなあ」

    若「ハハハ」

    恍惚の表情の唯。

    唯「髪ってさぁ、神経通ってないのに、なんで触られるとこんなに気持ちいいんだろ?」

    若「それは、想う相手なればこそであろう」

    唯「そんなモン?たーくんも、気持ち良かった?」

    若「良い心地であったぞ」

    唯「そっかぁ。これからは、がんばって早く起きてみようかなー」

    若「おぉ、良い心がけじゃの」

    綺麗なポニーテール、できあがり。

    唯「たーくんありがとう~。もうさ、朝からラブラブで、お出かけなんかどうでもいいような」

    若「それは本末転倒じゃろ。行くぞ」

    お揃いのヘアスタイルになり、ようやくリビングに下りてきた二人。

    唯「お待たせ~!」

    覚「おー、はいはい。それ、ウェディングドレスの上だな」

    尊「似た物があるもんだね」

    美香子「見つけた時は、もう嬉しくってね」

    唯「うふふ~」

    尊「兄さん、今日は髷なんですね。気温上がるらしいし、いいかも」

    若「唯と揃いじゃ。良かろう?」

    尊「あ、リボン付。お姉ちゃん何してんだよ」

    唯「たーくんがこれがいいって」

    尊「そうなんだ」

    若「怪訝そうじゃの。結び目が付いておるだけであろうに」

    尊「結び目。確かに」

    覚「そうか。うん、何というか、この中で一番先進的なのは、忠清くんだな」

    美「私もそう思う。よくお似合いよ、忠清くん」

    若「ありがとうございます」

    覚「よし。じゃ、そろそろ行こうか」

    ようやく出発。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days56~6日15時、昵懇の仲です

    互いにゾッコン、でもある。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    濡れたTシャツの裾を掴み、パタパタ空気を送って、早く乾かそうとしている唯。

    唯「もうちょっとで乾くから、待っててね」

    若君は微笑みながら、

    若君「何か、飲むか?」

    唯「あっ、うん。カフェオレの、甘めのがいいな」

    若「わかった」

    近くの自販機に歩いて行く。

    唯 心の声(キレイな背中…)

    若君は自分の財布を取り出し、買って戻って来る。一連の動きがしなやかだ。

    唯 心(夏の、王子様だ。はぁ。素敵過ぎる。見とれちゃう)

    若「姫、所望の品をお持ち致した」

    唯「ありがとう。たーくんのおごり?」

    若「おごり、とは?」

    唯「ごちそうしてくれるの?」

    若「勿論じゃ」

    唯「ありがと。たーくんも飲んでね」

    若「分け合うのじゃな。共有、が醍醐味と」

    唯「え?なんか難しいコト言ってる」

    仲良くカフェオレを分け合う。一層甘い。

    唯「だいぶ乾いたよ、もう透けてない。Tシャツ返すね」

    ふと触れた若君の体が、とても温かい。

    唯「たーくん、あったかい」

    若「温かい?それは唯が冷えておるのでは?」

    若君は立ち上がり、唯も立たせた。そして上半身裸のまま、唯を抱き締める。

    若「そこまで冷えてはおらぬの。良かった」

    唯「大丈夫だよ。心配させてごめんね」

    若「初めから、こうすれば良かったか?」

    唯「それはダメ」

    若「そうなのか」

    唯「気持ち良すぎて、離れられないから」

    若「ハハッ、そうか」

    腕を緩め、Tシャツを着る若君。

    若「おぉ、唯の匂いがする。良い香りじゃ」

    唯「やだ、恥ずかしい」

    見つめ合う二人。

    若「唯」

    唯「はい…」

    若君の手が、唯の顎をそっと持ち上げた。顔が近づいてくる。

    唯「…ダメ、ダメだよたーくん!」

    顔を背ける唯。

    唯「ごめんなさい、嫌だからじゃなくって」

    若「わかっておる。此処は公共の場、じゃからのう」

    唯「え、やだ、もしかしてわざとだったの?もー、たーくんの意地悪!」

    若「試したのではない」

    唯「そう?」

    若「さあ」

    唯「さあ?それ、穴だらけの言い訳だよ。もしや、隙あらばってヤツ?もろ、残念って顔してるもんね」

    若「あぁ、残念無念じゃ」

    唯「あれまぁ。あはは、素直でよろしい!」

    若「ハハハ」

    若君が、唯の髪を指ですく。

    若「こちらも乾いたの。良かろう。この後は、いかがいたす?」

    唯「久しぶりに、ボートに乗りたいでーす!」

    若「そうか、では参ろう」

    スワンボート乗り場。

    唯「ねぇねぇ」

    若「なんじゃ?」

    唯「今日はさ、別々に乗って、どっちが先に向こう岸に着くか競争しない?」

    若「ほぅ。ならば受けて立とうかのう」

    唯「なんか余裕だよね。ちょーっと、気にくわないなー」

    2艘に分かれ、用意、スタート。

    唯「キャー!」

    若「ハッハッハ~」

    バッシャバッシャと、漕ぎまくる二人。

    若「お、追い付いておるのう」

    唯「ムカつく~!」

    ちょっとの差で、若君の勝ち。

    若「大儀であったのう」

    唯「言ったなー、上から目線。旦那様の顔を立ててあげたの!」

    若「ハハハ~」

    たっぷり遊んで夕方。自転車に乗る。

    若「わしが前じゃ」

    唯「いいの?」

    若「お疲れの姫は後ろに」

    唯「優しーい。ありがと。ではよろしくお願いしまーす」

    若「しっかり掴まっておれ」

    唯「あー。はいっ!」

    若君の体にギュっと腕を絡ませて、帰ります。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    あなたがそばに居る幸せ。

    6日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days55~6日火曜14時、ふんわり守ります

    日付が、揃いました。ちょうど二年前は、こんなに自由に出歩けたな、と思いを馳せてしまいます。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    どんな毛布よりも暖かい。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    唯と若君が、出かける準備をしている。

    唯「今日は、少し曇ってるからそこまで暑くないよね」

    覚「一雨来るかもしれんぞ」

    唯「そーかなー」

    尊「何しに行くの?」

    唯「デート~」

    尊「ただ出かけると」

    唯「悪い?デートに理由などないのじゃ」

    尊「何しててもデートって事だな。いや、そのカッコで行くの?特別感が全くないけど」

    二人とも、Tシャツにジーンズ。

    唯「ペアルックと言ってっ」

    尊「普段着の延長でしょ。今日こそワンピースじゃないの?」

    唯「いいの、このカッコで」

    尊「アイロンかけるの面倒なだけでしょ」

    唯「ギクっ」

    二人の様子を、笑顔で見ている若君。

    若君「お父さん、久々に公園まで行って参ります。夕方には戻りますゆえ」

    覚「あー、気を付けて行っておいで」

    出発。自転車にまたがる唯。

    唯「たーくん、後ろに乗って。私の馬で、遠乗りへ参るのじゃー」

    若「後ろ、とな?ここに跨がれば良いのか?」

    唯「うん」

    若「重いじゃろう、わしが前に」

    唯「いーの、乗ってもいないのに重いとか言わない!」

    若「それもそうじゃの。ではよろしく頼む」

    唯「じゃあ行くよー」

    若君と二人乗りで、軽快に自転車をこぐ唯。

    若「おぉ、速い」

    唯「落ちないよう、しっかり掴まっておれ~」

    若「ハハハッ」

    唯 心の声(ちぇー、私にギュっ!とかしてくんないかなー)

    順調に走り、公園が見えてきた。が、

    唯「あ、ヤバっ、雨降ってきた!スピードアップ!」

    若「またそのような、唯ばかり濡れてしまうではないか」

    唯「いーの、あと少しだから行っちゃうよー!」

    本降りになった頃、到着。慌てて雨宿りする。

    唯「あー、焦ったぁ~」

    若「ひどく濡れてしもうておる」

    ベンチに座る二人。髪や腕の、雫を払う。

    唯「ハンカチじゃ全然追い付かないね」

    若「わしは良いのじゃが、唯が」

    唯「いいのいいの。もうちょっとだったのに惜しかったなー。…クシュン!」

    若「これは大変じゃ、体が冷えたのではないか?」

    唯「大丈夫、大丈夫」

    その時、若君は着ていたTシャツを脱いで上半身裸になり、そのTシャツで唯の髪や体を拭き始めた。

    唯「えっ!」

    若「背に腹はかえられぬ。幸いわしはそこまで濡れてはおらぬ、許せ」

    唯「やだ、ダメだよ、たーくんが風邪引いちゃう」

    若「わしの事はいい、じっとしておれ」

    おとなしく、拭いてもらう唯。

    唯 心(たーくんの匂いがする。あったかくて気持ちいいな…なんか安心する)

    拭いた後、一番濡れている胸元を隠すように、Tシャツを掛ける若君。

    唯「たーくん、ありがとう。返すよ」

    若「ならぬ。掛けておけ」

    唯「だって」

    若「ならぬ物はならぬ。その…」

    唯「なに?」

    若「見えて…」

    唯「見える?…あっ、やだっ!」

    胸元を確認すると、濡れたTシャツから、下着が透けてしまっている。

    若「さぞや冷たい思いをしたであろう。済まなかった」

    唯「そんな、私がムチャしたんだもん、たーくんは悪くないから」

    若「乾くまでそのままにせよ」

    唯「うん。わかった」

    若「大切な唯を、他の者に晒しとうない」

    唯「嬉しい。ありがとう」

    雨音が小さくなってきた。

    若「止みつつあるの」

    雲の切れ間から、空が見え始めた。

    若「夕立だったのじゃな」

    唯「良かった。もう大丈夫だね。あっ、虹見っけ!」

    若「おぉ」

    青空に、綺麗にかかっている。

    唯「なんかトクした気分ー。外に居たから見れたね!」

    若「濡れずに済めば尚良かったであろうが」

    唯「まっ、そりゃそうだ。あはは」

    若「ハハハ」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days54~5日11時15分、導きます

    若いけど、器量も徳もあるので。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    若君「所で、何を悩んでいる?」

    吉田「あ、はい。実は、留学の話が出てて」

    覚「へぇ、どこの国?」

    吉「イギリスです」

    尊の囁き「留学は、海の向こうの国に勉強に行く事。イギリスでは英語を話します」

    若「行きたくはないと?」

    吉「そんな事はないんですけど」

    若「英語、が不安なのか?」

    吉「微妙です。日常会話くらいは、なんとか」

    若「言葉は、お互いに相手が何を伝えようとしているかわかれば、何とでもなる」

    吉「あとは実践ですか」

    若「そうじゃな」

    尊 心の声(兄さんが、お姉ちゃんのハチャメチャな現代語に苦労した様子が、目に浮かぶよ)

    若「あとは?」

    吉「あとは…なんか、このまま流されていいのかなって。順調に進んでるんで」

    若「順調。良いではないか」

    吉「波に乗って、いいんでしょうか?」

    若「来た波には乗れば良い。波が砕けても、辿り着いた岸辺で、そのまま地に足を着け歩き出すのみ」

    尊 心(サーファー話の応用?)

    吉「なんか…全て前向きなんですね」

    若「前しか向かぬ。これは、唯に教わった」

    吉「あーあいつ、いつもそうですね。あっ、あいつなんて言ってすみません」

    階段から足音が。

    唯「あーよく寝た。え!吉田じゃん!何ウチでくつろいでんのよ!」

    吉「お前こそ、変な時間によくグースカ寝てられるよな」

    唯「で、なにしてんの」

    吉「忠清さんに、悩みを相談してた」

    唯「はあ。いきなり現れて?」

    吉「美香子先生に話したくて来たんだけど。でも先生には会えたし、悩みもなんだか解消したし」

    若「それは、手助けができて良かった」

    吉「僕今まで、大丈夫だよとか頑張れよとかしか言われてなくて。忠清さんには、特に励ましの言葉をかけられていないのに、一番背中を押してもらえた気がします」

    唯「たーくんは、色々苦労してるから」

    尊「生死の境を彷徨った事もありましたね」

    若「その際、助けてくれたのが、美香子先生だったのじゃ」

    吉「そうなんだ!へぇ、色々物語があるなぁ。忠清さんって、速川になってるから…医師を目指してるんですか?」

    若「あ?あぁそう…だね」

    吉「医師じゃなくても、カウンセラーとかもイケそう。僕、じっと見つめられて心が持ってかれそうになりましたから」

    唯「惚れそうになった?ダメだよ、あげないから!」

    覚「そうだね、さすが総領…あ、しまった」

    尊「お父さん~」

    吉「ははは、羽木家総領だけに、ですか?」

    覚「ははは~、賢い子は話が早いね」

    吉「では、大変お世話になりました。そろそろ帰ります」

    覚「え?良かったら昼ごはん食べていきなよ」

    唯「そうだよー」

    吉「昼の早い時間に用事があるんです。なのでこれで失礼します。ありがとうございました」

    廊下の途中、クリニック内で診療中の美香子に軽く会釈をして、玄関に向かった。

    吉「忠清さん、一つだけ質問していいですか?」

    若「苦しゅうない。申してみよ」

    吉「堂に入ってるなあ。あの、こいつのドコがいいんすか?」

    唯「うわっ!忘れてなかった!」

    若「ハハハ。唯はその、人となりそのものが、いわば生きる、生じゃ」

    吉「生。せい、ですか」

    若「生きる力が漲っており、周りにもその力を与える。時には命さえも皆に与える」

    吉「なるほど。確かに超前向きなんで、例えている意味はわかります」

    尊&覚 心の声(例えばかりでも、ない)

    若「また、雀の様に跳ね回る姿は実に愛らしい」

    吉「雀。かなりかわいい比喩ですね」

    覚&尊 心(愛の力だな)

    唯「もう!恥ずかしい、早く帰ってっ」

    吉「ははは。よくわかりました。本当に、今日はお世話になりました。ありがとうございました」

    若&覚&尊「いえいえ」

    唯「バイバーイ」

    リビング。

    尊「お疲れ様でした、兄さん」

    若「少しは、吉田殿の指針になったでしょうか」

    覚「なったよ、確実に」

    尊「一度は恋敵と思った人に、よく優しくできましたね」

    唯「そこ、大きく違うから!」

    若「いや、程なくして別の地に参るとの話であったので」

    尊「え!そんな事も思いながら話してたんですか。あい変わらずすごいなぁ」

    若「そうか?そういえば」

    尊「はい」

    若「カウンセラーとは、なんじゃ?」

    尊「あー、またそんな所で理解が止まってたんだ」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    救済完了。

    5日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days53~5日月曜11時、人生相談です

    悩める子羊、再登場。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    クリニック、診療時間中。

    芳江「先生、あの」

    美香子「はい?」

    芳「外に男の子がずっと立ってるんですが、入る気配がなくて。よく見たら、以前診察した唯ちゃんの同級生の子なんです。唯ちゃんを呼んできた方がいいですよね?」

    美香子が外を確認する。

    美「あら、吉田くんじゃない。どうしたのかしら?そうね、芳江さん悪いけど、彼をウチの玄関に案内してもらえない?」

    芳「わかりました」

    美香子が玄関に回った。ドアを開けるとそこには吉田くんが。

    吉田「美香子先生、こんにちは。すみません、突然来てしまって」

    美「それは構わないけど。唯を呼べばいい?」

    吉「いえ、実は先生に会いたくて来ました」

    美「え?」

    吉「僕、悩んでる事があって。どうしようもなく悶々としてたら、先生の顔が浮かんで…無茶は承知で、話を聞いていただけたらと思って、来てしまいました」

    美「まぁ、そうなの。気持ちは嬉しいけど、まだ診察中だしね」

    吉「そうですよね。すみませんでした!帰ります」

    美「…ううん、ちょっと待って」

    吉「え?」

    美「そういう話を聞いてくれる、うってつけの人物が今ウチに居るわ。頼んであげる。入って」

    吉「え、でも」

    美「いいのよ。きっとスッキリ帰れるから」

    玄関に入ると、声を聞きつけ、覚、若君、尊の三人がやってきた。

    美「どうぞー」

    覚「お客さん?」

    若君&尊「あ」

    覚「知り合い?」

    尊「この前、買い物途中で会ったんだ」

    美「唯の同級生の吉田くんよ」

    吉「お父さんですか?初めまして、吉田です。旦那さん弟さん、この前はどうも。すみません、お邪魔します」

    覚「どうぞー。お友達なんて久しぶりだな。お茶の用意してくるよ」

    美「お願いします。あれっ、唯は?」

    若「寝ております」

    美「は?」

    若「ソファーで眠そうにしておりましたので、部屋で寝るよう申しまして」

    尊「起こしてくるよ」

    美「いや、いい。唯に用じゃないし」

    尊「そうなの?」

    美「忠清くん」

    若「はい」

    美「彼、迷える子羊なの。悩んでる事があるらしくて、ぜひ話を聞いてあげてもらえない?」

    若「子羊?それは構いませんが」

    吉「旦那さん、にですか」

    美「忠清くんは若いけど、人生経験豊富だからね」

    尊「確かに適任だね」

    吉「そうなんですか」

    美「じゃ、どうぞー。私は戻るからゆっくりしていってね」

    吉「先生、お忙しい所、すみませんでした」

    食卓の、美香子の席に通される吉田くん。向かいに若君。尊は若君の隣に座った。尊が若君に囁く。

    尊「兄さん、もし吉田さんがわからない言葉を言ったら、すぐ教えますから」

    若「済まない」

    覚「はい、お茶どうぞ」

    吉「すみません」

    若「吉田くん、まだ名乗っていなかった。速川忠清と申します」

    吉「え!苗字速川なんだ、びっくり。あの…忠清って、羽木忠清と同じ忠清ですか?」

    若「そうだね」

    覚&尊 心の声(それを言うなら、羽木忠清と同じ、ヒト)

    吉「羽木家って、謎なんですよ。ずっと永禄2年には滅びたって習ってきたのに、最近どんどん歴史が書き換わってて」

    覚&尊 心(犯人、二階で寝てます)

    吉「でも忠清さん、もし羽木忠清が今の時代に居たら、こんな感じなのかなって思います。美香子先生が適任って言われたの、わかる気がします」

    覚&尊 心(さすが、勘がいい)

    若「そうか、では羽木九八郎忠清となって、話を聞こうか」

    尊 心(え?あ、でもうっかり戦国言葉入ってもイケるから、それいい考えかも)

    吉「あ、輩行名が入った。本格的だ」

    覚 心(九八郎って、はいこうめい、って言うんだ。賢い子達の話、ついていけるかなぁ)

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    続きます。

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    二人の令和Days52~4日18時30分、かけがえのない時間

    完全に、五人家族。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    女子チーム、帰宅。

    唯「ただいまー」

    美香子「遅くなりましたー」

    玄関に、男子チームお出迎え。

    唯「たーくん!ただいま!」

    若君「お帰り、唯。おおっ」

    ぴょーんと、若君に飛びついた。

    唯「会いたくてしょうがなかったよぉ!」

    若「そうか。わしもじゃ」

    唯「ホントに?嬉しーい」

    尊「熱いな。あ、こっちにもう一人居た」

    覚が、腕を広げて、よし来い!とばかりに待っている。

    美「お父さん。私には、そこまでの情熱はないです」

    覚「そうなのかー」

    美「後でね」

    尊「後とか言ってるし。買い物はできた?」

    唯「うんバッチリ」

    尊「なんでお姉ちゃんが答える」

    唯「私のも買ってもらったから。あ、たーくん、蚊取り線香入れ買ったからね」

    若「そうか。お母さん、香炉に要らぬ金を使わせてしまい、済みませぬ」

    美「大丈夫、三割引だったから」

    若「安く手に入れたと。買い物上手じゃのう」

    唯「当たりー!」

    美「うふふ、ホントね」

    若「?」

    覚「さ、じゃあ揃ったから、冷麦ゆで始めるよ」

    美「あ、そうなのね。お待たせしました」

    晩ごはん。

    美「しっかし、よく入るわねぇ、唯」

    唯「冷麦は別腹」

    尊「それ、メインが逆じゃね?何食べてきたの」

    唯「モリモリにデコった、パンケーキ~」

    それを聞いて、顔を見合わせる男子三人。

    覚「今日食べたんだ」

    唯「うん。悪い?」

    尊「悪かないけどさ」

    若君が、少し淋しそうな顔をしている。

    唯「ん?どしたの、たーくん」

    若「あ、いや。唯」

    唯「はい?」

    若「また、じきにそのような甘味処へ参ろう」

    唯「え、いいの?やーん、たーくんとなら何回でも行っちゃうよっ」

    若「そうか」

    笑顔になる若君に、ほっとする覚と尊。美香子も、経緯を悟った。

    覚&尊&美 心の声(良かった良かった)

    覚「あ、母さん。水曜、また違う城を皆で見に行こうと思うんだが」

    美「あら、そうなの。じゃあ、朝から行けるようにします」

    覚「済まないな」

    若「お母さん、済みませぬ」

    美「いいのよ~」

    唯「どこ行くの?」

    覚「ここだ」

    覚がタブレットを見せる。

    唯「へー、ここは行った事なーい」

    美「そこって、城下町が整備されて、食べ歩きとかできる所じゃない?」

    唯「食べ歩き!」

    尊「反応めちゃ速っ」

    美「で、今日はどうだった?忠清くん」

    若「はい、見応えのある良い城でした」

    尊「兄さんの、階段昇りの速さは見ものだったよ」

    唯「んー、まぁそうだろね。すっごく急でしょ」

    尊「うん。あ」

    唯「あ?」

    尊「お姉ちゃん、水曜そのワンピースは、オススメしないというか」

    若「確かに。エリさんには悪いが、ならぬぞ」

    美「あー、下から覗き放題になるからね」

    唯「それはイカン、止めとく。あ、やったぁ、じゃあ、今日買ってもらった服とジーンズにする!」

    美「そうね、ちょうどいいわ。私もスカートは止めるわね」

    若「服を、買うて頂いたのですか」

    美「ええ、忠清くんも喜ぶと思って」

    若「喜ぶ?」

    唯「うん!絶対。んー、お披露目は、当日のお楽しみにしまーす」

    尊「へー」

    覚「母さんの服は?」

    唯「よく似合ってたよぉ」

    覚「そうか。そのお披露目は大分先だな」

    美「あら、後で着て見せてあげようか?」

    覚「あ、いや、どうしようかなー。ん?」

    子供達三人が、どうするのどうするの?と言いたげなキラキラした瞳で、発言を待っている。

    覚「うわっ。僕も当日でいいです…」

    唯「え~?見せてもらえばいいのに」

    若「遠慮などせずとも良かろうに」

    尊「ラブラブなのは周知の事実なのに」

    覚「畳みかけられた!お前達、息ピッタリじゃないか」

    唯「んー、一心同体?」

    若「以心伝心じゃな」

    尊「三位一体でしょ」

    美「あはは、面白い!」

    全員「ハハハ~」

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    4日のお話は、ここまでです。

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    二人の令和Days51~4日16時30分、山盛りです

    スイーツ以上に甘い関係。
    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    ワンピースの試着行脚スタート。

    唯「なんかイマイチー」

    美香子「確かに。着てみないとわからないものよね~」

    他のも試す。

    美「あ、中々良くない?」

    唯「悪くないけど、他のも着てみる?」

    決まりそう。

    唯「あ、めっちゃいいじゃん!マダム感出てる。でもすっごいシンプルだけどいいの?」

    美「似合ってるならいい。これは、ジャッキー風かな」

    唯「ジャッキー?」

    美「元アメリカ大統領の奥様で、品のあるお洒落で有名だったの」

    唯「へー。どおりでイイ女」

    美「あらぁ、嬉しいわ~」

    無事決まり、試着室を出る母。

    美「あのさ」

    唯「うん?」

    美「そのワンピース、可愛いいけど袖がないから、来週街中とかホテルだと、腕から冷えちゃうかもしれないわ」

    唯「そうかな?」

    美「カーディガン買おう」

    唯「え!それ嬉しいけど、そんなに着ないよぅ」

    美「さっき、唯と忠清くんが絶対喜びそうなの見つけたの」

    唯「へ?たーくんもって、どゆこと?」

    母が、白っぽい薄手の半袖カーディガンを手に取った。

    唯「あっ、見覚えのある形!」

    美「ね。上までボタンがあるから、普通にセーターとしても着られるし、前を開けて着れば、頂いたワンピースにも合うし」

    唯「着てみるー」

    試着。

    唯「かわいい!下はジーンズでもいいよね」

    美「そうね」

    唯「でも」

    美「いいのいいの、決まりね」

    レジに向かう。

    唯「ホントにいいの?」

    美「大丈夫。ここにイイ事書いてある」

    2点以上お買い上げで10%オフ、のポスターが貼ってある。

    唯「あっ、おトク情報!」

    美「ね、だから買っちゃおう!」

    唯「やったぁ」

    ワンピースとカーディガン、お買い上げ。

    唯「お母さん、ありがと~」

    美「いーえー。さてと、ちょっと休憩する?」

    唯「うん。ねっねっ、私、モリモリにデコったパンケーキが食べたいなぁ」

    美「またそんなカロリー高いのを。晩ごはん食べないつもり?」

    唯「食べる気マンマンだけど」

    美「聞くまでもなかったか。忠清くんとは、一緒に行ってないの?」

    唯「甘過ぎるスイーツは体に毒だと思ってるんだよ。顔が拒否ってたから、お店に入るのやめた事がある」

    美「永禄ではまず口にしないもんね。甘いって背徳よね~」

    唯「一生のお願い!」

    美「大袈裟な」

    唯「一皿を半分コでいいからぁ」

    美「私が半分も食べられるかだけど。ま、忠清くんが乗り気じゃないなら、代わりに一緒に行ってあげよう」

    唯「わーい!」

    店に入る。待望の、これでもか!とモリモリに飾られたパンケーキが運ばれて来た。

    唯「うー、嬉し過ぎるぅ」

    美「こんなビジュアルなら、彼が引いたのはわからなくもないな」

    唯「そっかぁ」

    美「まぁその辺は、現代も永禄も変わんないかな。さっ、召し上がれ」

    唯「いっただっきまーす!」

    帰り道の車内。

    美「他に、やり残したなって思う事があるなら、やっときなさいね」

    唯「うん。また思い出したら。でもね」

    美「ん?」

    唯「ずっと心の片隅に引っかかってても、20年後に叶うんだってのもすっごくロマンチックでいいなぁ。しかも二人して思ってたんでしょ?」

    美「そうね」

    唯「二人でいつか叶えようねってのがいいー。長ぁい約束もきっと待てる。どしたら、そう思える?」

    美「それは、あなたと彼なら同じように出来ると思うわよ」

    唯「どんなどんな?」

    美「お互いをずっと好きでいる」

    唯「サラっとすごいコト言った!うん、がんばる!たーくんに嫌われないように。あー、早くギューってしたいよ~」

    美「ドラマティックな帰宅風景になりそうね」

    愛する男子達が、家で待ってます。

    ┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅

    見覚えのある形って?は後日。

    続きます。

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